1982/03/04 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 議院運営委員会 第10号
#1
第098回国会 議院運営委員会 第10号昭和五十八年三月四日(金曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 山村新治郎君
理事 瓦 力君 理事 山崎 拓君
理事 北川 石松君 理事 鹿野 道彦君
理事 小里 貞利君 理事 広瀬 秀吉君
理事 渡辺 三郎君 理事 山田 太郎君
理事 西田 八郎君
狩野 明男君 北口 博君
北村 義和君 古賀 誠君
近藤 元次君 高橋 辰夫君
長野 祐也君 野上 徹君
保利 耕輔君 川本 敏美君
清水 勇君 渡部 行雄君
東中 光雄君 甘利 正君
委員外の出席者
議 長 福田 一君
副 議 長 岡田 春夫君
議 員 田辺 誠君
議 員 矢野 絢也君
議 員 塚本 三郎君
議 員 金子 満広君
議 員 山口 敏夫君
事 務 総 長 弥富啓之助君
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委員の異動
三月四日
辞任 補欠選任
桜井 新君 長野 祐也君
同日
辞任 補欠選任
長野 祐也君 桜井 新君
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三月三日
ロッキード疑獄の真相究明と政治責任追及に関する請願(井岡大治君紹介)(第一三一六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案(田辺誠君外九名提出、決議第三号)
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#2
○山村委員長 これより会議を開きます。田辺誠君外九名提出の議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案を議題とし、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田辺誠君。
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議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案
〔本号末尾に掲載〕
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#3
○田辺(誠)議員 私は、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合の各党各派の提出者を代表いたしまして、ただいま議題となりました議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案について、提案の趣旨説明を行うものであります。最初に、決議案の主文を朗読いたします。
本院は、議員田中角榮君の議員辞職を勧告する。
右決議する。
次に、本決議案を提出した理由について、主文に付した理由を敷衍しつつ、提案の趣旨を申し述べたいと存じます。
今日、日本の政治は戦後最大の難関に直面しております。空前の長期にわたる経済不況、税収不足、赤字公債の莫大な累積など、国の財政は破綻寸前の状況にあります。
この事態からの脱却のためと称して、政府は、全国民に対し厳しい犠牲を求めつつあります。さらに、公務員労働者からスト権を奪った代償として設けられた人事院勧告による給与引き上げすら、政府は凍結して実施していないのであります。
一方、中学生などの年代を中心とする青少年の非行現象は続発し、教育の荒廃はまさに無視し得ない状況にあります。
このような深刻な諸情勢を踏まえて、いま全国民は政治に対して何を求めているのでしょうか。いや求め、期待したいことは山ほどあるが、要求しても今日の政権のもとではどうにもなるものではない。社会全体が金と権力によって動いているのだからという絶望感と白けから、かつてないほどの政治不信が充満しているのではないでしょうか。(「そうだ」「そのとおり」と呼ぶ者あり)
本来議会制民主政治は、主権者たる国民の厳粛な信託を受けた国民の代表者たる国会議員が、国民の信頼を裏切ることなく、廉潔にして公正な立場で、全身全霊を挙げて国政の運営に当たり、国民に最大の福利をもたらすところにその原点があるのです。その上にこそ、議院内閣制をとる行政府全般の綱紀も粛正され、国民の信頼にこたえることができるのであります。
しかるに、今日のごとき民主政治の根幹を揺るがしかねない政治不信を招いた主たる原因はどこにあるのでしょうか。私どもの見解によれば、申すまでもなく戦後政治史上最大最悪の構造的汚職といわれるロッキード汚職の発覚であります。
私たちはすでに、事件発生以来、事実の徹底的真相解明を行い、政治的道義的責任を明らかにする旨の国会決議を行うとともに、同趣旨に基づく議長裁定を受け、特別委員会を設置して真相究明に努めてまいりましたが、自民党のごり押しで航特委が廃止され、真相解明は中途半端のまま中断されたことはまことに残念であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
その中でも、いわゆる丸紅ルートの贈収賄事件について、当時総理大臣の要職にあった田中角榮議員が、外為法違反、受託収賄罪の容疑をもって逮捕、拘禁の後、起訴され、法廷で裁かれるに至ったものでありまして、このことが国民に与えた衝撃は、甚大かつ深刻なものがありました。わが国の裁判史上でも、元総理が五億円という巨額の受託収賄罪という破廉恥罪容疑で起訴された例を見ないのであります。
私たちは、田中角榮議員が第一回公判における被告人陳述の際、「起訴事実の有無にかかわらず、いやしくも総理大臣在職中の汚職の容疑で逮捕拘禁され、しかも起訴に至ったということは、それだけで総理大臣の栄誉を汚し、日本国の名誉を損ったこととなり、万死に値するものと考えました。」と述べたことは全く当然のことと存じます。
議員田中角榮君は、この発言とともに、いやそれだけの見識を公判廷で述べられるならば、逮捕拘禁時、あるいは起訴のときにすでに辞職すべきであったのではありませんか。(「そのとおりだ」と呼ぶ者あり)それこそが恥を知る政治家としてとるべき正しい態度であったと考えるのであります。
第一回公判開始以来すでに六年余経過し、今年一月二十六日、受託収賄の最高法定刑である懲役五年、追徴金五億円の論告求刑を受けるに至りました。
国民世論を代表する新聞社の論説は一月二十七日一斉に、「議員辞職こそ残された唯一の道」を初め、「やめて当然」「論告求刑を待つまでもなく、みずからの判断でけじめをつけるべきだ。」「求刑を受けたからではなく、逮捕起訴のときにおいて辞職すべきであった。」など厳しく田中角榮君の辞職を迫ったのであります。
しかるに田中角榮君は、かかる国民世論に背を向けて一向に反省の意を示さず、万死に値すると陳述したことも忘れたのか、みずから潔く辞職して国政最高の責任者としての政治的道義的責任を明らかにしようとしないことは、断じて許し得ないところであります。(「そうだ」「そのとおり」と呼ぶ者あり)
与党自民党の中には、いわゆる選挙みそぎ論などを振りかざして弁護する向きもありますが、容疑事実を選挙民の前で一切否認し、かつ金権の力で当選してきたことで、総理大臣としての地位を汚し、国家の威信と政治への信頼を失墜させた政治的道義的責任が免責されてよいものでありましょうか。断じてノーであります。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)
さらに国会議員は、国権の最高機関たる国会を構成する者として、幾多の特権を享有するのであって、その反面一般国民、一般公務員に比して、より高い倫理感が求められるのは当然であります。それとともに国権の最高機関なるがゆえに、他からの強制を待たず、みずからを浄化する機能をみずからが発揮する力を持たなければ、国民の厳粛な信託を裏切ることになるのであります。
特に最後に申し上げたいことは、今日のきわめて厳しい政治状況の中で、国会がみずから襟を正し、政治倫理を確立し、清潔、公正の範を示すことなしに、どうしてわが国の政治に対する国民の信頼を取り戻すことができましょうか。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)
非行少年に向かってみずからを正さずして、どうして「非行をやめよ」と説得力を持って言えるでありましょうか。
いまからでも遅くない。議員田中角榮君は、国政の最高責任者として汚職責任を問われた事実を改めて深く反省しなければなりません。公務員の廉潔と公正に対する国民の信頼を失墜させ、国民全体の道義を低下させ、民主政治の根幹を揺るがした責任に深く思いをいたし、その政治的道義的責任を国民の前に明らかにするため議員の職を辞すべきであります。
このことを決議として勧告しようとするのが本決議案の趣旨であります。
何とぞ与党自民党の諸君も、政治の大義に大いなる目を開き、国民の七五%、自民支持層ですら六九%が田中角榮君は辞職すべしとする世論に耳を傾け、早急に審査を進められ、賛成の上、本決議案成立に御協力くださらんことを願って趣旨説明を終わります。(拍手)
#4
○山村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。この際、鹿野道彦君から発言を求められておりますので、これを許します。鹿野道彦君。
#5
○鹿野委員 ただいま議題となりました田辺誠君外九名提出の議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案について、私は、この際、わが党としての意見を表明しておきたいと存じます。なお、私の発言は、衆議院規則四十五条一項の「委員は、議題について、自由に質疑し及び意見を述べることができる。」という規定に基づいての発言であることをあらかじめ念のため申し上げておきます。(発言する者あり)
さて、まずこの種の辞職勧告決議案の性格について考えてみますと、この内容は辞職勧告であり、法的拘束力はなく、決して憲法に保障されている議員の身分を強制的に奪うものではないから、比較的自由に提出できるものであるという議論もあることと思いますが、しかし、これは、内容は勧告でありましても、院議で決めるという性質を持つ以上、当該議員に対しては、たとえ法的拘束力はないといたしましても、政治的にあるいは社会的に事実上強制力を持つのと同様な効果を及ぼすものであるということを念頭に置かなければなりません。これにつきましては、昨年の八月十一日に当委員会に参考人として出席されました学者お二人とも、その参考意見の冒頭において表明されているところであります。
さて、われわれ政治に携わる者は、常日ごろ清潔にして公正な態度で国政に当たらなければならないということは言うまでもないところであり、国民の政治に対する信頼もこれあるがために高められるものであります。したがって、いやしくも国民から疑惑の目をもって見られることのないよう、われわれとしては常に心がけていかなければならぬところであります。この意味におきまして、議員田中角榮君が去る一月二十六日に検察官より論告求刑を受けるに至りましたが、近代刑事訴訟の理念は、有罪判決を受けるまでは無罪の推定を受けるのでありまして、当人が今回の事件に対して、みずからの考え方により自発的に措置せられるべきでありましょう。これは総理もたびたび答弁しているところであります。(発言する者あり)
#6
○山村委員長 御静粛に願います。#7
○鹿野委員 問題は、それを事実上強制力を持った辞職勧告決議という方法で、いわば他から強制するというそのことが、現在の法制度上果たして妥当なものであろうか、(「妥当だ」と呼ぶ者あり)冷静に考えてみなければならないと思うのであります。このように申し上げれば、あるいは、われわれが問題としているのはもっぱら政治的道義的責任であり、法律上の責任を云々しているのではないという反論があることも、この事件の性格や経過から見て十分に理解されるところであります。しかし、政治的道義的責任と申しましても、当該議員にとって重大な意味を持つこのような決議を、他からいわば他律的に行うものである以上、その根拠となる政治的道義的責任というものはそれに応じた法律的根拠を持つべきものであるし、しかも本件のように裁判係属中の事件についてこのような決議を行うべきか否かにつき、法治国としての現行法体系のもとで十分に検討されるべきものであろうと存ずるのであります。
現行憲法は、申すまでもなく国民主権主義をとっており、主権者たる国民の選挙を通じて国会議員の地位が取得されるのであります。したがって、現憲法は、旧憲法と比較すると、議員の地位について、憲法上格段の厚い保障をしているところであります。まず議員の任期について旧憲法と異なり、憲法みずからが規定し、たとえ法律といえどもこれを変更することができないことになっております。
さらに、主権者たる国民から選挙によって選ばれた以上、これを選挙以外の他の方法により議席を失わせることにはきわめて慎重な手続を必要とすることになっております。
すなわち、議員が身分を失う場合は、本人の意思による辞職のほかは、
一、任期満了の場合
二、被選挙資格を失った場合
三、他のハウスの議員となった場合
四、懲罰事犯で除名された場合
五、資格争訟の決定に基づく場合
六、選挙争訟の判決に基づく場合
七、衆議院議員については解散の場合
の七つの場合に限られ、これら以外の事由や手続により身分を失わないこととなっており、さらに国会法百十三条は、「議員は、その資格のないことが証明されるまで、議院において議員としての地位及び権能を失わない。」と規定しているのであります。
また、憲法は、さきに申し述べましたとおり、資格争訟の場合及び懲罰による除名の場合につきましては、さらに慎重な手続を規定しております。すなわち、資格争訟の裁判により議員の議席を失わせる場合及び懲罰による議員の除名の場合は、いずれも出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とすると、さらに慎重な手続を定めております。(「関係ない」と呼ぶ者あり)
一般に両議院の議事は、憲法に特別の定めのない場合は過半数で決せられますので、決議案のごときものの議決はもちろん過半数であります。したがって、冒頭に述べましたとおり、過半数で行われる辞職勧告決議は、学者も言っていますとおり、事実上当該議員に対していわば強制的に身分を失わせる性格のものである以上、三分の二の多数でなければ強制的に議席を失わせられないという憲法の規定との関連をどう考えたらよいのか、果たしてこれが憲法上議員の身分の保障の趣旨に合致するものかどうか、ここに重大な疑問があるのであります。
次に、、以上の憲法上の問題点のほかに考慮しなければならない点がございます。
その第一は、みずからの裁判がまだ係属中にかかわらず、このような決議により仮に辞職せざるを得なくなった場合、その後の裁判により無罪の判決があったとしたならば、議院としてその人に対して一体いかなる名誉回復の措置をとり得るのでありましょうか。
これについては、先ほども申し上げました昨年八月の当委員会はおいて、東京工大の慶谷参考人は、「特に第二審で仮に無罪となった場合におきまして、本人がいろいろ受けた損害につきまして、たとえばどういう責任をハウスとしてとるかという問題は、」やはり考慮すべき問題、このように発言しておられるのであります。一たん失われました政治生命の回復はいかに困難であるか、皆様の容易に御理解いただけるところであります。
さらに考慮しなければならない第二の点は、国民主権の憲法のもとで、主権者から選挙され、議員の身分につき、旧憲法と比較にならぬほど格段に厚い保障が与えられている議員の身分について、憲法上の手続によらずに過半数でそれを奪うということが容認されるとするならば、将来、時の多数党が反対党弾圧のためにこれを乱用することになるおそれはないかと危惧するものであります。これは決していわれなき心配ではありません。議会制民主主義の健全な発展を願えばこそ、この点についても十分配慮しなくてはならないと存じます。
さて、次の問題は、憲法上の重要なる原則の一つであります司法権独立の原則との関連についてであります。すなわち、憲法七十六条三項は、「すべて裁判官は、その良心に從ひ獨立してその職權を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と規定しております。
皆様すでに御承知のとおり、公判手続というものは、まず冒頭手続、これは検察官の起訴状の朗読等であります。次いで裁判所の証拠調べ、これが終了いたしましたところで検察官は事実及び法律の適用について意見を陳述し、一方被告人及び弁護人は意見を陳述することができる、このように刑事訴訟法は規定しております。この検察官の意見の陳述が論告求刑であり、これに対して被告人側の意見の陳述が、近く行われると言われます被告側の最終弁論ということになります。
この検察官の論告求刑について、次のような最高裁の判決がございます。「裁判官は公判審理において当事者双方の忌憚なき意見を聞き、その良心に従い独立して公平に職権を行うもので毫も当事者一方のみの意見に拘束されるものではないのである」と言っております。
御承知のとおり、現行刑事訴訟においては、当事者平等の原則が適用されております。これは、戦前の刑事訴訟について、権力による糾問主義や職権主義の過ちを繰り返さない反省の上に立って、英米法的な当事者主義の原則が行われることになったのであります。
さきの最高裁の判決のごとく、裁判官は、これから行われる被告人の弁論を聞き、検察、被告双方の意見を聞いて、良心に従い、独立して公平に裁判を行うわけであります。しかも、わが国の裁判制度は三審制度をとっていることは御承知のとおりであります。一審判決についても、控訴があれば裁判は係属するのであり、まして検察の論告があったからといって、取り急ぎ被告人に対して公的に何らかの措置をとろうとすることは、現刑事訴訟法の上から見て、どうしても公正な態度と言えないのではないかという気がするわけであります。
さらに問題なのは、先ほどからたびたび申し上げましたとおり、裁判官は当事者双方の意見を資料として、他の何物にも影響されることなく、独立して裁判を行うのが司法権の独立ということであります。
宮澤俊義博士の「日本國憲法」に、「裁判については、他の国家機関によるコントロールのみならず、国民による直接のコントロールをも排除することが要請される。」と書いてあります。また、「議院というような重要な国家機関がそういう行動に出ることは、実際問題として、裁判官に不当な影響を与えるおそれがないとはいえないから、司法権の独立を害すると解される」、このように宮澤博士は書いておられるのであります。
これによって考えてみるならば、裁判係属中の事件については、国権の最高機関を構成する院が、当該被告人に対して、その院の意思として何らかの意思を表明することは、論告求刑に対しては第一審判決、また第二審判決に対しては上級審の裁判に対して、何らかの予断、影響を与えることになりはしないか。これは有名な宮澤博士の解説を見ても、司法権独立の原則との関連において、慎重に対処すべきものと思考いたすものであります。(「筋違いの議論だ」と呼び、その他発言する者あり)
#8
○山村委員長 お静かに。#9
○鹿野委員 さらに危惧されますことは、この決議案の提出が、見方によっては、院が裁判所にかわり被告人の断罪を行う感があったとしたならば、これこそ三権分立、司法権の独立を侵すものとの見方もでき、これまた著しく不当であると言わなければなりません。以上要するに、冒頭でも申し述べましたとおりに、いやしくも政治家たるものは、政治倫理については厳粛に対処すべきものであり、政治倫理に対する院としての自浄作用は、これを否定すべきものでないことは言うをまたないところであります。しかし一方、わが国が法治国である以上、法律的に見て、種々の問題のある辞職勧告決議案の提出の方法をとることは果たしていかがなものでありましょうか。これはやはり当該議員の政治倫理に対するみずからの考え方によって自発的に措置せしめるべきものであって、それをしないことによって受けるみずからの政治的社会的不利益ありとするならば、それはみずからが甘受すべきものとするのが妥当であろうと存ずるものであります。
最後に申し上げたいことは、わが国の憲法のみならず、近代国家の原理は、法治国家、すなわち法の支配によって国家が運営されるということでございます。
これは、国家の機関が法の支配を受けなければならないということであり、その意味で、国権の最高機関たる国会も憲法によって律せられているのであります。また、憲法は明文をもって、私たち国会議員に対して、憲法を尊重し擁護する義務があることを規定いたしております。
この決議案が、その性格から重大かつ深刻な憲法上のさまざまな問題点を含んでおりますことは、私がるる申し述べたとおりであります。
議会政治の本旨は、目的のために手段を選ぶことにあります。目的のために手段を選ばない発想が独裁政治への道につながったことは、歴史の教えるところでございます。
この機会に、提案者の諸議員に対して、議会政治の本旨と憲法の原理を熟慮されんことを切望いたすものであります。
よって、この決議案の撤回を求め、自由民主党の意見表明を終わります。(拍手)
#10
○山村委員長 この際、広瀬秀吉君から発言を求められておりますので、これを許します。広瀬秀吉君。#11
○広瀬委員 この議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案は、野党全党こぞって共同提出をしたものでありまして、ただいまわが党の田辺書記長代行から、提案者を代表して趣旨説明をお聞きをいたしました。委員会での審議というのは、趣旨説明が行われるならば、その次には質疑等の段階に入るのは当然でありますが、いま聞くところによりますと、質疑の通告もないようであります。そして、ただいま衆議院規則四十五条に基づく意見の表明であるという断りを言いながら、実質上は、私どもは、これは言うならば反対討論である。(「意見、意見」と呼び、その他発言する者あり)賛否の態度を表明すること、これが討論であるけれども、いまの全体的な意見表明を聞けば、これは実質的には反対の意思表明があったもの、このように実質上は考えるものであります。
したがいまして、これは質疑も通告がない、そして討論は事実上行われておる、こういうように私ども野党全体が考えます。(「採決、採決」と呼び、その他発言する者あり)早速これで採決に移られんことを、委員長に野党全体を代表いたしまして提案をする次第でございます。
#12
○山村委員長 山崎拓君から発言を求められておりますので、これを許します。山崎拓君。#13
○山崎(拓)委員 ただいま広瀬理事より本決議案の取り扱いにつきまして御発言がございましたが、自民党の鹿野理事の発言は、本人も申されましたとおり、衆議院規則第四十五条に基づく意見の表明でありまして、いわゆる採決を前提といたしました討論という性格のものではございません。(発言する者あり)したがいまして、今後の取り扱いや審査の進め方につきましては、議運理事会の場におきまして与野党間で協議を行われるよう委員長において取り計らわれるようにお願いいたします。(「異議なし」「反対」「採決、採決」と呼び、その他発言する者あり)#14
○山村委員長 御静粛に願います。本決議案の審査の進め方につきましては、委員長として、ただいまの広瀬理事と山崎理事の御発言の趣旨を踏まえまして、後日、各党間におきまして協議いたしたいと存じます。(発言する者あり)
本日は、これにて散会いたします。
午後一時二十七分散会