1982/02/18 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 本会議 第7号
#1
第098回国会 本会議 第7号昭和五十八年二月十八日(金曜日)
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昭和五十八年二月十八日
正午 本会議
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○本日の会議に付した案件
北海道開発審議会委員の選挙
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時八分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。────◇─────
#3
○議長(福田一君) 御報告いたすことがあります。永年在職議員として表彰された元議員野原正勝君は、去る十日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
同君に対する弔詞は、議長において去る十六日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもつてその功労を表彰され さきに農林水産委員長社会労働委員長の要職につき また国務大臣の重任にあたられた従三位勲一等野原正勝君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
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北海道開発審議会委員の選挙
#4
○議長(福田一君) 北海道開発審議会委員の選挙を行います。#5
○保利耕輔君 北海道開発審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。#6
○議長(福田一君) 保利耕輔君の動議に御異議ありませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。議長は、北海道開発審議会委員に
川田 正則君 高橋 辰夫君
北村 義和君 池端 清一君
及び 斎藤 実君
を指名いたします。
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租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#8
○議長(福田一君) この際、内閣提出、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣竹下登君。〔国務大臣竹下登君登壇〕
#9
○国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。まず、租税特別措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
租税特別措置につきましては、最近における社会経済情勢と現下の厳しい財政事情に顧み、その整理合理化を行う一方、住宅建設、中小企業の設備投資の促進等に資するため所要の措置を講ずることとし、所要の法改正を行うことといたしたところであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、企業関係の租税特別措置につきましては、昭和五十一年度以来連年厳しい見直しを行ってきており、その整理合理化をさらに進める余地はかなり限られている状況にありますが、昭和五十八年度におきましても、価格変動準備金の廃止年度の繰り上げを行うなど、特別償却制度及び準備金制度等の整理合理化を行うことといたしております。また、登録免許税の税率軽減措置につきましても所要の整理合理化を行うことといたしております。
第二に、住宅取得控除制度につきましては、住宅融資の償還金等に係る控除率を七%から一八%に、その控除限度額を五万円から十五万円に引き上げる等その改善を図ることといたしております。なお、定額控除は廃止することといたしております。
第三に、中小企業の設備投資を促進するため、中小企業者等の機械の特別償却制度につきまして、二年限りの措置として、その対象となる機械及び装置の取得価額の合計額のうち、過去五年間の平均投資額を超える部分については、百分の十四の償却割合にかえて百分の三十の償却割合を適用する特例措置を講ずることといたしております。
第四に、特定の基礎素材産業の構造改善に資するための措置として、特別償却制度、現物出資の場合の課税の特例、欠損金の繰越期間の特例及び合併等に係る登録免許税の課税の特例を設けることといたしております。
第五に、自動車関係諸税につきましては、揮発油税及び地方道路税について税率の特例措置の適用期限を二年延長するほか、自動車重量税について、税率の特例措置の適用期限を二年延長するとともに、自動車検査証の有効期間が三年とされる自動車に対する税率を設けることといたしております。
第六に、少額貯蓄等利用者カード制度につきましては、これを三年間適用しない措置を講ずることとし、また、利子配当所得の源泉分離選択課税等の特例措置について、その適用期限を三年延長することといたしております。
その他、地震防災応急対策用資産の特別償却制度の創設等を行うとともに、揮発油税及び地方道路税の特定用途免税制度等適用期限の到来する租税特別措置について、実情に応じてその適用期限を延長する等所要の措置を講ずることといたしております。
次に、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
わが国は、現在、一般会計の歳入の三割近くを公債発行に依存し、その発行残高も約百兆円に達するというきわめて厳しい財政事情のもとにあり、財政の立て直しを図ることは、最も緊要な課題の一つとなっております。
昭和五十八年度の予算編成に当たっては、このような認識のもとに歳出面において経費の徹底した節減合理化に努めるとともに、歳入面においても税外収入等につき極力見直しを行ったところであります。
その一環として、製造たばこの小売定価の適正化を図り、あわせて財政収入の確保に資するため、製造たばこの小売定価の最高価格の引き上げを行うとともに、現下の財政事情等にかんがみ昭和五十八年度及び昭和五十九年度における専売納付金の納付の特例措置を講じることとし、所要の法改正を行うことといたしたところであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、製造たばこの小売定価を改定するため、その最高価格を、紙巻たばこについては十本当たり十円、パイプたばこについては十グラム当たり十円、葉巻たばこについては一本当たり十円、それぞれ引き上げることといたしております。
第二に、専売納付金の納付の特例措置を講じることとし、日本専売公社は、昭和五十八事業年度及び昭和五十九事業年度については、既定の専売納付金のほか、政令で定める日以降売り渡した製造たばこの本数に〇・三四円を乗じて得た額に相当する金額を、専売納付金として、国庫に納付しなければならないことといたしております。
以上、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#10
○議長(福田一君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。上田卓三君。〔上田卓三君登壇〕
#11
○上田卓三君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案並びに製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質疑を行うものであります。今日ほど国民の税に対する関心が高まっているときはありません。各種世論調査によっても、大多数の国民は現在の税制度は不公平であると憤激をいたしております。税に対する信頼は失われ、不信が渦巻いており、不公正税制を正せは、いまや天の声、地の声、国民の声であります。
しかるに、財政再建案は、たとえば収支のつじつま合わぜに税外収入やあへん特別会計までかき集めたりするだけで、何一つ不公正税制是正を求める世論に耳をかそうとしていません。税に対する信頼を回復し、公正公平な税制度を確立することを抜きにして財政再建は不可能であると考えますが、総理は一体どのようにして信頼の回復を図ろうとしているのでありましょうか。
国民のいま一つの願いは、この長期不況からの脱出であります。この不況の第一の原因は、レーガン政権の軍備拡張とそのもとでの徹底した緊縮政策であります。第二は、政府・自民党の行革デフレであります。一九七七年以来、実に六年間所得税の課税最低限を据え置き、サラリーマンの実質大増税を図り、実質公共投資の伸び率を低下させるという徹底的な緊縮政策が推し進められたのであります。
しかも、行革デフレに反対することは、あたかも非国民であるかのような世論づくりが図られ、こうした環境のもとで人事院勧告の凍結が強行され、消費不況、中小企業不況は一段と加速され、ことしの景気は底割れの危険性すら生まれておるのであります。
専門家は、世界不況と行革デフレの二つの要因で二%程度日本経済の成長は抑えられたと分析をいたしております。まさに今回の不況は、レーガンと中曽根行革のもたらした政策不況なのであります。
今日、国民は内需拡大を中心に景気回復を心から求めております。内需拡大は、言うまでもなく大幅な所得税減税と賃金引き上げ、さらに中小零細企業の振興によって可能になるのであります。そのことが貿易摩擦を解消し、世界経済の活性化に寄与する道なのであります。
政府の財政運営は、まさにこうした国民の要求に背を向けたものであります。たとえば「増税なき財政再建」と言いながら、実際には大幅な増税が強行されているのであります。八三年度の国税収入三十四兆一千二十六億円、地方税収入十九兆五千五百六十億円で、合計五十三兆六千五百八十六億円、国民一人当たりの租税負担額は四十五万九千八百円であり、租税負担率も急テンポで上昇しており、七五年度一八・四%、八〇年度二二・九%、八三年度予算で二三・七%に達し、増税テンポは戦後最高であります。
この原因は、物価上昇にもかかわらず、一九七七年以来六年間も所得税の課税最低限が据え置かれ、税率の調整が放棄され、所得税などの自動的な増税が進んだことにあります。サラリーマンの所得に対する源泉所得税は、一九七七年の三兆二千八百四十億円に対し、八三年度予算では実に七兆八千九百億円に、一人当たり十三万四千円から二十三万四千円に、納税人員は二千七百九十八万人から三千六百六十三万人にふくれ上がっているのであります。
勤労者からの自然増収という名の実質増税が、六年間で何と四兆六千億円の巨額に達しているのであります。この数字はまさにずっしりとした重税感を与え、勤労大衆の税負担はもはや耐えがたいものになっているのであります。
ちょうど一年前のいまごろ、野党の減税要求に対して、衆議院議長は、切実な要求と受けとめ、最大限の努力をすると約束されたのであります。こうした議長見解を自民党はけ飛ばしたのであり、当時の自民党の幹事長代行は竹下さん、あなたであったのであります。大蔵大臣の責任はまことに重大であり、事態は昨年よりももっと深刻であります。八三年度税収増加分の六〇%が所得税の増税によるという異常事態であります。予算審議の山場を迎え、所得税減税について、総理、そうして大蔵大臣、さらに特に税の小委員長でありました山中通産大臣、そうして経済企画庁長官の重大かつ責任感あふれる答弁を期待するものであります。
さて、総理、あなたは行政管理庁長官のとき、土光さんと心中する気で増税なき再建を図ると語っていました。ところが、総理になるや否や、新年早々「財政再建」という表現を「財政改革」と言いかえ、大蔵大臣は、予算委員会で、直接税と間接税の比率の見直しを真剣に検討する環境は熟していると語り、増税キャンペーンを重ねております。
ところが、舌の根の乾かぬうちに、土光・中曽根会談では、「増税なき」を約束する始末なのであります。一体、中曽根内閣の真意はどこにあるのでありましょうか。定見のないその日暮らしを国民は激しく批判しているのであります。
政府は、財政再建に不可欠な不公正税制の是正をせず、租税特別措置法、法人税、所得税法の中に存在する大企業、大資産家の課税所得の優遇には何ら抜本的メスを入れていません。
さらに、臨調第三部会による補助金の整理合理化も六項目三十三本、一般会計の三割を占める総額五兆円にも達する補助金を見直しの対象に選びながら、何一つ成果を挙げていないのであります。
取るべきところからは取らず、切るべきものを切らず、しかも防衛費突出では、財政再建はまさに空念仏であります。(拍手)
鈴木総理は「大型間接税は念頭に置かず」と繰り返し公約してまいりました。昨年の臨調答申も「租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、」と述べております。財政当局が導入を考えていると伝えられているEC型付加価値税も、大平総理の時代に一般消費税の前提として検討され、多段階課税であり送り状が必要であるとの理由で、小零細企業の多いわが国では事実として導入不可能とされた事情を総理は忘れたわけではないでしょう。
大型間接税導入をせずという前内閣の公約を引き続き厳守することを強く要求するものであります。
さて、現在国民は、確実性の高い、信頼できる財政再建計画を求めております。大蔵省は、三年、五年、七年の財政収支試算を提出しておりますが、これではこの先どうなるか、民間サイドでは一向にわからないのであります。信頼できる財政再建計画は、それ自体一つの景気対策なのであります。一体何年で財政を再建するのか、明快な答弁を期待するものであります。
次に、グリーンカード問題について御質問を申し上げます。
一九八〇年三月に政府みずから提案、成立し、本年一月実施予定のグリーンカード制度を、三年間実施の延期を求めるという法改正は、前代未聞の暴挙であります。
この問題の原点は、国民が額に汗した所得と利子配当との間に課税上の不公平があってはならないというところにありました。そのためわが党は、大資産家優遇の不公平税制として強く批判されてきた利子配当の分離課税制度をやめ、一日も早く総合課税とすべきことを主張し、こうした声に政府・自民党がようやく重い腰を上げたのが法律改正であったのであります。
ところが、実施を目前にして、架空名義預金などで財産隠しをしていた大資産家や銀行関係者が、一部の政治家をつついて何とか新制度を発足前に葬り去ろうと策動し、ついに今回の政府提案に至ったのが事の真相であります。
八〇年三月の大蔵大臣は竹下さん、あなた自身であったのであります。今回、このつぶす提案も同じ竹下大蔵大臣の手によってなされようとしておるのであります。先日、閣議ではグリーンカード制度を提案した戦犯捜しがあったと伝えられておりますが、大蔵委員会ではあなた自身、「良心の苛責に苦しむ」と告白したではありませんか。だとすれば、税の不公平是正の国民世論に公然と逆行する筋違いの主張を撤回することを強く要求するものであります。(拍手)
大蔵大臣は、マル優廃止を予算委員会で示唆したと伝えられておりますが、これは国民生活の実情を無視した発言であります。非課税の個人貯蓄の多くは、生活を切り詰めてまで貯蓄した零細資金なのであります。大臣の軽々な発言に強く抗議するものであります。
さて、政府は緊急財源対策として、たばこ小売定価を五月一日から、一本当たり一円、一箱二十円の大幅値上げを図り、年間二千億円の増収を見込んでおります。これは、今日の財政危機を招いた政府の政治責任を棚上げし、そのしわ寄せを一方的に国民に押しつける増税であって、断じて許せるものではありません。
しかも、このことは、専売納付金率法定化制度の趣旨や利益積立金の制度を便宜的に変えることであり、専売事業の根幹を揺るがすものであります。外国たばこの市場開放要請にさらされている日本のたばこ産業の将来を不安に陥れるものなのであります。
総理自身はたばこをお吸いにならないようですが、好むと好まざるにかかわらず大多数の国民にとって生活必需品的存在であります。喫煙人口三千万人と言われ、切り詰められた生活を強いられている国民にとって、公共料金であるたばこ値上げが家計に与える影響は大きく、低所得者ほど負担の大きいことから見ても、賛成することはできないのであります。この世知辛い世の中、せめてたばこぐらいゆっくりと一服できるよう、大幅値上げによる増税の撤回を求めるものであります。(拍手)
税に対する国民の強い関心は、税の使い道に対する厳しいチェックを求める声なのであります。防衛費聖域、不沈空母発言、さらにまた、武器輸出禁止を求める国会決議の公然たるじゅうりん、こうした軍事大国化への道は、軍縮と防衛費削減を求める国民世論への公然たる挑戦であります。
今日では、米ソ両大国といえども、腹の底では軍事費負担に弱り切っているのであります。戦後、日本経済の復興と発展を保障した根本は、平和憲法下、防衛力を極力抑制したことであり、そのことによって、アジア諸国民との共存を図ったことであります。この意味で、政府予算に占める毎年度の防衛費を国民総生産の一%以内に抑えるという歴代内閣の約束を、「財政や諸般の事情の変化」や「保険料」と称してほごにしようとする総理の責任は、いまはやりの表現を用いるならば、まことに重かつ大なのであります。
以上、今回提案されました法案にかかわる質問をいたしましたが、その全般にわたり誠意ある御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 上田議員の御質問にお答えいたします。まず第一は、不公平税制への不満の問題でございます。
税負担の公平は、税制を維持する一番大事な信頼関係という点におきまして、不可欠の前提であると考えます。
租税特別措置につきましては、昭和五十一年度以来、その主要な項目のほとんどについて改善措置を講じてきておりますけれども、今後ともさらに負担公平を図るという観点から、社会経済情勢の変化に対応して、必要な見直しを行ってまいりたいと思います。
なお、今回の財政措置につきまして、つじつま合わせではないかという御質問でございますが、昭和五十八年度予算につきましては、すべての歳出について、聖域を設けることなく最大限の歳出削減を行ってきたつもりでございます。特に、五十六年度の決算不足の後始末という臨時支出があるという事情にもかんがみまして、税外収入について特段の措置を講じた次第なのでございます。今後とも、歳出歳入構造の合理化、適正化に努力をしてまいるつもりでございます。
次に、防衛費の問題でございますが、わが国の防衛力整備につきましては「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準にできるだけ早く到達できるよう極力努力していくということであります。
GNPとの問題につきましては、今後のGNPの推移及び防衛費の動向等に不確定的な要素がございますので、見通しを申し上げることはむずかしいと思いますが、とにかく防衛費のGNP一%に関する昭和五十一年の閣議決定は、現在のところ変える必要はないと考えております。
所得税減税実施について御質問がございました。
昭和五十三年以来課税最低限据え置きということでございますから、所得税減税を求むる声が非常に強いことは私もよく承知しておりまして、できることなら御期待にこたえたいと思って模索しておる状況でございます。
昭和五十八年度におきましては、歳出削減に努め、一方租税特別措置の整理合理化等も推進いたしましたが、税収による歳出のカバー率は六四・一%でございまして、かなり低い水準にまだございます。
また、個人所得に対する所得税負担の割合は昭和五十六年度四・九%となっておりまして、国際的に見ますと、まだ低い水準にございます。
以上のような点を踏まえまして、昭和五十八年度におきましては、税制調査会の答申においても、所得税減税を見送ることはやむを得ない措置とされたところでございます。しかし、税調答申にもありますように、昭和五十九年度以降できるだけ早期に税制全体の見直しを行う中で、課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行うことが必要であると考えております。現在、与野党におきまして、この所得税減税の問題については話し合いを行っておりますので、その推移を見守っておるという状況でございます。
次に、大型間接税導入について御質問がございましたが、大型間接税の導入については、何ら具体的な検討も行っておりませんし、指示もしておりません。「増税なき財政再建」というこの行革の理念はあくまで堅持してまいります。つまり、安易に増税を念頭に置くことなく行財政の守備範囲を見直すという見地から、まず歳出の見直しを徹底して行うということであります。
そうして、この財政再建を、じゃ何年度ぐらいをめどに行うつもりかという御質問でございますが、歳出歳入構造全体を見直し、もって特例公債依存体質からの脱却、できるだけ早く脱却をするということと、さらに公債依存度の引き下げに努めるというのがわれわれの目標でございます。
どの程度かかるかという点につきましては、これは経済の将来の展望あるいは経済情勢等を勘案して、今後検討さるべき問題でございまして、大体一応の目算として考えておりますのは、ここ数年はかかる、五年以上、十年ぐらいの間、それぐらいは頭に置かなければならないのではないであろうかというのが現在の情勢でございます。
グリーンカードの問題につきましては、昭和五十五年の第九十一回国会において政府提案をして、成立させていただいたものでございますが、その後、この制度をめぐりましてさまざまな議論が展開され、昨年八月には多数の議員の御賛同のもとに、この五年延期法が議員提案として提出されました。
この法案は、昨年の十二月二十五日に廃案となりましたが、現状におきましては、事務関係から見ましても円滑にこれを実施できる状況にはないと考えまして、税制調査会にお諮りをして、この際、政府提案により、グリーンカード制を三年間凍結することとした次第でございます。
これによって、適正公平な利子配当課税の実現という政府の基本方針は、いささかも変わるものではございません。今後早い機会に国会での御議論等も踏まえ、税制調査会に検討していただくことにいたしたいと考えております。
残余の御質問は、担当大臣から答弁していただきます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕
#13
○国務大臣(竹下登君) 大筋は総理からのお答えにございましたが、昨年三月六日、幹事長・書記長会談が開かれまして、自由民主党を代表して参加いたしましたのは私であります。その議論を踏まえて、政調・政審会長会議等に基づいて議長見解が述べられ、そして小委員会でそれぞれ検討がなされた、そういう推移は私もよく承知しております。したがって、その精神は生きておると考えております。しかし、政府としては、現下の財政事情から見まして、税制調査会の答申にも述べられているように、昭和五十八年度においては所得減税は見送らざるを得ない、この問題はやはり昭和五十九年度以降、税制全体の見直しの中で抜本的に検討したいということを今日まで申し上げてきたところであります。
しかし、この問題につきましては、現在、国会の場で与野党間で協議が行われているという方向にあると聞かされております。政府といたしましては、それだけに現段階でとかくのコメントを申し上げる立場はむしろ差し控えるべきものであると考えますが、国会の場で与野党間の合意が得られるならば、これを尊重するという政府の姿勢というものは、今日もなお変わっておりません。
それから次は、いわゆる「増税なき財政再建」という問題。
総理からお答えがございましたように、まさにこの「増税なき財政再建」というものは、行財政改革の理念としてこれは堅持すべきものである、このように考えております。したがって、EC型付加価値税でございますとか、あるいはかつてのいわゆる一般消費税(仮称)というものが提案されましたところの経緯等についての御意見がございましたが、これは私も存じておるところでございます。
総理からもお答えがございましたように、いわゆる大型間接税の導入については、具体的に検討していることもございませんし、また指示をしておるものでもございません。ただ、私が予算委員会等で発言いたしましたのは、権威ある税制調査会という場がございます。その中にあって、特定の税目についてはこれを除外すべきであるというようなことは、権威あるこの調査会等に対しまして申し上げる立場にないという意味で申し上げてきたわけであります。
次が、グリーンカード問題でございます。
これは、御指摘のとおり、このグリーンカード制度を提出いたしましたときの大蔵大臣は私でありました。そうして、いまもお答えがございましたように、本制度をめぐってさまざまな議論が行われました。郵貯あるいは金、ゼロクーポン、あるいはそうしたものへのシフト問題等、グリーンカード制度の責めに帰することが必ずしも適切でないと認められるものではありましても、制度と関連づけて議論された事象が見受けられたことは事実であります。したがいまして、この関係者による理解と協力や制度への信頼があってこそ初めて円滑に運営されるものでありますだけに、現状においては、法的安定性等の観点から、この制度を一定期間凍結せざるを得ない、こういう考え方に立ったわけでございます。
この問題につきまして、当時提案者であった私が、凍結法案を出すことに対する責任というようなものは、感ずれば感ずるほど、そういう責任は法案を御審議いただく中において明らかにすべきものであると考えておるわけであります。
それから次は、いわゆるマル優制度の示唆の問題がございました。
この問題につきましては、グリーンカード制度の三年間凍結を前提としておりますが、その後の利子配当課税制度のあり方につきましては、当国会での御議論を踏まえまして、その上で改めて税制調査会で検討していただきたいと、そのように考えておりますので、その税制調査会の中においても、たとえばマル優というようなものは審議の外に置いてくださいと、わざわざ手かぜ足かせをかけるべきものではないという、一般論において申し上げたわけでございまして、現在マル優制度の廃止等の問題が私どもの念頭にあるわけではございません。
それから次が、専売に関する問題でございます。
今回の専売納付金の特例措置は、将来における公社の損益状況を十分勘案しながら、五十八年度及び五十九年度に限り、定価改定による増収分のうち、公社に帰属すべき分を専売納付金として国に納付することとしたものでございまして、専売事業の経営に支障のないよう配慮をいたしておるところであります。
それから、たばこの定価改定は、内外製品とも原則として一本当たり一円の定価改定となるよう措置しておりまして、この定価改定による内外製品間の競争条件が変化するというようなことはないように配慮してあります。
また、公共料金であるたばこ値上げは、低所得者層ほど負担の大きい逆累進税であって、「増税なき財政再建」に逆行するのではないか、こういう御指摘でございます。
今回の定価改定は、前回定価改定時からの物価等の変動とか、財政専売物資としての性格とか等を十分勘案しながら、たばこに対する負担の適正化を図ろうとするものでございまして、いわゆる「増税なき財政再建」の趣旨に反しておるというようには考えておりません。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#14
○国務大臣(山中貞則君) 質問は御自由だし、また、議長から呼ばれた以上、当然質問者に答えなければならないのですが、私は通産大臣でございまして、したがって、所得税減税問題を直接に申し上げるということは大変職務上は越権行為でございますから、通産行政から見た考え方を申し述べて答弁にさせていただきます。たとえば、やはり国民の消費支出ということは、絶えず景気の動向に対して敏感に反映いたしますので、百貨店売上高の低迷等も先行きの消費支出全体の動向を示す一つの指標になるわけでありますが、最近、非常に中小企業を中心に、あるいは構造不況業種等も含めて景気低迷感、暗いという感じ、先行きに明るさが見えないという感じ等がしておりますので、どうしてもこの点については、やはり個人消費支出に最も刺激を与えるものはもちろん所得税の減税である。したがって、私としては、与野党のお話し合いの中でその方向が生み出されるならば、通産行政にもきわめていい影響を与えるであろうということを答弁させていただきます。(拍手)
〔国務大臣塩崎潤君登壇〕
#15
○国務大臣(塩崎潤君) 私も、経済企画庁長官として、上田議員にお答え申し上げたいと思います。まず第一は、所得税減税と経済効果との関係でございます。
確かに所得税減税は、消費及び貯蓄の増加をもたらして、経済にいい影響をもたらすことは当然でございます。しかし、それがかわり財源いかんによっては、たとえば消費の増加を抑制したり、あるいは貯蓄の増加を相殺したり、このような効果がございますので、一概にはその経済効果はかわり財源との関係で申すことはむずかしいと思うのでございます。
第二は、大型間接税の問題でございます。
これは、ただいま大蔵大臣も御答弁がございましたが、まだ決定をしたわけでもございませんし、検討ということにも入っていないようでございます。検討が始まりますれば、経済企画庁といたしまして、大型間接税の持つ効果、消費価格の騰貴とかあるいは消費抑制とかそういった現象と現在の経済との関係、さらにまた経済回復が最も緊要な今日、どのような効果をもたらすか、慎重な検討をしたいと考えているところでございます。(拍手)
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#16
○議長(福田一君) 鳥居一雄君。〔鳥居一雄君登壇〕
#17
○鳥居一雄君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案並びに製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに大蔵大臣に対し、若干の質問を行うものであります。まず、所得税減税について伺います。
所得税減税は、いまさら申すまでもなく、税負担の不公平是正、個人消費の喚起、生活防衛など、切迫した国民的要求であります。
〔議長退席、副議長着席〕
所得税減税の必要性については、昭和五十七年度予算の修正にかかわる所得税減税の衆議院議長見解においても、さらに本院の減税小委員会の報告でも明らかなように、与野党が一致して認めたものであります。
政府は、こうした状況を熟知しながら、六年間連続して所得税の課税最低限の引き上げを見送り、国民に多大な実質増税を強いてきたのであります。この減税見送りに見られる政府の姿勢は国民生活無視と断言せざるを得ません。
総理は、就任以来繰り返し「増税なき財政再建」の堅持を公約されております。総理六年間に及ぶ所得税の実質増税は、この六年間で一般会計の税収の伸びが八六・三%、これに比べまして所得税収の伸びが実に一〇九・九%であります。中でも、サラリーマンの税金を中心とする源泉分の伸びは一一七・三%に至っております。この伸び率は、法人税の七〇・六%、酒税の六七・五%、物品税の六二・六%など、主な税目の伸び率から見ても群を抜いて高いものであります。しかも、この六年間に所得税を除く他の税目はそれぞれ税率の大幅な引き上げによる増税が行われてまいりましたこととあわせると、所得税増税の大きさが一段と鮮明になるのであります。
総理「増税なき財政再建」とは所得税の実質増税を放置することなのでありましょうか。「増税なき財政再建」と所得税の実質増税に対する明快な所信をお示し願いたいと思います。
次に、総理は、われわれの所得税減税の要求に対しまして、財源問題を取り上げ、特に政府税調答申による五十九年度以降税制全体の見直しの中で根本的に検討するという項目を好んで強調し、答弁されてきております。この答弁は、所得税減税は行財政改革や不公平税制の是正によるものではなく、間接税の増税と抱き合わせでなければならない、こういう総理の御決意なのでありましょうか、しかと答弁を願いたいと思います。
また、総理は、税の直間比率の見直しについては、国民の合意と選択に任ぜる問題であるとの見解を示されておりますが、具体的にはどのような形で国民に選択を求められるのでありましょうか。たとえば国政選挙あるいは税調答申、概案の提示など、その方法は数多くありますが、総理のお考えをお示し願いたいと思います。
次に、政府は、五十八年度の実質経済成長率三・四%のうち二・一%は個人消費の伸びによるものとしております。しかし、五十八年度予算など個人消費を支える対策は、五十七年度における国家公務員の人勧凍結を初め、恩給、年金、各種手当の賃金・物価スライドの停止、地方公務員の給与凍結などマイナス要因がメジロ押しであります。加えて、所得税減税の見送りによる実質増税は一兆三百六十億円にも上ることから、可処分所得の伸びを鈍らせ、個人消費に決定的なダメージを与えることは必至であります。
総理、景気対策の上からも所得税減税の実施は不可欠なものであります。また、新聞報道では、総理が所得税減税の五十八年度実施を決意されたとしております。この際、総理に英断を求めますが、誠意ある御回答をお示し願いたいと思います。
続いて、中小企業に対する投資減税について伺います。
中小企業に対する投資減税については、政府でも五十八年度に措置されており、われわれも評価を惜しむものではありません。しかし、残念ながら、その減税額は初年度において二百二十億円にすぎず、冷え切った中小企業の設備投資を喚起するには余りにも力不足であります。
ただ、やみに光明のたとえもあるように、予算委員会における通産大臣の答弁では、二百二十億円のミニ減税でも、実質経済成長率を〇・〇四%以上は間違いなく押し上げるとのことであります。この政府試算からすると、投資減税の拡充は経済成長の押し上げ要因として十分に期待できるものであると思います。
政府案のように機械装置などに限定したものではなく、最近の機械装置の技術革新は目覚ましく、数年でその機能が低下するために、企業によってはリースで設備投資をする場合もふえていることなどから、せめて減税額で通産省の要求の半分程度までは投資減税の対象を拡充することを要求いたします。大蔵大臣の御答弁を願います。
次に、グリーンカード制度の延期について伺います。
政府は、利子配当所得の総合課税化を図り、不公平税制の是正の観点から、みずからが提案したグリーンカード制度を三年間延期しようといたしております。竹下大蔵大臣は、この制度導入が決定いたしました当時も大蔵大臣でありました。この不見識とも見える責任を問われると、こうした方法も責任のとり方の一つである、こう弁明されておりますが、税の公平化を願う国民から見ると、とうてい納得できるものではありません。
また、今回の措置は、グリーンカード制度が実施され、弊害が明らかになった結果の政策変更ではなく、一部資産者階級の強引な反対運動と政治圧力によるものであるだけに、国民の税に対する不公平感や不信感を倍増させることは必至であります。同時に、こうした不公平税制を温存させながら、所得税減税見送りや財政再建への協力を求められても、国民は応ずるわけにはまいりません。
大蔵大臣、大臣が政治への不信感や税の不公平感を取り除く意思があるのでありましたら、利子配当所得に対する課税の公平化の手順と方策、これをこの場で明確にしていただきたいのであります。
続いて、大型間接税の導入問題について伺います。
総理は、わが党の竹入委員長の質問に対して、五十四年の十二月二十一日に全会一致で採択された国会決議を勘案され、いわゆる一般消費税は導入しないと明言されております。しかし、一方におきまして、さきに述べたように、税の直間比率の見直しについては積極的で、国民の選択を問うとも言われております。大蔵大臣は、一般消費税という名称さえ使わなければ、税の性格が全く同じである付加価値税の導入は認められると曲解をしているようであります。
総理、財政再建に関する決議では、財政再建は、行政改革による経費の節減、歳出の節減合理化、税負担公平の確保、既存税制の見直し等によって推進することも決議しております。したがって、私は、大型間接税の導入は国会決議を無視するものと言わざるを得ません。財政再建に関する決議と大型間接税の導入の関係についてどのようにお考えになられているのか、明確にしていただきたいのであります。
また、大型間接税の導入は、いかなる名称を用いるとも、物価上昇、負担の不公平、中小零細企業の経営苦、景気停滞など、国民生活に弊害をもたらすことは必至であります。われわれは、大型間接税の導入には強く反対することを申し添えておきます。
次に、たばこの値上げについて伺います。
今回のたばこ値上げについては大いに疑問を抱いております。その理由は、たばこ専売は、臨調から特殊会社や民営化への答申がなされていること、相変わらず貿易摩擦の原因であること、専売公社の経営は黒字であることなどが理由であります。
つまり、政府は、国民が望む専売公社の将来展望については、具体策を示さず、単に財源あさりのみ先行させていることであります。臨調答申に基づく専売公社の改革に関する法律案は、今国会に一体提案されるのでありましょうか。また、今国会が無理とすれば、いつごろをめどに作業をされているのか、明確にお示しをいただきたいと思います。
以上をもちまして、私の質疑を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 鳥居議員にお答えをいたします。まず、所得税等の問題でございます。
昭和五十三年以来、課税最低限の据え置き等によりまして所得税負担が上昇しているとしておりまして、各方面に減税の御要望が強いことは、先ほども申し上げたとおりよく熟知しているところでございます。
しかしながら、五十八年度の予算編成に当たりまして税調の御答申もいただきまして、五十八年度は無理だ、そういう税調の御答申もあり、また予算全体における税のカバー率等を見ましても、先ほど御答弁申し上げましたように六四%程度、あるいは個人所得における所得税の負担割合等を見ましても四・九%程度でございまして、国際的にはかなり下の水準にございます。
そういうようなところも踏まえまして、五十九年度以降できるだけ早期に、税制全体の見直しを行う中で、課税最低限や税率構造について抜本的な検討を行う、こういう税調の御答申の線に沿ってわれわれは処置していきたいと考えております。
「増税なき」という意味でございますけれども、「増税なき」という意味は、臨調答申で、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、こういう意味で書かれておるのでございます。このような観点から見まして、所得税減税の見送りによりまして実質的な税負担が上昇しているということが直ちに「増税なき財政再建」の理念に反するものとは考えておりません。
また、税制調査会の答申におきまして、五十九年度以降できるだけ早く全面的な見直しを行う、こう書いておりますが、これは税制全体の見直しと政府は受けとめておりまして、特定の検討の方向を示唆したものではないと考えております。
さらに、国会において繰り返して申し上げておりますように、現在、政府は直間比率の見直しを具体的に検討もしておりませんし、指示もしておりません。
なお、直間比率の問題は、国民の合意と選択の中から形成されてきた結果の姿でありまして、その意味で直間比率等の税体系の問題は、究極的には将来、国民の合意と選択の問題であると思いますが、それは直ちに選挙を意味するものではございません。各学界や専門家の御意見あるいは国会の場を通じての各党の御意見あるいは税制調査会その他審議機関の御意見、その辺をよく探りまして、国民の真意がどこにあるかということを見きわめていくべきものであると考えております。
さらに、所得税減税の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、いま各党各派におきまして話し合いを進めておるところでございまして、その結果を見守っておるという状態でございます。
次に、国会決議との関係でございましたが、大型間接税の導入につきましては、先ほど申し上げましたように、具体的に検討も指示もしておりません。
五十四年十二月の国会決議を尊重して、政府として、いわゆる一般消費税(仮称)を導入する考えは持っておりません。
今後、財政の対応力を回復して、財政改革を推進するためには、まず第一に、歳入歳出構造の全面的見直しを行うことが必要であると考えております。
さらに、専売公社の問題でございますが、専売公社の経営形態の改革につきましては、五十七年九月二十四日に閣議決定されましたいわゆる行革大綱に沿って対処していくつもりでございます。現在、政府・与党におきまして、この経営形態について鋭意検討が進められております。‘
なお、葉たばこ耕作者の取り扱い、小売人の取り扱い等につきましては、関係方面と十分調整を図ることが必要でありまして、目下鋭意作業しておるところでございます。
残余の御質問は、大蔵大臣から御答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕
#19
○国務大臣(竹下登君) 今回の中小企業の設備投資促進のための措置につきましては、限られた財源によって最大限の効果をねらいますとともに、従来の投資促進税制の利用実績を見てみますと、中小企業は、大企業と異なりまして、税額控除よりも特別償却を利用する割合が大きいこと等を考慮いたしまして、現行の中小企業者等の機械の特別償却制度を活用して、内容の拡充を図ることとしたものでございます。昭和五十八年度税制改正におきまして、企業関係租税特別措置について一層の整理合理化を行うこととしておる中にありまして、今回の措置は、中小企業の設備投資の促進に資するためのいわば精いっぱいの配慮をしたというふうに御理解を賜りたいと思うところであります。
それから、グリーンカード制度の三年延期の提案の問題について、今後の利子配当所得に対する課税の公平化の手順と方策を示せ、こういう御意見を交えての御質問でございます。
先ほども申し述べましたように、今回、諸般の情勢に顧みまして、税制調査会にお諮りして、グリーンカード制度の適用を三年延期することを提案しておりますが、適正公平な利子配当課税を実現するという政府のいわゆる基本方針、これはいささかも変わりがございません。
そこで、今後における利子配当課税の適正なあり方ということは、まず、当国会での御議論を踏まえまして、その上で改めて税制調査会で御検討をしていただくという方向で対応したいと考えております。(拍手)
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#20
○副議長(岡田春夫君) 米沢隆君。〔米沢隆君登壇〕
#21
○米沢隆君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま提案のありました租税特別措置法の一部を改正する法律案並びに製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、その基本的な問題点につき、総理並びに関係各大臣の所見をただしたいと存じます。御案内のとおり、最近におけるわが国経済の実質成長率は、年々低下傾向を示しております。政府は、経済見通しにおいて、五十八年度のわが国経済は、三・四%の実質成長達成が可能であると強弁いたしておるのでありますが、目下の個人消費の伸び悩み、民間設備投資の停滞、依然として続いております輸出の落ち込みなどの現状から見ますと、それは二%台に落ち込むおそれすらなしとしないのであります。
このような最近のわが国経済の景気低迷の要因は、政府が、第二次石油危機のもたらすデフレ効果を過小評価し、所得減税や公共投資の拡大など、積極的な景気対策を講じなかったこと、景気回復に逆行する大幅増税を強行したことなど、政策の対応を誤ったことに起因しており、明らかに政策不況と言わなければなりません。
この政府の失政による政策不況は、政府が、わが党からの再三にわたる忠告を無視し、ただ数字合わせ的な五十九年度赤字国債脱却方針に固執し、財政が本来持つべき景気調整機能、自動安定化作用を全く無視した財政運営をとり続けたことによる当然の帰結であります。
不況のときに財源がないからといって増税を行い、公共投資を抑制し続けていては、不況は一層激しくなり、結果的には税収が減って、かえって財政赤字は拡大するのは当然であります。財政バランスは、所得税等の減税と公共投資の拡大を行い、もって景気回復を達成することによって初めてもたらされるものではないでしょうか。
このようなことは、今日の経済学の常識ともいうべきものであるにもかかわらず、政府がこれに全く反した政策をとり続け、かえって財政赤字の拡大を促進する結果を生み、ひいては、わが国経済の景気低迷を必要以上に長引かせ、国民生活の安定をも阻害してきたことは、きわめて重大な失政であると言えます。
以上の点についての政府の猛省を促すとともに、総理、大蔵大臣並びに経企庁長官からの強い反省の弁と、あなた方の財政再建下における財政の景気調整機能発揮の是非につき、どのような見解を持たれているのか、その所見をお伺いいたしたい。
わが党は、わが国のすぐれた技術革新力、着実な向上が可能な労働生産性、高水準の貯蓄率などを持つわが国経済は、中長期的には四ないし五%の成長を持続する力を有しており、また、内需の拡大によって、世界経済の再活性化に大きく貢献すべきであると考えるのであります。
わが党は、わが国経済の潜在成長力を顕在化させ、中長期にわたる安定経済成長の維持と、それによる大幅な自然増収の確保による財政再建達成のためには、短期的には財政支出の拡大を伴うとしても積極的財政政策を講ずべきとの見地から、所得税、住民税減税、中小企業の投資減税など、二兆円程度の減税を断行するとともに、良質な住宅建設、生活環境の整備等を中心とする計画的かつ着実な公共投資の拡充を図るべきだと考えるのでありますが、総理並びに大蔵大臣はいかがお考えでしょうか。
同時に、現行税制に見られる制度上、執行上の不公正に対する国民の大いなる不満を政府はいかにして解消していかれるのか、あわせてお伺いいたします。
また、今国会の審議における政府の答弁を聞いておりますと、財政、税制に関する従来の政府の方針が明らかに方向転換されつつあると思われるのでありますが、ここに改めて、「増税なき財政再建」は一体守るのか。「増税なき」の定義をどう解釈されようとしているのか。たびたび取り上げられておりますが、五十九年度からの大型間接税の導入は検討しているのか。何もしてないという答弁でありますけれども、それならば、五十九年度には大型間接税の導入は絶対にないことを、ここで明言していただきたいと思います。
同時に、赤字国債脱却の目標はいつとするのか。
以上の諸点につき、総理並びに大蔵大臣の、さらに大型間接税導入によるわが国経済に対する影響と、いま、それを導入する時期にあるのかどうかという点につき、経企庁長官の御所見をお伺いいたします。
以上の質問を踏まえつつ、以下、租税特別措置法の一部改正案につきお伺いをいたします。
まず、中小企業の事業承継税制についてお伺いいたします。
政府は、本租税特別措置法の中に個人事業者の土地の評価減額の規定を盛り込むとともに、相続税基本通達の改正により、同族法人企業の株式の評価方法の改善を図ることとされましたが、これは、中小企業者の長年の希望にこたえるものであり、かねてより中小企業の事業承継税制の確立を主張してきたわが党の立場からも評価するにやぶさかではありません。
しかし、今回の改正では、個人事業者の小規模土地に限り、評価減額率が二〇%から四〇%に引き上げられたにすぎず、また、株式の評価につきましても、中小企業の経営の継続を円滑に行わしめるべきとの観点からの抜本的な改正が行われたものとは言えません。今後速やかに、さらに進んだ税制改正に向けて検討が着手されるべきであると思われますが、どのようにお考えか。
その際、わが党が主張してまいりました事業用財産の生前一括贈与制度及び相続税の納税猶予制度の早期導入は最も急がれる改正であると思いますが、政府の所見をお伺いいたしたいと思います。
また、今回の中小企業者の相続税負担の軽減措置に関しまして、税制改正による減収が計上されていないのはいかなる理由によるものか。
さらに、株式の評価方法の改善は、なお相続税に関する通達改正で行いながら、小規模土地の評価減額については、今回の改正で通達事項から法律事項へ格上げされた理由は何かの二点について、あわせて大蔵大臣にお伺いいたします。
さて、次には中小企業の投資促進税制についてお伺いいたします。
中小企業、とりわけ零細な事業者の設備投資が落ち込み、個人消費の不振と相まちまして、景気回復の足を引っ張っていることは周知の事実でございます。政府は、本租税特別措置法において中小企業の設備投資に対する減税措置を打ち出しましたが、その内容は余りにも貧弱なものと言わざるを得ません。
昨年来、政府部内におきまして、本施策の内容につきいろいろと調整が行われてきたやに聞きますが、その過程において、当初通産省の試案にありました税額控除の制度が否定され、また、特別償却の制度も、過去五年間の平均投資額を上回る部分についてのみを対象とすることとなり、かつ、償却率四〇%から三〇%に切り下げられることになりました。これでは、そもそも年間投資額の少ない中小企業の設備投資を誘発する効果はきわめて乏しいと言わざるを得ません。
中小企業の近代化、高度化を促進し、同時に、景気の抜本的な浮揚策とするためには、本法の中小企業投資促進税制を強化すべく、早期の見直しを行うべきであろうと思いますが、大蔵、通産両大臣の所見をお伺いいたします。
また、本改正案におきましては、特定基礎素材産業の活性化のための税制改正の実施が図られておりますが、わが国の素材産業が景気の停滞、国際競争力低下による輸出の減少等により深刻な構造不況に陥っている現状にかんがみ、かかる措置に加えて、化学工業原料の安定確保のための原料非課税原則の実現、あるいはエネルギーコスト低減化対策、新技術開発の促進などの諸対策をさらに講ずることによりまして、素材産業の安定と発展を図り、もって勤労者の不安を解消すべきだと考えますが、大蔵大臣、通産大臣はいかがお考えでしょうか、お尋ねをいたします。
次に、製造たばと定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。
今回の値上げのように、安易に国民に負担を強いる前に、政府は、専売公社の合理化、効率化に一体どれだけ努力されたのでありましょうか。
一昨年の臨調第一次答申は、工場の統廃合等による要員の縮減など、緊急の改革案を提示し、さらに、昨年七月の臨調基本答申は、専売公社の特殊会社化、民営化という抜本的な合理化方策を提示したことは周知のとおりであります。
しかるに、政府は、この間国民には臨調答申を最大限に尊重すると約束しておきながら、この公社経営の合理化についてはほとんど着手しなかったばかりか政府の行革大綱に専売公社の具体的改革手順を盛り込まなかったことは、きわめて遺憾であります。政府・与党間の調整がつかないなどというお家の事情で惰性的な公社経営を続け、ここに至って国民に負担をしわ寄せする政府の姿勢は、断じて許されません。行革に不退転の決意で取り組むという中曽根総理のリーダーシップがいま問われているのであります。
総理並びに大蔵大臣に対し、臨調答申どおり専売公社改革を実行する決意があるのかどうか、また、その具体的改革手順をいつまでに決めるのか、お伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 米沢議員の御質問にお答え申し上げます。まず、わが国経済の前途に関する政策でございます。
世界経済全体が第二次石油危機のあふりを受けまして、まだ調整期を完全に脱却しておりません。しかし、その中にあって、わが国の経済動態は欧米諸国から比べれば比較的にいい状況を追って推移していると思います。しかし、このようなわが国経済も世界経済の停滞の影響を受けてまいりまして、輸出の減少等により景気回復は緩慢なものにとどまっており、経済の現状はなお厳しい状況にあると考えております。
ただし、最近におきましては、在庫調整が進んできておること、物価がきわめて安定しているということ、それから為替相場が円高に移行しつつあるということ、こういうような条件は明るい条件でございます。
一方、財政改革を遂行して財政の対応力の回復を図るということは、また緊急の課題でございまして、その面に向かっていま鋭意努力しているところでございます。
こういうような状況のもとに、財政がこの際積極的に出動して景気浮揚を図るというようなことは、困難な状況にございます。五十八年度予算におきましても、公共事業関係費については前年度同額を確保するとともに、民間資金の活用等によりまして事業費の確保を図る等、さまざまの努力もして景気回復に努めておるところでございます。
特に、中小企業の投資減税、あるいは承継税制制度の改革、あるいは住宅政策等につきましては、五十八年度予算につきましても特に配慮したところでございます。
なお、財政改革を通じまして、財政の対応力の回復を図っていくということは、将来わが国経済の発展と国民生活安定の基礎になることでございまして、われわれはこの線をまじめに遂行してまいるつもりでございます。
また、来年度において、所得税、住民税の減税、あるいは中小企業の投資減税等の減税を断行せよという御質問でございます。
この点につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、各党各派の話し合いの推移を見守っておるという状況にございます。
さらに、現行税制における執行上の問題について御指摘をいただきました。
税負担の公平を確保するというためには、制度上の問題と、それから執行上の問題と二つあると思っております。
租税特別措置における公正度の確保につきましては、五十一年度以来、その主要な項目のほとんどについて改善措置を講じてきておりますが、今後も公平確保の観点から、社会経済情勢の変化に対応して必要な見直しを行ってまいります。執行上の公平確保につきましては、税務調査の充実あるいは納税意識の向上等に一層努力してまいりたいと思います。
なお、所得課税の適正な執行を担保するための制度上の措置につきましては、税制調査会の審議の状況等を踏まえつつ対処いたしたいと思っております。
また、「増税なき財政再建」とは何ぞや、これを守るのかという御質問でございましたが、「増税なき財政再建」は行財政改革の理念でございまして、これをあくまで守っていく考え方でございます。
その意味はいかなるものであるかということでございますが、臨調答申におきましては、全体的な見直しを行う、そして、その全体的な把握の中でGNP、国民総生産に対する租税負担率を変えない、そして、新たな税制上の措置はとらない、そういうことを基本線として「増税なき」ということをとらえておるわけでございます。
このような考え方に立って私たちも政策を進めてまいりたいと思っておりますが、大型間接税の導入につきましては、具体的に指示も検討もしておらない状態でございます。
赤字公債脱却の目標はいつとするかという御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、五年と十年の間ぐらいの中でどれぐらいをとれるかというところをいま鋭意検討しておるという状態でございます。
次に、財政改革と財政再建がどう違うか、こういう御質問でございます。
いずれも公債、とりわけ特例公債に依存した財政体質を改善して、その対応力の回復を図るという点においては同じでありますが、昭和五十四年以降、五十九年度特例公債依存体質からの脱却を目標に財政再建を推進してまいりました。さらに、社会経済情勢の進展に即応するよう歳出歳入構造を見直して、もって特例公債依存体質からの脱却、さらに、公債依存度の引き下げを図ろうという発想に立って、また、内容においては、歳出について言えば、単なるぜい肉落としから構造改革に進むというのが財政改革という考え方であります。
次に、専売公社の問題について御質問がございました。
公社経営の合理化の問題でございますが、専売公社の経営につきましては、いままでも葉たばこの減反、葉たばこ購入価格の抑制、定員の縮減、工場の統廃合等の合理化を鋭意推進してまいりました。
専売公社の経営形態につきましては、昨年、五十七年九月二十四日に決定されたいわゆる行革大綱に沿って対処してまいるつもりでおります。いま、政府・与党の内部におきまして、公社形態の改革問題について、鋭意検討が加えられているところでございます。葉たばこ耕作者の取り扱いや小売人の扱い等、関係方面と十分な調整を図ることが必要でありまして、鋭意、目下作業中でございます。
残余の御質問は、関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕
#23
○国務大臣(竹下登君) まず、最近の景気低迷についての御意見を交えた御質問であります。総理から基本的なお考えは申し述べられたところでありますが、一定の条件のもとにおきまして、公債発行によります積極的な財政運営が必要とされる場合がないとは思っておりません。特に、石油危機以後の内外経済の不均衡の克服のためには、この積極的な公債政策が貢献したと評価いたしております。しかし、その反面、公債が累増いたしまして、現に大きな財政問題が生じておる。だから、常に経済の下支えを積極的に行うような財政運営は、これは必ずしも適当ではありません。
さらに、現在のような財政事情のもとで財政による景気対策を行う場合には、その財源を公債に求めざるを得ない。その消化はきわめて困難である。また、無理して消化を図ろうとすれば金利の上昇を招来いたしまして、設備投資等への悪影響をもたらす。そういう面からは景気回復に逆に悪影響を与えることになる等の問題もございますので、それこそ慎重に、まさに対応力そのものを回復する必要をまず念頭に置いて、国民生活の安定の基礎となる経済発展というものに対処すべきである、このように考えております。
それから次は、減税に対する御質問でございました。
総理からそれぞれお答えがございましたが、私どもといたしましても、いわば所得減税問題については各党各会派の話し合いが行われるやに承っておりますので、その推移を見守っていきたい、こういう基本的考え方でございます。
そうしてさらに、現行税制における税制上の、執行上の不公正に対する御指摘の問題でございますが、これはまず国民の納税協力を確保するための不可欠の前提でございますので、租税特別措置につきましては、税負担の公平確保の観点から、社会経済情勢の変化に対応して今後とも必要な見直しを行っていく考え方でございます。
なお、執行上の公平確保につきましては、青色申告の育成充実、税務調査の充実等に一層の努力を重ねてまいります。
「増税なき財政再建」、これは総理からもお答えがございましたように、行財政改革のまさに理念として考えておくべき問題でございます。安易に増税を念頭に置くというようなことはあってはならない。自粛自戒をいたしておるところであります。
それから次に、租税特別措置のいわゆる承継税制の問題等についての御質疑がございました。
この問題につきましては、農地の納税猶予制度は、農地の所有と経営の不可分という農地法上の制約等を考慮いたしまして、農業の自立経営を目指す者が、民法の均分相続制にとらわれることなく農地を引き継ぐことができるようにとの農業基本法の趣旨に対処するためのきわめて異例の措置でございますので、この問題につきましては税制調査会の中期答申におきましても「農地と中小企業者の事業用財産等とは事情が異なるので、中小企業者の事業用財産等について納税猶予制度を設ける必要はない」、そして、そうした制度を設けることは結局給与所得者のみに通常の納税を求めることになりまして「税制として極めて歪んだものとなり適当でない。」このようにされておるところでございます。
したがって、今回の税制改正というものは、従来の要望にこたえまして、そうして、いわゆる小規模会社の株式についての問題等々、個人事業者の宅地のうち二百平米までの部分について、通常の方法により評価した価額から一定割合の減額を行う等々、精いっぱいの措置を講じたところでございます。
それから、その中小企業者の相続税負担の軽減措置に関しまして、税制改正によります減収ということになりますと、今回の措置は織り込み済みでございまして、税制改正による減収額として特掲しておりませんのは、相続税における評価に関するものでありまして、従来通達で取り扱ってきたことの延長線上のものである、こういうふうに理解をいたしておるからでございます。
それから、いわゆる株式の評価方法の改善は、相続税に関する通達改正で行いながら、小規模土地の方につきましては通達事項から法律事項へ格上げされた、この問題に対する御指摘でございます。
取引相場のない株式の評価の改善合理化につきましては、現行の株式の評価体系の枠組みの中で収益性をも加味することとするものでありますところから、相続税の評価通達の改正によってこれは措置をすることとしております。
一方、小規模宅地の課税の特例につきましては、小規模宅地が生活基盤の維持のために不可欠で、その処分に相当の制約を受けるのが通常であることからいたしまして、従来、通達によって所要の措置を講じたところでございますが、今回、最近における地価の動向等をも踏まえて、従来の措置をさらに進めて、事業用宅地は通常の価額からその四〇%相当額を減額するなど、相続税の課税上特別の配慮を加えることとするものでありますところから、今回、法律上明定する、こういうことにいたしたわけでございます。
それから、今回の法律改正の中小企業設備投資に対する減税措置の問題でございます。
中小企業の設備投資を促進するための措置といたしまして、現行の中小企業等の機械の特別償却制度につきましては、その対象となります機械装置の取得価額の合計額のうち、過去五カ年間の平均投資額を超える部分について、本則の一四%ではなく三〇%の特別償却を適用しておること。
それから、今回の措置は、限られた財源で最大限の効果をねらいますとともに、従来の投資促進税制の利用実績を見ますと、中小企業は大企業と異なりまして、税額控除より特別償却を利用する割合が大きいというようなことを考慮して、現行の中小企業者の機械の特別償却制度を活用して内容の拡充を図る、このようにしたところでございます。
そこで、本年度税制改正において、企業関係租税特別措置について一層の整理合理化を行おうとしております中で、今回の措置は、まさに精いっぱいの配慮をしたものであるというふうに御理解を賜りたい次第でございます。
それから、わが国の素材産業の問題に関してでございますが、いわゆる石油税につきましては、本税の課税の趣旨、そしてその使途から見まして、これを非課税とするというととは、これは困難でありますというふうにお答えをせざるを得ません。
石油税は、石油の利用に共通する便益性に着目して、広く石油の利用者に負担を求めるという観点から課税することとしたものでありまして、一部の利用者が負担を免れるというのは公平負担の見地から問題があることと、石油税の税収は石油対策及び石油代替エネルギー対策の財源に充てることとされておりますので、石油利用者に実質的に還元される仕組みになっております。特定の油種について免税する場合には、その油種の利用者は受益のみを受ける、こういう問題が存在するわけでございます。
臨調答申のとおり、私どもの所管であります専売公社改革を実行する決意があるかということでございました。
ただいま総理からこのお答えがございましたが、いわゆる行政改革大網におきまして、政府・自由民主党行政改革推進本部常任幹事会、これで関係者の出席を求めながら調整を進めておるところでございます。
なお、大蔵省、専売公社で事務的に鋭意検討しておりますが、葉たばこ耕作者の取り扱いの問題と小売人の扱いなど、慎重な配慮が必要な問題もございます。また、税制のあり方等、事務的、技術的に複雑な問題も多いわけでございますけれども、これは鋭意関係各方面と十分調整を図りながら進めてまいりたい。
以上でお答えといたします。
〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#24
○国務大臣(山中貞則君) 大蔵大臣から全部答弁してしまいましたので、私は、それにちょっと変わった面からの注釈をつけたいと思うのです。いま、中小企業は大体特償の方をとっているということでございましたが、これが、こういう言葉がなぜ出てくるかと申しますと、確かに各省庁、予算要求前にはいろいろなアドバルーンを上げたり、希望を最大限表明したりいたしますけれども、予算編成権を持っている大蔵省と最終的に詰めてでき上がったものは、原局も、あるいは大蔵省も含めて、政府一体の政策の決定ということでありますから、その意味では御了承願いたいのですが、この中小企業投資促進税制は、実際は当初の税額控除あるいは特償の率というようなことを考えますと、大変大きな、二千億以上の大台に乗る財源を必要としなければできない、それだけの減収になるわけでありますから。したがって、いろんな方面と検討しながら、これに参考にするのには何をとったらいいかということで考えて、去年四月から実施しましたエネルギー関連の、これは中小企業だけでない、投資促進をやりました。
その成果をずっとフォローして振り返ってみますと、そこで特徴が出てくるのですが、大企業はほとんどが税額控除を採用している、そして中小企業は特償を採用しているという現象が出ました。そこで特償一本にしぼって、大蔵省としてはとてもつらい財政の中で、財源の中で、これでも相当な規模でございますので、通産省の中小企業に対する活力を与えるという政策に財源を割いたというのがその結果でございます。(発言する者あり)特償とは特別償却税制のことを申します。
次に、原料非課税の問題でありますが、これはちょっと大蔵大臣の答弁では的確ではなかったかと思います。というのは、輸入ナフサと石油化学工業の使用する国産ナフサとの問題であろうと私は思いますが、現在、両業界話し合いの結果、石油税に相当する部分のコスト、それを国産ナフサで石油化学業界に転嫁することなく、その分を石油業界が背負って、その税額分だけは安く国産ナフサを供給することについて両者合意ができておるというととを承知いたしておりますが、なお、制度の問題としては、大蔵大臣の言われるのが基本的な理論であろうと思います。
〔国務大臣塩崎潤君登壇〕
#25
○国務大臣(塩崎潤君) 米沢議員にお答え申し上げます。第一は、財政の持つ景気調整機能の問題でございます。
確かに、これまでの不況期には、財政政策が金融政策と並びまして有効需要拡大の手段として活用されてまいりましたし、多分に成果を上げてまいりました。しかし、現在の財政状態がきわめて悪化しておりますので、景気調整機能といたしまして財政政策を活用することには大きな制約があるということは、大変残念に思っているところでございます。
しかし昨年、中曽根内閣成立に伴いまして、直ちに二兆七百億円の総合経済対策を公共投資を中心といたしまして提案、成立させていただいたのでございますが、このことは、財政の景気調整機能を無視するものではない証左だと思うのでございます。今後とも私どもは、財政の機動的運営、さらにまた、五十八年度の公共投資の確保のような努力を払いながら、金融政策と相まちまして、今後の安定的な持続的な成長を図っていきたいと思うのでございます。
さらにまた、御案内のように、巨額な財政赤字は金利の引き下げを妨げる、そして、住宅投資や民間設備投資の資金の獲得を妨げるおそれもございますので、やはり財政再建は景気対策の上からも必要ではないかと考えているものでございます。
第二は、大型間接税を導入した場合の経済に対する影響はどうかという問題でございました。
総理大臣も大蔵大臣も、指示も具体的な検討もしていないという御答弁がございましたが、仮に検討に入った場合、私どもは、大型間接税が持ちますところの効果、学説上よく言われますところの、商品やサービスの価格の上昇、それが持つ消費抑制の機能、さらにまた、新しい税金が経済の中になかなか溶け込まない困難性、このような問題を十分念頭に置きまして、経済との関係、特に、経済回復が最も緊要な今日でございますので、きわめて慎重な態度で検討してまいりたいと考えておるところでございます。
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#26
○副議長(岡田春夫君) 小沢和秋君。〔副議長退席、議長着席〕
〔小沢和秋君登壇〕
#27
○小沢和秋君 私は、日本共産党を代表し、租税特別措置法一部改正案及び製造たばこ定価法等一部改正案について、総理に対し質問いたします。わが党は、中曽根内閣成立直後、との内閣が戦後最悪の、金権擁護、軍拡、改憲内閣であると指摘いたしましたが、三カ月後の今日、事実はまさにそのとおりになってまいりました。
歴代の自民党政府が国民の反撃を恐れて先送りしてきた韓国への四十億ドル借款供与、対米軍事技術協力などの問題を一挙に処理した総理は、アメリカでは、運命共同体、不沈空母、四海峡封鎖などの危険な公約を連発いたしました。まさに、平和と安定した生活を願う国民に対し真っ向から挑戦しているのであります。
税制の面でもこの姿勢は貫かれ、中曽根内閣は、国民的憤激の的となっている大企業・大資産家優遇の不公平税制の是正を放置し、国民の大幅減税の要求には背を向けております。その一方、軍拡に必要な巨額の財源を確保するために、最悪の大衆課税である大型間接税を導入する意図をむき出しにしております。中曽根内閣が発足早々から異例の不人気に直面しているのは当然であります。
私は、このような中曽根内閣の暴走を許さず、税制の民主的改革を求める立場から、以下四点にしぼってお尋ねいたします。
第一に、税の不公平の根幹をなしている大企業に対する異常なまでの優遇措置をどうするのかであります。
今度の法案で、民間航空機の特別償却制度の対象範囲が拡大され、期限も延長されようとしております。日航や全日空が、これまでもこの制度を利用して過大な償却費を運賃に織り込んで利用者に押しつけ、さらに帳簿上だけで売ったり買い戻したりの操作を行って、不当な利益を上げてきたことはよく知られております。このような制度は、償却率のわずかな引き下げでお茶を濁すのではなく、きっぱり廃止すべきだったのではありませんか。
また、コンピューターの買い戻し損失準備金制度も期限が延長されようとしております。いま、一番もうけている業界の一つがコンピューターと関連機器産業であることは、総理も御存じのはずであります。国民の血税を使って手厚い補助金を出している上に、税制面でもなお優遇しなければならないのはなぜか。
今回の税制改正に当たって、有力視されていた退職給与引当金非課税限度の引き下げなど、企業課税のわずかばかりの手直しも結局見送りとなりました。株式の時価発行による莫大なプレミアムには一円の税金もかかりませんが、これも手つかずのままであります。
退職給与引当金など大企業優遇税制の是正が見送りになった背後に財界の強い圧力があったことは、経団連の税制についての意見書を見ただけで明らかであります。今回の改正には、最近経団連が新設を要求したばかりの石油化学、アルミなど素材産業の省原料設備の特別償却制度も早速取り入れられております。まるで国民の批判など眼中にないと言わんばかりではありませんか。
わが国の大企業は、すでに国際的にずば抜けた競争力を持っており、このため欧米各国との貿易摩擦が絶えません。そして、この不況の中でも、東京証券取引所第一部上場会社約八百社の中で、その四分の一は空前の利益を上げ、または大幅に収益を増加させており、不況と言われる素材産業でも多くが内部留保をふやしているのであります。これでもまだ税制で優遇したり補助金で助成したりせねばならぬというのでありましょうか。
総理に果たして大企業優遇税制を抜本的に見直す意思があるのかどうか、その基本姿勢をお尋ねするものであります。(拍手)
第二に、国民の切実な要求である所得税減税についてであります。
六年連続の減税見送りによる実質大増税が、勤労者、特に所得の少ない階層ほど税負担を急激に重くし、家計を破壊していることは、総理府の家計調査にもはっきりあらわれております。
減税見送りが始まってからのこの五年間で、勤労者世帯の収入は平均二二・三%の伸びでありますが、所得税の伸びは平均七三・七%と所得の三倍以上のふえ方であります。特に、第一階層と言われる低所得者は、一〇一・六%増と異常なまでの重い負担になっております。これに住民税、社会保険料、住宅ローンなどを考えれば、最近の勤労者世帯の生活苦の深刻さがよくわかるのであります。
総理、あなたも政治家なら、このことに胸の痛みを感じるのではありませんか。それでも減税をしないのですか。大企業への優遇税制で示した思いやりの何分の一かを勤労者に示す考えはありませんか。
減税を行う気なら、財源は幾らでもあります。アメリカの言いなりになるのをやめて軍事費を削ってもよし、あるいは総額三兆円を超える大企業優遇税制の一部手直しをするだけでもできるのであります。この際、五十七年度一兆円、五十八年度一兆円以上の減税が、国民の購買力をふやし、経済危機を打開するためにも重要になっていることを強調するものであります。
政府も、来年度の経済成長三・四%を実現する上で最大の問題が国民の消費が実質で三・九%伸びるかどうかにあることを認めております。実質増税によって可処分所得すなわち家計の手取り収入が年々落ち込んでいる状態を放置しておいて、どうして三・九%の消費増を実現できますか。この面からも減税は緊急課題ではありませんか。総理の責任ある答弁を求めます。(拍手)
なお、本日から国会審議が再開されましたが、その折衝の過程で、自民党は、所得税減税について前進した回答を来週前半にも示すと述べてきました。昨年も同じような問題が起こりましたが、結局何の成果もありませんでした。今回は何か成算があってこのような態度を表明したのか、お伺いいたします。
また、五十八年度に減税を本格的に実施する気ならば、当然予算案の修正が必要になりますが、その意思があるかどうかも明確にお答え願いたい。(拍手)
所得税に関連して重大なのはグリーンカードの延期問題であります。
ここには大資産家擁護の姿勢が露骨に示されております。三年前、政府がこの制度を提案した最大の理由は、総合課税化による不公平の手直し、一部の悪質な資産家の脱税防止などでありました。わが党は、グリーンカード制度が個人のプライバシーを侵害する危険性や高額所得者の名寄せが確保されない欠陥などを指摘して、その導入に反対しつつ、利子配当の総合課税には基本的に賛成し、そのための接近の手段として利子配当課税のさしあたり五〇%への引き上げ、名寄せの徹底など、実現可能な方策を提起してまいりました。
ところが、今回の政府提案は、そのような措置は何一つとらずに、グリーンカード延期に連動させて総合課税そのものまで事実上放棄してしまったのであります。このことは、中曽根内閣が大資産家の脱税を容認、擁護しようとする態度を鮮明にしたものと受け取らざるを得ませんが、総理はそれでよいのですか。
しかも、その一方で竹下大蔵大臣は、庶民のささやかな財産を守るマル優の廃止さえ示唆しました。大資産家の脱税はよいが庶民のマル優はだめとは、あなた方の税の公平の基準はどこにあるのですか。わが党はマル優の廃止は絶対反対でありますが、総理の態度をお尋ねいたします。
脱税防止の点では、しばしば裏リベート、政治家へのやみ献金、暴力団の資金源などとなっている大企業の巨額な使途不明金への対策を強化すべきであります。法人税さえ支払えばあとは勝手という現在の制度を改め、かねてからわが党が主張してまいりましたように、大口の使途不明金に対しては、既定の法人税に加えて七五%を追徴するなど厳しく対処すべきではないか、お尋ねいたします。(拍手)
また、たとえば三越事件の岡田、ホテル・ニュージャパン火災の横井などのように、力のある者に対しては刑事事件になるまで脱税を見逃しております。ところが、その一方で零細業者に対しては、事前調査、呼び出し、反面調査、推計課税などを多くの税務署が強行して、各地で抗議を受けております。このような、強い者には遠慮し、弱い者には高圧的な、ゆがんだ税務行政や行き過ぎた強権的な税務調査は、直ちに是正する必要があるのではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
第三に、たばこ値上げの問題であります。
今回のたばこの大幅値上げが、もっぱら年間約二千億円の財源を新たに国庫に吸い上げるためのものであることは、政府も認めております。これは明らかな大衆課税であり、取りやすいところからしぼり取るという中曽根内閣の姿勢をよくあらわしております。
いままでも、全国約三千五百万のたばこ愛好家は、まるで税金を吸っているようなものだと嘆くほど、国の財政に協力させられてまいりました。この上さらに重税を強いるというようなことは断じて許されないのであります。総理が「増税なき」を堅持するというのであれば、直ちにこの値上げは撤回すべきではありませんか。納得できる答弁を求めます。(拍手)
最後に、中曽根内閣が従来のどの内閣にも増して執念を燃やしております大型間接税導入についてお尋ねいたします。
五十四年十二月、総選挙での国民の厳しい審判に基づいて、一般消費税に関する国会決議が行われました。これが税調答申の言う「広く一般的に消費支出に負担を求める新税」の導入を将来にわたって禁じたものであることは明らかであります。ところが、竹下大蔵大臣は、禁止されているのはいわゆる一般消費税(仮称)だけだと子供だましの詭弁を弄し、EC型付加価値税も許されるとまで繰り返して述べております。このような重大発言が独断でなされるはずはありません。総理も同じ考えと理解せざるを得ませんが、いかがですか。
直間比率を見直し、間接税を半々までに引き上げるべきだという見解には何の科学的根拠もありません。現在の直接税は、所得や利益に応じ、つまり負担能力に応じて税を支払うという原則に立っており、それが税金の中心になるのは当然であります。これに対して一般消費税などの間接税は、商品、サービスに対し、税の負担能力の有無、強弱を無視して一律にかける税でありますから、逆累進的に低所得者に重くのしかかる最悪の大衆課税となるのであります。しかし、徴収する側にとっては、税率は低くても何兆円もの新財源を生み出すことのできるまことに都合のよい制度であります。総理などの直間比率見直し論は、要するに大企業等への負担増になる法人税の不公平を改めず、庶民から取りやすい間接税に比重を移して、ますます不公平を広げるだけのものではありませんか。このような大型間接税の導入は必ず物価の高騰を引き起こして国民生活を直撃し、国民の購買力を切り下げて一層不況を深刻にするだけであります。わが党は、総理に対し、大型間接税導入の準備を直ちに中止することを要求し、総理の明確な態度表明を求めるものであります。(拍手)
いま中曽根内閣が突き進みつつあるのは軍拡大増税への道にほかなりません。憲法とそれに基づく諸法律、国会決議よりも、レーガンに対する誓約を優先させ、GNP一%という最低の歯どめも取り払って大軍拡を進めるために、その財源確保の切り札として大型間接税導入を持ち出してきたことは明らかであります。しかし、これは国民をますます戦争に巻き込む危険を増大させ、経済財政危機を一層激化させ、生活を破綻に導くだけであります。ここには何の明るい展望も見出すことはできません。私は、国民がこのような道を断固として拒否するであろうことを確信しております。
わが党は、今後とも軍拡大増税を阻止し、国民生活擁護、税制の民主的改革の実現のために全力を尽くす決意であることを申し述べ、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#28
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 小沢議員にお答えを申し上げます。まず、民間航空機の特別償却あるいはコンピューターの買い戻し損失準備金制度等について御質問がございました。
企業関係の租税特別措置につきましては、昭和五十一年度以来連年厳しい見直しを行ってきておりまして、その整理合理化を進める余地はかなりいまや限られた状況になっておりますが、昭和五十八年度におきましても、さらに見直しを行うこととしておるところでございます。
御指摘の航空機の特別償却及び電子計算機買い戻し損失準備金についても特別償却率の引き下げを行う等、その政策目的等からなお存続することが必要と認められるものについても、厳しい見直しを行ってきた次第でございます。
退職給与引当金制度は、法人税の課税所得を合理的に計算するために設けられておるものでありまして、この制度自体を優遇措置と考えることは適当ではありませんが、その繰入率等について常に見直しを行っていくことは必要であります。
こういう考え方から五十五年度の改正においてその累積限度を引き下げて適正化を図ったところでありますが、累積限度のあり方につきましては、今後とも引き続き検討してまいりたいと思っております。
次に、公平な税制と言われまして、大企業優遇措置について御言及になりましたが、企業関係の租税特別措置につきましては、昭和五十一年以来、連年厳しい見直しを行っておりまして、いまや、それを整理合理化をする余地はきわめて少なくなってきた次第であります。しかし、五十八年度におきましても、価格変動準備金の廃止年度の繰り上げを行う等、縮減を行ってきております。
なお、租税特別措置による減収額のうち、企業関係分は二割程度となっておりまして、しかも、その大部分は、中小企業対策、資源エネルギー対策等の重要な政策目的に資するものであります。今後とも、社会経済情勢の変化に対応して、必要な見直しは行ってまいりたいと思います。
所得税減税について御質問がございました。
先ほど来申し上げているように、各党各派の話し合いを見守っておる次第でございます。政府といたしましては、ただいま予算案を修正する考えはございません。
次に、グリーンカード制について御質問がございました。
今回、諸般の情勢にかんがみまして、税制調査会にお諮りして、グリーンカード制度の適用を三年延期することを提案いたしております。これは、適正公平な利子配当課税を実現するという政府の基本方針にはいささかも変わりがないのであります。
今後における利子配当課税の適正なあり方につきましては、早い機会に、当国会での御議論を踏まえ、その上で改めて税制調査会で検討していただくことといたしたいと思います。
マル優制度の問題につきましても、今回、グリーンカード制度の三年間凍結を提案しておりますが、その後の利子配当課税のあり方につきましては、このマル優制度も含めまして、税制調査会で検討していただきたいと考えております。
いわゆる使途不明金に対して御質問がございました。
いわゆる使途不明金につきましては、重課措置を講ずべきであるとの御提案がございますが、制度上、技術上の問題が少なからずありますので、これらの問題も含め研究してまいりたいと思います。
また、弱者に高圧的な税務行政を正せという御質問がございました。
税務行政につきましては、従来から、納税者の理解と協力を得ながら、適正な執行に努めてきたところでございます。懇切丁寧に御指導申し上げる、そういうところを、税務職員非常に逼迫している定員の中で、よく努力してくれていると思いますが、今後ともこの趣旨に沿って努力してまいる考え方でございます。
たばこの定価問題について、値上げを撤回する考えはございません。
五十八年度予算におきましては、非常に厳しい財政状況にかんがみまして、経費の徹底した節減合理化に努める一方、歳入面において税外収入等について極力見直しを行っておるところでございます。その一環として、たばこの小売定価についても、前回改定以後の物価変動、たばこの財政専売物資としての性格等を勘案して、負担の適正化を図る見地から関係改正法を提出した次第でございます。
大型間接税、一般消費税について御質問がございました。
大型間接税の導入や直間比率の見直しについては、具体的に検討していることもなく、指示もしておりません。
なお、いわゆる大型間接税等の問題については、防衛費とは直接何ら関係はございません。
なお、昭和五十四年十二月の国会決議を尊重して、政府としてもいわゆる一般消費税(仮称)を導入する考えは持っておりません。(拍手)
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#29
○議長(福田一君) 小杉隆君。〔小杉隆君登壇〕
#30
○小杉隆君 私は、新自由クラブ・民主連合を代表し、議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。まず、租税特別措置法でございますが、この改正法律案は、不公平税制の是正の観点から毎年行われている特別措置の縮減合理化のほかに、幾つかの重要な改正が含まれております。そこで、若干の問題点を取り上げます。
特別措置の縮減合理化に関しましては、価格変動準備金制度の整理その他の整理合理化で、初年度百四十億円、平年度二百二十億円の増収が見込まれておりますが、現下の厳しい財政事情に対処する整理合理化としては十分なものとは申し上げられません。なお一層の縮減合理化に努められるよう最初に要望しておきます。
住宅取得控除制度の改善については、この措置が、果たして景気対策としてどれだけの効果を上げ得るのかという疑問です。
確かに、控除限度額が従来に比べ三倍の十五万円になるなど、住宅を取得した個人にとって、税の軽減は少なからず助かることとなりましょう。しかし、この税改正によって、住宅を欲する国民が、住宅を建てよう、あるいは買おうとする動機になり得るのかということです。住宅対策の目玉とされているのが取得税の軽減では、余りにもこそくだと思うのでありますが、いかがでしょうか。
政府の経済見通しによる昭和五十八年度の民間住宅は、実質国民総支出のベースで、対前年度比二・六%となっておりますが、五十七年度の同実績見込みは、土地税制の改革にもかかわらず、〇・五%にすぎません。政府の見通しが、この住宅取得控除の改善で可能になるのかどうか、見解を承りたいと思います。
中小企業の設備投資促進のための措置について伺います。
民間企業の設備投資については、各種統計から見て、大企業については一定の水準が確保されておりますが、中小企業についてはかなりの落ち込みが見られます。われわれの調査では、設備投資意欲は必ずしも落ちておりませんが、長引く不況で資金繰りが苦しく、思うに任せないというのが実情であります。こうした中で、中小企業の設備投資についての減税措置は、当を得た措置と言えましょう。
しかし、ここにも問題があります。それは、今回の減税措置が余りにも軽微に過ぎるということであります。過去五年間の平均投資額を超える部分を基準にとり、その三〇%の特別償却を実施することになっておりますが、この程度の措置では中途半端としか言いようがありません。二年間の時限立法とするのであれば、もっと大胆な、たとえば投資額の全額を特別償却の対象とすることが考えられないでしょうか。
景気対策として、また、底辺を支える中小企業の設備更新を行うことによる日本経済の活性化を考えるのであれば、思い切った措置が必要です。もし改正案程度の減税措置であるならば、資金繰りから、意欲を持ちながら投資が思うに任せない企業は救えず、もともと設備投資を行うことを予定していた企業のみ助ける結果が予想されます。これでは税の新たな不公平を生むことになりかねません。この点どのようにお考えか、承りたい。
次に、少額貯蓄等利用者カード制度の執行延期について伺います。
通称グリーンカードは、昭和五十五年の九十一国会に提出、可決された所得税法改正で、五十九年一月一日からの実施が決められたものであります。制度の実施は来年でありますが、カードの交付は、本年一月一日からの実施が予定されておりました。本来は、カードの交付がすでに始まり、グリーンカード制度は実質上スタートを切っていたはずでございます。ところが、どういうわけか、カードの交付は、昨年十二月二十八日の政令で当分の間延期されました。
グリーンカードの交付は、所得税法附則第五条二項で、五十八年一月一日から開始されることになっております。これは国会の審議を経て決定された事項と承知いたしますが、一片の政令で勝手に変更することができるものなのでしょうか。もし、どうせ租税特別措置法の改正案に延期が入っている、一月一日からグリーンカードを交付してもむだになるだけだとお考えになっているのでしたら、これは大変なことです。法案の成立をあらかじめ見込んでの行政ということになります。
法律事項が政令で勝手に変更できるものなのか。さらに、本法律案が成立しない場合に、この政令でいつまで延期させるおつもりなのか、まず、この点について伺っておきます。
次に、延期の理由について伺いたい。
本法案の趣旨説明を聞きましても、この点は全く不明でございます。昨年の九十六国会に自由民主党の提案で延期法案が提出されました。この廃案となった法案の延期の理由としては、時の自由民主党税制調査会長、現在の通産大臣である山中さんが、大蔵省に対する説明として、一、世間一般の心理不安、二、金融秩序の混乱回避を挙げておられます。今回の法案の趣旨も同様と解釈するべきなのでしょうか。しかし、これらの理由は、いずれもこれまで政府が根拠のないものとして説明をしてきたものであります。
大蔵省がグリーンカードに関して私どもに配付された資料の中に「グリーンカード一問一答」というものがございます。これは十二の質問が用意され、それに答える形で、今回延期の理由とされた事柄をことごとく否定しております。
さらに、昨年来の本会議や委員会の答弁の中では、次のように述べております。すなわち、世間一般の心理不安に対しましては、グリーンカード制度をめぐる最近の批判、論評については、本制度の趣旨等につき十分な理解を得ていないことによるものもあると考えるとした上で、政府としては、本制度の趣旨及び細目について国民の理解を得るよう今後ともその周知に努めてまいりたいと述べ、国民の理解が十分に得られさえすれば、実施についての不安はないとしております。
さらに、金及びゼロクーポン債の販売量の実数を挙げた上で、わが国の個人金融資産の大きさ及びその増加額に対する両者の割合は小さく、国内経済に大きな影響があるとは考えていないと、金融秩序の混乱回避の必要性も否定しておられます。
こうしてみると、グリーンカード制度を延期に至らしめる理由はもっとほかにあると考えざるを得ません。延期の理由につき、納得できる説明をいただきたい。
ところで、グリーンカード制度を含む所得税法改正案が閣議決定されたのは五十五年二月ですが、この件にかかわった政府及び与党自民党の責任者の顔ぶれは、大蔵大臣竹下登氏、党税制調査会長山中貞則氏、政務調査会長安倍晋太郎氏でございました。このグリーンカードの生みの親ともいうべきお三方は、それぞれ本延期法案を提出した内閣の大蔵大臣、通産大臣、外務大臣なのであります。さらに、現在官房長官である後藤田正晴氏は当時自治大臣であり、官房副長官である藤波孝生氏は労働大臣でありました。
内閣が責任を持って提出し、国会の議を経て成立させ、現行税制の不公平を憂うる国民多数の支持を得ている本制度を、顧みて過ちあらばこれを改むるにはばかることなかれといった無責任な圧力に屈して延期、さらには、いずれかの時期をとらえて廃止にまで持ち込もうとしているとしか思えない行動は、一体どう解釈すればいいのでしょうか。(拍手)
グリーンカード制度の創設を推進した政府・与党の当時の責任者と、今回延期法案を提出している政府閣僚が、すでに申し述べたとおり、奇妙なまでに一致するという事実に、私どもだけではなく、国民は一様に首を傾げざるを得ないと思うのであります。
責任ある立場で法案を成立させ、今度は責任を持って延期するとおっしゃるのならば、この二年数カ月の間に、利子配当に対する総合課税の必要性がなくなったというのでしょうか。あるいは源泉分離課税の特別措置が、額に汗する勤労所得者にとっても不公平な税制ではないと結論される新たな理由をお考えになったのでしょうか。それとも、相変わらずのお役所仕事のために、制度開始に事務的な支障が生じたのでしょうか。これらの点について、関係閣僚からそれぞれ明快な御説明をお願いいたします。
さらに、政府が税制調査会の存在をどのように考えているのかもたださなければなりません。
いま、欧州共同体型付加価値税の導入あるいはマル優廃止が政府部内でひそかに画策されていると聞いております。これらの点をただされた場合に政府が必ず持ち出すのは、税制調査会の存在であり、ここでの結論を最大限尊重することを明言しております。野党の反対に対しても、国民への説明にも税制調査会の答申が理由とされた例は枚挙にいとまがありません。
このように、税制調査会の権威に頼る政府ではありますが、都合の悪い場合には、その答申を平然と無視する例もございます。かつての医師優遇税制がそれであり、今回はグリーンカード制度がそれであります。
利子配当分離課税は不公平税制の代表的なものであり、税制調査会では、五十二年度の税制改正答申で、完全総合課税を実現するための方策についての検討の必要性を述べ、その具体的方策として、五十五年度の税制改正答申でグリーンカード制度が提起されました。五十八年度の税制改正に関する答申は昨年十二月に出されておりますが、この中にはグリーンカード制度の延長に関する記述は全くございません。税制調査会の存在は、その答申は、政府の都合のいいときにのみ利用されるとしか思えないのですが、との点についても見解を承っておきます。
次に、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の改正案について伺います。
今回のたばこの価格改定について、政府は製造たばこの小売価格の適正化と財政収入の確保の二つの理由を挙げております。この二つの理由は、それぞれ分けて考える必要があります。
まず、製造たばこの小売価格の適正化でございますが、前回のたばこの小売価格改定は五十五年の四月でございました。このときの法改正では小売価格の弾力化が行われており、価格改定の条件として、専売公社たばこ事業が赤字になった場合または赤字になることが確実であると見込まれる場合に限るとされております。
今回のたばこ小売価格の改定はこのいずれの条件にも適合しておりません。すなわち、昭和五十六年度の専売公社の純利益は千三百十三億円、五十七年度の見込み額は八百七十五億円であり、このまま推移すれば五十八年度についてもたばこ事業が赤字になる可能性はありません。このような状況でたばこ小売価格を引き上げることが製造たばこの小売価格の適正化と言えるのでしょうか。
確かに、たばこが健康や環境に与える影響が指摘されている昨今であり、その値上げについては心理的に反対しにくい雰囲気があり、弱い者いじめという評価はすでに過去のものとなりつつあります。しかし、それに便乗することは許されません。たばこ事業が赤字であればともかく、いま申し上げたとおり十分な収益があり、その事情を無視しての値上げは、理由なき値上げとしか言えないのではないでしょうか。お答えをいただきたいと存じます。
財政収入の確保という理由についても疑義がございます。現在の財政事情、また税収の伸び悩みから考えて、税外収入の確保について最大限の努力を図ることは当然の措置であり、五十八年度のこの点に係る政府の努力は多とするものであります。
しかし、専売納付金の二千億円の増収については納得できないものがあります。専売公社の経営については、臨調が一昨年の第一次答申で、また昨年の基本答申で改善策を指摘しているところであります。内容については、すでに十分御承知のことと存じますので細かくは申し上げませんが、三年分にも上る過剰在庫など、経営改善が必要であることは周知の事実でもあります。専売納付金の増収を図るのであれば、まず経営の改善によるべきでありましょう。これをしないで、たばこ価格の引き上げに頼るのは、余りにも安易に過ぎるのではないでしょうか。財政収入の確保の必要性は否定いたしませんが、必要性の前には方法はどうあってもいいというものではないと思います。
私たちは、こそくな手段による増収策ではなく、三Kを初めとする抜本的な行政改革を断行すべきことを強調いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#31
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 小杉議員の御質問にお答えいたします。まず、住宅政策の件でございます。
昭和五十八年度税制改正におきまして、住宅建設の促進に資するため、住宅取得控除について、ローン控除の控除率を七%から一八%に、控除限度額を五万円から十五万円に大幅に引き上げまして、その改善を図ることといたしております。
この措置により、三年間で最高四十五万円が所得税額から控除されることになり、また、民間住宅ローン金利の引き下げ、これは一月十七日に実施いたしまして、八・四六%から八・三四%に引き下げました。これと相まって住宅建設の促進に大きな効果を上げ、景気にも好影響を与えるものと期待しております。
次に、政府の税制調査会の意義でございますが、税制調査会は、税制のあり方につきまして幅広く調査審議することを目的として設置されておるものでございます。政府としましては、この税制調査会の答申を最大限に尊重して、税制改正を行ってきているととろであり、今後もその方針には変わりはございません。
かつ、葉たばこについて御質問がございましたが、専売公社の経営自体につきましても、葉たばこの減反あるいは葉たばこ購入価格の抑制等により過剰在庫の合理化に努力しております。さらに、公社の定員の縮減、工場の統廃合等の合理化措置も鋭意努力しておるところでございます。
残余の点につきましては、関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕
#32
○国務大臣(竹下登君) まず、租税特別措置法改正案について、特別措置の縮減合理化が不十分ではないか、一層の縮減合理化に努めるべきであるという御意見を交えての御質問であります。企業関係租税特別措置につきましては、五十一年度以来連年厳しい見直しを行ってきておりまして、この結果、租税特別措置による減収額のうち企業関係分は二割程度となってまいりました。その大部分は、しかも中小企業対策、資源エネルギー対策、こういう重要な政策目的に資するものでございます。
したがって、租税特別措置の整理合理化をさらに進める余地はかなり限られてきておるわけでございますが、五十八年度におきましても、価格変動準備金の廃止年度の繰り上げ等を行うほか、各種特別償却や準備金につきまして縮減を行うこととしておるところでございます。今後とも税負担の公平確保の観点から、社会経済情勢の変化に対応して必要な見直しを行っていくつもりでございます。
それから、中小企業の設備投資についての減税措置がいわゆる時限立法として不十分である、こういう御質疑でありました。
今回の措置は、限られた財源のもとで最大限の効果をねらうため、現行の中小企業者等の機械の特別償却制度を活用することとして、その対象となる機械装置の取得価額の合計額のうち、御案内のようにこの五年間の平均投資額を超える部分、これを一四%から三〇%、いわゆる特別償却を適用する、こういう内容でございます。
昭和五十八年度税制改正におきましても、企業関係租税特別措置について、一層の整理合理化を行うこととしておる中にありまして、中途半端、こういう御指摘がございましたが、精いっぱいの配慮、こういうふうに御理解をいただければ幸いであります。
それから、グリーンカード制度の執行延期につきましての政令との問題がございました。
昭和五十九年から本格的に実施されることになっておりましたグリーンカード制度におきましては、昭和五十八年からカードの申請と交付が行われることになっておったわけでございます。昭和五十八年中については、新制度への本格的な移行のための立ち上がりの時期であるということを考慮いたしまして、昭和五十五年の所得税法改正法の附則において、昭和五十八年に限ってはカードの交付申請に関する事項は政令で特例扱いが行えるよう定められていたわけでございます。
したがって、昨年末に出された延期政令は、この五十五年所得税法改正法附則の規定に基づくものでございまして、法律事項を政令で勝手に変更したという性格のものではないわけでございます。
それから、いわゆるグリーンカード問題につきましては、とにかくいろいろ議論がございましたように、郵貯でございますとか、金でございますとか、ゼロクーポン債へのシフトの問題でございますとか、グリーンカード制度の責めに帰することが必ずしも適当ではないと認められるものももちろんあります。しかし、これらがグリーンカード制度との関連性において議論された、こういう事象が見受けられたことは、これは否定できない事実でございます。
そうして、また、多数の議員の賛同のもとに、いわゆる議員立法も提案されたわけでございます。
やはり議員立法の法案は十二月末に廃案となりましたが、グリーンカード制度は、ほとんどすべての国民に関係する制度でありまして、関係者による理解と協力や制度への信頼、これがあってこそ円滑に運営されるものでありますだけに、現状においては、法的安定性の観点からこの制度を一定期間凍結せざるを得ないと考えたわけでございます。
そこで、政府といたしましては、税制調査会にお諮りをいたしまして、この際、政府提案によるグリーンカード制度自体を三年間凍結することとしたわけでございます。まことに異例なことでございますが、以上申し述べてきた状況から御理解を賜りまして、本法案をぜひ早期に成立さしていただくことを心からお願いする次第でございます。
次に、いわゆる税制調査会の問題でございますが、税制調査会は、税制のあり方について幅広く調査審議することを目的として設置されたものでありまして、政府としては、この税制調査会の答申を最大限に尊重して今日まで税制改正を行ってきたところでございます。
したがって、社会保険診療報酬課税の特例につきましても、昭和五十四年度の税制改正でこの抜本的改善が行われたところでありますが、これも昭和五十年度改正答申で示された具体的改善案を若干見直したものであります。特に実態に近い概算経費率である五二%を適用する収入階級を収入五千万円超とする線は、答申どおりこれは確保されてきたところでございます。
グリーンカードの延期の問題も、去る一月十三日の税制調査会にお諮りして、法的安定性等諸般の事情を考慮すればやむを得ないという御了承をいただいておるところでございます。
それから、たばこ事業の問題でございます。
御指摘がありましたが、前回改定以降の物価の変動、たばこの財政専売物資としての性格等を勘案して、負担の適正化を図る見地から関係改正法案を提出することとしたわけのものでございます。これは五十八年度及び五十九年度における公社の損益見込み等を勘案して、当該公社帰属部分については専売納付金の特例として国庫に納付する、こういうことにしておるところでございます。
それから、過剰在庫の問題でございます。
専売公社の経営自体は、葉たばこの減反、葉たばこの購入価格の抑制などによって過剰在庫の合理化に努力いたしますとともに、定員の縮減、工場の統廃合等の合理化措置を鋭意推進しておるところでございます。
なお、専売公社の経営のあり方については、目下鋭意検討を行っておるところでございます。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#33
○国務大臣(山中貞則君) 通産大臣にグリーンカードの問題で質問するぞというお知らせがありましたので、小杉君に直接電話して、ちょっと通産大臣としては答弁できぬがなと言って相談したんですが、さっき御質問の理論構成を聞いておりますと、その経過をたどった上にある私が、閣僚として閣議で延期措置の大蔵省の提案に賛成をしたということについて説明をしろというふうにおっしゃっているようでありますから、少しく、では所管外でありますが、御答弁をさせていただきます。最初、私どもこの問題を取り上げましたときには、不公平税制の是正という点から一本にしぼっていろいろと作業をしたのでありますが、そのときは当然金への換物思想あるいは書画骨とう類等いろいろ議論いたしました。しかし、一番哲学的な問題の論争が欠けていたと後で反省しましたのは、ゼロクーポン券の異常ないわゆる流出と申しますか、そういうものに際して、果たして私たちの国日本は、俗に言う民間金融あるいはアングラマネー、そういうようなものがどの程度許されていい国なのであるかということを議論をしなかった。たとえば、これは政党のことを言っているわけじゃありませんで、共産主義の国は完全に民間のアングラマネーなどというものはほとんど存在しないだろう。しかし日本は、そういうふうに厳しく締め上げる国であってはならないと私は思う。
一方、アメリカは、納税者背番号制度と言われるようになった社会保険の番号制度の国ですから、完全にアメリカが捕捉しているかと思って調べてみると、どうもアメリカでも三二%ぐらいの税務徴収当局の捕捉逃れがある。これはアングラマネーとも言えると思うのですが、そうすると、一方で、それが一番極端に見えているのがイタリーである。イタリーは、国家指標を見るともう没落しかけた国のようですが、国民生活は衣食住わりと豊かである。これは、どうも伝来のイタリーの特徴である海外移民の送金とか、あるいは観光が大変大きな柱の国ですから、この観光客の落とす金を政府が完全に捕捉しているかということを考えると、イタリーはどうやら五〇%ぐらいは地下にもぐっているのではなかろうか。
そういうことを考えてみまして、この際、わが国はもう少し、政府権力と捕捉力とそれから民間の自由な活力の源とも言える民間金融、民間経済というものをどのような関係に置くべきかについて若干の反省と検討の時期が要る、そう考えて私は延期に賛成をいたしました。(拍手)
〔国務大臣安倍晋太郎君登壇〕
#34
○国務大臣(安倍晋太郎君) 昭和五十五年、自由民主党の政調会長として、当時の竹下大蔵大臣、山中税調会長とともにグリーンカード制を推進をした一人であります。しかし、その後、国民各界各層の意見を聞いてみますと、この制度が国民背番号につながる、あるいはまたいまいろいろとお話が出ましたように、金融のシフト等が非常な勢いで始まってくる、あるいはゼロクーポンといったような状況が出てくる、こういうことで、このまま続けていけば非常に国民生活の混乱を起こす可能性がある、こういうふうに私も考えまして、やはりグリーンカード制は再検討をすべきである、あるいはまた、これが実施を延長すべきであるということを主張したわけでございます。その後、当自民党内において意見がまとまりまして、いわゆる自民党の議員提案として五年の延期法案が提案をされました。そして今回、政府の三年延長の法案提出となったわけであります。私は、今後三年の間に、利子配当課税等につきまして税制調査会等において十分検討をされるべきものである、こういう考えのもとに賛成をいたした次第であります。(拍手)
#35
○議長(福田一君) これにて質疑は終了いたしました。────◇─────
#36
○議長(福田一君) 本日は、これにて散会いたします。午後三時四十四分散会