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1982/02/23 第98回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第098回国会 安全保障特別委員会 第2号
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1982/02/23 第98回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第098回国会 安全保障特別委員会 第2号

#1
第098回国会 安全保障特別委員会 第2号
昭和五十八年二月二十三日(水曜日)
    午後一時開議
 出席委員
   委員長 小渕 恵三君
   理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君
   理事 中村 弘海君 理事 上田  哲君
   理事 矢山 有作君 理事 鈴切 康雄君
   理事 神田  厚君
      坂田 道太君    塩谷 一夫君
      竹中 修一君    玉沢徳一郎君
      箕輪  登君    石橋 政嗣君
      前川  旦君    東中 光雄君
      中馬 弘毅君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 安倍晋太郎君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 谷川 和穗君
 出席政府委員
        防衛庁長官官房
        長       佐々 淳行君
        防衛施設庁長官 塩田  章君
        外務省北米局長 北村  汎君
 委員外の出席者
        安全保障特別委
        員会調査室長  桂  俊夫君
    ─────────────
委員の異動
一月二十五日
 辞任         補欠選任
  永末 英一君     吉田 之久君
二月二十三日
 理事神田厚君同日理事辞任につき、その補欠と
 して吉田之久君が理事に当選した。
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 国の安全保障に関する件
     ────◇─────
#2
○小渕委員長 これより会議を開きます。
 理事辞任の件についてお諮りいたします。
 理事神田厚君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 引き続き、理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。
 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 それでは、委員長は、吉田之久君を理事に指名いたします。
     ────◇─────
#5
○小渕委員長 国の安全保障に関する件について調査を進めます。
 外務大臣から、わが国の安全保障問題について、また防衛庁長官から、最近の国際軍事情勢及びわが国の防衛政策について、それぞれ説明を求めます。安倍外務大臣。
#6
○安倍国務大臣 安全保障特別委員会の開催に当たり、わが国の安全保障問題につき所信の一端を申し述べます。
 わが国の安全保障政策は、わが国をめぐる国際環境をできるだけ良好で安定的なものとするよう積極的外交を展開するとともに、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に努めつつ、節度ある質の高い防衛力の整備を図るという三つの柱から成り立っております。
 本日は、このようなわが国の安全保障政策の三つの柱につきまして、私の率直な考えを明らかにし、皆様の御理解を得たいと存じます。
 相互依存関係の深まった今日の国際社会においては、世界の平和と安定なくしてはわが国の平和と繁栄を確保することはできません。とりわけ、現下の厳しい国際情勢のもとでは、わが国は、その国際環境をできるだけ良好で安定的なものにするための外交を広範な分野で積極的に推進していく必要があります。
 その際、わが国は、今後とも、日米友好協力関係を外交の基軸としつつ、西側先進民主主義諸国との連帯と協調を図るとともに、わが国に対する期待にこたえ、わが国の立場から、積極的に、その国力にふさわしい政治的、経済的役割りと責任を果たし、もって世界の平和と安定に一層貢献していく所存であります。
 かかる観点から、今般の中曽根総理大臣の訪米を通じ、同盟関係にある日米両国の信頼関係が一層強化され、また私の訪欧の結果、わが国と西欧諸国との間の相互理解が一段と深められたことは、きわめて意義深いものであると考えます。
 また、わが国が、アジアの一員として、アジア諸国との間に緊密な友好協力関係を発展させていくことは、わが国が積極的な外交を展開するための基盤としてきわめて重要であります。私は、今後ともこれら諸国との相互理解を一層深め、その発展と繁栄に寄与し、もってアジアの平和と安定に貢献すべく努力する所存であります。
 世界の平和と安定を確保していくためには、現在の東西関係をより安定した軌道の上に乗せる必要があり、わが国を含めた西側諸国が結束を維持しつつ、力の均衡を維持する努力を続けるとともに、他方において、このような均衡の水準を可能な限り引き下げていくための努力を推進していく必要があります。
 かかる観点から、わが国としましては、核軍縮を中心とする具体的軍縮措置の着実な実現に向けて、国連、軍縮委員会等の場を通じ、貢献していく考えであります。また、わが国は、現在米ソ間で行われている核軍縮交渉の結果、核兵器が大幅に削減されることを期待しており、米ソ両国に対し、戦略兵器削減交渉及び中距離核戦力交渉の実質的進展を図るよう強く求めてきております。
 特に、わが国は、かねてより極東を含むソ連全域においてSS20に代表される中距離核戦力の撤廃をソ連に求めてきておりますが、最近のソ連指導者の発言にあるように、中距離核戦力交渉の結果、ソ連が、極東に現存する中距離ミサイルに加え、新たなミサイルを同地域に移転する場合は、この地域の平和と安定を一層脅かすものであり、去る一月二十五日、ソ連側に強い遺憾の念を表明したところであります。
 政府としましては、今後とも欧州はもとより極東の安全保障を損うことのない形で同交渉の解決が図られるよう訴えていく所存であります。
 世界経済の健全な発展は世界の繁栄に不可欠であります。わが国は、世界経済の再活性化、自由貿易体制の維持発展のため、積極的な貢献を行っていく所存であります。
 また、第三世界の安定は世界の平和と安定の確保にとって重要であり、なかんずく開発途上国との相互依存関係がとりわけ深いわが国の平和と繁栄の確保にとり欠くことができません。わが国は、政府開発援助の新中期目標のもとで、開発途上国に対する経済協力を拡充し、これら諸国の政治的、経済的、社会的強靱性の強化に貢献するとともに、平和維持や民生安定のための国連等の諸活動に対して積極的に参加していくことによって、第三世界における紛争や対立を未然に防止し、またその平和的解決に資するよう政治的、経済的役割りを果たしていく所存であります。
 日米安保体制は、わが国の安全保障政策の重要な柱であり、わが国の平和と安全の確保を図っていく上で欠くことができません。
 日米安保体制の信頼性を高めるためには、日米双方において日米安保体制の抑止力の維持向上のための努力を継続するとともに、わが国としては、米国民をしてわが国を防衛することがその基本的国益に沿うゆえんであると信ぜしめるような、良好な日米関係を維持することが重要であります。
 かかる観点からも、政府としましては、日米友好協力関係を一層緊密なものとするよう、今後とも真剣に努力を進めていく決意であります。
 対米武器技術供与の問題につきましては、政府部内で慎重に検討を重ねてまいりましたところ、防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることは、日米安保体制の効果的運用を確保する上できわめて重要となっていることにかんがみ、今般政府は、かかる相互交流の一環として、米国に対し武器技術を供与する道を開くこととし、その供与に当たっては武器輸出三原則等によらないことを決定いたしました。
 この場合本件供与は、日米相互防衛援助協定の枠組みのもとで実施することとし、これにより国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての理念は確保されることとなります。
 なお、政府としては、今後とも基本的には武器輸出三原則等を堅持し、昭和五十六年三月の武器輸出問題等に関する国会決議の趣旨を尊重していく考えをいささかも変更するものではありません。
 わが国は、日米安保体制のもとで、憲法及び基本的防衛政策に従って、自衛のため必要最小限度の防衛力の整備を図ることとしておりますが、この努力は、わが国の平和と安全を確保する上で重要であり、また、自由主義国の有力な一員としてのわが国の責務であります。
 なお、かかる防衛力整備は、専守防衛に徹したものであり、近隣諸国に脅威を与えるようなものではないことはいうまでもありません。
 以上、わが国の安全保障政策のあり方につき所信の一端を申し上げました。政府は、今後とも国民の皆様の御理解を得つつ、わが国の平和と安全の確保に真剣に取り組んでいく所存であります。
 ここに改めて、本委員会の皆様の格段の御指導と御鞭撻を賜わりたく、お願い申し上げます。(拍手)
#7
○小渕委員長 次に、谷川防衛庁長官。
#8
○谷川国務大臣 衆議院安全保障特別委員会が開催されるに当たり、最近の国際軍事情勢及びわが国の防衛政策につきまして私の所信の一端を申し上げます。
 最近の国際軍事情勢は、ソ連による一貫した軍事力の増強とこれを背景とする周辺地域及び第三世界への勢力拡張が顕著であります。アフガニスタンにおける情勢は、国際世論の厳しい中、依然としてソ連が約十万人に及ぶ兵力を投入し同国に対する軍事介入を継続いたしております。このほか、中東における情勢といたしましては、イラン・イラク紛争は解決の糸口を見出せぬまま推移し、さらにこの一年間にイスラエルによるレバノン侵攻が発生いたしました。またイギリスとアルゼンチンとの間ではフォークランド紛争が生起し、さらに朝鮮半島及びインドシナ情勢も依然として緊張しております。
 ソ連は、グローバルな規模で軍事力の増強を行ってきていますが、極東方面におけるソ連軍の増強とこれに伴う行動の活発化も顕著なものがあり、わが国に対する潜在的脅威を増大させております。
 現在ソ連は、ソ連全体の三分の一ないし四分の一に相当する核及び通常戦力をすでに極東地域に配備しておりますが、引き続き増強を続けておるものと見られます。特に注目を要するのは、最近目覚ましい極東地域におけるソ連の戦域核戦力の増強でありまして、わが国を含む広範な地域をカバーし得る戦域核配備を行っております。最近、グロムイコ・ソ連外務大臣が、欧州における中距離核戦力交渉問題に関連して、中距離ミサイルのうち欧州地域で合意された数を超えるものは、西欧の目標に到達できないシベリアの線以遠に配備されることとなろうとの趣旨の発言を行ったと伝えられます。わが国としては、今日まで累次明らかにしてまいったとおり、中距離核戦力に関する米ソ間の交渉が実質的に進展し、グローバルなゼロ・ゼロオプションが実現することを希望しているのでありまして、ソ連が同交渉の結果として中距離ミサイルをシベリアに新たに移転させることを考慮しているのであれば、それはアジアの緊張を増大させることともなり、これまでの極東ソ連軍の顕著な増強と相まって、この地域の平和と安定にとって大きな影響を与えることになります。
 そもそもわが国が進めているのは、必要最小限度の防衛力の整備であり、このようなわが国の防衛力の整備を理由にソ連の核兵器が極東に移動されるというのであれば、それはまことに当を得ていないと言わざるを得ません。
 近年、西側諸国の防衛努力は総じて比較的低調でありましたが、ソ連は、伝えられる最近の経済不振や食糧不足にもかかわらず依然として大幅な軍事支出を行っているものと見られ、その結果として、東西間の軍事バランスはこのまま放置すればソ連に優位に傾く趨勢にあることから、抑止力の信頼性を回復するため実態に即した現実的な対処の仕方として西側諸国が連帯してそれぞれの防衛努力等を図ることが肝要であり、さらにこのような努力と並行してソ連との間に戦略兵器削減交渉及び中距離核戦力交渉等を行い、実効的かつ検証可能な軍備管理、軍縮条約交渉を推進すべきであるという方向へ西側の理解は進んできております。
 おおむね以上に申し上げたような情勢認識を背景に、米国は、厳しい財政事情のもと歳出全体の伸びを実質ゼロに抑える中で、八四会計年度の国防省費については実質約一〇%増の二千三百八十六億ドルを充て、核及び通常戦力の両分野において全面的な近代化及び態勢の強化を図りつつあります。さらに米国は、同国のみでは十分でないとの認識から、わが国及び西欧等の同盟諸国に対してもそれぞれの地域において一層の防衛努力を強く期待しておるところであります。
 このような国際情勢のもとにあって、わが国がみずからの平和と安全を確保するために総合的な安全保障の立場から各種施策を推進しつつわが国に対する侵略を未然に防止するという基本方針に基づき、そして万一侵略が生起した場合にはこれに有効に対処し得る実力を保持するため、自衛のために必要な最小限度において、質の高い防衛力の着実な整備に努め、日米安全保障体制を堅持しつつ、その円滑な運用に努めているところであります。
 政府はこのような考え方のもとに、昭和五十一年に閣議決定された「防衛計画の大綱」に従い、防衛力整備に努めてきたところでありますが、現状ではその規模において「防衛計画の大綱」の水準にまで至っておらず、質的に見ても装備の老朽化、抗堪性、即応態勢及び継戦能力等の面で改善を要する点が多く残されており、現在「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準をできるだけ早く達成することが肝要であると考えております。厳しい財政事情のもと、昭和五十八年度の防衛予算につきましては、以上のような観点から、五六中業の初年度として、引き続き質の高い防衛力の着実な整備を図るという考え方のもとに、国の他の諸施策との調和を図りつつぎりぎり必要な経費を計上いたしたのであります。
 さらに諸外国の技術の動向に対応し得るよう装備の質的な充実向上を図るとともに、わが国の地勢、国情に適した装備を整備するため、装備の研究開発に力を入れ、引き続き、地対艦誘導弾等の開発を推進するほか、新対潜ヘリコプターシステム等の開発に着手いたしたいと考えております。
 日米安保条約によってわが国を防衛する立場にある米国がわが国の防衛に関心を有し期待を表明することは当然のことと存じますが、わが国といたしましては、かかる米国の期待を念頭に置きつつも自主的判断に基づき、憲法及び基本的防衛政策に従って、防衛力の整備に努力してまいる所存であります。
 米軍との共同訓練につきましては、自衛隊の練度の維持向上、ひいては日米安保体制の円滑な運用に資すべく可能な限り実施してまいりたいと考え、さらに五条事態の発生に伴う日米共同対処の場面を想定して引き続き「日米防衛協力のための指針」に基づく共同作戦計画等の研究を推進させるとともに、在日米軍の駐留を実効あるものとして維持するため、駐留経費負担について、地位協定の範囲内においてできる限りの努力を続けてまいる所存であります。また、防衛施設の安定的使用は、わが国の防衛にとって必要不可欠なものであり、従来から関係地方公共団体、住民等の理解と協力をいただいて行ってきたところでありますが、今後とも防衛施設の設置運用と周辺住民の民生の安定との調和を図るべく、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する諸施策を講じてまいりたいと存じます。
 多年研究が続けられてきた有事法制の研究については、第一分類として区分している防衛庁所管の法令についての問題点についてはすでに国会に対して中間御報告を申し上げるところまで検討されてきておるのでありますが、引き続き第二分類の他省庁所管の法令に重点を置いた検討が進められております。これについては関係する法令もきわめて多く、なお時間を要すると思われます。
 最後に、米国に対する武器技術の供与の問題について申し上げます。
 本件は、大村長官が訪米した際、米国側から要請のあった日米間の防衛分野における技術の相互交流の一環としての問題でありますが、一年半にわたり政府部内で慎重に検討を重ねてきた結果、政府として防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが、日米安全保障体制の効果的運用を確保する上できわめて重要となっていることにかんがみ、このたび、相互交流の一環として日米相互防衛援助協定の関連規定に基づく枠組みのもとで米国に対し武器技術を供与する道を開くこととし、その供与に当たっては、武器輸出三原則等によらないこととすることを決定いたしました。同協定においては、供与される援助について、国際連合憲章と矛盾する使用、第三国への移転等に関し、厳しい規制を課しているところであります。
 したがって、この措置は、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念を確保しつつ行われるものであります。政府としては、今後とも基本的には武器輸出三原則等を堅持し、国会決議の趣旨を尊重していく考えをいささかも変更するものではありません。
 以上申し述べましたごとく、現下の国際情勢のもと、国の独立と安全を確保していくことはきわめて重大であり、国の安全保障は国の最重要課題であると同時に国民一人一人が真剣に取り組んでいくべき国民的課題であると考えます。
 小渕委員長初め委員皆様方の一層の御指導を賜り、万遺漏なきを期せますよう切にお願い申し上げ、国際情勢の報告並びにわが国の防衛政策についての所信の表明とさせていただきます。(拍手)
#9
○小渕委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後一時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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