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1982/05/25 第98回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第098回国会 交通安全対策特別委員会 第7号
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1982/05/25 第98回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第098回国会 交通安全対策特別委員会 第7号

#1
第098回国会 交通安全対策特別委員会 第7号
昭和五十八年五月二十五日(水曜日)
    午前十一時開議
 出席委員
   委員長 北側 義一君
   理事 浜野  剛君 理事 水平 豊彦君
   理事 竹内  猛君 理事 永井 孝信君
   理事 草野  威君 理事 玉置 一弥君
      浦野 烋興君    佐藤 守良君
      志賀  節君    中西 啓介君
      中村  靖君    野中 英二君
      三浦  隆君    辻  第一君
 出席政府委員
        総理府総務副長
        官       深谷 隆司君
        内閣総理大臣官
        房交通安全対策
        室長      滝田 一成君
        警察庁交通局長 久本 禮一君
 委員外の出席者
        大蔵省銀行局保
        険部保険第二課
        長       田中  寿君
        運輸省自動車局
        保障課長    越村 安英君
        特別委員会第一
        調査室長    長崎  寛君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 交通安全対策に関する件
 請 願
   一 交通事故防止対策と被害者救済措置に関する請願外三件(木村守男君紹介)(第一四二一号)
   二 同外二件(亀岡高夫君紹介)(第一四五二号)
   三 同(佐藤守良君紹介)(第一四五三号)
   四 同(細田吉藏君紹介)(第一四五四号)
   五 同外一件(玉沢徳一郎君紹介)(第一四八一号)
   六 同(羽田孜君紹介)(第一四八二号)
   七 同(村岡兼造君紹介)(第一四八三号)
   八 同(森下元晴君紹介)(第一四八四号)
   九 交通事故防止と安全施設整備の促進及び身体障害者等の安全輸送に関する請願外三件(木村守男君紹介)(第一四二二号)
  一〇 同外二件(亀岡高夫君紹介)(第一四五五号)
  一一 同(佐藤守良君紹介)(第一四五六号)
  一二 同(細田吉藏君紹介)(第一四五七号)
  一三 同外一件(玉沢徳一郎君紹介)(第一四八五号)
  一四 同(羽田孜君紹介)(第一四八六号)
  一五 同(村岡兼造君紹介)(第一四八七号)
  一六 同(森下元晴君紹介)(第一四八八号)
  一七 交通事故防止対策と被害者救済措置に関する請願(石井一君紹介)(第一五〇七号)
  一八 同(田原隆君紹介)(第一五〇八号)
  一九 同(水平豊彦君紹介)(第一五〇九号)
  二〇 同外三件(野中英二君紹介)(第一五五四号)
  二一 同外六件(箕輪登君紹介)(第一五五五号)
  二二 同(鳩山邦夫君紹介)(第一六三〇号)
  二三 同(木村俊夫君紹介)(第一六六三号)
  二四 交通事故防止と安全施設整備の促進及び身体障害者等の安全輸送に関する請願(石井一君紹介)(第一五一〇号)
  二五 同(田原隆君紹介)(第一五一一号)
  二六 同(水平豊彦君紹介)(第一五一二号)
  二七 同外三件(野中英二君紹介)(第一五五六号)
  二八 同外六件(箕輪登君紹介)(第一五五七号)
  二九 同(鳩山邦夫君紹介)(第一六三一号)
  三〇 同(木村俊夫君紹介)(第一六六四号)
  三一 自動二輪車等の事故防止対策に関する請願(永井孝信君紹介)(第一六六二号)
  三二 交通事故防止対策と被害者救済措置に関する請願(左藤恵君紹介)(第一九七八号)
  三三 交通事故防止と安全施設整備の促進及び身体障害者等の安全輸送に関する請願(左藤恵君紹介)(第一九七九号)
     ────◇─────
#2
○北側委員長 これより会議を開きます。
 交通安全対策に関する件について調査を進めます。
 この際、昭和五十七年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況並びに昭和五十八年度において実施すべき交通安全施策に関する計画について、説明を聴取いたします。深谷総理府総務副長官。
#3
○深谷政府委員 「昭和五十七年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」並びに「昭和五十八年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」について御説明申し上げます。
 この年次報告は、交通安全対策基本法第十三条の規定に基づき、政府が毎年国会に提出することになっているものであります。
 初めに、昭和五十七年における交通事故の状況について御説明いたします。
 道路交通事故による死者数は九千七十三人、負傷者数は約六十三万人、発生件数は約五十万件であります。これを前年と比べますと、死者数で四・一%、負傷者数で三・一%、また発生件数では三・四%の増加となっております。
 鉄軌道交通については、死傷者数は千三百五十七人で、前年に比べ減少しております。
 海上交通については、海難による死亡・行方不明者は二百八十九人で、前年に比べ減少しております。
 航空交通については、死者数は三十九人、負傷者数は二百二十二人と、それぞれ前年に比べ増加しました。
 なお、昭和五十七年に入ってから、二月の羽田沖日本航空機墜落事故、八月の石垣空港南西航空機オーバーラン炎上事故等が発生しております。
 道路交通事故は、昭和四十六年以降自動車保有台数の増加にもかかわらず、交通安全施設の整備に対応して着実な減少を続けてまいりましたが、昭和五十年代に入ると交通事故減少率は低下し、最近は増加傾向が顕著にあらわれてきております。
 昭和五十七年度は、第三次の交通安全基本計画の第二年度として、このような傾向を抑止し、さらに減少に転じさせるために、交通安全施設の整備充実を含めた総合的交通安全対策を強力かつきめ細かに推進いたしました。さらに、交通事故の急増に対処するため、昭和五十七年六月の交通対策本部決定に基づき、交通安全の広報の推進、自動二輪車、原動機付自転車の運転者に対する指導の強化等七項目にわたる緊急対策を鋭意実施してまいりました。
 このほか、踏切道の整備、港湾・航路の整備、航空保安施設の整備等の諸施策を推進いたしました。
 次に、昭和五十八年度において実施すべき交通安全施策に関する計画について御説明いたします。
 昭和五十八年度は、第三次交通安全基本計画の第三年度として、道路交通では、交通安全施設の整備を初め、運転者対策の充実、車両の安全性の確保、交通安全思想の高揚、被害者救済対策の充実等の施策を講じることにより、交通事故の発生の増加傾向に歯どめをかけ、特に、死亡事故防止には格段の意を注ぐこととしております。
 また、鉄軌道、海上及び航空交通においても引き続き所要の施策を講じ、交通安全を確保することとしております。
 以上をもちまして説明といたします。(拍手)
    ─────────────
#4
○北側委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野中英二君。
#5
○野中委員 過般、自動車保険料率算定会から、自動車保険料率認可申請書というものが五十八年五月二十日に大蔵大臣あてに提出されたと思うのでありますが、それは許可をする意思があるのかどうか。十分ないし十五分程度でございますから、一問一答式に田中保険第二課長に質問いたします。
#6
○田中説明員 最近におきます自動車保険の状況、自算会の検証に基づきまして、今回対人賠償保険、それから搭乗者傷害保険につきまして保険料率の改定をしたい、そういうことで認可申請が出てございまして、私ども、認可申請を受けまして目下検討してございますが、前向きに考えたい、こういうふうに思っています。
#7
○野中委員 前向きに検討をすると言われておりますけれども、巷間伝え聞くところによりますと、七月一日から実施をしたい、こういう意向のように聞き及んでいるわけでございますが、事実ですか。
#8
○田中説明員 その予定でございます。
#9
○野中委員 私は、このことについては大変残念に思うわけであります。御存じのとおり、今日は車社会と言われており、われわれの生活の中で車を手放すわけにはいかない、もう生活の一環であります。いま、この三年にわたる低成長の時代にあって、いかにして景気浮揚をしようかということが国会論議の中心になっているときであります。しかし、輸出振興等も国際社会、国際経済から見るとこれはなかなか伸ばすことができない。そのときにあって、やはり国内需要を浮揚さしていかなければならぬ、こういう重大な時期に来ておる。したがって、いかにして可処分所得をふやすかということが問題になっている。そのときに、これでは可処分所得がなお減少してしまうじゃありませんか。
 いま与野党挙げてとにかく減税をやろう、減税の規模あるいは実施の時期はいずれにしても、やろうということで合意されている現況に、この値上げをしていこう、保険料率を上げようということは私は賛成できないのであります。このことについて、私は田中保険第二課長の答弁を求めます。
#10
○田中説明員 保険のあり方ということでございますが、これは保険審議会の答申でもかねてからやかましく言われておりますように、厳密な、厳正な保険料率の検証を行う。その検証の結果に基づき迅速な料率の調整をやっていくというのが、いわば安定的な、消費者、契約者、それから保険者全体を考えた上で望ましい保険のあり方だというふうに考えてございます。
 ちなみに、自動車保険の対人賠償保険を例にとりますと、これは先生御存じのとおり、昭和四十五年前後の交通事故のあのピークからずっと好転してまいりましたので、そういう状況を踏まえながら、料率で申し上げますと、昭和四十九年には一四%下げ、あるいは昭和五十一年には一六%下げるということで、料率の引き下げもやっておるわけでございます。したがいまして、検証に基づきまして、リザルトがよくなった場合には速やかに下げる、同時に、リザルトによりまして悪化した場合にはそういう形で対応していくということが、保険のいわば安定した望ましい姿だ、こういうふうに考えているわけでございます。
#11
○野中委員 リザルトによって増減を図っていく、こういう答弁でございますが、そのことについては最後に触れることにいたしまして、ちょっと細かいことを聞いておきたいと思います。
 一つは、BAPあるいはプライベート・オートモービル・ポリシー、この加入率及び個別の収支の割合。どれぐらい赤字を出しているのか、どれぐらい悪化しているのか、ちょっとお示し願いたいと思います。
#12
○田中説明員 先生の御質問はPAP、いわゆるプライベート・オートモービル・ポリシーの対人の状況ということでございますが、最近における状況で見てまいりますと、損害率の悪化の状況が約三割近い状況になっておるわけでございます。ちなみに申し上げますと、対人賠償保険ですと予定損害率を六〇%ととらえているわけでございますが、これが今回、五十八年度の見込みといたしまして七五・四になるということでございます。
#13
○野中委員 BAPは……。
#14
○田中説明員 いま申し上げました対人賠償保険は、BAP、PAPを通じました対人賠償保険全体でございます。
#15
○野中委員 いま御説明がございましたけれども、それではどうしてこういうふうにリザルトが非常に悪化してきたのかということ。それは交通事故が非常に激増してきたということもございますでしょう。しかし、それ以上に保険会社に何か欠陥があるんじゃないだろうか。というのは、御存じのとおり自動車共済の方に入りますと、保険料率にしても堂々と基本料金が二万八千七百円でやられているわけですよ。そしておたくのように今度料率を上げてこられますと、ますます共済の方へ、県民共済であるとか国民共済だとか、そういう方向へ流れていきまして、決して保険会社の救済にならぬ、あるいはまた保険が永久持続していくものではないというように考えております。大蔵省は非常に安易な道を選び過ぎているのではないかというふうに私は思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
#16
○田中説明員 先生の御指摘の点は、私ども保険行政の一端を担う者といたしましては常々心しておるところでございます。ただ、共済と民間損保とのよって立つ基盤が異なっておりますし、また、いわば契約者の相互扶助的な形で出てくる共済というもの、それから募集制度との関係、はたまた逆に言えばサービスの内容等、いろいろそういう形での違いが保険料の差として出てくるというところは否定しがたいところでございます。
 さて先生の、料率を引き上げることによってますます悪くなるのではないかという御指摘でございますが、これはリザルトそのものが悪くなってございますので、保険会社の経営上のよって来るところでこれを上げる、調整するということではないわけでございます。今回料率の認可に当たりましては、これは保険料の中に占めますいわゆる営業費、社費でございますが、社費に関しましてはかなり節減を求めたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
#17
○野中委員 これは非常に私は残念に思うのでありますけれども、共済の方でどういう宣伝をしているかというと、「損保より半分以下の安い掛金で賠償資力と被害者救済に役立つ」云々というふうに書いてあるのですよ。これはいま御答弁を聞くと、社費にかかる。いわゆる募集費にかかる。あるいは宣伝費にかかる。ですから、そうしたことをどうしても合理化、節減を図っていかなければ、ユーザーというものがほとんど共済へ流れていってしまう。かえって値上げしたために、国鉄に例をとっても、国鉄離れをしていく。こういう実態が出てくるのじゃないかということを私は恐れているのです。ですから、値上げということよりも、いま課長が答弁されたように、社費を節減させるという指導の方が先ではなかったのだろうか、こういうふうに思うわけであります。
 そこで、もう一点質問しておきたいのでございますが、それは保険料の割引率の問題なんです。そういうふうにリザルトが悪いにもかかわらず、どういうわけか団体割引等をやっているわけですね。このことがますます私は経営を悪化さしていくのじゃないかと思うのです。無事故割引の方は、私が長年主張しておりましたいわゆるドライバー保険というようなものと連動して考えてみたときに、私は賛成なんでありますが、あとの総合契約割引であるとか、大口団体割引であるとか、運転者限定割引だとか、こういうものは一考を要するのじゃないか。こういうものを整理することにおいて、私は、保険料率の引き上げを抑えていくべきではなかったろうか、こう思うわけでございます。この点……。
#18
○田中説明員 今回の改定に当たりましては、できるだけ保険内容、消費者の利益になるような形での改定もあわせて考えてございます。先生のいま取り上げられました無事故割引、現在五年連続無事故でございますと五〇%の割引をしてございますが、今回これを、八年連続ですと六〇%まで拡大することができるというような措置をとってもございますし、それからまたいろいろ制度改正も考えておりまして、そういう形で保険商品の改善を図っていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
 先生はいま、割引制度いろいろあるけれども、これを整理統合すべきだというお話でございますが、これはやはり契約者の内容、特に保険で申し上げますと保険集団というものをどうとらえていくか、その保険集団に応じましたところのリザルトを調整していく。これは保険審議会でも、保険集団のとらえ方につきましては種々検討すべきであるということも、これは自動車ばかりじゃございませんけれども、一般論として常々言われておりまして、そういう形で現行制度というのは成り立っておりますので、この割引制度に関しましては今後ますますそういう形で検討し、改善を加えていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
#19
○野中委員 無事故割引制度というものを八年にして六〇%にする、こういうようなお考えでございますが、実は値上げ率というものが非常に高いわけですよ。ですから、六〇%割引されてもユーザーとしては少しも恩恵をこうむらない。現在の負担よりも高額になってくる。こういうことを考えると、今度の保険料率の改定というものが妥当であるかどうか、私は大きな疑問を持っておるわけでございまして、どうかこの認可に当たってはさらに慎重に検討していただきたい、こう思っておるわけです。
 もう予定の時間、十五分でございますから、これで終わりますけれども、安易に値上げだけの道を選ぶべきでないということを私は特に申し上げておきたいわけでございます。
 以上で質問を終わります。
#20
○北側委員長 次に、永井孝信君。
#21
○永井委員 いまの野中先生の御質問に関連をし、あるいは重複する部分もあるかもわかりませんけれども、自動車の保険料の料率改定の問題に限って質問をしてみたいと思うわけであります。
 まず初めに、きょうのこの委員会で、いろいろな委員長の御判断もあったわけでありますが、こういう質問の時間を設定をするに至ったその理由というものをどのように受けとめておられますか。
#22
○田中説明員 こういう自動車事故、交通事故という問題は、まさに国民に非常に密接に関連する問題でございますから、そういう形で自動車の保険料率につきまして御質問があるということで、問題の重要性は十分認識しておるところでございます。
#23
○永井委員 最前の野中先生の質問に対する答弁を聞いておって感ずるわけでありますけれども、田中保険第二課長の答弁を聞いておりますと、申請を受けて値上げの認可をする側が認可することを前提とし、あるいは認可する立場に立って、その認可の必要性といいますか、正当性というものを無理に答弁の中に盛り込んでいるのではないか、私はこういう気がするわけです。
 それは、すでに指摘されておりますように、せんだっての当委員会におきましても私も質問したのでありますが、自賠責の運用益の問題がずいぶん問題になりました。運用益を一般会計に繰り入れることの不当性ということで、各先生からずいぶん質問もありました。自賠責で運用益が出た、その運用益をたとえ特定の処理であったといたしましても一般会計に繰り入れる、このことがユーザー側の感情に対して、非常に感情を逆なでするといいますか、そういうものを持っていることは紛れもない事実なんですね。だから、この運用益の一部を一般会計に繰り入れることは本来やるべきでない、また、自賠法の精神から言ってもやるべきでないということも私は指摘をいたしました。そうしてそのときに、自賠法に基づく保険料の値上げは、こういう状況である限りはすべきでないという質問も私はいたしました。これに対して大蔵当局からは、値上げはいま考えていない、こういう御答弁を実はいただいているわけであります。
 しかしその一方で、任意保険が平均して三〇・一%も値上げをされるということになってまいりますと、当然これまた自賠責の方にも影響が出てくるのではないかという気が一つはするわけです。ですから、いまも指摘されておりましたように、大変な不況のもとで、それぞれの庶民の暮らしが厳しくなってきているときだけに、任意保険であっても値上げをすることがそういう国民生活に大きな影響を与えること、あるいは自賠責にはね返ってくるのではないか、こういう危惧を持ちますので、この点について私は大蔵当局の御答弁を聞きたい。
#24
○田中説明員 自賠責と任意保険は、先生も御存じのとおり、自賠責の場合ですと、四十四年の十一月に平均いたしまして二倍保険料を引き上げたわけでございます。その後交通事故の状況がずっと改善されてまいりまして、そういうことで自賠責の収支は非常によくなってきた、そういう環境の中で、もちろん限度額の改定なり支払い単価の改定等をやってきておるわけでございますけれども、基本的にはそのときの水準が生かされて今日に至っておるわけでございます。と申し上げますのは、やはり自賠責の場合と任意の場合とは違うわけでございまして、任意保険の場合は先ほども御説明申し上げましたように、これまで五十三年なり五十一年なり四十九年なり、料率の引き下げというのを行ってきておるわけでございまして、厳正な検証に基づきます迅速な料率の調整ということをやってございます。
 そういう形でまいっておりますので、任意と自賠とは、そういう意味でのいままでの料率のあり方、改定の姿勢というのは差があったということでございます。したがいまして、任意に関しましては、そういう意味で検証に基づきまして今回その料率の手直しをしたいということでございます。今回料率改定に当たりましては、先生御指摘のように、平均いたしまして三〇・一%、搭乗者傷害では七%、自動車全体では一二・一%ということでございますが、無事故割引の拡大によりまして、そういう意味での契約者負担の負担率というのは九・五%の増ということでございます。そういう状況でございまして、任意保険に関しましては、そういうことで厳密な検証に基づきます料率の迅速な調整ということで考えておるわけでございます。
#25
○永井委員 割引率の話がいま出ましたけれども、この問題について考えてみますと、たとえば無事故割引が五〇%から六〇%に拡大されようとしている。これは商品ですから、いろいろな商品の売り方はあると思うのですよ。あると思うのですが、現行で、無事故割引から運転者の限定割引、総合契約割引、大口団体割引を全部総合いたしますと七五%の割引率になっている。これが、今度無事故割引が一〇%拡大されますから八五%ということになるのですね。極端なことを言えば、この割引率の拡大によって、一五%にすぎない保険料で結局運用していくということになってくるわけですね。ところが、その恩典を受ける者と受けない者、これだけどんどんユーザーがふえていくという状況の中で、いま自動車の台数が四千三百万台と言われている。これからもどんどんふえ続けていくであろう、そういう社会状況にいま仕組まれてきているわけですね。鉄道は外しても高速道路はつくるという時代ですから、自動車を利用しなければいかぬ状況になっているわけです。自動車の保有台数はどんどんふえていく。そうすると、こういう割引率を商品として売り出すのはいいのでありますが、これをもとにしてどんどん保険料の値上げがされていくということになって、片方にこういう恩典があるということになってまいりますと、新たに入る者は割引率は適用されないわけですから、あるいは一部、大口団体なんかで入ると一〇%の割引があったとしても、全体の八五%の割引率を適用されるわけじゃない。そうなってくると、新たに自動車を保有する者にとっては非常に高い保険料になってくるわけですね。その辺の関係はどうお考えでいらっしゃいますか。
#26
○田中説明員 保険の料率を設定いたします場合には、ある程度のグループごとに、われわれは保険集団と呼んでございますが、保険集団に細分して、その保険集団のクレームコスト、保険金支払いがどうなっているかということをとらえた上で、それに対応した料率というのを決めるわけでございます。
 先生いま御指摘のように、そういう形で割引をした結果、ほかのものにその負担が転嫁されるということになるのではないかという御指摘でございますが、それはそうではございませんで、いまたとえば無事故割引が五年で五〇%でございますが、任意保険の場合をとらえてみますと、大体三分の一強が五〇%の適用を受けているわけでございます。
 さて、それではその五〇%の適用を受けている者のいわゆるクレームコストというものが、過大に五〇%を割り引いているのかというと、そうではございませんで、それに見合った形になっているわけでございます。したがいまして、逆に申し上げますと、そういうものにつきましてこういう形の制度をとりませんと、逆に不公平になるという面も否定できないわけでございます。そういうことでございまして、その割引が特定の者の、たとえば先生御指摘のように新規契約者の犠牲の上に成り立っているというものではないということを御理解いただきたいと思います。
#27
○永井委員 いまの説明を聞いておりまして、一部はなるほどと思うところがあるのですよ。しかし、考えてみると、任意保険の場合、保険会社は全部の保険料で事業として成り立っているわけでしょう、自動車保険としては。そうすると、なるほど無事故を積み重ねてきたから割引してやるということはいいと私は思うのですよ。いいと思うのだけれども、それを片方で拡大する、そのかわり保険料も全体の中で上げていくのだということがユーザーの感情に即応するだろうかという気がするわけですよ。
 無事故割引を受けるのに、五年間無事故を続けていくまでの間に掛けていく保険料は、いままでより非常に高い保険料を背負っていくわけですから、それは単に算術計算ではない。ユーザーの側に立って、保険に対して、ある意味で安心感と信頼感がもっと持てるようにしてやるのが保険行政の第一ではないかと実は私は考えるわけですね。
 事のついでにもう一つ申し上げますが、盛んに最前から保険料率の検証、検証と言われているわけでありますが、ではどのように検証されてきているのか。
 もう一つは、私は、この保険料の問題について当委員会で質問したときに、算定会のあり方について厳しく注文をつけました。参考人も来ていただいて注文をつけました。実情も聞きました。そのときに算定会の代表の方は、ユーザー側に、これからの料率の算定についてはすべてがガラス張りになるように、わかるようにしていきたい、こういうことを約束されているわけですね。
 ところが、保険料率の検証は大蔵省が厳密にやっていくと言っているけれども、どのように検証されたかわからない。あるいはユーザー側にすれば、どういう理由で、どのようになって、どういうことで保険料の値上げをせざるを得ないのかということは全くわからない。業界紙で仮にそういうものが発表されたとしても、そういうものを目にする者はごくわずか、一握りの者にすぎない。これは一体どのように対応されるのですか。
#28
○田中説明員 算定会法に基づきまして、まず算定会が認可申請いたしますと、これを公告いたします。これは二十一日に公告してございます。それで、算定の基礎につきましては、閲覧を受けることになってございまして、算定会の方でしかるべくそういう算定の根拠の資料を閲覧させていただくということになっているわけでございます。ただ、保険でございますので、算定のプロセス、中身そのものにつきましては、やや技術的要素が伴うということは避けられないところではございますけれども、そういう形での閲覧を求め、それでしかるべくそういう説明を求めるということであれば、それは自算会の方で対応するという形になっておるわけでございます。
 それからまた、保険に関しましては、できるだけ国民の皆様方によく御理解いただくというのが必要なことでございますので、この点に関しましては、算定会のみならず業界、協会を通じ、そういう形での普及にできるだけ力を入れるという形で、われわれもそういう視点でこの仕事も進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#29
○永井委員 いろいろな方法はあると思うのですよ。いろいろな方法はあると思いますけれども、私も自動車を何台か持っています。任意保険に入っています。保険料率が上がってからの契約をする場合に、これだけ上がりましたということはあったとしても、事前にユーザーに対して、このような状況でこういう経過があって、こう上げざるを得ないということは、私自身の知る限りは知らせてもらったことがないのですよ。どっかで公告されているのかもわからぬ。
 話はちょっとささいなことで恐縮ですが、一つの具体例として、保険以外のことで申し上げるのですが、たとえば役所が、一般の市民にあるいは関係する人々に物事を知ってもらうために公告といいますか書面を出しますね。たとえば税務署で言いますと、税務署の構内に公告の掲示板があって、ずらりと公告と銘打ったものが張ってありますよ。無関係の者はそんなものは関係ありませんけれども、関係のある者はそれを見るわけでしょうね。
 私は高輪の議員宿舎にいるのですけれども、高輪の議員宿舎のすぐ隣に品川の税務署があるのですよ。あの前を私はよく歩いて通るのですけれども、歩道がありまして、ガードレールがあって、そのガードレールから向こうへはがけのようになっておるわけですね。路肩が大分低い。高さ一メートル五十くらい、斜めになっておるのですね。その路肩の向こう側に公告掲示板が立っているのですよ。そこにこんな小さい字のものが張ってあるのですね。どんなに目のいい者でも見ることはできないのですよ。いつも私は不思議に思うのです。そしていまは草が刈ってありますけれども、この春までは草と木でその公告掲示板が半分隠れているわけです。しかし、そこにちゃんと張ってあるわけです。税務署の側にすれば、ちゃんと市民に公告したことになっているわけです、理屈としては。そんなもの、見えっこない。そういう行政がこの保険行政にもつながっているのではないか。それは大望遠鏡でも持ってこなければ見えないですよ、極端なことを言えば。それほどお役所仕事というのが、形式的には一定の手続は踏んでおっても、実際にユーザーの側に立っていないと言わざるを得ない。
 いま保険課長の答弁を聞いていると、いろいろな検証をしたと言われるのだから、保険料率を引き上げざるを得ないという理由は大蔵御当局として認めていらっしゃるのかもわからぬ。しかし、答弁を貫いている姿勢は、この値上げ申請を初めから認めるんだ。認める立場に立ってこの委員会でそのための答弁をしているとしか私は思えないのですよ。だから、これだけ不況の時代に庶民の立場に立つならば、ユーザーの気持ちに立って、ユーザーの立場に立って、保険料率はいかにして決めるべきかということを、もっと具体的にわかりやすく、ガラス張りというならガラス張りになるように、納得のいくようにしてもらいたい。そのことを強く要望して、一言答弁を聞いて、私は終わりたいと思います。
#30
○田中説明員 今回の認可申請に当たりましては、自動車保険の状況が悪化し出したというのはここ一、二カ月の話ではございませんで、昨年の夏以降からの状況でございます。したがいまして、業界としては、かねてからそういう形で料率の調整をやりたいという気持ちは非常に強くあったわけでございます。これに対しまして、いままでのように、たとえば社費の例を挙げますと、社費がこれだけだからこれをそのまま料率にはね返すということでは必ずしも適当ではないということで、今回の改定の場合には、強くその社費につきまして節減を求めた。求めたところで、そういう当方の意向を受けた形で認可申請がなされてきているということでございます。この点はひとつ御理解賜りたいと存ずる次第でございます。
 それで、公告制度につきまして先生からいろいろ御批判がございましたが、この算定会の認可申請に当たります公告につきましては、これは日本経済新聞に公告することにいたしておりまして、二十一日の日経の朝刊に公告いたしたところでございます。
#31
○永井委員 最後に一言だけ。
 料率の引き上げは慎重の上にも慎重にやってもらいたいということと、公告の話がありましたけれども、日経新聞の朝刊に出されるということでありますが、国民全部、ユーザー全部が日経新聞をとっているわけではないのですから、公告を出すのなら全国紙全部に出すぐらいの配慮をすべきだという苦言を呈しまして、私の質問を終わりたいと思います。
#32
○北側委員長 次に、辻第一君。
#33
○辻(第)委員 自賠責保険の保険金の支払い最高限度額は死亡の場合二千万ですね。昭和五十三年七月に改定されてからもう五年たつわけですが、据え置かれている、こういうことですが、今日、死亡事故補償額算出基準として裁判所などが採用している逸失利益に慰謝料、葬儀負担なんかを加える方法、たとえば年収六百万程度の一家の主人だと、逸失利益が六千五百万程度、慰謝料がほぼ一千四百万円、それに葬儀負担を加えると約八千万円、こういうことになるわけですね。
 ところが、現在自賠責だけという人が二〇%ほどある、こういう状況になっているわけです。こういうふうに見てまいりますと、やはり二千万円ではいささか低いのではないかというふうに思うわけです。そしてもう三千万へ引き上げるべきではないかという要望、交通遺児育英会だとかあるいは交通遺児学生の会などもそういうことを求めておられるわけであります。私は、早急に限度額を引き上げるべきである、こういうように考えるのですが、御見解を聞きたいと思います。
#34
○越村説明員 自賠責の保険金の限度額につきましては、裁判等における賠償水準とか、あるいは物価、賃金の動向とか、あるいは他の損害賠償制度との関連とか、それから保険収支の状況、こういったものを勘案いたしまして定める必要があるというふうに考えております。特に、四十四年以来据え置かれております保険料率への影響、これについても慎重に考えていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
 なお、さらに限度額の改定あるいは保険料率の抑制につきまして、運用益がどういうふうに利用できるか、そういったこともあわせて総合的に考えて判断をしていきたい、そういうふうに考えております。
#35
○辻(第)委員 限度額を引き上げる考えはあるのですか、どうですか。
#36
○越村説明員 いま申しましたようなファクターにつきまして検討いたしておりますが、いつ、どのくらいの幅でということはまだ結論が出ておりません。
#37
○辻(第)委員 早急に限度額を引き上げてもらうことを要望して、次に移ります。
 ことしに入ってから、自賠責保険の保険料の引き上げが新聞に報道されたり話題になっていますね。いま自賠責の保険料の引き上げを考えているのかどうか、大蔵省にお尋ねいたします。
#38
○田中説明員 一月二十六日の自賠責審議会、これは三年車検延長に伴います自賠責保険料の料率の設定の答申をちょうだいいたします審議会の開催をお願いしたわけでございますが、そのときに、自賠貴保険の収支の状況を御説明申し上げたわけでございます。そのとき以来どういう形でか、えらく料率のアップが具体的に取りざたされてきたわけでございますが、これは当委員会におきましても一貫して説明してございますように、当面、いま直ちに料率の改定をするということを考えているわけではございませんし、そういう検討に入っているわけではございません。
#39
○辻(第)委員 ことし自賠責の特会から一般会計へ繰り入れが行われたということですが、私はこれは大問題だと思うのです。これまで自賠責保険の運用益は交通事故の被害者の救済に使われてきたんですね。自賠責の収支は単年度で赤字になってくるという状況のようですが、その対応が近い将来本当に必要という状況のもとで、運用益の使途については、一つは保険料の引き上げをしないために充当をされるべきであり、また、支払い限度額の引き上げということにも充当さるべきである、こういうふうに考えるのですが、当局のお考えはいかがですか。
#40
○越村説明員 今回、自賠責の運用益の一部を一般会計に繰り入れいたしましたのは、一般会計の財政事情が非常に厳しいということを受けまして、五十八年度限りの臨時異例の措置として行われたものでございます。
 自賠特会の運用益は、保険契約者の納付いたしました保険料を原資として発生するものでございますので、本来、保険契約者の利益になるように保険制度の趣旨にのっとって活用されるべきものというふうに考えております。ただいま御指摘ございましたように、従来から、累積運用益については保険収支の改善のために留保しておきますほかに、自動車事故防止事業あるいは自動車事故による被害者の救済のための事業、こういったものに活用してきたところでございます。さらに、今回一般会計に繰り入れをいたしました二千五百六十億円、これは十年後までに返ってくるという原則になっておりますので、これを含めまして保険料率の抑制あるいは保険金限度額の改定、こういったものに使えるかどうかも含めまして、保険契約者の利益になるように検討してまいりたいというふうに考えております。
#41
○辻(第)委員 保険料の引き上げをしないために使うとか、それから支払い限度額の引き上げのために使うとか、こういう点はどうですか。
#42
○越村説明員 そういう点を含めまして検討いたしております。
#43
○辻(第)委員 それでは、その運用益の活用について、一般会計に繰り入れができるような状態なら、私は、交通遺児の進学の夢をかなえる、こういうためにでも交通遺児育英会の補助の拡充などをすべきであると思います。本当にこの運用益というのをもっと積極的に実のある活用をやっていただきたいということを要望して、質問を終わります。
     ────◇─────
#44
○北側委員長 次に、請願の審査を行います。
 今国会、本委員会に付託されました請願は三十三件であります。
 請願日程に掲載されております三十三件を一括して議題といたします。
 まず、審査の方法についてお諮りいたします。
 各請願の内容につきましては、請願文書表等によりましてすでに御承知のことと存じます。また、先刻の理事会におきまして慎重に御検討いただきましたので、この際、各請願についての紹介議員よりの説明等は省略して、直ちに採否を決したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 お諮りいたします。
 本日の請願日程中、第一ないし第八、第一七ないし第二三及び第三二の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#46
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#47
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ─────────────
    〔報告書は附録に掲載〕
    ─────────────
#48
○北側委員長 なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してございますとおり、シートベルト着用運動の推進に関する陳情書外二件でございます。念のため御報告申し上げます。
     ────◇─────
#49
○北側委員長 次に、閉会中審査申し出の件についてお諮りいたします。
 交通安全対策に関する件につきまして、閉会中もなお審査を行いたい旨、議長に申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#50
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次に、閉会中審査案件が付託になりました場合、今国会設置いたしました自転車駐車場整備等に関する小委員会は、閉会中もこれを存置し、調査を続けることに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#51
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、小委員及び小委員長の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#52
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次に、閉会中審査におきまして、委員会及び小委員会において、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#53
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。
 閉会中審査案件が付託になり、委員派遣を行う場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、その派遣地、派遣期間、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#54
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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