1982/04/15 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 外務委員会 第5号
#1
第098回国会 外務委員会 第5号昭和五十八年四月十五日(金曜日)
午前十時四分開議
出席委員
委員長 竹内 黎一君
理事 川田 正則君 理事 浜田卓二郎君
理事 山下 元利君 理事 井上 泉君
理事 北山 愛郎君 理事 玉城 栄一君
理事 渡辺 朗君
今枝 敬雄君 奥田 敬和君
工藤 巖君 小坂善太郎君
佐藤 一郎君 玉沢徳一郎君
津島 雄二君 中山 正暉君
松本 十郎君 河上 民雄君
土井たか子君 渡部 一郎君
林 保夫君 寺前 巖君
中路 雅弘君 石原健太郎君
出席国務大臣
外 務 大 臣 安倍晋太郎君
出席政府委員
外務大臣官房外
務参事官 都甲 岳洋君
外務省北米局長 北村 汎君
外務省中近東ア
フリカ局長 波多野敬雄君
委員外の出席者
外務大臣官房外
務参事官 遠藤 哲也君
外務大臣官房外
務参事官 木幡 昭七君
外務大臣官房外
務参事官 野村 忠清君
運輸大臣官房環
境課長 近藤 憲輔君
運輸省海運局外
航課長 寺嶋 潔君
運輸省海運局監
督課長 尾松 伸正君
運輸省船舶局検
査測度課長 石井 和也君
運輸省船員局労
政課長 佐藤 弘毅君
運輸省船員局船
舶職員課長 小和田 統君
外務委員会調査
室長 伊藤 政雄君
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委員の異動
四月十五日
辞任 補欠選任
赤城 宗徳君 奥田 敬和君
北村 義和君 今枝 敬雄君
鯨岡 兵輔君 工藤 巖君
宮澤 喜一君 津島 雄二君
野間 友一君 寺前 巖君
伊藤 公介君 石原健太郎君
同日
辞任 補欠選任
今枝 敬雄君 北村 義和君
奥田 敬和君 赤城 宗徳君
工藤 巖君 鯨岡 兵輔君
津島 雄二君 宮澤 喜一君
寺前 巖君 野間 友一君
石原健太郎君 伊藤 公介君
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四月十五日
核兵器禁止・全面軍縮等に関する請願(小川省吾君紹介)(第二三六二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第七号)
商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件(条約第八号)
宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)
宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)
宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)
海事関係条約に関する件
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#2
○竹内委員長 これより会議を開きます。千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件及び商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉城栄一君。
#3
○玉城委員 最初に、一九七八年の船舶汚染防止条約議定書について若干お伺いいたしますが、海上汚染に関連しまして、いま大きな問題になっておりますイランの原油流出の問題ですが、これは史上最大の流出と言われているわけですが、その現状と今後の見通し、それからわが国の政府がこの問題にどういう対応の仕方をしていらっしゃるか、あわせてお伺いしたいと思います。#4
○波多野政府委員 お答え申し上げます。現状でございますけれども、在外公館からの報告によりますと、三年前に発生いたしましたタンカーの油田への衝突事故によりまして油田の一部が破壊されておりまして、そこから本年の二月になりまして原油の流出が始まりました。そうしてこの三月の上旬、イラク軍がこの油田を攻撃したことによりましてプラットホームの二基が炎上いたしまして、さらに原油が多量に流出するに至ったというふうに了解しております。二月中旬ころから原油が流出いたしまして、現在までに約二十五万ないし三十万バレルの原油が流出したと言われております。
現在までの主たる汚染水域はイラン側の領海でございますが、流出原油は幾つかの分流になりまして南へ漂流中でありまして、バーレーン、カタール等ではすでに原油のかたまりが一部海岸に漂着した模様でございます。ただし、防油網、オイルフェンスと呼んでおりますけれども、防油網を構築する等事前の対応が非常に行き届いておりましたので、現在までのところ淡水化プラント等への影響はまだ出ておりませんけれども、漁獲量が減少する等若干沿岸漁業への影響は出始めております。
わが方政府といたしましては、事態が深刻になり始めた今月の五日に、外務省、運輸省、通産省、それから水島の事故によりまして経験を持っております三菱石油の担当の部長の六名からなる調査団を構成いたしましてクウェートに派遣いたしました。この調査団がクウェートからバーレーン、カタール、アブダビといま回っているところでございまして、本日現在アブダビで先方政府と打ち合わせ中でございます。当方といたしましては、中曽根総理の御指示もありますので、この調査団の報告を待ちまして、どのような協力ができるか慎重に検討いたしまして、しかるべき措置を早急に講じたいと考えております。
#5
○玉城委員 この議定書の締約国はすでに十五カ国になっておるわけでありますが、問題は締約国になっていない国、わが国もこれから締約国になろうとしているわけですが、そういう未加盟国の船舶がそのまま外国航路に就航していては条約の目的達成に支障があるのではないか、その辺いかがでしょうか。#6
○遠藤説明員 お答え申し上げます。先生御指摘のとおり、この条約は船舶の海運活動から起因します海洋汚染の防止という包括的な条約でございまして、なるべく多くの海運国がこの条約に入ってもらうことがこの目的の達成のために非常に望ましいわけでございます。しかしながら、先生いま御指摘のとおり、いまのところ十五カ国、船腹量でございますと約五〇%強という状況でございまして、私どもはなるべく多くの国が入ってもらいたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
それからもう一つは、仮にこの条約の議定書の締約国にならない場合でも、この条約の規定上、締約国とそれからそうでない国とを差別するというか、条約に入らないからといってそれを有利に扱うようなことがあってはいけないというようなことから、たとえば日本の場合でございますと、仮に日本が入った場合には、日本の港に参ります締約国ではない国の船舶につきましても、立入検査等も含めまして検査を行い、それに応じてしかるべき措置をとるというふうなことができることになっておりますので、私は、ここに書いております条約にありますような条件というものが実質的には徐々に充足されていくのではないかと思うわけでございます。しかしながら、やはり何といっても議定書に入ってもらいたい、こういうふうに考えております。
#7
○玉城委員 そこで、軍艦ですけれども、軍艦は適用されないわけですが、主にアメリカの軍艦がわが国に多く出入、行き来するわけですが、大変苦情が出ているわけです。この条約あるいは議定書からのいろいろな規制の規制外に置かれているわけですから、そこら辺はどういうふうな措置をするようになっているのか、その辺お伺いいたします。#8
○北村(汎)政府委員 アメリカの軍艦による汚水の処理の問題につきましては、これは米国に国内法がございまして、この国内法に基づいて、すべての米国艦船は昭和五十六年四月一日までに汚水の処理施設というものを艦船の中に設置して、そうして汚水をたれ流しにするようなことがあってはならない、そういうことになりまして、もう四月一日までにすべてこれをやっておりますので、米国の艦船がわが国に寄港する際にも屎尿等の汚物による海洋汚染の防止のためのしかるべき措置はとられておる、こういうことで私どもは合同委員会を通じて米側に確認をしております。#9
○玉城委員 いまの点、そういうふうになっているのですが、まだやはり関係地域においては苦情が出てくる場合があるわけですから、その点よく注意をしていただきたいと要望を申し上げておきます。それからもう一点、この条約の締約国になることによって、わが国の商船がいろいろな構造の設備だとか構造の改善を行わなければならないということになるわけですが、それは相当の費用が当然考えられると思うのです。そのことによって業界を圧迫し、それが運賃等にはね返るというようなことも懸念されるわけですが、そういうことは心配ないのかどうか、その辺をお伺いいたします。
#10
○石井説明員 お答え申し上げます。議定書の締結によりまして、新しく建造される船舶のほか、すでに就航している船舶についても新たに構造、設備の設置の義務づけがなされるわけでございますが、運輸省といたしましては、一九七三年の条約の採択以来、船主団体等に対しまして、当該構造、設備の規制の内容の周知徹底を図ってきたところでございまして、その結果、船主が自主的に改造を行っておりまして、現実には外航船のほとんどがこの規制内容に適合している状況でございます。したがいまして、今後業界が改造費用により圧迫を受けるというおそれはないと考えております。
#11
○玉城委員 それから、次の条約の商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)について若干伺っておきたいと思います。第一点は、世界の主要海運の国籍別船腹量を一九八二年七月のロイド統計で見ますと、イギリス、ノルウェー等先進国の多くがその船腹量を減少させているのに対して、パナマ、ギリシャ、サウジアラビアの伸び率が大きくなっているわけでありますが、特に年々その船腹量を増加させているギリシャが日本を追い抜き、リベリアに次ぐ第二位の船舶保有国になっているのはどういう理由によるのか、お伺いいたします。
#12
○寺嶋説明員 お答えいたします。御指摘のとおり、ギリシャの船腹量は年々増加傾向にございまして、一九八一年には四千二百万トンで世界の第二位、昨年は若干減少いたしまして、日本と第二位と第三位が入れかわりまして四千万トンになっておりますが、いずれにいたしましても有数の海運国でございます。
こういうようにギリシャの船腹量が趨勢的に増加しております背景といたしましては、伝統的な海運国として有数な海運企業を有しておる。さらに船乗りの伝統が強うございまして、船員の供給が潤沢でございます。それから、先進国の中では比較的給与水準が低位にございますので、それらの要因を総合いたしまして、商業的な競争力が非常に強いということが言えるかと思います。また、ギリシャ政府の海運業に対する支援もございまして、直接的な補助金等は出ておりませんが、税制上の優遇措置がとられております。これらの要因が相まちましてギリシャの海運業の伸展を招いておるというふうに考えております。
#13
○玉城委員 次に、アメリカの海運政策が国際的に影響するところが非常に大きく、かつ実質支配の船腹量がわが国と比肩しているにもかかわらず、米国籍船舶となると第八位に落ち、ソ違よりも船舶量が少ないという理由について伺いたいと思います。#14
○寺嶋説明員 御指摘のとおり、米国の米国籍船舶は世界の第八位にとどまっておるわけでございます。もちろん、アメリカは大きな世界的な貿易国でございますが、その意味では自国の保有船腹量というのが非常に低いということが言えようかと思います。その背景といたしましては、米国に登録いたします船舶は米国人の船員の乗り組みが要件となっておるわけでございますが、その場合に米国船員の給与水準が他の先進国に比べましても非常に高いということ、それから乗組員の配乗の人数がやはり他の先進国に比べて多いというようなことで、国際的な競争力が非常に低い状況にございます。一部の海運企業は国家の補助金を受けておりまして辛うじて経営を保っておるわけでございます、多くの企業が、むしろ外国、特にいわゆる便宜置籍国に置籍いたしまして、商業上の競争力をそういう面で保っておるという状況にございます。
#15
○玉城委員 そこで、先ほどもちょっと申し上げましたが、ロイド統計によりますと、世界の船腹量は約四億二千万総トンと出ておるわけでありますが、このうちおおよそ三分の一の一億四千万総トンがいわゆる便宜置籍船と聞いておるわけです。それはそのとおりであるのかどうか。また、便宜置籍船全体のうち、アメリカ、日本、欧州諸国の保有割合はどういう率になっておるか、おおよそで結構ですから、あわせてお伺いいたします。#16
○寺嶋説明員 便宜置籍船の船腹量でございますが、いわゆる便宜置籍国とされておりますリベリア、パナマ、便宜置籍国の中ではこの両国の保有船腹が大半を占めるわけでございますが、その他若干の国がございますが、これを合わせまして、昨年約一億総トンでございまして、世界総船腹量の約二五%となっております。それから、このような便宜置籍船を所有しております国の内訳でございますが、これは実は大変に捕捉が困難でございまして、いわゆるペーパーカンパニー等を設けまして所有しております関係上、これを正確にとらえるということが従来からきわめて困難とされております。いろいろ推測に基づきます作業はなされておりますけれども、いま一つ信憑性の点で欠けるものがあろうかと思います。ただ、一般的に言われておりますことは、米国資本、それから香港資本によります所有がずば抜けて高いということは言われております。
#17
○玉城委員 それでは次に、商船の最低基準を国際的に実現し、船舶の安全、労働条件の改善を図ろうとするならば、当然、国際海運に影響の強いアメリカ、パナマ等がこのILO百四十七号条約を早期締結することがきわめて望ましいことと考えるわけでありますが、それは期待できるのかどうか。#18
○野村説明員 先生御指摘のとおりに、商船におきます最低基準が国際的に実現されるためには、できるだけ多くの海運国がこの条約を締結することが望ましいわけでございまして、わが国といたしましても、ILO等の場におきまして、この条約をできるだけ多くの海運国が締結するよう働きかけていきたいというふうに思っておるわけでございますが、いま御質問のアメリカ、パナマにつきまして、批准の見通しについて私どもが承知しておりますところは、次のようなことでございます。まずアメリカにつきましては、数年前からこの条約の批准の可能性につきまして検討が行われてきているそうでございまして、特に法律的な問題はないようでございますし、また、政労使ともに批准に賛成の意向であるというふうに聞いております。ただ、議会への提出の段取りというようなことになりますと、いまのところ言われておりますところでは、早ければことしの十二月以降にも議会で審議がされる可能性があるというふうに私ども聞いております。
パナマにつきましては、目下この条約の関連の国内法を鋭意作成しているというふうに聞いておりまずけれども、批准につきましては、関係の国内法がことしの秋のパナマの国会で承認された後に批准の手続をとるということになるために、時期的には来年以降になるのではないかというふうに伝え聞いております。
#19
○玉城委員 このILO百四十七号条約の附属書に掲げられている十五のILO条約または条約グループについて、わが国は八つの条約について未批准でありますが、世界主要海運国としてのリベリア、ギリシャ、パナマ、ソ連、米国の批准状況はどのようになっているのか、お伺いをいたします。#20
○都甲政府委員 お答え申し上げます。この条約につきましても、これらのリベリア、パナマ、ソ連、米国等の批准状況の帰趨というものは非常に重要なわけでございますけれども、事実関係として申し上げますと、この附属書に挙げられております条約のうち、リベリアが批准しておりますのは九つ、未批准条約が六つでございます。それからパナマにつきましては、批准条約が十一、未批准のものが四つでございます。ソ連につきましては、批准を済ましている条約が六つ、未批准の条約が九つでございます。米国につきましては、批准条約が三つ、未批准のものが十二、このようになっております。ギリシャにつきましては、未批准のものが六つでございますので、九つを批准している、こういう状況になっております。
#21
○玉城委員 次に、この条約第二条では、附属書に掲げられたILO条約の中に未締結条約がある場合には、国内法令が未締結条約と実質的に同等であることを確認することが義務づけられているわけですが、実質的同等の取り扱いにより各国の国内法に国際的条約基準をゆだねるということでは、内容の伴わない条約の批准にならないかどうか。いわゆる基準がばらばらでいいのかどうかということなんですが。#22
○都甲政府委員 お答え申し上げます。先生御指摘の点は、まさにこの条約の成り立ちといいますか体系の根幹をなすものでございますので、若干経緯等も含めまして御説明をさせていただきたいと思います。
確かにこの条約の二条におきましては、未批准条約については実質的に同等な内容を国内法で確保するようにという義務を各国に課しておりますけれども、これは、必ずしも各国が恣意的に条件を定めてもいいということを言っているわけではないわけでございます。
若干経緯を申し上げますと、本件につきましては、まずILOの事務局の方におきまして原案をつくりまして、原案におきましては少なくとも同等、英語で言いますとアト・リースト・エクイバレントということで案をつくった経緯がございます。その際に事務局の法律顧問は、保護の全体的な水準が等しければいいのであって、条約の諸条件から細部の相違は許されるものであるという解釈のもとに、この少なくとも同等という条件を出したわけでございますけれども、議場で議論をされました際に、少なくとも同等ということになればその条約についてはその条件を満たしていることが必要になるということになる、ということになりまして、そうであればこの附属書に盛られている条約を批准しなければならないということと同じ意義になるではないかという議論がいろいろなされまして、その結果、現在定められてありますような「実質的に同等」という条件が課されることになったわけでございます。英語では実質的に同等ということになっておりますけれども、フランス語では全体として同等という言葉になっているようでございますので、いわば二つのものを比べてみまして大体の目的において同等であればいいということが解釈としてなされておるわけで、その点につきましてILOの事務局も、「実質的に同等」という表現は、附属書に掲げられた諸条約の批准を必要とするものではなく、この条約の締約国が当該諸条約の一般的な目的を尊重することに同意したことを意味するものであって、国内における基準との絶対的な一致は要求されていないと、こういうふうに説明されているわけでございます。そういうことで、国内法におきます措置が、この条約を全体として見てその目的が達成されているという判断が下されればそれでいいということに解釈上なっているわけでございます。
なぜこういうことにしたかということでございますが、これは、船舶の問題につきましては各国ともいろいろと経済的、社会的な条件が異なっておりまして、必ずしも画一的な制度を持っていないわけでございますので、その画一的な制度を持っていない各国にこれらの条約の批准を要求するということになれば、それは非常に長い時間がかかる、あるいは全くその目的が達成されないということがあり得るわけでございますので、このようなかなり柔軟な解釈を与える表現で同意することによってこの条約の批准を促進しようというのが目的でございまして、まさにこの条約の根幹をなす一つの概念であるわけでございます。
一つだけ例を挙げて御説明させていただきますと、この条約の附属書をごらんいただきますと、この千九百三十六年の職員海技免状条約に関連いたしまして注がついておりますけれども、ここでこの「制度に関する当該国の確立された措置と抵触することのないように実質的同等の原則を適用するものとする。」という注が書かれております。これが入ったのは、実は、インドにおきましては、軍艦に搭乗しております職員につきましては試験なしでもあるいは船長になりあるいは一等機関士、二等機関士になるという制度がありますものですから、この制度というのは実質的に尊重されてもしかるべきだという共通の認識がございまして、特に例示としてこういう一つの注を置いたわけでございますけれども、これは全部の十五の条約に当てはまるものでございまして、そういう意味で、ILOにおきましても共通の認識がございますので、そういうことで実質的に同等ということを各国が担保すればいいということになっておるわけでございます。
#23
○玉城委員 時間もございませんので……。対外依存度の大きいわが国経済にとって外航海運の活動はきわめて重要な役割りを果たしているわけでありますが、この海運分野において開発途上国とわが国との協調関係を強化していくことが必要であり、わが国は先進海運国として海運企業、経済技術の移転、船員の養成等については積極的に協力を進めていくべきではないかと思うわけであります。
そこで、昨年、九十六国会におきまして例のSTCW条約採決の際、本委員会においても決議がされております。その決議に対して政府としてどういう対応をしてこられたのか、お伺いをいたします。
#24
○遠藤説明員 昨年の四月十六日当外務委員会において御決議のその後の実施状況について御説明申し上げます。御決議は四項目ございまして、まず第一項目が「商船及び船員に関する条約ILO、油濁及び定期船同盟関係条約等の海事条約の批准促進」、こういう点でございます。
まず、ILO条約それから油濁条約につきましてはいま当委員会で御審議いただいておるところでございます。
それから、定期船同盟条約でございますけれども、これにつきましては、実はなるべく早い時期に私どもこの同盟行動条約に加入したいという努力を続けてきておるわけでございます。しかしながら、この条約自身、内容が若干抽象的で、私どもにとりまして解釈がはっきりしないところがあるものでございますから、この条約の解釈をはっきりさせますために、実は昨年の秋にヨーロッパに調査団を送りまして、ヨーロッパの関係諸国がどういうふうな解釈なり立場をとっているのかということを調査してきたところでございます。そういったような調査を踏まえまして目下鋭意検討中でございまして、私どもも、先ほど申しましたようになるべく早い時期に加入したい、こういうふうなことで努力を続けている次第でございます。
それから第二点が「便宜置籍船問題に関する国際的な検討に当つては、国際協調の精神に則り対処すること。」、こういう点でございます。
便宜置籍船問題は、先生御承知のとおり、二つの側面がございまして、一つは、いわゆる人命の安全とかあるいは船員の労働条件の改善とか、そういったようなILO関係の側面、それからもう一つは、便宜置籍船とかあるいはそういったことに関係なしに、どうやって海洋汚染を防止していくかという点、こういう点が一つの側面でございます。もう一つの側面は、いわゆる低開発国というか発展途上国の海運をどうやって振興するかという問題、この二つの側面があろうかと思うわけでございます。
第一の側面につきましては、いま御審議いただいております条約あるいはすでに御承認いただきました条約等々につきまして改善の方向に向かっておるわけでございます。
低開発国の海運をどうやって振興するかという第二の側面につきましては、やはり日本が先進海運国としての立場とそれから南の国との関係、南の国の海運を振興しなくちゃいけない、その振興に協力したい、この観点をどういうふうに組み合わせるかという問題でございまして、私は、先進海運国の立場それから南の立場をどうやって総合してこれに対処していくかということが肝心な点ではないかと思うわけで、近く行われますUNCTADあるいは現在行われておりますというか、去年も行われましたしことしも開催が予定されております船舶の登録に関する国際会議、そういうふうな場を通じまして、両者の立場の総合というような観点からこの問題には前向きに取り組んでいきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
それから第三点が「船舶所有者等の責任制限制度については、被害者保護と海運業の安定的発展に配慮しつつ、関係条約の改善に努めること。」、こういう点でございます。
これは、昨年御承認いただきました海事債権責任制限条約、これは実は日本は御承認いただいて加入をしたわけでございますけれども、発効条件を満たしておりませんで、まだ発効してないわけでございます。それで、この条約が発効しました暁には、この条約に規定されております責任額の問題あるいは船主の責任阻却事由の問題等々につきましては、日本としてはこれをもう少し改善していきたい、こういうような観点から訴えていきたい、こういうふうに思っておりますが、何分にもまだ条約が発効しておりませんので、発効した暁にはそういうふうな態度で臨みたい、こういうふうに考えているわけでございます。
それから最後の点の「開発途上国に対し、船員の訓練等の技術協力の促進に努力すること。」という点でございますけれども、この点につきましては、専門家の派遣、それから向こうのいわゆる技術者の日本への受け入れ等々の技術協力はこれまでも積極的に努めてきておりますし、それに加えまして、技術協力の総合的な施行といいますか、いわゆるプロジェクト方式というのがあるのでございますけれども、プロジェクト方式につきましては、マレーシアとエジプトに対しまして、マレーシアにつきましては船舶機関士の養成計画につきましてプロジェクト方式の技術協力を行っておりますし、エジプトにつきましても海員訓練センターに対しましての協力を行っているわけでございます。
それから最後に、この点に関しまして、去年御承認いただきました船員の訓練、当直等に関します国際条約につきましては、本年中に、実はバンコクに本部がございますESCAPの地域の船員協力の促進のためのセミナールを東京で開くことを検討しておりまして、現在関係方面とも協議しながら、日本でのゼミナールにつきまして目下準備しておるところでございます。
#25
○玉城委員 いまの問題で最後にしたいと思うのですが、その船員の訓練、技術協力、エジプトとマレーシアはやっている、今後ちょっと何かセンターということをおっしゃいましたけれども、今後この開発途上国の船員の訓練関係についてのそういうわが国の協力、それからもう一つ施設関係ですね、たとえば港湾とかそういうものについてもお願いします。#26
○木幡説明員 お答え申し上げます。いま予定されております海運関係の施設についてのわが国の経済技術面の協力につきましては、たとえばエジプトのスエズ運河拡張計画に対する円借款供与であるとか、さらにはインドネシアのウジュンパンダン海員技術学校建設費に対する無償資金供与等々が挙げられます。
#27
○玉城委員 船員関係はありませんか。今後船員の訓練について開発途上国に対して。#28
○木幡説明員 船員につきましての無償という形ではございませんが、専門家を派遣するとかあるいは研修員を受け入れるという意味で全くわが方の無償の形での技術面の協力は引き続き進めていく考えでおります。ただし、プロジェクト方式での形のものはただいまのところ予定はございません。#29
○玉城委員 今後どういう国々に予定していらっしゃるのですか。#30
○木幡説明員 お答えいたします。たとえば専門家の派遣につきましては、いま年次計画をつくっておりまして、五十八年度について鋭意要請を取りまとめているところでございます。これはまだ要請国からのベースで要請が上がってきておりませんので、取りまとめましたらまた御報告申し上げることにいたします。それからJICA、国際協力事業団におきまして、船員の養成分野におきまして船員教育行政コースというのがございますが、これにつきましては、本年度も昨年度に引き続き十名前後の受け入れを行うということで予定をいたしております。
#31
○玉城委員 終わります。#32
○竹内委員長 次に、渡辺朗君。#33
○渡辺(朗)委員 初めに、船舶による汚染防止条約に関連して幾つかお尋ねをいたします。まず、本議定書を締結することによって、現行条約の汚染防止規制のうち、主としてどの点の規制が強化されることになるわけでしょうか。また、規制が強化される結果、公害防止の分野においてどのような効果というものが期待されるものになるでありましょうか。そこら辺についてお聞かせいただきたい。
#34
○遠藤説明員 お答え申し上げます。いわゆる海洋汚染防止条約につきましては、先生御承知の一九五四年に油濁防止条約というのが一つございます。それから七三年に海洋汚染の防止に関する条約、それから最後に現在御審議いただいております本件議定書、この三つがあるわけでございます。
まず、今回の議定書を御承認いただきました暁にはどういうふうな規制が強化されるかという点につきましては、一九五四年の油濁防止条約、これは重質油だけであったわけでございますけれども、今回の議定書によりますと、規制対象というものが重質油ばかりではなくて軽質油も含めました油全般、それから有害液体物質、それも規制対象に入るわけでございます。それから、さらに船舶から出ます屎尿、それから船舶のたとえばプラスチックのものであるとかそういったようないわゆる廃物と申しますか、そういったものが規制対象になるわけでございまして、その規制対象の範囲というものが非常に拡大されるというのがまず第一点でございます。
それから、そういったような防止をどうやって確保していくかという点につきましては、今回の議定書によりますと、油のタンカーあるいはその他のタンカーにつきまして構造の規制、つまり、たとえばいままでのあれでございますと、油タンカーが運航します場合に、空の場合には船の重心を下げるために水を積んでいたわけでございますけれども、その水を積んでいたところに帰ってくるときにはその水を出して油を入れる。そうなりますと、水と油がまざっているものでございますから当然海洋汚染をする。そういうようなことで、そういったことを防ぐために水のタンクとそれから油を入れるタンクとを分離する、こういうようなこともこの議定書によりますと規制の強化の一つになっているわけでございます。
それからもう一つは、そういった汚物あるいは屎尿等々を出しましたときにそれをどうやって陸上で受け入れるかという陸上施設をつくることを義務づける、こういうようなことも規制の強化の一つでございます。
さらに、こういったような一般の規制の強化をどうやって確保していくかという確保の方法としまして、立入検査を含めましたいわゆる検査ということが義務づけられることになっております。そういうふうに規制の強化がかなり進んでまいりまして、これによりましていわゆる船舶の運航活動から生じます海洋汚染の防止という観点には相当程度に役に立つのではないか、私はこういうふうに考えておるわけでございます。
#35
○渡辺(朗)委員 いまのようないろいろお話が出てまいりましたが、特に、たとえばいままである条約、そういうようなものによってこのたびのペルシャ湾のあの海上油田あるいは海中油田の流出問題、あの汚染問題、深刻な状態、これにどういうふうにこれは関連してまいりますか。その条約に基づいて何らかの対策というものが講ぜられるべきでありましょう。当然そうだと思います。具体的にどういうふうに援用されそしてそれが適用されていくのか。どうもいままで聞いていると、まだ日本としては調査団を派遣をしたという程度で、調査団の報告を待ってそれで対処するみたいなことでありますが、そんな悠長なことでよろしいのでしょうか、ちょっと聞かしていただきたい。#36
○都甲政府委員 前段についてお答え申し上げます。ペルシャ湾における原油流出の問題につきましては、結論的に申し上げますとこの議定書とは直接に関係がないということになるわけでございます。御承知のように、この議定書におきましては船舶の構造、運航等から生ずる油の汚染を防止しようという観点からできておりますので、今回のペルシャ湾における油の流出の原因がすべて究明されておるわけではないと思いますけれども、いずれにしてもこの船舶の構造あるいは運航から生じたものというふうには観念されないだろうと思いますので、これはまた別な観点からの規制が今後必要になってくるだろうと思いますけれども、現状におきましてはこの議定書による措置の対象にはならないというふうにお答え申し上げられると思います。
#37
○渡辺(朗)委員 もう一遍重ねてその問題を聞きます。私が言っているのは、確かにそういうふうにそれがすぐそのまま援用されるということにはならぬでしょう。しかしながら、現実に目の前に汚染が拡大しつつあることは事実であります。どうもいま聞くと、この対応策、わが国として調査団が行っている、だから報告を聞いた上で対処する、大変技術的な対応だけになっているように思います。たとえば、湾岸八カ国の協議もできておらないようでありますけれども、まずそういうものに対して積極的に政治的に働きかけることはおやりになるのでございましょうか。あるいはまた、イラン・イラク戦争の問題もそうでありますけれども、これが現状まだ進行中だ、これに対して具体的にどういうふうな働きかけをして、一時停戦でもして対応していこうとするような姿勢を持っておられるのかどうなのか。私は外務大臣にもそこら辺を後でお聞きしますけれども、まず政府としてどんな姿勢でこれに臨んでおられるのか、ちょっと聞かせていただきたいのです。
#38
○都甲政府委員 必ずしも直接の担当でございませんので十分なお答えになるかどうかわかりませんけれども、確かにこの問題は原因が非常に深刻でございますので、紛争当事国関係の合意を得て汚染原因になっている油の流出をとめることがまず第一だろうと思いますので、その方向に向けての外交努力が最大限なされるべきであろうと思います。長期的には、このような問題に対処する際に、たとえば油田に対する攻撃を禁止するみたいな形での国際的な一つの合意をつくる方向で努力をなされることが、根本的に世界的な海洋汚染、このような状況から守るというためには必要ではないかと考えております。#39
○渡辺(朗)委員 外務大臣、そこでお聞きします。外交的なこれからの努力というのはいま非常に期待されていると思うのです。ASEANの方にも外務大臣いらっしゃいます。そちらの地域にも油田がございます。いまお話がちょっと出ましたけれども、たとえば紛争が起こっても当事者間で油田攻撃は差し控える、そのような取り決めをしていくような、その他のいろいろな方策もあるでしょうけれども、そういう差し迫った問題あるいはまたこれからの長期的な問題、いろいろなことを含めて、外務大臣、当面起こっているペルシャ湾の原油の流出問題についてどのようにお考えでございましょう。
#40
○安倍国務大臣 石油はどうしても人類の非常に大事な財産ですから大切にしていかなければならぬと思うわけです。そういう意味において、いま紛争が起こった場合においても油田等の攻撃はしないというようなことが国際的合意で生まれることは大変結構なことだと思いますし、そうした問題はまさに国連なんかで取り上げられてもいい課題でもあるかもしれないと思うわけでありますが、当面はイラン・イラク戦争、今回もまた、きょうの新聞等を見ますと第二回目の爆撃が行われた、こういう話も出ておるわけであります。あれだけの被害が当事国だけじゃなくてその他の国にまで及んでいるわけです。この辺は紛争当事国も、お互いに熱くなってやるわけですから、相手に打撃を与えようとやるわけですから、そんなことまで考えておられないと言えばそれまでですけれども、しかし第一回のああした爆撃その他で大変な被害が出ているということははっきりしているわけですから、同じ紛争を行いながらもその辺の節度はあってもいいんじゃないかと思います。しかし、そういうところはなかなか抑制もきかないだろうと思いますが、いずれにしても当面の課題としてはイラン・イラク戦争が早く終局に向かう。これだけの被害が出ておりますから、こういう被害を契機に国際的な調停とか当事国の話し合いを進めるいろいろな措置がとられることが必要ではないだろうか、そういう意味では機運もだんだん出てきておるのではないか、こういうような判断を持つわけであります。日本も、そういう中で最大の輸入国でありまして、日本経済の発展は石油に依存するところが多いわけですから、そうした問題についてほおかぶりで通すわけにいきませんし、これは調査も進めておりますし、場合によっては協力もしていかなければならぬと思います。そうした戦争等によって破壊されるというようなことに対する防止措置をどう考えるかということも国際的な場で日本も何らかの働きかけをやってみなければならぬ課題であろう、こういうふうに思います。
#41
○渡辺(朗)委員 外務大臣、特にいまの点、早急に進めて外交努力の展開を行っていただきたい。御要望しておきます。次に、ILO百四十七号条約の問題でありますけれども、この条約の問題点というのは、これを締結することの意義そのものは一体どこにあるのかということをまずお聞きしたいと思うのです。
船員法及び船舶職員法の改正等によっていろいろな問題点が解決された、図られたというふうに理解してよろしいのでしょうか。
#42
○佐藤説明員 昨年船員法及び船舶職員法が改正されまして、ことしの四月三十日から施行されることになっておるところでございますけれども、改正されます以前の法体系につきましては、まず一番目といたしまして、この条約は旗国主義をとっておるわけでございます。改正前の船舶職員法は配乗権国主義という主義をとって旗国主義ではございませんでした。それが改正によりまして旗国主義を採用することになったところでございます。したがいまして、改正前の船舶職員法はこの条約の附属書のILO第五十三号条約との関係で問題があったわけでございます。それからこの条約の第四条は、外国籍船に対しますいわゆるポート・ステート・コントロールの根拠を定める規定でございますけれども、この四条に対応しました外国船の監督につきましての根拠規定が改正前の船員法及び船舶職員法にはございませんでした。それが改正によりましてそれに対応するような規定が盛り込まれたところでございます。したがいまして、これらの本条約実施上の問題点につきましては、船員法あるいは船舶職員法の改正によりまして解決が図られたというふうに理解しておるところでございます。
#43
○渡辺(朗)委員 次に、昭和五十七年度の運輸経済年次報告によりますと、四十年代の後半から船舶コストの上昇に伴って日本船の国際競争力の低下が顕著となった、その回復が急務であるということを言っております。このような事態を招いたのにいろいろな原因があろうと思います。これは当局の見解をお伺いしたいのでありますけれども、一つには、政府が外航海運の施策を推進するに当たりまして便宜置籍船を中心とする外国船舶に過度に依存する傾向を放置してきたということがあったのではなかろうかと思いますが、御見解をお伺いしたいと思います。
#44
○尾松説明員 外航海運についてでありますけれども、わが国にとりまして外航海運は、食糧とかエネルギー資源、工業製品等の貿易物資の安定輸送を図り、わが国の経済的安全を確保するためにきわめて重要であると考えております。そのためには日本人船員の乗り組む日本船を中核とした商船隊を維持整備すること、そしてこれを中心としまして長期にわたるわが国海運の発展基盤を確保していくということが非常に重要であると考えてまいっております。しかしながら、御指摘のように、特に昭和四十年代後半から船員費を中心とする船舶コストの上昇に伴いまして日本船舶の国際競争力が次第に低下してまいりました。このような中でわが国の外航海運が外国用船への依存傾向を強めてきたということがございます。そこで、私ども運輸省としましては、こうした日本船の国際競争力を回復することによりまして日本船の減少傾向に歯どめをかけようということで、五十四年度から五十六年度まで利子補給の復活、計画造船制度の充実を骨子といたしました外航船舶緊急整備対策を講じてきたところでございますが、これによりまして日本船の比率はある程度の回復を示してきております。しかしなお、私どもとしましては、今後とも、海運労使の一致した企業努力というものを前提としながらも、日本船の国際競争力の回復、あるいは海運企業が安定的に日本船の建造を行っていけるための企業基盤強化のための施策といったことを講じることによりまして、日本船の維持整備に努めていかねばならない、こういうふうに考えているところであります。
#45
○渡辺(朗)委員 現在のように外国用船への依存傾向が高まっていくということになっていきますと、日本船員の乗り組む日本船の一定船腹量の確保さえ危なくなってくる、船員の方々の職域を極度に縮小してくる、そういう点が心配されるわけでありますけれども、いまお聞きしているとどうも抽象的な対策、対応しか感じられないのでございますが、もうちょっと将来展望を示してもらいたいと思うのです。国際海運界における日本のこれからの外航海運政策といいますか、こういうものについて、もう少し突っ込んだ具体的なものを海運当局は考えておられないのですか、お聞かせいただきたいと思います。#46
○尾松説明員 ただいまも申し上げましたが、先生御承知のように、国際海運は、各国の政治あるいは社会情勢等の動向にも大きく左右されますし、また市況も非常に大きく変動するという変化の著しい分野でございます。このような変化の著しい国際海運につきまして、今後とも日本船を維持整備していきますために重要だと考えておりますことは、繰り返しになるかもしれませんが、一つは海運労使の一致した船舶コストの低減のための企業努力、これは当然であります。さらに、計画造船制度によります長期、低利の財政資金を確保する、高度合理化船の整備を推進する、あるいは船員制度の近代化を推進していく、そしてさらには、海運企業が安定的に船舶建造を行えるような企業基盤の強化を図るための税制等の政策、これらの諸施策が重要ではないかと考えております。これらの施策を総合的に講じてまいることによりまして、変化の激しい分野ではありますが、情勢の変化に的確に対応して、日本船を中核とするわが国商船隊の維持整備をやっていきたいということでございます。
#47
○渡辺(朗)委員 今度は違った角度からちょっとお尋ねをしてお確かめをしたいのですけれども、これは、日本籍の船は日本船員で運航するのが本来の姿でしょうね。ところが、一般職員について、機関部員であるとか甲板部員であるとかいうような欠員補充等の場合、中進国やら途上国の一般船員が乗り組むケースというのがふえてきているのではないでしょうか。こういう状況に対して、船舶職員法は一体どういうふうに適用されるのであろうか、ここら辺についてちょっと聞かせていただきたいのです。#48
○小和田説明員 いま先生が御質問の一般船員につきましては、従来からわが国では船員法が適用されておりまして、この法律はいままでも旗国主義をとっておりますので、日本籍の船に乗る船員については、その者の国籍を問わず適用されております。それから、船舶職員法の関係につきましては、いま先生がおっしゃったような一般船員ということでございますと、船内の乗組員の分類からいたしますと、職員と部員というふうに分かれますけれども、船舶職員法は職員についてだけ規定している法律でございますので、今回の法改正は特に関係がないということになります。
#49
○渡辺(朗)委員 それから、いまのことに関連するのですけれども、先ほどもお話が出ておりましたが、途上国との国際的な政策の整合性みたいなものが、これからの日本にとっては非常に大事になってくるだろうと思うのです。と同時に、わが国の船員の職場の確保ということももちろん大事であります。いま、日本籍の船舶においても、外国の一般船員の混乗時代が予想されるのではないか。そうした場合、いままで、昭和四十八年の閣議了解事項でございましたか、外国人労働者の問題についてたとえばそういうものもあるが、一体、国際協調という問題と、そのような閣議の今日まで決めてこられたわが国の方針というものと、そこら辺の折り目をどうつけていく方針でございますか。
#50
○佐藤説明員 わが国におきましては、その雇用情勢にかんがみまして、原則としまして外国人の労働力の受け入れは行わないという労働政策をとっておるところでございます。したがいまして、いまのところ、日本の船社が配乗権を有しております日本船腹につきまして、外国人の船員が雇い入れられるということはないというふうに考えておるところでございます。ただ、いま先生が御指摘なさいましたように、日本の船籍を有する船でございましても、配乗権を有します者が外国人であるというケースがあるわけでございまして、そういったケースにおきましては、当該外国の船社が船員の配乗を行うということでございますので、事情を異にするというふうに考えておるところでございます。
#51
○渡辺(朗)委員 いろいろお聞きしたいのですが、時間がなくなってきましたので、最後に外務大臣にお聞きしたいのです。それは、海運の分野で各国間の利害がいろいろ複雑化している現状にかんがみまして、日本は海洋国家というふうに目標を定めて今日まで来たわけですけれども、わが国が海洋国家として発展していくために、国際協調というのは非常に重要になってきた。同時に、責任ある国際的役割りを果たすということが非常に大切だ。先ほどもお話を聞いておりますと、船員の訓練であるとか港湾の整備であるとか、そういうことについては何らかの経済協力や何かを進めるという姿勢はあるようでありますけれども、もうちょっと何かしら一本きちっと背骨の通ったこれからの方針といいますか外交努力というものが海洋国家ということを目指す以上あってしかるべきだと思うのです。そこら辺、これは非常に抽象的な話になるかもわかりませんけれども、ひとつ外務大臣としての所信のほどを聞かしていただきたいのでございます。
#52
○安倍国務大臣 いまわが国は資源はありませんし、エネルギー、食糧等も海外依存度というのが非常に大きいわけですから、海上の輸送というのが安定的に行われることが国の存立の基礎にもなるわけですし、同時に海洋国家としての世界的な役割りというものもあることは事実であります。海洋国家である、それだけの役割りを今後とも果たしていかなければならない、そういうふうに思っておるわけですが、そういう中でわが国はこれまでもいろいろな国際的な条約にも参加もして積極的な国際協力を進めておる、OECDにしてもあるいはUNCTADというふうな国際機関を通じまして国際協力論議にも参加もいたしておるわけでありますし、南北問題についても、開発途上国等におけるいわゆる商船隊の開発といったものに対しても協力もいたしておるわけでございますが、おっしゃるように、これから世界経済の一割国家として、そして完全な海洋国家としての役割りというのはますます大きくなる、日本の国際責任というのはますます重大になってくるだけに、とにかくこうした海運というものをこれからどういう位置づけにするかということは、これは外交の分野だけではなくて国全体としての一つの政策として取り組んでいかなければならない大きな課題でもあろう、こういうふうに思うわけであります。また同時に、やはりいわゆる国の総合安全保障というような立場からもこうしたわが国の海運政策というのも位置づけていかれなければならない課題でもあろう、こういうふうに思うわけです。#53
○渡辺(朗)委員 これはこれからの外務大臣の活動に期待するところ大でありますけれども、たとえばインドなんかでは、ガンジー首相はかつて、インド洋を平和の海へというような大きな国策といいますか、そんなものも掲げていろいろ外交努力も行ってきている。日本として、やはり太平洋なり日本海なり、あるいはまた、いまもおっしゃったように国際的に一〇%国家であるなら、もっともっと国際的な、海に対する、海洋政策に対するそういった姿勢をひとつ展開をしていただきたい、これを御要望いたしまして私の質問を終わります。ありがとうございました。#54
○竹内委員長 次に、中路雅弘君。#55
○中路委員 海事条約の二件について御質問するわけですが、その前に一点だけお尋ねしておきます。ペルシャ湾の原油流出問題ですが、湾岸諸国の経済、生活にも大きな影響を与えている大きな政治問題になっているのですが、政府が調査団を派遣されていますが、この調査団はいま何をやろうとしているわけですか。#56
○波多野政府委員 お答え申し上げます。調査団の第一の目的は現地で必要とするアドバイスを与えるということで、これはすでにクウェート政府、カタール政府、バーレーン政府、それから現在ア首連の政府との間で種々の会議を通じて行っているところでございます。
それから、次に、今後日本としてどういう協力ができるかをこれら調査を通じて探りたいと思っております。これにつきましては、現地時間の十六日に一応各国の巡回調査が終了いたしますので、その段階で現地と電話、電報等を通じまして密接な連絡をとった上で対策を考えたいと思っております。
それに加えまして、今度の調査団は政府の調査団でございますから、各国政府に対しましてわが国の抱いている同情を伝えるということも一つの任務になっております。
〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕
#57
○中路委員 この問題で大臣にひとつ要望もあるのですが、いまのイラン、イラク当事者の停戦問題とは一応別にしましても、国連を通じて、あるいは何らかの方法で、海洋汚染を取り除く、汚染の拡大を防止するという点で日本政府として何らかの働きかけといいますか国際的な行動、こうした点についてお考えがありましたら大臣の御意見をお聞きしておきたいと思います。#58
○安倍国務大臣 わが国もああした汚染防止、汚染からいかに回復するかということについていま調査団を派遣をしていろいろな角度から調査をしておりますので、その調査団が帰りまして、十分検討して、これから国際的にどういう役割りが果たせるか、どういう協力ができるかということも検討してみたいと考えております。#59
○中路委員 一応この問題はこれにとどめまして、時間が限られていますから、便宜置籍船問題を中心にして何点かお聞きしたいと思います。これまで海難事故や災害、海洋汚染の主要な根源として便宜置籍船が指摘されてきましたが、今回の商船における最低基準に関する条約でどういう効果が上げられることになるわけですか。
#60
○都甲政府委員 お答え申し上げます。今回の特にILO百四十七号条約が便宜置籍船の問題を契機としてできたという経緯は先生御承知のとおりでございまして、一九六七年のトリー・キャニオン号事件であるとか一九七六年の米国東部海岸におけるアルゴ・マーチャント号事件等リベリア船籍のタンカーが油濁の原因となったということを契機としてこのような問題が大きく意識されてきたということは御指摘のとおりでございます。
そういうことで、ILO百四十七号条約につきましては、船舶職員の資格、配乗、社会保障、居住施設等についての国際的な基準を定めることによって船舶の安全を確保するということ、とともに、労働条件の改善を目的とすること、こうなっておりますけれども、この条約につきましては、各国が入港した場合にこの条約の基準に従っているかどうかについての確認を行うことになっておりますし、それについての苦情が申し入れられたときにはこれについてしかるべき通報を行うとか国際会議への通報を行う等の措置をとることになっております。それからまた、一九七八年の船舶汚染防止条約につきましても、旗国主義での汚染規制を行うことになっておりますけれども、これにつきましても、特に未加盟国の船舶について有利な扱いをしないようにこの条約を準用するようにということで監督を及ぼすことになっております。
このようなことで、できるだけ多くの国がこの条約に入ることが望ましいわけでございますけれども、入らない場合においても、各入港地におきまして規制を行うことによって便宜置籍船等の場合においても一定の水準を確保できるようにしようという配慮がなされているわけでございます。これは昨年御承認をいただきました船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約においても同じような概念が盛られておりまして、未加盟国についてもこれを準用するということで監督を及ぼすことになっておりますけれども、このような多くの条約が未加盟国につきまして一般的な基準を高めていくということによって船舶の安全を図るということが確保される、この点は、この百四十七号条約の審議の経過におきましても、単に便宜置籍船だけでなくて、一般的な商船についてその安全基準を高める必要があるということで今回の条約ができたという経緯からも御理解いただけるのではないかと思っております。
#61
○中路委員 いま御答弁いただきましたように、便宜置籍船への一定の規制がなされたということですが、これは、将来、便宜置籍船を廃止するということと結びついた、いわば中間的な措置と考えていいわけですか。いかがですか。#62
○遠藤説明員 お答え申し上げます。いま都甲参事官からの答弁と繰り返しになると思いますけれども、この両条約とも便宜置籍船そのものの廃止ということを念頭に置いた、あるいは前提としたものではなくて、むしろ便宜置籍船とか、あるいはすべての船舶に対してその基準を高め、それに船員の労働条件の改善であるとか海洋汚染の防止、こういうような観点から、結果論としてはそれがすべての船に適用する、したがいまして便宜置籍船にもこれが適用される、こういうことになるわけでございます。
便宜置籍船の問題は、先生御承知のとおり、こういったサブスタンダードの問題と同時に、経済的な側面ということが発展途上国から言われておりますので、いわゆる経済的な側面の問題につきましては、UNCTAD等の場において議論されておるところでございまして、これにつきましては、日本としては、発展途上国との関係あるいは日本の先進海運国としての立場、こういうようなものを総合して、これに対しては積極的に今後とも取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。
#63
○中路委員 発展途上国はこの便宜置籍船問題について撤廃を要求しているわけですね。一九七九年五月にマニラで開催された第五回国連貿易開発会議ですね、これを見ましても、途上国はそういう要求をしているわけですけれども、この問題について、発展途上国の便宜置籍船についてのこうした要望について、日本の政府はどのようにお考えですか。理解を示されておるわけですか。#64
○野村説明員 先生御指摘のように、UNCTADの場におきましては、開発途上国は、便宜置籍船がふえてまいりますと開発途上国の海運の振興が妨げられるという観点から、船舶と旗国との間の関係をきちんと強化していくという方法によって便宜置籍船を排除すべきであるという主張をいたしております。これに対しまして、わが国を含みます西側先進諸国は、資本でございますとかあるいは労働でございますとか、こういうものの移動の自由というものを確保すると同時に、十分な競争力を備えた開発途上国の海運企業というものを育てていくということが開発途上国の利益になるのであるという考え方をとっておりまして、船舶の登録要件の強化によって開発途上国の海運の振興という効果を望むのはむずかしいのではなかろうかという考え方をとっているのが現状でございます。#65
○中路委員 便宜置籍船は、海運先進国が最大限に利益を上げるために、税金逃れだけじゃなくて船員の労働条件、劣悪な労働条件、そのために結局海運事故、海難事故あるいは災害、海洋汚染の大きな原因になってきたわけですが、問題はこれだけにとどまらない。労働条件、賃金などの劣悪な条件のもとに便宜置籍船が高い競争力を持つ、それが発展途上国の海運発展を阻害している、こういうことが途上国から撤廃を要求する一つの大きな要因になっていると思うのですが、やはりこういう要求が新しい国際経済秩序の確立に向けて貢献する側面を持っているのじゃないかと私は思うわけです。やはり海にも新しい南北の調和に役立つ秩序づくりがいま必要になってきている時期ではないかと考えるわけですが、いかがお考えですか。#66
○野村説明員 先ほども申し上げましたように、開発途上国側では何とか便宜置籍船を、旗国と船舶との関係を強めることによって少なくして、それによって開発途上国の海運の振興を図っていこうという考え方で臨んでおるわけでございますが、私どもといたしましてももちろん途上国自身による海運の振興というものの重要性といいますか、これが途上国の貿易の拡大あるいは国際収支の改善、ひいては開発途上国の開発の促進に貢献するということは十分認識しているわけでございますけれども、これを実現していくための方法につきましては、開発途上国側の主張しておりますようないわば国の介入を強めて、国とそれから船舶の間の関係を強めるというような方策によってこれを実現しようというのはなかなかむずかしいのではなかろうか、むしろわが国といたしましては、開発途上国の海運の振興は基本的には企業の努力あるいは自由競争によって競争力を強めていくという方向で考えるのが結局は開発途上国のためでもあるのではないかという考え方でございますけれども、同時に、先進国側といたしましてもこのような開発途上国側の努力を助けていくということは当然必要でございまして、わが国といたしましても技術協力その他の方法によりましてこのような開発途上国側の努力を助けていくという形で前向きにこの問題の解決に取り組んでいきたいということでございます。#67
○中路委員 いま答弁がありましたけれども、大臣、いかがですか。やはりこうした発展途上国の要望については、こうした要求が出てくる根拠というのはあるわけですし、海にも新しい南北の調和に役立つ秩序をつくっていくという立場から先進海運国が途上国のこうした点に十分な理解を示して、いまおっしゃいましたけれども、前向きにこうした問題を解決していく努力を、やはり日本政府としても理解を示すべきじゃないかと考えるのですが、大臣、お考えはいかがですか。#68
○安倍国務大臣 いまも政府委員から答弁をいたしましたように、やはりわが国も先進国でありますし、先進海運国であります。南北問題は非常に大きな問題であります。われわれも南北の調和といいますか、南に対する積極的な協力をするということはあらゆる分野において必要でございますが、特にこうした海運関係等につきましても調和を図っていく、あるいは協力を進めていくということが必要であろう、こういうふうに思うわけでございます。#69
○中路委員 船舶の登録要件についての国際的な約束をつくる場として国連の全権会議の招集が合意されていると聞いておりますが、この見通しについてお伺いしたいと思います。#70
○野村説明員 UNCTADにおきます便宜置籍船問題についての今後の取り進めぶりに関しましては、昨年末の第三十七回国連総会で決議が採択されておりまして、昭和五十八年、ことしに準備委員会を開催いたしまして、五十九年の早期に船舶の登録要件に関する国際的合意の採択を検討するための国連の会議を開催するという決議が採択されております。この決議の趣旨に沿いましていま準備が行われておるわけでございます。わが国といたしましては、これらの会議におきましても、先ほど来申し上げたところでございますけれども、国際協調の精神にのっとりまして、開発途上国と先進国相互の利益になるような解決法を見出すように努力を続けていきたいという考え方でおります。#71
○中路委員 開催の時期の見通しはいつごろになりますか。#72
○野村説明員 先ほどの決議で五十九年の早期に開催するということになっておりますけれども、具体的に何月というようなところまではまだ固まっていないのが実情でございます。#73
○中路委員 私は、そこでも発展途上国の海運の発展に役立つ、そういう意味で日本政府も積極的な役割りを果たしていただきたい。便宜置籍船の存在が途上国の発展にいろいろ阻害になっているという事実がある以上、先ほどもお話ししましたが、こうした問題の解決について新しい南北の調和に役立つ秩序づくりという立場からも政府としても努力すべきじゃないかと思いますが、もう一度そのことについてお考えをお聞きしておきたいと思います。#74
○野村説明員 先ほど申し述べましたことの若干繰り返しになるところがあるかと存じますけれども、政府といたしましても、開発途上国の海運の振興というものが開発途上国の特に開発の促進というものに大きな関係を持っておる、貢献するというところは十分に認識しているわけでございまして、このような観点から、たとえばUNCTADの場におきますところのこの目的を達成するための方策をどうしたらよいかというところについては、先ほど御説明申し上げましたように、まだ開発途上国側と日本を含みます先進国側の間に考え方の違いはございますけれども、私どもといたしましては、基本的には、企業努力と自由競争による競争力を備えた開発途上国の海運の振興という方向を目指しながら、技術協力というような援助も行うという形で、開発途上国側、先進国側それぞれの双方の利益になるような解決策を何とか見出したいということで今後努力してまいりたいということでございます。#75
○中路委員 この条約は、便宜置籍の国が参加しなければ意味がないわけでありますけれども、リベリアは入っているということはお聞きしていますが、その他の国への働きかけはどうなっているのか、加盟の見通し等について御説明いただきたいと思います。#76
○遠藤説明員 お答え申し上げます。まず最初のILO百四十七号条約についてでございますけれども、主要海運国といたしまして、アメリカは法律的には問題ないということであり、かつ政府、労使ともにこの批准に賛成ということで、早ければことし十二月以降にも議会でこの問題が審議される可能性があると承知いたしております。それからパナマでございますけれども、パナマにつきましても現在国内関連法を整備中と聞いておりまして、ことし秋から開かれますパナマの国会で承認されるのではないか、こういうふうな情報を得ております。
次に、海洋汚染の防止に関する条約の方でございますけれども、これにつきましてはパナマは同様にことしの秋以降の国会で本件を審議する動きがある、こういうふうに承知いたしております。それからスペインにつきましても同様に締結する意向のようであると承知いたしております。
それから働きかけでございますけれども、実は何分まだ日本はこれに加入しておりませんので、御承認いただきまして加入いたしました暁には、ILOあるいは国際海事機構の場におきましてなるべく多くの国がこの条約に入るように働きかけていきたいと思っております。
〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
#77
○中路委員 最後にもう一問だけお聞きしておきます。関連のILO条約についてですが、附属書が挙げている十五のILO条約のうち、日本は確か七つか八つの条約が未締結、まだ批准されていないと聞いておりますけれども、なぜ未締結になっているのか、その理由と、今後締結する用意があるのか、その点の見通し、全部でなくていいですが、二、三例示して御説明していただきたいと思います。
#78
○都甲政府委員 お答え申し上げます。先生御指摘のように、附属書に挙げられております十五の条約のうち、わが国は八本が未批准でございます。今回この百四十七号条約に入るに当たりまして、この附属書に掲げられております条約につきまして何とか入ることができないかということをいろいろと検討してみたわけでございますけれども、その実態的な内容におきまして国内法との調整の上でかなり問題があるものがあるということがわかりましたので、今回やはりこれを直ちに批准することは困難であるという結論になったわけでございます。
その例を一つ、二つ御紹介申し上げたいと思いますけれども、たとえばここで挙げております第九十二号条約でございますが、これは船舶の乗組員の施設について詳細な規定を置いておるわけでございますけれども、これは主としてイギリスの法令に準拠している、イギリスの社会習慣を基本に置いてつくられているものでございますので、たとえば食堂、娯楽施設等について上級船員と下級船員の別を設けるというような制度を設けておるわけでございます。これは日本の習慣にはなじまないわけでございまして、イギリスの社会制度、生活習慣等からすればかなり自然なものでございますけれども、日本の生活になじまず、また、船員組合においてもこのような上級船員と下級船員の間の区別を設けるということについては絶対反対であるということがございますので、これは入ることができないという一つの例でございます。
それからもう一つ挙げられますのは五十五号条約でございますけれども、これは船員の乗船中に発生した疾病、負傷、死亡等について、医療、生活費、送還、埋葬等の費用を船舶所有者がめんどう見るという趣旨の条約でございますが、この条約によって与えられております保護は船員法、船員保険法等によっておおむね満たされておるわけでございますけれども、職務外の疾病の費用負担につきましてもこれは決めておりまして、この点はわが国の制度と異なるものがございます。わが国におきましては、災害補償というものに関しましては職務上あるいは職務外の問題については区別するというものが確立した原則になっておりまして、これは国内法全体を通じての一つの制度になっておりますので、この制度を崩さない限りこの条約に入れないということになるわけでございます。
このような二つの例を申し上げましたけれども、まさに実質的に同等という概念が入りましたのは、このような各国での社会制度、民族的な習慣等があって条約に入れない場合でも、その条約の大筋において保護を達成することによって条約を早く批准させようという基本的な考え方が根本にあるということを御理解いただきたいと思うわけでございます。
#79
○中路委員 時間ですので、これで一応質問を終わらせていただきます。#80
○竹内委員長 次に、土井たか子君。#81
○土井委員 千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書に関して質問時間を与えていただいたことに、まず感謝申し上げます。私は簡単にこれを質問したいと思うのですが、従来環境保全の方の委員会で注目をしてまいりまして、関心の非常に高かった条約でもございますので、ひとつ気にかかるところを質問させていただきたいのです。
一つは、この議定書を今度承認いたしまして発効した場合も、一九七三年条約というのは未発効のままなのかどうなのか。
そしてまた、未発効だったといたしましょう。この議定書によってその内容に修正及び追加が行われるわけですから、それを実施することを各締約国は約束するということになった、その上から申しまして、効力のない条約が実際上は歩いていくというかっこうになるんじゃないか。この点非常に気にかかるのですが、いかがです。
#82
○都甲政府委員 お答え申し上げます。この一九七三年の条約というのは、御承知のようにトリー・キャニオン号等の油濁の汚染の深刻化ということを契機としてできたことは言うまでもないわけでございますけれども、この附属書IIにつきまして特にいろいろと問題があって、この条約が発効の見込みがないということになりましたので、一九七八年の議定書によってこの附属書I及びIIについて修正を加え、あるいは発効に猶予をすることによって七三年の条約を取り込んでいこうという形での解決を見たわけでございます。
もちろんいろいろな条約の採択会議におきましては、解決方式が提言されまして、たとえば七三年条約を改正したらどうかという動きもあったわけでありますけれども、この際やはり一番現実的な方法は、この議定書によりまして七三年条約の内容を改正することによって、議定書そのもので七三年条約を取り込んで実施していくという方法が一番合理的であるという結論になったものでございますから、長い議論の末現在のような解決方法に達したわけでございます。
#83
○土井委員 質問に対して答弁をお願いします。都甲さん、またそれを言わなければいけない。一つもこれは答えていらっしゃらない。そんな経緯は書いてあるのだからいいですよ。そこで、もう一度聞きますよ。じゃ、一九七三年条約は未発効のままなんですか、どうなんですか。
#84
○都甲政府委員 失礼いたしました。一九七三年の条約は未発効のままでございますし、いまのような採択会議の結果から、事務局としましても、一九七三年の条約についてはこれを発効させないようにという勧告を各国に行っております。#85
○土井委員 発効させないようにという勧告があったといたしましても、一九七五年一月一日以降は加入のためにこの条約自身が開放されているのです。そうでしょう。そうすると、条約十五条の規定に従って考えると、条約そのものが効力を発生するという場合を条約自身は是認しているのです。よろしゅうございますか。そうすると、条約と議定書との関係はどういうことになるのです。#86
○都甲政府委員 確かに先生御指摘のように、この一九七三年の条約の発効、条約の規定に従いまして所定の国が手続をとりますれば発効することになるわけでございます。そのときには、七三年の条約と、七八年の議定書による改正された内容との間で明確な抵触関係が起こるわけで、非常に複雑な法律関係が起こることを予想いたしましたので、まさに事務局が各国に七三年条約を批准しないようにということを呼びかけて、七八年の議定書を通じて全体を発効させていこうという理解が、IMOの事務局においてあるいは加盟国全体の中にそういう共通の認識ができた、こういうことでございます。#87
○土井委員 いわく、複雑怪奇ですね。そうすると、条約自身はいまだに加入のために開放されていながら、そういう国際会議の場所でこの条約に対して締結をしないようにというふうなことをお互いが申し合わせている。いわく、大変微妙というか奇怪千万なありさまだということを言わざるを得ない。こんな前例やほかにこういう例というのは恐らくないだろうと私は思うのですが。
#88
○都甲政府委員 確かに私どもは、この条約を勉強いたしましたときに非常に複雑怪奇な仕組みになっておりましたので、これをどのように御説明申し上げられるかということをいろいろ苦労した経緯はございます。いずれにいたしましても、前例といたしましては、ガットの条約が条約そのものとしては発効しておらず、その議定書によりまして暫定発効という形でガットの実態的な内容を各国が適用している、そういう先例はございます。#89
○土井委員 ただ、その場合とちょっと例が違うのじゃないですか。ガットの場合には加盟をするということももちろん開放して、それを前提にして一応暫定措置としての取り組みなんで、これは条約そのものに対しては加盟しないようにと言いながら議定書でやっていこうというかっこうでしょう。まるで違うのですよ。わけのわからぬ話ですね。本当にお話にならないと思うのだけれども、いろいろ言い始めると時間がかかりますから私は一切割愛しますが、一九七三年の汚染防止のための条約の中身の規制というのは非常にきついものであります。厳しい規制です。これに対して、自国に持って帰ったときに、どうもきつ過ぎるというふうな声が各国間にあったということをしきりに日本も説明されますけれども、ロンドン会議などのありさまを私も漏れ聞くところによりますと、日本の場合が一番積極的にこれはきつ過ぎるというふうな立場に立っていろいろと対応されたということも聞いておりますから、その辺の兼ね合いが大いにあったんじゃないかなと思っています。さて二つ目、今度留保がありますね。見てみますと、議定書の条文中にも条約の条文中にも留保条項は見当たらない。留保条項のない条約に留保宣言を行った場合は一体どうなるのかというのが私にはよくわからないのです。ことに、わが国の場合に留保を付したことによってどんな効果が出てくるのかというのもわからない。留保は通常署名の際に行われるのが原則じゃないかと私は思うのですが、こうなってきますと、わが国の場合、署名していないのですから、この付された留保は加入の際行うのですか、どうですか。どういうことなんですか。これもまたおかしいですよ。
#90
○都甲政府委員 お答え申し上げます。留保につきましては加入の際、加入書を寄託する際にあわせて留保宣言を行うことにいたしております。
#91
○土井委員 議定書の条文中にも、もちろん条約の条文中にも留保条項が見当たらないのにもかかわらず、留保条項のない条約に留保宣言を行うというかっこうになっているのですから、法的にこの留保自身の効果が問われるであろうと私自身は思うわけです。この点はお答えの限りじゃなかったのですけれども、どのように思っていらっしゃるのですか。#92
○都甲政府委員 留保の問題につきましては、一昨年御審議いただきました条約法条約の中に規定がございまして、留保を付することが禁止されているか、あるいは留保が条約の趣旨及び目的と両立していない場合を除いて留保を付することが認められるという形になっております。この条約におきましては、留保を禁止する規定は条約あるいは議定書を通じてないわけでございます。まさに今回行おうとしている留保は、附属書I及び附属書IIについて非常に理由のある改正を行うことを予定しておりまして、この理由のある改正に従って実施するようにということを各国に言っているわけでございまして、まさにこの条約の趣旨、目的に合致した留保でございますので、私どもとしてはこの留保は何ら問題がない、このように考えております。#93
○土井委員 ただしかし、条約の趣旨に合致した留保とおっしゃるけれども、本来は条約を誠実に遵守しようとしたら留保抜きで遵守するのが本則なんですよ。そういうことからすれば、政府としては、条件が整うということになれば留保を撤回なさるということでおありになるはずであると思いますけれども、そういう御用意がおありになるのかどうか、それは一体いつごろを想定して、今条約の議定書に対してお取り組みをなさったのか。この辺は基本的な問題にもかかわりますから、大臣の方から御答弁を願います。#94
○安倍国務大臣 撤回の必要はない、こういうふうに思います。#95
○土井委員 ちょっとそれは大臣、聞いていらっしゃらなかったのじゃないかな、いまの御答弁は。きっと聞いていらっしゃらなかったのでしょう。それこそ御答弁を撤回なさらないと困りますよ。#96
○都甲政府委員 若干技術的な問題でございますので、私の方から御答弁申し上げます。今回留保をいたしますのは、まさにまだ現在でき上がっていない附属書の合目的的な改正を先取りして実施するようにということを勧奨されているものでございますから、政府としてはそのために法的な整合性という観点から留保をするわけでございますけれども、この改正が実現いたしますと、日本政府がとっている内容というのはまさにその改正の内容そのものを実施しているわけでございますから、その改正の内容に合致した規制が行われておる状態になるわけでございます。
そういたしますと、まさに留保をする必要がない状態になるわけでございますので、そういう意味で留保の目的は全くなくなる、必要性がなくなる。そういう意味で、大臣がいまお答え申し上げましたように、留保を廃棄するという手続は必要ない、ただ留保自体が意味がなくなるという事態になる、こういうことでございます。
#97
○土井委員 それは手続上の問題ですからね、技術的なことであって。さて最後の一問。この議定書を実施するために国内的措置というのをどういうようにするかというのは、日本の場合、大変重要問題として今後出てくるわけですが、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の改正が必要である。」ということになっておりますね。それは「等」と書いてありますから、それ以外の法律ももちろん関係するところがあると思うのです。
たとえば船舶安全法なんというのはそうでしょうし、環境庁が所管である瀬戸内海環境保全特別措置法なんというのも恐らくひっかかってくる対象の中に入ると思うのですよ。こういう作業は、運輸省はもちろんですけれども、環境庁とも連絡されているのでしょうね。そして、法の改正の手続、手順というのは、一体進んでいるのですか、進んでいないのですか。これからなんですか、もうあらまし済んだのですか。いかがです。
#98
○近藤説明員 今回の議定書の加入に伴います、新たに必要になります国内法の手当てにつきましては、私ども、いま御指摘がございました海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部改正を行うことにより対処するということで、ただいま御提案を申し上げ、御審議を願っているところでございます。環境庁等の関係につきましては、この法律の附則でもって必要な手当てをしてまいりたいというふうに考えております。
#99
○土井委員 外務省の方はどうお考えですか。いまのその法律一つを改正すればそれで事足りるというふうにお考えなのか、それとも、関連する法律がほかにあるという御認識なのか。その辺はいかがですか。#100
○遠藤説明員 お答え申し上げます。基本的には海洋汚染防災法でございまして、あと省政令で必要なものは手当てをしていきたい、こういうふうに考えております。
#101
○土井委員 ちょっと、遠藤さん、それはいま言っている質問に対してのお答えになってないと思いますよ。そうすると、いまの海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律一つを変えればもう事足りるという御認識なんですか。
#102
○遠藤説明員 私が承知しています限りでは、法律といたしましては海洋汚染防災法だけでございます。#103
○土井委員 それでは、現在、法の改正の上では、ほかの国内的措置というのは何ら考えられない、それで十分に事足りるという御認識ですね。そうですか。#104
○近藤説明員 海洋汚染防止法の改正ですべて足りるというふうに考えております。#105
○土井委員 これは非常に問題が今後いろいろあるだろうと思います。論議を呼ぶだろうと思いますが、これで質問を終わります。#106
○竹内委員長 ちょっと速記をとめて。〔速記中止〕
#107
○竹内委員長 速記を起こしてください。これにて両件に対する質疑は終了いたしました。
─────────────
#108
○竹内委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。まず、千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。
本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#109
○竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。次に、商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。
本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#110
○竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#111
○竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。─────────────
〔報告書は附録に掲載〕
────◇─────
#112
○竹内委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。この際、海事関係条約に関する件について決議をいたしたいと存じます。
本件に関しましては、理事会におきまして各党間の協議が調い、案文がまとまりました。
便宜、委員長から案文を朗読いたし、その趣旨の説明にかえたいと存じます。
海事関係条約に関する件(案)
海事関係条約を締結するにあたり、政府は左の事項につき適切な措置を講ずべきである。
記
一 国際協力に寄与するために、寄港する外国船舶につき海事関係条約の基準が確保されるための監督措置に十分配慮すること。
一 いわゆる丸シップに対する特例措置を可及的速やかに本則にもどすため、船舶の安全を確保し乗組員の労働条件を改善することを今後とも関係者の意見を尊重しつつ取り組むこと。
一 乗組員船員設備の充実、日本人船員に対する船員保険適用等が確保できるよう日本籍船に対する対策指導を行うこと。
一 海事関係条約を実施するにあたり、国内措置の上で更に十分なる体制を確立すること。
一 定期船同盟行動憲章条約の批准促進に努めること。
右決議する。
以上でございます。
お諮りいたします。
ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#113
○竹内委員長 起立総員。よって、海事関係条約に関する件は本委員会の決議とすることに決しました。この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣安倍晋太郎君。
#114
○安倍国務大臣 ただいま採択されました御決議につきましては、政府としてその御趣旨を十分尊重し、今後一層の努力を重ねてまいる所存であります。#115
○竹内委員長 お諮りいたします。ただいまの決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#116
○竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。────◇─────
#117
○竹内委員長 次に、宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定の締結について承認を求めるの件、宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約の締結について承認を求めるの件及び宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約の締結について承認を求めるの件の各件を一括して議題といたします。これより各件について政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣安倍晋太郎君。
─────────────
宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定の締結について承認を求めるの件
宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約の締結について承認を求めるの件
宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約の締結について承認を求めるの件
〔本号末尾に掲載〕
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#118
○安倍国務大臣 ただいま議題となりました宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。この協定は、いわゆる宇宙条約の内容を一層具体化するために昭和四十二年十二月に国際連合の第二十二回総会において採択された後、翌昭和四十三年四月に作成されたものであります。この協定は、同年十二月三日に発効し、現在七十六カ国が締結しております。
この協定は、宇宙飛行士が事故等により緊急着陸した場合における宇宙飛行士の救助及び宇宙飛行士の打ち上げ国への送還並びに宇宙物体の回収及び打ち上げ国への返還等について定めております。
わが国がこの協定を締結することは、宇宙活動に関する国際協力に積極的に貢献する見地から、また人道上の観点からも有意義であると認められます。
よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
次に、宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
この条約は、いわゆる宇宙条約の内容を一層具体化するために昭和四十六年十一月に国際連合の第二十六回総会において採択された後、翌昭和四十七年三月に作成されたものであります。この条約は、同年九月一日に発効し、現在六十七カ国が締結しております。
この条約は、宇宙物体により引き起こされる損害について、宇宙物体の打ち上げ国の責任、損害賠償の請求の手続、賠償額算定の基準等について定めております。
わが国がこの条約を締結することは、宇宙活動に関する国際協力に積極的に貢献する見地から、また、宇宙物体により引き起こされる損害についての迅速な賠償を確保する上からも有意義であると認められます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
最後に、宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
この条約は、いわゆる宇宙条約の内容を一層具体化するために昭和四十九年十二月に国際連合の第二十九回総会において採択された後、翌昭和五十年一月に作成されたものであります。この条約は、昭和五十一年九月十五日に発効し、現在三十一カ国が締結しております。
この条約は、打ち上げた宇宙物体について、国内登録制度を実施すること及び国際連合事務総長に情報を提供すること、宇宙物体の識別に関する国際協力を促進すること等を定めております。
わが国がこの条約を締結することは、宇宙活動に関する国際協力に積極的に貢献する見地から有意義であると考えられます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
#119
○竹内委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時五分散会