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1947/10/04 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第29号
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1947/10/04 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第29号

#1
第001回国会 司法委員会 第29号
  付託事件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
 (第百四十五号)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案(内閣提出)
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
○経済査察官の臨檢檢査等に関する法
 律案(内閣送付)
○裁判官彈劾法案(衆議院提出)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
○札幌高等裁判所並びに高等檢察廳帶
 廣支部設置に関する陳情(第三百二
 十四号)
○最高裁判所裁判官國民審査法案(衆
 議院送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十月四日(土曜日)
   午前十時三十九分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○民法の一部を改正する法律案
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより委員会を開会いたします。昨日に引続きまして民法の一部を改正する法律案に対する質疑を継続いたします。
#3
○山下義信君 一、二伺いたいと思うことがございますが、若しすでに質疑が終了いたしておりまして、重複いたしておりましたら、どうかそうおつしやつて頂きたいと思います。
 第一は、第七百三十一條の男女の婚姻の年齢でございます。これがおのおの一歳ずつ引上げられてございますが、その引上げられましたる理由はいかなる理由に基きますのでございますか、お示しを願いたいと思います。
#4
○政府委員(奧野健一君) 男女おのおの一歳ずつ婚姻年齢を引上げた理由でありますが、大体我が國の現状を見ますときに、男女の婚姻は従來より晩婚になりつつあります事柄が第一点であります。それから今度は未成年の男女が婚姻いたしましても、これは成年に達したものとみなすというので、七百三十七條で未成年の者でも当然に成年に達したものとみなされることになつております。そこでそういうふうに婚姻すれば大体一人前ということに取扱つてたとえ未成年であつても、法律行爲その他について一人前として取扱うというのが適当であり、これは外國の立法例等によりましても、婚姻は成年となすということで一人前に取扱われているのであります。そこでその一人前に取扱う実際の能力といいますか、思慮分別も備わつておることが望ましい、いわゆる婚姻者は一人前にするだけの実際上の思慮分別を備えることが望ましいというふうな意味もあります。それから尚その外に大体外國の立法例、殊に米國の大多数の州の例を見ましても、男は十八歳、女は十六歳ということになつております。まあドイツ等は男は二十一、女十六、フランスは男が十八、女が十六、スイスは男が二十、女は十八というふうになつておりますが、アメリカなんかの大多数の州は男が十八、女は十六ということになつておりますので、それらを参酌いたしまして、男女共に一歳ずつ引上げたわけであります。
#5
○山下義信君 段々と晩婚になりつつあるということは、私共もさように考えるのでございますが、併し最近のそういう趨勢は全く社会の経済状態から参つておることでありまして、且つ又男女双方とも高等教育を受くるものが次第に多くなつて参りまする関係上、実際の結婚年齢が次第に晩婚の趨勢にありますことは、政府委員のおつしやる通りであります。事実若しそういうような実際の状態に相應いたしましても引上げられるということになりますれば、これはもつとお引上げになりまして、女は満十八歳、男は満二十歳とか、或いはそういうふうにお引上げになりましてもよいわけであります。併し年齢の数字だけそういうふうに伺いすのは、これは限りのない質問にな前りますので、一歳引上げることも、二歳引上げることも、どういうわけで一歳、どういうわけで二歳と、数字を伺つておりますのでは、これは無理な質問になりますから控えますが、実際の趨勢は晩婚の趨勢にあるといたしましても、併し一面考えますというと、早くから結婚を致しますということの方が非常によい場合があるのではないかと思います。例えば最近の青年の風紀の頽廃というような事柄も、どういうふうにしてそれを指導すべきかということがいろいろ関係者で心配せられておりまするが、名案がないのであります。結局抽象的に、或いは教育を盛んにしたり、或いは修養をさせたりというようなことを申すのでございますが私共は本当を申しますと、早く妻を持たせ、早く夫を持たすこと、そういうふうな不良性になり易い青年男女には早く結婚させるということがよいじやないかというようなこともあるのであります。そういう点から考えますというと、結婚年齢はむしろ引上げないで置く方がよいじやないかと思われるのであります。
 外國の立法も只今お示しでございましたが、実際を申しますと、外國から比べますれば、日本あたりはいわゆる未開でありまして、早熟の方でもございますし、少しばかり低い方が日本自体としては実際的ではないか、こう考えます。殊に人権の基本的尊重というような面から申しますれば、早く一人まの扱いをしてやる方の趨勢に進んで行かなければならんものではあるまいか。例えば選挙権のごときも段々と年齢の制限を引下げて行くべきものである。結婚によつて成年とみなすというがごときは、殊にこれは活用しなければならんのでありますから、結婚年齢等のごときは低い方がむしろよい面があるのではないか。実際におきまして今日青年が相当いろいろ犯罪などにおきまして、ああして一人前以上の惡い方の面もあるのでありますのであります。そういうふうに結婚年齢は從來の通りに据え置いた方がよいのではないかというふうに考えられますが、その点に関しまする御所見をいま一度伺いたいと思います。
#6
○政府委員(奧野健一君) 婚姻年齢をどの程度にするかということは、これは相当むつかしい問題で、どの線で画定しなければならないということは、社会状態その他を参酌して決定いたさなければならないものであろうと思うのであります。そこで先程ちよつと触れましたように、現行民法によりますとたとえ婚姻をしましても、未成年者である場合には、やはり未成年としてその父母の親権に服するということになつて参りまして、その夫或いは妻がいろいろな法律行爲をやるにしても、すべて未成年者として、法定代理人の同意若しくは法定代理人が代つて行うというふうなことになりまして、法律関係が非常に混乱して参るのであります。そこでスイス民法の例及び米國におきましてもそういう例が非常にあるのでありますが、要するに婚姻によつて一人前に成年者となつたものとみなすという七百五十三條の規定を置くということがどうしても必要であろうということになりまして、そうなると、それに相対應して一人前にふさわしい能力、思慮分別のある者が婚姻するという裏付けのあることも必要であるということで、少しく現在の婚姻年齢を引上げて然るべきではないか。ただ外國の例には、男が二十一歳或いは二十歳という例があるのでありますが、しかし只今仰せのように、我が國としては、殊に農村の実情等を見ますと、やはり晩婚とはいいながら、外國の例と比べて早婚であろうと思うのでありまして、急激にこれを引上げることもいかがかというふうに考えまして、いろいろ斟酌いたしました結果、男女とも一歳ずつ引上げるということが最も実情に適し、法制的にも適するのではないかということで一歳ずつ引上げたのであります。今の御意見も現在の我が國の社会状態から見て、そういう点も非常に考慮しなければならないのではないかというふうにも考えますが、先程言いましたようにいろいろの経緯から一年ずつ引上げるということにいたしたわけでありますから、さよう御了承を願います。
#7
○山下義信君 次に伺いますのは、第七百四十一條でございますが、外國に在る日本人の婚姻に関しまして、駐在する日本の大使、公使又は領事に届出をするということに相成つております。これは現在といたしましては、大使、公使、領事などというものがまだないことになつております。然るにこの民法は昭和二十三年一月一日から施行するということに相成つておりますが、それまでに大使、公使の交換というがごときことがあり得るかどうか、私共に判然といたさないのでございますが、只今の状態におきましてこの第七百四十一條の適用というものはどういうふうになるものでありますか、伺いたいと思います。
#8
○政府委員(奧野健一君) お説のように只今はこの規定は働かないわけであります。併し民法は恒久法でありまする関係上、將來講和條約が成立し、我が國からも大公使の外交官の派遣ということも想像できると考えまして、殊に現行法の七百七十七條という規定もありますので、將來を考えまして、これを削除する必要もありません。將來の講和條約後の場合も想像して、現在は働きませんが、そういう意味で残して参つたわけであります。
#9
○山下義信君 只今の七百四十一條の点は後で又伺いたいと思うのでございます。
 次に第七百五十二條でございます。夫婦たる要件がお示しになつてありますが、「互に協力し扶助しなければならない。」とあるのでございます。この協力と扶助の同異はどういう点にございますか、お示しをお願いたいと思います。
#10
○政府委員(奧野健一君) これは現行法の七百八十九條及び七百九十條を一緒にしたような規定でありまして、先ず前段におきまして、夫婦互いに同居する義務を負うということ、これは現行法では「妻ハ夫ト同居スル義務ヲ負フ夫ハ妻ヲシテ同居ヲ爲サシムルコトヲ要ス」というので、夫の方に妻が同居しなければならない。而して同居の場所の選定権等は夫にあるというふうに読めるのであります。これが男女平等の憲法の精神には余り適しないというので、「夫婦は同居し、」ということで相互に平等の関係を現わしている、更に現行法の七百九十條によりますと「互ニ扶養ヲ爲ス義務ヲ負フ」、夫婦間の扶養の義務が明らかに規定してあります。併しながら夫婦間に扶養の義務のあることは勿論でありまして、夫婦間の事柄を義務であるというふうに規定するのもむしろ水臭い感じがいたすという事柄、それから殊に新憲法におきましては、夫婦の関係を特に重要視いたしまして、憲法二十四條にあるように「夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」、つまり相互に協力をしなければならないということが明らかにいたされておるのであります。そういう関係から同居の点について平等とし、扶養の義務というふうなむしろ水臭い文字を改めて、扶助互いに助け合う、その中には当然に扶養の義務も含んでおります。その他に協力の義務、これはむしろ法律以上に経済的或いは精神的に互いに協力扶助して、夫婦関係を持続しなければならないという趣旨を現わす。そういつたような意味で、夫婦間の誠実の義務といいますか、協力義務を從來より強く現わして、從來の七百八十九條、七百九十條というふうなものに代えて、こういう表現を用いたわけでありましてこれを法律的にいえば、やはり同居の義務、扶養の義務というふうになろうと思いますが、その関係をこういうふうにやや精神的といいますか、道義的な意味を含めたような意味で表現いたしたわけであります。
#11
○山下義信君 そういたしますと、同居というのは精神的に互いに仲良くすること、それから扶助というのは経済的に互いに扶け合うこと、こう解釋いたしてよろしうございますか。
#12
○政府委員(奧野健一君) さようでございます。
#13
○山下義信君 次に伺いたいと思いますのは、第七百七十條の離婚の場合でございます。ここに列挙してございまする五項目は、相当これは離婚といたしましては重大な條件が列挙せられてあるように思われます。只今の夫婦の要件から推しましても、いま少し離婚の要件を拡大いたしまして、離婚を容易ならしむるというようなふうにいたして行くという方がいいのじやないかと考えるのでありますが、当局の御所見を伺いたいと思います。
#14
○政府委員(奧野健一君) この七百七十條は現行法の八百十三條に該当する規定でありますが、現行法におきましては法律上の、いわゆる裁判上の離婚の原因といたしましては、一から十号までで各場合を規定いたしております。それでこの場合に該当しない場合には、どうしても裁判上の離婚の請求ができないということになつておりまして、只今お示しのように非常に窮屈になつております。むしろ離婚を緩やかにすべきではないかという御意見とは全く反対の規定になつております。そこでこういうふうに一々原因を列挙いたしますことは、これは夫婦間のいろいろな原因によつてどうしても婚姻関係が継続されて行くことができないという場合のすべてを網羅するということはなかなか困難であるのでありまして、只今のような御趣旨を徹底せしめることは、幾らその原因の列挙を多くしましても目的を達し得ないということに考えます。そこで七百七十條の第五号に、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」という包括的な一号を加えまして、一号から四号までは大体例示的なものといたしまして、五号に至つてそれを包括的な、言い換えれば一号から四号までは、五号の一つの例を示している、というふうな考えから、要するに婚姻関係が持続し難いと思われるような場合であれば、とにかく裁判上の請求ができるということにいたしまして、これによつて只今の御趣旨に副い得るかというふうに考えます。
#15
○山下義信君 私共道義の面、種々なる社会情勢の面から、この民法の改正をいたしまするときに、この結婚に関聯いたしまする点などは殊に重大であると考えるのでありまして、大体におきまして結婚というものが極めて簡便に正式に取扱うことに相成り、而して一面におきましては離婚ということも極めて手軽にこれが取運びができるように相成り、從いまして刑法におきましても姦通罪の存置の必要がないという一部の理論も成立ち得る。延いてはそれがよい方面におきましては確かに風俗を良くするというふうの面に大きなる働きをするということを考えまするので、この離婚の民法の定めまする要件の上にも、その一貫したものが出ているのがいいのじやないか、こう考えましたので伺つたのでございます。從いまして第七百七十條に例示されました各項目の中におきましても、これが非常に重大なる要件のみを挙げられるというのではなくいたしまして、例えば第五号の「重大な事由」ということも、何も第一号から第四号に匹敵するがごとき重大な事由という意味ではなくして、夫婦の間に愛情が冷却をした、或いは俗語で申しますれば、仲がよくないようになつて來た、意思の疏通が欠けて來た、つまり先程御説明を承りました協力の精神が欠けて來たということも、これも夫婦の両者間におきましては重大な事由でありまして、客観的には小さいように見えましても夫婦当事者にとりましては、実に婚姻関係の重大なる事由であるます。そこに含まれてあるということでございますれば、私共も了承いたすのでございますが、重ねてその辺を伺いたいと思います。
 且つ又第一号の「配偶者に不貞な行爲があつたとき」、この不貞な行爲ということは、いわゆる相手方の俗に申しまする不品行な行爲というようなふうに解釋いたすべきものでございましようか。
#16
○政府委員(奧野健一君) 只今の御発言の前段につきましては全くその通りでありまして、要するにその具体的な場合においてその婚姻関係を継続いたし難いと思われる事由がありまして、婚姻の請求があります場合には、家事審判所におきまして一應調停を試みるいわゆる調停前置主義を採つているのであります。一應は調停を試みますがどうしても元の鞘に納まらないというような事情があれば、廣く離婚を認める。まあこういうことができる手当をいたしておるわけであります。そういう意味において前半についてはお説の通りということができるのであります。
 次の七百七十條の第一号の配偶者の不貞なる行爲という事柄は、現行法におきまする重婚でありますとか、或いは妻のみの姦通、或いは夫の場合には姦淫罪によつて刑に処せられたときということに、夫婦の間において差等を設けるということは適当ではない、男女両性の本質的平等からいつて妥当じやないというので、夫婦の一方に若し不貞な行爲があれば、それが男であろうと女であろうと離婚の原因になるということでありまして、この場合における不貞な行爲という中には、最も予想いたしておるのは、やはり只今御指摘のように姦通といいますか、配偶者の一方が配偶者以外の者と関係するというような意味の不品行ということを考えているわけであります。尤もそれ以外の場合の不貞な行爲という概念が相当廣い概念を持ちますもので、單に夫婦の一方が姦通をしたというだけに止まりませんと思いますが、最も狙つておるところは夫婦の一方の姦通というような不貞な行爲を考えておるわけであります。
#17
○委員長(伊藤修君) ちよつと速記を止めて下さい。
#18
○委員長代理(岡部常君) 速記を始めて下さい。
#19
○山下義信君 只今の御答弁で大体了承いたしましたのでございますが、私の伺いました中の一つは、この「不貞な行爲というのは姦通、重婚等のごとき固よりそれでございますが、尚これを廣く解繹をいたしまして、夫婦の一方の不品行、世間で申しまするところの不品行というものでございます。例えば夫がよく料理屋に参りまして藝者に戯れましたり、或いは妻がしばしばダンスホールに出入いたしまして、そうしてかれこれ心易い者などと懇ろにいたしまする、必ずしも姦通ではないといたしましても、世間の通念からいたしまして、そういうような不品行なような所業まで不貞な行爲と解釋していいのではないか、こう考えて伺うのであります。固より只今申し上げました夫婦の精神的協力という面の許し難い重大なる事由という中にも包含しうるとは存じまするけれども、差当つて「配偶者に不貞な行爲」というこの概念の中に、只今申しましたような俗に言う不品行というようなことも包含をいたされておるのではないか、こう考えますので、念のために伺うのでございます。家事審判所のいろいろ將來の運営の上におきましても、固よりこの民法の條項が、而もこの立法の御趣旨が非常に重大に影響しますることは言うまでもないと考えまするので、この段重ねて伺つて置きたいと思います。
#20
○政府委員(奧野健一君) 立法者の考えでは、夫婦はお互いに貞操の義務があるわけでありまして、この貞操の義務に違反する行爲がまあ不貞な行爲という考えでありまして、これはその意味は勿論男女の性的な交通というふうなものに必らずしも限らないと思います。性的交通がなくてもやはりいわゆる貞操の観念に反するようなことでありますれば、不貞という言葉になろうと思います。ただ男女間のその性的、体的関係のみに限定する意味ではありませんが、要するに男女間の貞操の誠実義務という義務に違反するような行爲をいいますので、これはやはり不貞という意味を社会的に解釈して然るべきものと思われるのでありまして、具体的な場合にはやはり裁判所が判断することになりますが、敢えて性的な問題のみを考えておるわけではありません。
#21
○山下義信君 只今の御答弁で本員は満足するものでございます。男女の平等という思想が、民刑両法の改正案の中に盛られておりまするということはそういう点にまで御解釈が及ばなければ、眞に從來欠陷のありました女子の立場が尊重されるというようなことは具現し難いのではないかと考えておりましたが、只今の御説明でよく了承いたしました。
 次に伺いたいと思いますことは、第八百十九條でございます。父母が離婚をいたしましたときの親権者の條文におきまして、子の出生前に離婚をいたしました場合は、母が親権を行うことになつております。尚出生後は父母の協議で父を親権者と定めることができるとなつております。次の項には、父が認知した子供に対しまする親権は、協議で父を親権者と定めたときに限つて父がこれを行う、こうあるのでございます。一應御説明が承りたいと思うのでございます。
#22
○政府委員(奧野健一君) 父母が共同して子供に対して親権を行うというのが、父母平等の考えから申しまして最もそうありたいと考えるのでありますが、父母が婚姻中でない、離婚でありますとか、まだ父母が婚姻しないというような場合におきましては、それは父母共同して親権を行うといつたところが、それは事実上不可能でありますので、そういう場合は例外として、即ち離婚の場合は先ず第一に何れかを親権者と決めなければならないというのであります。次に離婚のときにまだ生まれてない場合、その場合は誰にいたすべきか、これはまだ生まれてないのでありますから、予め離婚の際決めて届出をするといつたようなことは不可能であります。子供が生まれた場合は自然母親の許におるわけでありますから、母親が看護育成に当ることが最も適当であるという意味を以ちまして、取敢えず母がその場合には親権を行う。併しながらその後父母の協議で父を親権者と決めることができる。その協議が調わなければ家事審判所で協議に代える審判をすることもできるということにして、子供が生まれた場合は誰か親権者を決めて置かないとその間に当然に空白ができる、父母の協議あるときまで空白ができるわけでありますし、又別に協議をやらない、夫婦別れをした父母の間で子供について協議をするかどうかも疑問でありますので、そういう親権者のない状態を置くことはできませんので、その場合は母が親権を行う。それと同じような意味を以ちまして、現在では私生兒という言葉はありませんが、いわゆる父なし子を生んだという場合には、一應母が親権者としておるわけであります。併しそこへ父が認知をして父が明らかになつた場合に、父が明らかになつたといつて直ぐ父母の協議で親権者を決めて貰えばいいですが、そうでない場合に又空白の状態を作ることは適当でない、そこでやはり依然として一應母が親権者になつておるわけであります。ただ父母の協議で父を親権者とすることができる、その場合に限つて父が親権を行う。そうでない限りは母が継続して親権者となつて行く。尤もこの場合にも協議ができなければ家事審判所によつて協議に代える審判ができるという趣旨でございます。
#23
○山下義信君 子の出生前に離婚いたしましたときに、親権が母に限りまする理由を、いま一度お示しが願いたいのであります。
 それから子の出生後につきましての親権が、後の項では父が認知した場合先の場合は離婚前に姙娠しておりました子供の出生の場合でございますが、條文の文章が異つておりまするので、父を親権者と定めることができるという意味と、父を親権者と定めたときに限り父が行うというのと、條文の相違の解釈をいま一度お示しが願いたいのでございます。
#24
○政府委員(奧野健一君) 子供の出生前に父母が離婚した場合、これはやはり生れて來る幼少の子供に対しては、若し直ぐ父母の間でどちらか親権者を決めることができれば、むしろそれに越したことはありませんが、そういうことができないとすれば、一應は誰かが親権者でなければならないという場合に、父にいたすか、母にいたすかという場合でありますが、すでにその子供が生れ落ちて、母の手許にあるのでありますから、その場合に父を特に親権者とするよりも、取敢えず母を親権者とすることが自然の看護育成の上にも適当なものであるという意味で、母を親権者と決める。併しながらその後父母の協議で、父を親権者と決めることができる。そうして認知の場合も考え方は全然同じであります。文章の書き方が、こういうふうに変つておりますのは、父母が離婚した場合には、新らしくどちらかの親権者を決めるという問題になつて参りますが、認知の場合は認知されるまでは、もう子供が生れておつて、そうして親権は母が行うということに一應は確定しておるわけであります。そこで原則としては、母が親権者であるのでありまして、それを特に父を親権者と変更するという協議がない限り、母が親権者であつて、協議で父を決めたときに限つて父がこれを行うということにいたしたのであります。まあ認知によつて父ができるわけでありますから、本來は共同親権ということにもすべきものと思いますが、併し父母が婚姻しないのでありますから、婚姻しない場合に共同親権ということも適当ではない。併しすでに母の親権にあるのでありますから、父を親権者としない限りは、父が親権者にならないという趣旨を現わしたので、実際の働きとしては前の項と全然同じ考えであります。
#25
○山下義信君 第八百二十二條でございますが、親権を行う者は子供の懲戒ができることになつておるのでございますが、これはどういう御趣旨でございますか、承りたいと思います。
#26
○政府委員(奧野健一君) これは現行法の八百八十二條と全然同じで、裁判所を家事審判所に改めた点が違いますが、現行法の八百八十二條と同様に、やはり或る程度の懲戒権を親権の效力として持たして置くことも適当ではなかろうかという意味であります。
#27
○山下義信君 私見を申しましては恐縮でございますが、親権に懲戒権は要らないのではないかと思うのでございます。実父母でない親権者がありますことは申すまでもございませんが、どういうわけで子供の懲戒を親権の中に存置して置かなければならんのであるかということを承りたいと思うのでございます。
#28
○政府委員(奧野健一君) これは現行法の問題でもあるのでありますが、やはり親権といいますと、子供の監護、教育ということが主たる内容であつてそれが権利であると同時に義務であるというところに義務的な、むしろ親権は権利というよりも親の義務ということが大きく考えられるのが近代の行き方と思うのであります。そこでそういう意味からいたしますと、懲戒というふうなことは何だか封建的な、むしろ子供を自分の意思のままに、言い換えれば非常に昔の子供に対して親が生殺與奪の権を持つておつたというような思想が残つておるように見える嫌いはあるのでありますが、併しながら子供の監護、教育というその目的を達成するに必要な範囲で、やはり子供に対する或る程度の懲戒を行い得るということにすることが、子の監護、教育を全うする所以であるのじやないか。若し全然そういうことがないということになりますと、子供がいろいろ誤つたことをした場合に、親がこれを矯めたり或いはその他それを反省せしめるような、そういつたようないわゆる懲戒権のあろことも又監護、教育を全うする所以からいつて、やはりこれを認めた方がよろしいのであつて、これは必ずしも子供を圧迫するというような封建的な考えではなく、子供を教育、監護する親として子供に対して全然懲戒権のないということにもいかがかと考えられましたので、現行法にあるそういう考えを新民法において一應これを取入れて行くのが相当ではないかというふうに考えた次第であります。
#29
○山下義信君 政府委員のお説一應は御尤もでございますが、私共の考えますのに、親の立場から申しますと、懲戒ということは、若しこれを法律語のそのままで解決いたすといたしますと親の立場におきましては懲戒ということはあり得ないのであります。懲戒をいたしましても、それは親の慈愛の変形に過ぎない、こういうことはなくとも、親の慈愛として当然子供の勧善懲惡はやるのでございまして、悉くそれは親の慈悲であると思います。併し眞の実父母でない場合の親権者にとりますというと、この懲戒権があるということは非常に弊害があるのではないかと考えるのであります。すべての法律が改正されまするその要請の中に、仰せの通り基本的人権の尊重がしばしばあります。人権の尊重はいうまでもなく、ただ單に男女の一人前の上のみではないのでありまして、子供の上にまでもその人権尊重に趣旨が現われて來なければならんと考えます。すでに兒童福祉法という法案が國会に提案されてございまして、その兒童福祉法の原則には、兒童が子供としての人権が尊重される、すべての人から温かく育くまれて行く権利を有するということが冒頭に特筆大書されてあります。すでに親権を法律上代つて行うことのできる規定がそれらの保護團体の者に與えられてございましても、それらが子供に対して懲戒を與えるということはよくないという或る方面の指示もありまして、兒童福祉法に関します限り子供に懲戒をするということが非常に重大に扱われて、只今審議をいたしておるのでございますが、併せましてこの民法におきまする親権の懲戒権もこの際削除いたしますことが、子併の人権を尊重し弊害を防止する意味におきまして、私は今日の時代に即應した改正ではないか、こう考えますので、それに関しまする政府の御所見を重ねて伺いたいと思います。
#30
○政府委員(奧野健一君) 先程申しましたように、親権の内容はむしろ親の子に対するいろいろな権利というよりも、子の教育監護のための親の義務ということに関聯せらるべきものであるというふうになつて参りまして、そこでこの懲戒ということも全く親の懲戒権というふうな子に対する支配的な権利というふうなものではなく、監護教育の、現在における子の利益のための、子を思うが故の、いわゆる先程お示しのような子を愛撫し教育する親の慈悲としての必要上の事柄でありますので、こういうことを殊更に法律の中で謳うということも、むしろ適当ではないかという御意見も十分理由のあることと考える者であります。ただ從來の八百八十二條の規定は、それ自身そういう意味で見るならば、これを子供に対する人権を侵害するものだといつたようなものではなく、全く子供の監護教育、子供の利益のために受ける事柄であるというふうに見るならば、從來まあ歴史的に見ますると、子供に対する親の圧迫或いは支配というものから子供を解放するといつたような進み方になつておるようでありますが、單に子供を親の支配から解放するというのではなくて、子供を親が愛撫し教育し育成して行くという、むしろ親の義務というところにまあ進んで参るべきもので、八百二十條の親権というものは権利であると同時に義務であるという事柄は、同時にそれを意味しておるもので、義務としてその必要上、或る程度の懲戒ということを規定して置くも、人権を無視したものではないという考えで入れたわけであります。まあそういうこともありますまいが、若しこれが本当の子供の監護教育の必要上或る程度の懲戒を加えるというような場合に、子供が一々それは暴行であるとか、暴行罪として告訴するというようなことになつては面白くないので、そういう親子の関係、夫婦の関係はなるべくそういつたような法律で規定いたしたくはありませんが、まあ現行法にもあるという事柄と、若しそういつたような場合に、多少の法律的な根拠もないと、それは本当の親の慈悲だといつても、形式的に事を論ずる場合にはいろいろ面倒な問題も起りますので、この懲戒の事項を濫用するこは勿論戒しめなければならないし、場合によつたら犯罪を構成することにもなりましようし、又先程お話のように継親や継母が継子をいじめたというふうな例は從來多々耳にするのでありまして、そういう場合にこういう規定を置くことは、これを理由に濫用するということを非常に警戒しなければならないのでありますが、今囘はそういう継母或いは継子という関係はないことにいたしまして、それは親子関係ではないということにいたしましたので、そういつたような心配もなくなつておるまあ養子をいじめるというようなことも考え得るのでありますが、わざわざ養子を貰うという場合に、そういつたような濫用……。実父母の間及び養子関係という二つのみが親子関係になりますので、その二つの場合では大体これが濫用せられるというようなこともないのではないかという、いろいろな現行法を踏襲するというような考え方も交えて、從來通り存置いたしたわけでありまして、お説のような点は、十分理由のあることと考えますが、一應從來通りの條文を存置してあるのであります。
#31
○大野幸一君 七百二十九條に「養子その配偶者、直系卑属及びその配偶者と養子親及びその血族との親族関係は、離縁によつて終了する。」とありますが、その最後の「離縁によつて終了する」という意味でありますが、これは当然に終了するという意味でありましようか。と申しまするのは、旧法の七百三十條の第三項に、「養子ノ配偶者、直系卑属又ハ其ノ配偶者カ養子ノ離縁ニ因リテ之ト共ニ養家ヲ去リタルトキハ其者ト養親及ヒ其血族トノ親族関係ハ之に因リテ止ム」という規定がございましたので、今囘はこういう規定をなくするという意味で、当然終了するというようにお考えになつてできたものでありましようか。
 それから旧法の八百七十六條で、「夫婦カ養子ト爲リ又ハ養子カ養親ノ他ノ養子ト婚姻ヲ爲シタル場合ニ於テ妻カ離縁ニ因リテ養家ヲ去ルトキハ夫ハ其選擇に從ヒ離縁又ハ離婚ヲ爲スコトヲ要ス」という規定がありますが、この規定との関係はどういうふうにお考えになつたのでありましようかということを先ずお尋ねしたいとのであります。
#32
○政府委員(奧野健一君) 御尤もな点でありまして、これは只今お示しのように、從來は家を去るということによつて親族関係が終了するという場合を考えておつたのでありますが、今度は家を去るという観念がなくなりましたので、その養子縁組を基礎にしてでき上つた親族関係は、離縁によつて当然に終了するということにいたしまして、家を去るということによつて終了するということを廃めて、当然離縁によつて終了するというようにいたしたわけであります。
 そこで次に、現行法の八百七十六條で、夫婦が養子になつておつた場合にその一方が、妻が離縁によつて家を去るときに、夫は選擇に依つてその妻を離婚するか、或いはその夫も養親と離縁するか、どつちかの選擇権を與えるということにいたしております。これを今度は全部廃めまして、その結果夫婦共或る者と養子縁組を結んだという場合に、先ず第一に、そういう夫婦は夫婦共でなければ養子縁組ができないということがありますので、然らば離縁も夫婦共に共同してでなければ離縁ができないという問題がある、むしろそうすべきではないかという議論もあるのであります。とにかく從來の考え方では、養子縁組が夫婦共に一緒でなければいけないが、離縁のときには一人一人といいますか、ばらばらに離縁してもよろしい、併しそれでは家を異にするようなことになつて參るので、夫に離婚と離縁の選擇権を與えるということになつておるので、まあ縁組の方は夫婦共同、離縁の方はばらばらでもいいという観念を今度も踏襲し得るこういう規定がなくなつたから、或いは夫婦共でなければ、離縁もできないという解釈も或いは立つかとも思いますが、こういう規定がなくなつても、離縁の場合はばらばらでもよろしいというふうに、仮に解釈いたしますればそうなると妻の方だけが離縁になりますと、夫と養親だけは養親子関係、養子縁組の関係になりますが、妻はその関係がない、ただ夫の妻であるというだけで、夫のみが養親と養子縁組の関係になるということになつて、その場合に、從來のように夫に離婚の請求権を認めることは適当ではないかと考えまして、そういう場合に、当然に夫が妻を離婚するというふうな考え方を止めたわけであります。
#33
○大野幸一君 七百三十二條に「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。」こう申しまして重婚を禁止しておるのであります。これは刑法においては刑罰を以て、臨まれておるのでありますが、七百四十四條にはこれは單に裁判所に取消しを請求することができるということになつておるのでありまして、民法の方が手柔かく規定されておるのであります。これが若し取消しになつたときには、その婚姻は当初に遡つて無効になるのか、それとも遡及効を要しないのか、若し要しないとすると、その間に仮に子供ができたとすると、双方共実子であるというようなことで重婚の要項に反する、できた子供には何ら罪はないという意が規定してないようですが、その解釈はどういうように考えておいでになつておりますか。
#34
○奧野健一君 これはすべて從來通りであります。重婚を刑法で罰して置きながら、民法においては單に取消し得べき婚姻ということにいたして、当然に無効にしないのは不当であるという議論も十分立ち得ると思うのであります。併しながら大体刑法においては、重ねて婚姻するという、故意を以てやつた場合が刑罰に触れるのでありますが、民法のいわゆる重婚は、むしろ故意ある場合に限らないので、大体において戸籍吏はそういう重婚の届出を受付けることはないわけでありますからそういう法律上の重婚というのは殆ど考えられない、強いて申しますならば戸籍吏員が不注意……誤つて、或いはまあ故意に受付けたというふうな場合でありますとか、或いは再婚した場合に、前の婚姻を離婚して、新らしく再婚いたしましたが、前の離婚が無效であつたとか、前の離婚が取消された結果、事実重婚の関係になるといつたような場合が、民法上初めて考えられる重婚であります。そういう意味で、前の離婚が無効であつたとか、或いは取消しになつたがために、という理由で、後の婚姻が重婚になるからといつて、全然無効にしてしまうことは子供等の関係からいつて不適当であるというふうに考えまして、單に取消しの原因だけにいたしておる、從來そういうふうに規定されておるんだろうと考えます。そこで、こういう場合に、第二の婚姻、いわゆる重婚は、取消しの原因にのみなる、当然には無効にならないというふうになつておるわけであります。而してその取消した場合には、その効力が初めからなかりしことになるかどうかという問題でありますが、これはやはり一般原則に從いまして、七百四十八條で將來に向つてのみ効力を生じ、既往には効力を及ぼさないのであります。丁度離婚の場合と同様に、その法律関係を離婚した場合と同様に考えてよろしいというふうに考えております。
#35
○大野幸一君 次に七百三十七條の「未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも同様である。」とありますが、父母の双方が知れないときの規定については、どこかで救済してやりますのでしようか、いかがでしようか。
#36
○政府委員(奧野健一君) 父母の双方がおりまして、父母双方が反対をするという場合は、これはできません。婚姻ができないことになりますが、父母双方が死亡しておるというふうな場合は、それは自由に婚姻ができるということに考えておるわけであります。然らば父母が死亡しておるかどうかも分らん、おるかも知れないが、事実上表示ができないという場合はどうなるかということが問題になりますが、これは一つの解釈でありますが、これはやはり父母双方がその意思を表示することができないという場合も、むしろ婚姻ができるというふうに考えていいのではないか、父母が積極的に反対すればこれは勿論できませんが、父母が何処におるか分らないといつた事由で、意思を表示することができない場合には未成年者の婚姻の自由といいますか、そういうものを奪つてしもうということは適当でないのでありまして、そういう意味で、解釈問題にはなりますが、これは父母の同意がなくても婚姻ができるというふうに解釈すべきものと考えます。尚若し父母の同意がなければ婚姻できない場合でも、これが戸籍吏員によつて受理されてしまえば、これは取消しの原因にもならないことにいたしておるのでありまして、そういう意味で、元來は婚姻は両性の合意のみによつて成立するという建前をとるべきであるが、未成年の子に父母がある場合は、成るべく子供の保護という建前から、そういう場合に例外として父母の同意を要するということにいたしたので、その趣旨からいたしまして、父母の居所が分らんというような場合、そういう意味で同意を得られないというような場合は、やはり父母の同意がなくても婚姻ができるというふうに解釈すべきではなかろうかと考えております。
#37
○大野幸一君 七百三十九條の二項の婚姻をするときには、「当事者双方及び成年の証人二人以上から、口頭又は署名した書面、でこれをしなければならない。」ここに署名という言葉が使つてありますが、これは記名捺印ではよくないという意味と解したいと思うのであります。何故なれば、今まで多くの戸籍法上の届出は、記名捺印でよいというふうに解釈されたために、夫が妻を離縁する場合には、よく妻の記名捺印を濫用して届けてしもう。妻の方ではそういう意思がないために、訴訟を起さなければならん、こういうので、夫から訴訟を起す場合は非常に稀である。妻からのみ離縁の訴訟というものが起きていたというような場合がありまして、私は今離縁の場合について申上げたのでありますが、身分法上の関係を設定するに、記名捺印では甚だ軽卒の場合があると思うのでありますが、政府はどうお考えになつておるでしようか。
#38
○政府委員(奧野健一君) それは署名捺印でなければならないと考えております。これは戸籍法等によつてそういうことになつております。
#39
○大野幸一君 もう一点最後に詰らないことでありますが、この改正案では効力の効の字を力という字の方の効力の効の字が書いてあります。我々は昔から物理的ききめの場合の効力と、法律上の效力の效と、効と效との間のコウという字を区別しておりましたが、今度はこういう用語例に一定されて、こういう文字を使われることに一定されたのでしようか、ちよつと伺います。
#40
○政府委員(奧野健一君) さようであります。文というつくりのものはなくなつたのであります。
#41
○委員長代理(岡部常君) この程度で休憩に入りたいと思います。午後は一時から再開いたします。
  午後零時三分休憩
     ―――――・―――――
  午後二時二十二分開会
#42
○委員長(伊藤修君) 裁判所法の一部を改正する等の法律案、予備審査の法案でありますが、これを上程いたします。まず政府委員の提案理由並びに法案に対する説明をお伺いいたします。
#43
○政府委員(赤木曉君) 只今上程になりました裁判所法の一部を改正する等の法律案について提案理由を御説明申上げます。
 改正憲法の下におきまする司法制度につきましては、曩に裁判所法が制定されまして、改正憲法の施行と同時に施行せられ、從來の司法制度に画期的な変革が加えられましたことは、すでに御承知の通りであります。而してこの新制度の下に本年八月四日最高裁判所の裁判官の任命を見たのでありまして、ここに改正憲法によりまして、重要なる任務を負担される最高裁判所が発足するに至りましたことは、御同慶に堪えない次第でございます。
 政府におきましては、この最高裁判所、及び引続いて近く裁判官の任命を見まする高等裁判所以下の各裁判所の発足に当りまして、裁判所がその神聖なる使命を遂行いたします上に遺憾なからしむるため、裁判官その他の裁判所職員に関する諸法律を更に檢討いたしまして、ここに所要の改正を加えることといたし、本法案を提出いたす次第であります。以下本法案につきましと大略を御説明いたします。
 第一点は、裁判所調査官の身分に関する裁判所法の規定につきまして、從來これをすべて二級といたしておりましたのを、今囘一定の員数を限り一級官ともなし得ると改めました。これにより裁判所調査官に一層の適材を得る途を開きまして、特に最高裁判所の機能の充実を図ろうといたすものであります。
 第二点は、下級裁判所の裁判官の任命のため最高裁判所がその指名をいたす期間の延長であります。裁判所法施行法におきましては、裁判所法施行後六ケ月以内、即ち、本年十一月二日までにその指名をいたすべきものと定めておるのでありますが、裁判所法施行後、最高裁判所の裁判官の任命が、いろいろの事情から予想以上に遅れましたために、その指名の期間を本年十二月三十一日まで延長いたすものであります。
 第三点は、裁判所の職員の定員の改正であります。この定員は、裁判所職員の定員に関する法律によつて定めておるのでありますが、その後私的独占の禁止、及び公正取引の確保に関する法律の施行、並びに経済統制違反の取締り強化に伴う措置等によりまして、裁判官その他の職員の増員を必要といたします外、最高裁判所の事務局の機構を整備充実いたしますために必要な裁判所事務官等の増員をいたすものでございます。
 第四点は、簡易裁判所の判事の報酬につきまして、從來、「一般の二級の官吏の受ける俸給の額の範囲内」となつておりましたのを、「一級及び二級」と改めまして、一級になし得る余地を作りまして、その範囲を高く廣く拡張いたし、簡易裁判所判事に一層の適材を得ようといたすものであります。
 尚政府より提案いたしました法案といたしましては、只今申上げました四つの点でございますが、衆議院の委員会におきまして、修正案が提案されまして、第四條に、『昭和二十二年法律第六十五号の一部を次のように改正する。第三條第二項中「及び二級」を削ずる。同條第四項中「一般の」の下に「一級及び」を加える。』、要約して申しますと、判事補は別といたしまして判事はすべて一級の待遇にする。從來は、判事は一級若しくは二級ということになつておりましたのを、判事はすべて一級待遇にする、こういう修正案が提案されまして、衆議院の委員会におきましては可決されております。附け加えて申上げて置きたいと思います。
 以上極めて簡單ではございはすが、本法案の説明を申上げました次第であります。何卒愼重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたします。
#44
○委員長(伊藤修君) この法案に対する質疑は、後日にこれを讓りまして、本日はこの程度で散会いたしたいと思います。
   午後二時二十八分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
          大野木秀次郎君
           水久保甚作君
           岡部  常君
           松村眞一郎君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  政府委員
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
   司法事務官
   (官房臨時企画
   部長)     赤木  曉君
ソース: 国立国会図書館
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