1982/04/15 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 法務委員会 第7号
#1
第098回国会 法務委員会 第7号昭和五十八年四月十五日(金曜日)
午前十時十一分開議
出席委員
委員長 綿貫 民輔君
理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君
理事 羽田野忠文君 理事 稲葉 誠一君
理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君
今枝 敬雄君 大西 正男君
木村武千代君 森 清君
石橋 政嗣君 鍛冶 清君
安藤 巖君 林 百郎君
田中伊三次君
出席国務大臣
法 務 大 臣 秦野 章君
出席政府委員
法務大臣官房長 根岸 重治君
法務省民事局長 中島 一郎君
委員外の出席者
法務省民事局参
事官 濱崎 恭生君
大蔵省主税局税
制第一課長 滝島 義光君
大蔵省銀行局総
務課長 尾崎 護君
建設省計画局不
動産業課長 斉藤 衛君
法務委員会調査
室長 藤岡 晋君
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委員の異動
四月十三日
辞任 補欠選任
亀井 静香君 渡辺 省一君
木村武千代君 石田 博英君
同日
辞任 補欠選任
石田 博英君 木村武千代君
渡辺 省一君 亀井 静香君
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四月十二日
国籍法の一部改正に関する請願(河上民雄君紹介)(第二一七七号)
刑事施設法案の廃案に関する請願外一件(安藤巖君紹介)(第二二〇六号)
同(浦井洋君紹介)(第二二〇七号)
同(栗田翠君紹介)(第二二〇八号)
同(榊利夫君紹介)(第二二〇九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
建物の区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案(内閣提出第四四号)
────◇─────
#2
○綿貫委員長 これより会議を開きます。内閣提出、建物の区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林百郎君。
#3
○林(百)委員 本法案は、マンションというような近代的な、民法の制定のころ想像もしなかったようなこういう新しい住宅の方式が出てまいりまして、それに対する法的な規制をするということなものですから、いろいろ問題点があるし、それからどういう意味か、その規定づけもなかなかむずかしい点もありますし、それから行政的な部面で指導しなければならない部分も出てきますので、法律的にだけ割り切れるかどうかという問題もあると思うのです。私は、最初に建設省の方にお尋ねしたいのですが、専用使用権というのがありますか。これは、敷地や建物の一部に特定の区分所有者かあるいは分譲業者が専用使用権を持っている。たとえば自動車の駐車場みたいなものですね。そういうようなものはあるのか。これは一般的にまだなじみない言葉ですが、占有権というのはありますが、もっぱら用いる使用権ですね。駐車場などですね。それが契約書の中には明記してあると言っているのですが、契約にはいろいろの条項がありますから、譲り受ける方ではその専用使用権について詳しいことがなかなかわからなくて契約を結ぶものですから、後になって何だ駐車場は使えないのかというような問題もあって、いろいろのトラブルがあるわけです。
今回の改正案ではこの問題について触れていないのですけれども、法務省の方は契約の自由ということでそれは契約当事者の間で十分了解が成り立っているはずだと推定されるというようになっていますが、実際はそういうことになっておらないので、このことが非常に問題になっておりますが、このことについて何か行政的な手だてが講じられておりますか。
#4
○斉藤説明員 いま先生御指摘ございましたように、専用使用権、特に駐車場の使用等をめぐりまして過去にもいろいろトラブルがございました。行政的な対応といたしましては、古くは五十四年になりますが、マンションの管理通達というのを出しまして、専用使用権をめぐるトラブルが非常に多いのでやはりその権利の内容というようなものをしっかりさせるようにというような趣旨の通達を出しておりまして、さらに五十五年に入りまして、国会の方でも御審議を賜りまして宅建業法の一部改正を行いました。その中では、業者の方が取引をする際に説明をする重要事項を明記してあるのでございますが、その中の一項目といたしまして、専用使用権等があるものにつきましてはその権利内容を十分に説明するようにという趣旨が明記されるに至っているわけでございます。
さらに、最近におきましては、管理規約等につきましてより権利内容あるいは使用料の他との明確化、処分の明確化等につきまして明記するような標準管理規約も制定をいただきまして、関係業界の方に周知徹底を図っているところでございます。
#5
○林(百)委員 御承知かと思いますが、専用使用権については、固定資産税、都市計画税、光熱費、水道料等は区分所有者が払っていて、そして使用権だけは規約によって不動産業者とか一部の区分所有者が持っているということで、マンションの一番上のところへキャバレーの広告などがあったという例もあるわけです。そこで法務省の方の見解としては、どういうことなんですか、これは要綱試案の説明では「要は、分譲に際しそのことが購入者に十分理解されれば足りること」と言っている。十分理解されるという実態はあるとお考えですか。条項がいろいろあって、その専用使用権の条項まで目を通して理解するということが譲り受け人には能力的に言ってもなかなかむずかしい場合があるわけなんです。
いま建設省の方では、行政的に特別に重要事項として説明するようにという行政指導をすると言ったのですが、法務省の方としてはこの点についてはどうお考えですか。
#6
○中島政府委員 確かに関係者がこの区分所有関係にふなれでありました初期のころには、そういう専用使用権というようなものをめぐりましていろいろトラブルもありまして、これが訴訟になったという例も幾つかあるわけでありますけれども、だんだんに分譲業者の方も購入者の方もそういったものについての意識が高まってまいりましたために、取引に当たっては専用使用権の有無について分譲業者の方は説明をする、購入者の方はその点についての質問をするというようなことで、だんだんトラブルがなくなってきておるように聞いております。それに加えて、先ほど建設省の方からお答えがございましたように、宅建業法の改正によりまして、この事項は重要事項として業者は告知しなければならないということになりましたために、義務としてこの点の告知が法律で明定されたというようなこともありまして、最近ではこの関係のトラブルというものは非常に減ってきておる、なくなってきておるというふうに私どもは理解しておりますが、なお一層こういう問題について関係者が十分に理解をされまして、トラブルを起こさないようにあらかじめ決めるべきものは決める、告知すべきものは告知するという慣行が一層確立されるようにと期待しておるわけでございます。
#7
○林(百)委員 この点はまだトラブルが多いように私たちは聞いておりますので、建設省の方もひとつ行政指導をしていただきたいし、法務省の方も建設省と協力して、そういうことのために駐車場がないとか、あるいはいつの間にかマンションの上に専用使用者の権限に基づいてキャバレーの広告が出ていた、そういうことのないような指導をぜひ、行政的な面ですけれども、していただきたいと思うのです。それと絡んで、敷地利用権の問題なんですが、三十二条、二十二条によりますと、不動産業者は公正証書によって最初は規約を定めることができるのですが、その規約に別段の定めがない限り区分所有者が敷地利用権を分有するということになるわけです。しかし、これは規約によって敷地利用権を不動産業者――最初はもう建物も全部不動産業者が持っているわけですが、公正証書によってその専有面積の割合を左右することができるので、要するに不動産業者が、所有権は別としても敷地の利用権を大幅に持つという定めをする可能性があるのではないかということが心配されるのですが、その点はどうでしょうか。これは二十二条によっても、ただし、規約に別段の定めがある場合、一項、二項も。だから、規約によって、この敷地の利用権は必ずしも区分所有者の専有部分に比例しなくて、左右される可能性が出てくるのではないですか。それはチェックしなくていいのでしょうか。
#8
○中島政府委員 まず二十二条の第一項のただし書きでございますけれども、二十二条は専有部分と敷地利用権の一体性という原則を採用いたしまして、原則は「分離して処分することができない。」ということにしたわけでございます。「ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。」と申しますのは、たとえば区分建物が非常に小規模であって、一体化を図るほどのことはない、別々に分離するという現在の制度のままでいいというようなケースもございますので、そういう例外を規約で定めることができるということを二十二条の一項ただし書きは定めておるわけでございます。最初に分譲業者等が専有部分の全部を所有しております場合には、公正証書によってこの規約を設定することができるわけでありますが、もし分譲業者が非常に不合理な別段の定めをいたしました場合には、そういう建物は購入者が出てこないということになるわけでありますから、購入者がおかしなと申しましょうか、そういう建物は買わないわけでありますから、いま申しましたような不合理な規約が出てくるということは心配しなくていいのではないかというふうに考えております。
それから第二項は、敷地の利用権の持ち分割合は、原則は専有部分の床面積割合によるわけでありますが、これがたとえば面積が非常に端数がある、小数点以下の端数があるというような場合に、床面積割合そのもので全く修正をしないということになりますと大変複雑な数字関係になりますので、それを修正するとか、あるいは床面積は同じでも大変建物の価格に差がある場合には、そういった価格を反映させるために専有部分の価格割合にするとか、あるいは床面積が各戸それぞれ非常に似通っております場合には、一戸についての床面積割合でなくて平等に割り当てるとかというような特別の定めをすることができるわけであります。
それで、その点も三十二条によりまして業者等が最初に公正証書によって規約をつくるわけでありますけれども、業者としてはそれを分譲するわけでありますから、これまたおかしな規約をつくっておいたのでは購入者があらわれないということでありますから、その点につきましても三十二条の規定による規約についておかしなものが出てくることは心配する必要がない、こういうふうに考えております。
#9
○林(百)委員 マンションの買い受け人がみんな民事局長みたいに法律的な知識がある人と限らないわけですよ。見て不利だからそれは買わないでしょうなんてそういうことでなくて、この分譲業者が三十二条で最初のときは公正証書で規約を決めることができる、また規約の内部には分離処分の禁止の例外もあるというようなことになれば、これはどうしても分譲業者の利益のためにこれをてこにしていろいろ区分所有者の権利を動かすことができるようなことになりはしないかということが心配されるわけですが、たとえば五分の四とか四分の三というような数字が後から出てくるのですが、こういうことの数字の左右もこれをてこにして使われる場合もあるのじゃないかというふうに心配しているのです。そうすると、あなたは分譲業者がそういう不利な条項を入れたとすれば、買い受け人はよく条項を読むからそういう不利な分譲については買い受けないだろう、そういう御意見ですか。そういうことでこれは全うされるかどうか、ちょっと疑問だと思うのですね。
#10
○中島政府委員 最初の分離処分可能の点でありますが、これは余り小規模な建物にまでこの一体性の原則を強制することはどうかということで、こういった二十二条の一項ただし書きというような規定が設けられたわけであります。それから二十二条の二項の方でありますけれども、これは専有部分についてそれに敷地利用権としてどういうものがついておるか。所有権がついておるのか、賃借権がついておるのか、地上権がついておるのかというような問題、あるいはそれが所有権にしろ、地上権にしろ、その範囲はどれだけであるのか、敷地の範囲はどこまであるのか、それからそれについての自分の持ち分は一体どうなっておるのかということ、これはもう重大なと申しましょうか、売買契約の内容としてはもう中核的な問題でありますから、その点について無関心で専有部分だけ見て買うということは考えられないのではないかというふうに思います。
したがいまして、その点について敷地権が当然床面積割合ならばつくべきであるはずの持ち分が半分しかついてないという場合に、それにふさわしい対価を払って取得するわけでありますから、その点についての心配はいたしておりません。
#11
○林(百)委員 民事局長は法律の専門家ですから、安心して、そういう場合は占有権あるいは地上権等があって利用できないものの架空的な所有権だけ譲り受けても、それはそういう人はないだろうというようなことをおっしゃっていますが、私はやはりマンションを買うような人は所有権と占有権が分離されている、抽象的な所有権はあっても占有権は分譲業者が持っていますというようなことが言われても、そのかわり値段はこうしますなどと言われれば、私は買うのではないかと思うのですよ。だからこれはやはり分譲業者の意見が相当反映しているのではないかというように思うわけですが、そこでこれは建てかえの場合についても要綱より分譲業者の意見が大分入り込んでいるのですよ。だから、それと関連して私は後で質問するのですが、そういう心配がこの法案の中にはありますので、それで聞いているわけですが、一応局長がそうおっしゃるなら、それでこの問題だけにこだわっておるわけにいきませんが……。それで、その次にはたとえば建てかえの場合、法務省の要綱試案では十分の九以上ということも考えられるということが説明では書いてあるわけですね。堅固な建物については六十年、その他は三十年経過したもの、私の調べではそういうことになっているようです。これは私の調べですから、試案がこれと違っていたら説明してください。
それから、建てかえの決議の効力については、これは裁判所の許可に係らせるものというふうになっていたのですね。私がいま言ったのは試案ですが、これが一月二十五日の要綱に至ると相当の期間を経過した建物という表現になって、十分の九が五分の四になっている。五分の四というと、二割ですからね。百戸のうち二十戸ですから、百戸のうち二十戸反対があるという――ゆうべも何かテレビでやっていたのですが、特にお年寄りの人ですね。お年寄りの人は、建てかえといったって新しく建てかえたマンションを買うだけの資力がありませんから、あと余命五年か六年だ、できるだけここに住まわしておいてもらいたいという声が大分あるのですね。それが、この二割の反対者の数をとるということで救いを求めるというようにテレビでも言っていたのですが、そういうようなことがあって、新しく建てたマンションの買い受けの資力のないような人、それから積立金もないような人については、この数字というものは非常に重要な影響力があると思うのですよ。それが最初十分の九であったのがどうして五分の四になったのか、その経過ですね。
それから、六十年、三十年の経過が相当の期間に、相当の期間も最後には全くなくなってきたし、それから決議の効力を裁判所の許可にかけるという点もなくなってきたのです。この変化はどうしてこういうふうになってきたのですか。
#12
○中島政府委員 試案とそれから現在の条文とをごらんいただきますとおわかりいただけると思うのですけれども、試案の段階の方が建てかえの要件が緩やかになっておるわけであります。現在の法案での建てかえの要件というのは、要するに建物が経済的社会的に見てもう存続させることが不合理になっておるという非常に極端な場合に限っておるわけでありますが、試案の場合には、建物の効用を高めるための建てかえというようなものも認めてはどうかというような段階でありましたために、もしそういう緩やかな要件のもとに多数決原理で建てかえを認めるとすれば、それは五分の四では足りないかもしれない、あるいは十分の九まで厳格に多数決をしぼるべきではないか、こういうことであったわけであります。ところが、この試案に基づいて各界の御意見を伺いましたときに、その結果建てかえについては両説あったわけでありますけれども、その土地の効用あるいは建物の効用を高めるための多数決による建てかえについては賛成される方もありましたけれども、消極的な御意見の方もあったということでありますので、今回はその要件は落としまして、やむを得ない場合多数決原理によって建てかえを導入しても多くの方の御賛成を得られるであろう、そういう要件にしぼったものですから、それならば五分の四の多数決でよかろう、こういう結果になったわけでございます。
#13
○林(百)委員 六十二条の「建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至つたときは、」ということはどういう意味ですか、「過分」というのは。「老朽、損傷、一部の滅失」、大体建てかえということになると相当の費用も要るのはあたりまえで、「過分」という抽象的な言葉ですと、もう過分だからといって不動産業者が建てかえましょう、建てかえましょうということができるんじゃないですか。具体的にどういうことになるのですか。#14
○中島政府委員 やはり建物でありますから、それが客観的に見てそれにふさわしい維持費用あるいは回復の費用というものがあるわけであります。それはもちろん建物の構造等にもよりましょうし、あるいはその時代、時代の社会通念というようなことによってもある程度幅のある概念であろうかとは思いますけれども、そこに一つの線というものは多くの人の通念としてあるというふうに考えておりますので、それを超えて「過分の費用を要するに至つたとき」という意味でございます。#15
○林(百)委員 非常に抽象的で、これは実際問題としてはどうなるかわかりませんが、一応記録にそうとどめておきましょう。売り渡し請求をして売り渡しを受けた場合、ここに賃借人がいた場合は賃借人の占有権はどうなるのですか。
#16
○中島政府委員 賃借人の賃借権、占有権については法律上は影響はございません。御承知のように、この区分所有法という法律は、区分所有者相互間の法律関係、その間の利害の調整を中心として定めておりますので、それ以外の第三者との法律関係については特に規定をしていないわけであります。ただ、老朽その他によって建てかえの必要があるという決議があったというような段階になりますと、専有部分の所有者から賃借人に対する解約の申し入れの正当事由があるというふうに認められる場合が多いのじゃなかろうか、少なくともそれに立ち退き料をプラスすることによって正当事由が存在するというふうに認められる場合が多いのではないかというふうに考えております。
#17
○林(百)委員 そうすると、話し合いで片づかない場合は、区分所有者が賃借人、占有者に対してまた別個の訴訟を起こして、建物を建てかえなければならないから賃借権は解約する、したがって立ち退いてもらいたいということをしなければ占有の解除はできないわけですね。#18
○中島政府委員 そのとおりでございます。#19
○林(百)委員 それから売り渡し請求をした場合、「時価で売り渡すべきことを請求する」とあるんですね。「時価」というのの中には、たとえば一階あたりで店を開いて営業していますね、その営業権というものはこの中に入るのですか。それとも区分の建物そのものと敷地の価格だけなんですか。#20
○中島政府委員 建物及び敷地利用権の客観的な価格に限られるというように考えておりますので、ただいま御指摘のような点は入らないと考えております。#21
○林(百)委員 そうすると、そこで営業を二十年なりしていて営業権が確立されてお得意もいろいろできているという人に、反対にもかかわらず建てかえということで売り渡し請求をされるということになりますと、憲法に規定されている営業した人の財産権というものはどうなるのですか。#22
○中島政府委員 この建てかえの制度は、区分所有者相互間で一部の者が建てかえに反対をしておる、一部と申しましょうか、五分の四以上ということでありますから大部分の者が建てかえを希望しておる、そしてそれについての要件も客観的には備わっておるという場合でありまして、たとえば公用で収用するというような法律関係ではございませんので、営業費、移転費その他一切を補償して出ていってもらうという制度ではないわけであります。したがいまして、法律に定めるような客観的要件があり、かつ五分の四以上の多数の者が建てかえの決議をしたという場合には、当事者、区分所有者相互間の公平ということから考えまして、客観的な建物及び敷地利用権の時価の補償によって建てかえ手続きを進めるということを考えておるわけでございます。#23
○林(百)委員 まあ、そう答弁すると思っていたんですがね。しかし、現実の問題としては非常に気の毒な問題ですね。そこで、売り渡し請求を受ける者、きのうのテレビでも言っていたんですが、大体お年寄りの人たちなんですね。もう老後もわずかだし、それから新しく建ったものを改めて買い受ける資力もないし積立金もないしというような人たちで、三十年なり何なりここに住んでいたんだから、せめて老後、自分の生涯だけはここで終わらしたいというような人が多いようです。きのうのNHKのテレビで見ましたがね。
そこで、これは大蔵省と建設省に聞くんだが、そういう場合、特殊な事情がある場合には特別の融資をして、新しく買い受けるような融資をするとか、あるいは新しいマンションを買い受けるための積み立てをしている場合、その積立金については所得からの免除をしてやって課税しないとかなんとかの保護をして、そして老後の買い受けの保証をしてやらないと結局年寄りの人だけが追い出されてしまう、あるいは主人が病気で寝ているような人だけが追い出される、かわって財力のある者が入ってくる。
ここにおいでになる皆さんは公務員の方が多いので、やめたときは退職金が出てマンションを買うかもしれません、あるいはそれを当てにして買うかもしれませんが、しかし、やめられてから十年から二十年過ぎた後にまたいま買ったものよりもっと大きなマンションを買わなければいけないという資力はどこから見出すことができるか。行政官なら天下りとかなんとかそれぞれのところへ下れますけれども、法務省なんていうのは天下りにも何にも、使い道があるかどうか私はよく知りませんけれども、困るのじゃないか。私は皆さんに同情してこの質問をしているつもりですけれども、そういうことはどうお考えになるのでしょうか。ちょっと心配なんですがね。建設省と大蔵省にお聞きします。
#24
○尾崎説明員 御質問のうち融資の部分についてお答え申し上げます。マンションを建てかえした場合の新しく建てかえされたマンションを取得するという場合には、それが住宅金融公庫の融資対象要件に合致しておりますれば住宅公庫から融資を受けられるわけでございます。具体的な例がどれに当たるか、個々によって変わってくると思いますが、一般的に考えられますのは、住宅公庫の融資の中に個人共同住宅資金というのがございまして、その要件に当てはまりますればその融資を受けられるわけでございます。
#25
○滝島説明員 お尋ねのうち課税関係につきましてお答えいたします。マンションあるいはマンションに限らず木造の家、自分の家をお買いになります場合には、修繕費とか将来の建てかえのための費用とかいうものについてはやはり自分の責任で積み立てをなさるのが原則であろうと思います。林先生が御指摘になりましたような事情を伺っておりますと、確かに気の毒なケースが出てくるのではないかなと私も思います。思いますが、お年寄りのお住まいの状況はまさにさまざまでございまして、マンションに住んでおられる方もありますし、マンションが買えないでたとえば木賃アパートに住んでおるというような方もおられるわけでございます。その中で、マンションにお住みになっておる方だけを取り上げまして、建てかえ資金の積み立てについて課税上の優遇措置をするということは別途問題が生じてくるのではないかなと思います。
お年寄りにつきましてはそういった個々の事情に応じた特別の措置を講ずるのではなくて、お年寄りであるがゆえの一般的な優遇措置、たとえば現在老年者控除とか、奥さんがお年寄りの場合の配偶者控除の上積みとか、あるいはお年寄りが受け取られます年金についての老年者年金特別控除とかいった一般的な措置によってカバーするのが適当であろうというのが私どもの考え方でございます。
#26
○林(百)委員 これは建設省に聞きますか、中島さんにお聞きしますか、要するに建てかえで一たん壊されたマンションから出た人がまた新しいマンションに移るという場合は、新築の費用は負担しなければなりませんが、そのほかの負担はどうなるのですか。私の方の計算だと、解体費を負担しなければいかぬじゃないですか、これはいいですかね。それから一時どこか借りるから、敷金を出したり、新しいマンションができるまでの間の住居費用もかかるわけです。こういうものがかかってきますから、相当の費用がプラスされたものを新たに負担しなければならないようになるのですが、この解体費などはどうなるのですか。#27
○中島政府委員 いまのお尋ねは、建てかえに参加する人の負担についてのお尋ねであると思いますが、その場合は、現在の建物を取り壊して新しい建物を建てるその建築費用は参加者の負担ということになろうと思います。一般の場合には敷地の一部を処分するとか、あるいは従来低階層の建物であったものを高層のビルに建てかえることによって、その付加されたものを他に処分するというようなことによって利益を生み出して、それによって建てかえ費用の一部または全部を賄うということが現在のところ多く行われておるようでありますけれども、建てかえに要する取り壊しあるいは建築費用はだれの負担かといえば、これは新しく建った建物、建てかえに参加する人たちの負担である、こういうことになろうかと思います。#28
○林(百)委員 相当の負担になるし、それからさっき大蔵省の税金関係の滝島さんですか、何かマンションに住んでいる人は生活にも相当余裕のある人だ、中流の人だ、それ以下の人のことを考えれば、いかにお年寄りでも特別な税制上の配慮をする必要がないというか、そういう制度を設けるわけにいかないと言いましたが、いまマンションに住んで、少なくとも三十年前にマンションを買った人とか、あるいは堅固な建物で四十年前にマンションを買った人はそうぜいたくな人じゃないのですね、その後時代が経過していますから。あなたの言うような余裕のある人なら一戸建てを買いますよ。それはぜいたくな何億円というマンションもありますし、上を見れば限りがありませんが、マンションを買う人は経済的に十分余裕があるのだから、下を見ればもっと気の毒な人もあるから税制上の特別な配慮をしなくてもいいというような考え方については、マンションに住んでいる人の今日の状態、今日の住宅事情を大蔵省ではもう少し認識されて、何らかの措置ができるなら将来検討する必要があるのじゃないかと思います。これは答弁しなくていいのですが、あなたの答弁でちょっとひっかかる点があるものですから。その次に、この条文の中の義務違反の問題なんですが、この義務違反も最後にいけば追い出されてしまうわけで、これは具体的な例を挙げなくていいのでしょうか、こういう抽象的な例だけで。きのうのテレビや新聞の主張などを見ますと、騒音だとか、それから猛獣をペットにしておるとか、そんな例がありましたが、具体的な例としてはどういうことになるのですか。六条の一項にあるのですが、これは「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する」と、非常に抽象的なんですね。最初の行為の停止処分はだれでもできるわけなんで、そうすると、これは嫌がらせに使われる可能性もあるので、やはり具体的な例を挙げて、その他とかというふうにした方がわかりいいと思います。例が非常に抽象的だと思うのですが、中島さんの方としては具体的にはどんなことを考えていますか。
#29
○中島政府委員 まず法案の第六条の条文が問題になろうかと思いますけれども、これは現行法の五条と全く同一の条文でございます。表現その他も現行法どおりということでありますが、たとえば「建物の保存に有害な行為」ということでありますから、共用部分の一部を取り壊して建物全体の安全を害するというか安全性を低くする行為でありますとか、あるいは専有部分に危険物とか極端な重量物を持ち込むような行為が「建物の保存に有害な行為」に当たるのではないかと考えております。それから「その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」ということになりますと、たとえば騒音を発したり、あるいは悪臭を発散させたりして他の区分所有者の生活を著しく妨害する行為のようなものがこれに当たると考えております。
#30
○林(百)委員 これはいろいろな場合があると思いますから、具体的な例を挙げろといったって挙げ切れない部分があると思いますが、もう少し具体的にやっておかないと、六条で現行法にあるといっても、五十七、五十八、五十九が新しく設けられましたから、最後には追い出されるわけです。これはその人の居住権を奪われることになりますから、よほど厳密に考えなければならないと思うのです。そこで五十七条に戻ります。行為の停止のところですが、「必要な措置を執ることを請求することができる。」とある。「必要な措置」とはどういうことですか。
#31
○中島政府委員 その前にあります「その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置」と続くわけでございます。#32
○林(百)委員 続くことは結構ですが、「するため必要な措置」とはどういうことですか。具体的にこういう場合はこういうことをするとか、こういう場合にはこういうことをするとか……。#33
○中島政府委員 停止でありますれば停止を命じてもらう、それから結果がすでに生じておりますればそれを除去させる、予防ということでありますれば、たとえば騒音に対しては防音装置をしろということを命じてもらう、こういうことであろうかと思います。#34
○林(百)委員 たとえば、いまだとどこでもテレビはありますし、音楽もやりますね、これをとめる。人によっては非常に敏感な人もあるし、人によってはある程度の音を出しても迷惑に感じない人もあるのですが、そういう場合に、これが区分所有者相互の嫌がらせの手段として乱用されて、だれかににらまれたら毎日その停止を求められる、あるいは除去を求められる、もういたたまれなくなる。そういうようなことをチェックする方法はないのですか。#35
○中島政府委員 この五十七条の規定に基づいて訴訟を提起するためには、集会の決議によらなければならないことになっておりますので、訴訟の提起ということになれば、かなり慎重な手続を踏むことになります。隣人同志で、隣の騒音がうるさいから文句を言うということでいろいろトラブルが起こっておる例もございますし、あるいはそれが傷害事件、殺人事件にも発展したようなケースも新聞紙上で見たことがございますが、これはこの五十七条の全体の利益のための請求権とは別個に、個人が被害を受けたことによってそれに対する差しとめ等の請求をするということでありますから、五十七条とは関係なしに存在しておる権利である、あるいはそれが権利かどうかわかりませんけれども、制度であると考えております。#36
○林(百)委員 時間がありませんので、次に移らしていただきます。五十八条の「使用禁止の請求」ですが、「相当の期間」というのは、だれが、どう決めるのですか。
#37
○中島政府委員 その使用禁止によって円満な共同生活の維持を図ることが可能であるような「相当の期間」ということでありますから、これはケース・バイ・ケースで一概に言えないことであろうかと思います。ただ、その区分所有者は依然として所有権を持っておるわけでありますから、所有権を持っておりながら自分の所有物を使用できないということが五年も六年もということはちょっと事柄の本質に反するのではないかと思いますので、二、三年が限度ではなかろうか。さりとて余り短い期間ということでありますと、その使用禁止によって円満な共同生活の維持を可能にするという効果がございませんので、余り短い期間も考えられないということであります。ただ、どこが決めるのかということになりますと、これは使用禁止を命ずる裁判所が具体的事案に即して決めるということになります。
#38
○林(百)委員 これは強制執行はできるわけですか。訴訟としては不作為を求むる訴訟になるわけですね。使用禁止ということになると、どういうことになるのですか。要するに、使えないというのだから、そこを出なければいけないのですか。所有権だけはあっても、その区分所有者は自分の受けている区分を使うことができなくなって、あなたの言うように二年か三年はよそに出なければいけない、そういうことになってしまうのですかね。#39
○中島政府委員 みずから使用することはできないということになります。したがって、他に処分するか、あるいは第三者に賃貸しをするか、あるいは空き家にして置いておくかという選択が認められることになろうかと思います。#40
○林(百)委員 執行はどうなるのですか。もし裁判が確定しても、私はここしか住むところがありませんから住んでいますということになると、どうするのですか。#41
○中島政府委員 先ほど御質問にもありましたように、非代替の不作為義務を命ずる裁判ということになろうかと思いますので、その執行は民事執行法百七十二条による間接強制の方法によることになろうと思います。そうなりますと、執行裁判所が債務者に対しまして「遅延の期間に応じ、」「債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。」こうなっておりますので、これによって使用禁止を間接強制するということになろうかと思います。#42
○林(百)委員 次に五十九条の競売の請求ですね。ここは、訴えを起こす場合、請求の趣旨はどういう趣旨になるわけですか。#43
○中島政府委員 競売申し立て権を付与する、原告に競売申し立て権を付与してもらいたい、こういう趣旨の訴訟になると思われますので、たとえばでありますけれども、原告は別紙目録記載の専有部分の区分所有権及び敷地利用権を競売することができるというような趣旨の表現になるのではないかと考えております。#44
○林(百)委員 そうすると、判決が確定したから直ちに裁判所が競売に移行するのではなくて、改めて競売の手続を請求することになるわけですね。それで、そういう場合に、ここに賃借人か何かいた場合はどうなるのでしょうか。賃借人の場合は。
#45
○中島政府委員 最初のお尋ねについてはそのとおりでございます。賃借人がおりました場合には、賃借権つきの所有権を競落人は取得する、対抗できる賃借権であれば賃借権つきの所有権を取得する、こういうことになると思います。
#46
○林(百)委員 そうすると、賃借人はいいのですが、賃借人が転貸していた場合はどうするのですか。又貸していた場合は。それもやはりくっつくのですか。#47
○中島政府委員 同じことであろうと思いますが、競落人に対抗できるかどうかということで決まると思います。#48
○林(百)委員 それから占有者に対する引き渡し請求、この場合はいまの問題が出てくると思うのですけれども、この場合は賃借人や転借人に対してはどういうことになるのでしょうか。六十条の場合ですね。#49
○中島政府委員 当該違反行為者の賃借権あるいは使用借り権を消滅させて、その前の権利者の権利を復活させる、こういうことになろうと思います。#50
○林(百)委員 競売をしたという場合は、時価よりは通常は非常に安い価格で競落されるということは考えられますか。ことに、そこに賃借権なり転借権がついていたとすれば、非常にむずかしいことになりますので、そういうことは考えられますか。#51
○中島政府委員 賃借権なり転借権なりがついておるために空き家価格よりも低いということは、所有者がそういう処分をしたわけでありますから、これはやむを得ないと思います。競売手続の方が任意に売却するよりも価格が低くなるじゃないかという点につきましては、区分所有者としては任意に売却すればいいわけでありますから、競売を受けるなりあるいは任意に売却するなりという選択は認められておるわけであります。
#52
○林(百)委員 万一競売した場合のことを私は聞いたのです。任意に売却すれば、それは当事者の契約によってそういうことになると思いますがね。こういうように何か義務違反の行為というのが最後にはこういう結果になりますので、これは義務に違反するというようなことでいやしくも権利が乱用されたり嫌がらせになったり、あるいは不動産業者の思惑でこのことが行われないようにしていく必要があると思いますが、その点を念のために申し上げておきます。後でまたこれは総括的に法務大臣に聞きたいと思いますが、秦野さん、後で聞きますから、いま寝ていても結構です。
日弁連の方から、管理者の訴訟行為の点の代行については、信託法に基づく訴訟行為の信託の禁止の条項あるいは非弁護士の取り締まりの法律の規定に違反してくるのではないかというような意見が出ておりますが、この点についてはどういう考えをお持ちですか。
#53
○中島政府委員 二十六条の四項という規定を新設いたしまして「管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。」という規定を法案で新設をいたしておりますが、これはたとえば管理組合と申しましょうか、区分所有者の団体がいろいろと第三者と取引をする、その履行を求める場合に訴訟を起こす場合でありますとか、あるいは区分所有者に対して管理費等の取り立てをするという場合に訴訟を起こす必要がある、そういう場合に管理者に原告となる道を開いたわけでございますが、これに対しましては、確かにいまおっしゃいましたように日弁連の一部の方から異論もあったわけでございます。その御意見によりますと、このような訴訟追行権は区分所有者から選任された管理者に対してのみ認めるべきであるとか、あるいはあらかじめ規約によって包括的に与えることはしないで、個別的な集会の決議によって授権するという方法のみを認めるべきであるとかいうような御意見があったわけでありまして、その点は法制審議会においても十分に検討されたわけでございます。いろいろ検討されました結果、この制度を認めることにいたしましても、日弁連御指摘のような弊害は生ずるおそれは現実問題としては考えられないということであります。それよりも、このような制度の必要性が高いと申しましょうか、このような制度を設けるメリットが大きいという意見が大勢を占めまして、答申としても一般的に管理者に訴訟追行権を与えるべきであるという御答申をいただいたわけでございます。
ただ、そのうち、先ほどから問題になっております五十七条以下の違反行為の差しとめというような重要な訴訟についてまで管理者に一般的に訴訟追行権を授権するということの当否ということになりますと、これは若干問題もないわけではない、日弁連の御意見も一つの考え方であるというふうに思いましたので、この法律案におきましては、差しとめ訴訟については五十七条以降で別に規定を設けまして、これを管理者が提起するためには必ず個別的な集会の決議によらなければならないということにしたわけであります。でありますから、その限度で答申の内容は修正をされておるわけであります。それで、こういった点を日弁連にも御説明をいたしまして御了解を得たところでございます。
#54
○林(百)委員 時間が参りましたので、最後に法務大臣にお聞きしますが、あなたは私の質問を全部聞いていたわけではないので、私ごく簡潔に要約しますと、この法案は、やはり義務違反ということで最後には意思に反して競売までされてしまう。おまえは騒がしいのをいつまでもやめないというので、裁判所に競売を求めて競売までして追い出されるというようなことにもなりますし、また建てかえも、先ほど言いましたように、老齢の人が住んでいて新しいマンション、これはもういまの時代ですから価格は相当のものになりますから、買い受ける資力もない人はやむを得ず出なければならないということで、初めは十分の九だというような意見もあったのですが、これが五分の四になるし、それから建てかえの期限は三十年から六十年の期間というのがあったのが期間の経過は全然ないということ、それから、一応建てかえるかどうかは居住者の将来の生活にも影響するから裁判所の許可にかけろというのがこれも外されたというようなことで、心配になるのは不動産業者というか、それが相当の金を持っていますから、それで五分の四とか四分の三というような権限を自分で持つとか、あるいはその意向をくんだような手先の人をつくるとか、あるいは新しくつくった方がまだ一応もうかるとか、あるいは専用使用権を譲渡して不動産業者がもうかるとか、不動産業者がこれに介入して新たなもうけをすることに利用される危険と思われる点があるわけですよ。いやしくもそういうことのないように、やはり居住権というのはその人の生涯にとって決定的に大事なものですから、これが不動産業者にいろいろに悪用されて居住権が脅かされることのないように、新しい居住体系ですから新しい立法が必要だということも私はあえて否定はしませんけれども、そういうことのないような監視を十分にされることが必要だと思います。これは行政的なことにもなると思いますが、そういう行政的な指導とかチェックというようなものを一々法律で決めるということになると技術的に非常にむずかしいと思いますが、そういう点を法務省としても、これは建設省もやるでしょうけれども、十分監視してもらいたいと思うのです。
そういう点について最後に大臣の意見をお聞きして、私の質問を終わりたいと思うのです。
#55
○秦野国務大臣 いま少数者の利益という問題についての、総括して言えばそういう立場に立っての御意見だと思うのです。その点については、この法案の制定の経過の中で多数決主義の問題についてもいろいろ意見もあって、結局いまの形のように決まったわけですけれども、いろいろ論議があって、要するに不動産業者とか、そういった持てる人たちの立場で問題が運び切らないように裁判官の判定にかなりゆだねています。裁判官の判定にゆだねたということは、そういうチェックは法律と裁判以外の規約とかそういうことだけでは十分でないという意味が結構込められていると私は思うのです。手続は非常に煩瑣になるような感じになるけれども、そういうことにしたゆえんというのは少数者の利益を考慮に入れてのことであって、五分の四とか四分の三とかいうものは、立場からいけばもっと少数者を保護するような数にした方がいいという御意見もあったかもしれませんが、いろいろ論議の末そういうことになった。
お説のようなことへの配慮については運用上の問題になってきますから、法務省だけではなくて、建設省とか、それからまた金融の問題なら大蔵省とか、そういう立場もあろうと思いますが、政府としても総合的な、役所の各セクショナリズムに立たないで、それぞれの分野でそれぞれの立場を自覚して、全体としてこの法律が決して少数者の利益を無視するようなことにならないように十分に配慮していくような相談もするし、指導等においてそういう点については遺憾がないようにしてまいりたい、こう考えております。
#56
○林(百)委員 法務大臣、事は憲法で規定されている財産権との関係もありますし、数字だけで決めることができるかどうかという問題もありますので、いまおっしゃった趣旨をぜひ貫徹してもらいたい、こう思うのです。これで私終わります。
#57
○綿貫委員長 稲葉誠一君。#58
○稲葉委員 最初に二、三余り関係ないといえば関係ないことをお聞きするわけですが、この区分所有法の一条、これを見ますと、現行法では「一むね」というのがひらがなで書いてあるわけでしょう。今度の場合には漢字で「棟」というのが書いてあるわけでしょう。これはどういうわけなんですか。#59
○中島政府委員 戦後当用漢字とかあるいは法律用の使える漢字というようなものがだんだんに変わった点もございまして、現行法をつくるときにはこの漢字が使えなかったのが現在では使えるようになったということでございます。#60
○稲葉委員 現行法を昭和三十七年につくったときには、民法二百八条を廃止したわけでしょう。二百八条は漢字で「棟」という字が書いてあります。それをひらがなにわざわざする必要もなかったのじゃないですか。当用漢字の関係ですか。わざわざひらがなにして、今度また漢字にしたわけでしょう。これはどういうわけなんでしょうか。#61
○中島政府委員 当時の民法二百八条は明治の条文でございますので、漢字が使ってあったわけであります。それを三十七年に区分所有法という新しい法律をつくりましたので、その際に法律用漢字として使えるものに限られておりましたので、ひらがなを使った。今回は改正でありますから、改正の際には表現その他を改正当時の漢字と表現に変えることになっておりますので、再び漢字を使った、こういうことでございます。#62
○稲葉委員 余り重要なことでもありませんからあれですけれども、これは当用漢字というのは決め方の法律上の根拠がどういうところにあるのかちょっとよくわからない。これは文部省のことかもわかりません。そうではなくて、これは戸籍関係も含むから法務省の管轄かな、まあそれはいいです。この提案理由説明の中で「集会の特別多数決議」という言葉が使ってありますね、最初の一ページのところでは。その後になりますと、二ページのところ、第五に云々のところでは「集会の決議」ということでありますね。片っ方が特別多数決議で片っ方が集会の決議というふうにしてあるのはどういうわけなんですか。
#63
○中島政府委員 一ページの「集会の特別多数決議、すなわち区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議」と書いてありまして、二ページのところには「区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数による集会の決議」ということでありまして、数字は違いますけれども、いずれもそれぞれのところにふさわしい表現であるというふうに考えます。#64
○稲葉委員 後の方は、やっぱり特別決議の特別というのが入る必要があるんじゃないですか。特別多数決議という言葉を特に使ったのはどういう意味なんですか。商法の場合などに、株主総会のあれやなんか特別決議だけではないんですか。多数という言葉が入っていますか、商法では。どういうわけですか。#65
○濱崎説明員 特別多数決議というのは法律の条文の用語としては一般に使ってはおらないわけでございまして、今回の改正法律案におきましても、特別多数決議という言葉は条文の上では使ってございません。ただ、これは提案理由説明ということで、内容を御理解いただきやすいようにという見地から文章を作成しておりますので、必ずしもそういうことにこだわらないで特別多数決議という言葉を使わせていただいているわけでございます。第二の方では特別多数決議という言葉を使いながら、第五の方ではそういう言葉を使っておらないということの説明でございますが、これは四分の三以上の多数決議も五分の四以上の多数決議も、御指摘のとおりいずれも特別多数決議でございますけれども、その四分の三の方は、第二それから第三、第四に同じ要件が出てまいりますので、四分の三をそれぞれの場所で繰り返すのが煩瑣であるという、そういう文章作成上の都合だけから、ここで第二の方で特別多数決議、すなわち四分の三以上の多数による決議という表現をいたしまして、第三、第四で同じそれを引用するという文章にいたした。第五は、五分の四というのはこれだけしかございませんので、五分の四以上の集会の決議という表現を使ったということでございます。
#66
○稲葉委員 言葉の使い方ですからどうでもいいようなものですけれども、第五のところもやはり集会の特別決議という特別が要るんじゃないかと思いますがね、理論的には。まあどうでもいいと思いますが。これは世間ではよくマンション法、マンション法という言葉を使っていますね。マンションという言葉の定義はどういうことですか。
#67
○中島政府委員 特にマンションについて、この法律がマンションに限って適用されるというわけでもございませんので、この法律ではもちろんマンション等についての定義というものは置いておりませんけれども、一般にマンションという場合には、やはり木造ではなくて、鉄筋あるいは鉄骨のコンクリートづくりあるいはブロックづくりというような構造が一つあるんじゃないかと思います。それから区分所有建物であって、主として居住の用に供されるというような性格というようなものが大体われわれの頭の中にあるわけでございます。
#68
○稲葉委員 区分所有という言葉が何となくなじまないような印象を与えるのですがね。これは三十七年の立法ですけれども、そのときにも出たかどうかわかりませんが、ほかの言葉は何か考えられないのですか。区分所有以外にもっとわかりやすい言葉というか、俗的な言葉と言うと語弊があるけれども、余り俗的になっちゃうと法律的にむずかしくなっちゃうから、結局ほかには考えられないのですかね。#69
○中島政府委員 三十七年以前から今日に至るまで余り別案というものを聞いたことございません。#70
○稲葉委員 私、これを見まして疑問に思いますのは、昭和三十七年の立法当時、ちょうど私は出ていなかったのですけれども、その当時から現在のようなことが問題となっておったんではないでしょうか。たとえば管理の適正化の問題についてこれは問題になっておったんじゃないでしょうか。ドイツ住宅法というのですか、オーストリアの住宅法の問題の中でもそういう規定がその当時あったんではないですか。これはドイツ住宅法の十八条、十九条、オーストリアの住宅法の十条にこういう規定がありますね。これは川島一郎さんの書いたものに出ているわけですから、そういう規定があったのですから、当時、当然今度の改正のような内容というものは論議されておったんではないのですか。それが一つですね。もう一つは、登記の問題で「専有部分と敷地利用権とは、原則として分離して処分することができないこととしております。」今度の法案でこうなるわけですね。これは建物区分の問題だし、不動産登記の方はまた別かもわかりませんけれども、それならば三十七年から今日に至るまでの中で、登記法の改正については別個に当然立案されて、もっと早い時期にされてしかるべきではなかったのでしょうか。
問題は、昭和三十七年の立法当時に当然ドイツやオーストリアの住宅法の関係が考慮されておったのですから、今度のような管理の適正の問題については議論をされておってしかるべきであって、将来を見通しておれば、そのときにその点が加わっておるのが普通ではないかというふうに考えられるのが第一ですね。
それから第二は、もうその当時から不動産登記法の改正という問題は当然考えられてしかるべきではなかったか。考えられてしかるべきであったとするならば、これは本法の改正とは別に不動産登記法の改正でも単独にその間にできたのではなかろうか、こういう疑問が当然出てきているわけですね。私には出てくるのですが、その点についてはいかがですか。
#71
○中島政府委員 まず第一点でございますけれども、三十七年の立案のための資料などを見ておりますと、かなりいろいろ問題点を洗い出し、諸外国の立法例なども調査をしておられます。したがいまして、今回問題になっておりますような点につきましては、多くの点につきまして当時すでに問題意識は持っておったようであります。特に、ただいま御指摘になっておりますドイツの法律の十八条、十九条というようないわゆる悪質違反者の排除の規定でありますが、こういうものは具体的にも検討されたように聞いております。しかし、一般的に申しまして、何と申しましても当時はまだ余り区分所有の実態というものも数も多くございませんでしたし、法律関係もそれほど複雑でなかった。たまたまあります区分所有建物も、百戸も二百戸もというような規模の大きいものはそれほど数がなかったこともありまして、まず新しい制度をつくる、区分所有法という新しい法律をつくるということに主眼があって、しばらく将来の実績を見てから考えればいいのじゃないかということで見送られたものも多かったように考えております。
それから、第二点の専有部分と敷地利用権の一体化の問題でありますけれども、当時は、建物と土地は全く別個の不動産であって、これを一体に処分しなければならないというような考え方はなかなか受け入れにくかったのではないか、思いつきにくかったのではないかと思います。登記の点もそれほど深く考えたわけではなかったのだろうと思いますけれども、今日のようないろいろな弊害が出てくるということは必ずしも当時はそれほど認識していなかったのではないかと考えております。
私が東京法務局へ参りましたのが昭和五十二年でありますけれども、当時東京等大都会におきましては、この問題がかなり真剣に議論されるようになっておりましたけれども、まだそのときは、問題の解消に何らかの手を打たなければならないという認識はありながら、それでは建物中心に登記を編成するのか、あるいは土地中心に登記を編成するのか、あるいは工場財団というようなものを類推してそういう土地と建物が一体化した財団のようなものを登記するのかというような辺を暗中模索しておる時代でありました。ようやくそれが専有部分中心方式で登記を考えようという段階になってまいりまして、そのためには実体法を改正しなければならぬ、そのためには法制審議会の審議が必要であるということで、五十四年にまずこの問題を御検討いただきまして、そして基本的な方針を出していただきまして、後は事務当局で具体的な技術的な登記の問題を検討してきたその結果が今回の法案に結実しておるというのが経過でございます。
#72
○稲葉委員 お話を聞いておりますと、じゃなぜ昭和三十七年に立法したのか、ちょっとよくわからなくなってくるのです。どういう必要があって立法したのか、私はちょっとわからないのですが、何を目的としてできたのか。#73
○中島政府委員 当時、現在の民法部会長であります加藤一郎先生が委員として参加しておられたわけでありまして、今回の改正に当たって当時のことをお書きになっておるのを読んだことがございます。当時はまだ区分所有関係というものが現実の法律問題として余り起こってきていなかった、しかし、どうも趨勢としてはこれから分譲マンションというものがどんどん建つのではないか、したがってそれを少し先取りする形で法制度を整備しておく必要があるのじゃないかということでこの区分所有法が制定されたというふうに読んだことがございますが、しかし、何分具体的な法律問題が余り出てきていなかった段階でありますから、それにしても管理者とか規約とかいう管理の仕組みをいろいろとつくり出して法律がつくられておるわけであります。#74
○稲葉委員 登記関係のことでお聞きをするのは、まず「区分所有建物とその敷地の一体的な管理を図り、」この意味が技術的にといいますか具体的にどういうことを指しておるのか。それから「かつ、区分所有建物に関する登記の合理化を図るため」ということですが、「登記の合理化」というのは具体的にどういうことを言われておるのですか。ただ繁雑な手続がなくなる、簡素化されることだけが合理化、こういう意味なんですか、ここの説明はどういうふうに理解したらいいのですか。
#75
○中島政府委員 専有部分と敷地の利用権と申しましょうか、敷地の持ち分は、現在でも実際問題として一括処分されておるのが通常といいましょうか原則と申しましょうか、ほとんど例外なしにそういう取り扱いが行われておるわけでありますけれども、しかし、法律上のたてまえとしては別々に処分の対象になっておる、したがって登記も別々にしなければならないということになります。したがいまして、建物の登記簿にも登記をしなければならない、土地の登記簿にも登記をしなければならないということになりますが、今回の改正によって一体化をすれば、それが土地の登記簿に登記をしなくてもいいという点も一つあります。それからもう一つは、土地の登記簿が敷地一筆について一つの登記用紙を備えておりますので、その一枚のといいましょうか、一体の登記用紙に共有持ち分の登記がその建物の専有部分の数だけ出てまいります。したがいまして、その登記簿が検索に非常に便利が悪い。ある専有部分を持っておるAという人の持ち分がどこにあるかということを探しますためには、登記簿を全部ひっくり返して見なければならぬということになるわけでありますから、登記を扱う登記所も事務処理上大変困っておりますが、利用される区分所有者あるいはその他の国民の皆さんが非常に迷惑をしておられます。これを専有部分と一体化をすれば、専有部分の登記は専有部分ごとに整理がしてありますから、その部分だけを見れば権利関係が明らかになります。したがいまして、これが登記事務を大変合理化するということになろうかと思います。
#76
○稲葉委員 その一体化というのは、建物の登記をすればそれに伴って、何万分の一かどうか知りませんけれども、その土地のものもその中に記載されるという意味なんですか。一体化という意味はそういう意味なんでしょうか。#77
○中島政府委員 建物の専有部分の登記を見ていただきますと、その表題部にこの建物にはかくかくの土地の何分の一の持ち分権が敷地利用権としてついておりますということが書き込まれますので、それが一体的になる、その後は一括処分される、したがいまして専有部分の建物登記簿さえ見れば建物と土地についての権利関係が明らかになる、こういうことでございます。#78
○稲葉委員 土地の所有権ならそれでいいと思うのですが、敷地利用権というのはこれまた物権なのか債権なのか、両方含むわけでしょう。そうすると、賃貸借の場合には地主の方の同意がないと登記できませんね。そういうふうになるわけでしょう。それで、賃借権の登記なんというのは日本ではほとんどないのじゃないですか。具体的にはどうやってやるのでしょうね。私の頭の中にありますのは、マンションならマンションを買う人は何も土地を買うことを頭に入れてないのじゃないでしょうか。そこの一つの建物の区分所有された部屋というか何というか、そういうものを買うということだけが頭にあって、土地のことを考えているわけじゃないのだから、土地のことまでそこに登記をしなくてもいいのじゃないかという頭が私にはあるのですが、そこのところは、しかし、そんなことを言ったら土地の所有者との関係が無権利状態みたいになっちゃっておかしくなっちゃうから非常にむずかしいところになってきますけれども、土地と建物を結局分離して処分することができないというけれども、マンションの場合に、何万分の一の土地の敷地利用権というか土地の所有権の持ち分というか、そういうものを無理にくっつけて考えなくてもいいように私は思うのです。どうもそういう時代が来るのじゃないかと思うのだけれども、私自身もその辺はちょっとよくわかりません。
そうすると、敷地利用権というのは一体どういうものなんですか。
#79
○中島政府委員 先ほど私、敷地利用権ということで申し上げましたのは若干不正確でありまして、敷地利用権ということになりますと、それは所有権の持ち分の場合もあり、地上権あるいは賃借権の準共有持ち分の場合もあるということになります。そのうち登記のできるものと申しましょうか、登記のある敷地利用権、これを敷地権と呼びまして、これを専有部分と一体化させるということであります。賃借権のうち、あるいは地上権でもそうでありますけれども、登記のないものにつきましては今回の問題からは対象外でございます。#80
○稲葉委員 日本の場合、地上権というのはほとんどないんじゃないですか。賃借権というのはあるけれども、賃借権の登記というのはほとんどないと見ていいですね、ないとは言わぬけれども。それは金融業者、銀行なんかがやる場合は賃借権の仮登記なんかよくやったりしています。私の疑問は、所有権というものと賃借権というものとは――賃借権は債権だと言われている、対人的色彩が非常に強いと言われている。しかし、だんだん不動産に関する場合では状況が変わってきている。賃借権は物権だという、大正のころに大審院の判事をやられた方で有名な判決を書いた方もいらっしゃるわけですね。そういうことでそう区別する必要はないんじゃないか、こう思うのです。だから、だんだん利用権というものは所有権というものと性質が同じような状況になってきているのではないか。ちょっとお聞きしたいのは、たとえば民法の二百三十四条、相隣関係がありますね。五十センチ離さなければいけないでしょう。それで妨害があれば排除請求ができますね。その場合に、本来は所有権同士の場合が相隣関係ですね。だけれども、甲の方の家は所有権だけれども、乙の方の家は所有権ではない、賃借権だ、こういう場合でもその二百三十四条の第二項の適用があって、妨害排除の請求ができ、出てきた建物をきちっと排除するとか切断するとかという請求ができるのですか、できないのですか。そこのところはどういうふうに理解していいのですか。
#81
○中島政府委員 賃借権その他の用益権の場合にもこの規定を準用することができるというような説がだんだん有力になってきておりまして、下級審の判決ではそこまでいったものを見たことがございます。#82
○稲葉委員 これはもうずっと前、昭和の初めのころから議論になっていることですね。これは我妻先生の本の中にその点は書いてありますね。これは将来ますます賃借権というものが物権化してくるという情勢にあるというふうなことを考えていいと思うのです。それはそれとして、問題になってまいりますのは、いままでの問題の中で法定地上権の問題というのが出てまいりましたね。土地と建物とは分離して抵当に入れた場合に、法定地上権が成立する、これは民法三百八十八条ですね。そのことに関連して、今度の建物区分所有法、現在の状況では片っ方だけを抵当に入れた場合には法定地上権というものは成立しないのですか。この法案ができてしまいますと、成立するものと成立しないものといま言ったように分かれるのですか。登記によって違ってくるのですか。いまの場合、登記して建物の専有部分のところに一緒にくっついて書かれるものがあるし、また未登記ならば書かれないものもあるという説明でしょう。法定地上権の場合は、現在の場合とこの法案ができた場合とでどういうふうになっておりますか。
#83
○中島政府委員 今度の法案ができますといわゆる一体化ということになりますから、建物だけに抵当権を設定するとかあるいは土地だけに抵当権を設定するとかいう問題は起こらないことになります。したがって、建物の専有部分だけを競落して、そこで敷地利用権について法定地上権が設定されたものとみなされるということは考えられないわけであります。現行法でもそういう所有権の共有持ち分の上に法定地上権あるいは法定地上権類似の権利が成立するかどうかというのは一つの問題でありまして、むしろそれは成立の余地がないというふうに考えておるわけであります。それからもう一つ、先ほど私ちょっと言葉足らずだったんですけれども、登記のない権利につきましても実体法上は一体化されるわけでありますけれども、それはもう登記に記載をする方法もございませんし、登記上は一体化の問題が起こり得ない、こういう意味で申し上げたわけでございます。
#84
○稲葉委員 専有部分と敷地利用権とが一体化されるから法定地上権の問題は起きない、それはわかりましたが、そうすると共用部分はどうなってしまうのですか。共用部分というものは残されてしまうのですか。それには法定地上権は及ぶのですか及ばないのですか。それは全然関係ないことになるのですか。どうですか。#85
○中島政府委員 共用部分につきましては現行法におきましてすでに専有部分との一体化ということが規定されておりますので、分離処分ということはあり得ません。したがいまして、専有部分の処分に従うということになります。#86
○稲葉委員 私、この法案の説明を読んでみていて、疑問でもないのですけれども、ちょっと感じましたことは、たとえば第九条で「建物の設置又は保存の瑕疵(かし)に関する推定」「建物の設置又は保存に瑕疵(かし)があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵(かし)は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」こういうふうになっていますね。私の疑問は、まず瑕疵という言葉です。これは瑕疵担保から出ているんだと思うのですけれども、こういう言葉は一般の人は使わないわけです。こんなむずかしい言葉は知らないのです。これはだれかが新聞のコラムに、何新聞でしたか書いてましたよ。法律はどうしてこんなむずかしい言葉を使うんだろう。だれだったか忘れましたが、書いてありました。なるほどいいこと言うな。これは欠陥という言葉じゃまずいのですか。どうなんです。#87
○濱崎説明員 先生御指摘のとおり瑕疵という言葉が理解しにくい、しかもこの漢字は現在法律用語として原則としては使えないという問題がございまして、これを御指摘のような用語にかえた方がいいのじゃないかという問題は検討したわけでございますが、この規定の趣旨は、現行法の民法七百十七条の土地工作物の占有者、所有者の責任に関する規定を受けまして、その規定の適用に当たって瑕疵が――瑕疵がという言葉を使わせていただきますが、瑕疵が専有部分にあるのか共用部分にあるのか明らかでないときに七百十七条の規定がうまく働くようにという趣旨で設けた規定でございます。そういうことで、民法七百十七条の規定のつながりをはっきりさせるという趣旨で、あえてその条文が使っております漢字の瑕疵という言葉と同じ言葉を使いましてルビを振るという特殊の取り扱いをさせていただいたということでございます。ですから、七百十七条との関係がございませんければ、御指摘のような言葉を使うということが適切かと思うわけですけれども、別の言葉を使いますと、そのつながりがはっきりしなくなるという考慮からあえてこういう言葉を使っているわけでございます。
#88
○稲葉委員 法律で欠陥という言葉を使っているのはありますか。製造物責任に関するいろいろな法律がありますね。あなた方欠陥という言葉は使っていますか使っていませんか。どうなっていますか。こんな言葉はわからないですよ、瑕疵なんという言葉は。製造物責任の場合の仮に欠陥ということになってくると、立証責任というものは本件の場合と違ってくるのですか、どうなんですか。本件の場合、推定ですけれども立証責任はどっちにどういうふうにあるのですか。#89
○濱崎説明員 ほかの立法でどういう言葉を使っているかいま定かに記憶がないわけでございますが、欠陥という言葉を使っておったかどうか記憶ございませんけれども、要するに瑕疵にかわる別の表現というのはほかの立法にあると思います。ただ、事柄の実質は欠陥という言葉を使いましても瑕疵という言葉を使いましても同じでございますので、その言葉の使い分けをしたということによってその実質が変わってくる、あるいは解釈が変わってくるということはないと存じます。#90
○稲葉委員 この場合に、推定するということは、共用部分の設置または保存にあるというふうに推定されていますね。それは別として、全体として建物の設置、保存に瑕疵があって他人に損害を生じたときには、損害をこうむった人が、主張責任は別として立証する義務があるのですか、責任があるのですか。建物の設置をしたたとえば分譲業者の方に立証責任があるんですか。瑕疵がなかったんだ、だからというふうなことを立証する責任がどっちにあるのですか。問題はそこですよ。それが製造物責任との関係では違うのですか、違わないのですか。#91
○中島政府委員 建物の設置または保存に瑕疵があるということは、損害をこうむったという側、すなわち原告側で主張、立証する必要があると考えます。#92
○稲葉委員 製造物責任の場合はどっちに責任があるのですか。一般的につくった人の方にあるんじゃないですか。どうなっているのですか。だってそんなものは相手方に、分譲業者なら分譲業者、建築主の方に瑕疵があるということをこっちが主張は別として立証しろと言ったって、立証なんかなかなかできないんじゃないですか。自分の方に瑕疵がありませんよということを、分譲業者なら分譲業者側が立証する責任があって、それができなければそっちが負けるというか責任を負うというのでなければ、新しい不法行為法というか何というか近代法の一つの典型にならないんじゃないですか、立証責任として。これはただ推定するといったって共用部分の設置または保存にあることが推定されるだけのことであって、この条文はその過失がどこにあったかということの推定じゃないですね。これでは被害をこうむった方に立証しろといったって無理じゃないですか。ある段階で転換するということならわかるけれども、転換するというならばどういう段階で転換するわけですか、その立証責任が転換するということになるのですか。#93
○中島政府委員 この九条は必ずしも新しい不法行為責任における立証責任の問題をここで取り入れようという趣旨の改正ではございませんで、従来の七百十七条をそのまま前提にいたしまして、そして、それが専有部分に瑕疵があるのか共用部分に瑕疵があるのかということが区分建物については明らかでない場合がかなり多いわけであります。たとえば、水漏れがあって特定の者が非常に損害をこうむった、その水漏れがパイプから漏れておるということははっきりしておるけれども、そのパイプが専有部分にあるパイプ、すなわち専有部分から水漏れしておるのか、あるいはそのもうちょっと先の共用部分のところから漏れておるのかということが明らかでない場合がありますので、その点における推定規定を置いて当事者間の公平を図ったということでございます。
#94
○稲葉委員 それはわかったんですよ、条文にそういうふうに書いてあるのですから。そのもう一つ前の段階として、立証責任というものは当然転換されてしかるべきものではないか。そうでないと近代法のたてまえというか被害者保護といいますか、そういうふうなものが十分賄えなくなってくるのではないか、こう思うのです。そういう点が私は疑問なんですよ。加藤一郎先生がおられたんだから、こんなことを言っては悪いけれども、当然そういう点は議論されたんだと思うのですが、その点はどうなんですか。#95
○中島政府委員 不法行為一般について新しい制度を取り入れるということではなくて、立証責任も含めて現在の不法行為制度を前提にして、区分所有建物に特殊な点についての手当てをしたということでございます。#96
○稲葉委員 それはわかったんですけれども、これは私もよくわからないのです、いろいろなことを言う人がいるものですから。学者に近い人、学者でしょうね、そんなことを言っては悪いけれども。こういうことを言う人がいるのです。これは青山学院大学の森泉さんが「マンションに関する諸問題」というレクチュアをした中で言っていることなんですが、
マンションの販売時に関する問題でいわゆるこれは欠陥マンションの問題でございます。マンションに欠陥があった場合、買い主に瑕疵修補請求権なるものを認め得るものかどうか、民法五百七十条の瑕疵担保の規定に関連して問題があります。これに関しましては、特定物イコール瑕疵担保、不特定物イコール不完全履行という、そういう二元論に反対しまして、すべて債務不履行によって一元的に構成していこうという、いわゆる新債務不履行説も提唱されております。また他方では、規格化されたマンションや建物が大量的に取引されている商品化傾向を踏まえまして、自動車やその他の物と同じようにこれも製造物責任論でもって処理していこうという学説も見られるわけであります。
こう言っているわけですね。
だから、この製造物責任論というものとこの九条そのものはもちろん直接関係ありません。九条のもう一つ前にあるところの関連だ、こう私は思うのです。だから、製造物責任論でいくというと立証責任というものはどういうふうになるのですか。いますぐでなくても結構です。どういうふうになるのですかね。
また、製造物責任論と言ってもこれまた漠たるものであって、これは厚生省関係の法律に多いのかなと思いますが、そこでの立証責任、これは現実の裁判になれば立証責任が一番大きな問題でしょう、立証責任がある方が立証しなければ負けるわけですから。だから、そこら辺のところ大きな問題ですから、これはよく研究していただきたいと思うのです。
ジュリストの「製造物責任論」という本があって、私もあれを読もうと思ったんですが、ちょっと時間がなくて読んでないものですから、これは理論的にはなかなかおもしろいものであると思います。加藤一郎先生がずっと部会長をやられたわけですから、不法行為の大家ですから、そういう点の問題として当然法制審議会の中でもっと論議がされたのではないかと私は思うのですが、ちょっとよくわかりませんね。ここに言うところの新債務不履行説、これも何だかよくわからないですね。いや、皆さん方にはおわかりなんでしょうが、私にはよくわからないのです。ここら辺のところは、また別の機会にお聞きしたい、こう思うのです。
そこで、問題のもう一つの点は、いまの瑕疵の点は私はコラムを読んだときも思ったんです。その前からどうもこれは問題だと思っていたんですよ。この点はひとつあれしなければいかぬのじゃないか、こう思うのです。
それから規約の問題です。規約の効力の問題に関連をしてくるんですが、これは管理組合をつくって規約をつくるわけでしょう。その規約は登記事項でないわけですね。登記事項でないのに後から買った人や何かが、あるいは一たん買った人からまた買った人などが拘束されるという理由はどこから出てくるのですか。登記事項とは関係ないわけですか。どうなんですか。
#97
○中島政府委員 やはりこの区分所有者が当然に一つの団体をつくって共同管理をするというわけでありますから、それについての基本的な取り決めというものが規約であろうかと思います。それを特定承継人にも効力を及ぼすことによって管理の適正を期するというのが現行法以来の考え方であります。そうなりますと、これを公示するといいますか開示するという手段を尽くさなければならないということになるわけでありまして、そのために規約の保管者を定め、それについての閲覧請求に応ずる義務を定める。今回の改正におきましてはさらに規約の保管場所についてはその建物の見やすいところに掲示しなければならない。管理組合が法人になりました場合には、その法人の理事が規約を保管しなければならないということにいたしまして、これを過料の制裁によって強制しておるということでございます。
#98
○稲葉委員 私が疑問に思いますことは、その規約というのは、みんなが分譲を受けて買って、区分所有権者になってから後にみんなが集まってつくるんじゃないのが普通じゃないですか。初めに、分譲するときに規約がすでにできているんじゃないですか、私はよくわかりませんけれども。その規約ができておって、それに拘束をされるということを知っていようがいまいが、承知しようがしまいがそれに拘束をされるということになって、そういうんじゃないですか。だから一種の附合契約でしょう。一種というか何というか、そういうふうになってくるんじゃないですか。どうですか。それほど大きな権限で拘束されるというのならば、普通登記事項にしていいじゃないか、それが一つありますね。だから、そういう規約というのは、みんなが買って、みんなが集まって、それから後に相談をしてつくるのが本当じゃないんですか。すでにあそこへ入るときに分譲業者から印刷したものを渡されるか何かしてそれに拘束されるという形なんですか。実際は、これはどうなっているのですか。
#99
○中島政府委員 規約でありますから、これは区分所有者が作成するということになります。現行法では全員一致でつくりますし、今回の改正案では集会の四分の三以上の多数決議によって規約を作成するということになっております。現実に行われております形といたしまして、分譲業者等が規約案を用意いたしまして、分譲の都度各区分所有者からそれについての書面による合意と申しましょうか判こをもらうという扱いが行われているようであります。
そうなりますと、そこに区分所有者の関心が十分にないというようなこともあって、区分所有者が知らない間に規約がつくられているんじゃないかという御指摘があるわけでありますけれども、あくまでも形の上では区分所有者が合意して区分所有者の意思に基づいて規約がつくられているということになろうかと思います。
#100
○稲葉委員 登記事項でないという理由はどこにあるのですか。一種の物権的効力を及ぼすわけでしょう。あらゆる入ってくる人に全部効力があるわけですからね。だから登記事項にすべきが筋ではないか、こう思うのですがね。その点はどうですか。規約は非常に繁雑だから省くということになるのですか。#101
○中島政府委員 確かに物権的効力と申しましょうか、そういう対特定承継人に対する効力なども認められておるわけでありますが、そのためには必ずしも登記による公示ということに限りませんで、それにかわる開示、関係者に十分周知させるという方法を講じておけば取引の安全を害するというようなこともないかと思われますので、区分所有法におきましては、その後の方法をとっておるわけでございます。#102
○稲葉委員 これは管理組合というのはフランスの場合はどういうふうになっているのですか、当然管理組合というのはできることになっているのですか。私の問題にしておりますのは、管理組合ができた場合に管理組合と管理人との関係です、法律関係、それは一体何なのかということなんですわ。委任なのか請負なのかということになるでしょう。委任の場合と請負の場合とどっちがどういうふうに違うのかということです。委任の場合なら報告義務があるとか、いろいろなあれがあるわけでしょう。そこはどういうふうになるのでしょうかということです。#103
○中島政府委員 管理組合という名称で一般に呼ばれておりますけれども、この改正法案によって考えておりますのは、区分所有者が区分所有者となることによって当然に構成員になる、そういう団体であります。その団体がみずから管理をするに加えて、あるいはみずから管理をするにかえて管理業者その他の管理人に管理を頼むということが行われておるわけでありますが、その法律関係というのは、これも一概には言えませんけれども、請負か委任かということになれば委任に近いような形ではないかというふうに思います。と申しますのは、請負というのは一つの仕事をしてその結果を提供すると申しましょうか、ということでありますから、多くの区分所有建物において行われております管理の実態ということに着目をいたしますと、それは法律関係で言えば委任あるいは準委任に近いものではないかと思います。#104
○稲葉委員 そうすると、委任にしろ準委任にしろ、管理組合と管理人との関係は、管理人はどういう義務を管理組合に対して負うのですか、あるいは債権を持つことになるのですか。#105
○中島政府委員 これは管理組合と管理人との委託契約と申しましょうか、委任と申しましてもこれは決して法律的な意味の委任ではございませんが、そういう委任契約の内容によって定まることになろうかと思います。で、契約がない場合あるいは契約によって定められておりません事項におきましては、一般の慣行をも参考にし、あるいは委任その他の民法の規定をも参考にしてその内容を解釈することになろうかと思います。#106
○稲葉委員 だから、民法の委任によりますと、どういう権限が管理組合に生じて、それから管理人に生ずるのか。権利義務が生ずるのかということですね。それはあれでしょう、何どきでも委任だと解約することができるのじゃないですか。委任だということになると、もうあしたからあなたはだめです、これはかわってくださいということは言えるのですか。そういうわけでしょう。どうですか、それは。#107
○中島政府委員 先ほど請負か委任かと言えば委任に近いのではないかというふうに申し上げましたのは、決して委任だという意味ではございませんで、委任に関する民法の規定がそのまま適用になるという意味ではございません。あくまでも管理業あるいは管理の実態というものにふさわしい法律関係がそこになければならないというふうに思うわけでありまして、民法の規定が大いに修正されて適用があるというふうに説明いたしますか、あるいは原則として管理業者と管理組合との契約によるのだけれども、その内容は委任に似通った、強いて言えば似通った部分がかなりあるというふうに説明した方がいいのかよくわかりませんけれども、そういう実態であることを申し上げたわけであります。#108
○稲葉委員 契約自由の原則ですから、どういう契約をしたっていいわけですからそれはそうなんですけれども、委任に近いということになると、委任の場合はいつでもやめることができるのじゃなかったでしたっけ。民法ではどうでしたっけ。私も忘れちゃったですけれども。#109
○中島政府委員 それによって損害が発生した場合には、損害を賠償することによっていつでも委任は終了させることができるというのが民法の規定でありますけれども、それは必ずしも管理の委託契約ということにはふさわしくない面もあろうかと思いますので、修正をされて取り入れられるべきものであろうと思います。#110
○稲葉委員 そういう管理組合と管理人との関係などのモデル的な法律関係とかなんとかひな型みたいなものは今後法務省でつくるのですか、建設省でつくるのですか、あるいはつくらないで自由に任せる、こういうことになるわけですか、どうなんですか。#111
○濱崎説明員 私ども聞き及んでおるところによりますと、建設省の住宅宅地審議会というところでそういう管理委託契約の契約書のあり方についてモデル的なものをつくって、一応の基準としてそれを関係各界に配付しているというふうに伺っております。#112
○稲葉委員 「区分所有者の団体」というのは、第三条ですね。そうすると、この規定には自分は従いたくないという人はどうなんですか。これは強行規定でもう全部これに――しかし、これは「できる」ですね。「団体を構成し」は、当然団体が構成されるという意味なんですか。それで後の方の「管理者を置くことができる。」これは「できる」だ、こういう理解の仕方ですか。#113
○中島政府委員 私どもの気持ちとしてはそのとおりでございまして、「団体を構成し」というところは、区分所有者は区分所有者になることによって当然その団体の構成員となりという趣旨で、あと集会、規約及び管理者を置くという点は任意である、こういう趣旨でございます。#114
○稲葉委員 それと、管理組合という言葉は法律には出てくるのですか、こないのですか。#115
○中島政府委員 その団体が法人になりますと「管理組合法人」という名称で呼ぶことにいたしまして、法文にも「管理組合法人」というのが出てまいりますけれども、法人になります以前については、管理組合という言葉は法文は使っておりません。一般に現在すでに管理組合というものを構成しておる区分所有者が多いものですから、それが管理組合ということで呼ばれておるわけでございます。#116
○稲葉委員 その管理組合というのはどうなんですか、一つしかできないのですか。一つしかできないという意味は、どの程度の区分所有者の団体に一つしかできないのかという意味ですね。よくわかりませんが、建物は棟ごとに一つの管理組合ができるという意味なんですか。そこで一つの棟にも二つの管理組合ができても構わないのですか。あるいは重層的に上下の関係にある管理組合というものができてもいいということなんですか。そこまでは法律は関係しない、任意だ、こういうことですか。どうなっているんですか、条文でははっきりしないのですけれども。
#117
○中島政府委員 一棟の建物につきまして全員加入の一つの団体ができるという原則に考えております。ただ、それに対する例外といたしましては、三条の後段に「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分」があるときには、それらの区分所有者だけが管理することになっておりますが、この場合には、これらの区分所有者だけで団体を構成するということができます。それからもう一つは、数棟の建物が集まって団地を形成しておる場合には、団地の管理組合というものができるというふうに考えております。
#118
○稲葉委員 だから、数棟の建物が集まって団地を形成している場合に、団地全体として一つの管理組合しかできないということなんですか、あるいは棟ごとの管理組合というものをつくってもいいということなんですか、その点についてはそれはもう自由だ、こういうことですか。そこまで法律は規制すべき筋合いのものではないという理解の仕方なんですか。あるいはAという棟には一つのAという管理組合がある、それからBという棟にはBという管理組合があるけれども、それ全体を通じて連合会というふうな管理組合が、名前は管理連合会というのか何というのか上部団体的なもの、これもつくっていいということなんですか、それはだめだということなんですか、どうなんですか。#119
○中島政府委員 この法案の予定しておりますのは、一棟の全体の管理組合と、それから一団地に一つ設けられる団地管理組合というふうに考えております。#120
○稲葉委員 そういうことは条文のどこに出てくるのですか。#121
○中島政府委員 基礎になる条文は第三条でございます。これには一棟の全員で構成する団体についての規定があり、後段で、一部共用部分がある場合の区分所有者が構成する団体を予定しております。それから団地につきましては、六十五条以下におきまして団地関係について規定をいたしておりますので、そこで団地管理組合というものが出てくるわけであります。#122
○稲葉委員 いままで共用部分か専有部分かということはずいぶん裁判所なんかで争いが出てきていますね。最高裁まで行ったのはないんじゃないかと思いますが、それは具体的には何が一番争われているのですか。それで判例などでその見解が食い違っておるものもあるのです。ただ、必ずしも名称だけでいくわけにもいかぬかもわかりませんが、実態を見ないとわからぬ場合もありますけれども、何が一番争われているのですか。#123
○中島政府委員 専有部分か共用部分かということで問題になりますのは、一つは、管理人事務室あるいは管理人室が専有部分なのか共用部分なのかという点でございます。この点につきましては、まずそれが建物の構造としての独立性があり、かつ用途についての独立性もある、使用方法についての独立性もあるということから言いますと、専有部分と考えられる一面がありながら、管理のためのいろいろな諸設備が設けられておるということから言いますと、それは共用部分ではないかということが問題になります。それから、倉庫あるいは屋内の車庫が専有部分か共用部分かということが問題になります。これも倉庫なり車庫が専有部分としての実体を備えながら、しかしその一部に配電盤があったり、あるいは建物全体のための排水管その他のパイプが通っておったりということで一部共用にも使われる可能性があるという場合に、これが共用部分かということが一つ問題になります。
それから、ピロティーが問題になったことがございます。ピロティーが専有部分か共用部分かということもございます。
あともう一つ、いままでのものとは若干趣を異にしまして、天井、床、壁がその表面が専有部分であることは争いはないといたしましても、専有部分がどこまで及ぶのか、どこからが共用部分になるのかという意味で専有部分と共用部分性が争われることがありました。
#124
○稲葉委員 いまの管理人はその区分所有者でなければならないのですか。どうもそこまでは条文にはないようですけれども、それが第一点です。なぜ管理人室が共用部分か専有部分かということで争いになった例が多いのですか。どうしてそこが争いになるのでしょうか。#125
○中島政府委員 管理人につきましては、区分所有者である必要は全くございません。もっぱら管理を仕事とするために、先ほど問題になりましたように委任あるいは請負類似の契約に基づいてその事務を処理する者ということになるわけでございます。それから管理人室は、独立の構造を持ち、他と区分して使用することができるという意味におきましては、専有部分たり得るものが多いわけでございます。ところが、現在の法律の第三条、新しい法律の第四条におきまして、区分所有者の全員またはその一部の共用に供されるべき建物の部分は区分所有権の目的とならない、すなわち専有部分となり得ない、こういう規定がございますので、管理人室に配電盤でありますとか消防のための警報関係の機械でありますとか、電話の交換台というような共用のための設備が設置されておる、あるいはおおむね一階のホールなどに設けられておるわけでありますが、管理人室の前面がカウンター式になっておりましてそこで郵便物その他の受け付けをするという形になっておりますと、これが全員の共用に供されるものではないかという点が問題になってまいります。ですから、これは共用部分であり、したがって共有である、こういう主張が成り立つわけであります。
#126
○稲葉委員 いまの第四条で気がついたのですが、共用部分という言葉を使っていますね。片方は専有部分ですね。専用という言葉は使っていないわけですけれども、いまお話を聞くと共用部分は何か共有のようなお話ですね。それならこっちは共有にしたらいいんじゃないでしょうか。どういうわけでこういう言葉の使い分けをするのですか。#127
○中島政府委員 専有部分は専有ということに意味があるわけであります。共用部分は共有ということに意味があるのではなしに、まず意味があるのは全員の共用であるということに意味があるわけでありまして、しからばその部分をどういう所有形態にするかということで共有ということが出てくるわけでございます。#128
○稲葉委員 専有部分というのは所有権の問題ということですね。自分のものというふうに理解するのでしょうね。片方のは、利用の方を中心として考えておるということでそういう言葉になってきたんだ、こう思いますが、そうすると、一番大事なことと考えられるのが共同の利益に反する行為の禁止の問題ですね。これが今度の法律の中で一つの新しい部分ですね。そうすると、まず共同の利益、抽象論はいいのですが、具体的にはどういうふうな類型に分かれておるのですか。類型といったって、なかなかそう定型的に言うわけにもいかないかもわかりませんね。いままで実際にはどういうふうなことが一番共同の利益に反する行為と考えられてきたのですか。#129
○中島政府委員 類型化するということもむずかしいわけでありますけれども、強いて言えば、一つは建物の保存に有害な行為であります。先ほども申し上げたかと思いますけれども、共用部分に穴をあけて現実に裁判例になっておるので見ました事件といたしましては、外壁のところに穴をあけてそこからパイプを突き出して排気装置を取りつけたということで、それが建物の保存に有害な行為ということで禁止されておる事件がございますが、そういうこと、あるいは専有部分に重量物を置いたり危険物を置いたりするということが建物の保存に有害な行為に当たろうかと思います。それからそのほかに、管理または使用に関して区分所有者の共同の利益に反する行為ということになりますと、円満な共同生活を営むために妨害になるような行為、ひどい悪臭とかひどい騒音を発して他の区分所有者の生活を妨害するということがこれに当たるだろうと思います。
#130
○稲葉委員 前の三十七年当時の立法に当たられた川島一郎さんのものを見ると、共同の利益に反する行為の禁止というところで、大体三つの類型を挙げておられるのですね。一つは、建物の不当棄損行為、二つ目が不当使用行為、三番目がニューサンスに当たる行為、大体この三つに大きく分けているわけですね。これは相互に関連もあるしするわけでありますけれども、そこで、たとえばニューサンスに当たる行為は具体的にはどういうようなことが挙げられているのですか。問題になってくるのですか。これは余り野放しにしておいてもいかぬし、といって余りやかましくしたのでは大変な人権問題になってくるし、昭和三十七年に東京高裁で判例がありますね、これを参考にするかしないかは別として、有名な判例でしょう。だから、この第三番目のニューサンスに当たる行為というのは具体的にはどんなことを指しているのですか。裁判になったのはどんなことですか。
#131
○中島政府委員 裁判ということではございませんけれども、報告を聞いてみますと、次のような事例が報告をされておるというわけでございます。たとえば、一階の店舗においてスナック営業を始めまして、カラオケ騒音によってマンション住民の安眠を妨害する、再三防音装置を施すように求めても耳をかさない、そのほか共用部分に営業用器具を置くなどの違反行為について注意しても耳をかさない、こういう例でございます。
それから、二つ目といたしまして、住居用のマンションに印刷機を持ち込み印刷業を始め、床スラブへの影響、騒音、出入り業者による共用部分の使用等管理上著しく有害であるために、再三にわたって、印刷業の中止方を文書で申し入れてきたが、聞き入れようとしないというような例が報告されております。
#132
○稲葉委員 いま挙げられた前の例、カラオケで何とかかんとかした、そういうような場合は法律的には、現在の法律ではどういうふうになるのですか。どういうふうにしてそれをやめさせることができるのか。それから、この法律が通った場合にはどういうふうになるのですか。これが第一ですね。実際にはそれが目的を達するまでに何年ぐらいかかるのですか。十年ぐらいかかるのじゃないですか。もっとかかるのじゃないですか。どうなんですか。これは断行の仮処分をやろうといったってどうやって断行の仮処分をやるのですか、僕もよく知りませんけれども。騒音を立ててやるのをやってはいけないという仮処分は、本訴でやったってこれはうんとかかるから仮処分でやらなければ、しかも断行をしなければだめでしょうね。具体的にはどうやってやるのですかね、私もよくわかりませんけれども。
結局、この法律ができてもやはりそれは一つの抑止力になるかもわからないけれども、実際的には相当長くかかって余り効果がないというふうな考え方もあるし、また逆にそういう特定少数者を目のかたきにしてやるようなことが起きてきて、そういう少数者の権利というものが阻害される、これを守らなければいけないということも考えられてまいりますし、まず現行法の場合とこの法律ができた場合とでどういうふうに違ってくるのですか。それが一つですね。
#133
○中島政府委員 新しい法律の六条は現行法の五条という条文と同じでございますので、この禁止規定は現行法も同じでございます。その違反行為に対してどういう措置がとれるかということにつきましては、法案の五十七条が「共同の利益に反する行為の停止等の請求」という規定を新設いたしましたが、この規定は新設でございますけれども、この規定がなくても現行法のもとにおいてもこういう請求はできるというふうにわれわれは考えておったわけであります。しかし、必ずしもはっきりいたしませんので、明文の規定を置いたということでございます。したがいまして、現行法におきましても、改正法下におきましても、この五十七条によりまして行為の停止、それから行為の結果を除去し、その行為の予防をするための必要な措置をとることができるわけであります。そのために必要な場合には訴訟を提起することができるわけであります。ただ、その請求あるいは訴訟による請求というものは、ただいまも御指摘になりましたように、必ずしも的確な効果をおさめ得るとは限らない場合が多いわけであります。裁判に従う考えの者には効果もありますけれども、裁判があってもそれに従わないというような者に対しては無力であるということになりますので、今回はそれに加えまして、五十八条の「使用禁止の請求」というものができることにしたわけであります。
もちろん、五十七条の手続をとったからといって直ちに五十八条ができるのではなくて、それとは別にまたきわめて厳格な要件を規定しておりますけれども、使用禁止の請求ができる。そうなりますと、この区分所有者は相当期間自分の区分所有部分を使用できないということになります。この使用禁止ということになりますと、先ほどのように騒音を差しとめるということよりはかなり形がはっきりしてまいりますので、かなり実効が上がるのではないかというふうに思うわけであります。
しかし、これもやはり不作為命令でありますから、その執行方法は間接強制しかないということになるわけであります。したがって、これにも一種の限界もありますし、あるいは使用禁止では間に合わない場合もあるわけでありますから、さらに進んで要件をしぼりまして、五十九条におきまして競売の請求ができるということになるわけであります。競売ということになりますと、これは競落によって当該区分所有者は所有権を失うことになりますから、これはその区分所有関係からは全く排除される、こういうことになるわけであります。
この新設規定につきましては大部分の方が賛意を表明していただいておるわけでありますけれども、一部からはこれを若干疑問視する向きもございます。それは一つは、先ほど申し上げましたけれども、これによって一時使用禁止を命ぜられる者あるいは競売を申し立てられる者に対して酷ではないかという面からの懐疑的な御意見でございますけれども、それに対しましては私どもとしては、先ほど申しましたように、五十八条、五十九条で十分に要件を厳格にいたしましたし、手続的にも使用禁止等につきましては訴えの提起そのものに特別多数決議を必要とするということにいたしておりますし、最終的な判断は裁判所がするというきわめて厳格な形になっておりますので、この加害者と申しましょうか、それに対する不当な権利の侵害ということにはならないというふうに考えておるわけであります。
むしろ、そういうふうに要件、手続が非常に厳格になり慎重になっておりますために、果たしてこれで実効が上がるのかというただいまの後の方の御指摘が若干心配と言えば心配な面でありますけれども、こういうふうな制度にいたしましたので、私どもとしてもこういう制度ができたからといってこういう事件が頻発をするというふうには考えておらないわけであります。しかし、義務違反者については最終的にはここまでいって排除することもできるんだという制度をつくりましたことによって、先ほどもおっしゃいましたように、これが抑止力になってこの六条の規定が守られるという面が出てくるのじゃないか、それを期待する面もあるわけであります。
#134
○稲葉委員 お話をお聞きしていてわかるのですが、問題は一つの理論的な問題だ、こう思うのですが、五十九条で「区分所有権の競売の請求」というふうなものがありますね。これは、こちらの方でそれを請求する権利は一体何に基づく権利なんですか。ほかの区分所有権者の所有権に基づいてそういう請求ができるということなんですか。こちらの方に請求権がなければあれでしょう。請求権は法律的に言うと一体どういう権利なんですか。#135
○中島政府委員 区分所有権というものあるいはその区分所有者が共同して区分所有しておるという関係から、この五十九条の規定によってこういう要件のもとに発生をする権利であるというふうに理解をしております。#136
○稲葉委員 それはそうなんでしょうけれども、一言で言うと一体どういうふうな権利だというふうにあれしていいのですか。所有権そのものなんですか。物権的請求権なんですか。所有権に基づいて妨害排除を請求する権利なんですか。あるいはもっと広い生活権というようなものに基づくような権利だというふうに理解するのですか。やられる方じゃないですよ、請求する方の権利ですよ。請求する方の権利関係をどういうふうに理解するのかということを聞いているのです。単なる所有権なのか、それを含む全体の生活権というようなものなのか、あるいは環境権というようなものか、いろいろな理解の仕方はありますね。そこをどういうふうに理解をしたらいいんだろうかということをお聞きしているわけです。#137
○中島政府委員 所有権かあるいは人格権かということにつきましては、現在の民法理論のもとに認められております差しとめ請求についてもいろいろ御意見があるようですけれども、その点は、所有権、それに人格権なり環境権なりというものがつけ加わった権利というようなことになりましょうけれども、区分所有関係の場合には、個々の所有権ではなくて区分所有者全体の所有権と申しましょうか、その区分所有者全体の利益のために建物の価値を保存し、そして良好な環境を守るというために出てくる権利であるというふうに理解しております。#138
○稲葉委員 一言で言うと何権と言ったらいいのですか。それは一言でなかなか言えませんかな。学者は恐らくこういうのに非常に興味を持つと思うのですがね。どういうふうに言ったらいいのでしょうかね。#139
○中島政府委員 ちょっと一言で言いにくい、ここで新しく出てきた権利でありますから、類似のものはないわけでありますので、一言で言うのはちょっと困難であります。先ほど申し上げたところで御理解をいただきたいと思います。#140
○稲葉委員 では、最後に一つ、実態について、非常に失礼な話なんですけれども、皆さん方法務省関係がどの程度事実関係を知っておられるかということでお聞きしたいのです。修繕費を各管理組合ではみんな各人が積み立てていますね。それは全体のどのぐらいを積み立てているというふうにお考えですか。住宅価格のどのぐらいを積み立てておって、それがどういうふうに使われているというのが定型的なものだという、定型的というか何というか、というふうにお考えですか。実態というものを十分御存じの上で法律を立案したのか、それはまたわからぬ、法律論は法律論としてやられたのかということの、一つのテストケースとしてお聞きしているわけです。
#141
○濱崎説明員 これは私ども、建設省、住宅公団等の調査に基づいて承知しているところでございますけれども、実際に積み立てられている修繕積立金の額というのは、一般的な傾向といたしましては、そのマンションの価格に必ずしも相応していなくて、千円から二千円というところが多いというふうに聞いております。#142
○稲葉委員 実態調査をいろいろやった結果が新聞などに出ておるのを見ますと、修繕費積立金というのは住宅価格の一%が大体基準だというようなことを言っているのですね。それで内訳が、管理費が〇・四%、修繕費が〇・六%だ、こういうふうに言っておる。四、五日前の朝日新聞の「金かかるマンション補修 計画書作り積み立てを」という中に出ているわけです。それはいろいろ違いますから一概に言えませんけれども。だから、実態は法務省は関係がないと言えば関係がない、法律的な問題だけに限定されるんだ、こういうことであるいはいいのかもわかりませんけれどもね。そこで、いろいろな行政指導が今後行われていくということになると、それは法務省としてはどの程度タッチすることになるのですか。これは附帯決議にも関連するものですからお聞きしておきたいと思うのですが、いまでなければまた別の機会に別の方からお聞きするようになる、こう思いますけれども、どうなんですか。何を一体行政指導したらいいのか。この法律ができた後に、行政指導という言葉は余り好きじゃありませんけれども、一体どういう点についてどういうふうに行政指導したらいいのか、それについては一体法務省はどういう役割りを受け持っておるのか、こういうことですわね。これはいまでなくてもいいですよ、どちらでも構いませんけれども。
#143
○中島政府委員 法務省としては、この法案が成立いたしました場合には、その内容を正しく理解してもらうためのPRには全力を挙げて努力したいと思っておりますけれども、個々の具体的な法律問題、この改正法の解釈等についての相談あるいはそれがどういうふうに運用されておるかということを把握して、それについて必要ならば指導するという立場にはないわけであります。そういった面は必要があればそれぞれ所管のところでやっていただく。その場合に、そういった機関からこの法律の趣旨等について御照会があれば、それはお答えをする、御協力をする、こういう立場であろうかと思います。#144
○稲葉委員 じゃ、一応これで終わります。#145
○綿貫委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後零時四十八分散会