1982/03/02 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号
#1
第098回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号昭和五十八年三月二日(水曜日)
午後一時十八分開議
出席委員
委員長 宮田 早苗君
理事 上草 義輝君 理事 川田 正則君
理事 高橋 辰夫君 理事 加藤 万吉君
理事 島田 琢郎君 理事 吉浦 忠治君
近藤 元次君 中村正三郎君
中山 正暉君 玉城 栄一君
野間 友一君 菅 直人君
出席国務大臣
外 務 大 臣 安倍晋太郎君
国 務 大 臣
(総理府総務長
官)
(沖縄開発庁長
官) 丹羽 兵助君
出席政府委員
総理府総務副長
官 深谷 隆司君
北方対策本部審
議官 橋本 豊君
沖縄開発庁総務
局長 関 通彰君
沖縄開発庁総務
局会計課長 大岩 武君
沖縄開発庁振興
局長 藤仲 貞一君
外務省北米局長 北村 汎君
外務省欧亜局長 加藤 吉弥君
委員外の出席者
特別委員会第一
調査室長 長崎 寛君
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委員の異動
三月二日
辞任 補欠選任
瀬長亀次郎君 野間 友一君
同日
辞任 補欠選任
野間 友一君 瀬長亀次郎君
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二月二十一日
北方領土返還促進に関する請願(高橋辰夫君紹介)(第一〇〇二号)
は本委員会に付託された。
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二月十七日
北方領土問題の解決促進に関する陳情書外三件(福井県議会議長関捨男外十名)(第九七号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
沖縄及び北方問題に関する件
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#2
○宮田委員長 これより会議を開きます。沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。
この際、沖縄及び北方問題に関する政府の施策について説明を求めます。安倍外務大臣。
#3
○安倍国務大臣 このたび外務大臣となりまして、委員長初め委員の皆様の御指導、御鞭撻をお願いを申し上げる次第でございます。よろしくお願いいたします。それでは、外務省の所管事項につきまして、その概略を御説明申し上げます。
まず、北方領土問題について申し述べます。
ソ連は、わが国の重要な隣国であり、わが国はソ連との間で北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することを対ソ外交の基本的課題として対処してきております。
現在の日ソ関係は、北方領土における軍備強化、アフガニスタンへの軍事介入、ポーランド情勢など、ソ連側の責任により遺憾ながら引き続き困難な局面にあります。わが国としては主張すべきことは主張するとの立場より、かかる事態の是正をソ連側に要請してきておりますが、他方、日ソ間の対話も必要との認識から、昨年六月の国連軍縮特別総会に際し、また、同じく十月には国連一般総会に際し、日ソ外相会談を行い、日ソ間の最大の懸案たる北方領土問題については、これを速やかに解決して日ソ平和条約を締結することが重要とのわが国の基本的立場を改めてソ連側に伝えました。しかし、遺憾ながらソ連側は、領土問題は存在しないとの従来の立場を繰り返すとともに、日ソ外相間協議のためにグロムイコ外相が訪日する件についても、時期と雰囲気が問題として現時点における訪日に消極的姿勢を示しました。昨年十一月に成立したアンドロポフ新指導部の対日政策も、現在までのところ従来に比し特に変化は見られませんが、わが国としては、今春に予定されている第三回日ソ事務レベル協議、さらには日ソ外相間協議等を通じ、北方領土問題の解決に向け、粘り強くソ連側と話し合っていく所存であります。
先般、二月七日には第三回目の北方領土の日を迎えましたが、近年、北方領土返還に関し全国的規模で国民世論が盛り上がりを見せていることは、ソ連との外交に当たる者としてまことに心強い限りであります。このような国民世論を背景に、北方領土返還要求は決してソ連側の言うような一部の層の非友好的キャンペーンではなく、国民の総意であることを強くソ連側に申し入れてまいりたいと考えます。
また、北方領土問題は基本的には日ソ間の交渉により解決すべき問題ではありますが、本問題について国際世論の正しい理解を求めることもきわめて重要であると考え、従来から各種広報資料の作成、配布等海外広報活動を積極的に行っているところでありますが、今後ともかかる努力を継続していく所存であります。
次に、沖縄に関連する事項について申し述べます。
日米安保条約に基づく米軍の存在は、わが国の平和と安全、ひいては極東の平和と安全に寄与しており、政府としては、沖縄県における米軍施設、区域の円滑かつ安定的使用を確保することは、日米安保条約の目的達成のために緊要であると考えるものであります。
同時に政府としては、沖縄県における米軍施設、区域の密度が特に高く、その整理統合についてかねてより現地に強い要望があることを十分承知しており、従来より現地の要望、民生の安定、開発計画等に配慮するとともに、日米安保条約の目的達成との調和を図りつつ、米側との協議を通じその整理統合の推進に努めてまいりました。政府としては、今後も、日米安保協議委員会で了承された整理統合計画のうち、残余のプロジェクトの早期実現に一層努力していく所存であります。
以上、沖縄県民の理解と協力を引き続いてお願い申し上げる次第であります。(拍手)
#4
○宮田委員長 次に、丹羽国務大臣。#5
○丹羽国務大臣 所信を申し上げます前に、一言ごあいさつをさせていただきます。私は、昨年十一月末、中曾根内閣の発足に当たり、総理府総務長官並びに沖縄開発庁長官を拝命いたしました。国の内外の諸情勢がきわめて厳しい中にあって、沖縄の振興開発及び北方領土問題の解決促進という重要な職責を担うことになり、責任の重さを痛感いたしております。
微力ではございまするが、全力を挙げてこの職責を果たしてまいりたいと存じまするので、委員長先生初め委員先生、皆様方の御協力を心からお願い申し上げます。
沖縄及び北方問題について所信の一端を申し述べたいと存じます。
初めに、沖縄振興開発について申し上げます。
沖縄が本土に復帰して十年経過しましたが、この間、政府は、第一次沖縄振興開発計画に基づき、各分野における本土との格差是正や沖縄の自立的発展に必要な基礎条件の整備を鋭意進めてまいりました。
その結果、沖縄県民のたゆまぬ御努力もあり、沖縄の経済社会は着実な発展を遂げてまいりました。とりわけ一兆円を超える公共投資を行ったこともあり、学校、道路、空港、港湾、上下水道、住宅等の整備水準は大幅に改善されました。
しかしながら、社会資本の面でもなお整備を要するものが残されておりまするし、一方では、産業振興の問題を初めとして、雇用問題、水・エネルギー問題等まだ解決を要する多くの課題を抱えて、沖縄の経済社会は依然として厳しい状況にあります。
このため、先の常会において、諸先生方の御支援を得て、沖縄振興開発特別措置法の有効期限を十年延長し、これに基づき、昨年八月、第二次沖縄振興開発計画を策定いたしたところであります。
政府といたしましては、こうした状況にかんがみ、昭和五十八年度予算において、沖縄開発庁予算の大宗を占める公共事業関係費については、全国の伸び率がゼロという厳しい環境の中で、前年度に比し二・〇%増の一千八百二十四億五千六百万円を計上し、第二次沖縄振興開発計画のもとで初めて編成される予算にふさわしいものとするよう特段の配慮をしております。
私といたしましては、今後とも、沖縄県の実情、沖縄県民の意向を十分に踏まえながら、沖縄の振興開発を積極的に推進してまいる所存であります。
次に、北方領土対策について申し上げます。
歴史的にも国際法上も明らかにわが国固有の領土である歯舞、色丹、国後及び択捉の北方四島についてその返還を要求することは、わが国の領土の主権にかかわる当然の主張であります。
この北方領土問題の根本的解決こそ、日ソ両国間に安定的な真の友好関係を確立するための大前提であります。政府は、領土問題を解決し、その上で日ソ平和条約を締結するとの従来から一貫した基本方針を今後とも堅持し、粘り強い対ソ交渉を続けてまいる決意であります。
私は、このような確固たる対ソ外交姿勢と、これを支える国民の一致結束した力強い領土返還要求運動の継続こそが、北方領土の返還を早期に実現するかぎであると確信するものであります。
北方領土の返還を要求する国民運動が近年ますます高まりを見せていることは、すでに二千七百万人を超えた返還要求署名運動の参加者数や、去る二月七日に第三回目を迎えた北方領土の日に、東京を初め全国各地で昨年を上回る規模で多彩な行事が展開されたという事実が何よりもこれを雄弁に物語っております。
総理府としては、このような運動の高まりをさらに大きく発展、定着させるため、引き続き啓発広報事業、県民会議の活動の強化等を図るとともに、領土返還要求運動の中核的担い手としての北方領土元居住者に対する援護措置の充実等に配慮してまいる所存であります。
また、本委員会各委員の先生方の御尽力によって成立を見ました北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の施行に当たりましても、国民世論の動向を踏まえながら基本方針の策定等を行うとともに、地元の意向を十分に聞きつつ法律の趣旨に沿った施策の推進を図ってまいる考えであります。このために、同法に基づいて北海道に設置される北方領土隣接地域振興等基金の造成に要する経費の補助金として、昭和五十八年度において八億円を国から助成することとして、現在国会で御審議をお願いしている予算に計上したところであります。
ここに、沖縄及び北方問題に関する所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願いする次第でございます。ありがとうございました。(拍手)
#6
○宮田委員長 この際、総理府総務副長官深谷隆司君から発言を求められておりますので、これを許します。総理府総務副長官深谷隆司君。#7
○深谷政府委員 総理府総務副長官を拝命いたしております深谷隆司であります。丹羽総務長官のもとで、微力でありますが、北方領土問題解決のために全力を挙げる覚悟であります。委員長並びに委員各位の御指導のほどをお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
#8
○宮田委員長 次に、沖縄及び北方関係予算について、順次説明を求めます。関沖縄開発庁総務局長。#9
○関(通)政府委員 昭和五十八年度沖縄開発庁予算につきまして、お手元にお配りしてございます資料に沿いまして、その概要を御説明申し上げます。昭和五十八年度予算の編成をめぐる客観情勢はきわめて厳しい状況でございましたが、依然として多くの問題が残されている沖縄の経済社会の実情にかんがみ、昨年策定された第二次沖縄振興開発計画を踏まえて、沖縄の特性を生かしつつ、引き続き各面にわたる本土との格差是正と自立的発展の基礎条件の整備を図るため特段の配慮をすることとして予算措置を講じているところであります。
以下、順を追って申し上げますと、第一に、沖縄開発庁に一括計上されております沖縄振興開発事業費の総額は、一千九百八十九億七千百万円で、前年度当初予算額に対し〇・二%の増となっております。
特に、公共事業関係費については、第二次振興開発計画のもとで編成される初めての予算にふさわしい内容となるよう配慮し、二・〇%の増となつております。
沖縄振興開発事業費の内訳は、治山・治水対策事業費、道路整備事業費、港湾・漁港・空港整備事業費、農業基盤整備費等を主な内容とする公共事業関係費一千八百二十四億五千六百万円、公立学校施設整備費等を内容とする沖縄教育振興事業費百十八億七千百万円及び保健衛生施設等施設整備費等を内容とする沖縄保健衛生等対策諸費十二億九千万円並びにウリミバエ等の根絶を目的とする植物防疫対策費等を内容とする沖縄農業振興費三十三億五千四百万円であります。
昭和五十八年度の沖縄振興開発事業費予算は以上のとおりでありますが、特に一、水資源の開発、二、道路・港湾・空港等交通関係施設の整備、三、農林水産業基盤の整備、四、生活環境施設の整備等につきまして配慮をいたした次第であります。
第二に、これら当庁に一括計上される振興開発事業費以外の諸経費について申し上げます。
第一点は、沖縄における経済の振興及び社会の開発に必要な資金を融通するために設けられている沖縄振興開発金融公庫に対し、その業務の円滑な運営に資するための補給金として九十九億八千百万円を計上しております。
なお、同公庫の昭和五十八年度における貸付計画は、一千三百五十億円、また地場産業への出資計画は四億円を予定しております。
第二点は、いわゆる沖縄の戦後処理問題の解決を図るために必要な経費として、まず、土地関係等事案にかかる特別支出金の三年次分として十五億円を計上するとともに、不発弾等の処理、対馬丸遭難学童遺族給付経費等合計十九億七千四百万円を計上しております。
このほか、沖縄開発庁所掌の一般行政経費等として五十四億九千万円を計上しております。
以上述べました沖縄開発庁計上経費の総額は、二千百六十四億一千七百万円で、前年度当初予算額に対し〇・八%の増となっております。
#10
○宮田委員長 次に、橋本北方対策本部審議官。#11
○橋本(豊)政府委員 昭和五十八年度総理府所管の北方関係予算について、お手元に配付してございます資料によりその概要を御説明申し上げます。昭和五十八年度北方関係予算として十三億三千八百万円を計上いたしておりますが、これは前年度予算に比較し、一三〇・六%の増となっております。
その内容を申し上げますと、1の北方対策本部経費として六千七百万円を計上しておりますが、これは本部の人件費及び一般事務に必要な経費であります。
2として、北方領土問題対策協会の補助に必要な経費四億七千百万円を計上しております。
この経費の内訳は、(1)の事務費八千四百万円、(2)の事業費三億八千六百万円、(3)予備費百万円となっております。
(2)の事業費でありますが、まず、啓蒙宣伝関係費一億六百万円は、新聞、雑誌広告、テレビ放送、北方領土展の開催、広告塔の設置、北方領土を目で見る運動の実施等各種の啓蒙活動に必要な経費であります。
次の返還運動関係費は、国民の北方領土問題への関心を喚起し、返還要求運動の盛り上がりを図るため、中央で開催する国民大会のほか、全都道府県でそれぞれ実施することとしている県民大会の開催、キャラバン隊の派遣等に要する経費四千三百万円であります。
また、推進委員関係費三千三百万円は、地方における返還要求運動の中核的役割りを果たしている各都道府県推進委員が啓発活動などを行うために必要な経費及び全国的な返還要求運動を定着させるための地方基盤である各都道府県県民会議の設置運営のための経費であります。
さらに、団体助成関係費七千五百万円は、青年婦人団体の代表の現地研修等の経費並びに現地根室地域を訪れる一般国民に対する啓発経費及び北方館等の展示整備を行うための経費などであります。
次に、調査研究関係費五百万円は、北方領土問題に関する資料収集及び調査研究活動等の経費であります。
また、援護関係費一千三百万円は、北方地域元居住者団体が行う元島民としての活力の維持、啓蒙活動推進事業に必要な経費であります。
次は、貸付業務補給費であります。北方領土問題対策協会が北方地域旧漁業権者等に対して行う事業資金や生活資金の低利融資の昭和五十八年度における貸付枠は、十億円としておりますが、そのための利子補給費七千三百万円及び貸付業務に必要な管理費補助三千八百万円の計一億一千百万円を計上しております。
最後に、3の北方領土隣接地域振興等基金造成費の補助であります。これは第九十六回国会で成立し、昭和五十八年四月一日から施行される北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律に基づいて、北海道が設置する基金の財源の一部を補助するもので、初年度分として八億円を計上しております。この国からの補助金に北海道が二億円を加算いたしますと、昭和五十八年度における基金の規模は十億円となります。
以上をもって御説明を終わります。
#12
○宮田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後一時四十分散会