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1982/03/02 第98回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第098回国会 商工委員会 第4号
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1982/03/02 第98回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第098回国会 商工委員会 第4号

#1
第098回国会 商工委員会 第4号
昭和五十八年三月二日(水曜日)
    午前十時三十四分開議
 出席委員
   委員長 登坂重次郎君
   理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君
   理事 森   清君 理事 渡部 恒三君
   理事 後藤  茂君 理事 水田  稔君
   理事 長田 武士君 理事 中野 寛成君
      天野 公義君    植竹 繁雄君
      浦野 烋興君    越智 通雄君
      奥田 幹生君    梶山 静六君
      島村 宜伸君    田原  隆君
      中島源太郎君    鳩山 邦夫君
      宮下 創平君    粟山  明君
      上田  哲君    上坂  昇君
      清水  勇君    城地 豊司君
      渡辺 三郎君    北側 義一君
      横手 文雄君    渡辺  貢君
      石原健太郎君
 出席国務大臣
        通商産業大臣  山中 貞則君
 出席政府委員
        公正取引委員会
        委員長     高橋  元君
        公正取引委員会
        事務局経済部長 佐藤徳太郎君
        通商産業政務次
        官       渡辺 秀央君
        通商産業大臣官
        房長      柴田 益男君
        通商産業大臣官
        房審議官    野々内 隆君
        通商産業大臣官
        房審議官    池田 徳三君
        通商産業省産業
        政策局長    小長 啓一君
        通商産業省基礎
        産業局長    植田 守昭君
        通商産業省生活
        産業局長    黒田  真君
        資源エネルギー
        庁長官     豊島  格君
        資源エネルギー
        庁公益事業部長 小川 邦夫君
        中小企業庁長官 神谷 和男君
        中小企業庁計画
        部長      本郷 英一君
 委員外の出席者
        商工委員会調査
        室長      中西 申一君
    ─────────────
二月二十五日
 特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)
同月二十六日
 特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)
同月二十八日
 中小企業対策に関する請願(野田毅君紹介)(第一一二三号)
は本委員会に付託された。
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)
 特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)
     ────◇─────
#2
○登坂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案及び特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案、両案を議題とし、それぞれ趣旨の説明を聴取いたします。山中通商産業大臣。
    ─────────────
 特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案
 特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#3
○山中国務大臣 特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 特定不況産業安定臨時措置法は、第一次石油危機に起因する大幅な需給の不均衡等の経済的事情の著しい変化に対処するため、いわゆる構造不況産業について過剰設備の処理等を計画的に行うことにより、その不況の克服と経営の安定を図ることを目的として、昭和五十三年五月に制定されたものであり、本年六月末をもって廃止されるものとなっております。
 同法の制定以来、対象となった業種においては、設備処理が計画的に実施され、所期の効果を上げつつありましたが、その途上で第二次石油危機が発生したために基礎素材産業を中心として再び設備の過剰が生じ、経営不安定に陥る等構造的問題が顕在化するに至っております。このような基礎素材産業は、優秀な素材を川下の加工組み立て型産業等に供給することを通じて、わが国の産業構造の高度化を支えるとともに、雇用、関連中小企業、地域経済の安定にとっても重要な役割りを果たしており、その直面する構造的な問題を解決し、経済合理性を回復していくことは、今後のわが国経済の発展、国民生活の安定を図るために緊急の課題となっております。このため、特定不況産業安定臨時措置法の廃止期限を五年間延長し、従来より実施してまいりました設備の処理等に関する措置に加え、事業提携、原材料・エネルギーコストの低減のための設備投資等の措置を計画的に行うことにより、早急に基礎素材産業の構造改善を推進する必要があり、本法律案を提出した次第であります。
 次に、本法律案の要旨について御説明申し上げます。
 第一に、題名を「特定産業構造改善臨時措置法」と改めるとともに、法の目的を「特定産業の構造改善」に改めることとしております。
 第二は、法律による措置の対象となる業種の指定についてであります。
 業種の指定については、事業者の自主性を尊重するため、現行法と同様二段階指定方式をとっております。すなわち、まず最初に、対象候補業種として、電炉業、アルミ製錬業、化学繊維製造業、化学肥料製造業、合金鉄製造業、洋紙製造業及び板紙製造業、石油化学工業の七業種を法定するほか、原材料・エネルギー多消費型の業種で構造改善が必要なものを昭和五十九年末までに政令で追加指定することとしております。次に、これらの対象候補業種のうち、大部分の事業者の申し出があったものについては、特定産業として政令で指定し、法律による措置の対象とすることとしております。
 第三は、構造改善基本計画の作成についてであります。
 主務大臣は、特定産業ごとに、産業構造審議会等関係審議会の意見を聞いて、目標年度における構造改善の目標、設備の処理等に関する事項、事業提携に関する事項、原材料・エネルギーコスト低減のための設備投資に関する事項、雇用の安定のための措置等に関する事項を内容とする構造改善基本計画を定めることとしております。
 第四に、主務大臣の指示に従って行われる設備の処理等に係る共同行為を独占禁止法の適用除外とする現行制度を継続することとしております。
 第五は、生産、販売の共同化、合併等の事業提携についてであります。
 主務大臣は、事業者が構造改善基本計画に従って作成した事業提携計画について独占禁止法上の問題が生ずることのないよう公正取引委員会と意見を調整した上で承認をし、この承認をした事業提携計画に基づく事業提携について、税制上、金融上の特例措置を構ずることにより、事業の共同化等が円滑かつ迅速に進められるようにしております。
 第六に、特定不況産業信用基金を「特定産業信用基金」と改称するとともに、その業務を拡充することとしております。
 その他、特定産業の構造改善のために必要な資金の確保、課税の特例に係る規定を設けるとともに、雇用の安定、関連中小企業の経営の安定に係る規定、主務大臣と労働大臣の協力規定等について所要の整備を行うこととしております。
 これらの施策は、基礎素材産業の構造改善に必要不可欠のものであり、基礎素材産業をめぐる事態の重大性及びその対策の緊急性にかんがみ、ぜひとも早急に本法案の制定を図ることが必要であると信ずる次第であります。
 以上が、この法案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
 次に、特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 特定不況地域中小企業対策臨時措置法は、構造的な不況に陥っている業種に属する事業所に対する依存度が大きく、これらの事業所において事業の廃止等が行われている地域において、構造不況の悪影響を受けている中小企業者の経営の安定を図るため昭和五十三年十一月に施行されたものであり、現在、本法に基づき、特定不況業種九業種、特定不況地域四十七地域五十一市町村及び関連市町村九十六市町村を指定し、経営安定対策及び企業誘致対策を講じてきているところであります。
 本法は、本年六月三十日までに廃止するものとされておりますが、最近、構造不況が地域経済にさらに深刻な悪影響を与え、これらの地域において多数の中小企業者の経営がいまなお不安定であり、その経済的環境の変化への適応を促す必要がある状況にかんがみますと、本法を延長するとともに、新たにこれらの地域において構造不況の悪影響を受けている中小企業者の振興を図るための対策を講ずる等施策の充実を図る必要性が高まってきております。本法律案は、このような観点から、特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正しようとするものであります。
 次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一は、本法が廃止するものとされる期限を昭和六十三年六月三十日まで五年間延長することであります。
 第二は、題名等の改正であります。
 本法の趣旨に沿って、各施策のより円滑な推進と中小企業者の事業意欲の一層の増進を妨げることのないよう、題名を「特定業種関連地域中小企業対策臨時措置法」に改めるとともに、本則中において、「特定不況業種」を「特定業種」に、「特定不況地域」を「特定地域」にそれぞれ改めることとしております。また、新たに特定地域における中小企業者の振興を図るための対策を講ずることとすることに伴い、目的に「事業の新分野の開拓等を促進する措置を講ずること」を加えることとしております。
 第三は、新たに特定地域の中小企業者の振興を図るための対策を講ずることとすることであります。
 特定地域の経済の安定等を図るためには、当該地域において構造不況の悪影響を受けている中小企業者の振興を図ることがきわめて重要であります。このような観点から、認定中小企業者等は、新商品・新技術の研究開発、需要の開拓、人材養成等を内容とする新分野開拓事業等に係る実施計画を策定し、都道府県知事による承認を受けることができることとしております。また、当該計画に基づいて行う事業に係る中小企業信用保険法の特例の規定を創設するとともに、当該計画に基づいて試験研究を行う場合の課税の特例の規定を創設することとしております。さらに、国及び都道府県は、当該計画に基づいて行う事業の適確な実施に必要な指導及び助言を行うこととしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#4
○登坂委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。
    ─────────────
#5
○登坂委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。植竹繁雄君。
#6
○植竹委員 今回の特定産業構造改善臨時措置法の提案理由をただいま山中大臣から伺いましたけれども、本法律は五十八年の六月三十日をもって期限切れとなる特定不況産業安定臨時措置法にかわるものとしていろいろ趣旨説明を伺いました。
 しかし、前のいわゆる特安法ができた経緯が、当時昭和五十三年でございまして、このときは第一次石油ショック以後の高度成長から安定成長期に向かうそういう移行期にあって、石油ショックのダメージというものが各産業に大きく影響した時期でございますし、また高度成長時代に設備投資が行われた、その設備の過剰投資の結果が産業構造に大きく影響を与えた、一方ではまた発展途上国の生産性向上によって国際競争力が低下した、そういう背景であったかと思いますけれども、今回のこの新特安法は、その当時と多少とも状況が変わってまいったと思うのであります。したがいまして、今回の法律案の特色と、そしていままで参りました背景と、今後の変化にどういうように対応するか、その点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
#7
○山中国務大臣 御指摘の点は、確かにそういう見方がとられると思いますが、さらに最近時点になりますと、行方がいまだ定かでありません石油の輸出カルテル崩壊に伴う下落、こういうこと等で、現時点においてはさらに一層論議を複雑なものにする可能性がありますが、いま言われました点で、本法案を立案あるいは予算要求その他の手当てを特別にいたします前提としては、その後襲った第二次石油ショックというものをわれわれはなかなか克服できにくい、しかも、それが依然として国際的なそういう環境のさらなる重圧によって、一遍切り抜け得たかなと思ったものが、いまも言われたような諸点でさらに重荷を加えてきたということで、これはほうっておくと構造不況産業業種というものは日本の産業分野から消えてしまうおそれがある、そういうような心配がございました。
 したがって、この法案を提出し、御議論を願って五カ年間の延長をお願いするわけでありますが、しかし、その中でも、たとえば前回は、その対象となっておりました造船業というようなものは現時点においては、根っこからの議論を言えば、造船業というものは果たして基礎素材産業であったのかどうかという、これは前の法律の議論でありますが、今回は議論をいたしまして、いろいろ運輸省等の意見もありましたが、今回やはりしぼって、日本の国民経済上どうしても必要なもので明確な構造不況の条件にぴったり合うものということで、ただ不況だというだけで造船業も入れるということは勘弁してもらいたいということで整理もして、新しい考え方のもとに出発しておる次第でございます。
#8
○植竹委員 ただいまの山中大臣のお話、よくわかったわけでございますが、もちろんその時代に応じまして造船の問題、あるいは前は平電炉ということもございましたが、今日では平炉もございません、電炉だけになってまいりました。
 しかし、こういう現在の基礎素材産業のあり方ばかりじゃなくて、今日の日本の経済というものは、過去は政治が補完的な役割りを果たしてきた、今後は政治が優先して経済がフォローしていくという意味で、日本の将来というものは長期的な産業政策が主体となって推進しなくてはならない、そういう中の基礎素材産業の位置づけということが必要になってまいりますけれども、私はその点について、特に山中大臣においては中曽根内閣の中心的な大臣でおられますので、今後の日本経済の将来というものは、やはり産業政策の確立においてこういう問題を対処していただきたいと強く要望申し上げる次第でございます。
 そういう点について、何か新しい産業政策というものの基本的な構想といいますかお考えを、おありになればちょっとお伺いしたいと思います。
#9
○山中国務大臣 その点は、確かに私どもがいま考えて日本の進路を決めなければならぬ時期に来ておると思います。
 というのは、戦前と対比することは、もう総理がちょくちょくしかられていますからやめますが、日本の外交の現実はほとんどが経済外交だと思います。しかし、外交はやはりプロである外交官、役所は外務省というものがあくまでも本筋でありますが、外交の面においても、経済的な繁栄なりあるいはそれに逆行する姿に仮になってしまっても、日本は孤独で世界の中に存在し得ない国であるということが、前も原材料確保等の必要性から言われてきたのでありますが、ここまで世界経済が時間的に縮まってまいりますと、距離は同じであっても、そのお互いの接点というものは非常に火花を散らす度合いがふえてまいりました。したがって、対外的に日本の産業の運命もわれわれ通商産業行政が預からなければいけない、実態についてはですね。そういう自負と、またそれだけの責任を感じております。
 さらに、国内において、産業政策の原点はあくまでも私どもは自由主義経済でありますから、国民に対して強制的な行政なり、あるいはまた産業の強制的な転換なり推進なりということを国家として、権力としてしてはならない。しかしながら、わが国の自由主義経済というものが自由であるがゆえの活力を持ってここまで来ましたけれども、それは国際社会において野方図な、わが国の自己主張ばかりの自由であっては、先ほど申しましたように、通用しない。ならば、そこに政府が、産業政策の中に、日本のあるべき許容限度、あるいはまた日本の進むべき方向の明示、あるいはまた場合によっては国際ルール、そういうもの等にも、ある意味においては相手の立場も理解してやる政策というものをとりませんと、本来、自由主義経済あるいは自由貿易に逆行するような、自動車の自主規制とかビデオテープとかシャシーキットとか、政治家がおよそ議論するようなものでないものまで、品目まで挙げて、日本が国家で産業界の意思と別に規制をしなければならない、させられるということを考えますと、相手の国の立場というものも考えてあげる必要が絶えずある。
 たとえば、いまから議論になるでありましょう石油の値下がりの問題であります。いま私たちはそれを、長期的にいいことである、ありがたいと思っています。しかし、では石油の輸出カルテルを結んでいた方の国々、枠組みが崩れたために、抑止力といいますか、共同歩調のとれなくなったOPECの人々の立場は、いまどんな気持ちでいらっしゃるのだろうかということも、絶えず向こう側に自分の身を置いて考えてみませんといけないという立場が、最近急速に出てきたように思います。
 そういうことで、植竹先生のおっしゃるとおりの趣旨で今後運営していかなければなりませんが、通産省とか政府とかいいましても、これはやはり出ようによっては国家権力でございますから、自由主義経済の自主的な活力というものと、権力と見られても仕方のない国家の介入、指導というものに限度がある、そこらのところをいかにうまくやっていくかは、この現時点が私は日本経済の大きな将来への変換点になり得るというような気持ちで、少なくとも来年度予算要求までには、そういう考え方のもとの施策というものを皆さんとも、これからの御意見等を拝聴しながら固めていって、日本の産業そして経済、国民生活の発展は、産業をどのようにするか、活性化するか、あるいは進展化するか、新展開をさせるか、これはいまこそわれわれがその存在価値を問われているという、さっき申しました自負と責任を感じております。
#10
○植竹委員 ありがとうございました。
 それでは、今回の新特安法に入る前に、いままでの特安法の施行状況を伺いたいと思います。
 私の方の調べたところでは、過去の平電炉、アルミニウム製錬あるいは合成繊維、化学肥料、綿紡等の問題について、その処理実績はほとんど九〇%以上のものが多く処理されておるのでございますけれども、現在の方式では、ただ一律の方式によって設備廃棄等の処分がなされておりまして、中にはわりあいにまだ新しくて使えるものがあるのじゃないかというものも含まれていると考えられるわけです。
 そういう意味におきまして、今後廃棄する場合においても、個々の需要内容とか業種別にもっときめの細かい対策でいく必要があると思いますけれども、いままでの特安法に対する反省というか、どういうふうにしてやったらいいか。今後、新特安法の実際の実施に当たってのお考えを通産及び公取にもお伺いしたいと思います。
#11
○小長政府委員 特安法の指定業種につきましては、各業種とも計画的な設備処理を実施したわけでございまして、当初目標といたしました処理目標はほぼ達成したのではないかと私どもは考えております。
 具体的に申しますと、目標といたしました処理率は平均二三%であったわけでございますが、その平均達成率は九五%ということになっておるわけでございまして、ほぼ所期の目的は達成したのではないかと思っております。
 ただ、その後、さっき大臣のお話にもございましたように、第二次石油ショックが起こったわけでございまして、その結果、特安法で所期しておりました計画の効果が一定程度弱められたということも事実であるわけでございます。
 したがいまして、今後の問題といたしましては、いま先生御指摘のように、私どもも具体的な計画の立案に当たりましては、業界の実態をよく踏まえながらきめ細かく対策を立案していきたいというふうに考えております。
#12
○山中国務大臣 局長が申しましたようなそういう経過、御存じのことでもございましょうが、それを踏まえて、今後業界が自発的に進めていくそういう新しい計画については、十分に将来にたえ得る基礎素材産業としての体質を見きわめながら、その体質強化に合うかどうか慎重な判断をしていきますが、ところが私、大阪で中小企業サミットをやって、各国から幅広い、大臣あるいは中小企業庁長官的な人たちが来ましたが、中にぎょっとするような発言を日本に求めた人がおりました。
 それは、私たちの国々は、その周辺も意味しておられるのでしょうが、日本製のプラントもしくは機械の中古品の捨て場ではございませんと言う。これはどうも、私の胸には非常に大きなくぎを刺された気がいたしました。心得なければならないことであるなあと思いながら、たとえばいま、中国の対外経済担当の責任者の陳慕華さんがおいでになっておりますが、ずっといろいろごらんになって、われわれがいま議論しておるような業種にかかわるところで、つくってまだ新しかったんだが、操業をいまはやめているもったいない設備がいまあるわけですね。それに非常に興味を示されまして、場合によってはそういうものを中国へということが考えられるような言動に接しました。とすると、それが両国のために、確かに中古とは言えますけれども、しかし最新の設備であって、いま言ったような構造不況のゆえにクローズして、もう将来これを稼働させることは考えられないなあと思うようなもので、もし例を中国にとりまして悪ければほかの国も含めて、ぜひ自分のところに欲しいというような話がある場合には、そういうことは逆に、これは新品ではありませんがよろしいですなと念を押さなければいかぬですね。そういうことを考えながら、欲しいとおっしゃっている国には有効活用ということもあり得るのではないかなあと、いま、これ感想でございまして具体的なことはありませんが、二つ相反する言葉に接しましたので、そういうことも念頭に置きながら、国際化した日本の産業というものを、そういう外からの目も受けながら進めてまいりたいと思います。
 それから、独禁法との問題は、この法案の継続の可否が議論されると同時に、その対象について中身がいままでどおりではない。すなわち、独禁法適用除外ということを全部を目指しているのではないのか、全部を適用除外にするのかという意味において、公正取引委員会の許容範囲にどこまで入るのか、あるいは激突する法案になるのかという、その点は議論されてきた有力な点であったろうと思います。
 しかし、私自身が就任いたしまして、この法案の延長の可否、産業の実態、それから一方において知り尽くしている独禁法の精神あるいはそれぞれの条項、そういうものを踏まえながら、産業経済の実態について、私どもは行政法をつくるわけですが、公正取引委員会は監督法を与えられておる、独自の職務を持たされて、独自の職権を行使できる立場にある。そのことは確かに政府全体として尊重しなければならないことでありますから、そうすると、まず第一に激突を避けなければならない。破壊し合うということは同じ政府の中であってはならないし、またやってはいけないことであります。
 しかし、じゃ産業の実態に合う法律をつくろうとするときに、その目的たる実態に対する行政法の及ぼす行動というものが、公正取引委員会から見て独禁法上の問題がありと言われる点があるとすれば、どことどこなのか。それは恐らく、一、二点要約すれば、カルテルのどこまでを認め、どこまでを認めないかという問題がありましょう。あるいはその形態の問題がある。どの段階かの問題もありましょう。一方においては、これは法律ではありましょうが、公取が合併の際のシェアとして一応の物差しを持っておりますが、その物差しを超えない範囲でやる場合には、今度はこれは法律の目的と産業の構造改善の実質が完成しないというおそれもあります。そこらのところを、まともから法律と法律とをどのようにかみ合わせるかという点については、適用除外ということはいわゆる独禁法そのものをこの行為に限って当てはめないぞという法律ですから、これはよほどのことがない限りやっちゃいけないと私は思います。したがって、今回は適用除外を新規に追加しておりません。公取が適用除外をしないかわりに、産業経済に対する目的を達成するための手段についての両者の間の、通商産業省と公正取引委員会との間の一種の覚書と申しますか、産業政策にも、実態について必要な程度の最高の配慮はしてもらうということで、うまく組めたと思います。これは恐らく、答弁される委員長と私との間に食い違いはないと思います。
 それから、合併の際のシェアの問題ですが、これは法律事項ではありません。しかしながら、寡占もしくは高度寡占というものに対する一種の法律上の規定がございます。それの中身としてのシェアの問題として存在しているわけですから、これもやはり法律に準じたものとして無視してはならないことでありますが、しかし、そのことはカルテル禁止の条項と同じようなほどの厳しいものであっては、これは産業政策として実際にやらせようとしてもできないということになりますから、そこらのところはよく話し合いをしていただく。したがって、独禁法の適用除外の条項を新たにつくらなかった。そのかわりに、またシェア等の問題を含めて公取との間で産業の実態と独禁法の精神とその範囲というものがうまくかみ合うように工夫をした。一回半宙返り的な、いままでの法律としてはちょっと前例のない、よくも悪くも前例のない法律だと私は思っておりますので、ここらのところはきめ細かくお答えをした次第でございます。
#13
○高橋(元)政府委員 いま詳細、通産大臣からお答えがありまして、私どもも、新しい今回審議をお願いいたしております法案に関連する独禁法と産業政策の調整については、大臣からお話がありました御趣旨、それと同意見でございます。
 ただ、いまの御質問は、現在あります特安法の効果はどうであったかということでございます。
 先ほど産業政策局長からお答えがありましたように、現在の指示カルテルまたはそのほかの不況カルテルを使ったものもあるわけでございますが、設備処理につきましては、一応当初目標とされた過剰設備の処理量は達成されておるというふうに思います。
 ただ、私どもは、昨年の十一月の五日でございましたか、いろいろな調査をお願いしております経済調査研究会というものがございますが、そこからいただきましたレポートでは、過剰設備の処理の進め方について若干の問題が指摘されておりまして、それを要約して申せば、業種によって過剰設備が生産性を考慮しない一律方式であったという点が指摘されております。また、大きく申せば、必要以上の設備の新増設の制限、禁止というものがあったとすれば、それによって産業の競争力の向上につながらない面が指摘されるのではなかろうかということであったわけでございます。
 先ほどお答えしましたように、過剰設備の処理量は一応当初目標を達成しておるわけでございますが、五十四年から始まりました第二次石油ショックの影響もありまして、またそこで新しく予想以上の過剰設備が生じてまいったという事態に対処するために、御審議をお願いしております改正法案によって再び五年間の設備処理カルテルの延長も認めておるわけでございますから、私どもはその運用に当たりまして、いま申し上げましたような一律処理方式を廃するとか、個々の企業設備の生産性を十分に勘案いたしますとか、カルテル、期間も必要な限りでできるだけ短い期間にしてもらうというようなことで、十分配慮していく必要があろうというふうに考えております。
#14
○植竹委員 どうもありがとうございました。通産大臣から私が質問しないうちに答えられちゃったので、あとの質問がなくなっちゃうようなことがございますけれども、大臣からお話がございましたので、業務提携計画を公取に送付する場合はどういう場合か、いま事情はよくわかりました。
 ただし、大臣が独禁法上の問題について第一次的に判断をされるわけですけれども、問題なしとして同計画を公取に送った、そして公取の方では排除措置が出された場合に、行政上の責任とか、そういう点についてはどういうふうにお考えになっておられるのでしょうか。
#15
○山中国務大臣 そこらのことが、結果的にそういう結果を招来しないように十分な意思の疎通を図っていく。いま申し上げているのは、形式上の形は、こういうふうな計画を送りますということですが、そのことについては事前にも十分の打ち合わせをしながらやっていく。これがやはり産業政策を活気あるものとし、そして産業政策の公正な競争というものを疎外しないという範囲がどこまでであるかという十分の疎通を図った上でいきますから、その後、今度は公取の異議によって、その結果、計画が実行できなくなるということは起こらないような仕組みにしてございます。
#16
○植竹委員 その点よくわかりましたが、逆にいままでよりも、主務大臣そして公取のダブルチェックということになりまして、かえって厳しくなるというようなことはないか。それによって、せっかく基礎素材産業の本来の目的である活性化のための本法案の趣旨が曲がっていってしまうのじゃないかというような危惧を民間の業界に与える。そしてまた、冒頭のお話にもございましたけれども、これはやはり通産行政が、民間の自主努力によってこの活性化を図るという点について過剰介入ではないかという点が非常に危惧されるわけですが、本当にこのさじかげん一つで違うという意味で大事な点であるので、その点は重ねて大臣とそれから公取の委員長にお伺いしたいと思います。
#17
○山中国務大臣 そこらの点は、確かに直ちに起こってくる問題があると思います。確かに企業としては、ここまで行き詰まったのだからもう大同団結してみんなが話し合って合意してという、そこまではいいのですが、たとえばあるグループにおいて、一つの選抜グループが、シェアの問題はありましても、現実に非常に大きなものになる。そうすると、あと二つか三つか四つになるはずであったところのものが、それに対抗していくためには、自分たちももう系列その他を考えないで全部一緒になって対抗する第二グループをつくろうじゃないかというようなことにでもなりますと、これはその分野において二分する、超高度寡占という状態になります。したがって、同調的値上げの場合はシェアは三者七〇%以上、高度の場合は七五%ということが一方にはありますから、これは私どもは知らぬとは言えないわけです。したがって、その産業が活性化、再生を期する余り、その自主努力は買います、買いますが、一方において公正なる競争、あるいはまた寡占高度化に進むに従って、それが、たとえば製品価格の本来下げてしかるべきものが上方硬直といいましょうか、下方硬値ではない状態に実態としてなることは、その構造不況業種の産品をまた使用する人たち、買う人たちの立場から言えば非常に不公正な立場に置かれる、あるいは圧倒的に優越した地位の力を行使されても抵抗できないという状態は、次の段階の人たちもやはり産業界ですから、これを無視してはならぬし、最終製品は消費者ですから、それも無視してはならぬということで、確かに産業界が、自分たちは自発的にこういうふうにしたんだからいいじゃないかと言えば、自主性を尊重するという言葉どおりでありますが、しかし、そのことが結果的には、その業種のみに限れば超ガリバー型寡占といいますか、そういうものになってしまうことは、これは通産行政の中で、まずそういうことのないような調整をしなければならぬ。これが通産省の行政指導でやってはいかぬと言われればこれは仕方のないことでありますが、これは通産大臣の責任において当該産業界に対して説得をし、あるべき姿に自発的といえ従っていただく。ただ、どうせよ、この会社とこの会社と一緒になれと言うようなことはできません。しかし、そういうような形にしても困ります、もう少し話し合ってもらえませんかという意味のお願いというものは、これは決して行政の産業介入ではない。むしろそのことが長い目で見て、あのときに通産大臣の意向を受けて考え直してよかったという結果にしていきたい。
 具体的な産業の事例を挙げることは、この際避けます。
#18
○高橋(元)政府委員 御審議をお願いしております改正法の十二条の第四項から第九項でございますか、産業政策と競争政策の調整に関するスキームについて細かく規定しておりますけれども、こういうスキームが法律に書かれましたということは、通産大臣から詳細お答えがありましたとおりの趣旨によるわけでございますが、一言でこれを申し上げますと、改正法の運用とそれに伴う独禁法に基づく権限の行使に当たって、通産省と公取とは相互に連絡を密にして協調して行うということになろうかと思います。そのことを担保するために細かい法律の規定を置いておるわけでございますけれども、そういう産業政策それから競争政策、国の基本になりますような経済の大枠をつくります政策の調整を相互に行っていくことが何よりも大事なことでございますし、そういう見地で意見の調整を図ることによって、御懸念のようなことが起こらないように努めてまいりたいと考えております。
#19
○植竹委員 業務提携計画についてはまだ細かい点もお伺いしたいと思いますが、これは後回しにしまして、ちょっとほかの点でお伺いしていきたいと思います。
 今回の新しい法律改正提案でもって、世界経済の様相では、低成長時代あるいは長期的にゼロ成長時代が長く続くと考えられるわけですけれども、そういたしますと、本法案では五年間の時限立法ということになっておりまして、果たして五年間でもってこれは対応できるかどうか、もっと長期的に考えてこれを施行してもいいのではないかというふうに考えるのですけれども、この点についてお伺いしたいと思います。
 それと同時に、もう一つ、さらに特定産業の政令期限を昭和五十九年の十二月三十一日としております。一年半ということでありますけれども、現在の経済環境からして、これは二年ぐらいにしたらどうか。特にカレンダーマンスでもって十二月三十一日というよりも、三月末とか、そういうふうにしていったらいいのではないかと思いますが、あわせて御見解をお伺いしたいと思います。
#20
○山中国務大臣 この種の法律は、期限なしの法律というわけにはまずまいらない。期限なしということは非常な弊害を生む、あるいは産業の自主的な自己改造あるいは活性化ということ、その美名のもとに隠れて、いつまでも安易に政府の保護のもとにそれが温存されるということでは、私は法律として成り立たないと思うのです。やはり一定の期限を切って、その期間におやりなさい。
 今回それではなぜ延長するかといえば、それは先ほど申しました、その後起こった第二次石油ショックを抜け切らなかったという状態に新しいまたいろいろな条件が加わって、どうしても五年間もう一遍延ばしてやらなければならないという判断によるものでありますが、これをもっと長くとかあるいは活性化が終わるまでとかいう表現、当分の間というような表現にしますと、私が前提として最も強く法案作成のときに強調いたしましたのは、あくまでも産業界の甘えの構造というものは飲まない、甘えの構造は私はとらない、そのことを厳しく伝えてやってくれと言ってあります。
 したがって、これは五年ということが適当であると信じておりますし、さらに、一年半というのは確かにおかしい。おかしいのですが、裏話をしますと、通産省は二年にしてほしいということでありましたが、公取は、これはある意味の延長法でもある、部分的なところを除いては。したがって、次々と新しい産業分野がその中に入ってくるとは考えられないし、一年間ぐらいは余裕を持ってもいいけれどもどうだろうかという話がありまして、最終的に私の決断で一年六カ月という決断をいたしました。その点、二年が正しいか、一年が正しいか、その中間、よく足して二で割ると言われる日本式手段をとった私の決断が正しいか、これは批判のあるところで結論は出ないと思いますが、しかし、一年半の間にそういうものが出てこなかったら、その後、ではいよいよ自分たちも手を挙げるかという期間を、施行期間は五年ですから、その中でたとえば三年間は置くというようなことは、実行期間は実際上残る二年間ということになりますし、したがって一年半でやってみようということの決断でございまして、この点、長い短いの議論については御議論のあるところだと思います。
#21
○植竹委員 その点について私が五年間というように申し上げたのは、結局前のような成長じゃなくてゼロ成長で、いままでの特安法が五年間やってできなかった。これから世界経済も急速に発展するものとは思えない。しかも、昨今の雇用状況の問題あるいはイノベーションというものがなかなか進まないという問題等々を考えて、こういう法律も決めていかなければならないと思う。私は、これは通産省ばかりではなくて、公取もやはり日本経済の発展のために、ひいては世界平和のために考えていくべきじゃないか。いたずらに一方で抑えるということじゃなくて、弾力的に考えていいのじゃないか。足して二で割る方式というものが果たしていいか悪いか、これはむしろその結果において判断されるべきものであって、こういう考え方自体が一つは問題がありはしないか。
 たとえば、今回の問題について政令指定を行う場合でも、当該業種の三分の二の申し出が要件となっているわけですけれども、これは緊急性を要する場合においても時間がどれだけかかっていくか、これはなかなかわれわれは判断できない。そのうちに状況も変わればいいのですが、なかなか変わらないでどうしようもなくなってしまっては間に合わない。それと同時に、逆に言えば、その反対に長期間かかった場合に、五年間という限度も逆に長期間に考えなければならないということも考えられるので、そういう意味において、私は一応の区切りはいいとしながらも、フレキシブルな判断というものが基本的になされなければいけないのではないか。やはり経済というものは動態であって、弾力的な運用というものが法律の中に含まれてもいいんじゃないか、そういうことで申し上げたわけでございますけれども、それでは、早急に業種の指定とかそういう意味において各業種の準備状況といいますか、そういう点はどうなっているか、ちょっとお伺いしたいと思います。
#22
○小長政府委員 お答えいたします。
 一応この新しい法律案では法定七業種ということになっておるわけでございますが、そのうち電炉関係、アルミ関係、化学繊維の関係は現行法でも指定の対象になっておったわけでございまして、これは引き続き新法の対象になるということでございます。それから化学肥料の関係、合金鉄、洋紙・板紙の関係は現行の政令指定の対象になっておったわけでございまして、これも引き続き新法の対象になるということでございまして、新たに出てまいりますのは石油化学ということでございます。
 したがいまして、以上の七業種について申しますと、石油化学につきましては、最近の新聞紙上等でごらんいただいておりますように、大変活発ないろいろな動きが出ておるわけでございまして、特に最近樹脂の業種におきまして事業提携の具体的な動きが進行しているわけでございます。そういう事情でございますので、従来の継続業種につきましては、その経過規定によりまして新法においても引き続き対象になるということでございますし、石油化学につきましては、いまのような業界の意欲的な動きというのが進行しておるわけでございますから、この法律が成立いたしました暁には、非常に短期間のうちに計画策定ということにこぎつけ得るのではないかというふうに私どもは期待をしております。
#23
○植竹委員 まだ大臣はおいでになられますか、それとも行かれますか。大臣がおいでになれば――そうですか、それでは質問がちょっと後先になりますけれども、一つだけ伺いたいのは、本法律は開放経済下において行われるものでありまして、諸外国の批判を受けるものであってはいけない。そういう意味におきまして、これは現在、わが国がアメリカあるいはECと貿易摩擦という問題についていろいろ対策に苦慮しておるところでございますけれども、つい最近、米国通商代表部のブロック代表が日本に参りまして、この問題について非常に神経をとがらかした、あるいは米国のフォーチューンの表紙にも出ておりまして、この本法案がどちらかといえば日本の政府の介入的な要素がある、これでは各国が保護主義国になりかねないというような懸念も言われておるわけでございます。
 こういうような対外的にいま問題が多いときだけに、各国との理解といいますか、産業調整というものが非常に重要になってくるわけでありまして、そういう意味において、この問題がOECDの例の積極的調整政策、PAPの問題等考えまして、どういうふうに考えておられ、またどういうふうに説明しておられるか、その点、一点だけ大臣にお伺いしたいと思います。
#24
○山中国務大臣 OECDのその決定の内容には沿うものである、私はそういうふうに思います。ただし、感情的には、アメリカの世論とか議会とか行政府の一部とかというものにそういう声があり、ECにもそういう声があることは承知いたしておりますが、具体的に申し上げますと、先般、ブロック代表が日本に来られて、プレスクラブでございましたか、講演をされて、その中で、日本の産業政策に、国家の過剰介入による結果外国が迷惑を受けるような産業政策があるやに聞く、そういうものは政策上好ましいとアメリカは思わないというような講演をされたようです。
 しかし、私はそれに対して直接答えてはおりませんが、内政干渉であるということを聞こえるように言っておきました。そうして、私とブロック代表との二回にわたる直接の会談、個別交渉においては、ブロック代表からは、意図してかどうかはわかりませんが、結果的には日本の産業政策についての疑問あるいは輸出の方針とか、いまのこの問題も含めて、法案も含めて、そういうことは一言も発言がありませんでした。したがって、私どもも、何らそれに対して触れることのない会談に終始いたしました。でありますので、正式な国家間の交渉においては、この問題は、私は申し出があれば内政干渉であると言い、OECDの方針の中であるということが言える自信がありましたが、接触としても、あるいは直接の要求なり意思表明としても、事実なかったということを御報告しておきたいと思います。
#25
○植竹委員 どうもありがとうございました。
 それでは前に戻りまして、この第二条第一項の特定産業の中の、先ほど七業種を言われましたけれども、この中で、原材料及びエネルギーの費用が物品の生産費の相当部分を占めるものに限るとありますけれども、この点について業種はどういうものであるか、どういうふうに考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
#26
○小長政府委員 法定七業種は、先ほど先生のお話しになりましたその原材料の費用が相当部分を占めるという業種には全部該当いたします。それから、それ以外の産業分類では、私どもは観念的には三十業種ぐらいがこの対象業種になるのではないかと思っておりますけれども、具体的にこの業種という名前がまだ挙がっておるわけではございません。
#27
○植竹委員 ありがとうございました。
 それから、いま、第三条の構造改善計画につきまして、特定産業ごとに関係審議会の意見を聞いて計画を決定することになっておりますけれども、先ほど来申し上げておるとおり、緊急を要する場合にはどうするか、そしてその期間と、それから審議会のその意見の尊重度合いをどういうふうにとっていくか。過去の例も考えまして、今回の新しい法律に対する通産省の御意見を伺いたいと思います。
#28
○小長政府委員 いま先生のおっしゃったことは、業界の自主的な努力の尊重の考え方と、それから計画を早急に実施しなければいけないということとの調和をどの辺に設けるかということだと思いますけれども、私どもは、どの法律全体を貫く考え方といたしまして、官僚統制的な考えはとらない、業界の自助努力、自主努力というのを前提としておるんだというたてまえをとっておるわけでございますので、先ほどのお話にもございましたように、申し出を受けて具体的な計画策定ということに入るわけでございます。したがいまして、その段階までに、恐らく業界内部の段階である程度話し合いが詰まっておるということが前提になるわけだと思いますし、過去の例で見ますと、申し出をされた後、審議会の議論の過程で相当手間取って計画の策定がおくれたという例はございません。したがいまして、私どもは従来どおりの方針に従いまして、業界の自助努力を前提としながらこの法律の運用に当たっていくという考え方で対処してまいりたいと思っております。
#29
○植竹委員 それでは、いまのお話でよくわかりましたけれども、一方では、もうこれ以上、この業種に指定して、いわゆる限界に来た産業もあると思うのですが、こういう限界産業につきましても温存しないような、その辺のチェックを十分にやっていただきたい、これを特に要望しておきます。
 さて、これと同時に問題になってくるのが、例のアウトサイダー規制をどう対応していくか、これはまことに重要な問題だと思っておるのです。現行法に対する附帯決議を受けて、いままでどのようにこれを指導してきたか、また効果がどうであったか、そうしてまた、なぜこれを法律案に規定しないか。それと同時に、現実に設備を削減しても、アウトサイダーがいれば、結局シェアはそのアウトサイダーにとられる。たとえば紙であるとか電炉であるとかいう問題、過去そういう実績があるわけなので、公平の原則といいますか、これの本来考えられた基本に反する行為がなされてきたと思いますが、このアウトサイダーに対する点について、いま申し上げた点についてお答えをいただきたいと思います。
#30
○小長政府委員 現行特安法のもとで、いわゆるアウトサイダーが暴れてその計画の実現が非常に問題になったというような事例は、私どもは承知しておりません。
 それから、新法のもとにおきますアウトサイダー規制の問題でございますが、法案の立案の段階では、そのアウトサイダー規制的な措置に対する要望というのも一部の業界から強く申し出があったわけでございます。しかし、私どもの考え方といたしましては、業界の自主性を尊重する、自主努力をたてまえとしてこの法律の運用に当たっていくということから、アウトサイダー規制命令的な措置は、最終的にはこの法案の対象とすることにはしなかったわけでございます。したがいまして、もしそういう事態が起こり得るとした場合には、これからはできるだけ行政指導によって対処していくということでやっていきたいと思うわけでございますけれども、その考え方といたしましては、大多数のものが構造改善努力をしておるのに、一人のアウトサイダーがいるために全体の構造改善努力が無になるというような事態は招来しないように努めてまいりたいというふうに考えております。
#31
○植竹委員 そのアウトサイダーの事例を聞いてないと言いますけれども、現実にはいろいろあるし、通産の方には御報告しないまでも新聞その他でおわかりだと思うのですが、そういう民間の声も入れて行政指導をしていただきたい、この際特に要望しておきます。
 また、次の業務提携計画につきまして、先ほど大臣から伺いましたけれども、前後いたしましたが、この第八条の二の第三項二のグループ間の競争確保について、これは実際にはどういうものか、伺いたいと思うのです。
#32
○小長政府委員 この新しい法律の中で、事業提携のところが一つの目玉ということになるわけでございますが、その中で八条の二の三項のところが一つのポイントになるわけでございます。
 先生御指摘のその中の二号に、グループ間の適正な競争が確保されるというような承認条件が入っておるわけでございますけれども、ここにおいて私どもが頭に置いておりますのは、ある業界につきまして四つとか五つとかいうようなグループ化を推進していきます。その場合に、グループ間では適正な競争、適正といいますか激しい競争が展開をされておる。ところが、それぞれのグループの中では、生産の共同化であるとか販売の共同化であるとかといったような、ある種の競争抑制的な行為も行われるかもしれない。しかし、業界全体としてはグループ間で適正な競争が展開をされておるわけでございますから、いわゆる独禁法で言うところの競争の実質的制限ということにはならないであろうというような考え方をベースに置きまして、その承認基準におきましても、そのグループ間の競争が適正に確保されておるかどうかというのを一つの承認基準としておるわけでございます。
#33
○植竹委員 まだ聞きたいこともあるのですが、余り時間がないようです。
 さらに、「従業員の地位を不当に害するものでない」というような同条第三項四号の事業提携の承認条件を入れた理由について、これは雇用の問題というのは経営上の問題であって、こういう承認条件とはちょっと違うのじゃないかという気がいたしますが、何ゆえこれを特に入れたのか、その点を伺いたいと思います。
#34
○小長政府委員 先生おっしゃるとおり、労使間の問題というのは、まさに労使の話し合いで解決されるべき問題であるわけでございます。ただ、ここで取り入れましたのは、労使間のそういう意味の話し合いというのが行われておるかどうかというのを確認するという趣旨でございます。したがいまして、個々の企業の雇用者の具体的なケースにまで法律的に介入をするというようなことを考えておるものではないわけでございます。
#35
○植竹委員 それから、事業提携計画の写しを公取に送った場合に、公正取引委員会ではいつまでにこれを回答するか、その期限というものはいつか明示されていませんけれども、これはどうかということと、もう一つ伺いたいのは、承認をした計画でも要件に該当しなくなったときに自動的にこれは変更、取り消しすることが必要じゃないか。先般の造船みたいに今度は法律が切れるからそれまで待とうということではなくて、もっと有機的に弾力的にやってもいいのじゃないか。しかし、一方では合併あるいは営業の譲渡等について変更または取り消しはできないと思うのですが、この点について公取の方の御見解をお伺いしたいと思います。
#36
○高橋(元)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、今般の法律案、成立しました暁には、産業政策と競争政策の調整を十分に円滑に図ってまいりたい、そういう趣旨からの協議規定でございますから、そのスキームの中での同意、意見の相互のやりとりについては期限を書いておりません。これはできるだけ早くやっていく必要があると思いますし、また、いまたびたびお話しもございますように緊急を要する事柄でございますから、その点は踏まえて通産省とよく調整を図ってまいりたいというふうに考えます。
 それから、その提携計画、構造改善計画が実態に即しなかった場合にどうするかという御質問かと思いますけれども、輸入が相当あるという前提で事業提携計画を組んでおりましたが輸入がなくなってしまったとか、代替品の供給が減ってしまったとか、それから有力な競争事業者がやめてしまった、こういう場合にマーケットの条件は変わってくるわけでございます。そういう場合には、全体の国民の利益からしまして事業提携計画をそのまま実施することがぐあいが悪いということになるわけでございますから、主務大臣にその旨を十二条の七項で御通知をする、主務大臣は承認後の経済的事情の変化に即して公取委員会に意見を述べられる、あるいは事業提携計画の変更、承認の取り消しを行う、こういう規定が置いてございます。それによって、提携計画が実態に沿わないようなものでないように運用を図ってまいりたいということであります。
#37
○植竹委員 時間が余りないのですが、昨今のエネルギー問題について、原油価格がここのところで、北海原油あるいはナイジェリアの五・五ドルというようなことによって三十ドル以下になってまいりました。二十五ドルになるのか、どこまでいくのかは近々わかることかと思いますけれども、たとえばバレル当たり二十五ドル以下にまでなりますと、輸入のメリットというものは、消費の増加あるいは企業収益増加あるいは円高というようなことで、相当プラスになってまいると思います。
 それによって基礎素材産業に重要な影響がございます電気料金の問題でありますけれども、電気料金を、やれ利益が出たからといって下げるということは、私ども過去の例から考えましても、また足りなくなれば五十九年度で値上げということを言われておるわけでありますので、今回新聞等に言われているように、電気料金を値下げして消費者還元するということは、私はちょっとおかしいのじゃないか。こういうエネルギーの問題についてはもっと中長期的な展望に立ってやっていく、そういう意味において、私は電気料金の値下げということはやるべきじゃないと思いますけれども、この点について通産省のお考えを伺いたいと思います。
#38
○小川政府委員 御指摘の石油価格の引き下げの点につきまして、まだいろいろ流動的な要素もございまして、その辺の実態が見きわめにくいところでございます。また、それが電力会社の収支にどう影響をするかということ、そして、それがどの期間どう影響するか非常に不透明なところがございまして、まだその電力料金問題について具体的にどうこうということは考えにくい時期にございますが、基本的な考え方といたしまして、先ほど先生が御指摘ございましたような、料金というものは中長期的な展望において処理すべきだという考えは、基本的には私ども見据えて対処していくこととしております。
#39
○植竹委員 それに関連しまして、また電気料金の政策料金制度の導入というものはいろいろと問題が多いと思うのでありますけれども、今後はコスト主義の範囲内でどういった工夫をしていったら一番効率がいいのか、そういう点についても通産省の御見解を伺いたいと思います。
#40
○小川政府委員 電気料金の体系というものは、原価主義に基づき、かつ、その負担について公平性というものを担保するということで組み立てられ、運用してきておりまして、このあり方につきましては、今後とも同じような考え方で対処をしていく必要があると考えております。
#41
○植竹委員 基本的なことを伺っているのではなくて、基礎素材産業とか不況業種とかこういうものに対して、通産省としてはやはり全体として通産行政の中で考えていくべきではないか。電力なら電力だけを考えるというミクロ的な見方ではない、やはり全体の施策にのっとってそういう問題も考えていくべきではないかと私は思うので、これは部内でもって今後ともよく検討していただきたいと特に要望いたしておきます。
 時間もなくなりましたので、最後に、基礎素材産業に対しまして、ガットに認められているルールに従って行う措置、たとえば今回のLNGの問題について石油化学に重大な影響を及ぼすわけですが、カナダやアメリカのように価格調整問題について、これをうやむやにしない、言うべきときはやはりきちっと言うことが、これから日本が進んでまいります以上、国際協力の面でも必要ではないかと私は思うのであります。
 つきましては、今後、例のセーフガードの発動とかあるいはアンチダンピングという問題に対してどう対処していくか。私は、今度の基礎素材産業の新特安法を推進していくに当たりまして、最後に通産省のお考えを伺いたいと思います。
#42
○小長政府委員 私どもといたしましては、法律立案の過程で山中六原則ということで具体的に対処してきたわけでございますが、その中で開放経済体制の堅持というのがあるわけでございます。したがいまして、その開放経済体制の堅持というプリンシプルは内外によく説明もし、また理解を得ていかなければいけないと思っております。
 それから、先生御指摘のアンチダンピング、不当廉売とかというようなことによる措置につきましては、いま国内的にもその具体的な手続規定を雑価しようとしておるわけでございまして、そういうものに対しましては、また別途対処することは考えていかなければいかぬのではないかと思っております。
#43
○植竹委員 最後に、私は要望だけですが、この今回の特定産業構造改善臨時措置法ですか、これが成立した場合に、遂行するに当たってくれぐれも、これは自主的な民間の判断に任せるものであって、政府の介入というようなことを及ぼさないように強く要望して、質問を終わることにいたします。
    ─────────────
#44
○登坂委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 両案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選及び日時につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時四十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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