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1982/02/09 第98回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第098回国会 大蔵委員会 第2号
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1982/02/09 第98回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第098回国会 大蔵委員会 第2号

#1
第098回国会 大蔵委員会 第2号
昭和五十八年二月九日(水曜日)委員長の指名で
、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。
 税制及び税の執行に関する小委員
      麻生 太郎君    今枝 敬雄君
      大原 一三君    木村武千代君
      笹山 登生君    椎名 素夫君
      白川 勝彦君    平沼 赳夫君
      柳沢 伯夫君    上田 卓三君
      塚田 庄平君    戸田 菊雄君
      正木 良明君    玉置 一弥君
      正森 成二君    小杉  隆君
 税制及び税の執行に関する小委員長
                大原 一三君
 金融及び証券に関する小委員
      大原 一三君    熊川 次男君
      笹山 登生君    塩川正十郎君
      中西 啓介君    平泉  渉君
      平沼 赳夫君    森  喜朗君
      森田  一君    広瀬 秀吉君
      堀  昌雄君    武藤 山治君
      柴田  弘君    米沢  隆君
      蓑輪 幸代君    小杉  隆君
 金融及び証券に関する小委員長 中西 啓介君
 財政制度に関する小委員
      小泉純一郎君    椎名 素夫君
      中西 啓介君    中村正三郎君
      平泉  渉君    毛利 松平君
      森田  一君    柳沢 伯夫君
      与謝野 馨君    阿部 助哉君
      伊藤  茂君    野口 幸一君
      柴田  弘君    米沢  隆君
      蓑輪 幸代君    小杉  隆君
 財政制度に関する小委員長   中村正三郎君
 金融機関の週休二日制に関する小委員
      麻生 太郎君    今枝 敬雄君
      粕谷  茂君    熊川 次男君
      白川 勝彦君    中村正三郎君
      藤井 勝志君    山崎武三郎君
      与謝野 馨君    伊藤  茂君
      塚田 庄平君    野口 幸一君
      鳥居 一雄君    玉置 一弥君
      正森 成二君    小杉  隆君
 金融機関の週休二日制に関する小委員長
                粕谷  茂君
──────────────────────
昭和五十八年二月九日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 森  美秀君
   理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君
   理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君
   理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君
   理事 鳥居 一雄君 理事 米沢  隆君
      熊川 次男君    小泉純一郎君
      笹山 登生君    椎名 素夫君
      塩川正十郎君    平泉  渉君
      藤井 勝志君    毛利 松平君
      森  喜朗君    森田  一君
      柳沢 伯夫君    山崎武三郎君
      与謝野 馨君    阿部 助哉君
      上田 卓三君    塚田 庄平君
      戸田 菊雄君    堀  昌雄君
      柴田  弘君    玉置 一弥君
      正森 成二君    蓑輪 幸代君
      小杉  隆君
 出席国務大臣
        大 蔵 大 臣 竹下  登君
 出席政府委員
        大蔵政務次官  塚原 俊平君
        大蔵大臣官房審
        議官      吉田 正輝君
        大蔵省主計局次
        長       窪田  弘君
        大蔵省主税局長 梅澤 節男君
        大蔵省理財局長 加藤 隆司君
        大蔵省銀行局長 宮本 保孝君
        大蔵省国際金融
        局長      大場 智満君
        国税庁次長   酒井 健三君
        国税庁直税部長 角 晨一郎君
 委員外の出席者
        大蔵委員会調査
        室長      大内  宏君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 国の会計、税制及び金融に関する件(財政金融の基本施策)
     ────◇─────
#2
○森委員長 これより会議を開きます。
 国の会計、税制及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、財政金融の基本施策について、竹下大蔵大臣より所信の説明を求めます。竹下大蔵大臣。
#3
○竹下国務大臣 今後における財政金融政策につきましては、先般の財政演説において申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願いする次第であります。
 わが国経済は、国民生活安定の基本である物価がきわめて落ちついているとともに、毎年三%以上の成長を遂げ、現在も、個人消費に支えられた内需中心の成長に移行し、諸外国と比べて格段の実績を示しております。しかしながら、世界経済の回復のおくれから、輸出の減少が見られ、生産・出荷も伸び悩むなど、経済・社会構造の変化の中で厳しい対応が迫られている分野も見られます。このような状況に対応して、政府は、昨年、総合経済対策を決定し、その着実な実施に努めているところであります。
 国内金融面では、金融緩和基調のもとで、昨年十二月以降二回にわたり長期金利の引き下げが実施されたところであり、今後の景気回復の明るい材料になるものと考えられます。
 世界経済は、インフレの鎮静化などを背景に、徐々に回復するものと見られ、日本経済も、内需を中心とした自律的な回復の道を歩んでいくものと期待しております。
 今後とも、経済情勢を見守りつつ、適切な財政金融政策の運営を行ってまいる所存であります。
 国際協調のもとで調和のある対外経済関係を形成することは、自由貿易に多くを依存するわが国の安定と繁栄のための不可欠の条件であります。
 政府は、一昨年以来二度にわたり、関税率の撤廃・引き下げ、輸入検査手続の改善等を内容とする市場開放対策を決定し、着実に実施してまいりました。
 さらに、わが国の市場開放を一層推進するとの見地から、今回、新たな対外経済対策を決定し、欧米の関心が強い、たばこ、チョコレート、ビスケット等の関税率の思い切った引き下げ、輸入検査手続の一層の改善措置等を行うことといたしました。これらの措置が着実に実施され、自由貿易体制の維持強化に資することを強く期待するものであります。
 債務累積問題に端を発する国際金融不安の問題につきましては、債務国、債権国、IMF等がそれぞれ適切に対応することによって、これを回避できるという共通の認識が形成されつつあります。また、今回の十カ国蔵相会議において、IMFの資金基盤の強化の問題につき大きな前進が見られましたことは、国際金融の安定に貢献するものと考えます。
 次に、財政改革について申し述べます。
 わが国の国債残高は約百兆円に達し、経済全体が比較的良好な中で、財政の困難が際立っております。
 財政の立て直しは、単に財政赤字の解消にとどまるものではありません。それは、社会・経済の進展に合わせ、歳出・歳入構造の見直しを行うことにより、新しい時代の要請に即した財政の対応力を回復する財政改革でなければなりません。
 このためには、まず歳出面におきまして、現下の諸情勢と将来への展望を踏まえ、国、地方、企業や家庭の役割分担など行財政の守備範囲を見直し、歳出の徹底した洗い直し、一層の合理化を行うことであります。また、歳入面におきましても、社会・経済構造の変化に対応して、歳入構造の合理化、適正化に努めるとともに、行政サービスの受益と負担のあり方という観点から、基本的見直しを行う必要があります。このような方針のもとに、特例公債依存体質からの脱却とさらには公債依存度の引き下げに努め、財政の対応力の回復を図ってまいる所存であります。
 内外経済情勢は今後ともなおきわめて流動的なものと考えられ、財政改革への道は険しく容易ならざるものがあります。しかし、私は以上のような考えに立ち、国民の真の理解と協力を得つつ、財政改革を進めていく所存であります。
 このような観点から、昭和五十八年度予算におきましては、まずもって前年度より一段と厳しい歳出の削減を図りました。
 概算要求の段階におきましては、画期的なマイナスシーリングを採用し、各省庁に対して、所管予算の厳しい見直しを求めました。その後の予算編成に当たりましては、聖域を設けることなく、並み並みならぬ決意をもって徹底した歳出の削減を行いました。この結果、一般歳出の規模は三十二兆六千百九十五億円と前年度を下回るものとなっておりますが、これは昭和三十年度以来のことであります。
 補助金等につきましては、すべてこれを洗い直し、従来にも増して積極的に整理合理化を行うことといたしました。
 また、食糧管理費の節減合理化、医療費の適正化、国鉄経営の合理化等を一層推進したところであります。
 これらの結果、一般会計予算規模は、前年度当初予算に比べ一・四%増の五十兆三千七百九十六億円となっております。国債整理基金への繰り戻し額を除いた実質的な一般会計予算規模は、対前年度三・一%のマイナスとなっているのであります。
 このように、昭和五十八年度予算は一段と厳しい財政事情のもとにありますが、その中にあって、中長期的観点から充実を図る必要があるものや真に恵まれない人々に対する施策等につきましては、特に配慮いたしました。
 歳入面におきましては、きわめて厳しい財政事情にかんがみ、特別会計、特殊法人からの一般会計納付、たばこの小売定価の改定等を実施することにより、税外収入について格段の増収努力を行うこととしております。
 また、最近の社会経済情勢にかんがみ、税負担の一層の公平化、適正化を図るとの観点から、租税特別措置の整理合理化等を推進することといたしました。一方、中小企業の基盤強化、住宅建設の促進等に資するため、所要の税制上の措置を講ずることとしております。
 なお、税の執行につきましては、国民の信頼と協力を得て、今後とも一層、適正・公平な税務行政を実施するよう、努力してまいる所存であります。
 公債につきましては、さきに申し述べました歳出歳入両面の努力により、その発行予定額を前年度補正後予算より一兆円減額し、十三兆三千四百五十億円といたしました。その内訳は、建設公債六兆三千六百五十億円、特例公債六兆九千八百億円となっております。この結果、公債依存度は、二六・五%となっております。
 財政投融資計画につきましては、これまでになく厳しい原資事情にかんがみ、対象機関の事業内容や融資対象を厳しく見直し、真に緊要な事業に重点化を図ることにより、その規模を抑制する一方、民間資金の活用を図り、対象機関の円滑な事業執行の確保に配慮したところであります。
 この結果、昭和五十八年度の財政投融資計画の規模は、二十兆七千二十九億円となり、前年度当初計画に比べ二・〇%の増となっております。
 以上、財政金融政策に関する私の所見の一端を申し述べました。
 本国会に提出し御審議をお願いすることを予定しております大蔵省関係の法律案は、昭和五十八年度予算に関連するもの八件、その他一件、合計九件であります。それぞれの内容につきましては逐次御説明することとなりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第であります。(拍手)
#4
○森委員長 以上で説明は終わりました。
    ─────────────
#5
○森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
#6
○伊藤(茂)委員 ただいま伺いました大臣の所信表明に関連して、幾つかお伺いをいたします。
 竹下さん、今度は二度目の大蔵大臣の就任でありまして、たしかこの前の大蔵大臣竹下さんの当時には、大臣が財政再建元年前夜まではやれたのじゃないかというふうなことを伺った記憶がございますが、この前が財政再建前夜であったとすれば、今回の仕事をめぐる状況は、やみはより深く、日暮れて道遠しといいますか、より厳しい状況になっているわけでありまして、重大な時局の中で、どのように国民の理解の得られるような前途に光を照らしていくのか、重大な職責を懸命に果たしていただきたいと思います。また、ひとつお願いでありますが、いままで本会議や予算委員会の大臣の答弁や御発言などを伺っておりますけれども、やはり国民の多くが懸念をし心配をしている今日の重大な情勢でございますから、いままでの財政史にある名大蔵大臣のように国民に向けて前途を明確に述べていく、そういう構えを特に所管であるわが大蔵委員会ではお願いをしたいと思います。大蔵大臣と大蔵委員会の議論の中で、そういう方向にぜひお願いをしたいと思います。前の大臣はわかりやすく言うミッチー節ということでありましたが、そういう意味での国民にわかる竹下節で論議をしてもらうように要望しておきたいと思います。
 激励と要望はその程度にいたしまして、現下の最大の問題の財政再建、いま財政改革という言葉を使われましたが、基本認識をまず伺いたいわけであります。
 言うならば、今日の財政状況をどうしていくのかというターゲットの置き方という問題ではないだろうかと思います。いままでは赤字公債を五十九年までにゼロにするという、赤字公債をいつゼ口にするのかということが最大のテーゼとなって財政再建が論じられてきたというわけでありますが、ただいまの大臣の所信表明あるいはすでに提出をされております大蔵省の「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」などを読みますと、変わっているような感じがいたします。一体、それがどういうことなのかという基本認識をまず伺いたいわけであります。
 いまの大臣の所信表明の中でも「財政の立て直しは、単に財政赤字の解消にとどまるものではありません。」云々というお言葉がございましたし、それから大蔵省の出した「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」、この中でも「新たな時代に適合した財政とするようその改革を図り、もって特例公債依存体質からの脱却」という言葉が書かれております。また、たまたま先般ファイナンスを読んでおりましたら、大蔵大臣の年頭の言葉が載っておりまして、「「勇気」と「希望」をもって」という表題で、言葉は大変結構でございますけれども、その中身を見ますと「財政再建は、単に「赤字をなくす」といった消極的なものではなく、より積極的に将来の日本の発展の基礎を築くものでなければならないと考える次第です。」という大臣の言葉が書いてございました。
 そこで私は伺いたいのですが、従来の赤字公債ゼロということをテーゼにした財政再建ということから、一体どのようにターゲットが変わったのか、財政改革というか再建というか、その目標の姿というものを一体どういうことに置かれて考えておられるのか、何をもって再建と言い改革と言うのか、それがわからなければ結局何もわからぬわけですから、まあ早期に従来方式の財政再建ができなくなったから、ここでその目標は捨てて、従来の目標は不可能になったのでそれを捨てて、美辞麗句は並べてあるが、結局財政再建放棄宣言みたいなことになるのではないかというふうにも受け取らざるを得ないと思うわけでありまして、どのような姿を再建、改革と考えているのか、そのターゲットをどう置くのか、その辺の基本的認識をまずお伺いいたします。
#7
○竹下国務大臣 確かに、いま伊藤委員おっしゃいましたように、私どもも、この財政再建そして財政改革という言葉そのものを使うに当たりまして、その言葉を変えて、もって目標を延期ないしはギブアップをして、そして言葉上の問題として対応するではないかという批判に対して、最も注意しなければならぬというふうに考えたわけでございます。
 したがって、五十四年以後、五十九年度特別公債依存体質からの脱却を目標にいたしまして財政再建を推進してきました。すなわち歳出につきましては、高度成長時代の惰性をぬぐい去って、これを極力抑制して、一般歳出の伸び率等から見ますならば、この成果はそれなりに上がってきたという評価はしなければならぬと私は思っております。そうして歳入についてもまた見直しを行ってきた。
 ところが、財政を取り巻く環境は一段と厳しさを加えてきておりますが、今後とも財政の対応力の回復のため、きわめて流動的な経済情勢を勘案しながら、財政改革という考え方に立って、社会経済情勢の進展に即応するよう歳出歳入構造自体を見直して、もって特例公債依存体質から脱却と、さらには公債依存度の引き下げに努めてまいりたい。
 したがって、いずれも、財政再建にいたしましても財政改革にいたしても、将来に備えた財政の対応力を回復するというものを目指したということではございます。しかし、いまも御指摘がございましたように、言ってみれば、従来五十九年度赤字国債脱却という一つのターゲットを設けて、いろいろ歳出歳入の構造にまで踏み込んでまいりましたが、これからは歳出歳入そのものの構造にまで踏み込んで、さらにそれに一歩を進めていこうというのが財政改革であるというふうに御理解いただければ幸いであります。
#8
○伊藤(茂)委員 大蔵大臣は将来数人のニューリーダーのうちの一人というふうに言われているわけでありますけれども、私は、そういう将来の展望を持った、しかもこの重大な時局の大蔵大臣としては物足りない、それだけではわからぬと思うのでありまして、要するに、私どもも単なる収支論だけで一体財政再建を論じていいのかということはかねがね考えてまいりました。構造的にどう変えていくのかということであろうと思います。
 構造的にどう変えるのかということになれば、将来を展望する大臣であるとすれば、これから、たとえば五年後十年後一体日本の社会はどう変わっていくのか、経済構造もどう変わっていくのか。そういう中で、どういう価値観というのか目標が求められるのか。大変な財政収支あるいは国債の累積があるわけでありますが、そういう時代の中で安定した構造というものをどういう形でつくるのかというふうな、国民に将来を問いかけるあるいは訴えるという形がなければ、国民的な合意は形成されないと思うのでありまして、私どもは、それは公平であり分権であり福祉であり平和であるという立場からの構造的な財政構造の改革ということを考えているわけでありますが、明快にそれらの方向、ここにあるお役人のつくった原稿ではなくて、リーダーとしての、あるいは現下の大蔵大臣としてのそういう考え方、そういう気持ちを私はまず伺いたいと思ったのでありますが、重ねていかがでございましょうか。
#9
○竹下国務大臣 これは、私も最近つくづくと感じますのは、かつてわれわれが国づくりのターゲットとして目標を定めておりました、ヨーロッパを追い越そうとかあるいはアメリカに追いつこうとか、そういう一つのターゲットが私は存在しておったと思うわけであります。
 しかし、いまいろいろな数値を見てみますと、その目標はそれなりに経済の問題から見れば達成したではないか。むしろ私は、いまその域を脱して、ある意味においては先進国病とかあるいは具体的にイギリス病とかいう言葉もございますが、ああいう国にならないために、まずぜい肉を落とし、そしてまさに、今日まで押し上げてきたエネルギーを内的な方向に向けることによって新しく生み出される価値観に対応するというような国づくりというものを念頭に置くべきではないか。言ってみれば、あのような国になりたいと言っておったターゲットが、いまや、あのような国になってはならないという、置きかえられたターゲットというふうに認識すべきものではないか、こういう感じを持っております。
#10
○伊藤(茂)委員 その辺は当委員会の大きな問題だと思いますから、きようはその程度にしまして、さまざまの多面的な議論を質問をしてまいりたいと思います。
 いままでの議論の中で、本会議や予算委員会の議論を通じて、もう一つ私どもよくわからないのは、計画、展望、具体的にどういうプログラム、いつそれが提起されるのかということがあいまいに過ごされてきているのではないだろうかという気がしてならないわけであります。
 たしか竹下大臣は、昨年暮れ前国会のときに、財政再建大綱の名で新しい財政再建の指針をどう出していくのかという観点の御発言や御議論があったというふうに記憶をいたしているわけであります。確かに今日の状況でありますから、目の前二年か三年のうちにどうというのではない、やや数年というのか中長期的に構えた、多くの国民に御理解の得られる、しかも経済も財政も税制も総体的に含めて一体どう持っていくのかという角度からの計画が出されなければならないときというふうに思うわけであります。
 ところが、これはあなたに言うわけではありませんが、総理の言われているところでは、計画ではなく展望という言葉をしばしば使われている。伸び伸びと、社会主義の国のようなかた苦しい計画ではなくと言われているわけでありますが、西欧諸国でも、国民にお約束をするさまざまな努力をした計画がつくられて、努力をされているというわけでありまして、そんなこと言ったら、そういう計画を懸命につくっている国は全部社会主義の国かというふうに私も思いますし、あるいはまた、後の見通しが目下はないわけでありますから、伸び伸びとというのは、何か老朽化したゴムバンドみたいに伸びちゃったきりどうにもならぬというふうな締まりがない状態の危険性の方をむしろ感ずるわけでありまして、いま大事なことは、いつ、どのようにして見通しをはっきり国民に示せる計画を出すのかということが、これは政府としても国会の議論としても、国民に対する責任ではないだろうかというふうに思うわけであります。
 ところが、この大蔵省の出した基本的考え方を見てみますと、私は、一体こんな文章をよくもつくれたもんだということを実は感ずるわけでありまして、その進め方、これからの方向のことでありますけれども、「できるだけ早期に、できうれば数年を目処(めど)に、その達成を図ることが望ましいが、」「具体的な検討を進める。」こういう文章であります。へっぴり腰というよりも、まるで気魄がないという意味合いではないだろうか。いま大事なことは、やはり何とかして明確な将来性を皆さんの前に明らかにできるように懸命の努力をするという気魄と姿勢、その内容ではないだろうかと思うわけであります。
 私は、いままでの報道で伺っている議論でもそこはいかがかと思うわけでありまして、率直に大臣に答えていただきたいのですが、歳入委員会、また税法、財政法に責任を持つ当委員会の主管関係大臣として、明確にお答え願いたいのでありますが、そういう財政再建、財政改革といいますか、その方向、骨格、主要な骨組みの目標、いますぐできませんから、その目標をどう肉づけをしていくのか、経済動向もいろいろ不確定なところがございますから、一定部分はローリングで見直していくということも当然あっていいだろうと私は思うわけでありますが、そういうことを、ほかとは違う当委員会でありますから、ぜひひとつ明らかにしてもらいたい。少なくとも、いつそういうものを出すのですか。
 何かきょうの新聞を読んでおりましたら、大変率直に見出しが書いてありましたが、竹下さんの写真が載って、「増税じわじわムード作り」「歯切れ悪く 選挙後に狙い 具体論は霧の中」うまいことを言っているなと私は新聞を見て思いましたが、まあそういうふうに受け取られているんではないだろうか。私は、少なくともそれが大臣のねらいではないだろうというふうに良識を持って推測をいたしているわけでありまして、そういうことからいいましたら、そういう骨格というものをどうお考えか、率直に語っていただきたい。国政レベルの選挙も予想されるわけでありますけれども、少なくとも今国会、選挙の前に国民に明らかにする、それをしないでおいて、選挙に勝ったら国民をやみ討ちにするというようなことでは、これは議会のあり方全体の不信を買うということではないだろうか、ぜひ率直に語っていただきたいと思います。
#11
○竹下国務大臣 私が前回大蔵大臣に就任いたしましたときに、とにかくまず財政の展望を示すために、いわゆる計画と見えるようなものを努力してみろということでおつくりしましたのが財政収支試算でありまして、そうして、それに対してもっと計画性が持てないかということで、五十六年、五十七年に当たっては財政の中期展望、さらに前国会においても、いま御指摘のありました大綱というようなものは出せないか、こういう御指摘がありました。やはり予算編成の手がかりであり、財政運営の手がかりであり、ある意味においては、国会でいろいろ御議論をいただくための手がかりとしても、そういうものは必要だという考え方に立って、財政の中期試算というものをお出ししたわけであります。そのとき問答いたしました大綱というものになり得るかどうかということを基本的な考え方というものに添えて、これをお出ししたというわけであります。
 そこで、このいわゆる中期試算というものは、いろんな意味において、やはり事ほどさように国際経済の見通し等が不透明であるという今日、なかなかそのかちっとしたものを御提示するわけにはいかぬ、これは単なる社会主義経済と自由主義経済という意味だけから申し上げておるわけではございません。したがって、精いっぱいの努力をしてこのようなものをお出ししたわけであります。
 さらに、それがより皆さん方の御審議の手がかりにも重要な役割りを果たし得るといたしますならば、やはり経済審議会にお願いしております、これまた経済の中長期にわたる展望、指針、それと並行してという表現が必ずしも適切ではございませんが、それを当然参考にしながら財政の中期展望なり指針というものがおのずから描けてくるものではなかろうかというふうに思っております。
 しかし、いわゆる参議院の通常選挙までにこれを示すべきだということは、私は、政府の責任においてその展望と指針というものがかちっとしたもので示されるという状態にはいまないと思っております。それは作業の進みぐあいもさることながら、やはり事ほどさように先を見通すことに対する国際経済の不透明感からくる理由が主たる理由でございます。
 したがって、私は、いままで発言をいたしましたこと、たとえば直間比率とかいう問題を質問に答えてまいりましても、それは従来の税制調査会とかあるいは臨調とか、そういうところで述べられた趣旨に沿って、検討の対象ではあって、そして勉強する環境はかつての時期よりも熟しておるということを申し上げてみました。
 それからまた、いわゆる大型間接税の問題等につきましても、これから御審議いただきます例のグリーンカードの凍結法、これを税制調査会に御相談申し上げました際にも、その凍結期間の中において幅広く検討をすべきであるということになりますと、たとえて申しますならば、EC型の消費税は検討していただくらち外に置きますとかということが言える問題ではない。やはり総合的にお願いして判断してもらうとすれば、これとこれとこれという個別のものをらち外に置いて御判断してくださいという諮問の仕方もないだろうという意味において、一般論として申し上げますと、いまの御指摘のありました新聞記事のような感じを受けることもむべなるかなという感じが私自身もしております。
 したがって、そういう批判があってこそ、またこっちもそれにこたえてしっかりやるわけでございますので、そういう御批判を絶えず賜りながら、そして、こうした問答の中に少しでも画然とした先明かりが見えるようなものに対して努力をしていかなければならぬ、私自身が、かくかくなる計画でもって進めていきますよ、国民の皆さん、ついてきてくださいとか、事ほどさようにうぬぼれも持っておりませんし、要するに、その立場こそ異なれ、このような国会の中における問答の中に実りを見出していくというのが、ある意味においては私らしいあり方かな、こういう素朴な感じを素直に申し上げたわけであります。
#12
○伊藤(茂)委員 大臣、新聞の見出しに感心しちゃ困るんですね。大臣は大蔵省のお役人とか局長と違いますから、政治家として、あるいは重要な大蔵大臣として、国の経済、財政の将来、国民に向けてということを冒頭にお願いしましたが、わかることを極力提起をしていくということだと思うんですね。
 私は、かちっとしたものは通常参議院選挙の前にむずかしいとおっしゃいましたが、何か財政再建か財政改革百科みたいに完成品として全部でき上がったものがいますぐというふうに必ずしも言っているわけではありません。しかし、お役所、お役人とは大臣は違うわけでありますから、財政の難局のときに高橋是清大臣や井上準之助大臣や、いつか「男子の本懐」で議論したら、時代が違いますと大臣言われたことがございますけれども、やはり気魄、気慨はそういうふうに持って一つの方向を示していく、また少なくとも考え方、スケルトン、骨格、柱、そういうものを出して、私はこれしかないと思いますけれども皆さんいかがでしょうか、そういうことがどうしても必要なんではないだろうか。それがなくて、国政レベルの選挙があって、その後大増税計画が出ました、選挙の公約はしていないのに多数になりましたからやらしてもらいます、これは民主政治じゃないですよ。そういうことを含めて、いまの時期に、なるべく早い時期にという大臣の決意は、現下の難局に就任された大臣としてはあるのが当然であろうというふうに思うわけであります。
 重ねて気持ちを伺いたいと思いますし、もう一つ重ねてお願いしたいのですが、試算の中には三年、五年、七年の試算が出されております。まあこれも大変だぞという半鐘、いま半鐘じゃなくてサイレンかもしれませんが、鳴らすようなものでありまして、まだ処方せんは出されていない。これも私が言うだけではなくて、広く言われているところであります。三年、五年、七年と出されております。逆に言えば七五三みたいになるわけでありますけれども、とにかくこういうものが出されております。
 いずれにしても、三年でこの状態を、この要調整額の膨大な大きさから見ても、何とかなるというふうにお考えにはなっていないだろう。さっき冒頭に構造的なということも大臣言われました。それじゃ一体、五年、六年、七年あるいは八年、どういうめどの腹を持ってこういうものをやろう、あるいは今日の情勢のもとで大臣としてそれをつくっていこうというお考えは当然あるべきだと私は思いますし、また一般政治論と違って、わが大蔵委員会においては率直な御議論をお互いにしなければならない。
 私は、そういう中で、たとえば前期二年、後期二年とか、あるいは前期二年、中期二年、後期二年とか、あるいはまた三年、三年とか、いろいろな節目も含めた何か一つの収支論だけではない構造的な改革というものをつくっていくとか、そういう中身のある考え方も財政当局としては当然あるべきだろうと思います。さっき経企庁が主管をする経済計画、経済見通しと言われましたが、私は、これも責任逃れだろうと思うわけでありまして、いろいろ話を聞いても、マスコミで見ても、大蔵省の方がさんざっぱら文句をつけて注文をつけられるので、向こうの方もなかなかというふうな関係にもあるようでありまして、やはりその辺は気持ちか腹の持ちようということではないでしょうか。その辺どうお考えですか。
#13
○竹下国務大臣 基本的な御指摘の意味は私もよくわかります。
 まず二つの点に分けてみますと、一つは、やはり参議院の通常選挙があるわけであります。そうすると、選挙の際は当然各党の公約、こういうようなものが争点――争点というのは客観的に客観性を持って決まるわけでありますので、出したものそのものが争点とは別でございましょうが、争点を形成する素材たるの価値はあるというふうに考えてみますと、そういうものが各党間で議論されていくということは当然であると思うのであります。したがって、財政改革に対する基本的な考え方というのも、これは一つの指針を示したことになるのではないかというふうにも思います。だが、勝ったら勝手に三年間やる、こういう議論になりますと、これは選挙さえやってしまえば、後は勝った方が考えたことを自由勝手にやればいいという議論は、またいわゆる少数意見重視の議会制民主主義を否定することになりますので、事ほどさように安易なものであるとは私も考えておりません。ただ、財政再建の一つの基本的な考え方というようなものは各党ともお出しになるところでございましょうし、政府といたしましても、それはそれなりに考えなければならぬことであると思っております。
 次の問題の、その一つのめどとして君が出したこの中期試算では、三年はとても無理だろうとおっしゃいました。私も、これをお出しするときに、私なりにいろいろ良心の苛責を感じたわけであります。と申しますのは、五年、七年と等率、等差で割ったものをお出しした。そうすると、一体おまえの考えているのは何年だと言われると、英語で言えばセベラル・イヤーズだなと思ったわけであります。ところが、セベラル・イヤーズとは何ぞやということになると、それに対応すべきものではア・フュー・イヤーズ、こういうものがある。ア・フュー・イヤーズというのは、沖縄が返りますときに私も同行いたしておりましたが、共同声明でア・フュー・イヤーズという言葉が使われて、私、どう訳していいかわからなかった。一晩議論いたしまして、結局両三年以内、こういう訳になったわけであります。
 そこで、セベラル・イヤーズとは何だ、五年と七年を出しておるから五、七年というのも言い方かなと思いますが、普通日本語では五、六年とか六、七年とかは言う。そうして、伊藤さんの御指摘になりました七五三という言葉も確かにあります。それからリャン、ウー、パーということもあります。そうすると、セベラル・イヤーズというのは、やはり両三年以内という言葉があったように、あるいは五、七年というようなこと、日本語として数字で明記するならばそういうことになるのかな。いまおっしゃいました、これは言葉の問題と、やはり私どもの姿勢を示す意味におきまして、数年すなわちセベラル・イヤーズというものはまあ五、七年というようなところを念頭に置くべきではないかと考えて、これからなおこれを詰めてみよう、それにはやはりこういう問答をしながらそれを詰めていくというのが、いかにもこの議会制民主主義の土俵の上で議論するのにはいいのかな、こういう感じを率直に持っております。
#14
○伊藤(茂)委員 私は、大臣にアドバイスするわけでありませんけれども、一般的には、三年か五年か七年か八年かとか、いろいろな議論になると思います。ただ、私も単に収支相整うことを、総理もずいぶん速足の人だそうでありますけれども、駆け足であればいいというだけではなくて、経済論、財政論、税制論、全部含めて、しかも、これからの経済社会構造にどう対応してやっていくのか。あるいはまた、三年ではなくて七年だから、財政構造を変えていく努力がたるんじゃっても困りますから、さっきちょっと申し上げましたが、そういうものをまた区切って、どういうふうに中身をつくっていくのか。いろいろな知恵があってしかるべきだろうと私は思いますが、そういうようなことは、またこれからの議論にさせていただきたいと思います。
 次にもう一つ、この七五三の試算に関連してお伺いしたいわけでありますが、いずれにしてもこれは大変なことだ。それで「増税じわじわムード作り」と新聞の見出しになるわけでありますが、各社の報道を見ても、あるいは社説を見ましても、そういう論評が非常に多いわけであります。問題は、大変な火事になった、しかし後で焼け野原では困るわけでありまして、何とかしてみんなで家を建て直さなければならぬということになるわけでありますが、その方向性はよくわからない。暗示だけではなくて、ムードづくりだけではなくて、方向性を早く示さなければならないと思います。
 予算委員会で伺いますと、三つの方法といいますか、歳出の削減あるいは増税、新たな歳入とか言い直されたそうでありますけれども、それから国債管理、借りかえ問題を含めて。幾つかしか対応の柱はない。また、歳出カットだけで財政再建ができる、これもそう思う人は臨調の方々を含めて現実いらっしゃらないだろう。さまざまの複合した対応策というふうなことになってまいるであろうと思いますが、その中で一番気になるのは、実は増税というものに対する問題の出し方、考え方の問題であります。
 何か直間比率の検討の機運は成熟しているというふうなお話もあったようでありますが、私は、この前大臣をおやりになって、その間渡辺大臣が二期おやりになった、そして今度竹下大臣がまたおやりになる、その間に、幾つかの前の大臣のときとは違った議論の変化があったと認識をいたしているわけでありまして、大蔵大臣は、竹下大臣はこの前のときと同じように、国会決議で否定をされた「一般消費税」はやりません、それ以外は云々とか、それからその形は何か、ワン・オブ・ゼムとか何かいろいろな議論も前にございましたね。そういうことで考えてまいりますと、いずれにいたしましても、名前が変わったからいいのかという議論も依然として私どもは疑問を持ちます。
 この間に、鈴木前総理は「一般消費税」ということで総理答弁はほとんどいたしておりません。大型間接税などの方針、政策はとりませんという言葉を本会議でも予算委員会でもしばしば使われている。そういう認識が前内閣の当時から実はあったわけでありますし、あるいはまた、国会の議長見解も含む意思統一の問題などを含めて、いろんな経過があったと思います。
 私はその認識を伺っておきたいのですが、渡辺前大蔵大臣は、直間比率は五、五にする、五対五が望ましいが、当面六、四にいうことをしばしば言われておりました。大臣をおやめになった後も、例の調子で御発言をされているのを伺うわけであります。大臣就任当時も大臣在任当時も、前大臣はそう言われておりましたが、竹下大臣はどうお考えになるのか。それでまいりますと、いずれにしても数兆円と言っても、ア・フューの方ではなくて相当大きな兆の単位の額になる。これは計算するまでもなく大きな額になるわけであります。
 それじゃ、一体この具体的方法はどうなるのか。何か私は、皆さん方が大平内閣のときに「一般消費税」とされた、その前の議論を出されているような気がしてならぬわけであります。昨日ですか、新聞を見たら、大きくEC型付加価値税検討と書いてありました。たしか私の理解するところでは、ああいう多段階、インボイスつきということではとてもむずかしいということで、あの日本型一般消費税の構想になったはずであります。とてもじゃないけれども、あれと同じ形は日本の土壌にはなじまないということで、ああなったはずでありますが、そういう経過は明晰な大臣は御承知のはずなのに、何で一体ああいうことを言われているのかということで、私は非常に疑問を持つというわけであります。いわゆる直間あるいはEC型付加価値税などを言われましたが、その辺の物の考え方です。専門の大蔵委員会でありますから、ぜひお答えを率直にいただきたい。
 それからもう一つ、新聞を見ましたら、大蔵省出身でもある経企庁長官が、消費税には反対であるという趣旨の御発言をなさっているようであります。減税は大事だけれども、消費税とセット、抱き合わせにする、そういうことになると、消費税のマイナス部面の方が経済に与える影響が大きいし、財政にもよろしくないのではないかという見解を、大蔵省、大蔵大臣とは仕事上密接な関係にある、しかも大蔵省に縁の深い経企庁長官が言われている。大臣の言われたことは、何か閣内でも必ずしも理解をされていないということではないかと思いますが、どうお考えになっていらっしゃいますか。
#15
○竹下国務大臣 三つの御質問でございます。
 まず直間比の問題であります。私が五十五年度予算編成に当たりまして、そしてその国会を通じて、それから国会決議というものが行われたわけであります。この国会決議というものは一番重いものだ。そして、政府が意図したいわゆる一般消費税(仮称)は、国民の理解を得ることができなかったという前提の上に国会決議が行われたわけであります。したがって、これは私は重いものであると思います。そして歳入歳出各般にわたっての努力をすべきであるという趣旨の決議であります。
 その次は、強いて申しますならば、五十五年の十一月に税制調査会から出ておる答申で、幅広い間接税というものに着目をすべきであるという趣旨であります。そして今度は五十六年の暮れ、五十七年の暮れというふうに出ております税制調査会の答申、それからその間には臨調の中間答申というものも、直間比率等に対して検討を加えるべきであるということは、おおむね一つの最大公約数として出ておる。
 だから私が申しましたのは、当時直間比率と言えばすぐトタでいわゆる一般消費税(仮称)と結びつく、そういう環境がなくなって、お互いが勉強する環境は整ってきたという意味において、環境が整ったという意味のことを申し上げたわけであります。したがって、ずっといままでのそういう経過の中から自然に発生する、見直しの勉強をする環境は整ったということは、それなりの論理性はあると自分では思っております。
 そこで、今度は直間比率の中身をどうするか、こういう問題になります。
 そういたしますと、大体直間比率というものは、あらかじめ先験性を持って決めておく性格のものではないのではないか。結果としてそうなっておるというのが直間比率というものではなかろうか。それは、各国々全部見てみましても、国々における税制というものは、まさに歴史的な社会的な事情に即して、幅広い意味におきましては国民の選択の集積が現行税制というものになっておる。それが、景気の変動等によって法人税が少なければ、それだけまた間接税比率が上がる。だから、最初からいわゆる先験性を持って規範的な数字を置くべきものではなく、結果としてそうなって出たものが直間比率である。その出た直間比率そのものが七、三になっておるというのは、いろいろな角度から見て、やはり七に値するところから重税感というものが出てくるから、見直しの環境というものがそれなりに整ったと言えるのではないか。だから、六、四だ、五、五だという数字は念頭にあったとしても、それを先験性を持った目標値に置くべきものではないという考え方で対応していこうかなというふうに、正直な話をいたしますと思っておるわけでございます。
 そうして次に、今度はいわゆるEC型付加価値税、これは予算委員会で日本社会党の佐藤観樹委員から御質問がございました。私もそのとき考えました。
 率直に言って、EC型の付加価値税というものと、かつて政府が準備いたさんとした一般消費税というものは、手法の中にインボイスが除かれたものがそういう形で出ておるといういまの御指摘ですが、私もそのように理解しております。したがって、そういう限りにおいては、まさに類似そのものだから否定すべきかなとも思ってみました。しかし、これから幅広い角度からさまざまな検討をしていただくに際して、いわゆる一般消費税(仮称)の分は国民の理解が得られなかったからという前提のもととはいえ一応国会決議がある、少しでもそれよりも変わったものを全部否定の範囲内に置くということは、これはいささか言葉の上では学問的にそれはできないことじゃないだろうか。いろいろな問題を全部検討の素材の外側に置くということは、御審議をいただく税制調査会等に対してはむしろ非礼になるのじゃないかという考えをめぐらせながら、あえてそれも全く枠外に置くものではないという趣旨の御答弁を申し上げたわけであります。
 しかし、その制度がいろいろな議論の中になかなかなじみにくかったという事情を知っておりますだけに、今度は三番目の答弁になっていくわけでございますが、経済企画庁長官が、いまの指標を見ながら、いわば景気の動向等を見た場合に消費を少しでも阻害するような税制というものについてはやはり否定的な、その限りにおいては否定的な考え方をお持ちになるのも、これも当然じゃないだろうか。私がこの税制をやりたいと言い、そしてそれに対し閣内の国務大臣からやるべきでないという意見が出たのではなくして、私の答弁の中の、そういうものをまるきり検討の外に置くべきものでない、それを仮に実態として把握した場合は、経済企画庁長官としてそのような意見が出てくるというのもまた当然な姿ではないであろうか、それなりの見識ではないかと私は思っております。
 私自身がこれをやりたいと閣議で発言して、それに対して抵抗があったといえば、また閣内不統一とかいろいろな議論の問題があろうと思うのですが、いまの段階において塩崎さんの発言が出てくるというのはやはりそれなりの見識である、私自身がそれを入れるべきか否かということにちゅうちょをしながら答えただけに、当然出てしかるべき意見であるというふうに私は思っております。
#16
○伊藤(茂)委員 いまの質問は、私は、閣内において大いに活発な議論があるのはむしろ結構なことだというふうに思っおるわけであります。
 ただ新聞の報道で見ますと、その前にEC型付加価値税検討、増税志向というのが非常に大きく報道されておりまして、私、非常にけげんな気持ちで読んだわけであります。政府与党の方でも何年か前の議論のときにはさまざまの形を検討して、日本の土壌のもとではEC型付加価値税と同じものの導入というのはこの土壌に合わないという経過で、亡くなった大平さんが総理の当時に皆さん方からああいう提起がなされたというふうに理解しておりますので、何か大臣わかっているならいいんですが、非常に大きな焦点になってそれが出るとなると、われわれ関係者としては、一体大臣はわかっているのかしらという話になりますので伺いましたが、またこの辺の中身のことは、これから税法に関連をして詳細な議論をいたしてまいりたいというふうに思います。
 税制に関連をしてもう一つ大臣に、これは私の気持ちでありますが、折り入ってお伺いしたい、こう思います。
 税に対する現状というのは、国民の税に対する関心がかつてなく高まっている、これはもう現実だろうと私は思います。と同時に、税に対する不信の気持ちも非常に渦巻いているというのが今日の客観的な情勢ではないだろうか。税に関するいろいろな世論調査、各新聞社の報道も出されますが、六割以上の人が現在の税制では不公平だという答えを出されているという構造があるわけであります。
 これから中長期に展望して、日本の税制あるいは受益と負担、これからの社会の中における適正なあるいは公正な税制のあり方、いろいろな勉強なり議論を私どもしなければならないと思います。しかし、その大前提に、とにかく六割以上の人が、過半数の人が不公平だと思っている現状を直していくということが、税制をどう直して何で増税するかという前の当然のことではないだろうか。少なくとも六割以上ある今日の税制は不公平だと思っている方々が、逆に七割くらいはまあまあ公平になったというふうに思ってもらう姿をどうつくるのかということが現下のまず急務ではないだろうか、入り口の問題ではないだろうか。それが解消されなければ、何ぼ強力な大臣が何遍かわって何をやっても、僕は、国民の中に安定した、国民に信頼のある税制にはならぬだろうというふうに思うわけであります。
 それで、これは大臣にぜひ考えていただきたいと思いますけれども、たとえば政府税調、初代中山伊知郎さん、次は東畑さん、大変にごりっぱな方だったと私は思います。また、小倉さんが一生懸命活動されているわけでありますけれども、今度三代目の一つの任期、恒例の任免期ということになる。私は、人がかわるからというだけではありませんけれども、何かこういう時期に従来のシステムの単なる延長線で物事をやるのではなくて、政府税調も、さらに政府も、どうやってこの不信感を解消するのか、少なくとも七割くらいの人に公平な税制だなと思ってもらえるような姿をどうつくるのか、私は、それなくしてその先のことというのは成功しないだろうと思うのですが、そういうことをこの重大情勢に当たって大臣としてぜひ真剣に考えていただきたい。
 これは政府税調も総理の任命でございますから、大蔵大臣だけでどうこうというわけにはまいらぬのじゃないかというふうに思いますが、社会的公平を認識して国民の合意を形成する努力というものを具体的にどうするのか。いろいろな人材の構成の問題もあるだろうと思います。社会のどこから見ても、あああの人は直言をするりっぱな方だ、公正な方だという人をふやすことも必要だと思います。あるいは、そういう認識のシンボルとなるような会長も必要だと思いますし、あるいは、広く意見を求めるということを長期の一つの節として一年か二年懸命にやってみる。たとえば国民的な大シンポジウムをやるのもよし、いろいろな形が僕はあるだろうと思います。具体案までいますぐここでと申しませんが、そういう努力をもって、日本の長期の税制の中でも重要な一つの節目、国民の信頼を得られる、不信感が過半数ということではない状況をつくることをぜひ考えていただきたいと私は思っているわけでありますが、所見を伺いたい。
#17
○竹下国務大臣 いわゆる税の公平に対する国民のコンセンサス、まとめて言えばそういうことであろうと思うのであります。
 だから、税というものに対する、税の公平に対する国民的コンセンサスを求める方法というのは、これは不断の努力をしていなければならぬところでございますし、そうしてその意味におきましては税制調査会、私も一遍間違えたことがございます。税制調査会の事務はどこにあるか、こう質問されて、はい大蔵省の主税局でございます、こう言ったら、それは間違いでございます。地方税もありますし、まさに総理府であります。が、総理府のいわば委託を受けて主税局が国税部門を担当しております。正確に言えばそういうことであります。わが身の不見識を嘆いたわけでございますが、確かに総理大臣の御任命になる人事でもございます。
 そして、今日までのいろいろな歴史的経過の中に、いろいろな議論を通じて、人的な構成につきましてもそれなりの工夫が行われておると思っております。したがって、私どもからどのようにしてください、たとえて申しますと、諮問をいたす場合には、何分総理大臣任命の大変な機関でございますので、諮問する場合においても、国民経済の健全な発展を目途とし、国、地方を通じて財政体質の改善をするため税制上のとるべき方策、これを御諮問いたします、こういうふうに非常に大局的な御諮問をいたすわけでございますので、われわれが運営はかくあっていただきたいとか言うべき筋にはございませんものの、そういう良識が醸し出されるようなことに対しての努力をしたりお手伝いをしなければならぬ立場にはあるというふうに考えております。
#18
○伊藤(茂)委員 私も、いままで七年間大蔵委員会の議論に参加をして勉強させてもらいまして、一番その点を感ずるわけでありますが、また具体的な提案なども含めて、ぜひ問答をしてまいりたいというふうに思います。何かそういう節目がなければ、どういう提案にしろ税制全体がうまくいかないのではないだろうかという気がしてならないのでありますが、時間もありますから、それだけにいたします。
 もう一つ、所得税減税についてお伺いをいたします。
    〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
 これは、私は、所得税減税と新聞でも通例言われておりますから、そういう言葉遣いをいたしますが、本来的には所得税の調整の問題、世の中を公平にする、取られ過ぎを是正するということで、厳密な意味での税金まけろという減税ではないというふうに理解をいたしております。さまざまの議論はこれから大いにやってまいりますけれども、一つだけお伺いしたいのは、大臣としての対応、心構えの問題をどうお持ちかということであります。
 昨年年末の国会のときでも、それは大蔵委員会に設けられました減税特別小委員会の結論を尊重いたしましてというような繰り返しを総理も大蔵大臣も言われておる。それが隠れみのになってというのか、あるいはそれで淡々と済ませているのか、非常にいかがかという気持ちで終わったわけであります。また昨年の議長見解をつくるときには、大臣は幹事長代行として積極的な役割りを果たされた御当人でありまして、あの結末について、御当人としてまた現大蔵大臣として、一体どんなお気持ちかなということを非常に思うわけであります。
 それから、先般の本会議などの大臣の御答弁を伺っておりますと、やはり前の大臣の時代の御答弁と同じことを言っているのじゃないかなという減税のための条件、財源を含めて一、二、三言われている。それから後だけれども、情勢はあれから三、四年の間にもうとてもじゃないけれどもがまんできないという悲鳴に近いような状態に進展をいたしておりますし、私が申し上げるまでもなく、昨年の議長収拾見解のときでも、国民の強い要望を認識をする、あらゆる機会をとらえてできるだけ早い時期に実現できるように最大限の努力をしなさいというふうに議長が集約をするという状態にまで進んでいる。それだけ切実な状態になっているというわけであります。
 私は、議会で論争になり、それから昨年は議長見解、大蔵委員会減税特別小委員会、今回もまた明日から各党で話し合うということになっているわけでありますが、それを注目するのでは困るわけでありまして、要するに、これは現在の税制をどうするのかという政府責任のところから、それが対応できないからこの問題が発生しているというふうに、やはりより深刻に認識をされるべきではないかと思いますが、いかがでございましょう。
#19
○竹下国務大臣 総理の答弁にもいつも申し述べておりますことは、いま伊藤委員御指摘のような減税を望む声が強いことは十分承知しておりますというところから申し述べておるわけであります。
 そうして、五十七年の三月六日であったと思いますが、とにかく幹事長・書記長会談というものが開かれまして、私が自由民主党を代表してそれに参画をいたしました。そうして、その結論として政審、政調会長さんの時点で文章をまとめていただきまして、それが議長見解となり、そして本委員会に小委員会が設けられた。そして、それは中間報告の形でなされましたが、いわゆる財源の問題について合意を見ることができなかったので引き続きということでありました。そして次の臨時国会におきまして、また小委員会が設けられましたが、議まとまらずという形でこれがなくなった。したがって、私見を申し述べれば別でございますが、いまの段階ではそれにかわるべきという表現が適切かどうかは別として、各党間において協議するための機関が設けられたというふうに承っておるところであります。
 ただ、私自身が当時を思い起こしながらしみじみと感じますのは、いわゆる戻し税、すなわち、これだけの剰余金が出たではないか、だから戻したらどうだという議論は、当時のわれわれの議論の中ではもうできる環境にはなかった。しかしながら、六兆一千億に及ぶところの歳入欠陥が生ずるという認識も私自身にはなかったのではないか。すなわち、あの時点で私どもが期待いたしましたその後の経済あるいは財政の推移というものは、この不透明な国際経済情勢のもとにとはいえ、私個人の考え方と結果としては余りにも乖離を生じて、五十七年度予算に六兆一千億の歳入欠陥を生じた、こういう事態からすれば、その気持ちが底意に残りつつも、いま政府の責任においてやりますということを言える環境にはないではないか。
 そうなれば、税制調査会の答申の中にもございますように、そういう声が強いから五十九年度以降税制全体の中においてこれを考えるべきであるという御趣旨に沿って、不断の勉強を続けていかなければならぬ課題ではなかろうかというふうに考えております。
#20
○伊藤(茂)委員 この問題は、まさに税の不公平の最たるものであるという認識であります。また天の声、地の声、今度は月末には労働四団体も足並みをそろえて減税メーデーを行うという状態になっているわけでありまして、私もこれからの議論の大きな焦点として進めてまいりたいと思っておりますが、もう一つ、この点だけは竹下さんに声を大にしてぜひとも言わなければならぬというのが、グリーンカードの問題になるわけであります。
 大臣も重々自覚をされていると思いますし、こんなことがあってはならぬと私は思いますけれども、大変な悪例をつくろうとしているというわけであります。これは、私どもが言うだけではなくて、見識の問題として、一体こんなことがあっていいのだろうかということが各新聞でも主張されているという状態であります。要するに、みずから提案した法律をみずから葬ろうとしているという前代未聞のことが、いま出されているということになるわけであります。
 昨年の暮れの当委員会のときに、同僚委員が主税局長に伺いましたら、何しろ政権党の意向でありましてということを非常に困った顔をして繰り返し言われておりました。政権党の意向だからというのでは困るわけでありまして、昨年のあの経過を見ましても、本当に政策論か税制論か税の公平論か、こんなものは一かけらもない経過で、税を公平にしようと思ったら、不公平なものを守るためにああいう経過になったというのが今日の状態であります。閣議でも戦犯呼ばわりされたそうでありますから、何か新聞の囲みを読んでいたら、一番責任の重い戦犯は、大臣、あなただという話もあったようであります。この戦犯という言葉遣いは別にいたしまして、とにかく余りにも不見識なことをなさっている。どうお考えなのか。
 それから、三年間という法律が出されております。なぜ三年なのですか。もし不備があるとか、これは小倉政府税調会長も厳しく注文をつけられたそうでありますけれども、要するに、さまざまな不備があるということならばすぐ直せばいいですよ。われわれも議論しますから、すぐ直せばいい。一体なぜこの三年間凍結、三年というのが出てきたのか。
    〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
 それから、この三年という法律を出して、一体どうするつもりなのか。いままでどおりで準備は早急にやりますということなのか、あるいは一番肝心の利子配当の総合課税をやめちゃって、何か庶民いじめという色彩の強いマル優と郵貯の管理だけ厳重にやりますということなのか、あるいは、昨日も答弁されておられますけれども、マル優そのものの全廃、庶民の気持ちにも非常に大きな社会的な影響力を持つ問題でありますから、一挙全廃ということを大臣が言われたのかどうか、新聞だけではつまびらかではありませんけれども、そういうことも大きく報道されております。
 とにかく、前提としてかつてないことをおやりになる大臣としてどんなお気持ちですか。それから、三年という法律を出されておりますが、その対応というのは一体何を考えて出されておるのですか。いかがでしょう。
#21
○竹下国務大臣 この御指摘が、まさに一番私としては政治家としての良心の苛責を感ずる最大の課題であります。
 確かに、この制度を国会で政府提案をしたときの大蔵大臣は、まさに竹下登でございます。そして現在までの事態の推移を見ますと、従来の利子配当課税制度に対する大きな変革をもたらすものでありますだけに、さまざまな議論が行われて、そうしてあのような結論を出して提案をした。しかし、その後もさまざまな議論は行われました。そこへ持ってきて、郵貯だの金だのあるいはゼロクーポン、そういうところへシフトしていく問題というものが議論をされた。この中には、私は、必ずしもグリーンカード制度の責めに帰する問題ではない、因果関係の存在しない問題もあるという感じも持っておりました。しかし、それが因果関係の中にあるごとくかまびすしい議論が行われてきたということも事実であります。
 そして、昨年の八月に多数の議員の、政権党という表現はあえて使わないで申し上げますならば、多数の議員の賛同とともに五年間の延期法案が議員提案として出された。そうしまして、これは去年の暮れ廃案になりました。どんなりっぱな制度であれ、国民の理解と協力が得られなければ、それは政策としても機能しないということになりますと、現状において、いわゆる法的安定性とでも申しましょうか、この制度をやはり一定期間は凍結せざるを得ないという結論に達したわけであります。
 そうなると、議員立法で出ておったから議員立法にゆだねてもいいではないか、こういう議論もありました。しかし、やはりこれは私どもとして政府税調にお諮りしてお出ししたものでありますから、凍結法案ということになっても政府税調にお諮りして、その御答申で、異例なことではあるがやむを得ないという御答申の中に、政府提案で、具体的に言うと、今度また私が大蔵大臣で出すわけでございますから、最初の御指摘のとおりになるわけであります。
 そこで、私なりに政治責任を考えてみました。私自身がそのような問題が起こるであろうという見通しがなかったというのは、これはやはり責任があると思うのです。そうなれば、みずからその責任を感ずれば、この際自分が大蔵大臣であるならば、やはりみずからの手で政府提案として出してけじめをつけるというのが、政治責任のとるべき一つの姿だなという考え方になりまして、恐る恐る――という表現は取り消しますが、御提案を申し上げたということでございます。
 したがって、何で三年か、こう言われますと、非常にこれは、桃クリ三年カキ八年という言葉もございますが、いろいろなことを考えてみると、事ほどさように国民の大多数に関係する問題であるから、三年というところが適切な期間ではないか。これについては、私よりも専門家であります主税局長から、なぜ三年であらなければならないかという説明をあるいはしてもらえるかもしれませんが、私としては、そんな感じでおったわけであります。
 そうして今度さらに、マル優の全廃というような問題も予算委員会で質問がございました。これも私も考えたわけであります。これも大きな議論を呼ぶ問題であります。しかし、これを凍結いたしますと、その間において多数の国民の皆様方に関係する問題でございますから、御審議をいただきたいと言って政府税調に御審議をいただく場合に、この問題は審議の外に置いてくださいというやり方も、必ずしも適当ではないではないか。だから、そういう意見もあるとするならば、強いてその意見は議論の外に置いてくださいということは言えないという意味において、私がお答えした。それが、どういうことでございますやら、私が答えますと、たまたま記事のない日でもございますか、比較的よく新聞にクローズアップされるきらいがございますので、平素とも言動に慎み、みずから謙虚に身を置いておるつもりでございますけれども、これは不徳のいたすところだと思っております。
#22
○伊藤(茂)委員 これに関連して、まださまざまな問題があります。大臣、これは一般質問の話題で済むはずの話でありませんから、とにかくあなた方が日切れ法案としてぜひ通したい法案との絡み合いの問題でありますから、もうちょっと大臣にも深刻な気持ちを持って、また議論をさせていただきたいと思います。
 要するに私どもが言いたいのは、政策論でまじめに応酬して大いに議論をして、それで税制を少しでも国民の理解を得るためにどうしていくかという中の議論ならばまだましなのです。そういうことを一切抜きに、政権党か多数党か知らぬけれども、とにかくつぶしていく。これは、そういう議論で法案がまかり通るということになったんでは、大蔵大臣と私ども大蔵委員会の議論、私どもは、われわれ自体の権威がかかっているんじゃないだろうか、大臣の権威はもちろんでありますけれども、という気がいたしますので、法案のときに、そういうことも含めて、ぜひ真剣なといいますか、大臣にも痛切に感じてもらうようにひとつ議論をさせていただきたいと思います。
 時間でございますから、一つだけ感想だけ伺って終わりたいと思います。できたら、また後で詳しく議論をしたい問題であります。
 先般正月、突然大臣が総理と一緒に訪韓をされました。対韓援助の問題が出たわけであります。内容は、さまざまな角度から私どもも関連法案のときに議論をいたしてまいりたいと思いますが、昨年の当大蔵委員会の経過からいたしますと、はなはだしいルール違反だという感じを持たざるを得ないのであります。渡辺大蔵大臣は、とにかく外務省の言いなりに突出をして、外務省には対外援助に関する全部ルールがあるわけですから、途上国と援助の中心はあるわけですから、一体そういうことが許されるのか。何か私どもも、もっと大蔵大臣を激励したいような雰囲気の議論を昨年五月にやったような覚えがあるわけであります。
 私は、何かこれは非常に不愉快な気がいたします。ある新聞を見ましたら、十二月の初めに首相官邸に近いホテルにある瀬島事務所に外務省の木内アジア局長、大蔵省の国際金融局長大場さんが集まって協議をした。それから二十九日、年末にはその瀬島さんと竹下さんと何かどこかで集まってやった。何がどうで、密使が派遣されてこう決まった。何か陰謀みたいな気がしてならぬ経過でありまして、私は、少なくとも自民党の副幹事長時代の竹下さんでありませんから、大蔵大臣になってからでありますから、その前の経過だって御承知のとおりだろうと思います。
 いろいろと政策論の御議論は当然あるでありましょう、これは違いますから。御議論はあると思います。しかし、プロジェクト協議が進んでいないのに金額が決定をされる、あるいはまた、金額の面でも従来の対韓援助と事情を異にした状態になる。日本の経済協力の基本方針とはおよそ違った内容が決められてくる。そして四十億ドルの中身ということになるわけでありまして、中身の詳細な議論は別途いたしますけれども、時間でございますから、最後に大臣、昨年の経過からしても、こういうことを次々やったのでは非常におかしいじゃないかと思いますが、お考えだけ一言伺って終わりたいと思います。
#23
○竹下国務大臣 私は、総理が同行するようにということがございましたのは、一昨年の日中の経済協力の二階堂ミッションの場合私が同行いたしまして、結果としてそれが決着したという経験をそれなりに持っておりましたが、韓国自身は、私はいままでにおととし中国に行きます一週間ぐらい前に二日ほど訪問したことがございますし、そして今回で二回目の訪問でございます。
 しかし、今度の問題につきましては、私は、渡辺大臣時代ずっと継続しておりました一つの案件が教科書問題等におきまして中断をいたしておりました。それが結局環境が熟して再開されて、そうして政策論としては異論のあるところでございましょうが、共同声明に示されておりますごとく、「総理大臣は、右五カ年計画を中心とする韓国の経済社会開発プロジェクトに対し日本の経済協力の基本方針の下に可能な限りの協力を行う意図がある旨述べる」云々、こういうことで合意したわけでございますので、それが、従来のわが国の取り決めでございますとかあるいは昭和五十六年九月第十一回日韓定期閣僚会議開催の際にまとめましたものとか、いろいろなものからいたしまして、それなりに最も近い国であります両国の今後の関係につきましても有益であった。したがって、私どもが、いわば日韓議員連盟、私もメンバーの一人でございましたが、向こうで言えば韓日議員連盟というものの友好関係が大きな背景をなしたという認識は持っておりますが、私と瀬島さんとが密使的な関係にあったとかという関係はさらさらございません。
#24
○伊藤(茂)委員 では、質問を終わります。
#25
○森委員長 鳥居一雄君。
#26
○鳥居委員 引き続きまして、大臣に伺ってまいりたいと思います。
 財政運営で当面最大の課題の一つが所得税減税だと思うのですね。これまでの議論で、個人消費の拡大が内需への波及、景気浮揚に多大な波及効果をもたらす、これはもう理論上明白なわけであります。政府は減税をするために一体努力をしているんだろうか、これが国民の見る非常に厳しい目だと思うわけです。昨年議長裁定を受けまして、大蔵委員会の減税小委員会がさまざま協議をしてまいりました。大臣も大蔵省も、つまりこれにおぶさり切りで、財源として一体どう手当てをし、減税をやろう、こういう検討が全くないと言っていいんじゃないかと思うのです。どういう努力をこれまで重ねてこられましたでしょうか。
#27
○竹下国務大臣 私は、昨年十一月二十七日大蔵大臣に就任したわけでございますが、なかんずく議長見解ができるに至りました間、自由民主党を代表いたしまして幹事長・書記長会談に出かけておりましただけに、その間の議論は自分自身が一番承知いたしておるところであります。ただ、先ほども申し上げましたように、当時の議論の過程において、まさか剰余金が出るであろうとかという議論まではいたしませんでした。これはもちろんでございます。がしかし、何分にも六兆円余の歳入欠陥が生ずるという前提にまで議論をするだけのわれわれに基礎がなかったということが、今日に至った一つの要因であると私は思います。
 と同時に、大臣になりましてからにつきましては、そういう小委員会の御結論の推移を見守りながら、一方税制調査会に諮問申し上げましたところ、この諮問におきましてもやむを得ないところであろう、五十九年以後各般にわたって検討すべきであるという御答申をいただきましたので、その線に乗って編成した予算案等について御審議をいただいておる。また、租税特別措置等々につきましては、本委員会において法案を御審議をいただく予定になっておる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
#28
○鳥居委員 それで主税局に伺いたいと思うのですが、据え置いたまま六年目を迎えたわけでありますけれども、この間のいわゆる所得税の自然増はトータルで幾らか、源泉所得分がトータルで幾らか、お示しいただきたいと思います。
#29
○梅澤政府委員 五十二年度の所得税の税収の総額が六兆五千七百八十四億円でございます。現在御審議願っております五十八年度予算案で私どもの見積もりが十三兆八千五十億円でございますので、約七兆三千億という数字になるかと思います。
#30
○鳥居委員 源泉分。
#31
○梅澤政府委員 そのうち源泉分は、五十二年度は四兆九千七百九十六億円、約五兆円でございます。五十八年度予算の見積もりが十兆八千億円でございますので、五兆八千億に相なります。
#32
○鳥居委員 物価上昇分を考慮して、せめてその物価スライド分、これの減税をやってほしい、これがサラリーマンの偽らざる要求であります。
 物価はほっておいても上がる。一方、それに見合う程度の給与も上がる。それに対して所得税が重くかかる。ここから税の自然増ということが結果において出てくるわけでありますけれども、ですから、先進諸国にあるような良心的な政府であるならば、物価調整という形の、これはもう先ほどの指摘にもありましたとおり減税とは言えない性質のものでありますから、当然私はやってしかるべきであると思うのです。
 国税庁の数字があります。この国税庁の数字によりますと、平均的なサラリーマンは、六年目の課税最低限の据え置きのために、その結果五十六年までの四年間で給与が二五・八%ふえた、物価が二八%高くなった、そのために昇給分がほとんど消えて税金だけが七〇・三%ふえた。全くひどい実態を明らかにしております。所得税減税ができない理由を挙げるのは、こういう状況の中でいとも簡単なことだと思うのでありますが、何としてもやらなければならない時期に来ていると私は思うのですけれども、いかがなものでしょう。
#33
○梅澤政府委員 五十八年度の税制改正に当たりまして、所得税の減税をどう扱うかという問題は、政府の税制調査会でも何回か御議論願ったわけでございます。
 この間の経緯につきましては、先般来本会議あるいは予算委員会等を通じまして、総理なり大蔵大臣から御答弁のあったところでございますが、御指摘のとおり、五十三年以来課税最低限が据え置かれております。その結果、結果的に負担増をもたらしておる事実は否定できないわけでございますが、税制調査会の議論におきましても、何といいましても現在のわが国の財政状況から見て、所得税の特に財源の面について困難であるということと、これもいろいろ御議論のあるところでございますけれども、わが国の所得税のトータルの負担率は、たとえば個人所得に対します税負担率というものを見ましても、先進諸国と比較いたしました場合に、階層によっていろいろ違いはございますけれども、平均的に見まして、いましばらく一年間ごしんぼういただくぐらいの水準にあるのではないかということで、五十八年度は見送らざるを得ないという結論でございました。
 しかし、これも先ほど大蔵大臣の答弁にもございましたように、税調答申にもはっきり書いてあるわけでございますが、五十九年度以降税制全体の見直しの中で、現在の人的控除とか税率構造含めまして抜本的な検討を加える中で、この問題の解決を図るべきではないかということを税調答申でも指摘をされておるわけでございまして、その方向に向かって、私ども税制当局といたしまして今後懸命の勉強を続けてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#34
○鳥居委員 それで、大臣のこの直間比率の見直し、その機が熟したと御発言なさっていらっしゃいますし、結果において直間比率というのは決まってくるものであるというお話でありますけれども、私は、直間比率のひずみというのがよって来るところというのは、この六年間据え置きのままの所得減税をやれば、バランスというのはおのずととれてくると思うのです。
 それで、直間比率の見直しということは、租税負担率を変えずにバランスをとっていこうとされているのか。つまり、直に非常に重くウエートがかかっている直間比率の現状でありますから、租税負担率を変えずに直を軽くする、これで十分バランスがとれるわけです。これが一つ。それから、租税負担率を重くしていくために、直はそのままにして、間にウエートをもっとかけていく、そうすれば、三十年代五対五だったこういう姿は実現するわけでありますけれども、国民には非常に莫大な負担を強いることになります。
 いまお考えの直間比率の是正というのは、一でしょうか、二でしょうか。
#35
○竹下国務大臣 いま御指摘がありましたように、いわゆる直間比率は、あらかじめ予見を持って決めておくべき性格のものではない。結果として、不況等によって他の税目によるものが減って、そして一方が減税が行われないということからくる直間比率結果としての数字であるという議論については、私も否定するものでは決してございません。
 されば、その直間比率というものはどういう経過をたどってできておるかというと、これは確かに各国まちまちでございます。アメリカの場合は、なるほど国税における直接税の比率は大変高いけれども、なかなか統計上に出てこないいわゆる地方税の間接税分野というものを考えれば、われわれが国税だけで考えておるとは違った数値になるだろうと思っております。したがって、そういう各国のいわば民族的、歴史的な所産として現行税制があるということでございますので、やはり先進国等々のことも大いに参考にしなければなりません。
 したがって、いまおっしゃった将来の問題としては、一方の方が減収で、一方が増収であるということからくる問題の是正をも、やはり当然直間比率の是正の中には念頭に置くべき問題であるという考えでございます。だから、あらかじめ先験性を持って決めて議論するという性格のものではないというふうに理解をしております。あるいは先生の御質問に対していま私のお答えがすべて正確ではございませんので、主税局長から補足をさせることにいたします。
#36
○梅澤政府委員 いま大臣の御答弁で尽きているわけでございますが、委員がおっしゃいました直間比率というのは、大臣の答弁にもございますように、税制を仕組みました結果として出てくる数字でございますので、あらかじめ比率を決めて税制をいじくるという筋合いのものではないことは、先ほど来申し上げているとおりでございます。
 その場合に、租税負担率を現行のままでやるのか、あるいは租税負担率も引き上げるあるいは引き下げる方向で考えているのか、この議論は直間比率の見直しとはまた別途の議論でございまして、今後中長期的にわが国の租税負担率がいかなる水準にあるべきかという問題は、これは現在議論が行われております財政改革の方向をどの方向に持っていくかということとも密接な関連がございますので、これは常々財政当局である私ども申し上げておりますように、受益と負担の関係等国民の広い意味での合意と選択の中でおのずから結論が出てまいる問題であろうということでございまして、租税負担率をいまの段階で現状のままにするとか、あるいは引き上げる方向で考えるとかいう一切の予断を持っていないわけでございます。
#37
○鳥居委員 欧米特にヨーロッパ型の租税構造、これを念頭に考えていらっしゃるわけですね。ですから、これから次第に直間比率五対五――六対四、七対三に近い、これが日本型の租税構造だと思うのですよ。
 ですから、そういう意味でひずみだと言われますけれども、わが国の場合資源小国という特色がありますし、また技術立国でもありますし、マクロ経済から見れば他の国々よりも多少高い経済成長率というのが要求されるわけでありますから、そういう意味で、景気の動向に直接税が非常に敏感で、直接税中心で推移してきた不安定を言いますけれども、そこにやはり大蔵省としての努力が要請される、政府も努力を怠ることができない、これが日本型の税の仕組みだと私は理解しているわけです。
 ですから、この直間比率見直しを大型増税を導入する口実にしているように思えてならないのです。国民の大変危惧するところは、実はそこにあるだろうと思うのです。租税負担率は変わらないという前提で見直しをやるとはっきり明言できませんか。
#38
○竹下国務大臣 私は、いま主税局長からもお答え申し上げましたが、いま特定に租税負担率をどこに置くべきかということを固定しておるものではございません。
 かつての経済社会七カ年計画でございますか、あれには二六ヵ二分の一という数値があったことも承知はいたしております。結果的にいま二三・七ぐらいでございますが、要するに、この問題は結局分母になるいわゆる国民総生産、総所得、分子と分母がしょっちゅう変わってきますので、固定的にそれを前提に置いて考えるというのにはいささか無理があるのじゃないか、こういう感じがいたします。
 それからいま一つは、大型間接税という言葉はうんと使われておりますが、一体本当に大型間接税とは何ぞや、こういう議論は、終局的な結論というのは私はまだないと思うのであります。何に比べて大きいか、何に比べて中ぐらいか、何に比べて小型か。強いて言うならば、要するに課税ベースの広い間接税で税収規模がかなり大きいものというような、抽象的に言えばそういうことになるのかな。したがいまして、政府として現在具体的な形で大型間接税を考えておるということは、定義そのものも確定いたしておりませんので、私は、そのような考え方はないというふうに否定してしかるべきだと思っております。
#39
○鳥居委員 もういろいろ報道されておりまして、大体大蔵省で考えておるのは二つにしぼられるだろう、こういうわけです。
 つまり、第三次産業部分を含めて課税対象とするのかしないのか。ここら辺は、GNPの四六%から占めるサービス部門、これまで含めて財源としていくのだという考え方がいわゆるEC型付加価値税ですね。大臣の頭の中に、そこら辺の想定というのは全くないのでしょうか。
#40
○竹下国務大臣 私は、学問的には、EC型付加価値税というもの、これは理解できるところでございます。しかし、それの部分からそもそもインボイス部分がマイナスされた、除かれたということは、やはり日本の商慣習とかいうことになじまないという意味において除かれて、いわゆる一般消費税(仮称)というものがおおよそ形づくられたということでございますので、その一般消費税(仮称)も、詳しく読めば、国民の理解が得られなかったからこれはやめる、得られればいいのか、こういう議論もまたできぬわけではないと思いますが、そこまで議論するほど、それは国会に対して非礼でもあるし、私自身愚か者であってもならぬというふうに思うわけです。
 したがって、私の念頭にというか、私のみではなく皆さんの念頭にも、これは税制の学問としてはあり得る。しかし、今日それをトタで導入しようという考えが頭の中にあるかと言われれば、それはいま直ちにイエスと言う状態ではもちろんございません。
#41
○鳥居委員 いずれにしても、いまお考えの大型増税というものは、税収分だけ物価が上昇する、こういう問題を抱えている。そのほか、さまざま指摘されておりますとおり、税痛がない、自分のふところを痛めて初めてその使い道に関心を持つ、今日の民主主義のわが国の体制の中で、国民の側に政治をチェックする機能がなくなっていく、あるいはまた低所得者に対して非常に重く賦課されてくるものである、こういう性質。いまだにトーゴーサン、クロヨンと言われているような不公平税制、これが温存されている中で、サラリーマンの理解は得られるような形の税制にはとてもとてもなり得ないだろう、いろいろな指摘がされるわけであります。直間比率の見直しは、結果においてあくまで租税負担率は変わらないという形の見直しであるならば、所得税減税を大幅にやればこれは達成できるわけでありますから、所得税減税をやる、これを不公平税制の是正の上からもぜひとも要求したいと思うのです。
 長年の懸案であります所得捕捉率の格差是正について、国税庁の労働組合であります国税労働組合から、例年のように実調率を示す数字が出てきております。現在この実調率を仮に一〇%程度上げるだけで、軽く一兆円を超える税収が見込めるわけです。一兆一千四百五十六億円の増収になる。つまり、実調率一〇%では十年に一巡である。そのために課税の時効期間五年、この五年以内に実調が一巡するような形の実調の実を上げるべきである。時効完成による減失税収額を計算すると一兆一千四百五十六億円、つまり徴収の上で発生しております税の不公平感、これは緊急課題だと私たちは思うのです。
 国税職員の皆さんの年齢構成のひずみの上からいって、これは緊急に改めなければならない状況の中にありますけれども、五十八年度予算また五十九年度予算、この推移の上で大臣としてどういう努力をされていこうとしているのか、伺っておきたいと思います。
#42
○竹下国務大臣 これは鳥居委員が従来とも御指摘になっておる重大なポイントでございますので、五十八年度予算案の編成の際におきましても、私の立場からすれば、定員問題は第一義的には行政管理庁にあるといたしましても、非常に関心の深い問題でございます。
 一方、まずこのような問題には、必ず隗より始めよとかいって、大蔵省全体としては、環境としてはかなり厳しい環境にも対応していかなければならぬという中で種々この話し合いをいたしまして、結局、五十八年度予算案におきましての定員増は五百九人、一方、第六次の定員削減計画によって四百九十八人の定員削減を行うことになっておりますので、差し引き十一人ということになっておるわけでございます。
 したがって、国税職員の増員の問題、そしていまおっしゃいました年齢構成の問題も重大な関心があることでございますが、今後ともに関係方面の理解をいただきながら、その理解とは、すなわちきょうのような問答が理解の大きな背景にもなりますので、努力をしていかなければならぬ課題だと思っております。
#43
○鳥居委員 時間ですから終わります。ありがとうございました。
#44
○森委員長 米沢隆君。
#45
○米沢委員 私は、さきの本会議における大蔵大臣の財政演説並びにただいまの本委員会における所信表明に関連いたしまして、当面する基本的な問題について所信を伺いたいと思います。
 まず第一に、鈴木政権から継承しております増税なき財政再建、いわゆる財政改革についてであります。
 大蔵大臣は、財政演説の中の財政改革のところで「石油危機後の不況に対応するための巨額の公債発行は、財政に大きな後遺症を残しました。これは日本だけの問題ではなく、先進諸国に共通する大問題でありますが、特にわが国の場合、国債残高は約百兆円に達し、経済全体が比較的良好な中で、財政の困難が際立っております。」こういうことを発言されております。
 確かに、日銀の「国際比較統計」等を調べてみますと、これは八一年度の統計でありますが、財政の国債依存率は日本、西ドイツ、英国、アメリカ、フランスの順で高くて、日本はフランスの約三・七倍、アメリカ、英国の約三倍、西ドイツの約二倍と、異例なほど国債依存率が高い。石油ショックを契機に、どこの国でも国債への依存を高めたのは事実でありますが、しかし、日本以外の国では、それ以降今日まで国債依存率を低下させておるのでありますが、日本だけが高い国債依存を持続しておる特異な現象であると思います。
 同時にまた、長期国債残高のGNPに対する比率は、これは八〇年度の統計でありますが、イギリスが三六・三%、その次が日本で三四・八%と高く、その後にアメリカが二七・二%、西ドイツの一五・一%、フランスの四・二%と続いております。この傾向は今日も変わっておりません。
 そこで、日本の経済が他の先進国に比べて比較的良好な状態に推移しておるにもかかわらず、なぜ財政困難が特に際立ったものになっておるのか。このような現象は一体どういう理由で出てきたのか、その理由。それから、政府の過去の財政政策にそういう意味では大きな誤りがあったのではないかと思うのでありますが、この二点について大臣の率直な所見を承りたい。
#46
○竹下国務大臣 御指摘のとおりでございます。
 現在、各国に比べますと確かに私どものもろもろの経済指標というものは大変いいということは、数字を見る限り言えると思うのであります。これは大蔵委員会でございますので、いわば私にとっては最も身近な委員会という意味においてあえて申し上げてみますならば、きょうはございませんでしたけれども、大体委員会が始まりますまでの仕事の一つといたしましては、外国のお客さんに会うことが常例とされておるくらい多いのです。そういたしますと、どなたさんがお見えになりましても、何で日本経済はこんなにうまくいっているか、先生その秘訣を教えてくださいと言わんばかりの感じでございます。そして、緊張してまた委員会に入ってみますと、財政運営はきわめて拙劣ではないか。そういたしますと、頭の切りかえをいたしますのに約五分くらい本当にかかるのでございます。
 事ほどさように、この数値を見る限りにおいては、それは成長率と言えばよその国がマイナスのときにプラスでございますし、消費者物価と言えばまた世界でずば抜けて落ちついておりますし、何を見ても、そう言われてみれば数値の上ではそうだなと思います。しかし、なぜそうなったかということにつきますと、私は、従来までの公債政策というものにそれなりの意義があったと思うのであります。
 まず、公債発行を最初いたしましたのは、戦後最大の不況と言われたオリンピックの翌年でございますが、そのときは金額にしては大したものではございませんが、その財政の対応力があっという間にまた日本経済を押し上げてしまった。そうして、その次の起因になったのは、一九七一年のいわゆるドルの兌換制の停止のときであったと思うのであります。そして、その次が石油ショック。しかも、石油ショックの昭和四十八年は、福祉元年と称しまして福祉水準を世界のどこの国にも負けないような水準にしようというところで立ち上がったところへ、がたっと来たのが第一次石油ショックであった。
 それで、一体国際競争力はどうなるかというときに、とにかく内需を拡大して様子を見ようということで、国債の発行がそれなりに大きな意義があったんじゃないか。しかし、それが積もり積もって昭和五十四年度予算で四〇%近くなったときに、振り返ってみれば、国債依存率が四〇%を超したのは戦争に負けた昭和二十年の四二%。そうなると、なるほど国債政策そのものにも行き詰まりを生ずる。すなわち、売れなくなるというような状態で、そこから財政再建というものが始まったわけであります。
 しかし、それにしても五十四年、五十五年というのは自然増収に恵まれ、そして評価は別として五十五年もラーメン減税ができたというような状態でございましたので、私は、それはやはり財政の主導の対応力があった結果がそこまで押し上げてきた。それが限界に達したというので、いまおっしゃった公債依存率対GNP比の問題からいろいろ出てくる、おっしゃるとおりなんです。だから、やはりそれなりに財政政策というものの今日に対応した理由はあった、その功績という表現は別といたしまして、その存在価値は大いにあった。しかし、いまそれでどうなったかということになりますと、まさに世界最大の、もろもろの比較からいっても国債依存率を背負う財政になった、だから、この対応力をつけるために、まずここで財政改革をしなければならぬ、結論から言えばそういうことになるのじゃなかろうか。
 だから、やはりこうなった理由は、新たなる負担を求めることによらずして、日本人が世界で一番貯蓄性向の高い国民でありますだけに、そこに依存をしてそれなりの効果は上げたけれども、それの大きなひずみがまた生じてきたというふうに理解をすべきではないかなというふうに思っております。
#47
○米沢委員 私は、いま大臣がおっしゃいましたように、財政主導のいわゆる景気刺激策等も大きな原因になっておると思いますが、一口に言いまして、やはりいままで歳入構造あるいは歳出構造に大胆にメスを入れる姿勢に欠けておった、そのことが大きな要因ではないかと私は思うのでございます。五十六年、五十七年、租税弾性値が〇・六なんというのは、これは異常な姿でございまして、経済見通しでもごまかしがありましたけれども、経済の実態にいわゆる税収構造といいますか徴税構造がぴったり合ってない。そういう問題については、もうすでに検討されてしかるべきものであった、もう終わっておってしかるべきものであった、私はそういう感じもするのですね。同時にまた、歳出構造にメスを入れるのも、臨調をつくって行財政改革をしようなんということにならないと、歳出構造に本格的なメスが入らない、そこらもやはり財政当局の怠慢であった、私はそういうふうに考えるわけでございます。
 しかし、その理屈はどうあれ、結果的には大変なことになったということで財政改革をやらねばならない。そして、まず最初に臨調をつくって歳出構造にもメスを入れよう。その際、財政再建に当たっては安易な増税というものに頼らずに、いわゆる増税なき財政再建というものを柱にして政府はがんばろう、こういうことになって今日に来ておると私は思うのです。そういう意味では、増税なき財政再建というのは依然として政府の大きな公約の一つである、そういうふうに私は考えるのでございます。
 ところが、このごろ、その増税なき財政再建という言葉が、中曽根さんの演説にも大蔵大臣の財政演説にも一つも出てこないのですね。あれだけ鈴木内閣のときに増税なき財政再建、増税なき財政再建としょっちゅう言っておられたにもかかわらず、今度は政府機関の文書にもあるいは皆さんの発言からも、増税なき財政再建という言葉が全然出てこない。一体どうしたことだろうかと私は思うのです。
#48
○竹下国務大臣 増税なき財政再建、これは確かにたびたび申し上げておる言葉でございます。そして今日もまた、増税なき財政再建という問題は、これは理念である、理念として貫くべきものであるというふうに私も考えております。
 そこで、増税なき財政再建とはという議論がもう一つ出てくるわけであります。それで、これをいろいろなところで調べてみますと、臨調の中に、当面いわゆる租税負担率という問題に重点を置いた、定義ではございませんが、一つの考え方が示されておる。ところが、その租税負担率というものも、さて景気によって分母、分子ともに変わってくるということになると、その限りにおいて、いわゆる突然大きな負担をもたらすような新税を考慮しない。この辺までは私も理解できると思うのですが、一方直間比率の見直し等はやるべきだ、こういう御提言もいただいておる。そういうところから、やはり理念として貫きつつも、厳しい中にもまずはいま御指摘のあったまさに歳入、なかんずく歳出構造に徹底的にメスを入れていく。
 私も思うのですが、中期収支試算とか、いろいろいままで出しましたのを見ましても、本当にそれなりのメスを入れたなあと思ってみますと、五十五年に出した財政収支試算のときに五十八年の歳出の計は何ぼになっておるかというと、試算によれば五十九兆一千億になっておる。ところが現実は五十兆四千億。そして、その次の年に出したものもなお五十八兆三千億、そして昨年お出しいたしましたものも五十四兆五千億。それで約五兆円というものが、これは一般歳出で見た方がいいのですが、三兆五千億になりますが、これがいわば当時の時点で推測できたものからすれば削減をされておる。それなりの努力は重ねてきたと私は思います。
 しかし、いま御指摘のとおり、やはりこれからは、ここのところまでは個人または企業に帰する問題だ、ここまでは地方自治体に帰する問題だ、ここまでは国自身の責任に帰する問題だ、そういういわゆる区分というものについても本気にメスを入れていかなければならぬ、それがある意味においては財政改革というものかなというふうに考えておりますので、そういう厳しい御叱正を心から私どもは期待し、それを受けとめて対応しなければならぬというふうに考えております。
#49
○米沢委員 今回の財政演説の中で「財政の立て直しは、単に財政赤字の解消にとどまるものではありません。それは、社会・経済の進展に合わせ、歳出・歳入構造の見直しを行うことにより、新しい時代の要請に即した財政の対応力を回復する財政改革でなければなりません。」こう述べておられますように、昨年の十二月の臨時国会における財政演説の財政再建という言葉が、今回は財政改革という言葉に変わって、またその中身につきましても、歳出構造の見直しというものを強調しておることは前回と変わりませんけれども、今回は特に歳入構造の合理化、適正化、行政サービスの受益と負担のあり方という観点からの基本的見直し、こういう点に力点が置かれているように見受けられるわけでございます。わずか二ヵ月足らずの間に大変大きな変化だと私は思う。
 だから、財政再建から財政改革という言葉に変わって、政府の財政再建に取り組まれる姿勢が、歳入構造の方にかなり力点を置かれる方向に変わってしまった。イコール、それは大臣の種々の発言を聞かしてもらってもわかるのでありますが、この財政再建から財政改革への変化は、増税なき財政再建というものを何とか軌道修正しようという一連の動きのような気がするのですが、いかがですか。
#50
○竹下国務大臣 これもやはり厳しい御叱正の一つだと私は受けとめております。
 確かに、私どもが臨時国会の際お話をいたしました。それで、十一月の二十七日に組閣本部へ招致されて中曽根総理から、大蔵大臣をお引き受けいただけますか、こういうお言葉がありました。そして、それにはといって条件がつけられました。それは、いわば行政改革というものに対して誠心誠意努力すること、それから二番目には、初めてそのとき、財政改革についてその主軸となって努力してもらいたい。そして謹んでお受けをいたします、こう申し上げたわけでございます。
 そのときに財政改革という言葉を使われたのが、私も非常に印象に残ったものですから、すぐ大臣就任の初会見のときに財政改革という言葉を使ってみたのでございます。これは政治部の方が多かった関係もございますが、ちょっとそれに対する反応にある種の期待を持って申しましたが、反応がなかったのです。そこで私も、どういう時点でこれに対する一つの考え方をまとめようかと思ったわけであります。
 いまも御指摘のとおりに、確かに財政再建というものについては、五十九年度特例公債からの脱却という一つのターゲットを置いて、それがすなわち財政再建です、こういう印象が余りにも強過ぎたのではないか。今日、数字の上でも明らかにこの五十九年脱却はギブアップいたしました、こう言わざるを得ない状態になったわけでございますから、そこで、やはり最終的には本当の財政の対応力を確保するという意味においては一緒であっても、この際新たに国民の皆様方の理解も得、そしてわれわれの認識を新たにするためにも一歩踏み出して、いわゆる本当の財政改革というものによって、すなわちぜい肉を切るということではなく、それ以上に突っ込んだ歳出構造の見直しというところからこれに対応しなければならぬ。
 そういう考え方になっておるときに、今度は予算編成、こうなったわけであります。予算編成になりますと、財政審なり税調なりからのもろもろの意見なりあるいは御答申をいただく、そうなると、やはりそれにおいては、この際そういう財政改革を行うならば歳入の構造の合理化というものもやるべきだ、こういう御意見なり御答申なりに基づいて、そういう言葉もさらに強調したということでございましたので、歳出カットやめました、これから歳入増の方へばかり力点を置きますというような考え方で申し上げたものでは必ずしもございません。
#51
○米沢委員 ところで、大蔵大臣は、この臨調に対して全面的に支持する立場にあるのか、それともいいとこどりをする立場にあるのか、それとも足を引っ張りたい立場にあるのか、教えてもらいたい。
#52
○竹下国務大臣 これはやはり臨調というものを、私自身かつての経験からいいましても、第一次臨調の答申をいただきましたときに、ちょうど内閣官房副長官をいたしておりました。本当にいいことだなと思いましたが、いま顧みて、それをどれだけ尊重したかと言われると、じくじたるものがある。そうであってはならないというような機が、それこそ機が熟しておったときに第二次臨調というものができた。その構成するメンバーから見ても、まさに尊敬すべきものである。
 そこで、いまその臨調に対する基本姿勢としてまずどこからやったか、こういいますと、やはりこの答申に基づくところの予算編成の姿であったのではなかろうか。数え方によって違いますが、九十なら九十くらい御指摘のあった問題をほとんど残さずやったもの、やる手段方法を確定したもの、そういうものにはなし得たではないかという気がしております。私の所管でいえば、まだここにございますのは国家公務員共済と他の共済との統合の問題とか、あるいは専売公社の問題とか、あるいはさらには地方支分部局の廃止の問題とか残っておりますけれども、やはりこれは最大限尊重して対応すべきものではないかというふうに考えております。
#53
○米沢委員 それで安心しましたけれども、五十七年の七月三十日の臨調の答申に「「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない」ことである、こういうふうに昨年の七月の答申に出ております。
 中曽根総理もことしの一月三十一日の会合で、増税なき財政再建という基本方針は堅持したい、臨調では租税負担率を変えない範囲で歳入構造の見直しを求めている、その基礎の上に立って判断していく、こういうふうに述べておられますから、いまいろいろと言われております直間比率の是正という問題も、少なくとも租税負担率を変えない範囲内で歳入構造をどうするか見直す、それがまず一番最初に手をつけられねばならない問題ではないかと思います。
 ところが、いま四囲の環境がどうも財政再建がむずかしいという状況の中で、直間比率の是正といいますと、何か大型消費税等を入れて直間比率を是正するという方向に筆が運び過ぎて、臨調の求める租税負担率の範囲内で歳入構造を見直すという、そのところが何か飛んでしまっておるという感じがするのです。先ほど言いましたように、税収構造の問題等でも、いまの租税負担率をそのままにしながら手をつけねばならないものの方が逆に多いという感じがしておるのでございますが、大臣の所見を聞かしてもらいたいと思うのです。
 特に五十六年は、御案内のとおり一兆四千億の増税をしましたね。五十七年は約四千億の増税をしましたけれども、増税はしたけれども実際増収になっていませんね。というのは、やっぱり税収構造そのものが問題がある。したがって、直間比率の是正は大型間接税をまず絡めて議論するのではなくて、その以前の問題として手をつけてもらわねばならないということを私は考えるのでございます。臨調にも、一言も増税なんということは書いてないですね。臨調を尊重される立場から、私は、大蔵大臣の、直間比率等々の是正に関して即大型間接税という、その議論をまず排除してもらいたいと思うのです。
#54
○竹下国務大臣 これはいま御指摘のとおりでございまして、「「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率」丁寧に「(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」これが私どもやはり増税なき財政再建というものの仮に定義、定義という表現は別としまして、それを言われた臨調さんのお出しになった文章の中で一番近いものという感じで受けとめております。
 ここで言う増税なき財政再建は当面の方策でございますので、中長期的には、今日いわゆる所得税減税の声も高いとか、そういう問題に対して対応しろという御答申も別にございますが、この租税負担率とは何ぞやという議論をしてみたわけであります。現にあの答申の中で、中長期的には租税負担と社会保障負担の合計の負担率は現状三五%程度より上昇することとならざるを得ないということも認められておる。
 そこで、私もこれについて勉強してみました。要するに、増税とはこの負担率の上昇をもたらすような税制上の新たなる措置というものをいろんな形で考えると、直間比率の見直しというような問題がここで増税という言葉のうちへは入らないのではないかというふうにも理解をしてみたわけであります。ただ、租税負担率とは、国民所得を分母として、国税収入と地方税収入をプラスしたものを分子とするわけですから、経済の変動によって非常に動くものであるということは、これは否定できない。だから、予測としては非常に困難である。何かないかというので、経済社会七カ年計画のときの二六ヵ二分の一を思い出して、それを当てはめてみようかをとも私自身思った。ところが、あれをつくられたときには別の、いわゆるかつての一般消費税(仮称)というものも下敷きにあったのではないかということになると、これも適当でない。
 そういうようなことで、結局、基本的にはとらないという観点であるというふうに考えまして、五十八年度の予算編成に当たっては、したがって、これを解釈しまして、新税による増収というものは念頭に置かないという考え方で編成をしたわけでございます。既存税制そのものに対する増収を期待するという精神で。
 したがって、いま御指摘のように、今後もやはり既存税制の中で、時期が来ればやめなければならぬものもそれは中にはございますけれども、その中にまず増収の期待できるものというものに着目すべきであって、ただ、税制そのものを学問的に否定してはいけませんから、もろもろの税目はもちろん検討課題として残すけれども、政府自身が着手していく問題は、いま御指摘の既存税制の中における増収ということにまずやはり主眼を置いて進むべきであるということに対しては、私も同意見であります。
#55
○米沢委員 もう時間もありませんが、最後に一言聞かせてもらいたいのは、先ほどもお話しになっておりましたように、経企庁長官が、増税の環境ではない、こういうような発言をされましたが、大蔵大臣としては、三兆とか四兆ぐらいの大型増税みたいなものがもし結果的に政府の結論になったときに、いま増税をするような環境にあるとお思いですか。
#56
○竹下国務大臣 塩崎国務大臣がおっしゃった発言は、いまいわゆる消費を対象にした税制というものを新たに行った場合には、景気の柱たる消費そのものを抑えていくという意味において適当な時期でない、それはそれなりの一つの見識だと私は思っておるわけでございます。
 したがって、税制調査会等でこれからいろいろ議論をしていただいたり、主管委員会たる大蔵委員会で私どもとこのような問答をしながら、国民の合意、選択がどこにあるかということを判断していく問題であって、最初からこのような税目に着目して増税をするということは、大蔵大臣としては最も慎まなければならない姿勢であると考えております。
#57
○米沢委員 終わります。
#58
○森委員長 蓑輪幸代君。
#59
○蓑輪委員 この一月二十八日に財政の中期試算というのが出されましたけれども、これまでの政府は、財政再建という公約を掲げていたわけであります。特に、五十九年度赤字国債発行ゼロというようなことが公約の重要な中身になっていましたけれども、総理大臣がかわりまして、この公約ががらっと変わってしまったというのは、一貫した政府ということから見ますと、非常に問題があろうかと思うのですね。
 そして、現在の総理大臣は当時の閣僚でもあったわけですし、五十九年度赤字国債、脱却ということが事実上不可能になったという点は、政府の失政の結果だろうと思うのですけれども、そういう事態を招いたことについての反省なり、どのような見解を大臣がお持ちになっているか、その点をお聞きしたいと思います。
#60
○竹下国務大臣 いままでお出ししております中期展望にいたしましても、その前の財政の収支試算にいたしましても、五十九年度特例公債ゼロということを前提に置いて、それを財政再建の一つのターゲットとしておったことは確かに事実であります。
 それができなくなった。今度の中期試算で明らかに数字でもできないということをお示ししておるわけであります。これはやはり失政であるかどうか。これは国民がこれを批判するところであるし、蓑輪先生は失政とおっしゃいます。私どもも、これが善政であったとは断じて思っておりませんが、不透明な国際経済の推移というものが見通しどおりにいかなかったという点は、もちろん否定するものではございません。したがって、そういう不透明な国際経済社会というものを見詰めながら、これからの日本の経済運営なかんずく財政運営を考えましたときに、新たなる覚悟で財政改革という目標を立ててスタートをした、決意を新たにしてスタートした、こういうふうに御理解いただければ幸いであります。
#61
○蓑輪委員 本来公債の発行を減らしていくという目標だったのがふやしてきたというようなことは、どのように言っても失政であろうと私は思うわけですけれども、そういう中で、結局それが福祉を切り捨てたり教育の予算を切り捨てたりというようなキャンペーンに使われてしまったのではないかというような問題点も感じるわけです。財政が困難だという中で減税も実現されない、人事院勧告の実施もされないというようなことでは、国民の信頼は本当に低下せざるを得ないわけです。
 今回のように公約が破綻してしまった原因はいろいろあろうと思います。見込み違いというようなものも中にあろうし、それから過大な見積もりをしたという点も特に重要だろうと思いますけれども、やはり消費不況が長引いていて、六年続いて減税が見送られている、人勧が凍結されているということで、全国各地消費の伸び悩みというのは、だれしも否定できない状況に来ているわけです。特に、家計を預かる主婦にしましても、当てにしていた収入が入らないということで、やりくりも大変困難だという状況に陥っております。
 こういう状況のもとで政府として、減税あるいは人勧、こういう問題について、やる必要がないと考えてやめてしまったのか、あるいは何としてもやりたい、精いっぱい踏ん張ったけれどもやれなくなったという結果なのか、その辺の姿勢の問題をお聞きしたいと思うのです。
#62
○竹下国務大臣 これは確かに一つのポイントでございまして、減税を見送った、これは見送ってやろうと思って見送ったわけではもちろんございません。
 これについては、まずいろいろ議論をいたしました。これは確かに、幹事長・書記長会談から始まって小委員会にずっと継続されて、今日なお議論されておる問題であります。事の重要性は十分知っております。だから、総理の答弁でも、そういう希望の強いことは承知いたしておりますという前提の上に立って御答弁になっておるわけであります。しかし、いま税制調査会等におきましていろいろな国際比較もしていただいたり、五十六年度でいわば所得に対する所得税負担割合は、上昇してきてはおるが国際的には四・九%でなお低いとか、歳出のカバー率が六四・一%と異常に低い水準である、そういうことからして、結論的には見合わさざるを得ないという意見に到達したわけでございます。
 したがいまして、この問題については税制調査会の答申でも、五十九年度以降できるだけ早期に税制全体の見直しを行う中で所得税の課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行う必要がある、こういう御答申もいただいておりますので、その線に沿ってこれからも努力をしなければならぬ。
 それから人勧の問題、これもたびたび議論されるところでございますが、私が内閣官房副長官をしております当時は九月実施でございました。年々いろいろ議論をして八月実施にし、七月実施にし、六月実施にし、五月は飛び越しまして、それから四月実施、四十五年以来とにかくそれが一つの労使の熟した慣行として継続してきた。しかしながら、おととしでございましたか、いわゆる指定職の方は別とするとかボーナスは旧ベースにする、そういう部分的な、完全実施でない問題もありました。
 だから、その昭和四十五年以来の物の考え方というのは、やはり今日も基本的には持っていなければならぬ。しかし、どだいこれだけのいわゆる財政状態、加うるに、これも理屈を言うわけではございませんが、五%の義務勧告以下の数値であるというところで、この際、行政改革を行うためにまず公務員の皆さん方に率先して痛みを分かっていただいた、こういうことになるわけです。
 私も、このことが予算編成の中で一番苦しいことでございました。ある公務員が、いよいよ予算が終わってうちへ帰った。奥さんに「いやあ、きょうやっと予算が終わったよ」「それはよかったですね」「とうとうベースアップを抑え込むことができた」と言ったら、その奥さんは、いまの簑輪さんの主婦の立場の主張のように、私の家計簿を見てください、こう言われた。その話を聞いたときに、私も大正生まれでございますので、いささか頭は古くなっておるかもしらぬが、ああ、国民に対する奉仕者たる国家公務員、国家目的に従ってあえてみずから耐え忍んだと言えば国家公務員たる者の範とすべきではないかという感じもまた持つし、そういうことをあわせてつけ加え申し上げておきたいと思います。
#63
○蓑輪委員 まず減税の問題ですけれども、これはきょうの新聞を見ますと、首相が五十八年度実施を固めるというような報道がされておりまして、「五十八年度中に所得税減税を実施する意向を固めた。」そして「首相のこうした考えは既に竹下蔵相、田中政調会長らにも伝えられ、大蔵省に財源措置の検討を指示した。」というように報道されておりますので、これは五十八年度減税が実施される方向が進んできたのではないかという期待感を持つわけですけれども、その辺について現状はいかがなものでございましょうか。
#64
○竹下国務大臣 これは、日本経済新聞の記事についてでございますが、官房長官の定例会見でも否定されたようでございます。が、総理がいつもお答えになっておりますように、いまの減税を望む声が強いことはよく認識しておるが、しかし、こう言ってお答えになっております。
 私どもといたしまして、五十八年度中に減税を行うべく、その準備とか財源とかについて検討しろという御指示を受けた事実はございません。
#65
○蓑輪委員 そうしますと、五十八年度の減税というのはやはり大臣の頭の中にもなくて、五十九年度以降全般的な見直しの中で減税をということになるのだろうかというふうにも思うのですけれども、減税と絡めて常に問題になってきますのが、直間比率の見直しという問題を出しながら、いわゆる増税問題ですね、大型間接税の導入があり得るんではないかということが非常に私どもの大きな心配になっているわけです。
 この辺は、先ほど来直間比率の問題については、結果としてそうなるものであって、そういうものを目指すということではないんだというような御答弁がありますけれども、しかし見直しをする、直間比率を見直してフィフティー・フィフティーなりあるいは六、四なりにするということは、目指すということから言えば、結果としてそうなってしまったということとは違うようにも思うのです。大臣の前の答弁のときにも、直間比率の見直しというようなお言葉がございますけれども、これはやはりそういうものを目指して増税を考えていくというふうに受け取れるのですが、いかがでしょうか。
#66
○竹下国務大臣 これは、私も原則的に申し上げたのは、いわゆる直間比率というのは、同じ税制であっても、そのときの経済の推移によってその比率というものがどんどん変わっていく。先ほど来貴重な御指摘があったように、所得減税がないから、だからこっちの比重が高まっていく、これも結果としてそうなっておる。そういうところに着目をいたしますと、いかにもこの推移から見てもその比率が結果として高くなり過ぎておるのではないかというと、そこにやはり着目して何らかの検討を加えなきゃならぬというのが、直間比率の見直しというものではなかろうかというふうに思っておるわけであります。
 そこで、直間比率そのものを見直すことがイコール大型間接税かということになりますと、これも先ほど来問答をいたしておりましたが、大型間接税とは何ぞやということに対するおぼろげながらの定義をいろいろつくってみると、幅広い消費を対象にして、しかもかなり大きな額の税収の上がるものということになりますと、大きいとは何ぞや、こういう議論にもまたせんじ詰めていけばなっていく。
 だから、かつていわゆる一般消費税(仮称)のようなものにおいて考えた税額等が見込まれるようなものを仮に大型間接税といたしますならば、そういうものは全くいまは念頭にないというふうに認識していただいて結構ではないか。で、直間比率ということを言いながら、徐々に徐々に世論を大型間接税やむなしという方向へリードしていくのじゃないか、事ほどさような賢さは不敏にして竹下登にはないということを御理解いただきたいと思います。
#67
○蓑輪委員 そういうふうな意図があるとかないとかということは、大臣が答弁でされるかどうかではなくて、客観的事実から国民が判断することだろうというふうに思うのですね。
 再三再四にわたって、いわゆる一般消費税(仮称)、これはやらないというように言明はされておりますけれども、それと少しでも変わっていればこれはもう検討に値する問題であるという、先ほど来の答弁をお聞きしておりますと、ほんのちょっとでも毛色が変わっていれば、これは国会決議に反しないのだというような、これは詭弁とでも言えるようなことになってしまうのではないか。
 なぜ国会決議でそういうことがされたのかと言えば、やはり一般消費税(仮称)ということに代表されて、そういう趣旨の間接税というものは否定すべきであるという意思だと思うのですね。ですから、ちょっとでも変わっていればいいというようなのは、いかにもこすっからい論議だと私は思うのですけれども、その辺のところをもう一度お答えいただきたい。
#68
○竹下国務大臣 あの国会決議をつくりますときに私は大蔵大臣でございまして、本当にずいぶんここで相談をさせていただきました。
 といいますその念頭にありましたのは、要するに、これはなぜだめか、それには国民の理解を得ることができなかったという言葉を入れさせていただいたということ。それから、私自身が非常に苦悩いたしまして、(仮称)なんていまでもしつこく言っておりますのは、いわゆる税制、学問的に消費そのものを対象にしたものが全部否定されるということだけは、後の世の為政者あるいは納税者にもこれを伝えたら罪まさに万死に値する、こう思ったから、いわゆる消費一般を対象とした税制そのものを否定してはいけない、これは私の学問に対する良心であったというふうにも思うわけですね。それで否定をさせていただいたのです。だが、されば「が」と「を」が違っておったものならもういいか。そこまでは私も、いまこすからいというお言葉がありましたが、こすからくはできておりません。非常におおようにできております。
 したがって、何度も申しますように、何でもかんでも少しでも違ったものならいいということではなく、むしろ税制調査会等権威ある調査会に諮問申し上げるときに、この範囲はいけませんよ、この範囲は審議の対象にはございませんよと言って諮問することは控えるべきだ。偉い人ですから、みんなそういうことは国会決議があることも百も承知した方で御議論していただくわけですから、それをこの範囲は除いて審議してくださいということは言えないという意味において申し上げているのでありまして、決してこすからくはなく、きわめて正々堂々といたしております。
#69
○蓑輪委員 まあそういうような増税問題については、結局国民の皆さん方が、現在減税要求がある中で、それと絡めてやられるのではないかという不安がありますので、その辺は厳しく問題点を指摘しておきたいというふうに思います。
 続いて、政府の方は、この所得税減税や人勧の実施を見送りながら、予算編成の中で、軍事費などあるいは大企業に対する補助金などは非常に多額な予算が組まれているわけです。財政非常事態宣言というものが出されまして、大変厳しい、そして国民の皆さん、犠牲を分かち合ってくださいと言いながら、軍事費が異常な伸びを示しているということについて、納得できるものではありません。それで中曽根内閣において、竹下大蔵大臣も参加して予算編成を組まれた中で、財政再建とかそれから国民生活を守るというような点よりも、軍事費がうんとふえているという点で、私は非常に驚きと怒りを覚えざるを得ないわけです。
 所信表明の中で、五十八年度予算について「聖域を設けることなく」「徹底した歳出の削減を行いました。」というふうにおっしゃっておられますけれども、聖域というのは一体どういうことなんだろうか。これを別扱いにして大幅な予算を上乗せしていくということは、それはまさに聖域というふうに言われるのではなかろうか。一体、聖域というのはどういうことなのか、御認識を伺いたいと思います。
#70
○竹下国務大臣 まあ聖域とは、読んで字のごとく、聖の域ということになりますが、特別扱いしない、簡単に言えばそういうことだと思うのでございます。したがいまして、防衛費を特別の扱いをしたという基本的な考え方には立っておりません。
#71
○蓑輪委員 軍事費を特別な扱いをしたことがないと言われましても、予算のその伸び率等、具体的な数字がもうちゃんと、軍事費は六・五%増、一方、社会保障関係費が〇・六%、そして文教関係はマイナス一・一%だという数字が出ているわけですね。これを見て特別扱いじゃないと言われても、私どもは、特別扱いという言葉の意味とは、そうすると一体何だろうかと逆に思わざるを得ないわけです。
 五十一年十一月ですか、「当面の防衛力整備について」ということの閣議決定の中で、「防衛力整備の実施に当たって」「当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとして」と、いわゆるGNP一%以内という閣議決定がされているわけですね。それで、ことしはその一%の枠の中に入っておりますけれども、このままでいくならば、五十九年度にはその一%を突破するというのはもう確実であるというふうに言われる状況にあります。
 そこで、今度はGNP一%という枠の方を変えてしまおうという動きが出ておるようですけれども、そういうふうにいたしますと、何のための枠かということになってしまうわけですね。枠に近づいてきたら、枠の方がどんどん大きくなっていく、土俵が自分の動きに合わせてどんどんと広がっていくというようなことであるならば、枠の意味は全くないというふうに言わなければならないと思います。
 財政が大変厳しい事態を迎えている、危機であるという中で、このGNP一%というのは、もうそれでも私どもは非常に多いとは思っているのですけれども、せめて最低この一%を守るというのが、財政当局としてもあたりまえではないかと私どもは思いますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
#72
○竹下国務大臣 予算の御批判を交えながら一%問題に対する御質問に至ったわけでございますが、確かに予算は、そのときどきの経済情勢に対応いたしまして、プラスもあればマイナスもあります。プラスは、経済協力の七、防衛の六・五、エネルギーの六・一、社会保障の〇・六、しかし、中身は八%もうんと伸びたものもあります。公共事業が横ばい、その他がとにかくそれなりにマイナス。しかし、中身の点についてアクセントはつけてきたつもりでございます。したがって、比率だけでもっていわゆる例外扱いだという批判は必ずしも当たらないというふうに思うわけでございます。
 そこで、一%問題でございますが、これは昭和五十一年に国防会議それから閣議決定、私も記憶いたしております。これが私の側、財政当局から考えて、GNPの非常に低いときはもっと伸びの大きかったことは過去にはございますが、その後予算編成に当たって、やはり一%というのは一つの歯どめとしての役割りを果たしたなという感じは、私ども率直にございます。しかし、将来にわたっての問題になりますと、その必要が具体的に生じた事態において検討すべき問題であって、現時点において、私はその議論をする時期が到来しておるとは思えません。
#73
○蓑輪委員 現実にすでにそういう論議がもう国会でされているわけですから、その時期に達してないと言われても、ちょっと納得できないわけですけれども、いずれにしましても、GNP一%という枠、この枠が簡単に取っ払われるようなことになるならば、中曽根内閣というのは、要するに、国会とそれから国民が平和憲法のもとで一定の合意に達している問題を次々と取っ払っていって、軍拡そして軍事大国化を目指しているのだという批判にさらされるのは当然だと思うのですね。
 私どもも、いろいろなところで政治の問題を話すに当たりまして、家庭の主婦、子供を持つお母さん方は、一体このままで行ってどうなるのだろうか、本当に不安を禁じ得ない、大変心配だという声が井戸端会議で出てくるような状態になってきているというのが最近の実態なわけです。したがって私は、やはり歯どめをなくしてしまうというようなことは絶対にしてはならない。
 それで、特に昨年来、反核軍縮の動きが大きく盛り上がってきておりまして、これに対する国民の期待も強い中でございますので、私は、ぜひ大蔵大臣が、財政を預かる責任者という立場で、平和問題と絡めてそういう歯どめを守るという立場で総理大臣に迫っていただくことを期待したいと思うわけです。その辺の御回答をいただきまして、質問を終わりたいと思います。
#74
○竹下国務大臣 再々お答えするようですが、私は、GNPの一%というものが予算編成に対する、財政当局側から見た一つの歯どめになったというふうには思っております。そして、いまそれを変える必要はないというふうに考えております。蓑輪さんのお考えになっているいわゆる平和の問題等、その視点の相違はありましても、謹んで拝聴させていただきました。
#75
○蓑輪委員 終わります。
#76
○森委員長 小杉隆君。
#77
○小杉委員 先ほど来、直間比率の問題が議論されておりますが、いままで大蔵大臣の本会議あるいは予算委員会等での発言を整理してみますと、こういう文脈になると思うのですね。
 まず第一に、直間比率については見直しの時期が熟しているということですね。それから、大型間接税と所得税減税との抱き合わせということ。それから次に、その直間比率は七対三から大体五対五にする、そしてもし大型間接税とすればEC型の付加価値税というような文脈が、いままでの答弁の中から浮き上がってくるわけでございますが、これに対しまして経済企画庁長官が、いま大型間接税を導入すれば消費を冷やしてしまう、そして一方、所得税減税で消費をふやそうとしても、結局この大型間接税の消費を冷やすというマイナス効果ということから考えて、その効果については疑問があるというような発言だったと私は思いますが、その辺について大蔵大臣はどういう御感想をお持ちか、お答えいただきたいと思います。
#78
○竹下国務大臣 いま小杉先生が前提としておっしゃいました中で、若干そのことを触れておかなければなりません。
 確かに五十四年当時からいたしますと、五十五年の十一月、五十六年の十二月、五十七年の十二月の税制調査会からの答申、そして臨調の答申等々を素直に読んでみましても、いわゆる直間比率というようなことに対する勉強をする環境が熟したということは、私は言えると思っております。
 そこで、次の論理として展開なさいました、所得税減税を行うために、それと抱き合わせの形で大型間接税をやるんじゃないか、新聞にもそういうとり方で書いている向きもございましたが、私はいまの場合、再三ここで議論しましたように、大型間接税というものを具体的に念頭に置いておるという考え方はございません。
 それから、七対三の五対五というのは、これも再三申し上げますように、直間比率というのは先験性を持って置いておくものではなくして、結果として出た数字であるという意味において、確かにイギリスなどは約五対五という感じでございますけれども、それが念頭にあるということではなく、そういう数値はもちろん知っていなければならぬというように考えておるにとどまるわけであります。さらにEC型のいわゆる付加価値税というものは、学問的にこれを検討の対象から外すことはできないが、いまそれを念頭に置いて実行しようという前提の上にこれを検討していただこうというふうに考えているわけではないというふうなことを整理して申し上げておるわけでございます。
 そこで、塩崎国務大臣の御見解でございますが、やはりそれは総合的にそのときの経済を考えて議論をすべき課題でございますので、私は、塩崎さんの立場から見た場合、あの人の考え方からして、消費一般にかかる税制を不況時において行うならばなお消費を冷やす方向に機能するのであって適切でないという議論は、一つの議論として承るべき議論である。別に閣内対立とかそういう意味の問題とは違うというふうに理解をしております。したがって、消費に関する税制というのは、結局そのときの財政経済に及ぼす影響などを十分考えた上でやるべき課題であるということはよく承知しておるつもりであります。
#79
○小杉委員 大蔵大臣としては、当然そういう答弁にならざるを得ないと思いますが、私が率直に前提として申し上げたことを国民は端的に肌で感じ取って危惧をしているわけでございます。
 そこで伺いますが、先ほど来出ておりますように、臨調では租税負担率をふやさずに直間比率を見直せということでございますが、どうも大蔵省なり大蔵大臣の考え方は、直間比率を見直す機会に負担率もふやして財政の再建を図ろう、つまり、直間比率を見直すことによって税収増を図ろうという考え方でございますが、私は、直間比率を見直す場合に負担率を変えないで考えるということならば、まだ国民のコンセンサスを得られやすいと思うのですけれども、所得税減税をちょっぴりやって大型間接税でどかっと増収を図るということになっては大変困るわけでございますが、その点についての考え方をお伺いしたいと思います。
#80
○竹下国務大臣 これは先ほども申し上げたわけでございますが、確かに、いま増税なき財政再建とは何ぞやというところに、臨調で申されております租税負担率の問題。
 そこで私どもも、一体その租税負担率をどこにとるべきかということでいろいろ議論もしてみました。私が申し上げましたように、経済社会七カ年計画の二六ヵ二分の一というようなものも一応数値として挙げてみたのですが、そういうわけにももちろんなかなかいかない。やはり分母、分子が絶えず変化するというところに問題がありますので、大きく直間比率を変えるような新税等については、これは原則として念頭に置くべきものではないというふうに理解をすべきではないかな、かちっとした租税負担率というのは非常につかまえることのむずかしい問題ではないかという感じがしております。これを上げて何とかしてやろうというような考えを前提に置いているわけではございません。
#81
○小杉委員 よく大蔵省は、たとえば租税負担率とか直間比率というのを諸外国と比較をされるわけですが、やはり日本と外国とは違うのであって、たとえば、いま租税負担率が低くても、当然これから国際社会の中での責任、役割り分担がふえていく、あるいは高齢化社会が諸外国に比べて猛スピードで進んでいくということを考えますと、ほっておいても、どんどん租税負担率なり社会保険料の負担率が上がっていかざるを得ない。それを考えると、いまのうちに見直すべきものは見直しておけというのが、行政改革なり臨調の生まれてきた理由だと思うわけです。
 私どもから見ますと、安易に大型間接税とか直間比率の問題が出されるということは、行政改革が非常におろそかにされる懸念を持っているわけです。いままで五十六年度、五十七年度、五十八年度の行政改革に対する大蔵省の努力はそれなりに認めたいと思いますし、マイナスシーリングなどをやって非常に努力をされていることはわかるわけです。それは、既成のいままでの枠の中での切り込みについては、最大の努力を払ったと私は評価しています。しかし、このような時代になりますと、既成の考え方だけじゃなくて、新しい一つの発想といいますか、これは大蔵省の役人ベースじゃなくて、政治家としての大蔵大臣なり総理大臣の政策的な決断というか、そうしたものが必要じゃないか。
 たとえば三Kにいたしましても、国鉄なんかも毎年七千億とかー兆円の補助金を出していますが、一回これをばさっと削ってみたらどうか。国鉄などもいろいろ改革案をやっていますが、やはり頭を切られないと、なかなか役所にしても公社にしても、口では予算を削る、削ると言っても、糧道を断つといいますか、全体の枠を抑え込まないと、メスは入れられないわけですね。いままでだって必要があってどんどん予算を出しているわけですから、そういうふうな思い切った一つの政策の選択というのが必要じゃないか。
 あるいは、そのほかの三Kの食管会計の問題にしましても、あるいは健康保険なんかの問題にいたしましても、たとえば今度老人保健法で一部患者負担というのを導入しました。あれも、すべての医療に患者の一部負担というものを導入することによって、いまの十四兆円の医療費を一割あるいはその程度削減できるかもしれない。
 というようなことを考えますと、従来の枠の中だけで節約、節約で予算を切り込んでいくということではもう限界が来ている。もしいままでと同じ姿勢でいけば、当然大型間接税を導入して新たな財源を求めざるを得ないということになってしまうわけで、私どもとしては、やはりこの辺で政策の転換といいますか、そういう政治的な決断というものが求められていると思うので、そういうものなしに、ただ安易に直間比率の見直しというのを持ち出すということであれば、私は、国民のコンセンサスは得られないと思うのです。そういう点についての大蔵大臣の見解をお伺いしたいと思います。
#82
○竹下国務大臣 基本的に同感です。
 まず国民に新しい負担を求めるということが、仮に現在のいわゆる制度、施策の水準を維持するために必要であるという前提に立った場合にも、いわゆるみずからが切るだけ切ってなおという時点にならなければ、コンセンサスは得られるものでないということは基本的に私も同感でございます。したがって、おっしゃる意味が、まさに財政再建から財政改革への一歩踏み出したその基本理念にほかならないではないかと私も考えますので、具体的に三K等々御指摘がございましたが、いまの精神を体して、これに対応しなければならない。
 ただ、いつでも行き詰まりますのは、何でもかんでも、たとえば一律削減とか幾ら削減とやった場合のそのひずみの調整というものが、またいろいろ複雑な問題もありますので、中でばっさりやるのと、きめ細かくやるのとの融合調和の中に理想的な姿を模索し続けていかなければならぬと考えております。
#83
○小杉委員 終わります。
#84
○森委員長 次回の委員会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後一時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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