1982/05/20 第98回国会 参議院
参議院会議録情報 第098回国会 本会議 第16号
#1
第098回国会 本会議 第16号昭和五十八年五月二十日(金曜日)
午前十時二分開議
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○議事日程第十六号
昭和五十八年五月二十日
午前十時開議
第一 地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第二 臨時行政改革推進審議会設置法案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
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#2
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。日程第一 地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長宮由輝君。
〔宮田輝君登壇、拍手〕
#3
○宮田輝君 ただいま議題となりました法律案は、地方公務員共済組合の長期給付に関し、その業務の適正かつ円滑な運営を図るため、新たに地方公務員共済組合連合会を設けること、連合会の事業として、組合員の掛金率の決定、長期給付積立金の管理、各組合において不足する長期給付資金の交付等を行わせること、地方公務員の定年制の実施に伴い、定年等による退職者のうち、何らの年金を受ける権利を有しない者に対して長期給付の特例措置を講ずること等を主な内容とするものであります。委員会におきましては、年金財政の見通し、公的年金の改革のあり方、連合会の組織及び運営などの問題について熱心な質疑が行われました。
質疑を終局し、反対討論があり、採決の結果、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告いたします。(拍手)
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#4
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#5
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。
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#6
○議長(徳永正利君) 日程第二 臨時行政改革推進審議会設置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長坂野重信君。
〔坂野重信君登壇、拍手〕
#7
○坂野重信君 ただいま議題となりました臨時行政改革推進審議会設置法につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。本法律案は、臨時行政調査会の第四次答申を踏まえて、社会経済情勢の変化に対応した適正かつ合理的な行政の実現を推進するため、総理府に、附属機関として臨時行政改革推進審議会を設置しようとするものでありまして、審議会は、臨時行政調査会の行った行政改革に関する答申を受けて講ぜられる行政制度及び行政運営の改善に関する施策に係る重要事項について調査審議し、その結果に基づいて内閣総理大臣に意見を述べるほか、内閣総理大臣の諮問に応じて答申することを任務としております。審議会の構成は、行政の改善問
題に関してすぐれた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する非常勤の委員七人で組織し、審議会の調査事務を処理するため、事務局を置くこととしております。
なお、審議会は政令で定める施行期日から三年を経過した日に廃止することとしております。
委員会におきましては、審議会設置の必要性、審議会の任務、性格、本審議会と臨調第四次答申との関連及び既存の各種審議会等との調整問題等のほか、行革大綱の今後の策定見通し並びに電電、専売各公社の改革問題を初め総合管理庁の設置、国土庁など三庁統合問題等広範多岐にわたって質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して野田委員、日本共産党を代表して安武委員より、それぞれ反対の旨の発言がありました。
次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)
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#8
○議長(徳永正利君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。山崎昇君。〔山崎昇君登壇、拍手〕
#9
○山崎昇君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました臨時行政改革推進審議会設置法案に対し、反対の討論を行うものであります。反対の第一の理由は、この法案によって進められようとしている行政改革が国民の期待にこたえたものになっていないことであります。
国民のための行政改革は、軍縮で平和を築き、福祉、分権によって国民の生活を守り、国民のための効率的で簡素な政府づくりだと思うのでありますが、第二臨調答申はこのような国民のための行革理念が全く欠落しているのであります。ことに、答申が、わが国の平和戦略からでなく、アメリカの軍事戦略に追随して、軍事費の突出に道を開く端緒として利用されただけでなく、財政赤字を理由に福祉や文教政策を後退させ、所得税減税五年間にわたっての見送り、人事院勧告の凍結など、国民生活にかかわる諸権利を侵害する根拠をつくったもので、許しがたいのであります。
簡素で効率的な行政をうたい文句に、鈴木、中曽根内閣が今日まで行った行革は、このような臨調答申に名をかりた福祉、医療、文教の切り詰め、人勧凍結と防衛費予算の異常突出の聖域扱いであり、この事実は、国民の目に防衛費捻出確保のための行財政改革としか映らないのであります。歴代内閣が守り通してきた防衛費のGNP比一%以内の歯どめも、もはや風前のともしびであり、政府はこの公約を簡単に踏みにじろうとしているのでありまして、このような軍拡路線を選択している行財政改革には多くの国民が危惧の念を抱いており、このような改革の推進は断じて認めることができないのであります。
また、答申は、曲がりなりにも「増税なき財政再建」を堅持することをうたっているのでありますが、財政再建のために行財政改革の必要性が強調され、目的と手段が逆になっているのであります。中途半端な補助金の削減では財政再建ができないことは言うまでもありませんが、答申内容は、現下の不公平税制を是正する具体策の提言もなく、国民の期待したものとはなっていないのであります。
さらに、答申は、今後の行政の目指すべき目標として、活力ある福祉社会の建設と国際社会に対する積極的貢献を挙げ、行政改革を進める観点では、「変化への対応」「総合性の確保」「簡素効率化」及び「信頼性」の確保の四点を挙げているのでありますが、これらの内容が、大企業の活力を発揮させるための規制監督の緩和や中央集権化の強化あるいは行政サービスの切り捨てを意味するものであって、まさに財界主導の行革と言わざるを得ないのでありまして、このような行革推進に賛成することはできないのであります。
反対の第二の理由は、今回設置しようとしている臨時行政改革推進審議会の果たすべき役割りと性格が全く不明であり、真の行革に機能しないことであります。
鈴木内閣に引き続き中曽根内閣も、行財政改革を内政の最重要課題として取り上げながら、その具体的内容はきわめて不明確であります。本月下旬に最終答申を受けての「行革大綱」を改めて作成するとも言われておりますが、重要事項はすべて見送られると伝えられております。行政改革を具体的に実施することは政府みずからの責任であり、政府の立場で臨調答申を全面的に尊重し実施するというのであれば、まず具体的な実施計画と詳細な改革の内容を明らかにすべきであります。しかるに政府は、今日まで行革の具体的内容を明らかにしないまま、行政改革を推進する審議会だけを設置しようとしているのでありまして、こうしたやり方はきわめて無責任で、行革の進め方が逆転していると言わなければならず、納得できるものではありません。
今回の法案は臨調第四次答申を踏まえていることは言うまでもありませんが、この答申は、五次にわたる臨調答申の推進状況を監視する機関として設置するよう提言しているにすぎないと思うのでありますが、法案内容は、単に臨調答申の実施状況を追跡調査するだけでなく、臨調答申に沿って各種改革施策を決定する機関としての含みを持たせているのでありまして、実質的には臨調の存続と思わざるを得ないのであります。
本来、行政改革は、政府が国民の代表者である国会のチェックを受けながら責任を持って実行すべきでありまして、審議会を設置して推進するというやり方は、議会制民主主義を軽視するばかりか、審議会を隠れみのとして政府の責任を回避するものと言わなければなりません。今回設置しようとする審議会は、臨調答申の実施を監視する機能を負っているのでありますが、このような監視機関がなければ行革が実施できないものではないはずであります。行政改革こそ最大の政治課題と宣伝し、行革に政治生命をかける意気込みと言われる中曽根内閣が、このような法案を提出すること自体まさに恥辱的と言わざるを得ないのでありまして、中曽根内閣が言行一致の内閣であるならば、直ちに撤回すべき性質のものであると思うのであります。
反対の第三の理由は、行政の簡素化、効率化が期待されている今日、新たに審議会を設置して、既存の審議会、調査会との関連も明確にされないまま、屋上屋を重ねていることであります。
臨調に対する国民の期待は、簡素にして効率的な政府づくりにあるはずであります。しかるに政府は、二百十一に上る既存の審議会や調査会を温存したまま、さらに新しい審議会の設置を提案して組織の複雑化を図り、あまつさえ、既存の審議会、調査会等との役割り分担を明確にしていないのであります。すでに郵政大臣は、臨調答申が指摘している定額郵便貯金の見直しについて、「答申には利用者の立場が出ておらず、素直に納得できる心境でない」、さらに、「郵便貯金のあり方を変更する場合は、郵政審議会の意見を聞かなければならない」と言明しており、また、大蔵大臣は本院予算委員会において、増税なき財政再建を堅持すべきだとした臨調答申について、「哲学を示したもので、最終決定は権威ある政府税制調査会の判断による」とも答弁し、増税の可能性を示唆しているのであります。
このように、臨調が行った行政改革に関する重要事項は、ほとんど既存の審議会やあるいは調査会の場を利用して調査審議が行われることになっているのでありまして、今回設置しようとする審議会の検討課題と著しく重複し、屋上屋を重ねるだけで、かえって行政を複雑にするだけだと思うのであります。さらに、既存の審議会あるいは調査会と、今回設置しようとしている審議会の答申や意見が食い違った場合、だれがどう調整し、責
任はだれが負うのかは全く不明でありまして、絶対に認めることはできないのであります。
以上、私は、本法案に反対する主な理由について申し述べましたが、国民の求める行政改革は、政官財の構造的癒着を完全に断ち切り、国民に開かれた透明で有効な行政を確立するための情報公開制度の確立、国民の立場に立って所得税の減税を実現し、一部特定の者を優遇する不公平税制を徹底的に是正するとともに、膨大な補助金、公共事業のあり方などを抜本的に改革することこそが重要であり、わが党は、すでに提言している真の国民のための行財政改革を進める決意を表明して、反対討論を終わります。(拍手)
#10
○議長(徳永正利君) これにて討論は終局いたしました。─────────────
#11
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#12
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時十九分散会