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1947/10/06 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第30号
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1947/10/06 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第30号

#1
第001回国会 司法委員会 第30号
  付託事件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
 (第百四十五号)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案(内閣提出)
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
○経済査察官の臨檢檢査等に関する法
 律案(内閣送付)
○裁判官彈劾法案(衆議院提出)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
○札幌高等裁判所並びに高等檢察廳帶
 廣支部設置に関する陳情(第三百二
 十四号)
○最高裁判所裁判官國民審査法案(衆
 議院送付)
○廣島高等裁判所岡山支部設置に関す
 る請願(第二百八十一号)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十月六日(月曜日)
   午前十時五十一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより委員会を開会いたします。
#3
○松村眞一郎君 司法大臣が本日出席せられましたので、私は曾つてこの委員会で、新憲法の下におきましては、三権分立ということを非常に重要視しておるのであるから、内務省の解体であるとか、労働省の設置であるとかいう行政部内の問題よりも、行政そのものと司法権との分限を明らかにすることが必要である、從つて現内閣としましては、先ず司法省の將來の在り方ということについて考慮せられるべきであるということを申述べたのであります。その当時イギリスのロード・チヤンセラーのことを例に引いたりいたしまして大臣もその点については御同感であるというような意味の御答弁もあつたのであります。その後新聞紙の報ずるところによりますと、司法大臣はこの司法省即ち司法権というものについて愼重に御考慮になつており、閣議に対しても何らかの御意見をお述べになつたということが新聞に出ておりました。そういうような工合に内部でお進めになつておるといたしますればこの委員会ではそういうことを前に取上げて考慮いたしておるのでありますから、大臣から或る程度の御意見をお述べ頂くことが、この委員会に対しての審議の御進行の方から申しましても適当ではないかと考える次第であります。その点について差支えない範囲内においてお述べ頂けば非常に仕合せと思います。
#4
○國務大臣(鈴木義男君) 御質問の御趣旨誠に御尤もであります。御承知のごとく司法権が完全に独立をいたしました結果といたしまして、司法省と云うことは実は名称からいつても適当でないのではないか、司法というのは立法、行政に対立した意味の司法、要するに裁判でありますから、司法行政を司どる役所になるのでありますから、先ず名称から変えなければならんと共に、その仕事の主なものは何になるかということを考えて見ますると、若しただこれを機械的に区画整理のようなことをやるならば、これは残つた仕事だけをやつて行く役所にすればいいわけであります。これは余りにも理論の伴わない機械的な行政整理に過ぎないのであります。この機会に根本的に一つ裁判というものを除いた法務行政の在り方というものを考え直して見るべきじやないかということに相成つたわけであります。
 そこで議会の各有職諸氏の御意見等も是非承らして頂きたい。実は個人的にはそれぞれ御意見を承つておりますけれども、こういう席上で公けに御意見を承るということにいたさなかつたのは、御承知のように我が國の行政機構の改革に当りましても、只今の情勢上、政府だけ或いは議会だけでしてしもうということのできない事情にありますために、余り拘束的な意味において強い主張を承るということは、そのことを円滑に進めて行く場合において困る場合がありますから、ここで参考として御意見を承りたい。できるだけとるべきはとる、こういう方針でおるのであります。むしろこれは私共の方からお願いをいたしたい。一つ公けの席でもよろしいし、或いは別に席を設けてもよろしいのでありますが、忌憚なく司法行政のこれからの在り方についての御意見を承らして頂きたい、こう存ずるのであります。
 私が閣議において表明いたしました意見というのは極く大きなわけでありまして、つまり裁判権だけは完全に裁判所にお讓りをした、そうするならば残る仕事としてはどういうものであるかということを考えて見ると、現在残つておる仕事は当然残るべきである、國家のどこかの機構においてやらなければならん、強いて外の省に持つて行かないといえば、残ることは当然であるが外に内閣全体に対する関係において、一つの法務行政と申しましようか法律に関することはすべてここでやるという役所が一つ必要である。イギリスの例を見ましても、アメリカの例を見ましてもアトルニー・ジエネラルというものがございまして、殆どこれは政府の最高法律顧問として、一切の法律上の意見はアトルニー・ジエネラルがやる、こういうことになつておるようであります。と共に警察の方も指揮しなければならん、監獄のことも見てやらなければならん、そうかと思うと國家を代表して訴訟というようなこともアトルニー・ジエネラルの名においてやるというように、いろいろなことをやつておるのでありまして、これがやはり日本で考えて見ても、今どこにも属しておらないで、一部は法制局というものがやつておりますが、大体この際考えなければならん一つの機構ではなかろうか、こういうふうに考えまして、そういうことを申上げて、大体こういうことを考慮に入れて一つ新らしい司法省の在り方、これは何というか、省とすべきか、省でなく別なもつと省以上の役所というか、或いは省と無関係の存在にするかというようなことも考慮に入れなければなりませんが一つ案を立てることについて極く大きい枠の中において御承認を願いたいこういうことを発言したわけであります。よろしい、そういう方針で案を立ててよろしいから、具体的に案を付して閣議に報告して欲しい、こういうことになつたわけであります。
 つきましては、丁度いい機会でありますから、この委員会におきましても御意見がありましたならば、是非承らして頂きたいと思うのであります。
#5
○松村眞一郎君 大臣の御趣旨はいよく了解いたしました。誠にイギリス、アメリカなどにアトルニー・ジエネラルというのがありまして、大臣のお話のようなことも伺つておるのであります。それはやはり檢察制度とも合せて考えなければならんものと私は考えるのであります。檢察制度を別にして置いて、残つたものについて司法省の行政権を考えるのは、私はどうも少し無理じやないか、やはり檢察制度も合せてしなければならない、將來の行き方ということは私は考慮しなければならんのじやないかと思うのであります。尚この委員会でもそれぞれ他省関係との問題もあるかと思うのであります。いろいろ御意見のおありの方もあるようであります。私はその檢察関係のことだけ一つ一緒に考えなければならんということを思いますから、それを一應申上げて置きます。
#6
○鬼丸義齊君 私は過日、たしか先月の二十三日だつたと記憶いたしますが各新聞に報道されましたる高等裁判所の長官の任命に関しまする問題について大臣に伺いたい。
 裁判所が独立いたしまして、從來のいき方とは大変変つては参りましたが憲法八十條によりまする下級裁判所の裁判官の任命に対しまする点については、最高裁判所の方で以て指名いたしまするその指命に基き、名簿を作つて内閣の方に送り、内閣の方はこれによつて任命されると憲法は示しております。
 ところが、先般二十三日の新聞には全國の七つの最高裁判所の長官がそれぞれ七名決定をいたしまして、写眞までも出ておる。尚同日の午後には認証式が行われると新聞は報道しておりますのみならず、私の誤りか存じませんが、聞いておるところによりますと、すでに新聞に報道されましたところの長官候補者はそれぞれ東京に参りまして、認証式の準備に備えておつたと聞いております。
 ところが、その日でありましたか、その日の午後の新聞だつたかと思いますが、認証式が延びることになつた。そしてそれから更に翌日でありましたか、或いは二、三日後でありましたかいよいよ認証式が具体的に行われました人名は、先に発表されました者とはその中二名の相違で出ておりました。私は初めての制度でありますから、本当の眞相がどこにあるのか分りませんが、最高裁判所の方は、下級裁判所の裁判官の任命につきましては、その指名はするが、併しながら名簿をただ送るのみである、そこで内閣の方で以て事実上は任命する、こういうように極めて大雜把に考えておつたのであります。
 さて最高裁判所が作られまして、初めてのこうした人事問題という重大なる問題につきまして、認証式が行われますに先だつて、ともかく写眞入りで以て一般に報道されております者が、日を経ずして直ちに変更されて任命されたということは、一体どこにどういう手落ちがあつたのであるか。或いはその間にはいろいろ事情があつたろうとは思いますが、いずれにいたしましてもまだ確定をいたしておりません候補者を、そのまま堂々と新聞に発表いたしておりますることは、人事に関しましてはどうであろうか。若し最高裁判所の方で以て、これこれの人間とこういうふうに任命するというようなことの名簿を内閣に送りますと同時に、それを確定なりと発表されたのであるか。或いは又受理いたしましたところの内閣の方でそれを発表することになつたのでありますか。いずれにいたしましても、これは実に司法権が新らしくスタートを切りますこの場合におきまする人事の問題といたしましては、非常に大きな問題ではないかと思います。実はそれに伴います幾多のいろいろな非難を受けなければならんことになつておりますので、定めてそれにはいろいろな事情もあろうとは思いますが、いずれの事情であろうとも、確定せざる候補者を麗々しく発表しましたことは甚だ軽卒ではないかと思います。若しも最高裁判所において指名し、決定いたしましたそのままを発表されたのであるか。それとも又或いは候補者の倍数を出して、そうして内閣の方で詮衡した結果を発表されたのであるか。その点について先ず大臣に事情を伺いたいと思います。
#7
○國務大臣(鈴木義男君) お答えをいたします。高等裁判所長官の任命につきましては確かに鬼丸委員の指摘されましたような遺憾な点があつたのであります。ああいうことになりましたのは、最高裁判所の解釈と内閣の解釈との間に喰い違いがあつたためでありますがその人が洩れたことは責任がどこにあるかということについては当時もやかましく私からも詮議をいたしたのでありますが、どうもはつきりしないのであります。私共としては裁判所の方からその名前が洩れたものと解する外はないのであります。併しその裁判所のどこから洩れたかということは遂に只今までのところ分らないのであります。
 最初の憲法の解釈におきまして、下級裁判所の裁判官は最高裁判所の指名したものの名簿によつて内閣でこれを任命するというのを、機械的に七人の長官を任命するときは七人銓衡して、それを内閣に送付する内閣はそのまま任命する、こういうふうにおとりになつたのであります。それで七名をお選びになりまして七名の名簿を内閣に送付されたのであります。内閣におきましては閣議において、どうもこの先生は正しくないのではないか、それは内閣としては最高裁判所の意思を尊重する、これは疑いないことであるが、併し七人寄こして七人任命するということであれば、何らここに内閣の任命権というものが自由に発動する余地がない、ただ機械的任命になつてしまう、憲法の精神はそういうところにはないのだ、すでに最高裁判所の裁判官を任命するときも倍数の候補者を出させて、その中から選択をさして、初めて内閣の任命権なるものが活きるのである、故にこれは大切な前例にもなることであるから、内閣の解釈はそうであり、又正当な憲法の解釈としてそう見なければならない、故に倍数の名簿を提出して欲しい、こういうことを言い返したのであります。そのときすでに名前が世の中に洩れておつたようである。内閣に送付すると共に、それを何人が洩らしたかは存じませんが、どうも洩らしたらしく、新聞記者諸君は知つておつたようであります。
 そこで内閣から倍数出せということを命じてやりました結果、更に裁判官会議をお開きになりまして、倍数出せといつても、ただ誰でも出すというわけにはいきません。その人は皆任命をせられる可能性を持つのでありますから、任命されたときにはどうも自分は受けるわけにいかない、そういう意思はないと言う人が入つておつては困るわけでありますので、とにかくその倍数の十四名につきましては内交渉というものをやらなければならん、そのために時間を費やしたそうであります。それで内交渉ができまして、十四名が揃つて、それを再び内閣に送つて参つた、そこで内閣は諸種の事情を勘案いたしまして、そのうちから七名を選択いたしまして任命するという手続をとつたわけであります。それが鬼丸委員の仰せられる、最初にまだ内閣が正式に受理せないところの名簿の七名と、後の任命した七名とが違つておるそこで疑問とせられるのであろうと思うのでありますが、事情はそういう関係にあるのであります。
 内閣としては決してその最初の時に発表したことはないのであつて、内閣として、本日閣議において次の七名に高等裁判所長官に任命することをいたしたといつて発表したのは、その十四名の名簿が出た時の閣議でありまして、それは名前も実は私が書きまして官房長官に渡し、これが正式に発表せられたのであります。その以前そういう手続をとつたことは一度もないのであります。全く偶然に未確定のものが漏れたのである、こういうふうにお答え申上げる外はないのであります。
#8
○鬼丸義齊君 只今大臣の御説明になりましたような経緯らしく私も聞いております。大体指名されまする名簿は最初三倍に相当するものを出せとか、或いは二倍のものを出さなければならんということで以て、大分経緯のありましたことは聞いております。ところが今囘に限つて七名だけ特に指名して参りましたというようなことについて先に司法省と最高裁判所との間において、すでに重要なことでもありまするから、当然その点については確定したる一つの議が纏まつておらなければならんのではなかつたかと思います。それがいよいよ実際高等裁判所の長官が具体的任命が迫つて後に初めて定数だけを出す、或いはその倍数を出すとかいうようなことでその時に初めてそういうようなことが話題に上つたのであるかどうであるか。この点は私はすでにそういうような重要な問題は先にはや決められておる筈だ、それにも拘わりませず、最高裁判所の方はこの解釈に相違で結論を得ないことから、遂に最高裁判所だけの解釈によつて、七名だけの名簿を送つて來ただけであるか。そこで只今の大臣の御説明によりますると、どうも内閣の方で以て名前が漏れたものとは私も思つておりません。最高裁判所の方において決定と同時に私は漏れたものだと信じておりまするが、それについてとかくこれまでも官廳の仕事、就中この司法の関係、そうした事実を究めるにつきましては專門の立場におられる司法当局としてこのくらいの簡單な明白なことに対しまして、どこが漏らしたのであるということがはつきりしない筈はないと私は思つております。私はこれは非常に重要な、重大なる問題だと思いますから、司法大臣におかれましては格段なる一つ御調査をお願いたしまして、何れの場所において漏らしたかということだけを一つ是非確定さして頂きたいと願います。
 すでに最高裁判所ができましてから後に、遲々としてすべての事務が進捗いたしませんために、全國に亘りまする各簡易裁判所、これはこれまで持ちましたる警察署の権限を奪つたのでありまするから、一日も早く行わなければならんに拘わりませず、今尚任命がないばかりでなく、前途まだ見通しもつかんということに聞いております。そういうことでありましたならば折角の制度を却つて最高裁判所自体によつて蹂躪されてしまうのみならず、最高裁判所がスタートを切りましてから後の大体の行き方につきましては、何かと手遲れが多く、互いにどうも責任の帰趨が分らないというふうなところから、どこもかしこも全く立ちすくみの観がございます。而も日常起りまする事件は頻々として迫つて参るのであります。各方面共にそれに伴いまする弊害というものは日に日に増加して参つております。殊にこの人事問題に対しまする下級裁判所の任命に対しまする問題は甚だ不安定でおりまするがために、裁判官の仕事の上におきましても大きな影響を與えておるのが事実であります。殊にそうしたような裁判に関しまして私共幾多の疑問を持つのでありまするが、これに対しまする私共から伺いたい疑問を晴らすべき今尚機関も何もない。これらに対しまして惣々の場合であり、過渡的の場合でありまするから、尤もと思いまするけれども、何とかその点について早急に私ははつきりした行き方をお示しを願いたいと思います。
 右三点について伺います。
#9
○國務大臣(鈴木義男君) 名前が漏れたということについての責任の所在を明らかにすることは、できるだけ努力いたします。
 それからこれは後にも又問題になると困りまするから、念のため申上げて置きまするが、最高裁判所が提出する名簿は、倍数にするか、三倍にするか或いは必ずしも倍数に満たなくとも、その定員よりは多く申請をすればよろしいのか、この解釈につきまして一應考慮いたしたのでありまするが、最高裁判所と政府とが協議をいたしました結果、その点は余りはつきり倍数或いは三倍というようなことを決めないで置く、併し少くとも定員ではいけない、定員よりも多くの名簿を提出しなければならない、例えば高等裁判所長官のような場合は僅か七名でありますから、十四名を出すことはぞうさないそれでも相当内諾を得るためには骨を折るのでありますから、今度下の方に行きますと、地方裁判所所長、判事というものを倍数出せといつても、倍数出なくなることがあるのであります。そこでどうしても多少のゆとりを置いたということで許さなければ、事実上非常に困る、こういうことを考慮いたしまして、その点は解釈上定員よりも多ければよろしいということに理解して置くということに相成つたのであります。御了承願つて置きたいと思います。
 それから下級裁判所の裁判官の任命が遅れておりますることは、誠に御同樣非常に困つたことでありまして、事は最高裁判所の建設が遲れたことにすべては基くのでありまするが、人事は一旦決定をいたしますれば容易に動かすことができませんから、最初創設の際は多少時間を費しましても、立派な土台石を置いて、そうしてあとは段々補充をして行けばよろしい、こういう建前で行きたいということで、最高裁判所も非常に慎重な態度をとつて高等裁判所長官の銓衡に当られた。そのために日を費しましたが、幸いに東京を除きまして全國の高等裁判所長官は決定をいたしました。決定をいたしますれば、今度はその下は地方裁判所、簡易裁判所はすべて高等裁判所長官と最高裁判所の長官との協議においてやれることでありまするから、一潟千里とまでは申上げませんが、非常なスピードで今進行いたしまして、数日中に全國の地方裁判所以下の判事の任命を御発表することができる段階に達しておるということを申上げまして、その点については御了承を得たいと思います。今までは非常に遲滯いたしておりましたが、幸いこれからは相当迅速に進行して行くであろうという見通しを持つことができるようになつたということを申上げて置きます。
#10
○大野幸一君 今裁判所の裁判官指名名簿についてのお話がありましたのですが、最初憲法制定に関與されました本大臣の考えからしては、これは現在内閣と裁判所が取扱つておるような定数以上の者を名簿として提出する、こういう意味でこれは制定されたものであるか、それとも、従來は政府が裁判官を任命していたが、それは最高裁判所の指名したもので形式上内閣で、任命するという考えが多かつたのか。憲法制定当時の趣旨を御説明願いたいということと、もう一つは、一体これは倍数にするか、五〇%増加にするか、或いは又三倍にするかということは、内閣の権限としてどこまで認めるかという重大問題であるのでありまして、これを最高裁判所と内閣とのその都度の協議によつてやるということは非常にどうかと思うのであります。従つて若しそういうことを規定するならば、少くともそれは法律で名簿に関する詳細なる規定を國会で以てなすべきものであると私は考えるが、大臣はどうお考えになりますか。御質問いたす次第であります。
#11
○國務大臣(鈴木義男君) 誠に御尤もな御質問でありまして、最初憲法を作りまする場合に、最高裁判所の判事につきましては相当数の、これも必ずしも倍数とか三倍とかいうことは決まつておらなかつたのでありまするが、相当数の候補者を出してその中から内閣が一番適任と信ずる者を定員だけ任命するという解釈であつたことには疑いはないのであります。その先は最高裁判所の人事権というものを尊重いたしまして、できるだけ最高裁判所の選択に委ねる、こういうことも立法当時の意思においては間違いない。今日も同樣でありますが、併しそれはただ機械的に最高裁判所が出しまする名簿を鵜呑みにする、そういうものではなくて、やはり任命権は憲法上内閣にあるのでありますから、内閣が撰択権を持たなければならんということは條理上当然のことである。但しそれが倍数であるか三倍であるか、或いは五〇%、三〇%でよいかということは、これは無論仰せの通り、そういう確定した規定を設けまするならば、これは國会の御承認を得て法律で決めなければならん問題であります。けれどもそこまで私共は考えておらないのでありまして、或る程度余裕があるならば、その範囲内において、内閣で、最高裁判所の提出した名簿、殊にその名簿の順位というものを尊重して任命する。こういうことで行つて差支えないのじやないか。御承知のように地方裁判所、簡易裁判所等の判事を任命する場合に、倍數ということになりますと、只今定員が千二百人であります。まあ数字的に申しますれば、倍数といえば二千四百人出さなければならん。日本には判事の数は千二百人しかないのでありまして、とても倍数を出すことができない。そこでこの長官とか、上の方だけは樂に倍数でも三倍でも出せますけれども、下に行くほどそういう倍数を出すというわけに行きませんので、結局若干の裕りがあればよろしい。それを最高裁判所の意思を尊重して、その順位に從つて内閣が任命する。よくよくの事情がない限りは、その順位を乱すということもない予定でありますが、併し事情がありますれば、最高裁判所の提出いたしましたものでも削除することもあり、それだけこの任命権としては留保を持つておりませんければ、任命権の体をなさないわけであります。そういう趣旨であるということを御承知を願いたいと思います。
#12
○山下義信君 只今大臣から司法省の改組問題につきましてお話がありまして、この機会に我々委員の考えも聞いてやろうというお言葉がありましたので、この際一つは御考慮を煩わしたいと存じまするし、且つ又この席で御意見を承ることができますれば、非常に有難いと思うのであります。
 実はこれは予てからの懸案で、お互によく分つておることでございますが少年保護事業に関しまする司法省と厚生省との間の関係でございます。厚生省側の少年保護事業家が集まりますというと、常に申しますことは、司法省のこの少年保護事業を、我々と一貫したものにして貰いたいということの希望がいつも強いのでございます。昨年來こういう考えが一般社会事業家の間にも強くなつて参りまして、本年の五月の十七日であつたと思いますが、箱根におきまして兒童問題に関しまする社会事業家の大会が開かれまして、GHQ関係や殆ど全部が出席をいたしました席上におきましても、この問題が取上げられまして、強い要望となつて現われておつたのでございます。詳しいことはよく御承知と存じますから、省略いたしますのでございますが、今囘御承知の兒童福祉法案が上程せられておりまして、目下厚生委員会におきまして審議中でございます。兒童に関しまする一切のものを、この法案で統一をいたしまして、そうして兒童保護の徹底を期しようという画期的な法案を審議いたしております。この法案の中に、その対象者である兒童の年齢を十八歳までに引き上げまして、要すれば尚二十歳まで延期することに條項が置いてございます。名は兒童でございますが、言うまでもなく少年を含んでおりまして、ここに少年教護法を皆これに採り入れまして、いわゆる不良性のありまする少年の保護までもここにやつて行こう。從來少年教護法によりまして、訓戒とか、譴責とか、教護院に送るとか、或いは少年審判所に送るとかいつたような不良少年に対しまするいろいろなことも皆この兒童福祉法によりまして、統一してやろうというような法案が審議いたしております。この厚生委員会におきましても、司法省の少年保護事業との間の関係をいかにすべきかということが非常に重大な問題になりまして、只今実はその点で行詰つておるのでございまして、向うの委員会でも、司法省のお考えを承つてよく考慮したいということに相成つておるのでございます。然るに先般私共が京都、大阪その他の府縣に少年保護事業を視察に参りました場合、この司法省関係の少年保護事業の諸君の意見を聞きましたこところが、それらの人たちは私共が接しました範囲内におきましては、悉く司法省から脱しまして、そうしていわゆる社会事業としての立場に立つて、司法省とか厚生省とかいつた繩張りを脱却して、この際根本的に統一をして貰いたいというような要望が非常に強いことを見たのであります。殊に少年審判所の関係者の諸氏がやはりそういう意見であります。少年審判所関係の少年を保護いたしまする方面のことが非常に手薄いことを嘆き且つ又少年審判所そのものの機構の弱体を言い、本省におきまするところの、その関係部面の陣容の貧弱なることを指摘いたしまして、そうして実際の問題が少年の善導の上に行き届かないことを告白されまして、非常に憂慮されておるのでございます。若し司法省に置かるるということになりますれば、申すまでもなくこれらの一大強化をして頂かなくちやならんのでありますが、右の方には厚生省が兒童福祉法を以ちまして大々的に兒童問題を取上げて行こうということでございますので、司法省改組ということに際しまして、この少年保護事業をいかにするかということは、重大な課題として御考慮を煩す必要があるのではないか、こう考えられますのでございます。
 或いは一案といたしまして、司法省関係の少年保護事業を持つて参りまして、又厚生省の兒童保護関係を持つて参りまして、そうしてここに両者を合せました兒童院というものを別個に作りまして、兒童に対しまする対策を一貫強化したらばどうであろうかという提案をされました少年審判所長もあるのでございます。私共もこれには非常に心を動かされておるのでございますが、只今司法省改組につきまして御考慮中でありまするので、是非この点につきましては、多年に亘りまするこの宿題を、是非とも御解決を願いたい、こう考えておりますのでございまして、大臣の御所見を承ることができれば有難いと存ずる次第でございます。
#13
○國務大臣(鈴木義男君) 非常に示唆に富んだ有益な御意見を拜聽いたしまして、丁度制度の改革を考えておるときでありますから、よく参考にいたしたいと存ずるのであります。ただ仰せられまするような御意見は度々承つておるのでありまして殊に少年の取扱いについて……これはもつと強く申しますると、社会事業そのものがいろいろに分裂しておるということが甚だ好ましくないことでありまして、できるだけ社会事業の経営そのものを統一することが私は國家のため望ましい、こう考えておる次第でございます。
 その中の一つとして、少年の取扱いにつきましても、理想としては統一ができますれば、それが一番よいことと考えております。少年院設置のごときまことに好ましい御提案であります。併し不良少年と通常いわれておりまする者は、厚生省の兒童福祉法で十分に保護を加えて行くことができるのでありますが、御承知の犯罪少年、それから虞犯少年と呼んでおりますが、実はこれは犯罪少年なのでありますが、監獄に入れない、監獄に入れずに行政保護で、改遇遷善を図つて行こうというので、別扱いにいたしておるのでございますが、いわゆる厚生省の手にはちよつと負えないであろうと思われる少年を意味するのでありまして、この少年の八十%は監獄に入れずに保護いたしておること御承知の通りと思うのであります。これをもつと程度の浅い不良少年と一緒に、厚生省にお委ねすることが適当であるかどうかということについては、常に強い議論の対象になつておるのでありまして、私共は少しもセクシヨナリズムを主張するつもりはないのであります。國家のためによろしければ、どういう統一でも喜んでいたしたいと思うのでありますが、一方には憲法における人身の自由という規定がありまして、これを破ることを……或る場合には矯正院のようなものに收容いたしまして虞犯少年、犯罪少年等はやらなければならぬ。こういうことまでもいわゆる保育行政の役所であります厚生省に委ねてよろしいか。又厚生省が果してやれるであろうか。これにはやはり犯罪というものを取扱つている檢事、司法保護官というようなものが関與する特別のやはり組織が必要ではないか。こういうことが言われておるのでありまして、その見地から、この二つの範疇に属します少年は、兒童福祉法と別の少年法によつて保護せらるべきである。こういうことで、只今までのところ厚生省におきましても、これは止むを得なかつた、自分の方で強いて貰いたいとは思わない。司法省、厚生省を離れた一つの少年院というものができることも望ましいのでありますが、併しそれが不良少年、虞犯少年、犯罪少年と一緒にしてやることは、やはり非常に弊害が伴うと思うのでありますから、要するに結局分離はしなければならぬ。分離をするということは、收容する場所も變えなければならぬ、保護を加える人も変えなければならぬ、同じ所に一緒に置いてやるというようなことでは、却つて弊害を助長する虞れがあると思いますから、そういう点で只今までのところ分離論がむしろ多数説であるように思うのであります。併し御指示の点も十分に理由あることと思いますから尚進んでよく一つ考慮いたしまして、多くの方々の御意見も承りまして、統一することがよろしいということでありますれば、統一するのに吝かではございません。
#14
○山下義信君 誠に御懇切なる御意見を拜聽いたしましたのであります。只今大臣の仰せになりましたことは、全く從來司法省側のこの問題に対しまする御見解でございまして、私共の予ねてから承つておるところでございます。いわゆる不良性と虞犯性というものの境界が実に微妙でございまして、言葉の上では区別がつき、観念の上では区別がつきますが、実際の上におきまして、その線というものが曖昧でございます。且つ又果して社会事業としてやり得るかどうかという疑念をお持ちになりますことも、予ねて司法省の側の御見解として承知しておることでございますが、この点に関しまして、いわゆる社会事業家が大いに奮起しておるわけでございます。先般來フラナガン神父が参りまして、いろいろ向うでやつていることなどを承りましても、向うでは全部社会事業としてこれをやつておるのでございまして、今日日本の社会事業家が成る程微力ではありましようけれども、併しながらこの虞犯性の少年或いは犯罪性の少年を善導する力がないとは言切れない。又そういう虞犯性少年は、必ずいかめしい裁判所関係のいわゆる檢事であるとか裁判所であるとかいうような威圧的なものを持つて來なければ、それが善導或いは解決ができないとも言い得られないのでございまして、これはいわゆる所見の相違になつて参るわけでございますが、私思いまするのに、これは平素の議論ではあるまいか、いわゆる戰爭前まではこの議論が成り立つのでございましようが、今日終戰後の一切の社会情勢から参りますると、もう不良性、虞犯性といつたそういう範疇の言葉の上の問題でなくて、もう悉くが不良、悉くが虞犯性、悉くが犯罪少年にならんとしつつあるこの趨勢でありまして、対象の区別をやつておるどころではないというような、実に從來曾つて見ざる少年兒童の一大憂慮すべき時代が参つておるのでございます。そこで少数のそういつたような対象の少年の場合には、個々の犯罪に從いましていろいろ特徴のある施策もよろしうございましようが、こういうような場合、非常に少年問題が憂慮せられるというような場合におきましては、これは余程考え方を変えて参らなければならんではないかとこう思うのでございます。この点重ねまして賢明なる司法大臣の國家全般から見渡しての一つ御賢慮を煩わしたいと存じます。
 もう一つは私共素人でよく分らないのでございますが、少年審判所というのは裁判所ではなくつて、いわゆる司法行政に属してあることであろうと存じまするが、これらも子供の……、たとえそれが子供でありましても、人権尊重という上におきまして、行政措置を以ちましてそれぞれ子供に強制的にいろいろな、殆んど拘禁に近いような行政方法が採られ得まするものかどうか、これらも根本的に考えてみる必要があるのじやないか。たとえ少年法という法律の上で許されてあることといたしましても、根本的に考えてみる必要があるのではないかということが思われるのでございます。只今の兒童福祉法の中に少年教護法を取入れまして、いろいろな訓戒や譴責が所轄の知事その他によりましてなし得るような條項に対しましては、関係方面からこれは非常に喜ばしくない、裁判に掛けなければこういう譴責をすることもできないというようなサゼツシヨンがありまするようなことでございまするので、この少年審判所というものも大いにこの際お考えを願う必要があるのではないかということを思うのでございます。この点重ねまして大臣の御所見を承りたいと存じます。
#15
○國務大臣(鈴木義男君) 前の方の御意見につきましては誠に傾聽に値する御意見と考えまするので、今後の制度の改革の上に十分参考に資したいと存ずるのであります。尚書面その他によつて御意見を承らせて頂けまするならば、更に各方面に徹底させまする上に誠に好都合であると存ずる次第であります。
 それから第二の少年審判所の問題でありまするが、これは名前が審判所というので、殊に英語に直しますとジユビニール・コートとなりまして、裁判所ということに理解されておるのでありまするが、それだからしてこれは司法権に属すべきものである。司法行政の府たる司法省で管轄すべきものじやないんじやないかというような問題と共にいつも問題になるのであります。又やることの内容が憲法に適するかどうかというようなことと共に問題になるのでありまするが、私共は名前は審判所であるが、將來は少年保護院とでも呼んだならば誤解を生ずる虞れが少くなるんじやないか。結局本当の罪を犯して刑罰に処せなければならない少年は普通裁判所に委託いたしまして、そうして監獄にまで……少年監獄という別なものがありますけれども、送るのでありますから、これはもう純然たる裁判であります。司法処分であります。そこまで行かないものを扱うのが少年審判所でありまするから、これは一つの行政処分であることは疑いがないのでありまして、そういうものでもやはり非常に愼重な手続を必要とするということは仰せの通りであります。それについてはやはり制度の上に改革を考えなければならないと思います。そのやつておる仕事の実質は行政保護であり、行政処分であるということは疑いがないと思うのであります。その意味において少年審判所の誤解されないようにするところの制度の改革ということも私共考えておる次第であります。さよう御承知を願いたいと思います。
#16
○委員長(伊藤修君) 本日午後に、先般來問題になつておりますところの靜岡刑務所の件に対し、及びそれに伴うて司法官、行政官に対する改善に関する決議の取扱い方を決定いたしたいと存じます。それから尚分限に関する法案の採決もいたしたいと思いますが、その後で刑法に対するところの懇談会を開きたいと存じまするから、午後是非御出席を願いたいと思います。午前はこれを以て休憩いたします。午後一時から再開いたします。
   午前十一時四十八分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時四十二分開会
#17
○委員長(伊藤修君) 午前に引続きまして委員会を開きます。
#18
○岡部常君 私は今囘の司法省の改組の問題に関聯いたしまして、行刑関係の官廳がどういうふうになるかということについてお尋ねをいたしたいのであります。行刑の重要性ということにつきましては、先般司法大臣からも御意見を承りまして非常に心強く感じたことでありますが、もつと根本的に、一体行刑に関する官廳というものはどういう行政部面に属するのがいいかという問題、これは大いに考えなければならんと思うのであります。殊にこういう根本的の改革に当面いたしまして、それを更に檢討して見るということも意味があることだと存ずるのであります。
 我が國の沿革を見ましても、明治初年より内務省系統に属しておつたのでありますが、それが明治三十一年でございましたか、一二年頃に司法省に帰属することとなつたのであります。その以前におきましては、内務省により、内務省直属のいわゆる集治監、それから司法監獄所というようなものに分かれておつたというような沿革があるのでありまするが、これを諸外國の例に見ましても、或いは内務省に、或いは司法省にというふうに区々に分れておるのであります。これはその時代或いは國情によつて、そういうふうな帰属が決まつたものと考えられますが、こういう変革の際において、更にこれを從前の内務省系統に属するものとするか、或いは從前の司法省系統に属するものとするか、或いは厚生省関係の方面に移すか、或いは又新らたなる治安省といつたようなものでも設けて、それに帰属せしめるのがいいかというような問題が考えられるのでありますが、今囘の改革に当りまして、政府ではどういうお考えで、どこに帰属せしめようという御腹案があるのか、その点を承りたいのであります。
#19
○國務大臣(鈴木義男君) 御尤もの御質問であります。行刑の問題は非常に大切な問題でありまするから、むしろ独立の、何省にも属せざる内閣直属の行刑廳というようなものを作つてはどうかという議論もあるのであります。傾聽に値いする議論でありまするが、ただそれ程大きなものにする必要があるか、或いは財政上の点等も考慮しなければなるまいということから、結局は内務省解体後も公安廳といつたようなものを設けられるのでありますから、そういう方に持つて行くか、それとも新らしく改革せられる司法省、どういう役所になるか分りませんが、そこへおくかということが今当面の問題になつておるわけであります。只今のところ、これもいろいろな御意見を承りたいと存じておるのでありまするが、政府当局といたしましては、やはりこれは檢察、裁判と密接な関係に置かれておる仕事であるから、まるでそういう仕事と関係のない方へ持つて行くのもどうか、結局は司法行政を掌る役所ができる以上は、そこへやるべきものじやないか、そこで是非機構を拡大し、人員も充実し、予算も多く頂戴いたすようにはいたしますが、大体今の構想では新らしく改革せられる司法省の一局として、或いは外局にせよという説もありまするが、とにかく今よりはずつと内容を充実したものにして行きたい、こういう構想に相成つておるのであります。
#20
○岡部常君 只今のお答えの中で、從前我が國におきましても内務省に帰属しておつたこともあります。それが司法省に移つたのでありますが、その移つたときの沿革など迫る必要もないかも知れませんが、その点元へ返えす、内務省というのは解体になりますが、そういう方向に還えすというような考え方はなかつたのでありましようか。ただ單に独立というのは大変結構なようでありますが、実際上の行政の力といたしまして、どこか適当な所にくつ附けるというようなお考えがあつたかどうか。
#21
○國務大臣(鈴木義男君) 只今まで出た議論の中には、内務省が管轄すべきであるという議論もあつたのであります。それから厚生省に属してはどうかという考え方もありました。その外に全然独立した内閣の一つの廳にしろという議論、そういうものがあつたのでありますが、内務省案については、すでに内務省そのものを解体しようという矢先でありまするために、内務省の中のどの局に、残るところのどの局に所属させたらいいだろうか、結局は公安廳というのができるようでありますが、これは実は警察だけの目的のためにできる予定でありまして、それに附属させるのも適当でないというようなことから、一應考えには上りましたけれども、非常に微力な議論であつたのであります。結局司法省の生れ変るものに、内局又は外局として所属させるという議論が支配的である。そういうふうに御諒承願いたい。
#22
○岡部常君 その帰属といたしまして、厚生省の方に移したらどうかというようなことに関する議論は、何かございましたでしようか。
#23
○國務大臣(鈴木義男君) これも実は述べる人の意見が非常に纒まつた、組織化された、系統立てられた御議論として私共に提出されたのではないのでありまして、労を惜まずそういうふうな一つ堂々たる論文でも御提出下されば、非常に國家のために幸慶とするところで、私は心から歡迎し敬意を表するのでありますが、大体改過遷善を目的として、受刑者の訓育、授産、道徳的向上、独立の生活の保障というようなことを目的とするのであるから、むしろこれは厚生行政に合致する仕事をやるのだ。故に例えば少年の保護についても、不良少年と犯罪少年とを問わず、全部総括して、これを厚生省の仕事とすべしという議論と一緒に、行刑も全部厚生省の仕事としてはどうか、こういつたような常識的な議論として承つたのでありまして、余り深い理論的根拠があるというふうに解せなかつたのであります。そういう方面から見れば御尤もの議論でありますけれども、やはり同じ意味において檢察、裁判と非常に密接に繋がるのであつて、檢挙した者、裁判した者がその行刑の行方も見届ける、又絶えず監督をするということが、やはり効果あらしめるに適切妥当であろうという議論が成り立つのでありまして、結局司法省の説が有力に相成つたのであるというような経緯であります。
#24
○岡部常君 只今までの御説明によりまして大体の御意向が分りましたが、要するにまあはつきりした論拠が掴めないように考えるのであります。私考えまするに、このはつきりした囘答が出ないということは、結局國家刑罰権の究極の目的というものに対する考え方ができておらないというところにあるように考えられるのであります。今大臣が仰せられましたように、結局檢察、裁判というものが非常に関係が深いから、その自分等のやつた仕事の行末を見定める、或いはこれを監督するとおつしやつた、これは私はちよつと語弊があるように考えられるのですが、そういうお言葉が出るところにやはりはつきりしない点があるように私には考えられるのであります。私考えまするに、國家刑罰権の究極の、本当の目的というもの、これは刑法の教科書、刑法理論などにも私は盡されておらないと思いますが、私はこれはもう非常に大きい立場から見て行く必要があろうと思うのであります。言葉を換えて極くざつくばらんに申しますれば、國家の刑罰の本当の目的は、罪科を犯した人間を咎めることにあるか。或いは大きい國家社会の力として咎めることは咎めるのだけれども、結局はそれを或る時になつて許してやる、これを立派な者にして助けてやるのだというところに重点を置くべきではないかと思うのであります。咎めるのが主であるか、許すことが主であるかということになりますと、咎めることはむしろ手段で、許すというところに本当の力を入るべきものではないかと私は考えるのであります。從前のやり方から見ますと、犯罪に対して檢察をする、勿論これは大事なことであります。又裁判をするということますます大切なことでありますが、今までの考えからいいますと、実際のやり方から申しますと、咎める、裁判するで能事終れりという非難を受けても仕方のないような状況であつたと思うのであります。つまり監獄にさえぶち込めば、それで能事終れりとなすのが、これは世間一般の見方ではないかと思うのであります。これが世間だけならばよろしいのですが、これは本当はよろしくないのでありますが、裁判関係の人、司法関係の人までが、そういうふうな考えに墮しておつたのではないかというふうに考えられるのであります。それでは先程來申しておりまする本当の社会、國家という大きな立場から見ての、対犯罪策としては間違つておるものだと私は考えるのであります。
 それで結局刑罰權を行使するところは、どういう根本理念で処理して行かなければならないかということに私は話を移しますが、ただ檢察され、裁判された者を收容する、繋ぎ止めて置くという消極的なことから、むしろ入れてからこれをいかにするか、否入れてから國家の責務がここに初めて開始されるのだ、入れてから更に改めて檢察するのじやなし、裁判するのじやない、お裁きをするのじやなくして、それから後の新らたなる大きなる仕事が始まるのだ、積極的にここに仕事が始まるのだということをはつきり掴んで、その目的に適うような行政官廳というものが必要になると私は信ずるのであります。行刑の官廳というものは、檢察、裁判の消極性を脱却した積極性を持つた役所でなければならんと確信するのであります。その積極性というのはどこに向うべきかといえば、世の中に出す人間を作り出す、世の中に出てお役に立つ人間、過去においていかなる罪科を犯そうとも、これは檢察裁判によつてある程度の処理ができて、その処理の終つた者に対して、更に復活の息吹きを與えてやるのだ、積極的にその機会を掴んで立派な國民を作り上げるのだ、こういう考えの下にそういう世話のできる役所というものにならなければならないと考えるのであります。この点から申しますると、むしろ檢察裁判というものに関係を持たすのがいいか、或いは出て行つて働く世の中のこと、世の中に行つていかに生活すべきかということを世話する役所、どこでありましようとも、そういう性質を持つた、生きた世の中に関聯の深い役所に連繋を持たすということが絶対に必要だと私は考えるのであります。この点に関する大臣のお考えを承われば結構だと思います。
#25
○國務大臣(鈴木義男君) 岡部委員の御所見は一々御尤もでありまして、私も大体そういうふうに考えているのでありまするが、刑罰権の究極の目的というものを見定めなければ行刑のことを論ずる資格はないと思うのであります。
 さてそれが学説的に理論的に決めることは雑作ないことでありますけれども、制度の基礎としていずれの説を採るかということになりますると、非常にむずかしい問題に轉換すると思うのであります。私は実際家として考える場合には、やはり刑罰の目的は一面懲罰であり、他面社会的復帰である、この二つがやはり適当に調和され併行されて行かなければならん、こう考えているのであります。理論的には灰色でありますけれども、実際的にはそう考えなければならない。そういう意味でやはりこの懲罰的施設というものも抹殺するわけには行かないと思うのでありまするが、それ以外に、社会的復帰を可能ならしめるために、もつともつと刑務所というものを学校に近いものにし、事業場に近いものにし、社会保護事業に近いものにしなければならんということを痛感している一人であります。
 そういう見地から考えますると、今囘この監獄法の改正に当りましても、是非そういう点を十分に考慮して織り込んで頂きたいということを希望いたして置いたのでありまするが、十分とは申上げ兼ねまするが、可成りそういう考慮は拂われたように考えるのでありまして、今後ますますその方向に向つて助長さして行きたいと存ずるのでありまするが、そういう見地から行刑の仕事をどこへ持つて行つたらいいかということについては、どちらに重点を置くかということで、又おのずから決まるようなものでありまするが、厚生省のようなむしろ利用更生を図るという役所に持つて行く方が適当であるという議論も有力に成り立つのでありまするが、問題は官廳の所属ではなくして、やはり実際にそういう理念に基いてやつて行くかどうかということに帰着するのでありまするから、仮に司法省におきましても將來行刑の基準をそういうところに置くようにいたしまするならば、十分に成績を挙げて行くことができるのじやないか。又厚生省とか、同じ國家の役所でありますが、できるだけ相互援助の建前で目的を達しまするために、助け合う機構を作らなければならないということも考えているのであります。あちらへ置いた場合でもこちらが援助し、こちらに置いた場合にもあちらから援助して頂く。この官廳の分離だけがどうも強く叫ばれて互いに共助関係というものがうまく行かないのが一つの官僚制度の欠点であると思います。將來そういう方面に特に力を注ぎたい、こう考えているのであります。それによつて御指摘のような欠点を是正して行くことができはしないかと考えるわけであります。
#26
○岡部常君 只今のお答えによりまして、刑罰権の働きとして、懲戒的方面と改善方面、又社会復帰というようなことに関する御意見を承りまして私も同感でございます。社会復帰の点を強く御主張になりましたことに対しまして敬意を表するものであります。又実際問題といたしまして帰属の問題でなく、実際の運用の問題、又お互いが各行政官廳の間の相互援助というような問題が大切だとおつしやつた点も私は御同感申し上げる次第なのであります。要は実質をとることが大切なのでありまして、どうぞ今おつしやいましたところに基きまして、今後の行刑官廳のその目的達成のできるような線で強力に改革を行なつて頂きたいと考えるのであります。その一例といたしまして、他より掣附を受けないような大臣直属の外局にするというようないろいろな方法も考えられると思いますが、そういうふうにして國家の行政の中の大切な行刑という部門の立派な成果の挙るようにすることに御盡力をお願いいたすのであります。
#27
○鬼丸義齊君 最高裁判所の問題につきまして午前に伺つたのでありますが、司法省としては裁判官の任命につきまして、定員だけの指名によつて名簿を内閣の方に提出すれば、それで差支えないという御解釈をとつているであろうか、或いはそれともそれ以上の名簿の提出を望まれるのであるか。曾て今の内閣でありますか、前内閣であるか存じませんが、最高裁判所から裁判官の指名をする場合には、その必要のある定数だけのものでよいというようなことの内諾があつたように私は聞いております。ところが今度最高裁判所から名簿を送りまして、それが世間に発表され、その後に発表と異つた任命がありましたのについて、いろいろと最高裁判所の在り方について非常な疑義を持つておるように聞いております。若し最高裁判所が詮議の結果指名し、名簿を送つた場合においても尚且つ内閣の方で以てそれを支持し得ずというようなことになるのであるならば、最高裁判所の力は非常に弱いものであるというようなことで以て、そこでたださえ非常な生活脅威を受けております司法官の今後に対しまする見通しについて非常な絶望的の考えを持つておる者もあります。今度の問題につきまして最高裁判所がすでに指名をして発表し、更に私の聞くところによりますれば、すでに公文までも発送をして、任命の辞令を交付するために呼ばれたというようなことまでも聞いております。そこまで行つておりまして、恰も晒し者になつたようなことになりまして、このことが非常な大きな影響になつております。この際大臣としてその点に対しまするはつきりした見解を伺いたい。それが第一点。
 それからそれにちよつと附け加えて置きますが、先程もお願いいたして置きましたが、先囘の七名を発表したのは最高裁判所において発表したのであるか、いずれの場所において発表したのであるか、ということを一つ嚴密に御調査を願つて、委員会の方に聞かして頂きたいということを、重ねてお願いいたして置きます。
 それから第二の問題としまして、憲法改正によりまして、いろいろ刑事訴訟法或いは民事訴訟法等の大法典の改正は今年一杯にしなければならん必要の中にあるのであります。民事訴訟法の法案、それから又刑事訴訟法の法案、それらに対しまする今後の方針はどういう御方針によつて進められるのであるか。新聞の報道するところによりますれば、この特別議会も更に延長するというようなふうに聞いております。若しも延長されることがあるといたしましたならば、一氣に提案され、委員会に囘されましても審議は非常に困る、そのときに対しまする見通しを一つこの際御予定を伺つて置きたいのであります。司法省として今後予定しておりまする提案の法案につきましての大体要旨を伺いたいのであります。
 それから先程保護事業に対しまする御質疑が同僚の方よりございました。これにつきまして私は特に大臣に伺いたいと実は機会を待つておつたのでありまするが、これまでの保護事業は概して官営の保護事業が多い。概して社会事業につきまして民間の方の保護團体がございまするが、その他の場合においては概して官設の保護事業に携わつておるものが多い。例えば檢事正、檢事長というようなふうで、元來この保護事業に対しまして、概して司法官の檢察官の人が直接指導の任に当つておる。私は曾つて吉益俊次氏が名古屋の控訴院の檢事長をしており岩村通世代が檢事正でありました当時、私は会長をいたしておりました。丁度愛知縣に愛知自警会というのがありまして、これが大体檢事正が主宰しておりまする財團法人であります。免囚保護事業をしております。御下賜金がありまして、その傳達式に私共招かれまして、その式の終りました後に、それぞれ何かの話をせよということで以て、最初檢事長が立ちましたときに、丁度集まつておりまする囚人は千三四百名でありました。教会堂みたいの所でありましたが、それに集まりましたときに、傳達式をいたしたので、看守はずつと壁に沿いまして配置されておりました。ところが檢事長、檢事正の講話中に、非常な大きな荒い息をいたしましたり、或いは咳をする、明らかに反抗の態度をありありと私共見ました。檢事正の立ちましたときのごときは暫くお話ができなかつたというようなふうの状況であつた。看守は固より所長も、大きな声して、非常にたしなめまするけれども、何さま荒い息をいたすのでありまするから、どうしても靜止の仕樣がない。而も一つには殿堂でありましたために、声が籠つておりまして、どうしても話が進められない。私も立ちまするとうんと彌次られると思つて臨みましたところが、これは又本当に寂として声なく、而も檢事長、檢事正の講話中には、我々は罪を憎んで、断じて人を憎むのじやない、誠に甘き、柔らかき、本当に撫するがごとき講演があつたにも拘わりませず、それを聞き流して、依然として反抗的に彌次つておりまする態度を見ました。ところが、私は勿論個人としてでなく、会長として参つたのでありまするが、私の話は檢事長、檢事正に全然反対でありまして、七千万、八千万の國民中、君らのごとき姿をしておる者が幾人あるとか、随分、荒つぽいことを実は申しまして、一場の挨拶を終つたのでありまするが、その間、本当に寂として声なく終りまして、刑務所長の主催によりまして食事が出ました席上、いろいろ話があつたのでありまするが、吉益さんも檢事正も、実は自分らに対する彼らの感情というものが著しく尖つておる、これに反して弁護士というものに対する彼らの信頼というものは、彼らは殆んど弁護士の懐に飛び込んでおるのだということを、まざまざと実は見せられた、故に保護事業というものは、大体弁護士がやるべきものじやないか、檢事正とかいうふうの、これまで彈劾の立場にある者が長になつてやることはいけないのだ、というようなことをその席で以て共に眞劍に語つた事実があります。怱ち帰りまして、会員にも話し、何とかして弁護士会の手によつて保護事業をやりたいということで、年來微力をいたしておりまするけれども、今日までそれを実現することができなかつたのでありまするが、それのみならず、全國の弁護士としてこれまで保護事業に携わつておりまする者、或いは会としてこれに鞅掌しておりまするものは極めて少い。少いというよりはむしろ皆無であります。これは先程も岡部委員の御説のごとくに、行刑の効果に対しまする問題は、これがそもそも狙いであるのであります。このよろしきを得るということによりまして、私は判決を言い渡しまするものの意味が初めて加つて参るかと思うのであります。私はこうした被告人などに接しまする弁護士、これを私はこの際うんと活用することが極めて必要なことではないかと存じまするので、幸い御経驗を持たれる大臣にこの際御所見を伺つて、これを対しまする今後の御方針等も併せて伺いたいと思います。
#28
○國務大臣(鈴木義男君) 只今鬼丸委員の御質問は三点に亙つておるようでありますが。
 第一点の最高裁判所で決定をした高等裁判所の長官の任命の行き違いと申しましようか、手違いがあつたことについてでありますが、この点は深く遺憾といたしております。これは司法大臣として関係しておるのでなく、國務大臣として内閣でやつておりまする仕事に関與いたしておるわけでありますから、やはり閣僚の一員として責任を感ずるのでありますが、ただこの解釈について私の方では一定数以上の推薦あるべきもの、名簿というものはその定員をきちつと書いて持つて來るべきものではないということは、最高裁判所の方でも御了解済みと考えておつたのであります。ところが、最高裁判所の方では七人なら七人だけ書いて出せばよいというふうに解釈をしておつたのでありまするが、それは誤解ということが交渉の結果分りまして、それで決して悶着やなんかなく、司法権の独立ということは決して裁判の内部に関與することでない、干渉しないということであつて、いかに三権分立の建前でありましても、殊に三権が分立しておればおる程、少くも任命権は内閣が持つということは、アメリカでもやはり裁判官の任命権というものは大統領が持つているわけでありまして、最高裁判所の長官が持つておるのではないのでありますから、それはその通りだということにあつさり御了解に相成りまして、そうして出直されたのであります。これは最初の例でありますから、最高裁判所がそのような恬淡たる態度をおとり下さいましたことは非常に結構なことであるのであります。併し同時に任命権は内閣にあると申しましても、最高裁判所の意思というものを尊重することが又司法権の独立、人事権を尊重する所以でありますから、政府といたしましては特別の故障がない限り、最高裁判所の提出する名簿の順序に從つて任命をして行く、こういう申合せをいたし了解をいたしたのであります。たまたま長官としては、不適当であると思われまする二人の人がありましたるが故に、それは順序に從つて削除いたしまして、そうしてその次の順位にある二人を繰り上げたのでありまして、政府の方が勝手に籖を抽くようにして決めたというようなわけではないのであります。その点も今後も同じ方針を以て、最大限度まで裁判所の推薦というものを尊重する、こういう建前で行く方針でありまするから、御了承を願いたいと思います。ただ結果において晒し者のようになつたということは、誠に私共もその当事者の爲にお氣の毒に存じ遺憾に存ずる次第でありまして、こういうことになりましたのは実は最高裁判所の発足日が浅く、事務系統に携わつておられまするお方々も、こういう問題をデリケートに処理するということを怠られたと申しましようか、氣付かなかつたという点がありまして、お示しのような結果を招來したのでありまして、非常にその点は政府といたしましても遺憾に存じておるところであります。尚決定に先立つて軽率に発表した責任者のことは、午前中も申上げましたように、できるだけ追及をいたしましてこれを確めて善処いたすつもりであります。
 それから第二点の御質問といたしまして、民法、刑法は一應改正案が提案されたが、民訴法、刑訴法その他の方はどういうことになつておるかという御質問であります。これも御承知の憲法の改正に伴いまして、当然最小限度においても改正をいたさなければならんことに相成つておるのでありまするから、刑事訴訟法は目下法制局で審議中でありまして、只今のところでは通常議会の劈頭に提出をいたすつもりであります。根本的な大規模な改革は、民法、刑法と同じように、更に相当の時日を藉して頂きまして、大規模な審議機関を設けて根本的に練り直すつもりでありまするが、少くも憲法改正に伴うて必要な程度の訴訟のやり方の改正ということは是非必要でありまするから、その改正案はすでに準備が進んでおるわけでありまして、民事訴訟法についても同樣であります。又監獄法のごときも目下準備中であります。いずれも通常議会の劈頭には提案をいたすつもりであります。尚経済罰則の整備に関する法律の一部改正の法律、これは数日中に國会に提出の予定であります。警察犯処罰令の改正法、これも今議会に提出の予定でありまして、それらの少くも憲法改正に伴い必要な最少限度の改正は、是非本年の十二月三十一日までに終つて置かなければならんものが多いのでありまするから、それに間に合せまするように提案をいたすつもりでありますので、是非御審議を煩わしたいと思つております。
 それから第三点として、保護事業は民間人を以てやらせることが適当ではないか、これはもうその通りでありまして、私共の考えでは同じことをやりましても、やはり官設の事業でありますれば、それだけ割引されるのでありまして、本当の生命が疑われるという虞れがあるので、社会事業、保護事業等は民間において自発的に構成されるところの、殊に弁護士諸君が中心になつて頂くことは、最も望ましいことであります。司法保護事業の方は大体弁護士諸君などが中堅になつておられるようにお見受けいたすのでありますが、この上とも弁護士を初め在野の有識者が中心となられまして、民設の保護事業が発達することが最も望ましいことであるのであります。ただ新憲法等は、いわゆる民営の事業に対しまして國家が補助金を與える、財政的援助を與えるということを禁止いたしておりまするので、いわゆる財政的に基礎の薄弱な我が國におきましては、民間の企業というものがしばしば所期の成績を挙げ得ないという虞れがあるのでありまして、できるなら財政的基礎も、十分民間の有識者の醵出を得まして、基礎の固いものができることを希望いたしておるのでありますが、そういうのができないために、止むを得ず國家が援助をして、國庫補助の下にこれを助成する、そのためには今後、殊に何らかの形で國家の機構の中の組入れたものといたしませんと補助金が出せませんために、そういう形を取らなければならんようなことが多くなるのではないかということで、非常に我々は心配をいたしておるのであります。それは我々の本当の素志とは非常に遠いことなのでありますが、できるだけ一つ、そうでない、本当の民間の人によつて、民間の財政によつて賄えるところの社会事業、保護事業がどんどん発展をするように希望いたしておることは、鬼丸委員の仰せらるる通りであります。併しそれが十分できない間は、若干の官設の保護事業も亦これと併存することは止むを得ないのではないか、こういうふうに考えておる次第であります。
#29
○岡部常君 保護事業に関する問題で、鬼丸委員と大臣の應答に関聯しましてお尋ねいたしたいと思います。お尋ねというより、私実は自分の意見を申述べて置きたいと存ずるのであります。
 鬼丸委員が民間の方の力、殊に弁護士諸君の力を要請するようにおつしやいました。この点私も同感であります。又大臣もそれに御同意になりました。併し私は実際の状況から見まして、近頃の保護事業界というものは、長い間隱忍自重して参りました民間保護事業家が、やや閑却せられておるのではないかという懸念を持つておるのであります。尤も最近におきましては、戰災等によつて実力を失つたということもありますが、それより遡りまして、そういう傾向が現われたのは、実はいわゆる司法委員制度というものが確立せられてからのことなのであります。甚だこれは不思議な状況でありますが、形は非常に立派なもので、統計の上、文書の上では立派なのでありますが、一方において、実際に苦しい中を、何と申しますか、自分で手銭、手弁当でやつて來たような人々の力が殺がれるような結果を持ち來しておるのであります。少くとも、何か鳶に油掲げをさらわれたという感じがして、ぼんやりした恰好になつておるのが実情なのであります。こういう点は、今後の司法事業の運営につきましては、十二分に御考慮を願いたいと存ずるのでありますが、実はそれに関聯いたしまして、從前の保護事業、殊に釈放者の直接收容をいたしております收容保護の團体というものが、どういう力でできて來ておるかということを考え合せますると、これは実はその行刑の関係者が民間人と手を携えてそういう事業を育成して來たのであります。然るに、この保護委員制度というものが一方において立派になると同じ頃から、この行刑方面の保護事業というものの力が漸次剥奪せられるようになりまして、現在では、もう何とも仕様がない、司法省からこういうふうに押付けられるのでしようがないといつて、手を拱いて傍観しておるというような態度になつて來ておるのであります。從前保護事業というものを、民間の人を援けながら心配して來た刑務官が、甚だ寂しいような状況になつて來ておるのであります。これは私は傾向としては面白くないものだと思う。この現われといたしましては、現に本省方面における保護関係の人々というものが、実際の保護事業というものに知識を持ち、職務上の関聯も持ち、経驗も持つておる行刑人というものが、刑務官から出た人というものが、殆ど採用せられておらない。それは檢事陣に有能な人がおるかも知れません、行刑の中にもその人なしとは私は思わないのでありますが、未だ曾つて刑務官出身の行刑の人が用いられたことがないというところに、大いに原因があるのではないかと思うのであります。そういうように閑却せられましては、本当の保護事業というものは発達しようがないのではないかということを私は常に考えておるのでありまして、今後におきましては、相当沢山有能な人もおられる刑務官から、本当にその内容を知つて、本当に運用の妙手を持つておる人を選ばれるように、私は希望として申述べて置きたいのであります。
#30
○齋武雄君 新らしい憲法によつて、裁判所が独立されて、司法省の機構が変更される、これは当然なことでありましようが、この機会に私大臣にお願いして置きたいのは、大臣は司法大臣としてその人を得たのでありまして、この改革された機構が強力なものになつて貰いたい、そういうふうに更に一層の御努力をお願いしたいのであります。
 それにつきまして、司法警察官はどういうふうになるのであるか。先程大臣のお話によりますというと、公安廳というものができて、それが警察官に関係するようなお話でありましたが、私は、司法警察官は檢事の下にあつて、そうして犯罪捜査に全力を盡さなければならん。そうでなければ犯罪の檢挙というものは容易でない。治安の維持ということは容易なるものでないという考えを持つておるのであります。いろいろの評説を聞くというと、警察官を國家警察官と地方警察官と分離して、そうして地方警察官を地方自治團体に委任する、こういうような話も方々で聞くのでありますが、眞実であるかどうか分りませんが、私の考えとしては、そういうことではいかん、警察を地方に委讓するならば弊害が多くなるのである、こういう考えを持つておるのでありまして、私の希望するところは、司法警察官、少くとも司法に関する警察官としては、檢事直属にして、司法省で機構を改革されて、その長がそれを監督すべきものである、そうして國家の治安を維持して貰いたい、いずれにしても強力なものにして貰いたい、こういうことをお願いするのであります。司法警察に対する御意見を伺いたいと思います。
#31
○國務大臣(鈴木義男君) 齋委員の御質問御尤もの点であります。仮に今の司法省が新らしい機構に改革せられまするといたしましても、十分有力な、強力なものとするというつもりで考えておることはもとよりであります。それに関聯して、檢察と警察の関係というものが中心課題になることもお説の通りであります。殊に警察のあり方に伴いまして、これをどういうふうにしたならば最も能率よく活用して行くことができるかということは、この際大いに考えなければならんと思いまして、政府といたしましても、その点については十分に考慮を拂いまして、警察がどういうあり方をとりましても、檢察の方面から見て十分に能率を上げ得るような警察を運用し得る制度を樹立したい、こういう考えで只今研究調査中であります。
#32
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#33
○委員長(伊藤修君) それでは速記を取つて……。
#34
○來馬琢道君 過日十月一日から三日間開かれた全國社会事業大会に、司法部というものが第三部に入つておつて、畏くも天皇陛下、皇后陛下の御親臨を仰いで、高松宮殿下が総裁として非常に雄大なる規模で開かれました。私共も司法保護の方から、協議員としてそこに參加を許されました。又義務と感じましたのでそこへ出席をいたしておりましたが、社会事業という中に司法保護事業というものが入つたことについて、何となく疑惧の念を抱いております。曾ては司法省においても、保護ということは刑罰を行う役所であるのだから、役所の方で保護事業を行うのは異樣なものだというような考えがあつて、余程長い間この問題が躊躇されておつたのであります。今囘社会事業として司法保護事業が取上げられることになつたについては、更に私が第二日の教育会館における司法保護の部の委員会に參列して、いろいろ地方から來た人に聞いてみますと、委員諸君が、いわゆる社会事業であるところの民生委員とこの司法保護委員とが、國家の方で優待されているとかいないかというようなことをいいまして、何か司法保護委員の方が民生委員の方を羨ましがつておるような口吻がありましたので、私はそこに少しく割切れないものがあるということを感じたことであります。厚生省の管轄でありました社会事業が、今囘司法大臣の方も関係いたします社会事業というものになつて參つたのでありますが、その辺について、幸いこの際司法大臣の御意見を伺いたい、只今の問題に関聯して一應お聞きしたいと思います。
#35
○國務大臣(鈴木義男君) 午前中もどなたかから御質問がありましてお答えをいたしたのでありますが、実はこの社会保護事業というものは、今の日本においては最も大切な仕事である、何一つ大切でないものはないけれども、考え方によつては当面我が國にとつて最も大切な仕事ではないかと考えられるのであります。それでありますのに、どうも多少この民生委員と司法保護委員との待遇が違う、地方においても余り一方が優遇されるのに、他方が優遇されないといういろいろな軋轢に近いものがありますのは、要するに不必要に分課しておるためである、そこにセクシヨナリズムのようなものが行われることになるのだと、こう私共は考えておるのでありまして、できるだけ一つ社会事業というものを打つて一丸として、そうして最も有機的に、渾然一体となつて、そうしてその内部で分業的に、分課的に働いて頂く、そういうふうにいたしましたならば、只今申すような、一方が他方を羨むというようなこともなくなり、一種の勢力爭いに似たようなものが行われないで済むのじやないか、実は総理大臣にもそのことを話しまして、それが実に大事なことだということにおいては意見が一致しておるのであります。できるだけこれも團体それ自身の中から盛り上る力で一つ統一運動に展開して頂きたいと思うのであります。政府からもできるだけ水を向けまして、そういうふうに努力いたすつもりでございます。
#36
○委員長(伊藤修君) 大臣に対する一般質問はこの程度で打切りたいと存じます。
 尚午前中の委員会の決議に関する問題は、目下草案に対して小委員のお方が推敲を重ねておいでになりますから、いま一日遲れることになりましたですから、御了承願いたいと思います。
 次に本委員会に付託になつておりますところの裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律案を上程いたします。この法案に対しましては、先に十分御質疑が済まされておると存じますが、尚御質疑のある方はこの際申出て頂きたいと思います。……では御質疑はないものと認めましてよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#37
○委員長(伊藤修君) では質疑はこれを打切りまして、直ちに討論に入ります。賛否を明らかにして御討論願いたいと思います。
#38
○齋武雄君 私はこの法案に贊成する者であります。原案に贊成であります。質疑の場合に分らん点を十分質疑したので別に疑問もありません。免官の場合に彈劾裁判所でやるのでありまして、これは分限に関するだけでありまして、全部贊成いたすものであります。
#39
○政府委員(奧野健一君) この際一言発言いたしたいと思います。この裁判官等の分限法施行の結果、どういう費用が必要であるか、又その費用の予算等はどうなつておるかという点につきまして、一言御説明いたしたいと考えます。
 費用といたしましては、この分限事件の取調べの際に要します証人の旅費日当等が問題になるのでありますが、これは國庫負担であります。併しながら事件もそう沢山あろうとは予想いたしておらないのでありまして、將來のことは分りませんが、この際別段これがために予算を計上するということは致さなかつたのでありまして、將來若しそういう点について費用が増加するようでありますれば、その時に改めて予算上の措置を執りたいと思いますが、今囘は別段、予算上の請求はいたしておらないことをお答えいたします。
#40
○委員長(伊藤修君) 他に御意見ありませんか。
#41
○大野幸一君 この法律は公布の日からこれを施行するということは一考する必要はないでしようか。
#42
○委員長(伊藤修君) これはよろしいようであります。
#43
○大野幸一君 それならば私は贊成の意を表します。
#44
○委員長(伊藤修君) 他に御意見がないようでありますから討論を終結することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○委員長(伊藤修君) 討論を終結いたします。直ちに採決に入ります。本案全部を問題に供します。本案全部に対し御贊成の方は御起立を願います。
   〔総員起立〕
#46
○委員長(伊藤修君) 全会一致、原案通り可決すべきものと決定いたします。
 就きましては、本会議におけるところの委員長の口頭報告の内容につきましては、予め委員会の多数の方の御同意を得ることになつておりまするが、委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#47
○委員長(伊藤修君) さよう決定いたします。
 次に本案に対する御贊成の方の各自の御署名をお願いいたします。
   〔多数意見者署名〕
#48
○委員長(伊藤修君) それでは本日はこれを以て散会いたします。
   午後三時三分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           松井 道夫君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
          大野木秀次郎君
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
  國務大臣
   司 法 大 臣 鈴木 義男君
  政府委員
   司法事務官
   (刑事局長)  國宗  榮君
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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