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1947/11/06 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第39号
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1947/11/06 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第39号

#1
第001回国会 司法委員会 第39号
  付託事件
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○農業資産相續特例法案(内閣提出)
○經濟査察官の臨檢檢査等に關する法
 律案(内閣送付)
○昭和十九年法律第四號經濟關係罰則
 の整備に關する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣送付)
○北海道上川郡美瑛町に旭川司法事務
 局美瑛出張所設置に關する請願(第
 三百六十五號)
○仙臺高等裁判所郡山支部設置に關す
 る請願(第四百十九號)
○國立療養所栗生樂泉園獄死事件に關
 する陳情(第四百八十四號)
○青少年保護事業團體救濟に關する陳
 情(第五百五號)
○罹災都市借地借家臨時處理法第二十
 五條の二の災害及び同條の規定を適
 用する地區を定める法律案(内閣送
 付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十一月六日(木曜日)
   午後二時二十八分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○罹災都市借地借家臨時處理法第二十
 五條の二の災害及び同條の規定を適
 用する地區を定める法律案
○昭和十九年法律第四號經濟關係罰則
 の整備に關する法律の一部を改正す
 る法律案
○家事審判法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) 司法委員會を開會いたします。本日は本委員會に豫備審査のため付託せられたところ罹災都市借地借家臨時處理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地區を定める法律案を上程いたします。先ず政府委員の本案に對するところの説明を御伺いいたします。
#3
○政府委員(奧野健一君) 罹災都市借地借家臨時處理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地區を定める法律案の提案理由を御説明いたします。
 罹災都市借地借家臨時處理法につきましては、先に本國會におきまして同法の一部を改正する法律案が提出されまして、兩院を通過成立して、去る九月十三日法律第百六號を以て公布、即日施行させたのであります。この改正によりまして新たに設けられた同法第二十五條の二におきましては、從來罹災都市借地借家臨特處理法が戰災のために滅失した建物、又は疎開のため除却された建物のある場合にのみに適用されていたのを改めまして、別に法律で定める火災、震災、風水害、その他災害のために滅失した建物がある場合にも同法の適用を見ることになりまして、又前述の改正により改められた同法第二十七條第二項におきましては、第二十五條の二の規定を適用する地區は災害毎に法律で定めることになつております。よつて政府におきましては、早速前述の第二十五條の二の災害として指定すべき災害の有無及びその適用地區の範圍につき、愼重に調査いたしましてこれを檢討いたしました結果、ここに本法律案を提出することに相成つた次第であります。本法律案におきましては、前述の第二十五條の二の災害として五つの災害を指定し、各災害につきそれぞれ一乃至三の適用地區を設けておりますが、この指定の大體の標準は、終戰後最近までにおける災害、震災、風水害等の災害により全燒、全壞又は流失した戸数が千戸程度以上に達した市町村、尤もすでに戰災地又は疎開地として罹災都市借地借家臨時處理法の適用されておる市町村につきましては、若干この標準を下げておるのでありますが、かかる程度の災害を蒙つた市町村を大體の目安といたしまして、更に各都道府縣當局、その他の意向をも考慮いたしまして、これを定めたわけであります。何卒愼重御審議の上速かに御議決あらんことをお願いいたします。
#4
○松村眞一郎君 私は前にこの法律の改正のときに意見を申し述べたのでありますが、東京都について初め臨時處理法として出たのでありますが、そして法律施行の日から一年内に申し出ることになつておつたのであります。その一年の期間が滿了したからというので、それを二年に延ばしたのでありますから、やはり今囘は一年で適當だと私は思います。こういうような不安定な状態が二ケ年間も續くということは、先達つては臨時的に期間が滿了したので一年を二年に延したのだ。新しく適用するという場合に更に檢討するということの議論を皆いたし、その意味において施行したのでありますから、今度新しく法律を適用する場合におきましては、この臨時處理法の中の第二條の「二年間」というものは、一年間とすべきものでありますから、「但し第二條の適用については二年間」とあるは「一年とす」、こういうような工合な規定を添えて、先達つての改正の際に一年を二年に延ばしました部分は一年に改めることの規定を加えて本案を成立せしめることに賛成いたします。
#5
○委員長(伊藤修君) 本案に對するところの爾餘の質疑は他日に讓りまして、この法案に對しましてはこの程度で以て質疑を打切りたいと存じます。御異議ありませんですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(伊藤修君) ではさよう決定いたします。
 次に昭和十九年法律第四號經濟關係罰則の整備に關する法律の一部を改正する法律案も、豫備審査のために本委員會に付託せられた次第であります。これを上程いたしまして直ちに政府のこの法案に對するところの御説明をお伺いいたします。
#7
○政府委員(國宗榮君) 只今上程されました昭和十九年法律第四號經濟關係罰則の整備に關する法律の一部を改正する法律案についてその提案理由を御説明申上げます。この法律は經濟關係の各種法令中涜職罪及び秘密漏泄罪に關する規定が極めて區々に亙つておるのを整備統一すると共に、經濟統制事務、その他事要な公共事務を行う經濟團體の役職員に對しても右兩罪の成立を認め、その職務執行の公正を擔保することを目的として設けられたものでありますが、國家總動員法、その他經濟統制法令の多くはすでに廢止せられまして、統制の方式につきましても重要な修正が加えられ、本法は實情に副わない點を生じて參りましたので、今囘これがため、必要最小限度の改正を行うことにいたした次第でございます。
 以下その改正の要點を御説明申上げます。御承知の通り本法は第一條におきまして、國家總動員法第十八條第一項又は第三項により設立されましたいわゆる統制會、營團又は金庫等の役職員に對しては、これを公務員と看做しまして、直接刑法の適用を受けるものとし、第二條におきまして、統制會社等の役職員に對し、涜職罪に關する特別規定を設け、刑法よりもやや輕い罰則を定め、且兩者いずれの場合におきましても、その適用を受くべき團體、營團、金庫、會社等は勅令によつて具體的に指定すべきものとなつておるのであります。然るにやはり第一條の關係におきましては、國家總動員法の廢止に伴いまして、同法第十八條により設立せられた統制團體は、經過的に存續する船舶運營會を除きまして、他は存在しないことになりましたので、本條中統制團體に關する部分を削除いたしました。船舶運營會につきましては、附則によつてその存續中尚本法の適用を受くるようにいたしたのであります。
 次に第二條の關係におきまして、統制方式の改訂に伴いまして、民間團體において統則の權限を行使する場合はなくなりましたが、同時に新しく政府の國家統制の補助業務を行うものを生ずるに至つたのであります。後者におきましては、關係業者から報告を徴し、又は調査をして割當計畫案を作成するなど統制事務の相當重要な業務を行うものでありまするから、官廳の統制事務に對し、實質的に相當重大な影響を及ぼすものと考えられるのでありまして、この種の補助機關の役職員に對しましても、涜職罪及び秘密漏泄罪の成立を認め、その公正なる職務の執行を期待すべきこと從來の統制會社と變らないと申すべきであります。
 更に統制事務の補助は行わないにしましても、獨占事業であるがために、事實上強力な權限を有する事業につきましては、やはり右と同様のことが申されるのであります。この種獨占事業の大部分は、昭和二十二年法律第五十四號すなはち私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律によつて禁止されておるのでありまするが、鐵道事業、電氣事業、瓦斯事業、その他性質上當然に獨占となる事業、いわゆる自然獨占の事業は同法の適用を除外されておりまして、この種法人の役職員におきまして、獨占の優位を頼んで偏頗な行爲をなすときは、非常な弊害を伴うことが豫想されるものであります。
 これらの理由によりまして、統制の補助機關及び獨占事業をも新たに指定すべきものと考えられるのでありますので、第二條の規定に所要の改正を加えたいと存ずる次第であります。
 尚從來第一條及び第二條の適用を受くべき團體等は勅令によつて指定すべきものとなつておつたのでありまするが、更に公明を期するために、現に必要を認められておりまするものについては、本法中に別表を以てこれを掲げ、將來新たに別表に掲ぐる必要ありと認められるものにつきましてのみ改令を以て追加し得ることとする所存であります。
 尚第六條の秘密漏泄罪を適用せらるべき經濟團體は、勅令を以て指定すべきこととなつていたのでありますが、事實上秘密を持たない團體については同罪の成立し得ざることは勿論でありますし、且右の如く、特に勅令により指定することは却て不合理なる結果を生ずると考えられまするので、今囘その部分を削除し、團體の指定による制限を受けないことといたしたのであります。その結果、形式的には別表に掲ぐる團體につきまして、すべて同罪が成立し得ることとなるのでありますが、事實上秘密を有しない團體について同罪の成立せざることは右に申述べた通りでありますので、實質的には從來と結果を異にしないと存ずる次第であります。
 以上要點のみを簡單に御説明いたしたのでありますが、尚詳細につきましては御質問によりましてを答えいたしたいと存じております。何卒愼重御審議の上可決あらんことを希望いたします。
#8
○小川友三君 本案の大體の趣旨には勿論賛成でありすが、第二條にありまして、いきなり「三年以下ノ懲役ニ處ス」、或いは「七年以下ノ懲役ニ處ス」という條項でありまするが、これは罪の輕い者に體刑を加えるということにもなりまするので、一萬圓以下の罰金又は三年以下の懲役に處す、或いは二萬圓以下の罰金又は七年以下の懲役と、その罰金刑を體刑とを併立してやるつもりはないか。又修正する御意思であるかどうか伺いたいと思います。
#9
○政府委員(國宗榮君) 第二條は刑法の涜職罪の特別規定とも解せられるのでありまして、刑法の罪よりも、第二條の刑は斟酌いたしてあるのでありまするが、只今御質問のような、これに罰金刑を科するつもりはないか、こういうお話でございまするけれども、涜職罪はむしろ破廉恥罪でありまして、刑法上の罰を勘案いたしますると、これに罰金刑を課するということは、政府としては考えておりません。
#10
○委員長(伊藤修君) お諮りいたします。この法案に對する質疑は他日にこれを讓りたいと思いますが、如何でございましようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○委員長(伊藤修君) さよう決定いたします。
 次に民法の一部を改正する法律案を上程いたします。
#12
○小川友三君 第七百九十二條の「成年に逹した者は、養子をすることができる。」というのは了承することはできるが、この條項でありますが、先ず第二節の養子のどこを見ましても、養子には一人のものが二ケ所、三ケ所、四ケ所それ以上の養子に行つても、差支ないような形態になつておる法律案であります。これを惡用いたしまして、一人の養子に行つた者が、甲乙丙と養子を決めまして、そうして資産を分與して貰うという、數箇所より資産を分與して貰うという特典が、惡用する場合はできるのでありまして、この七百九十二條に、養子は離縁せずして二つ又はそれ以上の養子に行くことはできないというのを挿入することが必要であると信ずるのであります。これに對しまして政府の御意見を伺いたいと思います。
#13
○政府委員(奧野健一君) その點は現行法通りといたしたわけでありまして、養子に行つた者が、更に養子に行くということについては別段これを禁じてないのでありますが、お話のようにこれを濫用して相續の分與の利益に大いにあずかるように、これを濫用するというようなことは、恐らくないのではないか、苟くも親子の關係を結ぶのでありますから、何囘も轉々として養子稼業をやるというようなことは、想像は殆んどできないのではないかというふうに考えまして、從來通りこの點については養子になつた者は、更に養子に行くことはできないというふうに、從来禁止はないのでありますが、それと同じように、その點については特に規定を設けなかつたわけであります。
#14
○小川友三君 誠に人を善人と見た政府御當局の御答辯でありまして、養子になつた、併し又二つ、三つの所に養子に行かないということが限られないのでありまして、常識上……この項は親を殺した例というのが枚擧にいとまないほどであります。殺すことさへする子がありますので、まして養子に行くのは、これから惡性インフレが何年か、何十年か續いて、政府はどうすることもできない状態で、惡循環で流されておるというふうなことで、特に敗戰後の思想が頽廢いたしておりますので、現行法はそうであつたかも知れませんが、とにかく今度は新しく法律を作るのでありまするから、その點に對しまして一行を加えましても、インフレは別に助長しないし完全な法律ができるものと信じますので、この點に對しまして本員は絶對にこの項を入れたいと主張するのであります。
#15
○中村正雄君 四、五點お尋ねしたいことがありますので、一つずつ區切つて申したいと思います。最初七百七十三條、本條の第二項におきまして、父母の同意が一方がどうも不可能の場合は、他の一方で足りるという關係を規定しておりますが、又第一項では父母の同意を得なくてはいけないということになつておる關係上、父母が存在しておつてどちらも同意しなかつた場合は、恐らくこの條文で考えれば、婚姻ができないということになるわけです。又父母の一方が同意して、一方が同意しないときに、他の一方で足りるということになるときに、恐らく同意しない場合は父母の意見が不一致であろうと思います。これは父母の調和が取れていない場合で、父母のどちらも同意しなければ婚姻できないのでありますから、他の一方の同意を以て婚姻の成立の要件に代えずに、家事審判所がこれを判定することにしてはどうかと自分は考えておりますが、こういう點につきましては立案の際何かお考えにないかどうかお聽きしたい。
#16
○政府委員(奧野健一君) 只今お話のように兩親が共におつて、而も兩親とも反對であるという場合には婚姻ができない。未成年の子供は婚姻ができないというのでありますが、憲法の趣旨から行きますと、できるだけやはり當事者だけの合意で成立せしむることが、適當であるのでありますが、唯例外として未成年の未熟の子供につきましては、やはり思慮分別が十分でないという保護の意味から、未成年の婚姻の場合に限つて、父母の同意ということを要件にされるわけであります。併しながらこの點もできるだけ遠慮勝ちと申しますか、父母の中の一人でもまあ同意を與えるというようなことであれば、大體保護の點からいつても十分である。本來ならばこの場合でも父母の同意は、いらないというふうにいたすのが或いは憲法に忠實かも知れないが、未成年の例外、而もそれができるだけ遠慮勝ちにというので、父母の中の一方の同意だけでも足りるとまたしたのであります。そういうわけでこの場合に父母の意見が一致しないときには、家事審判所の審判でもつてこれに代えるという行き方も、一つの考え方と考えますが、父母の同意というのが、そういう意味で子の保護、子の思慮分別の補充といつたような考えでありますから、むしろそういう第三者的な官廳たる家事審判所がそれを補うよりも、やはり身近にいる父母いずれか一方の同意だけで足るといつた方が、實情としてはいいのではないかというふうに考えまして、いろいろ例えば親權者を離婚の場合に決めるような場合に、協議ができなかつたら家事審判所でというふうに持つて行つておるやり方が、相當この民法案では採用しておるのでありますが、この婚姻の場合の同意だけについては、むしろやはり身近におる父母一方の同意だけでいいことにした方が、むしろ適當であろうということで家事審判所の同意で以てこれに代えるという方法をとらなかつたわけであります。
#17
○中村正雄君 次に七百六十條、これは小さな問題ですが、婚姻から生ずる費用の分擔、この點夫婦間におきまして協議が整わない場合は、おそらく相當あり得るだろうと思う。そういう場合にやはり一般の訴訟となると思いますが、家事審判所の關係はどうなつておりますか。
#18
○政府委員(奧野健一君) これは、費用の分擔に關する處分につきましては、家事審判法に規定を設けておりまして、家事審判法九條の中で、乙類の中の第三號に、「民法第七百六十條の規定による婚姻から生ずる費用の分擔に關する處分」になるというので、家事審判所で決めることになつております。
#19
○中村正雄君 次に、前の七百五十三條、「未成年者が婚姻をしたときは、これによつて成年に達したものとみなす。」こういう規定がありますが、これに關連しまして、この條文から行きますと、婚姻繼續中ということだけでなくして、一度婚姻をするならば、たとい後に婚姻を解消しようとも、一般の年齢から行けば未成年であるが、そのまま成年としての効力が續くものというふうに考えられるわけですが、婚姻の成立の場合のみにこういうふうになつておつて、婚姻が成立すれば、離婚の場合にも父母の同意もなにも要しない。こういうふうに考えられますが、これでよろしいのですか。
#20
○政府委員(奧野健一君) 離婚の場合にも、やはり父母の同意は必要でないのです。で、只今お話のように、婚姻によつて未成年者が成年者とみなされるのでありまして、それが離婚してしまつたあとに、更に又未成年者になるかという問題は、結局正面からは明かでないので、結局解釋問題になろうかと思いますが、大體立案の當時の考では、一旦婚姻して、一人前に扱つた者であるから、たとい離婚しても、やはり一旦婚姻をした經驗のある者は、むしろやはり成年者として取扱うというふうに解釋をいたしておつたわけであります。婚姻中離婚する場合につきまして、これは父母の同意を必要といたさないのであります。
#21
○中村正雄君 次に一般問題でありますが、婚姻の成立につきまして、婚姻ということにつきまして、現行民法と同じように屆出主義をとつておるわけであります。この關係上、やはり今までと同じように慣習上認められた儀式によつて實際やつておりましても、屆出がなければ、やはり認められないという關係上、特に屆出以前の配偶者の相續權その他については、今後も相當問題が起ると思いますが、やはり今の内縁關係等が恐らく生ずるわけでありますが、これに對して何か救濟その他についてお考になつておるかどうか。
#22
○政府委員(奧野健一君) 實は内縁の關係をどういうようにするかという點につきましては、非常に問題になるわけでありまして、この點は、臨時法制審議會等におきまして、十數年に亙りまして、事實婚を採用すべきかどうかということについて、いろいろ研究をいたしたのでありますが、最後まで結論を得ることができません状態になつて、戰爭の状態になつたわけでありますが、そこでこの民法改正の際にも、事實婚の問題をこの中に入れるかどうかということを非常に研究したのでありますが、早急にこの中に事實婚を採用することは非常に困難でありまして、取りあえず憲法の要請に從つた改正だけをいたすという考から、この度はこの中に全然事實婚の採用ということを見合せたわけであります。併しながらいずれこの法律全體に亙つて再檢討をいたす場合があろうと思うのでありますが、その場合には、事實婚の問題を尚更に檢討いたしたいと思つております。
 そこでその本案におきましては、やはり法律婚、いわゆる屆出主義を採つて、婚姻の成立の時期を明確にいたします關係上、從來通りの屆け婚の主義を採つたわけであります。而して今度は御承知のように、父母の同意というなもの、或いは戸主の同意というようふうなものが、不必要になり、又家廢止と共に、家督相續人でも、廢嫡の手續をしないで、自由に婚姻ができる、女戸主であつた者でも、廢家とか、或いは隱居というような手續もしないで、自由に婚姻ができるというようになりましたので、比較的從來と違つて、婚姻の届ということは自由にできるので、今後婚姻の届をしないということは、むしろ當事者の怠慢と言われても仕方のないような、法律上の制約はなくなつたわけでありますから、今後日本國民が段々文化的に發達いたして參り、婚姻は屆が必要だということに、常識に段々なつて參りますと、むしろ事實婚というものはなくなつて行くので、すべてが法律婚というふうに持つて行きたいものというふうな考から、事實婚をむしろなくして、正式な法律婚を一般に普及徹底して貰いたいというふうに考えておるわけであります。
 そこで現在における事實婚のあることは、認めないわけには參らないので、そういうものについてどうするかというような點につきまして、この民法の中に、折角民法としては法律婚、屆出主義を採りながら、同時にその民法の中で、内縁關係を夫婦と同じように取扱うということは、矛盾することでありますので、民法の建前としては、それはやはり婚姻とみなさないというような建前で行つておりますが、併し民法以外の或いは郵便年金法でありますとか、或いはそういつたような社会立法的なものにつきましては、そういつた内縁の關係も、事實上の夫婦のような關係も、夫婦の關係と同じように含めて立法されておる例も非常に多いのでありまして、そういう意味で、そういう點については、夫婦と同じような法律上の保護を受けることになるのでありますが、この民法の建前としては、やはりそういう事實婚の問題は、やはり内縁關係として、從來の通りまあ婚姻豫約不履行があれば慰藉料、損害賠償の請求ができる程度である。從つて妻と言いますか。生存配偶者は相續權がありますが、その相續權は、現在の内縁關係の者は相續權が認められないという状態であります。
#23
○鬼丸義齊君 從來の婚姻關係とは著しくすべての規定が變つて參つたのでありまするが、これまで離婚、或いは離縁等によりまする場合にも、離縁の場合はあまりありませんが、離婚の場合におきまする損害賠償、これは不當な、不當と申しまするが、兎に角多額な損害賠償をしなければならんというようなことになるというと、當事者の不合理な夫婦關係を繼績するというようなことがあるというような趣旨から、損害賠償の額等につきましても、著しく少額であつたのであります。今後におけるこうした場合の損害賠償についての標準は、從來とは著しく増額されることも差支ないようにも考えられまするが、その點は政府としてどんなお考を持つておるのであるか伺いたいのであります。
#24
○政府委員(奧野健一君) その點につきましては、離婚の場合に財産の分與を請求することができるという規定を七百六十八條、これは裁判上の離婚の場合にも準用になつておりますが、できることにいたしたのでありまして、その思想は夫婦の間の財産というものは、これを夫婦の協力によつて元來できたものであるので、夫婦別れをする場合においては、その財産の分割のような意味竝びに又離婚された者の生計を保障するという意味、或いは只今仰しやいましたように損害賠償、慰藉料といつたような意味の、そういつたような思想を全部ひつくるめまして、財産の分與を請求することができるということにいたしたのでありまして、この財産分與ということになりますと、これはその額が協議で決められないときには、家事審判所が決めるのでありまして、當事者の協力によつて得た財産の額であるとか、その他一切の事情を斟酌考量いたしまして、額を決めるのでありますが、これはまあ財産の分割といつたような思想もあるぐらいでありますから、從來の慰藉料と違つて相當なものになるのだというふうに考えております。併し實際は家事審判所が決めることで、法律におきましては別に半分とか、そういつたような明確な標準はありませんから、實際の具體的な實情に應じて家事審判所が決めるということになつておるわけでありますが、大體におきまして從來の損害賠償、慰藉料の請求というものよりも、餘程多くなるものというふうに考えております。
#25
○鬼丸義齊君 裁判上の離婚の場合には、當然相手方が一つの責任を負わなければならん。財産の分割を請求する場合より外に、例えば配偶者の一方に對して不法行爲をしたということの特段なる責任が、それに加重されるのだと思います。それに對しまする財産分與の請求權以外に、そうしたような責任に對する賠償の意味はどういうふうな扱いによつて決めるのであるか。家事審判所においてそれを加味される範圍において、專らその額は家事審判所に一任することになるのであるかどうか、その點一つ伺いたい。
#26
○政府委員(奧野健一君) 大體財産分與の請求を認めた趣旨は、先程申しましたように、いろいろな意味で財産の分割の趣旨も含んでおりますし、扶養料の意味も含んでおり、場合によつては慰藉料的な意味も含んでおりますが、明確に不法行爲があつた。例えば虐待その他の行爲によつて、不法行爲があつたということが明白である場合には、その不法行爲による損害賠償請求權というものは、この財産分與の他に認めていいのじやないか、というふうに考えておりますので、それは一般の損害賠償として更に財産分與の外に、不法行爲としての損害賠償請求權はあるというふうに考えております。
#27
○鬼丸義齊君 そういたしますると、無論財産がないにいたしましても、相手方に對して債權の主張をなすことが許されることは勿論であろうと思いまするが、私の伺いますることは、その請求權の額、それは從來とは固より著しく違つて、やはり一般の損害賠償の標準によつて、事實上精神的或いは物質的に受けたる損害は、そのまま何ら斟酌するところなく賠償する義務があるのだ。こういうふうに解していいのでありますか。
#28
○政府委員(奧野健一君) 一般の不法行爲として、損害の算定等をいたすべきものと考えております。
#29
○松井道夫君 七百三十條に「直系血族及び同居の親族は、互に扶け合わなければならない。」という規定がございまして、通常の直系血族及び同居の親族に、當然その肉親その他の關係上扶け合つておるのが普通でありますし、又それが道徳といこうとに相成つておるのであります。民法は、法律というものは道徳でございませんので、それをここに道徳の規定というものを入れられたということは、どういうことであるか。見方によつてはやや不體裁ではないか。かように考えられるのであります。それから七百五十二條に「夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない。」という規定がありますが、これは夫婦の同居義務或いは扶養の義務といつたようなものを規定された趣旨であれば、これは法律上の義務を規定したと言うべきものでありますが、やはりそこには、「互に協力し」それから「扶助」という字句が用いてありまして、これは扶養の義務を規定したと、直ちに斷定いたすことができない。やはり道徳規定のような感じがいたすのでありまするが、先ずその點について御意見を伺いたいと思います。
#30
○政府委員(奧野健一君) 御尤もな點でありますが、先ず七百三十條につきまして、「直系血族及び同居の親族は、互に扶け合わなければならない。」というのは、御説のように、道徳的な規定として設けたのでありまして、これは民法から法律上の家の制度を廢めました關係から、一般國民として、我が國の實際の、現實の家族制度それ自體をも否定するのではないかというふうに誤解されては困る。我が國の從來の實際の親族共同生活をする家庭生活というものは、むしろ美風として尊重して行かなければならないということをどこかに明かにいたして置きたいという考えから、特に七百三十條を設けて、民法は、法律上の家の制度は廢めたが、いわゆる現實の家庭生活を亳も否定するものではなくて、親族共同生活は仲良く扶け合つて行かなければならないという、いわば道徳的な規定を設けたのであります。これが法律上のどういう扶養の義務ということになると、こういう意味ではなく、いわゆる道徳的な規定として規定したので、そういう意味からいたしまして、法律の中にこれを置くことがどうかという議論も、勿論考え得ると思うのでありますが、まあこれがあるからといつて、これがために現實の家庭生活の親睦という點に多少とも效果があれば、必ずしもすべて法律的效果を伴うものだけで、それ以外のものは全然入れてはいけないというものでもなく、最近の立法においては、相當そういつたような道徳的な規定も置いておるので、そういう意味でこの七百三十條を置いたのであります。ところがこれに反しまして七百五十二條におきましては、これは夫婦の同居義務とそれから扶養の義務、こういう法律上の義務は當然あることを前提として、それをも含む意味で書いたのでありまして、ただそれより以上に「互に協力し」とか、「扶養」という字を「扶助」というふうに改めたのであります。「互に協力し扶助しなければならない。」ということは、法律的な意味における扶養の義務は勿論のこと、それ以上の精神的、經濟的にお互に協力し扶け合うという、やはりやや道徳的な意味も加味した表現としてこういう表現を用いたわけでありまして、夫婦の關係は男女平等の權利に基いて互に協力して維持しなければならないということが、憲法二十四條にある。その「協力」という言葉を持つて來たわけでありまして、そうして「扶助」というようにいたしましたのは、夫婦の間で扶養義務というふうにいたすことは、如何にも水臭いような感じを抱くというので扶助といたしたので、その意味は、扶養の義務をも含めた意味で、更にそれよりも、協力して扶け合うという意味を強く現わしたわけであります。而してこの關係につきましては、家事審判法の先程申しました九條の乙類の第一號に、「民法第七百五十二條の規定による夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に關する處分」ということを規定いたしまして、これが同時に法律的な效力を持つことは、この家事審判法九條乙類の一號の規定から見ても明らかであらうと思います。要するに七百五十二條は、法律的な扶養義務、同居義務と、その外にやや精神的な夫婦の結合關係を加味して、こういう表現を用いたわけであります。
#31
○松井道夫君 七百三十條の方は、純然たる道徳規定であると、さようなお答えでありまして、又このような規定も、これからの法律には必要なんであるという御意見でありました。さようなことであれば、その趣旨は了承する者でありまするが、私の考からいたしますれば、かような道徳規定を置くということは、要するに法良の規定で道徳を進めて行こうといつたような考え方は、法律萬能的な考え方であつてむしろこういう規定がありますために、直系血族、親族の中の我儘者をしてはびこらせて、むしろその道徳を破壞するような結果になるような場合が出て來るのではないか。さような意味合におきまして、やはり法律は、法律、道徳は道徳、勿論その基礎の理念は通ずるものがありましても、併しその領域は守るべきものであろうというように考える者であります。ただ意見として申上げて置きます。
 それから七百五十二條の關係でございますが、これは法律上の義務を規定したのであつて、扶養の義務もここに入つておるのだというお話なのでありまするが、同居の義務につきましては、これは以前の民法七百八十九條、「妻ハ夫ト同居スル義務ヲ負フ、」「同居」という字がございまするので、これは分り易いと存ずるのでありまするが、ところが舊民法では、七百九十條に、「夫婦ハ互ニ扶養ヲ爲ス義務ヲ負フ」という規定がありまして、扶養義務が明確に規定してあつたのでございます。ところが、この改正案におきましては、扶養の義務という文字が夫婦間におきましては削られまして、それが扶助という文字に書き改められた。この扶助の中に扶養の義務が入るのだということでありまするが、更に附加えて、外の生活關係でも扶け合わなければならんと、そういつたような御説明でございまするが、そういたしますることは、却て扶養の義務自體を曖昧にせしめる。七百九十條に扶養の義務ということが、明確に規定してあつたのに、それを特に削つたというようなふうにも解釋される虞れがあるのではないかと存ずるのであります。第六章に扶養という章がありまして、「直系血族及び兄弟姉妹は、互に扶養をする義務がある。」ということに書いてあります。ところが、前の民法におきましては、やはり扶養の規定がございまして、この規定の中には夫婦の間の扶養のこともおのずからここに入るように規定してあるのであります。やはり第八章に扶養の義務というのがあつて、九百五十五條に扶養の義務者の中の第一として配偶者と書いてあります。それで夫婦の扶養の義務も、おのずからこの規定の適用を受けるということがわかるようでありまするが、この改正案によりますると、夫婦間において扶養の義務という言葉は削られて、第六章におきましても又夫婦間の扶養の義務のことが何らはつきりわかるようには規定してあると存じません。それで夫婦間の扶助ということが、一體どういう規定でどう取扱われるかということに非常に疑問が起きて來る。或いは素人が見ますると、よく分らないというふうに相成つているのじやないかと思います。それに對する御配慮があつたのかどうか。その點を伺いたいのであります。
#32
○政府委員(奧野健一君) 大體七百五十二條で扶助と書いてございますが、これは夫婦間の扶養の義務であることを前提といたしまして、而もその扶養についてはやはり六章以下の適用があるという頭でありますが、併し特にこれにつきましては家事審判法の乙類の一號として、夫婦間の協力扶助に關するいろいろな處分ができることにいたしております關係上、大體その審判によつていよいよ問題になれば、どういうふうに扶養して行くかという内容が決まるわけでありますが、實際問題といたしまして夫婦の間におきまして、扶養の請求をするというふうな判決、或いは審判によつて扶養の請求をするということは殆ど考えられないのでありまして、殊に婚姻生活に要する費用というものについては、すでに七百六十條でおのずから婚姻から生ずる生活費用が決めてありますから、觀念的には七百六十條と扶養というものとは區別して考えれば、考えられんことはありませんが、實際問題としてはそれが婚姻生活の費用でありますから、むしろ七百六十條で大體の關係はけりがつく。その外に現行法においてもすでにそうでありますが、現行法においても更にその扶養ということはどういう場合にあるのか、生活費の分擔ということで、その關係は片がついている。その外にどういうふうに扶養の請求權があるということは、實際問題としては殆ど考えられんような、そういう意味で夫婦間の扶養請求權ということは、それ程やかましく論ずることはないので、むしろ夫婦生活における夫婦生活費用を誰が出すかという問題で決定されるので、その點はややこの扶養を扶助と改めました結果、わかりにくいと言われることは御尤もでありますが、大體これで扶養も含まれる意味、而もそれについては、特に家事審判法では乙類の一號の別個な審判のやり方をいたしているので、家事審判所でその點適當に了承の上でやることと考えますし、而もこの點は扶養ということを規定いたしますことは、夫婦の間における扶養の權利義務ということに如何にも水臭いような感じがいたしますのと、夫婦の間においてのその生活費が誰から出るかということがはつきり決めて置く以上は、夫婦婚姻状態が繼續しておる間においては、殊ど婚姻生活用の關係以外に扶養の請求ということは、事實上殆ど考えられないというふうな意味から色々な意味を以ちまして扶養の字を扶助というふうに改めたわけであります。
#33
○松井道夫君 それで七百六十二條につきましては、御説明で大體了承いたしましたが、扶養の義務ということを更に道徳的に規定したのであるというふうな意味にとつておきます。
 次に協議離婚の點でありますが、協議離婚につきましては、只今の制度では當事者が別れようと思えば、いつでもその協議で別れることができるというようになつておりまして、婚姻法でそういう離婚ということをできるだけ緩和された條件で認めるように相成つて來ておるという上から申しまして、結構なことと思うのであります。ただこの規定が現在の日本の状況におきましてはやや濫用される虞れがある。現に濫用されておるのであります。力の強い夫の方で僅かの縁切代を呉れまして、そうして無理矢理に判こを押させて泣き寢入りさせるというような例が多多あるのであります。甚だしきに至つては有り合せ判で離婚届を出してしまう。後で弱い女の方で泣いてもどうにもならんというような例があるのであります。それでこれにつきましては立案の當局も相當考慮をされたように聞いておるのであります。たしか提案の理由の中にも述べられたかと記憶しておるのであります。併し結論といたしまして、やまり從前通り自由に別れられるということになつておるのであります。私は自由に別れるということは是非維持したいと存ずるのでありますが、ただ當事者の意思を確める、意思がないのに泣く泣く押す、或いは警察の調停によつて別れるというようなことを防ぐ意味合におきまして、裁判所の確認をさせる。そうして確認書を作つて役場にもつて行くといつたような制度にいたした方がよいと考えておるのでありますが、かくして只今申しました弊害が防がれる。別れるにいたしても、愼重な考慮を費して別れる。又別れるにつきまして、財産の分與とか、種々の制度があるわけでありますが、そういうものも裁判所でいたして貰えるというような意味合で種々の利益があるのではないかと思います。その點についての御意見を承りたいと思います。
#34
○政府委員(奧野健一君) その點は提案理由の説明におきましとも觸れましたように非常に重大な問題でありまして、我々も大いにその點について考慮をいたしたのであります。現在協議離婚が相當自由にできて、而も屆出のみによつて效力が生ずることになつておるので、その間或弊害等も豫想いたされますので、できることなら家事審判所等において、本當に夫婦別れをする意思があつて、屆出をするのであるかどうかということを確かめるというようなことが非常に望ましいことであろうと思うのであります。そこでそういう點も一應考えましたのでありますが、ただ從來我が國においては、協議離婚は屆出だけでできるという大體の國民感情になつておりますのと、將來協議離婚について一々裁判所なり、家事審判所なりの確認を必要とするということになりますと、やはり非常に億劫がつて離婚して、事實上は全然夫婦でない實際でありながら、屆出であれば簡單にできますが、裁判所の一々確認を得るということであれば非常に面倒がつて、法律上は夫婦でありながら、事實上はもう本當に離婚してるんだといつたような、法律と事實とが違つておることが非常に多くなりはしないかということを非常に惧れまするので、現在やや簡略に取扱われておる憾みがあるのでありますが、現在通り屆出だけで離婚ができる。これに對して家事審判所等の確認ということが望ましいが、現在の國民感情ではそこまで必要じやないというふうに考えましたのと、又この家事審判所が一々確認いたすということになりますと、大體最近におきましては、一ケ月離婚の件數は六萬件くらいになつております。それを二百數十ケ所の家事審判所で一々眞意を確かめるとうい手續をとることも、これは負擔の上において相當なことになるのではないか。將來家事審判所の陣容が非常に充實いたしました曉には、そういうことも尚よく考えてよいのではないかと思いますが、發足當時における家事審判所に六萬件等の確認の事件を背負わすことは負擔が大きくなり過ぎるのではないかといつたような、いろいろな含みから從來通り屆出だけで離婚ができるという制度を踏襲いたしたわけであります。
#35
○委員長(伊藤修君) 松井さんに申上げますが、まだ澤山ありますか。
#36
○松井道夫君 いやそう澤山ありません。只今の御説明中、法律上は婚姻をしておつて、事實上はそうでないようなことができる虞れがあるという點は、これは考えなければならんことであると思つております。併しながら、今の家事審判所の能力の點の御意見は、必ずしもそうではないのじやないかというように考えるのであります。この離婚についての確認ということは別にむずかしいこともないので、本當の意味の確認でございまするから、何も審判事件は或いは調停事件といつたような性質が全然ないので、必ずしも家事審判所にこれをやつて貰う必要はないであろうと私は思います。簡易裁判所の判事の確認で十分であると思います。簡易裁判所でありますならば、家事審判所の數倍の數があるのでございますから、假に年六萬件といたしましても、大した負擔には相成らないと存ずるのであります。その點についての御意見を伺いたいと存じます。
 尚次の問題に移りますが、先程中村委員からの質問がございました内縁關係であります。内縁關係は、これは將來法律の知識が進めばなくなる。さよう簡單には考えられませんので、これは日本の農村その他に根強く殘つておりますやや封建的な考から、子供ができるまで樣子を見ようとか家風に合うか合わんか樣子を見ようとか、主として姑であるとか或いは小姑であるとか、そういつたような夫婦の周圍の者の意見で屆出がなされないということが多いのであります。でありますから、この夫婦が屆出ることを法律上できないような制度は皆廢止されたからといつて、將來の法律知識の進歩と相俟つて直きなくなつてしもうというようなことは考えられないと存じます。それでどうしても内縁關係の救濟ということは、これは女性の地位を高める上から言いましても、或いは婚姻というものを大切に取扱う上から言いまして、どうしても憲法の改正に即應した改正として直ちに取上げるのが相當ではないかと私は存ずるのであります。私といたしましてはこの屆出主義、これは結構なことであると存ずるのでありますが、だだ屆出主義の及びません、その弊害と言いますか。それを救うという規定を入れる。かような意味合で申しておるのであります。主として財産の分與、それから相續關係でございます。ただ内縁關係ありや否や、その他先程申したような理由で籍が入らないその關係で、相續について言えば、三分の一なら三分の一のものを相續させるのが必ずしも正當でないというようなことがありますならば家事審判所の介入を認めまして、或程度減らせるとかというような配慮を用いれば必ずしもそうむずかしいことはないじやないか。將來の根本改正を待つて十分の考慮を加えまして初めてできるというようなことでないと存ずるのであります。その點についての御見解を拜聽したいと思います。
#37
○政府委員(奧野健一君) 第一の點につきましては、折角家事審判所というものを新しく設けまして、家庭事件、相續關係はすべて家事審判所でこれを取扱いたいと考えておりますので、こういう離婚の確認というようなことを簡易裁判所へ持つて行かすということについては、ちよつと家事審判所を設ける趣旨と牴觸いたしますので、俄に御贊成申上げかねるのであります。次の内縁の關係についてでありますが、これは財産分與或いは相續等について、それに婚姻の場合に準ずるような規定を設ければいいではないかという御意見で、一應御尤もと考えるのでありますが、果して内縁關係があつたかどうかということの確定が、實は非常にむずかしいので、形式的な慣習による儀式があつたかどうか。或いは儀式があれば尚よいのですが、事實上同棲しておるとか、或いはただ時々いろいろ關係があるというふうなのと、その間において、どういうところでもつて内縁關係であり、妻なら妻に準ずべきものであるということを決めることが、相當困難であつて、それによつて相續人の中に加つてくるかこないかが決まつてくるということになると、非常に利害關係を持つ部面が廣くなりますので、餘程その點は愼重な、何らかの手當をいたさなければならないのではないかというふうに考えますので、その點どういうふうな規定を設けますか。政府としてはまだその點については確たる確信はないのであります。ただ只今の御説のように、農村等において、周圍の關係から籍を入れないというふうな事柄は、從來のように、戸主とか父母等の同意がなければ屆出ができなかつたので、そういうことで牽制をすることができますが、今後はそういう父母等の同意が必要でなくなつたのであるから、そういう點においては餘程從來とは變つて參るのではないか。そういう意味で、自由に屆出ができるような状態に將來なるのでありますから、できるだけ皆屆出によつて……身分上の重大な問題でありまするから、その時期等について明確な標準を立てて、はつきりとした婚姻状態に入るというためには、やはり屆出主義を堅持して、それ以外のものは、むしろ民法の建前においては認めないといつた行き方がよいのではないかというふうに、現在のところ考えております。勿論内縁關係、或いは事實婚の關係は、將來篤と研究いたしておきたいと考えております。
#38
○松井道夫君 最後に細かい點を二三點伺いたいと思うのでありますが、今度遺言養子というものをなくされたのでありますが、これは養子にしたいが、まだその人の性質がよく分らんというようなことで、遺言で養子をするという實益があるように感ずるのであります。實際の例としてあまりないことでもございましようが、併し全然ないわけではないのでありまして、現に私の知つている人で、遺言で養子を決めている人があるのです。強いてこれを削らなければならない理由を拜聽したいのであります。又現在遺言養子の遺言を書いておられる人は、別に經過規定に何もないようでありますが、その遺言が無効になつてしまうものかどうか。このことが一點であります。それから夫婦の一方の子を養子とする場合には、自由に夫婦兩方でなくて、自由に一人でやることができるというようなことに相成つておると存じます。これは七百九十五條の但書にあるのでありますが、これが現行の民法ですと、たしか一方の他の配遇者の同意ということに相成つておつたと存ずるのであります。八百四十一條「他ノ一方ノ同意ヲ得ルヲ以テ足ル。」これはやはり他の一方の同意を必要とするとした方がよいではないかと私考えるのであります。というのは、子供でありましても、いろいろ性質もありますし、又いろいろな關係で、別れておるような子供もありますので、やはり同意を要することとした方がいいと考えるのでありますが、この點どうしてこういうふうになつたのであるかということをお尋ねしたいと思います。それから八百四十二條でありますが、後任の後見人を家事裁判所に請求するという規定でありますが、この中に、父又は母が親權を失つたことによつて後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母ということになつておる。その父又は母が後任の後見人を裁判所に請求するということに相成つておるようでありますが、この父又は母が親權を失つたというふうの場合には、親權の喪失で家事裁判所に、外の親族や檢察官の請求で親權を失わされた。その父や母に、後任の選任を請求するというふうに受取れるのでありますが、ちよつと難きを強いると言いますか。實行不可能の規定のように見えますが、その點は如何でありますか。その三點をお尋ねいたします。
#39
○政府委員(奧野健一君) 第一點は遺言養子をどうして止めたかという問題でありますが、遺言養子というのは、結局自分の家督相續人を作る。或いは家名を繼がすというために、從來設けられておつたものでありまして、將來の養子制度は、そういつたような家を繼ぐための養子というよりも、子供の保護或いは親子の愛情といつたような意味で養子の制度を認めるのでありまして、家のため、家を繼ぐためというふうなために認めるのではないというのでありまして、そういう意味で、家を繼がすために今まで認められておつた遺言養子の制度は、家を廃止するのと同じ考で、これを止めにいたしたわけであります。〔委員長退席、理事松井道夫君著席〕從いまして例えば從來遣言でそういうことをいたしましても、經過法にも規定いたしておらないので、效力がないことになるわけであります。次の七百九十五條の場合でありまするが、夫婦の中の一方の子供を養子とする場合は、これは他の一方の同意を必要としないで、これは夫婦の間の子供にするのでありますから、他の一方の子供でありますから、その他の一方の方に異存のある筈はないのでありまして、そういう意味を以ちまして、夫婦の一方が他の一方の子供を養子とする場合には、これは夫婦ともやらなくてもいい。而も他の一方の同意も必要じやない。從つて他の一方の實子を養子といたした場合においては、一方だけで養子となり、一方との關係においては依然として養子の關係が續くということになり、それでいいのではないかということにいたしまして、從來の八百四十一條をそういうふうに改めたわけであります。
 次の八百四十二條でありまするが、これはやはり後見人がなくなつた場合は、遲滯なくあとの後見人を選任いたしたいという考から、最もこの關係をはつきり分つておる者から選任の請求をいたすことにいたしたのでありまして、難きを強いるものではないかという懸念もさることながら、この場合は別に請求しないからといつて、實は罰則もなにも附けてないわけでありまして、そういう意味で一日も早く後見人の選任を得たいという意味で、一應の選任を請求する義務を課しておりますが、これは別に罰則等でその義務を制裁づけるという程の強い趣旨にできておるものではないと御承知を願いたいと思います。
#40
○小川友三君 時間もありませんから、簡單に申します。第九百條でありまするが、九百條の第四號に嫡出でない直系卑属の相續分は嫡出である直系卑属の相續分の二分一とするという條項であります。それから父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相續分は、父母兩方ある分の二分の一である。これは憲法第十四條の違反であると信じます。〔理事松井道夫君退席、委員長著席〕「すべての國民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社會的身分」云々このところに、これは無理に外したものと思いますが、二號の子供でも三號の子供でも、社會的身分においては同等であると憲法で認めておるに拘わらず、ここに差別待遇としまして、半分やろうという條項でありますが、これは本委員の斷乎といて認め難いところでありまして、これは平等に嫡出でない子も直系と同じく資産を分けてやる。双親揃つていなくても、又平等に分けてやるということが、これは正して法律でありまして、憲法の十一條と十四條を無視しまして、この九百條の第四號の項目に對しまして承認をするということは、斷じてできないのであります。この九百條の四號の改正すべき要點は、この原案で行きますると憲法違反であり、又二號、三號を奬勵することにもなるのであります。二號や三號の子は二分の一で済むのだから、精々拵えて置こうというような奬勵にもなりますので、これを本員の主張する同額の支給を、憲法第十四條によつてやるということになりますると、無論平等を認める憲法を承認するのであり、又二號、三號の子も同じ身上を受けるのだから、これは生まないようにしよう。生むのでも一ダースのところを一人か二人にしようというので、制限ができますので、これの修正を主張いたします。政府の御答辯が若しありましたらお伺い申し上げます。
#41
○政府委員(奧野健一君) これは九百條の四號の前段の方は現行通りでありまして、要するに憲法が婚姻を非常に尊重しておるのは、これは正當な婚姻の尊重であつて、いわゆる妾腹等からできた子に對して差別待遇をすることになりますが、これはやはり正當な婚姻を尊重する意味から言つて止むを得ないのじやないか。この點憲法違反ではないのかという御議論もありますが、一體こういうものを相續人の中に入れるかどうかということ自體は、法律でやはり書けるわけで、妻を相續の中に入れるか或いはどうかといつたような事柄。兄弟姉妹を相續人に入れるかどうかというような事柄。或いは嫡出の子でない者は相續人から排除するということは、やはり法律で以て決め得る事柄で、そういう意味で憲法違反ではなく、全然入れないということもできないし、入れるが半分ということもできるのではないか。現行法にもありますし、外國の立法例等においてもあります。
 又後段の方は、やはり自分に子供も何もない。結局自分の兄弟が自分の相續人になるという場合に、兄弟の中で自分と父母共に同じくする兄弟と父母の中一方しか同じくしない兄弟であつた場合に、やはり肉身の愛情として、父母の双方を同じくする兄弟の方へ餘計相續して貰いたいという氣持がある。こういう人間の感情は各國共認めておつて、異母の兄弟、いわゆる全血の兄弟と半血の兄弟によつて、相續分を異にしておるのでありまして、この點もやはり憲法に違反するものではないという考の下に四號ができておりますから、或いはその點多少見解の相違ということになるかも知れません。
#42
○松村眞一郎君 私は遺留分について伺いたいと思います。今度個人を尊重するということに憲法がなつておりますから、遺留分の規定を存置する理由の方から考えなければなりませんが、どういう理由で遺留分を存置しなければならんか、それを伺いたいのであります。
#43
○政府委員(奧野健一君) 自分の財産であるから、死後の處分を自由にしろという考も一方に確かに理由のあることでありまして、米國等はそういうふうになつておるようであります。併しながら一方法定相續の制度を認めておる。直系卑屬等が法律上當然に相續人になるという法定相續を認めます以上は、その者に全然財産が行かないで、外の者に全部くれてやつて、遺族に全然經濟的な保障を與えないということは適當ではない。そこで自由遺贈の主義とそれから法定相續をする以上、その遺族に對する經濟上の保障という要求との調和をどの點で圖るかという問題になりまして、結局或程度は自由遺贈主義に對しての制限を置いて、遺族のために或程度の生活上の保障をしてやるということが適當であろうというので、遺留分の制度ができておるものと考えるのでありまして、この點は從來通り踏襲して行つてもいいのではないかという意味で、英米のように全然、相續人を誰にするか、或いは誰に全部、どういうふうに處分しようとも自由であるという、そういう主義をとらなかつた關係上、遺留分というものを從來通り認めるのが適當ではないかということに落着いたわけであります。
#44
○松村眞一郎君 法定相續という意味が、私の意味とあなたのお考とは、一致しないと思います。從來のは家督相續でありますから、或意味においては義務的の相續であります。ところが今度は遺産相續で、利益のみを相續するのであつて、何らそこに負擔がないのであります。負擔のない利益の享受を相續人に強制しなければならん根據はどこにあるのか。決して法定ではないと私は思います。利益の分配のことを定めておるのであつて、尚根本に遡つて申しますと、遺留分という制度は、一年前に全財産を處分してしまえばそれきりです。それはお認めになるでしよう。一年前に全財産を贈與した場合に、あなたのいわゆる法定相續人が何の利益を得ますか。その點御答辯をお願いいたします。
#45
○政府委員(奧野健一君) 一年前と雖も、いわゆる惡意で以てやつた場合は、やはり減殺請求權があるわけでありまして、結局これを全部やつて、相續人に全然行かないということを知りながら敢てやつた場合も、同樣に減殺請求ができることになつております。
#46
○松村眞一郎君 惡意ということは、そういうふうな意味にお考になることが、私は非常に間違つておると思います。全財産を擧げて公益法人を作るということは、アメリカなどにある。自分の相續人に、例えばここに數千萬圓の財産を持つておる者があります。子供の生活をするためには十萬圓ずつあればいいということになれば、子供に十萬圓ずつ、長子に對して例えば十萬圓遺しておくということになれば、數千萬圓の財産の半分を必ず相續させなければならんという義務は、私はないと思う。生きるようにしてやればいいのですから、子供が生存するだけの財産を遺してやつて、殆ど九割を公益法人に提供して、それがどこが惡意でありますか。それを惡意と御覧になりますか。數千萬圓の財産を持つておる者が、その中の半分を遺さなければならんというのは遺留分の制度ですが、そういう必要がどこにありますか。これは惡意でありますか。どういうふうにお考えでありますか。
#47
○政府委員(奧野健一君) これは民法の建前におきましては、そういう遺留分が半分といたしております關係上、それを侵すということを知りながらやつた場合については、やはりこの民法の上から惡意ということになるのでありますが、御設例の場合におきましては、そんなに遺してやらなくても生活が十分できる程度に遺してあればいいのじやないかということは、御尤もと思うのであります、でありますから、遺留分の制度をどういうふうに規定いたされるかということは、ここで十分御審議をお願いするわけでありますが、一應政府といたしましては、まあ二分の一程度の遺留分を確保しておけば、それが大體妥當ではないか。やはり大きな財産を持つておる場合に、それに應じてやはり遺留分、その割合で決めるのがいいのか、或いは遺族の生活ということだけで遺留分の額を決定していいか。それは餘程問題であろうと思いますが、現行法の建前が大體割合で決めておりますから、財産が多ければ、從つて遺留分の額も割合でありますから、多くなる道理で、本改正案では、從來通りのいわゆる割合主義によつて遺留分の制度をとつたわけであります。
#48
○松村眞一郎君 あなたのようなお考をなされますと、惡意ということは、或財産を持つたときには、必ず半分は殘さなければならんということになります。そういうお考えを持つておられるのですか。自分の死ぬのは何年先か分らない。今數千萬圓の財産を持つておる。そのうち子供のために百萬圓だけ殘しておいて、あとのものを公益法人にやる。それは惡意でありますか。何年先に死ぬか分らない場合にですよ。私はそういうものは惡意とは思いません。惡意というのは、自分が殊更に子供に對して生活を困らせる。遺産相續をしなければ困るという場合は惡意でありましようが、あなたのように仰しやると、大きな財産を持つておる者は、いつも半分だけ處分ができない。借金もできないということになる。借金はあとに金が入りますから別でありますが、そういう考で惡意ということを御解釋になるならば、それは私は間違つておると思います。そこまでは觸れませんが、元來遺留分は一年だけしか效力がないのでありますから、今申しましたように、一年前に公益上の寄附をするということは、一向私は差支ないと思いますが、これは議論になりますから申しません。個人を尊重するという憲法の精神から考えるならば、遺留分の本體をもう少し眞劍に考えなければならんと私は思います。從來の家督相續の場合の遺留分と全然性質を異にしておるのであります。今度の改正は一應の改正であるということを、前に政府委員も説明しておられるし、司法省はそういう説明でありますから、一應の改正であるから、そのままにしておいたというならば、私は承認いたしますけれども、個人の遺留分は存置しなければならないという信念から出ておるというのであれば、只今のような薄弱な根據では、遺留分を規定するという意味がないと思います。遺留分を廢止するという理由じやない。存置する理由がなければ、個人尊嚴の意味が徹底しないと思います。今度あなたの方で原案として、私は不必要な條文なりと稱しておりますが、一條の二のところに、本法は個人の尊嚴を旨として解釋すべしとあります。個人の尊嚴というのは、そういう場合にどういうふうにお考になりますか。自分の財産を或程度において處分するということは、個人の尊嚴を維持する所以であろうと私は思うのであつて、遺留分、制度は、民主主義の制度の國においては考えなければならん根本的な問題であると私は思います。尚これは將來において考究すべしというような意味を包含されておるならば、私は默つて承認いたしますけれども、これは非常に理由があつて、いろいろ檢討した結果、こういう強硬な理由の下に維持するというのであるならば、私は修正案を出さなければならんと思います。その點を一つ確めておきたいと思います。
#49
○政府委員(奧野健一君) 遺留分の制度は、御説のように、家督相續の場合は、勿論推定家督相續人は相續の放棄ができないということと關係もあろうと思いますが、現行法のおきましても、遺産相續につきましても、遺留分の制度があつて、遺産相續の場合は放棄が自由にできるにも拘わらず、遺留分の制度は現在まであつたのでありまして、その制度を踏襲したわけであります。そこで大體において一ケ年内のものに限つて贈與はこれを減殺することができますが、一年前のものでも、當事者双方が遺留分權利者に損害を加えることを知つてこれをなしたときは、一年前のものであつても同様であるという千三十條の規定を先程申上げたわけでありまして、當事者双方が遺留分權利者に損害を加えることを知つて贈與をした。そういうものを惡意と言つたわけでありますが、この場合に、或年代にうんと金が、あつたという場合に、今これを呉れてやつても、將來又おのずから金もできるだろうしということを考えてやつたような場合には、ここに入らない。つまり惡意ではない。全然將來金が入るというようなことのないことが明かであり、そういう點を十分知りながらやつたという場合だけは惡意で、今金を寄附しても、將來自分が又金を得るかも知れないので、決して遺留分を害することにはならんだらうという考でやつた場合には、勿論その中に入らないわけで、一年前やつたものも減殺されないというわけであります。勿論この遺留分の制度につきましても、只今お話のように全部に亙つて兩檢討をする積りでありまして、その際には改めてこの制度のことについて十分檢討いたしたいと思います。
#50
○松村眞一郎君 今の惡意の規定が民法に存在することはよく知つております。その解繹はあなたといろいろ意見は違いますが、……要點は尚根本的に考えるということにお考になるのなら私はよろしい。この點の質問は終ります。その次に、前に松井さんから質問がありましたが、協議上の離婚の場合は、婚姻の成立の場合の手續と、成立したものを破壞する場合の手續と同じように見るということは、私は考えなければならんと思う。そうでありますから假に家事審判所に出さないにしても、何らか手續の上において戸籍吏に屆出の場合には、現行法は離婚の場合の屆出の場合も成立の場合と同じです。それは何か證人なりの記載があつて、それがなくても受理すればよろしいという規定について、何らかの考慮の餘地があるのではないかと私は考えるのであります。それは尚この次の問題としてもよろしい。將來の立法の問題として、その點御考慮願いたいと思います。
 その次は均分相續ということについて、どのくらい憲法の精神に適うものをお考えになつておるかどうか。均分の相續ということは、これは餘程個人の尊重という意味、法の下において平等という思想からいたしまして、相當に重點を置かなければならんと思います。そういうことについてどのくらい重點を置いておるか。その點をお尋ねします。
#51
○政府委員(奧野健一君) 離婚の場合につきまして、從來はやはり離婚の屆は成年の證人二人の署名がなければならないことになつております。その程度ではまだ不十分で、もう少し何らかのこれを出すものの本心を確かめる方法が考えらるべきだという點は非常に重大な理由のあることでありまして、或いはそれを家事審判所の確認にいたしますか。或いは戸籍吏の屆の場合に、双方二人は必ず出頭しなければならんというようなことにいたしますか。いろいろその點は研究すべき餘地があろうと思いますが、取敢ず從來通りの制度を踏袈したのでありまして、この點從來は非常に弊害があるから、もう少し愼重に手續をいたさなければならないという議論は、提案理由の説明の際にも司法大臣から申上げましたように、この點特にこの國會において御審議願いたい點であります。又同時に今後と雖もこの點について更に研究してやつて行きたいと考えております。
 それから均分相續の點でありますが、從來のように家督相續でありますと、戸主權の相續竝びに前戸主の全財産を戸主權を相續するものに歸屬せしめて、一方それが家族を扶養する義務もあるというようないろいろな意味からそういうことが行われておつたのでありますが、戸主權というもの、即ち家というものがなくなり、戸主權の相續というものがなくなりますと、ただ殘るのは財産の相續ということだけになります。そうなると、ここに財産を持つておつた者が死亡した場合に、これを相續せしむるという場合に、財産の相續だけというふうに考えて見ると、子供が數人ある間で年長であるか、幼少であるか、男であるか、女であるかということによつて、その間に不平等な取扱をするということはやはり憲法の趣旨から行きまして適當ではないというふうに考えまして、均分相續といたしたのでありまして、直接に憲法の正面の解繹からそうなくてはならんという程強いものであるかどうか、多少の疑いを持つておりますが、いやしくも今度は戸主權の相續ではなくして、財産の相續だけだということになると、その子供の間において差等を付けるということはやはり憲法の精神に適合しないというふうに考えられるので、均分相續制度をとつたというわけであります。
#52
○委員長(伊藤修君) 政府委員に一言お尋ねして置きますが、衆議院におけるところの第一條の修正の理由とその解繹を御説明願いたいと思います。
#53
○政府委員(奧野健一君) 衆議院におきましては、やはりここでいろいろ御質疑があつたと同じように私權はすべて公共の福祉のために存するということは公益優先のような感じがある。しかし大體趣旨においてはそれ程そう強い意味ではないということは、政府委員等の説明によつて分るが、これの誤解を避けるためにむしろ私權は公共の福祉に遵うということにしてはどうかというので、そのしたがうという字も遵法精神の遵という字にいたしまして、服從の從という字ではない。服從の從であると、私權は公共の福祉に從属することになつて、やはりこれでは面白くない。したがうということはやはり調和して併存一致して行くという意味で公共の福祉に適合しなければならんものであるという意味を現わす意味でこの遵法の遵、これによつて一致調和して行くという趣旨を現わすということで、第一條の一項を、私權は公共の福祉に遵うというふうに改めまして、第三項に權利の濫用はこれを許さずということを附加えまして、憲法の十二條でありますかの權利の濫用の禁止の趣旨をここに明らかにした方がよかろうというので、第一條に一項て三項を附加するという修正をいたしたのでありまして、政府といたしましても適當であらうと考えておるわけであります。
#54
○委員長(伊藤修君) 本法施行に要する費用はどれくらいですか。
#55
○政府委員(奧野健一君) この費用としてはただ若干この改正法律案の普及徹底に要する費用を要求しておりますことと、むしろ家事審判法の施行によつて、この民法の裏付として、民法を完全に運用して行くために家事審判研を新たに設けることについての費用を要求しております。その外にこれに伴いまして戸籍法の改正をいたすということになれば、その點についても或程度費用の豫算の請求をいたさなければならないかと考えておる次第であります。
#56
○委員長(伊藤修君) 別に他に御質疑はございませんか。質疑を打切りまして御異議ありませんか。
#57
○山下義信君 誠に恐縮なんてございますが、この機會に家事審判所の法案につきまして一箇所だけ簡單にお尋ねしたい點がございますが、お許し願われますか。
#58
○委員長(伊藤修君) よろしゆうございます。今この法案は質疑だけを終つておきたいと思うのであります。それでは質疑はこれを以て終局することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#59
○委員長(伊藤修君) 質疑はこれを以て終局いたします。便宜家事審判所法を挾みまして、家事審判の質疑を一點許したいと思います。
#60
○山下義信君 私はこの家事審判法案の審議に出席が十分できませんで、甚だ遺憾に考えているのでございますが、すでに同僚諸君で十分御審議をお盡し下さつたことと思うのでございます。或は私の伺いたいと思います點が重複いたしておりましたらば、どうかお許しを願いたいと存じます。大體におきまして、私はこの法案につきましては、非常に結構に考えているのでございますが、ただ一點この法案の運用の上におきまして、どういうふうにお考に相成るでありましようかと思います點を政府に伺つておきたいと思います。
 それはこの参與員のことでございますが、審判に参與員が立會いまして、その意見が審判官に聽かれて審判を行うということでございますが、この参與員の審判にあずかりまする、即ち審判官が參與員の意見を聽きまするという點でございますが、どの程度まで參與員の意見というものを聽きますものでございましようか。どういうふうになりまするのか、この第三條の上ではその邊が明瞭でございませんので、參與員の意見は相當重くお用いになりまするか。いわばどう申してよろしいのでございますか、殆ど參與員の意見を審判官はお用いになるというように、これが運用されて行くのでございましようか。その點を伺いたいと思うのでございます。言うまでもなくこれは普通の裁判とはすつかり性格を異にいたしまして、いわゆる家族生活の家庭の問題、その紛議、俗に申します仲裁は時にとつての氏神というようなことで、これを運んで行こう。こういう主眼でありますると承知いたしております。そこでこういう制度が實にこれは結構でありますると同時に、その審判のいたし方というものは微妙な點がございまして、いわゆるその土地の人情、風俗、或いはこの審判を依頼いたしまする關係者の、いろいろ關係と言いまするか、その點の事情に相當通じまして公平な立場で、然も圓滿なる審判が、乃至調停が行われて行かなければなりませんので、これはいわゆる審判官は裁判官、つまり常に仰せられてあります玄人の司法官が、審判官がお當りになる。私はこの説明を遂に拜聽する機會を逸しましたので、速記録で政府の御當局の御提案の説明を拜聽いたしますと、審判官は玄人で、この參與員或いは調停委員というものは、いわゆる素人を立會わせるのであつて、素人素人というお言葉が用いられてある。成る程この事件にはこの條文が當てはまる、この問題の判決には、この條文を當てがうという法律の適用には玄人がよろしゆうございましようが、人情の機微、家庭の問題のいろいろなことを聽いて、そこに圓滿な解決を與えて行くということに關しまするというと、或いは存外素人の方が非常にいい場合がある。つまりそこを見込んで、參與員調停委員という家事審判法のお用い方、この制度のお立て方があると思います。そうするとこれがぐじやぐじやの寄り集つての相談では果てがない。そこで裁判所という形で家事審判所、審判官、裁判官のような、この嚴格な場所で、そうして一つ聽いて頂いて、ちよつとお裁きを調停をして貰う。よう聽いて貰う。分別して貰うということで、大變それが結構でございますけれども、併し本當にそんな調停ができるのは、この參與員とか調停委員というものの意見が非常に肯綮に當る場合が多く、又多くなくてはならん。こう考えるのでございます。そこでこの參與員というものの審判に關係いたしまするのは、どの程度までそれが重くお用いになりますように運營されて行きますか。どうなるのでございましようか。この邊をこの條文の上でははつきりと伺い兼ねますのでお示しを願いたいと思うのでございます。
 今一つは最後の罰則のところでございますが、第二十八條に參りまするというと、調停委員或いは參與員が、職務上いろいろと經過を漏らしました場合には罰金が科せられることになつております。千圓でございます。これは非常に過少ではないかと考えるのでございます。最近出て參ります總ての法案の罰金の料金というものと比較いたしまして考えますのに、簡單なる經濟事犯でも五百圓以下の罰金、或いは一萬圓以下の罰金と相當金高というものが、最近はそういつたのが多いようでございますが、千圓……第二十七條はよろしうございます。これは出て來なかつた時に五百圓、これは普通は罰も要らんくらいでござしましようけれども、二十八條の千圓ということは、重大なる審判内容或いは調停内容を漏らしました時の罰金というものとしては過少ではないか。これは參與員や調停委員が内容を漏らすというようなことをしましたらば、家事審判というものは全然實は、どう申してよろしうございますか、殆どこれはゼロになつて參りますので、これは絶對にそれが漏らしてならんというところまで、相當嚴しく戒めておかなければならんのじやないかと考えますのでございます。この二點を一つ御説明にあずかりたいと存じます。
#61
○政府委員(奧野健一君) 先ず第一點の參與員でありますが、これは我々といたしましては世故人情に通じた非常に酸いも甘いも噛み分けたそういう人々を得たいと考えておるのであります。而してそういう意味で素人とは申しますが、却てそういつたような家庭事件に對しては裁判官等の方がむしろ法律の方から主に見て參りますので、そういつたような點から申上げますと、參與員の方がそういう意味における玄人であろうかと思います。即ち知識經驗、世故人情に通じた人を選びたいというふうに考えております。而してこれはやはり意見として聽きますけれども、一種の諮問機關でありまして、審判官はこれに拘束されるものではない建前であります。而してどの程度に參與員に意向を聽くかというお尋ねでありますが、これが一概には申上げられないと考えます。この第九條に審判事項に申類、乙類というふうに分けておりますが、甲類は本當に技術的な事柄でありまして、これは大して深く參與員の意向等を聽く必要のないようなものが多く機械的なものになつております。然るに乙類になりましては、遺産の分割でありますとか、或いは扶養の義務の關係でありますとか、そういつたような更に財産分與の關係でありますとか、相當複雜な内容になつて參りますので、その點については甲類の場合と餘程事柄が違つて參りますために、從つて參與員の意見を聽く程度もおのずから違つて來るのじやないかと考えております。ただ乙類の事項は、大體におきまして先ず調停に一應かけることになつております。そこで調停になりますと、大體におきまして調停委員會を作りまして、家事審判官と調停委員大體二人以上で以で組織する調停委員會が先ず調停に當つて、財産分與であるとか、或いは遺産の分割その他ここに乙類に掲げておる重要な事項を調停いたしますので、この場合は世故人情に通じた調停委員が單に諮問機關ではなく、調停委員として實質的に調停を試みることになつて參りますので、そういう意味から參りますと、參與員というよりもむしろ複雜な事件については大體調停が先ず行われますので、その點において調停委員が非常な活躍をいたすことになろうと考えております。勿論調停ができない場合には、審判ということになりますが、この場合に審判官が參與員に意見を聽いてやることになりまして、參與員の意見を聽く度合はむしろ乙類に厚く甲類に薄いようなことになるのではなかろうかと思つておりますが、結局はこの參與員に人を得るということは重要な問題でありまして、世故人情に通じた適當な人を得たいというふうに考えておる次第であります。最後の罰則の關係でありますが、大體只今お話のあつたものがむしろ二十九條に該當することが實質上多かろうと思うのでありまして、二十九條におきましては、やはり懲役或いは三千圓以下の罰金になつておりまして、割合に重くなつております。この點は秘密漏泄罪に合せた筈であるのでありますが、これは刑事局の關係ともいろいろ相談の上、こういうことになつたのであります。大體只今のお話の場合は、職務上取扱つた人の秘密を洩らすという法の二十九條に當る場合が多かろうと思いまして、この點については、相當刑罰は重いのでありますから、御心配の點は先ずなかろうかと考えております。
#62
○山下義信君 大體了承いたしましたが、調停委員と參與員とを兼ねる場合がございますか。
 それから第三條でもう一度お尋ねいたして置きますが、意見を聽かれないでも、審判官に意見を聽かれないでも、又意見を用いられないでも、ただ立會つておるという場合もあるのでございますか、若し立會つておるだけという場合があるといたしますれば、なんのために立會つておるのでございますか。それも序に承つて置きたいと思います。
#63
○政府委員(奧野健一君) 調停委員と參與員は、場合によつては、同じ人が參與員の候補者でもあり、或いは調停委員の資格の候補者である場合もあろうかと思います。
 それから立會わせた場合は、恐らく實際問題としてはその意見を聽くことになろうかと思いますが、法文の上からは、立會わせにも意見を聽かないことも必ずしもないではない。又立會わさないでも、意見だけ聽く場合も必ずしもないわけではない。要するに大體におきましては、立會わせてその意見を聽いてやるということになろうと思うのでありますが、これは先程來申しましたように、世故人情に通じた本當の、そういう道によく通じた人に立曾つて貰つて、一種の裁判の民主化と言いますか。そういう民意の反映というようなことに考えておるわけでありまして、苟くも參與員に立合わせて置いて、全然意見を聽かないのでは、なんのために立合わしておるのか意味がないわけでありますから、これは多く立合わせた以上は、その意見を聽くことに實際なろうというふうに考えております。
#64
○山下義信君 なんのために立合わせるのかということを伺つておるのでございます。民意を反映するということはよく分つたのでありますが、こういう場合はどう思います。一つの審判につきまして、參與員の意見と、審判官の意見と相反するというような事態が起きます。つまりその參與員の意見を用いても、用いなくてもいいのですから、大體ここで言えば、輕く扱つて諮問機關として扱う。提案趣旨の説明にも、そう言われた。意見が相違しますと、審判官が用いないでしよう。その場合相違する參與員は立合うのですか、立合わないのですか、意見の違う審判を下す場合、なんのためにその參與員は立合うのかと申すのです。世間の人は、ああ、あの人はあの審判に立合うたというので、その責任を負わなければならない。そこに立合うと、その事件に對して、社會に對して責任を負わなければならんような立場に置かれますので、なんのために立合うのかということを申上げるのでございます。これが檢事のような立場でありますと、非常に關係も深うございまして權限も違うのてございますが、こういう權限のないようなものが、審判のときに立合いまする趣旨でございます。意見の反しましたようなときには、その審判に立會わなくてもいいのでございましようか。それを一つお示しを願いたいと思ひます。
#65
○政府委員(奧野健一君) これは飽くまで裁判の一種である關係上、裁判官が結局審判という裁判をやらなければならないので、參與員がその裁判それ自體に關與するということは適當ではない。併しながら參與員が裁判に立會つて、いろいろ參與員の意見を聽くことは、法得一點張りの審判官の審判をする上について、非常ないろいろな助けになることが多かろうというふうに考えるので、いわゆる法律家の足らざる所を補う非常な重要な役割をいたす。尤もそれは必ずしも審判官を抱束しない。場合によつてはその意見を聽いても、それを用いないことがあろうと思うのであります。而してこの意見を聽くのは結局大體において最後の段階において意見を聽くことになるので初めから意見の違う者を立合わすということはあり得ない。立曾つて貰つて、そうして又最後に斷を下す際に、いろいろ意見を聽いてそれを參的しながら、それに拘束されないて、審判官獨自の責任において審判という裁判をやるということになるつもりであります。
#66
○山下義信君 私はこれで質疑を終了いたしますが、參與員と調停員のことは、非常に家事審判の上で重大なものであると存じますので、只今の御答辯でややまあ了承いたしますが、尚この參與員の扱い方というものにつきまして、調停員の方は委員會というものでやられますから、相當調停員の權限がございますが、參與員というものを折角お用いになりまして、それを相當重用なさるというような點が、この法案の上では明かではございませんので、運用の上におきまして訓令などをお出しになりますときには、十分その邊を御留意を願いたい。こういう御希望を申し上げて置きまして、質疑を打切ることにいたします。
#67
○委員長(伊藤修君) 他に御質疑がないようでありますから、家事審判所法に對する審議はこれを以て終局することに御異議ございませんか。
   〔「異認なし」と呼ぶ者あり〕
#68
○委員長(伊藤修君) それでは審議はこれで終局いたします。
 就きましてはお諮りいたしたいと思いますが、御承知の通り家事審判法は衆議院が、實體法を後に廻して手續法を先に送つて、本院には八月二十八日に付託されましたのですが、二十八日から慣例に從いますると民事訴訟法の計算とは違つて、當日から計算されるらしいのでありますから、休會を除きまして九日までが憲法のいう六十日に相當するわけでありまして、九日は御承知の通り日曜でありますから、八日の本會議に上程しなければならん。こういうような状態に立至つておるのでありますが、但し、衆議院におきましては、否決したものとみなすことを得というわけでありますから、みなさなければよいのでありますが一應はみなされる危險性に立至る、こういう状態にあるのであります。でありますから、家事審判法は御承知のように民法の大部分が援用されておりますから、先ず當院としては、民法を決定し、そうして家事審判法を決定するということが、法律を立法する建前としては正しいと考えて、これと併行して今進めた次第でありますが、本日兩案共採決に入つて行きたいと存じますが、御意見如何ですか。
   〔「異議なし」、「採決願います」と呼ぶ者あり〕
#69
○松井道夫君 私はこの程度で民法の法はこれは延べて頂くし、或いは家事審判法の方もできるならば延べて頂きたいと思うのであります。と申しますのは、今松村委員を小委員長としてやつております農業資産の相續特例、これをこの間同じく委員の北村さんから、今の家事審判法、それから民法を同時に施行するようにして、そうして條文なども整理して貰いたいということが希望に出ておるのであります。それでそういうことになりますと、今の家事審判法の甲類、乙類というものの中に今の相續財産の特例關係のいろいろの規定を入れまして、そうして整理しなければならんということに相成る。それで私も今の北村さんの御意見に實は賛成なんでありますが、そういう工合にいたしたいと考えておるのであります。それで衆議院が、否決したものとみなすということは、これは參議院で握り潰すといつたような場合に、それを否決したものと見て再可決することができるということでありまして、こういつた立派な理由がありまして延びます場合に、こちらの委員長から衆議院の方にその理由を述べて頂きまするならば、當然これが否決したものとみなすというような事態が起る筈もないのでありますから、できるならばそういう工合にいたしまして、民法、農業資産相續の特例と家事審判法と、一緒に一つ上げて頂きたい。かよう考えるのであります。民法につきましても、實は修正意見についてまだ皆樣と御相談しておりませんので、又今の家事審判法に關係のある甲類乙類を一つ加えるというような事態にならんとも限りません。そういうことがありますから、この際この程度で今日は延べて頂くということを希望いたします。
#70
○委員長(伊藤修君) ちよつと御注意申し上げて置きますが、私もまだ存じなかつたのですけれども、直接聽いたわけではありませんが、委員部の方へ農業資産相續特別法案に關しましては……速記を止めて…。
   〔速記中止〕
#71
○委員長(伊藤修君) 速記始めて……それでは進行することに御異議はありませんですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#72
○委員長(伊藤修君) それでは進行いたします。
#73
○政府委員(奧野健一君) 家事審判法施行の費用といたしましては、大體家事審判所は、舊來の區裁判所と地方裁判所の所在地に置くことになつておりまして、即ち結局二百七十八箇所に設ける豫定でありまして、このために專任の審判官といたしまして四十九名、その外、他の裁判もやる兼任の意味で相當多數の判事の増員が認められておるわけであります。廳舍等についてはまだ豫算に載つておりませんが、そういう意味で人員の相當數の増加を豫算で認められておるわけであります。
   〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕
#74
○委員長(伊藤修君) それでは先ず民法の一部を改正する法律案の討議に入りたいと存じます。
#75
○松村眞一郎君 私は民法の一部を改正する法律案の成立に贊成する者であります。但し、政府委員及び司法大臣總理大臣もこの委員會に出席され、いろいろ意見を鬪わせたのでありますが、私はただ、まだこの度の改正の中にも檢討を加えるべきものがあると考えます。殊に民法の第一繩、第二繩に至りましては、明治二十九年のこれは制定でありまして、根本的に全部檢討を加えなければならんと思います。そういう次第でありますから、この度の改正案が成立いたしましても、この改正案を含めて、民法全體に對しまして速かに我々は全面的の改正を加えるということをここに言明をいたしまして、取敢えず憲法の規定に副わないような箇條を除くということが本體になつて、この度の改正があるものと考えまして、私は只今申しました如く、速かに全面的の改正を我々はすることの必要あることを認めまして、そして本案の成立に贊成したいと思います。
#76
○小川友三君 原案の第七百九十二條養子の欄でありますが、これに第二項として左の一項を加える。「養子は離縁しないて、更に他の養子となることはできない。」もう一遍申上げます。第七百九十二條の第二項に、「養子は離縁しないで、更に他の養子となることはできない。」原案によると、養子が離縁しないで養家から更に他の家に養子となり、二重に遺産の相續をなし得ることを認めることになつておりますので、從つて財産を目的とする養子が行われる弊害を生ずる虞れがあるからであります。現にそうした例を知つております。二軒の家に養子に行つておる例があるのであります。全國には七千數百萬の同胞がおりますので、幾多の惡例があると思いまするので、これを原案の修正を主張するものであります。
 第九百條の修正であります。第九百條の第四項但書を削除する。修正理由、第九百條第四項の但書は憲法第十四條の國民が法の下に平等であるという大原則に違反するということになるからであります。その理由はこの第四項の但書に出ております通り、嫡出でない直系卑屬の相續分は、差別待遇を明確に原案として書いてあります。これは明らかに憲法第十四條に抵解するものでありまして、これぐらい差別待遇をした法律を私は斷じて承認することができませんので、修正案として提出をいたしました。
#77
○齋武雄君 私はこの原案に贊成する者であります。そうして松村委員のお話にあつた通り、速かに根本的に更に改正する準備を政府當局にお願いしたいのであります。それから只今の小川さんの修正意見でありますが、若し修正される場合があつた場合においては、この次に根本的に檢討した方がよいぢやないか。こういう考の下に反對いたします。
#78
○委員長(伊藤修君) 他に御意見はありませんですか。
   〔「討論打切り」と呼ぶ者あり〕
#79
○委員長(伊藤修君) 他に御意見がないようでありますから……。
#80
○鬼丸義齊君 私は衆議院の民法の修正に對しまする意見について贊成する者であります。政府の原案では、第一條の第一項として、「私權ハ總て公共ノ福祉ノ爲メニ存ス」いう規定を新設いたしましたが、衆議院におきまして、右の規定を「私權ハ總テ公共ノ福祉ニ遵フ」ということに修正いたしました。更に第一條の第三項として、「權利ノ濫用ハ之ヲ許サス」という規定を附加することに修正をいたしたのであります。政府の原案の第一條第一項はその表現が行過ぎておりまして、私權は公共の福祉に適應するように定められ、又公共の福祉に反しないようにこれを行使すべきであることは、憲法の趣旨精神から申しましても明瞭であります。政府原案の如くに、私權が總て公共の福祉のために存在するというのは、私權が專ら公共の福祉に隸從するものであるということになつて、公益優先という如き名目の下に、侵害を受ける虞れがあつて、行き過ぎたる觀念であると思います。この意味におきまして、私は衆議院の修正に贊同いたす者であります。又第一條第三項として、「權利ノ濫用ハ之ヲ許サス」という規出を附加いたしまする衆議院の修正につきましても、憲法第十二條の趣旨を民法の原則として明文化いたしたものでありまして、これも當然私は是認すべきものであると信ずるのであります。この意味におきまして衆議院の修正に對しまして贊成をいたる者であります。
#81
○委員長(伊藤修君) 他に御意見がないようでありますから、これを以て討論を終結することに……。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#82
○委員長(伊藤修君) 御異議がないようでありますから、討論を終結いたします。
 尚ここでちよつと御注意申上げでおきますが、從來委員會におきまして、修正意見の出た場合におきまして、贊成のあつた場合もない場合も、各委員會で取上げておりますが、本來は贊成がないというと、修正の動議としては成立しない次第でありまして、今小川議員の出された修正意見は參議院規則といたしましては動議は成立していないような形でありますから、從來まちまちの取扱いになつておりますから、一應當委員會におきましても、修正の御意見として取上げてこれを採決いたしたいと思います。では採決に入ります。小川議員提出にかかるところの修正御意見二案を問題に供します。この修正意見に贊成の方の御起立を願います。
   〔起立者少數〕
#83
○委員長(伊藤修君) 少數と認めます。否決いたします。
 次に民法の一部を改正する法律案、全部を問題に供します。本案に對して御贊成の方の御起立を願います。
   〔起立者多數〕
#84
○委員長(伊藤修君) 大多數を以て、原案通り可決すべきものと決定いたします。尚本會議におけるところの委員長の口数報告の内容につきましては、豫め御承認を得ることに御異議ありませんですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#85
○委員長(伊藤修君) 御異議ないと認めます。
 次に多數御意見者の御署名をお願いいたします。
   〔多數意見者署名〕
#86
○委員長(伊藤修君) 御署名終了と認めます。
 次に家事審判法の討論に入ることにいたします。
#87
○山下義信君 私は政府の原案に贊成する者であります。但し、この參與員竝に調停委員の入選、その運用につきましては、この法案が特に人情、風俗を重んじて、そういう性格に作られた性質上、萬全の注意をお拂い下さるように希望いたしまして原案に贊成する者であります。
#88
○委員長(伊藤修君) 他に御意見ありませんですか……御意見がないように存じますから討論はこれを以て終結することにいたします。
 次に採決に入ります。原案に對しまして全部を問題に供します。原案に對して御贊成の方の御起立を願います。
   〔全員起立〕
#89
○委員長(伊藤修君) 全會一致を以て原案通り可決いたします。尚本會議におけるところの委員長の口頭報告の内容につきましては、豫め御了承を得ることに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#90
○委員長(伊藤修君) さよう決定いたします。多數御意見者の御署名をお願いいたします。
   〔多數意見者署名〕
#91
○委員長(伊藤修君) 御署名終了と認めます。
 それではこれを以て散會いたします。
   午後五時五分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事      松井 道夫君
   委員      大野 幸一君
           齋  武雄君
           中村 正雄君
          大野木秀次郎君
           奧 主一郎君
          池田七郎兵衞君
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
  政府委員
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
   司法事務官
   (刑事局長)  國宗  榮君
ソース: 国立国会図書館
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