1982/04/27 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 建設委員会 第8号
#1
第098回国会 建設委員会 第8号昭和五十八年四月二十七日(水曜日)
午前十時三十分開議
出席委員
委員長 松永 光君
理事 鴨田利太郎君 理事 住 栄作君
理事 竹中 修一君 理事 村岡 兼造君
理事 小野 信一君 理事 木間 章君
理事 薮仲 義彦君 理事 小沢 貞孝君
池田 行彦君 川崎 二郎君
瓦 力君 桜井 新君
志賀 節君 泰道 三八君
谷 洋一君 東家 嘉幸君
野上 徹君 浜田卓二郎君
保利 耕輔君 井上 普方君
久保 等君 関 晴正君
中村 茂君 伏木 和雄君
青山 丘君 瀬崎 博義君
中島 武敏君 甘利 正君
出席国務大臣
建 設 大 臣 内海 英男君
出席政府委員
建設大臣官房長 豊蔵 一君
建設省計画局長 永田 良雄君
建設省住宅局長 松谷蒼一郎君
建設省住宅局参
事官 吉沢 奎介君
委員外の出席者
消防庁予防救急
課長 小坂紀一郎君
建設委員会調査
室長 升本 達夫君
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委員の異動
四月二十六日
辞任 補欠選任
関 晴正君 山本 政弘君
中村 茂君 大島 弘君
中島 武敏君 林 百郎君
同日
辞任 補欠選任
大島 弘君 中村 茂君
山本 政弘君 関 晴正君
林 百郎君 中島 武敏君
同月二十七日
辞任 補欠選任
金丸 信君 谷 洋一君
唐沢俊二郎君 志賀 節君
木村 守男君 保利 耕輔君
桜井 新君 浜田卓二郎君
羽田野忠文君 泰道 三八君
近藤 豊君 青山 丘君
同日
辞任 補欠選任
志賀 節君 唐沢俊二郎君
泰道 三八君 羽田野忠文君
谷 洋一君 金丸 信君
浜田卓二郎君 桜井 新君
保利 耕輔君 木村 守男君
青山 丘君 近藤 豊君
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四月十二日
都市計画法に基づく線引きの大幅見直し等に関する請願(関谷勝嗣君紹介)(第二三三三号)
同月十五日
重度障害者に対する建設行政改善に関する請願(新村勝雄君紹介)(第二四七二号)
都市計画法に基づく線引きの大幅見直し等に関する請願(大村襄治君紹介)(第二四七三号)
同(正示啓次郎君紹介)(第二四七四号)
同(玉沢徳一郎君紹介)(第二四七五号)
同(山下徳夫君紹介)(第二四七六号)
同(志賀節君紹介)(第二四九二号)
同(椎名素夫君紹介)(第二四九三号)
同月二十二日
都市計画法に基づく線引きの大幅見直し等に関する請願(綿貫民輔君紹介)(第二五四七号)
同(工藤巖君紹介)(第二六〇一号)
同(鈴木善幸君紹介)(第二六〇二号)
同月二十五日
重度障害者に対する建設行政改善に関する請願(池端清一君紹介)(第二七六七号)
同(石田博英君紹介)(第二七六八号)
同(熊川次男君紹介)(第二七六九号)
都市計画法に基づく線引きの大幅見直し等に関する請願(大西正男君紹介)(第二七七〇号)
同(田村良平君紹介)(第二七九九号)
同月二十七日
重度障害者に対する建設行政改善に関する請願(梶山静六君紹介)(第二九二〇号)
同(草野威君紹介)(第二九二一号)
同(佐藤誼君紹介)(第二九二二号)
都市計画法に基づく線引きの大幅見直し等に関する請願(奥田敬和君紹介)(第二九二三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
建築士法及び建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)
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#2
○松永委員長 これより会議を開きます。内閣提出、建築士法及び建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木間章君。
#3
○木間委員 建築士法及び建築基準法の一部を改正する法律案について、二、三の問題について、この機会にただしておきたいと思うのであります。まず一点は、基準法との関係からでございますが、建物を建築しようとするときは確認を受け、工事が完了したときに検査を受けて、初めて建物の使用、利用ができるようになっておるのでありますが、昭和五十六年度の検査済証の交付状況等を見ておりますと、その割合は三三・二%となっているのであります。すなわち、五十六年度の建築確認件数は百九万五千三百三十件、これに対して検査を完了されて検査済証交付件数は三十六万四千二十件であります。この検査割合の低い理由はどういったところにあったのか、どのように掌握されておるのか、まずお尋ねをしておきたいと思います。
#4
○松谷政府委員 お答え申し上げます。建築主は、建築工事が完了をいたしましてから四日以内に、その完了した旨を建築主事あてに届け出ることになっておりまして、その届け出がありましてから、建築主事は完了した建築物について検査をする、こういうことになっております。もちろん、その検査につきましては、法令等に適合しているかどうかということについて検査をするわけでございます。その検査の結果、適合しているということになりますと検査済証を交付する。これで一連の建築基準法による確認、検査が完了する、こういうことになるわけでございますが、ただいま先生の御指摘のように、検査済証の交付件数が、現状では確認件数の三分の一程度にとどまっているわけでございます。これはさきに申し上げましたように、建築主からの工事完了届が出ないと検査ができない。ところが、建築主からの工事の完了届がなかなか出ないということで、こういうような結果になっているわけでございます。
このことは、以前から私どもといたしましても問題にいたしておりまして、特定行政庁あてにこの工事完了届の励行を促進するよう強く求めていたところでございますが、現状なかなか改善されないという状況でございます。今後とも、この完了検査の充実のために、建築主による工事の完了届の提出を励行させるために、違反建築防止週間等の活用あるいは特定行政庁に対する今後ともの周知徹底等を図りまして、完了届の提出及び検査の励行を指導してまいりたいと考えております。
#5
○木間委員 今日、火災が起これば死亡事故が伴う、こういうわが国の状況でありますが、これは、いま局長がお話しになったように、三分の二の完了届が出てない。つまり確認申請どおりに建物が新築されておるのかどうか、そういった点からくる問題が内蔵しておると思うのです。つまり手抜き工事等々があるから、一たん事故が発生いたしますと大惨事になってしまう。さかのぼって調べてみた場合でも、完了届がなされていない、あるいは完了検査がなされていない。これを役所は放置をしてきた一つの責任があるんじゃなかろうか、このように思えてならないわけであります。したがって、大惨事に対する役所のいままでの見方が少し甘かったんじゃなかろうか、こういったものをもっときちっとやられるべきじゃなかったのか、このように私は思えて仕方がなかったのであります。去年も、ニュージャパンのあの事故の直後の建設委員会でも、これらのことを指摘してきたのでありますが、私は、いまの局長の答弁だけでは、これらの励行はなかなかできないんじゃなかろうか、もう少し思い切った対応をなされてしかるべきじゃないだろうか、このように考えるものであります。単なる指導だけではいかない、このように感ずるものでありますが、局長の率直なお考えをお尋ねしておきたいと思います。
#6
○松谷政府委員 お答え申し上げます。ただいまの先生の御指摘のように、検査済証の交付件数が三分の一程度にとどまっている、こういうような状況は、私どもといたしましても、改善しなければならない状況であると考えております。ただ、建築行政の執行体制がなかなか十分にまいりませんので、そういうような関係もありまして、御指摘のように、指導強化を図るということだけではなかなか十分な改善にならないことは事実でございます。
そこで、このたびの法改正にもありますように、建築物で防災上特に重要なものと比較的重要でないものと分けまして、比較的重要なものに建築行政の重点を指向していく、それによって、たとえばホテル・ニュージャパンのようなああいった災害を未然に防止する体制をとっていくというようなことで、いわばめり張りをつけた行政を実施していきたいと考えております。
こういうようなことで、建築士の活用による建築行政の合理化というようなことも、このたびの法改正等によりまして、その改正案が成立いたしましたら十分に指導徹底をしていきたいと考えているところでございます。
#7
○木間委員 完了検査等が十分にできない、いろいろの問題等もあるという前提でお話があったのですが、結局建築確認業務の対応をいまの局長の答弁では逃げておいでになるんじゃなかろうか、私はこう思えて仕方がないのです。特に火災発生時には、あるいは災害時には死亡事故が伴う、このことを重視したときに、きちっとやっていただかなければ私どもは納得できない点を持っておるのです。特に、いままでも論議を申し上げてきたのでありますが、たとえば中間検査等の導入もやっていくべきじゃないだろうか。ニュージャパンの件をとらえて大変恐縮でありますが、手抜き工事があったということもすでに御案内のとおりでありますから、あるいはマンションの欠陥工事等を見ましても、大変大きな社会問題にもなってきておるのでありますから、もう少しきちっと法の適用を進めていただかなければならないと思うのです。特に、完了検査もさることながら、中間検査をやるべきでないだろうか。このことはそれぞれ審議会等でも議論を呼んできたようでありますが、もっと積極的に義務規定を整備をしてもらいたい、このように考えるものであります。昨年の委員会でも、前の住宅局長からは、引き続き重要な課題であるので前向きに検討したいやの答弁もいただいておるのでありますが、その後、中間検査の制度化についてどのように検討を続けてこられたのか、この機会にただしておきたいと思うのであります。#8
○松谷政府委員 中間検査の重要性につきましては、先生の御指摘にありますように、私どもも認識をしておるところでございます。このため、計画時の建築確認に基づきまして、建築基準法の第十二条の第三項により報告を求めることができることとなっておりますので、この規定を活用いたしまして、現在でも必要に応じ中間検査を行うこととしているわけでございます。ただ、中間検査は、たとえば高層の建築物等につきましては、構造耐力上の問題、それから防災上の問題とありまして、構造耐力上の問題でありますと、建築の工事が各階ごとに一つの区切りをつけながら進行いたしますが、その各階ごとに検査をしなければならない。こういうことになります。そうすると、極端な話が五十階建てのビルであれば五十回は少なくとも行かなきゃならない等々のこともありまして、現在の建築行政の職員ではなかなか対応がむずかしい。これを行政職員が検査をすることがむずかしいとすれば、実際には工事の監理を担当しております建築士等を活用いたしまして、これによって中間検査と同様な効果を上げるような方法はないかということで、昨年来種々検討をしているところでございます。このたびの法改正では、小規模な建築物についてはそういった活用の方向等をとっておりますが、引き続き中高層の建築物等につきましても、建築士の活用によって中間検査と同等の効果を得るような方策を検討してまいりたいと考えております。またそういった方策によって、今後とも特定行政庁を指導してまいりたいと考えているところでございます。#9
○木間委員 いま局長は、いみじくも、人員不足も大きな要因の一つなんだ、こうおっしゃっておいでるのであります。つまり臨調がらみで事務の合理化あるいは能率化等が叫ばれまして、人員削減も時代の波に乗った状況ではありますが、私は、財産や人命にかかわる問題でございますから、何でもかんでも人員削減でよかろうというわけにはいかないと思うのであります。私ども、この住宅を含めた建築行政については、きわめて大事な国の事務でありますから、そういった点では万全を期すべきでないだろうか。特に現行法、旧法時代からずっとつながっておりますが、現行法を見ただけでも、昭和二十五年度に法制化されておりまして、すでに三十年経過をしておるわけでありまして、毎年のように、人員が足りないから手抜きを認めてきた、あるいは完了検査もやらない、中間検査もおぼつかない、こういった状況では何をか言わんやであります。したがいまして、そういった人員不足を認められながらも、今日どのようにこの三十数年間地方に対して行政指導をやってこられたのか、もっと思い切った増員の指導をやるべきでなかったのか、こういったことを含めて建設省のお考えをお示しいただきたいと思います。#10
○松谷政府委員 御指摘のように、現在の建築行政の執行体制につきましては十分ではございません。特に行政担当の職員が不足しているのは事実でございます。このため、関係各省庁にもお願いをしながら、特定行政庁の数をふやすあるいは関係職員の数をふやすというようなことで種々努力をしてきているところでございますが、なお十分ではございません。ただ、たとえば特定行政庁の数でございますが、現在二百四十九ございます。これは昭和五十年度末では百八十九でございます。これが五十八年の四月一日現在で二百四十九と若干ずつではございますが増加をしております。それから建築基準法の執行に関係いたします行政職員につきましても、建築主事の数が四十八年度末で一千人ちょっとでございましたが、これが五十六年度末で一千三百三十八人。また関係職員を合計いたしますと、四十八年度末五千二百三十五人が五十六年度末で六千八百九十六人と、抜本的にというわけにはまいりませんが、少しずつ増加をしてきているところでございます。
ただ、行政機構も若干ずつ改善されてきているとはいいながら、昭和五十六年度の建築の確認申請件数がなお百十二万件に上るということ。それからまた建築物につきましても、高層化、大型化あるいは複雑化等の状況が年々顕著になってきております。したがいまして、その確認あるいは検査等に大変労力をとられるというような状況にあるわけでございます。したがいまして、現在の執行体制をよほど飛躍的に拡充しない限りはなかなかこの人員不足が解消しないということは事実でございますが、なお、今後ともこういった執行体制の整備を図るよう、関係省庁にもお願いし、また努力していきたいと考えております。
#11
○木間委員 しつこいようですけれども、局長の御答弁では積極的に取り組んでいこうという姿勢が見受けられないのです。たとえば完了検査も三分の二が放置をされておる。先ほど、中間検査を導入したらどうか、こういう質問に対して、十二条三項で報告を求めてやっていく。完了届け出さえなされていないのに中間の報告がきちっといくものかどうか、私は大変懸念を覚えるものであります。特に、近年雇用不安が大変大きく高まっておる時期でもありますから、教育課程など専門課程を終えられた方々もなかなか就職の場につけない。勢い他の職種、業種につこうという昨今でありますから、もっと思い切った役所の対応、態度が表明していただければ、もっと建築主事の増員も可能になってこよう、こう私は思うものであります。せっかく大臣もおいででありますから、雇用の場の確保という観点からとらえていただいてでも、もっとこの建築確認行政がきちっといって、国民の生命、財産が守れるように、そういった思い切った態度を出していただきたいと思いますが、大臣の御感想をお尋ねしておきたいと思います。#12
○内海国務大臣 御指摘のような点も十分私どもも承知をいたしておるわけでございますが、現在、行政改革というような大きな流れの中で建築主事をふやしていくということが果たして現在の時点にそぐうかどうかという問題もあるかと思います。したがいまして、民間の建築士あるいは今回提案をいたしております法案の御審議の中で御議論いただくことになると思いますが、そういった方々に確認の代行的な仕事もやっていただければ、十分人員の不足というものについての補いもできるのではないか、こういうふうにも考えておるわけでございます。#13
○木間委員 くどいようでありますが、国民の生命、財産を守るためにもぜひ精力的に積極的に前向きにお取り組みをお願い申し上げたいと思います。次の質問でありますが、確認事務の簡素合理化の一貫として、消防長の同意事項を外すことを提案されてきました。この建築確認についての消防長の同意を受ける制度には歴史があったと聞いておるのです。旧法時代の東京あたりでは、消防設備士の認印がなければ建築物は建てられないような仕組みであった、このように聞くわけであります。したがいまして、同意事項を簡素化するということについて、建設省は消防庁と十分相談をしてきたのかどうか、また消防庁はそれらの方向についてどのような対応をされてきたのか、建設省、消防庁それぞれから当時の状況等を踏まえて御報告をいただきたいと思います。
#14
○松谷政府委員 ただいま御質問の消防長の消防同意の関係の点でございますが、建築主事が建築確認をするに当たりましては、その建築物の計画が法令または条例の規定のうち建築物の防火に関連するものに違反していないかどうか、その審査の十全を期するために消防長等の同意を求めることになっております。今回建築確認及び検査につきましては、建築士の活用等によってその合理化を行うということにしておりますが、この点は、消防同意につきましても同様でございますので、同様な観点から合理化を行うこととしているものでございます。改正法案を提案するに当たりまして、建設省といたしまして、消防庁と十分この間調整を行いまして、このたびの法改正案となったわけでございますが、次のような点につきまして十分調整を行っております。一つは、法令または条例の規定で建築物の防火に関するものに限り、建築確認及び検査の合理化の対象とする建築物の範囲と消防同意の合理化の対象とする建築物の範囲を合わせること。第二が、建築士の技術力に対する信頼を基本として合理化を行うということ。第三が、戸建て専用住宅等防火に関する基準の規制を受けることの少ない比較的小規模な建築物に限定をするということ。こういった点で調整を終えているわけでございます。消防同意を全面的に外すとということではございませんで、建築基準法の確認、検査を建築士の活用等によりまして合理化できる範囲の小規模建築物に限定をするということ等でございますので、防火上、防災上不都合の生ずることはないと思いますが、なお、今後ともこういった防災上の安全性につきましては、十分留意してまいりたいと考えておる次第でございます。
#15
○小坂説明員 消防同意の制度は、先生御指摘のとおり、建築物に関しまして、建築関係、それから防火関係の規定が守られているかどうかということを防火の専門家である消防機関がチェックをし、指導するということで、消防機関にとっては非常に重要な制度でございます。そこで、私どもといたしましては、消防同意が、いま申しましたような制度の趣旨からいたしまして、制度の創設以来、建築物の防災水準の向上に大きく貢献してきたという実績があるということ、それから消防機関がそのような自負を持っているということでございます。
他方、最近消防行政の重点というのが変わってまいりまして、ビルなどの防火対象物、これが大幅に増加をしてまいりました。ホテルとか旅館といったような不特定多数の方が利用する防火対象物がふえてまいりまして、事故も起こっているということで、予防行政の査察等の徹底が、そのような防火対象物に特に重点的に行われなければいけないという要請もあるわけでございます。
そこで、私どもといたしまして、今回の改正に際しまして、合理化をすることによって防災水準の低下がないように、予防行政への支障が生じないようにという観点に立ちまして、その内容を協議をいたしまして、ただいま局長から御説明がありましたような内容に加えまして、私どもといたしましては、合理化の前提としては、建築士の質の確保を担保することがぜひとも必要だということと、それから警防活動上にも、建築確認の同意制度を通じて、その建築物の実態を把握するという重要な意味がございますので、今回、消防同意にかわって建築確認の通知をいただくというぐあいに制度が変わるわけでございますが、そのような面について十分協議をいたしまして、必要な手当てをいたしまして、今回の成案を得たというものでございます。
#16
○木間委員 この機会に、もう一点消防庁にお尋ねをしておきたいと思いますが、消防の組織は、御案内のとおり全国に網羅をされております。自治体が三千三百余あるわけでありますから、やはり意思の徹底なりあるいは十分なる指導をされなければならないと思いますが、そういった全国的な取り組みに対する指導についての御配慮も十分なされておるとは思いますが、どういった措置をとってこられたのか、この機会にただしておきたいと思います。#17
○小坂説明員 消防同意制度の内容の変更、これはただいま申し上げましたように、予防行政の根幹にかかわる重要な問題であるということで、全国の消防機関は非常に関心があったところでございます。そこで、私どもといたしまして、全国の消防長の集まりである全国消防長会という組織がございますが、そこに相談をいたしまして、予防上、警防上、双方の観点から御意見をちょうだいしたわけでございます。いろいろな紆余曲折、御意見はございましたが、総じまして、今回の改正案の内容につきましては、合理化の範囲が火災予防、それから消防活動の観点から許容できる範囲のものに限られておりまして、格別の支障がないという御意見、それから合理化の結果、その余力を旅館、ホテルといったようなより重点的に防火指導を行わなければいけない防火対象物に振り向けるということによりまして、予防行政総体としては、質の向上を図れるのではなかろうかというような判断が大宗を占めまして、その結果、全国消防長会の意見も十分反映した成案を得たということでございます。#18
○木間委員 今度の法改正で、建設省は、単体規定の件については建築士の活用によって、あるいはいまの消防同意の問題については、消防庁は建築士の質の担保がなければならない、このように言っておいでるわけでありますが、私どもは建築士の皆さんはそれぞれ建築行政については大変精通をされておる、このように評価をしておるのでありますが、しかし、防災、防火の点についてはそこまでいっておるのかどうか。幾つかの事故、事件等を見たときに危惧の念を持つものであります。したがいまして、事務の合理化も大変結構でございますけれども、こういった防火、防災の思想の徹底について建築士の皆さんと十分にやっていただかなければならないのでありますが、こういった点を今後いかようにやっていこうとされておるのか、建設省のお考えをお聞きしたいと思います。#19
○松谷政府委員 お答え申し上げます。建築士は、当然その業務の範囲といたしまして防火、防災上の設計の知識、技能が十分なければならないこととされております。したがいまして、建築物の設計につきましては、そういった防災面を十分配慮して設計を行わなければならないし、また当然建築関係法規、消防法も含めまして建築関係法規に適合するよう設計をしなければならないわけでございます。また特定の大規模建築物あるいは高層の建築物につきましては、特に建築士の設計したものについては建設大臣がそれを十分チェックをするというようなことも行政的に現在実施をしております。
そういった面で、防火、防災の面で現在の建築士の活用を図ることで十分その実効は期すことはできると考えておりますが、なお今回の法改正によりまして、建築士及び建築士事務所に対する監督の強化、それから建築士についての研修等を通じて知識、技能の水準の向上等を図りまして、建築物の品質の確保を十分図るよう今後とも指導をしてまいりたいと考えておるところでございます。
#20
○木間委員 次に、建築士の改正点について若干ただしておきたいと思うのでありますが、小規模木造建築士の業務範囲を二百平方メートル以下とされておるのでありますが、特に二百平方メートル以下にされた理由はどこにあったのか。仮に三百平方メートルに引き上げたときに技術上の差はどの程度生ずるのか、この機会にただしておきたいと思います。#21
○松谷政府委員 ただいま先生の御指摘の小規模木造建築士の業務範囲を延べ面積二百平米以下に限りました理由は、まず第一に、私どもがこの改正法において考えております小規模木造建築士の主たる対象が大工、棟梁等の方々でございますが、こういった大工、棟梁の方々の経験的技術力を考慮いたしまして、二百平米以下に一つは限ったということであります。第二に、こういった規模であれば、設計、工事監理に著しく高度の技術力が要求されることはないということ。第三に、大工、棟梁の方々の設計、監理の対象として考えられます木造建築物の中で、二百平米以下のものの占める割合件数の割合でございますが、これは約九七%程度にまで上っておりまして、ほとんど全体をカバーするというようなこと等によりまして、このたびの小規模木造建築士の業務範囲を二百平米以下に限ったわけでございます。なお、御質問の三百平米まで引き上げた場合一体どういう問題が起こるかということでございますが、技術上の差といたしましては、柱間間隔が若干大きくなります大架横建築物が、木造ではございますが、業務範囲に含まれてくるというようなこと、そういう関係で若干設計、工事監理に必要な知識及び技能について特殊なものが要求されるということは考えられるのではないかというように考えます。
#22
○木間委員 余りよくわからないのでありますが、たとえば建築審議会の答申を見ておりましてでも、この大工さん、棟梁のわが国の建築行政にかかわってきたその功績は高く評価をされておるのであります。そういった点で、特に今回木造建築士を創設しよう、こうなったと私は見ておるのでありますが、いまの答弁ではなかなか納得できがたいのです。特に、私は豪雪地域に住んでおりますが、私どもの地域の木造住宅といえども二メートル、三メートルの豪雪にも十分耐え得ておりますし、特に今日世代の断絶が大きな社会問題にもなっておりますが、しかし、私どもの地域では親子三世代あるいは四世代がこの一戸のうちに同居いたしまして、すこぶる生活が順調に進んでおる、このように見ておりますから、私は二百平米を上限とするということについては大きな疑問を持つものであります。せっかくこのような制度を創設をされた決意には敬意を申し上げるものでありますが、しかし、もっと実態に見合った対応をすべきでないだろうか。なるほど三大都市圏でのみ適用されようという法律ならあるいは二百平米もわからないではありませんけれど、北海道から私どもの地域、九州、沖縄まで含めての法制度でありますから、もう少し国民の実態に見合った範囲を決めていくべきではないだろうか。
こういった点で、私は、この上限の二百平方メートルを三百平方メートルにすべきだ、こういう意見を持つものであります。
これはまた後ほど申し上げてみたいと思いますが、木造建築士を創設したのでありますが、小規模木造建築士とした名称はどういった経緯からなったのか。また局長はこの名称について適切と考えておいでるかどうか、お尋ねしたいと思います。
#23
○松谷政府委員 現行の建築基準法の第二十一条の規定によりますと、「高さ十三メートル、軒の高さ九メートル又は延べ面積三千平万メートルをこえる建築物は、主要構造部を木造としてはならない。」こういうようになっております。したがいまして、これを裏返しますと、三千平米までの木造建築物というのは存在をしているわけでございます。そういったことから言いますと、延べ面積が二百平方メートル以下かつ二階建て以下の木造建築物をその業務範囲とする建築士の名称としては、その比較から言いまして小規模木造建築士ということでいかがかというように考えているものでございます。#24
○木間委員 延べ面積三千平方メートルを超えるものは木造としてはならないと。先ほどの質問でも、二百平方メートルを上限としたんだ、こうなりますと、それでは三百平方メートルということになりますと、どういう名称をつけるのかとお尋ねしなければならないということになってくるわけです。私は、大工さんにもいろいろ御意見を聞いてきましたし、また全建総連と言いまして、いま全国的に大工さん、工務店の皆さんで全国建設労働組合総連合、こういった団体が組織をされて、末端で日本の建築行政をまじめに担当されて、今日の発展を見ておることを考えるときに、それでは局長、あなたが仮に木造建築士としての資格を取られたとした場合に、名刺に小規模木造建築士と一体書けますか。あるいは事務所を開設して看板を掲げるときに、小規模木造建築士として掲げられますかどうか。率直なあなたの感想を述べていただきたいと思います。
#25
○松谷政府委員 ただいまの先生の御質問はなかなかむずかしい御質問でございまして、私もそういった状況になりました場合には、小規模というのは、少し心にひっかかるものがあるかどうかはわかりませんが、しかしながら、法律で規定をされますと、それはやはり小規模木造建築士ということでちゃんと名刺に書いて、看板も掲げていくと思います。#26
○木間委員 木造の最上限が三千平方メートルでありますから、いまここで二百平方メートルを制度化するか三百にするかは別といたしましても、私はやはりせっかく日本の建築行政をずっと引き継ぎ、守ってこられた方々に資格を与えるわけですから、そのような――局長はむしろ一級建築士をお持ちでしょうから、小規模木造建築士の資格を取られても、あえて小規模の名刺は書かれないと推察をするわけです。ですから、そういった点では、むしろ世間的に見てもりっぱな技能、技術を持っておいでる皆さんでありますから、やはり仏つくって魂入れずのような考え方ではいかがなものか、私はこのように感じておるのであります。この対応につきましては、また後ほど対応させていただきたいと思います。次に、木造建築士試験に当たっては、制度創設の趣旨にのっとって十分に技術、技能が評価されるように、適正に生かされるようにまず考えることであります。またこのための問題作成については、大工さん、工務店さんあるいは先ほど申し上げた全建総連等々の団体の意見も十分に反映していくべきだ、このように考えるものでありますが、その点についてのいまのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#27
○松谷政府委員 ただいま御指摘の小規模木造建築士の試験につきましては、今後十分に検討をしていかなければならないことでございますが、判定する知識及び技能が小規模な木造建築物に関するものであること、それからまた受験者の相当部分を占めると考えられます大工、棟梁の方々の現在の知識及び技能の状況等を勘案をいたしまして、工事現場における実務経験が十分判定できるような試験の方法を考えるべきではないかというように考えております。したがいまして、特に複雑な構造力学、構造計算あるいは詳細な設計図の作製、そういったことについての知識、技能を判定する内容というようなことは考えていないわけでございまして、この資格の設定の趣旨に沿いまして、さきに申し上げました技術、技能が適正に評価されるように配慮することとしております。また、具体的な出題に当たりましては、新たに木造建築に関する専門的な技術を有する試験委員を選定をいたしまして、その試験委員によりまして木造建築物の生産の実態に応じた出題を行うということを考えております。また関係の方々にも、その辺のことにつきましては十分いろいろな御意見を伺いながら実施をしていくことになろうかと思います。
#28
○木間委員 最後でありますが、建築士試験の受験者も年々ふえていく。さらに木造建築士等の制度を導入いたしますとふくれることになるわけであります。そういったこと等の見通しから、今回その試験業務を公益法人に代行させよう、こういう考え方が出ておるのでありますが、その試験の委託機関の選定に当たっては、まず公正を期していただきたい。そのための特段の配慮もされていかなければならないと思いますし、またその委託機関の役職員についても、政治的、行政的に公正を保たれるようなものでなければならない、このように考えております。したがいまして、十分な指導をやっていただかなければなりませんが、局長のお考えをお尋ねして終わりたいと思います。#29
○松谷政府委員 建築士の試験につきましては、年々その受験者が増加をしてまいりまして、現在では一級建築士の試験受験者が八万人を超え、二級建築士につきましても七万六千人程度ということでございます。このため、一級建築士試験だけで言いますと、昭和二十七年当時に比べますと約二十三倍という激増ぶりでございます。このため、試験につきまして大変に困難な状況にある、現行の試験方法では非常に厳しい状況にあるというところでございます。このため、臨調等の答申もございまして、このたびの法改正によりまして、指定試験機関制度を導入することとしたわけでございます。これにつきましては、まず指定試験機関の指定は、試験事務を行おうとする者の申請に基づきまして、いろいろな要件を十分満たしているかどうか、それを十分検討して指定をする。またその際、建築士審査会の意見もあらかじめ聞くということにしております。
どのような要件を満たしているかといいますと、法律の中にもございますように、職員、設備等が試験事務の適正かつ確実な実施のために適切であるかどうか、それから経理的、技術的な基礎を十分有しているかどうか、試験が不公正になるおそれはないかどうか、こういうような点につきまして十分検査をいたしまして、これによって指定試験機関の指定を行うということとしているわけでございます。
また、指定されました試験機関の役員の選任及び解任は、建設大臣の認可を必要とするとしております。また役員が建築士法や試験事務規程、この試験事務規程は建設大臣の承認を必要としておりますが、こういった試験事務規程に違反する行為をしたとき、あるいは試験事務に関し著しく不適当な行為をしたときは、指定試験機関に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができるとしております。
また、試験委員の届け出、ただいま申し上げました試験事務規程の認可あるいは事業計画等々につきましても、建設大臣の承認を必要とするということにしておりまして、試験が厳正、公正に行われるようその実施を法律的にも担保しておるものでございます。
#30
○木間委員 質問は以上で終わりますが、この際に特に大臣にもお願いをしておきたいと思います。せっかくの木造建築士制度の創設でありますから、今後の運用に関しましては、大工さん、工務店さん、あるいはそれらの皆さんでつくっておられます全建総連の皆さんの御意見も十分反映できるように、そして万全を期していただくようにお願いをいたしまして、私の質問を終えさしていただきます。
#31
○松永委員長 次に、小野信一君。#32
○小野委員 今回の法律改正で小規模木造建築士という冠称をいただきました皆さんが、いま日本の経済の中で最も不況の立場にあるんじゃないだろうか、こう私は考えます。この立場を考えると、工事者である大工さん、工務店の皆さん、それから建て主、それから政府、この三つがお互いに痛み合うというなら私は納得できるんですけれども、現在の不況を小規模木造建築士の皆さんが最ももろにかぶっているという感じがするのです。これから日本の住宅建設を進めていく際に、不景気対策としていろいろな政策が行われる、このことが今回の小規模木造建築士にもろに不況をかぶせた一つの大きな要因になっているんじゃないだろうか。そうなってくると、政府の責任もまた大きいと言わなければならない、私はそう感じます。そこで、御存じのことですけれども、建築確認申請件数を調べてみますと、昭和四十七年に百二十二万四千件、四十八年が最も多くて百四十五万件。それから年々減少いたしまして五十六年に百十一万八千件。これは本来ならば、減るにしてもふえていくにしても、当然徐々なる傾向を示すと大工さんたちが非常に楽なんですけれども、景気対策によって急激にふえたり急激に減ったりするものですから、その影響をもろに受けている、私はそう考えるわけです。
そこで、いま大臣は、そういうことに対して、これからどうしなければならないのか、どうすることによって住宅困窮者に対して住宅を提供するし、大工さんたちが困っているのを救済する場合にどういう方法が最もバランスのとれた方法なのだろうか、それに対してどういうお考えを持っているのか、お聞きいたします。
#33
○内海国務大臣 御意見の点につきましては、私どももそのとおりな面もたくさんあると思います。しかしながら、建設省といたしまして、住宅政策というものは、すべての国民が良好な住環境のもとで安定した生活を営むに足りる住宅を確保させるということが目標でございまして、そのために住宅建設五カ年計画というものを策定いたしまして、計画的に事業を推進しておることも実態でございます。特に、御指摘のような低所得者層の方々、老人の方あるいは身体障害者の方々に対しましては、従来ともその生活の実情を十分に配慮いたしまして、公営住宅その他の公共的な住宅を的確に供給するように配慮しながら施策を進めてきたところでございます。また一方、御指摘のような景気対策として、住宅建設ということを政府も掲げておるわけでございます。景気対策として考えてみましたときに、この住宅建設が波及効果が非常に大きい、その上に関連する業種が多岐にわたっている、こういった意味から、住宅建設の促進が景気浮揚に大いに役立つのではないかというような観点から、住宅政策といわゆる低所得者層の方々、老人あるいは身障者の住宅といった面との整合性につきましても、それはそれで別個に考えていけば整合性は十分成り立つ、こういうような考え方で配慮をして促進いたしておるようなわけでございます。
#34
○小野委員 確かに住宅建設五カ年計画がありまして、五カ年の総数を五で割った数が単年度に建設されていけばいいわけですけれども、そこに住宅建設需要以外の要素が入ってまいりまして、多いときには百五十万戸、少ないときには百十万戸、四十万戸の上下があるということになりますと、業者というのは大変な不況に陥ることは理の当然であります。そこで、住宅建設数の趨勢とマネーサプライ、通貨供給量とを比較してみますと、これは波長が合うんですね。四十七年に百二十二万四千戸建てた場合に、四十六年にマネーサプライは二四・三%、通貨供給量が莫大に増加している。四十七年にやはり二四・七%マネーサプライを増加させている。そうすると建築数はぐっとふえている。景気に水を差そうとしてマネーサプライを抑えると建築件数がずっと減っていくという形、これは明らかに大工さんたちにとっては自分の能力とは関係のないところで操作されるわけですから、構造的不況と言ってもいいのかもしれません。そうなりますと、政府としてあるいは建設省として、小規模木造建築士と言われる人々に対する不況対策が当然必要になってくるだろう。しかし、それをいま早急に求めたとしても無理なのですけれども、そういうひずみがいまの住宅行政の中で小さい業者にもろにかぶっているということだけは十分御承知願いたいと思います。
そうしますと、景気対策によって前倒し、前倒しで住宅建設が行われると、経済が正常に戻った場合に、需要者は前倒しでやっていますから、急激に減ってくるのは当然だと思うのです。そうしますと、局長、もしこういう景気対策を行わないで、正常の需要と供給の関係で住宅が建っていった場合に、単年度の住宅建設数はどの程度になったと判断をいたしておりますか。
#35
○松谷政府委員 、ただいまの先生の御質問に果たして答えられるかどうかよくわかりませんが、現在、住宅の建設が一時期の百五十万戸等に対しまして相当落ち込んでおるということの大きな原因は、やはり住宅の価格と一般の人々の所得の乖離にあるというように考えております。こういうような乖離の状況は次第に解決に近づきつつあると私どもは考えておりますが、こういうような状況の中で、先生の御質問に沿う答えかどうかわかりませんが、前倒しあるいはいろいろな住宅政策を行わなかったときに、住宅建設がどういうような状況になっているかという御質問だと解すれば、それはやはり単年度ごとの住宅建設の戸数は相当さらに減退をしているのではないか。すなわち、一般的な事情としては非常に厳しい状況にありますが、それを住宅金融公庫の融資あるいは全体の景気対策のための前倒し等によりまして、幾ばくなりと住宅の建設の促進が図られるあるいは税制の改善等によって図られるということで、たとえば昭和五十七年度百十六万戸前後の建設戸数が確保されたのではないか。したがいまして、これをそういった景気対策等がなかった場合にどの程度落ち込むかというのは非常にむずかしくて、直ちに試算をできるものではございませんが、やはり相当数の減少は免れなかったのではないか。果たして御質問に合う答えかどうかわかりませんが、というように考えております。#36
○小野委員 私と局長の考え方はずいぶん違うのですけれども、私は、やはり前倒しすることによって、建築戸数は多くなるとは思いますけれども、現在のような不況を起点として将来を考えた場合には、少なくとも景気対策を重点的に行わない、自然発生的においた方が百十万戸を超えるのじゃないだろうか、前半と後半でバランスをとるようなことになるんじゃないだろうかという気がするわけであります。そこで、なぜ建たなくなっていくのかという理由を考えてみますと、土地の供給が一定しておるのに、景気対策として貨幣が増加するものですから、当然土地の価格が上昇する。上昇すれば住宅を必要とする人が建てられない。そこに所得と土地価格あるいは所得と住宅価格との乖離が出る。そこでまた落ち込むという循環になるのではないだろうか。私は、もちろん住宅建設の持っておる景気対策、最も有効な手段だということを承知しておりますし、経済を生かしていくためには、そういう方法をとらなければならないとも思うのですけれども、そうなった場合に最も犠牲を受ける人を重点的に救済しないでほっぽり出しておくというのは、政策的に片手落ちだ、そういう感じを私は持つのですけれども、景気対策によって土地価格が高騰したということはあり得ないですか。そのことによって建設戸数が伸び悩むということは現状から考えられないことですか。
#37
○松谷政府委員 お答え申し上げます。景気が急激に伸長をするときに、当然それに伴いまして若干土地の価格に影響を及ぼすということは考えられると思います。しかしながら、住宅政策につきまして、住宅政策の根幹である公的賃貸住宅の供給でありますとか、あるいは中、低所得階層に対する持ち家住宅の建設の促進でありますとか、こういうことは基本的なことでありまして、これは景気対策のいかんにかかわらず建設省として実施をしているところでございます。
ただ、この二、三年来のように、住宅価格と所得の乖離が目立ってまいりますと、これを何とか埋める方策として、たとえば住宅ローンのことでございますとか、あるいは住宅融資の貸付条件の改善でありますとか、あるいは若干間接的になるかもしれませんが、公共事業の前倒しでありますとか、そういうようなことによって、それを急激な落ち込みがないように平準化していく。それでさらに事情が好転してきますと、基本的な住宅政策の強化に努めていくというようなことで、余り大きなぶれがないようにしていくことが住宅政策上は重要であると思います。
景気対策を急激に実施したことによって、地価がまた急激に上がるというようなことは、若干の影響はあるとしても、そこまでの影響はないのではないだろうかというように考えております。
#38
○小野委員 新世帯というのですか、要するに結婚して独立して新しい家を持つ。これと住宅建設との関係あるいはそれと落ち込みとの関係はどういうとらえ方をしておりますか。#39
○松谷政府委員 新しい世帯につきましては、やはりその収入が比較的低いと思われます。そういった低い収入の方でも居住水準の確かな住宅に住んでもらうということのためには、公的な賃貸住宅の供給を図るということ、あるいは低利の融資を行いまして、持ち家住宅の建設を促進するということ、こういうようなことによって新世帯の方々が住宅にできるだけ円滑に入居できるようにという政策をとるべきであるというように考えております。#40
○小野委員 私はそういう政策を住宅五カ年計画でとっていただきたいのだけれども、逆に公的賃貸住宅であるとか公的住宅の方が非常に減少いたしまして、民間の高い方の住宅だけが伸びている。しかも五カ年計画がその方向に依存しておることに問題があるのであって、局長が言うような方法をとっていただければ問題ない。むしろ小規模住宅建築士の人たちが公的住宅建設のためにそこで働けるわけですから、そういうことをとってほしいと思って言っているわけですから、局長の言うとおりに政策を進めていただきたい。#41
○松谷政府委員 現在の住宅の入居の状況、すなわちどういった階層が公的資金住宅に入居しているかの状況を調査してみますと、公的な賃貸住宅のほかに公庫の融資住宅等につきましても比較的所得の低い方々、すなわち第一分位ないしは第二分位の方々も入居しておるように見受けます。また公団住宅等につきましても、第二分位、第三分位等の方々も入居するような状況も見られる。したがいまして、公的な住宅は、賃貸住宅だけでなくて、融資住宅あるいは分譲住宅等につきましても、その生活実態等から見れば、比較的所得の低い方々も、過去に比べますと利用をしている状況になってきているのではないかというように見ているところでございます。#42
○小野委員 私の言っていることを局長は十分御承知の上で答弁しているのでしょうから、できるだけ先ほどの答弁を実現するように努力していただきたいと思います。それから、改正の提案理由を読んでみますと、建築士法及び基準法制定以来三十年になっておる、それから建築物が多様化している、それから大規模化している、技術が高度化している、しかし建築士あるいは設計及び工事監督の技術者は、その任務を着実に遂行している、建築確認、検査の執行体制の見直しが必要だ、こう今回の法律改正の要旨を説明しておるのですけれども、それと小規模木造建築士の制度が生まれなければならない必然性あるいは必要性というものに、私は直接結びつかないような気がするのですけれども、小規模木造建築士資格の設定をした理由というのは、現在の小規模の住宅がどのように建てられて、それがどういう欠陥を生んだためにこういう資格制度が生まれたのか、わかるように説明していただきたい。具体的に説明していただきたい。
#43
○松谷政府委員 今回の改正法律案の提案理由説明の中にあります、ただいま先生御指摘の建築士を初めとする建築物の設計及び工事監理に携わる技術者について、現在、一定の建築物については、その業務を確実に遂行しているということ、それからまた建築に関する確認及び検査の増加、業務の複雑化等により執行体制の見直しが必要となっておるということ、それと小規模木造建築士の資格を新たな区分として設けるということは、直接の関係はないものでございまして、先生が最初に御指摘されました件につきましては、けさ木間先生からの御質問で私御答弁申し上げましたように、建築の執行体制がなかなか十分にならない。たとえば検査済証の交付も三分の一程度にとどまっている、違反建築物がなお全く後を絶ったというわけにはなっていない、そういうような状況を改善するためにどういうような方法があるか。それには五十万人を超える建築士の活用というものが考えられるべきではないか。これにつきましては、従来いろいろとそういう方面の御提言があったわけで、行政管理庁からもいろいろ御指摘があったところでございますが、建築士法制定以来三十年たちまして、やっとと申しますか、現状で建築士の活動が定着をして、建築士に対する信頼が十分ある、信頼されるというような状況になってまいりました。したがいまして、この際、一部の建築物でございます小規模な建築物につきましては、そういった建築士の活用を図ることによって建築確認、検査の合理化を図ろう、こういうことで法改正の提案をしたわけでございます。一方、小規模木造建築士につきましては、従来二級建築士をもって十分カバーできるということで建築士法を施行してきたものでございますが、実情は二級建築士の業務範囲は木造建築物だけではなくて、鉄筋コンクリートあるいは鉄骨建築物等の木造建築物以外の建築物についても十分知識、技能を要する、また業務範囲もそういうことで定められております。そのため、試験の内容等もそういった面での試験がございまして、その点で従来から木造建築物をもっぱらその業務範囲として活動されている大工、棟梁の方々が二級建築士の資格を取得するに困難な状況にあったというような状況がございました。このため、こういった状況を現実の状況に見直して、実際に住宅を中心とする木造建築物の担い手であります大工、棟梁の方々に、この際、小規模木造建築士として資格を与え、その業務範囲を明確にするということは適当ではないかということで提案をさせていただいたわけでございます。
#44
○小野委員 小規模木造建築士制度を創設する理由はわかりました。そうしますと、木造建築士という名称と小規模木造建築士という名称、いまの法律の名称を木造建築士と変えることによって何か支障がございますか。
#45
○松谷政府委員 小規模木造建築士の名称は、さきに御答弁申し上げましたように、木造建築物は三千平米までは存在をしておりますし、建築されている。その中で、その業務範囲が二百平米以下で、かつ二階建て以下の業務範囲、小規模木造建築士としてはそういう業務範囲を想定しておりますので、その名称としては小規模木造建築士が適切ではなかろうか、こういう考えでこういう名称を設けたわけでございます。これを、いま御指摘の小規模をとった場合に支障があるかどうかということでございますが、木造建築士ということになりますと、いかにもすべての木造の建築物はその業務範囲になる。すなわち設計、工事監理ができるというような印象を与えるのではないか。その辺から言いまして、若干、その名称としては適切ではないのではないかというように考えております。
#46
○小野委員 小規模をとっても、実質的にはその他の業務範囲をそういう法律で規制することによって支障がないということがはっきりしたようですから、そのように処理していただきたいと思います。「小規模木造建築士は、他人の求めに応じ報酬を得て、設計、工事監理、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査若しくは鑑定又は建築に関する法令若しくは条例に基づく手続の代理を行うことを業」とする、こう書いてあります。そして設計、建築監理を一つの小規模木造建築士事務所で行うわけですから、やはり家を建てる側から言わせますと、危険を感ずるというか不安を感ずる一つだろうと思うのです。そこで、本法の施行により供給される住宅の質及び価格に悪影響を及ぼさないようなためにどういう配慮をするおつもりですか。
#47
○松谷政府委員 御指摘のように、建築士につきましては、建築設計及び工事監理のほかに種々の業務が行えることとなっております。このたびの法改正によりまして、小規模木造建築士の資格が認められます。これによりまして、木造建築物についてはより適切な業務範囲として機能するようになるのではないかというように考えております。また、建築士全般につきましては、建築士の活用を今後の建築行政で考えるということもありまして、また建築士の社会的責任ということもありまして、十分建築士の研修等知識、技能水準の向上に努めるようにするということ、あるいは建築士につきましては、懲戒等の改善のための措置を十分強化していくこととしておるところでございます。
#48
○小野委員 政府は、現在の住宅の性能保証制度についてどんな指導を行っておりますか。#49
○松谷政府委員 現在わが国で行われております住宅の品質、性能についての保証は業者によりまちまちではございますが、一般的に、民法の規定とは別に、特約によりまして一年から二年程度の保証を行っているものであります。ただ、これは住宅取得者にとっては必ずしも十分な保証とは言えないわけで、このため、次第にこの保証の期間を長期に改善を図ろうという動きが強くなってきております。ただ、長期間の保証というのは、業者にとりましては相当負担が厳しいことになるわけでございます。このため建設省では、住宅性能保証制度というもので保険とリンクいたしまして保証を行い、その保証期間を延伸させまして、主要な構造部等につきましては、十年間の長期の保証を行うという制度を発足させております。昭和五十五年度から試行的に実施をいたしまして、現在全国的にその普及が図られているところでございます。#50
○小野委員 いま局長が言ったのは、住宅性能保証登録機構のことですか。もしそうであるとすれば、現在建築数とこの住宅登録の割合はどのぐらいになっておりますか。#51
○松谷政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、五十五年に試行的に北海道を中心として発足したばかりでございますので、まだ制度の実施が十分全国に行き渡っているものではございませんが、五十八年の四月現在での業者の登録数、すなわち住宅性能保証制度を実施する場合には、保証機構に登録をいたしまして、その登録された業者が住宅の保証をするという仕組みになりますが、その業者の登録数が全国で千四百八十四でございます。また住宅の登録数は、これもまたスタートしたばかりでございますので、まだ十分ではございませんで六百という状況でございます。#52
○小野委員 業者の登録料が十二万五千円、三年更新で、二回目から更新料が十万円、住宅登録をする場合に一千万につき六万九千円という保険料を払わなければならなくなるわけですけれども、私はこれは非常に高い保険料じゃないのかという感じを持ちます。同時に、住宅主の方から言わせますと、登録業者がもし破産宣言などをして責任を放棄してしまった場合に何ら救済措置がないわけです。この住宅性能保証登録機構の制度は、政府が非常に力を入れて、北海道を初めとして宣伝を始めているのですが、住宅主から言わせますと、夜逃げされた場合、倒産し破産した場合に全然跡始末をしていただけないという状況になるのですけれども、政府はそれに対してどういう指導を行っていますか。
#53
○松谷政府委員 登録料につきましては、業者の登録料が十二万五千円、住宅の登録料が住宅価格の〇・六九%ということでございますが、登録料につきましては、登録されました業者のPRでありますとか、ほとんどそういうような費用に係る実費でございますし、また登録の手数等の実費でございます。それから住宅の登録手数料は、さきに申し上げましたように、十年間の長期保証を行うに当たって保険でカバーするというその保険料、さらに現場検査を行いますその現場検査料あるいは事務費等々でございまして、現在の登録料が必ずしも高いとは私どもは考えておりませんが、しかしなお、これらの登録料が今後さらに改善できるかどうか、それについては登録機構等に対しまして検討するようお願いをいたしたいと考えております。なお、ただいま先生から御指摘がございました、業者が倒産をしたような場合には一体どうなるかということでございますが、これにつきましては、ただいま申し上げました保険制度がリンクしておりまして、その保険でもちましてその十年間の長期保証に係る修補に要する費用をてん補することとしております。てん補率は八〇%でございますから、すべての住宅の補修費を保険で支払うわけではございませんが、八〇%てん補されるということであれば、現在そういった倒産企業等の場合には、全く修補に対する費用が補てんされていない現状から見まして、相当消費者の保護を図ることになっているのではないかというように考えております。
#54
○小野委員 最後に、二級建築士の試験は、県単位で行われるのではなくて、非常にむずかしいということでブロック単位で行われているようですけれども、小規模木造建築士の場合には、一つはどんな形で行われると予想されておりますか。もう一つは、小規模木造建築士の試験の内容のレベルですけれども、これは二級建築士試験に比して具体的にどの程度のものを要求しようとしておるのか。その二点をお聞かせ願いたい。#55
○松谷政府委員 小規模木造建築士の試験の実施につきましても、二級建築士と同様、ブロック単位に各都道府県協力体制を組みまして公正な試験を確保するよう指導していきたいと考えております。また、小規模木造建築士の試験のレベルでございますが、さきに申し上げましたように、レベルとしては、二級建築士試験程度のレベルでございますが、ただ、その業務範囲を木造建築物に限定をしておりますので、木造建築物に限定をしているということと、その資格者の対象として想定される方々が大工、棟梁の方々であろうというようなことから、そういった実務経験等を十分考慮した試験を考えたいと考えております。
#56
○小野委員 最初の試験制度スタートですから、関係団体の御意見を十分聞いて慎重を期していただきたい。もし関係団体というのをいまどの団体を考えておるのか答弁ができれば、答弁していただいて終わります。#57
○松谷政府委員 学識経験者等の御意見も十分伺いまして、関係方面の御意見が反映されるようその試験の実施は慎重にやっていきたいと考えております。#58
○松永委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。午後零時二分休憩
────◇─────
午後一時開議
#59
○松永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。薮仲義彦君。
#60
○薮仲委員 今回提案されております建築士法及び建築基準法の一部を改正する法律案について、何点か質問をさせていただきたいと思います。この建築士法それから建築基準法が改正されることによって、建設業界全体が現在よりよりよく事業が遂行されるということで、この法律が改正されると思うのでございますが、本法をこのように改正しようとするからには、改正しなければならない幾つかの瑕疵といいますか、問題点がそこで指摘されておったと思うのですね。では一体どのような問題点が指摘されておって、それをどのように改善し、何がどうよくなるのかということを最初にお伺いしたいのです。
#61
○松谷政府委員 大きく申し上げますと二点ございまして、一つは、建築基準法の執行について必ずしも体制が十分ではない。建築主事の人数あるいは建築関係職員の数が飛躍的な増強にならない状態であるにもかかわらず、建築確認申請件数は非常な勢いで伸びまして、現在百十二万件を数える。しかも、その中身を見ますと、非常に複雑になり、高度化し、高層化し、大型化してきている。そういうような状況で、今後建築基準法の行政執行体制の万全を期すためには、若干めり張りのきいた形で行政の執行を図る必要があるのではないか。そのため、ある一定規模以下の小規模な建築物に対しては、現在建築士の資質が向上してきておりますので、そういった建築士を活用することによって、建築基準行政の簡素化、合理化を図ったらどうかということが一点でございます。それからもう一つは、従来建築士につきましては、一、二級建築士の二つの区分がございましたが、実際の住宅等の小規模木造建築物について、その設計、監理に携わっています大工、棟梁の方々がもっぱら木造建築物にその業務を限っているために、二級建築士に合格できないというような状況があります。建築士の資格を木造建築士に限れば、十分その水準があるにもかかわらず、建築士の資格が取れないというような状況がございましたが、それを、区分をさらに細分化いたしまして、木造建築物については、新しく小規模木造建築士の資格を区分として加えて、実際の業務の執行を現実的なものに持っていこうという、この二点でございます。
#62
○薮仲委員 それでは重ねてお伺いしますけれども、いままで建築主事が建築確認並びに完了検査等をやっておった。それがいわゆる建築士に責任を持たせる部分が出てくるわけでございますが、そこで懸念されますのは、結果として住宅の質あるいは性能が低下するおそれはありませんかということについて、これは責任を持って住宅の質や性能が低下することはないという裏づけ、どういうことでそれが担保されるのか。もう一つ問題点は、いま建設業界で一番問題になりますのは、具体的には何かと言うと、欠陥建築物、違反建築物、それからいわゆる施主を含めたトラブル、紛争があるわけですね。こういうことが今回の法改正によって改善の方向へ向かうのかどうか。それはなぜなのか。その点をお伺いしたいのです。
#63
○松谷政府委員 御指摘の点につきましては、建築基準行政の合理化を図る、そのために建築士を活用するという点にかかわって、建築物の質が落ちないかどうかということの御質問であろうかと思いますが、実は、建築士につきましては、建築士法制定以来三十年をけみしまして、その間、着実に質が向上をし、その制度も定着をしてきております。またこのたびの法改正によりまして、小規模建築物のうち、特に限定をされました事項、すなわち、単体規定のうちの構造、防火のごく限定されました部分についてのみ建築士の活用を図るということでございまして、その点で従来の建築確認、検査制度の水準が落ちるというようなことはないのではないか。具体的に申し上げますと、たとえば建築物の検査につきましては、大変残念ながら、現在の執行状況では三分の一の検査済証しか交付できないような状況にございます。ところが、今後は建築士を活用し、かつ建築士の指導監督を強化することによりまして、建築士がみずからの設計、監理にかかわるものにつきましては、その監理報告書を工事完了届に添付して、建築主を通じて建築主事に届けることとしております。工事監理報告というのは、建築物を着工して竣工に至るまでの全工程の監理の状況を届けるわけでございますから、建築主事が一度だけ完了検査に行くというような状況よりも、より十分、質の確保のための措置としては、水準向上に果たす役割りが大きくなるのではないかというように考えております。
それから、欠陥建築物につきましては、御指摘のように、いろいろな問題が出ておりますが、これにつきましても、建築主は、その設計、監理につきましては、「工事監理者を定めなければならない。」となっております。これは建築基準法第五条の二の規定によるものでございますが、この工事監理者を定めないで工事を施工するということは、施工者はしてはならないという規定が五条の二の第三項で規定されております。そういった点をこのたび建築士制度を強化いたしまして、建築士の質の向上を図るとともに、工事施工者につきましても、十分工事監理者と一体となって欠陥建築物が出ないよう行政的にも指導してまいりたいと考えているところでございます。
#64
○薮仲委員 今度の法改正の中で小規模木造建築士という名称が出てくるわけでございますが、私は、小規模木造建築士という名称について、これは好ましい名称ではないという立場に立っているわけでございます。先ほど来、同僚委員からも指摘がなされておりますけれども、現行建築基準法上のいわゆる高さ十三メートル、軒の高さ九メートルまたは延べ面積三千平米以下の建築物であるならば木造でよろしいということになっているのは、確かに建築基準法上の問題です。しかし、私は、生活実感の立場あるいは建設省がいま行っているいろいろな施策の中で考えてみますと、果たしてこれが小規模なのかどうかということに非常に疑問が起きるのです。具体的に申し上げますと、これは局長に簡単にお答えいただきたいのですが、たとえば住宅金融公庫が一戸建ての貸し出しをするわけですね。そのときに何平米までを対象とするか。何平米でございますか。
#65
○松谷政府委員 一般的な融資限度面積は百五十平米でございます。#66
○薮仲委員 これは建設大臣が責任を持って四期五計の推進を図りますということをおっしゃった。この四期五計で、建設省がいわゆる日本の最低居住水準並びに平均居住水準をかくかくいたしますという、昭和六十年度までに国民のすべてが最低居住水準、半数の世帯が平均居住水準をクリアするということですね。建設省がいわゆる日本の国民の平均的な居住水準について考えているのは、四人世帯で何平米ですか。#67
○松谷政府委員 平均居住水準は、住宅全体の面積で百平米でございます。#68
○薮仲委員 いまお答えが二つあったわけでございますが、確かに平均居住水準、四人世帯で住宅の総面積で百平米ということでございます。また住宅金融公庫が貸し出しする平米は百五十平米でございます。そうしますと、通常いわゆる日本の国全体として平均的な居住水準として認めているということは、百平米ということは一つの基準ですね。そうすると、今度の小規模木造建築士と言いますけれども、これは二百平米でございます。平均居住水準はその二分の一でございますから、二分の一、小規模木造建築士に建ててもらうというようなことになる。これは実感からいって、私は決して小規模ではないと思うのです。普通、平均的な広さですと、百平米ということはそう狭くはない。特に、いま東京都心で、二百平米だとざっと六十坪になりますが、四十坪からのおうちを建てようと思うと相当豪邸に入ると思うのですね。六十坪のうちを東京都内で建てるとなったら、これは大変なことじゃないかと私は思います。われわれの生活実感からいくと、小規模という表現は余り当たらないような実感がするわけでございまして、この辺はやはり小規模ではない。私たちの生活実感からいうと、木造建築士というような名前の方がふさわしいのじゃないかと思うのでございますが、局長のお考えはいかがですか。#69
○松谷政府委員 先生のただいまの御指摘のように、住宅の一般的な面積、規模の分布から申し上げますと、そういったお話のとおりであろうかと存じます。ただ、建築士法に言いますこのたびの小規模木造建築士の業務範囲は、住宅だけではございませんで、一般的な建築物の中で木造の建築物の業務範囲を定めておりまして、たとえば木造の体育館であるとか集会場でありますとか、そういうものもすべて含んでのことでございますので、そういうような意味から言えば、三千平米の天井に比べれば小規模ではなかろうかということで、そういう名称が適切ではないかと考えたものでございます。#70
○薮仲委員 では、これも簡単にお答えいただきたいのですが、二百平米と三百平米、これは構造計算あるいは材料、いろいろな力学等複雑なことがおありだと思うのでございますけれども、二百平米と三百平米の木造建築物には、そう大きな違いはないように私は思うのですが、その点、いかがですか。#71
○松谷政府委員 ただいまの先生の御指摘のように、特に大きな違いがあるものではございませんが、二分の三ぐらいになりますので、構造計算上若干複雑になると考えられます。#72
○薮仲委員 この問題はこれから十分各党また政府といろいろ協議され、最終的な結論はなされると思いますので、このぐらいにいたします。次に私は、小規模をあえて取らしていただいて、木造建築士――小規模でも結構でございますが、こういう資格を設けた。さっき局長の御答弁の中にも、一級、二級ではない、現在大工さん、棟梁と言われる方の中に、非常にすぐれた技術、それから経験というのを積んだ方がいらっしゃるというお話がございました。やはりそういうことを含んでのことだと思うのでございますが、もう一度重ねてお伺いしますけれども、今度あえてこういう木造建築士の資格を設ける、それの一番のねらいはどういう点でございますか。
#73
○松谷政府委員 お答え申し上げます。先ほど若干御説明申し上げましたように、従来、建築士につきましては一、二級の建築士の区分がございます。ただ、二級建築士につきましても、その業務範囲は、木造建築物のほかに鉄筋コンクリート造建築物あるいは鉄骨建築物等も業務範囲としております。このため、二級建築士の試験科目は多岐にわたっておりまして、木造建築物について知識と技能が十分ある方でも、鉄骨造建築物あるいは鉄筋コンクリート造建築物について、あるいは一般的な構造計算について十分な知識がないと合格にならないというような状況にあるわけでございます。しかしながら、木造建築物、特に住宅については、そのほとんどが木造建築物でございまして、しかも、その木造建築物を支えているのは大工、棟梁の方々で、こういった方々は、他の構造の建築物については十分な経験がなくても、木造建築物については大変深い経験と技能、知識を有されている方々でございます。いわば住宅建築物を担っている方々でございます。こういった方々をやはり建築士の区分に加えまして、今後住宅を主とする木造建築物の分野において、十分その業務範囲において活躍していただき、同時に、その資格を定めることによって技能水準の向上を図っていこうというのがその趣旨でございます。
#74
○薮仲委員 それでは、これも簡単にお答えいただきたいのですけれども、大体これに該当するといいますか、同名ぐらいの方がこの資格該当者になるのかなということがわかればお答えいただきたい。わからなければ結構です。何名くらいでしょうか。#75
○松谷政府委員 お答え申し上げます。現在、総理府の統計局の調査では、木造建築の事業所が工務店等を含めまして全国で十七万ございます。その関係者を全部総合いたしますと七十四万人程度になります。しかしながら、これは総数でございまして、これらの方々が全部木造建築士を志すわけではございませんし、従業員の方の中には建築士ではなくて、いわば事務的な仕事をおやりになっている方もいらっしゃいますが、一応参考に申し上げますと、そういうような状況でございます。
次に、二級建築士の受験の状況を分析してみますと、現在約八万人の方が全国的に受験をしております。そのうち約四割が七年の実務経験を有した方々でございます。その七年の実務経験を有した方々が小規模木造建築士の受験に関係のある方々ではないか。ただ、従来二級建築士を受験された方々でございますので、もちろんこれが全部小規模木造建築士にいくわけではございませんが、このたび新しい資格が設けられますと、そのうち半分程度がいくといたしまして、それからまた二級建築士の受験外で、それと同数程度の方が受験者として、大体三万人程度が初年度受験になるのではないか、対象になるのではないかというように考えております。
#76
○薮仲委員 試験が民間委託のような形で行われると私は思うのでございますけれども、試験そのものは厳正、公平であっていただきたいと思うのです。ただ、問題は試験の中身でございますけれども、それは大体どういうことを考えていらっしゃるのですか。#77
○松谷政府委員 試験の内容につきましては、小規模木造建築士の資格を定めました趣旨に基づきまして、木造建築物についての経験が十分反映できるような試験を考えたい。そのためには、特にむずかしい構造計算でありますとか、詳細な設計図でありますとかいうようなものは、試験の出題範囲からなくしまして、設計で言えば簡単な設計図、それから構造、施工等につきましても、従来の七年程度の実務経験を有する棟梁の方々であれば十分理解できるような内容の試験を考えるべきではないかと思っております。#78
○薮仲委員 ここは大臣にもちょっと最後にお答えを求めておきたいのですが、まず最初に局長に伺うのですが、大工、棟梁と言われる方は非常に経験を積んでいらっしゃる、技術的にすぐれていらっしゃる。御承知のように、いわゆる建築士法は設計、監理ですね。設計、監理が一級、二級建築士の資格でございます。現場でたたき上げて、いわゆる現場の監理監督、その現場で工事を行うというのは、設計、監理とは別な対象です。そうしますと、本来、法のたてまえからいきますと、木造建築士というものは、いわゆる木造建築の設計、監理ということが能力として可能な人に与えられる称号である。これは確かに法の上からいったら正しいと私は思うのです。ただ、いまいみじくも局長は、私さっきから何回か、わざとと言っては失礼なんですけれども、木造建築士の趣旨を伺った中で、経験とそこで磨かれた技術ということを繰り返しおっしゃった。これはやはり設計、監理じゃなくて、設計、監理は当然含まれますけれども、そこに経験と技術が裏打ちされている。現場でのとうといといいますか長年の実績が積み重なって棟梁の技術になっている。局長も御存じのように、棟梁と言われる方には六十歳、七十歳という年をとられた方がいらっしゃいます。でもあのかね尺一本でむずかしい屋根の勾配から円筒からひし形から何でもきちんとやってしまう。私はあのかね尺を見ていると、これは一体手品かと思うほど不思議に全部計算なさる。しかし、その方にいまのセンチメートルでの構造計算がどうのこうのと言ったらほとんどおできにならない方がいらっしゃるかもしれない。それから図面を引けと言ったってできないかもしれない。この天井にはどういうはりを使えばいいのか、この柱はどういうのを使えばいいのかということは、材料力学は全然御存じなくても、御自分の持っていらっしゃる経験から的確に材料を選んで絶対狂いのないお家をお建てになる。もう亡くなりましたが、私の知っている大工さんも名人と言われた方です。その方が建てた家は何十年たっても住んでいる方から喜ばれる。本当に〇〇大工に建ててもらったこの家はと言い伝えられるほどきちんといまだに狂いがこない。それは学問的な理論で裏打ちされたのじゃなくて、いまも局長がおっしゃられたように、長い経験に裏打ちされたすぐれた技術がりっぱな家をつくるわけです。しかし、そういう方がペーパーテストに向くか向かないか、これは私は非常に問題だと思うのです。さっきの法理論で、木造建築士はいわゆる設計、監理なんだから、そういう技術的なものとは別なんだということを言われますと、――ただ、さっきおっしゃられたように、大工、棟梁をフォローしよう、またそういう人に一定の社会的な資格を与えよう、こうなってきますと、いまの世の中は本当に経験が浅くても、浅いと言っても七年以上でしょうけれども、何十年とやった方よりも経験の浅い方がペーパーテストはうまくできる。しかし、一軒の家を建てさせてどっちがりっぱな家を建てるかといったら歴然と差が出てくる。しかし、資格の上ではこちらが取れて、経験豊かな方はペーパーテストに不向きだ。この点で私は、年齢とかその方がお建てになった過去の実績、こういうお家をお建てになったのだ、いままで一度もトラブルがなかった、あるいはまた世間で名人と言われる人だとか、そういう人にはこの際ある意味で救済といってはおかしいですが、新たにこういう資格をつくるのでしたら、長年建設業界で貢献なさったそういう方に特別、ペーパーテストは当然として、そういう経験とか知識、その方の持っているすばらしい技術に対して、設計、監理だけなんてそんなかたいことを言わずに、この木造建築士の資格を与える方向で試験の中身を御配慮いただいて、いま急にそういう資格ができる過渡的な措置といいますか、そういう意味でそういう方をフォローしていただきたい。そういう方にもなお一層自信を持って仕事をやっていただく。またそういう資格があると注文のあり方も違う。われわれが家を建てようというときに、そういう資格を判断の基準にする可能性もございますので、私はそういう点での御配慮を十分いただきたいと思うのです。局長と、これは大臣にもそういう御配慮をいただきたいと思いますので、お二人から御答弁いただきたいと思います。#79
○松谷政府委員 お答え申し上げます。試験の方法につきましては、先生ただいまお話しになりましたことを十分に考慮に入れながらやっていきたいと考えておりますが、書類試験以外でこれを行う方法についてはなかなかむずかしい点がございます。ただ、御趣旨のこともございますので、今後さらに検討いたしたいと考えております。
#80
○内海国務大臣 御指摘の点は大変ごもっともなことだと私も承知いたします。現実の問題といたしまして、別の例にたとえて言うと、無形文化財の指定を受けるような人でも、その道でペーパーテストを受けた場合に落ちるかもしれない、こういう極端な例もあり得る現在は世の中だと思います。したがいまして、いろいろな過去の経験、技術、こういったものも、その方がやってきた実績を勘案すれば十分見当がつく、技術的なものを評価できると思いますから、そういうような形をとれる特例といいますか、特別な道も開いて検討する余地があるのではないかというふうに考えます。若い方で、勉強だけしてペーパーテストは満点であっても、いざ建てるとなると経験がないし、なかなかうまくいかないということも十分考えられますし、ペーパーテストで落ちてても、そういう方もあるというので、いろいろ建設会社の請け負った仕事をやっておられれば、本当の一級建築士の方や何かがごらんになれば、この棟梁は大変腕がいい人だとかなんとかということはそれぞれわかっておるわけでございますから、そういったことも勘案しながら特例の道も開いていくべきじゃないかなというふうにも判断いたしております。これは今後の検討課題として大いに検討してみたいと思っております。#81
○薮仲委員 ただいま大臣がおっしゃったこと、私は大変ありがたいことだと思いますので、どうか十分御配慮をお願いいたしておきます。それでは、次に移らせていただきたいのでございますけれども、やはり建設業界の中で一番問題になりますのは、先ほど来申し上げた欠陥建築物あるいは違反建築物、それからトラブル、今度の士法の改正もそれが一つの大きなねらいの点だと私は思うのでございますが、私は、ここでちょっと何点か具体的に、というよりも、ここで指摘されていることをちょっとお伺いしたいのですが、大臣に対して建築審議会が五十八年の一月に答申を行っているわけでございます。この中でまず出てまいりますのが「建築士の業務に係る方策」として「適正な建築設計及び工事監理を確保し、建築士と建築主との間における紛争を未然に防止するため、建築士の建築主に対する報告義務等の強化、建築設計業務の責任の所在の明確化、工事監理の内容の強化充実、建築設計及び工事監理の業務基準の策定及び建築士に対する監督の強化を行うものとすること。」こうなっておるわけです。これは建築審議会が答申をしておるわけございますが、ここで私が問題にしたいのは、紛争を未然に防止するために、建築士の工事監理の内容の強化充実を図りなさいという指摘があるわけです。
それからもう一つは、行管の監査報告の中にこういう点がやはり指摘されておるわけです。「欠陥建築物の発生を防止するため、建築士による工事監理」、やはりここでも「工事監理」が出てきます。「建築士による工事監理制度の充実強化を図るとともに、一定規模以上の建築物に対しては、工事施工状況報告を徴し、これを活用して必要に応じた中間検査の重点的実施を図ること。」ここではいわゆる欠陥建築物をなくすためには、建築士による工事監理の制度の充実強化ということが出ている。
ここで指摘されておりますのは、建築士の「工事監理の内容の強化充実」あるいは建築士の「工事監理制度の充実強化」、いずれにしても監理の強化を言っているわけです。これが今度の建築士法改正の中でどのように具体的に取り入れられたか。いわゆる建築士の監理強化、これはどういうふうに今度の法改正の中で入っているか、ちょっとお答えいただきたいのです。
#82
○松谷政府委員 お答え申し上げます。ただいま先生の御指摘のように、建築物の質の確保を図るためには、建築士による工事監理の強化充実が重要であるわけでございます。このため、行政管理庁よりの指摘もございます。また建築審議会からの答申もあったわけでございます。このため、このたびの法改正につきましては、建築士の活用を図ることによって建築基準行政の合理化を図る、その中で、従来建築主事が検査を行ってまいりましたが、その検査を、建築士が工事監理をいたしました工事監理報告書を工事完了届とあわせて建築主事に届けますと、検査についてはこれを省略することができることとしております。また工事監理の強化充実のために、建築士の質の向上ということを目的といたしまして、建築士の研修等の実施を行いまして、その知識、技術の水準の向上を図ることとしておるものでございます。
#83
○薮仲委員 いまの局長の答弁でちょっとひっかかるのですよね、そういうふうな答弁ですと。と申しますのは、もっと具体的に聞きますと、いま申し上げた欠陥建築物あるいは違反建築物というのは、先ほど局長がおっしゃった単体規定の中にあるのか、主に集団規定の中で欠陥や違反があるのか、どっちに多いのですか。#84
○松谷政府委員 お答え申し上げます。一般的に言いますと、通称集団規定と言っておりますが、建物の敷地に関する規定あるいは相隣関係規定等の違反が建築基準法上の違反としては多うございます。
#85
○薮仲委員 そうですね。ということは、先ほどの局長の御答弁に私ひっかかるというのはそういうことでございまして、今度士法の中で建築士が許されているのは、先ほど来の御答弁にあるように、単体規定の中のごく一部だけなんですね。私が指摘しているのは、欠陥建築物や違反建築物というのは集団規定の方に出てくるわけです。それのあれは、どちらかというと建築主事の守備範囲の中に入ってきますよということなんです。そこで私は、ここで先ほど来申し上げたように、建築審議会の答申にせよ行管の指摘にしても、もう少し建築士というものの責任、社会的ステータスといいますか、社会的な地位というものを重んじてあげて、むしろ欠陥建築物とか違反建築物あるいは紛争処理に建築士というものがかかわり合いを持って、それを未然に防ぐようにしたらどうですかという指摘がここでなされているわけですから、私が今度の法改正の中にどういうように入っているかということをもう一回お伺いしますけれども、紛争防止のために、建築士は今度の法改正の中で多少でも入ったのか。それから欠陥建築物を監理するということで、具体的に今度の法改正の中で取り入れられた点がございますか。#86
○松谷政府委員 お答え申し上げます。ただいま先生の御指摘のことは大変重大なことでございます。このため、建築士を活用いたしまして、こういった集団規定を中心といたしました建築物の違反を未然に防止するということは大変重要なことと存じますが、このたびの法改正の中では、特にこれにつきましての改正はしていない。今後さらに検討いたしまして、行政指導も強化すると同時に、あわせて法改正も含めまして、今後とも十分検討をしてまいりたいと考えております。
#87
○薮仲委員 それではちょっとここまで聞いていいかどうか、時期というものがあるのですが、建築士の責任というものについてどう認識するかということでございますけれども、設計、監理ということが士法の中でうたわれているわけですね。そうすると、欠陥建築物とか違反建築物、こういうものの発生について、建築士は私は知りませんと言って責任を免れることができるかどうか、この辺ですね。もう少し具体的に言いますと、たとえば建築士は、設計図書を書きました、しかし施工業者が設計図書どおりやりませんでした、こういう場合が出てくるわけですね。そうすると、いわゆる建設業法で言うところの現場の主任技術者が責任を負うのか、設計者は責任がないのか。この監理責任という問題は、やはりずっと出てくるんじゃないかと私は思うのです。
と同時に、時間が余りなくなってきたので続けて申し上げますと、局長、ここにこうあるのですよ。建築士法十八条の「業務」というところにあるわけです。「建築士は、工事監督を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、もし工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。」これだけなんですよ。これは簡単に言えば、私の書いた図面どおり施工業者はやっていません、これじゃ困りますと業者に注意しました。直さない。たとえば鴨田先生が施主であったら、施主のところへ行って、施工業者がやりません、これで終わりなんですね。これでわざわざ一級、二級といって社会的な責任も与えられた建築士が、法律の上では設計、監理という言葉がありながら、ここへ報告をすれば終わり、これで責任が免れるというようなことでよろしいのかな、どうかなと思うのです。
いま一連にずらっとまとめて申し上げましたけれども、この辺での建築士の建物についての責任をどこまで持たなければならないか。もしもいまの十八条でいけば、報告すれば免責になるというのだったら、法律そのものが単なる報告事項で免責になるのでしたら、設計、監理とは何だ。あるいはいままで行管の指摘したことや審議会の指摘したことは何ら役に立たなくなってしまう。この辺、トータルしていかがでございましょう。
#88
○松谷政府委員 お答え申し上げます。ただいま先生が御指摘になりましたように、建築士法第十八条の三項におきましては、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、工事施工者に注意を与え、その旨を建築主に報告をするということでございます。なお、十八条の二項では、当然のことでございますが、建築士が設計を行う場合におきましては、「これを法令又は条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならない。」こう定めております。このたびの法改正によりまして、従来建築士が建築関係の法律、すなわち建築基準法等に違反をして設計等を行いました場合、罰金刑等に処せられた場合につきましては、これの免許の停止等が行えるということでございましたが、このたびの法改正につきましては、建築基準法等の法令に違反したことが明らかな場合につきましては、これを直ちに戒告等の処分が行えるということとしております。ただ、御指摘のとおり、社会的に認められた資格である建築士が十分その責務を全うし、建築物の質を向上し、あるいは欠陥建築物をなくすというために、基本的な方向でさらに検討する必要はあろうかというように考えております。
#89
○薮仲委員 これは局長、私の申し上げたことを、私はもう少しバランスをとって考えなければいけないなと思いつつ質問しておりますので、その辺はよく含んでお考えいただきたいのですけれども、私は、少なくとも建築士それから建築主事、施工業者、一体どこが違反建築あるいは欠陥建築に責任があるのかということで、一方的に建築士に責任を持てという言い方をすべきじゃないと思うのです。それは十分御理解いただきたいのです。ただ、この十八条の第三項でいきますと、免責になってしまうのですよ。私は施工業者にきちんと図書どおりやりなさいと言いました、施主にも言いました、この行為があれば不法じゃないのですね。自分の業務内容はきちんとやったのです、私はやったけれども施工業者がやらなかった、施主にも報告しました、これは免責になってしまうのです。ところが、いま局長は前の二項にありますと言うが、三項でくると免責になってしまうのです。ですから、私は、少なくともここにもう一つこの十八条がこれでいいのかどうかということは将来検討していただきたい。少なくとも、その違反事実について建築士が知っておったならば、監督官庁、行政官庁にそれを報告する義務がちょっとあると、これは非常に事柄がスムーズにいくのではないか。たとえば、私が施主です。設計図書どおり施工業者はやっていませんと私が言われても非常に困るわけです。どこが建築基準法に違反しているのか、どこがどうなのかということが私はわからぬわけです。そのときに、やはり建築士資格を持った方が監督官庁の方へ違反建築については報告する義務があるということがもしもこれにつけ加えられておりますと、施主は非常に救われますし、また施工業者も、今度は監督官庁から、建築業法の中であなたは法制のもとに違反しておりますよときちんと指導されるのです。今度は建築業法で指導できる。そうすれば、違反建築とかそういうものがなくなってくるのじゃないかと私は思うわけであります。ここで一遍に建築士に一切の責任を持てとかどこが悪いというのじゃなくて、そういうものを積み重ねながら、やはり業界全体が自粛自戒して、みずから欠陥建築や不法建築というものをやめる何かの手がかりになるような方向性というものがどうしても必要なんじゃないか、こう考えておるのですね。いまここでこうしなさいということじゃなくて、私の指摘していることは、今後の問題解決のための一つのあり方として御検討いただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。
#90
○松谷政府委員 先生の御指摘、まことに当を得た御指摘であろうかと存じます。ただ、建築基準法の九条、すなわち違反是正につきましては、一応違反建築の責任者である建築主に対して措置が行われるよう規定をしております。また工事施工者についても、その工事が違反である場合については、工事の施工の停止を命ずることができるということで、現行法では、建築士と施工者、建築主、その間の十分な連携を考えた上での違反改善措置というものが、先生の御指摘のように、万全なものとは考えられないと思います。したがいまして、これらにつきましては、今後とも十分検討してまいりたいと思います。
#91
○薮仲委員 もう一つだけ具体的に言っておきますと、いま局長のおっしゃったのは、設計者がいて、建築設計事務所がいて、施工業者がいて、施主がいるという三角関係でお話しになった。これは理想的な形なんです。ただ、もっと具体的な面で困るのは、普通二級建築士事務所兼工務店がある。ということは、自分で図面を引いて職人さんを集めてうちをお建てになるのです。そうすると、設計者と施工者と一人でおやりになる。これは大きな会社も全部そうです。設計部と工事部と分かれておりますから、大きな建設会社でも形は同じです。たとえば、わかりやすく言うと、一人の私個人が二級建築士です。そして建築事務所を開いて、大工さんからいろいろな人を集めてうちを建てます。設計士が自分で建てるわけですから、今度は鏡に向かっておまえは違反しているぞと言って施工業者に報告します。今度は私は施主には報告しないと思うのです。余りよくないことというのは報告しにくい。そこで、たとえば建築士に上級官庁なり行政官庁、監督官庁に報告しなさいよということになると、やはり二級建築士で工務店をやっている私はじくじたるものがあるわけですね。やはり報告しないと、いま禁錮だとか罰金とかおっしゃったが、事実がはっきりしなければわからないわけで、ですから、やはり自分で報告しなかったという責任は出てくるわけですから、これは一つの改善の方向にはなるのじゃないかなと思いつつ言っているわけでございますから、これは将来いろいろと御検討いただきたい。きょうはその程度にしておきます。
次に、これも私は非常に大事だと思うのでございますが、中間報告、中間検査という問題でやはり指摘されているのがあるわけですね。これは私やはり行管の指摘ですから非常に大事だなと思うのです。「適正な工事施工が図られていない欠陥のある建築物が工事完了時点では発見されないまま利用され、数年後に社会問題となる場合が多い。このため、マンション等一定規模以上の建築物を対象として中間検査が必要とされているが、」この次です。現行の「建築基準法においては中間検査の実施義務規定がないこと、建築主事は建築確認に係る審査事務等に追われ中間検査を実施できる体制にはないこと等から、中間検査は、住宅金融公庫の融資住宅について受託業務として実施しているものを除いてほとんど行われていない。」となっているわけです。やはり私は欠陥マンションとか欠陥住宅を解消するためには中間検査が必要なのじゃないかと思います。現行の建築基準法においては実施の義務規定がない。これは私は、いわゆる行政指導等の中で、こういう報告、中間検査というのは、やはり今後必要な事柄ではないかと思うのでございますが、その辺のお考えはいかがでしょう。
#92
○松谷政府委員 申し上げます。先生の御指摘のように、中間検査につきましては、建築物の質の確保を図るという見地あるいは不適合な建築物をなくすという見地から有効な方法であろうと考えております。ただ、中間検査につきましては、その建築物の規模等によっては、相当多数の行政職員を投入しなければならない。たとえば極端な場合、五十階建ての建築物の場合、各階ごとにコンクリートを打たれまして、それを配筋検査をするということになりますと、五十回行かなきゃならないというようなことで、従来からこの中間検査の重要性については十分認識していたわけでございますが、その実施についてなかなか思うようにいかない点があったわけでございます。これにつきましては、建築士の工事監理制度をさらに強化充実させることによって、これと同様の効果を図るようなことはできないかということで、現在検討を進めておるところでございます。
#93
○薮仲委員 ごく簡単にあと数点聞いて終わりますから。局長に基本的なことをお伺いしたいのですが、家というのは具体的には雨、風をしのぐところだと私は思うのです。雨、風をしのげないようなのは家と言わないと思うのです。雨、風が吹き込んでくるのだったら表に傘差した方がいいのであって、やはり家というのは雨、露、風をしのぐから家と言うのだと思うのです。私は家というのは雨が漏らないというのが必要最小限必要なことじゃないかと基本的に思うのです。その点、局長は私と同じ考えだと思うのですけれども、家を建てて、普通木造ですと三十年とか、住宅金融公庫で二十五年とか。それが現に三、四年で雨漏りするのがあるわけです。これは私理由のいかんを問わず欠陥だと思うのですね。家とは言いがたいのじゃないかと思うのです。雨が漏ってくるような建物を建てるのではとてもよくないと思うのです。新築して三、四年ですよ。雨が漏ってくる。これは住宅としては余り好ましい住宅じゃないと思うのです。局長のお考えはいかがでしょう。
#94
○松谷政府委員 先生と全く同じ考えでございます。#95
○薮仲委員 全く同じだということですね。それでは、次のことをお伺いします。建築物のアフターケア、これはいろいろトラブルがあるわけです。民法の問題がございます。それから宅建業法ではいわゆる瑕疵担保の特約がございます。そういうのは取っ払って、私はいま三年、四年ということを申し上げましたが、建築物のアフターケアというのは、いわゆる躯体にかかわるたとえば雨漏れ、これについては局長は大体何年ぐらいまでは漏らない家があたりまえだとお考えですか。これは重要な質問ですよ。
#96
○松谷政府委員 確かに、先ほどから先生御指摘のように、建築物で竣工後直ちに雨が漏るような建物は欠陥建築物であろうかと存じます。ただ、建築後一、二年で雨漏れが発生する事例が比較的多いわけでございます。これはやはり設計なり施工なりが十分に行われていなかったのではないか、そこに瑕疵が発生しているというように考えます。一般的には、少なくともどの程度の期間は雨漏りが発生してはぐあいが悪いかと言われますと、これはできるだけ長く発生しない方がいいのでございますが、通常中、高層の住宅の修繕実態を見ますと、大変幅が広くて申しわけないのでございますが、大体十年から二十年の間で防水関係の工事の改修を行っております。したがいまして、少なくとも十年は雨漏りがするのは好ましくない。十年か二十年の間で改修を行いながらできるだけ長期間雨漏りしないようにしていくということであろうかというふうに存じます。#97
○薮仲委員 大変結構な御答弁でございます。それで、宅建業法の四十条にいま申し上げた瑕疵担保特約があるわけでございます。これは二年ということが通常行われているわけでございます。民法では一年ということになっておるわけです。いま局長が十年とおっしゃっていただいて、私はほっとした一人でございまして、十年以内に起きるトラブルについて、いま宅建業法の中には紛争処理の手だてがございません。きょうは指摘だけしておきます。私は宅建業法の中で紛争をどうやって解決するかということは非常に重要だと思います。特にきょう指摘しておきたいのは、不動産のいろんな取引のトラブルがいろんな形で出てまいります。これは私は今後ルールづくりというものはどうしても御検討をいただきたい。これから中古住宅や何かが出てくるわけでございますけれども、こういうもののトラブルを解消するためのルールづくりを建設省は十分御検討をいただきたいというのが一つでございます。それから、これは大臣にちょっと耳にとどめておいていただきたいのですが、日本の国だけが大学に不動産学部がないのです。アメリカあるいは韓国等には不動産学部があるわけです。いわゆる不動産学部がないということは、今後日本の不動産の健全な育成のために、私は非常に遺憾なことだと思うのですね。アメリカやあるいは韓国でもほとんどの大学に不動産学部を設けて、不動産というもののステータス、社会的な地位をどんどん上げているわけです。それが業界の良識となって不正な取引や要らざる紛争をなくしてくると思うのです。いままでどういうことがトラブルになっているかも整理されていないものですから、やはり不動産の紛争処理のルールづくりは、大学に学部を設けること等も含めて、大臣にお心にとどめておいていただきたいと思うのです。
それから、これは聞くことにちょっとじくじたるものがあるのですけれども、局長にお伺いします。これは隣人訴訟の嫌がらせになるわけですが、国民はどんな人でも裁判を受ける権利がありますよと法務省が指摘したのです。いまの不動産トラブルの中に仲裁というやり方があるわけでございますけれども、この法務省の見解では、「裁判を受ける権利は、どのような事実関係であっても、自己の権利又は利益が不当に侵害されたと考える場合には、裁判所に訴えを提起してその主張の当否についての判断及び法的救済を求めることができるとするものであり、国民の権利を保障するための有効かつ合理的な手段として近代諸国においてひとしく認められている最も重要な基本的人権のひとつである」こうなっているわけです。
ただ、これは計画局長のところだと思うのですけれども、いろいろなトラブルが起きて仲裁という形をしたときには、裁判所はそれを却下しちゃうのですね。仲裁によってやってしまう。これは裁判所が却下するのですけれども、こういう法務省のだれでも裁判を受ける権利というものは基本的人権で大事だということと、建設省の法制の中で、紛争に対する仲裁というものは、裁判と同等である、あるいは裁判を受ける権利をそこでなくすということになっているのですけれども、この辺は多少いかがかなと思うので、余り深刻な御答弁要りませんから、簡単にさらっとお答えいただきたいのです。
大臣には先ほどのことについて御見解をいただいて、私は質問を終わります。
#98
○永田政府委員 お答えいたします。国民すべてが裁判を受ける権利を持っているのに、建設業の紛争解決の一手段として仲裁契約をやった場合は、裁判に持っていっても却下される、いかがなものであろうか、こういうお話でございます。
もともと仲裁という制度は、民事訴訟法の中でも、紛争の当事者がそれぞれ合意して、仲裁人たるべき人を信頼し切ってやる場合には、一つの紛争の解決の手段として古くからある話でございますし、どこにでもある話でございます。建設業の紛争の場合でも、少なくとも仲裁契約がある場合は、そういう旨を言って指導しているわけでございますし、かつ仲裁人を選ぶ場合に、名簿で約百人仲裁人がいるわけでございますが、こういうものについて、当事者にどなたになっていただきますか、お二人で相談して決めてください、こう申し上げて選んでいただいております。
ただ、紛争があるわけですから、仲裁人が直ちにぴしゃっと両当事者で合意することはございません。その場合は、常設機関である紛争機関で、それではこういう人にいたしますというやり方でやっております。ただ、公的機関で選んだ仲裁人が特別な事由がありまして、たとえばあの人は一方の当事者とこういう関係があるから困るな、こういう話があれば、それも聞き入れられるというシステムもございますので、いままで私ども紛争を仲裁で取り扱ってきておりますが、それほど問題になった例は余りないというふうに理解はいたしておりますが、御趣旨十分考えて、今後の運用に対処していきたい、かように思います。
#99
○内海国務大臣 先ほど先生から、アメリカ、韓国等において不動産学部という学部が大学に設置されておるというお話を初めて承りまして、大変示唆に富んだお話だと承りました。日本の工学部でも、経営工学とか生産工学とか、最近は新しい部門もいろいろできたようでございます。私も、十年ぐらい前ですけれども、文部政務次官をやりましたときに、大学に一つの学部を新しく設置するということは、いろいろ抵抗があるといいますか難色がございまして、当時はなかなかむずかしいような状況であったわけでございます。しかし、アメリカ並びに韓国等でそういうものが現に大学にあるということで、御指摘をいただいたこの時点から、そういった面で関係当局ともいろいろ話し合いをしてみて、現在日本人の生活の中で一番重要な課題となっておる不動産の問題についても、これが工学部に所属するものか何学部に所属するものか、ちょっと限定的なことは申し上げられないにいたしましても、大いに研究する課題の一つだなと先ほど来承っておるわけでございます。前向きに取り組んでみたいと考えております。#100
○薮仲委員 終わります。#101
○松永委員長 小沢貞孝君。#102
○小沢(貞)委員 ここでずっと聞いておらなかったので、重複する質問もあるかと思いますが、簡単なことを二、三質問させていただきます。まず、建築士法関係ですが、小規模木造建築士の資格を新しく設ける、こういう目的は一体どういうところにあるのでしょうか。
#103
○松谷政府委員 お答え申し上げます。建築士法におきましては、木造建築物について延べ面積百平米を超えるものの設計、工事監理を一級建築士及び二級建築士に行わせることとしております。しかしながら、従来から木造建築物の生産を支えております大工、棟梁の方々は、木造建築物の設計、工事監理については必要な知識あるいは技能を有しているわけでございますが、二級建築士の業務範囲である鉄筋コンクリート造あるいは鉄骨造等の建築物についての知識が乏しいということが通常でございます。このため、建築士の資格を取得するのに不利な状況に置かれているという実情がございます。
一方、建築士法制定以来三十年たちまして、建築物は大規模化してまいりました。木造住宅につきましては、その設計、工事監理に資格を有する延べ面積百平方メートルを超えるものは約四二%となってきております。このため建築士制度を整備することといたしまして、従来の建築士の業務範囲の一部を区分をいたしまして、百平米から二百平米までの木造建築物を業務対象とする資格を設けまして、あわせて建築確認、検査の合理化に資そうとしているものでございます。
#104
○小沢(貞)委員 この資格試験はどんな内容でどんな方法でやりますか。#105
○松谷政府委員 試験の内容につきましては、その判定する知識及び技能が小規模な木造建築物に関するものであるということ、それから受験者の相当部分を占めると考えられます大工、棟梁の方々の取得している知識及び技能が、工事現場等における実務を通じての経験を積み上げ、それに裏打ちされたものであるという側面が強いこと等を考慮いたしまして、こういうような観点からその試験内容は決められるべきであると考えております。したがいまして、構造力学、構造計算あるいは複雑な建築設備の設計というようなものにつきましてはその試験内容としない、また詳細な設計図の作製というようなものも試験内容としては適切ではないであろうと考えているわけでございます。また、方法につきましては、小規模木造建築士が従来の二級建築士の業務分野を区分いたしましてこれを行うことができるものとして設けられているものでありますので、二級建築士と同様な試験方法で行うことが適切ではないかと考えております。すなわち、学科につきましては、ごく簡単な筆記試験を行う。しかしながら、木造建築については十分に知識及び経験が判定できるような筆記試験を行う。また設計、製図等についても同様のことを行うということが必要ではないかというように考えております。
#106
○小沢(貞)委員 これを見ると、「建築に関して七年以上の実務の経験を有する者」、こうあるわけです。いまの答弁でちょっとはっきりしなかったのですが、お大工さんを七年経験した者に構造力学だ、材料力学だ、それ強度計算だ、こういうむずかしいことを試験しても、それはとうてい高ねの花で、合格するはずはないと思うのですが、そういうむずかしいものは学科試験には出さぬわけですか。それから、いま一つ、たしか私の経験では、私が県会をやっていた時分ですから、いまから三十年ばかり前ですが、二級建築士は、最初のときには、お大工さんで何年経験している者にはほとんど試験なしで与えたような記憶があるわけですが、それに近いように、七年以上の実務の経験ある者には、これは試験は一応やるでしょうが、小規模木造建築士の資格を与えるかどうか。
#107
○松谷政府委員 最初の御質問は、このたびの小規模木造建築士につきまして、試験内容として複雑な構造力学あるいは構造計算等の筆記試験を実施するのかというお尋ねでございますが、さきに申し上げましたように、そういったような筆記試験は行わないことといたしたいと考えております。それから、先生のお話のように、以前二級建築士が、制度が出発をいたしましたときに、経過措置で筆記試験なしにやったような事例がございますが、それは従来自由に設計をされていた方々が、新たに建築士法の制定によって資格を取らなければ設計、監理ができないということになったために、経過措置としてとったものでありますが、このたびの法改正は、そういった従来自由に行われていた方が、このたびの法改正で資格を取らなければ設計、監理ができなくなるというものではございませんので、このたびにつきましては、そういった経過措置は考えておりません。
#108
○小沢(貞)委員 このことに関して、日本建築士事務所協会連合会から、そういうものは必要がないというような趣旨の、二級建築士、一級建築士合わせて五十九万人近くいるから、それで十分ではないか、こういうように要するに反対の要請が出ているわけです。これにはどういうようにこたえるでしょうかね。#109
○松谷政府委員 お答え申し上げます。このたびの小規模木造建築士の資格を定めました理由につきましては、さきに申し上げたとおりでございますので省略をいたしますが、現在の一級建築士あるいは二級建築士の業務範囲を、新たに小規模木造建築士の資格を設けることによって制限をするというものではございません。従来どおりの業務範囲で、従来どおり一、二級建築士はその業務を行うことができるものでございますので、これについては特に、そういった御要請もあるということは存じてはおりますが、必ずしもそういう要請に応じなければならないとは考えていないわけでございます。
#110
○小沢(貞)委員 この資格を持つ者が設計及び工事監理ができる対象を二百平米以下の木造建築、こういうようにしておるが、私たちの地方もそうですが、農村、漁村においては二百平米以上の一般住宅も決して少なくはないわけで、二百平米では狭過ぎるのではないか、このようにわれわれも考えるわけで、これを三百平米程度まで引き上げてはどうか、こういう有力な意見があるわけであります。これを三百平米まで引き上げたとしたら、何か問題点が出てくるでしょうか。#111
○松谷政府委員 小規模木造建築士の業務範囲を延べ面積で二百平方メートル以下に限りました理由は、小規模木造建築士として主として想定されます大工、棟梁の方々の経験的な技術力を考慮いたしまして、二百平米程度までがより合理的ではないかと考えたことが一つであります。それから第二に、木造建築物全体に占めます延べ面積二百平米以下の木造建築物の件数の割合、棟数の割合は、約九七%にも上るという推計がございます。したがいまして、二百平米以下に限りましても、ほぼ木造建築物をカバーできるということで、こういった業務範囲を定めたものでございます。
#112
○小沢(貞)委員 それはまた後でお尋ねするとして、小規模と、こういうようにわざわざくっつけた理由がわれわれわからないわけで、大規模とか中規模木造建築士という言葉がない以上、どうして小規模とくっつけたか、その理由をちょっとお尋ねをしたいわけです。#113
○松谷政府委員 木造建築物につきましては、ただいま申し上げましたように、件数におきましては、その大部分が二百平方メートル以下の規模のものでございますが、ただ実態といたしまして、三千平方メートルまでは建築基準法上木造の建築物が建築でき、また相当大規模な建築物が木造でつくられていることも事実であります。したがいまして、件数としてはわずかではありますが、一応大規模の木造建築物、すなわち二百平方メートルを超え三千平方メートルに至る大規模の木造建築が存在している実情を考慮いたしますと、まあ二百平方メートル以下の木造建築物を業務範囲とする方々の資格の名称としては、小規模木造建築士が適切ではないかと考えたものでございます。#114
○小沢(貞)委員 さっきの二百平米、三百平米、率直に言って裏側の理事会の話では、これは大臣にお尋ねするけれども、二百を三百に直そうじゃないか、小規模は大規模、中規模がないのだから取っていいじゃないか、こういう修正案をほぼ合意しているわけです。みんな合意したら、これは修正をしてもいいですね、大臣。#115
○内海国務大臣 委員会で皆さん方の御審議でお決めいただくことで、それで決まればやむを得ないと思っております。#116
○小沢(貞)委員 わかりました。建築士の試験を指定試験機関に実施させることにしたのはどういうわけでしょうか。これは何か行政簡素化のためですか。
#117
○松谷政府委員 先生のただいまの御指摘のように、行政事務の簡素化というのが大きな目的でございます。#118
○小沢(貞)委員 中央指定試験機関、都道府県指定試験機関、こういうようになっているが、具体的にはどのような機関を考えているのでしょうか。具体的にちょっと教えてもらいたい。#119
○松谷政府委員 指定試験機関の要件といたしましては、このたびの建築士法第十五条の三に定めておりますように、第一に、職員、設備等が建築士試験事務の適正かつ確実な実施のために適切なものであること、第二に、経理ないしは技術的な基礎を有するものであること、第三に、試験の実施が不公正になるおそれがないこととしております。具体的には、そういった要件を十分に備えているものとして申請してきた者のうちから一つを選び指定することとなりますが、中央の指定試験機関としては、既存の団体であります財団法人建築技術教育普及センターも有力な候補の一つとして考えているものであります。
#120
○小沢(貞)委員 これらの機関が試験を行う場合に、試験内容の適正や試験の公正というものを確保しなければならないが、どのようなぐあいにしてチェックをしますか。#121
○松谷政府委員 お答え申し上げます。指定試験機関が行う試験内容の適正また試験の公正さを確保するために、このたびの改正法、建築士法第十五条の五の第一項によりまして、指定試験機関の役員の選任及び解任については、建設大臣の認可を得ること、それからまた同法第十五条の八の第一項によります試験事務規程につきましても認可を得ること、同じく同法第十五条の九の第一項によります事業計画及び収支予算等につきましても認可を得ることなど必要な監督を行いますとともに、その指定試験機関の役員、職員等に対しましては、特に秘密保持義務を課す。また試験委員に対しましては、厳正を保持し、不正の行為のないよう義務づける、これは建築士法第十五条の七の第二項でございますが、としております。さらに役員及び試験委員を公務員とみなして刑法等の適用を行うということにしておりまして、指定されました試験機関が試験を適正に行うよう確保しているところであります。
#122
○小沢(貞)委員 建築士事務所の登録の有効期限を三年から五年に延長した。これは行革のためだろうと思うのですが、その弊害はないでしょうかね。#123
○松谷政府委員 御指摘のように、第二臨調の最終答申にございますように、その登録有効期間を従来三年でございましたものを五年に延長したわけでございます。これにつきましては、従来建築士事務所の登録状況あるいは実態調査等によりまして、三年を五年にいたしましても、特段の支障を生じることはないと考えられます。したがいまして、臨調の御答申に沿いまして、有効期間を五年に延長したわけでございます。#124
○小沢(貞)委員 それでは次に、建築基準法の関係に移らせていただきますが、規格化されたプレハブ住宅等を建築確認の対象から外した理由は何でしょうか。#125
○松谷政府委員 プレハブ住宅につきましては、建築材料及び構造方法が一体として規格化されております。このため、建築基準法令の規定に対する適合性につきまして建設大臣があらかじめ審査しておりますと、個々の確認につきまして再度建築士が審査する必要はないと考えられます。したがいまして、違反の生じることもないと考えまして、このたびの規定を設けたわけでございます。#126
○小沢(貞)委員 建築検査の対象から外したのも同じことですか。#127
○松谷政府委員 同様の趣旨でございます。#128
○小沢(貞)委員 われわれ行政手続の簡素化は大賛成ですが、建築検査の対象からも外すことで不良建築物の増加を招くおそれはないか。これを防ぐためにはどんな方法を考えているか。#129
○松谷政府委員 検査の合理化につきましては、対象を小規模な建築物に限定をしております。また従来から違反の少ない単体規定の一部に限っております。そういうようなことと、さらに建築検査の合理化に当たりましては、工事完了届けに工事監理者であります建築士が行いました建築工事の監理及び施工の結果の概要書を添付させるということとしております。これによりまして、建築士が設計図書どおりに施工されていることを確認したものに限るとしておりますので、検査の合理化をこのたびの改正どおり行いましても、建築物の安全上支障はないと考えております。#130
○小沢(貞)委員 それでは最後に、現在でも違法建築物に対する改善命令は必ずしも励行されていないと聞いておりますが、違法建築物をなくすため、これからどのような対策を講じようとしているか。#131
○松谷政府委員 違反建築物の発生件数は少しずつ減少をしてきておりますが、なお昭和五十六年度におきまして二万五千件を超えるということで、相当数発生している状況にあります。このため、違反建築物の是正につきましては、まず行政庁による是正の行政指導を行い、これに従わない場合には、建築基準法の第九条に基づきまして、違反建築物の工事施工停止、使用禁止、除却等の是正命令をやる。またこの命令を履行しない場合につきましては、行政代執行、場合によりましては告発という措置を講ずることとしております。これらの措置によりまして、違反建築物をできるだけ少なくするよう考えていきたいと思いますが、なお、行政指導といたしましても、違反建築防止週間等によりまして、国民に対し建築基準法の周知徹底を図る等の措置を行いまして、こういった違法な建築を防止する等の措置を強化していきたいと考えております。#132
○小沢(貞)委員 時間短縮で、以上で終わりであります。#133
○松永委員長 瀬崎博義君。#134
○瀬崎委員 先ほど来の同僚の質問に重ねてお尋ねすることになりますが、まず、小規模木造建築士の制度の創設を考えるに至った経緯及びこの木造建築士を創設しようとする最も主要な目的は一体どこにあるのか、お尋ねをいたします。#135
○松谷政府委員 お答え申し上げます。先ほどから御説明を申し上げておりますように、従来建築士につきましては一級、二級の建築士がございまして、二級建築士につきましても、その業務範囲といたしましては、木造建築物のみでなく、鉄筋コンクリート造の建築物あるいは鉄骨造の建築物等を業務の範囲としておるわけでございます。しかしながら、木造建築物の設計、監理につきましては、従来その木造建築物等をもっぱらその業務の範囲としております大工、棟梁の方々が設計、監理を行っております。ただ、こういった大工、棟梁の方々は、鉄骨造建築物や鉄筋コンクリート造建築物につきましては、十分な知識、経験等がないということで、結局受験上の問題もございまして、試験出題等の問題もございまして、建築士の資格を取得できないというような状況がございました。このたび、そういった実情を十分勘案した上で、こういった大工、棟梁の方々が木造建築物については一定の資格を有するのだと、それに基づいて業務範囲を定め、そういった建築物の設計、監理を行うよう定めることとしたものでございます。
#136
○瀬崎委員 いまの答弁を整理すれば、結局りっぱな能力は持っているのだけれども、しかし、もっぱら木造をその業務範囲としているために、木造以外の部分についての知識もということを求められるとなかなか二級建築士の資格が取りにくいので、木造に限って、大工さんや棟梁さんの能力を大いに生かすようにしようという趣旨と承まわりました。だとすれば、名称もやはりもっぱら木造を業務とすることをあらわせばよいのであって、頭にわざわざ小規模をつける必要はない。それからその業務の範囲としても、木造に関してはできるだけ取り扱いの範囲を広げておいてあげる方が、いまの局長の答弁の趣旨にも合致すると思うのですね。ですから、大臣にも、重ねてなんですが、私ども共産党も積極的に、小規模という文字は取り消すべきだし、それから業務の範囲は二百平米ではなくて三百平米にすべきだと考えて、修正案ももちろん準備をしておったのですが、今回超党派でこれが成立する運びになった。それにやむを得ず従うというのじゃなくて、そもそも建設省がこの木造建築士の創設を考えた趣旨からいっても、積極的にそういう委員長提案に従う、そういう決意を示してもらうべきだと私は思うのです。大臣、答弁を求めます。〔委員長退席、鴨田委員長代理着席〕
#137
○内海国務大臣 法案を出しておる当事者といたしましては、御趣旨の点は十分承知して、先ほどのようなお答えを申し上げたわけでございまして、積極的に賛成するというような態勢をとっておるなら、最初からそういうふうにして出すわけでございまして、国会の論議でそういうような結論に満場一致でお決めいただくということであれば、政府の方もそれは喜んでお受けする、やむを得ないと思いながらも喜んでお受けする、こういうことでございます。#138
○瀬崎委員 まさにそこにこそ国会審議の重要な意義があるわけなんですね。議論を尽くしている間に積極的な意義が見出されて、それには政府側もみずからの提案にこだわらず、積極的に意義のあることには大いに賛成していく、そういう趣旨と理解しておきますが、こういう点は今後委員会審議では大いに活用すべき問題だと思うのですよ。そこで、これも重ねてになりますが、今度は建築士の試験を民間へ移すことにしようというのでありますが、その最大の要因は何なんですか。
#139
○松谷政府委員 建築士の試験につきましては、建築士の受験者が非常に急増をいたしまして、たとえば一級建築士に関して申し上げますと、昭和二十七年の受験者三千有余に対して、昭和五十六年度の受験者が八万人を超えるという状況で、二十倍を超えるような状況になってきております。このため、試験につきましては、各地方公共団体の御協力を得ながら実施をしておりますが、地方公共団体では、もう試験場の確保も十分でない、ままならない。また当然試験につきましては土曜、日曜等の休日を利用するということになりますが、休日の場合の職員の手当て等も十分ではない等々のことで、建築士の試験が非常に厳しい状況にあるわけでございます。これ以上受験者が増加してまいりますと、もうとうてい行政的に国が直接試験を行うということは非常にむずかしい状況になっている。こういうような状況でございますし、片や第二臨調の御答申におきましても、試験の事務というのは非常に定型的な行政事務であるから、そういった定型的な行政事務につきましてはできるだけ民間に委譲をして、指定試験機関制度等を導入して、民間の活力を活用することが適当であるというような御答申もございます。そういうような観点で、このたび試験事務等につきまして指定試験機関制度の導入を図ることとしたものでございます。#140
○瀬崎委員 いま局長は、行政機関が直接試験をやるいまの制度の困難さ、受験者の増大に伴う困難さについて、試験場の確保が困難だ、それから休日を選ばなくてはいけないが、その休日の職員の手当が十分に出せないのだと、こうおっしゃったでしょう。これは民間に移行したら試験場の確保が容易になり、職員の手当を払わなくてよくなるということなのでしょうか。何かそこに本質的な違いが起こりますか。#141
○松谷政府委員 ただいま休日等の試験要員の手当てと申し上げましたのは、手当てをする、すなわち確保するという意味で申し上げたものでございまして、国がやります場合には地方公共団体の職員の御協力を得ておりますが、これは次第にその確保がむずかしくなっておるということを申し上げたものでございます。#142
○瀬崎委員 しかし、公務員の自覚を皆持っておるわけですから。しかも、しょっちゅう、日曜日ごとにあるわけではないし、たまにあるわけですから、私は公務員を休日に確保することが困難だと言われる理由は納得しかねるのです。やはり試験制度というものは、ただ単に、臨調が言ってきたからとか、行政簡素化の手段として考えるのは間違いで、やはり試験問題は適正でなければならないし、また問題が漏れたりしないようにしなくてはならないし、審査も公正でなければならないでしょう。そういうきちっとした試験制度はどうあるべきかという観点から問題は考えなければならないと思うのですが、大臣どうお考えですか。#143
○内海国務大臣 御指摘のようなことも十分あるかと思いますが、何にいたしましても、この制度なり建築士の方々にある意味においては権威を持っていただくというような意味でありますし、いろいろ行政改革、こういったようなことで行政の簡素化、こういうところの趣旨等も踏まえまして、結局は民間の御協力をいただいて、しかもその試験の委員といいますか審査というような方面にタッチされる方々にも、それなりの十分な見識といいますか、そういうものを身につけていく意味におきましても、決して悪い制度ではないのじゃないかな、こういうふうに考えているわけでございます。#144
○瀬崎委員 権威を持たせるという意味で言えば、公的機関が行うにこしたことはないと私は思うのです。いまの答弁からいっても、結局後段部分の臨調、行革の方にウエートを置いたから民間委託になっていったのじゃないか、こう理解せざるを得ないのです。そこで、いま対象と考えている民間団体、さっきもちょっとお話があったのですが、どういう団体を考えているのですか。
#145
○松谷政府委員 指定試験機関の要件といたしましては、このたび御提案をしております建築士法第十五条の三に基づきまして、三つの要件を基本的な要件として考えております。一つは、職員、設備等が建築士試験事務の適正かつ確実な実施のために適切なものであること、第二が、経理的及び技術的な基礎を有するものであること、第三が、不公正になるおそれがないこと、この三つの要件を兼ねているものが指定試験機関として指定される、こういうように定められておるわけであります。具体的には、申請してきた者のうちからこういった要件を十分審査をいたしまして一つを選び、指定することとなりますが、中央の指定試験機関といたしましては、既存の団体であります財団法人建築技術教育普及センターが有力な候補の一つとして考えられております。
#146
○瀬崎委員 それではその建築技術教育普及センターが有力候補の一つだというのなら、それ以外の候補としてはどういうようなものが挙がっているのですか。#147
○松谷政府委員 それ以外の候補といたしましては、特に検討を重ねているわけではございませんが、一つは日本建築士会連合会あるいは日本建築士事務所協会連合会等が考えられるのではないかと思います。#148
○瀬崎委員 この建築技術教育普及センターはいつ設立されていますか。#149
○松谷政府委員 昨年の九月に財団法人として設立を認められております。#150
○瀬崎委員 他の有力な対象として考えられるものとして日本建築士会連合会等を挙げられましたね。この方はもっと前から存在しているのじゃないですか。#151
○松谷政府委員 建築士会連合会は、正確ではございませんが、大分前に設立されたものでございます。#152
○瀬崎委員 以前からそういう有力な候補の団体がありながら、半年やそこら前に急にできた建築技術教育普及センターがまず真っ先にこの候補団体として名前が挙がってくる理由は何ですか。#153
○松谷政府委員 建築士会連合会あるいは日本建築士事務所協会連合会等は業界団体あるいは個人の建築士の資格を持った人たちの集まり、連合会でございます。こういった資格者の集まりがみずから試験事務を行うよりは、むしろこういった建築士の資格を有する方々の集まりあるいは建築士事務所の団体等が支援をいたしまして、協力をして試験の事務と、もう一つ技術教育研修の事務、この二つを大きな目的として掲げる、いわば専用の機関をつくって、これで行う方が適切ではないかというように考えたものであります。#154
○瀬崎委員 この建築技術教育普及センターが昨年九月につくられたということは、これは政府の認可法人でしょうが、今回の法改正を予期してあらかじめ受け皿をつくっていた、そう理解していいわけですか。#155
○松谷政府委員 お答え申し上げます。建築技術教育普及センターは、その目的にもございますように、試験の事務を協力して行うということで、さきに申し上げましたように、実は建築士の試験につきましては、昭和二十七年に比べまして二十三倍という大変な急増ぶりで、そのため試験の事務を国がみずから行うことが非常にむずかしい状況になってきた。そのため地方公共団体にも御協力をいただいておりますが、地方公共団体の協力だけでもなかなかうまくいかない。そこで、府県等によりましては、その府県に存する建築士会等の御協力を得まして、いろいろ試験の事務を行ってきたわけでございます。もちろん、直接的な試験問題の出題でありますとか試験の監督でありますとか、そういうことはすべて国みずからが行っておりますが、細かな受付でありますとか案内書の配布でありますとか、そういうようなことは、そういうような団体にいろいろ御協力を頼んでいたわけでございます。ところが、建築士会というのは、本来の目的がございますので、そういうような事務的な、いわば雑務的な試験事務等については、それを目的とする団体をつくって、そこに一元的にやっていただく、あわせて建築士の技術教育の普及を行う必要があろうということで、昨年九月、したがいまして約一年になりますが、設立されたものでございます。したがいまして、そういうような団体もありますので、この際、法改正とあわせて、非常に時宜に合った、目的に沿った団体の一つであるということで考えておりますが、この法改正を目指してつくったというものではございません。
#156
○瀬崎委員 しかし、この建築技術教育普及センターの役員、つまり理事の中には、建設省の幹部出身の人もいらっしゃるのじゃないですか。#157
○松谷政府委員 常務理事で、以前建設省におりまして、建築研究所の企画部長をした者が、現在事務を実施しております。#158
○瀬崎委員 結局、手続では、幾つかある中から選ぶんだという装いはとっているけれども、これはどう見たってあらかじめ今度の法改正で試験を民間委託にするということを予期してつくられた受け皿と考えざるを得ぬのです。そこで、大臣にちょっと申しておきたいのですが、試験の民間委託だということを大義名分にして、こういうセンターを、つまり試験専門のセンターをつくる。それがやがて天下り機関にまたなっていくということは、絶対に防いでもらわなければいかぬと私は思うのですね。大臣、この点はきちっと約束できますね。
#159
○内海国務大臣 一概に天下りという言葉で表現をされても、この場合はちょっと御無理ではないかと思うのです。いままで国がやっていた業務をそういった機関にやっていただくということになれば、行政とのつながりにおいて十分その経験を持った者が指導し、携わらなければ、かえって円満な運営ができないのじゃないかという意味で御判断をいただきたいと思うのです。ただ単に、天下りという言葉だけでぴしっと決められてしまいますと、そこに逆になかなかむずかしい問題も出てくるのじゃないか、こういうように考えております。#160
○瀬崎委員 まさに大臣のお話は、いわゆる民間委託しようと思っている、つまり国の試験を代行する機関というものを予期すればこそふさわしい人を送ったということをおっしゃっているわけだから、これはまさに準備されておったんですよ、その意味では。私が言ったのは、それを大目に見るとかなんとかいうのじゃないですよ。それはもう既存の事実ですが、今後、必要がないのにどんどん建設省から、それをいいことにして理事のポストを建設省の出身者が占めていく、その割合が非常に肥大していく、こういうことは避けてくださいよ、私はこう言っているわけなんです。#161
○内海国務大臣 一概に天下りという表現でおっしゃられるといろいろ問題もあるかと思いますけれども、適当な人間が適当なポストにつくということに御解釈いただければよろしいのじゃないかと思うわけでございます。#162
○瀬崎委員 それでは次に、建築確認並びに検査の合理化の問題で伺いますが、けさほどの答弁の中で局長は、現行建築基準法第七条が定めている検査は、全体確認戸数の三分の一程度だ、そうなっている理由として、完了届が建築主から出されてこないから検査もやれないんだ、少なくなっているんだ、三分の二は検査をやっていないということになるのだ、こういうお話がありましたね、ちょっと確認しておきたいと思うのですが。#163
○松谷政府委員 現行建築基準法では、建築物の工事が終了いたしまして四日以内に工事完了届を出す。この工事完了届につきまして建築主事が検査を行い、建築物が法令に適合していれば検査済証を交付する、こういうことになっております。#164
○瀬崎委員 そこで伺いますが、それでは法律の規定どおり、建築が完了して、施主、つまり建築主が四日以内に皆届けを出してきた、それに対して全部七日以内にきちっと、いいかげんなのじゃなしに、きちっとした検査が完了できるような体制、つまり現在千数百人の建築主事しかいない、こういう体制で、もし本当に四日以内にみんな完了届を出したときに、それを追っかけてきちっとした検査が終わり得る体制にいまあるのでしょうか。#165
○松谷政府委員 工事完了届が提出をされますと、建築主事はそれが建築物の法令に適合しているかどうかを検査しなければなりませんので、そういうことになっております。#166
○瀬崎委員 法律がそうなっていることはもう何遍も聞きましたし、百も承知なんですよ。何せ現実にいま三分の二は完了届が出てこないから事実上検査をしないということになっているわけでしょう。そうあなたはおっしゃったわけです。逆に法律どおりにすべての建築主が四日以内に届けを出してきたときに、ではその後一週間以内にきちっと、きちっとした検査を終わり得るような体制がとられていますか。建築主事は千数百人しかいないのですよ。それでやれるというのですかと、そのことを聞いているのです。#167
○松谷政府委員 現行法の規定どおりに工事の完了届が出ましたら検査を行わなければならないということでございます。ただ、先生がたびたび御指摘になりますように、建築行政の執行体制が十分ではございませんから、そういう点で、すべて工事完了届が一斉にある時期に集中してくるというようなことがあれば、若干停滞することはあるかもしれませんが、これは法令の定めに従いまして検査を行わなければならない、また行うことと考えております。#168
○瀬崎委員 結局、法律では、完了届が出たら七日以内に検査をしなければならない、こういう自治体に対する義務規定を課しているわけだけれども、たまたま完了届がそんなに出てこない。このことが現在検査の体制の不備の隠れみのになっているのではないか。どうです。#169
○松谷政府委員 そういうようなことは全くございません。建築行政職員の数は不十分でありますが、そういった工事完了届が出ました場合には、十分その職責を果たすよういろいろな措置を講じて、万全に検査を行うことと考えております。#170
○瀬崎委員 本気で法律どおり的確にやるという気があるのだったら、――そもそも建築確認はしているわけですよ。だから、どこにどういう家がいつごろから着工される、そんなことは役所の方でわかっておるわけでしょう。だから、その追跡調査をすることはさして困難ではないはずなんです。さらに建築基準法の第十二条に基づく建築主とかあるいは業者、設計士等から報告をとることだってできるわけでしょう。だから、いつまでたっても完了届ができてこない、おかしいなと思うものに対しては、建築主に対してでもいいし、設計士に対してでもいいし、業者に対してでもいいし、ちゃんとそれは確認申請のところに載っているのですから、報告を求めればいいのですが、現在、完了届が出ない三分の二について、そのうちどれだけの部分に対してこの第十二条を活用して報告をとっていますか。#171
○松谷政府委員 御指摘のように、建築基準法第十二条の第三項によりまして、「特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、」以下ちょっと省略いたしますが、建築主等より「施工の状況に関する報告を求めることができる。」ということになっております。この規定によりまして、たとえば先般来御質疑がございましたように、中間の工事の実施状況等について報告を求め、建築物の質の確保を図るということとしております。#172
○瀬崎委員 それはあなたは法律の説明をしただけなんです。私が聞いているのは、本来建築ができ上がったら検査しなければならないことになっているのです、現在の法律は。けれども、それをたまたま完了届が出されないことをよいことにして、三分の二は検査していないわけです。けれども、先ほど来あなたもお答えになったのですが、いや行政機関の方は完了届を出してくれるようにいろいろと督促しているのですという話があったでしょう。しかも体制も、多少人数は建築主事等不十分でも、完了届さえ出されれば、それはやりますよと、こうおっしゃっているのでしょう。それなら、その完了届の出てきていない三分の二の建築に対して、おかしいな、一遍施工状況の報告を求めてみようかと、十二条があるのだから、これは活用しているはずだと思うのですよ。どの程度これまで報告を求めた実績がありますか、こう聞いているのです。その実績を聞いているのです。#173
○松谷政府委員 建築物の工事は、工事に着手する前に確認申請を出しまして、建築主事の確認を受けなければ工事に着手することができないわけであります。確認を受けまして、工事に着手をいたします。しかしながら、工事完了届が出てまいりませんと、半年たっても一年たっても、まだ工事が続行しているのかなということで、その工事の完了の時期というのはわからないわけでございます。そこである時期に検査の報告を求めるということが非常にむずかしい状況にあるわけであります。#174
○瀬崎委員 だから、そういうむずかしいものに対して、十二条で報告を求めれば、簡単に、現在でき上がっているのか、工事途中か、返事が返ってくるはずなんですよ。その報告を求めても建築主とかあるいは工事業者が報告をしてこないということなのか、そもそも行政機関から報告を求めていなかったのか、どっちなんです。#175
○松谷政府委員 建築基準行政が非常に多忙をきわめていることは事実でございます。それは建築行政の職員が十分ではない、そのためにこのたびの法改正で建築士の活用も図ろう、こういうことでございます。多忙をきわめておりますので、特に近隣からの通報とかあるいは公害の関係でありますとかいろいろな特殊な建築物の工事紛争、そういうものについては全力を挙げて行政事務を行っておりますが、工事着手をいたしまして、その後の工事完了届が出てこないときに、さらに十二条によりまして定期報告を行うということになかなか至らないと思います。
ただ、建築基準法十二条によって、工事が完了したはずではないか、工事完了届を出しなさいというような報告を聴取したかどうかについては、ただいま実績はございませんが、しかしながら、毎年春と秋に違反建築防止週間を実施しておりまして、そういったような週間を利用して、違反建築がなくなるよう種々調査もし指導しておりますので、そういった行事によりまして、違反の事実がわかりましたときは、直ちに違反是正の措置を行うよう行政指導をしているところでありますし、また工事の完了が行われたにもかかわらず工事完了届が出ていないことが明白である場合には、これにつきましては、当然特定行政庁としては、工事完了届の報告を行うよう行政指導等によりまして種々督促をしているところでございます。
#176
○瀬崎委員 そんな回りくどいいろんな督促をしなくたって、それはもう半年か一年たてば、木造だったらできているのがあたりまえなんですから、大体四、五カ月たったときに、報告の様式のはがきをつくっておいて出せばいいわけなんですよ。それすらできないぐらい、あなたが言われたとおり多忙をきわめている。きわめて少ない人数で過重な負担をいまやっているわけでしょう。率直にそれを認めればいいわけなんですよ。だから、結果的にはたまたま三分の一程度しか完了届が出てこないから、それに見合ったいまの検査体制でバランスを保っている、こういうようなことになっているのじゃないですか。いまはしなくも言われた、だから今回改正してもらうのだ。その現状を法的に追認しようというのが、今回のこの建築確認制度部分の主たる動機じゃないのですか。〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕
#177
○松谷政府委員 現状を追認しようということではございませんで、建築士の活用を図って、より建築基準行政の合理化を図ろうという趣旨でございます。#178
○瀬崎委員 建築行政の合理化、合理化と言われますけれども、この場合、ただ単に行政機関側が少ない人員で手っ取り早く要は確認や検査を済ましてしまうということであったら、私は重大な過ちだと思うのですよ。といいますのも、建築基準法の目的、あえてこんなもの私ここで読む必要ないと思いますが、「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と明記してあるでしょう。国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的にしているのでしょう。まさにこの目的に合致しているかどうかで制度を考えなくてはいけないのじゃないですか。
だから、建築士に対して、確かに国民の生命、健康及び財産の保護を図るように、きちっとした設計や監理、監督、施工をしてください、これを頼むことはいいですよ、それを私は否定しませんよ。だけれど、そもそも国民の生命、健康及び財産の保護ということは、まさにこれは国及び地方自治体の第一義的な義務なんですよ。だから、本来的に国及び地方自治体の負っているこういう義務を全部建築士に任す、このまさに建築基準法の目的になっている国民の生命、健康及び財産、これが保護できるように、いろんな最低の基準を満たしているかどうか、そのことまですべて建築士の責任なんだ、国は知らぬぞ、そんなことは私この法律の目的からいって絶対言えないと思うのですね。この点を履き違えないようにせぬといかぬと思うのです。あくまで、やはり建築物が国民の生命、健康及び財産を保護するようにできているかどうか、このことについて確認の責任を負っているのは国である、まず第一義的には国である、これが建築基準法の目的ではないかと思うのですが、どうですか。
#179
○松谷政府委員 建築基準法の制定の目的は、まさにおっしゃるとおりでございます。ただ、昭和二十五年にこの法律が制定をされましたときに、建築士法もあわせて制定されておりまして、建築物の質の基準を確保するためには、建築基準行政の執行体制を厳正に行うとともに、あわせて建築物の設計、監理を行う建築士の資格を定めまして、それによって質の向上を図る、すなわち建築基準法と建築士法が両者一体となって建築物の質の向上を図ろうということで制定されたものであります。したがいまして、本来の制定のそもそものいきさつからいいましても、建築士の活用を図って建築物の質の向上を行うということは、昭和二十五年当初からの一つの考え方であったわけでございます。そのため、建築行政職員の数が十分に増強されない、建築基準行政の執行体制が十分でないというような状況、あるいは逆に言えば、建築物の確認申請件数が非常にふえてまいりまして、しかも、その中身が超高層の建築物あるいは大規模建築物等非常に複雑多岐になってきている、そのために十分な確認検査ができにくい状況にあるというような状況でありますだけに、一部の小規模な建築物については、一部の規定について建築士の活用を図ることは行われるべきだということで、従来から行政管理庁からも御指摘を受け、また建築審議会からも種々御指摘のあったところでございます。これをこのたびの法改正によりまして、その制度を設けることとしたものでございます。
#180
○瀬崎委員 あなた、私の質問に答えればいいので、要らぬことを時間長々説明されては困るのです。あなたが言っていること、私もいま認めたでしょう。住まいというのは住む人の生命、健康、財産にかかわる、その家に住む人だけでなしに近隣の人にも影響する、そういう点で、設計、施工等に当たる建築士さんあるいは業者にそれなりの注意を喚起し、自覚を持ってもらう、そういうことを要請するのはいいと言っているのですよ。だが、この目的で言う「国民の生命、健康及び財産の保護」、これが果たされているかどうかということのすべてを建築士に任せてしまって、国は知らぬぞと言えるか。やはりこの法の目的がある限りは、公的機関のチェック制度というものは残されていなければならないのだ、いざというときには公的機関のチェックができるような道だけはなくちゃならぬのじゃないか、こう言っているわけなんです。そういう国としての公的機関のチェックの必要性も否定されるのですか。その点だけ明確に答えてください。
#181
○松谷政府委員 全部を建築士の活用を行って国の責任を免除してもらうというような内容でないことは、御承知のとおりだと思います。また確認、検査等につきましても、一部の限定的な規定についてのみ建築士の活用を図ることとしておりますし、それは確認、検査の手続の上で建築士の活用を図ることであって、その建築物が適法な状態であるかどうか、適法な状態で建築されているかどうかということについての責務は、国及び地方公共団体、特定行政庁にあるわけでございます。これについては、法第九条に基づいて、違反の事実があれば是正措置を行うことができる、もちろんそうしなければならないものでございます。#182
○瀬崎委員 それでは重ねてですが、いろいろな法改正も、要は、目的が言う「国民の生命、健康及び財産の保護」にかかわる最後の一線は、国がちゃんと責任を持つということを確認した上での話ですね。#183
○松谷政府委員 建築基準法の目的にございますことについての責務は、国にあるわけでございます。#184
○瀬崎委員 それでは今度の法改正によって、現在の建築確認申請の項目、内容等はそのまま引き継いでいくのですか。それともこれも省令等で改正していくつもりですか。簡単にしていくということがあり得るのですか。#185
○松谷政府委員 御指摘の点につきましては、現在検討中でございます。ただ、確認申請の中身を、このたびの建築士が活用される関係規定について全部省略することはいかがかなという意見が私どもの中でも強い。いろいろな検討をしておりますが、確認申請書の中身については、さらに慎重に検討してまいりたいと思っております。#186
○瀬崎委員 やはり一番皆が心配しているのは、消費者保護の立場ですね、あるいは施主の立場なんですよ。ですから、工事の過程あるいは事後においても、欠陥が生じないようなチェック、これが第一ですが、欠陥が生じた場合には、どこに問題があったか、事後においてでもチェックができるような内容のものが、少なくとも公的機関には出されているという必要性はあるように私は思うのですよね。現在でさえ確認申請に添付される設計図というのはきわめて簡単なもので済むわけですね。こう言ってはなんですけれども、一般に世間の相場として二通りありまして、いわゆる工事施行用の設計仕様と、それから建築確認用の設計仕様。建坪にして百平米前後の木造二階建ての住宅ですと、建築確認申請だけの設計仕様でよいということになれば、大体三万円か四万円でやってくれているような現状なんですよ。それよりもはるかに簡単にするということになりますと、私、きのう建設省の人にちょっと言ったのだが、ポンチ絵でもつけておけばいいというようなことになってしまう。これは困る。大体、現在出されている項目程度は今後とも残すべきではないか。そうしないと、何か欠陥が生じた場合に、設計に問題があったか、施工に問題があったか。あるいは施工に問題がある場合にも、元請業者または建て売りなんかですと、発注している不動産業者が意識的に設計図とは違った手抜きをやらしたかというような場合も多いので、そういうことが後でチェックできるようなものだけは公的機関がとっておく、そういう必要性はあるように思うのですね。どうでしょう。#187
○松谷政府委員 先ほど申し上げましたように、まだ私ども現在検討中ではございますが、私も個人的な考え方としては、ある程度後々にチェックできるような事項というものは、最小限必要ではないだろうかというように考えておりますが、なお、さらに慎重に検討してまいりたいと考えております。#188
○瀬崎委員 それで委員長に要望しておきたいのですが、われわれはいろいろ問題を感じつつも、理事会でもわれわれの態度を率直にいろいろ申し上げましたように、賛成するわけですが、今後、省令改正とも相当結びつくのですね。だから、省令がコンクリートされたものができ上がる前に、国会側にも建設省側からちょっと相談をかけてもらう、われわれの意見を言う場を何らかの形で確保してほしいな、こう思うのですね。委員長、いかがでしょう。#189
○松永委員長 その点は別途理事会で相談しましょう。#190
○瀬崎委員 住宅金融公庫融資住宅については、別途技術基準に基づいていますから、今回の法改正にかかわらず従来どおり行われるのでしょうね。#191
○松谷政府委員 そのとおりでございます。#192
○瀬崎委員 これまで私どもも多々欠陥住宅の相談を受けまして建設省に行政指導を求めました。そういう例、それから個人向け貸し出しの公庫融資住宅の信頼性が何に起因しているか、そういうようなことを参考にすると、大体次のようなチェックの必要性が考えられるのですよ。第一は、当初の設計仕様が技術基準をきちっとカバーしているかどうか、このチェックの必要性。第二は、内装工事や壁つけが終わってしまうと、事実上発見が困難になるような欠陥。よし後で発見されても、是正することが非常に困難な欠陥を事前に発見し、手直しをし得るような中間検査の必要性。たとえば火打とか筋かいが所定どおり入っているかどうか。それからボルト締めとか羽子板ボルト締め、あるいは斜めのところですと、三角座金を入れよということになりますが、そういうものが入っているかどうか。あるいは床の下の束が独立基礎の上に乗っかる場合、その基礎はちゃんと動かないようにコンクリートで固められていなければいかぬのだけれども、ただぽんとれんがを置いただけというのがないことはないのですね。それから束が横振れしないように、ちゃんと幅木等で連結をしておくということが中間検査で皆発見されて、相当手直しの対象になるわけですね。これは大変いいことだと私は思うのです。こういうことは必要だ。それから第三には、全体が設計仕様どおりになっているかどうか。特に不燃材等の指定がある場合、その指定どおりの内装材料が使われているかどうか。こういうところが完成検査として非常に重要だ。この三つがきちっと履行されないと、幾ら建築士を信頼したとかなんとか言ったって――これらが守られているかどうかということだけは、信頼できる建築士さんに守っていただけるようにはしておいてもらわなければいかぬわけですね。また簡単にそういうことが公的機関の側でチェックできるようになっていなければいかぬと思うのです。そういう意味でどんなことを具体的に考えているのか、伺っておきたいのです。#193
○松谷政府委員 お答え申し上げます。ただいま御指摘になりましたようなことは、戸建て住宅等につきまして確かに重要な点でございます。これにつきましては、もちろん竣工検査も重要でありますが、実は工事の各過程において十分チェックをしていかなければ、わずかな時間中間検査にいっただけでは、その工事の状況が判明するというものでもございません。したがいまして、そういった工事の適正さを確保するためには、建築士に工事監理を十分行わせる。その工事監理いたしました状況をつぶさに報告してもらう。そのためこのたびの法改正で考えているわけでございますが、これは建築基準法の省令の改正にもなろうかと思いますが、工事完了届の際、これに建築士が工事監理報告書を添付いたしまして、その工事の状況を十分に報告する。それによってその状況を建築主事が確認をいたしまして検査済証を出すというようなことといたしたいと考えておるわけでございます。御指摘のように、工事の各過程が大変重要でございますが、そういう意味では、建築士の活用を図ることは一つの方法ではないかと考えておる次第でございます。
#194
○瀬崎委員 われわれの経験からいきましても、注文建築で、それが直接大工さんとか棟梁のところ、あるいは事実上御主人が仕事もされる監督もされるというふうな工務店へ発注される場合は、欠陥住宅というのはほとんど起こらないのです。起こってくるのは大体が建て売り住宅に限られると言ってもいいのですね。それでちょっと過去の大きな例も拾ってきたのです。私どもが欠陥住宅の苦情を持ち込まれて、建設省の行政指導を依頼して、それによって解決されている例です。たとえば、これは五十四年の二月二十八日に建設委員会で私が質問したものですが、近江八幡市の川原町という住宅団地で近畿土地が九十六戸の建て売りを建てたのですが、これが屋根は下がる、雨は漏る、床は下がる、それから換気口は規定どおりあいてない等々の欠陥住宅が出ている。そのときの質問に対する答弁も引用しますと、当時の救仁郷住宅局長が、直ちに詳細な調査をし、改善命令等必要な措置を考える。それから丸山計画局長が、近畿土地株式会社の責任者を呼び、宅建業者として違反があれば実効ある行政処分をする。もちろん欠陥住宅は無償で全部修繕され、その間迷惑をかけた家に対しては若干の補償金等も払われるというふうな解決を見ている。それから五十四年の十一月に同じく滋賀県の蒲生町の長峰団地、これは大倉建設の約百戸の団地です。このうちの約四分の一、二十数戸で主として雨漏りの被害が出ておる。これも建設省の行政指導で全部無償修理が行われている。それからこれは一軒だけでしたが、八日市市にナプコホームの建て売り十四軒のうちの一軒。これは相当地盤の悪いところへ一メートルからの盛り土をした上にプレハブを建てたのですが、建物の半分部分の地盤沈下に伴って、基礎が弱かったものですから建物が半分割れて沈下するというような事態になった。これも建設省がナプコホームを当時呼んだ。
こういうケースを見ますと、まず建築指導課の方から、県に対してまず建築基準法に基づいて一遍調査せい、こうなるのです。それでまず建築基準法上技術基準に照らしてどういう欠陥なり違反があるか確認される。その後建設業課または不動産業課の方へ移管されて、業者に対していろいろ改善の行政指導をする。今度の法改正でこういう点でもし変化が出るとすれば、これは重大な問題になるのですね。こういう過去の欠陥住宅に対する建設省の行政指導は具体的に行われてきているのです。だから、今後とも具体的に行われるという確約がどうしても必要だと私としては思っているのです。いかがでしょうか。
#195
○松谷政府委員 そういうような欠陥建築物と申しますか違反建築物の事実がございましたら、それにつきましては具体的に措置をしていくことは当然でございます。#196
○瀬崎委員 従来と変わりなしですね。今回の改正案で、冒頭、局長が答えられたように、りっぱな能力も持っていらっしゃるのだけれども、木造に限る、そういう人々の能力を生かすという意味で、今回木造建築士を創設した、こうおっしゃるのですね。ところがその一方で、今回木造建築士の対象になるであろう相当数の大工さん、棟梁の方々は、建設業者の許可も持っていらっしゃるのですが、こっちの方は無許可にするとか登録にするとかという見直しが中建審に諮問されて、いま進んでいるわけでしょう。これは大変矛盾だ。片一方で能力を生かすために資格を新たに与えようと言いながら、片方で既存の資格を奪おうというわけでしょう。はなはだしい矛盾なので、こういう矛盾は同じ省内でやはり改めてもらいたい、こう思うのです。
#197
○永田政府委員 お答えいたします。木造建築士制度をつくって資格を厳しくしておきながら、建設業の許可基準を見直して緩くしようとしているというのはおかしいではないか、こういうお話でございますが、建築士法の改正の問題は、設計及び工事監理の問題でございます。それから建設業法の問題は、業者が仕事をやるための法律の制度でございます。おのずから多少目的は違います。
それから、一方で建設業法というのを四十七年に改正いたしまして、十年たったわけでございます。その間いろいろ情勢も変わってまいりましたし、業界の中からあるいはいろいろなところから、この制度に対する問題点も提起されましたので、建設大臣から、昨年中央建設業審議会に対して見直しをしてほしい、こういう要請を受けて、いま検討いたしておるわけでございます。その方向は、審議の中でいろいろ検討していきたいと思っておりますが、先生がおっしゃるように、同じ省内で全く方向が違うようなことをやっておるというのには当たらない、私どもはかように考えているわけでございます。
#198
○瀬崎委員 それは理屈の上での話なんですよ。けれども、確かにりっぱな能力を持った大工さんなりあるいは棟梁に対して、その能力を正当に認める、新しい資格を与える、これは社会的信用が高まりますから、そういう点では仕事の確保等にも有効に役立つと思うのです。ところがその一方で、同じ人の持っている建設業者としての許可を、今度は事実上格下げと見られるような無許可にするとかあるいは登録にするとかということになったら、こっちの方では信用を落とすわけですよ。これはどういうふうに説明したって実態面としては矛盾しますね。ここは、大臣は計画局とか住宅局ではないのですから、よく実態も含めて、せっかく新しく創設されるこの木造建築士の制度が生きる方向で全体を考えてもらいたいと思うのです。特に大臣に要望しておきたいのです。
#199
○内海国務大臣 一方の問題は、いま中建審に諮問しておるものでございますから、諮問に対する答申が出てきた段階で――審議会の協議の中で相当先生が言われたような御議論も出ると思います。したがいまして、その議論の中で適正な御答申が得られるものと私ども判断いたしておるもので、必ずしも矛盾した形の答申が出るとばかりは考えておりませんので、その点、結論は余り御心配要らないのじゃないかな、こう思っております。#200
○瀬崎委員 最後に、重ねて局長の方に……。いまの大臣の言葉を体して、ちゃんと中建審の事務局として、実態面でせっかく新しい建築士の資格を与えて、大工さんなどの社会的信頼性を高めようとしながら、一方で足を引っ張るようなことのないように、その辺はちゃんと中建審にいまの大臣の趣旨を伝えて、そういう見地の検討も十分やってもらう、このことをひとつ確認しておきたいこと。
それから、こういうふうな法改正が予定されているのであれば、中建審への諮問についても待ってみる。そもそも建設業者の許可事務も、大変繁忙だ、多忙をきわめているというところからああいう簡素化の案を行管庁が出してきたといういきさつもあるのでしょう。ではどの程度審査が多忙をきわめているのか、大変なのかについては、行管庁の調査は、ただ六県調査しただけでいいかげんなものだった。追っかけて、去年の十一月に建設省が電話等のついでに調査されて、公表するようなものではありませんと局長もおっしゃっている。本来ならやはり中建審にかける前に、実態のきちんとした調査があってしかるべきだ。そういう点では、中建審に対しても、そういう実態調査とか、この法律の施行状況等も見ながら議論してもらうので、もう少し待ってくれと言ってもらうぐらいが正しいのじゃないかと私は思う。これが二点目。
それから最後に、五月十九日に業者団体からヒヤリングをされますね。五団体から意見を聞かれることになっているのです。どうしても意見が分かれますね。二対三、どっちが二になるか三になるかわかりませんが、そういう場合、自後どういう扱いをされるのか、この点を伺って終わりたいと思います。
#201
○永田政府委員 いずれの問題も、いま中建審で鋭意審議されている状況でございます。私どもは行政がその審議に差しさわりのあるようなことをやるのは適当ではないと思っております。#202
○瀬崎委員 だけど、大臣が言ったことは伝えなさい。#203
○永田政府委員 大臣のおっしゃった点については十分配慮してやりたいとは思います。#204
○松永委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。─────────────
#205
○松永委員長 この際、先刻の理事会において協議をいたしましたとおり、本案に対する修正案を委員長から提出いたします。─────────────
建築士法及び建築基準法の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
─────────────
#206
○松永委員長 案文はお手元に配布してあります。御承知のように、本案は、第一条中において、建築士制度を改善整備して、新たに小規模木造建築士の資格を設け、延べ面積二百平方メートル以下の木造建築物について、能力のある大工、棟梁によるその設計及び工事監理の道を開くこととしておりますが、同建築士が行うこととなる業務の実態等を考慮し、小規模木造建築士の名称を木造建築士に、二百平方メートルの面積上限を三百平方メートルに改めることとしたものであります。
以上で、本修正案の趣旨説明を終わります。
御賛同を賜わりますようお願い申し上げます。
─────────────
#207
○松永委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。建築士法及び建築基準法の一部を改正する法律案及び修正案について採決いたします。
まず、委員長提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#208
○松永委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。(拍手)次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#209
○松永委員長 起立総員。よって、本案は委員長提出の修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。(拍手)─────────────
#210
○松永委員長 ただいま修正議決いたしました法律案に対し、村岡兼造君外五名より、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者より趣旨の説明を求めます。村岡兼造君。
#211
○村岡委員 ただいま議題となりました建築士法及び建築基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について、自由民主党、日本社会党、公明党・国民合議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、すでに質疑の過程におきまして委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることにいたします。
建築士法及び建築基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。
一 本法の施行が供給される住宅の質及び価格に悪影響を及ぼすことのないよう、消費者保護の立場に立って十分に配慮するとともに、住宅の性能保証の拡充について検討すること。
二 建築物の防火・避難施設等の整備を推進するとともに、定期報告制度の的確な運用とその対象建築物の維持保全に関する計画の策定を徹底すること。
三 建築基準法に定める集団規定の順守の徹底に努めるとともに、住宅の建築確認の簡素化に当たっては、住宅の安全性が低下することのないよう配慮すること。
四 木造建築士の試験の実施に当たっては、大工・工務店等の実態を考慮し、木造建築技術が適切に評価されるよう配慮すること。
五 試験の委託機関の指定に当たっては、公正の確保について配慮すること。
六 一定規模以下の木造建築物の施工管理に関しては、今後、新たな資格制度を設けないよう努めること。
七 地方公共団体に対し、本法の施行について、十分な指導を行うとともに、地方公共団体の建築行政の充実のため必要な執行体制の整備拡充に努めること。
八 違反建築物の発生を未然に防ぐため、宅地建物取引業者等関係者に対し指導強化を図るとともに、建築物をめぐる各種トラブルの発生については、その紛争処理の方途の充実を図ること。
右決議する。
以上であります。
委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#212
○松永委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#213
○松永委員長 起立総員。よって、村岡兼造君外五名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。この際、内海建設大臣より発言を求められておりますので、これを許します。内海建設大臣。
#214
○内海国務大臣 建築士法及び建築基準法の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、全会一致ただいま修正可決されましたことを深く感謝申し上げます。審議中における委員各位の御高見につきましては、今後その趣旨を生かすよう努めてまいりますとともに、ただいま議決になりました附帯決議につきましても、その趣旨を十分に尊重して努力してまいる所存でございます。
ここに、本法案の審議を終わるに際し、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。ありがとうございました。
─────────────
#215
○松永委員長 お諮りいたします。ただいま修正議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#216
○松永委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。─────────────
〔報告書は附録に掲載〕
─────────────
#217
○松永委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後三時四十三分散会