1982/04/13 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 大蔵委員会 第15号
#1
第098回国会 大蔵委員会 第15号昭和五十八年四月十三日(水曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 森 美秀君
理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君
理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君
理事 伊藤 茂君 理事 野口 幸一君
理事 鳥居 一雄君 理事 米沢 隆君
麻生 太郎君 木村武千代君
北村 義和君 熊川 次男君
小泉純一郎君 笹山 登生君
椎名 素夫君 塩川正十郎君
白川 勝彦君 藤井 勝志君
森田 一君 柳沢 伯夫君
山崎武三郎君 与謝野 馨君
阿部 助哉君 戸田 菊雄君
広瀬 秀吉君 堀 昌雄君
武藤 山治君 柴田 弘君
玉置 一弥君 正森 成二君
蓑輪 幸代君 小杉 隆君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 竹下 登君
出席政府委員
経済企画庁調整
局審議官 横溝 雅夫君
経済企画庁総合
計画局審議官 及川 昭伍君
大蔵政務次官 塚原 俊平君
大蔵大臣官房審
議官 吉田 正輝君
大蔵大臣官房審
議官 水野 勝君
大蔵省主計局次
長 窪田 弘君
大蔵省主税局長 梅澤 節男君
大蔵省理財局長 加藤 隆司君
大蔵省銀行局長 宮本 保孝君
国税庁次長 酒井 健三君
国税庁直税部長 角 晨一郎君
農林水産大臣官
房審議官 船曳 哲郎君
運輸大臣官房審
議官 熊代 健君
委員外の出席者
大蔵省銀行局保
険部長 猪瀬 節雄君
資源エネルギー
庁長官官房総務
課長 見学 信敬君
資源エネルギー
庁公益事業部業
務課長 黒田 直樹君
資源エネルギー
庁公益事業部開
発課長 渡辺 光夫君
郵政省電気通信
政策局監理課長 吉高 廣邦君
建設省計画局民
間宅地指導室長 小鷲 茂君
建設省都市局都
市計画課長 城野 好樹君
日本電信電話公
社経理局長 岩下 健君
参 考 人
(日本中央競馬
会副理事長) 池田 正範君
大蔵委員会調査
室長 大内 宏君
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委員の異動
四月十三日
辞任 補欠選任
今枝 敬雄君 北村 義和君
同日
辞任 補欠選任
北村 義和君 今枝 敬雄君
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四月十二日
納税者の記帳義務法制化反対等に関する請願(井岡大治君紹介)(第二一七八号)
同(小川国彦君紹介)(第二一七九号)
同(城地豊司君紹介)(第二一八〇号)
同(武部文君紹介)(第二一八一号)
同(堀昌雄君紹介)(第二一八二号)
同(森井忠良君紹介)(第二一八三号)
同(上原康助君紹介)(第二二一五号)
同(浦井洋君紹介)(第二二一六号)
同(小沢和秋君紹介)(第二二一七号)
同(高沢寅男君紹介)(第二二一八号)
同(竹内猛君紹介)(第二二一九号)
同(三浦久君紹介)(第二二二〇号)
同(岩垂寿喜男君紹介)(第二二四〇号)
同(加藤万吉君紹介)(第二二四一号)
同(川俣健二郎君紹介)(第二二四二号)
同(木島喜兵衞君紹介)(第二二四三号)
同(後藤茂君紹介)(第二二四四号)
同(佐藤敬治君紹介)(第二二四五号)
同(清水勇君紹介)(第二二四六号)
同(中村重光君紹介)(第二二四七号)
同(日野市朗君紹介)(第二二四八号)
同(前川旦君紹介)(第二二四九号)
同(森中守義君紹介)(第二二五〇号)
同(米田東吾君紹介)(第二二五一号)
同(井岡大治君紹介)(第二三〇六号)
同(島田琢郎君紹介)(第二三〇七号)
同(田邊誠君紹介)(第二三〇八号)
同(福岡義登君紹介)(第二三〇九号)
同(藤田高敏君紹介)(第二三一〇号)
同(武藤山治君紹介)(第二三一一号)
同(山田耻目君紹介)(第二三一二号)
同(渡部行雄君紹介)(第二三一三号)
同(新村勝雄君紹介)(第二三二四号)
同(野口幸一君紹介)(第二三二五号)
同(山花貞夫君紹介)(第二三二六号)
所得税減税及び大型間接税導入反対に関する請願(武部文君紹介)(第二一八四号)
所得税の課税最低限度額引き上げ等に関する請願(上原康助君紹介)(第二二一二号)
同(枝村要作君紹介)(第二二一三号)
同(松沢俊昭君紹介)(第二二一四号)
同(福岡義登君紹介)(第二三〇五号)
税制改革に関する請願(長谷川正三君紹介)(第二二二一号)
同(永末英一君紹介)(第二二五二号)
同外一件(有島重武君紹介)(第二二六八号)
同(石田幸四郎君紹介)(第二二六九号)
同(大橋敏雄君紹介)(第二二七〇号)
同(沖本泰幸君紹介)(第二二七一号)
同(長田武士君紹介)(第二二七二号)
同外二件(北側義一君紹介)(第二二七三号)
同外一件(斎藤実君紹介)(第二二七四号)
同(鈴切康雄君紹介)(第二二七五号)
同外一件(竹内勝彦君紹介)(第二二七六号)
同(武田一夫君紹介)(第二二七七号)
同外一件(玉城栄一君紹介)(第二二七八号)
同(平石磨作太郎君紹介)(第二二七九号)
同(正木良明君紹介)(第二二八〇号)
同(矢野絢也君紹介)(第二二八一号)
同外二件(薮仲義彦君紹介)(第二二八二号)
同(吉浦忠治君紹介)(第二二八三号)
同(大野潔君紹介)(第二三二七号)
一兆円の減税等に関する請願(枝村要作君紹介)(第二二二二号)
同(山本政弘君紹介)(第二三一四号)
申告納税制度の改悪反対等に関する請願(岩垂寿喜男君紹介)(第二二三九号)
公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ等に関する請願(大野潔君紹介)(第二三二三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案(内閣提出第一号)
────◇─────
#2
○森委員長 これより会議を開きます。昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。
この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
ただいま議題となっております本案について、本日、参考人として日本中央競馬会副理事長池田正範君の出席を求め、その意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。─────────────
#4
○森委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸田菊雄君。
#5
○戸田委員 相当設題を多くしたものですから、途中カットするところもありますものですから、あらかじめ御了承いただきたいと思います。大臣にお伺いをいたしたいと思うのですが、五十八年度の財特法の性格について、五十八年度の財特法、五十八年度の財政運営に必要な財源確保のためと制定の理由が末尾に載せてありますが、それにしても、この法律案は従来の法律制度や国会審議関係等々を無視したものではないのかという気がするのですが、大臣、どうですか。
#6
○竹下国務大臣 確かに、この法律案については、いわゆる所管の異なる諸制度に関する特別措置を一つの法律にまとめたということについての指摘、議論がある法律の仕組みであると私も思っております。これは、非常に素人っぽいお話をいたしますと、私なりには、財源関係の法律は国庫大臣として歳入を一括して取り扱う立場からはなるべく一本化した方がいいじゃないか、こういう議論もいたしてみました。しかし、制度そのものを恒久的に変えるようなもの、たとえばいわゆる補助貨幣の問題でありますとか、あるいは国年の平準化の問題でありますとかいうようなものは一本化になじまない。そうすれば、言ってみれば立法の動機、趣旨、そして性格が一緒で、すなわち五十八年度限りの特別措置というようなものを一括して御審議いただくということも一つの考え方であろう。
従来とも、いまちょっと私も記憶しておりませんが、まだポツダム勅令で残っておるもの、あるいはかたかなの法律、それから太政官、そういうのがいっぱいあります。それを、ちょっと数字は忘れましたが、千何百であったかと思いますが、できるだけ同質同種のものを一本化して整理する必要もあるという議論もございまして、したがって、立法の動機、趣旨の同一性とか法律の性格の同一性、こういうことで一本で提出をした。御審議になる方は、これは国会でお決めになることでございますから私の方で議論を挟む問題ではございませんが、率直に言って、従来ともこの問題についていつも、議論をいたします。ある種の後ろめたさを感じてみたり、またその方が効率的ではないかという一つの角度からの議論もしてみたりいたしますので、今回まさにその動機とか性格の同一性ということで一本化したということのお答えに尽きるのじゃないかなというふうに考えております。
#7
○戸田委員 財政法で禁止されている赤字国債、この発行をするときに法的根拠を財特法に求める、これはわれわれも立法論としてはわからないわけではない。しかし、今回の財特法はそうした範囲をはるかに超えていると私は思うのです。結局、あらゆるものをぶち込んで法案に仕立て上げているという状況じゃないかと思うのです。たとえば、五十六年度の財特法には中央競馬会の納付金それから電電公社の納付金等々を加えて一本の案で提出しました。そのときにも国会で問題になりまして、当時大蔵省としては、反省いたしますよ、こういう答弁であったわけです。ところが、反省どころか、今回出てきたものはもっとそれより輪をかけてひどいものですね。こういった法案提出というものは、やはりいままでの国会審議ないし法案提案等々の慣行から言っても、私はどうも当を得てないのじゃないだろうかというような気がいたします。結局、財源確保というこの一点の共通性、これを最大限に利用して全部提案してきたということじゃないのでしょうか。言ってみれば雑炊的な法案ですね。何でもかんでもめちゃくちゃにあらゆるものをぶち込んじゃって、そして味の悪いもので持ってきているわけです。味がいいなら話は別だけれども、これは私は非常に問題があるのじゃないだろうかという気がいたしますが、どうですか、大臣。
#8
○竹下国務大臣 決して味がいいとも私も思っておりません。だから、そういう観点から御意見を交えた御質問をなさることに対しての立場で言えば、私は、やはり必ずしも適当な措置ではないというふうにも言えると思っております。確かに、いま法律が千五百十四、それからまだ勅令で残っておりますのが百三十四、そういうふうにあるわけです。そういうポツダム勅令とかあるいは太政官とか全体の法律千六百八十三ございますものを、ある意味において動機が一緒で性格が一緒のものを一括してみるというのも一つの考え方であろうと思いますが、審議する側にとってみた場合、一括法案についてはやはり御指摘のような議論が起こることは私も理解をいたします。
したがって、いわば今年度の歳入に関するものならば皆一緒にしてみたらどうかということすら考えてみたのでございますけれども、恒久法をいじるものはもとより一緒にするわけにもまいらぬ、いわゆる法制局見解、すなわち無原則に一括してはならぬというのがございますので、それから見ますと、いわば無原則という中には入らない。しかし、審議する側に対しての親切の度合いとでも申しますか、そういうことになると、やはり問題がないとは私も思っておりません。が、一括することの合理性というものも全くないわけでもない、こういうような感じでございます。
#9
○戸田委員 大臣にしては珍しく明快さを欠いているのですが、具体的に私は指摘したいと思うのです。たとえば今回の財確法の第三条ですね、これによって、一般会計から国債整理基金特別会計への定率繰り入れ停止の規定を入れていますね。これは、歳出削減の効果はあっても歳入増加にはならないと私は思うのですね。したがって、定率繰り入れ停止は歳出問題で、歳入問題ではないのですから、これを歳入法案に入れるということになると、これはちょっと理由がわからない。この理由をひとつ教えてください。
それから、私はさっき雑炊法案と言ったのですが、それ以上に歳入歳出、こういった区別しない法案ですね。もし歳出削減の根拠法として財特法をつくるとすれば、国民年金の特別会計への一般会計の繰り入れ停止もあってしかるべきじゃないでしょうか。これは全然ないのですね。
だから、私はそういう面において全く一貫性を欠いていると思うのです。こういった法案の提案内容というものはどうしても私は納得できないのですね。どうですか。
#10
○窪田政府委員 定率繰り入れの停止は、御指摘のように確かに歳出の削減になるものでございます。しかし、定率繰り入れを停止いたしますとそれだけの財源が浮いて、その定率に充てるべき財源をほかに振り向けることができる、こういう意味では財源の確保になる。私ども、実はこの法律をまとめますときに、一緒にしていいものかどうか検討いたしまして、また法制局にもお伺いを立てまして、これは歳入確保法ではございませんで財源を確保する法律でございますし、しかも、この定率繰り入れの停止は特例公債の発行措置とつながりのあるいわば親戚関係のような関連のある措置でございますので、これも一緒に含めてよかろうということで含めさせていただいたわけでございます。また、この定率繰り入れも広い意味では国庫内部の振りかえという措置でありますために、ほかの税外収入の確保措置と共通している点もございます。そういったいろいろな要素を勘案いたしまして含めさせていただいたわけでございます。
国民年金の特会への繰り入れ停止でございますが、これは五十八年度限りの措置ではございませんで、今後七十二年までにわたって影響の続く措置でございます。今回の財源確保法では五十八年度限りの財源措置に限定をいたしております。そういうことで、国民年金の方の特別会計法の改正はここに含めなかった次第でございます。
#11
○戸田委員 いまの局長の答弁は、結局、国民年金は、今後八共済法案の統合案七十二年まで、こういう臨調答申等含めましてこれから取り扱われる問題ですから、そういうものを指していま答弁をしているのだろうと思うのですが、しかし、五十八年度単年度といっても、これは異質の問題だと思うのですね。そういうものは、これはどうなんですか、実際は国民年金への繰り入れ停止については大蔵委員会で現に質疑をして別途審議したのじゃないですか。だから、そういうことからいけば、どうも私はつじつまが合わないのじゃないだろうかという気がするのですが、それはどうですか。#12
○窪田政府委員 先ほども大臣の御答弁にもありましたように、法制局の見解といたしまして、無原則に一緒にするわけにはいかない、結局、法案に盛られた政策が統一的なものである、趣旨、目的が同じであるということ、それから内容的に条項が相互に関連しているものである、こういう原則を掲げておられます。そこで、国民年金の特会法の改正も、今後改正法をこの大蔵委員会で御審議をお願いするわけでございますが、財源確保法という趣旨、目的から申しまして、そこまで一緒にするのは無理ではなかろうか、こう考えているのでございます。
#13
○戸田委員 では別な角度でひとつ。たとえば五十八年度予算の財源不足の補てんのために財特法を提案したと述べているが、先ほどの国債償還の定率繰り入れ停止とは逆に、この法案に本来入れなければならないものを入れてないのじゃないですか。
それから、五十八年度の財源確保策として政府がとった対策のうちの税外収入、これはどういうものがありますか。ちょっと調べてください。
#14
○窪田政府委員 五十八年度予算では例の五十六年度の歳入欠陥の穴埋めのために税外収入の確保に非常に努力をいたしまして、特別の財源対策二兆一千五百億ほどをやっているわけでございますが、その中には、たとえば補助貨幣回収準備資金の受け入れのようなものもございます。これは、まさに法改正を先般の大蔵委員会でお願いを申し上げたものでございます。これなんかは、仮に財源確保という見地からすれば一緒にすべきではないかという御指摘ではなかろうかと思うのでございますが、特別の財源対策を一つのパッケージにして全部入れれば、それは国民にもわかりやすい、理解しやすいという意味では確かにそういう面はあると思いますが、ただ、補助貨幣の回収準備資金は造幣特会法の恒久的な改正でございます。と申しますのは、準備資金はいままでは補助貨の発行残高に見合うだけを持っておりました。それを今回は流通額の一〇%に相当する額まででよろしい、つまり準備資金の額を上限を下げていただく法案でございます。その上限を下げましたために、初年度においては一兆四百億ほどの財源が浮くわけでございますが、この資金制度そのものはずっと続いてまいるわけでございます。この補助貨幣の回収はその資金を取り上げるという法律ではございませんで、その制度の仕組みの改正という点でございまして、一時的な措置であります財源確保法に含めるのは無理である。法制局の先ほど申しました原則から申しましても、この中には含めるわけにはいかぬという御見解でございますので、私どもも、別途の法案で御審議をお願い申し上げた次第でございます。
#15
○戸田委員 造幣局特別会計の資金から一般会計が受ける補助貨幣回収準備金、これは約一兆五百億円ですね。これは五十八年度の財源確保と違いますか。#16
○窪田政府委員 五十八年度の財源確保ではございますが、いま申しましたように、造幣特会の基本的な仕組みの改正、つまり、準備資金の持つべき額を従来補助貨の発行額まで持つべしという規定でございましたのを流通額の一〇%までと下げていただいたために、初年度におきまして一兆四百幾らという財源が浮いた、それを五十八年度の財源対策に利用したという点ではそうでございますが、しかし、他の財確法の中に含めております税外収入は一回限りの、五十八年度単年度限りの措置でございます。それとは若干、基本的な造幣特会制度の改正であるという点で異なっておりますので、含めなかったわけでございます。#17
○戸田委員 補助貨幣回収準備金は別建ての法律で三月末に国会を通過してますね。この金額は税外収入の総体の四分の一を占めてますよ。これは五十八年度の財源に必要な財源確保、財特法に入れないのですね。そして、今回は自賠責特会の二千五百六十億円、あへん特会の十三億円、造幣局特会の四億、こういった小物だけ財特法に入れているのですね。私は、全く御都合主義ではないかという気がするのですが、財務当局の都合だけで勝手に法案をくっつけたり離したり、そういうものをやられては困ると思うのですね。これは大臣どうですか。#18
○竹下国務大臣 これは議論のあるところだと私も承知しております。一つは、法律をいま正確に調べてみましたが、千五百余りと言っておりましたが、千五百十五、政令が千七百二、それから勅令が百三十、恐らく太政官もまだ勅令の中に入っておると思います。それから閣令というのが十八本、それから省令が二千三百六十一、合計五千七百二十六、こういう数字がありまして、かねて法律というものは動機を一にし性格を一にするものは一緒にしようという一つの考え方が存在しております。それから一方、やはり租税法定主義とかあるいは財政民主主義とかいうたてまえから言えば、できるだけ一つ一つのものを分けて法律として御審議をいただくというのが一つの考え方、二つの意見があるわけであります。
したがって、それについて意見は、ある意味においてはこれからもずっと続く議論だと私は思っております。したがって今度の場合は、私は、前者の意見に、官房長官を長らくしておりましたので、とかくそういう方向に走りがちでありますので、いま御指摘のありました補助貨幣もあるいは国年も一本にできないか、こういう注文をつけてみました。しかし、これはいわば平準化の法律であって、国年の場合は七十一年までを拘束する、それから一方の補助貨は、なるほどその大宗を占めるものは五十八年度の財源確保に充てるわけであるが、将来もこの制度そのものは、比率はうんと下がりますが、いずれにしても残っていくというと、これはまさに本年度限りの財源を目的とするだけの法律の中に一括するにはいささか問題があるじゃないかということで、私は、そういう法律をできるだけ簡素合理化すべきであるという立場からこれを一括して、同じ性格であり、動機を同じくしておるということで、いわばみだりにのりを越えたとは思っておりませんが、そのような次第で、この法律、その二つの補助貨幣と国年を残しましたものは一本化をして御審議をいただくことにすべく、いわゆる国庫大臣としてその提出の責めに当たった、こういう考え方でございますので、国会に対していずれが親切な出し方かという議論になりますと、私はまだ議論は残っておると思いますが、今回の場合、動機の同一性とか性格の同一性とかいうことにして、みだりにのりを越えたものではないということで一括して御審議をいただくことにした。されば、審議する方でこの問題について、いまの戸田さんのような御指摘はあり得るということは私も十分承知をしておりました。
したがって、おれの言っていることが断じて正しいのであって、あんたの言っていることが間違っておるとかいうことを言う考えは全くございません。だから私は、どっちかと言えば同質同種のものについては一括するのが合理性があるという考え方、審議する立場から見れば、一本一本別で出すのが親切だ、この議論はまだいつまでも続く議論じゃないかなということで、私の決断で造幣特会、国年以外のものを一括させていただいた、こういうふうに御理解をいただきたい。議論はまだ残る問題だということは私は十分承知しております。
#19
○戸田委員 大臣もそのことを大体お認めになっておるようでございますが、本来ならこの特別会計の性格からいって、当該常任委員会というものがあって、そこで十分検討されて、そして最終的に決定をしていくというような手順を踏むことが私は一番いいと思います。そうでないと、いまのように何でもかんでもぶち込んでしまってやってくるということになると、財政法なり特会法そのものからいって全く紊乱の限りではないかと私は思う。そういう考えもあって、前回五十六年の財確法のときには中央競馬と電電のそういうものを一緒にして持ってきて問題になって、そして、反省をいたします、こう大蔵省は答弁しているのですから、いま大臣が大分余韻のある回答をされておりますから、これはもう一度検討していただきたいと思うのです。要望しておきます。それで、自賠責特会から一般会計への繰り入れ問題について若干質問しておきたいと思いますが、財特法の第四条で「政府は、昭和五十八年度において、自動車損害賠償責任再保険特別会計の保険勘定から二千五百億円、同特別会計の保障勘定から六十億円を限り、それぞれ一般会計に繰り入れることができる。」ということにしまして、以下、二項、三項、こうあるわけでありますが、この財特法の第四条で自動車損害賠償責任再保険から二千五百六十億円を一般会計に繰り入れることにした、これはなぜこういう措置をとったのですか。
#20
○窪田政府委員 基本的に、いまの一般会計の状況が非常に厳しいということがございますが、その上に、五十八年度予算では五十六年度の歳入欠陥の穴埋めをするために二兆二千五百億円ほどの異常な歳出需要がございました。そういうことで、私どもかねがね各方面から指摘をされておりました特別会計でございますとか特殊法人あるいは国有財産の処分、いろいろなものを総点検をいたしまして極力努力をいたしたわけでございます。その一環といたしまして、自賠責特別会計に累積運用益を積み立てているものがございまして、この使途につきましては、現在運輸省におきましてどういうふうにこれを使うかということは検討中でございますが、自賠責の積立金の状況から見て、当面直ちにその全額をいま必要とするものではございませんので、これを一時お借りをしたい、特別会計に繰り戻しをすることを前提といたしまして五十八年度で二千五百六十億円繰り入れていただいた、つまり、お借りをするという措置をとらしていただいたわけでございます。
#21
○戸田委員 結局、五十六年度の歳入欠陥二兆二千五百億円、国債整理基金から借り入れて決算処理をしている、その返済だ、こういうわけですね。それで運輸省、自賠責特会の目的はどういうものでしょうか。
#22
○熊代政府委員 お答え申し上げます。自賠法による自動車損害賠償責任再保険事業等に関する経理を明確にするた自増賠特会を設置し、一般会計と区分経理するということが特会法の目的になっております。
#23
○戸田委員 それはちょっと僕が質問したことと内容が違う。それは後からいくので、その答弁はちょっと間違っているんじゃないですか。結局、自動車の事故が発生した場合の被害者救済、それからまた、事故を起こした者が賠償能力がない場合の救済を目的としているわけでしょう、自賠責の目的は。そうじゃないですか。
#24
○熊代政府委員 お答えいたします。先ほど先生の御質問を特会法の目的というふうに理解したものですから……(戸田委員「特会の目的です」と呼ぶ)自動車損害賠償保障そのもの、自賠保険そのものが、おっしゃるように自動車の運行によって人の生命、身体が害された場合における損害賠償を保障する制度の確立、特会はこの保険事業を再保険するということが目的でございます。
#25
○戸田委員 この自賠責特会の目的は特会法で非常にはっきりしているのですね。だから、結局は自動車保有者が保険料という形で支払っているもので、これは税金とは性格が違うでしょう。したがって、五十六年度の政府の税収見込み違いの穴埋め措置に使うということは、大臣、問題じゃないでしょうか。#26
○竹下国務大臣 したがいまして、この問題については、いまの御指摘のように税金とは性格が異なるのではないか、私もそのとおりだと思っております。だからといって、この運用益について、保険設計上は毎年の保険収入の枠外にあるものでありますから、あらかじめその使途が定められておるわけのものではないというような考え方でお願いをしたわけです。しかし、いま御指摘のように、まさに税金とは性格を異にしておる、私もそういうふうに思っております。こういう財政危機のときでございますから、まさにわれわれとしてはお借りするというお願いする立場にあって、したがって私どもも、この問題については、ただ大蔵大臣と運輸大臣の協議にとどめることなく、一応総理の方からも運輸大臣に協力方の要請をしていただきました後、私からも正式にお願いして、事務当局同士で詰めましてこのような措置をとった。だから、やはり一時お借りするという精神で私どもも対応したということは事実であります。
#27
○戸田委員 それで、大臣どうなんですか。今回はやむを得ない措置で、いま大臣が御答弁になったようなことで処置をしましたが、これは一回限りで、後はやりませんか。#28
○竹下国務大臣 本質的にたびたびお願いすべき性格のものではないような気が私もしております。#29
○戸田委員 大臣もお認めになったように、税金と保険料は性格が違いますからね。しかも、自賠責特会の支払い目的もはっきり限定されているわけですから、こうした性格、法制度のあり方から見て、財特法をつくれば繰り入れ可能という考えは間違いであり、財政制度を紊乱するものだ、こういうように私は考えます。そこで、国の財政運営の基本法である財政法十三条に会計区分の規定がありますね。特別会計の設置対象を限定的に掲げ、特に一般会計の歳入歳出と区分して経理することを義務づけております。したがって、一般会計で苦しいから特会の金で穴埋めをするというのは、財政法の精神に反するのじゃないかと私は思うのです。財政法十三条、明確に区分しなさいとありますね。そういうものからいって、私は、非常に違反だらけの積み重ねじゃないかという気がするのですが、どうですか。
#30
○窪田政府委員 財政法十三条は「国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。」戦前の会計制度では、特別会計が従で一般会計は主だということでございましたが、戦後の財政法では、この国の大きな会計を一般会計と特別会計に分けるといういわば並列的な書き方に変わっております。ただ、特別会計を設けられる場合は、ここに書いてございますように「特定の資金を保有してその運用を行う場合」とか「特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合」というふうに限定をしているわけでございます。ただ、国がやっている大きな事業あるいは収支の一部であるという点には変わりはございませんので、一般会計から特別会計に繰り入れをしている例もたくさんございますし、あるいは特別会計から一般会計に繰り入れをしている例も、それぞれ法律に基づいて行っているわけでございまして、そういう必要性があれば、その一般会計と特別会計との間のやりとりというものも許されることになっております。今回の自賠責からの繰り入れにつきましても、この法律をもちまして国会のお許しをいただきたいというお願いをしているわけでございます。
#31
○戸田委員 運輸省にお伺いしますが、自賠責特会の経理状況から見て、二千五百六十億ものお金を出す用意があるのですか。たとえば自賠責の運用益、五十七年度末に保険勘定で五千億円、保障勘定で百二十億円、こういうことになっていますね。けさ、あなたの方から資料をもらったのですが、これをずっと見ましても、保険勘定で五十七年度運用益残累計はざっと五千十億円、五十八年度で五千七百五十五億円、それで運用益残としては確かに五十七年度二千四百五十億円、それから五十八年度二千八百八十八億円。
しかし、最近の収支状況を見ますると、五十三年度から収支残として、五十三年が二百六十億円、五十四年が四百九十三億円、五十五年が五百二十九億円、五十六年八百二十九億円等々の赤字になっているわけでしょう。確かに、累計残としては五十七年二千九百五十五億円それから二千百二十六億円、これはありますよ。ありますけれども、これは積立金へ行っちゃって、そして資産になったものと流動資産、流動資産を分けますと大体八百億円くらいしか残らないのじゃないですか。その中から今回の処置ですよ。これでいいんですか。
#32
○熊代政府委員 お答え申し上げます。先生お持ちでおっしゃった数字がちょっと私理解できない面があるのですが……(戸田委員「自賠責収支状況」と呼ぶ)自賠責収支状況というのは、実は私どもの方は再保険をやっておりますので、あるいは保険会社の四割部分の収支かと思いますが、自賠特会の最近の収支状況を御説明申し上げますと、確かに保険料だけで運用益を除きました純収支という計算でいきますと五十五年度二百十六億の赤字。ただその場合、純収支のいままでの累計でいきますと約二千二百億の残。五十六年度同じく四百五十七億ばかりの赤ですが、残が千七百四十七億。まだ結了しておりませんが、五十七年度は六百八十億ぐらいの純収支の赤が予定されておりますが、それを差し引きましても、残が純収支でまだ一千六十七億程度残る。各年度それぞれ運用益収支がありますので、これは五十八年度御提出申し上げておりました予算におきましても、純収支の赤を運用益収支でもってカバーして、なお五十八年度予算におきましても三十三億程度の黒が残るというふうに考えております。先生おっしゃいました数字は、約六百億というのは、四割部分を担当しております民間の保険会社の部分の運用益残は五十七年度末で約六百億程度になろうかというふうに思っております。
#33
○戸田委員 特別会計の本来の目的からすれば、この運用益というやつは保険金を納めた自動車保有者の財産でしょう。だから、もしそういう運用益で余ったものがあれば、当然これは保険者に還元するというのが金の使い方じゃないでしょうか。この点はどうですか。#34
○窪田政府委員 自賠責保険の運用益は自賠責特別会計に帰属している財産でございます。しかし、そのもとは保険契約者が払った保険金にあるわけでございますから、運輸省におきまして、保険契約者の利益のために活用することを現在御検討中でございます。ただ、現在その積立金の残高がそれぞれございまして、いま直ちにその全額を必要とするという状況ではないものでございますから、これの半額を一時着借りするということをお願いしたわけでございます。#35
○戸田委員 私がさっき指摘したような赤字になっているわけですが、一月の二十七日の日経によりますると、保険料をさらに上げるという考えがある、こう言うのですが、それはどうですか。#36
○猪瀬説明員 自賠責収支でございますが、いわゆるポリシー・イヤー・ベーシスと申します単年度で見ました場合に、先生先ほど御指摘のように、五十三年度以降赤字になってきておるのでございますが、ただ、過去の蓄積でございます収支というものとあわせ見ますと、累計で見ますと、なお若干の黒字が見込まれておるところでございますので、いま直ちに自賠責の料率を引き上げなければならないという状況にあるとは思っておりませんし、また、現にそのための準備ないし検討というようなこともいたしておらないところでございます。#37
○戸田委員 交通事故、これは大蔵省からいただいたのですが、警視庁にもちょっと電話で確かめてみました。この数字で間違いないようですけれども、四十四年をピーク時にいたしまして、ずっと、五十一年あたりからは若干減少傾向にございますね。ですから、この点では交通事故がふえておりませんから、そういう点では保険料率その他、六〇%台でもって十分間に合うような気がいたします。ただ、保険金支払いの額が、五十三年七月、五百万円が二千万円に引き上げましたね。だから、その点のはね返りが一つあるのじゃないのかということ。もう一つは医療費が高くなっていると思いますね。そういうことから、どうしても料率引き上げをやらなければいけないんだ、こういう話を聞いているのですが、その辺の見解はどうですか。#38
○猪瀬説明員 自賠責保険の収支の悪化の原因が、ただいま先生御指摘のように四十四年以来料率を据え置いておりまして、十三年余料率は据え置いておるのでありますが、その間におきまして、支払い限度額を五百万から一千万に、さらに千五百万、それで五十三年七月から限度額を二千万に引き上げてございます。さらに、御指摘のように治療費、物価等々の上昇を見込みまして、査定単価とも申すべき支払い基準も、二年に一遍の割合で引き上げております。さらに、もう一つ大きな原因でございます自動車事故もやや上昇の傾向にあるというようなことを勘案いたしますと、将来において、保険収支の累計残におきましてもこれがなくなるのであろうということは容易に想像がつくのでございますが、その場合に運用益というものをどういう形で料率の引き上げの中に織り込んでいくかということは、これから検討したいと思っている点でございます。
#39
○戸田委員 もう一つ運輸省に確かめておきたいのは、自賠責特会法第十条に利益と損失の処理を規定していますね、内容はどういうものですか。#40
○熊代政府委員 お答え申し上げます。特会法の第十条は「保険勘定又は保障勘定において、毎会計年度の損益計算上利益を生じたときは、これを当該勘定の積立金に組み入れて整理するものとする。」ということで、いわば会計外に流出させてしまうということじゃなくて、積み立てるということを規定しておる次第でございます。
#41
○戸田委員 結局、十条では、利益が出たときは積立金とする、損失が出たときは積立金を減額して処理をしなさい、こういうことになっているのですね。非常に明確なんですがね。そういうものをさらに財源確保のたてまえということで、性格のはっきりしている、目的もはっきりしている、それからいま言ったような、利益が出た場合にはどうする、事細かに自賠責特会法に書かれてあるわけです、十何条しかないけれども。そういうものを取り崩すというのはどうなんでしょうね。車保有者の財産でしょう。だから、それを勝手に、本来はそちらにやるべきものを国がそれを借りる。ことに二千五百六十億ということになりますと、三年据え置きの七年返還でしょう。返すという。しかし、そのときは無利子でしょう。六%ないし七%ということになると、私自身試算してみますと約一千億になりますよ。これはピンはねですね。こういうことが許されるのかなという気がするのですがね。どうですか。#42
○窪田政府委員 法律の制度はもう御指摘のとおりでございますが、一般会計の状況がこういうことでございますし、また、五十六年度の穴埋めというふうなこともありましたので、特別の御協力をいただいたものと考えております。取り崩すとおっしゃいましたけれども、これは一時お借りをして、また返すわけでございます。いま直ちにその全額を必要とするようなお金ではないものでございます。いろいろ御指摘のような事情はあると思いますが、一般会計の状況を理解をいただいて、格別の御協力をいただいたものと考えております。
利子につきましても、いまの一般会計の状況から、利子をそう払うゆとりもございませんし、また、運用益というものがこの保険の性格上予定されているものでもございませんので、無利子でお借りをするということをお願いした次第でございます。
#43
○熊代政府委員 十条との関係を補足して御説明させていただきたいと思うのですが、十条では、先生御指摘のとおり、剰余金の処理は積み立てる、あるいは欠損を生じたときにその積立金を取り崩す、こういうことになっております。今回の運用益の累積残は、過去の決算におきまして、端的に言いますと五十七年度決算で先ほど先生御指摘のように保険勘定で五千十億ばかり、これらはすべてその決算処理としては積立金として計上いたします。したがいまして、今回は、その積立金として計上したものの運用の仕方としまして、約半額を先ほど大蔵省の方からの御答弁もありましたように貸し付けという形で、一般会計への繰入金という貸借対照表上の処理もして資産性を明確にさせるということにいたしておりますので、十条との関係での問題点はないというふうに考えております。
#44
○戸田委員 最後に一点だけ。料率引き上げは当分やりませんね。#45
○猪瀬説明員 料率問題は今後の保険収支の動向にもよる点がございますので、この段階でいつまでやらないというようなお約束はできかねるのでございますが、ともかく先ほど御説明申し上げましたように、収支の累計でなお黒字が見込まれておりますので、いまの段階で料率引き上げの検討をいたすというようなことはございません。#46
○戸田委員 一説によると、審議会に出す諮問案を策定しているということですが、それはありませんか。#47
○猪瀬説明員 これは若干誤解があろうかと思うのでございますが、実は一月二十六日に自賠責審議会を開催いたしまして、その際に自賠責保険料率の一部改正を諮問したことがございます。これは、御承知のように、道路運送車両法の改正によりまして車検が新車につきまして二年から三年に延長されました。それに伴いまして、自賠責の保険料も二年分から三年分一括して徴収するということになったものでございますから、その三年分についていかなる保険料率を設定するかという点で諮問し、かつ答申をいただいたのでございまして、それの混同ではなかろうかと思います。現在その準備はいたしておりません。
#48
○戸田委員 多くの問題を抱えておりますので、いずれ時間のあるときにもう一度やりたいと思っておりますが、きょうは時間もありませんので、次に移りたいと思います。次に、赤字国債の償還方法でございますが、五十八年度の財特法二条では例年の特例法と同様赤字国債の借りかえはしない、こう規定しておりますね。これは守れる自信はありますか、大臣。
#49
○竹下国務大臣 答弁でも、なおかつ法律でも、単年度限りの問題としてそのことはしないということを絶えず明示しておるわけであります。したがって、いわゆる特例債の借りかえということが念頭にあると、それなりに公債発行政策に対してイージーな考え方になりがちであるということからしても、その都度そのことを法律でも明示していくのが筋だと私は思っております。将来にわたっての問題ということになりますと、六十一年度から大量償還が始まる、その時期それじゃ自信があるかとおっしゃれば、私どもとしては、自信を持ってこれに対処していかなければならないという決意でもって当たるわけでございますけれども、原則論として言えば、歳出削減をやるのか、負担増を求めるのか、借りかえあるいは新規発行でもって対応するかという三つの方法しかない。そうなると、これは中期的に国会の議論等を通じて検討しなければならぬ課題であるというふうには思っておりますが、いま直ちに借りかえを念頭に置いたとすれば、それこそ公債政策自体に対する歯どめの問題あるいは気持ちの緩み、こういうものが出てはならぬ、だから原則は貫きたいものであるというふうに考えております。
#50
○戸田委員 政府が言う建設国債と特例国債の性格の違いの一つは借りかえの有無にあるわけでしょう。建設国債は大体十年債を六回借りかえる方式、特例国債は十年目に全額現金返還、こういうことですからね。いまのような財政が非常に窮迫した状況の中で、これは借りかえなしでそのままいけるのかどうかという疑問が一つあるわけです。ことに国債整理基金特別会計法、明治三十九年法律第六号、この第五条の規定による償還のための起債は行わない、こういうことで明確になっておるわけですね。したがって特例国債の借りかえをするというようなことはないのでしょうね、大臣。
#51
○窪田政府委員 財確法にも規定しておりますように借りかえをしないという規定を入れております。借りかえをすることは考えていないわけでございます。#52
○戸田委員 そこで、けさも資料をいただきました。十年を経過した特例国債は必ず現金償還、こういうことですから、それは約束できますね。参考までに特例国債の償還額は、五十八年千三百億、五十九年千六百億、六十年二兆二千八百億、六十一年三兆五千九百億、六十二年四兆六千億、六十三年三兆四千百億、六十四年六兆四千百億、六十五年になると七兆三千億等々、こうなっておるのですね。これは現金償還をいたしますと約束できますか。
#53
○窪田政府委員 償還とか借りかえとかいう言葉の意味でございますが、満期が到来した場合、その国債をお持ちの個々の保有者に対しては全額を必ず現金でお返しするわけでございます。そこで問題になりますのは、その償還財源をどうやって調達するかという問題でございまして、理論的には、特別会計によって借換債を出す場合とか、国債費として一般会計で計上はいたしますが全体の収支の中ではあるいは特例債の増発になってしまう場合等々、いろいろな場合がございますが、いま御審議をお願いしている法律では、借換債の発行によってその財源を調達することはしないということを方針として掲げております。また、その個々の年度に実際どうなるかということは、そのときの予算編成の状況はどうなるかということによるわけでございまして、いま明確には申し上げられないわけでございますが、借換債を発行して償還に充てるということはしないという方針は、この法律上明らかにしているわけでございます。
#54
○戸田委員 これはかつて予算委員会に出された資料です。いわゆる赤字国債脱却三年、五年、七年、A、B、C。その大蔵省の提示によるCの仮計算を実は資料としていただいた。これを見ますと、新規国債発行額、五十八年十三兆三千四百五十億、四条債借りかえ額が四兆五千百億、小計で十七兆八千五百五十億、特例債償還額が一千三百億、その仮計が十七兆九千八百五十億。こういうことでずっときまして、これがどんどんふえていくわけですね。これだけの財源調達を一体どこに求めましょうね。どうですか。時間がありませんから全部読み上げません。これは大蔵省からもらった資料です。
#55
○窪田政府委員 いまおっしゃった数字は、財政中期試算の新規国債発行額と四条債の借りかえ額とそれから特例債の償還額を三つを足したものでございますが、それぞれまた実際の年度においては、予算編成の過程でこの数字は若干変わってくる可能性もございますので、これがそのまま国債発行額というふうにはならないとは思いますが、大勢として、借換債も含めると年々巨額な国債消化といいますか、そういうギャップが生ずることは推測をされるわけでございます。しかし、私ども、財政改革を今後進めてまいりまして、歳出削減努力を中心に努力をしてまいる所存でございますので、いまここで、借りかえやむなしとかあるいはそれだけ赤字国債の増発になるというふうには考えてないわけでございます。#56
○戸田委員 これは、今後の財政再建計画とも大いに関連を持つわけですが、結局特例国債を償還するために特例国債を発行するというような、そういう悪循環的なことはやりませんでしょう。その点はどうですか。#57
○窪田政府委員 それは将来、たとえば六十二年ぐらいからこの償還が非常に多額になるわけでございまして、四年先の一般会計の状況がどうなるかということをいま明確に推測するわけにはいかないわけでございますが、私ども、特例公債自体を減らす努力を、これから財政改革ということで全力を挙げてやろうということでございます。したがいまして、全体の収支の中で特例公債そのものを減らしていこうということでございますから、そういう努力を今後とも一層続けていきたいと思っております。#58
○戸田委員 そういうことになりますから、大臣、どうしてもこの辺で、予算委員会等でもいろいろ問題になりましたけれども、今後の財政再建ですね、ことに中曽根内閣としては最大の政治課題は財政再建と行革だ、こう言っておるわけですが、その財政再建の青写真が一向に示されないのですね。これはどうでしょう、いろいろな論議があったけれども、まだ衆参の論議で赤字国債脱却の目途すら政府は明らかにしていないのですね。五年とか七年とか、いろいろ新聞では言われておりまするが、もうすでにそういった内容について明らかにすべき時期じゃないかという気がするのですが、大臣の構想はどうでしょうか。#59
○竹下国務大臣 私も、基本的に、可及的速やかに財政再建の一つのめどとして、かつて設定された赤字国債脱却の時期を明示すべきだ、それは理解できる話なんです。確かに、五十九年赤字国債脱却ということを約束申し上げて、そしてそれを断念いたしました。そして、計画を出せ、こういう御主張に対して精いっぱい努力した結果が財政改革に対する基本的な考え方。考え方にはある種の哲学は書かれてありますが、その中に数値の入っていないもの、それでは国会が予算審議等についての手がかりとするためにも可能な限りのものを出してみろ、こう言われて苦心したものが中期試算である。その中期試算が、いま御指摘のように七、五、三と、こういうものを出した。私どもも、臨調の答申等を読んでみると、六十年代全体を通じて一つの構想を立てるべきだとも言われておりますものの、やはり世界のそれぞれの国のいろいろなそういう展望なり試算なりを見ても、十年と言えば長過ぎる。大体七年が限界ではないか。かつて経済社会の七カ年計画を出したことがあるというので、七年、五年、三年というものを出したわけです。
したがって、これをこれから徐々に固めていくためには、やはりいま経済審議会で御審議いただいております経済の中期展望、これとある意味において歩調を合わせながら、部内で財政の展望についての検討をより深く行っていかなければならぬということでございますので、私どもとしては、可能な限りその一つのめどである赤字国債脱却の年度というものをお示ししなければならないという考え方を持ちながら、いま少し経済審議会の審議等を見守りながら精力的な努力を重ねていきますので時間をかしていただきたいと、こういう素直な心境であります。
#60
○戸田委員 ただ、念を押すようで申しわけないのですが、いま大臣も言われましたように、財政中期試算ですね、これはやはり財政再建の手がかりと見ていいのですか。それから、七、五、三と言われるいわゆるA、B、C案ですね、この三つのケースの中で、どれが一番実行可能に近いのだというものがございますか。その辺の見解はどうですか。#61
○竹下国務大臣 この中期試算が結局現行の制度、施策をそのままに置いていわゆる等率、等差で示した仮定計算である、こういう意味においては、これを計画と見ていただきたいとは言えないと思います。率直に言って、まさにこの前提を置いた仮定計算でありますということを素直に提出の際も申し上げたわけであります。しかしながら、われわれとしてその中で強いてとるとするならば、まあ三年と言えば余りにも短過ぎるのじゃないか。ということになると、数年というと五とか七とかというものを念頭に置いて作業は進めてみなければいかぬなと。一方、総理からもお答えしたことがありますが、五年から十年の間、こういうような表現もあっておりますが、いま定かに五がよろしゅうございますとか七がよろしゅうございますとか言うだけの自信は残念ながら持っておりません。
#62
○戸田委員 時間ですからこれで終わりますけれども、最後に、五十九―六十一年度に四兆ないし十一兆に及が財源不足、こういうことになるわけですが、要調整額の解消策ですね、たとえば大蔵省提出の中期試算で見ますと、五十九年度Aで五兆四千五百億、Bで四兆五千五百億、Cで四兆一千六百億、六十年、六十一年とこうありますが、こういうものの解消、これは何としてもやっていかなくてはいけないわけですから、この解消策には一体どういうものがあるのか。歳出削減でいくのか、増税策でいくのか、また国債発行で乗り切るのか等々いろいろありますが、一体どういうものでこれは解消をしていかなくてはいけないのかという点について最後にお伺いをして、終わります。#63
○竹下国務大臣 これは、いまおっしゃいましたように、理論的に言えば、この要調整額を前提とした場合、歳出削減か負担増かあるいはこれまた公債に財源を求めるのか、こういうことになろうかと思うのでありますが、五十八年度予算が一般歳出で前年度以下に抑えたということをいわば財政改革の第一歩であるという認識の上に立つとすれば、私は、まず糧道を断って歳出削減というところから制度、施策の根源にさかのぼってまず対処していかなければならぬ。そして、それでもなおかつ現行の施策、制度というものをどうでも残す場合、初めて負担をする方も国民、受益者もまた国民という考え方の上に立って、国会等の議論を通じてその方途を見出していかなければならぬ。だから、やはり増税なき財政再建ということが一方に言われ、そして公債発行というのが金融市場を圧迫して日本経済の運営全体に好ましい影響を与えないということを考えれば、安易にそういう問題を念頭に置くことなく、まず歳出削減からかかっていかなければならぬ険しい道のりだと思っております。
#64
○戸田委員 終わります。ありがとうございました。#65
○森委員長 阿部助哉君。#66
○阿部(助)委員 まず初めに、この国会に財確法なんというものを提出された理由を私はお伺いしたい。当たるを幸い金集めをする措置は臨時的に行ったのか、また恒常的にお考えになっておるのか、まずお伺いしたいと思うのです。#67
○窪田政府委員 一般会計の状況が非常に厳しい上に、五十八年度では五十六年度の歳入欠陥の穴埋めをする必要がございます。かねがね国会等でも、特別会計あるいは特殊法人の資金で使えるものは総点検せよという御意見もございました。そういうことで、税外収入を総ざらいをいたしまして最大の努力をいたしました。そのうち五十八年度の臨時のものをこの財確法でお願いをしておりますが、そのほかにも造幣特会いわゆる補助貨の取り崩しでございますとか、あるいはたばこの臨時の値上げでございますとか、ほかの法律でお願いしているものもございます。最大限の努力をいたしましたが、今後こういった規模での税外収入は期待できないのではなかろうかというふうに考えております。
〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
#68
○阿部(助)委員 この後期待できないからやらないということなのですか。それとも、こういうやり方は本当の一時的な緊急避難としてやったのであって、これからはそういうことはやらないという方針なのか、それを聞いておるのです。#69
○窪田政府委員 こういう巨額なものは種もございませんし、また臨時異例のやりくりでございまして、過渡的にはやむを得ないと私ども思っておりますが、基本的にはやはり財政収支を根本的に健全化していくという、何といいますか大きな正道で努力をしてまいりたいと思っております。#70
○阿部(助)委員 私は後で述べようと思ったのですけれども、歴史の教訓に学んでいくと、これは皆さんの大蔵省の編さんされた資料ですよ、これを見ますと、いまこういう形で特別会計と一般会計との境目がなくなってきた。それは昭和十一年にいわゆる準戦時体制に入った、そこでこの措置は一年限りだと言って特別会計から一般会計に移した。一年限りということをやったのですよ。ところが、その後、この皆さんのつくった「昭和財政史」に書いてあるけれども、一年限りだったのが次からはもう恒常的なものになってきた。その上に今度は、それだけならまだいいけれども、特別会計を片っ端からいっぱいつくっていって、それでみんな料金値上げやいろいろなことをやっていって、それを一般会計にぶち込んでいく。これは戦時で特別だと言うかもわからぬけれども、そういうことが行われてきた歴史を私たちは承知をしておるわけです。
いま苦しいからといって財政法をがちゃがちゃにして、そしてこういうことをおやりになる。金がないからしようがないということでやる。先ほど来戸田委員の質問にもありましたように、こういう形で財政法という法律をめちゃくちゃにしていったら、一体どうなるのだろうかという不安を私は持っておる。
だから、なぜ特別会計をつくったかという問題を大臣にも大蔵省にももう一遍しっかり考えてもらわなければいかぬ。私たちもよく言われるのでありますけれども、いろいろ困難なときなどやはり原則に立ち返って、原則を踏まえてやるというのが、そのときは苦しいけれども立ち直るための一番近道だ、こう教えられてきたけれども、私もそう思うのです。ところが、皆さんは安直に何でもかんでも金を集めさえすればいいという、今度の財確法を立法するよりもまだやるべきことはいっぱいあったのじゃないですか。なぜ税収のちゃんとした、たとえば利子配当の総合課税だとかという税収をきちんと上げる道を講じないで、こういう安易な道に走ろうとするのか。そして、戦争中行ったような財政がめちゃくちゃになる、いま財政法を皆さんはどう考えておるのですか。三百数十万の人命を失って日本は荒廃して、あれだけ大きな犠牲を踏まえてその反省のもとにできた憲法、それをある程度担保すると言われるこの財政法、いま皆さんはこれを踏みにじっていこうとするのは、私は何としても承知ができないのです。
だから、その辺に大蔵大臣、これは私は大臣だけを責めるわけにいかぬ。われわれも国会議員として、ある意味ではまた同じように責任を負わなければいかぬのじゃないだろうかと思うのですが、大臣、財政法のウエートというものをどうお考えになっておるのか、私は、これは一番基本としてお伺いしておきたいと思うのです。
#71
○竹下国務大臣 これは、国に憲法が存在するごとく、そして財政というものを扱う者にとっては、まず財政法というものは財政に対する憲法であるというような基本認識は持たなければならぬ問題であるという基本認識については、私も意見を同じくいたしております。#72
○阿部(助)委員 一般会計の歳出は一般会計の歳入で賄うのが財政法の大原則だと私は思う。これは異存ありませんね。#73
○竹下国務大臣 私は、本来国の歳出は租税などの経常的歳入をもって賄うことが基本であるという考え方は言うまでもないことであると思っております。#74
○阿部(助)委員 税収が足りないから特別会計にまで手を伸ばして、なりふり構わずと言うと失礼かもわからぬが、みんな金をかき集める、そして一般会計に充ててよいなんという条文は財政法のどこにもないと私は思うのですが、あったら教えてもらいたい。#75
○窪田政府委員 財政法は健全財政主義に基づいたりっぱな原則でございますが、ただ、日本の財政の戦後の歴史を振り返ってみますと、やはり高度成長に恵まれてそれぞれ特別会計その他に蓄積を持ったものがございます。それはそれで国の蓄えがあるということは決して悪いことだとは思いませんが、こういう一般会計が通逼迫した状況のもとにおいては、まずそういうものを活用すべきじゃないかという御意見も世上非常に強いわけでございます。先ほどから安易にというふうにおっしゃっておりますが、私どもも決して安易に考えておるわけではございませんで、やむを得ずこういうことを努力をしている。こういうたとえ話をしては恐縮でございますが、終戦直後、私のうちも大変貧乏をいたしまして、払えぬものは先に延ばすとか売れるものは全部売るとか、まあ最近自分で予算をやっていまして、昔の自分のうちの状況などを思い浮かべるわけですが、そうやって最大限の努力をしませんと、やはりそこから先に進めることについて世間の御理解もいただけないのではないかということで、過去高度成長下に蓄積したものその他も洗いざらい活用する、それは一時の便法ではございますけれども、その努力をまずやるべき段階ではなかろうかと思っておるわけでございます。
〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
#76
○阿部(助)委員 いまの御意見からいいますと、何でも洗いざらいやるなんといったら、これは先ほど私が指摘したように、特別会計、一般会計なんという区別をしないで、会計は、釈迦に説法だけれども、統一的会計の原則というのがありますね。これはコンメンタールと書いてあるのですから間違いないと思う。そういうものまで無視しておやりになるならば、特別会計なんというものはやめて、できることならば一般会計でやるというのが財政のたてまえなんで、それなら特別会計はおやめになったらいいじゃないですか。活用すべきものはみんな活用していく、いまの特別会計、一般会計という区別、なぜ特別会計をつくったかという意義も何も踏みつぶして、いまのようなあなたの御意見、苦しいからしようがないんだとおっしゃると、これは全然理論が私とは違ってくる。それなら特別会計はやめなさい、一般会計で皆やりなさい。あたりまえじゃないですか。あなたのいまの議論からいくとそういうことになってしまう。みんな活用するなら一般会計でいいじゃないですか。
会計はできるだけ統一的な経理をやるということが原則です。これは、戦前の財政法でもその原則はあったし、文章は違うけれども、今度の財政法十三条も同じように、これはコンメンタールによりますと、もう釈迦に説法でしょうけれども、「特別の資金の運用をはかる場合とか、その他特定の限局された行政分野においてその収入を経済的かつ能率的に運用しその分野における収支の計算を明らかにしようとする場合に生ずる。」これは特別の場合なんですよ。本来、できることならば、特別会計じゃなしに一般会計でやるべきものなんですよ。どうも私はあなたの御意見はいただけないのですね。あなたの家庭の昔のことのお話は、それはそれでわからぬではないけれども、国の財政のあり方としては、私は納得できない。
#77
○窪田政府委員 私は、何も特別会計とかその区分をめちゃくちゃに踏みにじってもいいということを申し上げているわけではないし、また私の話も、必ずしもそうならないとは思うのでございます。一般会計の状況からして、もし活用できるものがあれば、また、法律を設けて国会のお許しを得てやれるものがあれば、それは最大限の努力をすべきである、こう考えているわけでございます。#78
○阿部(助)委員 話が飛び飛びになって、私も予定した順序が狂ってしまうのですが、たとえば電電公社から納付金をまた特別会計で取り上げる。もしそんなに金があるなら、電話料金を下げて利用者に還元したらどうなんです。これは特別会計としては当然のことだと私は思う。あなたの理論からいって、私が心配したのは、先ほど申し上げたように、戦争中は金がないということで特別会計も一般会計もごっちゃなようにして、特別会計をいっぱいつくってしまった。それで、そこから収入をふやしていく、そのふやしたものを一般会計にぶち込んでいく、そして戦争遂行の財政をつくった。その反省の上に今日の財政法があると私は思うのですよ。それだから、冒頭に引いたように、これが恒常的になってはいかぬのだ、いまは本当の緊急避難なんですとはっきりとさせていきたい、私はこう思ってお伺いをしておるわけなんです。
大臣、その点どうですか。あなたは、本当にあと財源が、取り上げるところがないとか言うけれども、またつくればあるのですよ。また特別会計をつくって料金値上げなんかをしたりしてやれば、戦争中と同じようなことをやろうとすればやっていける。大体、いろいろな困っているとき、人間の知恵というのはそんなにいっぱいはないものです。昔やったようなことをまたやりつつ、また誤りをやるものなんです。だから、そこへ行かないように、できるだけもっと原則に返りましょうやというのが私の質問をしている趣旨なんです。大変つらいところでしょうけれども、大臣、いかがですか。
#79
○竹下国務大臣 困ったときには原点に返れ、これは私もわかります。過去に犯したいろいろな過ちに対しての反省――しかし私は、日本国民と申しましようか、それにある種の総意がもたらされておるというのは、言ってみればこの国会というものの存在ではないか、国会というものは、与野党がそれぞれの立場にあって、しかも、議会制民主主義ですから、政権交代という前提を踏まえてもろもろの議論をしていく中に、かつての翼賛国会とでも申しましょうか、そういうものとはおのずから違った結果が出てくるのではないかということに対するある種の誇りと期待を持ちながら、しかし、そうは言いながらも、過去に犯したいろいろな問題についての反省を踏まえて取り組んでいくならば、日本の全体の経済、それに伴う財政運営というものも、困った中にもその活路を見出していくだけの知恵とバイタリティーは持っておるのではないか、こういうある種の自信というものでぶつかっていかなければならぬ課題ではなかろうかというふうに考えております。#80
○阿部(助)委員 どうも私の質問とちょっと焦点が外れておるようですけれども、国会は皆さんが多数でお決めになれば一応法律として出るのだから不可能ではないでしょう。しかし、それを多数だからといってやっていったら、原則を踏み外していったら、一体しまいにはどうなるんだろうか。そう殷鑑遠からず。私はこの席で、三木内閣のときに出した特例公債の問題で初日に質問をした。そのとき私は、これはアヘンのようなものであって、必ず赤字公債は赤字公債を生んでいくという形で膨張していくのじゃないかと。大平さんは、ここに速記録がありますけれども、これは緊急避難だとおっしゃっておるのですよ。特例公債は緊急避難で、何とか早いうちにこの赤字公債から脱却したいということはそのときおっしゃった。しかし、それにはきちんとした原則を立てられなかった。
私は、それからこの返済計画というものを強く言い続けたけれども、いまでも政府や大蔵省は出していない。それでそのときに、苦し紛れというか、私のところへ来て出したのが、私は承知しなかったけれども中間見通しなんですね。あんなものは一つも当てになりはしない。また皆さんがあれをつくっても、それほど計画どおりに行ってもいないし、なっていないのですよ。あんなものを私は要求したのじゃないのです。ある意味で赤字公債というものは借金なんだから、借金にはやはりちゃんとした担保が要る、それにはインフレで返すのか増税で返すのかどうなんだと私が言えば、インフレではやりません、こう言う。そうすれば税収で返すということになる、その税収はどういう税収なんだ、こう聞いたら、とにかくいままだそれは決まらないから、十年たったら必ず耳をそろえて返しますという決意表明で終わっておるわけだ。
それは、大平さんも間違いなしに十年たったら現金で返すつもりだったでしょう。しかし現実はもうそうはならない。あなたの先ほどの戸田委員に対する答弁でも、持っておる人には現金で払うけれども、その財源はまた赤字公債となれば、いわゆるこれが借りかえということになるのじゃないですか。だんだんごまかしていこうということにならざるを得ないでしょう。ないそでは振れないということになってしまう。これじゃ、われわれがここで幾ら議論をしてみたって、それは何もならないことなんじゃないだろうか。私自身も、本当に私の力のなさなのか、私の不勉強なのか、政府に納得してもらえなかったという残念さがいまでもあるわけです。私も責任を感じます。だけれども、この特例公債は、もう六十五年前後になればとても耳をそろえて返すなんというわけには私はいかなくなったと思う。それはやはり原則というものを無視して安易にやってきた。私は、当時これはアヘンだと言った。そのときはいいけれども、だんだんアヘンはよけい必要とするようになってくる、アヘン患者になる、サラ金になるぞと言ったけれども、まあ不幸にして私の言ったことが的中しておるような気がするわけです。まだ六十年にならぬから皆さんどうおっしゃるかはわからぬけれども、私は、もう六十四年、六十五年になったら、これは耳をそろえて返済するなんというあのときの決意表明は飛んでしまうと思う。現実はそうだと思うのです。そうすれば、財政をどうするかという、こんな財確法なんというものよりももっともっと根本的なものが、皆さんも選挙があるとかいろいろなことがあれば一遍に出せなくても、もう少し国民に理解のできる方向でやる方法があるのじゃないですか。
私たちは、もう総合課税の問題とかいろいろ提起をしてきたのであって、問題は皆さん勇気がないんだな。ここまで来たら、もう一遍大臣も勇気を出すときじゃないですか、決断をすべきときじゃないですか。竹下さんは将来の総理大臣を嘱望されておる人なんだから、それを考えれば、いまぐらいのときにもう少し決断を出して、私は総合課税をやるべきだと思うし、抜本的な対策をいまから考えても本当はもう遅過ぎるんだけれども、もう少しその辺で決断をするときなんじゃないでしょうか。大臣どうですか。
#81
○竹下国務大臣 これは阿部さんの、私を含む政府に対する鞭撻、こういう意味で私は謙虚に承ったわけであります。財政を預かる者として基本的に考えなければいかぬのは、先人の蓄積に手をつける場合と、そして後世の納税者に負担をそのまま先送りする、この二つが財政を預かる者としてその都度厳しく心の中に受けとめていかなければならない一番課題である。その二つを、一つは、これはいろいろな議論は別として、いわば今年度税外収入を確保するに当たって、ある意味においては先人の蓄積に対して手をつけたという感じもしないでもありませんでした。そして、なかんずく赤字公債の発行というのは、アヘンという言葉を使われましたが、赤字公債とはすなわち麻薬であるというような論評も当時からありました。
しかし、私どもとしては、とにかく現金で所有者に対してお返しする、これはもう必ず実行すべきことであり、これをしなかったらまた大変なことにもなります。ただ、その現金でもってお返しする調達の手段として、理論的に言えば三つの手段があるだろう。それが歳出のカットであり、そして負担増であり、あるいは借りかえを含む赤字公債の発行、形式は別といたしまして公債発行、そういうことであるということになれば、やはりあとの二者というものを安易に念頭に置いてはならぬ、こういう考え方で対応していかなければならないところに私も大変な厳しさを感じておるわけであります。
確かに、戦争中は別といたしまして戦後の、まあ六十五歳以上の人、阿部さんもその一人かもしれませんが、その人たちの蓄積が今日の日本の繁栄というものをもたらした。しかし、その間に行われた、オリンピック直後の戦後最大の不況の際の建設国債は仮に別といたしましても、ドルショック後、そして第一次石油ショック、そして第二次石油ショック、そこにいわば公債政策というものが導入された。しかし、その公債政策があったからこそ、また今日の日本経済全体のある意味におけるバイタリティーの基礎は支えられたではないか。それが限界に来て、今日いわば対応力を失った財政をどうして立て直すかというのが喫緊の課題となっておりますので、今後ともそうした御鞭撻の趣旨の意見を政策の中に反映さしていかなければならない課題である。
おっしゃるとおり、私は、自由民主党政府の重荷であると十分責任は感じつつも、国民合意の中で、せっかく日本には熟した議会制民主主義というのが今日定着しつつございますので、その中で一生懸命努力をしていかなければならぬ課題であるというふうに考えております。私は、多数というものが考えたことが絶対であるという考えは持ったこともございませんし、また、政党政治である限りにおいては、絶えず政権交代もあり得るという考え方の中に立って、さればそれぞれがみずからの主義主張に立脚して政策遂行に力をいたしておる、ある意味においては復元力というものがあるかというような反省も政党人としては絶えず念頭に置くべきではなかろうかというふうにも考えております。
#82
○阿部(助)委員 政権交代ができればいいのですが、いまそういう情勢じゃないのはわれわれまことに残念なのだけれども、だからといって、いま多数党だからここで多数決で決めれば何でもやってもいいということには私はならぬと思うのですよ。合法、非合法なんといったっていいかげんなものでして、ヒトラーだって、やったのはみんな合法なんだよ。彼は全権委任法というのを通したのだから、ヒトラーのやることはみんな合法だということになってしまったのだ。そうなっては大変なのでして、私は、もう少しそのときにいわゆる憲法だとか財政法というものを遵守するというお立場をとってもらいたい、こういうことなんです。
そこで、私は、この財確法なんというものをお出しになる、緊急避難だとおっしゃるならば、いまこれは緊急避難ですが、この次にはこういうふうにしてこういう緊急避難から逃れますというものがついてこなければ、どうもまた特例公債と同じことになるのじゃないだろうか。いま緊急避難でやむを得ません、何とかお認め願いたいというなら、それはそれである程度また判断をすることにやぶさかではないけれども、それには、来年の予算はこういう方針で臨みます、再来年はこうやりますということが明示をされない。いま大蔵大臣は、歳出カットに重点を置くかのようなことで負担増と公債という問題をいま考えるべきでないとおっしゃった。気持ちはわかります。現実はそうなっていないのじゃないですか。気持ちはこんな財確法なんか出したくなかったろう。緊急避難とおっしゃるくらいだから出したくなかっただろう。しかし、現実はどうしようもないということで、皆さんこれをおやりになったのでしょう。
だから、私は、政府のいままでのいろいろな財政の質疑や何かを聞いておっても、できもしない歳出カット、何がしかはできるだろうけれども、今日の特例公債、赤字公債をなくするような歳出カットができるなどということをお考えになっている人は、日本じゅうで大臣だけなのじゃないだろうかと思うんだな。まだ本当に大臣そんな気持ち――そのお考えは、基本はこうだというのはわかるのですよ。本当に国民に真実を訴えるということがより大事なのじゃないだろうか。それなしには、大臣、言葉は少し悪いけれども、国民をたぶらかすということになりゃせぬですか。やはりその辺に政治不信というものが来るのじゃないだろうか。苦しいときは、こうなのだ、しかしこうやるよという夢も必要でしょう。しかし歳出カットで、いまの財政再建がそれだけでできると大臣はお考えになっておるのですか。
#83
○窪田政府委員 大臣のお答えの前に、事実をちょっと振り返らせていただきたいのです。五十年代前半、私が主計官それから主計の総務課長でやりくりをしておりました時代、特に五十二、三年は、私どもは国債依存度を三割までにとどめていただきたいと申しておりましたが、その三割とは何の根拠もないではないか、それは財政エゴだと言って盛んに言われました。そういう時代から比べますと、最近の世論の支持といいますか、それは私どもにとっては大変な御支援でございまして、こういう御理解が進んだ時代にさらにそういう歳出の内容の合理化を私ども進めてまいりたい、これは本当にそう思っているわけでございます。
五十四年度予算を編成しますときに、当時の長岡主計局長が、肉を切らせて骨を切れという歳出カットの号令を出しました。これが歳出抑制の第一歩ではなかろうかと思いますが、五十三年度二〇%の伸びであった一般会計を、その年一二%に抑制いたしました。そのとき、非常な抑制を図ったような気が私はしましたが、いまから考えますと非常になまぬるいものでございました。
そういうふうに、だんだん時代が変わり世論も変わってまいりますと、とうていできなかったことがだんだんできるようになってまいります。ことしの五十八年度予算の中身でも、二、三年前ではとうてい考えられもしなかったようなことがいろいろ可能になっているわけでございます。したがいまして、今後私ども、いろいろ各省とも御相談をして最大の努力をしてまいれば、また新しい局面になってくるのではなかろうか、こう考えているわけでございます。
#84
○竹下国務大臣 いまの御意見を交えての御質問もいわば鞭撻であると思っております。私は、公債政策というものは、いまも五十四年というお話が出ておりましたが、五十四年までが言ってみればそれの爛熟期という言葉が適切であるか、実りがそれなりに実ってきた時期ではなかったか。したがって、五十四年というものは大幅な自然増収に支えられて、結果として一兆八千億でありましたか、発行を予定しておった公債を発行しなくて帳じりを締めることができた。
したがって、それが限界で、今度は公債の消化の問題にも当然問題が出てくるし、そこで一兆円の当初予算比減額というもので組まれた五十五年予算。しかし、最終的に四百八十四億でありましたか、まだ剰余金が出る時代であった。そうして五十六年、五十七年は、世界経済の不透明の中で歳入欠陥というものを大きくもたらした。したがって、なお一層財政改革というものの必要性が現実の問題として厳しく覆いかがさってきた。これが現在の時点ではなかろうかというふうに考えております。
したがって、私どもはもとより勇断をふるわなければなりませんが、戦後の今日までの推移の中で、国民自身が賢明でございますので、政府なりわれわれ行政当局者が国民自身をリードしていくということはもとより必要な要件の一つでありますが、それ以上に国民の選択する方向にむしろわれわれが引っ張られていっても、日本という国は知識水準からしても勤勉性からしても世界一高い国民であるだけに、この難局は最終的には国民の理解と協力の中に乗り切らなければならない問題である。そうなれば、国民の方にその判断を下す一つの、再三御指摘になっておりますある種のプランニングの問題でございますとか、そういうものの提供をより確実にしていかなければならない。しかし残念ながら、その財政の展望に関するプランニングというものが、現実問題として非常に確度の高いものをつくりにくいというのが現在の実情ではなかろうか。したがって、一つの方向を明示して、こういう国会の議論等を通じながら、国民の理解と協力を深めながら、国民の志向する方向に対してわれわれがかじをとっていくべき問題ではないかな、こういうことを常日ごろ考えておる次第であります。
#85
○阿部(助)委員 国民を信頼されるのは結構です。しかし、そのプランニングをつくりにくいとおっしゃるけれども、つくりにくいのではなしに、つくる勇気がないということじゃないですか。問題は勇気ですよ。それがないからつくることができないのじゃないですか。私たちは幾つか提案をしておるわけであります。先ほど言ったように、まず不公平税制の是正という形で利子配当の総合課税等であるとか、この前もありましたけれども、大臣が法律をつくられてまたやめたグリーンカードの問題であるとか、そういう問題や懸案が多々あるわけですよ。そういう問題に目をつぶって、このプランニングができないとすれば、これは勇気がないことだと思う。勇気があったけれどもできないとすれば、失礼だけれども、私は無能だということを言わざるを得ない。これはどちらかなんです。問題は、勇気があるかないか、無能かということになっちゃう。これでは財政も運営する担当者としては少しおかしいのじゃないだろうか。
皆さん幾ら言ってみたって、歳出カットの努力は結構です。努力をする気持ちは結構だけれども、いまの十三兆もある国債をなくするほど私は歳出カットができるとは思わない。そういう点からいって、財確法を出す、こんな財政法に背くような法律をお出しになる、緊急避難をするためには、先ほどから言うように、それならば次にはこうやります、しかし、ことしは緊急避難でこうですというものがなければ、また赤字公債と同じことになる。私はあのときに、大平さんが大蔵大臣でありましたけれども、お出しになるなら、これは緊急避難ならば、ここからこういう形で、来年、再来年にはこういう形で抜けますということをおっしゃらなければ、あなたの決意表明にすぎない。十年たったら返しますということは、これは何の足しにもならぬのです。中小商店の皆さんや商工業の皆さんや私が銀行へ行って金を貸してくださいと言って、必ず返します必ず返しますと言ったって、だれも銀行は信用しませんよ、貸しませんよ。同じことなんですよ。政府だからそれがまかり通るという理屈にはならない。やはりしゃばの理屈は通っておるんですよ。だから、それをやらないから、いまのような緊急避難であったはずの赤字公債がいまや恒常的なものになってしまった。だから、財碓法もまた恒常的なものになるんじゃないだろうかという心配を私はしておるわけです。
いま、見渡す限りこれしかありませんと言うけれども、もう戦争中に経験がある。次から次へと特別会計をつくっていっては、そこを収入を増加させて一般会計へぶち込んできた、金も借りた。しかし、借りたけれども敗戦で一つも返さないでパアにしてしまったという。これは皆さんのこの「昭和財政史」でちゃんと書いてある。私は、そうならないだろうかと、いまここでこの財確法を見ながら、昔を思い出しながら、その不安を持つからお伺いをするのでして、大臣、いま見れば確かに大体洗いざらい取り上げたな、だけれども、また皆さんが知恵を出すと特別会計をいっぱいつくって値上げしていくなんということになりはせぬだろうか、私はその不安があるわけですよ。
だから、私は繰り返し言うけれども、財確法を出すときには、次にはこれはこういう形で、こういうことはもう緊急避難で二度とやらないようにするという何かなければ、私は、財確法というのは何とも合点がいきませんな。大臣どうなんですか、その辺。いますぐ私はここでそのプランニングを出せとは言わないけれども、もう少し出す努力をちゃんとされなければ困るじゃないですか。
#86
○竹下国務大臣 このたび御審議いただいている財確法、いわば五十八年度の、この五十六年度の繰り戻し等も含めた財政需要に対しましての措置としてお願いをしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この財確法というものそのものを、もちろん特例債の発行の問題も含まれておりますので、基本的にはこれが中長期のプランニングを提出して、このような時点にはこのような手法によってこのようにいたしますというのが、御審議をいただく側に対してもそれなりに一番親切なあり方であると私は思っております。したがって、公債政策というものに踏み切って、それが緊急避難と言われ、しかも一番短時日で効果を上げたのは、やはりオリンピックの翌年の不況に対する応急施策のときの公債政策ではなかったかと思っております。それが徐々に、いわばお言葉をおかりするならば恒常的な性格を帯びて今日に至っておる。私はそれを否定する考えはありません。しかし、そこでこの恒常的な特例債依存体質あるいは大きく言えば公債依存体質からどのようにして脱却するかというのがまさに財政改革そのものであって、それにはやはり、いわば一時的な大手術によってそれをするということに対する国民の体力の問題もあるでありましょう。したがって、そこに中長期のプランニングというものが必要であるという議論はますます当を得た議論になってくるわけでありますが、それをお示しするには、言ってみれば世界の中の日本と言われる今日、それを確度の高いそのような一つの展望を見出すということについては、国際経済が余りにも不透明である。さようしからばということで、私どもといたしましても、院の要求に基づいて仮定計算とはいえ中期試算等をお示ししながら、なお今後、いわば経済審議会で御議論いただいておる将来の経済の中長期展望に対して、それに合わせながら財政の果たすべき役割りというのを基礎に置いた財政の中期展望について作業をいま進めておる。その中において、国会でこのようにして御議論をいただいておるということが、それらのものを作成するに当たってのまた大きな参考になる、こういうスタンスで承っておるわけであります。
#87
○阿部(助)委員 どうも私は、大臣、お伺いしておると、確かに国際経済はなかなかむずかしい、いろんな問題があるとおっしゃる。それは当然あります。前の大蔵大臣は、経済は生きておる、生き物だなんというお話をなさったことがある。生き物だから優秀な竹下大蔵大臣が就任したんじゃないですか。死んだ物ならだれでもやれますよ。中学の一年生でもやれますよ。生き物だから、これは優秀な大臣や大蔵官僚、そうそうたる連中がそろっておるんじゃないですか。だから、国際経済がどうだこうだ、それは影響は大いにあります。しかし、日本の財政がこんなにまでおかしくなってしまうということには、私先ほど言うように、勇気というか決断というものがなさ過ぎるんじゃないだろうか。
私は、先ほど堀さんと雑談したのだけれども、財政法でたった一つ守られておるというのは、本当に日銀引き受けをやらないということだけじゃないですか。あとは皆崩れてしまったじゃないですか。私は本当に残念だけれども、これだけ戦争の犠牲の上に成り立ったこの財政法が、いまやたった一つ柱が残っただけで、もう大半が崩れ去ったんじゃないだろうかという不安を非常に私は感じておるんですよ。
ここで聞かぬでもいいことかもわからぬが、日銀引き受けだけは何としてもこれは守る決意を大臣はお持ちなんでしょうな。
#88
○竹下国務大臣 私どもも過去の暗い夢、言ってみれば日銀引き受けという問題が日本経済の根幹を揺るがしてしまった。だから、やはりわれわれとして、当然のこと、財政法にも書いてあるわけでございますが、これを踏み外しするようなことをしてはならぬというふうに心得ております。#89
○阿部(助)委員 そこで、私ももうこれ以上言ってもしようがありませんけれども、いつごろまでに大臣、大体このプランニングというものをおつくりになるおつもりですか。あの財政の中期見通し、あれはだめですよ。あれはいろんな前提もあるし、ただこうなるであろうという数字を並べただけでして、私はあれを一番最初出す前に相談を受けたんだけれども、あれは予算委員会があれでとまってしまったわけですよ、本当言うと。返済計画を出すか出さぬか、出せというのとできないというのでとまってしまったわけですよ。そこで、何とかそれを出すから委員会をやれということで話があったわけです。しかし私は、あんなものは余り当てにならぬし意味はなさぬだろうから、そんなのは承知しないと言ったんだけれども、党と党との話で私にやれと言うから私は委員会再開に応じたわけでして、そういう経緯を持っておるわけです。あんなものはだめですよ。それよりも、やはり財政再建はどこまで――歳出カットをするならカットするでいいです。私は歳出カットは否定しません。だけれども、それだけではだめだということを私は言っておる。そうすると、どういう図式で財政再建をやろうとするのか。ただ抽象的に、理念としてはとか、あるいはまた鈴木前総理のように、ただ抽象的に五十九年度には赤字公債をゼロにしますなんという希望意見では、この委員会ではだめだと私は思うのです。お持ちでないものをいますぐ出せとは言いませんけれども、どの時点までにそれぐらいのものを出そうとされるのか、時間的なものは全然いま念頭にないのか、私はそれをお伺いしたいのです。こういう、財政法を食い散らすような財確法をお出しになるというならば、当然それをつけるべきだという考えを私は持っているだけに、本当はいま出してもらいたいけれども、いつごろまでにそういう案をお出しになろうとするのか。全然用意がなしに、いまは緊急避難、緊急避難と言われたって、これは恒常的になります。そういう点で、私は、大臣の決意というか御意見をお伺いしたいと思うのです。
#90
○竹下国務大臣 確かに、振り返ってみましても、いわゆる収支試算、それから中期展望、中期試算と、こういう変化を見ながら、国会の御審議の手がかりとしてのものを提出してきたわけであります。なかんずく、それの一つの考え方の基礎にあるものは、やはり後年度負担推計ということであるわけであります。しかし、先ほど来御指摘がありましたように、中期展望にいたしましても、今日その要調整額だけを見ても大変な乖離が生じておるものが現実予算案として御審議いただいたりしたわけであります。したがって、基本的には、経済は生き物という言葉もお使いになりましたが、そういう場合に、財政改革に対する基本的考え方に対して、その理念の中へ確たる数値を当てはめていくというのはなかなかむずかしい問題だと私は率直に思います。しかし、先ほど来申しておりますように、経済審議会の審議が進んでいく、そうして私どももそれを横にらみにしながら、これからの財政運営の改革の基本的考え方に沿って、それらのものを工夫して当てはめていく努力をしなければならぬと思っております。
したがって、政府側の考え方としては、出せる限界はこれまでですと、これが、いまお話なすったように、今回の中期試算に対しても御説明を申し上げ、やむを得ぬかなとか、これでは満足できないという意見はあるものの、一応提示したものをまあ受け取ってはいただいた。だから、これからどういうものの中身を詰めていくかということに対しましても、やはり御議論を通じて相談をしながらやっていかなければならぬ課題でありますが、いま、いつまでに出しますということを確然と言える状態にはない。一つのめどとしては、五十九年度予算審議に当たっての考え方というものについての工夫したどういう試算が出てきますか、それが一つは考えられますが、その前に、少なくとも赤字国債の脱却年度を含めた、そうしたものについての作業は、いま少し早目に進めていかなければならぬ課題である。これからも御意見を聞きながら、そして部内でも経済審議会の方の御意見をも参照にしつつ、作業を進めていく課題であるというふうに考えております。
#91
○阿部(助)委員 大臣は答弁が非常にうまいというかあれですが、御意見を聞いて御意見を聞いてと言うけれども、わが党がいろいろと意見を述べたって、さっぱり聞いてもらっていないのでして、その辺、言葉はうまいことをおっしゃるけれども、どうもさっぱり聞いておられないと思う。それよりも私心配なのは、皆さんがいまお考えになっておる主観がどうであれ、こうであれ、こういう形で流れていきますと、そこに大きな問題が出てくるのじゃないだろうか、そのことが心配なんです。先ほど来言うように、緊急避難が恒常的なものになり、そしてやっていった、それは戦前の話、戦後も赤字公債は緊急避難であったものが、いまや恒常的なものになって、ここまでやってきた。そしてその根拠も、これからどうするかというものも提示されないまま、いまのような御答弁で、御意見を聞いて御意見を聞いてということでいくけれども、やがて行く先はどうなるのだろうか。口先だけでそれを言われたのでは、財政危機は直らないだけじゃない、財政民主主義を破壊して、そして戦時下の戦時財政と同じような形の道を切り開いていくのじゃないだろうか。皆さんの御意図がそうであるとは私は申し上げないけれども、たどる道はそれしかないのじゃないだろうか。
冒頭に申し上げたように、一般会計と特別会計の問題もそうであります。そして赤字財政の問題もそうであります。ということを考えていくと、いま主観的には、皆さんは何とかしよう何とかしようと思っておるだろうけれども、ならないから、これはやむを得ません、やらないから、やむを得ませんでやっていくと、同じような道をたどるのじゃないだろうかという不安を私は持っておるわけであります。どうも頭が古いと言われるかもわかりません。戦争中を通ってきた私にはその不安がある。
だから、私が繰り返すように、財政法は、ある意味では憲法第九条を保障するものだと、こう書かれてあるあの解説書、私も全く同感なのはそれなんでして、だから、財政法の原則にもう一遍立ち返っていただきたいという願望も込めながら、この質問をしておるわけでありまして、その辺でどうもそれが不安でならぬわけであります。
どうかそういう点で、二度と昔の間違いを繰り返さないようにするためには、いまの大臣の御答弁にはどうもちょっと物足らなさを感ずるわけであります。確かに、いまこうする、ああするというものが出しにくいだろうとは、私も重々御想像申し上げます。しかし、どの時点か、なるたけ速やかな機会に、政府が勇気を出して財政再建の道、そしてそういうものをきちんとされないと、ますますサラ金財政になっていくのじゃないだろうか。それだけで済むならばいいです。それがやがて戦争中と同じような形で進んでいくのじゃないだろうかという不安を私は持っておるだけに、もう一遍大臣、もう少し勇気を出して、まあ皆さんの御意見を聞いてと言われるが、これだけ私は同じことを繰り返し繰り返し申し上げたのだから、もう意見も大分聞いたでしょうから、大体腹を決めていいときじゃないですか。私は、何月幾日までに出しなさいとかそんな無理な注文はしません。だけれども、もっと速やかに、本当に財政再建の決意を固めるときなんじゃないだろうか、こう私は思うのですが、どうですか。
#92
○竹下国務大臣 戦争中の悪夢という問題と今日基本的に違っております一つの点は、やはり戦争鎖国というような状態の中にあって国際経済の中の位置づけというものが考えの外においても運営できたのが、ある意味における戦時財政というものではないかなと思います。今日、平和憲法を持ち、そして世界全体がこの国際経済の中に、なかんずくGNP一一%くらいでございますか、そういう巨大な経済、ある意味において大国でございましょう、そういう中において、いわば国際経済を無視したわが国の経済、それに伴う財政というものは成り立ち得るものではない。そこには国民全体の良識というものがそういうものをディスターブするとでも申しますか、そういう方向に突っ走ることを許容するわけはないというふうに私は考えております。
したがって、私どもは財政改革の基本的な考え方を出しました。それに伴って審議の手がかりとしての中期試算をお示しした。だから、言ってみればその基本的考え方についてのいわばプランニング、そしてその手法、そういうものをできるだけ具体的にお示しをするということが私もあるべき姿、好ましい姿であると思っておりますが、それを直ちに拙速的にこれを出すということができない、事ほどさように全体の方向がつかみにくいというのが今日の状態ではなかろうか。
しかし、いずれにいたしましても、五十九年度予算のいわばシーリング、そしてその次は概算要求、こういうふうに続いていくわけでございますから、それらの作業と並行しながら、私は御満足のいけるものであるとは思っておりませんが、御意見を聞きながらそれに適応するようなものを出していく努力は、これからも引き続き、鋭意続けていかなければならない問題であるというふうに、しかと認識をいたしておりますので、いろいろな機会を通じての御叱正、御鞭撻をお願いするわけであります。
#93
○阿部(助)委員 あなたがおっしゃるように、確かにいまは戦争中じゃないのです。その点は違うと思います。戦争となれば何もかにもそこに集中せざるを得ないだろうから。だけれども、中曽根総理は、アメリカで憲法改正の時間表は私の頭の中にあるんだ、こうおっしゃっておる。あなたは、平和憲法があるから、こうおっしゃるけれども、それもどういうようになるのかという不安を持っておる。それで防衛費の問題は、御承知のように社会福祉やいろいろな問題を切り詰め圧縮する中で、われわれの言葉で言えば突出をしている。GNP一%というものも一つの歯どめかもわかりませんが、本当を言うと、防衛費というものは赤字公債を出す限り――私は、健全財政こそが防衛費の歯どめである、そう思っておるのです。赤字公債を出しながら防衛費を太らしていくということは、私は何としても合点がいかない。本当に平和国家ということになれば、私は、健全財政こそが防衛費増大の歯どめになるべきだ、こう思うのです。そうすれば、健全財政の中で社会福祉をこう切ってこうなるということに対して国民の批判も出るだろうし、いろいろな問題が出るだろうけれども、これはGNP一%、それも超えそうでありますけれども、そういうものよりもむしろ私は健全財政こそが、ある意味で言うとこれからの日本の経済にとっても日本の防衛費の抑制のためにも必要なんだろう、こう思っておるわけであります。
そういう点で、戦争中のものがストレートにはならぬけれども、いろいろな問題が非常に似た形になってきておるんじゃないかということを私は不安を持つだけに、この財政再建については平和憲法そして財政法、その原則をしっかり踏まえて財政運営に当たってもらいたい。そのためには、もう二度とこういう財確法なんというものを出さないような、そしてそういうときには必ず裏打ちを持って、それはいろいろな事態が起きるかもわかりません、私もそれは想像します。そういうときには緊急避難はあり得ると思います。あり得るけれども、その場合には、これは緊急避難であって、すぐにそれをその緊急避難から脱却するという裏打ちを持って国会に臨み、国民のために審議をしていただくように、これは私は強く要望いたしまして、大体時間のようでありますから、私の質問を終わりたいと思います。
#94
○森委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。午後零時十七分休憩
────◇─────
午後一時四分開議
#95
○森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。柴田弘君。
#96
○柴田委員 大臣、どうも連日大変御苦労さまです。私は、きょうは財確法に関連をいたしまして財政問題を中心に御質問させていただきたいと思います。そこで、過日の当委員会においてもいろいろ申し上げましたが、今回のこの財確法をいろいろ見てまいりまして、五十八年度予算、これはもう通過をしてしまったわけでありますが、やはりこれは大臣も、財政再建、いまは財政改革というふうにおっしゃっているわけなんですが、その第一歩の予算である、予算成立後の記者会見でそのようにおっしゃっているわけであります。なるほど、一般会計の規模を前年度予算から実質マイナス三・一%に切りかえた、あるいは国債発行額を五十七年度の補正予算から一兆円減額した、こういうことであるわけであります。しかし、その実態を見てまいりますと、本当にいろいろな、あちらからこちらから御都合主義の財源対策による歳入の水増し、先取り、これは本委員会においてもしばしば指摘をされておりますが、こういうことをやるには財政再建への一つの確固たる展望といいますか一つの指針というものがあって、その中でこういった財源あさりをやっていくんだ、それは国民の前にきちっとしていかなければ、財政改革に対する国民の共感というものは得られない。大臣の所信表明演説の中でも、財政再建は国民の英知と努力、こういうふうにおっしゃっているわけでありますが、そのように国民に求めるならば、やはりきちっとした財政再建への展望というものを持って対応されてしかるべきではなかったか、こんなふうに私は思うわけでございますが、その辺はどのようにお考えになっているのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
#97
○竹下国務大臣 確かに財政再建の展望、その中で従来国民にもそしてわれわれにも非常に強烈に印象づけられておる点は、やはり五十九年度赤字国債脱却、これは一つのめどとして強烈に印象づけられたものだと思っております。それが事実上困難になりました、断念をいたしましたということになりました今日、さてどのような計画のもとで進めていくか、こういうことになりますと、御提示申し上げましたのは財政改革に対する基本的な考え方、これだけは御提示申し上げることができた。しかし、少なくとも従来、十分なものとは言えないがいわゆる収支試算あるいはその後は中期展望、それに類するものに対する努力をすべきだ、こういう矢野さんの御要請に基づいて、それで私どもいろいろ工夫いたしまして、後年度負担推計という前提の上に立って中期試算というものをお出しした。しかし、その中期試算も、いわば七、五、三というあくまでも一つの試算であって、その中へされば何年にどうするかという数値は全く入っていない。したがって、財政改革に対する基本的な考え方の中にどれだけそれに数値を乗っけていくかというようなことがこれからの課題ではなかろうかと考えております。それをいつ作成するか、いわば自由主義経済のもとに計画そのものは非常に立ちにくい情勢にありましても、ある種の展望を示す、なかんずく、赤字国債からの脱却年次をギブアップしましただけに、新しいものを示すというような必要は私もあろうかと思うのであります。
したがって、いま経済審議会の御議論をお願いしておるところでございますが、それらの経緯を見つめながら、部内で鋭意これが検討を続けておるという状態でございますので、いずれ五十九年度予算の御審議もいただかなければいかぬし、その前にシーリングあるいは概算要求というような手続を踏んでいくわけでございますから、それこそこうした議論を聞きながら、そうして私どもとしては、それにどれだけこたえられるか、できるだけこの要請に沿うようなものを提示していきたいというふうに考えておるところであります。
#98
○柴田委員 国民の目から見れば、財政再建の手順も方策もなくて、いわば荒海に羅針盤もなしに航海に出た船のような、そういった感じを正直言って持つわけであります。これはきわめて失礼な言い方をしたかもしれませんが、現在の政府には財政再建に対する確たる展望、指針というものもないではないか、そういうことになるわけであります。それで、いま大臣も後段で答弁されましたが、何かきちっとした完璧なものとは言わないまでも、財政計画、これは財政計画と突き詰めて言ってしまうとちょっと大臣もたじたじとされますので、これは私の勝手な言い方で大臣はどんな御理解でもいいわけでありますが、そういった財政計画的なものを提示を早急にされまして、国会の審議あるいは国民の前に財政再建、財政改革への重要性というものをわかりやすい形で提示をするということがきわめていま大事なことではないかというふうに私は正直に申し上げて思います。
たまたま大臣が先々回の大臣のとき、昭和五十五年でございますが、四月の二日、私は、財政改革の問題につきまして、いろいろ御質問をいたしました。当時の主計局次長は吉野さんでありましたが、相当いい議論をしたと私は思っております。これは大臣も御記憶があろうかと思います。
いまその会議録をひもといてみますと、こういった「財政計画策定の意義は、今日の財政の現状にひそむ諸問題をそのままにわかりやすい形で国民の前に明確に提起する、そういう形で財政再建に大いに役立っていく、その財政再建を進めることだけでも十分に意義がある」このようなことを言うております。政府側も、基本的にはそうだ、こういうふうに答弁をされておるわけであります。具体的なあるいはまた技術的な問題についてもいろいろ質問したわけでありますが、一つは、税制改正との関連、あるいは公共事業の長期計画の取り扱い、あるいは行政改革、補助金等の整理合理化の問題、あるいはまた特別会計をどうするか、地方の財政計画をカバーしていけるかどうか、それぞれそういった問題を含めて、完璧とまでは言えないにしても、とにかく財政収支試算のような数字の羅列ではなく、国民にわかりやすい形で提示をしていく、こういった議論をいたしました。これは、僕はいまになって考えますと非常に意義があったことだと思いますよ。
それで、そういう議論の中で、五十六年度、五十七年度財政の中期展望が出されました。そこで、この財政の中期展望によって――しかし、かつては財政収支試算は増税計画書だ、政府側はそうでないと言っておりますが、そういうような非難もあった。財政の中期展望は、これは財政収支試算よりも一歩前進をして財政再建を進める一つの手がかりになったというふうに、正直言いまして私は考えております。ところが、今度また五十八年度は、いま大臣がお述べになったように、三つの七、五、三ですか、分けて中期試算という試算的なものに逆戻りしてしまったのではないかというような危惧を私は正直に言って持っております。そして、五十九年度の赤字国債の脱却も放棄をし、それから増税なき財政再建も、口では言うものの、果たして今後貫くかどうか、これも非常に疑わしい。この辺が、正直に言いまして国民が非常に不安を持っているところであると私は思います。
まず、本論に入る前に、財政の中期展望をどうでしょうか大臣、私がいま言ったように、一つの財政再建の足がかりになったということでは評価をしているわけでございますが、この辺の大臣の評価がありましたら、一遍お聞かせをいただきたいと思います。
#99
○竹下国務大臣 これは、先ほど申しましたように、御要請により、まず財政の収支試算、それから中期展望、これはやはり予算を御審議いただきますためにも一つの手がかりとしての役割りは果たしたではないかと私は思っております。しかし、いま五十九年度の赤字公債脱却という一つのターゲットが崩壊したという状態の中に、われわれにもそれなりのある種の反省があったわけです。これは理由をつければ、いわゆる国際経済に対する不透明さというようなものが膨大な歳入欠陥をもたらした、そういうことは言えると思いますが、しかし、そのことはそのこととして、別の意味において、政府が申し上げておりましたそういう一つの目標があえなくもついえ去るということは、ある意味においては政治不信そのものにもつながりかねない、より慎重になったという点もあろうかと思います。
それからいま一つは、費目ごとにいろいろな数値をお示しした、それも私はそれなりの意義があったと思いますが、一方、それは現行の施策、制度を前提に置きます限りにおいては、それを受けとめる側においては、そこまでは既得権であるという意識が固定形成されていく可能性が強い。そうすれば、これがその施策、制度の根源にさかのぼって歳出カットを行う場合の一つの障害にもなるということもあったかと思うのであります。
したがって、そもそも自由主義経済体制の中で確たる計画というものはなかなかなじみにくい問題でございます。したがって、お出しすることとなれば、現行の制度、施策を前提として、これを物価とか成長率とかいろいろな問題で将来に投影していくという、いわゆる後年度負担額推計というものが基本となるということは、他の先進諸国もその範囲を出ていないということがあるわけでございます。
したがって、確たる計画というものはなじみにくいものではありますが、私は、手がかりとしての役割りを果たしたとの評価をするとするならば、いわばこの財政改革に当たっての基本的考え方というものにある種の計画性を持たせたものは御提示する努力はしなければならぬ。それは十分御満足がいくかどうか、これは問題があると思いますが、その都度協議をしながら、御趣旨にできるだけ近く沿ったものをやはり提示していく努力はしなければならぬことだというふうに考えております。
#100
○柴田委員 それで、いまも大臣が答弁になりましたが、確かに確たるものは出てこないと思います。また、現行制度を基本にした後年度負担推計、この考え方もそうだ、私はこう思います。ただし、先ほど言いましたように、三つに分けた七、五、三の中期試算じゃ何ともならぬということなんです。これだけは完全に私は否定をしておきますし、大臣も恐らくそういう考え方ではないかと思います。そこで、たまたま客観的に見ましても、政府が国民の理解を得ながら財政改革を進めていく条件は整ってきている、私はこう思っております。これは非常にひが目かもしれませんが、まずその一つは、臨調答申でも、財政再建の手順と方途を明確にしなさい、こう言っているということ。二つ目には、いままで財政計画というものを出せなかった、再建計画というものを出せない理由にしていたいわゆる経済社会の中期計画、これも長期展望というふうになるにしても提出せざるを得ないと思います。三つ目には、歳出面における問題は、臨調の最終答申も、これは提出すべきであるということ。四つ目には、税制調査会、これもことしは中期答申を行う年になっている。
だから、こういったものを受けて、ここで財政再建、財政改革の手がかりとなる財政計画を提出して、国民にわかりやすい形で財政再建、財政改革というものを進めるいま一番大事なときではないか。そして、しかも、でき得ればそれが五十九年度の予算審議に間に合うような形で提出をしてくるべきではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、これは大事なところでございますので、その辺のところをひとつきちっと一遍お聞かせをいただきたいと思います。
#101
○竹下国務大臣 確かに、いま御意見の中におっしゃいました五十九年度予算審議の手がかりとなるためにもというのは、私も一つの時期であると思っております。ただ、そのときに、どのような努力によってどのように理解していただけるかという問題につきましては、本院における議論を通じたりまたは個々の接触の中で、できるだけ乖離の少ないもので提出する努力をしなければならぬというふうに考えております。#102
○柴田委員 いま、できるだけ提出をする努力をすると大臣がおっしゃったわけでありますが、主計局いらっしゃいますね。この中期試算、三つのあれじゃ本当に何ともしょうがないわけですよ。国民の選択を、こうおっしゃっても、判断するものがないものですから選択のしようがないです。せっかくいま大臣がそういった御答弁をなされたわけですから、事務当局として、いまの問題はどうでしょうか。
#103
○窪田政府委員 五十六年度大きな税収の欠陥が生じ、まだその傷がいえない段階でございますので、今年度は試算としてA、B、C、三つ出させていただきましたが、いま大臣から御答弁のありましたように、五十九年度に向けましては、私どもも真剣に今後の財政の姿を考えてまいりたいと思います。たまたま、いま御指摘のありましたように、将来の経済の姿について経済審議会の答申等がございますれば、それなども参考にして真剣に検討してまいりたいと思っております。#104
○柴田委員 大いに期待をいたしている次第でございます。せっかく五十九年度予算審議まで、こういうふうな御答弁があったので、計画の期間ですね。これは大体五年か七年、まあ五年が大体一つの、中期展望でもそうだと思いますが、そこら辺のところはどう考えていらっしゃるのか。
#105
○窪田政府委員 こういう中期の展望をつくります場合、私どもいつも技術的な限界にぶつかるわけでございますが、人間の想像力の限界と申しますか、いまある制度は最近時点に盛り込めますが、だんだんゆがんだ形にならざるを得ない。それから、経済自体が非常に変動の時期でございますので、今後どうなるか必ずしも的確に見通せないというふうな、いろいろ技術的な壁にぶつかるわけでございます。今度経済企画庁で経済審議会に諮問しておられます経済の今後の姿、これをどのぐらいのレンジでお考えになるか、その辺なんかもひとつ参考にさしていただきながら検討さしていただきたいと思っております。#106
○柴田委員 とにかく期待をしておりますので、よろしく五十九年度予算案審議までにひとつわかりやすい形で国民的なコンセンサスを得られる、あるいはまた、われわれがその予算審議をできるようなものを御提出いただくことを重ねて要望してまいります。続きまして、これに関連をいたしまして、五十九年度予算編成の基本方針、昨日来本委員会においてもいろいろ議論がなされましたが、簡潔にお尋ねをしていきます。
三点あります。一つは、一般歳出つまり国債費と地方交付税交付金を除いた支出、これを当然原則マイナスシーリングになされると思いますが、その幅、つまり、五十八年度はたしか五%でありましたが、それ以上切り込む方針であるかどうかが一点。
それから第二点は、五十八年度はマイナスシーリングが別枠となりました防衛費、これも聖域化なしで切り込んでいくのかどうか。私は、突出があるとすれば何のためのマイナスシーリングであるか、これは非常に疑問に思っておりますので、その辺もひとつ明確に御答弁をいただきたい。
それから第三点、これは大臣になるかと思いますが、第二臨調の答申どおり増税なしを貫くのかどうか、これは大臣の政治姿勢としてお答えをいただきたいと思います。
以上の三点についてのお考えをお聞かせください。
#107
○窪田政府委員 五十八年度予算をまだ四月に国会で御承認をいただいた間際でございますので、従来私どもは予算が終わるとやれやれということで一段落するわけでございますが、ことしは四月五日に早速主計局で来年の予算編成に向けて勉強を始めるという会議を開いたところでございます。それでは、具体的にどういうマイナスにするかあるいはシーリングを設けるかということになりますと、まだこれはいろいろ検討してみなければならない点が多うございます。シーリングというのはいわば総量を規制するやり方でございますけれども、いまの制度、仕組みをそのままにしてマイナス何%というやり方はだんだん壁にぶつかるというか、むずかしくなってきつつあります。そこで、私どもは、財政改革ということで制度、仕組みにまで触れて、そこを検討してまいろうということに踏み出したわけでございますので、いま、その率としてどうかということはまだもうちょっと検討さしていただきませんと、ここで申し上げるわけにはまいらないのでございます。
それから第二点の防衛費でございますが、これは防衛費を聖域として例外にしたわけではございませんで、国庫債務負担行為の歳出化とかあるいは国際的なお約束、義務に基づく支出でございますとかあるいは人件費のようなもの、それから特定財源というふうな経費の性質に着目しまして、それを切り込むあるいはその増加を他でめり込ませるのが非常にむずかしいという性格のものを例外とした。その結果、たまたま防衛費にそういうものがあるためにシーリングが高くなるということでございまして、防衛費を聖域扱い、別枠とするという考え方は持っておりません。
#108
○竹下国務大臣 申すまでもなく、臨調の最終答申で「そのような行政改革を推進するテコとして当調査会が掲げた方針が、「増税なき財政再建」にほかならない。すなわち、予算編成において、いわば糧道を断ちつつ、歳出の削減によって財政再建を図る限り、おのずから既存の制度や政策の見直しが不可避となり、」こういうふうに書かれてございます。したがいまして、私どもは、この増税なき財政再建という問題につきましては、糧道を断ちつつという表現、めったにこういう文章には使われない表現でございますが、それだけに、これをてことしてまずは財政再建に当たっていかなければならぬ。言ってみれば、安易な増税というようなものを念頭に置くことなく、施策、制度の根源にさかのぼりながら守備範囲を見直していくということは、まず理念として持ち続けていかなければならない課題であるというふうに理解をしております。
#109
○柴田委員 そこで、五十九年度の予算編成について、これからスタートするわけでありますが、私どもの考え方を一遍ここでだらだらと申してみますので、お聞きいただいて、後で大臣に御意見があればお聞かせいただきたいと思う。その前に、五十八年度予算は財政再建のめどのないまま福祉切り捨て、防衛予算増大のみが前面に押し出され、減税も景気対策も抜け落ちた最悪の予算である、これは通っちゃったからなんですが、私どもはそう考える。長期不況も、こうした見通しのない消極的な財政運営が影響している。つまり、一般会計だけでもGNPの二〇%を占めることを考えれば、この運用の是非によって国民生活は重大な影響を受ける、これは申すまでもないわけであります。でありますから、五十九年度予算編成がスタートするに当たって望むことは、まず財政の見通しを明確にすることであると思います。
いまもお話がありましたように、新経済計画は長期展望という形で策定をされますが、これを早期に策定をし、新たな財政中期展望を打ち出し、歳入歳出のギャップを埋める方途を明らかにしなければ国民の共感は得られないと思います。その上で、臨調答申も含め徹底した行革を進め、安易な増税路線に走らない、いまも大臣から答弁ありました。大型間接税の導入はすべきではない。財源調達のために大企業優遇の租税特別措置の洗い直しや所得の捕捉率の公平化など、税制を是正する形で税収増を図るべきである。それから行政改革につきましては、省庁の統廃合、行政経費の節減、国鉄再建を初めとする特殊法人の洗い直し、不要の補助金整理などを中心にすべきであり、防衛費の突出は抑えるあるいは教科書無償や児童手当、年金などの福祉削減はすべきではないと思います。
それからもう一つは、景気に対する財政のあり方もやはりこの際見直していただきたいと思います。政府は、財源難を理由にいたしまして、公共事業費の三年据え置きを初めとして景気にマイナス型の財政運営をとり続けてまいりました。単純に景気抑制型の財政をとり続けていると、かえって一昨年や昨年のように税収不足となって財政をさらに窮迫させてしまう。財源難は相変わらず続きますが、景気の流れを的確に把握し、柔軟な対応が必要である。でありますから、やはり公共事業の拡大あるいはまた所得税減税、こういったものも編成作業の過程で考えてしかるべきである、こう思います。
特に、所得税減税の問題はまた後でいろいろ質問しますが、公共事業の問題、生活関連型の公共事業ということでありますが、今後五年、十年あるいは二十一世紀を展望して老齢化社会が進行してまいりますと、これは大臣もよく御承知だと思いますが、国民の貯蓄率が低下をしてくる。だから、いまのうちに、財源難ということもありますが、できるだけ後追い投資にならないような社会資本の整備というものが必要じゃないかというふうに私はいま考えておるわけであります。だから、そういった観点で、三年据え置きでありますが、やはり景気浮揚という観点あるいは将来展望をした中で社会資本の整備という重要性から、十年、二十年を待たずに社会資本の整備というものをもっともっと早くやっていかなければ投資余力というものがなくなってくる、だから、これはできるだけやっていくべきだというふうに考えているわけであります。
そのような考え方を持っているわけでありますが、感想で結構ですが、ありましたらひとつお聞かせをいただきたいと思います。
#110
○竹下国務大臣 まず一番最初の財政の見通し、すなわち、議論をいたしておりますいわゆる経済計画あるいは中期展望という言葉になるかもしれませんが、経済審議会の方で勉強していただいておる、それをももちろん参考にしながら、一つの計画性のあるものを御提示申し上げる、そしてそれに対して、その方法、手法についての御議論もありました。これらについては、先ほど来申し上げておりますように、私どもとしても、御期待にどこまで沿えるか努力をしなければならない至上課題の一つであると理解しております。以下、行革の問題に始まり、そして景気対策あるいは高齢化社会の到来に伴う貯蓄率の低下からする、言ってみれば社会資本充実のための先行投資、こういうような御議論がございました。一つ一つ私どもはそれは念頭に置くべき課題でございますので、五十九年度予算編成に当たっての貴重な参考の指針として、これを受けとめさせていただきたいというふうに考えます。
#111
○柴田委員 もう一つ、あわせてお聞きしておきますが、マイナスシーリングの問題、一律削減予算編成方式といいますか、五十八年度の予算を見ておりましても、これは、私はこのように考えているのです。五十七年度はゼロシーリングであって、五十八年度がマイナスシーリング、いわゆる一律削減方式、そういった予算編成をなされてきたわけであります。ところが、こういう方式ですと、人に関する予算が多い、たとえば高齢化社会の到来でふえざるを得ない年金などを受け持つ厚生省などは不利じゃないか。やりくりの弊害が目立っている。厚生省は、これはもう言うまでもないのですが、たとえば老齢福祉年金の不足分、これを国民年金特別会計の積み立てから三千億を超える金額を持ってきて借りてきてやりくりをしている。 これは将来返済をしなければいかぬ。赤字国債と一緒なんです。それから同じく文部省、これは教員の給与や教科書無償を守るために公共の文教施設の整備に必要な文教施設費を対前年度よりも四百九億円も削り込むことで何とかやりくりしている。ところが、比べて物件費の多い省庁、これは有利になってくるわけです。これは私の考え方がおかしいかもしれませんが、その辺、もしおかしかったら指摘していただきたい。とにかくそんなふうに、やはりこれは本当の行政改革、行財政改革と異なる方向じゃないか。
だから、財政再建のために、財政改革のために痛みをみんなで分かち合うということであれば、そういった弱者にしわ寄せをする弊害というものを是正をしていかなければいけない。だから、はっきり申しまして、当然増経費はある程度認めてあげなければいかぬし、あるいはまた一番大事なのは、一律削減方式ではなく、政策の優先順位というものはもっときちっとつけていかなければならない。これは政府のあるいは大臣の政治姿勢の問題だと思いますが、まずそこら辺の弊害が私が考えているようにあれば、これがなければ私の質問もおかしくなってくるのですが、私はそんなふうにいま率直に考えているのですが、その辺どうでしょうか。
#112
○窪田政府委員 五十八年度マイナスシーリング、しかもそのでき上がりの姿は、一般歳出が前年同額ということで編成をいたしましたので、どこかが出っ張ればどこかがへこまざるを得ないというような編成でございました。しかし、私ども、必ずしも機械的に一律にしたわけではございませんで、予算を担当している主計官が九人おりますが、皆それぞれ自分のところの特殊な計画を主張して、毎日毎日ホットな議論をして調整を重ねたわけでございます。したがいまして、人件費が多いところ、そうでないところ、あるいは防衛庁のように国庫債務負担行為という過去の約束のツケが来るところ、あるいは農林省は物件費が多いといっても食管みたいな経費がある。皆それぞれ特殊性がありますので、その状況を勘案しながら調整をしていったわけでございます。
ただ、一つ言えますことは、日本のような国柄では、自分のところだけが非常に痛い目に遭うというのではなかなかおさまりませんが、あそこもここも同じように痛みを受けているというと、わりと話がまとまりやすいという傾向はございますので、一律というやり方も悪い点だけではないというふうに考えております。
#113
○柴田委員 大臣、そのような答弁があったのですが、私は、政策の選択の優先順位というのは、やはりこれから一つの政府あるいは大臣の政治姿勢の問題になってくるのですから、そこら辺も何か勘案してくれる手法というものはないだろうか、こう思うのですが、どうでしょうか。#114
○竹下国務大臣 やはりマイナスシーリングというのは、予算編成なかんずく厳しい歳出カットを伴う場合、一つの手法としてあり得ることだなと私は思っております。したがって、そういう姿勢そのものが全体に対する厳しさを持つわけであります。しかし御指摘のように、いわゆるマイナス対象経費ということになりますと、当然増的経費の中で、言ってみればマイナス要素を比較的持たない、マイナスしてもなお可能であるという許される範囲を持たない予算と、非常にわかりやすくマイナス予算をつけることのできる項目とあると思います。
そこが、おっしゃったいわゆる政策選択の優先度、最終的にはこういう問題であろうと思います。その優先度というものがいわば予算の、確かにいままでの歴史を見てみましても、昭和四十八年でございましたか、福祉元年とかそういうふうな象徴的な制度、施策が整ったとき、そのような政策選択の順位が象徴的な言葉で表現できることも、私は過去にもなかったとは申しませんが、厳しい財政事情の中で調和のとれた予算を組むときには、象徴的な言葉が使えるか使えないかは別として、政策選択の優先度ということには、これは十分配慮していかなければならぬ課題だというふうに理解をいたしております。
#115
○柴田委員 防衛費だけ突出せずに、福祉、教育、ここら辺に政策選択の最優先度を置いていただいて予算編成を進めていただきたいと心から要望しておきます。主税局長さん、お待たせをいたしました。
歳入欠陥の問題で、ちょっとここで財政の問題に関連して質問していきますが、四月八日に発表されました二月の税収実績を見てまいりますと、一兆九千九百六十九億円、前年同月比五・八%増の低い水準であった。二月までの累計が二十二兆八千四百十二億円ですか、約六%。補正後の税収というのは前年比五・三%増を見込んでおりますので、二月はかろうじてこれを上回っておる、こういうことでありますが、しかし、今後三月期決算の法人税はどうなってくるか。あるいは申告分の所得税、これは四月、もうそろそろ上がっているかと思いますが、これがどうなるか。マスコミの報道によりますと、これは期待率じゃないか、果たして補正後の税収が確保されるかどうか。
この間の大臣の参議院予算委員会の話では、税収の約一%、約三千億程度がまた補正後に欠陥が出るのではないか、こんなような御答弁もあったようでございますが、この二月の税収を項目別に見てまいりますと、所得税のうち源泉分は、利子配当税収が比較的高く伸びて、前年同月比が一二・六%増、しかし申告分は〇・六%増と横ばいである。法人税は十二月期の決算企業が中心でありますが四・一%増で低迷。酒税は一・一%増とさえない。物品税も一・一%増ですか、さえない。関税はマイナス一〇・一%。ただ、株式市況のにぎわいということで有価証券取引税が四八・五%増だ、こういうことでありますが、どうでしょうか、今後税収がどのようにあるのか、欠陥は出ないのか、出るとすればどの程度出るのか、現在の段階でわかっておれば教えていただきたい。
#116
○梅澤政府委員 二月末までの税収の状況は、ただいま委員が御指摘になったとおりでございます。二月分の単月の税収の伸び率は、ただいまも御指摘になりましたように五・八%、補正後の税収の伸び五・三%を単月分としては久方ぶりに上回ったわけでございますけれども、これもただいま御指摘がありましたように、一つには、昨年の一月の預金金利の改定の影響で二月分の利子の源泉所得税が大幅にふえたということ、それから法人税につきましては、十二月決算、実は年税ベースでは前年度を下回っておるわけでございますが、税収ベースで上回りましたのは、昨年の六月決算法人の中間申告、これも特殊事情がございまして非常にふえているという状況でございます。
したがいまして、今後の見積もりにつきましては、ただいまもお話がございましたように、確定申告の集計をいま国税庁がやっておりますので、恐らくこの月の末になりませんと計数的に判明しないのでありますが、それと三月期の決算法人、五月の税収を控えておりますので、年度を通じた見通しにつきまして現段階では計数的に申し上げられる段階にないわけでございますが、ただいまもお触れになりましたように、たとえば関税等は、最近の輸入量の減少を反映いたしまして、これはほとんど補正後の見積もり額を下回っていることはほぼ確実であるという税目もたくさんございます。したがいまして、現時点で計数的にはなかなか申し上げられないわけでございますけれども、補正後の税収見積もりを果たして達成できるかどうか、きわめて予断を許さない状況にあるというふうに考えております。
#117
○柴田委員 この三月十五日の申告分ですね、これはもう出ているのじゃないですか。――出ていない。それから法人税。これは抜き取り調査をされたのですかどうですか。その辺の傾向からいって、法人税が相当大きいと僕は思うのです。いま局長が御答弁されたように、予断を許さない、それは事実そのとおりだと思うのです。やはり大臣が御答弁されたように、三千億から五千億ぐらいまた歳入欠陥が出るのじゃないかということを心配しているわけです。どうでしょうかね。#118
○梅澤政府委員 三月決算法人につきまして、大法人にかなりのカバー率でヒアリング、聞き取り調査をやっておりますが、昨年秋つまり補正予算を見積もりました段階に比べまして、特に製造業を中心に、これは先般の日銀短観も同じような傾向でございますが、三月までの決算に関する限り、実は下方修正をしてくる企業が非常に多いということで、五月に入ってまいります三月決算法人の法人税収はなかなか楽観ができないというふうに私ども考えておるわけでございます。先ほども申しましたように、現段階で計数的に年度の税収見積もりを申し上げる段階ではないわけでございますけれども、まだ厳密に主計局等とすり合わせはいたしておりませんけれども、現段階でのきわめて大胆な前提と希望的観測をも交えて申し上げますと、厳密な意味での歳入欠陥と申しますか、つまり決算調整資金を発動するような事態にはならぬのではないかというふうに主税局としては考えております。
#119
○柴田委員 決算調整資金を発動するような事態がない、出ない。そうすれば、既定経費の節減あるいは予備費の取り崩し、この程度で足りるかどうかということですね。これはちょっと大事なところですから。#120
○梅澤政府委員 これは、大蔵省全体としてまだ調整して出した結論ではございませんで、主税局として希望的観測を交えて、しかも大胆に述べることをお許し願えればそういうことであるというふうに申し上げております。#121
○柴田委員 そうすると、その後の質問で国債整理基金の借り入れということをお聞かせいただきたいと思ったのですが、そこまでやりません。希望的観測であり、大胆なあれだということでありますが、じゃ、大体税収見積もりの一%以内ちょっと少ないかもわからない、こういう判断でいいですね。#122
○梅澤政府委員 大臣が一%以内にとどまればというふうに言っておられるわけでございますが、私どもも何とかそういうふうになればと考えております。#123
○柴田委員 わかりました。それで、この法人税収の所属年度の問題ですね。これは、五十三年の改正がありまして今日に至っておるわけでありますが、やはりこの辺の見直しということもしばしば当委員会でも各委員から指摘があったと思います。だから、この問題は財政制度審議会等に諮って真剣に一遍検討してもらったらどうだ、私はこんなふうに思っているのですが、そのお考えはありませんでしょうか。
#124
○窪田政府委員 年度区分は財政法に関しまして主計局でございますから、私どもからお答え申し上げます。五月分税収まで取り込みましたのは、何も金がないからというだけではございませんで、前年度末までに、つまり三月三十一日までに納税義務の発生したものについてその年度の歳入とするという会計法の年度区分が、年度区分は発生主義でございますからその原則を貫きますと、三月末までに発生しました法人税、所得税等々の税収を前の年度に帰属するということは、それなりに理由のないことではないと思うのです。ただ、そのために見通しが非常にむずかしくなったというふうな要素があることは御指摘のとおりでございます。それじゃ、いまこれをもとへ戻すかということになりますと、三兆円ぐらいの財源の問題になりますので、いまはなかなか実際にはむずかしい、こういうふうに考えております。
#125
○柴田委員 そういう点もありますが、やはり税収不足あるいはまた逆に税収見込みよりも余分に、予定よりも多く上がるという場合もあるわけです。そういった税収のプラス、マイナスというのは、国家経済、国民生活の面から見れば、私はデメリットも多いと思うのです。だから、そういう観点で申し上げたわけでありますが、ひとつ今後のまた検討材料にしていただければと思います。そこで、この財政の問題に関連をいたしまして、これは大臣に聞いておきますが、経済成長率の、私はこれは適正成長とこういうことを申し上げるわけでありますが、財政の問題を論議する場合には、経済成長の問題も重要な問題である。従来から私は、政府に対しまして、政策転換を図り高目の成長を目指し政策運営を行うべきだ、こういうことを要求をしてまいりました。短絡的な発想かもしれませんが、事実三%台の実質経済成長では、総理府の発表を見てまいりましても、一月と二月の失業率は二・七%台、最高の水準を記録しておりますし、また中小企業の倒産も増勢が目立っている。加えて税収面でも、補正予算で税収見積もりを六兆一千四百六十億円も減額しても、なおかつ税収不足が発生するかもしれないわけであります。それから租税弾性値を見てみましても、実質成長が三・三%と三・一%に落ち込んだ五十六年度と五十七年度は、ともに〇・六五と低いわけであります。
こういった点を考えてまいりますと、わが国は、実質経済成長率が三%程度では民間経済、財政面へのデメリットが多い、やはり少なくとも四%台を何とか確保していかなければいけない、こういうふうに思います。いまさら申すまでもありませんが、あくまでも財政の目的は、財政再建、財政改革も必要でありますが、やはり国民生活の安定向上にある、こう思います。だから、成り行き任せではなく、必要成長率のようなガイドラインを設けて積極的な経済運営というものを推進をしていかなければいけない、こういうふうに思っております。この辺についての考え。
それから財政審で、ただ財政運営のテクニックに対する建議に終わらせないで、国家経済にとってあるいは国民にとって必要な成長を達成するためにはどうしたらいいか、やはりそういった検討もお願いしてみたらどうだ、このようなことを私自身は考えているわけです。この辺のお考えはどうでしょうか。
#126
○竹下国務大臣 まず適正な経済成長率、これは私もいつでも非常に悩む問題であります。その前に、潜在成長力がどうあるかという議論もあるのでございましょう。私どもは、やはり高度経済成長になれてきたということからいたしまして、成長率というものに対して高目のものに対する期待、それが当然のこととして自然にそういう高目のものを期待しがちな傾向にもあるのじゃないか。一番問題は、無理に高い成長率を目指した場合におけるいわゆるインフレーションの問題でございます。これが国民生活の安定を損なうことになります。
そこで、さればということになりますと、とにかく五十七年度の実質成長率、下方修正いたしました三・一%は大体達成は確実だ、こう言われておる。そうすると五十八年度の成長率、一応描かれております三・四%ということが、これは米国経済の底入れあるいは石油価格の下落等の明るい材料もございますので、後半にかけて回復基調を強めるとすれば、これをより確実にするということが今日の経済運営のポイントではないか。したがって、先般経済対策というものも出したわけであります。
そういうことを考えてみますと、多くの先進諸国がマイナス成長であるとかゼロ成長を続けておる中で、物価の安定ということからして、何としても少なくとも三%以上の成長を遂げるということは、やはり世界経済の中では格段の実績だというふうにそれなりに評価すべきではないか。
また一方、その成長率が過度ないわゆる外需に依存すると貿易摩擦が起こりますし、財政に期待をすることは困難だというようなことを総合いたしますと、今度中期試算の中でも一つの参考にさせていただいております経済審議会の中間報告の数値である三%ないし四%程度というようなところが、安定成長の一つの指標として私どもは絶えず念頭に置くべきものではないであろうかというふうに考えております。
#127
○柴田委員 これは大臣もよく知っていらっしゃると思いますけれども、成長率が三%台に入ったのは五十六年度からですね。それで完全失業率、五十五年度は二・一%、五十六年度が二・二%、五十七年度が二・四%、五十八年度が二・七%台ですね。だから、こういった観点からいって三%ではなくてやはり四%台、ここら辺が成長率のガイドラインだ、そのための積極的な政策運営というものを推進をしていかなければ、これは財政にも大きな穴があいてきますよ、国民生活も低下してきますよ、そういういろいろな観点で私は御提案申し上げているわけでございまして、先ほどの大臣の御答弁もよく理解はできますが、できれば私の参考意見としてこれはひとつ今後お考えをいただきたい、こういうふうに御要望しておきたいと思います。時間がだんだん迫ってまいりましたので、次に、所得税減税について御質問さしていただきますが、今後の経済対策の中でも、これは取り組むべき課題というふうに一歩後退してしまったような感じを与えます。
大臣、端的に聞きますが、本当に五十八年度中に減税をされる意思があるのかないのか。法案を、たとえば参議院選挙が終わった臨時国会で政府が責任を持って提出されるかどうか。そしてその実施は幾ら遅くとも来年の一月、こんなふうに私は考えておるわけでありますが、この辺、端的にお聞きしますが、ひとつ御答弁をお聞かせいただきたいと思います。
#128
○竹下国務大臣 所得税減税問題というのは、与野党の合意、それに裏打ちされる議長見解、こういうことがございますので、これは私はやはり至上命題であるとまず認識しておくべきであると思っております。したがって、政府答弁は官房長官の発言によって代表されておるわけでございます。「景気浮揚に役立つ相当規模の減税を実施するための財源を確保し、所得税及び住民税の減税についての法律案を、五十八年中に国会に提出するとの確約があったことを承知しています。」したがって、これを目標にあくまでも対応していかなければならぬ問題であるというふうに考えております。そこで、手続的に申しますと、七月になれば、先ほど来の決算見込みの問題がございましたが、決算が確定する。そうなれば、いわば五十八年度の税収の土台ともいうべき五十七年度の土台がはっきりするわけでございますから、そこが税制調査会で本格的な御議論をいただく一つの機会ではないかな。そうなると、それまでにどうするかということになりますと、これは国会等で御論議いただいたものを念査して正確に税制調査会に御報告する諸準備をきちんとしておかなければならないことではないか、こういうことになるわけであります。
それを土台に御議論をいただきます場合に、私は、法律案を少なくとも五十八年度中に国会に提出するとの確約ということを承知しておりますと答えた限りにおいては、それを目標に努力を重ねていかなければならぬ課題である。だから、逃げて通れる課題ではないし、最終的には政府の責任でございますが、せっかく建設的な御議論もいただいておりますだけに、国会の関係者の皆さん方も従来小委員会等で汗をかいていただいておりますので、それらを十分参考にさしていただいて、あるいは相談さしていただいて進めていかなければならぬ課題である。遅くとも、少なくとも五十九年一月一日からという御意見もございましたが、十分念頭に置かなければならぬ課題ではなかろうかというふうに考えております。
#129
○柴田委員 わかりました。それでは、時間があと五分しかないので、税収問題について原油値下げとの関連でお聞きしますが、OPECの基準原油価格が一バレル当たり五ドル値下げをされました。経企庁では、経済成長率への影響が五十八年度で〇・三五%アップする、それから通産省も同じく〇・二%アップする、このように試算をしています。
大蔵省はどうですかね。この原油値下げがわが国の財政にあるいは税収にどのように影響があるのかないのか、試算をしていらっしゃるのかどうか。試算をしないとすれば、どうして試算をしないのか。通産省や経企庁はきちっと自分たちの責任分野は守っているわけだ。大蔵省がそういうことをやっていらっしゃるということはどうも聞いたことがない。私は、そういうことを非常に不満に思っておるわけであります。
私どもの方で単純に試算をいたしました。大ざっぱな試算でありますが、経企庁が、原油の値下げによって原油輸入代金が年間一兆六千億少なくて済む、そうすればこの金額は法人の利益である、こういうふうになるとするならば、大企業の法人税の実効税率は国が三四・八二%、地方が一六・七三%、合計五一・五五%でありますから、国と地方の合計税収は八千二百五十億円の増収になる。国だけでも五千五百七十億円の増収になる。これは非常に粗っぽい計算でありますが、こういうふうに出してみたわけです。
あなたの方も、それはあくまで仮定計算であり非常に大ざっぱな計算であるかもしれませんが、何か出したらどうかというふうに私は思いますね。これは出せないのですか。
#130
○梅澤政府委員 私から、税収に対する影響という御指摘について限定いたしまして御説明申し上げるわけでございますけれども、原油の値下がりによりまして実体経済に影響が出ます以上、当然それは税収面に反映するということは考えられるわけでございますが、現在私どもがそういう計数作業をやっておりませんのは、一つはタイムラグの問題がございます。前回は、逆の方向でございましたけれども、原油の値上げがございまして、その時期から毎月の法人税収を追ってまいりますと、端的に非常に明瞭な形で法人税収に影響があらわれましたのは、第一次オイルショック、第二次オイルショックを通じまして十数カ月から二十カ月以上かかっておるわけでございます。したがいまして、いま問題になっております原油の値下がりが恐らく五十八年度税収に顕著な形で出てくるということは考えられません。まずタイムラグの問題がございます。
それからもう一つは、実体経済をどう見るか、マクロ的にいろいろ議論があるわけでございますけれども、税収の影響ということになりますと、いま委員が御指摘になりましたように、何と言いましても一番敏感に出てまいりますのは法人税でございます。原油の値下がりがコストの低下を通じまして実質経済に非常にいい影響を及ぼすことはもちろん否定できないわけでございますけれども、各種の価格展開がどうなるかによりまして、つまり、所得移転として日本が受け取った部分が一体企業にどれだけ配分されるのか、家計にどれだけ配分されるのか、これはいろいろな見方があると思います。
したがって、一義的な推計をいまの時点で立てるということは、先ほど申しましたタイムラグの問題もあるわけでございますけれども、一義的に現段階で、たとえば五十八年度にどれだけ税収に影響が出るということは、恐らく計算する意味があるのかないのか、そういう問題があるということで、現時点におきまして部内でそういう作業はまだいたしておりません。
#131
○柴田委員 わかりました。それでは時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。
#132
○森委員長 米沢隆君。#133
○米沢委員 昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案の中身を見ますと、第一に、五十八年度における特例公債の発行で六兆九千八百億円、五十八年度における国債費定率繰り入れ等の停止で一兆三千九百七十三億円を浮かせる。それから、五十八年度における特別会計、特殊法人からの一般会計への納付ということで、自動車損害賠償責任再保険特別会計からの一般会計への繰り入れで二千五百六十億円、あへん特別会計からの一般会計への繰り入れで十三億円、造幣局特別会計からの一般会計への繰り入れで四億円、日本電信電話公社の臨時国庫納付金の納付の特例で千二百億円、日本中央競馬会の特別国庫納付金の納付で三百億円、トータル八兆七千八百五十億円を財源不足の折から確保しようという提案であります。私の感じる印象は、よくもまあこんなに集めたものだというのが第一印象。第二の印象は、中身を見ますと何と白々しいものだろうかという印象を否めません。
たとえば、第一の特例公債発行の件でありますが、五十八年度における特例公債の発行は、先ほど申しましたように六兆九千八百億円発行するということになっておりますが、従来の財政計画といいましょうか、一年前までは御承知のとおり五十八年度の特例公債発行高は一兆九千億前後でよかったわけであります。これが約五兆円ぐらいふえて今年度提案される。五十七年度補正予算に比ベますと約三千三百億円ぐらい減ったものの、当初に比べますと三兆円ぐらいまた特例公債の発行がふえておる。何かこういう流れを見ておりますと余りにも安易過ぎる。これは、特例という言葉にありますようにまさに特例の公債であるにもかかわらず、いまや特例という言葉ではなくて、通常とか当然発行していいんだ、そういう感覚で見られるほどに、臨時的なもの、緊急避難的なものというところから脱して、逆にあたりまえだというふうに開き直ってこういうものをどんどん発行しておる、そんな感じがするのでございます。財政当局の責任は一体どうなんだという気持ちがまず最初にするのでございます。
第二に、定率繰り入れ等の停止でございます。御案内のとおり、五十七年度の補正予算で一兆千九百八十四億円定率繰り入れをやめました。五十八年度も、ここに書いてありますように一兆三千九百七十三億円の定率繰り入れを停止しよう、こういうものでございますが、五十七年度でうまくいったから今回もというような感じ、それから、どうせ国債整理基金はパンクするんだから少々はいいじゃないかという開き直りみたいな感じ、そういうのがどうも目につきまして、私たちにとりましては、何だろうという感じがするんですね。定率繰り入れの停止等も、昭和四十一年の法改正で国債整理基金特別会計法をいじって、より充実した減債制度を確立しようという趣旨のもとでできたにもかかわらず、こんな簡単に定率繰り入れをやめましたなんという提案が出てくるんですね。公債政策に関する政府の節度ある姿勢を求めようというこの法改正が、結局みずからまたどうでもいいんですわというような感じでこういうものが廃止されていく。一体どういう感覚なのかというのが私にはわかりません。
ましてや、財政審議会等でも、例の五十八年度の特例公債の定率繰り入れ等の禁止の諮問を受けて何ということを言うておるかといいますと、「特例公債を発行しながら償還財源を積み立てることは、結局は、それだけ特例公債の増発をもたらすこととなり、それはまた、将来の負担によつて将来の償還のための財源を、利子を支払いつつ蓄えることにほかならず、不合理であるという意見がある」とか「特例公債を発行せざるを得ない五十八年度において、定率繰入れを停止することはやむを得ないものと考える」なんて、何を審議しておるかわからぬという不満を私は持つものでございます。特に、特例公債を発行しながら償還財源を積み立てるのはおかしいなんていうのだったら、こんな制度なんかなくてもいい。同時にまた、「特例公債を発行せざるを得ない五十八年度において」なんて、特例公債がなくなるのはいまから十年ぐらい先の話でしょうから、それまではみんな定率繰り入れなんかやめてもいい、こんな議論になってしまいますね。一体財政審議会なんか何を議論しているのか、いいかげんさにちょっと頭に来ますね。
そういう意味で、各項目ごとに大蔵省が考える、こんなこと取ってもいいんだ、こんな制度をやめてもいいんだ、こんなことをやってもいいんだ、あるいは特別会計や特殊法人からこんな金を取ってもいいんだという、全部整合性のある説明をしてもらいたいと思うのです。
#134
○窪田政府委員 この財源確保法案は、いまの財政の状況からやむを得ざる緊急の措置でございまして、決して財政の本則ではございませんけれども、五十八年度においてはやむを得ざる措置としてお願いを申し上げているわけでございます。特例公債の発行が昔予定していたようふえているではないかというお話もそのとおりでございます。いまここにございます、たとえば五十六年度にお出しした中期展望の五十八年度の数字とこの数字とを比べますと、五兆円ほど特例公債がふえております。しかしその反面、当時予定しておりました税収と今日の税収と約十兆円差がございまして、税収が約十兆円減っております。歳出全体としては、七兆八千億ほどその当時予定していたものより抑制をしておりますが、税収の減その他差し繰りいたしまして、このような特例公債の増発がやむを得なくなったわけでございます。
国債の定率繰り入れの停止でございますが、これもおっしゃるように国債償還制度の基本でございまして、この制度はあくまでも維持していくべきものと思いますが、ただ今日の財政状況から申しますと、やはりこれを一時停止していただかざるを得ない。つまり、これを繰り入れるといたしますと、やはりそれだけの特例公債の増発になるわけでございます。今日、特例公債の増発をできるだけ抑制しようという立場からいたしまして、やむなく今年度停止をさせていただきたいというお願いをしておるわけでございます。
それから、特別会計、特殊法人からいろいろ御協力をいただいておりますが、これも今日の財政状況から見まして、あるいはさらにそれに加えまして五十六年度の歳入欠陥の処理を五十八年度予算でしなければなりません。二兆二千五百億の臨時の意図せざる歳出需要がございまして、これに充てるために、かなり無理をいたしまして各方面に御協力をいただき、二兆一千四百九十四億という臨時の、異例の税外収入を確保したわけでございます。そのうち、この五十八年度限りの措置でございまして法律を要するものをこの財源確保法案の中に盛り込ませていただいております。自賠責、あへん、造幣特会の繰り入れのうち四億円、電電公社と中央競馬会からの繰り入れ、これは五十八年度限りの措置としてお願いをした税外収入の特別措置の一環でございます。
#135
○米沢委員 国債費の定率繰り入れ等の停止に関しまして、ちょっと御質問したいと思うのでありますが、先ほど申しましたように、財政審議会等がやむを得ないというふうな判断をされて、特例公債を発行する間は定率繰り入れなんかしなくてもいいというようなことが書いてありますね。あるいはまた、この制度そのものを否定するような、先ほど読み上げましたように「特例公債を発行しながら償還財源を積み立てることは、結局は、それだけ特例公債の増発をもたらすこととなり、それはまた、将来の負担によって将来の償還のための財源を、利子を支払いつつ蓄えることにはかならず、不合理である」なんという理屈を言われますと、実際こういう制度は要らないのですか。同時にまた、特例公債は来年も再来年も近い将来ずっと出さざるを得ないような状況なのでありますが、そのたびごとにもう定率繰り入れなんかやめようということなんですか。どういう議論が財政審議会でなされたんですか。
#136
○窪田政府委員 特例公債を出しつつ積み立てるのは不合理であるという意見もあると書いてあると思いますが、御議論の中でそういう意見の先生も確かにいらっしゃいました。民間の経済界の方ですと、銀行から金を借りてそれを預金に積んでおく、いわゆる歩積み両建てみたいなものじゃないかというふうな御意見の方もいらっしゃいました。意見もあるけれども、しかしこの制度は国債償還制度の基本であるから維持すべきである、答申にもそう書いてあると思います。しかし、今日の財政状況では、五十八年度では臨時的に停止するのもやむを得まい、こういう御答申をいただいたわけでございます。(米沢委員「五十九年度はどうするんですか」と呼ぶ)五十九年度以降につきましては、定率という制度がございますし、国債償還の基本でございますし、また国債管理運営上、国債整理基金特別会計にある程度の手金のあることも必要でございますので、この制度は維持してまいりたいと考えております。〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕
#137
○米沢委員 五十八年度に定率繰り入れをやらないという措置をとられたわけでありますが、やらなかった場合とやった場合と、どういうふうに後年度の負担が違ってくるだろうかというのを計数的に計算をしてみたのが、お配りしておりますこの「昭和五十八年度における定率繰入等の停止に関する財政事情の試算」という表でございます。大した計算をしたわけではありませんが、この第一は、定率繰り入れをわれわれが主張するようにやってもらった場合、第二はしなかった場合という計算をしておるわけでありますが、この表から見て結論的に言えますことは、五十八年度に定率繰り入れ約一兆四千億をしなかったことは、結局は昭和六十一年、六十二年にはね返ってくるわけです。結局、六十一年には二千九百億円たくさん繰り入れをしなければならなくなる。六十二年には一兆四千五百億円たくさん繰り入れをしなければならなくなる。結局要繰入額が後年度に増大する形であらわれて、結果的には、これは負担を先送りするにすぎないという結果が出てまいります。同時に、国債整理基金自体の立場から見ますと、余裕金残高の運用益が昭和六十一年までの分で約三千四百億円減る。これは制度の趣旨からしたらマイナスに働いておるという結論が出てまいります。
いまおっしゃったように、今回定率繰り入れをやらない、やろうとすれば結果的には特例公債の増発につながるからという話をされましたけれども、ことし特例公債を出すのか、それとも六十一年、六十二年に最終的には赤字国債を発行せざるを得ないでしょうから、結果的には赤字国債を発行せざるを得ないから繰り入れをやめたなんという理由は理由にならない。ことしやるのか、六十一年、六十二年にやるかの、ただその差にすぎないという感じですね。そのことは、結果的には財政体質を改善しようという見地からは全然意味をなさないものであるというふうに考えられると同時に、むしろ財政の実態を国民の目から覆い隠すという意味で、われわれはきわめて問題だというような認識をせざるを得ないのでございます。その点、どういうふうにお考えになるか。
第二に、大蔵省がおっしゃるのは、定率繰り入れをやったら赤字国債を発行せざるを得なくなる、その利払い費の増大がまた財政を圧迫するんだ、こういう理屈でございますが、先ほど言いましたように、しかし国債整理基金の立場からしたら、得ベかりし運用益を得られないということでございますから、逆に国債整理基金そのものの財政状態は軟弱になる。結局、何とか一般会計で負担を楽にするために国債整理基金の方にツケを回す、そういうやり方はまさにごまかしなのでございまして、そういう物の考え方というのは、私は大変残念だと思うし、遺憾だと思う。そしてまた、そういうことでつじつまをうまく合わせること自体、何か人をばかにしておるのではないか、国民をだましておるのではないかという感じがしてならないのでございます。
〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
臨調の最終答申にもありましたように、「五八年度の予算案においても、一般会計歳出の一部を特別会計や財政投融資に振替えさせるようなやり繰りや、現行制度の枠内での歳出の合理化にとどまっている例が見られ、本格的な制度改革は十分でない。」と指摘がされておる、まさにその一例だという感じがするのですね。
それと同時に、これも臨調あたりが指摘しておりますように、結局、歳出構造を徹底的に見直した基本的な制度改革が十分行われないから、このような赤字国債の発行に頼らざるを得ない。そしてまた、赤字公債をふやすと利払い費増が要るからということで繰り入れ等をやめて後に先送りするという、何かやり方が表面を取りつくろいながら逆に財政構造がおかしくなっておるという事態を覆い隠すような役目を皆さん方やっておるのだけれども、これはどういう感覚なのですか。
#138
○窪田政府委員 いただきました計算はこのとおりでございまして、後年度において予算繰り入れが多くなるということはそのとおりでございますが、その四、五年の間に私どもは財政改革を進めまして、何とか特別公債依存の体質から少しでも脱却をいたしたいということで考えているわけでございます。ことしこの定率繰り入れをやりますれば、一兆四千億の特例公債の増発になることもまた事実でございまして、特例公債を少しでも減らし、そして全体の枠を圧縮し、予算の厳しさというものをわかっていただく過程の中で財政の改革を進めてまいりたいという考え方でございます。#139
○米沢委員 結局、ことしの定率繰り入れをやらない分は六十一年、六十二年に繰入額がふえてくるという形で後にツケを残し、それまでに何とか財政改革をやってうまく取りつくろうというような答弁でございます。しかし、大蔵省が出されました、後でまた質問しようと思っておりましたが、国債整理基金の資金繰り状況等を見ても、おっしゃったような形で六十年、六十一年、六十二年当時に一体本当にやりやすくなるのですか。この数字を見る限り、余裕金残高が六十一年でなくなるのでしょう。そして、六十一年、六十二年にこういう今度のような繰り入れをやらなかったもののツケが回ってくるのでしょう。それまでに何とかうまく回るような話ですけれども、本当に回るのですか、六十年、六十一年、六十二年当時、どういう対策を打たれようとされておるのですか。
#140
○窪田政府委員 国債整理基金の資金繰り状況を去年お出しいたしました。つまり、定率繰り入れをやる場合とことしお出しいたしましたものとでは、国債整理基金余裕金残高が枯渇する年次が一年早まっております。昨年お出しした計算でも、六十二年度末には枯渇するわけでございます。それが一年早まった。これも重大な問題ではございますが、しかし、六十年代の初頭にはいずれにせよこういった深刻な事態に直面するわけでございますから、私ども、そのときまでに何とかこの財政改革を進めたい、こういう考え方でございます。#141
○米沢委員 財政改革の中身は何ですか。#142
○窪田政府委員 歳出削減を中心にいたしまして、いまの財政の仕組み、制度を総点検をして検討をしてみたいということでございます。#143
○米沢委員 この出された国債整理基金の資金繰り状況を見ますと、これはまさに、いま財政を見直そうと簡単におっしゃるようなもので片づきそうにないぐらいの泥沼状態をあらわしておる、こう言わざるを得ないと思うのです。五十七年度時点で国債整理基金の残高が三兆二百億円。しかし六十一年には底をついてしまって、六十一年以降は国債残高に応じて一般会計から国債整理基金特別会計に資金を繰り入れる定率繰り入れとは別に、償還資金不足を補うため多額の予算繰り入れを実施しなければならぬという数字が如実に記載されておるわけでございます。先ほど、五十九年度の定率繰り入れは実施したいような話をされましたが、これもどうも実情から言うと、五十九年も同じように定率繰り入れを停止するという結論にならざるを得ないのじゃないですか。そうなりますと、ますます国債整理基金の枯渇は早まることに相なるわけですね。一体、そう簡単におっしゃいますが、大臣、どういうかっこうで財政改革をなされて、このような泥沼状況から脱出するような計画がつくられておるのですか。
#144
○竹下国務大臣 確かにおっしゃいますとおり、お出しいたしました資料、それからいただきました資料、そのとおりの数字になるわけであります。国債整理基金への繰り入れを停止したという議論は、確かに審議会においても議論のあったところではございますが、そもそもこの国債整理基金、いわゆる国債の減債制度というものをつくりましたとき、もとよりこのときは建設国債だけのときでございました。私どもも、四十一年でございましたか、種々議論を重ねて、これがやはり後の世の納税者に負担を回すという意味においては歯どめとしてあるべき姿であるということでやったわけであります。
その後、特例債の発行ということになって、その際議論としては、さようしからば借りかえがないならば十分の一ずつ積み立てるべきではないかというような単純な議論もしたことはございますが、その制度の中で、今日まで国債整理基金への繰り入れということが続けられてまいりましたが、昨年、今年とこういうふうにして財政審においても、確かに少数意見とでも申しましょうか、という意見もあったということで、いわゆる歩積み両建て的なものに対する指摘もありました。がしかし、われわれとしてはやはりこの制度は貫くべきであるというところに、このお出しするに当たりましても、当分の間ではなく何年度に限りという法律構成をなしておるわけでございます。
しかし、それはそれとして、最終的に昭和六十一年に至ればこの国債整理基金の原資も底をつくではないか、それはそのとおりであります。そしてお出ししております数字にも、いわゆる必要とする予算繰り入れの額が書かれてあるわけであります。したがって、その際どうするか。若干時間のある問題ではございますけれども、私どもとしては、やはり安易な借りかえを行うということは安易に念頭に置いてはならぬということ、そしてそれに、さようしからば一方国民に負担増を求めるかということについても安易に念頭に置くべき課題でないということになると、歳出カットというものをまず念頭に置いて、これに対応していかなければならぬということになるわけでございます。
いずれにいたしましても、今後の財政状態あるいは経済情勢を踏まえながら、私どもは、国会での議論を通じながら、最終的に国債整理基金への予算繰り入れが生じます時点には、その問題について確たる答えを出していかなければならぬ課題でありますだけに、議論を聞きながら真剣に対処していくべき課題であるという問題意識を持っております。
#145
○米沢委員 苦しい答弁はよくわかりますが、たとえば大蔵省から出されました財政の中期試算では、三年で赤字国債ゼロにする場合、五年でする場合、七年でする場合等々の案が試算してあります。それを見ましても、ちょうどいま問題になっております昭和六十一年は、三年で赤字国債ゼロにする場合では約十一兆円くらいの要調整額が出ている。五年で赤字国債ゼロにする場合には八兆七千億くらいの要調整額が出ている。七年の場合には七兆六千億くらいの要調整額が出ておるわけですね。一体、これから四、五年の間にこんなに膨大な要調整額を、消せないと結局赤字国債が減らせないということですが、歳出カットだけでこんな多額のものを減らせるのですか。少なくともこの大蔵省が出した表を見る限り、増税をしないと本当にどうしようもありませんわということを正直に語っておるわけでして、そのあたりはっきりされた方がいいのじゃないですか、大蔵大臣。こんなの、歳出カットだけでカットできるはずがないでしょう。
#146
○竹下国務大臣 かつての財政収支試算それから中期展望というものを見ますと、前提に置いた仮定の変化はございますものの、いわゆる要調整額というものをその都度の努力によって減らしてきた。それは、裏返して言えば税収が思うようにいかなかったから結果としてそうなるのは当然ではないか、こういう議論はありますものの、前提に置いた仮定の相違はございましても減らしてきたわけでございますので、やはり歳出カットということからかかっていかないと、現在の制度、施策をそのままにして、国民の合意がそこにあるとすれば、そうなれば受益者も国民であるし負担する方もまた国民である、そのときに初めて負担増の議論というものが出てくる課題ではないか。だから、安易に初めからそれは不可能であるという前提の上に立って財政改革なりあるいは予算編成なりに臨んだ場合、私どもとしてはイージーに流れやすい、これを警戒しなければならないというふうに考えておるわけであります。#147
○米沢委員 精神論としては大蔵大臣のおっしゃることはよぐわかるのでございますが、実際の話、過去の財政の中期展望のものと比べたら約八兆円くらいは簡単に削れたようなことを委員会等でも答弁なされておりますけれども、その中身たるや、結局皆さん方の計算違いで、地方交付税ががばっと減額になったとか予備費が入っておったとか公共事業は全然伸ばしていないというだけの話であって、大蔵大臣が答えられている中身は、実際は本当に歳出カットの努力をして八兆円削ったというたちの数字ではないのですね。そういう意味で、これから先歳出カットを幾らやっても、現状のゼロシーリングでいまから五年まず続くはずがない。だから、制度改革等に相当手を加えない限り、トータルで七、八兆とか十一兆とかいう金額が歳出カットで賄われるはずがないという結論しか出ないのですね。したがって、大蔵大臣のおっしゃる精神論はよくわかりますが、実際は、この数字そのものは増税をさせてくださいと言って悲鳴を上げているような感じがするのですが、もう一回大臣の答弁を聞かせてもらいたい。
#148
○竹下国務大臣 これは数字をごらんになる方の主観によって、これだけのものが要調整額として必要であります、よってもって、これをいかに負担するか国民の皆さん考えてくださいということについての資料であるとの受けとめ方も、私はできないことではないと思っております。悲鳴を上げているといえば、本当にある意味においては悲鳴を上げているのじゃないかなという感じが私もしないわけではございませんが、確かに御指摘のように、かつて現実問題として八兆円減っているじゃないかといっても、中身はいま米沢委員御指摘のものが多く包含されておりますので、私は決してそのことを否定するものではありません。そしてまた、当時の中期試算の方がいまよりももう少し、たとえば公共事業等の問題につきましても、七カ年計画なんというものが下敷きになっておりますから、結果としては多目に調整額があったということも言えるわけでございます。その議論は決して否定するものではございませんが、まずは歳出削減というものに心がけていって、そうして国民のニーズが本当にそこにあるということに基づいて工夫をする、こういうときに初めて受益者も国民でありそして負担する者も国民であるという理解の上に立って、初めて負担増というのはお願いできる問題であるから、財政当局としては最初から安易にそういうものに飛びつくようなことがあってはならない、こういうふうに考えておるわけでございます。確かに要調整額というものが、よしんばこれが仮定計算であるといたしましても容易なものではないという認識は私にも十分ございます。
#149
○米沢委員 大蔵大臣の気持ちがわかった上で、そこで質問したいのでありますが、歳出カットでかなりの努力をされたとしても、かなりの国債費を払っていかねばならぬことは事実ですね。国債整理基金の資金繰り状況等を見ましても、昭和六十一年に赤字国債をゼロにするということを前提にして、一番ピークの六十七年の国債費が約十八兆七千三百億円になっていますね。五年間で赤字国債をゼロにしようというものに乗ったといたしましても、六十七年度に国債費がやはりピークで十九兆二千三百億円ですね。七年で赤字国債をゼロにしようということを前提にして計算されたものでも、六十七年国債費がピークで十九兆七千三百億円、膨大な国債費です。これから先どういう形で予算全体が伸びていくかわかりませんが、予算全体に占める国債費の割合等も、五十八年度は国債が八兆二千億となっておりますけれども、定率繰り入れをもししたとすれば、全体の予算の中で二〇%弱くらいのパーセントを占めるはずです。
今後、六十七年のピークなんか見ておりますと、どれくらい予算が伸びていくかわかりませんが、実際のところ二五%から三〇%近くが国債費に消えてしまうという数字をこれは示しておるわけですね。そうなった場合に、果たして赤字国債を発行しなくて国債費を消していけるかということになると、どうしても赤字国債そのものの一部借換債を発行するというようなことに手を出さざるを得ないのじゃないか。いま大蔵大臣の方は、安易に借換債なんかに頼らない。それも精神論としては大変大事なものかもしれませんが、事実上赤字国債の一部ぐらいは借換債をしなければならぬ状況がこの四、五年の間に必ずやってくるという感じがしないでもないのです。その点について、ただ単に精神論だけではなくて、本当にしてはいかぬのだという立場から絶対しないという答弁を欲しい。そうでないと、赤字国債など野方図に歯どめがなくなってしまうという危険性が実際にあります。
その点について、僕は大蔵大臣の御答弁をいただきたいことと、それから、もし五十九年度に大型間接税を導入できなければ、歳入不足の穴埋めに例の運用部保有国債の日銀への売却、つまり、事実上の日銀引き受けに踏み切らざるを得ないというような声が大蔵省から聞こえてくると書いてあるのですが、その点についてどういうような御見解を持っておられるのか。
この二点について御答弁をいただきたい。
#150
○竹下国務大臣 借りかえ問題でございますが、基本的にはとにかく国民手持ちの国債は現金で償還する、その現金で償還するための財源をどうするかという場合に、三つのこととして、歳出カットと負担増そして借りかえを含む公債発行、こういうことになるわけであります。いま安易にということをおっしゃいましたように、私どもも、こういう法律を提出しますに当たりましては、借りかえをしないという法的な法律上の規定を置くということ自身も、安易さを持ってはならぬという考え方があるからにほかならないわけであります。しかしながら、いずれいまのような、米沢委員がおっしゃいましたような議論をしなければならない時期があるかもしらぬ、そういう認識を私も全く持ち合わせていないわけではございません。したがって、その時点における財政の状態、経済情勢等を勘案して、それこそ国会の議論等を中心にしながらその方法を考えていくべき課題であって、いましばらく時間のある問題でもございますので、これに対しては、それこそ慎重に対応していかなければならない問題であるというふうに私は考えております。
それから、資金運用部の国債の日銀売却という問題でございます。資金運用部が国債を保有して、ある意味における市場流通の一つのいろいろな調整の役割りも果たしておるわけでございますが、実質的な日銀引き受けというようなものは、財政法第五条に照らして問題があるようなことをやる考えは私は持たない。すなわち、今日やっておりますいわゆる売りオペ、買いオペという感じの問題は別といたしまして、まず、手持ちの国債を日銀に売却して新たなる国債を引き受けるための手段としてそれを考えるということだけは、財政法第五条に照らしても絶対に避けるべき問題であるというふうに考えております。
#151
○米沢委員 さて次は、自動車損害賠償責任再保険特別会計から一般会計への繰り入れの件であります。これも、各同僚議員からやかましくいろいろと議論がなされたところでありましょうが、私も質問は重複するかもしれませんけれども一つだけ聞いておきたいのは、簡単にこういうかっこうで二千五百六十億円を一般会計へ繰り入れさせていただきたい、それも無利子でお願いしますなんて提案がなされておるのでありますが、この自賠責特会の財産はいわゆる滞留資金の運用益を含めて一体だれのものだと思っていらっしゃるのですか。それが第一点です。
それから、政府にあるいは大蔵省にどういう法的な権限があってこういうかっこうで運用益から二千五百六十億円を一般会計へいただきたい、それも無利子で、それも話し合いによって三年据え置き、その後七年で償還なんて決めるのですか。一体どういう法的な根拠があるのですか。そんなに皆さん強いのですか。人のものまで取ってきて、これは人の金でしょう、そんなのは泥棒じゃないですか。
#152
○窪田政府委員 この自賠責特会にあります積立金それからその運用益、これはこの特別会計に属するものでございます。そして、この特別会計はそもそも保険契約者の現金支払いによって積み立てられたものでございますから、それは保険契約者の利益になるように今後使い道を考えていくべきものだと思います。運輸省でいま御検討中でございますが、どう使うということは現在まだ決まっていない段階でございまして、いま直ちにこれが全額必要であるというふうな状況にはございません。そこで、特にお願いをいたしまして、これを一般会計でお借りをして一般会計の窮状を助けていただきたいというお願いをしたわけでございます。その権限につきましては、この財確法でその根拠を設けていただくようにお願いをしているところでございます。
#153
○米沢委員 いま、この自賠責特会の財産は結局払っておる加入者のものだ、こうおっしゃいました。それで、今後この積立金は具体的にどういうふうに契約者の利益のために活用するか考えましょうなんということになっておるとおっしゃいますけれども、これは今後の話じゃありませんよ。自賠責特会の積立金は少なくとも契約者の利益のために活用するようになっておるのでしょう。これについてこんな提案をして、その後にこの積立金の残りについてどうしたら契約者のためになるか検討しましょうなんて、こんな話はおためごかしもいいかげんにしてもらいたいと思うな。これは契約者の積立金でしょう、最初から契約者のために使おうということになっておるのでしょう。いまからそれを考えるのですか。運輸省、どう考えておるのかな。
#154
○熊代政府委員 お答えいたします。ただいま先生御指摘のように、運用益につきまして本来保険契約者に還元すべきものだということはわれわれ当然考えております。いまのタイミングの問題としまして、実はこのお話がありましたときの前から、われわれとしましては、この運用益の残、御承知のように再保険特別会計でございますので民間部分が四割ございます。それの運用益の残の形が特別会計の方が非常に大きいかっこうになっております。それと、保険収支そのものが全体でいいますと五十三年以降悪化しつつある。そういうことを含めまして、保険金限度額の問題、それから保険料をできるだけ現状を維持しながらやっていくというような点、あるいは事故防止対策なり交通事故被害者の救済の補完といったような四つの点につきまして、われわれとしては検討はしておったのでございますけれども、五十八年度の予算作成段階ではまだいま申し上げたような問題点の整理がついておりませんし、保険収支そのものの今後の問題、事故率の推移に伴う保険収支の推移の見通しという不明確な点もございまして、いまの段階では明確にこれをこういうふうにした方が保険契約者への利益還元として一番適切であるという方針がまだ固まっておりませんでした。
全体といたしまして、自賠責特会だけでいいますと、現在年間四千億程度の規模でございます。これは保険勘定でございますが、それに対しまして運用益残が五十七年度末に五千億を超えたかっこうになっておりまして、一般会計が非常に苦しいという場合に、保険契約者への還元方策としてもこれを一遍に使ってしまうという対策の立て方は余り適当ではないのではないかと考えまして、当面半分弱を、無利子でございますけれども、後日確実に返していただくということを条件に繰り入れに協力するということにいたした次第でございます。
#155
○米沢委員 いまの答弁は大蔵省の役人ならばわかりますけれども、運輸省の方がそんな答弁するとおかしいと僕は感じますね。いまおっしゃったように、少なくとも五十三年度以降単年度収支がおかしくなっておるのでしょう。それからまた被害者が多発しつつあるのでしょう。そうなれば、逆に言うたら、こんな運用益をお貸しするような状態ではないんじゃないですか。まずノーと断るのが運輸省の立場でなければならない、少なくとも利子を取るということが運輸省の立場でなければならないと私は思うのですが、どうなんですか。あなた、大蔵省の役人じゃないんだよ。
#156
○熊代政府委員 お答え申し上げます。運輸省の役人でございますけれども、われわれとしては「自賠特会あるいは自賠責保険制度そのものを健全に維持していくという観点で、いま先生がおっしゃったような議論もずいぶんいたしました。その最終的な結論といたしまして、大蔵大臣もたびたびお答えいただいておりますように、一般会計が非常に厳しい情勢にあるということ、それからもう一点は、この運用益がこれだけたまった原因の一つにも、一般会計から歳出されております事故防止対策の経費、これはいろいろなことがございますけれども、直接一般会計だけ出ておるものを見ましても、最近年間三百数十億といったものが支出されております。そういったことを勘案いたしまして、こういう半分、しかも三年据え置き七年償還、無利子というかっこうでやむを得ないというふうに判断したのでございまして、決して初めから議論なしにそういうことをしたのではございませんので、御了解いただきたいと思います。
#157
○米沢委員 この覚書に書いてありますように、積立金の運用益を契約者の利益のためにどう活用するか、これから具体策について検討するなんというのは、こんな書き方すること自体が大体職務怠慢ですね。同時に、自賠責の健全な運用をしようとするならば、先ほど言ったように少なくとも利子ぐらい取るというぐらいの主張をしてしかるべきものであって、それを仕方がないとあなた方が考えたら、自賠責に入っておる連中の利益は一体だれに確保していただくのですか。そのあたりが非常に残念だと私は思うのです。百歩譲って、お貸しできたとしても、少なくとも私は利子を取るように変えてもらいたい。と同時に、三年据え置き七年で返すなんという覚書を締結されておりますが、まだ法律が決まらぬ前からこんな覚書をつくって、これも大体問題にならない物の考え方だと思いますね。
したがって、いま保険料のアップ等が新聞等でいろいろ報道されておりますけれども、少なくとも保険料がアップする前にこんなものはすべて返してもらうというぐらい、覚書を破棄して約束してもらいたいと思うのです。大蔵省と運輸省の役人に答弁いただきたい。
#158
○竹下国務大臣 これは確かに、たびたび申し上げましたように、私どもも、財政がこのような厳しい状態の中にありますので、したがって一般会計から特別会計あるいは特別会計から一般会計、これは繰り入れという問題は、事実法律上可能な問題であったにしても、やはりこの問題については、先ほど泥棒という表現がございましたが、取るのが泥棒で、お借りするのは泥棒とまではいかないというような考え方から、これが協議に当たりましては、そういう性格のものであるだけにまず財政状態を訴えて、運輸大臣に総理の方から検討方のお願いをしてもらって、その後私が運輸大臣の方にお願いをして、事務当局間の協議にゆだねたという経過があるわけでございます。したがって、これが最終決着をつけます際には、御存じのように覚書というものもしたためることにいたしました。これは、たまたま私が大蔵大臣であって、大蔵大臣竹下登という覚書にはなっておりますが、日本の政府の内閣の中における責任者としての覚書でございますから、これは忠実に実行をしなければならない課題であるということはもとよりのことでございます。いろいろな経過の中でお願いしてお借りしたことでございますので、この返済の問題については、私どもも、これはお約束どおりきちんとした対応をしなければならぬ問題だ。
なお、金利の問題等につきましても、一般的に申しますならば、この運用益というようなものが存在するのはそれぞれの会計の中においてあるわけでございますけれども、ある意味において、これは民間の企業であったならばあるいは法人税として吸い上げられる対象としてのこともあり得るではなかろうかとか、あるいは、これはそもそも当初はいわば運用益を念頭に置いてつくられたものではないというような理屈もございますけれども、何はさておいてお願いと、こういうことで合意に達して、そしてお返しの約束もしておるというのが素直な現状でございます。
#159
○熊代政府委員 先ほど先生の御指摘のありました保険料との関係でございますが、実は保険料は大蔵省の銀行局の方で所管しております。ただ、私どもといたしましていま鋭意検討しておりますのは、現在のシステムのままですと、先ほどちょっと触れましたように四割の民間部分と六割の再保険部分とで運用益の残に大きな格差がございます。民間の部分が約六百億ぐらいで、六割部分に相当する再保険部分が五千億。私どもといたしましては、この保険契約者への還元策といたしまして、保険料をできるだけ長く安定化させるという要請、それと保険金の支払いを、支払い基準といった具体的な査定基準の改定と、そのほかに保険金の限度額を引き上げるということによって被害者救済を手厚くする、この二つの要請にどうやって対応していくのが一番いいかというふうな点を中心に検討をしておるところでございまして、先生おっしゃったように、返してもらうまで保険料云々の問題につきましては、銀行局の方から答弁していただくことにしたいと思います。
#160
○米沢委員 最後は何ですか。最後がわからぬ。#161
○熊代政府委員 保険料の改定につきましては大蔵省の銀行局の方から答弁していただくことにしたいと思いますと……。#162
○猪瀬説明員 料率でございますので大蔵省からお答えいたしますが、自賠責保険の収支が悪化しておりますことは先生御指摘のとおりでございまして、単年度で見ますと五十三年度以降赤字になっておりますが、収支の累計につきましてはなお黒字でございますから、いますぐ料率を改定するという必要があるとは思っておりません。ただ、今後支払い限度額の引き上げであるとかあるいは自動車事故の急増というような状況がありますと、これはまたその時点で検討しなければいけないと思っております。なお、先生御指摘の運用益でございますが、これは民間にも運用益が発生しておるわけでございまして、運用益の使用につきましては、自賠責の審議会におきまして、将来の収支の改善のための財源として留保する、そのほか自動車事故の防止対策あるいは被害者救済といったことのために使用すべきであろう、そういった形での契約者への還元をうたっておるわけでございまして、従来はそういった方針でやってきております。
ただ、いま御説明申し上げましたように、収支状況がいま悪化の方向にあるわけでございますから、今後の検討といたしましては、いよいよ料率の引き上げを考えなければならないという時点になった場合に、この運用益をどう活用して料率の引き上げ幅を低くしていくかということも一つの方向ではなかろうかと考えている次第でございます。
#163
○米沢委員 水かけ論になりますから、これはここらでやめます。電電公社の臨時国庫納付金の納付の特例の問題でありますが、これは五十九年の分まで前借りしようという提案ですね。これは電電公社の方に聞きたいのだけれども、こんなふうにして何か極道おやじが、まじめな息子が一生懸命稼いでいるのを借してくれとたかっているような感じがするんだけれども、これは将来の経営に問題は出てこないのですか。こういう姿で金が足りないから何とかしてくれという形をそのまま認めるということになると、何か経営努力がばかばかしくなるような感じがするのですね。同時にまた、電電公社はいまからかなりの研究投資をされると聞いているのですが、そこらにも何らかの影響が出てくるのではないかという感じがします。同時に、利益隠しをした方が得だという形になりますね。
これは、中央競馬会だって同じような気持ちを持たれるような気が私はするのですが、こういうのを提案されて電電公社は一体どういう対応をされたのですか。大蔵省ペースの余りにも安易な提案であり、同時に安易に認めておるような感じがしてならないのです。そんなに余っておるなら、電電公社は電話料金を下げてもらいたい、こう思うのです。
#164
○岩下説明員 今回の国庫納付金の前倒しの問題につきましては、率直に申し上げまして、先生御指摘のような問題をわれわれ自身も感じたわけでございます。五十八年度の予算案編成の過程におきまして、今回御提案しているような形のものが調整の結果出てきたわけでございますけれども、私どもとしましては、先生おっしゃったような利用者サービスの改善のための投資とか通話料の遠近格差の是正といった事業特有の課題に現在取り組んでおりますだけに、経営に対する影響はもちろんなしといたしません。一方、決して私どもから望んだわけではございませんけれども、国の現在の危機的な財政状況等といったものからの御要請でございますので、現行の四千八百億円の総額の範囲内ということでもございまして、政府関係機関としてはやむを得ないものと受けとめて今回の措置になったわけでございます。
御指摘のような利用者サービスの問題あるいは今後の設備投資の問題につきましては、いろいろ困難といいますか問題がございます。特に五十八年度からは、利用者の方々に債券を引き受けていただくいわゆる拡充法も期限切れになりまして、こういった点からの資金上の影響もございます。そういう問題もございますが、しかし、われわれの基本的な使命は利用者の方々によりよいサービスをより安く提供するということに尽きるように思います。そのためにできる限りの経営努力を重ねてまいりたい、もちろんこれには職員の協力が必要でございます。
具体的には、利用者の方々への還元の問題としては、御指摘のような電話料金の問題については、五十五年の夜間料金の値下げに始まりまして、一昨年の遠距離通話料金の引き下げ、引き続きまして本年夏を目途に第三段階の遠距離料金の引き下げを実は予定いたしまして、現在国会に上程して法案の御審議をお願いしようと思っておるわけでございます。これは金額で申し上げまして約一千四百億円の値下げになります。ただ、利用の増加が逆にございますから、平年度で約九百億円の減収でございますけれども、こういった形での利用者への還元と同時に、サービスの充実改善という形での還元も当然考えているわけでございます。
いずれにしても、利用者の方々によりよいサービスをより安くということにつきまして、これを基本的な使命と考えまして今後も努力をしてまいりたい、このように考えております。
#165
○米沢委員 これは来年の分まで納付金をもらってしまったのですが、五十九年度は一体どうされるおつもりですか。六十年度のものをまた借りてくるのですか。それとも、五十九年にもらったから取らなくていいのですか。それともまた、そうではなくて、新たに納付金制度を変えてたくさんもらうような方法を考えるのですか。大臣、聞かしてもらいたい。#166
○窪田政府委員 この国会でも、電電公社の利益は加入者に還元すべきものだとかあるいは設備投資需要があるということは十分伺いました。そういう事情も十分頭に入れて考えなければならないと思っておりますが、こういったことは安易に考えるべきものではないと思っております。#167
○米沢委員 五十九年度の財源確保というのは、もうことしがっちり取ってしまいましたから、ほかにもうないような感じがするのですが、五十九年度の財源確保について大臣はどういうような感触を持っておられますか。いま、余りこういうのに頼るべきではないとおっしゃったのですか、来年度は一体どうされるのか、はっきりしてもらいたい。#168
○窪田政府委員 五十九年度の税外収入はことしの、五十八年度のような規模のものはもうないと思います。しかし、世上いろいろ批判がございまして、たとえば国有財産なんかもっと売るべきものがあるじゃないかとか、税外収入についてももっと努力せよという御批判もございます。したがって、五十九年度も私どもなお努力をしなければならないと思っておりますが、電電公社の問題について言いますれば、いろいろ御事情もありますので、安易には考えるべきではない、こう思っております。
#169
○米沢委員 さて、昨年の七月の臨調答申で電電公社の改革が取り上げられまして、当面は政府が株式を保有する特殊会社に移行させると明記されておるわけでありますが、その後この問題は一体どうなっておるのか。同時にまた、大蔵省が、政府が株式を保有するような特殊会社に電電公社がなった場合に、株の時価総額は約十兆円くらいになるから、それを今度は民間に徐々に売り払いながら歳入不足を補う方針だという記事が書いてあるのを読んだのですが、大蔵大臣、そのあたりどういうふうにお考えなんですか。#170
○竹下国務大臣 これは、電電公社の経営形態の問題、臨調の答申、そうして行革大綱をつくりますときに、私がたまたま党の調整役をしておりましたので、今後各方面の意見を聞きながら鋭意検討を続ける、こういう結論にしたわけであります。したがって、いろいろ議論されております問題は、いわば保有した株式を年次計画的にこれを売り払って財源にしたらという記事等が出たことは私も承知しておりますが、大蔵省内において、いまそういうことを検討しておる事実は全くございません。そうしてまた、経営形態議論の中において、そのような株式が早期に市場に放出されることによって招く不安感という問題も存在しておるという議論があったことを私も聞いたことはございます。
#171
○米沢委員 もう時間がなくなってしまいまして、各省庁の方たくさん来ていただいたのですが、大変御迷惑かけました。最後に、結局こうして苦労されて財源確保に努力をされておるわけでありますが、要は、やはり自然増収が図られるような財政運営をもう少し積極的に展開してもらいたいというのがわれわれの希望でございます。
そこで、この前予算が成立した後に、政府は経済閣僚会議を開かれまして十一項目の景気対策をお決めになりました。しかしながら、この中身を見ますと、私どもにとっては果たしてこれは決め手になるだろうかという感じがしないわけでもありません。各マスコミ等も余り評価されてませんね。たとえば、一見盛りだくさん、ところが、いざはしをつけようとすると食べる物が見当たらない、これが政府のとった経済政策だと皮肉まで言われるように、現在の景況感の物の考え方の相違があるかもしれませんが、どうもぴしっとくる対策ではないというような感じがしてなりません。
そこで、きょうは詳しくいろいろお聞かせいただくつもりでございましたが、こういう景気対策十一項目が出てきた前提となった政府の現在の景況感、そして同時に、この経済対策が現在の景気回復に関してどういう位置づけを持つというふうに認識されておるのか、そして、これをやることによってどういう効果が出てくると思われておるのか、総論の部分だけ大蔵大臣に聞かしていただきたいと思うのです。
#172
○竹下国務大臣 景況感は、いま御指摘になりましたように個人においてそれぞれの差異がございます。私がこの場所で申し上げておりますことは、要するに、高度経済成長になれた体質というものからすれば、経済審議会の中間報告等にもありましたように、三%ないし四%程度、こういう表現がなされておりますが、三%成長というものが今日、世界同時不況、マイナス成長ないしはゼロ成長というようなときに、私は、それなりに日本の成長率は評価されてしかるべきものであるというふうな理解を持っております。これは国民の勤勉なるがゆえであると思っております。
そこで実質成長率、五十七年度下方修正して三・一%、これは達成は確実というふうに私は考えておるところであります。したがって、五十八年度にわたってのこのたびの対策というものは、いわゆる三・四%というものをより確実なものにせしめる、こういうことが基本的な考え方ではなかろうか。もとより今日、世界経済の回復のおくれから輸出の減少が見られておりますので、非常に厳しい問題がございますものの、また一方、あるいは円安の是正でございますとか石油価格の下落の問題でございますとかアメリカの景気も底入れしたというようなことからして、下期にいろいろ明るい材料が存在するとすればするほど、なおこの三・四%をより確実ならしめるためということが今日の総合した経済対策に対するいわゆる基本的な認識ではないかというふうに考えておるわけであります。
そして、これら発表いたしました経済対策というものがこれからどういう成果を出していくかということはいろいろあるでございましょう。が、まあ金融の問題につきましては、日銀の専権事項でございますので機動的弾力的運営にとどめておりますが、きょう一般論として申し上げますならば、内外金利の関係とか外為相場の状況等を見守りながら機動的な対処がなされていくでありましようし、きょうの、これはまだ前場のあれでございますけれども、二百三十八円五銭というような状態でございますので、恐らく慎重に対処しておられるところではなかろうかというふうに思っております。
その他、公共事業の前倒しの問題、これにつきましても下期の問題が大いに注視されるところでございますけれども、幸いにして年末に成立させていただきました補正予算、それらによりまして、従来あります四、五月のいわば端境期というものがなだらかな契約の土台を築いてきたのではないかということが将来にどういう結果を生み出していくかということについても、適切なこれからの対処の仕方が必要であろうというふうに考えておるわけでございます。
なお、住宅問題につきましても、税制上の問題あるいは住宅金融公庫の融資条件の緩和等お決めいただきましたもの、これらができるだけ早い機会に普及徹底するような施策と、同時に、二世代住宅リレーローン、おまえも大人になったから一緒におうちを建てようや、こういう表現を使っておりますが、そういうものが五月から実施されるということになれば、それなりの効果が期待できるものではなかろうか。しかし、基本的には三・四%をより確実なものにするという考えであることを重ねて申し上げておきます。
#173
○米沢委員 今後の景気対策に財政そのものが参加できないといいましょうか財政が出動できない、こういうことですから、こういう中途半端な経済対策になったのだろうと思いますが、私は、世界の各国が日本に対して要請といいましょうか注目しているのは、こういう経済対策を日本がやることではなくて、もっと内需を振興して、現在の世界の同時不況の中で日本はもう少し役割りを担ってもらいたいというのが、先進国を初めとする諸外国の日本に対する熱いまなざしのような感じがしてならぬわけであります。しかし、こういうことになって、経済対策の中にも述べられておりますように、今後取り組むべき課題として世界経済活性化のための国際協力に対する応分の貢献なんてきれいごとが書いてありますけれども、こんなことが幾ら書かれても、実際やられることがこういう内容じゃ、五月末のサミットなんかでもかなりたたかれるのじゃないかと私は思うのですね。現在の景況感にはそれぞれ個人差があるかもしれませんけれども、いま日本に対して諸外国が熱いまなざしをもって眺めておるのは、こういう経済対策を日本がやればいいのじゃなくて、もっと、今後の課題の中に抽象的に書いてあるようなこういうことが逆に具体的に表に出てくるような経済対策がいま連中が求めておる政策ではないか。そういう意味で、サミット等でもかなりまた日本が矢面に立たされるような感じがするのでありますが、ぜひサミット等ではがんばっていただきたいと思います。
以上でございます。
#174
○森委員長 正森成二君。#175
○正森委員 私の前にそれぞれの委員がお聞きになりまして、調査室からおおよその質問項目も見せていただいておりますが、大臣や答弁者にとっては多少重複することがあるかもしれませんので、それをお許し願いたいと思います。私は、まず第一に、今度の予算上定率繰り入れが停止されるわけですが、五十七年、五十八年、二年連続ですね。この機会に、昭和四十一年十二月の財政審の報告を中心に、やはり初心に返って、制度ができたそもそもの初めから考えてみる必要があるのではないかというように思います。
財政制度審議会の昭和四十一年十二月の報告では「より充実した減債制度を確立すべきであるとし、償還財源の繰入方式として、国債残高に対する定率繰入れを基本とし、」言うまでもございませんが、「一般会計剰余金の二分の一以上の繰入れをもってこれを補完し、さらに必要に応じて予算措置による繰入れを行う」ということにいたしまして、こういうことをする理由として、まず第一に、国債政策に関する国民の信頼の確保。それから二番目に、財政負担の平準化。三番目に、財政の膨張に対する間接的な歯どめ。四番目に、公債の市価維持等々を挙げているわけであります。
これがこのたび二年間停止され、かつ五十七年十二月二十四日の財政制度審議会の報告では、もう予算委員会等でも申し上げましたから多くは繰り返しませんが、こういう見方があるという言い方で、「特例公債を発行しながら償還財源を積み立てることは、結局は、それだけ特例公債の増発をもたらすこととなり、それはまた、将来の負担によって将来の償還のための財源を、利子を支払いつつ蓄えることにほかならず、不合理であるという意見がある。」これは基本的には四十一年十二月の財政審報告を否定するものですね。二番目に「他方、国債整理基金への繰戻しが五十八年度に実施されれば、同年度の定率繰入れを停止しても、同基金は、公債の円滑な償還に必要な流動性を確保し、また、公債の市価維持のためある程度の資金を保有することとなる。」「これらの諸点にかんがみれば、特例公債を発行せざるを得ない五十八年度において、定率繰入れを停止することはやむを得ないものと考える。」こういうぐあいになっているんですね。
そうすると、この五十七年十二月二十四日の財政審の定率繰り入れの取り扱いの項目についての第一項ですね、こういう見方があると言いながら、基本的な国債整理基金制度の存在意義を否定するものであり、第二項は、ともかく金を返すだけのものは持っておるではないか、少なくも今年度はということであり、第三項は、特例公債を発行している限りは歩積み両建てみたいなものだからやめても仕方がない、こういうことになるので、これを縮めて言えば、結局、減債資金制度の本質をそもそも否定するような意見を第一に書き、第二に、何ぼか今年度の返す金さえあればもういいではないかということになれば、毎年毎年その年に返す金が残っておれば余分なものは積み立てぬでもいいということになれば、その年度ごとの予算繰り入れと相隔たること一年分だけというように言うてもいいぐらいの考えですね。
こういうものを同じ財政審が、片や四十一年に出し、片や五十七年に出すということで、やはり基本的な原点に戻って考え方を整理してみる必要があると思うんですね。どういうぐあいにお考えになっておられるか、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
#176
○竹下国務大臣 いま御指摘にありましたように、この四十一年、ちょうどオリンピックの翌年の戦後の最大不況、そのときに福田大蔵大臣だったと思いますが、公債政策に踏み切って、そのときの議論の焦点はまさに歯どめ論であったわけです。それが、いまおっしゃいました四つの問題が議論されました。したがって、今回の定率繰り入れの停止ということは、これは財政審でも一方このような意見はある、と。私は、しかし基本的には四十一年の答申の趣旨というのはそのまま残されておる。ただ、やはり一番問題が変化してきたのは、四十一年は建設国債とは銘打ってありませんでしたが、そういう性格のものであったが、赤字国債というものがそれなりの効果を上げたといたしましても、そのときからあるいは物の考え方に少し変化が出る土壌ができたなあという感じを私個人持っておりました。しかしながら、やはりあのときの精神はそれなりに堅持すべきであるということからして、いわばこれもイージーに陥らないように、年度ごとでないとこのようなお願いができない、法律でそのようなことを定めておるわけであります。
したがって、今度の場合、やはり減債制度そのものの意義はこれからも失わしめてはならぬ。確かに最近の議論にすれば、諸外国においてもベルギーとか一カ所ぐらいしかないじゃないかという議論もございますけれども、私は、やはりこれが大きな歯どめの意義というものは今日も継続しておるではないかというふうに理解をしております。
#177
○正森委員 大臣の御答弁は、従来の政府の考え方を依然基本は踏襲しているということなのですが、いまの答弁で、竹下大蔵大臣、多少私がひっかかりましたのは、四十一年の財政審の報告は、主として建設国債、当時はそうですね、最初は赤字国債でしたが、翌年から全部建設国債、それを念頭に置いているもので、特例国債を発行するようになってから考え方が、多少基礎が変わってきたのじゃないかというお言葉でしたが、それはどういうぐあいに変わったのか。むしろ特例債を発行するようになりましたときは、建設国債の場合には資産が後に残るのだから六十分の一ずつ返せばいいということだったのですが、特例債の場合には十年たったら全額返すということで、むしろあってはならないものという考えをとって法律ができたとすれば、昨日ですか、別の委員から意見がございましたように本来なら十分の一を積み立てる。しかし、これは歩積み両建てのひどいことになるとしましても、むしろ早くなくさなければならないという方での考え方の変化であったはずですね。ところが、それは五十七年の財政審の考え方から見ると、むしろ特例国債を発行しているときに利子を払って積み立てるというのは、これはおかしい、あるいはむだであるという考え方だとしますと、まさにこの五十七年の財政審の報告というのは、特例債を出し始めたころの考えとは百八十度転換したものであると言わざるを得ないので、これは結局ないそでは振れぬということから、考え方に革命的変化が起こったのか、それとも合理的理由があるのか、承っておきたいと思います。
#178
○竹下国務大臣 四十一年は赤字国債であったか建設国債であったか、要するに、戦後最大の不況に対応するための初めての措置とでも申しましょうか、そういうことであったと思います。内容自身は建設国債的な内容であった。したがって、六十分の一という数字があって、むしろその議論が赤字国債の発行に当たっては、いま正森委員も御指摘なさいましたように、その土壌が変わったという表現はいささか適切を欠いたと私も思います。議論になったのは、それならばむしろ十分の一ずつ積み立てるべきじゃないか、こういう議論でございました。しかしながら、それこそまさに歩積み両建てではないか、こういう議論に基づいて、一応当初の減債制度の精神は今日まで貫きつつやっていこうということで今日継続しておるわけであります。したがって、私は、いま革命的転換というのですか、コペルニクス的転換とは必ずしも思っておりません。言ってみれば、この財政の非常に厳しい時代に対応して、なお歳出削減をし、さらに五十六年度の繰り戻し等を含めて議論をした結果ここに到達した問題であって、これは大きな政策の転換をしたというふうには私は考えておりません。
#179
○正森委員 国債整理基金が設けられた歴史を少し調べてみますと、国債整理基金特別会計法というのができたのは、たしか明治三十九年三月二日法律第六号でできたように思われます。私が手元に持っておりますのは、大蔵省の編さんの「明治大正財政史」第十一巻ですけれども、その中に出てくる文章を読みますと、当時の公債というのは、わが国の経済力が弱かったためにロンドンその他外国で調達したものが多いのですね。そこで、
而も戦時公債の大部分は外国に於て募集したるものなるが故に、若し整理の途を誤るときは、其の影響する所単に内国市場のみに止まらず、延いて海外に対する帝国の信用をも毀損するに至るの虞あるべし。是を以て政府は公債の整理償還に関し予め確固不動の方針を定めて財政の基礎を鞏固にし、以て内外市場をして倚安せしめ、其の信用を中外に維持せんと図り、而して之が為には国債整理基金を設置して、毎年度一般会計より相当の金額を之に繰入れ、以て国債償還財源の涵養に努むるを必要と認め、即ち明治三十九年一月第二十二回帝国議会に、国債整理基金特別会計法案を提出したり。
こういうぐあいになっているのですね。
これを見ますと、ともかく内国市場だけでなしに外国からも集めたので帝国の信用を棄損する。だから、ちゃんと償還計画を定めておかないとまず信用が落ちるし、それから市場が安定しないといいますか、そういうことだと言っているのですね。
そうしますと、相手が外国から借りておるものは大いに信用を高め、市場を安定させなければならないけれども、国内でやっておる部分は、それは構わぬという理屈にはならないわけで、それなのに財政審が、ともかくそういう意見があったということの形ではありながら、五十七年十二月にはああいう意見を言うというのは、よほど困り果てたからではなかろうかというように思わざるを得ないのですね。
それで、明治三十九年に減債制度ができましてから定率繰り入れが停止になったのはどういう時期ですか、それをお答えください。
#180
○窪田政府委員 たびたびございまして、大正九年から大正十一年の間は停止をされております。これは第一次大戦後の景気の停滞、反面財政需要がいろいろあったということのようでございます。それから昭和六年におきましては、やはり不況のために要繰入額から、四千六百万円本当は繰り入れるべきところを四千四百万円減額した。つまり二百万円だけ繰り入れたということでございます。その後、翌昭和七年からずっと減額をいたしまして必要な繰入額から三分の一だけ繰り入れ、つまり三分の二縮減をしたということのようでございます。それから、二十八年から三十五年まで、これはその時期は国債が非常に減少いたしましたので、剰余金繰り入れのみで国債償還が可能になったということで停止をされておりますし、三十六年以降四十一年までもずっと停止をされております。#181
○正森委員 いまの次長の答弁は、非常に下世話なことわざをもってすれば、みそもくそも一緒に答えたというような感じですね。昭和の二十何年になってからは国債が残り少なになって、定率繰り入れなんかしなくてもいい、剰余金の二分の一だけ繰り入れれば十分だというので停止になったので、いまの事情とは全然違うわけで、われわれも早くそんな結構な身分になりたいなと思っているわけですから、それを取り上げて、たびたびございましてと言うと、今度の措置があたかも異例でないかのような答弁をするというのは、これは人を惑わすものであり、少なくとも正森成二はそういう答弁に惑わされるということはないですな。それから、その前のいろいろな財政事情が困難になったというものでも、いまの答弁をお聞きしていますと、私はここに資料を持っていますけれども、これは大蔵省の役人が、優秀な者が書いたのですけれども、それを見ますと、えらい多い多いと言われますが、大正九年から十一年を除けば、全部、定率繰り入れはやるけれども、その額を減少させるということで、定率繰り入れを停止したなんということはないのですね。
私の質問そのものは、定率繰り入れを停止したことがありますかと聞いているのに、定率繰り入れの割合や額を減らしたものまでも挙げて、たびたびございましてなんと言うのは、これはまた詐欺的答弁ではないかということで、主計局次長としてはよほど困ったな。
そして、さらに三番目の詐欺的な答弁は、大正九年から十一年になぜ国債償還繰り入れを停止したかという理由の真の原因をごまかしておるのです。そういうことを国会の中で言ったらいけませんね。
ここに大蔵省編さんの「明治大正財政史」がある。この中に何と書いてあるかというと、あなたがそういう答弁だから、大正九年から十一年のところを読んでみますと、こう書いてあるのです。
〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕
大正七年九月寺内内閣に代りて原内閣成立し、同内閣は同年十二月開会の第四十一回帝国議会に大正八年度予算案を提出せじが、其の中、国債償還繰入額に関しては、前内閣の方針を踏み、之を三千万円に減縮することと為したり。此の繰入減額案に関しては、両院とも別に大なる異論もなくして可決せられしが、翌第四十二回帝国議会に方り、政府は国防充実に関する新規計画を立て、而して之が財源に充当する為め新に租税増収の計画を定めしが、尚ほ其の不足額に対しては、当分の内国債償還を停止して、之に充当するを最も機宜を得たる措置と認め、右に関する法律案を提出したり。
こうなっている。だから、大蔵省の編さんした財政史は、この大正九年からの停止は国防充実に関する新規計画を立てて、これを実行するために租税増収を決めたのだが、それだけでは不十分なので定率繰り入れを停止した、こういうぐあいになっていますね。あなたが言われたような表面的な事情ではないのです。
御承知でしょうが、本当の法律は、大正九年から四カ年にわたって停止するということだったのです。それを実際は三カ年だけ停止して、四カ年目からはその停止措置を撤回して再び繰り入れせざるを得なかった。そのときにまたこの財政史は何と書いてあるかというと、
而して前述の如く、大正九年度乃至十一年度三箇年間公債の償還を停止せしことは、当時に於ける一般経済界の不景気と相俟ちて、公債の市価を漸次低落せしむると共に、新規募集に対する市場の消化力をも減殺せんとしたり。茲に於て政府は将来に於ける公債の信用を高め、公債の市価を維持し、且つ其の発行を円滑ならしむる手段を講ずるを以て最急務と認め、前掲法律に依る償還資金繰入停止期間は尚一箇年度を残せるに拘らず、大正十二年度に於ては償還資金繰入の制度を復活することに決定したり。斯くて大正十二年度予算案に於ては、政府は国債総額の万分の百十六に相当する額を標準として、四千二百万円の償還資金繰入を計上し、第四十六回帝国議会の協賛を得たり。
こうなっているのです。
だから、あなたは、こういうことはたびたびございましてなんて言うけれども、私はあなたの答弁を三つぐらいに分析したけれども、昭和の二十年代以降のは、全く積み立てる必要もなくなったからやめたというものを今回と同じように答弁しているという意味で完全に人をごまかす答弁であり、そしてほかのは、何分の一かに減額しただけなのにそれを停止したように言い――停止したように言いと言うと語弊がありますが、後では正確に言いましたが、そして肝心の大正九年から十一年については本当のその理由を誤っておるということを言わざるを得ないのですね。
だから、いままでのわが国の明治三十九年に国債整理基金に関する法律ができましてから完全にその年度全部停止したというのは、大正九年から十一年まで三カ年しかない。しかも、それは軍備充実のためであるということは、大蔵省編さんの「明治大正財政史」にちゃんと出ているのですね。それを今回は五十七年度、五十八年度二カ年連続したというのは重大な問題であって、社会党からも出ましたように、二日や三日の審議で本当は審議満了なんて言うべきものではないという理由はここにあるのです。それを私が聞いているのに、事実を軽くごまかすような答弁をしたら、それはいかぬですよ。
大臣、私はいま主計局次長の答弁を若干訂正しましたが、そういう深刻な問題であるということをお踏みになった上、憲法第九条の、陸海空軍その他の戦力を保持しない、こういう憲法のもとでどうしてこういう事態が起こったのか。しかし、国民は、依然として軍備増強のために防衛費その他総合安全保障費はふやすけれども、その他の費用はカットされて、なおかつ金が足りないからこういう定率繰り入れの停止をやるという声がちまたにはあるという点から見ますと、よほど考えなければならぬ問題であると思いますが、歴史の教訓にかんがみて御見解を承りたいと思います。
#182
○竹下国務大臣 歴史の教訓は大変大事なことでございますが、この今度の定率繰り入れが、主観によって、それだけの財源を言ってみれば終局的には確保法の中で求めていく、こういうことは、されば、いわば防衛費の増強の見合いで考えたものでもなければ、政策選択というものは個人個人あるいは政党によってそれぞれの差異がございますので、総合調整した、現状における最善、最良のものとして提出し、御議論をいただき、議了をした五十八年度予算全体の中に位置づけた財確法の中のその一つとして定率繰り入れの停止があるというふうに理解をしておるわけであります。#183
○正森委員 私が言いたいのは、防衛費の問題については、大臣の属しておられる政府・自民党とわれわれでは意見の大きな相違があります。ですから、あなた方がいまここで防衛費をどうこうするということはおできにならないと思いますが、私がいま問題指摘で言いたいのは、戦前の強大な陸海軍を持っているときでも、その軍備充実のためといって停止をしたのはわずか三年であって、ほかはともかくやりくり算段して繰り入れを続けてきた。それを、憲法第九条があるようなわが国で、その理由が何にせよ、軍備増強のためではなしに、オイルショックのためであるとかいろいろあるでしょうが、それにせよ二年間停止せざるを得なかったというのは、明治以来のわが国財政史上真に異例のことである。その異例のことに対してどう受けとめ、どういうぐあいにこれを克服しようとするかということが出なければ、いまの窪田次長が言ったように、いままで再々あったことでございますと言ってけろっとしておるような、そんな問題ではない。
国民に対して政府というものはもっと真剣に責任を負うて、こうではございますが、こういうぐあいにいたして、ちゃんと国債の信用やら市価を維持し、国民に御心配をかけないようにしますというのが出なければ、こんな法案なんて簡単な法案なんですからね。停止しますと言えばそれだけのことです。しかし、その背景には並み並みならぬものがあるという御自覚がおありか。おありなら、もっと予算委員会でもまた当大蔵委員会でも、これを克服するためにはどうすべきであるかという真剣な議論がなされなければいけないんじゃないかと私は思うのです。真剣な議論というよりは、むしろ真剣な答弁といった方がいいでしょうね、野党側はいろいろ議論をしてきたわけですから。
そこで、大臣にお伺いいたしますが、大臣は、予算委員会でもそういうぐあいにお答えになりましたし、その後新聞の記者会見でもあるいは参議院でもお答えになっておるようですが、私の方から整理いたしますと、国債の償還をきちんとやるためには三つの方策がある。一つは財政支出のカットである。第二番目には広い意味で国民の御負担を願うということである。第三番目には赤字国債の借りかえということも赤字国債の発行を含めて考えなければならないという、この三つであったと承知しておりますが、間違いございませんか。
#184
○竹下国務大臣 まあそのとおりでございますが、歳出カット、負担増、そして最後のところが借りかえということをも含めての公債発行、こういうふうに申しておるわけですが……。#185
○正森委員 そうでしたね。順序が逆でしたね。そこで、あなたの四月六日の毎日新聞「竹下蔵相に聞く」、聞き手は東京本社の経済部長ですが、その一番終わりに、見出しが悪いのかもしれませんが、「国債借り換えはっきりさせる」、こういう見出しで、「赤字国債の借り換え問題もある。」という問いに対して、蔵相は「「赤字国債の借り換えはしない」「法律も禁じている」と国会で答弁してきた。しかし、六十一年度にも国債整理基金がパンクするし、この問題もはっきりさせねばならない。」――「この問題もはっきりさせねばならない。」こういうぐあいに言うておられるのですね。この問題もはっきりさせなければならないというのはどういうことですか。
#186
○竹下国務大臣 特例公債の償還期にまだ特例公債依存体質から脱却していない、仮にそういうような場合を想定した場合には、償還の財源を新たな特例公債発行によって賄わざるを得ないということも、これは仮にという前提を置いたらあり得るが、このような場合には特例公債の発行によるとかあるいは借換債の形によるかとかというような問題はやはり今後の研究すべき課題になるであろうという、私、元来言葉を非常に選びますし、それで非常に、国会の答弁ののりを越えない範囲内でお答えをしたつもりであります。#187
○正森委員 そうしますと、速記を見ればあれですが、言葉を選ばれる大臣の言葉を間違えると申しわけないので、誤っていたら御指摘を願いたいのですが、仮にとおっしゃいましたね、六十年度ですか、まだ赤字国債からの脱却ができていないとすれば、つまり償還には財源がないわけだから――財源がないわけだからというのは私のアドリブですよ。赤字国債なりあるいは赤字国債の借りかえということも検討せざるを得ない、たしかそうお答えになったと思うのですね。そうしますと、六十年に赤字国債の発行をやめにするなんということはとうていできないというのは、私ども予算委員会で審議しました財政の中期試算ですか、今度は。それでも三年のケース、五年のケース、七年のケースだけお出しになって二年のケースはお出しになっていないのですね。つまり、六十年に赤字国債をゼロにするのは無理だということで初めから試合放棄しているわけです。ということは、もう試合放棄したのであるから、その時点で赤字国債を出しているのは必至である、したがって、そうなると国債の償還をまた赤字国債でやるか赤字国債の借りかえでやるかということは検討せざるを得ない、つまり翻訳するとこうなりますね。
〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
#188
○竹下国務大臣 そこのところも大変言葉を注意しておりまして、仮に六十年度以降特例公債の償還期にと、こういう表現をしております。#189
○正森委員 大臣の言葉を選ばれた答弁によれば六十年度以降という、この六十年度以降というところが非常に重要なのですが、しかし、六十年度以降といいますと六十年も入り、六十一年、六十二年、六十三年ということになって、いつまでも決断をおくらせられないということは非常にはっきりしているのですね。だから、いまの答弁から見ますと、償還については歳出カットもがんばる、それから国民の負担もお願いする、しかしながら借換債を含む赤字国債の発行という線は検討課題であって可能性は消し去れない、多いというふうに受け取らざるを得ませんね、普通の日本語の問答であれば。その責任問題がどうなるかは別にして、必然的にそうならざるを得ないというふうに私たちは思っていますので、それはそれで結構です。
しかし、そうなりますと、これは理財局の答弁になるのですか、どこの答弁になるのか――そろそろ起きてくださいよ、局長。借換懇、借換債についての懇談会というのがあるようですけれども、六十年度以降借換債が非常に多くなって、そのときにどうするかについてはまだ結論が出ていないのですね。その前の、市中に持っておるものが比較的少なくて、日銀だとかあるいは資金運用部が持っておって乗りかえが十分できるという時代についての借換懇の方針が出ているだけで、乗りかえが非常に無理であるというほど多くが市中に出回っている、あるいは出回ってくる時期については答申、考え方が出ていないのですね。それほどうなさるおつもりですか。
#190
○加藤(隆)政府委員 五十五年の十二月だったと思いますが、いまお話しのように、五十九年までの借りかえの問題につきまして勉強してあるわけでございます。その趣旨は、もっぱら中期債が借りかえになりますので、中期債を中期債で借りるというのが骨子でございます。いまの、五十九年までに出ました公債が六十年度以降相当大きく借りかえになってくるわけでございますが、これをどうするかという問題でございますけれども、まだ時間がありますので、その前段階といたしまして昨年の六月に、非公開のものでございますが、国債問題研究会ということで学者と銀行と証券と日銀と私どもでざっくばらんな議論をいろいろやっております。そういうものの上に立って、従来からありました借りかえ問題の勉強会の方へシフトして勉強しようということで、率直に申して、目下のところは具体的な考え方あるいはアプローチは全く白紙でございます。
#191
○正森委員 大臣、白紙であると正直にお答えになったのですけれども、それだからわれわれが非常に心配しているのです。まだ時期もございますがと言う。確かに二年余りございますけれども、その間に政治情勢も変わるでしょうし、これから以後お伺いする国民の負担の問題もございますから、実際に衝に当たる者として、それらが決まらないうちにいろいろ案を考えましても机上の空論になりますから、理財局長の言われることもわからないではないのですが、しかし、それにしても策が白紙のままで進行しているということになりますと、大臣、いよいよもって五十九年度以降に歳出カットや国民の負担はどういうぐあいにするかということが早く決まらないと、相互に関連はいたしますが、その後の問題もなかなか決まりにくいということにならざるを得ないと思うのですね。
その問題を次に伺いますが、その前に、銀行局長せっかくおいでいただいておりますので一問だけ聞かしていただいて、あとはどうぞ。
借換債、これはいまは特例債のことを言うているのじゃないのですよ、一般的に言うているのですが、借換債の消化が新規財源債と違う点はどういう点でしょうか。
#192
○加藤(隆)政府委員 いろいろな整理の仕方がございますが、法律で申しますと、一つは、借換債は国債整理基金特別会計法の五条でやるわけでございます。それから新規財源債は、通常は財政法の四条、もう一つ赤字公債の場合は特例公債法ということになります。実質的な違いを申しますと、新規財源債の場合には新たな国民貯蓄の中に入り込んでいくわけでございますが、借換債の場合にはすでにある国民貯蓄に籍があるわけでございます。
まだほかにもございますが、大ざっぱに言えば形式、実質二点が著しい相違でございます。
#193
○正森委員 理財局長の御答弁は、私が簡にして要を得て答弁していただきたいと思ったことをずばりとお答えになりまして、私が採点したならば満点の答弁です。実質の方をこれからお聞きしますが、新たなものはこれから新しく銀行等へ預金されたものの中から取り上げるわけですけれども、借換債の場合は、ずばり言いますと、すでにあるものをどういうぐあいに吸収するかという再投資の問題になってくる。
そうしますと、再投資の問題の場合に、これまで日銀あるいは資金運用部などにありました場合には事は非常に簡単だったのですけれども、このごろのように市中消化が盛んになりますと、それを再投資させるにはやはり金利選好といいますか、国債の売買などで国債価格が下落している場合には、すでに発行されている債券についての利回りは上がってきますからね。価格が低下するから、したがって利回りが上がってくるということになりますと、幾ら借換債とはいえ、それを適法に適正に発行して消化させるためには利回りを考えていかざるを得ないということになるのではなかろうか。
そういう面から、金利の序列とかいろいろありますけれども、最近も事国逆転などと言われましたように、金利の自由化という方向によかれあしかれ進まざるを得ないのではないかと思いますが、銀行局の立場としてはどう考えておられますか。
#194
○宮本政府委員 先生御指摘のとおりかと思います。借換債の円滑な消化のためには、実勢金利といいますか、市場の実勢を尊重した発行条件を決定していくことが必要でございますから、そういう意味におきましては金利全体の自由化へのインパクトといいますか、そういうことに働く可能性はあろうかと思うのです。これが直ちに貯金金利を含みます金利の自由化までつながるかどうかという点については疑問かと思いますが、全般的には自由化促進の要因にはなろうかと思います。
#195
○正森委員 銀行界では資金運用の面から国債を買うわけです。そういう運用面で金利をできるだけ市場実勢に近づけてほしい、余り大蔵省が介入するなということを一方で言いまして、同時に、今度は調達金利の方についても余り政府関係機関が介入するのは困るということで、具体的にはほかのものが変えても郵貯が変わらないと足手まといになってかなわぬとか、あるいは公定歩合がなかなか動けないとかいうようなことを言うのですね。しかし、これは一々著者の名前を挙げませんが、物の本によれば、一方では、運用金利というのは市場実勢を反映して自由にしろと言いながら、自分の調達金利の方は低く固定する金利であって、そして郵貯というのは大抵高目に高目に設定されて動かない、それがけしからぬというのであれば、これは強者の理論であって、片や自分のもうけになる方は金利の自由化で、片や自分のもうけにならない方は金利の自由化ではなしにむしろ金利の固定化というような議論というのは、これは筋が通らないのではないかという意見があるのです。
それと同時に、国債の大量償還もしくは大量償還をしない場合にも特例債の償還が六十年、六十一年から大量に始まりますと、一年、二年、三年未満の期近物がふえてくる。これは一年定期、二年定期ともろに競合しますから、そうすると、資金を持っておる者は、退職金を持っておる者くらいになりますと、金利選好で一年定期や二年定期にするなら期近物の国債を買っておこうかということになるので、そういう意味から言いましても、運用面だけでなしに調達金利についても、遅かれ早かれ一方的に金利を固定して決めているということは打ち破られざるを得ないというものが、国債の大量償還と絡んで起こってくるのではないかというように私は思うのですが、これも物の本に書いている方がおられますので、伺っておきます。
#196
○宮本政府委員 この点も、一般論といたしましては先生御指摘のとおりだと思います。期近物等が大変大量になってまいるわけでございますが、ただ期近物につきましては、これが実際市場に出回るかどうかという点につきましては両説あるようでございまして、まだ実際はわかりかねます。ただしかし、一般論として、期近物の残高がふえるという点につきましては、いま御指摘のような預貯金等との競合が生ずることは当然考えられるわけでございます。
ただ、日本の場合に、金利の自由化を進めます場合に実体経済に及ばす影響であるとか、あるいはわが国の場合にはなお公定歩合政策を有効に活用いたしまして、預貯金金利もそれに連動して上げ下げすることによりまして金融政策というものも実施いたしておるわけでございます。それからまた、中小金融機関等のことを考えますと、急激な自由化を図ることによりまして資金コストのアップをもたらすということもまた避けなければいけません。したがいまして、一般論としては確かに自由化にインパクトは働くかと思いますけれども、自由化の実現過程は漸進的に慎重に進めるべきではないか、こういうふうに考えております。
#197
○正森委員 それでは銀行局長どうも。それでは、次の質問に移らしていただきます。大臣に伺います。
税制調査会が昭和五十五年十一月に「財政体質を改善するために税制上とるべき方策についての答申」というのを出しました。それを読んでみますと、これは十一ページの部分に書いてあるのですが、
国においては現在の歳出総額に対する国税収入の割合は六〇%台に落ち込んでいるが、特例公債の償還が本格的に始まる昭和六十年度より前に、国税収入の歳出総額に占める割合を、昭和四十年代における我が国の水準や主要諸外国における現在の水準を参酌して、まず、八〇%程度にまで引き上げることができるならば、財政構造の健全化はかなりの進展が図られ、国民のニーズに応えつつ安定的な財政運営を維持することが可能となり、財政の対応力も相当程度回復されることとなろう。
このような財政構造の姿を具体的な目標として描いた場合、この間における歳出規模を国民総生産に対する割合でみてほぼ横這いに維持できるとの前提の下では、国税収入の国民総生産に対する割合は、現在より三%程度上昇することが必要とされる。ところで、このうち一%程度は税の自然増収によつて上昇するものと考えられるから、この間の負担の引上げ幅としては国民総生産の二%程度が必要とされることとなる。公債金収入によつて従来調達されている公共サービスの財源を経常的収入に置きかえていくためには、この程度の負担引上げはやむを得ないものと考えられるし、また、負担の引上げ幅としては、この程度が当面のひとつの限界ではないかと考えられる。
こう言っております。それで、同じく十二ページには地方財政についてもほぼ似たような論調がなされておりますが、数字等は読み上げません。
それで、今度政府税調は、四、五月ごろいろいろ論議を重ねられまして、新聞で承知しておるところでは、十月ぐらいに答申をされると思いますが、これは中期答申ですから、もちろん五十五年の答申を受けて、それを自分なりに検討し、批判すべきは批判し、とるべきはとり、恐らく答申されると思うのですね。
そうしますと、大臣としましては、この五十五年を受けて、この中には実行されたのもあるでしょうし実行されなかったのもあるわけですが、どういう諮問をなさり、そして、政府税調としてはどういう方向を考えておられるのか。政府税調の考えておられることはお答えになれないかもしれませんが、大臣としてのお心づもりを伺っておきたいと思います。
#198
○竹下国務大臣 そこのところが税調に対する基本的な問題になるわけでございますが、税制調査会に対しては、五十五年の十一月十八日、すなわち任期が改まったところで、内閣総理大臣から諮問が行われております。それは「国民経済の健全な発展を目途としつつ、国、地方を通じて財政体質を改善するため、税制上とるべき方策」こういう大変広範な立場から諮問をしているわけです。その前のときには「国民経済の健全な発展を目途としつつ、国、地方を通じて財政体質を改善するため、税制上とるべき方策」こういうふうになっておりますので、まさに非常に広範な立場から諮問をするという性格の調査会であるというふうに認識をしております。#199
○正森委員 それでは、もう少し突っ込んでお伺いしますが、大臣の最近の新聞に出ておるものを見ますと、四月六日、先ほど引用しました毎日新聞の本社の経済部長との懇談では「減税財源として自然増収のような不確定要因はあてにしていない。」これはある意味では当然だと思います。それで、さらに三月二十七日の読売新聞を見ますと、参議院の予算委員会で勝又先生の質問に答えて、新経済社会七カ年計画で想定していた二六・五%も一つの数値だと思うということで、これを否定なさらないような御意見と承った。それからさらに、それと非常に関係があるかもしれませんが、今度新たに党税調会長になられた村山さんは、やはり財政支出のうちに占める国税の割合を八〇%に持っていくということを言うておられる。これらは全部ほぼ符合することになってきて、自民党あるいは大蔵省としては、その程度のことをお考えになっているのではないかというように思わざるを得ないのですが、いかがでしょうか。
#200
○竹下国務大臣 国の歳出は租税等の経常的歳入で賄うということが基本でございます。したがって、私どもは、五十五年の十一月にいただいた中間報告の、いま十一ページとおっしゃいましたが、歳出に占める租税収入の割合をいまの六〇プロから八〇プロに上げるためには国民の増加もやむを得ないというような記述があるということも十分承知をいたしておるところでございます。しかしながら、現状のままで、すなわち現状の施策、制度をすべて前提の上に置いた税負担の増加ということをお願いする環境にはいまないのではなかろうか。やはり歳出歳入構造の合理化、適正化を図って、まさに財政改革を進めていくということが先決でありまして、国民の負担をいただくという場合には国民のいわゆる選択と合意、これは私は、すべての制度、施策、税制をも含め選択と合意の集積というものが現行の施策であるという考え方の上に立ってみた場合、国民の皆さん方との問答を通じながら、そこに合意が帰結するという見きわめというものが必要でないことには、負担者も国民であるし受益者も国民であるという立場から安易に増税などということを念頭に置くことはできないじゃないかというふうに考えております。
それからいま一つ、二六カ二分の一の問題でございますが、これは臨調の答申にありますところのいわゆる租税負担率という問題について、とっさに念頭にくる数字の一つに私も二六・五というものがありますということは申しました。というのは、それが基準であるという考え方で申したということでなく、経済社会七カ年計画をわれわれが議論いたしましたときに、二六カ二分の一という数字が私の頭にたまたまこびりついておりましたので、そういう数字というものも瞬間的に私の念頭に出てくる数字の一つではあります。これは余りこだわった議論ではなく、素直な、そのときにいろいろ出てくる数字の一つとして申し上げたことは事実でございます。
#201
○正森委員 また、別の報道によりますと、参議院におきまして、大型間接税をいきなり導入するということは容易に国民の合意は得られないだろう、だから小型、中型を含めていろいろ考えなければならないのではないか、これも言葉を選んで言えば正確ではないかもしれませんが、そう読み取れる御答弁があったように承りますが、そうでしょうか。#202
○竹下国務大臣 いま大型間接税あるいは中型、小型というものを検討したという事実はございませんけれども、臨調においても、言葉が適切であるかどうかは別として直間比率の見直しという言葉が使われ、そして税調においても、最近は税体系のあり方という一言葉にかえておられますものの、直間比率の見直しという言葉そのものが使われたことがある。したがって、五十四年当時から言えば、当時は直間比率の見直しといえば直ちに一般消費税(仮称)じゃないかと言われた当時とは違って、勉強しなさいという環境はあります。したがって、勉強するとなればやはり広くいわゆる消費一般にかかる税制の中で大型とか中型とか小型とか、これの範囲が、どれが大で、どれが中で、どれが小かもわかりませんが、念頭には置いておかなければいかぬ問題だ。しかし減税問題等々につきましては国会の議論等を正確に税調にお伝えして予見を持たないで議論していただいていこうという基本的なスタンスですというときに申し上げた言葉であります。
#203
○正森委員 私の方で試算してみますと、五十五年十一月税調の中期答申の税負担引き上げを財政の中期試算のケースC、七年で七分の一ずつ赤字国債を減らしていく、つまり年一兆円というのに適用してみますと、五十八年のGNPは二百八十一兆七千億、こう見られておりまして、五十九年度以降の伸びは経済審の経過報告、それの中位ととりますと六%であります。一般会計の歳出もGNPの伸びと同じとすると、臨調では同じ以下となっておりますが、同じとするというように考え、それから一般歳出の八〇%は国税収入で賄うという、それぞれの数字を置いてみますと、六十五年のGNPは四百二十三兆六千億円になり、一般会計の歳出は七十五兆八千億円になる。昭和六十五年度ですから七年。そうしますと、八〇%賄うとしましてその税収は六十兆六千六百億円、そういうことになる。それを見ますと、一般会計の歳出のGNPに占める比率は一七・九%で、これは当然のことながら、五十八年の一七・九と一緒ですね。同じような名目で伸ばしたわけですから。これは五十七年が一七・八ですからほぼ変わらないということになります。ちなみに五十五年は一八・〇です。それから、一般会計歳出のうちどれだけ国税収入で賄っているかというのは、五十七年、五十八年とも六四・一%程度である。それを八〇に引き上げるわけですが、そうしますと、GNPに比べてみた税収の割合、つまり国税収入をGNPで割りますと、五十八年度は一一・五が六十五年度は一四・三に、約二・八%上がることになります。この二・八%のうち、税調でも、その三分の一程度、ほぼ一%前後は自然増収で大体いくだろう、こうなっていますから、この計算では大体二%ぐらいが実質税を上げざるを得ないということになる。これは当然にそうなるわけです。
それから、これはGNPとの対比ですが、国民所得との対比です。租税負担率というのは国民所得との対比ですから、それで考えますと大体三・六%ぐらいふやさなければならない。そのうちの三分の一は自然増収です。いずれにせよ、二%余りが増税だということになりますと、六十五年のGNPが四百二十三兆円ですから、大体八兆円を超えるということになるのです。だから、大体そういうようなことを実行しようと思いますと、これはあくまで仮定に仮定を重ねたのですが、小型、中型ではとても無理なんで、大型の間接税ということにならざるを得ないのじゃないかというように思われるわけです。
そこで電電公社来ておられますか。それではお待たせしました。
電電公社に伺いますが、電電公社は五十六年の財確法で毎年千二百億ずつ四年間四千八百億円国に出してもらうということで、特に五十八年度は金がないから、五十九年度に出すべきものであったのを、千二百億円追加して二千四百億円出せ、こういうことを言われておりまして、非常に御苦労さまです。お金を取られた上国会へ呼び出されて、言うことは何もない、こういうことでお気の毒ですけれども、しかし新聞を見ますと、それぐらいお出しになっても、なおかつ五十八年度も利益があり、五十九年度も利益が上がるということになっているようですが、おおよその見込みをおっしゃってください。
#204
○岩下説明員 お答えいたします。現在の電電公社の財務状況を端的に申し上げまして、なかなか大変な状況の中ではあるけれども一生懸命やっておって、どうやら利用者の皆様に御迷惑をおかけするような状態にはしていないということかと思います。
具体的には、五十七年度の状況では、予算では約一千百億円の収支の差額を予定いたしまして、これをかなり上回るものが収入並びに経費の節約面で出せるものというふうに現在考えております。五十八年度につきましては、予算におきまして約一千三百億円の収支差額を計上しております。
なお、電電公社におきます収支差額は、これは改めて申し上げるまでもございませんが、利用者の方々のサービスの充実改善のための設備投資の財源に当年度すべて使われるということでございます。したがって、いわゆる利益金とは観念も違いますので、改めて申し上げるまでもございませんが、そういう収支差額の使途でごさいます。五十七年度の予算を上回る収支差額についてもまた同様でございます。
#205
○正森委員 いまの経理局長の答弁で、一般の利益と同じように思ってもらったら困る、サービスを向上するための投資等に回されるべきものである、こういうことですが、しかし、それにもかかわらず国として必要だから千二百億ずつ出せ、ことしは二千四百億出せ、こういうことですね。そこで、大蔵大臣にお伺いしますが、たびたび申しわけございませんが、きょう朝日新聞を読んでおりましたら、「竹下蔵相は十二日の衆院大蔵委員会で、五十九年度までの特別措置となっている日本電信電話公社臨時納付金の六十年度以降の取り扱いについて「現行の法律は当然打ち切りとなるが、その後の取り扱いについては軽々に判断できない」と述べ、財政再建のため、この臨時納付金制度を六十年度以降も続ける場合もありうることを示した。」この後は解説ですが、私も上田さんの質問のときにおりまして、そのあらかたは聞かせていただきましたが、この御答弁をまつまでもなく、金が非常にないから、ないからというので四年間千二百億円ずついただくというのが、五十八年がないからというので五十九年度空にして全部もらってしまったということになりますと、五十九年度に何か目の覚めるような増収措置がよそで講ぜられれば格別、いまもお見受けしたところ、お手元非常に不如意のようですから、そうすると、せっかく、利益と言ったらいけませんが、再投資のためにとっておくようなお金が幾らかあれば、六十年度、六十一年度はいざ知らず、五十九年度は二千四百億から一躍ゼロになるというのではつらいから、二千四百億とかあるいは五十七年度並みに千二百億とかいうようなお気持ちが動いて当然である。動かないぐらいお楽な世帯ではなかろうというように思うのです。
そうすると、この朝日の最後のところに書いてある三行ぐらいは、大臣の御答弁を聞いた上での朝日の判断ですね。これは、こういうぐあいに理解していいのですか。五十九年度をやめてしまうなんということは軽々に言えない。やはり五十九年度財源がなければ、先に一年間年貢の先取りみたいに取ってしまったけれども、改めてもう一度年貢を申しつけるということになるんじゃないですか。
#206
○竹下国務大臣 これも言葉を選んで申し上げたのですが、この間来、専売の問題等々の質問も、本院から、また参議院でずっと質疑応答を繰り返しておりました。そこで、そのときにやはり関連して経営形態等の議論があります。そうすると、私はそのことが念頭に非常にありましたので、いわば電電公社の経営形態がどうなっておるかということについて見きわめがついていない。だから、現行の形そのままでいった場合という仮定でお答えすることに対するいささかのちゅうちょを感じておったわけです。それが一つ基本にございます。
それからいま一つは、軽々に判断できないと申しましたのは、むしろイージーにこれを考えるべきでないという考え方が私にはありました。率直にそのような気持ちがあったことを申し上げておきます。
#207
○正森委員 そうしますと、蛇足のようですが、この新聞が「財政再建のため、この臨時納付金制度を六十年度以降も続ける場合もありうることを示した。」というように書いておるのは、必ずしも大臣の真意ではないと言えるのですか。それとも、そうまで言われたら後々の含みがなくなると、こういうことでしょうか。#208
○竹下国務大臣 正確に整理してみますと、今後については国の財政状況も公社の財務状況も明確でございませんので、絶対に納付金を取らないと確言はできませんが、このような納付金は軽々に考えるべきものではない、こういうふうに申し上げたわけであります。#209
○正森委員 言葉を選ばれた確定版が出ましたので、この問題はこれで終わらせていただきます。それで、ほかに伺いたいこともございますが、競馬会に伺おうと思っていたのですが、ちょっと時間がないかもしれませんが、国税庁に伺います。
こういうように国の財政が非常に厳しいということになりますと、歳出はカットしなければなりませんが、何よりも税収を上げなくてはなりませんね。税収を上げる第一線に立っているのは国税職員ですから、国税職員の待遇といいますか、士気を鼓舞するといいますか、少なくとも士気を低下させるようなことはすべきではないというように思いますので、以下質問させていただきたいと思います。たくさん聞きたいことがあるのですが、一、二の点にしぼります。
国税の職場では、単身赴任の問題が非常に問題になっておりまして、昨年の当委員会でも私は実例を紹介しながら幾つか配慮をお願いしましたが、そのうちの相当な部分について、その後の報告では御配慮いただいたということで、この席をかりてお礼を申し上げておきたいと思います。
それで、今度再び私が申したいのは、北海道、東北、北陸、四国等における単身赴任の問題であります。この問題は、改めて申し上げるまでもなく、職員の中にも子弟の教育や将来の生活設計等からマイホームを持つ人がふえておるわけです。マイホームができた、子供が軽々にかわれない学校へ行った、高等学校でいよいよ大学に行かねばならぬから。そのときにかわるから、お父さんとしては、家を動き子供を転校させるわけにいかない。そこで単身赴任をするということで、単身赴任の比率が非常に職員の中で高まって、それで二重生活、場合によったら三重生活というものもふえてきておるということであります。
その中で、役付の者ですね、これは役付者の数は限られておりますから、課長で行けと言われれば、ある意味では課長で行かざるを得ないということで、これをなくしていくということが非常に困難であるということは、管理者の立場としてもわかりますが、役付でない、まあ言葉は余りよくありませんが、平さん平さんと言われている平の職員、これらの人が単身赴任になり、しかも私が一年前にたしか質問しましたときに、ほぼ二年をめどに、できるだけ単身赴任はなくしたい、二年はしんぼうしてもらうかもしらぬというような話がありましたが、その二年をはるかに超えて、三年、四年というように続いている人もあるというようなことがあるようであります。
その中で、幾つか申し上げたいと思うのですが、たとえば宮城県の気仙沼署から岩手県の盛岡署に配置転換された樋川君という人がおりますが、これは本人が頸腕障害症ですか、それから自律神経失調症。それから奥さんが頸腕障害。それからお父さんが健康を害し、長男が川崎病で定期的に検診だ、もともとは両親のめんどうを見るために昭和五十一年四月に東京局から転勤した、こういう人なんです。それが、かわったのに実際上は別れ別れにならなければならないような状況に達しておる。金、土、日で一カ月に何回か帰ってくるらしいのですが、非常に時間がかかって、しかも六千円の運賃がかかるというような状況である。
あるいは、いわき税務署勤務の羽田正雄君は、両親のめんどうを見なきゃならぬというので東京局から五十二年七月に転任したのに、自分が単身赴任させられておるということで、お父さんは交通事故で片足が不自由で膀胱結石とヘルニア、六十四歳のお母さんは白内障で右眼失明、妻も最近白内障で加療中であるという状況だと言われているのですね。これについて、いわき税務署へ配置がえをして通勤不可能になったわけですが、管理者にあなたが家にいたからといって状況がよくなることはないと突き放すことを言われたというのですね。それは、家におったからすぐに白内障が治るということはないかもしれませんが、しかし、本人が病気をしたときには奥さんがまた看病に出かけたとか、いろいろ不便があるのですから、こういう点は何とかしてあげるべきではなかろうか。
あるいは、富山税務署の宮本実君は、本人が十二指腸潰瘍で加療中で、家族は父が狭心症で寝たきり老人で家族の看護が必要であるということであるにもかかわらず富山へ転勤になった。
あるいは上田久敏という人は、高岡税務署で六十一歳ですが、本人は過去二回にわたって肝炎を患っておるにもかかわらず、富山税務署から高岡税務署に転勤になったために往復三時間半を超える通勤となるということだ。
あるいは、もう一例だけ挙げさせていただきますが、北海道の滝本正彦という人は、自宅から滝川署まで通おうと思っても時間の関係からどうしても通えないので、必ず遅刻することになるのでやむなく単身赴任しておるが、そのために四十六歳ですから非常な苦痛になるというような訴えが寄せられております。
一々これを読みますと、何ページもありますので長いですが、こういう点は、数少ない職員で配置をやりくりしておられるのですから、単身赴任をゼロにせよと言っても無理でしょうし、特に管理職の場合にはある程度やむを得ない場合もあるでしょうし、いろいろでございますが、原則としては二年をめどとする、特に事情のある者は二年たたなくても考慮してやるというようなことをしてやらないと、非常に精力をとられて仕事が十分にできないというような点も出てくると思うのですね。
その点について、どういうぐあいに考えておられますか。あるいは事情を調査されて、事情が非常に気の毒であるという者については御配慮いただけるかどうか、一応伺って質問を終わらせていただきたいと思います。
#210
○酒井政府委員 私ども税務の職員は非常に厳しい環境のもとで一生懸命仕事をしておりますので、できるだけ働きやすい環境のもとで、一人一人が健康でかつ十分その能力を発揮して働いていただきたいというのが私どもの偽らない率直な気持ちでございます。したがいまして、職員の異動に当たりましては、個々に身上、希望等を的確に把握いたしまして、できる限り個人的な事情にも配慮するようにいたしておりますけれども、何分、税務官署の所在地と職員の居住地の状況が必ずしも一致しないこととか、各種の公務上の要請ということもございますし、また、特にただいま御指摘のありました東北とか北海道等の地方の国税局にありましては大変広い地域に税務署が散在し、しかも交通が便利でないというような状況でございますので、ある程度の単身赴任とか転居が異動のたびに発生することは避けられない事情にございます。
持ち家のある方の場合には、先生も御指摘のように、子弟の教育等の問題もございましてどうしても遠距離通勤とか単身赴任という事例が多くなりますし、一方、持ち家を持ってない、公務員宿舎に住んでおられるような方は、わりあいと家族ともども転居なさるような事例が多いわけでございます。したがいまして、単身赴任だけの解消を図ろうとしますと、持ち家のある方は通勤可能地に勤務させ、一方、公務員宿舎に住んでおる人は転々と各地を転居していくというような問題も出てまいりますので、単身赴任の回避のみを優先してやるということは人事の公平確保という面からはなかなかやりにくいという事情を御理解いただきたいと存じます。
そこで、職員の異動に当たりましては、先ほど申し上げましたような身上等にきめ細かい配慮を加えるとともに、職員の単身赴任等の負担ができるだけ皆さんに公平になるように努めるとともに、やむを得ず単身赴任となる場合には、公務員宿舎を行く先ではっきり確保するとか単身赴任の期間が余り長期にわたらないよう、私ども、できるだけの配慮をしているところでございます。単身赴任の期間につきましては二年程度を目安にという考えもございますが、各国税局管内の地理的条件等に差異もございまして、必ずしも一律的な運用はしがたいという状況にございます。
いずれにいたしましても、単身赴任や転居というのは人事に当たりまして当局としては大変頭を痛め、最も心を砕いているところでございます。ただいま幾つかの個別事案につきまして御指摘をちょうだいいたしましたが、さらに一層個々の事情に応じたきめ細かい配慮が行き渡るよう、改めて各国税局に伝えるようにいたしたいと存じております。
#211
○正森委員 私が挙げました数例は、持ち家を持っており子供の教育ということだけでなしに、それプラスアルファですね、両親が非常な病気であるとかいうものを選んで言いましたので、一般論だけでなくプラスアルファがついておるものですから、特に配慮していただくことを要望しまして、時間が参りましたので終わらせていただきます。ありがとうございました。#212
○森委員長 野口幸一君。#213
○野口委員 同僚議員がそれぞれ入れかわり立ちかわって御質問を申し上げておりまして、重なる部分が多分あるだろうと思いますが、お許しをいただいて、ぜひ中身のある御答弁を切にお願い申し上げます。最近の財政再建論議を聞いておりますと、実は財政再建論というものと経済再建論というものがどうも判然としないというか、その関係をもっと密接に論じていらっしゃる方がないような気がしてならない、これは私の偏見かもわかりませんが、そんな気がするわけであります。
経済再建のない財政再建というのはないはずでありますから、もっとその経済再建という問題について大蔵当局も前向きにいろんな御発言をなさるのがいいんじゃないかと思いますが、大蔵省は立場が違うというのか、そういうことを余りおっしゃらないで、しばしば大蔵省の立場といたしましてはという言葉をお使いになりまして、財政再建の幅といいまするか、そこから余り飛び出ないで、いわゆる経済再建論といいますか、経済論の分野については新経済社会七カ年計画というのが一年前に作成されましたが、これも中身が余り大したことがないので、どうもこれと財政再建論との結びつきというのも十分でないと思われますが、大臣、経済の構造変化と政策の研究会というのが大蔵省の中でもお考えになってやっておられるようでありますけれども、これに関連をしまして、経済再建論というものと財政再建論というものとの関連、位置づけについて、マクロな立場でひとつお答えをいただきたいと思います。
#214
○竹下国務大臣 大蔵省部内におきましても勉強を一生懸命しております。ただ、私どもがかねてみずからの殻に閉じこもっておるという意味ではございませんけれども、いわば財政というものがわが国民経済の中に果たす役割りというものの偉大さは十分私どもも認識しております。しかし、逆に見れば、また経済運営全体の中の一つの大きな役割りを果たすのが財政であるという立場におきまして、財政再建という角度から見ました場合に、わが国の経済状態の推移というものは当然念頭に置くべき大きな問題であるというような角度から、いろいろ議論をいたしております。
一例を挙げるならば、たとえば成長率をどう見るかという問題につきましても、おのずから財政の果たす役割りというものには限界がありますし、なお今日はその対応力が非常に少ない状態にございますけれども、やはり経済全体の成長率等について強勉して、それが経済企画庁を中心としての経済対策全体を考える場合の一つの私どもの主張の根拠になりましたり、また議論をいたしまして調整をしたりという基礎的な役割りを果たしておる、勉強しておるというつもりであります。
#215
○野口委員 もちろん、それは大蔵省のことでございますから、全然やっていないと言っているわけではありませんが、どうも私どもが見る限りにおいて、政策の中の理念の欠如といいますか、そういうような面から見ますと、もう少し前向きな、もっと深く突っ込んだ経済再建論というのが大蔵省内にあってもいいのじゃないだろうかというような気がしてならないわけであります。ただ、皮肉な言葉を使いますと、財政再建案というのは、実はこの前私が本会議でお聞きをいたしましても、今日の時点では示し得ない、こういうお答えでございました。世界もそうでありますし、日本経済もそうでありますから、不確定要因の非常に大きなときでありますので、いまの時点で示し得ないということは、一見まともなようなお答えに聞こえるわけですけれども、国民の側から見ますと、何か雲をつかんだようなという言葉がありますけれども、わけのわからないままに進んでいるんじゃないかなという気がしてならないわけであります。
たとえば、この前お示しになりました中期試算で、A、B、Cという案がそれぞれ示されております。このA、B、Cというそれぞれの案も、大蔵省としては一体どれが一番いいと思うかということに対しても別に御意見がないようでありますけれども、しかし、少なくともA、B、Cという試算をなされたケースから考えますと、どれが一番比較的現実性があるのかということは当然省としてもお考えになってA、B、Cというのが出ているんだろうと思います。
そこで大臣、このA、B、Cのうち、実現が困難ではあると思いますけれども一番近いものは一体何なんですか。
#216
○竹下国務大臣 あくまでも、すべての仮定を前提に置きまして後年度負担を推計して、そして特例公債からの脱却をいま御指摘になりました三、五、七というところでお示ししたのが中期試算であります。確かに私は今日まで、特例公債依存体質からの脱却を図るということが先決だという考え方を持って、そうして五十九年をめどということは、たとえこれが実現不可能に終わったといたしましても、それなりのわが国の財政の、なかんずく歳出削減等の問題について一つの大きなめどであったと思うのであります。したがって、これからこれの将来展望の検討や経済情勢を勘案しながら具体的に検討する問題でございますが、何年というようなめどが欲しいものだなというふうには私も思っております。そこで、臨調等で、本当に財政体質というものを健全にするためには六十年度全体を通じて、こういう文章も書かれておりますけれども、十年というと大変長いような感じがします。それから一方、このA、B、CのAと仮にいたしますと、三年としたのでは現実性が非常に薄いということになりますから、五年とか七年とかというようなものを政策目標としてめどに置くことは好ましい問題であるというふうに考えております。
そこで、数年という言葉を使っておるわけでございますが、五とか七とか、あるいは場合によっては五年から十年という表現もありますので、確定してこのものだということは今日なお申し上げる段階にはない。ただ、五とか七とかというのは、先進国のいろんな計画を見ますと、大体中長期といえば五年ないし七年というようなものがございますので、そこで五、七というのを試算として御提示申し上げたということであります。
#217
○野口委員 仮にCというのを考えてみましても、実現は本当にむずかしい。六十一年度の要調整額、歳入不足額七兆六千億円に達すると言われておりますし、国会での大蔵省当局の説明によりますと、赤字国債がゼロになる六十五年という年は、国債費としての要消化額は、利払いを含めて実に十九兆六千億円に達します。しかも大臣みずから、償還期には現金でお返しします、こう言っておられるのでありますから、とてもじゃないが無理だということを明らかにした、この展望というか財政の中期試算という名前で出されておりまするこのものは、もはや打つ手がない、逆に言うと増税しか方法がございませんということをお示しになったような文章と受け取っていいわけですか。そういうように受け取らざるを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。#218
○竹下国務大臣 確かに、中期試算をお出しいたしますと同時に、また国債整理基金の資金繰り状況についての、仮定計算ではございますが、そう大きなぶれがあるとは思いませんので、これを御提出いたしたわけであります。このことは、予算審議なりあるいはこれからの財政運営に対しての御批判を賜るための手がかりとしての資料となるべきものであるというふうな理解を私はしておりますので、これそのものを示して、国民の皆さん、ひとつこの穴埋めは歳出カットか負担増かあるいは借換債を含む公債発行かということの三者択一とでも申しますか、そういうものを求めるために提出した資料とは考えておりません。
#219
○野口委員 私も、そういう短絡的な物の考え方はできるだけ避けようとは思いますけれども、どうも言われておることとそれから報告されている内容などを考えてみますと、結局、歳出カットをいろいろと考えてきましたが、これ以上歳出カットをすることが非常にむずかしゅうございます、たとえば土光さんの答申にも、補助金整理、これは本当は一番大事なことなのですが、この行革の最重要点であることについてほとんどメスを入れられていない。これはどういうことなのだろうと思うのですけれども、これは大臣、後から、その所信といいますか、どうしてこれが示されなかったのだろうということを大臣として一遍お聞きをしたいと思っているのですけれども、私なりに考えますと、複雑多岐にわたる行政のシステムの中にありまして国民と直結しているものでありますから、いろいろ思い切った歳出削減をするといいましても、関係方面の御意見がなかなか調整もできないだろうし、あるいはまた法改正を必要とするというような点もあってかなと思いますけれども、とにかく土光臨調の最大の焦点である補助金整理に対しては、全く手が触れられていないといっても過言ではないほどの状態である。これを政府としては、これだからいわばもうこれ以上歳出カットはできないのであるという一つの逃げ道にお使いになるつもりじゃないだろうかなというような気が逆にするわけですけれども、大臣、その点はいかがでしょうか。#220
○竹下国務大臣 いわゆる行政改革の基本的な考え方をお示しなすった臨時行政調査会の最終答申、これを見ましても、やはり私は、補助金等の整理合理化は単に保護助成策の見直しにとどまらないで、公的部門の分野に属する施策のあり方及び国と地方との間の費用分担のあり方の見直しにまでわたるものであり、このような見直しによって補助金等の総額を一層厳しく抑制すべきものである、そうして個別補助金等の整理合理化方策として、対象補助金というようなものが三十一でございましたか挙げられておって、それに対する答申の概要が整理されて添付されておるわけであります。したがって、私は、これらは今後補助金を削減するというに当たって念頭に置き参考にすべき事柄である、しかも、それは財政制度審議会で指摘いただきました報告書とダブったものがかなり多いというだけに、今日までもやってきましたが、今後も大いに参考にしてやらなければいけない問題点の指摘である、こういうふうに認識をいたしております。
#221
○野口委員 この前本会議で大臣は、いずれにいたしましてもこの問題は国民合意の選択の課題だということで、これは何も歳出カットだけの問題ではなくて消費税の問題も含めての話でありますけれども、いわゆるカットはしたいのだけれども、これを反対されるあるいは現行体制というものを維持したいという意見が強ければ、これを他の要素でもって埋めなければならぬだろう、つまりカットはできない、国民は現行体制というものを維持してくれというような意見があるとすれば、これはもうできないのだから、今度は増税というところに視点を変えざるを得ないのだろう、こういうようにも受け取れるのです。もっと強く、たとえそんな反対があろうとカッ卜するんだ、こういうのではなくて、言われておるところの歳出カットというのは一応言ってみるけれども、反対があってどうにもだめだ、現行体制をとにかく守ってくれ、こういうようなことがあれば、こっちの方は簡単に引き下がって、それでは他の財源を見つけてそのようにいたしましょうというような安易さが見られるような気がするのですが、その辺はどの程度きちっととらえておやりになるおつもりがあるのか、その辺もちょっとお聞かせ願いたい。
#222
○竹下国務大臣 臨調の答申を見ますと、中長期的視点に立って見るべきものあるいは定性的に見るべきものというようなものが提言されておりますが、これを受けて、いま三十一項目と言いましたのは間違いで三十三項目でございましたが、予算編成に当たって現実の施策としてとり得るもの、それから数量的にとらえるもの、これを検討していくことになろうと思っております。それは確かに厳しい仕事だなという認識は私にもございます。ただ、私が一般論として申し上げておりますのは、日本国民というのは総体的に見まして知識水準、勤勉さ、すべて世界一だと私は思っております。文盲率の低さと言いあるいは平均寿命の高さと言い、あるいはやはり国民全体が賢いから消費者物価も世界で一番上がらない国でございますし、失業率も一番ずば抜けて低い国でもございますし、そういう国民というもののいわば選択と合意の集積というものがすべての現行の制度、施策というものになっておるということを考えた場合に、まだ私どもが一方的にこれをカットするということに対してのいろいろな反論もあろうかと思います。それのいろいろな意見というものはやはり吸収した上で、さようしからばその制度は残すべきであるという合意ならば、受益者も国民、また負担する者も国民であるとすれば、現行の施策、制度を保つためには負担というものが必要でしょうということも、合意と選択の範疇に属する問題ではないかというふうに考えておるわけであります。
日本の国会というのは、そういう国民の代表によって構成されておって、知識水準の高い国民の合意というものの集積の場所はどこかといえば国会ではないかな、だから、行政府にある者がおれについてこいとかいうような形で行政執行は行われるものではないじゃないか、こういう考え方であります。
#223
○野口委員 いま大臣のおっしゃることもわからぬわけではありませんけれども、そうなってまいりますと、いわゆる増税なき財政再建という部分についての増税なきというのは、この前も実は当委員会でお答えをいただいておるわけでありますけれども、もはや単なるスローガンにすぎないなんということになってしまうわけでありますけれども。そこで、若干角度を変えまして、今日の財政危機と言われている部分についての認識でありますけれども、これはこの前もちょっとお聞きをいたしましたが、危機の認識論というのは余り深まっていなかったと思うのですが、財政の危機というのは、いまの日本の場合には、一体どのようなものを危機と言うのですか。たとえば財政赤字につきまして申し上げますと、今日の財政は財政サラ金論と言われているものがありまして、歳入の二六%を借金に頼っている。その借金の残高がわが国のGNPの三九%に達している。まさにサラ金地獄に入った一般家計にも似たような調子だ、これは大変なことじゃないか、こういう言い方をしているわけであります。
また一方の議論として、国の財政が家計のサラ金と同じようだと言うには、国内貯蓄が非常に寡少で、そして財政赤字のファイナンスを外国から借り入れているという場合を言うのであって、中南米諸国などにおける経済あるいはその財政等の再建計画がIMFの監視のもとで計画、実行されているというようなものとはーべつ同視をしてもらっては困る、日本の財政危機というのはまた違うんだぞ、こういう意味での議論もないわけではありません。
大臣、日本の財政危機というのは、いまどのような観点でとらまえていらっしゃいましょうか。
#224
○竹下国務大臣 いまのわが国の財政危機というのは、結局、国民の財政需要に対応することが困難な状態にある、これが財政危機ではないかな。すなわち、多額の国債費やそして累増する国債残高に直面しておりますので、確かに財政の対応力が失われておる。いわゆる国民の財政需要にこたえていく財政の対応力、それがないというのが財政危機ということの認識ではないだろうか。いまおっしゃいました議論はある議論でございまして、日本は、確かに政府は赤字財政でございますが、いわば国民の貯蓄性志向はまだ世界で一番高いんじゃないかとか、そして、よく国際金融危機と言われますように、諸外国から金を調達いたしまして、そしてそれが返せなくなりまして手形のジャンプを頼んだり、そういうような危機ではないというふうに私は思っております。あくまでも国民のニーズに対して財政がトタで対応していく力を失っておるという意味の危機だと思っております。
#225
○野口委員 非常にマクロの質問でありますので、お答えがそういうようになっていくわけでありますけれども、しかし、国民のニーズに対応し得ないということが一つの財政危機だという意味でとらえるということになりますと、それができないということを可能にする、つまりニーズにこたえられるという状態にしていくという、そのときがいわゆる日本におけるところの財政危機を脱したという時期になるわけですか、そういう認識ですか。#226
○竹下国務大臣 これは財政改革の考え方でもお示し申し上げておりますが、まずはいま赤字公債からの脱却ということを言っておりますが、基本的には、財政の対応力を回復していくということは、公債、建設国債であれ赤字国債であれ、そういう依存度が下げられて、そして依存度が下げられれば、国民の貯蓄性志向はいまだ強いわけでありますから、いつでも公債政策が弾力的にこれに対応することもでき得るわけでございますから、やはり財政危機からの脱却という意味においては、特例公債依存体質からの脱却とさらには公債依存度全体の引き下げを図られたときが、財政危機からの脱却という表現の中へ入るではないかと思っております。#227
○野口委員 そういたしてまいりますと、先ほどの同僚議員の御質問などにもありましたように、赤字国債の借りかえという問題についても、いわば今日的な認識から言うならば、政府の認識とするならば、そのこともやむを得ないということが最終的には考えられるというように思われますが、大臣、先ほどの御答弁なんかを聞いておりますと、なるべくならばそういうことをやりたくないというような御意見ですが、実際はもうやむを得ぬ、そこに足を突っ込んでいるのだ、こういうことにならざるを得ぬのじゃないでしょうか。#228
○竹下国務大臣 いま依存度が単年度で見ましても高いわけでございますが、それと同時に、いわば国債残高も大変に高いわけで、累増しておるわけでございます。したがって、この借りかえの時期が当然参ります。さようしからば、その際は負担増か借りかえを含む公債の発行かあるいは歳出カットかという選択にぎりぎり迫られてくる。それを歳出カットのみで行った場合には、国民に対する行政のサービスの範囲がうんと狭まってくる。したがって、そこのところは国民の選択と合意の問題になりますが、負担者も国民であり受益者も国民であるという観点に立ってなだらかに、いわばいま野口さんの御指摘の財政危機を脱却していく方策としてはなだらかな方策というものもあり得る。しかし、いま借りかえとかいうような問題を安易に念頭に置いたら、歳出削減といういわば腕が鈍ってしまうとでも申しましょうか安易になりやすいから、念頭に置いてはならないという心構えであります。
#229
○野口委員 その辺のことについては、まだまだ私も少し理解がいたしかねますが、しかし大臣の一言っておられること、先ほどからの質問者の答弁をずっと聞いておりますと、いま私がなぜ二つの議論をとり出して言ったかというと、サラ金財政だと言われている部分と、それからそうじゃないのだ、日本の財政危機というのはよその国で言われているような財政危機じゃなくて、まだまだ余裕のある財政危機なんで、いわば国債依存の問題にしてももう少し踏み込んでやってもいいし、あるいは経済七カ年計画、またそれを見直そうといういま現在の中にあっても、まだまだもっと前向きに、何もびくびくしてやらなくて、もっと大胆に国債の発行についてもやってもいいんじゃないかという議論が一部にあると言われている向きもあるようでありますので、実際、この国債を五十九年度脱却というのが事実上できなくなって、そして六十何年になるのかわからないわけですけれども、これが示されていない今日にあって、やはり不安感というものだけは国民の中に残っていることは間違いないわけです。それで、いわゆる財政危機脱却の時期というのはいつなのか、あるいはまた、どの辺までに特例国債を発行しなくてもいいようになるのかということを示すことがやはり大臣としての役目だろうと思いますし、任務だと思うのであります。それが今日幾ら内外の流動性が激しいからといって、その面だけで五年から十年というのは非常に大ざっぱな、五年から十年というのは、その間というのは五年間あるわけです。
この前の大臣にも言ったのですけれども、特に日本の場合は大蔵大臣を一年か二年しかやっていないのですね。自分のやっていない任期中にいろいろやったものが、次の大臣のときには全然違うような話が出されては困ったものであります。大蔵大臣だけでなくて日本の閣僚というのはそうなんですけれども、どうも任期が短くて、自分の本当にやろうとしておる仕事ができないんじゃないかということで、この前もそんな話をしたことがあるのです。オーストラリアなんかの大蔵大臣というのは五年も六年もやっていらっしゃって、ずいぶん長い間、自分が発想した財政計画なんかは自分の手で修正もしあるいはまたそれを実行もしというようなことが行われているのであります。
この前は、たまたま渡辺大臣、めずらしいことでございますが二年おやりになった。竹下大臣は、途中でお休みになって今度は二回目。その意味では、玄人というよりも、本当に日本の財政危機突破についての関心といいますか、そういうものは非常にお強いはずであります。そのことをずっと眺めてこられて、そのお答えが今日なお、たとえば赤字国債脱却の見通しはと言われたときに五年から十年、こういうような答えが出てくるようではどうも心もとないような気がするのですが、大臣、本当にいまの段階でもっとざっくばらんに、こういうようにすればこのぐらいの年度に縮められるとか、あるいは内容的に、増税なら増税に踏み切るその時期をどの辺のところに設ければ、この赤字国債発行の脱却が早まるとか、そういった具体的なものをこういう場でお話ししていただけないものでしょうか、いかがなものですか。
#230
○竹下国務大臣 これはなかなかむずかしいお話でございますが、先ほど来わが国の財政危機に対する基本的な考え方ということについて、世界の国々のあるいは国際金融危機とかいうような御意見を交えてのお話のときにございましたが、確かに私どもも、毎日と言っていいくらい外国のお客さんにお会いいたします。そうすれば、私どもが日本のいわば財政の現状をお話しいたしましても、すぐ返ってくる答えは、担税力があるからもっと税を取られたらいかがでしょうかとか、あるいは、世界で一番貯金をよけいしているんだからもっと国債を発行されても一向に構わぬではないですかとか、そういう意味においては、国民生活のファンダメンタルズも含めて、それは経済全体で見れば、外から見ればそれなりの評価をいただいておるのじゃないかと思うのです。それの基本も、私は決して政治のかじ取りがよかったとは思いません。日本の国民が勤勉であり、賢明であったからだと思っております。しかし、さはさりながら、担当しておる財政を眺めてみますと、まさに御指摘のように危機的状況にある。そうすれば、一つのめどというものは、公債依存率全体の問題を引き下げていくことが最終の目標でありますが、一つは赤字公債脱却の期間、せっかく五十九年というものを、たとえできなかったにしてもあれだけ国民の中に定着した一つの考え方であったわけですから、したがって私の見識においても、いつまでも五年だ、十年だ、セベラルイヤーズだ、数年だというようなことを言って心よしとしているわけではございません。したがって、少なくともこの辺だけは、経済審議会で御議論をお願いしておる問題も含めて、やはりきちんとした数値をお示しするということのための検討は急がなければならぬ。これもまた、めどをつけるのも五年か十年先ですというようなイージーな考えであってはならぬと思っております。
それから、御意見にございましたが、大臣がかわる。確かにかわりますが、まあしかし、私の場合のようにいわば出戻りというのは、希望者がなければ出戻りもあるわけであります。しかし、日本の官僚機構というものは世界のどこの国に比しても優秀でございますので、それだけに政策の継続性というものはそこに存在をしておる。したがって、責任の所在だけはそのつかさ、つかさに任命された大臣が背負っていかなければならない問題であるというふうに考えておるわけでございます。だから、私も御要望にこたえて、その経済審議会のお勉強と相まって、先ほどは五十九年度予算編成の際にはという御意見もございましたが、できるだけ御検討いただくための手がかりとなるべきものは作成して提示申し上げる努力を怠ってはならぬというふうに思っております。
#231
○野口委員 それでは別の話をいたしますが、大臣、最近景気対策の一環として公共事業投資の前倒し七五%というのをお決めになりましたようですが、それも一つ景気対策に必要だということで実行されるわけでありますが、減税ですね、この減税は、何か大臣の御発表では来年の一月とかいうようなことを新聞で拝見をしておりますけれども、その実施時期はどういう意味で来年の一月という言葉が出てきたのでしょうか。#232
○竹下国務大臣 この所得税減税問題は、何としても与野党の合意という至上命題のもとにございますし、それを受けられた議長見解、また官房長官発言と、こう続いておるわけでございます。したがって、これを真剣に検討をしなければならぬことは事実でございますが、ただ、時期あるいは規模等につきましては、なお国会における論議を踏まえまして、財源問題等を含めそれらを正確に整理して、税制調査会等の御議論に基づいて方向を出していかなければならぬというふうに考えておりますので、現段階で具体的方法、規模、時期を明示するわけにはまいりません。
したがって、所得税減税は来年一月ということを言ったことは私もございません。むしろ国会における議論の中で、少なくとも一月からとかいう御議論はいただいておりますが、いま私どもとしては、官房長官発言で申しておりますような線に沿って、先ほど申し上げました手順を経て検討を進めていくという考え方であります。
#233
○野口委員 それに関連して、自民党の幹事長さんが景気を浮揚するに役立つ減税という言葉をお出しになりまして、そんなちょろこい減税をやろうと言っているのではない、やるからには景気浮揚に役立つ減税をしたい、こういうお話があったわけであります。その景気を浮揚するということについて、この前も実は大臣にお聞きしようと思いましたが、時間がなくて梅澤主税局長からお聞きはいたしましたが、大臣に改めてお聞きをいたしますが、計数的には景気を浮揚する金額というのは出てこない、どのくらいすれば景気を浮揚する金額になるかというのは出てこないんだ、これはあくまでも心理的なものだということを塩崎経済企画庁長官も言われているそうでありますが、大臣は、一体景気を浮揚するに役立つ減税というのはどういう理解でございますか。
#234
○竹下国務大臣 そこのところが、やはり各党の代表者の方の高度な判断で景気浮揚に役立つという表現をお使いになっておると思うわけでございます。したがって、景気浮揚に役立つ額で示すということになりますと、これは金額に結びつけますということになると、これを計量的に申し上げるということはなかなかむずかしい問題でございます。仮に、もし景気浮揚に役立つというある種の金額を計量的に想定して、その財源を景気を逆に足を引っ張るもので求めた場合には、その趣旨に沿わなくもなりますので、そこのところが、いまのような国会の問答等を踏まえながらこれから検討していくべき重大なポイントの一つではなかろうかというふうに考えております。
いま一つ、心理的効果云々の問題がございましたが、それは大体景気というのも、いわゆるインフレマインドとかデフレマインドとかあるいは企業マインドとかいう言葉がございますように、経済学とは心理学だという言葉もございますので、その言葉自体を私も否定するものではございませんが、各般の検討の中に出てくるものではないかなというふうに思っております。
#235
○野口委員 それはそれとしまして、景気浮揚というのは、景気を刺激をして経済活動というものをより躍動せしめるというような、活発化するというのですか、そういうためにやるということでありますけれども、私はちょっと字引を引いてきまして、景気浮揚に役立つということだから、一体景気浮揚に役立つという意味はどういう立場を言うのかということを調べてみましたら、こう書いてあります。予算の支出を早目にやる、二つ目、予算規模をふくらませる、三つ目、大幅に減税をする、しかもそれを早期に行う、こういうことが、まだそのほかには金融政策として日銀の公定歩合、預金準備率を引き下げる等というようないろいろな手があると書いてありますが、その前段に、私が申し上げましたように大幅に減税を早期にやる、こういうことが実は景気刺激に非常に役立つんだ、これは経済辞典の中にそう書いてあるんですが、これからいきますと、大臣のおっしゃっておられる、少なくとも金額的な面は別としまして時期的な問題というのは、たとえば予算も、先ほども言いましたように公共事業投資の前倒しをやる、早く使う、これは一つの景気刺激策だ。減税も来年の一月などというようなことを言われておっては、とてもじゃないが役に立たぬのでありまして、早期に実現をしてもらわないと全くこれも意味がないということになるんじゃないでしょうか。その意味では大臣、思い切って減税の時期というのは早める、そういったお考えはございませんでしょうか。
#236
○竹下国務大臣 これは、経済原論からいいます景気対策と言えば、いま野口委員御指摘の問題等々がそれに当たると思っております。したがって、どちらかと言えば今日まで景気に対する財政の対応力がありましただけに、日本的景気対策と言えばいわば公共投資等の拡大であった。アメリカ的景気対策というのは消費刺激に伴ういわば減税政策であったということを十年前ぐらいにいろいろ言われておりましたが、いま、その点非常に判断のむずかしいところになっております。ただ、この各党合意の文書を読んでみましても「国民世論の動向にこたえ、景気浮揚に役立つ相当規模の減税を実施するための財源を確保し、」こう書いてございますので、なるほどこの財源というものが、またその出方によってはいわば前段の景気浮揚というものを減殺するようなものであってはならないというようなことも念頭に置きながら、しかも「五十八年中に国会に提出するとの確約があったことを承知いたしております。」こう官房長官が発言をいたしておりますので、それこそ各方面の意見を聞きながら税制調査会等で予見なしに御議論をいただいて出していくべき結論ではなかろうかというふうに考えております。
#237
○野口委員 いま大臣の言われたのもわからぬわけではないんですけれども、少なくとも景気対策という意味であるいはまた国内需要を喚起せしめるという立場から考えてみても、やはり減税が今日一つの重要な施策であるということは間違いない。しからばそれは、額の問題もさることながら、時期それから原資の問題、それによっていろいろと変わってくるわけであります。少なくとも私どもやっていただかなければならぬとするならば、金額もさるところでありますけれども、実施の時期をぜひとも何とか早くやることによって実のあるものにしていただきたいということが望まれるわけでございまして、ぜひそういった面の部分についても格段の御努力をお願いしたいということを申し添えて、この項の質問を終わります。次に、中央競馬会からお越しをいただいておりますので、若干中央競馬会に関する質問をさせていただきます。
今回、先ほど泥棒だと言われておりましたが、泥棒か何か知りませんが、その被害者の一人であります日本競馬会が特別国庫納付金に対して協力することになったわけでありますが、その協力をするということに決断をされた理由をお聞かせください。
#238
○池田参考人 中央競馬会といたしましては、通常の国家財政への寄与の方法としては第一次、第二次の二つの国庫納付金によって御協力申し上げるというシステムができ上がっておるわけでございますが、何分にも最近の緊急な財政は先ほどから大臣、先生の間でのこうした質疑の中で行われたとおりでございまして、私どもといたしましては、これらの緊急の事態というものの認識の上に立って、主務官庁その他財政当局等の御指導のもとに、できるだけこの際御協力申し上げるほかはないのではないかというふうに考えて、御協力申し上げることにしたわけでございます。#239
○野口委員 これは、昭和五十六年だけ単年の約束で国庫納付金を協力するというふうに決められておるのに、また今度言われまして、しようがないからまた出しますということであります。これは、言われれば幾らでも出すのですか。#240
○池田参考人 これは、五十六年度において御指摘のように単年度限りという措置で納付をいたしたわけでございますが、いま申し上げたような特別の事情というふうなことがございまして、今回も御協力を申し上げることにしたわけでございますが、今後さらにこのような形が続くといたしますと、これはなかなかファンサービスその他設備投資に対してもかなり影響が出てくると思わざるを得ませんし、また、現実に競馬を取り巻くいろいろなファン、関係者の理解というふうなものをだんだん得がたくなってくるであろうというふうにおそれるわけでございます。したがいまして、特別納付につきましてはやはり五十八年度限りの措置ということでお願いをいたしまして、国庫への寄与は、おしろ事業の拡大を通じて従来どおり第一次、第二次の国庫納付金に頼って実施をするという形で処理をしていただきたいということが私どもの切なる希望でございます。#241
○野口委員 それでは、特別積立金が二千九百七十六億ですか約三千億ばかりあるのですけれども、これは全部現金ですか。固定資産もあるのじゃないですか。ちょっと中身を教えてください。協力するのはいいけれども、どのくらい金が残るのか残らぬのか知らぬが、その現状をひとつ。#242
○池田参考人 ただいまの特積み二千九百億云々は前年度でございまして、五十七年度末におきましては三千二百七十七億円というふうにふえておるわけでございます。しかしながら、その三千七百二十二億円の中でほとんど大部分は、つまり三分の二程度は固定資産化されたものでございまして、競馬場の施設とか馬場とかその他土地建物等の固定資産分でございまして、それが約二千九十五億円ございます。〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
そのほかに、さらに二百六十五億円程度が本年度中に固定化されるという金額でございまして、御指摘の純流動資産として私どもが考えておりますのは、予定としては九百十七億円、全体の二八%程度ではないかというふうに考えております。
#243
○野口委員 先ほども御答弁がありましたように、政府が言うからということで、こわい人が言うからというので言うことを聞いているのだろうけれども、考えてもらわなければならぬのは環境整備費です。この環境整備費というのは、私もこの間ちょっと中山へお邪魔をいたしましたが、どうも環境整備が十分に行われているとは思えないのです。特にあそこの付近の交通事情だとかいろいろなことを考えてみますと、環境整備費を今年度も据え置いておられるというのは理解しがたいと思うのですが、地域の人々が非常にいろいろなことを日本競馬会に言っているのじゃないですか。この支出は十分ではないと思っているのですが、いわば関係者のそういった声まで封殺をして残した金を今度は逆に政府に取られて、はい、そうでございますかとこんな簡単に出していくというのはちょっと納得できないのですが、この環境整備費の支出についても、今後は、先ほどもちょっと話がありましたが、こんなに政府に取られるのだったら、もっとほかのところで金を使って、きちっと日本競馬会が自主的な運営をしっかりやらなければいかぬというような気もするのですが、その辺のところはいかがですか。
#244
○池田参考人 先ほど私の発言の中に、五十七年度末の特別積立金の総枠、総体が三千二百七十七億をあるいは三千七百二十二と言い誤ったかもしれませんが、訂正させていただきたいと思います。それから環境整備費の御指摘の問題ですが、これは御案内のように五十七年度は支出五十四億九千六百万円でございまして、予算枠としては五十五億円でございます。前年度も五十五億円でございますが、実は全体としての予算枠は支出総枠をすでに五・四%ほど占めておる状態のもとでございまして、据え置きというのは実質的には私どもとしてはかなりがんばって増額、減額しないということでがんばったというふうに実は考えておるわけでございます。
御案内のように、現在の競馬会の置かれた環境からいたしますと、事業所所在の二十九の市区町村ございますけれども、これらに対する道路整備あるいは交通安全、下水道、排水施設あるいは教育文化施設、公園緑化といったような一連のものを地元の施設として出すことによって、地元の一部公害に悩むような方々をカバーしていくということの意味は非常に強いものもございますので、ただいま先生御指摘のような方向に沿って、私どもとしては、できる限りこの面については予算面について確保を図って、地元の要望にこたえることを今後もがんばってまいりたいというふうに考えておるような次第でございます。
〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕
#245
○野口委員 この際ちょっと道を外れるようですが、競馬会に御要望申し上げておきますが、最近の売り上げの状況を考えてみますと、場外馬券場の売り上げが全体の三分の二ぐらい占めているのじゃないですか。そういうような状態の中で、場外馬券場対策というのは今後どのようにしていかれるのか。一部聞いておりますと、設置をしたいのだけれども、なかなか増設が非常にむずかしい、こういうことを言われているわけですけれども、むずかしいと言われるだけで、いわゆるマンモス馬券売り場みたいなものを考えてやっておられるから、たとえば浅草にあるようなもの、ああいうようなものを考えるからむずかしいのであって、もっとコンパクトなものを、こういう進化した時代なんですからできないことはないと思うのですが、そういう点はもっとお考えになって、場外馬券場対策というのは積極的におやりになる必要があるのじゃないだろうかという気がするのですが、その辺について、この際若干お聞かせいただきたいと思うのです。
#246
○池田参考人 いま御指摘の場外問題でございますが、これは確かに、ミニ場外と申しますか小さいものは、ロンドンとかパリとかに参りますと、喫茶店とかたばこ屋の店先とかという形で随所に売っております。ベッティングハウスと書いてかなりはでな宣伝もしておるようでございますが、いま最初にお話がございましたように、日本の場合には一つの歴史的な民族感情と申しますか、大きいものだけではなくて、小さいものをつくることについてもなかなかの抵抗感がございまして、特に自分の町の中にそういう施設ができることについての本質的な反対といいますか、感覚的な反対というものはどうしても先走ってまいります。したがって、その数をたくさんつくるということは、小さいから楽で大きいからむずかしいということではなくて、むしろ、その施設を自分の町の中に持ってこられることに対する町民の納得を得るための時間というものが非常にかかるのが現状でございます。いま私どもは、現に広島市の駅のそばに、これはすでに町民の納得を得まして現在かなり大型のものですが、つくりつつございますし、その他二、三現在計画中のものもございますけれども、全体として、どうもミニ場外という形で話が乗り切れるという可能性はきわめて少ないような感じがするわけでございます。
それからもう一つは、これは法律のたてまえとして全部人に委託ができないのが私どもの仕事でございます。したがって、中央競馬会が自分でやるということになりますと、現金を分散して、かなりの額になりますものですから、防備の薄いところへそういう形で置くということが、何かあったときの問題点として果たして大丈夫なのかどうかという問題点もございます。
それからまた、馬券払い戻しを効率的にやっていくということになりますと、当然、現在御承知のようにコンピューターを使いまして全部端末機に入れなければなりませんが、それらについての故障関係が起きるということになりますと、そこでも実は、大型の場外馬券売り場でも売りどめをする時期を場内と合わせろという問題があって、それがなかなかコンピューターのダウンを恐れてできない状況にございます。そこいらが、細かくなってまいりますとますますそれの故障関係についてもある程度配慮をしていかなければいかぬというふうな技術的な問題もあることはございます。したがって、いま御指摘がございましたような方向ができますれば私どももまさに大賛成なんでございますけれども、現状なかなかその時期と場所が選べないというのが実情でございます。
#247
○野口委員 終わります。#248
○森委員長 広瀬秀吉君。#249
○広瀬委員 最初に、きのうの新聞の記事が少し気になりましたものですから、大蔵大臣に質問したいのです。朝日の朝刊でございますが、北海道と福岡の知事選が革新の側が勝利をしたことによって一番ショックを受けたのは大蔵省だというような報道がなされておるわけであります。これは、次に衆参ダブル選挙が恐らくあるだろうと大蔵省は読んでおった、そうすれば五十九年度で大型間接税に踏み切ることができるだろう、こう読んでおったのに、それがどうやらできなくなったらしいというようなことで大変ショックを受けている、こういうような中身の記事であります。これは大蔵大臣、そのような構えでおったのでありましょうか。大型間接税は五十九年度にも実行する、こういうのが大蔵省の考えですか。そのことをまずお伺いしたいと思います。
#250
○竹下国務大臣 これは、理論的に消費一般にかかる税制を否定するものではございませんが、いわゆる五十九年度大型間接税を実施するというようなことは、検討したことも、また指示を受けたことも指示をしたこともございません。したがって、単なる憶測記事ではございましょうが、官僚機構というものは、その一人一人には主義主張がそれぞれございましょうが、政治的な中立の立場において日本経済、財政全体を考えるものでございますので、そのようなショックを受けたこともなければ欣喜雀躍したこともまたないであろうと思っております。#251
○広瀬委員 大型間接税を五十九年度にやるという考えはいまのところ全く持ってない、こういうように確認してよろしゅうございますね。#252
○竹下国務大臣 もとより検討したこともありません。#253
○広瀬委員 先ほど同僚の野口委員から、五十八年度における減税の問題について質問がありました。これは大臣も御案内のように、与野党幹事長・書記長会談で与党の二階堂幹事長が胸をたたいて必ず実行をする、こういう表明をいたしました。与党の幹事長である私が言ってそれを内閣が聞かぬということならば中曽根内閣は崩壊するであろうというところまで幹事長は明確に言明されて、しかも、それは景気回復にかなりの貢献をし得るような規模のもの、こういう表現をなさっております。言わず語らずのうちにその会談では、少なくとも一兆円以上であろう、こういう受けとめ方をその場でもしておるはずであります。特に五十七年度の景気も非常に低迷して、当初五・三%の実質経済成長率と見通しておったのが三・一%、これはどうにか達成できるのではないかということのようであります。
そういう経験にかんがみて、ことしも五・六%、実質三・四%の経済成長という経済見通しを立てておられるわけでありますが、輸出の動向なり多方面にわたる景気指標をいろいろ検討してみても、そう景気が回復するという状況にはないのではないかと思うわけであります。そういう問題について、五十八年度は一体どういうふうにお見通しか、その中における一兆円以上の減税というものの位置づけは、われわれは、国民とともにこれは正しい要求でありまた実現さるべき政策目標であろうと思っておるわけでありますが、景気の見通しと同時にその一兆円減税の正当性、こういうものをお認めになるかどうかという二つの点をお伺いします。
#254
○竹下国務大臣 まず、五十八年度の景気見通しでございます。いま御指摘がございましたように、五十七年度の経済成長、下方修正した三・一%、これは一―三月のQEを見るまでもなく確実になったではないかと言えると思うのでございます。したがって、五十八年度の政府見通しは三・四%ということを掲げておるわけでございますが、これは、原油価格の下落あるいは円安から円高へ転換したという為替相場、そしてアメリカの景気が若干なりとも底離れをしたというようなことを考えれば、内需を中心として三・四%は達成可能な数値ではないか、それだけに、それをより確実なものにするために去る五日に経済対策というものを発表いたしたわけでございます。それの確実な実施と相まって、私は、三・四%の成長をより確実なものに結果としてしなければならぬと思っておるわけであります。
そこで、それと見合う減税問題でありますが、各党合意をなされたものであり、そして、それの裏打ちとして議長見解というものが出されております。これに対しては、その合意をなされた事情を承知しておりますという趣旨の官房長官発言もございますので、これに対し真剣な検討を進めていかなければならない課題でございます。
ただ、その中で、いまの段階では自然増収が見込めるという時期にはなかろうかと私は思います。したがって、五十八年度の税収の土台になります五十七年の決算が確定します時期が、これが検討をなされていくまずスタート台ではないか。そうすれば、それまでの間に国会等で議論されました問題を念査して正確にこれを報告していかなければならない。したがって、あらゆる予見を持たないで税調の議論にまずお任せする、こういうことに手段としてはなろうかと思うわけでございます。参議院におきましても委員長見解がありまして、七月末とは言わずもっと早目に検討を開始しろという見解もございますので、それらに沿って検討を進めていかなければならぬというふうに考えております。
#255
○広瀬委員 いまの大臣の答弁の中で、何らの予見も持たずに税調の諮問をする、こういうことがポイントだったと思うのですが、それでは、ずっと午前中からの答弁、ところどころ私も聞いておったわけですが、日本の議会制民主政治はおのずから政党政治でもあります。その政党のかなめ役である与野党の幹事長・書記長会談、そこで合意したものが今度政府の手に渡ると、それはもう何らの予断を持たずに税調に、こういうことで税調に行ってしまえば、そこでこれはやるべきでないという結論を出されたらそれはもうやらぬ、こういうことになる可能性も非常に強いと見てもいいわけであります。いままでも税調隠れみの論ということがしばしば言われてきたわけでありますが、税調はずっと今日まで大体において大蔵省の考えた方向で答申を出してくるだろうということが言われてきたわけです。したがって、その意味では大蔵大臣の政治家としての決断、こういうものが景気回復の、俗な言葉で呼び水のような形で、経済心理学、経済学は心理学でもあるという面も強調された大蔵大臣でもございますから、そういう意味で国民の経済的な心理というものに呼びかける、アピールするといいますか、そういう形で決断が必要だろうと私は思うのですが、まるきり白紙でということでは、これは竹下大蔵大臣ともあろうお方の発言とも思われない。すでにそういう段階も経ておるわけでありますから、去年の減税小委員会のような形で、財源を野党で見つけてくださいというようなことで責任逃れをするのではなくて、やはりこれは大蔵省自身が積極的に無理のない財源を見つけながら、国民の要望にこたえて心理的な明るさを、そして特に内需の振興、個人消費の振興、こういうようなところに結びつけていく、そういうリーダーシップを発揮していただかなければならぬ問題ではないか、こう思うのですが、いかがでございますか。
#256
○竹下国務大臣 私があらゆる予見を持たないでと申しましたのは、言ってみれば、政府税調に対して財源はこのもので検討してくださいとかいう予見を持ってはならぬという意味でございます。当然のこととして、私どもが報告をします中には、各党合意の問題、そして本委員会を初めとする各委員会で議論された減税論議、そういうものを正確にお伝えするわけでございますので、全く否定的な答えが税調でなされるというようなものではないと思っております。
ただ、私どもも行政を預っておる者といたしまして、最終的にはもちろん政府の責任でやらなければならない問題でございますけれども、従来の手法に従って税制調査会等においての御議論の過程は、貴重な過程として通らなければならない過程ではなかろうか。いま一つは、減税小委員会等において貴重な御議論をなすっていただいたそういう議論に対しても、さらに追っかけてこれの意見等を承って正確に報告をすべきものではなかろうか。言ってみれば、私どもが野党の皆さんを引き込んで共同責任においてやめにしようとか、そういう考えを持っておるわけでは全くありません。
#257
○広瀬委員 いずれにいたしましても、大蔵大臣としては、先ほどからの経緯を踏まえて五十八年度中の減税は実施しなければならぬ、そういう責任を政府も負った、こういうようにお考えであることには間違いありませんか。#258
○竹下国務大臣 これは官房長官発言にもございますように、景気浮揚に役立つ相当規模の減税を行うための財源を確保して、そして五十八年中に法律案を提出するとの約束があったことを承知しておりますという言葉が、言ってみれば政府側の統一した見解であるというふうに承っていただいて結構ではなかろうかと思います。#259
○広瀬委員 いつごろ税調に諮問されますか。#260
○竹下国務大臣 御案内のように、政府税調というのは三年の任期がありまして、その最初の任期に当たって、広く国税、地方税のあり方について、こういう諮問を申し上げておるわけでございます。したがって、今回国会で議論があり、与野党合意のなされた問題を正確に報告いたしますならば、これに対する新たなる諮問という形ではございませんが、いわゆる協議に入っていただけるというふうに期待もし、確信もいたしておるわけであります。その本格論議の土台となるものが整理されるといえば、私は、厳密に言えば、やはり七月末の五十七年度の決算が確定した時期ということを再三国会でも申し上げておるわけであります。
#261
○広瀬委員 この減税ができる限り早く実現するように、年度内といっても、先ほどの質問でもございましたように五十九年の一月からだというようなことにならないように、いずれ大蔵委員会に所得税法の改正等もかからなければならぬだろうと思いますから、年内に実施できるように最善の努力を要請いたしたいと思うわけであります。いま私がこの減税の問題を取り上げましたのも、ここ六年にわたってずっと景気の低迷が続いている、まさに戦後最長の不況が続いておるわけでありまして、その中でも、GNPの中で最もウエートの高い個人消費の落ち込みが活性化しない、活発化しない、それが一番大きな原因になって景気も低迷をしておる。したがいまして、いろいろ景気を占う民間設備投資の動向等でも、物が売れなければ設備投資も活発にならないわけでありまして、さらにまた不況を克服するためには、昔は大体住宅政策を振興するというようなことが常識的だったわけでありますが、この住宅着工の問題なども、一月段階あたりで年率に直すと百三十一万戸ベースぐらいに乗ったというので幾らか明るい面もあるのですけれども、公営住宅等についても建設戸数は予算規模でもかなり減っておるわけでありまして、この点についても余り期待できないのではないか。
輸出の問題でも、五十七年度が対前年度比一〇・一%減少というようなことで、対前年比で輸出額がまさに二けた減少したというのは三十年ぶりだと言われるような状況である。しかも、国内の景気低迷を反映して輸出ドライブがかかったにしても、いまECがガットに提訴するとか、あるいはアメリカが農畜産物等についてまたガットに提訴するというような状況もあるわけでありますし、アメリカの景気が少しは上向いたのではないかとか、あるいはドイツあたりを中心にECも幾らか上向いたのではないかとか、あるいは東南アジア、ASEAN諸国等も幾らか景気回復の兆しが見え始めたのではないかというふうに見られるとか、そういう海外要因はあるにしても、輸出が急速に伸びるということも予想されないのではないか。うんと落ちた後ですから、あるいはその回復があるかとも思いますが、それ以上に今度は、日本からの輸出ドライブの要因はあるにしても、海外からの貿易摩擦というような形でのリアクションが出てくるというようなこともあるのじゃないか。
さらに、失業率などは二・七二%になった。これは、数字の使い方が変わったとかということで閣議でも問題になったということでありますが、いずれにしても、百六十万人という最近にない数字を数えているというようなこともありますし、金利も公定歩合が下がるのじゃないか、○・五%なり一%なり、その間くらいで下がるのじゃないかと言われておったけれども、これもどうやらまだ下がる見込みもない。あるいはまた、景気動向に対して石油の値下がりというようなことで二十九ドル体制になったということでありますけれども、これなどもやはり国際経済的に見ればプラス面とマイナス面と両方ある。そういうようなことで、なかなか景気回復というのはむずかしい。
そういうようなことになれば、まず減税問題というものを主体にして国民の個人消費に火をつけていく。こういうところから出発しないと、やはり経済の進展というもの、経済が活発化するというようなことがないと、いつまでたっても財政危機は相当な努力をしても直らぬのではないか、こういうように思われるわけでありますから、その辺のところを十分踏まえて、減税というものがこれからのそういう経済の活性化に向けての突破口を開くような立場でぜひひとつやっていただきたい、こういうように思っておる次第であります。
景気の見通しについて、私が大分悲観的な見通しを諸要因について申し上げたのですけれども、それについてそうではないというようなことがあれば、お聞かせをいただきたいと思います。
#262
○竹下国務大臣 いまの景気分析でそれぞれ申されたことは、私は、大きく反論する何物もないと思っております。強いて申しますならば、確かにアメリカの景気が若干でも底入れしたということになれば、あるいは外需に期待を持つということもありますでしょう。しかし、それは御指摘のとおりEC、米国のいわば通商摩擦問題というものがあるからそう大きな期待にできないということも、私もそのとおりだと思っております。
いま一つ、石油の価格下落の問題でありますが、石油が下がったということは、簡単に言うと産油国の富が先進消費国に移転するわけでございますから、日本経済全体に与える影響は中長期的に見ればいいということに決まっておると思います。ただ、それに伴って産油国への輸出というものは下がっていくと思わなければならないかもしらぬ。しかし、総じてはいい方向に行くであろう。しかし問題は、これを税収の面で見た場合に、やはり石油価格の下落というものは、端的な例で言えば、従価税であります税はそれだけ下がって減収になります。それから、いまストックを持っておる多くの石油企業というものが、いわば消費者の買い控え等からいって値を崩して、場合によっては乱売競争をしてまでもつないでいかなければならぬということになれば、当面は、在庫のいわば評価がえ等をいたしますならば、これは結果としては大変な減収になるでございましょう。しかし中期的に見た場合には、わが国経済全体に及ぼす影響はやはりプラスの方向に働いていくということは事実であると思うわけであります。
したがって、幸い何はさておいて世界で一番物価が安定しておりますので、それに伴う消費需要の増加というようなことに支えられて、まさに、もう高度経済成長の夢を追うわけにはもちろんまいりませんが、私は、なだらかながら回復の方向に歩んでいって三・四%という成長率というものは実質達成し得る可能性のある数値であるというふうに考えております。
#263
○広瀬委員 そうあってほしいという願望は私もそう思っておるわけなんですけれども、さて、この個人消費を中心にして景気の問題を論ずる場合に、ことしの春闘において、きのう春闘の相場づくりにかなり大きなウエートを持っております金属労協に一斉に回答が行われた。去年から見ると半分以下の賃上げ率でありますね。鉄鋼のごときは三・一四%、去年の二分の一以下、こういうことになっておりますし、あるいは造船重機、まあ電機は去年の半分というほどではないにしても五%を割り込んでいるというようなことになっております。そこで、予算の税収見積もり、この中では七%ということで給与総額がふえるであろう、こういうように見ておるわけでありますが、この現実の春の賃上げ、これはもうここ一カ月くらいの間にほとんどが決まる、今週、来週あたりで大体相場が決まるわけですが、私鉄も五%にならないというような状況でございますから、そうしますと、大体三・四、五%ぐらいで賃上げ率が落ちついてしまうのではないかというような懸念もあるわけであります。
これを基礎にしながら、せめて五%程度にはなるのかというようなことは人事院勧告の凍結以来日経連あたりがあるいは経団連あたりが言っておった。それが現実にはこういう形だということになれば、これはやはり税収見積もりにおける所得税特に給与所得税の見積もり、これはいまのところ税収の中で一番ウエートが高い税目でありますが、これの見積もりに大きなそごを来した、現実にそうなるのじゃないか、そういう感じがするわけでありますが、その辺のところはいかがでありますか。
#264
○梅澤政府委員 五十八年度の源泉所得税の見積もりに当たりまして、ただいま委員が御指摘になりましたように、経済見通しにおきます雇用者所得の伸びをそのままマクロ的の推計の基礎に置いております。予算の説明等で七%程度とお示ししておりますが、厳密に申しますと六・六と見積もっております。この六・六はさらに分解いたしまして、一人当たり雇用者所得の伸びが五・二でございます。それに雇用の伸びが一・三%。これを掛け合わせたものであります。いま、春闘との関連で問題を御指摘になっておるわけでございますが、これは企画庁の所管の問題でございますけれども、政府の経済見通しにおきましては春闘の相場を予測に入れているわけではございません。したがって、政府の見通しにございます一人当たり雇用者所得と春闘の相場とは直に結びつかないわけでございますが、昨年度の毎勤統計等から見まして、それから現在の経済動向から見まして、この政府見通しにおきます雇用者所得の推移、現時点で直ちに修正する必要はないのではないかと考えております。
#265
○広瀬委員 大蔵省が出した「税制改正の要綱 租税及び印紙収入予算の説明」というところでは、少なくとも七%という数字になっているわけですね。これが六・六であるにしても、六・九であるにしても、いずれにしても五・二という数字があった、それを基礎に置いている。それに雇用者数の伸びを掛け合わせた数字で割り出した。ところが今度の場合に、労働四団体あたりに聞いてみますと、これは総体的に落ちつくところは三・四、五%ぐらいではないか。中小企業なども、これから賃上げをやるのでしょうけれども、大企業よりはかなり下回るのが通例であるし、中小企業を取り巻く今日の経済状況は非常にシビアなものであるということになれば、これも相当見込み違いになる可能性があるのではないか、こういうように思うのですね。
大蔵省は、ここのところ、財政危機になってから見込み違いばかりやっておるわけです。税収不足が五十六年度でも二兆何千億、五十七年度でも六兆だとか、恐らく五十八年度でも相当な税の落ち込みがあるのじゃないかというようなことがあるわけです。そうなりますと、今度の場合のように、税収見積もりを誤ってはその分、五十九年度には特例公債から脱却するという目標はとうに崩れているということにもなるし、そして今度の財確法のようにいろいろなところから洗いざらい取れるところからみんな、いろいろ問題を抱えているところから財源調達、財源確保をしなければならぬ、こういうことにもなるわけです。ですから、こういう問題についてもっとしっかりした見通しを持ちながら、少し山がかかっているような見方をしないでやっていく、こういうことが当然必要であろうと思うわけでございます。
そういう点で、特別会計からあるいは特殊法人などから一般会計に納付させる、こういうことは決して好ましいことと大蔵省も思っているはずのものではないと思うのですが、大臣、これはどうなのでしょうか。こういうような扱いというのは、これからどのくらい続けられるものでしょうか。国の歳入の大部分は健全な税収によっていくというのが安定的な国の予算のあり方であろうと思うのです。そういう点で今日の事態を、特に五十七年度も大変な補正予算を組まざるを得なかったという状況、そして五十八年度でも相当な税収欠陥が見込まれるのではないかというようなおそれもある。この税収の見通し等について、大蔵大臣、どのように考えておられますか。
#266
○竹下国務大臣 五十八年度の税収ということになりますと、まさにこれからの問題であります。一応そのげたになる五十七年度補正後の税収の見込み、こういうことになりますと、正確には七月の下旬ということになりますが、二月末税収等々の推移を見てまいりますと、大物の三月決算の法人が残っておりますけれども、これは大蔵省の数字ではなく、私が個人的に一%は誤差のうちということをよく言っておりますが、三十兆あれば三千億、こういうことになりますが、何はさておいて誤差のうちにおさまってもらいたいものだなという期待を持っておるわけでございます。
したがって、五十八年度の税収ということになりますと、まさに始まったばかりでございますが、三・四%という成長率を先般決めた経済対策、また、いわば円高基調とか米国経済の底離れとか原油価格の下落、そういうようなものと相まってより確実なものになれば、税収についてもその見込みに大変な狂いを生ずることがないことをいまの場合期待しておるという表現にとどまるでございましょうが、そういう感じでございます。
#267
○広瀬委員 予算の執行が始まったばかりで税収欠陥があるだろうということは、大蔵大臣とうてい言えないだろうと思うのですが、そのおそれ多分にありということであります。私が言いたいのは、税収は、租税正義の原則に従ってきちんとしたやり方がとられる、公平の原則と言ってもいいわけでありますが、そういうものが確立されておればもっと確保できるはずである、こういうように思うのです。この大蔵省が出した説明によりましても、事業者、営庶業者、個人事業者、こういう人たちの所得の伸びというのは三%に見ている、そして法人の税収見積もりにおいては五%しか見ていない、こういうようなことで納得できるような合理的な根拠というのは何かあるのですか。
いままでの傾向値を見たとかなんとかという説明をされるのでは、われわれとうてい納得できないのだけれども、サラリーマンに重く、そして企業や事業所得者に甘いあるいは大法人に甘いというような重税感、不公平感というようなものに一層拍車をかけるようなこういう見積もり。そういうような形でいけば、今度は執行に当たる国税庁だって、個人事業者は三%ぐらいしか伸びないだろうという頭でそれからの税の調査もやるのじゃないか、法人なんかについてもそういうものが一つの基準になるのじゃないか。主税局がそういう見積もりをしているのだということになれば、税の執行面にもそれは微妙に影響する、そういうような面もあるだろうと思うのです。そういう点で、合理的な根拠があるならば説明してほしい。
#268
○梅澤政府委員 いま委員が御指摘になりました点について、若干説明をお許し願いたいのでございますが、五十八年度の税収見積もりの際に給与所得、事業所得、農業所得等々につきまして税収見積もりをしておりますのは、委員御指摘のとおりでございます。特に五十八年度の局面では、給与所得については先ほど推計の計数的根拠を申し上げましたが、事業所得につきましては政府のマクロ的な見通しはございません。したがいまして、従来から課税実績と経済動向等を勘案いたしまして、主税局と申しますか税制当局の責任において見積もっておるわけでございます。
ただ、給与所得の伸びと事業所得の伸びが五十八年度において若干開差が出ておりますのは、近年、四十年代、五十年代を通じましてわが国の経済の雇用所得化というものが進んでおります。同時に、それは税制面で見ますと給与所得化が進んでいるということにもなるわけでございまして、たとえば青色申告者の事業主の場合は、家族の給与というのは実は給与所得ということでそちらの方に入ってまいりますし、たとえばみなし法人課税を選択されますと、事業主の報酬本体そのものも給与所得として入ってまいります。したがいまして、非常に大ざっぱに言ってしまいますと、現在の事業所得というのは、あたかも法人における利益と同じように経済の循環に対して振幅が非常に大きくなるわけでございまして、たとえば過去二、三年来ずっと見てみますと、ある年には事業所得の方が給与所得の伸びよりも高い年もございます。五十八年度はたまたまそういう局面になったということでございます。
したがいまして、この見通しの数字の開差をもって、世間でよく言われます事業所得者と給与所得者の所得の捕捉率の差というふうにおとり願いますと、そこは若干違うということは申し上げなければならないと思いますが、私ども税制当局といたしましても、制度上の議論といたしまして、給与所得者と事業所得者の所得捕捉の公平という点については常に重大な関心を持っているということは申し添えたいと思います。
#269
○広瀬委員 国税庁にちょっと伺っておきますが、五十七年度で個人事業者あるいは法人の調査をどの程度やっておられるか、そして、やった調査の結果、修正申告をしたあるいは更正決定をしたというようなことで、どれくらいのパーセントで、法人、個人を問わず調査したものの中に正しい申告がなされていなかった、そういうものが法人と個人に分けてどのくらいあって、どのくらい調査の結果に基づいて税収が得られたのか、そういう数字についてちょっとお示しをいただきたいと思います。#270
○角政府委員 一番最近の計数と申しますと、申告所得税は昭和五十五年分になります。それから、法人税は昨年の六月末に終わった昭和五十六事務年度でございます。その数字で申し上げます。申告所得税から申しますと、営庶業者を中心とした数字で申し上げます。三百六十万件が対象となる納税者の数でございますが、そのうち調査をいたしましたのが十四万七千件、いわゆる実調率ということで申しますと四・一%でございます。このうち、更正ないし修正申告をいたしました件数は十三万八千件でございますから、そういう更正割合と申しますか、その割合は九三・五%ということでございます。この十三万八千件の更正等によりました増差所得四千六百五十一億円ということでございます。これに基づきます税額、加算税も含めまして千九十四億円ということでございます。これが申告所得税でございます。
法人税の方は、大法人などは国税局の調査課が所管しておりますが、税務署と調査課所管と合わせた数字で申し上げます。対象となる件数は百八十万件でございますが、このうち、五十六事務年度で調査をいたしましたのが十八万八千件、いわゆる実調率で申しますと一〇・四%ということでございます。この調査件数のうち、更正ないし修正申告を徴しましたものは十五万三千件でございます。したがいまして、更正等の割合は八一・五%ということでございます。こういう更正等の結果の増差所得九千八百三十七億円でございます。これに対応いたします追徴税額三千三百三十九億円ということでございます。
#271
○広瀬委員 まさに驚くべき数字なんですね。これは、もちろん調査を必要とすると思うようなところに重点的に行くという気持ちもあるだろうししますけれども、私は必ずしもそうではないと思うのです。これは、国税庁が全く職員数も少ない、そういうようなことで調査が行き届かない。三年ぐらい前でしたか、予算委員会の分科会で、ちょうど竹下さんが大蔵大臣のときに、私この問題を取り上げてやったことがあるのですが、実調率が法人一〇%になったというのは、それでも幾らか上がったのですね。あのときに私が大分厳しく質問をした結果幾らかでも改善されたなと思っておりますが、個人事業者の方ではわずかに四・一%ですか、そんなところだ、こういうことであります。これでいきますと、これはずっと調査をされないで、四%というのですから二十五年、四半世紀かからなければ全部の調査ができない。全部が悪いことをしているなどとは私も全く思いませんけれども、そういう点でもこれは余りにも少な過ぎるじゃないか。しかも、やってみれば、個人の場合で千九十四億円の追加税収が得られる。さらに三千三百三十九億円、これは法人の方ですが、そういうものが得られる。一〇%ですから十分の一をやっただけでもこれだけの税収が得られる。それじゃ、そのほかのやらなかったところはみんな問題がまるきりなかったか、あるいは過少申告をやっていなかったか。いろいろな脱法的な税逃れ、租税回避的なあの手この手をやっておる、いろんな問題でそういうものもあるのじゃなかろうかと思うのです。
この点について、西ドイツあたりでは、人口大体五千六、七百万ぐらい、約六千万と見ていいのでしょうが、税務職員が全体で十七万三千九百十三名、これは一九八二年のドイツの資料であります。日本の国税職員は大体五万三千人ということで、ずっとほとんど変わってないですね。これだけ税収もふくらんでいる中で、これが変わっていない。人口の規模から考えても六分の一であるというように非常に少ない。そういうことで税収漏れが、これはよけい取れと言うのではありませんけれども、税を逃れている。合法的に、調査をされないために、自主申告というこの制度もまさに性善説に基づいてやっているわけですけれども、調査をしてみればやはりそういうことがある。そのほかも全部そういうことと同じ数字が出るとは私も思っておりません。これは、いろいろな情報を得たりなんかして国税局調査なり国税庁調査なりというのはやるわけですけれども、善意の一般のところでもかなりの租税回避的あるいは脱税的な行為をやっているというようなものが非常に大きいだろうと思うのです。
そういうものについて、やはり租税正義の実現、公平の原則を実現させていくということが非常に大事だという観点からは、大蔵大臣、もう少し税務職員をふやして正しい納税が行われるというような点で、増税しろとかなんとかということの以前に、公正な租税正義の実現という形においてさらに税収が得られる部面というのは非常に大きいものがあるのじゃないか。安易にこういうように財確法を出して、あっちからこっちからかき集めるというようなものも、これは最後の最後の手段としてはいいかもしらぬけれども、その前にやるべき方策というものがあるのじゃないかということを私は強く感ずるわけで、その辺のところ、大臣いかがですか。
#272
○竹下国務大臣 確かに御指摘の点は、言ってみれば財確法というような税外収入源にいろいろ手をつける、これはさることながら、その前にもっと税の公平あるいは確実な捕捉、それらに対して意を払うべきであるということであります。その一つの方法として、先ほど来御議論のございました実調率引き上げの問題があります。税務署は、これはいまも御指摘にありましたとおり、各種の資料、情報等から見まして過少申告の疑いのある納税者について実調というものは行うわけでございますから、いわば実調率が拡大して、それが比例的に増差税額に出るというものでは必ずしもございません。しかしながら、申告水準向上に対する索制効果、これも十分にございますので、今後とも、厳しい財政事情のもとではございますけれども、関係方面の理解を得て要員の確保に努めていかなければならぬ。そうしてまた、コンピューター化の拡大等々内部事務の合理化も図っていかなければならぬと思っております。
その要員確保の問題について格別の御指摘がありましたが、私も行財政改革ということをやっておりますと、ときに、まず隗より始めよ、すなわち行政管理庁と大蔵省から締めてこい、こういう環境に置かれがちでございます。その中にあって、税務職員の要員の問題につきましては心を砕いておりますが、現実問題として、その数字からすれば非常に小さい数字にすぎないわけでございます、他と比ぶればという問題は別といたしましても。したがって、まさに関係方面、こういう御議論を踏まえまして、職員の確保に努めていかなきゃならぬ、そういう考え方でございます。
#273
○広瀬委員 十分ひとつその面も積極的に配慮をしていかれたい、こういうように考えるわけであります。さて、ちょっと話題を変えますが、五十九年度に特例公債からの脱却ということをずっと公約してまいった歴代内閣でありますが、これからの本当の脱却ができる年次、参議院等におきまして大蔵大臣が六十二年ぐらいまでかかるんじゃないか、あるいは六十三年までかかるというようなお話もあったやに聞いておるわけですけれども、本当に本音で特例公債からの脱却を実現する時期を大蔵大臣はいつに想定をされておられるのか、その辺をひとつ。
#274
○竹下国務大臣 これが非常にむずかしいところでございまして、確かに財政改革の一つのめどとして、特例公債からの脱却の時期というのは五十九年ということが非常に印象づけられておりましただけに、それが断念せざるを得ない状態になった今日、新たなめどの設定をした方が好ましいと私も考えております。しかし、事実、たとえ国際経済の不透明さがあったとはいえ、余りにもその目標と現実とが乖離した場合には政治不信というものをももたらす傾向もある。そうなると、私どももある程度のめどをお示ししますにも、一つの確信を得るに至るもろもろの情勢の分析が必要であるという立場に立ちますと、やはり中期試算でお出しいたしました三年、五年、七年――三年と言えば余りにも近過ぎる。とはいえ、一方臨調等で、本当の財政再建というものは六十年代全体にわたって施行しなければならないと言われておりましても、十年と言えばまた長過ぎる。そういうことになれば、私どもは中期試算で複数でお示ししておるものとすれば、五とか七とかいうようなところに一つの着目をしてこれから検討してみなければいかぬ課題ではないかなと思っておりますが、それこそ国会の議論等を中心にして、何とかできるだけ早期に経済審議会の議論をも踏まえながら固めていかなければならぬ重大な課題だという認識にはございます。
#275
○広瀬委員 少なくとも政府が一たん公約したものが、これはもう破綻をしておることは明確なんでありますから、いつまで虚勢を張って、と言っては言い過ぎかもしれませんけれども、やれないものをやれるという形は、やはり国民の不信を招くもとにもなるだろうと思いますから、実現可能性のある数字を速やかに発表して、それに向かって努力をしていただきたい、こういうように思うわけであります。それから公債の問題で、特例公債償還のための起債は行わない、これは借換債を発行していくということはしないのだという趣旨だろうと思いますが、これは厳格に守る用意がありますか。
#276
○竹下国務大臣 まず、国債の償還は、それを持っていらっしゃる方に対して確実に現金で償還を行う、これが大切な大前提であります。これは四条公債であれ特例公債であれ、まさに同じことであると思います。そこで、その償還期限が来た場合に、国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算にもございますように、大量の予算繰り入れが必要となるのが六十二年度、あるいは六十一年度とも読めるでございましょう。それまでに経済事情や歳入歳出の動向を踏まえて検討していかなければならないということであります。まさに私どもが赤字国債の発行をお許しいただきます、今度で言えば財確法でございますが、それらについてもそのことを前提にお願いしておるわけでございますので、安易に借りかえなどということを考えてはならないというふうに思っております。時間もあることでございますから、その際、理論的に言えば歳出カットかあるいは負担増かあるいは借りかえをも含む公債発行という三つが考えられるところでございますけれども、いま借りかえについて決めておるという状態にはもちろんございません。
非常に重大な問題でございますので、まさにこれから各方面の意見、特に国会の場を通じての国民との対話の中に真意が那辺にあるかということを模索しながら、これから研究していく課題であろうというふうに考えております。
#277
○広瀬委員 次に、また質問を変えますが、五十六年の財確法によって電電公社から一年当たり千二百億ずつ、四年間にわたって四千八百億、順次国庫納付をする、こういうことになっておったわけでありますが、五十九年度の分を五十八年度に繰り上げて、五十八年度中に二千四百億召し上げる、こういうことになるわけであります。前にどなたかの質問のときに、単年度では一千億ぐらいの利益といいますか余裕金ぐらいしか出ないというのがいまの現状だという話をちらっと私も聞いたわけであります。そこで、五十九年度分は五十八年度中に納付してしまうということになりますが、もしそういうようなことでさらにこれが――これは経営形態の問題で、どうも臨調では特殊法人化しろなどということを言われておりますし、公社制度がそのまま続くかどうかということとももちろん関係するのでしょうけれども、これについて大蔵大臣は、六十年度以降も電電公社がそのまま続いておったら、またそういう場合があり得る、こういうようにお考えでしょうか。あるいは、五十八年度に五十九年度の二千四百億をやれるのだから五十九年度にもさらにやるかということで、五十九年度、六十年度、そういうようなところにずっと延長してこういう臨時の国庫納付金というものをやる気持ちがあるのかどうか。これをまず大蔵大臣から伺って、その後公社の方から、経営の状況その他、こういうことでやったのでは将来電話料なり電報料金の値上げというものに結びつくおそれがないかどうか、その辺のところを聞いておきたいと思います。
#278
○竹下国務大臣 五十六年度の財確法に基づく臨時国庫納付金の納付は、この法律を通していただきますと完了するわけでございます。したがって一つの区切りはつくわけであります。それで、私も先般来、専売の問題、電電の問題等いろいろ御質問がありますと、経営形態の問題がどうしても臨調答申等々行革大綱等に基づきますと念頭を離れませんし、したがって非常に不確実な要素があるのでちゅうちょしたお答えもいたしておりましたが、いま、ある種の前提を置いての御意見を交えての御質問でございましたので、国の財政状況、公社の財務状況もいま明確でございませんので、絶対にやらないと確言はできませんけれども、このような納付金をイージーに考えるべきものではないというふうに考えております。
#279
○岩下説明員 お答えいたします。五十九年度あるいはそれ以降の問題についてのお尋ねでございますけれども、現在の国庫納付金それ自体があくまで臨時かつ特例なものということで定められたわけでございます。四千八百億円という総額を五十八年度に前倒しをすることによりまして五十八年度中に完納することになるわけでございますから、五十九年度以降はこの種の措置は当然あり得ないというふうに私どもは考えております。
ただいまの先生の方からの財務状況についてのお尋ねでございますけれども、先ほどもお答え申し上げましたように、五十八年度は予算で収支の差額は一千三百億円でございます。公社の場合、御存じのとおり、収支差額はすべて利用者の方々のサービスの改善あるいは拡充のための設備投資の原資としてその年度に充当されておるわけでございます。したがって、経営の努力によりまして生み出されたものは、やはりまずもって利用者の方々のお役に立つようなものに使うべきであると考えておりますし、具体的には、私どもがINSと呼んでおります高度情報通信システムの形成あるいは御要望の強い通話料の遠近格差の是正、こういったものに経営の努力の結果を充てたいというふうにいま考えておるわけでございまして、そういった意味合いも含めまして、五十九年度以降はこういった措置はないものというふうに理解しておるわけでございます。
#280
○広瀬委員 電電公社も最近では最も進んだ先端技術の研究開発というようなところで光ファイバーの時代だなんと言われると、私どもどうも素人ですから、どんなシステムでどういうものなのかは十分わからないのですけれども、そういう時代になっている。しかも、これからは情報産業と言われるような時代を迎えている。そういうような場合に、企業努力によって得た利益を安易に国が常に吸い上げてしまうというようなことについては、電電公社は研究施設等もかなりすぐれたものも持っているようですから、いつまでもこんなことをやって、大変な技術革新の先端を行っているものに水をかけることのないような配慮というものが必要だろう、こういうようにも思っておるわけであります。もう時間もありませんから、もう一つ質問をして終わりたいと思うのですが、自動車損害賠償責任再保険特会から今回二千五百六十億繰り入れるということなんですが、これは後日お返しをする、こういうことになっておるわけですが、後日というのは一体いつなんですか。それをはっきりさしていただきたい。
#281
○窪田政府委員 これは運輸大臣と大蔵大臣との覚書がございまして、「原則として昭和六十一年度から六十七年度までの間において分割して、一般会計から自賠特会へ繰り戻すこととする。」こうございます。原則としてという意味は、現在のところでは国の財政状況、特会の状況を明確にし得ませんので、いろいろな状況が考えられます。その状況に対応し得るようにするという意味で原則としてという言葉を使っておりますが、六十一年から六十七年の間に分割して返す、こういうことでございます。
#282
○広瀬委員 最後に、大蔵大臣に確かめておきたいのですが、特別会計も三十八ある。特殊法人なんかもかなりの数に上っている。そういうようなところから一般会計に、財政難である、財政危機である、苦しいところなんだ、国も苦しいんだからという形で洗いざらい後まだまだやる可能性がある、あるいはまた同じような措置で特会や特殊法人あたりから国庫納付金をせよ、あるいは一時借り入れして後で戻す、そういう考えが来年度についてもあるのでしょうか。ことし一年の措置にとどめて、本格的な基本的な立場を踏まえたしっかりとした税収の確保という形の上で財政危機を乗り切っていくのか。その辺のところ、どういうお考えかお聞かせいただいて質問を終わりたいと思います。#283
○竹下国務大臣 元来、国の歳出は租税等一般的な歳入をもって充てるというのがやはり本筋でございます。したがって、税外収入ということにつきましては、今年度は五十六年度の繰り戻しの問題等もございまして、本当に各方面に御協力をいただきながらこのような措置をとってきたわけであります。したがって、税外収入ということになりますと、まだまだ国有財産の問題でありますとかいろいろな指摘も受けておりますので、鋭意これが確保のための努力は重ねてまいらなければならないことは当然のことといたしましても、今年度のような相当な金額を税外収入として充当するということは非常にむずかしいことではないか、そういうふうな理解の上に立って、やはり財政のあるべき本来の姿というものにどのようにしてたどりついていくかということに、まず基本的な考え方に立って対応していかなければならない課題であるというふうに考えております。
#284
○広瀬委員 終わります。#285
○森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後七時十一分散会