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1982/05/10 第98回国会 参議院 参議院会議録情報 第098回国会 文教委員会 第7号
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1982/05/10 第98回国会 参議院

参議院会議録情報 第098回国会 文教委員会 第7号

#1
第098回国会 文教委員会 第7号
昭和五十八年五月十日(火曜日)
   午後三時四分開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     山東 昭子君     福島 茂夫君
 四月三十日
    辞任         補欠選任
     沖  外夫君     世耕 政隆君
     林  ゆう君     中西 一郎君
     福島 茂夫君     山東 昭子君
 五月九日
    辞任         補欠選任
     小西 博行君     柳澤 錬造君
 五月十日
    辞任         補欠選任
     柳澤 錬造君     小西 博行君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         堀内 俊夫君
    理 事
                片山 正英君
                田沢 智治君
                粕谷 照美君
                佐藤 昭夫君
    委 員
                山東 昭子君
                杉山 令肇君
                世耕 政隆君
                中西 一郎君
                仲川 幸男君
                藤田  進君
                柏原 ヤス君
                高木健太郎君
                小西 博行君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (総理府総務長
       官)       丹羽 兵助君
   政府委員
       内閣総理大臣官
       房総務審議官   手塚 康夫君
       日本学術会議事
       務局長      藤江 弘一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瀧  嘉衛君
   参考人
       日本学術会議会
       長        久保 亮五君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○日本学術会議法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ─────────────
#2
○委員長(堀内俊夫君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 日本学術会議法の一部を改正する法律案の審査のため、本日、日本学術会議会長久保亮五君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(堀内俊夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(堀内俊夫君) 日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#5
○藤田進君 今度のこの一部改正を見ますと、非常に重要な問題を含んでいるように思うわけであります。特に、選挙制を推薦、総理大臣任命に切りかえている点等がこれに当たると思います。
 それから、この経過を私なりに調べてみましても、非常に唐突な提案となっているのであります。そこで、肝心な点を政令で逃げているかっこうになって、どうも内容の実態が十分つかめないわけであります。時間の都合で一々指摘いたしませんが、政令案を提出、説明は無理かとも思いますが、最低限政令要綱案なるものをまず個条別にお示しをいただきたい。
#6
○政府委員(手塚康夫君) 個別に政令部分を全部御説明するのはなかなか時間もとりますもので全部は申し上げません。主なところを申し上げますと、現在、定員の配分、これが七つの部、四十四の専門というふうに分かれております。これは実は法律で規定されているということで、これは学術会議の自主改革の要望におきましても、これでは現在の科学の進歩に対応できない、それを改正してほしいという要望も出ております。その要望を取り入れまして柔軟性を持たせるということで、法律から落として政令にしているという部分がございます。
 それから、先生のお話ございましたように、現在の選挙からこれを推薦制に変えるということで、推薦制に係る基本的な部分を全部法律に書くというのもなかなかむずかしい面がございます。その部分を、実は基本的な点は政令にゆだねるという点がございます。その他推薦管理会等、これの中立性を保つために、これも政令で活動を決めるというふうなことにしております。大きく大体そんなところかと思います。
#7
○藤田進君 いや、その政令にゆだねられている点はもうお尋ねしなくともわかるわけですが、その政令が意図している要綱をお示しいただきたい。審議上必要があるので、それぞれの政令内容を、現在要綱的なものはあるはずでありますからお出しいただきたい。
#8
○政府委員(手塚康夫君) この点は必ずしもまだ要綱的になっているものがあるわけではございません。政令と申しましても、わが方だけで独自につくっていくということは考えておりません。恐らくはかなりの運用部分、細かい部分を規則にゆだねることになりましょうし、それとの関連で政令で大きく定めていくということは必要でございますので、これはじっくり学術会議でその細部を詰めていただいて、それに応じて政令を定めていく、このように考えております。
#9
○藤田進君 国会、立法府が法案を審査する場合に、主要な点について政令にゆだねている以上、政令の意図しているものはこうなんだ、もちろん日本学術会議会長さんなり総会なりの意見を徴しながら円満に合議の上で決められることは結構ですけれども、そういうものの粗ごなしはした上で議会の審議にひとつ役立つようにやってもらいたいと思うのであります。それが全く何もできていない。海のものやら山のものやらまだわからない。こういう点がやはり問題の一つであるように思うです。本法案が成立したとすれば、しからば今後どういう手はずでいつごろ政令として施行することになるのか、見通しをお伺いいたします。
#10
○政府委員(手塚康夫君) 時間の関係もございますので細かくは実は述べなかったわけでございますが、どういった事項を政令で定めることになるのかといったものはございます。これは読み上げても結構でございますが、ただその実際の中身になりますと、やはり学術会議側の意見も聞いていかなければいけないと私ども考えておりますので、そうなりますと、この法案が幸いにして成立したら学術会議側になるべく早急にそういった点
も検討していただくということで、一年余の準備期間も設けておりますので、その間に規則と並んで整備できるものというふうに考えているわけでございます。
#11
○藤田進君 一部改正とは言いながら、大きな骨になるものが今度大きく変わるわけですが、成立いたしますと、政令はもう一人歩きをして、いま言われるような学術会議等の意見も徴しながら仕上げていくということが単に速記録に残るだけのことで、われわれ長年の経験からも、そういう議会審議の過程における事情というものが無視されがちであります。日本学術会議の指摘を見ても、政令にゆだねている点についての危惧があるようにも思う。いやいや、学術会議の意見は十分聞いてくれるだろうという希望的御観測もあるようになっております。
 ここで久保会長さんに、本一部改正が両院成立して政令段階になったときに、果たして御意見のとおりになるものと御判断かどうかお伺いをいたします。
#12
○参考人(久保亮五君) 政令と規則の関係等につきましては、これまでの会議、政府折衝の段階でいろいろ申し上げ、総理府の側でお考えのところも伺った次第でございます。先ほど審議官の御説明のようなことでございますが、これについては、今後法律実施の以前に、十分学術会議の意のあるところを申し上げて主張すべきところは主張していきたいと存じております。
#13
○藤田進君 それはそうなんですが、その場合に、すでに申し上げているとも言われるわけで、久保会長が言われるようにうまくいくかどうかについての見込みをお伺いしているのであります。
#14
○参考人(久保亮五君) 私といたしましては、法律的なところに詳しいわけではございませんので、何を最後的に政令にゆだねなきゃならないかというようなところの判断は必ずしも申し上げかねるわけでございますが、できる限りの法的に許される限度においては私どもの主張は入れられるものと信じております。
#15
○藤田進君 政令ではなくて、規則制定権を持ち、かつ規則にひとつ任してもらいたいという御主張があるように思うです。そうですか。
#16
○参考人(久保亮五君) そういう個所がございます。その政令の内容とその規則の振り合い等につきましてまだ細部を煮詰めるというような段階に至っておりませんのでございますが、できれば規則にゆだねて自由度を残していただきたいと思うところは何カ所かございます。
#17
○藤田進君 その個所をひとつお答えいただきたい。
#18
○参考人(久保亮五君) 特に会員の推薦関係で第十九条の第一項、第二十条、第二十一条、第二十二条、第二十二条の二、こういうようなところでございますが、こういうところが提案されている法案で政令ということになっておる個所でございます。これはできれば規則ということにしていただきたいということでございましたが、折衝の段階でそれは入れていただくことはできませんでした。
#19
○藤田進君 そうすれば、学術会議としてはもうあきらめたととってよろしゅうございますか。
#20
○参考人(久保亮五君) これは、この法案の立案の過程で学術会議会長として折衝に当たるということでございました。それで、これはいわば協議整わずというところでございました。
#21
○藤田進君 久保さんが会長をされている日本学術会議というのは、私も関係は深いのですが、どうもおっしゃるように素直に、折衝したがだめだからこれはやむを得ないということで、これは十八日からまた総会をお開きになるようですが、うまくまいりますか。私は、学術会議というものが終戦直後ですが法制定されて、それが全く性格が変わる。他の先進諸国を見ても総理大臣が任命するというのは私の調査では例がございません。しかも、このことがいま学術会議の中でもやはり最大の議論になっているように思うです。
 会長は会長でその道をお歩みになる。総会は総会の道を行く。私は、会長と総会というのは全然機能的にはもう別のものなのかどうか疑うです、日本学術会議改革要綱なるものを昨年十月に発表されております。これは一つの意思だというふうに見ているんですね、私ども。これはもう全く取り下げたことになりますか、これは生きている成文でしょうか、どっちなんですか。
#22
○参考人(久保亮五君) 学術会議改革要綱は昨年の十月の総会で採択いたしたものでございます。それ以後政府のお考えとしましては、選挙制度に関しては、三分の二公選制、三分の一推薦制というものをとらないというお考えでございまして、それにかわって学協会を基盤として科学者が自主的に選出する。こういう方針で選出制度をつくりたいということでございました。
 この点につきまして、去る二月十六日の臨時総会におきましては、政府がそのような方針をおとりになるという場合にも、政府に対して会長は協議せよということでございました。その申し合わせに基づきまして、会長といたしましてはこの政府の御方針を動かすことは不可能であったということを残念に思いますけれども、そのいわば与えられた枠がございましたわけです。その枠の範囲内では最大限に要綱のよって立つところの精神を生かすということに努力してまいりました。その意味で、決して要綱は死んでいるものではございません。
 それで、要綱には、選出制度のみならず何項目かの重要な点が挙げられております。選出制度において要綱の主張することが入れられませんでしたのは繰り返して残念に思うわけでございますけれども、その選出制度におきましても、少なくとも精神においては十分、十分とまで申しますと私の主観が入るかもしれませんが、主張すべきことは主張いたしまして、それは大綱においてお取り入れいただいた。これは会長が協議の責任を負わされたものとしては最大限の努力をすることが責任でございますから、そういう立場で最大限努力したつもりでございます。
 そのほか、要綱に掲げられているところの学術会議が何のために存在するか、いかなる活動をするかということにつきましても、法令上明らかにしなければならないような点について主張いたしまして、その主張は相当にお認めいただいたと思っております。
 以上のような意味におきまして、これは折衝に当たりました会長としての立場でございますが、要綱を捨てたわけではなく、要綱を生かすことに努めたわけでございます。
#23
○藤田進君 このお決めになりました要綱を見ると、何としても最大のものは選挙制、これを維持すること、一部三分の一を推薦にする。これは学術会議の中でその推薦も決めていく、自主自立の基本的な考え方を持つ学術会議、こう見ているのであります。これに交換し得るような――政府が学術会議の意見を受け入れた、ならばこの公選制なるものを放棄してもやむを得ないという、その辺のもっと具体的説明をお聞かせをいただきたいと思うんです。足をへし折られて、松葉づえの見舞いをくれたから大変喜んでありがとうありがとう言っているような気がしますよ、私は。
#24
○参考人(久保亮五君) 繰り返して申しますが、学術会議の改革要綱の、三分の二公選、三分の一推薦というのは、学術会議といたしましてはこれが最善であるということを重ね重ね主張してまいっているわけでございます。その見解については変わりませんが、一方科学者が自主的に選出するということは、精神においてはまさに共通するところでございます。その点がいかに行われるかということは、一方には制度の問題であり、一方には科学者の自覚の問題であると思います。
#25
○藤田進君 端的に聞きますが、いま提案されている政府案、これは久保会長、賛否しかないんです、この委員会でも最終的には。私どもは、学術会議の諸般の主張はこれを是なりとして、むしろ今後両院を通じて御協力申し上げるのが当然だという考えでおります。しかし、肝心の学術会議を代表する久保会長が、この改正案について、いろいろ折衝の結果受け入れてくれたし、総理大臣任
命、これまたやむなしという結論でございますというように聞こえる御答弁のようでありますから、改めてお伺いしますが、この政府案の賛否はどちらになりますか。
#26
○参考人(久保亮五君) 私が折衝に当たった会長としての立場は、あくまでも会長として努力せよということを実行してまいったにすぎません。この法案に対して賛成であるか賛成でないかということは、これは私の個人の問題ではございませんので、学術会議として何らかの態度が明らかにされるとは思いますが、しかし、これが国会に提出されている段階において簡単に学術会議そのものが賛否を言うかどうかということは、まだ明らかではございません。国会で審議されている段階ですので十分慎重に考えさせていただきたいと思います。
#27
○藤田進君 いかなる団体、いわんや日本学術会議のごときは、会長のリーダーシップというものが大切ではないでしょうか。どうお考えでしょうか。
#28
○参考人(久保亮五君) リーダーシップというものはあるべきものであろうかと思いますが、学術会議は合議体でございますので、会長の立場で努力すべきことは努力いたしますが、合議体としての決定は合議体にお任せいたします。
#29
○藤田進君 近くその賛否も表明されるであろうがという意味は、聞くところによると十八日から三日間の日程、そこら辺で学術会議として俎上に乗せ、かつ政府案に対してもまた意見の集約をされると見られるわけです。この議案提案権は、会長はもちろんあるわけでしょう、運営委員会等は経たとしても。そう理解してよろしゅうございますか。次の五月十八日からの定例総会、ここで政府提案なるものを中心に諸般の議論も出る、これをどうまとめていくか、会長としても、やはりいずれ意思表示があるだろうという含みの中には、この日のことが、これが表現されているようにもとれるわけですが、いかがです。
#30
○参考人(久保亮五君) 学術会議の中にも広い意見の幅があることは御承知かと思います。近く開かれる総会においても、この改革についての御議論が出ると思いますが、ここにおいて仮に執行部から何らかの提案をするといたしますれば、それをどういう提案にするかということは、その前に開かれます運営審議会でお考えいただくということになります。
#31
○藤田進君 私が見ていますと、学術会議そのものに実はやっぱり問題がありますよ。極論する人はむしろ学術会議は要らないと。七億余の金を使って、人件費がその中に四億からある。しかし、政府としてはまた別の考えでしょう。これは学術会議が今度審議会の性格を持ってくるでしょう、総理任命で。後でだんだんと時間のある限り詰めてまいりますが、この重大な局面に当面している学術会議が、さみだれでとうとう流会するとか、あるいは来る十八日以後の会議ではどうなるか、会長すら見込みが立たない。賛否もあるだろうし、ここがやっぱり政府として寄せやすい拠点を突かれたことになるんだと私は思います。
 やはり時の政治、政党とは独立して学術会議というものがあらにゃなりません。それがこういうことで、まあ言葉が悪ければ、取り消せとおっしゃれば納得いけば取り消しますが、火事泥みたいなことになっているんですよ。参議院は今度先議、そうして会期末を控えて私自身も三つの委員会に所属しています。法案の審議に追われて、しかも政令にゆだねてみたり、いろんなことを調べてみればみるほど問題のある法案が本件と同様にあるのです。そういうときに、聞くところによるともう数さえあれば何でもなる、学術会議も幸いにごたごたしている。まさに太平洋の船の上で盛んに内輪もめをしていて、学術会議はいまに太平洋に沈没するかもしれないような、漫画家が書けばそうでしょう。どうするんですか、会長。そこを突かれているんですよ、どうしますか。
#32
○参考人(久保亮五君) ただいまの御発言の中で、学術会議の会員が総理大臣任命になって、これが審議会のようなものになるであろうという御発言でございましたが、それに対してお答えすべきかどうかはよくわかりませんけれども、総理大臣が任命されることは、そういう法案でございます。しかしながら、これはここにあるような選出制度によって選出された会員が形式的に総理大臣によって任命されるということで、実質的任命制を意味しないものだと私は理解しております。その意味において、これは総理大臣の実質的任命ではない。
 それから審議会になる云々のお話でございますが、お言葉を返すようで大変失礼でございますけれども、そういうふうになるかならないかということは、これは一にかかってやはり科学者の問題でございます。法律の上では、独立して職務を行うということが従来の法律どおり残されているわけで、この職務を行う上において変更があるとは私は理解しておりません。
 なおかつ、学術会議に対する御批判は大変ありがたく拝聴いたしました。そのような御批判があることは重々承知しておりまして、さればこそ微力も顧みず会長の重任を思いがけなく受けましてから、いかにして学術会議をこれからの日本のために、世界のために役立ち得る学術会議にしていくかということに日夜心を砕いてきた次第でございます。
#33
○藤田進君 大変りっぱな御決意で、そのまま正直に展望が開かれたように思えばいいのですが、恐らく多数の皆さんは、学術会議の中にいま法案に対する反対論も非常に強い。忙しい最中に皆さん見えていますよ、いま国会に押しかけて。賛成の人は来ないです。
 そこで、任命制であっても従来の投票と何ら変わりはないと言い切っておられる。学術会議のこの要綱案なるものに公選制と三分の一は推薦、しかもこれは学術会議の中で推薦を決める。そう決めたのにはそれなりの重要な理由があったはずです。いや、形式的な任命だから何ら差し支えはないというそんな軽い――いろんな場合を見通して、次に政府案の推薦を意図している点もわかる。しかし、それにしても自主自立で推薦三分の一は決めることとし、三分の二を公選制ということにされたと私は聞いております。論理が一貫しないじゃありませんか。予算を削られるか民営化されるか、いろんなことを言われてだんだん後退して、お任せしますということになったんだなとしか思えない。
 お伺いしますが、気骨のある科学者であれば、任期を一年延長して、全員残らず、ありがとうとは言わないにしても素直に一年残りまずか。これは本人の自由でしょう、一年私は残らない、やめると言えば。
 それから、政令にゆだねているものが多いが、推薦して総理大臣が任命するような、そういう推薦はいたしませんという、そういう推薦母体が皆無と言い切れますか。あるいは逆に、非常にたくさん推薦をする、三十名のところを五十名になるかもしらぬ、この整理をどうしますか。それぞれ推薦は法制上の問題ではないが、投票で推薦候補を決めようというところをどうしますか。一定以上の候補者が出れば総理大臣は選択的にこれを決めるでしょう。いずれも見通し論ですけれども、特に昨今の学術会議の動向を見ますと、法律では一年任期延長、素直に全員残るかどうか。推薦を素直にするかどうか、会長として自信がありますか。
#34
○参考人(久保亮五君) 会員候補者の予定者の推薦が定数を超えて出るというようなことは、これはあり得ないことでございます。定数だけの会員予定者を推薦するということにならなければならないわけであります。
 それからほかの点の御質問でございますが、これは各人のお考えでございますけれども、私が推測するということはできません。科学者は、日本の将来のために学術会議が存在しなければならない、それがまともな活動をしなければならないというふうにお考えになると私は信じております。
#35
○藤田進君 総務長官にお伺いしますが、まず選挙制度をどうしてもこの際廃止していかなければならないと。提案理由説明には、多様化したと
か、これは論理上すぐ選挙制度を廃止することには結びつきません。そこで、これにはかなり重要な理由がなくちゃなりません。どういう理由なのかお聞かせをいただきたい。
#36
○国務大臣(丹羽兵助君) 詳細については審議官から先生にお答えさしていただこうと思いましたが、時間の都合で私から言えと、こういうことでございますから、率直にお答えさしていただいて御審議のあれにしていただきたいと思います。
 選挙制については、従来から科学者の代表を選出する方法としては適当でないとの意見もあり、また現行選挙の実態として、立候補者数の減少による競争率の低下、無競争当選が多い等の問題があるなど、いわゆる俗に言いまする科学者離れを起こしておるとの指摘もあるところであります。総務長官の私的懇談会においても、多数意見は選挙制度を根本的に見直す必要があり、かつ推薦制の採用を適当とするものでございました。したがって、総理府としては、これまで多くの問題点が指摘されてきた選挙制にかえて、科学者が自主的に会員を選出することを基本にし、学会を基礎とする推薦制を適当と考えたものでございます。
#37
○藤田進君 審議官、補足があれば。
#38
○政府委員(手塚康夫君) ただいま大臣から御答弁がありましたように、二つ問題があるかと思います。
 一つは、科学の進歩に応じて複合的な領域、学際的な領域が出てくる、こういったものにいまの学術会議の組織が対応していないんじゃないかという点が一点でございます。
 もう一点は、いわゆる学者離れということで、たとえばいまの競争倍率で言いますと、第一回のときには四・五倍でありましたものが、十二期になりますと一・一五倍というふうに下がってしまっているわけでございます。投票率も初期のころは九〇%であったものが六〇%そこそこ、十二期は六二・八%でございます。さらに、出てきている方々を見ますと、二百十名のうち純粋に立候補だけで出てきている方は七%、十五名だけであるわけなんです。この点については、学術会議の方の要綱あるいは当方の試案について検討いただいた報告書等でもやはりお認めになっている点でございまして、実は懇談会でもその辺やはりその学術会議の要綱、それは複合領域、学際領域を反映するのに一つの考え方ではあるけれども、やはりそれでは不十分ではないかという声が強く、現実にはそこでも一人の方が発言されましたが、小さな学会に所属していると全く知らない人に投票することになっているんです、それが同じ学会であればどの人の業績がどうだというのはわかりますという話も出まして、その辺、当時の総務長官も八回全部参加しておられました。そういった点を全部総合的に判断いたしまして総務長官試案というものを考えてあるわけでございます。
#39
○藤田進君 これは公職選挙法でも、今度の地方選挙、非常に無投票が多いんですよ。この論理をずっと援用すれば、公職まで無投票、総理大臣任命になってしまうんだ、これ。それはなぜそうなったか、あなた方が知らないはずはないです。日本学術会議の会員であっても、もうおれは出る気はしないという人がかなりいるんですよ。私の周辺にもいます。行ったってメリットがないと言うんですよ、忙しいのに行っても。この間流会した理由もいろいろあるんでしょうけれども、それぞれ本職を持っていて、遅くなれば、いや講義があるとか、それぞれ所要でその方を優先して帰ってしまう。それは会員の自覚の問題でもあります。
 要約すれば、政府が一体この学術会議にどれだけの手を差し伸べ支援をしてきたかどうかにかかっています。予算の点においてもしかりですよ。一生懸命あれこれやったって一日千六百円ですかというのをきょうも聞きましたがね、千六百何ぼ。それは金だけではありませんが。そしていろいろな傍系をつくり上げていく等々で学術会議というものの権威というものが失墜してきていると見なきゃなりません。むしろこれをどう立て直していくかということに、一国の科学技術行政なりひいては日本学術会議の位置づけというものなりを高めていかなければ。これは、推薦制にして総理大臣任命にしたらうまくいくというふうに考えておられるのでしょうが、私は逆だと思うのです。だんだんと学術会議離れをしていくのです、いまのままではですよ。むしろ根本的には、せっかく国の機関として置く学術会議ですから、今後の予算措置なり立法上なりその辺を考えないと、単なる名誉職程度になってしまう。いまよりもっと落ち込んでいく、陥没してしまう。民間なり各大学なりあるいはそれぞれ各省庁の研究機関なり、こういうものの方がかなり充実をしていますよ。
 学術会議の勧告をどれだけ政府が実現しましたか。政府がどういう重要な課題を日本学術会議に諮問しましたか。古い資料出せといってもなかなか出ないようですけれども、ここにむしろ問題があるんじゃないですか。いままでの政府の学術会議に対する姿勢というもの、ひいては学術会議のメンバーの科学者の自覚。相まって今日のように学術会議は無用の長物になりかつ今後この法案通過後にはもう見直すものはない、見返るものはないようなものになってしまうことを私は恐れます。なるほど候補者は四・五倍から一・五なり一・〇何ぼに下がってしまう、その理由をひとつ政府から聞きたい。
#40
○政府委員(手塚康夫君) これは確かに悪循環を来した面もあるかもしれません。なかなか学者の先生方は立候補というのは確かになじまない点もあって、かつまたこの間の参考人の向坊先生のお話も出ましたけれども、ああいう方が落選するというようなこともあり、いよいよ出なくなってくる。そうしますと、何となく学者離れが起き活動自体が不活発になる。
 それから、不幸にして三十年代には、まあ自民党あたりとの関係でもなかなかむずかしい問題があったと聞いております。そういった点がいろいろ相まちまして現状になっていることは私は認めざるを得ないと思いますし、それは関係方面も十分認めているところでございます。であるからこそ、まあひとつこの際改革をして活性化を図り、もう一度いい意味の循環を図って、本来の機能にふさわしいものにしていかなければいけないというふうに私ども考えます。そういう面で、予算面についても、そういった状況も踏まえながら、現在きわめて厳しい財政事情のもとにありますが、本来の機能を果たし得るためにはやはりわれわれ政府部内でも十分がんばっていかなきゃいけないというふうに思っているところでございます。
#41
○藤田進君 それは審議官、いま行革のさなかで、あれもこれも削ろうとしているときに、学術会議のいまのていたらくでどの程度ふやしますか。補正でふやすのは無理かもしらぬ。そういうことで、学術会議、だから譲れ、そうでなければ予算減らすよと、その論法でいったんでしょうが、われわれはそんなもの信用しませんよ。悪循環を断ち切るために、予算なりあるいは学術会議をどの程度重要視していくのか。他の同種のものもたくさんありますね、指摘しません。長官からひとつお答えいただきたい。
#42
○国務大臣(丹羽兵助君) ただいま先生から最後におっしゃっていただいたように、やはり学術会議の先生方自身がそれに参加していろいろコミットしていただけない、こういうような学術会議自身が自主的に運営されておりまして、政府はいろいろ金は出しておりまするものの、政府機関である、また、政府が先生方の御了承を得てその経費は出しておるとは申しまするものの、学術会議自身が自主的に運営していただかなくちゃならない完全に独立した機関でございますから、余り干渉はできません。ですからきょうまでのようなことになっていろいろと批判を受け、先生方もその会員になられることを快しとせられないというような点もありましょうが、しかし、これは大いに反省しなきゃならぬことだと、いま先生から教えられて私もそう思います。
 もう少し、金は出すんだ、しかし独立の機関だ、干渉しちゃいけない、先生方に一切任しての運営だと、こういうような、魅力のない、またそ
ういうような運営をなされておってはこれはいけませんので、できるだけその線を越えないようにして、政府自身も法改正そのものよりももう少し学術会議の運営というものに関心を持っていくようにしなければこれはならないんではないか。それでないと、先生がいまおっしゃっていただきましたように、同じようなことを繰り返していくというおそれがございますので、私はいま先生のおっしゃったことに全面なるほどという考えを持っておるものであります。
#43
○藤田進君 非常に力強い御答弁で、私の意見は、ごり押しにこの国会で、近くどうももう参議院は上げていくんだというようなことも聞きますが、特に十八日から、それも来月ではないようです、あとわずかですね。私は、学術会議もまだまだまんざら捨てたものじゃないように思うんです。いまのままでどうなるか心配持っていますよ、内部があんなことで。しかし、こういう法案が出て、大げさに言えばもう沈没寸前にあるのに、まだ船上でお互いにけんかばかりしていることではならないんじゃないだろうか。そうなると、十八ないし十九日には真剣なやはり学術会議で御議論もある。その議論の終結というのがそんなに多岐にわたるとも思えない。これはひとつ聞かしてもらいたい。学術会議会長の苦悩もわからないではないが、しかし、リーダーシップに若干欠けるところなしとしないようにも思うんです。民主的だというのはそんなものかもしれませんが、それはそれとして何らかのやはり反応があるに違いないと私は思うんです。
 ですから、この際そういう時期が十分もう目睫に迫っている、学術会議の自立的体質というものが回復されるかどうか。いまはもう政府の言いなりじゃないでしょうかね。要綱案を出してもまるっきり違う方向を、これを是認したかのような印象を受ける、代表の御発言を見ますと。まず長官、そういう議論も実際にこの法の適用を受ける団体、学術会議の会合、定期総会もあるわけですから、これも見たい。いかがでしょう。
#44
○国務大臣(丹羽兵助君) ただいま先生から御親切にお教えいただき、御指摘を伺ったんですが、学術会議の方は、十八日に学術会議として総会をお持ちになって、今後の運営等十分御審議くださることでございましょうし、しかし私どもはいままでのことを見、将来のことを考え、そして政府の機関というよりは世界的、国内的はもちろんですけれども、国際的にも大きな権限を持たれる、権力のある学者の会議でございますからして、国家のためにも貢献しておっていただけることは、先ほど先生がおっしゃいましたように、政府自身は何ら諮問してないじゃないかとおっしゃいましたけれども、また必要があれば申し上げますけれども、相当政府としてもこの会議には諮問もして御意見を聞いておる向きも私は聞いております。
 いま申し上げましたように、十八日に、会議は会議として開かれますけれども、私どもとしては、今回のこの法の改正をしていただいて、そしてりっぱな会議としての運営をしていただきたい、それが最も望ましいことである、こういう考えでおりますので、どうぞひとつ御協力をちょうだいいたしたいと思います。
#45
○藤田進君 これは、まず法案がどうして条文編さんに至ったか、過程を見ても、まず自民党におかれては日本学術会議改革特別委員会をつくられておる。長官の総理府におかれましては、日本学術会議に関する懇談会が持たれておる。学術会議の学術会議改革問題懇談会。いろいろあります。
 参考までにこれらの、特に自民党なり総理府なりあるいは学術会議の構成メンバー、検討された期間、私が聞いているのではまことにお急ぎになっているように思われます。構成メンバー、あるいは期間等をお伺いいたしたいし、それぞれの委員会を設置せられたようですが、この委員会の結論というものは全く並列の答申というか、まとまったものがなかったように思います。そこで何でもいいから答申しておけということだったように思いますがね、後はこっちに任せ。それがこういうことで出てきたわけです。いや、そうではないとおっしゃるに違いない。その理由をひとつ聞かせてください。
#46
○国務大臣(丹羽兵助君) 後でずっと経緯は事務当局からお話しさしていただきますけれども、いま先生が私に向かってつらいことをおっしゃっていただきましたが、思いつきでやったわけじゃないですよ。うちで出して、これはもう先生方、委員会の方で適当にひとつ処理をしてもらいたいというような、そういうつもりで私自身は提案をし、お願いしておるわけじゃなくして、これはずいぶん前から、私の知っておる範囲ではずいぶん前からこの学術会議の改革について、学術会議ばかりでなく、相当方面にわたっていろいろと意見を聞いてきました。先生のおっしゃったとおりの意見がどんどん出ておるんですが、意見を聞いて種々の論議が行われてきたのでございますが、総理府はこれらの方面におけるいろいろの意見を十分踏まえて、特に先ほど来何度も言いますように、先生から出ておりますような意見というものは十分腹に置いて今回の改正案をつくらしていただいたようなわけでございます。
 お隣にいらっしゃいますけれども、久保会長さんにも私自身、二度も三度もお目にかかったり、あるいはまた先生の方の会議の模様等も聞かしていただいて、これなら学術会議を、先生のおっしゃいまするようなそういう権威のある学術会議として運営していくためには、この方法が最もいいということを先生方にも話していただきたい、御了承願いたいということをこんこんとお願いしておる次第でございまして、少しも、出しておけば委員会の先生方で処理してまいるだろうというような、そんな何と申しまするか考えで出しているんじゃないんですから。本当に思いつきでやっているんじゃないんです。
 長い間いろいろと言われてきて、最後はこれより方法がない、学術会議の方も御賛成を願いたい。そして外国からも信用を得られ、国内的にも大きく文化、科学に貢献していただけるりっぱなりっぱな学術会議としての運営をしていただきたい。金は出しましょう、しかしあくまでその運営は自主的に会議の方でやっていただくのだからということで、これが一番だという――また将来どういう考えが出てくるかわかりませんけれども、いまの段階においてはこれが最もいい方法だ、こういうことでお願いしておるわけでございますから、どうかひとつよろしくお願いいたします。
#47
○藤田進君 丹羽長官古い人で、御発言中私が見ますと、いまここで全く不完全だ、しまったと言うわけにはまいりませんわ、提案者ですから。これはむしろ丹羽長官より前に問題はすでに山を越していたんじゃないでしょうか、私ずっと日程を追ってみますと。これはあなたが厄介なものを引き受けた、それは現職長官ですから。しかし昔の人にあれこれ言うんじゃなくて、現職ですから、自然あなたに言わざるを得ない。あなたも苦しいか苦しくないか、答弁をされているわけですけれども。
 ただ、重要な点が御発言にあるわけで、いろいろ法案をまとめるに当たっては、久保会長を初め学術会議の方の御納得をいただけるという、そういうセンスでおられたようですけれども、大体この案で学術会議は十八日以後、まだ衆議院の段階がありますから、その前に食い逃げするわけにいきません。いずれにしても、参議院もまだまだ審議させてもらいたいと思います。そうすれば、丹羽長官の御自信のほどはわかりますが、久保会長は大体了承されたわけですか、長官に対しては。
#48
○国務大臣(丹羽兵助君) 私ですか。
#49
○藤田進君 そうです。もう久保さんの了解をとったようないま御答弁ですからね。
#50
○国務大臣(丹羽兵助君) 責任ある久保会長から私が了解をとったというように申し上げたら、それは私の言い違いでございまして、申し上げることをひとつこれで御了承いただきたいと思いますが、久保会長が私どものお願いを何とか総会、運営審議会の方で了解をとろうとして努力をしておる。しかし、なかなかこの努力を、よろしいということをここで申し上げるわけにはいまのところ
至っておりません。しかし最善の努力もいたしましょうし、また私は学会の方から、政府の方と話し合うことの一任も受けておりますから、今後とも話し合いは続けていきたいということでございましたので、今後とも話し合いを続けていきたい、いまの段階ではまだよろしいとは言えない、こうおっしゃっておられましたので、私としてはどうしてもこれは認めていただきたい。どうしても先生方に……
#51
○藤田進君 押しつけじゃないか。押しつけになるじゃないか。
#52
○国務大臣(丹羽兵助君) 押しつけじゃない。誠意をもってお願いしたいということを申し上げたのでございまして、会長の先生の方からよろしいということまでは聞いておりません。しかし、そうした気持ちが政府にあるならば、できるだけ交渉するという権限は受けておるので努力しましょう、こういうことを聞いておりますので、そういう解釈でおります。
#53
○藤田進君 久保さんが黙っておれないな、これは。
#54
○参考人(久保亮五君) ただいま総務長官からお答えがございました。先ほど私、御質問にお答えしたときに申し上げたと思うのですが、ちょっと繰り返して申し上げ、ちょっと補足もいたしますけれども、この長官試案なるものが出まして、これを検討してほしいということでございましたので、これは改革委員会におきまして御検討をいただきました。
 その報告をここで申し上げるのは時間が許しませんが、その改革委員会の報告には長官試案が、学術会議の改革に関して、許容といいますですか、その許容範囲に入るかどうかということについて六点のクライテリオンを挙げております。その一々を申し上げる時間がございませんが、先ほど申し上げましたように、総会の申し合わせによって折衝の責任を負わされました者といたしましては、その六つのクライテリオンに対して最大限の条件をつくり出すように折衝するのが私の責任であったわけでございます。
 その責任は一〇〇%果たしたとは申せないかもしれませんが、相当の程度私としては果たしたつもりではおります。それが最終的にその許容範囲に入るか否かということについては、会員の間にいろいろな御意見もございますが、その点につきましては明らかにされるものと思います。
#55
○藤田進君 まだ法案の入り口で時間が参りまして、また委員長におかれてもひとつ機会をつくっていただく。なお、審議を進めるに当たって、先ほど申し上げました政令についての、質疑応答でなしに文書でひとつ要項を、政令にゆだねたもの、規則にゆだねたもの、これをお示しいただきたい。それから、先ほどお答えがないのですが、本法案をめぐっていろいろ、特別委員会とか懇談会とか持たれておりますが、このメンバー、審議に入った、それからその終結というか、答申された日等を資料として御提出をいただきたいと思います。
#56
○政府委員(手塚康夫君) ただいまの点わかりました。政令で規定する事項につきましては、中身は、先ほど御説明したようにまだどうだというのは言えませんので、関係条文と、それからその事項ですね、どういった事項という点を出します。それから、関係の私ども懇談会等をやっておりますが、そちらの方、いま先生おっしゃった点について早急に資料を提出したいと思います。
#57
○高木健太郎君 この日本学術会議は、私から申し上げるまでもなく、「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させる」、それからまた、「独立して左の職務を行う。」と、重要事項を審議するとか、その実現を図る、あるいは研究の連絡を図る、また、種々のことについて政府はこれに諮問をする、あるいはまた、学術会議は政府に対して勧告ができる、このような職務を持っているわけでございまして、今度の改正案を見まして一番皆さん気になさっていることは、いま藤田委員からもお話がありましたように、この条文の中にある、政令によるということが幾つかあるということと、また、会員は総理大臣の任命によるということでございます。
 なぜまたいまのときになってこのような改革案が政府から、ある一部の会員にとってはまさに唐突として出されたという感じを受けているようでございますが、それはいまもお答えがございましたので繰り返しませんが、このように改革をすればよくなるという、沈没しかかった学術会議がりっぱになるというようなお考えが政府の方にはあるようでございます。しかし、私はこのように学者からそっぽを向かれているとか、あるいは関心が薄れているというような現在の学術会議がこのようになってきた原因の多くは、政府のこれに対する対応にあるのではないかと思うわけです。
 この第三条にございますように、政府は今度の改革で、「日本学術会議は、独立して左の職務を行う。」というこの独立してということを完全に守られるという、そういう決意がおありかどうか、そのことをまず最初にお伺いしたいと思います。
 また、学術会議の会長からは政令を規則に直してくれという幾つかの注文が出ているようでございますが、その点については政府はどのようにお考えか、まず第一にそれをお聞かせ願いたい。
#58
○政府委員(手塚康夫君) 学術会議法、先生御質問のとおり、学術会議は独立してその職務を行うということでいろいろ規定してございます。私どもこれにつきましては、懇談会の席上での話は、学術会議の性格からすれば何も独立してという規定がなくても同じであるというような御意見も実はございました。しかし、それが置かれたのはそれなりに意味があるわけでございまして、科学に関する重要事項の審議あるいは研究の連絡といった職務に関しましては政府が直接指揮監督するものではない、それは独立してという趣旨だと理解しておりますし、その点は今後とも十分尊重していくつもりでございます。
 すみません、第二点ちょっと……。
#59
○高木健太郎君 政令とかそういうことがあるけれども、また会長からは政令を規則に改めてはどうだという御注文も出ているというわけです。それはそれほど学術会議にとっては重要な要求であろうと思うからなので、政令によって科学者の独立性、学術会議の独立性が失われる危険があるのではないかという気持ちじゃないかと思うのです。その点はどのようにお話し合いをなされたか。そして、それによって決して学術会議の独立性は失われないという保証をされますかと、こういうことなのです。
#60
○政府委員(手塚康夫君) 私ども役人でございます。法律の体系として法制局ともいろいろ相談をいたさなければいけません。現実に現在法律になっているものを落とすということ自体なかなか大変なことでございますが、そういったものを十分考えてやったわけでございます。そういう意味で、協議の途中で、私どもの立場からするとやはりこれは政令にしておかなければいけないというような点が何点かあったことは事実でございますし、その辺は最後に会長、十分な御了解いただけなかったかもしれませんが、こういう形で出させていただいたわけでございます。
 しかし、今回の改正に当たっても、私どもは二百十名の会員を相手にして協議するということはとても不可能でございます。そういう意味で二月の総会の要望、申し合わせに応じまして、会長初め三役の方と何回か協議を重ねてきてこの案をつくり上げたというふうに思っておるわけでございます。
 恐らく政令を今後つくるに当たりましてもやはり中身が問題でありまして、規則等の関係も十分ございます。そういった点を考えますと、これは当然私どもの方は学術会議と協議を重ねながらつくっていくということになると考えております。そういう意味で、先生御懸念されるようなそれによって独立を侵すというようなことは毛頭考えていないことをここに断言しておきます。
#61
○高木健太郎君 毛頭ないということを断言されるということで私、承知いたしたいと思っており
ます。
 もう一つは、会員は総理大臣の任命制によるということでございますが、学術会議から推薦してきた会員はこれを形式的任命である、そういう言葉は使えないにしても、それを最大限尊重して任命するということでなくてはいけないと、こう思います。
 もちろん、現在の国立大学の学長は文部大臣か総理大臣か存じませんが、任命制になっておりますが、かつて京都大学におきまして、京都大学の学長の任免というような問題で大変大きな問題が滝川事件として起こったことがございます。そのようなまた過ちを繰り返さないということをここで長官にひとつ言明をお願いしたい、こう思います。
#62
○政府委員(手塚康夫君) ただいまの点、確かに現行では選挙制によっているために、実は任命を必要としておりません。実はこの総務長官試案につきまして、学術会議の方で改革委員会・選挙制度一般に関する分科会の報告、比較的短期間の間によく分析しおまとめいただいたと私ども思っておりますが、その中にも、「選挙の場合には、立候補制であるから任命を必要としないが、学協会推薦制の場合には任命行為が必要となる。」したがって、それが自主的に行われるものであってはいけないので、「学長の任命におけるごとく、」「形式的任命権にとどめておかなくてはならない。」というふうに書いてあります。
 それから、いまちょっとお話にございましたように、何か法令上の根拠もというふうに書いてございます。その辺私どもは、これは全く形式的任命であると考えているわけでございます。
 研連に二百十名の会員候補者の割り当てを行って、そこから二百十名出てくれば、これはそのまま総理大臣が任命するということでございまして、それが二百二十名出るとか何とかであれば問題外ですが、そういう仕組みになっておりません。そういう意味で、私どもは全くの形式的任命というふうに考えており、法令上もしたがってこれは形式的ですよというような規定、ほかにも例がございませんが、書く必要がないと判断して現在の法案になっているわけでございます。
#63
○高木健太郎君 法律に明文化されておりませんので、いまの審議官がおっしゃったことをそのまま私信用するわけにはまいりませんが、この委員会においでの方はすべてそのようにお考えだと思いますので、強くその点はしっかりと記憶していただく、しっかりと守っていただくということをここで言明をしていただきたい。長官にひとつお願いしたいと思います。
#64
○国務大臣(丹羽兵助君) せっかく高木先生からの御注意であり、要請でございますし、当然なことでございますから、この場で責任のある大臣として、長官として、いま事務当局から答えましたように、守らしていただくことをはっきり申し上げておきたいと思います。
#65
○高木健太郎君 ぜひその点をお願い申し上げたいと存じます。
 次に、このような一昨年から起こりましたこの学術会議の改革に関する問題は、私はまことに不幸なことでございますけれども、学術会議と政府の間の相互不信というものに端を発しているように思うわけでございます。政府は、せっかくわれわれがサポートして何とかりっぱな学術会議にしたいと、こういうふうに考えていろいろのことをされたと思いますが、学術会議の方ではいまの日本を憂えて、あるいは世界の将来を憂えて、科学者の立場から純粋にいろんなことを勧告もする、あるいは申し入れもするというようなことでございますけれども、政府は自分の耳に逆らうものは受けつけない、また日本学術会議の方では、いろいろなことをやっても一向それに対して反応がない、ときには予算が大幅にだんだん削られていくというようなことで、不信感を相互に持っている。
 そして、国民の税金を使ってりっぱな会館、会議の室を持ちながら、しかも大勢の学者がそこに会して年間何日間かを熱心に討議をし、あるいはうちに帰ってもこのことを一生懸命考えてきた、そういう学者の努力に対して、政府は何らこたえない。また政府側から見るというと、何か耳に痛いことばかりを言う、お気に召さないことを言うということで、だんだんと不信感が増してきたのではないか。今回の改革案が私は万全の改革案だとは思ってはおりませんが、しかし、こういうことを一つの機としまして、政府と学術会議の間に信頼を取り戻すということが私はまず第一に大事なことであろうと思うわけです。
 そういう意味では、これまで学術会議の総会が開かれましたときに、その第一回の総会のときにでも、総理府総務長官がその場においでになって、全国の学者に向かってごあいさつなんかをされたことはございますか。それをお伺いします。
#66
○政府委員(藤江弘一君) お答え申し上げます。
 その事実はこれまでございませんでした。
#67
○高木健太郎君 これは、おいでになったからどうなるというようなものでもございませんが、お互いに信頼し合って、頼みます、りっぱな政策を答申していただきたいとか、あるいは政府に対してそのようなアドバイスをしていただきたいという熱意があれば、中には余りりっぱな学者でない方もおいでかもしれませんけれども、大部分が非常にりっぱな学者でおありになる。そういうところにおいでになって、皆さんにあいさつをされて、そして十分な御審議を願いたいというふうにお願いなさると、一層私は親密度が増すのではないか。そういう不信感が取り除かれていくのではないか。それは、法律をいじるというよりもかえってりっぱなことじゃないかなというふうにさえ思うわけでございまして、どうぞその点、今後はひとつ御考慮をお願いいたしたいと思っておるわけでございます。
 長官、何か御感想ございましたらお願いします。
#68
○国務大臣(丹羽兵助君) いま高木先生から、大変いい御提案と申しまするか、御意見を聞かしていただきましたので、学術会議の方ともよく打ち合わせをいたしまして、また適当なときに、その御提案どおり実行させていただくようにしたい、かように思っております。
#69
○高木健太郎君 よろしくお願いいたします。
 次に、もう一つ私申し上げたいことがございます。それは、学術会議の予算のことでございますが、先ほども藤田委員からお話ございましたように、全体で七億何がしのものでございます。そのうちの事務費が約四億を超しているわけでございまして、また、事務費を除いた三億のうち、国際学術会議の関連として払っている費用、これはもう当然払わなければならない費用でございます。そういう費用とかを除いてみますと、私の計算したところでは、一億七千三百万ぐらいにしかならないわけです。この一億七千三百万ぐらいのものでございますが、そのうちの、この学術会議の一番重要な任務でございます学術会議の会議の開催費、あるいは関係費というのがございますが、それが昭和五十三年度では一億一千六百と、それが昭和五十八年一億三千万ぐらいになっておりますが、汽車賃なんかが上がって交通費が上がっておりますので、これは全く上がっていないと言ってもいいわけでございます。全体として少し五十三年ごろからふえておりますのは、結局これは事務費のベアとかそういう関係でございまして、一番重要なものである会議、あるいは国際共同事業とか、そういうものを全部合わせましても一億七千万にしかならないということです。
 私はかつて学術会議におったことがございますが、ある問題がございまして、そのことについていろいろの運動家が学術会議になだれ込んだことがございます。そういう関係で、必死になってその調査をしたことがございます。で、その調査の費用というものは一文も出ないわけでございます。また現在、種々の常置委員会あるいは特別委員会等、研連その他の会議がございますけれども、総会は一年に二回でございます。また、常置委員会というのは年に三回しか開かれない。その他の委員会でも、遠方からおいでになる方で、あ
る会議の準備をしなければならぬという委員長の役目におられる方は前もって打ち合わせをしなければならぬ。そういう意味で、ほとんど全部と言ってよいと思いますけれども、各委員の方々はみんなポケットマネーでございます。私もいろいろ働いてはおりましたけれども、それが全部自分のふところを痛めるだけである。
 しかも、そうやって調べ上げたものを政府に勧告として申し入れをいたしましても、ナシのつぶてでございまして全く取り上げようともされない、あるいはどうなっているかわからないという状況でございます。そのほかにもたくさんございますけれども、結局こういうことで、一生懸命にやる人はもう嫌気が差してくるということが非常に私は大きいと思うわけです。
 そこでお願いをしたい、あるいはこれはぜひ要求をしておきたいことは、一億七千万しかないようなものをもっと大幅にふやしていただきたい。そうすることが、規則を改正することと相まってよりお互いの相互信頼を高めることになる。もしもこれを怠って、単に選挙の方法を変えるということだけにこれが終わりますと、科学者は政府にそっぽを向くのじゃないか。まじめな学者ほどそっぽを向くのではないか。これは日本にとって私は非常にゆゆしい問題であろうと思うわけです。
 で、苦いことを科学者は申しますけれども、先を見通した科学者の考え方というものは、私は大いに政府としては参考にしなければならぬものがあると思うのです。そういう意味では、十分その人たちが会議ができるような、そのような経費、予算をぜひ見ていただきたい、こう思います。
 時間がございませんのでもう一つだけ申し上げたいと思いますが、今度推薦制をおとりになるという政府の案でございますが、推薦制を学会にお願いになるわけですけれども、学会は各部によっていろいろの形を持っております。そのために一様にはまいりません。これから学会を組みかえをしなければならぬし、研連との関係も種々雑多でございまして、この案が出て、恐らく非常に大きな混乱は避けられないと私は考えておるわけでございます。そういう意味では、少なくとも学会にお願いして推薦しなければならぬということになりますと、全然それを何にもなしでやれということは私はできないと思うんです。だから、そういう推薦制を実行されるためのいわゆる諸経費は、ぜひこれを見なければならないのではないか、こう思います。先ほどの会議費の上乗せあるいは増額と、及びいま申し上げました推薦制による会員の推挙というものに対する経費のことについて、お考えをお伺いしておきたいと思います。
#70
○政府委員(手塚康夫君) 先生御指摘の点、まことにごもっともだと思います。現在の学術会議の予算の状況を見ましても、私どもから見ても決してこれで十分だと考えているわけではございません。ただ、現在の学術会議に対するいろいろな問題が各界から批判されていることは事実でございますので、この際、改革を進めるとともに、それによって本来の機能を十分果たせるように、予算面の裏づけも考えてやるべきだという先生のお考えは、私どもとしても全く同感でございます。もちろん、先ほども話がございましたように、現在の厳しい財政状況の中で一気に多額の増額を望むということは私はできると思いません。しかし、これは年を追って、実際の活動と対応していくことによって本来の活動ができるような予算措置といったものも可能ではないかと考えますし、私どももそれを踏まえて最大限の努力はしていきたいと思っているところでございます。
#71
○高木健太郎君 この悪循環を断つのは、私はこれしかないと思うのです。それでなければ、七、八億の金を捨てているようなものだと思うんです。単なる事務官を食べさしているという、まあ言葉は悪いですけれどもそうなっちゃうわけです。一番行革の目玉になっちゃうんじゃないか、その気さえするわけでございまして、生かすも殺すもこのような方向をとらなければいけない。選挙法の改正だけでは絶対にそれは達成できませんぞということを私は強く長官に望んでおきたい。長官も大変でございましょうが、ぜひ閣議においてこのことを努力をして、そして新しい学術会議の出発点にこれをしていただきたい、そのように思いますが、長官の御決意をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
#72
○国務大臣(丹羽兵助君) 高木先生もかつては日本学術会議の会員として御苦労をいただいたとうとい御体験をお持ちの方でございますから、りっぱな学術会議にするためにこのような御親切な御芳志をちょうだいいたしましたので、私も、ただその会員を選挙じゃなくて推薦制にするというだけでりっぱな学術会議になっていくなどとは考えておりませんし、また先生がおっしゃっていただいたようにやっていかなくちゃならぬことでございますから、こういう財政の非常に厳しいときでございますからして大変努力を要することでございましょうが、このように先生おっしゃっていただくんですから、全力を挙げて最大限の努力で御趣旨に沿うように予算の方の交渉もしていきたい。そしてりっぱな学術会議にして、国民の負託にこたえていただきたい、こう考えております。努力させていただきます。お約束を申し上げます。
#73
○高木健太郎君 よろしく。終わります。
#74
○田沢智治君 学術会議問題が提起されて以来、多くの国民から私のところに、学術会議とは一口に言うと何ですかという質問がたくさん来ておるんです。国会というところは国民に対してわかりやすく国の実態を紹介し、かつその実態を国民に享受さしていく、そういう責任があると思いますので、一口に学術会議とは何だという質問に対してお答えをいただきたいんですが、総理府と学術会議両方から聞かしてください。国民に答えるつもりで答えてください。
#75
○政府委員(手塚康夫君) 学術会議法にもございますように、日本の科学者を内外に代表する機関であるというふうに認識しております。
#76
○参考人(久保亮五君) いまお答えがあったとおりでございますが、日本の科学者を内外に対して代表して科学の向上を図る。これは科学者の立場から、行政というようなものとは一線を画して、わが国の将来のために、世界の将来のために科学の発展を図る。そのために有効な提案をし、提言をするというのが一つの役割りであり、また国の中では研究の促進を図る、また国際的には国際的な協力を進める、こういうことが学術会議の仕事と心得ております。
#77
○田沢智治君 八億の予算を使いながら、第四条に基づく政府からの学術会議に対する諮問、この件数を近年どのくらいやったのか。第五条に基づく科学の振興対策について政府に勧告する義務がある。何件学術会議がやったのか、ひとつお答えいただきたいのですが。
#78
○政府委員(藤江弘一君) お答え申し上げます。
 これまでの勧告件数は二百三十二件でございます。なお、諮問がございましたのが八十六件でございます。
#79
○田沢智治君 政府。
#80
○政府委員(手塚康夫君) いま事務局長からお答えがあったとおり、諮問件数は八十六件ということでございます。
#81
○田沢智治君 四月の十六日の読売新聞には、「ここ十数年間、空文となっている。」と言われている。「昭和三十八年以降は、毎年わずか一件。それも法律によって諮問が義務づけられている民間学術研究機関への補助金交付だけである。」と、こう言われておるんですが、これはいかがでございますか。
#82
○政府委員(藤江弘一君) 諮問につきましては御指摘のとおりでございます。
#83
○田沢智治君 政府。
#84
○政府委員(手塚康夫君) 事務局長答弁のとおりでございます。
#85
○田沢智治君 そうすると、学術会議が政府に対して要望した件数は。
#86
○政府委員(藤江弘一君) お答え申し上げます。
 百三十七件でございます。
#87
○田沢智治君 私は、今日までに至る学術会議の業績というものはたたえなきゃならぬと思うし、
この機関はやはり国の代表機関として国がこれを支えて、日本の姿というものを内外に発揮する、まあ平和と人類福祉に貢献する機関として助成しなきゃならぬと、私はそういう考えなんです。
 ところが、昭和二十九年十月の十七回総会では、原子力研究・利用三原則を決めて、なかなか国家、民族、国民のために努力なされた、目覚ましいと言われる功績はあるが、それ以降さっぱり目立ったような内容がない。一体これはどういうことなのかという問題が、学術会議といえば学者の偉い人たちがやるんだ、国民に直接関係ないよという、そういう次元から、改革問題が提起されて、やっと国民の茶の間にこの問題が戻ってきた。
 私は、これは非常に大事だと思うんです。今日、がん研究によって国民のがんを征服してほしいという、これは世界的要望事項、国民的期待感。子供を産みたくてもどうしても産めない、試験管ベビーというものが今日一つの科学的成果の中で安全度の高い方向に来ている。また、遺伝子組みかえによって、いろいろな人間の悩んでいること、あるいは人類社会の中で大きく貢献しようとするような高度な科学も方向性が出てきている。あるいは腎臓移植の問題等も含めて、当然高い倫理観が求められるような時勢に対して、学術会議がどのように対処されてきたのか。この辺のところを聞かしてもらいたいんです。
#88
○参考人(久保亮五君) ただいまの御質問で、原子力研究・利用の三原則以来見るべきものなしというような仰せでございましたけれども、じみではございますが多くの業績と申しますか成果を上げてきておると思います。
 前回参考人として発言いたしましたときにも若干のことは申し上げましたが、わが国の学問の、今日現在非常に中心的な学問の担い手であるような主要な研究所のほとんどは学術会議の勧告によって、これを政府が受けとめて成立したものでございます。
 一、二の例を申し上げますと、たとえばわりあいに最近のものといたしますと、岡崎にございます研究機構、その中には基礎生物、生理学、あるいは分子科学と三つの研究所がございますが、これもそのようなものでございますし、もっと最近でございますと、たとえば筑波の高エネ研に放射光実験施設というようなのがございますが、これは世界一流の施設として誇るに足るものでございます。ごく最近完成いたしましたが、こういうものも学術会議の勧告に基づいてできたものと申して差し支えないと思います。
 その他数多くございますので一々申し上げませんが、必ずしも一般の方々の御関心は直接には呼ばないかと思いますけれども、わが国の学術の研究、また、それの技術面の応用等に関しまして非常に重要なものをしておるわけです。そのほか、こういう研究所ばかりではございませんで、種々の科学研究あるいは技術研究に関する基本的な問題に対する提言というようなものもいたしております。先ほど御指摘のありました、たとえばがん研究のようなものにいたしましても、これは目下委員会で検討しておりまして、近くその成案をまとめる予定でございます。
 そういうようなことでございまして、必ずしも短い時間でございますので十分お答えにならないかもしれませんけれども、それなりの努力はいたしておりまして、どうかじみな仕事でやっているというふうに御理解いただきたい。国際的にも多面的な活動をいたしておりますが、いろんな制約がありまして、必ずしも十分とは申せない、今後なお一層こういう点につきましては努めていきたいと思っております。
#89
○田沢智治君 私は、終戦直後とはかなり違って、国家的、民間的諸機関が大変整備されて、今日の実態から見ると、たとえば科学技術庁が三十一年五月十九日に成立して、科学技術会議が三十四年四月六日にこれはもう独立している。それから専門科学者の検討が必要な重要問題の諮問機関としては、四十二年六月一日に文部省に設立した学術審議会あるいは日本学術振興会とかというような諸機関がそれぞれの機能を分担して果たしつつあるというような状況の中で、今日の現行の学術会議では国民が求めている期待にこたえられない硬直した機関になっているんじゃないかという批判もかなり私はあると思うんです。ですから、十数年かけながら学術会議自身がみずから自主改革を実現するに至らないというような要因はどこにあるのかなと私は思うんですが、どう思われますか。
#90
○参考人(久保亮五君) 大変重要な御質問でございますが、また、それなりに非常にお答えするのがむずかしい点がございます。
 一つには、御指摘のようにいろいろな機関ができてきて、戦後間もなくのときに学術会議が果たした役割りをそちらのそういうような諸機関が果たすというようなことになりました事実はございます。しかし、それなりにそれは学術会議がより本質的な問題にその努力を傾けるという余地をつくったわけでございますから、当然学術会議といたしましてはそういう立場に立って努力すべきものがあったと思います。事実そういう意味においていろんなことをやってきたわけでございますが、これ一々申し上げません。
 まだほかに御質問あったように思いましたが、ちょっと失念いたしまして、もしお答え足りませんでしたら、また御指摘いただきたいと思います。
#91
○田沢智治君 私は、学術会議が発足された当初の仕事の量と、いろいろな機関がそれぞれ整備され、充実されて整ってきた今日、学術会議の行き方というものが本質的に変わっていかなきゃならない発展性があると思うんです。ですから、そういう次元に立って学術会議自身が自主改革しなければならない具体的な理由、自分たちはこういう点に対して自主改革したいんだというようなものをきちっと要点を述べてもらえませんか。
#92
○参考人(久保亮五君) 御指摘のように、戦後間もなくの時期と今日とは非常に違った面が多々ございます。
 学術会議の一つの特徴と申しますか、基本的な性格と申しますのは、各省に設けられております審議会と性格を異にいたしまして、いわば学問の全分野を代表するものになっている。これは大学関係者、産業界、それから政府諸機関にあるような研究者、そういうものをすべてを代表するというようなものでございます。その意味におきまして、広い観点から問題を掘り下げていくということがここで可能になるはずであり、人文科学から社会科学、自然科学、医学に至るまで、工学ももちろんのことでございますが、そういう全分野、問題として一つの問題をとらえましても、いろんな面からこういうものを考えることができる。そして何よりも大事なことは、目前のことよりも将来の問題につきまして、学問の立場から、科学の立場からそれを追求し、そしてあるべき姿あるいはとるべき方策というようなものを打ち出していく、これが学術会議の最も重要な任務であると思います。
#93
○田沢智治君 私も会長がそう申されることに同感なんですが、今日議論されている実態は、公選制反対だと。学術会議は国民、国家のために何をなすべきか、われわれはこういうことをやるんだというような問題がどこかへ行っちゃって、公選制か推薦制か、賛成だ反対だと言って学術会議自身が、日進月歩するいまの社会情勢の中で、たとえばがんの研究を私たちはやりますよとか、あるいはこういうことをこう改革しなきゃいかぬと思いますよというような、本来の本質的な主張というものを提起することが国民の前に出てきてないので、公選が反対だ、推薦が反対だ、やれああでもない、こうでもないという現象的なものに私は追われているんじゃないか。八億の金をもし使うならば、やっぱり国民のためにこういうことを私たちはやるんだ、ああいうことをやるんだという実績の評価の中で、学術会議というものは余り国が干渉しちゃいけないよというような着実な世論形成の努力をしなきゃだめだなと、こう思うんですが、学術会議の会長さんはどう考えますか。
#94
○参考人(久保亮五君) 大変重要な御指摘でございます。
 これは私自身の見解を申し述べるより仕方がないかと思うんですが、いま御指摘のようなことは、実はもちろん改革要綱自体にもそういうことは述べられているわけであります。何のために学術会議を改革しなければならないかということにつきましては、改革要綱にもそういう理念が打ち出してあるわけでございまして、現時点におきまして問題が選出制にしぼられる、これは改革要綱に主張されていることと、この法案との違いがそこに集約しているわけでございますから、そこに問題が集中して、それに対する御批判がいろいろ出るということも、これまことにやむを得ないことでございますけれども、おっしゃいますように、本来学術会議が何のためにあるか、何を目指しているかということについて、国民の方々に御理解いただきたいと思うのでございますが、おっしゃいますように、そういう主張を明らかにすることが十分でないと、これは弁解いたしても仕方がないことでございますけれども、そういう機会を得ないということもございますが、ぜひ皆様に御理解をいただきたいことと思います。
#95
○田沢智治君 私は、学者は少し甘え過ぎていると思うんですよ、率直に言って。それはなぜかというと、理念とか理想とか、観念的次元の論争は物すごく多い、この改革案を見ても。国民のためにこれからこうやるんだというものは一つもないですよ。理念、理想、観念的なものばっかりですよね。
 たとえば、がんの問題については向こう十年学術会議は真剣になって取り組むから、国民よ、がんの問題についてはもうしばらくがまんせいというようなことは一つもないじゃないですか。
 ですから、私はやはり問題点は、ああでもない、こうでもないということよりも、内容で勝負するというような、やはりまじめな学者層の実態をどのように糾合して改革の柱にしていくかという、先ほど高木先生が申されるような、そういうような方向にこなければ、私はこの問題はどんなような理屈をつけたって納得できないと思うんです。
 ですから、まあそれがいい悪いは別として、時間があと二分きりないというんですから、政府の原案が提案されるまでに至る過程の中で、政府とどのような点が合意でき、どのような点が対立し、どのような点が調整可能であると思われるか。これは非常にむずかしいと思うんですけれども、第二十二条の政令を規則にしてほしい、まあ一連の政令問題は、私も自民党であるけれども、これはよほど学術会議の意見をも尊重した形での政令というものを考えなければいかぬという主張を私は持っている。ところが、学術会議側が政令を規則にしてほしいと、こう主張しながらも、その裏づけとしてこういう規則をわれわれは持っているから、政令にするならばこういう内容のものをひとつしてほしいと意思統一ができて、そういう原案を持ちながら政府と交渉なさっておられるんですか。
#96
○参考人(久保亮五君) この法案につきまして、いま御指摘のような点でございますが、規則等々これをまだ具体的に検討するところに至っておりません。
#97
○田沢智治君 私は、だから学者というのは理屈ばっかり言って実行性がないと、こう言うんですよ。十数年来この問題が出ておるんでしょう。違うんですか、改革問題は。
#98
○参考人(久保亮五君) 御指摘の点はこの法律に関連したところだと思うのですが、この法律に関連して規則を具体的に検討するという作業はまだ行われていないという点を申し上げたわけでございます。
 改革問題に取り組みましたのは第八期でございますから十何年前かになりますが、具体的に法律まで変えてということの問題に取り組みましたのは今期、十二期の初めからでございます。で、まとめられましたものが改革要綱でございますが、改革要綱にいたしましても、これを具体的に法律にするという段になればたくさんの問題が出てくるとは思いますが、そこでどれが規則、どれが政令というようなところまでの検討はいたしておらなかったわけでございまして、その意味で、この法案に即したものがすぐ出てくるということにはならないわけでございます。
#99
○田沢智治君 だから、自民党側はいろいろ意見があるけれども、私たちは、参議院はまあ良識の府だと思っておるし、われわれは先生方の味方になろうという姿の中で、いままでいろいろ部内で議論しているわけです。ですけれども、対案を持たずに政令を規則にしてくれなんて言ったって、じゃその規則の原案はあなた方持ってますか。十何年来自主改革を主張しながらまだできておりません、合意もできません、今後何十年かかって合意できるかわかりませんというようなことでは、これはもうどうにもならないわけですよ。自民党がごり押しする、ごり押しするということよりも、あなた方の対応が、十何年間もうぶん投げっ放しできておるという実態なんだから、問題をここで提起して、自民党案というものをあなた方は真剣に受けとめてもらって、こういう政令事項については、学者としてはこういうような内容が欲しいんだというような真剣なる議論を内的にしっかりやらないと、これはまた五年たったって十年たったって空文化して何にもできないような結果になってはならぬと、われわれはそう思うんですよ。
 ですから、そういう辺のところをひとつ踏まえて、あなた方はあなた方で国民にその果実を享受させなきゃならない責任があるんだから、そういうような努力をしてもらわなければ私はだめだと思う。これはもうあなた方の自主改革のみにまっておったとすれば、実質的な果実を国民は享受できない、私はそういうふうに思っておるんですが、総務長官、そういう考えに対してはどういうお考えですか。
#100
○政府委員(手塚康夫君) ただいまの点、先生ちょっと誤解あるといけませんので私から申し述べておきたいのですが、今度の改正法案を考えるに当たって、私ども全く空から出発しておるわけじゃございません。自主改革要綱、これもずいぶんやはり年数をかけて検討されたものでございまして、選出方法以外の点はほとんど取り入れているわけでございます。それから選出方法についても、この点は残念ながら会長とも意見が分かれましたが、こちらの総務長官試案を検討していただきたいというのに対して、わずか二カ月ぐらいの検討期間ではございましたが、かなり分析した報告書を出していただいて、いわばこの範囲内で私ども積み上げていったわけでございます。
 そういうことで、そういう細かい点までなりますと、これは学術会議でその点対案がどうだというのは、正直私どもの方から見ても、会長個人の御意見を伺うなら結構ですが、それはちょっと会議体としての学術会議に対する要望としては無理ではないかと思います。
#101
○田沢智治君 最後に。
 だからこそ、一年間の猶予期間というものを法文の中に入れて、真剣にあなた方はあなた方で主体的な次元の中でよく検討し考えなさいというような、われわれは弾力的な案を出して検討してもらっておることでございますので、合意されているところ、合意できないところ、さらに煮詰めながらよりよい学術会議になってもらいたいというのが希望ですが、会長さんの決意をお聞かせください。
#102
○参考人(久保亮五君) 国会の御審議を経ました段階におきまして、学術会議として最善の努力はいたします。
#103
○佐藤昭夫君 いろいろ質問をしたい点多々あるわけですけれども、時間がきわめて制限をされていますので、問題をしぼって質問をいたしますが、まず五月八日日曜日のNHKのテレビ討論会、ここで自民党の国対委員長中山太郎氏が、その発言の中に聞き流すことのできない重大な内容、日本学術会議を意図的に中傷をし、法案の重大性を覆い隠す虚偽の発言が数々ありますので、
この点を、まず事柄の真実をただしておきたい。
 その一つは、中山氏は、国立大学の学長で日本学術会議会員は一人もいないと、こういうふうに発言をされているわけですけれども、事実はどうですか。この中山氏発言は間違いですね。
#104
○政府委員(藤江弘一君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘の点でございますが、現会員の中には四名の国立大学の学長がおられます。
#105
○佐藤昭夫君 いや、何人というのをよく聞こえるように。
#106
○政府委員(藤江弘一君) まず広島大学の頼実学長、これは五部の会員でございます。それからお茶の水女子大学藤巻学長、これは六部の会員でございます。それから名古屋大学の飯島学長、これは七部の会員でございます。それから山口大学の小西学長、七部の会員でございます。
 以上でございます。
#107
○佐藤昭夫君 明確に虚偽の発言であります。
 二つ目。学術会議の会長、久保会長のことを言っておると思いますけれども、会長が総務長官と合意したものを法案として今国会に出しておるんだとこう言っておりますけれども、これはもう先ほど来いろいろすでに出ていますように、一番肝心の選挙制度をどうするか、選出制度をどうするかというこの点については合意がないまま国会に提出をされておるということですね。
#108
○政府委員(手塚康夫君) 先ほども申し上げましたように、久保会長との間では、久保会長たしか二月の総会の後にお見えになったときにも総務長官に対して、自主改革要綱については御再考願えないかという話がございました。それに対して総務長官は、これはまあ前総務長官がいろいろ判断の上決めたことであるので、極力これで検討していただきたいというふうに申し上げた経緯がございます。
 そういう意味で、出発点で、そこでは確かに久保会長の意を私ども受け入れることはできなかったわけでございますが、その点を除けば、あと、私どもそういう意味での素人が法案をできるものじゃございません。やはり学術会議の意見をくみ上げていかなければいけませんので、その点、幸い二月の総会でも久保会長を窓口として政府折衝に当たるということになっておりましたので、それから何回となくお話をしながら御意見を取り入れていまの案をつくったということでございます。したがって、同意とか合意とかいう言葉の問題、これによっては合意したか同意したかと言われれば……
#109
○佐藤昭夫君 いろいろ解説は聞いていませんから事実を。
 ですから、肝心の学術会議会員の選出制度については合意が得られないまま、合意がないまま一方的に政府が国会に出しているということは疑うべくもないこれ事実であります。
 三つ目。中山氏はこういう発言をしております。これはテープできちっととって確認をしているんですが、これはすぐいま――これはというのはこの法案はという意味ですね、すぐいまこうするということではなく、まず、会員の任期を一年延期を決めて、今後新しい会員の選出方法を詰めていくというものだと、こういうふうになっているわけです。これも重大なごまかしですね。とにかく公選制を推薦制に改めるということはいますぐ決めるわけでしょう。この国会で決めてくださいという形で出しているわけでしょう。間違いありませんね、総務長官、あなた提案者ですから。
#110
○国務大臣(丹羽兵助君) いま先生のおっしゃった考えで私どもは提案しております。
#111
○佐藤昭夫君 そうしますと、私はこの重要なものを三つほど例を挙げていまただしてきたわけですけれども、こういう一連の虚偽の発言、テレビを通して茶の間向けにうそをついてまでこの問題の重大性を覆い隠して今度の国会で通してしまおうというこのやり方、こういうやり方というのはこれはまことに政治的にフェアでない、許されざる手法だというふうに私は思うわけです。
 そこで総務長官、こういう中山氏の発言をどう思われるか。自民党の国対委員長としての肩書きでの発言でありますから、これはぜひ総務長官から中山氏にこの訂正、謝罪、これを明らかにしてもらうようあなたから要求をしていただきたいというふうに思いますが、どうですか。
#112
○国務大臣(丹羽兵助君) いま先生からお話を聞かしていただいて、私ども提案しておる気持ちと違ったことを五月の八日でございますか、NHKで放送なさったということで、初めて知ったようなわけで、まことに申しわけありませんが、私、このテレビ討論会聞いておりませんで、いま御注意のありましたように、また先生からも御提言のありましたように、自民党の中山国対委員長さんにお目にかかりまして、どういう趣旨でお述べになったかよく確かめ、聞いて、私ども政府としてはそういう考えではないということをはっきりと申し上げておきたいと考えております。
#113
○佐藤昭夫君 その最後の部分聞き取れなかったわけですけれども、よく中山氏本人に確かめられるのもいいでしょう。私が言っているのが事実かどうかということはビデオテープが保存をされておるはずでありますから、それを一遍聞いていただいたらはっきりする問題。ということで、私の言っているようなことが、事実中山氏がそういううその発言をしておるということであれば、提案者総務長官としては、これはふさわしくないということで中山氏に訂正、謝罪をしてもらうというふうに総務長官として努力してもらえますか。
#114
○国務大臣(丹羽兵助君) 政府の提案しております趣旨と違ったことを、ただいまこの委員会で御審議願っておるときに、いかに自民党の国会対策委員長で大きな責任を持って国会の運営を考えておっていただく人であろうとも、そのようなことをおっしゃることは大変こちらも、何と申しますか、御審議願うに支障を来すことでございますから、はっきりとその点は私から中山先生にお目にかかって申し上げようと考えております。
#115
○佐藤昭夫君 ついでにこの機会に委員長にもお願いをしておきたいのですが、文教委員会としての正常な審議を保障をしていくために、この中山氏の発言に対してはひとつ適切な処置がされるよう委員長としても御努力願いたいとお願いしておきます。どうですか。
#116
○委員長(堀内俊夫君) 聞いてみます。
#117
○佐藤昭夫君 そういうことで努力する、総務長官と相協力して努力するということですね。
#118
○委員長(堀内俊夫君) 国対委員長に聞いてみます。
#119
○佐藤昭夫君 四月の、例の問題になっております学術会議の総会、ここに今次法案の日本学術会議法改正案の内容ということで二枚につづった法案の骨子説明のような文書が配付をされておりますけれども、この内容は、いまこの文教委員会に付託、審議ということになっているこの法案とは内容的に違う部分がありますね。それはどの部分ですか。
#120
○政府委員(藤江弘一君) その当時まとまりつつあった法案の内容を、口語体といいますのはあれですが、書き改めたものでございます。したがいまして、内容的には私ども同一のものであると考えております。
#121
○佐藤昭夫君 そうじゃありませんよ。私もずっと照らし合わせをしてみましたけれども、内容の違う部分がある。それを同じだという理解をされているんだったら、これが大変なことになるんです。
#122
○政府委員(藤江弘一君) 第十九条で規則となっておりましたものが、その後法案では政令となっております。
#123
○佐藤昭夫君 その一カ所ですか。
#124
○政府委員(藤江弘一君) そのとおりでございます。――失礼しました。二十一条がその後新しく設けられたわけでございます。
#125
○佐藤昭夫君 その二カ所ですか。
#126
○政府委員(藤江弘一君) そのとおりでございます。
#127
○佐藤昭夫君 三カ所あるんですよ。
 一つは、この学協会が日本学術会議に候補者の届け出をする、そのことを定めている部分で、こ
の配付されたものでは規則の定めによりこういう手続をとりますというのが、これが政令によりと、こうなっているわけでしょう。
 それから、会員の推薦及び会員の推薦管理会、これに対しての必要な事項を定めるというこれが、規則で定めるとなっているのが、政令で定めると、こうなっているでしょう。
 それから、いわゆる研連、研究連絡委員会、これ、規則で定めるというのが、政令で定めるとなるんでしょう。三カ所じゃないですか。そういうふうに違った内容で四月総会で説明をして、総会の会員の皆さん方の議論を聞いてきた、その議論自身が、この内容についてさえ同意を得るということには四月総会ではならなかったということがもうはっきりしたそういう問題になってきているわけですけれども、私は、さっきは中山元長官、現国対委員長の意図的な虚偽発言、これを取り上げました。
 続いて、ここでもそういう、言うなら四月の学術会議総会を、まあ言葉、表現がいいかどうか、だますような形で、違った内容で説明をしておいて、そして国会へ説明とは違うそういう法案が出てくる、こういうやり方というのも、これはまことに不公正な政府の法案の提出の仕方だというふうに言わざるを得ない。総務長官、私がいま言っていたこういう経過、四月総会で説明、配付をした内容と、あなたがいまこの参議院に提案をされておるこの法案と、内容が違っているということは重々知りつつ提案をされていますか。
#128
○国務大臣(丹羽兵助君) きわめて事務的なことでございますけれども、私に答えよということでございますから、正直に答えさしていただきますけれども、全然承知しておりません。
#129
○佐藤昭夫君 非常に正直な答弁ですね。とにかく承知しないまま、もう繰り返しませんけれども、そういう形で出ているということはきわめて重大ですよ。
 もう一つの問題は、今回の法案によりまして公選制が学協会推薦制、これに変えるというわけでありますから、二十三万人のいわゆる有権者、この有権者は日本学術会議の会員、すなわち代表をいままでは直接選挙で選ぶという、そういう権利があった。この権利が今回の法改正によって剥奪をされるという重大な問題があるわけですね。
 そこで、日本学術会議が、たびたびお話に出ておりますいわゆる自主改革の要綱、あれをまとめられるに当たっては、二十三万有権者の二百分の一、それから学協会や大学研究機関の長、元学術会議会員約三千数百人ぐらいの人たちにアンケートを送って、その意見を回収をして、大体これでおおむね同意が得られておるという内容を改革要綱にまとめてきたというふうに、この間岡倉参考人がここへ来られたときにもそういうお話をなさっておったと思うんです。しからば、今回政府がこの提案を、国会に対して今次法案を出されるに当たって、有権者の方々の意見を直接聞く何かの方法をとられましたか。どういう方法で、どういう範囲で有権者の意見を問うということをやってこられましたか。ありませんね、直接聞くのは。学術会議、まあ会長でも事務局長でも、どっちでもいいです。
#130
○参考人(久保亮五君) 有権者の意見を聞くというようなことは、直接にはやっておりません。有権者の方々から反対論の御意見はいろいろ寄せられておりますが、直接に有権者のサンプリング調査というようなことはやっておりません。学協会に対する懇談会は五回催しました。
#131
○佐藤昭夫君 ちょっと私、総務長官、総理府にいまの点をお聞きしたい。日本学術会議は自主改革の要綱をまとめるに当たっては、さっき言いましたが、三千数百人のアンケートをとってやってきたということですね。総理府は今回の政府提案を国会へ出すに当たって、直接有権者から意見を聞くということをやってこられましたか。
#132
○政府委員(手塚康夫君) 私ども、法律の提案権は総理府にございます。しかし、私どもだけではもちろんいけないということで、学術会議の意見を十分聞き入れるようにはいたしましたが、広く国民投票にかけるというわけにももちろんいきませんし、そういったことは実はやっておりません。
#133
○佐藤昭夫君 有権者の意見を直接聞くと、こういうことは政府提案に当たっては全くやってない。今後何か計画をされてますか、有権者の意見を聞く方策について。
#134
○政府委員(手塚康夫君) 今後この改正案がもし通りますれば、運用に当たって学術会議側もいろいろ考えられるでしょうが、先ほど先生おっしゃったように、二十三万人の有権者が権利を奪われるとおっしゃるんですが、私ども考えますと、実は学会の構成員の数の方がはるかに多いわけなんです。それで、むしろ今後その学会を通じてそういった意見を吸い上げていくといったことが学術会議側としても必要ではないか。私どもの方としても、必要があればそういったことを慫慂したいと考えております。
#135
○佐藤昭夫君 とにかく、政府がこの法案を国会に提出するに当たって、有権者の意見を事前に聞いたこともない、それから今後こういうふうにして有権者の意見を聞いていこうということを、政府として何らかの方策を具体的に持っておるということでも全然ないということがはっきりしたわけでありますけれども、もう大体時間かと思いますが、とにかくきょうは、一つは中山国対委員長のああいう発言、うそまでついてごり押しに法案を通そうと、法案の重大性を覆い隠して、国民のよくわからぬままにこれを通してしまおうという、こういうやり方、それから学術会議の総会に対してさえここをうそついてだまして、違った内容を国会へ出してきておるという、このまことに不当なやり方、それから有権者の意見を聞かないという、本当にもう三重四重の、異常とも言うべき不当なやり方で、とにかくこの法案のごり押しを図ろうということは、もう絶対に私ども認めるわけにはまいりません。
 きょうはもう時間がありませんので内容に入ることはできませんでしたが、公選制を推薦制に変えようという、この方向自体が日本学術会議の自主改革の要綱を真っ向から否定をする内容になっている、この部分は。それから総理府がみずからにとって有利な結論を願ってつくられたはずの諮問機関、あの吉織委員会、ここも結論がまとまらぬまま、なお相当の検討期間が必要だと、こういう答申になっているのを、見切り発車的に政府の一方的判断でこういうものを出してきたということでありますから、この不当性については引き続き徹底して私はただしていきたいと思っているんですけれども、総務長官、きょう私いろいろ申し上げている点で、やっぱりこれは撤回した方がよさそうだなと、振り出しに戻って、よく一致点を図るべく話し合いを尽くしてやるべき問題じゃないかというふうにお考えになりませんか、私は撤回をした方がいいと思うんですが。
#136
○国務大臣(丹羽兵助君) いろいろと御意見を聞かしていただき、お考えも承りましたが、先生の方ではそう考えていなさるのも、立場が違いますからそうかもしれませんけれども、私の方としては十分同意は、学術会議の方で完全な同意はちょうだいしておりませんけれども、できるだけの努力……(「だましているんですよ」と呼ぶ者あり)だましておりません。私としてはだますどころか、ここに会長おいでになりますけれども、会長さんともお目にかかって誠意を尽くして何とか話をしていただきたいという努力と努力、そしてあらゆる方面との連絡をとって提案さしていただいたのでございますから、これはもうどうしても通していただきたいという考えで、撤回する考えは持っておりません。
#137
○佐藤昭夫君 終わりましょう、本日は。
#138
○小西博行君 長官にまずお聞きしたいんですが、先ほどから同僚委員の方からいろんな角度から質問がございました。しかも、この文教委員会は委員のメンバーが元学者というのが五人ほど、あるいは六人いらっしゃるかもわかりませんが、五、六人の委員が学者OBということがございますので、先ほどからの質疑を聞きながら、全くそ
のとおりだというふうに私は思います。
 私は民社党でありますけれども、一昨日までは、これは賛成したらいいんじゃないだろうか、実はそのように私も判断しておりましたところが、いろいろ検討しておりますと、ややこれは、この改革案を出しても、このとおりやってもよくならないのではないか、そういうような感じに実はなっております。恐らく賛成の方々は、この法案によっていままでと違ったすばらしい学術会議が、成功するといいますか、いい方向に向かうのではないかという期待感があって賛成されているんじゃないかと思いますし、私どもはいまちょうど真ん中ぐらいにおりますけれども、どうもこの法案が通っても何ら変わらないんじゃないだろうか、ひょっとしたらいままでよりも、いわゆる自主性という意味では前の学術会議よりももっと悪くなる部分があるんではないか、全体とは言いませんけれども。そのように私は感じまして、きょうの質疑というのは賛成も反対も皆大体同じ角度で、恐らく中身はほとんど同調できるような御意見ばっかりだったように私は考えております。
 そういう意味で、本当にざっくばらんに、長官の方で、こういう御意見をいろいろ聞きながらどうなんだろうと、まあ長官としては非常に言いにくいだろうと思いますけれども、その辺の忌憚のない率直な御意見を長官からもいただきたいし、会長の方からも御意見を伺いたいと、このように思います。
#139
○政府委員(手塚康夫君) 小西先生そうおっしゃるのは、本当にもう少し御理解いただきたいのですが、私どもは本当に従来の学術会議、確かに権威が下がってきた、その原因はいろいろあります。私どもの懇談会でも、むしろ機能を分離せいとかあるいは民間移行にせいというような案も出たくらいでございます。
 ただ、一番の問題はやはりふさわしい人が出ていない、それからいまの科学の発達に必ずしも適応してないためにどうもいい方が出てこない。まあこういう言い方をさせていただきたいんですが、現在の選出は部、それから専門という縦割りになっているんです。縦割りで選出してくる。ところが、実際の科学はそうではなくて、もっと複合的なあるいは学際的な領域が出ている。それをどういうふうに反映させるかと考えた結果、学会、学協会自身がそういった面も持っておりますし、それから学術会議内部の最も活動している研運自体がそういう性格を持っている。したがって、そういう学会を基盤にして研連を母体にして出せば、いまの学術科学の状況によりマッチして、しかも比較的狭いグループですからふさわしい人が出せるのではないか。
 そういうことで、ふさわしい人が、適切な人が出てくれば、やはりこういった組織は人でございますから、いい人が出てくれば今後ずっとよくなってくるだろう。一気によくなるとは私は申しません。やはりこれはそういう積み上げでいくものだと思いますので、その辺十分御理解をいただきたいと思っております。
#140
○参考人(久保亮五君) 御質問は、この改革法案が成立して、それで学術会議が新しい出発をしたときにどうなるかという御趣旨のことだと思いますが、この改革法案につきまして、学術会議で皆さん御討論なさったわけでございます。それから、たびたび申し上げましたように、この長官試案なるものが出ましてからずいぶん真剣な討議をしたわけでございます。その討議の過程及びいろんな改革委員会その他総会に至る討議の間におきまして、御承知のように意見は一本にまとまっているわけではないのであります。
 御注意いただきたいのは、この改革の問題というのは、この改革法案そのものにいたしましても、簡単にこれに賛成であるとか、これに反対であるとかいうふうに割り切れない多くの要素を持っているわけでございます。それはそのシステムそのものがそうでございますし、何よりもむずかしいことは、学問の分野によって事態が非常に違う。認識も違えば実情も非常に違うということです。ですから、私は率直に申し上げなきゃなりませんが、意見の分布は分野によっても非常に異なります。個人によっても異なりますし、分野によっても非常に異なります。現在の公選制に対しても強い批判は学術会議内部にもございます。研究者一般にもございます。その事実は覆いがたいものでございます。一方、推薦制そのものに関しましてもいろんな批判があるわけでございます。
 それで、最も困難な問題というのは、このように学問の実態、個人個人の考えが違うものについて非常に幅が、全面的に公選制こそという方もあれば、公選制の批判をなさる方も学者の間にもございます。これだけ幅のあるものを改革しようという場合に、どういうことが一体具体的に可能であるか、それが最も困難な問題であるわけです。簡単に申せば、学術会議といたしましては改革要綱の線をまとめました。これは大多数の賛同を得たものでございますから、この線で行くならば、これは学術会議が反対するというようなことは原則的にはございません。その意味においてこれが実行されることは、この改正法案を実行するよりもはるかに容易であろうと思います。しかしながら、これとてやはり具体化するまでにはいろんな問題が出てくるわけでございますが、それにいたしましてもこれが学術会議として最善の案であるということは、私はあえて繰り返して申し上げたいと思います。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、実態は非常に違いがある。だから、むしろ根本的に言えば、そういう実態の違いがあるものをどうやって一つの規則、一つの法律にまとめるかといういわば至難のわざでございます。それで、学術会議会長として私に与えられた責務というのは、法律の提案権は政府にあるわけでして、学術会議はこういう方向で改革したいということを政府に要望したわけでございますが、それが入れられないという段階になり、総務長官としては前長官の試案の線で進むという御方針を明らかにされました以上は、その学術会議の改革全体をいかに進めるかということに対して、非常に苦しい立場に立つわけでございます。ジレンマと申しますのは、総務長官試案をいかに具体化するかという問題に関して、これを先ほど申し上げましたような非常に複雑な事情がある。そこの実態に合わせることが可能であるかどうかというところに問題はかかわるわけです。
 それで、学術会議会長としての責任は、政府がそういう方針をとって進まれる場合にも協議せよというのが負わされた責任でございますから、その責任を果たすためにはいかなる方策があるかということを日夜考えたわけであります。それでこういう方策は、これは私がつくったものというのではございませんで、あくまでも総理府において責任を持たれてつくられたものでございますが、その場合に学術会議会長として負わされた責任を果たすためには、そのように違った事情のある困難なものを、先ほども申し上げましたような総務長官試案が許容の範囲であるかどうかという、そういうクライテリオンに関してどれほどそれに近づけ得るかということに集中したわけでございます。それで総理府に対しましていろいろな意見を申し上げたわけでございます。その意見のあるものは取り入れられ、あるものは取り入れられなかったということでございまして、ですから、これは先ほども審議官から申されましたが、会長がこれに合意した、しないというよりは、そういう責任を負わされた会長としての意見を総理府としてしんしゃくされた、そういうことでできたものでございます。意を尽くさないかもしれませんが。
 それで御質問は、これが実施された場合に、これが新生する学術会議の基礎となり得るか否かということでございますが、私は、新生する学術会議の基礎となり得ることを目標としていろんな意見を申し上げ、そのために努力したわけでございます。
#141
○小西博行君 私個人としましては、久保先生の人格といいますか、学者としては非常に優秀な方だというふうに仄聞しております。ですから、そういう面で疑いを持っておるわけではございませ
ん。先ほど審議官がちょっとおっしゃいました、科学の発達にふさわしくない会員が選ばれて出てくる、だから選挙制というのはまずいんだというおっしゃり方をされたと思いますが、これは議事録に残っていると思いますので。そういう表現というのは非常に私は不適切じゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
#142
○政府委員(手塚康夫君) 私はそう申したつもりはございません。分野を言っているわけでございます、各分野。学術の分野の、科学の分野というのはかなり広いわけですが、現在の縦割り組織で、定員を当てはめて選挙というのではなかなかそれに対応できない。それで要綱でも四十四の専門をもう一度見直すというふうなことを言っているわけです。ただ私どもは、それよりもっと進んで、もっとそういう複合領域、学際領域といったものがむしろ学協会に反しているではないか。しかも学術会議の内部でも研究連絡委員会、その活動を見ますと、やはりそういう要素を兼ね備えている。したがって、そういったところを母体にして出してくればいまの日本の科学の情勢にマッチした形で二百十名がうまく配分できるのではないか、そういうことを申し上げたつもりでございます。
#143
○小西博行君 その問題は議事録ですぐわかると思いますが、いまの御意向が本当だというふうに私も思いますから、そのように理解さしていただきたいというふうに思います。ただ、私は、この学術会議がいい学術会議であってほしいという、そういう願いはさっき申し上げたとおりなんです。そこで、やっぱり一番覚悟してがんばってもらわにゃいかぬのは会長を中心にした学術会議のメンバーだと思うんですね。その辺の皆さん方が本気になってこれをやるという形にならないとどうもぐあい悪いというのが一点だと思います。これは内部の問題だと思います。
 それから外部は、さっき高木先生が予算の問題とかいろいろおっしゃいました。いま学術会議の方からは予算なんてなかなか言えないような形になっておりますので表現はしにくいと思いますけれども、政府の方がやっぱり責任を持ってそれをサポートしていくという、この物の考え方がないといけないと思うんです。私は法案のたびに思うんですが、法案を通すときには非常に熱心なんですね。この審議官が最たるもので、非常に熱心だと私は感心しておるわけですが、放送大学の件でも実はこういう問題が大分ありまして、本当に通すのなら通したでいいものをつくってくださいよと言ったら、いやもう通った後は審議官どこかに変わってしまっているとか、こういうのが現実にあるわけですよ。だから、その辺を省庁としてちゃんと対応していくんだということを明確にしていかないと、どうも質問すればその都度相手は変わっているという、そういう形があるのではないか。
 そして学術会議でも、堂々とそういうことはなかなか提言しにくい。というのは、内部の管理がうまくいっておればわりあいはっきり物が言えるんだと思いますけれども、内部の実績だとか管理がちゃんとやられているという体制があればいいんでしょうけれども、そういうものが逃げますとなかなか言いにくいという、こういう問題もあわせて私はあるんじゃないかと思いますので、その辺も同時にお聞きしたいと思います。
#144
○政府委員(手塚康夫君) 私個人のことをおっしゃられて――私が八月の概算要求のときまでいるかどうかというふうなことは、それは私自身予測のつかないことではございますが、ただ今度の問題は、総理府として、懇談会でもいろいろな意見があった中で、やはり国の機関として残して、しかし選出方法を変えることによって改善していこうという決意を持ちまして、前の長官ばかりじゃなく現在の長官もがんばっておるわけでございます。先ほども、予算についても政府部内で最大限の努力をいたしたいと総務長官も御答弁をいたしたところでございまして、これは決して一人の個人がどうこうという問題ではございません。
#145
○小西博行君 もう時間が追っておりますけれども、この間も実は会長の方にもちょっと御質問申し上げたんですが、例の会員の選挙制ですね、選挙に対する無関心さというのがございましたね。私は、実はその辺が一番根本的に問題があるんじゃないかと思うんです。なぜ無関心かといいますと、余り学術会議に入ってメリットがないといいますか、余り関心を持たなくても十分そこで生活できるといいますか、研究ができるといいますか、そういうものが私は基本にあるのではないかと思うんです。ですから、私は推薦制にしようと何にしようと、やっぱりそのことに対して非常に関心を持っていくというこの姿勢には変わりないんじゃないかと思うんですよ。そのことに対してはどのように会長さんお考えなんでしょうか。これから先もやっぱりそのことについては関心を持っていただく動機づけをするといいますか、そういう形がどうしても必要であるのではないか、このように思いますので、その点についてお聞きしたいと思います。
#146
○参考人(久保亮五君) 御指摘のように、学術会議に対する関心というのは研究者の間で逐年低下したという事実は覆うべくもございません。特に若い研究者の方々で学術会議に対する関心が非常に薄いものがございます。なぜかということは、おっしゃったように、学術会議に期待するあるいは学術会議でなければできないと自分が思うようなこと、あるいは自分が要求するようなものというものが少ないから。これは事実でございます。
 私、多少個人的な見解になりますが、これは大変ごもっともな話でございまして、一方逆に申しますと、学術会議が研究者個々の直接の利益に関係するようになることはきわめて望ましくないことだと思います。
 事実、この機会にちょっと申し上げておきたいのですけれども、文部省の科学研究費の配分に学術会議が関与しているというふうに御理解になっている方もあるかと思いますが、そういう事実はないわけでございまして、学術会議は研究費の配分そのものにあずかることはございません。その方針に対して文部省にアドバイスしたり、あるいは推薦人等、審査員も、学会を通して、学会からの御推薦を受けて文部省に伝えるというようなことはございますが、直接に研究費に関与することはない。また、そのほかのことにいたしましても、研究者の個々に直接に還元するような利益とかあるいは不利益とか、そういうようなものには学術会議がかかわるべきではないと私は考えております。その意味では大変自己矛盾でございまして、研究者の関心を呼ぶ力がないわけであります。しかし、研究者個々の利益不利益の問題ではなくて、ある学問の将来、さらに日本全体の学問の将来、そういうようなものについて、学術会議が有効な献言をするということが何よりも重要なことでございます。
 言い落としましたが、国際活動のようなものは、これは、どちらかといえばわりあい限られたグループの科学者集団に対する利益というふうなことを言っては適当でないと思いますが、それに直接関係するようなものでございますけれども、それ以外のものにつきましては、わが国の学術の将来と、この学問は将来はどうあるべきか、そういう種類の問題でございますから、日夜研究に専念する研究者にとりましては、そういうところに首を突っ込むのは時間のロス以外の何物でもないという感覚を持たれるのは、これはやむを得ないことであろうかと思います。にもかかわらずそれを超えて研究者に関心を持っていただかなければならない、そこに非常に現実の矛盾があるわけです。
 公選制そのものがその役割りを果たしてきたかどうか。これは果たすべきでございます。個々の研究者が有権者として登録されて、その方がそういう日本の学術の将来に思いを寄せて、それを学術会議を通じてその意思を表明したいと、皆さんがそうであるべしと望みたいのですけれども、それと現実との間にはかなりの差があることもこれはやむを得ない。一方、学協会と学術会議との関係をもっと深めよということは、これは改革要綱にも述べられていることでございます。それと推
薦制とが結びつくところには一つの飛躍があるかもしれませんが、学術会議の活動に対して、研究者の集団であるところの学協会というものがもっと関心を寄せられて、そしてその上に学術会議が立っていくということは、これは改革要綱で述べているとおり、学術会議のあるべき姿の一断面でございます。
 その意味において、この学協会からの推薦ということもゆえなしとしないわけでございまして、その点につきましては、学協会との懇談会の場合にもそういう御意見も多々ございましたし、学術会議会員の中にもそういう御意見も多々あるわけでございます。もちろん反対の御意見もございますが、そういう御意見も多々あるわけでございます。
#147
○小西博行君 最後に御意見だけで結構ですから聞いていただきたいんですが、さっき高木先生の質問の中に出てまいりましたが、学術会議の目的とか機能ですね、私は、これをもう少し上手な方法で教育するなり徹底するなりということがどうも欠けているんじゃないか。目的が非常にたくさんあるんですね。だから私は、学者としてはこれだということをよく言って教育もしてあげないと、どうもとらえるレベルというか、関心のレベルというのがやややっぱり自分中心型になってしまっているのではないかなと、そのように感じますので、これはこの法案が通る通らぬは別にしましても、ぜひともその面の御指導をお願いしたいということを申し上げて、きょうは時間がございませんから終わりたいと思います。ありがとうございました。
#148
○委員長(堀内俊夫君) 本案に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後五時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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