1982/04/06 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 運輸委員会 第7号
#1
第098回国会 運輸委員会 第7号昭和五十八年四月六日(水曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 原田 憲君
理事 三枝 三郎君 理事 三塚 博君
理事 宮崎 茂一君 理事 湯川 宏君
理事 西中 清君 理事 中村 正雄君
大村 襄治君 鹿野 道彦君
川崎 二郎君 久間 章生君
佐藤 文生君 谷 洋一君
近岡理一郎君 津島 雄二君
浜野 剛君 原田昇左右君
浅井 美幸君 小渕 正義君
辻 第一君 四ッ谷光子君
中馬 弘毅君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 長谷川 峻君
出席政府委員
内閣審議官 林 淳司君
運輸政務次官 関谷 勝嗣君
運輸大臣官房長 犬井 圭介君
運輸省鉄道監督
局長 永光 洋一君
委員外の出席者
大蔵省主計局共
済課長 野尻 栄典君
日本国有鉄道総
裁 高木 文雄君
日本国有鉄道常
務理事 三坂 健康君
日本国有鉄道常
務理事 竹内 哲夫君
運輸委員会調査
室長 荻生 敬一君
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四月六日
国鉄貨物取扱駅の廃止に関する請願(小沢一郎君紹介)(第二〇〇〇号)
東北新幹線盛岡以北の早期着工に関する請願(小沢一郎君紹介)(第二〇〇一号)
重度障害者に対する運輸行政改善に関する請願(部谷孝之君紹介)(第二一六六号)
同(野坂浩賢君紹介)(第二一六七号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案(内閣提出、第九十七回国会閣法第三号)
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#2
○原田委員長 これより会議を開きます。この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。運輸大臣長谷川峻君。
#3
○長谷川国務大臣 質疑に入ります前に、委員長のお許しを得まして一言ごあいさつを申し上げます。私は、過労のために先月二十七日より十日間ほど入院しておりまして、加療に当たりました。その間、皆さん方に大変御心配をおかけいたしました。しかしその間、審議日程等については順調に御連絡いただいたことをありがたく思い、私もまた欠席を深くおわび申し上げます。
また、本日も、審議に当たりましては、委員長初め各位の御了解を得まして、自席で御答弁させてもらうことを心から御礼申し上げます。どうぞよろしく御配慮のほどをお願いします。ありがとうございました。(拍手)
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#4
○原田委員長 内閣提出、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案を議題といたします。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅井美幸君。
#5
○浅井委員 臨時措置法案に関連いたしまして、質問いたしたいと思います。まず、長谷川大臣にお伺いしたいわけでございますが、大変御病気の中御出席いただきまして、余り厳しい質問をするのはなにかと思いますが、聞かなければなりませんので聞かせていただきます。
運輸大臣は、臨調答申を最大に尊重する、このようにおっしゃっておりますけれども、この発言に間違いはございませんでしょうか。
#6
○長谷川国務大臣 臨調答申の方針は私たち最大限に尊重して、それを実行可能にしたい、こう思っているわけです。#7
○浅井委員 臨調答申の中で、国鉄再建監理委員会につきましての答申は、これを総理府に設置し、強力な実行体制を整備、一つは、「分割・民営化のための再建基本計画の企画、審議及び決定」、こういう言葉が第一番に入っておりまして、あと「基本計画に基づき国鉄の作成する具体的再建計画の審査及び決定」あるいはまた、「国鉄の長期債務、年金等新形態移行のために必要な施策の調整及び決定」などなどが出ておりますけれども、その臨調答申を尊重なさるという運輸大臣の御発言なんですが、今回出てきておりますところのこの日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案要綱には、この臨調答申の意図というものは、明らかに分割、民営というものを目指しての再建監理委員会であったはずであります。これが「効率的な経営形態の確立」という表現に変わっておりますけれども、この中身はなぜこのように変わったのかという点についてお伺いしたいと思います。#8
○林(淳)政府委員 お答え申し上げます。ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、臨調答申を最大限尊重して、全体的な構想を設定して実現を図るというのが政府の決めた方針でございます。その方針に従ってこの法律案をお出ししているわけでございます。したがって、この法律案におきましても臨調答申を尊重してということが第一条に明記してあるわけでございますが、したがって監理委員会といたしましては、その方針に従いまして、まずは分割、民営化の方向で検討を進めていくということになるわけでございます。
ただ、この臨調答申は、明確に分割、民営化ということについて提言をいたしておりますけれども、その提言の中身は、基本的な考え方を示したにまだとどまっておる段階でございます。したがって、具体的にこれを検討し、さらにその実施可能性等についての検証をこれから行っていくわけでございまして、それをやらなければ最終的に分割、民営化というものが実現できるものであるかどうかということは、現段階では必ずしも判断しにくい面もあるわけでございます。したがいまして、そういう検討法、これから検討を進める法律である以上は、現段階で分割、民営化ということを法律上明記するというのは非常にむずかしいわけでございます。したがって、その方向を目指して、その方向で検討はするわけでございますが、結論についてはまだいまの段階では一つに決めることは必ずしも適当ではない、こういうことで、したがって法律上は「効率的な経営形態の確立」、こういう表現になっているわけでございます。
#9
○浅井委員 分割、民営化という表現が法律上むずかしいという理由は何でしょうか。#10
○林(淳)政府委員 分割、民営化というのは、そういう分割、民営化で実際に企業体を設定できる、こういう段階で初めて実定法上使えるものでございます。今度御提案申し上げている法律は、それを目指し、その方向で、検討するんだけれども、ただしかし、具体的なその内容あるいは実施可能性についての検証というものはこれからでございますから、そういうものについてむしろこれから検討を深めていく、検討を詰めていく、内容を詰めていく、こういう法律でございますので、したがって、現段階で分割、民営化をするということを実定法上書き込んでしまうということにはちょっと無理があるわけでございます。したがって、臨調答申を尊重して効率的な経営形態を確立する、すなわち臨調答申の方向を目指してそれを実現すべく、その方向でまずは検討を進めていく、こういう構成になっておるわけでございます。#11
○浅井委員 いまの御答弁でお答えにはなっていると思いますけれども、この前の本会議で総理の答弁と長谷川運輸大臣の答弁にずれがあった、このように報道をされているわけでございますけれども、もう一遍確認しておきたいのですが、中曽根総理の考え方、答弁と、運輸大臣のお考え、答弁とは違わない。やはり分割、民営というものが、これが臨調答申の意図であるならば、それを最大限尊重し、それに最大限努力をする、この方針に変わりはございませんか、確認しておきたいのですが。#12
○長谷川国務大臣 私が分割、民営、これを最大限に尊重する、総理も最大限に尊重する、ここも同じです。そして委員会においていろいろ精査した結果、いまの国鉄の効率性、活性化、再建に対する意欲、こういうものが生まれるためには分割、民営も必要である。しかしながら、さらにそれをもやらぬでもそれ以上の効果が生まれる、こういうふうなことがあり得るならば、これはその場合には一応考える必要もありはせぬか、ここも総理と私は意見が同じだ、こう思って、表現の強い弱いの問題で、一体でございます。#13
○浅井委員 わかりました。臨調答申を尊重した姿でこれからも審議をお願いしたい、これを確認しておきたいと思います。そこで総裁に伺いたいのですけれども、現在の国鉄が五十六年ですか、策定いたしました経営改善計画、この経営改善目標は、「昭和六十年度に経営の健全性を確保するための基盤の確立」、「引き続き、速やかに全体の収支均衡の回復」と、こうなっておりますけれども、この経営改善計画及び目標は現在も変更する考えはございませんか。
#14
○高木説明員 経営改善計画が目標としております指標はいろいろございますが、その中で、六十年度における生産性といいますか効率性といいますか、その点については、その後、貨物については経営改善計画立案当時は横ばいと考えておりましたけれども、かなり激しく輸送量が落ちておりますし、旅客につきましては微増と考えておりましたけれども、横ばいないし微減という状況でございますので、当時に比べまして、実は収入が思ったほど伸びないというか、落ち込みが大きいというか、そういう現象になっております関係で、六十年時点において予測しました生産効率といいますか、職員一人当たりの輸送人トンキロといったようなものがなかなか達成しにくいという現状にございます。また、もう一つのメルクマールとして幹線系で、六十年時点で収支を償うようにするということを非常に大きな目標としておるわけでございますが、この点もいま申しましたような事情からなかなか到達しがたいと見込んでおるわけでございます。したがいまして、あの法律の中で、中途の時点でいわゆる計画の見直しをすることができるということが規定をされておりますので、現時点で考えますと、あの計画の見直しを行わなければならない状況になっておるということを申し上げられると思います。ただ、その時期をいつにするかということにつきましては、いまいろいろ作業をいたしておるわけでございまして、なるべく早くということでありますが、まだ御承知のように、貨物について大規模に輸送方を変更するというようなことを、方針を決めましたのが一月末でございました。これを荷主さんを初め、皆さんの御理解を得て実現できるかどうかということについて、もうちょっと見通しを立てる必要があろうかと思いますので、現時点ではいつということはちょっと申しかねるわけでございますけれども、なるべく早いしかるべき時期に改定方について、政府に御協議申し上げたいというふうに考えておるわけでございます。
#15
○浅井委員 確かに、お答えのように旅客、貨物の輸送量が予想を上回るほどの減少をしておりますし、収入も減っておりますし、五十八年度の運賃改定も見送りになりましたし、赤字線、いわゆる特定地方交通線対策のおくれもございます。年金問題あるいは資産売却、こういう問題が数多くいま停滞をいたしておる問題もございますし、また新たな問題として起こってきている、そういうことを考えるときに、五十八年度以降現行計画を推し進めてみても、ほとんどこの目標達成が不可能と言わなければなりません。この点からもいわゆる抜本的な改正というか、修正というか、こういうものがいま望まれていると思いますし、また、この国鉄再建法案が通って監理委員会ができても、これが六十二年度をめどにしておりますので、当然これから六十二年度までの間累積債務がますますふえる状況の中、この辺につきましては、当初計画の六十年度の職員の三十五万人体制、これを三十二万人にまで持ってくるというふうな考え方も出ておりますけれども、この点も含めましてもう一度総裁の御答弁をお願いします。#16
○高木説明員 計画の立案時点と今日での一番大きな差異が出てきておりますのは貨物関係でございます。そこで貨物につきましては、単に一種の手直しをするということではなくて、現在のヤードで貨車を分解したり結合したりして、いわば駅送りで送っていくという貨物の輸送体制を変えて、従来はいわば補完的な役割りというような位置づけでありましたコンテナを中心とする直行輸送体系を主体としたものに切りかえると同時に、輸送量につきましてもむしろ相当積極的に減らすといったような姿勢で臨んでいきたいと考えております。この部分はいわゆる三十五万人体制では考えていなかったことでございますので、そのような切りかえをやりますと、かなりの程度現在の職員を減らさなければならない、また減らすことが可能であるというふうに考えておるわけでございます。何人ということはいままだ申し上げる段階まで作業は進んでおりませんけれども、当時の想定しました貨物関係の必要要員というものは相当減らし得るであろうと考えておりますから、そうすれば結果的には三十五万という体制は大いに見直して、もう少し少ない数の体制にいたしたい。先ほどなるべく早い時期に経営改善計画をつくり直してみますというふうに申し上げましたが、その作業の過程にはそのことも織り込みますので、結果としては三十五万よりも少ない体制だということにいたしたいというふうに考えております。#17
○浅井委員 この法案をつくるときに、あなたは後のない計画だとおっしゃったですね。そしてそれが、五十六年にできて五十八年、わずか二年で計画変更。国鉄の再建のために過去六回ですか、こういうのが何回も何回も出されてきては失敗しておる、そこにいろんな問題点があろうと思いますけれども、国鉄の企業性が発揮できなかったという理由に、国会及び政府の過度の関与あるいは地域住民の過大な要求、あるいはまた、管理限界を超えた巨大な企業規模あるいは国鉄自体の企業意識と責任感の喪失、こういうものが挙げられているのですけれども、総裁はこの指摘に対してどのように考え、どのように感じられていますか。#18
○高木説明員 ただいまお触れになりました四つの事項につきましては、いずれも臨時行政調査会での御審議の過程においてあるいは報告において示されたところでございます。私どもも、いま御指摘ありましたようなこともきわめて重要な要素として影響を与えておるということは事実だと思います。ただしかし、もっと基本的には、輸送の変革といいますか、いろいろ自動車とか飛行機あるいは船舶といったようなものとの競争関係といいますか、別の表現をとりますと、お客様の選択の変化というものが大変速いスピードで進んでおるわけでございまして、私どものそれらについての将来見通しの認識が必ずしも十分でなかったということを率直に申し上げざるを得ないわけでございます。いろいろな要因が重なり合っておりますので、そのうちどれがどういうウエートであり、どれがどういうふうに影響をしたかということは、もう少し時間の経過を待って、客観的に学者の方々にでも分析してもらわなければならぬことかと思いますが、それらの要素が重なり合っているということだけは事実でありますし、特に今回反省をいたしております点は、先ほど来お尋ね、お答えしておりますように、前回の計画の見直しを行わなければならぬということになってきました大きな要素としては、やはり輸送量が減ってきておる、つまり輸送需要が減ってきておるということが一番大きな、何が原因かわかりませんが、現象的にはそこにあらわれてきているわけでございまして、経費を切り詰めていくということをしなければどうにもやっていかれないという意味において後のない計画ということを申してきたわけでございますけれども、その点はかなりの程度当初の目標どおり進んでおるのでございますが、収入の方がいかにも見通しと違ってきておるということでございます。まあ、われわれの収入を上げるための努力が不足しておったのではないかということも考えられますし、サービス改善であるとか、そういう面もまだ十分でないと思いますけれども、非常に大きな力といいますか、体制が変わりつつあるということについて一面反省をいたしますと同時に、一面将来についていろいろと心配をしておる、懸念をいたしておるという現状でございます。#19
○浅井委員 いま私が挙げた中で、管理限界を超えた巨大な企業規模、これからだんだん人数が減るとしても三十五万人あるいは三十万人、これを中央集権的に国鉄本社で管理をするということについては、いわゆる管理限界を超えているのじゃないかという意見があるのですけれども、これについてまず総裁からもう一遍、余りにもマンモス企業じゃないかという指摘に対して率直な感想を求めたいと思いますし、同じ問題を大臣からも御答弁願いたいと思います。#20
○高木説明員 四十万人を前後する職員を抱えておるという組織は、わが国としては他に余り例を見ないわけでございますし、諸外国の例をとりましてもそれだけの大きな組織というものがそう数多くあるわけではないと思います。したがって、きわめて一般論で申しますと、やはり規模が大きいということは目が届きにくいといいますか、そういう意味でなかなか管理がむずかしいということは、事実としてはそう言わざるを得ないというふうに思っております。ただ、今日まで長い歴史の過程において、昔は必ずしも全部が国営の鉄道でなかったものを、明治時代末期から漸次国営化を進めてまいりました。そして全国一本で国営化になりましてからもうすでに四、五十年の歴史をたどってきたわけでございます。したがって、昔から大変大きな組織であったわけでございますけれども、特に戦前あたりの様子を見ますと、組織が大きくても結構それなりにうまく運営ができておったということが言えるわけでございまして、その過去の経験なり歴史からいたしますと、組織が大きいということだけが今日の経営が必ずしもうまくいってない要素であるということは必ずしも断定できないのではないか。もちろん、労働法規といったようなものを初めとして、多くの点において戦前と今日とではもろもろの規則、定め方といったようなものも変わっておりますし、住民の皆さんのニーズも変わってきておりますから、一概に比較はできないかもしれませんが、さりとて昔から非常にぐあいが悪かったということではなくて、かなりの程度大組織のままでやってきたわけでございますから、それを組織的に経営形態として分けるということだけが解決の方法であるかどうかということには、必ずしも賛成しかねるわけでございます。
しかしそれには、いかに大きな組織でありましても、運営的にうまくやる方法があるではないかということがもう一つ残っておる。過去におきましてもいわゆる支社制度ということで、かなりの程度の権限を支社に渡しまして、東京における権限を縮小して運営するというようなこともやられたわけでございます。これは結果としては途中でやめてしまいまして、それはやめるなりの事情があったわけでございますが、その試みに見られますように、一つの組織でありましても、組織形態ではなくて運営の形態にもう少しいろいろ工夫をすることによっても、組織が大なることを起因とするもろもろの条件に対応し得る道もあるのではないかと思うわけでございまして、この場におきまして私は、分割することのみが唯一の解決の道であるということには賛成の意見を申し上げかねるわけでございます。
#21
○長谷川国務大臣 三十数万体制で、いまむずかしい国鉄を迎えているわけですが、かつては国鉄一家というスローガンがありまして、国鉄に働くと、あそこの子供はいい職場に入った、いい嫁さんを世話しようという一つの流れがありました。敗戦後、いろいろなイデオロギーもあれば社会事情の変化等々もあり、この間また総裁が言うように、いまや労使ともども運営の失敗を認めている。こういう中から、私は、国民的な課題として国鉄再建というものは大変な問題だ。こんなときでありますから、これらを踏まえながら、やはり職場規律、人の金を預かる、人にサービスをする、そういうふうな雰囲気と、それから技術などは世界的に有名なものですから、そういうものをしっかりと振興させていく、こういう姿を出して、監理委員会等々においていかに将来その制度を確立させ、そしてまた労使ともどもに信頼し合って働く、その中から子孫の繁栄があり、一方には新しい技術を世界に向かって出していく、こういうムードをつくってもらいたい、これが私の願いです。#22
○浅井委員 いまはしなくも、臨調の答申の中で企業性の欠如という問題が指摘をされて、その企業性の欠如とともに労使関係の問題も出て、二つの問題として指摘をされているわけです。ところが大臣の答弁も企業性の問題に力点を置かなくて、労使関係が先に出てまいっております。国鉄の総裁は分割はもってのほかである、こういう意見でございます。この間、国鉄の問題についての解決ということで臨調が一生懸命調査をし、実態を把握をして答申をしてきた。そして国鉄監理委員会をつくろうと言う。ところがその国鉄監理委員会の中身が、私は先ほど確認をしたのですけれども、長谷川運輸大臣は余り民営、分割に力点が置かれてなくて、それよりもさらにもっと効率的なものがあるならばとおっしゃっていますけれども、その辺が少し後退をしている、こう私どもには感じられる。いまの問題でも、民営、分割の基本的な考え方を、総裁はそんなものはだめです。それじゃまたそれを聞いた私への答弁が、運輸大臣の方は違った方の、労使関係の方に力点を置かれた答弁が出てくる。この辺で今回総理大臣の答弁と運輸大臣の考えておられることとは少し違うのではないかという疑問が出てくるのです。この点についてどうでしょうか。
#23
○長谷川国務大臣 公共性のほかに、一つの仕事をすれば企業性というのがございます。国鉄も走っておりますが、民営鉄道も走っております。この場合には、民営鉄道といえども企業性の中でやっているわけです。それに対抗しつつ国鉄の労使ともどもが企業性を発揮するというのは当然です。それがときに少ないものだから、時折つまらぬいろいろないざこざがあるものだから、赤ん坊も大人も、乗らない者が年間約二万円ずつ国鉄に払っている、これが二十兆円になろうとしている。このままじゃとてもじゃない、日本の赤字財政の中にもう一つの赤字の国がある、何とかしなければならぬというのがやはり企業性をうたわれているゆえんと私は感じております。企業性を無視していま国の金で全部走らせるというわけにはいかない、こう思っております。#24
○浅井委員 その企業性の欠如の中で、特に「管理限界を超えた巨大な企業規模」、人数が多くて監督ができないんじゃないかという点もいま私は申し上げているわけなんです。先ほど来申し上げているように、大臣、昭和四十四年にこの再建対策というのが出てきたわけです。それから四十七年、四十八年、五十一年、五十二年と、五回再建計画が策定されて、そしてこれが挫折をしております。そして五十五年に後のない計画と言われる経営改善計画、これは五十六年度から実施されているわけです。私はこの後のない計画のときに高木総裁にも指摘をしました。これは必ずできませんよ、いや、できます、やります、こういう答弁がなされておるのです。そういうできない原因に、いろいろと原因はあるだろうけれども、「管理限界を超えた巨大な企業規模」というものがあるんじゃないかと言ったら、そうではない、分割は反対だ、こうおっしゃっているわけです。分割は反対だなんてかっこいいことを言うのならば、なぜ何回も何回もこういう再建計画が失敗しておるのかということを私は言いたいわけですよ。やるべきことをやって、するべきことをし、目標を達成してこそ、指摘をされたことに対して否定をするならば結構ですけれども、私はいまの国鉄に、臨調のこういういろいろな指摘に対してあくまでがんばって否定をするような姿勢は許されないと思いますけれども、いかがでしょうか。簡単に答えてください。
#25
○高木説明員 事実としてなかなか計画のとおり進んでいないということがあるわけでございますから、私どもが余り胸を張って物を申し上げられる状態ではないわけでございます。しかし、私どもとしては、従来からやってやれないことはないというつもりで取り組んでおるのでございますけれども、まあ民営の御説明になりますけれども、いかにも輸送量がどんどんと減っていくという事実に対して、それから身を守ることはなかなかできないでいるというのが現状でございます。そのことを別にして、経営形態の問題なりあるいは大き過ぎるといったことのみを指摘をされるということについて、率直に言って心から納得ができない心境でおるわけでございます。しかし、まあ事実うまくいっていないわけですから、余り多く弁解がましく申し上げることは避けたいと思います。
#26
○浅井委員 それから、私は運輸大臣にお聞きしたいのですけれども、この臨調答申の中の「国会及び政府の過度の関与」、この点の表現についてはどういう御感想をお持ちですか。#27
○永光政府委員 その文面におきます政府の関与ということにつきまして、私の方で御答弁申し上げたいと思いますが、臨調では、国鉄の企業性を発揮させるためにはやはり政府の介入というようなものをできるだけ少なくして、自由な、自主的な経営をさせたらどうか、そういう面でいろいろな規制なり関与が多過ぎるのではないかという御指摘だと思います。ただ、実際上国鉄が国の機関として交通を担っている全国的な公社としての性格であります以上、やはりいろいろな面におきまして必要な規制というものは要ると思いますけれども、われわれとしてもそういう臨調の答申を踏まえながら、さらに国鉄の企業性を発揮させるような仕組みというものを考えていかなければならぬのではないか、こういうふうに考えております。#28
○浅井委員 それは答弁で国鉄の企業性を発揮させるというふうにおっしゃいますけれども、たとえば青函、この青函トンネルの実態から見て、あの青函トンネルをつくろうといった計画、あるいはまた採算性というものを考えておるのかどうか、企業性というものを考えておるのかどうか。つくろうという計画と、いまでき上がってきてどうやって使ったらいいのか、在来線なのか新幹線なのか、こういうことがいま大騒ぎになるような無計画的なやり方、この辺については一体どうなのかということを私は聞いているわけです。これは総裁、国鉄自身が計画をしてあの青函トンネルをつくったのですか。#29
○高木説明員 御存じのとおり、青函トンネルの計画というのは、一つの夢としては戦前からあったわけでございますし、地質調査等は戦争中にも行われておったわけでございます。現実にこれを取り上げるということになりましたのは、ずっと後の四十五、六年のことであるわけでございますけれども、しかし、日本の四つの島を何らかの方法で一つに結ぼうということは国民的な強い悲願といいますか、そういうものであったと思います。ですから、それに応ずべくいろいろ技術的研究もいたしたわけでございまして、技術研究あるいは地質調査といったようなものが進むにつれまして、国鉄としてもぜひやりたいものだという気持ちを持ったことは事実でございまして、今日採算の方の角度から非常に問題になっておりますけれども、当時の国鉄が皆さんに御説明いたしました資料をいま引っ張り出して見てみますと、いまでは想像がつかないぐらいの規模の輸送量を想定してあの仕事が始まったわけでございまして、そのような見通しでありました。それが大変狂いましたということについて、決して私ども責任がないとは言えないわけでございますけれども、さりとてそれは全くの夢であったのか、あるいは全く何か鉛筆をなめてつくったものであるのかといえば、必ずしもそうは言えない、その時点においてはそれなりに合理性のあった計画であったと言わざるを得ないものではないかと思います。ただ、余りにも計画から完成までに時間がかかり過ぎましたし、またその間の、特に飛行機の変化が非常に大きくなりましたので、今日から言えばまことに見通しの悪い計画であったという非難も甘んじて受けなければならぬというふうに考えております。
#30
○浅井委員 要するに十年以上かかって、トンネルだから非常に採算性がいま悪くなってきて、企業性から見て非常に問題があるということで、その当時はトンネルが必要だった。だれが必要だったのかということ。本当に国鉄のやり方というのは、親方日の丸の体質とよく言われますけれども、企業性というか採算性というのを常に無視している。東北新幹線だって上越新幹線だってみんな同じじゃないですか。もっとこだわれば幾らでもこだわれますけれども、この辺にして次に進みます。経営の主体性、自主性の確立、こういうことについて本会議で総理が、国鉄再建のポイントは、予算統制を排除し、経営の主体性を確立することにある、こういうふうに答弁していますけれども、これは間違いないでしょうか。
#31
○林(淳)政府委員 総理が本会議で御答弁になりました内容は、国鉄の現状から見てもっと自主性のある経営が行えるように仕組みとしてしなければいけないだろうということでございまして、予算統制とかその他の問題を例に挙げられたのだと思いますが、そういう経営の自主性の強化ということについて、臨調答申の本来のねらいというのはそこにあるのではないかと自分は理解している、こういう趣旨で御答弁になったというふうに私は考えております。#32
○浅井委員 その主体性を確立するのは、予算統制を排除するだけで可能なのかということです。主体性を阻害していると思われるものはほかに何かありますか、具体的に挙げてみてください。#33
○林(淳)政府委員 この点については、臨調答申でも先ほど先生も述べられました四つの原因ということで記述がしてあるわけでございますけれども、まあそれはそれなりに、たとえば先ほどから議論になっております国会とか政府の関与の問題、これは過度であるかどうかは別問題としまして、それが自主性――先ほどの予算統制なんかはその中の一つの問題になると思うのですが、それのあり方というふうなこととか、またその自主性というのは予算統制だけではなくてほかにもいろいろあるのでございましょうけれども、その辺を臨調答申では具体的には述べておりませんが、そういう関与のいろいろな形態、これを臨調答申は問題としておるというふうに考えておるわけでございます。#34
○浅井委員 この経営の主体性を確立するために、法的にいろいろなことを改正しなければならないのじゃないかと私は思うのですけれども、民業圧迫ということで国鉄法の中でいろいろな制限もございますし、具体的にその主体性の確立ということから今後いろいろなことが検討され、そしてやっていかなければなりませんけれども、これについていま何か考えておられますか。#35
○永光政府委員 いま政府委員から答弁しましたが、私も補足させていただきますが、いろいろな面での主体性の確立という点で、たとえば労使関係のいろいろな法律がございます。あるいは給与の制度、あるいは退職金の制度等、いろいろな面におきましての公社としての規制がございますし、いま先生がおっしゃいましたように、いわゆる事業範囲としての問題もあると思います。これらもろもろのものを、要するに現在の公社で、予算統制のもとでこの国鉄を運営いたしておるわけでありますけれども、こういういろいろな基本的な規制を緩和するということは、やはり経営形態の問題と十分いろいろ関連があると思いますので、今後監理委員会におきまして効率的な経営形態を検討する際に、当然そういうようないろいろな法的な問題も解明されるというふうに考えておるわけであります。#36
○浅井委員 大臣にお伺いしたいのですけれども、経営の主体性の確立ということから考えてみまして、企業性を生かす、そういう場合、私どもの考えておるのは、将来分割、民営の前段階としては、もし地域的に分割するならば特殊法人という形をとるということも一つの考え方なんですけれども、そういう特殊法人という経営の考え方は大臣としてはどういうふうにお考えになりますか。#37
○長谷川国務大臣 まだ私の考えの中にそれが入っておりません。問題は、経営の問題としますと、国鉄の運賃は一々国会の通過をいただいた。それが通過したころにはその金が思ったとおり使えないというふうなことなどもあって、最近は国会をお願いしないで自主的に運賃値上げができておる。しかし五回もやってみたら、お客さんは減る、ほかの民鉄のお客さんはふえている。こんなことからすると、やはり運賃値上げなんという問題も経営の問題として慎重に考えなければならぬ。それから事業の問題にしましても、よくここで論ぜられることは、国鉄にホテルをやらせればいいんじゃないかというグッドアイデアが出ますが、一方また、民業圧迫である、百五十のホテルの部屋を五十ぐらいにしろというふうな話も実は出るわけでありまして、その間をどう調整させながら、自由に仕事をさせつつ利潤を得、そして生活の安定を図るかという、私は今度の監理委員会というのはそういう意味では画期的なものが生まれることを期待しているわけです。
#38
○浅井委員 当然いまの大臣の御答弁のように、国鉄の関連事業の問題ですよね。これは従来からいろいろな問題がありまして、直営でできる事業が第三条で、関連事業が第六条で範囲が明確に書かれてありますが、いわゆる民鉄の場合は、いろいろな関連事業の収益というものがその民鉄の経営に大きな貢献をしていることは大臣も御承知だろうと思うのです。国鉄もやはり再建ということから、企業性ということから考えていくならば、その辺のことも考えなければなりませんし、もちろんその経過的措置として、将来目標を分割、民営に置いたとしても、もしある一定の段階で特殊法人という形になった場合は、当然日本国有鉄道法という法律は改正されなければならぬでしょうけれども、いま、六十二年までの四年間、五十九年、六十年、六十一年、六十二年、この監理委員会からの答申の結果が出るまで四年間というもの、このまま手をこまねいて、収入を図らないで待っているという方法はいかなるものかと思うわけでございます。そこで、民業圧迫だとかいろんなことは言われますけれども、デパート、遊園地、ホテル、不動産、旅行あっせん業、構内営業、こういう私鉄のやっている総合事業、これに対抗するというわけではございませんけれども、国鉄自身が経営主体、そういう事業はこれから出てくると私は思うのですよ。その場合に、この国有鉄道法がその計画を縛ってしまうということがございますけれども、これについて弾力的に運営といいますか、いろんな事業をやる、そういうことについて法を運用できるかどうか、その辺はいかがでしょうか。
#39
○長谷川国務大臣 民鉄はお客さんを乗せますが、乗せるだけじゃなくて、そこでおりる人、その人に物を売ること、利便を図ること、こんなところに一つの発展があろうと私は思うのです。国鉄は従来人を運ぶだけです。最近ようやくターミナルビルなどというものをつくって、古手の管理局長などが社長ですから、商売になれないところもあるだろうけれども、地の利やらかれこれで相当な利便を感じ、収益を上げておる。ですから、いまからもそうした商売っ気のある、知恵のある、そんな諸君がしっかりとこういう国鉄の事業に参加する、アイデアを出していく、こういうところを希望して、その際には皆さん方にもまたいろいろ規制の枠の緩和ということもお願いしなければならぬのじゃないか、こう私は考えております。#40
○浅井委員 ぜひその辺は、第三条の場合は業務ですし、投資については第六条でございますが、いままでなかなか思うようにできなかった。お役所商法というのは余り成功しないということもございますけれども、もう少し収入が出るような方向にしてもらえればと私は思います。これは強く大臣に要望したいと思う点でございます。それから次に、国鉄の資産の売却ですけれども、臨調答申の中に、緊急措置の一つとして挙げられておりますところの「資産処分の一層の促進を図る」、この資産処分によって増収に努めよ、こう指摘されているのです。資産は、中でも利用価値の高い大都市周辺の土地については事業の目的とかいろんなことがございますけれども、この国鉄の資産売却、これが五十六年度が目標は六百億円、その達成率が八〇%、五十七年度が八百億円、この達成率をお聞きしたいわけですが、約六〇%ぐらいじゃないかということでございます。ことしは大蔵省の考え方等も入ったのか、千六百億という資産処分の目標が出ております。去年に比べて二倍の目標額を掲げておりますけれども、過去の実績から見てこの千六百億というのは可能な数字なのかどうか。
もう一点は、資産売却の基本方針というのはちゃんと明確になっているのかどうか。何でもかんでも国鉄の資産だから売れるものはどんどん売るんだという考え方なのか、それとも将来計画の中で必要な土地は確保しておいて、ほかの関連事業というか、先ほどのほかの事業ができるという幅ができたときに使える、そういう資産であるならば残そうという考え方なのか、そういう基本方針と、今年度の千六百億の目標の達成をどのように見ているか、二点にわたって御返事ください。
#41
○高木説明員 五十七年度の資産売却の実績は、まだ最終集計はできておりませんけれども、大体八百億円という目標に対して九割ぐらいの達成率になったかといま考えております。五十八年度につきまして、それを一挙に二倍の千六百億円を予定をしておるという事情でございますけれども、これは何といいましても五十八年度予算の大きな特徴といたしまして、過去五年間、毎年行わせていただいておりました運賃改定を行わないということにいたしました。それによって、要するに国鉄はしょっちゅう運賃を上げるじゃないかということで、大変利用者、住民の方々に悪い印象を植えつけることになるのを少しでも回避をしたいということで、そういう方針にしたわけでございますが、そういう特殊な事情もありますので、資産処分収入については五十八年度に限ってはかなり目標を上げてひとつやっていこうということで、かなり高い目標だとは自覚しながら、何とかそこまでいけるのではないか、あるいは届かなければいけないということで二倍の千六百億円という金額を見込んでおるわけでございます。二番目のお尋ねの資産の使い方の方針でございますが、これはいろいろ学識経験者といいますか、町のいろいろな専門家の方々にも随時御意見を承っておるわけでございますけれども、なかなか共通的な基本方針というようなものは立てにくいわけでございます。ただ、考えておりますのは、いたずらにどんどん処分をするということは長い目で見て余りよろしくないのではないかということでございまして、特に駅周辺の用地等につきましては、そこにいろいろな事業を行いますことによって、遊休地になっているものが収入を上げることができるというだけではなくて、駅を御利用いただける、レールを御利用いただけるということにつながりますから、なるべく駅周辺の土地については売り急ぐということがないようにいたしたいと考えておりますし、駅から離れたところにあります昔の宿舎であるとか、あるいは貨物扱いの中で本線から離れているところだとか、そういうところについてはなかなかうまい活用方も考えられませんので、処分をしていくというような考え方は持っておりますけれども、それを何か文書にして、あるいは計算方式を決めて、こういう場合は売ります、こういう場合は使っていきますというようなルールを立てることは技術的にどうも非常に困難でございますので、大変漠然としておって恐縮でございますが、いま申しましたような駅の近くかどうかというようなことがいま一つのメルクマールになっておりますが、そのほかにも具体的に経験の積み重ねによって、売るものと活用するものとを分けている次第でございまして、この物件は売った方がいいか残しておった方がいいかということの検討は、一々の物件についてやっております。ただ一般ルール、基本原則といったようなものを明快にお示しできないということでございます。
#42
○浅井委員 一般原則だとか基本方針は明確にした方がいいと私は思うのです。たとえば、個々にやっておられるというならば、大阪の梅田、東京の汐留、これはどういう考え方ですか。#43
○高木説明員 典型的な価値のある資産として汐留、梅田ということが挙げられるわけでございますが、どちらも最近貨物輸送のウエートが下がりまして、両貨物駅の必要性というものがだんだん低下をしてきておりますので、場合によって貨物機能を廃止することあり得べしということで、基本的にはそう考えております。具体的には、梅田の場合には、全体の面積の四分の一か五分の一に当たるレールの南の部分につきましては、昨年の十一月十五日で貨物の取り扱いをやめました。したがって、この土地をどう処分するかあるいは活用するかということが差し迫った課題になってきております。そこで、二年ほど前から地元大阪市と御協議をいたしました。その活用方について大阪市としてどうお考えいただくか。やはり大変貴重な土地でございます。町の中心部の貴重な土地でございますから、われわれの収入だけの問題で結論を導くことはまずいわけでございますので、地元の公共団体で考えていただくということで、ここ一年余りの間に相当頻繁に関係者間の打ち合わせが行われておるわけでございます。まだ具体的にこの土地を売ることにするのか、あるいは活用することにするのかということまで決めるだけの検討結果は出てきておりません。売るにつきましても、今後使ってまいりますにつきましても、まず全体構想といったようなものを地元の方々と御一緒につくっていく、その構想との関連であるいは一部売るとかあるいは一部使うとかいうことも生まれてこようかと思うわけでございまして、抽象的に、売るかあるいは活用するかということを決めるのでなしに、その使い方をまず特に地元の方を中心にして研究をしていただくということから入ってまいりたい。五十八年度中に結論を得ることは、あるいは売却といったようなことにつながるということは無理があるかもしれませんが、しかし五十八年度中にほぼ輪郭だけはつくり上げられるような方向に持っていきたいということで、大阪市にいつもお願いをしておるところでございます。(浅井委員「汐留は」と呼ぶ)
汐留につきましても、前々から東京都に申し上げておるわけでございますが、これまた東京都としては数少ない広い面積の土地であるということであるわけでございますけれども、率直に申しまして築地にあります魚市場をどういうふうに持っていくかという問題がありまして、基本的には魚市場の移転計画があるわけでございますけれども、その時期がいつになるのかということがまだ東京都として決めかねる。いまでも魚市場への、ごく少量ではございますけれども、貨物輸送の起点にもなっておるわけでございますし、その他のコンテナのヤードとしての機能も漸次大井埠頭の方へ移していっておりますけれども、まだどうしても汐留でないと困る、また、むしろ道路交通の方からいってもあそこをいますぐ全部やめられても困るというようなこともありまして、縮小計画を一方において立てながら、処分方については東京都にも御相談をいたしておるところでございますが、この方は、梅田の場合と違いまして、もう貨物扱いをやめたというところまでいっておりませんので、ややテンポがおくれておるということでございます。
いずれの場合にも、この活用方については、繰り返しになりますが、関係市町村の御意向を十分承りながら、また、そちらの都市計画全体につながるように考えながら、活用についても、処分についても考えてまいりたいというふうに考えております。
#44
○浅井委員 この資産処分についてもこれまたいろいろとあるわけですけれども、資産の売却というのは、国鉄は四十五年度から少しずつやっておりますね。だんだんふえてきたわけですけれども、五十八年度千六百億円の資産処分を見込んで、経常費の支出の方にこれを充てようとしています。収入不足の補てん措置としてやむを得ない状況にあるということは理解できますけれども、長期間こういうふうなやり方というのは問題があるんじゃないかと私は思います。資産売却は本来経常損益に充てるものではなくて、一時的な特別損益で対処されるべきものであって、資産売却に依存している財政体質から早期に脱却を図る必要があるのではないか、こう言われておりますけれども、どうでしょうか。#45
○高木説明員 おっしゃるとおりでございまして、いま資産処分収入というものを、いわばなりふり構わず経常損益の補てんに充てておるという姿は決して望ましいことではないと思っております。ただ、そうならざるを得ないのも、年々の経常損益が非常にぐあいの悪い状態になっているのに当面対処するために、やむを得ざる措置としてそうしておるわけでございまして、長期的あるいは基本的には御指摘のような方向で、処分をするにしても毎年の収支補てんというようなことじゃなくて、もっと基本的な損失の処理に充当すべきことは、本来の姿としてはそのとおりだと思っております。#46
○浅井委員 私としては、この国鉄資産の売却についてはやはり基本方針を明確にしてもらって、先ほど総裁の答弁にもございましたけれども、これの売却については、都市計画やあるいはまた地元自治体、関係省庁等で総合的な活用計画もやってもらいたいと思います。ただやみくもに資産を売ればいいというやり方ではなくて、やはり計画的に、これからの町づくりだとか都市づくりの計画に貢献して、国鉄自身も収入が上がる、こういう方向でやってもらいたいと思います。そこで、先ほどの、ちょっともう一遍繰り返すようであれなんですけれども、長谷川大臣に……。
これだけ資産まで売っているのですが、そういう売った後で、今度一緒に六条に基づく出資による事業の拡大、こういう場合が当然生まれてまいりますし、また、そのあいている場所でほかのことをやろうとすると、三条で国鉄の行為能力を決められておりますけれども、やはりこの辺が、資産売却とともに、いま言った新しい計画、新しい事業、いろんなものが生まれてきたときに、やはり三条が足かせになった場合は、この国鉄の再建にも足を引っ張ることになるという場合、三条の改正問題が当然出てきますけれども、その場合は、三条の改正について運輸大臣として着手される御意思はありますか。
#47
○長谷川国務大臣 浅井さんのお話の国鉄の用地の活用、これは、予算が成立した後で閣僚が全部集まった際に総理からも特別にお話がありました。これは活用してもらうという雰囲気を日本国民全体に与えることによって、土地の問題と国鉄の財政の問題をよく理解してもらうことであるから、積極的にそれを進めてもらいたいということでして、そういう意向の一部をあなたからお話しいただき、また国鉄の答弁も聞いて、私はよろしく思っているわけであります。さて、その後の三条の問題等々は、これはいまから先の問題ですから、これこそ慎重に、事業が失敗しないようにやりたい、こう思っております。
#48
○浅井委員 それでは次に年金の問題について伺いたいと思いますが、この間、国家公務員共済の合併といいますか、大蔵省案でございますけれども、法律が出されました。しかしながら、国鉄の救済ということで他の組合には強い反対の意向がある、こういうふうに言われておりますけれども、この共済年金統合法案を策定された大蔵省としては、この法案の成立の見通しについてどのように見ておられますか、お伺いしたいと思います。#49
○野尻説明員 今回提出させていただきました国家公務員と三公社の公共企業体職員の共済組合制度の統合一本化法案につきましては、わが国の公的年金制度全体の再編統合の第一段階と申しますか、一環といたしまして、そういう位置づけになっているわけでございます。この法律の内容は、いま申しましたように、二つの共済組合制度を統合いたしますために、それぞれ別体系でございました給付の要件あるいは支給水準といったものをまず統合する、一本化するという点と、それからもう一つは、昭和六十年度以降、年金の支払いが非常に困難になると予想されております国鉄共済組合の年金財政に対する暫定的といいますか、応急の対策、これは財政調整事業とわれわれは考えておるわけでございますが、その二つの面を持っているわけでございます。
いま公企体共済組合の年金受給者は、国鉄共済組合の三十数万人を初めとして、四十万人を超える年金受給者の方々を抱えているわけでございまして、この法律の実施は五十九年四月一日ということで予定はしておりますけれども、なるべく早い機会に成立させていただきまして、その四十万人を超える方々の年金の裁定がえその他、事前に相当の仕事をしなければならないことになっておりますので、ぜひとも今国会でこの法案の成立ができますように、私どもとしては心から希望しているところでございます。
#50
○浅井委員 この年金統合につきまして、運輸大臣と総裁の御意見はどうでしょうか。#51
○長谷川国務大臣 今度の国鉄再建の大眼目もありますけれども、国鉄従業員の年金問題等々はまさに破局的なことですから、働く諸君の、いままで働いた諸君のやっぱり生活の安定、そしてまた、ほかの組合の方々にお願いまでして統合をお図りする、こういう働く諸君の連帯感も盛り上げつつ、また、国鉄関係の組合の諸君には、よそのそういうふうに同情を示しあるいは好意を持つ、金銭まで好意を持つ、そういう組合に対してもよく、お願いと申しませんけれども、気持ちをひとつ通わしてもらいたい。 政府といたしますれば、これは大蔵省を中心に、お互いの関係の役所がみんなで将来のことを考えてやっていることだ、こう実は申し上げておるところです。#52
○高木説明員 年金が支払えなくなるということは大変問題でございまして、いま大臣から御答弁ございましたように、過去において国鉄のために献身した諸君の、いわば老後の生活の安定という意味も重要でございますが、同時に、現在私どもの職員の中で、近々に現職を退いて年金受給者の方に籍を置くことになる人の数が大変多いものですから、将来年金がどうなるのかということは、やめた人だけではなくて、現職の諸君の中においても非常に心配の種であるわけでございます。一方において民営化とか分割化ということで、われわれの生活は将来どうなるのであろうかという不安があります。と同時にまた、年金がつぶれるそうだということでの不安がそれ以上にむしろ大きいような精神的な状態にあるわけでございますので、安心して仕事をできるような環境にしてやらなければ、毎日の安全にかかわる仕事にも関係があるわけでございまして、そういう意味において、年金制度が何とか存続できるということは、現職のいわば精神安定剤として非常に重要な意味を持つものでございますので、ぜひともこれをなし遂げていただきたいと思っております。それともう一つ大事なことは、現在の国鉄の赤字の相当大きな部分がこの年金のために、共済組合の年金会計ではなくて、国鉄自体の会計に及ぼしておる金額的な負担が巨額になっておるわけでございますが、この処理をどうするかということは、過去債務の処理と同時に再建監理委員会において大いに御議論いただき、その上で政府でお考えいただかなければならぬ問題なんでありますが、それが将来どのぐらいの負担になるであろうかという見当をつけるにつきましても、やはり年金制度の方を将来に向かってこういうふうに持っていきますという方針をお示しいただきませんと、三年先、五年先の国鉄会計の中での年金負担が幾らぐらいになるかということもわからないのでは、なかなか再建計画もできにくいということでございます。今回の案によりますと、実は今日よりもさらに年間平均で一千六百億円の負担が国鉄会計にかぶさってくるわけでございますが、しかしその金額は巨額でありますので、国鉄の再建としては容易ならざることであるわけでございますけれども、しかし、まずもってどのぐらいのものの負担がかぶってくるかということの見通しがつくということは大変大事なことでございまして、そういう意味でも、この年金統合についての方針が法律という形で明示されますことを強く希望し、期待をいたしております。
#53
○浅井委員 大蔵省の共済課長でしたかね、ちょっとお伺いしたいんですけれども、いま総裁が答弁しているように、この法律ができ上がりますと国鉄に相当負担がふえてまいります。従来ベースの国鉄の負担からさらに二千億という積み上げになりますけれども、間違いございませんか。#54
○野尻説明員 私どもがお示ししている試算によりますと、これはあくまで試算でございまして、実際に財政調整を行うためにどういう内容の国鉄自身の御努力が得られるのか、他の共済組合からどのくらいの資金の拠出ができるのかという具体的な仕組みは、財政調整事業運営委員会というのを法律上の機関としてつくりまして、そこでお決めいただくということになっておりますので、これから申し上げます数字はあくまで私どもが試算をした内容でございます。それで決まるということではございません。その試算によりますと、昭和六十年度以降の五カ年間で、国鉄共済組合が資金不足を来すお金が年間約二千六百億と見込んでおります。その二千六百億のうち千四百億円を事業主たる国鉄あるいは公経済主体たる国鉄が拠出していただく。これはいろいろ制度的な仕組みを変えることによって出てくるわけでございますが、その千四百億円を日本国有鉄道が国鉄共済に払い込む。残りました千二百億円を半分に割りまして、六百億円を他の共済組合の方々からの拠出に仰ぐ、あとの六百億円は国鉄の現役の労使と年金受給者たるOBの方々に痛みを分けていただく、こういうような形で試算したものでございます。
その先ほど言いました千四百億と後から申しました六百億を足したものが二千億でございますが、これがいま先生がおっしゃられた国鉄側の負担ということになるのかもしれませんが、そのうち国有鉄道自身が負担するのは千四百億円と、あと百三十億円ばかりでございます。あとは受給者自身がスライドを停止することによって給付費の節減を図るという面と、それから職員自身が保険料を引き上げるということで保険料の拠出がかかってくるという分に分かれるわけでございます。
#55
○浅井委員 大臣、確かに年金の一元化の第一歩として、この考え方、いわゆる国鉄共済を初め国家公務員共済との統合ということは考えられるのですけれども、第一歩として見ればそれでもいいわけですが、財政的に見ますと、いまお聞きのように国鉄はさらに負担がふえてまいります。それでなくとも、年金は助かったとしても、国鉄の方の財政はまた逼迫してしまうという自己矛盾といいますか、相反することが出てくるわけですけれども、この辺の財政のことについてはどうお考えでしょうか#56
○永光政府委員 先生おっしゃいましたように、共済組合の経営収支を安定させ、そして組合員なり現在働いている人たちの将来の安定ということのために必要な施策ではありますけれども、反面、皆さん方に御助力を願うと同時に、労使、特に国鉄の経営サイドに大きな負担がかかることは確かでございまして、非常に頭が痛い点でございます。まず、やはり全体としましては、この共済組合をどうするかということがここで決まったわけでございますので、この方向をベースにしまして、国鉄の負担がふえる、この国鉄の経営収支を圧迫する要因については、本法案におきましても、大きなプロジェクトの問題あるいは長期債務の問題等とあわせて、国鉄の共済の負担問題についても御検討願えることになっておりますので、われわれとしてもこの監理委員会と協力しましてこの問題の解決に、共済組合の問題は一応一つの方向が出たわけでありますから、この経営側の負担につきまして、監理委員会で御検討願うとともに、われわれとしても検討していきたい、このように思っております。
#57
○浅井委員 大臣、いまの年金問題は国鉄財政の大きな負担になりますので、この処理を誤ればまた財政の再建は非常に厳しくなってしまう。また、拙速に処置すれば年金制度全体に大きな禍根を残します。中曽根内閣の閣僚としてこの問題を円滑に処理するよう努力していただきたいと私は思いますけれども、いかがでしょうか。#58
○長谷川国務大臣 御注意ありがとうございます。私は、近代国家というものは、工業国家は労使の連帯と信頼がなくちゃいかぬ、そういう意味から保険制度というものが発足して、いままで説明を受けたようなことになった、そのことは余りにも無情だ、無理だ。しかも、国鉄再建という大事なときにこれを一緒にやらなければならぬという、非常な大きな重荷をしょうわけであります。それにしても、御注意のように大事な問題ですから、さらに内閣全体、これは今度の法案が通過しますと、閣僚会議十五名が連帯責任で総理大臣を中心にやることですから、ひとつ徹底的に御注意のままに前進させたい、こう思っております。
#59
○浅井委員 そのときに、もう一つは厚生年金と国民年金ですか、厚生省でこれからつくることになるのでしょうけれども、これの抜本改正がこの秋出てまいりますので、それとともに一元化ということをどのように、今回の統合法案、これから将来年金全体が一元化される。同一負担、同一給付というのが本来望ましいものであって、官民格差あるいは官官格差と言われるような年金の現在の仕組みを、これから将来、時間をかけてでありますけれども改革していかなければならない。その中で第一段階だと言いながらも、どのような手順で、どのような形で将来これが一元化するのかということがまだ政府の方で明確でない。これはやはりこの法案が出てまいりました以上、そのことの将来計画もあわせて、その位置づけをはっきりさせていかなければならないのじゃないか、こう思いますので、この点についてはおわかりいただけておると思いますけれども、考えていただきたいと思います。それから、今回のこの統合法案でありますけれども、大蔵省案で妥協ができるか、国鉄救済が宙に浮くか、予断を許さないし、また、政府に年金改革の具体的な構想がないことや、共済年金相互に連帯感がないこと、共済年金には困れば国庫負担でという親方日の丸的考え方が根強いこと、こういういろいろな問題点を抱えながらの法案でございますが、その辺の矛盾のないように私はお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
#60
○長谷川国務大臣 おっしゃるとおり、年金制度も発足して以来時間もたっておりませんし、また各種年金が皆、ときにはばらばら、整合性がないということをよく言われた時代ですから、そういうものを調整し、また相手を納得させ、御協力願うというのは、私は大変な説得力が要ると思いますが、いずれにいたしましてもこれは避けて通れない問題ですから、渾身の努力をして皆さん方の御協力を得ながら、日本の労使関係の正常化に向かってまいりたい、こう思っております。#61
○浅井委員 私の質問は以上で終わりますが、特に大臣におきましては、お体の調子の悪いのに御出席いただきまして御答弁をいただいたことを感謝申し上げて、私の質問を終わります。#62
○原田委員長 次に、小渕正義君。#63
○小渕(正)委員 まず最初に、この委員会の中でたくさんの方から監理委員会の性格というか、任務というか、そういうものについてのお尋ねがいろいろとありました。先ほどもその点について触れられておったわけでありますが、改めて、もう少し気になることがございますので、御質問をいたします。政府の国鉄再建に対する基本方針は、臨調の答申どおり分割、民営というのが基本方針になるということについては間違いないかどうか、念のためにもう一度お尋ねいたします。
#64
○林(淳)政府委員 政府の方針は、臨調答申が出まして、昨年の八月十日に、これを最大限尊重するという閣議決定をいたしております。それから、同じく昨年の九月二十四日に行革大綱というのがやはり閣議決定をされておりまして、その中で、臨調答申に沿って全体構想を五年以内に設定してその実現を図るという方向で閣議決定がなされておるわけでございます。したがいまして、政府としては、臨調答申を最大限尊重してやっていくという前提でこの法案も提案されておるわけでございまして、この法案を成立さしていただきました暁には、監理委員会でその方向での検討がなされる、それで、その結論に従って対処をしていく、こういう方針でございます。#65
○小渕(正)委員 先ほどからの質疑の中でも、この委員会の法案の中身の中でなぜそこらあたりを明確にしないかということでの御質問がありましたが、答弁としては、万一といいますか、必ずしも将来的にその結論が民営、分割ということにもならない、そこまでそういうふうになるという確率がないというようなことから、そこらあたりを答弁されておりましたが、この再建監理委員会の任務というのは、臨調答申では、要するに、「改革の推進体制及び手順」というところで、臨調の分割、民営化の方針をいかに推進するかというために、監理委員会を設置してそれを推進していこうということで、臨調の中ではっきりそこまで明記されてあるわけですね。そうでしょう。そうであるならば、第一条にその点を明文化すればいいことであって、それをあえてしないところに何かしらあるものを想定する、何かしり抜け的な感じをどうしても持たざるを得ないような、そういう疑念が残るわけです。したがって、第一条で、臨時行政調査会の答申を尊重して、日本国有鉄道の経営について、分割、民営化を推進するために監理委員会を設置することとする、したがって、その任務はこうこうだというふうに、なぜここに明記ができないのか、そこらあたりが非常に不可解な感じがしてならないわけです。その点いかがでしょう。#66
○林(淳)政府委員 その点につきましては、臨調答申尊重ということでありますので、先ほど来申し上げておりますように分割、民営化という方向に沿って対処していく。この法律におきましても、第一条で、そういう方向で再建の体制を整備する、その第一条の基本方針を受けて、再建監理委員会としてもその基本方針に従って、すなわち臨調答申の尊重という方向に沿って所掌事務を遂行していく、こういうことになっているわけでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、臨調答申というのは分割、民営ということをはっきり申し述べておりますけれども、これはまだ具体的なものではございません。基本的な考え方を示しておるという段階でございます。したがって、現実に国鉄を仮に分割、民営するならば一体どういう形になるかという、非常に詳細かつ具体的な内容についての検討をしてみなければなりません。それからまた、実施可能性というふうな点についても十分検証してみなければ、これを現実の施策に落とすということは、なかなかむずかしいわけでございます。したがって、臨調答申の基本的な考え方を受けて、その方向に沿って検討し、具体化を図る検討を進めていくわけでございますが、ただ、その具体的な内容というものについては、これから検討しなければ、いまの段階で一〇〇%その結論がわかっておるというわけにはまいらぬわけでございまして、この法律は、そういうこれからの検討の仕組みを定めた法律でございますので、そういう実体的な内容について、現段階で分割、民営化ということを明記するのは非常にむずかしいということでございます。したがって、先ほど来申し上げておりますように、分割、民営化という臨調精神、これを最大限尊重し、その方向に従って検討を進めていくわけでございますが、その検討の結果、場合によったらそうでない場合も、これは、可能性としては考えられるわけでございますから、法律的にはあくまでそういう検討をしていく法律であるという以上は、そういう仕組みになっておるという法律の仕組みを先ほどから申し上げておるわけでございます。あくまで方向としては、臨調答申の方向に沿って検討を進めていくということでございます。
#67
○小渕(正)委員 分割、民営の基本方針に沿って、それを具体的に手順としてどう推進するかということで、監理委員会を設置して、いろいろな問題をいろいろと検討し、煮詰めていくわけですね。そういうことでしょう。だから、その結論がどのような形になるか別として、初めから場合によってはそういうことにならぬのじゃないかということを想定しながらこの監理委員会をつくるということは、臨調答申を尊重したということにならぬのじゃないですか。あくまでも臨調答申を尊重するという基本方針の中で、それをいかにその方針に沿って具体的に推進していくかということで、この監理委員会を設置して、たくさんの大きな問題を具体的にいろいろ検討しながら立案していただこうというのがこの監理委員会の任務でしょう。その先の結論が、場合によっては分割、民営化にならないようなことがあり得るかもしれないということを、そういうことを初めから頭の中に置くこと自体がおかしいじゃないですか。これが臨調答申を尊重すると言いながらも、出口のところで何かしらしり抜け的な要素をはらんでいるような感じがするのは、やはり問題はそこにあるのだと思うのです。この前の本会議での大臣の答弁の中でも、活性化された何らかの経営方策がもしあり得るならば、何も分割、民営というものにこだわらないような含みのある御答弁を長谷川大臣はなされておるわけですね。それと、いまのそういった御答弁をお聞きしますと、どうしても伏線として、スタートするときから分割、民営が場合によってはあり得ぬのじゃないかということも頭の中に置きながら、考えてスタートさせようとしていることじゃないですか。そうでしょう、いかがですか。
#68
○林(淳)政府委員 そういうことではございませんで、この法律では臨調答申を尊重して仕事をしていく、こういうことになっておるわけでございますから、最初の段階で白紙の状態でいろいろな可能性というものを考えながら検討するということではないわけでございまして、すなわち、臨調答申を尊重した方向、すなわち分割、民営化という方向を、まずはその方向に従って検討を進めていくということになるわけでございます。あれこれという可能性を、最初から、白紙の状態から複数でスタートするのではなくて、分割、民営化の方向での検討を進めていくということでございます。ただ、先ほども申しましたように、この法律は分割、民営とかいうような経営形態というものの実体を定めた実体法、現実の施策に落とすための実体を定める実体法ではございませんで、あくまでそういう基本的な考え方を、具体的にそれを検討していくための検討の枠組み、仕組みを定めたそういう仕組み法でございます、検討法でございます。したがって、そういう法律の性格上、法制的にはそういう方向でまずはスタートを切っていくのではあるが、ある段階でどうにもならぬということで、しかも、それが非常に合理的な理由がある、しかも、別の形態をとることが臨調答申のねらっている精神というものに決して反しないというようなことであるならば、そういうことも可能性としてはあり得るということを述べたわけでございまして、この法律の性格からそういう場合もあり得るということが出てくるわけでございます。あくまで分割、民営とかいうふうな経営形態というものを現実の施策に落とすための実定法ではない、あくまで検討のための仕組みを定めた法律であるというところから、法制的にそういうことが出てくるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、あくまで分割、民営というのが臨調答申である以上、しかもそれを尊重するという以上、白紙の状態ではなくて、その分割、民営という方向に沿ってまずは検討を進めていくということは間違いない解釈というふうに私どもは考えております。
#69
○小渕(正)委員 私が申し上げるのは、すべて白紙の状態で監理委員会にすべてを任せて、そういう中であらゆる可能性を探っていくという形であるならば、いま御答弁なさったようなこと、いろいろなことを想定しながら考えて一つの法律案をつくっていくということはそれなりにいいと思います。しかし、現在は、いま前段言われるように、あくまでも分割、民営化という基本方針の上に立って、そのレールの上に乗って、あとそれをどう具体化していこうかということで、これからいろいろと検討が進められるのがこの監理委員会の任務でしょう。だから、この監理委員会の任務でそういう仕事をやる上において、場合によっては分割、民営化でなくてもいい、そういうことがあり得るということを頭に置きながらそういうものを検討していくという行き方と、あくまでも基本方針の分割、民営化という方針に沿って、あとはこれをどう具体化していくかということだけで論議を進めていくのと、結論として変わってくることはあり得るのですよ。だから、あくまでもそういう意味で、私が非常にこだわっているのは、初めからそういうことをいろいろと頭の中に想定しながら監理委員会の人たちが検討する進め方と、絶対分割、民営化という基本方針の中ですべてやるのだという、一つのそういう整理された頭の中で問題を煮詰めていくのとは、場合によっては分割、民営化でなくてもいいんだ、そういうことがあり得てもいいんだという形でそういうものを頭の中に置きながらいろいろ議論を煮詰めていくのと、おのずから結論の出し方が変わってきます。だから、そこのあたりは非常に微妙だけれども問題だということで私は指摘しているわけです。その点おわかりですか。#70
○長谷川国務大臣 まさに大事な御指摘でございまして、先ほど国鉄総裁も、非常に多量な従業員がおってこれの管理がむずかしい、こんな話も実務者からありました。それと同時に、これだけの財政再建という国政の大眼目になっていることですから、これはやはりあれだけの世論、あれだけの支持者がみんなで集まって御研究いただいた臨調答申というのが分割、民営である、しかしそれは形としてそのまま押しつけるわけにいかぬから、監理委員会において分割、民営ということを中心に議論してもらいたい。私は、五人の委員会の皆さん方が、いままでのデータかれこれを全部集められて、分割、民営という原則で御審議をいただく、そしてそれが財政再建に通じるものだ、こう思っております。#71
○小渕(正)委員 先ほどから申しましたように、結局分割、民営、そういった、監理委員会が自分たちの任務はそれをどう具体化していく仕事だということですべてスタートするのと、先ほど言ったように、場合によってはそうでなくてもいいんだという形でスタートするのとはずいぶん違うわけです。だから私が言っているのは、少なくとも入り口、設置されて審議をこれから進める上においては、分割、民営という線に沿って、あとはどう具体化していくかということだけを中心に、それ以外に結論はあり得ないということでこれは議論を進めていただかぬことには、結論の中における前提を前もって持っておれば、場合によってはいろいろな、非常にむずかしい困難な問題を審議する機関ですから、いろいろなことが考えられると思いますが、そこのスタートのところの、皆さん方委員の人たちの心構えといいますか、認識をきちっとしておくか、しておかぬかによっては、いまそちらが言われたような、検討の仕方次第では結論の出し方がいろいろ変わってくると思うのです。だから、あくまでも分割、民営化という方向で、あとはどう具体化するかということがこれは国鉄監理委員会の任務だ、これをはっきりそこに明言されて、これからの作業をやっていただくということで確認していいかどうか、その点、いかがですか。#72
○林(淳)政府委員 その点は気持ちの持ち方の問題だと思いますけれども、先ほどから申し上げておりますように白紙の状態ではなくて、臨調答申を最大限尊重する、その方向で対処する、こういう考え方のもとに仕事を監理委員会としては進めていくということになろうかと思います。ただ、先ほど申し上げておりますのは、法律の仕組みのことを申し上げたわけでございます。#73
○小渕(正)委員 わかりました。その点、非常にくどいようでございましたけれども、非常に問題点を感じておりましたので、指摘をしたわけです。それから、委員会の人選の問題で、本会議の方でも一つの考え方が示されておりましたが、今回の監理委員会のお仕事からいきまして、これは人選をどういう形で行われるかによって、また結論の出し方が非常に変わってくる可能性があるような内容の問題点を含んでおります。したがいまして、そういう意味では臨調答申に沿って、国鉄を分割、民営化の方向の中でいかにしていくかという、一つの大きな見識を持たれた人たちを中心にしてこの委員会は構成さるべきだと思いますが、そこらあたりもう少し、具体的人選の考え方といいますか、基準といいますか、そういうものがございましたならば御説明いただきたい、かように思います。
#74
○長谷川国務大臣 このたびの国鉄再建監理委員会の委員の任命は、大変な大事な仕事でございますので、委員会の皆さん方は広く国民的視野にお立ちいただき、そしてまた、国鉄改革についての非常な熱意をお持ちになる方、こういう方を実はお願いしたい、こう思っているわけでありまして、いまこうして委員会で法案の御審議を願っておる最中ですから、人選等々にまだ頭を使うところまでいっておりませんが、いずれにいたしましても、御期待に沿えるような方々にお願いし、御報告申し上げたい、こう思っております。#75
○小渕(正)委員 次に、この監理委員会の最終答申といいますか、最終でなしに、いろいろその都度の考え方等が具申というか答申されていくだろうと思いますが、そういうことで、内閣総理大臣はこれを最大限尊重しなければならないということになろうかと思うのです。これは一つのあれですけれども、尊重するということを客観的にはどういう形で判断するのか。尊重の中にもいろいろありましょう。全体本当に尊重したという見方もありましょうし、部分的には尊重されておっても、全体で見たらこれは尊重されていないのじゃないかという見方もありましょうし、それは見る人の尺度によって、尊重ということはなかなか言葉の定義が広いのでむずかしいのでありますが、内閣総理大臣がこれを極力尊重せねばならないという、その尊重というのは、国民全体が見てこれは尊重されておるという意味で理解していいのか。たとえば、例をもう少し具体的に言いますと、監理委員会の人たちは、ああ自分たちの答申がこれだけ尊重された、こういうふうな形の中で尊重というものを一つの目安として考えるのかどうか、そのあたりの、最大限尊重するということに対するお考え方があればお聞かせいただきたいと思います。#76
○林(淳)政府委員 監理委員会の意見を内閣総理大臣としては尊重しなければならぬということを法律上義務づけているわけでございますが、尊重するという言葉の意味は、まあ特段の合理的な事由があれば別でございますが、そういうものがない限りは、最大限その考え方に従って対処していく、こういうことでございますので、したがって、臨調答申というものが出て、それがだれが見てもこれはおかしいということでない限りは、その方向で施策は進められていくということであろうかと思います。したがって、そういう状態というものをだれが一体認定するか、確認するかということでございますが、これは、まずはその意見を受けた政府が、客観的に自分みずから判断をして、その方向で対処をしていくということでございましょうし、それを周りから見て、関係者がなるほどということであれば、その方向での尊重という義務が果たされておるという状態になっておるということであろうかと思います。#77
○小渕(正)委員 それから、この監理委員会の具体的な仕事の中身の問題ですが、臨調答申の中では、「「新形態移行までの間緊急に措置すべき事項」を織り込み、現行経営改善計画を改正する。」という項目が具体的に「手順」の中に出ておるわけですね。そうすると、これは監理委員会で、たとえば、先ほど国鉄総裁のお話では、経営改善五カ年計画を見直す段階にあるけれども、その時期はまだわからぬということを言われておりましたが、この監理委員会が設置されれば、緊急に措置すべき事項を織り込んだ現行経営改善計画を改正するものを早急につくらなければいかぬということになるわけでありますが、監理委員会の意見を盛り込んでそういうものをつくった場合、そういった中身の個々についても監理委員会は、作業として、具体的に国鉄に対する何らかの指導助言といいますか、そういうものを行うのか。諮問があった場合にのみ応じて監理委員会としての一つの考えを出して、あとは、それを実際にどうするかということはすべて監理委員会がそこまで見守っていく、そういうことまで考えておるのかおらないのか。その監理委員会のそういう手順をいろいろ検討されるわけでありますが、そういう個々の意見を盛り込んだものの結果として、それを監理委員会は個々にまでいろいろ指導助言をするのか。これは、一つの結論を出せばあとは終わりという形でいく、あとは当事者の国鉄に任せるか、運輸大臣に任せるか、そういうことで個々のその実際の実行の中身についてまでは口を挟まないということになるのかどうか。そこらあたりはいかがでしょうか。#78
○林(淳)政府委員 この法律におきましては、監理委員会の仕事は、まず本来のメーンの仕事といたしまして、効率的な経営形態の確立及びこれらに関連する長期債務等の諸問題、これらを解決する、企画、審議、決定していくというのがございますが、同時に、それに密接に関連する仕事としまして、いわゆる緊急措置につきまして、監理委員会としてみずから調査、審議をして意見を総理に述べることができるという規定と、それからさらには、その緊急措置を受けまして、政府及び国鉄におきまして具体的な経営改善計画の改定作業が行われた場合には、その改定された経営改善計画の、運輸大臣の承認をとる手続の過程におきまして、監理委員会の意見を聞く、附則にそのための監理委員会への付議という規定が置いてあるわけでございます。そういう形で、結局は監理委員会のメーンの仕事である経営形態等の諸問題、これらと密接に関連しておるという関係で、緊急措置というのは、政府及び国鉄が主体的にこれを実行していくというのが本来の姿だと思いますが、そういう経営形態等の問題にも密接に関連する、こういうことでありますので、監理委員会としても、ただいま申し上げたような形でこれに関与をしていくということに法律上仕組みとしてしてあるわけでございます。#79
○小渕(正)委員 高木総裁にお尋ねいたします。先ほどの御質問の中でも触れられておりましたが、再建計画は、六十年度までの分がもう大きく食い違うといいますか、そごを来したので、早急にこれは見直しをやらなければいかぬということで、特に貨物部門を中心にして大きな要因であったということから、いまその検討といいますか、見直しの作業を進めつつある、こういうようなお話でありましたが、そういうものを見直してはっきり出していく時期というか、めどというのが大体いつかわからぬということは、ちょっとどうにもならぬのじゃないかという気がするのですけれども、その点、ここでいま触れましたように、この監理委員会が設置されれば、それらを含めて、緊急に措置すべき事項も含めた中での新しいものを早急につくり直さなければいかぬということになると思いますけれども、そこらあたりについては、いまの段階ではいつごろまでをめどにやるかということについては、やはり見通しは全然困難、こういうことですか。
#80
○高木説明員 私どもといたしましては、なるべく早く作業を取りまとめて、そして監理委員会でも、国鉄自身が経営の立て直しについてどういう取り組みをしているかということをよく御説明できるようにしたい。現行の経営改善計画では、このままではどうもうまくいかなくなりましたというだけでは御説明にならないので、国鉄の現状なり、私どもとしてとるべき具体的施策、経営形態と関係なく、どっちにしてもとるべき方針といったようなものを御説明しなければなりませんから、したがって、その時期はなるべく早くしなければならぬと思っております。ただ、一例を申し上げますと、先ほどの貨物の問題などにつきましても、私どもとしては、こういうふうに輸送形態を変えたいということを決めまして、いま各方面に御説明をし、御理解を求めようとしているわけでございますけれども、これは日本のもろもろの物流形態にかなり影響がございますし、個別個別の企業の経営のあり方にも影響があるということで、今日ただいまでも必ずしも皆さんから御理解が得られるということになっていない。また、地方交通線につきましても、第一次指定の分につきましては協議会は進んでおりますけれども、まだなかなかどっらの方向に、バス転換をするのかどうかというようなことについて、まだそれぞれの協議会が御意見を固めることにはなってきていない。また、第二次指定につきましては、まだ都道府県知事の御意見がいただけない段階でありますから、協議会が発足するということになっていないというようなことがあるわけでございまして、したがってわれわれの方として、こういうふうに経営を持っていきたいという腹づもりはできておりますけれども、それが実現可能かどうかということになりますとまだもう少しいろいろ、単に内部の検討ということでなしに、関係各位の御理解をもうちょっと得ませんと、これまた絵にかいたもちになってしまう危険があるものでございますから、明確に時期を申し上げられないでいるのはそういう事情でございます。まず、鋭意関係各位の御理解を深めた上で、貨物につきましても地方交通線につきましても、また、その他の問題等につきましても、中身を積み上げて案にしたいと思っておるわけでございまして、監理委員会の発足というようなことと密接に関連して間に合わすようにしなければいかぬというふうに思っております。
#81
○小渕(正)委員 いろいろむずかしい要素をはらんでおる問題でしょうけれども、私たちから考えますならば何かしら頼りない気が非常にするわけでありますが、監理委員会が設置されたらそういう形で早く取り組みたいということですから、この点に触れるのは省略いたします。次にお尋ねいたしますが、五十五年度以降の累積赤字は、五十五年、五十六年はわかっていますが、五十七年度がまだはっきり出されてなかったような気がしますが、五十五年以降の累積赤字は幾らになったかということとあわせて、それらの措置についてはどういう考えを持っておられるか、参考のためにちょっとお聞かせいただきたいと思います。
#82
○永光政府委員 お答えいたします。五十七年度はまだ締め切っておりませんし、五十八年度は予定でございますが、長期債務は、五十五年度が十四兆四千億でございまして、五十六年度が十六兆二千億、五十七年度が十八兆四千億、五十八年度は予定として二十兆三千億という額でございます。
#83
○小渕(正)委員 それから次に、臨調の答申を受けて緊急に措置すべき事項ということで、閣議決定いたしました十項目の問題が、実は緊急に閣議決定されて、現在国鉄で取り組まれておると思いますが、この緊急に措置すべき十項目の中身を具体的に、それぞれどのような進捗状況なのか、大筋で結構ですから、それぞれ項目別に、こういう項目は現在までほぼ八割完了したとか、これはまだ手つかずだとか、いろいろありましょうけれども、そこらあたりの大筋についての状況をお知らせいただきたい、かように思います。#84
○竹内説明員 昨年の九月二十四日に閣議決定されました緊急対策十項目は、臨調の十一項目にほとんど対応するものでございますけれども、基本的には、これは本来国鉄として当然なすべき事柄であるということでございますので、正面から取り組んでまいっております。まず第一項目は、職場規律の確立あるいは現協制度等の問題でございます。これに対しましては、職場規律は、五十七年の三月にまず第一回の総点検をいたしまして、七月に中間報告を行っております。さらに、九月に再度総点検を行いまして、その結果を運輸大臣にも御報告を申し上げたところでございます。しかし、現実の問題としましては、なおかつ問題点が残されているということでございますので、さらに年二回程度は今後とも引き続き続けてまいりたいということで考えてございます。
それから、現協制度につきましては、抜本的な改定案を組合に提示いたしたわけでございますけれども、組合の中で動労、鉄労、全施労の三組合とは妥結をしたわけでございますが、国労、全動労については妥結の状態になっておりません。十二月以降無協約状態が続いておるわけでございます。
それからもう一点は、信賞必罰体制の確立ということでございましたが、これも当然管理体制の確立を図る上におきましても最も大事なことでありますので、これについてはあらゆる機会に鋭意取り組んでございます。
それから第二項目目は、新規採用の原則停止というような事柄でございますけれども、五十七年度の合理化数は当初一万四千三百人ということでございましたけれども、これを上積みをいたしまして、二万二千六百人の合理化をこの五十七年度中に実施するということにいたしたわけでございます。その結果といたしまして、新規採用は原則停止をいたしましても業務運営上支障がないということにいたしておるわけでございまして、作業体制の見直しだとか配置転換の促進等によって、これらの施策を推進いたしておるわけでございます。
それから三項目目は、設備投資の抑制ということでございますけれども、安全確保のための投資を除いては原則として停止するということでございます。これに対しまして、五十八年度予算におきましては、五十七年度に対しまして三千三百億円の投資額を抑制いたしておりまして、東北新幹線の大宮以南の工事等緊急を要するもの、並びに安全確保に必要なものに限定をいたしまして工事を行うということにいたしております。
それから四項目目は、貨物営業の合理化という問題でございます。これは六十年度までに固有経費における収支の均衡を図るということを当初の目標といたしたわけでございますけれども、最近の貨物輸送量の激減という状況に対応するためには、当初計画ではきわめて不十分であるということでございますので、昨年、五十七年十一月のダイヤ改正におきまして、六十年までに行う施策をすべて実施したわけでございますが、なおかつ、これでは足りないということでございますので、五十八年度中にさらに大規模なダイヤ改正をやりたい。この際に、現在の八百駅、百ヤードという体制を根本的に転換いたしまして、直行輸送体制へシステムチェンジをしたいということで計画をいたしておるわけでございます。これによりまして、当初計画をしておりました貨物の固有経費におきます収支均衡を何とか達成したいということで、現在その方針に基づいていろいろな施策を進めておるところでございます。
それから五番目は、地方交通線の整理の促進という問題でございます。これは、現在の国鉄経営再建促進特別措置法に従って第一次特定地交線、第二次特定地交線を選定をいたしたわけでございますけれども、すでに第一次の特定地交線につきましては、各線区におきまして協議会が持たれて、現在検討が進められておるところでございます。一部の線区につきましてはすでに第三セクター化を目指して進められておりますし、一部の線区につきましてはバス転換を図るという方向で現実的な対応が進められておるわけでございますけれども、その他の線区につきましても、当初の計画に従いましてできるだけ早期に方向づけをしてまいりますように、現在それぞれの現地におきまして協議会で検討が進められておるところでございます。
なお、第二次につきましては、現在三十三線区を選定いたしまして、運輸大臣あてに御承認の申請をいたしておるところでありまして、運輸大臣の方から各関係知事さんあてに意見を求めているところでございます。
それから六番目は、乗車証制度の見直しということでございます。これにつきましては、昨年の十二月一日に大幅な見直しを行いまして、職務乗車証を除き、原則として廃止をいたしたわけでございます。
それから七番目は、運賃の適正化ということでございまして、一つは、安易な改定は行わないということと、もう一点は、他の輸送機関との競合関係、あるいは線区別原価等に十分配慮しつつ運賃を定めるという事柄でございますけれども、これは、現在五十八年度予算におきましては、第一の点については運賃改定なしを前提にした予算になっておるところでございます。それからさらに、線区別原価等の関係につきましては、これらを配慮いたしました運賃設定の具体化について現在検討を進めておるところでございます。
それから八番目が、兼職議員の承認の見直しということでございますが、これは昨年、五十七年十一月一日以降新たな承認は行わないということで、現在もそれに沿って進めておるところでございます。
それから九番目が、資産処分の促進等による積極的増収という事柄でございますが、これは五十八年度予算で資産処分を千六百億円ということで、対前年度予算に対しまして倍増の計画を組んだわけでございます。それから関連事業収入につきましても、五十七年度に対しまして約一四%程度の増収を見込んでございます。
それから十項目目が、自動車、工場、病院の分離等、また期末手当、業績手当等の抑制の検討ということでございますけれども、これにつきまして、自動車、工場、病院等に対しましては徹底的な合理化を進めるということにいたしてございます。
全般といたしまして、人件費総額を徹底的に削減をしたいという基本方針の上に立って進めております。結果的には、この閣議決定によります御指示を期待される効果として実現をしていきたいということで考えておるところでございます。
以上、閣議決定の十項目につきましての概要でございます。
#85
○小渕(正)委員 それぞれ各項目ごとにいろいろ中身を突っ込んでいきたいわけですが、余り時間がございませんので後で二、三点触れますが、その前に国鉄総裁にちょっとお尋ねするわけです。総裁は、臨調の第一次答申が出たときに分割、民営化という方向は反対だということを表明され、それから当時のどの新聞を読んでみましても、現在経営改善計画を進めておるが、これを進めていくということは分割、民営につながっていくことにもなるし、困ったような、ハムレット的な悩みみたいな言動をなさっておられたのが当時の新聞にいろいろ出ておりますが、いかがなのでしょうか。先ほど質問の中でもちょっと触れられておったようですが、総裁は現在でも分割、民営化にはやはり反対という立場で、今日もこれからもやられようとされておるのでしょうか。その点総裁、いかがですか。
#86
○高木説明員 臨時行政調査会の御答申がありましたのが七月三十日でございますが、その日に私どもの考え方を私の談話という形で明らかにさせていただきました。そこでは、私どもは「必ずしも経営形態の変更が再建の必須の要件とは考えていないので、これについて実績を以て応えたい。従って、ここ一〜二年の我々の努力とその成果が、今後の鉄道経営にとって極めて重要であると同時に、監理委員会の判断にも大きな影響を与えるものと考えられ、緊急対策をはじめとする経営改善施策の推進に全力を傾注する。」というふうに申しておるわけでございまして、その気持ちは今日までも変わっておりません。何といたしましても能率的な運営ということが、公社経営体でございましても民営あるいは特殊法人というような場合でも絶体的に必要なことでございますので、そのことについて全力を傾注するということを当時申し上げ、いまもそのつもりでおります。なお、新聞報道等によりまして、監理委員会という制度をいわばボイコットするというような表現を私がいたしたということが当時伝えられたことがありまして、いろいろ御心配をいただきましたが、これは全くの誤報でございます。
#87
○小渕(正)委員 国鉄の今日までに至った経緯等については、何もいまの高木総裁がすべて責任を負われる立場ではないと思います。歴代の政府、総裁その他いろいろそれぞれの要因がありましょうけれども、ただしかし、私、非常に奇異に感じたのでありますが、臨調答申がああやって真剣に相当の期間を要して出されたのに、即時、すぐいきなり、総裁としてそういったものは反対だとかなんとか言う立場にあるのかということですね。やはり謙虚に受けとめるということだけで、あと自分たちの努力を一生懸命やる中で、またそれなりに自分たちの新しい方向をわかってもらえるかどうかということでのお話なら、一般的に国民としては共感を得ると思うのですが、いま一番問われている国鉄の中で、しかもその責任者である総裁が、ああいう結論を出したらすぐそれに対して反対だ、どうだという意思表示をされること自身に、今日の国鉄の置かれている問題に対する認識が少しやはり違うのではないかなという、僕は率直に言って当時そういう感じを持ったのです。だから先ほども、いまでも変わりないかということで御質問したのでありますが、私の言うのが筋違いかどうか、これは皆さんの判断にまつ以外にないのですが、いやしくもあれだけ問題になっているいまの国鉄、何も高木総裁の責任と私は申し上げることはないのですが、ただ現在のやはり責任ある立場の人は、そういう政府機関のいろいろな階層の人たちが十分慎重に検討されて結論を出されたのを、いきなりすぐ反対だとかどうとか言うこと自体、ちょっとやはり間違っている。間違っているという言葉は悪いですが、少しやはりいまの置かれている国鉄の立場からの責任という意味での謙虚さというか、そういうものが不足しているのじゃないか、率直にそういう感じがしたわけであります。したがって、お尋ねいたしますが、今日まで国鉄として自助努力を非常に要請されておるわけでありますが、そういう国鉄が大体今日まで自分たちの力で、自助努力でどういうものをやったのか、代表的なもの二、三点あればまずお聞かせいただきたいと思いますが、その点いかがでしょう。
#88
○高木説明員 自助努力という点は、別の表現をとれば緊急十項目を着実に進めていくということでございまして、先ほど担当常務から御説明いたしましたように、必死にいまそれに取り組んできましたし、また、これからもそれをさらに深度を深めていくつもりでおります。〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕
これをどう御評価いただけるかというのは、評価をされる側のお考え次第でありますけれども、私どもとしては相当精力的に、集中的にそれに取り組んできたつもりでございまして、従来からいたしますれば、ちょっとなかなか手がつけにくいと思っておりました事柄も実施したつもりであるわけでございまして、その緊急十項目の実施そのものが私どもの自助努力ということでお考えいただきたいと存じます。
#89
○小渕(正)委員 真剣に取り組まれておるから自助努力、この緊急十項目が自助努力だと言われることはわからぬでもありませんが、これだって閣議決定で初めてこういうものをやりなさいと言われてやるわけでしょう。そういうのが本当の意味の自助努力なのかどうか。それぞれ自助努力に対する判断というか、定義というのがありましょうけれども、私たちが期待するのは、そういった政府とかいろいろなところからこういうことをやりなさいと言われる前に、自分たちだけでいろいろ考えて、こういうものをやっていこうということで何かやったのかという意味でお聞きをしたいわけですが、その点はないわけですか。いかがですか。#90
○高木説明員 何か、いわゆる外圧といいますか、外部からの御批判といいますか、それがあって初めて取り組んでいる、それでは自分でやったことにならぬじゃないかということであれば、そういう見方も成り立つかと思います。しかし、長年の懸案であるわけでございまして、何度も言われてきたことでございます。それをどういうふうに具体的に積み上げて実行に移すかという点に骨が折れることがあるわけでございます。項目そのものは前々から問題になっていることでございます。その意味で、おまえらは言われたからやったんだなという御批判に対してあえて否定はいたしませんけれども、しかし、それをやること自体をどう評価していただけるかということでお認め願いたいと思うわけでございます。〔三塚委員長代理退席、委員長着席〕
#91
○小渕(正)委員 この緊急十項目をやることについては、長い間のいろいろな問題、慣行がございましょうからそれは大変でしょう。だから私も、それは何もやっていないという意味で申し上げているわけじゃないのですが、もう少し自主的立場で物事を考えて、もっといろいろと取り組むことがあっていいのではないか、非常にほのかな期待ですけれども、そういうことでお聞きしたわけです。たとえば、一例を挙げますが、先ほどの質問の中でも、国鉄の年金、共済問題がいま非常に大きな問題になっていますね。いよいよ政府としては乗り出してきて、三共済を一元化していく中で何らか解決を図っていこうか、こういうところで現在法案が準備されているわけでありますが、われわれ国民の側から見ましてどうしてもすっきりしない点があるのです。一つの例として申し上げますと、国鉄の皆さんだけは年度末の三月三十一日退職じゃなしに、四月一日付で退職なされるわけですね。退職日を年度が明けた四月一日に、一日だけ新しい年度に置きかえる。そういうふうに日にちを設定して、そしてそのために昇給その他の定期的なものを含めて本給を上げて、そして退職金を支給する、こういうシステムになっておるようであります。ほかの共済関係では余りそういうことはないようでありますが、国鉄だけが特別に四月一日付にして、一段退職金を上げて、勤続二十五年か三十年の方かわかりませんでしたけれども、そのために一年間、退職金が約百六十万とか上積みされるということのようでしたけれども、そういうことをおやりになっているわけですね。国鉄だけの特殊事情ということのようでありますが、そういうことが今度はそのまま年金にはね返ってくるわけですね。そういうことをしたために、今度は年金支給においてやはり年にたとえば二十万なり二十五万なりの支出増といいますか、そういうことにはね返ってきているわけです。しかも、国鉄の理事の皆さん方は、一応理事になる前におやめになった形で退職金をおもらいになって、そして理事になったらまた理事になった後何年間かの在職中の退職金というか、何かそれに報われるものがあるということのようでありますが、そういうことが逆に年金の問題にも重なってくるわけであります。
いずれにいたしましても、ここに資料がありますけれども、いまの国鉄の置かれている問題点をサンケイ新聞が特集したのがありまして、ここにたくさんの問題が出ております。一つの事例としていま私こういう問題を申し上げたわけでありますが、ここらあたりはみずからの自助努力、考え方によって何らかの措置ができるのじゃないか、私はそういう感じもします。共済年金で電電とか専売とか国家公務員の人たちと一緒になって痛みを分かち合おうということをなされる以上は、みずからも何らかの形の痛みを少しでもする、痛みを分かち合うならば、それなりに自分たちの中においても少しはそういうところにメスを入れた形の取り組みをするということが、皆さん方との連帯感や共感を得る意味におきましても必要じゃないかと私は思うわけですね。だから、そういう意味で自助努力というのはもっと本気になれば、私は、何も働く人たちをどうのこうの言うことはございませんが、理事者だけでもそういうことについての考え方をもっと別に出していいのじゃないか。皆さん御承知のように、いま民間は不況になって、管理者以上はほとんど五%カットとか一〇%カットとか、期末手当につきましてもある程度カットとか、みんなそれぞれに応じた処理の仕方をされております。そういう意味で考えてみますならば、いまの国鉄の経営を預かる皆さん方の中に、何かそこらあたりのものが足りないのじゃないか。もっと自分たちみずからがそういうものを考えて、お互いにもっとできる面がたくさんありはしないか、こういう意味で実は先ほどから自助努力の問題を御質問したわけです。
先ほどから申し上げましたように、年金でお互いに連帯感の中で痛みを分かち合おうということは当然のことかもしれませんが、それにはそれなりに、ただ皆さん頼みます、いまの国鉄はこんな状態でございますからよろしく頼みますだけでは皆さん方の共感を得るにはいかぬのじゃないかという気が私はしてならないわけです。したがって、そういう点でひとついかがでしょう、いまからでも遅くないのです。自分たちみずからでもう少しそういうところにメスを入れてやろうという意気込みがあるのか、そういう決意があるのかどうか、そういうことが国民の皆さん方に少しでも国鉄が真摯になって再建に取り組んでおられるという一つの姿勢として理解されていくのじゃないか、かように思うのですが、その点いかがでしょうか。
#92
○高木説明員 いま御指摘の中の、年金計算の基礎となる給与額をいつの日で基準とするかという問題については、多少技術的ということでございますので、担当の者からお答えさせます。それから、もろもろの給与その他について、少なくとも理事者は自粛してしかるべきじゃないかということについてはそのとおりでございまして、実は私を初めといたしまして、私どもの方の理事者は約四年ぐらい前からいわゆる手当について半額返上をさしていただいております。最近、新聞等でいろいろな企業で管理職手当をカットするとか、ボーナスを減らすとかいうことが出ておりますけれども、ある意味では大変うらやましいなと思うわけでありまして、私どもはもっとうんと前からそれは実施をいたしておるわけでございまして、そのことは当時はいろいろと新聞でも報道してもらいましたけれども、もうそれが定位になってまいりましたので、今日では余り話題になっておりませんが、そうしたことはいたしております。また、理事者でなくて幹部職員の給与改定等につきましても、過去においても何回かにわたりましていろいろな特別措置により給与抑制をやっているわけでございます。
年金の問題は大変技術的な問題でございますので、他とのバランスの問題はいろいろ言われておりますが、計算日の基準をどこにとるかは答弁させますが、今回の統合につきましては、私どもの方だけにつきましては給付を抑制する、いわば物価スライド、賃金スライド等で毎年給付が上がってまいりますものをしばらく抑制することによって受給者の犠牲を求める、また、現職職員の共済の負担は他の公社等に比べて現在でも非常に高いものになっておりますが、さらにそれを高めていくというようなことで、先ほど共済についての御質問での大蔵省側からの御答弁でもございましたように、相当程度の金額のものを、当然みずからの問題でございますから、これまでよりも多く負担をするということでバランスをとる案になっております。どの辺がバランスかという問題はいろいろありましょう。その程度では少ないということもありましょうけれども、私どもとしましては、当然他の共済組合の組合員の方々に御迷惑な、ある意味ではいわれなき負担をお願いするわけでございますので、その前にわれわれとして、経営者としての国鉄も、それから現職の従業員も、給付を受けるOBの皆さんも、それぞれ他公社よりは重い負担をしていくという前提になっております。
#93
○三坂説明員 年金問題について補足させていただきます。国鉄職員の年金は公共企業体職員等共済組合法、各公社共通でございまして、国鉄職員だけが四月一日の退職となっているわけではございません。ただ、国家公務員との間には差がございまして、国家公務員は過去一年間の給与の平均をもって年金の基礎といたすわけでありますが、三公社の、公共企業体の職員は退職時の俸給をもって査定いたしますので、その分高くなっております。この分につきましては、逆に退職手当の方を三%引くということで調整を図っておるわけでございますが、今後法律が一本化されますと、そういう意味での公務員との差はなくなるということになろうかと存じます。
それで、自助努力につきましてはただいま総裁が答えたとおりでございまして、現在公務員が五・一五の掛金でございますが、国鉄職員はすでに七・四%、四割高い掛金を掛けております。これをさらに、今度の予算におきましては統合法案等の絡みがございますが、今年十月に八・七五に上げたいというふうに考えております。これは組合員からしますと、すでに日本に八つある公的年金制度の中で一番高い掛金を掛けておるわけでございまして、相当の異論があるところでありますが、やはりわれわれが自助努力をしない限り、他の公務員、公企体の方々の御納得が得られないということで、最終的には五十九年には一〇・二%にまで上げることでその計画をいたしております。さらに、総裁も触れましたように、OBにつきましては年金スライドを停止するという形で、自助努力の一つの方法として、われわれもできるだけ他の御納得が得られるような、あらゆる方法に努めてまいりたいというふうに考えております。
#94
○小渕(正)委員 このことは余り多く申し上げませんが、私が言ったのは何も年金の支給基準のとり方を言ったんじゃないのです。三月、年度末で退職になるにかかわらず、四月一日、一日だけ在職したようにして、新年度において昇給をさせて、少しまたプラスアルファという上積みしたような形の中で、退職金にしても年金にしても、そういうものにすべて影響するようなやり方を国鉄さんはしておりませんかということを言っておるわけです。だから、共済関係でそれぞれが一年間の年収を平均して、それが基準になるということは百も承知しておりますから、そういう意味じゃないですから、その点を間違わぬようにしておいてください。もし私の言うことが間違いであれば訂正していただきたいし、もしそうでないならばもう答弁は不要です。それから、先ほど高木総裁からいろいろのお話がございましたが、職場規律の確立という問題で、緊急措置すべき十一項目の中の第一項に出されておって、かなりいろいろ改善されたということになっておりました。三月二十九日付の新聞、どれでも出たと思いますが、南九州の五つの駅を当局は組合の管理下に置かれてしまったという報道が出ておりますね。これは御承知でしょう。新聞報道だけしか私たち知りませんが、こういう報道が事実なのかどうか、事実関係がどうだったのかということと、あわせてこれに対する処置、対策等どうしたのか、この点が一つです。
それからあと一つは、三月十五日でしたか、久しぶりと言ってはおかしいですが、国鉄の諸君が順法闘争という形の中で、二日間か三日間だったと思いますが、運行を非常におくらせて、結果的にはダイヤがおくれてしまった順法闘争、あれについて当然国鉄当局としては何らかの対策その他いろいろなものを考えられていると思いますが、そういうものに対する国鉄の現在の考え方、処置といいますか、処理をどのようにされようとなされているのか、この二点についてお尋ねいたします。
#95
○三坂説明員 先ほどの年金の関係でございますが、適用法律が一緒でございますので、他の公企体もすべて四月一日をもって退職年次といたしておるわけでございますので、補足させていただきます。それから、ただいまお話のございました鹿児島管理局における団体交渉の問題でございますが、鹿児島鉄道管理局では年度末に約五百人の職員が退職いたしますので、これの補充を図るために、労働組合に合理化の提案を各種いたしてまいったわけでございます。その中心になるものに駅の能率向上と外部委託の問題がございまして、七つの駅の合理化を三月一日から実施したいということで、労働組合に一月中旬に提案をいたしまして、鋭意団体交渉を重ねてまいったわけでございますが、どうしても労働組合の方が、特に主として国労でございますが、これに応じないもので、私どもは業務の引き継ぎの関係その他ございますので、これを三月四日に延ばし、さらに三月七日に延ばして、もはやこれ以上遷延できないということになりまして、最終的には当局案でやらせてもらう、団交に応じてほしいという呼びかけを国労にいたしたわけでございます。三月七日の時点になりまして動労、鉄労はこの呼びかけに応じて、徹宵で団体交渉をして妥結に至ったわけでございますが、国労は団交の場にあらわれませんでしたので、三月八日にその妥結内容を国労に伝えて、他の組合と決まった案で実施に移させていただいたわけであります。
この七つの駅のうち、二駅は当局案どおりスムーズに実施できたわけでありますが、他の五駅につきましては実施に際して国労組合員がピケを張って阻止するという事態がございまして、これは三月十四日、三月十五日、二つのケースがございますが、それぞれ警察官を導入して実施をいたしております。しかし、その翌日から再び労働組合員がピケを張りまして、外部の委託業者の入室を阻止する、あるいは駅長の勤務指定にもかかわらず、従前どおり出札、改札の業務を続けるというふうな事態が継続いたしました。私どもは、本案件が九州地方調停委員会の方に八日に国労から出されておりまして、その調停委員会の方から本案は解決不能であるという通知が十九日に参りましたので、十九日以降さらに当局案を誠意をもって説明いたしまして、ようやく事態は正常化いたしたわけでございます。しかし、この間正常な業務を阻害したという事実がございますので、ただいま旅客局長を初めとする調査団を現地に派遣したところでございますが、この事実を調査いたしました暁に厳正な措置をとりたいと思っております。
さらに、もう一点御質問のございました三月十五日からの順法闘争でございますが、三月十五日から十七日までの三日間、国労が要員の確保、年度末手当の支給あるいは入浴等諸権利の確保というふうな要求をもちまして、全国的に順法闘争を実施し、旅客列車約二百六十本、貨物約六十本の運休その他数多くの遅延列車を生じまして、利用者に大変御迷惑をかけて申しわけないというふうに考えております。もちろん違法な闘争でございますので、厳正な措置をとるべく、現在それぞれの関係管理局におきまして実行行為者等の精査をいたしておるところでございまして、できるだけ早い機会にこれも対処をしたいというふうに考えております。
以上でございます。
#96
○小渕(正)委員 いまの南九州の話の中で、要員配転の問題等が原因になっての事実関係として起こったようですが、新規採用原則停止ということで、先ほどの報告の中ではそのために二万二千六百人合理化して、人員の配置転換その他の対策を立てたというふうに言われております。しかし、結果的にはそういうことがまだまとまらなかったから、南九州あたりではいま申し上げたような問題につながって発展していった、こういうふうに受け取っていいかどうか。その点、新規採用原則停止という問題と、いま皆さん方の説明の中では、かなり人員をうまく配置がえして、国鉄運営に支障がないというような御答弁でございましたが、実際の枝葉といいますか、それぞれの現場に行くと、大枠だけは決まっておっても実際にはこういった問題でまだ何ら機能していないところがあちこちあるような気もするのですが、その点いかがですか。#97
○三坂説明員 全体的な計画から申し上げますと、先ほど話が出ましたように今年度約一万四千三百人の合理化予定に、さらに八千三百人上積みすることによりまして、当初予定いたしておりました約九千人の職員を新規に採用する必要がないようになったわけでございます。鹿児島のケースも、通常でしたら約五百人の退職補充者を新規採用しなければならぬわけでありますが、業務量を切り捨てる、あるいは能率を向上する、あるいは外部に委託するという形で新規採用が全く不要となるようにしたわけでございます。ただそれは、四月一日からの業務をスムーズに行うためには三月初旬にそのことを実施しなければならぬために、労働組合との間に若干のトラブルを生じ、われわれとしては、一定の時限を切って当局案で実施せざるを得ないという事態が生じたわけでございます。三月三十一日時点で、ほとんどの管理局で予定どおりの合理化を達成いたしました。四月にずれ込んだ管理局も二、三あるようでございますが、二万二千六百人の合理化はおおむね達成しておるというふうな報告をいただいております。#98
○小渕(正)委員 合理化は達成したけれども、実際にそういう現場なんかに行くとまだまだそういうトラブル等があって、必ずしも総枠どおりの形になっていないということの一つのあらわれじゃないかという気がするのです。その点は多くを申し上げませんが、先ほどからも申し上げましたように、緊急に措置すべき十項目の中で、職場規律の確立等というのが第一に挙げられた大きな課題ですね。先ほどの御説明、御報告ではかなり改良、改善されていったということのようですが、私たちが実際に見ると、まだまだワッペン、リボン闘争というような違法な形が平然と行われておるし、先ほど言うような順法闘争的なものがまた繰り返されるような状況でもあります。また、いま南九州の話が出ましたが、国民に本当に信頼される再建ということを考えますならば、ここで国鉄の労使がそういう意味では本当に真剣に現状認識をして、もっとがんばっていただかなければいかぬという気がするわけであります。いずれにいたしましても、これからもまだまだそういう点では問題点が出てくるかと私は思いますが、こういう場合はひとつ迅速にその処理をするように、運輸大臣の方からもそういった意味における指導性を強く発揮していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
#99
○長谷川国務大臣 まさにおっしゃるとおりでして、国鉄のこれだけ大危機のときですから、みんなが現状を認識されて、多少ずつひざを譲り合って、労使うまくやりつつ国民の信用をかちとるべきだ。私も現場を歩きながらそういう雰囲気をつくり、何といっても職場規律の確立が第一です。そこに規律があればみんなが信用しますし、お客さんも信頼感を寄せることですから、そうしたことで経営者もお互いにみんなで督励してやってまいりたいと思います。#100
○原田委員長 次回は、来る八日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。午後零時四十六分散会