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1982/04/12 第98回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第098回国会 農林水産委員会 第9号
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1982/04/12 第98回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第098回国会 農林水産委員会 第9号

#1
第098回国会 農林水産委員会 第9号
昭和五十八年四月十二日(火曜日)
    午前十時二分開議
 出席委員
   委員長 山崎平八郎君
   理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君
   理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君
   理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君
   理事 武田 一夫君
      岸田 文武君    北村 義和君
      近藤 元次君    佐藤  隆君
      田名部匡省君    保利 耕輔君
     三ツ林弥太郎君    串原 義直君
      新盛 辰雄君    田中 恒利君
      竹内  猛君    松沢 俊昭君
      吉浦 忠治君    岡田 正勝君
      寺前  巖君    小杉  隆君
 出席政府委員
        農林水産省農蚕
        園芸局長    小島 和義君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (全国改良普及
        職員協議会事務
        局長)     星  鉱治君
        参  考  人
        (全日本自治団
        体労働組合役
        員)      堀井  修君
        参  考  人
        (農業改良資金
        協会監事)   吉田康一郎君
        参  考  人
        (筑波大学助教
        授)      川俣  茂君
        農林水産委員会
        調査室長    小沼  勇君
    ─────────────
委員の異動
四月十二日
 辞任         補欠選任
  神田  厚君     岡田 正勝君
  阿部 昭吾君     小杉  隆君
同日
 辞任         補欠選任
  岡田 正勝君     神田  厚君
  小杉  隆君     阿部 昭吾君
    ─────────────
四月六日
 土地改良区の総代選挙制度の改正に関する請願(小沢一郎君紹介)(第一九九六号)
 農産物の輸入自由化・枠拡大阻止等に関する請願(小沢一郎君紹介)(第一九九七号)
は本委員会に付託された。
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)
     ────◇─────
#2
○山崎委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、農業改良助長法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 本日は、本案審査のため、参考人として全国改良普及職員協議会事務局長星鑛治君、全日本自治団体労働組合役員堀井修君、農業改良資金協会監事吉田康一郎君及び筑波大学助教授川俣茂君、以上四名の方々に御出席をいただきまして、御意見を承ることにいたしております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、審査の参考にいたしたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げますが、星参考人、堀井参考人、吉田参考人及び川俣参考人の順序で、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 それでは、星参考人にお願いいたします。
#3
○星参考人 御紹介を受けました全国改良普及職員協議会の事務局長の星鑛治であります。
 農林水産委員会の諸先生には、協同農業普及事業の推進に日ごろ心温かい御指導と御鞭撻をいただき、陳述に先立ちまして、本事業に携わる全国一万二千名の改良普及員を代表して、厚くお礼を申し上げたいと思います。
 協同農業普及事業は、戦後、昭和二十三年に農業改良助長法の制定により発足し、当時、わが国の社会背景の中で、食糧の増産と農村の民主化を最重点の課題として、本事業に従事する改良普及職員は、寝食を忘れ、課題の達成に農業者とともに励んでまいりました。このことは、諸先生のすでに御理解をいただいているところと存じます。
 自来、本事業の整備強化を図るために、三十三年に農業改良普及所の制度上の位置づけを明確にし、三十八年には複雑多岐、困難なる職務に対して普及手当の創設がなされました。さらに、五十二年に事業補助金の助成万式を国の負担による協同農業普及事業負担金に改め、その際、農業後継者育成の柱となる県農業著大学校を組み入れ、制度化がなされ、制度発足以来三十五年の過程の中で、時代の流れと農業者の要請に的確にこたえるために、以上のような普及制度の改善がなされ、その都度諸先生方の御理解をいただき、法改正が前向きに実現したわけであります。
 また、この間に、事業費の大半を占める人件費について、その補助率を三分の二から二分の一に引き下げる予算の削減や人件費の地方交付税回しといった動きが全く法律の基本を無視した中で取り進められたことや、改良普及職員の大幅な削減といったととが本事業を進める経過の中で巻き起こり、その都度、改良普及職員は本事業に対し、また普及指導活動の使命感に不安と意欲の沈滞を感じてきたわけであります。
 さらに、今回の第二次臨時行政調査会においても、普及事業が農業関係の問題の中で取り上げられ、基本答申において、一つには「普及事業については、生産性向上のための事業への重点化、生活改善普及事業の見直し等事業内容の刷新と効率化を図る。」また二つには、人件費補助一般を対象として、地方公務員に対する事務・事業の円滑な実施を確保するための措置について検討を加え、二年以内に原則として一般財源措置に移行するという答申が行われました。
 全国の改良普及職員は、従来から主張しておりました人件費の一般財源回し、すなわち一般交付税回しによることはわが国の普及事業の崩壊につながるものであるとして、わが国農業の発展、特に現状置かれている農村や農業者が求めている問題解決に普及事業や現地の活動が必要不可欠であり、そのためには、農業改良助長法の法の精神を生かし、一、協同農業普及事業を堅持強化すること、二、普及事業負担金の地方交付税移管を絶対阻止することなどを柱として全国運動を展開し、農林水産省はもとより、国会の諸先生方にも強く要請し、御協力と御支援をいただいたわけであります。
 以上の経過の中で、今回政府から農業改良助長法の一部改正案が提出されておりますが、協同農業普及事業の基本が堅持され、時代の要請に基づく地域の実情に応じた普及活動が進められるような観点での本法律改正の内容については、基本的には適切な措置であると私たちは受けとめております。
 しかしながら、普及事業の推進に当たっては、その使命とする農業者と改良普及員との現場における人間関係の信頼によることが最も重要なことで、そのためには優秀な職員の確保がぜひとも重要であると考えております。すでに申し上げましたように、職員の大幅な削減という経過を経てきており、組織内部には、職員の設置基準をこの際つくるべきで、そのような要望意見がありますが、現状都道府県の農業事情を考えるときに、全国に共通するスケールでははかれない要素もあり、また、画一的な基準を設けることはかえって都道府県の農業の実態にそぐわず、混乱を招くのではないかという意見もあります。
 したがって、私どもの全国改良普及職員協議会といたしましては、現に普及活動に従事している職員の数を最低の線で維持していきたいと考えており、その意味からすれば、今後一人たりとも改良普及員を削減すべきではないという意見でありますが、特に、生活改善普及員については少数で活動いたしておりますので、生活改善普及員については現状をどうしても維持する必要があるという気持ちであります。しかし、すでに実施されております第六次の公務員管理計画による削減については、国の政策として受けとめ、計画の範囲内の削減についてはやむを得ないという組織決定をいたしております。
 職員の確保についての問題点として、今後、都道府県間における職員設置のアンバランスが生じないかという点であります。都道府県知事の裁量によって大幅な削減が行われることのないよう、改正の中の運営指針等に職員の確保のための措置を明確に盛り込んでほしいことと、加えて、国と都道府県との十分な協議と、国の立場から行政指導の徹底を特にお願いするものであります。
 次に、今回の交付金助成方式による都道府県における裏負担の問題であります。
 都道府県知事の判断により、それぞれ本事業の大幅な後退が実現するという心配があります。各都道府県間における事業の均衡のとれた運営がなされることも協同農業普及事業の意とするところであり、改良普及職員、農業改良普及所も設置機関として義務づけられていることから、当然これまでのように負担されるものと考えておりますが、農林水産省においても、自治省がこれまでどおり都道府県が裏負担が行えるよう、責任を持って地方交付税による措置を行うよう強く要望しております。仄聞するところによりますと、自治省は五十八年度の地方財政計画の中で、従来と同様に普及事業に対する支出については措置されていると聞いておりますが、今後、将来にわたり引き続き同様の措置をいただくとともに、その趣旨を都道府県知事に対し周知徹底を図られるようお願いいたします。
 次に、試験研究と普及の関係につきましては、今回の法律改正によって国と都道府県の試験研究機関における共同研究の実施等がうたわれておりますが、試験研究と普及の連携を従来より一層充実強化する意味からも、意義のあるものと考えております。特に、技術革新が農業内部からも求められているときに、両者の連携を現地の圃場を通じ、たとえば合同技術実証展示圃等を十分活用することによって、真に農業者が求める現地の革新技術の確立に試験研究、普及の総力を挙げて対応できると考えております。
 なお、試験研究体制の整備につきましては、農業生産や農業経営等の研究に加えて、農家の生活に関する研究体制も、わが国農業が置かれている実態をお考えいただき、研究の強化を特にお願いするものであります。
 以上、改正法案について考えております点を申し上げましたが、適切な措置が付加されれば、制度を生かした実りある運営がなされるものと考えております。
 次に、本法改正に当たって御要望を申し上げたいと存じます。
 今回の法律改正によって、従来からの諸問題が解決し、安定した事業推進が真に実行されることになりますが、今後は、本事業に携わる改良普及職員の資質の向上が強く求められるものと考えられます。また、そうであることが今回の法律改正の真意に運動するものであると考えております。
 そのためには、まず国と都道府県が責任を持って改良普及職員の資質の向上に取り組むことであります。たとえば、最近は生産性の向上、農業経営の体質強化といった高生産性農業経営への推進が行われております。これらに対応し、地域の農業事情に即して技術、経営の指導能力の高度化を図ることが求められており、あわせて改良普及職員の高齢化に伴う若い職員の資質を早急に高め、普及活動の水準を維持していくことが重要であると考え、資質の向上のため職員の研修強化を図られるよう御要望いたします。
 次に、普及活動に必要な情報の問題であります。
 情報化社会の到来は、農業にも大きな影響を及ぼしております。改良普及職員が農業者や市町村、農協等のニーズに十分こたえていくためには、幅広い分野にわたり常に最新の情報を的確に把握しておくことが重要であります。そこで、県内外の新技術、先進事例等の情報を手軽に入手できるよう、体制整備が必要であろうかと考えております。したがって、これらの整備に必要な施策について国が責任ある対応を実施していただくよう要望いたします。
 普及事業の運営については、以上のような考え方のもとに抜本的な改善強化が図られ、事業の成果が高まるよう措置していただきたいと考えております。
 以上、全国の改良普及職員の立場からいろいろお願いを申し上げましたが、私ども組織といたしましては、自主的に事業整備強化のための研究協議を進めております。間もなく全国の普及員に対し、普及事業の刷新を訴えることといたしております。なお、本年を私たちは普及事業刷新元年として意義づけ、より信頼される普及事業の前進を図るよう努めてまいる所存でございます。
 諸先生には、本法案について慎重な御審議をいただくとともに、一日も早く成立の運びとなり、改良普及職員が誇りと自信を持って職務に邁進できますよう、今後とも格別の御指導と御支援を賜りますようお願いいたします。
 以上であります。(拍手)
#4
○山崎委員長 ありがとうございました。
 次に、堀井参考人にお願いいたします。
#5
○堀井参考人 ただいま紹介にあずかりました全日本自治体労働組合の堀井でございます。
 私は、本法案に基本的には賛成し、補強する立場で、農業改良普及事業に籍を置く者として意見を申し上げたいと思います。
 まず、私は、日本農政について述べてみたいと思います。
 今日の農業は、生産性のみを論ずる余り、国際価格より高い農産物はすべて輸入すべきであるというベースの上に、国際価格により近づくためには経営規模の拡大しかないという結論を導き出していることに大きな問題があると思います。これは、農業現場を知らずに農政を行っているということに等しいのではないかと考えます。
 農村には、いま農地の規模拡大をする条件が十分には整っていないと自分は考えます。その理由として、一点は、農地を手放したい、貸したいと考えている人が意外に少ないということでございます。そしてもう一つは、農地を貸してもよいが、年をとっているためにどこでも働かれず、細々とやらざるを得なくなっている現実にも目を向けていただきたいと思います。三番目には、小規模農業では施設化を除いてはほとんどやっていけないといういまの現状も把握していただきたいと思います。そして四番目は、たとえ農地があったとしても市町村を越えて借地農業をせざるを得ないといういまの現実があります。
 以上のようなことを一つ一つ実態をつかみ、解決してこそ、日本農業は再生できるのではないかと考えています。中核農家のみが農家ではありません。いま農家が何を考えているかをきちんとつかんでそれを政策に反映する、これこそ農政ではないかと考えます。それができるのは普及事業であると私は確信します。
 われわれ農業改良普及員は、農業の現場において日夜農家の皆さんと接し、農業技術、経営技術、生活改善、そして地域農業の振興、農業後継者の育成を行っています。現在、農家の皆さんは農業の先行きに不安を持ちながらも一生懸命農業生産に打ち込まれています。改良普及員は、これらの農家とたんぼのあぜや畑で裸で話し合いながら活動を行っています。
 普及にとって現場活動は原点であります。ちなみに、わが新潟県の現場対応の時間は、直接、間接を入れますると総労働時間の六九%をも占めています。われわれ普及員にとって、以上述べたように現場は基本でございます。現地に出て農家指導に当たるからこそ改良普及は農業行政の中にあって存在価値があると思います。農業現場に出ない普及は奨励行政の中に吸収されてしかるべきだと自分は考えております。
 さて、以上の立場で今回の改正案を見ますると、余りにも心配なことが多くあります。このまま法案が通過しますと、改良普及事業の将来が心配されます。
 その理由について述べます。
 まず第一番目に、今回の改正の最大のポイントは、助成方式が負担金方式から交付金方式に変わるということかと思います。これらを地方財政法で見ますると、法十条から十六条に変わるわけであります。十条には国が経費を出す義務がありまするが、十六条になりますとそれがきわめて弱いのであります。これは、国の政策変更で普及事業が今後大きく左右される不安定なものになってしまうということではないでしょうか。
 私は、普及現場の経験を十三年間持っています。 その中で考えるのは、日本農業の方向が少し変わるたびに普及の現場は大きく動揺させられているという現実でございます。私が普及に入ったころはなかったのですけれども、このごろは、普及員は公務員の中で最も暇な職種だとか、ひどいものは、もう廃止されても仕方がないのではないかというふうにささやかれています。これには、日夜農業現場で奮闘しているわれわれは大きな精神的動揺を来しています。衣食足って礼節を知るのことわざどおり、自分の仕事の将来に不安を持ちながらでは決してよい仕事はできません。自分の仕事に自信を持ち、安心して働けるようにしてほしいものでございます。
 二番目に、いままでは定率助成であったのが定額助成に変わるといいます。しかも、事業の積算方式であったのが取っ払われると聞きました。これは、各都道府県の農業政策によって国から交付される金をある程度操作できることを示すものだと自分は考えます。このことは、たとえばいままで普及職員の設置費が負担金のときには国が三分の二を負担していたのが、県の考え方により四分の三になったり二分の一になったりすることであります。拡大されることは普及現場にとって大歓迎でありますが、臨調、行革の中では望むべくもありません。残るは縮小ということではないでしょうか。
 普及は、普及員が直接農家に農業と生活改善技術を普及指導することでございます。改良普及事業を行うためには、一定の人数がどうしても必要でございます。普及は人なのです。人員が減るということは、普及員を農民から遠ざけてしまうことです。これ以上の人員と普及所数の減少は、普及の存在価値をも危うくします。
 ちなみに、いままでの普及事業の歴史は、小地区制二千百二十カ所から中地区を経て広域制六百十七普及所へと普及所を減らし、農民から名実ともに普及を離してしまう流れであったように思います。これは農家をして、昔は結構普及員が来たがこのごろはさっぱり来ない、または普及所がどこにあるかわからないと言わしめる大きな要因だと思います。その上、普及所が統合され大きくなると、当然広域を担当することになります。こうなると、地元に住み、いままでは地域の人たちの営農相談相手となっていた普及員も、単なる通勤者となります。結果として、日常的な地域農業とのつながりも疎遠になりがちになります。
 三番目に、負担金のときには都道府県の負担義務が三分の一または二分の一ございました。しかるに、交付金制度になりますると都道府県の負担義務が外されてしまいます。こうなると、農業すなわち普及事業を重視しない大都市を持つ都道府県においては、ストレートに普及の縮小につながります。それに、県の負担義務が外されるということは、普及事業が国と都道府県の共同事業という根本にも反します。
 都市における農業は不要ということが言われています。しかし、東京市場における都内野菜の供給割合は各野菜とも一〇%以上であり、中には五〇%以上の市場占有率を示しているものさえもあります。ミツバやシュンギクに代表される軟弱野菜は、いまのところ都市近郊でしか鮮度の関係で生産できません。都市の農地を札束で見るから宅地並み課税という発想が生まれるのであって、コンクリートジャングルの中の緑の空間と考えればよろしいのではないでしょうか。
 もう一つ、都市農業と並んで言われていることに、生活改善普及事業はその使命が終わったというのがございます。数年前には、大阪府が生活改良普及員の廃止を言い出したくらいです。確かに、敗戦後生活改良普及員がぶつかった、むしろ、土間での生活、かまどの改良を必要とする実態はもはや農村より追放されました。しかし、都市の核家族と異なる多世代にわたる夫婦が一つ屋根の下に暮らす生活、ますます主婦に負担のかかる農作業、農業の専門化によるハウス病等々、そして都市よりも二十年も早く進む農村の老齢化と、いまはむしろ生活改善発生時以上の難問を農村は抱えています。
 これで法案に対しての意見を終わりますが、普及の最大の問題は次のことかと存じます。
 昭和二十三年に発足した農業改良普及事業は、いま世代交代期を迎えようとしています。当新潟県においては、向こう五年間で約百四十名が退職年齢に達しようとしております。前にも申し上げたとおり、これ以上の人員減は普及事業を崩壊させます。人員を補充するためには、魅力ある普及でなければなりません。そのために、ぜひ今回の改正を実りあるものにしていただきたいと思います。臨調答申に対する緊急避難的であってはならないと考えるのであります。昭和五十二年四月十二日、農業改良助長法の一部改正時に「都道府県における所要の普及職員の確保について強力に指導する」という附帯決議がついていました。いまこそこれを強力に行う時期だと自分は考えます。
 最後に、日本に農業が必要な限り、そして日本農業が進歩発展していく限り、われわれ農業改良普及員と生活改良普及員は必要かと思います。私たちは、日本農業の発展のために全力を挙げるつもりです。
 以上で私の参考人としての陳述を終わります。(拍手)
#6
○山崎委員長 ありがとうございました。
 次に、吉田参考人にお願いいたします。
#7
○吉田参考人 私は農業改良資金協会の監事であり、群馬県の農政部長でございますので、特に本日は、群馬県の農政を担当する者といたしまして、地域の実情を交えながら本法改正に関連する意見を開陳させていただきたいと思います。
 まず第一は、水田利用再編対策関連であります。
 現在、政府は、第二期水田再編対策といたしまして全国で六十三万一千ヘクタールの減反目標を示し、六十七万ヘクタール、一〇七%の達成率となっております。本県の場合も、八千六百九十ヘクタールに対しまして一一二%の達成率となりまして、全水田面積の四分の一の面積を他の作物に転換いたしております。いかに奨励金による補てん措置が講じられておりますといえども、稲作に力点を置きました農家を大豆作あるいは飼料作物作、コンニャク作の栽培に移行させることは大変困難なことでございました。地域に適合した品種の選定、栽培技術についての不安が余りにも大きく、そのため普及組織は農民の不安の解消と新作物への取り組みを勇気づける等、普及関係者の努力がなければこの政策の遂行は不可能であったと思います。輸入圧力によりまして現在国内自給率五%と言われるまでに低下いたしました大豆のエンレイ、タマホマレ等の新品種を導入し、普及員の指導によりまして一から勉強し直して、ようやく定着しつつある状況にあります。
 また、中核農家の営農規模拡大を円滑にするため、政府は五十七年に農地三法を改正し、農地の利用増進を図り、さらに各種土地改良事業完工後の営農指導の推進に努力を重ねております。この場合も、一般行政組織による指導もさることながら、農民の意向を直接捕捉している普及組織による趣旨の周知徹底がより大きな効果を発揮していると思われます。
 第二には、農業後継者の育成であります。
 本県の総耕地面積は十万八千ヘクタール、農家戸数が十万二千戸でありまして、標準的な規模だと思われますが、その後継者は五十六年で百九十四人、五十七年で百七十八人を数えるのみであります。さきに発表されました八〇年代の農政の展望に示される五ヘクタール程度の規模の中核農家を育成し、その経営者の世代交代の期間を約三十年として試算をいたしますと、本県は毎年六百六十人の後継者を必要といたします。したがって、先ほど申し上げましたような数字をこの段階に当てはめてみますと、現段階で毎年五百名見当の後継者の不足が現実に見られるわけでございます。このまま推移いたしますれば、農地、農村の荒廃は火を見るよりも明らかであります。
 このため、現在、農業改良普及員、生活改善普及員とも、農業後継者としての人物の発掘、指導を青年クラブ等の活動を通じまして実施をいたしております。また、県立農林大学校におきましては、現行の学校教育とは異なるカリキュラムを独自に編成をいたしまして、理論を中心とする座学を二分の一、経営実践学を半分といたしまして、二年間全寮制をもって運営をいたしております。無論、この県立農林大学校の構成メンバーも普及組織の一環でありまして、教授陣もすべて普及関係者によって構成をされております。
 第三は、今回の法改正によりまして、都道府県農業試験場は国の試験場に対し共同の研究の実施を求めることができることとされております。このことは、私たち都道府県関係者は感謝と大きな期待を寄せております。
 常日ごろ、試験研究者に対しまして、いたずらに象牙の塔にこもることなく農民の要望する試験及び研究に即応する体制を整えるよう呼びかけてまいりました。先ごろ、本県といたしまして農業試験場、園芸試験場、畜産試験場、蚕業試験場、水産試験場の組織再編を完了いたしまして、本年四月からスタートいたしたところでございますが、なお、国の研究機関のスタッフ、近代的な機器、研究成果との共同研究は、県の試験研究機関と普及組織が密接な連携を保っております現在、それを実用化し農家の利用に供することが一層促進されるものと考えております。
 第四は、農協の営農指導員と普及組織との関連であります。
 現在、各市町村農協は少ないところで三、四人、多いところで二十人前後の営農指導員を抱え、農協本来の目的である営農指導活動を行っております。これと普及組織との関係は、農協の営農指導活動が生産から販売、市場直結を志向するため、農協間で作付農作物の生産の競合、過当な農協産地間競争を激化させている傾向があります。
 そこで、現行の中地区制普及所が中心となりまして、地区内農協指導員と品目あるいは品種の選定、出荷時期の調整、生産指導を行うほか、農協、市町村、農業委員会、土地改良区を構成メンバーといたします協議会を主宰いたしまして、地域営農計画の樹立指導に当たっておるところでございます。
 第五点は、生活改善普及についてであります。
 現在、第二種兼業農家は全農家の六〇%を超えると言われております。その労働力の主体はそれら農家の主婦によっているのが実情でございます。農村指導に当たってその実力を無視することは不可能でございます。中核農家の創設につきましても、集積利用すべき農地の提供者は第二種兼業農家であり、新しい地域生産集団、新しい村づくりに取り組む場合も、土地、水、生活環境の整序を図ろうとするときにも、婦人を中心とする第二種兼業農家の積極的な参加を期待せざるを得ません。
 また、各職場への女性の進出と同じく、全農業労働に参加する婦人の増加は今後ますます増大するものと思われます。健康問題を含む生活設計を基盤にした農村の生産計画、そうしたものの樹立の必要性は当然のことと思われますが、以上の命題を土俵の上に上げまして取り組める者は生活改善普及員関係者以外にはないと思います。
 最後に、本法の改正に当たりまして特に要望を申し上げたい点でございますが、交付金の割り当てにつきまして、都道府県の人口、耕地面積及び市町村を基礎としておりますが、各都道府県の都市化の実態、農業経営の実情を把握し、もう一歩突っ込んだ形での配慮が必要かと思います。畜産、野菜、果樹等の経営区分、複合経営要素、普及の難易度等を考慮して交付されるべきものであろうと思われます。
 要望の第二点といたしまして、交付金の交付に当たりまして、定額とはいえ、従前の職員賢三分の二、事業費二分の一の負担率が基礎とされていると思われますが、今後も人件費のアップ、経済変動要素を織り込んだ交付金額の確保をぜひともお願いをいたしたいところでございます。このことが、現行法による地財法十条の国と県の財政上の共同負担義務あるいは国の積極性を高く評価されていたものが改正法案によりまして後退させたとする関係者の不安を消去する最良の方法であろうと思われます。
 以上でございます。(拍手)
#8
○山崎委員長 ありがとうございました。
 次に、川俣参考人にお願いいたします。
#9
○川俣参考人 御紹介にあずかりました川俣でございます。
 農村教育学という研究、教育を担当している者でございますが、そういう観点から普及事業についての意見を述べさせていただきたいと思っております。
 協同普及事業は農政における教育的事業としての基本的な性格を持つものと認識し、普及事業の機能論の観点から、農政と教育あるいはまた協同農業普及事業の必要性と今回の法改正の方向を中心に私見を述べさせていただきたいと思っております。
 最初に、農政と教育ということでございますが、農政と教育は異質なものであり無縁なものと考えられがちでありますが、本来的には密接な関係を持つものであります。農政は、農業生産政策、農村政策、農民政策という三つの領域を持つ概念でありますが、わが国の農政では伝統的に生産政策に重点が置かれていたというところに問題があるように考えるのであります。明治前期においては教育は農政の中で明確に位置づけられておりましたが、その後の農政が権力的な作用といいますか、言うならば補助金という経済的作用を強化することによって、農政の中での教育の問題は後退したというように考えるのであります。
 しかしながら、戦後の新しい農政の展開の中で、農村の民主化とか農業生産力の増強という命題が結局はその生産主体である農業者の自発性にかかっているという考え方から、農業者教育が重要視されるようになったと思うのです。そして、自主的な農民の育成ということを標榜して農政の中で普及事業が持たれるようになったと理解しております。
 そもそも教育の本質は物の考え方を変えさせるための活動であり、農業者教育は農業者の自立意識を高めるための活動、農業者の能力開発ということであると考えております。
 このような意味で農業者教育が農政の中に登場し定着するようになったのは、戦後のこの農業改良助長法が出発点であるというふうに考えるのであります。
 だがしかし、農政は依然として物動計画に傾斜しており、生産主体である農業者への配慮が弱く、農政の中の教育的機能は十分に発揮していないというふうに考えるのであります。農政に教育が存在しておっても機能しないという現実が、農業者の主体性の形成を停滞させ、今日の農業と農村の混迷を招来している要因の一つになっているのではないかと考えるのであります。
 御承知のように、日本の農業は厳しい情勢下にあります。これからの日本の農業は、構造転換を図って再編成し、産業としての農業を確立するとともに、食糧安全保障の基礎づくりを急がなければならないと思います。この場合、重要なのは新技術の開発と普及、農地流動化の推進、それから集落機能の強化等でございます。これらの問題は、農業者の意識改革であり、農業者教育にほかならない。このような教育の徹底には普及員が担当するのが最も妥当だと思いますし、農業改良普及事業の必要性は一層高まるものだと思っております。
 御承知のように、協同農業普及事業はこれまで農業や農村の、あるいは農家や農業者の変化に対応し、その発展に大きな役割りを果たしてきたということは高く評価されております。だがしかし、その反面、激しい条件変化の中で普及事業への新しい要求あるいは批判の声も高まっておることも現実の問題でございます。
 近年、普及に対する批判の高まりの背景は、端的に言って、行政事務的な要請活動が多くなり、広域普及体制への移行と相まって、普及の現場、特に農家と普及員の接触が弱まり、農家が求める普及活動が後退したことにあると思います。だからといって、普及の使命は終わったとか、普及員の削減ということにはつながらないと思うのであります。普及の機能を発揮するのはまさにこれからであり、農業と農家がある限り、そこに教育があり、国が責任を持って普及事業を恒久的に行っていく必要があるのではなかろうかと思うのです。
 農業は伝習から創造への新しいときを迎えることになっておると思うのです。農業者の自発性と創造性を伸ばし、新しい農業経営と地域農業を振興して日本の農業と農村の発展に寄与することが普及の役割りであり、普及は客観的な農業者教育の唯一の制度、機関であろうかと思うのであります。
 これからの協同農業普及事業にとって必要なことは、普及員が情熱と誇りとを持って職務に精励できるような普及制度の改善、農家や地域との密着した活動体制と活動方法を構築し、普及情報システム化を確立するなどして、普及活動の効率化を図っていくことが大事だと思います。特に、普及員の資質向上のために独自性のある普及員研修体系を確立し、普及員が農業、農村の今日的問題を発見し、それを解決する能力を高めるための研修制度を整備することも必要であるし、また、普及員養成のための教育機関を国が責任を持って考えるということも必要になってくるのではなかろうかと思うのです。
 ところで、今回の法改正でございますが、今日の協同農業普及事業の効率化を図るということと財政再建と絡んだ問題で今回の農業改良助長法の一部改正の法案が提出されたと認識しておるものでございます。
 この法案の内容については、第一には、国の助成方式が従来の負担金から定額の交付金に変更すること、普及事業の運営方針の明確化を行い、普及事業の効率化と内容の充実を図るとともに、農業に関する試験研究の効果的な実施を図るために今回の法律が提出されたと考えるわけですが、そのことが普及事業の縮小化につながるのではないかという疑問と、一方では、普及活動に求められる内容が多様化している現状から、これ以上普及員の削減は普及事業の根幹を動揺させるおそれがあるというような普及関係者の心配がございます。あるいはまた、普及事業の運営を明確化するということで農林大臣が運営方針を決めるということが、逆に普及現場の創造性を後退させるおそれもあるのではないかというように危惧するものでございます。
 だがしかし、財政再建の厳しい状況の中で、現行の協同農業普及事業の体制が堅持され、普及の充実発展を期するというならば、今回の助長法の一部改正には大賛成であります。現状をベースにして普及の発展を先生方にお願いして、参考人の意見をこれで終わらしていただきたいと思います。(拍手)
#10
○山崎委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
    ─────────────
#11
○山崎委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。亀井善之君。
#12
○亀井(善)委員 参考人の皆さん方、大変お忙しいところを貴重な御意見の開陳を賜りまして、まことにありがとうございます。
 まず最初に、吉田参考人にお伺いをしたいと思います。
 群馬県の農政部長等で、地方自治体におきまして第一線でいろいろ御指導を賜っておるわけでございますが、今度の協同農業普及事業交付金制度への移行に伴いまして、農業事情の変化に即応した都道府県の自主性の発揮が促進される、こういうことが言えるわけでございますが、その一方で、国と都道府県との共同事業として、都道府県においては従来にも増して創意工夫が重要な問題になろうかと思うわけでございます。都道府県における責任もそういう面で重要なものが考えられるわけでございますが、その点、どうお考えになりますか。まずそれを一点お伺いしたいと思います。
 そしてさらに、普及事業の安定的発展を図っていくためには、いまそれぞれ御意見の開陳を伺ったわけでございますが、普及職員の設置あるいは普及所の運営や普及職員の資質の向上、また、農業後継者の育成等について均衡のとれた事業の水準が確保されることが必要である、こういう御意見はそれぞれ伺ったわけでございますが、都道府県の立場として今後財政面及び普及活動面でどのように対処していけばよいものか、その辺のお考え方をお伺いをしたいと思います。
#13
○吉田参考人 御質問につきましてお答えをさせていただきます。
 今回の法律改正に基づきまして、自主性の発揮の問題、創意工夫の問題点につきましてかなり重要な要素であるというふうな第一番の御指摘でございます。まことにそのとおりと存じております。
 私どもも、これまで普及の立場だけで実施をしてまいりましたことだけで解決をし得ない問題が外部的に一つございます。もう一つは、内部の問題といたしまして、かなり専門性を持った形での取り組みが行われております。この問題が、対農家との触れ合いの問題で、片一方は複合経営あるいはかなりの専作経営の高度技術を持っているというふうなことがございまして、かなりの農家側と普及側とのギャップがございます。そうしたことを解消する意味で、特にわれわれといたしますと班編成、これは養蚕、畜産あるいは米麦作、そういうふうなものを一切含めました包括的な班編成対応をまず農家にする必要があるであろうということが一つ。
 それからもう一つは、組織の問題といたしましては、普及の単一の行動ではなくて、先ほど申し上げましたような農業協同組合の営農指導員あるいは土地改良区の推進員、理事、関係者との共同作業というふうなことを、本来的に府県の段階で調整、組織化を図りまして今後進めていかなければ、農民側の要望に即座に即応的な対応は不可能というふうに考えまして、新しい創意をこらしつつあるところでございます。
 なお、職員設置に関連をいたしましての財政的な負担の問題、普及組織の問題でございますが、この問題につきまして、交付金、負担金の問題につきましては法律上の表現はかなりいろいろな取りざたがされておりますが、われわれといたしますと、今日までの生産性の向上なり、あるいは先ほど申し上げました水田再編の取り組みの問題等を考えてまいりますと、こうした組織そのものがなかりせばということを考えますれば、今日の財政負担以上のものをさらに投入する必要ありというふうに考えておる次第でございます。充実するということがございましても、減退することはまずなし。
 それからもう一つは、裏負担の問題等につきましての問題がございますが、実はこれまで財源の面でもそうした議論がないわけではございませんでした。今日すでに三分の二の補助率が実質的には二分の一、二分の一が三分の一というふうな実態がございます。そうしたことよりは、事業目的の遂行そのものがどこにあるかという点が財政上の配分の基本になっておる次第でございます。そうしたことで今後とも対応してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
#14
○亀井(善)委員 ありがとうございました。
 それでは次に、星さんに伺いたいと思います。
 今度の法律改正に伴って、先ほど来お話しのとおり、普及職員の数の確保が困難となる、ひいては普及水準、普及の指導水準の低下を来すのではないか、こういう心配があるわけでございます。これは先ほど来の皆さん方のお話にも出てきたわけであります。
 そこで、普及職員の全国の職員協議会としていろいろいままで御苦労をしていただいてきておるわけでございますが、このような実態を招かないために今後どのような制度の運営が必要であるか、このような点でどのようにお考えをお持ちでありますか、それをひとつお聞かせをいただきたいと存じます。
#15
○星参考人 お答えいたします。
 私たち普及職員協議会としては、先ほども申し上げましたように、普及事業の費用の大部分が人件費であります。普及事業は普及職員がやっているわけでありまして、一人たりとも削減することを私たちは反対しているわけであります。
 しかしながら、先ほど申しましたように六次計画で五年間で五%の削減がありますが、これは政策上やむを得ない、こういうことでありまして、先ほど申しましたように定数基準をつくるかということで何回か検討したわけでありますが、それも都道府県の農業事情でそうはいかない、こういうことで、農林水産省は十四条に、今度、国と県の共同事業という性格を明確にするために「運営指針」というものを出しました。その中に、普及員、専門技術員の配置基準という項目が第二に出ております。その中で都道府県と農林水産省が協議して適正配置をするわけでありまして、それを私たちは農林省に、そういうことで行政指導上、農林水産大臣は都道府県と十分協議の上に普及員を減らさない、こういうことで十分やっていただきたい、こう一つは思っております。
 それから第二点は、やはり普及員の資質でありまして、普及員の資質の向上をして、農家から十分信頼されるような研修体系を強化しろ。それからもう一つは、先ほど要望申しましたように、情報の強化をして、普及員が常に農家に正しい的確な情報を伝えるということが普及員の使命でありますので、そういう点で、職員を減らさずに普及員の資質と情報強化によってこの普及事業の体制を守っていくという考え方でおります。
 以上であります。
#16
○亀井(善)委員 引き続いて星さんにお伺いしたいわけでございますが、協同農業普及事業と試験研究との連携の問題についてお尋ねをしたいわけでございます。
 近年、水田利用再編あるいは地域農業の複合化などに関しまして、現場で解決を迫られている技術問題がたくさんあると思います。
 まず、この問題に関連しまして、今後技術革新の時代を迎えて、試験研究成果の活用やまた現場での問題解決など、試験研究機関との連携が一層重要になるのじゃなかろうか、このように思われるわけでございます。先ほども研修の問題であるとか情報の問題を御指摘をされておったわけでございますが、普及職員協議会として、この連携問題についてどのようにお考えをお持ちでありますかどうか、伺わせていただきたいと存じます。
#17
○星参考人 お答えいたします。
 諸先生方御存じのように、改良助長法は、一章が目的であります。二章が試験研究であります。三章が普及事業であります。したがいまして、一章の目的を達成するためには、試験研究と普及が一体になって農家の要望にこたえていかなくては一章の目的は達成できません。今日までそういう法律でやってきたわけでありますが、私たちから見ると、試験研究と普及を本当に一体になってやったかというと、そうとは言えない面もあったわけであります。このための法律改正で国と都道府県の試験場が共同研究をする、こういう法律が今度改正になるわけでありますが、国の試験場も都道府県の試験場も農家のためにあるわけでありますから、私たちは、試験研究機関が農業の技術開発をしっかりやってもらって、そうしてそれを普及員に伝達をしてもらう。それによって農家の技術革新にこたえていく。それからもう一つは、農家側にもいろいろ問題がありますから、私たちは試験場にその問題を上げまして、そこで解明をしてもらう、そういうことができないと普及の改良助長法の目的が達成できません。
 そういう意味で、私たちは試験研究と普及と一体になりまして農家の要望にこたえていきたいということで、一つは、先ほど申し上げましたように、農家の圃場で一緒になって技術確認をしていただきたい。それからもう一つは、このたびの改正前に農林水産省は試験場に普及の情報センターを設置するようになっております。その情報センターをわれわれは十分活用いたしまして、そうして農家の要望にこたえていきたいという考え方で、一章の目的を達成するためにはどうしても試験研究と普及が一体になってやらなければ助長法の目的は達成できないという意味で、試験研究機関の御協力を得たい、こういうふうに考えております。
 以上であります。
#18
○亀井(善)委員 以上で終わります。
#19
○山崎委員長 松沢俊昭君。
#20
○松沢委員 参考人の皆さん、大変御苦労さんでございました。若干御質問を申し上げたいと思います。
 いま四人の先生方からいろいろと御意見を伺いましたが、皆さん全部やはりこの改良普及事業というのは大変大事な事業だ、重要な事業なんだ、こういうお話でございましたが、今回の助長法の一部改正、これの経過を見ますと、結局、昨年の七月の第二次臨時行政調査会の答申、その答申で内容を刷新する、そして効率化を図るという提案が一つありますね。それからもう一つは、二年以内に原則として人件費補助というのは一般財源にすべきだ、こういうのも答申としてあるわけでありまして、それを受けてこの一部改正というのが行われるということになった、こういう経過だと思います。
 皆さんが、非常に重要な役割りを果たしてきているんだし、これからも果たしてもらわなければならぬところの事業なんだ、こう言っておられるわけなんでありますが、私もそうだと思います。そうだとすると、改正の内容を見ますと、一番大きな問題というのはやはり金の問題ですね。定率を定額にする。そうすると、裏負担というものを一体都道府県はどうするんだろうかというのが一番問題になってくると思うのですね、義務づけられておりませんから。そうすると、さっき堀井参考人の方から話がございましたが、新規採用、それから退職者、要するにこの関係、それから年齢構成などからいたしますと、だんだんと人間が減っている。先細りになる。そうなると、非常に重要なこの事業というものがだんだん弱体化していくというところにつながってくるんじゃないか、こういう心配を持っております。だから、私は、どうも改正することについて本当は賛成ではないんだという御意見なのかどうか、その点を四人の参考人の先生方に聞きたいのです。
 本当はこんなものを出さなくてもいいのに、臨調の方でやってきたんだからやむを得ないという受けとめなのか、いや、これはこういうふうにして改正していった方がいいんだ、こういう受けとめなのか、その辺がはっきりしておりませんが、四人の方々から、もう一回、簡単で結構でございますが、意見を述べていただきたい、こう思うわけでございます。
#21
○星参考人 お答えいたします。
 私たちは、五十二年に先生方のおかげで補助金から負担金にしていただきました。それから私たちはこれで大体普及事業は安泰だと思ったわけですが、第二次臨調の答申の中に、二年以内に一般財源に回せ、こういうことが出たわけであります。それからもう一つは、地方行政調査会あるいは知事さん方が、普及事業は一般財源に回せという声が非常に強くあったわけであります。そういう意味から、臨調は一般財源に回せ、こうなったんだろうと私は思います。そういう意味から申しますと、一般財源に回されては、先ほど申しましたように普及事業は崩壊であります。そういう意味からいうと、やはりこの交付金制度にしてやらざるを得ないというふうに考えて、私たちは了解したわけであります。
 以上であります。
#22
○堀井参考人 お答えいたします。
 私は、現場で働いている立場といいますか、自治労という立場からいきますと、やはり積極的には賛成しかねるということではないかと思うのです。実際にいま先生の方から質問があったように、私どもの新潟県における年齢構成は、五十代が六三%、四十代が一六%、三十代が一四%、二十代が七%という数字で推移しています。相当大幅な採用がない限りはこれは充足できない。先ほど申し上げたように、これから五年間の先のことを考えると百四十名の人たちがということになりますので、大変な採用をしなければならないという情勢にいまあるというふうに考えております。
 そういうことで、実際にわが県の例でいきますと、四十五年に四百三十二名であったのが今年度は三百七十七名、五十五名の減員ということになっています。いままでもこれだけの勢いで減ってきているわけですけれども、これから大変な勢いで減る。ですので、その辺にぜひ歯どめをしていただければ立場としては賛成ということにしたいと思いますけれども、現状のままでいくとやはり非常に心配される部分が余りにも多過ぎるということで御了承いただきたいと思います。
#23
○吉田参考人 ただいまの御質問につきましては、私どもといたしますと、法律のこれまでの経過を考えましても、やはり情勢の変化に応じて法律の改正がございます。交通機能の拡充等の問題でかなりの改正が行われております。
 今回の問題も、臨調というふうな御指摘もございました。あるいはそうかもしれません。しかし、私ども県内の関係の意見といたしますれば、これまで米を中心にした全体的な農業施策というよりは、かなり多角的な多面的な自主的な、あるいは地域農業再編というふうな形での農業経営が展開されております。したがいまして、そうした面での普及員の性格づけあるいは内容の変化というふうなものを府県に預けていただけるものならば、そうした自主的な判断の上に立って今後取り組んでまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
#24
○川俣参考人 この法律改正については、客観的に言いますとやむを得ないのではないかというような意見でございます。
 というのは、この前の昭和五十二年の法改正で負担金に変わったということで、自分たち研究者としては農業改良普及事業が恒久的に安定化したということで大変祝福をしておったわけでございます。その問題がそういう形で充実発展するということが本来的に言うと好ましい形かと思うのですが、しかし、一般交付税になって普及事業がなくなってしまうということになるとこれはまた問題が別なので、そういう観点から今回の法改正はやむを得ないものではないかということで、この改正を機にやはり先生方が普及に対する必要性を強調していただいて、将来ともこういう教育事業が残るように考えていただきたいと思うのでございます。
#25
○松沢委員 大変ありがとうございました。
 それで、現場といいますか、堀井さんにお聞きしたいわけでありますが、いまお話しのように普及事業というものはやはり人なんだ。人がいなかったら普及事業というものはできない、これは当然だと思いますし、そのためには人の確保ということになるわけでありますが、いまお話もありましたように、数がだんだんと減っていっている。それから、普及所がどこにあるかというのがわからぬ、そういう農家もおられる。こういう話なんでありますが、そういうことになっては、もうすでにある意味においては広域化されたことによって形骸化されているという面も出てきておるのではないか、こう思いますが、その辺はどうなっているのか、お伺いをしたいと思うのです。県の職員の立場ですね。
 それからもう一つ、吉田参考人にお伺い申し上げますが、資金を運営しておられる吉田参考人の方ではいまの堀井さんの言っておられるその件についてどのような対応をなされておるのか、お伺いしたいと思うのです。
#26
○堀井参考人 お答えいたします。
 先ほど私の意見の中で、普及は人だという言い方をしました。実際に参考人の方々も、私以外の方々もずいぶん言われているわけですけれども、普及事業そのものは、あくまでも農家に接してそこで初めて普及事業そのものが成り立つ。川俣先生が言われているように、やはりまさに教育事業ではないかと自分は考えているわけです。
 そこで、いまの私たち一人当たりどのくらいの農家を対象にしているかということは、新潟県の場合は大体五百十七戸を対象にしていますし、農業基幹労働者ということになりますと、五百七十人という人数をいまやっているわけでございます。私どもも普及計画に基づいて精いっぱい努力をしながらやっているわけでございますけれども、これらの人たちにとてもやり切れないという部分が一つあります。
 そして、いま私どもは、特技活動といいまして、稲を担当する普及員、果樹を担当する普及員、そういう形で特技が配置されているわけでございます。それらの中で、ただいま私の普及所においては、果樹特技ということになりますと私一人ということになります。
 そのような形で、ある程度の対象農家を持ちながらも、これ以上人数が減るというとそれらのバランスさえも崩れてしまう。実際に総合病院的な物の考え方からすれば、いろいろな医者がいて初めて成り立つのだと思いますけれども、その中で一つ二つなくなるということは、やはりそれの補充がなかなかさかないという意味では今後非常に困る問題が出てきて、実際に普及所に行っても役に立たないじゃないか、疑問に対して答えてもらえないじゃないかというような状況が、このままの人員の減が続いていきますと近々のうちに起こるのではないかと自分は考えているわけでございます。
 そしてあとは、もう一つは、やはりそのような多くの対象者を相手にしておりまして、しかも特技活動、もっともブロックによるチーム活動というものもやっておりますけれども、それらの中で全く行けない。そして、普及所は、大体一定程度のにぎやかな部分というのですか、都市部分、都市というのはちょっとおかしいかもしれませんけれども、そういう都会といいますか、人口の密集地帯に大体配置されているのがいまの現状だと思います。そのことから、なかなか出てこれない、普及所になかなか行けない。そのような状況が生まれてきたために、どこにあるかわからない。先ほど申し上げたように、数そのものは実に二千カ所を超えていたところから六百というところまでいっているわけですので、やはり身近だということは農家にしてみればぴんとこない、このようなものがあるのではないかというふうに考えています。
 以上です。
#27
○吉田参考人 御質問につきましては、ただいまの堀井参考人からのお話につきまして、将来の人員の先細りというふうな点につきましては、一つの予測でございますのでお答えから外させていただきたいと思っておりますが、普及事業に関しましては、それぞれの地域の特色なり特性なりというふうなものを、先ほどお話がありましたような創意工夫によってどうとらえていくかという問題が、やはりこの法律改正のうちの最も重要な部分であろうというふうに考えております。したがいまして、それぞれの地域の創意工夫あるいは新しい特色を持った農業経営の展開による増員配置あるいは減員配置ということが柔軟に行われるのはやむを得ないというふうに考えております。
 以上でございます。
#28
○松沢委員 もう一点聞きますが、この法律改正でいままでの改良研究員制度というものが廃止されることになっております。これは、聞きますと、研究員の試験というのがなかなか大変な試験だということを聞いております。要するに、その資格を取ったということに一つの意義を感じておられる方々が大変たくさんおられるということを聞いておりますが、制度は廃止してもやはりこういう肩書きといいますか、そういうものは残しておいた方がいいんじゃないかという御意見があるようでありますけれども、これは吉田参考人と星参考人にちょっとお伺いしたいと思うのです。
#29
○星参考人 改良研究員制度につきましては、二十七年に議員立法でできたわけでありますが、私は先ほど申しましたように、第一章の目的を達成するために試験研究と普及が一体になってやる、その橋渡しを改良研究員がやるように一応法律でつくったようであります。それで、現在まで一人という形でやったわけでありますが、それはやはり廃止してもいいのではないか。ただ、先生が御質問のように、試験研究のそういう人たちに資質の向上と励みを持たせるためには、何らかやはりそういう制度を存続させて試験研究の資質の向上に資したいというふうに私も考えております。
 以上であります。
#30
○吉田参考人 改良研究員の問題につきましては、ほぼ同等の資格試験を要します専門技術員の試験もございます。現在まで農業改良研究員は各都道府県に一名ずっというふうなことでございまして、そうした人とのつながりというふうな試験研究よりは、やはり試験研究全体の組織的な研究対応、それが国と府県との間に求められてしかるべきというふうに考えておりまして、研究員の廃止問題につきましては、今後の試験研究あるいは普及運営につきましての支障はないというふうに考えております。
#31
○松沢委員 これで終わります。
 ありがとうございました。
#32
○山崎委員長 竹内猛君。
#33
○竹内(猛)委員 参考人の皆さんには、お忙しいところ貴重な御意見ありがとうございました。
 私は改良普及制度の改正に関して若干の御質問を申し上げますが、まず第一の問題は、川俣先生の筑波大学のあるところ、私はその選挙区、土浦でありますから、茨城県は北海道に次いで第二の農業県で、しかも改良普及員の数もわりあい多く配置されておるところでありまして、いろいろ現地を見てまいりまして感じたことを質問します。
 まず最初に川俣先生にお伺いしたいのですが、農業には農政の目標というものが明らかにされなければならない。その場合に、農業は食糧をつくるための産業であり、同時に、治山治水、保水あるいは環境保全等の社会的役割りをしているという面から、二つの社会的任務を持っている、こういうふうに考えていいんじゃないかと思うのですね。
 そこで、農業を目的に沿って進めていくためには土地が必要であり、人間が必要であり、同時に、それを支えるものとしては、ある意味においては財政が支えなければならない。そして、教育であるとか研究であるとかというものはそれらをつなぐ一つの方法であり、手段でなければならないと思っています。そういうときに、わが国の農政の目標というものが常に変わってくる。普及員は農家と一番接触をしている、接点にいるわけでありますから、農家の状況というものは一番よく知っているはずだ。ところが、あるときには土地改良をやり、品種改良をやり、米を増産しろと言っていた政府が、今度は減反をやれと言うわけだ。自分で子供をつくっていよいよ生まれかかってくると殺してしまえ、これが改良普及員の主たる仕事になっているようですね。こういう矛盾がいま末端にある。これは大変問題だと思うんですね。
 こういうときになおこの制度というものを活用し、さらに前進をさせていくということは大事だと思うんですが、そこで、その目的と人と財政を中心とした改良普及制度というものに関して、川俣先生のお考えをちょっとお伺いしたいと思います。
#34
○川俣参考人 お答えいたします。
 従来、農政のコミュニケーションというものが若干農家と切れておったのではないかという面の問題での先生の御指摘かと思うんです。従来の農政は上意下達と申しますか、そういう意味で農家の意見、意思が反映されにくい形で進められてきたというところに日本の農政批判が農民からあるのではなかろうか。そういう意味での農政と農家とのコミュニケーションの媒体役として普及が大きな役割りを持つのではなかろうか。そもそも農政というものは、地域の農業が発展するためには、地域の資源とそれから農政の中心である金融とか制度とかという物動的な側面と、それから地域の農家、人間の問題が均衡のとれた形で進められれば大変推進されるわけでございますが、ともすると失敗した面といいますと、膨大な行政投資をいたしましても農民側が対応がまずい、あるいは農政の方向を御理解していないという形になってきて、せっかくの行政施策が中途半端になるというのが従来たまたま現場で発生している面です。そういう面で、行政からの農家の啓蒙開発あるいは農家からの要望を行政につないでいくという役割りを普及が持っているわけで、そういう面での普及の必要性というのはこれから一層重要になるのではなかろうかと思っております。
 以上でございます。
#35
○竹内(猛)委員 川俣先生がお書きになった「普及指導活動論」という本がございますが、あの本で展開をされている中に、いままでの農政の中で物をつくることに重点があり過ぎて人を大事にしない、とは言わないけれども、そういう意味のことをお書きになっていられるようでございます。物をつくるのは人間ですから、その人間を大事にし、人間を教育し、創造的な農業を進めていくことが大事だ、こういう立場に立ったときに、堀井さんと星さんにお伺いしたいのですが、日本の農業の地域は純農村地帯から混合地帯そして都市的農業地帯というようにそれぞれ地域の区分があると思いますが、町村は変化がない。地域にはいろいろな区分があったとしても、町村の数なり面積には変わりない、人口は若干移転をするけれども。そういう中で人口割り、面積割りという形で配置をされておりますが、大ざっぱに言いまして現在の九千人の農業改良普及員、それから二千人の生活改良普及員、これはもう限度で、これを減らすようなことがあったとすれば大変なことになるのじゃないかと思うのです。
 そこで、一方においては考える農民をつくるということと、それを結びつける改良普及員、特に健康面やそういう生活のめんどうを見る生活改善普及員が数ではもう限度に来ている、これを減らすようなことがないようにするために今日までどのような話し合いをされてきたのか、その辺はどうでしょう。
#36
○星参考人 竹内委員からお話しのように、農業改良普及員は九千人そこそこでありますし、生活は二千人を割っております。そういう意味で、先ほど参考人からもいろいろ申されましたように、私たちはとれが限界である、これ以上減らされては普及事業はとてもできない、こういう考え方に立っております。
 そこで、先ほど申しましたように、配置基準を、学校の先生とか警察みたいに定数基準をつくってこれ以上減らさない方法はないか、こういうことを考えたわけであります。都道府県の実情によって配置を先ほどの配分基準によって割り当てたわけでありますが、しかし、当時の状況を調べてみますと、都道府県の財政事情によって、仮に五十名割り当てますと、私の県はそれだけの財政負担ができないからとてもそれだけ人員を置けない、それで四十五人置いた、ある県は財政が豊かで、余ったら私の方にくれ、こういうことで、いま非常にアンバランスになっているわけであります。私たちはそういうアンバランスを適正配置はできないかと考えたわけでありますが、先ほど申しましたように定数基準をつくって配分計画をつくって全国的な視野からやりますと、多い県は減らさなくちゃならない、少ない県はふやさなくちゃならない、現在の実情ではとてもそれが無理だという考えに立ちまして、少々のアンバランスがあっても都道府県の実情によって配置されるべきだろう、こういうことで、現状を減らさない方法でぜひ御指導願いたい。先ほど申しましたように配置基準ができますから、農林水産省は強力な行政指導によって、都道府県と協議の上に減らさない方法で御指導願いたい、こう思っておるわけであります。
 それから、生活改善についてはいろいろ批判もありましたが、普及事業では生活改善が非常に重要な役割りを占めていますから、それが二千名を割っていますから、これはどんなことがあっても減らさないで現在の定数を守るという方法で御審議願えれば幸いだ、こう思っているわけであります。
 以上であります。
#37
○堀井参考人 お答えいたします。
 これ以上定数を減らさないでほしいということが僕ら自身の一番大きな問題でございますけれども、わが新潟県における人員の減は、一昨年がマイナス五、昨年度、五十七年がマイナス六という数字で減ってきています。それをわれわれは県当局の方に交渉しながら、何とか充足をしてほしいということで一応組合という立場でやっているわけでございます。実際、先ほど申し上げたように、これから非常に退職者が予想される中で、特技の配置とか稲の担当とか、先ほど申し上げたような部分で非常に大きな問題が出てきまして、確かに地域における特色に沿った人員配置というものが考えられますけれども、まだ農村そのものがそれだけの地域的な特徴が、たとえば畜産が多ければその地域で大問題を起こすとか、そのような問題もありますので、ここしばらくの間は現状の人員そのものを配置をしていかなければならないような状況にいまのところあるのではないかと考えています。
 以上です。
#38
○竹内(猛)委員 最近の現場の状況を見ますと、水田利用再編対策というものを中心に改良普及員の皆さんが夜昼を徹して努力をされている。一〇〇%いったところが一番いいと言われていますけれども、農家からしてみれば、米にかわるべき作目が定着しない状況の中での減反ということに対しては非常に矛盾を感じているわけですね。もうこの辺で減反はやめてもらいたい。どうも米も不足しているようだ。農協の倉庫にはなるほど米がないですね。私はこの四日間ぐらい、ほとんどの地域の農協の倉庫の調査をしました。古い米は若干あるけれども、新しい米はほとんどありません。自主流通米のごときは全くないですね。
 そういう状況のもとでなお減反をするという矛盾を農家の人たちはひしひしと感じている。残念ながら改良普及員の皆さんがその先頭に立ってやらざるを得ないという形になっている。そうすると、これは行政の下請ではないのかという心配がありますね。農家は専業農家ほど農業をやめるわけにもいかないし、機械の負担も大変でありますし、農業を心配をしている。その心配をしている、残したいという専業農家に対して減反でまた苦しめるということで、相矛盾するものがあるわけだ。これは改良普及員の心ではないかもしれないが、やむを得ざるものとして行政の下請になってしまうのではないか。本来であれば地域の農政に密着した創造的な農業を進めていくのが一番よろしいのですけれども、そういう形にいかないというこの矛盾を一体どこで解決するのか、そして本当に人間的にも尊敬され、愛される普及員になるためにどのようなことをしたらいいのかということについて吉田さんにまずお伺いしたいし、先ほど吉田さんのお話の中に後継者が残らないというお話がありましたが、一体どうしたら後継者が残るのかという点もあわせてお答えをいただきたいと思います。
 なお、その問題については川俣先生にもお答えをいただきたい。
#39
○吉田参考人 お答えをいたします。
 前段の、普及が行政の下請にならないかという点の御指摘でございますが、普及組織そのものは行政組織の一環でございまして、常に行政と一体であり、また、行政の内部組織の一つでございますので、当然行政と歩調を一にして仕事に取り組んでいただくというのが本来のあり様であると考えております。したがいまして、米の減反政策の問題はあるいはいろいろな不満、御批判もありますけれども、それはそれといたしまして、先ほどお話にありましたような地域に密着した、米以外にその地域に最もふさわしいものは何かという次善の方法を探りながら新しい農業の再編成問題に取り組んでいる、これが善及員の姿であろうというふうに思っております。
 後段の方につきましては、御趣旨が……(竹内(猛)委員「後継者が残らない問題をどうしたらいいか」と呼ぶ)実は私どもの方といたしますと、後継者の数がかなり減じておりまして、その辺は苦慮をいたしておりますことは先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、現在農家の中で優秀な人材の発掘、あるいは後継者にふさわしい人物が農村地域にどのような形でおろか、あるいは次男、三男等で他に転出する希望があるが、しかしさらに本人が農業経営を志望するというふうな家族調書的なものまで普及はタッチをいたしまして、そうした方々に就農を勧める、あるいは農業経営大学校なり何なりで勉強をしてもらいまして技術的な素地を与えるという形で、農業に対しての就職を勧めるという点を進めております。
 もう一つは、自立経営指標というものを定めまして、農家そのものが農業経営によって採算あるいは経済余剰が得られるべき経営点はどういう点であろうかというものをお示しをしまして、それに基づいた青年クラブでの話し合いあるいは農家集落での話し合いによりまして利用集積を図る、一定規模を設ける、あるいは資金援助措置によりまして施設園芸等の措置を講じながら経営内容を公開あるいは宣伝をいたしまして、魅力ある農業という形で農業者を引きつける必要があろうということで、普及の組織にお願いをいたしているということでございます。
#40
○川俣参考人 お答えいたします。
 普及員が行政の下請的だという御意見でございますが、そもそも普及と行政が一体的になって活動することで行政の効果が上がるのだろうと思うのです。そういう面で、行政と普及の活動の役割りの分担といいますか、機能分担ということをもっと明確にして、一応職務基準なんかで示されておるようでございますが、もっと行政と普及員の本来するべき分野を明確にすべきではなかろうか。
 ついでに申し上げれば、今日、普及が行政の先導的な役割りをするとするならば、農村の現場の中で今日あるいは将来どういう問題があるかという問題発見に焦点を当てるのもこれからの普及として大事なことではなかろうかと思っております。
 それから第二の後継者育成対策の問題でございますが、この問題については、自分自身としては農業後継者育成対策に決め手がないと考えているのです。それほど農業後継者をめぐる問題というものは複雑な要因、背景を持っているということで、それと同時に、そういう意味でいわゆる育成対策の問題の地域ぐるみの一元化ということを考えなければならないのではないか。
 あるいはまた、後継者が絶対的に少なくなってきている現状の中で、農村の青少年を見てみますと、現在の農村の青少年は後継者対策という中で息づいているような気がしてならないのです。そういう面でもっと自分たちの力で活動をし、あるいは創造するというようないわゆる後継者育成教育ということになってきますと、やはり後継者育成は対策ではなくて教育であるという考え方を導入していかなければならないのではないか。家庭においても集落においても今日教育機能というものが停滞しておりますが、そういう面で普及員さんが地域の中核になって後継者育成教育に力を入れてほしい。
 ついでながら申しますと、後継者が定着するプロセスというのは、就農と結婚と経営権の譲渡という三つの段階において後継者が定着してくるのだろうと思うのです。その就農の段階というものは、一言で言うならば教育の問題に要約できるのでなかろうか。そういう意味で、対策よりも、地域の中でのコンセンサスを得て普及所を中心にしての後継者育成教育の一元化を図ってもらうようにしていただきたいと僕は考えておるのでございます。
 以上でございます。
#41
○竹内(猛)委員 ありがとうございました。
 時間が来たのですけれども、恐縮ですが、自治労の堀井さんにもうちょっとこの点についてお伺いしたいと思います。
#42
○堀井参考人 お答えいたします。
 やはり率直に、現場にいて下請ということはよく考えることがございます。いろいろな調査事項とか、それらの問題点で相当時間を現場に、私が先ほど申し上げたように、僕ら自身の任務というのは現場に出て農家の皆さんにいろいろと相談に乗ったり、技術援助を申し上げたりというのが仕事だと考えているわけでございますけれども、やはり行政的な事務や資料提出、そういう部分はいまの現場の中ではふえているというふうに自分は考えています。
 そして、減反の問題に若干触れておきたいと思いますけれども、私自身が現場に出て減反の問題をやってみますと、米の部分自身は、麦とか大豆とかということ自身はいま手厚い保護といいますか、補助金等で何とかやっていますけれども、特に畑のもの、たとえばエダマメにしてもサトイモにしても、これらの部分は、ちょっとつくり過ぎると、野菜に代表されるのですが、暴落をしてしまうというような中で、いま県、国の方で価格保証の面で考えておられるようでございますけれど、そのような価格政策、支持といいますか、そのような問題というのがどうしても水田再編の作物転換という中では必要になってくるのではないかと思います。実際に僕ら自身が現場で農家を御指導申し上げますと、それが最大限の質問として、不安として上がってくるのが現状ではないかというふうに考えています。
 そして二点目の普及教育、後継者の問題でございますけれども、私も若干これに関与しておりますが、その農家の親御さんの自信とか、そういう部分にも非常に大きく左右されるというふうに前は言われておりますけれども、いまは、私自身が私どもの自営者養成の興農館高校というものに若干関与している関係で前に中学校を回ったことがございますが、それらの中において中学校の先生から端的な回答として、私どもの中学では、申しわけないけれども農業高校に行くような人はいませんよ、普通高校に行く人はいますがねというような回答が返ってきて、自分としても非常に驚いた経験がございます。それらの中において、農業高校に進むということは優秀な人材にとっては相当勇気が要ることだということが、私もいろいろの若い農村後継者の皆さんと話し合う中において考えることができるのではないかというふうに考えます。
 後継者を確保できるということについて申し上げるならば、やはり日本のいまある農業の方向といいますか、そういうものをきちっとしてもらって、農業をやって十分に暮らしを立てていくことができるというような方向性を先生方から示していただいて、その中でこそ初めて農業の後継者というものが育っていくのではないかというふうに私は現場で常日ごろ考えているところです。
 もう一つ申し上げておきたいのは、農家のまさに就農寸前の皆さんにお伺いしますと、何といっても春の行楽と秋の行楽のときにまさに農作業が一番忙しいんだと言われる。特に米なんかをつくっている場合ですね。彼らは私どもに、それらの問題点として、まさに二十前後の人間ですから遊びたいのはやまやまなはずなんです。その中において、人が花見だとか、やれ山に行くとかいうようなときに自分では一生懸命たんぼに入って農作業をしなければならない、おれは何て惨めなんだろうというふうに実際に考えている若い層もあるというようなことも、現場の実態として先生方にぜひおわかりいただければと思います。
 以上です。
#43
○竹内(猛)委員 時間が超過して迷惑をかけました。ありがとうございました。
 終わります。
#44
○山崎委員長 武田一夫君。
#45
○武田委員 四人の参考人の皆さん方には大変御苦労さまでございます。
 まず最初に、川俣参考人にお尋ねを申し上げます。
 先ほど、普及員が情熱と誇りを持ってその仕事に取り組めるようにすべきであるということをお話しされましたが、私もそのとおりだと思います。具体的にどういうような体制をつくってあげればいいものか。私も普及員の仕事には関心を持ってあちこち歩きますが、正直言いまして、普及員の地位を正当に、しかも非常に高く評価するというよりは、どちらかというと、場所によりましては非常に評価が低い。あるところでは、農協の場合なんかは、わが農協の食いぶちだなんというようなことも言われて、非常に萎縮しているということも見ているわけであります。そうなりますとやはり非常にお気の毒ですし、こういう方々に、先ほど申し上げました、先生がまたおっしゃっております、情熱と誇りを持って取り組めるようにさしてあげたいと思うだけに、具体的にはこういうふうにしていくべきではないかという御意見がございましたらひとつお聞かせ願えれば、こう思います。
#46
○川俣参考人 お答えいたします。
 自分も大学の教師でございますが、教師というのは、先生方、先生方というよりも一般の世の中の人が考えていらっしゃるよりも低賃金で働いておるものでございますが、その中で生きがいと情熱を持つというのは、自分の教育活動がそのまま学生に反映され、評価されるということが大変励みになっております。ところが、普及員の場合は、そういう教育的な活動をしていましても、評価の面で行政の評価なのか普及活動の評価なのかという面がやや不明確ではなかろうか。
 先回の御質問の中でも行政と普及の問題が出ましたが、この際、やはり行政の機能の分担といいますか、役割りの範囲と、普及の役割りの範囲と機能というものを明確にすると同時に、その活動が的確に評価され、社会的に評価されるようなことをしてあげることが具体的な励みになるのではなかろうか。単なる待遇改善というようなものでなくて、公務員の中で普及員を志向するというのは、やはり農家と会って普及活動をするという情熱を持った方が入ってくるんだろうと思うのですが、たまたま若い普及員に聞きますと、われわれが一生懸命やったことが、何かよくなると行政がやったような形で評価されて、自分たちの評価が認められないといいますか、わからないというようなことに対して普及員さんは大変悩みが多かろう。そういう面で、具体的なということになってきますと、その活動の評価の問題を明確にしていくということが大事なのではなかろうかと思います。
 終わります。
#47
○武田委員 吉田参考人にお尋ねいたします。
 農政部長という立場で、大変御苦労が多いと思います。私は宮城県でございますが、こういう事例があるわけです。
 一つは、現実には非常に忙しいわけです。特に生活改良普及員などというのは女性の方が担当しておる場合が大変多いんですが、非常に忙しいのです。どのくらい忙しいかというのをいろいろ見ますと、ある期間は超過勤務が課長さんで百二十一時間、女性の生活改良普及員で二十二時間やっているのですが、こういうものは全部ただ働きといいますか、全然補償がないのですね。それから、休みも返上しましてやっている。それから、夜遅くまでやらなければならないというケースが多いというわけですね。女性でも十一時ごろまでかかるときもある。そういうときは午前中は遅く来てもいいよと言われても、仕事が多いものだからやはり朝早く行ってしまう。おやじさんのめんどうを見切れないというケースもあるというのですが、部長さんのところはどうでしょうか、現実は。
#48
○吉田参考人 当県では、幸いにいたしましてそういう事例にまだぶつかっておりません。ただ、そうした百時間、百二十時間という具体的なものはございませんが、それに応じた時間外勤務はあるように聞いております。
#49
○武田委員 そういう場合、時間外勤務はきちっと一時間当たり幾らというのは出すんだと思いますが、宮城県の場合は、六時間までは出すけれどもそれ以上は出さないんだというようなことでして、これはちょっと不都合でないかと私思っているのですが、部長さんのところはどういうふうになっておりますか。
#50
○吉田参考人 現実には普及手当が一二%ございますが、それ以外には、職員に対しまして予算上の計上は六%、実質的な配分は四%というふうなことで措置をいたしております。それが予算上の枠でございます。
#51
○武田委員 それから、星参考人にお尋ねいたします。
 普及員の数ですが、先ほど話があったんですが、以前の状況で非常にアンバランスがあった。それが今日までずっと続いている。ですから、農業の密度とか農家の戸数とか、いろいろな状況を踏まえて、これはもう少し見直すべきでないかという声があるのですね。農業を一生懸命振興して、いまや非常にそういう方々を要求しているところ、反面、余り必要がなくなったというところもある。これも特に西高東低でして、かなり西の方が高く保護されている、東の方は非常に弱いということも事実のようですが、これはやはり今後中身を検討すべきでないかという意見も私は非常に重要な意見だと思うのですが、星参考人としてはどういうふうにこれはお考えですか。
#52
○星参考人 お答えいたします。
 私たち全国の協議会としてもそういう点を大分検討したわけでありますが、各県の会長さん方は、それはやはりその県の実情によってそれだけの普及員を置いたんだからそれが適正配置だ、だから各県とも一名も減らしてはいかぬ、こう言うわけであります。私もそれには困りましたが、いろいろ調べてみますと、やはりそれなりに県の実情によって普及員の定数を決めたわけでありますから、農林省の配分計画とは違っている、こういうことでありますが、何回言っても、全国の普及員の各会長は、おれのところはこれが適正配置だ、それ以上減らされては困るというのが現状であります。
#53
○武田委員 堀井参考人に尋ねます。
 私、これを見てみますと、普及員がどんどん高齢化になっていますね。ところが、採用が余りないのですよね。若手を育てていくということに非常に問題が出てくると思うのです。たとえば生活改良普及員の方に聞きますと、一人前になるにはどうしても五、六年はかかる。いま宮城県の場合は三十五、六、四十くらいなんですね。それで、全然若手がいないというケースが多いわけです。そういうケースは新潟の皆さんの場合はどうでしょうか。
 それから、最近は採用が非常に少ない、ほとんどないというケースを考えますと非常に心配なんですが、そういう実態はおたくの方はどうでしょうか。
#54
○堀井参考人 お答えいたします。
 いま先生の言われたとおりだと私どもは承知しております。先ほど申し上げたとおり、私どものところでも五十代が六三%、四十代が一六%、三十代が一四%という形で、そして二十代が実に七%です。そのようないまの年齢構成になっておりまして、高齢化というのは非常に大きな問題として職場の中にあるのではないかと思います。実際に、今後は県の方針としては資質の向上を図ってなるべく早いうちに現場対応ということになるわけですが、私自身の経験からいきますと、採用されて二、三年はほとんど――ほとんどと言っていいかどうか、自分自身が能力がないせいかもしれませんが、実戦にはほとんど役に立たない。その後、三年、四年、五年、六年、いま先生が言われたように六年くらいになりますとまさに幾らでも現場対応ができるのではないかというふうに考えております。ですから、いま一定程度の人数が採用されないと、まさに新任普及員の教育そのものに現場は振り回されてしまうというような問題点も、先の話ですけれども、生じる可能性はあると私は思います。
 以上でございます。
#55
○武田委員 最後に、普及員の資質の向上という問題ですが、正直言って、農家の方が非常に先取りをしていろいろな面で勉強していて追いつかない、そういう悩みを訴える普及員の方もいるようでございます。そういう意味で、先ほどあったように、どこへ行っても情報も早く提供してやる、あるいは技術の面でも学ぶべきものを持っているという優秀な方々を配置しなければならない非常に大事な機関だと思うわけです。そういう意味で、この資質の向上について、特に新しい先端技術の問題につきましては、これはもっと国が、各県のそういう優秀な人間を集めましてしっかりと教育訓練をして各県に帰してやるというようなことが必要だと私は思うのですが、こういうやり方に対して皆さん方お一人お一人はどういう御意見をお持ちか、最後にひとつ簡単にお聞かせ願いたい。
#56
○星参考人 お答えいたします。
 私たちは、新任者の普及員に対しては、農林省と都道府県は一年ぐらいインターンとして先進農家なりあるいは試験場に入れまして、十分教育して普及所に配置する、そういう考え方を現在検討いたしております。
 それから、先端技術を普及所に情報として伝えるということ、これは農林省も都道府県に情報センターを今度つくりますし、都道府県の情報センターと普及所をオンラインシステムでつないで、できれば全国をそういうオンラインシステムでつないで、あらゆる情報が各普及所に伝達できるような整備をしていただきたい、こういう考え方でおります。
 以上であります。
#57
○堀井参考人 お答えいたします。
 先端技術ということについては、私どもも現場にいてつくづく考えています。技術そのものは日々変わります。その中で、私ども現場にいまして、いま財政事情が非常に苦しい中で、県、国の企画した以外の自主的な研修も自分たちで工夫しながらやっているところでございますけれども、たとえば農協あたりでは国外研修までやり出しています。そのことを考えますと、われわれも現場にいて、もちろん机上の勉強はしますけれども、やはり百聞は一見にしかずと言いまして、そういう現地を見るようなことも必要ではないかというふうに自分は考えています。先端技術、まさにこれから経営技術やそのようなことがどんどん進んでいくかと思いますけれども、それらの研修対応ということになれば、ぜひ先生方の御尽力をお願いしたいと思います。
#58
○吉田参考人 これまでにも実施をしてきておりますが、普及員の一定年限を経ました者につきましては、四年制大学への派遣の問題あるいは国外研修、海外派遣の問題、あるいは改めて人事交流の面で試験場への配置がえの問題等を通じましてできるだけ資質の向上を図っておりますが、業務に支障のない範囲でその人員の増加を図るべきであろうというふうに考えております。
 以上でございます。
#59
○川俣参考人 お答えいたします。
 普及員の資質の向上ということは大変必要なことだと思うのですが、その前にちょっと申し上げたいことは、いわゆる大学がよく象牙の塔と言われておりますが、大学の農業教育というのは農学の教育をやっておるので、決して農業教育をやっていないというところに世間が錯覚を起こす問題があるのじゃなかろうか。だから、単に学歴が高いから同時にすぐれた普及員というふうにはならないわけでございますから、農業で農業を学習させる、農業で農業を教育させるというのが農業教育で大事なことだろうと思うのですが、残念ながら日本の学校教育の中では、農学は教えるけれども農業は教えないという大変困った問題があります。ましてや最前線で農家の御指導をしていただく普及員は、農学がわからなくても農業を知っていなければならない。そういう面で、これから大学卒のすぐれた普及員をどのように農業や農村の実態をわからせるかというような意味での研修を考えなければならないのではないかと思います。
 以上でございます。
#60
○武田委員 終わります。
 どうもありがとうございました。
#61
○山崎委員長 岡田正勝君。
#62
○岡田(正)委員 民社党の岡田でございますが、参考人の皆さんには、貴重な御意見をいただきまして大変ありがとうございます。
 順次お伺いをさせていただきますが、まず吉田さんと星さんにお伺いをいたしたいと思います。
 農業改良研究員制度の廃止についてでございますが、今回の改正によりまして農業改良研究員にかかる規定が廃止をされることになりますが、これによって試験研究機関と普及組織との連携が薄まっていきまして、普及事業に関する試験研究が弱まるのではないかという懸念をする向きがあるのであります。今後、試験研究機関と普及組織がどのように連絡調整をし、このような懸念が現実化しないように努めるべきであるかということにつきまして御意見をお伺いしたいと思うのであります。
#63
○吉田参考人 改良研究員の問題につきましては、先ほども申し上げましたが、一名配置になっておりました。しかしながら、従前試験研究機関と普及組織との連携の問題は、試験場にそれぞれ専門技術員室を置きまして、それに相応した農業試験場には農作関係の普及員あるいは畜産には畜産の専門技術員、そういうふうなものを配置をいたしております。その人間が、SP、いわゆる専門技術員が普及組織と試験場とのかけ橋になっておりますので、本県といたしますと、改良研究員の廃止の問題は、当面その連携に支障はないものと考えております。
#64
○星参考人 お答えいたします。
 先ほども申しましたように、改良助長法は、一章が目的で、二章が試験研究で、三章が普及事業であります。私は、改良研究員一名を置いたことがかえってその試験研究と普及が連携動作がとれなかった、こういうふうに思っていまして、廃止して初めて一章の目的が達するようになる。試験研究と普及が十分な連携をとって、試験場そのものが普及と連携をとらなくちゃいけないわけでありますから、そういう意味ではかえって廃止した方が試験研究と普及が十分な連携がとれるというふうに思っております。
 以上であります。
#65
○岡田(正)委員 それでは、次に吉田さんと川俣さんにお伺いをいたしたいと思いますが、共同研究の実施についての問題であります。
 今回の改正は、都道府県の試験研究機関が農水省の試験研究機関と共同して一体的、効率的に試験研究を行えるよう、共同研究の実施に関する規定を新たに設けることにしております。私は、こうした共同研究の推進は地域農業の推進を図る上で意義があると思いますが、参考人はどのような方針でこれを進めていくべきだとお考えでございますか。政府に対する要望も含めてお聞かせいただければありがたいと思います。
#66
○吉田参考人 冒頭にも申し上げましたが、試験研究機関に対する共同研究の求めに応じていただけるという点は、府県にとりましても大変感謝申し上げ、また、大いに期待をいたしておるところでございます。
 そこで、具体的な問題でございますが、やはりわれわれといたしますと、限られた人員と限られた機材という問題がかなり障害になっていることは否めない事実でございます。したがいまして、国の持つスタッフあるいはこれまでにどの程度まで研究内容が進歩しているか、その辺の内容をまずお聞かせいただくことと、一つには、やはりお持ちいただいている研究機器の開放の問題がわれわれとして一番期待をするところでございます。
 以上でございます。
#67
○川俣参考人 お答えいたします。
 御承知のように、日本の農業の試験場、その完成というのは明治二十六年にできまして、大変伝統的な試験研究の業績を持っておりますが、ともすると中央の試験場に系列化されるという試験研究の側面があろうかと思います。
 そういう面で、今回の法改正を機会に、国の研究機関に府県の研究機関が共同研究を求めることができるというのは、従来の農業試験研究機関の性格からいうと大変画期的なものであると思います。そういう面で、いわば農村の現場からの開発をして、あるいは問題になっておる技術の問題を中央の研究機関に持ち上げてそれを共同で解決するというのは、そういう面で国の試験研究機関と都道府県の研究機関また普及事業が一体になって開発する、そして対処していくということが、本当に普及を発展し、また農業の発展に直結するものだろう、そのような形を推進していただきたいと思います。
 以上でございます。
#68
○岡田(正)委員 次に、これは吉田さんにお伺いしたいと思うのでありますが、負担金を交付金に改正をするということについてでございます。
 今回の改正では、普及事業に関する都道府県の自主性の発揮を促進するとともに、事業の効率的運営を図る見地から負担金を交付金に変更することにしておりますが、このことによって普及事業の内容、水準に都道府県の間で不均衡が生ずるのではないか、また、予算の確保に問題が生じないだろうかという懸念が関係者の間に持たれていることが、先ほど来の陳述でもよくわかりました。
 そこでお伺いをするのでございますが、普及事業を今後どのような展望を持って推進されていかれるか、また、そのために政府に対して施策、予算の両面でどのような要望を持っていらっしゃるか、率直な御意見をお聞かせいただければありがたいと思います。
#69
○吉田参考人 負担金から交付金への移行の問題に関連をいたしまして、自主性あるいは予算確保上の支障の問題、府県間の不均衡の問題、御指摘ございましたが、われわれといたしますと、この交付金の問題に関連をいたしまして、特に冒頭も申し上げさせていただいたところでございますけれども、一つには負担率の削除の問題がございまして、定額ということになっております。職員費につきまして三分の二、あるいはその他の経費につきまして二分の一という点が問題がございまして、それについて定額になったということは、将来とも府県の裏負担、財政的な負担の問題を増高するおそれありというふうな懸念を表明する向きもございます。しかしながら、私どもといたしますと、もともと交付金になった経過からいいまして、負担金の負担率の問題を根拠にしてこの問題がスタートしているという点に論拠を置きまして、むしろこうした内容についての実質的な変化はそう急激にはないと考えております。したがいまして、この点につきましての問題は、今後とも長期的にこれまでの法律改正の経過を踏まえて財政当局に対する要望、要求をしていかなければならぬと考えております。
 もう一つは、この交付金の問題が、人件費のアップの問題あるいは経済変動によります物価の変動等によりまして実質的にその対応をなさなくなってきた場合のことを最も恐れます。それにスライドいたします交付金の増額をぜひともお願いをいたしたいと考えております。ただ、これまでの負担率の問題につきましても、三分の二、二分の一という負担率はございましたが、実質各都道府県が負担をいたしております分は三分の二の補助率につきましては二分の一、あるいは二分の一のものについては三分の一というふうな府県の超過負担をせざるを得ぬということもございました。したがいまして、この問題が負担金から交付金になったことによりまして府県の財政上の負担に急激な変化を来すおそれはないというふうに考えております。
 なお、そうしたことを裏づけといたしまして考えますと、将来的な展望といたしましては、先ほど来申し上げております水田再編をきっかけにいたしましたそれぞれの地域農業の再編問題、それぞれ適地に適作をすべきであるという根本原則に立ちまして、今後とも農業の生産再編をやっていく必要がある、それをまた定着化させるべきであろうと考えております。
 以上でございます。
#70
○岡田(正)委員 次に、吉田さんと川俣さんにお伺いをいたしますが、普及事業の運営の方針の明確化についてでございます。
 今回の改正によって、普及事業の内容の刷新を図るという見地から農水大臣が普及事業に関する運営指針を策定いたしまして、都道府県はこれを基本として実施方針を大臣に協議して定めるということになっておりますが、運営方針を具体的に定めるに当たっては、これまでの普及事業にかんがみどのような内容を盛り込むことが適当であるか、お考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
#71
○吉田参考人 今後の問題につきましての具体的な御指摘でございますが、当面、現在の大臣の定める基本的な方針なり何なりというものが明定されておりません。しかしながら、これまでの経過から申し上げさせていただければ、具体的な問題は別にいたしまして、むしろ府県が申し上げる要素そのものをかなり広く取り上げていただけるというふうに考えておりまして、具体的なお答えにはなりませんが、大臣の定められる基本的な方針を受けまして府県の立場を主張してまいりたいと考えております。
#72
○川俣参考人 お答えいたします。
 この問題は、普及の側にとっては大変重要な問題だと私は専門的な点で考えておるわけです。というのは、従来普及事業は、昭和四十五年だと記憶しておりますが、国が普及事業の重点目標というものを六項目にわたって明示したわけですが、その後、全国各県の普及所を歩いてみますと、どこの県でもどこの普及所でもその重点目標を普及の課題として掲げておる。それは大変結構なことですけれども、もっと地域の中の問題あるいはその目標についての留意がなされなければ本当の地域に密着した活動はできないのではないか。
 そういう面で、運営の指針を出すことによって府県あるいは普及現場の自主性が損なわれないように、大枠というものを示すようにしていただきたい。どういう方法でどういう形で運営指針が決められるか存じませんが、この問題は現場として大変デリケートです。というのは、普及員の地域での創造的な活動というのが損なわれるきらいが、運営指針の出し方によってはあるということ。そういう面で、都道府県との協議の上に、しかも弾力的に、普及員の創造活動が損なわれないような形の運営指針を出すようにどうかお願いしたいと思う。教育や普及活動というのは、自由の幅があればあるほど活動に情熱を持ち、現地への対応が的確になるのではなかろうか。そういう面で、この問題は、普及の根本的な特色、性格から注意していただきたい、このように思っております。
 以上でございます。
#73
○岡田(正)委員 では最後に、四人の方々に全員お答えいただきたいと思うのでありますが、普及職員の資質の向上策につきまして、近年、普及員の資質及び技術水準については必ずしも農民の期待にこたえていないのではないかという声がございます。普及事業の活性化によりまして農民の要望にこたえていくために、普及職員の資質の向上にどのように取り組んでいかれるか。また、そのためには国の施策をどのように拡充していく必要があるかというお考えがございましたら、お伺いいたしたいと思います。
#74
○星参考人 お答えいたします。
 先ほども申しましたように、普及員が農家から信頼され、よき相談相手となるためには、どうしても勉強してりっぱな普及員でなければいけません。そのためには、先ほど申しましたように、まず一つは研修体系を農林省がはっきりして、カリキュラムをつくりまして、やはり農林水産大臣は責任を持って普及員の資質の向上に当たるということが一番大事だと思います。
 もう一つは、やはり私たち自身がしっかり自己研修をしまして、それを補てんする意味で研修体系を決めていただきたい。そうして責任を持って資質の向上に当たってもらいたいと考えて、私たちいま検討中であります。
#75
○堀井参考人 資質の向上ということでございますけれども、政府、そして都道府県のやる研修というのはきわめて大事だと私は思います。それの中で本当の意味の長期の研修ができて、その中から先端技術というものがわれわれ自身に吸収されていくのではないかと思いますけれども、それ以上に、私が考えるのは、やはり自己研さん、これに一定程度帰結するのではないかと思うのです。
 実際に普及員というのはそれぞれ各分野に分かれて配置されています。稲、畜産、果樹、それらのことにおいて、自分がこの分野で――やはりその地域地域にはそれぞれの課題がございます。ですから、その課題についての研修は個人の一定程度の自由裁量というものを認めてもらわないと、上からの決まった研修ということになりますと、正直なかなか情熱がわかないという部分も生じてくるわけです。それは総体としてやっていただければいいのであって、各論というのも今後はきちっとわれわれ現場においては保障していただきたい。それが本当の意味の農家の要望にこたえることになるのではないかと思います。私たち自身が、正直、農家の要望を一番よく知っているはずなんです。それらの要望にこたえる研修体系というのは、やはり今後の中においては、われわれの資質向上という意味においてはますます重要になってくるのではないかというふうに考えます。
#76
○吉田参考人 資質の向上に関連をいたしまして、普及員の技術的な反応が鈍い、あるいは農家の要請にこたえていないという点の御指摘がございました。
 しかしながら、これをいろいろ検討いたしてまいりますと、複合経営的なものの農家がかなりふえつつあります。したがいまして、専門的な分野を担当する担当部分についての回答は的確でございますが、しかし、一たん他の部分に関してはかなり的確な答えができないというふうな面で御批判なり御意見があろうかというふうに考えております。したがいまして、やはり農家に対しましては、そうした複合的な経営に対応できるようなチームワーク編成がまず必要であろうというふうにも考えておるところでございます。
 これまでにも申し上げておる点でございますが、資質向上につきまして国外研修あるいは人事交流に基づく試験研究機関での勉強の問題、あるいは四年側大学への職員の派遣、こういうふうな問題を拡充すべきであろうというふうに考えております。したがって、そうした面での配置上の問題につきまして、あるいはそうした派遣の問題につきましての国の財政的な援助があればありがたいというふうに思っております。
 以上でございます。
#77
○川俣参考人 お答えいたします。
 普及員の研修については、その資質向上ということで研修体系を抜本的に改めなければならないかと思うのです。というのは、従来はさせる研修といいますか、いわゆる与える研修に中心があったと思うのですが、やはり研修は自分自身で教育者としてあるいは普及員としてやらなければならないという側面が強かろうと思うのです。そういう面で、自主的な研修あるいは職場内の研修ということを積極的に進めていく、そういう面でのそれらを含んだ研修体系というものを再構築していかなければならないのじゃないかと思います。
 それから、職場内研修とか自己研修という場合になってきますと、その職場の管理者といいますか、普及員ならば普及所長さんのいわゆる活動の管理能力とかあるいは自己研修への動機づけといいますか、そういうような問題が必要になってくるだろうと思うのです。そういう面での研修の場づくりとか研修の動機づけのための普及所長の管理能力を高めるための研修ということをまずやらなければいけないのじゃないか、こういうふうにお願いしたいと思うのです。
 もう一つは、資質の向上ということに関連しますと、いわゆる普及員になる前の段階でございますが、先般申し上げたように現状の大学教育の中では農学はやっておりますけれども農業はやっておらないということで、農業がわからない普及員さんでは困るので、そういう面で、一万数千人の普及員がおるわけでございますから、やはり国なりが責任を持って普及員の養成のための教育機関というものを用意すべきではなかろうか。今日の大学の状況の中では、残念ながら農業の現場の技術指導者の養成というまでにはいっていないというのが大学の現状かと思うのです。そういう面で、長期的展望に立って普及員の養成機関というものは国が責任を持って解決する方向で努力をしていただきたい、そのように考えておるものであります。
 終わります。
#78
○岡田(正)委員 貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。
#79
○山崎委員長 寺前巖君。
#80
○寺前委員 どうも長時間ありがとうございます。
 もう結構いろいろな角度からお話を聞かしていただきましたので、私はまたちょっともとへ戻りまして、今日の国会の状況から見ておりますと、第二臨調が提起された問題の動向でいろいろ法の改正もなされております。そういうことから考えまして、先生方に第二臨調が提起した問題についてどうお考えなのかをちょっと聞かしていただきたいというふうに思うわけです。
 すなわち、先ほども出ましたが、昨年の七月三十日でしたか出された中に、普及事業について出ております。「普及事業については、生産性向上のための事業への重点化、生活改善普及事業の見直し等事業内容の刷新と効率化を図る。」という点が一つの内容として出ておると思うのです。それからもう一つの内容は、直接名指しではございませんが、「地方公務員に対する人件費補助は、補助対象職員が担当する事務・事業の円滑な実施を確保するための必要な措置について検討を加え、二年以内に、原則として一般財源措置に移行するとともに、新規の人件費補助は、今後、原則として行わないこととする。」主としてこの二つの側面が普及事業問題として提起された臨調の問題点であると思うのです。
 そこでまず、最初の方の「生産性向上のための事業への重点化」それから「生活改善普及事業の見直し」これをあえて提起をして普及活動の刷新と効率化を提起している、こういう見方が果たして適切なんだろうかどうかということについて、事実を踏んまえてひとつ御指導いただけたらありがたいと思います。お願いします。
#81
○星参考人 臨調の答申を私たち見ていまして、臨調の委員の方にはまことに失礼ですが、本当に日本の農業を支えている普及事業が必要か必要でないかということに非常に疑問を持ったわけであります。私たちは、農業が産業である以上、やはり技術革新、それを普及する普及教育というものが農政の基本であると考えておりました。それなのに、普及は必要ないとかあるとかいう問題が出て、最後に出たのがこの答申でありまして、生産性の向上に重点を置けというのは、これは当然だろうと思います。しかし、その前に、普及は教育的手法によって農民教育をするというのが基本でありますから、そういう点は抜けている。だから、生産性の向上をするための農民教育が普及員の基本であります。そういう意味では、私たちは、ある意味では妥当であろうが、妥当でないというふうに考えます。
 生活改善については見直す、こういうのが出ておりますが、この点についてはとんでもない。普及は生活と農業が一体になって初めて日本の農家の生活が安定するわけでありますから、そういう意味で生活改善普及事業を見直すという考え方は当たっていない、こういうふうに考えております。
 以上であります。
#82
○堀井参考人 お答えいたします。
 生産性向上というこの問題点でございますけれども、私は先ほども申し上げたのですけれども、いまの農業の中でまさに生産性のみを追うことによっていわゆるアメリカ農業とか非常に大きな規模でやるということを前提にすれば、確かにこの生産性向上というのは間違いはないかと思いますが、しかし、いま一歩農村の状態というものをよく見ていただきたいというふうに考えます。
 一人頭百ヘクタールというべらぼうな面積を日本において本当にこなすことが可能なんだろうかということに、私は率直に疑問を感じたいと思っています。実際、いま私どもが接している農家の中の実に九割がいわゆる兼業と言われる農家になっているはずなんです。そして、その中で米の生産の八五%を実に兼業農家が担っていまやっているわけでございます。それらの問題を、ただ単に生産性向上というものを兼業農家に押しつけたならば、どんどんと兼業農家の生産意欲を後退させ、ひいてはますます米の生産、食糧の生産というものが落ちていくような気がするわけでございます。
 もう一つは生活改善の見直しという問題でございますけれども、今回農林省側から出た「普及事業の刷新」という中で、生活改良普及員というものと農業改良普及員というものが一体になって現地に出て現地の問題を解決していくという方針を出されました。私は、これを高く評価したいというふうに考えます。実際にいま農家の現場においては、高齢化の問題やハウス病の問題や、いろいろな問題点が山積しているわけでございます。それらの点を農業改良普及員と生活改良普及員が手を組んでやっていってこそ、本当の意味のこれからの農村生活の向上になり得るのではないかというふうに自分は考えます。
 もう一点は、兼業等で農家の主婦や老人は非常に忙しくなっております。働かざるを得ないような状況に追い込まれております。それらの中においてきわめて余裕がなくなってきている、日常生活の中に余裕がなくなってきているというのがいまの現状ではないかと思うのです。やはり余裕がなくなるというと、人間と人間との間というのは摩擦が生じます。そして、そのことが多世代住宅といいますか、親子何代にもわたって住んでいる中におけるあつれきが生ずることになるのではないかと思うのです。いま現場では潤いを求めて、みそづくりとかそのような活動をしております。見方によっては一体何をやっているんだというふうに見られる向きもあるのではないかと私は思いますけれども、やはりそれが、農村にいままであった人間と人間との間の活力、衰えつつあるその活力を再度盛り返していく非常に大きな役割りになるのではないか、それこそが本当の意味の生活改善事業の大きな役割りになって、それで初めて農業技術、農業生産の向上というのにつながっていくのではないかというふうに考えます。
 以上です。
#83
○吉田参考人 生産性向上の問題に関連をいたしまして申し上げますが、臨調が言われている生産性の向上の問題は、一つにはスケールメリットの問題があるんだろうと思います。規模拡大というふうなことで言われますが、そうした規模拡大の問題を特定の農業者あるいは生産集団に集積をするという場合にありましても、コミュニケーションといいますか、話し合いといいますか、農家側の意識的なもの、あるいは経済的な実情というものを正確に把握しているものは、行政の組織といたしましては農業改良普及員制度以外にあるまいというふうに考えております。やはりその潤滑油といいますか、かけ橋というものが農業改良普及員に強く求められているというふうにも思われます。
 また、物の生産に関しましては、仮に高度の生産性を有する技術ができましても、それを普及徹底するという方式にかけてはやはり改良普及組織をもって行うことが最も妥当であるというふうに考えます。
 なお、生活改善の問題につきましては、衣服とか台所というふうな問題を最近におきましては超越をいたしまして、農業労働全体の中での女性の労働というものの評価、あるいは第二種兼業農家の中における主婦のありよう、そうした問題をとらえて生産集団、土地の利用集積の問題のきずなにすべきであるというふうに考えておりまして、健康管理というふうな問題ともあわせて、農村の生産計画の樹立というものを生活改良普及員を含めて検討すべき段階にあるというふうに考えております。
#84
○川俣参考人 お答えいたします。
 生産性向上とか生活改善の見直しということに対する第二次臨調の問題提起は、はなはだ残念なことだと私たちは思っておるわけです。というのは、いわゆる工業の考え方といいますか、資本の論理あるいは経済の論理といいますか、その論理をそのまま日本の農業あるいは生活問題に当てておるのではなかろうかという面で、農業の分野からすると大変問題が多かろうというふうに思っています。生産性の向上というのはどの分野でも図らなければならない問題でございまして、決して今日どうということではなかろうと思うのですが、いい意味での生産性向上というものは農業のサイドに立って考えなければならない問題ではなかろうかと思います。
 それから生活改善の見直しということについても、確かに農家の都市的生活様式の導入とか、あるいは統計上見られるような農村と都市との生活水準の格差が解消したということから生活改善普及が必要がないではないかというような発想はきわめて短絡ではなかろうか。農業が近代化し、農村が混住化したことに伴う生活問題というのが今日たくさん発生しておるわけです。いま参考人の先生方から具体的な意見がございましたが、言うならばこれからとそ農家らしい、あるいは農村らしい生活を生産との関連において考えていくという意味合いで、生活改善の必要性はまさにこれからではなかろうか、そういうふうに私は考えておるものでございます。
 終わります。
#85
○寺前委員 ありがとうございました。
 それでは、これは第二臨調の答申で、一般財源措置に移行する過程の問題として提起をしておるわけです。全体として今度の法改正が、臨調が提起している問題の、多くの方々が御批判をされておるわけですが、方向に流れていくのではないかという危惧を持っていると思うのです。その点で、危惧の焦点はここにあるということを端的に改めて御指摘いただきたいというふうに思うわけです。
#86
○星参考人 交付金制度になりまして私たち一番心配することは、やはり裏負担の問題であります。この点については、農林水産省は自治省と折衝して十六条においてしっかり裏づけをするということを確認を得ている、こういうことで私たちは了承したわけであります。したがいまして、農林水産委員会において自治省に十分その確約を得ていただきたい。それから、都道府県知事に対して、普及事業は十六条で裏負担が確認されているのだということを徹底していただきたいというふうに私は思います。
 以上であります。
#87
○堀井参考人 お答え申し上げます。
 私自身も、いま先生が申されたように、いままでの負担金というのが交付金になる、これは本法案の中においては一番のポイントだというふうに考えています。実際にまさに義務的経費というものが一定程度任意的なものに移行することは、われわれのよって立つ基盤が非常に大きく揺らぐ。言ってみれば、大舟に乗っていたのが小舟に乗りかえる、このような不安を現場では率直に言って持っております。
 以上です。
#88
○吉田参考人 一般財源化に関連をいたしました問題で先ほど来お答えがございますが、私どもも、むしろそうした問題を阻止するといいますか、そうした方向に流れることを抑制する意味合いでは、やはり交付金制度の内容の充実、実質的な裏づけというふうなものが望まれるというふうなことであろうかと思います。
 もう一つは、交付金の問題につきまして、単純に府県の人口、面積等による配分ということになりますと、普及の実態というものから交付金が遊離してくるおそれがあるという点を最も危惧いたしておるところでございます。
#89
○川俣参考人 お答えいたします。
 この交付金を機会に普及事業が縮小化されるのではないかということを大変危惧してはおりますが、どうかこの機会に普及事業の恒久的な安定化ということを考えていただきたいと思います。
#90
○寺前委員 どうもありがとうございました。
#91
○山崎委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼申し上げます。
 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)
 次回は、明十三日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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