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1947/10/08 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第32号
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1947/10/08 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第32号

#1
第001回国会 司法委員会 第32号
  付託事件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに關する請願(第十一號)
○帶廣地方裁判所設置に關する陳情
 (第四十九號)
○刑事訴訟法を改正する等に關する陳
 情(第六十號)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 關する陳情(第百四十號)
○法曹一元制度の實現に關する陳情
 (第百四十五號)
○農業資産相續特例法案(内閣提出)
○經濟査察官の臨檢檢査等に關する法
 律案(内閣送付)
○裁判官彈劾法案(衆議院提出)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
○札幌高等裁判所竝びに高等檢察廳帶
 廣支部設置に關する陳情(第三百二
 十四號)
○最高裁判所裁判官國民審査法案(衆
 議院提出)
○廣島高等裁判所岡山支部設置に關す
 る請願(第二百八十一號)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十月八日(水曜日)
   午後一時五十一分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○裁判官、檢察官竝びに刑務官の待遇
 改善に關する決議案に關する件
○刑法の一部を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより委員會を開會いたします。本日は先般靜岡へ調査に派遣せられた鬼丸委員より發言を求められておりますから、先ず鬼丸委員の發言を許可いたします。
#3
○鬼丸義齊君 過般名古屋の高等裁判所管内竝に靜岡の刑務所等を實地につきまして調査をいたしました結果、裁判官、檢察官、刑務官等の待遇を急速に改善するの必要があるということになりまして、本委員會の名におきまして決議を出しますることになつて、その案の起草方を今囘委員の岡部常、齋武雄御兩君竝に私に御委託になりまして、漸く脱稿いたしました。以下裁判官検察官竝に刑務官の待遇改善に關する決議案を朗讀いたします。
   決 議
 兇惡犯罪の横行は、嘗てその比を見ざる現状であり、他の一般的犯罪の激増も前古未曾有である。これを徹底的に檢擧して國家治安の急速な安定を圖らねばならぬと共に、基本的人權尊重の観點からも迅速に裁判して、これを完うする必要がある。
 然るに、この國家治安の重責に任ずる裁判官及び檢察官中その待遇劣惡のため、生活の困窮に耐え兼ねて、その職より退く者簇出しおる現状にして、延いて裁判官及び檢察官の實員の著しき不足を生じ、剰へ兇惡犯罪その他一般犯罪の畫期的増加による事件も、擧げて残存寡少の裁判官及び檢察官の双肩にかかり、甚しき過重負擔となり、審理の澁滯遲延、未決勾留期間の不當な延長を招來し、刑務所における過剰拘禁に拍車をかけるに至り、監房施設の狹隘不完備と相俟つて、各地に囚人逃走事故頻發の現象を呈し、さなきだに動搖常なき社會不安を一層大ならしめおるは、疑うべからざる事實である。これを司法の崩壊寸前にありと云うも過言ではない。
 政府は須らく裁判官、檢察官及び刑務官の定員を増加し、その待遇を改善して夫々その品位を保たしめ、生活を保障し、刑務所の施設を急速に整備し、以て裁判及び檢察事務の迅速にして適正な處理及び行刑事務の完全な運用を期すべきである。
 右事項の具體的施策につき次の通常國會でその報告を求める。右決議する。
   理 由
 前古未曾有というべき犯罪増加の現象は、固より道義の頽廢、生活の不安定等に基因するもので、教育の普及、生活の改善に俟つべきものが多いことは勿論であるが、當面の施策としては、これらの日々發生する犯罪を徹底的に檢擧し、迅速に裁判して、一罰百誠の効果を完うし、又刑務所に收容した者に對しては、行刑本來の目的に副うように懲戒し、教育せねばならぬ。
 然るに憲法の改正により、基本的人權保障の要請から、檢察官憲の強制權の行使に著しい制限を設けられ、從來に比して非常に限られた期間内に事件を處理せねばならぬことと、公判の審理を要する事件の増加及びその審理樣式の複雜化に伴つて、公判立會のために多くの時間を要すること等から、檢察官の現在の定員では非常な不足を告げている。
 裁判所においても、新憲法の實施及び之に伴う刑事訴訟法の改正によつて檢察方面における捜査期間が短縮され、豫審制度が廢止となつたため、取調の中心は裁判所に移り、文字通り公判中心主義となり、又人權尊重を旨とする公判審理樣式の複雑化に伴つて、從來に比し公伴の審理に多くの時間を必要とするに至つたことと、事件數の増大のため、現在の定員を以てしては、短期間に處理することが困難となり、勢い未決勾留の期間が長びき、拘禁過剰の主な原因の一つをなすに至つている。
 右檢察官及び裁判官の定員の不足と、これに隨伴する書記の定員の不足と同時に重視せらるべきは、これらの實員の不足であり、その原因は一に繋つてその待遇の劣惡なことによる。昭和二十一年六月大蔵省の調査によれば、檢察廳職員の本俸總平均八二五圓で、學歴、勤續年數等を考慮して他官廳の平均より一人當り二八圓九六錢低く、裁判所職員の總平均は、七三四圓で、他官廳の平均より七六圓三二錢低い。
 由來司法官廳は、他官廳に比して厚生その他の福祉施設に乏しく、官舎等の設備も殆んど皆無のため、大多數の裁判官及び檢察官は遠隔の地から通勤して激職に身を挺している。又その職務柄世の師表を以て自ら任じ絶對に闇買いもせず、清廉に身を持し、窮乏に耐えて、聖職に敢闘していることは、世の齊しく認めて疑わざるところである。
 然るに、最近これら裁判官檢察官の中生活の困窮に耐えかね、待遇の不良なることを主なる原因として退職し、辯護士たらんとする者相當數に上る實情である。現在の待遇の下においては、これを引止むるに策なく、これを放置するときは、やがて司法の危機を招來し、これを破局に導く結果となることを保しがたい。
 次に最近各地において頻發する囚人逃走事故の最大の原因は、收容人員の拘禁過剰によるもので、戰災後の監房施設の不完備及び輓近の犯罪の激増に伴う收容人員の著増を直接の原因とするが、他面看守等刑務所職員の定員不足による負擔の過重、待遇が劣惡なため看守の素質が低下し、攣動が激しく、從つて訓練は熟せず、警備力は減退し、士氣が頗る弛緩したること等も有力なる原因となつていることを看取することができます。
 拘禁過剰の問題を全國的に檢討するに、收容者一人當り〇・九坪を本則とする収容定員を、過剰拘禁の實情に鑑み、一人當り〇・五坪に引直したる全國刑務所收容定員五六、五二五人に對し、本年八月末日現在において八〇、七三三人を收容しおり、實に四三%の過剩拘禁となつており、又職員一人當りの負擔能力は、收容者四人を最高限度と考えられて來たのに、現在職員定員約一萬人弱で、右八萬餘人の行刑を擔當し、その勤務時間は概ね十數時間に及び、而も殆ど官舍の設備がないので、而くから通勤しておる實情である。看守の待遇は、その全國平均給本俸四二九圓で、一般行政官の三級官の平均豫算單價五八〇圓に比し一五一圓の差があり、初任獨身者の諸給與合計一、一〇二圓、看守の全國平均給與一人當り一三八四、五二錢で、果して健康で文化的な最低限度の生活を營み得るやを怪しむべき劣惡な待遇である。
 政府は、急遽裁判官、檢察官及び刑務官の定員を増加し、夫々その給與を増額し、官舍を備え、その生活を保障し、品位の保持に努め、安んじて司法の聖職に挺身せしめ得るの態勢を整え、又刑務所の施設を急速に整備し、右待遇の改善と相俟つて過剩拘禁の問題を解決すると共に、逃走その他の事故を防止し、社會の不安を除かなければならぬ。
   参議院司法委員會      
      委員長 伊藤  修  
以上であります。
#4
○松井道夫君 只今裁判官、檢察官竝に刑務官の待遇改善に關する決議案の原文を御朗讀になりました起草委員の方々の御苦心、御勞苦に對しまして最大の敬意を拂う次第であります。この決議案に盡されておりまするように、現在の司法部は、正に危機に瀕しておるのであります。新憲法によりまして、日本より軍備というものが一掃されたのでありまして、國内の治安というものは、軍備の背景のない純然たる今の司法機關によつて維持されて行かなければならない今日におきまして、この司法部がここに詳記してありまするような状態にあるということは、國民の一人といたしまして實に深憂に堪えないところでございます。願くばこの決議案に要望してありまするように、定員の増加と、待遇の改善とそうして設備の完備ということに、國家の總力を擧げまして、一日も早くその目的を實現せられんことを希望する次第であります。
 私の承つておるところによりますと、司法官でありまして一級官になりまする平均の年齡は、司法機關、判檢事におきましては五十五歳餘りの平均年齡になつておるのでありまするが、他の官廳におきましては、四十五歳餘りということに相成つておるのであります。その間十年の差があるのであります。他官廳におきまして一級官になります四十五歳前後と申します。年齡は、扶養家族その他最も費用の澤山掛かりますときに一級官になるのでありまして、非常に適切になつております。ところが司法機關、判檢事の一級官になります年齡の五十五歳という年齡は扶養家族の最も多い、苦しいところを通過いたしまして、初めて到達できる年齡でございます。これが司法官が今まで非常に劣惡な待遇にあつた、清貧に甘んじておつたということを言われておりまする何よりもはつきりした例ではないかと存ずるのであります。
 又設備の點で申しますと、これもここに詳記してあるわけなんでございますが、刑務所の過剩拘禁のために假出獄で出しますところの人員は、最近の數字によりますると、收容人員の半數に當るものが假出獄で出されておるのでありまして、而もそれが假出獄の制度の目的といたしまする、もうこれは出しても大丈夫、改悛をいたしまして、二度と犯罪を犯す虞れがないのであるという状態で出すのでありません。刑務所の設備が十分でないために、過剩拘禁のために止むなく出すのでありまして、假出獄になりながら短い期間内に更に犯罪を犯すという者が百人に六人位の割合になつておると聞いておるのでありまして、實に國家の治安保持の觀點からいたしまして由々しい問題であるのであります。
 由來司法部の清貧は安んじて、富貴に阿ねず、威武にも屈せずして、その重要なる任務に從事いたしておりまして、他官廳のようないろいろな融通は何もききません。否國民一般を裁判を以て道義的に指導するという職責を持つておるのでありまするからして、生活に困窮いたしました裁判官が、或いは檢察官が離職いたすというようなことに相成るのも、その心事が高潔であればある程、最もその職に適當な方であればある程、そういう結果に相成ると存ずるのであります。先般名古屋管内に出張いたしましたときも、二人の司法官、裁判官一人、檢察官一人でございましたが、自分の郷里に是非轉任したいと思う。それは暮していけないから、郷里に歸れば何とか周圍の親類その他から救助を受けまして、やつて行けるのであるが、到底他の土地ではやつて行けないので、郷里に轉任したいと思う。ところが長官が許してくれない。實にそういう生活上のことに理解がないのだ。そう言つておつたのであります。ところが長官方の御意見によりますと、これも又尤もなことでありまして、何と言つても後任者がうまく貰えないので、後任者が決まつたら直ぐにもやりたいのだけれども、後任者がない關係でどうしてもやれないのだ。事務の澁滯になるので、涙を呑んでおるのだ。さようなお話でありまして、これは長官を恨むといつたようなことは或いは筋違いであろうと存じますれども、そういつたような役所内部の氣持の上の相剋といつたような形にも相成つて來ておるのでありまして、これはそういう状況を責めるさきに、やはりそういうことの起きて參りまする原因を解決しなければならんのでないかと存ずるのであります。先般の田中檢事事件などもそういうことが多少の原因になつておると思う。大分部の原因になつておるのじやないかと存ずるのであります。囚人の逃走事件。只今申しましたいろいろな不祥なことは不祥のこととして、それ自體に對して何とか應急策を講ずることが必要でありまするが、その又本當の原因というものを示唆いたしまするものといたしまして、これは十分に注意いたさなければならないものと存ずるのであります。國會といたしましては、そういう根本の原因を何とか直さなければならんところの必要とその職責があるのでございまして、この決議案が國會に提出されまして、滿場一致を以て決議として成立いたすことを私は衷心希望し、且つさように信じ、我が司法委員會の全員擧げてそのような結果を得ることに努力したいと存ずるのであります。今日は恰も司法大臣その他政府委員の方々も見えておられるのでありまして、この決議案の案文を審議いたしまする上におきまして、最も適當な日であると喜んでおる次第であります。何とぞ諸君竝びに司法省の關係の方におかれましても、この決議案の通過に御協力下さいますともに、又この根本の目的達成のために一段の御努力を賜わらんことをお願いする次第であります。
 これを以て決議案に賛成の言葉といたします。
#5
○來馬琢道君 速記を止めて下さい。
#6
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#7
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。只今鬼丸委員より提案にかかるところの、裁判官、檢察官竝びに刑務官の待遇改善に關する決議案、これを本委員會の名を以て決議することに御異議ございませんですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○委員長(伊藤修君) 御異議ないものと認めます。然らば採擇をいたしまして、本案に對するところの當委員會の意思を強固に表示したいと思いますから、これが採擇を諮りたいと案じます。本案に贊成の方は御起立を願います。
   〔總員起立〕
#9
○委員長(伊藤修君) 全會一致。原案通り可決いたします。
 この際司法大臣からこの決議案に對する御意見の開陳があります。
#10
○國務大臣(鈴木義男君) 參議院司法委員會におかれまして、誠に時局に適切な決議をして下さいましたことを、政府當局といたしましても深く感謝いたすものであります。是非この決議の趣旨を實現するべく努力いたしたいと存じます。
 固より司法大臣としてはそういう考えを今までもずつと持ち續けておつたのでありまするが、強力なる御援助がありませんと、非常に國家財政困難の際、實現することが困難である場面もあるのでありまして、百萬の味方を得たような心強さを感ずる次第であります。
 實は先日衆議院の司法委員會におきましても、決議まではなされなかつたのでありまするが、極めて強力なる同趣旨の御意見の開陳がありまして、司法大臣としてやはりこの裁判官、檢察官竝びに刑務官の待遇の改善、刑務所の増設、設備の充實、増員というようなことについて努力することをお約束申上げて置いたのであります。
 この度參議院司法委員會が満場一致を以てこの強力なる決議を遊ばされましたことは、更に我々を勇氣付けるものでありまして、心から感激いたす次第であります。
 實は裁判官というものは檢察官も含めてでありまするが、時流に超然として、毀譽襃貶を度外視して事に處して行かなければならない、いわば聖職、聖なる職とでも申すべきものと我々は常に考えております。そうして幸いに我が國の裁判官、檢察官はその國民の期待に背かなかつたのであります。今日各位が十分に御理解下さるように、ほぼ最下級の勞働者と同一の待遇を受けて、俸給等では食べて行くことが不可能の状態にあるにも拘わらず、決して忌わしい風評等が傳わらないということは、いかに我が司法官諸氏の矜持が高く、節繰が堅固であるかということを物語るものでありまして、涙なくしてはこれを語ることができない氣持がいたすのであります。併しながら、どうしてもあらゆる官職に比してその品位を重んじなければならない職域であることは當然でありますから、たとい世の中の經濟事情がよい時でありましても、好きが上にも好く、超然としていわゆる出世利達、榮達というようなことを求めずに、偏えに犯罪を檢擧し、正しい裁判をするということに徹して頂かなければならないのでありまして、そのためにはあらゆる官吏に優つて待遇をよくしなければならん、こう私は考えるのであります。現にイギリスなどの例を見ますれば、最高法官は總理大臣の數倍の俸給を、各判事もあらゆる官職に比して、ずつともう比較にならない高い俸給を得ておるのであります。それでこそ節操と品位とを保つことができるのであると思うのであります。然るに我が國では、ともすれば官吏一般の比較論において、あらゆる官吏に比してその最上位に置くことは諒とするも、それ以上にすることはなかなか贊成ができんというような御議論が多いのであります。私としてはこの際是非そういう形式的な議論を捨てて、又經濟が安定いたしましたときには、舊に復しまして、一般官吏としての最高級ということでもよろしいと思うのでありますが、非常時に際しては特別の優遇を講じて頂きたい、こう考えておるのであります。裁判官はすべて一級にする。松井委員から適切に指摘せられましたように、他の行政官吏は四十五歳にして平均一級官になる。司法官は五十五歳にして一級官となる。この十年の差というものは大いなるものでありまして、從來經濟安定時代には終身官であるから、それだから出世が遲れるのは止むを得ない、こういうふうに解されておつたのでありまするが、今日は終身官であることが毫もその生活の保障の根據にはならなくなつております。是非私は全部の裁判官を一級にいたしまして、又それでも決して生活の安定を得ることはできないのでありまするから、思い切つた年功加俸、從來の例を無視した年功加俸の制度を判檢事に限り布いて頂きたいというふうにすら考えておるのであります。
 檢事は裁判官と違いまして特別の法律を必要といたしませんが、裁判官とその職責はほぼ同じものでありますから、裁判官の待遇が改善せられますと共に同じくしたい。こう考えております。
 行刑官につきましても同樣でありまして、先程阿竹委員からお説がありました行刑官が受刑者の尊敬をかち得ていないということが、刑務所における不祥事の發生原因である。誠にその通りでありまして、静岡事件などを調査いたしましても、主たる原因はそこにあつたのであります。彼らは前科者であるに拘わらず、その刑務所の役職員が智能においても低いし、その待遇においては誠に悲慘な状況にありますることを眼前に見ております。大部分が一年未満の勤務者でありまして、一年以上勤める考は寥々たる有樣であります。そういうものではとても立派な行刑ができる筈がないのでありまして、先ず私は行刑官につきましても、檢事と同格の人々を以て原則として充てる、少くも半數ぐらいの行刑官は檢事と同じ格の人を充てる、一、二級官がこれに當る、宗教家と社會事業家と檢事とを兼ねたような資格を必要とする。人間を扱うところの最も尊い仕事の一つでありまするから、是非この行刑官の素質の向上という事には全力を盡したいと存ずるのであります。下の方はそう高いものというわけには參らんと思いまするが、それでも待遇においてはあらゆる警察官よりも上でなければ、その品位を保ち、その威信を保つことができないと考えておるのであります。殊に勞働基準法を適用されることになりますると、只今の行刑官は非常に過勞に陥つておるのでありまして、勞働基準法の命ずるところを實施いたしまするのには、少くとも今の倍數の行刑官を必要とするのであります。そして待遇も只今申上げますように、檢察官と同格に優遇をしなければならない。こういうふうに考えておる次第であります。
 それらの點は、實は只今までも機會あるごとに私は閣議等においても發言をし、注意を喚起いたしておるのでありまするが、如何せん、我が國の財政状態が逼迫の状況にありまするために、諸物價の安定、勞働攻勢等に對しまする關係から、他の官吏の俸給というもの、實は國務大臣の俸給が先ず第一に決められなれけばならないのでありますが、國務大臣の俸給を土臺にして裁判官の俸給が決まる、會計檢査官の俸給が決まるのであり、その他の俸給も段々決まつて參る關係になつておりまするために、實はそれらの俸給を上昇させることが勞働攻勢等との釣り合上いかがなものであろうかということで躊躇いたしておりまして、なかなか決しなかつたのであります。その餘波を受けまして、裁判官の俸給も改正することが遲れておる次第なのであります。併し到底一日を緩うすることができないという状況にありますことは、この決議の指摘せられる通りでありまするから、それはそれといたしまして、是非判檢事、行刑官につきましては、特別の方法を取つて急速に優遇を實現したい、こう決心を新らたにいたした次第であります。
 そのことを申上げまして感謝の意を表しますると共に、この決議の趣意を實行に移すことに最大の努力をいたすという決意を表明いたして置次第であります。
#11
○委員長(伊藤修君) では次に刑法の一部を改正する法律案を議題に供します。討論に入る前に修正の各意見が、鬼丸議員、松村議員、小川議員、松井議員より提出されておりますから、これに對して各修正案につきまして懇談をいたしたいと存じます。それでは懇談會に移ります。
   午後二時三十五分懇談會に移る
   ―――――・―――――
   午後四時二十九分懇談會を終る
#12
○委員長(伊藤修君) それでは速記を始めて。本日はこれにて散會いたします。
   午後四時三十分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           松井 道夫君
   委員
           齋  武雄君
          大野木秀次郎君
          池田七郎兵衞君
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           阿竹齋次郎君
  國務大臣
   司 法 大 臣 鈴木 義男君
  政府委員
   司法事務官
   (刑事局長)  國宗  榮君
ソース: 国立国会図書館
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