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1949/04/11 第7回国会 両院協議会・合同審査会等 両院協議会会議録情報 第007回国会 両院法規委員会 第5号
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1949/04/11 第7回国会 両院協議会・合同審査会等

両院協議会会議録情報 第007回国会 両院法規委員会 第5号

#1
第007回国会 両院法規委員会 第5号
昭和二十五年四月十一日(火曜日)
    午後二時十分開議
    〔衆議院両院法規委員長高橋英吉君が会
長となる〕
 出席委員
   衆議院両院法規委員長   高橋 英吉君
   理事           角田 幸吉君
      尾関 義一君    田中不破三君
      藤枝 泉介君
   参議院両院法規委員長   松村眞一郎君
      岡部  常君    竹下 豐次君
      羽仁 五郎君
 委員外の出席者
        衆議院法制局長 入江 俊郎君
        参議院事務総長 近藤 英明君
        参議院法制局長 奧野 健一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 米国の議会及び州議会の運営に関す説明聽取
    ―――――――――――――
#2
○会長(高橋英吉君) ただいまより両院法規委員会を開会いたします。
 かねて懸案となつております渡米議員団より説明を聞くことにつきまして、幸いこちらに参議院の事務総長が見えておりますので、これより米国の議会運営に関しまして、説明を聞くことにいたします。
#3
○参議院事務総長(近藤英明君) 議員団といたしまして、いろいろ調査いたしました事項等につきましてお話しろいうことでありますので、申し上げたいと存じますが、実は出かけます前に、議員団としてはこれこれの問題をとにかく調べようというというので調査項目をつくり、それにまず重点を置いた次第でございます。しかしながら実際向うに行つてみると、直接聞かなくてもいいことが多い聞いてもむだであるということが相当ある。もう一つは、これ以外に調査しなければならぬ面があつたということが、一番大きな問題であると思います。それは御承知の通り、徹底した三権分立主義をとつておるアメリカ議会と、一方議院内閣制がとられておる日本との間には、大きな開きが当然あつて、こちらの議院内閣制のもとで、アメリカのこういう点はどうなつておるかという疑問にぶつかつた点、これが非常に違つておるじやないかということが、感じました一つの大きな点であります。
 第二としては、法規的に調べました場合には、私どもが突き進んで聞けば聞くほど、制度そのもの、あるいは法律そのものから申しますと、必ずしも完備していないという感じを受けた点であります。逆にその完備しない法規が、きわめて円滑に、きわめてうまく運営されておる。こういう点が一番目についた点でございます。一番はつきりいたしましたのは、参議院において懲罰権の発動の問題について、非常に御研究を続け、継続審査までやつておりました関係から、懲罰委員長からこの点についてかなり細目にわたつて調査を要求されて参りまして、向うにも資料を要求し、あるいは個々に問い合せましたのでありますが、どうも懲罰のもとになる議長の議院規律権というような点が、法規の面で当つて行きますと、きわめて簡單に、ハウスは懲罰権があり、除名もできるという点がありますだけで、細目的には非常に大ざつぱで、穴が多い。しからばこれでうまく行つておるかというと、非常にうまく行つておるという結論が得られる。幸いカナダへも呼ばれましたが、カナダにおきましても、アメリカの各州においても、全部その点を当つてみますと、大体同じことが言えるのであります。
 一つは議長の院内規律権というものが絶対と言つていいくらい強い。従つてまず第一次的には、議長の権限をもつて、あらゆるそういう面が措置できるのじやないかと感じました。特にその議長権限の強さというものは、アメリカも非常に強いのですが、カナダの場合でも、議長の地位は尊嚴そのものじやないかということを、議場において現われた面だけでも第一に感じました。それは議場において議長が黒いガウンを着てすわつておる。事務総長も黒いガウンを着てその横にすわつております。議長が起立されますと、全員何人といえども沈黙して着席しなければならない、こういうことになつておる。そこで私は、これがやはり今の懲罰問題にも関係する点だと思いまして、追究して聞きました。かりに議長が立つた場合、なお討論に熱するあまり、立つたままで発言しておつたら、どういう処置をおとりになるかと聞いたら、そういうことはまずないが、もしあるとすれば、議長はその場合に、どこそこ選出の議員さんという言葉で注意を與えられる。その場合には必ずその人は着席しなければならない義務がある。のみならず必ずそれに従うということでありました。なおもう一段突き進んで、その場合になおかつこれに応じない場合には、いかがなされるかと言いましたら、そのときには、どこそこ選出議員という名誉ある言葉を使わない。議長はただちにミスターだれそれという言葉を使います。これは重大なる事件である。議長がミスターだれそれということは、通常の場合は考えられない。もし議長が言われたときには、すぐこれを守衛長が引出してしまう。これは議長の職権として、守衛長がただちに職務執行を行つて、その議員を退場させる。その場合はどうなるかといいますと、ただちに退場を命ぜられる。守衛長が、どうぞ私について出てくださいという鄭重な言葉を使うそうであります。そうしますと、それについて出なければならぬ。もちろん議場に大勢の守衛がおるわけではございませんから、その点も実は心配して、もし守衛長がひつぱつても出ないときにはどうするかということを聞こうと思つたのですが、そこまでは遠慮して聞かなかつた。守衛長がこちらについて来てくれと言うて連れ出す。そうなれば、その人は再びハウスの議決で復席を許されるまでは、一切の議員としての権能を停止されて、議席に帰れないということを申されました。それからアメリカの各州議会におきましても、そうい点をいろいろ聞いてみていますうち、サウスカロライナのコロンビアの州議会を見ておりますときに、守衛長といろいろ休憩中に懇談いたしましたが、あなたの方で議長の権限を行使する場合に、何か困ることはないかと言いましたら、非常に考えておりまして、そうだ、三年に一回くらい非常に手をやくことがある。あそこは夜議会を開くが、夜の会食後に出て来られて、ややごきげんがよくなつて出席して、発言された場合に、あなたは今夜御遠慮を願いたいと言うと、自分はきようは大丈夫だからと言つて続けようとする。そのとき失言をして、酒のせいだということになると、とんでもないことになるからと言つて、遠慮願うということがある。こういうことを申されました。
 そこで議長の権限でございますが、院内においては非常に強い権限を持たれると同時に、議長の権限を表わす態度といいますか、これが非常に厳粛に行われております。と申しますのは、州議会でも議長の入場される場合には、守衛長が議長の権標、メースと言いますが、議長の権威を表わす金のりつぱな飾り物、王冠のついたものや、劔の形をしたもの、こういうようなものをみな捧持して議場に入ります。そうして議長が入られる場合には、全員起立してそれを迎えます。そして議長が入ると、続いて所薦をする人が入つて参りまして、その日その日の祈りをささげます。ちようどこの日は日本議員団も来ておるし、日本国との間にりつばな関係を確立するというような、その日その日によつてかわつた折りの言葉を使うそうであります。祈りをささげて、それから議事に入る。こういう情景のもとで行われますので、やはり議長の権限というものが、法規に現われた以上に強く行われ、議長の命令によく従わなければならぬという環境に置かれるのではないかということを、特に感じました。議長というものが議院の権威そのものである。一番重要な機関として、国権の最高権威が議長によつて表わされる。議長が一たび議場に入れば、議長の職権が行われて、権威がそこにあるのだという建前でやつておるのを見ますと、なるほど懲罰委員会のような常任委員会はなくてもよい。日本の懲罰委員会のことをつい申しましたら、それは一体どんな委員会だということで、実はスタンデング・コミテイだと言つたら、非常にふしぎそうな顏をされまして、これはよけいなことを言つたと、後悔したくらいでありました。そういう点は確かに議場の風景がすでにそういうふうになつておるのじやないかということを感じました。
 それからもう一つは、これは皆さん行かれた方が感ぜられた点であると私は思うのでありますが、議場内における対立的な空気というものが非常に少く感ぜられる、それは、何が原因だろうという点を見ますと、その原因が二つあると思うのです。一つは独立していて、まつたく行政府と関係がない。行政府の役人は議場へ出席することができない。大統領がメッセージを読むことができるだけであつて、議場に行政府の役人が現われることはできない。委員会で証人として呼び出して、行政府の役人の証言を聞くだけであるということで、行政府との関係が非常に薄く、またかりに行政府をいかにやつつけることができても、そのかわりに行政府をとるという関係がない。議院内閣制でないという点から来るのが一点だろうと思います。
 それからもう一つは、政党組織の点が非常に問題になる。それは投票がよく割れる。重要な法案に対してかなり投票が割れるという状況を見ております。現に私どもがワシントンにおりますとき、二月二十二日はワシントンの誕生日でございまして、正午から祝典が行われ、午後引続いて会議に入つた日でございますが、その日はほとんど夜が明けるまで会議が行われた。ちようど私どもはカナダへ行く予定で、飛行機に乗る関係から、その議事には列しなかつたのでありますが、翌日の新聞で見ますと、たいへんにぎやかであつた。しかもフィリバスターが行われたということが大見出しで出ておつたのであります。おそらく共和党と民主党とのフィリバスターが行われたのだろうという想像で中を読んでみますと、そうじやなくて、デモクラットが、二つに割れてのフィリバスターであつた。それは南部諸州と北部との対立であつたわけであります。就職に関する差別撤廃の問題が法案になつて論議された。南部諸州がその問題については非常に強い関心を持つておる関係で、南部のデモクラットの諸君が反対の立場に立たれて、そして議事を延ばすために動議を次々と出して、その動議の採決と討論とのために、ほとんど夜を徹して論議された。こういうことにぶつかりましだが、そういうことを見ますと、党議拘束というものがきわめて弱いのではないかという疑点に達しました。
 そこで一党の党議拘束というものは、一体どの程度行われておるか、どういう措置をおとりになるかという点を、突き進んで質問いたしますと、党本部というものは、党所属議員団とは別個に存在しているということであります。そして党本部には議員に入つていない。そして党本部は何をするかというと、これは党の政策を樹立すること、それから議員の選挙に関する一切のおせわをする。そしてまず候補者を選定する。それから候補者として公認した人を議員にあげる場合の選挙費用を集め、選挙費用の支出をすること、これが一番大きな仕事であるということ、これはデモクラットとレパベリカン両党本部で一致した御説明でございました。両党のナショナル・コミテイに参りまして、そこのチェアマンにも会いましたが、これが事実上党の総裁というような地位だそうでとざいます。ところが党総裁というような地位の者は筆際にはないわけでありますナショナル・コミテイの委員長がそういう地位であられるそうでありますが、党の最高機関はと申しますと、党大会が最高機関であり、常時執行する機関はナショナル・コミテイである。その委員長が一番権限を持つておる。委員長と大統領はどういう関係にあるかと聞きますと、大統領は政策樹立については党の委員長と協議して定める。それでは議員に対してはどういう働きかけをなさるかというと、議員に対しては、わが政策はこういうように定めておる、その方針に従つて立法してもらいたいという連絡をするだけで、院内では議員の自由であるということでありました。そういうように党本部と議員との関係が違つておる。そこで今度は議員に関してですが、選挙区と約束されたことについては、党議できまつたことについても留保ができる。留保して自分の選挙区との約束を守るということを申しておりました。そういう点で、党議が常に南部なら南部という地区的な関係で、非常に割れるという問題が起るのではないかと思います。それからついでに党の本部のことについて聞きますと、党本部のことは党員の直接選挙でございまして、これは各州から党員の直接選挙で選んだ方が出られて、党本部の役員になつておられる。議員は議員で別個に、党員の投票によつて、選挙民が投票して出て来られる。全部分業であるというような感じがいたします。分業になつておる関係で、自分の受持分だけで闘えば済むという点で気が楽らしい。それから地方議会へ参りますと、地方議会はさらに政党の関係が薄くなつておる。市会などは選挙のとき以外には、まず関係がないと言つていいくらいだと感じます。
 それから運営の面で見て参りますと、委員会がやはり一番大きな役割を演じておるように感じます。行政府が立案に関係しないために、ほんとうに議員だけで重要法案が全部立案されておるかどうかということは、私どもとしても一つの大きな疑問であり、注意すべき点だと思いましたので、この点をいろいろ当つてみますと、図書館にも、立法考査局に非常に大きな組織をお持ちになつております。そしてこれが有能な専門家を持つて活動をされておりますし、また各常任委員会には四名のコミテイ・スタッフがついております。そのうち一人がディレクターになつて、委員長と直接交渉なさる、他の三人はディレクターの下についておる。四人がばらばらでなしに、一本のピラミッド型に組織されたスタッフがついております。これは委員長の直接選任される機関であり、委員長だけが任命権を持つておるという建前になつておりまして、俸給の支拂い、その他人事は事務局が持つておりますが、選任権は委員長がお持ちになつておる。この専門員が非常に活動をされおりますし、なかなかよく勉強されておると思う点もあります。また発言なども非常に自由になさつておる、公聽会で商務長官が人造ゴムの問題で証書をしたときに、委員長の質問が一番多かつたし、特に相当辛辣な質問を続けておりましたが、その途中から前の方におりました専門員が盛んな質問をやり出しまして、かなり鋭く追究されておりました。一体専門員は何の権限で、どういう法規で質問が許されるのかといいますと、これの権限はない、法規は何もないが、やはり専門員にも、専門の立場で聞いてくれることを一番利益たと考えて、委員長が希望されておる。また委員も希望しておるから、私ども専門員は質問いたします。こういうことでありました。そういう機関を持つておりますから、むろん専門員を使い、それから図書館をお使いになれば、相当の立法はできるはずですが、大体立法する場合に、それだけじやできないかというので、聞いてみますと、やはり行政府が原案は作成しておるそうであります。政府がこういう法律を出したいというときには、各省にある法制局で法制化しまして、それを予算局の中の法制局といいますか、そういう立法局のようなところへ持つて行きまして、ここで一つの国家的立場で統制したものにして、行政府として原案をつくる。それをドラフトとして、その所管されている委員長にお願いして、委員長の名をもつて委員会案にしてもらうか、あるいは委員長からさらに他の委員に委嘱してもらつて、その姿見からお出し願う。ですから、今のように大統領とハウスの多数党とが同じであれば、もちろん委員長におやりになつて、委員長は自分の党に属される委員に帰属されて、行政府の希望するような法律ができて来る。原案そのものについて、各省で必要であるというものは、やはり行政府がお手伝いする。あくまでこれはお手伝いであつて、国会がこれをお取上げにならぬ限りは、法案としての日のにあうことはできない。そういう点で、常任委員長というものは非常に高い地位を保持なさつておるのではないかということを感じたわけであります。
 それからもう一つは、委員長が非常に専門家になり切つておられるという点を感じました。というのは、今の商務長官に対する委員長の賛同が非常に鋭くて、商務長官は人造ゴムの証言に出ながら、しまいには本日は私は証言のために出席いたしましたが、委員長からきわめて有益なお話を伺つて感謝にたえませんと言つて、握手して帰つて行つた。あのくらい鋭くつつ込まれて、感謝の意を表して出て行つたということを見ますと、委員長はそうした専門の面に対しても、相当専門的な知識をお持ちになつておるのではないかと思います。委員長はどういうふうにして、そういうふうに専門家になつたかという点をいろいろ当つてみますと、シニュオリテイ・システムと申しますか、委員中の最古参者が常に委員長になる。古参者が欠員となる、あるいは次の選挙に出られない、あるいは老齢のために、どうも委員長は務めにくいというようなことでお譲りにならなければ、次の委員に行かない組織だということであります。従つて何回当選しても、議員は同じ委員会に所属している。決して委員の所属をかえないという建前をとつておるようであります。そこである年数を経れば、もちろんその委員会においては非常なエキスパートになられる。従つて行政府の長官が来て証言をされても、これに相当鋭い質問をすることができるのじやないかと考えられた次第でございます。
 それから特別委員会というようなものがあるかどうかということは、この前立法機能増進法で、特別委員会廃止ということが決定されておりましたので、ないのじやないかということで調べてみましたが、やはり現在も特別委員会は存在いたしております。
 それから定足数の問題が今日日本でも非常にやかましくなつて来て、今度参議院あたりは改選期になつて、定足数の問題でずいぶん心配いたされましたが、定足数の問題はあまり問題にされていないという肉情でございます。見ていますと、議長が入られ、祈りがあつて議事を始める。最初自由討議が毎日二人一分間ずつ許されます。自由討議をやつていますと、そのうちにだんだん集まつて、それから本論に入る。自由討議をやつておる間に人手はそろう、始まつてもまだ相当プライベート・ビルをやつている間は、少数でおやりになつております。常任委員会を始めても、常任委員会の方も定足数がない。定足数が問題になつたらどうなるかと聞いてみますと、そのときには入るのだと言う。登院数というものは常にわかつておるのかというと、議場で呼んでみなければわからぬということでありました。私たちは玄関で調べておるし、ことに標示器を使つて事務総長の部屋では知つておると申しますと、そんな必要があるか、日本では必要かしらぬが、自分の方は議場でロール・コールするまで何人登院しておるかわからないということでありました。これは建物の関係もございます。やはり控室がありません関係で、数えにくいのだと思いますが、議場で問題が起れば、そのときに氏名点呼をいたします。氏名点呼をしたときの数があれば、それですぐ退席してもよろしいということになるわけであります。通常は必要がなければ氏名点呼に入らない。投票の場合には、まず氏名点呼に入るわけでありますが、重要法案のときの一本の記名投票に当るもの、演壇へ投票を持つて集まるという方法は行われておりません。投票の様式はロール・コールの方法でありまして、リーディング・クラークが議長席の前から議員の氏名を順次呼びます。呼ぶと、その番に当つた人が立ち上つて、賛成だとか反対だとか返事をします。ずつと呼ぶのを見ておりますと、これで一体指名投票をやつているのかと感じられるくらいで、呼び始めるとその途中から続々と入つて来る、次々入つて来られて、ずつと一ぺん呼んで、もう一ぺんあと返りして呼ぶ。初めに返事のなかつた人をしるしをつけておいて、また呼んで、あなたはどちらですか、私は賛成だ。もう漏ればございませんか。私はまだだ。どちらですか。賛成です、という調子で、中にはそうしておるうちに、初め返事をなさつた方で、私はさつき賛成と言つたけれども、反対だからとりかえてくれ、反対の方でございますか、よろしゆうございますといつて反対につける。いかにも気楽な、記名投票のときのようなきゆうくつと言いますか、緊張した気分を感じなかつたのであります。非常にゆつたりした、投票が間違つたから直そう、はい、よろしゆうございますというような調子で投票が行われておる場面に数回接しました。指名投票はずいぶん頻繁に行われますし、そのためにずいぶん時間もかけておるようであります。ときには自然に数がふえる。それでもし指名投票をやるときに、数が少なければ投票が無効になる。それでかりに地域的な関係で、この法案は何とかじやましようと思つておるときには、ロール・コールを要求する、あるいは定足数を要求する。そのときたまたま土曜日の午後であつて、相当きようは欠けておるというときには、完全につぶすことかできる。これはよいフィリバスターであるということを言つておりました。フィリバスーにどういうことがあるかと質問いたしましたら、ロール・コールを要求すること、討論時間を千分に、なるべく長くとること、これ以外には方法はない。上院では討論時間の制限はしてないから、何時間もやれる。しかし実際制限の必要はないので、制限はしなくても、上院では一人が一時間ずつしやべつても九十六時間しかかからない。ですから一切討論には時間制限をしておりません。下院は四百三十六名の多数であるから、制限を加えるということで、大体重要法案につきましては、一時間とか二時間とか時間をきめて、両党が平等にやる。それは両党のフロア・リーダーが持つておつて、自分の党の所属者を指名して発言させる、その時間の範囲で適当な方にやらせる。その場合に地域なことで、フィリバスターとして、じやまをしようといえば、一時間しかないのを承知で、相当長くしやべる、それが自分の立場からじやまする結果になるというわけでありました。それでロール・コールの方法をよく見ておりますと、かなりおもしろい投票方法じやないかと思います。もう一つ、ロール・コールに入らない場合には、上から賛成か反対か聞いて、声の大きさで判断する、そのアイという声がたくさん聞えれば、大体賛成と見てそれで通す。また小さなプライベート・ビルがかかりますと、そのときには声がなければ賛成とみなして可決いたします。これを見ておりますと、一応書類をリーディング・クラークの前に置いておきまして、どんどん議案を読みます。そして声がないと可決と認めますということで、どんどん可決の方へ行きます。異議のあるものは、この次の機会にしてくれという声がありまして、横へ行つて、いつまでも進まないという方法をとつております。従つて全般的に議事がやわらかい運営じやないかという感じを受けました。
 これは連邦の議会と州の議会、市の議会、おのおの特色がある。連邦は連邦、州は州と、少しずつ組織も運営もみな違つておつて、画一的なものはございません。討論の方法でも、委員会の組織でも、ことごとく相違がある。みな違つておると言つていいくらい違つております。基本的な原則だけが同様であると言える程度だと思います。それで連邦の議会では議場の規律がやかましくて、タバコなんかも持つて入つておられないのですが、州の議会では、サウス・カロライナあたり、これはデモクラットの非常に強いところですが、ここでは議場がコカコーラやタバコを飲んでおるのを、常に目撃している状況であります。私もわきで見ておつて、あまりその風景がのんびりしておるので、スケッチをして皆に笑われたのですが、横を向いたり、雑談しておつたり、何か問題があればまつすぐ向くが、大体そんな状態です。横を向いておつていいのかと聞くと、大した法案がないから横を向いておるのだという返事でありました。なるほど大した法案もなかつたのであります。ほとんど横を向いて聞いておられない。それでさしつかえないかというと、大体さしつかえのあるなしは、最後には選挙民が判断するという返事でした。ことに大きな州、ニューヨーク州あたりの有力な議員は欠席が多い。それで一体因らないかと聞くと、やはり議事としては困ることもある。しかし困るかどうかをきめるのは選挙民がすることであつて、ハウスのきめることではないという返事を、向うの人たちはいたしました。これはニューヨーク州のりつぱな、有力な議員であれば、おそらく用務も多いだろう。そういう人たちに、常にハウスに出ておつてくれというのはむりだろう。そこでその人が州へ帰つておればよいと思つたら、州へ帰つている。それがいやなら次に出てもらわねばよいのだから、あえてハウスで文句を言う筋はない。まあこういうお話でありました。
 それからやじがアメリカの議会にあるかないかということが、途中で問題になりまして、どうもやじつているんじやないかという話が実は出たのです。ところがよく聞いてみますと、やじという言葉が当らないのであつて、他人の発言中に発言する者がありやいなやといえば、あるということなのです。決してやじではないわけです。やじというべきではないと言つています。ある人が議場で討論しておりまして、他の方が、その発言途中で疑問が起れば、「ジェントルマン・ウイル・ユー・イールド」と手をあげて、ちよつと私にゆずつてくれぬかと反対党なり味方から合図する。よろしいというと、そこで、あなたはこういう数字をあげておるか、これは間違いじやないか、私の州はこうなつておるか、これでよいかという、きわめて簡明な発言をいたします。これが相当上手に使われれば、やはりかなり発言妨害にもなると思うのです。そういうようなことが行われて、解説を加えられ、論議を進められるようなことが頻繁に行われては、迷惑になるのじやないかと聞きましたら、その場合には応じない自由があるから、そつちを向かなければよろしいということでありました。私ども法規集をとつたり、いろいろ説明を求めたりいたしましたが、法規集に現われているそのものよりも、運営という面で非常に法規の穴がふさがれている。結局三百年間やつていて、不自由がないからよろしいという返事を受けました。法規の質問を詳しくやつて行きますと、大きな欠陥があるということに同意はいたします。日本の法規はどうなつておるかと聞かれて、説明しますと、なるほどそれはよろしいと賛成されるので、もう少し聞いてみますと、こつちはこれでよろしいと言う。なぜかというと、三百年やつてちつとも不自由がなくて、これで動いているから、これでよろしいという返事を受けました。何というか、自信を持つた、板についた運営、あるいは歴史を基礎にした運営ではないかという感じを受けました。
 最後に、ちよつと申し落しましたが、両院協議会の関係は、向うのものを開きますと、これは両院の議が完全に一致した場合でなければ、両院協議会は成立たないという制度をとつております。日本では三分の二の多数で両院協議会の成案が得られますが、向うは全然全会一致でなければ、両院協議会の議を得ない。それでは得ないときの方が多いじやないかと聞くと、いやにたびたび得られていえだと言う。ではどういうようにして得られますかというと、得られるまで何べんでもやるんだ。一ぺんでだめなら、二へんでも五へんでも十ぺんでもやる。その場合に全期切れになつたらどうするかと聞くと、それはやむを得ぬから、またこの次続けてこの問題をやればよろしい。こういうことでありまして、両院協議をやれば、それがまとまるところまで続ける。それを見ますと、会期末のとことんまで両院協議会を開く状況ではないかと感じたのであります。日本の今のように、政府から法案が遅く出る状況になりますと、その点でむりがあると思います。
 そこで改革意見などにつきましても、議員団としていろいろこの間から御協議になりまして、それについて私どもも起案するように命じられ、この間から用意をいたしました。まだその起案したものを皆さんのお円にかけてきめておりませんか、その第一に私が申し入れておきたいと思いましたことは、日本とアメリカとは、いろいろ條件が違う。向うは三権分立主義が徹底しており、こちらは議院内閣制をとつていること。歴史の違いかあること。また現在の段階において、政党組織と議員との関係がアメリカと違うということ。あるいは議員のサービス機関である専門員制度、図書館制度、それらの点でいろいろ條件の違いがある。そこででき得ることはやるとしても、そういう條件の違いを念頭においてやらなければ危険がある。形のまねの方はできるとしても、運営のまねは困難だ。形のまねは、しいてやらなければならないようなものは見つけ得ない。精神のまね、運営のまねということになると、よほど慎重にしなければ、かえつて逆な効果が起りはしないか。それでは運営の面でいいものを取入れようとすれば、どういう点を取入れるかということで、この間も立案したような次第であります。雑なことを申し上げましたが、他に御質問がありましたら……
#4
○委員(角田幸吉君) きわめてつまらないことをお聞きしますが、向うでは行政官を証人に呼んで、やはり宣誓のようなことをさせますか。
#5
○参議院事務総長(近藤英明君) 私が見ましたところでは、宣誓はありませんでした。これは公聽会ですが、このときは公開でした。証人として行政府の人、利害関係者、専門家を呼んで聞く場合は、全部公開でまつたくあけつぱなしであります。この部屋の数倍のかなり大きな部屋を使つて、委員の方はまるく弧を描いて並び、委員長のところは少し引込んで、その前の方に専門員が一、二人おり、証人はその前の低いところで、行政府の長官あたりがそこにすわつておる。傍聽人が議場にずつと並んで、その横の方に新聞記者がおります。そうして証言をされるときには、事前に文書が提出されております。こういう問題を質問したいということで、議員から要求があると、その証言さる方は事前に証言をプリントされて議員に配つておく。大体この間見ていると、商務長官は人造ゴムのことを原稿通り朗読されました。そのときはやはり非常に公式的になると見えまして、公開で、各放送局のマイクがずつと並びまして、それに向つてどんどん朗読されております。それに半日かかりまして、午後になつて初めて質問にかかります。今度は委員長側が強力な質問をされる。さらに専門員から、専門の方面で質問される。そのヒヤリングが全部終りますと、ほんとうのエクゼキューテイブ・セッションになるわけですが、この場合議案の運命がどうなるかきまるのは、このあとの秘密会です。これは公開でなく、全然第三者は入りませんで、今度は小さな部屋に入つて、委員と委員会専属の専門員、委員会専属の職員だけになります。入口にはドア・キーパーが立ちまして、一人も入れません。そこでこの法案をどうするかということが論議されておりまして、この場合には速記は、必要があればとるという程度で、大してつけておりません。公聽会の場合も、原稿を読んでおられるときには、速記をとつておりません。原稿なしで質問をしたりするときは、委員会専属の速記者がおりまして、委員長の命令でとつております。大体そのようなぐあいで、公聽会は運営されております。
#6
○委員(角田幸吉君) もう一つお聞きしたいが、アメリカでは議長の地位と委員長の地位は国会において非常に高い。しかしこれは日本と違つて、国会議員が日本のように大臣になつたりするのでなくて、議員として最高峯の議長であつたり、委員長であつたりするからだと思いますが、そういう点どういう感じを向うで受けられましたか。
#7
○参議院事務総長(近藤英明君) その点は二つの原因があるかと思います。一点はただいま仰せられました通り、行政府の役人になれない点が一点、もう一点は議員であること自体が行政府の各省長官より高いということ、議員であるととは即主権者である国民の代表者である。それから行政府の長官は、主権者である国民の長官でなくして、主権者である国民の使用人にすぎないというのが、アメリカの建前であろうと思います。大統領は国民の投票で選挙された最高の行政府の長であつて、これは決して議員にひけをとらない高い地位である。行政府を代表する――三権の一権を代表する最高の地位である。議員は国民代表の側である。その最高の長が議長であるから、これは大統領と匹敵する高い地位だ。行政府の長官は大統領の使用人であつて、大統領に任命されておるのである。ですから、これは国民代表という地位がない。その関係ではるかに地位は低いということだろうと思います。
#8
○委員(角田幸吉君) もう一点お聞きしたいことは、アメリカでは何でも合理主義ですが、もとより国会議員も投票の数によつて代表されるので、地位も大きいと見なければならないと思います。たとえば三万票で当選したものより、十万票で当選した方が、それだけ多くを代表する。こういう意味で、国会あるいはその他において、待遇その他にかわるところはありませんか。
#9
○参議院事務総長(近藤英明君) それはこういう面があると思います。下院は大体人口五十万人に一人ですから、五十万の選挙区から出られた方は、かりに十万で当選なさつた方でも、あるいは二十万で当選なさつても、それは五十万の選挙民を代表する。その点は平等に扱われる。しかし上院議員は州の大きさによつて待遇が違う。上院議員の方は下院議員より秘書手当が高いのです。下院の秘書手当は一万五千ドルだと思いますが、上院は二万五千ドルぐらいです。これはおかしい。下院議員の方が忙しいのにどうして上院議院の方が秘書手当が高いのかと聞くと、上院は州を代表しておる。下院は人口五十万であるから、秘書を使う金が少くてもよいと言うのであります。しからば大きな州はと言いますと、州によつて二万五千ドルから三万五千ドル、四万ドルまである。一番大きなところでは四万ドルも秘書手当を使える。小さな州と大きな――ニューヨーク州のようなことろとでは、十院議員の待遇にそれだけ開きがある。これは代表されておる人口が大きいからだという。これはアメリカの歴史的な立場からで、各州代表で組織された上院という点と、もう一つはかつての有名な大妥協と申しますか、人口代表で行くか、州代表で行くか、議会でいろいろ論争の結果、最後に上院は州代表、下院は人口代表ということできまりましたが、あの経過から来ている沿革的なものじやないかと考えます。
#10
○会長(高橋英吉君) 何か御質問でも……
#11
○委員(角田幸吉君) ちよつと今問題になつています国政調査権の問題ですが、これは新しい憲法で日本にもできたわけです。あれは向うでどういうことになつておりますか。
#12
○参議院事務総長(近藤英明君) 国政調査権は相当活用をなさつておるようです。しかし広く国政を調査することについてば、特別な調査権はないという建前のように聞きました。ただ司法権との関係で、昨年参議院で最高裁判所が問題になつたことがありましたので、その点触れましたところ、司法裁判の内容に関しては調査権はない。こういうことをはつきり申されました。それは三権分立がはつきりしておる以上、司法裁判そのものは司法権に属し、立法府は裁判には関與できないから、司法裁判の内容については調査権はないということをはつきり議会でも申されましたし、なおアメリカン、ユニバーシティの憲法学者とゼミナールで話し合いましたときにも、この問題を質問いたしましたところ、おもしろい問題だからと、向うでも討論課題にされまして、その晩学生の討論課題にもなつた。日本の問題については、私もきようはここでは返事ができないと逃げられたが、向うの問題といたしましては、明らかに三権分立である以上、司法裁判に対して国会の調査権はないと明言されました。なおある意味においては、司法権の方が立法権に優越しておる面が一面だけある。それは法律に対する憲法違反の判決を下すのは司法権の側にある。この点は司法権が優越だと言つておりましたが、別の面では立法府の方に強みもあるし、行政府にも強みがある。一点だけ司法府に強い権限がある。せつかくつくつた法律に違憲の判決をすることができる。これは憲法には書いてないが、判例でそういうことになつている。これはマーベリ対マジソン事件に対するジョンマーシャルの判例だと言つておりました。
#13
○会長(高橋英吉君) 委員会で国政調査をする場合の手続ですが……
#14
○参議院事務総長(近藤英明君) その点はどういう手続をどういうようにするかということは、調査いたしませんでした。
#15
○会長(高橋英吉君) 参議院で問題になつており、また衆議院でも考査委員会でやつておるような問題ですが、五井産業のような問題、ああいうのはちよいちよい新聞なんかでも、外交通信を見ると、有間会のようなものが設けられておるようですが、こういう問題については委員会では……
#16
○参議院事務総長(近藤英明君) 立法府としては行政府のやつたことについては特別の調査はむろんいたしませんが、行政府の方面でやつたこと、あるいは他の政治面で行われたことなども、一個の調査という建前でやつているのではないか。その判決の結果がそれを左右するという調査権でなしに、おそらく行政部の執行の誤りを調査するとか、あるいは執行部の役人の非を調べるという意味からの調査じやないかと考えます。その点は具体的の問題までよくわかりません。資料は出ておりません。
#17
○会長(高橋英吉君) 政界なんかのスキャンダル、ああいうものを調べる機関がありますかどうか。
#18
○参議院事務総長(近藤英明君) そういうような特別な機関は常任委員会の中にはありません。そういう特別な委員会もございません。これは個々の委員会がその所管の中において自由に何でもやれます。委員会の行動には非常に制限が少いという感じを受けました。
#19
○会長(高橋英吉君) 別段具体的にそういう問題は起つておつたわけではないですか。
#20
○参議院事務総長(近藤英明君) そういう問題は私ども最近のところではつかめませんでした。
#21
○会長(高橋英吉君) 何かございませんか。――それでは懇談することにして速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#22
○会長(高橋英吉君) それでは速記を始めてください。
 これにて散会いたします。
    午後三時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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