くにさくロゴ
1982/03/24 第98回国会 参議院 参議院会議録情報 第098回国会 商工委員会 第5号
姉妹サイト
 
1982/03/24 第98回国会 参議院

参議院会議録情報 第098回国会 商工委員会 第5号

#1
第098回国会 商工委員会 第5号
昭和五十八年三月二十四日(木曜日)
   午前十時二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十三日
    辞任         補欠選任
     中野 鉄造君     馬場  富君
 三月二十四日
    辞任         補欠選任
     石本  茂君     森山 眞弓君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         亀井 久興君
    理 事
                野呂田芳成君
                降矢 敬義君
                吉田 正雄君
                市川 正一君
    委 員
                岩本 政光君
                大木  浩君
                金丸 三郎君
                川原新次郎君
                楠  正俊君
                福岡日出麿君
                降矢 敬雄君
                松尾 官平君
                森山 眞弓君
                阿具根 登君
                田代富士男君
                井上  計君
   国務大臣
       通商産業大臣   山中 貞則君
   政府委員
       通商産業政務次
       官        前田 勲男君
       通商産業大臣官
       房長       柴田 益男君
       通商産業大臣官
       房審議官     野々内 隆君
       通商産業大臣官
       房審議官     斎藤 成雄君
       通商産業大臣官
       房会計課長    鎌田 吉郎君
       通商産業省通商
       政策局長     中澤 忠義君
       通商産業省貿易
       局長       福川 伸次君
       通商産業省機械
       情報産業局長   志賀  学君
       通商産業省生活
       産業局長     黒田  真君
       資源エネルギー
       庁長官      豊島  格君
       資源エネルギー
       庁長官官房審議
       官        松田  泰君
       資源エネルギー
       庁石油部長    松尾 邦彦君
       資源エネルギー
       庁公益事業部長  小川 邦夫君
       中小企業庁長官  神谷 和男君
       中小企業庁小規
       模企業部長    赤川 邦雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        町田 正利君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○昭和五十八年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について
 (通商産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫)
    ─────────────
#2
○委員長(亀井久興君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨日、中野鉄造君が委員を辞任され、その補欠として馬場富君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(亀井久興君) 予算委員会から審査の委嘱がありました昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫を議題といたします。
 まず、通商産業大臣から説明を求めます。山中通商産業大臣。
#4
○国務大臣(山中貞則君) 昭和五十八年度通商産業省関係予算案等の商工委員会における御審議に先立って、一言ごあいさつを申し上げます。
 わが国経済を取り巻く諸情勢はきわめて厳しいものがあり、また、不確定な要素を多々抱えております。私は、こうしたときにこそ冷静、的確に諸情勢を判断し、険しいながらも将来に明るい展望を示しつつ、官民一体となって諸課題に対応していかなければならないと考えております。
 国内面では、当面の経済運営について万全を期するとともに、中長期的には活力とゆとりにあふれた福祉社会を建設していくため、経済の持続的、安定的な発展を確保することが必要であります。
 他方、国際面でも、世界経済の長期的低迷を背景とした保護主義的な動きに対して自由貿易の原則を堅持するとともに、発展途上国への援助等を通じて、国際社会における責任ある一員としての役割りを積極的に果たしていく必要があります。
 私は、以上のような内外情勢に対する基本的認識のもとに、わが国経済の発展を将来とも確保するためには、次のような課題を解決していく必要があると考えております。
 その第一は、内需中心の安定成長の実現と中長期的展望を踏まえた産業の活性化、第二は、自由貿易主義の堅持と円滑な対外経済関係の構築、第三は、総合的な資源、エネルギー政策の展開、第四は、技術立国を目指した技術開発の促進と産業構造の創造的知識集約化の推進、第五は、多様化する経済社会の要請に即応する中小企業政策の展開、第六は、魅力ある地域経済社会の形成と国民生活の質的向上であります。
 昭和五十八年度通商産業省関係予算案及び財政投融資計画の作成に当たっても、このような基本的方向に沿って、諸施策の具体化を図ることとした次第であります。この結果、一般会計八千二百三億六千六百万円、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計五千八百十四億三千八百万円、電源開発促進対策特別会計千九百五十億二百万円、財政投融資計画五兆九千六百五億円等を計上しております。
 通商産業省関係予算案等の重点事項については、お手元に資料がお配りしてありますが、委員各位のお許しを得て説明を省略させていただきたいと思います。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
#5
○委員長(亀井久興君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○金丸三郎君 山中通産大臣が御就任になりましてから、内外の経済情勢に対処しつつきわめて適確な通産行政を展開しておいでになりますことに敬意を表しますとともに、大変心強さを覚えている次第でございます。
 本日は、衆議院の予算委員会以来いろいろと御質問がございまして、そう事新しい御質問ではございませんけれども、ただいま通産大臣のごあいさつを伺いまして、私も重点の六項目については全く同感でございますが、その内容につきまして若干お尋ねをいたしたいと、かように思う次第でございます。
 課題として六つお挙げになりました。第一は結局景気対策と申しましょうか、総体としては、日本の経済をどのようなふうに景気対策を講じつつ、世界の経済的な構造変化に対応しながら日本の経済を発展させていくかという基本的なお考えのもとに、この六つの課題を御選択になったのではなかろうかと、かように感ずるのでございます。
 まず第一にお尋ねいたしたい点は、第一の「内需中心の安定成長の実現と中長期的展望を踏まえた産業の活性化」、これについてどのようにお考えになっているかということをお伺いいたしたいのでございます。
 その前に申し上げたいと思いますのは、一昨年から私は全国不景気でため息ばかり聞こえる、実はそういうような感じがいたしております。わが国では関東大震災の後の大正十三年から大正十五年と申しましょうか、十二月までの約三十五カ月にわたる長期の不景気が従来レコードでございましたのが、現在ではいろいろ見方もあろうかと思いますけれども、五十五年の二月ぐらいから今日まで長期の不景気が続いておる、とうとう三十六カ月に達して日本では最長の不景気になってきておる、こういうふうに言われておるわけでございます。しかも、日本だけではなく世界的な不景気でございますので、この脱出の方策も決して容易ではございませんけれども、国民がいま政府に一番求めておるものは何かということを考えますと、あるいは減税とかあるいは教育の問題とかいろいろございましょうが、私は国の財政が悪いこともわかるけれども、やはり何とかして景気をよくしてもらわなければならないとこう申しても過言ではないと、こういうふうに思っておるのでございます。
 以上、私が感じておりますことを前提にいたしまして、この第一の課題についての大臣の御所見をお伺いいたしたい次第でございます。
#7
○国務大臣(山中貞則君) 私たちは戦後の荒廃、無に等しい食べる物にも事欠くという時代から今日まで三十八年の歳月をかけたとはいえ、世界経済の一〇%を占めるだけの国力というものをつくることができました。私たちはすばらしい民族だと自分たちを自負したいと思います。
 しかしながら、その国民のまゆにかげりが生じた。過去にも景気をなべ底景気だのいろいろ言った表現等はございましたけれども、しかし遠からずという前途に一脈の光を求めながらの不景気のときであったと思います。しかし、今回の国民のまゆが曇ったままであったというのは、やはり第一次石油ショックのショックを克服し得たと思ったのもつかの間、さらにもっと厳しい第二撃を食らった国民経済というものは、これは世界的な規模で、口では自由貿易を唱えながらそれぞれにそれぞれの国の中で考えられる限りのそれと反対する保護貿易主義の道を走り出してしまった。そして排他的な、おのれの国が何とかして繁栄を、あるいは生き延びる道をという手探り状態に入ってしまったこと、これはきわめて遺憾なことであると思いますが、それゆえに日本の国の特性というものが実は思うように、理論どおりに運営できなくなったということになってきました。
 すなわち、どういうことかと言えば、日本には、原材料は皆無の国と言っていい。石炭等を除くほとんどのすべての物資を日本は外国に買いに行かなければならない。しかも憲法によって相手を武力による恫喝とかあるいは資源の占領とかという手段をとり得ない国、とらない国という、平和な形の中で円満に妥結した原材料を手に入れて日本に持って帰ってきて、そして世界一の高いレベルの国民の頭脳が、技術がそれをみごとな付加価値をつけて世界各地に売っていく、これが日本のいわば一本道、生きるための近代国家として国家と国民が繁栄するための自転車道であると、私はそう思います。
 その自転車道を私たちがペダルを踏むのを怠ったら倒れるしかありません。倒れたらどうなる、われわれは先ほどおっしゃった一九三〇年代に帰ってもいいのかという、この戒めは過去に嫌というほど学んできた歴史を持つわけでありますから、それでなくて、やはりここで停滞を少しでも前進へ導かなければならぬという考えで、東京で四極のサミット、経済閣僚サミットもやってみました。あるいは各国の経済摩擦も、とにかく口では自由貿易を唱えながら個々では保護貿易を主張するのはおかしいではないかということで個々の国との対談も、すべて過去の貿易摩擦と言われて長かったものは全部一挙に解決したつもりでおりますが、しかし、それにしてもそのことがわが国にとって何になったのかということを考えると、結果はECに対するテレビにしても、あるいはアメリカに対する自動車にしても、やはり自由な世界経済であったならば、ガット体制の原点が揺るがなかったならば、日本経済はもっともっと大きく飛躍していい国際的なマーケットを、みずからが閉めるという仕事であったわけであります。そこにむなしさを感じざるを得ませんでした。
 しかしながら、そのような状態で政府みずからが前途に光明はありませんよという顔をいたしましたならばもう終わりであります。国民は必死に耐え、そして小企業を含めて企業もまた必死に減量経営に耐えながら未来を少なくとも模索しておる。そこに私たちは指針を与えてせめて通産省だけは明るい顔をして、そして中小企業の皆さんにも経済界の皆さんにも私たちの日本は大丈夫ですよという顔をしようではないかと誓い合ったわけでありますが、その私の願いがただいまの御質問のところに込められておるわけであります。
 しかし金がない。そして仕事を何かせいというこれほどむずかしいものはないですね。たとえば、中小企業投資促進税制というものも曲がりなりにつくりましたものの、これとても一千九百億円ぐらいの貢献はあると見ておりますが、しかし、財源を持たずして、当初原案であった、私たちが最初に提案していた方式、税額控除やあるいは建物、リース等を含んだものでいけば、大蔵財政の方に二千六百億余裕があればできるという、その余裕があるかという折衝をしたってとてもないわけですね。ですから、結局は皆様方に御提案申し上げているような内容にしかならなかった。その点はきわめて遺憾でありますが、そのような国家財政の中でやはり前進していかせるためには、中小企業の承継税制もそれをひとつの世がわりの手助け、私たちの手助けと受け取ってもらいたい。そして、経済運営については内需中心と言っておりますけれども、これもなかなかいま経済閣僚会議などをやっていますが、そう簡単に手品のように内需を生み出すことができるわけではない。
 アメリカを見ますと、住宅にしても、自動車にしても金利等が少し有利になるとその対前年同月比などという比較が、対前年度五%とか何とかというものじゃなくて、五〇%、一五〇%月ではね上がっていくだけのバネを持っている。アメリカの経済のやはりしっかりした基盤というものは、一たび有利な時期が来たら、対前年同月比をとっても五〇%はね上がるだけの基盤力を持っておるなということをうらやましいと思いましたが、日本人はそれにまさる技術、頭脳というものを持っているわけでありますから、私は日本の経済を、まず国内の内需という立場から振興して明るさを取り戻して、そしてこれはもう祈ってもいなかった、願ってもいなかった、頼んでもいなかった、努力もしなかった、努力しても道がなかった原油の値下がりというものがこれに私たちに強力な援軍になってくれることを期待して、内需中心の、そして開かれた経済を取り戻すための努力を通産省としては国民に向かって呼びかけ、またみずからその行動の先頭に立つということでございます。
#8
○金丸三郎君 景気対策に関連いたしましてもう一回お伺いいたします。
 政府として総合的な景気対策は月明けましてからお決めになるようなお考えで、よりよりと御研究あるいは御協議中のように承っておりますので、現段階では少し早いかもわかりませんが、一般的に言われておりますように、国も地方公共団体も大変な累積の債務を持っておりまして、いわば公共事業だけで景気を引っ張っていくということは困難であろう、このように考えます。先般来この委員会におきましても、とりあえず景気対策をやるべきであるから公共事業の前倒しを思い切ってやっていただきたい。政府も大体その方針のように伺いますけれども、追加予算がございませんければ、総体としての景気対策が前進ということには、私はやっぱりならないと思います。
 ところで、民間の設備投資の意欲が薄らいできておる関係から、特に大都市銀行とかそういうところの資金に余剰があると大分言われております。したがいまして、民間のそのような資金力を活用して、公共事業と申しましょうか、あるいは準公共事業と申しましょうか、まあその一つが都市開発と最近言われております。純粋の民間事業の形でいくのか、第三セクター方式でやった方がよろしいのか、これはあるいは通産省だけの事項ではないかもわかりませんけれども、大臣とされましてはそのような民間資金を活用した景気対策の進め方についてどのようにお考えになっていらっしゃいますのか。あるいは通産省としてどのような構想をお持ちなのかお伺いいたします。
#9
○国務大臣(山中貞則君) 大変ユニークな発想でございますし、それはできればそのようなものができた方がよろしいという道でありますが、通産省として通産省の行政の中で取り組むものが具体的にあるかといわれますと、いまのところは具体的な例はありませんし、これからあるとすれば検討をしていかなきゃならないかと思います。後、経企庁長官も参りましたら、日本経済全体の金融の問題、それから民間資金の活用の問題、さらにまたそれに、公共事業ばかりじゃなくて、全体的にそれがどのように利用される形態が発見できるのか、いろいろあると思います。そういうようなことで、私たちは政府のみがすべてをなすんだという考え方よりも、むしろ政府の方は借金のやりくりでもうどうにもならぬ、それで逆に銀行に御迷惑もかけているわけですね。預金量よりも国債を詰め込んでしまうようなことは、これは邪道でありますから、よその省の役所のことは余り言わないとして、そういうところでなおかつ民間余剰があるということであれば、それは私は民間の活力だと思うんですね。その活力をどこにどのような形で引き出すか。みずから動こうとする場合は当然民間プロパーでおやりになるでしょうが、しかしそうじゃなくて、もっと公の立場の入ったものとして、たとえば国鉄の四国全線を自分に払い下げれば三年間で黒字にしてみせるという豪傑もおるわけですから、そういうのを国の方がむしろそんな切り売りはいかぬというようながんじがらめで、じゃどうなるんだという先行きについてはお先真っ暗という国鉄を抱えている。そのような政府の部分的に硬直している状態というものをこの際解きほぐして、やっぱり民間の活力というものは大したものでありますから、そういうものを引き出していきながら、必要ならば官は後から後押しをする、そして民が先に立つ、そして地方公共団体等がそれに対して責任を持つとか、いろんな形があると思いますが、ただいまの御提案というものは、やはり今後の財源状態が厳しければ厳しいほど、日本経済が全体が取り組むべき力というものはほかにはないのか、財政一本なのかという問題に一つの試金石を投ぜられたものとして謹んで拝聴いたしておきます。
#10
○金丸三郎君 次に、「自由貿易主義の堅持」、それから「円滑な対外経済関係の構築」、これもまことにもっともで、私もこのとおりだと思います。
 私は、年来ひそかに疑問を持っておりますのは、世界各国がそれぞれの国独自のすばらしい競争力を持った生産設備を持つようになった。たとえば、造船で自由貿易やりますと、日本が世界じゅうを圧倒せん滅できると申していいかもわかりません。農産物であればアメリカが世界じゅうを圧倒できる。あるいは自動車あるいはテレビ、オートバイ、一つ一つ考えてみますとそのようなふうになってまいりました。それを自由に放任しておいたのではほかの国の企業がつぶれて失業が起こってまいります。これが世界じゅうの貿易摩擦の私は根本の原因になっておるというふうに考えておるのでございます。
 自由貿易でないというといけませんけれども、たとえば先般永野ミッションがソ連に行かれるときに官房長官が、政経不可分ですよというくぎを刺しておられる。私は実は世界じゅうも政経不可分になってきちゃっている、私はそういう基本の見方をしております。本当に自由な貿易があるのか、日本とアメリカとの間において本当に自由な商取引がどの分野で行われているか、日本とECとの間でどの分野で行われているか、日本と中国との間で本当に自由な貿易がどの程度行われているか、私は世界じゅうどうも自由貿易というたてまえを外すことはできませんけれども、じゃ、現実の世界各国間の貿易取引というものは本当に自由なのか、私はここに実は非常な疑問を持っておるのです。
 だから、今後の国際貿易というのは、政経不可分で、別の言葉で申しますと相手の国と自分の国が両々成り立っていくようないわば秩序ある貿易といいましょうか、相互が成り立つような、これも鉄を売ったら、じゃ、石油を買うとか、安いから鉄を売るんだ、買うんだというなら、いわば自由貿易です。そのかわり石油を買ってくださいとか、じゃ、自動車を輸出します、そのかわり農産物を買いなさいとか、そういうふうな取引に変わってきておる。私はこれが世界の実情じゃないかと思うんです。
 大臣は通産省の元締めとして自由貿易主義を堅持する、これは私は日本全体としても当然のことだろうと思いますけれども、ただいま申し上げました私の認識について大臣どういうお考えなのか。それから政経不可分と自由貿易との関係をどのようなふうにお考えはなっていらっしゃるのか、ちょっとこの点について大臣のお考えをひとつお伺いいたしたいと思います。
#11
○国務大臣(山中貞則君) 日本は自由貿易体制というものが破れたら、恐らく国民生活の後退ということをがまんしなければならないことになると思うんですが、しかし、その旗はおろせないわけですけれども、外国も日本に対して自由貿易主義を守ろうということは言うわけですよね。しかし、現実はおっしゃるとおり、それは言葉だけであって、行為を取り上げるとそれぞれが全部自分の都合のいい輸出対策、都合のいい輸入対策で垣根を張りめぐらしている。ちょうどけさの朝刊に出ていたんだと思いますが、アメリカの人たちに日本の車について聞いている。日本の車は一番いい車である、すばらしいというようなことを七〇%ぐらいの人が答えて、日本車に乗りたいとか、買いたいとかいう人が圧倒的に多いんですね。しかし、日本車の輸入をこれ以上ふやしていいかということになると、ノーという方が七三%なんです。ここに実は問題があるわけですね。乗りたい、乗ったらとても燃費効率がいい、安全性もアメリカ車ほどは安全性についてはないが、わりといいじゃないか、私は買いたい、乗っているという人たちが圧倒的にいながら――ニーズはあるんですね。しかし、今度は日本車が自由にもっとふえていいかというのには、ノーだという、そこに何があるんだろうか。それはやっぱりアメリカの国民感情にまでなってしまった、主として議会で激しいやりとりが行われる。というのは、日本人というのは商売相手として見た場合にはとてもずるい国である、あるいは国ごと官民挙げて輸出のために、金もうけのためには不公正なことをやっても平気だというようなふうに見ている。したがって、自分たちが小型自動車を、国民の要求が強くなってきた、ビッグスリーからアメリカン・モーターズなど含めて小型車をつくろうと思ったけれども、これは国民が燃費の関係で、石油ショックのあとの話ですから、どうも日本車がこの勢いでアメリカの消費者に買われていくと、いまから着手するアメリカの自動車メーカーは追いつかぬということで、二年間待ってくれぬか、ひょっとしたら三年目までかかるかもしれぬからというようなことで、自主規制を日本は余儀なくされていた。そして三年目になるとその継続の可否を含めて決定するということで、三年目はブロック代表に、じゃ三年目の継続の可否は可である、よろしい。そして台数は前年同台数であるということで通告して、四年目はやらないということになっているんだからやらないよということで、しかしありがとうという返事をして帰りましたのが、その理解とは反対に、われわれも精いっぱい、そうしてみずから輸出できるものを抑えてがまんをしている。ところが、一方議会においては、ローカルコンテント法とか、そういうようなもの等で、演説に立つアメリカの下院議員、上院議員などの言動というのははなはだ不穏当な言葉を使うようになりました。私はアメリカの議員諸君にも、あるいはかつての議員の先輩であったマンスフィールドさんにも、とにかく忠告をしました。もう少し言葉の使い方などは紳士らしい国に戻ったらどうですか。余りにも下品な言葉を、あなたたちアメリカの議員の連中も、通産省へあなたたち与野党来ているが、とにかく言葉をもう少しお互い友好国らしい言葉にしようじゃないかと、とにかくローカルコンテント法案上程の日は、かつて日本軍がわれわれを真珠湾でだまし討ちにした日であって、この法案はその報復であるというような演説をやってみたり、あるいは日本と交渉をする方法としてはおどしをかけ続けろ、日本はおどしていくうちに少しずつ下がっていく国であるとか、あるいは日本に物を売るためには、戦車を先頭に上陸して売り込まなきゃならぬとか、アメリカの上下両院と大統領府との関係は日本と違う、日本は議院内閣制であるにしても、しかしそれにしても言葉が進んでくると、ジャップとかヤンキーとかいう、まるで戦争でも始めているかのような言葉遣いになってしまうおそれがあるから、十分これに対しては、そういう法案を出すことについても、あるいはそういう対象を日本に定めているにしても、日本に対する非難、あるいはまた誹謗、そういうものを形容詞であっても、使っていくうちにやっぱり日本とアメリカとの間に芽生えてくるものは芳しいものではない。日本の世論調査でも、アメリカが一番好きだという人、そして今度はアメリカは頼りになる国という人、アメリカと仲よくすべきであるという人、こういう人の比率がどんどん減ってきている。アメリカの方もその傾向にあるとき、日本の悪口さえ言えば全部拍手大喝采という国になっていいのかどうか。日本が本当にそれだけアメリカにとっての憎い敵なのか、そのことを考えて物を言ってもらいたい。交渉もそのつもりで話をしてもらいたい。でないと、わが日本、小なりといえども一寸の虫にも五分の魂がある。そのことで日米がさや当てをすることは、だれが喜ぶんだろうか。喜ぶのは日米両国のどちらでもないということまで激しく言っておりますが、いまのところはいろんな問題で完全に新しい問題を出してくるものですから、懸案事項は解決いたしましたが、まだトラブルが残っておりますけれども、その背景にどうも対日国民感情というものを選挙民としておる政治家の方々、これらの人々との対話がもう少し私は足りないように思います。われわれは何と言ったつて肌は黄色い人種なんですから、向こうは白であることでどう思おうとそんなことは関係ないんであって、堂々と主張すべきを主張する。なぜそんな主張をするんだということなら、それを堂々と説明するという機会が、政治家レベルの交流がもっとあっていい。そして、閣僚レベルも、何とか会議ということに参加してはすぐ帰るということでなくて、その機会に閣僚の、他の閣僚もしくは閣僚の関係のある国会議員ですね、そういう人たちのところを訪ねて、あるいは食事でもともにしながら、呼んで意見交換をする必要があるのではないか。そういう意味で日本の経済外交にはいまひとつ相手方もよくないと思います。しかし、日本もそれを知っていて対応する努力がまだ不足していると思います。国会議員がそういう交渉も含めてもっと交流をすべきだ、お互いを知るべきだというふうに思っております。
#12
○金丸三郎君 対米関係について大臣が大変深い御認識で、また通産大臣としてきわめて適切な、重要な御発言をなさっていらっしゃることをお聞きいたしまして、私も実は大変安心いたしました。どうも日本でもアメリカの悪口を言えばいい、アメリカでも日本を非難、攻撃すれば受けると、そういう風潮があってどうも最近非常にぎくしゃくしておることを心配しておる方がいらっしゃいます。私は大臣にやっぱりできるだけ早くアメリカにもおいでになりまして、隔意のない意見の交換をなさいますことが、日本の今後の通産行政のみならず、国政全般の上からもきわめて大事ではなかろうかというふうな感じをいたしますが、日米関係について、非常に適切な御認識をお持ちであることを承知いたしまして、大変私も心強く思った次第でございます。
 次に、石油の問題に関連いたしまして、できるだけ簡潔にお伺いいたしたいと思いますが、エネルギーの政策を全般的に点検し直すというお考えを大臣はお持ちのようにお聞きしております。たとえば、代替エネルギーの開発の進め方、石油がこんなに安くなってきますというと代替エネルギーの開発のテンポがおくれるんじゃないかという心配をする向きがございます。それから石油の依存度を引き下げるスピードをどういうふうに考えるか。それから電気料金の体系のあり方、国民は短気――すぐに一ドル下がれば一千億石油会社は石油の買う金が少なくなるわけですから、五ドル下がれば五千億収益がふえるので、五千億分料金を下げたらいいじゃないかという考え方もございます。すぐに下げないで、もっと長期の視野で留保をさせるということも考えられるじゃないかと、これについてのお考え。それから第四は、エネルギー関係予算の財源の確保の方法、こういうことなどを含めてエネルギーの長期の需給の見通しの目標年次が昭和六十五年度でありましたのを、それを六十五年度にするか、いつにするか、目標年度の変更も含めて全面的に改定をして八月ぐらいをめどに中間報告を受けるようにしたいと、こういうような報道を見たのでございますけれども、私は非常に、ちょうど適切な検討の時期ではなかろうかと、こういうふうに感じます。今度の石油の問題が起こりましてから世界経済に対する影響、日本経済に対する影響いろいろともうたびたび御質問もございましたようですから、重ねてはお伺いはいたしませんけれども、できますならば簡潔にそういう点も含めて今後のエネルギー政策をどのようなふうに考えておいでになりますか。国民の立場から申しますと、電気料金を下げてもらいたいとか、ガソリンスタンドの石油はどうなるんだろうかというのが国民一般のこれは偽らない気持ちでございます。そういうことも念頭に置いていただいてエネルギー政策全般について、こういう方向にいくべきじゃないかという大臣の御所信が承れるものならば、現時点のお考えで結構でございます。お伺いいたします。
#13
○国務大臣(山中貞則君) わが国のエネルギーの石油に関する依存度は九九・八という全く信じられないほどの依存度であり、まあその限りにおいて無資源国に等しいわけですが、それが天の恵みによってとしか考えられない、しかし、経済の原則からいくとOPECの立場における圧倒的なシェアを持った人たちの世界戦略というものがカルテルを結成することを成功させたんでしょうが、その依存度もその後の新しい油田とか、その他によって五〇%を割り込んでおりますし、力が第一少し弱まってきた。それに需給の原則によって、消費国の当然ながら消費の手控えとか代替エネとか、いろんなことを含めて需要が減退してきたということで、結局は自分たちにブーメラン効果が戻ってきたということを悟った。あるいは悟っているのかどうかわかりませんが、悟らざるを得ない現象に立ち至っていると思うんですね。ただ、その際私たちは、その受けとめ方ですが、これで手の舞い足の踏む所を知らずという受けとめ方はまずしない。それはついこの間まで二ドルだった。が、そのときに日本人は高度成長期にあって、幾らでも、そして安くて手に入るものだと思う、その走り続けていた出ばなを、相手国にすれば当然のことですが、有限の資源だとわかった瞬間に、少し売って寿命を延ばして高くすれば入ってくる金は同じじゃないかというあたりまえの戦略でしょう。それに日本人はびっくり仰天して、トイレットペーパーの買い占めまで起こったという、そういうことを考えますと、二度目のときには後頭部に食らわされたような重みのある第二撃の値上げでしたから、これはまだ私たちは経済的に乗り切れないでいたということを考えると、ここに立ち直りのきっかけをもらったという意味では、これは本当に干天の慈雨よりも天の恵みでしょうね。そういう気持ちで受けとめますが、その受けとめたものは三十四ドルから下がったぞという意味じゃなくて、二ドルであったものが三十四ドルになっていたけれども、それが二十九ドルということになったようだ。まだ現物は向こうにあって、だれも買ってないわけですからね。これから日本に運んできて、高いいままであったコストの油と逐次まぜながら、値段も下げながら、最終的に向こうの売り値の下がった分だけ下がった石油が日本で供給され始めて、国民経済全体に浸透していくというのには、最低六カ月というものは予測しておかなければいかぬでしょう。そうすると、その間にやっぱり、冒頭におっしゃいました世の中真っ暗やみだとみんなが考えて、そのときに一条の光明を見出したいと思っても財政上はなかなかできなかった。ところが、これがよそのおかげで、日本だけじゃない、諸外国全部それは恩恵をこうむるわけでしょうが、しかしそれにしても日本は、アメリカでも言うとおり、この恩恵を一番受けるのは日本だろうと言ってますね。この恩恵を一番受けるだろうと外国は見ている日本、この恩恵をさすがにみごとな受けとめ方をしたといわれる計画を私は産業計画、国民生活、こういうものの上に均てんしたい、そう願っております。そのためにはエネルギーの長期需給計画の見通しも改定する必要がありましょうが、しかし改定はしないつもりで、財源対策だけを考えているのがいまの石油税をもとにした代替エネルギー計画、こういうものは再びカルテルを復活したときにまた上がったのとと言っても、また周章ろうばいするような国策じゃとてもいけませんので、したがってここのところは、石油税が若干価格に――従価税でございますから、影響はありますけれども、これはことしの予算の執行には影響はございませんが、来年からどうするかについては大蔵省と話してみたいと思っております。これは大蔵省の、一応貯金がしてございますので、利子までつけろとは言いませんが、その貯金をどうするかという議論にまずなるわけでありますけれども、しかし代替エネの方向というものは新エネ、省エネも含めてわれわれは依然として緩めてはならぬ。それはなぜならば、有限の物質であることに石油は変わりがないからです、ということであります。
 それから、直接のお尋ねではありませんが、毎年度定める石油供給計画、これもやはり見直さなければならない、計画を変えなきゃなりませんが、その計画も毎年のように年度を見通すのはきわめてむずかしいのではなかろうか。先ほど申しましたとおり、いろんな計算で違いましょうが、六カ月後ぐらいに国民の生活の上にそれがあらわれてくるということになるでありましょうから、今回は年度限りの供給計画は半年ぐらいの見通し程度のものの上に乗っかって、慎重に渡っていった方がいいんじゃないか、そういうふうに考えております。
 そのような計画を持ちながら、何年度で終わらせるか、その長期見通しの時期の点等については、これはそう大して大きな問題ではなくて、むしろ今回の原油値下げがどれくらい続くのか、あるいはまたこれからもっと下がるかもしれませんし、あるいはまた機能回復して上げるかもしれませんが、その続く見通しをどう見通せるかというのが非常に重要な問題だと思います。
 アメリカあたりは、CIAがやっていますのか何なのか知りませんが、非常に別な情報を持っているようですね。ある国には武器援助をしたりいろいろしている、加勢をしたりしているでしょうから。そういうところの情報というものは日本よりきわめて豊富に持っていると思います。日本の方は、情報に関する限り、どうもただいただいて買っている、たくさん買ってくれている国とは相手も思ってはいるでしょうが、何かに役立つ国とは思ってない。
 江崎さんが最初中東に行ったときに、ある国で、油は日本に対して承知しましたと、そのかわり七四式戦車を売ってくれませんかと言われて、江崎さんは防衛庁長官の経験者でしたから、いやちょっと日本では売れないんですと言ったらけげんな顔をしたというんですね。はるばる来て、自分たちに石油を売ってください、よろしい、私たちはあなたの国の七四式戦車が欲しいんだがどうだと言ったら、売れませんと言った。アラビアの商人の教典には載ってない返事なんですね。そこを江崎さん、長官経験者というので、巧みに説明はしたんでしょうが、どうしてもわからなかったそうであります。そのような立場における日本はやっぱり結果を待って対応するしかない、大胆な、結論から言えば。しかし努力はしなきゃならぬ、そう思いますが、そういうことで、今後とも幾らぐらい続くのかによって、電力料金とか、ガス料金とか、そういう問題も含めながら、私は一番大切なことは、日本の産業が再び一条の光を目指して、さあ行こうと、国民全部がじゃ腰を上げようという気持ちにするような政策その他が展開できれば、もちろん電気料金も国民生活に密接な関係がありますし、ガス料金もそうですが、これは一つのファクターとして考えますけれども、全体をうまく日本経済が活用した、そういう形に持っていくのがいいんだろう、そう考えております。
 それから、もう一つ何でしたか。
#14
○金丸三郎君 いやもう結構です。
#15
○国務大臣(山中貞則君) そうですか。
#16
○金丸三郎君 時間もだんだんと迫ってまいりますので簡潔にお伺いいたしますが、一つは石油の備蓄、国家備蓄の計画の三千万キロリットルはお変えになるお考えがないのかどうか、これが一つでございます。
 それから、大臣よく御承知のように、鹿児島県の志布志湾に国家石油備蓄の計画を数年来進めているわけでございます。いま御承知のように、環境庁でアセスメントの関係から鹿児島県の方といろいろ協議中のように聞いております。通産省として、志布志の国家備蓄の計画について、どのようにお考えになっておいでになるのか、あわせてお伺いいたします。
#17
○国務大臣(山中貞則君) 国家備蓄三千万キロリットルを計画を変えるつもりはございません。自民党の方には五千万キロリットルの意見もございますけれども、まだ正式に私ども政府と話し合いをしてそこまでいっているわけではございません。一時的な石油の需給の緩みの現象によって備蓄の、しかも国家備蓄を怠る、少なくするということは全く愚かなることである。やはり私たちは、第一次オイルショックを受けたときの西ドイツ、シュミットが首相でしたが、翌日すぐに全くゼロであった国家備蓄を、一千万キロリットルを国会に出して、即日可決してもらいました。アメリカではまた、アラスカの北部に海軍所有の油田があることはわかっている。しかし、それを西海岸に持ってくるのにはアラスカの湿原に、ツンドラ地帯に入る湿原に影響を与えるという環境保護論者の国会議員たちや、その国民の声によってずっと着手を延期してやっていなかった。それをわずか二日間の国会審議でもって一本のみならず二本通してよろしいということをアメリカの議会は決定しました。このような過去の政治の決断というものを見ますと、日本のような国こそ決断をしなければならないんだと。その決断はいいかげんなものであってはならないんだ。政治的な問題でもあるし。アメリカはほかに戦略備蓄みたいなもので岩塩の大きな穴を掘ってためておりますが、日本は戦略備蓄というようなものまではいかない。ただ民需中心の、民需あるいは国民経済への対応としての備蓄でありますから、やはり三千万キロリットルというものは変えないでいくべきである。また、こういうことですぐに変えたりする国は、それこそ見通しを持たないで、その都度場当たり政治をやっておる国で、生き延びていけないことになる、そういうふうに考えます。
 それから志布志の問題については、これは国家備蓄は決定しておりますし、ただ、その立地するに当たっての事前の環境影響評価等について、環境庁側の方の御意見をいま鹿児島県が承っておるという話でありますが、公団の国家備蓄をやるわけでありますから、公団としてはそれが実現する場合のコストとかその他考えながら計算をしていくわけでありまして、予定どおりの進捗状況にあると考えております。
#18
○金丸三郎君 大臣の郷里でもございまして、大変熱いまなざしで期待をして見ておりますので、これはひとつよくお考えをいただくようにお願いを申し上げておきます。
 次に、第四の技術立国の関係、第五の中小企業の関係、それから第六の地域経済社会の形成の関係に関連いたしまして、テクノポリスについての大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
 私は、十二月の党の税制調査会におきましても、ため息ばかり聞くような日本の全国の様子の中で、テクノポリスぐらいが唯一の新しい希望を持たせる政策じゃなかろうかと、それにはやはりある程度の減税もやるべきではないかと、こういう主張を強くした者の一人でございます。その後伺いますというと、十九カ所全部合格させるというんでは、怠けて勉強せぬ地域が出てきたようだから、全部が全部合格させるとは言わぬよと、こういうようなお考えのようにも聞いておりますけれども、テクノポリスの今後の各地域の準備の進め方だと思いますけれども、およそ何カ所ぐらい御指定になるお考えなのか、どういう点に力点を置こうというお考えなのか、あるいは十九カ所それぞれもう独自の計画で持ってこざるを得ないと、全くの地域の自主性にまつと、通産省なり相談に来るところがあればそれに乗ってそれぞれの計画を立てさせたらよろしいと、こういうふうにお考えなのかということと、それから、もうきわめて時間もございませんから簡潔で結構ございます、日本の中小企業の対策として、まあ大臣が一番大事と思っておられる点をお示し願えれば大変ありがたいと思います。
#19
○国務大臣(山中貞則君) 時間も余り、私の方がひとりしゃべりをしちゃいけませんから、なるべく短かく言いますが、まずテクノポリスについては、そういう着目をした原点は何かと。それは国が誘導も、助成も何にもしていないのに、飛行場がたまたまへんぴなところにこのごろ――典型的に言えば大分県の国東半島の出先にあって、別府、大分に行くのに一時間、一時間半って、どうしてこんなところに飛行場をと思ったものでありますが、それは裏返しになると、その周辺はイグサで有名なぐらいのところでありますから、土地がそう高くない。そこで先端産業がばばばあっとこう出ていったんですね。そうすると、そういう現象が全国を見渡すとあちこちにある。これは結果論であって、結果そうなったけれども、これを放置する手はないじゃないか、地域の経済の活用にこれは資しない手はない。やはりもうちょっと工場から飛行場へ行って、飛行場から成田経由外国へか、工場から本社工場のある飛行場へかという、単に時間節約、そして比較的入手しやすい労働力、清浄な空気等がまだ多い地域、そういうような環境で自然に成り立ったもの、これをほうっておく必要はなくて、行政の上でこの結果をつかまえて、そしてその地方においてその技術をその地方にも拡散させ、あるいはその技術の波及効果が地方の中小企業にも及び、あるいは居住、学問、そういうものまでセットされたものができれば、これはすばらしい日本列島になるんじゃないかというのがこの発足の原点でありますから、このアイデア、着想は大変よろしいと思うんです。
 いざやってみますと、都道府県知事さんの方は、とにかくこの機会に基盤整備というような言葉でしょうが、道路、住宅、こういうようなものをセットでやってほしい。うちの役所の方もそういうつもりでやっているわけでありますが、しかし、それをどうしても入れてくれろという、それは何だと、それは地域を思う知事の心であるかもしれませんが、地方自治体の、都道府県の長というものが甘えの構図がある。この法律に乗っかってあわよくばレイアウトをうまくやろうと、うまくいった方がいいんですが――、本当の原点に戻って、国がそういう基盤整備などをしたから来たのか、そうではないわけですから、そうすると新産都市とも違う。甘えの構図が地方にあるんならそれは切り捨てろというので、道路と住宅を切り捨てろと命令したんですが、ところがどうしてもそれがないと理想的な設計書が書けないというようなことで、じゃ、通産省だけでやるんじゃなくて、建設省も国土庁も、それから――まあ経企庁なんか比較的これさばさばしておりますが、色男金と力はなかりけりというところでしょう。自治省、地方税に関係があると言う。地方自治に関係があると言う。農林省、農地転用をどうするのかとか、全部共管、共管、共管で、ほうっておくと経企庁を除く全部の官庁が共管になりたいと言い出している。こういうことなら法律つくるのはやめようかとまでいま思っているんです。もうここ二、三日うちの決断ですが、しかしその前に仮にやるとしても、そのようなことを私まだ踏まえる前でしたから、せっかく十九の地域が適正だとして手を挙げておられるので、最終的には何年かかるかは別にして十九地域に指定をしたいと思っていると言ったところが、その甘えの構図が直ちに出てきて、ああそうか、じゃ初年度に指定されぬでも、悪くて二年目、三年目にはいくわなという自治体の反応がはっきりわかりました。そこで私としてはこれはやっぱり甘えを許すもとを自分がつくったんだと思いましたので、事務当局にも意見はいろいろありましたけれども、十九指定はしない、そして厳正な、私がいま言ったような問題等については厳しい査定を加えるということで、いま、初年度何カ所で、全体的にあと何年度で何カ所というところまでまだ私自身が詰めておりませんから、その答弁はきょうはできません。
#20
○金丸三郎君 最後に大島つむぎの問題についてお伺いいたします。時間もなくなってまいりましたので、個条的に御質問をいたしますが、実は大臣に申し上げておきたいと思いますのは、参議院の商工委員会で数年前にこの問題について論議をしたことがございます。実はそれまでは、率直に申しますと、通産省では課長クラスの段階の扱いになっておりまして、上の方まで大島つむぎの切実な問題が私は通産省にはわかっていなかったと思います。五十五年の大島つむぎの生産量が七十一万反、五十六年が六十九万七千反、五十七年が六十一万八千反でございます。五十六年の六十九万七千反、これは鹿児島と大島と合わせてです。金額に直しまして四百七十一億円です。で、韓国の大島つむぎは、協定上は三万六千五百反日本に持ってこれるということになっておりますけれども、先染め絹織物、それからかすり、こういうものが二十一万三千九百反、これは大蔵省の通関の統計でわかっております。奄美大島の業者の人々は、約二十一万四千反のうち約二十万反が大島つむぎだと見ております。これについては通産省に異論があるかもわかりません。仮に二十万反といたしますと、六十九万七千反、五十六年ですね、まあ七十万反として、七十万反プラス二十万反、九十万反が大島つむぎとして売れているという勘定になります。大ざっぱに言いまして、大島つむぎの約二五%程度が韓国から日本に入っておる。二十万反もし入らないとしますと、鹿児島と大島で約九十万反の大島つむぎが生産できると、こういう理屈になるわけでございます。だから奄美大島は――大臣が奄美大島について最も愛情のある私は国会議員だと思っています。その奄美は、御承知のように、大島つむぎとサトウキビが主たる収入であります。観光もめっきり落ち込んできました。その四分の一に相当する大島つむぎが韓国から輸入されておるわけです。これはもともとは大島の業者に非があります。これは地元も深く反省しております。これも大臣御承知のとおりです。まあ通産省の方で一生懸命努力をしてもらいましてその厳守方を要望なさったり、私も担当官に要望して、韓国産の大島つむぎであるのに本場大島つむぎという織り込みなんかをやっておった事実も大臣はよく御承知のとおりです。私はやっぱりそれが韓国の国内法にも違反することがはっきりわかってまいりましたから、私はそれに対する韓国政府当局の厳重な取り締まりを通産省から要望してもらわぬといかぬと。どうもそういう点少し通産省は遠慮が過ぎるんじゃないかと、私はそういう感じがするくらいでございます。
 昨年の八月、衆議院の商工委員会の流通問題小委員会におきまして、鹿児島から業者の方も参考人として呼ばれ、各党の委員の方が本当に熱心な御質問をしていただきまして、相当程度認識が私は深く広がってまいったように思います。その際、地元の要望として、特別ビザを発行することを韓国政府に要望できないかということ。それから、二十万反ぐらいの大島つむぎの輸入があると業者は見ておるわけであります。通産省はそれは確認ができないということでございますので、昨年の八月、業者の輸入の自粛について文書指導をするという答えがあるわけでございます。実際に文書指導しておられるようでございますから、その内容と、それから効果、今後さらにそれをどのようなふうにしておいでになるか、その点についてお伺いをしたいと思います。
 それから、現在は二反の大島つむぎの持ち込みが認められております。これを全然認めないというわけにいかないのか。酒とかたばこはある程度持ち込めます。そのほかに無税で持ち込むのを認められるという物が一体どういう物があるのかでございますね。とにかく奄美としては四分の一ぐらいのものが持ち込まれてきておる。最近は以前のようにはございません。相当業者も自粛してはおいででございますけれども、そういうような現実の不景気の対応策から、地元としては、できるならおみやげ品も一反ももう認めてもらわないようにできないものだろうかと、こういう要望も強いわけでございます。具体的なお答えは担当官で結構でございます。大島つむぎ全体について通産省としてどういうような姿勢で臨んでいただけるか、奄美に大変御理解の深い大臣の温かいひとつ御見解を伺いたいと、このように思います。
#21
○政府委員(黒田真君) 先生御指摘のように、韓国から輸入されております先染めのかすり用の物が約二十万反を超える数量が入っておることは事実でございます。しからばそれが本場大島つむぎ類似品であるかということになりますと、いろいろな調査はございますが、残念ながら確認はされておりません。
 他方、韓国との間では、絹織物全体の数量の取り決めを行っておりますが、その内数として三万六千五百反に韓国産大島つむぎは限るという約束がここ数年行われておることも御指摘のとおりでございます。なかなかこれを確認するための方法として、先ほど御指摘ありました特別ビザ等が発給できないかということは、ここ数年来いろいろ検討しておるところでございますが、どうもなかなか技術的に、本場型の物であるか、あるいはその他のかすり物であるかということを行政ベースで確認するだけのはっきりした技術的裏づけが得られないということで、今日までその特別ビザというものの発給につきまして成案を得るに至っていないというのが状況でございます。しかし、韓国側もいろいろ協力をしてもらっているわけでございまして、たとえば不正表示の問題につきましては、従来いろいろ議論ございましたが、最近になりまして、たとえば畳み方を、反物で巻きつけてくると逆の端っこに事によると本場大島つむぎというような不正の表示があるかもしれないということで、平畳みと言うんでしょうか、両端が見えるような形で畳んだらどうだろうかというようなことを実行してもらうなど、韓国側の協力も得ながら実施をしておるところでございます。
 それから行政指導をどうしたかという点でございますが、昨年の八月、従来から私ども関係業者に対しては、慎重な取引に努めるよう要望を行ってきておるところでございますが、昨年の八月にも重ねて主要な取引業者に対しまして、日韓両国政府間において韓国産大島つむぎについては輸入限度数量が設定されているということなんだから、各社その取引数量を十分そういう前提のもとで考慮して慎重に取り扱ってほしいということを文書で要望をしておるところでございます。今後ともその文書による要請がどういうふうに実施されるかというような点については、随時調査をしながら確認をしていきたいというふうに考えております。
 それから持ち込みの問題でございますが、これも御承知と思いますが、歴史的には、かつては十反ぐらいまでいいじゃないかというような時期もあったわけでありますが、つむぎツアーが組織されるというようなことで大変大量に持ち込まれてくるという事態が明らかになりましたので、五十三年九月からはこれを三反にし、さらに五十六年二月からは二反というところに縮減をしたことは御承知のとおりでございます。私ども理解しておりますところによりますと、二反ということになってから大量に組織して持ち込む、それを商業ルートに乗せるために持ち込むというような形態は余り聞いておらないわけでございまして、それなりにこの規制の強化ができたのではないだろうかというふうに考えております。
 ただ、おみやげとして一切認めないというようなことができるかどうか、これはまたなかなか厄介な点ではないかというふうに考えられるわけでございます。
#22
○国務大臣(山中貞則君) ただいま御説明いたしました内容はよく金丸委員は御承知の上でなおその効果は上がっていないという御指摘だと思うんですね。
 これは最初のきっかけは、実は韓国でセマウル運動という農村振興計画をつくるときに、韓国はこれからはもう養蚕は見切りつけようということで、桑はその対象から外して計画をつくっていたときに、日本の関係者が行って、ぜひおつくりになりませんか、そして資本も出します、技術も教えます、そして日本に輸入も自由ですからというようなことで、韓国政府としては政府としての計画の中に養蚕の振興というのをのせたやに聞いておりますが、しかしその後、韓国産大島つむぎの飛躍的な輸入増に対処して国内生産者が当然ながら問題だということで騒ぎ出し、それに生存権を握られておる人たちにとってはなおさらのことでありますが、そうなりますと輸入阻止決起大会なんというのに、向こうに行って技術を教えた人も鉢巻きをして一緒に反対を叫んでいるような、私から見ると珍無類な情景が最初あったわけでありますが、最近は公正取引委員会の方も乗り出してくれまして、そういう不当表示というようなものによって本物でないものを、韓国産でありながら国産の本場大島つむぎのように見せかけた行為は摘発もいたしております。そういうことも相まって、若干それが日本人側の手助けによる共同行為というものはなくなってきたと思います。
 しかし、一方、一たん技術を覚えてしまいますと、もともとふだん着ではありますが、ちょっと外出にも着れるような亀甲型等までは韓国は自分で織れるようになった。そうすると、最初はいま折り畳み式にしたと言いますが、それは韓国産大島つむぎであることを隠すために本場大島つむぎを刷り込んであったり、あるいは糸が縦糸だけ長く残してあって横糸で日本でちょっと加工すると本場大島つむぎの字が組めるというふうにしてあったり、いろんな知恵があった。くぐる知恵を出していたようでありますが、ところが最近は韓国産大島つむぎとはっきり表示してあってもそちらの方を買う人がふえたし、そして韓国産大島つむぎフェアなんという即売展示会まで開けるようになったということは、いろいろな理由はありましょうが、大島つむぎは庶民の着物であったものが、価格が余りにも高くなって、もう韓国産であってもいい、手ざわりも模様もほとんど変わりないんじゃないかということでそちらの方を買う人がふえてきたという、国内的ないわゆる価格の問題もあり得ると思います。でありますから、いまさら関税でこれをどうこう措置しようとしても、一〇〇%関税をかけてもなおまだ国内産が高いというような現状でありますから、これはどうしてもやっぱり韓国側の方と日本側との約束事を守っていただくというようなことで、旅行者の持ち帰りの二反をゼロにしたらどうかということになりますと輸入禁止ということになりますから、持ち込みであっても。それは余り自由化された品目で――余りというよりも全然例はないんじゃないか、そう思いますんで、本当にそうできるかどうか、関税局等とも大蔵省等とも相談をしなければなりませんが、その問題も検討もいたしてみましょうし、また実際上にはどのようなルートでやればそのように両国の申し合わせをくぐって日本に渡ってこれるのか、これはフェリーの問題もありましょうが、飛行機もある。そのような取引をやっている業者について、通産省が所管できる、所管しております範囲内で、両国で取り交わした約束を守れとか、それを守らない場合にはきちんとそれに対して今後認めないとか、その商社は許さないとか、いろんな、商社法というのがありませんので大変困っておりますが、そういうようなもの等を念頭に置きながら厳しい取り締まりをしたい。
 しかも、韓国の人は一反もだれもそれを着ないわけですからね、もっぱら世界じゅうで日本人のみが着る物を、日本を唯一のマーケットとして売る。これは一つの商売から言えば戦術として成り立ち得ますが、それを標的にされた国の特定の地域の生産者はたまったものではないということがありますから、金丸先生の御指摘の点は長年の問題でなおかつ解決していない問題、それだけに大変むずかしい問題ということでありますが、しかし両国政府間においては話し合いは曲がりなりにもついているわけでありますから、それ以外にはみ出す分について、新しく私の方で調査を命じ、その結果について措置を講じたいと思います。
#23
○金丸三郎君 ありがとうございました。終わります。
#24
○吉田正雄君 去る三月十九日の予算委員会一般質疑におきまして、石油備蓄についてお尋ねをいたしましたが、時間が非常に限られておったことや、それから御回答いただいた数字の中では必ずしも明確な点がなかったということでありますので、これから引き続いてお尋ねをいたします。
 そこで、大臣、私がきょういろいろお尋ねを申し上げますのは、中曽根内閣の基本的な政治姿勢、政策でありますところの行政改革、それから増税なき財政再建、こういうものが本当に円滑に実現できるのかどうか、こういう基本的な観点を踏まえて御質問を申し上げたいと思うんです。
 また、大臣も私が当初に要望いたしましたように、十分検討すべき課題については誠意を持って検討したいというふうにもおっしゃっておるわけです。そういう点で、きょうはひとつ大臣もゆっくりお聞きを願いまして、今後また改善に向けて御検討いただけるということでありますならば、それはぜひそういうことで取り組んでいただきたいということを当初に要望申し上げる次第です。
 そこで、時間もありませんので、私の方でもできるだけ簡潔にお尋ねをいたしますけれども、答弁の方も、きのうも大体質問の要綱については申し上げておりますから、ひとつ簡潔にお答えを願いたいと思います。
 そこで、御承知の五十三年十月に総合エネルギー調査会の石油部会の答申というものが出されておるんですが、ここでは「今後の石油政策の方向」についてということが述べてありますけれども、この答申を尊重されると思うんですが、その点いかがでしょうか。
#25
○政府委員(豊島格君) 五十三年十月の総合エネルギー調査会の答申は、今後も尊重していくという考えに変わりはありません。
#26
○吉田正雄君 その答申では、「公団による備蓄を長期的には三千万キロリットルを目標としつつ、今後備蓄のあり方を規定する諸条件の変化に照応しながら対処していくこととし、当面立地候補地点の状況等を勘案して、現行の一千万キロリットルを二千万キロリットルに拡大することとし、」こういうふうになっているわけですね。したがって公団備蓄の量については二千万キロリットルまでは明確になっているわけですけれども、長期的な三千万キロリットルというものについては「諸条件の変化に照応しながら対処していくこと」ということになっておるわけですね。つまり固定したものではないわけです。そこで諸条件をどのように考えておいでになるのかということをまず当初お聞きしたいと思うんです。
#27
○政府委員(豊島格君) 三千万キロを目標としつつ、諸条件の変化ということでございますが、これを打ち立てるときにはエネルギーの供給構造の脆弱性の問題、あるいは諸外国の備蓄状況の問題、あるいは内外の石油需給の問題、あるいはタンクの建設のためのリードタイムの問題等々を考えてやったわけでございますが、そういう諸条件ごとにとりあえず直ちに着手しなければならないということで二千万を出したということですが、いま申し上げました三千万キロを目標とするという場合における諸条件については大きな変化はないというふうに私どもは考えております。
#28
○吉田正雄君 諸条件の中心的なものとしては、私としては石油需要に見合った安定的な確保、供給というものがやっぱり中心的な課題だと思うんですね。これを満たすのかどうかということで条件というのがいろいろあると思うんですね。そういう点で考えますと、石油の需給状況というのが大幅に緩和しているということは、これはお認めになるでしょう。
#29
○政府委員(豊島格君) 石油需給状況そのものは緩和しているということは、先生御指摘のとおりでございます。
 ただ、石油需給状況が緩和しているから備蓄は要らないのかということとの関連について申し上げますと、いわゆる備蓄をする目的は、緊急時における対策ということで、何らかの政治的あるいはいろいろな問題で石油の輸入が途絶するというときにどう対応するかというそういうものでございまして、現在、需給が緩和しているということと直接むしろ関係はないんじゃないかと。むしろ逆にそこまで言うことが正しいかどうかわかりません。
#30
○吉田正雄君 いいですよ、聞いたことだけ答弁してください。
 したがって、いまおっしゃったように、備蓄量がどうあるべきかということになってまいりますと、適正な備蓄量ということになると思うんです。しからば適正というのは何かというと、これは国際的には定義はないと思うんですね。そこで、通産省でも従来はIEAの平均備蓄日数ということが一定の基準、目標ということでやっておいでになったことは間違いがございませんですね。
 そこで、この前私は質問したときに、ただ多ければいいということにはならぬわけですね。なぜかと申しますというと、この備蓄タンクの建設資金であるとか、あるいは油購入代金、あるいはそれらの利子、あるいは利用量というものを考えますと、これは莫大なものになるわけですね。これは後で大臣もゆっくり聞いていただきたいと思うんですが、大変な額になるわけですよ。
 そこで、私は平均という意味も、無限大になる国もあるわけですね、計算のやり方によりましては。だから、そういう特殊なアメリカだとか、カナダだとか、イギリス等の三つの国を除いた国の平均というものがむしろ妥当な平均になるんではないかということと、もう一つは、このデーズFCという、そういうものが一番適正なといいますか、大臣がおっしゃるようなエネルギー安保とか、経済安保という目安としては、この方の日数というものがむしろ妥当ではないか、こういうことをこの前申し上げたわけですけれども、これについてはOECDの資料でも、手元にありますけれども、このFCについての日数もずっと書いてあるわけですよ。それから、いまの特異の三つの国を除いた平均日数については、日本というものはむしろ平均程度には達しておるということですし、絶対量はアメリカに次いで第二位なんですね。これはもう御承知のとおりだと思うんですが、いま言ったデーズFCという考え方、これについては妥当だというふうにはお思いになりませんか。
#31
○政府委員(豊島格君) 備蓄をなぜやるかということはたびたび申し上げておりますんですが、いわゆる供給が削減されると。しかもそれは外的なものが一番大きいわけでございまして、したがって、自給率が非常に高い国、たとえばアメリカのように五割以上自給している国と、それから日本のように一〇〇%輸入している国で一体緊急時どこが問題かといいますと、国内の生産というのは若干災害とか何かで落ちることもあるかもわかりませんけれども、このIEAができ、IEAで考えた備蓄制度というのをみんなでやろうと、これは緊急輸入システムと絡んでいるわけでございますが、そういうことから言いますと、やはり輸入量を前提とした備蓄ということが、この安定供給といいますか、緊急事態に備えるための数字として妥当である、むしろ消費、たとえば極端に言えば全部自国で生産をしておるような国というものについて同じような考え方を適用するということにはならない。そういうことで私どもデーズ・オブ・フォーワード・コンサンプションといいますか、DFCという先生の御指摘のものを考えることは私は適当じゃないんじゃないか。ただ、IEAでも参考までにそういうことを出しているということは一つの考え方であるということは私どもわかりますが、しかしその場合、これを基準として緊急事態に備える標準と考えるのはどうだろうか。
 それから、先生御指摘のアメリカとかイギリスとか、そういう非常に高いといいますか、自給率が高くあるいは輸出しているような国まで含めて平均で議論するのはちょっと行き過ぎじゃないか、こういう御指摘、これは私もごもっともな点があると思いまして、アメリカのように二百何日もやるという必要はないかもわかりません。ただ、一つだけ申し上げたいのは、そういう国を除いてもいろいろ計算しようがあると思いますが、西欧諸国の方が高いわけで、たとえばドイツなんかは……
#32
○吉田正雄君 もういいですよ、わかりました。
 いまの長官の答弁でまいりますと、いわゆるIEAが言っている備蓄日数、これはいま言った特別の三国を除いてとおっしゃってますね。特別の三国を除きますと、去年の七月現在のものでは日本が百二日、それから平均というのは百七日なんですね。変わってないんですよ、ほとんど。それ以上に私が言ったデーズFCというのは、大臣ね、輸入が完全にとだえたときに一体幾日持つかという数字なんですよ。だから、この数字から言うと、日本の場合には非常に大きくなりまして、全体の二十一カ国の平均が百七日であるのに対して、日本は百十日もあるんですよ。そういうことですから、あなたは単純な平均日数の方がむしろいいんじゃないかと――とはおっしゃいませんが、デーズFCも一つの考え方だとおっしゃいますが、デーズFCの方が、経済安全保障なりエネルギー安保という観点から考えた場合には、こちらの方がより大きな意味を持ってきているんですよ、輸入が完全にとだえた場合に何日持つかということなんですからね。
 そういう点で、もうちょっとその辺――いやいや、いいです、これでまた時間とってますとあれですから、日数どちらにしてもそんな大して差はないことは確かなんですよね、平均と比べた場合。これは時間ないですから、また資料等皆さんの数字と合わなかったら、これは後でまた検討することにしまして、もうちょっとその辺を検討していただきたいということなんですよ。
 そこで、そうなりますと、私は三千万キロリットルというのは、いままだ千二百五十万キロリットルですよ。当面は二千万キロリットルを直ちに備蓄をしていくんだということで、まだ三千万キロリットルについては、いま言った諸条件ですよね、その諸条件という基礎的な考え方が必ずしもそういうふうに明確になってないし、この数字、IEAの平均基準日数が絶対だというものも納得がいく、説得力のある基準ではないわけですから、そういう点でいまここでいいか悪いか論議をやっても時間ばっかりかかりますから次に移りまして、そこで民間タンクの余裕備蓄量についてお尋ねをいたしますが、五十八年度の基準備蓄量と融資指示数量についてこの前聞いたときと通産省が各社に指示されたのでは、数字が若干違っているようなんでしてね、幾らになっておりますか。――時間がかかりますから皆さん方の方が各石油精製会社等に通知をされたのは基準備蓄量が約四千八百七十三万五千キロリットル、それから融資指示数量が五千二百五十六万キロリットル、これ間違いないでしょう。
#33
○政府委員(松尾邦彦君) 五十八年度の数量につきましては、若干差はございますが五千八十八万キロリットルでございます。
#34
○吉田正雄君 そうすると、ここに書いてある、これは日刊の燃料油脂新聞というここで各社への基準というのをエネ庁から指示したと、こうなっているこの報道というのは全然違うんですか、十五日に示したとなっているんですよ。
#35
○政府委員(松尾邦彦君) その新聞の記事がただいま手元にございませんので比較はできませんけれども、各社に対して必要に応じまして指示した数量は先ほど申し上げた五千八十八万キロリットルでございます。
#36
○吉田正雄君 もう一回言ってください。
#37
○政府委員(松尾邦彦君) 五〇八八でございます。
#38
○吉田正雄君 それじゃ五〇八八と仮にしておいて、民間備蓄の過去最大の実績というのはこの前申し上げましたように七千二百二十八万キロリットル、これはまあこの前お認めになったわけですね。これはおたくから出ている資料にも出ているわけですから。ところがその後若干減ったような言い方もなされたんですが、現在どれくらいあるというふうにお考えになっておりますか、これ。
#39
○政府委員(松尾邦彦君) 現在の備蓄量は民間におきまして五千六百六十万……
#40
○吉田正雄君 あのね、備蓄量を聞いているんじゃなくて、過去の最大備蓄量というのが七千二百二十八万キロリットルですから、現在のその備蓄可能量というのが大体どのくらい、タンクの備蓄可能量というのはどれくらいになるかと聞いているんですよ。
#41
○政府委員(松尾邦彦君) タンクの容量で申しますと約一億一千七百万キロリットルでございます。タンクの容量でございます。これに対しまして実際にどのくらい油を入れられるかということになりますと、タンクの運用におきまして……
#42
○吉田正雄君 私の聞いている答弁になってないですよ。過去民間の場合の最大実績というのが七千二百二十八万キロリットルだったんですよね、備蓄量が。したがって、現在最大備蓄をやる可能量というのはどれだけあるかと聞いているんですよ。
#43
○政府委員(松尾邦彦君) 先ほど申し上げましたタンクの容量の合計額一億一千七百万キロリットルでございますのに対しまして、貯油率というのはどのくらいかという点はいろいろな計算方法があろうかと思いますけれども、おおむね従来過去五年間ぐらいの実績を見ますと、貯油率というのは五四%程度でございます。したがいまして、一億一千七百万キロリットルに約五四%の数字を掛けた五千六百万キロリットル強が現実に能力としては有されるものじゃないかと思っております。
#44
○吉田正雄君 過去平均どれだけ備蓄されたかということを聞いているんじゃないんですよ。いいですか、過去の最大実績というのが七千二百二十八万キロリットルまで備蓄したんですよ。したがって現在は五千幾らか知らぬけれども、まだ可能量というのがあるわけでしょう、タンクすいているわけですから。それはどれくらいありますかと聞いているんですよ。この前長官の答弁では、若干修理だとか何かで減っておりますからということをおっしゃったんで、じゃどれぐらい減っているかということを聞いている。
#45
○政府委員(豊島格君) 先生のおっしゃいます数字でございますと七千二百幾らというのがピークであったと、現在数量が幾らだと、その差し引きが恐らく先生の余裕があると、こういう御立論であろうかと私は存じます。その計算をいたしますと二千万キロリッター以上余裕があるじゃないかと、こういう結論になるかと思います。ただ、そこで一言申し上げたいと思いますのは、石油備蓄の義務量というのは年間最低限確保しなくちゃいけないというものでございまして、このたまたま一番大きなときは夏場でございます。したがって、夏場は相当備蓄の在庫を持って、冬場にかけてためて冬場減らしていくということでございますが……
#46
○吉田正雄君 そんなことわかっていますから、聞いたことだけに答えてくださいよ。時間ばっかりどんどんどんどん過ぎていく。
#47
○政府委員(豊島格君) はい、二千万というのは数字で、実際ではないということでございます。
#48
○吉田正雄君 そんなことわかっているんです。そんなこと聞いていないですよ、夏場がどうとか、冬場がどうとか、そんなことを聞いていないですよ、いいですか。むだな時間だから、当初言ったようにむだな時間をとらぬように、聞いたことだけ答えてもらえばいいんですよ、いいですか。
 そこで、少なくとも二千万キロリットル以上あるだろうと、こういうふうにおっしゃっているんですね。そこで、北海道共備の三期分までの備蓄量と沖縄の場合、これは全部できたとしたらどれくらいになります。
#49
○政府委員(松尾邦彦君) 沖縄と苫小牧東の共同備蓄の量といたしまして、能力的には五百万、五百万で合計一千万キロリットルの能力になる工事がいままで計画されて一部完成いたしております。
#50
○吉田正雄君 いま五百万、五百万とおっしゃったんですが、それはタンク容量が大体そうなんですが、ここでおっしゃったような貯油率を掛けますと北海道共備が大体三百八十万、それから沖縄が大体三百九十万くらいということになるわけですよ、〇・八五を掛けたりしていきますと、いいですか。そうなりますと、いまおっしゃったように、現にある民間タンクのこれから貯油できる余裕量、これは少なくとも二千万以上あるだろうとおっしゃっているわけですから、そういう点を加えますと、いまおっしゃった融資指示数量の、これは五千二百五十六だと思うんですが、皆さんの方じゃ五千八十八というふうに指示されたということなんですが、それでいいですわ、それを引きますと、引いた場合には少なくとも二千五百万キロリットル前後の余裕があるということになるわけですね――これはそうなるでしょう、数字上。細かいところはいいですよ、二十や三十違ってもいいんですが、おおよそ二千五百万前後になるでしょう。
#51
○政府委員(豊島格君) 先ほど私若干説明しかけましたか、聞いたことだけ答えろということでございましたんで申しましたが、計算上そういうピークのときと、その後のできたやつとを加えていま指示数量を引けば確かに先生のおっしゃるようになるということは事実でございますが、しかし、それが余裕であるかということの、余裕量になるでしょうと、こうおっしゃいましたので申し上げますと、必ずしも余裕量にはならない。といいますのは、石油の備蓄タンクはオペレーションをやっておるわけでございまして、夏場にはいっぱいいっぱい使っても、それを冬場にかけて取り崩して需給に充てていくということでございますんで、年間通じて維持すべき最低備蓄義務量という考え方からいたしますと、それだけの余裕はない、それ以下になっておるということははっきりと申し上げたいと存じます。
#52
○吉田正雄君 全然おっしゃっている数字は合わないんじゃないですか。いいですか、いま言った、皆さんがおっしゃった融資指示数量というのが出るわけでしょう、五千八十八ですか。ところが、民間のタンクに現在ある程度入っていますよ。ただまだ入れ得る余裕の備蓄量というのが出てくるわけですよね。タンク全体の容量の中から現に埋まっているものを除けば余裕量というのは出てくるわけでしょう。だからその数字というのが指示数量を引くと大体二千五百万キロリットル前後になるでしょうと、こう言っているんですよ。現にどれだけたまったかということを聞いているんじゃないですよ、あと空になっている部分がどれくらいありますかと、こういうことを聞いているんですよ。それで数字は合うじゃないですか、皆さん方の数字で私計算しているんですよ。
#53
○政府委員(豊島格君) 空になっているかどうかということになりますと、たまたま物理的にはそれだけ余裕があるということは言えると思いますが、それが本当に余裕があるかどうかという、実際の問題としてはそうではないということでございます。
#54
○吉田正雄君 だから、冬にはよけいだとか、夏には少ないとか、いろんなあれがありましても、指示数量と現に民間の持っているタンクがあるわけでしょう。タンクの絶対容量というのは、皆さんの方では一億一千万キロリットルぐらいとおっしゃっているわけですよね。だけど、過去最大備蓄したのが七千二百二十八万キロリットルですから、大体その程度というのは油は入れられるということはこれははっきりしているわけですよね。それでもまだ余裕が若干あるわけですよ。満タンになったわけじゃないんですからね、これは、貯油率というのは。〇・八五かけるわけでしょう。だから、そういう点で、私がいま言った数字というのははっきりしてるじゃないですか。それ何で否定されるんですか。こんなに簡単な、小学校の生徒に計算さしたって出てくる数字でしょう、それ。
#55
○政府委員(豊島格君) 〇・八五という計算でございますが、これは国備なんかをいたしますときには〇・八といいますか、いわゆる定検をやるとか、予備をつくるとか、いろいろ油種が違うとかという〇・八でございますが、民間備蓄のタンクにつきましては、毎日オペレーションをやっておるわけでございまして、国備のように固定的に緊急時のためにだけ払い出すと、こういう備蓄の計算とは違うわけでございまして、もう少し低いようでございます。
 それから、二千というのは計算ではいろいろあると思いますが、そのうち五百万キロリッターぐらいは国家備蓄として使っているという点も念のために申し添えておきます。
#56
○吉田正雄君 いまオペレーションだとか、いろいろおっしゃっていますけれども、そんなことは承知しているわけですよ。だけど、実際のタンクの容量というのは、さっき言ったように一億一千万キロリットルからあるとおっしゃっているわけでしょう。
 では現在、どれだけ入っておりますか。
#57
○政府委員(松尾邦彦君) 先ほど申し上げましたように、五千六百六十万キロリットル程度でございます。
#58
○吉田正雄君 そうすれば、先ほど言った最大のところが、過去七千二百二十八万キロリットルも入ってるんですよ。現に七千幾らまでいっているわけでしょう。それでもまだ余裕あったんですから、だから最高のところを見てといっても、いま言ったように北海道共備だの沖縄を加えますと、少なくとも二千五百万前後というものは余裕があると、こういうことを言ってるんですよ。それは、夏場だとか、冬場だとか、それはいろいろ多少変動あるでしょうけれども、そういうことは大体数字としてはつかめるじゃないですか、こういうことを言ってるんですよ。そんな単純な計算が、そんな考え込む内容じゃないと思うんですがね。
#59
○政府委員(松尾邦彦君) 確かに瞬間的にというか、ある期間七千万キロリットルの備蓄が行われたという状態があったのは先生御指摘のとおりでございますけれども、先ほどから申し上げました趣旨は、やはりタンクのオペレーションと申しますか、貯油率というものは長期安定的に備蓄のためには無理のない姿であることが必要であろう、このようなことで、もちろん国家備蓄基地の場合とか、備蓄専用の基地の場合と、そうでない場合、タンクの具体的に置かれた条件によっても違いはございますけれども、過去五年間の平均的な貯油率で計算いたしますと五四%程度というのが妥当な、能力に対する油を詰めておく量の比率ではなかろうかと、かようなことを申し上げた趣旨でございまして、結果において五十八年度になれば約二千万キロリットル前後の余裕があるという点においての数字は、私どもの方でも同様な考え方でございます。
#60
○吉田正雄君 これまた全然違ってるじゃないですか。いままでどれだけかと言えば、五十五年の十二月、五十六年も五月、六月、八月、十月に六千八百万キロリットルも記録してるでしょう。七千幾らまで、幾らでも貯油できるんですよ。ただ貯油してないというだけの話と、貯油できるということは違うでしょう。タンクがないということじゃないでしょう。すき間がないということじゃないんでしょう。過去平均の貯油率が幾らだったからって、そんな数字じゃないですよ、私は、平均を聞いてるんじゃないですよ。どれだけ余裕があるかということを聞いてるんですからね。全然質問を取り違えて、時間ぽっかり長引いてるじゃないですか、それは。二千万キロリットルはあるでしょうということは長官もおっしゃっておりますよね。そんなようなはっきりした数字が何で答えられないんです。全然だめですよ、そんな答弁。
#61
○政府委員(松尾邦彦君) 二千万キロリットル程度の余裕が五十八年度において生ずるであろうという点については、先ほどお答えしたとおりでございますが、その際付言さしていただきましたことは、一体タンクの容量、能力に対して備蓄というのは安定的な……
#62
○吉田正雄君 いや、それはまた後で聞きますよ、それ。
#63
○政府委員(松尾邦彦君) その関連においてどのくらいの貯油率が適当かということを付言したのでございまして、結論において二千万キロリットル程度、五十八年度においては余力が生ずるだろうということは、先生の御見解と大差ないところでございます。
#64
○吉田正雄君 二千万キロリットルといっても、私が指摘した二千五、六百万ぐらいは、これは間違いなくあるんですよ。これは一つ一つタンク当たってもいいですけれども時間がないからやめますわ。それはそんな簡単な、はっきりしている数字まで低く見積もるなんということは、これは問題ですよ。これは大臣、よく聞いていてください、それだけあるんですから。
 そこで、次に移ります。
 そうなりますと、仮に、いま大臣が三千万キロリットルの国家備蓄はいまのところ変える方針はないと、こうおっしゃったわけです。仮にそれを認めたとしますよ、これが妥当であるかどうかは別にいたしまして。認めたといたしましても、そうすると、いま言ったこの民間タンクにはそれだけの余裕があるわけですから、むつ小川原と苫小牧東部、これはむつ小川原の場合には三百八十八、苫小牧東部の場合には四百二十二万ということになるわけですからね。これだけでももうあとの国備基地というのは、数字の計算からするならば、なくたって三千万キロリットルの備蓄は可能なんです、これ、大臣。これは数字的にはそれは出てくるわけですね。これはそうでしょう、数字的には約二千万はあると、私の方では大体二千五百万くらいあると言ってるんですけどね。いまこの二つを加えても七百――約八百万あるんですよ。数字的にはそうなるでしょう、数字的には。
#65
○政府委員(豊島格君) 現在時点における余裕、その余裕の見方についてもキャパシティーが過去最高等の差だけで見るのか、もう少し実質見るのかということでございますが、いずれにしても若干余裕があることは事実でございます。ただ、この余裕がいつまでも続くかどうかということは、今後の石油需給の問題でございまして、当然民間の石油会社としては、このところ需要は減ってきておりますが、将来にわたって、六十三年、六十五年を見ていった場合の需要ということを考えると、必ずしもそのまま余ったことにはならないわけでございますので、それだからといってそういうものが六十三年、六十五年、さらにその次まで持ち越されるということではないと考えます。
#66
○吉田正雄君 しかし、長官ね、あなた数字的に考えたらはっきりしているでしょう。現在余裕がこれだけありますというんですよね。これが民間タンクの場合にはもう約二千万キロリットル以上ある。これにいま言ったむつ小川原と苫小牧東部を加えると、約八百万キロリットルぐらいになってくるんですよ。ですから、三千万キロリットル認めているといっても備蓄はだんだんふえていきますよ。ふえていくけれども、最終目標が三千万キロリットルと認めたとして、三千万キロなんでしょう。それをオーバーするわけじゃないんですからね。そういう点では現在の民間の据えておるタンクと、それからむつ小川原、苫小牧東部でほぼ三千方キロリットルというものは備蓄できるじゃないかと、こういうことを言ってるんですよ。それはなるほど備蓄がたまっていけばだんだん余裕数量は少なくなってくる、そんなのあたりまえの話じゃないですか。そんなことを聞いてるんじゃないですよ。これはまあいいですわ、数字はもうはっきりしていますから。大体――百や二百、違ってもいいんですが、単純計算ではそうでしょう。そうでなかったらもっと聞いていきたくなっちゃうんですよ。
#67
○政府委員(松尾邦彦君) 先ほど申し上げましたのは、五十八年度に二千万キロリットル程度の余裕があること、それからむつ、東苫小牧におきまして、若干数字は違うかもしれませんけれども、七、八百万キロリットルの備蓄が可能になるということは、先生御指摘のとおりでございますけれども、私ども、ちょっともう一言だけ申し上げさしていただきたいと思いますのは、民間のタンクが二千万キロリットル前後今後余裕が仮に出るという数字が計算上出ましても、現実には石油会社が短期的な石油需給の変化によってタンクをどのように活用していくか、たとえば今後の価格の動向とか、景気の回復の動向とか、あるいはいまは原油が値下がり感がございますけれども、先安感がございますかもしれませんが、今後また先高感が出てくるときもあろうかと思うんです。このようなときには在庫の積み増しを種々石油会社として自衛上考える場合もあるわけでございまして、さようなことで、非常に民間のタンクの使い方につきましては、非常に流動的な要素もございまして、これを長期安定的な能力として政策的に位置づけることができるかどうか、この辺は必ずしもそのままの数字が使えるわけではなくて、今後の情勢をよく見きわめながら、どの程度の余剰タンクが長期にわたり安定的に残るのかということを別途また考えてみる必要があるんじゃないかと存じております。
#68
○吉田正雄君 私がいま聞いておるのは、具体的に数字を挙げて聞いているんでして、今後検討だとかどうだとかという、そういうあいまいなことで聞いているんじゃないんですよ。したがって、皆さんがこれから三千万キロリットル仮に認めたとして、備蓄をやっていく、民間はこれだけ余裕がある、現に幾つかの国備基地では建設が進んでおるということで、一体計画では民間タンクをどれぐらい借り上げられるつもりになっているんですか、それじゃ。
#69
○政府委員(豊島格君) 現在、四百六十万キロ――七十万でございますか、借り上げておりますが、五十八年度もタンカー備蓄からの陸上げとか、あるいは二百五十万キロリットルの積み増し分等々を考えまして、ある程度民間タンクも借り上げるということを考えておりますが、その具体的な数字につきましては、最終決定をいたしておりません。
#70
○吉田正雄君 私が聞いている範囲では、これはもう確かな数字だろうと思うんですが――じゃ計画は全然ないんですか。計画がなくて建設をやっていくんですか。備蓄の数量が決まっているというのに、どこのタンクへ入れるのかわからぬでどうやって計画が進むんですか。買い込んではみた、どこへ入れるのかもわからぬなんという計画ありますか、それは。少なくとも六十三年度までに三千万キロリットルを備蓄するんだと。各国備蓄地での建設状況というのがあるわけです。計画があるわけでしょう。それに合わせた民間タンクと国備基地への備蓄というものの計画がなければ、計画の進めようがないじゃないですか。これから検討するじゃ済まぬでしょう、それは。
#71
○政府委員(豊島格君) いま申し上げたのは五十八年度どうするかということでございますが、最終的にはすべて国家備蓄の恒久基地にこの三千万キロは入れるということで建設を進めておるわけでございます。ただ、途中年度の経過といたしまして、御承知のように最初は国家備蓄も、タンカーに、基地がないからやった、あるいは民間の備蓄基地を借りてその間をつないでいるわけでございまして、その途中の経緯といたしましては、国備基地が五十八年度終わりにできますが、それでその入れる分は決まるわけですが、二百五十万キロの積み上げ分とそれからさらにタンカー備蓄は漸次減らしていく、こういう方針を出しておりますので、それをどのぐらい減らすかということによって五十八年度の民間備蓄基地の借り上げが決まる。五十九年度につきましても、そういうタンカー備蓄を減らす、積み上げあるいは国家備蓄基地の建設が本当にスムーズにいくかどうか、そういう建設のでき上がりの時期と、その何といいますか、スピードですか、そういうものを勘案して具体的に決めていくということでございまして、最終的な方向としては、最初に申し上げましたように全部国家備蓄基地に収容する、こういうことでございます。
#72
○吉田正雄君 皆さんからいただいた資料でも、六十年度と六十一年度では最大で八百七十五という数字が出ているわけですよ。いいですか。最終的には二百三十という数字がこの前出ておったような気がするんですけれども、そんなに皆さん国備基地に全部入れると言っておいでになるわけですけれども、六十三年度までに本当に三千万キロリットル国備基地に入れるということになれば、建設が順調に進んでいなかったらそんなことはできないわけでしょう。計画があるわけでしょう、何年度どうという計画が。計画がなくて最後までその油どこに置くんです。建設状況に合わせて入れていかなきゃいかぬわけでしょう。その間は民間タンクを借りなきゃならぬということになる、当然ですよ、それは。計画がないとは言わせませんよ。言ってくださいよ、わかっているんだから。
   〔委員長退席、理事野呂田芳成君着席〕
#73
○政府委員(豊島格君) 先生御指摘のとおり、国備基地の建設というものは、地元の状況もございますから計画どおり一〇〇%ぴしりと六十三年度までにできるということにならない可能性も絶無とは言えないと思います。したがいまして、その間備蓄基地ができない場合においては、当然のことながら、民間の備蓄基地をある程度活用していくということは避けられないことかと思いますが、現時点において年度別にどういうふうに民間備蓄基地を借りていくということについての確たる計画は私ども持っておりません。
#74
○吉田正雄君 きわめてずさんじゃないですか。むつ小川原の進捗状況というのははかばかしくないんじゃないんですか。それから苫小牧の東部の例の北地区、これは二十七基、予定では六十一年三月の完成ということになっているわけですから、もう着工してなきゃならぬですよ。ところがこれはストップがかかっておりますね。福井はどうです、全部建設おくれてますよ、これ予定よりも。だから、皆さんの計画でも六十年度、六十一年度――現在はおっしゃったように四百七十六ですよね、五十七年度は。で、五十八年度が六百二十五でしょう、五十八、五十九は。そうじゃございませんか。そうでなきゃ合わぬですよ。建設状況と合わせた場合にはおのずから数字というのは出てくるんですよ、各基地の建設進捗状況を見れば。こんなはっきりしているのを、何でいまわからぬなんておっしゃるんですか、これ。
#75
○政府委員(豊島格君) 二百五十万キロを積み増すというのが五十八年の計画でございますし、むつ小川原につきましてはその時期のずれというのはあるかどうかという、おくれるかどうかは別として、一応計画どおり順調にいくと五十八年にできるわけでございますから、そこははっきりしておるわけでございます。で、一つはっきりしておらないのは、タンカー備蓄をいかにどれだけ減らすかということについて最終的にまだ決めておりません。これにつきましては、例年並みでやっていくのか、あるいはもっと加速させるべきじゃないかという意見ももちろんあろうかと思いまして、その辺のところが最終的に決まっておりませんので、したがって、五十八年度というこの年、次年度そのものをとりましても正確な数字が出ないというのは、そこが一番大きな要因でございます。五十九年度以降につきましては、もちろん基地の進行の問題というのは来年度以降の問題ですから、若干不確定要素はあるということでございます。
#76
○吉田正雄君 だから私が言ってるでしょう。それじゃはっきり聞きますけれども、このむつ小川原は比較的進んでいる、これははっきりしておるわけですけれども、あとははかばかしくないんですね。さっき言った苫小牧の場合、六十一年三月に完成しますか、それじゃ。あるいは福井の場合も完成しますか、それ。どうなんです。しなかったらどうするんです。できない場合も考えなきゃだめでしょう。その場合、民間備蓄はどういうぐあいに考えておいでになるのかと聞いてるんですよね。
#77
○政府委員(豊島格君) 先ほど申しましたように、むつ小川原については順調に進んでおり、予定どおりできます。それから苫小牧につきましては、北と南という二つございますが、南については予定どおりできるということでございますが、北についてはおくれるということでございます。ただ、どのくらいおくれるかということにつきましてはまだはっきりしておりません。いろいろほかの地点も御指摘がございましたけれども、そこははっきりしてない。したがって、それはいま決めておかなくても、その年度、年度である程度見通しを立てていけばいいわけで、現在から、これだけを民間タンクを借り上げるという契約をする必要もないわけでございますので、一応のいろいろな観点からの検討はしておかなくちゃいけないという点については先生のおっしゃるとおりでございますが、幾ら幾らをもうこの時点でどこへ預けるということにはならないんじゃないかと思います。
#78
○吉田正雄君 だって、備蓄の数量が年次計画で進んでいくわけでしょう。そうするともうはっきりと、いま言った苫小牧東部の場合には間に合わないということははっきりしてますよ、これ。福井だってそうですよね、予定どおりいかない。いかないわけですから、そういうところへ入れられないということもはっきりしてきているんでしょう。だから、皆さんこの数字では、五十八年度は六百二十五、五十九年度同じく六百二十五、それから六十、六十一年度が、これが最大というふうなことで八百七十五という数字が出ているんですけれども、私は、いまの建設状況を考えていったらこの数字は大体妥当じゃないかと思うんですけれどもね。――まあいいですわ、これは皆さんこれから検討だと――しかし、これから検討じゃ大変じゃないですか。できないということははっきりしているのに、どうされるんです、それ。
#79
○政府委員(豊島格君) おくれることはある程度避けがたい地点もあるのは事実でございます。しかし、その場合、つなぎとしては、先ほど先生御指摘の、民間タンクの余裕もその時点ぐらいまではあるかということもございますし、もちろんそれもなかったらどうするのかということになりますと、タンカー備蓄というのを何にもないときはやるという手もあったわけでございまして、別にタンカー備蓄をやりたいわけじゃございませんが、いろんな方法はあるわけでございます。その辺はまず民間備蓄であいているところがあればそこを使うということには当然なるわけでございまして、そのときになかったらどうするのかと言えば、またタンカーということも、それは考え方としては――まずそうならぬと思いますが、そういうことで別に三千万キロリットルを積み上げるときに、その積み上げについて備蓄基地がおくれるから支障が直ちにくるということにはならないということでございまして、もちろん予定どおりいくことが望ましいことについては変わりございません。
#80
○吉田正雄君 大臣、いまお聞きいただいていてわかると思いますけれども、とにかく民間のタンクには相当余裕量があるわけです。だから、私がここで指摘したいというのは、仮に三千万キロ、こんなものは私は非常に過大だと思うのですが、仮に認めたとしても民間のこれだけの余裕というものを遊ばしておくには問題があるのじゃないかと、こういうことを言っているわけです。そういう点ではまさに民間の活力であるとか、むだな経費を省くとか、それから国備基地の一体備蓄経費というものと現にあるすでに建設済みの余っておる民間タンクを使う場合の経費というものがどうかということも当然勘案をしながら配分をしていかなきゃならぬと思うのです。国備基地に満タンにする必要もないわけです、民間の方が安いということになればそちらを利用すると。そして国備基地の場合はまた将来に備えるということもあるでしょうし、そういう点で、私は財政再建という観点から、そういうむだというものはできるだけなくしていくべきじゃないか。
 これから聞きますけれども、非常に建設費とか利子補給であるとか油代購入費というものが莫大な予算を要するということでやっているのです。
 現状を申し上げますと、現在民間石油企業というのは備蓄量をいまどんどん減らしています。さっきおっしゃったように、かつては七千幾らもあったのがいまさっき五千幾らとおっしゃっているように減らしているわけです。遊休タンクがふえているわけです。したがって、民間としては国備基地に参加をする理由も事情も現在はないわけです。これははっきりしているわけです。ところが、資本金を出資をして、完成後そこへ入れて高い利用料を払っていくということになれば参加のメリットというものが何もないわけです。民間はむしろ参加というのを現状では嫌がっているというふうに私は聞いておるのです。
 そこでお聞きしますけれども、皆さん何が何でも国備というふうにおっしゃっているらしいのですが、いまちょっと聞いていると、その都度その都度検討していくというふうなことをおっしゃっているのですよ。備蓄量の二〇%を上限として民間も油を入れなければならないという条項というのが各備蓄会社との間の覚書でうたってございますか、これは、どうなっていますか。
#81
○政府委員(松尾邦彦君) いろいろな備蓄会社がございますので、全部同じというわけじゃございませんが、使うことを義務づけているものもありますが、義務づけてないものもございます。
#82
○吉田正雄君 あるのはどこの会社です。
#83
○政府委員(松尾邦彦君) むつ小川原の会社だけでございます。
#84
○吉田正雄君 むつ小川原だけですね。したがって、民間がいま言ったように二千万キロリットル以上も余裕があると、タンクがすいていると、入れられるという状況でしょう。そういうところで民間がわざわざ金を出したり高い利用料を払って国備基地に油を入れる理由とか、メリットというのが出てきますか。嫌がるのはあたりまえだとはお思いになりませんか、これ。
#85
○政府委員(松尾邦彦君) 最近の石油需要の低迷の時期におきまして、石油企業がかつてのほどの熱意が、メリットを感じなくなるということがあるのは一つの現実であろうかと思います。
#86
○吉田正雄君 これは民間にとっては大変です。これだけ遊休のタンクを遊ばしておいて、また国備基地へ高い金を、出資金だ何だといって高い利用料を払って入れる。こんなことは考えられないことなのでして、これは大臣三千万の話は除いても、民間のいまのこういう問題というのは、慎重に私はやっぱり配慮をしてもらわなかったら、これはもう民間の方では大変だと思うのです。
 そこで、次にお聞きしますけれども、北海道共備の場合一期分が五十七年の八月、去年の八月にオイルインしているわけですね。そのうち公団の油は何基に入っております、これ。
#87
○政府委員(松尾邦彦君) 十二基のタンクに入れております。
#88
○吉田正雄君 そうすると、一期分十五基のうち十二基が公団の油が入っているわけですよ。これ逆に言うと、まさに北海道共備という民間会社の状況というのは、国備基地の状況と全く同じなんですね。むしろこういうのを国備基地にしたらどうなんですか、それは。
#89
○政府委員(松尾邦彦君) この会社は本来共同備蓄会社として設立されたものでございますが、先ほどのお話にも出てまいりましたように、国家備蓄基地の建設途上におきましては、タンカーとか、民間のタンクを借用するという方針の一環として活用しているところでございまして、基本的には民間のタンクとして活用されることは予定され、かつまた期待をされておるのであります。
#90
○吉田正雄君 それじゃ、北海道共備というのは将来どうなるんです、これは。全部そこに入れた油どっかへ持っていってどういうことになるんですかね、これ。あるいは民間ではいろんなことを言っているわけでしょう、国備基地に油を入れたくない、これ大臣よく聞いていてください。あるいはそういうものが認められないというふうな場合、民間が今度油を入れない場合、備蓄会社にすでに出資をしている資本金の見返りがどうなるのかという点も出てくるわけですよね。これどういうふうにお考えになっているんですかね。民間は余っているというのに、また別途無理やり国備へ入れるだとか、あっちへ入れるだとか、金を取られたわ、高い金を払ってそこへ入れなきゃならぬなんて全然メリットないんですよ、それ。
#91
○政府委員(豊島格君) この制度発足したときには、当然のことながら民間としても基地が足らなかったわけですから、三割の資本金をもってそれが一つの権利となりまして基地の一部を使うというのが特権であるといいますか、権利として出資の見返りだった。それが最近ではなかなか自分のところのタンクも埋まらないということで不満が出てくるということになっておるんだと思います。
 ただ、先ほど来先生たびたび御指摘のとおりでございますが、しかし、民間の自分のタンクというのはいざというときには結局自分で使うということを考えてやっておるわけでございまして、今後情勢いかんによってはみずから使う場合が出てくる。そういうときには当然国に貸している分も返してくれということになるわけでございまして、要するに、いまたまたま需要が減ってもうかっておらぬと、したがって借りてくれという声が非常に強い。そういう特殊な情勢のもとにおけることを前提にこの国家備蓄の政策を全部論ずることはできない。もちろんその間の実情に応じてわれわれも北海道の共備の基地を利用して民間の負担を軽くするといいますか、そういう現状に合ったことをやっているということは当然でございますが、それがいつまでもそういうかっこうになるということではないと、私は考えております。
#92
○吉田正雄君 基本的に、私はそこのところで大きな誤りを犯しているんじゃないかと思うんですよ。民間は自分が使いたいときには使うと言っても指示数量、基準日数というふうなものがあって、大体九十日なら九十日民間備蓄ということになっているわけでしょう。そのほかに国家備蓄として三千万キロリットルということを皆さんおっしゃっているわけですよ。だから三千万キロリットルも私は多いと、そんな必要はないと言うんですが、それは仮に認めたとしても、その三千万キロリットルの油というものをどこに備蓄をするのかということになれば、民間としては指示数量のほかに余っているわけなんですからね、まだ二千万キロリットル以上余っているわけですから、そこへ入れればいいじゃないか。そういう点では、すでに国備基地として建設をされている部分については、これはいまさら壊すの何だのなんてあほな話にはなりませんから、それは活用すればいいでしょう。しかし、三千万キロリットル認めたとしても、これからの国備基地計画のその他の部分については公然必要がないということなんですよね。皆さん方のいまされている計画を認めても要らないんですよ。これは、民間全部余裕というものを認めない、パアにしちゃうんだということになれば別ですけれども、そうでないんですから、民間のこの余裕というものをできるだけ活用するということになれば必要はないだろう、こういうことを言っているんですね。非常に時間がたっていますから、ちょっと私の方で計算をしてみますと、いいですか、国備基地ですでに着工したものとしてはむっと苫小牧東ですね、これで大体千十四万キロリットル入るわけです。それから立地は決定したけれども未着工のところが、白島だとか福井だとか五島、秋田、こういうところで、千六百六十九万キロリットルございますね。合計してこれで二千六百八十三万キロリットルです。すでにあるわけです。ところが、まだ立地未決定ということで、志布志、馬毛島、久慈、菊間、串木野、こういうのが予定には入っているんですね。ところが、いま言ったように、既着工のむつと苫小牧東だけで千十四もあるわけです。民間備蓄の余裕量というのが、タンクの余裕量が少なくとも二千万以上あるということは、すでにお認めになっているとおり、私の計算では少なくとも二千五、六百万あるんですけれども、まあ、いいです。二千万として、すでにこれだけでも合計すると三千万になるわけですね。しかも、いま皆さんの方では、北海道共備については、実質的には国家備蓄と同じ取り扱いでこれを利用されているわけですよ、十二基分について。だから、そういう点を考えますと、もう施設が余っちゃうということなんですよ。ここが大臣、大事なんです。いいですか。大臣は三千万キロリットルは変えないとおっしゃっているから、それは仮に認めたとしても、タンクがもう余裕があってしようがないんです。それにもかかわらず、まだこれからどんどんどんどんつくっていこうということですから、私は財政再建、しかもこれが全部、国民の税金によって今度は予算の中からどんどん建設費の利子補給、油代購入の利子補給ということでどんどん出ていくわけですので、そういう点で私は、この建設問題についてはもう一回再検討される必要があるんじゃないか。そういう遊休施設が出ることを承知の上で多額な資金というものを使うのは、それこそ中曽根内閣の一枚看板であります財政再建、増税なき財政再建というものに反するのではないかということを私は申し上げておるんですね。
 そこで、さらに財政面でお聞きになっていくとますますおわかりいただけると思いますから、量の問題ではもう数字ではっきりしていますから、これ以上、皆さんから聞くまでもないと思いますので、次の質問に移ります。
 そこで、それでは財政問題、予算問題についてお伺いをいたしますけれども、石油価格の引き下げによる石油減収というものがいろいろ取りざたされておりますけれども、そこで石特会計の石油勘定の五十八年度予算が幾らになっておるか。そのうちの国家備蓄関係費は幾らになっておりますか。要らない答弁は要りませんからね。
#93
○政府委員(松尾邦彦君) 石油税収入四千二百九十億円のうち、四千二百五十億円を石特会計に繰り入れまして、石特関係の予算としては剰余金等を加えまして四千四百七十一億円の予算規模となっております。
#94
○吉田正雄君 石油勘定の歳入の内訳は。
#95
○政府委員(松尾邦彦君) 大きな柱といたしましては、石油の開発あるいは石油の確保という関係で千四……。
#96
○吉田正雄君 いや、歳入の内訳ですよ。
#97
○政府委員(松尾邦彦君) 失礼いたしました。
 原重油関税千三百六十億円のうち九十九億円、それから先ほど申し上げました石油税収入のうち、石特に繰り入れられました四千二百五十億、それから剰余金等百二十二億から成り立っております。
#98
○吉田正雄君 先ほどもお話がありましたように、石油税というのは従価税であるわけですから、したがって今回の原油価格引き下げで当然減ってまいります。その減るという金額はどれぐらいに見積もっておいでになりますか。
#99
○政府委員(豊島格君) これは引き下げの時期とか、あるいは……。
#100
○吉田正雄君 二十九ドルとして。
#101
○政府委員(豊島格君) まあ、二十九ですか、それから実際油がどう入ってくるかという……。
#102
○吉田正雄君 従前の、去年の量でいいですから。
#103
○政府委員(松尾邦彦君) それから為替レートもございますが、そういうのを全部捨象いたしまして、四月一日から新しいものを全部やるとなると、一ドル当たり百二十億円でございますので、五ドルということであれば六百億ということになります。
#104
○吉田正雄君 そるすると、五十八年度の予算はいま申されたとおりですから、もしこの六百億が減るということになると石油勘定が約三千九百億円、それから国備関係費が千四百から千五百億円にそれぞれ縮小されていくということになるが、そうでしょう。
#105
○政府委員(豊島格君) 石特会計に入りますのは、石油税収入が直ちにダイレクトに入るわけじゃございませんで、それが一般会計を経由して特会に入れられる。その場合、繰入額は当該年度以前の繰入未済額を含む石油財源の範囲内で必要な額ということでございますから、直ちに、直に結びつくわけじゃない。その結果、石油税が減った結果、国の全体の収入がどうなるかということとはもちろん関係いたしますが、直ちにその分だけ減るという、連動ではないということでございます。
#106
○吉田正雄君 連動しませんか。そんなことないでしょうが。石油勘定の歳入のほとんどを占めているのが石油税でしょう。これはもう計算していけば当然出てくるじゃないですか。石油勘定そのものはほとんど石油税のあれによって賄われているのがほとんどなんですからね。そこから約六百億円を引けば、四千四百七十一億円から引けば――一億、五億、どうでもいいですよ。大体三千八百七十億円くらい、前後になるでしょう、これは石油勘定の範囲は。それから国備関係費というのがこの三千八百七十一億円の三七%という計算ですから、これが大体千四百三十二億円というぐあいに当然予算が減っていくわけですから、こういうぐあいにおのずからならざるを得ないでしょう、収入が減ってくるんですから。一般会計というのはわかりますよ。もちろん一般会計から入れて出してくるというのはわかりますけれども、引き戻すのだって事実考えてごらんなさいよ。当然そうなっていくでしょう、いま。
#107
○政府委員(豊島格君) これは先生十分御承知で聞いておられるのかもわかりませんが、要するに石油税というのは一たん一般会計の中に入って、その中から石油対策に必要なものを特別会計へ入れられるということでございまして、これまで五千億ぐらいは石油特別会計へ入れられていないものもあるということは御承知のとおりでございまして、本年度につきましても一般会計へ入れて、その中からたまたま石油税収入とその今度入れられる額との間には余り差がないという五十八年度はケースでございますが、それが直ちにいくということにはなっていないことは、もう法制度上、予算制度上、そうなっていることは十分御承知だと思います。したがって一般会計の財政収入がどうなるかということとはもちろん無関係ではございませんが、石油税収入とだけ結びついていくということにはならないということでございます。
#108
○吉田正雄君 私が言っておりますのは、いまおっしゃった五千億円の従来からの積み立てというのか、これがあるということは承知しているんですよ。だから、それはまたどうするかというのは別問題にしまして、いまの予算からいったならば、当然それだけの規模というのが縮小になってくるでしょうということを言っているわけですよ。そうでしょう。五千億というのはいいですよ、それはわかっていますから。
#109
○政府委員(豊島格君) これは大蔵省に聞いていただいてもいいかと思いますが、一般会計に入れられると。したがいまして、一般会計自身がどうなるか、歳入がどうなるかということは一つ問題がございまして、場合によってはふえるかもわからないわけでございますので、それは私ども言う立場でございませんが、したがって、そのふところの中から出てくるわけで、直ちに連動するということは制度上も、この予算ができました経緯からいきましてもそうなってはおらないということははっきり申し上げられると思います。
#110
○吉田正雄君 そうすると、予算勝手に変えられるんですか。予算で組んだんでしょう、それは。
#111
○政府委員(豊島格君) 特別会計の歳出予算は組んでおりますし、それから特別会計への繰入金額も組んでおりますが、それは繰入金額はいままでどおりいただくことが予算を変えないということでございまして、繰入金額を変えることは予算を変えるということになろうかと思います。
#112
○吉田正雄君 いずれにしても、この石油税収入が六百億減るということは、これはまあ総理大臣答弁でも認められているわけですね。現に五百億の余裕が、積み立てが残っていると、これもわかっております。
 そこで、次にお聞きしますが、建設費借り入れ、油代借り入れが非常にふくらんできておるわけですけれども、五十八年度予算の国備関係費の細目の金額とその使途がどういうふうになっているか。大きな項目だけで結構です、これは。
#113
○政府委員(松尾邦彦君) 公団の備蓄事業に関係いたします出資金につきまして百六十五億強。それから国備会社に対しまして行います基地建設資金融資の原資の借り入れに係ります金利を補給する部分、金利補給の部分が百三十億強。それから一般備蓄基地の建設の用地取得に関係する経費、あるいはタンカー備蓄等にかかります用船料等の費用に関係するものが八百九十五億。そのほか備蓄用の原油の購入資金等の借入金の金利の補給分が四百六十億強、いまの中には備蓄量の積み増し分も含めて申し上げております。
#114
○吉田正雄君 そうしますと、建設費の借り入れはどこからどういう条件で借りているのか、いままでの実績がどういうふうになっているのか、それから今年度五十八年度予算の額がどうなっているのかお聞かせください。
#115
○政府委員(松尾邦彦君) 五十八年度の国家備蓄基地の建設資金の調達は政府保証の短期借り入れによっておりまして、千三百九十八億円を計上いたしております。
#116
○吉田正雄君 私が聞いたのは、どういう条件で、どこから借りるのか、あわせて五十八年度予算はと、こう聞いているんですよ。
#117
○政府委員(松尾邦彦君) 国家備蓄基地の建設に関する借入金につきましては、期間は三年で借りることになっておりますが、金利はまだ決定いたしておりません。
#118
○吉田正雄君 え。
#119
○政府委員(松尾邦彦君) 金利等細目の条件はまだ確定いたしておりませんが、一応プライムレート・マイナス〇・一%ということで想定いたしております。
#120
○吉田正雄君 返済はどういうことになっています。
#121
○政府委員(松尾邦彦君) 返済は、先ほど申し上げましたように、三年間で返すことにいたしております。
#122
○吉田正雄君 もし返済しないという場合には、これは再触資を受けると、こういうことになりますか。
#123
○政府委員(松尾邦彦君) 借りかえによってつなぐことになると思います。
#124
○吉田正雄君 立地が決定しておるこの六プロジェクトについて、完成までの建設費借り入れの総計ですね、まあ累計と言ったらいいのか、これは大体幾らくらいになりますか。
#125
○政府委員(松尾邦彦君) およそ八千八百億程度だと思います。
#126
○吉田正雄君 そうしたら、今度国家備蓄三千万キロリットルということで実現をする場合ですね、この場合の建設費の借り入れ累計というのは、大体どれくらいになります。
#127
○政府委員(松尾邦彦君) 一兆一千億円強だと思います。
#128
○吉田正雄君 次に、油代借り入れも、どこからどういう条件で借り入れてきたのか。
 それから、いままでの実績と、五十八年度予算の額がどうなっているか。
#129
○政府委員(松尾邦彦君) 原油の購入資金につきましては、原則二年の市中借り入れによって賄っておりまして、現在までの借入残高は四千六百三十五億、五十八年度におきましては千四百億円強を予定しております。
#130
○吉田正雄君 それから、同じく三千万国備を実現するという場合の借入累計ですね、したがって。これ、どういうぐあいになりますか。
#131
○政府委員(松尾邦彦君) おおむね一兆五千億円かと思います。
#132
○吉田正雄君 次に、公団備蓄事業費等の交付金の予算、決算の推移は、大体どんなになっておりますか。
#133
○政府委員(松尾邦彦君) 五十三年度は、予算百九十三億に対しまして決算百三十億。各年度順番に予算、決算の順に申し上げますと、五十四年度は、四百二十五億円に対しまして二百六十四億円、五十五年度は、四百四十八億円に対しまして四百八十六億円、五十六年度は、五百五十二億円に対しまして六百四十六億円。五十七年度、まだ決算は出ておりませんが、予算としては八百八十九億円、五十八年度は、八百九十五億円を計上いたしております。
#134
○吉田正雄君 そこで、その事業費等交付金の中のタンカー備蓄経費、それから民間タンク借り上げの備蓄経費の推移がどういうふうになっておりますか。
#135
○政府委員(松尾邦彦君) タンカー備蓄についてから申し上げますと、五十三年度百二十七億円、五十四年度二百五十六億円、五十五年度四百七十一億円、五十六年度五百九十七億円、五十七年度はまだ見込みでございますけれども、五百八十九億円、五十八年度には五百二十三億円を計上いたしております。
 民間タンクにつきましては、五十六年度から行っておりまして、五十六年度に二十一億円、五十七年度は、これも見込みでございますけれども、百二十四億円。なお、五十八年度の予算には二百七十八億円を計上いたしております。
#136
○吉田正雄君 タンカー備蓄の一キロリットル当たりの経費及びそこに含まれる一キロリットル当たりの用船料がどうなっておるか。
 同じく、民間備蓄借り上げの場合の一キロリットル当たりの経費及びそこに含まれる一キロリットル当たりのタンク利用料が幾らになるか。
#137
○政府委員(松尾邦彦君) タンカーにつきましては、年間キロリットル当たり六十九百円が経費でございますが、そのうち用船料は約四千三百円でございます。
 それから民間タンクにつきましては、平均経費四千九百円のうちタンクの賃借料は約四千八百円程度でございます。
#138
○吉田正雄君 いまのタンカー備蓄の経費の中で、いま用船料が四千三百円というふうにおっしゃったんですが、その他の主要なものとして燃料費とか漁業補償というのがあると思うんですが、それ大体どれくらいになっていますか。
#139
○政府委員(松尾邦彦君) 恐縮ですが、燃料費、漁業補償費その他の細かい経費、ちょっと手元に持ち合わせておりません。
#140
○吉田正雄君 六千九百円で用船料が四千三百円ですから、あと約二千六百円ですから、残りの金額の中の主要な項目としてはそんなに細かい数字じゃないと思うんですが、いまお手元にないわけですね、ないですか、――はい。
 次に、むつ小川原一期分はことしの九月にオイルインする予定になっているわけですけれども、国備タンクの備蓄経費、それから利用料はどの程度を予定をされておりますか、その費用の内訳。
#141
○政府委員(松尾邦彦君) 金利を含めました費用の方はキロリットル当たり六千四百円程度でございますけれども、利用料は三千九百円程度になると予定しております。
#142
○吉田正雄君 あれですか、タンク利用料がそんな程度に、三千九百円ですか。そんなに安くてよろしいんですかね、これ。
#143
○政府委員(松尾邦彦君) 先ほど申し上げましたように、金利を含めた費用ですと六千四百円でございますけれども、平均いたしまして三千九百円が利用料になると思われます。
#144
○吉田正雄君 利用料ですよ、そんなに……
#145
○政府委員(松尾邦彦君) 利用料金。
#146
○吉田正雄君 利用料でしょう。
#147
○政府委員(松尾邦彦君) はい。
#148
○吉田正雄君 三千九百円ですか。
#149
○政府委員(松尾邦彦君) はい。
   〔理事野呂田芳成君退席、委員長着席〕
#150
○吉田正雄君 ちょっとお聞きしますけれども、タンク利用料の内訳というのは、じゃ、どんなになっていますか。――ちょっと待ってください。それじゃこういうことで聞かしてください。借地料、それから減価償却費、それから建設費借入元金返済、それから、その他いろいろ人件費だとか燃料費だとか電力料だとか委託費やいろんなその他のもの一切合財ひっくるめてこういうのを維持管理費というふうに呼んだとした場合ですね、建設費借入元金返済というのは大体どれくらいになりますか、いまこれずっと挙げたのでやっていって。
#151
○政府委員(松尾邦彦君) 先ほど申し上げた数字の三千九百円の中には入っておりません、金利の分は入っておりません。
#152
○吉田正雄君 タンクの利用料というのは、北海道共備の場合と民間タンク借り上げの場合には大体幾らになっていますか。
#153
○政府委員(松尾邦彦君) 民間の借り入れタンクには四百六十五万キロリットル入れておりまして、おおむねそれに、若干の差はあるかもしれませんが、容量的にはおおむねそれに近い数字だと思います。
#154
○吉田正雄君 ちょっとはっきりしないんですが、もうちょっとはっきりしてください。北海道共備の場合と民間タンクの場合。ちょっと声が小さくてよく聞こえないんですが、幾らになりますか。
#155
○政府委員(松尾邦彦君) 北海道共備の場合のタンクの利用料はちょっと手元に正確な数字はございませんけれども、おおむね四千八百円前後だと思います。
#156
○吉田正雄君 北海道共備の場合大体四千五百七十円くらいでしょう。それから民間タンクの借り上げ料というのが大体さっきも話が出ましたが、四千七百円とか、四千九百円という数字ですね。これはほぼ間違いないでしょう。
#157
○政府委員(松尾邦彦君) おおむね先ほど申し上げましたように、タンク賃借料については平均的に四千八百円程度でございまして、先ほどのお話のように、若干共備の場合は安いということでおおむね正しいかと思いますが、細かい数字ちょっと手元にございませんので、大体……。
#158
○吉田正雄君 そうするといまのむつの場合利用料というのはどれくらいかと言ったら、三千九百円という数字は一体どんな根拠で出てくるのですかね。こんな安い金額なんというのはどっから出てくるのですか、これ。
#159
○政府委員(豊島格君) 考え方の整理の仕方なんですが、民備の場合には当然自己資本でやっておりまして、借入金もありましょうし、いろいろやっておるわけでございまして、ただ過去につくった設備で安いのかもわかりませんが、四千八百円というのはすべての金利から極端に言えば配当まで入るということでございましょうか、使用料に全部入っておる、こういうことでございます。ただ、国備の場合には御承知のように、出資金といいますか、公団の出資金と、それから民間の出資金がありまして、あとは公団が無利子の貸し付けをして建設をしているということでございます。したがいまして、国備の会社はそういう金利負担が要らない。
 それから元本返済についてということでございますが、償却はちゃんといたしておりますので、償却の中から返してくるということにはなるわけでございます。そういうことで計算の根拠といいますか、そこが違うということでその開きが出ておるということで御理解いただきたいと思います。
#160
○吉田正雄君 いまこんなのがよくわからぬということじゃ困るんじゃないですか。いいですか、借地料は大体どれくらいです。じゃさっき言った数字大体どんなだか答えてみてください。借地料、減価償却費、それから維持管理費、それに建設費借り入れた元金返済、これはどうなるか、この四項目、わからないわけないでしょう、これ。
#161
○政府委員(松尾邦彦君) 先ほどの三千九百円の内訳というのは予算の積算上一応用意した数字でございまして、具体的にどうなりますかは、今後の具体的な詰めによって決まってくるかと思いますけれども、大ざっぱな感じでございますと、三千九百円のうち減価償却費が約千九百円強、なろうかと存じます。それからあとは土地の賃借料というのは三百円見当になるのではなかろうか、そういうふうに思います。その他の費用多岐にわたりますので、それぞれ数百円ずつあるいは数十円ずつの経費の積み上げによりまして三千九百円が成り立っていると思います。
#162
○吉田正雄君 いまおっしゃった借地料の三百円というのは他とのいろんなことから大体そういう数字になるだろうと思うんですよ。いまのところ維持管理費のところがどうもはっきりしなかったんですけれども、大体、従来の例とか、ほかの例からすると大体これは二千円くらいになっていくんじゃないですか、これ、普通。そうじゃございませんか。私は予算額で三千九百円とおっしゃる意味はわかりますけれども、そうでなくて、実際にはどれくらいかかるんだろうという計算というのはこれから予算を将来に向けてやっていくためにも必要な数字なんでして、ここはやっぱりある程度きちっと民間の場合にどうかと、共同備蓄の場合はどうだったと、北海道共備の場合どうだったということからやっていけばおのずから数字というのははっきりしてくるんですよ、これ。――まあいいですわ。時間もありませんし。
 予算額だということはわかりますけれども、予算額で本当に執行していくのかどうかということになりますと、これまた大分問題が出てくると思うんですよ。これは大臣お聞きのように、北海道共備の場合で四千五百七十円なんですよ。それから民間タンクの借り上げの場合には四千七百円なんです。そこで、いまむつの場合どうなっているかということなんですけれども、借地料はいまおっしゃったように三百円、まあ大体こんなものだろう、おっしゃるとおりだと思うんです。それから減価償却費が、これはまあ幾ら見るかというのは年数にもよりますし、率にもよると思うんですが、大体いま千九百円ぐらいとおっしゃったですか、大体それくらいだということで、これでもって約二千二百円になるわけですよね。そこであと維持管理費というものを考えますと、これは大体従来の例からすれば、その他のほかのところとあれした場合に、大体二千円くらいというのが、これほぼ常識になってくると思うんですね。そういたしますと、建設費の借入元金返済、これをこれに加えなきゃ利用料にならぬわけでしょう。利用料としては当然ですね。これはどれくらいに見積もっておいでになるんですか。
#163
○政府委員(豊島格君) 利用料はコストでやっておりますから、当然償却とか、それから維持管理費、それから土地の使用料、こういうのが要るわけでございます。ただし、この会社は金利はただの金を借りてやっておるわけですから、そういうのは要らないということ。入ってない。それから返済は普通の企業の場合、いろいろあると思いますが、償却でしていくということを前提とすれば償却費でやっていくということで、特別にそのためのコストは三千九百円の中に入れておらないということでございます。
#164
○吉田正雄君 またここでさらに論議をやりますと時間がなくなる一方ですから、これやめますが、大臣いまお聞きになっておわかりのように、むつ小川原の場合の利用料については北海道共備、それから民間借り上げとの間に、大体民間の場合ですと四千八百円くらいとおっしゃっているわけですから、そうすると三千九百円というと約九百円の差があるということになりますし、北海道共備四千五百七十円、まあ四千六百円としても七百円の差が出てくるということなんで、これはやっぱり問題だと思うんですよね。問題ですよ、これ。もうちょっとやりましょうか。――ちょっと答えられないのか、答えがあっても言えないのかわかりませんけれども、そういうことを大臣、ひとつよく頭に入れておいていただくということで、次にそれでは移ります。
 そこで、三千万キロリットルということで皆さんどんどんどんどん備蓄量ふやされていくわけですね。国備基地もどんどん建設をされていくことになるわけですから、六十三年度末に仮に三千万キロリットルを達成した場合、六十四年度以降毎年どれくらいの備蓄経費がかかるのか。
#165
○政府委員(松尾邦彦君) 大ざっぱな計算いたしました感じでございますけれども、四千億円程度になろうかと思います。
#166
○吉田正雄君 あのですね、五十七年度の場合にはタンカーで五百九十六億、民間、国備基地で百七十三億、それから備蓄経費ということで、そこで合計すると七百六十九億になるわけですね。それから事業費等交付金予算というのが八百八十九億円と、これは間違いないでしょう。――この備蓄経費というところですよ。いま言った合計間違いないでしょう。
#167
○政府委員(松尾邦彦君) 予算の点はそれで大体合っていると思います。
 それで、先ほど申し上げた四千億円と申しますのは、一応私ども大ざっぱでございますけれども、前提を置いて、施設のお金だけではなくて、導入する油の代金につきまして……。
#168
○吉田正雄君 いいですよ、ちょっと待ってください。
 それじゃ、もうちょっとはっきり聞きますが、事業費等交付金予算、これは五十七年度が八百八十九億で、それから五十八年度が予算で八百九十五億になっておりますね。この額は六十四年度以降大体どれぐらいになりますか。
#169
○政府委員(松尾邦彦君) おおむね千五百億円程度と思います。
#170
○吉田正雄君 計画量でいままでの利用料その他を計算をしてきますと、千七百億円ぐらいになるんじゃないですか、これ。千五百億じゃ上がりませんよ、これ皆さん方の計画どおりでずっと来るというと。
#171
○政府委員(松尾邦彦君) まあ将来の数字でございますから、いろいろ不確定の要因もあろうかと思いますが、先ほど申し上げた千五百億円の数字は基地の利用料、先ほど申し上げた単価三千九百円程度に容量四千万キロリットルをかけて大ざっぱに計算した数字でございます。
#172
○吉田正雄君 これ非常にずさんだと思いますよ、それは。じゃ、五十八年度の前の場合のタンカー、民間、国備基地の量ですね。それと備蓄経費計でもってずっと出てくる数字ね。いまさっき申し上げたように、備蓄の経費の計というのが五十七年度が七百六十九億円、五十八年度が八百五十億と、こうなっているわけでしょう。だから現行価格で計算するわけですよね。将来の値上がりなんか見込まないでいきますというと、五十九年度の場合には八百五十億円が九百八十億、六十年が千百十三億、こういうふうにふえていくわけですよね。したがってそれに伴って事業費等交付金予算というものも五十七年度の八百八十九億、それから五十八年度が八百九十五億と、こういうふうにふえていくわけですよね。そうでしょう。だから、それ皆さん方の計画に従って計算をしていけば千七百億ぐらいになっちゃうんですよ、千七百二十九億円と、まあ細かいですから千七百億円前後でいいんですが、千五百億というのじゃ大分違いがあるじゃないですか、これ。
#173
○政府委員(豊島格君) 先生は現在の備蓄経費をもとにして計算をしておられると思いますから、そういう計算をされればいまおっしゃったようになろうかと思います。
 ただ、現在の備蓄の実態は民間のタンクを借りておると、これは四千幾らと、先ほど数字ございました。それからタンカー備蓄の場合はちょっと高いところのを借りておるわけでございまして、今後恒久施設で国備基地を使うときには基地利用料というのは三千九百円ということでございますので、それで千五百億になるということでございます。先ほどおかしいじゃないか、民間の備蓄の基地を借りるときよりも相当安いという意味での御指摘じゃなかったかと思いますが、それは計算の方法でございまして、基地利用料としては三千九百円しか払いませんが、別途基地を建設するに当たりましては出資を公団からしたり、あるいは借入金に、利子補給受けて、それをただで貸しておるという意味で、そちらの方のコストがあるわけで、トータルして考えていただければ別の数字になると、こういうことでございます。
#174
○吉田正雄君 そんな言い逃れはないでしょう。私の計算したのは、皆さん方の五十三年度から六十三年までの積み増し量、それからこの備蓄量合計全部出てますよね、計画で、それから、そのうちタンカー備蓄がどれだけだと、それから民間借り上げが幾らだと、それから国備基地が幾らと、こういうふうになって出てきてるんですよね。だから、そこでいま言ったタンカーの利用料が幾らか、さっきもおっしゃったですよね。それから民間の借り上げが幾らかというものをこの数量に掛けて言っているわけですよね。そういって出てきた数字が大体こんなになるということを言ってるんでして、皆さん方の計画の数字でもって私は計算してやってるんですよ、それは。おかしいんじゃないですか、それ。まあいいですわ。とにかくそういうぐあいに違っておるということなんですよね。まあもう一回再検討してみてください。
 そこで、大体私どもの計算では、さっき言った千七百幾らと出てくるんでしてね、まあ大体その前後だろうというふうに思っております。その次に――まあ大体千五百幾らですって、もう一回。
#175
○政府委員(松尾邦彦君) 基地の利用料に関する部分につきましては、おおむね千五百億円程度と存じております。
#176
○吉田正雄君 それから公団から市中銀行への油代借り入れの元金返済、それから元金返済がどうなっておるのか、もし国備関係費から出すとすればそれは一体どの細目から出すことになっておるのかということです。
#177
○政府委員(松尾邦彦君) 先ほど申し上げましたように、償還の方法につきましては一定の期限をつけておりまして、財政事情を勘案しつつ返済していくわけでございますけれども、返済する場合には出資金において充てることになっておるわけでございますが、一般的な償還の方法につきましては、先ほど基地、それから原油購入についてそれぞれ申し上げましたように、基地であれば三年、原油でございましたら二年ということで償還する計画になっております。
#178
○吉田正雄君 もう少し大きい声出していただけませんかね、よく聞き取れないんですよ。いずれにしたって国備関係費からいずれは元金を返済しなきゃならぬということになってくるんじゃないですか、これどうなんですか。
#179
○政府委員(松尾邦彦君) 最終的には特別会計から返済することになりますが、先ほどもちょっと申し上げましたのは、国備基地に関係する部分につきましては、先ほどの利用料が回り回って返済原資になっていくということを申し上げたわけで、そういうことを添えさせていただきます。
#180
○吉田正雄君 利用料――利用料から返すということですか。いや、利用料というのは一体会計上どこへ入ってくるんです。私が聞いているのは、元金の返済をどうするかということでしょう。利用料なんて項目はありますか、予算上に――そんなものはないじゃないですか。はっきりちゃんと答えなさいよ、そんな。
#181
○政府委員(豊島格君) ちょっと整理させていただきますと、いま利用料と申しましたのは、基地利用料を払うわけですね。
#182
○吉田正雄君 いや、説明は要らないんですよ。
#183
○政府委員(豊島格君) したがって、その利用料の中に減価償却費が入っておりますので、その減価償却費というのは返済財源になるから、公団が無利子で出した金の返済にはそれが充てられるということでございます。しかし、それ以外には備蓄の方も、基地建設の方につきましても当面織り込んでおりませんが、将来この資金を返済するとすれば、公団に特別会計から出資が行われ、それが財源となるということに、返済財源になろうかということになるわけでございます。
#184
○吉田正雄君 その特別会計というのは、何を指してます。
#185
○政府委員(豊島格君) これは、石特会計でございます。
#186
○吉田正雄君 だから、石特会計の大体どの費目を予定されておるんですか、そうすると。そんなものは一切計画もしてないと言うんですかね。全然考えてもいないんですか、それは。金を借りて返済計画がない、どこから金を返していいかまだわかりません、単なる特別会計から払うことになるんでしょうじゃ、ちょっとやそっとの金じゃないから聞いてるんですよね、これ。
#187
○政府委員(豊島格君) 利用料を公団が備蓄基地に払うものにつきましては、交付金ということで特別会計から公団に交付されていく。それで利用料を払うわけです。したがって、その利用料から減価償却分は入るということになりますと、公団が貸している金が返ってくると。それで、その返った金で公団は市中に返すということになります。それから、あと公団が市中から借りて建設資金を貸したり、あるいは備蓄の原油を購入する代金につきましては、もしこれを返済するとして、いままでの利子につきましては利子補給金、それから基地使用料につきましては交付金がございますが、元本についてはございませんので、それをもし考えるとしたら、将来公団に対する出資というかっこうになるのではないかと思います。そうなる性質のものでございます。
#188
○吉田正雄君 なるのではないかというきわめて不確定な言い方なんですよ。だから、いずれにしても油代借り入れというのは相当な金額になるわけでしょう。さっきおっしゃったように。だから、これをどう返済するかということなんですよね。これは非常に大きな問題なんでしてね。利用料、利用料おっしゃっていますけどね、公団は利用料取ったってそれが全部いま言った元金の返済なんか回るわけないですよ、これは。だから、どこから払うかと、こう聞いておるんですよ。そうしたら、今度は特別会計だとおっしゃる。特別会計のどの費用ですかと聞くと、それはまだわからぬというんでしょう。わかるんですか。
#189
○政府委員(豊島格君) まだ決めておらないからだろうかと申し上げたんですが、性質上は元本に相当する部分は出資金のたぐい、要するに公団が自己資金で持てばいいわけです。ないから借り入れて持っている。したがって、それを自己資金にするためには出資金を公団に出さなければならない、こういうことでございます。
#190
○吉田正雄君 あのね、そんなことで返せると思っているんですか、あなたら。利用料取りました、ね、それからこれはちょっとこう冷静になってお考えになればわかるんじゃないですか。それじゃあちょっとお聞きしますよ。いままで再融資を受けることなく、さっき言ったように、返還計画というのは融資の条件として三年とかね、あるわけですよね。だから、再融資を受けてなくて実質的に返済した額はいままでありますか。で、それは幾らになっております。
#191
○政府委員(松尾邦彦君) ございません。
#192
○吉田正雄君 ないわけですね。そうすると、いままで借り入れの累計というのは、いままでの額の中でもまだ返せていないんですよ、これは。そうでしょう。返す予算項目もまだ載ってないわけです。これは大変な話なんですね。ところが、これからどんどん三千万キロリットルに向けての国家備蓄がどんどんふえていくということになったときに、実質的には最終的に一兆何千億だ、建設費と油代とやりますと二兆六千億円ですか、そんなになっちゃうわけですよね。こういうものを一体どこから返すのかということなんですよね。
 時間がないから、私は問題点だけこういま指摘をします、当初のうちにね。いいですか。建設費借り入れが、いいですか、建設費借り入れが現在九百七十五億円ですよね。これが六十三年度までの間に、さっきもあったように、一兆五千億円にふくらんでいくと。それから事業補給金、この建設借り入れに伴う利子ですね、利子補給、これが現在の約十五倍に、九百七十五億から一兆五千億にふくらむわけですからね。利子補給の額というものも現在の約十五倍に増大をしてくる、これは単純計算です。いいですか。それから、油代の借り入れが四千六百三十五億、現在。これが一兆約さっきの場合は一兆一千億円とおっしゃいましたが、こちらの計算では大体一兆三千億円くらいになるんじゃないかと思うんですが、まあいいですわ。それから、増強対策補給金、つまり油代借り入れの利子が、これも大体単純計算をやっていくと約二・八倍ぐらいになる。それから三つ目として、事業費等交付金のほとんどを占める備蓄経費、これがさっきも言いましたように八百五十億円から、ここに、予算に盛ってある八百五十億円、さっきは大体千五百億幾らくらいとおっしゃったんですが、こちらとしてはこれが千七百億円くらいになるんじゃないかということで、約二倍近い金額です。その次、ところが一方で先ほど申し上げましたように石油税収入というものが落ち込んでくる。なるほど一般会計に入れて、一般会計ではいままでの積み残しというのか、積立金というんですか、残っているのが大体五千億円ぐらいあるというふうなことはおっしゃっておるんですけれども、いずれにしても減った分の計算で、今後も二十九ドルということでずっと計算をしてまいりまして、それから現在の輸入量、まあ消費量ですか、約二億一千万ですか、その割合でずっといったといたしますと、いま言った国備関係費というものが、予算が大体千四百億から千五百億円程度に縮小せざるを得ない、これは五千億円は棚上げをしておいて、そうなるわけです。
 こういう状況の中で、いま言った膨大な一兆五千億円という建設資金の借り入れ、それから油代の借り入れの一兆一千億になるか一兆三千億になるか、これは合計しただけでも大変な額になっていくわけです。こういうものを実質的に返済できるのかどうか、元金。利息はいいですよ、国の方から入れていきゃいいんだから。この元金を一体どうやって返せるのか、返せないんじゃないかと思うんですけれどもね、これだけの膨大な額。それで、いま聞くと、いや、今後検討すればいいような、ただ言葉の上では特別会計だとか、いや利用料からとおっしゃっているんですが、返済計画というのはきちっとあるんですか、ないんですか。
#193
○政府委員(豊島格君) 返済につきましては、形式的には三年で返すとか、部長から御説明いたしましたが、基本的には将来の財政事情を見て返済計画を立てていくということでございます。
 ただ、一つだけ申し上げられますのは、国備の建設基地につきましては、建設が終わればその減価償却によって建設費は耐用年数に応じて返していくということでございますから、その分は返るということにはなるわけです。ただ、それが借りかえといいますか、短期で借りていますので、それにはある程度つながなくちゃいけませんが、償却期間中には一応返るということになるということは言えると思います。
 それから備蓄の方につきましては、そういうことではございませんので、これはいまのままほっておけば借りかえ借りかえということにならざるを得ませんが、その辺は将来の財政事情を見て返済原資を少しずつ織り込んでいけばその分だけ金利負担も減るし、元本も返済される、それでそのつなぎのところは今後の、将来の特別会計あるいは財源をどうするかという大きな中で考えていく、こういうことになろうかと思います。
#194
○吉田正雄君 いまのお話を聞いても、具体的な返済計画というのはまだ立っていないということなんですね。
 そこで、いま私が申し上げた金額というのは、あくまでも建設費とそれから油代の借入金だけでも二兆六、七千億円という膨大な額になるというんですが、さらに、大臣、聞いてもらいたいのは、六十三年度で完成した、ところが今度は六十四年度以降の経費というのがこれがまた膨大になってくるんですよ。どれくらいになってくるかというと、事業補給金、これが、建設資金の借り入れが一兆五千億円ですから、さっきは長期プライムレートよりもマイナス一%だというふうにおっしゃったので、現在、長期プライムレートが〇・〇八四ですから、それが〇・〇七四ということになると思うんですけれども、〇・〇八四、長期プライムレートの計算でいけば、補給金だけでもって大体千二百六十億円になるわけです。それから、増強対策金、これも利子になるわけですけれども、これが、油代の借り入れが一兆一千億になるか、一兆三千億円になるか、油代も量がだんだんふえていくということで、一兆三千億円と見ますと、長期プライムレートで計算して一千九十億円という数字が出てまいりますよ。さらに、事業費等交付金というものが、これがさっきは大体千五百億円くらいとおっしゃっているわけですけれども、こういうぐあいに国家備蓄関係費用だけでも四千億円、三千九百億円から四千百億円くらい、四千億円前後という膨大な額にこれがふくらんでいくということになって、いま五千億円の積み残しがありますなんというのは、そんなものは一遍に吹っ飛んじゃうんですね。これからだってどんどん減っていくんですよ。五千億をいつまでもとっておけるわけじゃないんですよ。大変なんです。そこへもってきて石油収入というものがいま言ったように減少をしていくわけですから、したがってこれはもう、大臣、いまのこの国備費関係予算というのは完全に破綻するんですね。石油勘定全体でもって大体三千九百億円くらいに減っていくだろうし、それから、いま言ったそこから出てくる、五千億を抜いておいて、国備関係費というのが千四百億から千五百億円くらいに縮小をするということになるんです。それはそこから、五千億円から足していけば、これはまたその分後が足りなくなってくるというだけの話なんでして、そういうことを考えますと、これはもう財政破綻というのは明らかになるんですよ。
 私が一番恐れますのは、国鉄ほどとは言いませんけれども、これだけ多額の金をつぎ込んでやる国家備蓄ですから、少なくとも将来の返還計画、こういうものを考えませんと、第二の国鉄までとは言いませんけれども、これが非常に大きな国民の負担になってくる。いずれは他の税金――きのうの新聞等によりますというと、早くも石油代替エネルギー政策に沿って、脱石油ということで今後もこの政策というものを続けていく、開発を継続するということになると、いまの石油税では足りなくなってくる、これはもう単純明快に出てきている数字ですから、したがって財源をどこに求めるかということになると、石油の消費量も減っていくという中では、石油税を少しぐらい上げてみたってとても追いつく数字ではないということで、自民党の内部では、今度はガス、石炭税を上げなきゃならないんじゃないかというふうな報道もきのうあたりの新聞を見ますと出ているわけですね、財源確保が焦点だと。ところが、いま言ったように、他の代替エネルギーの経費というのはそんなに大きくはないわけですね。
 時間がありませんから、もうここへきて一々明確な答弁を求めても、大体返済計画がないんですからお答えが出てこないと思いますけれども、私は大臣によく聞いておいていただいて、将来のこの返還について誤りのないきちっとした計画、その計画の中で、先ほど申し上げましたように、民間タンクとの関係、これから、まだ立地は未定だけれども、建設もやっていないという基地が本当に必要なのかどうか。財政との関係で十分検討しないと悔いを後に残すことになるというふうに私は思うわけです。
 そこで、石油税率を、前の本会議における総理答弁では、税収は六百億円くらい減るけれども、石油税率の引き上げについては答申を受けて、現段階では引き上げは考えておりません、こういう答弁を総理はされているんですね。まず、これは長官でなくて、大臣はこの点はどのようにお考えになっておりますか。
#195
○国務大臣(山中貞則君) まず、答弁が大変もたつきましておわびいたします。
 まず具体的にお答えする問題としては、いままでやりとりを聞いておりまして私の手元でももう一遍これは財政収支、将来願望も踏まえながらまず基本的な考え方ですね、哲学といいましょうか、無資源国とはいえ日本がいざという場合に困らないようにするためにはどこまでどうすべきかという哲学と、それから既存の計画が本当に、いまの答弁でははっきりしない点があるんですが、既定の方針があるとすればその方針どおりに進んでいるのか、今後の見通しについて償還その他を含めながらどういう計画を持っているか、一応答弁はなされておりますが、私自身がだんだんわからなくなってきちゃったわけですよね。したがって、そういうもので私が得心し、国民にも堂々と説明できるような内容のものを検討してみたい。再検討といいますか、まとめてみたいと、そういうふうに思います。
 それから石油税は、今年度予算の執行には関係がありませんが、おっしゃったとおり従価税でございますから、直ちにそれは大蔵省全体にとって国の税収減の予想が立ちますので、来年度予算の編成からこの問題は取り組まなければならない問題であります。どうするこうするは財政当局との話し合いでありますから先の問題として、来年度予算の編成には直接関係してくるという問題と認識しております。
 第三は、石炭もしくは、LNGとおっしゃいましたか……
#196
○吉田正雄君 ガス消費税ですね。
#197
○国務大臣(山中貞則君) 液化ガス、そういうものに対して課税するという構想が自民党の一部にございます。しかしながら、原料課税あるいは代替エネルギーへの転換のその途中の素材に対する課税、原料に対する課税というのは税法の四条が成り立つのかどうか私は疑問を持っておりますし、その点については実現がすぐであるとか検討を始めておるとかということはございません。
#198
○吉田正雄君 まあいまの大臣の答弁で大分はっきりしたんですけれども、くどいようですがもうちょっと申し上げますと、石油代替エネルギー対策を推進するんだということなんですが、一番大きな分野というのは、これは原発になっているわけですね。で、原発を除いたその他の石油代替エネルギー対策費というのは、大体予算規模としては三百五十億とか五百億とかというきわめて少額なんですね、原子力を除きますとね。したがって、そのために石炭、ガス消費税をふやすんだという理由にはならないんですよ。その辺が大分ごっちゃになっているんじゃないかと、石油税が減収になると石油代替エネルギー対策上、じゃほかの財源だというんですけれども、石油代替エネルギー対策費というのは、いま言ったように三百五十億とか五百億でほぼ横ばいになってきているんでしてね、原発じゃないんです。そのために税率を上げるということにはならないんですね。そういう点では私は自民党部会の中の論議も区分をされないごっちゃの論議が行われている感じがしまして、いま大臣が御指摘になったとおりだと思いますので、そこを誤りますとえらいことになっちゃうんじゃないかと。そして、そこで上げたものをいま申し上げましたように国備基地関係の金が膨大になっていくということで、石炭、ガスの税金を上げたものがこっちへ返ってくるという、そういうことになりかねないというふうに思うわけですので、そういう点でひとつこの税金問題についてはいまの国備基地計画そのものの検討ですね、財政との検討というものを総合エネルギー政策の中でも十分関連づけた御検討を私はお願いしたいというふうに思っているわけです。
 特にこの前は時間がなくて、言葉不足で長官には気分を悪くされたようなことがあったかもわかりませんけれども、そういう意味で申し上げているんじゃないんですが、ただこういうことが言われていることは――これは長官には関係ないですよ、そうじゃなくて、備蓄の中でも船のようなもので備蓄するという計画もあるわけなんです。そこで、鉄鋼業界とか造船業界が基地建設に――とにかく不況対策ということなんでしょうけれども、圧力をかけてつくれつくれという圧力というものが非常に強まっているんじゃないかということが言われておるというんですよね。これはそうだといたしますとエネルギー対策という、あるいは国家備蓄基地建設という、そういう中身に入った論議とは別に、とにかくつくってもらえばいい、船をつくればいいという、こういうことになって本末転倒もはなはだしいわけですし、しかもそれが大きな財政負担になるわけでありますから、いやしくもそういうことのないように、私は通産大臣に心からひとつ要望いたしたいと思うんです。
 そういう点で、当初申し上げましたように山中通産大臣は誠意を持って検討するというふうにおっしゃっておりますので、そういう点で時間も参りましたからもう一点だけ聞きたかったんですが、これは三十一日あたりのまた所信表明の際に最後のところはお聞きすることにいたしまして、きょうはこれで質問を終わります。
#199
○委員長(亀井久興君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時二十分まで休憩いたします。
   午後一時十七分休憩
     ─────・─────
   午後二時二十分開会
#200
○委員長(亀井久興君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#201
○田代富士男君 私は、最初に中小企業問題についてお尋ねをしたいと思います。
 去る三月の四日に発表されました日銀短観によりますと、中小企業、製造業の動向は、業況判断につきましていろいろな角度から述べられておりますけれども、五十八年度の伸びは低いという予測がされておることはすでに御承知のとおりでございます。また、マスコミ等の報道によりましても、景気てこ入れ策の柱といたしまして公共事業と金融政策弾力化が考えられておりますけれども、予算成立後に直ちに経済対策閣僚会議を開き、具体策をまとめるということでございましたが、昨日も私、経企庁長官にもお尋ねいたしましたけれども、後藤田官房庁長官が、予算成立後この景気対策へのてこ入れというのは直ちにということであったけれども五月にずれ込むというような、こういうような談話等も発表されておりますし、また、通産大臣は、低迷する景気てこ入れのために経済活性化対策の検討を指示されております。公定歩合の引き下げの問題、きょうは参議院の大蔵委員会等におきまして竹下大蔵大臣等がこの問題に対しても前向きの発言をされておりますし、公共事業の大幅前倒しの機敏な経済政策の運営が必要であるということから、通産大臣といたしまして、景気てこ入れ策といたしまして事務局に指示されたと思いますけれども、どういう指示をされ、また、対策の必要性をどのように感じられていらっしゃるのか、こういういま申し上げた立場から勘案して、最初にお答えいただきたいと思います。
#202
○国務大臣(山中貞則君) 通産行政の中だけではどうも八方ふさがりのような感じを持っている。まあ一般国民の消費者までそういう感じになっているときに、活性化していくというような手段がなかなかとりにくいものでありますから、かと言って、一例を公共事業にとりましてもそうですし、公定歩合にとってもそうですが、通産省の所管ではない問題をどうしてもやってもらわなければならない。それに、財政上はお金がないことはもう閣僚である以上みんなわかっていますから、借金をどうするかという問題、返済をどうするかという問題の議論はあっても、現時点で新しい財源というものを拾い出して新しい政策を打ち出すというのもきわめて困難なものでありますから、まず、内部の方で、垣根の外に出すとこれ省庁間の問題で、権限の問題がありますから、中で検討してみるという意味で内部検討を命じたわけであります。
 でありますから、それには当然ながら住宅建設の促進あるいは都市再開発の促進、大規模プロジェクトの推進、民間設備投資の活性化、新規産業分野の活動基盤の整価、地域経済の活性化、構造不況業種対策、中小企業対策、こういうふうに一応は並べてあるのでございますが、どうも自分たちの手だけではなかなか負えない。たとえば中小企業対策、こう言いましても予算の上では確かに税制上の承継税制というものも一応は目鼻をつけた感じでありますし、中小企業促進税制というものもまあまあの形で一応新規事業としてやってみたんですが、しかし、それでは足りぬじゃないかというお声はもうその途中からあったわけですね。ということは、私どもが中小企業投資促進税制を構想どおりに実現してもらうためには大蔵省に新たに財源を二千六百億準備してもらわなきゃいかぬ。しかし、それは不可能に近いことでありましたので、比較的中小企業がとりやすい方策としての特別償却というもののみにしました。そして建物とかリースとかという対象も外して約三百億ぐらい、大蔵省はそれでも金をこちらの方に割かされたという編成をしたと思いますが、それでもしかし効果という点では一千百億ぐらいはなるだろうという見積もり等もできるわけでありますが、しかし理想どおりにやりたいと言えばやはり税額控除、特別償却あるいは選択制、こういうようなもので建物もリースも加えて、この際、中小企業一斉にじゃこの期限のある間にやろうじゃないかという気になってほしかったのでありますが、しかしそれでも若干の誘引剤、促進剤にはなっただろうと思っております。
 そのようなことでございますので、就任以来真っ先に昨年言いたかったことは公定歩合の問題でございましたし、公共事業は政府全体の予算を見ればこれは前倒しの前にまだ問題がある。今年度下期に後年度負担ということで、しかしその後年度負担のものを入れて公共事業費は対前年同額ということであれば、そののめり込みはそのままことしの実際の事業費にならぬ。その残りを足して全部ですから、そうするとその分を差し引いた残りが同額ということは、事業量としては大きな減少である、だれが見てもわかることなんです。
 しかし、それをやはりこれは建設省、大蔵省の問題でありますから、表の方に向いて出して言うということは差し控えながらも、これらの諸施策というものを総合してやっていって、そして中小企業を底辺として日本の産業の起爆剤をもうそろそろやってもらってもいいではないかと思っておったのでありますが、四月に入らなければというのはもう御理解のように、三月いっぱいかかりまして予算の成立を待って論議をしているわけでございますから、予算が成立する前に前倒しをしたら、あと残りの下期はどうするんだということを返事しなければなりません。そうすると、それは補正予算を組みますなんということは予算成立以前には言えないという、ただの予算に対する誠心誠意通過さしていただくためのこれは政府・与党の理性でありますから、またそういう穴のあいた予算であるようなことを事前に申し上げることはできない。これは与野党よく理解していただいておりますから、ここのところのトラブルはありませんが、形式だけでも予算成立後にしたらということで、閣僚会議も総理が主宰をしまして、ごくわずかな関係閣僚でありますが、二回目をなるべく早く開こうということで、第一回は総論みたいなものを言い合いまして、そして今週招集があるんだろうというぐらいの心づもりではおります。しかし、その間、関係各省より総理の手元には予備知識としてこういうようなことを各省は考えているというものを挙げておいてもらいたい。総理の方からは、余り財源の伴う問題、そういう問題に集中しないで、住宅建設ならばほかにいろいろな規制があるんだろう、それは一例でありますが、そういう金を使わないで民間が自由に踏み出し、活力を編み出せる場所が、規制があるばかりに枠があったり、天井が低かったりする点があるんじゃないか、そういう点も考慮しろということでありましたが、それについては私どもは私どもなりに意見をすでに申し述べておるところでございます。一応これだけ御答弁申し上げます。
#203
○田代富士男君 いま通産大臣が八方ふさがりの中で活性化できる手段というものは通産省の枠としては非常にやりにくいけれども、その枠内でこのようにやっているんだという努力を多とするわけでございます。
 そういうわけで、大臣からの内部検討を命じられまして、いまもお話ありました八項目にわたる検討項目が定められたかと思うわけでございますが、その中に新規産業分野の活動基盤の整備、地域経済の活性化と並んで中小企業対策が挙げられておりますし、さらに活性化対策の柱といたしまして、いま通産大臣も申していらっしゃいましたけれども、各種規制の緩和策もこれは大事であると、これは通産省としても一番取り組みやすい問題ではないかと思いますが、これらについて具体的にどのようなことを考えられているのか、いまただ単なる緩和策の問題等ということを申されましたけれども、そういう立場から各種規制の緩和策の中に、たとえば大型小売店舗の出店制限の解除など、こういうものについてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、昨年二月以降の出店凍結以後、大型店の出店状況がどうなっているのか、こういうところをもう一度御説明いただけませんでしょうか。
#204
○国務大臣(山中貞則君) 現在の検討の中には、大型店の出店規制と申しますか、出店の規制の問題を具体的な対象には挙げておりません。
 ただ、ついででございますから、建設省に属する問題でございますけれども、閣僚懇談会と申しますが、そういうところで私が提案いたしました各種規制のうちの、たとえば住宅を一例にとって申し上げますと、いま二百四十万戸の空き家が現にあるわけでございます。しかし、国民のニーズとしては、質の面で住宅が足りないという現象が起こっているのではなかろうか。
 では、なぜ二百四十万戸の空き家があるのだろうかということになりますと、それは借地借家法という法律でこれ建設省は二回ほど国会に提案しまして、貧乏人いじめだというのでやられて廃案にされちゃった経験を持っておるものですからなかなか出さないんですが、党の税制調査会長をしておりましたときに、土地税制を恒久税制にいたします際に、土地税制は何のためにやるのかと言えば住宅のためにやる、住宅のために最も立ちふさがっているものは借地借家法であるということで、これを国会に出すことを条件に税調としては決めたんですが、なかなか出さないんですね。それで、今回もそのことを出しましたし――ということは、借家人の方が非常に権利が強いわけですから、家主さんの方はだんだん老朽になっていって、住んでいる人も、二階建てならば二階の廊下に一つ洗面所が共同のものがあって、おトイレは一番奥の方に共用であるというようなところがまだあるわけです。本当は家主さんもつくりかえたいのだろうと思うわけです。しかし、家賃の方は思うようにできないし、そのうちに一人去り二人去りしながら空き部屋がだんだんできていくけれども、残っている人がおる以上、建てかえるわけにいかぬという、そういうことが積もり積もって二百四十万戸という大変な数の空き家があるのに、しかしそれには住める環境ではないということであるならば、そこのところを既成市街地内において、それは存在する空き家ですから、それを建てかえられるようにしてあげたらどうだ、幸いマンションなんかについても、政令改正でマンションの建てかえについて四分の三が賛成すれば建てかえられるというようなこと等も、チャンスですから、この際、マンションからそういう小さい長屋みたいな家まで含めてそれをやれば、国が金を貸したりなどしなくとも、民間の人たちは建てかえたくてしようがなかったという人たちもおられるでしょうし、半分公団との間に契約をして家を建てて借家をつくるとか、いろんな方法があるわけですから、そういうようなことでやったらどうか。
 あるいは、東京都内の大部分の地域は十メートル以上は高さの制限があって、第一種専用住宅地域は三階がつくれない、そしてもうこんな狭いところにごちゃごちゃ住んでいるんですから、チグリス・ユーフラテスの時代じゃあるまいし、縦の方に人間の知恵で伸ばしていくことは当然あっていいじゃないか、日照権の問題等仮に出てきても。
 だから、実際は私、自民党の税制調査会長でありましたときに、去年、おととしですか、大変越権行為でありますけれども、特に頼んで東京都の、知事じゃありませんが、責任者に来ていただきまして、何とかこの第一種専用住宅の十メーターの制限を外してもらいたい、でないと、土地税制を幾らやっても、住宅税制をやっても、これが思うように活用できないということを説明しまして、やっと環七と申しますか、環状七号線の内は取っ払ってもらったんですが、逆に、地図を前にして見ますと、環状七号線の内に含まれている地域は残りはわずかだと。ですから、せめて環八以内はどうでしょうかということを言ったんですが、なかなかうんと言ってもらえていない。
 こういう問題を二、三点取り上げながら、このような制限によって――衣と食と住が基本的な国民の政治に対する願いであるとするならば、衣と食は足りて久しい、しかし住のみいたずらに充足できない国家というのはかたわじゃないか、政治としておかしいじゃないかという議論をいたしまして、それをどうするかの結論は出ておりませんが、そういうふうに、わずかな閣僚の総理を座長にしての懇談会ですから、思うように、国務大臣としてよその垣根を乗り越えていって議論をしてやってみようじゃないかと。
 ただし、私がとめに入りましたのは、ここで公定歩合引き下げを日銀に要請するといいますか、意思を政府として出そうではないかという意見もあったから、これはいかぬ、これはやはり中央銀行の日銀の主体性というものがあるので、これは日銀の御判断に待つべきものであるということで、それはとめる方に回ったりなどいたしまして――第一回だけの会合でございますから、この次あたりの会合でぼちぼち国民の御期待に沿えるものが、各省庁横並びで幾つ出ますか、知恵をしぼってみたいと考えております。
#205
○田代富士男君 これは、報道によりますと、大蔵省の首脳がこのように言っております。
 自民党が来年度上期に公共事業の八〇%以上の集中執行を要求している件は、今年度予算の補正で追加した公共事業の契約がまだ残っているし、消費者物価が安定しているなど景況観も必ずしも悪くないので、経済の実態に即して考えるべきだ、中小企業向けの投資減税など税制面のてこ入れは時間的にも間に合わないだろう、こういうふうに述べたということが伝えられておりますけれども、いま申し上げた中で、公共事業の前倒し執行につきましては、通産大臣の御意見と相反する方向ではないかと思うんですが、これらの発言についての大臣の見解はどういうお考えであるかということをお聞きしたいことがまず第一点。
 第二点は、景況観が必ずしも悪くないという発言については、これはちょっと納得できません、私も。通産大臣としてどのようにお考えであるか。
 第三点は、中小企業投資減税については、中小企業の設備投資促進の効果をどの程度に見ているのか、またこれを二年間に限ってやるというのはどういう理由であるのか、その根拠等を明確にしていただきたいと思いますが、この三点、まとめてお答えいただきたいと思います。
#206
○国務大臣(山中貞則君) その大蔵省首脳はあっぱれだと思いますよ。財政を預かる者として、財源のあてもなしにほいほいと、結構ですなあなんという、そういう大蔵大臣がおったら、日本はもうだめになっちゃいますから。その大蔵省首脳はだれかわかりませんが、いまのところあっぱれであると、それは財政理論上正しいんですから。だがしかし、そうは参らなくなるだろうということもつけ加えておきます。
 政治というものはやっぱり必要なときには必要な決断をしなきゃならぬ、客観的な情勢のみでもって、決断なしで政治というものはもう存在しないと私は思いますし、政治はそれこそ、それが政治であると思うので、しかるべきときにしかるべき発言をしかるべき場所でいたしたいと思います。
 それに、いまのは修飾語でしょうが、景況としてはそんなに悪いとは思わないというのは、ちょっと皮膚感覚が鈍っている人じゃないでしょうか。だれがそう言ったのか、これはわかりません。わかりませんが、とにかく去年の年末の零細小規模企業でボーナスを本当にどれだけ支払えた企業主がおるだろうか、これは疑問に思うぐらい少ないです。
 あるいはまた、週休二日制にしても、自分たちは盆と暮れに休めればそれで満足ですというような働き方をしている人たちもたくさんおるわけですね。それが日本の産業の岩盤を支えている人たちの構成者であることを考えると、今日の景気がここの人たちにとって全く先き行き明るさの見えない、そして自分たちの企業収益もこれから先、見るべき見通しがほとんど、政府からもあるいは示してもらえないという不満もあるかと私は見ていますが、自分たちの努力ではどうにもならないが、この先どうなるんだろうという意見の持ち主が圧倒的だと思うんです。そういう意味で、私たちは単にお上からの景気対策をどうしてやるというような考えではなくって、いまの一般の人たちの中小企業、零細小規模企業等が陥っておられる状態というものに対してどう私たちがこたえられるのか、その人たちのたいまつに火を点じてあげられるのか、そういう角度からやらなければならぬと自戒しておるつもりでございます。
 中小企業投資減税については先ほど申し上げましたし、その効果というものはやってみなきゃわかりませんが、やり方を実は期限を切りたというのはこういうことなんです。去年、これは中小企業じゃなくて、エネルギー関連投資に対して設備投資減税をやってみたんです。そして一年間の実績をずっと拾ってみますと、やっぱり過去五年なら五年をとって、それよりもエネルギー投資促進税制を出発、これも期限が切ってありますから、そうすると、その出発した年度をぐっと三角形をつくったようにほぼ横ばいだったものがエネルギー設備投資が上がっております。これがやっぱり税の促進効果なんですね。その実績を今度はさらに分解してみますと――その前に、様式としては今回もしたがって過去五年の平均の中小企業の設備投資の数字を拾って、その平均よりか高くなるべき部門についてめんどうを見る、こういう手法をとったわけです。そのときに、エネルギーの方でやった結果を見ますと、これは大中小決めていませんので、どっちの手段を、税額控除をとったのか特別償却をとったのかというものを見てみますと、税額控除をとっているのは大企業の方が非常に多いです。そして特別償却を採用したのは中小企業者に多いということで、今回できれば、税額控除まで考えたんですが、これは金を食うものですから、どちらがいいかと言えば特別償却というもので、中小企業が利用しやすいようだからこちらの方でやっていこうということで、しかし中小企業ですから短兵急に一年間というわけにはいきませんので、二年間だけやります、その間にうんとやってください、これが全体の景気の再出発への糸口の一つに、出発点になればという願いを込めてやったわけでございます。
#207
○田代富士男君 次に、企業倒産の問題についてちょっとお尋ねいたしますが、景気の立ち直りがおくれている中で、十月以降の件数が急増をしていることは御承知のとおりだと思いますが、三カ月連続して千五百件台に乗せておりますし、この結果、五十七年の一年間の件数が一万七千百二十二件、負債総額が二兆三千九百三十一億円余りとなっております。またこれは後半になってふえている傾向がありますけれども、この状況を通産省は特に今度金融面からいかに分析をしていらっしゃるのか、まずお尋ねしたい。
 それと、いまも申したとおりに、本年に入って倒産の傾向というものは衰えておりません。二月の企業倒産件数という数字を見ましたら千三百三十五件、前年同月比で四・七%の増加になっておりますし、この先さらに景気が停滞するようでありますれば、これは一段と厳しくなってくることは御承知のとおりだと思いますけれども、最近倒産のこういう傾向がふえてきているというその理由はいろいろありましょうけれども、どのように受けとめていらっしゃるのか。また、ちょうどいま時期は三月の決算期でございますし、それに対しまして、やはり通産省といたしまして何らかの措置をとるべきではなかったかと思いますけれども、こういうことに対してどういう措置をとり、企業を守ろうと努力されたのか、そこらあたりちょっとまとめてお答えいただきます。
#208
○政府委員(神谷和男君) 御指摘のように、昨年の末に入りまして、いわゆる危機ラインと言われておりました千五百件を超える月が続いてきておりましたが、前年同期比あるいは最近五年間の状況で見てみますると、大体年末は季節的な要因がございますので、どの年も倒産の件数というものがかなり高いレベルになってくるわけでございまして、たとえば十二月千五百五十八件ということでございましても前年同期に比べますと二・二%減、あるいは十一月も二・五%減という形で、われわれといたしましては、こういう状況を高いところで一進一退と、このように受けとめておったわけでございます。しかし、御指摘のように一月に入りまして、件数はこれも季節的要因がございますので千二百五十一件ということで、レベルはかなり下がりましたが、前年に比べますと一・一%増ということで、前年より高い水準にきた。二月の動向が注目されましたが、先生御指摘のような四%強という形で前年のレベルを上回っておると、こういう状況でございます。三月は季節的要因がございますので、また件数の絶対値そのものはかなり上の方にいくのではないかと思っておりますが、加えて前年同期とあるいは最近の何カ年かの状況と比して果たして下回っていくかどうか、われわれ最近の状況を見ておりますと、ややこの動向を危惧をしておると、この一、二カ月の状況というのは余りよい感じがしないという、非常に俗な言葉で言えば、そういう感じがいたします。
 この状況を全般としてどうとらえておるかということでございますが、景況は先生御指摘のとおり非常にここのところ長い不況が続いておりますので、中小企業の体力が弱っておりますが、幸いというのかあるいは何と申したらよろしいかわかりませんが、金融はかなり緩慢な状態が続いております。したがいまして、金融が緩慢であるということと景気の不況が一挙にきませんで、じわじわと続いておる、こういうことから倒れる企業は余り高いレベルになっておりませんが、先般の暖冬の影響とか、いま御指摘の年度末というような要因から、二月の水準に続いて三月あたりというのは非常に注意しなければならない、このように考えております。
 これに対してどういう対策を講じておるかということでございますが、いま申し上げましたような状況で、政府関係金融機関の資金量は十分現在ございます。したがいまして、私どもは中小公庫、国民公庫あるいは商工中金等の金融機関に対して、窓口で最近の状況を十分踏まえて、中小企業者の実情に適切に耳を傾けて、できるだけ親身になった相談をするようにと、さらには信用保証協会等にも同様のお願いをしておりますし、また最近その保証協会の会合がございますので、これは私が出てまいりまして、そこでも強く要請をいたしたいと思っております。
 さらに、後ほどまた触れる機会もあるかと思いますけれども、不況の相談室、倒産防止相談室がございます。これらに対して季節的な要因もあるので、特にきめ細かな指導を行うと、このような指導を現在行っておるところでございます。
#209
○田代富士男君 現実には倒産件数がふえているわけでございますから、その倒産の内容を見てみますとさまざまな形態があります。御承知のとおりに、銀行取引停止処分によるものだとか、あるいは会社更生法適用申請による倒産であるとか、また和議申請によるもの、自己破産についてのさまざまな形態がありますけれども、五十一年から五十七年までの比率を簡単にお示しいただけませんでしょうか。
#210
○政府委員(神谷和男君) 御質問でございますが、恐縮でございますが、五十三年からの数字しか手元にございませんので、五十三年から五十七年までの数字で御勘弁をいただきたいと思います。
 商工リサーチ調べの先ほどの倒産件数に対応する数字でございますが、銀行取引停止処分は全体の倒産のうち五十三年が九七・〇八%、五十七年になりますとこれが九五・九四ということで、銀行取引の停止処分、負債一千万以上の倒産の中ではウエートを逐次減らしてきております。これに対しまして和議、これが五十三年の一・二五%から一・七七%、自己破産が〇・八六%から一・九四%に、ともに小さなウエートではございますが徐々にウエートを高めてきております。会社更生法は五十三年の〇・三〇から〇・一五に、会社整理が〇・五〇から〇・二五に、これはともに減少の傾向を示していると、こういう状況でございます。
#211
○田代富士男君 ただいま御説明いただいたとおりに、銀行取引停止処分によるものあるいは会社更生法適用申請によるものが比較的に数字の上で低下をしてきておる一方、和議申請によるものあるいは自己破産の比重がふえてきているわけなんですが、このような倒産形態の変遷について通産省としてどのように分析をされているのか。また、和議申請したものの、会社更生法の適用申請をしたものの、やはり再建をしなければ目的が達成できないわけでございますが、こういう再建等をどのように把握されているのか、再建まで平均何年ぐらいかかっているのか、そこらあたりまでやはりきめ細かく温かく見守る必要があるのじゃないかと思いますが、そこらあたりはどうでございましょうか。
#212
○政府委員(神谷和男君) 銀行取引停止処分が減少しておりますことは、この一千万以下の数値というのも別途ございますけれども、この段階ではかなり急激に減ってきております。これは一般的に申し上げましてやはり、自画自讃に若干なりますけれども、国あるいは地方公共団体のいろいろ政府関係金融機関による手当、あるいは制度融資の充実というものが逐次効果をあらわしてきておるものと考えられますが、負債額一千万以上のところで申し上げますと、このような動向とあわせまして、特に近年におきましてはやはり五十五年のかげり以降の景気の沈滞というものが、第二次オイルショックは第一次ショックと異なりまして、急激な落ち込みではなくして、御承知のように非常に長期の低迷、いわゆるじわじわと全身衰弱的な形で来る不況でございますので、加えて金融も比較的緩やかであるということから、ばたりと不渡りを二回出して取引を停止食うというような件数が徐々に減っていくという傾向が、一つ不況の様相の反映としてあらわれてきておるのではないかと、このように考えられますし、また同じような理由が、突然の取引停止処分とかあるいは破産というような形ではなくして、むしろじわじわ来た不況でございますので、事前に余り人に迷惑をかけないように自己破産をするとか、あるいは和議というような形で関係者と話し合って始末をつけながら再建の道を歩むと、こういう方法をとらせているのではないかと思いますし、またとらすことが可能になっておるのではないかと、このように考えております。
 しからば、会社更生法が何で減っておるのかということでございますけれども、これは大企業は比較的使いやすいわけでございますが、中小企業は手続がどちらかと言えば非常に複雑でございますので、むしろ和議の方に中小企業は来ると、こういうことで、件数でとらえた場合には和議の件数が上がり、会社更生法の件数が減っておるのだ、こういうふうに考えます。
 したがいまして、ただいま御説明いたしましたことを要約いたしますと、近時の不況の状況、じわじわ型の不況というものを反映してこういう傾向があらわれているのではないかと、このように考えております。これらの更生法、和議というのがどちらかと言えば再建型でございまして、自己破産はそこで一応ピリオドを打ちますので、それら全体のこういうタイプのいわゆる倒産がふえてきていることに関しましては、先ほど申しました倒産防止対策室等では、すべての対応あるいはどのように対応しようとしておるかというような倒産あるいは倒産の未然防止というものの相談に応じておりますし、あるいは必要な顧問弁護士等を紹介をしながら、これらのいわゆる企業のお悩みに、御相談に応じておるわけでございますし、必要な制度金融等のあっせんを行っておるところでございます。
 しからば、破産したものは別といたしまして、更生法や和議で再建を図っている企業は一体どういう状況になっておるかということでございますが、御承知のように更生法等の手続に入りますと、これは裁判所の管轄に完全に属しまして、外部からなかなか手が出せない状況でございます。われわれもこれらの状況につきましては、最高裁判所の統計を伺うと、こういうことになっておりますが、たとえば更生法等では、最近四年間の数字で見ますと七割ぐらいは一応更生計画終結決定をいたしておりますので、七割程度、俗な言葉で申し上げれば、何とか再建が進んだのではないか。和議はこういう統計がございません。したがいまして、推察になりますが、この比率はもう少し半分近くになるのではなかろうかというふうに考えております。
 それから、立ち直りにどのぐらいの期間がかかるか。これも最高裁判所の方にいろいろ状況はわれわれは常時聞いておるわけでございますが、しかたる統計がないようでございます。また、別途いろいろな形で情報を収集したいと考えております。
 こういう更生法等の倒産企業の再建努力をどういうふうにわれわれとしてフォローアップするかと、こういうことでございますが、御承知のように、更生計画の認可決定までは管財人の完全にコントロール下に置かれますし、裁判官の指揮下に置かれますので、われわれとしては行政サイドでは全く手が出ないわけでございまして、認可計画で再建をスタートした後は、特に政府関係金融機関の融資手段等もあることでもございますので、そういう債権棚上げにしたほか、新しい再建計画に関しましてはできるだけ協力をしていく、こういうような形で現実に進めておるところでございます。
#213
○田代富士男君 いま御説明をいただきましたけれども、こういうような形態変化などの状況を考えたときに、当然中小企業施設に影響及ぼすことと思うわけでございますし、そうした倒産企業の再建に対する手だてをいま御説明いただきましたけれども、フォローについての考え方、もうちょっと温かい、何といいますかね、そういう手だてをすべきじゃないかと思いますが、もうちょっとそこらあたり何とか御説明できませんか、対策を。
#214
○政府委員(神谷和男君) まず、基本的にはわれわれの政策の第一義目標は倒産をできるだけ防止させたい、こういうことで倒産防止対策室、これでいろいろな制度融資その他と関連させながら、あるいは商工調停士の御協力を得ながら、これもやはりたとえば東京の例で申し上げれば、倒産駆け込み寺に来られた七割以上の方々が何とか再建をしておられるわけで、倒産に至ってないわけでございます。不幸にして倒産の範疇に入る更生法とか和議になりました際には、やはり更生計画をどういうふうにするかという問題に関しては行政としては手が出せない仕組みになっておりまして、むしろ裁判所並びに債権者の中でやはりいろいろな相談をなさった上で適当な計画を進められる。その恐らく再建計画というのはその限りにおいて衆知を集めた合理的なものだろうと考えられますので、われわれとしては、むしろその再建計画が円滑にいくように金融面その他で御援助を申し上げる、こういう考え方になっておるわけでございます。
#215
○田代富士男君 昭和四十三年以降の倒産率の椎移を見てみますと、五十二年の一・一五%をピークにほとんどは一%を割っております。こういう意味から、通常は百社のうち倒産するのは一社に満たない、こういう数字でありますけれども、しかしながら数字にあらわれない倒産といいますか、廃業が、最近の構造不況もありまして、ふえているというのが実情ではないかと思うわけでございますが、この廃業については、実態調査は現在行われていないようでありますけれども、通産省はこの問題に対してどのようにお考えになっていらっしゃるのか、まずお聞きしたいことです。そういう意味から、たとえば小規模企業共済制度の解約件数から割り出した廃業率はだんだんと高い方向へ推移しているわけでございまして、廃業そのものの見方によりますと、産業構造の変化をもたらす点では一面では好ましい点もある見方もあるわけでございますけれども、中小企業施策の大きな立場から見ますと、こういうような倒産率のみに注目するのだけでなくして、こういうような廃業率についても調査をいたしまして、適切な対策を講じていくべきではないかと思うわけでございます。いま倒産しないようにめんどうを見ているというそれだけでなくして、こういう点に対して通産大臣いかがでございましょう。
#216
○政府委員(神谷和男君) その前にちょっと私どもの状況を御説明させていただきますが、御指摘のように廃業の統計というのはないわけでございます。大臣からも累次指示を受けておりまして、私ども何とか廃業の実態をつかみたいと思うんでございますけれども、いわゆる、簡単に申しますと、俗に仕事、工場をやったり商売をやったりするのも登録制でないわけでございますので、自由に始めて自由に何らかの事由でやめられたと、これをフォローするというのは非常にむずかしいわけでございまして、現在いろいろ知恵をひねっておるわけでございます。
 その一環として、御指摘のように小規模共済の中にも、ひとつコンピューター化したことに伴いましてそういうプログラムを組み込んで出せるようにできないか、これもしかし、一つの保険にあるいは共済にかかった人たちの中の傾向でございますので、一つの時系列としての傾向値として意味がございますが、すべてではないと。しかも、ある程度の期間積み重ねませんと意味も出てこない、有意な数値が出ないと、こういうことでございます。さらに、全体として事業所の中でどのぐらいの廃業というのがあるんだろうか、あるいはその原因というものはどういうものであろうかと。これも調べたいと思っておりまして、現在種種の資料を使いながら一部区域につきましてサンプル的に調査もいたしておりまして、現在集計を図っておるところでございます。これとて万全のものでございませんが、このような努力を積み重ねながら、廃業というものの全貌といきませんでも、大体の姿というものをつかむような努力を今後も積み重ねてまいりたいと思っております。
 これに対してどういう対策を講じておるかということでございますけれども、廃業の要因という中をいろいろ調べてみますと、経営者が亡くなったとか、あるいは後継者が不在である、それから事業の先行きが不安であるというような理由が幾つか挙げられるわけでございますが、御不幸な死亡等を別にいたしまして、後継者がいないとか、あるいは譲る気がしないとか、あるいは譲り受けたがらないとかいうようなことで事業を廃業されたり、まあ場合によったら転業というところもあると思いますが、されるという傾向というものも、やはり一つ注目しなければならない問題でございます。
 これが転業でございますと、新しい分野に行くわけでございますのでむしろ喜ばしいケースもあるわけでございますが、せっかく営々と築いた事業がそこで一代限りでなくなるというのも悲しいことでございますし、また、事業の先行きが不安で閉めてしまう、先行きが不安である、あるいは先行きが余り望みないからより進んだところに転換していくというんならよろしいわけでございますが、それだけの意欲というのがなかなか持てないと、こういうことですと、これも非常に中小企業の活力維持のためには悲しいことでございますので、われわれといたしましては、こういう原因に対応するための、対処するための施策をいろいろ考えていかなければならないと考えておりますが、先ほど大臣から御紹介いたしましたように、こういう問題、特に後継者問題に関しましては承継税制の拡充というのを図らせていただくことになりまして、私どもはこれによって若手の方方が喜んで事業を継ぐ、そういうような方向にできるだけ持っていきたいと思っております。
 さらに、中小企業大学校の中でも後継者のための研修コースというものを非常に強化いたしておりまして、これには非常に意欲のある後継者の方方が、定員のたとえば関西校ですと三倍ぐらい応募されていると、こういう状況でございますので、こういう方々に広い知識なり新しい先端技術についての知識を持っていただき、意欲を持っていただいて、後継者としてりっぱに育っていただくなり、あるいは先行きが余り見えない事業からより新しい事業に若い意欲で転換していただくと、こういうような形で、転廃業というものがやむを得ないものを除いてはできるだけ少なくなっていくように努めたい、このように考えております。
#217
○田代富士男君 時間がありませんからもういまのあれで。じゃ、もう中小企業の問題といたしまして大臣に最後に。
 いまいろいろ御説明いただきましたとおりに、先行きが定まらない現下の日本の経済情勢下にありまして、体質の弱い中小企業の努力のみではなかなかできない面があることは万々御承知のとおりだと思うわけなんです。そういう意味で政府のバックアップが必要ではないかと思いますから、中小企業施策に対する通産大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#218
○国務大臣(山中貞則君) 倒産件数は毎月報告されて、千五百では危険ないとかいろいろ言われておるわけでありますけれども、一方、年間を通じての企業件数というものはふえているわけなんです。私はここに着目して中小企業庁長官に、この日本人のバイタリティー、あるいはまた末端に至るまで、小規模事業者まで非常に高い学力、世界ですぐれた能力を持つ国民で構成されている日本なんだから、倒産件数ばかりに目を奪われないで、倒産があっても総事業者数はふえるというそこのところにもう一つメスを入れて、その人たちは新しい事業なり、あるいはまた別な分野へ、あるいは近代的な分野へというふうにいろいろと変わっていっているか、新しくグループを生んでいる。このすばらしい活力のところに、もしわかるならばそこのところあたりを近代化促進法とか融資とか、そういうようなところで手助けしてあげることに注意を払ったらどうかという意味で指示もいたしたことがございます。
 私は日本は中小企業の国だと思うんです。大阪で世界の中小企業の責任者の大臣たちのサミットをやってみましたが、中小企業に対する法の定義が定められているのは日本だけなんですね。ほかの国はまだそこまでいっていない。そしてほかの国は、日本でなぜ大企業と中小企業とが併存しながらどうしてともに繁栄できるのかというのが最大の各国の大臣たちの疑問でございました。そうすると、私はやっぱり日本の場合は、よそを見て学ぶものはないなと、自分たちの持っているすばらしいものをより育て、より花を開かせる努力を官民一体となってやれば、中小企業に関する限り世界に冠たる日本になれるなという確信を逆に諸外国の多くの大臣たちと会ったために、自信といいますか、そういう、自粛、自戒しながらも将来に日本の中小企業有望なりという確信を得ました。今後もそのような意気込みで取り組んでまいるつもりでございます。
#219
○田代富士男君 大阪での中小企業サミットというのは地元でも高く評価されておりますし、いまの決意で中小企業育成をよろしくお願いしたいと思います。
 次に、原油価格引き下げの問題について質問をしたいと思いますが、御承知のとおりに、OPEC諸国の原油価格引き下げが現行より五ドル下げの基準価格二十九ドルの線で合意されたわけでございまして、わが国の原油輸入代金支払いが年間六十五億ドル減少すると。国民一人当たりに直しますと大体一万五千円の線が出てきているわけでございまして、原油値下げによりますわが国にとってのメリット、デメリットがあるかと思いますが、こういう点通産省としてどのように分析をされていらっしゃるのか。この景気浮揚に対する効果を今後どのようになさろうとしていらっしゃるのか。そういう面から、私はこのメリットは当然国民全体に返すべきではないかと思うわけでございますし、ここらあたり忌憚のない、ほかの大臣に比べてはっきり物を言われる通産大臣の方から、ここらあたり言える範囲内明確にお答えいただきたいと思います。
#220
○国務大臣(山中貞則君) これはもう先生がおっしゃるとおりで、私たちが今回受けるメリットというのは、日本の外交努力によるものでもなければ武力を背景にしてかち取ったものでもありません。ただ、OPECの加盟国の皆さんがカルテル崩壊を防ぐために結局値下げという手段に出ざるを得なかった。その恵みを私たちも受けることになった。したがって、物の考え方は、かつて二ドル原油だったものが、二ドル五十セントだったものが三十四ドルになったんだと、それにわれわれは耐えきれないで、まだ第二次石油ショックという打撃から立ち直れないでいたところに五ドルの値下げということで、平均標準油種で五ドルということで、向こう側の方で勝手に、経済のブーメラン原則その他があったにしても下げていただいたと。ですから、二ドルから三十四ドルになったものがそれから六ドル下がったんだという考え方をまず持とう。なぜ、こんなつまらないわかり切ったことを言うかと申しますと、六ドル下がった、さあ電気料金下げろ、ガス料金下げろ、これも考えなきゃいけませんが、もういまにもその安い油が市中に出るような話なんで、実は向こうの方で売る人々が合議して合意されたというだけであって、まだ一キロリッターだって買っちゃいないわけですね。ですから、それをすぐに買い始めたとして、買うことができたとしても、それが日本に着いて高い油と逐次均衡をとった価格で減らされながら、最終的に国際合意をされた、その安い油が日本国全体の資源エネルギー源としてあらゆる分野に供給されるのには半年のサイクルを見ておくべきであろう。そのために、それに通商産業省としてどのように対処すべきかという問題を、いま内部で、これは通産省でこういう会議をしたことがないそうですが、とにかく、大臣、事務次官、官房長、各省庁各局局長、外局の長全部、首脳部全部集めまして、通産省の英知の限りを尽くして、この手探り状態だった景気回復にこの五ドルは天恵である、天の恵みである、これを新しい一条の光とし、再出発の号砲としたいということで、懸命に取り組んでおるわけでございます。
 その際に私たちの願いは、これは国民全部のいただき物ということでございますから、国民の最終消費支出に至るまでの貢献を国民に全部均てんするというのがまず基本であって、そのためには、料金体系とかいろんなもの等が中に入ってきましょうけれども、最終的に国民が支払う代金あるいは供給される品物、そういうもの、あるいは対価、そういうものを全部考えてみて、生活も楽になり、そして、五ドルではなかなかでしょうけれども、少なくともそっちの方に向いていくという方向へ均てんしていくという点では、出発点と踏まえた原則は、先生おっしゃるとおり、この恵みは恵みとして全国民が少しはよくなりつつあるという、よくなったな、これは五ドル値下げのおかげだなと思うようにしたいというのが基本的な姿勢でございます。
#221
○田代富士男君 基本的な姿勢はわかりましたけれども、国民への利益還元の方法といたしまして、石油製品やあるいは電気、ガス料金の値下げなどの直接方法、あるいは電気料金の長期安定化や景気浮揚策を通じまして、間接的に還元するいろんな方法があると思うわけでございますが、五ドル値下げされたことによりまして、コスト軽減効果というのは電力業界では九つの電力全体で約五千億、また都市ガス業界では五百億、こういうことが見込まれておりまして、両方合わせますと大体一世帯当たり年間で二万円の料金負担の軽減、国民の間では電気、ガス料金引き下げに対する期待はきわめて大きいわけでございまして、この還元の方法としまして、電気、ガス料金の問題につきまして通産大臣としてどのようにお考えなのかお聞かせいただきたいと思います。
#222
○国務大臣(山中貞則君) 電気、ガス料金だけとか、電気料金だけ取り出されますと、なかなか端的には答えにくいんですが、いま御質問の中の言葉に、長湖安定というお言葉がございましたが、やはり振り返ってみて、円安効果というものを国民に還元せよということで、電気料金は引き下げて、そして各世帯ごとにわずかなものであったんですけれども、それでも一応満足してもらった。ところが一年半後には五〇%の値上げ申請を認めざるを得ない客観情勢になってしまった。こういうことを考えますと、今回は為替はちょっと理諭どおりに動かないので首をかしげているところでありますが、しかし、油の値段そのものが安くなるということはこれははっきりしたことであります。ただ、これがいつまで続くだろうかという問題については、まだだれも説明できる人はいないし、合意したOPEC加盟国の人たちも、いつまで続くかについては不安があるんじゃないかと思うのですね。これでうまく続くだろうか。逆に言うと、悪いことでは――われわれとしては悪いことじゃないんですが、北海原油がどう出るだろうか。そうなるとナイジェリアがまた反応する。またもう一遍、会議を開かなければ収拾つかぬという、それは下がる方の話ですけれども。要するに、ある程度の見通しをつけて、私が申しましたように、今回はクールに受けとめて、慎重な分析、判断をして、そして目的は国民のすべてに還元が、恵みが戻っていくように、そういう政策をやりたい。
 でありますから、途中でそれを国が税金で横取りしちゃうとか、恩恵を――ある非常に変わった論文でしたから覚えていますが、新聞の論文で、いまの国内価格の状態で日本は耐えていく経済構造のままでいくべきである。しかし将来のためを考えて、三分の二ほどは税金で国庫に入れて、国家経済に貢献させて、残りの三分の一、これがユウニークなんですが、産油国の地下に、お金を払って、そして置いておってもらえと。それで、それをいただくときには、そのときの値段がどうなっているかは別にして、その買わしてもらったときの値段で持ってくるようにしておいたらこれは非常におもしろいじゃないかという、おもしろいとは書いてありませんが、私のあえて個人的な私見であると書いてありましたけれども、その後段の点については、相手のあることですから、何を言っているんだ、おれの国の地下に貯蔵するとは何だと言われたら、それでおしまいですから。ですけれども、それぐらいの発想はあっていいのではないか。
 しかし、その前段の、経済構造が三十四ドルで耐えていけているかというと、耐え切れない状態でいま苦しんでおるときなものですからね。それのために、それを維持するためにという前提は私はちょっとこれはとりにくい。したがって、そういうふうに税を、五ドル下がったことを奇貨として、その分から税を取るという考えも私は絶対に採用させないつもりでおりますが、そういうようないろいろな人の意見とか、発言とかなんかを参考にしながら、やっぱり電気料金にしても、ガス料金も、特定のところだけでしょうが、やはりそれだけの分はまるまる、五ドル下がったから五百億、そのうちの九電力、沖縄電力で平均幾らという、そういうことではなくて、去年、電力料金の値上げの申請をしかけていて、いわゆる円が戻して、あるいは石油のだぶつきもあって、それで一遍手をおろした業界ですから、そこらのところもどうするかについて各社ごとに検討をして、そして最終的には電気料金もその対象に当然考えるべきである。付随してはガス料金もですね。
 そういうことがございますし、一方、LPGの方になりますと、これは一般家庭から自動車のタクシーのあれまで積んでいるわけですから、こっちの方は随伴ガスでございますから、石油の向こうの出荷量が減れば、それが量が減るものですから、値上げを逆にしてきている。ここらのところもやっぱり値上げをされたら、それも、じゃ、ぽんといくかという、ここら辺をうまく何かバランスをとる産業政策というものはあり得るんだろうと思うのですよ。そういうことを考えながら、いまおっしゃいました二点も当然検討の対象にいたしてまいります。
#223
○田代富士男君 私が申し上げた電気、ガスだけ、二つだけを取り上げて、それに的確なお答えはできないとおっしゃる理由もわかりますけれども、御承知のとおりに電気料金は世界で日本は一番高いわけなんです。こういうところから国民生活や素材産業を圧迫している実態というものも御存じだと思うわけなんですが、そこで、かつて五十三年の十月でございますか、円高差益還元を料金割引の形で行った例もあるわけでございますし、そういう立場から電気、ガス料金の値下げに通産省及び電力、ガス業界の人が前向きに取り組んでいただけるようにひとつ通産省の方からも指導をお願いしたいと思うわけです。これは国民の声を代表して申し上げるわけでございます。
 それと、今回願ってもない国民に対する還元をどうするかということは、広い立場でという大臣のお話等もございましたから、私は石油値下げの各産業分野に及ぼす影響を詳細にこれ検討調査して、産業別の調査結果を、私この委員会に御報告をしていただけるだろうかと。これは委員長にお願いしたいと思いますが、一つ一つ取り上げては時間がありませんから、そういう各産業別のそういうあれをひとつ報告を求めたいと思いますが、委員長よろしゅうございましょうか。
#224
○国務大臣(山中貞則君) 承知いたしました。
#225
○田代富士男君 だから、そういう意味におきましてそれをお願いしたいのでございまして、そういう業界に対する前向きの検討をひとつお願いしたいと思いますが、この点どうでしょうか。
 私の質問、あとソフトウェア産業の質問を予定しておりましたが、時間が参りましたものですから、おいでいただいている皆さんに申しわけございませんですけれども、いまの質問で終わります。最後に大臣のお答えをいただきたいと思います。
#226
○国務大臣(山中貞則君) 私にしては歯切れが悪いとお考えにならぬように……。
 要するに、機械的にそろばんはじいて、幾ら下がったから電力料金も幾ら下げてもいいんだという、そういうことを短兵急にやらないで、前車の轍ですね、いまおっしゃった、各家庭に円高のメリットを還元させたとおっしゃったんですが、その一年半後に五〇%上げたんですよね。これは政府としては少なくとも私は見通しとしてみっともないことをしたと思うんです。よしあしは別ですよ。やっぱり今回やる場合はじっくりと腰を据えて、一体いつごろまで続くのだろうか、何年もってくれるのか。少なくとも二年間もってくれるんならその間だけでも、後上がることはわかっていてもその間だけでもという計算はできます。しかし、日本に油が着くのがタイムラグがずっとあるわけでありますから、着いたころにはまた上がっていたというのに、それに料金だけ下げておいたというんじゃ半年でまた上げなきゃならぬというおかしなことは今回はしないで、その意味で冷静に判断しながら見ていくということを申したわけでありますから、歯切れはよろしいんですが、どうするのかという単純な問いについてはちょっと歯切れが悪いようにも聞こえると思いますが、それだけ慎重な検討をさせてほしいということでございます。
#227
○市川正一君 各省の元高級官僚が、今度の参議院比例代表選挙に自民党から出馬するために、いわゆる官庁ぐるみ選挙や、所管業界をフルに使った選挙運動を展開していることがいま大きな社会問題になっております。通産省からも元事務次官の矢野俊比古氏が田中派から立候補するために際立った活発な運動を進めております。
 そこで、まず大臣にお伺いいたしておきますが、公選法で公務員等がその地位を利用して選挙運動を行うことは厳しく禁止されておりますですね。
#228
○国務大臣(山中貞則君) 原則はそのとおりですが、公務員にもいろいろございまして、はっきり目に見える選挙運動をしている、これ自民党サイドでない公務員もいっぱいおりますので、なかなかそこのところは、原則はそのとおりでございますと申し上げますが、実態は大分違うと思うんですね。
#229
○市川正一君 実態論は後で詳しく申しますから、私原則論を申し上げているんです。百三十六条の二、その地位を利用して選挙運動を行うことができない国または地方公共団体の公務員云々、これは明確でございますですね。
#230
○国務大臣(山中貞則君) そのとおりでございます。
#231
○市川正一君 ところが、私、きょうは商工委員会でありますから、通産省の幹部が矢野元事務次官のためにその監督権の及ぶ業界に対して、矢野支援を押しつけている。たとえば、これは埼玉の矢野後援会の会長である原次郎武州瓦斯会長ですね、この人は東京通産局の職員から会長就任の要請があった、こう述べておりますが、この場合は地位利用の選挙運動ではございませんでしょうか。
#232
○国務大臣(山中貞則君) そこらの微妙なところは、われわれ選挙をやっている者たちは、官僚組織を利用している人は別ですが、いろいろとあの手この手をやっておりますから、その行為について(「後援会長は選挙運動じゃないよ」と呼ぶ者あり)それぞれいろんな手練手管をやっておるわけでありますが、事公務員の行為についての御質問でございますので、私はその辺のことを調査もいたしておりませんし、官房長に答弁いたさせます。
#233
○政府委員(柴田益男君) ただいま市川先生から御質問のような事実は、調査したところございません。
#234
○市川正一君 ぼくが聞いているのは後援会会長がやっているんじゃなしに、(「やじを気にしなさんな」と呼ぶ者あり)いや、だけど官平さんともあろう者が何言うとるんだ。
 そこで、新聞がちゃんとそういう名前を挙げて原次郎武州瓦斯会長のことを書いているわけです。これはお確かめになったんですか。確かめたんですか、いま事実なかったと言うけれども。
#235
○政府委員(柴田益男君) そのようなことについて一応調査しましたところ、事実はございません。
#236
○市川正一君 一応じゃなしにきっちり調査したんですか。
#237
○政府委員(柴田益男君) きっちり調査いたしております。
#238
○市川正一君 じゃこれはいわば誤報ということになるんですか。
#239
○政府委員(柴田益男君) 誤報かどうか、その辺はあれでございますけれども、当方の調査として、私が承知しているところでは、そういう事実はないということでございます。
#240
○市川正一君 これはやはり責任を持った記事ですから、名前が挙がっているんですから、一応じゃなしに本格的にきっちり調査して後で聞かしてもらいたい。
 それだけではないんですよ。通産省に野々内隆官房審議官がおられる。この審議官は「今度の選挙は、自民党にどう評価されるかだ。機会あるごとに矢野のイメージアップを吹き込むのが私の仕事」、こう言うとるんですよ。まあ頭かいていらっしゃるけれども、大臣、事実、同氏は通産省における欠野選挙の采配を振るっている事務長とも言われ、心部長とも称せられている人物なんです。官房審議官が、こういう選挙運動やるのが「私の仕事」だということを新聞紙上で堂々と談話を発表しているんですよ。私は、こういう通産省の上層がいわゆるぐるみ選挙をやっていることを放置していいかどうか、これは大臣どうですか。いや、大臣は最初お答えになったんだから。あの手この手の一つかどうか知らぬけれども、これはどうなんですか。
#241
○国務大臣(山中貞則君) 国家公務員違反事件として問題になればやらなきゃなりませんが、そのようなことをやったかどうか、これは本人もここにおりますからね。ですけれども、官房長がかわって答弁をすると言いますから、答弁をさせますが、それはまさか選対本部長だなどと、そんなことをやるはずも言うはずもないと私は思うんですが、私の感想としてはそうです。
#242
○市川正一君 御本人がいらっしゃるならば、あなたもこの記事はごらんになったと思うんだけれども、ひとつどうなんですか、「私の仕事」だというのは。
#243
○政府委員(柴田益男君) 官房長として省内全般の責任を持っている者として、本人はそういう事実はない、そういうことを述べたことはないと、そういうふうに私は報告を受けております。
#244
○市川正一君 先ほどのも一応調べたけれども、そうでなかったと。今度も聞いてみたけれども、そんなことを言うてないと。それは世間通りませんで、そんなことでは。
 私、もう一つ聞きますがね、社団法人全日本冠婚葬祭互助協会というのがある。この業界を担当しているのが産業政策局のはずですが、間違いありませんか。
#245
○政府委員(斎藤成雄君) 間違いありません。
#246
○市川正一君 矢野氏が事務次官につく以前は産業政策局長だったと思うんですが、確認いたしたい。
#247
○政府委員(柴田益男君) おっしゃるとおりでございます。
#248
○市川正一君 この全日本冠婚葬祭互助協会については、通産省はよく御存じだと思うんですが、その悪徳商法が重大な社会問題にもなって、国会でも取り上げたことは周知のところです。それはまあきょうはさておいて、この協会が互助会通信という機関紙を出しております。これがそうであります。済みませんが、大臣にもちょっと渡してください。三月十日付百十一号でありますが、この一月から二月にかけて同互助協会の近畿、東北、北関東、南関東の各地域ブロックの会議が開かれております。いま見ていらっしゃるその面でありますが、これらの会議には、たとえば東京通産局の緑川消費経済課長、赤線でアンダーラインしておりますから、赤い色鉛筆で、あるいは福井係長あるいは荒巻事務官、こういう人たちが出席をいたしておりますが、この点まず確認をいたしたい。
#249
○政府委員(斎藤成雄君) 出席をしていることは事実でございます。
#250
○市川正一君 ところが、通産省から出席している会議において、同様に黒でアンダーラインをしておりますが、すべて矢野氏の選挙に対する支援協力体制がここで話し合われております。この業界はいま確認をされたように、矢野氏が産業政策局長時代にめんどうを見てきた業界であります。しかも現在も悪徳商法として問題になっております「冠婚葬祭互助会の契約約款の適正化について」という問題が通産省の附属機関である販売審議会約款問題の分科会、私ここにも資料を持ってきましたが、これは大臣にもお渡しするまでもございませんが、そこで審議中であり、二月二十三日にもその会議が開かれております。まさに通産行政と直接利害が絡んだ団体であります。そこの会議に通産省の役人も出席し、その場で矢野支援の要請が話し合われ、確認されているというんでは、私は通産行政の公正さはこれで一体保たれるんだろうか、こういう疑いを持たざるを得ません。大臣、選挙に関する地位利用だけではなしに、消費者保護という立場からもこれはまことに重大であると思いますが、いかがでしょう。
#251
○政府委員(斎藤成雄君) ちょっと先に事実関係を申し上げたいと思います。
 冠婚葬祭互助会といいますのは、割賦販売法に基づきまして許可を受けて営業をしているものでございまして、すでに法律の許可制のもとに置かれてから十年になるわけでございます。したがいまして、こういった互助会につきましては、通産省としては、いろいろな意味で行政指導をいたしてきております。これは法律の徹底を図る意味でも必要となるわけでございます。先ほど来お尋ねのブロック会議というのは、こういった互助会が各地域別に集まりましていろいろ会議をする、その際に、役所の方に、いろいろ法律上の問題点とか、最近何か特に心得るべきことがあれば出席をして話をしてくれという注文があるのがしばしばでございます。したがいまして、いま御指摘のありましたブロック会議も、全国すべてのブロック会議に通産省から関係官が出ているのでなくて、要請のあったものについて、各行政側にいろいろ差し支えがあるといけませんから、差し支えのない場合について出ておる、そういう関係にあるということをひとつ御理解いただきたい。
 それから悪徳商法というお話ございましたが、通産省が許可をしております事業でございますから、これが直ちに悪徳商法をやっているというわけには恐らくまいらないと思います。ただ問題は、約款の中に最近いろいろ消費者サイドに不満の点も出てまいりましたので、そういった意見をどのように取り入れるかということで、昨年来互助会側にも検討をさせまして、それからまた私どももそういった約款についてどういうのが一番消費者の需要にも合うかということで、先ほど御指摘のありました割賦販売審議会に分科会を設けまして目下検討しているわけでございます。したがいまして冠婚葬祭互助会と役所との関係といいますのは、役所は監督をする体制にあるわけでございまして、利害が一緒になっているということではございません。
 それからもう一つつけ加えて申しますれば、ブロック会議に出ておりますのは、先ほど御指摘にお答えしましたように幾つかのブロックについて事実なんでございますけれども、お示しの互助会通信にも書いてございますように、矢野政治顧問についての支援云々というところでの発言者というのは、そのブロック会議のブロック長から発言をされているというふうに記事が載っております。これは私どもも実態に即しまして現実に出席者から事情を聴取いたしましたけれども、こういった発言というのはすべて互助会側から行われ、かつ事前にこういったものが議題として通告されているわけでもなく、また事前にこういう話をするという通知がされたわけでもない。ただそこに出て、従来のように互助会に対するいろいろ注文や御批判というのがあれば指導してほしいということで、そういう要望にこたえて出席をした、そういう状況にあることを御理解いただきたいと思います。
#252
○市川正一君 悪徳か善徳かはきょうの主要議題じゃないんで、私は余り時間はとりませんが、そう言われるならば、実態を少し言わざるを得ぬのですがね、何でしょう、約款の中に脱会することはできぬで掛金全部取られたわけでしょう。そういう問題だとか、たとえば玉姫殿、ああいうところへ金をつぎ込んだりということで問題があるからやっているんでしょう。問題がなかったら何もそんなものいま改めてやる必要はないわけで、問題はあったんですよ。そしていわば消費者保護の立場からも大きな社会問題になって、国会でも取り上げられて、そしていまやっているわけですよ。そういう問題がある各ブロックごとにやられているところへ指導に通産省の役人が行っている。それはそれでいいですよ。そうしたら、わざわざそこで、出ておられた通産省のたとえば緑川課長は、この問題があったときに退席していたんですか。その前でそういうことが議論されている。しかも、それは正式の協会の会議であって、報告されているのは、ブロック長あるいは政治連盟等々という形で、非常にそこが紛らわしい形でやられているわけですね。しかも、そこに通産省のいわば利害関係者、行政指導の立場にある人が臨席しているというような形でそういうことが話し合われるというのは、きわめてそれは不正常です、世間から見れば。あなた方が見てどうもないと言うのだったら、それはまた別ですけれども、世間から見たら、それは、そういうのをおかしい、臭いというんですわ。そこらはやっぱりちゃんともっと良識、いわば李下に冠を正さず、きちっとやっぱり折り目正しくやるべきだと思うんですが、そこらは大臣、あなたは歯切れのいい、先ほど来の御答弁から見ても、どうですか。
#253
○国務大臣(山中貞則君) それは歯切れはいいですよ。じゃ、矢野というのが共産党から立候補していたら、あなた同じようにとがめますか。
#254
○市川正一君 同じことです。
#255
○国務大臣(山中貞則君) そうですか、わかりました。
#256
○市川正一君 もちろんです。
#257
○国務大臣(山中貞則君) そういうことなら……
#258
○市川正一君 もちろんですよ。いまの、私は取り消しを求めたいぐらいですよ。
#259
○国務大臣(山中貞則君) そんなことないですよ。私の方はそういう政党の立場によって違うんですか、それとも同じですかということを言っているわけです。
 したがって、そのようなこと、事実関係はまだよくわかりませんが、いままでずっと役所から代議士に出る人もおりました。おりましたが、私の見ているところ、通産省はずいぶん選挙の下手な役所だなと思って私は見ていたんです、それは侮辱になるかもしれませんが。ほかのところなどはきわめてスムーズに、まるで待っていたかのように当選する役所等もございまして、どういうことをやってそういうふうになるのかは、これは全国区の指揮をとったこともありませんのでわかりませんが、通産省は現在はほとんど許認可行政のない、行政指導あたりぐらいしかない、そういうような形の役所になっておりまして、その中で冠姫葬祭互助会というものが、認可法人ということで、そこに出ることはいいが、選挙の問題でやるのはけしからぬという話で、確かにそうでしょうが、このいまの「互助会通信」というのを見ましても、何か政治連盟としてやっぱり立場はちゃんと心得えて、政治連盟としての何か推薦とか何かをやっているようでございますから、そこらのところは大変微妙なところでしょうけれども、それだけにまた政治連盟という名前に切りかえた形においてその問題を取り上げておるんじゃないだろうかと思うんです。
#260
○市川正一君 そうじゃないんだ。
#261
○国務大臣(山中貞則君) 違いますか。
#262
○市川正一君 もう一つ、じゃ問題を出さしていただきたいんですが、大臣にちょっと資料を。(資料を手渡す)
 私、いまお配りしているのは自民党の「比例代表公認候補者行動予定表」であります。この中に矢野氏の部分を見ますと、通産省関連業界の集まりがずっとここに列記されております。たとえば三月一日は山梨県LP保安大会、二日は青森県の商工会連合会であります。
 まず伺いたいんですが、商工会の組織等に関する法律第六条第三項はどう規定されておりますか。
#263
○政府委員(神谷和男君) 「商工会は、これを特定の政党のために利用してはならない。」、このように規定されております。
#264
○市川正一君 そのとおりであります。
 そこで、昭和三十八年の二月十八日及び昭和五十四年三月十四日に法制団体である全国商工会連合会に対して通産省が通達を出しておるはずでありますが、簡潔に言ってどう述べておりますか。
#265
○政府委員(神谷和男君) これは私の名前で全国連の佐多会長に対して「政治的中立の保持について」特に第十回統一地方選挙も、第十三回参議院選挙も控えておることゆえ周知徹底方を要望したわけでございます。
#266
○市川正一君 あなたの名前で、いつ――私が言うたのは、これは松尾さんとそれから左近さんだったけれどもね。
#267
○政府委員(神谷和男君) まず三十八年二月十八日、松尾金蔵次官。私はこの松尾次官の通達をリマインドする通達をことし出させていただきました。
#268
○市川正一君 そうしますと、たとえば青森県商工会連合会というのは、明白に全国商工会連合会の傘下団体であります。そこを矢野氏の選挙運動の場にするということになれば、これは商工会の組織に関する法律や通達に反することにならぬですか。
#269
○政府委員(神谷和男君) 私も、商工会法、商工会議所法、同種の規定でございますが、これの読み方につきましては常々いろいろ個人的にはどういう解釈なのであろうかと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、できるだけ疑義を持たれないよう政治的中立を保った方がよかろう、こういうことでございまして、「特定の政党のために利用してはならない」ということであって、これらの団体の会合に政治家の方が出席してはいけないとは私は読んでおりませんので、いろいろ各党の政治家の方々が出席されておられるのではないか。矢野前次官がどういう形で出席されたのか実は私、各県連の大会の状況まで承知しておりませんので、そこは存じておりませんが、これで拝見いたしますと、松尾次官の就任祝いということなので、特に特定の政治的会合に利用されておるとは想定はできませんが、詳細は存じておりません。
#270
○市川正一君 特定の政党ということは、同時に特定の候補とやっぱり連動するわけです。
 今度の矢野氏が自民党またその派閥までいま明らかにして名のっていることはもうこれ天下公知です。それをいまの、どなたでしたかな、神谷さんのように自由な、勝手な解釈されたら、これはもう法律は、通達は何のためにあるかと、――もういいかげんなことを言うたらいかぬですよ。それで、ここにあるのは、松尾次官の披露会はこれは十時から十三時なんです。で、矢野さんのなには十四時からなんですね。
 もう一つ聞きますが、この中に、三月七日鳥取県の西部中金クラブ講演会というのがあります。この世話役は商工中金米子支店の次長であって、会合の責任者の連絡場所もまた米子支店になっております。政府系のいわゆる中小企業三金融機関の一つである商工中金まで選挙運動の場に使うということになりますと、こういう政府系金融機関、その性格から言ってこれは許されないのは当然であります。
 私はほかの質問もあるので、もう一度簡潔に通産大臣にお伺いしますが、神谷さんは先ほど通達を先取りされましたが、改めてこの機会にこういう問題について必要な通達を出すということを私は要求したいと思いますが、いかがですか。
#271
○国務大臣(山中貞則君) 三月二十三日に出したんですから、それをまた同じものを出すということは……
#272
○市川正一君 それはいつの三月ですか。
#273
○政府委員(神谷和男君) ことしです。
#274
○市川正一君 ことしですか。
#275
○国務大臣(山中貞則君) きちっと行政指導する必要が……
#276
○市川正一君 徹底させればいい。
 単なる通達の出しっ放しでなしに、先ほどのような勝手な解釈でなしに、きっちり法律に基づいて厳しく徹底させると同時に、みずからも自粛自戒を、通産官僚皆いらっしゃるわけだから、しっかりそこは大臣目を光らせておいてください。
 次に、対米武器技術供与問題について私お聞きしたいんでありますが、今度の対米武器技術供与方針に関連して、政府として何らかの新しい立法措置を検討されておられるんですか、大臣。
#277
○国務大臣(山中貞則君) しておりません。
#278
○市川正一君 同じく今回の措置と関連して、日米間で武器技術の共同研究開発というものは、何か具体的に研究なすっていますか、検討をなすってますか。
#279
○国務大臣(山中貞則君) 全くそのような個別なものは、防衛庁に聞いてもまだ何にも聞いていないと、そう言っております。
#280
○市川正一君 新たな立法措置も考えていないし、武器技術開発の共同事業も検討していないということでありますが、ところが中曽根総理は、一月十九日付のニューヨーク・タイムズによりますと、「軍事技術を開発する共同の事業で協力し、立法措置をとる」――ちょっと済みません、もう一回。(資料を手渡す)こういうふうに、ジェームズ・レストン記者に語っております。
 いまお届けしましたのがその内容でありますが、大臣はこのことについて何か総理あたりから聞いていらっしゃいますでしょうか。
#281
○国務大臣(山中貞則君) 親友でもあります総理ですが、こういうことは初めて聞きましたし、私はそういうことを聞かされたこともありません。中曽根総理は、国会において共同生産はしないと、こういうことを言っておりますから、その国会に対して述べた言葉の方が、国民に対して答えたわけですから、本当だろうと私は信じます。
#282
○市川正一君 ところが、中曽根総理は残念ながらいままでそうでないパターンがあったんです、私、予算委員会で、総括で質問もし、リストも出しましたけれども。
 この記事は、いまお配りしましたように、内閣調査室が、内調が監修している国際情勢資料週報です。その二月三日号にこれが全文掲載されています。私どもはワシントンにも私どもの記者を特派員で派遣しておりますので、直接レストン記者に確かめてみたんです。こういう記事をあなたは出していらっしゃる。そうしたら、レストン記者は、一月十八日中曽根総理と宿舎のホテルで単独インタビューした際にこれを聞いて、そしてこの記事の内容には私は責任を持つ、こういうふうに確認をいたしております。
 本日の委員会は、予算委員会の委嘱による、いわば予算委員会そのものの構成の一翼をなすものであります。したがって、私は武器技術を開発する共同の事業とは一体何なのか、また、立法措置とは具体的にどういうことなのか、そして総理は本当にこれをおっしゃったのかどうか、このことについて非常に親しい間柄である大臣から、私は総理に確認をされて、そして後日この問題について回答をいただきたい、このようにお願いしたいと思います。
#283
○国務大臣(山中貞則君) 中曽根総理が何も国会から逃げ出しておるわけじゃないので、後の総括質疑等の際に、本人に直接確かめられた方がより正確だと思うんです。一遍私が聞いて、それを私が答えるというめんどうくさいことをするよりも直接お聞きなさい。
#284
○市川正一君 私は通産省がすぐれてこの武器技術輸出問題については大きなかかわり合いを持っており、その所管の大臣がそういう立法措置も考えていない、そしてまた共同研究の開発も考えていない、こうおっしゃったことを踏まえてお聞きしているわけですから、私どもに十分な時間の保証があればそれはまたやります。やりますが、大臣としても、親友がそんなことを言うてるのかどうか、そこはちょっとはっきりしておいてほしいということを私は希望いたします。
 そこで、私はこの機会に、もう時間が迫ってまいりましたんですが、政府の見解は、いわゆるMDA――日米相互防衛援助協定に基づいて、武器技術の第三国移転に歯どめがかけられておる、こういうふうに言っております。ところが、もし中曽根総理の言うように、共同研究開発に乗り出すならば、これは結局その新しい武器技術の第三国への移転は歯どめがかけられなくなってしまうという、まことに重大な内容を含んでいると思うんです。
 私は、そういう点から、大臣がさきの三月五日の衆議院の予算委員会の答弁でも、政治生命をかけても子孫のために未来永劫武器輸出は許さないし、総理にも武器輸出はしない、共同生産はしないと言明してもらっていると、こういうふうにお答えになった。したがって、私は再度この武器技術の共同研究開発はやらないというその立場から、総理にも言明してもらっているというこのあなたの衆議院での御発言の立場から、この問題についてはまさに日本民族のためにも、子孫のためにも、未来永劫政治生命を――未来永劫は何かこう、少しどうかなったようですが、政治生命をかけてもしっかりした立場を堅持される決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#285
○国務大臣(山中貞則君) これは私の政治哲学でして、生涯を貫くものですから、しかも今回の政府の関係省庁の合意は、武器については技術の供与にとどめる。したがって、共同生産もあるいはまた完成武器の輸出もしないということに決まっているわけですから、その決まったことが実行されれば私の考えているとおりのことですから、それでよろしいと思ったわけであります。
#286
○市川正一君 じゃ、これをひとつ。
 以上です。
#287
○井上計君 大臣初め、大分お疲れでありますから、なるべく簡潔にお尋ねをしてまいります。
 中小企業関係のことにつきまして幾つかお尋ねをしたいと思っておりますし、また提言もしたいと思っておりますが、その前に、いま市川委員の御質問に対して、最後市川委員が確認をされましたことで、ちょっと私、合点がいかぬ点がありますので、私からもお尋ねしたいと思います。
 それは、商工会の例を出されましたけれども、団体法によるところの中小企業団体あるいは協同組合法によるところの中小企業団体、それらが政治的な中立ということを実は過去よくいろいろな方が言われるわけであります。先ほど神谷長官は、特定の政党を支持することについてはこれはよろしくない、しかし政治家個人を支持すること、政治活動をやることについてはよろしいと、こういう御答弁、これについて市川委員はそれもだめだと、こういうお話がありました。私は、従来中小企業団体の運営を長くやり、またいろいろな活動をやっている中で感じますけれども、われわれが中小企業団体に対していろいろな講演だとか、説明等に行きます。これまでこれももちろん、それが全く選挙に関係ないと言えばうそになるかもしれませんけれども、事選挙と関係なしに招かれ、あるいは行ってそういう話をしたり、あるいは指導したりというふうなことは、これはもう多々あるわけですね。ところが、そういうふうなことさえ特定の政党云々という実は非難があることも事実なんですね。
 私はこれは大臣、やはり長官、大事なことなんです。明確にしておいていただきたいと思うのは、いわば政治社会の年代とこう言われておりまして、経済界、産業界がすべて政治とかかわりなしに行動できるわけない時代に、政治家がそういうところへ行って活動することが、すべてこれが法律上疑義がある、したがって一切やってはいけないと言われるなら、政治家は全部私は無所属になるべきだ、これ以外に方法なかろうと、こう思っておる。ですから、政党と政治家個人と、選挙活動と政治活動というものは明らかに別である、こういうことをぜひひとつ大臣も長官も明確にしていただいて、中小企業団体その他の経済団体の御指導をいただかないと、ほとんどの団体が、選挙一切ノータッチです、政治活動一切しません、政治家も呼びません、政治家から話を聞きたいけれども、政治家に来てもらうとまたどこかから注文が、いろいろなクレームつくと困るからいやですと、こういうふうな団体が特に多いわけですから、それではせっかくの私は経済界、産業界の政治への関心が遠のいていくし、またいろんな面で、政府の、あるいは施策等についての浸透度合いが薄らいでいくであろうと、こう思いますので、この点についてはひとつ――これはお答え特に必要ありませんけれども、私はそういう考えでおります。決して公務員の方々が地位を利用した政治活動をやっていいということを言うんじゃありませんで、それらのことは明確にしておきたい。私も従来そういうことでずいぶん非難されて、苦い経験を持っておりますが、よく、ある政党はいつも言われるわけです、けしからぬと。ある政党――どこの政党とは言いませんけれども。実はそうじゃないんです。本当に業界、組合員を指導しようと思えば当然行くわけです。それさえいけないと言われることはいかがであろうか、あえてこれはこういうことを申し上げておきます。これは特にお答え要りません。だから間違った通達をされると困るということで、あえてお願いをしておきます。
 そこで、私も時間がないんで、余りこんなことをしゃべっていると後大事な質問ができなくなるんですが、午前の金丸委員のお尋ねに対して、大臣は、通産省なかなか金がないので思うようにできない、こういうふうなごもっともなお答えがありました。それから、やはり通産省がもっと明るい顔をしないと産業界、特に中小企業が萎縮する、だからない知恵をしぼって明るい顔をしてというふうなお答えもありました。全くお察し申し上げるわけでありますけれども、しかしよく言われておりますように、ないが意見の総じまいということになりますと、実はどんないいことでもできぬということでありますから、ないところにやはり知恵をしぼっていろいろなことを考えていかなくちゃいけない、こう思います。確かに財政的ないろんな大きな問題がありますけれども、いわばいま、問題がやはり窮屈であってもいま行うことによって二年後、三年後、五年後、あるいは将来に向かってそれが大きな金の卵を産むということがはっきりしておれば、特に大臣、もうこれは実力大臣であるわけですから、大いにひとつ今後とも御活躍をいただきたい、こういうお願いをまず前提として、そこでお尋ねするわけでありますが、先ほど田代委員からの御質問にも種々お答えがありましたけれども、投資減税の問題であります。大変通産省が御苦労願ったことは承知をいたしておりますけれども、五十八年度予算案にありますところの投資減税は、私は中小企業にはほとんど効果がない、これは大臣はどうお思いか知りません、私の認識はほとんど効果がない、こう思っておるわけですね。というのは、過去五年間の百四十万の投資額を超えたものの平均を上回ったものの三〇%ということでありますから、過去五年間に中小企業はそんなにこの不況の中で余り設備投資をいたしておりませんよね。だから、先ほどからお話しの財源がないからこの程度でやむを得なかったというお話、これもわかりますけれども、これでは私は中小企業の設備投資意欲を喚起する余り大きな材料にならない、こう思っておりますが、これは長官からでも結構ですが、どうお考えでありましょうか。
#288
○国務大臣(山中貞則君) これは政策問題で、たとえば大蔵大臣が閣議に最終的に税の報告をいたしますが、税制改正について。今回は六項目しかなかったんです。そのうちの三項目は通産省のものでございました。したがってその意味、数が幾つだったからという意味じゃなくて、税制でめんどうを見てもらえればという各省庁はたくさんあると思いますが、しかし、なかんずく中小企業に対する施策の前提は、税と金融、これをいかにうまく組み合わせてタイムリーに発動するかということに尽きるんだろうと思うんですね。ということは、個々に対して、補助金を個人個人の私企業に対しては出せない、これはもう大前提になっているわけですから、そうすると税と金融政策しかないと私は思っておりますので、ただいまのとりました成果がどのような結果を生みますか、私もその成果は自信はありませんし、見通しはありません。しかし、過去五年が低かったとするならば、この少ないが与えられた税制上の投資に対する、その推進を評価する税制というものを採用して、この際、この四、五年見合わせてきたけれども、じゃこの期間中にやろうかという意味の浮揚力はかえって大きく出るんではなかろうか。ただ、これは結果ですから、来年のいまごろになりまして、やっぱり先生だめだったですとか、大分効果ありましたよという御報告を私ができることになるのか、これは一に、この制度が生かされたかどうか、今度はお上の目で見ていない中小企業ということを私言いましたが、中小企業の個々の形態の人たちが自分の家業を奥さんや子供たちと相談しながら、あるいはこの税制を見て、じゃあ、思い迷っていたけれどもいこうという決断をされるのか、こんな程度のものではとても税金も納められない、自分たちには関係ないやというふうに思われるのか、私もわかりません。しかし、だからといって、大蔵省は全く金はありませんよというのに、中小企業に明るさを見出さなければ、日本の産業を支えているものは中小企業であると認識している私にとって、手ぶらで明るい顔をしろということはできなかった。そこで、大蔵の方に再三再四の折衝をいたしまして、やっとこの形をセットしたわけでありますが、これは私も模様がどう進んでいくかを真剣に見詰めたいし、先生もその結果がどうかなとおっしゃってますから、これはやっぱり一年ぐらいたって効果があったかなかったか、これだけでないとするならば、じゃあほかの問題を、あるいはこの問題をもっと手厚く、リースとか何かそういうものを含めたり、税額控除をやったり、そういうところに財源が許せばどうしても踏み込まなきゃ中小企業は立ち上がらぬよという、どっちかの結論になると思うんです。しばらくお互いに真剣にこれを見詰めていきたいと思います。
#289
○井上計君 いや、大臣がおっしゃるように、私も、一年、来年のいまごろになってみないとその効果のほどはわからぬ、こう思っておりますが、ただ、私の杞憂にすぎなければ大変いいんですけれども、中小企業には余り効果がないであろう、省エネ投資減税から考えても余り効果がないんではなかろうか、こういう気がいたしております。
 それからもう一つ、やはり先ほど二年というふうなことについての田代委員からの御質問がありました。現状一応二年ということもやむを得ないであろうと思いますけれども、構造改善等の特定業種に対する、従来ありました初年度特別償却等の特例、これは大体五年でしたね。やはり少なくとも最低三年ぐらい続かないとコンスタントな設備投資がなかなかできにくいというふうな点がありますので、これは今後の問題でありますが、特に大日、ひとつこれは、大臣は税の神様と言われて専門家でありますから、大いに大臣のこれからの御努力、五十九年度のいろいろと予算編成、また政策立案についての大臣のひとつ御努力をぜひお願いをしておきます。
 そこで、またもう一つは、先ほどから中小企業庁長官も、また大臣も、言葉の中に承継税制というお話が出ております。これは私どもがもう久しく要望したことでありまして、若干これがいえば目を開いたというふうな程度のことについては評価をしております。これはまた財政面の問題がありますから、そう一挙に大幅にわれわれが、中小企業者の長年の願望であるところまで一挙にとはなかなか期待できませんけれども、しかし、承継税制と言われることは私はいささか異論がある、こう思っておるんですね。これは、承継税制と言われるんなら、新しくやはり私は、相続税、現行の相続税のほかに新しい中小企業の事業用資産についての税制が確立されれば、これは承継税制でありますけれども、今度のいえば相続税法の一部改正は、個人の事業用資産について、土地二百平米までを、従来の二〇%を今度四〇%は時価減額をするという一部改正だけですね、これ、相続税法の。それからもう一つは、非公開株式、同族法人の非公開株式についての評価を変えるということについては、これは長官通達ですね。これは何も税制の改正ではないわけです。ですから、これを私は、承継税制、承継税制といって今後言われることについては、大変な誤解、間違いが生じる、こう思うんですね。一般の中小企業者の中では、すでに政府が、あるいは自由民主党が承継税制を実現しました、こうこう、五十八年度こうです、こう言っておられるから、もう一挙にそれこそ後継者が喜んで安心して事業継承できるような税制に五十八年度なるんだ、こう思っている人が非常に多いわけです。ところが、実際に計算をしてみましても、今度の長官通達によるとなっていますけれども、言われておる非公開株式の評価がえについても、半分は従来どおり時価評価方式、半分については大企業類似方式、それもいろんな計算がありますからね。私どもの計算によりますと、大体一二、三%かせいぜい一五%程度ぐらいしか株式の時価評価から減額されない。ということは、やはり現実には事業継承は私は非常に困難だと、このように考えておりますが、大臣、長官、どういうふうな認識をしておられますか、お伺いいたします。
#290
○国務大臣(山中貞則君) 承継税制と余り言うなとおっしゃれば言いもしませんが、しかし、商工会議所とか商工会連合会とか、そういうところの陳情を続けてまいられました方たち、それから税制の中で特殊な分野にだけ承継もしくは相続に対する恩典を与えるということのきわめてむずかしいこと、この点は関係者も知っておりまして、これで非常な前進であったということで、それは満足とは言われませんが、評価は一応されております。
 たとえば、いま個人事業主の場合に、事業用の資産、場合によっては居住が二階であるということもあり得るかもしれませんが、まさに事業用の資産を減額してあげなさい、事業を続けていかれる後継者にせめて減額を四〇%まで多くしなさいということでありますから、これは法律条項でなくとも国税通則法と申しましょうか、そういうもので処理できるものはそれで処理してもおかしくはないと思います。しかし、陳情や要望の中には、居住用資産も含めてというお話がありましたけれども、居住用資産が事業用資産と別にあります場合、これは普通のサラリーマンと同じというふうに見なけりゃならないだろうということで、これは私の命によって事業用資産にかかる点だけを減額をさしたわけでございます。
 一方の非上場同族法人等の株の評価の場合に、ともすれば土地が評価の上では、大変土地値上がりの全体で小さい商店街であっても、やっぱり街の方の土地の値段は上がるというような状態になっておりますから、それを土地の評価を株との関係で、上場されておる売買の実態にスライドしていくというのは、やはりちょっとこれは大変だなと。やっぱり問題は、総資産の実態の問題だということで、一挙にそこまでいこうと思ったんですが、なかなか、大変むずかしくて、やはりいま言われましたような手段を一応とらざるを得なかった。これは去年から、と申しましてもおととしの末から議論をして、政府税調でも党の税調でも一年がかりで正式に検討議題にして結論を出した問題でございます。したがって、まだ足りないという点はあるとは思いますが、しかし、やはり中小企業の経営者の方々が、戦後、瓦れきの中から、テントみたいなものを張った店から始めて、今日の夜もこうこうとした商店街やその他をつくっていかれた苦労、そしてふっと気がついたら自分の年はもうそろそろその業務にたえなくなって、息子に譲らなきゃならない時代になっている。そこで息子に言ったら、嫌だよ、おやじみたいに来る人来る人頭を下げる商売、おれは嫌だとか、あるいはそんな跡を継ぐのは兄さんにさせろよ、弟にさせろよというような、そういう空気がなしとしない。やはり、そのためには少しでも税の上で、跡継ぎにはこれだけのめんどうを見てあるよということがあれば、ややスムーズにいくのではなかろうか。もう世がわりの時代にきたがために、四、五年前からそれが陳情の声が大きくなったというのはそこらに背景があるんですから、なるべくそれにこたえてあげたいと思ってやったわけですが、ともにこれ相続の際の問題でありますから、たくさん人が死んでくれたりなどすればいいという増収は大蔵省も期待はしておりませんので、この点については、余り財源論争としては厳しい論争はいたしません。ただ、そのあり方の限界、他業種との比較という問題で、この程度で矛を一応おさめたということでございます。
#291
○井上計君 私は承継税制という言葉を使わないでほしいというのは何も感情的にどうとかじゃありませんで、ただ、承継税制という言葉が余り使われ過ぎることによって、中小企業者が願望しているところまでうんと低下されるんだと、低減されるんだという実は誤解を非常に生じておるということですね。したがって、今度の改正程度では私は、われわれが従来唱えてきた承継税制が実現をしたということにはほど遠い。そういう意味で誤解がありますからそういうふうな表現は余り使っていただきたくない、こういうことなんです。ただ、通産省、特に中小企業庁が承継税制問題研究会を一昨年つくっていただきまして、そういう努力について私は大変評価しているわけです。いままでもう長いこと、特に私は十二、三年前から中小企業団体中央会の役員時代からもう事あるごとに言ってきたわけです。そうして国会に出ましてから毎年もう何回も、いわばこれ専門みたいに言ってきた立場からして、非常に評価をしています、いわば突破口はできたという点では。しかし、まだまだほど遠い。現実にありますやはり事業形成を円滑にやっていくということについてはまだまだほど遠い。したがって、今後一層ひとつこれについての御努力をお願いしたい、これは要望しておきます。
 それから、次に、機械、設備等の耐用年数の短縮の問題でありますが、新聞報道等によりますと、通産省ではこれについての研究会を設置をして、そうしてこれについていろいろと検討をしていただいているということであります。この点要望しておきます。
 先ほどの同僚委員の質問に対して、大臣しばしばお答えでありますが、わが国はやはり何といっても原料資材を購入をして、それに付加価値を加えて、さらにそれを売ってその代金でまた原料資材を購入をする、未来永劫それ以外に生きていく方法ないわけでありますから、そこに当然国際競争力に対応するという大きな絶対命令、至上課題があるわけですね。さて国際競争力を失ったらわが国が生きていく方法は実は閉ざされる、これはもう当然であろう、こう思います。
 そこで、いま国際競争力を失っておる素材産業が幾つかもうすでに出ました。今後ますますそれは出るであろうということは憂慮されるわけですけれども、国際競争力を失っておる理由、幾つかありますが、その一つは何といってもエネルギーコストだと、こう思います。
 それから、もう一つは機械等の設備耐用年数がアメリカ等と、先進工業国と比べて非常に長いという問題かあろう、こう思うんですね。そこでもう一つは、実態にそぐわない、そういうふうなものが非常に多いわけでありますから、これについてはこれまた財政上の問題がありますけれども、特にひとつ今後御努力をいただきたい、こう思います。
 一例申し上げますと、御承知だと思いますけれども、アメリカはレーガン大統領の景気対策からして非常に最近短縮をされました、御承知のように。大体機械五年になりましたよね。日本は平均してまだ十一年でありますが。それから、イギリスのごときは産業用機械設備は初年度一〇〇%特別償却をする、こういうふうなことに決定しておりますから、ますますこの差が開いていくのではなかろうか、こう思います。
 それから、さらに問題は、最近コンピューターがあらゆる部門に入ってまいりましたが、コンピューターは事務用に使いますと現状でも六年ですよね。それが営業用に使うと十一年になるんですね、他のものと一緒になりますから、他の工作機械と。ただ、実際問題としてコンピューターが十一年使えるわけがありませんし、また事務用なら六年であるけれども営業用に使えば十一年だと、こういうふうな実態、それからコンピューターを導入を、設置した機械、もう最近はほとんどそういうふうな、省力化の機械ですとほとんどコンピューターが入っていますが、コンピューターを設置するともうコンピューターぐるみで全部で十一年になる、こういうふうなもう実態に即さないようなものがもうずいぶんとふえてきているわけですね。だから、そういうことについて十分御配慮をいただきながら、今後ひとつ対処をしていただきたい、こう思います。中小企業庁長官、何かお答えありますか。
#292
○国務大臣(山中貞則君) 私たちはいま例を引かれましたアメリカ、イギリス、これは過去に自動車とか鉄鋼とか、そういうような基礎素材にもなりましょうが、そういう大事な国の基幹産業のそういう陳腐化というものに目を向けなかったと、そのために気がついたときにはアメリカのそのような基礎素材産業というものは陳腐化した耐用年数の上に立っておるために、日本で考えると大正時代につくった製鉄所じゃないのかというものが稼働していたり、それじゃとても巨大なアメリカの経済力をもってしても企業としては国際経済力にたちいかないはずである。イギリスについては、もうイギリス病という名前があるように、やはり同じような立ちおくれを自覚したんです。自覚したときにはすでにもうその国は疲弊し切っていた。したがって、非常に、アメリカで五年、イギリスで単年度全額償却という思い切ったことをやって取り戻そうと焦っているんだと思いますが、私は日本もそろそろ、無から有をつくり出した日本の産業界でありますから、そろそろ機械は、その当時は最新鋭、世界最高の設備であったけれども、陳腐化の時期に来ておる。そうすると、耐用年数等をよほど実態に合わせて考えてやらないと導入の時期を誤る。誤ったらもう取り返しがつかないというようなおそれがありますので、研究もしておりますが、先般大蔵大臣に、どうだろう、必要なものについて耐用年数の一斉短縮することは金食うがどうだねと言ったら、いや助けてください、それは大変な金食いますからという、第一ラウンドはちょっちょっとジャブ出してみたんですが、やはり金は食うことは間違いありません。ありませんが、さりとてさっきおっしゃった表現をかりれば、金の卵を腐らせるということにつながる陳腐化、このこともやはり国を挙げて避けて再生する力を与えてやらなければならぬということは間違いのない事実でありますから、この点はもう少し慎重に、どの部門をまず見るべきか、どの程度でいいのかというような問題等について、具体的に少し踏み込んでみたいと考えます。
#293
○井上計君 ぜひひとつこの点については、大臣も強くこれについて、今後ともお考え、行動していただくようにまた要望しておきます。
 それから、時間が余りありませんから、あと幾つかあったんですが、簡単に済ませたいと思います。
 実は、昨日、経済企画庁長官と公正取引委員長に特に要望し、またお尋ねをしたわけでありますけれども、独禁法が、物の大変過剰時代、いわば欠乏時代にできた独禁法が、このようにあり余って、あり余っておるために競争が激しくなり、そのために倒産というふうないわば原因になっておる時代に、同じような考え方の運用はいかがであろうかと強く指摘をしておきました。特に、中小企業団体が組合員に対する経営改善指導等において、いまのような独禁法の運用の仕方では非常に支障がありますということを特に要望しておきました。今後これらについても大臣並びに中小企業庁長官、大いにひとつ御留意をしていただきたい、これは要望しておきます。お答え要りません。
 それから、それに関連をいたしますけれども、団体法及び中小企業等協同組合法の中に独禁法の適用除外があります。幾つか現在適用除外を受けているといいますが、しかしそれは料金の面での、最低料金についての適用除外を受けているのは一つもないわけですね。私は、せっかく法律にあるのに、その法律を独禁法ががんじがらめに縛りつけて事実上機能しないということ、これまたこういう時代にいかがであろうかと、こう思いますので、これも十分ひとつ御検討をいただいて、公取との間で中小企業庁長官、特にまた今後とも折衝をしていただきたい、こう思います。
 それから、もう一つは、中小企業近代化促進法の見直しをぜひやるべきではなかろうか。これは提言をしておきます。
 といいますのは、従来の近促法というのは、いわばハード面さらに前向きの面だけに大体重点が置かれておりますけれども、このような情勢の中では、生産調整であるとか、設備の共同廃棄であるとか、あるいはさらには、新技術の開発、人材育成等への助成だとかというふうなものが必要になってくる、こう思います。だから、そこで近促法の改正を行うべきであろう、このように考えますので、これまた提言をしておきます。後でまとめてお答えいただければ結構であります。
 それから、これは私の杞憂かもしれませんけれども、けさ金丸先生から、韓国の大島つむぎの問題が出ました。これはこれとして大変重要な問題でありますが、私は五年あるいは早ければもう二、三年先だと思いますけれども、中国が繊維製品を中心とした軽工業製品に、今後特に外貨獲得というふうなことで非常に重点を置きつつあり、また置いております。となってくると、日本の繊維製品あるいは中小企業の生産するところの軽工業製品の海外市場は壊滅的な打撃を受けるんではなかろうか、これを憂慮しているわけです。まあ杞憂であれば大変結構でありますが、どうもしかし、いろんなことを検討しますと近い将来そういう事態が起きるであろう、こういうことを懸念をしておりますが、これはいまからそういう面についての調整あるいは中国とのこれは話し合いといっても大変むずかしいと思いますけれども、やはり通産行政としてぜひお考えおく必要があるんではなかろうか、こう思います。
 それからついでにもう一つ。これは大臣言われますように、金をかけぬでも産業界、特に中小企業に対してやはり明るい灯をということに役立つんではなかろうかと思います、これは大臣の所管ではありませんけれどもね。長年産業界、これは各般そうでありますが、産業界あるいは中小企業振興等に大変功績のあった方に、春、秋の叙勲、さらには同家褒章等が行われておるわけであります。これはこれで大変結構である。これは本当に長く苦労した人が勲章なり国家褒章をいただいて、そうして皇居に参内して天皇陛下から御苦労であったと言われて大変感激をして、さらにもう一歩ひとつ一生懸命業界のことに、あるいは企業の発展に努力をしよう、そうしてできるだけ税金を納めなくちゃいかぬ、こういう事実をみんな言っているわけですね。ところが、最近では該当者がふえたせいもありますけれども、非常に厳しくなってきましたね。中小企業団体の役員経歴二十年以上、実際は二十年では、団体によって違いますけれども、なかなかいただけないというふうなこともありますが、これらのことについてもう少し拡大というとおかしいですけれども、配慮していただくことができないであろうかということが一つ。
 それからもう一つは、そういうふうな特に中小企業関係の人が長年二十年以上にわたって団体運営をやり、組合員から大変感謝されるというふうな行動をするためには、これはもう奥さんの力が大変なものなんです。奥さんが協力しなければほとんど不可能なんですね。だから、どこの祝賀会行きましても奥さんの功績半分とみんなわれわれ言うわけです。ところが、その奥さん大変喜んではおられますが、奥さんに対するのは何も実はないわけですね。
 そこで、これは私の提案でありますけれども、そういうふうな国家褒章なり叙勲なりいただいた方の奥さんに対し、奥さんの条件もあるでしょう、きのうやきょう一緒になった奥さんじゃそれは困るんですが、ある程度一定条件を備えた奥さんに対しては、何か内助功労章的なもの、そんなものをひとつつけて御夫婦に渡す、これは金もかからぬし、大変みんな喜ぶし、大いにひとつこれからさらにがんばっていこうということになると思う。これは大臣所管ではありませんけれども、しかし、一応中小企業を担当していただいている大臣として金を使わぬでもみんなに喜んでもらって明るい灯を見てもらえる、こういうことになろうかと思いますので、これからそういう面についてもひとつ御検討いただいて、閣内で大いにひとつこれを声を大にして、できれば早期に実現をしていただければ、こう思います。
 まとめて幾つかお願いやらしましたが、以上で終わります。お答えをいただければ大変ありがたいです。
#294
○国務大臣(山中貞則君) 最後の叙勲に伴う内助の功の問題でありますが、確かに一つのヒントだと思うんです。
 そこで、通産省としてはそういうようなことについてどのような考え方を持っているかの一環として、全く事柄は違うんですけれども、外国の技術研修生を受け入れて、そうしてそれぞれの企楽にお願いをして、それで後知らぬ顔に近い状態が続くわけですが、マレーシアがルックイーストという、日本に学べ、西洋よさようならというのでマハティール首相がやられたときに、閣内なり国内の政治の中では、やはりあれだけ長い植民地の後から生まれた国でありますから、それは乱暴すぎるのではないかという意見があったらしいですね。しかし、それにもかかわらず、日本に来られて借款その他のお話もありましたが、研修生を来年もふやすということで非常に喜ばれた。ところが、いま来ている研修生、つい最近終わって帰りましたが、企業の方の側も言い分があるんですね。われわれは確かに受け入れてお帰ししました。しかし、本社の方からは経費節減とかいろんなやっぱりぜい肉を落とせ落とせと言ってくると。それらの人たちに政府が全面的に金を下さるわけではないし、おつき合い程度のことで、私たちが後は、たとえば事業所とか工場とかでめんどう見て受け入れてあげている。せめて親会社の方に、受け入れてくれてありがとうという、何か感謝状か表彰状かでももらえたら、おまえのところにもマレーシアの留学生が研修に来てたなと、いろいろ金要るだろうと、言ってくれぬでも自分たちの主張を理解してくれるということを耳打ちされまして、これは政治家が、なるほど自分たちは預け入れて、国としての仕事は済んだかもしらぬが、それを民間の人に任せりきりで、後帰ったときぐらいしかわからないということではこれはいけないということで、やっぱりその企業に対して、国策に沿って研修生を受け入れてくれて、種々の負担をしていただいて、国益に貢献していただいたと、ここに感謝の意を表しますという通産大臣の感謝状をつい先月差し上げました。たった一枚の紙切れ、おっしゃるとおり。ただ私ぐらいの者ではと思ったんですが、もらわれた企業は、自分たちのそれを認めてくれたのかと、知ってたのかということで、非常に好感を持たれたということを承りまして、やはりそういうところに人間、相手の立場あるいは連れ添う人の立場、苦労する人の立場というものを考えながらやっていかないといかないものだなということを最近体験いたしましたので、お説はよくその趣旨がわかります。
 まあ広く賞勲行政一般でございますので、私の所管はおっしゃるとおり違うところではございますが、そういう気持ちを持って何かできないかということについては、総務長官を二年七カ月もやらされましたので、裏の方は精通しておりますから、いろいろ研究もしてみたいと思います。
#295
○井上計君 終わります。
#296
○委員長(亀井久興君) 以上をもちまして、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち、公正取引委員会、経済企画庁、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫についての委嘱審査は終了いたしました。
 なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#297
○委員長(亀井久興君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト