1982/03/24 第98回国会 参議院
参議院会議録情報 第098回国会 逓信委員会 第4号
#1
第098回国会 逓信委員会 第4号昭和五十八年三月二十四日(木曜日)
午前十時五分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 八百板 正君
理 事
長田 裕二君
成相 善十君
委 員
小澤 太郎君
新谷寅三郎君
片山 甚市君
太田 淳夫君
白木義一郎君
山中 郁子君
青島 幸男君
国務大臣
郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君
政府委員
郵政大臣官房経
理部長 奥山 雄材君
郵政省郵務局長 永岡 茂治君
郵政省電気通信
政策局長 小山 森也君
郵政省電波監理
局長 田中眞三郎君
事務局側
常任委員会専門
員 酒井 繁次君
説明員
日本電信電話公
社総裁 真藤 恒君
日本電信電話公
社営業局長 信澤 健夫君
日本電信電話公
社経理局長 岩下 健君
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本日の会議に付した案件
○昭和五十八年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について
(郵政省所管及び日本電信電話公社)
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#2
○委員長(八百板正君) ただいまから逓信委員会を開会いたします。昨日に引き続き、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、郵政省所管及び日本電信電話公社についての委嘱審査を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○青島幸男君 昨日来さまざまな議論が交わされてまいりましたけれども、技術革新が日進月歩ということでございまして、目まぐるしく新しいものが次々に出てくる。それに法的にも制度的にも対応していくのは大変むずかしいことだというふうに私も考えておりますけれども、そのうちでもキャプテンシステムというものの進行状況を郵政省にお尋ねをしたいんですけれども、どういうふうなかっこうで検討がなされているか、それから将来展望などについてもお伺いしたいと思いますし、実際に行われている外国の諸事情なども郵政省御存じでしょうから、そういう状況も踏まえて、わが国でどういうかっこうに進展していくであろうかということも含めてお尋ねしたいと思います。#4
○政府委員(小山森也君) 先生すでに御存じと思いますけれども、キャプテンシステムは、電話とテレビという身近なものの組み合わせによりまして、画像通信サービスを行うものでございます。いろいろ情報がはんらんしている時代ではございますけれども、これはいわゆる受け手の方も自分の情報を積極的に検索できるというところが、従来の一方的な情報の提供と異なった点だろうと思います。したがいまして、利用者が希望するデータを入手できるというところに特徴があろうかと思います。
このようなキャプテンと同様なシステムは、イギリスにおきましてはプレステルという名前ですでに実用になっております。フランスではテレテル、電子電話帳というような形で、西ドイツはビルトシルムテキストというような形でもって、積極的に開発されているもの、あるいはもうすでに実用化になっているものとがございます。
現在、これにつきましては、新聞、放送、出版、それから関係行政機関、商業機関等の情報提供者、それからこれに対しまして、当然その回線を受け持つ電電公社、さらにこの端末機器を受け持ちますそれぞれの電機メーカーというようなものの三者の協力を得まして、昭和五十四年十二月から、東京都区内の一般家庭と事業所一千をモニターとして第一回の実験を行いました。さらに、五十六年八月からはモニターを倍の二千にいたしまして、第二期の実験を行っております。またキャプテンセンターの情報容量もかなり増加したというようなところが現在の状況でございます。
このようなことでモニターの方たちの調査を行ったわけでございますが、それぞれのモニターの調査によりますと、実用化した場合に利用の意向を持っているのはどうかという結果は、半数以上利用の意向を持っているということでございます。また、情報提供者の方も早期に実用化することを希望している、こういうような結果が出ております。したがいまして、郵政省といたしましても電電公社、情報提供者などの御協力を得まして、五十九年十一月を目途にこのシステムを実用化するように諸準備を進めているところでございます。いまのところ、当初はサービスエリアは東京二十三区及び周辺の主要都市として、引き続き需要動向等を勘案しながら全国的に拡大する計画でございます。
それでは、さらに先生の御質問にありました、どういうところに使われるであろうかということでございますが、現在のところ、やはりいながらにして、たとえば新幹線であるとか、航空機の座席予約ができるということで日常の生活に非常に便利だという、そういった家庭の利用についての評価というものもございますし、それと同時に、いわゆる商業用としてこれを使いたいという御希望の方が多いようでございます。イギリスの例などを見ますと、やはりどうしても商業用とつながったところが利用の頻度が多いというような情報が私どもに入っております。
#5
○青島幸男君 イギリスなどの諸事情も私もよくわかりませんけれども、これは利用者とどういう契約になっているんですかな。あらかじめ契約をして、金銭の授受の上に、対価としてそういう情報を売るということなのか、あるいは流される情報に民間放送のテレビのようにスポンサーがついて、そこで採算点を見出して営業活動を続けていくのか、その辺はどういうことになっていますか。#6
○政府委員(小山森也君) 一つは、無料で情報を提供していくというものもありますし、その中に有料もございますし、有料のときは例の索引をしていくうちに、以後の情報については何円なりの情報提供料をいただきますというのが画面に出てまいりまして、それを承知でもって、たとえば二百円なら二百円というのを払うという、こちら側の方の意思をもってそういう情報を引き出すというようなものと両建てになっているのがイギリスあたりの実情のようでございます。#7
○青島幸男君 そうすると、これ以後は幾ら幾らだぞという場合は、その支払い等は、つまり電話で情報を提供してもらうことにする契約ですね、契約を電話で行い、支払いは電話料金とともに払うとか、あるいは別途請求――見たか見ないかよくわからないと思うんですね、情報流している方は。実際にはどういう支払い方法で収受が行われるんですかな。#8
○政府委員(小山森也君) 電話線を通じるものですから電話線の方に加金されてまいります。したがいまして、これが日本の場合どうするか、これからの検討課題でございますけれども、電話料金と一緒に利用者の方に請求が来るという形になっているようでございます。#9
○青島幸男君 確かにこのごろは情報誌というのはふえまして、興業のものとかあるいは買い物の情報なんというものもたくさんありまして、ああいう情報誌、買い物の情報とかあるいは興業の情報だけを満載した雑誌というものの売れ行きも人気もかなりあることも承知しておりますから、何か特別なそういう専門的な情報だけ求める方も多いと思いますし、それが営業採算をきちっと超えて行われるということも感じとしてはわかるんですが、具体的にどうなるのか、さて将来わが国にこれが定着していくかどうかというのは私も疑問ですし、いま郵政省に聞いても、どの程度普及するかというのはすぐお答えもいただけないと思いますし、実際にはやってみなければわからないというようなところが実情じゃないかという感じがします。これ以上お尋ねしませんけれども。一方、双方向通信というのもさまざまなところで検討されたりしているわけですけれども、この方の状況はどういうふうになっていますか。
#10
○政府委員(小山森也君) もうすでに実験を終わったんですが、多摩ニュータウンで双方向のCATVということの実験を行っております。今回、筑波学園都市の方でこのCATVのさらに拡大した形での実験を行うことにいたしております。なお、生駒で現在、これはハイオービスという形で光ファイバーを使用して、センターと家庭の映像と音声で結んだという双方向システムで実験を行っているというような状況でございます。
#11
○青島幸男君 そうすると、キャプテンのように電話線を使っているものと、それからいまのところ、従来の同軸ケーブルでケーブルの中に電波を閉じ込めて使用しているものと、それから光ファイバーのものと三種類ありますね。それで、双方向の、いままでの考え方は有線テレビを主体に考え始められたものですね、これ。その三種類のものがそれぞれのかっこうで研究開発が進んでいるわけですね。その上に今度はINSで電話線にかわる光ケーブルでやろうという構想がまた新たにあるわけですね。このINSが普及発展した段階で行われるだろうと思われるサービス、非電話系のサービスにはどんなものがあるんですか。#12
○政府委員(小山森也君) INSと電話は同じ回線に結果的にはなるものだと思います。したがいまして、たとえばキャプテンのようなものはいずれ全国網にいくわけでございますが、この場合の回線の伝送路の使い方が、これがINSという光ファイバーによるものではないかと――全国網になってまいると思います。片方のCATVの問題でございますけれども、これはいわゆる地域社会の特定の地域の中における情報伝達活動でございまして、若干全国を持ちます電話網とは若干異なっているのではないかと思いますけれども、ただ、中に使用されますところの映像であるとか音声であるとかというものは同種類の質のものができるのではないかと思います。
なかなか専門的なことでございまして、なおいろいろあるわけでございますが、これは公社の方から御返事した方がいいかと思いますが、いまのところ電電公社は三鷹と武蔵野実験場においていろいろとINSの実用化の試験にどういう試験をしようかとやっているのが約六種類ぐらいあるようでございます。これにつきましては公社の方から御返事さしていただきたいと思います。
#13
○説明員(信澤健夫君) 概要はただいま電政局長から御答弁ございましたとおりでございますけれども、大まかに申しまして通信と放送と両方の分野から次第に歩み寄りが生まれてきたというのがCATVとINSとの間の関係じゃないかと思います。で、通信の分野では、当初は電話通信が主体でございまして、銅線というか、針金を使ってやるということだったわけですが、それを光ケーブルにしていくと電話だけでなく、ファックスも、データ通信も、さらには映像まで送ると、そして特定者と特定者との間の相互の通信ができるということになってきたというのが一方でございます。
それから、一方で放送の方は、放送は不特定多数の方に対して特定の情報を送るという、放送するというような役割りでありまして、その中からCATVという難視聴地域で共同でアンテナを張って、それを使って共同受信をしようということで生まれてきたのがCATVだと承知しておりますけれども、そのテレビを引くために張ったアンテナを、だんだんだんだんそれが高度化されまして同軸になり、光ケーブルになるということになりますと、それは放送を聞くということだけでなく、その間の通信あるいは放送局に対して、その放送番組に対する意見というか、アンケート調査に答えるというようなこともできるというような状態が技術的に可能になってきて、双方向通信的な形で使われるようになってきたというのがいままでの、あるいはこれからの推移になるのじゃないかと思います。
したがって、これからはそういうCATVの流れとINS化された電気通信のネットワークとの流れとかだんだんに融合していくということになるのではないかと思っております。
#14
○青島幸男君 ですから、その辺で、光ケーブルというのは大変な可能性があるそうですから、映像まで送れるんですよね。そうすると、その同軸ケーブルで有線放送をしていたところとぶつかってきますよね、能力が同じになるわけだから。そうすると、全国に光ケーブルが、あまねくネットワークが施された暁には、それは不特定多数の方と契約をして、不特定多数の方に映像を流して、年間契約幾らというようなことでやれば、その全国ネットの同軸ケーブルといいますか、有線放送が電話ケーブルを通じてできてしまうということになると、従来その同軸ケーブルでやっている地域の有線テレビ放送の事業者というものの権益というものはいたく侵害されることになるですね。そういうことでしょう。#15
○政府委員(小山森也君) まさにこれが技術の進歩と社会的な機能とそれに応じた法制度をどうするかというところの問題でございます。確かに技術そのものだけが先行いたして、それだけの世界でございますと、いま先生のおっしゃいましたように、できるものなら何でもやってしまうということになりまして、いままでのいわゆる社会的な秩序との関係というものが非常に問題になってくるわけでございます。ですから、こういった科学技術としての可能性の問題を社会的な機能としてもどうやって適応させていくかというところがまさに政策の問題であろうと、こう思っております。したがいまして、先日も当委員会で申し上げたのでございますけれども、こういった関連産業に与える影響というのは非常に大きいことが予測されますので、先日も相当期間をかけまして関係の団体からINSに関する意見とか要望をいろいろヒヤリングしたところでございます。一番の問題としては、やはり放送、CATVの既存のマスメディアを担当している方及び新聞、印刷等の方々は非常にこの調整というものを望んでおられました。
したがいまして、私ども情報社会というのはやはり進歩がなければならないとは思いますと同時に、その進歩が社会的な一つの機能をいきなり破壊してしまうような形でこれが実用に供されるということのないような配慮も必要であろうと思っている次第でございます。
#16
○青島幸男君 従来の経過を見ますと、その配慮があいまいといいますか、後手後手に回っているうちにどんどん技術が先に進んでしまってさまざまなあつれきや摩擦が生じて、行政上も非常に困ったことになったりして、矛盾に富んだ御答弁や施策が施されてくるという、結果としてそうなってきたということも事実あると思うんですよね。たとえば、全部VHFを上げてUHFにしようじゃないかというような構想で、十年を目途になんと言って七年も八年もたって、とうていできっこないというようなことになっていながら、まだ悪強情を張られてやるんだやるんだと言っておられて、ついにその看板を下げられたというような実情もありますしね。実際にこのINSはどういうことになるかというのも私も予測がつきませんけれども。
もう一つ端的な例がありますけれども、電子郵便と電電公社が行っているファックスとの違いというのはどういうことになるんですか。
#17
○政府委員(永岡茂治君) 先生御案内のように、電子郵便のサービスは去る五十六年の七月から実験サービスを東京、大阪、名古屋の三都市間で始めて以来、現在十四の郵便局で取り扱っておるところでございますが、私ども郵便事業を担当している者といたしましては、電子郵便というものは、沿革的に見れば、郵便が明治の初め飛脚時代から、鉄道が敷設されて以来、鉄道を郵便輸送の主役として使い、戦後モータリゼーションの発達によって自動車の利用が非常にふえてまいりましたし、また昭和四十一年からは郵便の輸送に航空機を使う、そういった形で郵便の運送手段が時代とともに変わってまいっております。今日、電気通信技術の非常に発達した時代を迎えまして、郵便の運送手段として航空機よりもさらに速い電気通信という手段を使って郵便の引き受け、伝送、それから配達を行うというようにいたしたわけでございまして、私ども郵便事業に携わっている者としましては、電子郵便は郵便を運ぶ一つの有力な手段としてファクシミリを使ってまいっておる。そういった意味で電子郵便は郵便事業であるというふうに考えておるところでございます。なお、公社の行っておる公衆ファクスにつきましては、公社からお答えいただくのが本当かと思いますが、私の方から郵便事業の立場から公衆ファクスを見ました場合は、事業所または個人の家に設置されてあるファクシミリの端末機と端末機の間を結ぶ業務が電気通信業務としての公衆ファクスであると。マシン・ツー・マシンの業務が基本的に電気通信業務であり、それが公衆ファックスであるというふうに理解しておるところでございます。
#18
○青島幸男君 郵便の方の考え方はそうだというんですけれども、電電の方はどう考えられていますかな。#19
○説明員(信澤健夫君) 先ほどお答えしたこととやや関連するかと思いますけれども、電気通信の進歩の過程で、当初は電話と、トン・ツーを中心とした電報と電信ということしかできなかったのが通信設備を使ってファックス通信もできるようになってきたという流れと、それから郵便――まあ郵便事業というのと電気通信事業というのは截然と分かれておったと思うんですけれども、それが郵便事業の中にもファックス通信を使って郵便事業の一部をそれに御利用されるという形で生まれたのが電子郵便ではないかと私は理解しております。したがって、制度的にあるいは政策的にこれからどうすべきかということについては、これは郵政省で御判断いただくべきことでありますけれども、事業者サイドから見ますと、やはりこういう電気通信技術の発展、進歩というのは、電気通信から発展していく新しいメディアと、それから郵便事業がそれを利用しながら新しく出てくる事業というものが相互に重なり合ってくるんではないか。重なり合った部分をどちらかに一元的にやらせるのがいいのか併存させていくのがいいのか、その辺はすぐれて政策の問題ではないかと思っております。
#20
○青島幸男君 その辺がわからないんですよね。そうすると、結局郵便事業というのは最後は歩いて届けに行くという部分だけが残って、それを郵便事業と言うということになりはしないかという気がするんですけれどもね。ファックスもいままだ高いですから、普及率が低いですから、まだ郵便事業の分野に残っていると思いますけれども、ほんの三十年ぐらい前は、テレビ一台、年収ぐらいしましたね、しかも白黒で。それが、いまやもうほんとに学生さんがアルバイトするとちょっとしたカラーテレビが買えるという実情ですから、こういうふうに、あと何年かしますと、ファックスだって、コピーの機械だって昔は畳一畳分の、タンスぐらいあったのが、いまはもう本当にボストンバックぐらいのものまでできているわけでしょう。しかも、それがもう大量に生産されて、それこそ日進月歩で皆さん方の欲求も高まっていますから、大量生産が施されると各家庭にファックスがそんな奇異な感じでなくあるということになりますと、しかもINSで光ケーブルに全部銅線がとってかわられている場合は、私の家から九州のいとこの家でも、友達の家へでも私の自宅で書いた私の自筆そのまま、それに近いものが郵便事業のどなたの手も煩わせずに、それこそ封筒に入って、切手を張ってありませんが、そのままのかっこうで向こうへ届いてしまうということもあり得ますね。そうすると、そのときには郵便事業そのものがもう体をなさない、電報が慶弔電報だけになってしまうような傾向に似て、ということになってしまうんじゃないかという気がしますが、それはいかがなんですか。
#21
○政府委員(永岡茂治君) 私ども郵便事業に携わっておる者としましては、ただいま青島先生のおっしゃるような事態になれば身も凍る思いであるわけでございますが、私どもとしましては、現時点におきましては、ファクシミリ、値段が安くなったと申しましてもやはり数万円のものでございまして、まあ業として営業用に設置されるということは当然理解されますが、個人が各家庭に設置するというところまではなかなかいかないんじゃないか、その間やはり一般の庶民の方がファクシミリという大変便利な手段を使う手だてを提供できるのは郵便事業ではないか、そういった意味で電子郵便の実験を初め全国的な普及を図りたいというふうに考えておるわけでございます。なお、将来のことは予測しがたいわけでございますが、仮に各家庭にファクシミリ端末機が設置されるような大変進んだ時代になったときを仮に想定いたしましても、私どもはただいま電話が各家庭に普及しておっても公衆電話が相当使われているというような実情からしまして、電子郵便、郵便局に行けばファクシミリを利用して情報が送れるといったような手段は、そういった進んだ時代であればやはり相競合してかなり利用がされていくんではないかと、そういうふうに考えておりますし、やはりファクシミリはあくまでも模写されたものでございまして、たとえば判を押した書類とか、やはり証拠として価値を保存しなければならないものと、そういった郵便の伝統的な特性は将来にわたっても失われることはないと思いますし、適正な料金とよいサービスというものに心がけていくならば、将来にわたって郵便事業はGNPの伸びに比例して伸びていくものと確信しておるところでございます。
#22
○政府委員(小山森也君) いろいろ御指摘がありましたけれども、結局郵便というのはいままでやはり人手とそれから実際の物を運ぶという全国ネットワークであったと思うんです。それで一番典型的な例が配達という機能で、ネットワークの端末を確保していたと。電気通信の方はこれが電気通信といわれるまさにそのとおり電気的な一つの通信形態でネットワークを形成しておりまして、最終的には電話のような形に各家庭にネットワークが張られていると、こういうことであろうと思います。しかしながら、いま現在のそれじゃ両者の形を見ますと、やはりファクシミリ通信という、いわゆる電電でやっている公衆ファックスでも、これはやはり端末機までの問題でございます。それで、最終的には公衆ファックスが局どめという形で、これはお受け取りになる方が局まで来るというところで、最終的なネットワークというところではそこの端末をもって終わりになります。片方の郵便の方の電子郵便はやはり配達という最終ネットワークを持っているというところが違うかと思います。それじゃ、これからどうかということですが、それぞれいま利用の形態によって、現在それぞれの利用の側から見た便利なものを取り出していくということになって、併存の形が続くと思います。ただ、しかし、問題は使用実態が国民経済的な見地から見まして非常に不経済な二重投資になるとか、あるいは二重投資の中には配達要員も含めてでございますけれども、重複してくる。特に電報との重複の状態があるというようなことになってきた場合にも、非常に大事な国民経済的な問題が出てくるわけでございます。それがいつ来るかはなかなか明確に申し上げられませんけれども、そう遠くないうちにこの状態はやはり政策的な解決を図らなければならない、その検討をしていかなきゃならない、こう思っております。
#23
○青島幸男君 そうですね。小荷物はそれこそ宅配にとられちゃうし、郵便物は有線で送られてしまうということになって、郵便事業が何が先細りになっていくというようなことも大変私もさびしく思うんですけれども、しかしINSの普及に従ってその傾向をたどっていくことは、これは仕方がないことだと思うんですね。もう一つは、INSのネットワーク化が進んでいきますと、いままでのCATVの関係者も今度は逆にCATVの局に交換機をつくって、そのCATVで各家庭相互に連絡ができるようになったりしますと、これは今度電話の権益を侵してくることになるわけですね。これはやっぱり法律で縛られている部分もありますから雑多にはできないことになるかもしれませんけれども、しかし営業が成り立たない、あるいはそういうことになってくると、そういう手当てもしていかなければならないかもしれませんね。そうすると、今度、電話とCATVの明確な区分がなかなかむずかしくなるということにもなりはしないかという気がしますが、この辺はどう郵政省お考えですか。
#24
○政府委員(小山森也君) ただいま先生が御指摘になりましたが、CATVのセンターに交換機を置いてという事実上電話の機能を果たすということでございますが、これはなかなか予測がむずかしいんでございますけれども、現状のいろいろな経費等から考えますと、なかなかこれは採算が合わないのではないかというような気もいたしております。ただ、しかし将来非常に通信機等の技術革新が著しいものでございますから、どのような変化が、あるとき突然に起こってくるかということは私も神ならぬ身でわからないわけでございます。ただ、しかし、ただいま想定されている双方向のCATVというのは、大体センターとそれを利用している利用者との間の双方向ということが大体想定されているわけでございます。そうしますと、この双方向という形はとりましても、このセンターを介してまたもう一つの加入者につながっていくという、まさに電話局そのものの機能というのはこれは今後またいろいろ法的な問題として考えなければいけないと思いますけれども、いまのところ実際的な経営上の問題としてはなかなか起こり得ないんではないかと思っております。
ただ、それと同時に、ただいま一応私ども有線電気通信法の理解といたしまして、やはり公衆通信というのは電電公社と、それから国際的には国際電電の一元的運用というのを非常に強く一つの通信秩序として原則として掲げております。したがいまして、有線電気通信法の理解にいたしましても非常に双方向というものに対する理解をきつくしておりますけれども、これは必ずしもこれからの時代に即したものとは考えませんので、いろいろな方々の御意見を聞きながら対処していかなければいけないと思っております。
ただ、そういうような法体系の中におきまして、今度は公衆電気通信事業そのものがどうあるべきかというのが、いま非常に公社の経営形態をめぐりまして、経営形態というても結果になって出てくるものでございまして、電気通信のこれからの、特に公衆電気通信はどうあるべきかということから、結果的にそれではどういう経営形態を持ってきた方がいいか、その中には多くの複数の公衆電気通信事業体というものがあっていいかどうかというようなことがその後にくるわけでございます。したがいまして、このCATVのセンターで交換機を置くと、で、実体的な公衆通信を行うというのもその中において考えなければいけない問題だと、こう思っております。
#25
○青島幸男君 それは、将来はテレビ電話というのもできて、遠隔の地でお互いにカメラの前に立って電話で話をすると、その表情から、少なくとも画面に双方が映るということまでも考えられているようですけれども、いまのCATVの話でやりますと、即できちゃうわけですね。ですから、電電公社の電話をかけるよりも、CATVの局へ電話をしてだれだれさんのうちへつないでくださいと言って――CATVのネットワークもこれからますます進むと思うんですよ。CATVは、諸外国の例にもあるように、CATVでクローズドですから何でもできるわけですね、非常に専門的なものが送れる。で、契約者のところへ送るわけですから、放送法で縛られたもの以外でもできますわね。そうすると、アメリカなんかではかなりの水準で普及しているそうです。で、都市間もまたCATVで結ばれると、かなり遠隔の地まで広範囲にCATVネットワークというものができるとしますと、そうすると、家庭と家庭との相互の通信をそのセンターで取りつなげますと、即座に各家庭にカメラさえあればテレビ電話というのはもうすぐ実現してしまうわけですね。その方が便利だからといってそっちへ行ってしまう。いまおっしゃられたように、その辺をどう整理していくかというのも問題ですけれども、公社のいままでの議論を通じてのお話ですと、公社も株式会社にした方がいいんじゃないかということになりますと、今度、会社対会社の権益争いということになってきますから、法のあり方も多少変わってくるわけでしょうからね、株式会社になると。すると、その独占性もそんなに高く確保されないということになると、ますます大混乱になってしまうんではないかという気がしますね。そこまで一挙に話を進めなくても、キャプテンと文字多重放送だって私はかなり重なってくる部分があると思いますよ。キャプテンと文字多重はどうなるんですか。
#26
○政府委員(小山森也君) キャプテンと文字多重の一番の違いは、キャプテンは双方向という形で受け手側からも情報提供者側から逆に情報を要求できるということ。これに対しまして、文字多重は放送の一種でございますから、これは一方的に流すだけであるというところが一番違うところだろうと思います。また、利用の実態見ますと、非常に文字多重は速報性があると言えると思います。しかしながら、速報性がありますけれども、情報量においては比較的少ない状態になるのではないか。これに対しまして、キャプテンシステムは、速報性においては若干欠けるところもありますけれども多くの情報を得られる。まあ、私ども非常に内輪同士のたとえ話でございますけれども、野球でAチームとBチームとの試合はどうだったか、まずそれを見るのは文字多重でAチームが勝ったというようなもの。それじゃ、Aチームの勝ち投手はだれで、だれがヒットを打ってというようなことは今度はキャプテンでもって情報を得るというようなところが、例としていいかどうかわかりませんけれども、文字多重とキャプテンシステムの特徴をあらわしているんじゃないか、こう思っております。#27
○青島幸男君 それはそうですね。確かに忙しいけども、株価はいま現時点で幾らになったかと、現時点で幾らかは文字多重で見て、その推移はキャプテンで見られるということでもありますよね。さまざまの使い方があると思うんですが。それはいいんですけれど、大臣、いままで私るる皆さんに質問してまいりましたように、機器が高い性能で、しかも多岐にわたった性能を持ってるものがありますね、このごろ。しかも、このINSみたいに、一本の髪の毛より細いファイバーなんだそうですが、私もその辺はよくわかりませんが、大変な可能性があるわけですね。
そうすると、いままで申し上げましたように、それぞれいままで行っていたものを総合的に一括できてしまうみたいな性能を持ってるわけですね。ですから、これを上手に、権益を侵さないように、摩擦が起きないように、しかも国民のすべての人たちに至福をもたらすように、責任者のお立場として上手にあんばいしていくってことは大変むずかしいことになっていきやしないかと。で、しかも、まだ先のことだからいいやと言ってられないんですよれ。もう本当にテレビの普及なんてこんなに早く来るとはわれわれも予想していなかった、大臣も予想しておいでにならなかったと思うんですけれども、急遽そうなりますからね。そうなってくるときに、心構えとしてどういうふうに対処していくべきかということを、基本方針だけでもお聞かせいただけますか。
#28
○国務大臣(桧垣徳太郎君) いままで御議論がございましたように、通信のメディアの発達というものは大変急速なものがあります。で、結局このメディアの発達は、電気通信、あるいは無線、あるいはCATVというようなものの境界がだんだんだんだんはっきりしなくなってくる。そうして、これが混乱を起こさないように在立をしていくために制度をどうするかということが私どもの仕事であるというふうに思っておるわけでございます。で、結局私は、そういう境界がだんだん明確でなくなっていくと同時に、ある種の競合もこれも避けがたいだろうと。で、結局、利便とコストの選択ということが起こってくるだろうと。しかし、通信手段という、国民生活なりあるいは社会経済活動の上で欠くことのできないこの分野で大混乱が起こるということはどうしても避けていかなきゃいけないという意味で、私どももいまから、進展をしております情報社会のニーズとそれから技術的な革新というものの調和を図っていくということを念頭に置いて、制度の整備を図っていくということにいたしたいと思っておるわけであります。#29
○青島幸男君 これは大変むずかしい問題ですけど、おっしゃるとおりのことでございますんで、心して対処していただきたいと思います。これは希望として申し上げますけども。どうも、INS構想というのは、十五年かけて三十兆だか二十兆だかわかりませんけれども、私は旧弊な人間でしょうかね、電話というものは遠隔の地にいる人が随時安い料金で安定した通話ができると、銅線をしみてくるその電位差でお話ができて、それ以上のものでもそれ以下のものでもないという認識があるんですよね、基本的に。ですからね、あのピ・ポ・パのプッシュホンができたときも、これで計算ができるんだ、新幹線の予約ができるんだっていう、しかもこれは基本料も高いし、ちょっと高いけど使ってくださいという言い方をされたときに、何かまゆつばだなっていう感じがしたり、この辺でだまされちゃうんじゃないかっていう気がしてたんですよ。
それで、私は当委員会でかつて、公衆電話を三分に切ったときの話ですけれど、公衆電話三分以上の長電話をするやつはばかだというふうに、時の郵政大臣の井出さんだったと思いますけれども、おっしゃられて、私は大反発しまして、三分に限らない電話だって多いんだっていう話をしまして、で、それがわりあい、あの公衆電話の前で待たなくて済むものですから、一般に受けがよかったんですね。で、これを今度は電電は逆手にとられて、同一地域内の通話も時間無制限だったのを三分一通話に切り上げて、そのことで莫大な利益を上げられておるわけですよね。その辺がやっぱりまやかしの根源だったみたいな気がして、いまだに恨みを持っているんですけれどもね。しかし、きのう総裁がおっしゃられたように、ただ話が通じればいいんだというだけではやっぱり困るだろうと。かつて、四国から東京まで半日もかかるような状況のときに、すでにアメリカではハワイから即時通話ができたというような状況を考えると、国際的なことを考えてもそうならざるを得ない部分があるだろうと。わかるんですよね、それは。しかし、これはやっぱり資本主義をたてまえとしてかかっている以上仕方がないことですよね。やっぱりある程度の経済成長っていうものを確保しながら経済に活性化を与えて順繰り順繰りにやっていかなきゃならないでしょう、きっと。で、多様なニーズにこたえてなんて言いますけど、われわれそんな多様なニーズ持っているわけじゃないと思うんですよ。皆さんここに御出席の方も、似たような背広をお召しになって、似たようなネクタイを似たようなかっこうで締めておられる。大体そうなんでしょうけれども、多様なニーズは企業によって喚起されるわけですな。実に多様なパターン化されたニーズにあおられて、われわれはそういう余り要りもしないものも買わされてやっているんじゃないかという気がするんですな。しかし、順繰り順繰りにそういうふうにいかないと世界経済の中で取り残されるということもありましょうし、何らかの方法で好むと好まざるとによらずそうしていかなきゃならないという部分があると思うんです。でも、私は旧弊な人間で、そのことでとても嫌だなあと思うのは、そういうことでいくのは仕方がないけれども、それで失われる部分もものすごく多いんじゃないかという気がするんですよね。たとえば、自動車が普及すれば自動車公害が起きるだろう。そのほか、エネルギーが必要になって乱開発が行われるだろう。緑の山や海は失われる。道路公害は起きる。それから、テレビが発達したら家庭の中心がテレビになって、お父さんが帰ってきても、お帰りなさいと言ってもすぐテレビの方を子供もおかみさんも見ちゃうと。父親の尊厳が失われるところから家庭内暴力が起こったり、家庭の崩壊が起こったりとか、そういうとても失いたくないものがそういう施策の中で大事にされないまま失われてしまうという部分が、私は人間が旧弊なせいですかね、実に残念なような気がするんですよね。だから、進歩発達に伴って経済社会もそれなりの進展を遂げていかなきゃならないんだろうけれども、その経済性あるいは便利さを最優先するために、人心の荒廃を招いたり、自然環境を損なったりするということには十分な配慮をしていかなきゃならないという気はしているんですね。それで、いつのまにかだまされてそういうかっこうにしていくというのは何か情けない気がして――これは私の愚痴ですから皆さんに質問を申し上げるわけじゃないんですけれども、ただ心情としてそういうことを考えていますんでね。
大臣、先ほどの業界の中の摩擦を何とかすることも重大な問題ですけれども、ただ便利を追求するということと人の幸せを確保するということは別のことだと思うんですよね。その辺にも十分な配慮をしていただいて施策を進めていただかなきゃならないということを私は考えるんですが、その辺の御見解を承りまして質問を終わりたいと思います。
#30
○国務大臣(桧垣徳太郎君) 何といいますか、昔からの美風というものを維持していくということと近代社会の発達ということに矛盾がありますのは、この通信問題だけでなくあると思うわけでありますが、この問題は通信行政の範囲以上に一種の社会教育的な立場からの国民への指導ということが私はなければならぬことであろうというふうに思いますが、通信行政の面でもそういう点に配意をした運営をやっていくということは、御指摘のように大事なことであろうと思っております。#31
○青島幸男君 終わります。#32
○新谷寅三郎君 郵政大臣に一つだけ先にお伺いしたいと思います。もうすでに同僚議員から、郵便事業とか、貯金、保険等の郵政省の現業事務については、いま非常に詳細な質疑がありましたので、私は重複を避けまして、一つだけお伺いしたい。御答弁いただく前にお断りしておきますけれども、お互いに立ったり座ったりするのはくたびれますし、国や国民のためにどうしたらいいかということを考えながら質疑応答を繰り返すんですから、ここではお互いに同じ立場に立っているものと考えて、リラックスして思ったことをお互いに述べ合うというような形で私の質問はしたいと思いますので、座ったままで私は質問しますから、皆さんもひとつ座ったままでリラックスして御答弁願いたいと思います。
郵政大臣にお伺いしたいのは、これは去年も郵政大臣に注文したんですけれども、なかなか政府の方で態度を決めてくれないものですから――今日のように放送衛星だ通信衛星だというようなものが、これは郵政省の所管と言ってもいいのでしょうが、あなたの守備範囲でそういった衛星が打ち上げられる。ところが、これは法制を調べるとよくおわかりになると思うんですけれども、衛星についての基本的な法制が整備されていないんですね、現在。たとえば、放送衛星でも通信衛星でも例にとりますと、放送衛星についてはNHK、通信衛星については電電公社というのが六〇%なり七〇%なりというものを、衛星そのものをつくるときに出資しているわけですね。あとは開発費と称してロケットを含めてその費用は国が負担するということになっていますね。
ところが、そのNHKや電電公社で使う以外のチャンネルをどうするかという問題になりますと、これはいかにもこの両方の衛星については郵政大臣が権限を持っているかのように考えがちだと思うんです。これは常識だと思いますがね。ただ、郵政省の組織法というようなものがありますね。組織法では権限はない。権限は与えられていないんですね。国民との間の権利義務というものは、やはりこれは法制で整備しないと、これはいいとか、これは悪いとかというような選択をする権限というものは郵政大臣の裁量権の中にないわけです。組織法から出てこない。ですから、私は早く政府の中で、いろいろの衛星が上がりますから、衛星についての所管及びその権限というものについて、権限というのは裏返すと責任ですわね。そういったものについて、もう少し詳細に検討されて、早く法制を整備してもらいたい。なかなか法制上の整備ができない場合は、少なくとも閣議決定ぐらいはして、そして政府の態度を明らかにしておく必要があるということを再々申し上げているんです。
たとえば、通信衛星なんかでいままで聞いているところによりますと、民間の人たちがあのチャンネルを自分たちも使いたいんだと、それが二つも三つも競合するとしますね。そうすると、Aには与えるがBには与えられないというような権限はだれが持っているか。どこにもないんですよ、いまの法制上は。電電公社が使い、それから消防庁とか警察とか防衛庁が使うというのは、これは政府がそういう出資をしていますから、常識的に考えて、それに対して異存を差し挟むような機会はないと思うのです。しかし、もし仮にこれが裁判所なんかの訴訟の問題にもなりますと、これはそんな権限はないですから、これはおかしいということになるわけです。
だから、私は大臣にこれはぜひ、もう実用衛星が打ち上がってくるのですから、衛星の実用化時代に入ったわけですから、そういった混乱が起こらないように、早く法制の整備を科学技術庁その他関係省庁ともお打ち合わせになっておつくりになっていただきたい。それができなければ、暫定的には少なくとも閣議決定ぐらいはしておかれた方がいいのではないかということを痛切に考えるものですから、これは大臣にその点を要望したいのです。
#33
○国務大臣(桧垣徳太郎君) 答弁は立ってやるものだということに慣例がなっておるようでございますから、委員長の御許可がなければ――座ったままでよろしゅうございますか。#34
○委員長(八百板正君) そのままどうぞ、質問者の意向ですから。#35
○国務大臣(桧垣徳太郎君) それでは、お言葉に甘えまして、座ったままでお答えをお許しいただきたいと思います。御指摘のように、宇宙衛星時代というのがようやく幕が開いたばかりでございまして、宇宙衛星の放送あるいは通信に関する利用についての権限といいますか、そういうものの規定は私は整備されておる状態であるとは思いません。御意見と同様に思うわけであります。事務当局に聞いてみますと、何とかいまの制度で読めるのだということを言っておるのですけれども、確かに設置法の上では、これは権限の範囲、別の言葉で言えば責任の範囲だけははっきりしておると思うのでありますけれども、個別の行政権の行使に関する規定は不備であるというふうに私も思います。改めて法律として提案を申し上げるかどうかは別といたしまして、せめて政府の内部の意思決定として閣議決定あるいは閣議の了承を得ておけという御指摘は私もよくわかるわけでございますので、郵政省として、ひとつ真剣に御指摘の点について対処をするようにいたしたいと思います。
#36
○新谷寅三郎君 ぜひ、そうしていただきたいと思います。郵政省は、ともすると電波法を持ち出すのです。それはみんな衛星とは通信するのですから、いわゆる無線局です。その無線局というものでは、甲はいいけれども乙はだめだというような、そういう政治的な裁量というものは電波法じゃできない。電波法のこれは範囲外です。ですから、そういうところに逃げ込まないで、私は宇宙衛星が本当に実用化される時代に入ったのですから、本格的な法制の整備をしておかれないと混乱しますよということを申し上げて、いまの大臣のようなお考えで、ぜひ基本的な考え方を政府としてもまとめていただきたいと思います。
それから、あと残り時間がまだ四、五十分ありますから、電電公社の問題について若干質問したい。これは多少事務的な問題もありますから、この点は総裁じゃなくて事務当局からでも結構です。
第一には、五十八年度の予算案を見てみると、拡充法の廃止に伴って特別債とか借入金というものを計上しておられますが、前年度比二千六百五十億円増加の七千二百五十億円を計上しておられるようですが、これはもちろんいままでの実績からいきますと、この特別債の発行なり借入金というものは特に支障がなく実行し得るものだと私も考えておりますが、その見通しはどうか。それから債券の発行条件はどうか。あるいは借入金の借入条件はどうか。特に非常な特例を加えなくてもこれは消化できるものだ、従来の実績から見ましてそういうふうに私は思うのですが、その点を簡単に答えてください、時間が余りありませんから。
#37
○説明員(岩下健君) 座ったままでよろしゅうございますか。先生ただいま御示唆いただきましたように、五十八年度から拡充法がなくなりまして、金額約二千五、六百億のものが加入者引受債券としてはいわば減ったわけですが、ちょうど同じくらいの金額が特別債ないし借入金という形で増加をしている。これが端的に言いまして特徴でございます。約二千六百億の対前年度の増加の調達の方法としましては、国内におきまして公募及び非公募の特別債、それから銀行からの借入金……
#38
○新谷寅三郎君 それは僕は知っているんだよ。だから、僕の言ったことに対して結論だけ答えてくれればいいんだ。#39
○説明員(岩下健君) はい。あと海外からの調達、こういったのを含めまして、端的に言いまして、現在の資本市場の状況、動向等から見して資金調達については支障はないというのが結論的なお答えでございます。#40
○新谷寅三郎君 それで多少安心いたしました。その次には建投資ですね。これは前年度から比べますと千百円減額しているんですね。それで一兆六千百を計上しておられるんですが、電電公社の一番の目というのは早くディジタル化を完成して、そして将来に対して、料金の低い、そしてサービスの多様な、そういうサービスを一日でも早くやりたいというのがこれは大方針だと思いますね。ところが、こういうふうに建設投資を減らしておることは、まだ遠近格差の是正とかいって、相当の収支差額からこれを拠出することになっている。それから例の納付金の前倒しまでやっている。それにもかかわらず、まだ収支差額が残っているわけです。にもかかわらず、建設投資についてこういう消極的な態度でいいのでしょうか。なぜもっと、ディジタル化を急ぐならば急ぐように建設投資について力を入れないのかということについて、私は疑問を持っているわけです。
#41
○説明員(岩下健君) 建設投資の金額につきましては、先生ただいま御指摘のように一千百億円減少しておりますけれども、この中身は五十七年度に比べますと濃くなっているというふうに申し上げてよろしいかと思います。と申しますのは、数字的な面で申し上げまして一千百億減りました端的な理由は、十万加入電話の増設工程が前年度は減りまして百二十万が百十万になったということが一つ、これで数百億の影響があるわけでございます。それからもう一つは、過疎対策として加入区域の拡大あるいは地集電話の一般化、これが五十七年度二百五十億円のものが、本年度は地集の一般化が終了しましたので五十億円で済む。つまり、そこで二百億円いわば需要が減ったわけでございます。こういった面が端的ないわば理由でございますが、中身の問題としましては、先生御指摘のINSへの基盤を志向するためのディジタル化あるいは非電話系の投資、これはむしろ前年度より増加をしておりまして、具体的に申しますと、五十七年度の約二千五百億円が五十八年度は約三千億円になっておりまして、設備投資に占めますウエートから見ましても、前年度の十数%が五十八年度約二割近いものを占めておる。これはまたこれからも当然の趨勢として出てまいるだろうというふうに考えておりまして、御懸念のような投資を控えるということではございませんで、あわせて申しおくれましたが、卸売物価の高騰が余りございませんし、また技術革新による設備自体のコストの低減も期待されますので、金額こそ表面的には減りましたけれども、むしろ中身は濃くなっているというふうに御理解していただいてよろしいかと思います。
#42
○新谷寅三郎君 事務的な問題まだありますけれども、大体そのくらいにしておきます。それから、きのうも各党から非常に意見が出ておりましたが、公社としてただいま一番の重要課題は何かといいますと、やっぱり経営形態の問題であると思います。しかし、この問題は、政治的な色彩が非常に強い基本的な政策ですから、これは総裁から答弁してもらいたいと思います。
昨年、この予算に関する会議で私も若干質問をいたしました。しかし、そのときはまだ臨調の答申もできていなかった。今度は最終答申も出ましたし、それに呼応して公社も公式に意見を発表せられたように考えております。それにつきまして、なるべく私は同僚議員との質問が重複しないように気をつけて質問したいと思いますけれども、同じ問題でも違った角度から意見を述べることもありますので、これはもうきのう答えたんだということじゃなく、お答えを総裁から願いたい。
一番初めにお聞きしたいと思いますことは、これは概括的に臨調の答申と総裁の見解とが違うところはあるのでしょうか。総裁は、もし違うところがあるとすればどういう点が違うのか、それをごく簡単に明確に御答弁をいただきたい。
#43
○説明員(真藤恒君) 臨調の答申につきまして、現在私ども、あの後行革大綱が出ておりますので、公式の立場で総裁としてとかく申し上げるのは穏当でないと思いますが、私どもの当事者としての立場から申しますと、あれは大体私どもの解釈では二つ、一段目と二段目と二つに分かれておると思います。一段目と二段目の間に五年という時間を与えてございますが、五年であの書いてあるとおりに実行するのはこれは至難のわざじゃなかろうかというふうに考えておりまして、そこのところが一番大きな私どものいまの関心事でございますが、いろいろあの線に沿うべく勉強は進めておりますけれども、なかなか簡単にはまいりそうにない。ことに人事問題、労務問題、対組合との関係ということはなかなか五年という時間で解決できるかなという感じは強く持っております。#44
○新谷寅三郎君 大体の気持ちはわかりましたが、臨調の答申は一言で言うと民営分割なんですね。きのうも他の同僚議員からそういう質疑がありましたけれども、民営分割という基本方針は総裁もそのとおりに考えておられるんですか。そのとおりにした方がいいとお考えなんですか。#45
○説明員(真藤恒君) 民営がいいかどうかということですが、私どもは、通常世間で言う民営と、それから臨調に書いてあるあの経営形態というものはかなり違ったものだというふうに解釈いたしております。ただ、問題は、国の御方針として、新規参入というものをどういう法体系の中でどういうふうに認めておいでになるのか、これによって非常に対応の仕方は根本的に変わってくると思うんでございます。ですから、あの臨調の答申の中には「一定の条件を満たせば」という言葉で表現してございますけれども、この一定の条件の設定の仕方でずいぶん変わってくると思いますんで、その辺もいま勉強しておるところでございますけれども、まだなかなか各方面の意見を聞きながらという条項で、各方面の御意見がまだまとまりませんものですから、こちらは想定問答みたいなことで勉強しておりますので、なかなか具体的に結論的には申し上げられませんけれども、さっきお話も出ておりましたが、このCATVあたりも、やりようによりますとCATVとCATVとつながって、しかもいま新しく開発されて緒につきました高周波の双方向性の広帯域の無線装置なんかをコンバインして使いますと、たちどころに非常に安いコストで別の電気通信システムがたやすくできてしまうわけでございます。
そのほかに、衛星の問題もいまお話がございましたように、どういうふうに扱うかということもまだ決まっておりませんし、当分の間は国産衛星に力を注ぐというコンセンサスのようでございますけれども、じゃ、アメリカが持ってきていまのKDDの範囲を超えたことが安くできるようになったときにどうするかというようないろんな問題がございまして、私どもは臨調を民営化ということで表現したくないんでございますが、やはり普通の株式会社のすんなりした形にはなかなかなりにくいと思います。
それともう一つ、公益事業でございますから、民間では、公益事業、公共事業でございますので、料金体系及びいわゆる私どもの言葉の加入者との相互関係というものについては、これはかなり強い規制が要るものだと思います。公益事業というのは、タクシーだって認可料金になっているのが世界じゅうの実情でございまして、そういうふうなことを考えますと、値段を勝手に決めて値段の競争できるような形のものにはちょっとなじまないんじゃないかと思います。
ですから、私どもが考えておりますのは、そういう新規参入というものが新しい法体系でどうなるかということが大体おぼろげながら方向がわかりませんと、何も責任を持って申し上げられないというのが現在の姿でございます。
#46
○新谷寅三郎君 いまの総裁のお話、私もそういったことを考えているんです。その点については、また後で新規参入の問題について一言申し上げたいと思いますが、どういう形で技術開発がされて、また国民がどういったサービスを要望しているか。それに対して新しく新規参入と言われていますが、公衆電気通信事業者というふうなのが生まれるのがいいのか悪いのか。もし生まれるとすれば、どういう条件のもとにそれを生んでいくのがいいのか。これはこれから技術開発が進んでいくのと並行しまして政策的に基本的にこれは考えていかなければならぬ問題だと思いますから、その問題について総裁がそういうふうに非常に先を見て柔軟な姿勢でもって対応しておられることに対しましては私も同感でございます。どうか、いまおっしゃったようなことを本当にそのとおりに、そういう考え方でもって進んでいただきたいと思います。それから、これは私が困るのは、いろんな資料をこれは研究材料ですと言ってくださるんです、電電公社から。日本電信電話公社と書いてあるんです。それがともすると新聞なんかにそのまま報道されるんです。電電公社の案なのか、それで中に聞きますと、これは総裁にも報告してありますから電電公社の案として考えてもらっていいんだというような答えが返ってくるわけです、持ってきた人は。そうしますと、中には、お互いに別の持ってこられた資料の中で非常に矛盾したものが入っているわけです。だれが責任を持って出しているのか、私たち不明なんですよ。日本電信電話公社という、ちゃんと印刷して書いてあるんです。それを持ってきているんです。だから、これから先、研究材料なら研究材料で結構です、われわれもいま研究している最中ですから。しかし、だれが責任者か、総裁の意見として出しているのか、出さないのか、こういった問題についてもう少し明確にしてもらわないとわれわれも困るし、国民はもっと困ると思うんですよ。これ何だということになりますわね。
われわれは、あなたの方でいまやっておられるプロジェクトチームの、企画室とかなんとかできたそうですね。そこの課長連が集まって相談しておられた結果を一々報告されて、それに対する意見を一々われわれ考えているという余裕はないんですよ。やっぱりわれわれとしては大綱を見て、これはどういうようにするのが国民のためにいいか、国のためにいいかということを考えながら進んでいますから。いま言ったようなことを部下に、ひとつ厳命していただきたいんです。それで早くいろんなものを知らしてくれるのは結構ですけれども、これはもう本当にわれわれの一部の者が考えた資料でございますと言うのなら、それはそれでいい。しかし、電電公社の総裁が、持っていってもいいよ、おれも同じ意見だ、こういうことであれば、それはやっぱりもう少しちゃんとしたものとして出してもらわぬと判断つかないですよ。
#47
○説明員(真藤恒君) いまのお言葉、気をつけて今後対処いたします。#48
○新谷寅三郎君 私は、電電公社の方から、いま公式でもあるし、非公式でもあるのでしょうけれども、そういった資料を実はできるだけ時間をかけまして考えてもいるし、検討もしている一人だと思いますけれども、総裁は初め、去年でしたか、これはこんな厚い資料をお出しになったことがあります。これによりますと、どうも毎年毎年収支差額が減ってきている、このままほうっておいたら国鉄のような状況になるおそれがある、早くこれを効率化して、民営化しなきゃいかぬということを盛んに言っておられた。ところが、現実の問題としましては、その後に去年のこれは十月ごろでしたか、出してもらった資料によりますと、これは総裁、もう御承知のとおりですが、六十四年までは現行料金でやっていけます、財政的な不安はありません、こういうことをおっしゃったですね。覚えていらっしゃると思う。そうしますと、非常に財政上の支障という問題から離れてきた。それはもうそんなにしなくてもいい。ことに私から見れば、長距離の方は外国よりも高いところがありますけれども、市内通話のごとき十円なんというような基本料金を取っているところは世界じゅうないでしょう。私は外国のいろいろな論評見ましても、世界的に最も安い、そうして効率の高い公社であるということを外国の人は皆言っているわけです。だから、これは当然のことだと思いますけれども、そういう財政上の心配がないということになりますと、残る問題は何だろうか。これは後でも申し上げますが、予算編成その他について、あるいは給与問題なんかの処理について、現行法では、あるいは予算総則なんかに書いてあるところを見ますと、非常に、あなたの方から言うと自主性が足りない。もっと悪い言葉で言えばめんどうであるというようなことで、もっとそれを効率化するように努力してくれということが残るだろうと思うんですね。
これについては、また後で申し上げますが、私もこれはその当時、これは三十年前ですけれども、私はアメリカの国務省から呼ばれて二カ月半アメリカへ行ったんです。電気通信を主として研究してきました。その結果、翌年、昭和二十七年に時の大臣から頼まれまして、現行法の制定に私も努力をしたんです。で、現行法ができたわけです。しかし、私は決して現行法に拘泥しているわけじゃないんです。三十年たっていますから、そういった問題についての社会的な変遷というものを私もよく認識していますから、現行法の制度そのままでいいとは思っていません。改善すべきものは改善した方がいいだろうと思います。それについて私は後で注文します。どういう点についてどういうふうに改善してほしいのか、具体的にその理由をつけて公社の総裁として委員会なりわれわれにも提示していただいて、これは必要かどうかということをわれわれの国会の立場から十分に検討し、お互いに協議をして最高の結論を得るように努力をしよう、こう思っているわけですから、これは何遍も言ったことですけれども、理由をつけてそういった項目を具体的に出してもらいたい。
これは、郵政大臣隣におられますけれども、公衆電気通信法とかあるいは公社法それぞれに許認可事項が非常に多いんですよ。お互いに十号ずつぐらいあるでしょう。そこへ予算総則があって、これは大蔵大臣も関与していますけれども、郵政大臣、大蔵大臣の許認可事項というのは相当あるんですね。こういったものをどういうふうにするのが電電公社の経営の効率化に役に立つかということは、私もこれは率直に考えてしかるべきだと思っておりますから、これは公社からもこれに対して、いけないものはいけない、いいものはいいというんで率直な意見を提示されないと、この問題は進展しない。抽象論だけじゃだめなんですよ。あなたさっき言われたように、公共性の非常に強い事業ですから、だから国会やらあるいは政府が大事なところについては関与するのが当然でしょう。だから、どの点をどうしてほしいということについて、私は具体的に総裁からわれわれにも項目なり理由なりというものを提示されるのが先決だと思います。やっていただけますか。――いや、総裁だよ。事務当局はいいですよ。
#49
○説明員(真藤恒君) いまの御趣旨を体して勉強を進めていきたいというふうに考えております。さっき、ちょっと収支差額のお話がございましたが、これは実はお話ししたこともあるかと思いますけれども、電電にとっては異例の措置を講じながら、全員がその気になって努力し始めてもらったのでああいう数字を出せる可能性が出てきたんでございまして、五十五年度と五十六年度と五十七年度と、それから五十八年度のわれわれの事業計画というふうに見てまいりますと、支出の伸び率が着実にいま下がりつつございます。しかし、これは従来の電電の運営の仕方をやったのではないんだということだけははっきりここで申し上げて、みんなの努力の結晶であるというふうにお認めいただきませんと働きがいのある職場というものは確立できませんし、もしこれをこのまま、従来のとおりでいろんな形で制肘――制肘と言うと語弊がございますが、制肘じゃなくて、従来どおりのしきたりの中に置いておきますと、これは重大な問題が将来出てきやせぬかというふうに私は心配しているぐらいでございます。いま非常にみんながその気になってくれたからああいう数字の変化が出てきておるということだけをはっきりここに申し上げておきたいと思います。努力せずに自然にそうなった数字じゃないということだけはひとつはっきり申し上げておきたいと思います。
#50
○新谷寅三郎君 さっき申し上げたような項目、現在の――あなた前に、去年だったか、現行法どおりに動いていればそんなに問題ないんですと。ただ現行法が、歴史的という字を使っておられたけれども、歴史的な動向で現行法どおり動いてないんだということを答弁されましたがね。だから、それはそれにしましょう。それなら、それに対して現行法どおり動かしてくれと、企業の経営にふさわしいような弾力性を持って予算編成をしろとか、あるいは予算について、これは公社法の四十条、四十一条です。公社法の四十一条には、予算は別に大蔵大臣に出す必要ないのだ、郵政大臣に出しなさいと。郵政大臣は閣議に出す前に大蔵大臣と協議をして、調整をした上で閣議に出しなさい、こういうことになっていまして、大臣と大臣との間の調整で電電公社の予算というものはできるようにしてあるわけですよ。しかし、それは不幸にして、だれがやったか知りませんけれども、いまのように一般会計と同じようなかっこうで大蔵省に提示して、大蔵省から査定を受けているでしょう。だから、そういったことを指摘しますと、いろいろありますけれども、しかしあなたがいまおっしゃったような努力は私も多とします。よくわかっている。しかし、これはあなた方だけの力じゃなくて、これは与野党を通じまして、われわれも職員の給与の問題につきましてはあらゆる機会に、可能な限りの協力をしているということだけは忘れないでもらいたいんです。そこで、もう一遍振り返って言いますけれども、さっき申し上げたような現行の制度、そういったものについてどこをどうしたらいいんだ、どういうことを希望するんだということを理由を付して項目としてお出しになることはやっていただけますね。
#51
○説明員(真藤恒君) いつお出しできるかということはいま申し上げかねますけれども、さっき申しましたように、そういうことを考える前提条件が全然まだ非常に流動的なものですから、具体的なそういうことをいつお出しできるかということは申し上げかねるんですが、いずれ、そういう私どもの考えに基づく私どもの希望事項というものをきちっと整理して申し上げなきゃならぬ時期が来るんじゃないかということは予想いたしております。#52
○新谷寅三郎君 どうも十分じゃないですね。ないけれども、これで時間食って押し問答したってしようがない。私はやっぱりそれが原点だと思うんですよ。そういったもので、こういうことはやってもらいたい、この点はこう変えてもらいたいというようなことで、後で新規参入なんかの問題ありますけれども、そういった問題を含めまして、あなたの方からそういった希望が出た場合に、それをどう処理するか、それには経営形態を変えなきゃならないのか、あるいはこの点をこういうふうに変えたらいいのかというような結論がそこから出てくると思うんですよ。そういう意味で、余りのんびりしないで、これはあなたの方のもう本当に一番の重要な問題ですから、至急に検討をされて早くそれを提示されると、郵政省も、政府側もそうだし、われわれもそれに対しまして対応策を十分に考えていこう、こう思っているわけですから、いつになるかわからぬなんて言わずに、なるべく早くお出しになることをこれは希望しておきます。それからINSの問題につきましては、きのうもはっきり皆さんに言われたから、私はここではもう申しません。これは経営形態がいかようであろうとも、それに関係なく電電公社としては当然歩むべき道なんですね。
それで、ああいったことを、この間の三月の十六日でしたか、われわれの方の通信部会の方にお出しになったのによりますと、いかにもINSをやるのには商法の会社、会社法による会社にしなければだめなんだというような印象を受けるようなものをお出しになっているわけですよ。これはしかし、あなたの方から――矛盾しているというのはそこなんです。いままで、五十六年、あなたが総裁になられてから公社が提出されたINSのメリットというのがあるわけです。こういうメリットがありますということを並べて書いてありますよ、私、いま持っていますが。要するに、非常に電気通信のコストダウンができる、それから異種の、違った種類のいろいろの端末機をきわめて低廉にスピードも速くどんどんこれは消化できるというようなことなんでしょうね、一言で言うと。もっと権威のある人たちの意見を聞きますと、これによって、たとえばアナログ方式化に対しましてディジタル化で伝送のコストが三〇%から五〇%ぐらい軽減できるであろうとか、あるいは光ファイバーなんかを使いますと、これは非常にコストが低減するだけじゃなくて、遠近格差が是正できるとか、そういったのがとにかく三〇%ないし五〇%のコスト低減ができるんだということでしょうから、それを目指してやるので、これは経営形態が会社になろうが、いまの公社制度であろうが、またそのほかの経営形態であろうが、これは当然やらなきゃならぬことで、会社にならないとできないんだという印象を与えるそういう報告といいますか、そういう物の書き方は、これは私は、きのうも訂正されたからいいですけれども、私はそれは間違っておる、こう思っておるんですが、この点はもうきょうは議論をしません。ただ、三月十六日にお出しになった意見書では、これはいまのINSの問題から派生しているんでしょうが、商法の原則に基づく特殊会社の実現が望ましいということが書いてあるんですよ、結論としまして。商法の原則に基づく特殊会社の実現が望ましい。
で、これは私は、学生時代に返るようなことで恐縮なんですけれども、商法によりますと、総裁も、これは法律問題ですけれども、この程度はこれは常識で知っておられると思うんですが、会社というのは営利を目的とする社団法人なんですね。それで、営利を目的とするというのはどういうことかといいますと、これはわれわれ法律を学んだ者から見るとイロハなんですが、単にその会社が企業活動によって利潤の獲得を図るというだけではなしに、さらにその得た利潤を構成員に分配することが目的である、これが会社なんですね。これはどこの会社法の解説を見ましてもみんなそう書いてありますよ。ですから私は、電気通信事業、これはこれから先の日本の政治経済、国民生活の発展の原動力になるものだと思いますが、非常に公共性の高いものだと思います。そういったものに、公共目的を第一義として発展させるべき事業だと思いますが、営利目的を第一義とするような経営主体が果たしてこれになじむかなじまぬかということにつきましては、これは非常に重大な考慮をした上でないと決定はできないと私は思っているんですが、この点は、あれは総裁が出したのかどうか知りませんが、電電公社として出したんだから総裁も知っておられるでしょうが、あれについては私は非常に不安な気持ちで電電公社の見解というものを見ているわけなんです。もし総裁が何か御意見があるならおっしゃってください。
#53
○説明員(真藤恒君) いまお話がありましたように、ディジタルなり光ファイバーを入れますと、技術的には非常にコストダウンになることは確かでございます。問題は、技術的にコストダウンできるものを社会的にコストダウンできるかどうかということが問題でございまして、経営の責任者の立場としては技術的にコストダウンできるということはいま全然心配する必要はございません。じゃ、社会的にそれが実際の金額としてコストダウンできるかどうか、それをどうやって実現するかというのが当事者としてのこれから先のポイントでございます。で、それをやりやすい姿でないと日本の電気通信事業というものは役に立つものにはならないんだというふうに私どもは考えておるわけでございます。しからば、社会的にコストダウンするときに、われわれの従業員に犠牲を強いなきゃならないようなコストダウンの仕方は絶対にこれは実行できない。やるべきでもないと思う。ですから、商法の原則にと申し上げているのは、商法の原則に従えば、世の中の民間の企業は十分それを過去にやってきた実績がございます。その実績をフォローして動けるだけのことができるようにしていただくということが基本的な私どもの態度でございます。
過去の国営事業で、社会的にひずみを起こさずにコストダウンできた歴史はございません。また、コストダウンができなかった例もたくさんございます。それで、いま問題を起こしているのはたくさんあるわけです。そうならないように持っていくためには、いまの日本の社会機構の中では商法の原則で動けるようにしていただくよりほか仕方がないと私は考えておるわけであります、たくさん例がございますから。
ところで、さっき申しましたように、いかに経営形態を変えても、民営という言葉は私は嫌いだと申し上げております。民営という言葉は嫌いだということは、いまおっしゃった商法の原則で動けるけれども、高度な公共性の面については、利益追求だけを追って自由勝手に料金を上げ下げすることができるようなことは、公共事業である限り世界じゅうどこに行ってもないわけです。これは必ず国の主権の制限を受けております。また、受けるべきものだと思います。その辺はきちっと厳重にくくっていただきたいということを、いまおっしゃった資料の中にも申し上げておるわけであります。
問題は、社会的にコストダウンできる方法、これが問題を起こさずに、従業員に迷惑をかけずにやれる方法をお願いしたいというのが私どもの最初から最後の願いでございまして、そこのところだけをどうしていただくかということが問題なんです。それがまだ、さっき申しましたように、きちっとした――きちっとまでいかなくても、おぼろげながらのその大枠はまだまとまっていないので、さっき委員会に答弁申しましたような御返事をしたわけであります。いまそういう大枠ができることをお待ちしているというのが私どもの現状でございます。
#54
○新谷寅三郎君 技術的にはコストダウンできるけれども、社会的にはコストダウンできるかどうかが疑問だ、こういうことですか。#55
○説明員(真藤恒君) そうです。#56
○新谷寅三郎君 あなたのおっしゃる社会的なコストダウンというのは、具体的に言うとどういうことなんですか。#57
○説明員(真藤恒君) 事業のトータルがどういうふうに変わってくるかわかりませんけれども、要するに技術的に合理化されるということは、人手が要らなくなるから合理化されていくわけであります。性能がふえて、しかも何十倍が何万倍になってもなおかつ従来のいまの設備よりも、技術よりも人手が要らなくなってくる、これをどういうふうにして人手が要らなく――技術的になればなったで人を減らさなきゃならぬのですが、商法の原則でそういうことができるようにしていただければ、世の中にそういうことをやっている前例は山ほどありますので、その例にならっていける可能性を持つことができる、したがって商法の原則ということを申し上げているわけでございます。#58
○新谷寅三郎君 それは別に商法の原則と私は関係がないと思いますがね。いまおっしゃったのを聞いていると、コストダウンというのは主として従業員の数が減るということだ、そこから出てくるコストダウンが多いんだということなんですけれども、私は必ずしもそれだけじゃないと思うんです。それは従業員の数を減らしてもいいということは一つのアイテムになるでしょうけれども、しかしそれだけじゃないでしょう。同じ人を使っていてももっと大量の回線がとれる、もっと早くまた通信ができるということによって能率が上がるというようなことが、社会の進展に応じましてそういった対応ができるというようなことが技術面からのコストダウンにつながっていくということでしょう。あなたのおっしゃる商法の原則によって何か従業員が云々とおっしゃる。それがもし唯一のものであるとすれば、私はそれはこれから電電公社としてはいろんな方法があると思うんですよ。これは時間がないから余り申しませんけれども、電電公社のいま自分で抱え込んでおる仕事というのは、後で新規参入とか、また新たな、やかましく言っている宅内装置を何とかするとかいうようなこともありまして、私は電電公社が、本社が自分で仕事を抱え過ぎている。そういったのをもっと本体をしっかりしたものにして、いわゆるぜい肉を取りなさい。その場合に、どういったものが電電公社の周りにできてくるか、またつくったらいいか、これは労働組合ともよく相談されまして、そしてそういったぜい肉を取るための措置をとった場合には、現在のエキスパートである従業員諸君にもその方に移ってもらうというようなことは、これは可能なんです。だから、これは私は、いまのあなたの言われる社会的コストダウンにはならないとおっしゃるけれども、この点についてはわかりませんよ。#59
○説明員(真藤恒君) いまいろいろお話承りましたが、私の長い経験から申し上げますと、いまの電電公社のコストというものは六割近くが過去の投資に付随するものと設備を運営するのに不可欠な物件費でございます。これはコストダウンが不可能でございます。六割が金利の支払いとか償却、こういうものはもう半ば先天的に過去の歴史で積み上げられたものでございまして、これが六割。あとの四割しか経営力で動かす力の及ぶものはございません。したがいまして、いま先生がおっしゃいましたように、需要が予想以上にふえてくれば結構でございまして、またふえてくるようにいろいろ私どもも社会に対してPRをし、またいろんな設備もそれにおくれないようにやりますけれども、ただ需要の拡大だけで問題が解決するとは考えられません。と申しますのは、現在の近距離料金は確かに安いのですけれども、INSというものの性質から言いまして、極端に申し上げますと、全国均一料金で、しかもそれが可処分所得の中に入らなきゃ使い物にならないという一つの経済性がございますから、そこへ持っていきますためには、簡単にいまおっしゃったような範囲の手の当て方では解決できないというふうに私は長い経験から見当をつけております。#60
○新谷寅三郎君 おしまいになりまして、これ少し長くかかるかもしらぬと思いましたが、これはもう置いておきましょう。新規参入というのは、これは恐らく、これの標本みたいにお考えになっているのはアメリカのSBSみたいなものだろうと思うんですね。臨調でもそうでしょう。こういったのは、私はたくさん資料持っていますから、必要であれば電電公社にも見せて差し上げてもいいと思いますけれども、SBSのやっていますことは、御承知のように、日本で言うとINSみたいなことをどんどんやりまして、衛星を打ち上げて、そこに音声とかデータ、ビデオコンファレンス、あるいはファクシミリというような全ディジタル方式の専用サービスなんですね、ここは。それが不幸にして、いま非常に収支が落ち込んでいるんですね。八一年も八二年も非常な赤字を出したんです。それで、出資者であるIBMもコムサットも予想が外れて非常に困っているということのようです。私は、さっき政策局長が神ならぬ身と言いましたけれども、本当に、これから三年先になって日本の情報化社会がどうなるかということについては、的確に判断し得る人はないだろうと思うんです。
そこで、私はこれは郵政大臣にも聞いておいてもらいたいんですけれども、技術開発はどんどん進んでいく。それで、開発された技術をそのまますべて実用化するんだということになりますと、日本の情報化社会というものは私は非常に混乱すると思うんです。昨年お出しになろうとした付加価値データ通信の法律案につきましても注文したのですけれども、第一に、一番身近に感じられることは、あれは不特定多数の人が利用しますと、直ちにプライバシーの問題をどうするんだという問題が出てくるでしょう。それから、日本でもどんどんふえているコンピューター犯罪なんかはアメリカの十分の一ぐらいしかありませんけれども、それでもコンピューター犯罪を防止するにはどうしたらいいんだ、これはハードの面でも、ソフトの面でも、管理運営の面でも考えなきゃならぬ問題がたくさんあるわけです。それから、データそのものを騙取したり改ざんしたりするような犯罪がやっぱりアメリカなんかでは起こっているんですね。だから、データそのもののセキュリティーの問題も大問題だ。だから、私はそういった問題を並べて考えまして、そうして健全な情報化社会というものを形成していくためにはどうしたらいいかということを考えていかないといけないと思うんですね。
電電公社に対しても私はそうだと思うんですね。真藤さんの言っておられるある一部分はそれに触れている問題だと思いますけれども、私はそういうふうなことを考えながらずっと検討を続けていきまして、そこで初めて、こういうことをしたらこうなる、こういったことは国民のニーズからいってもやらなきゃなるまいというようなことが出てきまして、そこで初めて、それならこういうことをやらなきゃならないとすれば経営形態はどうしたらばいいかということは、その次に出てくる問題だろうと私は思っているのです。そうしないと、先走っていくと非常な間違いを起こすだろうと思いますので、この点は最後に申し上げておきます。
なお、いろいろまだ意見を交換したい問題がありますけれども、時間が過ぎたようですからこの程度にいたしますが、私は決して究極的にいまの形態そのままでやるのが一番いいんだなどということは言ったこともないし、考えてもいない。ただ、これからの技術の開発、それから社会事情の変化、そういったものをにらみ合わせまして、どうしたら国のためになるか、どうしたら国民のためになるかということを主題にしてこの問題に取り組んでいくような、本当に高い視野からひとつ判断をされる必要があるのではないかと思いますから、あえていま言ったような質問をしたわけですから、御了承いただきたいと思います。
#61
○委員長(八百板正君) この際、委員長からちょっと申し上げます。電電公社に申し上げます。資料について、その渡し方について、渡したり渡さなかったりがあったとの非難を受けることのないよう、差別をしないよう注意してください。よろしゅうございますか。
#62
○説明員(真藤恒君) はい、心得ました。#63
○委員長(八百板正君) 他に御発言もなければ、これをもって昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、郵政省所管及び日本電信電話公社についての委嘱審査は終了いたしました。なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#64
○委員長(八百板正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本日はこれにて散会いたします。
午後零時一分散会