1982/05/11 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 決算委員会 第5号
#1
第098回国会 決算委員会 第5号昭和五十八年五月十一日(水曜日)
午前九時二十一分開議
出席委員
委員長 古屋 亨君
理事 近藤 元次君 理事 東家 嘉幸君
理事 中川 秀直君 理事 中村 弘海君
理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君
理事 春田 重昭君 理事 神田 厚君
伊東 正義君 植竹 繁雄君
小坂徳三郎君 桜井 新君
近岡理一郎君 森下 元晴君
島田 琢郎君 高田 富之君
田中 昭二君 三浦 久君
楢崎弥之助君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 林 義郎君
運 輸 大 臣 長谷川 峻君
出席政府委員
防衛庁参事官 西廣 整輝君
外務大臣官房外
務参事官 山下新太郎君
厚生大臣官房長 幸田 正孝君
厚生大臣官房会
計課長 坂本 龍彦君
厚生省公衆衛生
局長 三浦 大助君
厚生省公衆衛生
局老人保健部長 吉原 健二君
厚生省医務局長 大谷 藤郎君
厚生省薬務局長 持永 和見君
厚生省社会局長 金田 一郎君
厚生省児童家庭
局長 正木 馨君
厚生省保険局長 吉村 仁君
厚生省援護局長 山本 純男君
運輸省航空局長 松井 和治君
委員外の出席者
公正取引委員会
事務局審査部第
一審査長 樋口 嘉重君
法務省民事局第
四課長 筧 康生君
外務省アジア局
北東アジア課長 小倉 和夫君
大蔵省主計局司
計課長 加藤 剛一君
文部省初等中等
教育局審議官 古村 澄一君
文部省初等中等
教育局中学校教
育課長 遠山 敦子君
文部省大学局医
学教育課長 前畑 安宏君
運輸省航空局管
制保安部長 川井 力君
会計検査院事務
総局第四局長 磯田 晋君
会計検査院事務
総局第五局長 中村 清君
医療金融公庫総
裁 北川 力夫君
環境衛生金融公
庫理事長 加藤 威二君
決算委員会調査
室長 石川 健一君
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委員の異動
三月三十日
辞任 補欠選任
島田 琢郎君 前川 旦君
同日
辞任 補欠選任
前川 旦君 島田 琢郎君
四月十二日
辞任 補欠選任
楢崎弥之助君 阿部 昭吾君
同日
辞任 補欠選任
阿部 昭吾君 楢崎弥之助君
同月十三日
辞任 補欠選任
三浦 久君 辻 第一君
同日
辞任 補欠選任
辻 第一君 三浦 久君
同月十五日
辞任 補欠選任
楢崎弥之助君 伊藤 公介君
同日
辞任 補欠選任
伊藤 公介君 楢崎弥之助君
同月二十七日
辞任 補欠選任
楢崎弥之助君 河野 洋平君
同日
辞任 補欠選任
河野 洋平君 楢崎弥之助君
同月二十八日
辞任 補欠選任
植竹 繁雄君 石井 一君
桜井 新君 宇野 宗佑君
近岡理一郎君 小渡 三郎君
島田 琢郎君 新盛 辰雄君
同日
辞任 補欠選任
石井 一君 植竹 繁雄君
宇野 宗佑君 桜井 新君
小渡 三郎君 近岡理一郎君
新盛 辰雄君 島田 琢郎君
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本日の会議に付した案件
昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算
昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算
昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書
昭和五十四年度政府関係機関決算書
昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書
昭和五十四年度国有財産無償貸付状況総計算書
昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算
昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算
昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書
昭和五十五年度政府関係機関決算書
昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書
昭和五十五年度国有財産無償貸付状況総計算書
(厚生省所管、医療金融公庫、環境衛生金融公庫)
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#2
○古屋委員長 これより会議を開きます。昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を一括して議題といたします。
本日は、厚生省所管、医療金融公庫及び環境衛生金融公庫について審査を行います。
まず、厚生大臣から概要の説明を求めます。林厚生大臣。
#3
○林国務大臣 昭和五十四年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算につきまして御説明申し上げます。まず、一般会計の歳出決算額につきましては、歳出予算現額七兆六千九百八十一億三千十二万円余に対して、支出済み歳出額七兆四千七百十五億三千二百五十万円余、翌年度繰越額五百三十四億四千百二十八万円余、不用額一千七百三十一億五千六百三十三万円余で決算を結了いたしました。
以上が一般会計歳出決算の大要であります。
次に、特別会計の大要について申し上げます。 第一に、厚生保険特別会計につきましては、健康、日雇健康、年金、児童手当及び業務の五勘定を合わせ、一般会計から一兆百五十五億二千三十万円を繰り入れました。
その決算額は、収納済み歳入額九兆九千二百八十億二千八百三十四万円余、支出済み歳出額六兆六千八百十四億九千二十三万円余、翌年度繰越額十九億四千八百六万円余でありまして、差し引き三兆二千四百四十五億九千四万円余については、この会計の積立金として積み立てたほか、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
第二に、国民年金特別会計につきましては、国民年金、福祉年金及び業務の三勘定を合わせ、一般会計から一兆五千七百二十六億八千九百九十九万円余を繰り入れました。
その決算額は、収納済み歳入額三兆八千五百六十二億六千三百七十万円余、支出済み歳出額三兆三千百七十七億一千七百三十万円余、翌年度繰越額二千十二億四千九百四十九万円余でありまして、差し引き三千三百七十二億九千六百九十万円余については、この会計の積立金として積み立てたほか、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
第三に、船員保険特別会計につきましては、一般会計から二百四十六億五千九百六十万円余を繰り入れました。
その決算額は、収納済み歳入額一千九百五十億四千八百四十万円余、支出済み歳出額一千七百四十二億八千五十三万円余、翌年度繰越額二億八千八百九十三万円余でありまして、差し引き二百四億七千八百九十三万円余については、この会計の積立金として積み立てたほか、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
第四に、国立病院特別会計につきましては、病院及び療養所の二勘定を合わせ、一般会計から七百七十三億九百五十四万円余を繰り入れました。
その決算額は、収納済み歳入額四千九百八十億九千百七十五万円余、支出済み歳出額四千七百六十七億一千二百十五万円余、翌年度繰越額八十億七千百四十万円余でありまして、差し引き百三十三億八百十九万円余については、この会計の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
第五に、あへん特別会計につきましては、収納済み歳入額十三億三千二百六十三万円余、支出済み歳出額七億一千百二十五万円余でありまして、差し引き六億二千百三十八万円余については、この会計の翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
以上が厚生省所管に属する昭和五十四年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の大要であります。
最後に、昭和五十四年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾にたえないところであります。
指摘を受けました件につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。
次に、昭和五十五年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算につきまして御説明申し上げます。
まず、一般会計の歳出決算額につきましては、歳出予算現額八兆四千十八億六千六百四十九万円余に対して、支出済み歳出額八兆二千四十一億九千六百三十一万円余、翌年度繰越額六百九十一億五千七百六十二万円余、不用額一千二百八十五億一千二百五十五万円余で決算を結了いたしました。
以上が一般会計歳出決算の大要であります。
次に、特別会計歳出決算の大要について申し上げます。
第一に、厚生保険特別会計につきましては、健康、日雇健康、年金、児童手当及び業務の五勘定を合わせ、一般会計から一兆一千八百八十七億一千七百二十一万円余を繰り入れました。
その決算額は、収納済み歳入額十一兆五千四百四億七千百八十五万円余、支出済み歳出額七兆八千七百三十九億一千七百九十五万円余、翌年度繰越額十億一千五百二十万円余でありまして、差し引き三兆六千六百五十五億三千八百六十八万円余については、この会計の積立金として積み立てたほか、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
第二に、国民年金特別会計につきましては、国民年金、福祉年金及び業務の三勘定を合わせ、一般会計から一兆六千五百一億九千九百二十六万円余を繰り入れました。
その決算額は、収納済み歳入額四兆二千九百五十六億七千二百七十三万円余、支出済み歳出額三兆七千九百三十六億九千二百八十五万円余、翌年度繰越額一千八百六十一億七千四百七十九万円余でありまして、差し引き三千百五十八億五百八万円余については、この会計の積立金として積み立てたほか、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
第三に、船員保険特別会計につきましては、一般会計から二百八十二億九千六十三万円余を繰り入れました。
その決算額は、収納済み歳入額二千百二十億二千八百六十九万円余、支出済み歳出額一千九百六十八億四千六百四十八万円余、翌年度繰越額一億九千六百六十七万円余でありまして、差し引き百四十九億八千五百五十三万円余については、この会計の積立金として積み立てたほか、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
第四に、国立病院特別会計につきましては、病院及び療養所の二勘定を合わせ、一般会計から八百六十五億四千九百八十九万円余を繰り入れました。
その決算額は、収納済み歳入額五千四百六十億四千二百五十六万円余、支出済み歳出額五千二百七十五億四百五十三万円余、翌年度繰越額七十七億三千四百二十六万円でありまして、差し引き百八億三百七十六万円余については、この会計の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
第五に、あへん特別会計につきましては、収納済み歳入額十三億九千六百一万円余、支出済み歳出額四億八千十二万円余でありまして、差し引き九億一千五百八十九万円余については、この会計の翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
以上が厚生省所管に属する昭和五十五年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の大要であります。
最後に、昭和五十五年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾にたえないところであります。
指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。
以上をもちまして、厚生省所管に属する一般会計及び特別会計の決算の説明を終わります。
何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
#4
○古屋委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。磯田会計検査院第四局長。#5
○磯田会計検査院説明員 昭和五十四年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を説明いたします。検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四十件であります。
検査報告番号一四号及び一五号の二件は、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収に関するもので、いずれも保険料算定の基礎となる報酬月額の把握が的確に行われなかったことなどのため保険料の徴収が不足しているものであります。
検査報告番号一六号から二二号までの七件は、保健衛生関係補助金の経理が不当と認められるものであります。
これらは、都道府県、市町村等が行うがん予防対策事業、僻地医療対策事業、救急医療対策事業の運営に要する費用を都道府県に対して補助するものでありまして、その交付額は、事業に必要な基準的経費の額や総事業費から診療収入額を控除するなどして算定することとなっておりますが、事業主体において、診療収入額の把握が的確に行われなかったなどのため、補助の対象事業費を過大に精算しているものであります。
検査報告番号二三号から三六号までの十四件は、老人福祉施設保護費補助金の経理が不当と認められるものであります。
これらは、措置を要する老人を特別養護老人ホームに収容した場合に、その措置に要する費用を都道府県または市町村に対して補助するものでありまして、その交付額は、事務費、生活費等の基準的経費の額から扶養義務者等の課税額等を基準として算出した徴収金を控除するなどして算定することとなっておりますが、事業主体において、扶養義務者等の課税額を誤認したことなどにより、徴収金の算定を誤ったため、補助の対象事業費を過大に精算しているものであります。
検査報告番号三七号から五三号までの十七件は、保育所措置費補助金の総理が不当と認められるもので、いずれも事業主体において、補助対象事業費の算定の基礎となる保育単価などについて基準の適用を誤ったため、補助の対象事業費を過大に精算しているものであります。
次に、昭和五十五年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を説明いたします。
検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四十九件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。
まず、不当事項について説明いたします。
検査報告番号八号及び九号の二件は、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収に関するもので、いずれも保険料算定の基礎となる報酬月額の把握が的確に行われなかったことなどのため保険料の徴収が不足しているものであります。
また、検査報告番号一〇号から一六号までの七件は、保健衛生関係補助金の経理が不当と認められるものであります。
これらは、都道府県、市町村等が行う僻地保健指導事業、僻地中核病院運営事業、僻地診療所運営事業、休日夜間急患センター運営事業、農村保健対策事業、がん予防対策事業の運営に要する費用を都道府県、市町村等に対して補助するものでありまして、その交付額は、事業に必要な基準的経費の額や総事業費から診療収入額を控除するなどして算定することとなっておりますが、事業主体において、対象経費を過大に計上したなどのため、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
検査報告番号一七号から三〇号までの十四件は、老人福祉施設保護費補助金の経理が不当と認められるものであります。
これらは、措置を要する老人を特別養護老人ホームに収容した場合に、その措置に要する費用を都道府県または市町村に対して補助するものでありまして、その交付額は、事務費、生活費等の基準的経費の額から老人の扶養義務者等の課税額等を基準として算出した徴収金を控除するなどして算定することとなっておりますが、事業主体において、扶養義務者等の課税額を誤認したことなどにより、徴収金の算定を誤ったため、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
また、検査報告番号三一号から五三号までの二十三件は、保育所措置費補助金の経理が不当と認められるもので、いずれも事業主体において、補助対象事業費の算定の基礎となる保育単価などについて基準の適用を誤ったため、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
また、検査報告番号五四号から五六号までの三件は、環境衛生等施設整備関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもので、屎尿処理施設増設事業等三事業において、補助対象事業費の精算が過大となっていたり、補助金を過大に交付していたり、補助の対象外のものに補助金を交付したりしていたものであります。
次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。
これは、保育所措置費補助金の経理の適正化に関するものであります。
厚生省では、市町村長等が保育に欠ける児童を保育所に入所させた場合、市町村等に対してその保育に要する費用を補助することとしており、その補助金交付額は、当該市町村等が実際に児童の保育に要した経費から寄附金を控除して得た額と、厚生省が定めた基準によって算定される額とを比較して、いずれか少ない方の額から児童またはその扶養義務者から徴収する費用徴収額を控除した額を国庫負担基本額とし、これに十分の八を乗じて得た額となっております。
そして、この費用徴収額については、負担能力に応じて公平に徴収するため児童の属する世帯の前年分所得税課税額等に応じた世帯階層区分ごとの徴収金基準額を定め、これにより算定することとしておりますが、厚生省では、特に事業所得者については、確定申告がおくれるなどのため、前年分課税額が把握しがたい場合には四月以降も前々年分所得税課税額により階層区分を決定し、前年分所得税課税額が判明したときにその翌月分から前年分所得税課税額を適用すればよいとしており、この取り扱いは昭和四十年の通達において初めて定められて以来引き続き適用されて現在に至っております。
しかしながら、上記の取り扱いを認めた当初においては事務処理上前年分所得税課税額の把握に困難な事情があったことがあるとしても、この取り扱いが始まってからかなりの年月を経過し、この間、四十二年の地方税法の改正等により課税当局と事業主体である市町村等との税務上の連絡が密になったことなどのため、事業主体における事業所得者に対する所得税課税額の早期把握も困難ではなくなっている実情にあります。
現に、相当数の事業主体では、事業所得者についても税務当局や扶養義務者から課税状況を証明する書類などを得て早期に前年分課税額を把握し、また、課税額の把握がおくれた場合でも遡及したりなどして、費用徴収額は四月から前年分所得税課税額により算定している状況であります。
このような実態から見て、上記通達の取り扱いは実情に沿わなくなっているばかりでなく、給与所得者と事業所得者との間の費用負担の公平を失する上、本件補助金の交付額にも影響し、事業主体である市町村等間に不均衡を生ずることとなって適切とは認められないものであります。
したがいまして、厚生省において事業所得者の費用徴収額の取り扱いについて早急に調査検討し、給与所得者と事業所得者との間の不均衡及び事業主体間の不均衡が生ずることのないよう、所要の処置を講ずるとともに、事業主体に対する指導監督の徹底を図り、もって国庫補助事業の適正な執行を図る要があると認められるものであります。
以上をもって概要の説明を終わります。
#6
○古屋委員長 次に、中村会計検査院第五局長。#7
○中村会計検査院説明員 昭和五十四年度医療金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。なお、昭和五十三年度決算検査報告に掲記しましたように、業務委託手数料の算定について処置を要求しましたが、これに対する医療金融公庫の処置状況について掲記いたしました。
次に、昭和五十四年度環境衛生金融公庫につきまして検査いたしました結果を説明いたします。
検査の結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
次に、昭和五十五年度医療金融公庫及び環境衛生金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
以上、簡単でございますが説明を終わります。
#8
○古屋委員長 次に、医療金融公庫及び環境衛生金融公庫当局の資金計画、事業計画についての説明を求めるのでありますが、便宜上これを省略し、本日の委員会議録に掲蔵することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。─────────────
〔参照〕
昭和五十四年度業務概況
医療金融公庫
医療金融公庫の昭和五十四年度の業務の概況についてご説明申し上げます。
昭和五十四年度の貸付計画額は、貸付契約額千五十億円、貸付資金交付額千三十七億円を予定し、その原資としては、資金運用部資金の借入金九百九億円、貸付回収金のうち百二十八億円、計千三十七億円を充てることといたしました。
この計画額に対する実績は、貸付契約額九百六十一億三千万円余、貸付資金交付額九百一億七千万円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、貸付契約額で十一・四パーセント、貸付資金交付額で十四・七パーセントの減となりました。
なお、この原資として、資金運用部資金の借入金八百二十億円、貸付回収金のうち八十一億七千万円余、計九百一億七千万円余を充てました。
貸付契約額の内訳は、設備資金九百五十九億八千万円余、長期運転資金一億四千万円余であります。
また、貸付残高につきましては、前年度末四千五百八十一億八千万円余でありましたが、昭和五十四年度中に九百六十一億三千万円余の貸付けを行い、四百二十六億円余を回収いたしましたので、当期末においては、五千百十七億一千万円余となっております。
なお、貸付金の延滞状況につきましては、昭和五十四年度末におきまして、弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は百十八万円余であります。
次に昭和五十四年度の収入支出決算について申し上げますと、収入の部におきましては、収入済額三百三十八億五千万円余でありまして、これを収入予算額三百五十四億二千万円余に比較いたしますと、十五億六千万円余の減少となりました。
この減少いたしましたおもな理由は、貸付金利息収入が予定より少なかったためであります。
支出の部におきましては、支出予算現額三百五十八億四千万円余に対し、支出済額は、三百四十二億二千万円余でありまして、差引十六億二千万円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。
また、昭和五十四年度の損益計算につきましては、貸付金利息等の総利益は、三百八十四億五千万円余、借入金利息、業務委託費等の総損失は、三百八十四億五千万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。
以上で昭和五十四年度の業務の概況につきましての説明を終わります。
何とぞよろしくご審議のほどお願い申し上げます。
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昭和五十五年度業務概況
医療金融公庫
医療金融公庫の昭和五十五年度の業務の概況についてご説明申し上げます。
昭和五十五年度の貸付計画額は、貸付契約額千百五億円、貸付資金交付額千九十三億円を予定し、その原資としては、資金運用部資金の借入金九百八十二億円、貸付回収金のうち百十一億円、計千九十三億円を充てることといたしました。
この計画額に対する実績は、貸付契約額八百二十八億四千万円余、貸付資金交付額九百四十三億九千万円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、貸付契約額で十三・八パーセントの減、貸付資金交付額で四・七パーセントの増となりました。
なお、この原資として、資金運用部資金の借入金八百五十一億円、貸付回収金のうち九十二億九千万円余、計九百四十三億九千万円余を充てました。
貸付契約額の内訳は、設備資金八百二十六億六千万円余、長期運転資金一億八千万円余であります。
また、貸付残高につきましては、前年度末五千百十七億一千万円余でありましたが、昭和五十五年度中に八百二十八億四千万円余の貸付けを行い、三百九十億八千万円余を回収いたしましたので、当期末においては、五千五百五十四億七千万円余となっております。
なお、貸付金の延滞状況につきましては、昭和五十五年度末におきまして、弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は八百二十七万円余であります。
次に昭和五十五年度の収入支出決算について申し上げますと、収入の部におきましては、収入済額三百八十一億六千万円余でありまして、これを収入予算額三百九十五億一千万円余に比較いたしますと、十三億五千万円余の減少となりました。
この減少いたしましたおもな理由は、貸付金利息収入が予定より少なかったためであります。
支出の部におきましては、支出予算現額四百二億八千万円余に対し、支出済額は、三百八十六億九千万円余でありまして、差引十五億九千万円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。
また、昭和五十五年度の損益計算につきましては、貸付金利息等の総利益は、四百三十六億二千万円余、借入金利息、業務委託費等の総損失は、四百三十六億二千万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。
以上で昭和五十五年度の業務の概況につきましての説明を終わります。
何とぞよろしくぐ審議のほどお願い申し上げます。
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昭和五十四年度環境衛生金融公庫の業務の概況
一、環境衛生金融公庫の昭和五十四年度の概況につきまして御説明申し上げます。
昭和五十四年度の貸付計画額は、二千九百十億円を予定いたしました。
その原資としては、資金運用部資金の借入金二千六百六十八億円、貸付回収金等二百四十二億円、計二千九百十億円を充てることといたしました。
これに対しまして、貸付実績は、二千四百七億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、三・一パーセントの増となっております。
二、次に貸付残高について、御説明申し上げます。
昭和五十三年度末における貸付残高は、五千八百六十五億二千万円余でありましたが、昭和五十四年度中に二千四百七億五千万円余の貸付を行い、一千六百六十九億九千万円余を回収いたしましたので、昭和五十四年度末においては、六千五百九十九億五千万円余となっております。
三、次に貸付金の延滞状況について御説明申し上げます。
昭和五十四年度末におきまして延滞後六ケ月以上経過したものが百十三億八千万円余でありまして、このうち一年以上のものは八十一億八千万円余で、総貸付金残高の一・二パーセントとなっております。
四、次に昭和五十四年度の収入支出決算について御説明いたします。
昭和五十四年度における収入済額は五百十七億九千万円余、支出済額は五百二十九億一千万円余となりました。
まず、収入の部におきましては、本年度の収入済額は五百十七億九千万円余でありまして、これを収入予算額五百五十四億三千万円余に比較いたしますと、三十六億四千万円余の減少となっております。この減少いたしました主な理由は、貸付金利息収入が予定より少なかったためであります。
次に、支出の部におきましては、本年度の支出予算現額五百七十二億円余に対し、支出済額は五百二十九億一千万円余でありまして、差引き四十二億九千万円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。
五、最後に昭和五十四年度における損益について申し述べますと、本年度の貸付金利息収入等の総利益は六百五億円余、借入金利息、事務費、業務委託費、滞貸償却引当金操入等の総損失は六百五億円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。
以上が昭和五十四年度における環境衛生金融公庫の業務の概況であります。
なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
─────────────
昭和五十五年度環境衛生金融公庫の業務の概況
一、環境衛生金融公庫の昭和五十五年度の概況につきまして御説明申し上げます。
昭和五十五年度の貸付計画額は、当初二千九百十億円でありましたが、その後、資金需要の変化に伴い、総額二千六百九十億円に改定いたしました。
その原資としては、資金運用部資金の借入金二千六百七億円、貸付回収金等八十三億円、計二千六百九十億円を充てることといたしました。
これに対しまして、貸付実績は、二千五百三十九億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、五・五パーセントの増となっております。
二、次に貸付残高について、御説明申し上げます。
昭和五十四年度末における貸付残高は、六千五百九十九億五千万円余でありましたが、昭和五十五年度中に二千五百三十九億七千万円余の貸付を行い、一千七百七十六億三千万円余を回収いたしましたので、昭和五十五年度末においては、七千三百六十億七千万円余となっております。
三、次に貸付金の延滞状況について御説明申し上げます。
昭和五十五年度末におきまして延滞後六ケ月以上経過したものが百四十四億九千万円余でありまして、このうち一年以上のものは百九億二千万円余で、総貸付金残高の一・五パーセントとなっております。
四、次に昭和五十五年度の収入支出決算について御説明いたします。
昭和五十五年度における収入済額は六百八億七千万円余、支出済額は六百五億三千万円余となりました。
まず、収入の部におきましては、本年度の収入済額は六百八億七千万円余でありまして、これを収入予算額六百八億四千万円余に比較いたしますと、二千万円余の増加となっております。この増加いたしました主な理由は、運用収入が予定より多かったためであります。
次に、支出の部におきましては、本年度の支出予算現額六百十三億三千万円余に対し、支出済額は六百五億三千万円余でありまして、差引き八億円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。
五、最後に昭和五十五年度における損益について申し述べますと、本年度の貸付金利息収入等の総利益は六百八十八億二千万円余、借入金利息、事務費、業務委託費、滞貸償却引当金繰入等の総損失は六百八十八億二千万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。
以上が昭和五十五年度における環境衛生金融公庫の業務の概況であります。
なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
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#10
○古屋委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川秀直君。
#11
○中川委員 質疑に入る前に、ちょっと政府側にお願いをしたいのですが、非常に時間がありませんで、経過は前もって資料もお届けしておりますし御説明も申し上げておりますので、もうイエス、ノー、そうだあるいはそうでないというだけの御答弁を求めることが多いと思いますが、それはそういう御答弁にとどめていただいて、ほかの余分な説明は要りません。そうしないと間に合いませんので、お願いをしたいと存じます。そうしませんと、大臣の参議院に行かれる御予定にも差し支えがありますから、ひとつよろしくお願いいたします。委員長並びに同僚委員各位のお許しをいただいて、私は、本日は厚生行政の中の戦後処理の二つの問題について若干の質疑をさせていただきます。
いずれも実は過去何回か国会でも取り上げられた問題でありまして、本日御出席の各省の所管の各位も一応は御承知の問題であると思いますが、過去の同僚議員の御指摘も踏まえて私自身が調査した限りでは、今日までの政府側の御答弁、あるいはこの質疑に基づいてお進めになろうとしている方向もしくは対策が、いずれも事実の誤認や不十分な理解のもとに進められるおそれがある、こう思いますので、あえて取り上げさせていただく次第であります。
その第一は、戦時中の韓国人徴用工の問題。具体的には、昭和五十二年五月十九日の参議院の社労委員会と昭和五十七年四月一日の衆議院の社労委員会で取り上げられた三菱重工業広島造船所韓国人徴用工の問題であります。
まず、国会質擬では、いま申し上げました昨年の四月一日の衆議院の社労委員会で森井忠良君が取り上げたものが比較的詳しくて、また最近のものでありますので、しかも政府も、この質疑に対する当時の森下厚生大臣の御答弁の線で対応策を検討している、あるいはこれから進めようとしていると思われますので、これに従ってお尋ねをさせていただく次第であります。
要点のみ取り上げさせていただきますが、まず、昨年四月一日の質疑で、森井君から、戦時中三菱重工業広島造船所に徴用され被爆した韓国人二百四十人が、終戦後の昭和二十年九月十七日に福岡県戸畑港から木船で祖国に向け出発をした。ところが枕崎台風の襲来を受けて、長崎県壱岐郡芦辺町の芦辺湾内で遭難、転覆し、多数の死者が出た。遺体は同町に埋葬され、このうち八十六体はこの問題に取り組んでいる韓国の三菱徴用被爆者・遺家族・帰国遭難者・戦後問題対策会という会の手で発掘をされ、現在は広島県沼隈郡沼隈町の福泉坊に仮安置をされている。こうした事実を認めろ、こういうお尋ねに対して、政府側は、当時の外務省の小倉アジア局北東アジア課長さんが立たれて、ただいまの「事実関係につきましては、私どもが現在把握しているところとほぼ同じと思っております。」こういう御答弁をしまして、ほぼ全面的に事実を認めた形になっておるわけであります。これは外務省、議事録をお見せしましょうか。この点はよろしいでしょうね。この点、イエス、ノーで。
#12
○小倉説明員 議事録に書いてあるとおりでございます。#13
○中川委員 さらに、その質疑者たる森井君から、人道的見地から、早い時期に政府として現地調査をし、外交ルートを通じて遺骨を祖国韓国の遺族の手に送還するよう、厚生省、外務省と、それから昔の厚生省の勤労局を引き継いだ観点から労働省、この三省が協力をして当たるように求めたのに対しまして、三省とも前向きに努力することをお約束をなさいまして、森下厚生大臣から最後に、「ただいまの不幸にも徴用工の方々が船の中で台風のため亡くなった、しかもほとんどの方が被爆者であったというようなお話を詳しく初めて聞いたわけでございますけれども、過去の経緯等もお聞きしますと大体間違いない、幸い受け入れの団体もございますし、また韓国政府も承知しておるようでございまして、この点先ほど申しましたように外務省、労働省ともよく協力いたしまして、努力することをお約束いたします。」こういう答弁がなされまして終わっておるわけであります。この点も、厚生省、間違いないと思いますが、議事録の点で……。#14
○山本(純)政府委員 そのとおりでございまして、今後その点について調査を進める予定をいたしております。#15
○中川委員 さて、これからが私のお尋ねをしたいところになるわけですが、まず一般論として、韓国人あるいは朝鮮半島からの徴用工という方々は、三菱重工のみならず、たとえば九州の炭鉱とか昔の日本製鐵とかを初め、一説には日本各地に十数万人も来ていた、こう言われておるわけでありますし、また、私の知り得る限りでは、広島県内だけでも九つの企業に来ていたと言われまして、その九社は未払いの賃金について供託をしている、こういうふうに言われているわけであります。本件の三菱重工だけじゃなくて、各地にそうした韓国人あるいは朝鮮半島からの徴用工が来ていたことは、これは事実として推認をされるわけでありますが、この点はいかがですか、厚生省。#16
○山本(純)政府委員 私どもとしては、一つには、徴用工の問題につきましては、かつての資料を引き継いだたてまえになっておるわけでございますが、残念ながらほとんどが現在残っておりませんので、おおよそ聞き知っておりますところでは、これ以外にもいろいろな企業で使われておったことがあるということだけは聞いております。#17
○中川委員 ちょっと法務省にお尋ねしますが、この三菱重工という会社は未払いの賃金を広島法務局に供託をしているわけですけれども、供託をしているのはこの三菱重工だけでありますか、ほかにもありますか、このことだけちょっと。#18
○筧説明員 三菱重工以外にも、同様な理由によって供託がされておるという事実がございます。#19
○中川委員 会社側にも私確かめてみたのですが、当時の状況はこういうことのようです。第一に、昭和十九年から二十年にかけて三菱広島造船所には、当時年齢二十二歳で、実はこれは後で大変大切なポイントになるのですが、いずれも二十代の若者たちばかりの徴用工、あるいは女子挺身隊、動員学徒計七千七百人がいたそうであります。このうち、朝鮮半島の方は約二千七百人であった。
第二番目に、徴用工に対する待遇は、朝鮮半島人、台湾人、内地人の区別は全くなく平等であった。
第三点目として、その後戦況が不利になるにつれて、朝鮮半島からの約二千七百人のこの徴用工は、寮からの逃亡者が相次ぎ、さらに原爆、終戦という事態を迎えて残存者が激減をし、終戦時まで残った者はわずか一割程度の約三百五十人だった。
そして第四番目に、この三菱広島造船所に残った半島応徴工といいますか、半島から徴用工で来られた方、約三百五十人に対して、会社側が、終戦直後の大混乱で連絡船もとだえているので、もう少し見通しがつくまでこの三菱にいたらどうかと勧めたわけですが、徴用工の方々は、一刻も早く本国へ帰りたい、船は自分たちで探す、こう強く主張したため、本人たちの要望を入れて、寮で送別会を開き、賃金を精算して、寮費を支払って、広島で解散させた。そこで、先ほど申し上げましたように、終戦までいないで途中で離散をした徴用工の方々の賃金は、受取人が不在のため、昭和二十二年、広島法務局にすべてを供託している、こういうようなことになっておるわけであります。
さて、そこで事実関係ですが、先ほどの、昨年の社労での御質疑にあった、壱岐郡芦辺町からこの会の手で発掘をされて、いま広島のお寺に仮安置をされております御遺骨、しかもこれは昨年の質疑で、この遺骨を祖国の遺族に送還をすべきだ、こういうことで、政府側が努力をすると約束されたわけでありますけれども、この御遺骨が昭和二十年に三菱重工をやめて韓国へお帰りになる徴用工のものである、こういう確証があるかどうかということなのであります。
お手元に、先ほど大臣のところにも政府側にも、私、前もって当時の新聞をお渡ししてあります。ちょっとそれをどらんいただきたいのでありますが、まず一つは、この発掘は、昭和五十一年八月十日から八月十三日まで四日間、先ほど言いました市民グループである三菱徴用被爆者・遺家族・帰国遭難者・戦後問題対策会、この会が発掘をしたわけでありますけれども、その西日本新聞の八月十五日の線を引いた方をちょっとごらんいただきたいのですが、この「発掘で見つけた八十六人の遺骨は」三菱重工の徴用工のグループとは「別の遭難グループとみられ、被爆韓国人の遭難事件はまたも深いナゾに包まれてしまった。」こういう「深まるナゾ」という特集記事が十六日と二日間にわたって出ておるわけであります。
この記事によりますと、確かに三菱重工徴用工の方が昭和二十年八月十七日の午前十時ごろ、二百四十六人を乗せて九州は戸畑港から出航したということは、この当時の目撃者の話でもどうも事実のようである。しかし、現実に発掘をしてみたところ、この最後の線のところに書いてありますが、「遺骨の中に意外なものが見つかった。明らかに子供のものとしか見えない小さな遺骨の数々、それに金歯。徴用工一行は全員が二十代の若者。」発掘をしたものも「ひょっとしたら徴用工一行のものではないのでは……」、こういう不安が発掘をしながら出てきた。
しかも、との発掘を始める前から地元でいろいろ調べてみた証言や資料は、すべてがこの三菱徴用工であるという推理を否定するものばかりであった。たとえば、当時の芦辺町役場の課長さんは「遭難は確かに九月十八日にありました。しかしそれは役場の資料では朝鮮から内地へ引き揚げる途中の日本人なのですョ。死亡者はゼロ、救助五十三人となっていましてぬ。いま発掘している遺体は深川さん」、これは捜し出す会の代表さんでありますが、この「深川さんの捜している徴用工一行とは全く別の人たちですよ」、こういう御発言をしておるわけでございます。
もう一枚めくっていただいて、「深まるナゾ」の下の方でありますが、実はこの芦辺町に流れついた方々の遭難は二回あった。一つは、いま申し上げましたように九月十八日に枕崎台風で遭難があった。しかしこの遭難は、いま役場の方のお話を紹介しましたように、朝鮮からの日本人の引き揚げ船であった。もう一つは、昭和二十年十月十日夜、つまり、先ほどの三菱徴用工の方が九月十七日に出発しているわけですが、その約一カ月ぐらい後、阿久根台風という台風がやってきて、この壱岐近海が大変な暴風雨圏に入った。そして、この暴風雨によって数え切れないほどの韓国人が流れついた。死体で百六十八人、救助したのが三十三人だった。現実には町役場の海難記録にも、昭和二十年十月十一日、身元不明の朝鮮人が遭難し、死亡者百五十四人、こういうことで記載された記録が残っておるわけであります。今回発掘したのはこのときの遺骨であり、三菱微用工の方々の九月十七、八日の壱岐遭難説とは大きく食い違う、こういうことになるわけでございます。
そういうことで、昨年の質疑で出た芦辺町の白骨化した遺体が三菱徴用工のものであって、そういう徴用工の人たちの遺族会が遺骨を返せ、こういう運動も始まっておるから、政府は協力してお返ししなさい、それに対して、前向きに努力します、こういう御答弁が出ているのですが、実はその御遺骨であるという確証がない。むしろ三菱徴用工でない可能性の方が強いと思われるわけであります。
これについて、この新聞もうお読みになったと思いますので、簡単でいいです。私のそう思うことが、この新聞記事なんかを含めて、間違っておるのか間違っていないのか。政府として、昨年の答弁のように、そういうことは事実において間違いないと外務省も御答弁なさった、そういうような観点で進めるのか。いや、ちょっと調べてみると違うよというお立場でいまおるのか。一言でいいから……。
#20
○山本(純)政府委員 大変むずかしい内容でございますので、全部が正しいとか全部が誤りとかいうことは私ども判断つけかねておりまして、議事録を私もよく振り返りましたけれども、私どもとしては変わっておりません。もしできるならば、今回もう少し調査いたしまして私どもの判断を固めたいというふうに考えております。#21
○中川委員 変わってないというのはどういうことですか。質疑者は、その御遺骨は三菱徴用工のものであって、それが広島の方へ仮安置されておる、その御遺骨を韓国へ返せと言っておる。それに対して、事実においてそれは間違いはない、大体把握しておることはそのとおりだと言っておるのですが、その御遺骨が三菱徴用工であるという事実を前は認めたわけだけれども、これだけのことがあっても変わってないと言うのですか。#22
○山本(純)政府委員 ちょっとお時間をいただきまして、御遺骨の問題は大変微妙な点がございまして、これはある御遺骨がどなたのものであるかがきちんとわかることの方がむしろまれでございます。しかしながら、そういう遺骨である可能性がございます限りは、私どもとしては丁重にお扱いいたすということにいたしております。いまの状況から申しますと、この御遺骨が御指摘の徴用工の遺骨であるという証拠はまだ私ども持っておりません。しかしながら、当時非常に多くの韓国人の方が遭難なさったという事実は、これは認めざるを得ない。したがって、この御遺骨が、徴用工の方を含めまして韓国へ帰国される韓国籍の方々の御遺骨である可能性はかなり高いのではないかというふうに私どもは考えておりましたし、いまも、そういう立場から調査を進めよう、こういうふうに思っております。
#23
○中川委員 要するに、この前の質疑では、そういうことなんだ、三菱徴用工の御遺骨なんだという立場で質疑して、事実関係について大体われわれが把握しているところもそういうことであります、間違いないということで外務省が実は答弁しておるわけですね。そういう答弁が出ているわけですが、結局はいま言われたように確証はない。可能性は確かにあるでしょう、大きな意味でね。徴用工を含めて、朝鮮半島から来られた方の御遺骨、それは韓国かどうかわかりませんよ。朝鮮半島北部の人かもしれない。そんなことはわからないですよ。しかし、全体として朝鮮半島から来た徴用工であったかもしれないという可能性はあるが、確証はない。しかも、この事実関係を見ても、三菱重工の徴用工であるという確証は全くありませんね。そういうことですな、いまの御答弁は。
#24
○山本(純)政府委員 確証はいまのところは全くございません。#25
○中川委員 もう一つ、同じ地元の新聞で一枚配っていますが、これも参考までに見ておいてくださいね、この中国新聞の方もね。そういうことで、可能性としては、韓国人の徴用工の方々の遺骨かもしれない。それから、朝鮮半島でも北部へ帰る徴用工の方々の遺骨かもしれない。事実がはっきりしないまま別の御遺骨を三菱徴用工のものとして遺族に返したら、これは先ほども言われたように微妙な問題で、これは大変な問題ですよ。しかも、朝鮮半島北部の方の御遺骨を韓国へ返したら、これはまた外交問題にもなる。よろしいですか。だから、事実を調査することは大いに調査をしていただきたい。人道上の見地で、できることならば、それが事実ならば返してあげるべきです。それは当然のことです。しかし、事実をはっきりしないままに慎重さを欠いてそういうことをしたら、これはやはり問題になります。
この会の代表である深川さんという方も、発掘当時は、この新聞で、「今回の遺骨は彼らのものであると私は信じたい。しかし、事実はあくまで事実としてとらえるべきものです。」こう語っておられる。ところが最近、ことしの二月三日の記事に、深川さんは韓国に行かれまして、深川さんによれば、五日間滞在をして、李晟雨さんという韓国政府の保健社会部医政局長さんにお会いをして、この御遺骨は三菱徴用工のものであるから一刻も早く遺族へ遺骨の引き渡しをすべきだ、そのようにする意味で日本政府と早期に話し合ってほしい、こう申し入れた。それで韓国政府は、外務部を通じて日本政府に遺骨送還を要請し、韓国政府としても受け入れのための予算を組む、こう答えた。つい最近、二月三日の記事ですよ。よろしいですか。深川さん自身も、事実はあくまで事実としてとらえるべきだと言っていながら、あくまで三菱徴用工のものだときめつけて、韓国まで行って申し入れておられるわけであります。
外務省、韓国政府からこのことについて何か言ってきていますか。もし言ってきたらどうしますか。私は、確証はないがいいのですかというくらいの慎重な対応が必要だと思いますが、どうですか。一言でいいですよ。
#26
○小倉説明員 本件につきまして、過去、若干非公式に照会があった経緯はあるようでありますが、正式に韓国政府から本件につきまして最近申し入れはございません。また、いま先生の御指摘の、しからば韓国政府から申し入れがあればどうするかということにつきましては、韓国政府からの申し入れの内容にもよると思いますが、まずその事実を調査する、それが先行すべきではないかというふうに考えております。
#27
○中川委員 それは当然のことです。それでよろしいです。ついでに、関連してちょっと二つだけお尋ねしますが、本件の徴用工の債権債務の関係ですね。これはどうなっておるのでしょうか。
国家間においては、私の理解するところでは、昭和四十年の日韓条約で、条約締結以前の両国及び両国民間の財産、権利及び利益並びに両国及び両国民間のすべての請求権は完全かつ最終的に解決されたものとする、この条項で国家間の問題は解決済みだと思います。これは後で外務省からちょっと確認をしたいと思います。
それからもう一つ、三菱重工側と徴用工の方々の賃金の未払いの問題は、これは法務局へ供託しているわけでありますから、その関係も、債務は供託という行為によって弁済されたものとみなされると思うわけでありますが、その点、イエスかノーかだけでいいです。
外務省と法務省、両方から……。
#28
○筧説明員 供託の効果として弁済という効果が発生することはそのとおりでございます。#29
○小倉説明員 国と国との間の補償等の請求権の問題は、先生御指摘のとおり、昭和四十年の協定と議事録によりすでに解決済みでございます。#30
○中川委員 大臣、この件についてこれは最後なんですが、私は従来の国会の質疑や御答弁が人道上のものから出ているものだとは思います。そしてまた、先ほどの、発掘をされたり運動されたりしておられる深川さんらの御奔走も、それが人道上のものからだけ出ているものであるならば、その限りにおいて評価するのに全くやぶさかではないわけであります。そしてまた、もしそれが徴用工の遺骨だということがはっきりするならば、一刻も早く遺族に渡すことも当然のことだ、こう思うわけでありますが、しかし、先ほど言いましたような状況で、事実不明のものを措置すれば、別の人道上の問題も出てくる、また、外交上の問題も出てまいります。つい最近も「悪魔の飽食」などという小説、小説じゃない、ドキュメンタリーですか、事件がありまして、これはでっち上げだというようなことで騒がれました。そういう事実もしっかり確認しないのにもしそういうことをすれば、その二の舞になってしまうと思うのですね。そういう意味で、あくまでこれはやはり慎重に当たらないと大変なことになると思うのです。先ほど冒頭に言いましたように、当時の森下厚生大臣にもお会いをしてちょっとお話はしてみましたが、そうかということでありましたけれども、前の御答弁のあれは、たとえば被爆者であるとかなんとかということの表現の中に、そっくりそのまま徴用工の遺骨であるみたいな感じで受け取られている御答弁が出ているのですが、その辺はもう一回慎重に構えなければいけない、私はこう思っておるので、大臣にその御見解だけ一言ちょっとお伺いしたい。
#31
○林国務大臣 中川先生、御地元のお話でもありますから、大変御熱心にお取り上げいただいておりまして、私も心から感謝を申し上げるところであります。いまお話がありましたように、やはり遺骨の問題というのは、ヒューマンな問題、人道的な観点という問題から考えなければいけないことは当然のことでありますが、先生も御指摘のように、やはりわからないところがたくさんあるんですね。年数もたっておりますし、いろんな事実関係がはっきりしないということも御指摘のようなことでありますし、私の方もそれは認めているところであります。そうしたことをやはり明らかにしながら、人道的な見地でやっていくということが大切なことではないか。間違ったことをしておったんでは後で大変なことになる、また、ひいては外交上の問題にも発展しかねないような話になれば非常に困ることになりますから、あくまでも事実は事実として冷静にお話し申し上げ、いろいろな措置をしていくということが一番大切なことではないかというふうに私は考えているところであります。
#32
○中川委員 ありがとうございました。もう一つの厚生行政における戦後処理の問題でありますが、これはいま厚生省で鋭意努力をしている毒ガス障害者対策の問題であります。
これについては、大蔵省において、旧令共済組合員、毒ガス工廠の組合員でありますが、これについてガス障害者救済のための特別措置要綱あるいは特別手当等支給要綱において一方で措置し、またそれ以外の非組合員、たとえば動員学徒とか女子挺身隊とか人夫とか、こういう方々については厚生省の方で毒ガス障害者に対する救済措置要綱に基づいてやっている、こういうことであります。
時間がありませんので、もうぽんぽんと数点だけお尋ねをしたいのですが、昭和五十四年七月に、厚生省の委託調査によって広島大学の西本幸男先生が、広島県竹原市大久野島、旧陸軍毒ガス関係の工廠があったわけでありますが、ここで働いていた人たちについて健康調査をやったわけです。ここで働いていた人は約五千人といわれているのですが、このうちこれまでにもう七百九十九人が死んでいるのです。このうち三割ががんである。しかも、現存者も九割が何らかの異常を持っている、こういう結果が出ておるわけであります。これは七九年でありますからいまからもう四年も前のことですが、その後こういう調査をしているのでしょうか、していないのでしょうか、一言だけ……。
#33
○三浦政府委員 現在、健康管理体制の一環としまして巡回健診その他も行っておりますので、毎年継続的に健康管理を行っております。#34
○中川委員 この問題も昨年の四月の社労で取り上げられておるわけでございます。その中でも、実は先ほど申し上げました正規の従業員であった旧令共済組合の組合員たる方々、つまり大蔵省で措置している方と、それから非組合員の動員学徒だとか女子挺身隊とか人夫とかいう方々、つまり厚生省で措置しているものとの間に措置においていろいろ格段の差がある、こういう御指摘がありまして、当時の三浦公衆衛生局長がこういう答弁をしているのです。旧令の共済組合におきます認定患者に相当するような事例が存在するとすれば、これは旧令の共済組合制度との均衡も考慮しなければいけないので、一度詳しく調べなければならぬ、こういうようなことも言っておるわけでありますけれども、この格差是正の努力はその後どんな努力をしているのか。もうこれはごく簡単でいいです、事実関係だけ。#35
○三浦政府委員 旧令の非共済組合の関係のたとえば学徒動員等の人々に対する対策につきましては、確かに先生おっしゃいますように共済組合員であった人たちよりも対策が時間的に若干おくれた面はございますが、今年度、介護手当あるいは家族介護手当を新設することによりまして大体旧令の共済組合員の一般障害者と同じレベルになった、こういうことでございまして、今後とも私ども大蔵省の方とも相談しながら対策の強化に努めてまいりたいと考えております。#36
○中川委員 その点は私も承知をいたしておりまして、本五十八年度予算において、非組合員である厚生省の措置要綱で措置をしておられる方々にも、旧令の一般障害者と同じ介護手当、家族介護手当が新規でつきました。これはもう大変な御努力に感謝するものであります。われわれも一生懸命やったわけですが、これはさらに拡充をしていただきたいのであります。しかし、それだけじゃなくて、実態を調べてみると、まだまだ健康診断の問題、診断を受ける場所あるいは制度そのもののPR、こういうものにおいてもいろいろ深刻な格差があるということなのであります。
きょうお尋ねしたいのはそこなんでありますが、この学徒動員の人たちは実は授業料を払いながら学校へ行っていたわけです。しかも、ただで働いて体を壊したわけですね。平均年齢は十四・四歳、十七歳から十二歳の子供たちですよ。いまこの方々が五十歳あるいは女で五十・五歳という平均年齢になって、言ってみれば一家の大黒柱で、働きバチで、障害を抱えながら一生懸命働いている人たちであります。私の大変親しい支持者の方も、五十前の働き盛りで、クリーニング屋の大将でやっていて突然がんで急逝された。やはりこれが学徒動員の人なんです。非常に重症者も多い。
学徒の関係で実は会ができておるのです。大久野島学徒親和会、これの会員がいま四百三十四人です。忠海分廠動員児童の会が四十八人、旧忠海分廠動員学徒の会が二十一人、合計五百三人の会ができておるわけです。この会の調べだけでも、五十手前ぐらいでがんで急死をしたのは四人も出ているのですね。そういうような重症が非常に多い。いろいろな厚生省の調査でも、また西本先生の調査を出しますが、女子なんかでも非常に危険な作業にも従事しておった。それから戦後処理で入った班の人たちには相当重症の方もいらっしゃる、こういうこともわかっているわけです。
厚生省で把握しているのは、この関係の動員学徒八百三十七人ということになっていますが、会の方は五百三人しか組織できないのですね。実はその当時動員学徒でこういう忠海の毒ガス工廠に行った方は、学籍簿によれば千三百十九人です。それが八百三十七人しか残ってないということは、それじゃ五百人も死んだのかということになりますね。そうじゃないはずなんですよ。五十手前でそんなに死ぬはずないですよ。つまり、この制度が全部徹底して、私はこの措置を受けますよと手を挙げる人が――亡くなった方もいらっしゃるでしょうけれども、何百人かはこの制度を知らないでまだ対策を受けてない方もいらっしゃるはずなんです。
現に、この学徒の会の調査によりますと広島県内だけじゃないのです。後ほどこれは関係してきますから申し上げますが、竹原市百十二人とか確かに地元の方も多い。しかし地元の忠海から一時間以上もかかる呉市に二十二人、二時間かかる広島市に三十八人、その他島嶼部、それから大阪府なんというのに二十人もいる。会の方だけだって五十人近く県外の人がいらっしゃるわけです。そういうことを考えてみますと、やはりPRもまだ足らないのじゃないか。全国に非常に散らばっている人たちに対して、健診制度だとか、いま厚生省の方は、今度は介護手当や家族介護手当もできましたが、基本的には保健手当と健康管理手当、こういうことをやっておるわけですね。健康管理手帳と医療手帳の交付をしているわけですね。こういうような制度そのものが徹底してないうらみがあると思う。県外の会員の人たちは、診断の呼びかけもまだないという人も現にいたそうです。実際問題としてはこういう実態もある。
しかも、健康管理手帳で年一回の健診を受けることになっておるのですが、これは指定された日時に指定された場所でしかできないのです。たとえば広島県の場合は、厚生省の資料でありますが、その工廠のあったところの国家公務員共済組合連合会忠海病院、ことでしか健診は受けられない。医療を受けられるところは幾つかありますが、健診はここだけなんです。そうすると、広島から忠海といったら、汽車で二時間半かかるのです。車で行ったって二時間かかるのですよ。呉から行ったって一時間半かかりますよ。三原もおれば、県内たくさんおる。それから大阪の方の人もいる。こういうようなことが平均年齢五十歳で働き盛りの人たちに簡単にできますか。なかなかできませんよ。
しかも、制度的に言うと、医療手帳をもらうのについて、旧令共済組合員であるならば、当時そこの組合員であったという履歴書だとか戸籍抄本だとか従事したことの証拠書類さえあれば医療手帳をもらえる。ところが厚生省関係の学徒だと、これに対して健康診断、もう一回精密検査の成績表が二通要るのです。健康診断を一回受けて、あなたは精密検査が必要ですと言ってまたもう一回精密検査を受ける、そして初めて医療手帳が交付される。組合員だったらそんな手続は要らない。ただやったことがわかれば医療手帳をもらえる。この人たちは二回も健診を受けなければいけない。しかも遠方に行って一カ所の指定機関で受けなければいけない。しかも二回も受けなければいけない。そんな簡単にできませんよ。
一例を申し上げますと、さっきの調査では九割が異常を持っているわけなんですが、これは呉市の、名前を申し上げますが、山城タケコさんという五十三歳の元学徒です。この方は再生不良性貧血、一種の血液のがんですよ。多発性神経炎、これで重症でもう寝た切りなんです。それで、健康診断を受けなさいと言ったって動けない。しかも呉から忠海まで一時間半もかかる。受けないまま、いま医療手帳も持ってなければ手当も受け取っていない。よろしいですか。
そういうことですから、実態をもう少し親切につかんで、せめて学徒の方も医療手帳なんかもらうときは組合員並みにすべきなのが本当だと私は思うのですよ。これは学徒は余り危険なところで働いていないと言う人がいましたけれども、そんなことはありません。あの戦争末期に大久野島では島民の人たちは皆召集で持っていかれて、実際に業務をやっていたのは学徒ばかりなんです。よろしいですね。この西本先生の調査でも、検査、倉庫及び工務、焼却など、比較的危険な職務に関係していた者も多い。女子なんかでもそういう方がずいぶんいる、こう言っている。こういうことでして、私は、ここはもう一押ししていただかないとせっかくの対策にうらみが残る、こう思うのです。この点をひとつ。
#37
○三浦政府委員 いま四点御質問がございましたが、一つはPR不足ということでございますが、私ども、毎年全国の課長会議を開くたびにこの問題を取り上げまして、PRを徹底するように言っております。なお、学校の同窓会等を通してやるのも一つの手ではないかと考えておりますので、また広島県の方ともこの点は相談して趣旨の徹底を図ってまいりたいと思っております。二番目の健診につきまして、一カ所というお話でございますが、広島県内につきましては広島大学医学部の検診班が巡回健診をしておりますので、その関係で一カ所になっておりますが、この点につきましても、広島大学の西本先生の方とも患者の便宜上どうかという点で相談をさせていただきます。
それから、事務の簡素化につきましては、しばしばそういう御指摘を受けるわけでございますが、これも私どもできれば簡素化できるように検討いたしたいと思っております。
それから寝た切り者に対しましては、これも大変お気の毒な話でございますので、主治医のそういう精密検査があれば、認定審査会でそれで検討ができるかどうか、こういう問題の御指摘もございましたので、これは認定審査会の方とも相談させていただきます。
以上でございます。
#38
○中川委員 時間が参りましたので、最後に大臣の御見解だけ伺いますが、先ほど言いましたように、この学徒の方々の「くのしま」という会報ができているのですが、これによりましても、県内の会員の方々は八五%が一般健診を受けているのです。ところが県外の人たちは五六%、半分強しか受けていないのです。実際は受けられないのですね。それの理由は、要するに仕事が忙しいとか遠方で不便であるとかが半数の理由です。しかもこの現在の健康状態は七二%が病気がちである。それはもう呼吸器系疾患とかいろいろですね。親族に同じ病気の者がいるかと言えばいない。おやじは五十代なんですよ。しかも発病したのはいつかというと、二十一歳とか二十五歳というのが一番多いのです。つまり、やめてすぐなんです。しかも、この毒ガスの作業や運搬に携わったかと言ったら、五五%が直接携わったと言っている。そのとき防毒面があったかと言ったら、支給されていないというのが六一%。それで職場でも障害が起こったというのが六五%いるわけですね。この当時から作業中にもうすごい臭気とほこりがあったという人がほとんどなんです。本当に気の毒なんですよ。
ですから、いま局長からの御答弁、私は大変前向きなものだと感謝をいたしますけれども、大臣におかれましてもまた次なる五十九年度予算においてもさらに御努力をいただきますようにお願いを申し上げ、御見解を伺いたいと思います。
#39
○林国務大臣 私も実は戦争中に学徒動員に出された方でございまして、同じ年配の者の話だろうと思います。いま、毒ガス工場で働くというので学徒動員されておった、帰ってきてすぐ病気になったというようなお話を聞きましたし、いろいろな手はやはり尽くしてあげなければならないと思っております。
いま局長から御答弁申し上げましたように、広島市内、また広島県内でのいろいろな対策もありますが、さらには大阪その他のところへ行っておられる方もあるでしょうから、やはり同窓会を通じてやるとかというのが一番手っ取り早い話かもしれませんし、そういった形でやっていくとか、広島大学の病院でいろいろな巡回診断をしていただくとか、いろいろなことはやはり考えていかなければならない話だろうと思います。そうした戦争のときの被害を受けられた方であるし、国家との特別の関係でもありますから、私はそういった問題につきましては十分配慮していかなければならないものだ、こういうふうに考えているところでございます。
#40
○中川委員 終わります。ありがとうございました。#41
○古屋委員長 井上一成君。#42
○井上(一)委員 まず私は、優生保護法の改正の問題について尋ねておきたいと思います。優生保護法第十四条第一項四号の「経済的理由」を削除しようとする動きがあります。しかしこの改正には、次のような重要な問題があるわけです。
一つには、経済的理由に基づく人工妊娠中絶が法律上認められないとすれば、非合法中絶が行われるおそれがあるわけです。そして非合法中絶は母体にもきわめて危険な結果を招くわけです。ある資料によれば、非合法中絶の母体損傷率は合法的中絶に比べて約三十倍にも達していると言われております。
さらに二点目に、GNP世界第二位のわが国で経済的理由の規定は不必要という議論があるわけですが、しかし厚生省が本年一月発表した国民生活実態調査を見ても、四二%が生活が苦しいと訴えて、今後三年間の家計の見通しについて、苦しくなると答えたのが五四・一%、いわゆる長引く不況の中で、生活保護及び生活保護すれすれの貧困世帯がどれだけあるのか厚生省は一番よく知っているわけであります。また、出産年齢の女性の就業率が年々高くなっていることも事実であります。
さらに三点目に、性の解放の風潮が、わが国のみならず世界全体の傾向となっておる。これに伴う十代の婚外妊娠は世界各国の共通の悩みであります。わが国ではその救済措置としてこの十四条一項四号が適用されているわけでありますが、その道を閉ざすことはより深刻な問題を引き起こすことになるわけであります。
四点目に、子供を産むか産まないかは、基本的には夫婦あるいは女性の自由にゆだねるべきであり、女性の社会的、経済的自立と参加を促進する見地からも、その自由を束縛すべきではない。
さらに五点目に、現行の優生保護法のもとでも人工妊娠中絶の絶対数は年々減少しておる。さらに、計画出産、避妊知識の普及により、今後も減少こそすれ増加することはあり得ないと判断をするわけであります。
さらに私は、宗教の立場で人間の生命の尊重、特に胎児の生命尊重を説くのは、それなりに十分理解ができます。しかし、その宗教的立場を現実の行政の場へ法的規制の問題として持ち込むことには、まだまだ議論の余地があろうかと思います。
以上の問題点を含む優生保護法の改正については、医学的にも社会的にも重大な影響をもたらすものであり、行うべきではないと考えるわけでありますが、大臣の見解をお聞きいたしたいと思います。
#43
○林国務大臣 井上先生御指摘のように、この問題を改正したいという話が出ていることも事実でありますし、現状のままでいいということになるかどうか、私もいろいろ問題があるだろうと思いまして、検討を続けてきておるところでございます。先生の御指摘のように、非合法の中絶がかえってふえて危険なことになるではないか、全くそういったこともあるだろうと思います。現実問題としてあるのではないかと思いますし、経済的理由、先生御指摘の四二%云々、こういうふうな話がありましたけれども、この経済的理由というのをどう解釈するかというのは、やはり一つの解釈の問題として、だれがどんな解釈をするのか。経済的に非常に苦しいというような問題というのは一つの解釈の話でありますから、これは果たしてそれでいいのかなということも考えなければいけないのだろうと私は思います。
それから、産む、産まないの権利というのが国際的にもいろいろと言われていることも事実でございますし、それじゃそれを一般の民法上の権利というところまで認めていくのかどうかというようなことも、法律論としては議論をしておかなくてはならない問題だろうと私は思うのです。
そのほか、避妊の体制であるとかいうことも考えていかなければなりませんし、宗教的な観点で胎児の尊厳ということを言われることもありますが、それではすべての宗教がそうであるかというと、私は必ずしもそうではないと思っているのです。そういったこともありますから、私はこの問題は人間のあり方に関連してくる問題だろうと思う。昨今は男女の産み分けなどというのも技術的にできるなどという話もきょうの新聞なんかに出ていましたね。そういったようなことで、いろいろ技術的にできる、科学的にできるという話まで含めて少し考えてみないと、早急に結論が出せる話でもないだろう、私はこう思っているのです。
そういった意味で、私の方もいろいろな形でこれは検討しておるところでございまして、先生の方の御意見も、私は一つ一つの問題は非常にごもっともな御意見だろうと思うのです。だから、そういったものを踏まえましてこれからも検討していかなければならない話ではないだろうか。これはお互い政治家として、人間がどうして生まれて出てくるか、それからどういうふうにしていい生活をしていくか、また死ぬときにどうするかというような問題まで入りまして、やはり統一的なコンセンサスをつくっていくということは必要なことだろうと思っているのです。私は単に一条を改正したから問題がこれで解決するなどと思っていません。あと教育の問題もありますし、それから性教育をどうするかという問題まで入って議論をしていかなければならない問題だろう、こう考えているところでございます。
御趣旨をよく体しましてこれからも検討を続けていきたい、こういうふうに思っております。
#44
○井上(一)委員 さらに私は、老人保健法の保健事業に従事した医師の受ける委託料及び謝金等の税制上の取り扱いについてお尋ねをしたいと思います。租税特別措置法に基づく医師に対する税制上の特例措置は、社会保険診療に基づく報酬に限られており、今回の老人保健法の施行により保健事業に従事した医師の受ける委託料及び謝金等はその適用を受けられないことになっているわけであります。
ところで、老人保健法の施行に伴って市町村の事業として実施が義務づけられている胃がん検診、子宮がん検診を委託する場合、このようなことで医師側の協力が容易に得られると考えていらっしゃるのかどうか。子宮がん検診を例にとると、国の基準単価一件当たり三千八百十一円、この中から細砲診の検査再委託料千二百円及び自由診療扱いとなるための国税、地方税並びに事業税等の増額分約二千四、五百円を差し引くと、医師の手取り分はほとんど残らないわけであります。このため、事業主体である市町村のうち、市民病院等を持たずに地域の開業医等に委託をせざるを得ないところでは、市町村が超過負担を覚悟して委託料を上積みするか、あるいはやむを得ずこの事業の実施をおくらすか、いずれかの選択を迫られているのが実情でありますが、このような実情についてどう考えていらっしゃるのか。
さらに、老人保健法の健康診査等の保健事業は、従来医療に偏っていた老人保健対策を見直して保健サービスの総合的な実施とその充実を図ることを目的とするものであるわけであります。よって、これに従事した医師が受ける委託料だとか謝金等は、国、都道府県、市町村の三者の公費負担によって賄われるものであります。しかも、この健康診査の費用は社会保険診療報酬の点数表に基づいて積算されています。したがって、老人保健法に基づく健康診査の委託料、謝金等は、その業務の公共性にかんがみ、社会保険診療の報酬に準ずるものとして税制上特別控除等の特例措置を設けるべきであると考えるわけでありますが、厚生省の見解を尋ねておきたいと思います。
#45
○吉原政府委員 老人保健法の保健事業、健康診査をやった場合の謝金の税制上の扱いについての御質問でございますが、先生おっしゃいましたように、社会保険の診療報酬の税制上の特例というのは社会保険診療報酬に限って認められているわけでございまして、この老人保健法の健康診査をやった場合の報酬とか謝金というものは社会保険の診療報酬ということではございませんので、いまの法律、税制のままでは適用を受けられないということになっているわけでございます。それで、私どもこの扱いをどうするか、老人保健法を制定するときにいろいろ検討したわけでございます。そういったような考え方あるいは御議論、御要望は十分承知の上でいろいろ検討したわけでございますけれども、従来のたとえば成人病検診というものについてはそういう扱いになっておりませんし、老人の健廉診査あるいは母子の健廉診査等もそういう扱いになっておりませんので、いま一挙に最初からそういう扱いは非常にむずかしいかなと思いまして、従来と同様な扱いをしたわけでございます。
一方、しかしいままでの成人病検診等の単価を見てみますと非常に低い。これではやはり実際に地方自治体に実施主体としてやっていただく上にどうだろうかということで、財政当局といろいろ折衝いたしまして、実は検診単価を引き上げるということに全力を上げたわけでございます。胃がん検診とか子宮がん検診というのは、従来の単価に比べまして、胃がん検診の場合には約三・二倍、子宮がん検診の場合には三・三倍くらいまで単価を上げたわけでございます。まあこの単価でも地方公共団体によってはなお不十分であるというふうな御意見はあろうかと思いますけれども、そういった考え方でこの老人保健法の発足をさせていただいたわけでございます。
#46
○井上(一)委員 さらに、老人保健法による住民健康診査の活用についてでございますが、老人保健法は市町村に対して四十歳以上の住民の健康診査を義務づけているわけであります。地域住民に成人病の早期発見、早期治療への広い機会が与えられた点では一応評価できると思います。しかし、健康診査を地域保健政策にどう反映させていくかの具体的方法について国は十分な取り組みを考えているのかどうか、まだまだ疑問の余地が多いわけであります。毎回の健康診査の成績を蓄積して、受診者が自分の健康状態を経年的に観察し、自己の健康管理に利用できるようにすること、またそれらのデー夕を医療を受ける際に利用できるようにすれば、より保健政策にとって有効ではなかろうか、私はこういうふうにも思います。すべての受診者の健廉診査の成績を集積して統計的に処理を行い、これによって地域的な疾病の傾向だとか構造を明らかにして、これに対して有効な保健、予防計画を立案をし実施をしていく、こういうことであります。この二つの目的が達成されて初めて住民健康診査はその役割りを果たすことができると私は思います。
そのためには、大量のデータを同時に蓄積をし迅速に処理する必要が起こり、コンピューターの利用なしでは不可能に近いと考えられるわけでありますが、どうなのでしょうか。
また、国は国民健康づくりモデル事業と関連して、幾つかの地域で住民健康診査のデータをコンピューターで管理する健康管理情報システムを関発しているわけでありますが、今回の老人保健法に基づく住民健康診査事業との関連はどうなのか。
コンピューターの利用が必要不可欠というのであれば、各市町村で別々のシステムを開発、運用するのではむだが多いと思います。国で標準的なシステムを開発して希望する市町村へこれを導入するという計画は持っていらっしゃるのかどうか。また、希望する市町村とたとえば都道府県別のセンターとを回線で結んで、市町村のデータをセンターで一括処理をして、そして一括保存をする方法も考えられるわけでありますが、こういう点についてもどうなのか、お聞きをしておきたいと思います。
ただ、ここで特に指摘をしておきたいことは、健康診査に関する情報は受診者個人のプライバシーに関する情報でもあり、これをコンピューターで集中管理すれば、当然当事者以外の者の目に触れる危険性も生じてくるわけであります。プライバシーの保護の見地からはどのような対策を者えているのか。
厚生省は、老人保健法の施行に関する説明の中では、コンピューターの設置についての補助を行うのは管内に大規模な人口を有する保健所に限るとして、市町村保健センターについてはその設置の必要性を認めていないわけであります。これではせっかくの住民健康診査の結果が地域における保健政策に十分反映されずに、その意義は半減されることになるのではないでしょうか。
老人保健法の制定の趣旨が、政府の説明のとおり疾病の予防や健康づくりを含む総合的な老人保健対策の推進にあるとするならば、コンピューターの導入問題も含めて、住民の健康診査の結果をどのようにして地域における保健政策に反映させていくかの具体的な対策を早急に示すべきであると考えるわけでありますが、この点についての厚生省の見解を聞いておきたいと思います。
#47
○吉原政府委員 老人保健法の健康診査は保健事業の中の一つの大きな柱の事業として考えているわけでございますけれども、先生おっしゃいますように、健康診査というのは診査のやりっ放しに終わってはならないわけでございまして、その後のフォローの問題、データの管理、長期的な観察、管理の問題、それをまた個人の健康管理に活用していく、あるいは市町村の保健政策全体に反映をさせていくということは、私はこれから大変大切なことだと思います。その一つのやり方として、おっしゃいますように各市町村がコンピューターを導入してやっていくということは、これからぜひ進めていきたいと思っているわけでございますが、率直に言いまして、いまの段階ですぐ全市町村にコンピューターを導入してやれというところまでの研究なりノーハウの開発というものが実はまだ進んでおりません。そういったことにつきましては、これからの問題として、県、市町村とも十分協議をしながら、あるいは民間のいろいろな研究といったものも十分参考にしながら進めていきたいと思っているわけでございます。
その場合に、いまおっしゃいましたようなプライバシーとの調整の問題も大変むずかしい問題だろうと思います。具体的にどういうふうにすればその辺の調和なり調整が図られるのか、そういった点も十分考えてやっていきたいと思っております。
保健所のコンピューターの問題、それから健康づくり財団の問題につきましては、公衆衛生局長から御答弁をさせていただきます。
#48
○三浦政府委員 私の方から二点お答えいたします。国民健康モデル事業におきます健康管理情報システムと老人保健法の健康診査のデータ処理との関連というお話でございますが、私ども全国の三十万人ぐらいの都市五カ所でいまこのモデル事業の調査をやっておりまして、当然これの結果が出ましたら老人保健法の事業に有効に結びつくように持っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
それから、コンピューターの導入は大都市の保健所だけいま補助をしておるわけでございますが、これにつきましては、老人保健法が発足いたしましていろいろな健診データが大都市の処理が非常に大変だということで、当面大都市を持つ保健所に補助していこうという予定でございますが、これもまた今後のデータの処理量その他を見まして、今後その他の保健所あるいは市町村段階、こういうことも考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#49
○林国務大臣 二人の方から御答弁申し上げましたが、先生御指摘のように、老人保健法で四十歳からいろいろ保健ということでやっていこう、予防、健診ということをやっていこうということですが、やはりこれにはデータの積み重ねが必要だと思うのです。一遍やったからそれで終わりということではなく、ずっとデータの積み重ねをしていくことが必要であるし、それぞれの人についてそういったケアをしていくならば、相当大量のデータが入るわけです。それを広い地域においてやるということになれば、やはりコンピューターによらざるを得ないということも当然のことでありますし、いろいろな保健政策を入れていく上におきまして情報化の時代にふさわしいような体制をとっていくということは必要なことだと思います。先生はコンピューターの方も大変お詳しいことでもありますし、それからまた市長をやられた御経験もあるわけですから、地域医療、市町村段階のいろいろな問題とそれをどう組み合わせていくかというのは私は全体としての課題だろうと思いますし、先生は非常にお詳しいのですから、ひとついろいろな点でお話を聞かせていただければありがたい、これは率直に私は申し上げておきます。いろいろな問題があるだろうと思います。たとえば先生のところは大分社会移動が多いわけでしょう。出た人はあっちへ行ったらもうデータがなくなっちゃったということではどうにもなりませんので、そういったようなこともいろいろ考えていかなければならないと思いますから、ひとついろいろな点でお教えもいただきたいし、また、いろいろな点で御議論もさせていただきたい、こう考えております。
#50
○井上(一)委員 大臣から補足的に丁寧にお答えをいただいて、どうもありがとうございます。この問題については、地方自治体がいろいろ多くの問題を抱えるわけであります。老人保健法の施行に伴って市町村が四十歳以上の住民を対象とする保健事業を行うことになったわけでありますが、その費用負担については、たてまえ上は、政府の提案理由の中でも説明があったように、国、都道府県、市町村がそれぞれ三分の一ずつ分担するとされているわけであります。しかし、昭和五十八年度の保健事業費について厚生省が示している基準単価は、たとえば健康教育、健康相談については、一回当たりの人件費は一万三千四百四十円。さらに、訪問健康診査では、医師に看護婦を帯同させる場合で六千七百二十円、医師のみの場合は四千七百七十円。さらに、胃がん検診、個別方式で七千九百九十一円、子宮がん検診三千八百十一円であるわけです。厚生省は、大都市圏あるいはこれに準ずる地域で果たしてこの単価で事業の推進が可能と判断していらっしゃるのかどうか。
事業の実施主体は市町村であるわけであります。市町村は、事業の推進を図るためには、やむを得ずこの単価のほかに相当額の上積みを余儀なくされているのが実情ではなかろうかと思うわけです。このことは、老人保健法の施行に伴って新たな超過負担を市町村に押しつけるものになるわけであります。その対策についてどう考えていらっしゃるのか。場合によっては、これらの基準単価について地域別の上積み措置を講ずることも考えられるわけでありますが、そういう点についてもどう考えていらっしゃるのか、お聞きをしておきます。
〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕
#51
○吉原政府委員 健康診査あるいは健康診査以外の各種の保健事業の補助単価についての御質問でございますが、確かに、保健事業を市町村が中心になって円滑にやっていくためには、それなりの必要な財源のきちんとした裏づけがなければならないということは十分念頭に置いて制度の立案をしたわけでございますけれども、やはりいままでの成人病検診の単価が非常に低かったということが、この事業が伸びなかった実は一番大きな問題点であったというふうに思います。そういったことで、たとえば胃がん検診につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、五十七年までは、老人保健法ができるまでは胃がん検診は何と八百九十三円という単価であった。これで胃がん検診ができるか、こう言われておったわけでございます。それで、老人保健法発足に際しまして、実勢単価にできるだけ近づけるという考え方で大蔵省と折衝しまして、財政当局も大変理解を示してくれまして、御承知かもしれませんが、胃がん検診につきましては二千八百四十二円という単価で発足をすることができたわけでございます。子宮がん検診につきましては、これがまた五百九十七円という単価であったのでございますけれども、千九百七十一円という約三・三倍の単価が認められたわけでございます。私は決してこれで十分とは思っておりません。なお今後ともこの単価の引き上げ等については努力をしていきたいと思っております。
それから、地域別の何か上積みができないかということなんでございますが、確かに、その地域によって、この単価である程度、十分とは言えないまでもまあまあだというところと、かなり不十分だというところがございます。それから、たとえば健診をやりますときに、大都市もいろいろ問題があるわけでございますけれども、地方の離島や何かで健診をやります場合には、そこまでたとえば検診車を送るといったような費用がよけいにかかるというようなことも言われているわけでございます。
ですから、やはり全国一律の単価でやるということについてはいろいろ問題があるということはわかっておりますけれども、そうかと言って、ほかのいろいろな生活費のような予算と違いまして、健廉診査の単価を地域別につくるということもなかなかむずかしい面があるのじゃないか、財政当局もなかなかうんと言わない面があるのじゃないかということもあるわけでございます。
ただ、できるだけそれぞれの県、市町村の実情に見合って、何らかの形でそれに見合った補助なり援助ができるようなことは今後とも考えてまいりたいというふうに思っております。
#52
○井上(一)委員 私は、五十六年四月十七日の決算委員会で、休日または夜間の診療に従事した医師の報酬については、その業務の公共性にかんがみ、税制上特別控除等の特例措置を設ける必要があると指摘をいたしました。これに対して、当時の政府委員から、医療の公共性というものを評価する立場に立った税制改正に努めたいとの前向きな答弁があったわけであります。地域医療の中で休日、夜間診療の果たす役割りはその後ますます増大をしているわけでありますが、一日も早く税制改正を実現すべきだと思うわけであります。その後の取り組み経過及びその見通しについてここで聞いておきたいと思います。
#53
○大谷政府委員 救急医療のため休日または夜間の診療に従事した医師が地方公共団体等から支給を受ける報酬につきましての課税の取り扱いにつきまして、先生からも御指摘がございまして、私どもとしても、この点につきましては、救急医療の重要性という観点から、五十五年度から毎年、御指摘の趣旨に沿いまして税制改正要望を実は行ってきたところでございます。五十八年度の税制改正要望につきましても、この問題につきまして要望いたしておるところでございます。五十六年度に、休日夜間急患センター等に行きまして救急業務に従事した場合の報酬につきまして、従来事業所得の取り扱いになっていたわけでございますが、事業所得の取り扱いといいましょうか、事業所得か給与所得か不明確な点がございましたが、これを給与所得扱いとするような取り扱いにしていただいたわけでございまして、給与所得控除というものが適用されることになったということはございます。しかし、関係団体では、まだまだこれについてもう少し何とかならないかという要望もございます。
私ども厚生省といたしましては、救急医療という問題につきましては非常に重要であるという観点から、税体系上の問題があるという見解もございますが、今後引き続き関係方面に働きかけ、努力をいたしてまいりたいというふうに存じております。
#54
○井上(一)委員 さらに私はその委員会で、障害者の完全参加と平等を促進する立場から、現行の医師法、薬剤師法等における障害者を絶対的欠格事由とする規定を改める必要性を指摘をいたしました。当時の園田厚生大臣は私の発言の趣旨を了とされ、一遍にどうこうはできないが、逐次門戸をあげていくように努力したいとの答弁をされているわけです。その後二年を経過した今日、厚生省としてはこの問題についてどのような検討を行われたのか、この点についても聞いておきたいと思います。
#55
○大谷政府委員 目が見えない、あるいは耳が聞こえない等の絶対的な欠格事由を緩和するという問題につきましては、これらの事由を定めておりますところの各職種の行う個々の業務というものを考えまして、また一部の関係団体にも意見を聴取いたしまして、先生の御指摘もございましてこれまで検討を行ってきたところでございます。現在、医師等の医療関係職種におきましては、目が見えない者、あるいは耳の聞こえない者及び口のきけない者等に対しましては免許を与えないというふうにいたしておりますが、これらの障害の程度につきまして、視覚障害につきましては、たとえば一メートルの距離で指数を弁別できないという程度の非常に厳しいものにしているわけでございまして、いわゆる身体障害者福祉法に定める視覚障害に該当する方々にも医師等の免許を受けることができるような現実上の運用をいたしているようなわけでございます。
さらに重度の障害を持つ方々にまで免許取得を認めるかどうかということにつきましては、医療関係業務というものが国民の皆様の生命と健康に直接重要なかかわりを持っているというふうな観点から、先生も御承知のとおり、当然慎重に対処する必要があるというふうに考えておるわけでございます。
しかし、先ほども申しましたように、視覚障害あるいは聴覚障害、いろいろそういうものにつきまして、今後も補助器具等の進歩もございますし、私どもとしてはそういった運用の観点から、先生の前回御質問の御趣旨、また今回の御趣旨等も十分考えまして、身障者の方々に社会参加の機会を与えるというふうな視点で、運用においてできる限りそういった点を努力してまいりたいと考えておるわけであります。
#56
○井上(一)委員 次に、私は保育所の運営に要する経費に係る超過負担について尋ねておきたいと思います。保育所の運営に要する経費に係る超過負担は年々増高の一途をたどっているわけであります。たとえば、大阪府の調査結果によると、昭和五十六年の超過負担額は二百七十八億一千百万円で、前年度の二百四十七億八千四百万円に比べて三十億二千七百万円も増加をしているわけであります。対前年度増加率は一二・二%に達しているわけです。また、超過負担率では五四二・四%と、前年度の四七二・二%に比べて実に七〇・二ポイントの増加となっているわけです。この超過負担額は、昭和五十六年度の大阪府下市町村の地方交付税総額九百八十八億円の二八・一%にも及ぶ膨大なもので、府下市町村の財政を著しく圧迫しているのが実情であります。
国におかれても、超過負担の問題については年々その実態を調査し、解消に努めていられるわけでありますが、その調査結果は一切公表がされていない。国の部分的な是正措置のみが一方的に発表されるにとどまっているわけです。超過負担の解消に真剣に取り組む姿勢があるとするならば、国は地方公共団体と共同でその実態調査を行い、共通の実態認識に基づいて、国と地方公共団体とがお互いの論議の中で根本的な解決策を求めていくべきであろうと私は思います。
保育所の運営に要する経費に係る超過負担の最大の原因は、市町村が保育所に現実に配置している保母等の数と国が定めている保母等の配置基準とに大きな差があることであります。たとえば、大阪府下の市町村の実態では、児童四・九人に職員一人の配置となっているわけでありますが、国の基準では児童八・九人に一人の職員となっているわけです。特に、乳児保育を含む三歳未満児について、国の基準は児童六人に保母一人となっているが、現実にはこの基準で責任の持てる保育の実施が困難であることは国もすでに認めているところであります。
また、国の保育単価においては、保母の等級号俸は七の二とされ、何ら改善されていないわけであります。大阪府下の市町村を例にとると、過去、保母等の人材確保が困難であり、その後、児童の急増による保母の確保及び最近の採用抑制などにより、保母の経験年数、平均年齢が年々高くなっていることから言えば、国の基準と実態との乖離、つまり超過負担の度合いははなはだしくなる一方であります。この点について厚生省としてはどのように考えていらっしゃるのか、今後どのように対応されようとされているのか、ここで聞いておきたいと思います。
#57
○正木政府委員 保育所運営費に係る御質問でございますが、保育所措置費の超過負担の解消につきましては、先生からかねがね御指摘をいただき、私どもといたしましても従来から特に意を用いてきたつもりでございます。少しく述べさせていただきますと、先生御案内のところばかりでございますが、超過負担の原因と考えられるもののうち、給与の格差、格づけにつきましては、大蔵、厚生、自治の三省合同の実態調査をもとに是正措置を講じてまいりました。
また、保母さんにつきましては、所定の格づけに加えまして、本俸に約一〇%の給与改善措置を行っておるわけでございます。
また、保母さんの配置基準につきましても御指摘をいただいたわけでございますが、先生からは以前からもこの点御指摘をいただいているところでございまして、私どもとしても努力を続けてまいりました。特に五十八年度におきましては、非常に厳しい財政状況下でございましたが、先ほど御質問の中にもございました乳児保育のための特別対策といたしまして行っておる三対一の定数を、従来D4階層でございましたが、これをD5階層までに拡大いたしまして、対象の増を図ることといたしました。
そのほか、四十四時間勤務体制の計画的改善ということで、業務省力化等の勤務条件の改善費、あるいは措置児に対する処遇改善ということで、一般生活費等につきましても改善措置を講じたわけでございます。これらはもとより職員の処遇改善、それから対象児に対する処遇改善という問題でございますが、実質的には地方の財政負担の軽減にも役立つわけでございます。
そういった観点にも立ちまして、今後とも保育所の措置費の改善というものについては十分努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
#58
○井上(一)委員 それでは、厚生省の関係は一応以上で、大臣、次の予定がおありだと聞いておりますから、結構でございます。次に私は、自衛隊輸送機墜落事故について二、三質問したいと思います。
質問に先立って、有視界飛行方式とはどのような飛行の方法を言うのか、ちょっと念のために聞いておきたいと思います。
#59
○川井説明員 航空機が飛行いたします場合に、有視界飛行方式と計器飛行方式と二つございます。そのうちの有視界飛行に関しましては、視程、いわゆるパイロットからの視界でございますが、これが五キロメーター以上の天候の場合に、雲の高さあるいは地表その他を高度によりましていろいろ細かく規定されております。一般的に言いまして、五キロメーターの視程を持っておる気象状態、地表を見ながら飛ぶ状態を有視界飛行方式と呼んでおります。
〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕
#60
○井上(一)委員 そのことは、管制指示に従って飛ぶのが計器飛行、管制指示に従わぬで飛ぶ、計器飛行方式以外の飛行の方式だ、とういう理解をしてよろしいわけですね。#61
○川井説明員 御指摘のとおりでございます。#62
○井上(一)委員 それでは、有視界飛行方式の場合に計器飛行は行えるのかどうか。#63
○川井説明員 有視界気象状態と有視界飛行と二つございますが、有視界気象状態の場合に、計器飛行方式、いわゆる管制の指示を受けて飛ぶ飛行でございますが、これは可能でございます。また一般には、その逆の、管制の指示を受けて飛びます、通常、IFR、計器飛行方式と呼んでおりますが、これは天気の悪いときは必ずIFR、天気のよいときであってもIFRというのがあり得るというふうに御理解いただきたいと思います。
#64
○井上(一)委員 わかりやすく言えばこういうことなんでしょう。計器飛行は位置、進路を知ることができない場合に行うことができるんだ。航空法の第九十三条によって、地上の物標を利用してその位置、進路を知ることができない場合には計器飛行を行うことができる、そういうことなんでしょう。#65
○川井説明員 計器飛行と計器飛行方式とございまして、いま先生が御指摘の件は計器飛行のことではないかと私は思いますが、管制官の指示を受けておりますのを、気象にかかわらず計器飛行方式と呼んでおります。#66
○井上(一)委員 私が質問したのは、有視界飛行方式の場合、計器飛行は行えるのかどうかと聞いたのですよ。どうなんですか。行える場合はどういうときに行えるのですか。#67
○川井説明員 有視界飛行方式の場合、計器飛行は行えないことになっております。ただし、航空法の施行規則によりますと、区間距離が百十キロメートル以上の場合には、有視界気象状態でも計器飛行によれという決まりがございます。
#68
○井上(一)委員 四月十九日、三重県鳥羽市菅島で発生した自衛隊ジェット輸送機CIの墜落事故。当該六機編隊が名古屋空港を特別有視界飛行方式で離陸したとのことである。それらの事故現場における飛行方式は当然有視界飛行方式であると私は思うわけです。それでは、彼らが維持しなければならない有視界気象状態とは、航空法施行規則第五条の何号に該当するのでしょうか。
#69
○川井説明員 航空法九十四条によりますと、管制圏及び管制区のしかれている区域におきましては計器飛行方式で飛行するのが通常でございますが、特別に許可を得た場合には有視界飛行でも飛べるようになっております。これを通常、特別有視界飛行と呼んでおります。この間事故を起こしました防衛庁のCI機が名古屋空港を離陸する場合、これは特別有視界飛行で離陸いたしました。
#70
○井上(一)委員 特別有視界飛行で離陸した、それは私が言ったことです。彼らが維持しなければならない有視界気象状態とは航空法施行規則何条の何項に該当するのですかと聞いているのですよ。#71
○川井説明員 ただいま説明申し上げた特別有視界飛行方式については、航空法施行規則の百九十八条の四でございました。御指摘の有視界気象状態については、施行規則第五条三号でございます。
#72
○井上(一)委員 新聞報道によると、今回の編隊飛行は四番機を除いて二千フィート、約六百メートルの間隔の一列縦隊であったとされているわけです。有視界気象状態であるなら、当然前の航空機、すなわち三番機は二番機、二番機は一番機が視認できたはずだと思うのです。それはどうなんですか。#73
○川井説明員 視程が千五百メートル以上ということでございますから、十分、前の飛行機は見えただろうと思います。現に、離陸いたしまして約三分後に有視界気象状態になったという連絡を受けておりますので、以後、有視界気象状態のもとに飛んでいたものと私たちは理解しておりました。#74
○井上(一)委員 これも新聞報道で、三番機の証言として、事故当時、前にいる二番機と二千フィートという決められた間隔が保てないので、計器で約千八百メートルに離れた。伊良湖岬上空は視界千五百メートルで雨、雲は千から千二百フィートの高さにあったと報道されているわけです。これは矛盾しますか。私は矛盾すると思う。この報道はどうなんですか。#75
○川井説明員 先ほど私申し上げましたのは、名古屋空港を離陸するときの気象条件を申し上げましたが、空港周辺以外の場合の有視界気象状態といいますのは、高さによりましてそれぞれ異なっております。高さ三百メートル以下の有視界気象状態といいますのは、視程が千五百メートル以上、地表を視認できる、あるいは雲を避け得られるという気象状態になっております。したがいまして、いま先生御指摘の気象条件ですと、通常の有視界気象状態のぎりぎりの値ではないかと思います。
#76
○井上(一)委員 私は、これは大きく矛盾すると思う。視界が千五百メートルあるならどうして六百メートルという間隔が保てないのか、そういうことになりますね。さらに、もし見えないとするならば近づくべきである。逆にどうして千八百メートルに離れたのか。そういう矛盾を尋ねているわけですから、どうぞ率直に答えてください。#77
○川井説明員 視程千五百メートルといいますと、いま先生の御指摘の数字では楽に見られるはずであると思っております。確かに、そのために前が見えないからというのはちょっと理解に苦しむところでございます。#78
○井上(一)委員 同様に、三番機のパイロットの証言として、編隊長から九十度へ左旋回せよという指示が入った直後、機体腹部にどんというショックを感じた。このため、あわてて地上にエマージェンシーをコールしながら約二千六百メートルまで急上昇した。帰投後、点検したら、機体腹部に打痕があり、木の葉がついていたと発表されているわけです。この証言及び一番機、二番機が菅島の山腹に激突していた事実を考えるなら、操縦者が地表または水面を引き続き視認することができる気象状態にはなかったと私は考えるわけですけれども、どうなんでしょうか。
#79
○川井説明員 事故当時の菅島周辺の気象状態につきましては私ども熟知しておりませんので、お答えしかねるところでございます。#80
○井上(一)委員 私はその三番機のパイロットの証言を引用して質問をしているわけです。三番機のパイロットが証言しているこのことから考えて、これは地表あるいは水面を視認できる気象状況ではなかった、こういうふうに私は考えているのです。#81
○川井説明員 先生のおっしゃるとおりであると思います。#82
○井上(一)委員 こういう状況を総合して、新聞等で視界千五百メートルあったとされているが、今回の編隊飛行は航空法で定められている有視界の気象状態にはなかった、私はこういう認識に立っているわけです。だから、今回の編隊飛行は有視界気象状態ではなかった、こういうふうに認識しますが、いかがでしょうか。#83
○西廣政府委員 正確なお答えになるかどうかわかりませんが、まず申し上げたいのは、有視界飛行というのは、編隊として有視界飛行をしておるというようにお考えいただくとちょっと間違うと思います。それぞれの機が決められた条件を満たし得る範囲においては有梶界飛行ができるということでございますので、ある時点で、たとえば先ほど運輸省の方からお話のありました千五百メートルの視界が得られないとか、あるいは連続して水面なり地表が見えないという状況があれば、それぞれの機の機長の判断で有視界飛行を取りやめなければいけないということになろうかと思います。#84
○井上(一)委員 それじゃ、三番機はエマージェンシーをコールしながらあわてて一挙に二千六百メーター、八千五百フィートに急上昇した、これは有視界飛行方式で上昇したのかどうか。当時の気象状態からすると、有視界飛行方式による上昇は不可能だと私は思う。もし計器飛行方式で上昇したとするなら、その管制承認はどこから得たのか、この点についてじゃ答えてください。#85
○西廣政府委員 三番機は事故確認後直ちにエマージェンシーコールをしてそれなりの据置をとった。それを聞きました副編隊長機、四番機でございますが、それが全機に対して直ちに計器飛行に切りかえる命令を出しております。#86
○井上(一)委員 計器飛行方式に切りかえて上昇した、じゃ彼らはしかるべき管制機関から管制承認を得るまでの間どうしていたのか、あるいはその管制承認は、どこの管制機関の管制承認を得たのか。#87
○西廣政府委員 まだ現在調査中で細部わかっておりませんが、いずれにしましても、その直後においては管制部と十分な連絡をとるいとまはなかったものと私どもは考えております。#88
○井上(一)委員 調査中だけれども、計器飛行に切りかえて管制部と十分な連絡がとれなかった。ということは、その間は盲目飛行をやっておった、こういうことになるのじゃないですか。#89
○西廣政府委員 その間どういう状況にあったかについては現在調査中でございますので、各機についてそれぞれ条件は違っておったかと思いますが、現在お答えできないのが残念でございます。私どもまだ把握いたしておりません。#90
○井上(一)委員 じゃ、これは把握してこの委員会に報告をいただけますか。もう相当な日時がたっているのですよ。そういう体質が問題だと私は思う。#91
○西廣政府委員 事故調査につきましては、全般の調査が終わった段階でまとめて必要なものは公表いたすということでありまして、中途段階で個々の事実関係を発表するという考えはございません。#92
○井上(一)委員 それじゃ最終的にまとまった段階で、どこの管制部から指示を得たんだ、そのことは報告してくれますね。#93
○西廣政府委員 調査委員会の結論を得次第、何らかの形で公表をいたしたいというふうに考えております。#94
○井上(一)委員 私はいまも指摘したように、しかるべき管制機関から管制承認を得るまでの間は盲目飛行を行っていた。いまの答弁でも管制機関がどこであったかということも答えられない、これは当然でしょうと思います。盲目飛行を行っていたということは、空の安全という意味から非常に危険な状態であった。今回の事故が発生した菅島は、V52航空路の近くにあって、北の洞和の無線標識にはG4、幹線航空路が集中している状況から、私は、民間機を巻き添えにした第二、第三の空中衝突事件が発生する可能性が大きかったと思うわけであります。これは運輸省にお尋ねをします。私はあえて盲目飛行ということを申し上げておるわけです。そういう状況の中で民間機との衝突の発生の可能性が大であったというふうに私は思いますが、運輸省はどうですか。
#95
○西廣政府委員 運輸省がお答えになります前に、私の先ほどの答弁を少し補足させていただきますが、私先ほど、まだ調査中で個々の航空機がどういう状況にあったかわからないという、ちょっと直ちに管制部とコンタクトできる状況ではなかったと思われると一般論を申し上げましたが、有視界飛行を行っておりました航空機が計器飛行方式に移るという段階において、コンタクトができるまでの間は引き続き有視界飛行を維持することができるというふうになっておりますので、そういう状況にあったというふうに私どもは理解をいたしておるわけであります。#96
○川井説明員 菅島周辺は先生御指摘のとおり航空路がふくそうしております。したがいまして、当該磯が、航空路等民間航空にどのような支障があるかという点につきましては、その飛行機がどのぐらいの高度を飛んでいたかということが一つございます。それからもう一つは、当該機が事故を起こしました時刻が七時台でございまして、まだ民間機はそれほど飛んでいないという、いわばラッキーな状態ではございました。#97
○井上(一)委員 いや、私が言っているのは、時間が幸いにも早かったとか、あるいは高度が八千五百フィートであったとか、いろいろ不幸な事態を避ける要因は何ぼかあったかもわからないけれども、これが真っ昼間だとか、時期が悪ければ民間機との衝突も起こり得る状況である、僕はこう判断をしておる、そのことについて運輸省はどうなんですか。#98
○川井説明員 飛行高度が五千以上でありましたら、先生いま御指摘のとおりであろうと思います。#99
○井上(一)委員 ここで私は、さっきの参事官の再びの答弁は、自衛隊における安全感覚が全く麻痺をしておる、こういうことを指摘しておきます。防衛庁や小牧基地の幹部は、飛行計画に無理はなかった、あるいは有事の場合も考えるとこのような訓練が必要だと発言しているわけです。問題にしなければならないのは、このような発言が出てくる自衛隊の体質それ自体だ。今回の事故原因は、有視界飛行方式において守らなければならない気象状態も維持できない、いわゆる悪天候のもとでこのような低空の飛行訓練を強行させたことにある、私はそう思うのです。一つ間違えば、いまお答えのあったように、民間機や他の航空機を巻き添えにした大惨事を引き起こす可能性も十分にあったわけなんです。自衛隊の安全感覚の麻痺に関しては、四月七日、名古屋空港の北、美濃市上空で発生した全日空ボーイング737と浜松基地所属のT33ジェット練習機とのニアミスにおいても同様なんです。全日空機のパイロットは、危険を感じた、異常な接近であったというレポートをしているのに反して、自衛隊は、十分な調査もしないうちに、安全間隔は十分であった、こういうような発表をしているわけです。いまの答弁は、まさに考え方としてはこれと同じなんです。私は、民間機を巻き添えにするおそれのあるこうした航空機の事故の再発防止には、もとより自衛隊が安全感覚を取り戻してもらいたい、さらに、その安全軽視の体質を早急に改めて抜本的な安全対策をみずから講じていく必要があろう、こういうふうに思うのです。
これは、本来なら防衛庁長官にあえて質問をするわけですけれども、きょうは御出席いただけないから、この点についてひとつ防衛庁の見解を聞いておきます。
#100
○西廣政府委員 このたび、引き続きまして大変大きな事故を起こしまして、かけがえのない前途有為の隊員を大変多数失ったこと、また、事故を起こしまして基地周辺の住民の方を初めとする国民の皆様に大変御心配、不安をおかけしたことについては、深くおわびをする次第であります。防衛庁といたしましては、事故後直ちに、大変異例のことでございましたけれども、長官から各幕僚長に対して指示を出しまして、全機の機体の再点検を初めとしまして、安全教育の徹底、さらには、それぞれの訓練内容に応じた訓練の実施要領等について、安全確保という点についての徹底を期している次第であります。
#101
○井上(一)委員 このことについては参事官の答弁では満足がいきませんが、また機会を改めます。続いて、私はVOR航空路についてひとつ尋ねておきたいと思うのです。
基本的には、空の安全を十分確保してほしい、そのことにおいてわが国の安全をみんなでつくり上げていかなければいけないんだ、そういうことが基本であります。
昨年の五月十三日の決算委員会において、私の質問に、北海道、東北地区及び沖縄地区において未整備、すなわち北海道、東北地区については五十七年の秋に設定できる段取りだ、一方、沖縄地区では事務的な協議は行っているが、まだ線引きは行われていないということであったわけですが、それに関してその後どうなっているのか、ことで聞いておきたいと思います。
#102
○松井(和)政府委員 御指摘のVOR航空路につきましては、航空交通の安全の向上と、それから効率を拡大するという意味合いから、私ども積極的に進めつつあることは御承知のとおりでございまして、ただいま御指摘のように、東北、北海道地区と沖縄地区が現在まだおくれておるという状況でございますが、西日本はすでに完成をいたしまして、現在計画の約五〇%が完了をいたしておるという状況でございます。北海道、東北地区につきましては、昨年御答弁申し上げましたとおり、米軍あるいは自衛隊の訓練空域との調整が手間取っておりますために、なかなか実施ができずにおくれておったわけでございますが、その後調整を鋭意進めまして、防衛庁側との調整も終わりまして、残された米軍との最後の調整の段階に入っておるというところでございます。
また、沖縄につきましても、沖縄の全般的な訓練空域の見直しということを現在米軍との間で折衝をいたしておりまして、これはまだ残念ながら明確なめどをつけるという段階にまでは至っておりませんが、米軍側も日本側のVOR航空路の設定についての理解を示してくれておるという状況でございます。
#103
○井上(一)委員 北海道、東北地区のVOR航空路に関しては、昨年の秋に設定の段取りとなっていたわけですけれども、まだ設定されていない、そのおくれた理由は米軍制限空域が障害である、こういうお答えなんですが、米軍の制限空域、レンジ129ですか、これが障害になっているのですか。#104
○松井(和)政府委員 御指摘のとおりの空域でございまして、私どもその他の航空路についてはほぼ問題ないわけでございますが、宮古から北海道の東方に参ります航空路が当該訓練空域と抵触をいたします。その空域を一部同じ面積で他の空域に移してほしいという折衝を現在進めておるところでございます。#105
○井上(一)委員 その見通しはどうなんでしょうか。#106
○松井(和)政府委員 これは相手のあることでございますので、明確なめどはつきがたいわけでございますが、先ほども申し上げましたとおり、現在沖縄地区を含めます全体的な空域の見直しを米軍との間で行っておりますので、私どもとしてはできるだけ早い機会に話し合いがつくことを期待しているところでございます。#107
○井上(一)委員 さっきは自衛隊機が日本の空の安全に障害になっている、いまは米軍の訓練空域が日本の空の障害になっている。これはみんなが協力して日本の空を守っていかなければいけないわけなんですね。ところが、自衛隊と米軍が日本の空を支配しているということには、運輸省どうなんですか、こんなことで日本の空が、国民の空の航路が、安全を守り切れると言えるのでしょうか。#108
○松井(和)政府委員 私ども、民間航空の空の安全を担当する役所でございます。当然民間航空機の安全向上のために、先ほど申し上げましたVOR航空路の設定を急ぐという立場にあるわけでございます。日本の空域は、もとよりある意味では狭いと言わざるを得ないわけでございます。それをいかにして防衛庁、米軍と民間航空との間で効率的に使用していくかということが問題になるわけでございます。
私どもといたしましては、これまでもそうでございますが、民間航空の安全と効率の向上のためのVOR航空路の設定は是が非でも優先的に扱ってほしいという強い態度で今後も折衝を続けるつもりでおります。
#109
○井上(一)委員 五十年五日八日の航空交通管制に関する合意の空域の一時留保の問題についてでありますけれども、これは昨年も私が航空交通管制に関する合意書の原文を提出しなさいと言ったのですけれども、これはまだ国会には提出されていないわけですが、空域の一時留保の問題について質問をいたしております。この第八条にはただ単に、米軍の要請は少なくとも二十四時間以前に行うという方法を規定しているにすぎないわけであります。空域の一時留保については、便宜を図るとか、ましてや優先的に取り扱うとはどこにも規定していないわけなんです。したがって、これに関してそのような取り扱いをしなくてもよいと考えられるわけでありますが、この空域の一時留保、アルトラブについての法的根拠はないのだ、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
#110
○松井(和)政府委員 ただいま御指摘のアルチチュードブロックの件につきまして、米軍との間に、米国政府の要請に応じまして日本政府は航空交通管制上の便宜を図るということが約束されております。もちろんこれは優先的という意味ではございませんが、管制上の便宜を図るということは約束事項になっております。#111
○井上(一)委員 第七条に「便宜を図る」、そして第八条に、空域の一時的留保については「二十四時間以前に要請する」。便宜を図ることと優先的に取り扱うこととは意味は変わってくるのではないか。だから便宜を図らなくてもいい。特に七条の「防空業務に従事する航空機」あるいは「戦術的演習に参加する航空機」に対しては「便宜を図るものとする」、こういうことなんですよ。そういう点でもう一度指摘をしますけれども、アルトラブについては断ることも可能である、断ったっていいんだ。実際は断れるかどうかは別として、民間航空機に支障を来すような場合にはあえて断るべきであるという意見なのですけれども、そういうことについてはどうなのですか。やはり七条の便宜というものを法的根拠にとらえられる、これだけしか法的根拠はないのだ、こういうことですか。
#112
○松井(和)政府委員 根拠は御指摘の日米合同委員会の合意でございまして、便宜を図るという以上のものは書いてございません。したがって、これは認めなくても、断ってもいいのではないかという御質問でございますが、大体このアルチチュードブロックは、先生御承知のように、時間を定め、空域を定め、高度を定めていわば一時的に留保をするということでございまして、これまでのところ、それが民間航空機の大変大きな支障になるというような要請はなかったわけでございます。もし仮に民間航空路の多数の航空機に影響の出るような要請があった場合、私どもとしてはその空域なり時間なり高度なりについての注文をつけるということは当然あり得るというふうに考えております。
#113
○井上(一)委員 私は民間航空管制業務の運用に困難な状態をもたらしていると思うわけなのですが、何か答弁の中では、今日までは余り支障がないようなニュアンスです。それではお聞きしますけれども、このアルトラブは本来沖縄を中心にいままではその件数が多かったわけであります。しかし、本土上空でも行われていると私は承知しているわけです。たとえば日本上空におけるアルトラブの件数は一体どのように変化をしていっているのか、どういう状況であったのか、そのことをそれでは聞かせてください。
#114
○松井(和)政府委員 アルトラブの件数につきましては、これは米国側の了承がない限り公表はしないという約束になっております。件数の具体的な数字あるいはその推移についてこの場でお答えすることはお許しを願いたいと思います。#115
○井上(一)委員 それでは、空域の一時留保、いわゆるアルトラブは、日本の民間機の航路帯をふくそう化させていくとか支障を起こしている、航空管制業務の運用を困難にしていると私は思うのです。局長、いかがですか。#116
○松井(和)政府委員 先ほど私が御答弁申し上げましたのは、全く支障がないという意味で申し上げたつもりはございません。非常に大きな支障を来すような事例がなかったということを申し上げたつもりでございまして、一定の空域が占用されるわけでございますので、それによって民間の航空機にある程度の影響が出るということは当然のことでございますし、また、管制官といたしましてはそれなりに神経を使う必要が大きくなる、これまた御指摘のとおりだと思います、#117
○井上(一)委員 空域の一時留保の件数は明らかにできないといまお答えがあったわけですが、その理由は一体何であるのか。米軍の行動の内容が明らかにできないということがその理由であるならば、米軍機の取り扱い機数も明らかにできないということになるわけなのです。単なるアルトラブの件数の公表が一体米軍の行動とどのような関係があるのか、このことをそれでは聞かせてください。私は単なるアルトラブだと理解をしたいのですよ。したいのだけれども、公表ができない。局長、それは米軍の行動とどんな関係があるのでしょうか。#118
○松井(和)政府委員 その問題に関しましては、私どもよりは外務省の方からお答えをさせていただきたいというふうに考えております。#119
○山下(新)政府委員 お答え申し上げます。いま御質問ございましたアルトラブの設定あるいはフライトプランの通報等、これは御承知のとおり地位協定の六条に基づきまして処理をされているわけですが、そういうものは技術的に必要な限りで米側から関係当局に通報されてきているわけでございます。ただし、アメリカ側は米軍の個別的な行動につきましてこれを明らかにしないということを原則にしているわけでございます。したがいまして、米軍機の個別的なフライト等につきまして技術的な目的以外に用いることは避けてほしいという立場をとっている次第でございます。日本側といたしましてもこのようなアメリカ側の立場は理解できますので、その点御了承いただければと存ずる次第でございます。
#120
○井上(一)委員 これは米軍の行動と非常に密接な関係がある……。では、松井局長に続いてお伺いします。エンタープライズが佐世保に入港して出港し、日本海から北上し太平洋沿岸を航海した、そのときの日本の空は一体どういう状況であったのか。空域の一時留保がどういう状況であったのか、例年に比べて少ないのか多いのか。
#121
○松井(和)政府委員 そのエンタープライズの寄港期間だけをとりますと、通常より多かったと思います。#122
○井上(一)委員 そうなんですよ。通常よりもばかに多いわけなんです。私の調査では、アルトラブの件数それ自体も三月は多いわけです。エンタープライズが入港し、そして北上をする間、実に五倍近いふえ方なんですね。具体的に、たとえば札幌管制部だけの例を見ましても、ことしの五月一日までにすでに十八件、去年であればせいぜい二件ぐらいじゃなかったでしょうか。あるいは三月二十日から四月九日まで三十三件、こういうことが明らかになっているわけです。私は、先ほどから申し上げるように、日本の空が米軍機によって支配をされている、こういう状況がどうにもがまんができないということであり、そういう状況で本当に日本の空の安全なんというものが保障できるのか、こういうことなんです。松井局長、私は少し具体的に数字を出しましたが、いかがですか。
#123
○松井(和)政府委員 先ほども申し上げましたとおり、エンタープライズ寄港時のアルトラブの件数は通常より多かったということは事実でございます。私ども、そのような場合でありましても、当然のことながら十分米側と連絡を密にいたしております。私どもも、基本的にアルトラブの回数というものは少ない方が望ましいというふうには考えますが、しかしながら、十分な調整を図りつつ航空交通の安全を図るということは私どもとして十分になし得ることだというふうに考えております。
今後とも米軍側との連絡調整を十分にとって、民間航空の安全に疑念を挟まれるようなことのないように努めてまいりたいというふうに考えております。
#124
○井上(一)委員 そのことによって随所でトラブルがあるわけなんですね。今回エンタープライズが日本に寄港し出港していく、その間に日本の空域が米軍によって留保されていく、そこにトラブルが――まさにその一つの事例として、四月八日の三沢基地周辺における事故、このことについて運輸省はどういう報告を受け、どういう理解をしているのか聞かしてください。#125
○松井(和)政府委員 四月八日であったと思いますが、三沢基地から私どもの札幌管制部が二機の編隊飛行のフライトプランを受け付けまして、それが洋上に出て有視界飛行に移り、管制の手を離れたわけでございます。その後、帰投するに当たりまして管制部に連絡が入ります。その際に編隊を解いたという連絡がございませんでして、管制部としては当然編隊のままという理解のもとに三沢基地に連絡をいたしましたところ、三沢基地で一機だけ帰投したという事実が入りまして、管制部では直ちに米軍側に照会をいたしましたところ、米軍側は、その編隊を解いたという連絡がなかったということはこれは向こう側の手落ちでございますが、残りの一機については自分の方で所在を掌握しておるので問題はない、こういうような回答がございました。したがいまして、特別の捜索救難体制を組むというようなことはいたしませんで、その後、約三時間後に基地に帰投したという旨の報告を受けた次第でございます。#126
○井上(一)委員 いま答弁があったように、四月八日、まさにツインA3、二機編隊で帰投をせず、一時は大変な騒ぎになったわけです。そして三沢基地、いわゆる自衛隊もこの実情は承知していなかった、私はそう承知しているのです。米軍から軍事機密だ、これ以上追及するな、そういう形で問題が処理されていく、まさに危険きわまりない空の状況である。念のために聞いておきますが、三沢の自衛隊もこの一機については承知をしてないと私は理解しているわけですが、そのとおりなんでしょうね。
#127
○西廣政府委員 ただいまの御質問の米軍機の行動は、三沢基地、これは航空自衛隊が管制しているわけですが、そこから計器飛行方式で離陸をした。以後、運輸省の札幌管制部の方の管制によって飛行しておって、途中から有視界飛行に移ったんだと思いますが、三沢基地に有視界飛行方式で帰投したのは一機でございましたので、自衛隊としては、残りの一機が引き続き計器飛行によって運輸省の管制下にあるのかどうかという情報交換のための問い合わせをいたしております。#128
○井上(一)委員 運輸省ではその一機を見失っているわけなんです。それじゃ、その時点で自衛隊、三沢のベースオペレーションは一機を追いましたか。
#129
○西廣政府委員 運輸省の方は、計器飛行方式から有視界飛行方式になった段階で当然のことながら運輸省の管制下から離れておるわけでございますから、米軍機の所在がわからないといいますか、それを押さえてないということは当然であると思いますし、わが方といたしましても、ADIZ、防空識別圏を越えてくるアンノーン機ではございませんので、その種の有視界飛行等をしている航空機についてその動向を追跡をするというようなことはございません。#130
○井上(一)委員 自衛隊の基地も米軍の残り一機の状況は把握できない、まあ有視界飛行だ、そういうこと。これはローカル線が非常に飛んでいる地域でもある、非常に物騒な危ない状況であった、こういうことなんです。さらに、私は先ほども件数をもって指摘をしているわけですけれども、たとえば、エンタープライズが入港し寄港し出港するまでに米軍機がどれだけ日本の空を飛んだのか、これはひとつ運輸省に聞きましょう。
#131
○川井説明員 運輸省といたしましては米軍機の統計というものをとっておりません。また、管制機関におきましては計器飛行方式のみを扱っておりますので、有視界飛行を含みます米軍機の行動につきましての統計をとっておりませんので、先生の御質問にははっきりとお答えできない段階でございます。#132
○井上(一)委員 いや、あなた方そういうことを言うけれども、承知をしているんだよ。私の調査では、たとえば三日には東京管制部だけで扱った米軍機の数が六十機以下の日はたった三日しかなかったというのです。ひどい日は百十機飛んでいるわけなんです。とりわけ三月二十一日、これはいま言った百十機、二十二日は百五機、これは洋上でのフライトは別ですよ。まさにエンプラの日本寄港時の日本の空は米軍機によって支配をされていた、この事実を私は指摘をしたいわけなんです。これはやはり二月に比べて、いま私が言っているのはこれは東京管制部のなんですけれども、米軍機は八百五十八機も三月は日本の空をよけいに飛んでおるわけです。そんなことを国民は知らないし、いつ衝突が起こり得るかわからぬような状況の中で、運輸省は何の空の安全対策なんだろうか、もっとしっかりしていただかなければいけないし、外務省もこういうことについてのアメリカとのさっきの航空協定ですね、この問題についても十分にこの合意書に合った形でのフライトでないといかぬ。合意書に違反をしている、そういうことなんです。
運輸省、私がいま指摘した数字は否定しますか。
さらにもう一つ。佐世保へエンタープライズが入港し、北上していく四月二日から九日、北海道札幌の航空管制部でとらえた米軍機は、三日から九日まで実に三百二十三機ですよ。去年の、五十七年四月だったら、当時たしか六十機ほどです。五倍以上北海道の空を米軍機が飛んだ、こういうことなんです。こういう事実をどのように運輸省は受けとめるのか。
#133
○松井(和)政府委員 私どもいま御指摘いただきました数字につきましてはお答えする立場にございませんが、先ほども申し上げましたとおり、空は無限のように見えますけれども、実を言えば日本の空域というのは非常に狭いわけでございまして、その空域の効率的な、しかも安全な使用ということに私ども常々心がけていかなければいけないと思いますし、特に、防衛庁あるいは米軍との連絡をさらに密にし、仮に米軍の飛行がふえても、それは民間航空機の安全に支障のない場所、ない時間に行うというような調整の仕方があるわけでございます。でき得る限り航空の安全を確保するための努力を今後も続けていきたいというふうに考えております。#134
○井上(一)委員 大臣が見えましたので、私は大臣に聞いておきたいと思います。実は大臣、いま日本の空がいかに危険きわまりないかということを、具体的な数字を挙げて私は指摘をしてきたわけなんです。それは防衛庁も協力しなければいけないし、米軍も協力しなければ、運輸省だけで日本の空の安全は守り切れないんだ、こういうふうに私は思っているわけです。
菅島における自衛隊の事故も、まさに時間と高度が大惨事を引き起こす要因にならなくてよかったけれども、実に危険きわまりない状況である。民間機との大惨事を起こす大きな危険性をはらんでいるということ。
もう一つは、いま御承知のように空域の一時留保、アルトラブ、これによって日本の空が、ただアメリカとの航空交通管制に関する合意書第七条で便宜を与えるという、しかし空域の一時留保なんというのは八条なんですよ、二十四時間以前に通告をする。断ることもできるのですよ。法的根拠なんて貧弱なものなんです。そういう中でアルトラブが年々どんどん増加していく。沖縄だけであったのが、まさにアメリカの軍事行動の中に日本の空が含まれていっているという、その一つの例がエンタープライズが佐世保に入港したとき、あるいはそれから出港して日本海を北上して太平洋岸に出ていったとき、北の空は全部ブロックされていた。
こういう状況は好ましくないし、こういうことはやはりひょっとしたら――ひょっとしたらじゃなく、いつ大惨事を引き起こすかわからないぐらいの大きな要因をはらんでいるんだ。これは改めてもらわなければいけないし、そんなことで空の安全をいかに説こうとも、それはまさに性根が入っておらぬ、中身がないじゃないか、こういうことを申し上げてきたわけです。
それで、まだ佐世保入港時の長崎空港におけるトラブルもありますけれども、いま外務省の関係で運輸省としては、アルトラブ、空域の一時留保の件数は公表できないという答弁なんです。ふえているということは言われたけれども、何件あるかということも言われない。こういう状況では、本当に空の安全を議論できぬじゃないか。わかりますか。いつ、どこでこういうブロックがあって、それは何のためにブロックされた、そういうことについて大臣いかがですか、どうお考えですか。
#135
○長谷川国務大臣 航空問題は、わが国の空を飛ぶわけでございますが、空は無限に広そうでございますけれども、どこの国の飛行機も、どこのルートを通るかというのが共通に決まっているわけであります。そういう意味からしますと、アメリカの飛行機が日本の空を飛ぶ場合でも、どことどこは飛んでもよろしいというふうに話もしているわけでして、アメリカであるからどこを飛んでもいいという形にはなりません。また、それが大事なことだと私たちは思って、一つ一つのケースに対応しているわけであります。#136
○井上(一)委員 大臣、そこでいろいろ問題が起こってきている。私は、具体的に空域の一時留保も件数を挙げていま申し上げたわけです。こういう状況は民間航空に大いに支障がある、私はこう思っているわけです。だから、それは大臣どうでしょうか。じゃ、一つずつ聞きましょう。
そういうふうに、空をブロックしていくことは、どこを飛んでもいいんじゃないんですから、決められた航空路というのがある。だからさっきは、あなたが見えるまでには、米軍の訓練空域があるから、北海道に最短距離で行く航空路もまだ設定ができないんだという答弁があったのです。
そういう流れは聞いていらっしゃらないけれども、要は、空の安全を守るために、いまのアルトラブ、一時的留保を含めて米軍機のむちゃくちゃな増加なんというものはやはり支障を来すと私は思っている。そういうことについて大臣は、いや、大丈夫なのだとおっしゃられるのか、私の言っているとおりだ――最小限度支障がないように努力しているのだということはさっき言われているわけなのだけれども、局長は支障がある、全く支障がないとは答えていらっしゃらないのです。大臣は、どう認識をされていますか。
#137
○長谷川国務大臣 アメリカ関係の話でございますけれども、やはり日本の空を協定によって飛ばしてやることですから、その協定が破られることによって日本のほかの飛行機、日本の中に不安があるようなことではかないませんから、この辺は十分チェックし、そしてまた話に乗ってもらう、これだけの自主性を私たちは持ちたい、こう思っております。#138
○井上(一)委員 局長、さっき指摘をしたアルトラブ、まだまだもっと詳しい件数を私は持っておりますけれども、ごく最近とみに増加しつつある。こういう状況は、率直に言って好ましくないと私は思っているのですよ。局長、いかがですか。#139
○松井(和)政府委員 アルトラブで空域の一時的占用が行われるということは、私ども民間航空の安全をつかさどるセクションといたしましては少ない方が望ましいということは先ほども御答弁申し上げたところでございます。ただ問題は、その必要があってアルトラブが行われるわけでございますので、それを否定するつもりもございませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、どういう時間帯、どういう空域、どういう高度という、アルトラブをする場所、時間、そういうものについて米軍との間の調整を十分今後とも密接に図っていきたい、それが航空の安全を守る道であるというふうに考えております。
#140
○井上(一)委員 エンタープライズの入港、核搭載の問題も国民世論の中での大きな問題点でしたけれども、そのことにおいて日本の空がまさにアメリカ空軍によって支配されていた、このことも私は大きな問題だという認識に立つわけです。今後、アルトラブについては民間航空機の安全を考えて十分な毅然たる対応をとるべきである。件数も言えないといういま外務省に遠慮しているような運輸省。そうでしょう。あなた方は全部把握しているわけなのだ。外務省に遠慮している。なぜ遠慮せなければいかぬのか。そのことすら言えないという。運輸大臣、それで自主性なんて言えますか。
重ねて聞きましょう。あなたのところで承知している件数すら国会で言えないのです。場所まで指定せずに件数だけでも……。それも言えない。私が逆に言った。否定はできない。それが運輸省のいまの実情である。私は、運輸省のふがいなさを嘆きます。大臣、いかがですか。
#141
○長谷川国務大臣 各国の飛行機がほかの国の領空に入る、これはそれぞれ大きな制約があるわけであります。現に、中国民航が韓国に入った、国交かないにかかわらず、来る要人を入れて、すぐでも片づけて向こうに帰す、こういうふうにみんなが予想もし、そういう雰囲気ですけれども、その場合といえども、いろいろな国際条約、将来の契約、そんなことで一日、二日もかかっている。私は、日本の空は私たちの手で守りたい。ことに運輸省は、日本の空に日本の飛行機が飛べなくなって、講和条約が発効してから先輩の皆さんのおかげで日米航空条約が生まれて今日の日本航空の発展があるわけでして、そういう伸びているときに、一つ一つの制約というものをときに解いてきたわけです。また新しい制約なり約束事も生まれるわけです。そのときに、いかに自分たちの国益を守って近いルートで海外から日本に来るかということは、航空局が、相手の航空会社、相手の国、ときに外務省と連絡をとり、協力をもらいながら一つ一つ真剣にやっている姿でございまして、そういう中でございますから、皆さん方に不安を与えているのがどの程度のことかわかりませんが、いまのような気持ちでしっかりいまからもがんばるということを御理解いただきたい、こう思います。
#142
○井上(一)委員 大臣は後で来たので、もうこの問題は機会を改めますが、日本の空が一月に百二十二件、二月に百十六件、三月に百六十六件、米軍によってブロックされているのですよ。わかりますか。そしてさっき私が言ったように、具体的にエンタープライズが寄港し出港して航海を続ける間、まさに日本の空は米軍によってブロックをされていた。それはさっきも件数を言いました。あるいは二日から九日までの米軍機が飛んだ数はまさに通常の五倍も六倍もの増加、これはよろしくない、こういうことなんですよ。ハイジャックのそういう問題とは少し違う。私の言っているのは、日本の主権にかかわる問題だ、もう少ししっかりしてくれ。そして、その法的根拠というのは非常に貧弱な、決して両国がかっちりと取り決めたものでもなく、航空管制の合意の七条と八条、便宜を与えるという――優先権ではない。余りにも便宜を与えるにも度合いがある、ここまでで私はやはりとめるべきである、そういうことを申し上げているので、流れを十分御承知いただいてないから韓国の二日前の話を出されましたが、日本の空はそういう状況である。三月には百六十六件、一日五件も六件も日本の空はブロックされてアメリカが支配しているのですよ。日本の飛行機が飛べないのですよ。そういう状況だから、私は激励を込めて、大臣、運輸省にしっかりがんばってくれ、こういう状況ではだめなんだということを申し上げているわけです。
#143
○長谷川国務大臣 そういうお話がございますから、改めて私もよく前後の事情を精細に検討してまいりましょう。#144
○井上(一)委員 さらに、私は空の安全という立場から、このことも去年の決算委員会で指摘をしたわけですけれども、ACMIについてその後どういう状況なのか、この点について尋ねておきたいと思います。#145
○松井(和)政府委員 ACMIの空域の設置につきましては、前に御答弁申し上げたと思いますが、当初米軍側から提案のありました沖縄西方空域につきましての提案は、私ども航空局の立場で意見を求められまして、民間航空の航空路からは外れておりますけれども、レーダーで誘導をする空域にかかりますので、その空域の提供については航空局としては反対であるということを申し上げたわけでございました。米軍側はその後さらに、その西方空域の位置を若干ずらすというようなことで妥協が図れないかというような打診がございましたが、そのすべての案に対して私どもは了承できない旨のお答えをいたしました。米軍側はその後、沖縄西方空域の案をやめまして、東方の、より水深の深い場所になりますが、沖縄東方にあります既存の訓練空域を中心とした空域でACMIの空域がとれるかどうかという検討を現在しておる段階でございまして、米軍側から新しいACMIの空域についての案がそのうちこちら側に提示されると思いますけれども、現在のところまだ米軍側が検討の段階でありまして、正式の提案は出てきていないというのが現状でございます。
#146
○松井(和)政府委員 そういう新聞報道がなされたことは承知いたしておりますけれども、そのような形で合意がなされたということはございません。ただ、私どもといたしまして、先ほど御答弁いたしましたようにACMIの空域を提供するかしないかを決める立場ではございませんが、もし提供する場合には、民間航空の安全に支障がないかどうかというのを判断する立場でございますので、新しい提案がありました際には、その新しい空域が民間航空の安全に影響があるかないかという観点から判断をいたしたいと思いますし、また、ただいまお話がございました沖縄の全般的な提供空域の見直しというものもその際あわせてやることも一案ではないかというふうに考えておるのは事実でございますが、まだ合意を見たというような段階には至っておりません。
#147
○松井(和)政府委員 そういう新聞報道がなされたことは承知いたしておりますけれども、そのような形で合意がなされたということはございません。ただ、私どもといたしまして、先ほど御答弁いたしましたようにACMIの空域を提供するかしないかを決める立場ではございませんが、もし提供する場合には、民間航空の安全に支障がないかどうかというのを判断する立場でございますので、新しい提案がありました際には、その新しい空域が民間航空の安全に影響があるかないかという観点から判断をいたしたいと思いますし、また、ただいまお話がございました沖縄の全般的な提供空域の見直しというものもその際あわせてやることも一案ではないかというふうに考えておるのは事実でございますが、まだ合意を見たというような段階には至っておりません。
#148
○井上(一)委員 アメリカから新しく申し出があるであろうと想像される空域、沖永良部付近の空域ですね、これは御承知のように、すでにウォーニングエリア、W173とW179によって狭められているわけですね。航空機がふくそうする空域であると私は聞いているのです。こういう空域に新たな軍用訓練空域を設定すれば、安全上あるいは管制上影響が及ばないはずはない、影響が出てくる、こういうふうに私は考えるのですが、その点についてはどうなんでしょう。
#149
○松井(和)政府委員 まだ正式の提案がございませんのに影響があるかないかということは申し上げられないわけでございますが、現に東方海上は、ただいま先生御指摘のようにすでに提供しておる空域があるわけでございまして、その空域を中心にした新しい提案がなされるとするならば、それがどの程度航空路から離れているかというところを見きわめた上で私ども安全上の支障の有無を判断いたしたいと思っておりますが、一昨年の当初の米軍側の提案によります西方空域に比べますと、東方空域については先ほど申しましたレーダー誘導のための空域という使い方をしておりませんので、その意味で、西方に比べますと影響は少ないということは明らかではないかというふうに考えております。#150
○井上(一)委員 外務省に尋ねておきますが、昨年の決算委員会でこの問題については、運輸省も外務省も航空交通の安全確保に抵触しないことが条件だと答えているわけなんです。いま運輸省の見解がわかったのですが、外務省は現在においてもその考えに変更はないと思いますが、念のために聞いておきたいと思います。#151
○山下(新)政府委員 お答え申し上げます。私ども外務省といたしましても、無論のこと、航空局長さんから御答弁がございましたように、航空交通の安全確保に抵触することがあってはならないというふうに考えているわけでございます。
ただし、安保条約に準拠いたしまして、日本の安全を確保する手だてとして私ども米側に依存しているわけでございますから、それに必要な訓練が行われること、その必要性というものは認識しているわけでございまして、これと安全の確保との抵触を避けるように十分な調整をする必要があるというふうに認識している次第でございます。
#152
○井上(一)委員 運輸省に最後に、まだ正式な提案があったわけではありませんけれども、このことについては、正式提案があった段階において、安全上、管制上どのような影響を及ぼすのかを十分に検討して日本側の態度を明確にし、その上で米軍と十分に協議をしていく必要があると考えるわけです。運輸省の考えを尋ねて、私の質問を終えます。#153
○長谷川国務大臣 時折の委員会でいまのような話がありました場合に、やはりいままでよりよけいアメリカに空域を使われないように、そして安全であるように、またそのことを両方が合意できるような形において折衝してまいりたい、こう思っております。#154
○古屋委員長 新村勝雄君。#155
○新村委員 最初に、医療供給体制の問題についてお伺いしたいのですが、臨時行政調査会の基本答申の第一章の中に、医療供給の合理化を図るべきであるということが答申されております。その趣旨は、「地域の実情に応じ、公私医療機関の位置付けを明確にする等総合的かつ効率的な医療供給体制の整備を計画的に進める。国立医療機関については、全国的な視野に立った高度先駆的医療や地域の医療計画における中核的施設としての機能を明確化し、併せてその整理合理化を行う。」こういうふうな臨調の答申があるわけであります。そこで、まずお伺いしたいのですけれども、この前段の「公私医療機関の位置付けを明確にする等総合的かつ効率的な」とありますけれども、これはどういうことであるのか。特に国立の医療機関を中心とする、公立も含みますけれども、国公立の医療機関の位置づけをどうするのか、こういう点についてまず伺いたいと思います。
#156
○林国務大臣 わが国の医療供給体制は量的には相当整備が図られてきているという認識を持っておりますし、国際的に見ましても、また日本の国内、全国的に見ても相当の水準にあるだろうと思います。今後、医療需要が増大していく、多様化していく、高度化していくという事態を踏まえまして、かつまた高齢化社会の到来を控えまして、適切な医療をあまねく確保するという観点から医療制度の見直しが必要だ、私はこう考えておるところでございます。
公立病院と申しますと、国立病院それから地方自治体立の病院というものがございますが、それぞれの地域においてどういうことをしていくか、また国立病院が高度の専門的な技術を用いたところの医療供給をしていく、こういうことでございますから、そういったものを総合的に考えていかなければならないだろう、こう思っておるところでございます。
そうした意味で、医療というものはあくまで人間につながるものでありますから、地域計画というものを相当に考えていくことが必要であろう、地域計画の中で国公立の病院が果たす役割りというものを考えていくということが必要だという観点から、今回医療法の改正案を国会にもお願いをしておるところでございます。この中に地域医療計画というものを少しつくっていこう、こういうふうに考えているところであります。
それからもう一つは、非常に高い技術、昨今新聞等でも非常に喧伝されておりますけれども、新しい技術というようなものもございます。大学病院であるとか国立病院であるとか、そんなところでいろいろとやられているようなもの、新しい医療技術の開発というようなことにつきましても、こうした公的な医療機関でやっていくべきものではないだろうか、ざっとこういうふうに考えているところでございます。
#157
○新村委員 臨調の答申を見ますと、公的な医療機関については高度の医療供給をする、同時に公私の位置づけを明確にすべきだ、こう言っているわけですね。そして一方では、高度先駆的な医療や地域の医療計画における中核的施設としての機能を公立病院は明確にすると同時に、あわせてその整理合理化を行う、こういうことを言っておるわけです。そうしますと、公私の医療機関の役割りはそれぞれ違うと思うのです。この役割りの違いをどう位置づけるのかということが一つあるわけです。
それからもう一つは、この臨調答申によると、公的な医療機関については、充実はするけれども、一方整理合理化を行うということがあるのですが、そうしますと、公的な医療機関については、現状程度でも量的にはいい、質的な向上を図ると同時に、場合によってはさらに縮小をも考えるべきだ、こういうニュアンスがここに含まれていると思うのですけれども、それらの点はいかがですか。
#158
○大谷政府委員 わが国の医療の体制は、明治以来民間医療機関というものが歴史的に相当な機能を果たされてきたわけでございます。戦後、公立あるいは国立機関の整備が進んでまいりました。しかし、先ほど大臣が申されましたように、必ずしも全国で整合性を持ってそれが完全に配置されているというふうなわけにはなかなかまいっておらないわけでございます。しかも一方では医療需要が多様化してまいっておりますし、医学、医療というものが非常な進歩をいたしてきているわけでございます。したがいまして、先ほど大臣も申されましたように、私どもはそういうふうな趣旨で医療法改正案を国会に提出させていただいておりますし、臨調答申も受けまして、そういった点につきましてできる限り明らかにしていきたいというふうに考えているわけでございます。それからもう一つ、臨調答申で国立医療機関を縮小するようなニュアンスがあるのではないかというふうなお尋ねでございますが、臨調答申は必ずしもそれを縮小せよと言っているというふうには私どもはとっているわけでございませんで、国立医療機関の果たすべき役割りというものを明確にして、その線に沿って各医療機関というものを整備していくべきだというふうに御指摘になっているというふうに考えます。
したがいまして、厚生省といたしましては、現在政府の取りまとめを行っております行革大綱の中に、こういった臨調答申の趣旨を踏まえましてその点を明らかにしていきたいというふうに考えておりまして、決して縮小というふうには理解をいたしておらないのでございます。
#159
○新村委員 わが国の医療体制のいままでの歴史、現状を考えますと、私立の医療機関の役割りも決して少なくはないわけです。現に、日本の医療の六、七割は民間の医療機関によって担われていることは事実であります。ですから、その公私の医療機関の量的な問題だけではなくて、質的にどう公私の医療機関の役割りの位置づけをするかということが一つあるわけですけれども、この点は現在提案されております医療法の中にも若干は出ておりますけれども、これが必ずしも明確でないということと、もう一つは、臨調の答申にこういう表現があるのと、それからまた医療費を全体として抑えていかなければいけないという要請があるわけですね。こういう中でこの臨調答申がこれからどう解釈されそして運用されていくかということになりますと、いろいろ問題があると思うのです。
そこで、いま御答弁をいただきましたけれども、この表現の仕方によると、公的な医療機関についても量的にはもう現状程度でもいいんだ、場合によっては縮小という方向がどうも出ておると思うのです。それから、公私の医療機関についての位置づけを明確にするというのですけれども、厚生省はどういうふうに明確になさるかということですね。
#160
○大谷政府委員 先ほども申し上げましたように、現在の医学、医療というものは非常に複雑化しております。トータルで申しますならば、病院、病床というのは先進諸国に比べましても決して少な過ぎるということはない、むしろ多い目である。しかし、ある新しい進歩した医学、医療の対応すべき部分についてはおくれている部分もある。また、同じように進んでおりましても、地域によっては非常におくれている部分もありまして偏りがございます。そういった点で、私たちは、公私の医療機関というものについてこれを単に教条的に役割りを決めるのではなしに、歴史的な事情も踏まえまして、そして新しい医学、医療、あるいは医療需要の多様化に対しまして、公的機関あるいは国立機関というものがそれを相互補充する形で全体としてわが国の医療の需要に対応していこうというふうな考え方でございます。
では具体的にそれをどうするかということでございますが、厚生省といたしましては、ここ十年来、医療計画というものにつきまして、これは法律等ではございませんが、行政指導ということで、そういったものについてできるだけ合理的なシステム、配置というものを考えるということを指導してまいりましたが、今回そういうわけで、先ほど申し上げましたように医療法改正案を国会にお願いいたしておりますが、その法律の推移を見まして、私どもとしては適当な行政指導のガイドライン等につきまして、その問題について対処していこうというふうに考えているわけでございます。
#161
○新村委員 もう一つ、国公立の医療機関についての今後の整備の方針なり役割り、役割りはもうほぼわかりますけれども、今後、基本的にはどういう方針で運営されていかれるわけですか。#162
○大谷政府委員 何度も申し上げますが、私たちは、国、地方自治体などの公的病院、あるいは民間病院というものを教条的に役割りを決めるというのではなしに、歴史的あるいは地域の実態に即して国公立の役割りというものを明らかにしていきたいというふうに考えているわけであります。しかし、原則的に申しますならば、現在、医療の中で、医学、医療の進歩のスピードが非常に早い、あるいは非常に金がかかる、あるいはマンパワーを要する、たとえば救急でありますとかあるいは僻地医療でありますとか、あるいは卒後の医師、歯科医師の研修等を図る、あるいは研究の促進を図るというような部面につきましては、それぞれその規模に応じまして、国あるいは都道府県あるいは市町村が、その病院の経営の中でその特殊性というものを考えていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
#163
○新村委員 医療供給体制について、施設の面が一つあるわけですが、もう一つは、これは臨調答申の中にあるのですけれども、人の面の医療供給体制の問題があるわけですね。続いて臨調の答申は、「医療従事者について、将来の需給バランスを見通しつつ、適切な養成に努める。特に、医師については過剰を招かないよう合理的な医師養成計画を樹立する。」こう言っているわけですが、わが国の医療従事者、特に医師については、私立医大が急速にその数においても量においても充足されてきておりまして、現在ではすでに医師の数が人口十万人に対して百五十人を超えておる実態です。それで、近いうちに医師の過剰が起こるであろう、すでに地域においては過剰だと言われておりますけれども、この問題ですね。
これは施設の問題と同時に、人の供給体制、これの見通しをやはりつけておきませんと、医師が不足であるということは困るわけでありますけれども、同時に、医師が過剰である、医師が生活に困るというような状態がもしあらわれたとすると、これもまた一つの問題なわけですから、そういう点についてどういうふうに見通しを持っておられますか。
#164
○林国務大臣 医師の過剰という問題でございますが、昭和六十年までに人口十万人対百五十人を確保したいということでいままでやってきたところでありますが、本年中にはこの目標が達成されることは確実になってきているという状況にございます。しかし、全体としての医者の数が達成されたからといって、それでは全部満足しているか、過剰ぎみになるか、こういうことになると、そうではないのでありまして、地域的にも、また医療の領域別にも、不足を訴える部分が相当あるということもまた事実でございます。特に、これから人口の高齢化が進んでくるということになるし、医療技術の発達によりまして新しい領域の医師というものも必要になってくるというようなこともございますので、恐らく、先ほど申しました目標値を超えるぐらいの医者は必要ではないだろうかなということを考えておるところでございます。〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕
しかし、現在の養成力と申しますか、医科大学の卒業生、それから医者として毎年大体七千五百人くらい医師の試験を合格してこられる方があるわけですから、そうしますと、二〇〇〇年には二百人を超えるというような一応の計算ができるわけでございます。そうしたことを考えますと、ちょっとやはり多いのではないかなあという感じも持っておるところです。そうした将来を見越した対策を少しこれから考えていかなければならないなあ、こういうのが私たちがいま考えているところでございまして、医師数をどうするか。それでは一体どういう形で対応策をとっていくかというのがこれからの話だろうと思うのです。そういった点につきましてこれから検討していきたいというのが私たちの考えでございます。
実は、昨今私はアメリカに行きまして、アメリカの医師会に、アメリカでも医師が過剰だという話があるけれどもどうだ、こういうふうな話をしてみたのですよ。ちなみに、アメリカでは医師の数が人口十万人に対しまして百八十六人となっている。日本の数字よりは多いわけです。しかし、アメリカというのはきわめてドライというか、はっきり割り切っちゃって、いや、医療の需要と供給によって決まるのだから過剰などという概念はない、必要があるならば医者はふえるだろうし、必要がなければ少なくなる、それは当然の医療の需要と供給との関係であるからというような話でございます。これもアメリカ人らしい考え方だろうと思いますが、その考え方をすぐに日本に適用できるかと言えば、私はそうでもない。日本は日本の国らしく少しいろいろなことを考えていかなければならない、こう思っております。
#165
○新村委員 アメリカのお話をなさいましたけれども、日本とアメリカでは医療体制も違うし、日本の場合には医療というものが一つの政策の中に組み込まれておるわけですから、医師の数等についても政策的な配慮を十分していかなければいけないと思うのですね。いま二〇〇〇年になれば二百人を超えるとおっしゃいましたけれども、これはもっと早く二百人に達するだろう。そうなりますと、明らかにこれは過剰という事態になるわけなんですが、そういうことが着々と一方では進行しておるわけですね。
同時に、もう一つ問題なのは、戦後に公私立医大が、乱造と言うと失礼ですけれども、特に私立の場合には乱造と言ってもいいほど急速にたくさんの医大ができたわけです。そして国家試験を受けて医者になるわけですが、国家試験の合格率が逐年低下していますね。最近は非常な合格率の低下でありまして、いわゆる国家試験浪人なるものが多数出ておるわけです。
五十七年度の不合格者は何人ぐらいおりますか。それから、いままで国家試験に合格できないいわゆる国家試験浪人は、累計でいまどのくらいいるのですか。
#166
○大谷政府委員 従来九〇%台の合格率で推移していたわけでございますけれども、昭和五十年ごろから八〇%台、あるいは最近では七〇%台というふうになっておりまして、昭和五十七年春の国家試験では七一・四%と最低の合格率になったわけでございます。#167
○新村委員 浪人の総数はどのくらいおりますか。#168
○大谷政府委員 五十七年巻の国家試験では、受験者数が八千四百七十八名、合格者数が六千五十五人、合格率が七一・四%、こういうふうになっているわけでございます。#169
○新村委員 国家試験浪人はいま総数どのくらいおりますか。#170
○大谷政府委員 受験者総数は八千四百七十八名でございます。#171
○新村委員 それで、いわゆる国家試験浪人ですね。#172
○大谷政府委員 国家試験浪人の数につきましては、私ども正確には把握いたしておらぬのでございますが、三千人から四千人くらいではないかというふうに言われているわけでございます。#173
○新村委員 これはもっと多いと、六千ないし七千ぐらいいるだろうと言われていますね。こういう事態は決して好ましいものではないわけです。六年間勉強して、しかも目的を達することができないということになりますと、これは教育におけるある意味での浪費、それから人材の点からしても、そういう人が中途半端でいるということは、社会的にいって人材の有効な活用ではないと思いますが、そういう点について厚生省はどうお考えですか。これは文部省とも関係があるのですけれども、医者はもうかる、医者の希望者がたくさんいる、医科大学をつくれば引き合う、こういうことで医大がたくさん計画をされ、それからまた、一方では医者を充足する必要があるんだということで、国の方でも将来の計画なしに、野放図にとは言いませんけれども、どんどん許可をしてしまった、こういうところにこういう問題が起こる原因があると思うのです。
それと同時に、これは一般の常識になっておりますけれども、私立大学においては、多額の寄附金を取って、裏口入学と言うと語弊があるのでしょうけれども、そういう入学がかなりあるということで、学生の質の低下もそういうところから来るのではないか、そういうことで国家試験浪人が多数そこに滞留しているという事態が起こると言われていますが、こういう事態に対する厚生省のお考えなり、これからどうするという何かのお考えはございますか。
#174
○大谷政府委員 医師国家試験につきましては、医師として基本的に具有すべき知識というものを試す、こういうふうなことで、私どもとしては受験者の数のいかんにかかわらず、一定の医師としてのルールを守るということでやっております。これと医科大学との間の乖離と申しましょうか、国試浪人というものが多数出ているということについてどうかというお尋ねでございますが、私どもとしては、国家試験につきましてはその基準をやはり厳正に守っていくということでございます。
しかし一方、ここ十数年来、医師不足ということが非常に叫ばれまして、医学部定員というものの増加が図られてきたわけでございますが、先ほども大臣から御答弁申し上げましたように、最近の情勢では、急速にその効果があらわれまして、非常に医学部卒業生が増加するようになった。この問題につきましては、私どももいろいろな統計から非常に重大な問題であると受けとめておりまして、文部省との間で、将来の推計医療需要というふうなものを考えながら、現在、慎重に協議をいたしているところでございまして、こういった問題につきましては、できるだけ早急な結論を得て対処をいたしたいというふうに考えているわけでございます。
#175
○新村委員 対処されるのでしょうけれども、臨調答申においても、医師の過剰についてはそういう事態を招かないように合理的な医師養成計画を樹立しなさいという答申ですね。臨調の言うことがすべて正しいということではありませんけれども、こういう指摘を受けるという事態が確かにあるわけです。これに対して、検討するというだけではなくて、現在どういうお考えを持っているか、現状認識はどうかということをもう一回伺いたい。#176
○大谷政府委員 先ほど大臣も申されましたように、適正な医師数というものにつきましては、これは相当いろいろな要素を考えなければいけないわけでございます。たとえば、地域別に見ましても、沖縄でありますとか、北海道の僻地等ではいまだに相当な医師不足の問題がある。また、休日、夜間、救急等の問題につきましても決して十分ではないというふうな状況もございます。また、診療科別に見ますと、ある科目につきましては相当不足しているというふうなこともございます。これを政策上の見地から運営して、それでうまくいくかどうかという問題について、私どもとしてはいろいろ努力をいたしているわけでございますが、そのトータルにおいてそれでは一体どういうふうになるか、こういうふうな問題でございます。
私どもとしては、現在、現状におきましてはまだまだ不足しておる部分もあるという事実をにらみながら、しかし二十一世紀にはトータルとして相当な数になるというふうな点も勘案いたしまして、先ほどから申し上げておりますように、文部省との間でこの問題にどのように対処していくか、いろいろ研究、調整をいたしているところでございます。
#177
○新村委員 文部省はこの問題についてどういうお考えですか。#178
○前畑説明員 お答えいたします。先ほど来、厚生大臣あるいは医務局長の方から御答弁があっておるとおりでございまして、私どもの方でも、従来、医師の不足あるいは無医大県における医療格差の是正といったような観点から、医学部の増設あるいは入学定員の増加というものを図ってまいった結果、先ほど来御議論があってございますように、昭和七十五年、西暦二〇〇〇年には人口十万対二百という医師の数が見込まれておるという状況にある。そして、その数字につきましてはいろいろな方面から問題が提起されておるということは十分承知をいたしておるわけであります。
ただいま医務局長の方から御答弁がございましたように、臨調の御指摘もあり、政府としてどのように対処すべきか、厚生省とも十分協議をしながら、二十一世紀における医師の養成につきまして遺漏なきを期するよう検討を進めておるところでございます。
#179
○新村委員 そうしますと、その基本方針については、厚生省だけではなくて文部省とも御相談なさるのでしょうけれども、これはいつごろ、どういう形で具体的な政策が示されるわけですか。#180
○林国務大臣 いま私の方の事務当局と文部省の当局の方から御説明したと思いますが、いま事務当局でどういうふうな形でやっていくかということを鋭意検討しておるところでございまして、できるだけ早く結論を得まして方針を出したい、こう思っておるところであります。先生の御地元の千葉県なんかでも、実は千葉県はわりと医師の数が少ないようなところになっておるのです。常識的にはそうでないのですが、恐らく、人口が非常にふえてきておる、ふえてきておるところで医者の数が少ない。医者の数が同じでも、人口がばあっとふえてきますと、人口十万当たりの医師の数というのは少なくなるという数字も出てくるわけです。先ほど話がありましたが、沖縄などというのは少ないからその辺をどうするかとか、いろいろ地域的な問題も私は正直申しましてあるだろうと思います。そういったようなことも含めながら、これから医師をどうして養成していくかということを考えていかなければならないと思います。
ただ、医科大学でやったから皆医師国家試験に合格させるというようなことになりますと、これまたおかしな話になりますから、医師の国家試験は国家試験でぴしっとやっていかなければならない。そして、いわゆる医者の卵というものをどういうふうな形で養成していくかというのはいま一生懸命詰めているところだ、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
#181
○新村委員 医者の数がふえても地域的には不足なところがある、確かにおっしゃるとおりだと思いますけれども、現在のような医療行政でいきますと、これは十万人対二百人、二百五十人になってもなかなか解消しないと思いますよ。これは別途な政策が必要なわけですから、そうではなくて、それは別途の政策は十分検討するにしても、医師の総数についてもやはり政策的な一つの目標がなければいかぬということですから、その点ひとつ御検討いただきたいわけです。それからもう一つ、さっき出ましたけれども、医師税制の問題です。
この点について伺いますが、医師に対するいわゆる優遇税制だということで国民から大きな非難を浴びてきたわけです。これに対して、政府もそれに対する措置をおとりになったことは事実でありまして、現在の医師優遇税制というのは、優遇というほどのものでは――若干の優遇、きわめて総収入の少ない階層に対して優遇があるということですね。しかし、優遇が残っていることは事実です。
一方、医師もやはり一つの経営ですから、経理を無視しては維持ができないわけです。ところが、医師の経営については税法上あるいは経営の形態上、一般の企業とは全く別途に扱われておるわけですね。法人化についてもきわめてむずかしい条件がありまして、簡単にはできない、こういうことが一方にあるわけです。医師はほかの業務と違って営利を目的としてはいかぬという一つの大原則が、前提的な要請でしょうけれども、あるということもあってそうなっているんだと思いますけれども、一方では優遇税制をしながら、一方では厳しい経営上の枠をはめておる、制限をしておるということなんです。
現在の時代からするともうそういう段階ではないのじゃないかということで、優遇税制については現在でも国民の非難の的になっているわけですから、これは当然廃止をしなければいけないでしょうが、同時に、一方においては、この経営の形態は、倫理的な医業に対する価値判断はあるでしょうけれども、医業といえども経営ですから、他の経営と同じように扱うべきではないかという議論がありまして、厚生省さんもその考え方に基づいていらっしゃるということを聞いておりますけれども、そこらはどうですか。
#182
○林国務大臣 いわゆる医師優遇税制ということで、昭和二十八年でしたか、二八プロというのができて、昭和五十四年になりましてこれを現在の五段階制というところに変えてきたわけでございます。実は私も、五段階制に変えるときに自民党の中の党の税制調査会の幹事をやっておりまして、いろいろと議論をしたわけでございますが、やはり二八プロ一律でやるというのは非常に問題があるということで、そこの改正をしたわけでございます。これは医療の実態にできるだけ合わせる、近づけるというような形でやっていこうというステップだった、こう思うわけでございます。これをどうするかというのは、本来的には税制の話だろうと思いますが、やはり医療を経営しているところの医者につきましてどうするかというのは、厚生省としても当然関心がなければならない問題だろうと思うわけでございます。
そこで、いま先生御指摘のように、医療の一人法人というような話が出てきておるわけでございます。御承知のとおり、現行医療法では、医者が三人いなければ、こういうふうな話になっておる。しかし、それは昭和二十五、六年にできた話でありまして、どうもその当時の事情はよくはわからないのですが、昭和二十五、六年というとまだ日本が戦後の時代、いまから復興していくというときに、急速に医療体制も整備をしていくことが必要であるし、金も持ち寄ってやった方がというようなことで恐らくいまの法人体制というものができているのだろうと思います。
しかし、時代が昭和二十五、六年からもう三十年もたちまして、相当変化してまいりましたし、国民皆保険というような体制でもありますから、そうした中で医療の経営というものを考えるときに、健康保険制度というか保険診療というようなことを考えていくならば、その経理はやはり明らかにしておかなければならない。経理はやはりガラス張りにしておかなければならないということになれば、当然、いわゆる個人の家計の方と医療経営によるところの経費の問題というのは分けて考えるという考え方が正しいのではないかと私は思います。そうしますと、医療に対するところの経営というものを法人というふうな形で考えまして、そこで経理をしていく。それから、家計は家計の方で別にいたします。個人の資産所有その他の問題は別にする。こういうことでやっていくというのも一つの方法ではないか、こう私は思うのでございまして、私もこの問題については、事務当局にやはりそういった方向で検討してみたらどうだということで検討を命じておるところでございます。
そのときに、医療法人というものの持つ性格というものがやはりあるだろうと思います。医は仁術なり、こう申しますから、いわゆる一般の商売をやるところとはやはり違った性格があるんだろう。そこをどういうふうな形で法人の中に盛り込んでいくべきか。また、一つの経営でありますから、経営的な合理性、採算性というようなものについてどういうふうに考えていくかという問題もあるだろうと思いますが、そういったことを中心にして現在検討させているところであります。
#183
○新村委員 言うまでもなく、医療は一つの経営です。そして二八%というあの発想も、当時の状況からすればやむを得なかったと思いますけれども、あれは医者の経営を全くどんぶり勘定にして、二八%でまけてやるからやれということで来たわけですね。しかし、そういう説明のできない――これはちょっと説明ができないのです。そのために国民の間から、不当だ、不公平税制の最たるものだということで強い非難を受けたわけですけれども、こういう非難、国民の間に少なくとも不公平という印象を与えるような制度があってはいけないわけですから、この際やはり経理は合理的に処理をするということにしていった方がいいんじゃないかと思います。いま医者に対する信用は地に落ちていますからね。医者に対する信用が地に落ちたということは、これは決していいことじゃないですから、患者にとっても非常に不幸ですから、医者の信用を回復する。医道の振興といいますか、医の倫理を確立するという面からいっても、そういう面からやるものはきちんとやってやって、そして一方、要求するものは要求するということの方がいいのではないかと思いますので、これは医療法改正の中に当然入ると思っていたのですけれども、なぜ入らなかったのですか、そこらの事情は何かあったのですか。
#184
○林国務大臣 二八プロの問題は、先生御指摘のような当時の情勢で、まあやろう、こういうことだったと思います。私の記憶では、あの特別措置の中に入っていますのも、当分の間この制度を適用する、こういうことになったんですね、二十八年か何かに。確かに条文の中に「当分の間」と書いてあるのです。「当分の間」と書いてあるのは、恐らく余り長い期間でなくて、どこかで本則を見つける、こういうことだったんですけれども、それが二十八年から五十四年まで二十六年間も続いてきたということだろうと思うのです。したがって、五十四年に五段階制になりましたし、これからどういうふうな形での医療法人の体制をつくっていくか。先ほど先生も御指摘になっているし、私もその点は全く同感なんですが、やはり医療経営というものを近代化、合理化してやっていくということは非常に必要なことだと思いますので、鋭意詰めたところでございますが、今回の医療法の改正にはまだまだその詰まりができていないという状況でございまして、いま一生懸命やっているということでございます。
#185
○新村委員 大臣、現在の制度は適当でないとおっしゃっているわけですよね。そうでしょう。どんぶり勘定みたいなもので二八%。段階にしましたけれども、この段階だって全然根拠のないものですからね。あれは適当に段階をつけたんでしょうから。だからそういう状態はよろしくないと大臣もいまおっしゃっているわけですね。そうでしょう。だからできるだけ早くこれは合理的にしていただく。それから医者に対する信用が失墜しているわけですけれども、これについてもこういった面から医道の確立を図っていただきたいということをお願いしたいと思います。
#186
○林国務大臣 先生もよくおわかりなんでしょうけれども、二八プロのときには、とにかくその当時の状況では大体そのぐらいだろうということで検討したのでやったのだろうと私は思います。〔近藤(元)委員長代理退席、東家委員長代理着席〕
状況としては、とても法外な話をやったわけではないと思うのです。五十四年に改正しましたときも、五段階をつけたのは、税制上の体系として、五段階をつけたならばその当時の段階としては税法上のある程度の合理性があってやったのだ、こう思うのです。
しかし、事態は経済の実態とか社会の実態というものがだんだん動いてきているわけですから、それに合うようなことを考えていかなければならないのだろう、私はこう思います。そういった意味で、その当時やったことがおかしかったというようなことは私は思っていないわけです。ただ、経済の実態が動いてきておりますからそれに合わせていろいろなことを考えていかなければならない。
そういたしますと、いまの段階で考えるのは、先生も御指摘のようにいわゆる一人法人にして、それぞれの医師の経営の実態が明らかになるような制度を考えていくべきではないか、こういう御指摘でございますから、私もそれは素直にそういうふうなことをやはり考えていくべきだろうと思っておりますし、いま事務当局にそれをやれということを言っておるところでございます。
#187
○新村委員 ぜひその方向で御努力を願いたいわけです。それから、優生保護法の問題、さっきちょっと出ましたけれども、これについてはいま論議の的になっているのは経済条項を外せということだと思いますね。それで厚生省でも御検討をなさっておるようですけれども、これは確かに経済条項の問題がありますが、経済条項云々という問題が出てくる前に、というよりはむしろこの優生保護法のすべての前に問題があるのですよ。この問題はやはりたてまえだけでは解決しない問題ですよ。これは恐らくたてまえと本音のかなり違う問題の一つだと思います。要するに、言ってしまえばこの問題の解決は、望まない妊娠をどう減らすか、なくするかということだと思うのです。やはりそこから出発しないとこの問題はたてまえと本音が離れたままの議論になってしまう。立法してみたって守られない、経済条項を外してみたって余り現状と変わらない、こういうことになると思う。
そこで、望まない妊娠をどう数を減らすか、なくするか。なくなればいいのですけれども、なかなかなくならないでしょうが、少なくともそれをできるだけ減らすということ、これが必要だと思うし、そこから出発しなければいけないと思うのですけれども、その点は大臣の認識はいかがですか。
#188
○林国務大臣 優生保護法の問題は、御指摘のようにあの条文一条を改正しろという御意見もどこかにはありますが、私は初めからそんなことは考えてない。これは基本問題であるし、先生のお話のようにたてまえと本音との違いだという御意見もあります。私は、人間がいかにして生まれてくるか、その生まれてくることに対してどういった尊厳的な価値を認めていくか、人間というものはどんなものであるかというようなことをやはり考えていかなければならないし、先生御指摘のように、望まない妊娠をどうして抑えていくかというのは、この優生保護法をどうだという問題を離れて、基本的な問題だろうと私は思うのです。そこをどう考えていくかということが、これからお互い考えていかなければならない話だろうと思います。
対策といたしましては、母子保健の見地から家族計画に関する知識の普及とか施策の充実を図ることが必要だろうと私は思いますが、同時にやはり、学校教育で性に対する知識とか、単に科学的な知識だけでなくて、性というものを人間としてどう考えていくか、これを教えていかないといかぬのだろう、こう思います。そういったようなものまで入っていって議論をしていかなければならないし、一部の宗教家が言われているような形だけのものではないし、宗教のたてまえといたしましてもいろいろな考え方があると私は思います。そういったものを深く考えながらやっていかなければならない問題だろうと思って検討しているところでありますが、本人が望まない妊娠を抑えていくための施策というものは、それはそれなりに十分やっていくことが必要だろう、こういうふうに思っておるところでございます。
#189
○新村委員 このように医学が進歩して、一たび生命が生まれ出ますと、そのうちの大多数の生命は七十年、八十年という長命を保つことができる時代になってきたわけです。皆は、農家なんかでは十人ぐらい子供ができても二人か三人しか育たない、自然淘汰というかどうかわかりませんけれども、そういう状態だったのです。ですから現状では、少なくともこれからは人間はどこの国でも家族計画ということが当然そこに導入されてくるし、産む、産まないの自由もこれは認めなければ、トータルトしてもつかないわけですよ。仮に日本で自然に任せておけ、産まない自由は認めないということになった場合には、数十年たてば日本列島は満員になっちゃいますからね。そういったこともあるし、やはり経済的な問題だけではなくて、これは宗教問題であるし、倫理的な問題ではあるけれども、基本的な問題として産む、産まないの自由は認めざるを得ないのじゃないか。そういう点からすると、受胎調節ですか避妊、これは当然、倫理的な理論的な裏づけがどうなるかということとは別にして、現実問題としてやはり認めざるを得ないということだと思うのです。これは大臣もそうお考えだと思いますけれども、いまおっしゃったように、それにはやはり性教育、性というのは日本では長い間タブーになっていましたけれども、タブーでは済まないと思います。そういう点で、これは文部省のお考えをお聞きしたいと思いますけれども、性教育についてどうするのか。それからまた、産まない自由もこれは認めざるを得ない。そうすれば避妊ということについてこれから基本的にどう対処していくかという問題があります。
そこで、まず先に、性教育について、これはいままでタブー視していたわけですけれども、タブー視すべき段階じゃないと思いますので、これはタブーじゃなくて神聖な問題として取り上げていくべきだと思います。まず文部省のお考えを伺いたいと思います。
#190
○遠山説明員 学校におきます性に関する指導についてのお尋ねでございますけれども、学校におきましては、人間尊重の精神に基づきまして、児童生徒の発達段階に応じて、学習指導要領に基づきましてその指導が行われているところでございます。性に関する指導には二つの重点があるわけでございますが、一つは、性に関する科学的な知識を与えるということでございますし、同時にもう一つは、児童生徒が健全な異性観を待って、これに基づいた望ましい行動がとれるようにするということが重点になっているわけでございます。このような考え方に基づきまして、地域や学校の実態に応じて、保健体育、道徳、特別活動などの授業を中心にいたしまして、学校の教育活動全体を通じてこれを指導しているところでございます。
また、このようなことの実現のために、文部省主催の教員研修会におきましてもこの指導の問題を取り上げておりますし、また、生徒指導資料などをつくりまして参考に供しているわけでございますが、地域の実態に応ずるというようなことで、各地の都道府県教育委員会などにおきましても、性教育の手引きの作成でありますとか研修会の開催などを通じて指導の徹底を図っているところでございます。
今後、文部省といたしましても、いま御指摘のような重要性にかんがみまして、生命尊重の教育とか性に関する指導について、より充実したいというふうに考えているわけでございます。
#191
○新村委員 時間がありませんので、あとの質問については簡単にお願いしたいと思います。いまの問題と関連しますけれども、避妊ということは、これは新しい考え方に基づいて認められるべきだと思うのです。それで、いま世界先進国どこでも認めております経口避妊薬、ピル、これが日本ではなぜまだ解禁されないのか、この理由をひとつ。
#192
○持永政府委員 先生お尋ねのピルにつきましては、いわゆる避妊効果を目的とした効能というのは、日本ではまだ御指摘のとおり認めておりません。ピルにつきましては、実は長期にわたって妊娠可能年齢の御婦人方が連用するということが考えられるわけでございまして、そういった場合に、私どもの方に副作用の報告がいろいろ出されております。具体的には、血栓性静脈炎でございますとか肝機能障害、そういったものの副作用があるということの報告が出されております。日本の場合、薬に対する安全性についての国民の関心も非常に高いところでございますので、現在の段階でまだピルは認められておりません。ただ、最近、こういった安全性の面につきまして非常に配慮いたしました新しいピルも出回っているというふうに聞いておりますけれども、こういったものについては、十分外国の状況なりあるいは副作用の状況、そういったものについて調査をしてまいりたいと考えております。
#193
○新村委員 それからもう一つ、これは大臣にお伺いしたいのですけれども、老人保健法の実施によりまして、老人はもう長期の入院は認めない、それから特に歯科等については入れ歯も入れなくてもよろしい、こういうことになっておるわけですね。そこで、こういう状態、特に長期の入院はできないわけですから、それに代替する政策として特養を十分にふやすとか、こういう対策が必要ではないかと思いますけれども、その考え方があるかどうか。
それから、特に歯科の場合、これは大臣御承知のように、今度は老人の入れ歯なんか入れる場合に非常にむずかしくなるわけですね。ほとんどお金持ちでなければ歯が入らない、こういうことになったわけですけれども、これに対するお考えはどうですか。
#194
○林国務大臣 老人保健法の施行によりまして病院から老人が追い出される、こういうふうなお話がときどきあるわけでございますが、本来老人保健法でやりましたのは、老人の方々が地域や家庭で療養できるようにすることが大切である、これが基本的な考え方であって、本当に必要な老人の方々の入院治療というものを制限したり、むやみに退院を強制したりするようなことはしていないわけでございます。特に、今度特別許可というか、老人病院というような形で、一般の病院の基準とは違った、どちらかというと低い基準で老人の方々を専門に診るところの病院制度をつくっていこう、そこにつきましては特別の診療報酬体系をつくっていこう、こういうことにしたわけでございまして、むしろ御指摘のような追い出しではなくて、老人の看護につきましては特別によくやっていこう、こういうふうに私たちは措置をしておるところでございます。
〔東家委員長代理退席、中村(弘)委員長代理着席〕
ただ、医療機関が、自分の採算の都合から老人は出ろなどというようなことをしたり、あるいは老人が入ってくるのに対して入院を拒んだりするようなことがありましたならば、これは老人保健法の趣旨にも反することであるし、人の生命を預かるところの医師の態度としてもきわめて遺憾な行為というふうに考えますので、そういったことがないように十分に指導はしてまいりたいと考えております。
それから、歯科医療の話でございますが、やはりこれも老人につきましては、先生御指摘のように有床義歯、入れ歯でございますが、そのような取り扱いにつきましては特別の配慮をしておるところでございまして、老人診療報酬が設定されたことによって老人が歯科医療から締め出されるということは考えていない。むしろ老人につきましては老人の特性に合ったような診療報酬体系を考えたというふうにわれわれは思っているところでございます。
〔中村(弘)委員長代理退席、委員長着席〕
#195
○新村委員 まだ問題はたくさんあるのですけれども、別の機会にしまして、終わります。ありがとうございました。#196
○古屋委員長 春田重昭君。#197
○春田委員 最初に、薬価問題についてお尋ねしていきたいと思います。薬価基準制度の見直しについて報道がなされているわけでございます。その内容を見ますと、第一点は、「現在、保険が適用されているビタミン剤や総合感冒剤、漢方薬などを薬価基準から削除する」、第二点としては、「同一規格、同一成分でありながら、価格差を設けている現行の銘柄別収載を是正する」、こういう方針が厚生省で検討されているということでございますけれども、この新聞報道につきましての厚生省の御見解、また御真意を伺いたいと思います。
#198
○吉村政府委員 厚生省におきまして、医療費の適正化問題に対処するために国民医療費適正化総合対策推進本部というものを設置いたしまして、医療の需給両面にわたりまして幅広い検討を現在行っているところでございます。その中の検討の項目といたしましては、私どもとしては、医療保険による給付の中身についても、従来からこういう改善をしてはどうかとか、あるいはこういうところは不合理だというような指摘をされておるような事項につきましても、網羅的に検討を事務レベルでやっておるわけであります。いま先生がおっしゃいましたビタミンの問題あるいは漢方薬の問題等もその中の検討項目で、検討はしておることは事実でございます。
それから、薬価基準の収載方式につきましても、現在銘柄別の収載方式をとっておりますが、それだけでいいのかどうか、統一限定方式というようなものも別途考えてみる必要があるのではないか、こういう御意見ももちろんございますので、それも含めて検討している最中でございます。
#199
○春田委員 第一点のビタミン剤、総合感冒剤、湿布薬、これらはすでに諸外国では一般薬局で販売されていると伺っているわけでございます。局長の御答弁では検討しているということでございますが、これは将来何らかの手直しがあるものと、そう期待していいのですか。#200
○吉村政府委員 まだ結論を得ておりませんので明確にどうするという方針を述べることはできませんが、今後の医療費の動向いかんによってはいろいろな方策を考えていかなければならない事態に立ち至るのではないか、こういうような予感はしております。#201
○春田委員 さらに、第二点の現行の銘柄別収載の是正についてでございますけれども、私もかねてから主張しているとおり、同一規格、同一成分であるものは先発品、後発品ということで価格差を設けてはならない。先発品につきましては保証期間が六年間あるわけでありまして、六年間過ぎれば同一価格にすべきである、こう主張しているわけでございますけれども、先発品の保証期間六年が過ぎれば同一価格にすべきであるという私の主張について、厚生省はどうお考えになっておりますか。#202
○吉村政府委員 先生の、ある一定の時間を経た後において統一限定の方式に切りかえてはどうかという御指摘あるいは御意見でございますが、一つの御意見だと私どもは考えております。#203
○春田委員 ところで、薬価がことしも一月一日より四・九%引き下げられたわけでございます。この目的は、国民医療費の中に占める薬剤費が諸外国に比べて異常に高いということ、また薬づけ医療という批判に対し薬剤費を減少させるための措置であろうと思っておるわけでございます。そこでお伺いしますけれども、一昨年、五十六年六月一日に薬価を一八・六%引き下げたわけでございますが、厚生省の意図する薬剤費の引き下げの効果は十分あったと考えられるのか、また、そうした数字的な実態は出ているのかどうか、お答えいただきたいと思います。
#204
○吉村政府委員 五十六年六月に薬価ベースにいたしまして一八・六%の引き下げをいたしたわけでありますが、その結果、総診療報酬のうちに薬剤費の占めるウエートというものがどれくらい減ったかというのは、まだその後の調査をしておりません。しかしながら、私どもがある一定の前提を置きまして推計をした結果によりますと、改正前は三八・七%ぐらいが薬剤費の占める比率であったわけでありますが、それが四%前後は下がって三四%前後になっておるのではないか、こういうように推計をしております。
#205
○春田委員 局長の答弁では、推計であるけれども下がったと思う、こういうことでございます。さらに確かな数字が出た段階で私はこの問題については質問していきたいと思いますけれども、国立の大学病院ではこうした薬価引き下げの効果が全く見られず、かえって薬剤の購入費が増加しているという現象も出ております。また、一般医療機関等でも薬価差益の少ないCランクの薬は敬遠されて、差益の多いAランクが使われている、こういうような実態もあるわけです。こうしたことがあれば厚生省の当初目的でございます薬剤費の減少というのは余り期待ができないわけで、中小企業等のいわゆるCランクの薬の製造メーカーの倒産が出てくるわけでありまして、国民にとってはプラスにならない。大手製薬メーカーがプラスになって、中小零細企業のメーカーが不利という現象になってくるわけでございまして、先ほどから私は現行の銘柄別収載というものは非常に問題点があろう、こう言っているわけでございますが、先ほどの局長の御答弁でも検討に値する問題であるということでございます。五十三年度に統一限定方式から銘柄別収載方式に変わったわけでございますけれども、いずれにしても問題点があるわけでございまして、こうした点も是正すべきである、私はこう主張しておきます。さらに、銘柄別収載方式と統一限定列記方式があるわけでございますけれども、ある大学の教授でございますが、いろいろ欠点があるので両方のいい面をとって混合方式で考えたらどうかという提言もあるわけでございますけれども、厚生省としてはどう考えておりますか。
#206
○吉村政府委員 銘柄別かあるいは統一限定方式かということにつきましては、私どももいろいろとあらゆる角度から検討をしております。そして、銘柄別にもやはり問題点が出てきた、先生いま御指摘のようないろいろな問題点が出てまいっております。しかし、それでは全面的に過去の銃一限定方式にもう一遍房るかといいますと、やはり統一限定方式には統一限定方式の問題があるということで、両方の長所を生かし、両方の短所を削るような何かうまい工夫ができるかどうかということでいまいろいろ検討をしておるところでございます。#207
○春田委員 いずれにいたしましても、アメリカはMAC制度、また西ドイツは公的な病院等は安い薬剤を使うという制度があるわけでございまして、こうした諸外国の例を十分参考にしながら、要するに国民医療費の中で薬剤費が三十数%ということは諸外国に比べて異常である、そういう批判があるわけでございまして、そうした薬剤費の減少を一層進めるためにもひとつ鋭意検討をしていただきたい、こう思っているわけでございます。次に、公正取引委員会がお見えになっておりますのでお伺いしますけれども、五十六年十一月の日本製薬協の栃木やみカルテル事件の立入検査の結果がその後まだ発表されておりませんけれども、どういう段階になっているのですか。
#208
○樋口説明員 お答えいたします。先生御指摘のとおり、いろいろの医薬品につきまして、昭和五十六年十一月十日と十一日の二日間にわたりまして、価格維持または再販売価格維持の疑いで栃木県を中心に立入検査を行いました。
収集いたしました証拠を検討いたしましたところ、これが全国的な規模で行われている疑いが濃くなりましたので、同年の十二月十五日に全国的規模で立入検査を行いました。またさらに、昨年の八月以降、メーカー八十社、卸売業者百二十社、病院約千三百に対しましてアンケート調査を実施したわけでございます。現在、関孫人からの事情聴取も終わりまして、問題点の検討を行っている段階でございます。
着手以来一年半を経過いたしておりますので、早急に結論を出したいというふうに考えているところでございます。
#209
○春田委員 当時の報道では、厚生省の経済課の幹部が薬価基準引き下げに関連してこうしたやみカルテルの問題を誘引したのではないかと報道されておりましたけれども、そうしたことが調査の段階で出たのかどうか、お答えになれればお答えいただきたいと思うのです。#210
○樋口説明員 厚生省の行政指導がどうであったかというようなことでございますが、これは事件の内容にかかわることでございますので、法律の規定でお答えできませんので、御容赦いただきたいと思います。〔委員長退席、中村(弘)委員長代理着席〕
#211
○春田委員 それでは厚生省の名誉のためにも、経済課の御意見をお伺いしたいと思うのです。#212
○持永政府委員 先生御指摘の内容は、恐らく日本製薬協におきます当時の薬務局の経済課長の発言だと思いますが、経済課長といたしましては、あくまで流通過程あるいは医薬品の取引につきまして、公正な競争に基づく適正な価格の販売というのを指導しているつもりでございます。私どもの方の行政指導も、常にそういう立場になって指導しております。そういう範囲内で行われたものというふうに私どもは理解をいたしております。#213
○春田委員 この点につきましては、わが党の議員からもことしの二月の予算委員会で質問されているわけでございます。立入検査されてからもう一年半たっているわけでございまして、それだけ規模の大きいものであろうと察します。しかし、通常の公取の検査結果の発表に比べて相当期間が長いわけでございまして、ちょっと期間が長過ぎるように思われてならないわけでございます。薬の問題というのはとかく政治的に決着しかねない問題があるだけに、早期に公平な結論といいますか結果を国民に発表していただきたい、私はこの点を要望して、この質問は終わりたいと思います。公取の方、結構でございますから……。
続きまして、医療監査体制についてお伺いしたいと思いますが、保険医療機関などに対する厚生省の審査、監査体制について概略説明をしていただきたいと思います。
#214
○吉村政府委員 まず、診療報酬の請求が各保険医療機関から都道府県の支払基金または国保団体連合会に提出されまして、支払基金または国保団体連合会においてその審査をする、こういうことになっております。それから指導、監査の体制でございますが、指導、監査の権限は厚生大臣と都道府県知事にあるわけでありますが、本省に医療指導監査官、それから都道府県に指導医療官、医療事務指導官というものを置きまして保険医療機関に対する指導、監査を実施する、こういう体制になっております。
#215
○春田委員 保険医療機関の審査、監査体制でございますけれども、社会保険の支払基金、国民健康保険の団体連合会の審査機関とは別に、いま局長から御説明がありました医療監査制度がございますけれども、この監査の目的はいかなるものなのか、簡単で結構でございますから、御説明いただきたいと思います。#216
○吉村政府委員 監査の目的は、大きく分けまして二つございます。診療報酬の請求につきまして不正があるかどうか、こういうことを監査するのが一つでございます。それからもう一つは、保険医が行った診療内容が保険医療として適正であるかどうか、主としてその診療の中身が不当であるかどうか、こういう二つの点を主なる監査の対象目的といたしまして実施をしておるわけでございます。#217
○春田委員 この監査に従事する担当官といいますか技官といいますか、現在、定員に対して現員は何名いるのか、御説明いただきたいと思います。#218
○吉村政府委員 現在、指導医療官の定員は百七名でございまして、現員は七十八名、欠員が二十九名ということになっております。#219
○春田委員 定員に対して現員が少ないわけです。特に、資料をいただいた中では、栃木県、山梨県、愛媛県、高知県、宮崎県の五県では全く専任者がいないという実態になっているわけです。県でゼロということは、先ほど局長から御説明があったように、診療報酬の不正や診療内容の適正化を図る、いわゆる不正行為を見逃すことにもなりかねないわけでございますが、この確保のめどはついているのでしょうか。#220
○吉村政府委員 先生御指摘のように、いまの五つの県は指導医療官がいないわけでございます。私ども、欠員を補充するためにいろいろな努力をしておるわけでありますが、やはり指導医療官と申しますと、人格も識見も、それから最近の医学、医術等についても通暁をしておる人でないと適任者でないということで、なかなかその人材が得られないというようなむずかしさがございます。いろいろ努力をいたしておりまして、たとえば栃木県につきましては、近々一人採用できる見込みが立っております。それから、その他の県につきましては、隣の府県と連絡をとって兼任にしてやるとか、あるいは医療専門員、これは非常勤でございますが、この医療専門員を活用いたしましてその穴を埋めるというようないろいろな工夫をしておるわけでありますが、やはり先ほど申しました指導医療官にふさわしい人材をいろいろな手だてを講じて見出し、それを採用していくことが基本でございますので、そういう努力を続けてまいりたいと思っております。
〔中村(弘)委員長代理退席、近藤(元)委員長代理着席〕
#221
○春田委員 人材がいないということでありますけれども、兼任という話もありましたが、現在、保険を扱っている医療機関だけでも全国で十五万、お医者さんでも三十二万いるわけであって、そうした相当広い規模の医療機関、医者に対して、兼任なんというのではとてもじゃないができるはずがないわけであって、これは都道府県で一名ないし二名ずつ置く。一名でも少ないわけですよ。そういった面で、兼任なんて不可能だと思うのです。ところで、人格、識見、医療に通じているということで話がございましたけれども、資格としてはやはり医者としての資格が必要なんですか。
#222
○吉村政府委員 医科診療に関しましては医師、それから歯科診療につきましては歯科医師、こういうことで採用しておるわけでございます。#223
○春田委員 現在、指導医療官は全国で七十八名おられますけれども、平均年齢は何歳ぐらいなんですか。#224
○吉村政府委員 現在平均年齢を調査しておりませんが、先ほど申しました要件に合致するといたしますと、かなり高齢になっておるということは言えると思います。#225
○春田委員 聞くところによると六十歳以上の方がかなりおられるということでございまして、そういった面から考えれば、現員も少ないけれども、将来こういう方で高齢者であれば当然おやめになる率も高くなるわけでございまして、先細りになってくるわけですね。医師としての資格が必要である、そういった面で、身分は公務員でありますゆえに開業医や大学病院の医師に比べて待遇面では相当格差があると思うのです。また、大学病院等ではいろいろな研究等ができますけれども、こうした資格の方たちは研究もできないということで、研究熱心な先生にとっても物足りない、また医者が医者を監査するという面でも余り喜ばれない面もあるわけです。こうしたことも考えれば、現行制度といいますか、待遇面では一般公務員に比べて若干プラスアルファはあるみたいでありますけれども、その他の面も含めて抜本的な改善をしなかったならば、こういう制度そのものが死んでしまう。先ほどから言っているように、高齢者の方がおやめになったら、なり手がなくなってしまえばこの制度は崩壊してしまうわけですよ。そういった面で、私は現行制度を抜本的に改善する、そういう真剣な検討をする必要があるのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。
#226
○吉村政府委員 確かに御指摘のように、仮に百七人の定員が全部埋まったといたしましても、それで十分かというと必ずしも十分でない。それからまた、おっしゃいましたように待遇面でもやはり限界があるというようなことで、なかなか常勤の監査官としての来手が少ない、したがって、現在おられる人が高齢化をしていかざるを得ない、こういう一々の御指摘はごもっともでございます。したがって、私どもも先ほど申し上げました医療費適正化推進本部におきまして、指導、監査体制も含めて検討しておるわけでございます。その一つとしては、もう少し医師団体の協力を得る方法はないかとか、あるお医者さん方のチームみたいなもので指導、監査に対処できないかとか、いろいろな角度から検討しておることは事実でございまして、私ども、保険医療が適正に運用されておるという保険医療に対する国民の信頼感というものが保てない限り国民医療の適正化はできない、こういうように考えておりますので、いろいろな工夫をしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
#227
○春田委員 大臣の答弁がいままでございませんので、お疲れだと思いますけれども、この点について大臣からの御見解を伺っておきたいと思います。#228
○林国務大臣 医療を公正にまた適切にやっていくということは大変に必要なことだと思いますし、そういった意味で指導官を置いておるわけでございますが、いま御指摘のありましたように、いろいろな問題がある。しかし、では別の人にやらせるかといってもなかなかやらせるわけにいかないわけでありますから、いい指導官制度をどうつくっていくかというのは、これから検討していかなければならない重要な問題だと私は思うのです。特に、医療そのものが人の信頼、医者に対する信頼から成り立っておりますし、また、医療全体が国民的な信頼をかち得ていかなければならないということでありますから、その医療のあり方につきまして不正やごまかしなどがあったら困るわけでありますから、そういった意味での指導官制度というものを健全に育てていくことが非常に大切なことのように考えているところでございます。
#229
○春田委員 ところで、この指導医療官と事務指導官の監査状況について、簡潔に御説明いただきたいと思います。#230
○吉村政府委員 昭和五十六年度におきます保険医療機関に対する指導、監査の実施状況でございますが、一応集団指導と個別指導というのがございまして、集団指導は、保険医療機関のうち六万九千件、保険医につきましては七万一千四百十七件やっております。それから個別指導でございますが、保険医療機関の数で七千四百十六件、保険医の数で八千八百八件でございます。それから監査でございますが、保険医療機関の数にいたしまして七十五件、保険医の数にいたしまして百十六件、監査の結果、返還を命じた金額が十一億六千四百四万円となっております。
#231
○春田委員 五十六年度の監査の内容はただいま御説明あったとおりであります。不正請求の返還額は、国民医療費十二兆八千億円のうち十一億六千四百四万円、取り消し処分に遭った医療機関、十五万三千七百二十七機関のうち三十六機関、医師数では三十二万七百十六人のうち三十二名が取り消しの処分になっているわけです。数字の割合からすれば決して大きな割合ではないかもしれませんけれども、私は氷山の一角であろうと思っております。
国民医療費が毎年一兆円ずつ上がっていく。現在は十四兆円という国民医療費と言われているわけです。こうした膨大な医療費がかさむ今日、これら不正請求は決して見逃すわけにはいかないと私は思います。厳しく監査し、徹底した処分をする、国民はこれを望んでいると私は思っておるわけでございますが、厚生省はどう考えておりますか。
#232
○吉村政府委員 監査後の処分につきましては、その事故の中身の度合いによって、いろいろ取り消し処分だとか、あるいは戒告処分だとか、注意の処分だとか、こういうことが決まっておりますので、やはり監査をして、その結果、事故の態様に応じて厳正に処理をしてまいりたい、こう思っております。#233
○春田委員 五十五年度の国税庁の税務調査では二十六億六千万円の不正請求が見つかっているわけです。それに比較しますと、厚生省の場合は、五十五年度の不正請求の返還額は六億三十四万円となっております。専門の厚生省の額に比べていわゆる専門外の国税庁の不正請求の額の方が大きいわけでございまして、厚生省としてはどうも医者に遠慮しているのじゃないか、医師会に遠慮しているのじゃないかという批判の声が上がっているわけです。これでは国民は割り切れない面があると私は思うのですね。局長がずっと答弁なさっておりますけれども、吉村保険局長がいろいろな雑誌や機関誌等でずいぶん思い切った発言をされているということで、私もある資料をいま持っているわけでございます。
三つの提言をされておりますけれども、特に不正請求については徹底的に排除すべきであるということもお述べになっているわけです。「不正請求は今後徹底的に排除する姿勢で臨みたいと考えております。従来、不正の監査には医師会の立会いのもとにやることになっていましたが、行政庁が単独で監査すべき性質のものと思われますので、今後その線で進めていかねばなりません。」局長がおっしゃったのかどうかわかりませんけれども、私の資料ではそう書いております。これが真実とすれば、その辺の意図をもう少しお聞きしたいと思います。
#234
○吉村政府委員 医療機関の監査の対象になるタイプというのが二つあるということは先ほど申し上げたとおりでありまして、不正請求と不当な診療という二つのタイプがあるわけでありますが、診療の中身については、私どもはやはり医師会とよくよくお話をしながらやっていくのが、医療の中身の問題でございますのでよろしいのではないか。しかし、不正の問題というのは、仮にそれが現実にあったとすれば、これは医療の中身というよりも、やはり人間の行為として、あるいは人間の倫理としての問題ではないか、こういうことから、私ども筋としては医師会の立ち会い等を求めなくてもできる筋合いのものではないか、こういうように考えておるわけでございます。しかし、現在の慣行というのはいろいろな要素があります。たとえば、厚生省の監査が信用できないというようなこともかつて過去においてあったわけでありまして、いろいろな事故も起こって、そういうことから、役人のやることについては少しずつチェックをしておく方がいいのではないかというようなことで、医師会の立ち会いを求めましてその立ち合いのもとに監査をするという現在の慣行になっておるわけであります。
そこで、その慣行の是正の問題について私どもは医師会と十分話をして、話がつけば、少なくとも不正請求の事案につきましては役所のベースでできるようなことにするのが、医師会のためにもいいし、私どものためにもいいのではないか、こういうように考えたからそういう発言になったわけでございまして、そういう線がいいのではなかろうかということでこれからまた医師会と話をしてまいりたいと思っておるわけであります。幸いなることに、医師会の方も自浄作用を医師会の会員に強く求めておられますので、恐らく十分御理解はいただけるのではないか、こういうように考えております。十分話し合いをしながら進めてまいるつもりでございます。
#235
○春田委員 ただいまの質問につきまして、同じく大臣に御見解を伺いたいと思います。とともに、さらにもう一点、ある調査によりますと、三人に一人が医者に不満であるというデータも出ているわけです。大臣としては何か初めてお聞きになったように思われますので申し上げますと、これは健康保険組合連合会が健康医療に関する意識調査の結果をまとめたものでございまして、二十歳以上の二千人を対象に面接調査したものであるとなっています。大臣は先ほど医者と患者は信頼関係が必要であるとおっしゃっておりますけれども、こうしたアンケートでは三人に一人が不満を持っているということで出ております。こうした点をどうお考えになりますか。
最初の問題とあわせて御答弁いただきたいと思います。
#236
○林国務大臣 医者なり医療というものは、個人個人の患者及び国民の信頼を得たものでなければならない、そういった意味で、医療が適切かつ公正に行われなければならないということは先ほども御答弁申し上げたとおりでありますし、そうした意味からいたしまして、医療が現在の診療報酬、保険制度のもとで行われるときに、不正というものがあるということは非常に好ましくない、やっぱり国民の信頼を傷つけるものになるだろうと思うのです。たとえば、診てないのに診療をしたというようなことがあると、これは明らかな不正だろうと思うのですね。そうしたものに対しては断固たる措置をとっていかなければならないし、そういったことについてお医者さん全体としても異存のあろうはずはない、こう私は思っておるところであります。ただ、医療の内容になりまして、この薬を盛った方がいいのかあの薬にした方がいいのかとか、あるいはこういった手術をしたらどうだろうかこうだろうかとかというような話になりますと、それで非常に金がかかったというような話になると、これはやはり当不当の問題になりますから、私はそこはお医者さんの判断というものは十分に尊重していかなければならないものだろうと思うのです。観念的にはそういうふうに割り切れますが、私はなかなかそこが割り切れないところの分野というものも実際の問題といたしましてあるのだろうと思うのです。
それから、健康保険制度によりまして言うならば、非常な大きなコントロールをしておるというか制約をしておるわけでありますから、それでしかも医療というものをすべての国民に満足のいただけるような形で供給していくということでありますから、医療の行政の分野と、それから医療を実際にやっていられるところとの間の連携というものは非常に必要なことではないだろうかと私は思いまして、そういった意味で間断なき対話を繰り返していくということは、一つの方向として、本当によき医療、国民の信頼を受けるところの医療をつくり上げていくためにも必要なことではないかと思っております。局長が先ほどいろいろと御答弁申し上げましたのも、まさにそういった観点から、国民が信頼の置けるところの医療は何だろうか、こういうことでやっていくところのいろいろな手段、方法だろうと私は考えているところであります。
それから、三分の一の方が現在の医者に対して、あるいは医療に対して御不満である、こういうふうな話が出ておるという話がございます。私は、その数字は率直に受けとめたいと思います。やはり改善すべき点はあるだろうと思いますが、その数字が一体どういうふうなことを意味するのかということも考えてみなければならない。また、どういうふうな問いかけ方をされたのかということもあるだろうと思うのです。一説には、三分の一の人が不満である、では、逆に言うと三分の二は大変信頼しているんだというようなことを言われる方もあるわけですね。だから、そういった点は、本当に医療がどれだけ信頼されているかということを単純にいまのお話だけで割り切って、そうだこうだと言えるかなという、三分の一という数字からすればなかなかむずかしいことではないか、こう私は思っているところであります。
ただ、だからといって、医療が非常に信頼されているとか、また絶対的な不信に陥っているとかいう判断を私はしておりません。むしろわれわれとしては、本当に国民に信頼されるような医療の方向へ、いろんな手段を使ってこれからやっていかなければならない。それは単に宣伝したり何かして、いい医療だどうだという話ではない。むしろ個々の医者が、また医療機関が、誠意を持って患者の方、国民の方に対して一つ一つのものについて努力をしていくことであろう、私はこういうふうに考えているところであります。
#237
○春田委員 さきの質問に対しましては、大臣もかなり慎重な御答弁であろうと思っているわけでございますが、さらに確認といいますか、重ねて質問しますけれども、局長は、不正請求の問題については、要するに医師会の立ち会いのないままに行政庁が単独で監査してもいいんじゃないか、十分話し合い、連携等は必要であるけれどもという条件がついておりますけれども、監査の段階ではそうした方がいいんじゃないかということをおっしゃっておりますけれども、この点についてもう一回大臣の御答弁を簡単にいただきたい。#238
○林国務大臣 先ほど御答弁を申し上げたように、不正とか不当とかというような問題がありますが、その間の話ということは必ずしもはっきりしていない。いままでのそういったことをベースにして、医師会の立ち会いのもとでやる、いままではこういうふうな話になっているわけですね。ただし、それを慣行をやめるということになれば、話し合いをいままでしておったわけですから、いきなりこっちでぽかっとやるというわけにもいかぬでしょう。それから、立ち会いをした方がいいのかどうかというのも、医師会の方の立場もあるでしょう。お医者さんの方だって、別のところへ行くときに立ち会いをしろというような話になったら、立ち会う人もちょっとつらいということもあるだろうと思いますね。だから、その辺少し率直に医師会との話をしてみたらいいんじゃないかな、どうするんだという話を。それは医師会のエゴイズムとか役所の独善とかという話ではない。お互いが協力して、国民に信頼されるところの医療をどういうふうな形でやっていったらいいか、それの一つのあり方だろうと思いますから、そういった観点で、少しフランクに、謙虚にお互い同士が話をしてみたらいいことではないかと思いますし、これからも医師会と少し話をしてみるように事務当局にも言っておきます。
#239
○春田委員 最後にまとめとして、行政改革の第一次答申の中にも「医療機関に対する指導監査の強化、不正・不当請求事案についての厳正な処分の実施を図る。」べきであると明記しております。政府は行革を進めているわけでございます。行革は人減らしから始まるといいますけれども、いわゆる金減らしにつながる医療監査体制の増員は必要欠くべからざるものである、充実していくべきである、このように要望して、この問題は終わります。最後に、東北大学や徳島大学等で研究が進められ、この秋にも出産が予定されております体外受精児、いわゆる試験管ベビーについては、賛否両論、いろいろな論議が交わされているわけでございますが、厚生省としてこの問題に対し、現時点でいかなる御所見をお持ちになっておりますか。
#240
○大谷政府委員 体外受精につきましては、医学的に慎重な配慮でやられるべきはもちろん、倫理面からも慎重に配慮して行われるべきであるというふうに考えております。現在まで、東北大学の体外受精につきましては日本産科婦人科学会の基準あるいは大学における基準というふうなもので慎重に配慮されて行われておりますし、徳島大学におきましては、医学関係だけではなしに、各方面の有識者も参加されました委員会において倫理基準というものをお定めになって、これによって実施に移そうとされていると伺っております。厚生省としては、こういった問題につきまして、学会等の倫理基準を踏まえられて慎重にやられるということを期待しているわけでございます。厚生省におきましては、こういった問題の国民的コンセンサスということも必要であるというふうに考えておりまして、去る四月十三日に、林厚生大臣がみずから司会をされまして、医学界だけでなしに、法律、哲学等、各界の有識者の方々にお集まりいただきまして、このような生命と倫理の問題につきまして自由かつ率直に御議論をいただきました。今後とも、大臣みずから出席して、この問題については一つの国民的コンセンサスのもとになるような議論の展開になっていくことを期待されているわけでございます。
現在のところ、体外受精につきましては、厚生省といたしましては、十分配慮されてやられているし、このような状況で推移いたしておることを慎重に見守っていきたいというふうに考えているわけでございます。
#241
○春田委員 大学や日本産科婦人科学会等では倫理的な基準が設けられているやに伺っているわけでございますけれども、厚生省としてはこうしたものをうかがっておるという答弁でございますが、厚生省単独で、いわゆる政府としてこうした基準といいますか、規則といいますか、こういうことを設ける気というのは現在持っていない、こういうことですか。#242
○大谷政府委員 先ほども申し上げましたように、厚生大臣みずから生命と倫理の問題について各界の有識者にお集まりいただきまして、月一回くらいのペースでこういった問題について自由かつ率直な御議論をいただいているわけでございます。ただ、体外受精そのものにつきましては、先ほども申し上げましたように、直ちに厚生省がそれについての基準を設けるとか、そういうふうなことではなしに、全体、そういった御議論の中でこれから考えていきたいというふうに考えているわけでございます。
#243
○春田委員 毎月一回懇談会といいますか、そうした場を設けているということでございますけれども、大臣、これは集大成として、将来そういうことも必要になった場合は考える、こういうことなんですか。#244
○林国務大臣 私的懇談会という形で各界からの御意見を少し聞いていこう――私が考えましたのは、いま御指摘になりました東北大学もあるいは徳島大学のときも、体外受精また妊娠、こういう問題でなくて、新しい科学が非常に進歩してきて体外受精というようなことができるということは、私は科学の勝利だろうと思うのです。子供に恵まれない方にとっては大変な朗報である。しかし、科学が進歩していきますといろんな問題が私は出てくるんだろうと思います。これを何らかの形で法律にし、あるいは倫理コードにし、あるいは憲章のような形にまとめていくということが場合によったら必要になるかもしれないし、また国民的なコンセンサスに任しておいた方がいいというようなものもあるだろうと思います。そういった意味で、私は幅広く少しこの問題は議論をしてまいりたいと思っておるところなんです。単に国内だけではありません。先般ジュネーブへ私行きまして、WHOの会議に出ました。演説もしましたが、その中で、科学が非常に進歩してくることは非常に望ましいことである、ただし人間の生命、人間の持っているところの秩序と関連してこの問題がある。けさの新聞にも出ておりましたけれども、男と女を産み分けることができるなどということになりますと、私はWHOでも申し上げたのですけれども、そういう国においてはアンプロポーショナリーに、不必要に多くの割合で男の子が生まれ、別の国においては不必要なまでに女の子が生まれるというような事態というものが起こらないという保証は何もないよというふうなこと、そういったような問題であるとか、あるいは植物人間のような問題についてどうするのかというような問題について、これは世界的な規模でもやはり議論をしていかなければならない話ではないだろうかという提言を私の演説の中でしておいたところであります。
私は、これは単に狭い範囲で考える話ではない。これだけ科学が進み、医療が進んできた、その中でお互いが真剣に考えていく問題だろうというふうに思っているところでありまして、国会でもいろいろな御議論をしていただきたい、これをお願いをする次第でございます。
#245
○春田委員 大臣がおっしゃっているように、不妊症に悩む夫婦にとってはまことに喜ぶべきものであると私は思います。しかし、何万人という患者にこうしたことが行われた場合、夫婦や医師だけの問題ではなくなってしまうおそれが出てくると私は思います。生まれる子供の立場、生命と医学という関係等、論議を尽くさねばならない面が今後多々あると思うのです。厚生省としても、有識者の意見をより多く集め、そして、できれば海外で何百名と存在しているそういう方たちの本人や家族等の環境調査も十分やっていくことが大事ではないかと思います。科学の発展だけに拍手を送るだけでなく、万全の準備を怠りなくしていくべきであると要望しておきます。
時間が参りましたけれども、最後に、先ほどの銘柄別の収載の問題について、大臣にも一言御意見をお伺いしたいと思いますが、私は、同一成分、同一規格のものであれば、先発品、後発品というものは、ある一定の期間、六年が過ぎれば、これは同一価格にすべきであるという主張を前からやっているわけでございます。かつての森下厚生大臣におきましても、この問題については十分関心があるところである、検討させていただくという御答弁も国会でいただいているわけでございますけれども、林厚生大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
#246
○林国務大臣 私は本来自由経済論者でございまして、自由経済であると一物一価法則というのが働くというのが正しいことだろうと思うのです。同じ効果があって、同じ数量で、同じ品質のものが価格が違うというのは、プライスメカニズムがどこか間違っているのだろう、こういうのが私は経済学の原則だろうと思います。ただ、いまそういった形でやると、いろいろとやはり薬業界においてひずみが出てくるということで、現在の銘柄別収載制度というものが、いろんな議論の上で採用されたものだと私は思っておるのです。
銘柄別の収載制度というものについては、そういった制度でありますから、やはりメリットもあると思うのです。新しくやってもいろんなメリットがある。それは新しい技術体制、技術をつくる、新しいものをつくっていくという上においてメリットがあるような制度にすればいいわけですから、そういったことは私はあるのだろうと思うのです。それから、デメリットとしては、また非常に高いものが売られてしまうというようなこともあるのだろうと思います。
そうしたようなことをやはり考えて、市場価格に合うように薬価基準を改正していくということもずっといままでやってきたところでありますが、お互いの制度のメリット・デメリットというものを考えながら、やはり最もメリットが多くてしかもデメリットの少ないような制度というものを私はこれから考えていかなければならないと思いますし、まあ社会制度でございますから、真理は中間にあるというようなことかなという感じも持っておるのです。持っていますが、どういうふうにしてやるか、御指摘もありますし、いろんな点を考えていま検討をさせているところでございます。
#247
○春田委員 終わります。#248
○近藤(元)委員長代理 午後三時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。午後二時二十七分休憩
────◇─────
午後三時一分開議
#249
○東家委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。三浦久君。
#250
○三浦(久)委員 生活保護行政の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。現在、適正化推進事業というのが行われておりますけれども、これに付随いたしまして、各地で行き過ぎと思われるような事案やまた権利侵害というようなものが続出をいたしております。
具体的には私は後でその事実については指摘をいたしたいと思いますけれども、まず最初に厚生大臣に、保護行政の理念といいますか、そういう問題について御答弁をいただきたいというふうに思います。
この生活保護というのは、救貧対策とは違いまして、恩恵的であるとか慈恵的だとかいうようなものではなくて、憲法の第二十五条、いわゆる最低限度の生活保障という考え方に立った上で、国民の権利として保障されたものであろうというふうに私は思います。したがって、生活保護法の運用に当たっては、要保護者に対して当然与えられるべき保護を理由なく抑制するというようなととは厳に慎まなければならないというふうに考えておりますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
#251
○林国務大臣 先生御指摘のとおり、生活保護は憲法二十五条の規定に基づくものでございますが、具体的には二十五条の内容は法律によって定めるというのがいままでのたてまえでございますし、生活保護法第四条に定めてありますとおり、第一に、資産その他あらゆるものの活用、第二に、民法に定める扶養義務の優先履行を前提として、国が生活に困窮するすべての国民に対し、最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的としているものであります。国としては、この基本原理にのっとり、生活保護の適正な運用に努めているところであり、今後とも努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。#252
○三浦(久)委員 具体的な事実関係を指摘する前に、今度施行規則や施行細則が改正になりまして、それによって、申請をするときに同意書というものを添付させるようになっています。その同意書というのは、ここにモデルがございますが、「保護の決定又は実施のために必要があるときは、私及び私の世帯員の資産及び収入の状況につき、貴福祉事務所が官公署に調査を嘱託し、又は銀行、信託会社、私苦しくは私の世帯員の雇主、その他の関係人に報告を求めることに同意します。」こういう内容の同意書を添付させるようになりました。これは私はいろいろ問題が多くあると思うのですけれども、どうしていままで個別的に同意をとっていたものを、今度は包括的に申請の時点でこういう同意書をとるようになったのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
#253
○金田政府委員 お答え申し上げます。先生も御承知のように、昭和五十五年末でございますが、和歌山県の御坊市の暴力団生活保護不正受給事件に端を発しまして、生活保護行政につきましては種々マスコミ等からの批判も招いたところでございます。このような事件は、大多数の善意の被保護者に迷惑をかけるだけではなく、制度に対する国民の信頼を失わせるおそれが多分にございます。したがいまして、こうした不正受給を、保護実施機関と関係者の十分な努力によって未然に防止することが私どもとしての責務であると考えております。
したがいまして、ただいま先生御質問のこの通知は、こうしたことから厳に不正受給の防止を図り、一方、真に生活に困窮する者に対しましては必要な保護を確保いたしますために、要保護者の収入及び資産の的確な把握を図ることを目的といたしまして、この通知を出すことにしたわけでございます。
#254
○三浦(久)委員 えらい抽象的な御答弁なんですけれども、いろいろ調査をするということは当然なことでしょう。ですから、法律にも第二十九条に調査することができるということは書かれていますね。この同意書というのは、この二十九条の内容をそのまま持ってきているわけです。しかし、私はこれは越権行為だと思うのですよ。やはり、皆さん方がいろいろ調査をする場合には法律に厳格に従ってやらなければ、こういう問題というのは、相手の自由権といいますか相手の基本的な人権を侵害してはならないわけですから、そういう意味では、私は法律に厳格に従って調査をしなければならないと思います。二十九条ではどう書いてあるかといいますと、これは、「保護の決定又は実施のために必要があるときは」調査ができるわけであります。申請の時点でこういう包括的な同意書というものを出させるということは、これは調査の必要があるかないかわからない、調査の必要の有無にかかわらず調査活動の一環としてのこういう同意書を提出させているわけですね。これは私は越権行為だというふうに思うわけです。そしてまた、同意書を書かされる方にとってみますと、何も自分は悪いことはしてない、詐欺もしてない、虚偽の申告もしてない、そういう気持ちがあっても、自分がこの同意書を出したことによって、いつでも調べられているという、そういう非常に不安定な心理状況になることもまた間違いないと思うのですね。ですから私は、要保護者に対してそういう心理状態に陥らせるということはよくないことだ。そういう二つの面があるのですね。
ですから、越権行為だということと、もう一つは、要保護者の人権擁護という観点から、こういう包括的な同意書を必要性の有無にかかわらず提出させるということはやめるべきだというふうに思っておるわけですけれども、その点についてはどういう御見解でございましょうか。
#255
○金田政府委員 ただいま先生、越権行為あるいは人権擁護の観点ということをおっしゃったわけでございますが、実は、生活保護法第二十九条におきましては、「保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定又は実施のために必要があるときは、要保護者又はその扶養義務者の資産及び収入の状況につき、官公署に調査を嘱託し、又は銀行、信託会社、要保護者若しくはその扶養義務者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。」とございます。ところが、従来から、ややもいたしますと、そういったところへ照会いたしましても、本人の同意がなければということで必ずしも十分な回答がなく、生活保護行政の実施に非常に支障を来していたことがございました。そういうことで、暴力団事件等もございましたので、これを契機に私どもいろいろ考えましてこの通知を出すことにしたわけでございます。しかしながら、この申請時の同意書は、これがなければ保護の要件を欠くというものではございませんけれども、まず第一番目に、関係先に対する照会はいつ生ずるかわからないということがございます。また第二に、必要時には速やかに照会し円滑な事務処理がなされなければならないという事務上の要請がございます。第三には、そして何よりも、途中で同意書を徴するということにいたしますと、要保護者と実施機関との間でよけいな不信、摩擦を惹起するおそれがございます。こういったようなことがございますので、保護開始に際しましてはすべての申請者から徴収することといたしております。
なお、申請時に同意書がないために収入等の調査ができない場合には、結果として保護の決定ができない場合もございます。そういうことがあるということも申し添えておきたいと思います。
#256
○三浦(久)委員 私は、包括的に申請の時点で提出をさせるということが不当であるということを言っているわけであります。調査をするということは結構だと思います。そしてまた、調査をする場合に、必要があったときに同意書をとるということも、それは具体的にいままでやっておったのと同じように、こういう疑いがあった、たとえば収入がどうも過少申告らしい、そういうような場合に、その雇い主に、調査をしたいがどうか、そういうふうに個別的、具体的に調査の同意書をいままではとっていたわけですね。そういう運用でやっておった。それで十分にやれておった。それで何十年やってきたわけですよ。それを今度は包括的に、必要の有無にかかわらず事前にそれを提出させるというのは、どう考えても私はこれは越権行為だというふうに思うのです。あなたの方はいま事務の迅速な処理のためにということを言われました。それともう一つは要保護者との関係を言われましたね。すると、要保護者との関係というのは、恐らくあなたたちが具体的にこういう点に不審があるのでこういうところを調べたいというようなことを言うと、何だおれを疑っているのかと思われるとか、そういうことだろうと思うのですね。しかし、いまの生活保護者の関係団体、ここはこういうやり方に反対しているのですよ。だから、これは要保護者のためなのだというのはちょっと的が外れているのじゃないか。いわゆる生活保護者の関係団体は反対している、こういうような不安定な状態に陥れられるようなものはやめてくれ、こう言っているわけです。
これはいろいろ問題があって、たとえば自治体によってはまだこういう同意書を提出させないところがあるのじゃありませんか、どうですか。
#257
○金田政府委員 ただいま先生これは何十年もの業務だとおっしゃいましたが、確かに昭和二十五年以来新しい憲法に基づきまして現在の生活保護制度を実施しているわけでございますが、長い間の経騒にかんがみまして、どうしても仕事を大量に処理していく上において支障を来すということでこういうことをしたわけでございますが、これがなければ保護の要件を欠くというものではございません。理論的には必ずしもそうではございません。現に、まだ通知を出して以後実施がされてない県が数県あることは事実でございますが、それらの県につきましても、私どもなるべく早く実施するように指導しているところでございます。
#258
○三浦(久)委員 私の聞いておるところでは、東京都は提出させていないとか、京都府、京都市、神戸市、大阪府、大阪市、こういうところが提出をさせていない。そして、これはちょっと疑義があるのじゃないかというような意見を厚生省に出しておるということも伺っておるのですが、その点はいかがですか。#259
○金田政府委員 個々の県のうちにはもう少し待ってほしいということで要望をかつて出したことがあるということも聞いておるわけでございますが、最近逐次実施しようとする県もあるというように聞いております。#260
○三浦(久)委員 いや、私がお聞きしたのは、意見みたいなものを厚生省に出している、そういう都道府県もあるのじゃございませんか。#261
○金田政府委員 確かに、先生おっしゃいましたようにそういう意見がかつてあったことは事実でございます。#262
○三浦(久)委員 ですから、やはり自治体でもこれはちょっとまずいぞ、要保護者の基本的人権を守るという観点からまずいぞという感じを持っているわけですね。それは当然ですよ。必要の有無にかかわらず調査活動に着手しちゃうわけですから。これは調査活動の一部ですから。ですから、そういう意味では自治体が疑義を持つというのも当然だと思うのですよ。しかし、いま局長が言われた、いや、もう少しで実施いたしますから、こう言っているのは、それは厚生省の方がやれ、やれとしりをたたいているから、関係団体との間でもっていろいろ板挟みになって困っておる。しかし厚生省の力の方が強いから、結局はそういうことで関係団体の了承を得て近く実施しよう、そういうことを考えているんだろうと思うのですね。しかし、そういう自治体が持っているこれはちょっと法律上疑義があるぞということは依然として消えていないというふうに私は思います。しかし、私がことで幾ら言ってもあなたの方でそれじゃやめますとは言わないでしょうから、私たちの意見をお伝えして、善処方を要望しておきたいと思います。
いま局長さんは、提出がなかった場合に申請の受理をしないということではない、それからまた、そういうことがあるからといって、保護の要件を満たしているのに保護の受給決定をしないというようなこともない、そういう趣旨の御発言をされましたね。ところが、要件ではないと言っておりますが、現場ではそれによっておくれる場合はあるぞと言っておどかすのですね。ですから、これを出さないからといって故意に調査をサボるとかそういうようなことはすべきじゃないと思いますけれども、どうでしょう。
#263
○金田政府委員 この同意書の利害得失につきましては先ほど申し上げたようなことでございますが、同意書といいましても、御本人が全部自筆で書いていただくわけではございませんで、きちんと書面を私どもが用意いたしまして署名捺印していただくだけのことでございますので、私どもとしては申請の方々に無用の不安を与えることのないよう、第一線のケースワーカーに十分その趣旨を徹底させる、また関係者の御理解を得るように努力いたしたいと考えているところでございます。#264
○三浦(久)委員 いや、私が聞いているのは、わざとそういうお答えをしているんだろうと思うのですけれども、これを出さないからといって、保護の開始、そういうものを故意におくらせるというようなことはしてはならないというふうに思いますが、いかがでしょうかと聞いているんです。#265
○金田政府委員 これは、結局その場合のケース・バイ・ケースの問題であろうかと思います。#266
○三浦(久)委員 そうすると、場合によってはこの同意書を出さないからうんとおくらせてもいい、そういうことになるんですか。私はそういうことにはならないと思うのですね。それなら、個別的に必要があれば同意をとってそしてどんどん調査を進めていけばいいんじゃないですか。ちょっとお答えがおかしいんじゃないでしょうか。#267
○金田政府委員 先生も御承知のように、生活保護といいますのは全額公費負担で御本人の生活のめんどうを見るわけでございますので、申請時に同意書がない、そのために収入等の調査ができないような場合におきましては、結果としては保護の決定がどうしてもできないという場合があろうかと思います。ケースワーカーの方から見ましてどうも他に収入がありそうだ、ケースワーカーというのはその地区の状況をいろいろ把握いたしておりまして、また地区の民生委員とも常時接触いたしておりますので、その人の収入状況についてはある程度把握している場合がございます。そういった場合にもなおかつ同意書をどうしても御本人が拒むというような場合には、保護の決定がおくれる場合もあろうか、そういうことを申し上げているわけでございます。#268
○三浦(久)委員 それは個別的な同意書をとればいいだけの話であって、それを出さないからといって故意におくらせる、そういう理由にはならないと思うのですね。まあいいでしょう。次に、ちょっと具体的なケースを申し上げますが、私が住んでいる小倉の北区の問題なんですけれども、この福祉事務所の窓口に申請用紙を置いてないんですね。それで、要するに申請に来ると、まず申請書を渡す前に必ず相談をするわけです。これはもう以前からずっとやっております。ですから、相談業務がどんどん先行して、その相談でもってどんどんはねちゃう、こういうケースがある。だから、なかなか申請までたどり着かないわけですね。
たとえば、これは小倉北区の五十九歳の男の人ですけれども、内臓癒着の過去の病歴があった。その人が保護の申請に行ったら就労指導が行われたので職安に行った。職安に行ったら、おまえ病気なら働けないじゃないかといって拒否された。そしてまた福祉事務所に保護の申請に行ったら、今度は、じゃ市立病院でもって検診をしてこいということで検診に行っている。そして、その市立病院では軽作業は可であるという診断書が出されているわけですね。それで今度は、軽作業が可なんだからおまえ働けるじゃないかというので、また申請を受け付けない。こういうような事例があるのです。
ですから、保護の申請をしようといったって、申請用紙は置いてないわ、相談でもってみんなはねられてしまう。うわさによれば、三回は追い返せというような指導方針になっているというようなことまで聞くわけです。
それからまた、特に生別の母子世帯、これに対してはかなり調査がきつい。というよりも、これもまたなかなか申請にのせない。たとえば、生別母子世帯の場合には、申請に行きますと、まず、別れた夫に慰謝料請求を行っているか、行っていないと言うと、じゃ慰謝料請求をやって金をもらってこい、それからでなければだめだとか、それから、子供の養育費はどうなっているのだ、いやもらっておりません、それならまずもらうのが先決じゃないか、もらってこいと言って、もう相談業務で追い返してしまうわけですね。
しかし、私も弁護士を長年やっておりましたけれども、こういう別れるという問題はなかなかいろいろ事情があるのですね。たとえば、とても慰謝料の話なんておっかなくてできないというような夫婦だってあるわけです。暴力がこわくて別れたなんという場合もあるわけですから、ケース・バイ・ケースでいろいろな状況があるわけでしょう。それから、慰謝料とか養育費なんというのは、幾ら出すかというのは大問題ですから、家庭裁判所で調停を出さなければ片がつかないというような場合もありますし、そうするとこんなものは何カ月もかかってしまいます。そうしますと、結局、いま生活に困っているという人を保護するのではなくて、追っ払ってしまうという結果にしかならないわけです。
ですから私は、こういう場合には、現在収入がない、そして生活できないという人に対しては、窓口で追っ払うのではなくて、先に保護の決定をして――もちろん調査は結構ですよ。調査をした上で、必要があればちゃんと決定をして、そして給付を与えておいて、それからあなたたちが、二十七条で指導権限がありますね、ですから、そこで指導をしたらいいのです。慰謝料はこういうように請求できるぞ、また、扶養料も大体このぐらいの相場だぞ、だから交渉したらどうかといって手助けをしてやる、指導助言をしてやる、そういうことが大事だと思うのです。それでもしか金が取れれば、これは法律にも六十三条で、「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において返還しなければならない。」というのがありますね。ですから、返還をさせればいいじゃないですか。私は、やはりそれが法の趣旨ではないかと思うのです。
それは、あなたたちが不正受給を何とかチェックしようという気持ちはもちろんわかりますよ。それは税金ですから、保護の要件もないのにどんどんそんなものを湯水のように使われたのでは困るわけです。しかし、そういうものをチェックしようというために、やはりこういうような行き過ぎがあってはならないはずなんです。私はそう思います。こういう問題について、局長さん、どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
#269
○金田政府委員 まず先生のお尋ねの、生活保護の申請用紙が窓口にないではないかということでございますが、先生も御承知のように、生活保護行政というのは、単に金銭の支給をするだけの行政ではありません。金の計算をするだけのものではございません。最終的にはその世帯の自立を助長することが目的でございます。ケースワーカーが申請者と面接し、その結果、たとえば世帯更生資金とか公費負担医療その他の社会資源の活用をもって足りるということで、本人が納得して帰られる場合も少なくございません。それが社会福祉事業で言うケースワークの効果があったよい例だと思います。次に、五十九歳の方のお話でございますが、たしか私もそのケースのことは聞いたことがございますが、最終的には、主治医からの病状聴取によりまして就労指導可能と判断したという報告が参っております。
それから、生別母子世帯等の問題でございますが、生活保護におきましては、民法に定める扶養義務の履行を生活保護法による保護に優先させることといたしております。これは法律の第四条に書いてあるわけでございますが、中でも、未成熟の子、特に中学三年以下のようなそういった子供に対する親の関係、いわゆる生活保持義務関係にある者の扶養義務の履行は、何にも増して強く求められるべきものであると考えております。よく学者が言っておられますように、たとえて言えば、最後のパンの一片をも分かち合うべきものと認識されております。こうしたことから、生別母子世帯の前夫の扶養能力を十分に調査し、扶養能力がある場合におきましてはその履行を求めることとしておるところでございます。
したがいまして、生別母子世帯で前夫からの扶養の申し出を拒否する場合、あるいは前夫に扶養能力があるにもかかわらず、その扶養の請求を全くしようとしない場合、こういったような場合には、福祉事務所として十分助言指導を行いますが、なおこれに従わないときにおきましては、生活保護の受給要件を欠くものとして、申請の却下や保護の廃止を行わざるを得ない場合もあるわけでございます。
ただ、先生おっしゃいましたように、相手が暴力をふるう、そういったケースも最近生別母子世帯にはいろいろ出てまいっておりますが、こういったケースにおきましてはそういったことはやっておりません。結局、どうしても申請者が受け付けてくれと言い、他にその世帯を救う手段がないと判断されましたときは、もちろん申請を受理いたしておるところでございます。
#270
○三浦(久)委員 そうすると、あなたの方では福祉事務所の窓口に申請用紙を置かなくてもいいという考えなんですか。それはおかしいじゃないですか。それはあなたたちの行政の都合だけを考えて、国民の権利という問題については非常に配慮が足りないやり方だと私は思うのですよ。何も必ず相談を受けなければならないという義務はないのですから、自分が保護の要件があると思えば、自分で申請用紙を書いて所定の手続をとるということは当然許されるべきことというか、当然の国民の権利じゃありませんか。その申請用紙を置かなくてもいいなんというのは、ちょっと私は納得いきませんね。#271
○金田政府委員 先ほども申し上げましたように、生活保護の申請がございました場合、御本人が福祉事務所の窓口でいきなり申請書に収入ゼロとか収入幾らとか家族数何人とか、そういったことを書いて書類をお出しいただき、そのまま決定するというような仕組みにはわが国の生活保護行政はなっていないわけでございます。先ほど申し上げましたように、そういった方が来られますと、この世帯は果たしてどういう人員構成であり、収入はどうであり、また働く能力があるかどうか、そういったことを十分ケースワーカーの人たちが窓口で聞きまして、その上で最終的に判断するというのが生活保護行政のやり方でございまして、用紙を事前に外に出しておくか、あるいは相談が終わってから用紙を差し上げて書いていただくか、それはどちらでも自由でございます。それはそこの保護の実施機関のやり方でございますから、私どもは別にそれをどちらにしろと言っているわけではございません。しかしながら、生活保護行政というのは、相手の世帯の状況を十分聞かないでいきなり一片の書面だけで決定するというようなことは、全国どこの福祉事務所でも現にやっていないわけでございます。
#272
○三浦(久)委員 ですから、申請書を提出したいというものは提出させて、それからあなたたちが調査をしたらいいじゃないですか。それでこういう点はどうだこうだといって調べて、是正すべき点があれば是正させて、そして保護にのせるか却下するか決めればいいわけですよ。それが、申請を受け付けてもらうまでが大変なんですよ。三回追い返せというのは、局長さんの答弁を聞いていると、何か本当にそういう指導をしているのかなというような感じがしますけれども……。申請書はちゃんと置いておくべきですよ。後のやり方はどうでもいいけれども、国民が申請する権利を奪ってしまうなんというのはとんでもない話だと私は思うのです。局長さんの答弁でも、現場では申請受理にまではなかなかこぎつけない、そういう状況になっているというのは大体わかりましたけれども、私は、これは本来あるべき姿のやり方ではないというふうに思います。
それから、生別母子世帯の場合、これは民法の扶養義務の問題とか何だかいろいろなことを言われましたね。しかし、扶養義務とか扶養の権利とか言うたって、そんなものは現実化しないと飯は食えないわけですからね。私は子供の扶養をしない親はけしからぬと思います。ですから、確かにあなたたちがおっしゃるように厳格にそれは徴収すべきです。扶養の義務を履行させるべきです。私はその点についてはあなたたちと同じ意見であります。しかし、その履行をさせた上でなければ保護を受け付けない。おまえやり直してもう一回出直してこいというのは余りにも冷たい仕打ちではないかということを言っているのです。ですから、まず最初に、困窮状況にあればちゃんと保護にのせて、後の処置は後の処置で考えればいいじゃないかということを言っているわけなんです。その点はどうなんですか。
#273
○金田政府委員 まず誤解のないように申し上げておきますが、三回追い返せなどということは私どもは申し上げたことはございませんので、よろしく。それから、私どもとしましては、ケースワーカーに対しまして、できるだけ親切に応対するように、相手といかに親切に応対し相手の実情を聞きただすかがケースワーカーの一つの技術でもございますので、そういった意味で、ケースワーカーについては資格の定めもございますが、常時現任訓練もやっているわけでございます。
それから、これは考え方の問題だと思いますが、せっかく申請しようと思って来られて、書面を細々お書きいただいて、それが結果としてケースワーカーと話し合いましたところがむだであった、ほかの方法があったというようなことになりますとそれはむだでございますので、そのペーパーを窓口に置いておくか、お話を聞いてから書いていただくか、それは保護の実施機関である福祉事務所の判断に任せているということでございます。
#274
○三浦(久)委員 ですから、それは申請をするという国民の権利を妨害していることになると私は思うのです。事実上妨害していることになると思います。いやそれは申請者のためにやっているんだと言うけれども、申請者が申請したいと言えば、むだになろうと何しようといいじゃないですか。ですから、そこはやはりぴしっとすべきだと思います。それから、こういう例もあるのです。八幡の例ですけれども、同じ世帯の子供が働いている。申請するときにはちゃんと給与証明書をつけておるはずだと思うのですけれども、それが会社に行っているらしいのですね。これは福祉事務所のケースワーカーと係長さんが会社に行っている。そしてばれてしまったわけです。おまえ、就職をするときに生活保護世帯だということは言ってなかったじゃないかというようなことで冷たい目で見られる。そういうことで、本人も居づらくなってその会社をやめてしまったというような例があるのですね。お聞きになっていると思いますが、こういう例なんかはどうなんです。給与明細書があれば、それを疑ってかかるというようなことはしない方がいいのじゃないですか。保護を受けているということがわかったために、せっかくできた就職までパアにする、そういうことはやはり人権侵害につながっていくのじゃないかというふうに私は思いますが、いかがでしょう。
#275
○金田政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、常用雇用者の収入の把握につきましては、本人から申告させますほか、事業主から給与説明書を徴して行うことといたしております。給与証明書の内容に不審がございます場合とかあるいは証明額が同種の被用者の通常の収入額より相当程度低いと判断されますような場合には、直接事業主について具体的内容を調査確認することもございますが、勤務先に対する照会に際しましては、世帯の状況に十分配慮して行うよう、従来から都道府県、指定都市を指導いたしているところでございます。特に、昨年も三月に課長通知を出しまして、この点については特に配慮するよう指導しているところでございます。#276
○三浦(久)委員 じゃ、もう一つ例を挙げますが、小倉北区の、これは御婦人なんですけれども、アルバイトをしておったというんですね。アルバイト先で六万円の収入を受け取っておった。そしたら、そこへ担当の係長と担当のケースワーカーが来まして、給料六万円というのは安いじゃないか、十二万円払ったらどうだと雇い主に言ったというんですね。それで雇い主に抗議をされて帰っていったというようなことがあるのです。これはちょっと信じられないような話なんですけれども、こういうことを私は報告を受けております。今度の適正化推進事業の中で、生活保護費を何%か減らせとか、何かそういうような指示でも出てないとこんな事例というのは出てこないのじゃないかというふうに私ちょっと思っているのですけれども、どうなんですか。こういうケースについてどういうふうにお考えですか。#277
○金田政府委員 いまのケースは私は初めて伺ったわけでございますが、私もちょっと信じられないような感じがしているわけでございます。いまの先生のお話をお伺いした範囲内においては、そういったことはあってはいけないことだと思っております。また、私ども、生活保護費を何%減らせ、そういうようなことを言ったことは一度もございません。
#278
○三浦(久)委員 生活保護関係の質問はこれでやめますので、最後に大臣、ちょっとお伺いしておきますけれども、私はいまの適正化事業、これは本当に法に厳格に従ってやるということよりも、逆に、生活保護者というのは何か不正受給をしているのじゃないかというような、はなからそういう目で見て、それで、能力を活用してないのじゃないかとか虚偽申請しているのじゃないかとか、そういう目で見て、そして、どういうのですか、しぼろう、制限しよう、抑制しよう、そういう観点で行政が行われているように思うのですよ。本当の生活保護行政というのは、因っている人がいないか、因っている人がいたら生活保護にのっけて保護してやろう、そういう観点がなければならないのではないかというふうに私は思うわけであります。しかしまた、漫然とやることによって不正受給がふえるというのも困りますね。ですから、その兼ね合いは行政をやる立場からいって非常にむずかしい問題があると思いますけれども、いまの適正化推進事業というのは、何か要保護者を犯罪人扱いして、そういう対処の仕方をしているというような疑念を私は持っているわけです。ですから、こういう行き過ぎとか基本的人権の侵害とか、そういう問題については今後もう発生しないように厳正な指導を私はお願いいたしたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
#279
○林国務大臣 先ほどから三浦さんのお話を聞いておりまして、私も大変なじみの深いお話がちょいちょい出てくるものですから、興味を持ってお話を聞いておったところでありますが、生活保護というのはやはり適正にやっていかなければならない。一連の不正受給に対処してこれは厳正にやらなければならないということは先生もお認めのとおりでありますし、まあ不正受給というのは私は全部でないと思っていますし、ごく一部の限られた者によるのでありますが、やはりそういったことがあると善意の大多数の被保護者に多大な迷惑がかかるばかりか、生活保護制度自体に対する国民の理解と信頼が失われるということにもなりますので、やはり厳正な姿勢で対処していかなければならないと思っているところであります。もう申すまでもありませんけれども、生活保護制度は国民の生存権保障の最後のよりどころとなるものでありますから、真に生活に困窮する者に対して必要な保護を確保するということについては十分配慮してまいりたい、こういうふうに考えております。
#280
○三浦(久)委員 次に、学童保育についてお尋ねをいたしたいと思います。小学校の低学年、一年生、二年生、三年生、この留守家庭の児童、いわゆるかぎっ子、こう言われておりますけれども、こういうかぎっ子に対する学童保育ですね、これに対する政府の基本的な考え方をまず最初にお伺いいたしたいと思います。
#281
○林国務大臣 御指摘のいわゆるかぎっ子対策でございますが、留守家庭児童対策と申しまして、福祉、文教等関係各分野の施策の適切な組み合わせによってこれに対処することが基本として必要なことだと考えております。厚生省におけるかぎっ子対策は、児童の生活圏に見合った児童館の整備を促進していくというのが第一でございます。第二に、児童館などの整備が図られるまでの経過的な措置として、児童育成クラブの設置、育成を図るための都市児童健全育成事業の実施を図っていくということでございます。
今後ともこれらの施策の推進に努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
#282
○三浦(久)委員 究極的には児童館でやっていく、それまでの間は都市児童健全育成事業、これも併用してやっていく、こういうお話だと思いますが、児童館というのは留守家庭の児童だけを対象にしているのではないと思いますね。一般の児童も対象になっているわけです。ですから、児童館をつくって児童館の適正な運用で片がつくということになりますと――いま大臣が言われた都市児童健全育成事業、この中のメーンは児童育成クラブですね、その設置、運営だと思います。これはお母さんたちが一生懸命やられておるわけですが、この児童育成クラブでいまやられておるようなものをたとえば学童保育と言うとすると、そうするとそういうものはなくなってしまうということになるのですよ、児童館を建てればそれでいいのだということになりますと。たとえば、いまこの児童育成クラブ、いわゆる学童保育クラブ、こう言っておりますが、これは一定の時間子供を預かる仕組みになっていますね。指導員がおって、部屋があって、そして適当に教育といいますか保育といいますか、そういうものをやって、お母さんが迎えに来るまで預っておってやる、そういう形態のものを学童保育と言うとすると、そういうことではなくなってしまうわけですね、児童館を設置して、それに併置するといいますか吸収するというかそういうふうにいたしますと。ですから、それではいまのお母さんやお父さんたちの要求を実現することはできない。ですから、児童館を建てるのであれば、その児童館に学童保育クラブの専門の部屋を設置する、そして同時に専門の指導員を置く、そしてお母さんが来るまで預かってやる、そういう機能を児童館の機能として持たせなければだめなのじゃないかと私は思うのですよ。ですから、もしただ児童館だけをつくればいいということになりますと、学童保育クラブがある地域に児童館をつくっても、結局この学童保育クラブというのはなくならないのですよ。だってそれは学童保育を児童館でやらないということになるわけですから。ですから、その点はどういうふうにお考えになっているのか、お尋ねしたいと思います。
#283
○正木政府委員 お答え申し上げます。児童館は、先生御指摘のようにいわゆる留守家庭児童、かぎっ子だけを対象にしたものではございません。児童館というのは、先生十分御承知のように、児童の健全育成を図っていくためには健全な遊びを通じてその情操を高めていくということが必要でありますので、そういう面で児童館の整備にこれまで努力をしておるわけでございます。しかし、一方において、児童館が整備されれば、お父さん、お母さんがお仕事に出られているかぎっ子の方々もその児童館を利用して、遊びを通じてみんなと親御さんの帰るまでの生活ができるということになるわけでございます。それで、児童館につきましても、運営要綱によりまして児童厚生員を置きましていろいろな指導をやっておるというわけで、先ほど大臣からもお話がございましたように、児童館の整備というものを今後どんどん進めていきたい。
しかし、児童館の整備ができるまでの間、いわゆるかぎっ子問題を解決する施策として児童育成クラブというものがある。したがって、児童館が整備をされれば児童育成クラブというものはそこに吸収されるということになるわけでございます。
長くなって恐縮でございますが、先生おっしゃいますように、児童館ができたら児童育成クラブの機能が失われることがあるのじゃないか、そこが心配だということだと思いますが、私どもは、その地域の実情あるいは対象者のいろいろな形態を考慮しながら運営を図っていかなければならぬと思います。たとえて言いますと、やや平たい例になるかと思いますけれども、一般の子供さんは学校から帰っておやつを済ませて児童館へ遊びに行く。ところが、いわゆるかぎっ子の方は学校から直接児童館に行かれる。それで、親御さんからの御依頼もあって、そこでおやつを食べて、それからみんなで遊ぶというような場合もあろうかと思います。そういった場合にどういった運営をしていくのがいいのか、その辺は児童館によっていろいろ知恵をしぼっていかなければならぬ。
いずれにしても、児童館の整備を中心にして健全育成対策を進めると同時に、かぎっ子問題の対策もこれによって進めていくのが私どもの基本施策として努力をしておるところでございます。
#284
○三浦(久)委員 そうしますと、政府の方針としては、児童館の運営一般で解消してしまうということになりますね。ただ児童館をつくっていればいいんだ、そして学童保育クラブはそれに吸収するというわけですから。それでいわゆる学童保育をやるための専門の部屋とか専門の指導員とか、そういうものは置かないということでしょう。置くような方針ではない、それは地域がやりたければやりなさい、こういうことですか。#285
○正木政府委員 どうも私の説明が悪いのかもしれませんが、児童育成クラブというのは、先生御案内のように、児童館ができるまで、たとえば地域の福祉センターであるとか寺社を利用してかぎっ子対策をやるというものでございます。児童館はそれよりももっと広い機能を持っておる。一般の児童の健全育成、児童の厚生員もおりますし、集会室もある、遊戯室もある、そういう中で児童育成クラブで対象にしておったかぎっ子を受け入れて処遇できる機能を持ち合わせたものが児童館というふうに私どもは考えておるわけでございます。あとは、その児童館の中でかぎっ子の方々と一般の児童との間で一体どういう取り扱いをやるかというのは、それぞれの地域の実情に応じて知恵をしぼっていかなければならぬということで、機能的には児童館というのは非常に広い機能を持っておるということを御理解いただきたいと思います。#286
○三浦(久)委員 いや、それはわかっているのですよ。だから、そういう一般の児童を対象にした機能だけしか果たさせないというのでは、学童保育をやらないということにしかならないのですよ。そうでしょう。いまのお母さん、お父さんたちの要求というのは、専門の部屋をつくってください、専門の指導員を置いてください、そしていま児童育成クラブでやっているような保育の内容を行ってくださいということだと私は思うのですよ。しかし、局長さんは、私のそういう質問に対して御答弁なさってないのです。じゃ、児童館は学童保育のための専門の部屋をつくる、それで専門の指導員も置く、そういう方針になっているのですか、どうでしょうか。もちろんそれだけじゃありませんよ。一般の機能のほかにという意味ですよ。
#287
○正木政府委員 どうも繰り返しになるようで申しわけないのですが、児童館の運営要綱、先生も十分御案内のとおりなのでございますが、ここでは、職員は二人以上の児童厚生員を置くほか、必要に応じてその他の職員を置くこととなっております。ただ単に児童館で子供が勝手に遊んでおるということじゃなくて、子供の健全育成という面で児童厚生員がいろいろ指導をしておるわけでございます。したがって、学童保育ということを先生はおっしゃいますけれども、要するに、学齢期に達して御両親がお働きに出ているためにお家へ帰ってもだれもいない、その方々が児童館に来て、児童厚生員の指導のもとに健全な遊びを通じてやっていく、これは児童館は児童育成クラブの機能を十分吸収したものとして機能しておるということは間違いないというふうに思うわけでございます。
#288
○三浦(久)委員 いや、それは全然違うと思いますよ。だって、それはそうしたら一般の児童対策じゃありませんか。そうでしょう。それだけでいいという考えじゃありませんか。だって、児童館に遊びに来る子供、これはいつ来てもいいんでしょう、いつ帰ってもいいんでしょう。それだったらかぎっ子対策にならないじゃありませんか。だから私は、専門の部屋があって、もちろんその部屋から出ちゃいけないということじゃありませんよ、一般の児童とも交流をしながら、しかしそういうかぎっ子に対しては専門の指導員がおって、そしてやはりお母さんが来るまでは、どこか表に出ていくというようなことじゃなくてちゃんと預かる、そういうような機能をやはり持たせなければ後退にしかならないじゃないですか、児童館をつくっても。あなたのおっしゃっているのは一般の児童対策を言っているだけの話なんですよ。そうじゃないですか。#289
○正木政府委員 どうも私の説明が悪いので申しわけないと思うのですが、児童館におきましては、先ほども申しましたように、二人以上の専任の児童厚生員を置き、そして必要に応じてその他の職員を置くということで、やはり児童館の機能というのはそれぞれの子供のニーズに応じて処遇していくということでございます。それから、先生おっしゃいますように、児童館というのは一般の児童のことを考えておるので、かぎっ子のことはらち外になってしまうんじゃないか、私はそうは思いません。かぎっ子のニーズに応じた児童館運営というものをやっていくというのは、これは当然なことなんで、その点御心配はないというふうに思っております。
#290
○三浦(久)委員 いや、それはあなた、もちろんかぎっ子は除くとかなんとかという意味じゃありませんよ。だけれども、一般の児童対策しかやってないということじゃありませんか。それじゃお尋ねしますが、いわゆる学童保育というのは何ですか。
#291
○正木政府委員 お答えいたします。別に法律上学童保育という用語があるわけではございませんが、強いて申しますと、児童福祉法の三十九条に、保育所というのは「保育に欠けるその乳児又は幼児を保育することを目的とする施設」である。三十九条の二項に、「保育に欠けるその他の児童を保育することができる。」という規定があるわけでございます。
先生御案内のように、児童というのは十八歳未満を言っておるわけですが、乳児、幼児、少年ということになっておりまして、少年というのは学齢期に達した子供たちが少年になるわけでございます。その子供たちでも、やはりお父さん、お母さんがお留守の場合には保育に欠ける面が出てくるんじゃないか。しかし、この子供さん方は学校に行っておるわけでございます。学校に行って帰ってくる、学校教育との関係というものも考えなければいかぬであろうし、一方において児童館というものが整備されてくれば、そういう子供たちの処遇というものが十分機能として果たせる、一般の子供たちと。
したがって、私どもとしては児童館の整備というものを児童健全育成の目玉といいますか柱として考えておるわけでございますが、特に都市児童館、話が長くなって申しわけございませんが、都市児童館なんというのはいわゆる留守家庭児童を念頭に置いてできた制度でございますし、児童の健全育成と同時に、かぎっ子対策という面でも十分な機能を果たしていくというふうに思っておるわけでございます。
#292
○三浦(久)委員 そうするとあれですか、学童保育というのは児童福祉法の第三十九条第二項によって行う保育を言うということですか。#293
○正木政府委員 お答えいたします。先ほども申し上げましたが、学童保育という言葉は法律上出てこないわけでございます。したがって、先生の御質問の趣旨を私ども受けとめまして、やはり学童ですから学校に通っておる、就学年齢に達した子供たちの保育問題についてどう考えるのだ、それはとりもなおさずかぎっ子対策の問題ではないかということでお答えをしておるつもりでございます。
#294
○三浦(久)委員 そうすると、現在都市児童健全育成事業の中でやっている児童育成クラブ、この児童育成クラブが行っているものは学童保育と言うのですか。#295
○正木政府委員 お答えいたします。その学童保育というもの、先生のお考えになっておる学童保育というものがどうも私十分まだつかみ切れないために不十分なお答えをしているような感じがするわけでございますが、恐らく先生のおっしゃっているのは、私の理解とすれば、学童で保育に欠けるようなかぎっ子の問題についての対策はどうするのだということだと思います。
〔東家委員長代理退席、委員長着席〕
とすれば、いわゆるかぎっ予対策というものは児童育成クラブというものでやっておる。その児童育成クラブというのは、繰り返しになりますが、児童館ができるまでの次善の策としてやっておる制度であるということでございます。
#296
○三浦(久)委員 文部省にちょっとお尋ねしますが、あなたたちは学童保育という問題についてどういうふうに対処してきていますか。#297
○古村説明員 文部省の立場からお答えいたしますと、学校に行っている子供が家へ帰っても親がいない、親が働きに行っておるという子供について保育をするということだと思います。したがいまして、その仕事は児童福祉という観点からなされるべき問題であるというふうに思っております。#298
○三浦(久)委員 文部省は最近学童保育に物すごく消極的ですね。どんどん手を引くというようなことですが、五十六年の四月十七日、いま隣にいる井上さんが質問していますね、学童保育について。検討すると言っているんですが、どういうふうに検討されたんですか、いままで。#299
○古村説明員 前回の御質問の趣旨は、学校の施設の利用との関係で御質問があったというふうに伺っておりますが、学校の施設というのは本来の学校教育を行うために設けた施設であることは当然のことでございますけれども、学校教育の目的を達成するのに支障がない範囲でその他の事業に対して利用させることができるということで、学童保育の点においても、学校教育上支障がなければそういった学校施設をある程度使用させてもいいということではなかろうかというふうに思っております。#300
○三浦(久)委員 もう時間がありませんのでやめますけれども、厚生省も文部省も、また機会があったらこの問題はもう少し時間をとって私質問をいたしたいと思いますが、きょうは、ほかに迷惑をかけますのでやめます。#301
○古屋委員長 神田厚君。#302
○神田委員 まず最初に、臨調の第三次答申の中で触れられております「医療保険制度の合理化」の問題につきまして御質問をさしていただきます。この臨調の第三次答申の中で、「医療保険制度の合理化」の問題といたしまして、「医療保険の在り方として、高額な医療については適切に保障する一方、軽費な医療については受益者負担を求めるという方向で制度的改善を図る。また、本人、家族間の格差の問題を含め給付率の見直しを行う。」こういうような答申が出ておりますが、これらの問題につきましてはどういう方向で御検討なさっておられるのでありましょうか、お聞かせいただきます。
#303
○吉村政府委員 お答えを申し上げます。私ども、臨調の答申を踏まえると同時に、年々増額をしていく医療費に対応しまして、省内に医療費適正化対策推進本部というものを設けまして、省を挙げて検討をしておるところでございます。
いま先生御指摘の、軽費医療の自己負担、そして重度医療については厚くすべしという臨調の御答申でございますが、これもいま検討はいたしております。ただ、私ども、この問題につきましては、技術的に非常にむずかしい面があるのではないかというような感触を持っております。したがって、まだ結論が出たわけではございませんが、いろいろな角度から検討いたしている最中でございます。
#304
○神田委員 いろいろな角度からということでありますが、方向としては、軽費医療については受益者負担を求めるという問題についてはいろいろ問題が多いというふうなことで御検討なさっているわけでありますか。#305
○吉村政府委員 保険給付におきまして、受益者負担と申しますか、患者の自己負担と申しますか、そういうものが必要であるという考え方には変わりはございません。私ども必要である。ただし、どういう形で受益者負担と申しますか、患者の自己負担というものを課するか、ここが問題でございまして、臨調の御指摘の、軽度の医療について自己負担をすべし、それから重度の医療については自己負担を軽減すべし、こういうことは考え方としては非常にわかるのでありますが、軽度医療と童度医療をどこでけじめをつけるかとか、あるいは幾ら以上の医療費を重度と考えるか、あるいは幾ら以下を軽度の医療と考えるか、いろいろ技術的に割り切れない問題がございまして、私ども自己負担そのものについて否定をしておるわけではございませんが、重度、軽度に医療を分けて自己負担の区別をするということについては、そのまま実施することはむずかしいのではないか、こういう感触を持っております。#306
○神田委員 関連しまして、新聞報道などによりますと、ここのところ高額医療の請求が非常に多くなってきているというようなことが出ておりますが、その実態といいますか、傾向といいますか、それらはどういうふうになっておりますか。#307
○吉村政府委員 ただいま具体的な資料は持ち合わせておりませんが、先生御指摘のように、最近の傾向として高額医療費というものが非常にふえておることは事実でございます。たとえば、ある関西の医科大学で一カ月五千三百万円、一人の医療費でございますが、そういう請求が出る等、一千万を超える医療費の請求というものが次第にふえてきておることは事実でございます。#308
○神田委員 それらについては、厚生省としてはどういうふうな考え方をお持ちでありますか。#309
○吉村政府委員 個々のケースでございますので、どこまでが適正だ、どこからが不適正だということはなかなかむずかしいのでありますが、たとえば五千三百万円ぐらいの請求がありました件につきましては、審査の上、三千万円ぐらい査定をした、こういうことをしたわけでありますが、高額医療費につきましては、特に重点審査の対象にいたしまして、支払基金の中に重点審査のための専門部会を設けまして、一定点数以上のレセプト請求につきましては特に厳格な審査をする、こういう体制で現在臨んでおるところでございます。#310
○神田委員 同じく「医療保険制度の合理化」の答申の中で、「国民健康保険制度については、地域医療保険としての性格を踏まえ、広域化等保険制度としての安定化を図る方向で改革を行う。また、国庫補助制度の改善合理化を検討する。」さらに、次の項目といたしまして「被用者保険制度の中には、日雇労働者健康保険制度等対象が限定され、財政的安定が期し難いものがあるが、その制度の在り方を含め早急に検討を加え、合理化を図る。」こういうふうになっておりますが、これらについてはどういうふうな方向で御検討がされておりますか。#311
○吉村政府委員 国民健康保険につきましては、やはりいま先生御指摘の高額医療費の請求がたとえば一件出たとすれば、ある国民健康保険組合は崩壊の危機に直面する、こういうような事態に相なります。したがって、経営主体そのものを広域化していくという方向が一つと、それに至る一段階と申しますか、そういう高額医療費だけを対象にいたしまして共同事業をする、それによりまして、高額医療費が発生した場合に保険者が財政運営に破綻を来すというようなことを緩和していってはどうかというような考え方で、昭和五十八年度におきましては、高額医療費に関する共同事業を実施するということで考えてまいりたいと思っております。
それから、日雇労働者健康保険制度でございますが、これにつきましては、昨年十月二十五日に社会保険審議会に諮問をいたしまして、現在、審議会で審議中でございます。遠からぬ将来、一定の方向が打ち出されるものと考えております。その方向に従って私どもは必要な措置を講じてまいりたい、こういうことで進んでおります。
#312
○神田委員 臨調答申の問題は、なお医療従事者の需給バランスの問題その他がございますが、後ほど質問させていただくことにしまして、次に、大臣にちょっとお伺いしたいのであります。老人保健法が施行されまして約三カ月たったわけでありますが、この三カ月を経過しまして、ひとつ御感想といいますか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
#313
○林国務大臣 老人保健法を二月から施行いたしまして、いろいろなことが言われてきたわけで、新聞等でもいろいろな御議論がありました。しかし、私も地方を回りましたときに、どのようになっているかという話も直接に各地の医師会の方々にお聞きをしましたし、厚生省の当局といたしましても都道府県その他に聞いてみておるわけでございますが、新聞その他で言われているような動きというものは実はない。何か老人追い出しであるとかなんとかというような話がありますけれども、そういったことは余りないのだ、もしもそういったことがあるならば、それは、それを奇貨として採算の合わないようなところをやっていく、こういうふうな話ではないかというふうに私は受けとめているわけであります。また、これからいろいろやっていかなければならない点がある。老人保健法の中では、四十歳からの保健というものを、事前の予防体制というものをしっかりつくっていかなければならない。これに対しまして、いますぐになかなかできないわけでありますから、保健婦さんの問題であるとか診療体制の問題であるとか健診体制の問題であるとか、そういった問題をいろいろやっていかなければならない。
いろいろな方面から御激励をいただいておるところでありまして、こういったものを順次整備を図って、老人保健法が目的としているところの豊かな老後における健康な生活の実現に努力をしてまいりたい、こういう決心でございます。
#314
○神田委員 事務当局の方で結構でございますが、三カ月経過をしまして、たとえば一部負担金が導入をされた結果、受診の抑制につながっているようなことがないかどうか、あるいは入院費を一日三百円、二カ月ということで患者さんが支払うようになって、そういうことについての負担増の問題はないかどうか、さらには、六〇%の問題に関連しまして、入院、退院、転院等の問題が起きてないかどうか、この辺につきまして、ひとつお考えをお示しいただきたいと思います。#315
○吉原政府委員 ことしの二月から老人保健法が施行になったわけでございますけれども、二月、三月あるいは四月の診療状況、受診状況が具体的にどういうふうなことになっているのかということが、実はいま集計中でございまして、まだ結果が出ておりません。十分掌握をしておりませんが、いま御質問の一部負担導入による受診抑制というようなことがあったかどうかという点につきましては、私どもとしてはそういったような状況はないというふうに考えておりますし、外来の場合四百円、入院の場合一日三百円という一部負担というものが老人の方々にとってそう無理な負担ではなかったのではないか、十分御理解をいただいて御協力をいただいているというふうに思っているわけでございます。それから、診療報酬で、新しい考え方に立ちまして特例許可病院あるいは許可外病院という考え方を入れておりますけれども、これにつきましても、いま大臣から御答弁しましたように、若干誤解といった面もあったかと思いますけれども、現在では私どもの考え方が十分理解をされまして、円滑な運営がされているというふうに考えております。
#316
○神田委員 これはまだ三カ月しか経過しておりませんから確定的なことで議論するわけにいきませんが、一部報道等によりましても、いわゆる老人の病院からの追い出しが始まっているとか、そういうふうな深刻な問題も出ているようであります。やはり老人保健法が法本来の目的を達成するように、老人の老後の健康について国がきちんと健康管理を全うできるような方向でなされなければならないわけでありますが、どうも現場の実情を見ておりますと十二分に治療を施せないような傾向がある。現場のお医者さんなんかともいろいろお話をしているのでありますが、重病になった老人はかえって十二分な治療を受けられないような傾向に流れているということも聞いておりまして、実はその点非常に心配をしているわけでありますが、現場からといいますか、現象面でのそういう傾向についてはどういうふうにお考えになりますか。#317
○吉原政府委員 老人保健法は、老人の方にとって必要な医療はあくまでもしていく。ただ、いままでの傾向として、若干入院医療に偏っている、あるいは投薬や検査が多過ぎるというような面も確かにございましたので、そういった面は是正をしたい。一応入院治療の段階が終わって家庭に帰れるという方については、できるだけ在宅で療養が続けていかれるような状況をつくっていきたい、こういう考え方でやっているわけでございまして、この診療報酬を決めるに当たりましては、医療担当者、診療担当者も入りました中医協というところで十分御審議をいただき、いま御質問のような御心配がないということで御答申をいただいたわけでございます。ただ、実際にやってみまして、先ほどから申し上げておりますような危惧でありますとかあるいは御指摘が一部にあったことは事実でございますけれども、私どもそれだけに、医療機関が実際どういうふうな対応をしているか、県を通じて十分注意深く見守っておりますけれども、御指摘のような御心配はいまのところ私どもとしてはなかったというふうに思っておりますが、今後とも十分気をつけて見守ってまいりたいというふうに思います。
#318
○神田委員 老人の健康管理の問題ですが、非常にいろんなケースがありますけれども、必ずしも、病人になってしまった老人が温かく家庭で保護され、療養を受けているというふうなことばかりではないという現状があるのですね。ですから、そういう者を病院から、治療が終わったという形で、いろんなケースがありますけれども、家庭に戻しても、家族から隔離されて、農家で言いますれば納屋のようなところに隔離されて、余り親身なめんどうも見ていただけないで、大変孤独なかっこうで療養といいますか放置されているような事情もあるのですね。ですから、その辺のところも含めて、この問題については、退院させたたとえば幾つかのケースがあれば、その後どういうふうな形で家庭の方でそれがやられているのか、社会問題としてもこれは非常に大きな問題になってくると私は思いますので、その辺も十二分に追跡調査をしていただいて、調査結果に基づいて是正する場合におきましては、行政の指導の中でしていただきたいというようなことをひとつお願いをしておきたいというふうに思っております。
それから、これは、医療費を抑制するという基本的な考え方には私も大賛成なんでありますが、同時に、現在大変大きく取り上げられておりますのは、私立の、私的な病院や医院等の経営不振と倒産の傾向がある、約五百なりあるいはそれ以上の私的病院の経営不振というものが取りざたされているというような情勢があるようであります。これにはいろいろ原因もあるでありましょうが、その辺のところはどういうふうにお考えでありますか。
#319
○吉村政府委員 私的病院の倒産の件数がふえておる、事実、若干ふえておるような数字がございます。しかし、その倒産の中身を検討いたしますと、直接医療経営上の問題というよりも、たとえば他の事業に手を出して経常が行き詰まった、そういうようなケースが多いわけでございます。倒産の件数そのものについて私どもは余り神経をとがらせておるというようなことはこざいません。それでは一般的に私的病院の経営が苦しくないかということにつきましては、相当苦しくなっておるのではないか、私はこういう感じは持っております。ただ、病院の経営が次第に苦しくなっておるということは一応感覚的に理解されることは事実でございますが、現在のところ、診療報酬か何かの措置によって手当てをするという必要があるかどうかということにつきましては、まだそこまで追い詰められていないのではないか、私どもこういうような感じを持っておるわけでございます。
#320
○神田委員 そういうことでありますれば、これ以上のいろいろな問題がはっきりしてくるような場合には、そういう形で救済といいますか、それも考えるということでありますか。#321
○吉村政府委員 いい医療を行い、いい経営を行っておる医療機関が苦しむ、そして経営の危機に陥るということは避けたい、私どもはこういうことで事態を見ているつもりでございます。#322
○神田委員 続きまして、先ほどの臨調の答申の関連でありますが、医療従事者の問題について指摘がされております。「将来の需給バランスを見通しつつ、適切な養成に努める。特に、医師については過剰を招かないよう合理的な医師養成計画を樹立する。」というふうなことで第三次答申が出ております。この問題につきましては、現在省内でどういうふうな御検討がなされておりますか。#323
○大谷政府委員 従来、医師につきましては昭和六十年までに人口十万人対百五十人を確保する、こういうことを目標として医科大学の整備等を進めてきたわけでございます。この目標は本年中に達成することが確実になっているわけでございます。しかし、地域的に見ますと、いまだに僻地や人口急増地域等におきましては医師数が不足いたしておりまして、医療に事欠いているということも実態としてございます。また一方では、こういうふうに目標値を確保はいたしましたけれども、二十一世紀に向けますと、これがさらにペースを速めまして相当数に達するのではないか、こういうふうな問題もございます。したがいまして、私どもといたしましては、適正な医師数というふうな問題につきまして現在文部省と協議を進めておりまして、この問題についてできるだけ早く対処する方針を打ち出したいというふうに考えているわけでございます。
#324
○神田委員 これは私どもの書記長が予算委員会その他でも何回か取り上げて御質問をしている問題でありますが、特に歯科医師等の過剰の問題も出ているようでありまして、それらの点につきましては、ひとつ当局におきましてより合理的な医師の養成あるいは配置についての計画をお立ていただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。続いて、同時に医師の質の問題がいろいろ言われてきました。近年は特にそういうふうなことが強く言われているということでもありませんけれども、何といいましても人の命を預かる大変崇高な使命を持った職業でありますから、医師の質の問題というのは大変重要だと私は思っております。
それに関連しまして、医学生の選抜方法あるいはそれの教育内容、さらには医師国家試験などの改善の問題、こういうふうな問題について厚生省としていろいろお考えになっているところがあるのかどうか。さらには、医師免許を取った後の、卒後の教育や生涯教育等について厚生省として何か考えているところがあるかどうか、その辺につきましてお尋ねをしたいと思います。
#325
○大谷政府委員 まず、医師としての第一の関門であります医師国家試験についてでございますが、医師国家試験は、保健、医療の担い手となれるかどうかという非常に大事な国家試験でございます。これにつきまして、適正かつ厳正な試験というのがいかにあるべきかという問題については従来からも検討してきたところでございますが、特に、昨年十一月から厚生省に医師国家試験制度改善委員会というものを設けまして、順天堂の懸田先生に委員長になっていただきまして、当面急いで改善すべき事項は何か、また将来長期にわたって改善すべき点は何かというふうなことで、さまざまな先生方にお入りいただきまして御検討をいただいてきたわけでございます。幸いこれにつきまして御意見がまとまってまいりまして、くしくもきょう懸田委員長から厚生大臣に意見が手渡されることになっているわけでございます。
その内容につきましては、国家試験問題を作成するプロセス、たとえば試験委員の問題あるいはやり方の問題というふうな問題作成のプロセス、また試験問題そのものに外国で行われておりますようないわゆるプール制を導入する、あるいはまた国家試験の問題の範囲でありますとかレベルにつきましてのガイドラインを改善していく方策、あるいはそういった試験内容の改善にあわせまして、従来年二回実施してきたことにつきまして年一回実施するというふうな内容が盛り込まれております意見書がきょう厚生大臣に提出されることになっておりまして、私どもといたしましては、この意見書をいただきました暁におきまして、全力を挙げて国家試験制度の改善のために実施に向かって努力をいたしたいというふうに考えております。
それから、医師が国家試験をパスいたしまして実地の医療に向かうわけでございますが、当初二年間にいわゆる臨床研修というものを実施することになっております。厚生大臣が指定いたしました臨床研修病院で研修を行うわけでございますが、臨床研修病院におきます研修のやり方等につきましても、厚生省といたしましては、多くの研究班とかいろいろなことを通じましてこの改善に努力してきたところでございますが、最近では、臨床研修病院の教育に当たる方々が集まりましてさらにそういった方法を討議するというふうな研究協議会というものを設置され、厚生省としてもこれを支援している等、いろいろ臨床研修病院における臨床研修のあり方の改善に努力をいたしているわけでございます。
さらには、臨床研修を終わりました医師が地域で実際に医療に当たりましたときに、医療の内容は日進月歩の状況でございますから、そういったものを実地でやりながらまた吸収していくというようなことのために、地域における医療研修センターというものを全国の基幹的な病院に設置することといたしまして、厚生省といたしましては、この地域医療研修センターをできるだけ数多く設置いたしまして、医師が生涯にわたって新しい医学、医療の進歩、それを実地に移していかれるような方途を講じたい。
こういうふうなことで、私どもは国家試験から生涯にわたる研修につきましての改善策というものを実際にやっていこうということで努力をいたしておるわけでございます。
#326
○神田委員 ただいま局長の方から丁寧な答弁がございましたが、意見書の提出があるということで、特に大臣からそれらの問題に対して今後どういうふうに取り組んでいくのかということについての御決意をお聞かせいただきたいと思うのであります。#327
○林国務大臣 いま局長から御答弁申し上げましたが、実は私はまだいただいていないのでございまして、この委員会が済みましてからいただくという予定になっているというふうに承っております。医者の資格の問題につきましては、いろいろな方面から御議論がありましたり御批判もあったところでありますから、そういった点を踏まえて各委員の方々で真剣に検討されたものでもございますし、その答申は最大限に尊重いたしましてそれの実現に努めたい、こういうふうに考えております。
#328
○神田委員 続きまして、医療の地域格差の問題であります。医師の問題もそうでありますが、あるいは医療設備等の問題も含めまして、医療の地域格差が進んでいるような感じがするのであります。たとえば、十万人当たりのお医者さんの数でも、埼玉県あるいは沖縄、千葉、茨城等々を見ていきますと非常に格差が広がってきている。この問題につきましては、ちょうど医師が過剰な状態でありますから、それを一つのチャンスとしまして、この医療格差の是正に、行政なり医師なり医療機関なり、あるいは住民の話し合いで、より計画的な地域医療の確立をすべきではないかというふうに考えておるのですが、その辺のところについてはどういうふうにお考えになりますか。
#329
○林国務大臣 医師が地域的に偏在をしているという問題は、先生御指摘のとおりでありまして、たとえば病院、病床の偏在をしているところ、それから医師が偏在をしているところ、それで、病院、病床が非常に多いというのは、高知県、石川県、徳島県、岡山県、香川県というのが順番に並んでいます。医者が多いのは、徳島、石川、鳥取、京都、東京と、こう並んでおりますが、二つ入っていますのは、徳島と石川はどちらも高い方に入っている、こういうことでありますし、少ない方になりますと、病院、病床の少ないのは千葉、沖縄、埼玉、静岡、神奈川という順番になっている。それから医者の方の少ないのは、埼玉、沖縄、千葉、茨城、福井、こういうふうな順番になっておりまして、千葉、沖縄というのはこの中にどちらも入っておるわけですね。恐らく沖縄はなかなかお医者さんが行かれない、こういうふうな話でしょうし、千葉県などは人口が非常に急増しているからということだろうと思いますが、そういったような状況に対しまして、やはり適切な対策をしていかなければならないと思います。全体としては、私は、医師の過剰時代と言われるまでに医師の数もふえてきておりますし、医療の体制につきましては欧米諸国に遜色のないところまで、医療水準としては相当な水準に日本は来ているのだろうと思っていますけれども、御指摘のような地域的な偏在がございます。そういった点はやはりこれから考えていかなければならないと思いますし、特に、多様化をしていく医療の問題、それから最近などでは大変機械化されたり、その他の点で高度化されてきておりますから、そうした問題に対しまして適正な医療をあまねく確保していくということをやっていくことが必要だろうと思います。
そうした意味では、やはりそれぞれの地域におけるところの医療をどうしていくかということを考えることが必要でありますし、医療法の改正案をこの三月二十五日に国会にお願いをしているのも、そうした地域の中における医療体制の整備ということを考えていこうということでありまして、この法案の早期成立に向けて今後とも一層努力していきたいと思っております。先生にもよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。
#330
○神田委員 次に、薬価問題について二、三お尋ねをしたいと思います。一部報道によりますれば、保険薬の見直しが進められているというようなことが言われておりまして、薬価基準の見直しが話題になっておりますが、その作業の進みぐあいといいますか、それはどの程度まで進んでいるのでありましょうか。
#331
○吉村政府委員 先ほどお答え申し上げましたときにも申し上げたのでございますが、いま私ども医療費適正化総合対策推進本部を設置していろいろな角度から検討をしておるわけでございますが、その検討項目といたしまして、医療保険における給付の中身についても当然検討をしております。そして、従来から指摘されておった事項とか、あるいは従来提言があったとか提案があったとかという事項につきまして網羅的に検討をしておるわけでございます。したがって、新聞の報道にも出ましたビタミン剤等の問題につきましても、検討をしておることは事実であります。ただし、現在あくまで事務レベルの検討でございまして、厚生省としてこう方針を決めた、こういうようなことではございません。したがって、現在のところ厚生省の方針が決まった、こういうことではないという段階でございまして、いろいろな角度から検討をしておるというのが実情でございます。
#332
○神田委員 この新聞の報道によりますと、「現在、保険が適用されているビタミン剤や総合感冒剤(風邪薬)、漢方薬などを薬価基準から削除する」というような書き方がされておりますが、こういうふうな報道については、したがってそれは真意を伝えてないというようなことでありますか。#333
○吉村政府委員 削除するということを決めたというように受け取られるならば、それは真意を伝えてない、こういうことになると思います。検討をしておるということなら、これは事実でございます。#334
○神田委員 大衆薬といいますか、大変需要も多い薬でありますが、これらについて、それを薬価基準から外していくというようなことになりますと、非常に大きな問題もあると思うのであります。したがいまして私は、患者はもちろんそうでありますが、医療機関あるいは関係各審議会等の意見も十分に聴取をして、国民医療の混乱を生じさせないような十分な配慮のもとに検討していかなければならないのではないかと思っておりますが、その点はいかがでありますか。#335
○吉村政府委員 おっしゃるとおりでございまして、私どもが独断で決めて独断で実施をしようという気持ちは毛頭ございません。#336
○神田委員 さらにもう一点でありますが、銘柄別の問題でございます。「同一規格、同一成分でありながら、価格差を設けている現行の銘柄別収載を是正する」というふうなことでこれも報じられていますが、この問題につきましてはどうでございますか。#337
○吉村政府委員 薬価基準の問題につきましても当然収載方式を含めまして検討しておることは事実でございますが、薬価基準の収載方式を検討するに当たりましては、私ども考慮に入れるべき重要なポイントとしては、医薬品の市場価格が十分反映されるというのが一つ、それから適正な市場競争が確保されることが第二、それから財政的、経済的な効果を十分持ち得ること、新薬開発についての及ぼす影響をどう考えるか、こういうような観点から収載方式というものを検討しておるわけでございます。ただ、それでは現在の銘柄別薬価基準をやめて、従来やっておりましたような統一限定方式というようなものに直ちに切りかえていくのが適当かどうか、こういう点につきましては、銘柄別につきましてもやはり長所と短所がございますし、統一限定方式につきましても長所と短所があることは事実でございまして、銘柄別収載方式に問題点があるからといって直ちにこれを切りかえる、こういうような考え方は現在のところは持っておらないわけでございまして、銘柄別と統一限定方式とのうまい調和点はないだろうか、こういうようなことで種々工夫をこらしているのが現在の段階でございます。
#338
○神田委員 局長の御意見で大体わかりますが、私もやはりこの銘柄別問題というのは大変むずかしい問題だと思っております。しかしながら、いろいろ財政効果の面からいいましても、果たして限定列記統一方式の方がいいのかどうかといいますと大変問題がございますし、さらには研究開発や情報管理活動などの側面を見ましても、この銘柄別によって果たされているそれぞれの役割りなどにつきましても高く評価をしていかなければならないし、あるいは、そういういろいろなことを考えていきますれば、他の銘柄の価格によりまして薬価基準が決定されるということが、既存の製品にとっても、その製法改良による合理化努力、品質向上努力を阻害するおそれがあるのではないかというような問題も含めまして、どうぞひとつこの銘柄別制度の問題には、いろいろ問題はあるでしょうけれども、慎重なお取り組みをいただきたいというふうに考えているところであります。その辺のところを含めまして、大臣のお考えをまとめてお聞かせいただきたいと思います。#339
○林国務大臣 医療というものが国民の信頼を受けたものでなければならないし、またそれが合理的な価格によって供給されるということは必要なことだと私は思います。医療の中で日本は特に薬の占める比率が多いということもございますし、その薬が適正な価格で医療の素材として供給されるということも考えていかなければならないと思います。そういった中で、銘柄別であるとか統一であるとか、私はそれぞれの制度に長短いろいろあるのだろうと思います。私は、本来自由経済論者でありますから、自由経済のメカニズムの中であるならば、同じ効果を持っているもの、同じ品質のもの、同じ数量のものは、やはり同じ値段であるというのが市場メカニズムで動いて出てくる話だろうと思います。ところが、システムがそういう市場メカニズムになっておりませんから、そこでいろいろなことを考えていかなければならないと思います。と同時に、先生御指摘のように薬の開発であるとか医療技術の開発とかというものがいろいろとございますから、そういったものを取り入れていかなければこれからの医療の進歩にも追いついていかない、そういったことをどう取り入れていくかということも考えていく必要があるだろうと思いますので、やはりそういったものを総合的に考えて体制をつくっていくということが必要だろうと思います。
基本として考えるべきことは、本当に国民のためにどういうふうなことをやったならばいい医療がしかも財政的な効果も考えてよくできるかということをわれわれは基本に置いてこれからも検討していかなければならない問題だろうと考えているところであります。
#340
○神田委員 時間がそろそろ参りましたので、最後に大臣にお伺いをしたいのでありますが、厚生省は医療費の抑制というもの、これが基本になっているようでありますが、医療費の抑制は、こういう財政の大変厳しい折でありますからもちろんこれに努めていかなければなりませんけれども、そのことによりまして適正な医療を受けられない、あるいは適正な医療を受けることが阻害をされている、こういう傾向が出てきておるように私は感じておるのです。したがって、適正な医療を国民がきちんと受けられるような形での医療体制を確保していくためには、医療費の抑制というものを進めながら、なお適正医療の確保を進めるという、非常にむずかしい両面を持っていかなければならない。ということは、現場におきまして実際にどういうふうに医療が展開をされているのか、こういう状況の中でどういうふうな形で展開をされているのかということをよく見きわめて指導をしていただきたいというふうなことを感じておるのでありますが、ひとつその辺につきましてお考えをお聞かせいただきたいと思います。#341
○林国務大臣 先ほども申し上げましたように、やはり国民のための医療ということでございますから、金がないから医療をやめてしまえとか足りないから少し何か値切ろうというような話ではいかぬのだろうと私は思います。ただ、医療のいろいろなものも進歩してきておりますし、薬の方も進歩している、いろいろな医療機械その他の技術も非常に進歩してきているわけでありますし、それから医療の体制におきましても、情報化時代に入りましていろいろなコンピューターシステムその他ということもまた出てくるわけであります。そういったものを踏まえてやっていかなければなりませんので、単に医療というお医者と患者との関係だけでなくて、社会の動きというものも注視しながら、本当にいい医療を国民の皆さん方に安心してやっていただけるというようなことを考えていかなければならないと思っているところでございまして、そういった方向でこれからも努力をいたしたい、こういうふうに思います。
#342
○神田委員 終わります。ありがとうございました。#343
○古屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後四時四十九分散会