1982/03/18 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 本会議 第12号
#1
第098回国会 本会議 第12号昭和五十八年三月十八日(金曜日)
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昭和五十八年三月十八日
正午 本会議
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○本日の会議に付した案件
小宮山重四郎君の故議員松本幸男君に対する追悼演説
防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後零時三十三分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。────◇─────
#3
○議長(福田一君) 御報告いたすことがあります。議員松本幸男君は、去る一月二十八日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
同君に対する弔詞は、議長において去る二月五日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は 議員従五位勲四等松本幸男君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
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故議員松本幸男君に対する追悼演説
#4
○議長(福田一君) この際、弔意を表するため、小宮山重四郎君から発言を求められております。これを許します。小宮山重四郎君。〔小宮山重四郎君登壇〕
#5
○小宮山重四郎君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員松本幸男先生は、去る一月二十八日、逝去されました。まことに痛惜の念にたえません。思えば、本通常国会の施政方針演説に対する代表質問の行われました一月二十七日、先生が議席から飛鳥田委員長の質問に声援を送られておりましたお姿が、いまだに私のまぶたに焼きつくがごとく残っております。その翌二十八日、忽然とこの世を旅立たれようとは、夢想だにし得ぬことでありました。恐らくここに御出席の議員各位におかれましても、余りにも信じがたい訃報であり、余りにも口惜しい悲報であったかと存じます。
私は、ここに、議員各位の御同意を得、議員一同を代表して、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)
松本先生は、大正十五年三月、埼玉県入間郡三ケ島村の農家にお生まれになり、昭和十五年に三ケ島尋常高等小学校を卒業後、家業の農業に従事されておりましたが、太平洋戦争の敗色も濃くなった昭和十九年八月、陸軍特別幹部候補生として中部第九十七部隊に入隊されました。
多感な十九歳の松本青年を待ち受けていたのは、特攻隊員としての厳しい訓練であり、毎日のように多くの仲間が戦場に散っていく生と死との対決でありました。しかし、不屈の先生は、天はみずから助くる者を助くのたとえのとおり、九死に一生を得て、復員されたのであります。
終戦の混沌の中で、時代は百八十度転換いたしました。熟慮断行の先生は、死中に活を求むべく、埼玉県入間市にあります米軍ジョンソン基地に入られ、たくましい人生の再出発をされたのであります。
時あたかも、困窮と廃墟の祖国にデモクラシーの新風が芽生えんとするとき、先生はいち早く全駐留軍労働組合に加入し、その身を労働組合運動に投ぜられるとともに、労働者の生活の安定と地位の向上に挺身されることをかたく決意されたのであります。
敗戦国の国民が占領軍のもとで働くという基地労働者の困難な立場と境遇の中で、労働組合運動の成果を上げることは並み大抵のことではありません。しかし先生は、あくまでも粘り強く、穏やかに理非を説き、誠意と情熱をもって事に当たられました。
果たせるかな、その真摯な御努力と誠実なお人柄を慕う多くの仲間たちに推され、ジョンソン基地労働組合の青年部長に就任、さらに副書記長を経て、昭和三十年には書記長の要職につかれて、ひたすら基地に働く労働者のために献身的な努力を続けられたのであります。
また、先生は、十余年にわたって組合運動を指導、推進する傍ら、埼玉県地方労働委員会委員等を歴任して、多くの労働問題の処理に当たられ、公正無私、すぐれた先見性と卓越した見識のもとに、県下の労働運動に輝かしい足跡を残されました。
しかしながら、先生は、一途に労働組合運動に挺身しながらも、常に高所から大局をにらみ、核心をつかむ人でありました。推進される組合運動が政治の場で解決されねばならない幾多の問題を抱えていることを痛感された先生は、みずから政界に身を投じられることを決意されたのであります。
先生は、昭和二十九年、日ごろから私淑し、心の師と仰ぐ淺沼稻次郎先生の日本社会党に入党、昭和三十四年五月、三十四歳の若さで所沢市議会議員となられ、政治への第一歩を踏み出されました。さらに、昭和三十八年四月には、埼玉県議会議員に当選以来、連続四期、十六年の長きにわたって県政に参画され、郷里埼玉県の発展に大きく貢献されたのであります。(拍手)
私は、埼玉県第二区選出の国会議員として、この間の先生の県会議員としての御活躍に注目するとともに、その業績をつぶさに拝見してまいりました。特に痛感いたしましたことは、先生が、あるいは県議会総務副委員長、さらに生活福祉衛生委員長、そして産業対策特別委員長など、地方行政のあらゆるジャンルの責任ある政治家として幅広い活躍をされたということであります。しかも、そのいずれの分野においても、卓越したエキスパートとして指導力を遺憾なく発揮され、すぐれた実績を残されたことであります。
思うに、先生の誠実、実直なお人柄から察しますに、責任感強く、しかも非常な勉強家、努力家であったからこそ、この負託にこたえて余りある業績を上げられたと存ずるのであります。
時はめぐり、奇跡の復興を果たした高度経済成長時代はオイルショックとともに終わりを告げ、激動する日本列島に中央集中の時代から地方自治の時代が訪れました。と同時に、花咲ける地方の時代は、それぞれの地方で、財政の再建、行政の改革、産業、文化、教育、社会福祉、生活環境など、山積する諸問題を自治体レベルでいかにして処理解決するかを問われるとともに、国政レベルでの地方行政への対応を問い直される時代でもあります。
地方行財政に精通し、地方産業の振興や社会福祉の対策に明るい有能な士が国政壇上に待望されるのはむべなるかなと申せましょう。先生が、先生の地方行財政に発揮されたすぐれた力量と、これに示された卓越した見識を知る多くの同志、知己に推されて、国政への参画の道がおのずと開かれたのも、その御経歴や残された業績に照らして、けだし当然と申せましょう。
しかし、無欲にして恬淡、清廉にして阿諛を排する先生は、第三十五回衆議院議員総選挙に立候補されながら、僅差の次点に甘んじられたのであります。次点とはいえ、初めての総選挙立候補で獲得された八万の支持票は、先生にとって千鈞の重みがあり、孤高の政治家松本先生にとって、いかばかり温かい励ましになったでありましょうか。
そして、昭和五十五年六月、巷間ダブル選挙と言われる第三十六回衆議院議員総選挙において、大激戦の末、みごと初当選の栄冠に輝かれたのであります。(拍手)
適材適所は天の声であります。時がふさわしい人にふさわしかるべき所を与えます。開けゆく地方の時代が、その時代にふさわしい庶民政治家松本先生に国会の議席という適所を与え、その力量にふさわしい活躍の場を与えました。
先生は、議員在職二年と八カ月、短い期間ではありましたが、そのほとんどを地方行政委員会に所属され、委員として、さらに理事として、地方自治確立のための諸施策の審議に縦横の活躍をされました。
第九十四回通常国会の昭和五十六年二月、地方税法改正案、地方交付税法改正案等の審議の際、先生はこの壇上において、日本社会党を代表し、地方自治、地方分権の確立など、地方振興の諸施策について力強い所信を述べられるとともに、多年培われた政策論を披瀝され、舌鋒鋭く時の総理に迫ったことは、いまなお私どもの脳裏に鮮烈な記憶として残っております。(拍手)
また、先生は、内閣に設置されております地方制度調査会委員に党を代表して就任され、地方行財政のあり方について数々の有益な意見を反映されて、地方自治の発展のために力を尽くされました。
在職期間は短かったとはいえ、精励恪勤、その信ずるところに従い、貴重なスペシャリストとして、本院議員の職責を全うされた功績はまことに大なるものがあると申さねばなりません。
先生の若いころからのお好きな言葉は、「熟慮断行」と承っております。言を飾らず、人におもねらず、みずからの所信に忠実で、不言実行の政治家である先生のお人柄の片りんを如実に物語る言葉として、私は深い感銘を受けたのでありますが、その後、本院議員に当選されて国政に参画されてからは、好んで揮毫された座右の銘は「慢心自戒」という言葉と承っております。
恐らく先生は、この厳しくもさわやかな自戒を真摯に服膺されながら、二十年間地方議会議員として蓄え育てられた全エネルギーを、僅々二年八カ月の本院議員の職責に傾注されて、そのすべてを燃やし尽くされたのではないでしょうか。(拍手)
そして、誠実にして責任感の厚い、すさまじいまでの先生の生きざまを象徴するがごとく、余りにも人間的にこの世を去っていかれました。
私は、先生の訃報に接しましたとき、ただただ信じられぬ思いで愕然といたしました。そして、先生の飾らぬお人柄をしのび、真摯な生きざまを思い起こしたとき、私の胸に去来いたしたものは、二千余年前の中国の国士、屈原の故事でありました。それだけに悲しく、痛恨ひとしお深いものがあります。
同時に、長年にわたって、厳しくも清廉な先生の政治生活を、内にあって支えてこられた奥様を初め御遺族の胸中を思うとき、お慰め申し上げる言葉もございません。
私と先生は、党派を異にし、主義主張は違っていても、国政にあってはよきライバルとして競い合ってまいりました。それはたとえ短い間であっても、選挙区を同じくし、親しく謦咳に接し、たくまざるお人柄に接し得ましたことが、先生亡きいま、私のわずかな慰めでもあります。
しかし、現下の多難な内外の情勢を思うとき、前途有為な大衆政治家松本幸男先生を失いましたことは、日本社会党にとっても、本院にとっても、はたまた国家にとっても、まことに大きな損失であると申さねばなりません。(拍手)
もはや、この議場に先生のお姿を呼び戻すことはできません。できるごとは、先生の御遺徳をしのび、御生前のよすがをこの胸に秘めて、悲しみに耐えるのみであります。
松本先生、どうか安らかにお眠りください。
心から御冥福をお祈りいたしまして、追悼の言葉といたします。(拍手)
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防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#6
○議長(福田一君) この際、内閣提出、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣谷川和穗君。〔国務大臣谷川和穗君登壇〕
#7
○国務大臣(谷川和穗君) 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。初めに、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
まず、防衛庁設置法の一部改正について御説明いたします。
これは、自衛官の定数を、海上自衛隊千三百二人、航空自衛隊六百三十人、統合幕僚会議四十六人、計千九百七十八人増加するためのものであります。これらの増員は、海上自衛隊については、艦艇、航空機の就役等に伴うものであり、航空自衛隊については、航空機の就役等に伴うものであり、統合幕僚会議については、防衛庁中央指揮所の開設準備等に伴うものであります。
次いで、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。
これは、自衛隊の予備勢力を確保するため、陸上自衛隊の予備自衛官二千人を増員するためのものであります。
次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、任用期間の定めのある自衛官、いわゆる任期制自衛官が引き続いて任用された場合及び任用期間の定めのない自衛官、いわゆる停年制自衛官となった場合の退職手当の支給方法等を改めるものであります。
すなわち、自衛官に対する退職手当は、現在、任期制自衛官については、任用期間が満了する都度、任期制自衛官から三等陸曹等に昇任した停年制自衛官については、任期制自衛官以外の期間を基礎にして支給いたしております。
しかし、停年制自衛官としての勤続年数が長期にわたることとなる者にあっては、任期制自衛官に対する退職手当は支給しないで、当該期間をその者の停年制自衛官としての勤続期間に通算して支給する方がよい場合がありますので、その者が希望した場合には、当該退職手当は支給しないことができるように改めるものであります。また、任用期間が満了したときに退職手当の支給を受けなかった任期制自衛官が、三等陸曹等に昇任しないで退職することとなった場合等におきましては、支給を受けなかった退職手当を退職時等に合算して支給できること等に改めるものであります。
この法律案の規定は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。
以上が防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#8
○議長(福田一君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。渡部行雄君。〔渡部行雄君登壇]
#9
○渡部行雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案並びに防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に対し、総理並びに防衛庁長官に質問をいたします。およそ一国の宰相たる者は、常に国民の命運を担っているという責任感と、国家の将来を決するかじを握っているという自覚を持って事に当たらなければならないことは、論をまたないところであります。一億一千数百万の日本国民とその将来を満載している日本丸の操縦者たる総理は、憲法を羅針盤として、世界情勢の正確な分析のもとに、正しい判断を持って最も安全な航路を選定しなければならないのであります。したがって、グローバルな情勢の認識と慎重な配慮が常に要請されることは当然であります。
しかるに、中曽根総理は、首相就任早々韓国に飛び、全斗煥大統領との日韓共同声明に新韓国条項を盛り込んで朝鮮半島情勢へのかかわりを深め、日米韓の連携強化を浮き彫りにして、ことさら朝鮮民主主義人民共和国やソ連を刺激し、北朝鮮からは、米日韓三角軍事同盟づくりの中曽根首相の南朝鮮行脚などと非難を受けたのであります。
また、アメリカに行っては、レーガン大統領にこびるつもりでか本心でかは知りませんが、とにかく日米は運命共同体であると言って、日本をアメリカの人身御供にするような発言をされたことは、断じて許せないのであります。(拍手)総理、あなたは現在も日米は運命共同体であると思っておられるのか、その本心を国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
また、日米同盟関係の再確認をされたと言われておりますが、いままで鈴木前総理が軍事同盟ではないと繰り返し国会で答弁されてきたものを、あなたはそれを軍事同盟に変更されたのかどうか、その性格について明確にしていただきたいのであります。(拍手)
また、平和独立国家としての持つべき襟度についてどのようにお考えになっておられるのか、あわせてお伺いいたします。
さらに、ワシントン・ポスト紙に対し、私の防衛に関する見解はと前置きして、日本列島はソ連のバックファイア爆撃機の侵入に対する強力な防波堤となる不沈空母のような存在であるべきで、バックファイアの侵入防止をわれわれの第一目標に置くべきだと言われましたが、一体どこの防波堤になるのか、明らかにしていただきたいのであります。
第二の目標は、ソ連の潜水艦及び他の海軍艦艇の通航を許さないよう、日本列島を取り巻く四つの海峡の完全な支配権を持つことだ、第三の目標はシーレーンの確保である、大洋について言えば、われわれの防衛は数百海里拡大されるべきだ、もしわれわれがシーレーンを確立しようとするならば、グアムと東京、台湾海峡と大阪を結ぶシーレーンの防衛を望むことになろうと述べられたそうであります。
そこで記者団から、あなたはバックファイアに対する防衛、ソ連潜水艦隊の封鎖に言及されたが、これを日本の防衛任務と認めるかとの質問に対し、この問題については、歴代の日本政府は、どちらかと言えばあいまいな態度をとってきた、しかし、私の政権はその問題についてはきわめてはっきりしているとお答えになられたそうであります。この一連の発言は、詳細に検討すれば驚くべき重大な内容を持っているのであります。
まず第一に、憲法違反を犯しているという点であります。すなわち、日本国憲法は、その基本原理において平和主義であり、しかもその前文で、「諸國民との協和による成果と、わが國全土にわたつて自由のもたらす惠澤を確保し、」と言い、さらに、「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」との文言と、第九条の戦力及び交戦権の否認とをあわせ考えるならば、日本国民は、現実の侵略がない限り他国を敵国扱いしてはならないのであります。ましてや、交戦を予期して準備をするなど絶対に許せないのであります。
第二に、今日まで個別自衛権の範囲内で専守防衛を唱えてきたにもかかわらず、シーレーン防衛の任務を積極的に遂行するということは、つまり一定の海域、空域を支配することであり、いわゆる制海権、制空権の確立を意味するもので、これは明らかに防衛の質的転換と言わなければなりません。
また、もし総理の言うバックファイアの侵入防止、シーレーン防衛と三海峡封鎖を満足させる防衛力とは、一体どのような戦力構造と規模を持つのか、その概要を明らかにしていただきたいのであります。また、それは防衛大綱程度のものと考えてよいのかどうか、御見解を承りたいのであります。
そこで、これまでの総理発言を総合すると、これは全くアメリカの世界戦略の一環に組み込まれた発想であり、集団防衛の思想であります。それは、アメリカの一九八四年度国防報告によって証明されるのであります。その中に、「合衆国にとっての東アジア及び太平洋の安全保障の重要性は、日本、韓国及びフィリピンとの間の二国間条約、締約国としてタイを加えたマニラ条約並びにオーストラリア及びニュージーランドとの間のわれわれの条約であるANZUS条約により証明されている。それは、韓国と日本における陸上及び航空戦力の展開と、西太平洋における第七艦隊の前方展開により一層強化されている。」云々とあって、さらに国防政策C、「合衆国の国防戦略」の中で「防衛的かつ抑止的な戦略の成功を期するため我々はこれを支援する三つの重要な政策を重視して来た。第一に、合衆国は我が同盟諸国の力を包含した集団的防衛態勢の引続き一部となり、これに寄与している。北大西洋条約、リオ条約、ANZUS条約並びに韓国、フィリピン及び日本との間の我々の条約は、外部からの侵略に対して効果的な共同防衛態勢に役立っている。第二に、我々の集団的安全保障態勢を強化するために、我々は我が同盟諸国の戦力と連合して、西欧・日本及び韓国における(通常戦力による)防衛の第一線となるべく前方展開部隊を維持する。」云々と書いてあり、全体から判断すれば、もはや日本は個別自衛権を飛び越えて、完全に集団防衛態勢の中に組み込まれたことは疑う余地のないところであります。しかも「合衆国と同盟諸国の戦力の調整に資する定期的演習によって強化される。」となっており、リムパックや日米合同演習、現在行われているチームスピリット83は、すべてこの基本政策に基づいてなされてきたものであります。かくしてシーレーン防衛共同研究へと、抜き差しならないところまで突き進んでいくのであります。
総理、これ以上国民をだますのはおやめになってはいかがでしょうか。あなたが幾ら頭を隠しても、しりはアメリカの方からまくられてきているのであります。(拍手)今度の二十一日予定されるエンタープライズの佐世保寄港もそうではありませんか。事前協議の申し入れがないから核は積載されていないと政府が強弁しても、これを信用する人が世界にどれだけおるでしょうか。いまさらラロック証言をかりるまでもなく、ライシャワー元駐日大使その他多くの高官が明らかにしたように、エンタープライズには核が積んであるのであります。しかもアメリカ政府はマクマホン法によって、核の有無については肯定も否定もしないことになっており、チェックのしようがないのであります。イントロダクションの解釈にしても、日本政府が都合よく解釈して、肝心な問題を避けているにすぎないのではありませんか。ここに非核三原則の虚構性があるのであります。総理並びに長官の御見解をお聞かせ願いたいのであります。
次に、一九八四会計年度の米軍事態勢報告の中で、「対日関係は一層活発な防衛上の連帯関係へと変ぼうしつつあり、その中で日本はその領土、周辺海・空域及び本土から一、〇〇〇マイルまでのシーレーンを防衛するための能力を大幅に改善することとなる。」と指摘しているように、今度の防衛力増強はこの方針に沿ったものではありませんか。
さらに、「兵器共同計画を日本との間に設けることを期待している。」とありますが、その対応策についてお伺いいたします。
また、F16の三沢配備に伴って、経費の四分の三の日本負担が求められておるようですが、その内容と、日本の施設整備計画における日米間の経費負担関係を明らかにしていただきたいのであります。
あわせて、今後ますます防衛分担金の日本側比重が増大する傾向にあると思うのでありますが、その対策と考え方をお示し願いたいのであります。
次に、今国会で暴露されたクーデター未遂事件、防衛庁作成の年度防衛警備計画問題で、シビリアンコントロールの権限を持つ者が全然知らないということは、民主主義体制を維持する上で重大な問題であり、シビリアンコントロールはまさに死に瀕しておると言わなければなりません。政府はこの真相を国民の前に明らかにするとともに、責任の所在を明確にしていただきたいのであります。
最後に、いま全世界にあらしのような反核、軍縮の運動が巻き起こっておるのであります。しかるに政府は、歴史的潮流に背を向けて、軍備拡張を進めておるのであります。このようなことで平和日本を維持できると思っておられるのか、所信のほどをお伺い申し上げ、あわせて本法案に反対の意思を表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 渡部議員にお答えいたします。まず、運命共同体でありますが、日本とアメリカの関係は、自由、民主主義を奉ずるという共通の信条を持ち、また膨大な経済の相互依存関係を持ち、さらに日米安全保障条約による防衛上の協力関係を持っておる、こういう意味において運命を分かち合う緊密な関係にあると私は申しておるのでありまして、この考えは間違っていないと私は考えます。(拍手)
次に、同盟という言葉について御質問がございました。
日米関係は、集団的自衛権を両方が持って相互防衛をやるという意味における軍事同盟関係はありません。しかし、日米安全保障条約という防衛上の協力関係を持っておる一種の広義の同盟関係にあると私は考えております。
次に、私のアメリカにおける一連の発言について憲法違反ではないかという御質問がございました。
私は、アメリカにおきましても、日本の防衛の方針につきましては平和憲法を守り、専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならず、非核三原則を堅持する基本方針に変わりがない、このことを常に強調してきておるのであります。その上に立ちまして、日本の防空、海上防備並びに国土防衛の重要性を説き、みずからの力で最大限やるということを言ってきたのでありまして、憲法に違反していることは全然ございません。
次に、シーレーン防衛以下一連の発言というものは、防衛の質的転換ではないか、こう言われますが、このシーレーン防衛につきましては、従来と同じように周辺数百海里、それから航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度を目標に防衛力を整備していく、こういうことを言っておるのであり、海峡につきましては、その海上防備力の一環として海峡コントロールを行う、こういうことを言ってきているのでありまして、平和憲法のもとに、個別的自衛権を行使して専守防衛に徹して行うという考えには変わりはございません。
次に、どの程度の防衛力を装備するかという御質問でございますが、これは財政力やあるいは他の諸項目とのバランスを考えつつ、私たちは考えていかなければならぬと思うのであります。政府といたしましては、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準をできるだけ早期に達成するように努力していきたいと申し上げておる次第でございます。
次に、アメリカの集団的防衛態勢の中に組み込まれたのではないか、こういう御質問でございますが、先ほど来申し上げておりますように、日本の防衛は憲法のもとに個別的自衛権の範囲内に行うのでありまして、集団的自衛権の行使は否定されております。したがいまして、アメリカの世界的な防衛態勢の中に組み込まれているというようなことはございません。八四年度のアメリカの国防報告もしさいに読んでみますと、たとえば米韓関係におきましては、あれは集団的自衛権下における相互防衛同盟条約、軍事同盟という関係で書かれておりますが、日本とアメリカとの関係は、日米安全保障体制に基づく個別的自衛権を日本が行使して行うという趣旨のもとに注意深く書かれているということをこの際申し上げたいのであります。
エンタープライズの問題でございますが、安保条約上いかなる核兵器のわが国への持ち込みも事前協議の対象であり、事前協議が行われた場合には政府としては常にこれを拒否すると言ってまいった方針を堅持してまいります。昨十七日に、マンスフィールド駐日大使も外務大臣に対しまして、米国として安保条約及びその関連取り決めに基づくわが国に対する約束を誠実に遵守していく旨、改めて確認したところでございます。
次に、軍縮問題について御質問がございました。
私は前から、日本の防衛は三つの項目のもとに行う、まず第一は、みずから自分の国を守るという国民の決意と気概が重要である、第二番目は、日米安全保障条約を有効に機能させるということが第二である、第三番目は、外交やあるいは物資の備蓄や、いわゆる総合安全保障政策をとって、軍縮についても力を入れてまいりたい、外交的努力も大いに力を入れたい、そういうことを申しておるのであります。(拍手)したがって、軍縮問題につきましても、私たちは熱意を持って推進してまいりたいと思っておりますが、自分の国を守ることを放てきして軍縮を唱えるというようなことはわれわれはやりたくないと思っております。(拍手)
〔国務大臣谷川和穗君登壇〕
#11
○国務大臣(谷川和穗君) まず、一九八四会計年度の米軍事態勢報告に関連をいたしてでございますが、米国は従来から厳しい国際情勢認識のもとに、みずから国防努力を強化するとともに、わが国に対しましても一層の防衛努力を行うよう強く期待してきておるところでございます。わが国の防衛力整備でありますが、米国の期待を念頭に置きつつも、あくまでもわが国の自主的判断に基づき、わが国の防衛に必要な範囲で行っていくべきものだ、こう考えております。
次に、日米間におきまする兵器協力計画についてでございますが、国防報告では「技術の両面通行を可能にし、その地域における合意された自衛隊の防衛任務上の役割りを支援する形のしっかりした兵器協力計画を日本との間に設けることを期待している。」こう述べられておりますが、この部分で強調されておるのは、防衛分野における技術の相互交流を可能にしたわが国の今般の政府の決定を受けて、今後技術の相互交流を踏まえた協力関係を着実に進めていきたいということであると考えられるのであります。
米国に対する武器技術の供与の道を開くことといたしました今般の決定に伴いまして、日米間の防衛分野における技術の相互交流を図ることが可能となり、また、武器技術の対米供与を伴うような日米間の武器の共同研究開発につきましても道が開かれることとなったところであります。かかる米側の希望を受け、わが国といたしましては、今後、国益を踏まえ、適切な対応を図ってまいりたいと考えておるわけであります。
なお、国防報告において、米側は、日米間の武器の共同生産まで進めよということまで求めているわけではなく、また、わが国といたしましても、武器の共同生産を行う意図のないことは、すでに再々にわたり国会で明らかにいたしているところであります。
次に、F16の三沢配備に関し、経費負担の内容、関係、今後の対策と考え方についてお尋ねがございました。
F16三沢配備に伴う施設整備については、現在、在日米軍との間で調整をいたしておるところであり、日本側負担については、いまだ具体的な規模、金額等について要請を受けてはおりません。
また、施設、区域の整備、提供についてでありますが、日米安全保障体制の整備を防衛の基本方針といたしておりまするわが国といたしましては、日米安全保障体制を有効かつ確実なものたらしめるために、条約に定められた当事国の責務を積極的に遂行することが肝要であると考え、日米安保条約の目的達成との関係を考慮し、その緊急度等諸般の事情を総合的に勘案し、個々の事案ごとに慎重に検討の上、整備、提供すべきかどうか決定いたしておるところであります。
最後に、クーデター計画、年防の問題について、シビリアンコントロールの観点から真相と責任の所在を明確にせよとの御指摘でございますが、指摘されましたようなクーデター計画について事実関係を調査いたしましたが、そのような計画は存在いたしません。
年防の問題につきましては、現在調査中でありまして、果たして自衛隊において作成されたものか否か不明な現時点においてとやかく申し上げるのは差し控えたいと存じますが、シビリアンコントロールは十分に現在機能しておると考えておりまして、今後ともその維持に努力をいたしてまいりたいと存ずる次第でございます。(拍手)
#12
○議長(福田一君) これにて質疑は終了いたしました。────◇─────
#13
○議長(福田一君) 本日は、これにて散会いたします。午後一時二十四分散会