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1983/09/13 第100回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第100回国会 本会議 第5号
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1983/09/13 第100回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第100回国会 本会議 第5号

#1
第100回国会 本会議 第5号
昭和五十八年九月十三日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和五十八年九月十三日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続
 )
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 宇宙開発委員会委員任命につき事後承認を求め
  るの件
 公害等調整委員会委員任命につき事後承認を求
  めるの件
 公安審査委員会委員任命につき事後承認を求め
  るの件
 労働保険審査会委員任命につき事後承認を求め
  るの件
 国務大臣の演説に対する質疑   (前会の続
 )
    午後二時四十四分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(福田一君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 稲葉誠一君から、九月十五日より二十四日まで十日間、粟山明君から、九月十五日より二十五日まで十一日間、古いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 宇宙開発委員会委員任命につき事後承認を求めるの件
 公害等調整委員会委員任命につき事後承認を求めるの件
 公安審査委員会委員任命につき事後承認を求めるの件
 労働保険審査会委員任命につき事後承認を求めるの件
#5
○議長(福田一君) お諮りいたします。
 内閣から、
 宇宙開発委員会委員に井上啓次郎君を、
 公害等調整委員会委員に三浦大助君を、
 公安審査委員会委員に荻原伯永君を、
 労働保険審査会委員に高橋久子君を
任命したので、それぞれその事後の承認を得たいとの申し出があります。
 まず、宇宙開発委員会委員及び公安審査委員会委員の任命について、申し出のとおり事後の承認を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#6
○議長(福田一君) 起立多数。よって、いずれも承認を与えるに決しました。
 次に、公害等調整委員会委員及び労働保険審査会委員の任命について、申し出のとおり事後の承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
#8
○議長(福田一君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。浅井美幸君。
    〔浅井美幸君登壇〕
#9
○浅井美幸君 私は、公明党・国民会議を代表して、中曽根総理に対し、当面の重要課題について重点的に質問をいたします。
 まず、総理、あなたは過日の所信表明の中で、今国会が第百回であることをとらえ、大きな節目を迎えたと強調されました。日本の政治がいま大きな節目を迎えているとの認識は、私どもも同じ、否、総理以上に深刻に受けとめているものであります。
 戦後三十八年、わが国は国民各位の汗と努力に支えられてここまで歩んでまいりました。その日本の社会、経済の歩んだ道を振り返るとき、そこには高度成長から低成長への激しい変化があり、これによって生じた大きなひずみのもとで、社会も経済も病み続けているのであります。このことは、社会や経済の軌道修正が迫られている節目としてのあかしであります。
 しかし、その軌道修正の旗振り役であるべき政治、その政治における倫理観の欠如はロッキード事件で頂点に達し、国民の政治不信も極度に高まったままにあるのが今日の現状であります。日本経済の安定的成長を維持し、民生の向上を図るために、高度成長から激変した混乱期のツケを一日も早く解決しなければなりません。それが、一つには行政改革の断行であり、二つには日本経済の体質を内需拡大へと改善を図ることにほかならず、これは現下の緊要な政治目標であります。
 その行財政改革は、総理も主張されるように、国民と痛みを分かち合うことなくして完遂されるものではありません。総理、そのための大前提が政治への信頼回復であり、政治倫理の確立てはないのでしょうか。総理は所信表明で、「高い政治倫理の確立が必須」と述べられました。しかし、総理に就任されてはや一年を迎えようとしている今日、あなたはいま、高い政治倫理確立のためにこのように取り組んできたと国民に胸を張って言えるものが一体何がおありなのか、しかと伺いたいものであります。
 国民の政治に対する変わらない信頼を確保するためには、田中元総理の政治的道義的責任を明らかにすることが、その第一歩になるはずであります。したがって、国権の最高機関である国会が、田中議員辞職勧告決議案の是非を審議し、それに決着をつけることは当然のことであります。決議案は、現在、本会議への上程をめぐって与野党対決のままにありますが、政府・自民党がこれまでのように決議案を棚上げし続けるならば、さらに国民の政治不信は加速され、総理の発言とは逆に、わが国民主政治は危機に陥ると言っても過言ではないのであります。
 総理、あなたは自民党の最高責任者でもあります。しかし、昨日来の答弁は、静かに見守りたい、この一言に終始したままではありませんか。高い政治倫理確立への決意は一体どうなされたのでありますか。議員辞職勧告決議案の取り扱いについてのお考えを改めてお示し願いたい。
 ロッキード事件は、田中元総理とともに、政権政党である自民党の構造的な金権体質が厳しく問われているものと受けとめるべきであります。したがって、政治倫理の確立を重視し、心を新たにして取り組んでいくというのならば、かねてから懸案になっている政治資金規正法の改正強化、政治倫理委員会の設置、議院証言法の改正、証人喚問の実施などに対し、これを具体的にどう推進するのか、自民党総裁としての御所見をしかと伺いたいのであります。(拍手)
 また、議会制民主主義の確立の根本的問題である衆参両院の定数不均衡是正にどのように取り組まれようとされるのか、方針を示していただきたいのであります。
 次に、大韓航空機撃墜事件についてであります。
 今回の事件は、ソ連の側にいかなる言い分、理由があるにせよ、非武装、無抵抗の民間機を、ミサイルで撃墜し、二百六十九名のとうとい人命を奪った行為であり、暴挙、蛮行以外の何物でもありません。私は、この事件に遭遇された乗客、乗員の皆様の御冥福を心からお祈りし、その家族の悲しみと怒りに心を同じくするものであります。
 本事件に対し、昨日、全会一致の国会決議がこの衆議院においてなされました。政府はこの決議を忠実に履行されるよう、ここに重ねて求めるものであります。総理の決意をここで示されたい。
 なぜ大韓航空機が領空侵犯をしたのか、いまだ明確ではありませんが、その原因の究明とともに、同じルートを航行するわが国の日航機に対し、今後、不注意から過って領空侵犯を生じさせぬための安全航行の措置、再発防止をどうとろうとされているのか、明らかにしていただきたいのであります。
 さらに、今回の事件を奇貨おくべしとして、対ソ脅威論と結びつけて防衛力増強路線にはずみがついたり、日本の防衛力拡大論や中曽根内閣のタカ派姿勢が正当化されるようなことがあれば、これは全く逆さまな、かつ、危険きわまりない論理であり、平和逆行の姿勢であることを私は強く指摘しておきたいのであります。(拍手)軍拡や対決によって緊張緩和や平和は確保できるものではありません。アジアの緊張緩和と軍縮の促進こそ緊急の課題であるということが、今回の事件の教訓と受けとめるべきであります。この点をどう認識されているのか、明らかにしていただきたいのであります。
 さて、国際政治情勢は、今回の事件を契機として緊張激化へ向かう懸念があり、わが国の対応はきわめて重要であります。したがって、この対応には、ソ連に対してその人道上の道義的責任の追及とともに、緊張緩和への冷静な対応も必要と思いますが、御所見を伺うものであります。
 次に、私は、この臨時国会の会期中にその適切な対策が速やかに処理されなければならない景気対策、減税問題についてお尋ねをいたします。
 現在、景気に明るさが見え始めたとはいえ、その実態はあくまでも好調な輸出に支えられたものにほかなりません。しかも、その輸出の増加による経常黒字の拡大はすでに諸外国から批判を招きつつあり、いずれ限界に達するであろうことがすでに目に見えているのであります。したがって、目下の課題は、この段階で停滞色を強めている内需を活性化させることによって景気を持続的回復基調に乗せることであり、そのために強力な対策が必要であります。この点に対する認識をまずお示しいただきたいのであります。
 この景気対策の中心に位置し、国民の最も大きな関心事であり、また待望している減税であります。昨日来この本会議場でも取り上げられてまいりましたが、私からも重ねて総理の決意を伺いたいのであります。
 減税については、与野党の意向を踏まえて必ずこれを実施すると述べられましたが、遺憾ながら総理からは、実施の時期、減税の規模等がいまだに明らかにされていないのが現状であります。減税問題をめぐる与野党間交渉については、すでに周知のとおり、与党側から、減税法案の十月下旬提出、額は景気浮揚に役立つ相当規模、実施時期は年内、この三点が確約されております。
 総理、もはや減税問題はあなたの決断のみが残されていると言っても決して過言ではありません。この際、内需主導の景気回復とともに、国民生活を守るために、わが党は、所得税一兆円、個人住民税四千億円の減税を五十八年中の実現を目指し今国会に臨むことを表明し、減税財源として大型間接税を導入することには断固反対するものであります。
 総理、抽象的な決意の表明ではなくして、減税規模、その実施時期と方法について、この場所でぜひ国民の前に明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 また、内需の活性化を図るために、減税に加えて、生活関連公共投資の追加、中小企業に対する設備投資減税の拡充、土地・住宅対策、金融緩和政策など、総合的な景気対策の実施が緊急な課題であると考えるものであります。総理のお考えをこの際明らかにしていただきたいのであります。
 あわせて、私は、現在苦境に立たされている中小企業への対策として、中小企業向け官公需の大幅増額、下請代金支払遅延等防止法の強化改正に取り組むべきだと考えます。また、私は、中長期的にわが国経済の活力を維持するために、財界や自民党の一部にある独占禁止法緩和の動きには強く反対するものでありますが、これらの諸点についてお答え願いたいのであります。
 なお、私は、政府に対し、景気対策を柱とした補正予算の提出を強く要求いたしますが、まず、その考えがあるのかどうか、お答えいただきたいものであります。
 また、先般の日本海中部地震、山陰豪雨、台風五号による被害の復旧に全力を挙げるとともに、補正予算の編成に当たっては災害復旧費を十分に確保するよう求めるものであります。
 この問題の最後に、貿易摩擦の問題を取り上げたいと思います。
 著しい輸出の伸びは貿易摩擦を激化させておりますが、内需拡大こそ解消策の基本となるものであります。こうした認識をお持ちかどうか、また、貿易摩擦の解消のために具体的にどのような取り組みを今後なされるのか、お示しいただきたいのであります。
 次に、行財政改革についてお尋ねいたします。
 私は、行政改革を断行し、国民生活を守りながら「増税なき財政再建」を進めることは、現下の緊急な政治目標であると考えます。総理は、六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却を言明されましたが、あくまでも「増税なき財政再建」を貫く決意があるのかどうか、その達成のために中期財政計画を提出する用意があるのかどうか、それぞれ明確にされたいのであります。
 私は、行政機構の肥大化や行政の非効率を是正する行政改革の必要性は当然のことであり、強力に推進しなければならないと考えるものであります。政府は今国会をみずから行革国会と銘打っておられますが、提出された法案を見る限り、行政改革の名に値しないと申し上げなければならないのであります。
 まず、今国会へ提案された法律案のうち目玉と言われた総務庁設置法についても、その目的と意義がいずれにあるのか不明確である上、機構も削減せず、単に局などの組みかえが行われたにすぎません。
 また、許認可、機関委任事務の整理は、許認可が一万余件のうちわずか三十九件だけ、機関委任事務は三百八十四法律のうち四十四法律にすぎず、地方出先機関の整理もきわめてなまぬるい措置であり、率直に言って、これで行政改革と言えるのかどうか、はなはだ疑問であります。
 また、十五兆円にも上る補助金の整理についても、今回は提案されておりませんが、今後どのように進めようとされるのか、あわせてお答えいただきたいのであります。
 第二は、行革の重要な視点である肥大化した人員削減計画の実施に対する取り組みについてであります。
 政府は、従来の定員削減計画のような増員計画を別枠にした削減計画をここで見直し、純減、すなわち公務員の数が大幅に減るような計画を作成すべきだと私は考えます。中曽根総理、静かな改革というより、あなたの公約である政治生命をかけての断行こそ、国民は期待しているのであります。決意のほどをお示しいただきたい。(拍手)
 なお、この問題に関連して人事院勧告についてお尋ねいたします。
 着実な人員削減計画を進める一方で、公務員が労働基本権を制約されている代償として設けられた人事院勧告制度は、あくまでも尊重されるべきだと考えるものであります。また、今年度の人事院勧告については完全実施する考えを持っておられるのか、さらに人勧の凍結、抑制と憲法の関係についてどのように考えられているか、それぞれ明らかにしていただきたいのであります。
 次に、行政改革と同様にわが国が直面している基本政策の課題について、何点か御所見をお伺いするものであります。
 まず、福祉問題であります。
 五十九年度の社会保障関係費の概算要求が、健康保険の給付水準の大幅カットや受益者負担の導入、強化など財政論理を優先させた内容となっていることは、きわめて遺憾と言わざるを得ません。国民生活の安定を確保するためには、現在の社会保障制度は質的に十分とは言いがたく、特に高齢社会を迎え、その高齢社会に移行しつつある今日、福祉施策の後退は国民の生活設計に大きな不安を与えるものであります。
 そこで、総理は、高齢社会におけるナショナルミニマムとして医療、年金の給付水準をどのように維持されようとするのか、また、概算要求では福祉施策の地方財政への転嫁が目立っておりますが、国と地方自治体の行政責任と役割り分担についてどのように考えておられるのか、御見解を伺いたいのであります。
 もともと予算編成において、社会保障関係予算を一律にシーリングで抑制するところに問題があり、国民生活に最もかかわり深い経費については別枠として優先措置することこそ、活力ある福祉社会建設への筋道ではないかと思うのであります。(拍手)六十年度以降の社会保障費の当然増の財源確保についてどのように考えておられるのか、国民の前に明確にしていただきたいのであります。
 なお、伝えられる健康保険の本人給付を八割に削減するという医療保険制度の改革案は、健康保険制度に寄せる国民の強い信頼と期待を根底から覆すもので、これを容認することはできません。私は、まず医療費の適正化対策を強化すべきであり、乱診乱療、薬漬け、検査漬けあるいは水増し、不正請求などの是正や薬価基準の適正化、診療報酬制度の見直し、疾病予防・保健事業の確立などを推進すべきであると考えるものでありますが、御所見を承りたいのであります。
 第二に、教育改革の問題であります。
 総理は、最近特に教育改革に熱意を示されております。しかし、教育改革を進めるに当たっては、文部省の一方的な考えで推進するのではなく、教員組合も、親も、地域社会も、教育に対する責任の自覚と協力を前提として、改めるべき点と守るべき点を国民の前に明らかにし、国民のコンセンサスが得られるよう慎重に取り組んでいかなければなりません。単なる現状維持や誤った教育改革は国の将来を大きく損なう危険があるからであります。
 私は、いかなる時代にあっても、教育の独自性、人間教育、生涯教育の視点を維持すべきであり、各種の教育奨励・奨学制度・義務教育無償制度も重要だと考えるものであります。総理は、教育改革を進めるに当たって、このような認識を持ち合わせておられるのかどうか、お考えを示されたいのであります。
 わが党は、学制、入試制度、知識偏重教育の改革等を提唱し、すでにその具体策を発表しておりますが、特に学制改革を進める視点として、子供の成長発達に見合った学校制度とする。また、人間的な成長発達を阻害している要因を除去する。さらに、今後の日本人が迎えるべき社会に対応し得る人材の育成、この三点があると考えます。学制改革についての基本認識をしかとお伺いしたいのであります。
 第三に、農業問題についてであります。
 いまや日本農業が抱える問題は深刻そのものであります。健康で安全な食糧供給を初め、食糧の自給率の向上、国際社会の中での日本農業のあり方などを基本課題として、農業の活性化をいかに図るかは、わが国の重大かつ基本的な問題と言えるのであります。確かに、農業が産業として自立できるようにするには多くの困難がつきまとうことは事実であります。しかし、地域の活性化を図る中で円滑な構造政策を進め、品種改良や農法の改革などにより生産物の質的向上などに取り組んでいくならば、その可能性は必ずや見出せるものと確信するものであります。
 日本農業の現状は、もはや小手先の対応では許されない段階に立ち至っております。総理は、わが国農業を中長期的に見てどう展望し、また、現下の危機的状況から再建への手がかりの決め手をどこに置いておられるのか。また他方、昨今高まっている国民各層からの農業、農政への合理化や食べ物の安全性に関係する要求はどのように受けとめておられるのか、あわせて明確な御答弁をお願いしたいのであります。(拍手)
 さらに、当面の問題としての日米農産物交渉並びに来年度からの減反の第三期対策では、減反面積、転作奨励金水準、えさ米及び米の在庫積み増し計画等について、どういう方針で臨もうとされているのか、お尋ねをいたしておきます。
 最後に、外交、防衛問題についてお尋ねをするものであります。
 総理は、所信表明の中でサミットの成果を強調されました。しかしながら、いかなる脅威にも対抗して十分な軍事力を維持するとの政治声明に合意したことは、これによってわが国の防衛力増強、西側の一員としての軍事的役割り分担について言質をとられたものと憂慮し、危惧するものであります。また、首脳会談の中で、NATOへの中距離核戦力の配備断行を求めた総理の発言は、唯一の核被爆国であり、非核三原則を国是とする平和日本の立場を無視したものとして、はなはだ遺憾であると言わなければなりません。これらの点について明確にお答えいただきたいのであります。
 また、総理は、「平和の維持と軍縮、なかんずく核兵器廃絶を目指していきたい」と述べられましたが、ここに総理の海外での発言と国内での発言に大いなる矛盾と虚構の論理があることを指摘せざるを得ません。言葉の使い分けはやめていただきたい。もし、総理が真に軍縮、核廃絶を目指すというならば、平和憲法をあくまでも守り、非核三原則を堅持し、第三回国連軍縮総会の早期開催や核兵器全面撤廃のための首脳会談の開催を積極的に提唱され、その実現に最大の努力を傾けるべきであると思います。これらについて所信を求めるものであります。(拍手)
 総理、私は、わが国の防衛力増強政策に強く危惧を持つ一人であります。
 第一に、政府は、五十九年度予算の概算要求でも福祉、文教等国民生活関連予算を厳しく抑制しながら、防衛予算については六・八八%の特別枠を設け、突出させようとしておりますが、一体、防衛予算の特別扱いをいつまで続けるのか、政府が厳しい財政事情を強調するのであれば、私は、防衛予算についても他の予算と同様に扱うべきだと考えるのでありますが、御答弁を求めるものであります。
 第二に、総理は、参議院選挙中の六月十二日、防衛予算はGNP一%枠を守ると言明されたと伝えられております。この際、GNP一%枠を五十九年度、さらには六十年度以降も必ず守っていくという決意があるのか、明確にしていただきたいのであります。
 さて、この秋にはレーガン大統領を初め各国代表がこれから日本を訪れるわけでありますが、一連の首脳との会談にどのような基本方針で臨むのか、この際明らかにしていただきたいのであります。
 特に、米国はここへきてわが国に対し、防衛予算の増額、防衛大綱、五六中業の見直しなど、一段と性急かつ過剰な防衛力の増強を迫っております。レーガン大統領との首脳会談においては、米国の圧力とも言える防衛力増強要請が、国民の軍拡への不安、対米不信、ひいては日米関係に深刻な悪影響を及ぼしかねないことを米国にも明白に伝えるべきであると私は思うのであります。
 それぞれについてお考えを伺うものであります。
 以上、私はきわめて重点項目にしぼって質問をいたしました。そこで、質問の最後に、特に中曽根総理に申し上げたい。いま、国民は、政治の清潔さ、そして公平な政治を強く求めております。この清潔と信頼の政治を取り戻すことこそ、今国会に課せられた厳粛な課題であり、清潔な政治の確立なくして公平な政治も議会制民主主義もなく、信頼の政治もまた成り立ち得ません。
 総理の誠意ある答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 浅井議員にお答えを申し上げます。
 質問は多岐にわたりましたので、要点を簡潔に申し上げたいと思います。
 まず第一に、政治倫理の問題でございます。
 この所信表明演説でも申し上げましたとおり、政治倫理の問題は、議員一人一人の道徳性、あるいは政党や政治機関の運営の澄明度の問題、あるいは民主政治に対する責任感、積極的な貢献の問題等々ございまして、いずれにつきましても、われわれは戒心していかなければならぬと申し上げたとおりでございます。
 ただ、田中判決の問題につきましては、裁判の判決が近づいております折から、近づけば近づくほど、やはり静かにこれを見守るというのが正しいのではないか。この前にいろいろ立法府あるいは行政府等の方から雑音が出まして、裁判の静ひつ性を害するということは、必ずしも三権分立に適合するゆえんではないと私は考えるのでございます。(発言する者あり)
 次に、政治資金規正法の問題、あるいは倫理委員会の問題、あるいは定数の問題等は、いずれも国会の基本的な事項にかかわる共同の基盤の問題でございまして、これらにつきましては、各党間において十分論議されて合意が成立されるように期待しておるわけでございます。
 大韓航空機撃墜事件につきましては、わが方は、すでにソ連側パイロットの交信記録という動かぬ証拠まで国際機関に出しましてその責任を求めておるのでございますが、これに対する誠意のある対応がないのは、はなはだ残念でございます。したがいまして、ソ連の反省を求め、ソ連の実効性ある措置を期待いたしまして、本日は一連の措置を決定いたした次第でございます。
 すなわち、九月十五日から二十八日まではソ連の民間航空機及びわが国の日航機の往来を停止するという措置を国際的連携の一環としてやったわけでございますが、さらに、真相の究明と責任の追及のためには、あらゆる機会を通じこれを実行してまいりたいという考えでございます。政府といたしましては、また、きのう採択されました御決議の趣旨を十分に体して、引き続き努力をしてまいるつもりであります。
 このような不幸な事件の再発を防止するということも非常に大事な点でございまして、これらにつきましては、国の方針という問題がございますと同時に、航空機の技術的問題もございます。コンピューターにインプットするのが間違っていたのであるかどうかという問題も、十分検証する必要のある問題でもあると思います。これらの問題につきましても、技術的にわれわれはこれを確かめてまいりたいと思う次第でございます。
 アジアの緊張緩和、軍縮の促進の問題については全く同感でございます。
 すでに申し上げましたように、自衛問題につきましては、憲法を守り、そして軍事大国にならないように既定の国是、国策を守って、節度のある防衛力を整備するという穏健中正な考えで今後も進めてまいるつもりでございます。また、軍縮問題につきましても、特に核軍縮につきましては、積極的にわれわれは努力してまいりたいと思う次第でございます。
 次に、景気対策の問題でございました。
 ようやく景気については明るさを見出しておりますが、内需の回復はまだ力強さを欠いております。「今後の経済対策について」として四月五日に決定しました経済政策をいま着実に推進しておおところでございますが、さらに機動的な経済政策の運営を心がけて、引き続き内需の振興に努めてまいりたいと思います。特に、民間活力を引き出して、息の長い安定的な経済成長を図るという政策をいま強く探求し、かつ実施しようとしておるところでございます。
 減税につきましては、すでにここで御回答を申し上げた次第でございますが、法案の提出につきましては、税制調査会の結論を待ちまして、内容、時期、財源手当て等につきまして決断をいたしたいと思う次第でございます。特に、財源の問題につきましては、赤字公債に頼るということでは、いたずらに財政の膨張と子孫に対する負担を増すのみでございますので、この点につきましては、これを回避するという考えに立脚しておるわけでございます。
 さらに、中小企業対策につきましては、中小企業向け官公需につきまして本年度は目標比率を三七・三%にいたしまして、昨年の三七%よりさらに上げたわけでございます。なお、下請代金支払遅延等防止法につきましては、さらにその厳正な運用に努める考え方ております。
 独禁法の問題につきましては、公正かつ自由な競争を促進して経済を健全化していくということから、独禁法というものは不可欠であると考えております。現在の安定成長下において、物価や中小企業等への影響、経済の効率性、民間活力の保持、消費者保護、その他あらゆる面から見まして、この独禁法に対する点検を行っておるわけでございます。この党の検討を、私は推移を見守ってまいりたいと思うところでございます。
 補正予算につきましては、先般来災害もあり、また不況対策等についていろいろ御要望もあるところでございますが、現在補正予算について確たることを申し上げる段階ではございません。まだ余りにも不確定的要素が多いということでございます。
 災害復旧につきましては、既定の計画の中で全力を挙げて取り組んでまいる考え方ております。
 貿易摩擦につきましては、申し上げましたように、原油価格が一バレル五ドル下がったということで、六十億ドルくらいの黒字が出てきているわけです。あるいはドル高による輸入の低迷等によりまして、主として輸入面から見た経費の軽減というところで黒字が生まれておるわけであります。すでに八十一億ドルの黒字が七月までに出ておりますが、さらにわれわれは貿易の拡大均衡を目指すと同時に、ある意味においてはいわゆるオーダリーマーケティングという考えに立ちまして、集中豪雨的輸出を避けつつ、国際的バランスの回復、調和に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
 財政計画につきましては、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というものをつくりまして、これで経済政策の基本をつくりましたが、これは臨調答申を受けた基本的路線に沿って経済運営の政策が生まれ、この政策に調和がとれるように財政政策、財政構想というものをいま策定しようとしている段階でございます。今後財政改革を進めるに当たりましては、安易に増税を念頭に置くことなく、行財政の守備範囲の見直しあるいは歳出歳入構造の構造的な見直し等も含めまして、検討を加えてまいりたいと思っておるところでございます。
 なお、中期的な財政運営の問題については、あらかじめ一定の数字を織り込んだ具体的なプログラムを策定することは現在ではきわめて困難でありますが、今後検討の手がかりとなるような中期的な展望を持って財政を考えていくことは必要であり、このような観点から財政制度審議会で検討をお願いしておるところでございます。この検討も参考として、五十九年度予算編成以後、中期的な財政の展望を作成するとともに、今後の財政改革を進めていく上での基準となる考え方を明らかにする方向で努力してまいりたいと思っております。
 行政改革につきましては、臨時行政調査会において精力的な御努力を願いまして、すでにその答申をいただいており、その路線に沿っていま懸命の努力をしておるところでございます。今回の法案の中でも、総務庁に関するものは、行政の人事、機構、定員その他の総合調整機能の活性化と総合化のための法案として提出いたしたものでございます。
 なお、そのほか、補助金の問題や行政機構の簡素化の問題等につきましては、各党各派の御意見や国民の御意見をよく拝聴いたしまして強力に進めてまいるつもりでおります。
 定員の縮減につきましても、政府はすでに六次にわたる定員削減計画を実施しておりまして、すでに一万二千人以上の純減を達成しているところでございます。五十七年度においては千四百三十四人の純減をやり、五十八年度におきましては千六百九十五人の実員を実は減らしておるわけでございます。今回もさらに新行政改革大綱に沿いまして、現業部門の要員の合理化、地方支分部局の定員の縮減あるいは第六次削減計画の着実な推進等を図ってまいるつもりでおります。
 次に、人事院勧告につきまして御質問をいただきましたが、給与関係閣僚会議において、この勧告制度尊重という基本的たてまえに立って、国政全般との関連で慎重に検討しておるところでございます。
 また、高齢化社会に対する対応でございますが、今後の高齢化社会におきまして、年金、医療等、社会保障が国民生活に果たす役割りは非常に重要になってまいります。したがって、その具体的水準、内容は、世代間のバランスとか費用の負担の問題等との関連を踏まえまして、効率的に重点的に改革をしていく必要がある。
 福祉施策における国と地方との役割り分担につきましては、国と地方がともに理解と協力し得るような福祉政策を考えてまいりたいと考えております。
 なお、五十九年度の福祉政策につきましては、概算要求におきましてもこのような配慮がなされているものと考えます。
 社会保障費の財源につきましては、医療あるいは年金その他社会保障関係の経費は、その性格上、人口高齢化の進行等によりまして、毎年巨額の自然増が出てまいっておる状態です。昭和六十年度以降の社会保障費の当然増の財源確保につきましては、今後とも諸施策を安定的に維持していくという見地に立って、財政状況等の中で総合的に検討してまいりたいと思います。
 健保及び医療費の適正化につきましては、診療報酬の合理化、薬価基準の適正化、指導監督の厳正化など、また疾病予防対策や老人保健法に基づく保健事業についても、今後とも推進してまいるつもりであります。
 これと同時に、高齢化社会の到来に備えて、医療保険制度を安定的に維持し、国民に必要な医療を確保していくためには、中長期の観点に立って、社会、経済、医療の動向に対応した給付と負担の両面にわたる改革を図る必要があると思います。このような観点から改革に真剣に取り組んでまいります。
 教育改革について強く御主張をいただきましたが、いまや教育改革はわが国の将来を卜するために重大な課題になってまいりました。学校、家庭、社会を通じて、健全な青少年の育成あるいは大学の改革等に真剣に取り組むべきときであると考えております。
 「自由で多様な生き生きとした人間性あふれる教育、健全で個性豊かな青少年の育成」ということを所信表明で申し上げましたが、このような観点に立ちまして、教育改革につきまして検討を進めておる状況でございます。
 学校教育のあり方につきましては、改善を要する種々の問題が御指摘されておりますが、やはり時代の変化に対応することができるように子供たちの教育も改める必要があるが、また一面においては、人間として生きる基本の型を教えるという意味において、不易の徳性を要請されている点もございます。そういう面につきまして慎重に検討しながら進めてまいるつもりでおります。
 農業の活性化につきましては、食糧の安定供給あるいは地域社会の健全なる形成、国土、自然環境の保全、こういうさまざまな面からも農業に対する要請はございますし、また、農民自体のために農業の長期的展望と農政の進む道を明らかにする必要があり、先般の農政審議会の報告等を踏まえまして、生産性の向上を基本とする農業の体質強化と安全性の確保、消費者ニーズに応じた食糧の安定供給という観点からも、農業政策を進める必要があると考えております。
 農産物の自由化の問題につきましては、一面において国際的友好関係に留意しつつ、農産物の需給動向を踏まえ、食糧の安定供給あるいは農村の健全な発展等々を考えて実行していく必要があります。
 牛肉、柑橘等の自由化については、わが国の国内の生産事情からすれば応じがたい諸問題があります。今後の日米協議等におきましては、わが国の主張を十分相手方にも説明し、その理解を得るように努力したいと思います。九月十四日、十五日にまた日米間における協議が行われますので、その機会等を通じてそのように努力してまいるつもりです。
 第三期の減反対策につきましては、明年度から始まるこの対策については、長期的な視点のもとに、米需給の均衡を図りつつ、地域の実態に即して転作の定着化を促進するという基本方向に沿って実行してまいりたいと思います。
 ウィリアムズバーグ・サミットの声明は、これは平和を確保するために参加国が政治的に協調いたしまして、アメリカのレーガン大統領がソ連のアンドロポフ書記長と軍縮を有効に推進するための会談を整えよう、そのための足場をつくろうという意味で私は努力をいたしましたし、関係各国も同調していただいたわけでございます。
 INFの問題は、わが国としては重大な関心を持っておるのでございまして、これがアジアや日本の犠牲において解決されることは断じて承認することができない、そういう意味において、アジアや日本の犠牲において解決されないように声明書に盛らせる必要がありまして、その意味において西欧の諸国とも政治的に協調して、手を組んで声明書にも参加したわけでございます。
 このように、一面において世界の軍縮や平和のために協調するという面を行わずして日本の主張を通すということはむずかしいのでございまして、そういうようにして日本の主張を通したということは、私は、現段階においては妥当な政策ではないかと考えておるわけでございます。
 次に、軍縮問題及び首脳会談について御質問がございましたが、今後の首脳会談あるいは対外関係におきましては、いままでの国是、国策を守り、非核三原則を堅持して、そして軍縮委員会等を通じて平和外交の実現に努力してまいりたいと思っております。
 第三回国連軍縮特別総会については、今次国連総会の議題の一つとなっており、わが国としてもその審議に対して積極的に臨む所存であります。
 また、核軍縮に関する首脳会議につきましては、実りある成果を生み出すことが必要でありまして、そのような会議が開かれる素地を醸成する、そのための十分な準備が必要であると考えております。
 次に、歳出の抑制の問題でございますが、今後の予算編成に当たりましては、防衛関係費につきましても、他の経費と同様、概算要求の内容について十分検討を加えて、財政事情その他経費とのバランスも考慮しつつ、真に必要な経費の計上を図ってまいるつもりであります。防衛費の対GNP一%というこの決定は、これを崩す必要はないと考えております。
 次に、首脳会談に臨む方針でございますが、この秋には、コール西独首相、レーガン米大統領、胡耀邦中国共産党総書記等、多くの賓客が参りますが、各国代表を心から歓迎申し上げたいと思っております。そうして、日本が国際国家として世界の平和や軍縮に重大な関心を持ち、また、日本独特の国策を展開して、このために貢献しているわが国の真情をよく先方にも説明し、また、先方の考えもよく聞きまして、そして実りある会談にいたしたいと考えておる次第でございます。
 コール西独首相との間におきましては、日本とECとの関係の問題もありますし、コール西独首相はアンドロポフ書記長ともすでに会談もしておりますから、そういう状況についてもよく聞きたいと思います。
 レーガン大統領との間につきましては、日米関係の相互の問題、あるいはアジア、世界の安全保障、景気回復の問題、あるいは太平洋地域における協力関係の問題、あるいはがんやその他の対策の問題等についても、隔意ない懇談をしていきたいと思います。
 中国の胡耀邦総書記が十一月下旬に御来日になりますが、初めて西側自由主義世界を御訪問になるわけでございまして、日本がその初めの国に選ばれたということは非常に歓迎するところでございます。胡耀邦総書記との会談も、これを機に日中友好協力関係をさらに新たな十年に向けて力強く前進させるために隔意なき懇談をいたしたいと思いますし、世界の平和や軍縮の問題について中国がいかなる所見をお持ちであるか、よく詳しく聞いてみたいと思う次第でございます。
 防衛努力に関しまして米側から強い要求あるいは不当な要求があった場合屈してはならないというお示してございますが、まさに同感でございまして、防衛のような問題は、みずから自主的にこれは決定するものでございます。しかし、世界の平和や軍縮の問題はいまや一国だけではできないのでありまして、アメリカや西欧の諸国とも提携してこれは行うべきものであります。わが国の防衛につきましては、憲法及び既存の国是、国策に従いまして忠実にこれを実行してまいりたいと思っておる次第でございます。
 まだ日米会談の議題は決まっておるわけではございませんが、いずれ機が熟しましたら、これらについて十分なる用意をして臨みたいと思う次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(福田一君) 竹本孫一君。
    〔竹本孫一君登壇〕
#12
○竹本孫一君 私は、民社党・国民連合を代表して、現下のわが国が直面する重要な問題について質問をいたします。
 私ども民社党は、今回のソ連の非武装かつ無抵抗の大韓航空機撃墜の暴挙に対しまして、限りなき憤りを感じております。その野蛮な行為によって犠牲となられました皆様、その御家族に対し、心から哀悼の意を表したいと思います。また、亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りをいたします。ソ連一流のごまかしの多い本件の真相が一日も早く究明されること、再びかかる惨事の繰り返されないように政府が安全保障を取りつけること、また御遺族に対する補償の確保のために全力を挙げられることを強く求めております。
 質問の第一は、核軍縮、平和への努力の問題であります。
 今日、世界には五万を超える核弾頭がございまして、しかも毎日その数を増し、その質を高め、人類はいまやいわば滅亡への道をはく進しておるようであります。しかし、他方におきましては、前の西ドイツのブラントさんも叫ぶがごとく、二秒間ごとに一人の子供が病気と飢餓で死んでおるのであります。イギリスの前の首相であるアトリーさんが、いまは全くマッド、気違いの時代であると申しましたが、全く同感であります。
 一体、米ソの間には、今日、いまなおミサイルギャップが大きく存在するのであろうか。また、あるかないかを別といたしまして、今日は、グローバルなソリューションを求めて核の競争をまず凍結する、その上で、拡大均衡によってではなく、縮小均衡によって世界の平和と安全の確保を目指すべきだと思いますが、総理のお考えはいかがでありますか。(拍手)日本は平和国家である。日本の外交の重点はあくまで米ソをして戦わしめざることである。そのための具体的な努力を総理にお願いしたいのであります。
 この秋十一月、レーガン大統領が来日されるのでありますが、その際には、パルメ・スウェーデン首相やイタリアのペルチーニ大統領も言っておられるように、政治家たるもの、指導者たるものはまず広島を訪問すべきであるという考え方に立ちまして、レーガンさんにも広島訪問を要請してはいかがであろうか。総理にお伺いいたします。(拍手)
 また、今日、米国におきましては、五八%までの人が米ソの即時相互の核凍結を求め、賛成しておるようであります。したがって、この冬、欧州へのパーシングUの配備の問題につきましては、慎重の上にも慎重を期して、決意はもちろん断固たるものでなければなりませんけれども、最後の瞬間までアメリカは米ソの合意達成のために努力すべきであります。このことを日本としても強くレーガンさんに要求してもらいたいと思いますが、総理のお考えはいかがでありますか。(拍手)
 いま米ソの間には、信頼関係はゼロに近く、軍備拡張の競争が激化しております。しかし、皆さん、毎年毎年三千億ドル前後の国防費を費やすということは、アメリカにとってもソ連にとっても重大な問題でありまして、私は、米ソそれぞれ財政の破綻は必然的だと思っております。したがって、米ソは、いまのままいくならば、極端に申しますと、戦争による滅亡か財政破綻による亡国の道であります。
 私は、そういう意味におきまして、この際、三つのことを叫びたい。
 一つは、米ソは、それぞれみずからの体制に強い自信を持つならば、静かなる対応によって世界の平和を守ってもらいたい。二つは、米ソは、核の縮小均衡を目指して、まず即時相互に、かつ、実証できる形において核の全面的凍結をやってもらいたい。三つは、米ソは、その国防予算の一部、たとえば五%を南の途上国の救済に充ててもらいたい。
 日本は、自由国家群に属する国際国家として、米ソいずれに対しましても、毅然たる態度で世界平和のためにこれを訴えるべきであると思いますが、総理のお考えはいかがでございますか。(拍手)
 次に、今回の事件によりまして、北方領土の重要性というものが特に浮かび上がってまいりました。政府は、アメリカの具体的な協力も得て、この北方領土問題の早期解決のために努力をされるお考えはありませんか。また、今回の事件にもかかわらず、中曽根総理は、日本のため、世界平和のために、アメリカの次にはソ連を訪ねるべきであると思いますが、訪ソのお考えはないか、お伺いをいたします。対ソ外交は、キッシンジャーも言っておるように、断固として、しかも創造的に取り組むべきものであります。
 次に、防衛費一%論について伺います。
 およそ国防費は、ゼロを叫んでみてもそれは余りに理想的で、世界の現実が許しません。同時に、多々ますます弁ずというものでもありません。日本においては、非武装論と重武装論と両極端な議論を闘わしておりまして、しかも統一、帰一を見るところがありません。これは国家の不幸であります。真理は常に中間にある。私は、その意味におきまして、鈴木内閣が、われわれの政治的歯どめとしてのGNP一%論を最後まで誠実に守る努力をされたことを高く評価いたしております。もちろん、共産主義の理論やソ連最近の軍事力極東配備の状況あるいは科学技術の発達等も考えますと、これらの事実を無視することはできません。しかし、軍備は常に相対的であります。
 わが国の一%論は、その数字の一%が問題なのではなくて、そこに象徴される、防衛費を抑制するという日本の政治姿勢が大事なのであります。(拍手)この姿勢は、非核三原則や専守防御、武器輸出の禁止、これらとともに、戦争放棄日本の平和外交の四つのとりでであります。この重大なる政治的歯どめというものを、五十九年度の予算の編成におきましても政府はあくまでも守っていかれる考えであるかどうかをお伺いいたしたいと思います。
 なお、念のために申しますが、必要なる法律の整備その他をやらないで、いたずらに物、兵器、艦船といった問題にだけ力を集中しておりますために、周辺の法律の整備その他の条件整備ができておりませんので、十分に機能しない、質の悪い一%になっておるということも、この際警告をいたしておきます。
 第二は、減税、景気回復の問題であります。
 クレマンソーは、戦争は軍人に任せておくのには余りにも重大であると申しました。私は、今日の財政経済問題は一部官僚に任せておくのには余りにも重大であると言いたいのであります。(拍手)
 御承知のごとく、わが国は、五十二年以来の物価は二九%上がりました。国民の所得は三九%ふえております。しかも課税最低限はそのままでありますために、納税人口は四千三百三十二万人、九百四十万人ふえてまいりました。租税負担率は一九・三%から二三・七%へと激増しております。これは、考えてみれば、法律または法律の定める条件によらずして増税をやった、実質的には憲法第八十四条違反の行為であります。クロヨンその他の不公平もますます激化してまいりました。したがいまして、今日における減税問題は、単なる経済問題ではなくて、一つの大きな政治問題であるということを御認識願いたいのであります。(拍手)
 私ども民社党は、野党の各党とともに、所得税減税一兆円、住民税減税四千億円、この減税を主張いたしておりますのできればそのほかに中小企業のために、現行の省エネ、代替エネ、設備投資減税の拡充延長、さらには新技術体化の設備投資への減税あるいは耐用年数の圧縮、さらに、わが党がつとに主張いたしております中小企業のための事業承継税制の確立もあわせて行いたいのであります。もしこうした減税を実行いたしますならば、ストックの少ない同本におきましては、直ちに四千万人の納税者の購買意欲を拡大するのであります。GNPの六割を占めておる個人消費を拡大するということが、景気回復の第一の道であるということを申し上げたいのであります。
 しかるに、政府は、財政難を理由に、これらの減税を実現しないだけではなく、他方、政治的には一つの義務費とも言うべき人勧を昨年凍結し、今回の六・四七%の公務員給与引き上げにつきましても、また仲裁裁定につきましても、積極的な姿勢をいまだにお示しにならないのはまことに遺憾でありますが、一体どうなさるつもりであるか、伺いたいのであります。
 さらに驚くべきは、財源がないという問題であります。皆さん、財源はおよそ、あるものではなくして、つくるべきものであります。五十兆円の予算を組んでおきながら、一兆円や二兆円の財源がないというのは、能力の問題ではなくして、実は誠意の問題であります。(拍手)
 私は、がまんの哲学にも反対ではありません。しかし、倫理と経済を混同してはなりません。経済には経済の論理が貫徹する。だから、今日の日本の経済をごらんなさい。昨年に比べて、鉱工業のごときはわずかに二%の成長である。百貨店の売れ行きのごときは、前年に比べて、下手をするとマイナスである。日銀券はわずかに五%の増である。事業債の発行は、今年上期は半分になっておる。しかも、失業者は百四十万人を超え、企業の倒産は八カ月連続して増大をしております。こうした経済の行き詰まりの結果、財政もいよいよ行き詰まりまして、膨大なる赤字を抱えながら、なおかつ要調整額は四兆円、五兆円という状態でありまして、私は、経済はじり貧である、このままいけば財政はとか貧であると叫んでおるわけであります。(拍手)
 特に、六十年代の財政は大変重大であります。したがいまして、この際、われわれが主張する減税のほかに、さらに社会開発を中心とした公共投資二、三兆円、いま直ちには困難かもしれないが、できるだけ早期に金利の思い切った引き下げ、これらを実現いたしまして、内需を拡大する、これこそがこの不景気を打開する唯一の血路であると主張いたしたいのであります。
 政府は、内需拡大のために災害の問題も含めて、この際、先ほどもお話がありました補正予算を組むべきであります。特に私が強調したいのは、補正とは単なる財政的な補正ではなくして、経済が長年陥没をしておる、これを補い、補完する、社会的不公正はそのままになっておる、これを正す、財政的な補正ではなくして、政治的、経済的な補正を組んでもらいたいと思うのであります。(拍手)
 私は、昨年大蔵委員会に設けられました小委員会に参加いたしました。しかし、その一年かかった委員会の結論は、御承知のように、赤字公債は出さない、戻し税方式はとらない、税率構造もできれば改正しよう、たったこれだけであります。決して中曽根総理の言われるように、やると言ったら断固やるといったような内容では全然なかったのであります。(拍手)特に死中活を求めるような政治的決断は全然ありません。また、私ども野党も、ただ要求だけすればよいという考えではなくして、目をつぶって一定の財源案を提示したはずであります。そして自民党の皆さんは、これに対してさまざまの批判をなさいました。しかし自民党からは、みずからが提案をすべき順序になっておるときになっても、最後までその提案をなさらなかったのであります。それがために小委員会はついに解散をいたしました。
 一体、これはだれの責任であるか。総理大臣、大蔵大臣の答弁を求めます。(拍手)これはまた、議長見解を軽視することにもなると思うが、いかがでございましょう。(拍手)
 しかしながら、いまや五十七年度の一般会計の決算では、約三百億円の税収増を含めまして千五百億円の剰余金が出てまいりました。さらに、油の値下がりがあります。内外景気の好転もあります。したがいまして、これから自然増収というものも若干期待できると思うが、政府は公約を守って、民社党初め各野党が要求し二階堂幹事長が九月九日確認文書において明らかにされました減税に関する三項目、これを総理としても責任を持って実現する御意思があるのかどうか、より具体的に伺いたいのであります。(拍手)
 一体、景気浮揚に役立つ大幅規模の減税、少なくともこれは一兆円の所得税、住民税の減税と解してよろしいか。課税最低限は必ず引き上げられると期待してよろしいか。関係法案の提出は遅くとも十月、さらに、その実施の時期は昭和五十八年内と期待してよろしいか。財源問題も含めて明確なる御答弁をお願いしたいと思います。(拍手)
 政府が「増税なき財政再建」という意味深長なる大旅のもと、税にはノータッチ、減税もしない、公共投資もふやさない、しかも、つじつまが合わないので、毎年定率繰り入れは停止する、税外収入は無理に拡大をする、さらに最後には法律を改正して赤字公債の借りかえもやる、その上でなおかつ、赤字公債脱却の年次は無原則にこれを引き延ばしておるというのが現状であります。一体、これで日本の財政はどうなるか。日本財政の前途はまことに深憂にたえないのであります。
 次に、経済摩擦の問題について申し上げます。
 ニューヨーク・タイムズはさきに、日本国民の一人一人が福祉を拡充されて、社会施設も充実されて、一人一人がより肥え太るということが、日本の国のためにも世界のためにも最も安全なる道である、「ファッターイスセーファー」という論文を掲げました。全くそのとおりであります。もし今日の現状を続けてまいりますならば、わが国の対米貿易の黒字は二百億ドル、対ECは百億ドルを超えるでありましょう。しかも、アメリカに大統領選挙が来年はある、ECにはすでに失業者が千二百万人おる、このことを考えますと、経済摩擦はいよいよ深刻になってまいるでありましょう。
 そこで、内需の拡大が急務中の急務になります。各大臣に具体的に伺いたい。
 一、輸出を抑えるとはどこまで抑えるのであるか。どういう手段で抑えていこうというのであるか。二、輸入を飛躍的に拡大する具体的対策は何か。三、対外投資、産業協力を拡充する具体案はどうか。四、農産物輸入自由化についても適切なる対応をしなければならぬが、その具体策は何か。これらのことについて、各大臣からも明確なる御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
 私は、こうした対外経済摩擦の問題も含めて、補正予算の早急なる編成を要求するものであります。
 次に強調すべきは円安対策であります。
 日銀総裁は、円高が最大の景気策だ、このように申しました。私も全く同感であります。しかし政府は、円安に対しては一体どういう手を打とうとしておるのか。大蔵大臣にも伺いたいが、円高対策としていかなることを考えられておるか、具体的に伺いたいのであります。
 しかし、この問題は、本来ならばサミットにおいて解決すべき問題であったと思います。御承知のように、アメリカにおいては軍事費が一〇%ふえる。これはめちゃくちゃである。二千億ドルの財政赤字は大変である。この認識に立ちまして、上下両院、二つ力を合わせて一〇%の膨張を五%に抑えるということでいま折衝が進んでおります。
 私は、膨大なる赤字を削減する、膨大なる軍事費の膨張を抑える、そのことによって赤字を少なくし、金融を緩和し、ドル高を抑える、逆に円安を変える、そうした努力がサミットにおいて行われるものと期待いたしましたけれども、これはどうにもなりませんでした。
 フランスのモーロワ首相は、ドル高は第三の石油ショックであると申しました。さらに、アメリカのボルカー議長は、最近におきましても、アメリカにおいて金利が上がる、ドルが上がる、それは金融政策の失敗のためではなくして、膨大なる財政赤字のためであると主張いたしております。前FR丑議長のミラーさんも、最近、日本に参りまして同じようなことを言っておられる。このことに対してメスを入れないサミットの会議は、経済サミットとしては全く意味がなかったと思うのであります。(拍手)
 さらに、ドル高はアメリカに対しても重大な打撃を与えております。ドル高が日本に、ECに、発展途上国に重大なる打撃を与えておるだけではなくて、アメリカ自身にとっても輸入をふやします。農産物の輸出さえ思うようになりません。そのために貿易の赤字はどんどんふえまして、いま月に六十億から七十億ドルである。ことしのアメリカの赤字は六、七百億ドルになると予想されておるのであります。
 全くこうしたアメリカのだらしのないドル高、この金融政策に鋭いメスを入れるために、ドル高を是正するということについて、日本政府はアメリカの友人としてももっと強い交渉をなさるべきであると思うが、政府のお考えはいかがでありますか。(拍手)
 次に、わが国の国民のすぐれた資質、高い貯蓄率、さらに豊かなる労働力、高い科学技術水準、高度の資本の有機的構成、これらを考えますと、日本の産業には五%の成長をする潜在的能力は十分にある。一時は一〇%まで行きました。五%は十分あるというのに、今回発表されました「展望と指針」によれば、これから四%経済成長であるという。そうすれば、一%というものは日本の生産力を切り捨てるというのでありますか。一%は補助金を出して休眠させるというのでありますか。
 何よりも中曽根総理は、所信表明演説において、日本の経済は二十一世紀の経済の著しき発展を目指して経済の効率性とダイナミズムを高めるとおっしゃった。この所信表明と五%以上力がある日本を四%に抑えておくということとは矛盾しておると思うが、総理大臣、いかがでございますか。(拍手)
 さらに経済企画庁長官にお伺いするが、五%をなぜ四%に抑えたか、その四%で完全雇用は達成できるのか、経済摩擦は解決できるのか、財政の自然増収は期待できるのか、明確なる御答弁を求めたいのであります。(拍手)
 経済企画庁は、あるいは通産省は五%を考えた、大蔵省は三%しか主張しない、足して二で割って四%になったというのでは、大野伴睦先生は地下で苦笑されるかもしれないが、合理性を求める国会の答弁にはなりません。指針ならば指針らしく具体的な説明を願いたいのであります。
 第三は、中曽根内閣の政治姿勢についてお伺いいたします。
 私は、総理の行革に政治生命をかけるという御決心に強く感銘をいたし、その御成功を祈っております。ただ、その理念について若干お伺いをいたします。
 総理がたびたび強調される――臨調は社会の情勢変化、社会変化への対応を説く、総理は戦後政治の総決算を主張される。総決算をする対象、目的、それは一体何であるか、いつ、いかにしてこれを決算し、清算をされるお考えであるか、具体的に伺いたいのであります。
 権利の主張が行き過ぎておる、甘えの構造、暴力指向、いずれもこれは戦後の民主的な解放過程における一つの副産物でありまして、私は、ある程度はやむを得ないと思います。しかしながら、この傾向に迎合したりあるいは助長したのに政治の責任が大きくあるということも反省したいのであります。民主主義、解放の原理は私は高く評価しておりますけれども、哲学と宗教のない場合には、それは人間を歴史と伝統から、地域と社会から切り離しまして、エゴとアトムの狂乱、無秩序になってしまうのであります。しかし、そのことは、総理が所信表明されましたように創造的な安定社会の構築とは全く逆になるのであります。
 ミルトンは、世界において人間より偉大なるものはない、人間において心より偉大なるものはないと申しました。この心の問題、人間の基本を教える教育の問題について、総理は所信表明において力強く言及されました。
 しからばお伺いいたします。知育偏重である今日の受験制度、今日の大学教育、社会教育をいつまでにいかなる方向に切りかえていこうとされるのであるか、その具体的構想を承りたいのであります。
 次に、行革の具体的問題について。
 中央省庁の統廃合は、総理府や総務庁の今回出された法案で終わりであるか。また電電、専売についてはいかがなさるつもりであるか。承ると、これは臨調の答申の線とは少し違った力の要求が出ておるようであるが、いかがなさるつもりであるか。
 また、中央地方の役人が五百万人もおるということは多過ぎます。しかも、先ほど総理の御答弁にありましたように、毎年千人程度減らしていったのでは全く前途の見通しがつきません。これは私どもは、思い切って新規採用は半分にするといったようなことで、とりあえず五%の削減を願いたいのであります。
 また、補助金につきましても、十五兆円は、三割なりあるいは五割なりというめどをつけて、しかも具体的に年次計画を立ててこれを減らしていくのでなければ実行はほとんど不可能であると思いますが、いかがでございますか。(拍手)
 行革の問題に関連しまして、行革デフレの問題について申し上げます。
 シュンペーターという経済の専門家が申しました。行革デフレというものは大変な問題である、これは不満や悲惨事の発生に対して精力的に、ときには冷酷と思われるほどのエネルギーを結集して守り抜かなければできないことであると申しました。わが国におきましても、御承知のように、明治の松方デフレは、天皇陛下に松方さんが五年間の期間を与えてもらうことを一札とって、その上でやったのであります。浜口内閣の行政改革は、深刻な、ついに総理やあるいは蔵相の肉体的生命を奪ったことは御承知のとおりであります。したがいまして、これから、いま政府がやっておられるような看板のかけかえ程度の行革ではなくして本格的な行革をやろうと思えば、いま申しましたような多くの犠牲と覚悟が必要であると思いますが、総理のお考え、御決意はいかがであるか、伺いたいのであります。(拍手)
 また、うわさされております国会の解散問題、これは行革の完遂とはちょっと食い違っておると思います。両立しないと思いますが、総理の真意はどこにあるか。解散にあるか、行革にあるか、はっきりとお答えを願いたいと思います。(拍手)
 最後に、政治の倫理化について申し上げます。
 最近、私どもの周辺におきましては、外では金大中事件、アキノ氏暗殺事件、まことに過酷なる事件が相次いで起こりまして、われわれは大きなショックを受けております。国内におきましては汚職事件が次々に拡大をいたしまして、総理も、いまや高い政治倫理の確立が政治必須の課題であると叫ばれました。しかし私は、いまごろ倫理化、倫理化と叫ばれること自体が、道義日本にとっては最大の恥辱ではないかと思うのであります。(拍手)私どもは、敗戦日本を再建するについては一番大切なものは道義であると考えておる。インドの再建を考えたネールさんは、かつて、インドを再建するには鉄にあらず、電力にあらず、インド国民が持っておるプライド・アンド・バーチュー、誇りと道義であると叫びました。私は、日本国民のこの敗戦日本を再建する基本の力は、われわれが持っておるプライドであり、われわれの道義であり、国民の団結であると思いますが、いかがでございますか。(拍手)
 しかるに、最近におきましては、ロッキード事件によりましてこの数年間私どもは全く憂うつであります。私事にわたって恐縮でございますが、私自身は造船汚職に憤慨して政治に入りました。自来、ますます汚職は大きくなる、暴力は頻繁になる、全く残念でたまりません。しかし、いまやこの腐敗政治、この金権腐敗の政治を一挙に一掃する最後のチャンスが日本に参っておると思いますが、総理のお考えはいかがでございますか。(拍手)
 政治は最高の道徳であります。ロッキード事件に係る田中元総理の辞職問題は、この上幾十幾百の証拠を必要とする刑事事件としてではなく、ただ一片の政治家の良心を求めておるのであります。(拍手)
 中曽根総理は、田中さんの盟友として、また自民党の総裁として、内閣の首班として、この際田中さんと腹を割ってお話し合いをいただき、この問題に対して政治的なけじめをつけていただきたい。友情の問題でありまして、司法介入の問題ではありません。総理の勇気と友情に大きく期待をいたすものであります。
 実は、私は田中さんに対しては非常にお気の毒に思っております。あれだけの才と手腕を持ち、日中国交回復その他あれだけの業績を上げられた田中さんが、最近七年以上いわゆる針のむしろに座らされて批判と攻撃にさらされておる。一人の親友ありて、田中さんに機先を制してやめるように声涙ともに下るアドバイスをなぜしないのであろうか。田中さんの晩節を汚させないために、全うさせるために、面を冒して辞職勧告をする心のこもった真実のある仲間が一人いないのであろうか。いかでございますか。大義親を減するという。情において忍びないものがあるならば、泣いて馬謖を切るだけの勇猛心が望ましい、裁きのない世界は最も恐ろしい世界であります。日本国会のモラルを確立するためにも、私は、この際、田中さんが深くやめられることを、そしてやめられることによってこの問題に政治的なけじめをつけられることを心から願うものであります。そのために、中曽根さんは友人として最大限度の努力をしてもらいたい。
 いまや同本は、総理の言われるように、二十一世紀に向けて静かなる改革をたゆみなく重ねていかなければならない時期であります。私は、中曽根内閣が厳しい自己反省、自己改革のもとに、この政治の困難にりっぱなけじめをつけられることを心からを求めて質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 竹本議員の御質問にお答えいたします。
 ただいまは真心のこもったお話をいただきまして、心から感謝申し上げる次第でございます。
 なお、先ほど浅井議員に対する御答弁の中で、雑音という表現を用いましたが、これが不適当であると思いますので、取り消させていただきます。
 まず、竹本議員の御質問の第一番は、大韓航空機撃墜事件でございます。
 すでに、いろいろ申し上げましたとおり、事件の真相を速やかに解明して、そしてしかるべき措置をソ連にとってもらう、そして御遺族をお慰め申し上げる、また再びこれを繰り返さないように保障する、こういうことが現在の問題でございまして、その面に向かって政府は引き続いて持続的に努力してまいりたいと思う次第でございます。
 次に、ミサイルギャップと軍備管理の問題について御質問がございました。
 私は、ただいまの核軍備の状況を見まして、量はソ連がまさっておる、しかし質の面においてはあるいはアメリカがまさっておるのではないかと思います。しかし、ベトナム戦争以来、アメリカが少し緩めておったところにソ連が急激な増強を行いまして、量的にはかなりソ連が優位に立っているのが現実ではないかと判断をいたしております。このような状況のもとに、できるだけ両方の話し合いを調和させまして、世界のために、人類のためにこの核軍備の状況をレベルダウンをさせて、そして最終的にはこれを廃棄に持っていくという面に向かって全世界も努力するし、日本も懸命の努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
 ただ、これにつきましては、竹本さん御指摘のように、検証を伴った有効な確実な保障措置が必要である、そういうものがなければ相互信頼が生まれるわけはありません。そういう点につきましても、現実的な着実な政策を進めていかなければならないと思っております。
 次に、レーガン大統領の日本訪問に関する問題でございますが、滞日スケジュールはまだ先方と話し合ってもおりません。大体先方の要望を聞いて行うというのがわれわれのいままでのやり方でございます。先方の御意見はよく聞きまして、適切な御訪問が行われるように努力していきたいと思っております。
 INFにつきましては、米国は、すでに本年三月にいわゆる暫定案を提案するなどいたしまして、いままでよりも弾力的な立場に立っております。この弾力的な立場に立って、西欧側の各国、協調している各国といろいろ緊密な連絡を行っておるのが現状でございます。われわれも、できるだけソ連との間に合理的な調整が行われることが望ましいし、三歩進まなくとも、一歩でも二歩でも前進することが事態解決への道であると考えておりまして、将来的展望を踏まえつつ、そのような現実的対応を行うように、今後とも懸命の努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。
 次に、北方領土問題でございますが、私に訪ソせよというお話でございましたが、すでにわが方の総理大臣は三回モスコーを訪問しておりますが、先方はまだ一回も来たことはありません。また、わが方の外務大臣は数回にわたってモスコーを訪問しておりまして、今回はグロムイコ外相が来る番になっており、そのことを、先方のカピッツァ次官もその順序を知っておるわけでございます。あまつさえ、大韓航空機のような事件がありまして、ソ連がまだ責任を感じないような状況を示している現在、私が訪ソするということはとうてい考えられないところであり、まず先方の外務大臣グロムイコ氏が日本を訪問する番である、そのように考えて、国連総会等を通じまして、安倍外務大臣はグロムイコ外務大臣に会うチャンスがあるかどうか知りませんが、そのような面につきまして、われわれの招請の意思を伝えるのが適当ではないかと考えておるところでございます。
 次に、防衛費の問題でございますが、一%の問題について、それはわれわれの防衛に関する意思のシンボルの一つのあらわれであるという御発言でございました。しかし、この一%の問題は、他の経費とのバランスという考えのもとに一つのかんぬきをかけた政治姿勢であると私たちは考えております。五十一年に決めましたこの方針は、われわれは維持していきたいと考えておるところでございます。この点はいままで御答弁申し上げたとおりであります。
 防衛問題について官僚に任せるというようなことはいたしておりません。やはり文民優位を貫く。文民優位とは政治優位であると考えておりまして、私たち政治家の責任においてこの問題は推進してまいりたいと考えておるところでございます。
 中小企業に対する政策についていろいろ御指摘をいただきましたが、今回設備投資促進のための措置、すなわち、一定の要件のもとで三〇%の特別償却を認めるという制度や、あるいは事業承継に資するための措置、すなわち取引相場のない株式の評価の改善合理化、個人事業者の事業用宅地等の課税の特例措置等を講ずることといたしております。今後とも下請代金の支払い促進とかそのほかの面につきましても、きめの細かい配慮をしてまいりたいと思っております。
 人事院勧告と仲裁裁定につきましては、すでに申し上げたとおりでございまして、制度尊重という基本的立場に立って国政全般との関連でこれを検討しておるところであり、また、国会の御判断を仰ぐべきものとして提案しておるところでございます。
 減税問題について御質問がございましたが、この減税につきましては、実は財源の問題がやはり大きな問題であるのであります。大蔵委員会に設けられました小委員会におきまして、ずいぶん精力的にやっていただいたのでございますが、結局は財源問題について非常に難航しておったというのがその結果であると私承っております。赤字公債に持っていけば簡単でございますけれども、赤字公債を増発するということは結局はまた高金利を呼び、あるいはさらに後世に向かって大きな負担を呼び、いたずらなる財政膨張を招くという結果であるのも皆様方すでに目の前に見ておるところでございます。
 そういう点から、政府としては、臨時行政調査会の答申を真っ当に受けて、その精神のもとに歳入歳出全般の総合的見直しを行って構造改革を行い、スリムの政府機構、スリムの政治運営という関係に立って減量を中心に進めているわけでございます。この点についても、御理解と御協力をいただきたいと思うのでございます。
 なお、自民党幹事長が各党にお約束いたしました点につきましては、政府といたしましても最大限尊重してまいるつもりでおります。
 補正予算の問題について、政治的、社会的補正を考えよというお話でございます。
 その言わんとするところは私たちも理解できるところでございますが、現在の状況では、やはりこの財政全般の苦しい状況、また、この危機を脱出しようと思って懸命の努力をしているわれわれの心構え等からいたしまして、まだ不確定な要素が余りにも多い今日の段階において、補正予算云々を申し上げる段階ではないと思います。しかし、災害対策等につきましては、既定予算の範囲内におきましてできるだけの措置をいま講じて落ち度のないようにしているところでございます。
 経済摩擦につきましては、政府といたしましては、いまこれらに対応する対策を各省庁の内部において検討さしておりまして、いずれ近いうちに発表できるようにいたしたいと思っております。
 米国の高金利の問題について御発言がありましたが、確かに同感でございます。よって、ウィリアムズバーグ・サミット宣言におきましても、金利の低下や赤字財政の回避という問題について声明にわざわざ載せて、各国がこれを守るように戒めたところなのでございます。今後ともこの線に向かって私たちも努力してまいります。
 経済成長を四%にした理由はいかん、五%の力を殺しているのではないかという御質問でございますが、今後の日本経済を世界経済全体の流れの中に見ておりまして、五%とするのはいささか危険な要素があると思います。スペキュレーションの要素があり過ぎる。いままで日本の社会経済発展計画が高い成長率をつくり過ぎて、そのためにかなり大きな修正を余儀なくされた、こういう面からいたしまして、四%程度にしておくのが最も堅実なやり方である、しかし、その要素が少し変化が来れば、リボルビングシステムによって毎年毎年これに検討を加えて修正していく、こういうシステムに今度変えたのでございまして、この方がはるかに弾力性があるやり方であると考えております。
 戦後政治の総決算という点について御質問がありましたが、端的に申し上げれば、国際政治に関する日本の姿勢を一歩前進させる。言いかえれば、政治や文化の面についてもさらに発言も持つし、役割りも引き受けていく。それによって日本の運命を開拓し、世界に名誉ある地位を占めたいと思うのが一つです。
 もう一つは、内政につきましては、行革の断行あるいは教育制度改革への準備等によって、いままで日本が三十八年間たどってきた過去を反省しつつ、新しい地平線へ向かって進もうというのが総決算という意味であると申し上げたいのであります。単に過去を見詰めるばかりが能ではないのでありまして、この坂を登りつつ峠に来ておる段階でございますから、次の地平線に向かって進むということをすでに実行しているということであると御理解願いたいと思います。
 教育の改革について、受験制度や大学のあり方につきましても、その一環としていま基本的な問題からこれを再検討を加えつつあるという状況なので、先般来、文化と教育の懇談会をしばしば開いて、私自身も出席させていただいておりますが、それはそのような文化的な、もっと深い包括的な観点から教育問題を見直そう、そうして準備をしていこう、こういう考えに立っておるのです。
 特に、この所信表明演説でも申し上げましたが、教師とか国とかという与える方の側がいままではややもすれば中心であったが、PTAとかあるいは学生とか生徒とか、受ける方の立場を中心にまた考えてみる必要がある。そういう意味のこともここで強調申し上げた次第なのでございます。
 行政改革につきましては、土光さんの非常な御努力によりましてりっぱな答申をいただきましたので、この路線に沿っていま着々と推進しておるところでございます。
 今回の総務庁の改革、その後は何があるのかという御質問でございましたが、国家行政組織法の改正をお願いをいたしております。この法案をぜひ成立させていただきますれば、ただいま八省庁、運輸省や厚生省やそのほかの八省庁におきまして部局の改革を試みておるわけです。今度の国家行政組織法の改正によりまして、たしか局の数が中央官庁において百二十八あったと思いますが、この範囲内において各官庁はスクラップ・アンド・ビルドで改正できるというシステムにしておるわけです。運輸省を初めその他の役所は、許認可を中心にした、ややもすると権力的官庁であると言われておりましたが、これを政策的官庁に脱皮させよう、厚生省におきましてもそうですし、文部省の一部改革におきましてもそうでありますし、そういう意味の約八省にわたる十六の局、部、これが二十にふえる見込みでございますが、そのスクラップ・アンド・ビルドによって政策官庁への脱皮の制度がいまやすでに成案を得て準備されておるのであります。そういう意味におきまして、次にそういう大きな改革が出てまいりますので、ぜひとも国家行政組織法改正を実現させていただきたいとお願い申し上げるものなのでございます。
 電電や専売の公社の改革につきましては、すでに申し上げましたとおり、臨調答申の線に沿いまして着々と推進してまいるつもりであります。
 国家公務員の定員につきましては、国立大学特に医学部の増設あるいは国立病院の整備、あるいは二百海里による海上保安庁の強化、あるいは各地の飛行場のジェット化による管制要員の増員等々、いろいろな問題がありましたが、ともかくこの十数年の間に、昭和四十三年からであると思いますが、一万二千人の実員の削減をやっておるわけであります。五十七年においても千四百三十四人、五十八年においても千六百九十五人、血の出る実員の削減をやっておるわけであります。今後も、この趣旨に沿いましてやってまいるわけであります。
 補助金につきましても、同じように、ややもすれば既得権化しておって、むだや不合理の多い面もあります。これらにつきましても、今後とも補助金の削減合理化について努力してまいるつもりであります。
 行革デフレ、松方行革や浜口行革について御言及がありましたが、われわれも、松方さんや浜口さんに負けないだけの使命感を持って懸命に今後も努力してまいるつもりでおります。
 次に、ロッキード事件等政治倫理の問題について御質問がありました。プライドとバーチューが大事であるというお説は、私も全く同感でございます。この事件につきましては、しかし、いまや判決が出る直前に差しかかってまいりまして、厳粛にこれを見守っていくことが適当であると考えておる次第です。
 最後に、解散か行革かという御質問でございますが、解散か行革かと言われれば、行革だとお答えする次第であります。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
#14
○国務大臣(竹下登君) 大部分は総理からお答えがございましたが、ます、課税最低限を六年間据え置いた結果の、いわゆる憲法八十四条租税法定主義に違反するとは言わないまでも、それはけしからぬではないか、こういう御質問であります。
 この問題は、そのときどきの社会経済状況、財政事情等を総合勘案して判断さるべきものでございまして、数年行われなかった、そのことが直ちに憲法違反の問題を生ずるとは思いません。しかし、所得税制を長期にわたって固定することは好ましくない、そのように考えられますので、これらの問題にも対処すべく、税制調査会において所得税制のあり方について税制全体の中長期的なあり方を考慮しながら、その具体的内容について精力的に御審議を願っておるさなかでございます。
 それから、公共投資等二、三兆ということの補正予算の問題でありますが、これについても総理からお答えがございました。この問題につきましては、特に、先ほど民社党から正式な公共事業の下期追加の御提案が文書で政府当局に申し出がございました。
 現在、私どもが整理してみますと、昨年暮れにいわゆる五十七年予算の補正を行いまして、補正後予算に比べましても、予算の現額からいたしますと下期は昨年程度の事業量は確保できる、こういう数字が出ておりますので、いま総理からもお答えがありましたように、よしんばこれに建設国債の財源をもって充てるとしても、これがまた民間金融等に影響を及ぼして景気の足を引っ張りかねない、こういうことにも相なりますので、今日、財政の出動は考えておりません。
 それから、金利の問題もございました。
 これにつきましては、公定歩合の操作は日本銀行の専管事項でございますが、とにかく景気や金融動向のほか内外金利関係、外国為替相場の状況等を見守りながら、機動的に対処していくことが必要であるという認識はひとしくいたしておるところでございます。
 それから次に、大蔵委員会の減税小委員会で財源を提示したのに、批判はしたがこれに対して代案を示さなかったではないか、こういう趣旨の御発言のように受けとめました。
 確かに減税小委員会では、与野党の方々が精力的に審議を行われました。竹本議員も、積極的に参加していらっしゃった一人であると承知をしております。その中間報告において、減税を行う必要があること、そして、財源は赤字国債によらないこと、これには意見の一致を見た。がしかし、具体的な財源についてはなお検討を続ける旨述べられて、それが議長さんの手元に中間報告として提案をされておるわけであります。
 これは、与野党からいろいろな意見が出されたが、結局は合意に至らなかった、結果としてそうであると思うわけでございます。しかしながら、すべてが私は共同責任であるとかいうふうに申し上げるつもりはございません。マジョリティーを持っておる者が七割の責任を受けるということは、これは議会制民主主義のあるべき姿であると私は思っておるからであります。しかし、これはその後脚案内のようないろいろな経過がありました。そうしてまた、小委員会の審議につきましては、これは国会の中で非公開で行われた議論でございますから、これについてのコメントは差し控えるべきであると考えております。
 そこで、税制調査会の場を中心として今日検討が行われておりますが、そこでの作業も減税小委員会と同じように、赤字国債を財源としないようにという前提で議論がされておるやにいま承知いたしております。したがって、まさに一番むずかしい問題でございますので、税制調査会の結論を踏まえながら今後とも検討をしてまいりたい。そして、その都度やはり御意見をお聞かせいただきたい、心から私はそのように思っておるところであります。
 それから、いま一つ、いわゆる円高対策というお言葉をお使いになりました。
 総理からお話がございましたように、これは「インフレなき持続的成長」ということを基本にして、いわゆるアメリカの巨額の財政赤字が金利の押し上げをしておるということの世界経済全体に対する影響について、われわれも同じ認識を持ってそれを話し合ってきたところであります。基本的には、わが国のファンダメンタル等から見ますならば、私は円高基調に回復するであろうという期待は持っておりますが、短期的には、おっしゃいました巨額の財政赤字、それから来る金利の押し上げに作用されておることも否定できない事実でありますので、七カ国蔵相会議、またサミット等においても確認をいただきました適時適切なる単独あるいは協調介入等を実施することによって、いわゆる通貨の安定対策というものに取り組んでいきたい、このように考えております。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
    〔国務大臣宇野宗佑君登壇〕
#15
○国務大臣(宇野宗佑君) まず、経済摩擦に関しましてお答えを申し上げたいと思います。
 輸出全体に対しましては、最近、ややもすれば保護主義が台頭いたしておりまして、これではいけない、だからあくまでも自由貿易体制を堅持すべきであるということがサミットにおいても確認されましたし、また、私が参加いたしました四極会議においても確認されております。従前もわが国の貿易理念はさようでございましたが、今後もその方針は貫くつもりでございます。しかしながら、現実の問題といたしまして、やはり二国間があるいは多国間におきましていろいろと規制がなされておることも事実でございます。
 したがいまして、日本としてはいかなる輸出規制を今日考えておるかという御照会でございましたが、私といたしましては、いま申し上げましたように、規制そのものがいわば自由貿易体制に反するものである、保護主義に偏るものである、こういう認識を持っておりますし、このこと自体は、去る四極会議におきましても確認をされております。したがいまして、現実の問題として幾つかあるであろうが、そうした規制に関しては、今後は、ガットの精神に反して制度そのものを崩壊さしてはいけないから、ガット事務局まで届け出をしようではないか、ここまで実は話が進んでいるようなことでございまして、わが国といたしましては、今後もそうした気持ちで輸出に臨みたいと思いますが、もちろん輸出の急増に関しましては、私は監視を怠ってはならないと考えております。しかし、調和ある対外政策といたしまして、輸出は常に秩序あるものでなければならない、また節度あるものでなければならない、かように考えております。
 次に、輸入に対してでございますが、黒字対策といたしましては、やはり輸入拡大、特に商品輸入の拡大、さらには市場開放、このことを中心に考えていかなければならないと思うのであります。
 さきに政府は、御承知のとおり東京ラウンドの関税引き下げの前倒しをやりました。さらに、去る国会におきまして、議会の御協力のもとに基準・認証制度の改正も行われました。この二つの措置に対しまして、私が参加いたしました四極会議は高い評価をいたしております。しかし、これだけではまだまだ不十分でございますので、ひとつ今後は内需の拡大を図る、また為替対策を強化する、さらには金融、税制の整備を図る、こうしたことで、あれこれとわれわれといたしましても輸入拡大政策を進めていきたいと考えております。
 三番目に、流通協力並びに資本協力についてはどういうふうな考え方であるかという仰せでございますが、この点に関しましても、私たちといたしましては、やはり日本が国際的に孤立化しないためにも今後は大いに推進すべき重要な問題である、こういうふうに認識をいたしております。
 具体的にはどうするかという問題でございますが、ただいまアメリカに輸入促進ミッションを派遣いたしておりますが、これは、かつてございましたように一過性であの商品を買ってやろうというのではなくして、ひとつアメリカから見た場合に、日本にどういうものを輸出すればよいか、どういうふうな資本協力があるか、技術協力があるか、いわば対日アクセス促進ミッション、こういうふうに名のりましてただいま行っていただいておりますが、このミッションは続きましてECにも私は派遣しなければならないと考えております。そうしたこと等を通じまして、経済摩擦は今後極力少なくなるように考えていかなければならないと思っておる次第でございます。
 続いて成長率でございますが、御承知のとおりに、わが国の貯蓄率は非常に高いものがございます。その間におきまして、間断なき技術革新がなされておるのではないかと私は思います。同時に、そうした技術革新に対応する経済的な経営改善もやはり力強く推進されておるのではないかと私は考えます。そうしたものを総合的に判断をいたしますと、今後も引き続きましてある高さの成長率は期待できると私は思いますし、また、それだけの潜在力はあると私は思う次第でございます。したがいまして、そうしたものを今後も勇敢に引き出していくということが私は大切であろうと思いますが、八〇年代の展望という観点に立ちましたときに、対象期間の平均といたしましては四%が妥当な線である、私はかように考えておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣塩崎潤君登壇〕
#16
○国務大臣(塩崎潤君) 竹本議員にお答えいたします。
 御質問の趣旨は、先般私どもが閣議決定いたしました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の中で年平均実質成長率を四%と決めたことに対しまして、潜在成長率五%から見たら低いのではないか、あるいは根拠に乏しいのではないかという御趣旨でございました。
 四%にいたしましたのは、御案内のように、一九八〇年代に入りましてからここ三年間ばかり三%台に下がっているのでございますが、これを引き上げて四%にしたのでございます。しかもまだ、それは足して二で割るといった妥協的な方法でございません。私どもはあとう限りの各種の要因を基礎としながら客観的に見込んだつもりでございます。
 四%と考えました要因といたしましては、まず第一に、これまでのわが国及び世界の経済成長の趨勢、一九六〇年代はわが国は一〇%確かに成長いたしましたが、一九七〇年代には五%に低下したことは御案内のとおりでございますし、いま申しましたように、一九八〇年代は三%台に低下しているのでございます。それから、第二の要因といたしましては、いわゆる世界の同時不況と言われております現状から世界各国がどういうように景気を回復していくか、この状況でございます。第三には、わが国の技術開発、貯蓄率、さらにまた労働力供給等の社会的基盤の動向でございます。第四は、国及び地方を通ずる財政の状況も私どもは勘案いたしまして四%と決定したわけでございますが、御指摘のように、四%に引き上げましても、御案内のように完全失業率は二・六%が二%台になるという見通しを持っておりますし、自然増収も、昨今のように一兆五千億から二兆円に下がっておりますものは恐らく相当な増収を来すようなことになる、私はこういうふうに見ているところでございます。
 竹本議員のおっしゃるように潜在成長力が五%とわかっておれば、全く企画庁長官は苦労しないわけでございます。これが暗やみで黒猫をつかまえるようにつかまえられないから、私どもは大変苦労するわけでございます。もうおっしゃるように、五%の経済成長が達成いたしますれば、いま総理も申されましたように、リボルビングプランで一刻も――久しぶりで経済見通しを上方修正いたしまして、私ども大いに喜んでいきたい、こんなふうに考えているところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(福田一君) 金子満広君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔金子満広君登壇〕
#18
○金子満広君 私は、日本共産党を代表して、当面する重要な幾つかの問題について、中曽根総理にただしたいと思います。
 まず最初に、大韓航空機撃墜事件について伺います。
 大韓航空機の領空侵犯があったとはいえ、多数の乗客を乗せた民間機をソ連が撃墜したことは、人道上もまた国際法の上からいっても断じて許せない蛮行であります。私は、ここに犠牲になられた方々並びに御家族の皆さんに対し、心からお見舞いを申し上げます。
 民間機の安全航行について最善を尽くすことは、今日、世界で共存する国々の共通の責務であることは、いまさら言うまでもないことであります。ましてや、人命尊重を最も重要な原則とする社会主義の立場からして、ソ連の民間機撃墜は、この原則に照らしても全く相入れないものであります。
 すでに、わが党は、この事件について、発生後直ちにソ連政府に対して、真相を明らかにするとともに責任ある態度をとることを強く求めてまいりました。さらに、昨日、この事件の重大性にかんがみて、わが党は、幹部会声明を発表して、「ソ連指導部が率直に責任を認め、事件のすべての情報を公表することがいま最も重要である」ということを重ねて指摘したのであります。同時に、このような事件を二度と再び繰り返さないためにも、なぜ大韓航空機がソ連領空侵犯を行ったかを明らかにすること、日米両国政府は、みずから知り得た情報を軍事優先ではなく平和と人命尊重を最優先させる立場から公開すべきであります。この見地に立って、日本政府はその資料のすべてを公開すべきでありますが、この点について総理の見解を承りたいと存じます。
 さて、中曽根内閣が成立して間もなく十カ月になろうとしています。この激動の中の十カ月、国民の前に明らかにされた中曽根政治の実態は一体何だったろうか。それは、福祉の切り捨てであり、教育の圧迫であり、国民生活に対する全面的な圧迫であった。しかも、その圧迫の上に、日米軍事同盟を土台にしたおびただしい軍備の拡張であり、軍事費の連続異常な突出でありました。まさに軍拡路線ひた走りの暴走政治と言うほかないと思うのであります。(拍手)
 総理は、所信表明演説において、「現在のわが国をめぐる諸情勢の変化から生ずるもろもろの問題は、避けて通れない戦後政治の歴史的ハードルであり、これを乗り越えなければ、次の日本の命運が開けない」このように述べています。このハードルとは一体何だろう。それは憲法であり、命運を開くとは、アメリカに追随した中での軍事大国の道であると私は言わざるを得ません。(拍手)
 以上の見地から、具体的に質問を行います。
 第一に伺いたいのは、戦争と平和の問題についてであります。
 周知のように、いま世界は果てしない核軍拡競争の真っただ中にあります。しかも、核戦争の危機が諸民族の死滅にかかわる危機としてとらえられ、反核、平和の運動は国際的にもかつてない規模で高まりを見せています。このとき、広島、長崎、そしてビキニと、三たび原水爆の被害を受けた世界でただ一つの被爆国である日本が、世界の平和と核兵器の廃絶という問題で果たさなければならない役割りは、一層重大になっていると考えます。
 昨年、第二回国連軍縮特別総会を前にして、わが国の国会は、核兵器の廃絶を当面の課題とするとともに、核兵器が二度と使われないような実効ある措置をとるとの決議を採択をいたしました。また、総理は、所信表明の演説の中で、軍縮と核兵器の廃絶を述べられました。
 総理、総理が本当に国会の決議を実行する立場に立ち、みずからの言明に責任を持つなら、まず何よりも、今月の下旬からニューヨークで開かれる第三十八回国連総会に対して、みずから核兵器の全面禁止の国際協定の締結の提案を行うべきであり、同時に、国会の決議に基づいて核兵器の使用を禁止する実効ある国際協定の締結の提案を、まず核軍縮という立場から態度で示すべきであると考えますが、このような提案をする用意があるかどうか、この際、しかと承っておきたいと思うのであります。(拍手)
 次は、国是である非核三原則の完全なる実施の問題についてであります。
 いまアメリカは、原子力空母カール・ビンソンの日本寄港を初め、核攻撃機F16の青森県三沢基地への配備、そして日本を母港とする第七艦隊所属艦船への核巡航ミサイルの装備を急速に進めていることは、天下周知の事実であります。これはアメリカの核戦力の有力な部隊として位置づけられているものであります。
 総理はこれを認める立場を明らかにしていますが、総理が非核三原則を守るというのであれば、こうした航空機、艦船の日本寄港や配備こそ拒否すべきであると私は考えます。(拍手)いま世論調査では、核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませずという、この非核三原則が完全に守られているかという問いに対して、守られていると信ずるその人は、何とわずかに七%であります。いまや、非核三原則の内容、つまり、「つくらず」「持たず」はそれとしても、「持ち込ませず」は「確かめず」に変質していると私は思います。
 総理が本当に非核三原則を厳守する、そういうことであれば、何よりも日本から核部隊、核基地の疑いのあるものを一切撤去させる、同時に、核兵器を積んだ艦船、航空機の寄港も通過も認めない、そうして疑わしきは入れない、こういう確固とした態度ですべての核持ち込みを拒否する立場を内外に宣言すべきであると考えます。
 わが党は、すでにこうした内容を持った非核日本宣言を政府がすることを求めてまいりましたが、これらの諸点について中曽根総理の見解を改めて伺いたいと思います。(拍手)
 次に、わが国への核持ち込みの問題が内外の重大な関心を呼び起こしているまさにこのとき、六月、ドネリー在日米軍司令官は、「米国の核の傘の下に住もうという人々は、われわれの兵器庫に核兵器があるという事実を受け入れなければならない」、このように述べています。つまり、核兵器の持ち込みを受け入れるべきだ、こういうことを公に発言をしたのであります。これは、在日米軍司令官としての公式な発言であり、単なる個人の発言などということで済まされる性質のものではありません。紛れもない非核三原則の空洞化、変更を迫るものと言わざるを得ません。
 総理は、このような発言を内政干渉として見るのか、それとも黙認をするのか、この際、ドネリー発言は国際的にも重大な関心を持たれている発言でありますから、ここで所信を明確に述べていただきたいと思います。(拍手)
 さて、こういうアメリカの内政干渉の発言は、軍備拡張問題て一層激しくやられております。
 総理の一月訪米による日本列島不沈空母化、そして日米運命共同体の誓約以来、アメリカの議会、政府、軍の首脳からは、GNPの一%の枠を外せとか、あるいはまた日本政府の「防衛計画の大綱」の見直しがどうであるとか、こういう点など、次々にわが国の予算に関係することまで干渉してきているのが実態であります。われわれは絶対にこれを許してはなりません。
 ところが、先日開かれた日米防衛首脳会談の結果を総括した自由民主党機関紙自由新報は次のように述べています。「日本の防衛政策が米国の対ソ戦略に明確に位置づけられ、大きな曲がり角に立っている」と述べて、わが国がアメリカの対ソ戦略の中に深く組み込まれていることをみずから認め、そのもとでの軍事力の増強、軍事費の異常な突出を進めているのであります。
 もし総理が軍縮というのを真に実行しようとするならば、みずから、軍事費の突出ではなくて、軍事費の削減をこそ行うべきであります。(拍手)もしこの削減を行わず、日米安保条約の強化路線を強引に推し進めるならば、それこそ、口に軍縮を唱えながら実際には軍拡の車を走らせる、このように言わざるを得ないのであります。
 人々は、総理が、何を述べたかではなくて、何をやっているか、その事実を通して明確な判断を下すのであります。軍事費を削って暮らしと福祉と教育の充実を、これは国民の多数の声であり、私はこのことを強調して、次の質問に移ります。(拍手)
 第二は、国民の生活を守ることと行政改革の問題であります。
 いま国民は深刻な不況のもとに置かれています。購買力は著しく低下している、失業の問題、就職難、一層ひどくなっています。来年三月卒業期を迎えての就職難がどういうことであるかは多くの人々が指摘をしているところであります。中小企業の倒産、過去さかのぼって七カ月間にわたって前年同月を大きく上回っています。そうしてまた、地場産業と言われる各地の織物、皮革、履物産業などはまさに危機的状態に置かれているのであります。そして、わが国の農業は外国農産物の輸入拡大などによって一層圧迫されていることはだれしもが認めているところであります。
 ところが、総理は、所信表明において、こうした実態に対してはどう打開するかについて明確な方向を示さないまま、行財政の改革の断行こそが重要である、このように強調しているのであります。
 総理、中小企業とか地場産業、そして、日本の農業の当面しているあの困難に対してどのような方策をいまとろうとしているのか、この点についても、全国の関係者はどのような答弁が総理から出てくるか、それを刮目しています。ぜひ明確に答えていただきたいと思います。
 さて、行政改革とは一体何だろうか。われわれは、むだを省く、そうして不正をなくす、簡素にして効率的なそういう行政を確立する、これが本当の行政改革であると確信をしています。しかし、政府がいま進めている行政改革はこの方向に全く反するものであります。国費のむだ遣い、浪費の点について若干の事例を挙げるだけで、これは明白であろうと思います。
 一九七〇年代、政府が鳴り物入りで全国的に進めたあの大がかりな臨海工業基地建設、それがいまどんな状態に置かれているか。莫大な国費を投じた北海道苫小牧東、青森県むつ小川原などはどうなっているか。用地の分譲ができたのは、わずかに一〇%であります。広大なあの造成地の大部分は、雑草だけが生い茂って荒れ地に成り果てているのが現状であります。しかも、その中で、総事業費千三百億円、港の建設だけでも三百億円をつぎ込んだ福井の港の場合は、開港以来この五年間に入港した船はたった一つだと言われています。現地では、多くの人たちがそこで釣りをしている。百億円の釣り堀だという言葉さえ生まれているのであります。むだ遣いでしょう。この浪費について、私は、これを計画し、実行し、そして進めてきた責任は一体どこにあるのか、こういうところにメスを入れるのが本当の行政改革ということではないでしょうか。(拍手)この点について総理はどのように考え、何をしようとしているのか、この点も伺っておきたいと思います。
 また、わが党がこれまでしばしば問題にしてまいりました、あの原子力船「むつ」の問題も全く同様であります。五十六億円、十二年前にできました。この船は、御承知のように、運航直後に放射線漏れという致命的な事故を引き起こしました。そういう中で、修繕、補償などでこれまでに六百億円近い費用を費やしています。さらに、今後九百億円もつぎ込まなければならぬという、そういうことまでもくろまれています。時代おくれのこの船、いまだに母港がありません。さすらいの船であります。これ以上の出費は絶対に許されません。廃船すべしの声は高まっているのであります。
 総理は、昨日の答弁で、この「むつ」について、エネルギーの長期的安定供給、将来の輸送政策の研究のために廃船しないということを述べました。それでは、廃船しないのであれば、今後一体どんな展望があって、どんなことをして、どのようにやるのか、このことについては明確に責任を持って答えていただきたいと思うのであります。(拍手)
 さて、私はちょうど二年前、この時期、本院の代表質問で、政府が進めようとしている臨調答申に基づく行政改革というのは、むだと浪費を温存しながら、実際には福祉、教育、国民生活を犠牲にする、そして軍備拡張、軍事大国への道を切り開く体制づくりだと指摘をいたしましたが、あれから二年たちました。この二年間の現実政治の実態は、この指摘の正しかったことを事実によって証明していると確信をいたします。(拍手)
 そこで、次の具体的問題について伺います。
 まず、減税であります。
 総理は、所信表明でもあるいはまた参議院選挙の演説の中でも、減税はやると言ったらやるんだということを繰り返し言明されました。しかし、残念ながら肝心の減税の額とか時期とか財源については今日まで一言も触れておりません。だから同じ質問が繰り返し繰り返し出てくるのです。私はそういう点で、わが党は一兆四千億円の減税要求をしております。今国会に対する補正予算の要求もしています。財源についても提案をしています。
 そこで、総理、いつまでも額と時期と財源について触れないで、やると言えばやるんだということだけで国民を納得させようとしても、だれ一人納得する者はないと私は思うのです。(拍手)そうした意味から、この演壇から明確に答えていただきたいと思うのです。確かに財政問題で苦労しているということを総理も言いました。それでは財政問題どうするんだ。そこで、具体的に聞きます。
 減税のために増税をするとか、直間比率の見直しということを政府や自由民主党の首脳の方々は繰り返し発言をしておるのでありますけれども、この点についてどう考えているのか。そうして現に、酒税、物品税、印紙税、それに加えて今度は電話の利用税からギャンブル税から石油税からパスポートにまで税金をかけるということが何の秘密もなく取りざたされております。こういうような諸税について、来年度、総理はこれを導入する気があるのかあるいは導入しないのか、大型間接税というのはどうなるのか、こういうことについて、税調が何々とか、税調任せとか、税調次第ということでなくて、総理自身の考えを内閣の首班の責任において答えていただきたいと私は思うのであります。(拍手)
 次に、人事院勧告及び仲裁裁定の完全実施について伺います。
 報道されているところによれば、政府は、五十八年度人事院勧告の完全実施を行わず昨年度分を連続凍結をする、こういう方針を固めていると伝えられています。これは人事院勧告の制度そのものを否定するものであると言わざるを得ません。これが三公社四現業、さらには年金や恩給、そして民間の賃金にまで悪影響を与えることは明白であります。これはかってあの戦争中、当時の政府が戦費調達のために、財政危機を口実にして、官吏つまり現在の公務員の減俸を強行したことを想起させるものであります。
 人事院勧告及び仲裁裁定の完全実施を改めてここに強く求めるものでありますが、この点についての答弁も求めるわけであります。(拍手)
 次に、年金と恩給の問題です。
 言うまでもないことでありますが、年金、恩給は老後の唯一の生活の支えてあります。その受給者はすでに千九百万人を超えています。
 ところが、政府は来年度予算でも年金、恩給の改定を行わず、そして、わずか二%以下にこれを抑える方向を打ち出していることが報道されております。給付額を消費者物価の上昇に合わせて上げるということは、法律上もしっかり書かれていることであります。年金制度の根幹がここにあるわけですから、老人医療の有料化に引き続くこのような冷酷な方針は直ちに撤回して、法の精神にのっとり、年金、恩給の引き上げを行うべきであります。(拍手)
 次に、健康保険法の抜本改悪についてであります。
 厚生省は、健康保険の本人十割給付をやめて、二割は負担してもらうなどということを決定いたしました。これはまさに大改悪であります。加入者はもちろん、日本医師会を含めて、全国的な反対運動が急速に盛り上がっております。盲腸で一週間入院しただけで、これまでは四千三百円だったものが、今度は何と八倍の三万三千四百円、そういう本人負担にはね上がるのであります。また、これが長期療養者に対する耐えがたい負担になることは言をまちません。金の切れ目が命の切れ目になみということは、マスコミでも繰り返し報道されていることであります。こんな事態を絶対につくり出してはなりません。
 かつて昭和十八年、あの十五年戦争のしかも末期に、時の東条総理が軍事費確保のために健康保険の本人の二割負担を行った、あの歴史的な経過を見るならば、いま中曽根内閣のもとで進められている健康保険法の改悪が一体何を意味しているかは明らかであろうと私は思います。(拍手)本人二割負担によって減少する国の支出は、わずかに三百六十億円であります。これは米軍の家族の住宅とか、その子弟のための学校の建設とか、それをつくるために思いやりとして出している何の義務もない予算の半額を削っただけで十割給付を続けることが可能であります。どちらを選ぶか、国民はそれに注目をしているのであります。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 さて、暮らしと平和を守り、不況を打開するためにも、いまわが国の政治にとって最も根本的な問題は、軍拡の路線を軍縮と国民生活防衛の方向へ根本的に転換させることであります。この点を強調し、次に、金権腐敗政治の一掃の問題について質問をいたします。
 ロッキード事件、田中元総理に対する判決はいよいよ一カ月後に迫ってまいりました。この事件は、現職の総理による犯罪が問われているという点でも、また賄賂史上例のない巨額な五億円という点から見ても、そしてその政治的道義的責任という点から見ても、国会の権威ということから考えても、この問題は国民の前に必ず明らかにしなければなりません。これはわれわれ政治家に課せられた当然の義務であります。
 すでに、田中議員の辞職勧告決議案は本院に提案をされています。この決議案は、議会制民主主義の立場からして必ず本会議によって表決されなければなりません。その決議案に対して賛成するか反対するかは、個々の議員の自由の意思を表明すればよいのであります。ところが、総理は、昨日の答弁で、静かに事態を見守り政府としては三権分立の原則に立って処理すると、全くわれ関せずの無責任な態度を表明したのであります。
 総理、かつて昭和二十九年二月の衆議院予算委員会で、造船疑獄の究明について次のような質疑が交わされております。
 質問者が、「この議会政治の危機を議会みずからが粛正してこれを解決しなければ、議会政治は没落するのであります。」と当時追及しました。これに対して時の政府は、「司直の厳正公正なる取調べの結果をまって、それに対する善処の道を考えるべきであると思っております」云々と答弁をしているのであります。まさに昨日の総理答弁と相通ずるものがあります。そこで、当時の質問者は次のように質問をしています。「これは検察庁にすべて政治をまかせればよいということになります。これでは政治の価値もなければ存立の意義もありません。今日の世の中の状態を一体国民はどう考えておるか、政治家は党利党略で金がほしさに財界と結託して収賄はかりして、それが出て来たら隠そうく、逃切ろうとしておる。」と指摘しているのであります。
 総理、この質問者は、ほかならぬ当時の中曽根康弘代議士であるのであります。(拍手)総理が今日この立場を貫くことができるならば、田中議員辞職勧告決議に対してとるべき態度は明瞭であります。なぜいま同じ立場に立てないのか。攻守ところを異にしたからとでも言うのでありますか。わかりやすくお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 次に、自民党が提出準備を急いでいる公職選挙法改正の問題についてただしたいと思います。
 報道されているところによれば、その内容は、選挙運動期間の短縮、立会演説会をやめる、街頭宣伝の時間制限を極度に行う、こういうことであります。これは、主権者である国民の知る権利を制限することであり、政党の知らせる義務を抑えるものであると言わなければなりません。全く議会制民主主義の原則に対する挑戦であります。このような無謀な提案は直ちに撤回をしていただきたいと思います。
 公選法の改正ということをいうならば、いまさしあたって急がなければならないのは、民意を公正に議席に反映させるために定数の是正を行うべきであり、言論による選挙活動、政策宣伝の自由を保障することであります。
 さて、今国会は、現憲法公布以来ここに百回。この間の国会は、まさに憲法が明確に規定した国家主権と国民主権、恒久平和、そして基本的人権、議会制民主主義、地方自治の五原則を真に実現し充実させようとする国民の努力と、これに反してこの憲法を改悪しようとする勢力との論争と闘いの歴史の日々であったと私は考えます。
 今日、みずからを改憲論者であるとして公言し、さらに改憲への時刻表を持っているとする中曽根総理のもとで憲法改悪を現在食いとめているのは、改憲を目指す党と議員に三分の二の議席を与えず闘い続けてきた国民の大きな力であります。(拍手)
 日本共産党は、創立以来六十一年、主権在民、侵略戦争反対と、民主主義、国民生活向上のために全力を尽くしてきた党であります。この立場から私は、最後に重ねて、わが国の政治がいまだかつてない危険な方向に導かれつつあることを厳しく指摘し、手おくれにならないうちに軍拡政治を軍縮と国民生活防衛、金権腐敗政治一掃の方向に根本的に転換すること、そして日米安全保障条約、これをなくして、非核、非同盟、中立の日本を目指すことの重要性を強調して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#19
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 金子議員にお答えをいたします。
 まず、大韓航空機の事件について記録その他を提出すべきであるという御質問でございますが、政府といたしましては、交信記録その他必要な資料をすでに公開もいたし、また、国連安全保障理事会にも提出しておるのでありまして、必要なるものはすべて提出しているということを申し上げる次第であります。むしろ、この際、ソ連側からこれに対応する交信記録を出していただくのが一番いいのではないか、このように考えております。(拍手)
 次に、核兵器の問題について御質問がございました。
 核兵器を中心にする軍縮及び核兵器の廃絶の問題につきましては、政府も懸命に努力をしておるところでございます。国連総会あるいは軍縮委員会等を通じまして、今後とも引き続いてその真摯な努力を継続してまいりたいと思います。
 提案をするかしないかという御質問でございましたが、これは今後研究してみたいと思っておるところでございます。その国連総会や軍縮委員会におきまする主題、あるいは客観的な背景、あるいはこれに対する保障、そういうあらゆる問題について検討すべきものであると考えております。
 次に、いわゆるドネリー発言と称することに対する御質問がございました。
 わが国は非核三原則を堅持しておるのでございまして、核兵器の持ち込みもないし、また、非核三原則を堅持して、入れるという場合には断るということもすでにしばしば言明しておるところでございます。これらの問題は日本とアメリカとの国家間で正式に合意していることなのでございまして、だれがどう言ったかということを一々気にする必要はない、国家間の合意を堅持していくということはわれわれの仕事であると考えております。
 防衛努力に関しましては、あくまで日本の国本位の立場に立って、日本の国を防衛する、そして均衡と抑止力を中心にして世界平和の維持にも貢献していくというのがわれわれの考え方でございます。
 防衛予算につきましては、「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く近づくように、しかも他の項目とのバランスを考えながら今後防衛予算を考えてまいりたいと思います。
 中小企業の問題について御質問がございましたが、本年度の中小企業対策は、中小企業の円滑な事業承継及び設備投資促進のための税制措置の実施、政府系中小企業金融機関三機関の貸付規模の十分な確保、技術革新、消費者ニーズの多様化等の環境変化への対応の促進等、中小企業の活力の維持強化に最大限努力しておるところでございます。
 また、四月の経済対策閣僚会議の決定に基づき、金融対策、官公需対策、下請企業対策等、きめ細かい中小企業対策を目下実施しておるところでございます。
 地場産業の振興を図るためにも、地場産業振興センターの建設、新商品開発の推進等を中心として、対策を実施しております。
 今後とも中小企業の問題打開のために最大限努力してまいるつもりであります。
 農業をめぐる情勢につきましても、外国からの市場開放の要請につきましては、日本農業の自主的な立場に立ちまして、安定性あるいは食糧確保の安全保障面、生産性の向上あるいは外国との調整、そういうあらゆる面を考えて今後適切に実行してまいりたいと思います。
 大規模工業団地の問題について御質問がございましたが、全国平均を調べますと、約七〇%がすでに使用されております。ただ、北海道において使用されているのが三六%、東北が四五%というふうに、率が少なくなっております。これらはいずれも石油危機あるいは景気停滞等に基づくものでございます。この工業団地の分譲の問題は、一面においては工業再配置という大きな国策のもとにできた政策でもあり、また一面においては過疎地対策としても考えられた政策でございまして、この政策選択は間違っているとは思いません。特に東北や北海道のような過疎地につきましては、こういう政策を力強く推進していくところに活路が見出されるという面もありまして、たまたま景気停滞がこういう結果を生みましたが、これでこういう政策を挫折するということには忍びない状況であると考えます。
 原子力船「むつ」の問題につきましては、海洋国家としての日本の将来も考え、舶用炉の研究開発は今後とも必要であると、このように考えておる次第でございます。
 減税の問題につきましては、与野党の意向を踏まえた衆議院議長見解に基づいてこれを必ず実施する。税制調査会においていま検討していただき、促進しておるところでございます。税制調査会には、日本でも権威のある方々に委員をお願いいたしておりまして検討を依頼しておるわけでございまして、これらの方々の考えを無視して政府だけで独走保することは許されないのでございます。そういう意味におきまして、税制調査会の審議の促進をお願いをいたしております。そして「増税なき財政再建」という原則を堅持し、いわゆる大型間接税を導入するという考えは持っておりません。
 人事院勧告につきましては、勧告制度尊重という基本的立場に立って、国政全般との関係においていま閣僚協において検討中でございます。
 仲裁裁定につきましては、国会に付議しておりまして、国会の御判断を待っておるという状況でございます。
 年金、恩給の物価スライドにつきましては、昭和五十九年度分につきましては、人事院勧告の扱いとか今後の物価の動向等を見きわめつつ慎重に対処する考え方でございます。
 健康保険の問題につきましては、高齢化社会の到来に備え、医療保険制度を安定的に維持して国民に必要な医療を確保していくため、中長期的視点に立って、社会、経済、医療の動向に対応して、給付と負担の両面にわたる改革に真剣に取り組む所存でございます。
 高齢化社会になりまして、これらに関する自然増の費用の負担が相当膨大になりつつあります。したがいまして、これを放置しておきますと、保険制度自体の基盤が崩壊するという危険もなきにしもあらずなのでございます。したがって、これらの保険制度を長期的に安定的に維持していくためには若干の改革が必要なのでございまして、そういう面から、いま改革の方向を模索し検討しておるところでございます。
 田中議員の問題につきましては、先ほど来申し上げましたように、現在は裁判の第一審判決が下される直前に来ておるのでございまして、これを厳粛に見守ることが適当であると考えております。
 選挙運動期間の問題につきましては、各党各派の合意を得られるように希望しております。やはり議会政治の根幹に関係する問題でございますので、できるだけ各党各派が共同のルールをつくるという意味において合意を形成することが望ましい。しかし、選挙運動期間につきましては、やはり大方の声は、いままで長過ぎる、そしてこのように交通、通信が発達し、かつ交通が非常に渋滞をして、自動車の交通がこのようにはんらんしているという時代にあっては、いままでの原則をそのまま適用するのがいいかどうかという大きな反省も起こっておるわけでございまして、それらの点、及び金のかからない選挙運動推進の一環としても、これらは当然検討さるべきものであると考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○副議長(岡田春夫君) 河野洋平君。
    〔河野洋平君登壇〕
#21
○河野洋平君 私は、新自由クラブを代表して、民主政治の基本となる公正な選挙を総理がどう認識しておられるかを初めとして、政治倫理、外交政策、教育問題などについて総理の御所見をお尋ねいたします。
 まず最初に問題にしなければならないのは、さきの参議院選挙で目立った自民党の露骨な利益誘導発言の数々です。たとえば、災害復旧で千五百億円が長崎につき込まれた、私が大臣を呼びつけてやらせたのだ、だから今度の選挙では八、九割が自民党に投票してほしいと二階堂自民党幹事長は発言をされました。中曽根総理も、五月十九日には、中央と地方の補助金を悪用、乱用する気はないけれども、投票率の悪いところはそれなりにお仕置きをし、優秀なところは表彰する、これが民主政治だと檄を飛ばしています。
 これは、一政党による国家予算の私物化以外の何物でもないではありませんか。公選法も、亘二十六条で公務員の地位利用による選挙運動を禁止して、二百二十一条に買収と利害誘導の罪を設けているのですから、選挙で総理や閣僚や党幹部がこんな発言をするのは明らかに法律違反だ。それは選挙の公正を損なって、民主政治の根底をもゆがめている。もし、こんな不条理がまかり通って、一票が利権に直結するというのであれば、行政の改革もさることながら、政治家の意識改革こそが焦眉の急務だと言わなくてはならないと思うのであります。(拍手)
 さらに総理は、遊説の第一戸で、わが国の経済あるいは社会がうまくいっているのは政権交代がなかったためだと、政権交代無用論を唱えておられます。しかし、私は、そうではなくて、政治がかくも腐敗し政策が硬直化したのは、一貫して自民党が政権を握ってきたためなのであって、政権交代こそ議会制民主主義再建の道だと申し上げなければならないと思うのであります。
 総理は、こうした民主政治に対する感覚を疑わせるような一連の政権党発言に、当然のことながら強い反省を持ってしかるべきだと思いますが、総理の御所見をお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
 次に、減税についてお伺いをいたしますが、景気浮揚に役立つ相当規模の減税を年内に実施することは、すでに合意事項になりました。景気浮揚に役立つというからには、それは規模だけの問題なんでしょうか。その実施方法とかあるいは財源をどこに求めるかということも景気浮揚にかかわりがあるのではないかと思います。所得税や住民税を減税する見返りに、地方税を増税したり電話利用税などさまざまな新税を創設するのであれば、総理の持論である「増税なき財政再建」にもとるばかりか、景気浮揚の効果も相殺されてしまうのではないでしょうか。
 内需の振興は、アメリカのみならずヨーロッパ諸国との貿易摩擦の激化を防いで、さらには世界経済を再活性化させ、わが国の国際的責任を果たす上でもきわめて重要であります。そこで、景気浮揚に役立つ減税の実施方法、その財源について政府はどのようなお考えをお持ちなのか、税調の結論もさることながら、中曽根総理のお考えをまずここでお聞かせいただきたいと思います。
 次に、行財政改革について伺います。
 言うまでもなく、行革の断行にはいわゆる既得権益の見直しが不可欠であります。つまり、国民各層に多かれ少なかれ痛みをがまんしてもらうことになるのだと思います。そして、その痛みはなるべく平等でなければならないと思います。さきに触れましたように、参議院選挙での露骨な利益誘導発言は、その痛みを自民党に投票すれば軽くしてやると言わんばかりの、まさに言語道断の呼びかけではないでしょうか。政府・自民党がそんな感覚で行革に取り組もうというのなら、真の行財政改革は全く期待できません。国民全体に痛みを分かち合うには、何よりもまず国会が率先して事に当たる姿勢がなければならないと思います。
 たとえば、国鉄再建問題の前提として、私たち新自由クラブはすでに無料パス返上を主張してまいりました。最近、年間六億円程度の実費を国会が国鉄に支払おうという動きがあるやに聞いておりますが、こうした考え方を私たちは評価をいたします。これを実現させることによって、立法府の国鉄再建の論議が説得力を増すと思うからであります。ぜひともこの構想が腰砕けに終わることのないように、念を押させていただきたいと思います。
 さて、今回の行革に当たりましては、まず国会が定数削減と一票の価値の格差是正に真正面から取り組むことによって行革推進の決意を国民に示す、これが一番大事だと私は思います。(拍手)衆議院の定数問題は、すでに司法の場でも五十一年、最大四・九九倍の格差について最高裁が、投票価値の平等は憲法の求めるところであり、全体として違憲と明確な判断を下し、五十五年十二月には東京高裁で、二対一を越せば違憲と格差の許容基準を示しています。最大五・二六倍の格差があった五十二年参議院選に対しては、この四月に最高裁が、参議院の特殊性を理由に合憲判断を下しながらも、投票価値の平等は憲法上の要請とはっきり述べています。
 もはや事態は明白であります。投票価値の平等は法の要請であるばかりでなく、一票の価値にこれほどの開きがあるのは、国民感情からもとうてい納得できるものではないのであります。そして、その定数の是正はまさしく立法府の手にゆだねられております。この際、一票の価値の速やかな格差是正とともに、衆議院の総定数も、公選法第四条の規定である四百七十一名に戻すべきだと考えますが、いかがでしょうか。総理は、一票の価値の平等実現についてどんな決意をお持ちなのか、お聞かせをいただきたいと存じます。
 あわせて、行革に対する総理の基本理念といたしまして、行財政の効率化を権限の集中に求められているのか、それとも地方への分権を含め権限の分散によって果たそうとされるのか、あるいはまた、三権分立とか国民参加の行革を説かれる総理なのに、減量化、簡素化という改革を官僚の抵抗に遭って骨抜きにされながら、なお国会審議の法律事項を政令にゆだねようとするなど、一体どんな基本態度で行革をお進めになろうとしているのか、この際はっきりともう一度お示しをいただきたいと思います。
 さて、総理は、四月末から東南アジア諸国を歴訪された後、五月末のサミットに臨まれました。この二つの外国訪問で示された総理の言動には、いかにも落差があり過ぎたのではないでしょうか。
 総理は、クアラルンプール・スピーチで、専守防衛を旨とし、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならない、この戦後一貫した防衛の基本方針は忠実に守っていく、これは単なる一つの政策ではなく、過去への厳しい反省に立った日本人の強い、変らぬ国民感情に深く根差しているからだと、平和国家の原点に触れられました。
 ところが、サミットでは一転して、いかなる攻撃をも抑止して、いかなる脅威にも対抗し、平和を確保するのに十分な軍事力を維持するという声明を進んで受け入れて、米ソの中距離核削減交渉で焦点になっているアメリカの新型ミサイルの欧州配備に積極的に賛成されたのであります。このことは、平和国家を志向しているはずのわが国が、軍事大国のパワーゲームにみずからのめり込んでいくことを意味するものではないのでしょうか。サミットでは、軍事大国の力の駆け引きに加担するのではなくて、自民党の福田元総理も最近しばしば力説されているように、軍縮による世界経済の活性化を説くことがわが国の役割りだと考えますが、一体いかがでしょうか。
 いまやアメリカの核弾頭は約二万五千個、ソ連もほぼ匹敵する量を備蓄していると言われています。これ以上核兵器を積み増すことで、果たして総理の言われるとおり米ソ核軍縮の突破口が開けるのでしょうか。私には、核軍縮を実現するために核軍拡が必要だという逆説が成立するなどということはとうてい考えられません。(拍手)
 国民は、正直なところ、アジアでの中曽根さんとサミットでの総理と、その発言が余りにも対照的で戸惑っております。こうした総理の二面性は、たとえば花と緑をいっぱいにしようと言いながら、時代を経た貴重な自然の保護には積極的な理解を示そうとしない、こういった形にもあらわれている。一体総理は、どちらを重視なさるのでしょうか。当面、軍備増強なんでしょうか、軍縮、緊張緩和なんでしょうか、ここではっきりと御答弁を願いたいと思います。
 次に、大韓航空機事件についてお尋ねをいたします。
 まず、不幸な事件に遭遇された方々の御冥福をお祈りを申し上げると同時に、御遺族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。
 民間機を撃墜したソ連の行為は絶対に許せない。そして、その責任はあくまでも追及しなければならないと思います。しかし、一方で、これを機に、米ソの軍事的対立をいたずらにあおるような言動も慎まなければなりません。
 そこで、一つ総理にお伺いをいたします。
 あの悲惨でなぞに満ちた事件は、初期の情報が強制着陸だ、それが一転して撃墜へと変わりました。政府が撃墜の情報をつかんだのは、九月一日の一体何時だったのでしょうか。御家族の心情を思えば、今回の場合、情報を手に入れ次第人道的立場を最優先して発表すべきだったのじゃないのでしょうか。政府の態度にアメリカや防衛問題への配慮をし過ぎた嫌いはなかったのか、われわれには疑問が残ります。このことは、国家が問われている情報の公開との関連でも見逃し得ない重要な問題を提起していると思われますので、総理の明確な御答弁をお願いをいたします。
 次に、教育の問題についてお尋ねをいたします。
 総理は、先ほども、いまや教育の問題は、国や教師の側からだけでなく、むしろ児童生徒の立場から検討されねばならぬ、こう述べられました。ということになれば、私は、今日の教育を語る上で塾、学習塾の存在は無視できない問題だと思いますが、総理は一体この塾についてどうお考えでしょうか。
 実は、私は、この塾の実態を知りたいと思って文部省を初め各省に資料の要求をいたしました。しかし、文部省には五年前小中学校を対象にした調査があるだけで、わかりません、中小企業庁で聞いてください、総理府にあるかもしれません、いろいろなことを言われて、あちこち問い合わせましたが、ほとんど満足なものを手にすることはできませんでした。学校教育法の対象であるかどうかにかかわりなく、生徒、受験生や、その親たちにとって、現実にどうしても無視できない存在、かけがえのないよりどころとして頼りたくなるのがこの種の教育機関、つまり塾や予備校なのです。そして、その塾の数たるや、およそ五十万とも推定され、巨大なものは百万人の生徒を擁し、年間八十億円近い収益を上げているとも言われています。
 夕やみの中を歩く子供を見ても、近ごろではだれもが、ああ、塾の帰りだな、全く不思議に思わないほど塾の存在は一般化されてきています。しかし、学校と塾の二重教育が、総理が言われる生き生きとした子供の世界を遠いものにして、あるいは父母にも大きな経済的負担を強いているのは疑う余地のないところであります。それでもなお塾の存在を認め、それに傾斜していかざるを得ない現在の状況を総理は本当に認識しておられるでしょうか。私には、塾を悪と言い切る勇気はありません。むしろ国とか文部省の側に、教育の置かれている環境の変化を積極的に把握して生徒や父母の要望にこたえて思い切った対応を試みる勇気があるか、それが問題だと思うのです。
 文部省は、確かに、私たちの年来の主張である学制改革に重い腰を上げてプロジェクトチームを発足させました。総理も諮問機関をつくられたようです。しかし、学制改革に要する時間は一つや二つの内閣では恐らく足らないでしょう。六・三・三・四の学制改革は学制改革として、この際、偏差値至上主義を脱皮して、自由な学習選択の拡大を目指して、思い切って、教育の自由化であるとかあるいは教育の多様化であるとか、そういったものに踏み込んでいくお考えが総理にはありませんか。総理も私たちも、次の世代を担う子供たちの教育に本当に情熱を傾けるならば、いま、教育のために自由化、多様化あるいは簡素化に思い切って踏み込んでいくまじめな態度が必要だと思います。その断行こそが総理の言われる多様化の時代に対応できる教育のスタートであって、調査会をつくりました、あるいは諮問機関をつくりましたというだけで、この問題を逃げて避けてはならないと思います。御所見をお伺いいたします。(拍手)
 さて、最後に、新自由クラブが立党以来一貫して主張してまいりました政治倫理についてお尋ねをいたします。
 現職総理の収賄容疑という不幸なこの事件は、十月十二日に判決を迎えます。私たちは、すでにことし一月の求刑の段階で、国政浄化を求める国民の要請にこたえて、被告の元総理に議員辞職を促す決議案を国会に提出しました。しかし、残念ながらその決議案はいまだ本会議に上程されず、議院運営委員会でストップしたままであります。ついに判決を迎えるまで、国会が何ら自浄力を発揮できないままに終わることに対し、国会に席を置く政治家の一人として強い自責の念を禁じ得ません。
 総理は、この問題には三権分立の原則を厳守するとか、そういった答えばかりで、あるいはまた自民党首脳は、議員の身分に関する決議案を本会議に上程すること自体すでに理屈が通らない、あるいは多数決で議員をやめさせるのは憲法違反でファッショ的だなどと提言を吐く向きもあるようでありますが、これほど国民をばかにした話はないと思うのです。
 問題にしなければならないのは、司法の判断のいかんにかかわらず、政治責任をいかに明らかにするかであります。
 この決議案は強制力を伴わない辞職勧告であり、席を同じくする議員の一人に総理の犯罪という前代未聞の疑いがかかっていることに対し、国権の最高機関を構成する国会議員としてどう受けとめるか、その姿勢を示そうとするものなのであります。ファッショ的云々の発言に至ってはまさに噴飯物で、決議案の上程を力で阻んでいる勢力こそファッショ的だ、そう言わなければならないと思います。(拍手)
 いま国会が問われているのは、すべての政策の前提となる政治倫理を正当な地位に復権させる自浄力を発揮できるか否かであります。政治倫理の確立なくして国民の負託にこたえられるはずもなく、真の行財政改革もあり得ないと思います。ましてや、総理の言われる政治家の高い道徳性など絵そらごとではないでしょうか。
 今国会に求められている政治改革の第一歩は、所信表明演説にある清潔澄明な政治活動などと美辞麗句を並べることではなくて、この辞職勧告決議案を本会議に上程して、議員一人一人がみずからの判断と責任で国民の前にその姿勢を明らかにすることから始まらなければならないと思います。(拍手)
 前国会からたなざらしになっている議員辞職勧告決議案の決着をこれ以上引き延ばすのは、国会の国民に対する責任としても許されないと思うのでありますが、自民党の総裁として、中曽根総理はどうお考えになりますか、お答えをいただきたいと思います。(拍手)
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 河野議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、政権党としての発言等について御質問をいただきました。
 戦後、日本がこれだけ繁栄したのは自由民主党の結果ではないか、こういうことについて御批判をいただきましたが、私は、やはり自由民主党、つまりこれを推してくだすった国民の皆さんのお力に頼るところが多いと思うのであります。
 いまの日本の二大政党の状況を見ますと、余りにも政策が離れ過ぎておりまして、イギリスやドイツの保守党、労働党の関係と違います。余り離れ過ぎているから、これで政権交代が頻繁にあったら、温室へ入って、また冷蔵庫に入れられる。また温室へ入って冷蔵庫に入れられる。国がもつはずがないのであります。したがって、やむを得ず自由民主党は政権担当せざるを得なかっためでありまして、この温室と冷蔵庫の関係をいかに早く直すかということが私は大事だと思っておるのであります。結局、過去の実績を見ますれば、やはり国民の御支援を得た自由民主党の力に負うところがきわめて多いと断ぜざるを得ないのであります。
 次に、投票の問題について御発言がございましたが、やはり投票率を上げるということが民主政治に対する国民参加を旺盛にするということで、選挙に際しては、為政者は投票率を上げるという点にやはり相当の力を注ぐべきである。ですから、投票日になれば、市町村では巡回車を回しまして投票に行きましたかとやっているのは、あれはその姿でありまして、あれは正しい姿であります。私は、そういう意味におきまして、国民の参加をさらに拡大し、充実させるために投票率を上げるように刺激したい、そう思ってやっただけの話であります。
 次に、利益誘導の話がございましたが、あの二階堂発言という程度のものが利益誘導にかかるとは私は思いません。選挙に際しましてはああいう発言は各国とも間々あるのでございまして、政策を鮮明にしている、国民にわかりやすく政策を鮮明にしている、そういう意味で御理解願えればいいのではないかと思います。
 次に、減税の問題について御質問がございましたが、この点につきましては、税制調査会において審議を開始しており、特にわれわれの方からもこの促進をお願いしておるのでございまして、その内容を私たちはお待ちしたい、こう考えております。
 次に、議員定数の問題につきましては、お話を伺いましたが、ごもっともの点があるように思います。やはり議員定数という問題は、議会政治の根幹をなす大事なポイントでございまして、結局、これは上級裁判所の判決を参考にしながら、適当な時期に国会がみずからこれを決める、そういうことが正しいと思って、これらにつきましては、各党間において十分御論議を尽くしていただくのが適当ではないかと思う次第でございます。
 次に、行革に対する基本的考え方の御質問がございましたが、臨調答申には余すことなく哲学やその方向、具体策が明示されておりまして、政府はこれを一つ一つ忠実にいま履行せんとしておるのであります。行革について国会が率先して行おうとしておられるこの御主張は賛成でございまして、この点に関する新自由クラブの御主張には、かねがね敬意を表しておるところでございます。
 それから中央地方の問題につきましても、やはり地方分権、つまり地方自治の本旨にのっとって進むということが今日においては正しいのでありまして、その調整を中央と地方でどの程度やっていくかという点につきましては、今後われわれは懸命に努力してまいりたいと思っておるところでございます。
 次に、私のクアラルンプールの演説とウィリアムズバーグの演説の落差の御質問がございましたが、私たちの考え方、特に私の考え方は、あくまで平和を目的にして、それを実証的に現実的にいかに実現していくかという点について、ちょっとあなた方と考えが違うと思うのです。われわれは、あくまで平和を目的にしつつ、抑止力によって戦争を回避する、均衡によって戦争を回避する。戦争を回避するという現実的なやり方についての意見の相違であると思いますが、世界の現実を見れば、やはり力の抑止力あるいは均衡に頼らざるを得ないのでありまして、これで初めて国民も安心しておれるのではないかと思っております。
 私の政策は、常にあらゆる面を考えまして、複合的に厚みを持って政策を考えておる。単純に、単線的に政策を考えてはおらないのです。世界的にいわゆるポリシーミックスという言葉が言われるように、そういう複合的なもので政策というものはできておるのです。河野君は平塚から見たのが富士山だと言いますが、静岡から見たのも富士山である、このようにお考え願えればありがたいと思うのであります。
 大韓航空機の事件につきましては、私が情報を得ましたのは九月一日の午前十時をちょっと過ぎた時刻であります。防衛庁長官からその報告も受けましたし、その前に内報も得ておった次第でございます。しかし、事態の余りの重大性を考えまして、日本だけが突出してはいけない、そのように思いまして、まず国際的にこれをある程度友好国の間において、果たしてこれが事実であるかどうか、資料を持っている国々の間で確認し合うということも大事な要素であったのであります。
 そういう諸般の慎重な配慮のもとにいろいろな手続もし、また検討も加えまして、そして一日の午後四時に後藤田官房長官が記者会見におきまして当該機の墜落の可能性を表明いたしました。次いで、八時に至りまして安倍外務大臣が、今度は撃墜された可能性があると言いまして、段階を経てその真相を徐々に説明していったというのがその実情でございます。これは先ほど申し上げましたように、事態の確認を日本だけが突出して行うことを避けて、あくまで慎重に取り扱うという考え方に立ってやったのであります。
 教育問題、学習塾について御質問がございましたが、確かに私も、かつて充電をやっておりましたときに塾へ行ってみました。そうすると、塾におる子供たちは実に生き生きして勉強しておりました。それで塾から家へ帰っても、問題のわからないところは電話で先生に質問したり、先生は夜の十一時でもわからなければ来いよと言って、山手線に乗ってまた塾へ行ったり、先生がそこでうどんをつくってあげたり、そういう非常に人間的な触れ合いが塾にあったように思います。
 すべての塾がそういうものであるとは申しませんが、学校生活で得られない何物かを子供たちが塾生活によって得られているという面も実は無視できない。これは非常に重要な点でありまして、塾の存在で学校が薄れてきているというのにはそれぞれの理由がある。学校の方も反省しなければなりませんし、あるいは学校の先生方も、なぜ塾がこういうふうに栄えているかという点についても、よく検討を加える必要があるのではないか。
 しかし、塾がこれだけはんらんするということは、学校教育全般としては健全な現象ではございません。このようなものをできるだけなくすということが大事なので、結局、受験競争あるいは学歴社会――学歴社会というよりも学校歴社会というような面からこういうものが出てきているという面もありまして、そういう意味からも、日本の学制全般、教育制度全般を根幹的に洗い直してみよう、そういう考えに立って文化と教育の懇談会をつくって私も勉強しておる、そして成案を得たら適当なときに文部省や中教審で参考にしてもらって改革に入っていこう、そういうように考えておる次第なのであります。
 教育の政策につきまして、河野君は偏差値やあるいはその多様性の問題を言いましたが、これらはみんな自由民主党は、この間の参議院選で大きく訴えた点なのであります。ポスターをごらんになっても、偏差値よりも人柄とか、暗記よりも思いやりをとか、ちゃんと書いておいたのでございまして、その点においては、新自由クラブと自由民主党は考えが同じであるということはきわめて欣快にたえないところでございます。今後とも、そのような面で新自由クラブからいろいろ御鞭撻をいただけばありがたいと思う次第でございます。
 政治倫理の問題につきましては、前から申し上げておりますように、判決が近い今日の段階におきましては、静かに厳粛に見守る段階であると申し上げる次第であります。(拍手)
#23
○副議長(岡田春夫君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
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#24
○副議長(岡田春夫君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後六時散会
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ソース: 国立国会図書館
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