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1947/11/25 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第42号
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1947/11/25 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第42号

#1
第001回国会 司法委員会 第42号
  付託事件
○農業資産相續特例法案(内閣提出)
○經濟査察官の臨檢檢査等に關する法
 律案(内閣送付)
○昭和十九年法律第四號經濟關係罰則
 の整備に關する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○國立療養所栗生樂泉園獄死事件に關
 する陳情(第四百八十九號)
○青少年保護事業團體救濟に關する陳
 情(第五百五號)
○戸籍法を改正する法律案(内閣送
 付)
○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正
 する法律案(内閣送付)
○家事審判法施行法案(内閣送付)
○民法の改正に伴う關係法律の整理に
 關する法律案(内閣送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十一月二十五日(火曜
日)
   午前十時五十三分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正
 する法律案
○家事審判法施行法案
○民法の改正に伴う關係法律の整理に
 關する法律案
○戸籍法を改正する法律案
○昭和十九年法律第四號經濟關係罰則
 の整備に關する法律の一部を改正す
 る法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれより委員會を開會いたします。
 先ず本委員會に最近付託されましたところの家事審判法施行法案、民法の改正に伴う關係法律の整理に關する法律案、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案以上三件はいずれも豫備審査のために付託されておりますが、この法案に對しまして提案理由だけ御伺いして置きまして、質疑は後にこれを廻すことにいたしたいと思います。
#3
○政府委員(奧野健一君) 只今上程されました家事審判法施行法案につきまして、提案理由を申上げます。
 民法の改正に伴いまして、家庭事件を適切に處理いたしますために、先に家事審判法案を提出いたし、すでに御審議を經て成立いたしたのでありますが、この家事審判法の施行等に伴いまして、現行人事調停法を廢止し、現行人事訴訟手續法及び非訴事件手續法を改正する等の必要がありますので、ここに本法案を提出いたした次第であります。
 次に本法案の概要を御説明いたします。第一は、人事調停法の廢止であります。現行人事調停法によつて處理いたしております調停事件は、すべて家事審判所において取扱うこととなりましたので、人事調停法を廢止いたしました。
 第二は、人事訴訟手續法の改正であります。現行人事訴訟手續法によつて處理いたしております事件の中、夫婦の同居に關する事件、親權及び財産管理權の喪失の宣告に關する事件、禁治産及び準禁治産の宣告に關する事件、失踪宣告に關する事件等は、家事審判所において取扱うことになりましたし、推定家督相續人の廢除に關する事件、隱居の無效及び取消事件等は、改正民法の施行によつてなくなりますので、これらの事件に關する規定を削除いたしました。又、改正民法は協議離婚及び協議離縁の取消等について新たに規定を設けておりますので、これに伴い所要の改正を加えました。
 第三は、非訴事件手續法の改正であります。現行非訴事件手續法によつて處理いたしております不在者等の財産管理に關する事件、子の懲戒に關する事件、相續の承認及び放棄に關する事件、遺言の確認及び執行に關する事件等は、家事審判所において取扱うこととなりましたし、離籍、隱居、廢家等の許可事件、親族會に關する事件等は、改正民法の施行によつてなくなりますので、これらの事件に關する規定を削除いたしました。又改正民法は、妻の能力の制限等を撤廢し、繼親子關係、嫡母庶子關係等を廢止いたしておりますので、これに伴い所要の改正を加えました。
 第四は以上の人事調停法の廢止、人事訴訟手續法及び非訟事件手續法等の改正に伴いまして、必要な經過規定を設けました。只今申上げたのが本法案の概要であります。何率愼重御審議の上速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
 次に民法の改正に伴う關係法律の整理に關する法律案の提案理由を説明いたします。
 民法におきましては、日本國憲法の基本原則に適合させるために、戸主、家族その他家に關する規定及び、家督相續に關する規定の削除、兩性の本質的平等に反する規定の改正、親族會の廢止、口語化、書きおろしにするための條文の整理等が行われたのであります。然るに他の法律中には、從前の民法を前提として幾多の規定がありますので、これを改正された民法に適合させるように整理する必要があるのであります。
 又民法の改正と竝行して、他の法律中の家族制度に關する規定も亦これを憲法の基本原則に適合するように整理する必要があるのであります。これらの整理をしなければならない法律の數は、すでに他の法律の改正等に關連して整理したものを除いても、尚實に六十七の多きに上るのであります。これをそれぞれの法律で改正することは非常に煩雜になると思いますので、ここに一括して整理をすることにいたしたのであります。以下この法律案の内容について概略を御説明申上げます。
 第一に例えば銃砲火藥類取締法第二十一條の營業者に對する罰則においては、營業者の戸主、家族が同法に違反したときには、自己の指揮に出でないという理由で處罰を免れることができないことになつておるのであります。民法から戸主、家族の規定を削除しました結果、銃砲火藥類取締法の右の規定からも、戸主、家族を削り、事質上同居しておる親族に反則行為がありました時は、同條中の同居者に包含されるものとして扱うことにいたしました。同樣に他の法律についても、戸主、家族その他家又は家督相續の存在を前提とする規定をそれぞれの法律の内容に照らし、或いは削り、或いは他のものに改めたのであります。
 第二に、例えば信託法第五條第二項の、妻が信託の引受をするには夫の許可を受ける必要があるという規定のように、妻の能力を制限する規定、その他兩性の本質的平等に反する規定は、それぞれの法律の内容に即應して、或いは削り、或いは改めて、兩性の本質的平等を徹底させるための措置を講じたのであります。
 第三に、例えば精神病者監護法第一條第二項においては、精神病者に對する最終順位の監護義務者は、四親等内の親族の中から、親族會が選任することになつておるのでありますが、親族會廢止の結果、これを家事審判所が選任することに改めました。同樣に從來親族會の決議又は裁判所の裁判で取扱つていたもので、改正された民法の精神に照らし、家事審判所で扱うのが適當と思われるものを家事審判所の審判事項といたしたものであります。
 第四に、國民優生法第四條におきましては、父母等の同意を要しないで優生手術を受けることのできる年齢は三十歳となつておりますが、これを原則として二十歳まで引き下げたのであります。これは單なる整理ではなく實質的な改正を含んでおるのでありますが、從來の民法においては、男が父母等の同意なくして婚姻できる年齢が三十歳であつたから、單獨で優生手術を受けることのできる年齢を三十歳にしていたのであります。ところが改正された民法におきましては、父母等の同意なくして婚姻できる年齢を、原則として二十歳に引き下げましたから、これに歩調を合わせるのが適當であると考え、單獨で優生手術を受けることのできる年齢を原則として二十歳と改めたのであります。
 第五に改正された民法の條文の整理に伴い、他の法律で引用した民法の條文を整理し、その他所要の整理、改正を加えたのであります。
 最後に信託法外二法律については、その法律の改正に伴い、それぞれ所要の經過規定を設けたのであります。
 以上がこの法律案の大要であります。何率愼重御審議の上、速やかに御可決せられんことを御願いいたす次第であります。
 最後に訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
 民事、刑事の訴訟費用及び執行吏手數料等は、御承知の通りそれぞれ民事訴訟費用法、刑事訴訟法及び執達吏手數料規則の三法律に規定されておるのでありますが、戰時中の諸物價の高騰に應じて、訴訟費用等臨時措置法が制定されまして、更に昨年九月右措置法の改正によりまして、終戰後の經濟情勢に應ずるため訴訟費用や執行吏手數料等を臨時的に増額する途が拓かれ、同時に右手數料等の額も相當程度の増額をみたのであります。
 然るにその後一年間の經濟情勢の變遷は眞に甚しく、例を總理廳統計局發表の東京における消費者物價指數表にとつてみましても、本年九月の物價は、昨年右手數料を増額いたしました當時の物價に比して約三倍の高騰を示し、現行手數料等の額は全く實情に副わんものとなりました。このため民事、刑事の訴訟關係者は非常に重い負擔を強いられるに至り、又執行吏は現在の収入を以てはその生計を維持することが極めて困難な状態にありまして、延いては民事、刑事の訴訟や強制執行制度の圓滑な運行にも支障を來たす恐れがある状態に立ち至つたのであります。よつて政府はこの際更に暫定的に右手數料等の額を増額して現状を打開するために、この法律案を提出した次第であります。以下改正の要點を申上げますと、
 第一は民事、刑事の訴訟費用及び執行吏の手數料等を現状に即するように増額いたした點でありまして、今囘の改正の眼目とするところであります。増額の程度は大體物價指數によりまして、現行の二倍半乃三倍程度にいたしたのでありますが、旅費、宿泊料等右の標準によつては實情に副い得ないものにつきましては、例外を設けてあります。第二條乃至第四號の改正規定が即ちそれであります。
 第二は、執行吏の差押及び競買手數料の計算方法を改めた點であります。この手數料は、債權額又は競買金額の多寡に應じて定まるものでありまして、現行法の下では、手數料計算の標準となる債權額又は競買金額を一萬圓以下六段階に分けてありますが、現在ではこの分け方はすでに細かきに過ぎ、且一萬圓を超える場合に適當な段階が設けてないため、手數料の算定に適正を缺く憾みがありますので、今囘の改正に依り、五萬圓以下を六段階に分けて各段階毎に適當な手數料額を規定することにいたしました。第四條第二項及び第三項の改正規定がそれであります。
 第三は、新憲法及び裁判所法の施行に伴う條文の整理をした點であります。裁判所法の施行に伴い、「執達吏」は「執行吏」と變更されましたので、この點の整理をいたすことにいたしました。又執行吏が一年間に収入した手數料が一定の額に満たないときは、國庫からその不足額を支給することになつておりまして、この一定額は勅令で定めることになつておりますが、新憲法の施行に伴い、「勅令」を「政令」と改めることにいたしました。第一條及び第五條の改正規定がそれであります。尚第四條の改正規定も若干條文の整理をいたしております。
 以上がこの法律案提案の理由であります。何率愼重御審議の上、速やかに可決せられんことをお願いいたす次第であります。
#4
○委員長(伊藤修君) 以上三法案に對する質疑は次囘にこれを讓ることにいたしまして、前囘に引續き戸籍法を改正する法律案に對する質疑を繼續いたしたいと思います。お諮りいたしますが、戸籍法に對しまして逐條の説明をお伺いして順次質問することにいたします。
#5
○政府委員(奧野健一君) 大體の改正の要點だけを御説明いたしたいと思います。現行の戸籍法は相當條文がありますので、更に改正の點を追加いたしますれば非常に條文の數が多くなりますので、大體戸籍の内部の事務、戸籍を受付けて、それを記入するとか、その戸籍吏員における内部の手續きと思われる點は施行細則の方に讓ることにいたして、條文を成るべく少いようにいたしたことが第一と、それから全體の方針といたしましては、そういつたふうに外部關係に缺くべからざるものを大體法律に殘しておきまして、内部關係で行政事務的に考えられるものを成るべく本法から落して施行細則に入れたいというような方針で参つたのであります。第一章、從來は、戸籍法事務の管掌というふうな標題でありましたのを總則といたしまして、これは要するに戸籍事務をどこで取扱うか、要するに從來通りこれは市町村長が管理することにいたしております。そうしてその監督系統は從來は區裁判所でありましたが、今度は司法事務局、これは司法省の民事局、即ち司法事務局におきましては、裁判所と司法省が分離いたしました結果、純粹な裁判に關する事柄を裁判所が扱う。戸籍とか、登記とか、公體とか、供託とかいつたような司法的であるけれども、尚行政事務と考えるものを、やはり司法省の行政事務として殘すことにいたしまして、それからの事務は從來の、供託局とか、或いは登記所とか、そういうものを一本に集めた司法事務局というものを設けております。それは各地方裁判所毎に現在司法事務局というのがありまして、從來の區裁判所毎に司法事務局の出張所というものを設けて登記事務を扱つておりますが、そういう系統がこの戸籍事務の監督をすることにいたしたのであります。これはもうすでに裁判所法の施行令によりまして、そういうことに改まつておるのを實は整理したに過ぎないのであります。それが第三條であります。それから第五條、これは地方自治法の制定に伴いまして條文の整理をいたしたのであります。ただ從來ありました戸籍吏員の第三者に加えた損害賠償の義務については、國家賠償法で配慮されておりますが故に、從來あつたそういう規定を削除いたしておるのであります。
 第二章は戸籍簿に關する事柄でありますが、從來の戸籍簿は、御承知のように戸主を中心として家毎に作成いたしたのでありますが、今度は家、戸主、家族という關係がなくなりましたので、どういうふうな方針で以て戸籍簿を作るべきかということが、實は重大なる問題になつて來たわけであります。考え方によりましては、各個人ごとに一枚ずつの戸籍簿を作るということも考えられます。併しながらこれは例えば父と母、それから子供と別々に一枚ずつの紙にいたしますと、相互の關係をおのおのの用紙に記入して、その他そういう相互の關係を悉くおのおのに記入するということは非常に煩雜でもありますし、相互の連絡が非常にむずかしくなります。又一方現在の紙の状態から見て、そういつたようなことは到底事實上できないことになつております。然らばどういう標準で、どれだけの程度に纏めて、一つの戸籍に編製するかということになりますと、結局やはり一夫婦、及びそれらの子供という、その團體で戸籍を作るということが最も妥當でありますし、又一方實際の現在の親族協同生活の上からにも、相當即應しておると思われるのであります。そういう意味で夫婦と子供ということで、一つの戸籍を作ることにいたしたのであります。ここで御注意申上げたいことは、夫婦と子供だけで戸籍を作るので、孫までは入らないということになつております。要するに御祖父さん、御祖母さん、或いは自分の孫というスリー・ジエネレーシヨンス、要するに三代までの戸籍は認めないことになつておりまして、二代までということにいたしたのであります。そこで第六條に要するに一つの夫婦と、これと氏を同じくする子ごとに作るということになつております。この中には勿論嫡出子の外に養子、或いは認知された子供というようなものは、やはり民法の七百九十一條によつて、認知された子供が父の氏に入ることができますが、その場合にその間の子供が父の戸籍に入るということになるわけであります。妻が連れ子をしたような場合も民法の七百九十一條を介して、その連れ子の名前を變えて、氏を同じくすることにして、夫婦の間の戸籍に入れるということになるわけであります。それが第六條であります。その外はずつと大體現行法通りでありますが、第九條が新らしい規定でありまして、今までは戸籍を表示するのは、本籍とそれから戸主の名前で表示しておりましたが、今度戸主というものがなくなりますと、何々何番地というだ
けでは戸籍を、何といいますか、直ぐ探し出すことができないので、やはり何か符牒がなければいけない。そこでいろいろ考えました結果、結局筆頭に記載した者の氏名と、そうして何處々々何番地というので戸籍を表示するというより他に方法がありませんので、大體筆頭に記載した何々何番地と、それからそれにいろは順で戸籍を分けておりますから、そういうふうに探し出すためには便宜上やはり筆頭に記載した者の氏名と、本籍で表示するというふうな方法より他にないということで、第九條というものができたのであります。
 それから後はずつと大體におきまして現行法通りでありますが、第三章におきましては、この十三條というのが戸籍の記載法であります。各人について氏名とか、いろいろのことを記載する。この他に尚命令で、讓つておりますいろいろのこと、例えば親權の關係でありますとか、或いは後見の關係でありますとか、相續人が排除されたような關係でありますとか、いうような事柄を記入するということが、第十三條の第八號に書いてあります「その他命令で定める事項」として豫定しておるわけであります。
 第十四條が、誰を筆頭者として書くかということになりますが、夫婦と子供ということになりますので、その場合に夫婦の中のどちらを筆頭に書くかと云いますと、夫婦は婚姻のときに夫又は妻となるべき者の何れの氏を稱することもできることになつておりますので、夫の氏を稱するときは夫、妻の氏を稱するときは妻を筆頭者として掲げ、その次に他の配偶者を掲げまして、それから子を掲げるという順序にいたしておるのであります。從いまして戸籍を表示する場合には、筆頭の者の氏名と、其處の本籍の番地で以て戸籍を表示するということになるわけであります。
 それから第十六條以下が新らしく入つた規定でありますが、即ち戸籍はどういうときに新らしく作るかという作り方の問題であります。これは婚姻屆があつたときに、夫婦につき新らしい戸籍を編製するということにいたしたのであります。尤もその場合に、それはすでに例えば分籍等をいたしまして獨身のときから分籍しておつて、自分が筆頭のものである。その場合に婚姻をして、妻がやはり自分の夫の方の氏を名乗るというふうな場合におきましては、但書で別に新らしく新戸籍を與す必要はないが、原則として夫婦が婚姻屆を出せば、そこで新戸籍を作るということが一つの最も重要な新戸籍編製の場合であります。
 次に十七條で、假命筆頭に記載した者でない場合でありまして、まあ筆頭者及びその配偶者以外のもので、その戸籍がある者が子供を儲ける、或いは養子をするというふうになつた場合には、その者について新戸籍を編製することになつたわけであります。即ち夫婦間の子供が、言葉が惡いのでありますが婚姻して子供を儲ければ、十六條でその者について新らしく戸籍を作るのでありますが、その者に私生兒を拵えたという場合、或いはそういう者でも養子をすることはできますが、養子をした場合になりますと、結局三代の戸籍ができることになりまして、この法案では三代の戸籍を作らないという方針でありますから、そういう者が子供を儲けたような場合におていは、その者について新らしく戸籍を作るということを規定したのであります。これは結局三代戸籍を認めないという方針から、三代に亙ような戸籍ができそうになると新戸籍を作るということにいたしたわけであります。十八條はただ子供がどこの戸籍に入るかということ、これは民法等によつて氏を、摘出の子は父母の氏を稱することになり、それから摘出でない子は母の氏を稱することになり、養子は養親の氏を稱することになりますから、それに對應して各々規定を設けたわけであります。それから十九條がやはり新らしい規定であります。要するにこれは離婚若しくは離縁によつてよつて元の舊氏に復氏する場合に、戸籍をどうするかということでありますが、從來は大體元の戸籍に入るという原則でありました。ただ例外として元の戸籍が全部除籍になつておる場合に、一家創立で新らしく戸籍を作ることになつておるのでありますが、大體その方針を踏襲したのでありますが、ただ例外としてその者が新らしい戸籍を作りたいという申出があつたときは新戸籍を作る、即ちお嫁に行つた者が離婚になつて歸つてきた場合に、その從來の實家、まあ昔の言葉で言いますと實家の氏に復するか、或いは新らしく新戸籍を自分だけで作つて貰いたいという要求があれば、新戸籍を作ることができることにいたしたのが十九條であります。ただその外に第二十條で、前二條の規定に拘わらず、他の戸籍に入るべき者に配偶者あるときはその夫婦について新戸籍を編製するということにいたしておるわけであります。例えば夫婦養子が離縁になつたという場合においては、前の氏に復することになるのではありますが、その場合に戸籍を、前の戸籍に入るのではなくて、夫婦については常に新戸籍を作るという頭から新らしい戸籍を作るというのが二十條であります。それから尚夫婦について新戸籍を作るというのが原則、或いは子供を持つた者について新戸籍を作るというのが原則でありますが、いわゆる分籍というものを二十一條に認めまして、そういう夫婦者であるとか子持ちであるというふうな者でない者でも、成年に達した者はいつでも分籍ができる。從來の分家と同樣なものでありますが、これは勿論民法上の何等の身分上の法律的效果はない。ただ戸籍簿を分けるというに過ぎないのでありますが、これは成年に達しさえすれば自由に分籍ができて、新らしい自分だけの戸籍ができる。その場合に細君を貰うというような場合に、その細君がやはり夫の方の氏を稱するというような場合には、別に新戸籍を作らなくてもいいというのが、十六條の但書がこれに對應するわけであります。尚最後の二十二條で、例えば國籍を取得したとか、或いは捨子の場合であるとか、新らしく戸籍を就籍するといつたような場合に、二十二條で新戸籍を編製するということになるわけであります。要するに新戸籍を編製する婚姻を以て、或いは子供を持つたとき、或いは離縁、離婚によつての場合、その他分籍の場合、その他戸籍取得、就籍、いわゆる二十二條の場合が新戸籍を作るということにいたしたのであります。その後はずつと大體現行通りであります。それから第四章は屆出全般に關する事柄でありまして、この點は大體從來で通りでありますが、この三十條というのが新らしい規定と申しますか、從來ではいろいろ戸籍の變動の生ずる場合、その所どころで一々こういつた規定を設けておりましたのを、今度は三十條で通則として全部纏めて規定いたしたのであります。要するに出生の場合、死亡の場合、婚姻の場合、或いは縁組の場合いつたような、戸籍に變動を生ずる場合のすべての場合を網羅して、この三十條に規定をいたしたのでありまして、從來は各々のその場所々々でこういつたような規定を掲げておつたのを、纏めた形式に外ならないのであります。それから三十一條以下ずつと大體現行通りを口語體に改めただけに過ぎないのであります。
 大體主な、非常に變つた所は大體そういう所でありまして、その外は大體ずつと從來に殆んど大した變更はいたしません。それから二節以下は、各別にこの屆出の、今度は各論に入るわけでありますが、出生の點についても同樣であります。ただ四十九條の四項で、「その他命令で定める事項」というのは、これは人口統計の必要上、出生屆にいろいろな細つかい行政的な記載をいたさなければならないことになつております。これはいずれもその點はポツダム勅令に基く司法省令で相當詳しい屆出事項が記載されております。これをここに一々記載することは煩に堪えませんので、命令で定めるということに譲つたわけであります。と同時に新しいことは醫師、助産婦その他出産に立ち會つた者の出産證明書を添附せしむことになつております。これもすでに出生屆については、すべて一定の樣式で屆出用紙が作られておりまして、それにいろいろ記入さえすればいいことになつておりまして、出生證明書に關する事柄も、記入すればいい欄がありまして、そこに醫者なり助産婦なりが記入すればいいことになることになつております。
 それから第五十條というのは新らしい規定でありまして、子供の名前を付けるのに、常用平易な文字を使わなければならない。これは漢字制限等の非常な強い要求がありましたので、子供に餘りむずかしい常用平易でない漢字を付けないようにという要望に基いて作つた規定でありまして、何が常用平易な文字かというような範圍につきましては、大體この前の文部省から出ました常用漢字と同じような範圍を、命令で出すことになつておるのであります。五十一條もこれは從來ポツダム勅命に基く司法省命昭和二十一年第四十七號で規定されておつたいわゆる出生、死亡は嚴格にその事件の起つた場所で屆出なくてはならない、これは人口動態統計の必要上、司令部等の要求に基きまして、それに基く司法省令でそういうことを規定しておつたのをこの中に入れたわけであります。
 五十二條は現在通りでありまして大して變つた點はありません。認知の點も大體從來通り條文の整理等をやつたに過ぎないのであります。養子縁組の點も通則に相當詳しく、先程申上げました三十條のような規定を置きましたから、非常に簡單になつておるわけであります。それから養子離縁も同樣であります。婚姻につきましても非常に簡單でありますが、これは婚姻の七十四條で「その他命令で定める事項」、これにつきましては、やはりいろいろ詳しい事柄がこの婚姻屆出にはやはり樣式が決つておりまして、行政的にいろいろ人口動態統計の必要上記載しなければならない事項がありますので、それを一々ここに列擧することも煩に堪えませんから、やはり命令に任したわけであります。それから離婚についても同樣であります。
第八節親權及び後見につきましては、新民法によりまして、親權の規定がいろいろ家事審判所等で決める場合があります。それを採入れたのが七十八條、七十九條、八十條という規定が、新らしい民法に基いてそれに即應するように規定したのであります。その他の點につきましては大體これは現行通りであります。ただ第十節の九十五條、九十六條というのは、新らしく民法の七百五十一條、七百二十八條によつて、婚姻前に復氏することができるとか或いは姻族關係を終了させることができるということが規定されております。それに即應した規定が九十五條、九十六條であります。
 それから九十七條は家督相續人排除ということがなくなりましたから一般の相續人排除に關する規定、それから九十八條は入籍に關する規定でありまして、九十八條、九十九條は新らしい規定でありますが、これは民法の七百九十一條で父母と氏を異にする場合には家事審判所の許可を受けて同じ氏を名乗ることができるという新らしい規定が設けられ、又そういうものが元の氏に歸りたいと思えば歸り得るということが七百九十一條の第三項で規定されておりますので、これらの點は九十八條と九十九條で規定したわけであります。それから十三節の分籍は先程申上げました分籍ができる場合の手續であります。それが百條、百一條であります。
 それから次は國籍の得喪でありますが、實は國籍法は憲法の趣旨から鑑みまして、相當これを改正する必要があると考えるのであります。殊に國籍離脱の自由を新憲法で認めております以上、從來のような國籍法は内務大臣の許可等に掛つておる關係上、これを改正しなければなりませんが、これは國際情勢等がありまして、急には御審議を願うことができません關係上、一應はこの國籍得喪に關する條文は從來のまま、即ち百二條は從來の百四十七條以下大體從來通り踏襲した次第でありまして、これは國籍法改正の曉には、當然この點を修正いたしたいと考えております。
 次に第十五節氏名の變更、これは從來改性名に關する太政官布告がありますが、これを廢止しまして、氏及び名を變えることを緩やかにいたしたのが百七條であります。即ち名よりも氏を變えることがむずかしく、止むを得ない事由によつて初めて氏を變更することができる。それから正當な事由がある場合には名を變更することができることにして、いずれも家事審判所の許可によつてこれを變更することができることにいたしたわけであります。
 次の十六節の轉籍及び就籍は、これは大體從來通りであります。
 第五章の戸籍の訂正につきましても大體從來通りであります。
 それから雜則につきして、從來は戸籍事件についての違法處分、不當處分に對する抗告は區裁判所ということになつておりましたのを、家事審判所に不服の申立をすることができることにいたしたのであります。その他家事審判所に係らしめる事件が百十九條で列擧しておりますが、このものについては、家事審判所の適用については家事審判法第九條第一項甲類に属する事項として取扱うことにいたしたわけであります。百二十條以下は過料の制裁でありますが、これも從來の非常に少い金額を高くいたしただけの事柄であります。それから過料の裁判については簡易裁判所の管轄にしたのが百二十三條であります。大體以上で以て本則の方は終りまして附則でありますが、これは從來の戸籍をどうするかという問題につきまして百二十七條、百二十八條等で、從來の戸籍は大體そのままにいたして置く。そしてこの戸籍法の適用については、この新らしい戸籍法で作られたものと擬制いたしたのであります。即ち百二十八條で、舊法の規定による戸籍は、これを新法の規定による戸籍と一應みなして、ただ新法施行後十ヶ年内にこれを新法によつて改正して行きたいという方針を表わしております。順次改正されることになります。
即ち今後新らしい婚姻ができるとか、或いは分籍があるとか、或いは新しく子供を生んだ者があるというような場合には一々新戸籍を編製して行きますので、大體十年も經てば全部新らしく變つて行くんではないかというふうに考えておりますが、少くとも十年以内にこれを全部新らしくいたしたいという方針を百二十八條で表わしておるわけであります。その外大體の新舊の移り變りの場合における經過規定と、それから廢止すべき法令が掲げておるのであります。甚だ簡單でありますが、大體以上がこの改正戸籍法の大體の御説明であります。
#6
○委員長(伊藤修君) 質疑がありましたらばこの際質疑をお願いいたしたいと思います。
#7
○大野幸一君 只今最後の御説明の百二十八條ですが、「これを新法の規定による戸籍とみなす。」こうあります意味ですが、どうも新憲法ができても戸籍謄本を取ると戸主という言葉が削除されていないのであります。これは謄本を交付するときには今後は戸主というのを抹消するように適當にその係りの人が抹消して出すようにしたいと思うのですが、どういう御所見でございましようか。
#8
○政府委員(奧野健一君) 本來は御説のように新憲法、新民法によつて戸主というものはなくなつたのでありますから、全部を新らしく戸籍簿を作り替えたいのでありますが、資材の關係、人手の關係等によつて到底そういうことはできないので、從來通りでこれを新法の規定によつて戸籍とみなすというような甚だ亂暴な法律の擬制でありますが、そういう意味で謄本等におきましても從來通りにいたしております。結局それはこの法律に當篏めますと筆頭者、戸籍の筆頭に記載した者という趣旨で戸籍の表示というような場合、今までの戸主の所に書いておつた者と本籍の地番號で表示するということにしてその點まあ止むを得ず從來通りになつておるわけであります。
#9
○鬼丸義齊君 この戸籍事務が從來區裁判所であつたものが改正法によりますと司法事務局の方に移されておりますが、勿論司法事務局は裁判所の所屬でありますが、これをなぜなぜ家事審判所の方に所管を移さなかつたかという點について伺いたいと思います。
 それが一つと、第二點として新戸籍を作りまする場合には氏というものは勝手に決めて差支ないのでありますか、尚子供の名前は殊更平易な名前によれということでありますが、これは男女共に漢字たると假名であろうとそれは自由であつて、何等の制限は行わないのであるか、若しそれ自由であるとするならば、非常な混亂をするのであるが、そこまでなぜ擴げなければならないのか。その理由を伺いたい。それから氏の變更、これも今度非常に容易くできることになつたようでありますが、そういうことを一體しなければならない理由はどころにあるか。それがためには從來極めて秩序ある戸籍の制度があつたにも拘わらず、今度こういうふうなことになりますと非常な混亂に陷るような感じがいたします。そういうことをしなければならない必要がどうしてあるのか。成るほど民法改正の結果によりまするこの中には幾つかの戸籍法の改正の必要な點がありますけれども、この際非常に何もかにもが自由になりましたがために、それがために從來の秩序を著じるしく亂して、その所屬が非常な混亂をするのじやないかということを憂えます。その點について先ず伺いたい。
#10
○政府委員(奧野健一君) お答えいたします。先ず第一に戸籍の監督機關を司法事務局にいたしたのでありますが、何故家事審判所にしないかという點であります。從來は區裁判所が監督いたしておりましたのでありますが、これは裁判所系統におけるまあ最高の監督が司法大臣という行政機關が持つておつた關係上、裁判所にもそういつたような行政事務を取扱うことについて別段それほど支障がなかつたわけであります。純粹にいいますれば、裁判所は裁判を審議し、それから行政事務は行政機關が行うというのが憲法の趣旨と考えてますが、從來は司法大臣というものが裁判所を監督しておつたので、同時にその裁判所にも裁判以外の行政事務を取扱わしむことにいたしておる。結局その行政事務については、司法大臣が國會に對して責任を負うという關係から是認されておりましたが、裁判所が純然たる司法機關ということになりまして、司法大臣と司法省と獨立いたしますと、純粹な裁判については最高裁判所が獨立して、何等責任を、裁判の方法以外で責任を問われないのであります。そういう國會に對して全然無答責な機關が裁判以外のいわゆる行政事務、戸籍登記、或いは供託或いは公證といつたようないろいろな今ま
まで裁判所に蜀しておりました行政事務をも依然としてやるということでは、そういう廣い分野における行政事務の責任の所在、いわゆる國家に對して責任を負うことができない。而も行政であつて而かも國會が責任を問うことができない部面が大きいということは新憲法の趣旨に反するものと考えますので、裁判所が獨立すると同時に、そういつたような行政事務はいわゆる現在の司法大臣の下でこれをやる。將來は法務廳においてこれをやるということにいたしたのでありまして、これは五月三日からすでにそういうことに法的に分けておるのであります。そういうわけで、この仕事は要するに裁判所系統に屬しない行政事務として取扱われるということにいたしたのでありまして、そういう意味で家事審判所もやはり裁判所なのでありますから、家事審判所の行政監督に任しない。唯勿論市町村長等の取扱いの不當である場合は家事審判所に不服、いわゆる抗告を申し立てることができることになつておりまするが、それは裁判的な意味におれる不服の申し立でありまして、行政的な意味の監督はいわゆる司法大臣系統、いわゆる行政系統で監督するということにいたしました結果、その取扱いの不當な點については家事審判所に不服の申し立してをするということになつておるのでありまして、このことは百十八條に明らかであります。そういう裁判上の監督を要するに家事審判所がすることになる。行政上いろいろな記載の紙を世話したり或いは記載例を作つたり、或いは記載の行政的な指導を行つたり、そういつたような行政事務は司法省、將來の法務廳が行うということになつておるのであります。
 それから第二の御質問は、新らしく戸籍を作るときには氏は自由にし得るかというと、それはそうでないのでありまして、例えば分籍、新らしく戸籍を作る場合は、第一は婚姻の場合であります。婚姻の場合は必らず夫たるべき者、若くは妻たるべき者の何れか一方の氏を稱さなれりばならないことになつておりますので、その場合は新戸籍を作るにしてもやはり新らしい氏ではなくて、夫婦どちらか一方の氏ということになります。又十七條で子供ができた場合に新らしく氏を作ると言いますが、その場合でも、從來父親なり母親なり稱しておつた氏で新戸籍を作ることになります。又分籍する場合、いわゆる分家する場合でも、やはり從來の氏をそのまま踏襲しなければならないということになつて、その點從來通り變らないので、新戸籍編製のときに自由に氏を勝手に作るということができないのでありまして、ただ捨子について一時新戸籍を作る場合でありますとか、或いは國籍を取得した場合でありますとか、就籍の場合というような特殊の場合について新らしく戸籍を作る場合に限つて、新らしく氏を作ることができますが、これは從來とも全然變りのないやり方であります。
 次に子供について平易な名前を用いなければならないということにいたしたのは、これは漢字の整理等の關係から、餘り常用されないようなむつかしい文字で名前の屆出、出生の屆出があるということでは、漢字を統一して段段整理して行こうという趣旨に反するからということで、各方面からの要望がありまして、常用平易な文字で名前を附ける。いろいろに漢字の制限をやつても、名前が非常にその範疇に屬しないいろいろなことがあるので、一番困るのは地名及び姓とか名前において困つておるという非常な要望がありまして、是非こういう規定を設けて貰いたいという要望に基いていたしたのであります。それから姓及び名の改正、いわゆる改正名につきましては、從來は太政官布告においてやはり百七條と同じような規定があつたのであります。尤もこれは家事審判所の許可ではなくて、地方長官が所管しておりましたが、これが今囘司法省所管になつて、それでこれは家事審判所の許可にするのが適當であろうということで百七條に規定したのでありますが、これは特にやさしくなつたというふうに申上げましたが、これは止むを得ない事由というものを如何に家事審判所が今後判斷するかによつて決まる事柄であり、名前
については正當な事由というものもどういうふうに家事審判所が許可を與える際にこれを理解するかということによつて決まるもので、止むを得ないということを非常に嚴重に考えますと、殆んど氏の變更ということは認められない、從來と同じことになるのではないか。併し全然氏を變更することを許さないということも如何かと考えるのでありまして、例を擧げますと、非常に長い氏とか、或いはグロテスクな氏といつたような場合に是非止むを得ないと考えられる場合もあろうかと思いますが、これは尚氏を變えるときは眞に止むを得ない場合に限定して、濫用されることは萬々ないと考えております。要するに、やはり氏の變更は從來通り殆んど、よくよくのことがなければ許可がないのではないかというふうに考えておりますが、從來といえどもよくよくのことがあれば、太政官布告によつても氏を變えることを許しておるのですが、實際はそれに當篏まらんというようなことで許されていないので、運用如何によつては勿論從來と變りがないことになります。それから正當な事由の場合につきましても、從來は同じ戸籍の中に同じような名前の者があるとかいつたような、襲名の場合であるとかいうような場合に、名の變更を認めておりますが、正當な事由によつてというので、やはり同じようなことになろうかと思います。或いは場合によつては、今後は從來自分の名前が常用文字で表わされていないような場合の變更というようなことも、正當な事由として變更を許可されるようなことになるんではないかと考えますが、これはすべて裁判所である家事審判所の判斷に俟つことになるというふうに考えますので、御心配のように、この新戸籍法の適用によりまして、無用の混亂を來すというようなことは萬ないと考えております。
#11
○鬼丸義齊君 子供の出生の場合に、父母いずれかの氏を選擇することは、これはやはり父母兩者の間において勿論できるでありましようが、その場合に父母兩名の意見で以て別な氏を起すということも許されるかどうか。父母兩者の氏の何れかに決し難いという場合に、新らしい氏を設けることも宜じいかどうか。若しそれとするならば、同じ戸籍内に氏の違うようなことにもなる。それが第一點。尚この際戸籍というものの意義、この意義をどういうふうな、從來のごとき戸籍の意義で變るところないのか。或いは又戸籍の意義について政府の方では新らしい意義を持たれるのであるかどうか。この點を伺いたい。尚戸籍の屬する所、屬する場所については勿論法規上制限はありますまいが、これは例えば他の人と同樣なうちに戸籍を持ちたいというような屆出がありました場合に、幾多の復數なものも自由にできるかどうか。まあ戸籍のことでありまするから、場所の概念ではありますまいが、その場所はいずれの場合においても何ら制限を置かなくても宜いかという點について伺いたいと思います。
#12
○政府委員(奧野健一君) 子供の氏はこれは新らしい民法で決まつておりまして、嫡出の子供はその父母の氏、父母のどちらか、父又は母の氏になつておりますから、その氏を稱せなければならないので、勝手に父母の氏と違つた氏を稱するということはできないことになつておりまして、これは必らず父母の氏を稱さなければならない。ただいわゆる父なし子であるような場合におきましては、母の氏を稱せなければならないので、他の氏を稱することはできない。尤もそういう場合に、その父なし子が父から認知されたような場合は、民法七百九十一條で父の氏を家事審判所の許可を受けて稱することができる途がありますが、それまでは必らず母の氏を稱せければならないというふうになつておりますので、出生のときには必らず父母の氏か母の氏ということになるわけでありまして、そう自由に他の氏を稱するということは許されないのであります。
 次に戸籍でありますが、成る程これは從來は家というものがありまして、家の籍という意味で戸籍ということにいたしたのでありましようが、今後はそういう意味とは非常に違つて參りまして、要するに氏ということが、今まで家の氏をその家に屬する者が皆これを稱しておるということであつたのを、氏が各人の氏、各人の姓ということになつたのと同じように、戸籍というのは、結局その各人の本籍、まあ本籍ということからが家の場所というのでなくなつたので、各人の登録の場所ということになりますが、そういうむしろ各人の登録ということになるのであります。そこで、それはやはり市町村の區域内で、そのどの場所に本籍を置くということを決める必要があると、これが第六條であるのであります。從いまして、その點は大體從來と同じようなことになつて參りますが、その本籍である何々番地という番地は、どこに決めることも自由かということになりますと、この點は從來と同樣自由であります。でありますから、全然自分の住つてない場所、或いは人の住つておる場所の何番地に自分の本籍を定めるということも可能でありまして、この點は從來と同樣になつております。
#13
○鬼丸義齊君 そうしますと、今度の新らしい戸籍の意義というものは、戸籍とは各人の登録の場所を言うと、こういうふうに解してよいですか。
#14
○政府委員(奧野健一君) 結局そういうことになります。尤もその戸籍は、一夫婦と子供で以て一つの戸籍を編製いたしますが、概念としては、やはり家の籍ではなくして、各人の籍ということになつて參ります。この點は第十三條に、「戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。」ということで、各人についての登録ということで以て、各人ばらばらでは相互の間の關係が分らんから、或る一定の範圍、いわゆる夫婦と子供というのを一つのグループとして一つの用紙の戸籍として載るということになるわけであります。
#15
○鬼丸義齊君 そうしますと、この戸籍という文字が當らないのであります。戸籍という文字自體がお説のように各人の登録の場所であるというのであるならば、戸籍という名前自體もそれに副うようにこの際變えなければならないのではないか。
#16
○政府委員(奧野健一君) それは御尤もな點でありまして、我々も實にこの戸籍という名前をどういうふうに變えるか、或いは民籍とか、或いは人籍とか、いろいろ考えたのですが、從來やはり戸籍と言われておつて、非常にポピユラーに皆に知れわたつておる名前でございまして、止むを得ず、民籍とか人籍とかいろいろ考えましたが、結局戸籍というのは必らず家の存在と離るべからざる名稱とも考えられませんので、こういう名前を用いましたが、別によい名稱がありますれば、變更するに吝かではありません。
#17
○鬼丸義齊君 やはりこの審議のときに、人籍とかいうようなふうな議論も出て、それがやはり詮議に上つて、容れられないことになつてそういうふうになつたというわけですね。
#18
○政府委員(奧野健一君) 民籍ということも一應考えたのであります。
#19
○前之園喜一郎君 第六條によつて戸籍簿の根本というものが定められておるわけでありますが、百二十八條によつて、この規定によつて現在の戸籍を新法の戸籍とみなすと、こういうことになるわけでありますね。ところが、こういう規定がありましても、屆出があつた場合、例えば老夫婦と子と孫と一緒におる。子と孫だけで新たに戸籍の編製をして貰いたいという屆出があれば、それは當然受理されることになるわけでありますが、屆出がない場合にはやはりそのまま置く、こういう趣旨になるわけでありますか。
 それから子供の屆出に關する問題でありますが、親子關係存在の訴訟が確定いたしまして、子供が離籍されるような場合、こういう場合に、實父母がその子供を自分の子供として出生屆出をしなければならない義務があるわけでありますが、實際において實父母が分らないことがままあるわけであります。親子關係存在の訴訟でありますと、子供だけを相手にいたしまするから、實父母或いは實母が知らないというような場合が往々にあるわけであります。それらの場合に對して、結局屆出もなければ、新らしい戸籍の編製もできないというような場合には、いつまでもその子供は無籍者でおらなければならんということになるわけでありますが、そういうような場合に、どういうようなふりにするかということがこの戸籍法の中にはないようでありますが、そういう點について御研究になつておるならばお答え願いたいと思います。
 それから百七條の氏の變更の場合でありますが、筆頭の記載者の變更したという場合、つまり夫なり妻なりが氏の變更をした場合、その妻なり或いは夫なりが氏の變更を希望しない場合があるかも知れない、筆頭の記載者が變更を希望しても、その同一戸籍内にある妻なり夫なりは希望しない場合もあり得るわけでありますね、そういう場合でもやはり筆頭記載者が氏の變更をすれば當然その妻なら夫なりも氏の變更をされるということになるわけでありますか、つまりその意思に反してそういうような結果を生ずるということになるわけでありますか、そういう場合でもやはりこの條文から行くと止むを得ないという御解釋になるのでありますか、そういうような點を伺いたいと思います。
#20
○政府委員(奧野健一君) お答えいたします。先ず第一に現在のでき上つておる戸籍につきましては、假令三代、孫まである戸籍でも從來通りそのままにして置きます。ただ百三十一條にありますように、或いは特に分籍等で新戸籍を作りたいというふうなことがあるとか、或いはその戸籍にある者が新らしく婚姻をする、從つて十六條によつて新戸籍を編製するというような場合、或いは戸籍の或る者が新らしく子供を儲けることによつて十七條で新戸籍を作る必要があるといつたようなことによつて、新戸籍が段々作られて行く。そういう屆出がなければ從來通り三代でも四代でもの戸籍がそのまま今後ずつと殘つて行くわけであります。
 それから最後の問題でありましたか、筆頭の者が氏を變えることになるわけでありますが、氏を筆頭の者が許可によつて變えられた場合には、その同じ戸籍にある者はやはり全部同じ氏を稱せなければならない建前になつておりますので、全部變つて來るわけであります。そういうわけでありますから氏の變更の許可を筆頭者に許可する場合には、そういう關係も十分考慮して、その戸籍におる者の意思も十分確めた上は許可することになるので、非常に止むを得ない事由というようなことについて、十分嚴格に檢討されることになると思います。若し許可されれば全部が變ることになります。でなければ轉籍、分籍等をするより仕方がないと考えます。
 今一つは、第二の問題でありますが、親子關係不存在の確認の訴え等がありまして、そういう場合にはそういう判決があれば、戸籍訂正をいたすことになつております。その場合にそういう意味で父親の方の戸籍から除くことになりますが、母親が分らないので母親の方の戸籍に入ることができないという場合におきましては、止むを得ず就籍の手續を取つて、新らしく戸籍を作つて、將來母親が分るようになれば、母親の方の戸籍に訂正をするということになろうと思います。
#21
○前之園喜一郎君 就籍の手續は誰がすることになるのでありますか。
#22
○政府委員(奧野健一君) これはやりは子供がすることになります。
#23
○前之園喜一郎君 子供がするといつても、子供が全く意思能力のない場合が往々にしてあるように思います。それができるものであればそれは問題はない、全くそういうことのできない子供に對しては、現在そのまま無籍者であるものが相當あるのじやないか。私ども扱つた事件でも二年も三年も無籍者のままであつたという事例が多いのであります。
#24
○政府委員(奧野健一君) そういうように親權者が、今まで父が親權者でありましたのが、父との關係が確定判決によつてなくなりますと、結局親權者がないということになりまして、後見人を選定して、これは家事審判所によつて今度は選定されることになりますが、その後見人からそういう手續を取るより外はないと思います。
#25
○前之園喜一郎君 後見人の選定も申請をしないという場合はあり得るわけです。誰も親族會等の招集をしないという場合はどうなるのか、やはり昔のまま置くのかどうするのか承わりたいと思います。これは當然戸籍法の中に考えられるべき問題だと思うのであります。
#26
○政府委員(奧野健一君) それが誰も後見人選定の手續を取らなければ止むを得ないわけでありますが、捨子のような場合には、捨子の手續によつてやりますが、そうでない場合においては、全然意思能力がなくて後見人の選定の手續も取る者もないということになれば、現在のところこれは戸籍に載らないで止むを得ない、そういう状態ができることになるのでございます。
#27
○前之園喜一郎君 そういうことは實に私は不都合千萬だと考えて、從來から非常にその問題に對しては眞劍に考えたのでありますが、將來においては私はこういうような問題が非常に多くなるのじやないか、道義の頽廢その他男女關係がルーズになると、つい人の子供として屆出るというようなことが多くなるような傾向にあるのじやないかと考えられる。そういう場合に何等それを戸籍に記載せしめる方法はないということになつて、無籍者であるということになると、學校の就學もできない。いろいろな法律上の問題を生ずるわけでありますから、この問題に對してはそれは止むをえないというふうにお考えになることは、私は非常に誤つたお考えだと思うのであります。
#28
○政府委員(奧野健一君) 捨子のような場合についてはその手續がありますが、そうでないそういつたような孤兒のような場合については、やはり教育施設の方に、保護施設の中にその者が収容される場合には、そういう各種の法律によつてそういう教育施設の長が親權なり後見人の權限を持つておることになつておりすから、そういう施設の長がそれぞれの手續によつて就籍の手續ができることと考えております。
#29
○前之園喜一郎君 そういう施設、養育施設の中に入つて行かない者はどうなるのでございますか。
#30
○政府委員(奧野健一君) それは誰か養つて何とかしなければ、赤ん坊か何かなら誰か監護する者があるだろうと思います。
#31
○前之園喜一郎君 あるだろうじや困る。法律の上で明確にして置く必要があるのじやないかと思います。
#32
○委員長(伊藤修君) 尚政府委員にお調べ願つて、次囘に御答辯を願うことにして……。
#33
○鬼丸義齊君 先程戸籍の意義について、各人の登録の場所をいうという御答辯がありましたが、私はこれはむしろ本籍の所在をいうのじやないかと思う。私のお尋ねしたのは、本籍のことでなくて戸籍の意義がどうであるか、こういうことを伺つたのであります。その點を一つ明確にして頂きたい。もう一點、尚この戸籍法によりまして二代戸籍の主義を採られましたことによりまして、當然子供が妻を迎え、更に又子供を生めば、親子が別の戸籍に入る、こういうことになります。これは感情的において、從來同一戸籍にあるということにおいて、非常に親子關係の感情が細やかなものがあつたと思いますが、これを法律上殊更二代主義になさなければならない理由があるかどうか。むしろそれは本人の自由意思に任した方が、私は國民感情というと大袈裟でありまするが、親子間の感情の意味におきまして、むしろ三代でも四代でも、本人の自由意思によつて同一戸籍内にあらしめるということの方がいいのじやないか、かように考えまするが、その點を伺います。
#34
○政府委員(奧野健一君) 第一點でありますが、お説のように何々何番地というのは、その戸籍全體の所在をいうので、戸籍というと、やはり夫婦、親子というものが一團となつたものが即ち戸籍ということで、その本籍といいますのは、その戸籍の場所ということになるわけで、本質はいろいろ考え方がありましようが、この建前としては家というものはないが、夫婦、親子というのを一團として戸籍を作つて、その戸籍の場所を本籍というふうに考えておるわけであります。
#35
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#36
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて下さい。
 この法案に對する質疑はこの程度にしておきまして、尚この法案は明後日審議いたしたいと思いますが、若し修正點その他がありましたならば、その日までに、一つ成るべく各派においてお纏め願いたいと思います。それでは大變御迷惑ですけれども、速記の關係上もう一案お願いいたします。
 昭和十九年法律第四號經濟關係罰則の整備に關する法律の一部を改正する法律案を議題に供します。先般鬼丸さんから質疑續行を願われておつたのですが……。
#37
○鬼丸義齊君 もう別にありません。
#38
○委員長(伊藤修君) 質疑はまだ繼續になつておりますから、質疑のある方はどうぞ。別に御質疑もないようでありますが、質疑を終結することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#39
○委員長(伊藤修君) 質疑はこれを以つて終結いたします。討論を省略いたしまして、直ちに採決に入ることに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○委員長(伊藤修君) それでは直ちに採決に入ることにいたします。
 本案全部を問題に供します。本案全部に對して御贊成の方は御起立を願います。
   〔總員起立〕
#41
○委員長(伊藤修君) 全員起立、仍つて原案通り可決すべきものと決定いたします。尚本會議における委員長の口答報告については、豫め御了承を願つておきます。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○委員長(伊藤修君) 次に只今御贊成の方は御署名をお願いいたします。
   〔多數意見者署名〕
#43
○委員長(伊藤修君) では本日はこれを以て散會することにいたします。
   午後零時二十三分散會
 出席者は左の通り
   委員長     伊藤  修君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           中村 正雄君
           奧 主一郎君
           水久保甚作君
          池田七郎兵衞君
           鬼丸 義齊君
          前之園喜一郎君
           岡部  常君
           松村眞一郎君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  政府委員
   司 法 次 官 佐藤 藤佐君
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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