1982/04/28 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 社会労働委員会 第8号
#1
第098回国会 社会労働委員会 第8号昭和五十八年四月二十八日(木曜日)
午前十時四十五分開議
出席委員
委員長 稲村 利幸君
理事 今井 勇君 理事 大石 千八君
理事 丹羽 雄哉君 理事 牧野 隆守君
理事 金子 みつ君 理事 森井 忠良君
理事 平石磨作太郎君
逢沢 英雄君 伊藤宗一郎君
小沢 辰男君 川田 正則君
古賀 誠君 桜井 新君
白川 勝彦君 田邉 國男君
津島 雄二君 戸沢 政方君
友納 武人君 中尾 栄一君
長野 祐也君 浜田卓二郎君
船田 元君 池端 清一君
川本 敏美君 栂野 泰二君
永井 孝信君 大橋 敏雄君
和田 耕作君 浦井 洋君
小沢 和秋君 菅 直人君
柿澤 弘治君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 林 義郎君
出席政府委員
厚生省社会局長 金田 一郎君
委員外の出席者
議 員 森井 忠良君
議 員 金子 みつ君
社会労働委員会
調査室長 石黒 善一君
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委員の異動
四月二十七日
辞任 補欠選任
古賀 誠君 石原慎太郎君
浜田卓二郎君 唐沢俊二郎君
船田 元君 江崎 真澄君
山下 徳夫君 片岡 清一君
池端 清一君 五十嵐広三君
川本 敏美君 山口 鶴男君
浦井 洋君 渡辺 貢君
小沢 和秋君 蓑輪 幸代君
同日
辞任 補欠選任
石原慎太郎君 古賀 誠君
江崎 真澄君 船田 元君
片岡 清一君 山下 徳夫君
唐沢俊二郎君 浜田卓二郎君
五十嵐広三君 池端 清一君
山口 鶴男君 川本 敏美君
蓑輪 幸代君 小沢 和秋君
渡辺 貢君 浦井 洋君
同月二十八日
辞任 補欠選任
浜田卓二郎君 桜井 新君
山下 徳夫君 川田 正則君
同日
辞任 補欠選任
川田 正則君 山下 徳夫君
桜井 新君 浜田卓二郎君
同日
理事田口一男君同日理事辞任につき、その補欠
として森井忠良君が理事に当選した。
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四月二十七日
年金の官民格差是正に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八二九号)
同(草野威君紹介)(第二八三〇号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八三一号)
障害福祉年金受給者の所得制限廃止に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八三二号)
同(草野威君紹介)(第二八三三号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八三四号)
労災年金と厚生年金等の完全併給に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八三五号)
同(草野威君紹介)(第二八三六号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八三七号)
在宅重度障害者の介護料支給に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八三八号)
同(草野威君紹介)(第二八三九号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八四〇号)
労働者災害補償保険法の改善に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八四一号)
同(草野威君紹介)(第二八四二号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八四三号)
無年金脊髄損傷者救済に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八四四号)
同(草野威君紹介)(第二八四五号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八四六号)
在宅重度障害者の暖房費に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八四七号)
同(草野威君紹介)(第二八四八号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八四九号)
重度身体障害者の雇用に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八五〇号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八五一号)
労災重度被災者の暖房費支給に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八五二号)
同(草野威君紹介)(第二八五三号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八五四号)
労災重度被災者の遺族に年金支給に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八五五号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八五六号)
労災重度被災者の終身保養所設置に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八五七号)
同(草野威君紹介)(第二八五八号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八五九号)
重度障害者の福祉手当増額に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八六〇号)
同(草野威君紹介)(第二八六一号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八六二号)
旧々労災被災者に労働者災害補償保険法適用に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八六三号)
同(草野威君紹介)(第二八六四号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八六五号)
労災年金の最低給付基礎日額引き上げに関する請願(梶山静六君紹介)(第二八六六号)
同(草野威君紹介)(第二八六七号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八六八号)
国公立病院における脊髄損傷者の治療に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八六九号)
同(草野威君紹介)(第二八七〇号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八七一号)
労災被災者の脊髄神経治療に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八七二号)
同(草野威君紹介)(第二八七三号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八七四号)
脊髄損傷治療技術の研究開発に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八七五号)
同(草野威君紹介)(第二八七六号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八七七号)
身体障害者の福祉行政改善に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八七八号)
同(草野威君紹介)(第二八七九号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八八〇号)
身体障害者家庭奉仕員の採用に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八八一号)
同(草野威君紹介)(第二八八二号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八八三号)
労災年金のスライドに関する請願(梶山静六君紹介)(第二八八四号)
同(草野威君紹介)(第二八八五号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八八六号)
健康保険・国民健康保険による付添介護人派遣に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八八七号)
同(草野威君紹介)(第二八八八号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八八九号)
年金制度の改善に関する請願(梶山静六君紹介)(第二八九〇号)
同(草野威君紹介)(第二八九一号)
同(佐藤誼君紹介)(第二八九二号)
民間保育事業振興に関する請願(枝村要作君紹介)(第二八九三号)
優生保護法の一部改正反対に関する請願(枝村要作君紹介)(第二八九四号)
同(小川国彦君紹介)(第二八九五号)
同(栂野泰二君紹介)(第二八九六号)
腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(永井孝信君紹介)(第二八九七号)
原子爆弾被爆者等の援護法制定に関する請願(阿部助哉君紹介)(第二八九八号)
重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(砂田重民君紹介)(第二九四一号)
同(関谷勝嗣君紹介)(第二九四二号)
同(田中龍夫君紹介)(第二九四三号)
国立腎センター設立に関する請願(砂田重民君紹介)(第二九四四号)
ハイヤー・タクシー等の安全輸送確立のため労働条件改善等に関する請願(伊藤茂君紹介)(第二九四五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
労働基準法の一部を改正する法律案(森井忠良君外三名提出、衆法第七号)
母子保健法、健康保険法等の一部を改正する法律案(金子みつ君外七名提出、衆法第六号)
厚生関係の基本施策に関する件
社会福祉事業法の一部を改正する法律案起草の件
社会福祉協議会に関する件
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#2
○稲村委員長 これより会議を開きます。この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。
理事田口一男君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○稲村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○稲村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。それでは、理事に森井忠良君を指名いたします。
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#5
○稲村委員長 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。社会福祉事業法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
本件につきましては、先般来各会派間において御協議いただき、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしてございます。
その起草案の趣旨及び内容について、委員長から簡単に御説明申し上げます。
今日、人口の急速な高齢化、核家族化等の進行により、福祉ニーズの増大と多様化が顕著となり、これへの対応が喫緊の課題となっており、地域社会を基盤とする福祉サービスの中核的役割を担う市町村社会福祉協議会の重要性がますます高まっております。
このため、本案は、市町村社会福祉協議会の法的位置づけを明確にし、地域福祉の推進を図ろうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
第一に、都道府県社会福祉協議会は、現行の社会福祉事業等を経営する者の過半数参加に加えて、市町村社会福祉協議会の過半数が参加するものでなければならないものとし、その事業として、現行の調査、総合的企画、連絡調整及び助成、普及及び宣伝の四事業のほかに、市町村社会福祉協議会の相互の連絡及び事業の調整を加えるものとすること。
第二に、市町村社会福祉協議会の規定を新たに設け、市町村社会福祉協議会は、当該市町村の区域内において社会福祉事業等を経営する者の過半数が参加するものでなければならないものとし、その事業として、現行の都道府県社会福祉協議会の事業と同様の四事業を行うものとすること。
第三に、この法律は、昭和五十八年十月一日から施行すること。
以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。
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社会福祉事業法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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#6
○稲村委員長 採決いたします。お手元に配付いたしております草案を社会福祉事業法の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#7
○稲村委員長 起立総員。よって、さよう決しました。なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○稲村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。────◇─────
#9
○稲村委員長 この際、金子みつ君外六名より、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合及び柿澤弘治君共同提案に係る社会福祉協議会に関する件について決議されたいとの動議が提出されております。本動議を議題といたします。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。金子みつ君。
#10
○金子(み)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合及び柿澤弘治君を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
社会福祉協議会に関する件(案)
人口の高齢化、核家族化等の進行により、福祉ニーズの増大とその多様化が顕著となり、このため、地域社会を基盤とする福祉サービスの総合的な取組みとして「地域福祉」が近年特に強調されている。
このため、地域福祉を推進していく上において社会福祉協議会が果たす役割の重要性にかんがみ、社会福祉協議会が地域福祉の推進に貢献しうるようその体制の確立に努める必要がある。
よつて、政府は、次の事項に配意すべきである。
一 社会福祉協議会には、地域住民の意向を的確に反映することができるよう広く住民の参加を求めること。
二 社会福祉協議会は、更に組織の強化、運営の適正化を図り、その活動の一層の充実に努めること。
三 政府は、社会福祉協議会の民間活動としての自主性を尊重しつつ、その活動の基盤の強化に努めること。
四 地方公共団体は、市町村社会福祉協議会の制度化に伴い、一層地域福祉の推進に努めること。
右決議する。
以上であります。
何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
#11
○稲村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#12
○稲村委員長 起立総員。よって、金子みつ君外六名提出の動議のごとく決議することに決しました。ただいまの決議に対し、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。林厚生大臣。
#13
○林国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を尊重し、社会福祉協議会の一層の発展のため努力してまいる所存でございます。#14
○稲村委員長 なお、本決議の議長に対する報告及び関係方面への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○稲村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。────◇─────
#16
○稲村委員長 森井忠良君外三名提出、労働基準法の一部を改正する法律案及び金子みつ君外七名提出、母子保健法、健康保険法等の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。森井忠良君。─────────────
労働基準法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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#17
○森井議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。近年、わが国の経済は高度成長を遂げ、工業生産力はヨーロッパの先進諸国を追い抜き、アメリカに次いで資本主義国の中で第二の地位を占めるに至りました。しかしながら、労働条件においては、なかんづく婦人労働者の労働条件においては、欧米の先進諸国に比べて著しく立ちおくれているのが実態であります。
特に、解雇、昇進、昇給等々の労働条件において、わが国では婦人が大きな差別を受けております。この性による差別は、解消される傾向にあるどころか、雇用の不安定化とともにむしろ拡大される傾向にあります。
たとえば結婚した婦人や、子供を産んだ婦人が、事実上差別的に解雇されたり、定年退職年齢を男子より低く決められているようなことが当然のごとくいまなお行われているのであります。
憲法は、第十四条において、すべての国民は法のもとに平等であって、人種、信条、社会的身分とともに、性別により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない、と定めております。
ところが、現行労働基準法においては、第三条で、使用者は、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取り扱いをしてはならないと定めながら、性別による差別の禁止はここから省かれ、第四条において、賃金についてのみ男女の差別禁止が定められておるのであります。このままでは解雇、昇進等における性差別をなくすることは不可能でありましょう。
また、合理化が進められ、労働の密度が高められ、神経も一層疲労させられる結果、早産、流産、死産等々の異常出産が多発し、日本では特に周産期死亡の後期死産率は世界第一位、妊産婦死亡率は第二位を占めております。
母性をよりよく保護し、健康なる子供の出産と成長を保障することの重要性が一層増しているのであります。このようなすべての国民の健康にとって必要不可欠な母性保護が、性差別の範疇に入る性質のものでないことは言うまでもありません。
世界的に見ても、国際労働機関、すなわちILOの第百十一号条約では、雇用及び職業についての性差別が禁止され、その第五号では、「国際労働機関の総会が採択した他の条約又は勧告で定める保護又は援助に関する特別の措置は、差別待遇とみなしてはならない」と規定しております。ILO第百三号条約では、母性保護が具体的に定められ、第九十五号勧告では、より進んだ母性保護の内容が勧告されているのであります。
日本社会党は、このような状況にかんがみ、労働条件における性差別をなくするとともに、母性保護を推進するために、労働基準法の改正を提案する次第であります。
次に、この改正案の内容について御説明申し上げます。
第一は、この法律の目的であります。
この法律は、すべての労働条件について性別による差別的取扱いを禁止するとともに、異常出産の多発等にかんがみ、母性保護の推進を図ることを目的としております。
第二は、性差別の禁止についてであります。
この法律は、現行の第三条に性別を加えることにより、賃金のみならず、すべての労働条件について性別を理由として差別的取り扱いをしてはならないものとすることといたしました。したがって、男女同一賃金の原則を定めた第四条は削除することといたしました。
第三は母性保護についてであります。
その一は、現行第十九条を改正し、使用者は妊娠中の女子及び産後一年を経過しない女子を解雇してはならないものといたしました。
その二は、現行第六十一条及び第六十二条を改正し、妊娠中の女子または産後一年を経過しない女子について、労働協定による時間外労働及び深夜労働を禁止することといたしました。
その三は、現行第六十五条を改正し、産前産後の休暇の期間をそれぞれ八週間(二人以上の胎児に係る妊娠の場合には十週間)とすることといたしました。なお、この間、健康保険法の改正により、健康保険からの六割分に国庫から四割分を加えて、賃金の十割に相当する給付を保障することといたします。
また、産前産後六週間の期間については、女子の請求による場合でも、就労を認めないものとすることといたしました。
また、使用者は、妊娠中の女子が請求した場合には、その者の労働時間を短縮しなければならないものといたしました。
その四は、妊娠に起因するつわり等の生理的障害のための休暇を設け、その障害により就労が困難な女子が休暇を請求した場合には、使用者は、その間、その者を就業させてはならないものとすることといたしました。なお、その休業の間は、二週間を限り、産前産後の場合と同様にして、賃金の十割に相当する給付を保障することといたしました。
その五は、妊娠中は、産後一年以内の女子が、母子保健法による保健指導または健康診査を受けるために必要な休暇を請求したときは、その者に休暇を与えなくてはならないことといたしました。なお、その休暇については、一日を限り、母子保健法の改正により賃金分の給付を保障することといたします。
その六は、現行第六十六条を改正して、育児時間は一日二回、おのおの少なくとも一時間与えなければならないものとすることといたしました。なお、その時間は労働したものとみなすことといたしました。
その七は、現行第六十七条を改正し、生理日の女子が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならないものとすることといたしました。なお、その期間は、二日を限り有給とすることといたしました。
その八は、看護休業を設け、労働者が、配偶者や子や父母等の負傷または疾病につき、その看護のための休業を請求した場合には、使用者は拒んではならないものとすることといたしました。なお、同時に健康保険法を改正し、その期間、家族看護手当金として、一日につき標準報酬日額の六割に相当する金額を、同一の疾病または負傷に関し、十四日を限度として労働者に支給することといたしております。
以上、この法律案の提案理由及びその内容について御説明申し上げました。
早速御審議の上、速やかに御可欠あらんことをお願い申し上げます。
#18
○稲村委員長 次に、金子みつ君。─────────────
母子保健法、健康保険法等の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
─────────────
#19
○金子(み)議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、母子保健法、健康保険法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。母性を心身ともに健全な状態に保つことは、人類の永遠の存続と発展を保障する上で、国の最も基本的な事業と言わなければなりません。この観点からわが国の関連制度を見直してみますと、諸外国ではすでに解決済みになっている基本的事項の立ちおくれが、少なくとも二つあります。
その第一は、妊娠及び出産に関しては、疾病にかかわる事例を除いては、保険給付の対象にならず、原側として自己負担だということであります。女性は、出産によって、児童の出生とその育成という重要な社会的役割りを担うことになるわけでありますから、出産は、単なる個人の責任ではなく、母と子の二つの生命にかかわる厳粛な社会的機能と言うべきであります。したがって、妊娠及び出産に関しては、公的責務を果たすことは当然の理であると考えます。現に社会保障の最低基準を定めたILO百二号条約においては、出産医療としてこれを保障し、本人に経済的負担を課さないことを規定しています。
わが国においては、出産は、公費の保障がないばかりでなく、健康保険の医療給付としても扱わず、出産費として現金給付を行っていますが、加入している保険の種類によって十五万円ないし十万円とその金額の格差があるのが現状であります。したがって、このような出産に関する給付の不公正、不合理は、自由料金と相まって大きな自己負担として問題になっています。都会では、すでに三十万円を超える出産費用が常態なのであります。そこで本案においては、健康保険法、船員保険法、日雇労働者健康保険法及び国民健康保険法を改正し、被保険者の出産に関しては、現物給付を行うものとしたわけであります。
第二の問題点は、母性保護の見地に立つ健康管理の体制が、ゼロに等しいことであります。新生児から老人に至るまで、法律で保障された健康診査がないのは、就業していない婦人だけという現状はすでに周知の通りであります。
わが国の妊産婦死亡率は主要国中常にトップクラスの高率を示しておりますし、また周産期死亡率、特に妊娠後期死産率は実に世界第一位を示しております。これらは、わが国における妊産婦保健管理の徹底が、緊急の課題となっていることをよくあらわしていると言わねばなりません。
母性の健康は、健康な児童を生み育てる社会的役割りの上からも放置できない重大問題であり、一家の主婦の健康は、その家庭の安らぎの基礎でもあることを考えるとき、まず、欠如している健康診査の制度を緊急に確立する必要があります。このため、本案においては、母子保健法を改正し、満十五歳を超える婦人で、他の法令すなわち学校保健法及び労働安全衛生法並に老人福祉法等による健康診断又は四十歳以上を対象とする成人病健康診査を受けない者に対し、都道府県知事は、毎年健康診査を行わなければならないものとするとともに、妊産婦に対しても、少なくとも妊娠中は毎月、出産後は一回の健康診査を行わなければならないことといたしました。
第三の問題点は、家族に病気や障害のある者を抱えていると、職場と家庭を両立しにくいということです。よく女の老後は三回来ると言われます。老親の世話、夫の老後そして自分の番となります。これでは、婦人の労働参加や社会進出のいとまがないはかりでなく、母性の健康が損なわれることにもなりましょう。
この問題を解決するには、一方で介護者派遣制度や訪問看護制度の確立を目指すとともに、他方で看護休業及び家族看護手当金の制度化が必要なのであります。本案は、これらのうち家族看護手当金の支給をまず法定しようとするものであります。ただし、男女共同社会の立場から、その支給は男女の別なく被保険者を対象としております。
次に、本案の概要を御紹介いたします。
まず、母子保健法については、主として次の諸点を改正することにいたしました。
@ 都道府県知事は満十五歳を超える女子で他の法令による健康診断又は健康診査を受けないものに対し、毎年健康診査を行わなければならないものとすること。
A 都道府県知事は、妊産婦に対し、少なくとも、妊娠中十回、出産後一回の健康診査を行わなければならないものとすること。
B 都道府県知事は、妊娠もしくは出産またはこれらに起因する疾病につき医療保険を受けた者に対し、その自己負担分(初診、入院時一部負担金を含む。)に相当する額を出産医療費として支給するものとすること。
C @及びAの健康診査に要する費用は、国が三分の一、都道府県又は市が三分の二をそれぞれ負担すること。
D Bの出産医療費に要する費用は、国が十分の八、都道府県又は市が十分の二をそれぞれ負担すること。
E 健康保険法については、主として次の諸点を改正すること。
(ア)被保険者の妊娠及び出産に関し、療養の給付(現物給付)を行うものとすること。
(イ)療養の給付の範囲に、助産を加えること。
(ウ)妊娠及び出産に関する療養の給付を担当する保険医療機関に、都道府県知事が指定した助産所を加えること。
(エ)保険医療機関において健康保険の助産に従事する助産婦は、都道府県知事の登録を受けた助産婦(保険助産婦)でなければならないものとすること。
(オ)保険医療機関たる助産所又は保険助産婦に対する厚生大臣又は都道府県知事の監督は、現行の保険医療機関または保険医に対する監督と同様のものとすること。
(カ)被保険者の資格を喪失した際妊娠または出産に関し療養の給付を受けている者は、継続して同一保険者から当該療養の給付を受けることができるものとすること。
(キ)被扶養者が妊娠及び出産に関し、療養を受けたときは、その費用の百分の八十に相当する額を支給するものとすること。
(ク)出産費及び配偶者出産費の支給制度は廃止するものとすること。
なお、船員保険法、日雇労働者健康保険法及び国民健康保険法についても、健康保険法と同様の改正を行うこととしております。
(ケ)被扶養者の疾病又は負傷の看護のため、被保険者が休業する場合は、家族看護手当金として、標準報酬日額の六割を十四日を限度として支給するものとすること。
以上が、本案を提案する理由および本案の主な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、委員各位の御賛同を賜りますよう心からお願い申し上げる次第であります。(拍手)
#20
○稲村委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。次回は、来る五月十二日木曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時七分散会