くにさくロゴ
1982/03/24 第98回国会 参議院 参議院会議録情報 第098回国会 外務委員会 第4号
姉妹サイト
 
1982/03/24 第98回国会 参議院

参議院会議録情報 第098回国会 外務委員会 第4号

#1
第098回国会 外務委員会 第4号
昭和五十八年三月二十四日(木曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十四日
    辞任         補欠選任
     嶋崎  均君     鳩山威一郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         増田  盛君
    理 事
                安孫子藤吉君
                福田 宏一君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                夏目 忠雄君
                鳩山威一郎君
                前田 勲男君
                宮澤  弘君
                小山 一平君
                宮崎 正義君
                立木  洋君
                木島 則夫君
   国務大臣
       外 務 大 臣  安倍晋太郎君
   政府委員
       外務大臣官房長  枝村 純郎君
       外務大臣官房会
       計課長      斉藤 邦彦君
       外務省北米局長  北村  汎君
       外務省条約局長  栗山 尚一君
       外務省国際連合
       局長       門田 省三君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       外務大臣官房調
       査企画部長    岡崎 久彦君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○昭和五十八年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について
 (外務省所管)
    ─────────────
#2
○委員長(増田盛君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 前回に引き続き、予算委員会から審査を委嘱された昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○立木洋君 まず最初に、大臣に外交、防衛に対する基本的な考え方をお尋ねしたいのですが、御承知のように、中曽根総理がアメリカを訪問されてきわめてタカ派的な発言が繰り返された。これに対していろいろマスコミ等々、国民からもいろいろと不安や懸念が表明されるというふうな事態があるわけですが、大臣は中曽根総理が述べられているこういう具体的なタカ派的な発言に完全に考えを同じくされるのか、あるいは若干問題があるというふうにお考えになるのか、まずその辺の御認識からお尋ねしたいと思うのです。
#4
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私も中曽根総理の日米首脳会談に同行いたしたわけでありますが、中曽根総理の発言は、御承知のようにいろいろと総理独特の形容詞とか比喩には非常に富んでおりますけれども、全体的にずっと私自身がそばにおって総理の発言をとらえた場合は、私は、これまでの日本のとってきました外交あるいは防衛の基本政策を、あるいは基本の考え方を逸脱といいますか、それを超えたものでは基本的にはないと、こういうふうに思っております。また、これを超えることは、いまの日本の立場から言いましてとうていできるものではない、またそうあるべきではない、こういう認識を持っております。
#5
○立木洋君 基本的にはとおっしゃったので、やはり個々には若干違うニュアンスを大臣自身はお持ちになっておるというふうに理解していいのですか。
#6
○国務大臣(安倍晋太郎君) いや、それぞれのそのときどきの総理の発言には、それは総理独特の発言のニュアンスといいますか、あるいは発言そのものの形容詞だとか比喩だとかそれは総理独特のものがあると思うのですよ。ですから、そういう点は私は中曽根総理自体の個性というものは出ておると思うのですけれども、しかし全体的に見ると、流れとしては私は変わっていないのじゃないか、そういうふうに思っています。
#7
○立木洋君 なかなかお述べにくい点もあるかと思いますが、少し突っ込んでたとえば最近の核開発の状態から見てみますと、いろいろと開発が実際に進んで、大変な段階にまできているということが言えるだろうと思うのですね。その場合に、現在の段階で日本がアメリカの核抑止力に防衛上依存しているという具体的な内容、核抑止力に依存している形態、内容、どういう形でどういうぐあいに依存しているのか、そのあたりについて述べていただきたいのです。
#8
○国務大臣(安倍晋太郎君) これ、私に具体的に述べろと言われましても、具体的に述べることはなかなか困難だと思いますけれども、日本としては日米安保条約という条約によって日本の平和と安全を確保しておると。それは究極的にアメリカの持っている核、その核の抑止力に依存する、こういうことになると思うわけですね。ですから、そういう意味からいけばアメリカのいまの核の実態といいますか、いまの核の力といいますか、そういうものがやはり確保されるということが、日本にとっては日米安保条約というあるいは日本の平和と安全という立場から不可欠なものじゃないかと、こういうふうな認識を持つわけです。
#9
○立木洋君 大臣も御承知だろうと思いますが、かつては戦略核でしたね。その後戦術核が開発され、いまは戦域核等々というふうなことが、それぞれの利用の目的等々に応じて呼ばれておりますが、これらの核にすべて依存しているのかどうなのか、これらの核の抑止力にいわゆる依存しているのかどうなのか、その点はどうなのですか。
#10
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私は前々から申し上げておりますように、われわれの立場というのは、やはりいまの世界の平和というのはいわゆる軍事的バランスというものによって確保されておるのじゃないかと。それは、軍事的バランスと言えば東西、特に米ソ間の軍事的バランスということでございますから、アメリカの持っているあらゆる戦略核あるいは戦術核あるいは中距離核ですね、そうした全体的総合的な核戦力というものが軍事バランスを支えておる、日本としても日米安保条約というたてまえからこれに依存しているということは言えると私は思っております。
#11
○立木洋君 五十年六月十三日の衆議院外務委員会で、当時の丸山政府委員がこういうふうに述べておる。「わが国については戦略核が核のかさとしてきいておるということでございまして、戦術核については、非核三原則を採用する以上、戦術核の抑止力は欠けておるというふうに申し上げてよろしいんだと思います。」と。
 いまの大臣のお話ですと、戦略核、戦術核、戦域核、すべての核に、核抑止力に依存しているというふうにお述べになった。これは五十年に丸山政府委員が述べた内容とは変わっているわけですね。つまり、「非核三原則を採用する以上、戦術
核の抑止力は欠けておる」と。これが変化した理由だとか、いつから変わられたのか、そのあたりはどうなのでしょうか。
#12
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私はきわめて常識的な答弁をしていると思っておるのですが、これはアメリカが持っておる全体的な核、そしてその核の抑止力というものに日本は日米安保条約という面からこれに依存をすると。その各種の全体的な総合的な抑止力というものに依存するというのは、私は日本の立場から見て当然のことではないだろうかと、こういうふうに思うのですけれども。
#13
○立木洋君 大臣、常識で言われたら困るのですよ。これは、非核三原則とのかかわり合いで核の抑止力がどういうふうに機能するか、作用するかというのは、長い間国会で議論されてきた問題なのですね。重要なテーマの一つなのです。ですから、非核三原則があるということになると、いわゆる戦術核の抑止力は欠けるということがいままで言われてきた。
 これは、たとえば戦術核が核抑止力として機能するという場合、この戦術核がアメリカの本土にあったのではこの核は抑止力として全く機能しないのですよ。つまり、射程距離がないのですから。ですから、結局はそれが有効に働く場所に配備されて初めて戦術核は抑止力としての機能を持つ。私は、抑止力というのを本来は認めないのだけれども、いわゆるというふうに言っていいのですがね、抑止力として機能する。ところがそこに配備されていないと戦術核というのは機能しないのですよ。何ぼアメリカの本土にたくさん戦術核があったとしても。これはアメリカ自身が、戦術核は米本土において全くいわゆる核抑止力にはならないと。だから、この核が力を発揮するためには有効な場所に配備されなければならぬというふうな考え方、とりわけそういう意味で言えば、今度の国防報告にも出されていますが、NATO地域以外ではこのいわゆる戦略核以外の核ですね、核戦力というのはアメリカの海軍が主力である。つまり、第七艦隊が主力であると。こういうふうに言われるわけですね。それが抑止力として機能するというためには遠く離れておっては全く機能しないのですよね。そうするとそれが日本の領域、領海、近海、ここにおって、そして常時核を積載した、そういう第七艦隊の核が実際には積まれていて、それが機能されるという状態にならないと核抑止力というのは働かないと。
 そうすると、非核三原則とのかかわりが出てくるわけですが、このあたりの核抑止力というのをどういうふうにお考えになっているのですかね。戦術核の核抑止力が作用するというのはどういうふうにお考えになっているのですかね。
#14
○政府委員(北村汎君) 先ほど立木委員が、昭和五十年六月十三日の衆議院外務委員会における丸山防衛局長の答弁を御引用になりました。このときに、わが国については戦略核が核の傘として効いておる、戦術核の核抑止力は欠けているというような趣旨のようなのがあったということでございますけれども、その後で、六月十六日に丸山局長から中路委員に対しまして、「この間、外務委員会でおたくの松本議員からの御質問で、私は、日本の核抑止力の実態というものはアメリカの戦略核兵器によるものが主であるというふうに申し上げておきまして、その際、第七艦隊が核抑止力のかさに入ってないような表現を申し上げておったわけでございますが、これは誤解をされるとあれでございますので、この際はっきり申し上げておきたいと思います」ということを言って、「有事の際におきましては、アメリカの戦略核はいわゆるレディネスコマンドで、いつでも報復できる」状態になっておると同時に、「戦術核兵器につきましては、そういう情勢、つまり有事の際においては具体的な能力を帯びてくるということで、アメリカの日本に対する核のかさの一部をやはり第七艦隊の核抑止力というものは構成しておるのだ」という答弁をして訂正をしております。それを一つ申し上げておきます。
#15
○立木洋君 十六日に若干訂正したかのような発言があったのは私も知っております。
 ただ問題なのは、私がお聞きしているのは有事の際の抑止力じゃないのですよ。いま言っているのは、現在日本が防衛のためにアメリカの核の抑止力に依存していると言われている。その際に、どういう核に依存していますかという話なのですよ。ここで丸山さんが言っているのは、有事の際と限定しているのですよ。先ほど来の私への外務大臣からの答弁というのは、有事の際という限定はないのですよ。いま日本は、防衛上アメリカの核に抑止されている。その際、戦略核によって依存しているのだということが言われているけれどもどうなのだという問題なのですよ。そうすると、平時においても依存しているという状態になれば、これはまた変えたということになるのです。これは限定しているのですよ、有事の際と。平時でも、いわゆる依存しているというのは確認してよろしいですか、大臣。
#16
○政府委員(北村汎君) 抑止力と申しますのは、要するに武力攻撃をすれば、その相手国からもう耐えられないような反復報復を受けると、こういうことを相手方に前もって十分知らしておくことによってそういう武力攻撃をさせないようにすると、これが抑止の本質でございますから、要するに、核抑止力といいましてもあるいは通常兵器の抑止力といいましても、すべてこれはそういう武力攻撃、すなわち有事というものを起こさせないためのものでございます。ですから、御質問の有事の際という限定と、あるいは限定ないという御質問でございますけれども、あくまでもこれはそういう有事を起こさせないための抑止力であると、こういうふうに理解しております。
#17
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私が言ったのも全く同じ考え方ですね。要するに、いまの世界の平和というのはいわゆる米ソの軍事バランス、それがやはり大きく核戦力に依存するところがあると思います。そうした核戦力というものの全体的な力というのが私は平和を維持しているのじゃないかと。ですから、全体的、総合的に核戦力というものはとらえるべきである。これが戦争を起こさない力になっておるわけですから、世界の平和というのはそういうものによって保たれておるし、日本の場合もそうした平和というものを追求している以上は、これも特に日米安保条約という条約を持っておる、そういう中でアメリカの核の傘に依存しているということでありますから、そういう立場に立てば、当然アメリカの全体的な総合的な核戦力というものに世界の平和あるいは日米安保条約という立場から見まして依存をしているということは、言っても決して差し支えはないことではないかと、そういうふうに思います。
#18
○立木洋君 大臣ね、つまり核抑止力と一般的に言われておる内容について言うともっと厳密なのですよね。これはまさにかつては戦略核があって、いわゆる本国に対して核攻撃があった場合にそれを迎え撃つ、そういう力を戦略核として持っておる。それがもっといまで言うならば命中精度が高められておる。しかも遊撃を開始する能力ですね、蛇行性まで持って、つまり発射してもそれに迎え撃つのを回避して目的地を爆撃することができるという巡航ミサイルみたいな形にまで発達してきたわけでしょう。だからこの核が、つまりどういう形で抑止をするかといえば、それが相手に打撃を与える場所に配備されて初めて抑止力になるのですよ。距離が決まっているわけですから、射程距離が。そうすると本土にあって、アメリカがモスクワまで撃とうとしたってそれはできないわけですから、そうすると、それが抑止力として作用するからには作用するところに配備されていないといけない。つまり、核というのはそういう形でだんだん開発されてきた経過があるのです。
 そうすると、問題は日本で言うならば、日本は領域、領海、領空、これには一切アメリカの核は入れないということでしょう。これは非核三原則があるのですから入れないというのですよ。ですから入れない、核が一切ないのに、そういう射程距離のきわめて短い、しかもSS20に対抗すると
いう意味で戦域核や戦術核が日本の近海に配備されなくて一体どうして核抑止力が、その戦術核、戦域核の核抑止力が作動できるのか、これは大変な問題なのですよ。だから、いままで非核三原則とのかかわりで問題になってきている。大臣もずっと勉強されておられるだろうともちろん思いますけれども。ですから、そうするといままでは厳密な意味で言えばアメリカ本土の戦略核に依存してきました、戦略核に。そうして戦域核には欠けておる点がありますと。有事の際にはその核抑止力にももちろんわれわれは依拠しますと、こういうふうに厳密に言われてきたのですよ、論争の過程というのは、討論の過程というのは。それを区別しないで常時戦術核、戦域核に依存すると言われるから、それは総合的ななんて言ったって、そんな漠然としたものじゃないのですよ、抑止力というのが働くか、働かないかという問題は。そうすると、日本近海に全くないのにどうして戦域核、戦術核の核抑止力の傘に日本が入れるのですか。
#19
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私は、いまの日本の非核三原則というのは、別にいまおっしゃるように戦術核であろうと戦域核であろうと、それは核である以上は日本への持ち込みは禁止しているわけですから、これは問題ないと思うのですね、全然問題ないわけですよ。射程距離がどうだ、こうだと言われますけれども、その射程距離が短くても長くても、やはり戦争の抑止力というのは、核全体の力というのが戦争の抑止力というものには大きく貢献をしているわけですからそういう意味で私は言っているわけで、日本の立場からいくと、非核三原則という日本の基本的な国是というものといまおっしゃるようなその他の核の問題とはかかわり合いのないことですね。われわれは、三原則は平時においてはこれを遵守する、これを守っていくわけですから、ですから、これは別にそう何か基本的な立場の相違とか考え方の相違にはつながらないと私は思いますね。
#20
○立木洋君 つまり、いま大臣の言われるその核抑止力に依存するというのは、何か戦術核、戦域核に依存している形態、内容ということがいままでの内容と全く変化がないかのように述べられていますけれども、平時の場合でも日本がアメリカの戦術核、戦域核の核抑止力に依存するということは重大な変更なんですよ、平時においてもそれに依存するということは。それで、それを御承知の上で大臣がお述べになっているのか、あるいは大臣が知っておりながら、その重大さを御存じでありながら全くおとぼけになってそういうふうな答弁をなさっているのか私は大変疑問なのですよ。これは大変な問題なのですから。
 つまり、日本の場合には非核三原則があるから一切領海、領空、領域には入れないということになっているわけだし、そうすると近海に核抑止力が、――平時でもアメリカの海軍の核抑止力、つまり戦術核、戦域核に依存しているという状態になると、そういうふうな積んでおる積載艦の日本入港というのは拒否できないという立場になるのですよね。あなた方はわれわれの核抑止力に依存しているのじゃないかと、戦術核でも戦域核でも。それを積んで核抑止力として作用している状態にある艦船が、あなた方の日本の国、港に寄港するのになぜあなた方は拒否するのか、われわれの核に依存しないというのならばそれは別だと。依存しているのになぜ寄港を拒否するのかと言われたら、大臣、何と答えますか。
#21
○国務大臣(安倍晋太郎君) これはいまさら申し上げるまでもなく日本は非核三原則という国是を持っておりますから、ですから安保条約において、有事の際はそれはアメリカの核に依存をして日本の平和を守っていこうということですし、その核戦力があるからこそ日本の平和が保たれておるという考えですが、日本には日本の立場というものがあって、この非核三原則というものはこれは国是として今後ともこれを貫いていくということですから、アメリカの核がどういう核であっても、日本への持ち込みは認めないということは、これは平時その他を問わず当然のことじゃないかと、こういうふうに思うのですがね。
#22
○立木洋君 岡崎さん、いままでの論争の経緯は御存じだろうと思うのでお尋ねしておきますが、アメリカの核抑止力に依存すると言った場合に、戦術核、戦域核を戦略核と明確に区別して日本の政府としては答弁してきたと思うのですね。それで、平時においても戦域核、戦術核の核抑止力に依存するという政府の答弁がいままであったでしょうか、なかったでしょうか。それだけでいいです、余分な解釈を加えなくて結構ですから。
#23
○説明員(岡崎久彦君) これはやはり答弁があったかないかということだけは申し上げにくいのでございまして、結局いままで申し上げた答弁がどういう内容を持っているかということでございます。やはり、日本は非核三原則を持っておりますので、それでいかなる具体的な形でアメリカの核抑止力が働いているかと申しますと、これは過去の経緯でございまして、たとえば日本が核不拡散条約に入ったときのアメリカの保証であるとかそういう形でもって日本は入っておりまして、結局はこれは非核三原則がございますので、核抑止力というものはアメリカの戦略に依存しているわけでございます。
 それでまた現在先生がおっしゃっている御議論も、これも実はまだ全くそれについていかなる文献もございませんし議論も出ていない問題でございまして、それで全体として核抑止力に依存している……
#24
○立木洋君 いいです、もう時間がなくなりますから結構です。どうも済みません。
 そういう答弁はないのですよ。僕はあると言われたら、いつ、何月、だれが答弁したかと聞こうと思っていた。ないのですよ。平時において戦域核、戦術核の核抑止力に依存するということを述べたというのは大臣が初めてなのですよ。このことだけ私は指摘しておきたいと思うのです、非常に重要な問題ですから。そういうことになれば非核三原則は事実上ないがしろにされる、それにかかわる重大な問題だということを大臣が御存じでありながらおとぼけになってそういうふうにお答えになっているのかどうもわからないので、まあ座って発言するとつい口がすべるものだなんてきのうおっしゃっていましたから、そのたぐいではないだろうと思いますけれども、私はそのことだけ。
 それで、ちょっと話を変えますけれども、マンスフィールドにこの間お会いになりましたね、核問題で話すということで。あの話し合いをなさった目的、ねらいは一体何だったのでしょうか。あれはセレモニーじゃないかなんて新聞では大分御批判があるようでありますけれども、目的、ねらい、これはいかがですか。
#25
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは前国会でありましたかね、F16の三沢配備につきまして野党の皆さんから、国民の中にも非常に――F16の配備ということについて核が持ち込まれるおそれがあるので、この点についてはアメリカ政府に対して一度はっきり日本の立場というものを伝えて、アメリカのこれに対する態度を明確にすべきだとそういう質問がありまして、政府としても、これは近いうちにアメリカ政府に対しましては日本の立場も明らかにして、アメリカの従来の立場を再確認しましょうという答弁をしたいきさつがあります。その後、御承知のようにエンタープライズが入港するというふうなニュース等も流れてきまして、さらに国会からもそういうふうな意見が出ましたから、私自身としては、アメリカもこれまで安保条約あるいはその関連協定、さらにまたそれに基づくところの事前協議条項というものは遵守するということを言っておるので、いまの日米の同盟関係から言えば、いまさら確認するのも必要ないというふうな考えを持っておりましたけれども、国会でこれまで政府が何回も答弁したいきさつがありますから、私としても改めてマンスフィールド大使に会ってこの点は日本の立場をもう一度説明する必要がある、そしてアメリカのそれに対する回答を求める必要があると、こういうことで実はマンスフィールド大使との会談を行ったわ
けでございます。
#26
○立木洋君 つまり、そういう疑惑を払拭するといいますか、そういうふうなことが起こらないためにやっぱり態度を明確に伝え、相手側の確認も得るということ。
 これ大臣ね、いままで核持ち込みの疑いというのがもう再々繰り返し問題になるのですね。これ、どうして繰り返し問題になるというふうに大臣はお考えですか。
#27
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは、いまの日米安保条約というのがありますし、お互いに日本も義務を守らなければならないし、アメリカもその義務は守るわけですから、そして信頼関係にあります日米関係、そういう立場から見ればこれまでも何回もそういう点については確認を求めておりますから、いまさら必要ないわけですけれども、しかし、国民の中の一部に依然としてそういう疑念があると、こういうことでございますから、あえてそういう再確認を求める必要はないわけだと私は思っておりますけれども、そうした疑惑を晴らすためにもきちっとやらなければならぬということでこの会談をしたわけであります。その会談の結果に基づいてもこれは明白になっておるわけですから、これについては御心配は要らないと、国民の一部が持っておられるような御心配は要らないと私は思っております。
#28
○立木洋君 大臣ね、どういう意図で大臣が申し入れされたのかということではなくて、つまり疑惑がなぜ繰り返し再三起こってくるのか。日本政府は、いや、ありません、確信してくださいと。入っていないと確信していると政府が何回も言っているのだけれども、国民の中からはそういう疑惑が繰り返し出てくるというのはなぜなのか。そういうことをお尋ねしているのです。
#29
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは政府を信頼していただく以外にないですね。ですから、それは信頼してくれと言われても、国民の中にいやそれは信頼できないという声があるのも、それはこの民主政治の世の中ですからそれはあるかもしれませんけれども、あくまでもこれは政府を信頼していただく以外にはない。
#30
○立木洋君 私は、信頼するかどうかという問題よりもその以前の問題だと思うのです。
 この間、外務大臣がマンスフィールドに会われたときに、あのエンタープライズにはまさか核は積んでいないでしょうねという確認はしましたか。核があるかないかということをお聞きになりましたか。
#31
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは、とにかく私はいままでの非核三原則という日本の立場というものを改めてアメリカ政府に伝え、あるいはまたこのF16の配備あるいはエンタープライズの入港、そういうものに伴って国民の中にもいろいろと疑念も出てきておるので、われわれ日本政府の立場というのは十分アメリカ政府も知っていただいておるのでしょうが、やはり日米安保条約あるいはその関連規定あるいは事前協議条項、そういうものについてはアメリカ政府としてのお考えは変わっておりませんでしょうねということを確認したわけです。それに対してマンスフィールド大使は、核の存否ということは、これはもうアメリカの従来の政策からいって外には出さないということになっておるけれども、われわれは日本国民の中にそういう疑問があるということは十分知っておるし、核に対して日本国民が非常に心配しておられるということも十分承知しておるので、われわれアメリカ政府としては、安保条約、その関連規定、さらに事前協議条項はこれはもう誠実にこれを遵守しますということを大使は言っておるわけですから、これで問題ないと思いますね。
#32
○立木洋君 核があるかないかということは直接的にはお尋ねになっていないわけですね。つまり、非核三原則の日本政府の考え方、立場を向こう側に示したということだと思うのですね。
 日本政府が、いろいろと核の問題が問題になって、持ち込まれている疑惑が問題にされたときに、日本の外務省は、アメリカ政府に対してそれに核があるのかないのかという存否そのものを尋ねたということはただの一回もないのです。これはもういままで外務省に確認しています。一回もないのです。核があるかないかということを聞かなくて、日本政府の非核三原則という立場、向こう側としてはそういう立場はそのまま理解していると。それで存否はしかし明らかにしないと。安保条約の有効的な効用が、効果が発揮できるようにと。これは全くわからぬのですよ、国民には。あるのかないのかというのは本当にわからぬのですよ。
 これは、いつまでたってもそういう問題というのは起こってくるだろうと思うのですが、私はそこで一つだけはっきりさしておきたいのは、この非核三原則は国是として将来とも確実に守ると。つまり、有事の場合も含めて非核三原則は国是として守るということは明確に御確認できますか。
#33
○国務大臣(安倍晋太郎君) 非核三原則はいまさら申し上げるまでもなく国是でございますから、今後とも日本はこれを守っていかなければならない、われわれはそういう決意を持っております。この考え方は変わりません。
#34
○立木洋君 極東への核の配備ということがいろいろ問題にされつつある状況があるわけですが、前総理大臣の鈴木総理が、これはアメリカの核であれソ連の核であれ、極東に核が配備されるということは好ましいことではないということを明確に述べられた。外務大臣はこうした鈴木総理の見解に全く同感されますかどうですか。アメリカであれソ連であれ、極東に核が配備されるというようなことは好ましいことではないということを鈴木総理は八一年十一月十八日、明確に参議院で述べられているのですが、大臣はどういうお考えでしょうか。
#35
○国務大臣(安倍晋太郎君) われわれはあくまでも平和というものを求めておるわけですから、平和が実現されるためには、それは理想的に言えば米ソ両陣営がといいますか、とにかく核がなくなるということが私は最も好ましいことだと思います。しかし、現実的にはこれはソ連も極東において軍備の増強をしている。核といえばSS20なんかも極東に増強していると、こういうことでありますし、現実的にはその理想とは離れた状況にあることは事実です。しかしわれわれは、理想としてはそれは米ソの核がアジアからあるいは極東から撤去されるということが望ましいと思います。
#36
○立木洋君 ワンクッション置いた答弁の仕方なのですが、大臣になられてからアメリカ並びにソ連に、極東に核配備をしないでくれということを申し入れたことはございますか、アメリカ並びにソ連に対して。
#37
○国務大臣(安倍晋太郎君) とにかく私は、外務大臣になりましてからヨーロッパにも参りましたし、ヨーロッパの首脳の皆さんといわゆる中距離核兵器の配置の問題をめぐりまして話し合いもいたしましたし、またアメリカでもシュルツ国務長官との間でもそういう問題について話し合いをいたしました。
 その際われわれは、とにかくいま大事なことはやはり東西両陣営がバランスのとれた核軍縮を進めていかなければならぬ。特に中距離核兵器については、現実的にいまソ連の中距離核兵器が強化されておるという立場から見れば、そういうものに対してこれが撤去というものをわれわれとしては強く求める。ですから、その前提としてはアメリカのゼロオプションというものを日本としては支持したい、支持するのだと。同時にまたこのゼロオプションの交渉、いわゆるINF交渉をめぐって極東に――INF交渉でヨーロッパにおいて軍縮が一部実行されたとしても、しかしその犠牲がアジアに及ぶといいますか、極東に及ぶということだけは絶対に避けてもらいたいということを、これはヨーロッパの首脳に対してもあるいはまたアメリカのシュルツ長官に対しても私は強く申し上げたわけでありますし、またソ連に対しても、ソ連のパブロフ大使と懇談をし、会談をしあるいはまた外務省にも呼びまして、ソ連のSS20の極東配備、それからさらに極東配備を増強するというふうなグロムイコ発言、そういうものに対
して強硬に抗議を申し入れたいきさつはあります。
#38
○立木洋君 話は変わりますけれども、エンタープライズが佐世保に寄港するという問題については、アメリカが佐世保にエンタープライズをどうしても寄港させてほしいという理由ですね、これはどういうふうに述べているのですか。
#39
○政府委員(北村汎君) これはアメリカから乗組員の休養とレクリエーションのためである、こういう説明を受けております。
#40
○立木洋君 休養、レクリエーションのためというと、いかにも余り必然性がない。佐世保でなくても、どこでもいいことになるだろうと私は思うのですが、佐世保でなければならない理由というのは何か日本政府は特に理解しているのですか。
#41
○政府委員(北村汎君) 別にそういうような説明をアメリカから受けておることはございませんが、立木委員よく御承知のように、エンタープライズは長い間、三年以上かかって非常に大規模なオーバーホールをやって、その後ずっとインド洋の方とか各地を回って、そして今回はチームスピリットに参加してそして来たわけでございます。そこで、乗組員の休養とレクリエーションのために寄港したい、こういう説明を受けております。
#42
○立木洋君 エンタープライズが佐世保に寄港するということは、アメリカの極東における戦力の配備の重要な変化というか進展というか、そういうものとの関連については何らお感じになりませんか。
#43
○政府委員(北村汎君) 私どもといたしましては、エンタープライズの今回の佐世保寄港はこれは米海軍の運用、いろんな艦船の運用の一環として行われておることであって、特別にそこに意味を持たせて考えておるわけではございません。
#44
○立木洋君 北村さんね、アメリカの国防報告をあなたお読みになっているだろうと思うのですよね。それで、八四年度の国防報告の中でも、日本を含む極東地域を、アメリカの戦略上柔軟作戦地域というふうな表現がされておるわけですし、また問題は、日本海での海戦の演習を重視するというふうな内容、こういうことも記載されていますし、そして空母戦闘群の常時配備をこの地域に考えていると。ですから考えてみますと、日本海において空母が参加して演習が行われていますね、去年も二回にわたって。そして、エンタープライズに続いてカール・ビンソンが寄港するとかしないとかという話までやっぱり出てきているというふうな問題になってきて、アメリカの国防報告と照らし合わせてみると、いわゆる空母戦闘群の常時配備が明確に計画の爼上に上っているわけですから、そういうことの実際上の進行と重大なかかわりがあるのじゃないか。今度はチームスピリット83がやられた内容を見てみましても、海峡封鎖が事実上訓練されているわけですね、これは米韓ですけれども。もちろん、日本の自衛隊が参加しているなどということを言っているわけじゃなくて、いわゆる訓練の内容としてはそういうことまでやられている。そうすると、国防報告で言われている極東、とりわけ日本海地域、この地域をきわめて重視した戦力の配備、そのことと関連していわゆる佐世保寄港という問題が問題になってきているということがはっきり言えるのじゃないですか。
#45
○政府委員(北村汎君) ただいま立木委員から御指摘がございましたことしのアメリカの国防報告には、一九七九年ごろから例のアフガン問題であるとか、中東における情勢の変化に対応して米海軍がインド洋に相当海軍力を集中したそういう事情から、今後は空母で申しますと、常時一・五隻の平均年の存在があったのを今度は〇・五隻減らして一隻のプレゼンスにして、余った〇・五隻を他の地域に回して、そしていろいろな訓練を行う。その場合に、確かにいま先生が御指摘になりましたように、日本海とかカリブ海とか、いままで余り訓練をしなかったところにも訓練を行うというようなことは確かに書いてございます。それはそうでございますけれども、要するに七九年以前の状況に戻ったというふうに解釈するのが適当ではないかと思います。そういうことで、今回の佐世保寄港というものには特に新しく米戦略が転換したというふうにはわれわれは受け取っておらないわけでございます。
#46
○立木洋君 それは全くおかしいですよ、アメリカの国防報告の読み方は。あなたは故意に読み違えているのではないだろうと私は思いますけれどもね。そういうふうにはどんなに読んだって読めませんよ。
 大体そうすると大臣、このことだけちょっと確認しておきたいのですが、たとえばエンタープライズや何かが、母港と言うとそんなことはないなんておっしゃるでしょうから母港という言葉は私使いませんが、たとえば補給、補修あるいはオーバーホール、あるいはまた佐世保に米軍の艦隊の住宅地を建ててやるとか、こういうふうな形にアメリカ側がいま申し入れてきているのかどうなのか。申し入れてきていないとしたら、将来申し入れがあった場合でもはっきりとお断りするのかどうなのか。その点はいかがでしょうか。
#47
○政府委員(北村汎君) アメリカからそういう申し入れはございません。申し入れがございましたときには、安保条約及びその関連取り決めを踏まえて対処する所存でございます。
#48
○立木洋君 いや、局長だとそういうふうなそのぐらいの答弁になるので、将来の見通しについての大臣のお考えを聞いておきたい。
#49
○国務大臣(安倍晋太郎君) これはいままだそういう申し入れは全くないわけでございますから、ない段階においてこういうことでお答えするというのはどうかと思うのですね。将来そういう申し入れがあった場合は、いま局長が言うように、それは安保条約とか関連取り決めとかというものがあるわけですから、そういうものによって適宜対処していくということは当然だろうと、私はそういうふうに思うわけですがね。
#50
○立木洋君 これで終わりにしたいのですけれども、つまり、そういう事態の場合にはお断りするというふうにはっきりと述べられなかったことを私は重視しておきます。これは重要な意味を持っていると思います。ということはどういうことかと言えば、これはいままでも議論されているのですが、日本で事前協議の対象になる装備の重要な変更という場合、事前協議の対象になる装備、配置等の重要な変更の問題に関して言いますと、つまり海軍の場合、ワンタスクフォースということがいままでも言われてきたのですね。これはもう御承知だろうと思うのです。
 ミッドウェーというのはいわゆる母港化されて横須賀にいるわけですな。そして、今度佐世保にもそういう事態が起こる。それから極東に重視された事態で、エンタープライズだけではなくてカール・ビンソンなんかも来る、あるいはニュージャージーなんかもどうなるかわからない。太平洋艦隊として配備されるのがことしの夏か秋かということが、ニュージャージーやカール・ビンソンなんかはすでに言われているわけですね。そうすると、そういうふうに配置されたアメリカの重要な最新式の空母、これが事実上太平洋艦隊として配備される、そして日本が母港化されるような事態になるということは、これは事前協議にかかわるような重大な事態なのですよ。こういう事態になるということは、これは極東におけるいわゆる緊張緩和に逆流する大変な事態にますますなっていくわけですから、大臣がそういうふうにならないことを望むと言っても、現実には両方が軍備を極東に投入すればそれだけ緊張した事態が生まれるわけですから、そうした大変な事態になるという内容を含んでいるわけですね。
 そういうふうな重大な事態であるということを御認識しておいて、そういう危険な事態にならないように対処していただきたいと思うのですが、そういう重大な事態にある、進みつつあるということについての御認識と今後の対応について最後に大臣の御所見を伺って、きょうはもう時間が若干過ぎてしまいましたが、私の質問を終わりたいと思います。
#51
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私は、いま立木さん
のおっしゃるように重大な事態といいますか、それ、どういうことをおっしゃるのかちょっと理解ができないのですが、そういう事態に進みつつあるという認識は持っていないわけです。
 それから、いまカール・ビンソンとかそういう航空母艦が入ってくるというようなことについては全く日米間で話し合いは行われておりませんし、それからエンタープライズの入港につきましても、いまおっしゃるように、今後もまた入ってくる場合においては、これは安保条約とか関連取り決めにおいて対処していけばいいことであって、これが配置の重大な変更とかあるいは装備の変更だとか、これは日本には日本の立場があるわけでありますし、配置の変更ということになりますればこれは事前協議の対象ということになるわけですし、核の持ち込みということについては日本の立場というのははっきりしておるわけでございますから、これは日米間でその辺のところは十分話し合えばいいことだし、日本の立場というのはアメリカもよく承知しておりますし、その点は今後どういう事態があっても日本の基本的な立場というものは貫きながら、なおかつ日米安保条約の効果的な運用という面についてはわれわれとしては配意していかなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
#52
○木島則夫君 きょうは、極東における核のバランスについてお聞きをしたいのですけれど、その前に外務省の予算に関連して一つ二つお尋ねをしておきたいと思います。
 予算説明の中で、わが国の地位にふさわしい外交を展開するために外交実施体制を一層整備、強化をする。こういう観点から、五十八年度予算では定員の拡充あるいは情報収集機能の強化、在外職員の勤務条件の改善等に特別の配慮を加えたと、こう説明をされているわけです。
 一つ伺いたいのですけれど、人員の拡充については五十八年度七十七名増の三千七百十二名ということですけれど、外務省の計画では六十年に五千名体制に持っていきたいと。現実と目標との間には大きな隔たりがあります。もしその目標を達成するためには年間二百七十名ずつふやしていかなければならなかったし、またこれからもそうせざるを得ない。しかし財政が逼迫をしているし行革の推進もやらなければならない。こういう中でなかなかむずかしいと思います。この五千人体制はどうなるのか。その格差をこれから外務省としてはどういうふうに埋めていくのか。これはやっぱり大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
#53
○国務大臣(安倍晋太郎君) 外務省としては、外交の実施体制というものを強化するためにはどうしても定員をやはり五千名は確保したい。これは外務省の念願でもありますし悲願とも言うべきかもしれませんが、そこで努力しておるわけです。五十八年度予算につきましても、私もこの点について最大の努力をいたしました。最終的には七十七名という純増でありますけれども、しかしこれ、各省庁の定員削減という基本方針の中では、いまの日本の外交の重要性というものを判断していただいて、今日の状況の中では私はやむを得ないことであったというふうに思っておりますが、しかしおっしゃるようにこのペースでいきますと、六十年度までに五千人体制というのはなかなか困難だと思いますが、しかしわれわれとしてはその目標は捨てずに今後とも努力は重ねていきたいと、こういうふうに思っております。日本の外交の占める役割りというのが世界的にも非常に大きくなってまいりましたし、日本においてもそれに対する世論その他支持もふえてまいりましたから決してこれは夢ではない、今後の努力によっては達成はできる目標である、こういうふうに思います。
#54
○木島則夫君 この問題について議論をするとこれだけでも相当の時間が必要でございます。そういったひとつ抱負を伺って、それに即応できるような体制をできるだけ早くつくっていただきたいというふうに思います。
 日本の防衛をたとえてハリネズミと言う、これは私は言い得て妙だと思います。しかしネズミの耳は非常に小さいから、耳だけはウサギの耳に取りかえてもらいたい。そういう意味で情報課の設置というのは、ようやく情報の収集とか分析、こういうものが日本の外交の展開に必要欠くべからざるものであるという認識に立ったことは私は評価をしたいと思います。しかし、何といってもまだまだ予算の裏づけも少ないし人員の配置も少ないというようなことで、一体情報を的確に把握して、それに基づいて日本の外交戦略あるいは平和戦略を組み立てていくことができるのかということになりますと、これまたなかなかむずかしいと思いますね。この点に関して私は、行政改革一律、すべての面を対象にということではなくて、必要なものであるならばそこへ思い切って予算をつける、やっぱりこういうものが必要だというふうに考えております。
 そこで、情報収集が外交に欠かせない重要な要素であるので、この面での充実強化を図っていく、そういった点での大臣の抱負というか将来展望を伺っておきたいと思います。しかし、将来展望といっても五年や十年先のことを言ってもらっても困るので、現実にいまこの時点で世界の情勢は厳しく変わりつつある、変動していっているということですね、ひとつ伺いたいと思います。
#55
○国務大臣(安倍晋太郎君) 外務省が情報の収集能力あるいは分析能力というのを強化するということは、これからの日本外交を進める上においては欠くことのできないことである、私はそういうふうに思っております。外務省自体もそういう認識に基づいてこれまで努力をいたしまして、やっと今回情報課の新設が認められたとこういうことでございますが、この中身をどうするかというのは、今後ともいろいろと検討して効果的なものに持っていきたいと思います。
 何といいましても情報の収集分析、これは外務省だけじゃなくて、この持っておる外務省の情報あるいは分析能力というのが日本の国内政治にも大きく寄与していかなければならないと思うので、そういう立場から見ましても、外交、内政、そういうものを踏まえた上でのこれからの情報機能というものは今後着実に強化をしていくべきものである、そのための努力は今後とも続けていきたいと、こういうふうに思っておりますし、臨調なんかも大体そういう方向で答申等も出されておるわけでございますから、そういうことも大いにわれわれは踏まえてやっていきたいと思うのです。
#56
○木島則夫君 足らざる面の補完――補完というとおかしいですが、補強というか、これはやっぱり一つは民間との協力、こういうものを具体的に進めていかなきゃいけないのだけれど、外務省は何か具体策をお考えですか。
#57
○政府委員(枝村純郎君) 民間との関係でございますけれども、まず出先公館におきまして、各種の月例会その他の形をもちまして民間の商社その他の駐在員の方々との意見交換、これは非常に進めております。また国内におきましても、各種の学者グループとの会合などもございますし、あるいは私どもの持っております国際問題研究所でありますとかあるいは国際協力推進協会、そういった協力機関を通じていろいろの情報の交換の場を持っております。また各局も、たとえばパナマ運河について昨年来一つの懇話会というようなものも設けておりますし、問題ごとに、最近はまた広報文化活動について次官に対して助言を行う懇談会というようなものも設けまして、そういう形で開かれた外務省であり、これはいい意味でこちらから情報を提供するという面でも、あるいは意見をいただくという意味でも、そういう形でますます努力してまいりたいと思っております。
 あるいは在外に、先ほど来先生御質問の、定員の不足を補う一つの手段としてでもございますが、専門調査員という制度を設けまして、本年度三十名、来年度二十五名、これは民間の学識経験者でありますとか、報道関係者でありますとか、そういった研究者を活用する、こういうこともやっております。そういう面で民間との情報交換というものは、私どもの今後情報機能を強化してい
く上で持っております大きな問題意識の一つでございます。
#58
○木島則夫君 そういった意味で、足らざるところを補強をして、日本の地位にふさわしい外交の展開ができますようにこれから鋭意御努力をしていただきたいというふうにお願いを申し上げておきたいと思います。
 極東における核のバランスについては、この委員会でもいろいろ議論されているところでありますけれど、ソ連のオガルコフ参謀総長が、三月十七日付のニューヨーク・タイムズとのインタビューで、ソ連当局者は、現在ヨーロッパ向けに配備しているSS20の少なくとも幾つかのものはソ連の極東部へ再配備されるであろうと、こう示唆をした。現在極東には百八基のSS20がある。中国、アメリカの増大する脅威に対抗するために極東におけるSS20の数の増大を求めていると、このように語っているわけでございます。
 端的に言えば現在極東にはSS20が百八基ある。今後これを増大させていくが、その分は欧州向けのものを回すと、こういうことでございます。
 外務省はもちろんこの発言については確認をされておりますですね、どうでしょうか。
#59
○政府委員(門田省三君) ただいま委員から仰せのございましたオガルコフ参謀総長とニューヨーク・タイムズとのインタビューの件につきましては、確かにそういう記事があったことは承知いたしております。しかし、実際にこういう発言をソ連側当局者が行った事実そのものについては確認いたしておりません。
#60
○木島則夫君 この報道、それじゃ報道ということにしておきましょう。この報道をまつまでもなく、極東にはすでに百基余りのSS20が配備をされていることはこれはもう常識になっておりますね。仮にその一割が日本を目標にするとすれば、百五十キロトン、これは三十個の弾頭で日本の主要都市は一瞬にして吹き飛んでしまうというこういうものです。すでに極東のソ連の核が飽和状態に達している。ここに欧州分から回ってくるということは、まあどういう言い方をしたらいいのでしょうかね、飽和状態に屋上屋を重ねるというか超飽和状態になる。飽和状態は変わらないということですね。だからといって欧州の核の分がこっちに回ってきていいなんて私は言っているのじゃない。
 なるほどソ連の通常兵力というものを考える場合には、攻撃型潜水艦あるいは戦闘爆撃機、さらにはその爆撃機が増大をすれば潜在的脅威というものは目に見えてこれは増大をする、これはもう明らかです。
 しかし、核の場合にはちょっとニュアンスが違うのじゃないだろうか。もちろん軍事的にもこれは大きな意味があるけれどももっと大きな意味は政治的であり、心理的な影響力が非常に大きいということもこれは冷静に受けとめて判断をしなきゃならないということですね。軍縮についてのソ連の態度というものは明確です。ソ連ははっきり言って一方的軍縮は行わないというのが一つ。アメリカの軍事的優位は許さないというのがもう一つ。したがって、協定ができる唯一の合理的基礎というものは平等と同等安全であるということ。これはさきに共産党中央委員会が私ども民社党にあてた書簡の中でもはっきり言っている。そしてアンドロポフ政権でも、平和というものは不敗のソ連軍の存在のみによって築かれるという確固たる姿勢を示している。同時に、アメリカのレーガンも力の優位を貫くという方針を変えておりません。米ソぎりぎりの対決と言っていいでしょうね。
 こうした状況の中で、アメリカはINFに関して近くゼロオプションにかわる新しい提案を行う可能性があるというふうに聞いている。この問題については当委員会でもきのうから議論の対象になっております。この背景にはどうしても年内にアメリカとソ連、米ソ首脳会談を開きたいと。その前提としてINF交渉を何とかしてまとめたいというこういう制約がつきまとうことは、これは当然だろうと思う。新提案の内容がどうなるにしましても、これはSS20が極東に移動する可能性はさらに大きくなってくるのじゃないだろうか。
 この新提案がなされる可能性、そしてこの見通し、内容、それによって極東に回ってくる核の増大、この問題についての外務省の所見を聞かしていただきたい、見通しを聞かしていただきたい。
#61
○政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。
 ただいま仰せがございましたような問題点について報道がございますのは事実でございます。私どもも承知いたしております。しかしながら現時点までにおきまして、米国としてゼロオプションにかわる新提案を行うという旨の決定はまだ行っていないと、かように承知いたしております。
#62
○木島則夫君 しかし、アメリカにも、ゼロオプションで突っ張ってもなかなか妥結をしないと。したがってこの際はある意味で妥協も必要であろうというような論があることはもうこれは先刻御承知ですね。それが新提案という形でいろいろ伝えられている。取りざたをされている。これは、そうなるとどうしても極東に回ってくる分が多かろうということで、日本に対する圧迫、核の脅威、こういうものは飽和状態を通り越える可能性がさらにふえてくると、こういうことを私は言っている。こういうものに対してただ日本が傍観をしているというのはこれはおかしい。
 そこで、外務大臣にお伺いをしたいのでありますけれど、こういったアメリカの動きですね、こういうものに対して大臣はどういう御懸念を持っていらっしゃいますか。
#63
○国務大臣(安倍晋太郎君) アメリカがゼロオプションにかわる新提案といいますか中間提案といいますか、そういうものをするかどうかについては、いま国連局長が答弁いたしましたように、最終的に決定したというふうなことはわれわれまだ聞いておらないわけでございますが、秋たちもゼロオプションというものは正しいと、これで最終的に処理されるものであると、こういうふうに考えておりますが、しかしINF交渉をまとめるためには、果たしてそれをゼロオプションに固執するだけでこれができるかどうかということにつきましても、ヨーロッパ等の動きもありますから多少の懸念というのは持っているわけです。ですから、アメリカもあるいはそういうことを検討される段階に来ているかもしれない。しかしこれははっきりしておらないわけでございます。
 いずれにしてもわれわれとしては、このINF交渉において日本の立場あるいは日本の憂慮というものが解消されるような形でINF交渉がまとめられなければならないと、こういうふうに思います。そのために、私もヨーロッパへ参りましたときから声を大にしまして、ヨーロッパの首脳にも、INF交渉がまとまる段階において日本が犠牲になるようなことはわれわれは認めるわけにはいかないと。これは十分配慮して主張してもらいたいということも述べました。ヨーロッパの首脳もそういうことは十分皆承知しておる、考えますと、こういうことでありました。またシュルツ長官と話し合った際も、これは総理の口からもそうですが私の口からも同じように、INF交渉が妥結して、その結果として極東が犠牲になるようなことは、特に日本が犠牲になるようなことはこれはもう日本としては認められないので、アメリカもその点は十分踏まえてほしいということを何回も申し入れまして、シュルツ長官も十分その点は心得ております、そういうことはいたしませんと、こういう回答を得ております。それからアメリカが何か新提案を出すというような段階においては、日本にもそういうことは早々にお伝えすると、こういうことにいままでのところはなっておるわけです。
#64
○木島則夫君 こういう言い方をすると誤解を招くおそれがあるのですけれど、私は冒頭に申し上げたわけですね、もうすでに百基あると。そこへ欧州分から回ってきても飽和状態は変わらないのだと。こういうことをはっきり非常に客観的に言う軍事評論家もおりますね。こわいことは、それが倍加を、いわゆる加えられることによる政治的
なまた心理的な圧迫、こういうものにくじけることであるということを指摘する。私はそういうことも非常に大事な論調であろうというふうに思います。
 そこでもうちょっと突っ込んで伺いたいのだけれど、ゼロオプションで突っ張ってINF交渉が成立をしない。それよりも現実的な問題としてこれを妥協する、いわゆる妥結をさせるためには、新提案でもよいというようなお考えは大臣にございますか。そういう可能性もあるならば、それでもやはりないよりはいいというふうなお考えがあるかどうか。そして、そういう可能性があるならばそれに対応して日本の外務省はどういうことをする必要があるのかというようなことまでお考えでございましょうか。立ち入ったことでありますけれども。
#65
○国務大臣(安倍晋太郎君) やはり政治も外交も現実ですから、現実というものを踏まえながら対応していくということは私は大事だと思うのです。そういう中で、われわれは決してゼロオプションというものをもちろん捨てるわけにいきませんし、われわれとしてはあくまでもゼロオプションに目標を置いているわけでありますし、ただ、これはまだ全く仮定のことですけれども、何か中間的なものが出るとしてもそれはゼロオプションに近づくものでなければ意味をなさないと、こういうふうに思っております。非常に現実的に世界が動いておりますから、アメリカがどういうふうな対応に出てくるか、われわれはこれを見守りながら、しかし日米間では少なくとも寸分のすきもないような話し合いといいますか協議が行われなければならないとそういうふうに思いますし、アメリカも日本の立場というものを踏まえて十分これは行うものであると、そういうことになればですね、そういうふうに考えます。
#66
○木島則夫君 私が受けとったニュアンスといたしますと、ゼロオプションというものはこれは当初からの目標に違いはないけれど、しかしやはり政治というものは現実的なものであると。もし仮に新しい提案が出たとしましても、それがゼロオプションに近いものでなければならない。そして、そういうものが討議をされた場合に、日本とアメリカとの間には寸分のすき間もない、そういう態勢でいくのだと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか、大臣。
#67
○国務大臣(安倍晋太郎君) そのとおりでございます。
#68
○木島則夫君 さて、伝えられるところによりますと、先日ソ連のアルバトフ中央委員が、極東において中国を含めた中距離核戦力制限交渉の必要性を強調したというふうに私は聞いております。アメリカのマックス首席代表はこの提案を拒否いたしましたが、政府はこのソ連の提案をどのように見ているか。また、これに対するアメリカの反応というものについてはどうなのか、この辺は政府としてどういうふうに受けとめておりますか。
#69
○政府委員(門田省三君) アルバトフ中央委員が発言をしたというお尋ねでございますが、この点につきましてまず申し上げたいのは、アルバトフ氏はソ連政府当局を代表して述べたものでないと、かように私ども認識いたしております。また詳細は、したがいまして十分把握しておりませんけれども、その内容は、昨年五月の第十九回コムソモール大会のブレジネフ演説において述べられた内容と同様のものであったのではないかと、かように理解いたしております。
 これに対しましては先生おっしゃられましたとおりに、アメリカ国務省当局におきましては、三月十八日に、この発言はソ連が中距離ミサイル分野において圧倒的優位を有しているとの事実を意図的に覆い隠すものであり、ジュネーブにおいて真剣に交渉すべきであるとの見解を表明したと承知いたしております。
 わが国といたしましては、米国は、現在のINF交渉が全世界的な観点に立ってわが国を含むアジアの安全保障が損われないような形で解決が図られるようあらゆる努力を行っていると、このように考えております。このような米側の努力というものを、わが国といたしましては全面的に支持しながら今後とも交渉の推移を見守っていきたい、かように考えております。
#70
○木島則夫君 わかりました。
 極東においては、中距離核戦力の制限について何らの交渉の糸口を設けられていない以上、日本としては、どのような形式をとるにせよ、私はその糸口の設定のために米ソ両国に対して何らかの働きかけをする必要があるのじゃないだろうかというふうに考えるのです。アルバトフ提案がアメリカの拒否にあったということもさることながら、極東において制限交渉、そういう交渉の糸口がないわけですから、これはやはり何とかして働きかけをしなければならないと私は思うわけです。
 こういう点について何らかの具体策と申しますか、たとえばいまソ連と日本との間はわりあいに冷却的ですね。来月開かれる日ソ事務レベル協議、こういうものがいまある。そこで、何か極端な発想かもしれないけれども、思い切って総理がソ連を訪問するとか、外務大臣がいらっしゃるとか、そして極東におけるこういった交渉の糸口と申しますか、日本が当事国になるということはこれはあり得ないですけれども、つまりその場をつくる仲介と申しますか、働きかけをやはり積極的に進めるべきだろうという意見が多いのです。大臣、これはどういうふうにお考えでございましょうか。
#71
○国務大臣(安倍晋太郎君) こういう問題もやはり先ほど申し上げましたように、現実という面からとらえて処理していかないといかぬと思いますね。ただおっしゃるように、総理がソ連を訪問するとか私が訪問するとか、そういうことによってソ連側がINF交渉についての態度を変えるとか、あるいはまた日本の立場を十分配慮して軍縮を進めるとかそういうことなら、それはそれなりに意味はあるわけなのですが、いまの状況から見まして果たしてそれだけの効果があるかどうかということになりますと、私は非常に疑問視せざるを得ないわけなのですね。すでに日本の立場というものは、そういうことをしなくてももうパブロフ大使にも説明をしているわけです。
 日本としては、たとえばSS20が削減されたものが極東に回ってくるということになれば、潜在的脅威というものが増大することになるわけですから、やはりヨーロッパのために日本が犠牲になるというようなことにもなりかねないわけで、それは困るということは日本の立場ははっきりと天下に表明しておりますから、ですから私は、ソ連もその辺のことは十分承知をしておると思いますし、またアメリカとの関係は、御承知のように私たちも会いましてしょっちゅうこれは申しておりますし、アメリカも日本の立場を尊重すると言っておりますし、ヨーロッパの首脳も日本の立場は十分理解できるということを言っておるわけでございますから、後はやはり米ソがそうした全体的な立場を踏まえて何らかの実効的な措置が米ソ間によって行われる、それを最終的にはソ連全土という立場でこのINF交渉が妥結すると、こういうことが望ましいわけでありますし、今後ともわれわれは国際世論を喚起するための努力は続けていきたいと思います。
#72
○木島則夫君 そうすると現在はまだ日本が、日本というかたとえば外務大臣が訪ソをされて、直接働きかけをなさるような状況にはないというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
#73
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私は、いまの状況のもとで考えられることではないと思います。むしろ私はしょっちゅう言っておりますが、ちょうど定期外相会議というのがせっかく日ソであるわけですから、そして今回はグロムイコ外相が日本に来られる番ですから、むしろ私としてはグロムイコ外相を一日も早く迎えてこうした問題等について論議を進め、日本の主張も説明をし、ソ連の理解を求めたい、こういうふうに思っておるわけであります。
#74
○木島則夫君 ぜひその席で私言っていただきたいことがあるのですけれど、パブロフ駐日大使
は、外務省が欧州、ヨーロッパのSS20の極東移動に抗議をした折に、三沢へのF16の配備とかあるいは西太平洋のアメリカの海上核への対抗措置だというふうに反論されたというふうに聞いております。ソ連共産党中央委員会が、F16などを絡めた内容の書簡をわが党に送ってきていることからもこのことは確実であろうというふうに思います。
 しかし、私はちょっとおかしいと、おかしいというか飛躍をしていると思うのは、F16に対抗するのにSS20というのはちょっとおかしいと思うのですね。ソ連はすでにこのF16に近いフィッターとかフロッガーDあるいはフェンサー、こういう戦闘爆撃機を極東に多数配備をしている。こういうものを見落としたものとしか思えない発言だと私は思う。これらはいずれも核、非核両用のものであることは周知の事実ですね。この辺もはっきり抗議の中に入れていただいたのか。あるいはこれから日ソ外相定期会議、いわゆる日本とソ連の外相がこちらにおいでになる、そういう席でも歯にきぬ着せずこういうこともひとつおっしゃっていただきたいと思うのだけれど、外務省はどうですか。これは予定の質問項目に出してなかったものですけれども。
#75
○国務大臣(安倍晋太郎君) 外相会談が実現できるかどうか、これはグロムイコ外相にぜひ来ていただきたいと思いますから、実現できれば、日ソ間だけでなくて国際的な問題につきましても、さらに重要ないまのINF交渉といったような軍縮問題等につきましても、それこそ率直な意見の交換をしまして、両国の理解を深めていかなきゃならぬ。またソ連側にも日本の立場を認めてもらわなきゃならぬ面も私は出てくると思います。はっきりその時には言うべきことは言わなきゃならぬと思うわけでございますが、その前にも、四月の上旬から中旬ですか、日ソ高級事務レベルの協議をやることになっておりますので、ソ連からもカーピッツァという次官が日本に来ることになっておりますので、その定期事務レベル会議においてもいまのようなお話については意見の交換をしたいと、こういうふうに思っておるわけであります。
#76
○木島則夫君 欧州におけると同様に極東においても核のバランスを維持する、これはぜひ必要だろうと思います。現状ではソ連のSS20とバックファイアに対抗し得るものは、中国の核を別といたしますればやっぱりアメリカの海上核しかないわけですね。このためアメリカは、明年から核巡航ミサイルを攻撃型潜水艦に装備をする、次いで水上の主要艦艇にも装備をすることで核のバランスの回復を図ろうとしているわけです。ミサイル戦艦のニュージャージーの太平洋配備もその一環と見てよろしかろうと思います。政府はアメリカのこういった対抗措置をどう評価するか、こうした動きにどうまた対応しようとされるか。もっと端的に言えば、アメリカの核の傘に依存をしている日本としてはこれを歓迎するのかどうか、こういうふうな端的な聞き方の方がよろしかろうと思います。どうですか。
#77
○政府委員(北村汎君) ただいま木島委員がおっしゃいましたように、まさにアメリカといたしましては、ソ連が一貫してこの極東地域において軍事力を増強しているのに対抗して、あるいはその軍事的なバランスを回復するためにいろいろな措置をとろうとしておるわけでございますから、そういう観点から、この地域におけるアメリカの軍事的プレゼンスというものが一層増強されあるいは明確にされるということは、これは核あるいは抑止力というものを維持向上するという観点から、政府といたしましては、わが国の安全及び極東の平和と安全に資するものであるというふうに考えております。
#78
○木島則夫君 最後に、政府はエンタープライズの寄港に先立ちまして、マンスフィールド大使を呼んでわが国の非核三原則を改めて確認をされたわけでございますが、一般の原子力潜水艦の寄港とかミッドウェーの寄港についてはこういったことは行っておりません。エンタープライズに対してだけ特別に確認をした理由は何かということですね。
 それから、いま話に出た戦艦ニュージャージーあるいはカール・ビンソン、こういった寄港に当たりましても同様の確認を行うのかどうか、これらの軍艦が将来頻繁に寄港するようになっても、その都度こういった措置をとるのかどうかということを最後の質問にしたいというふうに思います。
#79
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今回、私はマンスフィールド大使に会いまして、非核三原則を初めとして日本の基本的な核の持ち込み等に対する立場を明らかにいたしましてアメリカの再確認を求めたわけでありますが、これはこれまでの国会論議の経過から見まして、F16が三沢基地に配備をされる、さらにまた最近ではエンタープライズが寄港をする、こういうことで国会からも強くアメリカに対して核に対する日本の立場を明らかにして、安保条約を守るあるいは事前協議条項を遵守するというアメリカの従来の立場を再確認すべきであると、こういう声がありまして、そういうものを受けて私が会ったわけでありまして、それじゃこれから具体的にいろいろとまた事態が起こったときに、アメリカにその都度そういうことをやるのかどうかということになりますと、その必要はないと、私はそういうふうに思います。アメリカ政府としては、これまでも何回も言っておりましたし、今回のマンスフィールド大使の言明も、日本の非核三原則というものは十分これを踏まえておると、同時にまた安保条約、それの関連取り決め、さらにそれに基づくところの事前協議の条項については、アメリカとしてはこれを誠実に遵守するということを明確に述べられたわけでございますから、私はその都度その都度の必要はないと、こういうように考えております。
#80
○木島則夫君 もう一言最後にお願いいたします。
 外務大臣ね、現在米ソの核の抑止力、いわゆる核の均衡によって残念ながら現実的には世界の平和というものが保たれておりますね。これを一遍になくすということはとても現実的にむずかしい。したがって、その核の均衡というものを低い状況にだんだん抑えていきながら、その中で一方平和戦略というものを日本が徹底して行ってもらいたいというふうに私は思うわけであります。
 最後に、外務大臣の日本の平和戦略に対する御所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
#81
○国務大臣(安倍晋太郎君) いまおっしゃるように、われわれが一番心配をするのは、核の拡張がどんどん東西両陣営において拡大をされるということが心配です。したがってやはりわれわれとしては、何としてもこの核についてはバランスのとれた縮小が行われるということが絶対に必要であるというふうに考えますし、そのために日本としてもできる限りの努力、外交的努力というものはしなきゃならぬ、外交的努力を惜しんではならないと、こういうふうに思います。したがって国連の場において、あるいはまた米ソ両大国に対しても、さらにまたその他の関係の諸国に対しても、日本の立場を訴えあるいは外交的な努力というものを今後とも積極的に進めてまいる考えであります。
#82
○木島則夫君 以上で終わります。
#83
○委員長(増田盛君) これをもって昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。
 なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#84
○委員長(増田盛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト