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1982/02/23 第98回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第098回国会 大蔵委員会 第4号
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1982/02/23 第98回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第098回国会 大蔵委員会 第4号

#1
第098回国会 大蔵委員会 第4号
昭和五十八年二月二十三日(水曜日)
    午後一時三分開議
 出席委員
   委員長 森  美秀君
   理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君
   理事 中村正三郎君 理事 伊藤  茂君
   理事 野口 幸一君 理事 鳥居 一雄君
   理事 米沢  隆君
      熊川 次男君    小泉純一郎君
      椎名 素夫君    藤井 勝志君
      森  喜朗君    森田  一君
      柳沢 伯夫君    山崎武三郎君
      与謝野 馨君    阿部 助哉君
      塚田 庄平君    戸田 菊雄君
      広瀬 秀吉君    堀  昌雄君
      柴田  弘君    玉置 一弥君
      正森 成二君    小杉  隆君
 出席国務大臣
        大 蔵 大 臣 竹下  登君
 出席政府委員
        大蔵政務次官  塚原 俊平君
        大蔵省主計局次
        長       窪田  弘君
        大蔵省理財局長 加藤 隆司君
 委員外の出席者
        大蔵省造幣局長 石川  周君
        大蔵委員会調査
        室長      大内  宏君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 造幣局特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)
     ────◇─────
#2
○森委員長 これより会議を開きます。
 造幣局特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置一弥君。
#3
○玉置委員 大臣は大変お忙しいということで時間が限られておりますので……。
 昨日もいろいろ集中的に論議をされましたが、今回の造幣特会の取り崩し、これについては減税絡みの問題が非常に残されておりまして、そういう面でわれわれとしても、五十六年の当初からこういう話がありながら、今回五十八年になって初めて取り崩されるということになったわけでございまして、これまでの減税に対する政府・与党の取り組み姿勢、それと今回の造幣特会の取り崩しという両方の相関関係といいますか、考え方の相違、その辺についてお聞きをしていきたいと思います。
 当初、五十七年度の財源、その前に五十六年度の減税、あるいは五十七年度の減税という部分で、野党が四党統一ということで減税の要求をしてまいりましたけれども、その当初の政府の考え方がいま時点で変わってきたのかどうかという点について質問したいと思います。五十六年の十二月に大蔵省が取り崩しの検討を初めて行ったというようなお話を聞いておりますし、今回残高が一兆三千億円にも達しているというようなところから、いままでなぜ財源として注目をされなかったかということについてもお聞きをしたいと思います。
 そこで、要点をしぼりまして、まず五十七年度予算編成に関して取りざたをされたけれども、取り崩しが行われなかった。これはなぜなのか。減税にも多分絡んでくると思いますけれども、その辺についてお聞きをしたいと思います。
#4
○竹下国務大臣 玉置委員、いろんなことを御承知の上でのお尋ねであると思います。
 率直に申しまして、この問題があるいは減税財源として、もとよりそれを特定するまでもなく、税外収入の一つとして外為特会の運用益の問題でありますとか、いろんな問題と一緒に本委員会等においても議論されておったことは事実でございます。
 やはり財政当局として考えますことは、一番心を痛めるとでも申しますか、一つには、いわば過去の国民の蓄積というものを取り崩すということに対する良心の苛責とでも申しましょうか、それからもう一つは、後年度の納税者に負担を回すという、たとえば公債政策、そういう場合における良心の苛責とでも申しますか、そういう二つの点はやはり財政当局者としては一番心を痛めるところであろうと思うのであります。その意味において、これは昭和二十五年設立された制度とはいえ、長い伝統の中で補助貨幣のいわば信認性というものを維持してきたという意味、そして、それはまた貴重な財投の財源としても運用されておるということに対する抵抗感が確かにあったと私も思います。
 しかし、それを減税財源として特定した場合には、いわば一過性の財源ではないか、こういうことが考えられました。そうして、いま御指摘になりました、正式に資料として検討しておりますといって提出したのはたしか五十七年の六月であったと思いますが、これもすでに正式に資料としてお見せいたします今後の税外収入の貴重な財源の一つとして検討しております、こういうことを申し上げたわけです。その後、五十六年度決算の繰り戻し等を念頭に置いた場合、できるだけ、一遍限りの財源とでも申しましょうか、そういう意味で公債発行の増額ということ以外で措置したいということから、有力な財源として浮かび上がってきて、最終的にきょうこのようにして御審議をいただくような経緯を経てきたというふうに御理解をいただきたいと思います。
#5
○玉置委員 確かに、いますぐこのお金があるものではないというようなことはよくわかるのです。しかし、五十六年に論議がされ、そして五十七年、予算のときと減税要求のときと二回にわたりましてお願いをしたような形になっております。その辺から考えますと、ある程度の思い切りがあれば、いつでも取り崩せたのではないかというふうに思うわけです。
 われわれの側から見ますと、やはり減税要求の財源問題、これがもう二年越し、もうすぐ三年越しになりますけれども、こういうことで減税要求がなかなか受け入れてもらえないということにもつながってきているわけでございまして、やはり昨日の論議の中にも出ておりましたけれども、いまの減税に対する考え方、これは財源の問題は確かに事務当局としてはありますけれども、各政党間で見ていけばまさに政治問題ではないかというふうに思うわけです。今回も、きょうの夕方あたりに予算委員会の方に対して自民党・政府の方から回答が出るというようなお話を聞いておりますけれども、大蔵大臣として、政治家の竹下先生として、この減税問題に対して、いま本当にわれわれは必要だと思っているわけでございますけれども、どのように判断をされるか、その辺についての御意見をお伺いしたいと思います。
#6
○竹下国務大臣 非常に広い範囲からする政治的な意味を込めた御質問でありますが、私ども、昨年たまたま私は自由民主党を代表して幹事長・書記長会談に臨んでおりまして、そしていろいろな場合を想定して政調、政審会議にお願いした文章に基づいて議長見解ができて、いわばこれは今後でございますから、五十七年のあの時点以降、もちろん五十八年も含めての課題として御検討いただいたわけであります。その御検討いただいた中で、恒久税制であることとか赤字国債はこれを対象としないこととか、いろいろな専門家さんのお集まりでございますから、大変高度な議論が行われてきた、そのことをやはり政治的な重みとしては大変に痛感をいたしております。
 そして一方、いま御指摘のあったように、減税問題というのは、いわば銭金だけの問題ではなく、言ってみれば、国会の場はもとよりとして完全な政治問題ではないかという御指摘でございますが、私も、認識としてはそのとおり受けとめるべきであるというふうに思っております。何分長い間据え置いたままになっておる状態、いろいろなことがございます。一方また考えてみますと、本当にわが国の今日の所得税というものが、世界同時不況の中で悩む他の先進国と比べた場合には、いわばがまんの哲学ではございませんが、まだそれなりに対応可能のものではないか、こういう考え方も一方にはあります。
 そうして、種々検討された結果、一応政府として権威ある機関と考えます税制調査会においても、見送らざるをやむを得ないという御意見が大勢を占めた。そうして税制調査会の答申を見ます限りにおいて、五十九年度以降それにこたえるように幅広い検討をしろと言われること等を考え、いま御審議いただいておる予算並びに関連法案等につきましては、現状においてそれをベストとして御審議をいただいておるわけであります。
 したがって、いま減税という問題が大変要請が強いという認識はありますものの、これに対して予算修正を伴うような私どもの直ちの考えがまとまっておるわけでもございまぜんし、高度な判断から各党間の協議ということが行われておる現段階といたしましては、その推移を見守っていくべきではないか。そうして、もちろん、どういう形でそれが出てくるかはハウス自体でお考えいただく問題といたしましても、その結論に対しては尊重していくべきだという立場をとるというのが、私もいま玉置委員にお答えする限度いっぱいの御答弁ではないかな、こういうふうに考えております。
#7
○玉置委員 いまの大臣の御答弁では、五十三年以降据え置かれております特に給与所得者の処遇、これについては十分認識しているというふうに受け取っていいかと思いますが、それでよろしいですか。
#8
○竹下国務大臣 いわゆる課税最低限の問題についての御言及だと思いますが、そのことは十分認識しております。そしてまた、税制調査会の答申を見ますと、さらに、いわば累進構造等に対してもやはりそれなりの検討が指示されたというふうにも理解すべきではないかなと考えております。
#9
○玉置委員 大蔵省から出されております資料の中の財政試算によりますと、五十九年度はこのままいくと五兆四千億ぐらいの歳入不足が出る。そして、六十一年になりますと十一兆二千億近くの歳入不足が出るというお話があるわけでございます。いまぽつぽつとちまたでは、間接税の導入というようなことがいわゆる直間比率の是正として出されてくる。われわれの是正は、従来ですと、直接税が多いからそれを減らした分だけ間接税を何とかというようなことで考えているわけでございますけれども、大蔵省当局はどうしても減る方向では検討しない、大体ふえる方向にしか考えてないということで、当面ふえる部分だけを見ていこうというふうに、この不足を埋めるために行われるであろうと推測をされるわけです。ところが、いまお話がございましたように、前大蔵大臣の渡辺美智雄さんが、累進課税率については見直しをしていかなければいけないというお話をされまして、税調の方でも、いま大臣から御答弁があったように、累進課税率の見直しということが言われてきたわけです。
 いままでの所得者層の特に古い、四十六年ぐらいからずっと年収の比較をしてまいりますと、平均給与でも四十六年には百五万円ぐらいだったと思いますけれども、それが五十年には二百万になり、いまでは三百万を超えるというふうに上がってきたわけです。それと同時に、いわゆる中間管理者といいますか、いろいろな職場で働く勤続年数の長い方、経験の豊かな方、あるいは管理職として大変な仕事をされている方、そういう方々の年収が大変大きく伸びてきております。私たちの仲間にもいろいろ聞いてみたわけでございますけれども、そういう世代になりますと、住宅問題あるいは教育問題、それぞれ出費のかかる度合いが非常に激しくなっているということもあるわけでございまして、私自身、課税最低限の見直しも当然必要だと思いますけれども、それ以上に累進構造の見直しをやらなければ、非常に努力をされているゾーンについて大変な負担、むしろ生活に響くような負担というものがあるのではないかというふうに感じているわけでございます。
 それについて、前大蔵大臣の渡辺さんは累進課税率の見直しを積極的にやっていきたいというようなお話をされておりましたけれども、竹下大蔵大臣として、累進課税率の見直し、いまのお話では五十九年度以降に手がけるようなお話がございましたけれども、その辺について具体的な考え方がございましたら、お示しをいただきたいと思います。
#10
○竹下国務大臣 私、最近この言葉の中で、いろいろ本当に正しい言い方かどうかなと思っている問題の一つとして直間比率という問題があります。
 同じ制度、税制のもとにおいても、景気の変動等において結果として変わってくるのが直間比率なのかな、だから先験的に、初めからそれをアプリオリに設定しておくものではないのかな、こういう感じもいたします。ただ結果としての姿を見ましても、確かに七、三ということでございますから、地方税の問題を除くアメリカを別として考えれば確かに高いかな、こういう感じがいたします。
 したがって、それらについて、かつて直間比率を見直すといえばすぐ一般消費税をやるのじゃないかな、こういうことでございましたのが、昭和五十五年十一月、そして五十六年十二月、五十七年十二月というふうに税調の答申を見ましても、それらを対象にして検討すべきであるという指摘がありますし、また臨調の答申を見てもそういう指摘がありますので、そういう意味においては、勉強する環境は五十四年当時私が大蔵大臣をしているときとはずいぶん違ってきたな、こういう感じは持っております。
 したがって、さらに所得税のいわゆる累進税率に対する考え方でございますが、これは国会で答弁するのに適当な言葉かどうかは別といたしまして、よく最近言われる言葉の中に、いわば独身貴族に熟年こじきでございますか、あるいは若年天国、熟年地獄とかいうような言葉がございますが、ある意味において、これは累進税率というものを、すなわち努力と報酬の一致、そしてそれが勤労意欲の減退、高揚につながっていくという角度から使われた言葉かなという感じもしないわけではございません。したがって、やはり私は、いまの御指摘の点については数字の上でも見直すべき課題だ、ある意味においては、税調からいただいておる御指摘は当を得たものであり、いまの本院において御指摘をいただいたことも当を得たことではないかというふうに理解しております。
#11
○玉置委員 普通の労働組合なりあるいはいろいろな団体にかからないゾーンといいますか、サラ金でいうとグレーゾーンみたいなものですけれども、どちらにもかからない、そういう層がかなり企業の中で努力をしているわけでございまして、その辺のいわゆる負担といいますか、非常に体を使い、特に最近病気になる方も多いという話も聞いておりますし、それだけにやはり報われるような形をとっていかなければいけないと思っておりますので、何とかその辺を今後の改正の中での頭の中にぜひ入れておいていただきたいと思います。
 いまちょっとお話がございましたように、間接税がいわゆる一般消費税(仮称)という形で言われておりましたけれども、国会決議では一応やらない、これは一般消費税だけだと竹下大蔵大臣はいつも大体お考えになっているようでございます。これは一般論としてお聞きをいたしたいと思いますけれども、いまの日本の国民の税に対する考え方あるいはいままで特に消費的な要素ということでやっておりましたのが物品税あるいは酒税等、そのぐらいしかないということを考えてまいりますと、たとえば先ほどの中期試算によりますと五兆四千億足りない、あるいは六十一年になると十一兆足りない。
 いまの行政改革の効果を見ておりますと、行政改革にはとても期待がなかなか金額の効果としては出てこない。精神面では時間をかけてやっていこうというようなことになるかと思いますけれども、これはあくまでも一般論としてお答えをいただきたいのですけれども、いま日本で消費税あるいは間接税を導入した場合に、ことし計画をして来年から実施ができるかどうか、これについてお答えをいただきたいと思います。
#12
○竹下国務大臣 これはなかなかむずかしい議論だと思うのでございます。
 私が非常に注意して物を申し上げておりますのは、この税制調査会というのは、一応役所側からいえば大変権威のある機関でございます。そして、これに対しては三年ごとに改選がこざいまして、そのまず最初の会議に諮問がされるわけです。その政府諮問というものは、国、地方を通じての幅広い税制のあり方についてという大変グローバルな諮問をするわけです。したがって、そういう権威あるところへ、この問題は議論されてもらっちゃ困りますとか、これは議論していただいていいとかいうようなことはすべきでないなと思っております。しかし、本委員会で議論した問題等はことごとく正確に報告しております。したがって、本院の国会決議というものがありますだけに、税制調査会でも、いわゆる一般消費税(仮称)は国民の理解を得るに至らなかった、だから別途考えなさい、こういう御答申もいただいたわけであります。したがって、いま幅広い消費一般にかかる税制というのが日本の国民に直ちになじむかといえば、私は必ずしもそうでないと思います。
 そして一方、ヨーロッパの国においては比較的なじんだ制度でございますけれども、これはあるいは私の独断でございまして、大蔵省としての見解じゃございませんけれども、言ってみれば、ああした形の税制というものは、直接税、所得税のような感じのほかに、税痛といいますか税の痛みを感じないままに納めていく、そういうことが、ある意味において日本以上のイージーな歳出に走っていって、かつて目標としておった先進国であったイギリスが、いま日本の一人当たり所得の八五%くらいでございましょうか、イタリーは六五%くらいでございましょうか、そういう国にむしろなってしまった。だから、ある意味においてはそういうことも一つのゆえんであったかな。
 だから、いたずらに比較的税の痛みを感じない間接税だけに頼っていくところに問題があったのじゃないか、税の痛みを感ずるからこそ、歳出に対する監視の眼もきつくなるのじゃないかなというような私の私見をも交えながら、されば、いま日本にどういう印象を持って受け入れられるかというと、大変ウエルカムであるという状態で入っていく土壌は必ずしもできていないのじゃないか。大いに検討する、勉強しろ勉強しろという環境はできておるが、これが直ちにすんなり入っていくという土壌は必ずしも醸成されていないのかな、こういう感じでございます。明確な答えにならなかったと思いますが……。
#13
○玉置委員 前回の一般消費税のときには、自民党支持層が特に大変反対が強かったというようにわれわれは受け取っておりますけれども、今回の間接税の導入につきましては、欧州型付加価値税とか案がいろいろあるようでございます。
 では、ちょっと事務当局にお聞きをしたいのです。窪田次長にお聞きしますけれども、たとえばインボイスをつけたり流通経路あるいは製造段階、いろいろな準備が必要になるわけです。ところが、いま特に民間企業におきましては合理化がすでに進み過ぎて、人を採用しなければいけないというところまで来ているところもございますし、特に生産部門でない間接部門、そういう面での合理化というのは本当に徹底してやっているわけです。そういうところへ行きますと、もしいま間接税がやられますと、とてもじゃないけれども採算面でカバーできないというようなお話をよく聞くわけです。
 われわれとしても、間接税のいい悪いというのはいろいろ論議があるかと思いますけれども、いまの財源から見て、いずれ日本の税制の中に拡大発展をしていくことはまず間違いないであろうというように考えておりますので、もし実施をしていくならば、事務当局として、どういうことを各民間の方々あるいは企業それぞれにやっていかなければいけないか、そしてそれは期間的にどのぐらいかかるのか、その辺についてお答えをいただきたいと思うのです。
#14
○窪田政府委員 まことに申しわけございませんが、税の担当の者がいま来ておりませんが、いままだ全く検討の素材になっていないわけでございます。新しい大問題でございますので、税制調査会に諮りまして、かなりの期間をかけて検討しなければならないのじゃないか、こう思っております。
#15
○玉置委員 もう一回確認しますけれども、たとえば五十九年度から間接税をやるということが事務的に間に合うか間に合わないか、一般論で答えていただきたいのです。
#16
○窪田政府委員 ちょっと私、担当でないので責任あるお答えもいたしかねますが、時期的な問題としますと、内容いかんということもございますし、一般論としてもなかなか申し上げにくいことだと思います。
#17
○玉置委員 欧州型付加価値税に一応限定をしてお聞きしますけれども、欧州型付加価価税については、来五十九年度から技術的に導入可能かどうか。
#18
○窪田政府委員 そういうふうなことを具体的に検討しているわけでもございませんし、また、実際にやりますと検討項目がどういうふうになりますか、そのこと自体また税調にお諮りしなければならないことでございますので、いま断定的に、ここでできるとかできないとかなかなか申し上げかねると思います。
#19
○玉置委員 まだいろいろございますけれども、一応時間が参りましたので、次回にまた持ち越しておきます。どうもありがとうございました。
#20
○森委員長 正森成二君。
#21
○正森委員 いままでに他党の委員がお聞きになった点もございますけれども、ほんの一、二問だけは重複することをお許し願いたいと思います。
 この補助貨幣回収準備資金を取り崩せといままでたびたび野党などからも言っておりましたが、これまで政府は、補助貨幣の信認度とか、あるいはインフレマネーになるとか、あるいはこれまでの歴史的な経緯があるというように反論をしておられたわけです。これを取り崩さざるを得なかったのは、一言で言えばよくよく困ったということですか。
#22
○竹下国務大臣 先ほども申し上げましたが、結論から言うとそういうことだと思います。
 余り舌足らずになってもいけませんので言ってみれば、財政当局、担当者としては、先人の蓄積に手をつけることに対する気持ち、そしてまた、後世の納税者に対して負担を残すという、この二つのことが絶えず念頭にありますだけに、あのようにして財投の原資としてもそれなりの効用を上げておりますし、歴史的経過から見ても先人の蓄積であるということから慎重であったと思うのであります。
 したがって、結論から言えば、一過性のものであるなら一過性の、目的財源では必ずしもございませんけれども、五十六年度の戻しに使うというようなことを念頭に置いて、とうとうやったということでございます。
#23
○正森委員 背に腹はかえられぬということだろうと思います。
 幸いに、主計局も来ておられますが理財局長が来ておられますので、伺っておきます。
 歳入の方では、こういうぐあいに一年限りのものをかき集めると言ったら聞こえは悪いですけれども、約二兆円くらい、これは一兆一千億円ですが、かき集めて、歳出の方では定率繰り入れを五十七、五十八とやめたわけですね。この間総括質問のときにも質問しましたが、銀行で言えば歩積み両建てみたいなもので、困ったときに利息を払いながら結局のところ積み立てるのはどうかということで、定率繰り入れをやらなかったわけです。また、そういう意味の財政審の答申が出ております。総括でも聞きましたけれども、一応去年取り崩しました国債整理基金の二兆二千五百億円をこの予算で返せば、五十八年はもちろん五十九年度の国債償還にも支障がないということになれば、五十九年度も財政事情によっては定率繰り入れを停止せざるを得ないということになるのじゃないですか、また、それが財政審の答申の考え方ではございませんか。率直な御意見を承りたい。
#24
○窪田政府委員 五十九年度の予算編成、まだ具体的に考えているわけではございませんが、決して容易なものではないように思います。しかし、定率繰り入れ、これは国債償還制度の基本になる大きな柱でございまして、五十七、五十八はまあやむなく停止させていただきましたけれども、そう安易にやめるとかやめないとかという話をすべきものではなかろうと思います。
 そこで、その辺は財政審にお諮りするときも、単年度の問題として予算編成全体と絡んで御説明をし、御理解をいただいているわけでございますので、五十九年度は、そういった全体の予算編成の姿とも絡みまして、また慎重に考えたいと思っております。
#25
○正森委員 財政の中期試算では、これまでの手法で五十九年度を積み立てていくと、いま資料を持っておりませんが、赤字国債を三分の一ずつ減らすか、あるいは七分の一ずつ減らすかということで違ってきますが、大体四兆一千億円から五兆円余りの要調整額が出るということだとしますと、これは政府答弁で大幅な負担増を国民に願うということであれば格別ですが、従来のやり方を踏襲するとすれば、なかなかそれだけの、数兆円の財源を生み出すことは困難であるということになれば、結局は五十八年度の財政審の答申と同じような考え方が出てくるのじゃないかというのは理論上は言えるわけなんですが、かねがね理財局長は、歩積み両建て論について相当突っ込んだ意見を持っているようでありますが、理財局としてはどう考えておりますか。
#26
○加藤(隆)政府委員 昨年の大蔵委員会で正森委員からの御質問があって、そのときにお答えをいたしたわけでございますが、四十二年に定率の制度をつくるときにいろいろな議論をやりまして、定率の政策目標がある。私は、元来あれに反対、必要でないという考え方を持っておったわけでございます、それもそのとき申し上げましたが。
 理財局に参りまして、あれから十五年もたっているわけでございますが、率直に申して、残高が百兆、そして金融資本市場が非常に自由化と国際化をしておる。そういう中で百兆の、表現がよくないですが、お守りをしていく立場に立ちますと、手銭と申しますか、そういう金がどうしても要るのではないかという心境になってきたということを申し上げたわけです。
 ただ、予算の方の立場とそれから公債の管理政策をやっている立場と、必ずしも環境が同じではないわけですが、職場が変わったから意見が変わったということではなくて、その間のわが国の財政状況が非常に変わってきた。それから、市場の構造が変わってきておるということだということをそのとき申し上げたわけで、去年参りましていろいろ考えて、やはり何がしかのファンドというものがあった方がいいのではないかという見解を持っておるということでございます。
 それで、法制部会の主計局の方の答申でも、私どものそういう意見を入れてもらってありまして、あの中にそういう表現が入っております。ただ、五十九年、六十年、ずっとどういうふうになっていくかという問題でございますが、当面の問題としては、ABCいずれをとっても六十一年ぐらいまでは残高がある。幸いこの一兆一千億をお認めいただければ二兆二千五百億戻ってまいりますので、償還の金で使う部分がございますけれども、かなりの残高を基金が持ち得るという状況にある。
 御答弁になるかどうかわかりませんが、そんなようなことを感じております。
#27
○正森委員 大蔵大臣、いまの理財局長の答弁は、結論は出しておりませんけれども、この補助貨幣回収準備資金の取り崩しを認めていただいて、それを財源にして二兆二千五百億円の国債整理基金への返戻ができれば、六十一年までは国債整理基金は大体においてABCいずれの試算をとってももつというところで終わったのですね。
 その後の答弁は大蔵大臣にゆだねて、賢明にも答弁をそこで切ったと思うのですが、その心を問いますと、五十九年度も定率繰り入れはやめても支障かないのではないかというように、その心が出てくるわけですね。大蔵大臣はいかがですか。
#28
○竹下国務大臣 これは私もその議論、前々から聞いておりまして、いま理財局長から二つの点においてお答えかありましたように、不合理であるという意見もございます。確かに、将来の負担によって将来の償還のための財源を利子を支払いつつ蓄えることにほかならず不合理である、大筋で言えばそういうことになります。それから必要性が高まってきたというのも、いまのお答えにございましたように、いわゆる公社債市場の国際化、自由化の進展に伴ってファンドがある程度の資金を保有する必要性が高まっておる、こういう意見であります。
 そこで、結諭としていま最大公約数で申し上げますならば、定率繰り入れの取り扱いは、要するに、そのときどきの財政事情や国債整理基金の状況等を勘案して判断すべきものであって、特例公債発行下においては即定率繰り入れ停止だという考えはとらない。したがって法律でも、当分の間とかという書き方でなく、一年一年でやはりある種の緊張感を粘って御審議をいただくということかな、こういうふうに感じております。
#29
○正森委員 ほかに伺いたいことございますが、大蔵大臣、時間のようでございますので、もう一問だけ伺って、どうぞ予算の方に回っていただきまして結構です。
 新聞紙上を見ますと、きょうも減税、人勧問題について代表者会議が開かれて回答がある予定ですが、その減税について、五十八年度も不用額が出るから戻し税減税で一千億円だけは出せるのだとか、あるいはOPEC等で石油が非常に値下がりになる、バレル五ドルとか七ドルとかですね。そうしますと、石油税は従価税ですから減ってまいりますから、これを税率を改正してある程度収入を上げなければならぬ。そのときに二、三千億余分に取ってそれを減税財源にしようとか、そういう報道があらわれております。
 こういう問題について、大臣は記者会見等で意見を言われたというのが報道されておりますが、いかがお考えでございますか、委員会でお述べ願いたいと思います。
#30
○竹下国務大臣 二つとも新聞、私も朝ちょうど四十五分かかりますが、朝、毎、読、サンケイ、日経等々を読ましていただいております。それで、犯人捜しという表現は適切ではありませんが、どこから出たんだろうかということを関心を持って見ましたが、どうも火のないところに煙が立ったという感じがいたしております。ただ、それだけにやはり自分なりの見解を整理しておかなければいかぬなと思いました。
 まず最初の戻し税の問題でございますが、確かに理論的に戻し税というのはあり得るわけでございますけれども、ずいぶん御苦労いただきまして、五十五年のいろんな状態の中に四百八十四億円全額を繰り入れないで戻し税にした。それはそのときなりの評価を私もしておりましたが、また、ラーメン減税とかそういう大変な批判も受けました。
 いまオーソドックスな物の考え方では、戻し税というものを考える環境にはないのじゃないかな。これは去年の減税小委員会が行われるその前提の幹事長・書記長会談のときにも、理論的にはあり得るが、今日そういう環境にあるとは思えないというような議論を私もいたしたことをいまでも思い出しておりますが、したがって、あの報道に伝えられたような戻し税というのは、いま私として念頭にないと申し上げるべきだろうと思いました。
 それから次の問題でございますが、自分の言動をも振り返っていろいろなことを思い出してみますと、原油価格が下落した。財政当局に来ていつも考えますのは、一つは為替レートがございますが、為替レート一円で、石油の総輸入額の下落とでも申しましょうか、それが約四百九十億円ぐらいになると思います。それが十数%あるいはそれ以上の、今度は原油価格そのもののドル建ての値下がり、こういうことになりますと、経済すべてに相当な影響がありますが、税制そのものでとってみた場合は、従価税の部分は当然それだけ減額する。
 それで、そうなると一つの考え方として、これがいわゆる代替エネルギー開発というような意欲を喪失せしめることはよくない。だから、それの目的財源的存在であるもの等はやはり確保しておくべきだ、こういう議論もあると思うのです。しかし、現在はまだ少しオーバーフローして一般財源に使わせていただいておるような状態、だから、これも私なりに考えてみましたが、いま直ちにあわてふためいて対応する税目ではないじゃないかなというふうに考えました。
 したがって、結論から申しますならば、この戻し税にいたしましてもあるいは石油関係税制、多くが特定財源になっておりますが、についても、いま直ちに念願にあるのかと聞かれれば、そういう犯人捜しをしながら自分の頭を整理してみても、権威ある本委員会で権威ある正森委員の質問に対しては、まだ念頭に置いたことはございませんとお答えするのが妥当ではないか、こういうふうに考えたわけであります。
#31
○正森委員 どうぞ予算へいらっしゃってください。
 それでは政務次官、恐れ入りますが、技術的な問題が多くなると思いますが、お答え願いたいと思います。
 これも同僚議員がお聞きになった問題ですが、五十六年四月二十一日の参議院の議事録を見ますと、わが党の近藤忠孝委員の質問に対して、当時の渡辺喜一政府委員が答えております。その中でこう言っているんですね。「この補助貨幣の製造コストというのは貨幣の表面金額よりはかなり低いわけでございまして、何にも政府が見返りなしにそれを発行するということは、まさに発行コストと表面金額との差額を全く何にも代償なしに政府が手に入れるということでございまして、それこそまさにその部分はインフレマネーの発行につながるわけでございます。できるだけそういうものにつきましては十分の準備を持ってやるというのが正しい行き方ではないかと考えておる次第でございます。」こう言っておるんですね。これは、当時は製造コストと表画金額が違うわけで、その差額として貨幣準備資金を積み立てておかなければインフレマネーの発行にもつながるし、信認にもならないという考えを述べていると思うんですね。
 それに対して近藤委員が、そういうことを言うと「日銀券との関係でいったらどうなるのか。せんじ詰めれば日銀券は税金が担保なんですから、その補助貨幣をさらに二重、三重の保護をする意味はどこにあるのか。」云々、こういう流れになっているわけですね。これは、ある意味では当然の疑問でありまして、日銀券を発行するにつきましては、もちろん担保というものが要るわけで、それは多くの場合国債であるとかあるいは貸し付けであるとかあるいは商業手形とか持っているわけです。国債は何が担保かと言えば、せんじ詰めれば政府が税金をちゃんと後の世の国民から取ってくれて返してくれるであろうという税金が担保ですからね。
 そうすると、補助貨幣は日銀券が担保であり、日銀券は税金が担保である、こういう流れになりますと、五十六年のときの答弁は答弁として、補助貨幣についても別に取り崩しても、最後の担保の税金を払おうという国民の意思あるいはそれを確保し得るだけの国家の安定度があれば十分であるということにもなってくるわけですね。そういう点については、いまどう思っておられますか。
#32
○加藤(隆)政府委員 インフレの定義でございますが、仮に安易な定義をとるとしまして、あることの行為によってマネーサプライがふえるかどうかということで考えてみますと、いまの段階で一兆一千の金が運用部に預託されておりまして、その見返りに運用部が運用しておるわけでこざいますね。そういうかっこうで、マネーサプライのあるAならAという量が決定しておる。今回の場合、それを取り崩して一般会計へ持っていって歳出に充てる、マネーサプライはその限りにおいて増減がないわけでございますね。そういう意味においてはインフレにならない。インフレの定義を一応そういうふうにして、今度仮に全然ないところでこのことが起こった。そうすると、その分はマネーサプライの増になりますね。両方あると思います。本源的な議論としては後の方で、前の渡辺政府委員が答弁したことは本質的な問題だと思いますが、いまの段階で考えた場合には、仮にインフレの定義を、そういうふうに勝手な定義ではございますが、マネーサプライの増減ということで定義をすれば、増減はない、その限りにおいてインフレ要因にはならない、そんなことだと思います。
#33
○正森委員 そこで、純技術的にお伺いしますが、これも同僚委員がお聞きになりましたが、そういうぐあいに製造コストと表面金額との差ということが言われておりますので、製造原価、この製造原価というのは管理費が含まれておりますから、管理費を一円なり五円なり五十円なり百円なりにどう配分するかということは非常にむずかしい問題ですから、まずうそ偽りのない素材価格というのがありますね。素材価格がそれぞれの貨幣について幾らかということを伺って、それをある一定の比率で分ければ製造原価はどういうぐあいに観念しておられるかを伺っておきます。
#34
○加藤(隆)政府委員 これも昨日御質問がございまして申し上げたのでございますが、急に局長が変わって答弁するというのも大変妙ちくりんなことかもしれないのでございますが、そういうことで素材価格の方をまず御質問でございますので、全部申し上げますと長くなりますから五百円で言いますと、約六円ぐらいでございます。
 それで、予算書で御提出しております数字で申しますと、五十八年度予算で全部の補助貨が二十七・五億枚ございます。経費が二百五億円でございます。割りますと一四%、マクロ的にこういうことでございます。しからば個々に言えというお話で、一番新しく出ました五百円の補助貨で申しまして約五%。率直に申しまして、私の前任者が何人か毎年非常に答弁を渋ったというのは、一つの企業秘密的なところがあるわけでございます。
 そんなことでお許しをいただいてきたのに私が答えるということは、じくじたるものがあるのでございますが、まあ考えようによっては、いま申し上げたようなことでお許しいただければ、そうビジネスシークレットにもかかわっていない、このように思うわけでございます。
#35
○正森委員 私は、別に造幣局の企業秘密を知って貨幣でも鋳造しようと思っているのではなしに、そう御心配なさらぬでも、たとえばここに私は昭和四十五年三月三十一日の当大蔵委員会の会議録を持ってきておりますが、ここでは、おられますか、きょうはおられませんが、社会党の広瀬秀吉委員が御質問になりまして、当時の岩尾政府委員が、ここに素材価格から製造コストまで、これは五%やそんななまやさしい答えではなしに、読み上げれば、えらい詳しく何円何銭まで答えておりますよ。素材価格の方は、百円の白銅貨が三円七十二銭でございます、五十円の白銅貨が三円十銭、十円の青銅貨が二円六十八銭、五円の黄銅貨が一円六十二銭、一円のアルミ貨が二十銭でございます、こうなりまして、そして製造コストは、ずっと割り振りますと、中で一番高いのが一円で、製造コストが九十九銭につくというぐあいに全部言うているわけです。
 言うているから、私も、もうすでに十数年前に言ったことがいまさら企業秘密などということはあるまいということで聞いているわけで、これは、経済学的にはそんなに意味がないかもしれませんけれども、国民としては大いに関心のあるところで、私自身も演説の材料等にもしたいと思いますので、よろしければ素材価格を答えていただきたいと思います。
#36
○加藤(隆)政府委員 これは五十八年度予算でこざいますが、五百円が先ほど申しましたように六円ちょっとでございます。それから百円が四円、五十円が三・五円、十円が二・三円、五円が一・五円、一円が四十銭でございます。
#37
○正森委員 それは素材ですか、それとも製造コストですか。
#38
○加藤(隆)政府委員 素材でございます。
#39
○正森委員 製造コストはわかりますか。
#40
○加藤(隆)政府委員 製造コストは、先ほど申しましたように、これにいろんなものがありますので、五百円が約五%というようなことで、まあその辺で……。
#41
○正森委員 それでは、局長かわって理財局長が変じて造幣局長になって答えておられるわけですから、それぐらいにしておきましょうか。
 ところで、日銀券もやはり同じように税金が担保ですね。これの製造コストは、五百円、千円、五千円、一万円は幾らですか。
#42
○加藤(隆)政府委員 こちらはまことにまた妙なんで、これは従来から申し上げているようなんでございますが、売り渡し価格ということで一万円が十八円六十七銭でございます。五千円が十八円六十四銭、千円券が十円九十九銭というようなことでございます。
#43
○正森委員 ですから、渡辺政府委員の答弁でも明らかなように、日銀券も製造コストといいますか引き渡し価格と名目価格はもう雲泥の相違ですからね。一万円が十八円。補助貨幣の方がむしろ率が高いというぐらいで、結局のところは、とどのつまりは税金が担保ですから、これを取り崩しても経済学的にはそんなに大きな混乱はないということで、これは、いままで野党がしばしば述べていたことを、政府がやりくり算段の必要上意見に同調せざるを得なかったというように考えていいと思うのですね。これは、これ以上もう申しません。
 そこで次に、非常に初歩的な質問で申しわけないんですが、私もこの資料をいただいたんですけれども、国民の皆さんもこの資料だけではわからぬ点があると思いますので、国民にかわって初歩的な問題を聞きますので、わかりやすく答えていただきたいと思います。
 説明の資料としていただいたのを見ますと、まず補助貨幣発行現在額見合いというのがありまして、これがいただいた資料では年末のもので一兆四千四百十八億円、こうなっているのですね。そこから点線で五十億円程度が引きかえまたは回収による資金の減ということで、これが回収してお札束とかえるわけですか。この部分が、ほぼここ三年程度で結構ですが、毎年どれくらい出ているか、お答え願いたいと思います。
#44
○加藤(隆)政府委員 五十六年が五十二億でございます。五十五年が五十五億、五十四年が九十二億というような数字になっております。
#45
○正森委員 ある年度だけ特別に倍に飛び上がったのはどういうわけですか。
#46
○加藤(隆)政府委員 これは、引きかえ、回収というものの中身でございますが、法律にございますように、汚れたり、かっこうが崩れたり、そういうようなのが年によって変動いたすわけでございます。
#47
○正森委員 いただいた資料を見ますと、別口預金として千九百二十八億円出ております。
 この別口預金の説明を見ますと、資金は、日銀の政府預金経理上補助貨幣が日銀に保管されている段階は別口預金である、これが市中に流通すると当座預金として整理されるというようになっておるわけですが、この別口預金というのは、通常ほぼどのくらいが妥当なものとして認められるのかということと、この別口預金は当座預金と同じように利息といいますか運用益のつかないものなのかどうかという二点をお答え願います。
#48
○加藤(隆)政府委員 別口預金というのは非常に妙な名前でございますが、結局、造幣局で製造しまして発行になるわけでございますが、日銀の手に渡りまして流通という段階がございます。要するに、発行と流通との差額、国民の方から見るとそれだけ日銀にコインの在庫がある、在庫見合いの勘定のことを別口預金と言います。そして、従来の比率が大体一〇%足らずでございます。たまたま昨今の数字は、五百円が、昨日も御質問があったんですが、三億枚をつくりまして、大体二億枚市中に出回っているのですが、一億枚ちょっと切ったあたりが日銀の手元に残っておる、出ていかないというようなことで若干パーセントが上がっておりますが、おおむね従来の経験的に言いますと、六〇%足らずというような比率に、これは経験的なものでございます。
#49
○正森委員 もちろん利息はつかないわけですか。
#50
○加藤(隆)政府委員 利息はつきません。
#51
○正森委員 その次に、地金等として四十八億円と書いてありますが、この地金というのはどういう意味ですか、貨幣の体をなさなかったのですりつぶして、それの原価だけを挙げておるのかあるいは名目なのか、そこら辺をちょっと御説明願います。
#52
○加藤(隆)政府委員 全く物そのものの金額が表示されております。物があるわけでございます。
#53
○正森委員 今度は、流通高見合いというのがほぼ一兆二千四百九十億円ございまして、それの一〇%の千二百四十九億円ぐらいを留保しておく、それ以外は取り崩すということですが、ほぼ一〇%にした根拠、それで今後必要なもろもろのことが対応できるのかどうか、そこら辺を御説明願います。
#54
○窪田政府委員 残しました資金の使い道は何かと申しますと、いま説明のありました回収で日銀へ戻ってきた場合、日銀が政府に戻す場合に政府がそれを買い戻すといいますか、そういう行為が必要になるので、それに充てる。それから、貨幣の鋳造経費が要ることになります。
 この二つに充てるわけでございますが、一〇%は、いまの制度になりましてから約三十年たちますが、二十六年から今日までなっているわけですが、過去三十年間のトレンドをずっと見ますと、回収の流通高に対する比率はでこぼこしておりますけれども、最近では四十二年で四・六九%というようなときもございますし、五%見ておけば大体賄えるんではなかろうか。それから鋳造経費と申しますか造幣局の経緯、これも非常にでこぼこしておりますけれども、傾向として見て大体五%ぐらいを見ておけばいいのではなかろうか、この両方を足したものが一〇%に当たるわけでございますが、実はこれはかなり変動がございます。
 たとえば貨幣の自動販売機ですとか、テレビゲームみたいなのが非常に盛んになりますと、そういう需要が出てまいりますし、一段落するとまた戻ってくるというふうに非常に変動がございますし、また記念貨幣をつくるとその経費がよけい要る。そこで、確定した率というものがなかなか決めがたいわけでございますが、過去のトレンドを見て、まあ大体一〇%ぐらいあればいいのではなかろうか。ところが、最近はこの率が貨幣の材質その他から見て落ちておりますが、三十年代以前は一〇%を超えた年が九回もございますので、ちょっと心配は残るわけでございます。
 そこで、今度の法改正の中に、いよいよ足りない場合に一時借入金ができる規定を入れていただく、あるいは一般会計でそこを補てんする範囲を拡大していただくということをあわせてお願いをしているわけでございます。
#55
○正森委員 いまの答弁の中にもございましたが、資金不足のときには一時借り入れができることになっていますね。その借入先としてはどこを考えているのですか。
#56
○窪田政府委員 特にまだ具体的にどこと考えておりませんが、やはりそういういざというときの借り先としては、さしあたり資金運用部資金というふうなことになるのではなかろうかと思います。
#57
○正森委員 いよいよ足りないので必要もないのに補助貨幣をたくさんやって、そうすると製造コストと名目価格が違うわけですから、いやでもおうでも収入はふえますね。そういうことを考えられると、それこそインフレマネーになってしまうわけですけれども、そういうことはないのでしょうな。
#58
○加藤(隆)政府委員 私もそういう問題意識を持ったことがあるのですが、不思議なものでございまして、日銀券と補助貨との関係というのは人為的にできませんですね。結局、取引慣行、そのときの社会の人々の選択でございますね。もう一点は、仮にこの差額をよけい取ろうと思って、じゃんじゃん補助貨をつくったとしますね。ところが流通しないのです。そうしますと別口に入ってしまって、いまの政府預金にならないのですよ。そこは経済の自然な歯どめがあるようでございます。
 要らぬことを言いますが、ただ記念貨幣なんかをどんどん出せば退蔵されますね。製造して、流通して、退蔵される、そういう問題がありますが、いろんなこういうおもしろい問題がありますね。
#59
○正森委員 それでは、借入金を必要とする場合も余りないし、あるとしても資金運用部資金等でインフレマネーになることはまずないというように伺っておきたいと思います。
 いまの答弁の中に入っているのですが、そうすると、造幣局の経費というのは、結局のところはその一〇%の中で賄える、こういうことですね。
#60
○窪田政府委員 そのとおりでございまして、いままでも造幣局の経費は回収準備資金で賄ってまいりました。その点は変わりないわけでございます。
 しかし、いままでは残高も多うございましたから運用益その他もたくさんございまして、経費を賄ってなお余りあるお金を一般会計に、その流通高を上回る部分は一般会計に入れるというようなこともございましたが、今度は一〇%でございまして、その運用益その他も大して期待できませんものですから、若干不安はありますが、造幣局の製造経費は二百億円程度でございますので、何とかそれで賄えるのではなかろうかと考えております。
#61
○正森委員 そうすると、いまの答弁の中に入っていたのですが、今後オーバーフローというのはほとんど見込めない、こう考えていいのですか。
#62
○窪田政府委員 不確定要素というのがございまして、実際補助貨がどのくらい需要があるか、それから製造経費そのものも記念貨幣とか何かをやれば変更があるわけでございますから、予測しがたい要因がございますが、今後は一般会計で財源として期待できるほどのものはなかろう、こう考えております。
#63
○正森委員 最後に、いま質問しましたように、特に政務次官、この法律というのは、いままで手をつけなかったとらの子を、一回限りのものを取り崩すということで、一兆一千億円出しますね。それから歳出では定率繰り入れという、国債整理基金との関係からはどうしてもいままで積み立てなければならないというのを五十七年、五十八年と積み立てないということで、取るのはもう一回限りのものを取り、出さなければならないものは出さないということで、何とかかんとか五十八年度予算を編成したということになるわけです。
 そうしますと、五十九年以降を見通した場合に、特に六十一年からは国債整理基金が底をついて予算繰り入れで返済を賄わなければならないというようなことを考えますと、私が予算委員会でも言いましたように、どうしてもやっぱり歳出カットだけでは何兆円という金は出てこないので、国民に負担増を求めるか、あるいは赤字国債の借りかえ制度というのを新しくつくるか、あるいはそれを併用するかということに、正直に考えればならざるを得ないのじゃないかと思うのですね。それを見越した上で、与党としてはあるいは政府としては政策を考えて国民に訴えていくということが、この法案の審議の中でもその必要性をひしひしと感ずるということだと思うのですが、それについてもしお答えできましたらお答えをいただきまして、私は質問を終わらせていただきたいと思います。
#64
○塚原政府委員 ただいま御指摘をいただきました件につきましては、政府といたしましては精いっぱい、当初の財政の目的というものがございますので、できるだけ多くのところに御迷惑をおかけしないような形で努力を一生懸命して対処をしてまいりたいと決意をいたしております。
#65
○正森委員 努力だけではできない事態になってきているということを申し上げて、私の質問を終わります。
#66
○森委員長 次回の委員会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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