1982/04/15 第98回国会 衆議院
衆議院会議録情報 第098回国会 本会議 第16号
#1
第098回国会 本会議 第16号昭和五十八年四月十五日(金曜日)
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議事日程 第十一号
昭和五十八年四月十五日
午後一時開議
第一 森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案(第九十七回国会、内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
永年在職の議員稲富稜人君に対し、院議をもつて功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)
日程第一 森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案(第九十七回国会、内閣提出)
千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件
商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件
国家行政組織法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
法制局長の辞任承認の件
法制局長の任命承認の件
午後一時九分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。────◇─────
永年在職議員の表彰の件
#3
○議長(福田一君) お諮りいたします。本院議員として在職二十五年に達せられました稲富稜人君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。表彰文を朗読いたします。
議員稲富稜人君は衆議院議員に当選すること十回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
〔拍手〕
この贈呈方は議長において取り計らいます。
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#5
○議長(福田一君) この際、稲富稜人君から発言を求められております。これを許します。稲富稜人君。〔稲富稜人君登壇〕
#6
○稲富稜人君 ただいまは、私の本院在職二十五年のゆえをもちまして、御丁重なる表彰の御決議を賜り、まことに感謝にたえないところであります。この決議は、私の生涯を通じ最も光栄であり、深い感銘を覚えるものであります。ここに、議長並びに本院議員各位の御厚情に対しまして、衷心より謝意を表したいと存ずる次第でございます。(拍手)
私が今日この栄誉に浴し得ましたのは、諸先輩を初め、同僚、友人各位、並びに長い間私の歩んできました政治活動あるいは農民運動など、各種の運動にともに参画し、苦楽を分かち合いました多くの同志諸君や、終始変わらず私を御支援くださいました郷党の方々の御懇情によるものでありまして、ここに、謹んで厚くお礼を申し上げる次第でございます。(拍手)
顧みまするに、私は、昭和二十一年四月、敗戦と荒廃と混乱の中で執行されました第二十二回総選挙において初めて本院に議席を得たのでありますが、その私の前途には思わざる陥穽が仕掛けられておりました。
すなわち、それは占領軍総司令部による公職追放令でありました。そして、政界の大先輩鳩山一郎先生たち、政界より五名が追放第一号として指名されたのであります。この理不尽かつ過酷なる追放のため、私は、涙をのんでこの当選後わずか二カ月の六月に本院議員の職を辞し、自来六年有余の長い間、隠忍雌伏のときを過ごさざるを得なかったのであります。
その間、私の追放は理由なき追放であるとして、これを解除すべきであると、当時の追放解除委員でありました私の早稲田大学の恩師であります北沢新治郎先生を初め多くの方々の御協力をいただき、努力をしていただきましたけれども、メモランダムケースに指名されておるということでこれも不可能でありましたが、これに対する多くの方々により温かい励ましのお言葉を賜り、人の情けのありがたさを感じましたことは、いまなお私の脳裏に深く刻みつけられておるところであります。(拍手)
以上、申し述べましたように、私の本院における政治活動はその船出から波乱に満つるものでありました。しかし、昭和二十七年、日米講和条約成立により追放解除の身となり、第二十六回総選挙において改めて本院に議席を得、先輩同僚各位の御協力をいただき、政治活動を開始することになりました。
大正末期においてわが国にデモクラシー運動がほうはいとして起きましたときに私は農民運動に身を投じ、すでに六十年、政治活動五十年の中における私の二十五年の国会活動の歴史は、まさに日本の敗戦の苦しさとの闘いから始まっております。
私は、健全なる国家は健全なる農村があってこそ築かれるものであるとして、その信念に従い、今日までその政治運動の大半をこれに傾注してまいりました。しかるに、その峰は余りに高く、いまだにその半ばにも達し得ず、非力非才、志は大なるに比し、その成果の余りにも小なることをいま顧みて恥じ入る次第でございます。
私は、すべての国民が政治の恩恵に浴し得るような政治の実現をこいねがい、かような信念に基づきまして行動してまいりました。そして、政治家に与えられた責務は、一切の私心を離れて国家国民のために奉仕することであると深く信じておるのでございます。(拍手)
いま、政治の荒廃を嘆き、政治倫理の確立を求める世論はほうはいとして高まり、わが国将来の政治を憂うる声がちまたに満ち満ちております。いまにしてこの病弊を絶ち切らざれば、将来に大きな禍根を残すことになりはしないかと深く憂慮するものであります。(拍手)
今日、われわれの周囲を取り巻く国際環境は日に日に変転し、全く予断を許さない厳しさであり、わが国の政治も経済も大いなる試練に直面しておるのであります。このような内外の諸情勢を思うとき、われわれに課せられた責務の重大さを痛感するものであります。
顧みまするに、大正より昭和の初期における農民運動に、また労働運動、その他の社会運動に、あらゆる弾圧を乗り越えて苦闘の歴史を積み重ねてこられた多くの同志が、かつてはこの本院に議席を占められておりました。しかるに、いまはその多くの方々は、あるいは故人となりあるいはすでに本院を去られ、いまでは私一人が本院に生き残っておるのでございます。この壇上に立ち、いま申しましたようなかつての同志各位の面影をしのぶとき、ひとしお感無量なるものがあるのであります。(拍手)
いまここに、過去にありしことなどを追想しつつ、今後ともこの私に対し、変わらざる御厚情を賜りますようお願いをいたしまして、感謝の意を表する次第であります。
本当にきょうはありがとうございました。(拍手)
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日程第一 森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#7
○議長(福田一君) 日程第一、森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案、日程第二、農業改良助長法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。農林水産委員長山崎平八郎君。
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森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
農業改良助長法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔山崎平八郎君登壇〕
#8
○山崎平八郎君 ただいま議題となりました両法案につきまして、農林水産委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。まず、森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、間伐、保育等の森林の整備を推進し、林業生産活動の活性化に資するため、市町村による森林整備計画の制度の導入、分収育林制度の創設等を図るほか、林業普及指導事業の効率化を図るための措置を講ずることを内容とするものであります。
本案は、去る二月十日提出され、同日本委員会に付託されました。
委員会におきましては、三月二十二日金子農林水産大臣から提案理由の説明を聴取した後、三月二十四日及び三十日の二日間審査を行い、三月三十日質疑を終局いたしました。
次いで、四月十三日、本案に対し、自由民主党提案に係る修正案及び日本共産党提案に係る修正案が提出され、討論、採決の結果、日本共産党提案に係る修正案は賛成少数をもって否決、自由民主党提案に係る修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも賛成多数をもって可決、よって、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、修正の内容は、林業普及指導事業の助成に係る改正規定等の施行期日を公布の日に改めること等であります。
次に、農業改良助長法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、協同農業普及事業について、助成方式の変更と運営方針の明確化を行い、事業運営の効率化を図るとともに、農業に関する試験研究の効果的な実施を図るための措置を講ずることを内容とするものであります。
本案は、去る二月十日提出され、同日本委員会に付託されました。
委員会におきましては、三月二十三日金子農林水産大臣から提案理由の説明を聴取した後、四月十二日には参考人から意見を聴取し、翌十三日には政府に質疑を行う等、慎重に審査を重ねてまいりました。
かくして、四月十三日質疑を終局いたしましたところ、本案に対し、自由民主党提案に係る修正案が提出され、討論、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも賛成多数をもって可決され、よって、本案は、修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、修正の内容は、施行期日を公布の日に改めること等であります。
また、両法案に対し、それぞれ附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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#9
○議長(福田一君) 両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#10
○議長(福田一君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。────◇─────
日程第三 日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案(第九十七回国会、内閣提出)
#11
○議長(福田一君) 日程第三、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員長原田憲君。
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日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔原田憲君登壇〕
#12
○原田憲君 ただいま議題となりました日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。御承知のように、国鉄の経営は、昭和五十五年度以降毎年一兆円以上の欠損を生み、また、長期債務は昭和五十八年度には二十兆円を超えることが見込まれる等、まさに破局的状況にあり、国鉄の事業の再建は、国政上、早急な解決を要するきわめて重大な課題となっております。
このような国鉄経営の現状にかんがみ、昭和五十七年七月三十日に行われた臨時行政調査会の第三次答申におきましても、国鉄の事業の再建は最も重要な柱とされておりまして、抜本的な改革のための方策が示されるとともに、その推進機関として国鉄再建監理委員会を設置することが提言されております。
本案は、このような状況を踏まえて、国鉄の経営する事業の再建の推進のために国が講ずべき施策等について定めるとともに、日本国有鉄道再建監理委員会の設置等に関し、所要の事項を定めております。
その主な内容は、次のとおりであります。
第一に、国は、臨時行政調査会の第三次答申を尊重して、国鉄の経営する事業の適切かつ健全な運営を実現するための体制を整備することにより、当該事業の再建を推進することを基本方針とするとともに、この体制整備のために必要な効率的な経営形態の確立等及びその実施の円滑化のために必要となる国鉄の長期債務の償還等に関する施策を講ずること、
第二に、国鉄の経営する事業の運営の改善のために緊急に措置すべき事項に関し、国及び国鉄は、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法に基づく措置その他の必要な措置を講ずること、
第三に、総理府に五人の委員より成る日本国有鉄道再建監理委員会を置くこととし、同委員会は、さきに述べた基本方針に従って、効率的な経営形態の確立等及びその実施の円滑化のために必要となる国鉄の長期債務の償還等に関する重要事項について、みずから企画し、審議し、決定し、内閣総理大臣に意見を述べることとするとともに、国鉄の経営する事業の運営の改善のために講ずべき緊急措置の基本的な実施方針について内閣総理大臣に意見を述べることができ、また、同委員会からこれらの意見が出されたときは、内閣総理大臣は、これを尊重しなければならないこと、
第四に、同委員会は、国の施策等について内閣総理大臣等に勧告することができ、また、関係行政機関の長及び国鉄総裁に対し、資料の提出その他の必要な協力を求めること等ができること、
第五に、国鉄の経営する事業の適切かつ健全な運営を実現するための体制整備を図るための施策は、昭和六十二年七月三十一日までに講ぜられるものとすること
等であります。
本法案は、第九十七回国会の昭和五十七年十一月三十日に提出され、同国会の最終日である同年十二月二十五日に本委員会に付託された後、継続審査となったものでありますが、今国会におきましては、三月二十二日の本会議において趣旨の説明を聴取し、同日本委員会において長谷川運輸大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、同二十四日には現地視察を行い、四月五日には参考人から意見を聴取し、また、十三日には、特に中曽根内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど、慎重に審査を行ったのであります。
この間において行われました質疑の主な事項を申し上げますと、数次の国鉄再建計画の改変の原因とその責任の所在、本案と現行の日本国有鉄道経営再建促進特別措置法との関係、臨調答申の分割民営化と本案の効率的経営形態との関係、国鉄再建監理委員会の性格及び役割り並びに委員の選考基準、国鉄の労使関係その他多岐にわたっておりますが、その詳細につきましては委員会議録によって御承知願いたいと存じます。
かくて、四月十三日質疑終了後、本案に対し、自由民主党の三枝三郎君から、附則の規定中の法律番号の年の表示を「昭和五十八年」に改める修正案が提出され、次いで討論に入りましたところ、自由民主党の宮崎茂一君、公明党・国民会議の西中清君、民社党・国民連合の中村正雄君及び新自由クラブ・民主連合の中馬弘毅君から、原案及び修正案に賛成、日本社会党の吉原米治君及び日本共産党の四ッ谷光子君から、原案及び修正案に反対の意見がそれぞれ述べられた後、採決の結果、三枝三郎君提出の修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し、国鉄再建監理委員会の委員の人選、事業の効率的経営形態のあり方、長期債務等の処理、労使関係等についての附帯決議が付されましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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#13
○議長(福田一君) 討論の通告があります。これを許します。吉原米治君。〔吉原米治君登壇〕
#14
○吉原米治君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案の原案及び修正案に対し、反対の討論を行うものであります。まず最初に、私は、国鉄経営が今日のごとく破局的危機を迎えざるを得なかった原因を考えるとき、歴代自民党内閣の責任はきわめて重かつ大なるものがあると厳しく指摘をせざるを得ないのであります。
すなわち、国鉄経営が昭和三十九年度に赤字に転落して以来、幾たびかその再建策が検討されてきたわけでありますが、いずれも失敗に終わっております。その最大理由は、何といっても政府がなすべきこと、つまり公共交通を維持していくための財政措置を怠ってきたことであります。
国鉄財政を無視した政治路線の建設あるいは莫大な借金政策による新幹線建設、青函トンネル、本四架橋などに対する膨大な設備投資の負担など、本来国鉄の財政能力をもってしてはなし得ない先行投資を余儀なくされてきておるわけであります。
国鉄の経営が国策に沿って運営されてきたものである限り、その企業努力だけでは果たし得ない分野については、政府がかわって負担するのは当然のことであります。長期負債や特定人件費の処理、設備投資のあり方、国と国鉄の責任分野の確立など、政府の基本方針として当然対策を講ずべきでありました。それを完全になし得ずして、今日の危機を招いたのはあたかも国鉄労使の責任であるかのごとき発言は、本末転倒と言わざるを得ないのであります。
去る昭和五十五年十一月四日、私はこの同じ壇上から、この法案では真の国鉄再建はできないとして、一部修正案を提起しながら反対討論を申し上げました現行の再建特別措置法を審議したときを思い出しておりますが、あのとき政府も国鉄も口をそろえて、再建の最後のチャンスであるとし、少なくとも昭和六十年度には、この法案を通してもらえば幹線系で百億の黒字にする、こう大みえを切ったものでありましたが、わずか二年経過した今日、その数字はけた外れに崩れ去ってしまい、いまだに再建のめども全く立っていない現状をどう一体反省されているのか、政府並びに国鉄当局の猛省を促しながら、本法案の反対理由を申し上げます。
その第一は、本法案の目玉である監理委員会の設置の必要性、その性格と役割りについてであります。
本法案の基本方針第一条で明らかにされているように、昭和五十七年七月三十日に行われた臨調答申を尊重してこの委員会が運営され、審議が進められていく限り、国鉄の経営形態を民営分割化の方向で検討されることは、今日までの審議過程からいたしましても明白であります。一体、今日までの国鉄が持っている公共性、あるいは国家的交通の基幹事業として、民営分割などの経営形態の変更が可能なのかどうかということであります。
むしろ、民間産業界では、効率的経営形態を求めて統合、合併などが進んでいる現状から見ましても、時代逆行ではないのか。全国ネットワークのもたらす利便性、合理性を否定する考え方ではないのか。どう見ても、民営分割化といった経営形態の変更は、実現性は乏しいのであります。
だとすれば、もはや公共性を持つ国鉄の再建策とは言えず、逆に国鉄の解体であり、破壊策であると言わざるを得ないのであります。したがいまして、こうした方向で審議がなされる監理委員会の設置には、とうてい賛成できるものではありません。また、今後の再建策のすべてをこの委員会にゆだねている政府、国鉄当局の無責任、無能、無策ぶりに対し、心から憤りすら感ずるものであります。
また、委員の人選について中曽根総理は、全国民的視野を持った、見識のある、しかも国鉄改革に熱意を持ち、推進力のある人で、労使関係にも理解と見識を持っている方が適当だと答弁されておりますが、一体、現在の運輸省や国鉄内部にそうした人材はおらないのかと叫びたくなるのであります。さしずめ民間企業なら、責任をとって役員総退陣のケースであります。
また、予想される委員は、いかにりっぱな人格、識見を持っておられたとしましても、しょせん国鉄経営には素人であります。したがって、この委員会から出される再建策が、現在の政府、国鉄当局が予測できなかった合理的な答申が出されようはずはありません。
また、およそ一つの事業を再建するに当たって、現場を預かる労使相互の理解と協力が大切でありますが、本監理委員会に対しては、委員会が必要と認めたとき以外は積極的に再建のための提言ができない仕組みになっております。こうしたきわめて強権力的な、非民主的な監理委員会に、真に再建のための施策を期待することはとうていできないと思います。
反対理由の第二は、監理委員会の所掌事務、第五条で明記してある効率的な経営形態の確立と長期債務の償還対策であります。
この二つの課題は、過去幾たびも論議が続けられ、検討され尽くされてきた課題であります。どうすれば解消できるか、その方針も、政府が昭和五十五年不退転の決意で提案された現行の再建促進特別措置法の中でも明確になっております。
すなわち、その三条二項では、政府は、日本国有鉄道にわが国の基幹的交通機関としての機能を維持させるため、国鉄再建を促進するための措置を講ずることとなっており、またその四条では、経営規模に関する事項、業務運営の能率化に関する事項、組織運営の効率化、経営管理の適正化などの経営改善計画を定め、実施することになっております。
さらに、長期債務の償還対策に対しては、政府は長期資金の無利子貸付制度、利子補給制度、また国鉄再建に必要な財政上の措置やその他の措置を講ずるため、特別の配慮をすることになっております。いまさら監理委員会を別につくり、むだな経費と時日をかける必要は全くないのであります。
要は、政府みずからがその決意に踏み切るかどうかにかかっていると言っても決して過言ではありません。したがいまして、わが党が今日まで一貫して主張してまいりました、国鉄当局には主体性を持たせ、経営責任と権限を与えること、そして政府は、いわゆる構造欠損と称される部分は国の責任で処理すること、この二つが完全に実施される限り、再建は可能でございます。
いたずらに屋上屋を重ねるような監理委員会の設置を中心とした本法案及び修正案には、以上の理由から断固反対するものであります。政府の猛省を再度促し、反対討論を終わります。(拍手)
#15
○議長(福田一君) これにて討論は終局いたしました。─────────────
#16
○議長(福田一君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
#17
○議長(福田一君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。────◇─────
#18
○保利耕輔君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件、商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件、右両件を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#19
○議長(福田一君) 保利耕輔君の動議に御異議ありませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。─────────────
千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件
商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件
#21
○議長(福田一君) 千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件、商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長竹内黎一君。
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千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件及び同報告書
商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔竹内黎一君登壇〕
#22
○竹内黎一君 ただいま議題となりました二件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。まず、一九七八年の船舶汚染防止条約議定書について申し上げます。
本議定書は、近年相次いで発生したタンカー事故等を契機として、政府間海事協議機関で検討された結果昭和五十三年二月ロンドンで開催された国際会議において作成されたものであります。
本議定書は、一九七三年の船舶汚染防止条約に所要の修正及び追加をした上で同条約を実施することを定めることによって、船舶による海洋汚染の防止及び規制の増進を図ることを目的とするものでありまして、海洋汚染を防止するため、油、有害液体物質、汚水、廃棄物等の海洋への排出基準を定めるとともに、各種船舶が守るべき設備、構造の基準等について規定しております。
なお、わが国は、本議定書を締結するに当たり、一九七三年条約附属書I及び附属書IIについて留保を付することとしております。
次に、商船における最低基準条約について申し上げます。
本条約は、昭和五十一年十月ジュネーブで開催された国際労働機関の第六十二回総会で採択されたものでありまして、商船の船内における安全基準、労働条件等につきまして最低基準を設定し、自国船舶がこれらの基準に適合することを確保するためのもろもろの措置及び外国船舶に対し一定の監督を行うことなどについて規定しております。
以上二件は、去る三月十八日外務委員会に付託され、三月二十五日に安倍外務大臣から提案理由の説明を聴取し、四月十三日及び本十五日質疑を行い、引き続いて採決を行いました結果、いずれも全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────
#23
○議長(福田一君) 両件を一括して採決いたします。両件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承認するに決しました。────◇─────
国家行政組織法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#25
○議長(福田一君) この際、内閣提出、国家行政組織法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣齋藤邦吉君。〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#26
○国務大臣(齋藤邦吉君) ただいま議題となりました国家行政組織法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。行政改革の推進は、政府の当面する最重要課題であります。政府としては従来から行政機構の簡素効率化に努めてきたところでありますが、最近における行政をめぐる内外の厳しい諸情勢のもとで、行政機構の膨張や行政運営の固定化を防止し、その一層の簡素効率化を継続的に促進する必要があります。
このため、昭和五十七年七月三十日に行われた臨時行政調査会の「行政改革に関する第三次答申」に沿って、行政需要の変化に即応した効率的な行政の実現に資するため、行政機関の組織編成の一層の弾力化を図り、あわせて行政機関の組織の基準をさらに明確にすることとし、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、府、省等の組織と所掌事務の範囲は現行どおり法律で定めるという原則は維持しつつ、府、省等に配分された行政事務を所掌する官房、局及び部の設置及び所掌事務の範囲については政令で定めることとしております。
第二に、府、省、委員会及び庁には、法律または政令の定めるところにより、審議会等及び施設等機関を置くことができるものとし、また、特に必要がある場合には、法律の定めるところにより特別の機関を置くことができるものとしております。
第三に、庁次長、官房長及び局、部または委員会の事務局に置かれる次長並びに大臣庁以外の庁に置かれる総括整理職の設置は政令で定めることとしております。
第四に、政府は、少なくとも毎年一回国の行政機関の組織の一覧表を官報で公示するものとしております。
第五に、当分の間、府、省及び大臣庁の官房及び局の総数の最高限度は、百二十八とすることとしております。
なお、以上のほか、その他所要の規定の整備を行うこととしております。
以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
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国家行政組織法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#27
○議長(福田一君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。矢山有作君。〔矢山有作君登壇〕
#28
○矢山有作君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました国家行政組織法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。まず冒頭に、中曽根総理の行政改革に取り組む基本姿勢につき、お尋ねいたします。
総理が政権を獲得した背景には、田中元首相の強力な援護射撃とともに、行革の大看板が挙げられます。政権獲得の手段として、第二臨調、俗に言う土光臨調を利用したのであります。
しかし、総理は、一たび政権の座に着くや、訪米、訪韓と相次いで行う中で、改憲、軍拡、日米運命共同体など、わが国憲法に抵触しかねない問題発言を連発し、あたかも総理が一人で、わが国の動向を左右できるかのごとき危険な錯覚に陥っているようであります。その結果、国民の厳しい批判にさらされ、自民党内部にすら反発を招くや、一転して内政重視を打ち出し、再び行政改革推進の看板を掲げて、国民の人気を回復しようと躍起になっております。
このような総理の政治姿勢に対して多くの国民が不信を抱くことは当然であり、ある新聞社の世論調査結果によると、総理の言動に不信を抱く国民は実に四〇%にも達し、またそのことから中曽根内閣の支持率も低下し、支持率よりも不支持率の方が高くなっております。あえて言うなら、総理は行政改革をもてあそんでいるのではないかと思うのでありますが、どうでしょうか、御所見を承りたい。
次に、中曽根行革の手法についてであります。
総理は、行政管理庁長官時代から、行革宣伝の場として土光臨調を最大限に利用してきました。そこで、第二臨調とは何であったのか、いま改めて考えてみますと、臨調は臨調設置法で定められた所掌範囲を大きく逸脱して、国家の目標、国づくりまで提言をし、財界主導のもとに社会福祉、文教、農業など国民生活に密接な部門を、自立自助、受益者負担の原則を強く前面に掲げて抑制し、他方、財界の利益につながるエネルギー開発、海外経済協力、防衛などの部門は積極的な施策の拡大を提言し、国民が行政改革に期待した行政経費のむだをなくすること、肥大化した行政機構の整理、不公平税制是正などの諸課題にこたえるものとはなっておりません。
さらに問題なのは、こうした国の重要政策の決定が密室審議の形をとり、国民が強く求めていた審議の公開、議事録の公開をことごとく拒否し、臨調は現代の枢密院であるという厳しい批判があるように、国会を越え、国会の機能を実質的に代行してきたことは、議会制民主主義を守る立場からは絶対に容認できぬところであります。総理の御所見を伺いたい。
次に、最近の報道などによりますと、総理は、この臨調方式の手法を使って、安保臨調とか教育臨調とかを設置して、その答申を得て、わが国の防衛政策の決定や教育制度の抜本改革に反映させるという構想を打ち出していると伝えられていますが、このような考えがあるとするならば、われわれは重大な関心を寄せざるを得ません。なぜなら、臨調と同様、国会の機能を空洞化させ、民主主義を根底から崩壊させる危険性を感ずるからであります。この点についての総理の御答弁を求めます。
次にまず、本法案は、行政による臨調路線を進める一環として位置づけられます。本法案の提出のねらいを端的に言うならば、現在国会が議会制民主主義の立場からコントロールしている行政組織の立法規制を、行革の美名に隠れ、政府が勝手に官房、局以下の内部部局や審議会などの行政組織の設置、改廃を政令だけでできるようにするものであります。これは憲法で規定されている国会の審議権を制約するものであり、行政による国会に対する重大な挑戦であり、とうてい容認できないものであります。
政府は、これまでにも本法案とほぼ同様な内容のものを第六十五国会を皮切りに三回にわたって国会に提出しましたが、いずれも門前払いの憂き目を見、廃案となった経緯があります。その理由については、私があえてここで述べなくても御承知のとおりであります。
特にここで触れておきたいのは、第一回国会に労働省設置法が提出されたときのことであります。その内容は、労働省の内部組織として官房のほかに五つの局を設置するというもので、そのほかに、新しい部局の設置を想定して、必要があるときは政令で五つの局のほかに部局を設けることができるという規定をつけ加えていたのでありますが、この規定は国会で削除されました。
その理由につき、参議院決算委員長の報告は、新憲法下においては、行政機構の定め方については、旧制度とは趣きを異にし、国民自身がこれを決めるのである、すなわち国民の代表である国会において、法律によって決めるというたてまえになっている、政令で部局の増置を規定する考え方は、戦時中に法律で定むべき事項をやたらに勅令に委任したのと同じ考え方であり、これは新憲法の精神に反する云々と述べ、さらに、政令で部局の増置を規定した規定を削除したことは、その含むところの内容はまことに重大なものがある、それは、従来の旧憲法の官制大権のごとき思想をさらりと捨てて、すべては国民の代表たる国会においてこれを決定すべしとする新憲法の精神にのっとる国会至上主義の実現である、われわれ憲法を合理的に運用せんとする考え方を持つ者にとって、これは重大な原則の確立であると述べて、政府の姿勢を厳しく批判するとともに、国会としての態度を明確にしたのであります。総理の御所見を伺いたいと存じます。
第二は、国の行政機関の組織の公示についてであります。
本法案では、「政府は、少なくとも毎年一回国の行政機関の組織の一覧表を官報で公示する」となっております。しかし、答申では、この点に関して、「行政組織規制の弾力化に伴って政令により規制されることとなった組織の設置・改廃状況について国会に報告するものとする。」と述べています。この両者を比較すると、明らかに行政組織の公示制度で、法案は答申より後退した姿勢であります。これは、国会軽視のあらわれであるとともに、政府は臨調答申を最大限に尊重すると言いながら、答申の中の都合のよいところをつまみ食いをし、都合の悪いものは切り捨てるなど、政府の御都合主義の見本を示していると言えます。法制的に国会への報告義務を排除した理由を明確にしてもらいたい。
第三に、「当分の間」と断りながらも、官房、局の総数の最高限度を百二十八に抑えたことについてであります。
われわれは、この問題に対して、内部組織などが内閣の裁量にゆだねられた場合、国会による規制がきかず、官僚的恣意により弾力的運用の名をかりて、かえって行政機構の肥大化を招くおそれがあることを繰り返し警告してきました。しかし、この警告を無視して本法案が提出をされました。
そこで、行管庁長官にお尋ねしますが、行政組織の膨張は、この規定によって完全に防止できるという自信がおありかどうか。また、「当分の間」とはどの程度の期間を指しているのか、御答弁を願いたい。
第四は、本法案には盛り込まれていませんが、自衛隊の組織についてであります。
答申によると、自衛隊部隊等の組織は、その性格上、行政需要の変化への即応という観点のみをもって規制を弾力化することは適当でない、その規制のあり方について別途検討するとされております。つまり、自衛隊の性格論に焦点を当てて、政府に別途検討することを答申しているのであります。しかし、臨調は、国の政策に優先順位をつけ、最優先に防衛を位置づけるとともに、これを受けて、政府は軍事予算を聖域化し、軍事費の増大は歯どめがきかなくなっており、加えて、総理の軍備増強など一連のタカ派発言、さらに、本院予算委員会審議の中で論議になった自衛隊のクーデター未遂事件の発覚など、一連の自衛隊をめぐる最近の動きを見ると、シビリアンコントロールを大きく揺さぶる危険性が露呈していると言わざるを得ません。したがって、私は、自衛隊部隊の組織規制の弾力化について重大な関心を寄せております。総理並びに防衛庁長官の御答弁を願います。
次に、国の地方行政機関の設置と国会の承認についてであります。
答申によれば、「国の地方行政機関の設置についての国会の承認に関する地方自治法の規定については、再検討するものとする。」と述べています。地方自治法第百五十六条第六項の規定は、「国の地方行政機関は、国会の承認を経なければ、これを設けてはならない。」としています。そこでこの規定を再検討しようというのであります。
本規定の設けられた趣旨は、戦後、地方自治が憲法により保障され、地方自治の強化、地方分権の確立の立場から、国の出先機関を地方に設置する場合に地方住民の意思を尊重する必要があることから、住民にかわり国会が承認するという民主的手続の必要性を考慮して定められたのであります。したがって、行政の効率化の側面だけでは割り切れないものがあります、総理、自治大臣の所見を伺いたい。
第五は、行政組織規制の弾力化と国家公務員法第七十八条第四号との関係についてであります。
この規定は、「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」には、本人の意に反して降任または免職することができると規定されております。そうすると、本法案が成立をし、政府が勝手に行政組織の改廃を実施し、意図的に国家公務員の過員を生じさせた場合には、この規定を適用して公務員の出血整理を断行できるのではないかという危険性も内在しているのであります。しかも、臨調の最終答申には、公務員について、一般職員の定員を五年間に一〇%を上回る削減を行うように政府に要請しております。この点について、行政管理庁長官の御所見を伺いたい。
最後に、予算成立後の国会運営についてであります。
総理は、本法案など行革関連法案の成立を最重要目標としているようであります。中でも国鉄再建推進臨時措置法案は、総理の言葉をかりれば、日露戦争の激戦地になぞらえて二百三高地と位置づけ、野党側が強力に法案成立の阻止を図ってくる場合には、解散、総選挙に打って出ることをほのめかしていたようであります。行革関連法案の審議に絡めて解散、総選挙を考えているのかどうか、総理の態度を明らかにされたいのであります。
以上で、本法案に対する反対の立場を明らかにし、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#29
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 矢山議員の御質問にお答えをいたします。まず、行革に取り組む基本姿勢について御質問がありました。
私は、総理大臣就任時に当たりましては、急迫した外交案件がございましたので、そちらを片づけ、かつまた臨時行政調査会において最終答申をつくるべく当時御努力を願い、最近に至りまして最終答申をいただきましたので、いよいよ本格的に行政改革に取り組んできておる次第でございまして、不退転の決意をもって真剣に取り組んでいくものでございます。決してこれをもてあそんでいるようなことはございません。
次に、臨調答申について財界主導主義ではないかとかいろいろ御批判がございましたが、この臨時行政調査会の構成員につきましては、全国民的視野に立った識見の高いお方の御出馬を願い、労働組合方面からもお二人御出馬を願いまして、ここでいただきました答申は、まさに全国民的背景のもとに提出されたとわれわれは考えております。
なお、臨調の組織法の中におきましても、臨調は「行政制度及び行政運営の改善に関する基本的事項を調査審議する。」ということでございまして、この決定実行はあくまで政府の責任でございます。政府はこれを実行するにつきましては、国会に御審議をお願いいたしておるという次第でございまして、臨調が枢密院とかあるいは国会の権威を侵すものであるということは毛頭ございません。
次に、いわゆる安保臨調構想とかあるいは教育臨調構想について御質問がございましたが、このようなことは目下考えておりません。
次に、組織規制の政令化は国会の審議権を制約するものではないかという御質問でございます。
今回の法改正につきましては、従来から種々検討を加えたところでございますが、確かにこの国会が審議すべき重大な責任を持っているのは行政組織の問題であると思っております。戦前のような官制大権というものは現憲法には認められておりません。したがって、基本的には国会があくまで審議すべきものであるという基本線を堅持していかなければならぬと思っておりますが、しかし、あくまでそれは行政組織の大綱と急所を国会が押さえていただきまして、細部にわたる部面は行政部局に任せるのが、最近の情勢にかんがみまして適当ではないかと考えている次第でございます。
最近の情勢を見ますと、各官庁等は旧来になずみまして、ややもすれば固定化と硬直化を招いておるという情勢がございます。したがいまして、この大綱、急所は国会の厳重な監視監督のもとに置きまして、細部の実行につきましては政府に委任していただきまして、そして弾力的に機動的に運用する時代に入ったのではないかと思う次第でございます。
なお、そのために膨張するということを抑制しなければなりません。そういう意味からいきまして、この部局、特に局につきましては百二十八と限定いたしまして、ちょうど総定員法における定員の規制のように上限を区切っておるわけでございまして、これによりまして膨張を抑制することは確実であると考えております。
次に、自衛隊の部隊の組織問題について御質問がございました。
部隊の組織のあり方やその規制につきましては、国の防衛という目的に照らしまして、特別の合理的、効率的なものでなければならぬという特殊性格がございまして、シビリアンコントロールの確保という大前提のもとで、これは別途検討することが適当であると考えております。
地方自治法第百五十六条に関する御質問がございました。
地方自治法第百五十六条第六項は、国の地方行政機関の設置の要否について、地方自治尊重の観点から、国権の最高機関である国会の判断にゆだねられるようにしてあるわけでございます。したがって、この規定の要否は、単に組織規制の弾力化の見地からのみこれを検討するというのでなくして、さらに多くの、多方面からの検討が必要である、慎重に検討すべき問題であると考えております。
次に、解散について御質問がございましたが、解散は考えておりません。
〔国務大臣谷川和穗君登壇〕
#30
○国務大臣(谷川和穗君) 自衛隊の部隊の組織規制の弾力化に関してのお尋ねでございますが、自衛隊の組織編成につきましては、臨調第三次答申で御指摘をいただいておりますように、必ずしも他の省庁のように行政需要の変化に即応するといった考え方にはなじまない面もあると思われるわけでございます。一方、自衛隊の組織編成、その規制のあり方につきましては、国の防衛という目的に照らしまして、合理的、効率的なものとする必要があることも、これまた当然でございまして、シビリアンコントロールの確保という大前提のもとで進めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#31
○国務大臣(齋藤邦吉君) 矢山議員の私に対する御質問は四点でございます。まず第一から申し上げてまいりますと、最初の御質問は、国の行政機関の公示の問題でございます。
今回の法律改正に当たりましては、官報公示制度をとったのでございますが、この制度が国会を初めとして広く国民に周知するに最も適切な方法であり、国の行政機関の組織については、国民全体に知らせるということにした方が適当であると判断いたしたからであります。
それから、今回の改正によりまして本当に行政組織の膨張抑制ができるのかという点のお尋ねでございます。
政府は、行政組織の管理に当たりましては、従来からスクラップ・アンド・ビルドの原則のもとに厳しい管理を行ってきているところであり、今回の改正に当たっても、この考え方に変わりはありません。
さらに、今回の改正においては、府、省及び大臣庁の官房及び局の総数の最高限度を百二十八と法定しておりますが、これは機構膨張を抑制するという政府の強い決意を法律、制度の上でも表明したものであるわけであります。
また、「当分の間」とは、というお尋ねでございますが、明確にいつまでと言うことはできない性質のものではありましょうが、組織膨張の懸念がなくなるまでの間というのが一つの目安になるものと考えております。
なお、政府において膨張の懸念がないと判断したとしても、上限規制の制度を廃止する段階においては、国会の御判断を仰ぐことになるのは当然であろうと考えております。
それから第三点は、組織規制の弾力化が国家公務員法第七十八条第四号に基づく公務員の出血整理の道を開くものではないかという御質問でございますが、今回の国家行政組織法の改正は、行政需要の変化に即応し、行政機関の組織編成の一層の弾力化を図ろうとするものでありまして、これによって国家公務員法第七十八条第四号の規定の現在の運用が改められるというものではないと考えております。
最後の御質問は、最終答申では一般職員の定員を五年間に一〇%削減するように政府に要請しているが、これにどう対処するかというお尋ねでございます。
この定員削減については、最終答申でなくて、そもそも最初の第一次答申においてすでになされておりまして、最終答申はただそれを繰り返しておるにすぎないわけでございます。
そこで、第一次答申によりますと、一般事務の職員について五年間に一〇%を上回る削減を行うことを含め、国家公務員全体として五年五%程度の定員削減を行うということをすでに提言があるわけでございますので、政府はこの提言を踏まえ、一昨年の八月二十五日の閣議決定において、昭和五十七年から六十一年度の五年間に五%の定員削減を行うという第六次定員削減計画を定め、実施いたしておるのでございまして、今回の最終答申によってさらに削減が強化されるという性質のものではないことを御了承願いたいと思います。(拍手)
〔国務大臣山本幸雄君登壇〕
#32
○国務大臣(山本幸雄君) 国の地方行政機関の設置と地方自治法百五十六条の六項による国会の承認ということについてお尋ねがございまして、ただいま総理からもお答えがございましたが、私からもお答えをいたします。臨調の第三次答申では、お説のごとく、行政組織規制の弾力化の一環として、国会の承認に関する地方自治法の規定の再検討を求めております。
しかしながら、御指摘のごとく、この国会の承認制というものは、国の地方行政機関の設置について地方自治を擁護するという観点から設けられておるものでありまして、単に国の行政組織規制の弾力化を図るという見地からのみでその要否を決することは、地方自治の健全なる発展の上から見まして適当ではない、かように考えております。(拍手)
#33
○議長(福田一君) これにて質疑は終了いたしました。────◇─────
法制局長の辞任承認の件
#34
○議長(福田一君) お諮りいたします。法制局長大竹清一君から、法制局長を辞任いたしたいとの申し出があります。これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、承認するに決しました。────◇─────
法制局長の任命承認の件
#36
○議長(福田一君) つきましては、法制局長に上田章君を議長において任命したいと存じます。これを御承認願いたいと思います。御異議ありませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#37
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、承認するに決しました。────◇─────
#38
○議長(福田一君) 本日は、これにて散会いたします。午後二時二十四分散会