1982/05/19 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 決算委員会 第6号
#1
第098回国会 決算委員会 第6号昭和五十八年五月十九日(木曜日)
午後四時三十三分開議
出席委員
委員長 古屋 亨君
理事 近藤 元次君 理事 東家 嘉幸君
理事 中川 秀直君 理事 中村 弘海君
理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君
理事 春田 重昭君 理事 神田 厚君
伊東 正義君 植竹 繁雄君
小坂徳三郎君 桜井 新君
志賀 節君 白M 仁吉君
近岡理一郎君 森下 元晴君
高田 富之君 田中 昭二君
宮田 早苗君 三浦 久君
楢崎弥之助君
出席国務大臣
内閣総理大臣 中曽根康弘君
法 務 大 臣 秦野 章君
外 務 大 臣 安倍晋太郎君
大 蔵 大 臣 竹下 登君
文 部 大 臣 瀬戸山三男君
厚 生 大 臣 林 義郎君
農林水産大臣 金子 岩三君
通商産業大臣 山中 貞則君
運 輸 大 臣 長谷川 峻君
郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君
労 働 大 臣 大野 明君
建 設 大 臣 内海 英男君
自 治 大 臣
国家公安委員会
委員長 山本 幸雄君
国 務 大 臣
(内閣官房長官) 後藤田正晴君
国 務 大 臣
(総理府総務長
官)
(沖縄開発庁長
官) 丹羽 兵助君
国 務 大 臣
(行政管理庁長
官) 齋藤 邦吉君
国 務 大 臣
(北海道開発庁
長官)
(国土庁長官) 加藤 六月君
国 務 大 臣
(防衛庁長官) 谷川 和穗君
国 務 大 臣
(経済企画庁長
官) 塩崎 潤君
国 務 大 臣
(科学技術庁長
官) 安田 隆明君
国 務 大 臣
(環境庁長官) 梶木 又三君
出席政府委員
内閣法制局長官 角田禮次郎君
内閣総理大臣官
房会計課長兼内
閣参事官 渡辺 尚君
総理府人事局長 藤井 良二君
警察庁警備局長 山田 英雄君
行政管理庁長官
官房会計課長 前山 勇君
防衛庁参事官 西廣 整輝君
防衛庁長官官房
長 佐々 淳行君
防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君
防衛庁人事教育
局長 上野 隆史君
防衛庁経理局長 矢崎 新二君
防衛庁装備局長 木下 博生君
防衛施設庁総務
部長 伊藤 参午君
経済企画庁長官
官房会計課長 遠山 仁人君
経済企画庁調整
局長 田中誠一郎君
経済企画庁調査
局長 廣江 運弘君
科学技術庁長官
官房長 安田 佳三君
科学技術庁長官
官房会計課長 三井 嗣郎君
環境庁長官官房
会計課長 森 孝君
沖縄開発庁総務
局会計課長 大岩 武君
国土庁長官官房
会計課長 金湖 恒隆君
法務大臣官房会
計課長 村田 恒君
外務大臣官房会
計課長 斉藤 邦彦君
外務省アジア局
長 橋本 恕君
外務省北米局長 北村 汎君
外務省欧亜局長 加藤 吉弥君
外務省経済局次
長 妹尾 正毅君
外務省経済協力
局長 柳 健一君
外務省条約局長 栗山 尚一君
外務省国際連合
局長 門田 省三君
外務省情報文化
局長 三宅 和助君
大蔵大臣官房会
計課長 冨金原俊二君
大蔵大臣官房審
議官 水野 勝君
大蔵省主計局次
長兼内閣審議官 宍倉 宗夫君
大蔵省理財局次
長 勝川 欣哉君
大蔵省国際金融
局長 大場 智満君
文部大臣官房長 高石 邦男君
文部大臣官房会
計課長 國分 正明君
文部省初等中等
教育局長 鈴木 勲君
文部省大学局長 宮地 貫一君
文部省管理局長 阿部 充夫君
厚生大臣官房会
計課長 坂本 龍彦君
農林水産大臣官
房経理課長 谷垣 孝次君
通商産業大臣官
房会計課長 鎌田 吉郎君
通商産業省貿易
局長 福川 伸次君
通商産業省機械
情報産業局長 志賀 学君
資源エネルギー
庁長官 豊島 格君
運輸大臣官房会
計課長 大塚 秀夫君
運輸省航空局長 松井 和治君
労働大臣官房長 加藤 孝君
労働省婦人少年
局長 赤松 良子君
建設大臣官房会
計課長 牧野 徹君
自治大臣官房長 矢野浩一郎君
自治大臣官房会
計課長 大塚 金久君
委員外の出席者
大蔵省主計局司
計課長 加藤 剛一君
会計検査院長 鎌田 英夫君
決算委員会調査
室長 石川 健一君
─────────────
委員の異動
五月十九日
辞任 補欠選任
河本 敏夫君 志賀 節君
同日
辞任 補欠選任
志賀 節君 河本 敏夫君
─────────────
本日の会議に付した案件
昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算
昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算
昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書
昭和五十四年度政府関係機関決算書
昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書
昭和五十四年度国有財産無償貸付状況総計算書
────◇─────
#2
○古屋委員長 これより会議を開きます。昭和五十四年度決算外二件を一括して議題といたします。
ただいまの各件は、第九十四回国会に提出され、第九十六回国会で概要説明を聴取の後、審査を行ってまいりました。
本日は、それらの経過に基づき、各件について締めくくり総括質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
#3
○井上(一)委員 まず、中曽根総理は就任以来、韓国訪問、引き続いての訪米、さらにはせんだってのASEAN訪問と大変御苦労さまでございます。なお引き続いて、国会終了後サミットに出かけられるわけでありますけれども、サミットに臨む基本的な姿勢が先日明らかにされたわけであります。
第一の柱に、内需主導型の成長を挙げていらっしゃるわけなんですね。もちろん内需主導型、このことは、公共事業の前倒し、さらには住宅設備、生活関連事業等の促進も大きな要因でありますけれども、何よりも内需拡大の大きな要因としては大型減税であります。総理がサミットという国際会議で成長政策は内需主導ということを訴えることになるわけでありますから、結果としては国民に大型減税を約束したことに相なると私は思うわけであります。そのように理解をしてよろしいでしょうか。
#4
○中曽根内閣総理大臣 所得減税につきましては、与野党の幹部の合意がございまして、その合意を誠実に実行すべく努力してまいりたいと思っている次第であります。#5
○井上(一)委員 われわれ国民の大多数が大型減税を望んでいるわけであります。間接的に国際会議で表明したことは、もはやその財源云々という弁解の余地はなくなってしまった、サミットでの総理の表明というものはもう言い逃れができないのだ、財源等に言いわけをする、そういうことはもうあり得ないのだ、くどいようでございますが、さらにもう一度、そのように理解をしてよろしいでしょうか。#6
○中曽根内閣総理大臣 サミットでどういう発言をするかということは、きのう外務委員会及び自民党の外交調査会・外交部会との合同会議で一般論を申し上げたということでございまして、具体論ということはまだ申し上げていないわけでございます。もちろん国際会議で発言したことについては、われわれは責任を持ってやるつもりでおります。
#7
○井上(一)委員 さらに私は総理に、今回のサミットに臨む姿勢として、対ソ経済制裁について伺っておきたいと思います。昨年のベルサイユ・サミットでは、対ソ経済制裁は明らかに失敗だったという意見を述べる人が多かったわけであります。これはまあいろいろな見方がありまして、失敗だった、いやそうでもないという意見が出るわけでありますが、総合的に過去を振り返ってみると、結局、ソ連自身余り打撃を受けなかったのではないか、そう見るならば、失敗か失敗でないか、そういうことは別として、目的的には成功したとは言えないのではないかと思うわけであります。
そのことについて、総理自身、過去の対ソ経済政策をどのように評価をされているのか、まずお伺いをしておきたいと思います。
#8
○中曽根内閣総理大臣 ソ連のアフガニスタン侵入に対しまして、自由世界の国々が政治経済的に共同行動をとってまいっておりますが、私は、失敗だとは思っておりません。それはそれなりに、ある意味においてはソ連の将来の行動について抑制措置をもたらしてきている、そういうふうに考えております。#9
○井上(一)委員 アメリカ議会の専門機関である技術評価機構は、対ソ制裁はむしろ逆効果であるという報告書を出しているわけです。その報告書によれば、対ソ制裁のため、いわゆる西側諸国の結束が乱れる、むしろソ連の利益になり、特にパイプラインをめぐる米欧間の亀裂を生じさせたと述べられているわけです。この対ソ経済制裁はむしろレーガン一流の世界戦略から考えたものではなかろうか、戦略的に決して西側に有利なものと思えないのではないだろうかと受けとめるわけですけれども、総理のお考えを聞いておきたいと思います。
#10
○中曽根内閣総理大臣 アフガニスタン問題のように、国際的に皆さんが非難し批判する、こういう問題について自由主義諸国が結束して政治的、経済的な統一行動をとるということは、世界平和を維持し、侵略や侵入を抑止するために効き目のあることであると私は思っております。その一環として経済的措置がとられておりますが、またそれはそれなりに、やはりある意味における反応を相手方にもたらしておるものである、一概に失敗と断定することは早期に失すると思います。
#11
○井上(一)委員 それじゃ、たとえばアメリカの対ソ制裁の一つとして穀物の禁輸がなされたわけであります。このことは、結果的にアルゼンチンなりカナダ等がアメリカの輸出に取ってかわって、むしろアメリカの農民を困らせ、アメリカ自身が穀物禁輸を解除せざるを得ない羽目になった。私は、アメリカも欧州も日本も、それぞれの国はそれぞれの国によって事情があるのではないだろうか、こういうふうに思っています。今回のサミットで対ソ制裁が問題になると思うわけでありますが、総理としてはどのような考え方で会議に臨まれて、どのような御意見を表明されるのか、このことについて伺っておきたいと思います。
#12
○中曽根内閣総理大臣 東西問題の中に政治的課題と経済的課題があると思います。エコノミックサミットというのですから経済問題が主ではあると思いますが、現下のINF交渉とかそのほかの政治的課題も、あるいは経済問題との絡みで出るかもしれないと思っていろいろ勉強はしております。しかし、経済的問題につきましては、いままでアフガニスタン問題で統一行動をとり、その後もパイプラインの輸出問題そのほかいろいろあり、またアメリカも穀物禁輸を解除したというようなこともあったりいたしまして、さまざまな変化がございました。これは、政治は生きておるものでありますから当然起こり得ることでございますが、しかし、先進諸国と言われる国々がともかく話し合いをして統一行動をとった、それがある程度その後調整されたにせよ、とにかくそういう統一行動をとったということは、また将来について統一行動をとる可能性も予想させるのでありまして、あらゆる事態について統一行動をとるという可能性自体を示しておくということは、私は意味のあることであると考えております。
#13
○井上(一)委員 西側陣営が結果的に亀裂を生じる、そういうことが過去にあった。そのことはむしろ本来の目的に沿わないのではないだろうか。それぞれの国、だからわが国としてはわが国独自の対応を明確に示していくことがサミットでの日本の総理としてとるべき対応ではなかろうか、このように私は思うのです。協調ということはもちろん必要でありますし、大事なことだと思います。しかし、その国のそれぞれの事情、とりわけわが国は貿易立国でありますから、そういう意味で、アメリカの提起する議題すべてに、いわゆる独自性、主体性、独自の対応を見失わないようにぜひすべきではないだろうか、私はこのように思うのです。総理にもう一度所見を承っておきたいと思います。#14
○中曽根内閣総理大臣 わが国がもとより自分の意見を持ち、独自性、主体性を持って行動するということは私も大賛成であり、そのように心がけてまいりたいと思っております。しかしながら、自由主義世界の一員として、そういう国際法違反に当たるような侵入や侵略的性格のことが起きた場合に、そういうものを再び起こさせないようにするという意味において協調した行動をとるということは、平和を維持するためにも大事なことであると考えております。アフガニスタン侵入については、非同盟の諸国もこれを非難しているということでありまして、自由主義の国々がそういう協調行動をとったということは、意味のあることであると私は思っております。
しかし、意見が分かれるということはこれは自由主義の特色でありまして、どの国もみんな版で押したような同じことを言うというのは共産国の特色でありますが、分かれるということ自体が自由主義の特色で、それが自由というものを示している証拠だろうと思います。
問題は、それがいかにして調整されるか、対話を通じて調整されるかという点が大事な点なのでありまして、話が一致しなかったり、話し合いが続けられたり、あるいは調整されたり、また崩れたり、また調整されたり、これが自由主義の強みであると私は思っております。みんながそういう話し合いで解決しようという志を持って、その現実が続いている限り、それ自体が一つの大きな力を意味している、そのようにも感じておる次第です。
#15
○井上(一)委員 さらに、けさの新聞報道によれば、政府は、日韓間のわだかまりとなっている金大中氏事件の捜査に事実上、終止符を打つ判断を固めたと報道されているわけでありますが、総理はそのような判断をされたのかどうか、聞いておきたいと思います。#16
○中曽根内閣総理大臣 それは私がとやかく言うべきことではなくして、警察は国家公安委員会の監督下にありまして、国家公安委員会は御存じのように国家行政組織法上における三条機関で、八条機関とは違います。そういう意味におきまして、国家公安委員会の指揮、指導、監督のもとにすべては行われるのでありますから、私がとやかく言うべき問題ではございません。#17
○井上(一)委員 山本国家公安委員長は捜査本部を解散したいとの意向を非公式に表明されておられるそうですが、これは何ゆえに解散したいと思われているのか、それじゃ公安委員長からお聞きをしておきたいと思います。#18
○山本国務大臣 金大中事件の捜査につきましては、真相解明のために捜査をするという基本方針には変わりはありません。それからまた、特別捜査本部体制をどうするということにつきましては、これは警察、特に警視庁の問題でありまして、私が指示する限りのことではない、こう思っております。
#19
○井上(一)委員 今後の進展から、金大中氏が事情聴取について一定の条件をつけて、そのことがむしろ政府の対応としては待ってましたという、そういう気持ちなのかどうかは別として、それで一応幕切れにしたい、そういうふうに推測をされるわけなんです。私は、金大中氏も政治家であり、彼自身の立場もあるから、三つの条件というのでしょうか、そういう条件をつけてきたと思われるわけです。この条件が事情聴取の絶対的な前提条件であるとは私は思わないわけで、むしろ無条件あるいは日本側として許容のできる範囲の条件で事情聴取に応ずるというのであれば、真相究明のために事情聴取は当然行われるであろうと思うわけでありますが、それじゃ当局のお考えを聞かしていただきたいと思います。
#20
○山田(英)政府委員 金大中氏、被害者でございますから、私どもかねて申し上げておりますように、事情聴取の機会があれば事情聴取したい、それが捜査の第一歩であり常道であるという考え方でございます。このたび、政治的な三条件というものがついた回答書が来たわけでございまして、私ども、これはいずれも警察当局が捜査機関として処理、判断できる事柄ではございませんので、それが事情聴取に応ずる前提であるならば、金大中氏の回答は事情聴取をお断りになったも同然、われわれの立場で断られたも同然というふうに受けとめておるわけでございます。
ただ、純粋に捜査上無条件で応ずるということでありますれば、そのために事情聴取する意向があるかどうかを伺っておるわけでございますから、事情聴取いたしたいと思っております。
#21
○井上(一)委員 総理にここでお尋ねをしておきたいのですけれども、間近に控えた参議院の選挙の公約に、総裁でいらっしゃる自民党の公約の中の一つに、靖国神社の公式参拝、国家護持がうたわれているわけです。このことについて、総理であるということと同時に自民党の総裁でいらっしゃるのですが、どのように認識をしてどのように考えていらっしゃるのか、ここで承っておきたいと思います。#22
○中曽根内閣総理大臣 私は実はまだ党の公約を読んでおらぬのです。いまサミットの準備やら国会で非常に忙しいものですから、けさもらいまして、今晩読もう、そう思っておるわけです。大体政調会長にお任せしておるわけであります。一般論としてはいろいろ話し合っていますから、こういうものが重点だ、そういうことは政調会長も知っていろいろおつくりいただいているものだろうと思います。いまの靖国神社の問題について具体的にどういうふうに書いてあるか、私、確認しておりません。もし書いてあるとすれば、党員の強い希望をそういう意味において表明しているのではないかと想像いたします。
#23
○井上(一)委員 このことは、憲法の二十条、信教の自由の保障、その立場に立つと相矛盾していくのではないだろうか、こう思うのです。総理いかがですか。#24
○角田(禮)政府委員 いわゆる公式参拝の問題につきましては、御承知かと思いますが、昭和五十五年の十一月に衆議院の議運委員会の理事会において宮澤官房長官が政府の統一見解として読み上げたものがございます。それは、いわゆる公式参拝をするということは憲法二十条三項との関係で問題があるという認識を前提としております。それはいま委員が言われたように、憲法に直ちに反するということではございませんが、違憲ではないかという疑いもなお否定できないというようなことでございます。#25
○井上(一)委員 実は私は総裁でいらっしゃる中曽根総理の見解をお聞きしたいのです。それで、けさもらったところだということでございますから、後で結構ですから、もしよかったら最終締めくくりに、総理としてあるいは総裁として御意見を聞かしていただきたい、こう思います。
さらに続いて、国際文化交流について総理にお考えを聞いておきたいと思うのです。
私は、民間レベルでの国際的な文化交流は民間外交の一環として非常に大きな役割りを果たしている、こういうふうに理解をし、そのことは大切なことだ、こう思います。具体的には、来月二日だったと思いますが、ねむの木学園の子供たちの美術展がスイス・チューリヒで開催されるわけであります。その子供たちの絵から生まれてくるところの心、あるいはその絵から、スイスの多くの人たちに感動と感激を与えるのではないか、そのことがまたわが国とスイスとの友好をより深く深めていくことに相なっていく。ややもすると、こういう民間の熱意ある文化交流に、外務省が中心でありますけれども、余り積極的な協力の体制が見受けられない、私はこういうふうに思うのです。
ここでただ具体的にチューリヒで行われるねむの木学園の子供たちの美術展を一例として申し上げたわけでありますけれども、今後、政府自身はこれらの有益な民間文化外交、文化交流にどう取り組もうとなさっていらっしゃるのか、むしろ決意を聞かしていただきたいと思います。
#26
○中曽根内閣総理大臣 民間外交の一環としてそのようなことが行われることは、大いに歓迎し、奨励されるべきことであると思っております。ややもすると日本はエコノミックアニマル、こう言われておりますが、そういう純真なねむの木学園の子供たちの絵の展覧が行われれば、大きな感動を引き起こすことであるだろうと思います。チューリヒで行われるものにつきましては、大使館が後援して大使夫妻が開会式に列席するという報告を受けておりますが、このように今後とも大いに奨励していきたいと思っております。#27
○井上(一)委員 さらにもう一点、具体的な問題として、いま世界的経済の不況の中で各国がそれぞれ経済の活性化のために努力をしているわけなんです。とりわけ日本の貿易に対しては、貿易摩擦から生ずる対日批判が各国ともそれぞれの形で起こっているわけです。国際経済力をつけていく、そういうことについていまここで議論をしようとするのではなく、むしろそういう中で一つの事例として、私はきょうここに時計の何点かを持ってまいったわけであります。いわばこれはにせ時計であります。いわゆる大手メーカーのムーブメントが使われて、そしてそのにせ時計が国内はもとより国外に出回っている。こういうことは、貿易の対日批判以上に、わが国に対する信頼をなくすと同時にひんしゅくを買うわけでありまして、通産当局はこのような実態、実情をどう承知しているのか、あるいは徹底した実態究明に取り組む決意を持っていらっしゃるのか、あるいはまた、必ずしも大手メーカーがすべて悪だ、あるいはこのことにすべてかかわっているという断定はいたしません。ただ、大手メーカーのムーブメントが使われているという事実は私なりに調査によって明らかになったわけです。だから、そういうメーカーに対する行政指導は今後どう行っていかれようとするのか。
また、不幸にも善意の消費者がこのにせ時計を購入し、粗末なにせ時計ですから故障が起こります、故障したときにだれが保護をしてくれるのか、いわゆる消費者の保護、そういう問題も含めて、これは大変大きな問題ではなかろうか。犯意を持った意図的なものであるとするなら、国際犯罪としての大きな問題点だと私は思うのです。こういうことについて、通産当局から、大臣はどう対応されるのか、どのように取り組んでいこうとされるのか、聞かしていただきたいと思います。
#28
○山中国務大臣 警察が取り上げて、調査して、逮捕しております。わが国の時計は、本場スイスと言われた時計を凌駕して久しい。それをわざわざ、一応は高名なるブランドといいましょうか、そういうものへの国民の志向がまだ残っていることを利用してそのようなことをやることは、国際的にお恥ずかしい限りである。当然ながら、逮捕されてしかるべきである、そう思います。
しかし、通産省が指導監督している時計工業界の各メーカーの中で、そういうものに関与しておるということは、調査の結果、全くございません。これは当然、警察が、司直の手によってそれを明らかにしたときに、もちろんそういうことはあり得ないけれども、まさかのことがないように、一部週刊誌等の報道もありましたので調査してありますが、そういうことはございません。
買った人が、故障した場合はどうするというような話などになりますと、いかんせん、通産省がけしからぬと思っている連中がやったことに対して、通産省の責任は当然とり得ないし、それはその人が欲と二人連れで変なものに手を出すからそういうものが結局は売られるということも結果的には言えるのでありまして、自業自得ということしか言いようがないだろうと思います。
#29
○井上(一)委員 善意の消費者が自業自得だなんて、ブランドで、たとえばこのようにまことしやかなパンフをつくって、これをだれがにせだという――自業自得だなんてだれが受けとめますか。まじめに高い代金を支払って買った人が、何が自業自得なんですか。こういうことの起こらないように、やはり行政指導――悪いことをしているのを、犯罪を摘発するというか掘り起こして取っつかまえるのは、それは警察でしょう。しかし私は、大手のムーブメントがちゃんとこの中にあったんだ、だから、大手はもっともっとみずからの製品、品質の管理、チェックをしろ、これを通産はちゃんと指導しなければいけない、こういうことを言っているのです。それも通産は、指導もしなくていいんだ、悪いことをしたって、自業自得、欲と道連れで買ったんだと。悪いことをしているグループに対して、それは徹底糾明しなければいけない。
しかし、数十万個に及ぶそういうにせ時計が出ておるという実態を通産当局が素知らぬふりをするというのは、それは大臣、ちょっと考え方が間違いではございませんか。
#30
○山中国務大臣 こういう問題は、どうもばれた後ではそういうことを言いますが、恐らく納税者といいましても、これは物品税は庫出しですから、脱税をしていると思うのですよ。恐らく大蔵省には捕捉されていない。したがって、脱税の物件が出回るということにもなっていると思うのです。しかし、大蔵省は一々、そういうものが堂々と表通りでまかり通っているわけではないし、通産省もそれを一々、それは本物かにせものかと回って歩くほどチェックはいたしておりません。そういうことをしなくても、日本の時計は、国内はもちろん、国際的にも、冒頭に申しましたようにりっぱな業績、実績を持っているわけでありますから……。日本の時計のにせものが出るならわかりますけれどもね。したがって、通産省の監督下にある人々がつくったものではない。ですから、言葉が悪ければ取り消しますけれども、そういうものを買う人がいるから、にせものの銘柄、ブランドをつくって売りつける者も出てくる。卵が先か、鶏が先かでしょうけれどもね。
#31
○井上(一)委員 買う者が悪いなんて、大臣、あなたはめちゃくちやですよ。大手メーカーのムーブメントがそういう中に仕込まれている、それはだれかがそこへ仕込んだのでしょう。しかし大手メーカーは、自分の生産したもの、生産するものはちゃんと管理をすべきじゃないだろうか。わかりますか。管理をする、そういう行政指導が通産はできないのですか。#32
○山中国務大臣 できないのじゃなくて、そういうものをわざわざつくらなくとも、日本の時計メーカーは、ムーブメントを含めて、あたりまえの生産をしていけばそれで売れるわけですから、それでも過当競争なぐらいですからね。ですから、大手の方が一部どうのこうのという話が週刊誌等に載っていましたので、調査したところ、日本の時計メーカーが関与している事実はないという答えを得ておりますから、関与していることがないのはあたりまえであって、それから先、注意するといったって、それは一部の犯罪人たちがつくったにせ時計でありますから、それは司直の、警察の手によって厳重に裁かるべきものであると私は考えます。
#33
○井上(一)委員 余り時間がありませんから、私は、続いて次の折にこの問題は明らかにしていきたいと思うのですが、大手メーカーのムーブメントが中に仕込まれているという事実、これは動かしがたい事実なんですから、犯意があって大手メーカーがそれに加わった加わらないの議論じゃないわけです。私はいまここで、事実は事実として、そのことについて通産が大手メーカーに、そういうところに流通されないようにきっちりとチェックしていくよう指導すべきだ、こういうふうに言っているわけなんです。しかし、大手メーカーが犯意があってかかわったらぱくられますよ。私はそういうことを言っていない。そういうところに流れないように十分なチェック体制をすべきじゃないか、そういうことを通産が行政指導すべきだ、そういうふうに大臣に言っているのですよ。どうなんですか大臣、まだ理解ができないのですか。#34
○山中国務大臣 これは大蔵大臣の方が答えるべきかもしれませんが、時計は庫出し課税なんですね。したがって、それは庫出しをされたときにすでに一個ずつ全部点検されて国税庁で押さえてあるわけでありますから、大手メーカーは関与していないということになれば、そのムーブメントのところが――ずいぶん御調査になっておるようでありますから、根拠もあるのでしょう。果たして大手がそれに対して関与しているのかという調査を当然ながらしなければならない責任は通産省にありますから、調査した結果、そのような事実はございませんという返事ですから、おまえたちうそを言っているのかという調査をもう一遍するという気はございません。#35
○井上(一)委員 現在までの調査ではそういうことであったかもわからないけれども、私はこういうことを指摘して現実に言っているのだから、今後徹底した追及をすべきでないか。それに対して、しないのですか、するのですか。#36
○山中国務大臣 わかりました。もう一遍徹底した調査をします。そういうことはないのですけれどもね、調べてみます。#37
○井上(一)委員 これはまた別な委員会でやりましょう。次に私は、関西新空港の今後の取り組みについて、総理から聞いておきたいと思います。
#38
○中曽根内閣総理大臣 五十八年度予算で、設計準備調査費として約四十億円計上したと思います。先般第一回の閣僚協を開きまして、諸般の準備体制に入ったところであります。
#39
○井上(一)委員 時間がありませんので、きょうは今国会も終わりに近づいて、決算の締めくくり総括ということでありますので、さらに武器禁輸問題についてここで私は一、二触れておきたいと思うのです。わが国は、紛争国もしくはそのおそれのある国に対しては武器輸出の要請があってもできない、これは当然なんですけれども、確認をしておきます。そのとおりですね。
#40
○安倍国務大臣 武器禁輸三原則、政府見解がありますが、今回、御承知のように、アメリカに対しては武器技術に関しては政策の修正をいたしまして、相互交流ということを行ったわけであります。#41
○井上(一)委員 何を言っている。そんなことを言ってだめじゃないか。議長預かりになっているじゃないか。時間がないから私の方もはしょった質問で、これは何とかやはり確かなことをお互いにここで確認していこう、こういうことなんです。
総理、三原則を厳守するというのはこれは当然なんで、さらに聞きます。国会で何回も同僚議員が質問に立って、それに答えていらっしゃるわけです。中でも私は、ベトナム戦争の際のアメリカの地位、これは紛争当事国という認識である。
ところで伺いたいのですが、今後どのような事態が発生するかわからない、もしアメリカが紛争当事国もしくはそのおそれのある国になった場合、当然アメリカへは三原則の中で武器輸出はできない、これはどうなんですか。
#42
○安倍国務大臣 武器輸出についてはもちろん三原則がありまして、アメリカに対してもこれは輸出しないということであります。#43
○井上(一)委員 武器輸出については、三原則があり、わが国の憲法があるから……。それじゃほかのものについては輸出するのですか。#44
○安倍国務大臣 武器については三原則がある。武器技術については、対米関係については、安保条約の効果的運用という立場からアメリカと相互交流を行うということを政府としては決めたわけであります。#45
○井上(一)委員 それじゃ紛争の認定はだれがするのですか。#46
○栗山政府委員 武器技術の供与との関連では、先ほど外務大臣より御答弁申し上げましたとおり、武器禁輸三原則の例外扱いということで処理いたすというのが政府の方針でございますから、紛争が起こっているか否かということ自体は、武器技術の供与とは直接の関連にはならないというふうに存じます。#47
○井上(一)委員 あなた方は、いつもこういうときになると勝手な解釈を並べて、どうも歯どめをはがしていこう、そういうことにきゅうきゅうとしている。私は、紛争それ自体の認定をわが国のだれがするのか。そのことはやはりわが国の主権にかかわる問題ですから、一般論としてどこの国の紛争についても言えることですけれども、とりわけアメリカが紛争当事国もしくは紛争のおそれのある当事国になっているという認定はだれがするのか。総理、このことについてはどういう見解を持っていらっしゃいますか。
#48
○安倍国務大臣 紛争の認定につきましては、これは国際法的な関係もありますから条約局長から答弁させますが、武器技術に関しては、これはアメリカが紛争当事国になる、あるいは紛争当事国のおそれがある、そういうこととは別に、先ほど申し上げましたような例外扱いとしてアメリカに対して輸出を行うということを決定したわけであります。#49
○井上(一)委員 私は、アメリカを例外扱いにし、そして実質上三原則から除外をしていく、三原則を放棄される、そのことは非常に許せないことだと思います。さらに、平和政策を崩していくことだ、私はこの点について、総理大臣以下各大臣にも、担当の事務当局にも強く警鐘を鳴らして、時間がありませんから、質問を終わります。#50
○古屋委員長 新村勝雄君。#51
○新村委員 総理にお伺いをいたします。総理はかねてから、総理は国民投票によって選ぶべきだという御主張を持っておられましたけれども、いまでもそういうお考えをお持ちですか。
#52
○中曽根内閣総理大臣 昔そういうことを主張したことはございますが、いまは内閣総理大臣といたしまして憲法の個々の条文に触れるような発言をすることは差し控えておる次第でございます。#53
○新村委員 そうしますと、そういうお考えはもうない、お捨てになったということですね。#54
○中曽根内閣総理大臣 内閣総理大臣という地位にありまして、影響力が多い地位でございますから、そういう個人的な意見は差し控える、こういうことで一貫して申し上げておるわけであります。#55
○新村委員 次の問題ですけれども、いま行政改革が総理の強力な指導によってこれから進められようといたしております。その行政改革あるいは財政再建のもとをなすのは、やはりいかにして財政資金を有効に効率的に使うかということだと思います。そういう考え方からいわゆる会計検査院法の改正ということが出されておる。この問題は、歴代総理が、前向きに取り組む、こういうお約束をなさっていらっしゃるわけでありますけれども、次第にこの考え方がしぼんできておる。中曽根総理はこの問題についてどうお考えでございますか。#56
○中曽根内閣総理大臣 この問題は、ロッキード事件が起きまして、それ以来、行政の監察、会計経理の正確さ等々、あるいは腐敗防止という観点から取り上げられた問題でございます。自来、政府としてもいろいろ検討を加えておりますが、問題は、特殊法人から融資その他を行ったところについて会計検査院が直接いろいろ調査やら審問を行う、そういう問題について問題点がございまして、民間の自由な企業活動が萎縮しやしないか、そういう点に対するおそれがありまして、まだ各省庁の調整ができかねておる状況でございまして、はなはだ残念でございますが、いまこれを見ておる、そういう状況でございます。#57
○新村委員 そうしますと、これは政府部内の調整がつけばその方向で進めるということでございますか。#58
○中曽根内閣総理大臣 もちろん、各省庁の調整がつけばそれに従って処理すべきものでございます。#59
○新村委員 次の問題ですけれども、会計検査院の検査官、この任命は、昭和二十二年現院法施行後今日まで、十八名が内閣の推薦を受けて国会の承認を経て任命されておりますけれども、ほとんどの人たちの前歴は、東大出身者、あるいは官歴で言いますと大蔵省の局長以上あるいは衆議院の事務総長、会計検査院の事務総長というような方々ばかりであります。そこで、こういう学歴あるいは官歴に偏向した推薦ではなくて、もっと自由な立場から、これ以外の方であっても有能な適任者は抜てきをしていくべきであると思いますけれども、総理はいかがですか。
#60
○中曽根内閣総理大臣 その点は同感でございます。最高裁判所の裁判官にいたしましても在野法曹から簡抜しているという例もございまして、統治権を構成する三権の中の一番重要な部分でもある最高裁判所についてもそういう事実上の運用が行われているのを見ますれば、会計検査官につきましても、もし適材があれば考慮すべきものであると考えます。#61
○新村委員 最高裁の判事でも法曹界以外から任命した例もあるくらいです。ですから、これについてはひとつ十分御配慮をいただいて、有能な方を、先ほど申し上げた方々以外のところからも抜てきをしていただくようにお願いをいたします。次は、これはまず文部大臣に私学のあり方について伺いますが、私学については、日本の場合、国公立の教育機関を補完する、あるいは特色ある学風を持ってそれぞれの分野に寄与するという点で、私学の果たす役割りは非常に重いわけでありますけれども、残念ながら、最近私学の運営の面で多くの問題が起こっております。
五十二年以来の例を見ても、愛知医大、金沢医大、東北歯科大、松本歯科大における高額寄附金の問題、あるいは相模工大、東日本学園大学における学校法人の運営の問題、また、北里大学における入学寄附金の問題、九州産業大学における補助金の不正受給、久留米工業大学のやはり同じ不正受給、早稲田における入試漏れ、日本大学の入学寄附金の問題等あるわけですけれども、その中でも特に東日本学園大学というのが北海道にあるわけです。
この大学におきましては、大学の設置の当初において寄附金を徴しまして発足をしたわけでありますけれども、後になってその寄附金はこっそり借入金あるいは負債の肩がわりというような形でもとの寄附者のところへ戻っていた、こういうことが指摘をされたわけです。この点については、文部省も調査をされてそれに対する指導をした結果、回収はされたということになっておりますけれども、これは大変不明朗な問題として世上伝えられたわけであります。
そうして、これは時間がありませんので一気に申し上げますが、東日本学園に対する寄附金は新日本観光の佐々木真太郎氏から寄附されたということになっております。そして、その寄附の動機というのが、一つの投資のような考え方で寄附されておる。あたかも教育機関を営利の対象にしているのではないか、こういうような疑いが持たれるわけであります。たとえば、これは新日本観光のメモでありますけれども、「資本として受入たのなれば返済しないでよいが資本力に対する経営権と配当権の確立を要求する 借入金として受入たのなれば無能力者経営の学校に貸付て置くことは不安であるから即時元利合計を返金させ税金返納を行う」、税金というのは免税されておりますからね、というようなことをこのメモに書いておるわけです。こういう点からしましても、私学のあり方について大変残念に思うわけです。
この問題については前の委員会でも文部御当局の考え方をただしたわけでありますが、その後これがどうなっておるのか、その経過と、それからこういう事態に対して文部大臣はどうお考えであるのか、これをまず伺います。
#62
○瀬戸山国務大臣 お答えいたします。新村さんお話しのように、わが国の教育の大半と言ってよろしいでしょう、私学に負うところが多いわけでございます。特に高等教育においては約八〇%は私学が受け持っておるという実情でございまして、これがわが国の教育の振興に大きな貢献をしている、こういう一面があるわけでございます。また、私学は一つの考え方を持って教育を振興しようという情熱を持って私学経営に当たられるというのが趣旨でございまして、そういう経過をたどって、明治以来わが国は私学が非常に発展をしてきておるのは御承知のとおりです。
ところが、最近、いまお話が出ましたように、全部が全部というわけではありませんけれども、私学の中には、内容は違いますけれども、補助金を不適切に受けたり、あるいは経理が非常におかしかったり、こういう問題がありまして、非常に遺憾に思っておるのが現状でございます。
いまの東日本学園、北海道にあるわけでございますが、私もその実情、過去の経過を聞きまして、これはあなたの方からも前に質問主意書を国会に出しておられます。それについては詳細にお答えしておりますから細かいことは申し上げませんが、ここでは二十八億円という資金が最初出されておったのを、それを立てかえ金に支払いをしておった、あるいは二十六億円をまた別に貸しておったとか、あるいは土地をえらい安く売っておったとか、こういう点を、新しい学校は文部省で審査をいたしますから、それによって発見をしたわけでございますが、御存じのとおり二十八億円、二十六億円はもう完全に解決をいたしました。土地の問題がまだ残っております。また利息の問題が残っておる。これを解決するためにいま指導をしておる。
問題は、御承知のとおりに私学は自主性を非常に尊重するというたてまえになっておりますが、私は最近のいろいろな私学をめぐる忌まわしい事件等が起こりますのを見まして、事務当局にも、私学の制度というものをもう少し検討してみる必要があるのじゃないか、もちろん自主性を尊重しなければならぬけれども、文部省はただ助言をするとかいうだけの権限しかないというので、学校教育というものはこういう状態であっていいのかどうか、まだ結論を持っているわけじゃありませんけれども、その点を少し突き詰めて検討しておる、こういうことをしておるのが現状でございます。
#63
○新村委員 文部大臣からは前向きの答弁をいただいたわけでありますけれども、総理に、なお、これは重要な文教上の問題でありますからお伺いしますけれども、いま申し上げたように、これは一部でありますけれども、教育機関を営利の対象と考えているのではないかというような疑いを持たれる運営をしておる例があるわけであります。それからまた、東日本学園だけではなくて、ほかの私学でもしばしば不祥事が伝えられておるわけでありますけれども、こういう一連の問題に対して、総理としてはどういうお考えですか。#64
○中曽根内閣総理大臣 私学につきまして、私学振興の精神に反して不明朗な経理が行われているのが近ごろ間々出ておることは、はなはだ遺憾でございまして、私学振興の精神に沿うように今後とも監督を厳重にしてまいりたいと思う次第です。#65
○新村委員 文部大臣にもう一回お伺いをしますけれども、前向きの御答弁をいただいたわけですが、こういう一連の事態をこれから未然に防ぐための何らかの御指導なり、あるいは、制度というとむずかしいでしょうけれども、やはり何らかの措置をぜひお願いしたいと思いますけれども、もう少し具体的にお願いします。#66
○瀬戸山国務大臣 先ほどもお話が出ました、たとえば九州産業大学等について、私から見るといかにもずさん過ぎるという感じを持っている。私学あるいは私学振興財団等についても、国民のとうといお金で、教育が大事であるからということで助成しておる問題でございますから、もう少し真剣にというと失礼でありますけれども、申請について綿密に検討するということなど、いま指導しておるわけでございます。法制的に私学は、当然と言えば当然でございますが、たてまえ上は文部省がいろいろ干渉がましいことはできないことになっておりますから、率直に言ってやりにくい点があるわけでございますが、一体それでいいのか、こういう事態が頻繁にとは言いませんけれども、教育とはそういうものであるかという疑惑をこれほど世間に持たれるようなことでは、教育に非常に大きな弊害を及ぼすと思いますので、さっき申し上げましたように、もう少し何か監督といいますか指導の強化ができないかどうか、そういう制度ができないかどうかということを検討してみたい、かように考えておるわけでございます。
#67
○新村委員 ぜひお願いをいたします。学問の自由は、これは保障しなければいけませんけれども、学校がいわゆる学校屋の手によって汚される、こういう事態は絶対に許してはならないと思いますので、大臣、こういう問題についての未然の抜本的な防止策をぜひひとつ御検討いただきたいと思います。それから、なお、私学についての補助金の問題でありますけれども、補助金の問題についてもその算出の基礎がきわめて大まかですね。学生数であるとかあるいは職員の数、教授の数、あるいは幾つかの基礎によって算出をするということでありますけれども、もっと精密な基礎が必要ではないか。
それからまた、補助を与えるからには経理の公開を国民に対してすべきではないかと思うわけでありますけれども、その点についてはいかがですか。
#68
○瀬戸山国務大臣 いまおっしゃるように、私学振興財団が補助金を交付する際に、やや形式的に流れ過ぎておりはしなかったか、そういう意味でいまおっしゃったようなことを再検討しておるところでございます。それから、経理公開ということをしばしば耳にするわけでございますが、これは御承知のとおりに、そういう性質の学校法人でございますから、当然のこととして監査役がおるわけでございます。なお、公認会計士の検査を必要とする、こういう制度になっておるわけでございます。したがって、関係者にはそれがわかるようになっておるわけでございますが、いわゆる一般に公開するのがいいのかどうかということはもう少し検討してみなければいけない、こういうのがいま内部で相談しているところでございます。
#69
○新村委員 終わります。#70
○古屋委員長 春田重昭君。#71
○春田委員 まず、総理に解散問題についてお伺いします。衆参のダブル選の回避はほぼ間違いないと見られておりますが、その後、秋口解散のうわさが出ているわけでございます。総理の御真意をお聞かせいただきたいと思います。
#72
○中曽根内閣総理大臣 私は、やはり衆議院の場合は任期満了まで行うのが常道である、そう考えておりまして、解散は考えておりません。#73
○春田委員 総理は、たてまえ上衆議院は任期満了説をおっしゃっております。しかし、解散の引き金となる、たとえば国会の審議がストップした場合とか内閣の不信任案が出た場合においては解散するかもしれないという御答弁があったわけでございますけれども、これはいまも変わりございませんか。#74
○中曽根内閣総理大臣 任期満了まで議員は誠実に務めるのが筋である、そう思っております。#75
○春田委員 時間がございませんので、走っていきます。次に、原油値下げによる電気料金の値下げの問題でございます。
山中通産大臣はこの値下げに積極的な御発言をなさっておりますが、総理はさきの物価安定会議の中では、むしろ設備投資に回した方がいいのではないかというお話があったように聞いているわけでございます。そうだとすれば、通産大臣と総理の考え方が違うように思いますが、総理のお考えをいただきたいと思います。
#76
○山中国務大臣 私も物価安定会議には出る予定でございましたが、出ておりませんで、総理の御発言を正確には聞いておりませんが、総理は五ドル値下げについて、単年度ということを前提にお話しになったものと思います。〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
私もそれは正しいと思いますし、同感でありますが、私が産油各国を回ったりなどして直接得た感触では、最低三年は二十九ドルを守ろう、むしろ二十九ドルから下がることを防ごうという意思の方がはっきりしてきましたので、そうなれば、われわれに与えてもらったこの五ドルという天恵を、わが国の経済そして国民生活に、世界に先駆けて、あるいは世界よりもより効果の高い経済運営を試みることによって、有効な結果として日本に定着させたい、そういうことを言っておるわけであります。
したがって、その中で、三年間五ドル値下がりしたままの状態であって、電力についてはいま石油は四〇%をちょっと切るぐらいの比率でありますけれども、それにしても、ほかの物価等も下がり始めておりますし、そうすると、それが自然の状況で浸透していっても、電気料金だけは下げないぞということはあり得ない、電気料金もその際の対象になってくる。まず石油から下がっていきますから、スタンドあたりは需給の先取りで値が下がり過ぎておるようでありますけれども、当然ながら電力会社に対する石油の供給も値が下がってきておりますので、設備投資の方にも繰り上げをお願いしております。しかし、電力料金というものも一般庶民に対して、金額の多寡は別として、これは大切なものであろう、そう考えております。
ただ、一年限りであるならば、これはむしろ下げてはいけないと私は思うのです。来年はまた上げるのだというような値下げはしてはいかぬ。これは前回の例がありますから。そういうことで念のため申し上げておきます。
〔中川委員長代理退席、委員長着席〕
#77
○春田委員 この問題についての総理の御答弁をいただきます。#78
○中曽根内閣総理大臣 山中大臣は産油国を回って、大体三年ぐらいは二十九ドルが続くであろう、そういう感触を得て、いまのようなある程度長期的展望に立った観測を言ったのだろうと思います。五十八年度に関する限りは、四月五日の経済対策閣僚会議におきましても、石油の値下がり分は補修やら設備投資に回そう、そして景気回復に役立たせよう、そういう発想で事態を処理しておりますので、五十八年度に関する限りはそういうことであります。
将来のことは、将来その時点におきましていろいろな状況を考えながら考うべきものであると思います。
#79
○春田委員 鈴木前総理の財政再建というものは、五十九年度をめどに赤字国債の脱却を目指したわけでございます。結果的には挫折したわけでございますが、中曽根総理の財政改革は何年を赤字国債脱却のめどとしているのか、お答えいただきたい。現時点で明確にお答えできない場合は、この計画はいつごろ明らかにされるのか、あわせて御答弁いただきたいと思います。#80
○竹下国務大臣 予算審議の手がかりにしていただくためにケースA、ケースB、ケースC、これを手がかりとして御審議いただいたわけでございますが、五十九年脱却ははっきりあきらめて、そうしてこれからの問題ということは、経済審議会でたまたま御審議いただけるいわば今後の経済展望、このめどが立ったわけでございますので、これとの整合性を図りながら、できるだけ早い機会というふうに申し上げた方が正確だと思うのでありますが、めどを立てていきたいというふうに考えております。#81
○春田委員 その経済審議会の中長期の経済展望が出るのは大体いつごろなのですか。#82
○塩崎国務大臣 この点につきましてもたびたび申し上げましたが、私どもはこの夏を目標に経済審議会の皆様方に御検討をお願いしているところでございます。#83
○春田委員 防衛予算は、五十九年度、対GNP一%を突破することはほぼ間違いないと言われているわけであります。総理は昨年の臨時国会で、この問題につきまして次のように御答弁なさっております。最大限の努力をしても、その後の情勢変化が出てくれば突破もやむを得ないとおっしゃっているように聞いているわけでございますが、この考え方は現在も変わりありませんか。#84
○中曽根内閣総理大臣 一%は守るべく、ともかく全力を尽くしていく考えでおります。#85
○春田委員 全力を尽くしても突破した場合にはやむを得ないと見ているのか、これを聞いているのです。#86
○中曽根内閣総理大臣 ともかく全力を尽くすということは、しないように努力する、全力を尽くす、こういう意味であります。#87
○春田委員 五十七年度人勧は凍結されました。五十八年度人勧は八月上旬に勧告されるはずでございます。そこで、五十八年度人勧についてお伺いしますけれども、政府側の答弁は、二年連続して凍結はないと言っております。この意味は、五十八年度は実施するということでございまして、この実施は完全実施ということで理解していいのかどうか、お答えいただきたいと思います。
#88
○中曽根内閣総理大臣 まず、人事院がどういう勧告を出すか、それは人事院がみずからお決めになって政府及び国会に提出することであります。それを見た上でわれわれは考えますが、これは与野党間の話もございまして、政府としては尊重するという態度で対処したい、こう考えております。#89
○春田委員 五十九年度予算は五十八年度以上に厳しいと見られているわけであります。予算編成作業は七月以降にかかるとしても、基本的な問題として私はお伺いしたいと思います。従来、政府は、歳出削減では聖域はないとしても、たとえば国際条約に伴う歳出の増加、エネルギー関係費、政府開発の援助費等は例外措置として別枠の扱いをしていたわけでございますが、この方針は五十九年度も変わらないと見ていいか。
#90
○竹下国務大臣 春田委員、いま五十八年度の概算要求の際のことに敷衍しての御意見でありますが、確かに義務的に増加せざるを得ないいま御指摘のようなものを、ある段階においてそのような措置をいたしましたが、最終的に予算編成の過程においてはこれをいわゆる聖域とすることなくやってきたわけであります。したがって、五十九年度の概算要求限度額につきまして具体的にどうするかということは、なおしばらく時間もございますので、政府部内において十分検討させていただきたいと思うのでございますが、四日に予算を通していただいて、そして直ちに五十九年度に対して、厳しい内容になるであろう、各省の制度、施策の根源にさかのぼって御勉強をお願いしたいということから今日始まっておるのでございますので、いわゆるシーリングにつきましては、いましばらくの時間をちょうだいさせていただきたいと思います。#91
○春田委員 次に、減税問題についてお伺いします。本日の与野党幹事長・書記長会談で五項目の合意がなされております。この中を見ますと、規模と実施時期は明示されてないわけであります。しかしよく読むと、たとえば二項目の減税の規模については、国民の期待に沿うよう最大限の努力をする。時期につきましては、三項目に課税最低限の引き上げについては秋口までに結論を出す。こういった点から推察いたしますと、国民の期待している減税というものは私は一兆円規模の減税ではなかろうかと思いますし、秋までに結論を出すということは、秋の臨時国会で所得税法、地方税法の改正が出てくる、こう理解していいのかどうか、お答えいただきたいと思います。
#92
○竹下国務大臣 本日の書記長さん、幹事長さん会談、私もまだ正確にわが党の幹事長から承っておるという状態にはございませんが、きょうの簡単な報告メモを見てみますと、国民ということは、与党も野党もないすべての国民だ、だから国民の期待にこたえるという意味できちんとした応答がなされたということはここに参っております。そこで、規模それから時期の問題でございますが、これは御案内のように、去る四月二十五日に税制調査会で本院において行われた議論等を念査して詳細に御報告申し上げ、そこで部会をつくっていただく、こういうことになりました。税制調査会長さんも昨日の大蔵委員会の場でそのことを御報告にもなっておったわけでございますので、これの推移を見ながら、正確に、たとえばきょうの幹事長・書記長会談でいろいろ議論されましたことにつきましてもそれを正確に伝えていく、そしてまた税調の議論等を正確に伝えるために連絡会議も設置されたと書かれてありますので、そういう方向で今後進めていきたいということでございます。
基本的には、総理がいつでも申されますように、何としても各党合意、それに裏づけされた議長見解、こういうものがございますから、その線によって対処していきたい。したがって、政府としての立場から時期、規模について正確にお答えをする段階ではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
#93
○春田委員 総理に確認したいわけでございますが、大蔵省としては、五十七年度税収が大体七月ごろわかる、その後検討の作業をしていくということでございますが、総理は政治生命をかけて、この減税は五十七年度どういう税収状況になろうと断固やっていく、この決意に変わりないか、この点をお伺いしたいと思います。#94
○中曽根内閣総理大臣 与野党の合意は誠実に尊重してまいりたいと思っております。#95
○春田委員 教科書の無償制度であります。昭和三十八年以来、憲法二十六条及び教育基本法の精神に基づいて堅持されてきております。ところが、毎年予算編成のときに有償化の話が出てくるわけでございます。また、臨調でも制度の検討を示唆しているわけでございますが、この件につきましては、要するに憲法を守るか財政を優先するかという問題であろうと私は思っております。そういった面で、私は、この教科書無償制度は憲法を尊重するという上から堅持すべきである、こう主張したいと思いますが、総理の御見解を承りたいと思います。
#96
○中曽根内閣総理大臣 臨調答申を最大限に尊重して、逐次実施すると政府は従来言明しております。臨調答申の内容は私は正確にはまだ記憶しておりませんが、私の知っている範囲内では、廃止も含めてこれを検討する、そういう文章になっていたと思いますし、自民党におきましても、概算要求をこの夏出すまでに党としての結論を得る、そのために党全体で検討する、そういうことになっていると思いますので、そのように処理していきたいと思っております。#97
○春田委員 最後にお伺いいたしますけれども、わが国は憲法上、男女平等であるとしております。しかし現実はかなり差別されている面がございます。その代表的なものに、婦人の社会進出に伴う職場の男女差別が挙げられます。現在、婦人労働者は雇用者総数の約三四・六%、一千四百十八万でございます。ところが、平均給与は男子一〇〇に対して女子五二・八と、その格差は非常に大きいわけであります。その他格差の面で言えば、女子大生の就職を初めとする採用の厳しさ、昇給の厳しさ、定年退職の厳しさ、また職場の配置等、雇用のすべてにおいて格差があるように私は思います。
現在は、労働基準法の第四条で男女同一賃金の原則、また職安法の第三条では、職業紹介及び職業指導における男女の差別的取り扱いの禁止がうたわれておるわけでございますが、残念ながらこうした労基法違反もかなり出ております。五十六年度でこの労基法第四条違反が五十八件出ている。これも氷山の一角でありましょう。そういった面でかなり格差があるわけでございます。
国連でも、婦人差別の撤廃条約の批准が、四年近く経過しているけれども、現在日本は批准をしていないわけでございます。
そういった面で、この国内法の整備を図る上でも、わが党がさきに参議院の委員会で提案いたしました男女雇用平等法を参考にし、早急な整備を図って、こうした男女の雇用の差別をなくしてもらいたい、私はこう主張するわけでございますが、総理のお考えをいただきたい。
#98
○中曽根内閣総理大臣 日本で現在働いている勤労者の三分の一がすでに婦人の労働者であるという状況にかんがみまして、できるだけ早く環境の整備を図って差別撤廃条約を批准する、そういうところへ持っていきたいと思っております。#99
○春田委員 時間が制約されておりましたのでかなり走っての質問でございます。どうか総理は私の質問の意を十分酌んでいただきまして、早急な対策を講じていただきたい、このように要望し、質問を終わります。#100
○古屋委員長 神田厚君。#101
○神田委員 私は、まず最初に、レフチェンコ問題につきまして御質問を申し上げたいと思います。現在、レフチェンコ証言国会調査団が訪米しております。活動を開始しているわけでありますが、政府は独自の調査を行って、すでにその成果をある程度取りまとめているというふうに聞いておりますが、官房長官いかがでございますか。
#102
○山田(英)政府委員 警察としましては、三月下旬に係官をアメリカに派遣しましてレフチェンコ氏から直接証言の具体的内容を聴取してまいりました。ただいまその聴取内容に基づきまして、アクチブメジャーズの諸活動の実態の解明あるいは違法行為が介在していたかどうか調査中でございますけれども、結論を得るまで多少時間がかかりますので、いましばらく確定的なお答えは留保させていただきたいわけでございます。ただ、いまの段階で申し上げられますことは、レフチェンコは在日中から政治工作担当のKGB機関員である、容疑者であると警察は見ておりました。そこでその視察をしておりまして、彼の行った政治工作の実態にも触れておったわけでございます。そうした実態、それから彼の証言内容に基づく調査、これ等を照合してみますと、彼が証言しておるいわゆるアクチブメジャーズ、わが国各界各層に対する働きかけの活動は、証言内容どおりの信憑性はあるものと判断しております。
#103
○神田委員 調査の結果を早くまとめて公表を求めたいわけでありますが、大体いつごろまでのめどで調査結果がまとまるような考えでありますか。#104
○山田(英)政府委員 警察としてはできる限り早い時期と思っておりますので、あえて申し上げれば、数日中にでも調査の結果というのはまとめたいと思っております。#105
○神田委員 数日中にまとまりました結果に基づきまして、またいろいろと議論を進めたいと思います。官房長官にお尋ねしたいのでありますが、レフチェンコ氏自身は日本の議会での証言をしてもいいというふうな発言もしておりますし、このレフチェンコ証言によってもたらされております事実は、もしこれが信憑性があるというただいまの警備局長の判断であるとすれば、きわめて重大な内容を含んでいるわけであります。したがいまして、そういうことでありますれば、政府としましての対応といいますか、それはどういうふうにお考えでありますか。
#106
○後藤田国務大臣 いま山田局長がお答えをいたしましたように、捜査当局としては犯罪があるかないかといったような観点で調査をしておるようですが、まだその調査が終わっておりませんから、その調査の結果を見、さらにまた犯罪にはならぬけれども云々、アクチブメジャーズの問題ですから、それらについてどの程度どういうようにするかということは、これはアクチブメジャーズと言われる人の人権というような問題もございまするので、そこらは慎重の上にも慎重に対応するのが政府の立場ではなかろうか、私としてはかように考えております。#107
○神田委員 この証言が信憑性があるというふうな形で現在調査が進んでいるわけでありますから、私は、その調査結果に基づきましては、日米の司法共助協定に基づく嘱託尋問等の措置も政府の方として行う考えがあるのかどうか、その点も含めて御答弁いただきたいと思います。#108
○山田(英)政府委員 違法行為が介在するかどうか調査中と申し上げましたが、あえて調査という言葉を使いましたのは、捜査の端緒をつかむための前段階という考え方で調査しておるわけでございます。そういったことで、犯罪の容疑が固まらなければただいま御指摘の嘱託尋問という手続にはなじまないと考えております。#109
○神田委員 すでに調査から捜査の段階に入りつつあるというふうな印象を持っておりますが、そういう段階に至れば当然嘱託尋問の形もとるというふうに考えてよろしゅうございますか。#110
○山田(英)政府委員 まあ論理的に申し上げればそういうことだろうと思いますが、ただいまの段階では、違法行為ということについては、何分古い話でもございますので、レフチェンコ自身が手がけたケースにつきましても、捜査の端緒をつかむということはかなりむずかしいと判断しております。#111
○神田委員 総理にお伺いしますが、アメリカあるいはフランス、イギリス、西側の自由諸国では、ここのところ次々とスパイ容疑でソ連の大使館員その他を追放しております。レフチェンコ証言がほぼ信憑性が強いというような中でありますならば、彼が証言をし、そして組織的に供述をしておりますそういうものを含めますと、日本におきます諜報活動も非常に活発に行われているというようなことでありますが、そうであるならば、政府としましてやはり何らかの対応策を強化をしていかなければならないと思うのですが、その点につきましては総理はどういうふうにお考えでありますか。#112
○中曽根内閣総理大臣 レフチェンコ事件は刑事事件になるかどうかまだよくわかりませんが、ともかく日本を舞台にしてああいうような職業的なスパイ網が張りめぐらされて、それが積極的に活動を開始していたということははっきりしていることであります。そういうケースが前に自衛官の問題でもありましたし、こういうものが何回も出てくるということは実に寒心すべきことでありまして、われわれとしてはこれを看過するわけにはいきません。国民の皆さんにもこの事態はよく御認識願うし、政府としても公務員その他について深く戒めていかなければならぬし、政党人としてもお互い戒め合っていかなければならぬ要素が多々あると思います。しかし、だからといってすぐスパイ防止法をつくろうというところへ直結することはまだ早過ぎる、そういうように思います。
#113
○神田委員 時間がありませんから余り突っ込んだ話ができないのでありますが、私は、やはりこのレフチェンコ証言がもたらしている内容というのはきわめて重要な部分を含んでいるというふうに思っております。その第一は、インタビューにおきましてレフチェンコ氏は、ソ連のスパイ活動がわが国内において公然と行われている。その理由の一つとしてレフチェンコ氏が言っているのは、スパイ工作を防止する方策が十分に講ぜられてないからだ、こういうふうに断言をしているのです。
総理のお考えでいますぐそういうものをつくっていくつもりはないということでありますが、私は、少なくともレフチェンコ証言を見過ごすことなく、やはりこれは徹底的に調査をし、政府の責任においてそれらについての対策、その後のこの問題についての方策というものをきちんと確立をしていただきたい。念を押すようで恐縮でありますが、いかがでありますか。
#114
○中曽根内閣総理大臣 御趣旨に沿うように努力してまいりたいと思います。#115
○神田委員 次に、サミットで二、三お尋ねをしたいと思います。まず一つは、政治課題といいますか政治議題の方向で、総理はこのサミットにおきまして、核軍縮に対しましてこれを大変力説をし、核軍縮の成果を上げるように努力をしていくというふうにお考えのようでありますが、その問題につきましてひとつ御説明をいただきたいと思います。
#116
○中曽根内閣総理大臣 われわれは、地上から核兵器を廃絶したいと念願しておるのでございます。ただ、これを実現していくためには、いま抑止と均衡という形で平和が維持されておる、この現実も無視することはできません。そういう現実に立脚しつつ可能ないろいろな方法を考え、そして建設的な方法によりまして、安心感を持ちつつ核兵器を縮減し廃絶していく、こういうことが妥当な方法であると思っております。
具体的な問題になると、これは米ソが中心でやっておる問題でありますから、私は、やはり自由世界が団結して、一枚岩になって、そしてアメリカをして激励してそういう方向に向かわしむる、また、ソ連の方もそこへ馴致するように環境づくりをしていく、そういうことがわれわれとして大事であると思いますが、やはりわれわれ忘れてならぬことは、そういうような状況をつくり出すためにも自由世界が結束しているということが非常に大事であると思いますし、また、これを処理する方法自体が建設的であり現実的であって、お互いが安心できる方法を確立しつつそれを行うということが長続きのするゆえんではないかと考えております。
#117
○神田委員 この問題に関係しまして、中距離核戦力、INF制限交渉でレーガン大統領が暫定案を表明するに当たりまして、総理に親書を送ったというふうな報道がございましたが、その問題について総理の方から御説明いただけますか。#118
○中曽根内閣総理大臣 たしか三月ごろであったと思いますが、レーガン大統領から、これこれの提起をしたいが所見をお伺いしたいという趣旨の親書が来たと思います。それに対しまして、わが方の考えを返事を出しました。そんなことが一、二回あったと記憶しております。わが方の考え方は、国会で御答弁申し上げた筋のことをわれわれの考えとして言ってあります。#119
○神田委員 そうしますれば、これは当然SS20の極東配備の問題と絡んでくるわけでありますが、私は、その親書での意見の交換があったというふうなことも考えまして、極東にSS20が配備強化されているという現実をレーガン大統領を初め西側諸国の首脳に訴えて、真に日本国民が核戦力の不安がぬぐい去れるようなそういう方策をとっていただきたいと思うのでありますが、これらを中心とした対ソ政策につきまして、レーガン大統領を初め西側の首脳に協調、協力を求めるお考えはありますか。#120
○中曽根内閣総理大臣 われわれはレーガン大統領のゼロオプションを強力に支持して、いまでもその基本の線に立っており、アジアや日本の犠牲においてこの中距離弾道ミサイルの問題が解決されるようなことが絶対ないように何回も念押しをして、今後ともそういう態度を持続してまいるつもりであります。サミット等におきましては、要するに西側が団結を示すいい機会でもありますから、そういうことを中心に、いかなる戦略で西側が立ち向かっていったらそういう目的を達するか、チャンスがあらばよく話し合ってみたいと思っております。
#121
○神田委員 次に、経済問題で二、三お伺いしたいのであります。内需主導で経済成長を求めていくというふうな基本方針のもとで、しかしながら米国の高金利の是正というのは、これは求めていかなければならない問題だろうと思っております。
この問題と、もう一つは為替問題です。この為替の乱高下が経済に及ぼす影響はきわめて深刻でありますので、これらについてフランスのミッテラン大統領がいろいろ提案をしておりますけれども、日本といたしましても、この外国為替市場に対する考え方は、変動相場制のこのままの姿でよいのか、何かもう少し具体的に前向きに考えていく考え方があるのかどうか。
この二点をまずお聞きしたいと思います。
#122
○竹下国務大臣 まず、為替相場の問題でございます。世界経済の円滑な発展のためには、これは安定が最も必要であります。御説のとおりであります。そこで、各国の間で金利差、それから経常収支の差、インフレ率の差、そういうものが多少縮まったとはいえ、まだ非常に乖離が大きいわけでございます。したがって、現在の情勢では固定相場制に復帰するということは困難でもございますし、主要国で直ちに固定相場制という意見は出ておりません。それで、先般の七カ国蔵相会議の報告を首脳会議にするわけでございますが、中長期的な視点に立っては、経済政策の調和を図っていくということと、そして行き過ぎに対しましては主要国が、単独もございますが、協調して介入するということが重要であるという方向を考えております。それから米国の金利、いわゆる長期金利であろうと思います。これは結局、財政赤字がどの程度縮小されるかということで左右される問題でございますので、折に触れ主張していこうと考えております。
#123
○神田委員 最後に、総理にお尋ねしますが、減税問題で与野党の中で交渉が続いております。減税をサミットで表明するかどうかということは、やはり一つの大きな関心事であるわけでありますが、与野党間においてある程度の減税の方向が見定められましたならば、サミットの中におきまして減税実施を諸外国に対しまして表明なさるお気持ちはおありですか。#124
○中曽根内閣総理大臣 そういう個別的、具体的な政策表明というものは、必ずしもこういう国際会議においてはなじまないと考えております。#125
○神田委員 終わります。#126
○古屋委員長 三浦久君。#127
○三浦(久)委員 まず、総理大臣にお尋ねをいたしたいと思います。憲法改正の問題ですが、ことしの自由民主党の大会宣言に、自主憲法の制定ということが盛り込まれております。参議院選挙の政策には、この憲法の改正は除外をされております。しかし、国民は、中曽根内閣がいつ憲法の改正に乗り出すのだろうか、その内容はどうだろうかということを大変危惧いたしておるのではないかというふうに私は考えておるわけであります。
それで総理にお尋ねをいたしたいのですが、中曽根内閣としては、改憲の発議に必要な勢力の保持いかんにかかわらず、この憲法改正を現実の政治日程にはのせない、そういうように考えておられるのかどうかお伺いいたしたい、こういうふうに思います。
#128
○中曽根内閣総理大臣 現内閣は憲法改正問題を政治日程にのせないと言明しているとおります。#129
○三浦(久)委員 中曽根総理は、昭和三十年に「自主憲法の基本的性格」という本をお書きになりまして、その中で「自主憲法のための改正要綱試案」というのを発表しておられます。その後、昭和三十六年に「高度民主主義民定憲法草案」というものをお書きになっておられると思いますけれども、そのとおりでございましょうか。#130
○中曽根内閣総理大臣 後の方は著書とかなんとかというのじゃなくて、そのときの考えをパンフレットみたいなものにまとめたものではないかと思います。#131
○三浦(久)委員 ここに「大右翼史」という分厚い本があります。これは右翼の歴史を書いた本ですが、この中にも中曽根総理のこの「高度民主主義民定憲法草案」というものが転載をされておりますから、これは総理がお書きになったことはまず間違いがないだろうというふうに私は思います。この昭和三十年の「自主憲法の基本的性格」という本の中で総理は、「国民が承認したら徴兵もやり得る様にしておいた方がよい」、こういうふうに書かれているわけですね。これは国会の答弁でもって取り消しをされました。しかし、この「自主憲法の基本的性格」の本や、また、いま私が述べました昭和三十六年の「高度民主主義民定憲法草案」では、共通して、「天皇は、日本国の元首であり、日本国を代表する。」そういう条文があります。また、これは三十年の本の方ですが、天皇は、「内閣の進言に基ずき」、三十六年の草案では「内閣の決定に基づいて」というふうに変わっておりますが、宣戦布告を行う。天皇は、「内閣の進言」、後の方では「内閣の決定」によって宣戦布告を行う、そういう条文まである。それから、両方に共通している問題で、また、われわれがちょっと目につくのは、「日本国民は国家を防衛する義務を有する。」こういうことがはっきり書かれているわけであります。
そういうことをお書きになった記憶がおありになるのか、ないのか、お尋ねいたしたいと思います。
#132
○中曽根内閣総理大臣 昔はさまざまなことを考えましたから、いろいろなことは書かれているだろうと思います。しかし、徴兵の問題は、これはもう徴兵はやりませんと、ずいぶん前からそのことははっきり言明しておるところであります。#133
○三浦(久)委員 国防の義務というのは徴兵制度を可能にするものだと私は思うわけでありますけれども、いかがでございましょう。#134
○中曽根内閣総理大臣 大体そういう文章は共産圏の国にみんな書いてあるのじゃないでしょうか。そういうことも勉強してそういう文章が出てきたのではないかと思いますが、ともかく、私の考えがわりあいにまとまってきて、そしていまの考えに近い考えになってきているのは、昭和三十八年ごろ、憲法調査会が終わりかけたころで、あの総括として「中曽根康弘の意見」というのが憲法調査会の記録に正式に載っておりますが、あの辺が、大体いままでのいろいろな考え方が収斂されて、統一してまとめられた考え方で、それをぜひごらん願いたいと思っております。#135
○三浦(久)委員 そうすると、いまの国防の義務というようなものは憲法改正の際には明記はしない、そういうふうに伺ってよろしいのですか。#136
○中曽根内閣総理大臣 私は、現内閣は憲法改正問題を政治日程にのせないというのですから、そういうことを問題にすること自体が変じゃないのですか。#137
○三浦(久)委員 いえ、いえ。論争しておると時間がすぐなくなってしまうので次に行きたいのですけれども、政治日程にのせないとはいっても、しかし、あなた自身は総理大臣をやめたらまた改憲運動をやるのだというようなこともおっしゃっておられるわけであって、そして、また、そういうふうにあなた自身が憲法の改正運動を行う、自主憲法の制定運動を行う、その基本的な方向がどういうものかということを承っておくということは、あなたのこれからのさまざまな施策をわれわれが予想する場合に必要なことだと思って私は聞いているわけであります。次に移りますけれども、総理は、去る四月三十日から五月十日にかけてASEAN諸国を歴訪されております。この歴訪の中で、五月六日のフィリピンのマルコス大統領主催の晩さん会で、総理は、過去の戦争で貴国と貴国国民に多大の迷惑をかけたことはきわめて遺憾であり、深く反省したい、こういうふうに述べておられます。また、五月九日のクアラルンプール・スピーチではわが国の安全保障政策について触れておられますが、その中で、このわれわれの安全保障政策は、過去への厳しい反省に立った日本人の強く変わらぬ国民感情に深く根差したものである、こういうふうに言われて、太平洋戦争に対する反省を語っておられるわけであります。また、帰国後の国会答弁でも、中国東北地方を含め、第三国に侵入したことについての反省も述べておられます。また、ことしの二月十八日の予算委員会の席上でございますが、十五年戦争について侵略戦争と認識しているという旨の答弁をされておられるわけであります。
これらの総理の一連の言動からいたしますと、総理はこの十五年戦争を自衛のための戦争というふうにはお考えになっていらっしゃらない、また、虐げられたアジア諸民族の解放闘争というふうにもお考えになってはいらっしゃらないというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
#138
○中曽根内閣総理大臣 そのことはすでに国会においても申し上げておりますように、関係各国に対して多大の迷惑をかけ、また国民の皆様方の生活を侵害したりいたしまして、それは非常に深く戒めなければならぬことであり、また、国際的にも、それは侵略戦争であると国際的な多くの判定を受けておる、そういうこともわれわれはよく認識して、みずから戒めていかなければならないと考えておる次第であります。#139
○三浦(久)委員 ですから、十五年戦争を自衛のための戦争であったとか、民族の解放闘争であったとか、そういうようには認識されておられないのではないでしょうか、どうでしょうか。#140
○中曽根内閣総理大臣 いま申し上げたとおりであります。#141
○三浦(久)委員 なかなかそこをはっきりおっしゃられないようですけれども、そのくらいのことはお答えになって当然だと私は思うのです。多大の迷惑をかけた、しかしそれは正義の闘争であった、そういうふうにお考えなんですか。私は、総理の腹は、いままでの一連の答弁を見るとそうではないと思うので、いま念を押して聞いているのですが、お答えになられないようですので、次に進ませていただきたいと思います。よく大東亜戦争という言葉を使いますね。総理も、総理大臣になる前はあちらこちらでよく大東亜戦争という言葉を言っておられた。総理になってからは、大東亜戦争とは言わないで、第二次世界大戦であるとか太平洋戦争であるとか、そういうような用語をお使いになっていらっしゃると思います。
この大東亜戦争という用語が出てきたのは、昭和十六年の十二月八日に当時の東條内閣がアメリカとイギリスに対して宣戦の布告をいたしました。その四日後の十二月十二日に東條内閣の閣議決定が行われまして、「今次の對米英戰は、支那事變をも含め大東亞戰争と呼稱す、」そしてその理由は、大東亜新秩序建設を目的とする戦争だからである、こういうように定義づけているわけですね。そうすると、これは当然、大東亜戦争というのは大東亜の新秩序を形成するための正しい戦争であった、そういう価値判断が入った言葉だというふうに私は思います。
そういう意味で、私は、今後、政府の公式発言とかまた公式文書、そういうものではこの十五年戦争を大東亜戦争というふうに呼ばない方がいいと思っているのですが、総理の御見解はいかがでございましょうか。
#142
○中曽根内閣総理大臣 歴史というものは悲喜こもごも織りまぜているものであり、栄光と悲惨というものが織りまざっておる。イギリスの歴史もそうであり、フランスの歴史もそうであり、共産党の歴史もそうであると私は思っております。しかしそれは、現実にみずから国民が後で反省もし、国際的批判にもたえ得る正しいものに逐次形成していかなければならぬ、それが人間が進歩するゆえんである、そう感じております。大東亜戦争という名前は、あのころ東條内閣がそういうふうな名前で呼ぼうと――大東亜戦争と直接はクォートしてないのですね、大東亜建設のための何とかという、そういう記憶があります。あのころ知識欲旺盛だったゼネレーションの諸君は、そういうことを言われて、そのために頭に残っておる。飛鳥田委員長も、たしか本会議で大東亜戦争という名前を出したことがあったと記憶しております。共産党の中にも、ちょっとそういうことを言いかけた方がいたのではないかと記憶したこともあります。
そういう意味で、やはり人間の歴史というものは、悲喜こもごも、いろいろなものが織りなされている。その中に反省が生まれ、正しいものに逐次形成されていくのが正しいことだと考えております。
#143
○三浦(久)委員 個人的に大東亜戦争というふうに使ったり、また一杯飲んで軍歌を歌ったり、そういうことを私は言っているんじゃないのです。政府の公式的な発言や文書の中では大東亜戦争という言葉は慎んだ方がいいのではないでしょうかと聞いているので、それにまともにはお答えになれないでしょうか。#144
○中曽根内閣総理大臣 その問題については、政府は特別の決定をしてないのではないかと思います。ですから、わりあいに自由に、皆さんが自分がいいと思う方法で発言しているのではないか。しかし私は、いわゆる大東亜戦争というものは、私の著書では間違った戦争であると書いてあります。その点はもうちょっとよく調べてもらえばわかります。どういうふうに正式に呼ぶかどうかということは、これは法的には法制局長官に聞かないとわかりませんが、私はやはり戦後の政治家として、この大きな悲惨な事実というものを反省して、そしてあのころ東條内閣が決めたそういうものが果たしてそのとおり真実なものであったかどうか、世界の歴史の批判にたえ得るものであったかどうか、これは厳正に検証し批判されなければならぬことがあった、私はそう思いますから、大東亜戦争という名前を私は公式には使わぬ、私自体はそういうふうに考えておりまして、公式には余り使ってないと思います。しかし、私的に使うことは、何しろ飛鳥田さんと同じ時代に育った人間でございますから、言うことはあると思います。
#145
○三浦(久)委員 それは年の問題じゃないのじゃないですか。戦争に対する反省の問題でしょう。私ももう五十二歳ですから、戦争は経験しておりますよ。しかし、なるべくそういうものは使わないようにみずからを戒めているつもりです。ところで総理、福岡市の中央区谷二丁目の国有地に膨大な碑が建てられています。これは高さが七メートル三十センチあるわけですが、この大きな碑にこういうことが書かれているのです。「今次の大戦は自存自衛のため日本国の存亡をかけ虐げられた民族の解放と万邦共栄を願っての聖なる戦いであった」、こういうことであります。そのほかにもいろいろ戦争を賛美する内容があります。
私は、国有地にこういうようないわゆる大東亜戦争と言われる戦争を賛美するような碑が建っている、こういうことは好ましくないと思います。私も決算委員会でそれを取り上げました。当時、前外務大臣の櫻内さんですが、外交上好ましくないというふうにお答えになっておられるんですね。
総理自身は、こういう戦争を賛美するような碑が国有地に建てられているということについてはどういうふうにお考えになっておられるのか、お伺いをいたしたいというふうに思います。
#146
○竹下国務大臣 国有地は大蔵大臣の所管事項でございます。したがいまして、いまの問題は事実関係でございますから、正確を期するためにこれは政府委員からお答えする、こういうことで御理解をいただきたいと思います。#147
○勝川政府委員 御指摘のように、本件碑文は確かに種々問題があるものでありますが、最初に申し上げておきたいのは、碑文それ自体は福岡県大東亜戦争戦没者慰霊顕彰会という一民間団体が書いたものでありまして、政府の見解とは何ら関係のないものであるということであります。ただ問題は、そのような碑文が国有地に、しかも事前の承認を得ることなく建てられており、したがって、国の姿勢に疑義を生ぜしめるおそれがあるということから好ましくないということでありまして、かかる観点から、昨年九月二十一日の本決算委員会において、国は碑文の全面修正または碑の撤去を求めるべきであるという御指摘をいただいたところであります。
当局といたしましては、直接の管理者たる福岡市に対しまして同日の御審議の状況を伝え、その善処方を強く要請した次第でありまして、これを受けて、地元において関係者が鋭意協議したところであります。この過程で、委員会で御指摘のあった点についても十分検討協議いたしましたが、まず、碑の撤去、移転につきましては、適当な移転先が見当たらず、また移転には多額の経費を要することから、きわめてむずかしいと判断せざるを得ませんでした。また、碑文を当初申請書どおりに修正させることにつきましては、当方としても顕彰会に強く要請したところでありますが、顕彰会はこれに応じがたいとしている状況にあります。
かかる状況において、当初申請書どおりに強制的に修正させることについて法的な可能性も十分検討いたしましたが、本件無償貸付契約は、公法上の行政処分とは異なり、基本的に私法上の行為であることから、碑文に問題があるにしても、本件碑が基本的には慰霊碑としての性格を逸脱しておらず……(三浦(久)委員「そんなことはわかっているよ、委員会でずっとやってきたんだから。そんなことはもういいよ。そんな長いものを書いてくることはないんだよ、みんなわかっているんだから」と呼ぶ)どうも済みません。(「結論を言いなさい」と呼ぶ者あり)はい。
したがいまして、先生の御承知のように、「聖なる戦いであった」という文言を「悲痛なる戦いであった」というふうに改め、英霊の「偉大なる業績」という文言を「偉大なる犠牲」というふうに改めると同時に、「この碑は 今次の大戦において 尊い生命を捧げられた人々の当時の心境を想い 心からなる敬弔の意を現わすとともに 大戦が これら同胞のみならず亜細亜その他の国民にも悲惨な結果をもたらしたことを深く悼み 再び人類に不幸をもたらす戦争を繰返すことのないよう 恒久の平和を祈念して建立したものである」という文章を記した補足文をつけることとしているものであります。
したがって、こういうことで、個々の文言は別として、全体として戦争賛美をしているということの趣旨がないということが明らかになったと考えますので、碑についてこれ以上論議が続くということは好ましくないという観点から、大蔵省としてはこのような措置で解決させていただきたいと考えております。
#148
○三浦(久)委員 何言ってるんだ。何が好ましくないんだ。論議を続けていくことが何が好ましくないんだ。そんなばかなことを言ってもらっちゃ困りますよ。わずかな時間を、長々と書いてきたものを読まれても本当に迷惑しますよ。総理、そういう碑文が刻まれた大きな碑、いわゆる聖戦碑と言われているものですが、昨年の五月に建立されたものです。現在もそのまま建っています。これについて総理はどういうふうな御感想をお持ちでしょうか。お答えになられますか。
#149
○中曽根内閣総理大臣 この問題は、いま局長が答弁申し上げましたように、いろいろ善処すべく努力しておる問題でございますので、しばらく推移を見守りたいと思います。#150
○古屋委員長 楢崎弥之助君。#151
○楢崎委員 私の質問時間は七分程度というまことに非常識な質問時間でありますから、ただいまの大蔵省の局長の答弁を聞いておって反省をいたしまして、質問方式を変えて、質問を一括してざらっと言いますから、答弁は一括してやっていただきたい。それで、再質問の時間はないと思いますから、答弁は答弁漏れのないように親切に、どんなに長くても結構だからお願いをいたします。まず第一番は総理に対する質問でございますが、項目は総選挙問題であります。
その第一は、先ほど、総選挙というのは、任期いっぱいやるのが原則だ、これはあたりまえの話で、そのぐらいのことを聞く必要は何もないのです。ところが、私も八回選挙をやり二十三年間になりましたが、その八回のうち四年間まるまるやったのは一回でありました。あとは平均大体三年間、私の経験の中では。しかも、一番短いのは七カ月。現実はそうであります。
しかも、今度の同日選挙の問題については、四月二十四日の読売新聞の朝刊に、同日選挙に与野党が動いておるということが一面トップ。それから二日置いた四月二十六日、同じく読売新聞に一面トップで「同日選挙、首相も意向」と書いてあります。朝日、毎日、サンケイも全部一面トップで同日選挙。これは恐らく前日行われた衆参両院議長と総理の会談の中で、解散問題に対してはこちらからしかける気はない、受けて立つという言葉について、福田衆院議長の、この意味は恐らく不信任案が出されたら受けて立つという意味であろうという見解が載っておる。福田議長といえばベテラン議員でありますから、そのような印象を議長に与えた総理の言葉は、総理御本人はそういう気はなかったかもしれないが、そういう印象を与えたという事実、それから一流新聞をして同日選挙だということを一面トップに書かせた何かがそこにあるはずだ。そしてまた、それを受けて走った議員がおるし、事務所の確保なんかもやればこれはむだ銭を使ったことになる、現実の問題は。これは全部マスコミが悪いんだ、議長が勝手にそういうことを言ったんだ、あるいは勝手に走った者はその議員が思慮が足らないんだということだけでは済まされないと私は思う。
したがって、その辺について、そういう意図はなくても、そのおっしゃられたことが与える影響について、総理の発言は重大だから責任があると私は思う。その責任あるいは反省についてお伺いしたいのがまず第一点であります。
第二点は、同日選挙は回避されましたが、先ほども申し上げたとおり、任期満了というのはまことに少ないケースで、任期中に解散、総選挙がある。総理は、衆議院解散、総選挙について、任期満了前の解散についてはどのような大義名文がなければならないとお考えか、これが第二点。
第三点目は、同日選挙は回避された。われわれは同日選挙はいろいろの意味で反対をしましたが、そのうちの一つの大きな柱は、衆参両院の機能を決めております憲法の精神になじまない、これが反対の大きな理由です。われわれはそう考えている。この点については、同日選挙とこの憲法の精神との関係についてどのような見解をお持ちか、それが第三点であります。
第四点は、総選挙というものは、当然ですが、その内閣の政治姿勢なりあるいは政策について国民に信を問うものである。したがって、政治姿勢について言えば、田中決議案問題は御案内のとおりであります。そのうちの一つは、まだ起訴の段階だからということも言われておる。秋口には判決がありますから、政治姿勢について国民に信を問うその判断材料としては、やはり判決後の総選挙が必要である。逆に言えば、判決前の総選挙ということは非常に問題がある。そうでなくてもロッキード隠しとか目白解散とか言われやすいから。
私は、その四点を具体的にお伺いをいたします。
それから次に、法務大臣と後藤田官房長官にお伺いします。
例の田中弁護団の最終弁論について、いろいろ長官が発言をされました。証人として立たれたから、弁護団側の解説をされたやに新聞では承りました。ただ、あの最終弁論の中には、五億円の問題について、恐らく丸紅側がP3Cに関してロ社から受け取ったのではないかという推理部分が含まれておる。これは私は重大だと思うのです。この問題の中でわれわれは、PXLと次期早期警戒機E2C、これの白紙還元について国会で問題にしましたね、四十七年に。そして、この問題がロッキード事件の実は最頂点の問題ではないかとわれわれは認識しておった。しかし、どういう理由か途中でこの問題の中からは切られましたよね。それが再び田中弁護団の最終弁論の方でP3Cと絡んで出されたのではないかという推理は、実に重大であると思います。その最終弁論の組み立ての中の一つに、もし後藤田長官の証人としての発言が利用されておるとすればやはり関係なしとはしないという、これは私の感じですよ、ちょっと無理な結びつきもあるかもしれませんが、その点について法務大臣と後藤田長官の御見解を承りたい。
最後は、五月五日の週刊新潮ですが、自衛隊のクーデター問題について杉山公一なるえたいの知れない人間が出てきて、自衛隊の現役佐官二人を私のところに差し向けていろいろ私を陥れるために工作をしたやに載っておる。これが事実ならば大変なことだと思うのです。こういうえたいの知れない人間から現役佐官が動かされる、恐らく事実ではないであろうと思う。しかし、もし事実でないならば、防衛庁と自衛隊の重大な名誉にかかわるから、どういう処理をされるのか、それが一つ。
いま一つは、東京タイムズがこのクーデター問題に対する連載をやっておる中で、この杉山公一なる人物について内偵が行われておるという記事が出ておりました。警備局長にお伺いしますが、それが事実なのかどうか。
この防衛庁と警備局長は、調査の時間がありましょうから、この国会に間に合わないときには、国会が終わってでもいいから私のところにその調査結果を報告していただきたい。
以上であります。大体七分です。
#152
○中曽根内閣総理大臣 大体時間超過のようですから、簡単に御答弁申し上げます。福田議長の御発言について解散に関する記事が出たということでありますが、あのときの新聞をごらんになりましても、徳永議長は同じところに同席して別な発言をしております。そういう意味におきまして、新聞はときどき大きなとちりをやるものであると私は感じました。あの責任は、私の方へ持ってこられても、これは困ります。それが第一であります。
次に、選挙の大義名分のことでございますが、選挙はそのときどきによっていろいろなケースがあり、大義名分もおのおの変わってまいります。私は大体任期満了をもってよしとする、そう考えておるので、大義名分のことはいま考えておりません。
次に、同日選挙は憲法違反ではないかということでございますが、すでにこれは先例もあり、憲法違反であるとは考えておりません。
次に、解散の時期について御意見がございましたが、一つの意見として拝聴いたしておきます。
#153
○後藤田国務大臣 私の記者懇談について一つの新聞が大きく取り上げました。そのことについての御質疑でございますから、事実を明らかにいたしておきたいと思います。それは十一日ですね、つまり、裁判再開となりました当日のこれは記者会見。裁判が再開になったが、きょうから最終弁論だ、官房長官どうだ、こういう御質問がございましたから、私は、裁判について行政府の私としてコメントする立場にはないということを明確にお答えをいたしたわけでございます。
ところが、その翌日十二日、ずいぶん記事がずっと出ましたね。それに関連をして、これは記者会見ではなくて記者との懇談でございます。いろいろ出ているが、一体どのようなお感じですか、弁護側の言わんとするところは、とこういうことでございました。そこで、弁護側が言わんとしているところは、これは丸紅の穴埋めですか、そういうことを言わんとしているんじゃないの、こういうお答えをいたしました。ところが、それに対して一人の記者の方から、そうすると、時期がずれていますからP3Cということになるんではないですか、そうなるとそれは政府に関係してくるのではないか、これは軍用機ですからね。私は、そんなこと言っていないんじゃないの、別段政府の中に金をもらったなんという者はおるわけがないし、そんなこと言っていないんだから政府は関係ないよ、私はさように申し上げた。
もう一つは、八月十日の日時のことについて私と山下元利さんが証言に立っております。その件について、今度の弁論でどう言われているか私読んでおりませんが、一つの新聞にでかく出てしまったわけです。そこで、この点は山下元利さんはお気の毒だと僕は思うよ。それはなぜかならば、五年も六年も前のことを、大筋はわかっておっても、細かなことはわからぬのじゃないか。ただ僕は違うよ。私は行動記録を持っております。その行動記録に基づいて、日時についての私の部分に証言をしているんだから、僕はでたらめやうそを言ったつもりはないよ。ただ、それは、検事さんの方としては根拠薄弱ということになっているようだが、それは検事さんの方が私は間違っておると思うよ。以上がやりとりでございます。
それ以外一切話はありませんから、私自身、その新聞に出たように、当然のことなんで、裁判批判をするとか検察を批判するなどというつもりはありません。これは私自身に関するところと、弁護側がこう言っているんじゃないのと聞かれましたから言ったにすぎない。この点は明確にお答えをいたしておきたい、かように思います。
#154
○秦野国務大臣 いま私は詳しく官房長官の記者会見の経過を聞いたわけですけれども、私はそんなに詳しく知らなかった。知らなかったけれども、法務委員会で、後藤田発言について法務大臣はどう思うかという質問でございました。あんなに詳しくは聞かなかったけれども、およその見当は私は狂っていなかった。そこで、私としては目くじらを立てるような問題ではないと思う、こう答えたわけでございます。そのことは、目くじらを立てるほどのことではないというその言葉は、それ以下でも以上でもない、いまでもそう思っております。#155
○谷川国務大臣 楢崎委員の御指摘になられましたクーデター事件に関連いたしまして、ただいま二点ございましたが、そのうちの東京タイムズの方は別といたしまして、五月五日号の週刊新潮に関係してお答えをさせていただきます。えたいの知れぬ人物が現役の佐官をもって先生のところへ差し向けたというような御指摘がございましたが、少なくともあの記事の中だけでは、その真偽のほどはどうにも調査のいたし方がない、こういう感じがいたしております。
#156
○山田(英)政府委員 お尋ねの東京タイムズの五月十日付の記事では、そこで五月五日付の週刊新潮の記事が引用されているわけでございまして、そこの中では、杉山公一なる人物が、自衛官の制服を着て報道関係者に会ったということを週刊新潮の記者に公言しているようでございます。事実の真否は今後確かめなければいけませんが、いやしくも自衛官の制服を悪用されているということは重大である。その真否を確かめますために、ただいま愛知県警において杉山公一の所在確認に努め、真相を追求したい、かように考えておるわけであります。(楢崎委員「わかったら報告してください」と呼ぶ)結果がわかりますれば御報告いたします。
#157
○楢崎委員 長くなって済みません。終わります。#158
○古屋委員長 これにて昭和五十四年度決算外二件についての質疑は終了いたしました。─────────────
#159
○古屋委員長 昭和五十四年度決算についての議決案は、理事会の協議に基づき、委員長において作成し、各位のお手元に配付いたしております。これより議決案を朗読いたします。
議 決 案
昭和五十四年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につき、左のごとく議決すべきものと議決する。
本院は、毎年度決算の審議に際し、予算の効率的執行並びに不当事項の根絶について、繰り返し政府に注意を喚起してきたにもかかわらず、依然として改善の実があがつていないのは、まことに遺憾である。
一 昭和五十四年度決算審査の結果、予算の効率的使用が行われず、所期の成果が十分達成されていないと思われる事項が見受けられる。
左の事項がその主なものであるが、政府はこれらについて、特に留意して適切な措置をとり、次の常会のはじめに、本院にその結果を報告すべきである。
1 会計検査院の検査の充実強化については、本院において数回にわたり議決を行つてきたところである。
政府は、会計検査院の検査の充実強化が行政改革との関連においても重要な課題であることにかんがみ、今後とも会計検査の実施に当たつては、その目的が十分達せられるよう所要の措置を講ずべきである。
2 政府広報が無断で転載されることのないよう、今後、厳重に注意すべきである。
3 行政改革の推進について、政府は、高度成長期に肥大化した行財政の徹底した見直しを行い、もつて財政再建に資すべきである。
4 政府は、第二回国際連合軍縮特別総会に関する国会決議の精神を生かし、世界の軍縮を真剣に推進するよう各国に強く訴えるとともに、開発途上国に対する経済協力を強化し、特に、海外経済協力基金に対する一般会計及び資金運用部からの資金の充実についても考慮すべきである。
5 国有地の無償貸付に当たつては、当該無償貸付の本旨を逸脱した利用が行われることのないよう、今後、管理に十分留意すべきである。
6 近年、医療費が増高しているなかで、保険医療機関等における医療費の不正請求が毎年指摘されている。
しかるに、保険医療機関等に対する指導、監査体制は、指導医療官の欠員などのため、その機能が十分に発揮されているとはいえない現状にある。
政府は、医療費の請求の適正化を期するため、その指導、監査体制の強化、充実を図るべきである。
7 農地の造成を目的として実施されてきた国営干拓事業において、造成された土地が農地以外の用途に転用されたり、中途で事業を廃止したりなどしているものが相当数見受けられる。社会経済情勢の変化に起因する面もあるとはいえ、いずれも投下された多額の国家資金が所期の効果を十分発揮していない点が認められる。
財政再建が叫ばれている折から、今後の事業遂行に当たつては、厳格な選別のもとに投資効果の発現が確実と認められるものについて実施するよう努めるべきである。
8 日本中央競馬会が日本軽種馬協会に無償で寄贈する外国産種牡馬の購入に関し、種々の問題が指摘され、国民の不信感を招いたことはまことに遺憾である。
政府は、日本中央競馬会に対し、指摘された事実の解明に努めることはもとより、今後再び同種の事態が生じないよう、購買馬の決定手続、価格決定方法、会計処理等、種牡馬の寄贈に至るまでの一連の手続きについて、公正かつ適正を期するよう改善を図るべく指導すべきである。
二 昭和五十四年度決算検査報告において、会計検査院が指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。
政府は、これらの指摘事項について、それぞれ是正の措置を講ずるとともに、綱紀を粛正して、今後再びこのような不当事項が発生することのないよう万全を期すべきである。
三 決算のうち、前記以外の事項については異議がない。
政府は、今後予算の作成並びに執行に当たつては、本院の決算審議の経過と結果を十分考慮して、財政運営の健全化を図り、もつて国民の信託にこたえるべきである。
─────────────
#160
○古屋委員長 これより昭和五十四年度決算外二件を一括して討論に付します。討論の申し出がありますので、順次これを許します。中川秀直君。
#161
○中川委員 私は、自由民主党を代表しまして、昭和五十四年度決算につき、ただいま委員長御提案の議決案のとおり議決するに賛成の討論をするものであります。当委員会は、昭和五十四年度の予算がいかに執行されたかを各省庁別に順次審査を続け、その間、是正改善を要すると思われる事項については、その都度関係当局に注意を喚起してまいりました。しかし、ただいま委員長御提案の議決案に示されましたとおり、予算の効率的使用等、所期の成果が十分に達成されていないと思われる事項並びに会計検査院の昭和五十四年度決算検査報告に不当事項、改善処置要求事項等が指摘されたことは、はなはだ遺憾であります。
これらの指摘事項等につきましては、政府は誠意を持って改善に努力されたいのであります。
わが党は、その改善を期待しつつ本議決案に賛成いたすものでありますが、ただ、この際予算の執行に関して政府に一言希望を申し上げておきたいと存じます。
政府及び政府関係機関等の予算執行については、当初の予算を年度内に完全に執行することを目途としていると思います。しかし、多額の繰越額、不用額を生じているのが現状であります。
すなわち、昭和五十四年度予算のうち、用地の取得難のため年度内にその支出を終わらないで五十五年度に繰り越された金額は、一般会計において六千三百四十二億円、特別会計の合計において三兆七千六百二十二億円、政府関係機関の合計において六千五百三十億円であり、また、諸般の事情により不用となった金額は、一般会計において四千九百二十六億円、特別会計の合計において四兆七千百二十八億円、政府関係機関の合計において三千八百五十六億円になっております。
また、国の直轄事業で多額の国家資金が投下されていながら、所期の効果が十分発揮されていない実例が見受けられます。
このような実情にかんがみ、政府は予算の執行及び事業の計画決定並びに実施に当たっては、本院の決算審議の経過と結果を十分考慮して財政運営の健全化を図り、もって国民の信託にこたえられることを希望いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
#162
○古屋委員長 新村勝雄君。#163
○新村委員 私は、日本社会党を代表して、昭和五十四年度決算につき、ただいま委員長から提案された議決案に対し、反対の意思を表明するものであります。議決案のうち、予算の非効率的使用等に関し政府に適切な措置を求める第一項、会計検査院が指摘した不当事項について本院もこれを不当と認める第二項については賛成であります。
しかし、「決算のうち、前記以外の事項については異議がない。」とする第三項に反対するものであります。なぜならば、昭和五十四年度決算における不当事項等は、議決案の指摘に尽きるものではなく、氷山の一角でしかないからであります。
以下、昭和五十四年度決算の問題点について申し述べます。
第一は、決算の前提となる昭和五十四年度予算についてであります。わが党は、この予算に対して当時厳しく批判いたしました。昭和五十四年度の財政は、第二次石油危機に対して、国民生活を守り、経済を安定成長に向かわせ、財政を再建することにその責務がありました。しかるに、同年度予算は、十五兆二千七百億円もの大量公債を発行し、国債依存度を実に三九・六%にまで高め、一層の財政破綻を招いたのであります。その要因は、不要不急の経費やむだの削減及び不公平税制の是正による財源の確保を行わないばかりか、大企業向けに公共事業費を二〇%も増額し、歳出を拡大した点にあります。加えて、不十分な雇用対策、国民負担の急増など、国民生活を犠牲にする予算でありました。
このような昭和五十四年度予算の執行に関して、限られた事項以外に問題がないと承認することはできません。
第二は、防衛費の問題であります。わが党が昭和五十四年度決算審議において指摘いたしました諸点に関し、政府の明確な答弁がないばかりか、疑問が強まったのであります。すなわち、防衛費をGNPの一%以内とする基本方針をなし崩しにする政府の企図、シーレーン防衛、三海峡封鎖、急増する国庫債務負担行為、レーガン戦略への加担、F16の三沢配備、米軍によるアルトラブ等々の問題であります。
このような軍事大国化を進める重要な一環となった昭和五十四年度財政を容認することはできません。
第三は、予算のむだ遣いが多いということであります。昭和五十四年度決算検査報告は、不適正経理三百三十六億、国損額三百三十五億を指摘しており、史上最悪の検査結果となったのであります。会計検査院の実地検査は対象機関の八%について行われたのでありますから、財政全体では四千二百億円のむだ遣いがあったと推計できるのであります。
自民党政府は、財界本位の行政改革において、年金、福祉、教育費を切り詰め、国民にがまんと耐乏を強いながら、多額の予算のむだ遣いをしているのであります。
わが党は、国民とともに、このような予算の使用を是認することができないのであります。
第三は、会計検査院の権限の拡充強化についてであります。この件については、すでに本院においても決議がなされています。清潔な政治を実現するため、わが党は会計検査院の機能を拡充強化する法律案を提出してきたところであります。
しかし、政治の浄化に背を向ける自民党がこの法律案の審議促進に対して全く消極的対応に終始しているため、成立を見ていないのであります。
会計検査院の権限の拡充強化がおくれていることも一因となって、予算の不当使用の是正が進んでいないのであります。
私は、以上の理由により、本議決案に対し、反対の意思を表明いたします。
さらに、政府が決算を翌年度以降の予算の編成や執行の改善に反映させる点において全く不十分であり、このため決算を軽視する傾向を生じさせていることについて政府が直ちに改めるよう強く要求して、私の討論を終わります。(拍手)
#164
○古屋委員長 春田重昭君。#165
○春田委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま委員長から提案されました議決案件に対し、反対の意を表明するものであります。議決案第一項におきましては、本委員会での決算審査の際、各委員より政府に対して問題が指摘され、政府の速やかにして厳正な措置が強く望まれた事項が挙げられており、わが党としても賛成するところであります。
したがって、政府は本委員会の意図するところを十分に酌み取り、国民の負託にこたえるべきであります。
第二項におきましては、「会計検査院が指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。」としていることについては私も同意するにやぶさかではございませんが、会計検査院の実地検査はあくまで抽出検査であり、これらの不当事項は氷山の一角と言わざるを得ません。したがって、政府はこうした現状を直視して、未検査の分に心を配り、内部監査の強化を図り、みずからの襟を正すべきであります。
第三項におきまして、「決算のうち、前記以外の事項については異議がない。」としてこの決算を総体として是認することになっているのは承服できないところであります。なぜなら、政府に対して警告すべき事項は前記の各項にとどまらないからであります。
たとえば、会計検査院の検査権限の充実強化は、これまでにも本委員会で再々にわたり議決されてきたにもかかわらず、いまだに十分な措置がとられていないことは、はなはだ遺憾と言わざるを得ません。政府は速やかに院法改正を提案すべきであり、あわせて検査体制の整備を図るべきであります。
また、農地の造成を目的として実施されてきた国営干拓事業において、造成された土地が農地以外の用途に転用されたり中途で事業を廃止したりしているものが散見されることは、投下された国家資金が所期の効果を発揮しているとは認められず、遺憾と言わざるを得ません。
さらに、保険医療機関等における医療費の不正請求も毎年のように指摘されており、看過できないところであります。
これらのことを初めとして、審議の中で明らかになった決算の実態からして、幾多の警告すべき事項が指摘されているわけであります。このことを無視して本決算を「異議がない。」とすることは妥当とは認められないのであります。
以上、私の意見を申し述べましたが、最後に、政府は決算委員会軽視の惰性を改め、これを重視して、総理及び各大臣が積極的に出席されて、国民の血税を公明正大に審議して謙虚に国民の前にすべての事項を明らかにしなければ国の決算は承認できないことを強く申し述べまして、反対討論を終わります。(拍手)
#166
○古屋委員長 神田厚君。#167
○神田委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、昭和五十四年度決算外二件につき、ただいま委員長より御提案の議決案のとおり議決することに反対の意を表するものであります。そもそも昭和五十四年度会計に対しましては、その予算審議の過程においてわが党は幾つかの問題点について厳しく追及し、批判を行ってきたところであります。
その主な問題点は、第一に、五十四年度予算が、景気回復の面からも物価抑制の見地からもきわめて中途半端な性格を持っていたことであります。第二に、政府が財政再建の大前提ともいうべき行財政改革の断行並びに不公正税制の是正を十分行わないままに一般消費税の導入を図ろうとしていたこと、第三に、雇用、年金、住宅対策などについて政府が抜本的な改善を図る積極的な姿勢を欠いていたことなどであります。
これらの指摘は、今日のわが国経済と国民生活の実態、財政の現状等から見ても非常に正鵠を射るものであったと考えているものでありますし、政府の現在の姿勢に対しましても同様な指摘を申し上げなければなりません。かくのごとく、五十四年度の会計は、その当初予算自体が誤れるものであったのであり、その予算の執行の結果である五十四年度決算外二件に対し、わが党はとうてい賛成できるものではありません。
また、わが党が、五十四年度予算の執行に対して格別の関心を払い、予算の効率的使用、公正な執行に注意を喚起してきたにもかかわらず、ただいま委員長御提案の議決案に示されたごとく、予算の効率的使用等、所期の成果が十分に達成されていないと思われる事項が見受けられたことはきわめて遺憾であります。これらの指摘事項につきまして、今後政府が早急に改善を図る努力を行うよう強く求めるものであります。
その他の諸点についても改善すべき問題点を今日まで指摘してまいりましたが、これまでの審議を顧みるとき、委員長御提案の議決案のうち、第一の「特に留意して適切な措置をとる」よう政府に求めている点、及び第二の「会計検査院が指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。」点に対してはわが党も賛成するものでありますが、第三の、「決算のうち、前記以外の事項については異議がない。」とすることに対しては、わが党はとうてい認めるわけにはいきません。
なお、わが党は、今後の予算編成及び執行が効率的かつ合理的に行い得るよう会計検査院の権限を強化し、会計検査院の検査対象範囲の拡大、チェック機能の充実等を図るとともに、会計検査院が予算編成時に大蔵省に意見を具申することができ、予算が効率的に執行されていないときは年度途中においても執行停止、変更の勧告ができますように制度を改善することを提案するものであります。
最後に、今後とも政府が本来の行政改革である国鉄など特殊法人の改革、公務員定数の実質大幅削減による総人件費の抑制、むだな経費の削減、行政経費の節約、補助金制度の改革等に全力を傾注することを強く求め、五十四年度決算についてはこれを認めることができないことを申し上げて、私の討論を終わります。(拍手)
#168
○古屋委員長 三浦久君。#169
○三浦(久)委員 私は、日本共産党を代表し、昭和五十四年度決算外二件に反対の討論をするものであります。まず、五十四年度決算に反対の理由を述べます。
第一に、本決算は、歴代自民党政府の政策運営の失敗がもたらした五年来の不況のもとで、これに反省するどころか、すでに破綻している従来型の景気対策を続け、大幅な負担増を強いることによって国民の購買力を圧迫して不況を長引かせる一方、国債の大増発で財政危機を一段と深刻化させたものであります。
第二に、軍事費の支出についてであります。
政府が、E2C導入問題に絡む政府高官汚職の疑惑の解明がなされないまま、予算を執行したことは絶対に認めることはできません。
また、この財政難の中で自衛隊の装備、施設費は二一・九%と驚くべき増強ぶりであり、総額で二兆円の大台を突破したことは、危険な日米共同作戦体制の質的強化を示すものであり、断じて容認できません。
このような内容を持つ昭和五十四年度決算について、ごく限られた指摘事項のほかは「異議がない。」とする本議決案には、とうてい賛成することはできません。
次に、国有財産増減及び現在額総計算書についてでありますが、この総計算書は予算執行を国有財産から見た結果であり、とうてい是認することはできません。
第三に、国有財産無償貸付状況総計算書についてであります。
わが党は、従来、公園、緑地等の目的で地方自治体に無償で貸し付ける本制度の趣旨にかんがみ、これまで賛成してきたのであります。ところが、福岡市に貸し付けた墓地に昨年五月「大東亜戦争戦没者之碑」が建立され、過去の侵略戦争を賛美する内容となっているとともに、貸付契約の用途目的にも違反したものとなっているのであります。
この事実に対し、碑文のわずかな手直しでよしとすることは断じて容認できません。速やかに原状回復させることを要求するとともに、この事態が解決されない以上は、同計算書に賛成することはとうていできないのであります。
以上、討論を終わります。(拍手)
#170
○古屋委員長 これにて討論は終局いたしました。 ─────────────#171
○古屋委員長 これより順次採決いたします。昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算、昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算、昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書及び昭和五十四年度政府関係機関決算書を議決案のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#172
○古屋委員長 起立多数。よって、議決案のとおり決しました。次に、昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和五十四年度国有財産無償貸付状況総計算書の両件は、これを是認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#173
○古屋委員長 起立多数。よって、両件は是認すべきものと決しました。なお、ただいま議決いたしました各件の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#174
○古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。─────────────
〔報告書は附録に掲載〕
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#175
○古屋委員長 この際、各国務大臣から順次発言を求めます。竹下大蔵大臣。#176
○竹下国務大臣 ただいま御決議のありました国有財産の無償貸し付けの問題につきましては、御決議の趣旨に沿い、今後とも適正な管理に一層努めてまいる所存であります。#177
○古屋委員長 次に、後藤田官房長官。#178
○後藤田国務大臣 ただいま御決議のありました会計検査院の検査の充実強化につきましては、政府といたしまして、会計検査の実が上がるよう今後も協力をしてまいりたいと存じます。#179
○古屋委員長 次に、安倍外務大臣。#180
○安倍国務大臣 政府といたしましては、第二回国運軍縮特別総会に関する国会決議の精神を生かし、世界の軍縮の促進のため、国連軍縮委員会等の場において軍縮の促進を強く訴えてきておりますが、今後はさらに、ただいま御決議いただいた趣旨をも踏まえ、軍縮の促進のために努力する所存であります。また、わが国の開発途上国に対する経済協力についても、これを一層強化する所存であります。
#181
○古屋委員長 次に、塩崎経済企画庁長官。#182
○塩崎国務大臣 国際経済の均衡ある発展のためには発展途上国の成長の確保が不可欠であることにかんがみ、海外経済協力基金の資金の充実については、御決議の趣旨に沿うよう努めてまいります。#183
○古屋委員長 次に、林厚生大臣。#184
○林国務大臣 ただいま御決議のありました厚生省所管の保険医療機関等に対する指導監督の実施につきましては、御指摘の点に十分留意して、その強化充実に努めてまいる所存であります。#185
○古屋委員長 次に、金子農林水産大臣。#186
○金子国務大臣 干拓事業につきましては、御決議の趣旨を体して、今後一層その適切な実施に努力してまいる所存であります。また、日本中央競馬会につきましては、御決議の点に十分留意をし、同競馬会に対して指摘された事実に関する調査結果を速やかに取りまとめるとともに、外国産種牡馬の購入に関する一連の手続が公正かつ適正なものとなるよう十分指導してまいる所存であります。
#187
○古屋委員長 次に、齋藤総理府総務長官。#188
○丹羽国務大臣 ただいま御決議のありました政府広報のあり方については、その適切な実施について今後とも十分な配慮をしてまいりたいと存じます。#189
○古屋委員長 次に、粛藤行政管理庁長官。#190
○齋藤国務大臣 ただいま御決議のありました行政改革の推進につきましては、政府といたしましては、臨調答申を最大限に尊重するとの基本姿勢のもとに、諸般の改革方策を立案し、逐次その実施に努めているところでありますが、御決議の趣旨を尊重し、引き続きその推進を図ってまいる所存であります。#191
○古屋委員長 以上をもちまして各国務大臣からの発言は終わりました。次に、鎌田会計検査院長から発言を求めます。
#192
○鎌田会計検査院長 ただいま会計検査院の検査の充実強化は、行政改革との関連においても重要な課題であるとの御指摘がありましたが、会計検査院といたしましても検査体制の整備強化に努めますとともに、今後とも財政が健全に執行されるよう会計検査を徹底してまいる所存であります。#193
○古屋委員長 次回は、来る二十四日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。午後七時十二分散会