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1982/03/02 第98回国会 参議院 参議院会議録情報 第098回国会 安全保障特別委員会 第2号
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1982/03/02 第98回国会 参議院

参議院会議録情報 第098回国会 安全保障特別委員会 第2号

#1
第098回国会 安全保障特別委員会 第2号
昭和五十八年三月二日(水曜日)
   午後一時二十一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二日
    辞任         補欠選任
     源田  実君     大島 友治君
     上田耕一郎君     立木  洋君
     柳澤 錬造君     柄谷 道一君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         堀江 正夫君
    理 事
                竹内  潔君
                勝又 武一君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                板垣  正君
                大島 友治君
                夏目 忠雄君
                林  ゆう君
                村上 正邦君
                桑名 義治君
                立木  洋君
                柄谷 道一君
                秦   豊君
   国務大臣
       外 務 大 臣  安倍晋太郎君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  谷川 和穗君
   政府委員
       防衛政務次官   林  大幹君
       防衛庁長官官房
       長        佐々 淳行君
       防衛庁経理局長  矢崎 新二君
       防衛施設庁長官  塩田  章君
       外務省北米局長  北村  汎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        林  利雄君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国の安全保障に関する調査
 (国の安全保障に関する件)
 (昭和五十八年度防衛関係予算に関する件)
○参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(堀江正夫君) ただいまから安全保障特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、柳澤錬造君、上田耕一郎君及び源田実君が委員を辞任され、その補欠として柄谷道一君、立木洋君及び大島友治君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(堀江正夫君) 国の安全保障に関する調査を議題といたします。
 国の安全保障について、谷川防衛庁長官から所信を聴取いたします。谷川防衛庁長官。
#4
○国務大臣(谷川和穗君) まずもって、最初にごあいさつを申し上げさしていただきたいと存じます。
 昨年十一月、中曽根内閣の発足とともに防衛庁長官に任命をされました谷川和穗でございますが、本日まで参議院安全保障特別委員会の諸先生方にごあいさつを申し上げる機会がおくれておりますことを、まことに恐縮に存じておる次第でございます。
 ひとつ今後ともよろしくお引き回し、御叱正お願い申し上げまして、それでは私より、最近の国際軍事情勢及びわが国の防衛政策につきまして、所信の一端を申し述べさしていただきます。
 最近の国際軍事情勢は、ソ連による一貫した軍事力の増強とこれを背景とする周辺地域及び第三世界への勢力拡張が顕著であります。アフガニスタンにおける情勢は、国際世論の厳しい中、依然としてソ連が約十万人に及ぶ兵力を投入し、同国に対する軍事介入を継続いたしております。このほか、中東における情勢としては、イラン・イラク紛争は解決の糸口を見出せぬまま推移し、さらにこの一年間にイスラエルによるレバノン侵攻が発生いたしました。また、イギリスとアルゼンチンとの間ではフォークランド紛争が生起し、さらに朝鮮半島及びインドシナ情勢も依然として緊張しております。
 ソ連は、グローバルな規模で軍事力の増強を行ってきていますが、極東方面におけるソ連軍の増強とこれに伴う行動の活発化も顕著なものがあり、わが国に対する潜在的脅威を増大させております。
 現在、ソ連はソ連全体の三分の一ないし四分の一に相当する核及び通常戦力をすでに極東地域に配備しておりますが、引き続き増強を続けておるものと見られます。特に注目を要するのは、最近目覚ましい極東地域におけるソ連の戦域核戦力の増強でありまして、わが国を含む広範な地域をカバーし得る戦域核配備を行っております。最近、グロムイコソ連外務大臣が、欧州における中距離核戦力交渉問題に関連して、中距離ミサイルのうち欧州地域で合意された数を超えるものは、西欧の目標に到達できないシベリアの線以遠に配備されることとなろうとの趣旨の発言を行ったと伝えられます。わが国としては、今日まで累次明らかにしてまいったとおり、中距離核戦力に関する米ソ間の交渉が実質的に進展し、グローバルなゼロ・ゼロオプションが実現することを希望しているのでありまして、ソ連が同交渉の結果として中距離ミサイルをシベリアに新たに移転させることを考慮しているのであれば、それは、アジアの緊張を増大させることともなり、これまでの極東ソ連軍の顕著な増強と相まって、この地域の平和と安定にとって大きな影響を与えることになります。
 そもそもわが国が進めているのは、必要最小限度の防衛力の整備であり、このようなわが国の防衛力の整備を理由にソ連の核兵器が極東に移動されるというのであれば、それはまことに当を得ていないと言わざるを得ません。
 近年、西側諸国の防衛努力は総じて比較的低調でありましたが、ソ連は、伝えられる最近の経済不振や食糧不足にもかかわらず依然として大幅な軍事支出を行っているものと見られ、その結果として、東西間の軍事バランスはこのまま放置すればソ連に優位に傾く趨勢にあることから、抑止力の信頼性を回復するため、実態に即した現実的な対処の仕方として、西側諸国が連帯してそれぞれの防衛努力等を図ることが肝要であり、さらにこのような努力と並行してソ連との間に戦略兵器削減交渉及び中距離核戦力交渉等を行い、実効的かつ検証可能な軍備管理、軍縮条約交渉を推進すべきであるという方向へ西側の理解は進んできております。
 おおむね以上に申し上げたような情勢認識を背景に米国は、厳しい財政事情のもと、歳出全体の伸びを実質ゼロに抑える中で、八四会計年度の国防省費については実質約一〇%増の二千三百八十六億ドルを充て、核及び通常戦力の両分野において全面的な近代化及び態勢の強化を図りつつあります。さらに米国は、同国のみでは十分でないとの認識から、わが国及び西欧等の同盟諸国に対し
てもそれぞれの地域において一層の防衛努力を強く期待しておるところであります。
 このような国際情勢のもとにあって、わが国がみずからの平和と安全を確保するために総合的な安全保障の立場から各種施策を推進しつつ、わが国に対する侵略を未然に防止するという基本方針に基づき、そして万一侵略が生起した場合には、これに有効に対処し得る実力を保持するため、自衛のために必要な最小限度において、質の高い防衛力の着実な整備に努め、日米安全保障体制を堅持しつつ、その円滑な運用に努めているところであります。
 政府は、このような考え方のもとに、昭和五十一年に閣議決定された「防衛計画の大綱」に従い、防衛力整備に努めてきたところでありますが、現状ではその規模において防衛計画の大綱の水準にまで至っておらず、質的に見ても、装備の老朽化、抗堪性、即応態勢及び継戦能力等の面で改善を要する点が多く残されており、現在防衛計画の大綱に定める防衛力の水準をできるだけ早く達成することが肝要であると考えております。厳しい財政事情のもと、昭和五十八年度の防衛予算につきましては、以上のような観点から、五六中業の初年度として、引き続き質の高い防衛力の着実な整備を図るという考え方のもとに、国の他の諸施策との調和を図りつつ、ぎりぎり必要な経費を計上いたしたのであります。
 さらに、諸外国の技術の動向に対応し得るよう装備の質的な充実向上を図るとともに、わが国の地勢、国情に適した装備を整備するため、装備の研究開発に力を入れ、引き続き、地対艦誘導弾等の開発を推進するほか、新対潜ヘリコプターシステム等の開発に着手いたしたいと考えております。
 日米安保条約によってわが国を防衛する立場にある米国がわが国の防衛に関心を有し、期待を表明することは当然のことと存じますが、わが国といたしましては、かかる米国の期待を念頭に置きつつも自主的判断に基づき、憲法及び基本的防衛政策に従って、防衛力の整備に努力してまいる所存であります。
 米軍との共同訓練につきましては、自衛隊の練度の維持向上、ひいては日米安保体制の円滑な運用に資すべく可能な限り実施してまいりたいと考え、さらに五条事態の発生に伴う日米共同対処の場面を想定して引き続き日米防衛協力のための指針に基づく共同作戦計画等の研究を推進させるとともに、在日米軍の駐留を実効あるものとして維持するため、駐留経費負担について、地位協定の範囲内においてできる限りの努力を続けてまいる所存であります。また、防衛施設の安定的使用は、わが国の防衛にとって必要不可欠なものであり、従来から関係地方公共団体、住民等の理解と協力をいただいて行ってきたところでありますが、今後とも防衛施設の設置運用と周辺住民の民生の安定との調和を図るべく、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する諸施策を講じてまいりたいと存じます。
 多年研究が続けられてきた有事法制の研究については、第一分類として区分している防衛庁所管の法令についての問題点についてはすでに国会に対して中間御報告を申し上げるところまで検討されてきておるのでありますが、引き続き第二分類の他省庁所管の法令に重点を置いた検討が進められております。これについては関係する法令もきわめて多く、なお時間を要すると思われます。
 最後に、米国に対する武器技術の供与の問題について申し上げます。本件は、大村長官が訪米した際、米国側から要請のあった日米間の防衛分野における技術の相互交流の一環としての問題でありますが、一年半にわたり政府部内で慎重に検討を重ねてきた結果、政府として防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが、日米安全保障体制の効果的運用を確保する上できわめて重要となっていることにかんがみ、このたび、相互交流の一環として日米相互防衛援助協定の関連規定に基づく枠組みのもとで米国に対し武器技術を供与する道を開くこととし、その供与に当たっては、武器輸出三原則等によらないこととすることを決定いたしました。同協定においては供与される援助について、国際連合憲章と矛盾する使用、第三国への移転等に関し、厳しい規制を課しているところであります。
 したがって、この措置は、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念を確保しつつ行われるものであります。政府としては、今後とも基本的には武器輸出三原則等を堅持し、国会決議の趣旨を尊重していく考えをいささかも変更するものではありません。
 以上申し述べましたごとく、現下の国際情勢のもと、国の独立と安全を確保していくことはきわめて重大であり、国の安全保障は国の最重要課題であると同時に、国民一人一人が真剣に取り組んでいくべき国民的課題であると考えます。
 堀江委員長初め委員皆様方の一層の御指導を賜り、万遺漏なきを期せますよう切にお願い申し上げ、国際情勢の報告並びにわが国の防衛政策についての所信の表明とさせていただきます。
#5
○委員長(堀江正夫君) 次に、安倍外務大臣から所信を聴取いたします。安倍外務大臣。
#6
○国務大臣(安倍晋太郎君) このたび外務大臣に就任をいたしました安倍晋太郎でございます。
 非才でございますが、委員長初め委員各位の皆様の御指導と御鞭撻のほどをお願い申し上げる次第であります。
 さて、安全保障特別委員会の開催に当たりまして、わが国の安全保障問題につき所信の一端を申し述べさせていただきます。
 わが国の安全保障政策は、わが国をめぐる国際環境をできるだけ良好で安定的なものとするよう積極的外交を展開するとともに、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に努めつつ、節度ある質の高い防衛力の整備を図るという三つの柱から成り立っております。
 本日は、このようなわが国の安全保障政策の三つの柱につきまして、私の率直な考えを明らかにし、皆様の御理解を得たいと存じます。
 相互依存関係の深まった今日の国際社会においては、世界の平和と安定なくしてはわが国の平和と繁栄を確保することはできません。とりわけ、現下の厳しい国際情勢のもとでは、わが国は、その国際環境をできるだけ良好で安定的なものにするための外交を広範な分野で積極的に推進していく必要があります。
 その際、わが国は、今後とも、日米友好協力関係を外交の基軸としつつ、西側先進民主主義諸国との連帯と協調を図るとともに、わが国に対する期待にこたえ、わが国の立場から積極的にその国力にふさわしい政治的、経済的役割りと責任を果たし、もって世界の平和と安定に一層貢献していく所存であります。
 かかる観点から、今般の中曽根総理大臣の訪米を通じ、同盟関係にある日米両国の信頼関係が一層強化され、また私の訪欧の結果、わが国と西欧諸国との間の相互理解が一段と深められたことはきわめて意義深いものであると考えます。
 また、わが国がアジアの一員として、アジア諸国との間に緊密な友好協力関係を発展させていくことは、わが国が積極的な外交を展開するための基盤としてきわめて重要であります。私は、今後ともこれら諸国との相互理解を一層深め、その発展と繁栄に寄与し、もってアジアの平和と安定に貢献すべく努力する所存であります。
 世界の平和と安定を確保していくためには、現在の東西関係をより安定した軌道の上に乗せる必要があり、わが国を含めた西側諸国が結束を維持しつつ、力の均衡を維持する努力を続けるとともに、他方において、このような均衡の水準を可能な限り引き下げていくための努力を推進していく必要があります。
 かかる観点から、わが国としては、核軍縮を中心とする具体的軍縮措置の着実な実現に向けて、国連、軍縮委員会等の場を通じ、貢献していく考えであります。また、わが国は、現在米ソ間で行われている核軍縮交渉の結果、核兵器が大幅に削減されることを期待しており、米ソ両国に対し、
戦略兵器削減交渉及び中距離核戦力交渉の実質的進展を図るよう強く求めてきております。
 特に、わが国は、かねてより極東を含むソ連全域においてSS20に代表される中距離核戦力の撤廃をソ連に求めてきておりますが、最近のソ連指導者の発言にあるように、中距離核戦力交渉の結果、ソ連が、極東に現存する中距離ミサイルに加え、新たなミサイルを同地域に移転する場合は、この地域の平和と安定を一層脅かすものであり、去る一月二十五日、ソ連側に強い遺憾の念を表明したところであります。
 政府としては、今後とも欧州はもとより極東の安全保障を損なうことのない形で同交渉の解決が図られるよう訴えていく所存であります。
 世界経済の健全な発展は世界の繁栄に不可欠であります。わが国は、世界経済の再活性化、自由貿易体制の維持・発展のため積極的な貢献を行っていく所存であります。
 また、第三世界の安定は、世界の平和と安定の確保にとって重要であり、なかんずく、開発途上国との相互依存関係がとりわけ深いわが国の平和と繁栄の確保にとり欠くことができません。わが国は、政府開発援助の新中期目標のもとで、開発途上国に対する経済協力を拡充し、これら諸国の政治的、経済的、社会的強靭性の強化に貢献するとともに、平和維持や民生安定のための国連等の諸活動に対して積極的に参加していくことによって、第三世界における紛争や対立を未然に防止し、またその平和的解決に資するよう政治的、経済的役割りを果たしていく所存であります。
 日米安保体制は、わが国の安全保障政策の重要な柱であり、わが国の平和と安全の確保を図っていく上で欠くことができません。
 日米安保体制の信頼性を高めるためには、日米双方において日米安保体制の抑止力の維持・向上のための努力を継続するとともに、わが国としては、米国民をしてわが国を防衛することが、その基本的国益に沿うゆえんであると信ぜしめるような良好な日米関係を維持することが重要であります。
 かかる観点からも、政府としては日米友好協力関係を一層緊密なものとするよう、今後とも真剣に努力を進めていく決意であります。
 対米武器技術供与の問題については、政府部内で慎重に検討を重ねてまいりましたところ、防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることは、日米安保体制の効果的運用を確保する上で、きわめて重要となっていることにかんがみ、今般政府は、かかる相互交流の一環として、米国に対し武器技術を供与する道を開くこととし、その供与に当たっては武器輸出三原則等によらないことを決定いたしました。
 この場合本件供与は、日米相互防衛援助協定の枠組みのもとで実施することとし、これにより国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての理念は確保されることとなります。
 なお、政府としては、今後とも基本的には武器輸出三原則等を堅持し、昭和五十六年三月の武器輸出問題等に関する国会決議の趣旨を尊重していく考えをいささかも変更するものではありません。
 わが国は、日米安保体制のもとで、憲法及び基本的防衛政策に従って、自衛のため必要最小限度の防衛力の整備を図ることとしておりますが、この努力は、わが国の平和と安全を確保する上で重要であり、また、自由主義国の有力な一員としてのわが国の責務であります。
 なお、かかる防衛力整備は、専守防衛に徹したものであり、近隣諸国に脅威を与えるようなものではないことは言うまでもありません。
 以上、わが国の安全保障政策のあり方につき所信の一端を申し上げました。政府は、今後とも国民の皆様の御理解を得つつ、わが国の平和と安全の確保に真剣に取り組んでいく所存であります。
 ここに改めて、本委員会の皆様の格段の御指導と御鞭撻を賜りたく、お願いを申し上げます。
#7
○委員長(堀江正夫君) 次に、昭和五十八年度防衛関係予算について説明を聴取いたします。矢崎経理局長。
#8
○政府委員(矢崎新二君) 昭和五十八年度の防衛庁予算について、その概要を御説明いたします。
 まず防衛本庁について申し上げます。
 昭和五十八年度の防衛本庁の歳出予算額は、二兆四千五百五十四億三千百万円で前年度の当初予算額に比べますと一千六百二十二億七千八百万円の増加となっております。
 次に、新規継続費は、昭和五十八年度甲IV型警備艦建造費等で一千四百三億六千百万円、国庫債務負担行為は、武器購入、航空機購入、艦船建造、装備品等整備等で九千百九十四億六千万円となっております。
 また、自衛官の定数の増加等法律の改正を要するものについて、「防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案」、「防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案」を提出し、御審議をお願い申し上げております。
 次に、防衛本庁の予算の内容について申し上げます。
 昭和五十八年度予算においては、防衛計画の大綱の水準をできるだけ早く達成する必要があるとの認識のもとに、経済、財政事情等を勘案しつつ質の高い防衛力を着実に整備することといたしております。
 その際、現下の厳しい財政事情にかんがみ、現有防衛力の練度の維持向上を図りつつ、五六中業の初年度として防衛力を着実に整備していくために、必要最小限の経費を計上したものでありますが、特に重点を置いた事項は次のとおりであります。
 第一に、陸上装備、航空機、艦船等の主要装備については、更新近代化を中心としてその整備を進めることとし、特に、対潜哨戒機P3C及び要撃戦闘機F15の第四次調達を行うほか、艦艇の防空能力等の向上のため誘導弾(ターター)搭載護衛艦(四千五百トン型)等の建造に着手するとともに、航空警戒管制機能の更新近代化を図るため、新自動警戒管制組織の建設に着手することとしております。
 第二に、均衡のとれた防衛態勢を整備するため、弾薬の備蓄、魚雷・機雷の実装化を始めとする継戦能力、即応態勢の着実な充実に努力するとともに、航空機用掩体の建設等抗堪性の向上にも配意しつつ、中央指揮システムの整備等指揮通信能力の向上のための諸施策を引き続き進めることとしております。
 第三に、教育訓練関係経費については、平時における自衛隊業務の中心をなす教育訓練の重要性にかんがみ、現有防衛力の練度の維持向上を図るため、必要な財源を確保することとしております。
 第四に、隊員施策については、前年度に引き続き自衛官の定年延長、就職援護施策等を実施することとしております。
 第五に、研究開発を推進し、防衛力の質的水準の維持向上に努めることとし、引き続き、新戦車、地対艦誘導弾、中等練習機の開発を実施するとともに、新たに、新対潜ヘリコプター(艦載型)システムの開発に着手することとしております。
 以下、機関別に内容の主な点について申し上げます。
 陸上自衛隊の歳出予算額は、一兆二百七十三億三千七百万円、国庫債務負担行為は、一千八百二十九億六千九百万円となっております。
 陸上装備については、七四式戦車六十両、七三式装甲車九両、七五式百五十五ミリ自走りゅう弾砲二十四門、二百三ミリ自走りゅう弾砲十二門、新百五十五ミリりゅう弾砲二十門等の調達を予定しております。
 地対空誘導弾については、引き続き一個群の改良ホークへの改装を予定するとともに、八一式短距離地対空誘導弾四セット等の調達を予定しております。
 航空機については、対戦車ヘリコプター五機、観測ヘリコプター三機、多用途ヘリコプター七機、連絡偵察機一機、合わせて十六機の調達を予
定しております。
 海上自衛隊の歳出予算額は、六千五百四十億三千七百万円、新規継続費は、一千四百三億六千百万円、国庫債務負担行為は、二千二百九十一億九千九百万円となっております。
 艦艇については、護衛艦四千五百トン型一隻、護衛艦三千四百トン型一隻、潜水艦二千二百トン型一隻、掃海艇四百四十トン型二隻、海洋観測艦二千トン型一隻、合わせて六隻の建造に着手するほか艦艇の近代化二隻を予定しております。
 航空機については、対潜哨戒機七機、救難飛行艇一機、計器飛行練習機二機、対潜ヘリコプター五機、初級操縦練習ヘリコプター一機、新対潜ヘリコプター(艦載型)用機体一機、合わせて十七機の調達を予定しております。
 航空自衛隊の歳出予算額は、六千九百九十四億二千七百万円、国庫債務負担行為は、四千四百六十七億円となっております。
 航空機については、要撃戦闘機十三機、支援戦闘機三機、救難ヘリコプター一機、合わせて十七機の調達を予定しております。なお、F4型機について、構造安全管理態勢の整備及び代表機一機の能力向上のための試改修を継続して行うことといたしております。
 地対空誘導弾については、八一式短距離地対空誘導弾一セット等の調達を予定しております。
 内部部局、統合幕僚会議及び附属機関の歳出予算額は、七百四十六億三千万円、国庫債務負担行為は、六百五億九千二百万円となっております。
 各種装備品等の研究開発費、その他各機関の維持運営に必要な経費であります。
 以上のうち、昭和五十一年十一月五日に閣議決定された「防衛力の整備内容のうち主要な事項の取扱いについて」に基づき、国防会議に諮り決定されたものは、七四式戦車等主要陸上装備の調達、地対空誘導弾ホークの改装、八一式短距離地対空誘導弾の調達、対戦車ヘリコプター、対潜哨戒機、要撃戦闘機等航空機四十四機の調達、護衛艦四千五百トン型等艦艇六隻の建造及び新自動警戒管制組織の整備並びに新対潜ヘリコプター(艦載型)システムの開発着手であります。
 続いて、防衛施設庁について申上げます。
 昭和五十八年度の防衛施設庁の歳出予算額は、二千九百八十六億七千九百万円で、前年度の当初予算額に比べますと五十八億二千九百万円の増加となっております。
 また、国庫債務負担行為は、提供施設整備及び提供施設移設整備で四百六十九億五千九百万円となっております。
 次に、防衛施設庁の予算の内容について申し上げます。
 昭和五十八年度予算において、特に重点を置いた事項は次のとおりであります。
 第一に、基地周辺対策事業については、住宅防音工事の助成に重点を置き、基地周辺地域の生活環境の整備等を図ることとしております。
 第二に、米軍駐留経費の負担については、日米安全保障体制の円滑な運営に資するため、地位協定の範囲内で前年度に引き続き提供施設の整備を推進することとしております。
 以下、各項別に内容の主な点について申し上げます。
 施設運営等関連諸費は、二千四百九十億三千四百万円となっております。
 このうち、基地周辺整備事業については、基地問題の実態に有効に対処し得るように、個人住宅の防音工事費四百七十二億六百万円を含め、一千四百五十三億九千八百万円を計上しております。
 このほか、日米安全保障体制の円滑な運営に資するため、提供施設の整備として歳出予算に四百三十九億一千二百万円、国庫債務負担行為で四百四億五千六百万円をそれぞれ計上しております。
 調達労務管理費については、駐留軍従業員の離職者対策及び福祉対策等に要する経費として百九十二億一千四百万円を計上しております。
 提供施設移設整備費については、提供施設の整理統合の計画的処理を図るため、歳出予算に九十四億二千百万円、国庫債務負担行為で六十五億三百万円をそれぞれ計上しております。
 その他相互防衛援助協定交付金一億三千八百万円、一般行政事務に必要な防衛施設庁費二百八億七千百万円を計上しております。
 以上申し述べました防衛本庁及び防衛施設庁予算に国防会議予算を加えた昭和五十八年度防衛関係費は、二兆七千五百四十二億三千四百万円となり、前年度の当初予算額に対して一千六百八十億九千九百万円、六・五%の増加となります。
 以上をもちまして、防衛本庁及び防衛施設庁の予算の概要説明を終わります。
#9
○委員長(堀江正夫君) 以上で、防衛庁長官、外務大臣の所信及び防衛関係予算の説明の聴取を終わります。
 なお、本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ─────────────
#10
○委員長(堀江正夫君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
 国の安全保障に関する調査のうち、シーレーン(三海峡を含む)防衛の本質と問題点に関する件の調査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○委員長(堀江正夫君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましてはこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○委員長(堀江正夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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