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#1
第096回国会 運輸委員会 第8号
昭和五十七年四月二十日(火曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月十九日
    辞任         補欠選任
     目黒今朝次郎君    青木 薪次君
     田  英夫君     前島英三郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         桑名 義治君
    理 事
                井上  裕君
                小柳  勇君
                黒柳  明君
    委 員
                伊江 朝雄君
                江島  淳君
                梶原  清君
                木村 睦男君
                高平 公友君
                内藤  健君
                安田 隆明君
                山本 富雄君
                竹田 四郎君
                小笠原貞子君
                柳澤 錬造君
                前島英三郎君
   国務大臣
       運 輸 大 臣  小坂徳三郎君
   政府委員
       運輸大臣官房長  角田 達郎君
       運輸大臣官房総
       務審議官     石月 昭二君
       運輸省海運局長  永井  浩君
       運輸省船員局長  鈴木  登君
       海上保安庁次長  勝目久二郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        村上  登君
   説明員
       労働省労働基準
       局安全衛生部計
       画課長      菊地 好司君
       日本国有鉄道旅
       客局長      須田  寛君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○船員法及び船舶職員法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○船員災害防止協会等に関する法律の一部を改正
 する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(桑名義治君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。
 船員法及び船舶職員法の一部を改正する法律案、船員災害防止協会等に関する法律の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題といたします。
 前回に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○竹田四郎君 船員のことを実際経験していないからよくわからないわけでありますけれども、船員の近代化というのは一体なぜ必要になってきたか、その経緯をちょっと聞きたいと思います。
#4
○政府委員(鈴木登君) 実はこの近代化の問題はすでに約十年余り前から問題が起こってまいりました。その一番大きなのは、やはり最近わが国の――これは国際全部でありますけれども、海運を取り巻く国際情勢の変化によると思います。その一番大きなものはやはり開発途上国の海運の進展だと思います。そのために私どもの海運が非常に国際競争力を喪失してきたという事態を発生いたしました。何せ非常に低賃金の開発途上国の海運が伸びてまいりましたので、相対的な問題としてわが国の国際海運の国際競争力が落ちてきたわけでございます。それに対する一つの対策といたしまして、いろいろと船舶の近代化というような状態がかなり強く進められてきたわけでございます。それに応じまして船舶自身の方も、かなり、船員乗り組み体制の方もかなり近代化を進めてまいりましたけれども、やはりそれには追いつきませんで、その結果、外国用船の増加という事態を招いております。約十年くらい前はわが国の海運に占めます外国用船比率が約一六%でありましたのが、最近は五〇%になんなんとしておるような状況でございます。
 そういうことになりますと、やはり一番の大きな問題はわが国の日本人船員の職場がなくなってくるというような大きな問題がございます。現に、最近は船員の数もどんどんどんどん減少しつつございますし、そういう事態を考えまして、やはりもう少し何らか抜本的な対策を講ずる必要があるのではないかということで、私ども、労働者側も使用者側も、あるいは公益の代表者も入りまして、官公労使でいろいろ委員会をつくりまして、それの対策をこの五年間いろいろと検討してまいったわけでございます。その結論は、やはり近代化された船舶に適応したような船員制度を設ける必要があるだろうということでございまして、それが船員制度の近代化の問題でございます。
 その骨子といたしますところは二つございます。一つは、やはり船員の働く場合というものを、非常に高級技術の集団といいますか、そういうものにして、船員自体に労働に対する意欲をもっと高めようじゃないかと。いわゆる社会的地位の向上とわれわれ言っておりますけれども、そういう意味で船員の社会的地位の向上をさせようじゃないか、そうすることによって船員自体になり手もまたふえてくるんじゃないかというような問題。それからもう一つは、先ほど申しましたように、船員の一船当たりの乗組員の数がたとえ減りましても、そういう船舶がふえることによりまして、すなわち外国用船の減少、裏返しますと日本船の、日本人の乗り組む日本船の増加でありますけれども、そういうことによって船員の職場が確保されるんじゃないかということで、船員の社会的地位の向上を図ると同時に、船員の職域の確保を図ろうというようなことでこの船員制度の近代化に着手したわけでございます。
 以上が船員制度近代化の趣旨と申しますか、骨子でございます。
#5
○竹田四郎君 いまも若干外国用船と日本船の関係が述べられたんですが、日本の商船隊の船腹というのは一体どのくらいあって、最近はそれがどんなふうな動きになっているのか。まあ外国の用船なども、たとえばチャーター船なりあるいは便宜置籍船なり仕組み船なり、あるいはマルシップ、そういうものを含めて日本の商船船腹というのは、ここ五年ぐらいで結構でありますけれども、一体どんなふうになってきているのか。その辺が明らかになっていかないと、船員制度の近代化あるいは職域の確保の問題も浮き上がってこないんじゃないだろうかと、こういうふうに思いますから、特にその辺をひとつ御説明いただきたいと思うんです。
#6
○政府委員(永井浩君) 最近の日本商船隊の推移について申し上げますと、昭和四十五年に、いわゆる日本商船隊と申しますが、これは日本船とそれから日本の船会社が雇っております外国船を含めまして日本商船隊と言っております、その日本商船隊の総トン数が二千八百万トンでございます。そのうち日本船が二千百万トンでございまして、外国用船が七百万トン。比率で申しますと日本船が七五%で外国用船が二五%でございます。合わせて一〇〇%。これが五十六年の数字で申し上げますと、日本商船隊の総トン数が六千二百万トンでございますが、そのうち日本船の総トン数が三千四百万トン、それから外国船が二千七百万トン、それぞれちょっと端数がついてございますので合計が合いませんが、そういう数字でございまして、比率は日本船が五五・六%、それから外国用船が四四・六%ということで、十年前に比べますと、日本船の比率が七五%から五五%に落ちておる、こういうのが現状でございます。
#7
○竹田四郎君 外国船、まあこれは外国用船がいいだろうと思うんですが、外国用船と日本船の船の運航のコストこれは具体的にどんなふうになっているんですか。船員費もあるだろうし、いろんな保険費もあるだろうし、減価償却費もあるだろうと思うんですけれども、その辺は一体どうなっているんですか。何か今度の話だと、船員の問題だけが――船員法ですから当然そうだろうと思うんですけれども、船員の問題だけじゃ私はないと思うんですね。もっといろんな問題があると思うんです。燃費の問題もあるだろうし、償却の問題もあるだろうし、いろんな保険の問題は日本のものは安いだろうと思いますけれども、そういうような問題がやっぱり明らかにされていかなくちゃならぬと思うんです。
#8
○政府委員(永井浩君) 細かいコストは一船一船を比較しませんと何とも申し上げかねますが、一般的に申し上げますと、コストの多くを占めております建造費とそれから運航費を比較いたしますと、建造費につきましては日本の造船所でつくる場合にはそう差はございません。ただ、外国船の場合には輸出入銀行の融資がございますし、それから国内船をつくれば開発銀行の融資がございます。それに五十四年から五十六年、日本船の建造の場合には利子補給という制度が三カ年ございました。こういうことで、建造コストで申しますと、この外国用船を仮に日本でつくった船といたしますと、利子補給を加えますとほとんど変わりがございません。
 それから船員コストでございますが、これは当然ながら、発展途上国の船員を乗せておりますので、大幅に外国用船の方が安いというのが現状でございます。
#9
○竹田四郎君 もう少しこれは分析するために必要なんですよね。だから、海運というのは確かに世界的な競争場裏にあることは明らかですわな。何も囲いのないところで競争されているわけですし、特に日本では海運の自由の原則という原則にのっとってやっている以上は、ますますもってそうしたコストがどうあるかということに対する真剣な論議なしには、私はこの議論というのは入れないと思うんですね。そういうものの上に初めて船員の数をどうするのか、こういうことも論ぜられないと、片手落ちに私はなると思うんですね。その辺の資料をひとつ出してくれませんか。それでないと、ほかの、一体これからの日本の所有船の造船に対してどうしたらいいかという問題もこれ当然出てくるわけです。船主協会あたりでもそういう問題はいろいろ議論のあるところですね。ですから、そういう問題をひとつもう少し、いまのような大ざっぱな話ではこれはちょっと検討の材料になりませんな。もう少し詳しいものを出してくれなければ進められないと思うんですが。
#10
○政府委員(永井浩君) 船のコストというのは、その船一隻一隻を比較しなければ正確なコストというのは出ないわけでございますけれども、私どもの海運造船合理化審議会の審議の過程で一つのモデルケースをつくった資料がございますので、後ほど御提出いたします。
#11
○竹田四郎君 これ、大臣にひとつ伺っておきたいんですが、やっぱり確かに日本の船が少なくなってきたと。いまいろいろお話がありましたように、途上国の船とかあるいは東欧圏の船など、これがかなり強力な競争相手になったことは事実ですが、私は船員だけの問題じゃないと思うんですね、これは。もっと大きな問題もあると思いますね。たとえば積み取り比率などを一体どうしていくのかということ、これは途上国ではかなり大きい問題になっていると思いますけれども、こういうような問題も一体どこに原因があるのか、こうした問題がやっぱり明らかにされていかなくちゃいけないだろうと私は思うんですが、その辺、大臣どう考えますか。これだけだとやっぱり総合的な海運の発展ということにならぬじゃないかと思うんですがね。
#12
○国務大臣(小坂徳三郎君) 竹田委員の御質問は、まことに大事な点を御指摘になっていると思うのでありますが、いま私がこの問題を考えたときに、やはり比較いたしますと賃金だけは四分の一なんですね、発展途上国は。それで結局賃金が非常に段違いに相手が安いものですから、あと金利は日本の方が安いんだろうと思いますが。それから、その他の油はほとんど世界的に同じ値段になっていると思います。でございますから、結局賃金の差というものがいわゆる経費で一番大きく突出しているものですから、問題はやはりそういうことから、全体として建造費も余り変わらないとするならば、また償却制度もそんなに変わっておりませんから、全体から見るとやはり日本船は非常に割り高になっちゃっておる。結局お客が逃げてしまう。特に日本に持ってくるだけじゃなしに、第三国間の輸送等にずいぶん動いておりますから、そういう面では非常に競争力が弱くなっていることは事実なのでございまして、そういう意味から言って、先ほど来、この改正でわれわれが主張いたしておりますのは、このままほうっておくとどんどんと日本船が減ってしまって、需要がなくなってくる。それで、経費の安いところに流れていってしまうというふうに思われるので、これを食いとめたいというのが労使双方の合意事項、五カ年間非常にその問題について深刻な議論をしてもらって、その結論が今度のような改正につながってきておるわけでございますから、その点につきまして、もちろん後ほど資料は御提出しなきゃなりませんが、われわれがこの法案の改正をしなければならぬと思うのは、やはり日本国船が五〇%を割るようなことになりますると、これは非常に日本にとっては重大なことになるという心配もございます。いまのままほうっておきますと、どんどん減っていって五〇%を割る可能性は非常にあるというのがわれわれの心配なんでございます。
#13
○竹田四郎君 大臣のおっしゃっていることも、原因等については当たっていないわけではなかろうと思いますけれども、しかし、どうしたらいいのかということになりますと、これは私自体も、本当に船員の近代化とかあるいはSTCW条約の批准に基づく改革で果たしてそういうようになるのかどうなのか。単なる船員の競争力の問題が一つありますね。もう一つは、やっぱり提案の中には総合安保的な要素というようなものもあると思いますね。何かあったときに一体日本の船員で動かす船がなかったらどうなるだろうかという安保の問題も私は当然あるだろうと思いますけれども、この安保の問題を絡めていくと、また対策としては違ったものが当然出てくるわけですがね。その辺がどうも今度の提案自体の中で、一体どっちを向いているんだということが率直に言って余りはっきりわからないと思うんです。いまも大臣がおっしゃっておりましたように、四分の一の賃金と競争するということになりますと、人を少しぐらい減らして、あるいは船を近代化するということぐらいだけで果たして競争力が出るものやらと思うんです。
 こう考えてみると、大変むずかしい問題だなというふうにも考えざるを得ないわけですが、それは今後の問題として検討してもらわなくちゃならぬ問題ですが、船は少なくなってくる、今度も船員の職域拡大ということが大変大きな目標になっている、これはよくわかるわけでありますが、それでは日本の船員の状況というのはどんなふうになっているんですか。特に予備員という人たち、あるいは船員――いま若い人の海離れということが盛んに言われておりますけれども、もう海員でやっていけなくなって海をあきらめたというような人も、船員の資格を持っている人の中ではかなりいるんじゃないかと思うんです。そういう船に乗らない人は一体いまどんな生活をして、どんなことをしているんですか。
#14
○政府委員(鈴木登君) いわゆる海技免状を持っております者は約四十万人ぐらい、これは実は私どもの方に登録してございますので約四十万人ぐらいおります。そのうち、いわゆる船員として働いておりますのは五十五年現在で約二十三万四千人ぐらいの数字でございます。したがいまして、残りの十七万人ぐらいが恐らく船に関係ないお仕事についておられると思います。具体的にどういうお仕事についているか私どもわかりませんけれども、商船大学だとか商船高専とか、あるいは海員学校卒業の方、最近幾らか就職率がよくなってまいりましたけれども、従来非常に悪いときには、いろいろと調べましたけれども陸上産業すべての方に、あらゆるところに就職されていまして、なかなか把握することが困難でありますけれども、機関関係の方々はやはり技術的なところへ就職されておる。それから航海関係の方々は商社からあらゆる部門に就職されておりますので、一概にどういう部門ということは非常にむずかしいという感じでございます。
 それから、先ほどお尋ねの予備員はどれくらいかということにつきましては、全数ですけれども、船員約二十三万四千人のうち、現在、船の乗組員は二十万四千人、残りの約三万人が予備員という形になってございます。
#15
○竹田四郎君 その予備員の人というのは、一体どういうふうな形で――恐らく待機をしていらっしゃる人が多いんだろうと思うんですが、その人たちはどんな状態でいま待機をしているんですか。
#16
○政府委員(鈴木登君) 予備員の中には、私ども予備員と一概に呼んでいますけれども、非常に数が多うございまして、ちょっと読み上げてみますと、艤装員、待機員、有給休暇員、代償休暇員、特別休暇員、請暇員、傷病員、療養休職員、依命休職員、依願休職員、それから学校に行っている人たち、それから研修員、陸上勤務員、特別休職員、それだけをわれわれは一応統計上予備員と呼んでございます。その中で、いまの御質問は陸上勤務員ということだろうと思いますけれども、これはやはりかなり多うございまして、これは船会社の陸上関連企業に主として働いていると思います。
#17
○竹田四郎君 数字が合うかどうかはわかりませんが、これは日本船主協会で出された八十二年の海運統計要覧でございます。この数字が間違っているかどうかわかりませんけれども、これによりますと、五十五年十月一日現在で、「その他」と書いてある人が二万三千の中で五千八百おりますね、これ。これはページ数で言うと三百五十八ページに書いてありますけれども、この「その他」というのは何ですか。これは、余りにも数字的には多いんですわな、二番目ですわな。
#18
○政府委員(鈴木登君) この船員職員のうち、「その他」と書いておりますのは、恐らくドクターとか、あるいはそういう関係の人だと思います。
#19
○竹田四郎君 ドクターがこんなにいるんですか。予備員のうちで五千八百名もドクターがいるんですか。
#20
○政府委員(鈴木登君) 先生御指摘の数字は三百五十四ページの……。
#21
○竹田四郎君 三百五十八ページ。そこの五十五年十月一日現在の合計欄のところを見ると五千八百五人と書いてあるでしょう。これは資料は海運統計から出ているからね、船員局から出ているんでしょうね、これ。これがよくわからない。まあわからなければ後でいいですよ、そんな時間をとられちゃかなわんから。
#22
○政府委員(鈴木登君) 後から調べてお答えいたします。
#23
○竹田四郎君 いずれにいたしましても、船に乗れないという人がずいぶんあるわけですね。恐らく船に乗るというのはかなり志を立てて船員になろうとした人が私は全体としては多かろうと思うんですけれども、その人たちが乗れないというのは大変なことであろうというふうに私も思います。それで、いわゆるマルシップとか便宜置籍船などという形で、本来は日本の船で日本人の船員が乗らなくちゃならないと思われるのが、いま大臣が言ったように四分の一の給料の外国人の船員を乗せることによって非常に運航費を安くしよう、安く上げようと、こういうことなんですが、こういう船に一体外国船員というのはどのぐらいの割合を占めているんですか。本来は日本の船でなくちゃならないのが便宜置籍船とかマルシップと、こういうような船は、日本人と外国人との乗っている割合がどのぐらいになっているんですか。
#24
○政府委員(鈴木登君) 最新の数字で申し上げますと、去年の十二月に調べたのがございますけれども、マルシップ三百十四隻、二百五十四万七千トンでございますけれども、それに乗組員の数が約七千名、そのうち日本人の数が千七百名、外国人が五千名余りでございます。
#25
○竹田四郎君 便宜置籍船というのじゃそういうのはわからぬですか。
#26
○政府委員(鈴木登君) 便宜置籍船の方は、これは純粋に外国船でございますのでちょっと把握しておりません。
#27
○竹田四郎君 正確な数字でなくてもいいですけれども、大体日本と関係の深いような船で一体どのくらい。それもわかりませんか、全然資料なし、放置しているということですか。
#28
○政府委員(鈴木登君) 船の数はおよそのところわかり得るようですけれども、それに乗っている船員の数はわかりません。
#29
○竹田四郎君 確かに日本の籍じゃないし、日本の法律が恐らく適用にならないだろうからそういうことをおっしゃるんでしょうがね。しかし、もとは日本の船で向こうに籍を移したのがずいぶんあるでしょう。そして、現実には日本のだれかがその運航を、実際には日本のどこかの会社がやっているということなんでしょう。だから、調べようと思えば調べられないことはないでしょう。しかしそういうのがそのままほうり出してあるというのも、どうもいま船員法のことが問題になっているのにその辺もわからない。しかも、日本ではかなりの――世界にいままで海運国を誇ってきた国として、少しその大ざっぱなところぐらいはキャッチしていなけりゃ、それは日本の船員の労働条件というのは悪く引き下げられるばかりじゃないですか。あるいは便宜置籍船の方がどんどんどんどんふえていくという原因をみずからつくっていることにならないですか。権限はあるいはないかもしれませんけれども、それを運航している日本の会社は恐らく日本の法律に従っているんでしょうからね。その関係を調べれば出てくるんじゃないですか。
#30
○政府委員(永井浩君) 便宜置籍船そのものは、本来法人が他国にまたがっておりますので、非常に把握しにくいということで、たとえば日本が便宜置籍国の法人に出資をするというケースがございますが、直接日本の船会社が出資している場合、あるいは子会社、孫会社を通じて出資している場合、それから外国法人と合弁でやっている場合、非常に複雑なものでございますので、なかなかその実態は把握しにくいのが現状でございます。
 便宜置籍船とほどんど同じカテゴリーと思われまする仕組み船につきまして、これは中核六社だけでございますけれども、これを調べますとおよそ、百八十隻、五百万総トンがございます。そのほか、中核六社以外を含めまして、おおよそ、先ほど申し上げました日本が雇っております外国用船二千七百万トンの三分の一前後ぐらいがいわゆる便宜置籍船ではないかと、このように考えられております。
#31
○竹田四郎君 いま海運局長の話でいきますと、大ざっぱな数字は出るんじゃないですか。それを材料がないからということでそのままほったらかしておいて次の手を打つというのはどうもよくわかりませんな、そういう姿勢が。海運国であり、またこういう問題をやるならそれなりに資料は整えるべきだと私は思うんですよ。そういうものも調べないで次の段階へ進むというのは、どうも私のくせですかな、私のくせではとてもこんなやり方で進むことはできませんがね。
#32
○政府委員(鈴木登君) 実はマルシップもそうでありますけれども、特に便宜置籍船につきましては、それぞれかなり企業の秘密的なこともございまして、実はわれわれいろいろその努力はするのですけれども、なかなか把握しがたいという点はございます。その上にさらに便宜置籍船につきましては、船員法の方も、船舶職員法の方も適用はございませんので、なかなかその把握ができていないのが実情でございます。
#33
○竹田四郎君 ぼくはおかしいと思うんですよ。今度のこの船員法なりあるいはSTCWの条約の批准、それに基づく国内法の関係というのは、そういうのまで日本の籍にしようと、日本の船員をそれに乗り組まして、そして日本の法律を適用しよう、こういう考え方にあるんじゃないですか。そういうことであるならば、日本に帰ってくるべき置籍船が一体何隻ぐらいあるのか、それによって日本の船員の職場がどのくらい確保されるかというものがない限りは、ずいぶん何か船員の職場が一遍に確保されるような書き方ですわね、今度の船員法の書き方は。しかし、現実には、その辺がわからなければ、便宜置籍船を何カ年計画で、どのくらいで日本の法律のもとに置く旗国主義の船にするのかということが明確にならない限りは、幾ら職域の拡大と言ってお経を述べたって、そうならないんじゃないですか。日本にマルシップはこのくらい返ってくるんだ、便宜置籍船はこのくらい返ってくるんだ、そこで条件はこのくらいにして、これだけの船員をここに乗せるから職域の確保になるんだと、そういう、何というんですか、プログラムというのがないんじゃないんですか、これには。なくて、お経みたいにこう唱えているという感じが私はしてならない。職域拡大なら、そういうものを出しなさいよ。そういうものを出してから、これは職域拡大でございます、船員の社会的な地位の向上に役立てるものです、だから船員の皆さんもこれだけがまんしてくださいよ、縦の壁も横の壁もひとつ外して一生懸命やってくださいよと、こういうことに初めてなるんじゃないですか。そういうものをなしに議論させようといったって、これは職域の確保に私はなり得ないと思うんですよ。その辺をわれわれにわかるようにやってくださいよ。そうすれば、私ども、関係の労働者の人にも、こうなるんだからあなたたちこれに協力してくれよと、こういうふうになるんだからひとつ船会社もこうしてくれよと、こういうことが私ども言えるわけじゃない。そういうものが全然わからぬで、やれ職域の拡大だ、やっぱりMO船をつくるためには利子補給だと、こう言ったって、それは納得できないですよ。僕は納得できない。ほかの皆さんは納得できるかもしれぬけれども、ほかの議員の方が納得できるかどうかは、これはこれからの質問だけれども、ともかく私はわからぬ。本当の意味で船員の職場の拡大になるのかどうなのか。乗せる船がこのくらい返ってきますよ、この中の混乗の状況はこう直しますよと、こう言ってくれなければわからないじゃないですか。
#34
○政府委員(鈴木登君) 実は、具体的な数字、どれぐらいマルシップあるいは便宜置籍船がなくなって、純粋の日本船になるのか数字を示せという御趣旨でございますけれども、なかなかその数字は、われわれの方はどうも具的体にお示しできずに残念でございますけれども、やはり便宜置籍船とかあるいはマルシップの発生原因が、日本船の国際競争力がなくなってきたという点にあるのはこれは事実でございますので、日本船の国際競争力を高める方策の一つとして、やはりこういう船員制度の近代化が話題になったことも事実でございます。もちろん、船員制度の近代化は、そのほかに船員の地位の向上ということもございますけれども、やはり船員の数を少なくすることによって日本船の国際競争力を高めれば、あるいは日本船がまたふえるだろうと。というのは、マルシップあるいは便宜置籍船に行っているのがまた戻ってくるだろうと、そうすることによって日本人の船員の職場がふえるだろうということが目的でございますので、私どもはこの法律を制定していただきますと、やはり日本船の国際競争力がふえることによって、従来の便宜置籍船あるいはマルシップが徐々になくなってくるだろうというふうに信じております。
 ただ具体的に、じゃどれくらいがなくなるのかということにつきましては、やはりこの近代化の進展ぐあいといいますか、にも関係することでございますし、何年にどの程度のマルシップあるいは便宜置籍船がなくなって純粋に日本船になるという数字をお示しすることは非常に困難でございます。
 ただ、この船員制度の近代化の問題は、労使も入った場所で、特に使用者も一致団結してやっておりますので、恐らくこの船員制度の近代化が実現されれば、現在マルシップあるいは便宜置籍船を所有している船会社、船舶所有者は、やはり純粋の日本船をふやすべく努力されるだろうと思いますし、それからまた、一昨年あるいは昨年の海運造船合理化審議会の結論でも、今後できるだけ日本人の乗る日本船をふやしていこうというふうな結論を出していただいておりますので、そういう点でも、私ども日本人の乗る日本船がこれからふえていくだろうというふうに考えておるわけでございます。
#35
○竹田四郎君 局長の言うのは、国会なんかどうでもいいという考え方が一つあるようですな。四者が協定して、これでうまくいっているんだからこれでいいんじゃないかと、国会なんか理解しようがしまいが、四者さえ話がわかればそれでいいんだと、こういうのが一つ。
 それからもう一つ、私は根本的に疑問があるのは、これから、MO船に象徴されるように、技術革新によって船が非常に集中管理というんですか、そういうものができるようになってくる、人手が要らなくなってくるということが今度の船員の近代化の問題の中にも入っているわけでしょう。十年ぐらい、何か実験したかしないか、その辺の詳しいことは知りませんけれども、実験したと、こう称しているわけでしょう。だから少なくともいままで二十五、六人で働いていたという船が、今度は十何人かでやれるということになるわけでしょう。そうすれば、一船当たりの船員の数は少なくなることはあたりまえでしょう。これはだれが計算したって少なくなるわけでしょう。じゃ、その船員の行き所はないじゃないですか、船をふやさなければ。船をふやすったって、それは結局、いまあなたの話の中にもあったように、便宜置籍船をなくする、マルシップをなくしていく――なくすると言っても、とりあえずは返してもらうことでしょうね。その問題がわからなければ、減らす方ばっかりの近代化を一生懸命やったって、職場をふやすことの話というのは全然具体的に出してこないじゃないですか。私は、あなた方がそこまでは気がついていなかったと言って謝られるなら、それはそれでいいと思うんですがね。そういうものをつけずに話をしたって国会にはわからぬですよ。四者の間にはわかるかもしれぬけれども、国会にはわからぬですよ、そういう話を言われたって。
 これは、大臣どうなんですか。そういうので国民に理解を求めようと言うんですか。ある程度私は、そういう目標なら目標というものを、プログラムをつくらなければいかぬと思うんですよ。そう言っても、それは船だって十年に一回か二十年に一回ですか、変わっていくものですから、それは同じような数字どおりにいくとは思いませんけれども、どうもそういう目標なしにこの議論をしろという感じがしてしょうがないんですよ。国民は理解できないですよ、これじゃ。だから、いまはそれがなければなくても仕方がないでしょう、それは。しかし、今後そういうものをつくり上げて、国会にも、四者の間にもこれは協議をしてもらう必要があると思いますし、国会にもあるいは国民全体にも討議をしてもらうという材料をやっぱり出してくれないと困ると私は思うんですがね。大臣はおわかりになりますか。
#36
○国務大臣(小坂徳三郎君) ただいま委員が仰せられましたことは、私は大変よく自分では理解できます。それでまた、いま局長から申し上げたことは、決していま委員が仰せられたような意味ではないのでございまして、実体のところが、マルシップとかあるいは便宜置籍船というのが把握できないような状態になっておるので、したがって、それに対してこれをどのように減らしていくかというスケジュールがなかなかできない。それを減らし得る唯一の方法としては、日本の船によった方がコストが安いんだ、運賃が安くなるんだというようなことから、船主あるいは荷主が日本船を活用してくれるというふうにだんだんと変わっていくであろうというようなことを大変正直に申し上げてしまったのだろうと思うのであります。もちろん、われわれが今日までマルシップとかあるいは便宜置籍船というものを把握できない理由は、やはりこれが船会社の一つの営業政策の中で展開されておるもので、そこまで運輸省としても手を伸ばすことができなかったのは事実だと思います。
 しかし、これはいま委員の仰せられましたように、日本の海員諸君の職場を拡大するということのためには、どうしたってこうしたものを日本籍船にどんどんと変えていかなくちゃいけないし、またその変え得るためには、やはり迂遠なことであっても、経費が安く、運賃が安くなるというものでないとなかなか変わっていけない、そうしたことを申し上げたのでございますが、ただいま委員の仰せはまことに私にはよくわかることなんで、今後この法案が御認可と申しますか、決めていただくならば、われわれとしても積極的に船主あるいは荷主に対して日本船を使うような方向を進めてまいりたいし、またその中での海員の職場の確保ということを十分配慮していきたいというふうに思っておるのでございます。
#37
○竹田四郎君 大臣がそういうふうにおっしゃられましたから、その点は私も理解できるし、これからそういう方向でひとつ進んでいただくことが政府のやる役割りだと、ほかではなかなか調べられないけれども、まあ政府ならいろんな関係で調べられるということがそうだと思うんですが。
 そこで、便宜置籍船というのは日本では、どうなんですか、本気でこれは世界からなくしていくという、そういう気持ちがあるんですか。私は、どうもそういう気持ちがないからそういうところを調べないんじゃないかと思うんですよ。便宜置籍船は大いにあった方がこれいいと。いま発展途上国や東欧の諸国ではこの便宜置籍船をなくするという決議を出しているでしょう、UNCTADの海運の何かそういう関係に。そういうものに対して、日本はどうも便宜置籍船を残しておけ、そういうふうな決議に加わっているんじゃないですか。これはおたくで出した雑誌だよね。「トランスポート」、八一年の十月ですから、去年の秋出したものですよ、これ。これに書いてあることを読むとまことに私はびっくりするんですが、ここの四十三ページ。これは大臣もいつか読んでおいてほしいんですが、四十三ページに書いてあります。書いた人は運輸省のいま大臣官房人事課付、前海運局外航課定期船同盟憲章企画室長の荒井正吾さんという人、こう書いてありますよ。「わが国の立場は先進国側の基本的考え方を支持し」、これは便宜置籍船は置いといた方がいいという海運自由の原則に基づいているんでしょうね。「ともすれば崩れがちな他の先進各国の態度をできるだけまとめていく点に重点があった。」と書いてある。だから便宜置籍船は――これはその後で決議案がその段のおしまいの方にあるんですけれども、この途上国の決議に対して先進国は反対していた。この決議に日本が「先進各国の態度をできるだけまとめていく点に重点があった。この点については日、米、英がみごとなまとまりのある行動をし、先進国内部での主導権を維持することに成功した。」と、こう書いてある。どうもこれを見ると、便宜置籍船を残しておけ残しておけと、発展途上国がそんなものはあっちゃ困るというのに対して、一生懸命アメリカや英国のまとめ役を日本がやった、こう書いてあるじゃないですか。これは一体どういうことですか。
#38
○政府委員(永井浩君) 便宜置籍船の問題につきましては、確かにそれぞれの国の職場の確保という問題はございますが、反面なぜこの便宜置籍船が発生したかということを考えますと、やはりその船の国際競争力の問題あるいは企業の為替ヘッジの問題、その他いろいろな問題がございます。そういうことでこういった便宜置籍船が近年相当ふえてきたという経済的な情勢がございます。そのほかに、従来から、便宜置籍船というのはサブスタンダード、つまり水準以下の技術の劣った船あるいは労働条件の悪い船ということで、とかく事故を起こしたりなんかするという例はございますが、こういった意味で、サブスタンダード的な船を排除するという意味では確かに便宜置籍船が大きな問題になるわけでございまして、この点につきましては、便宜置籍国でありますリベリアあるいはパナマ等につきましても、関係条約を批准するとか、あるいは近く批准する準備を進めておりまして、そういった欠陥を是正する、改善するという方向にございます。
 それからもう一つは、そういったサブスタンダード的なという意味以外に、いわば国際競争力のまだついてない発展途上国の海運の発展を妨げるんじゃないかという、いわば海運の南北問題、この二つが問題になっているわけでございまして、後者については、南北問題、いろいろな見方があろうかと思いますが、先進国であります、ここに出ております日、米、英等につきましては、この便宜置籍船というものはいま申し上げましたような経済的な必然性があるものでございますので、これを一挙に廃止するということは広い意味での輸送効率を阻害するということもございますので、いわゆる発展途上国グループが主張しておりますような便宜置籍船の一挙の廃止というものには反対しているわけでございます。
 今後、こういった発展途上国の言い分と、それから先進国、特に海運自由を唱えております先進海運国との間で十分意見を交換して、どのようにしたら世界の海運が発展していくかというのを十分意見を交換していきたい、こういうのが日本の基本的な態度でございます。
#39
○竹田四郎君 海運局長、うそをおっしゃいなさんな。この決議案に一遍に便宜置籍船をなくするなんということは何にも書いてないじゃないですか。どこに書いてあるんですか。その第一項は、「登録要件を強化することによって、便宜置籍を徐々に、かつ、前進的に通常置籍に転換することを推奨する。」と書いてある。一遍になんてどこにも書いてないじゃないですか。「徐々に」「前進的に」と書いてあるんですよ。それに対して日本は、この決議案は賛成四十九、反対十八、棄権三で、日本はこの反対の十八の中に入っているんでしょう。どうしてこういうことを、片方では船員の職域拡大だ何だかんだ言っていながら、片方の国際会議の中じゃこういうことをするんですか。よくわからぬですな、私は。これは「トランスポート」に書いてあるんですからね。運輸省が監修した雑誌ですよ、これは毎月出ている。これはどうもわからぬですがな。
#40
○政府委員(鈴木登君) 便宜置籍船の問題は、私どももSTCW条約の批准とかあるいは近代化によりまして、やはり徐々に正当な国籍の方に戻していくべきだろうという点については、海運問題も船員問題も変わりないと思います。
 ただ、短期的な物の見方と長期的な物の見方とやはりございまして、短期的には、そういうものを余り極端にやりますと、やはり国際会議というのはこんがらかりますし、日本の海運もこんがらかりますし、それから正当な輸送もできないということから、やはり徐々にやっていこうということだろうと思います。私どもの方も、船員制度の近代化もあるいはSTCW条約の方も、両方マルシップあるいは便宜置籍船と絡んでくると思いますけれども、やはり近代化の方も一挙にじゃなくて、現在の近代化の実験はあくまでも最も初歩の段階でございまして、この近代化の実験はこれから何年もあるいは十数年も、これから長い間、恐らく無限軌道的に近代化の実験というのは進めていくという必要がある問題だろうと思っております。したがいまして、それが完成されていくと同時に、徐々にまたマルシップあるいは便宜置籍船の方もなくなって日本船がふえていくというふうな形になってくるのだろうと思います。したがいまして、ある程度そのUNCTADの決議の問題につきましては、かなり短期的な物の見方と長期的な物の見方がございまして、長期的にはわが国の政府の方も、やはりそういうサブスタンダード船をなくそう、あるいは便宜置籍船をなくそう、マルシップをなくそうという方向にございますけれども、いま急に一挙にすぐそれをやるということはかなり混乱を招くということでそういう結論になったのだろうというふうに思うわけでございます。
#41
○竹田四郎君 この前にはこう書いてあるんですよ、その一段上には。「これに対し先進国側は、便宜置籍船の安全、海洋汚染等の問題と思われる点は改善すべきだが、その方法として」云々と書いてあるんですが、なくするということは一言もないんですよ、先進国側で。そうすると、いま言っているのとこういう国際会議で言っているのと、二枚舌を使っているということですか。どうも私はこの点よくわからないから、これはっきりしてもらわなければ――国内では適当なことを言っていて外へ出ていけばやるという。もう日本の外交というのは、対外姿勢というのはそういうのが得意かもしれませんな。核不使用の問題でもそうだしね。どうもこの点はもう少し――委員長、はっきりしてください。これ理事の皆さんにもお願いしますが、はっきりしなければ――言っていることとやっていることと違うんですからね。
#42
○小柳勇君 関連。
 これは以前から便宜置籍船の事故が非常に多い。それで、もう十年も前に事故がありまして、一体リベリアには本当にそんな会社があるのかと言ったら、全然会社はないと、もうペーパーカンパニーだというわけですね。幻の会社、そこに船が籍を置いて、それが世界の海を乗り回しているという、先般の銃撃を受けたものもそうでしたけれども。したがって、この運輸委員会でも再三再四便宜置籍船の問題が問題になっています。いま竹田君の質問は非常に重要なところですから、運輸省はこの便宜置籍船を減らそうとするのか、これを自由化の方向でもう承認しておるのか。大臣がはっきり方向を決めて、その上で国内的な問題と国際的な問題を、対応はこうしますとこの際はっきりしないと、この法案自体論議しても本当に意味がないと思いますから、大臣、必要があれば休憩してもらって、委員長に休憩をお願いして、運輸省の方針を決めてください。その上で答弁してください。提案をいたします。
#43
○政府委員(永井浩君) 先ほどのUNCTADの件でございますけれども、UNCTADの決議の最後にございますように、政府間の準備会合というものがいま開かれておりまして、日本政府もこれに出席いたしております。それで、基本的にはいまこの中身をどうするかということで政府間で議論をしておる段階でございますが、基本的な考え方としては、こういった経済的な必然性に伴う便宜置籍船というものを、政治と申しますか、政策的に断ち切るというのは無理ではないかと。むしろ、日本の場合で申し上げれば、日本船の国際競争力をつけることによってこれらの船を減らす、日本の船のシェアをふやしていくというのが一番の自然な流れではないかというのが私どもの基本的な考え方でございます。
#44
○小柳勇君 竹田君はもう質問をやりませんから、もう少し議事進行について諮りますが、もう一回重ねて言いますけれども、船の籍を置いた、船籍は持っているのと、それから船員はもうばらばらの外国の船、それで金の取引はアメリカの銀行でやっている、そんな船が世界を横行しているわけですよ。したがって、私はこういうふうな条約ができて、承認される機会に、国際的にも便宜置籍船は減らす方向で、どこで事故があっても完全に補償できる、また国際的にも海運というものを秩序あるものにするという方向に日本は方針を確立すべきではないかと。全部この矛盾を、幻の会社、あるいはだれが乗っているかわからぬような船、それで金の取引はアメリカなどの銀行、そういうようなことで自由化などということは言えぬのじゃないかと思うんですよ。したがって、まず便宜置籍船についてはこれをちゃんと旗国主義で減らす方向にいくと、そういう確認ができるのかどうかですね、海運局長。まずそれをひとつ答弁してもらって、その上で国際的にはこういうふうな対応をいたします、国内的にはこういたしますと、その三つの問題を答弁してください。
#45
○政府委員(永井浩君) 確かにいま先生の御指摘のように、非常に置籍国、あるいは経済関係、法律関係が複雑な例が多うございますが、具体的に申し上げますと、たとえば日本で油の事故を起こす、あるいはその他の事故を起こした場合には、それぞれの条約に基づきまして、日本が批准しております条約に基づく国内法が適用になりますので、十分にその責任関係は追及できると、このように思っております。ただ、そういった問題が一般的にございますので、私どもとしては、できれば日本の貨物は日本船で運ぶのが一番いいと、このように考えておりますが、先ほどから申し上げておりますように、それなりの経済的必然性があって発生した形態でございますので、これは一片の行政措置等でこれを禁止するというのはかえって弊害が出るのじゃないか。むしろ日本船の国際競争力をつけることによって、日本船を整備することによって日本の輸出入貨物の日本船によるシェアをふやしていきたい、これによって徐々に便宜置籍船を減らしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#46
○小柳勇君 それは答弁になっていない。そらしているんですよね、答弁を。単刀直入に、便宜置籍船については、言うならもう幻の海運ですよ。したがいまして、そういうものは減らすという方向に運輸省としては考えを決めるのかどうかですよ。でないと将来も、いまおっしゃったように、日本の船をふやして自然的に便宜置籍船を減らすといったって、これ何年先になるかわかりませんでしょう。局長自体が確固たる自信、ここ一、二年のうちにそんなに船を減らしますと言う自信はないと思うんですよ。したがいまして、方針としては日本はこうですと。そうすると国際的にもそういう発言ができましょうに。でないと、いつまででも便宜置籍船を、自由と言いますけれども、経済的な自由とおっしゃるけれども、それは本当の自由じゃないですか。脱税、あるいは補償もできない、ただもうけ主義のそういうようなものは本当の経済の自由じゃないでしょう。秩序でもありませんでしょう。だから、そういうものは日本の海運としてはちゃんと海運の方針を確立して、便宜置籍船の方向については、反対とまでは言えないならば、減らす方向ということを言明してください。
#47
○政府委員(永井浩君) 再度繰り返すようでございますが、減らす方向ではございます。ただ、その方法といたしまして、日本船の競争力をつけると、日本船の整備を進めることによって減らしていきたいと、このように考えておるわけでございます。
#48
○竹田四郎君 便宜置籍船は、日本だけがそうやれば便宜置籍船が世界からなくなるというものですか。あなたが言っているのを見ますと、日本のいい船をつくって、効果のある船をつくれば便宜置籍船はなくなると、こういう言い方ですな。日本だけがそうすれば便宜置籍船は世界からなくなっていきますか。そんなことないでしょう。ここにも書いてある。日、米、英みごとなまとまりのある行動だから恐らくやっているんでしょう、こっちだって、日本がやればアメリカはそれに従いますか。そうじゃなくて、便宜置籍船というものをなくしていこうじゃないかという国際的な取り決めがあって初めてできることでしょう。それは日本が圧倒的な船を持っていればいいですよ。独占的な立場に日本のシェアがあればいいですよ。それはできるでしょう。そうじゃないでしょうが。どうしてできますか、日本だけやれば。便宜置籍船、これいまあなたも経済の原則からと、こういうふうにおっしゃっていた。結局安いからでしょう、はっきり言えば。コストが安いから運賃も安くして荷物をとっちゃうからなんでしょう。そういう状態だから、一遍にこれをぎゅっとねじって便宜置籍船をなくするということもなかなかできないという点もあるんでしょう、経済的な関係が。そうなってきますと、日本だけがそうすれば、便宜置籍船は世界からなくなって、海運の市況の非常な混乱というのは防げるんですか。私はそうは思わない、ほかの国が便宜置籍船をふやすにすぎないと。そうなってくれば日本の船員の職域の拡大という問題にも絡んでくるし、日本の船会社あるいは海運の運航会社、こういうものの利益にも絡んでくる。だから私は国際会議が必要だろうと思うんです。
 それで、海上保安庁からもお見えだろうと思うんですけれども、このマルシップとか便宜置籍船とか仕組み船などの海難事故というのは相当あるんじゃないですか、実際問題として。これをやめさせていくことによって、今度の船員の近代化、船員の労働環境の向上というものも初めて生まれてくるんじゃないですか。これを抜きにしていたら、海員組合の人が、船の中で休むときに快適な個室を与えてくれ、そこではもうゆっくり疲労がなくなってしまうような、新しい労働の活力が出るようなひとつ休憩所をつくってくれと言ったって、できやしないですよ、そんなもの。率直に言って船主の側から見ればあるいは荷主の側から見れば、こんなものむだな金だと、こう言うに決まっていますよ。もっと安いところへやりますよ。そっちの方が運んでくれますよ。保険料は少し高くたってそっちの方がいいですよ。私はこういうことなると思う。
 これは海上保安庁からも海運局長の方からもひとつ御答弁ください。
#49
○政府委員(勝目久二郎君) 外国船の海難状況でございます。五十二年以降の五カ年間の数字を申し上げますと、五十二年が百八十五隻、五十三年が百五十七隻、五十四年百四十九隻、五十五年百六十一隻、五十六年百四十九隻ということで、大体百五十隻程度の海難の隻数の数字が出ております。
 これらの船舶は漁船をももちろん含んでおりますし、いろいろな運航の実態がございますので、どれが便宜置籍船かどうかということについては把握しておらないという状態でございます。
#50
○竹田四郎君 こっちでも便宜置籍船の内容はわからないということですね。事故を起こしたんだから、その辺のことは調べればわかるはずですよ、それは走っているのを調べると言ったってこれはなかなかむずかしいでしょうけれども。だから、そういう便宜置籍船ということについてのどうもポイントを持っていない、だから調べない、わかりません、こういうことに私はなると思うんですね。事故を起こしているんだから、調べようがあると思うんですよ。
 これは運輸大臣、どうも便宜置籍船というのはいろいろ監督行政の対象にやっぱりしていないということですな。これは野方図にしておくということですか。運輸大臣、その辺がどうもわれわれによくわからぬ。
#51
○国務大臣(小坂徳三郎君) ただいまの御所論は、まことにどうも手の出ないものがあるということがはっきりしたわけでございまして、この点につきましては、外国の船でもあるし、すべて外国人の運用する船であるということでわれわれの調査も十分でないわけでございますけれども、この法律でSTCW条約を通過さしていただくならば、今後はそうした面から見ての便宜置籍船あるいは仕組み船、マルシップ等に対しても、相当にこうした問題についてわれわれとしては調査もある程度やれるし、また勧告もできるというふうに考えておるのでございまして、今日までの状態は、委員の御指摘のとおり、まことに何のことやらわからないと言わざるを得ないので、まことに申しわけないのでありますが、これを通していただいて後、われわれとしては一つの国際的な条約を基盤にして、もう一歩これらの海運の実態に行政も入っていけるというふうに考えております。
#52
○竹田四郎君 どうも大臣に謝られちゃうと議論しにくくなるわけですがね。しかし、もう一回私は念押しをするんですが、いまのような態度でSTCW条約が批准されても、マルシップとか便宜置籍船とかというようなものに対して、まあマルシップについてはこれは恐らく旗国主義でこれはかなり監督取り締まりはいくだろうと思いますが、便宜置籍船には僕はこれいきそうもないと思うんですね。そうなってくると、大臣、謝るのは結構なことなんですがね。謝られても改善されるなら結構ですよ。改善されないであなた謝られても私困るんですがな。
#53
○国務大臣(小坂徳三郎君) 私の発言でござますので私から申し上げますが、ただ謝ってばかりいるわけじゃございませんで、ただいま委員のおっしゃったように、マルシップに対しては今後は相当にはっきりとわれわれの行政権が行使できると思います。なお便宜置籍船につきましても、ただしま申し上げたような条約の基盤の上に、いままでのような放任、放置ということでなしに努力をいたしますので、その点をひとつお酌み取りをいただきたいと思います。
#54
○政府委員(鈴木登君) 便宜置籍船につきましても、今回のSTCW条約につきましては私どもの方で監督していくということになっておりまして、これは条約の第十条と附属書一−四規則で決められておりますので、今回船員法百二十条を改正しまして百二十条の二、それから職員法につきましては二十九条の三という規定を置きまして、便宜置籍船の方も私どもの方で立入検査するなり監督していくようになりましたので、十二分にその点を指導してまいりたいと思います。
#55
○竹田四郎君 さっきの海運局長の話だと、便宜置籍船は、日本が新しい船をつくってそれによって日本の船に注目をされることによってなくしていくんだというようなお話だし、いまのお話ではかなりこの条約あるいはそれに伴う法律改正で便宜置籍船も直せるんだと、まあこういうようなお話なんで、どっちが本当なのか、またよくわからなくなってきたわけですけれども、私は便宜置籍船が絶対的に悪いということじゃないと思うんですよ。そこの安全基準だとか、あるいは運賃を攪乱するとか、そういう問題に悪さがあると思うんですよ。船そのものが悪いというわけじゃないですよ。あるいは船員に余りにも過酷な労働を押しつけるとか、そういうことが直っていれば何も日本船だって競争できるわけで、そういう点が取り締りが非常にルーズであるから、船は危ないし日本船が高くついちゃうと、こういうことなんだから、向こうも高くなれば同じなんですからね。だから、そういうような点が本当に具体的にできるかどうかということが非常に心配なんですが、たとえばマルシップ、これに日本の乗組員は、先ほども数字が出ましたけれども、非常に少ない人しか乗っていませんね。一体どういう職務で乗っているんですか、こういう人たちは。その職務はどういうことなんでしょうか。何か非常に少なかったですね。人数はいいですが、どういう職分で乗っているんですか。
#56
○政府委員(鈴木登君) このマルシップに、先ほど申しましたように、約千七百人日本人が乗っていると申し上げましたけれども、この千七百人のほとんどは職員だろうと思います。
 それからなお、電波関係では必ず日本人を乗せなきゃいけないというふうになってございますので、通信関係は全員日本人が乗っておると思います。そのほかは、この職員のうちでも船長とか機関長とか上級船員が恐らくこの約千七百人のうちの大部分を占めるだろうというふうに推定しております。
#57
○竹田四郎君 それが、今度のこの条約とそれから法律改正によれば、これはいまの千七百名というのは一体どうなるんですか。日本の船員というのはどのくらいふえることになるんですか。
#58
○政府委員(鈴木登君) いま申し上げましたこの乗組員、マルシップの乗組員七千人余りと申しましたけれども、このうち、これは職員と部員とがございまして、日本船の場合は、たとえば五千トン以上の船につきましては、職員は法定職員が通信関係を入れまして九名でございます。そのほかの乗組員は部員で、船員法七十条で六名以上を要請されておりますので、合わせますと十五名以上必ず乗っけていかなければいけないということになるわけでございます。したがいまして、これがマルシップの形をそのまま……
#59
○竹田四郎君 十六名じゃないんですか。十五名なんですか。
#60
○政府委員(鈴木登君) まあ司厨員などは、これは別に法定しておりませんので、司厨員は必ず――省令の方では書いてございますけれども、それを入れますと十六名ということになります。船員法及び船舶職員法で直接書いておりますのは十五名。それから司厨関係の人間が、法律で、省令の方で一名書いてございますので、それを入れますと十六名ということになりますけれども、そういう数字でございます。
 ただ、そのうち、今回の法律、STCW条約が批准されますと、このマルシップがそのまま船舶職員法の適用になりますので、船舶職員法上の職員は恐らくかなりふえると思います。
 ただ、船員法上の船員は、これは資格関係はございませんので、いわゆる部員は資格に関係ございませんので、どのくらいふえるかはちょっと私どもの方で把握いたしかねるような状況でございます。
#61
○竹田四郎君 どうもその点、ますますまたわからなくなってきたんですが、私が知らないからわからないのかもしれませんけれども。
 それじゃほとんどふえないんじゃないですか。マルシップを旗国主義に基づいてやるということになると、もう少し具体的にどのくらい職員がふえるか、あなたはかなりふえるでしょうと、これは言っているんですが、部員の方はふえないでしょう、こう言うんだね。これじゃ議論にならないじゃないですか、あなた。その辺をはっきり言ってくれませんか。海員組合の人は、どのくらいふえるかと思って、局長の口を見ながら答弁を聞いているんですよ、みんな、率直に言って。私はわからぬけれども、船員組合の人は、あるいは海員組合の人はわかるんですよ、私をごまかしたって。私はごまかされてもいいけれども、海員組合の人をごまかすわけにはいかぬですよ。どうもいまの話はよくわからぬ。
#62
○政府委員(鈴木登君) 実はこれ見通しでございますので、私から具体的な数字を申し上げるのは非常にむずかしいわけでありますけれども、いまの三百隻に、たとえば職員の数を九名としますと、三、九、二千七百人になりますか、それだけの船舶職員は要るということになります。
 それから部員が何人乗っているかはこれはわかりませんけれども、三百隻に平均、どれくらい乗っておりますか、十人といたしますと、三百隻掛ける十人で三千人でございますか、マルシップが純粋の日本船になるとすればそれくらいの数になるだろうと思います。
 ただ、いま申しましたように、部員につきましては、これは法律が現在も施行後も一緒ですので、どのくらいいま申し上げました数字が――現在恐らくそれは全部外国人が乗っておると思いますけれども、日本人にかわるかはちょっと推定できかねるわけでございます。
#63
○竹田四郎君 いまの話もよくわからぬですわな。三百隻あって、それが旗国主義になると、九人というのは職員ですな、それが全部マルシップの船に乗りかえるわけですか。そうすると、いままではマルシップには日本の職員というのは全然乗っていなかったということですか。部員は十人ぐらい乗っていたということですから、そうするとさっきの話とはちょっと違いますね。これで十九人になりますからね。さっきは十六人あるいは十五人と言っておりましたからね。その数字は全然合わないんですが、まあ余分に乗っているという意味で十人なのかもしれませんけれどもね。これからこれは日本の旗国主義の中に入るんでしょう、マルシップは具体的に。今度の条約の批准と法律改正によって入るんでしょう。入るんなら具体的にどのくらいふえるということはわかりそうなもんですな。船員法だって、旗国主義に基づくということになればもっとはっきりするんでしょう。
#64
○政府委員(鈴木登君) 職員の数字だけについて一応推定をしてみますと、マルシップ三百隻、まあ九人以上乗っている船もあるかと思いますけれども、一隻当たり九人乗らなきゃいけないとした場合には三、九、二千七百人でございます。ところが、それが現在のところは、これ私ども手持ちにありますのは、五十六年十二月一日で調べたのでは約千七百人乗ってございます。
#65
○竹田四郎君 それは職員ですか。
#66
○政府委員(鈴木登君) これは内訳はわかりませんけれども、私先ほど申し上げましたように、恐らく全部職員であろうという推定でございます。それで残りは、それを引きますと千人ぐらいでございます。
 ただ、現在乗っております約千七百人といいますのは、実は私どもの方に届け出といいますか、私ども行政指導した数字でございまして、マルシップ船は日本から外国に貸すときにいわゆる運輸大臣の許可を得ておりますけれども、これは海運局で許可業務をやっておるわけでありますけれども、その許可のときに、私どもの方からその船舶所有者に対して、できるだけ日本人を乗せるようにと、船舶の安全上から日本人を乗せるようにという形で行政指導いたします。その行政指導したときに把握した数が千七百人でございます。したがいまして、行政指導しましても、その船が一度外に出てしまいますと、これはもう極端なことを言えば、きょう乗っけて、あす出航するけれども、あさってその日本人の船員をおろして外国人の船員を乗っける場合もあるやもしれません、これは把握しておりませんけれども。これは特に外国航路、三国間航路なんかに就航しておりますときにはほとんど日本の港に戻ってきませんので、私どもの方が船員労務官を派遣して、行政指導したとおり日本人船員を乗っけているかどうかということは非常にチェックできない場合もございますので、私どもの方に届け出のあったのが千七百人ということで、実際に千七百人乗っているかどうかはこれは私どもの方ではちょっとわからないわけでございます。
 したがいまして、私どもの行政指導したとおり、当初予定どおり千七百人、三百隻に千七百人近い日本人船員が乗っておるとした場合に、これに全部完全な形で船舶職員法を適用した場合にはプラス千人ぐらいの船舶職員が必要になってくるというようなことでございます。
#67
○竹田四郎君 部員の方はどうなんですか、それじゃ。先ほどの予備員の場合でもその他のところを見ても、やっぱり部員の方が待機とか何なりで多いわけですね。部員の方はじゃプラスにならないんですか。職員の方はそれだけプラスになるけれども、部員の方は何かさっきの話では余り数字がはっきりしないようなことなんですが、これはどうするんですか。これは外国船員をやっぱり乗せておくんですか、それとも日本の部員に入れかえるんですか。どうなんですか、これ。
#68
○政府委員(鈴木登君) 部員につきましては、資格を特に必要と――現在のところ船舶職員法上は資格を必要としませんが、それが今度STCW条約を批准いたしますと、当直する部員につきましては幾らかの資格を要求されてございます。したがいまして、その資格をこれからチェックしていくわけですけれども、ただ、かなりその資格は職員ほど、何というのですか、むずかしい資格ではございませんので、これはかなり日本人のほかでも、外国人でも持っているような程度の資格でございますので、部員につきましては現在でも――かなり日本人の部員がふえるとは思いますけれども、どれくらいふえるかはこれは推定が非常に困難でございます。
#69
○竹田四郎君 どうも何をねらっての船員の近代化か、いよいよ、ますますもって今度の船員法、船舶職員法の改正というのがよくわからぬですがね。職域拡大という問題が非常に多くありますね。それで一方では、海運局長の話じゃ、恐らくMO船をふやして日本の船の優秀さを強調することによって職域をふやすんだ、こういうふうにおっしゃるんですが、どうもマルシップがとりあえずは一番近いところのような気がします、職域拡大の立場ではね。日本の船員を乗せるという意味では一番近道のような気がします。で、船員の失業というのがなければそれは私はいいと思うんですよ。需要が多くてもう失業ゼロというような状態ならいいですけれども、どうもそういう状態じゃなさそうですわな。そうなってくると、このマルシップというものを一体どう考え、どうここで職域の拡大を確立していく一つの手段にするのか。全部じゃないと思うんですが、大きな一つの手段だと思いますよ。これについてどうもはっきりしないんですね。船舶職員ははっきりするんですが、部員の方ははっきりしないんですね。これではどうもわれわれが一生懸命――私はこの二時間やるのに何時間か勉強したんですが、果たしてそれだけ勉強した価値があったのかどうなのか、非常に私、自信をなくしてきましたね、これ。どうなんでしょう、大臣、これだけ前書きがりっぱであるとすれば、マルシップぐらいについては、便宜置籍船はこれはむずかしいとしても、マルシップぐらいについてはもう少し職域拡大という問題が浮かび上がってこなくちゃいかぬと思うんですがね。これじゃちょっと何を審議しているのかわけがわからぬです。どうですか、船員局長。
#70
○政府委員(鈴木登君) お答えいたします。
 実は問題が二つございまして、一つは船員制度の近代化の問題。これはおっしゃるとおり、日本人の乗り組み体制を近代化することによりまして日本船をふやそうというのが、これはマルシップとか便宜置籍船とは直接関係ございません。ただ、日本船の国際競争力がふえてくれば、自然発生的といいますか、副次的効果といいますか、としてマルシップとかあるいは便宜置籍船がだんだんなくなってくるのではなかろうかというのが一つの問題でございます。
 それからSTCW条約というのは、これは近代化とは一応また別の次元の問題でございまして、STCW条約を批准すると、便宜置籍船というのは関係ございませんけれども、マルシップというのは、従来日本の法律、特に船舶職員法でありますけれども、適用がなかったのが今後適用するということになります。これはSTCW条約がいわゆる旗国主義を採用してございますので、マルシップにも船舶職員法を適用せなければいかぬ、日本の法律を適用せなければいかぬということになります。日本の法律を適用いたしますと日本の船舶職員を乗せざるを得なくなる。従来マルシップは、日本の船員も乗っけている船がありますけれども、それはそれぞれ船によりまして、大ぜい乗っけている船とほとんど乗っけていない船といろいろありますけれども、日本の法律どおりに日本の船員を乗っけなければいかぬ。そこでそういう点の副次的効果として、そちらの方でも日本の船員の職場が一応ふえるだろうと。
 それから便宜置籍船につきましては、条約を適用いたしましてこの法律を施行いたしましてもこれは全然関係ないわけでありますけれども、ただ、条約上日本の船員労務官、あるいは海上保安官が外国船に対しても監督権を行使できる。監督いたしますときには条約どおりの、それに決めているような当直体制をとっているかあるいは適正な職員が乗っているかどうかを監督できるとして監督しまして、非常に危険な場合には出航停止まで命じることができるというふうにこれは条約がなっておるわけでありますけれども、そうすることにすればあすこへ行っても取り締まると言って出航停止を命じられる、こちらでも出航停止を命じられるということになれば、やはり便宜置籍船よりはむしろもともとの正しい本国、旗国に船を置いておく方がいいんじゃなかろうかというふうな国際環境にもなってくるのではなかろうか。そうするとまた、便宜置籍船も徐々に減少してくるのではなかろうか。
 これはあくまでも推察ですけれども、そういう問題でございますので、両方とも、幾らか船員の職場の開拓ということではSTCW条約の方も関係ございますけれども、近代化のようにじかにダイレクトにそれを目的としたものではございません。
#71
○竹田四郎君 非常に私は残念ですけれども、この二法の改正というものというのは、かなり皆さんの挙げているのは船員対象の問題としていろいろ挙げているわけです。いまのお話を承っていると、どうも目標、目的が違っているんじゃないかという感じすらするですね。本当に船員の社会的地位を拡大していくための構えといいますか、姿勢というんですか、どうも非常に弱い。だから、そっちの方は百年かかるか、二百年かかるか徐々にやっていこうというようなことだとしか思えないですね。
 海運局長に伺いますが、ではMO船はいま大体たしか千二百の中で四百ぐらいあるというのですがね。これは何年計画でMO船のような船を日本の外航船舶に割り当てるんですか、何年計画で。
#72
○政府委員(永井浩君) MO船と一口に代表されて言われている船でございますが、私ども昭和五十四年度建造以降の船につきましては、いわゆる超合理化船ということで、国の計画造船――これは開発銀行融資対象の船でございますが――につきましては、超合理化船というものに限定しております。したがいまして、年度によって多少の差はございますけれども――失礼いたしました、高度合理化船ということで融資の対象にいたしております。今後つくる船はすべて計画造船に関する限りは高度合理化船に限定しております。
#73
○竹田四郎君 何年計画でそれをやるんですかって聞いているんです、私は。いままでのことは聞いちゃいないんですよ、いままではもう四百隻程度つくっているというのは数字がはっきりしているんですから。今後一体どうするのかと聞いているんです。何年計画で――あなたの話では、高度合理化船というものを日本の船がほとんど全部やって、それによっていろいろ悪い船を追っ払うと、こういう趣旨でしょう。だから、一体百年かかってそれをつくるのか、十年かかってやるのか、五年かかってやるのか、三年でやるのか、そのことは当然問題になるでしょう。だからそれを聞いているの。大体外航船舶千二百隻ぐらいあるだろうと思うんですが、大体そのぐらいだろうと思うんですが、いま、この前のお話でも四百隻ぐらいMO船があると、こう言っているので、今度はそのあとのものを一体どんなふうな計画で、それでカバーしていくんですかと聞いているんですから、それに答えてください。
#74
○政府委員(永井浩君) 船は時代によって陳腐化しますので、これは半永久的に続くということでございますけれども、とりあえず、昭和五十六年度から五十九年度までに千三百万総トン、年間三百万総トン程度を考えております。
#75
○竹田四郎君 五十九年、何年。
#76
○政府委員(永井浩君) 昭和五十六年度から五十九年度まで千三百万総トンが現在の計画でございます。
#77
○竹田四郎君 そうすれば、いわゆる私どもMO船MO船というふうに聞かれているからMO船ということで言っていただいた方がよくわかるんですが、外航船舶のうちのどのぐらいの割合を占めるんですか。――そんなものわかりそうなものじゃない。そんなものわからないでどうするんだよ。
#78
○政府委員(永井浩君) 約三割でございます。
#79
○竹田四郎君 日本の船が外航船舶の三割を占めたら、さっき言った悪い船ですね、悪い船はどのぐらいなくなって、日本の船員の職域はどのぐらい広がるんですか。――あなたそう言っているんだから、そういう質問に対して答えられるはずじゃない。
#80
○政府委員(永井浩君) これは、合理化船が三割程度ということでございますが、そのときの海運の市況その他によりまして、非常に市況が落ちるときには日本船のシェアが落ちるというようなこともございまして、少なくとも合理化船そのものは残るといたしましても、不経済船は海外売船等、こういうことが行われますので、一概には言えないんじゃないか。仮にいまと同じトン数で維持していけば、三割に相当する約四百隻の分が合理化されるわけでございますので、その分だけは、合理化の分だけ船員の数は減ります。しかし、逆に貿易等が拡大しますと当然日本商船隊の量がふえるわけでございますので、その近代化によって減る人数と、それから日本商船隊、あるいは商船隊の中の日本船のシェアのふえ方によって、船員の職域の拡大、あるいは現状維持と、そういったものが大きく左右されると、このように考えています。
#81
○竹田四郎君 これまたよくわからないね。あなたの一番最初の便宜置籍船のときの話では、そういう船をつくってやることによってそういうふうなのを追っ払っちゃうと、こういう話だったじゃないですか。いまの話だと、何かそういう船をある程度つくると商船隊の量がふえるなんて、またどこかから用船してきて、また外国人を乗せてということになっちゃうんじゃないですか。もとのもくあみになっちゃうんじゃないですか。どうもおっしゃっていることがよくわからない、私には。聞けば、今度は海運の市況のよしあしによって何だかんだと言ってほかの要件を入れて話をほかへそらしてしまう。そんな説明の仕方ないですよ。そんなことはわれわれわかっているんだよ。景気の波のあるくらいのことは私だって知ってるよ、あなたに教えてもらわなくたって。しかもそれが激しいってことぐらい、私はちゃんと知ってるよ。いまそれを持ち出してきて、景気がよくなればって、景気がよくなれば雇用がふえるのあたりまえのことだよ。そんなこと答弁にならないよ。
#82
○政府委員(永井浩君) いまの高度合理化船と在来型の船、仮に高度合理化船は現在実験船としてやっています十八名、それから通常の在来型ですと二十五、六名、その差七名ぐらいというのが当然高度合理化船になれば減るわけでございます。ところが一方、日本船が過去においてずっと減ってきております。先ほど申し上げました昭和四十五年、隻数は申し上げませんでしたけれども、千五百隻が、ずっと減ってきております、トン数は少しずつふえておりますが。そういった関連を申し上げますと、この分だけで大幅に隻数がふえるということではなくて、やはりそのときの情勢によって、年度によってずいぶん差があるわけでございます。したがって、長期的にマクロの数字を用いて計算しないとわかりませんが、現段階では、高度合理化船の減った分とそれから日本船がトン数がふえてきた分との差によってどのぐらい職域がふえるかということは、ちょっと計算がむずかしいということでございます。
#83
○竹田四郎君 ますますわからなくなってきた。STCWの方は余りそういうこととは関係ないと。船員の、船の近代化によって職域をうんと拡大していくんだというお話が、またわからなくなった。――舶は大きくなるでしょう、トン数は。人がふえるわけじゃない。トン数がふえたら人がふえるってわけじゃない。恐らく隻数との関係が一番そういう点では問題があると思う。こういうことであれば一体何なのか、さっぱりわからぬ。聞けば聞くほどわからなくなってくる。もう少しわかるような説明してくれまんか、運輸省で。船員局長の話と海運局長の話、何か、運輸省ってのは海運局と船員局別々ですかな、これは。
#84
○政府委員(永井浩君) 大変はしょって御説明したのでわかりにくくて申しわけございませんが、トン数でだけで申し上げますと、昭和四十五年にトン数比で日本船が七五%と申し上げました。それがずうっと減ってまいりまして、どん底が五十三年に五〇・六%でございます。ところがこれは、利子補給の復活とか、あるいは開発銀行の融資条件を手厚くするといったような海運助成策を五十四年度から講じまして、これだけではないと思いますが、これが一つの大きな要素となりまして、日本船のシェアが五二・九%に五十四年なりまして、五十六年には五五・六%まで復活したと。つまり、国の助成措置によりまして、少なくとも減少傾向に歯どめをかけ、わずかでありますが増加の傾向に向かっているというのが現状でございます。これは海運の建造の方の助成と同時に、いま御検討いただいております近代化、これによっても当然国際競争力が強化されると思いますので、そういったことも合わせると、さらにこの日本船のシェアはふえていくであろうと、このように考えております。
 ただ、これはトン数だけでございますので、しかもこの間は非常に船の大型化が進んでまいった時代でございます。したがいまして、トン数はふえましたけれども、隻数はふえていないというのがいままでの傾向でございますが、今後大型化の傾向もとまったように考えられます。また、世界の景気の動向その他から考えますと、隻数も少しずつふえていくのではないか、このように考えております。
 つまり、今後の見通しでございますけれども、隻数も若干ふえるであろうし、トン数もかなりふえていくと、日本船のシェアがふえていくのではないかというのが私どもの推定でございますが、一方、先ほど申しましたような超合理化船による定員の減ということもございますので、そう顕著にこれだけでもって船員の職場の拡大ということが直ちにはあらわれないと思いますが、少なくとも五十三年まで非常に縮小、減少していったものについて歯どめをかけ、これ以上の日本船の衰退を防ぐという効果は非常に大きいのではないか、このように考えておるわけでございます。
#85
○竹田四郎君 そうすると、海運局長の話ですと、合理化船はそんな物すごくふやすような感じじゃないですね。在来船ですと競争に負けているわけでしょう。競争に負けているからMO船をつくって、これはどこから出てきた数字だか知りませんけれども、船員局長の話だと十八人で運転する近代化船をつくるというんでしょう。それで、そのうちで、この競争の中で一番高いものは人件費だっていうんでしょう。船員費だと、こういうんでしょう、さっきからの大臣の説明ですと。そうすると、在来船も十八人にしちゃうんですか。在来船も十八人にすれば、これは競争関係が成り立つわね、人件費だけでは。どうもその辺が今度は合理化船は十八人。それで十八人を今度は在来船にも移していきゃ確かに競争力は出ますよ。こういう意味ですか。
#86
○政府委員(鈴木登君) いわゆる船員制度近代化の今回の法律の特例を適用いたしますのは、これからまだ設備基準とか、そのもろもろの基準を決めるわけでありますけれども、一応最新型の船を決めていくことになるだろうと思います。
 そういたしますと、いま海運局長の言われましたように、徐々にそういう最新型の近代化船がふえていくということになりますれば、これはあくまでも仮定でありますけれども、先ほどから数字が出ておりますように、たとえば四十五年当時日本船が約千五百隻、外国の用船が約五百隻、合わせて二千隻の船であったわけでございますけれども、現在のところ、日本船が約千二百隻、外国船が約千三百隻余りというふうに、数では外国船の方が多くなってしまったと。それがたとえば日本船を近代化して、船員制度を近代化していくことによりまして、この外国用船をできるだけ数を少なくしていって、従来のような、たとえば四十五年のような用船比率になってくるとした場合に、恐らく日本船は千隻ぐらいふえるということに、これはいつの時点かはわかりませんが、われわれの方ではこういう一つの理想的な形で進んでいっていただきたいというふうに願っておるわけでありますけれども、そういう点で、日本船が千隻ぐらいふえて二千隻ぐらいになるということになった場合には、やはり一隻当たり十八人でありますけれども、まあ二十人としましても二万人ぐらいの職域がいずれは確保できるだろうというような考え方でございます。
#87
○竹田四郎君 どうも船員局長と海運局長の言っていることがよくわからぬですわね。いま外航船舶が約千二百でしょう。それが二千隻になるというんでしょう。いままでの在来船はどんどん変えていくと言っているんでしょう。あるいは売船していくというんでしょう。そうすると、いまさっきの話で、五十六年から五十九年、これに大体三割ぐらいを変えていくというんでしょう。そうすると、いま千隻でさえ三割だというんだよ。二千隻にするといったら一体何年かかるのよ。二十一世紀の終わりごろになっちゃうじゃないですか。そういうことを考えているんですか、この船員法の改正は。ほかの方でいうと、どうも配乗表なんかを法律事項から政令事項に落としたところを見ると、法律はどんどん変えていくんだからだからこれは政令に落としたんだと言っているんだけれども、この話はそれじゃあれじゃないですか、一世紀にわたってこの法律が変わらないというようなことにすら思えるんですがね。どうも話が違うんです、二人の話が。合っていない。どうも海運局長の話じゃ二千隻なんかにここ十年、十五年じゃいきそうもない。いまの海員組合の人が代がわりしなけりゃもうとてもここへはいかない。こういうことになっちゃう。できるんですか、海運局長、二千隻にいま。船員局長が言った日本の船が二千隻にできる、その二千隻になったときの船の構成はどんな構成になるんですか。――これは海運局長だよ、あなたの方に聞いたってわからぬ。
#88
○政府委員(永井浩君) 今後隻数も増大する傾向に移るであろうということは推定できますが、二千隻になるのが昭和何年になるかというのは、私どもちょっと計算いたしておりません。
#89
○政府委員(鈴木登君) 私どももこの船員制度近代化を進めていくときに、いわゆる理想的な船員像というのを描きまして、そういう形になれば外国用船が少なくなって日本船がどんどんふえてくるであろうという、そういう一つの理想像を描いてこの作業を始めてきたわけでございますので、二千隻というのは、あくまでもそういうふうになっていってほしいという、われわれの、船員サイドからする願望でありまして、いつ二千隻になるかということは、見通しは立てておりません。
#90
○竹田四郎君 どうも、大臣わかりますか、この両局長の言っていることが。非常に数字的にも合いますか。私は頭が悪いんですかね、どうもよくわからないんです。
 じゃ、いま局長言うけれども、二千隻になるのはこれは何かえらい理想的な目標だと言うんですが、二千隻の船はどんな構造、たとえばあなたがよく言っている近代化船と在来船の構造というのはどんなふうになるんですか。船の大きさはどんなふうになるんですか。そこへどんなふうに船員が張りつけになるんですか。その辺言ってくださいよ。それでなきゃわかりゃしないんだよ。夢のような話ばかりしておられちゃ困るんだよ。
#91
○政府委員(鈴木登君) 二千隻と申しましたのは、たとえば一つの例として申し上げたわけでありまして、一つの具体的な数字の目標値ではございません。
 それから、船は五千トン以上になりますと、乗組員の数はほとんど変わりませんで、先ほど申しましたように、船舶職員法では五千トン以上が九名、通信関係も入れまして九名というふうになっておりまして、これは船の大きさが二十万トンでありましょうが、あるいは一万トンでありましょうが、そう変更はございません。したがいまして、われわれの方、船員サイドからしますと隻数が問題でありまして、トン数は大して問題ではないということが言えようかと思います。
#92
○竹田四郎君 どうももうやる気がなくなった。こういう、数字が合わなかったり、二人の言っていることがもう各個ばらばら、これじゃとても質疑をしたってまともな答えが返ってこない。これは大臣、私この次も、まだ質問たくさんあるんですが、時間をもう少し委員長にお願いしていただいて、もう少しわかるようにしてくださいよ。何も時間だけつぶすのが私の役目じゃないんですからね。それをひとつ、お願いしたいんですが。
 あと、もう時間がありませんから、次の問題に移ってしまいますけれども。
 今度のは、これは聞いておかないと来られている方に申しわけないですから、船員災害防止協会に対する法律の方なんですが、この問題は陸と海で大分安全衛生関係の法律が違っているわけですが、これはどんなふうに違っているんですか。
#93
○政府委員(鈴木登君) 労働安全衛生あるいは災害防止の関係の法律は、陸上では労働安全衛生法という法律になっておりますのに対しまして、私どもの方は一応船員法体系の中で取り上げております。同じような名前で船員労働安全衛生規則という省令がございます。ただ、片方は法律で片方は省令というのはおかしいじゃないかといういろいろ御指摘もございますけれども、船員関係につきましては、実は船単位に物事をとらまえないとなかなか船員の労働安全衛生とか、あるいは災害防止を図ることができません。と申しますのは、船の船員の労働安全衛生のためにも、あるいは災害防止のためにも、船の安全ということが基本問題でございます。船自体が沈没するとか、遭難するとかということがございますと、船員がいかに個人個人に労働安全衛生面で注意しましても、これはすべてが悲惨な結果になるわけでありまして、したがって、船の安全問題を中心に考えまして船員の労働安全衛生面あるいは災害防止面を考えておるような次第でございます。
 この一つの船の職場あるいは私的な居住という、一つの船のそういう場をとらまえて安全面をとらまえておりますのは船員法という体系でございますので、労働安全衛生面も船員法体系の中でひとつとらまえておるわけでございまして、そこが陸上と違うところであります。陸上は先ほど申しましたように、労働安全衛生法という、ひとつの仕事のやり方とかそういうことだけを中心に考えておるわけでありますけれども、私どもの方は船の安全を中心とした船員法体系の中で船員労働安全衛生面をとらまえておるという形で、私どもの方は船員法、向こうの方は労働安全衛生法という体系になっているわけでございます。
#94
○竹田四郎君 実際陸上で働いている人と船で働いている人との労災関係というのはどんなふうな形で、割合で出ていますか。人数にすればそれは陸上の方がはるかに実数では多いだろうと思いますけれども、比率で見てどんなふうな関係になっていますか。
#95
○政府委員(鈴木登君) ここにちょっと数字がございますので申し上げます。
 五十四年度の数字で申し上げますと、船員の災害、疾病の発生数は八千百十四件でございまして、千人当たり三十七・五人、千人率三七・五ということになってございます。
#96
○竹田四郎君 これは疾病ですか、災害ですか。
#97
○政府委員(鈴木登君) 疾病、災害合わせてでございます。
 それから、陸上との比較で申しますと、これは死傷者数で見ますと、これは非常に高い数字で出ておりまして、船員は五十四年度の数字しかございませんけれども、船員は千人に対して一・七人、陸上の全産業は〇・一人ということで、船員の方が十七倍ぐらいに高くなっております。ただ、陸上産業の中でも鉱業、いわゆるマイニングにつきましては、千人に対して一・四人という数字で、船員にほぼ近いような数字でございます。
 それから、職務上の死傷について見ますと、五十四年度は船員関係は千人率は二六・五に対しまして、全産業は九・五。これはけがも病気も入ってございますけれども、九・五。それから先ほど申しました鉱業、マイニングにつきましては八五・二ということで、全産業と比べますと船員関係はやはりかなり高いのに対しましてマイニングに比べますと低い。大体陸上の建設関係は二三・九でございますので、ほぼそれと同じような数字ということになっておるわけでございます。
#98
○竹田四郎君 これを見ましても、やっぱり板子一枚下は地獄だというようなことが船員の間にはよく言われているほど厳しいだろうと思うんですがね。そういうので、片方は規則、片方は法律と、どうしてこういう差別をつけているんですかね。船員だって同じ日本の労働者だし、陸上の労働者だって日本の労働者、差別をつける必要はない。同じように法律でやったらどうだろう。法的効果は違うと思うんです、私は。これはどうなんですかな、大臣。同じにしたらいいんじゃないですか。船員だけは規則で片方は法律ということにしない方がいいんじゃないですか、むしろこういう際に。
#99
○政府委員(鈴木登君) 先ほども申しましたとおり、船員の労働安全衛生面あるいは災害防止面といいますのは、中心は船単位にやはり考えなきゃいけないと思います。
 特に船の安全というのは非常に重要でありまして、たとえば陸上では、非常に職場の危険なときにはもう就業しないというようなことがこれは労働災害あるいは安全衛生を図る面で一番重要でありますけれども、船の場合は、すでに大洋のど真ん中におります関係上、台風とか非常に危険な場合にこそ一生懸命就業せにゃいかぬというふうな、そういうような状況もございますので、これはそこが一番陸上との大きな差。それからもう一つは、生活の場と仕事の場とが完全に同じだというような点、これも陸上の産業とは非常に大きな差だと思います。そういう点を踏まえまして、船単位に物事を見た場合の、船単位に労働安全衛生を見た場合の法体系になってございます。したがいまして、先ほど申しましたように、船員の労働安全衛生面は船員法体系の中でやってございます。
 ただ、今回私ども大臣の言われました提案理由の中にございましたとおりに、幾らか船員の労働災害面の減少傾向が停滞ぎみにあるということを申し上げましたけれども、その点やはりわれわれいろいろと反省しました結果、余りにも船単位に物事を考え過ぎる、もう少しやはり船会社の陸上組織といいますか、そういう船会社全体の立場から見た労働安全衛生面の強化を図る必要があるんじゃなかろうかというふうなことを考えまして、今回船員災害防止協会等に関する法律を改正いたしまして、その船会社の陸上における、本社サイドにおける船員災害防止あるいは労働安全衛生面の強化を図ろうということで、今回法律を改正する案を御提出した次第でございます。
 それから、まことに、先ほどのお答えの中で恐縮でありますけれども、先ほど疾病の数字だけを申しましたけれども、災害の点を忘れておりまして、災害と疾病を合わせますと五十四年度一万四千二百六十件でありまして、千人率は六五・八でございます。先ほど申し上げましたのは、実は疾病だけの数字でございましたので、御訂正申し上げます。
#100
○竹田四郎君 そういうふうに、船員の場合には特に職域が限られていると思うんですね。それに、しかも先ほどの予備員のところで陸上勤務者というのは非常に多くなってきていると、こういうことになればなるほど、私はこの船員の安全衛生規則を法律にしていかなくちゃいかぬじゃないか。そして陸と海との互換性もこれからは確保できるようにしなくちゃいかぬと思うんですがね。
 労働省からお見えいただいているんですが、たとえば、この船員の中で、船の中でクレーンを動かして玉掛けなんかしますが、こういう玉掛けにはひとつの資格が恐らくあるだろうと思うんですがね。その人は陸上勤務になったら同じ陸上での玉掛けの資格と同じようになるんですか。あるいは恐らく船の上では鉄のあれがありますから、まあ電気溶接というのか、ガス溶接というのか、そういう溶接なんかも船員がおやりになることが私はあると思うんですがね。そういう船の中でやっている人が、別の陸上の試験を受けないで、資格試験を受けないで、陸へ上がってそういう溶接とか何かの仕事は直ちにできるんですか。恐らく私はできないんだろうと思うんですが、どうなんですか。
#101
○説明員(菊地好司君) 陸上部門と海上部門とでは、作業環境とか作業態様等が違っていまして、各種の資格の内容、目的もそれに準じて違いがございます。したがいまして、海上部門の資格のままで陸上部門の資格者になれるかということについては、内容、レベルが違うので必ずしも言えないという状況に相なっております。
#102
○竹田四郎君 そういう点もありましたし、陸と海との互換性ということがますます大きな問題になるとなれば、あなたも先ほど陸上の支援体制のことを今度の中で改めてつくるんだと、こう言っておりますから、そうなれば私はますますそういう問題が起きてくると思うんです、互換性の問題が。そうなれば、片方はできない、陸へ上がったらかっぱと同じように何もできない、乾いちゃってできないということじゃこれは困るんですね。それはぼくは船員の人の福祉なり社会的地位の向上にはつながらぬと思うんですな。そういう互換性を考えていくということを考えるなら、やっぱりできる限り共通の法律、こういうものを考えなくちゃいかぬじゃないかと思うんですが、どうなんですか。
#103
○政府委員(鈴木登君) 先ほど労働省の方もお答えになりましたとおりに、海上の資格といいますのは、海技免状を取れば船の中にあるそういうたとえばクレーンの操作もできるし、それから機関の操作もできるということで、かなり包括的な形になっています。それがまた船の一つの特色かと思います。それを、たとえば商船大学を出ますと、特にエンジン関係の仕事につきます方はすでにボイラーのこともかなり詳しいですし、それからクレーンの操作のこともかなり詳しいわけです。私どもは、そういう点で海上の資格を取れば陸上の資格も同時にくれないものだろうか、これは船員の方でも非常に強い希望がございますので、そういう点でいろいろ研究を進めた次第でございます。現在、労働省関係だけでも百数十種のそういう資格制度がございますけれども、そのうちでも海上にかなり関係が深いと思いますものを十八種類ほど挙げまして、実は関係省庁と相談申し上げておりますけれども、先ほど話のありましたとおりに、その能力要件が同一であるかどうかの判定というのが非常にむずかしゅうございまして、現在のところなかなかうまく進んでおりません。したがいまして私どもは、その十八種類の職種につきまして、そのわれわれの能力要件とそれから陸上でのそういう資格を持っておられる方の能力要件と具体的に比較しました上で、もう一度とにかく関係各省と話し合おうということでいま作業を進めているような次第でございますけれども、関係各省はかなりやはりそれぞれのギルド的な問題もございまして、非常にむずかしい事態でございます。
 なお、それとは別に私どもは、やはり船員の方々に、いつ船をおりるような事態になっても陸上の産業にいつでもすぐスムーズに再就職できるような措置を講じようということから、海技大学校の七尾と児島の分校におきまして、いろいろと陸上の関連の資格を取るための講習を実施しているような事態で、非常に船員の方々からは好評を得ておる次第でございます。
#104
○竹田四郎君 もう時間が来ましたから、これ以上質問しないんですけれども、まだ当直体制の問題とか、あるいはマンニングブローカーの問題だとか、あるいは命令事項だとか、たくさん問題があるので、後でひとつ理事会で御相談いただきたいんですが。もう少しわかるように答弁してくれれば次の質問に入れるわけですが、全然わからない答弁をして私の時間をつぶされたというしか申し上げようがございませんので、後で質問できる時間をひとつ理事会の中でお決めくださるように、特に委員長、理事の皆さんにお願いして、私の質問を終わります。
#105
○委員長(桑名義治君) 午後一時再開することとし、休憩いたします。
   午後零時四分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時六分開会
#106
○委員長(桑名義治君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#107
○黒柳明君 まず、STCW条約についてお伺いしますけれども、世界主要海運国であるわが国がこの本条約を採択して批准しようと、こういう方向に向かうわけでありますが、これがいまになった、おくれたといいますか、いままでの経過、またいまなぜこれを採択批准しなければならないのか、ここらあたりからお聞かせいただけますか。
#108
○政府委員(鈴木登君) STCW条約と申しますのは、お手元の関連資料にありますとおりに、船員の資格、訓練あるいは当直に関する条約でありますけれども、実は海上の安全に関する条約でありまして、従来海上の安全に関する条約につきまして、船舶の設備とかあるいは実際の救難関係の条約あるいは交通規制に関する条約はすでにかなり整備されておったわけでございます。ところが、船を動かします船員につきましてはなかなか安全面からの条約というのはございませんでして、今回こういう条約ができ上がった次第でございます。
 直接の経緯は、一九六七年にトリー・キャニオン号という船、実はこれ二十万トンタンカーでございますけれども、英仏海峡で事故を起こしまして、大量の油を流してイギリスの海岸を汚染したという事故がございます。その事故を契機といたしまして発生したわけでございます。いろいろとその原因を究明しましたところが、やはり船長の的確な判断に欠けるところがあったのじゃないかというようなことが指摘されまして、その辺を条約で整備をしようと。すなわち船員の資質の向上、レベルアップを図ろうということでIMCOの方で取り上げられた次第でございます。その途中でまた一九七六年にアーゴ・マーチャント号事件という、これはアメリカの東海岸で同じような事件が起こりまして、それがさらにそういう議論を加速いたしまして、一九七八年にSTCW条約というのが成立したわけでございます。
 現在のところまだ発効はしておりませんけれども、近く発効する見通しでございます。すなわち、七十二カ国一応署名はいたしましたけれども、現在のところまだ十六カ国しか批准してございません。発効要件が二十五カ国の批准、その批准国の船腹が世界の船腹量の五〇%以上になるということが発効するための要件でございますけれども、現在のところ十六カ国、船腹量にいたしまして世界の船腹量の四四%ということでまだ発効しておりません。ただ見通しといたしましては、もう近々批准するというふうな声明をしております国が七カ国ございますし、それ以外にも署名の国が六カ国ございますので、恐らくことしじゅうには発効要件を満たすのではなかろうかと。発効要件を満たしますと、それからちょうど一年後に条約が発効するというふうになりますので、私どもは来年じゅうにはこのSTCW条約は発効するのではなかろうかという感じを持っております。
 ところが、わが国は先進海運国でございまして、世界の船腹量の一〇%近い船腹量を保有しておりまして、世界の船腹の安定的な運航を図るためにはその一〇%のウエートというのは非常に大きゅうございますので、まだ発効しておりませんが、世界に先がけてこれを批准しようということで、今回別途外務委員会の方に条約の批准案件が提案されておりますけれども、それと同時に、条約の批准のために船員法、船舶職員法の改正案をお願いした次第でございます。
#109
○黒柳明君 アメリカが一時期この採択に熱心だったのがまだ批准していないわけですね。日本以上に、また日本と並んで世界主要海運国のアメリカは、何の理由があってこの批准に踏み切らないのか。これはどうですか。
#110
○政府委員(鈴木登君) 御指摘のとおりに、先ほど申しましたように、一九七六年のアーゴ・マーチャント号事件というのがアメリカ海岸で起こりまして、それを契機にカーター大統領が早くこの条約を成立させろというふうな教書を出されましてこの条約が成立したという経緯もございますので、アメリカの政府自身は非常に前向きに考えておりまして、一九七九年、条約の成立の翌年でございますけれども、実は批准案件を議会に提案したと伺っております。
 ただ、その過程でまだ批准がなされておりませんのは、私ども伺っているところによりますと、特に小型船舶における船員のいろいろのレベルアップがちょっと過重ではないかというふうなことのために議会の審議が進まないというふうに伺っています。
#111
○黒柳明君 何ですか、小型船舶の過重、ちょっとわからなかったな、小型の何です、それは。
#112
○政府委員(鈴木登君) 小型船舶の乗組員に対するいろいろの規制が厳し過ぎるのではないかというふうな意見が出まして、そのために国会の審議が滞っておるということを伺っております。
#113
○黒柳明君 午前中も便宜置籍船、変な言葉で、私も素人なものですから、海のこういう用語につきましては一生懸命勉強してあれしたんですけれども、これは英語で言うと何と言うんですか、この便宜置籍船というのは英語で言うと。
#114
○政府委員(永井浩君) フラッグ・オブ・コンビニエンスと申します。
#115
○黒柳明君 フラッグというと旗のフラッグですか。
#116
○政府委員(永井浩君) そうです。
#117
○黒柳明君 フラッグ・オブ・コンビニエンス、それを日本語では便宜置籍船と、こうやったんですね。どういう理由ですか、便宜置籍船とフラッグ・オブ・コンビニエンスと。
#118
○政府委員(永井浩君) 直訳的な意味じゃないかと思いますが、要するに船舶の登録が非常に厳しくないと、ある程度緩やかな国に登録した船という意味でございます。
#119
○黒柳明君 日本語でコンビニエンスというのはやっぱり便宜というようなことでしょうね。ですけれど、実際これ便宜というよりも便利ですね、日本語で訳すと実質的に当てはまるのは。その便利の後ろにはやっぱり利害関係、利益というものを、害じゃなくてプロフィット、メリット、これを含めてのやっぱり便宜、そういう感じがしますね。実際実質的な、ただフラッグ・オブ・コンビニエンス、それを便宜置籍船と、また後の方も――どうも済みませんね。やっぱり国際的な条約ですから、私も党の国際局長なものですからやっぱり横文字も聞かないとということを思いましたので、別に知ったかぶりした知識を振り回すわけじゃないですけれども。
 実質的に、午前中にもこれを排除する今回の法案であると、盛んに話がありました。数もつかめない、つかんでいないと、こういうふうなことですけれども、どうもこの便宜置籍船という考え、この訳。まあそれじゃどういうコンビニエントな方法があるかというと、それこそコンビニエントがないというふうな感じがするんですけれども、この訳からいきますとどうもやっぱり何かつかまなくてもいいんだ、つかめないからしようがないんだと。せめてこのリベリア国籍、パナマ船主、乗組員が第三国人でありながら、さっきのアメリカでそれを会計処理しているなんていうようなことは、日本の船主の中にあるものなら、これはつかめなきゃならない。つかめなきゃならないとは思うんですけれども、こういう訳自体が何かこの便宜的な訳をぽこっと当てちゃって、もうこれはわれわれ関知するところじゃないんだと、これは日本だけの問題じゃなくて、世界全体でこんなものはもうつかめないんだから、だけどこれを排除しなきゃならないこともあたりまえだ、だからその中において何とか努力目標だけ立てなきゃいけないというふうな、非常にそれこそ何かこうお役所の方が便宜的に考えた、根本的にこの便宜置籍船なんていうような名前がどうも私は頭にこびりついてしようがない。
 まあそんなことでつけた名前ではないと思いますよ。ですけれども、コンビニエントな船であったとしても、コンビニエントなやり方でやっぱりこれを処理するわけにいかない、しちゃいけない、こう思いますし、午前中の質問もまた先般の質問もその一点にしぼられたんですけれども、四十二年ですか、先ほどからのパナマのアカデミー・ニュースター号ですか、あの事故もありましたけれども、この船が便宜置籍船、これがわが国に関係するようなところで事故に遭遇した場合のわが国の処理というのはどういうことだったんでしょうか。
#120
○政府委員(鈴木登君) 御質問の処理という点につきましては、海難救助の問題とかあるいは立入検査とかそういう点かと存じますけれども、実は従来海難救助につきましては、これは日本船であろうが、外国船であろうが、わが国の近海でありましたものはすべて海上保安庁の方で処理することにしております。
 それから便宜置籍船につきましては、実は従来、これはけさほども御説明申し上げましたように、船員法も船舶職員法も、純粋の外国船と、法律上は、法律的な立場では純粋の外国船ということでございますので、何らわが国の船員法及び船舶職員法によって取り締まるとか、そういうことができなかった次第でございます。
#121
○黒柳明君 そうすると、具体的なわが国の関係した中で、事故が起きた場合も、これは全く放任だったわけですか。それともこういうわが国に関係した接点があったような事故というのはなかったんですか、いままで。
#122
○政府委員(永井浩君) 一般論で申し上げますと、わが国の領海内でたとえば便宜置籍船が海洋汚染を起こした場合のことを申し上げますと、油の場合には油濁損害賠償法に基づきます被害者補償制度が領海内においては適用されます。それからそのほかに、この制度が適用されますと、便宜置籍船であるか否かにかかわりはございませんけれども、船舶所有者とそれから油濁国際基金から、一事故当たり最高百二十億を限度としてその被害者の補償が行われるわけでございまして、便宜置籍国であるリベリアあるいはパナマにおいてもこれらの条約を批准しておりますので、こういった制度に入っておりますので、そういった意味では他の外国船と何ら変わらないと、このように考えております。
#123
○黒柳明君 要するに、批准した国ならいいんですけれども、しない国で何かそういう事故が起こった場合には、この法律を見ますと航行の差しとめもできると、こんなことも述べられておりますですね。そうなると、まあ外交のパイプで理解、話のついた上ならいいですけれども、そうじゃなくて強硬にこれ航行差しとめなんかやると、これは外交問題にも発展する可能性もあるわけでしょうか。これはどうですか。
#124
○政府委員(鈴木登君) 実は、今度のSTCW条約の方は、その条約の目的としております船舶の安全とか、あるいは海洋汚染の防止とかという点を徹底的に防遏いたしますために、外国船に対する取り締まりの根拠規定を置いてございます。ただ、この外国船に対する取り締まりというのは、いま御指摘のとおりに、何といいますか、余り恣意的に行われますと、かなり国際紛争の原因にもなったり、あるいはさらにまたかえって船舶の安全な航行を阻害するおそれもございます。あるいは、物の流れを、スムーズな物の流れを阻害するおそれもございますので、条約はかなり制限的な形でいろいろと規定してございます。これは本文の十条と、それから附属書の第一−四規則というところでかなり詳しく規定してございます。むしろ、関係各国がやたらと立入検査をして、やたらと船をとめてしまったりするようなことを防ぐ意味で、私どもはこの規定がかなり詳しい規定になったのだろうというふうに理解しております。
 具体的な内容は、たとえば当該船長に対して文書ではっきりと通告するとか、あるいはその当時国に駐在しております領事にその旨を通報するとか、あるいは実際に事故が起こった場合でないとその出航停止を、事故が起こって、しかもその事故、それを放置しておきますとさらに一層の事故が発生するおそれがあるというふうな見通しでないと出航停止を命ぜられないとか、あるいは出航停止を命ぜられることによって、違法な出航停止によって損害を与えた場合にはその損害を賠償せにゃいかぬとか、そういうふうなかなり制限的な形での外国船に対する監督の規定が置かれておるような次第でございます。したがいまして、私どもの方も、この監督は船員労務官あるいは担当職員あるいは海上保安官が行使するわけでありますけれども、特に英語の点での知識を十分に持たせるとか、あるいは国際的な法制度の点につきまして十二分に講習するとかいうことによりまして、そういう国際紛争が発生しないように、職員に十二分の注意、あるいは講習制度の充実ということを措置してまいりたいというふうに考えております。
#125
○黒柳明君 外交上の紛争を起こすことを避けるというとそうなるわけですけれども、また逆に、事故を起こすのは置籍便宜船が多いと、こういう立場、またこの条約がそれを排除するということになると、今度は外国船に対する監督、あるいは整備、そういうものが現状において十分なのかどうかという点も指摘できるんじゃないでしょうか。これはひとつうらはらの問題かと思うんですね。過剰な介入もならない。ですけれども、現在は過剰な介入というよりも、むしろそういう外国船に対する監督、あるいは整備についての不備な点、手が出せない、こういう点にむしろ問題があるということなんですか。この点についてはどうでしょう。
#126
○政府委員(鈴木登君) 御指摘のとおり、特にこの条約の発端は、いわゆる便宜置籍船の事故といいますか、によって起こったものでありますので、調べてみましたところ、やはり便宜置籍船はかなり基準以下船が多いということから、特にそういう船の乗組員のレベルアップを図ろうということでこういう条約ができ上がった次第でございますので、私どもも、そういう国際紛争が発生しないような非常に慎重な配慮をしながら、積極的に担当者に立入検査などをやらせていただきたいと思っております。
 そのための要員の御質問かと存じますけれども、船員法につきましては船員労務官がいろいろと監督することになっておりますし、船舶職員法につきましては一般の運輸省の職員が監督権を行使するというふうな法制度になってございます。もちろんこれは別々のものじゃございませんで、私ども両方の仕事を同時にやれるように船員労務官に併任するとかいう形で処理してまいりたいというふうに考えておりますけれども、現在のところ、一応船員労務官が百二十六名現在在籍しております。それから関係職員が四十名在籍しております。特に船員労務官につきましては、これは特別な司法警察権を持っている職員でございますので、できるだけこの船員労務官を中心にこれから監督体制に入っていきたいというふうに考えております。
 そういう前提で、五十七年度も二名ほどの増員をお願いしましたところ、非常に厳しい国家の財政状況の中で二名の増員を認めてもらいまして、ことしの十月からは、先ほど申し上げました百二十六名を百二十八名の体制でやっていきたい。
 それからこの船員労務官の方も、実は先ほど申しましたように、やはり資質の向上といいますか、レベルアップを図らにゃいかぬと思いまして、これは毎年かなり厳重な講習制度というものを設けまして、毎年東京に数名ずつ呼びまして、順繰りに資質の向上のための講習会をやっておりますし、それから船員労務官につきましては、昭和三十九年ですか、それまではどういう人たちを――まあ船員労務官になる資格は全然問題なかったわけでありますけれども、三十九年に制度をちょっと改正しまして、一定の資格を持った者でないと船員労務官に任命しないというふうな資格要件の加重をしたりしておりますので、私ども十分そういう基準以下船に対する取り締まりの目的は達成し得るものというふうに考えております。
#127
○黒柳明君 今回のこの改正法の関係で、外航海運のこれからのあり方についてはどういうふうなお考えをお持ちですか。
#128
○政府委員(鈴木登君) 外航海運のこれからのあり方と申しますと、やはりけさほども議論のありました点かと思いますけれども、私どもやはりこのSTCW条約の批准、あるいはもう一つのこの今回の法改正の目的でございます船員制度の近代化の推進ということを通じまして、わが国の外航海運に占める日本人の乗った日本船のウエートがどんどんどんどんふえていくということを期待いたしましてこの今回の法改正を御提案申し上げた次第でございますし、恐らく、私どもの期待どおりそういう方向に日本の外航海運が進んでいくのだろうと存じております。
#129
○黒柳明君 もう一回尋ねますけれども、批准していない国、非批准国の外国船に対しては、これが批准された場合にわが国はこれを適用できるんですか。
#130
○政府委員(鈴木登君) 条約の先ほど御紹介いたしました第十条、それから第一−四規則で、批准していない外国船にも、この条約の趣旨を国際的に全部に徹底させるために、批准していない国に対しても入港国の監督権というものを認めておりまして、したがいまして、日本の港に入ってまいります船は、批准国であろうが批准していなかろうが関係なくこれに対する監督を実施していけるようになってございます。
#131
○黒柳明君 そうすると、それは非批准国に対しては相当の、何か二十五カ国は批准されて、施行されると同時に、何か通達かあるいは会議か何か開かれて、特別な伝達方法か何かとられるわけですか。
#132
○政府委員(鈴木登君) これは、私ども批准いたしますとすぐIMCOの本部に連絡いたします。IMCOの本部の方から関係各国に全部こういう国が批准したということが通報されるようになっておりますので、そういう形で世界の各国に批准状況、それから発効状況、これが全部わかるようになっております。
#133
○黒柳明君 また先ほどに戻りますけれども、そうすると、日本の港に入った場合は、批准した国の港に入った場合には、非批准国の船はその批准国の条約に従う。ただ、これを拒否した場合とかあるいは認識がなかったとか、そういう場合にトラブルが当然起こるんですな。そういうケースというものも想定できぬでしょうか。できると思いますけれども、いかがでしょう。
#134
○政府委員(鈴木登君) 私どもは、日本の港に入ってきました非批准国に対する取り締まりは、先ほど申しましたように非常に慎重に、できるだけ外交問題が発生しないように関係国の領事とよく連絡をとりながら対処してまいりたいと思っておりますけれども、逆に日本の船が他国の港に入りましたときに、同じような問題がやはり発生する場合があると思います。この点につきましては、私どもそういうことがないように、具体的にはそういう問題が発生しましたときには、外交ルートを通じてできるだけ日本の船がそういう事態がないように処理したいと思っております。
 それから、いろいろと船員が、具体的に英語の知識があるかとか、こういう点もやはりかなりそういうトラブルの発生の予防になりますので、私どもはこの条約の批准を機に、船員に対する英語の講習といいますか、そういう点につきましてもかなり意を用いてまいりたい。そのために、関係の団体あるいは公益法人あるいは私どもの実際の海員学校あたりで英語の講習会を開催いたしまして、その辺の点もかなり充実してまいりたいというふうに考えております。
#135
○黒柳明君 これを見ますと、今度はあれですか、船長とか一等航海士とかはなくなって海技士と、こういう名称になるわけですな。これは英語で何と言うんですか、一級海技士というのは、英語で。
#136
○政府委員(鈴木登君) いま御質問の点はSTCW条約とは関係ございません。むしろ近代化絡みの今度は問題でありますけれども、いわゆる運航士の制度は近代化関係の制度でありますけれども、私ども――失礼しました。御質問の点は海技士の名称変更のことでございましょうか。名称の変更の点につきましては、実は従来甲種船長、乙種船長とかあるいは甲種一等航海士、甲種二等航海士という名称を、今度は一級海技士、二級海技士、三級海技士というふうに名称変更いたしますけれども、英語ではその海技士をマリタイムオフィサーという名称で呼んだらというふうに考えております。これはまだ実は最終的に決めておりませんで、検討中でありますけれども、実際に海技免状に英語の名前を書いておきませんとそれが外国に行ってもわかりませんので、私どもは一応いまの案ではマリタイムオフィサー、すなわち一級海技士はファースト・マリタイムオフィサー、二級海技士はセカンド・マリタイムオフィサーというふうな名称で呼ぼうかというふうに考えております。
#137
○黒柳明君 そうすると、もう従来の船長、キャプテンというのはなくなるわけだ。マリタイムオフィサー、何か自衛隊の将校さんみたいな、暫定的な呼び名でこれからもう一回じっくり考えようというんでしょうけれども、ファーストからセカンド、サード、フィフス、シックススとこうあってマリタイムオフィサー、こういう名称で呼ぶわけですか。通じますかね、それ。
#138
○政府委員(鈴木登君) 私いま申しましたように、一級から六級までの海技士、マリタイムオフィサーといいますのはあくまでも海技免状の名称でございまして、船内のいわゆる職務に関する名称は船長とかそれから一等航海士、二等航海士、機関長、一等機関士、二等機関士というのは残るわけでございます。したがって、たとえば何々丸のキャプテンという名称は依然として残ってまいります。
#139
○黒柳明君 そうすると、ここでは甲種船長がファースト・マリタイムオフィサー、それから一等航海士がセカンド・マリタイムオフィサー、こういうふうに書いてありますね、これ。それでいいわけですね。それでキャプテンというのは残るわけで、一等航海士も残る。だけれども、これを見ると、何か現行、改正って書いてありますけれども、現行と改正となると、いままでのこういう資料ですと現行というのはなくなって改正、新資格というのに変わるというようなニュアンスで出ておりますが、この文章はそうじゃないんですね。現行資格から新資格に変わるんじゃなくて、現行はそのままでプラス新資格の一級海技士、マリタイムオフィサーという名前がつく、こういう意味ですか。
#140
○政府委員(鈴木登君) お手元の法案のところの三条に、「職員とは、航海士、機関長、機関士、通信長、通信士」というふうに書いてございますけれども、ここでいわゆる船長あるいは一等航海士、二等航海士あるいは機関長、一等機関士、二等機関士あるいは通信長というのは職名でございまして、それは従来どおり改正はいたしておりません。それに対しまして、たとえば商船大学を出ますと、従来甲種二等航海士の免状をもらえたというふうに普通言っておりますけれども、それは資格でございまして、資格の方は、いま先生の四十一ページから四十二ページにあります第五条の点でございます。これの方は資格の方に関する問題でございますが、資格の名称を、従来甲種船長、甲種一等航海士、甲種二等航海士あるいは乙種船長、乙種一等航海士、乙種二等航海士と呼んでいましたのを、今回ちょっと、甲、乙とかいうのは国民一般にも余りなじみがないんじゃないかということから、一級海技士、二級海技士、三級海技士というふうに変えたわけでございます。したがいまして、たとえば、五千トン以上の船長になり得るのは、一級海技士の資格を持っている人たちがなり得るとか、あるいは小型船の船長になり得るのは、従来丙種船長の方々がなり得たというのは、今後丙種船長の名前がなくなりまして四級海技士の方々がなり得るというふうに、そういうように今度はなるわけでございます。
#141
○黒柳明君 そうすると、今度は商船大学を卒業するとどういう資格、それで一級、二級という海技士の資格を取った者が今度は――そうするとこれは逆ですな。これを見ますと、現資格の甲種船長で矢印で新資格が一級海技士ですけれども、今度は一級海技士を取った者は甲種船長になる。そうなるとこれは矢印が逆ですね。いままでの現行資格、矢印、新資格というときは、一つには現行から新になるのだ、だから現の甲種船長がなくなって一級海技士になるのだ、要するにこういうつくり方というのがいままでの私たちの一つの常識パターンだったですけれども、それから、少なくともいまおっしゃったあれですと並列するものですね。だから矢印でこう別になるものじゃなくて、現と新というものでもないわけですね、そうなると。海技士は確かに新だが、この資格を取った者は甲種船長になれる。こういうことであって、そうなるとむしろこれは逆ですか、矢印の向き方が。済みませんね、変な質問で何か細かい質問で済みません。もっと大きい質問を聞けばいいんですけれども、どうも私神経質なもので、ちっちゃい質問も含めてお聞きしたいと思いましてね。
#142
○政府委員(鈴木登君) 私ども実はこの船員問題を勉強していますときには一番こんがらかった問題でございまして、そういう点がないように今度実は改正するわけでございます。それで従来船長になり得る人は、甲種船長でも、甲種一等航海士でも、甲種二等航海士でも、乙種船長の資格を持った人でも、みんなそれぞれの大きさの違いはありますけれども船長になることができました。それで、甲種船長が大型船の船長になったり、甲種二等航海士が小型船の船長になったりというふうな事態があったわけでございます。それで非常にわかりにくうございますので、ここに書いてありますとおりに、甲種船長という名前をもうやめてしまいまして、一級海技士という名前に変えよう。それから乙種船長という名前を変えまして三級海技士という名前に変えようとしたわけであります。ただし別途、船長とか、機関長とか、船の中の職名、大型船には船長、一等航海士、二等航海士、三等航海士、機関長、一等機関士、二等機関士、三等機関士、通信長、通信士、そういうふうな職員が乗っておりますけれども、その名称は全然変えません。したがいまして、これからは、一級海技士という資格を持っておりますとたとえば二十万トンタンカーの大型の船長になれるということで、先生の御指摘のような、資格の名称と職の名称とがこんがらかるというようなことは今後なくなるというふうに存じております。
#143
○黒柳明君 何か聞いているこっちがこんがらかって、僕はわからない。まあつくられた皆さん方が非常に苦労したというんですから、私がこんがらかってもしようがないと思うんですけれども。
 いま言ったその仮という、ファーストマリタイムオフィサー、これはあくまでも仮であって、また英語では変わる可能性があるわけですか。あるいはそのマリタイムオフィサーというのは、何かちょっと、私英語の知識が幼稚なもので、オフィサーなんてなると自衛隊なんというふうに結びつくんですけれども、こういう名前は国際的になじむ名前なんですか、マリタイムオフィサーなんというのは。まあ新資格で新しい名称ですから、この英訳も苦労されたと思うんですけれども。
#144
○政府委員(鈴木登君) ちょっと実は海外の事情はいまつまびらかじゃございませんが、担当者の耳打ちによりますと、海外ではファーストグレードキャプテンとかセカンドグレードキャプテンとかサードグレードキャプテンとか、船長につきましてはそういういろいろ名称を使っておりまして、統一していないようでございます。それから、私ども現在甲種船長とか甲種一等航海士とか言うのは、英語ではやはり、甲種船長はファーストグレードキャプテンという表現を使っております。ところが、キャプテンと言う場合に、資格の名称なのかあるいは職業の名称なのか、両方ともキャプテンと言うものですから、甲種船長、乙種船長につきましてはなかなか現在のところはわからないというふうな事態でございます。特に甲種船長と乙種船長につきましては、たとえば英語で船長の方はキャプテンと言いますので、甲種船長はファーストグレードキャプテン、乙種船長はセカンドグレードキャプテンというふうな名称を使いますときに、実際上は乙種船長と甲種一等航海士といいますのは、甲種一等航海士の方がランクとしては上でございますけれども、甲種一等航海士につきましてはファーストオフィサーというふうな名称を使っておりまして、キャプテンという名称を実際に使っておりませんので、外国に行きますと、甲種一等航海士よりも乙種船長の方が、俗な言葉で言いますと偉いんじゃなかろうかというふうな印象を持っておるようでございます。そういう点でも国際的にもちょっとこんがらかっておりますので、私どもはこの際もうはっきりと、ファースト、セカンド、サード、フォースというふうに、全部統一してしまおうというふうに考えた次第でございます。
#145
○黒柳明君 済みません、話が横道にそれました。
 それで、午前中も話がありましたけれども、その船員の近代化の問題で、どうしても何回聞きましても便宜置籍船の数がわからない、つかめない、そういう問題から、近代化とともに合理化が人員の削減に、それから職域の拡大どころか行き場がなくなっちゃうと、こういうふうにどうしても論理的には、常識的にはもう考えざるを得ない。ですけれども、それについて今後の見通しはどういうことなんでしょうか。いつまでたってもこの便宜置籍船というのは――いつまでといったって二年先には批准されると、こういう見通しですけれども、そうなりますとそれなりにまた法規制が適用されるわけですけれども。この二年間もやっぱり近代化が進むわけですがね。あくまでも、ただ単に合理化というのは人員の削減、職場の拡大どころか狭められていく、こういう方向に行くのではないかと、こう思うんですが、この見通し、これについてはどうでしょうか。
#146
○政府委員(鈴木登君) 具体的にいつごろかということは、これはなかなかわれわれにもわからないわけでありますけれども、STCW条約自体が、そういう便宜置籍船を中心といたします基準以下船、非常に船員の資格のレベルが低い船をできるだけなくそうと、そういうところをレベルアップすることによってなくそうというような目的でつくられましたので、だんだんだんだんこういう基準以下船がなくなってくるだろうと思います。同時に、それから条約の中で、先進国は開発途上国といいますか、そういうレベル以下の国に対して船員教育に協力するようにという条文もございます。現に私どもの方も、東南アジアあるいは中近東の国に対して、船員教育の海外技術援助というものをかなり強力にやっております。そういたしまして、便宜置籍国だとかあるいは開発途上国の船員が非常にレベルアップして、しかも非常に高度の教育を受けてレベルアップしてくるということになりますと、徐々にその船員のレベルも上がり、船員のいわゆる労働基準といいますか、給与を含めました労働基準も上がってくるというようなことになりますと、だんだんだんだん、最終的にはそういう便宜置籍する必要もなくなってくるだろうというようなことになってまいりまして、これは非常に長い期間を要するとは思いますけれども、やはりこのSTCW条約の批准によりまして漸次そちらの方に進んでいくのではなかろうかと。もちろんSTCW条約は、そういういわゆる国際的な船員の資質の向上を目指したものでありまして、便宜置籍船の排除を目的とした、便宜置籍船をなくしてしまおうということを目的につくった条約ではございませんけれども、結果的には、長い目で見ればそういう点にかなりの貢献をする条約だろうというふうに考えております。
#147
○黒柳明君 この船員の近代化なんかにつきまして、海員組合との話し合いはある程度されてあるんですか。あるいは海運業界、ここらあたりはこの法改正についてどういう受けとめ方をしているとお感じになられますか。
#148
○政府委員(鈴木登君) この船員制度の近代化の問題が話題になりましたのは、約十二年前の昭和四十五年当時でございます。当時、けさほどからも問題になっておりましたMO船がかなり出てまいりまして、それを契機に、そのMO船に相応するような船員制度はいかにあるべきかということの検討に入ったわけでございます。その検討をお願いいたしましたのは、労働者委員、使用者委員、それから公益委員で構成されております船員中央労働委員会の方にその検討をお願いした次第でございます。ところがその後、まあ機が熟していないと申しますか、いろいろとそれぞれの思惑の差もございまして、一時途中でとんざしたわけでありますけれども、昭和五十二年の四月に改めてまた同じ場で、やはり社会的な状況変化、あるいは国際海運の変化というものを踏まえまして、ひとつその問題をもう一度同じ場で検討しようじゃないかということで、五十二年に改めてこの船員制度近代化の問題が検討を再開された次第でございます。その再開の場は、もちろんいま申し上げました船員中央労働委員会の場もございますけれども、もう少し従来のやり方を変えて、官、公、労、使が集まって、実際に海外の船員制度近代化の進捗状況も調べ、それから、その上で実際の実験船というものを使ってみて、その実験船に、具体的に申しますと、十八名の乗組員でその実験船を動かすような方策を、具体的には実験船を使って検証していってみようということで、船員制度近代化委員会という委員会をつくりまして、これは船員中央労働委員会とは別の組織でございますが、つくりまして、ここでいろいろと実験、検証をしてきたわけでございます。したがいまして、その場はいま申しましたように官、公、労、使の四者構成ということでやっております。そこでいろいろと議論しまして、一応、さらに近代化を進めていくためのもろもろの障害を除去すべきだという結論を得ていただきましたので、その結論に従いまして、障害の一番大きなものであります法律の改正を進めるべきだということになりまして、今度はその法律の改正になりますと、これはまた非常に具体的に、船員法につきましては、法律に基づきまして船員中央労働委員会に諮問することが強制されておりますし、船舶職員法につきましては、これはまた、海上安全船員教育審議会の場に諮問するように法律上義務づけられておりますので、船員法につきましては船員中央労働委員会の方に、船舶職員法につきましては海上安全船員教育審議会の方に諮問いたしまして、今回の改正案の最終案を得て上程申し上げた次第でございます。
 いま申し上げました船員中央労働委員会の方も、それから海上安全船員教育審議会の方も、公労使の三者構成で構成しておりますので、私どもこの案につきましては、労働側の御承認も、それから使用者側の御承認も得ておるというふうに考えております。
 それからなお、そのほかにいろいろと、たとえば船員関係の団体、船長さん方で組織しております船長協会とか、あるいは機関士の方で組織しております機関士協会だとか、そういう関係団体がございますけれども、そこらの団体にも皆一応この案をお示ししまして、御了解を得ておる次第でございます。
#149
○黒柳明君 船員制度の近代化委員会は私的諮問機関ですが、これは公的にする考えはないですか。
#150
○政府委員(鈴木登君) 船員制度近代化委員会というのは、実は船員局長の私的諮問機関という形で発足しております。当時はどういうふうに船員制度の近代化の実験、検証が進んでいくのかもなかなかつかめなかったために、そういういわゆる関係者の方々から、どちらかというと中途半端な組織だと言われておりますけれども、船員局長の私的諮問機関になったのだろうと思います。
 ところが、一度進んでまいりますとかなり実質的な働きをしていただいておりまして、かなり社会的にもやはり一つの大きな存在として認められておる次第でございます。ただ、この法案の審議の過程、あるいは船員制度近代化委員会の検討の過程で、船員局長の私的諮問機関である船員制度近代化委員会を、少なくとも法的な制度、法的なといいますか、法律に基づいた、たとえば運輸大臣の諮問機関とか、そういう形にすべきではないかという御意見も出たわけでありますけれども、そういう法的な制度にするためには、現在、別途行政機構改革というのが政府の一番大きな、政府と申しますか、わが国の一番大きな問題になっておりまして、そういう状態の中で新しい行政機関をつくるということはこれは実はそういう国家の方針にも反するというようなことから、われわれもいろいろ検討したわけでありますけれども、この機関をそういう法的なものに格上げするということはできなかったわけでございます。ただ、そういうことができなかったといたしましても、私どもは今後ともこの船員制度近代化委員会のような形で、労使の御意見を十二分に、この法律の運用あるいはこれからたくさん政省令があるわけでございますけれども、そういうものの制定に際しましても、労使の御意見を十二分にそういうところを通じて尊重してまいりたいというふうに考えております。
#151
○黒柳明君 近代化の実験は今後も続けるんですか。将来のプログラムはどういうお考えでしょうか。
#152
○政府委員(鈴木登君) 現在の船員制度近代化の実験は十四隻、これは三十五次船の、現在のところ一番新しい船でございますけれども、それでやっております。そのやり方といいますのは、一応目標値を決めまして、その目標値、私ども仮設的船員像、仮に設ける船員の姿といいますか、実験をやっておる最中に、こういう船員像がいいのじゃないかと思っていましても、また実験の途中で変わっていく可能性もあるというようなことから、仮に設ける仮設的船員像というふうな名称をつけたわけでありますけれども、その仮設的船員像に基づいて実は実験、検証をやっている段階でございます。
 そしてただいまの段階は、その仮設的船員像への過程で、三段階に分けまして、その三段階のうち、現在は第一段階の実験が済んだところでございますが、あと第二段階、第三段階の実験が残っておりますし、第三段階の実験が済みましても、さらにまた新しく、その場で、その時点でさらに新しい理想的な船員像というものがまた出てくる可能性もございますし、私はよく申し上げておりますけれども、いわば無限軌道的な形で新しい船員像を設けて進んでいかなきゃならないんだろうと思います。
 こういうふうな仕事を始めましたのは、けさほどからも御議論いただいておりますとおりに、国際的なわが国の海運の競争力の増強とかいうことも言われておりますけれども、恐らく私どもはこういうふうな形で理想的な船員像を求めて船員の社会的地位の向上を求めてやっていくわけではありますけれども、開発途上国あるいは便宜置籍国がわが国と同じような形になってくれば、またそこで日本の船舶の国際競争力の下落といいますか、あるいはそれに続けて船員の職場の減少といいますか、そういう事態が起こってこないとも限りません。そのときはそのときでまた新しい船員像を設けてそこに進んでまいらなきゃいけないと思います。そういう意味で、私は船員制度の近代化は、無限軌道的に船員の理想像を求めてまだまだこれから長い間続けていかなきゃいけない問題だろうというふうに考えております。
#153
○黒柳明君 大臣、最後に、確かに将来ともに相当しっかりしたプランを持って進まなきゃならないと思います。ただ、この近代化のあるいは条約の批准を目指して進むに当たって、まず根本的なのは、午前中便宜置籍船についての質疑が行われました。私はあえてその質問は避けたわけですけれども、海運業界に対して、やっぱり置籍船の利用の抑制を強力にこれは指示する、これがすべてであり、あるいはそれがゴールでもあるかというような感じがします。その中において、近代化というのはもう陸でも空でも進んでいるわけで、海だけ進まないわけにいかないわけであります。ただその中で、陸の近代化が、コンピューターの発達があるいは失業につながる方向を避けつつあるという、一つの方向があるわけですが、海の場合は、そうかといって陸と同じ方向に行くとは限りませんものですから、ひとつ海運業界に対しての強い行政指導、それとともに、やっぱり何にもわからないというのじゃ目標、プランも展開できないと思いますので、まあどのぐらいのものがあるのか、こういう船が、フラッグ・オブ・コンビニエンスというものはどういう位置を占めているのか、どのぐらいの利用度があるのか、これも速やかにやっぱりつかむ努力もしないと、これからの船員の近代化に伴ってのプラスの方向は開拓できない、こう思いますんですが、ひとつそれらを含めて最後に大臣に見解をお伺いします。
#154
○国務大臣(小坂徳三郎君) 黒柳委員のただいまのお話は、大変に今後の海運行政あるいはまた船員問題について重要な御指摘であったと思います。いまわれわれこの法案によりまして、少なくとも船員の社会的地位の向上と、またこれらの方々が働く職場そのものがきわめて近代化されていくということをこれから非常にわれわれは期待をいたしておるわけでございますが、午前中からもお話のございましたように、だんだんと職場が拡大しないのじゃないかというおそれ、それが一方において、いわゆる便宜置籍船というようなものが、これは非常にヤマカンでございますが、全海運の総トン数の中じゃ三〇%ぐらいあるのじゃないかと見られておるのですが、こうしたものがどんどんと利用されて、日本国籍の船が余り利用されないということでは非常に困る。その両方の面があって近代化を進めなくちゃいけないのでございますが、やはりいまおっしゃったように、なるべく日本の船主や、あるいは海運業界が、こうした海員の方々の職場を今後も広げていくということに心をそろえて今後の運営をしてもらえるように、われわれも本日の委員会を通じて非常によく皆様方の御意向がわかったつもりでございますので、そうした面について十分船主あるいは運営の経営者の方にも話をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
#155
○前島英三郎君 初めて当委員会で質問さしていただきますので、先ほど来熱心な質疑がございましたが、まあなれない問題でございますけれども、私なりにいろいろ取材もいたしましてまとめましたものでございます。したがいまして、午前、午後の質疑の中と重複する部分も多々あるかもしれませんけれども、お許しをいただきたいと思います。
 今回の法律改正案は、三部構成といいますか、STCW条約批准関係の部分と、それから船員制度の近代化に関する部分、それにまた、船員災害の防止に関する部分、大きく分けてこの三つの要素から成り立っていると思います。しかもこの三つは、内容的に大変深いつながりがございますし、そのつながりの接点に何があるかというと、事故のない安全な海運、その適正な発展という命題があると、私はこんなふうに理解しているわけでございます。
 ところが、わが国海運を取り巻く国際的な環境ははなはだ厳しいものがあると思います。具体的には、日本人船員の職場が大幅に狭まってきているというこの実態でございます。今回の法案審議に際しまして関係者の方々のいろんな御意見をお聞きしたんですけれども、ある人は、近年の傾向を、悪貨が良貨を駆逐するという感があるとさえ言っておられました。すなわち、日本人船員という良貨が職場を狭められ、結果として、安全の面でも、適正な発展という面でも著しく問題が生じていると、こういうことでございます。
 船員制度近代化はすぐれた日本人船員の職域確保ということが重要な目的の一つでございまして、今回の法改正は当然この目的に沿ったものであると理解したいのでございますが、どうも午前中からのやりとりでは、かえって職域が狭くなるのではなかろうかというような雰囲気も若干私は感じておるわけでありますが、その辺はいかがでございましょうか。
#156
○政府委員(鈴木登君) 船員制度近代化の問題と、それからSTCW条約の問題、実はこれ両方とも私どもはやはり優秀な日本人船員の職域確保につながるだろうと存じております。それで、ダイレクトにそれを目的にしたものが船員制度近代化の問題でございます。実は、けさほどからも問題になりましたように、日本の海運に占めます日本人の乗った日本船舶の比率と申しますのが、十年前は八五%ぐらいであったのが最近五〇%ぐらいにまで減少してきております。このために、実際問題といたしましても、日本の船員数というのはどんどんどんどん減ってきております。もちろんそれと同時に、船員制度近代化はまだこれからの問題でありますけれども、一船当たりの乗組員の数も減っておりますけれども、さらに同時に、日本船の数もふえずに外国用船ばかりふえたという二重の相乗効果で日本人の船員の職場が減ってきたのだろうと思います。ここらあたりで何らかの形で歯どめをしないことには大変な問題になるというのがわれわれの考え方でございます。
 したがいまして、この歯どめをする方法というのはどういうことかということが問題になりまして、その歯どめの方法は、やはり最近非常に進んでおります船舶の近代化に対応した船員制度を採用することによって国際競争力を強め、その国際競争力を強めることによって外国用船の比率を少なくする、純粋の日本人の乗った日本船舶の数を多くするということが日本人船員の職域の減少の歯どめになるんではなかろうかというふうな事態で、この船員制度の近代化を手がけた次第でございます。
 それから、けさほどから問題になっておりますSTCW条約につきましては、先ほども申しておりますとおりに、このSTCW条約が完全に施行されまして、外国船に対する監督とかということが一般化してまいりますと、だんだんだんだんそういう基準以下の船員が乗っている船が少なくなるだろう。そういうふうになりますと、これはまあむしろ自動的に日本人のような優秀な船員が社会一般、国際的にも一般化するだろうという意味で、これは間接的ではありますけれども、日本人の船員の職域確保につながるだろう。したがいまして、近代化の方もSTCW条約の批准の方も、いずれも両方とも日本人の職域の確保につながる問題であるだろうというふうに考えておる次第でございます。
#157
○前島英三郎君 まあ法律というものは、ひとり歩きしてしまいますと振り返ることもできないという部分もありますので、それゆえに、将来に対するビジョンもまた大切になってくるだろうと思います。大変局長さんが熱心に、その近代化というものは日本人船員の職域確保というには大変な効果があるんだということでございますから、これ以上言及しないにいたしましても、海の日本ではありますが、それも外国とのひとつのコンセンサスがあってこそまた日本のひとつの成り立ちというものもあると思うのでございます。特に、近隣の発展途上国の海運に対しまして、適正な発展にわが国が寄与しなければならないという重要な課題も一方にはあると思うのでありますが、ともすればその部分は非常にまた置き去りにされてきたひとりよがりの部分もやっぱり反省しなければならない点もあろうかと思います。近代化によりまして人減らしをしておいて職域は一向に広がらないということになりますと、日本人船員の立場は全くなくなってしまうわけでありますから、まあひとつ先ほどの言葉がそのまま額面どおり今後育っていくことを期待したいと思いますが、と同時に、貿易にきわめて大きな比重のありますわが国の経済、そして国民生活にとりまして、海運の余りに多くの部分を外国船及び外国人にゆだねるというのは、これまたいささか不安な要素もございますし、それゆえに大変重要だろうとも一面で思っております。ぜひとも有効にして適正な発展を期待したいと、このように思うわけであります。
 さて、船員制度近代化に関してお尋ねいたしますけれども、これは一面において急がねばなりませんが、また一面において慎重な取り組みが必要だというふうにも思います。現実に船を浮かべて実験を積み重ねながらの法改正ではございますけれども、今日までの経過を見ますと、船員制度近代化はまだ実験の途上にあると言えると思うのでございます。なかなか将来のビジョンというものが先ほど来伺えないんですけれども、これはいかがでございましょうか、この辺は。
#158
○政府委員(鈴木登君) 五十二年に船員制度近代化調査委員会というものをやはり官公労使の四者構成でつくりまして、それで諸外国のそういう近代化の状況だとか、あるいは具体的に、実際に日本の船でどういうふうな形で仕事を行われておるかというような基礎データというのを集めまして、さらに五十四年にその船員制度近代化調査委員会を船員制度近代化委員会というふうに改組いたしまして、その調査結果に基づいた、ひとつの基礎データに基づきまして新しい実験をやっていこうという形で五十四年から実験段階に入ったわけでございますが、その実験段階に入りますときに、やはり何らかの形で目標値をつくらないとなかなか実験ができないだろうということで、仮設的船員像というひとつの目標値をつくった次第でございます。
 その目標値は、簡単に申し上げますと、もう職員も、現在のところは船舶内での職種といいますか、それは甲板部、機関部、事務部、通信部というふうに四つの部に分かれておりまして、四つの部がそれぞれ船長のもとにいわば独立しておりまして、甲板部の関係の方々は機関部の仕事には全然タッチしない、通信部の方々は機関部の仕事には全然タッチしないというふうな形なっておりまして、したがいまして、同じ船に乗っておりながら、甲板の方々は機関のことが全然わからない、あるいは通信の方々はエンジンのことは全然わからないというふうな状態でありました。ところが、それではやはりいけないということで、仮設的船員像では、甲板も機関も通信もあるいは事務部も、その辺の区別をできるだけその障壁を取り払ってしまおうと。それから、現在は船長は甲板部出身の方でないと船長になれません。ところが、そういう仮設的船員像では、甲板の方でも通信の方でもあるいは機関の方でも、統率力のある方はだれでも船長になれるような形にしようとか、あるいはさらに職員と部員は現在厳然たる差がついてございますけれども、その辺の区別もできるだけなくしていこうと。というのは、日本の乗組員の中では部員というのは非常に世界的にも評価が高うございまして、非常に優秀でございますので、そういう部員をもっとどんどんどんどん職員に登用していくべきではないかというふうな問題もございまして、そういうふうな形で、縦割り、それから横割りといいますか、上下の区別をできるだけなくして、乗組員である以上は全員高級技術者になるような、そういう船員というものに持っていこうというふうなそういう像を仮に設けました。これがいわゆる仮設的船員像でございます。最終的には、これは十年先か二十年先かあるいはもっと先かもしれませんけれども、いずれにしてもそこまで、そういう一つの仮設的な像を、目標値をつくりまして、その目標値にいくためにいろいろワンステップ、ワンステップで進んでいこうと。
 現在のところは一応その最初のワンステップでございまして、その最初のワンステップでは、部員について甲板部と機関部の区別をなくしてしまおうと。これは部員は甲板の仕事も機関の仕事もできるようにしようと。それから職員につきましては、一番下の職員といいますか、三等航海士、三等機関士について、相互の仕事をお互いにし合うといいますか、相互交流をしようと。そこまでを一応第一段階として、それでやってみようということでおととしから去年にかけまして、その第一段階といいますか、最初の段階の実験を済ませたところでございます。これを今回法律的に一応取り入れようと。
 それから第二段階といいますのは、それをさらに職員の部で二等の航海士あるいは機関士のところまでやり、さらに第三段階では、一等航海士、一等機関士までもそういう相互に乗り入れをするというふうな形での実験をしていこうと。それが済みますと、また新しい一つの像を求めて実験をしていこうということになっておりまして、現在のところは第一段階の総合実験が済んだというところでございます。
#159
○前島英三郎君 そういう点では実験的段階の中から一つの法律という問題が提起されてきているわけですが、いわば特例的な処置であると受けとめざるを得ないというふうに思うわけでありますが、今後さらに実験、検討を積み重ねて、実験の結果即また法改正というような繰り返しになりますと、大変混乱も招くだろうというふうにも思います。改めて本格的な法整備を図るべきものであり、今回はその一段階であると私は理解したいと思うのであります。したがいまして、今回の近代化にかかわる特例的な規定の適用船舶は必要以上に拡大してはならないと考えられますけれども、この辺はいかがでございますか。
#160
○政府委員(鈴木登君) 先生御指摘のとおり、今回のはあくまでも特例でございまして、船員法につきましても船舶職員法につきましても、在来の制度はそのまま残しておきまして、今回新しく採用いたしますのはあくまでも特例という形をとっております。したがいまして、船員法につきましても、従来の七十条はそのまま存続した上で七十二条の三といういわゆる近代化特例の条文を別につくりまして、特別の船についてだけこの七十二の三を適用するというふうな形をとってございます。したがいまして、七十二条の三を適用する船につきましても、七十二条の三をお読みいただいたらおわかりいただけますとおりに、非常に厳格な条件をつけておりまして、たとえば船舶の設備の要件、部員の要件、それから、その他のもろもろの基準に適合する船舶のうちさらに運輸大臣の指定するものだけがこの七十二条の三の適用を受けるのだという形で、かなり制限的な書き方をしてございます。したがいまして、どの船をこの七十二条の三の近代化特例を適用さしていくかというのは、これからいろいろとまた労使の御意見も伺いながら検討してまいりたいと思います。
#161
○前島英三郎君 次に、STCW条約批准に関連した問題についてお尋ねいたします。この条約は、国際的な基準を定め、その基準を守っているかどうか、各国が相互に監視し合うことになっておりますが、
   〔委員長退席、理事黒柳明君着席〕
ところが、聞くところによりますと、ヨーロッパの十四カ国は、来る七月一日を期して向こう三年間にわたり大変厳しいポートステート・コントロールを実施するということのようでございます。入港船舶を片っ端からチェックしまして、国際基準に満たない船舶を締め出すという方針だと聞いておるんですが、昨今のヨーロッパとの貿易摩擦、いろいろなことを考えますと、日本の船がその火の粉をかぶるおそれもないとは言えないと思うんです。と申しますのは、ヨーロッパ十四カ国は今回のSTCW条約を含む六つの国際条約に基づいてチェックしようというんですけれども、六つのうち、海洋汚染防止条約、ILO百四十七号条約、この二つはわが国はまだ批准をいたしていないと思うんですが、こうした状況にどのように対応するつもりなのか、その辺も伺っておきたいと思いますが、いかがですか。
#162
○政府委員(鈴木登君) 実は、先生御指摘のEC諸国のポートステート・コントロールに対する申し合わせでありますけれども、ことしの一月の二十六日に、欧州地域会合におきましてEC諸国が、ことしの七月一日から、EC加盟の国に入ってくる外国船に対しては、いまも先生御指摘の七つの条約をかなり厳格に適用していって取り締まるんだという点で申し合わせを行ったわけでございます。その七つの条約は、満載喫水線条約、それから海上人命安全条約、それからそれの議定書、それから海洋汚染防止条約の議定書、それから現在問題になっておりますSTCW条約、それから海上衝突予防条約、それから商船の最低基準条約、この七つでございます。いま先生御指摘のとおり、このうちわが国がまだ批准しておりませんのは、このSTCW条約を除きまして、いわゆる海洋汚染防止に関する議定書とそれから最後の商船最低基準条約、これがいわゆるわれわれ百四十七号条約と呼びますけれども、この二本でございます。この二本につきましては、実は現在私どもは批准すべくいろいろ検討中でございます。非常に申しわけない次第でございますけれども、やはり私ども事務量もございまして、まずSTCW条約の方が先に発効するだろうという見通しのもとにSTCW条約批准案件の検討に入ったわけでありますけれども、逆にその百四十七号条約の方が先に発効してしまったというふうな状況でございます。
 したがいまして、私どもの方は、このSTCW条約の批准を御承認いただきました暁には、次はやはりこの百四十七号条約の方に入らなければならないというふうに思っておりますが、まだ時期もすぐというわけにもまいりませんので、できるだけ早くやりたいと思っておりますが、その間に諸国で取り締まりが進むというふうな事態になってまいります。したがいまして私どもの方は、この点につきましては、外務省を通じて、いろいろと日本のわれわれのその批准状況といいますか、検討状況を外務省の方に御連絡いたし、万が一そういうトラブル、外国の港へ入った日本船舶が取り締まられるというふうなトラブルが発生するような場合には、私ども外務省を通じていろいろと外交交渉で問題の解決を図りたいと思っております。
   〔理事黒柳明君退席、委員長着席〕
 それから、日本船主協会等の関係者につきましても、そういう事態が発生しないかどうかをよくチェックして、発生のおそれがあり次第すぐ私どもの方に御連絡していただきたい、その御連絡をいただきますればすぐまた私どもの方から関係各国に直接御連絡するとか、あるいは外務省を通じて御連絡するとかいうことで、できるだけスムーズな形で船舶の運航ができるように措置するつもりでおります。
#163
○前島英三郎君 昨今、大変きな臭い国際情勢でもございます。そういう意味での空も陸も海も、非常に経済の流通機構というのは一層厳しさを増しております。そういう中で、ぜひそういう形での今後の善処をもあわせて考えていただきたい、そのように思います。
 今回の条約の大きな柱の一つは旗国主義でございますけれども、これを崩すようなことがありましたら正しい批准とは言えないと思いますし、国際的にも非難を浴びるばかりか、しっぺ返しも覚悟しなければならないと思うんです。これまでの日本の海運のあり方を見ますと、いわゆるマルシップでありますとか便宜置籍船でありますとか、目先の経済的利益を追求するために安全と適正な発展にもとる傾向が大変見られたと思います。その反省の上に立っての今回のこういう形だろうと思うんですが、このことが日本船員にも深刻な打撃を与える結果にもなってきたわけでございます。したがって、日本としてはこの旗国主義を緩和することなく厳格に実施していくべきだと考えるものでありますが、この点についていかがでございますか。
#164
○政府委員(鈴木登君) STCW条約は、旗国主義、いわゆる日本の国に登録している船に対しては全部日本の国の法律を適用するようにというふうないわゆる旗国主義を採用しております。この条約を批准いたします以上は、私どももそういう日本に国籍のある船には全部この船員法、船舶職員法を適用していくつもりでございます。
 ただその適用の仕方でありますけれども、やはり先ほどから話題になっておりますように、いわゆるマルシップ、三百数十隻ございまして、日本の海運に占めておるウエートも非常に大きいものがございます。これを一挙に一〇〇%、STCW条約あるいは船員法、船舶職員法を適用するということになりますと、やはりかなり社会的な混乱を招くと思いますので、私どもはこれからいろいろと、これを御可決いただきますとまた一年先ぐらいから施行ということになるわけですけれども、一年間、その間にできるだけその障害がないような方法を関係者ともよく話し合いながら、できるだけこの条約の趣旨を逸脱しないような形で、しかし現在のそういうマルシップの存在というものが根本的に破壊してしまうようなそういう急激な変化のないような形で調整を図ってまいりたいというふうに考えております。
#165
○前島英三郎君 条約により、国際的な基準につきまして相互に監視するということのようでございますけれども、日本側の監督体制はいかにも弱体であるのではないかという感がいたします。監督の任に当たる船員労務官は現在百二十六名ということです。五十七年度には二名プラスして百二十八名ということを伺いましたが、これでは不足であると局長さんは認めていらっしゃるようでございます。船員労務官だけですべてをカバーするのではなく、他の機関の協力を得る必要があることはもちろんなんですけれども、しかし、軸となるのはやっぱり労務官でなければならない、このように思いますね。足りないという自覚をお持ちなんですが、最低限、これからのいろいろな海洋に対する取り組みなどを踏まえまして、これだけは必要だという分析、計算というふうなものはいかがでございましょう。これだけは最低必要なんだがと。足りない足りないではわからないような気がするので、その辺はいかがでございましょう。
#166
○政府委員(鈴木登君) これははっきり申しまして多々ますます弁ずという感じでございまして、数が少なければなかなか立入検査の回数も少なくなりますし、数が多くなれば立入検査の回数も多くなるというふうな事態でございまして、具体的にじゃ何回立入検査すればいいんだということになりますと、これは非常にむずかしい問題でございます。したがいまして、私どもの方は毎年毎年たとえ一人、二人ずつでも増加していただくように関係当局にお願いしてまいるつもりでおりますけれども、具体的に、じゃ何名まで船員労務官をふやせばそれで十分かというような数字につきましては非常に算出しにくいものでございますから、一人でも多く整備していきたいということだけ申し上げておきます。
#167
○前島英三郎君 やっぱり何といいますか、いろいろ将来に対するある程度の目標の数値を持ちませんと、こういう海洋におけるニーズが高まる一方の中では、一名ふえてもらえばいい、二名ふえればありがたいというふうなものでは、なかなか安全という面で、あるいは監督体制という面でも不十分だと思うんですね。大体このぐらいの数はどうしても必要なんだというふうなものが、やっぱりお答えの中に目的値として出されることが、すなわち、いままでいろんな実験を積み重ねた一つのデータのもとにこういう特例措置も考えられてきているわけですから、そういう方向が願わくは望みたいところだったんですが、いろいろどうもなかなかその部分はむずかしいようでございます。
 外国船の監督ということになりますと、この船員労務官の語学力といいますか、英語力、まあ英語力が主体だと思いますが、必要になってくると思うんです。五十七年度予算の中で語学の講習のための経費を計上しているということですが、その予算額あるいは使い道等についてお尋しておきたいと思います。
#168
○政府委員(鈴木登君) 五十七年度予算で、一応非常に少ない金額で恐縮ですけれども、百五十万八千円を認めていただいております。これによりましてどういうことをするかといいますと、いろいろ当直基準の英文のパンフレットの作成、それから英文、和文の船員労務官の監査マニュアルの作成、それから海事英会話の講習、そういうものに充てたいと思っております。
 われわれは、もちろんこの海事英会話の講習を中心に考えておりますけれども、やはり英会話の能力というものはすぐ一朝一夕で実現するものじゃございまんので、たとえば実際の取り締まりに際して、その一冊を持っていけば主な質問事項を日本語と英語とで書いてそれを見ながら質問すればいいというふうな形でのマニュアルのようなものを、この百五十万ぐらいの金でつくりたいというふうに考えております。
#169
○前島英三郎君 しかし、その百二十八名が全員が語学が達者というわけじゃないし、それがまた今後は大変重要になってくるし、しかもそのSTCW条約を含むいろいろな問題がいま国際的にも爼上に上っているという段階で、どうも語学が大変重要になってくるのに百五十万円というのは、まあどんなマニュアルが出るかは別といたしましても、やっぱり非常にお粗末きわまりないと、こういう感がするんですが、その辺はいかがお考えになりますか。これだと、もう本当にとても語学の養成なんという形以前の百五十万という数字で大変驚いたんですけれども、それは局長さん、どう理解しておられますか。
#170
○政府委員(鈴木登君) 船員労務官の質の点につきましては、三十九年以来実は高等学校、大学校を卒業した者でなければ任用をしないというふうなかなり厳しい基準で質の向上を図ってございます。したがいまして、それぞれ高等学校、大学卒業者しか任命しないようにしておりますので、そういう点ではすでに英語の能力は基礎的なものはかなりあると思っております。私ども、百五十万余りで金額は非常にお恥ずかしいような金額でありますけれども、そこに私どものアイデアをふんだんに織り込んで、百五十万以上の価値を出してみたいというふうに考えております。
#171
○前島英三郎君 予算をお取りになるには十分苦労されたとは思うんですけれども、もう少しやっぱり本格的な講習、教育ができるよう一層の工夫と努力をお願いしたいと思います。
 船員労務官については、その人員の拡大あるいはその現職の方々の語学力等の資質の向上、この両面の対策が必要であるわけですが、もう一つ今後の問題として、任用資格の再検討も必要であると私は考えます。また、監視体制全般に関しましては、経験豊かな民間の方々の協力を得る方法も考える必要があると思いますし、まあ海運新時代に入るわけですから、それにふさわしい体制をぜひとも整えていただきたいことを強く要望しておきたいと思います。
 次に、船員の労働安全衛生についてお尋ねしたいと思うんですけれども、今回御提出の船員災害防止協会等に関する法律の一部を改正する法律案に関しまして、その現状認識は次のように述べられております。すなわち、近年船舶の技術革新の進展に伴い、乗組員数の少数化が進んでおり、また、漁船においては云々とありまして、労働環境は厳しい状況にあり、一方、船員災害の発生率は陸上の労働災害のそれに比べ、依然として高く、しかも、近年においては従来の減少傾向が停滞している。これは運輸省自身の見解をまとめたものですけれども、もう少しデータと照らし合わせて確認したいと思うんです。午前中も質問にありましたけれども、船員の災害それから疾病の発生状況をもう一度ちょっと伺いたいと思います。
#172
○政府委員(鈴木登君) 申し上げます。
 昭和四十二年に、船員災害防止協会等に関する法律、ただいま改正案を出しておる法律でありますけれども、それを制定いたしましてから、徐々にやはりかなりその法律の効果があったものと存じまして減ってきております。
 実は昭和四十二年、その船員災害防止協会等に関する法律の制定の年でありますけれども、災害、疾病合わせまして二万六千七百五十二件ありましたのが、昭和五十四年には一万四千二百六十件というふうに、四六・七%の減少を見ております。そういう点で私どもかなりこれの効果があったのだろうと思っております。
 ただ、残念なことには、陸上に比べましてやはりかなり発生率が高うございまして、特に死亡発生率につきまして、けさほども御説明申し上げましたとおりに、五十四年度は、船員につきましては千人のうち一・七人が職務上災害によりまして死亡しておる、それに対しまして陸上産業は十七分の一と申しますから〇・一にすぎないということで、私どもかなりこの数字につきましては実はショックを覚えておるような次第でございます。
#173
○前島英三郎君 いまの数字でもわかるように、陸上に比べて発生率が非常に高いわけですね。しかも死亡につながる率が著しく高いのが現状であると思うんです。そもそも海の上はごく単純に見ましても陸上より危険が多いわけでありまして、また不幸にして遭難などいたしましても死体も上がらないというような経過もございます。その上仕事がきつくなってきておると。これでは特別の対策がなければ船員災害や疾病が多くなるのは無理もないと考えられるわけなんですが、現状のように陸上に比べて発生率が高く、しかも、近年下げどまりになっている理由はどこにあるとお考えになっておりますか。
#174
○政府委員(鈴木登君) 先ほど申し上げましたとおりに、実は船員の災害防止の徹底を期そうということで、四十二年に船員災害防止協会等に関する法律というものを制定していただいた次第でございます。それによりましてかなり減ってまいりましたけれども、やはり何といいますか、非常にお恥ずかしい話でありますけれども、やはり幾らかマンネリズムになったといいますか、そういうことがあったのではなかろうかと思いますけれども、最近下げどまりの状況でございます。
 具体的な数字で申し上げますと、船員の災害と疾病の発生率で、千人当たりの数で言いますと、五十年、千人率が四二・一でございましたのが、五十一年三九・七、五十二年三八、五十三年三六・三、それから――失礼しました、これは疾病の数だけでした、申しわけございません。災害と疾病全部で言いますと、五十年が、千人率で七二、五十一年が六八・五、五十二年が六六・一、五十三年が六四・九、それから五十四年が六五・八、ちょっとふえまして六五・八というふうな数字になっております。これはやはりわれわれの努力も足らなかったし、海運界あるいは全体が一つのマンネリズムになったのではなかろうかという点をおそれるわけでございます。したがいまして、もうちょっとその辺を徹底を期そうということから今回の法改正をお願いしたわけであります。
 従来のやり方といいますのは、船単位で物事を考え過ぎる嫌いがございまして、船単位の点につきましてはかなりわれわれ整備したわけでございますけれども、災害の発生率が下げどまったという点で、これはやはり何らかの形でもう少し対策を講じなければいかぬだろうということで、いろいろと陸上の制度との比較もやりました結果、今回陸上のそういう体制をもっと強化しよう、すなわち本社サイドといいますか、船単位じゃなくて陸上の船舶所有者の本社サイドのそういう災害防止体制、労働安全衛生互助体制を強化しようということで、今回法律の改正に踏み切ったような次第でございます。
#175
○前島英三郎君 陸よりも一層危険の多い海上については、いろいろ見てみますと、陸上の労働災害防止に関しては昭和二十二年に労働安全衛生規則ができ、昭和四十七年には独立した法律となったわけなんですね。私などから見ましても、これはやっぱり規則の段階から一歩進みまして、実際海の上で働く皆さんのお話を伺いましても、確固たる法律制定の必要があるという見解に立って再三運輸省に働きかけをしているということも伺ったんですけれども、海上の特殊性から、船員法あるいは職員法と規則との組み合わせでやっているんだと、そうお答えになられると思うんですけれども、私は何かそれでは納得できないような気がするんですね。将来の課題としてでも、これはやっぱり大変危険な仕事の中に非常に孤立した形の中での海での一つの労働ですから、将来の課題としてでも前向きに法律化を検討すべきである、このように思うんですが、その辺はいかがでしょう。
#176
○政府委員(鈴木登君) 実は船員につきましては、船員法とか船舶職員法とかあるいは行政官庁も労働省でなく運輸省とかという、そういう事態がございます。やはりそういう一般の陸上の労働法体系とかあるいは行政体系とは別の体系をとっておるということは、これは一つの長い歴史もございますけれども、やはり船員の労働というのが陸上の労働と違う点が非常に多いということが大きな原因だろうと思います。
 その一番大きなのは、職場と私生活の場が同じだということと、それから船の安全が図られないと船員の災害防止の問題も労働安全衛生の問題も何もかもあり得ないというこの二つだろうと思います。したがいまして、従来から船員につきましては、船員法という船の安全を中心とした一つの法律がございまして、その中で労働安全衛生の問題も、それから災害防止問題も従来考えてきたわけでございます。その船員法の中から労働安全衛生問題あるいは災害防止問題だけを引っこ抜いてしまうということになりますと、これは船員法体系全体がばらばらになってしまいまして、法体系上もあるいは行政指導上も非常にむずかしいような事態を招きますので、私はやはり船員法という一つの船の運航形態というものを考えて、一つの船の安全が確保されないとすべてがうまくいかない、すべてが画餅に帰するというふうな、そういう前提のもとに立った船員法体系というものをやはり堅持していくのが、船員の労働安全衛生面でも災害防止面でも一番いい方法だろうと思います。
 ただ、それだけでは足りない面、いま申し上げましたように陸上の本社サイドでもっと災害防止面も考えてもらわなければいけませんし、あるいは労働安全衛生面にも配慮してもらわなければなりませんので、そういう点についてはやはり船員法を取り巻く周りの法律として徐々に整備していく、そして全体として船員法を中心に船員の全体の労働安全衛生面、災害防止面を強化していくという形が一番いいのだろうというふうに考えております。
#177
○前島英三郎君 もう少しそれは議論が必要な部分だと思いますけれども、後日に譲るとしまして、陸上との対比という観点から見ますと気になる点が幾つかあるんですが、たとえば労働安全衛生法及び同規則によりまして、危険を伴う作業に関しては技能資格を定めておりますけれども、海上ではこれらが独立した資格となっていないと思うんです。たとえばボイラー、クレーン、冷凍機等の運転、あるいは溶接などを行う場合、これは免許は別に要らないわけでしょう、どうなんですか、免許という問題ではいかがですか。
#178
○政府委員(鈴木登君) これも一つの船員の職場という、船舶乗組員という点では陸上と違って非常に特殊な制度と言えるかと思いますけれども、船に乗る以上は、船の運航に従事する以上は、エンジンのことも――これはまあエンジニアの方でありますけれども、エンジンのことも、あるいはクレーンのことも知っていなければいかぬということで、陸上のたとえばボイラー専門家ほど深くはないけれども、非常に広範囲な知識を持っているというのが海技資格の一つの特徴だろうと思います。したがいまして、海技資格を一つ取りますと、船の中のそういうエンジンとかボイラーとか、あるいはクレーンとかいう点についての陸上の資格が要らずに全部処理できるというのが、これは船の特性でございます。
 したがいまして、現在のところ、先生お尋ねの、船に乗って、船の中のクレーンとかあるいはボイラーを処理する場合でも、陸上のボイラー処理とか、あるいはクレーンの処理に必要な資格は要らないと。ただ、そういう点で逆に申しますと、船員が海技資格を持っておるだけでは陸上のボイラー取り扱いとか、あるいはクレーン取り扱いには資格がないと、これはうらはらの関係でございますけれども、そういう事態にございます。
#179
○前島英三郎君 それゆえに、たてまえとしては海技免許の中でカバーしていることになっているわけなんですけれども、先ほども竹田委員から、陸に上った場合にはかっぱであるというような話が出ましたが、陸上では有資格者とは認められていない。したがって、海から転職した場合に、何らそれらの資格は陸上では役に立たないんだという部分があるわけです。資格だけで論ずることはできませんけれども、陸上の資格と共通性を持つぐらいのやっぱり中身を持たせる必要があると考えるんですが、その辺はいかがですか。
#180
○政府委員(鈴木登君) 実はこの点につきまして、私どもその必要性は確かに認めておりまして、そのためにいろいろと関係各省とも実は折衝しておる最中でございます。全部、これは労働省関係を中心に調べてみましても百数十のそういう資格制度がございます。これはほかの関係各省を調べますともっと恐らくふえるだろうと思います。そのうちで一番船の中でもやっておるような、非常に類似の仕事というものを調べましたところが十八種類ございます。その十八種類について、船員の資格、海技免状を持っておれば陸上の資格をそのまま認めてくれるようにしていただけないものかと思って関係各省とも折衝しておりますけれども、資格を取るための資格要件といいますか、能力要件といいますか、それが陸上の場合と海上の場合とかなり違うと。具体的に言いますと、海上の場合は広く浅くということに対して、陸上の場合は狭く深くというような問題もございまして、なかなかむずかしい問題がございます。
 したがいまして、私どもは今度は十八業種個別個別に、陸上の資格の深さ、広さ、それを個別に現在実はチェックしているような段階でございまして、そのチェックが済みました段階ではもう一度関係各省にいろいろとお願いしてまいりたいと思っております。
 ただ、それとは別に、この互換制といいますのは、船員が陸上に上がったときに新しい資格を取らなくてもすぐその陸上の職場につけるという意味で、恐らく船員の方々はそれを希望されるわけでありますけれども、この点につきましては、そういう互換制というのは一挙に解決する問題じゃございませんので、私どもはそれはそれとして関係各省と折衝しながら、別途私どもの方の海技大学校の分校の方で、希望の船員の方々には陸上のそういう資格を取らせるための講習会をかなり精力的に開いておりまして、これはかなり船員の方々の好評をいただいておる次第でございます。
#181
○前島英三郎君 質問することがすべて鈴木局長さんだけの答弁で、大分お疲れのようですから、まだほかにも幾つか大事な問題がありますが、少しお休みしていただきまして、ちょっと話題を変えまして、船舶職員法における小型船の船長資格につきまして、障害を持った方が資格を取ろうとした場合、制約が過去にございました。この制約が必ずしも適当ではないということで御検討いただいておったと思うんですが、その後どのようになったか、承っておきたいと思います。
#182
○政府委員(鈴木登君) これも私の担当でございますので、私からお答えさしていただきます。
 身体障害者に対する小型船舶操縦士の資格の点につきまして、実は昭和四十九年の船舶職員法の改正の際に一部改正を、法律の五条三項の改正をいたしまして、身体障害者の方々でも小型船舶操縦士の免許を取れるような措置をいたしました。ところが、それがやはり法律改正いたしましても具体的のやり方は省令とか、通達とかいうことで処理しなきゃなりませんので、四十九年以来、小型船舶操縦士身体標準検討委員会という委員会を設けまして、そこでいろいろと、どういう形でその身体障害者に対する小型船舶操縦士の免許を処理していくかという点を検討してまいった次第でございます。その結果、昭和五十六年、去年の三月、ちょうど一年ぐらい前でありますけれども、報告書をまとめていただきまして、今回それについて九月十五日付で省令を改正いたしましてその施行をいたしました。その後すでに十九人ぐらいの身体障害者の方々がすでに小型操縦士の免許をお取りになっておられます。その内容は、従来免許の出せなかった下肢の特定の障害のある方々についても免許を出すと、それから上肢の、手の方に障害のある方々につきましても船舶の設備を特定の設備に、たとえば片手のない方にでもそれに相応した設備を設ければ、われわれ設備限定と言っていますけれども、そういう船につきましては小型船舶操縦士の免許を出し得るとか、あるいは耳の非常に悪い方々にも補聴器をつければ免許を出し得るとか、そういう点での改正を去年九月に施行した次第でございます。
#183
○前島英三郎君 それは障害者の職域拡大ということでも大変評価できることでございます。どうもありがとうございました。今度は局長、答弁は要らない問題ですから少しお休みください。
 さて、船員災害の結果、体に障害を負って陸上に上がらなければならないという方もたくさんおりますが、ところがその陸上生活にはさまざまな壁がございまして、その最大の壁の一つが移動、交通の障壁でございます。そこで、まず障害者の移動、交通に関しまして、私はかねてから総合的、体系的整備の必要性を叫んでまいりました。歴代の運輸大臣にも考え方としては御同意いただいているわけでございますが、必ずしも実効が伴ったとは言えないと私は思っております。政府の障害者対策にかかわる長期計画がまとまったことでもありますので、総合的、体系的整備にどのように取り組むのか、ひとつ大臣にお答えいただければありがたいと思います。
#184
○政府委員(石月昭二君) 初めに私からお答えさしていただきます。
 御承知のように、先生おっしゃるとおり、身体障害者の方々の社会参加というためには、まず第一番目に移動の自由が保障されなきゃいかぬ、そのためには、公共交通機関を含めて出発地から目的地まで一貫して身体障害者の皆様方が利用しやすいような形で施設が整備されなければならないと私ども考えている次第でございます。先生御承知のように、しかしながらこの問題は、たとえば道路の問題につきましては建設省、たとえば道路の段差というような問題で建設省の問題がございますし、交通信号というような問題については警察庁という形で、各省にまたがる問題でございますので、この間の連絡調整をよくとってやらなきゃいかぬ。それからいま一つは、公共交通機関の場所的な制約と申しますか、非常に人の往来のふくそうするところでございますので、改造のときというようなときでないとなかなか年次計画というような形ではやれないと。
 それから、先般先生の論文にもございましたけれども、やはりそういう意味からでも、施設の整備基準というようなものをつくって、そういう改造のときにあるべき姿というものを事業者に示して、その整備を進めた方がよろしいという先生のお考えもございます。私どもも全く同感でございまして、そういう意味で、今年度の予算で約千四百万ほどの予算を準備いたしまして、公共交通機関の施設の整備基準というようなものをいまのところつくりたいと思っております。
 そういう、片方でハードの面の対策を進めますとともに、やはりこの問題は、そうは言っても一挙にはなかなかできませんので、そういうところを補完するためには、従業員の善意と申しますか、そういう面が非常に大事なんじゃないかと。そういう面で、ハード、ソフトの両面にわたりまして、関係の事業者を指導して、交通機関が利用しやすいようにということを進めていきたいと考えている次第でございます。
#185
○国務大臣(小坂徳三郎君) ただいま総務審議官からお答えを申し上げましたことが、運輸省として現在基本的に進めようとしていることでございます。
 ただ、これは少し唐突な話で恐縮でございますが、今度国鉄運賃が値上げになりました。このときに、身障者の方から御陳情がありまして、これは前からあったそうでありますが、切符を買うときに、一々区役所に行って証明書みたいなものをもらって、それで切符売り場に行ってそれを見せて買わなくてはならぬ、これは大変なことだというお話で、これは前々からみんなで検討しておったようでありますが、今度は国鉄は、手帳だけ見せたら必ず売るというような改正を進めたことは、本当に数日前の具体的なことでございます。
 なおその他、国鉄も貧乏して大赤字を出しておりますが、今度は値上げで大変評判が悪いので、せめてわれわれとしては身障者の方々に特急料金を割り引きしたらどうかという話をしておりましたら、予算が足りないの何のとか言ってなかなか進んでおりませんが、来年度にはぜひひとつこれは、というよりも、なるべく早く、特に目の御不自由な方には、一人では歩けないのでありますから、そんなような面についても直したいというので検討を命じたところでございます。
 その他いろいろとございますが、なかなか、お金がないというのじゃなしに、アイデアがないんです、むしろ。改善をすべき問題は、役人衆が頭で考えたって何にも大して役に立たないことが多いので、やはりこうした問題については、それらいろいろと御苦労いただいている方々、苦しんでいらっしゃる方々のいろいろなアイデアが本当に生きるのじゃないかと私は思っておりまして、前島委員はそうした意味において、ぜひまたいろいろな面で、御質問だけでなしに、こうした面を直せとか、やったらどうかというアイデアをひとつ運輸省にいただくならば、大変われわれとしてはありがたいと思っております。
#186
○前島英三郎君 きょうから国鉄は値上げになりまして、いま大臣が御努力いただきました、窓口で手帳だけを提示すれば、いままでのような複雑な割引証持参でなくても国鉄の利用ができる。これは先般報道されただけでも大変反響がございまして、それと、いま大臣からお言葉がありました急行料金、特急料金も乗車券並みに半額にしていただきたい。それとあわせて、内部障害者が十二万ほどおりますが、この内部障害の人たちが大変長い努力、運動を積み重ねておりますけれども、割引対象になりません。この辺の割引の問題。確かに国鉄は大変な赤字を背負っておりますから、非常にわれわれも要求はしにくいわけでありますが、しかし、人が乗ろうと乗るまいと、八両なら八両は絶えず動いているわけでありますから、そこに、むしろ障害を持った人たちが身近な活動の中で、百キロ以遠ではなくて、五十キロ以遠ぐらいに拡大をしてくれると、かえって国鉄をその障害を持った人たちが行動の中で利用できる、そうすれば国鉄も増収ではないかという、妙な理屈をも私どもは考えながら、いろいろと障害者の移動についてお願いをしているところでございますけれども、ぜひ大臣のお力をいただきましてすべて特急料金、急行料金の半額割引、それと内部障害者十二万の夢を実現していただきたいことを、いまこの場でもって強くお願いしたいんですが、その見通しの中に、前向きという言葉はひとつ御提示いただけるでしょうか。いかがですか。
#187
○国務大臣(小坂徳三郎君) 急行なんというのは乗る人はなくなっちゃっているのですから、特急料金でなくちゃ意味ないのでございますが、計算させたら、六十億円かかるというんです。大変な金額なんで、とつおいつしちゃっておりますが、これは相当厳重に言っておりますので、どうしても考えさせてみたいと思っております。これは前向きと言ってはしかられるかもしれませんが、せめてもそんなことはしたいというふうに思っております。
 それからもう一つの問題につきましては、実は私初めて伺ったものですから、よく内部で検討さしていただいて、御要望に沿うように考えてみたいというふうに思っております。
#188
○前島英三郎君 そこで、いろいろと私たちにとって国鉄は大変移動の中の手段に使われているわけですけれども、その中にもいろいろと問題がいくつかありまして、大変細かいことになりますが、たとえば新宿駅にルミネというビルがあるんです。国鉄が出資しているビル会社が経営しておりますけれども、このビルの五階にあった、たとえば障害者用トイレが取り壊されて、問題になったためにあわてて別の場所につくったという一件があったりしたわけです。これはまあ復活したからいいだろうという問題ではないと思うんですね。一つには国鉄の姿勢が問われる問題であると思うんですけれども、それと同時に、利用者が少ないと思っても、トイレがなくなったのを見つけたのは現にそこを利用しようとした障害者であるという点をこう見ますと、一カ所また一カ所と一つずつ使えるトイレが出てくるのが、まるで宝物を発見したような大変な感激の中で障害者は期待をしているわけです。ぜひとも今後は、これは建設行政の中でも、長期行動計画の中でもお願いをしたいところでございますけれども、いろいろそういう意味での今後の細かい配慮もぜひともお願いしたいと思います。
 そこで最後に、東北・上越新幹線もいよいよ営業開始が近づいてまいりました。かねてから申し入れをしてきたところでありますけれども、いままでつくられている中では、健康な人を標準にすべて駅舎がつくられておりますから、なかなか新たにつくるというのには予算的裏づけで大変でございますが、新たにつくられる駅舎、改装される駅舎、あるいは一つのライン、そういうようなものには、もう設計の段階で歩けない人たちのことも配慮さえすれば、予算の超過負担というものは私はあり得ないだろうと思うんです。世の中には歩ける人と歩けない人しかいないんですから、歩ける人のことを考えちゃうと、一たび歩けなくなると大変不便をいたしますが、歩けない人のことを公共的輸送機関で考えていただければ、何ら歩ける人には不便がない。この単純な考えのもとに、今後つくられる上越あるいは東北新幹線は万全を期しているだろうと、私は高く期待をしているわけですが、その辺行き届いておるかどうかを最後に伺いまして、私の質問を終わります。
#189
○説明員(須田寛君) お答え申し上げます。
 東北・上越新幹線の各駅につきましては、いま先生御指摘のように、新しく建設する駅でございますので、車いす御利用の方々、あるいは目の不自由な方々のための設備を全部完備いたしております。たとえば、各ホームにエレベーターをつくっておりますとか、あるいは車いすの方の御利用いただきますトイレ、それから幅広な改札口、それから目の御不自由な方のための点字ブロック、そういったものはすべて完備をいたしておりまして、ほぼ完全な姿でそういったお体の不自由な方に御利用いただけるような形になっていると、このように考えております。
#190
○前島英三郎君 どうもありがとうございました。
#191
○委員長(桑名義治君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後三時五十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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