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1982/03/22 第98回国会 参議院 参議院会議録情報 第098回国会 内閣委員会 第3号
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1982/03/22 第98回国会 参議院

参議院会議録情報 第098回国会 内閣委員会 第3号

#1
第098回国会 内閣委員会 第3号
昭和五十八年三月二十二日(火曜日)
   午前十時二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月二十一日
    辞任         補欠選任
     三治 重信君     伊藤 郁男君
 二月二十二日
    辞任         補欠選任
     伊藤 郁男君     三治 重信君
 二月二十三日
    辞任         補欠選任
     三治 重信君     栗林 卓司君
 二月二十四日
    辞任         補欠選任
     栗林 卓司君     三治 重信君
 三月三日
    辞任         補欠選任
     林  寛子君     秦野  章君
     林  ゆう君     世耕 政隆君
 三月四日
    辞任         補欠選任
     世耕 政隆君     林  ゆう君
     秦野  章君     林  寛子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         坂野 重信君
    理 事
                板垣  正君
                大島 友治君
                山崎  昇君
                三治 重信君
    委 員
                岡田  広君
                竹内  潔君
                林  寛子君
                堀江 正夫君
                山内 一郎君
                野田  哲君
                小平 芳平君
                峯山 昭範君
                安武 洋子君
                秦   豊君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (内閣官房長官) 後藤田正晴君
       国 務 大 臣
       (総理府総務長
       官)       丹羽 兵助君
       国 務 大 臣
       (行政管理庁長
       官)       齋藤 邦吉君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  谷川 和穗君
   政府委員
       人事院事務総局
       管理局長     加藤 圭朗君
       内閣総理大臣官
       房会計課長兼内
       閣参事官     渡辺  尚君
       宮内庁次長    山本  悟君
       皇室経済主管   宮尾  盤君
       行政管理庁長官
       官房総務審議官  門田 英郎君
       行政管理庁長官
       官房会計課長   前山  勇君
       行政管理庁行政
       管理局長     佐倉  尚君
       行政管理庁行政
       監察局長     中  庄二君
       防衛庁長官官房
       長        佐々 淳行君
       防衛庁経理局長  矢崎 新二君
       防衛施設庁長官  塩田  章君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        林  利雄君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国の防衛に関する調査(今期国会における本委員会関係の内閣提出予定法律案に関する件)
 (総理府関係の施策に関する件)
 (昭和五十八年度内閣、総理府関係予算に関する件)
 (行政管理庁の基本方針に関する件)
 (防衛庁の基本方針に関する件)
 (昭和五十八年度防衛庁関係予算に関する件)
 (昭和五十八年度皇室費に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(坂野重信君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 まず、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(坂野重信君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に三治重信君を指名いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(坂野重信君) 国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国の防衛に関する調査を議題といたします。
 まず、今期国会における本委員会関係の内閣提出予定法律案について説明を聴取いたします。 後藤田内閣官房長官。
#5
○国務大臣(後藤田正晴君) 今国会の内閣提出予定法律案は、三月二十二日現在、総件数五十五件でございます。うち予算関係法律案は二十九件でございます。このうち、すでに国会に提出されておりますものは四十五件であり、うち予算関係法律案は二十九件となっております。なお、現在国会に提出されていない法律案については、できる限り早期に提出するよう努力中でございます。
 これら内閣提出法律案のうち、参議院内閣委員会に付託が予想されます法律案は七件、そのうち予算関係法律案は四件になることと思いますが、これらの法律案の件名及び要旨はお手元の資料のとおりでございます。
 なお、委員会への付託は、議院において決定される問題でございまするので、若干の変更もあろうかと思います。
 以上でございます。
#6
○委員長(坂野重信君) 次に、総理府総務長官から所信及び昭和五十八年度内閣、総理府関係予算の説明を聴取いたします。丹羽総理府総務長官。
#7
○国務大臣(丹羽兵助君) 総理府本府の所管行政につきまして所信の一端を申し述べます。
 初めに、今国会において御審議いただいております恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案におきましては、現下の厳しい財政事情のもとではございまするが、従来からの懸案事項でありました老齢旧軍人等の仮定俸給の改善及び傷病者遺族特別年金の改善について措置することといたしております。
 次に、法律案以外の主な所管事項について申し上げます。
 わが国の将来を考えますとき、青少年の非行、とりわけ最近の一連の非行事件は、非常に根の深い、まことに憂慮すべきことであります。青少年を非行から守り、健全に育成していくためには、家庭、学校及び社会がそれぞれの立場で努力するとともに、相互に連携、協力して全国民的運動を展開する必要があり、政府全体で取り組まなければならないきわめて重要な問題と考えております。総理府といたしましては、さきに、関係省庁と早急にとるべき対策について申し合わせを行ったところでありまして、これを踏まえまして、各省庁がそれぞれ関係機関等に対し指示、依頼を行う等具体的な取り組みを進めているところであります。今後とも、関係各省庁との緊密な連携のもとに、青少年の非行防止対策を積極的に推進するとともに、健全育成施策についても充実させてまいることといたしております。
 次に、公務員制度に関しましては、行政に対する国民の信頼を確保するため、官庁綱紀の厳正な保持及び公務能率の増進に一層努力するとともに、公務員に対する適切な処遇の確保に努めてまいる考えであります。
 また、本年は世界人権宣言三十五周年に当たっており、同和問題の啓発に一層の努力を重ねてまいる考えであります。
 なお、このたび、総理府に緑化推進連絡会議を設置し、国土の保全、水資源の涵養、環境整備等の面から、緑化政策の総合的かつ効率的な推進を図ることといたしました。
 もとより緑化政策は、政府ばかりでなく、民間の協力も必要であり、政府、民間相まって国土の緑化がより効果的に実現されるよう努めてまいる所存であります。
 その他の所管事項につきましても、諸施策の推進に一層の努力を傾注してまいる所存でありますが、ここに所信の一端を申し述べ、委員各位の深い御理解と格段の御協力をお願いする次第であります。
 引き続いて、昭和五十八年度における内閣及び総理府所管の歳出予算要求額について、その概要を御説明いたします。
 内閣所管の昭和五十八年度における歳出予算要求額は百二億九千八百二十二万五千円でありまして、これを前年度歳出予算額百一億五千七百七十九万四千円に比較いたしますると一億四千四十三万一千円の増額となっております。
 以下、予定経費要求書の順に従って申し上げますと、内閣官房に必要な経費四十三億六千六百十一万一千円、内閣法制局に必要な経費五億四千九百六十八万二千円、人事院に必要な経費五十二億五千八百十一万五千円、国防会議に必要な経費一億二千四百三十一万七千円であります。
 次に、総理府所管の昭和五十八年度における歳出予算要求額は六兆二千八百二十九億六千八百八十三万二千円でありまして、これを前年度歳出予算額六兆六百五十四億二千九百九十九万二千円に比較いたしますると二千百七十五億三千八百八十四万円の増額となっております。
 このうち、当委員会において御審議を願っております総理本府、青少年対策本部、日本学術会議、宮内庁及び行政管理庁の歳出予算要求額は一兆八千百七十七億三千九百七十七万五千円でありまして、これを前年度歳出予算額一兆八千五十七億五百四万八千円に比較いたしますると百二十億三千四百七十二万七千円の増額となっております。
 以下、予定経費要求書の順に従って申し上げますと、総理本府に必要な経費一兆七千八百六十二億九千九百三十八万八千円、青少年対策本部に必要な経費二十一億七千五百三十七万九千円、日本学術会議に必要な経費八億五千五百二十八万九千円、宮内庁に必要な経費六十九億四千百五十五万四千円、行政管理庁に必要な経費二百十四億六千八百十六万五千円であります。
 次に、これらの経費について、その概要を御説明いたします。
 総理本府に必要な経費は、交通安全対策、広報及び世論調査、恩給の支給、統計調査等のための経費でありまして、前年度に比較して百十二億五百七十九万六千円の増額となっております。
 青少年対策本部に必要な経費は、青少年非行防止活動、青少年健全育成国民運動、青年の国際交流及び国民健康体力増強等のための経費でありまして、前年度に比較して、二千五百十一万七千円の増額となっております。
 日本学術会議に必要な経費は、科学に関する重要事項の審議、内外の研究連絡調査と国際共同事業の協力に関する業務等に必要な経費でありまして、前年度に比較して一億五百十九万九千円の増額となっております。
 宮内庁に必要な経費は、皇室の公的御活動、皇室用財産の維持管理に附帯して必要となる経費等でありまして、前年度に比較して一億六千九百五十八万二千円の増額となっております。
 行政管理庁に必要な経費は、行政管理庁一般行政及び国の行う統計調査事務に従事する地方公共団体職員の設置の委託等のための経費でありまして、前年度に比較して五億二千九百三万三千円の増額となっております。
 また、以上のほかに国庫債務負担行為として、総理本府において百十七万六千円を計上いたしております。
 以上をもって、昭和五十八年度内閣及び総理府所管の歳出予算要求額の概要の説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議くださるようお願い申し上げます。
#8
○委員長(坂野重信君) 次に、行政管理庁長官から所信を聴取いたします。齋藤行政管理庁長官。
#9
○国務大臣(齋藤邦吉君) 第九十八回国会における内閣委員会の御審議に先立ち、行政管理庁が所管する業務運営の基本的考え方につきまして御説明申し上げます。
 まず第一に、行政改革について申し上げます。
 内外環境の変化に即応し、簡素にして効率的な行政を確立することは当面の急務であります。このため、政府は、行政改革を国政上の最重要課題の一つとして位置づけ、一昨年三月臨時行政調査会を設置して以降、中長期的観点に立った改革構想の検討、立案と、当面具体化を急ぐべき諸施策の推進に取り組んでまいったところであります。
 御承知のとおり、臨時行政調査会は去る三月十五日をもって二年間にわたる任務を終えたところでありますが、政府は、臨調答申を踏まえた政府としての改革施策を着実に推進すべくこれまで努力を続けてまいりました。
 すなわち、法律改正措置としては、第一次答申に関連して一昨年秋の臨時国会において行革関連特例法が、また第二次答申に関連して昨年の通常国会において行政事務簡素合理化法等が成立を見ているところであります。さらに昨年七月の第三次答申に関連して、現在、国鉄再建臨時措置法案及び国家行政組織法の一部を改正する法律案を御提案し、御審議をお願いしておるところであります。
 予算及びその他の措置といたしましても、補助金等の整理を初め、年金、医療、農業、公共事業その他各般の行政分野における歳出の縮減合理化措置や、新たな定員削減計画の策定とその実施による国家公務員総数の縮減、地方公務員の定数及び給与の適正化の指導、国鉄再建のための緊急対策十項目の推進等々の措置を実施してまいったところであります。
 また、電電公社、専売公社の改革、公的年金制度の長期的改革問題等今後取り組むべき重要事項についても、昨年秋に閣議決定をいたしました行政改革大綱に沿って、着実に検討、具体化を進めていくことといたしておるところであります。
 さらに、去る二月二十八日及び三月十四日に臨時行政調査会から相次いで提出された第四次及び第五次の答申につきましては、今般、政府としてこれを最大限に尊重しつつ、逐次所要の改革を実施に移す旨の基本的対処方針を決定したところであります。政府といたしましては、今後、この方針のもとに、当面具体化を急ぐべき事項については速やかに成案を得て所要の施策を実施に移すとともに、中長期にわたる改革課題についても、国
民世論の動向や国会における御審議等を踏まえつつ、各般の改革施策を総合的かつ着実に推進してまいる所存であります。
 第二に、昭和五十八年度の行政機構、定員等の審査について申し上げます。
 まず、行政機構につきましては、機構の膨張を厳に抑制することとし、部局の新設はすべてこれを認めないことといたしました。
 なお、農林水産省については、時代の要請にこたえて試験研究機関の整理再編成を行うことといたしております。
 また、国家公務員の定員につきましては、第六次定員削減計画に基づく定員削減を強力に推進するとともに、新規行政需要に係る増員につきましても必要最小限度に抑え、全体としての増員数を厳しく抑制いたしました。この結果、行政機関等の職員につきましては、昭和五十年代で最大規模の千六百九十五人の純減を図ることといたしております。
 今後とも、行政機構等の審査に当たりましては、膨張抑制の方針を堅持しつつ、新しい時代の要請に即応した行政機構等の実現に努めてまいる所存であります。
 第三に、行政監察について申し上げます。
 今日のように、行政全体が新たな対応を迫られている状況にあって、行政の合理化、効率化及び行政運営の適正化を推進する行政監察の役割りは一層重要なものとなってきております。
 そこで、昭和五十八年度の行政監察業務の運営に当たりましては、その効果的かつ重点的な実施に十分配意してまいるつもりであります。すなわち、主要行政分野の制度運営の全般的改善を図るとともに、許認可、特殊法人、補助金等の諸問題につき、計画的、体系的な点検に着手するほか、たとえば貿易摩擦を解消するための一助として現在調査を実施しております輸入検査手続等の改善のような早急に対応を必要とする問題についても、必要に応じ、適時適切に対処してまいることといたしております。
 なお、行政監察による改善を効果あらしめるため、従来より主要な行政監察結果に基づく勧告を閣議の席において報告しておりますが、そのほか、各省庁及び各特殊法人の監察・監査担当部局との連絡体制を密にし、政府全体として、監察・監査の有機的機能が十分発揮できるよう力を注いでまいりたいと考えております。
 また、行政の監視及び苦情の救済業務につきましては、苦情事案の解決に当たって必要に応じて行政監察機能の活用や民間有識者の意見を反映させる措置をとるほか、国民生活に関連する施策に重点を置いて現地監視を進めるなど、国民の行政に対する信頼の確保に努めてまいる所存であります。
 なお、臨時行政調査会答申においても取り上げられましたオンブズマン制度の導入につきましては、行政の監視及び苦情の救済といういわゆるオンブズマン的機能を行政管理庁が担ってきているところでありますので、いま申し述べましたような諸方策を講ずる等の措置により、現行制度の一層の活性化を図りつつ、日本型オンブズマン制度の条件整備を進めてまいることといたしております。
 第四に、行政情報システムの総合調整業務について申し上げます。
 最近のようにOA等事務処理の近代化が著しい状況にあって、行政情報システムは行政運営の合理化を推進するために欠くことのできない手段となっており、また国民生活にも密接なかかわりを持つに至っております。
 そこで、当庁としましては、時代の変化、情報関連技術の進展に絶えず即応できるよう行政情報システムの総合調整機能の一層の強化に努めるほか、情報の公開、プライバシー保護の問題につきましても、臨調答申の趣旨を尊重しつつ、積極的に取り組んでまいる所存であります。
 最後に、統計の総合調整業務についてでありますが、申すまでもなく統計は社会経済の現状を把握する手段として欠くべからざるものであり、そのためには、社会経済情勢の変化に伴う行政上のニーズに対応した精度の高い統計の作成に努めることがぜひとも必要であります。また一方、統計調査業務に伴う国民の申告負担の軽減を図るため、合理的、効率的な調査を実施することも強く要請されているところであり、当庁といたしましては、この両面から統計調査の改善を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 以上、当庁所管行政の業務運営につきまして、その基本的考え方について申し述べましたが、先ほど述べましたように、二年間にわたる精力的な活動を行ってきた臨時行政調査会は、去る十四日の最終答申の提出を最後にその使命を終えたわけであります。今後は行政改革の舞台は政府側に移るわけでありますが、当庁といたしましては、政府部内にあって行政改革を推進する全般的な責任を担っている立場から、国民の期待にこたえるべく、簡素で効率的かつ適正な行政の実現を目指し、最善の努力を傾けてまいる所存であります。
 委員各位におかれても、一層の御理解と御支援をいただきますようお願いする次第でございます。
#10
○委員長(坂野重信君) 次に、防衛庁長官から所信を聴取いたします。谷川防衛庁長官。
#11
○国務大臣(谷川和穗君) 参議院内閣委員会が開催されるに当たり、最近の国際軍事情勢及びわが国の防衛政策につきまして、私の所信の一端を申し上げます。
 最近の国際軍事情勢は、ソ連による一貫した軍事力の増強と、これを背景とする周辺地域及び第三世界への勢力拡張が顕著であります。アフガニスタンにおける情勢は、国際世論の厳しい中、依然としてソ連が約十万人に及ぶ兵力を投入し、同国に対する軍事介入を継続いたしております。このほか、中東における情勢としては、イラン・イラク紛争は解決の糸口を見出せぬまま推移し、さらにこの一年間にイスラエルによるレバノン侵攻が発生いたしました。またイギリスとアルゼンチンとの間ではフオークランド紛争が生起し、さらに朝鮮半島及びインドシナ情勢も依然として緊張しております。
 ソ連は、グローバルな規模で軍事力の増強を行ってきていますが、極東方面におけるソ連軍の増強とこれに伴う行動の活発化も顕著なものがあり、わが国に対する潜在的脅威を増大させております。
 現在ソ連は、ソ連全体の三分の一ないし四分の一に相当する核及び通常戦力をすでに極東地域に配備しておりますが、引き続き増強を続けておるものと見られます。特に注目を要するのは、最近目覚ましい極東地域におけるソ連の戦域核戦力の増強でありまして、わが国を含む広範な地域をカバーし得る戦域核配備を行っております。最近、グロムイコ・ソ連外務大臣が、欧州における中距離核戦力交渉問題に関連して、中距離ミサイルのうち欧州地域で合意された数を超えるものは西欧の目標に到達できないシベリアの線以遠に配備されることとなろうとの趣旨の発言を行ったと伝えられます。わが国としては、今日まで累次明らかにしてまいった通り、中距離核戦力に関する米ソ間の交渉が実質的に進展し、グローバルなゼロ・ゼロオプションが実現することを希望しているのでありまして、ソ連が同交渉の結果として中距離ミサイルをシベリアに新たに移転させることを考慮しているのであれば、それはアジアの緊張を増大させることともなり、これまでの極東ソ連軍の顕著な増強と相まって、この地域の平和と安定にとって大きな影響を与えることになります。
 そもそもわが国が進めているのは、必要最小限度の防衛力の整備であり、このようなわが国の防衛力の整備を理由にソ連の核兵器が極東に移動されるというのであれば、それはまことに当を得ていないと言わざるを得ません。
 近年、西側諸国の防衛努力は総じて比較的低調でありましたが、ソ連は、伝えられる最近の経済不振や食糧不足にもかかわらず、依然として大幅な軍事支出を行っているものと見られ、その結果として、東西間の軍事バランスはこのまま放置すればソ連に優位に傾く趨勢にあることから、抑止
力の信頼性を回復するため、実態に即した現実的な対処の仕方として、西側諸国が連帯してそれぞれの防衛努力等を図ることが肝要であり、さらにこのような努力と並行して、ソ連との間に戦略兵器削減交渉及び中距離核戦力交渉等を行い、実効的かつ検証可能な軍備管理・軍縮条約交渉を推進すべきであるという方向へ西側の理解は進んできております。
 おおむね以上に申し上げたような情勢認識を背景に、米国は、厳しい財政事情のもと、歳出全体の伸びを実質ゼロに抑える中で、八四会計年度の国防省費については実質約一〇%増の二千三百八十六億ドルを充て、核及び通常戦力の両分野において全面的な近代化及び態勢の強化を図りつつあります。さらに米国は、同国のみでは十分でないとの認識から、わが国及び西欧等の同盟諸国に対しても、それぞれの地域において一層の防衛努力を強く期待しておるところであります。
 このような国際情勢のもとにあって、わが国がみずからの平和と安全を確保するために総合的な安全保障の立場から各種施策を推進しつつ、わが国に対する侵略を未然に防止するという基本方針に基づき、そして万一侵略が生起した場合には、これに有効に対処し得る実力を保持するため、自衛のために必要な最小限度において質の高い防衛力の着実な整備に努め、日米安全保障体制を堅持しつつ、その円滑な運用に努めているところであります。
 政府は、このような考え方のもとに、昭和五十一年に閣議決定された防衛計画の大綱に従い防衛力整備に努めてきたところでありますが、現状ではその規模において防衛計画の大綱の水準にまで至っておらず、質的に見ましても装備の老朽化、抗堪性、即応態勢及び継戦能力等の面で改善を要する点が多く残されており、現在防衛計画の大綱に定める防衛力の水準をできるだけ早く達成することが肝要であると考えております。厳しい財政事情のもと、昭和五十八年度の防衛予算につきましては、以上のような観点から、五六中業の初年度として、引き続き質の高い防衛力の着実な整備を図るという考え方のもとに、国の他の諸施策との調和を図りつつ、ぎりぎり必要な経費を計上いたしたのであります。
 さらに、諸外国の技術の動向に対応し得るよう装備の質的な充実向上を図るとともに、わが国の地勢、国情に適した装備を整備するため、装備の研究開発に力を入れ、引き続き地対艦誘導弾等の開発を推進するほか、新対潜ヘリコプターシステム等の開発に着手いたしたいと考えております。
 日米安保条約によってわが国を防衛する立場にある米国が、わが国の防衛に関心を有し期待を表明することは当然のことと存じますが、わが国といたしましては、かかる米国の期待を念頭に置きつつも、自主的判断に基づき憲法及び基本的防衛政策に従って防衛力の整備に努力してまいる所存であります。
 米軍との共同訓練につきましては、自衛隊の練度の維持向上、ひいては日米安保体制の円滑な運用に資すべく可能な限り実施してまいりたいと考え、さらに五条事態の発生に伴う日米共同対処の場面を想定して、引き続き日米防衛協力のための指針に基づく共同作戦計画等の研究を推進させるとともに、在日米軍の駐留を実効あるものとして維持するため、駐留経費負担について、地位協定の範囲内においてできる限りの努力を続けてまいる所存であります。また、防衛施設の安定的使用は、わが国の防衛にとって必要不可欠なものであり、従来から関係地方公共団体、住民等の理解と協力をいただいて行ってきたところでありますが、今後とも防衛施設の設置運用と周辺住民の民生の安定との調和を図るべく、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する諸施策を講じてまいりたいと存じます。
 多年研究が続けられてきた有事法制の研究については、第一分類として区分している防衛庁所管の法令についての問題点については、すでに国会に対して中間御報告を申し上げるところまで検討されてきておるのでありますが、引き続き第二分類の他省庁所管の法令に重点を置いた検討が進められております。これについては、関係する法令もきわめて多く、なお時間を要すると思われます。
 最後に、米国に対する武器技術の供与の問題について申し上げます。本件は、大村長官が訪米した際、米国側から要請のあった日米間の防衛分野における技術の相互交流の一環としての問題でありますが、一年半にわたり政府部内で慎重に検討を重ねてきた結果、政府として、防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが日米安全保障体制の効果的運用を確保する上できわめて重要となっていることにかんがみ、このたび、相互交流の一環として、日米相互防衛援助協定の関連規定に基づく枠組みのもとで米国に対し武器技術を供与する道を開くこととし、その供与に当たっては武器輸出三原則等によらないこととすることを決定いたしました。同協定においては、供与される援助について、国際連合憲章と矛盾する使用、第三国への移転等に関し厳しい規制を課しているところであります。
 したがって、この措置は、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念を確保しつつ行われるものであります。政府としては、今後とも基本的には武器輸出三原則等を堅持し、国会決議の趣旨を尊重していく考えをいささかも変更するものではありません。
 以上申し述べましたごとく、現下の国際情勢のもと、国の独立と安全を確保していくことはきわめて重大であり、国の安全保障は国の最重要課題であると同時に、国民一人一人が真剣に取り組んでいくべき国民的課題であると考えます。
 坂野委員長初め委員皆様方の一層の御指導を賜り、万遺漏なきを期せますよう切にお願い申し上上げ、国際情勢の報告並びにわが国の防衛政策についての所信の表明とさせていただきます。
#12
○委員長(坂野重信君) 次に、昭和五十八年度防衛庁関係予算について政府委員から説明を聴取いたします。矢崎経理局長。
#13
○政府委員(矢崎新二君) 昭和五十八年度の防衛庁予算について、その概要を御説明いたします。
 まず防衛本庁について申し上げます。
 昭和五十八年度の防衛本庁の歳出予算額は二兆四千五百五十四億三千百万円で、前年度の当初予算額に比べますと一千六百二十二億七千八百万円の増加となっております。
 次に、新規継続費は、昭和五十八年度甲IV型警備艦建造費等で一千四百三億六千百万円、国庫債務負担行為は、武器購入、航空機購入、艦船建造、装備品等整備等で九千百九十四億六千万円となっております。
 また、自衛官の定数の増加等法律の改正を要するものについて、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を提出し、御審議をお願い申し上げております。
 次に、防衛本庁の予算の内容について申し上げます。
 昭和五十八年度予算においては、防衛計画の大綱の水準をできるだけ早く達成する必要があるとの認識のもとに、経済、財政事情等を勘案しつつ質の高い防衛力を着実に整備することといたしております。
 その際、現下の厳しい財政事情にかんがみ、現有防衛力の練度の維持向上を図りつつ、五六中業の初年度として防衛力を着実に整備していくために必要最小限の経費を計上したものでありますが、特に重点を置いた事項は次のとおりであります。
 第一に、陸上装備、航空機、艦船等の主要装備については、更新近代化を中心としてその整備を進めることとし、特に対潜哨戒機P3C及び要撃戦闘機F15の第四次調達を行うほか、艦艇の防空能力等の向上のため誘導弾(ターター)搭載護衛艦(四千五百トン型)等の建造に着手するとともに、航空警戒管制機能の更新近代化を図るため、新自動警戒管制組織の建設に着手することとしております。
 第二に、均衡のとれた防衛態勢を整備するため、弾薬の備蓄、魚雷・機雷の実装化を初めとす
る継戦能力、即応態勢の着実な充実に努力するとともに、航空機用掩体の建設等抗堪性の向上にも配意しつつ、中央指揮システムの整備等指揮通信能力の向上のための諸施策を引き続き進めることとしております。
 第三に、教育訓練関係経費については、平時における自衛隊業務の中心をなす教育訓練の重要性にかんがみ、現有防衛力の練度の維持向上を図るため、必要な財源を確保することとしております。
 第四に、隊員施策については、前年度に引き続き自衛官の停年延長、就職援護施策等を実施することとしております。
 第五に、研究開発を推進し、防衛力の質的水準の維持向上に努めることとし、引き続き新戦車、地対艦誘導弾、中等練習機の開発を実施するとともに、新たに新対潜ヘリコプター(艦載型)システムの開発に着手することとしております。
 以下、機関別に内容の主な点について申し上げます。
 陸上自衛隊の歳出予算額は一兆二百七十三億三千七百万円、国庫債務負担行為は一千八百二十九億六千九百万円となっております。
 陸上装備については、七四式戦車六十両、七三式装甲車九両、七五式百五十五ミリ自走りゅう弾砲二十四門、二百三ミリ自走りゅう弾砲十二門、新百五十五ミリりゅう弾砲二十門等の調達を予定しております。
 地対空誘導弾については、引き続き一個群の改良ホークへの改装を予定するとともに、八一式短距離地対空誘導弾四セット等の調達を予定しております。
 航空機については、対戦車ヘリコプター五機、観測ヘリコプター三機、多用途ヘリコプター七機、連絡偵察機一機、合わせて十六機の調達を予定しております。
 海上自衛隊の歳出予算額は六千五百四十億三千七百万円、新規継続費は一千四百三億六千百万円、国庫債務負担行為は二千二百九十一億九千九百万円となっております。
 艦艇については、護衛艦四千五百トン型一隻、護衛艦三千四百トン型一隻、潜水艦二千二百トン型一隻、掃海艇四百四十トン型二隻、海洋観測艦二千トン型一隻、合わせて六隻の建造に着手するほか艦艇の近代化二隻を予定しております。
 航空機については、対港哨戒機七機、救難飛行艇一機、計器飛行練習機二機、対潜ヘリコプター五機、初級操縦練習ヘリコプター一機、新対潜ヘリコプター(艦載型)用機体一機、合わせて十七機の調達を予定しております。
 航空自衛隊の歳出予算額は六千九百九十四億二千七百万円、国庫債務負担行為は四千四百六十七億円となっております。
 航空機については、要撃戦闘機十三機、支援戦闘機三機、救難ヘリコプター一機、合わせて十七機の調達を予定しております。なお、F4型機について、構造安全管理態勢の整備及び代表機一機の能力向上のための試改修を継続して行うことといたしております。
 地対空誘導弾については、八一式短距離地対空誘導弾一セット等の調達を予定しております。
 内部部局、統合幕僚会議及び附属機関の歳出予算額は七百四十六億三千万円、国庫債務負担行為は六百五億九千二百万円となっております。各種装備品等の研究開発費、その他各機関の維持運営に必要な経費であります。
 以上のうち、昭和五十一年十一月五日に閣議決定された「防衛力の整備内容のうち主要な事項の取扱いについて」に基づき、国防会議に諮り決定されたものは、七四式戦車等主要陸上装備の調達、地対空誘導弾ホークの改装、八一式短距離地対空誘導弾の調達、対戦車ヘリコプター、対潜哨戒機、要撃戦闘機等航空機四十四機の調達、護衛艦四千五百トン型等艦艇六隻の建造及び新自動警戒管制組織の整備並びに新対潜ヘリコプター(艦載型)システムの開発着手であります。
 続いて、防衛施設庁について申し上げます。
 昭和五十八年度の防衛施設庁の歳出予算額は二千九百八十六億七千九百万円で、前年度の当初予算額に比べますと五十八億二千九百万円の増加となっております。
 また、国庫債務負担行為は、提供施設整備及び提供施設移設整備で四百六十九億五千九百万円となっております。
 次に、防衛施設庁の予算の内容について申し上げます。
 昭和五十八年度予算において特に重点を置いた事項は次のとおりであります。
 第一に、基地周辺対策事業については、住宅防音工事の助成に重点を置き、基地周辺地域の生活環境の整備等を図ることとしております。
 第二に、米軍駐留経費の負担については、日米安全保障体制の円滑な運営に資するため、地位協定の範囲内で前年度に引き続き提供施設の整備を推進することとしております。
 以下、各項別に内容の主な点について申し上げます。
 施設運営等関連諸費は二千四百九十億三千四百万円となっております。
 このうち、基地周辺整備事業については、基地問題の実態に有効に対処し得るように、個人住宅の防音工事費四百七十二億六百万円を含め、一千四百五十三億九千八百万円を計上しております。
 このほか、日米安全保障体制の円滑な運営に資するため、提供施設の整備として歳出予算に四百三十九億一千二百万円、国庫債務負担行為で四百四億五千六百万円をそれぞれ計上しております。
 調達労務管理費については、駐留軍従業員の離職者対策及び福祉対策等に要する経費として百九十二億一千四百万円を計上しております。
 提供施設移設整備費については、提供施設の整理統合の計画的処理を図るため、歳出予算に九十四億二千百万円、国庫債務負担行為で六十五億三百万円をそれぞれ計上しております。
 その他、相互防衛援助協定交付金一億三千八百万円、一般行政事務に必要な防衛施設庁費二百八億七千百万円を計上しております。
 以上申し述べました防衛本庁及び防衛施設庁予算に国防会議予算を加えた昭和五十八年度防衛関係費は二兆七千五百四十二億三千四百万円となり、前年度の当初予算額に対して一千六百八十億九千九百万円、六・五%の増加となります。
 以上をもちまして、防衛本庁及び防衛施設庁の予算の概要説明を終わります。
#14
○委員長(坂野重信君) 次に、昭和五十八年度皇室費について政府委員から説明を聴取いたします。山本宮内庁次長。
#15
○政府委員(山本悟君) 昭和五十八年度における皇室費の歳出予算について、その概要を御説明いたします。
 皇室費の昭和五十八年度における歳出予算要求額は二十八億二千四百六十七万八千円でありまして、これを前年度予算額二十八億八千八百六十九万四千円に比較いたしますと六千四百一万六千円の減少となっております。
 皇室費の歳出予算に計上いたしましたものは、内廷に必要な経費、宮廷に必要な経費及び皇族に必要な経費であります。
 以下、予定経費要求書の順に従って事項別に申し述べますと、内廷に必要な経費二億二千百万円、宮廷に必要な経費二十四億四千百九万円、皇族に必要な経費一億六千二百五十八万八千円であります。
 次に、その概要を御説明いたします。
 内廷に必要な経費は、皇室経済法第四条第一項の規定に基づき、同法施行法第七条に規定する定額を計上することになっておりますが、前年度と同額となっております。
 宮廷に必要な経費は、内廷費以外の宮廷に必要な経費を計上したものでありまして、その内容といたしましては、皇室の公的御活動に必要な経費三億四千七百六十万二千円、皇室用財産維持管理等に必要な経費二十億九千三百四十八万八千円でありまして、前年度に比較して六千四百一万六千円の減少となっております。
 皇族に必要な経費は、皇室経済法第六条第一項
の規定に基づき、同法施行法第八条に規定する定額によって計算した額を計上することになっておりますが、前年度と同額となっております。
 以上をもちまして、昭和五十八年度皇室費の歳出予算計上額の説明を終わります。
 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。
#16
○委員長(坂野重信君) 以上で所信及び予算の説明聴取は終わりました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十時四十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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