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#1
第096回国会 予算委員会 第13号
昭和五十七年三月二十四日(水曜日)
   午前十時四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十三日
    辞任         補欠選任
     田渕 哲也君     中村 鋭一君
 三月二十四日
    辞任         補欠選任
     村上 正邦君     田代由紀男君
    目黒今朝次郎君     鈴木 和美君
     立木  洋君     市川 正一君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         植木 光教君
    理 事
                井上 吉夫君
                岩崎 純三君
                土屋 義彦君
                松尾 官平君
                竹田 四郎君
                矢田部 理君
                田代富士男君
                沓脱タケ子君
                柳澤 錬造君
    委 員
                岩動 道行君
                板垣  正君
                岩上 二郎君
                亀長 友義君
                木村 睦男君
                熊谷太三郎君
                藏内 修治君
                源田  実君
                古賀雷四郎君
                下条進一郎君
                関口 恵造君
                田代由紀男君
                田中 正巳君
                谷川 寛三君
                長谷川 信君
                藤井 孝男君
                堀江 正夫君
                宮田  輝君
                八木 一郎君
                山崎 竜男君
                片岡 勝治君
                片山 甚市君
                鈴木 和美君
                寺田 熊雄君
                丸谷 金保君
                山田  譲君
                大川 清幸君
                太田 淳夫君
                中野 鉄造君
                三木 忠雄君
                市川 正一君
                中村 鋭一君
                野末 陳平君
                喜屋武眞榮君
   国務大臣
       外務大臣臨時代
       理
       国 務 大 臣
       (内閣官房長
       官)       宮澤 喜一君
       大 蔵 大 臣  渡辺美智雄君
       農林水産大臣   田澤 吉郎君
       通商産業大臣   安倍晋太郎君
       労 働 大 臣  初村滝一郎君
       建 設 大 臣  始関 伊平君
       自 治 大 臣  世耕 政隆君
       国 務 大 臣
       (総理府総務長
       官)       田邉 國男君
       国 務 大 臣
       (行政管理庁長
       官)       中曽根康弘君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  伊藤宗一郎君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       河本 敏夫君
   政府委員
       内閣法制局長官  角田禮次郎君
       内閣総理大臣官
       房広報室長
       兼内閣官房内閣
       広報室長     小野佐千夫君
       総理府人事局長  山地  進君
       総理府統計局長  永山 貞則君
       臨時行政調査会
       事務局次長    佐々木晴夫君
       行政管理庁行政
       管理局長     佐倉  尚君
       行政管理庁行政
       監察局長     中  庄二君
       防衛庁長官官房
       長        夏目 晴雄君
       防衛庁防衛局長  塩田  章君
       防衛庁人事教育
       局長       佐々 淳行君
       防衛庁装備局長  和田  裕君
       経済企画庁調整
       局審議官     大竹 宏繁君
       経済企画庁総合
       計画局審議官
       兼物価局審議官  川合 英一君
       経済企画庁調査
       局長       田中誠一郎君
       国土庁土地局長  小笠原正男君
       外務大臣官房審
       議官       松田 慶文君
       外務大臣官房審
       議官       田中 義具君
       外務省中南米局
       長        枝村 純郎君
       外務省条約局長  栗山 尚一君
       外務省国際連合
       局長       門田 省三君
       大蔵大臣官房日
       本専売公社監理
       官        高倉  建君
       大蔵大臣官房審
       議官       水野  繁君
       大蔵省主計局長  松下 康雄君
       大蔵省主税局長  福田 幸弘君
       大蔵省関税局長  垣水 孝一君
       大蔵省理財局長  吉本  宏君
       大蔵省証券局長  禿河 徹映君
       大蔵省銀行局長  宮本 保孝君
       大蔵省国際金融
       局長       加藤 隆司君
       国税庁次長    小山 昭蔵君
       国税庁直税部長  吉田 哲朗君
       農林水産大臣官
       房長       角道 謙一君
       農林水産大臣官
       房審議官     戸田 博愛君
       農林水産省経済
       局長       佐野 宏哉君
       農林水産省構造
       改善局長     森実 孝郎君
       食糧庁長官    渡邊 五郎君
       通商産業大臣官
       房審議官     植田 守昭君
       通商産業省通商
       政策局長     若杉 和夫君
       通商産業省通商
       政策局次長    黒田  真君
       通商産業省機械
       情報産業局次長  石井 賢吾君
       中小企業庁長官  勝谷  保君
       労働大臣官房長  松井 達郎君
       労働省労政局長  吉本  実君
       労働省労働基準
       局長       石井 甲二君
       労働省婦人少年
       局長       高橋 久子君
       労働省職業安定
       局長       関  英夫君
       建設大臣官房長  丸山 良仁君
       建設省計画局長  吉田 公二君
       建設省都市局長  加瀬 正蔵君
       建設省住宅局長  豊蔵  一君
       自治省行政局長  砂子田 隆君
       消防庁長官    石見 隆三君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        道正  友君
   説明員
       外務大臣官房調
       査企画部長    秋山 光路君
   参考人
       地域振興整備公
       団理事      松田豊三郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○昭和五十七年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十七年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十七年度政府関係機関予算(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(植木光教君) 予算委員会を開会いたします。
 昭和五十七年度一般会計予算、昭和五十七年度特別会計予算、昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(植木光教君) まず、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 昭和五十七年度総予算三案審査のため、本日の委員会及び地域振興整備公団理事松田豊三郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、出席時刻等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(植木光教君) これより山田譲君の一般質疑を行います。山田君。
#7
○山田譲君 私は、日本の現在の防衛産業、この問題についていろいろな角度からお伺いをさしていただきたいと思います。
 先日、総括質問の最後のところで、ごく短い時間でございましたけれども、私が防衛庁長官にお尋ねをしたことがあります。それに続いていろいろ御質問したいと思います。
 それは、四十五年の七月十八日、防衛庁が「装備の生産及び開発に関する基本方針」というものをお出しになられたわけであります。これは当時の新聞なんかでも大きく取り上げられたものでございました。これは、当時の中曽根防衛庁長官のときにお出しになられたと、こういうことでございます。これは、いろいろ書いてありますけれども、端的に言って、やはり言っていることは、「国を守るべき装備はわが国の国情に適したものを自ら整えるべきものであるので、装備の自主的な開発及び国産を推進する。」というふうなこととか、あるいは、適正な競争によって促進されることが必要であると。ですから、積極的に競争原理の導入を行っていくんだ、そうすることによって適正な価格も維持されていくというふうなことが主な内容になっているわけであります。
 そしてこの前、総括質問の最後に防衛庁長官にお伺いしたのは、この基本方針がもうすでに四十五年ですから古いものになりましたけれども、現在に至るまで、この基本方針がいまでも生きているかどうか、この方針に変わりはないかどうかということをもう一遍防衛庁長官にまずお尋ねをしたいと思います。
#8
○国務大臣(伊藤宗一郎君) 先般の委員会でも答弁をさせていただきましたとおり、中曽根長官当時の基本方針でただいまもやらしていただいております。
#9
○山田譲君 そこで、通産大臣にお伺いしたいのですけれども、この防衛産業に関する基本方針、これは当時、四十五年のことでありますからもちろん大臣もかわっていらっしゃるわけでありますけれども、通産省としてこういう基本方針をそのときに知っておられたかどうか、この辺についてちょっとお伺いしたいと思うんです。
#10
○国務大臣(安倍晋太郎君) ただいま御指摘がございました基本方針は、防衛の責任官庁であり、いわゆる防衛産業の唯一のユーザーである立場から、防衛庁が基本的な指針を作成をいたしたものでございまして、したがって、作成に当たっては、事前に通産省に対して公式な協議がされたことはないと、こういうふうに承知をいたしております。
#11
○山田譲君 かなり大きな産業政策上の問題であろうというふうに私は思いますけれども、そうすると、これは防衛庁としては独自の立場で、さしあたり他の省庁に特別な協議もなしにこの方針はつくられたものというふうに理解してよろしいですか。
#12
○政府委員(和田裕君) 防衛庁は装備品の唯一のユーザーであるという立場もございますし、そういった観点で、装備品の生産につきましては当然のことながら関心を持っております。そういったような観点で防衛庁がつくったものでございますが、正式な協議は確かにいたしておりませんけれども、つくります際にお話はしたと、通知はしたというふうに伺っております。
#13
○山田譲君 これだけ大事な産業政策上の問題について、まあ余り大した連絡もなしに独自におつくりになったということについてはどうもちょっと納得がいきかねますけれども、この問題は後でまた御質問したいと思います。
 そこで、この基本方針が生きているというお話でありますから、この基本方針に沿っていろいろお尋ねしていきたいわけです。
 まず最初に、防衛庁長官にお伺いしたいんですが、この基本方針が現在十二年もたっているけれども、いままでこの方針に従ってこれを実現させるように努力してこられたかどうか、もし努力されたとするとどういう努力をしてこられたか、そして、その結果どういうふうにこの方針どおりの成果が、完全ではないにしても、少しでも効果が上がっていますと、こういうことがあるかどうか、その点を防衛庁長官にお伺いしたいと思うんです。
#14
○国務大臣(伊藤宗一郎君) 防衛庁としては、ただいま申し上げたような方針にのっとってやってまいりました。恐らく御質問のポイントは、その中にうたっております自由競争というものがそれほど数字の面であらわれていないのではないかというようなお気持ちだろうと思いますけれども、御案内のとおり防衛庁の装備品は、まず第一点は、航空機製造事業法、武器等製造法等の適用を受けるため製造業者が限定されるということ。第二点は、仕様内容が複雑な装備品等が多いために高度の技術経験、生産設備等を必要とし、したがって製造業者が限定をされるということ。また第三点、ライセンス生産をするものについては外国企業との技術援助契約を必要とするため、これまた製造業者が限定されること。次に、輸入品については、外国企業との販売契約が結ばれている商社に限定をされること等のため、契約の相手方がおのずから限られざるを得ないという現状にあるわけでございます。
 しかし、主要装備品の取得に当たっては、契約以前に機種選定作業を行うとともに、国産または輸入のいずれにするか、価格の要因を含めて総合的に検討し、決定することとしております。したがって、これらの段階において競争原理が取り入れられているというふうに理解もし、極力競争原理を導入するように努力してまいったということは申し上げられると思います。
 なお、御質問によりまして、政府委員から補足的に説明をさしていただきたいと思います。
#15
○山田譲君 特別お尋ねもしないことまでおっしゃっていただいたわけで、その点、これからいろいろお聞きをしていこうかと思っていたところなんです。
 具体的に、これは局長で結構でございますけれども、まず「装備の自主的な開発及び国産を推進する。」と、こういうことを言っていますね。しかし、どうも私の見る限りそうはなっていないわけでありますけれども、どういうことで自主的な開発を進めてこられたか、あるいは国産が従来よりもふえているかふえていないか、ふえるような努力をしてきているかということについて、これは局長で結構でありますからお尋ねをしたいと思います。
#16
○政府委員(和田裕君) お答え申し上げます。
 私どもは、いま先生の御指摘になりました装備品の生産に関しますところの基本方針というものを踏まえまして、なるべく国土国情に合いました国産品の開発というものに努力するように努めております。しかしながら、いま長官の方からも申し上げましたように、いろいろな制約要因もございまして、たとえば乏しい財政資金の中で割り当てられます防衛費というものを最も効率的に使わなければいかぬというようなのも大きな一つの考慮要因になるわけでございます。そういったようなことで、調達する数が非常に少ないものにつきましては、場合によりましては外国から買いました方がどうしても割り安になる、費用対効果の点で割り安になるというものがございます。また性能等の点におきまして、わが国におきましては残念ながら所望の性能、要求性能といいますか、そういったものを満たし得ないものもございます。そういったものにつきましては、やむを得ず外国から導入するということでございます。
 しかし、そういったことにもかかわりませず、われわれとしては国産化をなるべくふやすように努力しておりまして、一番最近の数字で申し上げますと、国産化率で大体八〇%の高い方、九〇%をちょっと割り込んでおりますけれども、そういうふうになってきております。これはちょっと数字で後でまた補足さしていただきますけれども、十五年あるいは十年前というものに比べますと、国産化率が上がっていることは事実でございます。
 それからまた、外国の機種を導入する場合におきましても、努めてライセンス生産ということで、向こうから技術は導入いたしますが、その中でアメリカとかその他の外国からなるべく日本に技術を開示していただきまして、その開示した技術に基づきましてライセンス生産をするということもしております。これは純粋な意味での国産ではないかもしれませんけれども、しかし、そういうことをすることによりまして、わが国はその技術をそれだけ培養、習得することができる、それによって技術基盤ができる。それから装備品の維持、補給が容易になるということでございますので、本来の純粋の国産が持っておりますメリットの相当部分をやはりライセンス生産によっても確保することができるのではないか。そういうことで私ども、制約の中ではございますけれども、なるべく国産化が拡大できるように努力をしている、こういうことでございます。
#17
○山田譲君 それから続いて、詳しいことは後から御質問したいと思いますけれども、競争原理を導入するというふうなことを盛んに言っています。
 それからまた、装備の開発と生産に当たりましては、特定企業に集中することのないように配慮するというふうなことを至るところで言っておるわけでありますけれども、「特定企業に集中することのないよう配意しこというふうなことがありますけれども、それについてはどのような配意をなさってこられたかということをお伺いしたいと思うんです。
#18
○政府委員(和田裕君) 私どもは、なるべく競争原理を導入するというのは、二つの局面に分けてお話しした方がいいかと思っております。
 実際に物を調達する場合にどういったメーカーを選ぶかというのが一つの段階でございます。それからまた、さらにさかのぼりまして、研究開発をする場合にそもそもどういうような配慮をするか、こういった二つの要素があるかと思います。
 まず、物を調達する場合について申し上げますと、先ほどもちょっと申し上げたことではございますが、私どもは機種を選定する際に一番基本でありますのは、何といいましても防衛上の考慮からいたしますところの要求性能というものを満足しているかどうかということが一番根本になるわけでございますが、その際には、わが国自体で生産することができるもの、それから外国から輸入することができるもの、こういったものにつきまして綿密な比較検討をするわけでございます。そういった意味で、たまたまたとえば輸入のものを、外国のものを導入するといった場合、その場合におきまして国産の可能性があるかどうか、あった場合には一体どういうものができるか、大体幾らぐらいでできるかということを常に考慮しております。また、国産でする場合におきましても逆なことがございまして、そういった意味でまず基本的に、外国のもの上国産品というのは潜在的、場合によっては顕在的な競争にさらされているということをまず御理解いただきたいと思います。
 その次に、たまたま国産のものを採用するといったようになりました場合には、大体こういったような要求性能のものを買わなきゃいかぬということに、なるわけでございますが、そのときには、さっき防衛庁長官が言われましたような航空機製造事業法とか武器等製造法、そういったもので一定の枠がございます。枠の中で認められる範囲内におきまして努めて競争原理を働かしていきたい、こう思っております。
 装備品というのは、先生御存じのように非常に複雑でございますので、どこのメーカーでもつくるというわけにいきません。どうしても一定の技術能力それから生産能力、技術の蓄積、あるいはマネージメントの力、こういうものが必要でございますが、その範囲内で私どもは努めて競争させるようにしておりまして、幾つかの例を申し上げても結構でございますけれども、たとえばこれは例を申し上げた方がむしろいいのかと思いますのであえて申し上げますが、最近で言いますと、本年度の予算から認めていただきました新中等練習機というのがございますが、このときにはわれわれとしては、要求所望としてはこういうものだけれども、一体その所望範囲でどういったようなものができるかということで、いわば競争的な提案といいますか、それを航空機会社にお願いしたその中で、最も高い要求性能を満たし、かつ相対的に価格が安くなるだろうといったものにつきまして、われわれとしてはこれをプライムといいますか、一応のその研究開発の相手方として選択したということもございます。
 それからまた、今度バッジの建設というのをやりますけれども、これも私どもの方の基本的要求所望を定めまして、その要求所望を国産のコンピューターメーカー六社に提示いたしまして、これにつきまして競争的な提案をしてもらうということで声をかけておりまして、いま鋭意これについては審査中であるということでございます。
 このようにして、われわれは客観的な情勢が許す場合にはなるべく競争原理を入れて、よいものをかつ安くするように努力しておる、こういうことでございます。
#19
○山田譲君 それでは、この基本方針に沿ってもう一つ、「今後の装備の開発及び生産は、原則として自国産業に限定するものとする。」ということを言っております、この中で。それは本当にそのようなかっこうになっているかどうかです。
#20
○政府委員(和田裕君) いま先生言われましたのは、「装備の生産及び開発に関する基本方針」の第二でございますか、「国を守るべき装備はわが国の国情に適したものを自ら整えるべきものであるので、装備の自主的な開発及び国産を推進する。」このことをおっしゃったのかと思いますが……
#21
○山田譲君 いや、そうじゃない。そこの七、最後のところで「今後の装備の開発及び生産は、原則として自国産業に限定するものとする。」というふうに書いてある。七のところ。
#22
○政府委員(和田裕君) わかりました。失礼しました。
 防衛産業の整備方針でございますね。「今後の装備の開発及び生産は、原則として自国産業に限定するものとする。」これでございますね。これは開発及び生産ということで、開発自体につきまして外国のメーカーに直接依頼するということは自主防衛の見地からいかがかなということで、こういうふうに書いたというふうに承知しております。私どもはこれまで、外国のメーカーの方に直接に開発及び生産をお願いしたという例はないわけでございます。そういう意味でこの方針は守られているというふうに考えております。
#23
○山田譲君 いろいろお聞きしたわけですけれども、要するにいろいろごたごたおっしゃったけれども、これをつくったときからそんなことは当然わかっていたことだろうと思うんです。ですから、私がお聞きしたかったのは、この方針に従ってそういうことを超越していろんな努力をした結果、四十五年当時はこうだったものがこうなったのだということを実はお聞きしたかったわけです。
 それで、具体的にお示ししたいんですけれども、競争原理を導入するとかそういうことを言っていますが、たとえば金額的に調達額全体に占める割合というものを過去十年間、四十六年から五十五年まででありますけれども、これを見まするというと、もう圧倒的に三菱重工業がトップになっております、ずっと四十六年から連続十年間トップ。そしてその次が大体石川島播磨というふうなところが二ないし三位というふうなかっこうになっております。五十五年の四位が三菱電機になっておりますね。これがやはり三番、四番というふうなずっとこの十年間続けてきている。そうしますと、一位から四位まで三菱重工と石川島播磨と川崎重工業と四番の三菱電機、これが多少二、三の入れ違いはありますけれども、ともかく十年間というものは全く同じ状態で来ているわけでございます。しかも、これは三菱系の三菱重工と三菱電機を入れますと、これだけで三〇%以上を占めている。そして四位までの全部でもって五〇%、半分以上はこの十年間全部上位四位が占めているわけであります。そうしますと、果たしていまいろいろおっしゃったように、集中化を避けるとか競争原理を導入するというふうなことを言っておられるけれども、少なくともこの現状で見る限りそういうふうにはとれないわけです。
 こういう現状について、いまあなたいろいろおっしゃったけれども、具体的にどういうふうに考えておられるか。これは、あなたが言っているような集中を避けるとか競争原理を導入するというようなことを実際にやっていけば、十年間全く同じ座で、しかも五〇%以上をこれが占めていくというふうなことは考えられないわけでありますけれども、それについてどう思いますか。
#24
○政府委員(和田裕君) 確かに先生おっしゃいましたとおり、過去十年間を見てまいりますと、三菱重工、石川島播磨、川崎重工あるいは三菱電機、こういったところがほとんど一、二、三、四位でございまして、例外は一つ、二つございますが、ほとんどそのとおりかと思います。ただ私どもは、これはいわば先ほど申し上げましたような、私どもの調達に関しますところのいろいろな方針、努力というものをやった結果、たまたまこういうふうになったというふうに御理解いただきたいと思います。
 たとえば航空機について申し上げますと、ライセンス生産というのをやっておりますが、これにつきましては、戦闘機系列のものにつきましては三菱重工が何といいましても非常に安定的な技術力を持っているというようなことで、これにつきましては通産省とも御相談してやっておるわけでございますが、やっぱり技術力あるいはその技術の蓄積、それから実際の持っております生産設備、そういったことに若目いたしますと、三菱がとるということもございましょうし、それから川重につきましては比較的大型のたとえば対潜用の哨戒機等を中心にやってきたと、あるいは若干のヘリコプターもございますが、そういったものについて非常にすぐれた技術力があるというようなこともございます。
 それからまた、艦艇につきましても、やはり三菱、石川島播磨、川重等が、ほかの艦艇につきましては日立造船とか住友重機がございますが、そういったものが非常に安定的な力を持っておるということもございます。
 私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、常に選定の場合には決して頭からこの一社に決めるということはしておりませんで、常に複数、なるべく多くの会社を対象にして考えておりますが、いろいろ選定いたしますと、実際にその企業が持っております技術力あるいはこれまでの技術の蓄積、それから実際持っております生産設備、それからまたそういうことをいわば反映したと思われますが、武器等製造法あるいは航空機製造事業法によります認可の対象になり得る企業というものは狭まれてくるというようなこともございまして、たまたまこういうところに来るということでございます。
 ただ、先生がおっしゃいましたように、競争原理をなるべく入れろということもございますので、今後とも先生の御趣旨を体しまして、なるべく競争原理を入れるようになお一層努力していきたい、そういうように考えております。
#25
○山田譲君 私は、競争原理を入れろと言っているわけではないので、この基本方針がそういうことを言っているから、そのとおりやっているかという話を聞いているわけです。それから、たまたまこうなったというようなことをおっしゃるけれども、この表を見る限りはどう見たってたまたまとは思えないわけですね。恐らくこれは、四十五年のこの基本方針をつくった当時も大体こんな状況だったと思うんです。ですから、こういう状況を脱却して、そして競争原理を導入していくのだということで基本方針ができ上がったはずでありますけれども、いろいろおっしゃったけれども、結局この表を見る限り、現状を見る限り、どう見てもそれは基本方針どおりになっているとは思えません。
 しかも問題なのは、そういう企業に将、将補というふうな人たち、昔で言えば大将、中将という人たちだと思いますけれども、こういう人たちがどんどんそういう企業の中に入っていっている。試みに、これは一九七八年九月現在のものでありますけれども、見ますと、三菱重工に陸将、陸将補が四人、海将、海将補が十人、空将、空将補が六人、計二十人もこの三菱重工に行っているわけですね、入っている。石川島播磨には、これは陸はいませんで、海将、海将補が六人、空将、空将補が四人、計十人。川崎重工には、陸将、陸将補が三人、海将、海将補が六人、空将、空将補という人が十三人。三菱電機には、陸将、陸将補が五人、海将、海将補が二人、空将、空将補が三人、計十人。東京芝浦電機には、陸将、陸将補が七名、海将、海将補が六名、空が二名ですね。陸が七名、海が六名、空が二名、計十五名、こういうふうな大ぜいの空将、空将補というふうな人たちが、昔で言えば大将、中将というような将軍たちがそういう会社にいわゆる天下りをして行っている。そしてしかも、それがこの企業の順位とちょうど符節を合わせるようになっていて、三菱重工が圧倒的に多い。しかも、そういうところに統幕議長が四名、それから陸幕長が二名、海幕長が二名、空幕長が四名というふうな状態で、非常な重要な地位を占めた人がそういうところにみんな入っていっているわけですね。これは、もう恐らく昔で言えば参謀総長であるとか軍令部総長といったような、軍人の中でも大物になると思うんですが、そういう人が続々といま言ったような企業に入っていっている。そして、企業と防衛庁のパイプ役になっていることは、これは間違いない事実でございます。そういう状態でいる限り、幾ら競争原理を導入しろとかなんとか言ったって、やっぱりそれはそういうところの方が圧倒的に強い力を持ってくる、そういうふうに考えざるを得ないのです。
 それからまた、有力な商社というふうなところにも多くの自衛隊幹部、たとえば日商岩井であるとか住友商事、三井物産というふうなところに相当の幹部クラスが皆続々として入っていっている。これは何のために入っていったか、当然わかり過ぎるくらいわかるわけだと思うんです。
 こういう現状で、あなたは抽象的なことしか言わなかったけれども、この競争原理導入であるとかということを言っているけれども、果たしてそんなことができるかどうか、そこら辺どういうものですか。
#26
○政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。
 御指摘のように、自衛隊の高級幹部が三菱重工等に再就職をしておることは事実でございまして、五十一年以降退職をした一佐以上の自衛官で三菱重工等上位二十社に入りました者が百十一名になっております。しかしながら必ずしも三菱重工が圧倒的に多いということではございませんで、たとえば五十五年の場合には、全部で年間十八名一佐以上の者が再就職をいたしておりますが、上位二十社の中で三菱重工にはだれも行っていないというふうな年もございます。新しい資料によりますといま申し上げたようなことでございます。
 しかしながら、御承知のように自衛隊法六十二条で「私企業からの隔離」という規定がございますが、この規定の趣旨は、必ずしも自衛官であっても再就職を防衛産業に求めてはいけないという趣旨のものではございませんで、若年定年制の適用を受けております自衛官の場合、将は五十八歳となっておりますが、実際の運用上は五十六、七歳で肩をたたいておりますし、将補も五十五歳が定年でございますが、五十四歳ぐらいで肩をたたいておる、勧奨退職をお願いしておるというのが実情でございます。ちょうど子弟の教育等、一番負担のかかる年齢でございますので、防衛産業に再就職してはいけないということはその法の趣旨でもございませんし、また職業選択の自由あるいは生活権の問題がございますので、全面的にこれをいかぬというわけにはいかないだろうと考えております。
 六十二条の再就職制限の趣旨は、もう御承知のように、退職後二年間は、離職前五年間についておった職務に密接な関係のある地位にはつかせない、こういうことによって行政の公正性を担保しよう、こういうものでございまして、この趣旨にのっとりまして、ただいま申し上げました高級自衛官幹部も役員のような地位にはついておりません。顧問、嘱託というようなことで、会社の重要な決定には職務権限上参加ができないようなところで勤務をいたしておる、こういうことでございます。
 若年定年制を受けました自衛官の再就職の問題につきましては、こういう事情でございますので、何とぞ御理解を賜りたいと存じます。
#27
○山田譲君 私は何も打っちゃいかぬということを言っているわけじゃないんですよね。法律的に打っちゃいけないとなっているわけじゃないのはよくわかりますけれども、それは確かにおっしゃるとおり、非常に若くて肩たたきされる、昔と違って、将軍であるから退役した後は恩給で悠々と暮らしていくというふうなそんな時代でないことは私もよくわかります。ですから、その生活の問題もあるので、どこかの企業に行くということも決して私はそのこと自体いけないと言うわけじゃないけれども、その天下りの状況と、それからこの企業の上位四位くらいまでの状況を見ますと、それが余りにも符節を合わせたように一緒になって、同じになっているというところに私は問題意識を感ぜざるを得ないわけです。
 ですから、いま重要な役割りを果たしていないんだ、顧問か嘱託というふうなかっこうで、企業の方針を決めるところには参画していませんというようなことを言うけれども、これは何といったって、こういう防衛産業の大企業にとっては、こういう大将軍を採用することが企業にとって物すごくプラスになるから、これは顧問だか何だか知らないけれども、採用していることは間違いないわけですね。ですから、それは利潤を追求する大企業がだてに自衛官の失業救済をするわけはないんでありまして、必ずそういう人が入ってくれば、それなりに企業にとっても非常にプラスになるということが考えられるからこそこういう人を採用しているはずだと思うんです。
 ですから、私は法律的にこれがいけないとかいいとかというんじゃなくて、そういうことが、結局は防衛庁と防衛産業の大企業、独占的な大企業と絶えず癒着の構造が強まっていくんじゃないかということが問題じゃないかということを言っているわけです。この辺、防衛庁長官どうですか。
#28
○国務大臣(伊藤宗一郎君) 私どもとしては、受注額と再就職者数とは必ずしも比例しているとは考えておりませんし、また、したがって防衛産業と制服組との癒着につながっているということも考えないわけでございますけれども、御質問の趣旨を体し、今後とも国民から疑惑の目をもって見られることのないように指導を徹底してまいりたいと思います。そしてまた、競争原理を極力導入する方向にも努力をしてまいりたいと思っております。
#29
○山田譲君 いま長官おっしゃるようなことでやむを得ないと思うんですけれども、くれぐれもその点は注意をしていただきたいと思うんです。そして、後で何か問題があってからじゃ遅いわけですから、ひとつ事前によく御注意いただいて、仮にもこういう制服の人たちが重要産業、防衛産業に入っていって、そういう人たちと防衛庁が癒着をする、それのちょうど橋渡しになるというふうなことの絶対ないようにひとつ御注意をいただきたいというふうに思います。
 それからもう一つお聞きしておきたいんですが、こういう状況を見ますと、どう考えても競争原理どころじゃなくて、一社が独占的に飛行機をつくったり艦船をつくっているというふうにしかほとんどとれないわけでありますけれども、そういうところにおいて価格はどういうふうにして決まるか。つまり、価格決定のメカニズムみたいなものですね。これは局長で結構ですから、教えていただきたいと思うんです。
#30
○政府委員(和田裕君) 防衛庁が国内で調達いたしますときの装備品等につきましては、国の買うものでございますから、当然のことながら予定価格というものをまず定めるわけでございますが、これは一般的にごく基本的に見ますと、市場価格というものを基準にいたしまして算定いたします市場価格方式によるものということになっておるわけでございますが、しかしながら主要な装備品等につきましては、先ほど来申し上げましたようないろいろな特性がございまして、市販されていないものが多いということでございますので、こういった場合におきましては、個々の計算要素につきまして積み上げをいたしまして計算いたしますところの原価計算方式ということによって決めているわけでございます。
 市場価格のことはちょっと暗さしていただきまして、原価計算方式について申し上げますと、原価計算方式によります計算方式といいますのは、材料費それから加工費及び直接経費というものを合算いたしまして、まず製造原価というものを算出いたします。次に一般管理費及び販売費、これは一般管理費と販売費一緒でございますが、及びそれから販売直接費というものを加えまして総原価というものを算出いたします。この総原価に対しまして、次に適正なる支払い利子及び利益というものを加算いたしまして裸価格というものを計算いたします。最後に、これに梱包費及び輸送費というものを加えまして積算した計算価格に基づきまして予定価格を算出している、こういうことでございます。これがいわば算式といいますか計算の算式でございますが、一方、こういったような原価計算を生み出しますために、防衛庁におきましては調達実施本部その他におきまして原価計算の専門家を多数用意しておりまして、これが原価計算につきまして日常いろいろな資料の収集に当たっておりまして、この集めました資料その他いろいろな情報というものをもとにいたしまして、原価の算出にいろいろ努力しておる、こういう状況でございます。
#31
○山田譲君 それは当然の話だと思うのですが、それでその予定価格どおりに、たとえば三菱重工が、これじゃとてもできないというふうなことはありませんかということを聞いているわけです。
#32
○政府委員(和田裕君) まず、装備品の価格を算出いたしますときに、いま申し上げましたような方式で私どもはできるだけ正確な数字をつくるように最大の努力をいたしまして、それに基づきまして防衛庁なりの数字はつくりますが、これが予算でお願いするときには、当然のことながら大蔵省の御査定をいただくわけでございまして、大蔵省の方におかれましても非常に厳密なこれについての洗い出し、それからこれの審査ということを行うわけでございます。それによりまして一定の価格というものに達するわけでございますから、よほどたとえばインフレ、石油ショックがありました昭和四十七年でございますか、ああいったような非常な特殊な状況でもない限り、一般の場合にはそういった算出された価格、それから予算がつきました場合に、さらにその時点におきましてもう一度精密な計算を行いまして予定価格を出しますが、その予定価格をわれわれふところに抱きまして商議をするわけでございますが、それによりまして商議が普通成立する、こういう状況でございまして、特にできないというようなことにつきましては、何か私は余り思い当たる点がないというふうに考えております。
#33
○山田譲君 そうするとあれですか、こっちで決まった予定価格どおりに向こうが引き受けてくれる、こういうことで、その間に問題があったことはないという話ですか。
#34
○政府委員(和田裕君) 予定価格というのはあくまでもいわば上限、予算でございますので、われわれとしては予算で認められました価格が最上限になりますが、その範囲で予定価格を算出いたしますと、その予定価格を持っておりますけれども、その範囲内でなるべく安く契約するように努力いたします。商議でございますから相手もございますが、その結果、予定価格におさまって普通契約ができておる、こういう状況でございます。
#35
○山田譲君 この問題これ以上深く言いませんけれども、いずれにしても独占あるいは競争原理が働いていないところでありますから、その価格については十分考えてよくやっていただきたい。仮にも向こうの言うなりの価格でつくらせるというふうなことのないように、そこのところは非常にむずかしいと思いますけれども、考えていただきたいと思うんです。
 もう一つ防衛庁長官にお伺いしておきたいんですが、これはもうかなり古い話ですが、アイゼンハワーというアメリカの大統領が演説したことがありますけれども、その中で、兵器産業というものがだんだんだんだん発展していきますと逆に兵器産業が軍拡を促進していく、軍拡をプロモートしていくというふうなことになるのでこれは注意しなければいかぬというふうなことを、アイゼンハワー大統領ははっきりと演説をしているわけでありますけれども、現状の日本を見ますと、それほど兵器産業が物すごい勢いで伸びているというほどではまだないように思うのですけれども、そこら辺について防衛庁長官、どうお考えでしょうか。
#36
○国務大臣(伊藤宗一郎君) われわれがいま進めております防衛力の整備は、わが国の自主的な判断のもとに、また財政経済、他の施策との調和等、あるいはまた、専守防衛という防衛の基本政策等に乗って適切な規模の防衛力を整備するということで進めておるわけでございます。したがいまして、防衛産業がひとり歩きで盛んになっていくということはあり得ないわけでございまして、防衛産業が盛んになって防衛力の整備にいろいろな影響が起こるというようなことでなしに、唯一のユーザーである防衛庁が、あるいはまたその政策がしっかりしておるならば御指摘のようなことにはならない、またならしてはならないというふうに考えております。
 なお、ちなみに、わが国工業生産における防衛生産の割合は〇・三九%でございまして、防衛予算の現状等から見ましても、防衛産業の拡大が軍拡というようなものに結びつくようなものではないということも、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
#37
○山田譲君 防衛産業の最後の問題で、ひとつ通産大臣にお伺いしたいのですが、いまお聞きのような状態で、防衛産業の現状というふうなものもおわかりになったと思うのです。それからまた、特別協議はしてなかったとは言いますけれども、基本方針が十二年前のものであるけれどもできている、こういう状況の中で、防衛産業というふうなものが将来日本の産業政策といいますか、そういう中でどういうような位置づけをしていくべきであるかということを通産行政の立場から、通産行政といいますか、広く産業政策の立場から通産大臣としてどうお考えになっておられるか、防衛産業の将来の全産業における位置づけというふうなものをお聞かせいただきたいと思うのです。それで防衛問題は終わりたいと思います。
#38
○国務大臣(安倍晋太郎君) 防衛産業は、わが国の安全保障を確保する上で非常に重要な防衛基盤の一翼を担う責務を有しておりまして、防衛政策と整合性を保ちながら可能な限り競争性を確保し、効率的に装備の供給を行うようにすることが必要ではないかと考えております。
 また、自国の装備体系は、先ほどからお話がございましたが、可能な限りやはり国産化した技術体系で装備をされることを基本とすべきものである、こういうふうに考えておりますが、個々の装備品の調達に当たりましては、この基本を踏まえながら、防衛政策上の要請とそれに対応し得るわが国の防衛産業の供給可能性を個々に判断をして決定をされるべきではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
#39
○山田譲君 通産大臣、もう結構でございます。防衛庁長官も結構ですから。
 それでは、その次に労働行政の問題に移りたいと思います。
 まず、大臣にお伺いしたいわけですが、後で私詳しく申し上げますけれども、最近の日本の労働行政についていろんなとかくの批判が出ているわけであります。私は、やはりその批判はどれも当たらない。当たらないところか、労働行政の重要性というものをもっともっと認識するなり、そういうものを発展させていかなきゃいけない、そして本当に日本の労働者のためになるような行政をやっていただきたいというふうに思うわけです。そこら辺について、まず労働大臣の労働行政に臨む基本的な決意といいますか、考え方をお伺いしたいと思うのです。
#40
○国務大臣(初村滝一郎君) 労働行政に対してとかく、指導が行き過ぎではないか、あるいはまた余り干渉し過ぎではないかというような見解があるようでありますが、私はやっぱりわが国の全就業者の七割を占める雇用労働者の職業の安定、生命の安全、さらには健康の保持、安定した労使関係の確保等はわが国にとってきわめて重要な問題であり、必要な対策は講じていかなければならない、こういうふうにまず考えます。
 今後の労働行政については、高齢化社会への移行、国際経済環境の変化などに伴って産業構造の変化への対応、それから高齢者、心身障害者対策の推進、労働時間等労働条件改善の対策の強化を図らなければならない。さらにまた、雇用における男女平等の推進など、的確な適応を迫られる課題が非常に多いわけであります。それとともに、従来からいろいろな対策を講じてきている労働者の安全衛生の問題、あるいはまた賃金適正、不払い等の最低労働条件の問題等についても、まだ十分とは言いがたい点が多々あると思います。このような数多くの課題にこたえるためには、労働行政の充実強化が必要であります。このような認識に立って、また現下の厳しい財政事情も踏まえて、効果的な行政の進め方、行政体制についての検討を行って、労働省として積極的な労働行政を進めていかなければならない、こういう気持ちでございます。
#41
○山田譲君 初村労働大臣、まだ就任してから半年そこそこにも足らないわけでありますけれども、非常に詳しく、しかも力強く決意を述べられまして、私も実は安心をしたわけでございます。
 そこで、多少詳しくなって恐縮でありますけれども、労働行政の中には労政行政――労政局がやっているやつ、それから職安行政、それから基準行政、それから職業訓練の関係、それから婦人少年行政というふうなそういう行政が行われていますが、これは各局長で結構でございますから、五十七年度においていわゆる新しい政策といいますか、現在問題になっている内容、それとそれに対してどういうふうに対応していこうとしておられるか、これをまず各局長からお聞きしておきたいと思います。
#42
○政府委員(石井甲二君) 基準行政からまずお答えを申し上げます。
 基準行政の行政の範囲につきましては非常に広いわけでございますが、何といいましても重点は産業安全といいますか、現在労働災害にかかっている者が百万人を超える、あるいは死亡者が三千人というような状況でございますので、これに対して、職業病を含めましてこれの体制をつくり、かつ監督を実施するという方向で、これを最重点に考えております。
 さらに、最低賃金行政につきましても、毎年最低賃金、特に地域別最低賃金並びに産業別最低賃金を毎年、地域別につきましては各府県ごとにやっておる、こういう状況でございまして、これも大変重要なことであります。
 さらに、労働者福祉の観点からしまして、特に来年度におきましてはいわゆる勤労者の財産形成政策を基本的に展開をしようということでございまして、一つは、国会に法案をお願いをしておりますが、個人年金の制度を財形制度の中に導入をする、あるいは現在住宅について勤労者のニーズが非常に高いわけでございますので、これを促進するという意味におきまして、いわゆる利子率につきまして、利子補給を実施する予算につきましてこれも国会にお願いをしている、こういう状況でございます。
 さらにそのほか、いわゆる監督の実施につきましても、監督官の増員につきまして、現下非常に厳しい情勢でございますが、若干でございますが増員を図りまして体制をつくっていく、こういう状況になっておるわけでございます。
 そのほかございますが、一応お答え申し上げておきます。
#43
○政府委員(関英夫君) 来年度の職業安定行政の重点について申し上げたいと思いますが、一つは、大臣からもお話がありましたように、高齢者の雇用安定対策がまず第一だろうと思っております。それは一つには六十歳定年の早期一般化、これに向けての行政指導の強化が第一でございます。
 それから、六十歳を超えた方々、六十歳代前半層の方々の雇用の安定対策として、六十歳定年後も引き続き雇用が確保されるように努めていくこと、各種の助成金等を活用してそういうことを図っていきたいと思っております。
 また、高齢者で退職された方々の再就職の促進ももとより重要でございます。
 それから第二は、最近の雇用失業情勢は非常に足踏み状態でございまして、いま安定所の職員を挙げて求人開拓に努め、再就職の促進に努めておるわけですが、でき得るならば失業者を出さずに休業でしのいでいただくようなことで、雇用調整助成金、これの活用に努めているところでございます。
 それから、産業構造が変化してまいりまして、技術革新その他でいろいろ雇用に対して影響が出てまいります。そういった調査研究、あるいはこれからふえていくであろう三次産業に向けての雇用情報の充実、あるいはパートバンクの設置等によるサービスの強化、こういったことも重要なことでございます。
 心身障害者の雇用促進対策につきましては、昨年の国際障害者年を契機として世間の理解が一段と促進されたと思いますけれども、今後十年の提言もいただいておるところでございまして、十年計画をつくり、特に重度の心身障害者の雇用促進対策を強化してまいりたいと思っております。
 その他、中国引揚者に対する雇用対策等々いろいろございますが、ただいま申し上げたところを特に重点として取り組んでいきたいと考えております。
#44
○政府委員(高橋久子君) 婦人少年行政につきましては、まず、婦人でございますけれども、最近、婦人労働者が大変ふえてまいりまして、全雇用労働者の三分の一を占めるに至っております。経済社会の発展に非常に大きな役割りを果たすようになってきてはおりますけれども、婦人が職場において十分にその能力を発揮できるような条件が整備されているとは申せません。
 そこで、私どもといたしましては、来年度の婦人行政の重点といたしましては、まず第一点といたしまして、雇用における男女平等促進対策でございます。雇用における男女の機会と待遇の平等の促進ということで、具体的には、男女別定年制、結婚退職制等の解消、男女同一労働同一賃金の原則の徹底、四年制大卒女子についての雇用管理の改善等を図っていきたいというふうに考えております。また、さらに男女平等を一層確かに保っていくためには、男女の実質的平等とは何かということを明らかにしていく必要がございますので、現在、専門家の方々にお願いいたしまして男女平等のガイドラインについて御検討をお願いしておりまして、この御検討結果を踏まえて諸対策を進めていきたいというふうに考えております。
 二番目は、母性の健康管理対策でございまして、基準法に規定しております母性保護措置が十分に守られるよう、これを監督指導を徹底していきますのとともに、事業主に対しましては妊娠中及び出産後の勤労婦人の健康管理の充実について行政指導を行っているところでございます。
 それから、職業生活と家庭生活の調和対策を図るということもきわめて重要な施策でございまして、具体的には育児休業制度がさらに一層普及していくように努めております。
 以上が婦人対策の主な点でございます。
 勤労青少年につきましては、勤労青少年はまだ心身ともに未成熟なものでございますので、これらの青少年が充実した職業生活を営み、かつ、有為な職業人として健やかに成育していきますように、具体的には勤労青少年福祉に関する機運の高揚、職場生活の充実、余暇生活の充実、それから指導者の養成を図っていく、このような諸対策を進めているところでございます。
#45
○山田譲君 労働大臣、いまお聞きになったように、それぞれ局長は物すごく意欲的に、現在の労働情勢の問題にかんがみてひとつこれはやっていかなきゃならぬと、こういう気持ちにあふれているわけでして、私も労働省出身の人間として非常に力強く思っております。
 ところで大臣、それはいいんだけれども、そのとおりの体制に果たして本当になっているかどうかという問題なんです。たとえば労働基準監督官の問題でありますけれども、二十三年以降五十万八千しかなかった事業場が現在三千三百二十二万というような約六・三倍にもふえている。ところが、監督官の数はわずか一・二八倍にしかなっていない。そういうことで、ILOのこの八十一号勧告によりますと、監督官というのは一年に一遍ずつ事業場を監督する、それだけの数でなければいけないということをはっきり言っているわけです。ところが実際には、監督率はわずかに六・四%。これでは十五年以上かかったって全部の事業場を回り切れるものではない。そうしてまた、しかも実際に監督官が行って監督した結果を見ますと、違反率が六〇%以上になっている。ちっとも減っていないんですね。それから百の事業場に行けば必ず六十の事業場は何かで違反している。あるいは時間外労働を手当も出さずにやらしているとか、女子の深夜業をやらしているとか、あるいは健康診断も全然実施していないとか、要するに、そういったごく初歩的な基準法違反でさえまだまだいっぱいあるわけであります。そうしてまた、監督官が本当にわずかであるけれどもふえておりますけれども、幾らふえても逆に事務の方の職員が減らされておりますから、監督官は今度は監督どころか事務を一生懸命やらなきゃならなくなる。私もかつて基準局長を群馬でやっておりましたけれども、沼田という監督署なんかはわずかに署長以下監督官は二名くらいしかいない。そうすると、あれだけ膨大な地域で、しかも上越新幹線とか関越道路とかあるいは奈良俣ダムとかいう大プロジェクトを抱えていながら、監督官が回り切れない。しかもその中で事務官の仕事もやらされますから、ますますもって監督率わずか六%というふうな低率になっていってしまう。こんなことでいまいろいろ意欲的な話をおっしゃったけれども、ちゃんと仕事ができるかどうか。
 しかも、自治体からも速やかに安定所の職員であるとか監督署の職員をふやしてくれというふうな意見書が、もうすでに二十の県議会あるいは九十の市町村から前から出ているわけでありますね。そういう状況を考えて、せっかくそういうふうな労働行政をこれから真剣にやっていこうというのに、その体制が、まず端的に監督官の例が出ているわけでありますけれども、数がもう圧倒的に少ない。そういう状態でまじめな行政ができるかどうか。ひとつ、この辺、労働大臣どう思いますか。
#46
○国務大臣(初村滝一郎君) いろいろと聞いてみたのでありますが、違反率が六、七割もある。六〇%から七〇%ある。それで、ずっと数字を聞きましたら、書類を確認してでも、ちょっと間違いますと一件になるそうであります。そこで、私は、やはり労働基準監督行政関係の職員については、いろいろ仕事がありますけれども、特に労働災害の防止とか、あるいは労働者の賃金とか、労働時間等の労働条件の確保を図るためには、毎年労働基準監督官の増員が必要ではなかろうかというふうに考えておりますけれども、なかなかこの増員が認められない。そういうことで、私どもは内部の再編成をなるたけ行って、労働災害防止を初めとする労働条件の確保を図るために、局、署、それぞれの役割りとそれから機能分担に創意工夫をして機動力の増強を図るなど、行政推進の効率化に努めるとともに、関係職員の増員等監督機関の充実強化に努めなければならないと思います。
#47
○山田譲君 こういう時世でありますからそうやたらに増員というわけにもいかないとは思いますけれども、それにしてもやっぱりいまお話ししたような情勢でありますから、監督官あるいは安定所の職員ですね。最近失業者がいっぱい出てきている。それに対応する安定所の職員がいない。ですから職業紹介についても親身な相手ができない。それで非常に求職者が怒って、安定所の職員を陰に呼んで刃物で刺したというふうな事件すら起こっているくらいで、やはり安定所とか監督官の数というものは、これはどう考えたって私は足りないというふうに考えざるを得ない。そういうことで非常にやっぱり職員が無理をするわけであります。試みに国家公務員の中で、いわゆる健康診断、国家公務員が健康診断をやるわけですけれども、その結果指導区分ですね、おまえはここが悪いから注意しろと、そういう注意を受けた者をほかの省庁と比較してみますと、歴然とこれが出ているわけです。たとえば結核にしても、全省庁平均は〇・六%ですけれども労働省の場合は一・六%もいる。循環器の故障が、各省庁は平均が四・八%ですが労働省の場合は七・九%、胃の悪い人は、全省庁平均二・四%ですが労働省の場合は三・五%もいる。これは何も労働省だけが特別弱い人間を採用したというふうには思われない。やっぱり安定所とか監督署というふうなところにいて非常な重労働をしているためにこういった病気になる人が多いのじゃないかというふうに考えざるを得ないわけであります。そこら辺どういうふうに思いますか、労働大臣。
#48
○国務大臣(初村滝一郎君) いまお尋ねがありましたとおりに、同じ公務員であって、採用のときには思想的、あらゆる面に関して質実剛健な方々を採用するわけでございますが、それがスタートして途中でそういう、健康診断をした結果非常に他の省庁と比べて倍以上も悪化率があるということは、これはもう聞き捨てならないことでありますから、私としても、執務に相当な無理があるのではなかろうかと考えます。したがって、早速調査した上で善処いたしたいと思います。
#49
○山田譲君 ぜひひとつそうやっていただきたいと思うのです。
 それと同時に、先ほど来のお話の増員の問題も、具体的にひとつ監督署あるいは安定所の中にでも行って実際の仕事を見ていただいて、これは大変だというふうに認識をしていただきたいと思うのです。
 さて、そういう労働行政について、非常にけしからぬ話だと思うのですけれども、去年あたりから労働行政無用論、不要論というふうなやつが出てきている。これは週刊新潮の記事ですからこんなものは余り相手にする必要はないと思うけれども、それにしても「廃止されない『労働基準局』“労働省そのものも不要”」、こういうふうに書いてある。この最後を見ますと、「ひとり労働基準局に限らない。「パンフレットばかり作っている」婦人少年局、「すでに使命は終った」労政局、「地方自治体に任せれば十分」な職業訓練馬、そして、「時代遅れ」の職安局など、労働省全体が見直され」て要らなくなるんじゃないかと、こういう言い方をしているのです。もちろんこれは週刊誌の言うことだから、私は何もこんなものを本気で取り上げるつもりはないけれども、これと符節を合わせたように、日経連の機関紙である日経連タイムス、この社説を見ると一貫してこれと似たようなことを言っているのです。さっきもちょっとお話ありましたけれども、労働行政は指導が行き過ぎだ、そんなもの指導することは要らないんだと、こういうふうな言い方で、最賃制度のやり方もおかしいとか、いろんなことを言って、とにかく労働行政に対していろんなイチャモンをつけている。労働行政がなめられているのじゃないかというふうに私は思わざるを得ないのです。そういう状態の中で、いまさっき、最初に各局長から言っていただいたような重要な労働行政であるにもかかわらず、片方ではこういう論調がのさばって出てきているということについて、私は非常にけしからぬことであると思うのですけれども、労働大臣どう思いますか。
#50
○国務大臣(初村滝一郎君) 私は冒頭に労働行政のあり方についていろいろと申し述べたわけであります。しかしながら、各週刊誌とか、特に日経連タイムス等において、いま先生が申されたような批判的なことがあるということは非常に残念でなりませんけれども、要は、労働行政を余りにも経営者が理解しておらないのではなかろうか、こういうようなところから、やれ指導の行き過ぎだとか監督が厳しいとかというような言葉が出るのではなかろうかと思います。したがって、そういう批判を受ける面もまた私どもにも反省するところがありはしないか、こういうところはやはり謙虚に受けとめて、そして労働行政の周知徹底を図って、なるほど労働省というところはこういうところかなということをさらに知らしめて権威のあるものに促していきたい、かように考えます。
#51
○山田譲君 どちらかというと、労働行政というのは非常にじみな行政ではあるけれども、それだけに監督官なり安定所の職員の苦労というものは並み大抵のものじゃないわけですね。しかも、そういう人たちが苦労の余り、先ほど言いましたように病気がほかの公務員よりもはるかに多くなっている。死亡率も、さっき言いませんでしたけれども、ずっと高いんですよ。そういう状態の中でじみな行政をやっている、こういう労働省の職員たちの親分として今後とも情熱を持ってひとつがんばっていっていただきたいというように思うわけです。
 そこで最後に一つだけ、これは婦人少年局長で結構でありますけれども、お聞きしておきたいけれども、多少古くなりましたが、五十三年の十一月に「労働基準法研究会報告」というものが出されました。とりわけ「(女子関係)」ということで書いてある。その中に、雇用平等法の問題であるとか、あるいは女子については超過勤務の制限も撤廃していいんじゃないかとか、あるいは育児休業の問題であるとか、あるいは深夜業はもう撤廃してもいいんじゃないかとか、危険有害業務の就業制限もこれはもう現実的でなくなっているのじゃないかと、こういうふうなことを研究会報告としていろんな指摘がなされております。結論的に言いますと、現在基準法で言われているところの女子労働者に対する保護規定というふうなものが全体的に現状と合わなくなってきているのでこれをやめるべきであるというふうな、どちらかというとそういう主張であります。もう一つ、男女平等法をつくるということ、この二つをセットにして平等にするからには保護はやめなきゃいかぬと、こういうふうな思想もあるように感じられてならないのですけれども、この辺、婦人少年局長、どうお考えですか。
#52
○政府委員(高橋久子君) 先生が御指摘になりました労働基準法研究会の報告、昭和五十三年の十一月二十日に出されておりますが、この研究会の報告で指摘をされておりますのは、現在の婦人の状況を見ますと、まだ男女の平等ということが確保されていない、したがって、そういうものが不平等であるという場合には裁判に訴えるというような方法をとっているけれども、裁判を行うということは大変時間もかかるし、個人が訴訟を提起するということは大変労を要するところである、したがって、就業の場における性別による差別的な取り扱いを解消していくについては、明文をもって男女差別を禁止して、迅速かつ妥当な解決を図り得る行政上の救済が必要である、こういう指摘があるわけでございます。そして、この指摘にあわせまして、現在婦人にとられておりますいろいろな労働基準法の保護規定につきまして、こういった保護というものは規定された時点から大変時間も経過しているので、現時点において見てみると、婦人が平等に働くという点においていろいろな支障になっている面も見られる。男女平等を確保していくためには、婦人に対してとられているこういった特別扱いというものを見直して、その中で合理的理由のある保護についてはこれを残していく、合理的理由のないものについては解消していくと、こういう御提言があったわけでございます。
 労働省といたしましては、この報告をいただきまして、婦人少年問題審議会、これは労使の代表が入りております三者構成の審議会でございますが、この審議会に御報告をいたしまして、この審議会におきましてはこの報告を勘案しながら検討を進めてきたわけでございますけれども、婦人についての平等の問題を考えていくに当たっては、実際にはどのような姿が平等であるのかということを明らかにしていく必要がある。考えてみますと、男性と女性というものは質的に違っているわけでございますので、こういう質的に異なったものを平等にするという場合には、どの範囲の特別扱いが必要であるのか、そういった特別扱いというものについて、それが適切な範囲であることが必要であるということでございまして、具体的な平等の姿につきまして、いま専門家の方々にお願いをいたしまして、その具体的な平等の姿というものを明らかにするようにお願いをしております。この御報告を三月末までにということでお願いをしておりましたので、いま鋭意専門家の方々が非常に連日のように御審議をいただいているような状況でございまして、私どもは、三月末までは無理といたしましても、近く御結論がいただけるのではなかろうかと期待をしているわけでございます。この具体的な平等の姿が明らかになってまいりましたら、それを踏まえて審議会におきまして男女平等を実質的にどのように確保していくのか。そして、婦人について行われているいろいろな保護措置、こういった特別な措置の取り扱いというものをどのようにやっていくのかということにつきまして御審議をいただき、それを踏まえて労働省として対策を立てていきたい、このように考えているところでございます。
#53
○山田譲君 大変に重大な問題であるだけに、いずれ私はこの問題について詳しく御質問したいと思いますけれども、ひとつおくまでも慎重に対処していただきたい。婦人労働の実態というものは必ずしもこの研究報告に書いてあるようなものでない面も多々あるわけでありますから、そこら辺を踏まえて慎重にやっていただきたいと思います。
 労働関係で最後に、これは大蔵大臣にお伺いしたいのですが、地域別最賃というのがありますね。これが毎年上がるわけです。東京でもって今度多少上がった。三千百八十二円になった。この計算でいきますと、これは大蔵大臣でなくても大蔵省の方で結構ですが、最低賃金にいわゆる税金がかかるようになる。これでいきますと、年間九十五万ばかりのあれになる。最低賃金というのは言うまでもなく一番最低の賃金で、これ以下だったら罰せられるという賃金だけれども、これでもなおかつこれに対して税金がかかるというようなことではどう考えてもちょっとおかしいというふうに思うのですけれども、どなたかこの辺いかがですか。
#54
○政府委員(福田幸弘君) 答えいたします。
 最低賃金がどういう水準であるか、所掌外でわかりませんが、生活保護費というものはこれは非課税というような扱いがございます。しかし、最低賃金というのは別個の観点からの賃金水準の問題でございましょう。課税最低限は二百一万五千円というのが夫婦子二人ですから、その最低賃金だからということで課税になるかならないかというよりも、税制の中では諸控除の組み合わせの中でその課税最低限の水準がいま相当議論になっておりますけれども、国際的には相当高い。過去相当引き上げてきていますので、その種の中の話ではないかと理解しておりますが、急な御質問で、お答えになったかどうかわかりませんが、以上です。
#55
○山田譲君 これはひとつぜひ御検討いただきたいと思います。
 次に、甘味対策の問題で、時間ありませんから、農林大臣にお伺いしたいのですが、総合甘味対策、いろいろ最近問題が多いわけですが、これについてどういうふうに対策を講じておられるか、それをお伺いしたいと思うのです。
 それからもう一つ、砂糖消費税、これはもう大蔵大臣も御承知のとおり、明治三十三年北清事変のときに、その戦費調達というような目的で、一番ぜいたくな砂糖にかけりゃいいということでやられた税金であります。ところが、現在全体で〇・一%ぐらいにしかなってない。しかもその月内はそういうことですから、もはやその使命も終わっているのじゃないか、こういうものをぜひやめていただきたい。そうすれば一キロ何がしの中でもちょうど十六円ばかり税金があるわけですが、その分だけでも砂糖が安くなるという、こういう実態があるわけで、この二つについて農林大臣と大蔵大臣にお伺いしたいと思うのです。
#56
○政府委員(福田幸弘君) お答えいたします。
 砂糖消費税、これは明治三十四年からですから八十一年の歴史を持っているわけで、それなりに定着し、現在の財政状況では非常に貴重な、また安定的な財源で四百三十億ということであります。当初これは北清事変の関係の戦費調達で、酒税の増徴と同時にこれが新設されたわけでありますが、嗜好品課税という意味ではやはり現在もそれとしての意味を持っておりますので、これを廃止するという考えは全くございません。
 その他の異性化糖というような問題がありますが、これは今後どういうふうにこれを扱うかという問題は検討中であります。
#57
○国務大臣(田澤吉郎君) 甘味の現状につきましては、最近一般的に甘味離れの傾向が非常に強うなってまいりました。さらに、国内糖が非常に増産されている状況でございます。反対に輸入糖が非常に輸入の減少の傾向にございます。加えて異性化糖の進出が非常に強い。でございますので、従来のいわゆるメカニズムが大きく変化したと言って差し支えないと思います。加えて、この売り戻し特例がこの三月三十一日で期限切れになるものでございますので、私たちとしては、総合的な糖価安定対策の意味からやはり総合対策を考えようということでこの十九日に糖価安定法の一部改正をこの国会に提出しているという状況でございます。
 また、消費税につきましては、いま大蔵省から御説明がありましたけれども、農林水産省としましては精製糖業界あるいはまたユーザー団体から軽減の要請がこれまたずっと強いのでございますので、私たちとしては、食品加工の原料対策の強化という意味からやはり大蔵省に対してはできるだけこれは軽減してほしいといってとを要請しておるのでございますが、財政再建の現状でございますので、ただいま大蔵省からお答えのとおりでございます。今後私たちはこの点は大蔵省にさらにお願いをしてまいりたい、かように考えております。
#58
○山田譲君 まあキロ当たり二百三十三円、これのうち十六円が消費税になっておる。先ほどの局長の話では……
#59
○委員長(植木光教君) 山田君、時間が参りました。
#60
○山田譲君 はい。
 非常にぶっきらぼうなお返事で全然やめる意思はないというふうなことを言われたけれども、これはこれだけ明らかに、やめれば十六円安くなる、そういうことで物価の観点から見ても企画庁長官にぜひお伺いしたいという気持ちでございます。
 それからもう一つ最後に、申しわけありませんが、甘味の問題に関連して、労使の中で非常にもめて混乱を起こしておるところがあります。要するに甘味をつくっている工場は完全に商事会社が一〇〇%出資しておる。それで、商事会社の何々製造部といった程度の感覚で労使関係がやられるものだから、いつまでたっても当事者能力が使用者側にない、そこで混乱が絶えないというふうな状態にありますけれども、これについて労働省の人のお答えをいただきたいと思います。
#61
○国務大臣(河本敏夫君) まあ何事によらず税金は少ない方がいいと思うのですが、砂糖消費税の場合は、いま御説明がございましたように財源を確保する、こういう観点から続いておるわけでございますから、私も現時点では廃止することはむずかしい、こう思います。
#62
○政府委員(吉本実君) お答え申し上げます。
 製糖産業が、先ほど御指摘のように商社の製造工場と、こういうふうなことも言っておられますが、そういった実態があるかどうかはともかくとしまして、その多くの商社が資本関係にあるということは承知してございます。また、現在、先ほど御指摘のように業界が不況で厳しい環境にあると私どもも大変心配しているわけでございますし、また労使ともこれに対してむずかしい状況の中で何とか打開しているという努力の姿も見られるわけでございます。そういうわけでございますので、そういった中でいろいろと御指摘のような労使紛争が発生するというようなことに対しまして、業界全体ではございませんが、ただいま御指摘のような一部でそういったところもあるということでございます。私どもといたしましても、十分そういった実態を把握するなど努めてまいりたいと思います。
#63
○山田譲君 終わります。(拍手)
#64
○委員長(植木光教君) 以上で山田譲君の一般質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#65
○委員長(植木光教君) 次に、岩上二郎君の一般質疑を行います。岩上君。
#66
○岩上二郎君 現在特に農林漁民においては、冷え切った農村経済の中で冷災害の後遺症を初め、けさの新聞報道に見られるように、牛肉、オレンジ等貿易の自由化に伴う貿易摩擦のしわ寄せ、財政難に伴う農林予算の縮減、そして第二臨調の行方が農業者過保護論を背景にどうなるか、近来にない不安に襲われております。特に、たばこ、養蚕、畜産、果樹、園芸、林業、漁業、全般にわたりかってない厳しい政治不信さえも抱いている現状であります。このような認識の上に立って、具体の問題について二、三お尋ねをいたしたいと思います。
 食糧不足時代に発足しました食管制度も、時代の変化に対応し切れず、たび重なる生産調整等政策転換を続けて、辛うじて食管の根幹だけは維持しているが、農民の期待とうらはらに、すでに生産費所得補償方式さえも、逆ざや解消のため、その都度政府の一方的修正米価に甘んじなければならないところまで追い込まれている現状であります。この空洞化した食管制度を昨年一部改正をしてみたものの、従来の食管制度の延長線での手直しては農民の信頼にこたえられるかどうか、いささか疑問なきにしもあらず、この際新たな方策として、生産、流通、保管の問題を含めて食管制度の抜本的な研究に着手されてはどうか。
 第二問としまして、今後も米の生産調整を計画的に続行されると思いますが、この辺で計画を見直し、むしろ餓死寸前にある栄養不良者を抱えている東南アジア、アフリカ等に目を向け、世界食糧会議の決議を尊重し、さらに応分の無償援助はもちろん、輸出米の枠をいままでよりも大幅に拡大し、海外経済協力のサイドからも開発途上国との平和外交の一端を担う時期ではないだろうか。財政その他いろいろと困難な問題がありますが、政策転換を期待するものであります。
 第三の問題としまして、農林水産省はすでに各省庁に先駆けて、従来の補助金行政を改めて総合メニュー化による地域農政を進めていることは結構でありますが、この際さらに一歩進めて、新たに全国に品目別地域分担指標を作成し、生産技術指導、農林金融、価格政策、災害共済制度、全般にわたり農民の参加の上に、国、県、市町村ぐるみでの地域総合農政を固めてはどうであろうか。
 第四点としまして、特に兼業農家の増大する傾向の中で専業農家育成のためには、すでに諸外国でも実施している責任と分担を伴う契約農業といった制度についての検討が必要であると思うが、どうか。
 また、農林水産省は、農地三法を改正し、中核農家を育成して自立農業経営を進めているが、同時に零細兼業農家を含めた協業、共同集団化方式を田園都市構想の推進とあわせて強力に展開してはどうか。もちろんこのためには、近代的な農業経営や農業の生活条件と相当の時間をかけて農民の意識改造のための農民教育、さら花は政府の誘導政策が先行しなければ失敗するおそれがありますが、相当成功している実例もありますので検討してみる必要があると思います。
 要するに昨今、自営のための農業高校卒業生は年々激減し、他の産業に比べ極端に若手農業者も減少し、嫁飢饉なり、あるいは農業者後継難に直面している中で、日増しに過疎化現象に見舞われている農村に踏みとどまる農民に希望とやる気を与えるためにも、確固たる将来の展望を示す時期ではないであろうかと思います。大臣の御所見と御決意を伺いたい。
#67
○国務大臣(田澤吉郎君) 先生御指摘のように、いま農林水産業を取り巻く環境が非常に厳しゅうございます。国際的に見て、御指摘のように対外経済摩擦に見られるような状況、あるいは中長期的に見て世界の食糧需給は非常に不安定でございます。また国内的には米の過剰、経営規模拡大の渋滞あるいは兼業化、混住化、それから老齢化という問題を抱えているわけでございますが、私たちはこういう中で何としても食糧の安定供給を図らなければなりません。したがいまして、長期の展望に立ちまして、国内で生産できるものは極力国内で賄うという基本に立って、国民の需要の動向に応じて農業の再生産を図って農業生産の向上を図ろう、そうして食糧の維持を、食糧自給力の確保をしていこうというのが私たちの方針でございますけれども、特にいま御指摘の食管制度についてでございますが、去年新たに食管法を改正いたしまして、食管法の内容については先生も御承知のとおり、食管そのものの根幹は維持してございますけれども、特に新しい点といたしましては、一つは基本計画を立てる、もう一つは供給計画を立てることによりまして、基本計画ではどういう種類の作物をどの量必要とするかという生産計画を立てる、またそれにのっとって消費者の好みのものを配給するという形が新しい食管制度の姿でございますので、今後私たちは、これをいま改正したばかりでございますので、これをいま少し定着さして国民になじんでいただく。そしてこの食管法を中心にして今後の食糧管理体制を確立したいと、かように考えておりますので、先生の御提案でございますけれども、ただいまは食管法を新たに変えることはちょっとむずかしいのじゃないだろうかと考えます。
 また、水田利用再編対策についてでございますが、これは御承知のようにいま二期対策を進めております。いままでは水田利用再編対策というのは、ともすれば緊急避難的な考え方でこの対策を農家あるいはまた団体の方々も見てきておったようでございますけれども、最近はこの水田利用再編対策こそまさに新しい農政の窓口なんだ、道なんだという考え方に変わっておりますので、そういう点でこれから水田利用再編対策を中心として新しい農政をつくる時代に入ったのではないだろうかと、こう思います。現に私が現地をいろいろ見てまいりますというと、水田利用再編対策の成果はかなり上がっております。ただしかし、その新しい農業の芽生えはまだ点でございます。私たちはこれから線にし、それを面にして日本の新しい農業を確立してまいりたいと、かように考えておるのでございます。
 さらにそれに関連して、余剰米は、いま毎年計画的に削減をいたしているわけでございますが、確かに財政負担が非常に大きいわけでございます。そこで過剰米として私たちはいまかなり海外に出しているわけでございますけれども、これを計画的にやはり海外に出すといたしますというと、アメリカあるいはタイ等のいわゆる米の輸出国と言われる国との間に非常に大きな問題があろうと思いますので、そういう点もまた十分考えなければいけない、また財政的な負担をも相当してまいらなければならないと、こう思いますので、そういう点は今後十分検討してまいらなければならない課題だと考えます。
 また、兼業農家と専業農家の関係でございますが、私たちは長期の展望に立って専業農家の育成というものを軸にして新しい農業をつくろうといたしているわけでございますが、現状は兼業農家の占める度合いというのは非常に大きいわけでございますので、今後私たちは兼業農家も含めてやはり農業のもろもろの政策を進めてまいらなければならないと、かように考えております。
 さらに、アメリカで進めておりますいわゆる契約農業の問題につきましては、確かに作物によっては契約農業というものを進めることも可能でございますけれども、わが国においては全作物にそれを広げることが果たしてよろしいのかどうかというような点をも含めて、今後は十分検討してまいらなければならないと思うのでございます。
 いずれにいたしましても、私たちは新しい農業を進めるためには、先生御指摘のように経営規模の拡大が必要でございます。あるいはまた、技術の開発、普及というものも必要でございますので、今後そういう点に十分力を入れて農政を進めてまいりたいと考えます。
 特に、教育と農業後継者についてでございますが、最近農家の方々が自分の息子さんを後継者にするために農業高校あるいは大学に入学させる、そのことがむしろ農業離れをつくるという傾向にあるわけでございますので、私は農業高校なり、あるいは農業大学校に入学した、また卒業する者は、必ず厳しい農業を自分が担当するのだという意欲を持った青年が教育されなければならないと思いますので、そういう点では今後農業教育そのものに私は大きくメスを入れていく時代になったのじゃないだろうか。そうして、力強い農業後継者を育成していくことが私は今後の新しい農業をつくるために最も必要なものだと考えますので、そういう点をも配慮しながら今後新しい農政確立のために努力をしたいと考えております。
#68
○岩上二郎君 田澤大臣、どうぞ結構でございます。
 次に、行管庁長官並びに自治大臣にお伺いいたします。
 すでに御承知のように、フランス革命は市民や農民の怒りに端を発した市民革命でありますが、同時に、政府職員のマンネリ化と国費のむだ遣い、政治倫理の乱れ、贈収賄等の頻発によったもので、だれもこんな革命が起きるとは想像もしなかったと言われております。今日の日本に起こっている諸現象を顧みて、他山の石として大いに反省する必要があります。
 そこで、まず五十八年に国債残高百一兆八千億、六十九年には二百十七兆四千億という膨大な国債を抱え、世界経済不況の中で日本財政の危機をどう克服するか、きわめて厳しい段階を迎えています。
 まず、小さな政府を目指し必死に行財政改革に取り組んでおられる長官に心から敬意を表するものでありますが、この際、第二次臨調答申を前にして、このことだけは十分に腹構えとして腰を据えておいてもらいたいと思うことがあります。それは、中央と地方との関係において地方自治団体の重みをどう見るかということであります。つまり憲法条章の趣旨を生かすため、文教とか恩給、年金とか、あるいは一部公共事業等は別としまして、でき得る限り市町村、県に思い切って中央の権限や財源を移譲し、特に自己財源を与えて、民主主義実践の場としての地方自治体をいまこそ育てるべきではないかということであります。そして、そのことが小さな政府の実現への近道ではないであろうかと思うのであります。いまでも実態的に中央集権体制が補助金政策や起債絡みで温存され、地方行政あれども地方自治なしといった感が深いことも否定できません。かつて知事時代、予算時期には各省庁ごとに補助金の行方を追って東京事務所にそれぞれ出城を設けて霞が関に日参した経験から、これで真の自治体とは言い得るかといった批判を抱いていた一人であります。地方にその主体性を与えることなしに、従来の省庁ごとの縦割り行政機構をそのままにして補助金一律カット方式や行政事務の近代化、減量化だけを先行させたままでの行財政改革では、小さな政府実現はおろか、地方分権とか、あるいは地方の時代はかけ声だけに終わるおそれを抱くものであります。しかしながら、明治以来、中央、地方を通ずる補助金行政と深いかかわりを持つ官庁組織という強力な壁が立ちふさがる中で、行政管理庁の組織上の実態から見ても、また各省庁の一つの省にしかすぎない自治省の機能からいっても、果たして国と地方の役割り分担の明確な意識転換ができるかどうか、一抹の不安もありますので、中曽根長官、世耕自治大臣の御決意を伺いたいと思います。
#69
○国務大臣(中曽根康弘君) 岩上さんのお考えに私も原則的に賛成でございます。日本もここまでやってまいりまして、かなり力もついてまいりました。ここまでやってくるについては、日本のいままでの官庁組織や指導方針というものが非常に効き目があったと思いますが、これだけ力がついてまいりますと、従来の中央集権的な考え方で指導や統制で地方を馴致してきたのが、もはや限界に来つつある。ちょうど官業と民業との分界点を新しく模索しているように、中央と地方との仕事の役割りも、もう一回見直すときに来ていると思っております。ただ問題は、地方がそれにたえ得るだけの実力をまた備えていただかなければなりません。
 この間、自治省から給与の発表がございましたが、大都市周辺あるいは大府県においてはラスパイレスがかなり高いようでございます。こういうような点も、やはり長期遠大な計画のもとに自律的にお考え願うポイントではないかと思います。また、人材をみずから多く蓄える必要もございます。そういういろんな点で地方としてもやっていただくことがあると思いますが、原則的には先生のお考えに立って今後の行政改革は行われるべきだと思い、いま臨調の第三部会において鋭意検討しておりますので、その答申を待っておる状態でございます。
#70
○国務大臣(世耕政隆君) 私も、岩上先生の御指摘になったように、小さい行政機構、能率の上がる行政機構で国と地方との役割りの分担をさせながら、地方の分権、活力化を図っていく。つまり、地方の団体が自律的に住民の需要に応ずるりっぱな行政を確立させていくことが、今後のねらいになると思います。ただし、いま行管長官から御指摘がありましたように、地方団体ではまだそこまで受け入れ切れない面も幾らか残っているので、こういう点を整理しながら、御指摘のような地方の活力を育成しながら、そういった面で指導をいたしながら国、地方の分権を明確にしていって、行政の機構をもっと縮小して行財政改革を行っていくべきであると私は念ずるものでございます。また、補助金などに関しても、非常に数が多くて手のつけようがないくらいのときもあるわけでございまして、こういう点ももう少し大きく分類整理して、もっと簡便な、簡潔な機構に徐々に切りかえていくべきであろうと、このような点で今後努力を重ねていく所存でございます。
#71
○委員長(植木光教君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時、委員会を再開し、岩上二郎君の質疑を続けます。
 これにて休憩いたします。
   午前十一時五十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三分開会
#72
○委員長(植木光教君) 予算委員会を再開いたします。
 昭和五十七年度総予算三案を一括して議題とし、午前に引き続き、岩上二郎君の質疑を続けます。岩上君。
#73
○岩上二郎君 中曽根長官にお伺いいたします。
 わが国のインドシナ難民対策につきましては、時宜に応じた政府の施策及び国民の理解と協力によりまして所期の成果をおさめつつあることを評価するものであります。かつて総理は本国会における施政方針演説の中でも「本年一月、多年の懸案であった難民条約が発効いたしました。政府は、これを契機として、人道的立場で難民対策の充実を図る考えであります。」と述べておられます。
 これまでわが国に到着したベトナム難民、いわゆるボートピープルは五千人を超えておりまして、現在約千八百人がわが国に残留していますが、そのほとんどは米国に定住を希望しております。しかし、昨秋以来残念ながら米国を初め各国の難民受け入れがきわめて厳しくなりまして、一時滞在難民の長期滞在化の傾向が日立ってきております。さらに、今後もベトナムからの難民流出は余り減少しない見込みとのことでございますし、今後、一時滞留難民はますます増加する可能性があります。
 従来までは主として民間の善意に頼ってきた一時滞在難民が滞留化の傾向が出て以来、いろいろな意味で民間の処理能力の限界を超える状態になっております。したがって、これまでどおり民間の協力を仰いでいくほかに、国も積極的に一時難民の対策を進めるため、一日も早く担当省庁を定め、難民を受け入れていかなければならないものと考えるわけであります。
 人道上の立場に立って考えるならば、希望する第三国へ定住することのできない難民は最終的にはわが国の地域社会に受け入れ、将来自分の国への安全な帰国が可能になるまで生活さしていくことにあると思います。しかし、現在一時滞在難民の多くは第三国に事実上行くことができないにもかかわらず、また日本にも定住を希望しないという事態を考えるとき、難民対策の困難性と同時に日本民族のヒューマニティーとは一体何かを改めて問われる試練のときを迎えたと思われるのであります。
 これらの事実を踏まえ、行政管理庁では難民対策に関する行政監察を実施しておられると聞きますが、どのように取り組んでいくおつもりか。また、行政機構の大枠の中で難民対策をどのように位置づけるのがよいのか。中曽根長官も平素大変御関心をお持ちになられておるそうでございますので、そのお考えをお伺いいたしたいと思います。
#74
○国務大臣(中曽根康弘君) いわゆる難民というものには二つの種類がございまして、一つは政治的亡命者でございます。これはいわゆる難民条約に該当する方々で、この種の方々は昨年三十六人日本で亡命しております。ポーランド、アフガニスタン、チェコ等でございまして、全員第三国への定住を希望しております。もう一つはベトナム難民と称せられるいわゆるボートピープルの人々でございます。日本に上陸した人は昭和五十年以来五千四百人、うち日本へ定住したのは百三人、一時滞在した者が千七百三十二人、第三国へ行った人が三千七百四十一人、こういうことで、最近日本の上陸の数字は、三月一日に三十八人、三月八日に九人、三月十三日に一人、こういうようにぼちぼち、ぼちぼち入ってきておるわけでございます。
 それで、定住した人を見ますと、アメリカでは二十七万人受け入れておる、カナダでは五万人受け入れている、日本は百一土人と、こういう状態で、なぜこういう事態になっているかわれわれよく検討を要するところでございます。現在、経済摩擦ということが言われておりますけれども、これは一種の人道摩擦になりはしないか。イルカをぶっ殺したというのであれだけ大きな問題になる、鯨をとるというので問題になっていますが、人間をどう処遇するかということはやはり国際間では一番大きな関心の問題であると思っておりました。
 そこで、難民の扱いに関していろいろ調べてみましたが、いまのところわが国においては確とした行政機構がまず確立されていない。何省の所管であるかということがまず明らかでない。いままでは日赤とかあるいは天理教とか立正佼成会とかカリタスジャパンというカトリックの人たちとか、そういう方々に主としてお世話を願っておりましたが、もう限界がきておるわけです。定住センターをつくっておりますけれども、これも必ずしも十分なものではございません。そこで、まず何省がこれを責任を持って所管するかという体系を至急確立する必要があります。これをいま調べております。
 それから、どういうふうに処遇をしたらいいかということがございます。これは政治的亡命者とボートピープルとは扱いが別でございまして、政治的亡命者の場合を考えると、この間ポーラン下の船員が亡命いたしましたが、一体どこへかくまって、収容したらいいのか、その場所がまずないわけです。変なホテルへ泊めれば身分の安全保障上の問題もございますし、外へ泊める費用も実は取っていないんです。そこで、民間の方々が奔走してあの人たちをかくまったりしたわけでございますが、これは国としては大変恥ずかしい状態であると思います。しかるべき身分の安全保障も得るような場所に適切に収容して、希望の国へ送ってあげるという処置を責任を持ってやるべきであると思って、その行政体系もつくるようにいま調査しておるところでございます。
 このように、ボートピープルと難民の問題は比較的関心が薄れておった問題でございますが、これはやはり国際的には非常に大きな影響を持っておる問題でございまして、アメリカでは上院の難民の委員長はケネディ上院議員がやっております。それぐらい人道上の問題にはセンシブルでありますが、日本の場合には余り関心がないんです。これをやはり喚起して、日本の国際的名誉を確立することが行政の非常に重要な場になってきたと考えまして、いま行政管理庁におきまして調査を実施し、勧告を近く実行したいと、こう考えておるわけでございます。
#75
○岩上二郎君 どうぞ積極的なお取り組みをお願いいたしたいと思います。長官、もう結構でございます。
 次に、外務、防衛長官にそれぞれ御質問申し上げたいと思います。
 今日、反核運動あるいは軍縮運動について、以前にも増して世論が高まりつつあります。いよいよ六月に総理が国連軍縮総会で、わが国の総意として、核兵器廃絶を究極的目的とする軍縮を世界に向かってアピールされることについては全面的に支持するものであります。
 これと関連して、平和問題につきまして私見を申し上げて論議したかったのでありますが、本日は総理がおられませんので、後日改めて討議をしてまいりたいと思います。
 昨年、当予算委員会や、平和研究所を設置されてはどうかという私の質問に対し、伊東元外務大臣は、すでに民間でも平和安全保障研究所や国際問題研究所等があるので、しばらく民間研究に任せたい、という答弁がありました。しかし、私の調査によれば、政府の委託費はわずかに五十六年度で、平和・安全保障研究所に防衛庁より二千三百六十万円、国際問題研究所に外務省から一億一千二百三十万円程度であります。それ以外は、広島大学、國士舘大学等公私立大学、日本平和学会での研究が主で、いずれも財源の問題もあり、内容検討が単発的で総合性にも欠けておりますし、職員も不足がち、海外派遣者もほとんどいません。それぞれ研究者の恣意的な判断によるものが多い現状であります。
 ところが、経済、貿易関係の研究はどうなっているかと言えば、戦後何をおいても経済復興を国策として経済優先の道を選択した結果と思われますが、アジア経済研究所では五十六年度事業費補助二十四億四千五百七十三万円のほかに調査委託費として一億二千四百七十三万円。役職員も二百八十三名となっております。また貿易振興会、いわゆるジェトロですが、これは何と百八億三千二百万円、役職員においては国内職員五百九十一名、国外職員六百四十一名で、活発な情報普及及び調査活動を行っている実態であります。まさに現在、貿易摩擦ともなっている経済大国を生んだ源泉とも思われるのであります。
 このことは、単純に比較対照はどうかと思いますが、いままで平和や国防問題の基本的な研究については、内容を広く深く主体的に吟味することもないまま、矛盾の多い憲法や日米安保体制にお任せ、その研究も民間研究所に委託するといった傾向ではなかったかと思うのであります。この問題は、民族の存亡をかけた国家的な、また国際的にきわあて重要な政治的課題であるだけにこのような姿勢では済まされないと思うのでありますが、外務、防衛両大臣に、それぞれ、委託された研究機関の調査結果を踏まえ、平和の認識と今後の主体的取り組みについて御決意を伺いたいと思います。
#76
○説明員(秋山光路君) お答えいたします。
 平和研究所設置のお考えにつきましては、大変貴重な御意見として拝聴いたしました。
 平和研究の重要性につきましては、政府としましても十分認識しておるつもりでございます。先生御案内のとおり、すでに既存の団体がございまして、私どもは、この研究所を一層拡充していくというのが現在の私どもに与えられた急務であると、このように考えておる次第でございます。
#77
○国務大臣(伊藤宗一郎君) 防衛庁は、各界の有識者によります自由な立場からの調査研究の成果を参考とすることはきわめて有意義であると考えております。このような趣旨から、先ほど先生御指摘のように、昭和五十二年度より平和安全保障研究所に対して国際情勢と安全保障に関する調査研究を委託し、防衛庁の業務の運営に役立たせていただいているところでございます。
 先生御指摘のとおり、平和問題、防衛問題は国家存立の基本でもございます。今後とも同調査委託の充実に努力してまいりたいと考えているわけでございますけれども、これまた先生御指摘の財政の問題もございますので、これからのわれわれの努力に対しまして、先生を初め皆様方のなお一層の御支援をお願いを申し上げたいと思います。
#78
○岩上二郎君 官房長官にお願いしたいと思います。
 確かに、軍縮提起あるいは核廃絶を強調することも平和構築の一側面ではございますが、戦争というのはきわめて愚劣で、地球上から人間を抹殺する最大の暴力であることはわかりながらも、軍備の均衡こそ平和の維持につながるという実態も見逃せない事実であります。また、平和は戦争の一形態であり、手段でもあるといった内容を抱えているだけに、軍縮即平和という単純な方程式だけでは結論を導き出せないわけであります。
 むしろ日本外交で最も欠落している民族学、あるいは宗教、あるいは心理学、文化人類学的な立場からの世界的な規模で広範囲な研究、情報や調査活動がすべてに先行しなければならないと思うのであります。
 その意味で、私の提案しております平和研究所の問題は、やはり相当思い切った国の基本の姿勢にもかかわるものであるだけにお願いをしているわけでありますが、外国では平和問題や防衛戦略の研究には、いかに不況といい、あるいはインフレ、失業に悩むといいながらも、国家存続の基本問題としてとらえ、ほとんど国家援助の形で相当の研究がなされているわけであります。
 この際イデオロギーにとらわれず、真の平和とは一体何か、死にもの狂いになってそういう平和問題を構築していかなければならない時期を迎えていると、このように思うのであります。その意味で、新たに平和についての研究体制の充実を図る必要があると思うが、官房長官の率直な御意見をまずお伺いしておきたいと思います。
#79
○国務大臣(宮澤喜一君) この問題については、岩上委員が昨年の春にも御指摘になっておられまして、その速記録を改めまして拝見をいたしました。
 で、気がつきましたことは、この平和という問題を御提起になっておるときに、それを政治の問題、政策の対象としての平和と、そういう問題が一つあるわけでございますが、それであれば、たとえば政府が相互安全保障会議をやっておるようなこと、あるいは各省のやっております行政そのものが、平和というものをいかにして構築し維持するかということをやっておるということにもなるわけでございます。
 もう一つ。しかし、岩上委員の言っていらっしゃいますのは、もっとそのもとの方に、宗教であるとか仏教であるとか、わが国にはわが国の平和のいわば哲学がある、西洋的な平和の系譜とは違う哲学があるだろうということを御指摘になっておることを速記録で気がついたわけですが、そういうことになりますと、そういう哲学に基づいた平和というものを、政府の、国の研究機関は別といたしまして、狭い意味での行政が取り扱うべきかどうかということには非常に私は問題があるであろうと思います。
 そこで、しかし問題はないがしろにできないのだから政府がそういう機構をつくれとおっしゃるのではなくて、そういうものを考える機関にいわば委託をする、あるいは補助をすると、そういうことをやれと言っていらっしゃるのではないかと、こういうことになります。そうしますと、それは非常に私は、やはり意義のある、考えなければならない重大な御提言ではないかと、こういうふうに考えます。
#80
○岩上二郎君 ただいま官房長官の御意見のとおりでありまして、民間研究所はこの体制のままでは、とてもわれわれの期待するような平和外交の展開には役に立たないのではないかと、このような感じも持ちますので、やはり、今後相当むずかしい問題ではあろうと思いますけれども、他の経済関係から出ているいろいろな資料等と対比して見る場合に余りにもお粗末である、したがってこの際、やはり平和問題、防衛問題についての真剣な研究体制を整える必要があるという意味で御提言申し上げておりますので、ぜひひとつ総理に対して強くその私の主張をお伝え願いたいと思います。
 以上で質問を終わります。(拍手)
#81
○委員長(植木光教君) 以上で岩上二郎君の一般質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#82
○委員長(植木光教君) 次に、市川正一君の一般質疑を行います。市川君。
#83
○市川正一君 去る二十一日、広島で二十万人という空前の規模で「82年・平和のためのヒロシマ行動」が行われましたが、広島県選出の国会議員でもある宮澤官房長官はこれをどう受けとめておられるのか、認識をまず伺いたいと思います。
#84
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国の国民の間に、この問題についての関心がこのように高まっておるということにつきまして、それは真摯に受けとめております。
#85
○市川正一君 じゃ具体的に伺いますが、採択された「ヒロシマ一アピール」は四項目を訴えております。それについて伺いますが、第一項は「ヒロシマ・ナガサキの原爆および核実験による被害の恐ろしさ、被爆者の苦しみを世界の人々に知らせること。」とこうなっております。日本政府としてこういう活動に積極的に取り組まれるべきだと思いますが、いかがですか。長官どうですか。
#86
○政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。
 このアピールの第一の点につきましては、従来とも機会あるごとに政府の立場におきましても意向を表明しているところでございます。今後とも機会あるごとにこの趣旨を体して対処いたしたいとかように考えております。
#87
○市川正一君 やっていないですよ。長官、具体的に聞きますが、たとえば今度の国連第二回特別総会で原爆の写真展を行うと、こういう意思はございませんか。外務大臣の代理である宮澤官房長官。
#88
○国務大臣(宮澤喜一君) まことに恐縮でございますが、ただいま外務大臣不在でございますので、事務当局からお答えいたします。
#89
○政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。
 来る六月の第二回国連軍縮特別総会におきまして、お言葉のございましたような写真展を開くことにつきましては、ただいま関係の団体と国連事務当局との間において話し合いが行われていると、かように了解いたしております。
#90
○市川正一君 政府としてはどうか、と言うのです。
#91
○政府委員(門田省三君) お答えいたします。
 この写真展の主催、これを催すということは関係の団体において企画されておりますので、政府といたしましては側面的に御意向が十分反映されるように努力するということで対処いたしております。
#92
○市川正一君 第二項は「核兵器の使用を人道に反する犯罪として禁止する国際協定をすみやかに実現すること。」、この点どうですか。
#93
○国務大臣(宮澤喜一君) 恐らく御質問は、この「ヒロシマ・アピール」の全文を一つ一つお尋ねになっていらっしゃるのだと思います。それで申し上げたいと思いますのは、こういうアピールがまとまったその背景にはいろいろなたくさんの思想の人々がいると思うのでございます。ですから、このできましたアピールをこれはいかぬことだとか、一つ一つを取り上げてどうだとかいうこと、実は余り私としては申し上げたくない。全体としては純粋な動きだと思いますから、余り私そういうことを申し上げない方がいいと思いますけれども、いま市川委員のお立場からお聞きになったこの第二項「核兵器の使用を人道に反する犯罪として禁止する国際協定をすみやかに実現すること。」これだけでございましたら別に反対をする理由はない。しかしこういうことが唱えられますときに、いろいろな思想的背景、いろいろの思惑を持って唱えられることが間々ございますから、これがひとり歩きをするようなことになる場合には、やはりどういうそれが国際的な意味を持つのか、どういう政治的な立場を反映しているのかということは十分に注意をした上で、いい悪いを判断いたさなければならないと思います。
#94
○市川正一君 あなた真摯に受けとめるとこうおっしゃったその前提で私は聞いているわけですから。
 第三項「核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませず、核攻撃を認めない非核地帯を世界各地に広げること。」この点はどうなんですか。
#95
○国務大臣(宮澤喜一君) これにつきましても、このような条件を担保するそれだけの国際的な環境が生まれてこれが可能になればまことに結構なことだと、こういうふうに申し上げるべきだと思います。
#96
○市川正一君 第四項は、「軍縮のための条約をつくり、期限を決めてきびしく実施すること。とりわけ、核兵器の完全禁止を最優先させること。」、こう呼びかけています。この点はどうでしょう。
#97
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国の立場は、核兵器のみならず通常兵器もそうでございますが、とりわけ核兵器について、それをだんだん縮小バランスの上において最終的には廃絶をすると、こういうのがわが国の立場でございますから、同じくそのような国際環境が生まれてそれが実現するということは望ましいことだと、こういうふうに申し上げておきます。
#98
○市川正一君 じゃ長官、ところで、アメリカのレーガン大統領は、こういう核兵器廃絶の運動についてどういう評価と態度をとっているのか御承知でしょうか。
#99
○国務大臣(宮澤喜一君) レーガン大統領自身は、恐らく、個人的にそういうことを言われたことはありませんけれども、世界から核兵器がなくなるようなそういう平和な世界というものを志向しておられるには違いないだろうと私は想像をいたしますが、現実のいわば世界の一つの超大国としてのアメリカは、現在の世界において平和を維持するのは、やはり力の立場から、少なくともそれだけの備えのある立場から平和を維持しなければならないと、こういうふうに考えておられると承知しております。
#100
○市川正一君 そうではないんです。これは、たとえば三月十五日テネシー州議会でレーガン大統領が演説をいたしましたが、いま全米に広がっている核兵器凍結運動に対して、わが国と同盟国を薄氷の上に置くものだ、大統領としてそれを決して許すことはできない、こう言っています。言いかえれば、レーガンは核兵器廃絶運動を露骨に敵視している、こう言って過言ではない。私は率直に言って、先ほど来の長官の誠意のない答弁もこれに通ずるものであると、こう言わざるを得ぬのです。
 しかも重要なことは、今国会のやりとりの中で明らかになったように、鈴木内閣がこのレーガンのいわゆる限定核戦争計画を弁護する態度をとっていることであります。そのことは、いま問題になっている事前協議をめぐる問題と実は一体のものであります。先般本委員会において、同僚議員の片岡委員の質問に対して、特別の事由がある場合は事前協議について国会に報告しないことがある、こう答弁がありました。「特別の事由」とは何なのか、改めて確認をいたしたい。
#101
○政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。
 先般の十一日の予算委員会におきまして櫻内外務大臣から御答弁申し上げました、特別の事由のない限り公表すると申し上げましたのは、御承知のように安保国会におきます岸総理の答弁、これを踏まえて行われたものと承知しておりますが、その場合、大臣が申し上げました特別の事由とは何かということにつきましては、先般理事会におきましても御質問がありまして、その際に御説明したところをもう一度この場で申し上げたいと思いますが、第一点は、現在事前協議の発議がアメリカ側から行われることが予想されるような状況にあるわけでもないところ、全く仮定の事態を想定して、何が特別の事由に該当することとなるかをあらかじめ確定的網羅的に御説明することはできかねるということが第一点でございます。第二点としまして、しかしながらあえて一般論として申し上げれば、事前協議の事実が公表されることにより、米国の軍事機密が直接間接に明らかとなり、わが国自身の安全保障にも重大な影響を与える場合等が特別の事由に該当することとなると考えられる、かかる場合には国益上の見地から、事前協議の事実を国会に報告しないことがあり得るということについては御理解を賜りたいと、こういうことで理事会で御説明申し上げた経緯がございます。
#102
○市川正一君 まことに重大な見解でありますが、具体的に伺います。
 そうしますと、そういう立場は岸・ハーター交換公文で決めた三つの事前協議対象事項のすべてに当てはまるのですか。
#103
○政府委員(栗山尚一君) 従来から申し上げております政府の立場というものは、いま先生御質問の岸・ハーター交換公文に掲げられています事前協議の主題となる三つの項目、すなわち配置における重要な変更、装備における重要な変更それから戦闘作戦行動のための施設区域の使用、この三項目のいずれについても同様の立場であるというふうに承知しております。
#104
○市川正一君 三つとも……。いまでさえしり抜けなのに、よくまあそんなことをぬけぬけと。私は、全く野放しの自由を与えるという、これは重大です。
 もう一つ伺いますが、公表しないことがあるというのは、事前協議があったかなかったか、そういうことも公表しないということなのか、それとも事前協議の有無は公表するが、その内容は公表しないということなのか、どっちなんですか。
#105
○政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。
 冒頭申し上げましたように、この問題につきましては、一般論を離れて申し上げるということはできかねると存じますが、安保国会以来政府が御質問に対してお答え申し上げておりますことは、事前協議がありました場合には原則としてこれを国会に御報告するということでございまして、特別の事由がある場合には御報告することは必ずしも、あらゆる場合に必ず御報告するというわけにはまいらないであろうということを歴代総理が申し上げておるというふうに私は理解しております。
 その場合に、事前協議の有無自体について国会に御報告しないこともあり得るか、あるいは事前協議があったことは御報告するけれども、その内容をしさいにわたって御報告するということがない場合もあり得ると、その両方を含めて政府は申し上げておることというふうに理解しております。
#106
○市川正一君 そんなわけのわからぬ答弁……。事前協議の有無を公表するのか、それとも――そこはひとつはっきりしてください。宮澤長官。私が聞いているのは、公表しないことがあるというのは、事前協議がありなかなかったかについてなのか、それとも内容なのか、どっちなのかはっきり促してくれ、そういうことなんです。
#107
○国務大臣(宮澤喜一君) 全体の問題といたしましては、せんだっても申し上げましたが、これは原則としてやはり国会に御報告をすべきなんだと、しかしいかなる場合も必ずすべてを御報告いたすかどうかということは、これは状況によってそのとおりは必ずしも申し上げられないかもしれぬ、何となればわが国の安全がかかるようなそういう事態のときに事前協議というものは多く行われるわけでございますから、そういうことを考えますと、その場ですべてのことを申し上げることが必ずしも適当でないと政府が判断することがございますかもしれませんと、こういう答弁を申し上げております。したがってその観点から申しますと、協議があったこと自身も場合によってその対象になり得ると私は考えます。
#108
○市川正一君 そうすると、こういうことですか。たとえば核持ち込みについて事前協議があった場合ですね、事前協議があったこと、それ自体も公表しないと、こういうことですか。
#109
○国務大臣(宮澤喜一君) 原則として国会に詳細に御報告するのが本来であると考えております。しかしながら、それがわが国の国の安全にきわめて重大な関係のあるような瞬間において行われました場合には、そのときにすべてを御報告申し上げることができないかもしれない、このように申し上げておるわけです。
#110
○市川正一君 先ほどの外務省が言った特別の事由という場合と、いまの答弁とが食い違ってきますから、後でお聞きしますけれども、いまのお話だと、そうすると、国会も国民も全く何も知らされないままに事態が進んでいくということに相なるわけでありますが、もしそうだとすれば、果たして日本政府が――日本政府は核の持ち込みに対しては常にノーであると、こうおっしゃっている。そうすると、日本政府がノーと答えたのかどうか国会や国民は確認のしようがないじゃないですか。さらに、いままで日本政府は、事前協議は一度もなかったと、こう言い張ってきた。しかしそれ自体もはや信用できなくなるということに相なるじゃないですか。
#111
○国務大臣(宮澤喜一君) まず第一に、先ほど申し上げたつもりでございますけれども、そのときすぐに云々と申し上げましたつもりでございます。それはその瞬間においてわが国の国益がかかっておるという場合に、やや時間がおくれてなら御報告ができるということは、これは十分またあり得ることで、永久に申し上げないと申しておるわけではありませんし、第二に、そのときの国の国益が非常に重大であると考えましたときには、それは何も国会に偽りを申し上げるというような趣旨ではなく、恐らく御理解をいただけるであろうような、そのような事態のもとに一応そういう措置をとることをお認めいただけるのではないかと、こういうふうに考えて申しておることでございます。
#112
○市川正一君 じゃ、それにかみ合って伺いましょう。
 事前協議の有無を公表することがどうして特別の事由になるんですか。
#113
○国務大臣(宮澤喜一君) これは抽象的に、先ほども政府委員が申し上げましたように、お答えすることが非常に困難でございますが、事前協議が行われる三つの場合でございますね、御承知のように。これらは何でもないいわば平時にあり得るものもございますけれども、概して言えば、何か緊急な事態のときに起こりやすいこの三つのケースでございますから、その場合に非常に日本の国の安全がその瞬間にかかっていることがあり得ることでございます。その場合に例外的にしばらく申し上げないことがあるかもしれないということを申しておるだけであって、原則としては御報告をするのが本当だというふうに申し上げております。
#114
○市川正一君 そうしますと、先ほど予算委員会の理事会に報告したという内容にもありますが、国会に報告しない特別の事由として米軍の軍事機密をここに挙げております。そうしますと、米軍の軍事機密というのは一体何なんですか。
#115
○国務大臣(宮澤喜一君) 私が先ほどわが国の安全云々と申し上げましたこととの関連でございますけれども、わが国と米国とは安全保障条約でこのように緊密に結ばれておる。しかもこの事前協議というのは、そういう概してと申しますか、多く緊急の事態のもとに行われることが多いと思われますので、したがいまして、その場合の状況を逐一申し上げる場合に、わが国の安全に差しさわりがあることがあり得るということでありますので、米軍の軍事機密、そのことはわが国の安全と結びつけてやはり考えていくべきものじゃないかと私は思います。
#116
○市川正一君 そうすると、米軍の軍事機密ということについての基準ですね、これは日本政府はアメリカからお聞きになっているんですか。あるいはその基準ということについて日米間で協議をなさったことがあるんですか。向こうの言いなりですか。
#117
○政府委員(松田慶文君) お答え申し上げます。
 米軍の内部におきます機密区分等々につきましては、法的な基礎を持った取り決めがあることは御承知かと思いますが、それらは私どもとして承知しておりますが、個々のある事象が、それが米軍の機密に属するかどうかを日米が協議して決めるという性質のものではなくて、これは米側が法的基準に即し、みずからが一定の段階の機密扱いをする、しないということを決めるべき性質のものでございます。
#118
○市川正一君 そうすると、あなた方が出されたこの文書の中に、米国の軍事機密が云々と、こうあるけれども、これはそうすると機密と判断するのは一体日本とアメリカのどっちなんですか。日本は否定し得るのですか、その場合に。向こうの言いっ放しなんですか、言われっ放しなんですか。長官どうですか。
#119
○政府委員(松田慶文君) まず申し上げますことは、このような事態が現実にあることをただいま想定して私どもは御説明する立場にはございません。あくまでも一般論として申し上げますので、その点は御了解いただきたいのでありますが、先ほど条約局長から御説明いたしました米国の軍事機密が直接、間接に明らかになることとなり、それがわが国の安全保障に重大な影響を与える場合、そのような判断につきましては、当然のことながら、私ども日本政府の判断も当然に加味されるわけであります。
 もしお尋ねが前段の米軍の軍事機密であるかどうかということ、それ自身の認定というふうな御質問でございますれば、それは米側の先ほど申し上げました機密区分によって決定されるもの。ただ、それを明らかにするかどうかが米側の、そしてわが国の全体としての安全保障上の考慮から、場合によっては明らかにし得ない場合もあり得ると、そういう理論的可能性を先ほどから御説明している次第でございます。
#120
○市川正一君 理論じゃないんだよ、同時にまた実態なんですよ。
 そうすると、結局アメリカがこれは機密だというふうに言えば、米軍の軍事機密ということで何も言えなくなってしまうという筋書きじゃないですか。
 そこで伺いますけれども、アメリカの政府部内では、核兵器の海外への持ち込みの場合、これに関するどういう情報なら公開できる、こういう場合は一切秘密扱いだというような基準をアメリカはつくっているのじゃないんですか。
#121
○政府委員(栗山尚一君) 委員の御質問の趣旨、必ずしも私正確に理解したかどうか知りませんが、従来原子力法、いわゆるマクマホン法と呼ばれるものにつきまして、マクマホン法のもとにおきまして、アメリカが一定の核兵器に関する種々の資料、データというものを機密扱い、秘密扱いしておるということは私ども承知しております。
#122
○市川正一君 そういうものじゃないんです。
 委員長、資料を配付さしていただきたいと思います。お願いします。委員の皆様にも……。
   〔資料配付〕
#123
○市川正一君 いまお配りいたしました資料は、これはアメリカの国防総省が出した、核兵器情報の何を秘密にするかについての公式の基準であります。これはハワイの地裁の命令でアメリカの国防総省が提出した公式の基準であります。そして二通りの文書があります。一つは、国防総省と核兵器製造当局の合同基準書です。もう一つ、これが海軍の核兵器秘密区分基準のものであります。両者は完全に一致した内容なので、いまお配りしましたのは海軍の方を、これを翻訳いたしまして、対訳式にわかりやすいように作成いたしました。外務省はこういう基準が存在していることを御存じですか。
#124
○政府委員(松田慶文君) ただいま御配付いただきました資料の三ページ目にございます、米軍の一般的な秘密区分につきまして記述がございます。「アンクラシファイド」「コンフィデンシャル」「シークレット」「トップシークレット」云々というのは、私どもの理解でも、このような機密区分とその表示、その略号であろうかと承知しておりますが、突然の資料を拝見した次第でございますので、とりあえずの感じを申し上げた次第でございます。
#125
○市川正一君 若干私の方からも補足いたしますと、ここでは核兵器情報を公開可能なものと秘密扱いのものとに区分する基準が非常に明確に確立されておるのであります。表紙が二枚ございますけれども、これはこの極秘密文書の通常の形式であります。C−一、C−二というのがいずれも表紙であります。また、表紙に「アンクラシファイド」、秘密解除という横の判が押してございますが、これは先ほど申しましたハワイの地裁の命令で提出するに当たってこの措置をとったものであります。
 わかりやすくするために、大事な部分を対訳方式で作成したのでありますが、ここで秘密とされていますのは、たとえば資料C−四ページ、ここの下段の二の十一の一、「ある施設が核兵器貯蔵所であることを明かすもの。」、またその次のページのC−五、二の十一の二、「施設が核兵器用の貯蔵所であることを明かす情報」云々とあります。
 他方、秘密でないものとして、資料C−五ページ、二の十一の五の一、「地理的区画に関して」、核兵器についての地理的区画に関してなどが挙げられております。
 政府はこういうことを御存じでしたでしょうか。
#126
○政府委員(松田慶文君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、ただいまいただいたばかりの資料でございまして、これを確認するべき状況でございません。
#127
○市川正一君 そうすると、いま初めて見たと、こういうことですね。そしてまた中身はいま知らないと。
 そうすると、続けますが、資料六ページでありますが、C−六、二の十一の五の三でありますが、ここには核持ち込みに関して「地政学的な単位(国、米領地、領土その他米施政下の地域)に関して」とあります。ここで言う国とはたとえば日本であり、米領地とはたとえばグアムであります。すなわち、日本など一国を単位とする、核持ち込みについての情報は秘密とされております。また、米国の軍事機密に危害を与える場合というふうに先ほどありましたが、国会に報告しない特別の事山ということを主張される限り、このアメリカの基準によって確立された日本を単位とする、すなわち国を単位とする核兵器の情報は、国会に全く報告しないでよいということに相なるんですね。つまり、核持ち込みの事前協議というのは一切公表されないということにアメリカの基準からは当然相なるんですが、そういうことをあなた方は想定されておらぬですか。
#128
○国務大臣(宮澤喜一君) それは前段の御議論の最後のところを市川委員が、どういうわけか、正確におとりになっていないのでして、アメリカの軍事機密は全部国会に御報告いたしませんと申し上げておりません。それがわが国の安全に非常に重大な影響があると政府が判断いたしました場合に、場合によりまして申し上げないことがあるかもしれない、しかしそれはきわめて例外的など、こう申し上げておるとおりでございまして、アメリカの軍事機密は何も申し上げないというようなことは前段で御答弁いたしておりません。
#129
○市川正一君 ここに出された文書にそうなっているわけです。外務省がそう答えているわけです。
 続けますが、この基準にはさらに重大な問題があります。資料C−六ページ、二の十一の五の五でありますが、核兵器についての計画や交渉に関しても秘密扱いになっております。ここで言う交渉とは、これはまさしく日米安保条約に基づく事前協議が該当することは明白であります。そうしますと、日本政府の言う米軍の軍事機密を特別の事由とする限りにおいては、核兵器の持ち込みの事前協議も秘密扱いになるわけであります。ノーであろうとイエスであろうと、そういうことになる。こういうことが基準として明示されているのであります。
 そこで私伺いたいんですが、日本政府は核についてはいつでもノーなんだ。ある人が、ノーもあればイエスもあると言って、すぐに宮澤長官が後でカバリングなすったこともあったようですが、そう言ってこられた。ところが実際には、そのことを主権者たる国民も、国権の最高機関である国会も全く確認のしようがないということになってしまうんです。言いかえれば、アメリカがつくり上げた基準によって、それがそのまま日本の国会に報告しなくてもよいという理由づけにこれはなってしまうじゃないですか。とりわけ核持ち込みについては、そのすべてが報告されないという基準に結局この基準書が明示しているということにならないと宮澤長官はお考えでしょうか。
#130
○国務大臣(宮澤喜一君) その問題は、従来から幾たびも本院において御議論になっておりまして、つまりアメリカ政府の基本方針が核の、核兵器の存在有無については一切言わないということであるならば、事前協議というものは成り立ち得ないではないかと、こういう御議論は何度も行われております。それについては政府はたびたびアメリカ側の確認を得て、わが国の国民が核兵器に対して持っておる特殊な感情というものはよく米国側は知っておる、いわばそういう事前協議の制度がつくられておるという意味についてはよく知っておる、それを尊重するということを言っておりますことで、アメリカのそのような、基本的には核の有無について言わないということと事前協議制とが両立をするものであるというふうに政府はしばしば従来から御答弁をしております。
#131
○市川正一君 そこがトリックなんです。わが党は、いま宮澤長官もいみじくも言われたように、この事前協議制というのはもともと虚構なんだということを再三指摘してきましたが、しかしいままでは、それにしてもたてまえとしては、おっしゃっていたように、たとえば六〇年安保国会での岸総理、また七二年国会での佐藤総理、原則として報告するという見解を明らかにしてきた。ところが去年の国会では、状況によっては国会に報告することもあり得る、こういうふうに後退しているんです。そして今国会では、核持ち込みはすべて軍事機密というアメリカの言い分に呼応して、これを国会への報告拒否の理由に使おうと、いましているんですよ。それがせんだっての片岡委員の質問に対する政府の答弁じゃないですか。政府は、こういうアメリカの軍事機密に日本の国会の知る権利が従属されることが許されるとお考えになるか、この点はっきりさせてください。
#132
○国務大臣(宮澤喜一君) 事を明確にしておく必要があると思いますので、三月十一日の本委員会において、政府といたしましては、核の持ち込みにつき事前協議が行われた場合には、国民の重大な関心にもかんがみ、政府としては協議の際に特別の事由のない限り公表することが適当であると考えている旨をお答え申し上げておりまして、これは従来お答え申し上げておりますところと異なっておりません。
#133
○市川正一君 その特別の事由とは何ぞやということで、原点から問いただしているんじゃないですか。そうしてまた戻っていく。だからそれはすりかえですよ。だから、特別の事由というのが、結局先ほど外務省が言ったように米軍の軍事機密ということで全部そこへ逃げ込もうとしているんじゃないですか。ですから、これでは事前協議があったのかなかったのかさえ国会も国民も知ることができない。核隠しが公然と行われることを許すことになるわけであります。この問題は片岡委員からも追及がございましたが、事は国是である非核三原則の根本にかかわる問題であり、また国権の最高機関である国会の権威にもかかわる問題であります。
 私は、きょう示したこのアメリカの海軍また国防総省の文書、あるいは原則として報告という従来の国会答弁を踏まえて、改めて責任ある政府の統一見解を示すことを強く要請いたします。
#134
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど三月十一日の本委員会において申し上げたことを御紹介をいたしましたが、さて、その特別の事由とは何であるかということについて理事会において政府の立場を御説明を申し上げました。そこで、理事会で申し上げましたところは次のとおりでございます。
 まず前段で、あらかじめ確定的、網羅的に特別の事由というものを申し上げることはできない。しかし後段で、一般論として申し上げれば、事前協議の事実が公表されることにより、米国の軍事機密が直接、間接に明らかとなってわが国自身の安全保障にも重大な影響を与える場合などが、これに該当することとなると考えられると、こうお答えを申し上げておりまして、単純に米国の軍事機密云々と申し上げておるのではありません。最終的にはわが国自身の安全保障に重大な影響がある場合と、こう申し上げておりまして、それもきわめて例外的に国益上の見地から事前に申し上げないことがあるかもしれない、その節には御理解を賜りたいと、こう申し上げておる、これが理事会におきまして御説明を申し上げました政府の立場でございます。
#135
○市川正一君 理事会協議で引き続きやっていただくという……
#136
○委員長(植木光教君) 引き続き本問題については理事会で協議をいたします。
#137
○市川正一君 同時に、この基準、まだ外務省は初めてだとおっしゃるんですが、裁判所に提出された公開のものであります。したがって、政府として当然入手できるものでありますので、直ちに取り寄せて、これに基づく政府の責任ある見解もあわせて国会に明らかにしていただきたいと、こう思います。いかがですか。
#138
○政府委員(松田慶文君) お答え申し上げます。
 そのようにいたします。
#139
○市川正一君 次の問題に移りますが、引き続いて宮澤官房長官にお伺いいたします。
 長官は、ロッキード事件をわが国の議会制民主主義にとってどういう位置づけを持つ事件であったとお考えでございましょうか。
#140
○国務大臣(宮澤喜一君) 事件が終局をいたしておりませんので公の立場から論評いたすことは差し控えさしていただきたいと思います。
#141
○市川正一君 そういう無責任な答弁は私はないと思うんですが、国会として、たとえば私ここに参議院の院の決議を持ってまいりましたが、ロッキード事件というのはわが国の国民主権、議会制民主主義の根本にかかわる問題、これが国会としての決議、そして国会の意思であり位置づけてあります。田中角榮元総理は、このロッキード事件で五億円の賄賂を収受したということで起訴され、法廷で裁かれている刑事被告人であり、政治不信を大きく国民の間に招いたという責任は政治家として重大だと思いますが、長官いかがでしょう。
#142
○国務大臣(宮澤喜一君) 事件が係属中で終局しておりませんので、公には論評を差し控えたいと思います。
 なお、田中議員個人の問題、これは田中議員のモラルの問題でございますので私が論評申し上げる限りではございません。
#143
○市川正一君 どうしてそう言葉を濁されるか、国民には理解できない。
 ところで、その田中角榮、形の上では党籍こそありませんけれども、自民党最大派閥の事実上の領袖として、鈴木内閣また自民党に強い影響力を行使しているというのはこれは政界の常識になっていると思いますが、官房長官はそうは思われませんか。
#144
○国務大臣(宮澤喜一君) 長い間の政治経験を積まれたお方でございますから、恐らく尊敬を申し上げている同僚も多数おられるであろうと思います。
#145
○市川正一君 田中氏自身が雑誌の対談で、私は大平内閣、鈴木内閣の別なく全力を挙げて支えてきたし、これからも支えていくと。またこうも言っています。私を自民党でないと言う人はいないし、私もまたわが自民党とやっている、というふうにうそぶいているのでありますが、現に現職閣僚までが目白もうでを行っています。たとえば、きょうここにお見えの渡辺大蔵大臣、ことしの元旦に目白もうでをなすっているんですね。そのほか、櫻内外務大臣、箕輪郵政大臣、世耕自治大臣、小坂運輸大臣、松野国土庁長官。さらに党関係では二階堂幹事長、田中政調会長等々。先日鈴木総理は、党籍がないから影響はないと、こう強弁なさいましたが、とんでもない、鈴木内閣と自民党に大きな影響力を持っていることは明白であります。
 そこで伺いますが、そういう認識は宮澤さん、ございませんでしょうか。
#146
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたとおり、長いキャリアを持たれる政治家でございますから、いろいろ私淑をしておられる同僚は私は少なからずおられるだろうと思っております。
#147
○市川正一君 伺いますけれども、渡辺大蔵大臣、元旦に田中邸にあいさつに行かれていますが、なぜですか。
#148
○国務大臣(渡辺美智雄君) それは個人の問題でございます。ちょうど宮廷へ行きまして、それから党本部でやって、それから官邸でやるんですよ、その祝賀会を。その間一時間半ぐらいあいちゃうのです。で、そのままぶらぶらしていられませんから、そこで田中さんのところへ行ってみたらば、たくさん代議士さんもいっぱいいますから、そこであいさつして、やあやあと言いますともう一遍に百人ぐらい正月のあいさつが済んじゃうんですよ。重宝でもあるし、そういうことで私は行きました。毎年ではないんですが、三、四回行ったことがあります。
#149
○市川正一君 世話にならなかったら予算は組めなかったと、こう東京新聞で言っておられるんでありますが、全く異常な政治の姿であります。
 そこで、世上田中新金脈の問題が出てまいりました。この問題でわが党は先日上田副委員長を団長とする調査団を現地に派遣し、つぶさに実態をつかんでまいりましたが、まず建設省に伺いたい。本委員会でわが党の佐藤謙員が吉原組ですね、建設業法の違反について指摘し、処分を求めましたが、どういう処分を行われましたか。
#150
○政府委員(吉田公二君) お答え申し上げます。
 吉原組に対しましては、北陸自動車道大積パーキングエリア休憩施設の新設工事及び同売店新築工事におきまして東急建設株式会社から一括下請した事実が明らかとなりましたので、建設業法に基づきまして去る三月十七日付をもちまして四月五日より三日間の営業停止処分に付したところでございます。また、同社につきましては、発注官庁でございます建設省といたしまして指名回避要領に基づきまして北陸地方建設局におきまして今年の三月十七日から一ヵ月間指名回避を行ったところでございます。
#151
○市川正一君 いま資料をお配りいたしましたが、一ページの上段の方にこれまで判明した田中系企業のいろんな虚偽申請等の一覧表がございます。私も一々ここではもう紹介はいたしません。問題はこれだけではないんです。続々とあるんですが、まず建設省に伺います。
 新潟市の福田石材株式会社、この会社が昭和五十四年十一月二十八日に建設大臣許可の特定建設業者としての資格申請を行っておりますが、この資格を取る上で経営業務の管理責任者及び専任技術者及び工事実績は不可欠の要因であると思いますが、いかがでしょうか。
#152
○政府委員(吉田公二君) 必要な要件と思います。
#153
○市川正一君 ところが福田石材は、この資料で五ページ上段、ここにございますが、昭和五十四年十一月二十八日に提出した工事実績が全くのうそ、それがばれてその下段にあるように五十六年の十月五日に変更届を出しております。これで資格を取得した時点における工事実績が全くのゼロであったことが明白になったのでありますが、建設省間違いございませんね。
#154
○政府委員(吉田公二君) 私どもが受け取っております申請におきましては、工事経歴は山北町発注の町道工事ほか十八件となっております。(市川正一君資料を示す)
 ただいま書類について確認しましたところ、そのようになっているようでございます。
#155
○市川正一君 そのようにというのはこっちのように。
#156
○政府委員(吉田公二君) 御指摘のように。
#157
○市川正一君 そうすると、資料の三ページ上段の経営業務の管理責任者証明書の奥村啓一、経歴年数満七年というのもこれは実績ゼロなんですから、この福田石材自身が、これもうそということになると思いますが、この点どうですか。
#158
○政府委員(吉田公二君) 私どもの当初の資料によりましては経歴があるというふうに理解しておりましたが、いまの段階ではちょっと調査いたしませんとわかりかねるわけでございます。
#159
○市川正一君 だけれど実績がゼロなのに経歴があるということはないでしょう。
#160
○政府委員(吉田公二君) その福田石材であるか、またそのほかのところで経歴があるか……
#161
○市川正一君 ずっとここにおったんですよ。
#162
○政府委員(吉田公二君) そこら辺も調べてみます。
#163
○市川正一君 次に資料の四ページ上段の技術者証明書ですが、ここで青森土木営業所の相馬九二市、彼の住所は新潟県の西蒲原です。
 建設省に聞きますが、専任技術者は営業所への通勤圏内に居住していなければならないはずですが、どうですか。
#164
○政府委員(吉田公二君) 専任技術者でございますからその工事の現場に行けるところに居住しているべきであります。
#165
○市川正一君 そうすると、そういううその書類で資格を取得した、これに対して建設省はわかっていたはずなんだけれども、どういう処分をしたのですか。
#166
○政府委員(吉田公二君) 現在のところの私どもの受理した内容では専任技術者となってございますが、実態を調査いたした上で考えます。
#167
○市川正一君 一番最後の六ページ、始末書を見てください。あなた方は始末書をとっているんですよ。始末書をとっただけなんです。しかも奇々怪々にもこの始末書の日付は五十四年十一月二十八日でしょう。ところが申請日は同じく五十四年十一月二十八日。二ページにありますよ。こういうばかげたことないんですよ。まさに建設省がこういう虚偽申請の隠蔽に手をかしていると言わざるを得ぬのです。建設大臣、この際こういうような田中系企業の申請書類を全体として洗い直す、そして徹底的に調査するという必要があると思うんですが、いかがですか。
#168
○政府委員(吉田公二君) 同日付で始末書をとったというのは、工事経歴書によりますと、この許可をとる以前に本来建設業法の許可が必要であるような工事の経歴を持っておりますので、こういう許可以前にそういう工事を行っているということは業法に抵触するわけでございますので、その点を厳重に始末書をとって注意をしたということでございますので、同日付であるということは、当然そういうことになるわけでございます。
#169
○市川正一君 建設大臣、いかがですか。
#170
○国務大臣(始関伊平君) 建設業の許可などに、関連いたしまして重大な虚偽事実の記載があるとか、その他欠陥がございます場合には、すでにこの建設業の許可の取り消しをいたしたものもございますし、今後とも状況によりまして厳重に処分してまいりたい、かように存じております。
#171
○市川正一君 洗い直しやってくれますか。
#172
○国務大臣(始関伊平君) 洗い直しの必要のあるものにつきましては洗い直しをいたします。
#173
○市川正一君 もう一つ伺いたいのでありますが、大蔵省主税局見えていますか。――いまの法人税の実効税率は約何%で土地譲渡益金課税は何%でしょうか。
#174
○政府委員(福田幸弘君) お答えいたします。
 法人税の実効税率は、法人住民税、法人事業税を合わせまして五一・五五%であります。さらに法人土地重課の関係でございますが、今回この基準が変わりますけれども、短期の土地譲渡につきましては追加課税をすることにいたしまして譲渡益の二〇%、これは法人住民税の方に影響いたします。三・四六%法人住民税に影響しますので、土地の譲渡益に対する税負担、これは合わせて七五・〇一、すなわち先ほどの五一・五五に二三・四六を加えた七五・〇一と、こういうことになります。
#175
○市川正一君 田中直系企業の一つに長峰地所というのがあるんですが、この長峰地所が長峰団地という造成事業をやっております。
 国土庁に伺いますが、この団地造成の総面積、販売面積、販売区画はいかがでしょう。
#176
○政府委員(小笠原正男君) お答え申し上げます。
 長峰団地の全体の開発規模は約二〇・四ヘクタールでございまして、計画によりますれば区画数で四百九区画を分譲いたしたいということになっておるようであります。そのうち第一期分二百二十五区画の分譲価格、これにつきましてはあらかじめ新潟県知事の確認を受けなければいけないと、こういう制度になっておりまして、昨年六月に国土利用計画法に基づく新潟県知事の確認を終わっておりますが、確認価格一平米当たり三万四千円から五万六百五十円、全体平均で四万四千百三十八円ということに相なっております。
#177
○市川正一君 われわれの資料七ページの数字とほぼ合致しております。
 次に、地域振興整備公団、お見えになっておると思いますが、公団はこの長峰団地を取り囲むような形で、ここに地図もございますが、長岡ニュータウンをいま隣接してつくっておられます。その総面積と一ヘクタール当たりの工事費はいかがでしょう。
#178
○参考人(松田豊三郎君) お答え申し上げます。
 長岡ニュータウンの事業計画の総面積は約一千八十ヘクタールでございまして、その事業費の中におきましては用地費、工事費その他ございますが、お尋ねの工事費だけで申し上げますと約四百九十億円でございます。したがいまして、工事費を総面積で単純に割りますと約五千万弱ということになるわけでございます。
#179
○市川正一君 四千五百万という数字に……。
#180
○参考人(松田豊三郎君) 四千五百万から五千万の間でございます。
#181
○市川正一君 いまお話があったように一ヘクタール当たり約四千五百万から五千万、これがいわば造成費用です。
 ところが、長峰地所はこの売り出しに当たって昭和五十六年四月、新潟県大規模開発行為の適正化対策要綱第七条に基づいて県当局に届け出を出しております。それによりますと、総面積が約二十一ヘクタール、総経費は六十八億六千五百万円、純工事費が四十八億一千万円。したがって一ヘクタール当たりの工事費は約二億三千万円。同じような条件で造成している長岡ニュータウン公団の実に五倍になっているのです。この長峰団地はすでに売り出しに出しておりますが、国土庁は一平米当たり幾らで販売されているか御存じですか。
#182
○政府委員(小笠原正男君) お答え申し上げます。
 長峰団地の第一期分譲計画の中で先ほど申し上げましたものの区画数のうち、昨年末までに約半分ぐらいの区画しか売れていないという報告を受けておりますが、確認価格の範囲内でありますれば、いかような価格で契約が行われてもいいということに相なっておりますので、個々の契約価格については、実際の契約が行われた価格につきましては掌握をいたしておりません。
#183
○市川正一君 まことに申しわけございませんのですが、時間が詰まってまいりまして、せっかくお越しいただきました防衛庁長官には重要質問があるのですが、断念いたしましてお引き取りくださいますように、まことに失礼いたしました。宮澤官房長官もどうぞ、残念でございますが。
 いまの聞き損ねたのだけれども、単価平均して何ぼですって。平均すればどれぐらいになりますか。おたくから来てますでしょうか。
#184
○政府委員(小笠原正男君) 国土利用計画法に基づきまして事前確認を受けました価格、これが実際に販売いたします場合の最高価格でございますが、これが第一期分の中で四万四千百三十八円、平米でございます。
#185
○市川正一君 そうすると、一平米当たり四万四千百三十八円、そして販売面積が十二万七千五百五十六平米ですから、全部売れたとすると、総販売収入は五十六億三千万円になります。ところが、不思議なことに総経費は六十八億六千五百万円、全部売り尽くしても約十二億三千五百万円の赤字になるわけであります。大もうけを得意とする田中系企業としてまことに不可解なんです。何でやというのです。それは、ほとんど同じ場所で同じ条件で先ほどお話があったように、公団の方は一ヘクタール当たり約四千五百万円でしょう。一方長峰団地は約二億三千万円と五倍の経費がかかっておる。秘密のかぎはいわば造成費用です。したがって、長峰団地は総工事費用として四十八億一千万円かかったと県に報告しているけれども、もし公団並みでいくと九億四千五百万円、実際には四十億円も安くでき上がっておるんです。ですから、周辺業者に聞いても、工事費が十億円を上回るようなことは絶対にあり得ないと言っております。つまり工事費が約五倍、四十億も水増しされているということであります。
 このねらいは脱税、そういう疑いまことに濃厚であります。なぜなら、先ほど主税局からお話がありましたように、法人である長峰地所は赤字が出れば法人税を免除される。また土地譲渡益金も出てこない。まさに税金逃れです。どの程度の税金逃れが可能か。先ほどの計数で試算してみますと、総経費は実際には約三十億で済むのに、いまの売り出し価格でも全部売り切れると二十六億三千万円の利益を上げることができます。法人税の実効税率約五一%あるいは土地譲渡益金課税二〇%を掛けますと約十九億払わぬといかぬのです。すなわち、二十六億の利益を上げて十九億の脱税を図る、そのための経費の水増しを図っているという疑いが濃厚であります。これは東京ニューハウス、あの新潟遊園はりの脱税からくりの一環であるというふうに思うのでありますが、渡辺大蔵大臣、長峰地所のこういうやり方について、これはまだこれから売るのですけれども、当然重大な関心を持って情報収集など調査に当たられるべきだと思いますが、いかがでしょう。
#186
○政府委員(福田幸弘君) お答えします。
 先ほど申し上げたのは一般的なことでございまして、租税特別措置法六十三条にありますように、優良宅地の供給に資するものということで条件に該当いたしましたらこれは重課から外れます。いまの件は具体的に承知しておりませんけれども、開発許可を受けた一千平米以上の造成宅地の譲渡であるというふうなことで、また価格も、知事の許可を得た適正価格であるというような条件を満たしておれば、先ほどの重課は関係ない。ということになります。一般の法人税はもちろん課税になります。
#187
○国務大臣(渡辺美智雄君) ただいま聞いたばかりの話でありまして、きわめて専門的な問題でございますから、本当は国税庁から答弁をさせるわけであります。その旨は伝えておきます。
#188
○市川正一君 大臣としては関心をお持ちになって、いろいろ情報収集などは今後も目を光らすと。
#189
○国務大臣(渡辺美智雄君) 関心は持っておりますが、ただ私といたしましては、個別の事件にはあれはよく徹底的に調べるとか、これはいいかげんにやめろとかそういうことは一切言わないんです。
#190
○市川正一君 厳正に。
#191
○国務大臣(渡辺美智雄君) 厳正にやらしてもらいます。
#192
○市川正一君 そうしますと、先ほど一覧表をお渡しいたしました。一ページがそれでありますが、たとえば越後道路サービス、これは先ほどお話があったように処分も出ておりますが、さらに越後交通、吉原組、大石組、そしてまた福田石材等々のこういう虚偽申請、虚偽報告という資格取得で公共事業を大きくひとり占めしているという問題に対して、最近たとえば越山会の一員である、寺泊町に中島甚一郎という町長がいらっしゃいますが、この方も今後越後交通はもう指名しないということを議会で明言されております。建設省としてもこういう越後交通などに対しては指名停止処分をすべきだと思いますが、いかがでしょう。
#193
○政府委員(吉田公二君) 越後交通という会社についてどうかということでございますが、これは新潟県知事の許可に係る建設業者でございまして、具体の問題について新潟県において調査中であるという旨の報告を聞いておりますが、建設省といたしましては、同社が知事の許可業者であることでございますので、知事におきまして業法違反ということで何らかの処分がございましたら適切に、対処するつもりでございます。
#194
○市川正一君 そうしますと、先ほど具体的に私お伺いしました……
#195
○委員長(植木光教君) 市川君、時間が参りました。
#196
○市川正一君 福田石材、これについては専任技術者、工事実績あるいは管理責任者、いずれもうそであるということが判明いたしました。そこで二十九条に基づいて許可取り消し処分をする必要があると思いますが、この点を建設大臣に最後に確認をいたすとともに、私、今日こういう田中問題というのがまさに民主主義の根幹にかかわる重大問題であると。与党議員の多数を擁して行政府の人事をも左右し、さらには司法にもにらみをきかせるような挙動に出ているというのは民主主義のいわば常態、普通のあり方を逸脱した深刻な問題だ……
#197
○委員長(植木光教君) 時間が参っております。
#198
○市川正一君 こう思うんでありますが、私は、そういういわば今日議会制民主主義の根本にかかわる問題として政府が毅然とした態度をとられることを強く要望し主張し、そして福田石材に対する具体的措置を、そのあらわれとしてきっぱりとおとりになることを強く要請して質問を終わりたいと思うんですが、大臣いかがですか。
#199
○政府委員(吉田公二君) ただいまいろいろ御指摘ございましたけれども、具体の問題でございますので具体的に調べたいと思います。
#200
○市川正一君 じゃ詰めますね。(拍手)
#201
○委員長(植木光教君) 以上で市川正一君の一般質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#202
○委員長(植木光教君) 中村鋭一君の一般質疑を行います。中村君。
#203
○中村鋭一君 まず、課税最低限の問題についてちょっとお伺いしたいと思いますが、大蔵省、資料がありましたら日本の平均世帯の課税最低限と欧米先進国の課税最低限の資料の比較をお願い申し上げます。
#204
○政府委員(福田幸弘君) お答えします。
 課税最低限の夫婦、子二人の場合、給与所得者について見ますと、日本がこれは二百一万五千円、アメリカ百六十九万四千円、イギリス九十一万八千円、西ドイツ二百二十五万四千円、フランス二百三十二万三千円ということでございます。
#205
○中村鋭一君 大蔵大臣は、いま指摘のありましたこの欧米先進国と日本の課税最低限について、日本の課税最低限は、勤労階級、一般的に言って低いとお思いですか、それとも非常に高いとお思いですか。
#206
○国務大臣(渡辺美智雄君) 低いとも高いとも思いません。適当なところであると。ただ、五ヵ年間据え置いておるということについては別な感じを持っております。
#207
○中村鋭一君 低いとも高いとも思わないということですけれど、単に数字を比較すると確かに、大蔵大臣いつかテレビでもおっしゃっていたと思うんですけれど、いまは高いとも低いとも思わないということでしたけれど、日本は確かに欧米先進国に比較して比較的低いとおっしゃったように私は記憶しているんです。ということは、租税負担が欧米先進国に比較して軽いというふうに私は発言をされたことがあると理解をしております。ただいま御自身おっしゃいましたように、課税最低限は五十二年以来据え置かれているわけですね。住民税も数年来据え置かれております。そこで、最近の消費者物価は安定はなるほどしております。しておりますけれど、一方で河本経済企画庁長官も可処分所得、勤労階級の、これをふやさないと景気の刺激ができない。のみならず、実際に勤労階級が使えるお金をふやすことによって租税を負担している、税金をたくさん取られているという実感もまたそこにおいて軽減されるわけでございますから、所得税負担は結果において累進的にふえているわけですから、やはり私、所得税の軽減といいますか、減税は何としてもやっていただかなければいけない、こう思いますけれど、この点につきまして大蔵大臣の見解をお伺い申し上げます。
#208
○国務大臣(渡辺美智雄君) できることならば私も減税はやった方がいい、こう思っております。ただ、各国とも非常に所得税は日本よりも三千万円以下ぐらいのところは税額は高くなっております。日本はフランスに次いで先進国の中では低くなっております。したがって、減税の問題というのは結局歳出の問題との関係がございますし、あるいはまたかわり財源との問題の関係もございますから、そういうような全体として見ていかなければならぬことであって、そうは思ってはおりますが、なかなかそれにかわるものがいまのところ見つからないために減税について、私が減税するということを言えない実情にございます。
#209
○中村鋭一君 ということは、もし減税をするに足る財源が大蔵省において見つけられるならば減税はやる、こうおっしゃるわけですね。
#210
○国務大臣(渡辺美智雄君) 減税はやりたいという気持ちはございますが、問題は歳出、歳出でもっと足りないものがあるのかどうか、それから他にかわるべき財源があるのかどうかの問題のほかにもう一つ、現在赤字国債を発行しておるという現況にございますから、赤字国債の発行をなるべく早くやめたい、急に一遍にやめることはできないけれども、せめても五十九年度末までには赤字国債から脱却したいと、この三つの問題が絡み合っておるということであります。
#211
○中村鋭一君 その三つの問題が、なるほど絡み合ってはいるんでしょうけれどね、現実に、たとえば本委員会においてあるいは本会議等において野党がはっきりと、こういう財源がありますから、これを減税に充てればいいじゃないですかということを具体的に提案をすれば、その分は減税に回すということは、それは可能なんじゃないですか。
#212
○国務大臣(渡辺美智雄君) 問題は、その財源が仮につくられるとしても、その財源が減税の財源として果たして適当であるかどうかということもございます。
 たとえば、よく言われる補助貨幣準備金というようなものを財源にどうだと、これは一回限りのごとでありまして、そこで減税を、もしそれを財源に全額使ったと仮定をすると、その次の年には減税はつながって財源を必要とするけれども、片方はそれきりで終わりになりますから、その次に減税をやめるというわけにいかない、したがって、財源の中身にもよりますということを申し上げたわけであります。
#213
○中村鋭一君 いま補助貨幣のことをおっしゃいましたけれども、一回限りだからその次からはこれはもう効かないんだから、それを減税の財源に充てられぬということにもならないと思うんです。やっぱり、勤労大衆の可処分所得をふやしていい暮らしをしたいと、これはもう当然のあれでございますし、望みですし、大臣もできるものならしたいとおっしゃっているんですから、一回限りであったってやればいいと思うんですよ。いまおっしゃいました補助貨幣の回収準備資金ですけれども、これは外国でも、民社党の大内議員の指摘によりますと、これを用意しているのは日本とベルギーだけだそうですね。大蔵省、ちょっとその点御確認願えますか。
#214
○国務大臣(渡辺美智雄君) 私もさように聞いております。
#215
○中村鋭一君 とすれば、これだけたくさん国連加盟国があってですよ、日本とベルギーとたった二国だけ。しかもいま金本位制じゃないわけですね。そのときに、頑固にこの金は用意しておかなければいけないんだということでもないと、こう思うんですね。現に政府並びに与党内でもどうだろうかという相談をしていらっしゃるんじゃないんですか。
#216
○国務大臣(渡辺美智雄君) いま財政は非常に窮迫をいたしておりまして、そうでなくとも国会等でも税収は大丈夫なのかと、思ったとおり出るのかというようなことも言われておりますから、非常に私は心配をいたしております。そういうような段階の中で補助貨幣の回収準備金を優先的に減税に回すのだというようなことはとうていできません。
#217
○中村鋭一君 大蔵大臣は先月の二十七日に、急にやれと言われても困る、勉強の機会が必要だとお述べになったと新聞では報じられておりますね。急にやれと言われても困る、勉強の機会が必要だとおっしゃったことは、ちゃんと勉強をして、急でなければこれは実施するというふうな解釈もできるのじゃないでしょうか。
#218
○国務大臣(渡辺美智雄君) 私は急に補助貨幣の準備金という制度をなくしてしまえと、明治以来これは続いているわけですから、そう言われましても、確かに二カ国ぐらいしかやってないと御指摘もございます。そのとおりだと思いますが、そういう制度の物の考え方ですからね、それを急にここでなくしちゃえと言われましても、いますぐそれをなくしてしまう、そういう制度そのものをなくしてしまうということはちょっと決断できないということを申し上げたわけです。
#219
○中村鋭一君 五十七年度には五百円貨幣も発行されるわけですよね。それで、そのまた新五百円硬貨に見合う金が二億枚流通するといたしますと、およそ一千億円計上しなければいけない。やはりこれは生きて動いている社会ですからね、いま大蔵大臣は明治以来続いている制度ですからとおっしゃいましたけれどもね、旧来の陋習にこだわって進取の気分を失ったら、これは政治は活力を失います。まして減税は国民の要求です。数年間据え置かれている課税最低限。住民税もそうですね。ですから、ここでそういうふうに一応だれもがもう金本位制でもないんだからこの準備金の制度は古いのだということを認めていれば、たとえそれが明治以来続いていたって、現に、何遍も申し上げますけれども、日本とベルギーだけなんです。だから、これは一回限りのことであっても、大胆に百尺竿頭一歩を進めて、思い切ってこれを減税の財源に充ててくださるよう、検討をさらに深めてくださることをお願い申し上げておきたいと思います。
 次に、外国為替資金特別会計についてお伺いいたします。
 これの一般会計への繰り入れですけれども、政府は、五十七年度の予算においての外国為替特別会計の五十六年度におきましての決算上の剰余金六千三百六十億円の中で、二千億円を一般会計に繰り入れることにしていらっしゃる。で、五十七年度の貸借対照表をここに私持っておりますけれども、これを見ますと、五十七年度末予定の積立金三兆八百九十八億円が外国為替等繰越評価損二兆六千三百五十九億円を四千五百三十九億円上回っております。ですから、これを見るとなおその一般会計への繰り入れの余地があるんじゃないか、こう見られるわけですね。さらに五十七年度においてこういうような剰余金が生じた場合、あるいはその生じることが確実となった場合には、それを財源とする減税を行うお気持ちはありませんか。
#220
○国務大臣(渡辺美智雄君) これは非常に為替の変動という問題がございますから、こういうような円安が続くことは好ましくないし、われわれは円高にむしろ努力をしておるので、これはある程度円高になればとんとんと、現在の積み立てがとんとんということになってしまいます。したがって、そういう点からも二千億円を拠出するということがぎりぎりの実は限界と、こう見ておるわけであります。
#221
○中村鋭一君 まあ見解の相違ということかもしれませんが、私が申し上げましたのは、具体的にたとえばですよ、いまの貨幣準備金にいたしましても、外国為替特別会計からの一般会計への繰り入れにいたしましても、大臣、きめ細かく見ていけばですよ、まず念頭に国民の暮らしをよくするんだと、そういう政治家としての情熱があればきめ細かい配慮をしていけば、やってできないことはないんだと、そういうマインドで取り組んでいただきたい、そういう意味で、私は一例、二例としていま申し上げたわけであります。その点ひとつ慎重によろしく御検討くださるようにお願いをしておきたいと思います。
 それから歳出ですけれども、歳入があれば当然ながら歳出があります。したがって、まあお台所を預かる大蔵大臣としては、金の入ってくる道をしっかりと監視して、これは国民の貴重な税金でございますから、それをむらなく公平に皆さんからちょうだいをする、当然であります。しかしまた、使い道についても常に目を光らせている必要があると思います。
 総理府にお伺いいたします。年間の政府の広報予算並びにその内訳ですね、たとえば活字媒体に対する予算は幾ら、テレビに対する予算は幾ら、ラジオに対する予算は幾らで、テレビ番組の主なるものはどういうものがあったか。今年度の予算並びに昨年度実際に使われました予算についてお教え願います。
#222
○政府委員(小野佐千夫君) お答えいたします。
 昭和五十六年度におきまして総理府提供のラジオ番組につきましては二億六千五百万円、テレビ番組につきましては三十九億三千五百万円、それから新聞、週刊誌のスペース購入でございますが、これが三十九億七千八百万円が五十六年度において見込まれる経費でございます。
#223
○中村鋭一君 総額幾らですか、合算いたしますと。
#224
○政府委員(小野佐千夫君) 約八十二億ぐらいになると思います、これだけで。
 それから、昭和五十六年度におきます主な政府広報番組名とその視聴率についてお答えいたします。
 五十六年度において実施いたしました主な番組の視聴率は、「あまから問答」、これはテレビ朝日制作の番組でございますが、視聴率は五十六年年間を通じまして三・五%から〇・五%の間でございます。
#225
○中村鋭一君 この「あまから」というのは毎週何曜日の何時から何時までですか。
#226
○政府委員(小野佐千夫君) これは毎週土曜日の午前十一時十五分から四十五分までの三十分でございます。「日本レポート」、これは日本テレビ制作の番組でございますが、視聴率は六・九%から一・〇%の間でございます。それから「日本のひろば」、これは東京放送制作でございますが、六・六%から二・四%の間でございます。これが主なものでございます。
 それから昭和五十七年度の広報予算でございますが、総額が百三十四億七百万円でございます。媒体別に申し上げますと、テレビ関係が三十八億九千百万円、ラジオが三億六千四百万円、新聞、雑誌等のスペース購入四十三億五千五百万円、その他四十七億九千七百万円でございます。
#227
○中村鋭一君 いま伺いましたけれど、今年度百三十四億七百万円とおっしゃいましたね。大蔵大臣、この政府関係の広報予算に百三十四億余円の予算が組まれておりますが、この予算は、今日これだけ財政再建、行財政改革が言われておりまして、いまおっしゃいましたように、要らぬ金は使わずに済ますのにこしたことはないですね。これはぜひ必要なものですか。妥当な金額とお思いですか。
#228
○国務大臣(渡辺美智雄君) これは政府の広報予算としては私は決して多いと思っておりません。問題は視聴率を高める方法をもっと考える必要がある。したがって工夫はこらさなければなるまい、そう思っています。国民にいろいろな真相、実態を知ってもらうということは大変結構なことでございますから、問題は、視聴率がうんと低いというようなものについてはそれは中身を再検討さしていただきたい、そう思っております。
#229
○中村鋭一君 個人的なことではありますが、私は三十年間テレビ、ラジオの仕事をしてまいりました。現にプロデューサーも長年やってまいりました。民間放送の番組をつくっております制作責任者は、視聴率〇・一%とか〇・五%とか、こんな番組つくっていたら一発で配置転換ですよ。ワンクール三ヵ月でやりまして、そんな視聴率とっていたらスポンサーからお金ちょうだいしてとても職責を果たすことになりません。
 ところがいまお伺いしたら、これは一%だとか〇・五%だとかそういう視聴率なわけですね。じゃ果たして、これ百何十億使って〇・五だとか一%だとかこんな視聴率とっているような番組をつくっているとすれば、これはもう国民の税金のむだ遣い以外の何物でもないと思います。したがって私は、いま大臣おっしゃいましたように、なるほど視聴率を高めるための努力をするのも大事ですけれど、考えてみますと、政府の広報番組をそれはどうつくったってみんな喜んで見やしませんよ。そうそうおもしろいわけがないと私は思いますよ、そうでしょう。それはやっぱりいわゆる娯楽番組がおもしろいに決まっているわけでございますから。とすれば、努力をしても視聴率が上がらないということがはっきりしていれば、むだな投資はやめた方が私はいいと思います。したがって、こういった百数十億というような予算、特にその中でもテレビやラジオに関する予算は思い切ってばっさりとお切りになったらいかがでございますか。
#230
○国務大臣(渡辺美智雄君) まあそういう低いのもあったのかもしれませんが、高いのも、一〇%超えているのもあるんですよ、私の出たのなんか一一%ですから。ですから一概に言えない。私は、したがってその視聴率の低いというのには理由があるわけですから、時間帯あるいは登場人物の問題もあるのかもしらぬ。ですから、これはよく内容を再点検をして、むだにならないようにやらしたい。それはもう御指摘のとおりで、ただ予算があるから使えばいい、そういう筋合いのものじゃありません、私はそう思っています。
#231
○中村鋭一君 それは政府には渡辺大蔵大臣のような名タレントもいらっしゃるわけでございますから、それはそれで結構なんですけれど、ただ私が申し上げたいのは、視聴率がとれない、そういうものに多額の金を使うよりも、もっと別の生きたことに金が使えるはずだと。だから、そういう点やっぱり大蔵省は常にきめの細かいその点においても配慮をしていただきたい。だから、さっきから私が申し上げた補助貨幣の問題にしても、外国為替特別会計にしても、こういうふうに細かく見ていけば減税に回せる財源があるじゃないか。じゃこれを思い切って回そうじゃないか。金の使い道についても確かにおっしゃるように、もうこんなところへ何でもかんでもとにかく予算をつけりゃそれでいいと、縄張り争いだとかメンツだとか、そういうことはひとつやめていただくようにお願いを申し上げておきたいと思います。
 所得税の税率の国際比較、資料をお願いしておきましたが、欧米各国と日本との税率についてお教え願います。
#232
○政府委員(福田幸弘君) 税率という御質問でございますので、税率関連で幾つかの資料がございますので申し上げますが、わが国の所得税のまず最低税率――さっきは課税最低限を申し上げましたから、最初にかかり出します最低税率がどうかと申しますと、日本は一〇%から始まります。アメリカが一二、イギリス三〇、西ドイツ二二、フランスは五でございます。フランスはすべて間接税が重いという前提でお聴きいただけようと思います。
 それから税率ですから、税の刻み方でございますが、これは日本は一九という刻みを、ブラケットを持っております。アメリカが一二、イギリス六、それから西ドイツは曲線で行きますのでこれは数が数えられない、非常に小さくつながっておる。これは算式で出すということになっています。フランスが一二と、こういうことです。
   〔委員長退席、理事井上吉夫君着席〕
 それから最高税率が問題になってまいりますが、最高税率が地方を入れまして日本が九三ということです。アメリカが地方を入れて五五、イギリス六〇、西ドイツ五六、フランス六〇ということであります。で、最高税率が適用される給与収入の水準はアメリカでは二千百六十二万、イギリスが千二百七十九万、西ドイツ二千六百二十万ぐらいからになっています。外国は最高税率が低いとともに、それがかかり出すところも日本は八千七百二十五万でございますから、わが国と比べて相当低い。そういう仕組みになっておる。
 で、日本のカーブと外国のカーブがどこで交差するかということでありますが、アメリカとの間では二千五百十八万のところで日本が追い抜く。西ドイツを二千四百三十万で追い抜く。イギリスを四千二百二十三万で追い抜くというようなことになっております。
 まあいろいろあとございますが、さらにお答え申し上げますけれども、ちょっと御趣旨のところが税率ということでございますから、標準世帯の税負担ということでよろしければお答えを続けますが。
#233
○中村鋭一君 はい。
#234
○政府委員(福田幸弘君) 最近十二月にOECDで発表しました夫婦子二人の製造業で働く平均的労働者というものを、これはOECDが毎年つくっております。これを見ますと、日本の場合は地方税含めまして六・一五%、アメリカ一二・四八、西ドイツ一〇・〇一、イギリス一九・九三、これもやはりその背景には、間接税ウエートがヨーロッパでは高いということでございますので、フランスの場合には、この標準的な労働者の場合は所得税負担はない。しかし、付加価値税を負担しておりますが、計数としては出てきません。
#235
○中村鋭一君 私の手元にあります資料によると、円換算、給与年額三百万、日本の場合は所得税が六万六千円、住民税五万円、合計十一万六千円、アメリカが二十四万八千七百円、イギリスが六十二万四千四百円、西ドイツが三十一万五千八百円。年収五百万でとりますと、日本の租税負担は四十八万九千円、アメリカが七十七万六千円、イギリスが市二十二万四千五百円、西ドイツが七十二万三千二百円、フランスは二十九万六千二百円。フランスは間接税の比率が非常に高こうございますから二十九万六千二百円、こういう数字が出たのだと思いますけれども、この数字を耳にして大蔵大臣はどういう所感をお持ちになりますか。
#236
○国務大臣(渡辺美智雄君) フランスが、所得税は非常に日本より安いわけですから、一体どういうことをやっているのだろうと。日本は間接税は二七か八ぐらいしかシェアがありませんが、フランスは六〇%が間接税のシェアになっている、そういうことです。
 それから、いまのおっしゃった数字を見ると、一千万以下はフランスを除いては日本の方が非常に税金は安くなって、安くという言葉はどうか知らぬが、税金は低くなっております。しかしながら、一千万円あたりを超えるところから非常に加速度的に税率が急カーブで上がるということになりまして、先ほど主税局長が言ったように、三千万円ぐらいのところから日本はもう世界で断然税金の重い国になっているという感じを受けます。
#237
○中村鋭一君 いまいみじくも大蔵大臣が、外国に比を見ない、安いと思わずおっしゃって、いや安いというか低いというかと言い直されましたけれども、確かに、それは誤解をされないようにお願いはしたいのです。日本の税金が私は安いと言うつもりはありませんし、課税最低限が非常に日本の場合高いと言うつもりもありませんけれども、ただいま御指摘の中で、一千万円超の累進税率が異常なカーブで高くなっているという認識においては私も大蔵大臣と全く同様であります。
 資料を見ると、わが国の所得税及び個人住民税の税率ですね、中小所得階層では最低税率、所得税一〇%、個人住民税四%、しかも税率の刻みは所得税においては二%か三%、非常に小刻みになっているわけですね。これはもうだれよりも大臣がよく御存じだと思います。ところが、累促進税率の伸びを見ますと、六百万円超七百万円未満が三〇%、八百万円超一千万円未満が三八%、一千万から一千二百万が四二%で、一千五百万超になりますと五点万の大刻みになって五〇%、二千万円かり三千万円までが五五%、三千万円超大〇%、四千万円超六五%1そして八千万円超は七五%という税負担になっております。
 もう一遍確認いたしますが、大蔵大臣、たとえば八千万円を超える所得階層に七五%という所得税率ですね。当然これに見合って住民税も払わなきゃいけませんけれども、これはやっぱりカーブとして異常に高いとお思いじゃありませんか。
#238
○国務大臣(渡辺美智雄君) 先ほど言ったように非常に、住民税が一三%かかりますから、超過部分だけをとって言えば、八千万が仮に百万ふえたとすれば、そのふえた百万の部分については九十三万円を取られるということになりまして、こういう国保は世界に例がありません。
#239
○中村鋭一君 世界に例がないということは、世界に例がないわけですから日本が異常に急カーブで税率が高いということをお認めになっていらっしゃるわけですね。世界に比を見ない累進税率の急騰であります。
 これを、たとえばいまの八千万円超七五%というのを、思い切って六〇%ぐらいまで下げて、それに見合って中堅所得層の税率の見直しをするお気持ちはございませんか。
#240
○国務大臣(渡辺美智雄君) 私はかねて言っているのですが、先ほども主税局長から言っているように、たとえば給与所得というものを例にとると、アメリカは最高が五〇%。幾らあっても五〇。それから、イギリスが六〇、西ドイツが五六、フランスが六〇ということですから、日本は所得税だけで七五ということになりますね。
 したがって、特に一千万円というものを高額所得者というふうに考え込んじゃっておりますから、そこからがもう急カーブで上がるわけですから、一千万円の人が百万円仮に月給が上がれば、四十四万円は所得税と住民税で取られるわけですから、そのほかに健康保険とかそれからあれがふえるでしょう、特に年金の掛金がふえます。したがって半分ぐらい取られるということになりますから、いま一千万円というとテレビ会社でもディレクタークラスですね。銀行、証券等では課長クラス、そういうことで、一千万円高額所得者で告示義務をつけてやるという、そういう時代と私は時代が違うんじゃないかという気が実はしておるわけなんです。
 したがって、これはやはり何か発想の転換を図っていかなければならない。もうますます所得税のなにがふえまして、どんどんどんどん所得税が六割も七割もということになってしまったら、それで国家を支えるんだということになったら、私は所得税の大減税なんてやろうといったってできない。
 したがって、こういうような点についてはやっぱりみんながたてまえ論でなくて現実論で、私はよく一遍検討をする必要があるんじゃないかと、そういうような感じがしておるわけです。財源の問題との絡み、財政再建との絡みがありますから、急にというわけにはいきませんが、いずれにしてもこのまま放置をしておけば、恐らく国の税収め負担は、いま四割が所得税、三割が法人税ということになっています。七割が直接税です。しかし、法人法人と、法人だけいじめると、イギリスやフランスやドイツのように法人税の税収というものがうんと少なくなっちゃって大体一〇%前後ですから、諸外国は。日本だけ三一%ぐらい。アメリカは一八ですから、もうアメリカも衰えてきました。日本の場合は法人が衰えれば所得税だけが頼りということになってしまう。
 したがって、それらとの見合い、間接税との見合いというようなものも、私は、時代が変わればこれもやはり一遍みんなでどうあるべきかという問題を考えていく必要があると、そう思っております。
#241
○中村鋭一君 非常に本音で言っていただいてありがとうございます。
 確かに一千万円、いま新聞にも一千万円以上は名前が出ますね。これは私はくあい悪いんじゃないかと思いますよ。それだったら一千万円以下も税務署へ行けば全部わかるようにすればいいことでね。
 大体、ちょっとお伺いしますが、一千万円以上の所得がある人を公示するというのは、どういう目的で、いつから始まったのですか。
#242
○政府委員(福田幸弘君) お答えいたしますが、戦後の占領時代に第三者通報制度というので、脱税の通報を受けて確実な課税をしたいというふうなことがアメリカ的に一時入ったわけです。これはやはり国民の中に不信感が出たというようなことでなじまなかった。その後シャウプ勧告を受けまして、ある所得以上は公示すれば、あの人は幾らぐらいだから申告はお互いにチェックされるんだという間接的な効果をねらったのがいまの制度で、いつ導入されたがは、私いま資料を持ってきておりませんが、そういう沿革で入ったと記憶いたしております。
#243
○中村鋭一君 いまのお答えではもう一つよくわからぬですが、要するに一千万円以上お金をもうけたのは世間にこれを知らしめて、あいつは金持ちだということで認識をさせようと、大蔵大臣、そういうことじゃないですかな。ある意味の、金持ちはけしからぬというような考え方もあったんじゃないですか。大蔵大臣はどうお考えですか。
#244
○国務大臣(渡辺美智雄君) けしからぬということがあったかどうか知りませんが、いま局長が言ったように、高額所得者を表に出して、そしてこれでどうだ、まだ脱税しているかと、教えた人には報賞金をやるから、要するに摘発して持っていらっしゃいという占領政策がありまして、その一つの流れとしてあるのじゃないか。したがってそれに対して非常に不快感を持っている人がありますし、逆にそれなら納めた税金の方も一緒に公表してくれという人があるんです。所得幾ら、税額幾ら、それから手取り額幾らと、それならば満足すると。しかし実際は税金で半分以上もなくなっちゃって、七割も取られちゃって、それでけしからぬという声はあっちこっちでたくさん聞きます。
#245
○政府委員(福田幸弘君) 補足説明いたします。
 制度自体は二十五年にできておりまして、当初五十万ということですが、その前歴はそういうことであったと思いますが、現在の一千万は四十六年に設けられてその以降変わっておりません。
#246
○中村鋭一君 一千万月以上の人を公示する、そのことを私はとやかく言っているのじゃなくて、しかしそれも、別に強いて私はやらぬでもいいと思いますし、いま大蔵大臣おっしゃったように、それならば納めた税金もむしろ発表した方が市民は納得がいくと、こう思いますけれど、そうじゃなくて、一千万円という金額ラインの設定がやや実情に合わなくなっているのじゃないかということを私は指摘をしておきたいわけですね。大蔵大臣もおっしゃいましたけれど、私、たまたま長崎の方へ数目前行っておったのですが、あそこへ観光に来る人はほとんど大部分が若い人ですよ。四十代後半から五十代のお父ちゃんは、あの連休に観光地やなんかほとんど行っていませんよ、私は行けないと思います。そうですね、さんざ苦労してやっと会社の部長にもなった。さっきディレクター一千万とおっしゃいましたけれどね、平均して民間放送のディレクターは一千万取っていませんよ、もっと低いです。これは指摘しておきますが、やっと課長になった、部長になった、娘は嫁にやらなきゃいかぬ、息子は大学受験に失敗して、来年はもう一遍医科大学を受けると予備校へ行っている。
   〔理事井上吉夫君退席、委員長着席〕
金のかかる一方のときに、一千万円四二%、これに、三〇%から三五%の控除があるとしましても、住民税も後で言ってくるわけですから、これはもうお父さん方は四苦八苦ですよね。こういう人たちがまさにいま日本の中堅として活躍していることを考えれば、この累進税率の現実に即した手直しというのは喫緊の課題であると思います。大臣からはその方向で検討をするという、しているという御答弁をいただいたとこう解釈しておいてよろしゅうございますね。――よろしくお願い申し上げます。
 それと関連してですけれど、グリーンカード制が実施される、分離課税じゃなく総合課税ということになりますと、いわゆる資産合算課税制度が実施されるということになりますね。そうしますと、一千万円を超す世帯が相当にふえてくるんじゃないかと、こう思いますけれど、これを個別に課税するとか、あるいは現行の一千万円を引き上げる、こういった対策は必要じゃないでしょうか。資産合算課税制度ですね、これを奥さんの収入はやっぱり個別に課税する、それがいいんじゃないかと思うのですが、それについての大臣の御見解。
#247
○国務大臣(渡辺美智雄君) これも私の持論でございまして、奥さんが何らかの不動産収入、その他利子配当あるいは持参金で持ってきた人もあるだろうし、自分で働いて稼いだ人もあるだろうし、そういうものがある限度を超すと要するにだんなさんの方の所得に合算をするという制度に現在なっております。しかしながら、いままでは分離課税というのがありましたからそこで切れちゃったと、今度は総合課税ですから、総合課税でしかも奥さんのそういうような資産所得もだんなさんの方へ課税すると、これはいかにも僕はひどいんじゃないかという気がしておるんです。したがって、これについてやはりグリーンカードの実際の施行ということになるときまでには検討をすべきではないかということは、私国会で何回もいままでも言っております。
#248
○中村鋭一君 ということは大臣、グリーンカードが実施されても分離課税は存続するということですか。
#249
○国務大臣(渡辺美智雄君) そうではなくて、総合課税というのは結構なことです。だから総合課税をやる方法としてはやはりグリーンカードがないと捕捉ができない、したがってグリーンカードの実施も結構です。しかしながら、総合課税をやっている国はアメリカにしても税率は五〇%ということですから、そういうような先進国にならって総合課税するのですから、そうする以上はやっぱり世間並みに考えていく、あるいは二分二乗というような問題をやっている国もありますが、それに近いことを、そういうことも、ただ取る方に都合のいいところだけ世間並みにしちゃって、そのほかのところはもう世間並みじゃないといってもこれはむちゃな話じゃないか。だから、そういう点はやはり総合課税を実行するという段階においてはその整合性というものも考えていかないと、所得税だけに全部しわ寄せが来るということは私はいかがなものかと思っておるわけなんです。
#250
○中村鋭一君 直間比率についてお伺いいたします。
 大蔵省に先ほどから再々お尋ねしておりますが、日本と、たとえばアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、イタリア等の直接税と間接税の比率について資料をお教え願います。
#251
○政府委員(福田幸弘君) お答えします。
 直間比率ということで、直接税、これは所得税、法人税、相続税等が入るわけですが、主として所得税、法人税、これが日本が七二・四、アメリカ九〇・一、これは連邦税です。それからイギリス五九・七、西ドイツ五二・二、フランス四〇・〇ということになります。
#252
○中村鋭一君 フランスが直接税がおよそ四〇%、間接税がおよそ六〇%ですね。日本が五十七年度当初では七二・四と二七・六、たしかそうおっしゃいましたね。これはたとえば、日本とフランスを比べると大分極端な開きがありますけれど、この直間比率の問題について、私は大蔵大臣、もう少しやはり間接税の比率を直接税と接近させて、その方が国民も、昔は松下幸之助の吸っているたばこも、おれの吸っているたばこも同じだけの税金なのかと、そういう考え方もそれはあったかもわかりませんが、いまは時代も変わってきているんですからね、少し間接税の比率を高めて直接税の比率を下げた方がいいんじゃないか。ただ、その場合間接税を導入して直接税はそのままでは困りますから、先ほどから再々、私、質問申し上げておりますように、全体としては思い切った減税をやる、だから直接税はとんと下げる。そのかわり間接税の比率を上げる。結果において減税効果が波及していくというふうな形における直間比率の改定というのはお考えになってもいい時期に来ているのじゃないかと思いますが、その点についての大臣の率直な御意見をお聞かせ願います。
#253
○国務大臣(渡辺美智雄君) かつては日本も、昭和九年から十一年は、間接税が六五のシェアを持っておったのです。それが昭和二十五年には四五になりまして、三十年にはちょっとふえて四八、四十年ごろまでは――大体二十五年から四十年の高度経済成長のころですね、そのころまでには大体四五から四〇の間。それがだんだんだんだん、間接税は余りいじらないというようなことで下がってきました。これは一方、所得税とか法人税が好景気に支えられてふえてきたという関係もあるでしょう。したがって下がってきまして二七・六。この趨勢でいくと、大体二五とか、二三とかということになって、直接税、つまり、直接税というのは所得税ですよ、主たるものは。所得税と法人税。これが日本の財政を支えるということになります。したがって、そのままでは、要するに財政支出はもう切ると言っても限界があるわけですから、そいつを支えているのですから、直接税でもう七割も支えて、これが八割五分も支えるということになれば、貴重な財源ですから、そいつ、手をつけるわけにいかない、どれがどうしたって。ですから、切る方にも限界があるということになれば、直接税が、特にその中でも所得税が重過ぎちゃって、もう本当に働く気がしないというようなことになっても、これも勤労意欲にもかなり影響がある、私はそう思うのです、実際の話が。したがって、これはじゃ法人税取っちゃえというやり方もあります。これも余り過激なことをやると、たとえばアメリカですら法人税のシェアは一八・六に下がっちゃった。それから、イギリスでは八%、西ドイツでは六・八、フランスですら一〇・三。日本は三一%いまもう法人税持っているわけですからね。企業にバイタリティーがあるから三割持っているわけですよ。これが企業が落ちぶれていけば、結局所得税に全部がかかってくる。そういうことは困る。したがって、そういう現実的な路線の上に立って、税の問題は考えていく必要があるというときに、まあイギリスでも西ドイツでも大体四〇から四七、フランスの六〇はちょっときつ過ぎますが、かつて日本もずっとそうだったわけですから、二十五年から昭和四十五年ごろまで。間接税が重くて国民が苦しんだという話も聞いたこともない。したがって、私は、これは一挙にできるかどうかは知りませんけれども、まずは将来の課題としては、結局少しは税金を納めるということも私はいいことじゃないかという気がするのですよ。現実にビールの値上げもせざるを得なくて国民にお願いしたのですが、ビール飲みながら怒って飲んでいる人も余り見たことはありませんし、確かに砂糖にかけるのはけしからぬと言うけれども、キロ十六円という砂糖で四百数十億円というお金が入っておることも事実で、砂糖の税金で苦しんだという話も余り聞かない。そういうような観点から、たとえばこれは洋服なんかもかかっていませんわね、これ。三十万とか何十万といったって、洋服にじゃ仮に三千円とか五千円とか税金がかったら、洋服買えなくなっちゃったというようなことが、一体あっていいのかどうか。あるはずがないのじゃないかという気もしますので、これは将来の問題。とりあえずは、私は、歳出カットに最大の努力をする。その後の話は国会で決めることですから、これはしょせんはもう国会で決まらなければ法律はできないわけですから。衆議院だけでもだめ、参議院だけでもだめ。衆参両院の国会で法律が成立するわけですから。そこで、私は、そういう空気が両院にできれば、常識的な方に動くのではないだろうかと思っております。
#254
○中村鋭一君 ただいま衆議院だけではだめと言っていただいたので、非常にありがたい次第でございます。
 この税制の中期答申で「広く消費に着目する間接税については、税負担配分の逆進性や物価に対する影響等の観点からの批判があることは事実であるが、これらについては、適切な措置を講ずることによって、その難点を克服できると考える。」このように中期答申では言っているわけですね。
 大蔵の事務当局にお伺いいたしますが、この「難点を克服する」、この難点ほどのようなものであると理解をしていらっしゃいますか。
#255
○政府委員(福田幸弘君) お答えします。
 広く消費に着目する間接税の場合、難点としては逆進性ということと物価、それから転嫁の問題もございますが、そういうことが難点であろうと思います。
 これに適切な措置を講ずるということが何を意味するかでございますが、逆進性ということは、これは考え方でしょうが、所得に対しては逆進ということは言えます。しかし、消費に対してはそうではないということも言えるわけで、担税力が所得だけか、それとも消費の方に求めてもいいかという議論はございます。いずれにしましても、所得に対しては逆進といういままでの考えございますので、これをどうするかは生活必需品、この範囲はいろいろありますけれども、これを外していく。これはヨーロッパの付加価値税ではいろいろ扱いが、課税している国もありますし、外している国もある。それから逆進の問題の対応策としては、複数税率を持っておる国もあるわけですから、そういうこともできます。これがしかし適当かという問題は議論ございます。
 それから物価に対する問題としましては、これは便乗値上げにならないようにということを監視する必要があるということでございます。それで、これは一回限りの物価論でありますけれども、そこで物価がまたその税率だけ上がらないと転嫁しないわけですから、転嫁の形で物価として税金を納めるわけですから、これはやはり物価がその分税金分として上がるというのは当然のことですが、便乗値上げは避けるべきであるということであろうと思います。
 転嫁の方は、それが確実に転嫁するような仕組みを考えるということがポイントであろうと思います。
 また、さきの逆進の問題は、財政の歳出の方でやはり下に厚い施策をしていくということが対応策の一つであろうかと思います。
 以上のようなことでございます。
#256
○中村鋭一君 大蔵大臣、ちょっと確認をしておきたいのですが、直税が七割にも八割にもなる。これを急にばっとばっさりカットするわけにいかない。これをそのまま置いておいて間接税を導入いたしますとこれは増税になりますから、そういうことは絶対なさいませんね。ちょっと確認をしておきたい。
#257
○国務大臣(渡辺美智雄君) これは新税はつくらないということですから、いま動かすということじゃありませんよ。ありませんけれども、将来の問題として、直接税だけで財政負担をみんな持てと言われても、とてもそれはできないでしょう。したがって、仮に大幅な所得税減税をやるということになれば、他に財源を求めなければ、これは言うべくして私はむずかしい問題ではないかと。したがって、全然別にそういうものを、間接税をうんと大幅にふやすということは考えておりません。
#258
○中村鋭一君 税の負担の公平の原則、これはもうだれもがいつも口にすることですね。
 具体的にお伺いいたしますが、医師の優遇税制、これはどういう目的で昭和何年度にこの特例法が設けられたのでしょうか。
#259
○政府委員(福田幸弘君) お答えします。
 この制度は昭和二十九年に設けられたわけですが、その当時診療報酬水準が不十分であるというようなこともございまして、それを税の方で配慮するということで、必要経費を一律に七二%とするというのが法制化されたわけです。昭和二十六年の診療報酬の改定の際にもこの議論がその前にございまして、社会保険医の生計費を一般の勤労者との比較で、どのくらい格差を設けるべきかというような問題も議論されて、先ほど申しました単価の議論があって、予算的にそれがなかなか措置できないというようなことから、社会保険診療報酬の所得率というところでこれを三〇から二五程度ということで取り扱ったのを二十九年に法制化したという経緯がございます。
#260
○中村鋭一君 大蔵大臣が厚生大臣のときに武見太郎さんとけんかをされた。われわれ国民はもう大喝采をこれに対して送りました。五十四年度に改正がありまして、二千五百万円以下は保険診療報酬の七二%、二千五百万円超三千万円以下が七〇%、以下六二、五七、五二、こうなっているわけですけれども、医師の経費率の実態を見ますと、平均の実際の経費率、内科五二%、外科五五%・産婦人科六〇%、私はこれでもまだ経費率見過ぎだぐらい思っているのですよ。ですから、税負担の公平の原則から考えても、なぜお医者さんが、開業医の方が二千五百万円まで七二%の経費率を認められなければならぬのか、国民の率直な疑問だと思います。したがって、五十四年度の税制改正に次いで、比較的近い機会に再度この税率を改定なさるおつもりはございませんか。
#261
○国務大臣(渡辺美智雄君) これは私は二つ考えを持っておりまして、一つは不公平だという考え方、一つはこの制度を置いたのでは医療が非常に荒廃するのではないかという考え方。この理由は、経費がかからなくてもかかったことにして七二見るというわけですから、したがって百円で七割の経費をかけて七割見るのならいいけれども、四割でも七割、三割でも七割、架空請求しても、一つもかからないです、これはペンとインク代だけですから。それでも七割収入の経費に見るということになれば、みんながどうして経費をうんと少なくしちゃうかと、ゾロゾロ薬品の横行というようなことが今度は逆に患者の健康、長い目で見るとそういうところに影響が出てくるという点で私は言ったわけです。かかった経費は認める、かからない経費は認めない、あたりまえじゃないのかと、それだけでしかられたわけですが、私としては本当はこれは全廃したかった。
 しかし、問題は一つありまして、要するに医業といえども事業である、事業である以上は合理的な経営をやって悪いということはないじゃないかという理屈が一つあるわけなんです。その理由は、要するに町の魚屋さんでも八百屋さんでも、みんな有限会社とかなんとかということで、結局経費はきちんと、そのかわりかかっただけしか見ないで結構ですよと、そのかわり働いている人には報酬を分けて所得の分散をやっているじゃないかと、医者は一人じゃなかなかできないのだと、開業医で奥さんも娘さんも手伝っているという場合がいっぱいある、そういうときにわれわれはそういうことができないという訴えがあるわけです。これは厚生省の方の関係の法律を直してもらわなければならない、いわゆる一人法人制の問題ですね。
 これは、私は同情いたしまして、それで、そういうようなことと長いいままでの三十年の歴史ということで、余り理想的なことを言ったのではこれは改正ができない。そこで、妥協の産物と言ってはなんでございますが、いずれにしてもこれはできた。しかし画期的なことではあるのですよ、何十年間、当分の間続いた制度ですから。それを直して、いま大体五千万円、開業医の標準どころになると四千万から五千万なんですよ、いま売り上げ。売り上げと言っちゃしかられますが、受取診療報酬。ですから、標準以上は大体実態に近づいたということを言えるわけです。したがって、今後これをいじるとすれば、要するに医療法の改正――医療法かな、あれは。要するに医療法人の法律ですね、そういうようなものの改正との絡みができれば、私はもっと合理的で実態に即したものができるのじゃないかと考えております。
#262
○中村鋭一君 それは世間には本当に、私も友人に医者はたくさんおりますけれども、まじめなのがおりまして、ニュータウンなんかへ、まだ患者さんもいないのに高い金を借りて入ってぴいぴい言っている医者もたくさんいるわけですから、そういうお医者さんに医療にしっかりやって従事していただくためにも、それはこういう優遇税制が私はあったっていいと思いますけれども、いま大蔵大臣もおっしゃったように、大体四千万円ぐらいに平均なっているわけですよ。だったら、これ思い切って七二%を四千万ぐらいまで上げて、そのかわり四千五百万以上ぐらいをもっと小刻みに控除率を低くしていくというような考え方もあるのじゃないか。これはできませんか。――できませんか。じゃ大臣、どうすればいいですか。私はこれはできると思うのですけれども。
#263
○国務大臣(渡辺美智雄君) それは四千万円まで引き上げちゃったら大減税になっちゃいますよ。四千万円まで七二にしろという話でしょう。いま七〇とか六二%控除を七二%控除にしろということになったら、そんなに経費がかっていないんだから架空経費を認めちゃうという話になりますから、大減税になるからそれはだめです。
#264
○中村鋭一君 そしたら訂正いたします。これ、だから四千万円にしないで、だから二千五百万以上をもっと下げればいいわけですよ、経費率を。それで、ひとつぜひお願いいたします。
 時間がありませんので先急ぎますが、中小企業の承継税制について民社党の春日顧問が非常に思い切った提言をなさっておりますが、これは承知しておられますか。
#265
○国務大臣(渡辺美智雄君) 承知しております。
#266
○中村鋭一君 これについて、ひとつ思い切った立法措置を講じて――こういうことなんですね。「個人企業の事業用の土地及び法人企業の「取引相場のない株式」に対し、その事業用の土地又はその取引相場のない株式の発行会社の土地の時価のうち当該土地の取得価額又は帳簿価額を超える部分に対応する相続税について、その納税を猶予し、次の相続まで又は申告期限後二十年間その事業を継続した場合はその納税猶予税額は免除することとしよう」、これが目的であります。これについて大蔵大臣はどのようにお考えでございますか。
#267
○国務大臣(渡辺美智雄君) この発想は、農地からきた発想だと思うのです。農地は、ともかくそういうようなことで非常に軽減措置を図っておる。しかし、これは農地の細分化を避けたり、それから実際、農地というのは収益力がないわけですから、確かにいま地価が高くなっているから、壊廃すればそれは高い値段になるでしょうが、現実には収益力がない。振興地帯では自由に壊廃はできないし、売買もできないと。私の物であって私の物でないというような点から、そういうふうな特別な扱いをやっているわけです。ただ、それが要するに、大都会の農地まで実際は壊廃自由、届け出だけでできるというところまで恩典がいっているものですから、問題はそこにあるわけですよ。
 ですから、それならばおれたちの工場についてもそれを認めろというお話なんですが、それは直すべきとしたら別な方を直すべきであって、やはり農地と事業用の資産と全く同じにするということはできません。できませんが、一つだけ理のある、理のあると言っても、私が賛同できるところは、株の問題のときに、要するに普通は上場会社の株等は実際は値段がついていると。時価評価すれば含み資産があるからもっと金額張るかもしれない、会社解散しちゃってなにするような場合は、赤字会社のときは。しかしながら市場の価格で安く評価されている。自分たちの方は実態の時価評価をされるというところに対する不満があるわけです。だから事業場だけは何とかしろということなんですが、この問題は全く農地と同じにはできません。できませんけれども、何かうまい工夫は少しないか評価その他の点で、ということで研究はいたしておるつもりです。
#268
○中村鋭一君 これは民社党の政策審議会で、研究会等も設けまして非常にいい案ができておりますから、これをひとつ参考にしていただいて、中小企業の承継者の皆さんが安心して親の代を継ぐことができるように税制をひとつぜひお考えいただくようにお願いをしておきたいと思います。
 大蔵大臣は、クロヨン、トーゴーサンピンという言葉御承知ですか。
#269
○国務大臣(渡辺美智雄君) 聞いております。聞いておりますが、実態は私は必ずしもそうではないと思います。
#270
○中村鋭一君 このトーゴーサンピン、クロヨンという言葉はどういうことを意味しているのですか。
#271
○政府委員(吉田哲朗君) お答え申し上げます。
 トーゴーサンピンとかクロヨンという言葉がございますけれども、俗に所得者間の税負担の不公平をあらわす言葉として言われているというふうに考えております。ただ、トーゴーサンとかクロヨンと申しましても、それが具体的にどういう意味を持って言われているかについてはさまざまであろうかと思います。
 たとえば、申告すべきであるのに無申告になっている者がいるではないかというとらえ方もございますし、あるいは申告しておっても、その所得の申告水準が適正かどうかというようなことを問題にする者もあります。また各種所得間の、たとえばその所得の伸び率の差に着目するような意見もございます。あるいはまた、暮らし向きなんかから見まして所得が高いと思われるのに低い、もっと生活がいいのに税金を納めてないという、そういう感覚のところもございますが、いずれにしても私どもの考えとしましては、トーゴーサンとかクロヨンという言葉は非常にカテゴリーでもって納税者を一からげにして論評するような意見でございまして、そういう点でいろいろ国民の納税意識にも影響あろうかと思いますし、やはり実態に即した論評が下されてしかるべきものであろうというふうに考えております。
#272
○中村鋭一君 五十五年の納税者比率、給与所得者八三%、事業所得者三七・五%、農業所得者九・八%ですね。こういう数字を見ても、やっぱりクロヨンとかいうような言い方は、主として給与所得者から税金の捕捉率についてばらつきがあるのじゃないか、率直な国民世論の反映がこういう言葉になってあらわれているのじゃないかと思います。
 五十七年度から児童手当の所得制限、自営業者は三百九十一万、サラリーマンは五百六十万円となさいましたね。これによってサラリーマンと自営業者の支給率がほぼ八割にそろえられた、こういうことなんですが、これはどうなんでしょう。国税庁、いま言った税徴収の不公平を国みずからが苦し紛れに認めていることじゃないのですか。
#273
○国務大臣(渡辺美智雄君) それは違うんです。
#274
○中村鋭一君 違いますか。
#275
○国務大臣(渡辺美智雄君) 違います。
 それは、要するに児童手当を私はうんとずっと下げて、本当にボーダーライン層を二百五十万円ぐらいのところにしたらいいじゃないかと私が提唱したわけですから、大蔵大臣で。それでどうだということを言ったところが、そうなると給与所得者の方はもらえる人が十何%しかなくなってしまう、現在よりも減っちゃって。自営業者の方は半分ぐらいもらえるというのですね。半分ぐらい、それでも。そうすると、自営業者の方は掛金掛けていない。そうすると、片っ方の給与所得者の方は事業主が掛金を掛けてますから、そんな制度なくしちゃったらいいじゃないかという話が出てくる。自分たちの従業員のためだと思って掛金掛けているのに、それがみんな農村に行っちまう、そんなばかな話があるか、この制度自体が崩壊しちゃうというようなこともありまして、そこで所得制限をある程度しなきゃならない、支給率の点についても大体同じような八割ぐらいの支給率になるというような点から考え出されたものでございます。したがって、どちらもある程度格差をつけると支給率が大体同じぐらいになるということにしたもので、それは税金の面から出たものではありません。
#276
○中村鋭一君 ニュージャパン社長の横井英樹氏は雪谷税務署に税の申告をしておりますけれども、確認願います。ここ十年来横井英樹社長の所得は年収一千万を超えて申告はありましたでしょうか。
#277
○政府委員(吉田哲朗君) 私ども部内の簿書で確認したところによりますと、過去五年間公示されてないということは事実でございます。そういう点につきましては、正確なところはもうひとつちょっとわかりかねますが、おおむね各年公示されておったのではないかというふうに考えております。
#278
○中村鋭一君 ここに私は、興信所並びに秘密探偵社等が調べた横井社長の不動産目録、財産目録ですね、持っておりますけれども、こんなにたくさんあるのですよ。
 これを見ますと、たとえば箱根あたりの山林でも、地価の公示で三億六千万円とか一億六千万、四億三千五百万、みんなこれ横井英樹名義で買っているわけなんですね。それから、異性の友人のためにといいますか、異性の友人が現在居住しております屋敷が土地だけでおよそ六億円、それからいま一人の異性の友人が住んでおりますマンションが時価およそ八千万ですね。したがって、この横井ファミリー全体で一千億円を超えるという財産形成をしている。
 これは、ここに会社等たくさん登記してありますからわかるのですけれども、それからまた横井社長は山科精工という会社の役員であります。副社長の給料がおよそ百万ですね。横井社長は会長ですから、副社長より安いということはないと思うのですよ。そうすると、これ、ほかは赤字会社と言っております。給与は取っておりませんと言っていますけれど、山科精工だけからでも年収およそ一千二百万。山科精工の株を五百五十三万株所有しております。およそこれ持ち株比率は三三%。三年来連続して山科精工は一割の配当をしております。ということは、その配当だけでも年に二千七百万ぐらいあるわけですね。これは世間だれが見ても、横井社長がこれだけの不動産を持ち、動産を持ち、株の配当だけでも二千七百万あり、はっきりしている給与だけでも一千二百万ぐらいあるだろうという推測がつくだろうに、何で国税庁はこれまで、いま捧読みにおっしゃいましたけれども、ここ五年間一千万円以下でございました、そう言えるのですか。
 なぜもっと国税庁は、国民の税負担の公平の原則、不公平に税金を徴収されているのじゃないかという不満に対して、そういった不満にこたえるためにも、そんな目の細かい網で取りやすいところからばっさり取るというのじゃなくて、大きな網でそういう大魚はきっちりとしぼり上げてもらいたい。それについての御見解をお願い申し上げます。何をしておられたんですか。
#279
○政府委員(吉田哲朗君) 税務行政において課税の公正を保っていくべきであるということは、先生御指摘のとおりでございます。
 個別事案につきましては、ここで具体的答弁をお許しいただきたいと思いますが、ただ、一言申し上げておきたいのは、公示されないということをもって年収が一千万円以下ということにはならないわけでございます。御承知のように、たとえば株式配当の収入でございますと、たとえばその株式の元本を取得するのに要した負債の利子というもの、これは控除できるわけでございますし、あるいは役員報酬等につきましては給与所得控除というのが当然適用になるわけでございます。あるいは株式名義につきましても、表面の名義とそれから実際の権利者と異なる場合もございます。
 それから、先ほど御質問ございましたように、相当いろんな資産を持っているという報道があることを承知しておりますけれども、しかしながら資産保有をめぐって課税上問題になりますのは、資産取得のときと資産譲渡のときが問題になるわけでございます。資産取得のときにはその取得資金の出所が問題になるわけでありますし、譲渡の場合は譲渡益の有無ということが問題になるわけであります。
 いずれにしましても、私どもは、いろんな情報を十分収集いたしまして分析いたしまして、課税すべきものは課税するという基本方針で日ごろの行政に臨んでいるところでございます。(「横井英樹という名前が出ているんだから、それについてきちんといまのに答えろよ、そんな一般論じゃなく。横井英樹という名前を出しているんだから、何でそれに答えないんだ。」と呼ぶ者あり)
 これは国税職員の守秘義務の問題がございまして、個別事件につきまして具体的答弁は差し控えさしていただきたいと思いますけれども、しかしながら、私どもはいまのようなマスコミ情報も含めまして、いろいろな資料源から資料の収集をいたします。それと部内簿書あるいは本人の申告、そういうものを総合いたしまして、課税すべきものについてはきちっとした課税をやっていくと、そういう方針でおるわけでございます。一般論でございますけれども、そういう方針で御理解をいただきたいと思います。
#280
○中村鋭一君 最後に一言。
 いまのような紋切り型の答弁を私は期待して質問しているのじゃないのですよ。大蔵大臣、お願いします。だれが考えたって、あのニュージャパンで火を出した横井英樹社長の私財が大変なものであるというのはわかっているのです。それを守秘義務だとかなんとかと言って、過去五年間は一千万円以下でございました。したがって公示はしておりません。われわれとしてはちゃんと調べております。これから調べようったって、じゃ過去十年間一体何をしていたのだということを言っているんです。税負担の公平の原則というものは、絶対に全国民に共通であるべきであります。だから、したがって大蔵大臣も、いまのような紋切り型の答弁をする職員は十分ひとつ督励をしていただきまして、国民の先頭に立って、国民は義務として税金払っているのですから、こういう巨悪をのさばらせて、おまえたちそれで仕事ができているのか、そういう指導を厳にやっていただくようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
#281
○委員長(植木光教君) 以上で中村鋭一君の一般質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#282
○委員長(植木光教君) 寺田熊雄君の一般質疑を行います。寺田君。
#283
○寺田熊雄君 大蔵大臣にお伺いをいたします。
 減税の問題は、いま国民的な願望となっております。これは、たとえば歳出の削減によって財政的な余剰を生ずるとか、まあよく言われます財政再建期間を延長しなければだめだというような論議もときどき聞くのでありますが、また、そのほかの課税方法によってこれを生み出さなければいけないというような手法もあるようであります。これは、歳出の削減については、大蔵大臣、いままでそれなりの御努力をなさったように私も見ておりますけれども、たとえばゼロシーリングであるとかマイナスシーリングであるとか、いろいろなことをしていらっしゃる。この歳出の削減によってというのは、今年度に関する限りは、これはもう絶望と見てよろしいのでしょう。
#284
○国務大臣(渡辺美智雄君) 五十七年度ですね。本年度というのは五十七年の新予算。
#285
○寺田熊雄君 はい。
#286
○国務大臣(渡辺美智雄君) 新予算については、制度、施策を変えなければ大幅な歳出削減というものはなかなかむずかしいだろうと思っております。
#287
○寺田熊雄君 なお、財政再建期間を延長して、五十九年度までに赤字国債をゼロにするというような方針、これを変えるということも大蔵大臣としては容認しがたいと見てよろしいんでしょう。
#288
○国務大臣(渡辺美智雄君) これは鈴木内閣の総理の公約でありますから、これを変えることはできません。また、それを延ばすというようなことになりますと、結局は安易に増税に頼るという空気が起きたり、安易に歳出削減が、まあいいかげんと言ってはなにですが、弱くなってしまう。したがって、これはやはりそういう出口をふさいでおいて、そしてまず歳入、歳出の徹底的な見直しをやるという点からも、ここを変えるというわけにはまいりません。
#289
○寺田熊雄君 ただ、冒頭に大蔵大臣は、鈴木内閣の政策を変更しない限り今年度無理だと、歳出の削減を図ることは無理だということをおっしゃったでしょう、五十七年度。そうじゃないですか。そうしますと、どうしても私は何らかの新税に頼らざるを得ないのではないかと考えるわけですが、これについて、総括質問において、臨調の新規の増税は行わないという答申の意味について、国会決議による一般消費税のような新税の導入はいけないけれども、それ以外はいいんだというような趣旨の御答弁を総理はなさった。行管庁長官は、租税特別措置をいじる以外にはだめだとおっしゃる。まあ大蔵大臣は、多少それと異なるニュアンスを持つ御答弁をなさったわけでありますが、たとえば法人税の累進制というようなもの、あるいは富裕税、広告税というような、過去において幾たびか論議があった、そういうような新税を導入するということも大蔵大臣としてはとうていお考えになれないと考えられますか、論議の余地はあるというふうに見られますか、どちらです。
#290
○国務大臣(渡辺美智雄君) 歳入というのは歳出のためにあるわけですから、出費が必要だからお金を集めるわけですからね。ですから歳出が切れれば歳入はその分要らないということになるわけですね。歳出をだからまずぎりぎり切りますよと、その次は、仮に減税財源というようなものを――なかなかしかし、歳出切っても年金とか医療とかいうものはふえるわけですからね、人件費とか。医療や年金、人件費が一つもふえないなんてことは、これは常識で考えられない。かなりそれはふえる。その財源は歳出カットをやって埋めていくということが一つでしょう。さらにうんと余るほどカットができればいいですよ。現実はなかなかそう何兆なんていう金は、私は歳出カットですぐ出るとは思っておりません。最大限の努力はします。だけれども、さらに減税するとかわりの財源を見つけなきゃならぬ。かわりの財源の中で――皆さんからのあの五党の何にも書いてありますよ。これは増税して、それでこれは、まあどこかでふやさなければないわけですから、ですから、そういうものは絶対に税率も上げちゃいかぬ、退職引当金の方も直したならば法人税増税になるからこれもいかぬ、そう言われたら何もできませんわね、これ実際は。ですから、そういうようなものは、中で入れかえというのについては、不公正税制是正だって、その部分だけとれば増税ですからね。税率いじるか、制度やめるかするわけですから。だから、そこまで厳格に増税は一切いけないのだと言われたのでは、とても私は減税財源なんというものは出るわけないのじゃないかという気がするのですがね。ですから私は、増税なきという言葉は、衆議院でもこの間質問されました。それは別に会計用語でも財政用語でもなくて、増税なきというのは政治用語じゃありませんかと、そう思っております。
#291
○寺田熊雄君 いまの大蔵大臣の御答弁によると、たとえば法人税の累進制であるとか、富裕税、広告税についてはお触れにならなくて、たとえば退職給与引当金の問題であるとか、まあそういう点に論点をしぼっておられたわけですが、たとえば引当金、準備金制度の見直し、そういうようなものは、もう大蔵大臣の頭の中に、構想の中にはある、しかし、富裕税、広告税あるいは法人税の累進制というような全く新規のものが考慮の中にない、そういうふうに伺ってよろしいんでしょうか。
#292
○国務大臣(渡辺美智雄君) 現在私の頭の中には、新規の税ということは目下ございません。
#293
○寺田熊雄君 利子配当の源泉分離課税が現在百分の三十五、これ世もう昭和五十八年度限りでありますが、この百分の三十五をいじるというお考えもありませんか。これをたとえば百分の四十にするという、そういうお考えはないですか。
#294
○国務大臣(渡辺美智雄君) それはこれからなくなるわけですから、総合課税になりますと。ですから、人によってみんな違う。五十九年度から総合課税にするという法案がすでに準備されて施行されたわけですから、だからそいつを上げてということになれば、現在の分離課税制度を存置するということになって、いまの法律と違った形になりますので、それはございません。
#295
○寺田熊雄君 現在非常に円安が進行して、いろいろな輸入価格が非常に、何といいますか高くなるという反面に、原油がだぶついて原油価格が弱含みである。値下がりの傾向にある。一方、オイルマネーの減少の傾向もある。こういうような現象は、これからの日本の国民経済、それから世界の景気というようなものにこれはどんな影響を持ってくるのでしょうか。これはちょっと経済企画庁長官に、それからできれば通産大臣にもお伺いしてみたいと思います。
#296
○国務大臣(河本敏夫君) 石油の価格は弱含みでございます。だんだん下がる傾向にございますが、これは現在の需給関係からいって当然のことだと思いますが、石油の価格が下がれば、私は世界経済全体に大きな貢献になるであろうと、こう思っております。もっとも、OPECの資金繰りは一部窮屈になる国も出ようかと思いますけれども、しかし、世界経済全体にとっては大きなプラスになる、貢献するであろう、こういう判断でございます。
#297
○寺田熊雄君 オイルマネーの減少はどうでしょうか。
#298
○国務大臣(河本敏夫君) オイルマネーは現在のような石油消費量、したがって、OPECの予想されておる生産量、それから価格等から判断をいたしまして、急速にことしは減少するであろうと、こう言われております。あるいは全体としてはマイナスになるのではないかと、こういうことも言われておりますが、しかし、中には、二、三の国は非常に豊かでありますから、全体が仮にゼロであっても、二、三の国の黒字は非常に大きい。残りのOPEC諸国の赤字がまた別に大きく出てくると。合計して、平均してゼロあるいはまたマイナスになる、こういうように言われておるわけでありますから、赤字の国は当然その不足資金をユーロ市場等から調達をする、そういうことになろうかと思いますが、私は、そのこと自身が世界経済の足を引っ張るとは思いません。
#299
○寺田熊雄君 いま国民経済に対する影響もあわせて伺ったのですが、日本の国民経済に対する影響は。
#300
○国務大臣(河本敏夫君) 日本の国民経済に対する影響も当然私はよい結果が出てくるであろうと思います。石油が安定的に供給されて、しかも価格が安くなるということでありますから、日本といたしましては、これは非常に大きな経済にとってはプラスであろう、こう思っております。
#301
○国務大臣(安倍晋太郎君) ただいまの河本経済企画庁長官と同じような判断を持っております。
#302
○寺田熊雄君 いまの景気を回復させるために、とりわけ内需の振興を図るためにということで、政府は公共事業の前倒しという方針を打ち出されましたね。これはすでに確定した方針のようでありますが、しかし、この効果を余り過大に見積もるということは不適切ではないだろうか。と申しますのは、五十六年度も上期の契約率は七〇・五%のようであります。年度中の契約率は九八%前後だという政府の統計のようであります。それから補正予算の消化も順調に行われておるということ、これは企画庁長官おっしゃっておられますね、もうすでにこの委員会で。それでも企業の前向きの資金需要は減ってきておる。鉱工業生産指数も三カ月連続して下降状態にある。消費は低迷しておる。この消費低迷で、竹田委員が伊勢佐木町のことをおっしゃったときに、みんなちょっとどっと笑ったんですけれども、しかし、われわれ議員が一番直接生活に結びついておるのは、やはり地元の町内なんですが、岡山でも一番繁華街であると言われてきた表八ケ町というのがありますが、そこでも五十軒ぐらいの商店が売りに出している。表面に出しておらないけれども売りたいと思っておるという現象が出ております。そういうわれわれの直接体験から言いましても、消費の低迷というのは、これは疑うことができないわけです。そして実質経済成長率は、昨年十月から十二月まで七年ぶりのマイナスであるというようなことを考えますと、この公共事業の前倒しというものに余り大きな期待はできないように思うのですが、これは経済企画庁長官、いかがでしょうか。
#303
○国務大臣(河本敏夫君) 現在の景気が低迷をいたしております原因は幾つかあるわけでございますから、公共事業の前倒し執行ということだけで景気が一遍に直る、よくなると、そのようには考えておりません。しかしながら、いま政府としてとり得る景気対策といえば、さしあたりこれしかありませんから、ひとつこれを最大限にやってみよう、こういうことで先般七五%以上、技術的に可能な限り最大限上半期に執行する、こういう基本方針を決めたわけでございます。
#304
○寺田熊雄君 公共事業の前倒しというのでありますが、大体あれですか、経済企画庁長官は、国と地方と合わせてこの総額は二十四兆円になるとおっしゃっていますね。そのうち地方の分というのは、私ども十兆円というふうに見ておるのですが、間違いないでしょうか。
#305
○国務大臣(河本敏夫君) そのとおりであります。
#306
○寺田熊雄君 そうすると大体七五%以上、仮に八〇%といたしましても、上期に十一兆四千億の請負契約が締結されるということになりますが、そうすると、下期はわずかに二兆九千億になってしまいますね、国の公団、公社等全部入れて。これでは下期に息切れをしてしまうと言われるのは当然で、これはもういろいろな経済の研究所の見通しなどを見ましても、どうしてもこれは建設国債の追加発行で最低一兆円ぐらいのやっぱり拡大は余儀なくされるというふうに皆一斉に見ておりますけれども、これは長官とそれから大蔵大臣にその点の御意見を伺いたいと思いますが、お見通しは。
#307
○国務大臣(河本敏夫君) 中央と地方と合わせまして、土地代を除きまして約二十四兆と想定をしておりますから、いま仮に八〇%云々というお話がございましたが、八〇%近くをやるということになりますと、上半期に十九兆円、下半期に五兆円と、こういうことになります。下半期の数字が少ないということは、これはもうお説のとおりでございますが、私どもは公共事業の前倒し執行だけで景気は直ちによくなる、このようには判断をしておりませんが、しかしながら、ことしの後半は世界経済も回復の方向に行くであろう、このように各国政府も見通しを正式に発表しておりますし、油の問題も先ほど来御質問のように小康状態になりまして、これもわが国経済に寄与するところが大であろう、このように考えております。
 また、アメリカの金利も、物価が相当下がる方向にございます。いまのアメリカの状態では、物価が下がっただけでアメリカの金利が下がるということは直ちに断定はできませんが、それにいたしましても条件はある程度整備されつつある。そういたしますと、日本の金利政策ももう少し機動的に運営することができる、こういう条件も出てこようかと思っております。
 また、住宅投資等につきましてもようやく回復の兆が私は見え始めたのではないかと、こう思っておりますが、一−三月、新年度の新しい条件で公募をいたしましたところ、二倍前後の応募がございまして、三年ぶりに相当な数が応募をしてきております。そういうことでございますから、私どもは、公共事業前倒しのほかに幾つかのやはり経済の要素もございますから、下半期にはある程度民間の力も回復するであろう、その力につないでいきたい、このように一応考えておるわけでございますが、いまのお話は、万一ぐあい悪いという場合には一体どうするのだ、こういうお話であろうかと、こう思います。後半万一政府の考えておりますように景気が立ち直らない、依然として低迷状態が続いておる、こういうことでありますとこれは放置できませんから、その時点におきましては適切な政策を考えなければならぬと、こう思っておりますが、それじゃどういう内容なのか、建設国債を出すことを決めておるのか。こういう御質問でございますが、現時点ではまだ具体的に何も決めていない、その時点において適当な判断をしたい、こういうことでございます。
#308
○国務大臣(渡辺美智雄君) 河本長官と同様な考え方でございます。
#309
○寺田熊雄君 その適切な措置ですが、建設旧債による公共事業の拡大――建設国債を増発するわけですね、そのことも入りますか。
#310
○国務大臣(渡辺美智雄君) いまお話があったように、景気の動向を見て考えるべきものであって、いま当年度の初年度予算の審議も終わらぬうちに、建設国債の発行ということは補正予算の話ですから、大蔵大臣としてはとてもとてもそんなことはいま言える段階でもございませんし、考えられる状況でもありません。
#311
○寺田熊雄君 私どもは、いろいろ来春の選挙もありますし、正直のところは、やはり自民党の方方、党としても政治家としても選挙資金というものを当然工面しなければいかぬ、これはやはり公共事業を拡大してまあ景気をよくするとか、あるいは少なくも今度も前倒し執行で、たとえば国の事業が八〇%、十一兆四千億というものをどっと契約をすれば、前渡金としてその四〇%というものは、その資金はやはり散布するということになるのでしょう。どうですか。
#312
○政府委員(松下康雄君) 公共事業の頭金と申しますか前渡金は、通常の場合約四〇%でございます。
#313
○寺田熊雄君 大蔵大臣、やはりそういう政治的な見通しというものはあなた方の頭の中には持っていらっしゃるのでしょう。
#314
○国務大臣(渡辺美智雄君) 大蔵大臣は選挙のことまで考えてはできませんから。
#315
○寺田熊雄君 いまの問題で四〇%と主計局長がおっしゃった。四兆五千――一兆円以上の金が一度にどっと出ていく、新年度予算が成立した後ですけれども。資金というものは非常に、何といいますかね、豊富にある。いままででも金融というものは非常に緩んできておりますね。国債の売れ行きも非常に最近いいようでありますけれども、それで、従来からプライムレートを引き下げろとか、国債の利率を引き下げてもいいのじゃないかというような意見がだんだんあるようであります。きょうの新聞にもそういう記事が載っておりますけれども、国債の利率の引き下げというようなものは、もう大蔵大臣が判こを押された、大蔵省の既定の方針と見ていいのでしょうか。
#316
○国務大臣(渡辺美智雄君) 国債の市況は、年初来国内の需給関係が良好であるということなどによりまして比較的落ちついた動きを示しております。御指摘のとおりであります。三月に入ってからは、米国金利の低下傾向等を反映して上昇した後、円安傾向もあって一服状態となっておりますが、現行条件をこのところ〇・二ないし〇・三程度下回っておるというのも事実でございます。しかし、円相場に与える影響等にも配慮をしなければならない。余り金利を下げますとまた円安傾向になっては困りますから、そういうことも頭の中に入れて、市場実勢に追従したなだらかな形で、国債金利の引き下げはそういうようにしなければならぬ、余り極端なことはできない。こういう趣旨に沿って考えますと、国債引受シンジケート団と国債金利の引き下げ交渉をしたい。表面金利を〇・二ぐらい下げるのが適当ではないだろうかと思っております。
#317
○寺田熊雄君 それは、この五十七年度予算が成立して、そして四月から発行する長期の国債ということになるのでしょうね。
#318
○国務大臣(渡辺美智雄君) 当然そうでございます。
#319
○寺田熊雄君 それから、当然それが長期の金利、一般の金利にも影響するわけでしょう。連動していくわけでしょう。ですから、民間のプライムレートなどもやはり同様に行政指導をなさると。それは長期信用銀行であるとかその他の政府系の銀行の資金を入手するための債券の金利にも影響する。貸し出しの金利にも影響してくるわけでしょう、すべてに。それはそういうふうに伺ってよろしいのですか。
#320
○国務大臣(渡辺美智雄君) 長期プライムレートなどのいわゆる長期金利につきましては、これは長期信用銀行などの関係者が債券の市況、長期資金の需給関係等を総合的に判断をして決めるということでございます。したがって、いずれ国債の発行条件で〇・二%下げるということになればそういうことが、影響が出てくるというように見て差しつかえないと思います。
#321
○寺田熊雄君 これは住宅ローンとかそれから政府系のいろいろな中小企業に対する金融機関がありますね。こういうものもやはり当然貸出利率を引き下げるということになるのでしょうが、その点はいかがでしょう。
#322
○政府委員(宮本保孝君) 住宅ローン金利につきましては長期、プライムレートと大体連動して引き下げるというふうなことが行われておるわけでございます。したがいまして、今度長期の金利が動くことになりますと住宅ローンにつきましても引き下げが図られるということになろうかと思います。ただ、なるたけ住宅ローン金利につきましては安定的にしておこうというような配慮もございまして、上げのとき、下げのときもフル連動ではございませんで、何割かということでございますので、その点はそういう制約ございますけれども、引き下げの方向で検討してまいる。
 それから、政府系機関の金利につきましては、特に輸開銀等の基準金利は長期プライムレートにも連動いたしておりますので、これは長期プライムレートを下げられますと同幅の引き下げが図られるというふうに思っております。
 なお、中小三機関等につきましては、特別にプライムレートよりも現在でも〇・三低いというふうな状況でございまして、この点につきましては別の配慮から検討が行われるというふうに思っております。
#323
○寺田熊雄君 いまの政府系の金融機関それから中小企業金融公庫、その他の貸出利率、住宅ローンの引き下げ、そういうものは引き下げる利率幅というものが出ている新聞もありますね。これはどの程度引き下げる方針で臨まれますか。
#324
○政府委員(宮本保孝君) 国債の発行条件の改定の交渉が始まったばかりでございまして、全体的にどういうふうに決まるかということもわからない状況でございますので、政府系等、特に住宅ローン等も含めまして、いまのところはまだお答えできない状況でございまして、まだ検討も具体的に行われていないという状況でございます。
#325
○寺田熊雄君 臨調は、第一次答申を見ますと、「公共事業」の中で、「公共事業関係費については、前年度と同額以下に抑制する。事業の実施に当たって、その効果の早期発現を重視し、新規事業を極力抑制する。」というような答申を出しておるのですが、そういたしますと、これはあれですか、先ほど論議のあった五十七年度の後半で公共事業が出尽くして息切れしてきた場合でも、これを増額して建設国債をまたさらに発行するというようなものは臨調としては認めないという方針ですか。土光さんが何か認めたとか、いや取り消したとか、いろいろやかましいのですが、中曽根長官、いかがでしょう。
#326
○国務大臣(中曽根康弘君) 土光さんが認めたという新聞記事が出ましたけれども、あれは間違った報道でありまして、土光さんはあの記事に対して非常に不快感を表明されて、ああいう事実はないとはっきり言っております。
#327
○寺田熊雄君 いやいや、長官ね、それはわかりました。
 この行政改革に関する第一次答申の趣旨を貫くと、五十七年度の後半にさらに補正を組んで建設国債の増発というようなことは考えられないのかどうかと、臨調の方針ではですよ、長官のお立場を伺っているわけです。
#328
○国務大臣(中曽根康弘君) 臨調の答申によれば大体横ばいという考え方になっておりますから、おっしゃるとおりであろうと思います。
#329
○寺田熊雄君 この臨時行政調査会というものは、設置法を見ますというと、第二条「調査会は、行政の実態に全般的な検討を加え、行政制度及び行政運営の改善に関する基本的事項を調査審議する。」と、こうあって、制度の是非を論ずる、改革を論ずる、これはよろしいと思うんですがね。「行政運営の改善に関する基本的事項」というのに、何か個々の行政について一つ一つ口出しをするような傾向があるのじゃないでしょうか。これは設置法の趣旨に反するようにも思うのですが、長官いかがです。
#330
○国務大臣(中曽根康弘君) 「行政制度及び行政運営」と法律にはたしか書いてあると……
#331
○寺田熊雄君 「基本的事項」。
#332
○国務大臣(中曽根康弘君) もちろん基本的事項でありますが、運営という面から見ましても、それは行使的事項に入ることもあると思います。たとえば補助金等について、これこれの性格の補助金についてはこれこれである、そういうような所見を表明しておることもあり得ると思っています。
#333
○寺田熊雄君 基本的事項の概念ですがね。たとえば今年度の公務員の給与はどうしろとか、それから今年度の建設事業はもう前年並みだと、ふやしちゃいかぬというような個々の行政についてまで口出しをするというのはどうでしょうか。それを私はお伺いしているのです。基本的事項じゃないでしょう。
#334
○国務大臣(中曽根康弘君) 行政運営という面もございまして、それが基本的事項にわたる場合もあり得ると思うのです。たとえば補助金等につきまして、これこれの性格の補助金、これこれの性格の補助金、補助金の性格によって分類をしておりまして、これはやめた方がいいとか、これは少し縮減した方がいいとか等々幾つかに分類してあります。そして、その中で今度は具体的に例示としてこれこれはどうする、たとえば私学の補助金はどういう系統に入るとか、あるいは水田の利用についてはどうするとか、そういうようないろいろなジャンルに分けた所見を表明しておる。私は臨調に対して、第一次の臨時行政調査会においては非常に分厚な一般抽象論がわりあいに盛られておりました。そうでないのもございますけれども、それでは漠としてつかみにくいと、なるたけ国民の皆さんにわかりやすい具体的、的確なこともやってくださいと、そうお願いをしてありまして、そういう面の要請もお考えいただいているのだろうと思いまして、一般論を普遍、具体化して、そしてこれこれについてはこれこれであるというふうに表明することは決して設置法に矛盾するものではないと思っております。
#335
○寺田熊雄君 財界はいま景気対策よりも行政改革だというように、いまの不景気にことさら冷静さを装っている。これは、景気浮揚のためには思い切った賃上げが必要である、そういう声を非常に恐れておる。それからもう一つは企業増税、これは大蔵大臣の言われる引当金とか準備金制度の見直しというようないろいろなものを含めて、企業増税やむなしという声が起こるのを非常に恐れておる。その思惑から出ておる、私はこういうふうに考えておるのですが、経企庁長官と行管庁長官、行管庁長官にお伺いするのは臨調もそういう方針ですからそれでお伺いするのですが、これはどうでしょう。そういうふうにお考えになりませんか。
#336
○国務大臣(中曽根康弘君) 物は見方でありますが、私はやはり行政の縮減を、簡素合理化を徹底的にやれ、増税というようなものを考えるとややもすれば財政の肥大化を招き国費の乱費を招いている、今回は思い切って縮減、削減を敢行せよ、これは国民の声である、そういう考えに立って真摯に言われておるものでありまして、自分の利益を中心にして考えて言っているものではないと思います。
#337
○国務大臣(河本敏夫君) 私もいま行管庁長官が言われたとおりだと思いますが、ただ私は、行政改革というものは絶対に成功させなければならぬ、こう思っておりますが、財政再建を成功させるためには、行政改革を成功させることのほか、経済が力を回復いたしましてやはり政府の考えておるような歳入が確保される、そういう力が出てこないとむずかしい。だから、行革と景気の回復と両々相まって財政再建ができる、私はこのように考えておりますので、機会あるたびにその趣旨のことを申し述べまして各方面の理解を得るように努めておるところでございます。
#338
○寺田熊雄君 日経連が五十七年一月十三日の労働問題研究委員会報告によりまして、国全体の賃金上昇率を国民経済の実質生産性上昇率、これはGNPの実質成長率マイナス就業者増加率の範囲にすればホームメード・インフレはゼロに近づくということを言いまして、この生産性原理によって賃金決定を唱道しておるわけでありますが、これで国民経済の実質生産性上昇率というものはどのぐらいの数値になりますか、五十一年から五十六年までの数値をちょっと挙げていただきたいと思います。
#339
○政府委員(田中誠一郎君) ただいまの日経連の方式によります生産性基準に基づきます生産性の伸び率でございますが、五十一年が四・三%、五十二年度が三・八%、五十三年度が三・七%、五十四年度が四%、五十五年度が二・六%でございまして、五カ年間平均いたしますと三・七%でございます。
#340
○寺田熊雄君 五十六年の推定をちょっと……。
#341
○政府委員(田中誠一郎君) 五十六年は暦年ベースで二・一%でございます。
#342
○寺田熊雄君 いま数字が大体わかりましたけれども、消費者物価上昇率と民間主要単産の賃上げ率、これがいまの数値を非常に上回るわけですよね。だから、私どもから言うと、いかにこういう理論が誤っているかということがわかるのですが、いかに消費者物価上昇率や民間主要単産の現実の賃上げ率と乖離しているかということを明らかにするために、その二つを挙げていただきたいと思うのですが。
#343
○政府委員(田中誠一郎君) 賃金の交渉妥結率でございますが、労働省の調査でございまして、東証と大証一部上場企業のうち資本金が二十億円以上従業員千人以上の企業でありまして労働組合のある企業の平均値をとったものでございますが、五十一年度の率は八・八%、五十二年度が同じく八・八%、五十二年度が五・七五%、五十四年度が五・八三%、五十五年度が六・七四%、五十六年度は七・六八%でございます。ただしこの計算は、五十一、五十二年は単純平均でございますがそれ以降は加重平均でございます。一方、消費者物価でございますが、五十一年度は九・四%、五十二年度が六・七%、五十三年度が三。四%、五十四年度が四・八%、五十五年度が七・八%でございまして、五十六暦年は四・九%でございます。五十一年度から五十五年度の平均を見ますと、賃金交渉妥結率は七・一八%でございまして、消費者物価上昇率は六・四%でございます。
#344
○寺田熊雄君 よくわかりましたけれども、これによってこの日経連の数字と消費者物価上昇率、民間主要単産の賃上げ率というようなものがいかに乖離しておるかということがわかるわけです。ですから、こういうふうな賃金抑制政策をとったのではとても景気の回復なんていうのは望むべくもない。経済企画庁長官は先ほど、いま当面考えられるのが公共事業の前倒しなんだ、ほかには効果的な手がないのだということをおっしゃった。大蔵大臣は先ほど長期金利の値下げのことをおっしゃった。これは金融の手だてによる、ある意味で消費、設備投資などですね、これを回復させようというお気持ちでしょうが、最も効果的なものはやはり大衆の所得がふえるということ、これ以外に最も効果的な消費拡大の方法はないと私は考えるのですが、誤りでしょうか。企画庁長官いかがでしょう。
#345
○国務大臣(河本敏夫君) いま景気が低迷しております一番大きな原因は、過去二年間実質可処分所得が伸びない、あるいはときには減少する、そのために消費が非常に停滞をし、家が建たない、中小企業の状態が悪い、こういうことでありますから、所得の問題は景気の一つの大きな柱になっておるということはこれはもう御指摘のとおりだと思うのです。それではどうすれば実質可処分所得が伸びるかということでありますが、これには所得そのものが一体どうなるのかということもありましょう。それから公的負担がどうなるのか、こういうこともあると思うのです。それから物価がどうなるのか、こういう課題もあろうかと思います。政府として直接取り組むことのできる課題は物価政策でございまして、物価安定のためにはいま全力を傾けておることは御案内のとおりでございます。政府の見通しはございますけれども、さらにそれ以下に安定するようなそういう努力をいま続けておるところでございます。
 この所得の問題につきましては、これはベースアップが主体をなすわけでありますが、これはもう労使間の交渉にまつと、こういう考え方であることはもうたびたび申し上げたとおりでございます。また、公的負担のうち減税問題につきましては、大蔵委員会の小委員会、そこの結論を待って判断するということはこれは総理や大蔵大臣からも答弁をしておるところでございまして、政府としてこの問題でやれるのは物価対策、これを直接やることは可能であるが、他の問題につきましてはいま言ったような状態でございまして直接政府がいま判断をしにくい、こういう立場でございます。
#346
○寺田熊雄君 最近のこの「ESP」、これに経済企画庁国際経済第一課長丸茂さんという方が「日本経済の地位と役割――成長のエンジンであり続けるために」という論文を書いていらっしゃる。「モデレートな賃上げによる物価の安定」と。「モデレートな賃上げ」という抽象的なことで、感じはわかるけれども、やっぱり消費者物価を少なくも上回っていかなければいかぬ。それから、消費が昨年より下回るというような、これはこの一、二年ほど消費が下回っている。こういうものはやっぱり「モデレートな賃上げ」とは言えないでしょう。消費動向というものは昨年より上向くかあるいは少なくも同じレベルでなければ、もっと下回ったのでは景気の回復、内需中心の国民経済を形づくるという国際的な要求にも合わないでしょう。いかがでしょう。
#347
○国務大臣(河本敏夫君) 政府の方では、何が適正な賃上げなのか、こういうことについては一切発言する立場にはございませんが、ただ、産業全体の能率が上がるということはこれはもう日本の産業政策としては当然必要なことでございますから、産業全体の能率が上がる、そういう政策は強力にやっていかなければならぬと考えております。それから同時に、構造不況業種とかあるいは中小企業の経営状態が悪い、こういうことではこれはもう国民生活に大変困るわけでありますから、そういうことのないような個別政策も強力にやるということはこれはもう政府としては産業政策としてすでに決定しておる課題でございまして、そういう面で努力することによりまして労使交渉が順調に進む、そういう努力はしなければならぬと思いますが、さてどの見当が妥当であるかということについて判断を言えと言われましても、それは政府としては申しかねる、まあこういうことでございます。
#348
○寺田熊雄君 ただ、総理府統計局が家計調査報告に出しておるように、消費支出が実質でマイナスになるようなそういう結果をもたらす賃上げというのは望ましくないということは言えるでしょう。
#349
○国務大臣(河本敏夫君) 望ましくないといいましても産業にそれだけの力がなければこれは万やむを得ないことにもなりますから、やはり国民生活が向上できるような力を産業全体が持ち得るようなそういう産業政策を政府としては進めなければならぬ、こういうことだと思います。
#350
○寺田熊雄君 いまの経済界は、経常利益というものはむしろ五十一年から五十六年まで見ていると非常にふえているのですよ、主要産業の。ですから、そういう消費支出を下回るような結果をもたらす賃上げではなく、少なくも同等ないしこれを上回る賃上げをするだけの実力を持っておると私は思うのですが、その点はいかがでしょう。
#351
○国務大臣(河本敏夫君) ベースアップそのものに対しましてはこれはもう一切政府は意見を申し述べないということになっておりますが、ただ経済見通しを立てます場合には当然その年度における雇用者所得が個人個人で幾ら伸びるのか、全体として幾ら伸びるかということについては想定した数字を出さなければ経済見通しが出ませんので、それにつきましては五十七年度は見通しの数字を出しておることは御案内のとおりでございますが、これはしかし直接ベースアップとは関係のない数字でございます。
#352
○寺田熊雄君 労働大臣、もう少しいまの問題で、やはり適正な賃上げができるように一歩前へお出になるお気持ちはないでしょうか。
#353
○国務大臣(初村滝一郎君) 賃上げ問題について河本経済企画庁長官からいろいろ話がありましたが、私はやはりこの問題は労使交渉によって円満に解決するのが妥当だと、交渉によって円満な解決を図ることが一番いいと思います。ただ、突っ込んで申し上げられれば、出せるところは出していいんじゃないかと思います。ただこれが非常にまあ、交渉によってやるわけでございますから私どもが経済界にこのくらい出したらいいんじゃないかとか、こういうことは言われないと思いますね、気持ちはありますけれども。労使間のいろいろな要望についても聞いてはおるわけでございます。そういうことについて労働大臣としては深い関心は示しております。したがって、これをどうこうということを、指導とかあるいは鞭撻とかいうところは差し控えてもらいたい、さように考えます。
#354
○寺田熊雄君 公共事業の前倒しの問題で建設大臣にお伺いしたいのです。
 中小企業、これは官公需の何%というようなことをよく聞くのですが実態を聞くと非常に離れておるのですが、もう一遍、一体官公需のどの程度の部分を中小企業がシェアとして持っているのか、いままで。ちょっと御説明いただきたいと思うのです。
#355
○国務大臣(始関伊平君) 官公需に対する中小企業のシェアの問題でございますが、これはもう政府の方で方針を決めておりまして、本年度で申しますと、全体の官公需の大体三六・八%というものを中小企業の方に確保したいということで中央、地方一緒になりまして努力しておると、こういうことでございます。
#356
○寺田熊雄君 その方針はずっと昭和五十三年度中も一緒だったんでしょう。
#357
○政府委員(丸山良仁君) 中小企業に対します発注率は逐年増加しておりまして、五十三年度は三五%でございましたが、ことしの目標は三六・八%、いま大臣がお答えしたとおりでございます。
#358
○寺田熊雄君 ところが、「建設業の経営分析」という建設省からお出しになったものを見ると、その四、ページをちょっと見てほしいんだけれども、これ規模別に一から七まで分類しておるのだけれども、第五、資本金五千万円以上の会社、企業がもうほとんど九九%を受け持っているわけですよね、工事完成高から見てみると。だから実際に合わないんじゃないですか。いかがでしょう。
#359
○政府委員(吉田公二君) これは工事完成高の全体の数字でございまして、この中には元請下請の問題もございますし、官需のほかの民需も含めてございますので、その辺のところを仕分けしてまいりますと、実際問題として完工高としては規模別の数字、これで見ますと、確かに七番目の部類が非常に多うございますけれども、実態の官需については先ほど官房長が申し上げたような数字になっておるわけでございます。
#360
○寺田熊雄君 いや、それは企業が下請に出すことまで中小企業と言うたらいけませんよ。それはやはり清水建設なら清水建設、三井建設なら三井建設へ出して、そしてそれが請負契約を締結するのだから、それも下請があるから中小企業だなんて、そんなことは言えない。それはいかぬ。
 それは別として、中小企業というのを建設業の場合にはやはり従業員三百人以下としているけれども、ああいう建設業で常時三百人の従業員を抱えておる中小企業というのは実際にはないのですね。それはもう実際上は大企業なんです。だから工業と一緒にしては困るのだ。その点をもうちょっと考慮してみる必要はないかしら。いかがでしょう。
#361
○政府委員(吉田公二君) 建設業におきます中小企業の定義は、これは中小企業基本法におきまして定められておりまして、御指摘のとおり従業員三百人以下または資本金一億円以下の企業とされております。この定義につきまして一部の中小建設業者の団体からは少し高いのではないかという声がございますことは承知いたしております。ただ、現在中小企業政策審議会におきまして、全産業を含めまして定義改定問題についての論議がなされていると伺っておるところでございまして、その結論によって考えることにすべきではないかと思っております。
#362
○寺田熊雄君 あなたの御意見を伺っている。実態を見てあなたがどういう御意見を持っているかということ。
#363
○政府委員(吉田公二君) 実態といたしまして、従業員が三百人以上の企業と申しますのは、これは昭和五十三年度の事業所統計でございまして、五百七十五という数字が従業員が三百人以上の企業でございます。それから資本金が一億以上の企業で申しますと約九百八十ぐらいになると思いますが、全体といたしまして建設業は非常に零細企業が多いわけでございまして、大企業に当たるというのはおおむねそういうところではないかというふうに感じております。
#364
○寺田熊雄君 そこで建設大臣、やはり実態を見ますと、いまお話があったように従業員が三〇人以上、資本金一億以上というのは建設業の場合には大企業の範疇に入るというのですね。それがほとんど事業を取ってしまう。実際大企業だけれども、中小企業基本法で言うと中小企業の範疇に入っている。その間の矛盾をやはり検討して、本当の中小零細企業にあなたのおっしゃったやはり三七%近いものがいくように御検討願いたいのです。いかがでしょうか。
#365
○国務大臣(始関伊平君) 中小企業の定義は中小企業基本法によりまして建設業も含めて大体統一的にできているわけでございますけれども、建設業については若干の特殊特異の、特別の事情はあるかもしれません。ただ、それをたとえば百人以下というようなことにいたしますと、またそういう別の範疇ができまして、先ほど官公需の中小企業に対する発注の目標の問題を申し上げましたが、そういう問題も中小企業の範囲をまた下げればそれに応じて考えなければいかぬというような問題もあるかと思いますが、せっかくのお話でございますので、考えさしていただきたいと、かように存じております。
#366
○寺田熊雄君 この貿易摩擦の問題でありますけれども、今度は櫻内さんがアメリカでレーガン大統領から大変きつい注文を受けたようでありますが、この貿易摩擦解消の方途として、通産大臣の方は何か二十日ごろまでは品目別の折衝でいくのだということをおっしゃっておりますが、これはいまでも変わっていらっしゃらぬのですか。
#367
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私はそういうふうなことは言ってはおりませんが、いまの貿易摩擦は相当深刻になってきておると、こういうふうに判断をいたしております。このまま放置をすれば自由貿易体制に破綻を来す。そこでやっぱりわが国としてもこれに対する対応策を急がなければならない。大体これからいろいろとやっていくとしても、一応やはりサミット前ぐらいには総まとめをすると同時に、これからのやはり市場開放に向けてのわが国の基本的な考え方を含めて、いわば包括的にサミット前にわが国の対外経済政策と貿易摩擦に対する基本的な方針というものを打ち出すべきではないかと、こういうことを言っておるわけであります。
#368
○寺田熊雄君 何かこのマンスフィールド大使の言うドラマチックな解決という、包括的な解決の方途でいくのか、品目別でいくのかということで、何か外務省と通産省との間で意見の対立があったように聞いたのですが、これはもう通産大臣も包括的な解決を図るという点では御異議がないわけですか。
#369
○国務大臣(安倍晋太郎君) 別に意見の相違というのは政府の部内には私はないのじゃないかと思うのですが、これからやはり貿易摩擦に対する対策を講じなければならない。そうして五月の時点、サミット前にはわが国としてのそうした対策を総まとめをして、同時に今後に対するやはり基本的な方策も含めて打ち出すべきではないかと、こういうことで、たとえば通産省と外務省との間に行き違いはないと、こういうふうに思っております。
#370
○寺田熊雄君 きょうはそういう問題で通産大臣の方が品目別の折衝によって解決を図るという御意見だというふうに聞いておったものですから、宮澤長官の調整役としての御意見を伺いたいと思ったのですが、いまはそういう調整役として宮澤長官がお出になる必要性というものは全くないわけでしょうか。いかがですか。
#371
○国務大臣(宮澤喜一君) 少しずつ報道された形で表現が違うのでございますけれども、実態は結局一つ一つ問題をできるだけ早く片づけていこうということでございますので、通産大臣の言われましたように実態的に別に違いはございませんで、私がどうかしなければならないというようなことではないと思っております。
#372
○寺田熊雄君 よくわからない。結局はやっぱり包括的な解決を図ると、そういう結論にいまはまとまっていると伺っていいんでしょうか。
#373
○国務大臣(宮澤喜一君) できるだけやれることは全力を尽くして一つ一つ問題を処理しておかなければならないと思うのでございますが、いわゆるそのドラマチックとい三言葉をいま仰せになりましたが、そういうものを一つ一つそっと片づけておきまして、こっそり隠しておいて緞帳でもぱっと切って落とすようなことですと、文字どおりドラマチックになるわけでございますけれども、やっぱりむずかしい問題を片づけますと、とても三日も内緒にしておけないようなわが国の実情でございますから、全部まとめてさっと一度にお目にかけるというようなことは実際はなかなか困難でございますので、それで要はむずかしい問題を一つ一つできるだけ早く片づけていくということしかないということでは、まあみんなが一致しておるということでございます。
#374
○寺田熊雄君 農水大臣はおいでになっているのでしょうか。
#375
○委員長(植木光教君) 来ています。
#376
○寺田熊雄君 農水大臣にお伺いしたいのは、牛肉それからオレンジ、これの問題に関するアメリカの圧力が非常に強いですね。これは日本の農業を守るという農水大臣の本来的な職分と私は抵触すると思うのです。しかし、何か情勢は日に日にあなたに不利になっておるように思うのですけれどもそうじゃないんでしょうか。あなたの御決意とこれに対してどういうふうに対処していかれるのか、その御抱負をお伺いしたいのです。
#377
○国務大臣(田澤吉郎君) 農産物の輸入制限品目についてでございますが、これについては御承知のように東京ラウンドで一九八三年まで合意されているのですよ。そこで、これからのこの話し合いは一九八四年以降のこの協定をどうするかということでございまして、東京ラウンドでは一九八二年の後半にその話し合いをしようじゃないかと。そこで過般の日米貿易小委員会でいろいろございました。アメリカ側からは非常に農産物の市場開放を強く要請されましたけれども、わが方としてはやはりこれは農畜産業の基幹作物である、また地域の重要作物である、水産業振興のまた重要な品目でございますので、この二十二品目というものにはなかなか応じられませんよということを強く要請いたしました。それに対してアメリカ側は、日米間の農産物についての要請というものは扱いはかなり厳しいよ、しかしこの日米間の農産物の市場開放は良好ですよと。日本はアメリカのいいお客さんでございます、市場開放については単に日本だけの問題じゃなくしてECともこれは改めて協議をしたいとこう考えています、こういうようなお話でございまして、そこで、しかし東京ラウンドで合意された話し合いの時期をことしの十月一日前に早めていただけないだろうかというお話があったのです。それに対して、それはやはり東京ラウンドの合意事項に反するからそれはいけませんと。そこでこの十月の双方で適当な時期に話し合いの日にちを決めましょうということで合意されました。
 それからもう一つ、他の品目についての作業をやはり進めたいということでございますので、作業部会をつくりまして、これもそれじゃお互い話し合う機会はつくってまいりましょうということで、これも来月からそれじゃその話し合いはしていこうじゃないですかということでして、その作業部会も、これは残存輸入品目を合意したという意味じゃございませんよ、この部会で私の方ではアメリカの皆さん方に言いにくいことも言いますよ、日本の立場を十分申し上げますよと。たとえば各国の市場開放率の問題だとか、それからそのアメリカに与える影響だとかということなどもいろいろ申し上げたいと思いますよというようなことを前提にしながら作業部会をつくって今日に至っているという状況でございます。
#378
○寺田熊雄君 オレンジと牛肉についてはどうなんですか。
#379
○国務大臣(田澤吉郎君) ですから、オレンジと牛肉につきましては東京ラウンドで合意されておりますので、十月以降話し合いに入るということに相なります。
 こういうことでございますので、私たちの方では先ほど申し上げましたように、これは農畜産物の基幹をなす作物でございますので、これは私たちの方ではこの残存輸入品目はいわゆる開放するわけにまいらないという態度をとってまいりたいと考えております。
#380
○寺田熊雄君 これは通産大臣、守れますか。あなた、どんなふうに見ていますか。
#381
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは日米小委員会でも大体いまの方向が合意されたというふうに承っております。いまの農産物についての作業部会をつくる、それから十月以降に交渉に入るということは先般の日米小委員会で大体合意をされたというふうに承っておりますが、私は貿易摩擦全体につきましては、やはりサミット前には日本としてのやはり貿易摩擦に対処する基本的な方向と、具体的に何と何ときちっとやれるということがどれまでできるか、できないものもありますが、しかしやはりできるものはやると。しかし今後の問題として残こされた課題についてもどういう方向でやっていくという基本的な方向というのは一応サミット前には出さなければ、私はいまの非常に危機的な状況にあるこの貿易摩擦というものを切り抜けていくことはできないのじゃないかと、こういうふうに判断をいたしております。
#382
○寺田熊雄君 官房長官いかがでしょうか、この問題。
#383
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は、たまたま二十年になりますけれども、ケネディラウンドが始まりましたときからこのことにかかわり合いまして、そのころの大変にたくさんございました残存輸入制限がいま二十七まで十何年かかりましてなったわけでございます。その間、幸いにして日本の工業化が非常に早く進みましたので工業製品の方の自由化がわりに楽にいきまして、もう現在残っておりますのは石炭とか皮革でございますから、これは事実上もう大量生産の、工場生産のものではございませんで、しかし農業の方はそうでございませんから二十二残った。もう残ったものは本当につらいものだけが残ったという感じがつくづく私は正直いたしますものですから、なかなかこれから先がつらいところだということを身につまされたように私自分で思います。その中でもしかし何か少しでもやれるものがないのかなあという気持ち、また御理解を得てそういうことができればいいなあという気持ちは持っておりますけれども、たまたま自分がそういう長い経験をいたしましたものですから、なかなか楽観はできないという感じを持っておるわけでございます。
#384
○寺田熊雄君 使途不明金の問題についてお伺いしたいと思ったのですが、恐らく時間が許されないかと思うので、最後に人事院勧告と憲法の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。
 これは御承知のように全農林事件の判決がその指標になっておるようでありますが、これは御承知のように七対八というきわどいところで……
#385
○委員長(植木光教君) 寺田君、時間が参りました。
#386
○寺田熊雄君 はい。
 多数説が勝利をおさめたという特別な事件であります。この判決、多数説を読んでみましても、公務員については労働基本権が保障されると、しかしこの保障と国民全体の共同利益の擁護との間には均衡が保たれる必要がある、したがって労働基本権を制限するに当たってはこれにかわる相応の措置が講じられなければならない。人事院勧告についてはこの憲法上どうしてもやはり労働基本権を制限するに当たって憲法上の要請として相応の代償措置が必要だというところからこの人事院制度ができております。これは準司法的機能を持つ人事院を設けておるのだという規定であります。したがってこの人事院勧告を尊重するということは憲法上の要請であるということはこれ疑いがない。この判決全文をいま御紹介することができないけれども、時間的な余裕がないから。しかし多数説の説示からしても当然であります。
#387
○委員長(植木光教君) 寺田君、時間が超過しております。
#388
○寺田熊雄君 この点総務長官が担当でいらっしゃるということですから、その御意見をお伺いして、もし足らぬところは法制局長官に補っていただくことにして質問を終わりたいと思います。
#389
○国務大臣(田邉國男君) お答えをいたします。
 人事院勧告制度の性格につきましては、最高裁全農林事件判決におきまして、労働基本権の制約に対する代償措置の一つであると述べられております。したがいまして、人勧制度が実効を上げるように最大限の努力をしなければならないということは最高裁の判決の趣旨であると考えております。政府は、人事院勧告につきましては、従来からこれを尊重するという基本的たてまえに立って対処をいたしておりまして、私といたしましても、今後とも勧告を尊重し、誠意を持って対処をしてまいりたい、かように考えております。
#390
○寺田熊雄君 憲法上の要請がどうかということですよ。
#391
○政府委員(角田禮次郎君) ただいま総務長官からお答え申し上げましたように、公務員の労働基本権を制約する場合の代償措置として人事院の給与勧告の制度が最高裁判決において指摘されておりますので、最高裁判決の考え方は、公務員の労働基本権を制限する場合の合憲性を公認する一つの理由としてこれを考えているということが言えると思います。
#392
○寺田熊雄君 終わります。(拍手)
#393
○委員長(植木光教君) 以上で寺田熊雄君の一般質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#394
○委員長(植木光教君) 次に、去る十八日に引き続き、熊谷太三郎君の質疑を行います。熊谷君。
#395
○熊谷太三郎君 大分時刻もおくれておりますので、なるべく簡単にいたしたいと存じますが、御答弁も簡単明瞭にひとつお願いをいたします。
 まず、消防庁にお伺いいたしますが、過日のニュージャパンの火災で死亡された方が三十二名でありまして、うち十三名が窓から飛びおり、残り十九名のうち十四名が室内で、また五名は廊下または屋上で死亡されたとのことでありますが、それに相違はございませんでしょうか。
#396
○政府委員(石見隆三君) ホテル・ニュージャパンの火災によりまして亡くなられた方は、お示しのように三十二名でありまして、飛びおりて亡くなられた方は十三名、火煙によって亡くなられた方は十九名でございます。
#397
○熊谷太三郎君 そうしますと、窓から避難する設備があったとしたら、飛びおりられた十三名はもちろん、室内の十四名及び恐らくは廊下や屋上の五名の方々もすなわちほとんど全員の方が死亡しなくて済んだということになるわけですが、そういう避難設備はなかったのでしょうか、お尋ねをいたします。
#398
○政府委員(石見隆三君) ホテル・ニュージャパンにつきましては、いわゆる消防法上の設置が義務づけられております避難器具、たとえば救助袋でございますとかあるいは誘導灯さらには建築構造上の避難階段というものは設けられておりました。
#399
○熊谷太三郎君 何だかわかったようなわからないようなお答えでございますが、大体ホテル防災に関しまして建築基準法上どういう避難設備が義務づけられておりましょうか。さらにはまた、消防法上どんな設備が義務づけられておりますか、これにつきましてお尋ねをいたします。
#400
○政府委員(豊蔵一君) お答えいたします。
 ホテルに関しますところの避難設備といたしまして、建築基準法におきましては、まず第一に直通階段を設けることとなっております。それでこの直通階段もこのホテルの規模等によりまして二以上の直通階段であること、あるいはまた防災区画を施した避難階段であること、あるいはさらに附室を設けた特別避難階段とすること等々、条件がその構造、規模によって違っております。第二番目には、非常用の照明装置を設けることでございます。第三番目には、一定規模以上のものにつきましては、壁、天井等の仕上げを不燃材料または準不燃材料とするといったような規定が設けられております。
#401
○熊谷太三郎君 消防庁。
#402
○政府委員(石見隆三君) 消防法上避難のために設置を義務づけておりますものは、いわゆる避難器具としては救助袋、それから誘導灯でございます。
#403
○熊谷太三郎君 どうも、いま御答弁を聞きますと、完全な避難設備が義務づけられていたかいないか、それも不十分のような気がしますが、義務づけられていたとすれば、それがつけられていなかったということは、やはりホテル当事者は言うまでもありませんが、監督の立場にあられる消防当事者の責任もきわめて重大であると言わねばなりません。まあしかし、そういうことを申し上げてみてもただお責めするだけのことになりますから、つけ加えて申し上げたいと思いますが、一体、避難用の設備などはきわめて簡単であると思います。たとえば、窓の外側にベランダを設けまして、ところどころに階段をつけてさえあれば、万一の場合窓からベランダに出ることによりまして避難の目的は容易にかつ完全に達し得られることと考えます。必ずしもこのとおりにとは申しませんが、このようなわかりやすい避難設備をホテルその他に義務づけて将来の防災対策をお考えになるようなことはありませんか。一言御所見をお伺いいたしたいと存じます。
#404
○政府委員(豊蔵一君) 建築物の避難施設の計画につきましては、できるだけ二方向以上の経路を確保するということが重要でございます。また、個別の建物の条件に即した設計を行うことが必要であろうかと考えております。
 御指摘のような窓の外側にベランダを設けるといったような方法につきましては、それぞれの建築物の用途、形状等によりまして、副次的な避難経路として有効な場合もあろうかというふうに考えております。
#405
○熊谷太三郎君 いまお尋ねしておりますのは、いろいろな姓物を聞いているのではありませんので、ホテル防災について承っているわけであります。そういう場合もあろうかということでございますが、私は絶対に、そのほかにもっと有効な方法があれば別問題ですが、現在はいま申し上げましたような方法、そういうわかりやすい方法で十分にそういう避難ができるものと考えておりますから、よくひとつ御研究をお願いしたいと考えるわけであります。
 ここで一言つけ加えておきますが、それは地方のホテルの防災対策についてであります。私の見聞します範囲では、一体に、肝心の避難対策よりも、間接的な防火対策を重視し過ぎるような嫌いかないかと思うわけであります。簡単な経費により、あるいはきわめて簡単、シンプルな配慮によりまして適当な避難設備をすれば人命の安全が確保し得られると思いますのに、それを十分にしないで、逆に大した効果も期待できないと思う防火対策に莫大な経費をかけさせて、これを強行させようとする傾向があるやに思うのであります。これは詳しいことは別の機会に譲りますが、指導に当たられる消防庁の御一考を望みたいと考えておるわけであります。
 そこで、最後に、私の申し上げましたホテル防災に関します質問に対しまして、自治大臣の御所見、御感想を一言承ることができればまことに幸いであります。
#406
○国務大臣(世耕政隆君) 先ほどから伺っておりまして、私もホテルなんかの火災に対しては、これは火が出ないように気をつけるのはもちろんだし、火が出たときにある程度の防火設備というのは必要でございますが、それでもなおかついろいろな、日本だけではなくて外国でも、火災が強くなって逃げ場を失って窓から飛びおりるというような珍事がございます。これは大阪でもありましたし、いろいろなところでそういう現実を見ておるのでございますが、私はやはりお客に対してはホテル側の方で逃げさせる、退避させるのが第一番だと思います。その意味で、仮に非常階段なんかが煙で見えなくなって行き詰まりになってしまったときに、まあ部屋の外から出られなくなったときにどうやって逃げるか。そういうことを、やっぱり先ほどから議員が御指摘になったようないろいろな方法を通じて、とにかく生命の安全を補完するのが大切ですから、そういった退避の方法をこれからいろいろな角度から考究すべきであると、このように存じております。
#407
○熊谷太三郎君 終わります。(拍手)
#408
○委員長(植木光教君) 以上で熊谷太三郎君の一般質疑は終了いたしました。
 明日は午前十時に委員会を開会いたすことにし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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