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1982/02/23 第98回国会 参議院 参議院会議録情報 第098回国会 公害及び交通安全対策特別委員会 第2号
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1982/02/23 第98回国会 参議院

参議院会議録情報 第098回国会 公害及び交通安全対策特別委員会 第2号

#1
第098回国会 公害及び交通安全対策特別委員会 第2号
昭和五十八年二月二十三日(水曜日)
   午後零時四十三分開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月十八日
    辞任         補欠選任
     大石 武一君     沖  外夫君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         宮之原貞光君
    理 事
                梶原  清君
                福島 茂夫君
                本岡 昭次君
                沓脱タケ子君
    委 員
                伊江 朝雄君
                石本  茂君
                沖  外夫君
                山東 昭子君
                関口 恵造君
                内藤  健君
                中村 太郎君
                増岡 康治君
               目黒今朝次郎君
                小平 芳平君
                中野 鉄造君
   国務大臣
       運 輸 大 臣  長谷川 峻君
       建 設 大 臣  内海 英男君
       国 務 大 臣
       (総理府総務長
       官)       丹羽 兵助君
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    山本 幸雄君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  梶木 又三君
   政府委員
       総理府総務副長
       官        深谷 隆司君
       内閣総理大臣官
       房交通安全対策
       室長       滝田 一成君
       警察庁交通局長  久本 禮一君
       公害等調整委員
       会委員長     青木 義人君
       公害等調整委員
       会事務局長    桐澤 昭夫君
       環境政務次官   福島 譲二君
       環境庁長官官房
       長        加藤 陸美君
       環境庁長官官房
       審議官      鈴木  健君
       環境庁長官官房
       会計課長     森   孝君
       環境庁企画調整
       局長       正田 泰央君
       環境庁企画調整
       局環境保健部長  大池 眞澄君
       環境庁自然保護
       局長       山崎  圭君
       環境庁大気保全
       局長       吉崎 正義君
       環境庁水質保全
       局長       小野 重和君
       運輸政務次官   関谷 勝嗣君
       運輸大臣官房総
       務審議官     西村 康雄君
       建設政務次官   中村喜四郎君
       建設省道路局長  沓掛 哲男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○公害及び環境保全並びに交通安全対策樹立に関する調査
 (派遣委員の報告)
 (公害及び環境保全対策の基本施策に関する件)
 (交通安全対策の基本施策に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(宮之原貞光君) ただいまから公害及び交通安全対策特別委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る十八日、大石武一君が委員を辞任され、その補欠として沖外夫君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(宮之原貞光君) 公害及び環境保全並びに交通安全対策樹立に関する調査を議題といたします。
 まず、先般当委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。本岡君。
#4
○本岡昭次君 派遣委員の報告を申し上げます。
 去る一月二十日より二十二日までの三日間、大阪府及び兵庫県の公害及び環境保全並びに交通安全対策の実情調査のため、宮之原委員長、梶原理事、沓脱理事、中村理事、中野委員及び私、本岡の計六名の派遣が行われました。
 日程の第一日は、大阪国際空港において、空港騒音問題に関する周辺住民団体等から空港騒音問題に関する陳情を受けて、空港当局より空港の概要及び騒音対策の実施状況について説明を聴取し、その後管制塔などの空港施設や緩衝緑地帯を視察し、空港騒音対策の実施状況について調査を行いました。
 次いで、大阪府庁において、大阪府管内における公害問題について当局より概況説明を聴取した後、地元住民団体から公害問題に関する陳情を受けました。
 第二日は、大阪ガス株式会社泉北製造所で業務概要の説明を受けた後、工場施設を視察し、石油からLNGへのエネルギー代替による大気汚染削減効果等についての調査を行いました。
 次いで、国道四十三号、阪神高速道路を視察し、途中の鳴尾交差点付近で沿道住民から交通公害に関する陳情を受けた後、鳴尾浜で鳥獣保護の現状を視察しました。
 また、兵庫県庁において、公害及び環境問題について説明を聴取した後、国道四十三号及び阪神高速道路の自動車公害問題で沿道の尼崎市、西宮市及び芦屋市から要望を受けました。
 第三日は、神戸市庁で公害問題について概況説明を聴取した後、須磨海岸を視察し、海岸環境整備事業等の調査を行いました。
 以下、これらの調査事項のうち主要な点について若干報告をいたしたいと存じます。
 まず、大阪国際空港周辺における騒音問題等について申し上げます。
 同空港の利用状況は、旅客数では、五十七年において国内線千二百九十九万七千人、国際線三百五万四千人、合計千六百五万一千人となり、対前年に比較し減少傾向を示しております。
 一方、貨物取扱量では、五十七年において国内線十二万八千五百トン、国際線九万四千五百トン、合計二十二万三千トンとなり、旅客数とは反対に増加傾向を示しております。
 航空機の運航状況は、五十八年一月現在、国内線の発着回数は一日二百五十八回、国際線の発着回数は一週間三百八十八回となっております。
 現在同空港周辺において講ぜられている航空機騒音対策のうち、音源対策としては、低騒音航空機としてボーイング747、ロッキード一〇一一等の航空機を就航させるとともに、現用機のエンジンの改良を進め、すでに終了しております。また、
これらの措置とあわせて便数の規制としては、五十二年十月から一日当たりの発着回数三百七十回、うちジェット機二百回に制限を強化しており、さらに飛行時間の規制として昭和五十年末の大阪国際空港騒音公害訴訟大阪高裁判決を契機として、原則的に午後九時以降の飛行を禁止したほか、騒音軽減運航方式等の諸施策を講じております。
 さらに、空港周辺対策として、大阪国際空港周辺整備機構により、再開発整備、代替地造成、移転補償、緑地造成及び民家防音等の事業が進められております。なお航空機騒音については、昭和四十八年末に環境基準が定められ、大阪国際空港などは、改善目標として、十年以内に七五WECPNL未満または七五WECPNL以上の地域において屋内で六〇WECPNL以下とすることとされておりますが、現在までの進展状況では、本年末という期限内での環境基準の達成は困難ではないかと憂慮され、なお一層の努力が必要とされております。
 一方、現行の騒音対策による移転は、申請主義であることの限界があり、地主、借地権者、たな子の複雑な権利関係の中で交渉が進展しないなどの問題が残されており、また移転補償により空地が生じ、町が虫食い状態になるといった問題や、さらに営業への影響も大きいということも指摘されております。
 今回の派遣においては、騒音状況、空港周辺の緑地造成事業や移転跡地等をつぶさに調査しましたが、五十八年度予算において騒音対策事業を建設省の公園事業とあわせて町づくりをする方向が芽を出している点の説明も受け、今後の飛躍的な改善が期待されます。
 なお、今回、空港周辺の川西地区や豊中地区の住民団体及び大阪国際空港騒音対策協議会から、午後九時以降の航行規制の厳守、環境基準の早期達成、計画的町づくり対策、商業者の営業補償等各種の騒音対策についての要望を受けました。
 次に、大気汚染問題について申し上げます。
 大阪府においては、窒素酸化物対策として大気浄化計画及び大気汚染防止法に基づく排出規制等を実施してきた結果、窒素酸化物の排出量は削減されているが、なお昭和六十年までに環境基準の確保が困難と予側されたので、昭和五十六年六月二日大気汚染防止法施行令の改正により、総量規制の導入が決められ、昭和五十七年十一月一日から実施されております。これにより二酸化窒素の環境基準は昭和六十年三月末までに達成することとしております。
 具体的な削減対策としては、原燃料使用量の重油換算量が一時間当たり二キロリットル以上の特定工場等に対しては総量規制基準を適用し、特定工場以外の工場に対しては燃焼方法の改善、省エネルギー化等を促進することとし、また自動車に対しては、大阪市内都心部を中心とした自動車交通量・流対策を実施する等各種の対策を講ずることとしております。なお、総量規制基準は、新設工場については昭和五十七年十一月一日から、また既設工場については昭和六十年三月三十一日から適用することになっております。その他、二酸化硫黄については、排出規制の強化、燃料の低硫黄化等の対策により、昭和五十六年度は長期的評価では環境基準を達成しており、浮遊粒子状物質等は依然として環境基準に不適合となっております。また、一酸化炭素は環境基準に適合しており、光化学スモッグについては、予報、注意報ともに増加しているが、被害の届け出は減少しております。
 なお、大阪公害患者の会連合会から、二酸化窒素の新基準を撤回し、旧基準値に基づく総量規制の早期実施、二酸化窒素、浮遊粒子状物質の環境基準の早期達成及び自動車交通量の抑制等についての要望がありました。
 兵庫県においては、窒素酸化物の排出量は自動車排出ガス規制の効果等により減少しており、今後の窒素酸化物対策として工場、事業場の燃焼方法の改善等技術開発を指導すること等により排出量を減少させることとしております。
 また、二酸化窒素については、一般環境大気測定局では昭和五十五年度及び昭和五十六年度において〇・〇六ppmを達成しているものの依然として高い濃度を示しており、さらに自動車排出ガス測定局では多くの測定局で〇・〇六ppmを超えておりますので、今後の一層強力な取り組みが望まれます。
 兵庫県が窒素酸化物の総量規制を導入していない点について県当局にただしたところ、導入しないと決めたことはなく、その必要性、効果等を慎重に検討している段階であるということであります。
 神戸市においては、硫黄酸化物の総量規制等各種の公害対策を積極的に推進したところ、硫黄酸化物の年間排出量は、五十六年度約二千七百トンであり、昭和四十七年の約二万トンに比較して大幅に減少しており、同様に二酸化硫黄の濃度についても昭和五十六年度〇・〇一ppmであり、昭和四十七年と比較し三分の一に減少しているとのことであります。さらに、窒素酸化物では、二酸化窒素の濃度は昭和五十六年では年平均値で大気監視局〇・〇二三ppm、自動車監視局〇・〇二八ppmと最近においては横ばい状況となっているが、排出量では昭和六十年度推計で約一万五千トンであり、昭和五十二年度の約一万六千五百トンに対し一〇%減少する見込みであります。
 次に、交通公害問題について申し上げます。
 大阪府と兵庫県にまたがる国道四十三号及び阪神高速道路により沿道住民は激しい自動車公害に悩まされております。国道四十三号と阪神高速道路の交通量は両道合わせて芦屋市においては一日十五万台を超えており、ことに自動車公害の元凶である大型車の混入率は、日平均で約三〇%であるが、深夜ピーク時には国道四十三号線が六二%、阪神高速道路が六七%にも達しております。
 自動車排出ガスによる大気汚染の状況では、国道四十三号に設置された神戸市、芦屋市、西宮市及び尼崎市の四つの測定局において昭和五十六年度に測定した結果、一酸化炭素は環境基準に適合しているが、二酸化窒素はすべての測定局で環境基準を超えております。これはここ数年横ばい状況にあり、基準達成にはなお一層の交通公害対策の推進が望まれます。
 次に、騒音及び振動の状況を見ますと、振動については昼夜とも要請限度を超える地点はありませんが、騒音については、昭和五十六年度の測定結果では第三種地域に指定されている西宮市を除く芦屋市、尼崎市では環境基準はもとより要請限度をも超えているのが現状で、この現状はここ数年横ばい傾向にあります。
 阪神高速道路の公害対策として、環境施設帯の整備、遮音壁の設置、住宅防音対策、テレビ受信障害対策及び日照阻害対策を実施しており、一方国道四十三号においては、片側一車線削減による緑地帯の設置、遮音壁の設置、自動車走行速度規制及び無人交通取締機の設置、夜間の自動車走行車線の規制、系統信号の採用、民家防音工事への助成及び大型車の阪神高速道路への乗り上げの行政指導等各種の対策を実施しておりますが、今後さらに物資輸送システムの合理化等による自動車走行総量抑制対策、高速道路等への利用促進のための高速料金制度の検討及び大阪湾岸道路の建設等の対策が望まれています。国道四十三号と阪神高速道路は、昭和五十七年八月三日にいわゆる沿道整備法に基づく沿道整備道路の指定を受けましたので、今後沿道区域の整備に当たっては適正な都市機能の分担と良好な住宅環境を兼ね備えた町づくりを基本として各種の施策の推進が望まれます。
 地元住民の鳴尾甲子園池開地区四十三号線公害対策協議会からは、大型車交通規制、さらに一車線の削減、沿道住民の健康調査及び低周波公害対策についての陳情を受けました。さらに、尼崎市、西宮市及び芦屋市の関係三市から交通体系の確立、沿道整備促進のための施策の確立等について今後一層強力に推進されるよう要望がありました。
 次に、大阪ガス株式会社泉北製造所視察につい
ての報告をいたします。
 大阪ガスでは、昭和五十六年度現在、都市ガスの供給量は六十七億二千九百万立方メートル、約四百四十万戸となっているが、そのうちLNG――液化天然ガスの割合が七〇%に達しております。LNGは今後のエネルギー供給事情の中で安定した供給が期待されていますが、さらに生産地において硫黄分などを取り除いてあるため、再び気化して燃やしても亜硫酸ガスやすすを発生しない等環境保全上期待されるエネルギーであるとの説明を受けました。
 次に、浜甲子園鳥獣保護区について報告いたします。
 保護区は、西宮市枝川町地先に位置する鳴尾川河口西部に残存する干潟を含む水面の区域で鳥獣保護区三十ヘクタールで、そのうち特別保護地区は十二ヘクタールとなっており、当地域に生息する鳥類は春秋に渡来するシギ、チドリ類、カモ類等約六十種が生息するため、今後とも十分な保護対策が望まれます。
 次に、須磨海岸環境整備事業について報告いたします。
 須磨海岸は、近年浸食が進み台風時には危険となったため、神戸市において昭和三十二年ごろから四十四年まで護岸補強工事を行いましたが、海水の汚濁が進み海水浴場として適さなくなりました。神戸市では、海水浴場保存のために海水浴場としての水質改善、防災のための海岸整備、自然環境の保全と海岸環境の創造等を基本方針とし養浜事業を実施することにしましたが、昭和四十八年度からは国の補助事業として海岸環境整備事業を進めてきました。この結果、昭和四十五年当時砂浜が三十五メートルだったものが現在は約百メートル、広さ七十二万平方メートルになり、海水浴利用者も約百万人を見るに至っております。
 以上のほか、今回派遣に際して調査の際受け取りました要望書等につきましては、別途その要旨を会議録の末尾に掲載させていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 以上で終わります。
#5
○委員長(宮之原貞光君) ただいま本岡君から発言のありました要望書等につきましては、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(宮之原貞光君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
    ─────────────
#7
○委員長(宮之原貞光君) 次に、公害及び環境保全対策の基本施策に関する件につきまして所信を聴取いたします。梶木環境庁長官。
#8
○国務大臣(梶木又三君) 第九十八回国会における参議院公害及び交通安全対策特別委員会の御審議に先立ち、環境行政に関する私の所信を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 環境は、人間が活動する場であると同時に、人間を初めとする生物の生存の基盤であります。
 人間は、これまでの歴史において環境を利用し、変化させることにより経済活動を営み、高い生活水準を実現してきました。しかし、その過程で、ともするとみずからが環境に依存していることを忘れ、環境を回復困難なところまで破壊したり、環境の持つ自律性や多様性を損なったりしたことも事実であります。ことにわが国は、狭い国土できわめて高密度の経済社会活動が営まれてきており、高度経済成長の過程においては、著しい公害と自然破壊、公害による健康被害まで生じさせました。こうした経験から、私たちは、環境は有限であり、人間がその力を環境への配慮なく行使すれば、私たちの生存自体が危機に頻することを学んだのであります。そして、緊急の対策を求める国民的要請のもとに環境保全への本格的な努力が始められたのであります。
 以来、国、地方公共団体、国民が一体となって対策に全力を挙げてきた結果、かつての著しい環境汚染に比べ、一部にはかなりの改善が見られます。しかしながら、交通公害、閉鎖性水域の水質汚濁のように深刻な問題となっている分野もなお残されており、かけがえのない自然を保護する上でも多くの課題を抱えております。
 また、近年、生活雑排水問題、近隣騒音といった都市・生活型公害、石油代替エネルギーの開発導入に伴う環境問題に加え、快適な環境づくりを求める国民意識の高まり、環境問題の地球的規模への広がりなど、環境問題の様相は多様化、複雑化しております。
 こうした環境問題の現状に対処し、大きく変貌しつつある経済社会条件のもとで将来にわたって環境を保全していくためには、環境汚染の未然防止を第一義として着実に環境の保全に努めるとともに、よりよい環境の創造に向け、長期的視点に立った環境政策を総合的に講じていく必要があります。
 また、国内の環境問題にとどまらず、地球上の緑の減少を初めとする地球的規模の環境問題について、国際協力の観点に立って積極的に対応を進めていくことが必要となっております。
 私は、こうした基本的考え方に立ち、長期的な環境政策の目標とその達成方策についての環境保全長期構想の策定を推進するとともに、次のような事項を重点として環境行政の推進に最大限の努力を払ってまいる所存であります。
 第一に、環境影響評価法制度の確立であります。
 かつての著しい環境汚染の経験にかんがみ、環境汚染の未然防止に万全を期することが環境行政の根幹であります。このため、政府は第九十四回国会に環境影響評価法案を提出し、現在同法案は衆議院環境委員会の審査に付されております。同法の早期制定は現下の環境行政の最重要課題であり、今国会において御審議の上一日も早く成立させていただくようお願いする次第であります。
 第二に、各種公害対策の推進であります。
 特に、自動車、航空機、新幹線鉄道等交通機関の運行に伴う交通公害は、近年各地で深刻な問題となっており、先般の中央公害対策審議会の二つの専門委員会報告で示されたように、環境保全の観点から物流や交通施設周辺の土地利用のあり方にまで踏み込んだ対策の強化が要請されております。環境庁としては、関係行政機関との連携のもとに、従来からの発生源対策、周辺対策をさらに推進するとともに、審議会での審議を踏まえつつ、抜本的かつ総合的な交通公害対策の樹立、推進に努めてまいります。
 次に、湖沼につきましては、河川、海域に比べ環境基準の達成状況が悪い上、富栄養化に伴う障害が著しくなっております。環境庁としては、先般湖沼の窒素及び燐に係る環境基準を告示したところであり、さらに窒素及び燐に係る排水基準の設定を急ぎたいと考えております。また、湖沼法案について、今国会への提出を目指してさらに政府部内調整に努めるなど、総合的な湖沼環境保全対策を推進してまいります。
 これらに加え、窒素酸化物を初めとする大気汚染、水質汚濁等の公害防止対策を引き続き推進してまいります。
 第三に、公害健康被害者の救済対策の充実であります。
 公害健康被害者の迅速かつ公正な保護に万全を期することは環境行政の重要な責務であります。このため、公害健康被害補償制度の円滑な実施に努めるとともに、これに必要な財源を引き続き確保するための所要の法改正をお願いしているところであります。また、水俣病認定業務の促進、国立水俣病研究センターの研究体制の充実等を図ってまいります。
 第四に、自然環境の保全であります。
 私たちは、美しく豊かなわが国の自然の中で生活し、固有の文化を築いてきました。自然環境は、経済活動のための資源となるだけでなく、物心両面において私たちに限りない恵みを与えてくれます。しかし、自然は一たび失われると回復は著しく困難であり、自然を守り、子孫に伝えていくことは私たちに課せられた重大な責務であります。
 この責務を果たすべく、わが国の自然環境の現状を把握するための第三回の自然環境保全基礎調査の実施や自然保護に国民の参加を求めるための新たなる方策の検討等自然環境の保全に関する調査研究を推進するとともに、自然公園の施設整備等による自然との触れ合いの増進、鳥獣保護対策の充実を図ってまいります。
 最後に、環境行政の基盤の充実であります。
 環境行政を的確に推進するには、その基盤となる科学的知見の整備充実が不可決であり、国立公害研究所のなお一層の充実強化に努めてまいります。また、環境問題の解決のためには国民の理解と協力が不可決であり、国民の声に十分耳を傾けるとともに、広報活動や環境教育にも力を入れてまいりたいと考えております。
 以上、私の所信の一端を申し述べました。
 私は、国民の健康と生活を守り、自然を保護し、よりよい環境をつくり出していくという環境行政の使命を果たすべく、全力を尽くす決意であります。本委員会及び委員各位におかれましては、環境行政の一層の進展のために今後とも御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
#9
○委員長(宮之原貞光君) 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#10
○委員長(宮之原貞光君) では速記を起こして。
 次に、交通安全対策の基本施策に関する件について、関係大臣から順次所信を聴取いたします。丹羽総理府総務長官。
#11
○国務大臣(丹羽兵助君) 今国会における交通安全対策に関する審議が開始されるに当たり、交通安全対策に関し一言所信を申し述べます。
 今日、わが国における自動車の保有台数は二輪車を含めて五千六百万台に上り、運転免許保有者数も四千七百万人を超え、なお年間それぞれ三百万台、二百万人の規模で増加しているところでありまして、まさに本格的な車社会、国民皆免許時代を迎えていると申しても過言ではありません。
 一方、交通事故による死者数は、ここ数年ほぼ横ばいで推移いたしておりましたが、昨年は年初から急激な増加傾向を示しました。このため、政府といたしましては、六月に「交通事故防止に関する当面の緊急対策について」を決定し、交通事故の実態に応じた各般の施策を強力に推進したところでございます。その結果、夏以降は大幅な増加傾向に一応の歯止めをかけることができたのでありますが、その後も増加の傾向は続き、年末には遺憾ながら九千人を突破するに至りました。これは昭和五十一、二年の状況に逆戻りしたことになり、まことに厳しい情勢にあると言わなければなりません。このような情勢の中にあって、国民を交通事故の脅威から守り、交通の安全を確保することは大きな政治課題であると考えております。
 私は、交通安全は国民福祉の根幹であるとの認識のもとに、国民各位の御理解と御協力をいただき、関係省庁との緊密な連携を確保しつつ、総合的な交通安全対策を強力かつ着実に推進してまいる所存であります。
 なお、総理府の昭和五十八年度における交通安全対策の事業といたしましては、交通安全思想の普及活動の推進及び交通事故被害者の救済等のほか、最近の交通事故実態を踏まえて、原動機付自転車に関する調査研究やシートベルト着用推進に関する調査研究等の事業を実施することとしており、これら事業を強力に推進することにより交通事故の防止を図ってまいりたいと考えております。
 以上、交通安全に関し所信の一端を申し述べましたが、委員先生の深い御理解と格段の御協力をお願い申し上げてごあいさつといたします。
#12
○委員長(宮之原貞光君) 次に、山本国家公安委員会委員長。
#13
○国務大臣(山本幸雄君) 交通警察行政に関して一言所信を申し述べます。
 わが国における道路交通が国民生活の中で果たす役割りはますます重要となってきており、車両保有台数や運転免許保有者数の増加傾向は今後とも続くものと考えられます。
 このように道路交通が一段と大量複雑化することに伴い、交通事故、交通渋滞、交通公害等の諸問題が山積しております。
 特に、交通事故による死者数は増加の傾向を強めており、昨年は六年ぶりに九千人を超えるなど深刻な事態を迎えております。
 このため、警察といたしましては、これまで実施してきた交通事故防止対策を見直すとともに、交通安全施設整備事業を重点とする道路交通環境の整備、運転者教育の充実強化、適正かつ合理的な指導取り締まりの実施等の諸対策を総合的、効果的に推進し、交通死亡事故抑止の実効を期してまいる所存であります。
 また、行政改革の一環として、運転免許証の更新手続の合理化方策の推進にもさらに努力を重ねる所存でございます。
 以上、交通警察行政に関し所信の一端を申し述べましたが、委員各位の一層の御指導を賜りますようにお願いを申し上げます。
#14
○委員長(宮之原貞光君) 引き続きまして、長谷川運輸大臣。
#15
○国務大臣(長谷川峻君) 運輸省における交通安全対策に関し所信を申し述べます。
 人命の安全の確保は交通運輸に関する施策の基本であります。
 運輸省におきましても、交通安全対策を最も重要な施策の一つとして全省の組織を挙げて取り組んでまいりました。
 最近の交通運輸活動はふくそう化と高速化の度を強め、輸送機器も大型化しておりますので、事故の発生の可能性も高まっており、一たび事故が発生いたしますと多数の死傷者を出すおそれも強まっております。したがって、交通運輸活動が展開される場における安全性の確保のための条件を整えることが必要であり、このため鉄道、道路、港湾、航路、空港などの基盤施設の整備を推進し、車両、船舶、航空機などの輸送機器自体の安全性の確保のための諸施策の充実に努めるとともに、交通管制の強化等秩序ある交通運輸活動の確保のための施策の一層の徹底を図る必要があります。
 最近発生した主な事故の原因を見ますと人的な要因によるものが多く、それらの中には基本的な事項を守らなかったために引き起こされたものも見られます。このような事故を防止するためには、安全な運行を確保するための管理体制を一層充実させるとともに、運行関係者一人一人が安全運行確保の責務の重大性を自覚し、事故の絶滅に努めることが何にも増して重要であり、そのため関係者の教育訓練と安全意識の高揚に努める必要があります。
 このほか、交通運輸における安全性の向上のためには、最近における技術の進歩も重要な役割りを果たしておりますので、このための技術開発に努力を傾注することが必要であります。
 私は、以上のような視点から、今後の交通運輸における安全確保のための諸対策に取り組んでまいりたいと思います。
 終わりに当たりまして、皆様の深い御理解と格段の御協力をお願い申し上げる次第であります。ありがとうございました。
#16
○委員長(宮之原貞光君) 最後に、内海建設大臣。
#17
○国務大臣(内海英男君) 交通安全対策に関する諸施策について御審議をお願いするに当たり一言所信を申し述べたいと存じます。
 御承知のとおり、わが国の経済、社会の発展に伴い、道路交通需要はますます増大かつ多様化しており、これに対処するため、政府としては、新たに昭和五十八年度を初年度とする第九次道路整備五カ年計画を策定し、道路事業の積極的な推進を図ることとしております。
 申すまでもなく、道路交通需要の増大に対処し、安全かつ円滑な道路交通を確保することはきわめて重要な課題であります。
 最近の交通事故の発生状況を見ますと、昭和四十五年を境に減少を続けてまいりました交通事故
は、昭和五十三年以降、関係者の懸命の努力にもかかわらず再び事故件数及び負傷者数について増加の傾向を示し、特に昨年は死者数が九千人を上回るなど、交通安全をめぐる情勢は依然として憂慮すべき状況にあります。
 かかる事態に対処するため、昭和五十八年度は、厳しい財政事情ではありますが、より一層強力に交通安全対策の推進を図ってまいる所存であります。
 まず、道路を新たに建設する場合におきましては、交通安全対策基本法の精神にのっとり、交通安全施設等に十分配慮した道路を整備することとしております。
 次に、既存の道路につきましては、昭和四十一年度以降交通安全施設等整備事業に関する計画により、総合的かつ計画的に交通安全施設等の整備拡充を図ってまいりましたが、昭和五十八年度においては、第三次交通安全施設等整備事業五カ年計画の第三年度として、交通安全施設等の整備を進めてまいりたいと考えております。この場合、特に弱い立場にある歩行者、自転車利用者を交通事故から守るための施設の整備に重点を置くこととしております。
 さらに、道路の改築事業におきましても、交通の安全を確保するため、歩道等の設置、バイパスの建設、自転車専用道路及び歩行者専用道路の整備等の事業を行い、また落石、のり面崩落、なだれ等の危険を防止するため、道路の防災対策についても万全を期してまいることとしております。
 また、踏切道における交通事故の防止と交通の円滑化を図るため、引き続き立体交差化等の事業を推進することとしております。この場合、多数の踏切が連続する中心市街地等においては、これらを同時に除却する連続立体交差事業を推進してまいることとしております。
 次に、既成市街地の居住地区あるいは歴史的に価値のある地域における交通事故を防止し、居住環境の改善を図るための事業、中心商業業務地区等における道路交通の安全と円滑化を図るための事業、通勤通学等のための自転車駐車場対策を推進することとしております。
 なお、児童の交通事故防止及び児童、青少年の心身の健全な発達に資するため、第三次都市公園等整備五カ年計画の第三年度として、都市における国民の日常生活に密着した児童公園等の住区基幹公園、都市基幹公園及び緑道の計画的な整備の推進を図ることとしております。
 最後に、道路管理体制を強化して、道路交通の安全の確保と交通の円滑化を図ることとしておりますが、特に道路法及び車両制限令に違反する車両の通行に対する指導及び取り締まりを強化するとともに、道路交通に関する情報の収集及び提供について体制の強化拡充を推進することとしております。
 以上、交通安全に関する諸施策について所信の一端を申し述べましたが、交通事故防止のため今後一層徹底した総合的な交通安全施策を強力に推進していく決意でありますので、よろしくお願いを申し上げます。
#18
○委員長(宮之原貞光君) 以上で所信の聴取は終わりました。
    ─────────────
#19
○委員長(宮之原貞光君) 次に、関係政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。福島環境政務次官。
#20
○政府委員(福島譲二君) 昨年末、総理府総務副長官に引き続き環境政務次官を拝命いたしました福島譲二でございます。
 委員長初め委員の皆様方に引き続きよろしく御指導、御鞭撻をいただきますよう心からお願い申し上げます。
#21
○委員長(宮之原貞光君) 深谷総理府総務副長官。
#22
○政府委員(深谷隆司君) ただいま御紹介いただきました総理府総務副長官の深谷隆司であります。
 丹羽兵助総務長官のもとで、微力でありますが、全力を挙げて仕事に取り組みたいと思っております。
 委員長初め委員各位の御指導のほどを心からお願い申し上げましてごあいさつといたします。ありがとうございました。
#23
○委員長(宮之原貞光君) 関谷運輸政務次官。
#24
○政府委員(関谷勝嗣君) 昨年、運輸政務次官に就任いたしました関谷勝嗣でございます。
 委員長初め委員の皆様方の御指導をいただきまして、長谷川運輸大臣のもと一生懸命がんばりたいと思いますので、どうか御指導をいただきますようにお願いいたします。どうもありがとうございました。
#25
○委員長(宮之原貞光君) 中村建設政務次官。
#26
○政府委員(中村喜四郎君) 昨年十一月、建設政務次官を拝命いたしました中村喜四郎でございます。
 委員長初め委員各位の皆様方に御指導をいただきながら、内海建設大臣のもとで、交通の安全と公害の撲滅のために微力でありますが全力を尽くしてやってまいりたいと思いますので、皆様方の御指導をよろしくお願い申し上げたいと思います。
#27
○委員長(宮之原貞光君) 本日はこれにて散会をいたします。
   午後一時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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