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1947/11/20 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第41号
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1947/11/20 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第41号

#1
第001回国会 司法委員会 第41号
  付託事件
○農業資産相續特例法案(内閣提出)
○經濟査察官の臨檢檢査等に關する法
 律案(内閣送付)
○昭和十九年法律第四號經濟關係罰則
 の整備に關する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○北海道上川郡美瑛町に旭川司法事務
 局美瑛出張所設置に關する請願(第
 三百六十五號)
○仙臺高等裁判所郡山支部設置に關す
 る請願(第四百十九號)
○國立療養所栗生樂泉園獄死事件に關
 する陳情(第四百八十四號)
○青少年保護事業團體救濟に關する陳
 情(第五百五號)
○罹災都市借地借家臨時處理法第二十
 五條の二の災害及び同條の規定を適
 用する地區を定める法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○岐阜縣關町に簡易裁判所竝びに區檢
 察廰設置に關する請願(第五百九
 號)
○戸籍法を改正する法律案(内閣送
 付)
○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正
 する法律案(内閣送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十一月二十日(金曜日)
   午後二時四十六分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○昭和十九年法律第四號經濟關係罰則
 の整備に關する一部を改正する法律
 案
○罹災都市借地借家臨時處理法第二十
 五條の二の災害及び同條の規定を適
 用する地區を定める法律案
○北海道上川郡美瑛町に旭川司法事務
 局美瑛出張所設置に關する請願(第
 三百六十五號)
○仙臺高等裁判所郡山支部設置に關す
 る請願(第四百十九號)
○岐阜縣關町に簡易裁判所竝びに區檢
 察廰設置に關する請願(第五百九
 號)
○戸籍法を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれより司法委員會を開會いたします。議事に入る前に發言の通告がありますからこれを許可いたします。松井委員。
#3
○松井道夫君 實は今日總理大臣にも御出席願いまして、憲法上の問題につき一、二司法大臣と兩大臣の御見解を拜聽いたす豫定にしておりましたのでありますが、總理大臣におかせられては御多忙のためお出で願えなかつたので、その點につきましては又後日にお揃いのときにお尋ねいたしまするとしまして、取敢えず司法大臣に三、四點お尋ねしたいと存じます。先ず第一に、先程刑法の一部改正の法律が成立いたしましたし、現在民法の一部改正の法律が本院において審議されておるのでございまするが、追つて根本的の改正をこれに加える、今度いたしました改正は、憲法の要請に從いまして、取敢ず改正する必要のある點を改正するという建前でごいましたので、その根本的の改正が、そう遠くない將來に實現いたす段取りになると存じまするが、その改正の立案をどこで擔當いたしますのが最も適當であろうかということが、一つの問題であると存じます。從來司法省のお世話によりまして、種々の審議會が作られまして、そこで一應立案せられたのでございまする、それと同じ方法で研究調査或いは立案せられるのも結構でございまするけれども、私が考えまするに、國會は國權の最高の機關であり、且唯一の立法機關でございまして、この民刑法というがごとき國民の根本的の日常生活に關係する法律、これは國會において立案いたしますることが最も適當でないかと存じておるのであります。これが例えば國管案でございまするとか、一つの政黨の表看板であるといつたような方律案でございますと、その政黨において立案いたし、或いはいろいろの行政的法規におきましては各省等において立案いたすということが適當でないかと存じておるのでありますけれども、民刑法のごときものは、先程申しましたように、國會において立案いたすことが最も適當ではないかと存ずるのであります。その點についての司法大臣の御見解を拜聽したいと存じます。
 第二點といたしましては、司法法規に對する審議の態度についての大臣の見解を拜聽いたしたいと存ずるのでありまするが、私、今の政策的の法規でございませんで、純然たる司法法規におきましては、その審議に當りましては、政黨その他の黨派的の考えを何らそこに交えませんで、よき法律を作る、國民のためよき法律を作るという建前で、是々非々主義で愼重審議いたすというのが、正しい行き方でないかと存ずるのであります。そこに何らかの政治的意圖を盛りますることは適當でないと存じておるのであります。それに關連いたしまして、參議院で衆議院から送付いたして來ました法案を審議する場合に、それに修正を加えます、そうしますると、衆議院に囘付しなければならんのでございまするが、衆議院におきましては、衆議院の體面ということを考えまして、先程申しました私の考えておりまする司法法規を審議いたしまする根本的態度にそれまして、そういつた體面的觀念、或いは政治的懸念からこれをなかなか通さないといつたような傾向があり、言説があるように聞いておるのであります。そういうことでは、二院制を認めました建前からいいましても、その目的を達せられないのみならず、よき司法法規を作るという意味におきまして遺憾の點があるのではないかと存ずるのであります。その點についての大臣の御見解を伺いたいと存じます。
 それからこれも只今の問題と關連いたすことでございまするが、政府提出の司法法規の審議に當りまして、これも修正點があるということで政府委員側にお話いたしますると、なかなか御同意が頂けないのであります。例えば先般の刑法の改正におきましても、三宅正太郎さんが、これは刑法改正案の中で唯一の改惡點であるということを新聞に發表されておるような點、その同じ點で、收野英一博士が、これは酷だというておられました例の罰金の刑を受けましたときに、懲役禁錮の執行猶豫をも取消すことができるという點でございまするが、そういつたような點は、これはどちらがいいのか分らない、罰金の刑を受けたときには、罰金の執行猶豫のみを取消すことができるというようにした方がいいという、今の兩先生の御意見でございますが、これはどつちがいいか分らないのでございまして、否、私の考えからいたしまして、新憲法に即應いたしまして改正するというときに、そういう酷な結果を生ずるような規定はよろしくない、やはり兩先生の御意見のように修正いたした方がいいと存じたのでございますが、そういつたような場合に、やはり立案者の建前に囚われまして、どうも御同意、御贊成が頂けないのであります
。これも司法法規を審議いたしまする態度という點からいいますと遺憾な點であると私存じておるのであります。少くとも強いて反對いたさないのである。兩先生の御意見も頻る尤もなんで、非常に有力なんで、そういう工合に修正されるならば、別に強いて異議を言うわけじやない、積極的に贊成いたしませんまでも、修正なさるならば、委員會乃至國會において修正なさるならば結構であるというような、裕りのある態度に立つて頂けませんと、審理上非常に困ることがあるのでございまして、その點についての司法大臣の御見解を煩したいと存ずるのであります。
 次に先般朝日新聞、その他の新聞に報道せられておりました東京の或る判事が、統制法規を嚴守せられまして、その結果、榮養が惡くなつて肺浸潤を患い、病氣になつても、その統制法規を嚴守するということを主張せられておりまして、結局亡くなられてしまつたという記事が出ておりました。私はこの記事を拜見いたしまして、或る感慨に捉われたのでございまするが、實に申上げて見ようのない事柄でございます。私考えまするのに、判檢事、判事は罪人を裁くものであり、檢事は、これを檢察いたすものでありまして、その人々がやはり闇をやつて食べておるのだ、俺たちが裁判されたり、起訴されたりするのは運が惡いのだというような考えで、その檢察、裁判を受けるということでは、裁判の目的、司法の目的を達成いたします上に、非常に惡い影響があるのじやないかと私思うのであります。否有能の判檢事を、そういうことで失う、非常に手不足の際にそういうことで失うということは殘念なことでございまするから、判檢事には特に主食の加配をいたすということが、これは適當なことではないのか、さように今考えておる次第であります。私の聞き違いかは存じませんが、一般官吏についてそういうことが主張されたことがあるように聞いておるのでありますが、判檢事につきましては、他に先立ちまして特例といたしましても、これを増加配する必要があるのぢやないかと存じております。この點について司法大臣に御見解を承りたい。實現に努力して頂けるかどうか、その點をお尋ねしたいと思います。
#4
○國務大臣(鈴木義男君) お答えをいたします。第一に民刑法のごとき重要な基本的な法律をどこで立案したならばよろしいかというお尋ねであります。これにつきましては實はこの司法省の制度の改正に絡みまして、裁判所とも協議いたし、關係方面とも協議をいたしましていろいろ研究をいたしたのであります。只今のところ新らしくできる法務廰の中に調査部というものと、民事局というものを設けられてありまして、調査部というのは世界中の法律制度、司法制度等について常に調査研究をする、そのための資料を整備することに努力する部局でありまして、それと法制局と相俟ちまして、民事局は今までこの民法の立案等に當つておつたのでありまするが、刑法の方は刑事局が當るというふうにやつておつたのでありますが、それを統一して調査局に廻して、調査局でやるのが適當ではないかというようなことに、只今までのところなつておるのであります。併し國會が唯一の立法部であり、法律を作ることはできるだけ國會に委ねることが望ましいことは申すまでもないのであります。ただ純然たるこの形式法律と違いまして、刑法でも民法でもその他いろいろの商工、農林に關する法律のごときは、それぞれの行政を實際にやつておる者が立案いたしませんと、宙に浮いた法律ができるという嫌いがあるように、民法刑法もやはり幾らかこの民事刑事の裁判をやる、檢察をやる、辯護士としてその任に當るというような經驗者がその任に當りませんと、餘り觀念的にだけ、學者が集つてやる、或いは學者でないまでも素人が集つて觀念的に考えてこれがいい法律である。こうであるべきであるというようなことだけで制定をいたしますると、でき上つてから餘りに理想法ができてしまつて、實際には迂遠である。又實際の便宜に合致しないとかいうような缺點も、從來そういう經驗をいたすことがよくあるのでありまするから、そこでやはり國會でおやりになるとしてもその立案に當る人はやはり判事、檢事、辯護士その他の實務家が參加いたしまして、そうして特別の委員會のようなものを、作つて、そうして議會内部における役員諸氏と協力してやるというようなことになるのでないかと存ずるのであります。それならば法務廰の調査部なり或いは民事局が要らなくなるかといえば、そういう意味において、又民法刑法についてだけならば、そういうことは言われまするが、その他凡百の法律政令を絶えず改廢しなければならないということになりますると、そういう部局はやはり必要である。そうすればこの國家全點から申しまするとやや重複した機構を國會も持ち、行政部も持つというようなことになる。行政經濟の面からどうかしらというようなことも考えられるのであります。それで私はまだ確たる結論を持つておるわけではありませんので、國會にはどういう法律を委ねる。國會で獨自にお作りになるということになりまして、その法律の種類を決めることもこれも可なりな問題であろうと思いまするが、若しそういうことができまするならば、國會が、それぞれの機關をお持ちになりまして、そうして委員會のようなものを組織しておやりになりますることに少しも異議がないばかりでなく、行政部の方面からも、憲法は行政部と立法が協力したり往來したりすることを一應阻止しておるわけでありますが、併しできる範圍において御協力申上げることには吝かではないのであります。十分御研究を願いたいと存ずるのであります。
 それから第二の司法法規の制定はできるだけ無黨無派でなければならん。これは仰せの通りでありまして、單に司法法規に限らんと思いますけれども、殊に司法法規のごときは黨派的という觀念で制定すべきものではないのでありまするから、常に國家全體の立場、國民全體の福祉ということを考慮の中に入れて立案もされ、修正もせられなければならんと考えるのでありまして、參議院において御修正になりまするものは、衆議院において適當な方法で熱心にそれを研究し、參議院の御意見も聞いて適當と信ずるものは喜んでその修正に應ずる、こういうことであつて頂きたいと思うのであります。實例としてはまだそう澤山ないように存じまするが、ただ體面に捉われて反對をするというようなことはなかろうと存じまするし、若しありまするならば、できるだけそういう弊は一掃いたしたいというように考えております。
 それから政府提出の司法法規についても、もつと恬淡と議員の修正を容れるようにありたいという御希望につきましては、御尤もでありまして、私といたしては、少しも囚われるつもりはないのでありまして、兩院の多數が政府の提出した原案を否なりとして修正するという御意見に相成りました場合には、喜んでそれに應ずるつもりでおるのであります。ただ行政部で以て長い間研究をいたし、調査をいたして立案をして提出するものでありますから、そこで國會において或いは反對の意見を出され、或いは修正の御意見を出されましても、立案に當つた者から言えば、俄かにすぐに贊成はでき兼ねる、そういうことも一應考えたのであるが、こういう缺點があるからその御意見には應じ兼ねるのだという場合が非常に多いのであります。御引例になりました罰金の言渡しを受けた場合にも體刑の取消をする。これは確かに見方によりましては、近時の罰金刑というものは可なり惡質の犯罪について、經濟違反等について常に科せられる刑罰でありまして、罰金だから輕いというふうには一概に見るわけにはいかんのでありまして、罰金刑に處せられるようなことをやるということは非常に國民道義の上から言えば、忌わしいことに屬する場合が多いと思うのであります。そういう場合にはやはり體刑が取消されるというようなことも一つの警戒の意味においてそういう制度は存置する理由は十分にあると言い得るものと思うのであります。併しこれは議論をすればきりがなく展開し得るものでありますから、多數がやはり罰金の言渡しに對しては罰金の前科だけを取消す、こういうことで行つた方がいいということであれば、別に反對するつもりはないのであります。まあ私どもは下僚に命じまして、決して立案者の體面とか、そういうものにこだわらずに、丁度一度起訴した檢事が、なんでもかんでも有罪にしなければ承知せんというようなことは、これは惡風だと思うのでありまして、檢事などにも訓示をいたしまして自分の起訴した事件が無罪になつても喜ぶべきであつて、決して悲しむべきことではなく、又それが成績に關するというような考え方は捨てなければならんということを申しておるようなわけでありまして、立案いたしました場合にも、自分の立案だけが唯一いいというのではないのでありますから、虚心坦懷國會の御意見を承るように、そうして多數が修正に同意せられます場合には、喜んでこれに應ずるようにありたいということを申しておるつもりであります。どうかさように御承知を願いたいと思います。それから山口判事の死に關連いたしまして、いわゆる判檢事の生活保障の問題、主食の加配等をやるつもりはないかというお言葉でありまして、實は私は主食の加配は勿論といたしまして、野菜や魚まで一つ配給をしたい、こう考えまして大方の判檢事が榮養失調を呈しておりますので、これは容易ならん問題でありますから、實は銀行から金を借りて、今度皆さんの御援助によりまして増額せられまする俸給を擔保にして、一大消費組合を作つて、そうしてこれらの生活必需物資を一つ大量に買込んで配給する組織を作ろう、こういうことに實は著手いたしたのであります。ところがやつて見ると、實際はどうも闇でないものを買うということは殆んど不可能でありまして、司法省が率先して闇の物を買つて配給したということになりましては、山口判事の死に對しても誠に恥かしい話でありますから、まあどうもこれは實行がむずかしい、暫く見合わすというようなことに相成つたのが實際でありまして、主食の加配だけは安定本部、農林省において御贊成下さればできるわけでありますが、これはなかなか容易ならん問題であります。現に東京、大阪等特別の都市の官公吏にだけは加配米を出して、そうして榮養失調を防ぐと共に、能率を擧げさせたいということで、勞働大臣から熱心な御主張があつたのでありますが、それは東京、大阪の役人だけが加配米を貰えるということで、それを許したならば、他の國民は法の前に平等なりという原則から、他の官公吏が黙つておるとは思えない。結局全國の官公吏が加配しなければならないということになり、全國の官公吏が加配を受けるということになれば、今まで加配を受けていない勞働者は又我々も平等の人間であるというようなことで、これはどうも非常にむずかしい問題になります。
 故に、特別の職種を限つて、まあ今炭坑とか重勞働者に對して、殊に國家の必要とする重勞働者に對しては加配をやつておりますけれども、それでも懶ける者から取り上げろというような主張すらあるのでありまして、なかなかこの問題も、私個人としては非常に希望いたしますが、實際に實現させることはむずかしいのじやないか、でき得る範圍内において、主食はちよつとむずかしいと思うのであります。せめて副食物その他の方面になんとか手を打ちたい。こういうこうを考えておる次第であります。
#5
○松井道夫君 御懇切な御答辯で大體了承いたしたのでございまするが、今の政府委員側の態度についてという問題でございまするが、多數が贊成であれば同意するということでございまするが、多數が贊成ならばこれは修正ができるのでありまして、できた修正について贊成いたしますかどうかということは、これは又そのときのいろいろな事案によつて違うと思いまするが、大體どちらにも一理あるというような場合には、同意することに大體しておるのだというような御答辯に聽いたのであります。私の申上げておるのはそれとちよつと違いますので、二つの意見が出ましたときに、その意見は何れも理由がある、といつた場合の態度であるのであります。それを立案者側の方を強いていいことにして、他の方の意見をこれは贊成できんのだというような御意見を述べられますその態度を申上げておるのであります。若しも双方の意見に同等の理由があるといつた場合には、そのようにやはり御意見を述べて頂いて、淡泊に五分々々の意見であるということを明らかならしむようにやつて頂ければ仕合せだ、かような意味合いで申しておるのであります。重ねてこの點について御意見を伺いたいと思います。
#6
○國務大臣(鈴木義男君) 松井委員の仰せられることは皆御尤もなのでありますが、ただ會議體の形式といたしましては、原案提案者がどこまでも一つ原案を支持しようという立場で御説明を申上げ、これに對して異なる意見のありまする方が遠慮なく異なる意見をお述べになる。そこで原案提案者がふらふらしておりましてどつちでもいいというようなことでは、議論にならないわけでありまして、まあ一應原案をどこまでも支持するという建前で申上げる。それでこそ初めて熱のある意見も出、反對意見も出て來る、火花を散らして御論戰に相成るということが、會議體の理想であると思います。それだからあの男は頑迷度し難いというふうにお考へ願つては困るのでありまして、私自身でも結局において皆さんの御判斷がその方に行くかも知れないと思いましても、一應私が提案したものに對しては、原案支持の意見を熱心に述べるわけでありまして、併し何でもそれだけが唯一の眞理であるとは信ぜないでおる心の餘裕は持つておる積りであります。恐らく政府委員になつておりまする諸君も、皆同じような氣持と思うのでありまするが、どうしても丁度檢事と辯護士とが對立して法廷で論爭するように維一方はどこまでも有罪を信じ、一方はどこまでも無罪を信じて、それで火花の散るような論戰ができて、第三者から見ていずれが正しいかが、はつきり浮び上つて來るのでありまして、やはり多數の意見を贊成させるためにはそういう活發な討論が交換されることが大變いいことだと思うのであります。併しそのために木を見て山を見ず、なんでもかんでもがむしやらに一度言い出したらきかないというような態度は取らないようにすることは、平素も注意いたしている積りでありますが、今後も十分注意いたす積りであります。
#7
○委員長(伊藤修君) ではこれより昭和十九年法律第四號經濟關係罰則の整備に關する法律の一部を改正する法律案を議題に供します。前囘に引續きまして質疑を繼續いたします。ただ前囘までの質疑の形態は豫備審査の過程においてなされまして、御承知の通り衆議院におきまして第一條の第二項全部と、第二條の第二項全部と、それから別表の十五、十六を抹消いたしまして新たに二十六、二十七が追加されておる。これだけの修正がなつて本審査に付託された次第であります。ちよつと速記を止めて……。
   〔速記中止〕
#8
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。次にこの罹災都市借地借家臨時處理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地區を定める法律案、これを議題に供します。これも前囘二囘委員會を開いておりますが、まだ質疑は打切つておりませんから、若し質疑のある方はこの際お願いいたします。それでは御質疑はないようでありますからこの程度において質疑を終結することに御異議はございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○委員長(伊藤修君) 異議ないものと認めます。ついては討論を省略いたしまして直ちに採決することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○委員長(伊藤修君) それではさよう決定いたします。本案全部を問題に供します。本案に御贊成のお方は御起立を願います。
   〔總員起立〕
#11
○委員長(伊藤修君) 全員御起立になりまして、原案通り可決すべきものと決定いたします。不日本會議における委員長の口頭報告については、豫め御承認を得たいと思います。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○委員長(伊藤修君) 尚只今御贊成の方は御署名をお願いいたします。
   〔多數意見者署名〕
#13
○委員長(伊藤修君) 次に本委員會に付託されておるところの請願を上程いたします。請願第三百六十五號、北海道上川郡美瑛町に旭川司法事務局美瑛出張所設置に關する請願、これを議題に供します。紹介議員の木下源吾君の御説明を願います。
#14
○委員外議員(木下源吾君) この美瑛町というのは御案内の方もございましようが、旭川から七里ほど離れた所にある町の面積が四十三万里、戸數が三千四百戸、人口が約一萬九千の純農村でございます。この町の農地は田が二千町歩、畑が八千町歩でございます。合計一萬町歩あつて、この土地の所有者の分布状況は、概ね不在地主の大農場であるのでございます。そこで昭和五年以來自作農創設に意を用い、昭和二十一年度までに大略百五十萬圓程度の農地の解放をしたのでございます。更に尚三千二百町歩の小作地を有しておる有樣である。然るにこの度農地調整法によりまして、買上げ對象地は約三千二百町歩、その中初年度二千三百町歩は目下農地委員會において交渉中のものであります。それでこれが買上げに伴い、登記事務はすべて旭川まで參らなければならないのであります。ところがこの旭川は美瑛町と七里離れておりまして、一日三往復の汽車があるまするけれども、尚一泊二日を完全に費さなければならんような状態でございます。かような事情にありまするに加えまして、更に目下この美瑛町において實施中の緊急開發に伴う農耕地は六千八百町歩あるのでございまして、この入植者は一千三百戸を目標として五ヶ年計畫で、只今第二年度計畫を實施中であります。このような實情にありまする美瑛町といたしまして、是非とも旭川司法事務局の美瑛出張所を設けて頂きたい。これに要する設置費用の負擔は、全額町で賄うことに異議はございません。現に二十五坪ばかりの建物を空けておるような實情でございますので、これが設置を要望する次第であります。これが美瑛町の町長からの請願の理由でありまするが、我我この方面の選出國會議員が、これを御紹介申上げる次第でございます。何率採擇あらんことをお願いいたします。
#15
○委員長(伊藤修君) これに對する政府の御意見を伺います。
#16
○政府委員(奧野健一君) 美瑛町に出張所を設置方の請願の御趣旨は、一應御尤もと存じます。先に農地調整法改正に伴いまして、登記事務の激増が豫想されましたので、本年の二月一日から全國に三十二箇所の臨時登記所が設置いたされたのでありますが、その際有力な候補地でありますがら設置漏れになつたので、この點地元に對しまして甚だお氣の毒に存じておる次第であります。將來豫算關係等考慮いたしまして、できるだけ速やかに御期待に副うように努力いたしたいと考えておりますから、御了承を願いたいと思います。
#17
○委員長(伊藤修君) 本案につきまして、質疑がなければ、質疑及び討論を省略いたしまして、直ちに採決をいたしたいと存じますが、如何でございましようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○委員長(伊藤修君) ではさよう決定いたします。本案は會議に付すべきものといたしまして、且内閣に送付すべきものと決定することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○委員長(伊藤修君) ではさよう決定いたします。
 次に請願第四百十九號、仙臺高等裁判所郡山支部設置に關する請願、これを議題に供します。紹介議員橋本萬右衞門君の御説明を伺います。
#20
○委員外議員(橋本萬右衞門君) 仙臺高等裁判所郡山支部設置に關する請願でございますが、紹介議員といたしまして、一應御説明申上げます。私が申上げるより、實は鈴木司法大臣の方がよく御承知なのでございますが、關係しておりますので、私より申上げます。皆樣御承知の通り、福島縣は會津地方と中通り地方と濱通り地方の三地方に岐れております。そうして四市十七郡を包含しておりますが、郡山にあつた方が便利とする地域が三市十四郡でございます。福島市にあつた方がいいものは僅かに一市三郡に過ぎないのでございまして、尚又舊福島區裁判所に屬しておつた地域ですら、郡山にあつた方が便利な状態でございます。殊に會津地方は交通不便なので、郡山市にあることを最も便利とする次第でございます。本件は、すでに衆議院におきましても採擇になつたような次第でございますから、どうぞ十分御審議下さるように願います。合せて申上げますが、郡山には、來年の一月から甲號支部が設置されることに決定いたしまして、先般三淵最高裁判所長より話がございまして、それにつきましては、増員の判事及び職員の住宅に困るが、どうしてくれるかというような話がございまして、早速郡山市長と相談の結果、全部お引受けすることに正式に御挨拶申上げまして、それでは一月からするというお話もございました。合せて申上げておきます。
#21
○委員長(伊藤修君) 本案に對する政府の御見解をお伺いいたします。
#22
○政府委員(奧野健一君) 請願の御趣旨は、至極御尤もと存じます。政府といたしましても御不便の事情はよく承知しておりますので、裁判所の支部の設置の點は、最高裁判所の權限に屬しておりまする關係から、最高裁判所にもよく御趣旨をお傳えいたしまして、十分この點について最高裁判所の方に御考慮を促すことにいたしたいと存じます。政府といたしましてもこの請願の趣旨達成のために十分努力をして行きたいと存じます。
#23
○委員長(伊藤修君) 別に御意見もなければ、質疑及び討論を省略いたしますことに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○委員長(伊藤修君) ではさよう決定いたします。
 直ちに採決をいたしたいと思います。本案は會議に付すべきものといたし、且内閣に送付すべきものと決定することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○委員長(伊藤修君) ではさよう決定いたします。
 次に請願第五百九號、岐阜縣關町に簡易裁判所竝に區檢察廰設置に關する請願。紹介議員は私ですが、便宜專門調査員から説明してもらいます。
#26
○專門調査員(梶田年君) 御命令によりまして、私から、岐阜縣關町に簡易裁判所竝びに區檢察廰設置に關する請願について御説明申上げます。
 本請願の趣旨とするところは、只今申上げました標題の通り、岐阜縣の關町に簡易裁判所竝びに區檢察廰を設置されたいということでありまして、その理由といたしましては、關町は岐阜縣中南部地方における最大の都市でありまして、縣下において大垣に次ぐ一大工業都市でもありますし、近く市制實施のため目下はその準備に努力しておる次第であつて、更にこれを政治、經濟、産業、交通、通信、文化等の分野から見ましても中樞的な要地ということになつておるのであります。これも亦官公署その他事業場の施設の關係から見ましても、警察署、司法事務局出張所、司法保護委員、税務署それから公共職業安定所、專賣局出張所、國民保健所、金屬試驗所、郵便局その他縣立の高等女學校、工業學校等があり、又汽車、電車等の各驛も無論ありまして、その他地方的のいろいろの會社、銀行等もある次第でありまして、こういう方面からいつても中心地となつておるのであります。殊に司法關係に最も縁の深い警察署について見ますると、その管轄に武儀の二十一町村の中の二町、即ち關町と美濃町の二町の外、十五村の管轄をもつておりまして、人口十萬を含んでおりまして、金山、高富という警察署が分離いたしたのでありますが、これは關警察署から分離したというわけでありまして、相當司法關係事件の上から申しましても重要な地點となつておりまして、昭和二十二年度には事件數七百九十七件、二十一年度は八百二十二件、二十二年度の本年の五月末現在において四百八十三件という事件がありまして、それぞれこれらの事件の相當數はすでに檢事局の方に送致せられたことになつておるのであります。殊に當町は現に簡易裁判所竝びに區檢察廰として格好な建物を持つておりまして、且必要に應じまして、直ちにこの建物の設備を提供し得るような状態になつておるというわけでありまして、その建物の圖面などが添付せられて來ておるのであります。以上の次第であるからして、この司法制度の改革に際して是非この簡易裁判所竝びに區檢察廰の設置を要望するから、そのように實現をお願いしたい、こういうことになつております。
 尚この簡易裁判所、區檢察廰の官轄について希望を述べてあるのでありまして、その管轄といたしましては、岐阜縣武儀郡一圓と、益田郡に内、下原村、郡上郡の内、東村、加茂郡の内、田原村、富岡村、太田町、古井町、山之上村、蜂屋村、加茂野村、坂祝村、富田村、加治田村、伊深村、三和村、川邊町、下麻生町、これだけを管轄にして欲しいという希望がついております。
#27
○委員長(伊藤修君) これに對して政府の御見解をお願いいたします。
#28
○政府委員(奧野健一君) 簡易裁判所の設置につきましては、當時一警察署に對し一つの簡易裁判所を設ける積りでありましたが、豫算の關係上大體二つの警察署に對して一つの簡易裁判所が設けられたわけでありまして、具體体な設置の場所は、それぞれ現地の關係廰の上申によりまして決定いたしたのでありますが、關町の場合は警察署が置かれておるほどの土地でありながら簡易裁判所の設置がなかつたのでありまして、この點地元に對しまして非常な御不便を掛けておることと存じまして甚だ恐縮に存じておる次第であります。政府といたしましても最高裁判所とも協議いたしまして財政その他の事情の許す限り、成るべく速やかに御希望に副うよう努力いたしたいと存じております。尚區檢察廰の設置につきましては簡易裁判所が設置されるようになれば當然考慮されることになるはずでありますから、さよう御了承の上何分御協力を願いたいと思います。
#29
○鬼丸義齊君 只今の簡易裁判所の數は、この上近く増加することを許されますか。
#30
○政府委員(奧野健一君) 豫算の許す限り多く簡易裁判所を設けたいというふうに考えております。
#31
○鬼丸義齊君 それについてはやはり裁判所の方、竝びに地元の方でも檢察廰を合せて作るということについては順次、地理的にそうした必要のような場合には順次許すということの御方針であるか。或いは從來の數が、六百いくらというものに對して多少融通し合いをするということになるのでありますか。新設を許すかどうかの點について一つお見込を伺いたいと思います。
#32
○政府委員(奧野健一君) その點についは最高裁判所ともよく協議をいたしまして、簡易裁判所竝びに區檢察廰の設置を進めて行くことになるのでありますが、豫算が大體取れます場合は相當の數の豫算が計上されることになりまして、一つ一つ順次に行くか、或いは相當數豫算の取れたときに一齊にいたしますか、その點はまだ決まつてはおりませんけれども、方針といたしましては大體一警察に對して一簡易裁判所という最初の方針に向つて逐次擴充いたして行きたいというふうに考えております。
#33
○委員長(伊藤修君) 他に御質疑及び御意見がなければ、これを省略することに御異議ありませんですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#34
○委員長(伊藤修君) ではさよう決定いたします。では本案につきまして會議に付すべきものと決定し、且内閣に送付することに決定すること御異議ありませんですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○委員長(伊藤修君) ではさよう決定いたします。
#36
○前之園喜一郎君 私は非常に請願竝びに陳情に對する委員會の取扱ということに對して不滿を持つておる者であります。敢てこの司法委員會という意味でありませんが、私淺い經驗でありまするけれども、或る面においては愼重を缺き、又非常に熱意に缺けておる點があるのではないかという氣持がしてならんのであります。凡そ國民が政府に對し、或いは議會に對して陳情をいたしまするにつきましては、各方面から非常なる熱意と研究を持ち、又期待をかけておるのであります。參議院の委員會で通過したならば、これは實現するものであるというような非常に明るい希望を持つて迎えるのであります。ところが委員會などで取扱つておるものを見ると陳情が出ると説明を聞く。餘り深い研究もしないで、直ちに採擇になつて、それが政府に送られるようなことになるということになりますると、私はその間取扱に非常に輕卒な感じがせざるを得んのであります。苟くも委員會で採擇した以上、その陳情乃至請願はどうしてもこれを實現せしめる、政府を鞭撻し政府を激勵し、ときには強い意見の發表をして實現せしめるという熱意がなければならんのであります。ところが現在參議院邉りで取扱つておるこの陳情請願というものにはそういうものがない、或る委員會などの取扱を見て見ると、こういうのがあります。私は非常に遺憾に考えたのでありますが、政府の意向を聽く、そうしてこれこれのものは昭和二十三年度豫算に組むつもりであるという、こういう答辯を聽いて、それならばそれだけのものを採擇しようじやないかということをやつておる委員會もあるように見受けるのであります。私どもに言わせるならば、政府がすでに豫算として計上するような計畫のあるものに對してはむしろ採擇の必要はないのである、その他のものに對して若し委員會が必要と認めるならば、どこまでも政府をして實現せしむるということに努力しなければならんのではないかと私は考えるのであります。こういうようなことを私考えるときに、請願などというものはお座なりに委員會として取上げてはならん、十分に御研究をして、取上げるものはどこまでも實現する、實現せしめるという熱意と信念とを持つてやらなければならんものではないか、かように考えておるのであります。今のような取扱い方、私はこの委員會のことを言うのではありませんが、取扱い方をいたしまするならば、議會というものは國民に信を失うということになるのではないか、かように考えておるのであります。少くも委員會で以て採擇したものは、どこまでも實現に努力するというふうに將來私は委員會においてもお考え願いたい、こういう希望を申上げておく次第であります。
 もう一つこれは高等裁判所の支部の問題でありますが、實は私は鹿兒島でありますが、福岡高等裁判所の支部が九州に二ヶ所できるということであります。これは正確なことは知りませんが、そういうような取沙汰がせられておりますので、鹿兒島は地域的にどうしても支部を設置して貰いたいというので、政府に陳情いたしておるのであります。私も使いとして最高裁判所の長官或いは事務總長などにも會つたのでありますが、その兩者の答辯の内容はどうも今の人のやり繰りでは實現は約束はできないというようなお話があつたのであります。ところが實際において地方の實情から申しますというと、鹿兒島のごときは福岡まで行くのに十何時間もかからなければ行かれない。前日發ちまして、そうして翌る日に事件をやつて、その翌る日歸つて來るということをしなければならん、事件一件か二件持つて行つて二、三日もかからなければならん、又被告もそれにつれて行かなければならん、證人なども同樣でありますが、こういうような實情にあるのでありますから、本委員會としてもこういう問題に對して陳情が出ましたならば、よく地域的に御研究を願つて、各地方裁判所に支部ができるものならば、これはすべて採擇せられてもいいでありましようが、九州のごとく二ヶ所しかできないという場合に、先に陳情書が出たものと採擇するというようなことになると非常に困るのであります。こういう點も豫め私は御參考までに申上げておきたいのでありますが、恐らく高等裁判所の支部というものが各地方裁判所にできるということは當分覺束ないと思うのであります。そうしますと陳情書を先に出したところが採擇せられて政府に送られる、それが先ず優先權を持つというようなことになつては非常に困ると考えるのであります。それでありますから、それ等の點も十分に御研究を願つて、陳情或いは請願に對しては愼重に一つお取扱を願いたい、こういうことを私は希望申上げておきたいと思います。
#37
○委員長(伊藤修君) 前之園さんにお答え申上げますが、御指摘の御趣旨は十分當委員會としては了承しておりまして、嘗てこれが取扱に對しましてもさような意思を以ちまして愼重に取扱つておる次第でありまして、ただ委員會の形式としては甚だ簡單な取扱をしておりますが、實は專門調査員をして十分請願者竝びに地方的及び政府、裁判所等と打合せまして調査いたさせました結果を、ここに持つて來ておる次第でありまして、勿論當委員會におきまして採擇した以上は、責任を以てこれが實現を期すると、こういう考えを以て採擇しておる次第でありまして、豫め高等裁判所のこの請願事項に對して可能性あるや否やということを打診してある次第でありまして、可能性のあるものだけを當委員會に採擇を願つておる次第でありますが、嘗て請願が五六件あつた場合におきましても、さような意味からいたしまして、實現の不可能なものに對しましては、會議に付すべからざるものといたしまして、不採擇に五件いたしましたのですが、少くとも司法委員會におきましては、この請願に對しまして、相當責任を持つた取扱い方をいたしておるのであるますが、他の委員會におきましては、どうも今の説のようなものがなきにしもあらずと考えますが、本來ならば請願があつたならば、一々現地に行つて調査するのが本來かも知れませんが、これも不可能なことだと存じますが、一應政府及び關係者によつて取調べて、その必要性を認め、且その實現性がある場合に限つて、當委員會は成るべく採擇して行くこと、こういうように考えておる次第で、只今御指摘の御趣旨は十分私ども體して扱いたいと存じておる次第であります。
 他にまだ二つ陳情がありますが、これは尚研究を要する次第でありますから、後日にこれを譲りたいと思います。この際本委員會に付託されました戸籍法について、便宜上政府委員の説明を願つておきまして、後の審議の便宜を圖りたいと存じます。
#38
○政府委員(奧野健一君) 戸籍法を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申上げます。日本國憲法の施行に伴い、民法の親族編及び相續編が全面的に再檢討いたされ、その改正が行われることになりましたが、かかる人の身分關係に關する實體法規が變更いたされますると、身分關係を登録する戸籍の制度につきましても、必然的にその改正を要するに至ることは申すまでもありません。ことに民法から戸主、家族その他家に關する規定が全部削除いたされますと、家を單位に且戸主を本として編製しておりました現行の戸籍は、その編製そのものの根本からこれを改めて參らなければならなくなつたのであります。よつて政府は民法の改正事業と竝行して、戸籍法改正につき所要の準備を進めて參り、又民法改正案中、親族、相續編の條文が口語體に書き改められたことに對應いたしまして、本改正案もその條文全部を口語化し、國民一般の理解を容易ならしめることに努めたわけであります。以下改正案の重要な諸點について簡單に御説明申上げたいと存じます。
 先づ第一は曩に一言いたしました通り、これまで家を單位として編製されておりました戸籍の編製方法を改めた點であります。從來戸籍は各家ごとに編製され、謂わば家の登録とも申すべきものでありましたが、民法の改正によりましてこの家の制度が廢止されることになりますので、戸籍を編製する基本的な基準が全く失われることになつたわけであります。併しながら戸籍を各個人毎に編製することにいたしますと、各個人相互間の續柄が不明瞭となりまして、國民一般に非常な不便を感んぜしめると共に、他方戸籍事務の取扱い上豫測すべからざる困難を招來することとなります。從いまして他にその編製の基準を求めなければならんわけでありますが、その基準としては、夫婦親子を單位とする以外に他に適當なるものを見出し難いのであります。仍て本改正案におきましては、その第六條におきまして、戸籍は夫婦及びこれと氏を同じくする子をもつて編製することにいたしました。そしてこの編製方法は、戸籍をして或る程度現實の親族共同生活體に即應せしめることにもなろうかと存じておるわけであります。かようなわけでありますから、子が婚姻いたしますと、その夫婦について新たに新戸籍を編製することになるのでありまして、第十六條がその規定であります。
 又夫婦親子を單位として戸籍を編製いたします關係上、祖父母と孫とは戸籍を同一にすることはないのでありまして、そのために第十七條で戸籍の筆頭に記載した者、又はその配偶者以外の者が自己と同一の氏を稱する子、又は養子を有するに至つたときは、別に新戸籍を編製することにいたしておるのであります。右のように戸籍の編製方法を根本的に改めることといたしましたが、併し經過的には、現行法の規定による戸籍全部を直ちに編製替いたしますことは、無用の混亂と繁雜を來すのみでありますから、第百二十八條によりまして、かかる戸籍はこれを本改正案の規定による戸籍とみなし、唯今後十年を經過したときにこれを改製することにいたしましたのであります。又轉籍の場合も第百三十七條によりまして、從前の戸籍によつてそのまま同じ戸籍を編製することにいたしております。
 第二は、從來戸籍を表示するには戸主の氏名及び本籍でいたしておりましたが、本改正案では戸籍の筆頭に記載したものの使命及び本籍で表示することに改めました。そして戸籍の筆頭には夫婦が夫の氏を稱するときは夫、妻の氏を稱するときは妻を記載することになつております。尚從前は戸主が死亡その他の事由に因りまして、戸籍から除籍されたときは、他にこれと戸籍を同じくする者があつても家督相續届によりまして、新戸籍を編製しておりましたが、これを改めまして他に同籍者がある限り、戸籍の筆頭に記載した者が除籍されても、その戸籍はそのままとし、唯全員除籍になつて始めてその戸籍を除籍簿に移すことになつております。從いましてかかる戸籍の表示は、その筆頭に記載した者が假令除籍となつても、その者の氏名及び本籍でこれを表示することといたしました。第九條、第十二條、第十四條等がこれらに關する規定であります。
 第三は、現行戸籍法では如何なる場合に一定の戸籍に入り又は新戸籍を編製すべきかは、一に民法上の入家又は一家創立に關する規定に據つておりましたが、民法上かかる規定が削除されます結果、本改正案では入籍、新戸籍編製又は除籍の事由は、それぞれ戸籍上これを列擧的に規定いたしました。第十六條乃至第二十三條がそれでありまして、大體、民法上の氏が改まれば、これに應じてその者の戸籍を改めることにいたしております。
 第四は、新憲法の施行及び民法の改正に伴い、現行戸籍法から隱居、家督相續、推定家督相續人の廢除、家督相續人の指定、離籍、復籍拒絶、廢家、絶家、分家、廢絶家再興、族稱の變更及び製爵に關する規定を全部削除するとともに、他方、後見監督人、姻族關係の終了、推定相續人廢除及び分籍に關する諸規定を新たに設けることにいたしました。分籍については、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者を除いては、成年に達した者は、自由に分籍できることにいたしております。
 第五には、我が國の人口動態統計は、從來より戸籍上の出生、婚姻、離婚及び死亡の届出に基いて集計されておりましたが、昨年七月以降、この人口動態統計が聯合軍總司令部の指令に基いて畫期的に改善され、これに即應して戸籍法も數次の改正を見たのでありますが、更に又その要請に應えるため、本改正案第四十八條、第四十九條等で、出生届に醫師、助産婦その他の者の出生證明書を添附させ出生の年月日等に關する不實な記載を防止し、他方また届書等につき或る程度その公開を制限する等の處置を講ずることといたしました。尚昭和二十一年司法省令第四十七號で、出生又は死亡届をそれぞれ事件發生地で届け出さすことになつておりますが、本改正に當り、これを戸籍法中に織り込み、右省令は廢止することにいたしました。第五十一條、第八十八條、第八十九條及び第百三十八條等が、これに關する規定であります。
 第六は、子の名には、常用平易な文字を使用せしめて、もつて當用漢字表制定の趣旨に添うため、新たに第五十條の規定を設けております。又更に、この趣旨を徹底するために、明治五年太政官布告第二百三十五號(改姓名に關する件)を廢止して、家事審判所の許可の下に改姓名を比較的容易ならしめることに改めました。第百七條及び第百三十八條がその規定であります。尚明治六年太政官布告第百十八號(御歴代の御諱及び御名の文字の使用に關する件)は、新憲法の精神に反しますので、この際これを廢止することといたしました。
 最後に、戰時立法たる昭和十五年法律第四號(委託又は郵便による戸籍届出に關する法律)を廢止するとともに、同法中郵便による届出で死亡後到達したものの效力を認めている規定は、本改正案第四十七條にこれを織り込むことといたしました。尚國籍法を改正する法律案は、諸種の事情のため、この法律案と共に本國會に提出することが困難となりましたので、戸籍法中國籍得喪の届出に關する規定は、本法律案では一應これを現行法通りといたして置きまして、近く御審議を願うべき國籍法を改正する法律案において、この部分につき更に所要の改正を試みる所存であります。
 以上が本法律案の大要であります。何率愼重御審議の上速かに可決せられんことをお願い申し上げます。
#39
○委員長(伊藤修君) 本案に對する質疑は後日に譲りたいと存じます。來週一週……御承知の通り、會期切迫いたしまして、豫定からいいますと來週一週ということになりますが、恐らく延びることとは存じますが、尚延びないものとして我々取扱いたいと存じます。從つて當委員會に付託されております法案は、只今の法案と先程の經濟罰則に關する法案と、それから家事審判所の施行法案と、民法の改正に伴う關係法律の整備に關する法律案、竝びに訴訟費用に關する法律案、これらがこの委員會に付託されておりまして、外の小委員會に付託しておる議案が、安本から出ておる法律案が一つと、農地相續に關する法律案が一つと、それから連合委員會を開くべき法務廰法案がまだ本日提案されておる次第であります。かような次第ですから來週は一つ努めて御出席を煩わしたいと存じます。尚月曜は御承知の通り本會議がありますし、他の委員會等非常に混雜しておりますから、火曜の午前十時から一つ努めて午後に亙つて開きたいと思います。委員會が流れますと次の委員會を取るに速記がなくて、到底取れないように思うのですから、何率それを御了承の上、御出席を煩わしたいと思います。では本日はこれを以て散會いたし
ます。
   午後四時二十分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           松井 道夫君
   委員
           中村 正雄君
           奧 主一郎君
          池田七郎兵衞君
           鬼丸 義齊君
          前之園喜一郎君
           岡部  常君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
  委員外議員
           木下 源吾君
          橋本萬右衞門君
   專門調査員   梶田  年君
  國務大臣
   司 法 大 臣 鈴木 義男君
  政府委員
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
   司法事務官
   (刑事局長)  國宗  榮君
ソース: 国立国会図書館
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