1982/07/07 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 石炭対策特別委員会 第6号
#1
第098回国会 石炭対策特別委員会 第6号昭和五十八年七月七日(木曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 武藤 山治君
理事 麻生 太郎君 理事 野田 毅君
理事 岡田 利春君 理事 中西 績介君
理事 斎藤 実君 理事 小渕 正義君
川田 正則君 倉成 正君
古賀 誠君 三枝 三郎君
藤田 義光君 三原 朝雄君
山下 徳夫君 塚田 庄平君
細谷 治嘉君 田中 昭二君
稲富 稜人君 小沢 和秋君
石原健太郎君
出席国務大臣
通商産業大臣 宇野 宗佑君
委員外の出席者
資源エネルギー
庁長官 豊島 格君
資源エネルギー
庁石炭部長 弓削田英一君
資源エネルギー
庁公益事業部長 小川 邦夫君
労働省職業安定
局高齢者対策部
長 増田 雅一君
自治省財政局長 石原 信雄君
参 考 人
(北海道知事) 横路 孝弘君
参 考 人
(日本石炭協会
会長) 有吉 新吾君
商工委員会調査
室長 中西 申一君
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委員の異動
七月七日
辞任 補欠選任
北村 義和君 川田 正則君
同日
辞任 補欠選任
川田 正則君 北村 義和君
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五月二十六日
一、石炭対策に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
石炭対策に関する件(北炭夕張炭鉱株式会社の再建問題)
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#2
○武藤委員長 これより会議を開きます。石炭対策に関する件について調査を進めます。
本日は、北炭夕張炭鉱株式会社の再建問題について調査を進めてまいりたいと存じます。
参考人として、北海道知事横路孝弘さん、日本石炭協会会長有吉新吾さんの御出席をいただいております。
この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。
参考人におかれましては、本問題につきましてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただいた後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得て御発言願います。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。
それでは、まず横路参考人にお願いいたします。
#3
○横路参考人 北海道知事の横路孝弘でございます。衆議院石炭対策特別委員会の武藤委員長初め委員の諸先生方には、石炭鉱業の安定と産炭地域の振興につきまして日ごろから格別の御高配を賜っておりますことにお礼を申し上げたいと思います。
また、本日は、北海道にとりまして最大の関心事となっております夕張新炭鉱の再開発問題の審議に関連いたしまして、私に参考人として発言の機会を与えていただきましたことに対し感謝申し上げますと同時に、重ねて心からお礼を申し上げたいと思います。
まず最初に、地元の状況について簡単に御説明を申し上げたいと思います。
夕張新炭鉱は、五十年六月から営業出炭を開始した、わが国では最も新しい炭鉱でございますが、昭和五十六年十月、新たに開発中の北部鉱区においてガス突出及び坑内火災が発生いたしまして、九十三人の痛ましい犠牲者を出す事故となったのであります。このため、その後の経営が悪化し、ついに昭和五十七年十月、露天掘りを除き閉山するに至りました。
この閉山により解雇された方々は、直轄従業員のみで二千三十九名、下請を含めますと全体で二千五百人を超えております。
これらの離職者は、昨年十月の閉山時におきまして当時の安倍通産大臣が、政府としては石炭業界による新会社によって早急に再開発が行われることとなるよう最大限の努力をいたします旨約束された言葉を信じて、いまだに千人を超える人々が地元にとどまり、苦しい生活に耐えながら夕張新炭鉱の再開発を一日千秋の思いで待ち望んでいるのであります。
夕張の職安によりますと、山中大臣の発言があった途端に再就職を希望する者がばったりととだえ、テレビや新聞の報道に一喜一憂しておるのが現状でございます。
御遺族の方はもちろん、炭鉱の人たちは、亡くなられた九十三人の人々は北部鉱区開発の人柱だ、炭鉱の再建が実現しなければその魂は浮かばれないと話し合っております。
また、やむを得ず他の炭鉱へ転職した人々の中にも、再開発が決まれば、ふるさとの炭鉱へ戻りたいと希望している人々がたくさんおります。「私のたった一つの願いは、どんなに辛くても夕張に帰ってくることです。そして先生やクラスの皆さんにお会いすることです。」こんな炭鉱を離れていった生徒からの手紙が夕張の学校のクラスにずらりと張られておるのが今日の状況でございます。
一方、多数の中小企業の人々は、移転や転業さえもままならず、夕張新炭鉱の再開発に望みをつなぎ、厳しい状況の中で不安と期待を込めて事態の推移を見守っているのであります。
私は、夕張新炭鉱の再開発問題こそ知事に就任をして初めて私に課せられた大きな問題であると考えまして、ただいま申し上げた事情を踏まえて再開発を要請するため、去る五月二十日、山中通産大臣をお訪ねしたのでございますが、その際、山中通産大臣から、道としても一枚かんで何とか炭鉱を残す方策を考えてほしい、道がかむことが国の援助が可能となる道筋であるという旨の御要請を受けたのであります。
また、この要請の具体的内容については、五月二十七日に通産事務御当局を通じ、次のような考え方の枠組みが示されました。
その内容は、
一、国や政府関係機関が出資するなど、将来、国家管理につながることは考えていないこと。
二、国の助成措置は、現行制度の枠内とするが、開発資金の助成については、石炭鉱業審議会及び財政当局の了解が必要であること。
三、道が資金援助する場合の財源措置として道債を発行する場合は、大臣として自治省、大蔵省に働きかけて、道に迷惑をかけないようにすること。
四、炭鉱を残すことは、北海道の産業経済にプラスになるので、道からの応分の負担が期待されること。
五、道と石炭協会が一体となって参加することが開発資金を出す前提であると考えていること。
参加とは、常識的に言って出資を指すものと考えること。
六、参加の件を除いた部分については、枠を越えた道案を提示されても、大臣は拒否するようなことはないこと。というようなものでございました。
また、私は、この内容に加え、去る五月二十五日に開かれました当委員会及び参議院のエネルギー対策特別委員会における山中大臣の発言の中で、石炭協会の参加については大臣が直接説得するとされた点も重要であると理解をしております。
私は、山中大臣からこの要請を受けて以来、本道における石炭関係者で構成する石炭対策連絡会議を初め、経済団体など広く道内関係者の意見を伺うとともに、日本石炭協会が通産省に提出した答申のうち資金、経理面について分析、検討を行い、道の考え方を取りまとめ、去る六月十七日、宇野通産大臣に申し述べたのであります。
以下、その内容について御説明申し上げますが、最初に、夕張新炭鉱は営業出炭開始後約七年で事故のため閉山が余儀なくされたのでございますが、その際、先ほども申し上げましたように、当時の安倍通産大臣が再開発に最大限の努力をする旨約束されたこと、また、これを受けて山中大臣の提案があったことなど特殊な事情があったことをまず御理解をお願いしたいと思います。
内容について御説明申し上げますが、まず第一点は、「新会社は、石炭業界の主導により運営されること。」でございます。
地方公共団体としての道には、石炭鉱業を経営するため必要な技術面の蓄積がなく、また、地方公共団体の性格から、主導的立場で経営に参加することは適当でないと判断し、このような内容となったものでございます。なお、このことについては、山中大臣も、道が経営主体となることはできない相談であると発言をされております。
第二点は、「通産省において日本石炭協会が答申した「夕張新区域十尺層開発検討結果」について検討し、見通しを明らかにされたいこと。」ということでございます。
私は、石炭協会の答申は、多額の投資を必要とするが、技術的には再開発は可能であると判断されたものと理解をしておりますが、炭鉱の指導監督業務を所掌する通産省において検討していただき、技術面での判断を示していただきたいという趣旨で申し上げたわけでございます。
第三点は、「新会社に一般炭の輸入業務を併せ行わせ、経営の健全化を図られたいこと。」具体的には「電源開発株式会社が使用する一般炭に係る輸入業務を行わせ、補てんを要する額を輸入価格に上乗せできるようにされたいこと」でございます。
私どもといたしましては、石炭協会の答申において「開発の可能性は見出し難い。」とされた最大の理由は、総合収支が大幅な赤字となることにあると理解をしておりますので、この点の解決の方策が見出されれば、新炭鉱の再開発は可能になるものと考えます。
また、技術面については、先ほど申し上げたとおり一定額の投資を行えば再開発は可能であると判断されたものと理解をしております。労務面での課題である技術職員の確保につきましても、業界による協力と技術職員の養成などによって対処し得るものと考えております。
そこで、答申のうち経理面について私どもで検討したのであります。
まず、石炭協会の答申では、開発着手から終掘に至る二十四年間の総合収支は八百八十八億円の赤字になるものとされております。
この場合の前提条件の主なものは、新規炭鉱に対する開発資金は適用しないこと、不足資金は年利九%の市中金融で調達することなどであります。
もし山中大臣の提案のように開発資金の適用があると仮定した場合には、総合収支は三百十八億円の赤字になると試算されているものと承知しております。
私どもは、これに加え、各年度に発生する収支不足額を当該年度で補てんすることとして試算しましたところ、借入金の利息負担が削減されるため、二十四年間における各年度の収支不足額の合計は約百億円にとどまるものと試算されました。
そこで、この百億円の不足額を補てんする財源を検討したのでございますが、結果として、ただいま申し上げたとおり、新会社に電発の使用する一般炭の輸入業務を行わせ、この不足額を輸入価格に上乗せして販売させるという方式としたのであります。
御承知のように電発は、これまでも国内石炭産業を保護する観点から石炭対策特別会計からの融資などを受け、国内炭を専焼する火力発電所を建設しており、このような意味合いから国内石炭産業の保護にいま少し一定の期間に限り御協力をいただきたいと存じております。
次に、この方式によることとした場合の他に及ぼす影響についてでございますが、先ほど申し上げましたとおり必要な額は約百億円であり、これを二十四年間で平均すると約四億二千万円になります。これを電源開発に販売する炭価に上乗せするわけでございますから、昭和五十八年度の電発の一般炭輸入計画量四百十八万トンから算出いたしますと、トン当たり約百円になります。現在、一般炭の平均輸入価格はトン当たり約六十ドルでございますから、一ドル当たり二円弱で、為替相場の変動幅におさまる額であり、電発に対し大きな負担となる額ではなく、自社で吸収していただける範囲内のものではないかと考えております。
また、電発の五十六年度の総発電電力量は約百八十一億キロワットアワーでありますから、一キロワットアワー当たり二銭の上乗せにしかならず、仮に電力会社に対する売電価格に転嫁したとしても、電力会社のコストに与える影響はきわめて小さなものとなり、電力料金値上げの引き金にはならないものと考えております。
第四点は、「以上により、新会社の採算が成り立つとして、道は応分の出資を検討する考えであること」などでございます。
道といたしましても、先ほども申し上げましたとおり主導的立場で経営に参加することはできませんが、出資という形で参加する意思を表明したものでございます。
以上が、私が宇野通産大臣に申し述べた夕張新炭鉱の再開発に関する考え方の内容とその背景でございますが、私といたしましては、道の案は多くの限定された条件のもとにおいて策定したものでございまして、その限りにおいては最善の案であると考えております。
ただ、昨日、宇野通産大臣と会談した際、大臣から、道案を含めていろいろ検討するよう事務当局に指示してあるとのお話がございました。そこで私は、道案についての考えを再度申し上げるとともに、通産御当局でさらによりよき案があれば、私どもの願いは北炭新鉱の再開発ということでございますから、いろいろ制約はございますが、その中で最大限協力をさせていただきたい旨お話を申し上げました次第です。
結論的に申し上げますと、夕張新炭鉱の再開発問題は、山中前通産大臣が一%の可能性があれば炭鉱を残したいとの意欲を示されたとおり、良質の国内石炭資源を確保する観点と疲弊した夕張地域の経済的復興を図る観点から、通産大臣の決断を下していただくことに尽きると私は考えております。
御承知のとおり、地元の夕張新炭鉱労働組合の委員長が一昨日から単独で無期限のハンガーストライキに入るなど、きわめてせっぱ詰まった状況となっております。何とぞ私の陳述内容をお酌み取りいただきまして、夕張新炭鉱の再開発の実現に向けて御尽力を賜りますよう心からお願いを申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
#4
○武藤委員長 ありがとうございました。次に、有吉参考人にお願いいたします。
#5
○有吉参考人 私は、ただいま御指名をいただきました日本石炭協会会長の有吉でございます。本日は、国会休会中にもかかわりませず、特に夕張問題につきまして本委員会を開催され、再三にわたり御審議いただくことになりまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。
夕張新区域十尺層開発につきましての石炭業界の検討結果につきましては、五月二十四日の当委員会におきまして詳細申し述べたところでございますが、その後、北海道の基本的考え方が示されましたので、これに対する私どもの見解を申し述べたいと存じます。
まず第一に、前回申し述べました夕張新区域十尺層開発検討結果答申書の内容は、技術的につきましても、また採算面につきましても、基本的に誤りはないと確信をいたしております。
ちなみに申し上げますと、この答申内容の炭量、骨格構造、採炭規模、人員配置等、技術面の検討結果につきましては学識経験者も妥当なものと賛意を表されておりますし、さらにこの技術面の立案をもとにした採算面の検討結果につきましても、このたび北海道でその内容を詳細にごらんになった上で、どうしても赤字が残るということから、あのような基本的考え方を提案されたものと思うのでございます。
次に申し上げたいことは、私どもの答申の採算面だけを取り上げられて、技術面に問題はなく、生ずる赤字さえ補てんすれば開発は可能というような誤った受け取り方をされている向きもありますが、あれだけの大災害を惹起した厳しい夕張の自然条件に対処するには、答申に述べている技術面の検討結果を立案のとおり確実に実施しなければならないという採算面以前の重要な問題があるのでございます。
答申の中にはいろいろ確実に実施すべき問題を述べておりますが、その中で最も重要な問題は保安管理の問題であります。
答申書にも申し述べておりますが、「適切な保安管理のためには、幹部技術者の管理能力をはじめ、第一線技術職員の技術力、判断力並びに作業員の技能等、相当高度の能力が必要であると同時に、個々の能力と合わせて幹部から末端までの一連の総合的な保安管理能力を高く保持する必要があり、この体制が確立されなければ、このようにきびしい条件の夕張新区域十尺層の保安問題に対処することはできない。」と指摘をしているところであります。
しかしながら、五月二十四日の当委員会におきましても、この保安体制確立に絶対必要な保安技術職員の充足がきわめて困難であると申し上げましたが、現状においてはまさに絶望的と申し上げなければなりません。
六月末の状況で申し上げますと、夕張に残っておられる保安技術職員は、立て坑、斜坑等の保坑に従事されている方が十三名、その他夕張に残留されている方が長欠者を除き十六名、このうちすでに五十四歳以上の方が九名という状況であります。
このような状況では、完成年度に必要な上級幹部を含む二百四十三名の保安技術職員の計画数を確保することは全く不可能であるばかりでなく、開発着手初年度の計画数八十三名すら確保できないのであります。
さらに、坑内労働者の確保についても、夕張残留者では年齢構成の問題あるいは職種別偏りの問題等があり、計画に基づきました適正な確保がむずかしいということは答申の労務面検討において指摘をしたとおりであります。
このような状況のもとでは、さきに述べた一連の総合的保安体制の確立はとうてい不可能であり、したがって、きわめて厳しい条件にある夕張新区域十尺層の保安確保に万全を期しがたく、その結果、事業の計画どおりの遂行はできないと申し上げざるを得ません。このことはもちろん採算面に重大な影響を及ぼすことになります。したがって、答申の収支はさらに悪化することになりますので、赤字だけを取り上げてつじつま合わせをするようなことは意味がないと存ずる次第であります。
次に、北海道の基本的考え方で御提案になっております電源開発株式会社の輸入炭に眠り口銭をかけることによって赤字を解消しようということでございますが、このようなことはいずれ通産省において最終的に御判断になることと存じますが、石炭業界としましては、電源開発株式会社がたとえ国策会社であるにいたしましても、直接関係のない特定の会社に対し赤字の穴埋めの金を出してもらいたいというような提案に実現性があるとは考えられないのであります。
石炭業界といたしましては、常々理解と協力を仰がねばならない大切なユーザーに対してこのような提案がなされたことで、業界とユーザーの間に悪い影響が生じなければよいがと危惧している次第でございます。
以上、いろいろ申し上げましたが、答申における計画立案の最重要課題である保安管理体制の確立は現状においては全くむずかしいと判断せざるを得ませんので、事業の計画どおりの遂行は不可能であります。したがって、採算面は検討結果どおりの収支すら成り立たず、さらに悪化することは明らかであります。
石炭業界といたしましては、多年にわたって苦しい経営を続けてまいっていることは先生方よく御承知のとおりでございまして、きわめて脆弱な経営体質にありますので、あらゆる面で余力というようなものはございません。保安技術職員を初めといたしまして人員をこの夕張のプロジェクトに割愛するようなことは不可能でございますし、まして採算性を見出し得ないプロジェクトの赤字補てんをするとか債務保証をするとかいうことは考えられないことでございます。したがいまして、石炭業界といたしましては、夕張新区域十尺層開発の経営主体となることはできないと申し上げざるを得ないのであります。
以上をもちまして私の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
#6
○武藤委員長 ありがとうございました。以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
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#7
○武藤委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三枝三郎君。
#8
○三枝委員 最初に、大変お忙しい中、参考人のお二人におかれましては当委員会に御出席をくださいましたことを、心から敬意を表する次第でございます。特に横路知事さんにおかれては、初の北海道議会の開会中、非常に大事なときに御上京になって、ただいま陳述があったわけでございますが、深く敬意を表し、またそれだけ山のことをお考えになっておいでになったということについて深く感銘をするものでございます。そこで私は、これから二、三御質問をいたします。本日は夕張の市長さんもおいでになっておりますが、私自身といたしましても、先般の当委員会の参考人に対する質問におきまして、夕張の市長さんには御要望を申し上げました。その際市長さんは、地元の夕張市を預かる責任者として切々とその苦悩をお述べになったわけでございますが、私自身もそれを伺って胸の痛む思いをしました。千人の山の人がいまこの解決を待っている、それを取り巻く夕張の町の人たちも一日千秋の思いで解決を待っている、全くそういった気持ちで私もいっぱいでございます。
先般この委員会が終わるに当たりまして、特に武藤委員長におかれましては異例の所信を表明されたのでございます。山中前大臣の誠意を高く評価されまして、感銘深く受けとめられたというごあいさつがありまして、私も武藤委員長のその御熱意に対して感銘深くこれを伺ったものでございます。一日も早くこの問題を解決したい、そういう気持ちを前提にして、これから二、三御質問をいたしたいと思います。
まず最初に横路参考人にお尋ねいたしたいと思います。
先ほどいろいろとお話がございまして、十分に承知いたしました。山中前大臣の受けとめ方はあの中に十分入っておりますが、確かに前の速記録を見ますと、山中前大臣は「北海道における夕張市の地位というもの、置かれた立場というものは道民ひとしく憂慮しておられることだろうと思うのです。それに対して私はいま提案をしただけでございまして、」そして横路知事さんに「道に中に入ってもらえないかという御相談をしたわけでございまして、道の方からもし入るとすれば、単なる出資の立場に立つのか、あるいは山の経営にもタッチするのか、いろいろの疑問がおありだと思うのです。」率直にひとつ検討してもらいたい、そういう趣旨の御提案があったわけでございますが、それにつきまして、端的に言いましてこの道案、横路案というものを拝見しますと、応分の出資はする、しかし全面的に経営の主体となってやっていくというわけにはいかない。経理面でタッチする、参加する、そういうことじゃないかと思います。後で有吉さんの方にもお伺いいたしますけれども、技術面の点では全然検討されなかったのかどうか。この山中提案というものを受けて、横路さんはどのようにこれを受けとめて基本的な方針を出されたのか、もう一度お伺いいたしたいと思います。
#9
○横路参考人 私ども、その山中発言を受けまして、さらに通産事務御当局と先ほど申し上げましたような山中提案の枠組みというものは何かということを詰めまして、その枠の中で検討したわけでございますが、特に考慮を払った点は、やはり石炭政策というのは本来国の責任において行われるべきものではないだろうか、エネルギー政策という観点からぜひ考えるべきものではないかというのが第一点でございます。それから第二点は、道が主体となって新会社を運営、経営するということは、石炭行政そのものが国の専管業務でございますし、道にそういう技術的な蓄積があるわけじゃございませんので、地方公共団体の性格からいっても経営の主体になることはむずかしい。
同時に、石炭協会の答申のうち、先ほどもいろいろお話ございましたが、技術面及び労務面については協会の検討結果を前提にして、その妥当性については私ども判断する材料というものがございませんから、保安技術をもっぱら行っております国の判断にお願いをしたいということが、あの提案の二つ目になっているわけでございます。
石炭協会の答申における保安対策というのは、政府における夕張新炭鉱事故調査委員会の報告結果を取り入れてつくられておるものでございまして、答申どおりに投資を行えば技術上開発は可能であると石炭協会が判断をしたものというように私ども理解をしております。そういう前提に立ちまして、技術保安の問題については、これはひとつ通産大臣の方に御判断いただきたい。私ども道の立場で技術的にこれが可能であるとかどうかということを判断することはできないので、もっぱら経理面について着目をして分析を行い、通産大臣提案の枠組みの中であのような提案をした、こういう経過でございます。
#10
○三枝委員 いま、保安管理体制の面で有吉参考人は非常に否定的な御見解を示されましたね。横路提案では、いまおっしゃるとおり第二点で、石炭協会の答申について検討して見通しを明らかにしてもらいたい。それでは、その見通しについて、ノーである、保安技術体制は確立されないということになった場合に、知事さんとしましてはどうお考えになりますか、その点をお聞かせ願います。#11
○横路参考人 宇野通産大臣に持っていった案の二つ目に、石炭協会が出した夕張新区域十尺層開発検討結果答申書、これを通産省で正式に受け取られて、通産大臣の手元で御判断を願いたいと言った趣旨は、いま私が申し上げたような趣旨でございます。ただ私どもは、この答申書の内容を見ましても、最後のところに問題点とまとめというのがございますけれども、この問題点とまとめを拝見する限りにおいて、主として問題はやはり経理面である。もちろん保安要員の問題は指摘をされておりますけれども、技術的な問題については、この答申書そのものが政府の夕張新炭鉱事故調査委員会の報告結果というものを取り入れて、これだけの投資がそのかわり必要ですよということになっているわけですね。したがって、私どもその投資を前提として経理の面についての分析を行った、こういう次第でございます。
#12
○三枝委員 それでは、保安管理体制の点については以上にいたしまして、時間がありませんので要点だけお伺いいたします。そうすると、経理面の参加ですが、その参加の仕方がいわゆる海外炭の輸入業務を新会社が代行して、そのマージンの一部を、先ほども数字を挙げられましたが三百十八億と考えられる赤字に充てる、そういう考えでございます。そういうぐあいに受けとめておりますが、横路さんは他に及ぼす影響について、これは非常に微々たるものであるというお話があったわけでございます。
ただ、私は他に及ぼす影響に対する見解がちょっと知事さんと違うのでございまして、金目の問題でなく、北海道以外のたとえば九州あるいは四国その他の電力会社の電力料金に影響を金目でなく筋として及ぼすことは事実なんですね。それが一つと、それからもう一つ他に及ぼす影響というのは、私も知事さん御承知のように北海道を地元とする国会議員でございますが、北海道の他の炭鉱経営企業は、いずれも非常な苦心をしていま経営をしております。この他の会社に対しても、今後第二、第三のこのたびの夕張のようなことが起こらないという保証はない。
そういった場合の影響もやはり考慮しなければならないと思いますけれども、私はその点で実は知事さんはどのようにお考えになっているのかと思いまして、先般知事さんの初の議会における行財政の執行方針をずっと拝見しました。その中でどうも明らかにされておりませんのは、たとえばいま米価問題で北海道の農民も非常な苦況に立たされている。私ども一緒になって何とかこれを解決しなければならないと取り組んでおりますが、この前提になるのは、北海道は日本における主要な食糧の基地であるということでございますが、知事さんの執行方針の中に、北海道が日本においてどういう位置づけをされているか、北海道の開発は日本においてどうか、日本における北海道の開発の位置づけ、意義というものがほとんど私はうかがい知れないのでございます。
ただ知事さんは、世界に結びつく北海道、世界に開かれた北海道、アジアの一員としての北海道、そういうような表現をあちらこちら使われておりますが、私がお伺いいたしたいのは、今度の炭鉱問題につきまして、これは北海道の開発ということにもちろん大きな影響はありますけれども、同時に北海道の石炭鉱業というものは、日本のエネルギー政策の中で非常に重要な地位を持っているわけでございます。その日本のエネルギー政策の中で他に及ぼす影響という点で、公共料金とも言われる電力料金に筋としてははね返るということが考えられるわけでございますけれども、その点はどのようにお考えになっておられるか、お答えを願いたいと思います。
#13
○横路参考人 いま三枝先生からいろいろお話がございましたが、私、北海道は二十一世紀に向かって日本の中で一番ある意味で言うと発展の可能性を持った地域である、政府のこれから策定される四全総の中でもそういう位置づけがされることを非常に期待をしておる次第でございます。夕張の問題について周辺の炭鉱との関連で御質問ございましたけれども、夕張はやはり一昨年のあの大事故がまずございまして、九十三人の方々が亡くなられたということから出発をして、しかも昨年の安倍通産大臣の発言、そして山中大臣の発言を受けて、今日それらの発言に期待をした人々が夕張に一日千秋の思いで待っているという経過を抜きにしては考えられないのではないかというように考えております。そんな意味で、やはりほかの地域と違った特別の事情というものがあるのではないかと考えております。
それから電力料金へのはね返りの問題なんですけれども、たとえばこの半年間、一月十一日から六月十六日の為替の変動を見てみますと、一月十一日の二百二十七円四十銭の円高から六月十六日の二百四十二円八十五銭の円安と、常に変動しております。では、その変動によって、買う方の価格は変わるわけでございますけれども、電力料金にはね返っているかというと、そうではないわけでございまして、これは通産の方の認可ということになっておるわけですね。したがって、先ほど言いましたように一ドル当たり二円弱という程度のことならば、その変動の範囲の中で企業努力で吸収される問題ではないだろうか、それがすぐ電力料金にはね返らないということは、こうした変動の現状を見ましても御理解がいただけるのではないかと私どもは考えております。
#14
○三枝委員 その点については私は多少見解を異にするのでございます。知事さんの執行方針の中でも、活力あふれる民主主義の北海道を進めていきたい、その中で、産業界、経済界の皆さんとも今後よく話し合っていきたいという字句がございますので、筋として電力料金にはね返る――金額は私は言っていないのです、恐らくこれは微々たるものですよ。しかし、筋としてはね返るかもしれない。この点について、北電はまだ海外炭はほとんど輸入されておりませんけれども、電力業界その他の意向も、知事さんの執行方針どおり今後よく話し合ってみる必要があるのではないかと私は考えますが、これはいずれ通産省が最終的には判断を下す問題でございますので、午後、大臣にお伺いしたいと思っております。そこで、時間がほとんどありません、知事さんにつきましてはまた別にお話しし合う機会もあろうかと思いますので、有吉参考人にお伺いいたしたいと思います。
先日もお伺いいたしましたが、有吉さんは先日の答申について、さらに山中提案も加味した上で、先ほどのお話では基本的には誤りはないのだという表現をされております。さらに、保安管理体制の面で絶望的であるというお話もあった。不可能だというぐあいに言っておられます。その点は、たとえば資金面はある程度解決したと前提して、解決したということにして、それでもなおかつ有吉さんのおっしゃるように責任は持てないのだ、もう全く不可能であるというぐあいにお考えになるのかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
#15
○有吉参考人 先ほどから申し上げております保安技術職員の不足という問題は、これは私は充足できないと思っております。不可能であろうと思っております。いま、実情を申し上げますと、夕張の閉山に伴いまして北炭の残りの三山は、かねて不足でありました保安技術職員を夕張炭鉱から全部もらって充当しておる、それが実情でございますし、それから北炭社以外の各社の炭鉱におきましても、いかにして保安技術職員を確保するか、これに大変な苦労をしておるのが現状でございますので、そういうのを呼び集めまして必要な数を満たす、あるいはこれから訓練、教育をいたしましてという考え方もございますけれども、これはとうていむずかしい、私はそういうふうに考えております。
#16
○三枝委員 有吉さんのお考えはわかったわけでございますが、時間が参りましたので、一つだけ横路さんにお伺いいたします。先ほどの御発言の中に、今度の案は最善の案であるという表現がございましたが、これは最善、ただ一つの妥当な案であるというぐあいにお考えなのか、あるいは次善の案を別にお持ちなのか、その点を聞かせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
#17
○横路参考人 私が申し上げましたのは、山中通産大臣から、先ほど一番初めに陳述いたしましたその枠組みの中で道内のいろいろな意見の取りまとめを行いまして、その中でまとめた案でございますが、考え方はいろいろな考え方が正直に言ってございました。その中から、山中通産大臣が責任を持って石炭協会は説得をするという御発言もございましたし、できるだけ通産省、通産大臣の権限の枠の中でできる案にした方が実現の可能性があるんじゃないだろうかと私ども考えまして、あのような案を宇野大臣に提出をしたという次第でございます。ただ、先ほども申し上げましたように、昨日、宇野大臣とお目にかかったときに、道案を含めてそのほかのいろいろな考え方についてもいま事務当局に検討させているというお話が大臣の方からございましたので、私どもとしても、示された枠組みの中では道案は最善の案だというように考えておりますが、通産省の方でまださらにいろいろなお考えがございまして、道に対してこういう面の協力をしろというような話がございましたならば、地方公共団体としてのいろいろな制約はございますが、その枠の中では最大限の協力をさせていただきたいという旨、きのう通産大臣にお話を申し上げてきたところでございます。
#18
○三枝委員 これで質問を終わります。参考人の皆さん、どうもありがとうございました。#19
○武藤委員長 岡田利春君。#20
○岡田(利)委員 両参考人、大変御苦労さまです。初めに有吉参考人にお尋ねいたしたいと思うのですが、いわば石炭産業、炭鉱の特殊性から考えて、しかも夕張の場合には非常に深部の、ガスの湧出量の多い鉱区である。露頭とか、きわめて浅部の炭鉱をやる場合には、その開発主体は石炭業者でなくてもできると思うわけです。しかし、この山の炭鉱を開発するという場合には石炭業界以外に開発主体になり得るものはない、これはきわめて常識的だと私は思うのです。したがって、専門家の有吉会長に、この山を開発する場合に他に経営主体になり得るものがあるとお考えになっておるかどうか、承りたいと思うのです。
#21
○有吉参考人 経営主体というのがどういうことを意味いたしますか、要するに、たとえば収支の責任を負うという意味であれば何も石炭業界だけでなくてもいいと私は思っております。しかし、山の開発となりますと、これはやはり石炭業界の技術というものがなければできない、こういうように考えております。#22
○岡田(利)委員 当委員会ではいま夕張問題を中心に意見を聞いておるわけでありますから、いま会長が言われたように、この山を再開発するとすれば石炭業界が中心になってやる以外に他にやれるものはない、これが常識だ、こう私は受けとめたわけですが、それでよろしいでしょうか。#23
○有吉参考人 恐らく常識的には石炭業界がやらなければどこもやるところはないと思いますね。#24
○岡田(利)委員 先ほど会長は、道案に対する電発の問題に触れられて述べられた意見があるわけであります。三枝議員も関連して質問しているわけですが、石炭政策と電源開発株式会社のかかわり合いというのは非常に深いのであります。会長も御承知のように、ボイラー規制法を廃止するときに、改めて電発主体で石炭火力をつくる、これが代案として設定をされて以来、電発と石炭政策は重大密接な関連があるわけです。しかもその政策は、いまになって考えてみれば非常に先見性のあった政策であった。このことが実証をされておるわけであります。したがって、特別会計からも電発に対してそのためのいろいろな措置を講じておるわけです。石炭政策の面で一体、電発にどの程度の資金が投入されて政策を進められたと石炭協会の方ではお考えでしょうか。#25
○有吉参考人 石炭政策として電発に石特の金をどういうふうに割くべきかという御質問かと承ったのでございますけれども、今回の北海道の御提案は、確かに電発というものは、おっしゃいますようにその設立の由来からいたしまして石炭政策と深く関係を持っておるわけでございますが、現実問題といたしましては、電発向けの輸入炭について口銭を取るという問題は非常にデリケートな波及問題をはらんでおる、こう思うのでございます。これは石炭政策といたしまして、今後の石炭政策の財源をどうするかという問題はいずれは当然問題となると思っておりますけれども、ただ現在電発を含めまして、電発といいましてもこれは通り抜けて電力会社になるわけでございますので、広く鉄鋼、電力、一番大手のユーザーさんと、石炭政策に対する考え方をどう調整していくかというのが一つの今後の課題でございまして、そういう問題をこの夕張の再開発という問題に絡めましていま出すということは、それはプラスであるかマイナスであるか非常に問題である。むしろいまのような外国炭が非常に安くなりまして、これから石炭の値上げもお願いをしようというそれが非常に困難な状況にありますときでございますが、こういう現実を考えますと、その輸入炭に対する口銭という問題の及ぼす影響というものはむしろマイナスの方向に当面の問題としてはいくんじゃないか、こういうふうに私どもは考えております。#26
○岡田(利)委員 この問題については午後から通産省といろいろ意見をやりとりしてみたいと思っておるわけです。私は、電発と石炭政策のかかわり合いというのは非常に密接不可分の関係で来ましたし、西日本と北海道と何か別だという感覚を持っているようですけれども、これは大間違いだと思うのですよ。この政策を進めたおかげで、西日本関係の電発から卸売で各電力会社に供給された電力によって今日多大の恩恵をこうむっているわけです。これが実態でしょう。ですから、何か迷惑をかけるなんというのは実態とは違うのです。先見性ある石炭政策を進めたおかげで安い電力がすでに供給されているのですね。これが実態なんですよ。このことだけをまず指摘をしておきたいと思うのです。次に、横路参考人にお伺いしますけれども、知事の提案について道議会内に不協和音があるなどと新聞に報道もされておるわけですね。これは道新にも出ました。したがって、この北海道提案に対して道内各政党、各界はどのような態度を表明しているのか、この点ひとつ明らかにしてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#27
○横路参考人 私ども、山中提案を受けて以来、道内の各関係の団体、各議会の皆さんともいろいろと意見の交換をしてまいりました。まず六月二十三日には、道議会を初め道内経済団体や労働団体など関係九団体で構成する石炭対策連絡会議というのが北海道にございますが、これを開催し、北海道案を説明いたしましたところ、全面的に支持する旨のコンセンサスを得ておりますし、六月二十八日には、道議会の石炭対策特別委員会において一致して道案を積極的に推進することを決定をして、国に対し道案による山の再建を要請していただいておるところでございます。なお、先日そのような新聞報道がなされましたけれども、一昨日、道議会におきまして、道議会石炭対策特別委員会の決定と同様である旨確認をされておりまして、そのような経過から私としては、広く関係者の御理解をいただいておるというように確信をしておる次第でございます。
#28
○岡田(利)委員 北海道案についていろいろな批判といいますか御意見も出ておるようであります。この機会に率直にお聞きいたしたいと思うのですが、北海道案は地域問題という視点が全然ない、地域問題としてはとらえてないという点、あるいはまた北海道案は赤字がふえれば、一応トン当たり百円という電発海外一般炭の輸入の口銭ということを基礎にしておりますけれども、これはずんずん上乗せのおそれがあるんだという意見、また道債の発行や保証ということについては全然しないという考え方に対しての批判、こういういろんな批判とか意見が私の耳にも入るわけであります。この点について横路参考人の率直な御意見をひとつ承っておきたいと思います。#29
○横路参考人 先ほども三枝先生の御質問にお答えしたとおりでございますが、率直に言いまして道としてもいろんな問題を考えました。しかし、道内的なコンセンサスは、石炭政策は基本的にはやはり国の責任で果たさなければならない問題であるというように考えております。夕張新炭鉱の再建問題は、山中通産大臣の要請にこたえて道の基本的な考え方を提出したものでございますが、もちろん北海道の地域問題としての側面もあることは十分認識をしております。したがいまして、これまでも実施に踏み切ったことのない出資について検討する旨を表明しておりますし、仮に新会社が発足した後の資金あっせん等についても既存炭鉱同様手当てをしていきたいというように考えております。
このほか、地域の振興対策としては、産炭地市町村特別対策資金等の優先配分や企業誘致などにも努めて、地域的な対策も道として進めているところでございます。
また、赤字対策についてでございますが、石炭協会の答申書は、専門家の方々が八カ月を費やして資金、経理面を検討しており、しかもこの検討に通産事務当局の方々も参加された権威のあるものだというように私ども承知をしております。しかし、実際、新会社が採炭を開始して、予想しない事態で資金不足が発生した場合には国の御協力をいただかなければなりませんが、道としてもできるだけの支援をしなければいけないというように考えております。
次に、道債の発行や道の債務保証についてでございますが、道債の発行は自治大臣の認可事項でございまして、また仮に発行した場合でも、償還期において国から財政措置がなされる見通しが立たないことから、なかなかむずかしい。また、道の新会社に対する債務保証は、これは法律によって原則的に禁止をされているということにございます。
いずれの方策もそんな意味で、一つには北海道の将来にわたる財政を危機に陥れるというような心配もございまして、いまお話し申し上げました道債の発行であるとかあるいはその債務の保証というような点は避けて今度のような提案になったという次第でございまして、御理解をいただきたい、このように思います。
#30
○岡田(利)委員 有吉参考人にもう一度お伺いしておきたいと思うのですが、先ほども述べられているように、この検討結果の答申については学識経験者の意見も十分含んで、そしてまとめて答申されました。したがって、伊木調査団の保安対策の答申も全面的に入れて、これを克服するという前提に立って組まれた。伊木参考人も当委員会で、この点については、十分保安体制については盛り込まれている、このような意見があって、そういう意味ではこの内容は妥当であるという意見も述べられたわけです。また有吉参考人は、この資源は将来活用されなければならないという考え方は私も持っている、そういう意見である。伊木参考人もまた同様な意見を当委員会で述べられておるわけです。そうしますと、採算面の問題が、これは午後の議論もあるわけですけれども一応解決するとすれば、あとは会長がいま言われた保安管理の問題なんですね。問題は、石炭各社が日本の石炭産業を歴史的にその使命を全うさせるという決意と、個々の会社に連帯感が一体あるのかどうかということがいま問われているし、今後も問われ続けるであろう、こう私は思うのであります。その気持ちがなければ何をやってもだめなわけですよ、どっかの会社が引き受ければいいですけれども。こういう問題は、国家的な面としてやるとすれば、そういう決意と連帯感というものがしっかりないと、これは何もできないわけですよ。それがあるかないかということが、まず保安管理の問題を解決する一つの方向性ではなかろうか、こう私は思うのです。
もちろん、いまいろいろ意見が述べられました。私も、この内情についてはかねがね検討いたしておるのであります。協会長は初年度の八十三名の保安技術職員をも確保することはできないと断定されたのですが、ちょっと言い過ぎではないでしょうか。そういうことはないと思うのですよ。決意と連帯感があれば、それは必ずできます。全然いないわけでもないし、足りないところはそういう決意と連帯感があればできるのです。私はそう思うのですね。ただし将来にわたって二百四十三名の、しかもパネルシステムの採炭方式で石炭を掘る、こうなると相当高度な保安管理面が要求されるという点は同感であります。そのためにどうするかというのは、約三年間あるのでありますから、その手だてを考えれば不可能なことではないのではないか。だがしかし、むずかしさはありますよ。非常に簡単だなんということを私は言っているのではないのです。そういう点について、もう一度御意見を承っておきたいと思うのです。
#31
○有吉参考人 私ども石炭業界といたしまして、もちろん友山の一つがつぶれる、再開発できないということを望んでおるわけではもちろんありません。事故を起こしました当初におきまして、これはやはり石炭業界で何とかやるべきじゃないか、こういう意見が出たのであります。実のところを申しますと、私は内々数社の社長には、これはやはり業界で何とかしないといかぬじゃないかという相談もしたことはあるわけであります。ところが、その後夕張の実情というものがわかってまいりますにつれまして、これはとてもという空気になったというのが実情でございます。それからもう一つ私が申し上げたいのは、先生のおっしゃるような、このままでは石炭政策への影響というものがあるが、これでいいのかという点、それは私の方としても重々考えておるわけでございますが、ただ現実問題を私は言っているわけでございます。先生方の応援も得まして、役所にもまたいろいろ御努力をいただき、ユーザーにも御理解をいただきまして、現在まで第七次にわたる石炭政策というものができておるわけでございます。そして二回にわたるオイルショックで石炭見直しというチャンスもございました。しかしながら、なおかつ石炭は赤字です。平均いたしますと四百円近い赤字、そういうところに根本の問題があるのだ。保安技術職員がなぜ来ないかというのも、いかにしてそれを確保するかに苦労しているのも、人が来ないからでございまして、そういう見通しの余り持てないところには来ない、そういう根本につながっておるわけでございます。
私は、おっしゃるように各社が人を供出いたしましてやったらやれぬことはないじゃないか、こういうことはわからぬではございませんが、では各社が供出できるような状態にあるのか。それこそ一生懸命になって、自分のところの保安を守るために保安技術職員というものを養成し確保して努力をしている、それが実情であります。さっきもちょっと申しましたが、北炭さんのほかの三山は、夕張の保安技術職員を閉山とともにすぐに欠員補充ということで引き取られた。それをひとつ返してもらえばスタートのときの保安要員を確保できるじゃないか。こういうことで、つじつま合わせは合うかもしれませんが、実際にそれを供出できるかと言いましたら、真谷地にしろ幌内にしろ空知にしろ供出できないというのが私は実情だろうと思うのです。それは一人か二人、ごくわずかな人はあり得るかもしれませんけれども、そういう問題ではないかと思っております。
それで、先ほども言われましたように、やるとしたら外国ではやはり資本を持って技術を持った者が請負でやればいい、そういう形態もございますけれども、いま恐らく日本で、金は出すわ、どこか請負の炭鉱技術者を雇ってやる、いまの石炭の置かれておる現状でそういう資本家はいないと思うのですね。そうすると、やるのはやはり石炭業界がやらざるを得ないわけでございまして、私どもは本当に保安が確保できるのかと判断せざるを得ないと思うのです。やらない人がいろいろとああこう言うのは簡単でございますけれども、事故でも起こしたら大変なことでございまして、そこをひとつ御理解を願いたいと思います。
#32
○岡田(利)委員 いまの御意見であれば、大体私も耳を傾けて相当聞ける御意見だと思うのですよ。内容的には若干私も意見がありますけれども、もちろん基本的に石炭産業の安定性がなくて技術者やあるいはまた有能な若い労働力が集まることにはならぬということは、いままでもわれわれは議論して、そのために政策展開についていろいろ論議をしてきておるところであります。そこで、かつて田中角榮氏が通産大臣の時代にこういうことを言いました。炭鉱は民有、民営、私企業かもしらぬけれども、いまわが国の炭鉱というのは国家管理下にあるという、そういう認識が当然だ。私は、きわめて当を得た田中角榮氏の認識だと、当時そう思いました。第五次政策のときです。この点について会長はどう思われますか。
#33
○有吉参考人 おっしゃいますとおり、国の金もずいぶん使わせてもらっておりますし、全くの私企業体制とは違ったニュアンスを持っておると思うのでございます。しかしながら、これを国家管理とか国営とか、そういたしましたら、私は働かないと思いますね。やはりこれは一生懸命やって努力をするという姿勢でなければ、国の金を浪費をいたしまして、しまいには本当にどうするんだということになっていくのではないか、こういう気がいたします。民有、私企業という形におきましていかに政策を進めていくかという方法はいろいろあるだろうと思うのでございますが、形を国有にしなければいかぬとか、それは一つの飛躍でありますし、大変なことになっていくのじゃないか、こう思っております。#34
○岡田(利)委員 私は、国有にするとかそういうことを決して言っているのじゃないわけです。そういう飛躍したことを考えていませんし、全然そういう意図で申し上げたのではないわけです。認識として民有、民営の私企業の体制にあるけれども、現状は国家管理下にある。〔委員長退席、中西(積)委員長代理着席〕
だって、そうでしょう。需給計画だって全部認可ですよ。炭価だってそうでしょう。法律で決めることになっておるわけでしょう。経理は規制されるわけでしょう。新規の開発は許可を受けなければできないわけでしょう。そして閉山した場合には今度封鎖されるわけでしょう。これだけ条件がそろっておったら、これは国の管理下に明確にあるという意味なんです。その認識に立って、まず今後日本の石炭産業を歴史的にその使命を全うさせるということをわれわれは追求してまいらなければならないのではないかな、私はこう考えておる立場でお聞きしたということを御理解願っておきたいと思います。
そこで、もう一つお聞きしておきたいと思うのですが、有吉参考人が前回の私の質問に対して答えた、この資源は活用されなければならない、そう思います。伊木先生もそう言われました。その言われた意味を、あのとき時間がなかったものですから突っ込んでお話が聞けなかったのでありますけれども、その言われた意味をもう少し具体的にお聞かせ願えないでしょうか。
#35
○有吉参考人 私どもの答申にもございますように、保安管理体制の確立にいたしましてもあるいは経理的な収支の問題からいたしましても現在の再開発はむずかしい、こういう結論でございますけれども、しかしエネルギー情勢と申しますか、これが今後どういうふうに変わってまいりますか、油がいま安くなっておりますが、いつまでもそういう状態であるのかどうか、これは将来のことはわからないと思うのですね。そういう点から言いますと、やはり国産の唯一と言ってもいいような石炭資源というものは将来の活用を考えるべきじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。#36
○岡田(利)委員 横路参考人にお伺いしますけれども、きのう宇野通産大臣にも会われたということを先ほど述べられておるわけであります。道案も収支バランスをとるという一つの案だと思うのですね。午後いずれ質問するつもりですけれども、私は石炭政策のかかわりから言うと、唐突な案だと思っていないわけですよ。それは証明できるのだと思うのです。ただしかし、いろいろな意見があるわけですから、そういう意味で考えますと、たとえば通産省としても、当委員会の意見等も踏まえて最終的に結論を出すでしょうが、特にそういう案があれば、知事として当然それに基づいて誠意を持って協力について検討するという御意思はおありだ、こう思うのですが、その点がどうかという点。その場合、いつでも通産大臣とともに関係者がテーブルに着いてこの問題の解決を図るという点についても積極的な姿勢があると思いますけれども、この点についての考え方を承っておきたいと思います。#37
○横路参考人 ただいま先生から御指摘のとおり、道の考え方につきましては、山中通産大臣から示された枠の中で私どもいろいろ道内で検討いたしまして、各方面の意見も聞きました上でいろいろな制約のもとでつくられたものでございますが、その中では最善のものであるというように考えております。〔中西(績)委員長代理退席、委員長着席〕
しかし、国によってさらに検討がなされて新たな展望が開かれるような御提案がございました場合には、道といたしましても関係者の皆さんと十分協議をして検討してまいりたい。きのうも宇野通産大臣から、道案も含めていろいろ検討を事務当局に指示をしてあるというお話がございましたので、私も枠組みの中では道案が最善のものとは思いますけれども、しかし、夕張の新会社の設立、再建、再開発ということが私どものお願いの一番最終目標でございますから、そのために国の方からいろいろな協力の要請があった場合には、いま申し上げたようなことで、地方公共団体としてのいろいろな制約がございますが、その中で全面的に協力をしていきたいというように考えております。
それから、いまの一つのテーブルに着いてということでございますが、いまたとえば有吉会長のお話をお伺いしましても、やる場合には石炭業界しかないだろう、ただ問題なのは、保安技術職員の確保という点が問題なんだというお話が再三ございました。それならばなお、その保安技術職員というのが一体確保できるものかできないものか、石炭業界、通産省あるいは現地の人たち、あるいは道も含めて一つのテーブルに着いてその辺のところを検討するというようなことも、問題を前向きに解決するために必要なことではないだろうか。そういう御提案があった場合には、私ども積極的に考えて受けとめてまいりたいというように考えております。
#38
○岡田(利)委員 有吉会長にお伺いしますけれども、これは非常にいい機会で、いま産炭構造というのは九州、北海道ですが、九州は三池、松島池島、高島という三山で、あとは北海道に集中しているわけです。しかも一社会一山の状況は非常に深まっているわけですね、一市一町村一山と。夕張を除いてはそういうことに相なっているわけです。したがって、われわれも十年先のことを考えながらいろいろ政策の展開をしなければならぬ、こう思うわけです。そのためには、基本は先ほど言ったように、一つにはわが国の石炭産業の歴史的な使命を間違いなく全うさせるということ、第二は石炭業界が使命感を持って連帯的にそういう目標に向かって進まなければならないということだと思うのです。いわばこれから石炭の問題は、エネルギー政策として一定の哲学を持って、そして先をびしっと見据えて政策を展開しなければならぬ重要な時期に立たされておると私は思うのです。北海道の各山を見てもそうでしょう。今度の七次政策で安定補給金の格差配分をやったわけですね。初めてやった。そしてまた、それでも格差が埋まらない、格差は拡大していく、こういう認識も同じでしょう。北空知四山の対策をどうするか、こういう問題が浮き彫りにされたことも事実でしょう。幌内も依然としていろいろ問題を抱えているという状況もあるわけですね。私はそう考えると、北炭夕張をどうするかという問題、またこの問題を土台にして、そういう全体の問題も考えながら通産省、あるいはまた北海道の道庁、そして石炭協会が虚心坦懐にコミュニケーションをよくして問題を一緒になって解明していく、こういう姿勢がいま求められておる。きょうこの委員会が開かれるに当たってもそういう目で国民は見ておるのじゃないかな、私はこう思うのです。したがって本件についても、通産大臣を中心にして北海道知事も含め、それ以外の関係者も含めてテーブルで話し合う、こういう姿勢が最も望ましいと思うのですが、有吉さんの御意見はいかがでしょうか。
#39
○有吉参考人 話し合いは拒むものではございませんし、おっしゃるような一つの哲学を持つ必要があるということも私はよくわかっておりますけれども、石炭協会のメンバーというのは一つの企業でございまして、現在、さっき申しましたように平均的には相当な赤字でございますが、そういう理想的な考え方をいたしましても現実に保安が確保できるのか心配だ、恐らくは新しく開く山というのはいかなる政府の相当の援助がありましても大体相当大きな赤字になるだろうということはほぼ予想される。こういうものを石炭企業のアカウントにおいてやるわけですから、それはできません、こういうことを言っているわけです。私どもが、おまえの責任においてやれ、こういうふうに言われるから、私どもの判断を申し上げているわけであります。そこをひとつ御理解願えませんと、同じ席に着きましても、私はこう思う、こう言われましても、私どもがどう判断するか、それを聞いてもらうしかないわけです、私どもにやれとおっしゃるなら。そこのところを、こうだからやれるじゃないかと言われましても、私どもとてもそういうふうに思えない、こういうときにはやはりやれない、こういうふうに言わざるを得ないわけでございますので、無意味であるとは申しませんけれども、私どもはそういう考えをしておるということをひとつ御理解願いたいと思っております。#40
○岡田(利)委員 無意味であるとは思わないと最後に述べられたわけですが、私が言っているのは、もちろんこの問題についてテーブルに着かなければならぬわけですが、同時にまた、いま置かれておる状態を見たら、そういういろいろな面についてやはり意見の交換をするということも必要ではないかと思うのですね。ですから、協会長のいまの御意見は御意見として、またいろいろな意見もあるでしょう。そういう面を踏まえる場合には、私はそう無意味ではないと思うわけであります。ですから、無意味ではないという御意見は、そういう呼びかけがあれば一緒になって有吉さんとしてもこの場に出て、そして十分意思疎通ができるように意見の交換を図ります、こういう意思は持っているんだ、こう確認してよろしいでしょうか。#41
○有吉参考人 各方面の御意見は十分お聞きするつもりでございますし、私どもの意見も申し上げたい、こう思っております。#42
○岡田(利)委員 有吉参考人も答申の方も、いまの政策を前提にして計算されて、ああいう答申をされたわけですね。そして、一方においては赤字は四百億円ないし五百億円ある、現在の炭鉱は安定していない、だから技術職員も労働者もなかなか集まらない悩みがある、しかも青息吐息であると率直に述べられておるわけですね。そうしますと、北炭夕張問題のみならず、やはりいま石炭産業全体としても基本的に問題があるんだということを率直に意見として述べられたと私は思うのです。私も、たとえば今年度予算案審議に当たって分析をしてみますと、もう石炭鉱業安定化の予算というのはどんどん減っておるわけですね。二、三年前四〇%のものが三三%になっておるわけでしょう。どんどん減っておるわけでしょう。ウエートも低いわけです。そういうような状況の中で炭価の方は上がらない。いま何か非公式には下げると言ってきておるのじゃないですか、流通費の軽減を、鉄鋼なんかの方からは。しかし、西ドイツの例を見ますと、やはり炭価政策というものは基本的にずっと一貫した形でとられておるわけです。電力に対してもしかり、原料炭に対してもしかり。油には財源の一〇%の関税はかけておるけれども、石炭には消費税も何もないわけですね。そして外炭と競合しますよ。いや、それは安定引き取りをやるんだ、優先引き取りはやるんだと、こう言うけれども、なかなかその装置はできていないわけでしょう。最近、原料炭にその傾向がすでに出始めている。結局、政策ではいろいろ書いているけれども、装置が機能しないわけですよ。だから第七次政策では、そういう意味で、いま再検討をすぐしなければならぬかどうか知らぬけれども、問題点がやはり出てきておるということは率直に言えるんだと思うのですね。
私は、そういう意味で考えますと、もう一歩そういう哲学を持って歴史的な使命を全うするためにこうしなければならぬというものがやはり自主的に出てこないと、なかなか議論も進まないのじゃないかと思うのですよ。われわれが幾ら意見を言っても、いや、専門家の方の、経営をやっておる人が納得していますよと言われれば終わりでしょう。私は、政策議論する場合にその点にいつも問題があるなということを感じながら今日までやってきておるわけですね。そういう意味で有吉さんとして、いま当面、では何を最低限やれば多少安定する、こうお思いでしょうか。
#43
○有吉参考人 石炭政策のお話になったわけでございますが、私もずっと、たしか第五次、六次、七次と石炭政策に関与してまいっておるわけでございます。おっしゃいますように快刀乱麻を断つような、すきっとした形になれば一番いい、こう思っておりますが、現実問題としてはなかなかそういきません。ただ、この六次、七次という政策におきまして、考え方としては相当前向きの、私どもが基本的に要望いたしておりますのは石炭業界が平均的にコストを償うようにしてほしい、これが根本でございまして、それを財政とユーザーの協力によって達成してほしいというのが私どもの基本的なお願いでございます。大体そういう性質の内容が第七次答申には一応盛られておるわけでございます。つまり炭価というものは、コストと外国炭の市況、外国炭の価格というものを参考にしながら、石炭企業が自立できるようなそういう形で考えていくべきだということは、この第七次答申においてはうたわれておるわけでございまして、問題は、それがそのとおりに実施できないところに問題があるわけでございます。幸いに昨年は、大体そういう趣旨に従いまして石炭のコストというものをユーザーさんにおかれましても相当詳細に内容を検討してくださいました。これは私どもとしては非常にありがたいことでございまして、それまではもう石炭のコストの内容なんというものはほとんどチェック、検討するところまでいかなかったのでございますが、昨年は相当それをチェックされまして、これは認めよう、これは認めまい、そういうようなところまでいったのでございます。ところが、御承知のように石油が下がり、外国炭が非常に下がった現状におきましては、第七次答申の趣旨はわかってはおるけれども、なかなかいまユーザーさんも、おれの方も大変困っておるのだというお気持ちで、実施できないのですね。私は、石炭鉱業審議会需給部会において石炭の値段は決める、こうたてまえとしてはなっておるのだから、ひとつそういうふうに運んでもらいたいということをずいぶん口を酸っぱくして審議会の席では言ったことがあるのでございます。しかし、世の中皆そうだろうと思うのでございますが、実際問題としてはユーザーさんの了解を得なければ決まらないわけです。そこのところに――まあしかし、もう一歩何とかこれを考えないと、という気持ちでおります。#44
○岡田(利)委員 時間が来ましたので終わりますが、最後に横路参考人に。自治体というのはいろいろな制約があることは先ほど述べられたとおりであります。制約が取り除かれればそれでまた対応する方法もあるでしょう。いずれにしてもこの問題はそう長く放置できる問題ではない、こう私も認識をしております。したがって、通産大臣ともこれから会われると思いますけれども、そういう意味でぜひ積極的なこれに対する対応をされますことを心から期待を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
#45
○武藤委員長 斎藤実君。#46
○斎藤(実)委員 最初に横路参考人にお伺いをいたしたいと思います。知事さんとしては、山中前通産大臣からの要請がありましてから道としていろいろな角度から検討して今回の案になったと思うわけでございますが、御承知のように石炭協会の答申では、採算性あるいは保安技術職員等の確保に問題があるといたしまして、開発困難と結論をつけているわけでございます。こうした中で道庁が再建方策を検討して取りまとめるに当たりましては大変御苦労されたことだと思うのですが、先ほど横路参考人から、具体的に夕張の関係者の困難な立場、あるいは北海道の基幹産業のエネルギーを何とか振興しようということで詳細に陳述があったわけでございます。これからまた午後から通産大臣とも質疑が行われるわけでございます。
そこで、率直に申し上げまして、夕張の再開発は非常に厳しい状況下に置かれておるということは知事さんも御承知のとおりと思うのですが、夕張新炭鉱の再開発のために、知事さんは政府に一体何をしてもらいたいのか、具体的にお考えがあれば率直にお尋ねをいたしたいと思います。
#47
○横路参考人 ともかくぜひとも一日も早く再開発に踏み切っていただきたいということに尽きるわけでございます。夕張のこの炭鉱は、まだ七年しか採掘しておりませんで、埋蔵炭量は豊富にございますし、しかも非常に優秀といいますか、貴重なエネルギー資源になっているというように確信をしております。待ちわびている千人の人のためにも、その決断をしていただきたい。同時に、通産大臣から結局石炭協会にお願いをして、これはやっていただくしかないわけでございまして、そのことに当たって石炭協会の方でも、いろんな条件なり御意見なりあろうかと思いますが、国として石炭協会を責任を持って説得をまずお願いをいたしたい。同時に、現行制度にとらわれることなくあらゆる方策をお考えをいただきたい。大変勝手なことではございますが、率直なところを申し上げまして、一日も早く決断をして、そのためにひとつ石炭協会を説得し、現行制度を含めてさらにいろいろな方策についてお考えをいただければ、私どもとしても御協力できるところは御協力していきたい、このように考えております。よろしくお願いします。
#48
○斎藤(実)委員 有吉参考人にお尋ねをいたします。先般からこの委員会でいろんな陳述をされたり、私も御意向を伺っておるのですが、石炭協会としましては八百八十八億にも達する巨額の赤字が見込まれる、採算がとれない、これが一点。それから保安技術職員の確保がもう困難である。先ほども有吉参考人からるるお話がございました。率直にお尋ねをいたしますが、この二つの大きなネック、この二つの問題が解消される、こういう前提に立った場合に経営主体を引き受けるというふうになるのか。前提ですよ。いま有吉さんが、赤字がもうとても大変だ、それから技術職員の確保が不可能だ、この二つの問題が解決をされれば経営主体になるというお考えがあるのかないのか、率直にお尋ねをいたしたいと思います。
#49
○有吉参考人 そういう前提を置いての御質問でございますから、お答えしなければならぬのでございましょうけれども、私どもはそういうふうにならないと思っております。#50
○斎藤(実)委員 ならないという御答弁ですから、それはそれでまあ結構です。一つお尋ねをしたいのですが、エネルギー資源が乏しいわが国でございますから、エネルギー政策の中で石炭産業というものはどういう位置づけと申しますか、石炭協会として石炭産業というものをどういうふうにごらんになって位置づけておられるのか、まずそこからひとつお尋ねをいたしたい。
#51
○有吉参考人 現在の日本の石炭、国内炭の生産量は千八百万トン何がしでございまして、西ドイツとかイギリス等のように量的に国のエネルギーに占める位置というものが大きくはないわけでございます。かつては御承知のように六千万トン近くまでの石炭を出したわけでありますが、油に押されたときに全部スクラップしてしまったというのが現状に至ったなにでございますけれども、ただ私は、千八百万トン、そのうちの千三百万トンぐらいは一般炭で残りが原料炭、そういうところじゃないかと思うのでございます。私が常日ごろ申しておりますのは、それにしましても、たとえば一般炭の千三百万トンとか千四百万トン、そういうものを仮にこれで発電をいたしますと、七百万キロワットぐらいの電力はできるわけでございますし、これだけの石炭を海外から発電用に入れるということになりますと、これはなかなかそう簡単ではないわけでございます。そういう意味で、やはり大きくはセキュリティーの一端を担っておるのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
それからもう一つは、私は探鉱技術というものを温存すべきじゃないかと思っておるのであります。どうしても日本はエネルギーというものを海外に頼らざるを得ないわけでございますし、油とか天然ガスと並びまして、やはり将来は石炭というものを海外から相当大きく輸入することになるわけでございますが、安定確保、海外からの供給の安定、これを図る一つの大きな方法は、日本が金を出すということと同時に技術を提供する、これにあると私は思っております。
いま、外国炭は安い安いと言っておりますが、これは大半が露天掘りの海外の炭鉱だから安いわけでございまして、話は飛びますけれども、いま日本と同じように地下六百メートル、七百メートルで掘っておりますイギリスとかドイツの国内炭価格というのは、日本の国内炭価格よりも、為替レートもございますが、円貨に換算いたしますとちょっと高いのです。その辺をひとつ御認識願いたいと思うのです。非常に安いのはオーストラリア、アメリカ、南アフリカ、カナダといったような、そういう露天掘りとか非常に採掘条件のいいところの炭は低いのでございますが、私の申し上げたいのは、日本の持っております技術は、アンダーグラウンドの地下採炭の技術です。世界的にはだんだんやはりオープンカット、露天掘りから地下採炭に入っていく傾向、入っていかざるを得ないのです。そういう意味で技術の温存、後継者をつくって、金と並んで、その技術を持って海外の石炭と結んでいくというところに、私は国内石炭産業というのを温存していく大きな意味があるのじゃないか、こういうふうに考えております。
#52
○斎藤(実)委員 有吉さん、先ほど私の、どういう条件が満たされれば経営主体を引き受けるかというのに、できないということでございますね。これは具体的にどういう条件が満たされればこの経営主体になるという話を私は聞きたかったのでありまして、頭からもうそれはないなんという、そういう答弁を聞くために私は質問したわけじゃないのだ。それでは全くもう石炭協会が日本のエネルギー資源を何とかしようという責任を放棄することになるのであります。どういう条件が満たされれば、あるいは政府なりあるいはいろいろな機関が手当てをした場合に、それでは私の方もまた考えましょうとか、あるいは態勢を整えて検討しましょうかというお話を私は聞きたかったのでありまして、もう一遍ひとつ御答弁いただきたいと思います。#53
○有吉参考人 私どもの答申に書いております保安管理体制とか技術的な構造の完成とか、あの答申に書いておりますような内容が実施できればということが一つの条件だと思います。もちろん赤字であっては問題にはなりません。そういうことでございます。#54
○斎藤(実)委員 これから午後からまた通産大臣との質疑があるわけでございますが、先ほどずっと有吉参考人のお話を伺っておりますと、言葉が悪いかもしれませんが非常に消極的で、もうこれはどうにもならぬ、投げたというそんな感じを私は受けるのですが、そういう感じなんですか。それとも衆知を集めて夕張を何とか再開しようというお気持ちがあるのかどうか、その辺ちょっと伺っておきたいと思います。#55
○有吉参考人 前にもちょっと申しましたように、かつては、これは協会でみんなでひとつ考えなければいかぬかなという気持ちでおったわけでございます。また、友山の一つが消えていくということは私どもとしても耐えがたいことでございますし、石炭政策にも影響いたしますので、そういう気持ちであったのでございますが、その後検討を加えていきますにつれまして、これはやはりちょっとむずかしい、こういう結論になったというのが実情でございます。#56
○斎藤(実)委員 時間が参りましたので終わります。#57
○武藤委員長 小渕正義君。#58
○小渕(正)委員 まず横路知事にお尋ねいたします。知事に就任されて地域のこういう大きな問題を抱えられて大変御苦労なさっているわけでありますが、端的にお尋ねいたします。山中前通産大臣から、夕張再開の前提は地方自治体としての道もぜひ一枚かんでもらいたい、それがまずすべての前提になるということでのお話から、道として検討された結果、ひとつ新しい会社の出資にも応分に応じていこう、しかしながら新会社が発足したといえども採算性については収支的には見通しはきわめて暗い、そういう問題の解決策として一つの具体的な、電発の海外炭について上乗せのアイデアを出されておるわけですね。
それで私、先ほどからお話をずっと伺っておるわけでありますが、確かにそういった一つの具体的なものを、採算性を何とか収支を合わせていくための一つの提案として逆に通産の方に問題を投げかけられておるわけでありますが、このような具体的なものまで示すことが果たしてよかったのかどうか。ということは、確かに新会社の出資に応分に応じていきながら、しかしながら条件その他を考えると収支はきわめて困難、そういう意味では国の積極的な何らかの施策が欲しい、それが前提条件だ、そういった一つの問題提起でもよかったのではないかという気がするのですが、あえてこれを具体的なこういう問題まで踏み込まれていることから、逆に今度はこの問題に対する当否の論議がまたいろいろ世間に出てきておるわけですけれども、そこらあたりについては通産当局等から、そういった具体的なものについてまでの要望的なものか何かがあったのかどうか、その点ひとつぜひお聞きしたいと思うのです。
#59
○横路参考人 山中通産大臣からのお話は、国が協力するにしてもともかく新しい形でないと新鉱開発資金というのを出すわけにいかない、その受け皿をひとつ道が出資することによってつくってくれというお話でございました。ただ、地方公共団体が出資する場合に初めから赤字とわかっている会社に出資をするというわけには実はいかないわけでございまして、これは議会の方の議決をいただかなければならないわけでございます。そんな意味では、やはりこの会社の経営が成り立つということ、それからもう一つは二度と事故を起こしてはならないというのが大前提でございますから、そういうことを前提にいたしまして、石炭協会の答申案というのは実は事故調査報告書も踏まえて二度と事故は起こさないという、技術保安面にはかなりいろいろとお金をかけている案になっているわけでございます。そこから八百八十八億という赤字が出てきて、主として経理面、さらには保安職員の問題ということでこれはできないという答申が出されておったものですから、私たちとしてはその辺のところを考えてあの案を宇野大臣に示した、こういうことでございます。趣旨は、出資をするに当たって私どもはやはり赤字会社に地方公共団体として出資できないということから、ああいう知恵を出したということでございます。#60
○小渕(正)委員 わかりました。後でお尋ねいたします。道の判断の中で、いろいろ政策的な問題は別といたしまして、石炭協会が指摘されている保安技術上の問題点、この点については、監督官庁である通産省がこの問題に対してどのような判断を示すか、道としての判断はすべて最終的にはそれに任せたい、こういうようなことだというように受け取っておるわけでありますが、先ほど来からいろいろ言われておるように、どのような政策的なものをするいかんにかかわらず、人的構成、人的な問題で、要するに保安管理職といいますか保安技術者の不足ということは、どうしようもない一つの問題として協会の方から明らかにされておるわけですね。ですからこれは、どのようなと言ってはちょっと語弊がありますが、いろいろ具体的な手を打ったにしても、そういう人たちの人的資源を急に確保できるというのは、そういうものと別の問題になると思うのですね。そういう点については、先ほどからお尋ねしていますが、やはりそういう意味であるから、もうすべてそういった最終的なものに対する具体的な専門的な問題については、監督官庁である専門的な分野である通産当局にすべての判断を任せる、こういうふうなことなのかどうか、もう一度お尋ねいたします。
#61
○横路参考人 保安対策ということにつきましては、通産の事務当局も参画をして、政府による夕張新炭鉱事故調査委員会の結果報告を取り入れて検討されたものであるというように承知をしておりますので、答申どおりに投資を行えばそこは問題がない、技術上は可能であるというように私どもは判断をしております。しかし、これは最終的にはやはり通産省において御判断いただかなければならない問題だと思っております。それから職員の問題でございますが、この問題について私どもは、通産省の強い行政指導によって業界が協力すれば可能であるというように考えております。また、鉱山保安センターにおいて保安技術職員を養成したり、あるいは転職した人たちの保安技術関係の職員の人々も健全な新会社が設立されればもとの職種に戻ることも可能である、問題はやはりやる気の問題ではないだろうかというように考えております。
それから、石炭協会の方でその点大変心配をされておられるようなんですが、石炭協会だけで御心配なさらないで、通産省なりあるいは現実に現場で働く皆さん方とも、たとえば労働組合の皆さんと話をして、では現実に保安職員、技術職員というものはどうなっているのかという点について話し合いをされることによって前進的に解決していく道筋は見出すことができるのじゃないだろうかと私は考えておりますので、ぜひそのような検討を一緒のテーブルに着いてやっていただければありがたいというように考えております。
#62
○小渕(正)委員 次に有吉参考人にお尋ねいたします。前回の委員会でも、再開といいますか、そういう点に非常に大きな期待があるものですから、場合によっては非常に厳しいことなんか申し上げて大変失礼いたしておりますが、前回なお今回、先ほど来からお聞きいたしまして、夕張新鉱の再開発の問題は、いろいろな助成策、政府の新しい政策、いろいろな手だてをとったとしても、最終的には人的問題でひっかかってしまう、そこで問題にぶつかってしまうという感じがしてならないわけです。しかもこの問題は、非常に専門的で特殊な状況に置かれているのが地下産業の炭鉱関係の問題ですから、外部からなかなかはかり知れない問題がございます。そういう意味で、専門的な立場にあられる協会の人がそこまで言われれば、あえてそれ以上のことも私どもとしては何も言えないような感じが実際するわけなんです。だから、そういうことを考えますと、再開発にはどのような手だてが必要なのか、どういう考え方でやればいいか、どういう手段を講じたらいいか、いろいろなことを議論してみましても、全部それは結果的にはむなしいものになってしまって、現実のそこの問題をはっきりわれわれが承知するかどうかにすべての問題がきているのではないか、こういう感じがするわけであります。
そういう点からいきまして、先ほどから何回も言われておるようでありますが、いま横路知事あたりはやる気の問題だということでこの人的資源確保の問題を解決されるように言っていますが、われわれ自身も確かにそういった願望的、期待的意味での意見はあります。また、評論家的なことをいろいろ言えることは言えるのです。しかし、事この問題については専門的でありますから、これは業界の皆さん方の見解を十分尊重せざるを得ないというのが私は率直な立場だと思うのですよ。そういう意味で考えますと、政府が思い切ってどのような手だてを講じてもなおこの問題だけは解決し得ない、当面こういうふうな判断にお立ちなのかどうか。そういう技術職、専門的な知識を持った人がいきなりさっと生まれてくるはずはないわけですから、そういう意味では当然ここ二、三年どのような手だてを講じてもすぐそういう状況の中に応じ切るような態勢にならないというふうにもとらざるを得ない感じがするわけでありますが、そういう意味で率直なところをお聞かせいただきたい、かように思います。
#63
○有吉参考人 先ほど来申し上げておりますように、現在保安技術職員で残っておられる人は二十九名しかおられません。そのうち五十四歳以上が九名とかそういうかっこうでございまして、先ほどからも申しておりますように、一番近いのは北炭さんのほかの三つの山に行かれたもと夕張におられた職員ですが、ほかの三山もこれは足りないから採ったのでございまして、なかなか供出は無理だ、また現に粕谷社長にいろいろ聞きましてもとても無理だ、こういうお話でございますし、当面の問題といたしましては私は事実上無理ではないか、こういうふうに思っております。それからもう一つ、この保安問題というのは炭鉱一家と申しますか上から下までが同じ山に住んで、山をよく熟知をして、そして新しく入ってきた者を先輩、先山が教育して保安に取り組むということでなければできないわけでございまして、各山から寄せ集めてそういう空気をつくっていくということは事実問題としてはとても信頼ができないという感じを持っております。
#64
○小渕(正)委員 終わります。#65
○武藤委員長 小沢和秋君。#66
○小沢(和)委員 まず横路参考人にお尋ねをしたいと思うのです。そもそも今度、北海道の方からこういうような案が持ち出されてくるきっかけになったのは、山中通産大臣が何とかしてこの山を残したい、そのためには新鉱開発資金なども含めて思い切った手だてが打てるようにしなければいかぬし、そのためには新しい経営主体をつくり上げなければいかぬのだ、そこから道にも一枚かんでもらいたいという要請をしたのがきっかけだと思うのです。だから、そういう意味では、道の方としてはこういう一枚かむという意思表示をしたわけですし、大臣の方からかつて要請を受けたことに対しては十分満足のいく回答を出したということになるのじゃなかろうかというふうに私は理解しておるのですが、いかがでしょうか。
#67
○横路参考人 山中大臣のお考えが、石炭協会の案が再開発不可能ということなので、それを受け取ったのでは終わりである、一%でも可能性があるならばそれに挑戦するのが政治である、そのためには、いま御指摘のとおり新鉱開発資金を出すに当たってもやはり新しい受け皿が必要だ、その受け皿を何とか道も一枚かんでつくってみてくれないか、こういうことでいろいろとお話がございました。私ども、そんな意味で出資をするということについて検討いたしますということを通産に申し上げたわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、出資をするに当たっては赤字だとわかっている会社に地方公共団体が出資をするということにはなりませんので、そこのところの考え方というものも道として示す必要がございまして、そんな意味で私ども案をまとめた次第でございます。そういう意味では通産大臣から御要望のあった点についてのお答えとしては、私ども力いっぱいといいますか誠実にお答えをしたと考えております。
#68
○小沢(和)委員 私も、とにかく北海道は一枚かんでもらいたい、かむという意思表示をすればあとは道に対してはいろいろな意味で迷惑は一切かけない、責任を持って石炭協会を説得したいというのが山中大臣の考え方であったと思うのです。そうだとすると、道としてはこういうものを出したわけですから、当然今度は国が石炭協会に対して責任を持って説得してもらいたいということを道として要請する立場にいまあるのじゃなかろうかと私は考えますが、いかがでしょうか。#69
○横路参考人 全く御指摘のとおりでございまして、昨日宇野大臣にお目にかかった場合にも、大臣の方から石炭協会の方にお話しいただいて何とか石炭協会が腰を上げていただくようにお願いをしたい、同時にまた、そのことに、石炭協会に対して国の方でも御協力をお願いいたしたい、それからまた、私どももいろいろ制約はございますが、通産省の方でそういう方向で何か協力しろとおっしゃるならば、その制約の中ではありますが最大の協力をさせていただきますということを昨日申し上げたわけです。#70
○小沢(和)委員 そうすると、引き続いてお伺いしますが、そういういままでのいきさつからすると、知事がぜひ説得していただきたいと言ったのに対して、大臣はそれを引き受けられたわけでしょうか。どういう態度だったのですか。#71
○横路参考人 詳細については午後宇野大臣に直接お尋ねしていただきたいと思いますが、石炭協会と会ったときにはなかなか厳しいという話があったという大臣のお話をいただいております。#72
○小沢(和)委員 ではこの機会に石炭協会にもその点をお尋ねしたいと思うのですが、先日石炭協会としては大臣に対して、道の提案については非常にむずかしいというような態度をお会いになって表明されたというように新聞記事で伺っておるのですが、その際に国の方から、とにかく道がそういうように乗り出すようにした以上は協会としてもぜひ前向きでこれから再建に臨んでもらいたいというお話があったのじゃなかろうかと思うのですが、その辺どうだったのか経過をお尋ねしたいと思います。#73
○有吉参考人 一日の日だったと思いますが、大臣にお目にかかりまして協会の意見を申し上げました。内容はきょう申し上げたようなことでございます。この保安技術職員の確保というのは非常にむずかしいということと、そのほかに申し上げましたのは道の御提案の開発資金をもう一回出せという問題ですね、これは政府がお決めになる問題ですけれども、これもそういう財源が果たして確保できるのかどうか、協会としてはその辺は非常に危惧の念を持っている。それから電発への口銭の問題につきましては、きょうも申し上げましたように業界としてはいろいろ影響するところもありますが、これも政府がお決めになるのだけれども、果たしてそれができるかどうか、私はこれもむずかしいのじゃないかと思っておりますという意見は申し上げました。これに対しまして大臣は何ら特別の御意見は申されませんでした。ひとつきょうは協会の意見を聞いておく、こういうことで終わっております。
#74
○小沢(和)委員 そうすると、重ねてお伺いしておきますけれども、大臣の側から、道の方がこういうことで一枚かんで再建に積極的に乗り出したいという意思表示だから、協会としてもぜひそれにこたえて前向きで考えてほしいというようなお話は出なかったというわけでしょうか。#75
○有吉参考人 引き続きこの後、道の横路知事さんともお会いをして意見を聞いて考えたい、こういうことでございまして、いまおっしゃったような意見は出ませんでした。#76
○小沢(和)委員 それから横路参考人にもう一遍お尋ねをしたいと思うのですが、私もこの夕張の再建というのは本来は国の責任でやるべきことだというふうに考えるわけです。先ほどから知事もそういうようなお考えは漏らしておられる。ただ、いままでのいきさつからいろいろな制約や前提があってこういうような道としての提案になったというお話なんですけれども、それでは、そういうような制約を考えずに、本来だったらどういうような形でこの再建というのはあるべきだというふうにお考えなのか。この際ですから率直なところをひとつお尋ねをしておきたいと思うのです。#77
○横路参考人 いま夕張で千人を超える人が持っているのは、昨年の閉山のときに当時の安倍通産大臣の、政府が責任を持って業界を説得して再建に向かって努力をするという御発言がございまして、そして石炭協会の方にいろいろな検討を命じた、そういう経過で千人を超える人が期待を持って待っておるわけでございます。さらに、山中通産大臣が一%の可能性に自分は挑戦するとおっしゃられて、さらに期待をふくらませて待っているわけでございまして、そんな意味では国の責任において石炭業界の方でお引き受けをいただいて、何とか一日も早く再開をしていただきたいというふうに考えております。#78
○小沢(和)委員 それからもう一つ最後にお尋ねしたいと思うのですけれども、主として道としては採算制という点からだけ今度の協会の答申について検討したというお話でした。しかし、採算制という点で検討しても、この案というのはそもそも北部の十尺層のそれも非常にいいところだけを掘る、こういうふうにもう前提を置いて計画をしておるというところに非常に無理があるのではなかろうかということを私考えるわけです。もともと非常に大切な国内での数少ない優良な石炭資源でありますから、これを総合的にもうとれるところは丁寧にみんなとっていくというのが私たちの考え方でもあるのですが、そういうふうな総合的な採掘計画をもう一遍考えるようにその可能性を追求していった方が、比較的安いコストで石炭を掘る規模などももっと大きく伸ばしていくことができるのではなかろうか。こういうような点についてもっと可能性を探って、この案を再検討してもらいたいというふうなことも当然要請の中でされる必要があるのではなかろうか、こういうことを私この案を見て思うのですが、この点いかがかということをお尋ねして終わりたいと思います。#79
○横路参考人 夕張の石炭は、ともかく日本のエネルギー資源としては大変良質な炭でございまして、そんな意味では全面的に再開発されることが一番望ましい姿だというように考えております。ただ、今度、道として検討いたしましたのは、山中提案の枠組みの中で私ども技術的にも検討する、ある意味で言うと能力といいますか、そういう力を行政として持っているわけではございません、石炭行政全体は国の専管行政でございますから。したがいまして、石炭協会の答申案をもとにして検討させていただいたということでございます。#80
○小沢(和)委員 終わります。#81
○武藤委員長 石原健太郎君。#82
○石原(健)委員 有吉参考人にお尋ねいたします。石炭業界が再開発を引き受けなければほぼあきらめざるを得ないというような状況のように感じられるのでありますけれども、そうなりましたときには、千人を超す残留労働者の方たちがどうなるかということが大変心配されるわけであります。また一方、聞くところによりますと、炭鉱業界はいずれも労働者の方が高齢化していて再就職の道の心配はないだろうかというような話も聞くわけであります。そういう点に対する業界としてのお考え、御見解をお聞きしたいということと、特に再就労というような問題が起こった場合に、夕張地区において既存の炭鉱に労働力をより大きく確保できるような方策はないものかどうか、その点もあわせお伺いいたしたいと思います。
#83
○有吉参考人 再開発をしないということになりますと、一番の問題は、いま残っておられます千名近い人たちの就労の問題になるわけでございまして、これにつきましては、北炭さんのいま残っております三つの山におきましても、計画を見ますと減耗補充の採用を毎年二百五、六十名はされるような計画になっておりますし、まず第一は北炭さん内部におきましてその方面の御努力を願うというのが一番自然ではないかと思うのでございますが、石炭業界の他社といたしましても、適格者につきましては平均年齢が非常に高うございますので、やはり若い人を雇って若返りを図らなければならないという一つの問題もございますから無条件にというわけにはいきませんけれども、業界におきましてもそういう問題につきましては全面的な協力をしなければならぬ、こういうふうに考えております。#84
○石原(健)委員 横路知事さんにお尋ねいたします。いろいろお話を聞いておりますと、膨大な国費を投入しても赤字が予想される、しかも再度の災害の可能性も全くゼロではないというふうにも感じられるわけでありまして、このような危険を冒して再開発するしか夕張地区の問題を解決する方法はないものかどうか。何かこういうことでなしに地区の問題を解決する方法はないのか。その辺の御見解がありましたらお伺いしたいと思います。
#85
○横路参考人 私は、いまの段階で、これは一つは国のエネルギー政策あるいは広くは安全保障政策とも関連すると思いますが、ともかく国内の資源というものをどう位置づけるかという基本的な問題があろうかというように思います。そういう基本的なエネルギーあるいは安全保障政策の中で、国内資源というものを大事にしようという立場が必要でございますし、またその立場に立ちますと、夕張の炭鉱あるいはあそこの石炭というものは本当にすばらしい良質な炭質でございまして、ぜひその再開発の方向でお願いを申し上げたいというのが私の立場でございます。いま夕張の状況は、先ほど協会長さんが言われましたけれども、黒手帳による収入にだんだん移行しつつございまして、最高で月約十二万ということで、子供さんを抱えている家庭など大変厳しい、苦しい状況にあるわけでございます。私としては、国のそういう長期的なしかも全体的な展望に立った御決断というものをお待ちしている次第であります。
#86
○石原(健)委員 終わります。ありがとうございました。#87
○武藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
午後一時に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
午後零時十一分休憩
────◇─────
午後一時一分開議
#88
○武藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。この際、通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宇野通商産業大臣。
#89
○宇野国務大臣 このたび通産大臣に就任いたしました宇野宗佑でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。御承知のように石炭情勢もきわめて厳しい中でございますが、私といたしましては石炭行政に最善の努力を払いまして取り組んでいく所存でございます。どうか委員長初め委員の皆様方のよろしき御指導、御鞭撻を仰ぎまして、簡単でございますがごあいさつといたします。(拍手)
─────────────
#90
○武藤委員長 午前中に引き続き質疑を続行いたします。三枝三郎君。#91
○三枝委員 本日は大変お忙しい中を北炭夕張の再建に関しまして大臣の御出席をいただいたことを感謝申し上げます。最初に、夕張の再建の問題に入る前に、大臣の石炭政策に関する所信の一端をお聞かせ願いたいと思います。
これにつきましては、さきに当委員会におきまして山中前大臣が次のような石炭政策についての所信を述べております。その中で、「石炭の安定的な供給の確保とその利用拡大を推進するため、引き続き所要の施策を推進してまいりたい」という前提で、国内炭についてこういうぐあいに言われております。「貴重な国産エネルギーである国内炭については、一昨年八月の石炭鉱業審議会の第七次答申の趣旨を尊重し、また、昨年、五年間延長の措置が講ぜられた石炭鉱業合理化臨時措置法等の関連法律に基づいて、わが国石炭鉱業の自立を目指して石炭政策を推進していきたい」、それから海外炭につきましては、「今後の石炭需要の増大に対応するために重要な地位を占めるに至った海外炭については、その低廉で長期安定的な供給を図る」という所信を述べておられたのでございます。
そこで、大臣におかれましては、こういった石炭政策をどうお考えになっていかれるか。特に私は、最近のエネルギー情勢を踏まえまして、この石炭政策のあり方についていろいろと問題があろうかと思いますけれども、国内炭あるいは海外炭それぞれの政策のあり方について大臣の御所見を伺いたいと思います。
#92
○宇野国務大臣 前任者の述べておられます線は私も同感でございます。特に私も先年、科学技術庁長官を務めまして、わが国のエネルギー情勢のきわめて厳しい状況も知っております。したがいまして、国内におきましてもそうしたエネルギー情勢に対処するため、常に代替エネルギーの開発には意を注いでまいったものでございますが、石炭行政もその重要な一環である、私はこのようにとらまえていきたいと思うものであります。なおかつ国内炭に関しましては、いまも御指摘がありましたとおり第七次の答申、これを踏まえまして、十二分に石炭行政に現行制度の枠内でそれを生かしていきたい、かように存じておりますし、また外国炭に関しましても、これはやはりエネルギーの長期安定という意味から、そのことを十二分に頭に置きながらスムーズな運営をやっていかなければならない、かように考えております。
#93
○三枝委員 そこで、大臣いまお述べになられたような石炭政策のあり方を前提といたしまして、夕張の再建問題に入りたいと思います。すでに午前中、参考人として横路知事並びに有吉石炭協会会長がそれぞれ所信をお述べになったわけでございますが、大臣におかれては、すでに横路知事とはきのうを含めまして二度お目にかかってお話し合いをして、また道案を受け取っておられるわけです。また、山中提案が出されまして、それを加味して、さらに有吉石炭協会会長としてこれを検討の上、これまた大臣にお会いになって意見を述べておられるわけでございます。さらに大臣といたしましては、与野党各関係議員の方々と必要に応じてお会いになってきた。そういうような経過を踏まえまして、大臣はこの夕張の今度の再建問題について基本的にどのようにお考えになっているか、これをお伺いしたいと思います。
#94
○宇野国務大臣 六月の十日に私は本職に就任いたしましたが、ちょうど一週間たちました十七日に、横路知事わざわざ御上京の節、寄っていただきました。そして道案なるものを見せていただいたのであります。もうその内容は御承知のところでございましょう。また、石炭協会にもやはり会長にお目にかかりまして、いままでの石炭協会の出された報告書並びに横路案に対しましてもその答えを私といたしまして求めた次第であります。さらには野党の方々、特に社会党の方々には、私は団体の役職の方々を含めまして三度ばかりお目にかからせていただいて、いろいろと御意見を拝聴させていただいております。昨日は一応与党の特別委員会の方々の意見も拝聴いたしております。そうしたときに本委員会が開かれておりますから、私といたしましては本日も各党代表の方々の御意見も恐らく開陳される、かように存じておりますので、十二分にその御意見を拝聴いたしたいと考えておる次第でございますが、いままで承っておりましたそうした内外の声からいたしますと、非常にむずかしい状況にあるのではないかな、心境を申し上げればそういうところでございます。#95
○三枝委員 午前中の横路参考人からの意見陳述では、いわゆる北海道案、横路案では、新会社設立に際して応分の出資を検討している、これが一つ御承知のとおりございます。そしてその項目につきましては、新会社が石炭業界の主導によって運営されることであって、北海道としては経理面で参加するということになるわけでございます。
それから第二項目は、通産省においてこの保安管理体制をどのように今後見ていくか。これは石炭協会の方で、すでに山中提案があって、それを加味してさらに検討して、大臣いまお話がございましたように、すでに有吉会長とはお会いになっているわけですが、この保安の面の見通しを明らかにしてもらいたい、これが一つポイントではないかと思います。
それから三番目は、これが私はこの知事案とは少し見解を異にしているのですが、新会社の事業として一般炭の輸入業務を代行する、そしてそのマージンといいますか手数料で将来生ずるであろう赤字を埋めていく、そういう考え方でございます。午前中、このことは北海道に限らず全国のユーザーである電力会社の公共料金である電力料金の引き上げに影響するのではないかということで、この点は道案としては諸般の制約のもとにこれは最善の案として考えたと言っておりましたが、私といたしましては、その辺は考え方が少し違うということを申し上げております。
それからもう一つは、道の方は新会社に対して債務保証はしないんだ、法的にもむずかしい問題があるので債務保証はしないんだ、こういった案が出ております。
私は、大臣におかれましては、この道案の、いま申し上げました点で、この保安の体制でどういう見通しを通産当局は持っていくかということ、これをやはり一つのポイントにしていますのと、それから海外炭がいま輸入されております。これはだんだんふえるかとも思いますし、また海外炭の価格はエネルギー事情で、原油の価格の引き下げに伴っていま著しく安くなっておりますけれども、そういったことを踏まえて、海外炭輸入業務の手数料の一部を回すという構想、考え方、これが道案の中に出ておりますが、この点について、道案全体でございますけれども、その他お気づきの点もお話しくだされば幸いですが、以上の点についてどのようにお考えになっておられるか、お伺いいたします。
#96
○宇野国務大臣 横路さんといろいろと道案のお話をしまして、また最初の日はそれの説明を受けました。率直に言いまして、私は、いままでそれに対しまして公には一度もコメントいたしておりません。しかし、こうした公の場で御質問でございますから、私としてその後検討いたしましたところを若干申し述べるとするのならば、まず第一点は、知事は、道としては技術並びに保安、これに関しては知識がない、また経験もない、これは国のやってこられた問題である、だから三つに分けた場合に経理だけに関しましてひとつ私の一生懸命に考えた構想を申し述べたい、こういうふうにおっしゃいました。非常に真摯な方でございますから、私もこの案に対しましては耳を傾けた次第でございます。その案の中に、いまおっしゃいましたとおりに、新しい会社にはひとつ海外炭の輸入並びに販売の権限を与えてほしい、それを販売することにおいて、そして赤字を埋めたいと思う、そういうことが確認されたならば道といたしましても若干の出資をしてもいいのではないか、こういうような大ざっぱな話がございました。
しかし、私もとっさにそのときに考えたのでありますが、やはり電発の持っておる使命なり、海外炭が今日輸入制限の対象となっておる等々のことを考えますと、これは非常にむずかしい提案ではないかなと私は思っておりますし、事実その後の調査におきましては、これはきわめて、まあ人に言わせますと眠り口銭を取るのか、そういうふうな批評もあるような案でございます。私は、私の言葉は避けておりますが、人によればそういう言葉すら出ておるような案でございます。特に、その後、私は石炭協会の会長と出会ったことは先ほど申したとおりでございますが、石炭協会の会長といたしましても、いま石炭事情は非常に苦しいときであるから、こういう重荷をいま背負わしていただくということに対してはなかなかむずかしいんだ、そして特に新会社設立に際して経営主体になれということに対しましてはお断りいたします、これはとてもできません、なおかつそうした理由の一つには保安管理体制がきわめて不十分でございます、だからやはり新鉱を再開発いたすにいたしましても、いろいろとそれまでの期間、作業もやっていかなければなりませんが、そうしたところから、さらにはもう本当にいよいよ本作業に入ったというとき等々も考えましても、保安管理には責任を持ちかねます、そういうふうな状態から、協会といたしましては、はなはだ残念だけれどもお断りする以外にございません、こういうふうに私に答えた次第でございます。
大体以上でございます。
#97
○三枝委員 この電発の輸入炭に関しての構想について大変むずかしいというお話でありまして、私も、これは金目の問題ではなくて筋論としても、北海道以外の本州の各電力の負担になることについてはいささか問題があるのではないか、こう考えておりますが、その保安体制、保安技術の面で非常にむずかしいという有吉会長のお話があったわけです。絶望的とかあるいは非常に不可能であるとか、そういうようなお話がございましたが、これは石炭部長さんで結構ですが、どんなに金をかけてもこの夕張の山は保安管理体制の面でもう致命的な欠陥を持っているんだ、どうしてもできないんだというものなのか、ある程度金と時間をかければそれは克服できるんだというものなのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。#98
○弓削田説明員 ただいま保安管理体制につきましてのお尋ねがあったわけでございます。夕張の再開発に必要な保安技術職員は、現在夕張に残留している技術者だけでは大幅に不足する、こういう問題の御指摘が協会長からあったわけでございますが、これにつきましては通産省といたしましても実は同様の理解をしているわけでございます。御案内のとおり、夕張新炭鉱の今後の採掘区域は地表下千メートルから千三百メートルというきわめて深い深度の採掘でございまして、自然条件の非常に厳しいところでございます。したがいまして、こういう厳しい条件のところでの保安の経験を持ち、また実際の操業に当たって、日々変化をいたします坑内状況を的確に把握して、速戦即決と申しますか、そういうような判断のできる高度の技術者の確保並びに育成が必要であることは当然のことでございまして、こういうような技術者の養成確保につきましては各山元でも非常に腐心をしておりまして、私どもとしては短時日に技術者の問題を解決することは非常に困難じゃないか、こういう意味で、果たして十分な保安管理体制がとれるのかどうか非常に危惧の念を持っている、こういうことでございます。#99
○三枝委員 第七次答申の「具体的対策」の中で、「新規炭鉱の開発」という項目がございます。この中にこういうことを言っております。「新規炭鉱の開発を進めるに当たっては、基本的には民間の自主的な判断と責任に委ねるべきである。しかし、政府においても所要の支援を行うべきである」、そして終わりのところにいろいろあるのですが、「更に、需要の裏付けや地元の協力があることが新規炭鉱開発の重要なポイントであるので、需要業界及び地元地方公共団体の協力についても十分な配慮を払う必要がある。」そううたっております。したがって、もう一度お伺いいたしますけれども、この線に基づいて、今度の夕張の再開についてこの線からさらに検討をする用意があるかどうか。これは石炭部長さんでよろしゅうございます。
#100
○弓削田説明員 ただいま先生御指摘がございましたように、第七次答申におきまして、新規炭鉱の開発に関しまして基本的な原則と申しますか考え方が述べられているわけでございます。これにつきましては先生いまお話しになったとおりでございまして、私どもとしましても今後新規炭鉱の開発、これは夕張を含めての話でございますが、基本的にこの線で今後とも対処してまいりたい、かように考えている次第でございます。#101
○三枝委員 それでは、その点はいろいろとこれから検討されるのではないかと思いますが、御承知のように北海道はことしは冷たい夏でございます。私の選挙区でもありますのでよく承知しておりますが、やがて来るであろう冬を控えて、地元の山の人たちは一日も早くこの問題の解決をしてもらいたいということで待っているわけでございます。したがって、通産省といたしましては、そういった情勢もこれあり、また道案も投げ返してきたわけでございますし、また石炭協会の意向も明らかになりつつありますので、さらにこの際自主的に総合的な立場に立ってどう取り組んでいくか。いろいろの手順があろうかと思いますけれども、終わりに、大臣におかれましてはそのあたりを今後どう判断し、どう決断し、そしてこの問題の解決に当たるか。私どもといたしましては、先ほど申し上げました地元の声なき声を身にしみるほどいたく感じております。そういったものを十分に踏まえまして、大臣の御所信をお伺いいたして、質問を終わりたいと思います。#102
○宇野国務大臣 地元の先生方のこの問題に関するお気持ちは、私もやはり政治家でございますから痛いほどよく存じております。しかし、いろいろと皆さん方の御意見も承らなければなりませんので、今後さらに検討いたしまして、大所高所より判断をいたしたい、かように存ずる次第であります。#103
○武藤委員長 岡田利春君。#104
○岡田(利)委員 初めに、三点大臣にお伺いいたしたいと思います。夕張炭鉱災害が一昨年十月発生して以来、安倍通産大臣、そして山中通産大臣、そして宇野通産大臣と三代にわたってこの問題が議論されておるわけです。したがって、ずっとここ一連の経過の上で、きょうまた当委員会でこの問題が議論されておるわけです。
そこで私は、安倍通産大臣の趣旨、そしてまた山中前通産大臣の道庁に対しての要請、この点について宇野通産大臣はどのようにこの両通産大臣の方針を受けとめて今後この問題の解明に当たられようとしているか、その姿勢についてまず第一点お伺いいたしたいと思います。
#105
○宇野国務大臣 前任者はそれぞれ最大の努力をするという気持ちでこの問題に臨まれたと思っております。もちろん私も、石炭行政を預かる者といたしまして、前任者と同じ気持ちでこの問題に臨んでおる次第でございます。山中通産大臣は地域問題ということを考えられまして、だから知事も中心となって今後の対策を講じてはどうかという具体的な提案もなさっておられます。そうしたいわば山中提言に対しまして、先般横路知事から私に対して一つの答えが出たのではないか、こう考えております。そのことに関しましては、先ほどの三枝さんの御質問にお答えしたとおりでございまして、いろいろ私もむずかしい提案だなとは思っておりますが、本日の皆さん方の御意見も聞かしていただきたい、こういうことで本日この席に臨んでおる次第でございます。
#106
○岡田(利)委員 そうしますと、山中前通産大臣が道に対して一定の案を示すように要請した際、また当委員会でも明らかな点を集約すると三点に集約されるのではないか、私はこう思うのです。その第一は、まず北海道庁が一枚かんでほしい、そのことによって政府は開発資金を貸与するというのが一つであると思います。第二点は、経営の主体は石炭業界である。もちろんそれに対して一枚かむという意味は、道は出資するが経営の主体は石炭業界である、これが第二点だと思います。第三点は、債務の保証については一切迷惑をかけない。そしてその過程の中でチッソ方式のようなことが、次元が違うけれども一つの参考になるのではないかという点がつけ加えられて述べられて、いわばこの三点が北海道庁に対する山中通産大臣が案を求める場合の、その後委員会等で明らかになった点を集約しますと大体これが三つの原則である、こう言っていいのではないかと思うのですが、この点はそのように受けとめられておりますか。
#107
○宇野国務大臣 それぞれ山中提案に対するそうした御解釈もあるかと思いますが、いわば知事が中心となってひとつ新しい会社に関する案を出してみよということで出されたということでございますから、私は、その点を受けとめまして、今回道から出ました案は、いろいろ新しい案ではございましょうが、大所高所から考えました場合には、一私企業のためにこうした案はいいのかどうか、これはまた重大な判断を迫られておるのではないか、こういうふうに考えております。なおかつ、助成金そのものに対しまして、補助金に対しましても、やはり最初から赤字が出るというそうした問題に対して補助金を約束することは恐らくあり得ないことであり、またそうしたことが広く他にも波及するということになりましては、これは大変な問題ではないか。だから、山中提言の中におきましても、もし知事が中心となって、そしていわば経営主体、その一方を担ぐくらいのつもりでやったときにはおれはいろいろ考えてみようということではなかったかと思いますが、この間横路知事とお話をいたしておりますと、実は宇野さん、私もいろいろ経理面を計算しましたが、これは赤字は必須でございます、赤字が出ることはこのとおりであろうと私は思います、だからひとつ上乗せをして外炭の輸入並びに販売を許していただけるのならば何とか赤字が防げるのではないかという案でございますのでという説明もございまして、その点、先ほど申し上げましたとおりに外炭の輸入販売というものは、これは御承知のような国内炭というものに対する一つの保護政策的な意味合いも持って実施されておりまするから、それを一私企業に用いることはどうであろうか、こう思いますので、いま山中案の御分析がございましたが、そうした物の考え方に立って私が今日の事態を判断すればいま申し上げたようなことではないか、こう思っておる次第であります。
#108
○岡田(利)委員 道案については後から具体的に質問いたしたいと思いますけれども、いま私が申し上げたのは議事録にぴたっと残っておるわけです。しかも、たとえば経営主体についても、道がそういう技術力もないし、できるはずがないではないか、もちろん出資はするけれども、炭鉱経営という特殊な経営は当然石炭業界が主体でなければできぬではないですか。私もそう思います、こう山中さんは答弁しているわけです。午前中、有吉参考人にも聞いたわけですよ。この特殊な炭鉱をほかでやる人がおりますか、やれる能力がある人がおりますか、経営主体が石炭業者でなければならぬということはきわめて常識的ではないですか。最終的にはそうだというわけです。まずこの点は疑問の余地がないわけですね。道が一枚かんでほしい、なぜかんでほしいのか、それは二度開発資金を出すためである、こう明確に言っているわけですよ。債務の保証についても議論したわけですね。債務の保証については、たとえば道が地方債を出すあるいは債務の保証をした場合に、その損失の補償については、これは一切迷惑をかけないで政府はやります、こう言い切っているのですよ。これは議事録に衆参で明確に残っているわけです。だから、その後の情勢の問題は別にして、山中さんはそう明確に言われたということだけは明らかじゃないでしょうか。(豊島説明員「委員長」と呼ぶ)
#109
○武藤委員長 大臣から先に発言を求めてから、発言してください。#110
○宇野国務大臣 前任者からもいろいろ話は聞いていますが、その細かなところまでは私もどうであったかということは聞いておりません。したがいまして、その経緯に関しましては、当時からおりましたエネ庁長官より答弁をさせます。#111
○豊島説明員 ただいま御質問ないし御指摘のありました点につきまして、当時の情勢について若干御説明申し上げたいと思います。山中大臣が横路知事に対しましてひとつ考えてくれとおっしゃいました本旨は、いわば石炭政策としてはこれ以上のことはできない、事務当局に検討させたところ、だめだということになってしまった、しかしそれではどうかということで、実はこの問題は単に石炭政策の問題にとどまらず夕張という地域社会の問題ではないか、そうするとその地域社会の問題を解決するということについては道ないし夕張市というものも非常に関係があるし、そういう観点から道ないし夕張市もこれに乗り出していただけるということであれば、それなりのことはわれわれとしても応援したい。たとえばチッソの例も出ましたけれども、そういうことで、いろいろと地方債を発行してその資金を賄うということになる、そういうことになれば、そういう観点から自分としても自治省に相談して大いに応援を頼みに行く、まず道がそこへ出てきて、大いに地方振興政策、地域対策として乗り出してくれということを言われたわけでございます。
それとの関連で申しますと、経営主体ということでございますが、実はそうなりますと、この経営についても道としては相当財政面でタッチしてほしいということを言っておられるわけでございまして、そういう観点からいくと、経営はどうかということです。ただ、大臣がはっきりおっしゃいましたことは、炭鉱の技術面その他について道にやってもらうわけにいかぬでしょう、そういう点については当然のことながら石炭業界に助けをかりなければいかぬ、そこまでやってくれということでは決してありません、しかし、その経営に実質的に大いに入ってもらわないと、いわゆる石炭政策の範囲内ではできない、こういうことだと思います。
それから出資をする理由につきまして、出資をしてといいますか参加してくれなければ開発資金は出せないよ、こういうことでございますが、この点につきましては、そういう非常に重要な問題について道がそこまで乗り出してくるということになりますと、開発資金につきましては、同地域に対しましてすでに一回出しておる、そういうところにもう一回出すということについては、現在の政策の面からいって問題がある、法的にもいろいろ問題があるかもしれない、しかしそこまで道がやって乗り出してこられるのなら、通産省としても相当問題かもしれないけれども開発資金ぐらいは出す、こういうことを姿勢として、もちろん相当問題があろう、法律的にどうか、しかし、そこは道の態度によっては乗り出していってもいい、こういうことかと思います。
それから保証の問題その他ございますけれども、これは迷惑をかけないという意味につきましては、道がいまの財政でそういう膨大な金を出せるかどうか、いかに地域振興のためということでも出せるかどうか、こういうことでございますので、そういう場合には地方債の発行も必要なんじゃないか。そうなると、これについては自治省としても一定の基準があるから、そこについては大いに通産省も、山中個人としても自治大臣に話をして大いに協力を求めてもいい、こういうことでございまして、お言葉を返して大変失礼かと思いますが、私ども、山中大臣とこの案の推進につきましては、内容についてはよく勉強をし、打ち合わせをして、そういう観点から山中大臣がおっしゃったというふうに私は受けとめておりますし、詳しく読みますと、そういうふうにお受け取りいただけるのではないか。大変僣越でございますが御説明させていただきました。
#112
○岡田(利)委員 だから、いま長官が答弁されたことを一、二、三と並べればそうなるでしょう。いま私は、北海道の案がどうだ、これに関連して言っているのじゃないんですよ。当時述べられた通産大臣の趣旨を一、二、三と集約して述べれば同じじゃないですか。今後どういう案が出てくるか、いまの案に対してどうかという問題は別ですよ、私は原則的なことを聞いているわけですから。そこで次に、わが国の石炭産業の認識の問題でありますけれども、第七次答申にも私企業、こういう原則がうたわれているわけです。したがって、民有民営の形態にある。しかし、前にも田中角榮通産大臣時代も、私企業形態であるけれども石炭産業は厳重な国家の管理下に置かれている、田中さんはこう明確に述べられているわけです。私は、やはりそういう認識がきわめて当然ではないか、民有民営の形態である、私企業であるけれども厳重な国家管理下にある、これがいまの石炭産業である、こう思うのですが、大臣の認識はいかがでしょうか。
#113
○宇野国務大臣 私は、やはり石炭企業はあくまで私企業である、わが国におきましては、そうした原則を打ち立てていくべきであると考えております。もちろん、石炭行政に関しましては政府はいろいろと責任を果たしていかなければならない、これが現状ではないかと思います。#114
○岡田(利)委員 いまのいろいろな石炭政策は単に通産の行政だけでやっているわけじゃないですよ。法律をすべて設けて、法律に基づいてぴしっとこれは管理されているわけです。こういう産業がほかにありますか。たとえば生産計画でも需要計画でも、すべてあなたが承認しなければどうしようもないんですよ。公示をしなければならぬわけですよ。炭価は、これはあなたが決められると書いてあるわけです。あとわずかなものは別でありますけれども、大宗をなすものは、大臣が法律で決めなければならないんですよ。そうして開発は厳格に規制されておるわけです。鉱区の消滅、これは封鎖されるわけですよ。経理についても厳格に規制されておるわけであります。こういう産業が他にありますか。だから、田中通産大臣時代は、私企業形態である、大臣と同じ、だがしかし石炭産業は厳重な厳格な国の管理下に置かれておる、こう言うわけですよ。それが実態じゃないですか。もしそうでないとすれば、こういうことをぴしっとやっている産業がほかにありますか。大臣の承認を得なければ炭価も何も決められない、こういう産業があって、厳重な国の管理下にあるということが言えるでしょう。いかがですか。#115
○宇野国務大臣 ほかにもあるかもしれませんが、御承知のとおりに現在の国内炭の事情というものを考えました場合には、あらゆる手段を講じて一応外炭よりは割り高である国内炭の引き取りを確実にしていかなくちゃいかぬ、確保しなくちゃいかぬ、そういう線から政府としても諸般の行政でいわば援助もし、また指導もしておる、これが現在の石炭行政であると私は考えております。#116
○岡田(利)委員 問題は、認識がその辺にあると大分考え方が違ってくるのですが、私はドイツに行ったときに日本の石炭政策を説明した、法律はこうなっていると。ドイツでは、非常に日本は国の管理が厳しい状態に置かれておるのですねと言うのです、向こうは。向こうのやり方はまたちょっと違うのですよ。非常に国も援助している。もちろん国家管理の炭鉱もありますよ。一千万トンも出すザールは、政府と州の管理下、出資をして経営しておるのですから。あとは一本化しておるわけですよね、ルール炭田は。ですから私は、法律用語からして私の認識の方が素直に言えばきわめて常識で、しかも適当な表現だと思うのですよ。これは私は大臣の認識がどうかということをお聞きしたかったから質問いたしたわけであります。そこで、今度の北海道提案にいろいろ電発問題が出ているのですが、電発問題についてお伺いしておきたいと思うのです。
まず、いままで電発に対して石炭政策上どれだけのどういう資金が投入をされたのかという点が第一点であります。また、電発以外にも石炭政策の一環として資金が投入されておりますが、どこにどの程度の額が投入されていますかというのが質問の趣旨であります。
#117
○宇野国務大臣 長官から詳細お答えさせたいと思います。#118
○豊島説明員 電源開発株式会社に対する国からの資金でございますが、出資金として会社発足以来四十四年までに、資本金七百六億円のうち、これは民間が一部負担しておりますが五百十一億円ということでございます。ただ、その中には一般的なものがございますわけで、いわゆる石炭政策としての揚げ地石炭火力に関係するものとしましては、三十九年度から四十一年度まで産投特別会計から四十五億円、それから四十二年度から四十四年度まで三カ年で石特から六十億の出資金が出されております。それから、国内炭揚げ地火力発電所の公害対策のために設置されます排煙脱硫装置に対しましては、電源開発株式会社排煙脱硫装置設置交付金が四十九年から五十七年まで約二百三十八億円出されておる、一部未交付でございますが出されております。さらに、電源特会におきましては、石川石炭火力発電所、これは沖縄につくります発電所でございますが、その建設費の補助金として補助金が出ております。以上が補助金でございますが、そのほかに電発に対しましては石炭増加引き取り交付金というものが制度上ございますが、これは電発ではなくて石炭販売業者に対して行われているということで、これは電発に対してのものではないので省略させていただきます。
それから、電発以外にどうなっているかということでございますが、電発以外に対しましては、北海道電力の苫東厚真一号機及び砂川四号機の建設に対しまして、石炭火力でございますが、それぞれ四十六億円それから二十六億円の補助金が出されております。
以上でございます。
#119
○岡田(利)委員 石炭政策上、いま述べられたように産投会計及び石特会計から合計百五億円、排煙脱硫については五十七年まで、私の資料では二百三十一億六千七百万。これはまたことしも十四億予算を組んでいるわけですね。そして来年からまた三年間、十四億四千万ずつ出すわけでしょう。ですから、これがプラス追加されるわけですね。この合計額を計算しますと、大体三百億近い金が出ることになるわけです。そうして増加引き取り金が五十六年まで百七十七億七千九百万。これはもちろん電発に直接ということではなくて石炭会社でありますけれども、割り引いて売るわけですから、それを補てんする。実際は電発のために出したお金であります。こういう内容になっているわけですね。苫東厚真の場合は四十六億四千七百万。砂川はちょっと数字が違うのです、いま二十六億と言いましたけれども二十八億六百万ですか、合計七十四億五千三百万出ているわけですね。そこで、いま電発は決算はどういうことになっていますか。去年の決算で結構です。いわば総合収支でどれだけの黒字になっているのでしょうか。
#120
○小川説明員 五十七年度の電源開発の決算でございますが、収入が三千四百二十九億円に対しまして支出が三千四百二十九億円でございます。その差し引き経常利益は約二千二百万円の計上ということになっております。これが経常利益でございますが、特別損益の差し引きがございまして、ことし五十七年度の場合は渇水であったことから渇水準備金の取り崩しがございましたり、それから公害防止設備の特別償却引当金の法定取り崩し、これが時期に来ておりますために取り崩した。そういった特別損失関係の処理がございまして三十億円取り崩しました。したがいまして、税引き前の利益は締めて三十億円でございまして、法人税約二十億円を差し引きまして当期利益は十億円、こういう決算になっております。
#121
○岡田(利)委員 電発の石炭火力発電所の卸売電気料金、これは毎年通産大臣が認可しておるわけですが、どうなっていますか。#122
○小川説明員 電源開発の卸売認可料金は個々の発電所単位で計算して決めて、これを認可をしておるわけでございますが、これを束ねまして水力、火力ごとの分類で申し上げますと、水力の平均は七円二十四銭になっております。それから火力が平均でまいりまして十二円七十一銭でございます。ちなみに火力のうちの石炭火力だけで幾らになるかということでございますが、石炭火力だけの平均は十二円五十二銭でございます。それぞれ個々の単価を平均したものでございます。
#123
○岡田(利)委員 磯子が十一円九十九銭、高砂が十一円四十九銭、竹原一号が十三円十八銭、竹原三号機が十二円六十八銭、外国炭オンリーの松島火力は十三円八銭と、非常に安いわけです。これはやはり政策の先見性があったということをこのことは立証しておるわけですね。エネルギー政策の変化で、二度にわたるオイルショックがあり、今度は逆ショックとは言っていますけれども、いまの水準から言っても一連の電発に石炭火力を建設させてずっとやってきた政策は非常に先見性があったということをこれは証明しているわけですよ。このことをまず理解願わなければいかぬと思うのです。そして石炭政策の見地から、それぞれの先ほど述べられた資金も投入をされてきた。電発がそれを受け持ってやってきた。それが非常に効果をあらわしている。そのおかげで、それぞれの発電所から電力会社に卸売りした場合、その電力会社はそれで非常に恩恵をこうむっておるわけですね。電力会社が恩恵をこうむっておるということは、その地域の人々、電気を使う企業あるいはまた個人にもやはり恩恵が広く行き渡った、エネルギー政策上非常に先見性のある政策だった、こういうことになるのではないかと思うのですが、この私の考え方についてはいかがでしょうか。#124
○弓削田説明員 先生の御意見でございますが、確かに御案内のとおり電発が石炭火力を建設をし、これに対して私ども石特の中で実は出資もしてまいっていましたし、さらに先ほどお話がございましたように、排脱の関係の費用につきましても、非常に公害規制が厳しくなる中で石炭の引き取りがなかなか進まない、これを促進するためにそういう排脱の費用についても交付金という形で実は見てきたわけでございます。いずれにいたしましても、これらの措置といいますのは、石油の急激な進出の中で石炭市場が奪われていく状況の中で、いかに国内炭の需要を確保するかという観点からすべてなされた措置でございます。これは私どもが予想しましたように一応の政策目的は達成し、また現に達成しつつある、こういうふうに私ども考えております。#125
○岡田(利)委員 余り回りくどい答弁をしないで、やはりエネルギー政策というのはロングランで見なければいかぬわけでしょう。そして国内資源も大事にしなければならぬ。そういう点で、一定量石炭火力発電所をつくって、しかも電発に新しく業務の追加をしてやってきた。そういうことがみごと効果をあらわしておるわけですよ、油より安く現在供給いたしているわけでありますから。だから、そういう点から言えば先見性があったと言えると思うのです。やはりエネルギー政策というものは変わっていくわけですから、また六十五年になったら油の値段だってどうなるかわかりませんよ。そういう点は自信を持って考えたらいいと私は思うのです。ですから、いま融通電力なんというので、九州の電力を北海道に供給することができるでしょう。実績があるのですよ、ペーパーでやっているのでしょうけれども。そこまで広域的なんですよ。だから一地域に迷惑がかかるなんという、そういうことはないのですよ。政策のよろしきを得れば平均化することが可能な体制にあるのが、わが国の電力の実態なわけであります。ですから、一方だけに何かしわ寄せされるというのではなくて、むしろそのことによって恩恵をこうむってきている、こうはっきり言えるのではないかと私は考えておるわけです。したがって、いまのこの逆ショックの場合でも、石炭火力はずっと安いわけでしょう。先ほどキロワットアワーの認可料金を発電所別に申し上げたわけですから。そういう中でもなおかつ、それ以前にたまたま契約したものだから、排脱装置についてもまだ全額を石特会計から出し続けておるわけです。ことしを含めて今後四年間、十四億四千万ずつまた出し続けるわけですよ。本来であればこれは、もうすでに電源のコストが変わってきておるわけですから、電気会社が受け持ってもいいわけでしょう。しかし、それは私はそうせいとは言いませんよ、情勢が変わってきておるのですから。しかし、もう情勢が変わったって、一回決めたものは全くそのまま来ているのですよ。それはいま言ったように予算化されておるわけですね。ですから、そういう状況にあるから、北海道案というものも、いろいろ意見はあるだろうけれども、それぞれみんな立場で意見があるだろうけれども、そんなむちゃくちゃなものではない、石炭政策と密接不可分の関係にあるのだから、そういうところに一応着想して考えたということも一つの案である、とるかとらないかは別ですよ、こう言えるのではないか、私なりに石炭政策の流れを分析をすると、そういう気がいたしたわけです。
ただしかし、特に今度は海外炭の関係で口銭を取ることがいいかどうかという点についてはいろいろな意見があるんだと思うのですね。大体ドイツの例なんか見れば、石炭に全然消費税もかけないで、まだ油は競合だから関税をかけて、その財源で石炭政策をやる。今度は油が高くなったら外炭の方が安い。外炭には何も消費税もかけないで、そういう財源も取らないで、いま石炭政策をやっておるわけでしょう。そういう矛盾がいまもう固まっておるのが私は今日の状況だと思うのですね。そういう意味では、石特会計も見直しをしなければならぬ時期が来ておるのではないかなという感じすらするわけであります。
私は、そういう点をまず基本に据えてかかわり合いというものを整理しておく必要があるのではないのか。言うなれば、石炭予算の構成比で、石炭安定資金としてはわずかに三三%よりウエートがないんです。一千三百億が全部石炭に入っておるわけじゃないんです。あとは鉱害とか産炭地振興とか、労働省に対してだって一三%のウエートのある予算が、百八十億を超える予算が依然として雇用対策に石特会計から出ておるわけであります。
ですから、そういう意味で考えますと、石特会計も窮屈ではあるが多少見直しをしなければならぬのではないかなと思うのです。そういう時期に来ておると私は認識をするんですけれども、どうでしょうか。見解があれば聞いておきたいと思います。
#126
○豊島説明員 石炭政策といいますか予算につきましては、先生御指摘のように直接生産にかかわるもの以外の比率もいま非常にふえておる、こういうことでございます。ただ御承知のように、財源につきましては原重油関税という制約が一つ一つございますということが何よりも大きな制約要因でございます。それからもう一つは、いずれにしても石炭政策というものをいろいろの観点から見直すにいたしましても、石炭企業のあり方といいますか、第七次答申にございますように、やはり石炭業の自助努力、いわゆる私企業の責任体制ということについては基本になるわけでございますので、そういうところを直したような政策、制度ということはなかなかむずかしい、このように感じます。#127
○岡田(利)委員 いま電力会社の負担能力は非常に膨大で、これは一体消費者に還元するかどうかと、しばしば国会でも議論されておるのであります。先ほど有吉参考人も言われたように、しかし石炭産業は赤字であるという実態もあるわけであります。基準炭価については大臣が決める、そして告示をする、こう書いてあるのですが、今年の基準炭価についてはいつ決める考え方がありますか。いかがですか。#128
○弓削田説明員 先生御案内のとおり、基準炭価につきましては、合理化法の規定に基づきまして、石炭の生産費をベースにいたしまして競合燃料の価格の推移あるいは経済情勢を勘案して審議会の意見を聞いて決める、実はこういうことに相なっておる次第でございます。その考慮すべき要素の中で、生産費につきましてはほぼ本年度の春闘も終わりまして、労務費のアップというのも決まりましたし、大体コストのアップ要因は決まったわけでございますが、ただ競合燃料としての海外炭の価格がまだ未決定でございます。御案内のとおり原料炭につきましては海外の生産者との話はほぼついておりますが、一般炭に関しましてはこれからという状況でございまして、私どもといたしましては本年度の石炭価格を決めますいろんな要素の資料をいま集めている段階でございまして、これを分析し、その結果を得まして以降、本年度の価格決定に取り組んでまいりたいというふうに思います。できるだけ早くやりたい、こういう気持ちでございます。#129
○岡田(利)委員 石炭は外割り制度になっておるわけですが、このIQ制度には一般炭、原料炭の区別がありますか。#130
○弓削田説明員 お答えをいたします。IQ制度は、先生御案内のとおり割り高な国内炭の需要を確保する、こういう観点から実は設けている制度でございまして、これによりまして国内炭の安定的な取引を確保しようということで設定しているものでございます。こういう観点におきまして、原料炭と一般炭の間で実は区別はないわけでございます。しかし、現実の運用面におきましては、原料炭と一般炭とではそれぞれIQの申請者が当然異なってまいりますと同時に、輸入割り当て量も原料炭、一般炭、それぞれの国内炭供給量を考慮して別途に決める、こういうことに相なっておるわけでございます。
#131
○岡田(利)委員 ちょっと気にかかりますけれども、申請者というのはどういう意味でしょうか。会社という意味ですかね。別に申請者であっても、鉄鋼会社がたとえば原料炭と普通国内の一般炭というものを一緒にミックスしてコークスをつくると申請した場合、一本で申請できるわけでしょう。別に申請者が鉄鋼会社だから国内で言う原料炭しか申請できないとか、そんなものではないでしょう。#132
○弓削田説明員 先生御案内のとおり、輸入割り当てはエンドユーザーに割り当てるものでございまして、原料炭、一般炭それぞれについて輸入割り当ての申請者の資格があるわけでございます。たとえば原料炭で言いますと、いま先生おっしゃいましたように高炉メーカーがもちろん入るわけでございますが、そのほかにガス製造業者、コークス製造業者等々、原料炭を使ういわゆる業者が申請者としての資格として規定をされておる、こういうことでございます。#133
○岡田(利)委員 基準に別に原料炭と一般炭と分けてないんだから、一本になっているわけでしょう。言うなれば、石炭組成から言えば強粘結の分は自由化で、それ以下は基準は一本でしょう。区別なんかされていないわけですよ、ということを私は聞いているわけです。たとえば一般炭と原料炭を混ぜてハウスコールに使えたら結構な話じゃないですか。何も区別する必要はないでしょう、IQもそうなっているのですから。だから余り既成概念にとらわれないで考えておいた方がいいのではないかと私は思うわけです。そこで、自治省からきょうはおいで願っているのですが、おりますか。――しばしば問題になっている山中通産大臣も、同案をつくるときに、道の債務保証あるいはまた地方債、こういう点についてもチッソの問題を出して示唆をされておるわけです。しかし、先ほど北海道知事のお話を聞いたわけでありますが、石炭企業、こういう企業に自治体が出資をすることも多少なじまないし、債務の保証やあるいはまた地方債を出すということについてもなじまないという、これは恐らく公式じゃないと思うのですけれども、そういういろいろな意見を参考にしながら、制約された中で一つの案をつくった、こう言われているわけですね。したがって、この面について自治省はどういう見解でしょうか。
#134
○石原説明員 御案内のように、地方公共団体が会社その他の法人に対して債務保証を行うことにつきましては、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律の第三条におきまして原則として禁じられております。ただ例外としては、自治大臣の指定があればそれは認められるということになっております。問題は、今回のケースにつきまして、石炭の採掘を目的とする法人に対して道が債務保証をすることについてこの法律による指定がどうなるかということでありますが、この法律の規定による指定は、従来の例で申しますと開発公社その他きわめて公共性の高い法人についてのみ指定が行われておりますので、今回のケースについては一般論としては非常にむずかしいのではないか、このように考えております。
#135
○岡田(利)委員 では問題は、債務の保証をする、地方債を出す、そのことは地方財政を管理する立場から言うとやはりぴしっと規制をしておかなければならないという点の制度ができ上がっておるのだと思うわけです。ただその場合、たとえば別に政府がこの地方債や債務保証について損失補償をするという裏づけがぴしっとなされた場合には、これは大体限定されてその案件は認められるものと解釈されてよろしいでしょうか。#136
○石原説明員 お尋ねの件は地方債の転貸債の活用のことではないかと思うのですが、御案内のように水俣病患者の救済のために、現在チッソに対して熊本県が転貸債を発行しております。これにつきましては私ども許可をいたしております。この転貸債につきましては種々論議があったわけでありますが、患者救済というきわめて重要なケースでもあるということで、政府が一体となってその償還につきましては熊本県に迷惑はかけない、こういう論議の過程で、私どもといたしましてもそういった事情を総合勘案して、この転貸債の償還については十分担保される、熊本県の財政負担にならない、このような見通しのもとに許可をいたしているところでございます。#137
○岡田(利)委員 石炭政策上、損失補償ということはなじみがないとは言えないと思うのですね。損失補償というのは石炭政策の中にあるわけです。本年度予算の中にも明確にあるわけです。俗っぽい言葉で言うと第一次、第二次肩がわりの金融機関に対する契約解除の損失補償金、これは予算化されているわけですね。だから、石炭政策では金融機関に対しては損失補償をしておるわけですから、例がないことではないわけです。政策上あるわけです。そういう損失補償をするという場合、これは明確でありますが、こういう場合においては当然自治省としても検討に値するもの、こう言ってよろしいでしょうか。#138
○石原説明員 法律解釈論といたしまして、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律は債務保証を禁じているわけでありまして、損失補償はここに言う債務保証とは違いますから、直接この法文上禁止しているわけではないということで、現在におきましてもいろんなケースについて損失補償契約を結んでいる例があるわけであります。今回の件につきまして、石炭の採掘を目的とする企業経営につきまして、地方公共団体である北海道庁が損失補償をするということにつきましては、何と言いましょうか、現在の地方自治法上の地方公共団体の一般的な事務、事業として、特定の企業経営につきまして全面的に損失を公共団体が補償する、そういう責務を負うということは予定されていないのではないか。そしてまた、その金額にもよりますけれども、伝えられるような状況であれば、その損失は大変な額になる可能性もある。そうなりますと、現在の北海道の財政力、あるいはさらに言いますと現在の地方財政全体の状況の中で、この問題は慎重に考えていかなければならない問題であろう、こういうふうに考えます。
#139
○岡田(利)委員 もちろん無制限にはこれはできないわけですね。損失補償する場合にも一定の限度額に対する補償ということになるのだと思うのです。したがって、無制限にこういうことが行われるということは、これは法の精神からいっても禁じられておるし、またとるべき道でもないし、またそれは損失補償する人もいないだろうと思うのです。私は、そういう意味に立って、せっかく山中通産大臣が言われた面を考えていくと、問題は、政策上なじみがあるとすれば、この損失補償について通産省が決断をするのであれば、道としても対応する方法があるのではないのか、こう思うのであります。したがって、たとえば道が地方債を出すとか、あるいはまた許可を受けて債務の保証をするという場合に、損失が生じた場合は損失補償すると言えばずいぶん道の案のつくり方が変わってくると思うのです。そういう用意、そういう検討をされたことがありますか。――これは部長でいいの、問題は大きいよ。
#140
○弓削田説明員 損失補償の問題でございますが、今回の夕張炭鉱の再建問題について横路知事から六月の十七日に通産大臣に回答があったわけでございます。これは先生すでに御案内のとおり、夕張炭鉱再建のためには道債を発行するという考えは一切ない、こういうことでございました。そういうふうに私ども承知しているわけでございます。実は石炭の場合にはかって例があるじゃないかというお話があったわけでございますが、先生御案内のとおり、石炭企業の経営基盤の回復、こういうことのために昭和四十二年、四十四年、さらには四十八年と、三回にわたりまして総額二千五百億円の債務の肩がわりを行った実績が実はあるわけでございまして、現にこれらの予算は現在の石特会計に計上いたしまして実行しているところでございます。
それでは、今後もう一回やると四回目ということになるわけでございますが、そういう用意があるか、こういうような御質問でございます。七次答申におきましては、あくまで現在の石炭政策の枠内で、あわせて石炭企業の自己努力でもって石炭鉱業の経営基盤の確立を図っていく、こういうことが答申の趣旨になっているわけでございます。私どもとしては、第四回目の肩がわりと申しますか、これをやる意思は毛頭ございません。
#141
○岡田(利)委員 そんなことでは、道が一枚かめというのもおかしいでしょう。いまの七次政策の枠内でしょう。全然論理性がないわけですよ。通産大臣が道が一枚かめということも、第七次政策の枠内でしょう。しかも政策としてはなじんでいるわけでしょう、あるわけでしょう。だから論理が合わないわけですよ。一方には、はみ出すことを言っておいて、一方においては第七次政策の枠内だ、こんなばかな考え方はないと私は思うのです。そういう点が非常に論理的に矛盾があるのですよ。ということをまず十分認識しておいて、よく考えてみなければならぬ問題だと思うのです。たとえば、では現在にある制度でずっと見ていきますと、第七次政策でわが国の石炭政策上初めて安定補給金の格差変更をしたわけです。二百五十円、六百五十円、千百五十円の三段階の方式に安定補給金を出すことになりました。この地域は、協会長が先ほどから言われているようにパネルシステムによるガス対策をして採掘する特殊な採掘方式をとるわけですね。言うならば、その難易さは急傾斜と全く匹敵するわけですよ。そう言っても過言ではないと思うのです。そうすれば、この急傾斜対象の千百五十円の安定補給金をもし出すという決断をされれば、トン当たり五百円、七十万トンで三億五千万円、対象になるのであります。
また、道は道で一定の石炭政策がありますから、中小炭鉱にありますから、これらをもし適用するとすれば、私の計算では一億円程度の助成ができる、制度上補助が出せる。制度を分析すると出てくるのであります。合計すると四億五千万円になるのですよ。こういうことは決して現行制度からはみ出したものではない。予算の制約はあるかもしれませんけれども、現行政策内である、こう言っていいのではないでしょうか。出すか出さないかは別ですよ。出すか出さないかは別ですけれども、私が考えることは現行政策の枠内であるということはお認めになりますか。
#142
○弓削田説明員 安定補給金を急傾斜炭鉱並みに増額したらどうか、こういうようなお話のようであります。その他いろいろ先生のお考えの中には、補助金等の増額についても考えたらどうかというようなお考えもあるかとは思いますが、いずれにいたしましても新鉱の操業に伴いまして発生します赤字というものを補てんするために国の責任で処理する、こういう考え方におっしゃることはつながっていくのではないか、さらには、御案内のとおり経営格差に苦しんでいる他山もあるわけでございまして、こういう山への波及の問題もございます。膨大な追加的な財政事情になってまいるのではないかと私ども考えるわけでございます。私どもとしては、とうていそういう考えを受け入れるわけにはまいりません。こういうふうに考えるわけでございます。#143
○岡田(利)委員 部長がそう大みえを切らないで、先ほど言ったように、パネルシステムの最もガスの多い、難易度から言えば最もむずかしいと協会長は言ったわけでしょう。その難易度から言えば急傾斜と同じでしょう。そうすると、協会の前提は旧夕張炭鉱の制度を前提にしたわけでしょう。しかし、現行ある制度でそういう難易度をこの水準と認めるということになれば、安定補給金はちゃんと上がるわけでありますから、そうすると、そういうお金が追加されるから、協会の案の内容は変わってくる、こう言っているわけですよ。それを、いともあっさりだめだ、こう言うのではなくして、せっかく制度があって、現有炭鉱はできるだけ維持をするというのが七次政策の基本ですから、夕張も温存するということが政策の中身に入っているわけでありますから、それを余りあっさり言わないで、もう少し慎重に検討してみたらどうですか。今後だって、これは基準が変わるのじゃないですか。海底炭鉱と言ったって、高島炭鉱のような炭鉱もあるわけですよ。太平洋炭鉱、松島もある、三池もある。こういう点をやはり考えておかなければ、あなたの答弁では、安定補給金というのは初め決めた以上絶対固定化するのだ、そんな前提で組んでいないでしょう。その状況によって弾力的に対応するというのが安定補給金の性格でしょう。それで当面三段階に分けたのでしょう。そんな固定化されたものではないわけですよ。そういう点も、最終的にだめならだめでも結構です。もう少し慎重に検討してもらいたいということを申し上げておきたいと思います。そこで、時間がありませんが、もう一つは石炭特会の一千三百四十二億円、大変なお金であります。しかし、この構成比については、しばしば問題にしておりますように鉱害に四三・七五%も入っています。産炭地のために六・五三%、労働省関係に一三・七%、そして合理化安定資金には三三%、その他事務費三%。四十五億もあるわけですからね。それも全部見込んでおるわけであります。ですから、もし本当に資金的にやるとすれば、全体を見直せば、ある程度政策的にもやる決意があれば、この中で出てくるのではないのか。先ほど電発の面だって、何も払うなと言っていませんけれども、ずっと三年間のものを十年間にしたって電発が困るわけではないでしょう、お互いに相協力してやってきたわけでありますから。そういう工夫をすれば予算は編成できるのではないかな、こう思うのです。私は、そういう意味では少し工夫を要する必要がある、こう思うわけであります。
いまの炭鉱労働者は五十五歳で皆、定年です。緊就でも開就でも、私はなくせとは言いませんけれども、一般化しているわけですよ。一般化していれば一般的な就労もあるわけでしょう。足りない金があれば石特会計から出せばいいわけですよ。そういうふうに労働省も通産省も素直になってやらないで、一方において夕張の失業者が出ても黒手帳で終わり、あと方法なし。制度がないのですから、予算がないのですから、できないわけでしょう。そんなむごいことはあり得ないと思うんですよ。着工すると言っても、四年たたなければ七十万トン出ないのですから。いまの千名がすぐ採用されるわけではないのですから。初めからわかっているわけでありますから。といっても、そういう点についての検討も何ら進んでいないように思う。こういう点をぜひ検討した上で対策を立てるべきではないかと思うのですが、労働省に言えば予算管理は通産省だと言うし、これどうでしょう、通産省、労働省も含めて、そういう点検討したらいかがでしょうか。
#144
○豊島説明員 いま先生いろいろ御指摘いただきまして、それから内部の配分の問題、いろいろございます。ただ、先ほど石炭部長もお答え申し上げましたとおり、この問題の基本は、制度を若干いじったらそれで穴が埋まるのではないか、こういうお話で、それは工夫したらできるのではないか、こういう御指摘でございます。ただ、私どもこの問題について考えますことは、やはり基本は私企業体制で自助努力ということでございますから、実際に出る経理といいますか、それはやってみなくちゃわからない。その場合に、常に出る赤字を必ず全部見るということを目的とする制度ということにはどうしてもそこまでは踏み切れないということでございまして、もちろん、そのときどきの運用の弾力性ということも当然考えてよろしいと思いますが、本件に関しましては基本はそこであるというふうに私どもは考えております。#145
○岡田(利)委員 時間がありませんから、大臣に最後に伺っておきたいと思うのですが、弾力的にやらなければ何もいい考え方は生まれてこないのであります。私は先ほど石炭協会長にも、わが国の石炭産業の間違いのない歴史的な使命を全うさせるということがわれわれの念願である、そのためには、今日のわが国の石炭の賦存状況から判断をして、石炭の開発については一定の哲学を持ってやる必要がある、そういう意味で、石炭業者は政策下にあるわけでありますから、管理下にもあるわけでありますから、お互いに連帯をしながら協力してやるべきであるという意見も述べました。また前の参考人を呼んだときにも、いまの案ができるかどうかというのが、いま大きく決着が迫られておるわけであります。しかしまた協会も検討したこともないと言われる、陳述されているように一体的な開発が可能かどうかについても協会は検討していないのであります。私は、そういう面から考えると、この結論を出す場合には、そんなに先送りばかりしても結論は出ないのでありますから、一定の期間内に結論を出さなければならぬことは明らかでありますので、やはり大臣が中心になって、もう少し具体的な問題も含めて北海道知事の意見も聞く、あるいはまたそういう面で協会の意見も聞く、あるいはまた技術屋の問題であればそういう関係の意見も聞く、できれば大臣が中心になって一つのテーブルに着いて、そして意見を交換されて、最終的には通産大臣が責任を持って判断をされる、このことが私は最も望ましいと思うわけであります。先ほど大臣も、この委員会の意見を聞きながら大臣としても最終的に判断をしたいということを述べられておりますが、この委員会を終わっても、そう期間は長くはとれないでしょうけれども、やはりそういう詰めた議論を積み重ねて、その上で大臣が決断されるもの、そういう意味で意見の交換がされるもの、私はこう理解いたしておるわけでありますので、大臣からの御答弁をいただきたいと思います。
#146
○宇野国務大臣 この問題の最終判断は私がしなければならないと思っておりますが、そのためにはいろんな御意見も承ることが必要でございました。今日までも私はそれを極力努めてまいった次第でございます。したがいまして、私の判断も、いつまでもじんぜんとおくらしておるわけにもまいらないのではないか、私はこう考えておりますが、ただいま岡田委員が申されましたことも十分承っておきます。そして最終的には、私は何度も繰り返すようでありますが、大所高所からこの問題の判断をいたしたい、かように存じております。#147
○岡田(利)委員 終わります。#148
○武藤委員長 斎藤実君。#149
○斎藤(実)委員 大臣にお尋ねをいたしますが、夕張の再建問題に入る前に基本的なことをまずお尋ねいたしたいと思うのです。わが国は資源の乏しい国でございますので、エネルギーの中で石炭政策、また特に石炭にまつわる内外の情勢は厳しいということは大臣も御承知になられておるところでございますが、特に北海道の石炭産業、これは一地域の問題ではなくてやはり国のエネルギー政策にかかわる問題でございますので、まず、この石炭の振興なりあるいはエネルギーの中での石炭の位置づけ等、基本的なことを簡単にお尋ねをいたしたいと思います。
#150
○宇野国務大臣 冒頭に三枝さんの同様の質問に対しましてお答え申し上げた次第でございますが、わが国は資源小国でございます。その資源小国で現在はほとんど石油に頼っておるという現状でございます。だから石油の輸入量は非常に高く、またわが国にとりましてもそれは大変な一つの外交問題でもあるわけでございますが、極力省資源あるいはまた代替エネルギーの開発等によりまして、そうしたわが国の隣路を克服していくということが必要でございます。そうした面から考えますと、石炭といい、あるいは原子力の開発といい、あるいは天然ガスといい、そうしたものは政府といたしましても代替エネルギーの重要な柱の一本である、こういうとらまえ方で今日まで行政は推進してまいられましたし、また私もそういう気持ちでその行政をお預かりいたしております。
#151
○斎藤(実)委員 実は五月二十五日の当特別委員会で夕張再建問題についての質疑があったわけです。それで山中前通産大臣は、夕張炭鉱再建についてこういう発言をしていらっしゃる。「石炭協会に検討をお願いした、その結果がまとまった、」「再建は不能である、ああそうかということで、後は離職者対策ということになるでしょう。それだったら通産大臣は要らない、政治家が通産相に座っている必要はないということになります。」「今回の事故は大変不幸であったけれども、これが閉山で、そして先の見通しはもう終わりです、後は離職者対策ですということでは、政治というものがそこに何ら介入していないということになりはしないか。」こう山中前通産大臣は発言をしておるのですね。こうも言っておるわけです。「私は政治家であって通産大臣である以上、世間が何と言おうと、無謀と言おうとむちゃと言おうと、この問題にわずか一%の可能性があったらそれに取り組んでみるのが政治ではないか、」というきわめて積極的な前向きな決意を表明されておるわけでございまして、エネルギー政策の最高責任者である宇野通産大臣が、この山中前通産大臣と同じ気持ちを持っておるかどうか、お考えを伺いたいと思うのです。
#152
○宇野国務大臣 私も石炭行政の責任者でございますから、ただいま申し上げましたような見地においてこの行政をお預かりいたしております。ただ、それを表現するのに、山中さんは山中さんのような表現法があり、私は私のような表現法もあるのではないか、こう思っておりますから、したがいまして、山中前通産大臣はそういう気持ちで取り組んでこられまして、その結果、知事からいわば山中さんの投げたボールが投げ返されてきた。私はそのボールを受け取った瞬間からの責務を果たさなければならない。そのためには各方面の意見も聞きまして、そして大所高所から判断いたします、こう言っておるわけでございますから、その時点の山中さんの言葉と私の言葉が何か取り違うようなことがあってはなりませんし、私も気持ちの上ではやはりそういう気持ちで臨んでまいった、こういうふうに思っておる次第でございます。#153
○斎藤(実)委員 それでは、いまの御発言のとおり、前大臣と同じ気持ちで取り組んでいるというふうに理解をしてよろしいかどうか、再度お尋ねいたしたい。#154
○宇野国務大臣 政治を預かる者といたしましては、そうした気持ちで最後までいるのは当然のことであります。しかしながら、やはり最高の責任者であるときには、いま現在は私が預かっておるわけでございますから、私は私なりの判断ということも必要である、これはひとつお認め願いたいと思います。#155
○斎藤(実)委員 今後のことはまたこれからお尋ねをいたしますけれども、大臣としての基本姿勢を私はお尋ねしたわけでございますから、御理解いただきたい。それから、これはまた前大臣のことで恐縮でございますが、私の質問に対して、大臣はこういうふうにおっしゃっておるわけです。私は第三セクターということを前提にしての質問なんですけれども、山中大臣はこう言っておるのですね。「臨調答申の趣旨にもこれは逆行すると言われれば一言もない点があります。それから国の石炭行政の積み重ね、各種審議会の答申等も先ほど述べられましたが、その方針をも逸脱していることも私は認めております。しかし、北炭夕張というものを再建するには、もうそのような過去のことにこだわつて、過去のルールと申しますか、先例どおりやっていたのでは道はない。だからそのようなことは、後でいろいろな叱正も非難も私は覚悟します。しかし道のために一点にしぼって可能性のある道を懸命に探求している、できないかもしれませんが、できる道があるならばできることを信じて進んでみるということが政治であろうと私は考えております。」ということを言っておるわけです。
それで、私は細かいことは多くは申しませんけれども、いまこの夕張問題が抱えている問題について、きわめて大きな問題をはらんでいることはもう大臣御承知だと思うのです。私、率直に申し上げまして、いろいろ石炭協会からも大臣はお話を承っているというふうに私も新聞報道で伺っておるわけでございますが、知事さんともお会いになりましたですね。それで私は、政治家として宇野通産大臣がこの問題について、後でまあ事務当局と検討してというお話がありますが、それはそれとして、大臣の気持ちをひとつここでおっしゃっていただければありがたいと思うのですが、いかがですか。
#156
○宇野国務大臣 およそ行政の衝に立つ者は常に冷静な判断が必要だと思っております。また、あくまでもそのプロセスとしてはいろんなプロセスを踏んでいくことが必要であろう、こういうふうに私は考えております。そうして、たまたま残念にして山中大臣は入院なさいましたが、そのときにボールが投げられておって、そのボールから始まって、先ほど申し上げましたけれども、いま受け取ったボールに対しましてすら私はまだ公に、感想は申し述べるようにいたしておりますけれども、それの是非については語っておらない。そういうことで、私自身といたしましては、今日ただいま、この問題に慎重に取り組んでおるということをお考え賜りたいと思う次第であります。#157
○斎藤(実)委員 大臣、確かに石炭協会では財政的にこれはなかなか厳しい、それから保安確保、この職員の確保についても全く見込みがないという、これはもう大臣も御承知のとおりでございます。しかし、この石炭協会に対して、私はもっとよりよい対策なりあるいは計画なり、あるいはもっと洗い直して経営に参加するという、通産省としての対応というものがやはりあってしかるべきではないかと思うのです。ネックになっているのは財源問題と保安要員の問題と私は思うのですが、これについて大臣、事務当局の検討はまた検討として、大臣が、それじゃ石炭協会の会長は別として事務当局あるいは道側の事務当局、あるいは通産省の事務当局と何か道はないかということで一遍相談をしというか、そういうテーブルに着いて詰めるというか再建の模索をする、そういう手だても私は必要じゃないかと思うのですが、大臣いかがですか。
#158
○宇野国務大臣 道側の知事案につきましても、十七日に承りましてから、やはり相当の時間がかかっております。この間には道の事務当局並びにエネ庁の事務当局がいろいろと話し合っておる。したがいまして、きのうも知事と道の事務当局も来られましたが、やはり事務局同士でいろんなことを詰めておるなということがその場におきましても私は確認できました。また、石炭協会に関しましても、すでに、この球が投げられたことはずっと以前のことでありまして、その報告書が出されたことも私の就任以前のことでありまして、そうしたものをもろもろ踏まえて前通産大臣が、夕張の地域問題として知事も一枚かんではどうかね、中心にならないかねという提言をされたことも事実でございますから、私といたしましては、相当方面の意見がこうしたことで実は積み重ねられた結果ではないかと思っております。
だから、私が就任いたしましてから聞いておらないのは、こうした公式の場における議会の意見だというわけでございます。その前にも社会党さんの意見はいろいろと承った機会もございました。そうしたことで、私といたしましては全力を挙げまして事務当局に意見を聞かせ、またそれを私自身が判断をするということも積み重ねてまいっております。だから、本日は私はまだ判断をせずに、自分の決心をせずにこの場に臨んでおるということを申し上げたわけでございますので、その辺の事情からお酌み取り願ったらよいと思いますが、やはり一つのテーブルで話をしてもらおうということになりますと、皆が合意しなくちゃいけませんが、なかなかこれはそう簡単にいける問題ではないかもしれない、私はこういうふうに思っております。したがいまして、今日ただいま、そういうふうにした方がよろしいね、私も賛成ですという、私はまだそこまで言い切れないのではないか。だから、先ほどもいろいろ岡田さんからも御親切なアドバイスがございましたが、私は、ひとついままでの経緯並びに本日の御意見等々を踏まえながら大所高所から最終的な判断もさせていただきましょうというところまでいっておるということでございますので、そこら辺も御了解賜りたいと存じます。
#159
○斎藤(実)委員 先ほど参考人への質疑の中で、石炭協会としてもそういう呼びかけがあれば結構でございます、知事さんからも同様の御意見がありましたから、これはひとつお考えいただきたいと思うのです。大臣は、事務当局でいろいろな検討もいましておる、最終判断はまだできないという御答弁でございましたが、先ほど来、恐縮でございますが山中前通産大臣の発言の要旨を私は申し述べました。私は、大臣がかわっても行政の継続性というものはあるだろうと思う。したがいまして、山中さんの並み並みならない決意、姿勢といいますか、これはやはり持続していっていただきたい。物事は最高責任者の通産大臣の、あの夕張の地で苦労されている国民に対する思いやり、愛情というか、あるいはこの石炭産業がわが国にとってきわめて大事な政策だという判断の上に立って、先ほど私が申し上げました山中さんの基本的な姿勢を新大臣が今後とも尊重し、また踏襲し考慮していくというお考えがあるのかどうかお尋ねをいたしたいと思うのです。#160
○宇野国務大臣 よく行政の承継性という問題がございますが、承継性とはどういうものであるか、具体的には非常にむずかしい問題もありますね。あるいは内閣におきましても、前内閣よりの承継性はどうなのか、いろいろそういう議論もございます。われわれといたしましては、同じ政党でございますから前任者の気持ちは十二分にくんでおるつもりでございます。しかし、通産大臣という職を離れ、たとえば国務大臣という立場に立ちまして物事を判断する場合もあるわけですが、今回は石炭問題でございますから、私はそんな大きなことを申し上げようとは考えておりません。しかし、今後のエネルギー政策をわが国としていかに推進していくか、そのためにはこれも一つのその中の判断であるかもしれない、こういうこともございます。したがいまして、山中さんのおっしゃったことを一〇〇%私は守りますと言うことの是非に関しましては、私はここでそのとおりだと申し上げるわけにはまいらないのではないか、こういうふうに思っております。#161
○斎藤(実)委員 私は、宇野通産大臣は自民党の中ではきわめて実力のある大臣だ、きっと国民の期待にこたえてくれるだろうと、苦しんでいらっしゃる北海道夕張の方々も期待していると思うのです。そういう意味で、実力大臣である宇野通産大臣がこの問題についてよくやってくれる、こういう期待を込めて質問しているわけでございますので、最後に大臣の決意のほどを伺っておきたいと思うのです。#162
○宇野国務大臣 地元の先生方の切実な声といたしまして私は本日拝聴させていただいておるということでございます。その点は先ほども再三申し上げましたが、私といたしましては十二分にこの問題を大所高所から検討して、そうして最終的な判断をいたしたいと思っております。#163
○斎藤(実)委員 大臣の決意のほどを伺って、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。#164
○武藤委員長 小渕正義君。#165
○小渕(正)委員 大臣にお尋ねいたしますが、今回の北炭夕張の再開の問題につきましては、山中前通産大臣の異常なまでと言ったら語弊があるかもしれませんが、そういうかたい信念と決意の中で、この問題を何とか前向きに解決しようという形の途中で大臣がおかわりになられたわけです。先ほどの御質問の中でも触れておりましたが、前回のこの石特の委員会の中で、大臣のそういった決意のほどがいろいろな表現で述べられたわけです。それに対しまして宇野通産大臣とされても、一つも考え方、決意については変わりはない、前任者のそのままを受け継いで自分もやるという考えであるのだ、ただ表現の仕方はそれぞれ人間的な違いがあるからやむを得ないにいたしましても、そういう意味では、この問題解決に前向きに取り組んでいこうということについてはいささかなりとも変化はない、こういうふうな趣旨のお話を先ほどから再々言われておるわけであります。そのようなお話を承っておりまして、しからば通産大臣として道に一つのボールを投げた、それが返ってきた、もう返ってきてから約旬日以上たっているわけでありますが、そういう段階でいまなお慎重に関係者の意見を聞いているということは一体どういうことなのか、そこらあたりはどうしても首をかしげざるを得ないわけでありまして、少なくとも前任者のあれだけのかたい異常な決意まで考えますならば、当然待ってましたとばかり、その球を受けたら、どういうふうにこれからこれを進めていくかという次の一歩前の段階の中に進んでいかなくてはならぬ時期に来ているのにかかわらず、いまなお、ただ重要な問題だからそれぞれ関係者の意見を聞いているということはどうしても解せない感じがするわけです。したがいまして、もうはっきりしていることは、道としては応分の出資にも応じていきましょう、しかしながら、これからの新会社の収支といったものを見ますならば、一つの新しい考え方をもってこの点は考えてくれぬかというような問題提起までなされているわけでありますから、そういうものを受けて早速新しい次の行動にいま通産当局はどんどん作業を進めていかなければならぬ段階に来ていると思うのですけれども、それがただ単に関係者の意見を慎重に聞いているという足踏み状態というのは一体どういうことか、そこらあたりについて、もう少しそういった状況についての考え方を含めてひとつ御説明いただきたい、かように思います。#166
○宇野国務大臣 山中前大臣と私の気持ちは変わらない、言葉は違うが、これはそのとおりでいいと思いますが、山中さんのそういう気持ちを体して、具体的に道が中心になってひとつ考えなさいということに対して横路さんが一つの案を提示された、こういうことでありますから、その後、山中先生がもしここに立っておればどう言われたか、これはまた別の問題ではないかと私は思います。私は、いまそのボールを受け取った者として、先ほどから申し上げておりますとおりに、道案はいろいろな内外の声を聞いて私が判断いたしましても非常にむずかしゅうございますよ、こういうふうに申し上げているわけでございます。特に、いろいろ解釈の間違いがあるといけませんので申し上げておきたいと思いますが、実はまだ出資額を一億する二億するというふうには決して知事さんはお決めになっておりません。この点に関しましても、いろいろと検討した結果、新会社をもし設立するとすれば赤字が出ることはもう明らかである、しかしその赤字を埋めるためにはいわば電発に輸入されておる石炭の輸入販売の権限を与えてほしい、それなら何とかなるのじゃないか、これを言ってもらったときに初めて、一億か二億か知らないが道に諮って出資を頼むことができる。その約束がないのに、いまから赤字が歴然としておる新事業に対して出資します、宇野さん、こう言うわけにはまいらないのだ、私はこれは本当に知事の真情じゃないか、こういうふうに思っております。
したがいまして、私も、それは知事さんそうだね、十分お互いに考えましょうと言っていろいろ考えました結果、肝心かなめの経営主体になってほしいと山中さんが思われておりました石炭協会そのものが、とても経営主体はわれわれの手に負えません、お断りしますと言ったことが一つの問題点。
第二番目の問題点は、これから石炭を採炭するにつきましても、その保安の管理体制、これには責任持てませんというふうに石炭協会が言いますことも第二点。
しからば、そのほかにどういう方法があるのだろう。中には、いや方法があるんだよ、おれも案を持っているんだという先生方もいらっしゃるということでございましたから、それならばそういう案を承る前に私が決断するのは早過ぎるのではないか、だからこういうふうな機会に十分お話を伺いたい、そういうことで実は昨日も自民党内の石炭対策特別部会を開いていただきまして自民党内の党案のお話をいろいろ承りました。どういう話かここで公表するわけにはまいりませんが、承っております。そういう意味でございますので、いかにも逃げているように思われたかもしれませんが、私は先ほども申し上げましたとおりじんぜんと手をこまねいて見ているわけではございません。いろいろな御意見、いろいろな資料等々を集積いたしております。だから、本日もそうした意味で皆さん方の御意見は拝聴しなければならない、私はこういう気持ちで参っておりますので、その点はひとつ御理解賜りたいと思います。
#167
○小渕(正)委員 事務当局を中心にしていろいろ問題点を洗い出しながら検討を進められているということについては理解いたします。ただしかし、ここで一つ私どもといたしましては率直に申し上げますが、山中通産大臣は前の方ですから、余りそのことに触れることはどうかと思いますが、委員会の中では、はね返ったボールをこっちにもらったらすぐ次の行動をするようなことをそれぞれニュアンスとして言われておったのです。そういう感じからいきますならば、確かにいま問題の一つは、経営の主体となるべき石炭協会が逃げ腰というよりももう全然だめだという感じの中で受けとめておられるわけですね。そういう点については、前にも石炭協会が答申書を出されたときに、答申書に対しまして山中前大臣は、それは受け取ったらだめだということで、初め自分は受け取らぬという形の中でこういった問題が出てきておるわけでありますが、道からの一つの回答が出た段階で、今度は経営主体となるべき石炭協会が体を引いて後ろ向きでありますから、当然そこらあたりについても異常なまでの決意を持って、はっきり言いますと石炭協会を説得するということになると思いますが、そういうことでもやって、自分として大臣の権限において少なくとも説得してでも何とかしなければいかぬというような、暗にそう思わせるような強い発言を前回の石炭委員会でされておったわけです。石炭協会としてもいろいろな面において国と深い関係を持つ仕事をやっておるところだから、やはり最後になると、国からお願いするという形で強く言えば、それについていやと言うわけにもいかぬだろうということまで言われて、石炭協会に対しても明らかに、大臣の権限においてそういう逃げ腰のものは引っ張ってきてでも説得するんだというような非常に強い意気込みが感じられた発言を実はされておったわけですから、当然いまのような問題点を明らかにされているわけであります。そういう意味で大臣としてのリーダーシップを発揮していただいて、そういうところまで一歩踏み込んだことをやられているのかどうかということについて見ますと、そこまではとてもされていないということから、先ほど私が申し上げたような質問になってきたわけであります。したがいまして、まず真っ先に大臣みずからがリーダーシップを発揮されて、そういう問題の打開に、石炭協会に対するアプローチといいますかアタックをされるべきではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
#168
○宇野国務大臣 諸般の事情を判断いたしますと、第七次の答申が、石炭企業は自助努力をしてくださいよ、またユーザーは協力してくださいよ、政府はそうしたことに対して指導しまた行政面でいろいろと手伝いをしてくださいよ、こういうふうなことが中心であろうと思いますときに、私は石炭企業そのものが今日決して強い立場ではないのではないかと思うのでございます。強い立場でないだけに、政府といたしましても極力あらゆる手段を講じてその石炭業界、企業そのものが自立できるように、それを目的として今後も行政をやっていかなくちゃならぬ、その過程におきまして多くの体験を積んでおられる協会の意見は大切な問題ではなかろうかと私は考えております。先ほどの質疑応答におきましてもお答え申し上げましたとおり、わが国は石炭企業に関しましてはあくまで私企業である、決して国管ではないのである、こういうふうに私は考えております。したがいまして、国のリーダーシップの問題もございましょうけれども、今日ただいまといたしましてはいろいろな議論を重ねて、もう少しく協会も考えられないか、何とかならないかと裏は裏でいろいろやっております。そうした結果として、この間会長が私を訪問されまして、この間の報告書の意図を私たちは変える必要はありません、そのままであります、特に道案に対しましても私たちはこういう考え方でありますということを述べられて、われわれとしても非常に大変なときでございますから、協会はひとつ御勘弁賜りたい、とてもとてもその責めを負うことはできません、これは経営面からもさようであったかもしれませんが、特に働いていただく職場の安全ということを考えました場合に、ただいまの保安管理体制では無理でございます、こういうふうに言われるときに、ではどういうふうに人を配置し、その人をどこから動員するか、先ほど石炭部長が答えておりますが、実はそこらまでもいろいろと事務的に詰めておるわけでございます。したがいまして、私もこのポストをお預かりいたしましてから日はまだ浅うございますが、この問題も私が与えられた最初の最も重要な課題だ、こういうふうに解しましてせっかく努力をいたしておる、これはひとつお認めを賜りたいと思う次第であります。#169
○小渕(正)委員 前任者のきわめて論旨明快な中での発言が非常に強く行われておりましたことから考えますと、若干もどかしさを感じた次第ですが、それなりに大臣としてまた違った角度からこの問題に前向きに取り組まれておることについては理解をいたします。いずれにいたしましても問題は、経営の主体となるべき石炭協会がきわめて困難だという姿勢をきょう朝からの参考人の方の御意見の中でも堅持されておるわけでありまして、そういう状況の中でこれをどう打開するか、きわめてむずかしい要素が絡んでおりますが、石炭協会が当初出された答申案がいまも変わりがないということについては、この答申書は前の大臣は一切そういうものは受けられないということをまず前提にしながら話を進められたわけでありますが、宇野大臣は業界なりの意見を聞こうということで協会の出された答申書の中身については十分お受けされた、こういうふうに受け取っていいかどうか、その点いかがですか。#170
○宇野国務大臣 横路知事とお目にかかりましたときにも、大臣、この道案につきましてはやはり経営主体が必要だから石炭協会の御意見も聞いてくださいよ、こういうふうに知事も率直に言っておられました。またそれは当然のことだろうと思います。したがいまして、私としても協会の意見も聞きました。協会の報告書は私は適切なものであると考えております。ただ、横路さんのその案に対しまして協会が言われた問題につきましては、私は現在もなお承っておきますという態勢のままにおることは先ほど申し上げたとおりであります。#171
○小渕(正)委員 最後に申し上げますが、この北炭再開の問題は社会的に非常に大きな関心を呼んでおるわけであります。特に、再開不可能というような協会の結論が出された後、山中通産大臣のああいった言動をもって、もちろんその前の安倍通産大臣からの一連の流れはありますが、非常に大きな期待を抱かせたことは間違いないわけです。これは北海道並びに関係者だけでなしに、国民にもそれなりの期待を持たせながら今日まで推移してきたという、この事実だけは否定することができないと思います。そういう意味で通産当局、政府の責任はきわめて大きいし重いと私は思います。単に一大臣がかわったからこの問題がもう方向転換してもいいということにはならないのではないかと思うわけで、この問題の一連の流れを考えますならば、ともかく政府はそれなりの責任を自覚されて、重大な任務を果たされなければならないところに今日来ていると言っても間違いないと思います。この北炭問題が出ましてからの山中通産大臣の取り組み等いろいろ含めて、前回の石特委員会の議論の中でも、大きな期待を抱いてもよいような幻想を与えたと言ったら悪いですが、そういうような責任があるのだということを私は申し上げましたが、社会的にそういうところに来ているということをぜひ大臣は御理解いただきまして、リーダーシップを発揮されながら全力を挙げてこの問題の解決に努力していただきたい。
以上のことを申し上げて、大臣の御見解がございますならば伺って、終わりたいと思います。
#172
○宇野国務大臣 小渕委員のお話は私十分拝聴いたしました。この問題はひとつ私も大所高所より判断をして、そして最終結論を出したい、かように考えております。#173
○小渕(正)委員 終わります。#174
○武藤委員長 小沢和秋君。#175
○小沢(和)委員 大臣にお尋ねをいたします。山中前通産大臣がここで発言されたことについては、宇野大臣は、表現の方法やらは違うかもしれないけれども考え方は同じだというふうに言われました。私はそれは当然そうでなくてはならないと思うのです。
そのことを確認する意味でまず一つお尋ねをするのですけれども、前回の石炭特別委員会でわが党の三浦議員が、国のエネルギー政策という点からいっても、あるいは夕張の地域振興という点からいっても、さらに労働者の雇用問題という点からいっても、この夕張はどうしても再建しなければならないし、これにどういう姿勢で取り組むかということが日本の今後の石炭政策を占う試金石になるという趣旨の質問をしたわけです。これに対して山中大臣は「これが一つの先導、ともしびとなる」という言い方ですけれども、わが党のこの指摘にほぼ同意をされたと思っております。この点についてまず大臣のお考えを承っておきたいと思うのです。
#176
○宇野国務大臣 石炭行政の今後の試金石が夕張炭鉱問題である、こういうふうにいま小沢さんおっしゃっての質問であったかもしれませんが、それはそれぞれの主観の問題ではないかと思います。しかしながらわれわれは、夕張というところにりっぱな炭鉱があったということは十二分に考えながらこの問題をどういうふうに解決するかということでございますので、先ほど来申し述べましたような気持ちにおいて私はこの問題に対処したいということであります。#177
○小沢(和)委員 私は、それぞれの主観によってこの問題の評価がいま分かれるというようなことじゃないと思うのです。いま国内全体を見渡してみても、この夕張のように炭質もいい、また石炭の存在の状態からいっても最も開発の可能性があるというところはほかにないと私は思うのです。だから、ここがだめだということになるならば、もう今後日本の国内に新鉱の開発の可能性はない。したがって、いま第七次政策がやられていますけれども、どの山も余り先の状態が明るいとは言えないような状況の中では、恐らく日本の石炭産業というのは間もなく決定的な事態を迎えることになってしまう。これはそういうことにまでつながるような判断だと思うのですよ。だからいまお尋ねをしているわけです。もう一遍伺いますが、これは主観によって分かれるような問題ですか。私はそうじゃないと思うのですが、いかがでしょうか。
#178
○宇野国務大臣 いま申し上げましたのは、これによって今後の石炭行政がすべて満点かあるいは落第か決まるのだと言わんばかりの考え方に基づく御質問であったと解釈しますから、そうなりますとその質問については、私たちはそうであるかもしれないし、そうでないかもしれない、主観が違うということを申し上げたわけであります。補助金はもう国が損をしようがだれが損をしようが出せ、たとえばそういう話になってしまいますと、それは全国的な問題にも波及をいたしまして、今後のいろいろな財政問題にも一つの大きな障害になるのではないか、こういうふうに考えてまいりますと、一つの問題をもちまして、これをやらなかったらほかはだめだよというわけではなかろうと思いますので、私といたしましては、政策にもそれぞれの主観がありますとおり、いま小沢さんが申されました質問そのものについては、これは主観の存在の違い方ではなかろうかと申したわけで、決して夕張地区の石炭そのものを軽視いたしたりあるいはまた軽んじておる意味ではない、こういうふうにお考え賜りたいと思います。#179
○小沢(和)委員 もちろん私たちも、この夕張の再建のためには幾ら金がかかろうとどんなことになろうとやれと言っているわけじゃないわけです。いま申し上げたように、ここが最も有利な地点であるし、いま新鉱開発資金を使えば三百億程度の赤字だろうとかいうようなことが言われているけれども、その三百億も、先ほどの午前中の議論ではっきりしたように二百億程度は利子だ、そうすると残る純然たる赤字というのは、いまのような形でやっても百億程度のものだ。これを二十四年で割ったらどれだけになるかというようなことが午前中議論されたわけですよ。だから私などの考え方としては、この山について言うならば、あの地域の石炭全体を北部の十尺層だけでなしに統合的に開発をするような観点に立てば、採算という点でもこれは十分な可能性を持っておるという立場でいまのことを申し上げているわけです。時間がありませんから、私、次の質問にいきたいと思うのですけれども、この夕張の再建は、政府が炭鉱労働者だけでなく国民全体に対して行っておる公約ではないかということなんです。御存じのように、いわゆる大沢構想というのが出されまして、とにかく一たん閉山をして、いままでの債務などを片づけてしまわないと身軽になって再建できない。そういうように、ここで一たん閉山して区切りをつけると再建の可能性がこんなに十分にあるという案が示されて、そうして政府の方もそれを裏書きをしておるわけでしょう。炭労に対して昨年の十月七日に通産大臣が回答している中身を私、いまここに持っております。これは「通産大臣が口頭で述べたものを文書化したものである。」という注釈が入っていますけれども、これによると、「政府としては、関係方面の理解と協力を得て、本構想が早期に実現することを強く期待するところである。このため、政府としては、石炭業界による新会社によって、早急に再開発が行われることとなるよう最大限の努力をする。」ということが回答として言われているわけです。同じような趣旨のことが、この石炭特別委員会でも大臣の発言として行われている。こういうようなものを受けて炭労としてもあるいは山元の組合としても、一たん閉山することはやむを得ぬだろう、これはあくまで再建されることが前提になって、それが必ずあなた方の努力によってされるであろうという期待のもとに、そういう行動がとられたわけでしょう。そういう事実経過ではなかったかどうかということと、いまのような事実経過であるとすれば、これは労働者と国民に対してあなた方がそういう公約を負っておるというふうに私は考えるが、どうでしょうか。大臣のお答えをお願いします。
#180
○宇野国務大臣 そうした経緯があったことは私も十分知っております。しかし、安倍さんのときにも、現行制度の枠内で最大限の努力をする、こういうふうに言っておりますし、また山中さんの考え方は先ほど申し述べたとおりであるということも私承っておるような次第でございます。だから、現在は私といたしまして諸方面の御意見も聞き、また経理面あるいは安全面さらにはまた技術面すべての問題を私は私の責任において検討いたしまして、そして大所高所より決断をいたしたい、こう申し述べておるわけでございます。#181
○小沢(和)委員 いま読み上げた中にも「最大限の努力をする。」というふうに書いてあったのですけれども、この間少なくとも私が見ている限りでは、政府が行った努力というのは、石炭協会に対して答申を早く出してくれというふうに言って待っておっただけでしょう。私はそうとしか考えられないし、そういう意味で、最大限の努力などというのはこれはもう全く文章の上だけのことで、現実には行われてこなかったと言わざるを得ないと思うのです。それから山中発言の問題ですけれども、山中さんが、再建不能という趣旨の答申が出かかって、それに対して先手を打って逆の提案なり行動なりを起こされたわけであります。その考え方については、前回の石炭対策特別委員会で詳しく開陳をされているわけです。これを読むと、午前中も私言ったのですけれども、新鉱開発の資金などを引き出すためにはどうしても新しい経営の形態をとったという形を整えなければいかぬ、だから北海道に対して一枚かんでくれと言ってお願いしたのだ、絶対迷惑をかけないという趣旨のことが繰り返して言われているのです。だから、その意味ではすでに北海道としては出資を検討する用意があるということで、もう十分にかむという姿勢を示したわけですから、次は前回の山中さんの発言の趣旨からするならば、あなた方が石炭協会を全力を挙げて説得しなければならないという段階をいま迎えているのじゃないですか。
#182
○宇野国務大臣 道案がもしそれ、はっきりと経営主体になってやりますということならば、あるいはそういうことがあったかもしれませんが、この経営主体自体は私が考えましてもこれはなかなかむずかしい問題だったのではなかろうか。だから私は、ボールを投げられた横路知事としては、この間出された案が横路知事としても最もいい案ではなかろうか、こう思っていますよ。しかしながら、肝心かなめのいわばパートナーとも言うべき石炭協会がだめですということを言っておりますし、また横路さんの内容に関しましては内外の声もいろいろあった、また現在あるということは私申し述べておるわけでございますから、だから横路案が出た以上は、それがAであろうがBであろうが甲であろうが乙であろうが、ともかく出た以上は石炭協会を説得せよということはちょっと短絡的ではないか、こういうふうに考えます。#183
○小沢(和)委員 大臣、あなたは議事録をよくお読みになったですか。この議事録では、道当局に対してとにかく参加をしてほしいということであって、自分としてはいかなる条件もつけてないんだ、とにかく参加をしてくれ。それも、中心的に参加をしてほしいというようなことじゃないのですよ。この会議録を見ると随所に「一翼を担ってほしい」とか、それから「一肌脱いでもらえないか」とか、それから「本来国が責任を持つべきものを地方自治体に、形の上だけといっても参加してもらうということでありますから、」形の上だけでも参加してもらうというふうに言っているのですよ。それを、中心的に参加をしてもらうというふうにあなた方さっきからすりかえて、そして電発のお金を出させることがどうだこうだと言っているけれども、その電発のことがどうだこうだというようなことは、そもそも山中大臣が北海道当局に対して参加を要請するというふうに言ったときは、これは枝葉も枝葉、こんなことは何もここで議論をするような問題じゃないのですよ。問題は、北海道当局が新鉱開発のためにお金を出せるように参加をするという姿勢を示すかどうかなんです。この議事録にほかに読みようがあるというのだったらはっきり答えてもらいたい。#184
○宇野国務大臣 その当時の経緯のことでございますから、エネ庁長官から答弁をいたさせます。#185
○豊島説明員 先生御指摘の前大臣の発言につきまして、その部分だけでございますといかにもそういうことになろうかと思いますが、たとえばこの考え方を知事に申されますときに、これは地域問題であるということで、そういうものに対してはやはり道とかあるいは夕張市というものについては相当関心を持ち、そういうことで考えてもらえないか、石炭政策だけでいけばこれは事務当局が言うように不可能なんだけれども、地域政策ということで道とか夕張市が乗り出せばと、こういうことを言われて、そのときにははっきり道が中心としてということも、私陪席しておりましたが言っておられます。そういう意味で私は申し上げております。それから、たとえば何でもいいから持ってこいとおっしゃったというふうにとられる節もありますが、前大臣は、しかし何でもどんな案でも全部いいよということではないということもはっきりおっしゃっておられまして、その根幹としてはやはり国管はしないんだよということははっきり言っておられます。したがって、赤字が出た場合、その赤字は全部見るということではないということの趣旨は、これははっきりしておられるということでございます。
それからなお一億でも二億でも、これはまだ知事がお出しになると言ったわけでは決してございませんが、仮にそういうもので十分じゃないか、こういう御見解かと思いますが、私どもの当時の知事とのやりとりと言っては大変失礼でございますが、国会での答弁でございますが、地方債、道債を発行するのも大いに協力してやる、相当多額の金が要るんじゃないだろうか、それに対して道としても財政上困るようなことになってはならない、したがって、道債を発行してでもやる、それに対しては自治省にも自分から話していいということで、その辺をお含みいただきますと、山中大臣の言っておられることは、いま単に御指摘のような簡単なことではないと私は理解しておりますし、大臣ともそういう議論をしてまいったわけでございます。
#186
○小沢(和)委員 地域問題だ云々ということで大臣が道知事に言われたことをもって、私がさっきから指摘していることを否定できるような根拠には何らなり得ませんよ。だって、相手は道知事でしょう。だから、北海道にとっても重大な関係があるから、あなたのところも関心を持っているだろう、考えてくれというふうに言うのは、これはあたりまえのことでしょう。だから、そんなことは何の反論にもならない。むしろ、この議事録を読めばわかりますけれども、山中大臣は恐らく北海道の方が踏み切っても石炭協会の方はなかなかうんと言わないだろうということまで見越して、もうそのときの話までこの議事録ではしているのですよ。あなた、うなずいているからわかるでしょう。「どうしてもむずかしい場合は、私自身が石炭協会に行きまして頭を下げてでもお願いをする決意でございます。」というふうにも言っているし、さらに別のところでは、いまの日本の石炭情勢の中で一社でも国のお世話にならなかったというところはない、今後お世話にならないというところがあるなら話は別だけれども、今後もお世話にならなければならぬとすれば、みんな連帯してこの事態に当たるのは当然だという立場で私は説得したいということまで、この中で言っているわけでしょう。当然そういう立場に立って次にあなた方は行動を起こすべきでしょうが。ところが、先ほど石炭協会の有吉会長に私が質問をしたところによると、宇野大臣は、御意見はどうですかと協会長に聞いただけで、だめだという話を聞いただけ。それに対して、山中大臣の後継者としては当然、あなた方は大変だろうけれども何とか考え直してもらえないかと形だけにせよ言ったのならともかく、何も言わなかったというのですよ。これで、安倍元大臣、山中前大臣のときからずっといままであなた方が言ってきたことを本当に誠意を持って政府が全力を挙げて最大限の努力をしてきたというふうに言えるのですか。全く言えないのではないですか。もう誠意がないと言わざるを得ませんよ。何か反論があったら言ってください。#187
○宇野国務大臣 私が結論出した後であなたは何もしなかったじゃないかと言われたらそれはやむを得ません、結論出す段階で、こう言うてますから、そのあとのことはひとつ私に判断させていただきたい、こう思っています。#188
○小沢(和)委員 終わります。#189
○武藤委員長 石原健太郎君。#190
○石原(健)委員 冒頭、大臣は再開発することには相当な困難があるのではないかというふうな感じを持っているとおっしゃいましたが、その困難であるだろうというお考えを持つに至られた根拠というものはどういう点にあるのか、御説明いただきたいと思います。#191
○宇野国務大臣 幾つもございますが、私は本日、また他にいろいろと御意見を承ってからと申し上げております。だから、いままでどういうことがあったかということに相なりますれば、やはり山中通産大臣が道もひとつ参加したらどうかということに対する道知事の答えは直接私になされました。私はそのときコメントしてませんし、いまだにコメントはしておりませんよ。しかしながら、内外の声を集約いたしますと、先ほど来申し上げておりますように、一私企業に対して外炭の輸入並びに販売の権利を与えて、そして、ひどい表現かもしれませんが眠り口銭で経営が成り立ってよいのかどうか、これは重大な判断ではないかと私は考えております。第二番目には、安全という問題から考えました場合に、専門家である石炭協会から今日ただいま再開発に際してすら保安管理体制というものには自信が持てません、こういうふうに言っておることが、二番目といたしまして私には今後どうすればいいのかなという一つの材料でございます。
三番目といたしますと、日本は私企業で石炭企業を営んでいただいておりますから、これは国管でやるわけではございません。国管ならば、それは赤字が出ようが何が出ようがやっていくということでございましょうが、わが国はあくまでも私企業でやっております。だから、第七次答申におきましても、自助努力で石炭企業はがんばってくれ、そして自立する方向にがんばってくれ、そのためには需要者の協力も必要でございます。需要者本来の考え方ならば、もっと安い石炭ならば輸入したいとあるいは思っているかもしれませんが、石炭は重大な資源でございます。そして国内産業として長い間のりっぱな歴史を持っておられます。これを一朝に失うということは大変な問題だというので、政府といたしましても、それぞれ国内炭を守るためにあらゆる努力をいたしておるわけでございますから、そうした点から考えましても、やはり私企業としてだれが適切だろうか、その際には石炭協会がいろいろと考えていただいて、こういう方法がありますというならばまた別でございます。道がやるというならば別でございます。しかしながら、いずれもそういう肝心かなめの問題に関しましては今日まだ私には答えが得られておらない。こういう状況を判断いたしますと、私自身といたしましては非常にむずかしい環境に置かれた問題だな、こう言わざるを得ない。だから、先ほど来そういうふうに率直にお答えをしておるのでございます。
#192
○石原(健)委員 エネルギー庁の方にお尋ねをいたしますけれども、山中通産大臣が北海道に申し入れをしたときに、いま宇野大臣がおっしゃられたような経営上困難であろう、あるいは安全確保、技術者の確保が困難であろうといったようなことを、大臣はすでに御承知になっていたのかどうか。その辺のことはいかがだったのでしょうか。#193
○豊島説明員 大臣としては、この再開発ということが経理的といいますか、経営上非常に困難だということは当然御承知でございましたし、それからたとえば技術面、保安面でも要員の確保その他が非常に問題があるという点については十分御存じでございました。しかし、なおそれにもかかわらずやはり道が一枚かむといいますか、地方振興のために乗り出してくるということを前提として一%の可能性を追求したい、こうおっしゃっておられました。#194
○石原(健)委員 道が一枚乗り出してきても、技術者の確保が困難であるとかあるいは安全確保が困難だといったような問題が解決できなかろうということは、だれが考えても明らかだと思うのです。また経営上の問題にしても、いろいろな制約があって困難である。そういうことを考えますときに、山中さんがあのときあのような提案をされたことは、やはりここでちょっと反省すべき点もあったのではないかというふうにも思われるのですけれども、その辺の反省といいますか、いかがでしょうか。#195
○豊島説明員 経営上は非常に困難である、要員の確保も非常にむずかしいという大前提ながらも、やはり北海道が夕張炭鉱の再開発のために地方政策といいますか地域政策として相当の決意と負担を持っておやりになるなら、われわれもそういう面でも最大の努力をすべきではないかというお考えでございまして、むしろそういう余地があるなら追求すべきで、追求した結果だめであればそれはまた元へ戻るだけの話で、元へ戻るということは最初の石炭協会の報告に戻るということでございますから、そういう追求はまずしてみたい、政治家としてはすべきである、そういうことでございまして、追求したこと自身がおかしいということには私はならないと思います。この結果がどうなるかはまだこれからの問題でございます。仮に問題がうまくいかなかったとしても、そこを最大限追求してみた、そういう問題かと思います。#196
○石原(健)委員 時間ですので、終わります。#197
○武藤委員長 この際、大臣に一言要望しておきたいと思います。本日の与野党議員の発言は、ほとんど夕張を再建したいという強い熱意の表現であります。これは国民の意思と思っていただきたい。きょうの答弁を聞いておると、山中前大臣の勇み足、無知、ひとりよがり、短絡的とでも言いたいような姿勢はまことに遺憾であります。業界説得の自信ないとすでに放棄した姿勢は不誠意な姿勢であると感じました。
なせばなるなさねばならぬ何事もという言葉があります。政治は法をつくる力であり、法を廃止する力を持っているのであります。宇野大臣は政治家であります。夕張の問題は中曽根内閣の性格と方針を表明する大きな国策の問題でありますから、国民が失望しないよう、将来のエネルギー政策を見通して国家の大計を誤らないような結論を出してほしい、委員長個人として強く要望いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後三時三十分散会