1982/02/23 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第2号
#1
第098回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第2号昭和五十八年二月二十三日(水曜日)
午前十時三十分開議
出席委員
委員長 中野 四郎君
理事 小沢 一郎君 理事 奥野 誠亮君
理事 片岡 清一君 理事 小泉純一郎君
理事 佐藤 観樹君 理事 堀 昌雄君
理事 伏木 和雄君 理事 中井 洽君
足立 篤郎君 上村千一郎君
小里 貞利君 大村 襄治君
高村 正彦君 住 栄作君
田名部匡省君 渡海元三郎君
浜田卓二郎君 栂野 泰二君
中村 茂君 山花 貞夫君
山本 幸一君 坂井 弘一君
部谷 孝之君 安藤 巖君
小杉 隆君
出席国務大臣
自 治 大 臣 山本 幸雄君
出席政府委員
自治省行政局選
挙部長 岩田 脩君
委員外の出席者
警察庁刑事局捜
査第二課長 森廣 英一君
法務省刑事局刑
事課長 飛田 清弘君
自治省行政局行
政課長 中島 忠能君
自治省行政局選
挙部選挙課長 小笠原臣也君
自治省行政局選
挙部管理課長 平林 忠正君
特別委員会第二
調査室長 秋山陽一郎君
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委員の異動
二月二十三日
辞任 補欠選任
大西 正男君 高村 正彦君
粟山 明君 小里 貞利君
山口 鶴男君 栂野 泰二君
岡田 正勝君 部谷 孝之君
同日
辞任 補欠選任
小里 貞利君 粟山 明君
高村 正彦君 大西 正男君
栂野 泰二君 中村 茂君
部谷 孝之君 岡田 正勝君
同日
辞任 補欠選任
中村 茂君 山口 鶴男君
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二月一日
国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)
同月九日
衆議院議員の定数配分の是正に関する請願(加藤万吉君紹介)(第四四三号)
同月十八日
衆議院議員の定数配分の是正に関する請願(加藤万吉君紹介)(第八四六号)
同月二十一日
衆議院議員の定数配分の是正に関する請願外三件(加藤万吉君紹介)(第九二七号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)
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#2
○中野委員長 これより会議を開きます。内閣提出、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
提案理由の説明を聴取いたします。山本自治大臣。
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国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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#3
○山本国務大臣 ただいま議題となりました国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由と内容の概略を御説明申し上げます。この改正法案は、国会議員の選挙等の執行について、国が負担する経費で地方公共団体に交付するものの現行の基準が実情に即さないものになりましたので、今回これに所要の改定を加えようとするものであります。すなわち、最近における賃金及び物価の変動等にかんがみまして、執行経費の基準を改定し、もって国会議員の選挙等の執行に遺憾のないようにしたいと存ずるものであります。
次に、この法律案による改正の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
第一は、最近における賃金等の上昇に伴い、投票所経費、開票所経費等の積算単価である超過勤務手当及び投票管理者、開票管理者、立会人等の費用弁償その他の額を実情に即するよう引き上げ、これらの経費に係る基準額を改定しようとするものであります。
第二は、最近における物価の変動等に伴い、選挙公報発行費、ポスター掲示場費等の積算単価である印刷費その他の額を実情に即するよう引き上げ、これらの経費に係る基準額を改定しようとするものであります。
以上が国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案の要旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#4
○中野委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。─────────────
#5
○中野委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花貞夫君。
#6
○山花委員 ただいま提案理由の御説明をいただきました国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、若干の質疑をいたします。大臣から、提案の理由として、大枠、人件費と物件費のくくり方になると思いますが、最近における賃金及び物価の変動等の事情を考慮して、「国会議員の選挙等の執行について、国が負担する経費で地方公共団体に交付するものの基準」を改定すると御説明をいただきました。
内容について検討さしていただきましたけれども、まず冒頭、基準の改定についての算式、一体どういう方式によったんだろうか。一つには賃金の問題、一つには物価の問題ということについて御説明がありました。賃金については賃金上昇率、物価については物価上昇率ということが勘案されて積算がされたのではなかろうかと思いますけれども、全体的な基準がどうなっているのかということが一つと、法案の内容は実務的に大変多岐にわたっておりますので、そのうち、改正点の特徴のある部分についてだけはピックアップして補足的に説明をしていただきたいと思います。
#7
○岩田(脩)政府委員 お答えを申し上げます。ただいまお話がありましたように、基準法は、投票所経費とか開票所経費とか、そういった幾つかの項目に分けまして、投票所経費でございますと、投票区の規模に応じましてそれぞれ単価を考えるというようになっております。しかしながら、実際には、その積算に当たりまして、それぞれの投票所にどれだけの人員配置を考えるかとか、それから事務につきましてどの程度の超過勤務を見込むかといったような基礎の算式がいろいろございます。非常に複雑な算式になっております。
その中で、たとえば超過勤務の時間単価をどういうように見るかという問題、これがただいまお話しの人件費の問題としてあるわけでございまして、実はこれは、地方財政計画上の超過勤務の単価を三年前のものと比較をいたしまして、その伸び率を中心にしてその計算をするという方式をとっております。そのほか、たとえば投票立会人とか開票立会人に対する報酬というものがあるわけでございますけれども、このたぐいのものにつきましては、政府予算の上昇率をもとにするとか、それから各種委員の手当、それの上昇率をもとにして考えるとか、それから、たとえば今回一つのアップのあれに使いました印刷経費などにつきましては、物価の上昇率、とりわけ紙の経費の値上がりを計算に入れるとか、そういうような個別の計算をしたわけでございます。
そして、そういった単価が変わりましたことに基づきまして、それぞれの開票所経費が幾らに上がり、投票所経費が幾らに上がるというのが、お手元に差し上げました法案の内容になっているわけでございまして、執行経費全体として、前回と比べまして二十数%ぐらいの増加になろうかというように考えております。
ただ、中には、今回の全国区の制度採用によりまして廃止になった分がございます。たとえば候補者の氏名掲示に関する経費という項目があるわけでございますけれども、この中には投票所外の氏名掲示の経費が入っております。これは改正前の全国区についてだけありました制度でありまして、今回、投票所外の氏名掲示の制度がなくなっておりますので、これはマイナスが出ております。そういうような形で積算したものが今回の改正案であるというように御理解をいただきとう存じます。
#8
○山花委員 概略よくわかりましたけれども、いま御説明の中で、積算に当たりましては、賃金、物価の上昇ということなどに加えまして、政府予算の伸び率やあるいは人件費関係の伸び率についてもしんしゃくしたという趣旨の部分がございました。本来、そうしたものにつきましては、賃金上昇率や物価上昇率とは必ずしも一致していないわけでありまして、そうした部分についてどの程度はね返らせるかということはなかなかむずかしい問題ではないかと思います。事務執行の経費ということならば、単純に賃金、物価上昇などをまずはね返らして、その上で、いま最後に御指摘ありましたような特色のある問題については部分的に修正するということが妥当ではないかと思うわけですけれども、その点について、いまのお答えに関連してお尋ねしておきたいと思います。もう一つ、そうした関連でこの際お伺いしておきたいと思いますことは、実は選挙公営の関係であります。昭和五十年の選挙法改正によりまして、新たに選挙運動用自動車の使用、選挙運動用ビラの作成や選挙運動用ポスターの作成につきまして公営の制度が設けられました。その後、選挙運動用自動車の公営につきまして、昭和五十五年に燃料費や運転手の報酬がそれぞれ千円引き上げられたわけであります。しかし、ビラの作成費やポスターの作成費につきましては、制定以来全く改正が行われないで現在に至っております。実はこの点、いま申し上げました執行に当たって賃金とか物価上昇をということで考えてみますと、総理府統計局の全国の、物価の関係でありますけれども、五十年から現在までのところの上昇率というものを一応計算いたしますと、物価上昇四七・八%という数字が出てまいります。一方賃金につきましては、これは同じような形で賃金の指標を基準といたしましてこの間の上昇率を考えますと、六二・五%のアップというのが五十年以降今日までの経過であります。
そういたしますと、五十年以降物価四七・八%、賃金は六二・五%上昇しているということになりますと、この際、選挙執行経費の改定にあわせまして、こうした公営に要する費用につきましても実情に即するよう引き上げるべきではないかというように考えるわけでありますけれども、この点につきまして検討されたのでしょうか。それとも今後検討する余地があるのかということについてお伺いしたいと思います。
#9
○岩田(脩)政府委員 まず最初にお尋ねのありました上昇率の問題でございますけれども、私どもの方はただいま地方財政計画上の予算単価、人件費につきましての単価ということを申し上げましたけれども、この仕事に従事するのが公務員でございますから、したがって、公務員の超過勤務の単価の動き、それを示すものとして私どもはそれをとったというわけでございまして、実際の人件費の動きや物価の動きと関係なしに政府何とかによったというようには考えておりません。そういうものをもとにしてやったというように御理解をいただきとう存じます。それから御指摘のありましたいわゆる新公営、自動車の運行費、それからビラ、ポスターの印刷費についてでございますが、これは今回の基準法とは直接の関係はないのでございますが、来年度の予算の中で同じように印刷経費やその他の物価についての検討はいたしました。そして、実は選挙が終わりますと、それぞれの候補者の方が実際に契約を結ばれるわけでございますが、自分は自動車について幾らぐらいのどういう借り上げの契約をしたか、ポスターについてはどういう契約を結ばれたか、その契約書を私どもの方に送ってくださいまして、われわれの方がそれに対して政令で定められた基準の範囲内でお金を払う。その払う比率でございますけれども、実際にポスターや自動車について見ますと、まず候補者の方から自分が結んだ契約はこうである、これだけ金がかかったと言ってこられた経費の八、九割くらいのものは政令の方でカバーをしておるという状態になっております。
ただ、ビラについては確かに御指摘のとおり、実際にかかったぞと言ってこられた部分の四割台くらいのカバーしかしておりません。このビラの印刷費というものについては五十年度の改正のときの経緯がいろいろありましたことは御承知のとおりでございまして、当初これは一色刷りの中質紙のチラシというところから話が始まりました。実際には多色刷り、両面刷り、上質紙のチラシが行われておる。そこら付近に両方の食い違いの大きな原因がございます。このギャップというものは初めの考え方との違いでございますので、なかなかカバーできないという現状にございます。
ただ、今回の予算におきましては、その後の物価の上昇を考えまして、いまの自動車の話では燃料費において一千円のアップをいたしております。それからもう一つ、ビラの印刷費につきましては、現在まで一枚単価三円でありましたものを今回一枚の単価四円に、パーセンテージで申しますと三分の一ほどの引き上げ。御指摘のとおり五十一年からの制度が始まって以来最初のアップをやったわけでございます。実態がただいまお話しのように多色刷りといったような問題もあり、そういった意味でのギャップはまだ残るとは思いますけれども、制度始まって以来最初の改正をやることができましたので、一歩の前進として受けとめていただければ幸せでございます。
#10
○山花委員 御努力の一端は理解するにやぶさかではありませんけれども、いまの答弁の中にもありましたとおり、たとえばビラにつきましては一色オフセットということではなくて、多色刷りで上質紙を使うような実態があらわれた。実はこういう問題はきょうあらわれたということではないわけでありまして、すでに何年もそうした選挙の実態があるわけであります。もう幾度か選挙を五十年以降経験しているわけでございますけれども、実態とすればかなり上質紙で、競争もありますから多色刷りという実態になっているわけでして、立法当時の経過はあったといたしましても、選挙の執行とか選挙関係の問題というのは、選挙の実態を把握された上で対策を立てていくというのが必要なのではないだろうか、こういうように考えるところです。したがいまして、いま自動車の燃料費とビラにつきましては若干の調整ということについて伺ったわけですけれども、また一方における問題として、全面的な負担ということではなく、一部公営的な考え方にあるということについても理解をした上での質問でありますけれども、選挙の実態に即してもうちょっと実態に合わせるような余地がないだろうか。これは予算の関係その他もあると思いますけれども、その点について重ねてお伺いをしたいと思いますし、いまお伺いした中では若干の増額になりますのは自動車関連とビラの関係だけということになっておりますけれども、ポスターの関係などについては検討されたのかどうかということについてお伺いしたいと思います。なお、これからの準備の過程で具体的に自動車、ビラの関係について増額が確定する時期はいつごろになるかということについても、この際あわせてお伺いしておきたいと思います。
#11
○岩田(脩)政府委員 前段のお話でございますが、確かにそういう実態との乖離はあるわけでございます。ただ、新公営というのは事の性格上かかる経費のうちのどれだけを国がカバーするかという話でございます。したがいまして、そもそも話が起こったときに白黒一枚、こういうようなものと考えてその範囲で国が持とうという話で出発したものですから、そこのところが実態が先行したからといって、それでは直ちにその分だけの金をどんどん見ていくことになるのかという、こういう財政事情の中でという大蔵サイドといいますか経費を負担する側の議論があるものでございますから、なかなかそこのところの溝を一息に飛び越えるようなわけにはいかないでいるという状態でございます。それから、これから先どうなるかという話でございますけれども、いま申し上げた改正の中身はただいま御審議をいただいております予算案の中に入っております。したがいまして、予算が成立しました後にはしかるべく措置をいたしまして、施行令の一部を改正することになると思いますけれども、この予算の施行に遺憾のないように手当てをいたしたいというように存じております。
#12
○山花委員 選挙の公営に関する制度的な趣旨が、まるごとということではなくて、どの程度かというのが立法過程で議論されたというお話については当然承知しておりますけれども、その問題は当時と現在も変わらないということを前提に置きましても、選挙の実態が変わってきたならば、選挙執行の立場からいたしますと改定をする必要があるのではないかという気がいたします。大蔵省の関係についてもお話がありましたけれども、やはり選挙の適正な執行をする立場からこの問題についてはさらに御努力をいただきますよう要望申し上げる次第です。同時に、従来から議論されてまいりました問題は、実は選挙公営関係が国政選挙どまりであるということであります。これは各政党ともそうだと思うのですけれども、地方議員の皆さんからいたしますと、国政選挙だけこうなっておってわれわれの方はだめである、こういう声が大変強いわけでありまして、それぞれの党が御苦労されている問題の一つだと思うのであります。実はこの問題について従来からわれわれはこの公営を、たとえばビラ、ポスターなどにつきましてはさらに広げるべきではないかということを主張してきたわけですが、それは各自治体ごとの財政事情の差などがあるといたしましても、最低の基準をつくるとかいろいろやり方はあるのではないか、こういう気がいたします。この点について検討されたことがあるのか、それとも今後とも全く検討する余地はないのか、この点についてお伺いしたいと思うのです。
#13
○岩田(脩)政府委員 新公営を地方公共団体の選挙にも及ぼしたらいいではないかという御質問がときどきありますし、われわれもそういった御質問に即して問題意識を持ってはおるのでございますけれども、やはり地方公共団体の選挙ということになりますと、ただいまお話にもございましたように地方公共団体の財政事情ということもございますし、また選挙の行われる区域であるとか候補者の数であるとか、そういったことを考えましても、ちょっと一律にはいかないように思っております。また、片一方では、御承知のとおりわが国の選挙公営というものがほかの国に比べましてもかなり進んだ状態にあるということ、それからまた、五十年に改正が行われまして、いままでとはまるで性格の違う公営でございます新公営という制度が取り入れられたときにも、それは国会議員の選挙だけにするということのうちにもそういう地方公共団体の選挙とはおのずから性格が違うのだからという御判断もあったのではないかというように思っております。一つの課題であるとは考えておりますけれども、ただ、現状から考えて、なお慎重に検討させていただきたいというように考えておるわけでございます。#14
○山花委員 実は、政治資金規正法の改正の中で、寄附をめぐる問題、同じような問題がありました。当初、県会議員とかそれ以下のものにつきましては、個人が政治資金として寄附した場合に、租税特別措置法の関係ですけれども、所得から経費として控除されるかどうかという問題でありますけれども、議論されまして、これはその後手直しがされて拡大をいたしまして、たしか県会議員と政令指定都市の議員まで拡大したのではなかったかと思うわけです。当初の立法の趣旨についてはそれぞれあるといたしましても、現実の各級議員との間の矛盾の問題については、政治資金規正法の方では一定の調整がされまして、現在ではそれ以下まで及ぼすというような議論までは起こっていない、一応の落ちつきを見せているということではないかと思います。いま一つの課題ではあるというようにお話を伺ったわけでありますけれども、地方に新公営を及ぼすかどうかという問題については、技術的な問題点とか、先ほど申し上げました各自治体の、とにかく三千三百あるとするならば、どこまでやるかということについてはいろいろ議論があるといたしましても、やはり政治資金規正法の関係でも問題提起にこたえたという経過があったわけでありますから、この新公営問題につきましても、やはり単なる課題ということではなく、きょう直ちにということが非常に困難であるとしたならば、課題について議論を進めていただくということについて強く要望をしておきたいと思いますが、大臣からも一言この点についてお話しいただきたいと思います。
#15
○山本国務大臣 公営問題というのは、選挙の公正、あるいはやりやすい、金のかからない選挙という面から見れば非常に大事なことなので、いまお話しのように、国会議員の選挙にいまは限定をされてはいますものの、選挙としては同じことでございますが、多少選挙のやり方にも違うところもあるわけでございまして、その辺も踏まえまして、また、いま地方の財政ということも出ましたが、これはやはり地方財政で負担をしていただかなければならないということになるわけでございまして、その辺のところも考えながら、今後ともいまの御趣旨に沿ってひとつ検討をさせていただこう、こう思います。#16
○山花委員 ぜひ前向きに取り組んでいただきますことを重ねて要望しておきまして、次の質問に移りたいと思います。次の問題として、衆参両院の定数の格差問題についてお伺いしておきたいと思います。
かねてから大議論が繰り返されているところでありますけれども、ことしの一月十五日自治省が発表いたしました昨年の九月二日現在の全国選挙人名簿登録者数概要によりますと、議員一人当たりの有権者数は、衆議院では最高の千葉四区が最低の兵庫五区の四・二四倍になっております。実は、この点について全体の流れを振り返ってみますと、五十一年十二月五日執行の当時には三・五〇倍、五十四年十月七日当時は三・八七倍、五十五年の六月二十二日当時は三・九五倍という経過でありまして、それが最近では四・二四倍になったというのが全体の経過であります。参議院の地方区はおきましては、神奈川が鳥取の五・五倍に達しております。これまた全体の経過を振り返ってみますと、四十九年七月七日当時は五・一一倍、五十二年七月十日当時は五・二六倍、五十五年六月二十二日当時は五・三七倍となりまして、そして、先ほど指摘いたしましたことし一月の自治省の発表によりますと五・五倍に達していると、こういう現状であります。いずれも、その一票の格差というものが次第に年を追うごとに拡大しているという、こういう実態があるわけであります。
さて、こうした定数の格差の問題につきましては、従来からたくさんの裁判が有権者から提起されておりました。こうした経過の中で、昭和五十五年の十二月二十三日でありますけれども、東京高等裁判所におきまして判決がなされました。また、昨年の二月には大阪の高等裁判所で判決がなされました。いずれも衆議院の議員定数の不均衡につきまして違憲の判決が下されているわけであります。東京高裁の判決におきましては、格差が二対一を超えれば違憲であるというような基準まで示されているわけでありまして、こうした問題を考えますと、大変事態は緊迫しているというように考えなければならないと思います。
東京高裁の判決などにつきましても、そうした違憲の判決をしながらも、選挙そのものは、かつて五十一年四月の最高裁大法廷判決が採用いたしました事情判決という判例を採用いたしまして、無効とはされなかったということになっておるわけでありますけれども、この格差の問題につきましては、いわば選挙に対する国民の信頼ということにかかわってくる大変大事な問題だと思います。一つには政府の責任、一つには国会の問題、両面あるということだと思いますけれども、こうした問題につきまして基本的にどのようにお考えになっておられるだろうか、これは、できれば大臣に冒頭この問題についての基本的な認識をお伺いいたしたいと思います。
#17
○山本国務大臣 この問題は、非常な選挙制度上の重要な課題になっておると思っておりますが、過去二回各党間の合意で不均衡の著しい選挙区について是正が行われましたが、これは定数をふやすという方向で是正が行われたということでございます。したがいまして、こういう定数是正をする際に、衆議院の場合、全体の定員は一体どうするのか、それに従って今度は区制の問題がどうしても何らかの是正をしなければならないということにもなるのでありまして、これは現行の選挙制度上の重要な問題に影響をするわけでございます。参議院につきましても、いまは半数ずつ三年ごとに改選をしている、あるいは各選挙区の地域代表的な性格というものもあるということで、この問題は、いま仰せのように、わが国選挙制度上の最大の問題点ではなかろうかと私は思います。しかし、それと同時に、やはりこれは選挙制度の基本に関するきわめて重要な事柄であり、各党としても、もしこれを何らかの形で検討をされるという場合には、それぞれやはり御意見がおありだろう、こう存じておりますので、やはり国会におきまして各党間で十分ひとつ論議を尽くしていただきまして、その合意に基づいて実施していくのが最も民主的かつ現実的なやり方ではないかと、かように思っておる次第でございます。
#18
○山花委員 実は、問題認識につきまして大臣のお話を伺った上で、最も深刻な事態になっているということを、全体の流れの中では痛感せざるを得ないと思うのであります。これは二月三日、本年に入りましてからごく最近のことでありますけれども、五十五年の衆議院選挙における定数是正問題につきまして、大阪の高等裁判所と東京の高等裁判所でそれぞれありました違憲の判決につきまして、最高裁判所がその第三小法廷に係属しておりました東京高裁の方の事件につきまして、これを大法廷で審理するということを決めて関係者に通知したという報道がなされました。通常、それぞれ小法廷に係属している事件を大法廷に回すということにつきましては、常識的に憲法判断か判例の変更、こういうことになるわけでありまして、従来の各高等裁判所につきましての判断をずっと流れを追ってきた場合には、大法廷で十五人の最高裁判所裁判官が憲法問題について正面から取り組んでいるというのがこの大法廷に回したということの意味ではなかろうかというように考えております。ことし衆議院の選挙がいつあるかということにつきましてはきょう以降の大変流動的な問題でありますけれども、そうしたことの中で、大法廷としては恐らく衆議院の次期総選挙がある前までには判決を出したいぐらいの意欲があるのじゃなかろうか、こういうようにこの流れを追っているわけであります。最高裁判所が正面から大法廷で違憲の判決をもし出したということになりますと、政府と国会の怠慢が改めて国民の目の前に浮き彫りにされるわけでありまして、そうした意味におきましては、すでに大法廷で審理が進んで、いつ判決が出るか、こういう状態にもなっているということを考えますと、非常に切迫した中でこの問題について取り扱いの方向というものを出していかなければならないのではなかろうかというように思います。
いま大臣の方から、最も民主的、現実的な方向としては各党間の協議という従来どおりの御答弁があったわけでありますけれども、各党間の合意ということ、そこだけにかけておったのでは、これは従来の経過から、その中から何が生まれるかということにつきましてある程度まだ時間がかかるだろうということが予測されるわけでありまして、こうした問題につきましては何らかの措置を政府の側からも積極的につくっていく必要があるのじゃないだろうか。選挙制度審議会は現在つくっておらない、こういう状態でありますと、全く政府の方が何らの対策も立てないで各党にお任せするということだけでは、最高裁大法廷での判決が迫っている、しかもそれが憲法判断にあるということが予測される事態のもとで、やはり政府は怠慢ではないか、こういうことを言わざるを得ないわけです。
そうした状態の中で、もっと積極的に一歩踏み込んで、諸外国の例などについても参考になる例がたくさんあると思うわけですが、各党間の協議と並行して政府の方から積極的にこの問題について取り組んでいく姿勢を示すべきではないかと考えるわけですけれども、この点いかがでしょうか。
#19
○山本国務大臣 いま、国会の方もやっていくが、しかし同時に政府ももう少し勉強しなさい、こういう御趣旨でございます。ごもっともでございます。ただ、この問題は、やはり何といいましても各政党としてはそれぞれのお考えがおありだろうと私は思うのです。それぞれの政党はそれぞれのお立場がございますから、いろいろなお考えが出てくるであろうと私は思うのです。政府の方で何とか一つの勉強をしなさい、こういう仰せでございますが、これはいろいろな制度、外国の制度を勉強したりあるいは選挙制度審議会とかそういうところにお願いするとか、そういうことは私は政府としてもできると思いますが、何らかの案を出すというのはなかなか容易なことではなかろう、こう思うのでございます。
まず第一には、いままでは二回にわたりまして定数をふやした形で是正をしたということでございますが、それでは今度やるというときに、もう一度同じような手法でいけるのかあるいはそれはむずかしいだろうということなのか、その辺からしてまず大変な論議を呼ぶことではなかろうかと思うのです。これは各党の国会議員の先生方のそれぞれの選挙に関することでございますから、個人としても皆さんそれぞれ御意見をお持ちでございますので、やはりその辺のコンセンサスはどうしても得ていただきたいなあ、それでなければせっかく出しましても事は進まない、こういうふうに私は思いますだけに、われわれの方も勉強をしなさいということであればそういう御意向をいただいて勉強もいたしていきますけれども、何といいましても国会でぜひそういう合意が得られるようにひとつお願いをしたい、こういう考え方でございます。
#20
○山花委員 各党の取り組みということになりますと、それは各党とも努力されているところだと思います。われわれ日本社会党の内部におきましても、選挙制度関係の党内の委員会におきまして、日常的に最大の関心を持ったテーマの一つとしてこの問題について議論を続けているところでありまして、それぞれの努力はしているわけでありますけれども、同時に、単に勉強を進めるという程度ではなくて、最高裁の大法廷の判決が迫っているという現状のもとにおきましては、もっと踏み込んで、選挙制度審議会ということがいいかどうかは別にいたしまして、何らかの、第三者機関の設置その他の努力を政府としてしていくべきではないだろうか、こういう問題提起をして、この問題に対して積極的に対応して、いたずらに国民の政治不信を増すような、そうした怠慢のそしりを受けることのないように努力をしていただきたいということを重ねて要求いたしまして、次の質問に移りたいと思います。ことしは選挙の年と言われて各地ですでに選挙がスタートしているわけでありますけれども、熊本県知事選挙をめぐるトラブルについてお伺いをいたしたいと思います。
これは、当日の状況につきまして、テレビカメラの前で事件が起こったという経過もありまして全国民が大変注目をした重大な事件であります。わが党といたしましても、この問題につきましては、単に一般の選挙犯罪とは質が違う、悪質なものであるというように考えております。立候補しようとした者を実力で立候補させなかったということは、まさに選挙に関する国民の権利、参政権を揺るがす重大な出来事と言わなければならないと考えるところであります。
この事件の経過につきまして詳しくお伺いいたしますことは、新聞記事その他でかなり詳細に時間を追って経過が出ておりますので省略をいたしたいというように考えるわけですが、こうした実力で立候補を阻止した熊本のケースにつきまして自治省としてはどのような見解をお持ちなのか、また、この問題に対して県選管に対してどのような指導をされたのかということにつきまして、具体的にそうしたテーマについてお伺いをいたしたいと思います。
#21
○岩田(脩)政府委員 ただいま御指摘のありましたように、熊本県知事選挙の立候補の場合、中原さんとおっしゃる立候補予定者といいますか届けにおいでになった方が、選挙長の目の前で実力で阻止をされまして地方課の部屋の外に運び出されたという問題がございました。こういったように立候補の行動そのものが実力によって阻害されるということは、われわれの方も重大に受けとめておりまして、大変残念なことに思っております。ただ、この選挙についてわれわれがどういう指導をしたかということでございますが、このことについては、県の選管から選挙途中で第一次的な報告を受けて意見の交換もある程度行ったのでありますけれども、いずれにせよ県の選挙管理委員会が管理をしております県の選挙であります。かつまた、選挙長が受理をしていないという決定を下してしまって、もうそれを修正する道がないという状態に立ち至ったケースについてでございますので、自分たちとしましては、県の選挙管理委員会の報告を聞き、その適切な行動を期待するということにしたわけでございます。目下、この件につきましては、一昨日でございますか、その関係者の中原氏の方から県の選挙管理委員会に対しまして異議の申し出がなされております。今後これに伴いましての争訟が予定されておりますので、そうした争訟の成り行きを見ながら関係の選挙管理委員会、これは熊本ということではございませんけれども、全選挙管理委員会に対して適切な指導をしていきたいというように思っております。
#22
○山花委員 実は、先ほど申し上げましたとおり、地元紙含めて新聞報道では何時何分にどういうことがあったということが詳しく報道されているわけでありまして、一例を挙げますと、午後三時の段階で熊本地方法務局に知事選の供託金百万円を納入した。三時半になったら熊本県庁へ行きまして、十二階の県警の捜査二課で県選管の主任書記に届け出書類の点検をしてもらった。いわゆる事前審査ということだと思います。四時半ごろから、今度送検されております被疑者の五名らが県選管の周辺に集まったり廊下に集まったりしておった。その後、四時五十六分ごろから中原さんが捜査二課から階段をおりまして県選管に飛び込んで、そのところで後ろから抱きつかれたり引きずり出されて、そしてトラブルが起こったという経過であります。全体の流れを見ますと、捜査二課に行って事前審査をするというあたりから異常なわけでありまして、かつ選管の周辺に恐らく届け出を妨害するのではないかと思われる人たちが徘回しているというような状態のもとにおきましては、捜査二課なり警察がそこに入ってあらかじめガードするということはむずかしいわけでありまして、こういう場合には選管の側でも何らかの対策を立てておくべきではなかったのだろうか、そこに手落ちがあったのではないだろうかという疑問を持たざるを得ない面もあるわけであります。
実は、その後何人かの学者の先生方が、選管の態度にも手落ちがあったということについて批判した見解を発表されていることにつきましては御承知のとおりであります。熊本大学の竹内先生は「憲法に背く熊本選管の態度」こういう論説を発表されておりますし、明治大学の岡野先生は県選管の不手際をやはり同じように批判いたしまして、委員長の判断で妨害のあった時点で何らかの対策をとるべきであった、こういうように主張されておるわけであります。この問題は確かに異常な事態でありましたけれども、それだけに県選管としてとるべき態度があったのではないかということを指摘せざるを得ないわけでありまして、この点についてどうお考えか、お願いしたいと思います。
#23
○岩田(脩)政府委員 確かにこの案件につきましては、ただいま御指摘のところが一番大きな問題になるのだろうと思います。前段お話しのありました事前審査というのは法律上の手続ではございませんで、県の選挙管理委員会の話ですと、県の選挙管理委員会の書記が呼び出されて、行ってみたらこの書類を見てくれぬかという話であったというように聞いております。結局そういったかっこうで四時五十六分、締め切り間際を迎えまして、中原氏が地方課の中へ入ってきたわけでありますけれども、そのときに選挙管理委員会として本人といいますか、選挙長の周辺をどの程度まで準備をしておかなければいけなかったかという問題があるのだと思います。県の選挙管理委員会の話ですと、県の選挙管理委員会は締め切り間際の立候補者があることが予想されましたので、むしろ通路から選挙長までの間には人が入ってこないようにこれを排除して、ドアを入ったらすぐ選挙長がどこにいるかわかるようにしておいたという話であります。県の選挙管理委員会としては、わずか二十秒ほどの間にドアがあいてどっと入ってくる、選挙長のところへやってくる、連れ出される、あれよあれよという間であって、そこのところで具体的な方途を講ずることはできなかった、そういう余地はなかったということを言っております。
私どもも、これから訴訟がありますからあくまで一般論といたしまして、県の選挙管理委員会というものは、たとえば暴力による阻止があるだろうということを前提にしてその準備をしておけというわけにはまいらぬ、そこまでは期待されていないのだと思いますけれども、今回のケースについてそこのところをどう評価されるかというのがまさにこれからの問題になるのだろうと思います。ただいまお話がございましたように、抱きとめた方というのは、中原さんの出されました異議申し出の書類によりましても、選挙管理委員会の中にはいらっしゃらなかったようですし、選管の中にいらっしゃったのは、地方課長の机の横にお一人座って談笑しておられたということでございますし、そういう措置というものは予想できなかったということを選挙管理委員会は申しております。それが一つの問題だろうとは思っております。
#24
○山花委員 時間の制約もありますので、この問題につきましては、いまお触れになりましたとおり二月二十一日午前十一時五十二分と伺っておりますけれども、中原さんの方から熊本県選挙管理委員会に対して公選法二百二条に基づく知事選挙の効力に関する異議の申し立てが出されたと伺っております。まだ二、三日前の話でありますから、今後この進展に応じて、大変大事な問題でありますから委員会で今後もいろいろお伺いさせていただきたいと思います。ただ、関連して、重大な事態でありますので、当然刑事問題にもなるのではないだろうか。まず警察庁にこの問題についての捜査はどうなっているかという現状についてお伺いをいたしたいと思います。
#25
○森廣説明員 お答えいたします。熊本県警察は一月十三日の日に事案の発生をすぐ知りまして、関係被疑者の取り調べその他所要の捜査を直ちに行いまして、一月二十二日には捜査を終了いたしまして、公職選挙法の第二百二十五条第一号、いわゆる自由妨害事件といたしまして所轄の熊本地方検察庁の方に犯人五人の送致をすでに終わっております。
#26
○山花委員 これを受けまして法務省にお伺いしたいと思うのですけれども、送検された後、捜査がどうなっているのかということについて、捜査中の問題でありますから必要な範囲で結構でございますが、御説明いただきたいと思います。#27
○飛田説明員 ただいま警察庁の方から御答弁がございましたように、熊本地方検察庁は、本年一月二十二日、岡本篤という人他四名につきまして公職選挙法違反事件ということで事件の送致を受けまして、現在、熊本地方検察庁で捜査中、こういうことでございます。#28
○山花委員 いずれ起訴、不起訴の決定、恐らくその後の公判ということになるのではないかと考えますけれども、これは刑事問題ということだけではなくて選挙の自由、公正に対して重大な事件でありますので、この問題については今後も質疑を続けていきたいと思います。あと時間が四、五分でありますので、最後に一つだけ実務的な問題についてお伺いしておきたいと思います。
本年三月から四月にかけまして統一自治体選挙が行われまして、まず前段として都道府県知事選挙が三月十六日告示、四月十日投票として行われる予定であります。後段といたしまして市町村議会議員や市町村長の選挙が四月十四日ないし四月十七日の告示、投票日が四月二十四日ということで行われるようになっております。
この際、選挙運動の絡みにおきましては、公職選挙法の関係で若干の解釈の混乱が出るおそれがある問題についてお伺いしておきたいと思うのですけれども、問題を一つだけにしぼってお伺いしておきたいと思います。
公職選挙法二百一条の九の各項との絡みでありますけれども、知事選挙期間中の政治活動につきましては、政党その他の政治活動を行う団体は、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説会の開催、ポスターの掲示、立て札及び看板のたぐいの掲示及びビラの頒布並びに宣伝、告知のための自動車の使用につきまして、確認団体の行う一定の数量以内のものを除いて制限されているということになります。実はその間各級の議員さんは一体何もできないのかという疑問があるわけでありまして、これは政党、政治団体、確認団体の関係での規制でありますので、個人として、たとえば国会議員、私があるいは市会議員さんが政党、政治団体の政治活動ということではなくて、純粋に個人の立場で政治活動をする、その行われている知事選挙とは別な政治活動をするという場合には、これはできるのではなかろうかというように思うわけですが、実は昭和二十七年九月二十四日の自治省選挙部長回答、これは鹿児島選管あての政治活動についての行政実例なども拝見したわけでありますが、その点のものの整理につきまして御説明をしていただきたいと思います。
#29
○岩田(脩)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、二百一条の九は選挙運動の期間中の、特定の選挙が行われる期間中の政党その他の政治団体の活動の規制に関する規定でございます。したがいまして、その期間中の政党その他の政治団体ではない個人、純粋の個人のそれも政治活動であれば、二百一条の九の規定の適用がない、そういう組み立てになっていることはお話のとおりでございます。ただ、実際の問題といたしましては、結局ある方の、ただいまは市会議員なり何なりの方の政治活動とおっしゃいましたけれども、それが純粋に個人の政治活動というように認められるだけの客観的な条件がそろうかどうかというお話だと思います。さらに、蛇足でございますけれども、ついでに申し上げれば、例の公選法百四十六条の方の規定がございまして、これは選挙運動に関する規制を免れる意図をもってということにはなりますけれども、選挙の運動の期間中に、候補者を支持する者、多くの場合そういう市会議員さん方はそういう上級選挙の候補者と支持関係にあるのだと思いますけれども、そういう方のお名前を書いた文書図画を掲示することは違反行為とみなすというたぐいの規定もございます。
そういう絡みがございますし、また、さらに申し上げれば、選挙を管理執行する方の立場といたしましては、そこのところでそういう知事選挙とか県会議員選挙が執行中である、それに紛らわしいことはなるべくあってほしくないと思っておるという気持ちもございまして、いろいろそこに屈折したものがございますけれども、法律のたてまえ、組み立てとしては、御指摘のとおり二百一条の九は純粋な個人の政治活動に関係した規定ではございません。
#30
○山花委員 お話を伺いますと、売名行為であるとか、禁止を免れる行為であるとか、そうした状況の問題については当然問題となる余地があるわけでありますけれども、そういうことを一応外して、純粋に個人の議会の報告を小さな集会をやってやるという場合には二百一条の九には当たらないのではないかというふうに理解するわけですが、最後に確認的なことになりますけれども、昭和二十七年九月二十四日の鹿児島県選管あて自治省の選挙部長回答はこの問題についての回答でありますが、これはこの回答どおり現在も生きているといいますか、理屈ではこのとおりであるというように理解してよろしいですか。#31
○岩田(脩)政府委員 御指摘の昭和二十七年九月二十四日自丙選第七十号鹿児島県選あての回答は、変更されておりません。#32
○山花委員 以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。#33
○堀委員 ちょっと議事進行。当委員会は十時半から始まったのですけれども、定足を欠いておるわけです。定足数が欠けておって法律案を審議するということは、これは国民の権利義務にかかわる重要な問題でございますので、与党側の出席を要請をしてすでに二十分たちますけれども、依然として実はこういう状態でございますので、ちょっとしばらく休憩をいただいて、少なくとも与党も定数をそろえてもらいたいと思います。私どもはそれなりに四名もちゃんとおるのでありますから、与党も責任を持って半分だけはそろえるということでなければ、法案審議をするのですから、さっきも御注意申し上げたのに、いま住さん来られたけれども、ずっとさっきから五十分間二人だけしかおられないのですからね。ちょっと委員長、ともかく自民党が半数そろうまで待っていただきたい。
#34
○中野委員長 ちょっと速記をとめて。〔速記中止〕
#35
○中野委員長 速記を始めて。伏木和雄君。
#36
○伏木委員 国会議員の選挙等の執行経費に関しましては、都道府県及び市区等の選挙管理委員会連合会から昨年の七月陳情が自治大臣のところへ参っていると思いますが、これは、自治大臣、お読みになったでございましょうか。同時に、今度の予算にどういう形でこれが反映されているか、この点をまずお伺いいたします。#37
○岩田(脩)政府委員 各種の要望を取りそろえた要望書の中の執行経費に関する部分でありましたので私どもの方で読ませていただきましたけれども、単価の積算や執行経費の基準の内容の整備についてもっと充実を図れという趣旨のものであったと思っております。#38
○伏木委員 趣旨であったというのじゃなくて、今年度の予算にどういうふうに反映されたかということを伺っているのです。#39
○岩田(脩)政府委員 今回の改正につきまして、それぞれの積算の単価とかそういう面ではそれぞれに一定の進歩をしたと思っておりますけれども、選挙管理委員会サイドが要求しております新しい事項、懸案になっていることが実は幾つかございます。たとえば、翌日開票をやるときには、勤務時間に入る前の超過勤務時間というものがあるではないかとか、それから選挙を管理、執行するために地方課なり何なりに特別に引く電話、そういったものの架設費用をもっと見込んだらいいではないかとかいった幾つかの制度的なものがございます。ただ、こういった問題につきましては、残念ながらこういう財政事情のもとでございましたので、新しい制度を開くことはできませんでした。ただ、御承知のとおり、現在の基準法というものは、ある意味でそれぞれの項目をもとにして積算しました経費をお互いに融通することはある程度できるわけでございますので、そういった単価のアップや全体の改善の中で、局面を外した形ではございますけれども、回り回ってそういった要望にもある程度こたえたことになるかなとは思っておりますが、今回は残念ながらそういう新しい制度改正をするには至っておりません。
#40
○伏木委員 国会議員の選挙に関する経費については、全額国が負担するというのは当然のことであろうかと思います。ところが現実は、特に大都市においては、地方の負担が大きくなってきているということは否めないと思うわけでございますが、四十九年の参議院選挙のときに実態調査をおやりになっております。その後実態調査をおやりになっているのか、あるいは今度の基準法改正に当たって再度実態調査をやったのか、あるいはこれからでもおやりになるおつもりがあるのか、この点伺いたいと思います。#41
○岩田(脩)政府委員 御指摘のとおり、四十九年のときに実態調査をやりました。五十五年のときは、これは衆参ダブル選挙という形で行われましたので、これについては特に調査をしておりません。今回通常選挙が行われましたならば、またもう一度出かけていきまして、実際の調査をして実態をもう一度把握してみたいと考えております。
#42
○伏木委員 時間がございませんので、二、三具体的に伺ってみたいと思います。投票管理者について、横浜市の例をちょっと申し上げますが、投票管理者については民間人を充てることにしているようであります。その職務の遂行上、事前の打合会開催をしなければならない、あるいは設営準備の指導等の必要から、一日六千五百円の単価で投票当日分を含めて二日分計上している、こういう問題がございます。現実に、投票日に集まってきてやれば必ずミスがある。したがいまして、事前に打ち合わせなり準備なりということを行うのは、投票の公正を期する上から当然これはやらなければならないことであるというにもかかわらず、単価は低い、しかも二日かかるところを一日しか国は見ない、こういう問題がございます。
あるいは立会人につきましても、投票時間の前後一時間を含めて十三時間程度、厳しい勤務となっているわけです。または、事務補助のアルバイトの賃金との格差をなくさなければならぬ。したがって、五千九百円の報酬の支払いをしているということでございますが、今度の基準法によれば五千百円の報酬にとどまっている、こういうようなことで、これは取り上げていきますといろいろ問題がございますが、いま申し上げた立会人と管理者、この問題についてお伺いいたします。
#43
○岩田(脩)政府委員 確かに立会人の単価その他につきましては、果たしてそれが実際にお願いをしております仕事の内容と見合うだけのものであるかどうかという議論はあるわけでございますけれども、個々のところの単価につきましては、従来から政府の予算の上での各種の委員さん方の手当のアップ率をもとにしてアップ率を計算していくという方法で臨んでおりまして、立会人の方にはいろいろ御苦労をかけていることは承知の上でございますけれども、ただ、一つには、有権者である住民がみずから立会人や場合によっては管理者という形で投開票にタッチをする、その仕事の性格に目を向けていただきまして、必ずしも金額だけで割り切らないということで御理解をいただければ幸いでございます。なお、ただいまお話がございましたように、果たして二日出てくるのに一日しか計上していないではないかといったような積算の単価そのものについては、いろいろ御意見もあろうかと思いますけれども、前段申し上げましたように、この関係につきましてはある程度の彼此融通が可能なわけでございますし、いわば交付金額の積算の方法としてそういうものがあるというように御理解をいただきとう存じます。
#44
○伏木委員 次には、身体障害者の方のために、投票所の入り口の段差をなくすために最近スロープをつくっているということでございまして、たとえば横浜市で、これはざっと二千万程度かかるそうであります。こういうものも今後見ていかなければならない。これは東京も始めたそうですが、こういう経費を見ていかなければならない、こう思いますが、この点はいかがでございましょう。#45
○岩田(脩)政府委員 そういったスロープみたいなものができていくことは僕らの方としても大変歓迎しておるところでございまして、基本的には投票所を一階に移すとかといったことと並行して進めていきたいと思っております。なお、そういったスロープみたいなものは、条件にもよりましょうけれども、一回つくればそれでなくなるというわけのものでもございませんし、そういった負担が、あるときに急につくりますために特に多いというようなことになれば、またそれはそれで個別に当該選挙管理委員会との相談を進めていきたい。本来、投票所の置かれました個別条件に基づくことでございますので、そういう形で対応させていただきたいと思っております。#46
○伏木委員 それから最後に、通常啓発費についてお伺いいたします。通常啓発費が本年度から市区分が廃止になったという本年度の予算の内容でございますが、これは特に大都市の場合、現在投票率が非常に低下しているということから、最も必要なのが市区におけるところの啓発運動ではないか。それを本年度カットしてしまったということで、これはぜひ市区における啓発がもっと活発に行われるように――予算を削ってしまって、それでは今後自治省として市区に対してどういう指導をしていくのか、その指導の内容と、私はこの予算はぜひもう一遍考え直すべきではないか、こう思いますが、この点をお伺いしたい。
#47
○岩田(脩)政府委員 いわゆる常時啓発費の中には、いままで補助金として市町村に流れておったものと都道府県に流れておったものがございます。しかしながら、こういった客観情勢のもとでだんだん予算も少なくなってまいりますので、おのずから、都道府県も減少していったのでございますが、市町村分も減少いたしまして、先年からは町村分がゼロになり、さらには小さな市分についてはゼロになるというかっこうで推移してまいりましたけれども、来年度からは市区分は全部あきらめまして、これを都道府県の方へ積むという形の改正をやることにしました。一つは、さっき申し上げましたようにいろいろ客観的な情勢がございまして、市区分といいましても、すべての市区に補助金を差し上げるわけにはいかない情勢になっておりましたし、ごく限られた市区だけに補助金を出すという形もどうかという情勢にあったのも事実でございます。今後といたしましては、私どもの方ではそのことを通じまして都道府県の事業量をふやしておりますので、これで市区分のカバーをやりたい、個別にそれぞれの市と県との話し合いを進めていただきまして、一種の補完事業といいますか、ことに大都市の場合には大都市選管の力もあるわけでございますので、市と県との間の息の合ったところを見せていただいて、一種の共同事業とか補完事業とかいった形で常時啓発事業の実質が落ちませんように努力をしてまいりたいというように考えております。
#48
○伏木委員 従来市区に行っていた分が今度県へ回って、従来のに市区分が都道府県に上乗せになったと言うのならいまの御説明でわかるのですが、予算額としては両方トータルしてもずっと減っているわけですね。ということになりますと、県は従来持っておった予算にわずか市区の分が来るわけです。そうすれば市区に回らなくなることはあたりまえのことであって、やはり啓発運動というのは直接市区がやっていく、都道府県がやってもなかなか末端まで浸透しないという結果になるのではないか。したがって、そういう面から投票率の低下というようなことになれば、私はやはりもっと政治に関心を持っていただくという面からも大きなマイナスになるのではないかと思いますが、この点。#49
○岩田(脩)政府委員 御説明が不十分で申しわけございませんでした。実は白状しますと、国費を市区に出しておったときと県に出しておったときとでは補助率が違うのでございます。したがいまして、補助率の高かった市区分がなくなりまして補助率の低い県分へ回りましたために、事業量総量としては実は減っていない。国費の補助分としては確かにおっしゃるようにそれほど目覚ましく伸びておりませんけれども、事業量としてはほぼ従前を維持しておりますので、市区へ回す分はあります、こういう形になっておるのでございます。#50
○伏木委員 時間がございませんからここで議論してもしようがありませんが、従来市区が啓発費を受けておった、それが廃止されたということで、何とかこれは復活してもらいたいという強い要望があるという点を申し上げておきたいと思います。最後に、先ほど定数問題が議論されました。自治大臣の受けとめ方は余り深刻になっていないのではないか。私はもうぎりぎりせっぱ詰まっている段階まで来ているのではないか、このように考えるわけでございます。
そこで、衆議院の定数につきましては先ほどお話がございましたので省略するとして、参議院地方区の定数是正問題でございますが、五十五年国調で、人口比でいきますと神奈川県と鳥取県では五・七三倍、これはもう異常な格差というところへ来ております。地方区につきましては、高裁等の判例もいろいろあることは私どもも承知しておりますが、それにしても、地方区は出発のときからある程度人口比によって定数を定めたという経緯もございます。
その上、たしか四十五年度だと思います。選挙制度審議会の答申を自治大臣御存じであろうかと思いますが、堀先生もいらっしゃいました。ここで、選挙制度の全般の見直しをしながら定数の是正ということを答申に盛り込まれているわけでございましたが、その中でも、全国区の見直しをやった上で検討するとしながらも、なおかつ、とりあえずは東京、大阪、神奈川については格差を是正すべきである、これは内閣総理大臣に答申されているわけでございます。
各党間でお話ということもございますが、総理大臣が諮問機関として任命いたしました、たしか第六次選挙制度審議会だと思いますが、ここで明確に、とりあえずは東京、大阪、神奈川の人口の多いところはやるべきである、このように政府自体に答申があるわけです。これを忠実に実行しておればこういう問題は出てこないわけです。ましてや、参議院全国区だけが先行してしまって、それよりもむしろとりあえずやれと言っておったこの特別の三県に対する定数の是正を怠る、これは非常に怠慢ではないか。私は、これは政府ができることではないか、このように考えるわけでございます。
定数の問題は、選挙が終わればまた訴訟問題が出てくるのは目に見えているわけですから、政府みずからがこうした答申を率直に受けとめて、政府みずからこれの是正に踏み切る、こうあるべきであると思います。時間もございませんのでこれを最後に伺いまして……。
#51
○山本国務大臣 特に参議院の地方区の問題をお取り上げになりまして、これも私は、決して状況は切迫していないとかゆっくり考えているとかいうことではありません。私どもも大変深刻に受けとめておるわけでございます。ただ、いずれにしましても定数是正の際の基本といたしまして、では定数を現状のままで是正をするのか、あるいは違った方法を考えるのかというその点がまず決められなければ、とても進まないのではないだろうか、私はその辺が、まずそういう大きなところを決めていかないと事は進まないと思うわけであります。確かにおっしゃるとおりのことは私どもも受けとめてはいるのですけれども、しかし、これに政府側があんまり出過ぎてもいけない。やはり何といいましても区制の問題あるいは定数の問題というのは、これは議員の方方一人一人の深刻な問題だけに、私どもは深刻に受けとめながらもいまのような姿勢をとっておる。ぜひひとつ各党のお話し合いをしていただきたいなという気持ちを重ねて申し上げるような次第でございまして、ただいまのお話は、私どもしかと承ったということでお許しをいただきたいと思います。
#52
○伏木委員 この四十五年の答申は最も具体的に、とりあえずこれだけはやれということで、大阪、神奈川、東京、ここに増員と、栃木、群馬、岡山を減員するということで、全体の定数等には関係なしにとりあえずこれだけはやれという、この答申そのものについて、これは政府が受け取っている答申ですからね、だから、この答申それ自体については、政府はどういうお考えでしょう。#53
○山本国務大臣 いまおっしゃるところは、何か決まってしまっておるというようなお話のようにも受け取れますが、しかし、これはなかなか、そう簡単に決まる問題かなという感じもいたすわけでございまして、段々にお話を承ったのを、ひとつ今後の私どもの努力の目標にさせていただきたい、こう思います。#54
○伏木委員 時間ですから終わります。#55
○中野委員長 安藤巖君。#56
○安藤委員 毎回私がお尋ねをしておる身体障害者の方々の選挙権の行使の問題について、お尋ねをしたいと思います。時間の制約もありますので、ポイントだけにしぼってお尋ねをしたいと思いますが、立会演説会における手話の問題です。だからこれは聴覚障害者の方々の関係でございますが、東京都では知事選挙それから国政選挙、これは全部立会演説会で手話を入れてやっております。それから、御承知だと思うのですが、大阪でも知事選以上は、これは全部ではないのですが、半数以上の立会演説会で手話を入れてやっておるのです。この関係につきましては昭和五十二年の三月にも私お尋ねしたのですが、そのときは自治省は、公平、不公平の問題があるのでなかなか着手しにくいのだというようなお話があったのです。私の方で実際に立会演説会に手話通訳をやっている東京都選管の実務者の人たちの話を聞きますと、手話で聞くというのはおかしいかもわからぬですが、手話で見た人に一体どういうようなことを候補者の人たちはしゃべっていたかということの確認をとってみましたところが、耳で聞いていた人が聞いているのと大体同じことを見ているというような実務者の話も聞いているのですね。だからそういうことになると、公平、不公平の問題というのはほとんどないのじゃないかと思うのですね。それから、手話をやっておる人、あるいはそれに相当熟達をしている人の人口も相当ふえてきている情勢にあると思うのです。だから、この際きちっと中央選挙管理会あるいは自治省でも立会演説会に手話を入れる。それから、前に私はテレビの政見放送に字幕を入れたらどうかという話をしたこともあるのですが、これは一応撤回しまして、そこへもやはり手話を入れるというようなことも考えてみていただきたいと思うのですが、どんなものでしょうか。
#57
○岩田(脩)政府委員 まず立会演説会の手話の件でございますけれども、これは正直に申しまして、手話通訳というのは御存じのとおり逐語訳ではございませんで、演説されている内容を訳者が受け取って、それをいわば手話でしゃべれる言葉というとおかしいですけれども、手話に適した言い方に翻訳をするものですから、そこら付近でいろいろニュアンスが失われたり、公平性の問題で、あるときはうまくいったけれどもあるときはうまくいかなかったということもあるわけでございまして、そういう問題を全然考えていないわけではございません。けれども、立会演説会について申し上げますと、特定の会場にお集まりになる聴力障害の方たち、そしてまた通訳者として選ばれる方も、どちらかというとそのグループの方たちと面識もあり、いわば気持ちも通じている方である場合が多いということがあるので、比較的問題なしに受け入れられているのではないかというように思っております。実際のところ、前回、たとえば五十五年の総選挙における立会演説会の手話の状況を見ますと、ほとんど全国の県で立会演説会での手話通訳が行われておりまして、大体会場の数において二百五十会場ほどで手話通訳が行われております。ですから、これはこれなりに定着をしていくのではなかろうかというように考えております。
ただ、もう一つのお話の政見放送の方でございますが、これについては私どももまだまだ勉強させていただかなければならない部分が多いのではないかというように考えております。一つには、先ほども申し上げましたような手話の性格がございます。立会演説会の場合と違いまして、今度はいわばそのテレビを見ていらっしゃる全聴力障害者の方に対する通訳ということになりますし、たとえばその場合に通訳が余り適切でなかったというか、スムーズにいかなかった場合とか、もしかして間違いがあった場合とかというようなことに対する反響、反応というものをやはり考えざるを得ないというふうに思っております。
それに承りますところでは、手話というのも必ずしも手だけがわかればいいのではなくて、たとえば固有名詞なんかになりますと、指先で文字を表示したり、それから唇で文字を表示したりというようなこともあるようでございますし、少なくとも上半身は明瞭に画面に映っていなければならないというようなこともあるようでございます。そうした場合に、たとえば端的に考えてみまして、現在の政見放送ですと、そういう手話が入るであろう部分にはまさに候補者の方のお名前と選挙区が表示されておるわけでありまして、そういったようなものを一体どうしたらいいのかというような問題もございます。中には、いま先生はテロップの話はあきらめた、こうおっしゃいましたけれども、むしろテロップの方がいいのじゃないかという説をなす方もおりまして、そういう兼ね合いをもう少し勉強させていただきたいというように思っておるところでございます。
#58
○安藤委員 技術的になかなかむずかしい問題もあることはわかっておりますが、これもいまお答えになったように前向きに検討していただきたいと思います。それから視力障害者の方の関係についてですが、点字の選挙公報は東京都、大阪、それから兵庫県もそうですか、それから川崎市、愛知でもときどきはおやりになっておられるようです。これはヘレン・ケラー協会ですか、あそこで点字の選挙公報をつくる。あるいは点字毎日でもつくっておるようですが、そこから買い上げて、そうして有権者の人たちに配布をしておられるということをやっておられるようです。この費用は執行経費の中から出ておらなくて、常時啓発費の中からそれぞれの当該選挙管理委員会の人たちが一種の便宜供与というようなかっこうで出しておられるという話ですが、そのとおりかどうかということと、そうではなくて、やはり正式にこれを執行経費の中へ入れ込んで、すべての視力障害者の有権者の人たちに点字の選挙公報を配るように考えるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
#59
○岩田(脩)政府委員 お話しのとおり、点字公報を出している県が相当数は達しております。たとえば五十五年の選挙のときには二十一都道府県、約三万部程度の配布が行われております。それをつくっておりますところは、ただいまお話のありましたようなヘレン・ケラー協会であるとか、そのほかにも赤十字の支社であるとか、それぞれの場所によっていろいろでございます。それぞれの県の置かれた状態、印刷能力、そういったことによるものだと思います。その経費の支出は、ただいまお話がありましたように啓発経費の中から出ておるところもありますけれども、選挙の執行経費の中に織り込んでやっておるところもあります。これもまたそれぞれの県の状態によるものだと思います。御指摘ではございましたけれども、正直に申し上げまして、点字の公報は公職選挙法上に明文の根拠があるわけではございません。そういう意味で一種の便宜供与とか啓発とかいう側面を持っていることもまた事実でございます。むずかしく申し上げますよりは、現在のようにいろいろな混合形態ではございますが、実態に即して点字公報が出され、国政の選挙でありますからには、国費の範囲内で賄われていくようにというような姿勢で臨んでまいりたいと思っております。
#60
○安藤委員 余り時間がないから次の質問へ移ります。やはり視力障害者の方々の問題ですが、総選挙と同時に行われます最高裁判所の裁判官に対する国民審査の問題です。これは御承知のように、国民審査法の十六条によりますと、点字の場合は「罷免を可とする裁判官があるときはその裁判官の氏名を自ら記載」しなければならぬ、こうなっておるわけですね。そうしますと、視力障害者の方々は罷免を可とする裁判官の名前を一々点字で打たなくちゃならぬ。そうしますと、これは多いときは四、五人から五、六人という場合もあるわけですが、立会人の方もちゃんと後ろに立って見ておらなければならぬし、一々その名前を打つわけでしょう。そうしますと、何人か打てば、あああの人は何人か打っておる、何人かバッテンをつけておるのだなということにもなるわけ。だから、これは投票の秘密というようなことから考えてもゆゆしい問題じゃないかと思うのですね。
だからこの問題につきましては、八年ほど前ですか、私ども共産党もそれから社会党、公明党も一緒になって、これは法務委員会の方ですが、改正案を提案をしてあるのです。これはいままだ法務委員会で継続審議になっておるのですけれども。これは社会党の稲葉誠一さんが趣旨説明をやられて、まだ継続審議になっておるのですが、その改正案の中にもやはりうたってあるのですが、点字で審査される裁判官の名前をずっと書いて、その上に何らかの印をつけるということでもって、視力の障害のない人だったらバッテンをつけるのと同じような効果が出るような方法に変えていただく必要があるのではないか。先ほどおっしゃったように、いろいろ手間暇かかるということと選挙の秘密を守るという問題からもこれは重大な問題だと思うのですね。この点はどういうふうに考えておられますか。
#61
○岩田(脩)政府委員 なるほど御指摘のとおり、現在、点字投票の場合にはバツを書くかわりに名前を書いていただくということになっておりますから、確かにたとえば裁判官の名前を全部覚えていただかなければならぬでしょうし、記載に手間がかかる。まあ、御指摘のそのことが投票の秘密を侵すではないかという話は、これは実はほかの選挙人についてもそういう言い方であれば所要時間がどうのこうのという問題があるわけでございますから、これは審査制度上そのことをもって直ちに投票の秘密をというのはどうかと思いますけれども、ただ、視力障害のある有権者の便宜のためにもっと改善の余地はないかということは御指摘のとおりだろうと思います。ただ、御指摘のとおりではありますが、それではあらかじめ点字で全裁判官の名前を印刷したといいますか、記した投票用紙をつくれるかということになると、これはまた技術上大変問題のあるところだと思います。これからいろいろなそういう印刷媒体、方法などの進歩もあるのでございましょうけれども、そういう状態とあわせて将来に向けて検討させていただきたいというように存じております。
#62
○安藤委員 技術的ないろいろな問題があろうかと思うのですが、そうむずかしいことではないのじゃないかと思うのですよ。これはやる気があるかどうかの問題に一にかかっているのじゃないかと思うのですよ。これは全部で約三十万の人たち、点字を使える人は四万から六万だということですから、そう大したことじゃないのじゃないかというふうに思うのです。だから、やる気の問題じゃないかというふうに思いますので、そう首をかしげないで前向きに取り組んでいただきたいと思います。大臣もよく聞いておいてくださいね。それからもう一つ視力障害の方々の在宅投票の問題ですね。これは実は請願が出されておりまして、この前の九十六国会で採択されているのです。これに対しましてはいろいろ問題があるということを指摘されながらも、制度の改善等について検討してまいりたいというふうに自治省の方からの意見が出ているわけですが、これは郵便投票証明書の交付申請の問題ですね。その交付申請をするときに点字を除くとなっておるのです。点字で交付申請はできないということになっているのです。ここでチェックされてしまうわけですね。ですから、この辺のところも点字による在宅投票制度の問題については採択された請願に対する回答にあるように改善について検討してまいりたいということですが、どういうふうに改善をしていただけそうなのかということをお伺いしたいと思います。これは大臣に対しても、身体障害者のいまの聴力障害の方、それから視力障害の方の参政権の重大な問題にかかわる問題ですから、これはどういうふうに検討していかれるつもりか、大臣にお答えいただきたいと思います。
#63
○山本国務大臣 後ほど事務当局からお答えいたしますが、これはおっしゃるように参政権という問題と選挙の公正ということとの接点をどこに求めるかという考え方から結論を出すということだろうと思います。そういう観点から、今日までは在宅投票制度というものにはいろいろ弊害もあったということで廃止をされたという経緯もございますので、選挙の公正を確保するという十分な配意ができるかどうかというところに問題があると思います。後ほど御説明をいたしますが、今日はそういう御趣旨のようなことにはまいっていない、こう思います。#64
○岩田(脩)政府委員 大臣から申し上げたところに尽きるわけでございますけれども、一つには、在宅投票を復活するときの非常に大きな歯どめが二つあった。一度郵便投票が二十七年に失敗しているものですから、復活のときに二つの条件があったように思います。一つは対象者を客観的に明白にする、これが例の手帳を持っている者という要件であったわけです。それからもう一つの要件が本人自署、本人確認のために署名をさせるということにあったわけでございまして、お話は確かに重大な問題なのでありますけれども、まさにその二本柱の一本に触れることになりますので、慎重に検討させていただきたいというように思っているわけでございます。あわせまして、この問題につきましてもいろいろ方法を考えているのですけれども、変わるべき方法がなかなか見出せません。まさか暗証番号を書けというわけにもいかぬでありましょうし、そこら付近に何とも知恵がない。それから実は同種の請願が参議院にありまして、参議院ではなお問題ありということにもなっているというようなこともございまして、もう少し勉強させていただきたいというように考えている次第でございます。
#65
○安藤委員 最後に一点ですが、先ほどもちょっとお話がありました常時啓発費の問題ですね。時間がありませんからこれは自治省からいただいたこれに基づいて先に申し上げますが、常時啓発費は昭和五十一年度から五十五年度まで毎年十二億円あったのですが、五十六年度には十一億八千万円、五十七年度十億八百万円、五十八年度八億八千三百五十万七千円、こういうようにだんだん減ってきておるのです。それでこの問題につきましては、常時啓発というのは物を贈らない、求めない、もらわない、こういうことを常時啓発をして、腐敗した選挙をなくするというのが趣旨だというふうに伺っております。これはこの前の執行経費の改正案が出されましたときに、当時の自治大臣の後藤田さんに私が質問いたしましたら、そういう問題については目に見えた効果がないようだけれども、粘り強くこういった選挙公明運動――常時啓発運動というのは選挙公明運動ですからね、これを進めていくということは非常に肝心なことではなかろうか、こういうふうに思っておるというふうに言われたわけです。にもかかわらず、こういうふうにだんだん減ってきておるということになると、肝心なところの公明選挙をないがしろにするという姿勢がやはり自治省にあるのではないか、こういうふうに疑われてもやむを得ぬじゃないかと思うのですが、この点について大臣の御答弁をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。#66
○山本国務大臣 おっしゃるように大変大事なことでございまして、選挙が公正に行われる上においてはぜひやらなければならないのが啓発活動だと思います。したがいまして、いま予算面では減っているという御指摘でございますが、そういう最小の経費でできるだけ効果の上がるような方法を考えまして今後とも努力していきたい、こう思うわけでございます。#67
○安藤委員 時間が来ましたので終わります。#68
○中野委員長 小杉隆君。#69
○小杉委員 今度提案されている法律案に関連して、議員定数の問題についてお伺いしたいと思います。ことしは統一地方選挙が行われる年でありまして、いま全国各地の市町村議会あるいは県議会等で議員定数の見直しとか削減に踏み切る例が多いと聞いておりますが、つい最近の新聞報道によりましても、市議会議員だけでも年間十二億円浮くというような報道がされております。こうした傾向が私はやはりいまの国を挙げての行政改革ということからも当然出てきていると思いますが、自治省ではこうした地方議会における定数の見直しということについての実態を調査されたことがあるかどうか、まずお伺いしたいと思います。
#70
○岩田(脩)政府委員 御指摘の定数の調査につきましては、五十五年の十二月一日現在でやっております。五十五年というのは結局この前の統一地方選挙を前にしてというに近いわけでございます。#71
○小杉委員 いま選挙部長からお答えがあった五十五年の十二月一日現在というのが一番新しい資料ですが、最近はこれをやっておられますか。#72
○岩田(脩)政府委員 これは行政局のサイドでやる仕事でございますけれども、五十五年十二月、統一選挙を前にしてと言ったのは間違いでございました。前回の統一選挙が終わった段階でやっているわけでございます。したがいまして、これから先、実際に統一選挙を前にいたしまして各都道府県、各市町村で減数の動きが出てくるわけでございますので、今回の統一選挙が終わりましたら、もう一度新しい状況をとりたいというように聞いております。#73
○小杉委員 行政局の人いますか。――行政課の方では何か昨年末に調査したというふうに聞いているんですが……。#74
○中島説明員 大変失礼いたしました。いま選挙部長からお答え申し上げましたように、今度の統一地方選挙が終わりましたら調査をしたいということで準備を進めております。
#75
○小杉委員 私は、やはり統一地方選挙という一つの機会をとらえて各県議会なり市議会、町村議会は定数の見直しをやろうとしているわけですから、その前に、自治省はこうした傾向を促進する必要というか、参考資料としてやはり調査をやる必要があるのじゃないかと思うのですが、自治大臣は最近のこうした地方議会における定数削減、減量作戦といいますか、こういう傾向についてどういうお考えでしょうか。#76
○山本国務大臣 定数の問題はそれぞれの自治体でお考えになるというのがやはり基本であろう、それぞれの自治体の実情に即してお考えになるのが私は基本であろうと思います。また、その場合、財政的な理由もあるいはあるかもしれません。やはり地方公共団体のそういう自主的な判断でやっていただくのが一番よかろうと思いますが、一般的に言えばやはりそういう傾向は逐次高まってくることであろうと思い、またそれはどちらかと申せばいい傾向ではなかろうか、かように思っております。しかし、何と申しましても地方公共団体の御判断でおやりいただくのが一番よかろう、こう思っておるわけであります。#77
○小杉委員 先ほど選挙部長から答弁のありました昭和五十五年、つまり二年前ですか、五十五年十二月一日現在の「地方公共団体の議員数調」というのによりますと、たとえば市の場合、法律に定めている議員定数よりも少なく条例で決めている減少条例を設置している団体数というのが六百四十六市のうち四百四十二ということで、全体の六八・四%が減少条例を持っている。そしてその減少条例によって減少している議員数というのが二万三千二百八人の全体のうち二千七百十九人で、一一・七%にも達している。それから町村も減少条例を設置している団体の比率が八六・三%で、減少条例による議員減少数の割合が一九・六%という大変大きな数字になっているわけであります。そして最近の新聞報道でも言われているように、ここ二年間の間にも相当減量が進んでいると思うので、恐らくこの減少条例を設置している団体数というのは昭和五十五年よりももっとふえていると思いますし、それによる議員の減少数もふえていると思うわけです。いま地方自治法の第九十条と第九十一条で人口に比例した議員定数を決めているわけですけれども、こういうふうに、実態としてほとんど八十数%とかの団体が減少条例を持っているということを考えますと、もうそろそろ法律の議員定数を見直してもいいのではないかというふうに思うのですよね。これがやはりこれからの国を挙げての行政改革にも大変即応した一つの行き方だと思うのですが、そうした地方議員の法律の定数を見直して、もう少し実情に合ったような方向で変えるという意思はないかどうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
#78
○山本国務大臣 仰せのように、地方自治法にある基準というものも大分年数もたっておりますし、最近のおっしゃるような傾向もひとつ考えながら、しかし直ちにそれじゃどうするこうするというわけにはなかなかまいらないと私は思います。確かに、おっしゃるように行政改革の一環で地方公共団体もいろいろやっていただかなければならぬ点がたくさんあるわけでございます。これはまた議員ということになりますると、議員全体の問題になってくる。こういうことも考えていかなければならないと思います。そういう観点もいろいろ考え合わせながら、いまお話のありました点は私どももひとつよく承っておこう、こう思います。
#79
○小杉委員 やはり行政改革を本当に進めていくためには、まず立法府である国会なりあるいは地方議会が率先して、定数を減らすというようなことは一番痛みを伴うわけですから、こういうことを実行することが国民に対して一番説得力を持つわけです。いまの御答弁に重ねてお伺いするのですが、統一地方選挙後にもう一度全体的な調査をされるということを聞きましたが、この結果によっては、恐らく相当減少条例を設置する団体がふえると思うのです。そこの段階でこの定数を見直すというふうなことに踏み切ってもいいのじゃないかと思うのですが、重ねてひとつ御答弁いただきたい。
#80
○山本国務大臣 最近の情勢もいろいろあるようでございますから、調査もいたしまして、その調査結果に基づいて考えていきたい、こう思います。#81
○小杉委員 あわせて国会議員の定数についても、私どもはまず国会議員の定数についても考えなければいけないと思うのです。たとえばアメリカは、上院議員が百名、下院議員が四百三十五名、合わせて五百三十五名、それに対して、人口が約半分の日本が衆議院が五百十一名、参議院が二百五十二名、合わせて七百六十三名ということで、二百二十八名も多いわけですね。これは国情の違いがありますから直ちに比較はできないと思いますが、やはり日本の国会議員一人当たり大体一億円ぐらいの経費がかかっている計算に予算上はなっているわけでございますので、私はやはりこの定数についても見直す必要があると思うわけです。公選法の四条によれば、本則によれば、定数は四百七十一名になっているわけですね。それが現在五百十一名になっているのはどういう経過なのか、簡単にひとつお答えいただきたいと思うのです。#82
○岩田(脩)政府委員 公職選挙法の本体と実際の定数が違うのはおっしゃるとおりであります。これは、先ほど来お話に出ておりました過去二回にわたる各党お話し合いの上での定数改正、あれが、本文の定数をいじるという形でなしに、その附則で、当分の間、何名とするという修正をつけ加えるという形で行われてきたためでございます。#83
○小杉委員 もう質問時間が切れましたからやめますが、附則で「当分の間、五百十一人とする。」ということですが、半分の間というのは、これは本来は時限をつけてやっていることであって、本来的にはやはり本則による四百七十一名というものに返す方が正常だと思うのです。この点につきましてはまた各党の話し合いの場になると思いますが、ひとつそういう点は私どもの意見を申し上げながら、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
#84
○中野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。─────────────
#85
○中野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#86
○中野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#87
○中野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。─────────────
〔報告書は附録に掲載〕
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#88
○中野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後零時二十二分散会