1982/03/24 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 科学技術委員会 第3号
#1
第098回国会 科学技術委員会 第3号昭和五十八年三月二十四日(木曜日)
午前十時十八分開議
出席委員
委員長 永田 亮一君
理事 岸田 文武君 理事 小宮山重四郎君
理事 保利 耕輔君 理事 与謝野 馨君
理事 小林 恒人君 理事 関 晴正君
理事 草川 昭三君 理事 吉田 之久君
古賀 誠君 櫻内 義雄君
津島 雄二君 平沼 赳夫君
前田 正男君 村上 勇君
森山 欽司君 村山 喜一君
林 保夫君 山原健二郎君
菅 直人君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(科学技術庁長
官) 安田 隆明君
出席政府委員
科学技術庁長官
官房長 安田 佳三君
科学技術庁長官
官房会計課長 三井 嗣郎君
科学技術庁計画
局長 下邨 昭三君
科学技術庁研究
調整局長 加藤 泰丸君
科学技術庁振興
局長 原田 稔君
科学技術庁原子
力局長 高岡 敬展君
科学技術庁原子
力安全局長 赤羽 信久君
委員外の出席者
防衛庁防衛局調
査第一課長 松村 龍二君
外務省国際連合
局原子力課長 岩崎 允彦君
大蔵省主税局税
制第二課長 伊藤 博行君
資源エネルギー
庁長官官房エネ
ルギー企画官 雨貝 二郎君
資源エネルギー
庁公益事業部開
発課長 渡辺 光夫君
資源エネルギー
庁公益事業部原
子力発電課長 高沢 信行君
資源エネルギー
庁公益事業部原
子力発電安全管
理課長 谷口 富裕君
海上保安庁水路
部測量課長 佐藤 任弘君
労働省労働基準
局安全衛生部労
働衛生課長 福渡 靖君
参 考 人
(日本原子力船
研究開発事業団
理事長) 井上啓次郎君
参 考 人
(日本原子力船
研究開発事業団
専務理事) 倉本 昌昭君
参 考 人
(電源開発株式
会社理事) 児玉 勝臣君
科学技術委員会
調査室長 曽根原幸雄君
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委員の異動
三月二十三日
辞任 補欠選任
笹山 登生君 梶山 静六君
平沼 赳夫君 野中 英二君
林 保夫君 佐々木良作君
同日
辞任 補欠選任
梶山 静六君 笹山 登生君
野中 英二君 平沼 赳夫君
佐々木良作君 林 保夫君
同月二十四日
辞任 補欠選任
佐々木義武君 津島 雄二君
笹山 登生君 古賀 誠君
田川 誠一君 菅 直人君
同日
辞任 補欠選任
古賀 誠君 毛利 松平君
津島 雄二君 佐々木義武君
菅 直人君 田川 誠一君
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
技術士法案(内閣提出第四〇号)
科学技術振興の基本施策に関する件
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#2
○永田委員長 これより会議を開きます。内閣提出、技術士法案を議題といたします。
本案に対する質疑は、すでに去る三月二十二日終局いたしております。
この際、日本共産党山原健二郎君から、本案に対する修正案が提出されております。
提出者より趣旨の説明を求めます。山原健二郎君。
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技術士法案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
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#3
○山原委員 私は、日本共産党を代表しまして、技術士法案に対する修正案を提案いたします。修正の内容はお手元に配付してありますが、技術士制度の試験事務及び登録事務を民間に委譲できることを定めた規定を政府案から削除するというものであります。
修正の理由は、第一に、試験事務、登録事務の民間への委譲は、技術士制度の運用そのものの簡素化にはつながらず、また、予算的にも増大すると考えられること。第二に、試験及び登録事務に独立採算制の原則が導入され、受験者、登録者の負担が大幅に増大される結果となりかねないからであります。第三に、事務委譲されると予想される社団法人日本技術士会の業務に支障を来す結果にならないかとの懸念があり、民間委譲はかえって技術士制度にマイナスの影響を与えかねないものであるからであります。
技術士制度がわが国の科学技術の振興に果たすべき役割りは大きく、量質ともにその充実発展が重要だと考えており、今回の改正に盛り込まれた技術士補の新設、また、技術士及び技術士補の試験受験に当たって学歴制度が撤廃されたことなどについては、より多くの国民に技術士への道を開くものとして賛成するものであることを申し添えまして、修正案の提案理由の説明を終わります。
#4
○永田委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。─────────────
#5
○永田委員長 これより討論に入るのでありますが、本案並びに修正案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。技術士法案について採決いたします。
まず、山原健二郎君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#6
○永田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。次に、原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#7
○永田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○永田委員長 御異議なしと認めます。 よって、さよう決しました。─────────────
〔報告書は附録に掲載〕
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#9
○永田委員長 この際、安田国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。安田国務大臣。#10
○安田国務大臣 ただいま技術士法案の御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。今後とも、当委員会の審議の経過を踏まえ、技術士制度の一層の発展を図るため全力を尽くす所存でございますので、何とぞ御支援、御協力のほどをよろしくお願い申し上げます。
────◇─────
#11
○永田委員長 科学技術振興の基本施策に関する件について調査を進めます。この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本件調査のため、本日、参考人として、日本原子力船研究開発事業団理事長井上啓次郎君、同車務理事倉本昌昭君及び電源開発株式会社理事児玉勝臣君から意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。─────────────
#13
○永田委員長 これより質疑を行います。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
#14
○村山(喜)委員 私は、東海再処理工場での溶解槽のトラブルの問題やあるいは酸回収蒸発缶のピンホールの問題について、若干の質問をしてまいりたいと思っております。まず初めに、東海再処理工場の使命は、これは再処理技術をわが国に定着をさせること、そして再処理の需要の一部を賄いながら、新型炉開発のためのプルトニウムの需要を満たすことだ、再処理の位置づけというのはこの三つだ、こういうふうに把握してよろしゅうございますか。
#15
○高岡政府委員 東海村に設置されております再処理工場につきましては、ただいま御指摘ございましたように、わが国最初の再処理施設でございまして、再処理技術を確立するということを第一の目的にいたしております。規模といたしまして、設計規模で年間二百十トンの使用済み燃料が再処理できるということでございますので、わが国で稼働中の原子力発電所の使用済み燃料の一部を再処理をするという使命をも持っておるわけでございます。#16
○村山(喜)委員 そうすると、新型炉の開発のためのプルトニウムの需要を満たすということは、目的の中にないのですか。#17
○高岡政府委員 再処理の目的それ自体が、使用済み燃料から、減損ウランと称しておりますけれども、軽水炉に供給しました濃縮度よりは若干低下しておりますが天然ウランよりもたくさんのウラン235を含んでおるというものが残っております、それからいま御指摘ございましたような、プルトニウムが発電所の運転に伴いましてできております、そういうものを回収するということが目的でございますので、プルトニウムを回収し、それを新型炉の開発に使っていくということも目的でございます。#18
○村山(喜)委員 そこで、事実上再処理工場を運転をしております動燃事業団の再処理部計画課長の竹内さんの「再処理技術の開発」というのを見てみたのでございますが、これは「人間と科学技術 プロメテウス」の三十二号に書いてあるのを読んだのです。その中でレポートが出ておりますが、「酸回収蒸発缶のピンホールによる故障は、一つの基礎的に確立された技術を産業化レベルにまで到達させるには、なお多くの開発努力が必要である」ということを痛感したということでございます。そのピンホールの問題は後ほど尋ねてまいりますが、基礎的に確立された技術であるというふうに判断をしておいでになるのですけれども、東海再処理工場というのは、位置づけとしてはパイロットプラントになるわけでございますか。その点はどうなっておりますか。
#19
○高岡政府委員 先ほども申し上げましたように、東海の再処理工場と申しますのは、実際に発電所から出てまいります使用済み燃料を処理しながら、そういうサービスを提供しながら技術開発を進めるということでございまして、いま御指摘ございましたように研究開発的な仕事といいますか、そういう役割りがかなり大きなウエートを占めております。この工場で採用しております技術はピューレックス法と申しまして、液体、いわゆる湿式で使用済み燃料を処理するという方法でございまして、同じ方法を英国でもフランスでもその他の国でも採用しておるわけでございます。そういう意味では、世界的に基本的な技術としては確立をしておるものだという認識を私ども持っております。持っておりますけれども、放射能の環境に対する影響ということに非常にセンシティブであるといいますか神経質でありますわが国の社会環境あるいは自然環境のもとで再処理工場の運転をやるということにつきましては、機器の改良でありますとかあるいはメンテナンスの面で日本として非常に多くの解決を要する問題があるというふうに考えておるわけでございます。
#20
○村山(喜)委員 そこで問題は、動燃では小型試験設備テストをやり、原研の再処理特別研究をクリアして現実に運転をした。その中で現実にはトラブルが、酸回収系の加熱部に、五十三年の八月に蒸発缶の腐食による穴があいた。それでこれは中の管の取りかえをやっておりますね。そうして、五十六年の二月には精留塔に穴があいた。そして五十八年の二月には、同じように取りかえたのが三年余りでまた穴があいた。それは、設計の上では十年間の腐食しろを見ていた。 にもかかわらず、三年余りでまた同じような故障が出た。それから溶解槽の加熱ジャケット部につきましては、五十七年四月に一基に穴があいてしまった。五十八年二月には残りの一基に穴があいて、現実には運転不能に陥っている。そういうような状況を見たときに、一体これは基礎的に確立された技術があるのかどうだろうか、こういう疑問を持たざるを得ないのでありますが、これは基礎的に確立された技術だという判断は科学技術庁も持っていらっしゃるのですか。
#21
○高岡政府委員 先ほど申し上げましたように、基本的な点では確立された技術であるというふうに考えております。ただ、御指摘ございましたようにいろいろなトラブルが発生しておりまして、これらにつきましては材料の問題でありますとか溶接部の施工上の問題でありますとか、最近起きましたトラブルにつきましては現在原因究明中でございますけれども、前の経験からいたしますと、大体以前のトラブルと同じ原因で起きておるのではなかろうかというふうに思われております。こういったことにつきましては、材料あるいは溶接技術等の改良を図りまして克服をしたいといいますか、日本の技術をもってすれば十分克服できるものだというふうに考えておるわけでございます。#22
○村山(喜)委員 そこで、私は具体的にもっと詰めてまいりたいと思いますが、溶解槽の致命的なトラブル、これは先ほどなにをいたしましたが、二基ともいまダウンをしているわけです。穴のあいたのは、両方とも加熱ジャケット部のバレル部でございますが、直径が二十二センチから二十七センチでありますので、仮に除染をいたしましても人間は狭いところには入れない、工業用テレビによります観察が辛うじてできるにすぎない、こういう状況だと思いますが、それは間違いございませんか。#23
○高岡政府委員 現在の状況は御指摘のとおりでございます。#24
○村山(喜)委員 それから、気泡試験の組み合わせによって穴の位置は確認できても、その部分がどのように変質をし、どう腐食をしているのかということはわからない。よろしゅうございますか。#25
○高岡政府委員 いまお尋ねのございました具体的な原因調査については、いま調査中でございます。調査結果に基づきまして、対策を講じたいというふうに考えております。#26
○村山(喜)委員 これは、切り取って破壊検査をする構えをお持ちですか。#27
○高岡政府委員 御指摘がありましたような破壊検査をやるかどうかという決定をするにまだ至っておりませんけれども、将来そういう必要もあるかもしれないということで、原因調査を進めておるという状況でございます。#28
○村山(喜)委員 そうすると、溶接部の粒界腐食だと言われておりますが、その原因はわかっておりますか。#29
○高岡政府委員 溶接部の粒界腐食という現象につきましては、一般的に原子力発電所の関係で同じ経験を持っております。そういうことから類推をいたしまして、大体こうであろうということはわかっておりますけれども、対策を講ずるための具体的な、詳細な原因調査につきましては調査中でございまして、まだ的確な結論を得ておりません。#30
○村山(喜)委員 そうすると、現象的には結晶構造の変化という状態の中でそれが発生をしているのじゃないだろうかと思われるわけですが、その場合に、切り取って破壊検査をする必要があるにもかかわらずそれをやるかどうかもわからない。それは、今後検討するというふうに受け取れるわけですが、聞くところによりますと、遠隔操作によります文字どおりの糊塗的な補修を行う予定だということでありますが、そうじゃないのですか。#31
○高岡政府委員 先生御承知かと思いますが、溶解槽というのは二基ございまして、一基が去年トラブルを起こしまして、残りました一基がことしトラブルを起こしておるわけでございますが、去年トラブルを起こしたものにつきましてはいまおっしゃいますような補修を行いまして、できるだけ早く機能回復を図りたいということで対応いたしております。今回トラブルを起こしましたものにつきましては、遠隔的に原因調査のための作業を進めておるということでございます。それから、もう一つの対応といたしまして、東海の再処理工場の中には溶解槽が納められる予備的なシェル、入れる場所がございます。その場所を使いまして、日本の設計に基づいて日本の技術で新しい溶解槽をつくる作業を進めております。予定どおりまいりますと、五十九年度中にはそれができ上がるという状況でございます。現在のところ、そういった対応を考えておるわけでございます。
#32
○村山(喜)委員 原因もわからない、根本的な解決策も持たないままに、同じ型の新装置を五十七年度の予算でつくるというお話のようにいま聞きましたが、これは一体五十七年度予算の中で何ぼ見てあるのですか。#33
○高岡政府委員 昨年の四月に故障を起こしました溶解槽の補修に要します費用が十二億円、それから先ほど申し上げました新型の溶解槽の据えつけに要します費用三十八億円というものが見込まれております。#34
○村山(喜)委員 この十二億円は、一年前に穴のあいた分をことしの秋に補修をする、その経費が十二億円、これは五十七年度予算の計上ですか。#35
○高岡政府委員 五十七年度の予算で手当てをいたしております。#36
○村山(喜)委員 そうすると、三十八億は何年度予算ですか。#37
○高岡政府委員 三十八億円につきましては、五十七年度に予備的な経費を一部用意しておりますけれども、大部分がただいま国会で御審議いただいております五十八年度の予算で手当てをするという予定にいたしております。#38
○村山(喜)委員 これは大変な国民の税金ですよね。十二億、三十八億、合わせて五十億円。これは一〇〇%近いものをフランスのサンゴバン社から技術を導入してつくった。その場合の設計の段階では、腐食に耐えられるのは十年は大丈夫だ、こういうようなことで設計されておるわけでしょう。どうなんですか、その腐食しろはどうなります。#39
○高岡政府委員 設計の段階での考えとしましては、いまおっしゃいますように十年程度は耐えられるということが基本的な理念になっております。#40
○村山(喜)委員 そこで、これはいろいろ私も関係のなにを読んでみますが、軽水炉の場合と違いまして再処理の問題は、なかなかほかに例が余りないので大変苦労なさっていらっしゃることもわかります。わかりますが、この秋に補修を十二億もかけてやる。その後この装置を、溶解槽のなにとして、また同じような目的で使うわけですか。#41
○高岡政府委員 溶解槽の機能回復につきましては、昨年故障を起こしたものにつきましては、ことしの秋には機能回復を図りたいということで考えております。それから、先ほど申し上げました新型の溶解槽につきましては、五十九年中には使用可能にしたいというふうに予定しておるわけでございます。#42
○村山(喜)委員 そういたしますと、一年前に穴のあいた分は補修をやって、そして使用目的はいままでのような形で使うということになりますると、これは稼働をするわけですか。再処理の工場はいつから運転が始まる見通しになるのですか。#43
○高岡政府委員 一応の補修を終わりました段階で、設計、工事方法が妥当であったかどうかということを安全当局が確認をいたしまして試運転、それからおっしゃいます本格的な運転、稼働という段階で、できるだけ早く稼働に移りたいというふうに考えております。#44
○村山(喜)委員 それは、補修が行われたら、この装置を腐食実地試験に当面は使う、こういう目的を持っているのですか。#45
○高岡政府委員 補修を終わりました後、試験運転といいますか、その期間を十分とりまして、本格的な運転に移るということを考えておるわけでございます。#46
○村山(喜)委員 原因は一体何だろう、それは調べてみなければわからぬ。根本的な解決策はまだ立たない。そして現象的には、結晶構造の変化が生まれているものだと思われるわけだけれども、それを切り取って破壊検査をすることはまだ考えていない。こういうような状況の中で、新しく三十八億もかけまして同じ型の新装置をつくるということは、これは一体大丈夫なんですか。また同じようなトラブルが発生をして、そして現実には二基ともその溶解槽が動かないから、再処理ができないでとまったままではございませんか。そういう事態がまた生まれてくるのでは、これは国民の税金を浪費をするということになりかねないと思うのでありますが、その点は大丈夫ですか、局長。#47
○高岡政府委員 確かに、御指摘の点を念頭におきまして対応を考えておるわけでございまして、私どもといたしまして、原因を十分に究明すること、それに基づきまして適確な対応策を講ずるということが基本でございますけれども、一方では、東海村の再処理工場の機能回復といいますか、操業を維持するということも非常に大事な点でございます。でございますから、その間で苦心をしておるということでございますけれども、当面の補修をやりながら、一方では、たとえば新型溶解槽につきましては溶接方法等につきまして、いままでの原子力発電所その他の経験に徴しまして、この点がまずかったのであろうという想定のもとに、溶接方法の改良を行っております。そういったことを積み重ねまして、やや時間はかかろうかと思いますけれども、安定した運転が維持できるように持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。#48
○村山(喜)委員 これは、溶接個所は何カ所あるのですか。#49
○高岡政府委員 突然のお尋ねでございますので的確な数字を申し上げられませんけれども、数十カ所の溶接部があろうかと思っております。#50
○村山(喜)委員 それを半減すると。いま局長が、溶接部分のそういう対応の仕方を説明をされるから私は聞いているわけです。言われなければ質問をしないわけですが、おっしゃるから聞いているわけなんだけれども、その溶接部分を半分ぐらいに少なくしようと、こういうような新しい手法でやろうということでございますか。#51
○高岡政府委員 考え方としましては、おっしゃるとおりできるだけ溶接部分を少なくしたいということで改良をいたしております。#52
○村山(喜)委員 大臣、いま局長とのやりとりをお聞きになって、大臣は、やはりこれは基礎的に確立された技術だ、こういうふうにお思いですか。どうも、単にピンホールの現象が生まれて、その材質がそういうようなのに耐えられなくなった部分的な故障だから、それであとまたそういうような溶接部分を少なくしてやればいいのじゃないかというような、そんな単純なものじゃないのじゃないか。科学技術というのは、もっと原因を徹底的に究明をして、それに対応して、これではどうだろうかという新しい材質の検査から何から全部やりまして、そしてそれに耐えられるような耐腐食性のものを開発をしていく、そこに前進があるというふうに考えるのです。ところが、いま聞いていると、基礎的には確立した技術なのだけれども原因はわかりません、原因究明中でございます、これじゃどうも科学技術のあり方としておかしいのじゃないか。やはりそれは、原理的に学問的には確立されたものかもしれないけれども、現実的にこういうトラブルが発生をして再処理工場全体がとまっているわけですね。そして、ことしも末ごろまでは動かないような状態が続くわけです、これからも。予算は十二億かけてそれは補修もするでしょう。しかし、原因がはっきりわからない。その原因の探求をやりながらその三十八億の金も使うというのが、あり方としては正しいのじゃないでしょうか。
それを、遠隔操作によって糊塗的な補修をやって、さあそれでまたやりますよということの試行錯誤を繰り返していくというのはどんなものであろうか。財政も大変厳しい状況の中で、これは基礎的には確立された技術なのだという形で押しまくっていくことがいいのかどうか。特にこの場合には、フランスから一〇〇%近い技術導入によってつくった工場ですから、日本ではまだこれからの技術ですね。そういう点で、もっと謙虚な姿勢でこれを受けとめてやるということが必要じゃなかろうかと思うのですが、大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
#53
○安田国務大臣 私も、実は現地をよく見ました。私は技術的には素人でございますけれども、いま村山先生のお話のとおりに、確かにピンホールは確認された、トラブルの起こったことは事実。しかも、その穴は〇・〇一、こういう微細なピンホール、ここまではわかっておるわけです。しからば、一体この原因は何なのか。こうなりますと、材質なの、溶接技術なの、もういろいろとそこに原因の究明というものをやらなければならない。これは先生のおっしゃるとおりだと思います。ところが、遠隔装置の中でこれを究明するのには相当の時間を要する。それで、二者択一になるのか三者択一になるのか、いずれにしましても基本的な設計、これにつきましてはフランスからの技術導入の中でこの方式はということでは私たちは理解し得る。
さて、それはこれからどうするかということになりますと、いま高岡局長のお話のとおり、われわれはひとつ自分の手で、自分の知恵で、日本自身が今後のサイクル計画の中で絶対これは自分で克服し得るというものをどうしても手に入れなければならない、蓄積しなくちゃならぬ。それには金がかかるでしょう。しかし、私たちは核燃料サイクルという、これは原子力政策の中で、世界の中でも日本は置かれた立場が違いますから、そういう意味でこれに取り組まざるを得ぬし、避けて通れない。この点はひとつ村山先生にも御了解をいただきたいと思います。
二者択一になるの、もう新しいものでもってやってしまう、そうじゃない、溶接技術の中で新しい一つの研究開発というものを見出す、こういう方式にいくか、ここにはちょっと時間がかかると思いますけれども、この点はわれわれは絶対サイクルの中で自主的な技術をみずからが開発する、こういう至上命令の中で取り組みこれに対応したい、こういう気持ちでおるわけであります。御了解願いたいと思います。
#54
○村山(喜)委員 大臣、いまのお話はわからぬでもないのですが、先ほど局長の説明を聞いておりますと、溶接部分をできるだけ少なくして、私が聞いているのは九つぐらいに数を少なくしようという話のように聞いているのですが、しかしながら、そうなりますとこれは溶接部分の粒界腐食だというふうに見ていらっしゃるに違いない。しかしながら、現象的には結晶構造の変化によってピンホールができた。とするならば、そこを切り取って破壊検査をしなければこれは真の原因追求はできない、私はそう思うのです。そういうような根本的な解決策を図る御意思があるのかないのかということを聞いたら、それはまだそこまでは考えていない、こうおっしゃるから、一体どうされるのですかということを聞いているわけでして、大臣が言われるそういう核燃料サイクルの問題を完成をするためには、これは一時的にそれを塗りつぶしてそれで済ませるわけにいかぬのじゃないですか。そういうような設計は一〇〇%であっても、実地にやった場合にはピンホールが、十年間はもつであろうというのが三年余りで穴があくのですから、そこにはおかしな点があるのじゃないか、一体それはどこから来たのかということを考えれば、そこまで徹底して追求をするのが大事じゃないでしょうか。その点を大臣にお聞きをしているわけですが、どうでしょう。
#55
○高岡政府委員 先ほど申し上げましたことの補足になるかと思いますけれども、先生御指摘のように、的確な原因究明というのは破壊検査ということが一番効果的でございますから、私どもとしてはできるだけ早く、いますぐにでもやりたいということでございますけれども、ただ、再処理工場としての機能維持、回復ということもまた大事な点でございますので、ただいま現在のところその余裕がないというのが実情でございます。でございますから、新型溶解槽が五十九年度にできて動き始めるという時点になりましたら、その新型溶解槽を含めまして三つそろいますから、三つのうちの一つはおっしゃるように、まだ決めてはおりませんけれども破壊検査を含めて徹底的な原因究明が可能になる、こういうふうに思っております。#56
○村山(喜)委員 そこで、その点は五十九年度に持ち越しのような話でございますが、やはり基本的な姿勢は、いま切り取って破壊検査をする必要があるということを局長は認められたと私は確認をいたします。そこで、これは酸回収系加熱部のトラブルでございますが、五十三年の八月に酸回収蒸発缶が腐食をされて穴があいた。これは高温の硝酸によるものだと思いますが、一年余り休止をしまして中の管を総入れかえをした。二年前に社会党の調査団が参りまして現地を調査いたしましたときに、全部取りかえたからもう大丈夫だということであったわけです。ところが五十八年の二月に、五十三年の八月に穴があいて一年以上かけて入れかえをした酸回収蒸発缶が三年余りでまた穴があいた。これは酸の回収蒸発缶のトラブルでございます。それから五十六年二月には、その隣にあります酸回収精留塔の加熱管に穴があいた。ここの管も入れかえておるようでございます。
そうすると、硝酸に対して耐腐食性が高いようにニッケルとかコバルトの含有率の高い高級ステンレスを使っている、このような使用条件では最善の材質だと言われているにもかかわらず、しかも設計で腐食しろというのは十年分もとってあるというのに、ごく短期間で穴があいた。これは一体、先ほどの溶解槽のトラブルの問題とどう違うのですか。同じ性格のものだというふうに見ていらっしゃるのですか。その点をお答え願いたい。
#57
○高岡政府委員 酸回収蒸発缶のリークにつきましては、御指摘のような故障を経験いたしております。前回の故障につきましては、故障を起こしますまでに約六千時間の運転を経た後に故障が起きているわけでございます。今回、故障を起こしましたものにつきましては一万三千時間。稼働しております時間数は確かに延びてはおりますけれども、基本的にまだ改良を要する点があるというふうに考えております。これにつきましては材料の問題もございましょうし、ほかの研究によりますと、いま使っております高級ステンレス以上に硝酸に耐える材料もあるようでございますので、そういったものの採用を含めまして、将来の課題でございますけれども、対策を講ずる必要があるというふうに考えております。#58
○村山(喜)委員 やはり材質の問題ですね。そうなってまいりますと、どうも先ほどから溶解槽のトラブル、酸回収系の加熱部のそういうトラブル、こういうようなものが続発をして、現実的には稼働ができないような状態に立ち至っているのに、なおそれでも基礎的には確立された技術だ、こういうふうに見ていらっしゃるわけですが、そういう見方でいいのですか。#59
○高岡政府委員 溶解槽にいたしましても酸回収蒸発缶にいたしましても、故障を重ねておるわけでございます。そういう状況ではございますけれども、先ほど申し上げましたように、使用済み燃料を湿式で硝酸溶液で溶かして処理をして、残っておりますウラン、プルトニウムを回収し廃棄物を処理するという、基本的な技術としましては信頼し得る技術であるというふうに考えております。でございますが、そういう操作が安定して維持できなきゃいかぬわけでございますので、その点につきましては、材料の問題でありますとか、あるいは溶接施工上の問題でありますとか、改良すべき点が多々ある、その面で努力を要するというふうに考えておるわけでございます。#60
○村山(喜)委員 これから改良しなければならぬとおっしゃるからその辺でとどめておきますが、昭和六十五年、原子力委員会は四千六百万キロワットの発電を計画をされているようでございまして、再処理の民間工場もそれに対応しまして、一九九〇年には原燃サービスの会社が千二百トンの処理能力を持つ工場をつくるのだ、こういうふうに計画がされているようでございます。この問題につきましては、再処理の問題とATRの実証炉の問題との関連がございますので、これは後ほど関委員の方から質問があろうかと思うのでございますが、そういう計画を進めながら、核燃料サイクルと再処理との関係というもの、それぞれの位置づけというものをきちっとしておかなければならない段階にあるだろうと思います。その場合に、東海の第一工場がこういうトラブルばかり起こしているような状況の中で、さあ民間がやれよ、しかも六倍の規模を持つ再処理工場をつくりなさいよというような、そういうことをやりまして進めていく場合に、一体皆さん方は、自信を持って推進をしていけるようなお気持ちがいまございますか。こういう状況の中で故障をし、そして動かない、運転も不能な状態の中に立たされている。とするならば、やはり根本的な原因の追求を行いながらやっていくという初心に返ったやり方をとらなければ、ゴーサインを出して、そして三千億円ですかの金を集めて、そして国も出資をしてというような形でやられる計画のように承るわけでございますが、一体そういう大規模な処理工場というものが現実的にふさわしいのでしょうか。その点については、いまどういうふうにお考えになっていらっしゃるのですか。原子力白書を読んでみますと、千二百トンの工場をつくるのだ、こういうように書いてありますから、その点をお聞きをしているわけです。
#61
○高岡政府委員 原子力発電所の建設が進んでおりまして、一九九〇年、七年ほど先でございますが、その時点で、使用済み燃料が原子力発電所から大体年間一千トンぐらい出てこようかと思います。でございますから、現在は東海村の再処理工場で一部処理をし、足りない分をイギリス、フランスに再処理を委託しておるわけでございますが、一九九〇年の時点におきます年間千トンという使用済み燃料の要処理量を念頭に置きまして、将来その先の需要の増加ということも考えまして、千二百トンの再処理工場を民間でつくってもらうということで計画が進んでおるわけでございます。これにつきましては、東海の施設がいろいろ故障を起こしておって民間の手で計画が進むのかという御指摘でございますが、私どもといたしましては、東海の再処理工場の技術、基本的にはあの技術をベースにして民間の再処理工場が計画されるというふうに考えておりまして、言うなれば、民間の商業プラントで予想されます技術的な問題が東海のプラントで先行していろいろ出ておるということでございますから、その点を克服していくことで、民間の再処理工場の建設、運転というのは、技術的に十分可能だと考えております。
それから、年間千トンあるいは千二百トンという大規模なものを集中した方がいいのかどうかという点につきましては、いろいろ議論がございます。日本自体も東海村で非常に苦心いたしておりますけれども、外国でも再処理工場の運転につきましては非常に苦労しているわけでございまして、そういうことも考えまして、サイトとの関係がございますけれども、二つ程度に分けたらどうかというようなことも議論としてはあるわけでございます。そういったことも念頭に置きながら、サイトの問題あるいはそのほかの工場計画を具体化をしていくということで、民間で計画が進んでおると了解いたしております。
#62
○村山(喜)委員 大臣の時間の関係もあるようでございますから、私の持ち時間はあと十分ぐらいございますが、最後に一つだけ承りまして終わりたいと思います。それはATRの実証炉が、これは設置許可申請書というのが出てきた場合に、科学技術白書によりますと、実証炉は実証試験にウエートを置いて研究開発を進めるんだというふうに書いてあるのですね。ところが、エネ庁に申請書を出すということになりますと、これは売電、電力を売る、こういうことからの設置許可申請書にならざるを得ない。そうすると、科学技術庁の方は、これは実証試験にウエートを置いて研究開発を進めるのがATRの実証炉なんだ、ところが実際は建設主体は電発ですが、国と電力会社と電発の借り入れと自己資金で賄うんだというような話になっておるようだ。とするならば、一体どこが認可の担当省庁になるのか。この点については、まだはっきりしていないというふうに承るのですが、その点はどうなんですか。
#63
○赤羽(信)政府委員 御指摘のように、ただいま予想されます計画中のATRの実証炉、現在の「ふげん」から規模を大きくするという意味で実証実験をやるという性格がございますし、それからまた、大型になりますと実用の商業発電炉としての性格も持っているわけでございます。その両方の立場から安全規制を行わなければいけないわけでございます。この点は、現在「ふげん」の実績に基づきまして安全審査の方法は大体確立しておりますし、さらに軽水炉の安全規制の基準等をそのまま使える、性格的にかなり似た面がございますので、という考え方でおります。したがいまして、実際の申請書がどちらに出るということは、今後さらに計画が固まってきた段階で検討すべき問題かと思われますけれども、事実上の安全規制上の困難はないものと考えております。#64
○村山(喜)委員 名答弁というのでしょうか、わけがわからぬような答弁でございますが、私はその問題は関委員に譲りますけれども、どうも東海の再処理工場、二百十トン工場、これは比較的小規模なプラントでさえも、さっき申し上げたような状況の中で当分は稼働が不能の状態に陥っている。いわんや、千二百トンという六倍もの大型の第二再処理工場の建設計画というのは、現在の段階の中では中止されるのが当然ではないだろうかという気がするわけでございます。もう少し基礎的なものを確立をしていかなければ、またやってみた上で税金をどんどん使うというわけには今度はいかぬわけですから、そういうような意味において、いまトラブルが何カ所も出て運転不能に陥っているという実態をどう基本的に克服をしていくのか、解決をするのかということをしっかりと見届けた上でおやりになることを、私は意見として申し上げておきたいと思うのです。以上です。
#65
○永田委員長 関晴正君。#66
○関委員 一年ぶりで原子力船「むつ」にかかわる問題、そして活断層にかかわる問題について先にお尋ねいたしたいと思います。特に今度は、強権をもって鳴る中川科学技術庁長官ではなくて、科学的なことに理解の深い安田科学技術庁長官だ、こう私は認識をして質問したいと思うわけであります。昨年のいまごろにもお尋ねしたのですが、下北半島三キロの沖合いの海底には南北にわたって百キロの活断層が走っておる。これは「日本の活断層」という活断層研究会が編集した、長年にわたって研究をされ、討議をされて、その上で発表された図において明らかに示されているわけです。長官にも、この図はぜひ見ていただきたいと思うのであります。見ないことには、これは話にならぬのであります。なおまた、委員長にも、その部面については認識を深めていただくように、さきに要望をしておったところでもあります。
この百キロにわたる活断層があるということになりますと、想定される地震の大きさというものはまさにマグニチュード八・二、どんなに耐震設計を施そうとしてみたところで、その耐震設計は今日の建設の技術において及ばないものである。そういう認識に立ちますと、この個所に原子力船の母港をつくったり、あるいはまた直前である東通の村に二千万キロワットの原子力発電所まで建設していこうなどという計画は、おのずから再検討していかなきゃならなくなるものではないだろうか、こう思うわけであります。
そういう点からさきに追及した際に、東北電力株式会社の資料によりますと、ここに活断層は認められない、こういうことで御答弁がありましたし、しからばその東北電力株式会社の活断層の生データを提示していただきたい、こういう要望については、借りてきたものであるから電力会社の許可を受けない限り貸すわけにいかない、借りるときの条件として、他に貸してはならないということで見ている関係上お断り申し上げる、こういうことで今日まで経過されました。
その際、私は、当時の長官である中川一郎氏に、少なくともこの国会の科学技術委員会において真偽のほどを明らかにしてもらうためにも、その生データの提出を求めたいし、長官みずからもその努力をすべきではないか。答えて言うには、そのとおりである。しかし、今日まで一年間たちましたけれども、一向にその生データの提出も、またこれについての積極的な検討についての要請も、私どもにはありません。
そこで、私は改めてお尋ねしたいのでありますが、この下北半島東方三キロの海底に百キロにわたる活断層はいまもってないと認識しておるのかどうか、承りたいと思います。
#67
○倉本参考人 下北半島東方沖の活断層でございますが、ただいま先生が御指摘になりましたように、活断層研究会が取りまとめられた「日本の活断層」によりますと、先生のおっしゃいましたように、下北半島東方沖にいま活断層ありということになっておるわけでございます。私ども、関根浜に新しい定係港を建設するに当たりまして、一昨年の秋から、この地区に定係港が建設し得るかどうかということについての調査を行ったわけでございます。この調査を行うに当たりまして、活断層の問題につきましては、やはり特に検討をする必要があるというぐあいに考えまして、また、原子力関係の施設をつくるに当たりまして、私どもの建設予定地から大体三十キロメートルの圏内について調査を行う必要がございますので、そういった検討を行っておりましたところ、東京電力、東北電力さんの方が東通村に原子力発電所を建設される予定で、これに関連をして私どもが考えておりますと全く同様の調査をすでに行っておられるということをお伺いいたしました。
この調査の結果がお借りできれば、私どもといたしましては、この経費も節減できますし、また調査期間も短縮できるということで、両電力会社にお願いをいたしましたところ、快くお引き受けいただきまして、このデータをお貸し願えるということでございましたので、このデータをもとにして私どもで解析を行ったわけでございます。
ただ、その際、この両電力会社におかれましては、現在御計画中の発電所等についても、まだ技術的な検討も進めておられる段階でもございますし、また、私どもの方といたしまして、このような資料についても解析をぜひやらしていただきたいということでお願いをしたのでございますが、生データについては第三者の方には出さないようにというようなお話があったわけでございます。
このデータに基づきまして私ども解析をいたしましたところ、どうも、「日本の活断層」に記載をされておる個所につきまして、いろいろ検討、解析をいたしましたが、活断層に当たるものが認められないという結論に達したわけでございます。
したがいまして、私どもといたしましては、その地域には活断層はないという判定をいたしたわけでございますが、なお、これにつきましては、やはり活断層の問題というのは非常にむずかしい問題でございますので、その道の権威ある学識経験者の方々の御意見等をお伺いをいたしましたところ、どうもこの解析結果から活断層というものは認められないという御意見もいただきまして、私どもとしては、活断層はここには存在しないというぐあいに判断をいたしたわけでございます。この判断につきましては、現在も変わらないところでございます。
#68
○関委員 人には見せない、自分では見て、そうして判断をした結果、活断層は認められないとの判断をされた、こういうお話。一体どなたが見て、そうして御判断されたのですか。#69
○倉本参考人 この解析でございますが、解析につきましては、こういった地質関係の調査、解析に長年の経験と知識、また優秀なる人材をそろえております会社に委託をいたしまして、その解析をお願いをしたわけでございます。また、その解析の結果、ここには活断層はないという判断をしたわけでございますが、なお、これにつきましては、先ほども申し上げましたように、活断層関係の権威ある先生にも見ていただきました結果、これは活断層はないというぐあいに先生もおっしゃっていただいたわけでございます。
#70
○関委員 いつ、何という方が、何という科学者が、それをごらんになったのですか。いつ、何という方がごらんになったのです。#71
○倉本参考人 私も、ちょっと正確な日付は現在覚えておりませんが、私も北海道へ赴きまして、北大の名誉教授の湊先生の御意見をお伺いをいたしました。#72
○関委員 いつです。いつ行ったかということと、それから、湊先生というのはどこの方なのか、湊何とおっしゃるのか、その方の経歴も示してください。#73
○倉本参考人 私が参りましたのは、一昨年の暮れか去年の初めであったと思います。それから、先生は、北大の名誉教授をしておられます湊正雄先生でございます。
#74
○関委員 幾つになる方ですか。#75
○倉本参考人 ちょっと私も、お幾つであるか存じ上げません。#76
○関委員 重ねて申し上げたいと思うのですが、電力会社はいまでも出せと言えば、まだお断りするのでございましょうか。#77
○倉本参考人 電力会社さんの方は、現在でも状況は変わっておりません。この点につきましては、私どもといたしまして、電力関係者の方々とは、先生の方からもいろいろお話がございましたので、再三、こういった御要望もあるのだけれどもということを申し上げましたが、現在、発電所等について、まだ具体的な、技術的な説明等も――もう少し具体的に申し上げますと、安全審査等が終わるまではやはり困るというようなお話もございまして、私どもとしても、このお約束は曲げられないということでございます。#78
○関委員 湊さんという方は、そのときに資料を見まして、活断層は認められないという判断を示された。それでは、活断層は認められないが、何があるとおっしゃいましたか。
#79
○倉本参考人 解析と申しますか、また、電力会社さんの実施された音波探査でございますが、これは該当地域に活断層があるかどうかを判断するための調査でございまして、比較的海底の浅い部分の地層がはっきりわかるというための調査を行ったわけでございます。それで、そのデータを解析するに当たりまして、活断層というのは、先生も御存じのように、いわゆる第四紀層にこの断層が見られるかどうかということが一つの決め手でもございますので、そういった観点から解析を行ったわけでございます。その結果、第三紀層の上に乗っております四紀層にはそういった断層が見られないということで、活断層はないという判断が下されたわけでございます。
また、いまの第三紀層の方がどういうあれになっておるかという点につきましては、私どもとしては、そのデータの細かい点についての解析はいたしておりません。
#80
○関委員 活断層は認められないと、あなた方の方は湊先生の一つの判断でわれわれにお答えになった。しかし、活断層は認められないが、断層は認められるということについてははっきりしておったと思うのですが、どうですか。#81
○倉本参考人 断層があるかないかということにつきましては、私どもとしては、第四紀層に断層はない、したがって、活断層はないという判断をいたしたわけでございます。#82
○関委員 音波探査だけで、そういうような判断ができるものでございましょうか。#83
○倉本参考人 これは、いわゆる第三紀層、第四紀層というところがどういうぐあいになっておるかということを、はっきり調査をしておかないといけませんので、それは電力会社さんの方でボーリングをやっておられまして、これらの陸地のボーリング、それから、さらに海底における海上ボーリングを実施しておられるわけです。それで、地層が陸の方から、また海の底に従ってどういうぐあいになっておるかということから、音波探査をやりまして出てくるそのデータと、そのボーリングの結果とを対照いたしまして、どこからが第三紀層であるかということを明確にして、その上でその第四紀層の中に断層が見られるかどうかということを、判断をいたしておるわけでございます。#84
○関委員 ボーリングはいつなされて、何カ所なされて、どの地点であったか、示してください。#85
○倉本参考人 海上のボーリングでございますが、これは五十六年の三月から五十六年の十月にわたって――ボーリング自身は五十六年の、実際のあれは五月から六月にかけて実施をいたしておりますが、計画から解析等いたしますと、五十六年の十月いっぱいかかって解析をやっておるわけでございます。(関委員「地点と個所は」と呼ぶ)個所につきましては、下北半島の東側でございますが、この海上に全部で三地点やっておるわけでございます。#86
○関委員 どこどこです、三地点は。#87
○倉本参考人 一つは、ちょうどあそこの尻屋崎の突端の沖の方になりますか……(関委員「沖合い何キロ」と呼ぶ)沖合い大体三キロぐらいのところでございます。それから、次の地点はもう少し下がりまして――失礼いたしました。東通の原発の沖三キロの地点に三カ所でございます。#88
○関委員 そのデータは出せますか。#89
○倉本参考人 このボーリングのデータにつきましても、やはり音波探査の結果と同様に、電力会社の方からは、第三者には話してもらっては困るということであります。#90
○関委員 それじゃ、三地点の、地点と地点の間の間隔は幾らでした。#91
○倉本参考人 ただいま、その辺の詳しい数字がすぐちょっと見当たりませんので、調べましてまた御報告申し上げたいと思います。#92
○関委員 あなたは、北海道の教授のところに持っていったのは何を持っていったのです。距離もわからないで持っていったの。#93
○倉本参考人 この解析されたデータを持ってまいりました。#94
○関委員 どこのものをさ。#95
○倉本参考人 その御判断をいただくに必要な音波探査のデータ、それからボーリングの結果を、大体一連のものを持ってまいりました。#96
○関委員 言葉では、一連のものを持っていった。一連のものをわれわれは見せろと言えば、お借りしているものだからお見せするわけにはいかない。そして三地点、やっと出てきた、その地点間の距離は幾らかと聞くと、知らない。では、北海道の湊先生は、どこから持ってきたものかも知らないで返事をしておったということになりましょう。百キロにわたる地点ですよ。それを三点持っていって、ここに活断層が認められないなんというような話で、わかりましたといってあなた方は帰ってきたのですか。#97
○倉本参考人 地点その他につきましては、音波探査につきましてもやはりどこを走ったかということ、それからまた、ボーリングにつきましてはどこの地点でこれを掘った結果であるかということは明確にしまして、それと、そのそれぞれの探査の結果の生のデータと、それから解析の結果を持っていったわけでございます。#98
○関委員 明確なものと言うなら、答えてください。地点間の距離は幾らかと聞いているのですから。いまそれを答えられないなら、後でもいいですよ。そこに持ってきたものが不足しているから答えられないというならば、まだ質問時間がありますから、その間にでも結構ですから、地点間の距離はこうであった、これだけは言えるようにしておいてください。そこで、私は続けます。先ほど、活断層は認められないということについての判断をされたと言うが、じゃ何があるのかということについては、断層があるともないとも別にお話もなかったように受け取るわけです。この問題については、海上保安庁においてすでにエアガン方式で調べられまして、ここにはそういう断層がある、こういうことについてははっきりしているわけなんですが、海上保安庁の方がおいでになっているならば保安庁の方から、この担当の方に、そこに断層があったかどうか。ないというのか、あるというのか。あったというならば、あったということにおいてのはっきりした調査の結果をひとつ報告いただきたいと思うのです。
#99
○佐藤説明員 海上保安庁は、昭和四十七年の五月から六月にかけまして、下北半島付近の海域で、測量船昭洋によって「大陸棚の海の基本図」作成のための調査を実施いたしました。この調査項目は、海底地形それから海底地質構造、地磁気、重力でございます。このうち、海底地質構造の調査はエアガン方式でありまして、低周波の音波を海底に発射して、その反射波を受信して地質構造を記録する反射法音波探査であります。海上保安庁では、それらの調査結果をもとにいたしまして、大陸棚の海の基本図として、海底地形図、海底地質構造図などを刊行しておりますが、そのうちの海底地質構造図に、下北半島東方の沖に断層の所在を記載してございます。
#100
○関委員 権威ある海上保安庁の調査によって、断層が明らかにある。また、権威ある「日本の活断」の分布図と資料を見ますときに、そこには明確に、何らの疑いもなく、活断層が百キロにわたって南北に走っているわけなんです。そうして、あなた方がこの百キロの活断層を否定するために、東北電力株式会社の資料をもとにして否定してしまった。初めは、中川君は、地震なんか恐れることはない、日本のこの東京をごらんなさい、わが国の技術がどんなにすばらしいか、そう言って、地震には自信があると言ってここでお答えになったことをお忘れにならないだろうと思う。そのとき私は、それは文学的表現においていいかもしれないが、少なくとも科学技術庁の長官としてのお答えとしては受けるわけにはいかない、そんな非科学的な御答弁はいただけないと言って、はっきり申し上げておったわけでございます。そこで、あなた方の方は、三点のボーリングによって、そうして大学の湊教授に見てもらって判断をした。こういうものは一人の判断で、それがよろしいということにすることが妥当だと思っておられますか。湊先生のほかに、また何人かあっておやりになったものでございましょうか。その点だけ聞いておきます。
#101
○倉本参考人 私どもといたしましては、実際解析を委託いたしましたところも、非常に権威のある、また経験豊富な技術者がおるところでございますので、その結果については、私ども非常に信頼のおけるものであるというぐあいに思っております。また、私どもといたしましては、いろいろ御意見のある先生方の御意見等も一応参照しながら、最終的な判断を行いますにはやはり斯界の権威のある先生に御判断をいただくのが妥当であろうということで、私は湊先生のところにお伺いしたわけですが、その解析を行っておるところでは、いろいろ関係の先生方の御意見は聞いておったと私は聞いております。#102
○関委員 どなたたちですか。それらの方たちの名前を示してください。#103
○倉本参考人 その点、はっきり調べまして御報告いたします。#104
○関委員 これの調査に当たった東北電力株式会社のどこの部門がこれを担当したか。具体的にこれに当たった機関はどこなのか。それと、権威ある方々が調べたというのは、湊さんだけじゃなくて数人だと言うならば何人で、そしてどなたかということがおわかりでしたらすぐ答えてくれませんか。#105
○倉本参考人 その点、いま私はっきり記憶しておりませんので、調査いたしまして御報告いたします。#106
○関委員 これは理事長に伺っておきたいと思うのですが、この問題は私が取り上げてもう一年過ぎているのです。そのときに私は申し上げました。少なくとも否定している者と肯定している者があるんだから、肯定している者に対しての一つのあり方としても否定するに至った根拠等を示して、あなた方の方は間違っていますよと言うことくらいはしたらどうですかとも言っておきました。そういうようなことをして、この「日本の活断層」をつくった権威ある方々が権威がなくなったということになっているのでございましょうか。#107
○井上参考人 お答え申し上げます。ただいま先生御指摘の権威ある先生方の判定、それからまた私らがいろいろ調べた結果と合致していないという御指摘、確かにそうでございます。ただ、私どもの方では活断層という一つの定義といいましょうか、判断基準を非常に重視して進めておるわけでございまして、いま先生の御指摘の矛盾は十分承知しております。しかし、それを解明するようにさらに先生方から御指摘がありましたから、その後も勉強はしております。
#108
○関委員 聞いておることにちっとも答えていないのであって、「日本の活断層」は活断層研究会、貝塚先生を中心として四十名の権威ある日本の大学の専門家が調査をして発表したものなんです。大分お金もかかりましたし、文部省からも助成が出てこの本ができ上がった。この本に書かれていることがうそだということになるならば、これを発行した人にとっても大変な不名誉なことになるわけですから、あなた方はこういうようなものをつくっているけれども、こういうわけでここには間違いがありますよとかなんとか、ないと判断したならば申し上げておくのが、少なくとも学界等における礼儀作法として当然のことではないかと思うのだが、それを少しでも行ったのでございましょうか。#109
○倉本参考人 「日本の活断層」というのは、一つの非常に貴重な文献であることは間違いはないところでございますが、私どもといたしましては一応これを参照いたしまして、特に、特定の目的のために特定の地域についての調査を実施いたしたわけでございます。したがいまして私どもとしては、私どもが得ておりますデータ等から見ますとそこに活断層はないという判断を一応下しておるわけでございますが、この点につきましては、安全審査等の段階におきましてまた専門家の先生方に十分御説明をいたしてまいりたい、かように考えておるところでございます。#110
○関委員 とにかくいつも言うことですが、実際に安全審査の請求をするときにはそういう資料等を出してやっていただく。終わってしまってからそんなものを出してもらって事を進める――いますでに前進している一つの建設事業なんでしょう、原子力船「むつ」の母港というのは。その判断があった上で決めるのじゃない。そういうことを考えますと、いまのようなことは後でもいいからなんということは本当に理解ができない。先に不安なし、よろしい、決定。決定した後に不安があるかどうか調べてやってもらいますなんというのは、進め方、やり方が逆じゃないですか。これは何もこれだけに限ったことじゃありません。行政においても至るところにあります。だがしかし、引き返すことのできるものと、引き返す場合に多額の金を投げることになる問題とでは、おのずから順序というものがあるだろうと思う。私は、こんな論を何度もここで繰り返すなんというのは、本当に時間がもったいなくていやです。靴の上からかゆいところをなでるようなこの論議の進め方、これが日本の国会における科学技術委員会の活断層調査に当たっての問答だなどということになると情けないし、笑われ者になると思う。日仏合同の会議をやってみたところで、あるいは日米の合同の国会議員の協議をしてみたところで、恥ずかしくてこんな話なんか表にも出せない。大臣も、恐らくびっくりしているんじゃないだろうかと思う。そんなお粗末なことがわが国の科学行政にあっていいものかどうか。
東北電力が出さないと言うのならば、人の借り物でなくて、積極的にこちらで言われているところの百キロにわたっての活断層についてボーリングをして当たってみる、そういうことが必要じゃないだろうかと思う。見たもの、見ないもの、どこからとってきたものだかわけのわからないもの、聞けば答えられないもの、出せと言えば出せないもの、そういういうことでの論議なんというのは、もうばかばかしくてやれません。
私どもも国民に選ばれて国会に出てきて、そしてこの地先の活断層の問題について取り上げて一年、そしていまのようなことです。あなた方は、活断層がそこにあろうとなかろうと、まるで用がないような姿勢で当たっているのじゃないだろうかと言わざるを得ません。百キロの活断層といいますと、ログLイコール0.6Mマイナス2.9でLイコール100です。Mはマグニチュードです。2イコール0.6Mマイナス2.9で、二・九が左に移ると四・九、これを〇・六で割りますとMイコール八・二近くになる。そういう方程式まで示しておいて、大変なものがここにあるんだよと言うて警鐘を乱打しておるのだが、あなた方の方は東北電力の下請機関みたいなものになり下がっちゃって、いいものがあったなということで活断層を殺しちゃったのです。
東北電力としては、あそこにいま原子力発電所百万キロのものを二十カ所つくろうというものだから、そこにそんなものがあろうものなら、その計画もおじゃんになる。だから、都合いい資料をつくって、これなんだと言って納得させているのだろうとしか私には思えない。客観的なものであるならば、何で出せないのです。しかるべき機関が見せろと言うものを、何で見せないのです。電力会社が見せないと言うものに、はいはいと従っているばかがどこにありますか。まるで、泥棒の言うことを巡査が聞いているようなものじゃないですか、言い方が少し悪いかもしれませんけれども。取り締まる者と取り締まられる者との関係が上下になっているじゃありませんか。
これを調査するには、五億から六億ぐらいの費用がかかると先ほどの答弁にもありました。今度の予算において、原子力船「むつ」の定係港に出されている予算は百八億です。これは、百八億で片づく港じゃありません。六百億になるか八百億になるか、わかりません。そういうときに、しかもまた、原発がずらりと放列をしいて設置されようというこの東通の村です。五億、六億かけたって、そういうような疑点がある限り、きちんとした判断ができるような資料を国としてとっておくべきではないだろうか。そういう意味において、幸いにも新しくここで生まれ変わった科学技術庁長官、強権政治の中川君と違って、科学的を第一とするところの長官と私は見ておるものですから、これについての誠意のある御態度があるならば出していただきたいと思います。
#111
○安田国務大臣 まず第一に、国会が、委員会が、あるいは議員が資料の提出を求める場合には、誠意を持ってこたえなければならない、これは私はよく承知いたしております。そして、あとう限り、許す限りの資料の提供はわれわれは行わなければならない、こういうたてまえに立っております。そして、いまのこの事案を検討いたしてみますると、先ほど倉本理事がお話しのとおり、どこに問題があるのだろうか、電力会社の方が資料の提出を何としても御遠慮申し上げたい、こういうことを申し上げておるのです。そのよって来るところは何であろうかと考えてみると、お互いに権威ある調査機関のいわゆる分析、解析の結果というものがここに二つ出ておると、こういうことであります。この二つのものを公開、対比、こうすることは、これはもう釈迦に説法でございますけれども、ちょうどこれは信用調査に値する一つの形になるであろうな、お互いに権威あるものが右にあり、左にある、こういうことをやらしていいかどうか、これが第一であります。
第二番目には、御存じのとおり、この調査結果というものはいろいろ地元に派生的に影響を与えるであろう、ここに私たちの頭の置きどころがございます。
そして、第三番目には、やはりこれはいずれかの時期には明らかにしてもらわなければならない。何といったって、電力立地は企業の責任において、万が一のことがあったら大変なことでございますから、いろいろこれはしさいな、綿密な調査の上に立っておるという、そういう前提もまたこれは理解できるわけであります。
そして、現段階でどうか、こうなりますれば、いまほど倉本理事からございましたが、ボーリングとボーリングの間隔調査はどうなっているんだ、地点を明示しろ、これには後から御説明申し上げますと、こう言っておりますが、可能な限りのものはひとつ先生のところへ御説明に参上する、こういうところで、現段階で資料の提出と、こうなりますと、ここでもう一方私たちの立場を御了解願いたいと、こういうふうに私もお願いするものでございます。ひとつ御了解願いたいと思います。
#112
○関委員 どうも、先の話は大分いいお話であったと思うのですよ。大臣らしい答弁だなと思っているのだが、後の方の答弁は……。これはやはり大臣の立場から判断をして、ひとつきちんとしてもらわなければならないと思うのです。というのは、資料を出せと言っても出してくれない、出すまで待とうという姿勢じゃ、私は間違いだろうと思う。もう一年も過ぎているのです。それでいながらこの問題についての作業が、何ら調整しようとも、踏み込もうともしておらぬわけです。ですから、私どもは、電力会社の資料というものを生データを出してくれ、向こうも、じゃいつまでに出して見ていただきますと、大体原子力行政というのは自主、民主、公開を原則としておるわけなんですから、その原則に立って地形の姿、地層の姿がどうかということなんで、何もこれは企業秘密にも何にも属するものじゃないのです。これによってもうけたり損したりというような秘密事項じゃない。ただし、うそを言っていると秘密事項になりますよ、ばれちゃ困るからね。そこなんです。
それから、科学者の中にもいろいろあります。そういう分析を見て、そのデータに基づいて、ありとする者もあれば、疑いありと言う者もあればなしと言う者もある。しかし、少なくともここに海上保安庁でも調べまして活断層ありと、はっきりしているのです。私も、何月何日から何月何日まで、綿密に、わずか五、六メートルの間において発せられたエアガンに基づく記録を巻物のようにしてとってあるのを広げて見て、すばらしいデータだなと思って感心したのです。同じようなデータを電力会社も見せたらいいじゃないですか。見せられない。スパーカー方式でも何方式でもいい、やった結果のデータを見せる。ましてボーリングをしたと言うならば、ボーリングした個所を示す、ボーリングをした責任者の名前も明らかにする。どこまで掘ったのか、いつ掘ったのか、何のむずかしいこともない。
だから、そんなことを隠したまま進みたいと言うならば、そんな電力会社に用はないから、原子力船母港の設置という仕事は国の仕事ですから、何も電力会社に関係ない。見せないと言うなら見せなくてもいいから、八百億も千億もかかるかもしれない、いつまで、どこまで進むかわからないようなこの仕事であるけれども、安全のことというのは第一なんだから、五、六億ぐらいの金をかけてボーリングしたらいいでしょう。させたらいいでしょう。その点について、長官のお考えをもう一遍聞いておきます。
#113
○高岡政府委員 活断層であるかどうかということにつきましての基本的な判断の資料が、専門家といいますか、非常に対立する二つの判断があるということでございまして、一方が公表をされておる、一方がお聞き取りのような事情で公表できないという状況でございますが、これにつきましては何とか公表できないかということで前長官とも御相談申し上げまして、事業団を通じて電力会社の了解を得るべく努力をいたしたわけでございますが、去年の六月ごろでございますが、何としてもいまの段階では、つまり東北電力、東京電力の原子力発電計画が安全審査の段階でないといういまの段階では、公開することはまずいという結論でございまして、やむを得ないというふうに考えておるわけでございます。はなはだ残念でございますが、ただ、ぜひ御理解をいただきたいと思いますのは、先ほども参考人からのお話がございましたけれども、原子力船の母港の陸上の附帯施設につきましては、当然政府によります安全審査が行われるわけでございまして、その段階では事業団の判断のベースになりました科学的なデータというものも十分審査されるわけでございまして、その段階で先生の御指摘の疑問も解決するものというふうに考えております。
#114
○関委員 私は、大臣にお答えいただきたいのです。もうこの論争は、担当者との間では何度もしてきたのですよ。私はこれを裁断して、いやいや、そんな詰まらぬ話をいつまでしたってしようがないから、五、六億かけてここを調べなさい。私は貝塚先生にお会いしました。私は、ただここで申し上げているのじゃないのです。四十人の先生方が必死になってつくった、いろいろな作業の努力等も伺いました。先生は何とおっしゃっているかというと、いろいろな資料によるとやはり活断層と断定せざるを得ないであろう、そうして、活断層でないということを立証することはきわめてむずかしいと言っておられる。ですから、よほどきちんとしたものがおありだとするならば、それは見たいな、こうも言っているのです。これが学者としての態度じゃないですか。
だから湊先生だって、これをつくった貝塚先生らに、おい、どうしてこうなったというようなことくらい学者であるならば聞いて、同じ学者のやっておるものを否定することなのですから、軽々にやれることじゃない。あなたは、何日先生のところへ行って何日教えを受けてきたのかわかりませんよ。少なくとも、科学的な資料に基づいて科学的な調査が行われて科学的な判断が出たのだということには、私は一〇〇%そうだったというふうには胸には落ちませんよ。
だから長官、八百億もかかるのでしょう、原子力船「むつ」。また、東通の原発の安全審査に当たって調査して、その調査資料に基づいて判定するときにも、ここにあるかないかの論争がまた始まるわけですよ。そのとき、申請者の資料に基づいて活断層はありませんですよというようなお粗末なことで審査いたしますか。どうあったって金をかけて独自の調査をして、この海底の診断をしておかなければならないものなんだ。だから、いまの長官というのは仕事をする内閣の一員でしょう。中曽根内閣は、仕事をする内閣だと言っていばっているわけですから、このお仕事をされたらどうです。だれも手をつけれない。安田長官、これはあなたならばやれと言えばそれでいいのです。あとの人はこわごわ腰なんですよ。鼻息をうかがってみたり、この先どうなるかといって心配したり。あったらあった、なかったらなかった、そのためにはひとつ調査をする、こう踏み込んだらどうです。(「原子力のメッカができるわけだ」と呼ぶ者あり)そうですよ。
しかも、この下北半島というのは、何からかにまで、いわば原子力半島化されようとしているでしょう。私どもは反対ですよ。原子力半島化よりも風力半島化しろと言っています。ソフトエネルギーに力を入れなさいというのがわれわれの方針です。ここには幾らも風があるのですから。まあ、その論まではきょういかないで、せめてこの海底の活断層の調査については長官としても踏み込んで、われわれが信頼できるようなものの発表ができるようにされませんか。重ねて長官に御答弁を求めたいと思います。
#115
○安田国務大臣 重ねての御質問でございます。この話につきましては、中川前大臣以来の長い経過があるわけであります。中川大臣のそのときにとられた措置、そのときの理解、これも私に引き継ぎがありまして、その考え方はずっとこれを踏襲いたしておるわけであります。それは、学説あるいは権威ある立場にある人たちは、いろいろな分析、集積の結果を、見解を示すことになろう。繰り返しになりますけれども、やはり権威ある人たちのお互いの議論というものを、集積というものをここで露呈して、そうして右か左かと論争することはいろいろな意味においての物議を醸すであろう。大きな投資をしてそして安全第一と、こういう視点に立って詰めてみる、検討してみると結論は間違いがないであろう、こういう結論に達してわれわれはこの作業に取り組んでここまで来た。
しからば、いま関先生おっしゃいますように議論の場はあるでしょう。それは公聴会もあるでしょう。いろいろなヒヤリングの段階もあるでしょう。そういう段階においてひとつ十分に議論をいただきたい。当方の考え方、見解、理解の度というものもそこで開陳をし、またわれわれにも聞かせていただきたい。こういう運びでこの問題に取り組んでおるわけであります。関先生には本当に御心配をかけて、長い間の議論でございましたけれども、前中川大臣の考え方を踏襲いたしまして、私もそういう理解の上に立っているのです。こういうことで御理解願いたいと思います。
#116
○関委員 その話ではとても理解できませんよ。何で理解できないかと言えば、中川さんだって電力会社から出させましょうと初め言ったのですよ。ところが、こっちが思ったって向こうは出さないんだからと言って、最後には弱腰になった。意思としてはあった。同じように、意思としてありながらも今日までなお出さないと言うのですから、じゃその次の道を考えなければならないじゃないですか。これは、何も右や左の思想の争いじゃないです。いいですか。実態の分析について片一方は公開しているし、片一方はどこでどう調べてどう判断されたのかがやみの中なんですよ、あなた。そして、電力側だけがないと言っている。これほど言われてもなお黙っているなんということは、厚顔無恥といいましょうか、よほど恥を知らない者か、名誉、権威というものについてかかわりない、利潤さえ追求していればいいんだというような存在の者にしかとれない態度だろうと思うのです。
だから、何も出さなければ出さなくてもいい。自信と確信のない者に出して広げて見せろと言ったって、むしろそれは無理ですから見せぬでもいいですよ。しかし国の仕事でしょう、原子力船の母港の設置というのは。その設置個所にかかわる、すぐ直近のところにおける問題でしょう。国で調べて、そうしてわれわれに安心させるなら安心させたらいいじゃないですか。何も激突の場じゃありませんよ、あなた。長官、認識が少し違っていませんか。ここに出す金が惜しいからといって電力さんに頼ったのだろうが、頼られた電力さんも内密では資料は出しただろうが、公にはできないということなんですから、それじゃ公にできないものをどうするか、われわれのものでもないものを出せ出せと言ったって、それは仕方がないとするしかないでしょう。ならば、われわれはわが道を行くで、ボーリングしたらいいじゃないですか、ボーリングする予算くらいかけたっていいじゃないですかと私は言っているのです。
そうして、この公表している活断層研究会と論戦を無理にさせなくても、早いところ長官の手で活断層のボーリング調査をしようじゃないか、こう言えば済むじゃないですか。どっちみち、しなきゃならない時期が来るでしょう。来るならば早い方がいいじゃないですか。そうして、実態があるならば計画変更すればいいのです。
長官、何がむずかしいのです。私は、あなたを十二時半にはここから出してやろうと思って一生懸命努力しているのだけれども、私の意が通じなければ努力してもできないことになりますよ。善意で聞いているのだから、何も作為も悪意もない。だれに聞かせたって、私の主張というのは支持されるはずですよ。これは、自民党の理事の諸君だってそうだと言ったのだから、金をかけて調査するしかないじゃないかとまで昨年は言っておられたのですから。それで一年暮らしているのです。何も前進しない。私は、国会というものは本当に新幹線と比べて鈍行のやり方で進むものだなと思いながらも、そこには慎重さということにおいてまたいいところもあるであろうというふうに思ってこの一年間がまんしておるわけですが、もうがまんできません。
これでものらりくらりの答弁で、責任ある職員たちは、補償金はどのくらいになるのだろうかということでいまいろいろと折衝があるだろうけれども、その補償金の金額だって全然決まらないでしょう。年度内に決めたいと思っているだろうけれども、決まりそうにもない。次にその質問に入っていきたいと思うのだけれども、その質問をすると次の質問の方がまたおくれちゃうものだから、とにかく大臣、もう一遍踏み込むように検討くらいされませんか。あなたは、いまそこでたんか切って、よし、やると言えないとするならば、仕方がない、次善の策としてこの問題は検討してみる。長官としても、初めての長官だから、この問題が出てから聞くのが初めてのことでしょうから、社会党の言うことだから大したこともあるまいと思っていたかもしれませんが、よく聞いてみるとこれはりっぱじゃないか、こうお思いになったとすれば、あなたの判断で、本当に胸三寸ですよ。あなたの部下に、どうしたらいいかなんて相談する必要はない。あなただって、御指示をいただいて参議院議員から長官になられた方なんだから、指示をすればいいのです。下からの御指示で動くのじゃない。あなたの御指示で下が動くのです。そういう意味で、踏み込んでみる、検討してみる、こういけませんか。
#117
○高岡政府委員 長官からまた御答弁があろうかと思いますが、その前に一言だけ申し上げたいと思います。先ほど申し上げました安全審査につきましては、これは定係港の附帯施設につきまして安全審査をやりまして、もしその結果、御指摘の活断層の問題で施設が設置できないというようなことになりましたら大問題でございますので、われわれも慎重に考えておるわけでございます。でございまして、東京電力、東北電力が持っておりますデータにつきまして事業団自身がいろいろ検討を加えておりますけれども、その事業団が、あれは活断層ではないと判断しました根拠というのは、公開できませんのが残念でございますけれども、十分信頼のおける、確信の持てるものだというふうに考えておるわけでございます。そういう状況でございますので、いまの段階では、御提言のようなボーリングをして確認をするということは必要ないというふうに考えております。
#118
○安田国務大臣 関先生の御指摘の点は、中川長官から私との事務引き継ぎの中で案件として出てまいりました。そして、私も自分の考え方がありますし、いろいろ大変な問題だな、関先生は非常に情熱を持って御勉強しておられるということを聞きました。そこで、それならば事業団が、あるいは庁がこれをもう一遍やってみるかということになりますと、そのやる計画はいま出てきているこの資料のやり方と同じことをやるわけですね。だから二重投資になるし、結論はここで同じことになってしまう。だからして、ひとつこの考え方で早く定係港に取りつく、こういうことで一貫して中川大臣もそれでいきましょう、こういう引き継ぎを私は受けておるわけであります。だから、本当に関先生の気持ちはよくわかりますし、中川大臣も特に引き継ぎの中でこのことがあったわけでありますから、同じ結論が出ることを、われわれはそれを信頼しておりますし、どうかひとつそういうところで御了解いただきたいとお願いいたします。
#119
○関委員 電力会社と同じことをやるならば、それでいいのだというならば別ですよ。私言ったでしょう。電力会社はどんな調査をしたか、三地点のボーリングをした。どこどこをボーリングしたのだ、わからないというのでしょう。どんな学者に見てもらったのだ。御用学者であったとは言わないけれども、そちらの方の向いている方にちょっと見てもらっただけでしょう。しかもいま現役の方でもない。それが権威あるものだという認識に立って必要ないなんて考えているとするなら、私はいただけない。特に、ただいまの原子力局長の答弁。電力会社と同じことをやるのだから必要ない。電力会社と同じことをやればそれで済むと思っているのですか。それで百キロの活断層の問題についての解決がつくということになるのですか。そんなに自信があるならば、なぜ出して見せないのです。自信があるならば、こうだと言ったらいいじゃないですか。見せられないと言うなら、見せられるものをあなた方がつくってわれわれに示したらどうです。必要ないなんという局長の答弁は、私はとても容認できません。あなたは原子力局長ですよ。電力会社の調査で事足れりという認識でしょう。調査をすれば、それ以下の調査ぐらいで終わるから必要がないというのでしょう。そんなことありますか。指摘されて調査に臨む以上は、もっときちんとした調査をすべきものじゃないですか。言われて調査をする場合にも、同じ調査でお茶を濁しておこうという考えですか。先ほどの局長の必要ないという答弁にだけはとても了解できないから、答えてください。
#120
○高岡政府委員 先ほど申し上げましたのは、陸上附帯施設の建設の着工に先行しまして安全審査をやるわけですが、その段階で活断層の問題について専門家の承認といいますか審査、了承が十分とれる自信があると事業団も判断しておりますし、私どもも現時点において判断しております、こういうことを申し上げたわけでございます。少なくとも現時点におきましては、活断層のあるかないかということを解明するためのボーリング調査ということは考えておらないということを申し上げたわけでございます。#121
○関委員 考えておらないし、必要ないというならば、われわれが必要として求めているものを出したらその返事が妥当でしょう。あなた方だけつかんで、あなた方だけ見て、それで必要ないといって納得されるものですか。あなた方の感覚、常識というものはそんなものですか。だれにでも見せて、そうしてやはり必要ない、考えない、これなら別だよ。自分だけ見て、自分だけ食べて、おいしかったよと言っているようなものじゃないの。こっちは何も食べもしない、眺めもしない、それでおいしかったかどうかわかるものじゃないよ。それで信頼しろ、信頼しろ。宗教じゃないよ、科学なんですよ。橋田邦彦さんという、昔文部大臣をして、「科学する心」ということを説いた人がある。私はあのころ小学生だった。でも、いまでも忘れられない。あれはいい言葉だと思っています。「科学する心」。科学技術庁長官は、橋田邦彦さんじゃないけれども、「科学する心」、あの文部大臣の言葉というものを生かすようにして行政をすべきじゃないですか。私は、とにかく長官に先ほど申し上げた、何がこれむずかしいのですか。五億、六億かけて調査するのが何かむずかしいのですか。しかも、いまヒラメの補償でも、漁業の補償でも、あなた方が出そうというお金は六億でしょう。六億でおさまりますか、絶対におさまりません。そうすると、今度はあなた方は倍額の十二億にするでしょう。またおさまりません。申し上げておきます。
そういう情勢にあるときに、少なくとも活断層にだけは五億、六億をかけてごらんなさい。補償費にただ金を投げるよりははるかにそれが、行政調査会においても求めている本旨じゃありませんか。本当に情けないことをあなた方は、とにかく逃げよう、逃げようとして事を進めようとしているのですよ。話が少し横道にそれたけれども、漁業補償の問題、これだって解決できますか。どこまで進んでいますか。私がいま言った言葉に間違いがないと思うのだが、そのとおりなら、そのとおりでございますでもいいですよ。答えてください。漁業補償はどこまでいっていますか。
#122
○井上参考人 現在漁業補償の交渉は、回を重ねて五回交渉委員会等をやっております。いま御指摘のように、いろいろ御意見もありまして、それを踏まえて、なるべく早く解決するように努力をしております。現在のところ、組合員の方々のいろいろな御意見が出ておりますので、それをなるべく尊重しながら解決したいと思っております。#123
○関委員 私の聞いているのに答えてください。六億二千万までいっているのでしょう。それでだめだと言われているのでしょう。そうすると、倍額にでもして臨むつもりですかと聞いておるのだ。とても、どんなことがあってもそんなふうにはなりませんというなら、それで結構なんだ。それだけ答えてください。#124
○井上参考人 御指摘のように、六億二千万円の補償額の提示をしております。いまもお話し申しましたように、組合の方からはいろいろと御注文が出ておりますことも承知しております。特に漁業の今後の発展ということから、漁業補償以外に漁業振興ということも考慮してくれという話もございまして、これから誠心誠意交渉に当たります。いま、幾らでおさまるかという御質問でございますが、その点は、現在の段階で幾らでおさまるかという明確な金額は出せませんので、御了解願いたいと思います。#125
○関委員 いま漁業補償に話が及んだが、六億の漁業補償では足りなくて、恐らく積まれていくであろう。では、倍額に積まれて十二億になったとすれば妥結するのか、こうなると、私はそれでも妥結はむずかしいし、できないであろう、こう見ているのです。そういうようなことで補償費の金はじゃんじゃん出されていく、そういうむだ遣いと言えば言葉は悪いが、そういうような金の出方は容赦なくいくときに、効率のある金の出し方からいくならば、この際、南北百キロにわたる括断層の調査ぐらいは一方においてしておいて、そして、東北電力の借り物で行政を進めるなんという卑しいことはやめて、自主、民主、公開の原則に立って、だれにでも見ていただきます、資料はこのようにございますと、どの学者でも一致した意見が出るようなものに、自信と確信を持って提示できるようなものにしたらいいじゃないですか。そういうことで私は申し上げているのです。何が何でも、石にかじりついてもこの調査はすまいと決心しているのですか。
#126
○倉本参考人 この活断層の調査を行うに当たりましては、私どもといたしまして、活断層の調査をするためにはどういうような方法で調査をするのが適当であろうかという検討は当然いたしたわけでございます。それで、私どもとしての活断層の調査の方法、それからこの調査を実際に電力会社の方がやっておられるということをお聞きしまして、電力会社とお話をいたしましたところ、私どもが考えております調査の内容と、電力会社の方で実際に実施をされた方法とが全く同じ方法であったということで、そういうことであれば、私どもがあえて同じ方式でこれを実施するということもないという判断をそこで下したわけでございます。と申しますのは、この活断層の調査を行いますには、先生も御案内のような、海底下三百メートルぐらいまでの比較的浅いところにいわゆる第四紀層というのが横たわっておりまして、そこのところに断層があるかどうかということを把握するためには、そういった調査に適しておりますスパーカー方式というものを採用しておるわけで、私どもとしてはその方法をとったわけでございます。
また、その検討の段階で、先ほどもお話に出ておりました「日本の活断層」で下北沖に活断層ありという絵が書かれておるわけですが、その絵のもとになりましたのは、先ほどもお話の出ました海上保安庁の方が実施をされましたものを基礎にして御検討されたものであるわけでございますが、その水路部の方で実施をされましたのは、海底地形がどういうぐあいになっておるかということを主たる目的としておやりになられた。
また、そのためにやはり海底下の比較的深いところの探査といいますか、そういうことにも適したエアガン方式というものを使っておられまして、そういった点から考えて、私どもとしては、その「日本の活断層」そのものも権威ある資料であろうと存じますが、やはりいま活断層というものを検討する以上、それに最も適した方法でこの調査は行うべきであるということで、スパーカー方式を採用をいたしたわけでございます。
したがいまして、その結果活断層と思われるものが認められないという結論を得たのでございまして、こういった活断層の検討をどうやったらいいかという検討、さらにその調査に基づいた解析等も行ったわけでございまして、それらの信頼のおけるデータから判断をいたしまして、この活断層はないという判断をいたしたわけでございます。もちろん、その段階におきましては、こういった活断層についての権威ある先生にも、先ほどお話し申し上げましたように、見ていただいたわけでございます。
〔委員長退席、与謝野委員長代理着席〕
また、先ほどちょっと資料がなかったのでお答え申し上げませんでしたが、海上のボーリングの方の調査の場所でございますが、東通の原発の沖合い、これは三地点でございまして、下の地形等の関係からいたしまして一番北側のものが海岸から約四キロメーターぐらい沖でございます。それから第二点が、大体それから約三キロメーターほど南側の地点でございまして、海岸から約二キロ足らずのところでございます。それから第三地点は、第二地点から約八キロぐらい南に下がったところで、これも約二キロ足らずの地点でございます。
それで、この地点を選定いたしますに当たっては、いろいろ御検討されたようでございますが、海底の地層といいますか、その点を把握いたしますのに、非常に深いところになりますとボーリングもなかなか大変でございますが、そういった地層の確認といいますのには、やはり大陸棚の上で行うのが一番的確、適しておるということで、その地点が選ばれたと聞いております。
#127
○関委員 とてもいまの答弁でわかりましたということにはなりません。ちょっと計算して足しただけでも十五キロじゃありませんか。三地点合わせての延長距離は十五キロですよ。百キロにわたる活断層があるというのですから、百キロにわたって調査して、ないというならば別ですよ。わずかに三地点、しかも地点間の距離というものは三キロと八キロだから、十一キロということにしかならないでしょう。その程度で、百キロのところの活断層が認められないなんということを言うことができますか。その地点で調べたところでは、ないと言えるかもしれませんよ。
しかも、ここは、東北電力が調べたのは、言うなれば東通の原発の沖合い、尻屋の沖合い、関根浜から真っすぐ見える北方の地点。何の調査もしてないじゃないですか、あなた。百キロの言うなれば延長線上におけるものについての判断が、それによってどうして出されるのです。めちゃくちゃじゃないか。それでわかりましたというふうになるものですか。
局長、あなた、これでわかりましたということになりますか。――原子力局長だ。必要がないと答えた原子力局長、答えてください。その程度の調べで、あなた、関根浜の沖合いの方の、尻屋の北方にあるものを、何にも調べないで、それで、ないという話について、必要がないなんてこれ表明できるものですか。
#128
○高岡政府委員 私自身は地質の専門家でも何でもございませんけれども、先ほど参考人からるる御説明ございましたように、東京電力、東北電力がやっております調査の内容は、比較的浅いところ、活断層があるかないかということについての判断をいたしますときに非常に大事な三百メートル程度の比較的浅いところについて、判断の的確な資料が得られるという方法を適用しておるわけでございます。その調査の結果――公表できませんけれども、結果に基づきまして、この御指摘の場所には活断層はないという判断ができるものというふうに考えております。
#129
○関委員 あなたも、地質のことについて知らないと言っているんですから、知らないものは知らないままで素朴に聞いて判断すればいいんだ。いま調べた結果の個所だけでも、南北わずか十一キロですよ。百キロに比べて一割程度ですよ。それであとを推定してしまうということは無謀じゃありませんか。いいです、お答えは。もう時間がありませんから。同じ話したって……。
そうして、見せる人は都合のいい人に見せて、そして御判断をいただいて、それで終わり。われわれのところにも出してくれと言うのに出せない。そういうやり方、あり方でよろしいのかということをさっきから言っている。私どもなんか納得しなくても、事を進めればいいと思っているのですか、あなた方。横暴じゃありませんか。きょうは、あと時間がありませんから、この論はこれでおきます。
残念ながら、ATRの問題についての質問はできないままに終わってしまいました。新型転換炉については、何で青森県の大間の町に決めたのか。大間が適地だなんというのはどこから出てくるのか。どこも調べてないから、大間だけ調べたから大間が適地だなんという、ふざけた審査態度で大間町に決められた日には、私は、日本の原子力発電所行政において問題を残しておると思っています。一言だけ、何で大間の町に設定したのかということだけは答えてください。私は、あと、終わりますから。
#130
○高沢説明員 大間町につきましては、今回のATR新型転換炉実証炉の事業主体であります電源開発株式会社が、これまで原子力発電の立地の可能性を含めて地元とコンタクトをとってきた個所でございます。そういった意味で、地元からも電源開発株式会社に対しまして誘致的な動きがあった個所でございます。今回、実証炉の開発が決まりました後、電力業界におきまして、その受電関係を含めまして検討をしてきたわけでございまして、大間地点を含めまして他の地点での立地の可能性も電力業界の中では検討をしていただいたと聞いておりますけれども、その結果、現段階では、立地環境調査の地点としては大間町が適当であるという結論に達したという報告を私どもは受けているわけでございます。
#131
○与謝野委員長代理 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。午後零時五十分休憩
────◇─────
午後二時十分開議
#132
○永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。草川昭三君。
#133
○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。まず最初に、公明党の中に実は先端技術問題の小委員会というのがございまして、私ども、生命工学、バイオテクノロジーを初めとする生命科学一般についての今日的な問題の検討会をやっておるわけでございますが、すでに新聞でも御存じのとおり、アメリカでスーパーマウスのようなものが現実化してきておるわけでありますし、先日来新聞等でも大変話題を呼んでおりますように、日本でも体外受精に成功しておるという問題が報道されておるわけであります。
ライフサイエンス、生命科学の進展というものは非常に目覚ましいものがあるわけでありまして、遺伝子を人工制御するDNA、デオキシリボ核酸あるいは組みかえ、試験管の段階を過ぎて、非常に大型のタンクでインターフェロンを量産する実用化への試みもわが国で始まっておるわけであります。映画やSFというのですか、空想科学小説に登場するコピー人間はまだでありますけれども、そういうようないろいろなキメヲ動物等も可能になってきておるわけであります。
そういうような、バイオの時代というのですか、生命工学の現実的な展開の段階になってまいりますと、人間生命の尊厳というものを大前提にして、いわゆる生物兵器への悪用の禁止、あるいはまた事前評価の安全対策の確立、倫理的ガイドラインの設定というものの確立を急がなければいけない、こう思うわけでありますし、社会的な合意のもとに研究開発の利用を推進することが必要だと思っております。
そのような立場から、私どももさまざまな提案をいまいたしておるわけでございますけれども、ひとつ、これは科学技術庁にお尋ねをするわけでありますが、日本におけるバイオテクノロジーの振興に際しては、平和、民主、公開の原則というものを確立すべきではないだろうかというように思うわけでございますが、まずその点についての見解を賜りたい、こう思います。
#134
○下邨政府委員 バイオテクノロジーにつきましては、ライフサイエンスを進める中で基本となる技術でございまして、先ほど御指摘のように、組みかえDNAとかあるいは細胞融合、バイオリアクター等、生物機能を有効に利用する技術として人類の福祉に大きく貢献するものと期待しておるところでございまして、その一層の振興が必要であると考えております。この振興に当たりましては、安全性の確保ということは大前提でございまして、その安全性の確保に万全を期すと同時に、国民の理解を得るということが、またその推進を図る最も大きな課題であろうと思っております。そういう立場から、バイオテクノロジーを振興してまいりたいと思っておりまして、現在バイオテクノロジーについて、御指摘のような平和、民主、公開といった原則を特別に新たに設けなければならないというような事情があるとは考えていないわけでございます。
〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕
なお、生物兵器につきましては、すでに昨年の六月に生物兵器の開発禁止に関する条約にわが国も加入いたしまして、その実施につきまして国内法で措置されているということでございます。
#135
○草川委員 私どもは、昨年のたしかあれは外務委員会でございましたか、生物兵器の禁止の条約についても討論に参加したわけでありますけれども、日本の戦前からの細菌戦争にも石井部隊のような名前も挙がったわけでありますし、具体的な生物兵器というものが現に生存をしたのではないか、こう思っておるわけであります。でございますから、よほどこれはスピードを上げて、いわゆる生命工学あるいは遺伝子操作を中心とする対応を立てることが必要ではないか。いまの御答弁だと、いまだその段階ではない、こうおっしゃいますけれども、すでに組みかえ実験についての基準等につきましても、学術審議会の分科会等でもいろいろな対応がなされておるわけでありますし、あるいはまた、マウスに人の遺伝子がすでに注入をされて九匹の誕生も行われておるというようなわけで、新聞等におきましても非常に大きく報道されておるわけでございます。
一般の国民といたしましても、私はいま平和利用あるいは安全の原則あるいは民主、公開ということを言いましたが、さらにいわゆる同意の原則、たとえば人間に対する遺伝子操作等は正しい情報を告知して、当該者はもちろんのこと保護者の同意を必要とするのだというようなことも、実は前倒しで科学技術庁あたりが積極的に対応を立てていきませんと、すでにこれはもう治療の段階ではずいぶん応用されてくるわけでありますから、たとえばこれは医師あるいは医師だけではなくて、文部省管轄の国立大学の附属病院なり研究所等においてもいろいろな意味で実験をされておるわけであります。
きのうも何かニュースによりますと、徳島大学でございますか、徳島の方も試験管ベビーというのですか体外受精の問題について、非常に積極的な研究をなされている大学でございますが、倫理的な基準というものの確立を急げというようなことも私ども承っておるわけでございまして、具体的にもう少し科学技術庁としての前倒しの対応が必要ではないだろうかと私は思っております。
いまも生物兵器の問題等については、国際的な条約の関係からそういうことがないとおっしゃっておられますけれども、本当に科学技術庁は確約できるかどうか。あるいは、科学技術というものは軍事技術とうらはらでありますから、どこまでが科学技術であり、どこからが軍事技術になるかわからぬという点はたくさんあるわけであります。そういう意味でも私どもは、平和利用ということの大原則は、繰り返し繰り返し主張しても私は言い過ぎではない、こう思うわけでございますので、その点は積極的な答弁を求めていきたいというように思うわけであります。これは要望であり、そういうように申し上げておき、最後に大臣からもその点についての見解はまとめていただきたいものだと思っております。
そこで今度は、遺伝子操作についての実験指針が緩和をされてきたというのが報道にもなされておるわけでございますが、たとえばP4施設で実験をしなければいけないものをP3にするということは、私どももp4施設について、厚生省の武蔵村山の試験所になりますか研究所になりますかどこかわかりませんが、現状を見ますと大変厳格なものでございます。一般の研究では、たとえばP4でなければならないものをP3に落とすということは一面では理解できるわけでございますけれども、しかしこの実験指針が本当に企業だとか大学だとか研究所で守られているのかどうかということになると、かなり疑問があるわけであります。本当に実験指針をそれぞれの企業、大学、研究所等で行えるのかどうか。非常に厳格な空気清浄だとか、実験者あるいは研究者の衛生上の保護というのですか、無菌で作業をしていただけるようなことをやっておるわけでありますけれども、周辺の全体の安全性なり基準については疑問があるのではないか、私はこう思っております。
特に、経団連の方で一昨年の九月でございますか、実施した調査結果があるわけでございますけれども、企業の中での安全委員会というものはまだ設置されていない企業があるやの報告がございました。その後、科学技術庁としては、現に製造をしておるところでは安全委員会は設置されておるというようにお答えをいただいておりますけれども、私も全部見ておるわけではございません。たとえば英国等には、実験指針が守られない場合には処罰をするという法制化が行われておるというように聞きます。でございますから、この実験指針なり安全基準が本当に守られているのかどうか。どこの省庁がやるのか。これは厚生省がやるのか文部省がやるのか、あるいは企業化をすれば通産省がやるのか、そうではなくてそれは科学技術庁がやるのか。あるいは法制化への考え方を持
ってみえるのかどうか、お伺いしたいと思います。
#136
○下邨政府委員 安全確保の問題で実験指針が緩和されたということがございました。五十四年八月に組みかえDNA実験指針が総理大臣によってつくられまして、それに沿って大学、企業、研究機関で実施されているわけでございます。その中には、物理的封じ込め基準あるいは生物学的封じ込め基準、それから安全委員会の設置等必要な要件が書かれているわけでございまして、これの周知徹底を図るために私ども、文部省それから経団連、都道府県等を通じまして遵守方を要請し、行ってきているところでございます。#137
○草川委員 その程度の答弁では実は私どもは納得しないわけでありますが、これは非常にむずかしい問題でございますから、もう一回前に話を戻して少し具体的にお伺いしたいと思うのです。たとえば、いまの東北大学の医学部で成功した体外受精の問題でもそうでございますけれども、徳島大学なら徳島大学の方では倫理的な歯どめが必要だというような意見も出ておるわけです。それで、どうしても一方ではガイドラインをつくり、あるいは企業の場合ではP4施設等の問題なり――P4施設の建設等について筑波でも反対運動が起きておりまして、科学技術委員会でも議論になっておるところでございますけれども、たとえば安全委員会というものをつくる。安全委員会というのも、いわゆる企業内だけの安全委員会ではなくて、住民代表という言葉が適当かどうかわかりませんが、たとえば住民の方々の推薦する学者等もその中に含まれるような形の安全委員会というものができてもいいのではないだろうか。一つの提案でありますけれども、私はそのようなものもつくる必要があると思うわけであります。
あるいは試験管ベビーの問題等につきましても、たとえば科学技術会議というのが内閣総理大臣の諮問機関の中にあるわけですが、この中に生命倫理委員会というようなものをつくって、そこには学術会議の代表だとかいろいろな審議会の代表の方々も入っていただいて、積極的な取り組みがいまから行われてもいいのではないだろうか、私はこう思うわけであります。特に、三月十四日ですか、つい最近科学技術会議の本会議が開かれて、総理の方からも、今後十年間のわが国の科学技術の政策指針をつくったらどうだというような諮問があるわけでありますから、それにこたえる具体的な問題ではないか、私はこう思うのですが、その点はどうでしょうか。
#138
○下邨政府委員 安全委員会の構成につきましては、各企業あるいは研究機関で設置されておるわけでございますが、たとえば私どもの関係でございます理化学研究所におきますP4施設の話が出ましたけれども、その安全委員会の構成に当たりましては、地元の推薦される方に入っていただくというようなことで構成されることになっております。そういうようなことで、できるだけ開かれた安全委員会であるように指導してきているところでございます。また、科学技術会議に生命の倫理委員会を設けるべきではないかというようなことでもございます。最近、科学技術の発展によりまして、先ほど御指摘のありました体外受精であるとか臓器移植というような問題が出てまいりまして、倫理とのかかわりが議論されるようになっております。たとえば臓器移植につきましては、心臓移植とか腎臓移植とかございますけれども、これは死の判定というような問題もございまして、国民の多様な価値観に深くかかわっている問題でございます。宗教とか哲学とか社会制度とか、いろいろと広範囲な議論を踏まえる必要があるわけでございまして、いろいろな場で多方面から検討を尽くしていただいて、そうした中からコンセンサスができていくということが重要なことではないかというふうに考えております。
#139
○草川委員 私は、この問題はこれで終わりますが、アメリカ政府の最近の動きなんかを見ておりますと、これは医療に限っておりますけれども、医療倫理に関する大統領委員会というようなものをつくりました。例のカレンちゃん事件というのですか、死の判定の問題とか死ぬ権利の問題、尊厳死の問題等で、倫理委員会というようなものがあるわけです。だから、これは医療に限りませんけれども、科学者の実験等については、一定の歯どめがいずれにしても必要な時代が早急に来る。というわけで私は、生命倫理の確立については、社会的なコンセンサスに基づくガイドラインをぜひ設定すべきだということを強く主張して、この問題は終わりたいと思いますから、ぜひそういう方向に科学技術庁として全体の方向づけをお願いしたい、こういうふうに思うわけです。二番目に、宇宙開発のことについてお伺いをいたします。
これも三月十六日でございますか、宇宙開発委員会が開かれまして、新しい計画が盛り込まれておるやに聞いておりますが、宇宙開発も、通信衛星あるいは放送衛星、気象観測、地球探査、それから、後でこれもお伺いをいたしますが、船舶航行等の広範な分野において人工衛星の利用が行われまして、天気予報等につきましてはわれわれの日常生活の中に溶け込んでおりまして、重要な役割りを果たしておるわけです。あるいはまた、アメリカのスペースシャトルの成功を初め、宇宙基地についての日本の役割り分担も出ておるようであります。それから、これも漏れ承れば、NASAの機構というものが、民間に転用というのですか、移譲されるというのですか、独立採算化するというようなことになってまいりまして、わが国に対する宇宙開発の利用についても相当なアプローチが予想されてくることになります。
そういうことになりますと、日本の独自の宇宙開発の体系にもいろいろな意味での、摩擦というのですか、問題点もこれから出てくると思うのでございますけれども、とりあえず、この三月十六日に宇宙開発委員会が開かれて、宇宙計画の見直しが行われて、新しい計画が盛り込まれておると思いますが、主なものは何か、お伺いをします。
#140
○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。三月十六日に見直されました宇宙開発計画につきまして、いま先生から御指摘ございました主な点につきまして、簡単に拾って御説明をさせていただきます。
宇宙開発計画の見直しを内容的に見ますと、一つには既定の計画どおりに進める事項、さらにもう一つは新しく追加した事項という、二つに分類ができるわけでございます。
既定の計画どおりに進める事項といたしましては、九号、十号、十一号というような科学衛星の打ち上げとか開発、あるいは五十八年度に予定しておりますところの第一次スペースラブ計画に参加して実施する、粒子加速装置を用いた宇宙科学実験、そのほか通信衛星二号b、放送衛星二号a並びにb、さらには静止気象衛星三号及び海洋観測衛星一号の打ち上げあるいは開発というようなものが主なものでございます。
新しく追加された事項といたしましては、まず、昭和六十二年度におきまして、HIロケット三段式試験機の性能確認を兼ねまして、静止三軸衛星バスについての基盤的な技術を確立いたしますとともに、将来の大型実用衛星の開発に必要な自主技術の蓄積を図りまして、さらに、あわせまして移動体通信実験を行うことを目的にした、技術試験衛星V型の開発に着手をいたします。さらに、その次は、昭和六十二年度と六十三年度にHIロケットを用いまして打ち上げる、静止軌道上重量約五百五十キログラムの大型通信衛星三号a並びにbの開発に着手をすること。また、ロケットにつきましては、HIロケットにつきまして、まず二段式の第一号試験機の試験打ち上げを昭和六十年度に行うことを目標に開発を進めます。そのほかさらに、その予備機としまして、その打ち上げが六十一年度に可能になるような開発にかかります。また、三段式試験機につきましては、昭和六十二年度ごろに打ち上げることを目標に開発を進める、かようになっております。
以上は開発に着手をする事項でございますが、そのほか開発研究ないし研究に取りかかるものもございます。大型の放送衛星であるBS3の開発研究のほか、スペースシャトルにわが国の技術者が搭乗しまして無重力、これは正確に言えば微小重力ということかもしれませんが、宇宙空間の特性を利用しました材料実験等を行うことを目的にしまして、第一次材料実験を昭和六十二年度ごろに実施する、さらにそのための実験システムの開発研究あるいは搭乗科学技術者の募集並びに選抜を当面行うというふうにしております。さらに、いま先生からお申し越しのございました、アメリカでは宇宙基地の計画の検討がなされておりますが、それへの参加についての検討をするための調査研究、さらには将来の大型人工衛星の打ち上げ需要に対処するためのHIロケットの性能向上というようなものが、今回の宇宙開発計画の見直しの主な点でございます。
#141
○草川委員 いま、たくさんのロケットの計画についてのお話がございましたけれども、余りたくさんのお話を聞きましても時間的に問題もございますが、これも新聞等で出ておりますけれども、六十一年の二月に予定をされます二段式の試験機の予備の方に、実験衛星の余裕があるので、ハム愛好家というのですか、民間のアマチュア無線の方々に利用していただくというのでございますけれども、果たしてこのようなことができるのかどうか、あるいはまた、民間と申しましても、どこかの財団が主催をして呼びかけをするのか、全国で十万人を超す愛好家の方々がどのように参加ができるのか、そのようなことも含めて検討をなされたのかどうか、お伺いしたいと思います。#142
○加藤(泰)政府委員 御説明申し上げます。ただいまのHIロケット二段式の試験機のペイロードの関係でございますが、このHIロケット二段式試験機は、高度約千五百キロメーターの円軌道に約一千三百五十キログラムのペイロードを打ち上げる能力を持っているものでございますが、そのペイロードとしましては、測地実験機能部のほかに、その余裕を利用しまして、ただいま先生からお話ございましたアマチュア衛星の打ち上げ等もこれに含まれているものでございます。なお、そのほかに、磁気軸受けフライホイールの浮上実験というようなことも、その一環として行うという計画がございます。
そこで、そのアマチュア衛星の関係でございますが、これはもともとは複数衛星の打ち上げに関する基礎実験として考えているものでございまして、将来ロケットの打ち上げ能力がたんだん大きくなってまいりましょうが、必ずしも大きな一つの衛星を打ち上げるということばかりじゃございませんで、複数の小さな衛星を組み合わせて打ち上げるということも海外ではすでに行われておりますし、日本の国におきましても早急にその技術を取得する必要があると、かように考えているわけでございます。
そういった意味におきまして、今回のこのペイロードの利用の一環としましては、一つには測地実験機能部、これは地上からのレーザー測定とか写真撮影によって測地実験が行えるようにしました、直径約二・一五メーターの構体に太陽光とかレーザーの反射体を装置したものでございますが、このような測地実験機能部のほかに、これは日本アマチュア無線連盟が設計、製作いたしました約五十キログラムのアマチュア衛星を、同時に切り離しながら打ち上げていきたい、かような計画になっているわけでございます。
このアマチュア衛星のいわば申し込みの主体は、いま申しましたように日本アマチュア無線連盟として星をおつくりになりまして、これが宇宙開発事業団の方に持ち込まれまして、複数打ち上げの技術の取得という意味において共同的にこれを行っていく、そういった意味でございます。
#143
○草川委員 いまの予備機でアマチュア衛星について連盟でやるということについては、現実化の中で補助をどうするのかとかいろいろな問題が出てくると思うので、また別の機会にお伺いをします。実は、NIIロケットが六十一年には海洋観測衛星で一つ打ち上がるわけです。これも極軌道で回るわけですが、これは海の色だとか潮の流れだとか温度あるいは赤外線で可視というのですか、センサーで魚群を見るというような意味では、非常に期待をされている衛星が六十一年には打ち上がるわけでありますし、六十二年にはいまも御答弁がございました静止衛星が、八月にV型として技術試験衛星というのが三軸制御で上がるわけです。問題は、これに余力があるので、少し通信中継器だとか事故の連絡の器材というのを積んで船の航行援助をしよう、小型船舶の通信ミッションを載せようという計画があるやにお伺いをするわけであります。航行援助ということは、当然のことながらシーレーン防衛等にもこれが利用されるのかどうかわかりませんけれども、非常に私どもも関心を持っておるわけです。
また、これは全然別な話でございますけれども、ちょっと外務省にお伺いをいたします。
日本の原子力発電所から出たプルトニウムをフランスで再処理をお願いをして、海上輸送で日本に持ってくるという話があるわけであります。そのような計画があるのですけれども、いわゆる核ジャックなどを防止をするために商船用の海事衛星インマルサットを使って、これは郵政省の管轄になるのですけれども、常時監視をすることが日米間で話し合われた、こういうニュースもあるわけであります。星を使って航行援助ということは、私どもも少し勉強しなければいかぬと思うわけでありますが、このプルトニウムの海上輸送について日米の原子力協定に基づいて、日米間でどのような話が行われたのか、まずお伺いをしたいと思います。
#144
○岩崎説明員 外務省の原子力課長でございますが、ただいまの先生の御質問にお答え申し上げたいと思います。このプルトニウムは、アメリカで濃縮いたしましたウランからつくられたものでございますので、それを移転することにつきましては、アメリカが許可権限を持っておるわけでございます。この場合は、プルトニウムにいたしましたヨーロッパ、すなわちフランスでございますが、そこのユーラトムとアメリカとの間の原子力協力協定に基づきまして、ユーラトムがアメリカの許可を取りつけた上で管轄外に移転することになっておるわけでございます。
アメリカといたしましては、アメリカの議会に対する説明その他の国内手続上、この許可をおろしますにつきまして、そのプルトニウムを実際にどういう輸送方法で運ぶのか、それから先生の御指摘のございました核ジャック等の問題、すなわち核物質防護の問題でございますが、こういった問題につきまして、どういう措置を準備して移送するのかということにつきまして十分な情報が欲しい。そういう情報の検討に基づいて許可するかどうかを決めたい、こういう立場をとっておるわけでございます。
実際にこのプルトニウムを輸送する責任を負いますユーラトム、それからプルトニウムの持ち主と申しますか、それを受け取る日本も、このプルトニウムをどういうふうに安全に輸送するかということにつきましては大変な関心を持っておりますので、いかに安全にそれを輸送するかということにつきましては、当事者がそれぞれ協議をいたしまして真剣に検討をしておるわけでございます。その過程で、先生の御指摘のございました海事衛星を使っての衛星の利用ということも検討されておりますが、これは日米間で合意をしなければそういう衛星が使えないという性質のものではございません。そういった衛星の利用を含めてアメリカに説明して、許可がおりやすいようにしようという方向で努力しているわけでございますす。
なお、日米間の原子力協力協定との関係で申しますと、この物資の移転につきましてはアメリカとユーラトムとの間の協定でカバーされておりまして、日米間の協定上は直接の関係はございません。
以上でございます。
#145
○草川委員 じゃもう一つ質問をしますが、一部の報道で、アメリカの軍事衛星を利用して宇宙から監視をするという報道がありますが、それはどうなんでしょう。その事実はありや否やということをお伺いします。#146
○高岡政府委員 お答え申し上げます。フランスからのプルトニウムの国際輸送につきましては、いま外務省から御答弁がございましたような手続で進んでおるわけでございまして、プルトニウムの量にいたしまして約百キロという、プルトニウムとしましてはかなり大きな量でございます。でございますから、日本はもちろんでございますが供給国、プルトニウムのもとになった濃縮ウランを供給しましたアメリカとしても非常な関心を持っておりまして、核物質防護、安全確保のための物の盗難防止ということについての具体的な内容をどうするかということの話し合いを進めておるわけでございます。
その一つの方法といたしまして、まだ結論を得ておるわけではございませんけれども、アルゴス・システムという、これはノアという気象観測衛星がございますが、その衛星を利用しまして船の位置でありますとかその他の必要な情報を把握しようという案が一つございます。
もう一つは、現在日米の間で検討中のといいますか、技術的な開発の段階でございますが、トランシーバー計画というのがございます。これは、インマルサットの静止通信衛星を利用いたしまして同じ目的を果たそうということでございます。アルゴス・システムを使います場合には、船の位置その他の確認は六時間に一回しかできない、そういう制約があるわけでございますが、トランシーバー・システムが利用できればもっと頻度高くその監視ができるということでございます。でございますけれども、これにつきましては先ほど申し上げましたように、いますぐ利用できるという状況になっておらないものでございますので、これを付随的に、ある意味では試験的に採用するということを話し合いの中で検討しているという状況でございます。
#147
○草川委員 航行援助衛星システムというものに、いまのお話等を引用いたしましても、これから相当この衛星を利用することになると思うのですね。インマルサットの海事衛星を使う方法、あるいはまたいまのお話のようにアルゴス・システムというのですか、回転する極軌道型の衛星を利用する、いろいろな方法をとっていくことになりますと当然――きょうは時間がありませんので、せっかく通産省来ておられますけれども、これは通産省の方も将来、六十三年からぐらいをねらって資源探査衛星というものを開発されるような計画があるわけであります。衛星ですから、それぞれの目的がございますけれども、そんなにたくさん打ち上げるというわけにはまいりません。そこで、当然のことながら私どもが非常に思いますのは、与党の自民党の方々が昨年の六月に、監視衛星というものを開発をしたらどうだろう、これは宇宙の平和利用という限界があるのだけれども、憲法の範囲内で防衛目的に使用できるように考えたらどうかというお話があるやにお伺いをするわけでございます。そしてまた、つい最近アジア調査会で防衛庁の岩島防衛研究室長が、いまお話がございました核ジャックという問題もあり、大国の介入ということも考えなければいけないのではないだろうかとか、あるいは軍事戦略問題等について衛星の情報探知、伝達能力の飛躍的な向上というものをやはり評価をすべきではないだろうか、宇宙的な視野で軍事戦略も考えたらどうだろうというようなお話も出ておるわけでございまして、非常に私どもも将来の問題としては興味を持っておるわけです。
そこで、まず科学技術庁に、与党の方々から軍事衛星を打ち上げたいという提案があったときに、それなりの提言についてのコメントを六月の四日に出されております。この中で、衛星を防衛目的に利用する点については、今後の政治レベルでの検討課題として提言されたものと理解をするというコメントがあるわけでありますが、この点をいま少し解説をしていただきたいと思うのです。
#148
○加藤(泰)政府委員 ただいまの提言に関する件でございますが、わが国の宇宙開発につきましては、まず、御存じのように宇宙開発事業団法におきまして、同法でその業務を平和の目的に限るべきことということが定められておりますし、また、わが国の宇宙開発は平和の目的に限るべきであるという両院の御決議もあるわけでございます。政府としましては、事業団法並びに国会の決議に沿いまして、平和の目的に徹して宇宙開発を進めているというその基本線に変わりはございません。ただいまの衛星の防衛利用に関する提言でございますが、これは先ほど先生おっしゃいましたように、われわれはこれに対しましては、むしろ行政庁のレベルというよりも、今後の政治レベルでの御検討の課題として自民党が御提言になったものというぐあいに解釈をしている、そういうことでございます。
#149
○草川委員 防衛庁にお伺いをいたします。もちろん、基本原則はそれで結構でございますけれども、現実に偵察衛星というものが有力な情報収集手段の一つであるというように認識をされておるのかどうか、あるいはまた、専守防衛を旨とする自衛隊として、この偵察衛星についてどのような考え方を持っておみえになるのか、その点についてまずお伺いをしたいと思います。
#150
○松村説明員 偵察衛星は、先生御指摘のとおり、有力な情報収集手段の一つであるというふうに認識しております。また、各種情報機能の充実が専守防衛を旨とするわが国の防衛にとってきわめて重要であるところから、これに関心を有しているところでございます。しかし、現在のところ、その保有についての構想ないし計画は持っておりません。#151
○草川委員 保有についての構想は持っていないということは予算上からも十分わかるわけでございますが、たとえばアメリカ側が日本近海の海域を対象とした海洋偵察衛星を打ち上げた場合、あるいはまた、すでにある星を利用して日米間で共同の監視システムというようなものをつくるということは現実にはあり得るのではないだろうか。特にいま、海峡封鎖等をめぐる問題が今度の国会でも問題になっておるわけでありますし、航路帯、シーレーンの防衛で日米の小委員会が持たれているわけでございますが、当然のことながら防衛コストという面からも、日米共同で星を使って監視システムというようなものをつくりたいという話はあるのではないかと思うのですが、その点はどうですか。#152
○松村説明員 ただいまの海洋偵察衛星を米国側が打ち上げた場合日本側がこれを利用するか、また、日米共同で偵察衛星を打ち上げるというふうなことについての問題でございますけれども、現在、先ほども申し上げましたように、わが国といたしまして関心を有して各国の利用の動向についても注意深く見守っておりまして、関心は持っておりますが、現在、米国が打ち上げた衛星の共同利用または日米共同による共同利用といったものについては、具体的な構想ないし計画は有しておりません。#153
○草川委員 現在の話ですが、将来の可能性というのは現実的にあるのでしょうか。#154
○松村説明員 現時点では答弁いたしかねるのでございます。#155
○草川委員 じゃ、きょうは科学技術委員会でございますし、宇宙開発についての基本原則があるわけでございますし、そのような中で私どもも問題提起をしておるわけでございますから、偵察衛星等につきましてはこの程度で終わっておきたいというふうに思います。いずれにいたしましても、経団連なんかもいろんな研究等を出しておりまして、専守防衛の基本線に偵察衛星は抵触するものではないのではないかという問題提起もしておみえになるわけです。私も、平和の目的に限り、学術の進歩あるいは国民生活の向上及び人類社会の福祉を図りという基本原則であり、あるいは宇宙開発事業団法の平和の目的に限るというその言葉は非常に大切な言葉でございますけれども、これを平和の目的に限るということを読みかえる時期が来るのではないだろうかという感じもするわけでございまして、また、現実に日本の船舶の航行ということならば、いまもお話がございましたように、ずいぶん星を利用する方法で海上保安庁なら海上保安庁の受け皿を通じて情報収集ということになるならば、それは果たしてどうなのかという問題もあるわけであります。
いまから衛星の使い方等についてはいろんな議論をしておいた方が、私は日本の将来のためにも間違いが少なくなるのではないだろうかという、こういう趣旨を一面的には持っておるわけでございまして、ぜひ星の使い方あるいは衛星の利用の仕方、そしてまた、核ジャックというような予想をすることは愚かなことではございますけれども、現実に国際的にも議論になっておるわけでありますから、そのような対応はこの委員会等においても十分議論をしたいという気を持っておるものの一人であります。時間が大分来たようでございますから、宇宙関係はこれで終わります。
最後になりますが、電源開発促進税法の一部を改正する法律案が出ておるわけでございまして、促進税の問題の根本的な長期エネルギーの需給見通しが果たして適当であったかどうかということの議論を最後にしたいと思うのです。
その前に、電事連の会長の平岩さんが、ことしになりまして、四年前に事故を起こしたアメリカのスリーマイル島の原子力発電所の修理作業に対して、日本の電力業界としてある程度の資金協力を検討するという考え方を表明されたようでございます。そしてまた、二月の下旬に日米の業界首脳による会議等もあったようでございまして、いろいろとアメリカ側の方は、非公式ながら五千万ドル分の分担を求めておるというような話があるわけでございますが、その点についての経過が通産省の方でわかればお答え願いたいと思います。
#156
○高沢説明員 御指摘のスリーマイル・アイランドの事故に関連しましては、昨年の四月でございますが、米国の電力業界からわが国の電力業界に対しまして、TMI原子力発電所の除染に関する研究開発計画への参加及び除染作業への協力要請がございました。わが国電力業界は、除染作業そのものは米国の問題であるということで辞退する旨、一たん回答をしてございます。しかしながら、その後米国側から再度わが国電力業界に対しまして、除染に関する研究開発計画への参加に関しまして強い要請がございました。わが国電力業界といたしましても、同計画に参加することによりまして、除染に関する研究開発関係の情報の収集に役立つかもしれないということも考えまして、改めて協力の可能性について現在慎重に検討していると聞いております。#157
○草川委員 情報と引きかえ料としてある程度の資金協力をするということを電力業界だけでできるものかどうか、あるいは、これは電力業界の内部の問題に果たしてなるのかどうか、非常に私どもも議論をしたいところなんですね。これは業界の話とはいいますものの、通産省も相当な連絡をされてやっておみえになると思うのでございますけれども、勉強料として費用を持つというあり方がいいのかどうか、あるいはまた、全然別の形でお互いに協力をすべきなら協力をすべきだろうか、そのコストは一体電力料金にはね返るのかどうか、あるいは剰余金の中から出すのか、あるいは、いま問題になりますところの電源開発の促進の勘定の中から出すのか、いろいろな問題が出てくるわけでございますが、いわゆる立地勘定ということにはならなくて、電源多様化勘定の中から出るのか、あるいは電力会社の研究費の中から出るのか、その点についての考え方は何かあったのでしょうか。#158
○高沢説明員 現段階では、米国側からの研究開発計画への参加条件等の詳細はまだ必ずしも明らかでございません。そういうことで現在、米国側と電力業界とが話し合っている最中でございます。それから、本件の取り扱いについてでございますが、これにつきましては、電力業界が仮に参加を決めました場合には、参加を決めた段階で、電力業界よりその参加形態、内容等、詳細に聴取をした上で、その結果を踏まえて検討してまいりたい、そのように考えておるわけでございます。
#159
○草川委員 時間があと五分しかありませんから、電源開発促進対策の方へ行きますが、それのもとになりますのは長期エネルギーの需給見通しになるわけでございます。これは昭和四十二年でございますか、第一次の答申が電事審の方で出ましてから、部会報告を入れますと計五回の見直しになっております。この見通しも、単なる需給試算ではなくて、中長期のエネルギー供給の優先順位が決まってくるわけでございまして、非常に下方修正等ができ、あるいはまた、昨年の見直し等でも経済成長率を五%程度と見ておるわけでありますけれども、現実にはもっと低くなっておるわけです。これはいろいろな関連から、特別会計の方にもはね返ってくるわけでございますが、とりあえず見直し作業の進捗状況というもの、あるいは四月には出ると言われておりますけれども、改定時期はいつごろになるか、お伺いしたいと思います。#160
○雨貝説明員 長期エネルギー需給見通しにつきましては、現行のものは昨年の四月に策定されておりますけれども、最近の実勢を踏まえまして、この四月から点検の作業を総合エネルギー調査会にお願いしたいというふうに考えております。その取りまとめの最終的な仕上がりにつきましては、今後に予定されております経済審議会における長期経済計画の検討の進捗状況等を勘案して、広範な角度から慎重な検討が必要だと考えておりますが、できるだけ速やかにその作業が進められることを私どもとしては期待しておるところでございます。#161
○草川委員 大蔵省の方もせっかくお見えになっておられますので、今回の電源開発促進税法の一部を改正する法律案で三百円を四百四十五円に引き上げることになったのでございますが、当初の通産の原案、いわゆる値上げ案というのは幾らであったのか、あるいは大蔵として通産の値上げ案を値切るというと言葉は悪いのですけれども、このような四円四十五銭にした経過というものを大蔵の方からお伺いしたいと思います。#162
○渡辺説明員 電源開発促進特別会計法の実質的な歳出の中身を担当しております通産省でございますが、私どもが昨年の夏の段階で大蔵省の方にお願いいたしましたのは、千キロワットアワー当たりにつきまして百六十五円の引き上げをお願いしたわけでございます。その後、年末の具体的な予算編成になるまでの期間に幾つかの、夏に予想をしました事情も変わりましたし、新しい事情に応じた私どものいろいろな数字の見直しも行ったわけでございます。その結果、最終的には百四十五円の引き上げで十分であろうということで予算が編成されたものでございます。#163
○草川委員 それで大丈夫だと言われるのですけれども、いまのように計画も経済成長率を五%と見ておりますし、それからその他の電力需要の伸び率も四・三%と昨年の伸び率を見ておるわけでございますが、昨今の事情等を考えますと、電力需給計画も現実には非常に下がってきておるわけでございます。いろいろな点を考えてまいりまして、出る金が大きいから特別会計の値上げということになるわけでありますけれども、油の値段が下がり、電力料金を下げろというような一面的な要求もありまして、電力会社の方としてもこれは痛しかゆしの感じになっておるのではないか、こう思うわけであります。そのようなことも含めて、大蔵省の方は、この税制を一体どのように将来持っていかれるのか。私は本来は、きょう時間があれば従来どおり、お金の使い方に地域的にずいぶん問題があるということを申し上げようと思ったのですが、時間がございませんのできょうは避けますが、せっかくお見えになっておりますので、大蔵省の見解を賜っておきたいと思います。
#164
○伊藤説明員 お答えを申し上げます。今回、改正案で御審議をお願いしております百四十五円の税率改定につきましては、先ほど通産省の方から御説明ございましたように、この案を決めるにつきましては関係者とも十分相談をいたしまして、可能な限り長くもつような、かつ、当面必要最小限の事業が確実に実行できるようなという観点で決めたものでございます。
具体的に何年ということは、確定的に申し上げるのは非常にむずかしゅうございますけれども、当面、現行の施策水準を維持するという観点から必要にして十分といいましょうか、必要最小限のものの改定をお願いしておるということでございます。
#165
○草川委員 時間が来たのでこれで終わりたいと思いますが、ひとつ、ぜひこの電源開発促進税の問題等につきましては、また別の委員会でもございますので、本来の日本の長期のエネルギー計画というものが安定した形で行われるよう要求をしておきたいというふうに思います。以上で終わります。
〔岸田委員長代理退席、保利委員長代理着席〕
#166
○保利委員長代理 吉田之久君。#167
○吉田委員 初めに長官にお伺いをいたしたいのでございますけれども、わが国における原子力発電、これはかなりむずかしい条件があったにもかかわらず、お互いの努力によりましてここまで進展してきておりますことは、大変喜ばしいことであります。そして、すでにわが国の電力の供給の上で原子力発電は、かなり重要な役割りを果たしてきておるわけであります。しかし、ここに来て現在一番悩ましい問題は、その廃棄物の処理の問題であります。俗に、トイレなきマンションだとさえ言われているこの現状にかんがみまして、今後政府としてさらに積極的な対応を迫っていただかなければならないと思うのです。その点につきまして、長官のひとつ決意と申しますか、やる気のほどをお示しいただきたいと思います。
#168
○安田国務大臣 いまお話しのとおりに、三十八年に初めて原子炉の灯がともりました。自来今日まで、わが国としましては二十四基、六軒に一軒が原子炉の明かりをともしておる。ここまで参りましたたゆまない努力と申しますか、私たちは顧みて本当にみんな勉強しましたし、同時にまた、地元の御協力をいただきましたし、今日までの成果の理解というものは、私どもは心から感謝いたしておるわけであります。しかし、エネルギー供給源の構造の面、これからとらえてみますると、先生御存じのとおり、いま油価の問題、量の問題、いろいろありますけれども、長期的展望に立っては、どうしてもわれわれは原子力供給構造というものを等閑視することはできない。こういう中において、幾つかの問題を抱えておる中のその一つが廃棄物の処理の問題。これにつきましては、先生御存じのとおり、先般のロンドン条約のあの会議の問題、あれもああいう決着になりました。しかし、避けて通れない問題でありますから、わが国としては、若干の時間的猶予はございますけれども、この処置につきましては、陸で処分するか、海洋投棄で処分するか、このいずれかを選択せざるを得ないわけであります。
いよいよ私たちの研究成果も実りまして、海洋も陸上もこれでおおむねいけるだろう、こういうところまで参ったのが現時点であります。これからはひとつ国際的な場で、御了解を得られる措置をいかにこれ対応するか、陸の問題につきましてどう対応するか、こういうことで本当に真剣にこの問題に今後とも取り組む、こういう決意を申し上げたいと思います。
#169
○吉田委員 長官の強い決意に敬意を表します。同時に、長官がお話のとおり、海洋処分あるいは陸上処分、いろいろ方針は決まっておりますけれども、まだ確たるめどが確立している現状にはないと思います。いま、長官自身がお話しくださいましたとおり、過日のロンドン条約におきましても、スペインを初めとする国々が、ここ当分の間さらに科学的な研究グループを設置して検討を行い、その結論が出るまでは、海洋投棄については一時停止するようにという提案をいたしまして、これが可決されております。実は、いま最も私たちが海洋投棄の面で心を砕いてきているときに、こういう国際的な逆の反応が生じておりますことは、なかなかに容易ならぬものがあると思うわけなんです。
つきましては、今度のロンドン条約のこの決議の経過につきまして、政府として知り得ておられる背景と申しますか、その辺、いきさつについて御説明をいただきたい。
〔保利委員長代理退席、委員長着席〕
同時に、今後こうした国際条約に基づくいろんな関係各国との提携あるいは調整、あるいは理解を求める交渉、こういう点をどのように進めていかれるか、その辺もあわせてお聞かせいただきたいと思います。
#170
○赤羽(信)政府委員 ロンドン条約と申しておりますが、これは海洋にいろいろ廃棄物を捨てては海洋汚染が深まる、それをとめようということで、たとえば水銀等の汚染の激しいものを禁止するという経過でできたものだと思われます。そして、その中には、海洋投棄を禁止しているものがまず挙げられておりまして、たとえば水銀の化合物とか、放射性物質につきましても高レベルのものというのが禁止されております。その次に、厳重に管理しながら捨てればよいものという項目に、低レベルの放射性廃棄物が挙げられているわけでございます。無制限に高レベルのものを捨てないようにというのが、このロンドン条約発足のときの趣旨であったと思われます。
ところが、ヨーロッパにおきましては、すでに二十年以上にわたりまして投棄が行われておりまして、これはOECDの機構のもとで共同監視のもとで行われてきたわけでございます。一部には環境派等の反対がありましたけれども、まあ円滑に投棄が毎年進んできたという事情であったわけでございます。
わが国は、おくればせながら、しかしわが国の立場、それから近隣の諸国の立場を考えまして、漁業に与える影響等を勘案して非常に慎重に考えてまいりまして、陸上でのかなりの実験等も経まして、いよいよ海洋投棄に移ろうと考えたわけでございます。そして、安全評価を行い、しかもいきなり本格的投棄に移らずに、まず試験投棄を行って確かめた上で本格的投棄に移ろう、投棄地点も国際機関で決められております諸条件を満たし、かつ、漁業の邪魔にもならないという場所を選びまして、試験投棄から入ろうという計画を立てたわけでございますが、先生御承知のとおり、南方の各国から反対が出されまして、この方々の納得を得た上で行おうということで努力してきたわけでございます。
ところが、南方の各国の中で、ロンドン条約に加盟しておりますキリバス、ナウルが代表格という形で、毎年行われますロンドン条約の締約国の会議に全面禁止をすべきだという提案を持ち込んだわけでございます。この会議が二月十四日から十八日までロンドンで行われたわけでございますが、各国、意見が非常にたくさんございまして、キリバス、ナウルのような禁止案から、かなり厳しい、禁止に近い案を出した国としては北欧の五カ国がございました。一方では、すでに投棄を行っておりますイギリス等、それから今後投棄をしようと考えております日本あるいはアメリカ等、それからその中間に立ちまして、利害関係はそうないけれども、科学的に進めるべきだという意見等、非常にたくさんの意見が出たわけでございます。
しかし、最初の案は、現在施行されております案は、科学的な検討の結果出たものでございますので、これを変えるには相当の科学的検討をすべきではないかという意見が優勢を占めまして、それに加えてスペインが、科学的検討をする間は投棄をすべきでないという決議案を出しました。これが多数の賛成を得て決議されたという事情にあるわけでございます。
今後、わが国といたしましては、まず科学的検討に積極的に参加していきたいと思っております。と申しますのは、各国以上にわが国は、陸上においてあるいは海においてたくさんの実験等のデータを持っております。これをこの専門家会議に専門家の出席を通して提出することによりまして、科学的な安全性を十分認識してもらうということが第一かと思われます。
特に、わが国の考えといたしまして、海へ捨てるのだというのではなくて、安定した深い海に捨てることが人間社会から隔離する最も確実な方法なんだという認識を科学的な検討の結果持っておりますので、これを十分納得していただいて、仮にムード的な意味の環境運動に遭いましても、そういう方にも御迷惑をかけないということをよく説明してまいりたいと思います。しかし、そういうムード的な反対というのもございますので、そういう方々に対しましては、科学的のみならず、わが国の誠意をいろいろな形で披瀝しながら理解を求めるという仕事も、並行的に進めなければならないと考えております。
#171
○吉田委員 確かに、理念的な反対とかあるいは利害関係的な立場からの反対とか、いろいろな要素があると思うのですが、特に私どもが気になりますのは、ニュージーランドとかフィリピンとかパプア・ニューギニアとか、そういう今後関係を持つべき諸国がことごとく海洋投棄に反対の立場に回っている、今度の決議に賛成の立場に回っていらっしゃるという点、やはりわが国としても今後一層いろいろな配慮、努力がなされなければならないと思うのです。いまの説明では、科学的な説明を日本が主導的にやっていく自信のほどを示すお話がありましたけれども、いままでそういう努力をなさったのかどうか、この点も気になるところでございます。同時に、こういう決議は法的な拘束力を持っているのかどうか。ないと聞いておりますけれども、そういう点で、場合によっては無視できるのかどうか。イギリスは、こういう決議のあるなしにかかわらず実施するのだと言い張っていると聞いておりますけれども、この辺のわが国の覚悟はいかがでございますか。
それから、相なるべくは、いまお話しのとおり、できるだけ科学的な検討を深めるために、日本もそのリーダーシップをとって努力すべきだと思いますけれども、結論を出すには一定の期間が要ります。しかし、また同時に、われわれとして限られた期間の限界というものもあると思うのです。五年でも十年でも待てる問題ではないと思います。この辺のところをどうお考えでございますか。
#172
○赤羽(信)政府委員 御指摘のように、形式的には法的拘束力はない、単なる決議案のようでございます。本格的に拘束力を待たせるには、条約そのもの、これは附属書に書いてあるわけですが、その附属書を改定しなければならないということで、拘束力はない。イギリス等もこれに束縛されないということを、会議の席上、コメントしているようでございます。しかしながら、かなり多数の同意によって、賛成によってつくられた決議案でございますから、これに逆らうのは、今後のまじめな説得のためにも得策ではないのではないかと思われます。一方、わが国も、OECDの中のNEAという相互監視機構がございますが、そこへ加盟して投棄をするわけでございますが、ここのルールによりまして、「初めての投棄には一年前に通告して内容の審査を受ける。」という条項がございます。
そういうことをいろいろ考えますと、これから実験投棄をしようとしましても、そうすぐにできるわけではございませんので、あえて法的拘束力を受けないと宣言をする必要もないかと思われまして、形式的にその権利は留保しなければなりませんけれども、会議の席上では、あえて日本は発言しないでまいりました。そういう状況でございます。
それから、科学的検討の期間は、この議論がされている過程におきましては、二年ぐらいあるいは締約国会議の次の次の会議あたり、一年ないし一年半ごとに行われますので、二、三年後という案も出たようでございますが、最後の決議案にはそれが載っておりません。しかし、大方の気持ちとしましては、二年ぐらいで結論を得たいという雰囲気のようでございますので、わが国も積極的に協力しながら、できるだけ早く結論を得られるように協力していきたいと考えております。
#173
○吉田委員 なぜ、その会議において積極的に発言しなかったのか、その辺が私どもの気になるところでありますけれども、ただ気を使い過ぎて黙っているだけでは、問題は解決しないような気がするわけなんです。西ドイツもそうでありますけれども、特に核燃料サイクルでいろいろ深いかかわりを持っておりますフランスあたりが棄権に回っている。当然、日本はこの辺の国々とは、もっと事前にいろいろ協議をしておいてしかるべきであったのではないかというような気がいたします。今後積極的に、この会議の中で、リードした発言や行動をしていくべき立場にあると思うわけなんでございますけれども、その際、その代表者はだれなのか、あるいは外務省と科学技術庁との連絡、そういうものがこの点でどのように緊密に図っていかれるのか、ちょっとその辺のところも気になります。また、南太平洋諸国とのこの問題に対する会議、別な会議等を持つ計画は日本にあるのかないのか、この問題についてそういう対応策も講じようとしているのか、ついでに承っておきます。
#174
○赤羽(信)政府委員 現在、科学的検討の具体的なやり方はまだ協議中でございまして、固まらないものですから、わが方もどういう形で対応するか決まっておりません。しかし、原則は専門家ということでございますので、わが方もいままでの安全評価、実験等にかかわってくださった専門家の非常に厚い層がございますので、そういう方々のうちから出ていただく。しかも、そういう方々は、単に科学的問題だけではなくて、廃棄物問題全般への深い認識をお持ちの方がたくさんおられますので、その方々にお願いしたいと考えております。行政ベースと申しますか、外務省、科学技術庁、これは当然各国間の協議が別途あると思われますので、そういう協議を表からする。それから、御指摘のように、関係深い国と裏の方でも意思を疎通しながら進めていく。今度の会議でも、かなり大きい代表団を派遣しまして各国と調整をしたのでございますけれども、それぞれの国、まさに先生御指摘のように、フランス、西ドイツというように微妙に立場が少しずつ違いまして、先進国グループというような一つのまとまったグループになり得なかったということは残念でございましたけれども、しかし、そういう裏の交渉を通しまして、かなりの相互理解が深まり、かつわが国としましても、そういう国が将来何を考えているかという形が少しずつわかってまいりましたので、今後それを生かして、さらに積極的に理解を求める折衝をしてまいりたいと思っております。
南方の国々とは、今度の事の起こりからしましても、この科学的結論がついた後で、正式には話し合いを始めるのがよろしいかと思われますが、その間にもいろいろな接触がございましょうし、また、ほかの関係も起きてまいると思われますので、そういう機会を通じまして理解を求める努力をしてまいりたいと思います。
#175
○吉田委員 エキスパートグループの人選とか、あるいはそういう人たちが今後展開していくべき研究や、理解を求めるそういう交渉の進める方針であるとか、その辺のところを、特に政府もこれを一つの出発点として、積極的な対応を迫られるよう強く要望いたしておく次第でございます。海洋処分の方は、いま申しましたような一つの問題が生起いたしてまいりましたけれども、同時に陸地処分の方でございます。これは、同時並行的に進めているのだと先ほど長官からのお話もありましたけれども、私どもの目から見て、この陸地処分に対する安全評価手法の整備とかあるいは試験研究等が、一向にはかどっているようにはどうも思えないわけでございます。そういう点で、まず陸地処分の仕方について、時間もありませんのでいろいろ経過を聞きたいところは省略いたしますけれども、特に集中方式でできるだけ数カ所に集中して処分していこうとする考えなのか、あるいは、日本に発電所が海岸線に広がって各所に分散している現状でありますので、それに見合うようにできるだけ日本の各地にそういう陸上処理の設備というものをつくっていこうとするのか、その辺の考え方はお聞かせいただけますか。
#176
○高岡政府委員 お答え申し上げます。陸地処分につきましては、先生御指摘のように、陸地処分をいたしました場合の安全評価手法の確立ということで、いろいろな試験研究を積み重ねてきております。私どもといたしましては、そう遠くない将来に、技術的には安全確保を十分図りながら処分が実現できるというふうに考えておりますけれども、先ほどお話のありました海洋投棄につきましても、関係国の間でいろいろな議論があるところでございます。ましてや、国内で陸地処分をする――処分と申しますのは、当然でございますけれども管理の外に置くということでございますから、言うなれば環境に放出するということでございますので、非常に慎重を要することは当然でございます。そういう観点で、科学的、技術的に安全ではあっても、一般公衆の理解を得るということはそう容易ではないというふうに判断せざるを得ないと思います。
この面についても、今後努力を要すると思っておりますけれども、一方で、いま先生のお話の中に出ておりました、私どもは施設貯蔵と称しておりますけれども、現在原子力発電所の運転に関連しまして、低レベルの廃棄物が四十二、三万本という大量といいますか、それだけの量がたまっております。これにつきましては安全に貯蔵ができておるということで、安全上の問題はないわけでございますけれども、長期的には放置できない。やたらにサイト内の貯蔵施設を増設するということも得策でないということもございますので、原子力発電所のサイト外で集中的にかなりまとまった量を貯蔵する。一つの考え方としまして、たとえば三十年とかそれ以上の期間長期貯蔵をする、その間は厳重な監視の対象にするということで対応するのが現実的ではないかという考えがございます。
でございますので、そういう考え方に基づきまして、そのための安全規制をどうしたらいいのか。その前提として、施設貯蔵といいますけれども、具体的にどういう施設貯蔵の態様になるのかといったこと、それからその貯蔵のサイトにいたしましても、周辺の公衆の理解を得る必要がございます。そのための方策をどうするかといった各般の問題がいろいろございまして、現在、原子力局に専門家の参加を得まして、去年の末ぐらいから具体策の検討をやってもらっております。その結果がそう遠からず出てまいろうかと思いますが、その結果に基づきまして、具体的にこの施設貯蔵ということを進めるための施策を考えたいということでございます。
#177
○吉田委員 いまお話がありましたとおり、昭和五十七年三月末現在で、二百リットルのドラム缶に換算して約四十一万本、それだけの累積量がある。そのままの想定でいきますと、昭和六十五年には百十万本になる。昭和七十五年には百八十万本になる。その間、いろいろ技術的に、コンパクトに圧縮する方法もさらに進められると思います。そこで私が申し上げたいのは、これはなかなか容易ならぬ量ではありますけれども、現に三十万、四十万がサイトの中に一応は隔離して、管理下に置いてはあるわけなんです。それの少し拡大した観念で、ただ処分するというのではなしに、隔離された環境の中に置く、そういう発想で問題を解決していくこともあり得るのではないか。フランスのラマンシュ処分場のことにつきましても、きのう、フランスの国会議員と話し合いをいたしておりましたら、処分場とは呼ばないでくれ、われわれはこれは半永久的な保管をしているのだ。そういう発想と申しますか、あるいはそういうニュアンスが伝える国民への安心感と申しますか、もちろん、そういう中で合意を図るべく一層慎重な対処が必要だと思うのです。何かやはりそういう角度から問題をとらえながら、そしてできるだけふさわしい場所を選んで、それを山の上に置くのか、谷の底の方に置いておくのか、あるいはどの程度地中深く埋めるのか、いろいろやはり具体的な計画と申しますか、そういう皆さん方の発想をそろそろ提示していただいてもいいのではないかというふうに思います。
私、この四十分、時間でちょっと退席しなければならない用事が生じました。労働省の方から、せっかく来ていただいておりますので、放射能防護服を改善しろという一連の要求もあるようでありますけれども、この辺のことにつきまして労働省としてどのように対処しておられるか、それだけを承りましてきょうの私の質問を終わりまして、また機会を見てお尋ねいたしたいと思います。
#178
○福渡説明員 お答えいたします。放射線防護服は、現在原子力発電所の中で使われているものでございますけれども、原発の中では身体や下着が放射性物質により汚染されることを防ぐために、汚染防護用の保護衣類として着用して作業するということになっております。そしてまた、このような保護衣類を着用して作業をする場合には、その人の体温が上昇する、こういうようなことも実験的に報告されていることは承知をしております。それで私どもとしましては、このような状況を正確に把握することがまず第一でございますけれども、現在まで承知をしているところでは、このような保護衣類を着用して作業をする場所は非常に限られているところである。汚染のおそれのある区域においては、水を用いた除染作業というようになっているように聞いております。
私どもも電力会社等と一緒に指導していくことになりますが、保護衣類を着用する場合には、建屋内の換気あるいは冷房等をすることによって作業環境の温度を下げていく。それから、そういうことが困難な場合には、エアラインスーツといって空気を通しながら作業できる服があるわけですが、そういうようなものを使用するとか、作業そのものもできるだけ軽量化していく、軽作業化していく、あるいは作業時間の短縮を図るというようなことで対処していきたい。そういうことで、電力会社等に対する指導も進めていきたいというふうに考えております。
#179
○吉田委員 ありがとうございました。私の質問を終わります。#180
○永田委員長 山原健二郎君。#181
○山原委員 原子力発電所の安全性の確保の問題についてお伺いいたしたいと思います。ことしの二月二十五日に発生しましたアメリカのニュージャージー州セーラム原子力発電所の事故の経過、内容等について、現在どういう経過になっておるのか、どの程度つかんでおるのか、最初にお伺いいたします。
#182
○赤羽(信)政府委員 事の発端からその後の対策まで、アメリカの原子力規制委員会からざっとした情報を得ております。その要点をかいつまんで申し上げますと、ことしの二月二十五日にセーラム発電所の一号機、これは加圧水型でございますけれども、この一号機のプラントを起動させようとしたときに、定格出力の十数%まで上がったときでございますが、起動時には各パートのバランスをとりながら出力を上げていくわけでございますが、そのバランスが崩れたものと思われます。蒸気発生器の水位が異常に低くなったという信号が出たわけでございます。これが連動いたしまして、原子炉を急速に停止させる信号が出た。それは、普通ですとトリップ遮断器、大きなスイッチのようなものでございますが、これが切れることによって制御棒が落ちるという働きになっているところが、予備の一台を加えた二つともスイッチが切れなかった。そのために、運転員が手動で切ったというトラブルがあったということでございます。それに対しましてNRCは、直ちにこれと同型のウエスチングハウス社製の遮断器を使っております各発電所に対しまして指示を行いました。その指示は、一つは早急にトリップ遮断器の機能の健全性を確認すること、もう一つはウエスチソグハウス社が推薦しております保全の方法がございます、それにきちんと合った保全を行うようにというようなことを各電力会社に対して指示したわけでございます。その結果を報告するようにということで、大方トラブルがないという報告を受けたようでございます。
ただ一つ、その後サンオノフレ原子力発電所で停止中の二号機、三号機について遮断器のテストを行いました。これは、先ほどのウエスチングハウス社製とは違いまして、ゼネラル・エレクトリック社製でございますけれども、これがうまく動かなかったということがございまして、NRCとしましては同じような注意を各社に出したというのが現状でございます。
#183
○山原委員 少し細かく聞きたいのですが、要するに電気遮断器が作動しなかったということですね。それで結局、どういう場合に作動するのか、具体的なケースはどういう場合なんでしょうか。#184
○赤羽(信)政府委員 原子炉の働きが正常でなくなった場合、安全をとるために、かなりの場合につきまして原子炉は急速にとまるようにできております。たとえば、ただいまありましたように蒸気発生器の水が減ってしまって、原子炉の熱が十分取れないというようなときもそうでございますし、あるいはポンプが傷んで水の循環が悪くなったとか、どこか大きな漏れがあるとか、原子炉の正常な運転に影響がありそうな場合はすべて信号がここに送られまして、原子炉は急速に停止するという仕掛けになっているわけでございます。#185
○山原委員 冷却材の減少であるとかいうような、言うならばいまおっしゃったように非常に重大な場合ですね。重大な場合にこの事態が起こってくるわけでございまして、普通であれば原子炉の自動停止装置というのは、たとえば一つ働かなくても予備の回路があって作動して安全を保障するということになっておると思いますが、この場合はどういう状態であったのでしょうか。二重、三重の安全装置があるはずだと思いますが、それが二つとも作動しないということはどういうふうに判断をされておりますか。#186
○赤羽(信)政府委員 通常二つのスイッチ、ブレーカーでございますが、これが直列についております。したがいまして、どちらの一つが作動いたしましても電流は切れて磁石はとまり、制御棒は落ちることになっているわけでございます。したがいまして、二つともが動かないということは、確率的には非常に少ないわけでございます。今回、NRCが指摘しました原因としましては、ブレーカーに対する潤滑が不適当であった、あるいはごみ、夾雑物の払いのけが不十分であった、あるいは摩耗等材質の傷みがあった、その他細かいことを幾つか挙げまして、こういうことが複合的に起きたものという解釈をしております。したがいまして、点検をきちんとすれば二つともが動かないということはないわけでございますが、日ごろの整備が悪いと、両方ともが同じような悪い条件になっていて動かなかったというのが一つの解釈のようでございます。したがいまして、NRCは、日ごろの整備をしっかりやれというふうに指示を出しているわけでございます。
なお、今回、その後手動で外したということでございますが、原子炉をとめるべき異常が起きた信号は運転室の中ですぐ出ますし、アラームも鳴るわけでございますから、仮に作動が不十分でも手動ですぐとめられる。したがって、そのこと自身がすぐ大事に至る可能性を含んでいるとは言えないわけでございまして、さらに、もしそれがうまくいかなくても、次にとめる方法もいろいろ用意してあるわけでございますから、このことがすぐ危険につながるということではないと判断しております。
#187
○山原委員 私も、科学技術庁の方から図面をいただいて、一夜漬けでありますけれども見せていただいたのですが、このセーラム発電所の場合の回路は幾つあったのでしょうか。#188
○赤羽(信)政府委員 確認はしておりませんのですけれども、ただいま申し上げました直列につなぎました二つと、それと並列にもう一組、これは平時に試験をするために切りかえるわけでございます。したがいまして、ブレーカーの数としては四つがあったのではないか。さらにこれ以外のものもあったのか、そこはちょっと確認しておりません。#189
○山原委員 今回の場合は、運転員がランプで気がついて、三十秒後に手動で操作した、そして原子炉を停止させた、こういうふうになっておりますが、どうしてこんなことが起こるのか。何重もの装置が作動しなかった。もともとブレーカーは非常に敏感に反応するものであって、むしろ逆に誤って作動する場合が多いぐらいのものが反応を示さなかったということについては、ただ単に汚れがあったとか、あるいは腐食があったとか、手入れが足りなかったというようなこともあるかもしれませんが、それだけなのでしょうか。その辺は米側からどういう情報を得られておりますか。細かいようですけれども、伺っておきます。#190
○赤羽(信)政府委員 そういう観点からの詳しい報告はまだもらっておりませんけれども、NRCとしましては、先ほど申し上げました原因となる幾つかの点が重なって起きたものという判断をしておりますので、逆に申しますと、その点を十分保全していけばこういう問題は起きないというのが結論として出されていると思われます。#191
○山原委員 いま局長お話しになりましたように、アメリカNRC(米原子力規制委員会)は、二月二十五日夜事故が起こって、その日のうちに全アメリカの加圧水型の原子炉に対して点検を指示しているわけですね。この点では、きわめて機敏な対応をしておるという点では、私は、スリーマイル島の教訓もあるでしょうし、そういう意味では、事故が深夜に起こってその日のうちに指示が、点検を命ずるという非常に敏速な措置がとられたということは、原子力発電所の重要な部分に対する安全性の問題については非常に問題を重視しているというあらわれではないかと思いますが、その点は日本の科学技術庁としてはどういうふうにお考えでしょうか。#192
○赤羽(信)政府委員 御指摘のとおり、非常に重要な装置であることは間違いないと思います。そこで、しかも確実な作動を期待した設備であったのに動かなかったという点で、アメリカのNRCは重要視しまして総点検等を行ったと想像されます。わが国におきましてもその事情は全く同じわけでございますけれども、かねてから安全委員会としましてもこの種の問題は注目しておりまして、日ごろから点検がよく行われているということを非公式にではありますけれども確認しておりまして、わが国ではすぐそういう心配をする必要はないであろうと、直接の監督を行っております通産省からの報告を待ったわけでございます。#193
○山原委員 いまお話しのように、セーラム発電所と同じ型のブレーカーを使っている原子炉は、申し上げるまでもなく美浜二号あるいは高浜一号で、やはりウエスチングハウス社のDB50型というのを使っておるわけでございます。こういう事故が起こり、アメリカ側においては、政府機関が直ちに敏速にこれに対する点検を命ずるというような事態にあるわけですけれども、いまお話しのように、日本の場合はかなり安心した立場で、自信を持っておられるようです。その点では、通産省の方も、あるいは原子力安全委員会の方も、この事故、またアメリカ側のとった態度を見まして、特別に点検指示を与えたということはないように思いますが、新聞の一部の報道によりますと点検を指示したというのもありましたが、これはどうなっていますか。そのままですか。両方の省から聞きたいのです。#194
○谷口説明員 ただいま赤羽局長からも御説明ございましたように、アメリカの場合には、今回の遮断器が直列で二つついているものが二つとも作動しないというような、日本ではちょっと考えがたいようなことが、今回の事象を契機に調べましたところ、すでに三十五回も生じておるということが判明いたしまして、主たる理由は、いままで得た限りの情報によりますと、先ほども局長からございましたように、どうもそのメンテナンスが非常によろしくないということでございます。一方、わが国におきましては、当該の遮断器につきましては、毎月一回法令で作動試験を義務づけておりますと同時に、事業者が毎日一回以上の巡視点検をするということもあわせて義務づけておりまして、さらに毎年一回非常に丁寧な点検を義務づけておりますけれども、この定期検査の中においても、通常の毎月一回のもの以上に詳しい試験並びに分解点検を義務づけておりまして、いままでそういうことで毎月の試験の結果、大体日本のPWRは十一基稼働しておりますけれども、一つの炉当たり一年に一、二回のスクラムがございまして、このスクラムの頻度もアメリカに比べますと大体十分の一という頻度でございまして、日本の発電所の信頼性あるいは運転並びに保守がいかに丁寧に慎重に行われているかという一つの証拠かと思います。
いずれにしましても、この毎月の試験及び定期検査の結果、さらには実際にスクラムが作動した結果、すべて合わせまして、いままでこのリレーが、遮断器が作動しなかったことはないということがわかっておりまして、念のため、今回の事象についての情報を得ましたのは米国でこの事件が起こった翌日あるいは翌々日だったかと思いますが、直ちに電気事業者に指示をしまして、従来の点検結果を再確認させたということでございます。
それによりますと、先生御指摘のように、わが国では美浜の二号機それから高浜の一号機が今回の問題を起こしたウエスチングハウス社のDB50という遮断器と同型のものを使っておりまして、このうち美浜の二号機については、現在蒸気発生器の補修のために停止中でございます。それから高浜の一号機につきましては、定検の最終段階での調整運転中ということでございますが、最も新しい試験の結果は、当然のことながら、高浜の場合には二月、それから美浜の二号機の場合には一月から補修に入っておりますので一月の中ごろ、それぞれ行われておりますし、それから今月中に高浜の調整運転の最終段階での試験でもう一度確認を行います。それから美浜の二号機についても、やはり今月中に確認を行うということになっております。
それから、その他残りの九基につきましては、そのうち大飯の一、二号機が、ウエスチングの改良型の違った型式の遮断器を使っております。それから残りの発電所につきましては、国産の三菱の遮断器を使っておるということでございますが、それぞれにつきまして、大体運転中のものと定検中のもので差はございますが、いずれにしましても一月から二月の最近時点で試験が行われておりますし、それから今月中に再度もう一回試験を、すでに行ったかあるいは行うということでございまして、これには、できる限り通産省の検査官もしくは常駐の専門官が立ち会うということで対応しておりまして、アメリカの実績に比べまして、従来のわが国における当該の遮断器の試験結果あるいは検査結果、作動状況を見ましても、いままでのところ一〇〇%の信頼性を持って作動しているということでございます。
そうはいいましても、先生おっしゃるように非常に重要な機器でございますので、アメリカの情報、さらに詳細が入りました段階で、十分今後一層の信頼性を確保するという方向で、適確な対応をとってまいりたいと考えております。
〔委員長退席、保利委員長代理着席〕
#195
○山原委員 いまの御説明でも、同じ型のものがあり、アメリカの場合は直ちにNRCが指示を出して、いわば緊急指示で点検を命じているわけですね。ところが、その点で日本側は、それについては絶対の信頼を持っている、アメリカでこういうことが起こったことは考えられない、主たる理由は保安に問題があるのじゃないだろうかというお話、それ以上私にもわかりません。どうしてアメリカがそんなにずさんな管理をやっているのかということも実際聞きたいわけです。アメリカの規定の中には、そういう点検項目はないのかということもお聞きしたいのです。時間の関係もありますけれども、アメリカの場合はそういうことはないのですか。たとえば、日本でやっている月一回とか年一回とかいうのはありませんか。#196
○谷口説明員 いままで調べた限りでわかった範囲でございますけれども、米国の場合には一応機器の供給者であります、今回の場合にはウェスチングになりますし、それからサンオノフレのケースではGE社になるわけですが、そこの要領書では一月に一回は点検をするということになっているようですし、それからさらには具体的に、どの種の油をどう差して、どういうふうに保守、メンテナンスをすべきかという事項もかなり詳細に決っておるようでございますけれども、どうも実態の方は、電気事業者が自主的にメーカーの技術的なスペックに従うという形になっておりまして、必ずしもそのとおりに行われてないというのがどうも今回の主たる原因であるように、現在のところの情報では聞いております。この辺につきましても、実は現在、たまたま原子力産業会議の年次総会ということでアメリカのNRC当局の幹部も来ておりまして、今後一層情報交換を緊密にしようという観点でいろいろ向こうの情報を聞いているところでございますが、米国でも現在まだ詳細調査中でございまして、先ほど赤羽局長からもございましたように、いろいろ複合的な原因もあるようだし、十分に調査した上で対応を考えたいということを申しておりますので、この辺の結果を踏まえまして、わが国としても、対処すべきところがあれば適確な対処をしていきたいというふうに考えております。
#197
○山原委員 自信を持つことは結構ですけれども、やはりこれだけ安全性の問題が国民的に重要な問題として論議されておるときでありますし、また、わが国の実用発電炉の技術が設計あるいは建設、運転、保守、すべてにわたってアメリカに依存してきた歴史的経緯もあるわけでございますから、日米原子力協定の情報交換の規定や、あるいは日米規制情報交換取り決め等に基づいてアメリカに照会してその内容を把握して、そしてその結果を国民に知らせるぐらいのことは、二月二十五日に起こったことですから一カ月たっておりますから、相当資料を綿密に把握をしていただいて点検をし、そして国会に対してもこうだということが発表できるようにしてほしいと思うのです。その辺はどうですか。それはぜひやっていただきたいと思いますが、その点、一言伺っておきます。時間がだんだん経過しますので、答弁の方もなるべく簡明にしていただきたいと思いますが、いかがですか。#198
○赤羽(信)政府委員 御指摘のとおり、アメリカの経験はまたわれわれの経験として生かすべきものでございまして、NRCの方の結論を詳細に聞きまして、必要なものがあればわが国でも適用していきたいと考えております。ただし、再三申し上げますように、アメリカで過去の点検中に何度も動かないことがあったり、今度はメーカーのメンテナンスの条件をきちんと守れという指示が出たりということは、仮に点検しましても、よくごみを取り、よく磨き潤滑をさせる、あるいはくたびれた材質を取りかえるという本格的な点検に手抜かりがあったのではないかということがかなりはっきり読み取れますので、わが国では十分していると思いますけれども、さらにそれに落ち度がないように引き締めてまいるべきものと考えております。
#199
○山原委員 局長、通産省の方では原子炉の設置、運転に関する規則がありまして、いまお話にありましたように月に一回、そして年に一回の停止点検というのが行われている、これは規則にちゃんとあるわけです。ありますけれども、これは何といっても原子炉施設の定期自主点検ですね。自主点検でございますから、これは言うならば設置者、いわゆる電力会社の方に任されている自主点検でございます。今度のアメリカの場合はそうではなくて、NRCが緊急指示をしておるということから考えますと、その自主点検というのを疑うわけではありませんけれども、こういう事故が起こって、アメリカでの事故ではありますけれども、起こった際には、確かに保安状態がよくないとかいうことがあるかもしれないが、しかし日本の原子力安全委員会としては、改めて点検を求めるという必要があったのではないか。それは、いままでもしばしば規則を厳守していると言いながら、トラブルが起こりましても行政庁に対して報告しなかったことがあるでしょう、敦賀原発にしましても。そんなことが一たび起こったら、国民の安全性に対する信頼というのはがた落ちになってくるわけです。そういう点から考えまして、そういう緊急の指示ぐらいはしていいのではないかと思います。これは時間の関係で、その点は私どもとして強く要請したいと思うのです。
たとえば、スリーマイル島のときには、御承知のようにいわゆる自動停止装置というのは作動しておったわけですね。もし、あれが作動していない今度のような場合であったら、どんな事態になっておったであろうか。もし、このブレーカーが作動しなくて、そして今度の場合三十秒後に職員が気がついて手動で停止して原子炉をとめたわけですが、スリーマイル島のあの事件、炉心溶融まで起こりかねないというような事態の中で、仮に三十秒間ブレーカーが動かなかった場合はどういう事態になっておっただろうかというと、私もよくわかりませんけれども、恐らく大変な事態ではなかったろうかと思うのです。そういうことはお考えになったことはありませんか。そういう場合、仮に三十秒作動しなかった場合にはどんな事態になっておっただろうというようなことは、お考えになったことはないのでしょうか。
#200
○赤羽(信)政府委員 一つの条件を設定して、それによって起きます事象を判断するというのは、かなり高度なシミュレーションを行わないとわからないことかと思われます。したがいまして、ここで適当に想像して申し上げるのはいかがかと思われますけれども、ただ一つ言えますことは、先ほど申し上げましたように一部の報道では、幸いにして運転員が気がついたので手動でとめたというような文学的表現がございましたけれども、運転室の中の状況としましては決してそういうことはなくて、とめなければならない情報というのはアラームとともにすぐ出るわけでございますから、大きな時間のおくれがなく停止できる。また、そういう状況のもとに対応する訓練が訓練センター等で行われているわけで、運転員にとって一番重要な事故でございますので、ひどく時間がおくれるということはない訓練がされていると考えております。#201
○山原委員 続いて、いま局長のお話に出ましたけれども、三月三日と三月八日に、カリフォルニア南部のサンオノフレ原子力発電所でも自動停止装置が作動しなかったということが出てまいりまして、これは二つの原子炉でブレーカー停止作動せずということ。この原子炉はゼネラル・エレクトリック社のAK2型、これは日本ではないそうでありますが、ウエスチングハウス社の型の問題が起こりまして点検を命じて、そしてその中でこれがまた出てきたわけですね。型の違うものではありますけれども、恐らくセーラム事故による点検中に出てきたのではないかと思いますが、十六のうち四つが作動しないという事態が起こっているわけでございまして、これが三月三日と三月八日と聞いておりますが、それに対してまたNRCは三月十一日に、全米の加圧水型四十八基すべてについて点検を指示している。これは、先ほどのセーラムの事故の問題でもアメリカの原子力規制委員会は機敏に動いているということを申しましたが、このカリフォルニアで起こった場合でも全米の加圧水型全基に対して点検を指示しておる、こうなっているわけでございまして、そういう意味では、確かに保安状態が悪いとかいろいろあるでしょうけれども、しかし、政府機関としては非常に機敏に対応しておるというふうに考えられるわけでございます。その点は、日本側としても模範としていいのではないかと私は思いますが、この点はいかがですか。
#202
○赤羽(信)政府委員 サンオノフレ発電所におきまして起きた事象と申しますのは、やはり加圧水型ではありますけれども、遮断器の型が違ってGE社製であったということでございます。御指摘のように四つも動かなかったということは、NRCにとってもかなりのショックであったと思われます。しかし、調べました結果が、やはりウェスチングハウス社製と同じような理由によって動かないという感じがございましたのでしょう、全部の点検を命じたということでございます。原子力安全委員会は、基本的な問題につきまして方針を出し、基準を出しているわけでございますが、こういった日常の点検につきましては日ごろ重大な関心を持ちまして、通産省から報告を受けたりあるいは専門家の判断を聞いたりという活動を行っておりまして、本件につきましては、通産省の管理で十分やっていけるという当面の判断がございましたので、先ほどと同じように通産省の監督にゆだね、通産省からの報告を聞くという形にとどめたわけでございます。
#203
○谷口説明員 少々補足させていただきますと、アメリカの場合には現在五十基の加圧水型の軽水炉が動いておりまして、それで従来、一九七三年以降この遮断器の不作動というのがときどき起こっておりまして、NRCの報告によりますと、先ほど申し上げましたが三十五件ございまして、そのうちウエスチングハウス社製のものは二十一件でございます。これに対しましてわが国の場合には、先ほど申し上げましたように最近では十一基もございますので、毎年回数としては百回を超えるような試験を行いましても――少し細かく申しますと、毎月一回の試験、点検は、一回だけ作動する試験をするわけではございませんで、先ほど赤羽局長から説明がございましたさまざまな原子炉のトリップの停止信号について、代表的な組み合わせ八組について大体八回の試験を行うということで、実際の実績はそういう意味でさらに十の三乗近い回数になるわけでございますが、いままで一度もないということでございます。
それを踏まえた上で私どもとしましては、先生のおっしゃるように、非常に大事な事象に関係するということで、セーラムの場合にもサンオノフレの場合にもそうでございますけれども、いままでの過去の検査結果について直ちに再確認を求めるとともに、今後の検査の計画についても、先ほど簡単に申し上げましたけれども、三月中にはすべての発電所の再確認が済むということを確認しているわけでございます。
#204
○山原委員 時間の関係もありますが、月に一回性能検査――性能検査というのは、これはいわゆる停止装置の部分の点検だろうと思うのです。だから、いただいたこの図面のブレーカーの部分の点検が主になっておると思いますが、その点でも、たとえば他の部分、一定の制御棒がおりるまでの全体についての点検その他というものもあると思うのですけれども、ここらになってくると私もよくわかりかねます。とにかく、いまお話しのようにかなり自信を持っておられるとは思いますが、これは大臣もお聞きいただきたいと思いますけれども、やはり念には念を入れるということが大事だろうと思いますね。たとえばスリーマイル島の事件のときに、その教訓として、原子炉の型や設計の違いを超えて共通の課題としてとらえることが大事だということが、NHKが出している本の中にスリーマイル島の結果として出ておりますが、これはもうお読みだろうと思います。したがって、日本は大丈夫だという大丈夫論だけではなくして、やはり念には念を入れていくということ。
そして、特にこの事故に至った要因は単純でないわけでございますから、スリーマイル島のときにも、二重、三重、四重のミスが複合的に重なって事故をつくっているわけですね。したがって、ただ単にアメリカの方は保守が悪いからということだけでなくして、その要因をもっと綿密につかむ必要があるのではないか、そしてそれを日本の原子力発電所の安全性に生かすということが必要ではないかと思うのです。
だから、月一回あるいは年一回の点検が行われておると言われますけれども、やはり腐食の状況であるとかいろいろな要因を今度の事故から酌み出していくという態度をとっていただきたいという意味で、この原子力発電所の安全の問題については、慎重の上にも慎重かつ謙虚な立場でこの安全性を保障していただきたい、私はこういうふうに思っているわけです。
これは大臣、いままでのやりとりをお聞きくださっておると思いますから、私は、日本の科学技術庁あるいは通産省のやっておられることは、厳密にやっておられるとは思っていますけれども、一たび事故が起こった場合には大変なことになりますし、そういう意味であえてお尋ねをしておるわけでございます。
そして、もう一つ、アメリカ側の政府機関のとっておる態度というものは、スリーマイル島の事故の場合は、これは大事故でございますから、今度の場合とは比較にならないかもしれませんけれども、アメリカ大統領が指示をしてケメニー委員会ができまして、そこで点検をしておるわけですね。そのケメニー委員会の報告書では、これは私は何遍もこの委員会で取り上げたことがありますが、むしろ根本問題として、原子力発電所は危険なものだという認識が、電力会社にも原子力産業界にも規制当局にも欠けていたことが最大の問題なんだという指摘をしておりますね。
私は、このスリーマイル島の教訓から生み出したアメリカの大統領指示によるケメニー委員会の報告というのは、やはりいつまでも日本の原子力発電の行政を進めていく上でも、一番肝心の問題として腹におさめておかなければならぬ問題だと思うわけでございますが、この点につきまして安田大臣の御見解を伺っておきたいのであります。
#205
○安田国務大臣 先ほど来の山原先生のお話を拝聴いたしておりまして、私は、本当にそのとおりだと思っております。全く安全第一という基調は至上のものでございます。そこで、わが国の枠組みはどうなっているのか。まず第一は設計。これは慎重に慎重、そういうことで今日までやってまいりましたことは御承知のとおりです。
第一義的には、やはり管理者の責任、この管理運営について日本の方はどうなっているのだろうか。これも本当に厳しい枠組みの中で義務づけていることも、御承知のとおりであります。第二義的には、いわゆる電気事業者に対する監督機関としての通産省の対応というものも、これは先生御指摘のとおりでございます。その次にわれわれの安全委員会の出番、こういうことになるわけであります。
先ほど申しましたように、今日まで二十年間、日本は二十四基動いてまいりました。世界はいま二百八十基動いておりますし、いま建設中のものが二百五十基あるわけでありますが、たまたまいまのような事故の反省というものをじっと聞いておりますと、これはなかなか言えない問題が出てくる。その理由は何だろうか。これは、やはり運営管理の中においてのミスというものがここに出てくる、そういうことが一番大事なことである。
私は、先ほど山原先生がおっしゃいましたように、本当にルーズな運営をやる、手抜きをやる、こういうところに目が届かない監督行政ということを一番心配しておるわけであります。わが国の今日の監視体制、安全対策というものは、その点について世界に冠たるもの、したがって、この二十四基、二十年間動いてまいりました中では、能の放出というものは全然ない、線のものについてはいささかあったかもわかりませんけれども、人身事故皆無、こういうことで今日ありますのも、そういうところで手落ちなし。今後も、先生のおっしゃるように、緩めていったらいけない、強く強くこの目を離さずにいくべきもの、こういうふうに私たちは考えておるわけであります。御理解願いたいと思います。
#206
○山原委員 大臣は決意を表明されましたので、それに期待をいたしたいと思うわけです。いまのやりとりの中でも、私も多少不安を持っておりますのは情報の把握ですね。アメリカにおいて起こった事故については、確かにかなりの情報を得ておられるし、また、それも専門家の立場で恐らく分析をされておると思いますが、しかしやはり細部になって聞けば、複合された事故の要因について的確に把握しておるかというと、それはもちろん困難な面はあると思いますが、決して十分ではない。やはりそこは今後十分に把握していただいて、また、アメリカ側の点検の結果あるいは分析の結果がどうなるかわかりませんけれども、それが出ましたならば把握をしていただいて、そして国会に対しても十分な答弁ができるようにぜひしていただきたいと思いますが、この点は局長よろしいですか。
#207
○赤羽(信)政府委員 御指摘のとおり進めてまいりたいと思います。#208
○山原委員 最後に一言。実はこれは、科学技術庁あるいはいまお見えになっている通産省の谷口さんの方には、それ自体としては関係のないことだと思います。けれども、原子力発電所の設置その他についてやはり一種の金権的体質がございまして、そして私も四国でございますから伊方原発がございますし、また、いまかなり大きな問題になっております高知県の窪川原発もあります。この二つの原発については、私もこの委員会でしばしば取り上げてまいりまして、たとえば電力会社などが多額の経費を出して招待旅行をやるとかいう目に余ったやり方については、当然それは指導すべきであるということを今日まで言ってまいりました。亡くなった中川一郎当時の科学技術庁長官も、やはり出過ぎたことについては指導しなければならぬ、好ましくないという答弁をされておったのであります。これはもう御承知だと思いますし、予算委員会でも問題になっておりますが、高速増殖炉の「もんじゅ」建設に当たって昨年の十二月に、福井県の金ケ崎宮の修復に一千万円を敦賀観光協会をトンネルとして寄附をした。敦賀観光協会というのは、敦賀市の市長の高木さんがやっておられるわけでございますが、こういうことがこれは御本人の口から出ておるのです。これは長官とも御関係のあるところですから、長官もよく御承知だということを議事録で読みましたが、ことしの一月二十六日に石川県下でのこの方の講演で、こういうことを言っておられるわけです。これは本当に読みたくないような言葉なんですけれども、「百年後にカタワの子、五十年後に不具の子が生まれるかもしれないが、今は心配する時代ではない。原発はまったくタナボタ式で金が出る」こう言っているわけですね。
そして、日本原電の敦賀原発の事故が起こったとき、これは一九八一年、一昨年のことですが、このことについても「初めは魚やワカメが売れなくて困ったが、シメタと思った人もいた。私は百円損をしたら五十円は慰謝料、百五十円要求しろといった。あの事故で損をした人はいない。みんな補償金をたくさんとって喜んでいる。一年に一回大きな事故があればよいと思っているのが敦賀の現状だ」という言葉ですね。さらに「敦賀市の金ケ崎宮も、日本原電、動燃から六千万円出資させて修復した。気比神宮改築でも、日本原電、動燃、北陸電力から各一億出させる約束をとりつけた。短大建設、高校誘致、運動公園建設、火葬場改築も原発から金をもらってやるつもりだ。タナボタ式だ」と言っている。これがテープに残っているわけでございまして、これはもう隠すことのできない発言となっております。
恐らく、いろいろな事情があってこういう発言になったのではないかと思いますから、これはこれで、この場所で個人の責任を追及するつもりはありませんけれども、しかし、この方は実は全国原子力発電所所在市町村協議会会長という肩書きを持っておられる方でございます。だからこの方は、言うならば原子力発電所設置自治体の長といたしましてまさにベテラン、したがって原子力発電所を各地に設置することに積極的に御発言をなさったのだろうと思います。しかも、この方が石川県でお話をしましたときの紹介は、原発先進地の市長さんとしてお話をされておるわけでございまして、決してこれは軽視できない問題だと私は思います。また、大変残念な言葉だと思うわけでございます。
そういう意味で、特殊法人である動燃がお金を出すというようなことも、私は決して正常なものではないと思っております。この間の予算委員会で、社会党の藤田議員に対して科技庁の方でしたか、調査をして報告をしますという議事録が残っておりますが、これは御調査をなさったのか、どういう結果になっておるのか、お伺いしますと同時に、こういうことはあってはならないことだと思いますが、その点についてまず局長の見解を伺っておきます。
#209
○高岡政府委員 敦賀市の高木市長が、いま御指摘ございましたような講演で発言をされたということは承知いたしております。私ども、テープを入手して一々どういうニュアンスでどういう発言をされておるかということにつきましては確認はいたしておりませんけれども、御発言の要旨といいますか、そういうものは理解しておるつもりでございます。いま御指摘ございましたように、原子力発電所あるいは原子力の施設の安全について、あるいは動燃でありますとか電力会社でありますとか原子力発電施設の設置者の地元に対する協力ということの関連におきまして、たとえば安全問題につきましては、一般の方の非常に誤解を招くような御発言があったように理解をしております。それから、いま御指摘ございました地元に対する協力でございますが、私どもの監督いたしております動燃事業団、これは御存じのように敦賀半島におきまして、「ふげん」というATRの原型炉を運転いたしております。その上で、現在、高速増殖炉「もんじゅ」、二十八万キロの発電能力を備えた原型炉でございますが、これの建設を進めておるわけであります。「もんじゅ」だけでも全体の計画が四千億という大きな計画でございますし、しかも、日本で初めての最先端の施設計画であるというようなことで、地元住民の側にもいろんな不安があるというようなことに関連いたしまして、地元に対する協力といいますか、理解を求めるための協力というのは、必要最小限にはやむを得ないということで指導いたしておるつもりでございます。
御指摘のございました金ケ崎宮に対する協力金の支出云々でございますが、これはせんだって衆議院の予算委員会で御指摘がございまして、調査いたしますとこう申し上げたわけでございますが、その後調査いたしましたところ、合計一千万円の協力金を動燃が支出をいたしております。いたしておりますが、これは金ケ崎宮の、つまり神社の修復ではございませんで、観光協会が行います、金ケ崎公園という市営の公園がございますが、それの整備事業のために一千万円の協力金を支出をしたということでございます。
それから、いま先生のお話の中に出てまいりました気比神宮というのがございましたが、気比神宮に対する修復あるいは協力金ということにつきましては、そういう支出は全くございませんし、動燃としましてそういう支出を約束したということもないというふうに報告を受けておるわけでございます。
#210
○山原委員 最後に大臣にもう一言お伺いしますが、やはり安全性の問題については、いま大臣からも御答弁がありましたように、国民全体が本当に、賛成、反対はあろうが、とにかく安全性の問題について真剣に討議していることは事実です。私の窪川町におきましても百回を超す説明会が持たれておりまして、ときには騒がしくなったり、ときには静ひつな中で行われたりする、いずれにしましても真剣勝負が行われているという事態のときに、その衝にある地方自治体の長などが、棚ぼた式だ、やれば金が出てくるんだというような次元の問題としてこれをとらえておったのでは、国民を納得させることはできません。確かに、口が走ったという点があるかもしれませんけれども、しかし、そこらは本当にもっと真摯な態度でこの問題と取り組むべきであると考えておりまして、非常に遺憾な気がするわけですが、最後に長官の御意見をお伺いしまして、私の質問を終わります。#211
○安田国務大臣 先ほど山原先生のお言葉の中に、万一事故が発生した場合には、長い集積の中で積み重ねてきたところの国民の信頼を一気に失墜しますよという御発言がございました。まさしくそのとおりでございます。だからして、原子力政策の推進に当たっては全くもう安全第一、これは厳しい厳しい枠組みの中で、幾つも幾つもチェックのハードルをつくって、これでもう間違いない、そういう仕組みをつくってあるわけであります。だから、私たちの立場から申しますと、本当に日本の安全政策というものは、他の国、外国から見るとずいぶん厳しい枠組みをつくってあるものだ、私はこのように理解しておりますし、評価しておりますし、これを緩和するというようなことは毛頭考えておりません。
同時にまた、いまお話のございました敦賀の高木市長さんの発言であります。これは、先ほど局長から御答弁ありましたように、いささか誤解を招く、こういうふうに私は受けとめておりまして、藤田先生にもそのような御答弁を申し上げたわけであります。われわれはあくまでも常識の中において、地域住民と同居するわけでありますから、地域住民の理解を得るためにやはり常識的な御協力は申し上げるべきもの、こういうふうに私は理解しております。よろしく御理解のほど願います。
#212
○山原委員 ありがとうございました。終わります。#213
○保利委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後四時四十三分散会