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#1
第096回国会 社会労働委員会 第6号
昭和五十七年四月六日(火曜日)
   午後一時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月六日
    辞任         補欠選任
     玉置 和郎君     斎藤 十朗君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         粕谷 照美君
    理 事
                遠藤 政夫君
                佐々木 満君
                安恒 良一君
                渡部 通子君
    委 員
                石本  茂君
                斎藤 十朗君
                関口 恵造君
                田代由紀男君
                田中 正巳君
                福島 茂夫君
                村上 正邦君
                対馬 孝且君
                中野 鉄造君
                沓脱タケ子君
                藤井 恒男君
                前島英三郎君
                山田耕三郎君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  森下 元晴君
   政府委員
       厚生政務次官   津島 雄二君
       厚生大臣官房長  吉村  仁君
       厚生大臣官房審
       議官       吉原 健二君
       厚生省公衆衛生
       局長       三浦 大助君
       厚生省医務局長  大谷 藤郎君
       厚生省社会局長  金田 一郎君
       厚生省保険局長  大和田 潔君
       社会保険庁医療
       保険部長     入江  慧君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○老人保健法案(第九十四回国会内閣提出、第九
 十五回国会衆議院送付)(継続案件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(粕谷照美君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 老人保健法案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○佐々木満君 私は、これから老人保健法案、それに関連する諸問題につきまして若干の御質問を申し上げたいと思いますが、御質問申し上げます前に、一言、厚生省、政府側の皆さんにお願いを申し上げたいと思います。
 私は、国会へ出てまいりましてまだ間がない本当の新米でございますけれども、ここ数年間国会におきますいろんな質疑、政府側の御答弁をお聞きをいたしておりまして、大変残念に思うことがあるわけであります。これは、政府側の御答弁をお聞きしておりますと、どうも逃げ腰の御答弁、弁解がましい御答弁、あるいは質問者におもねる、何と申しますか、その場限りの御答弁が大変多いわけでありまして、私は非常にこれを残念に思っております。何かございますとすぐ謝る、頭を下げる。こんな情景を国民が見た場合に、政府というのは頼りないものだ、こういう気持ちになるだろうと思います。予算委員会なんかテレビで放送されますけれども、私は、この社労委員会に限ったことではございませんが、各委員会、本会議でもそうですけれども、国民に対して大変不安感を与えるのではないか、こういうふうに心配をいたしております。
 国の将来を心配する人はたくさんおりますけれども、役人の皆さんはどなたにも劣らない国の将来を憂えていただいておる方々だと私は思います。また、国民のだれにも負けないほど国民の幸せを念願して仕事をしていらっしゃるはずだと思います。また、それぞれの分野でどなたにも負けないほどの皆さんは専門家である、それなりの勉強もしていらっしゃる、こういうふうに確信をいたしております。また、国民の側からしますと、何といったって政府が一番頼りになる存在でありまして、その政府がぐらついておる、そういうことになりますと、これは国民が大変不安感を覚える。こういうことであろうというふうに思うわけでありまして、私はこの点で、国の将来のために残念なことだと、こういうふうに思っております。
 これは私の意見でございますけれども、そういうふうなことでございますので、どうかひとつこれから私が申し上げることにつきまして、自信を持って胸を張ってひとつお答えを願いたい。私の言っていることが間違っておったら、それは君の言うことは間違いだ、こういうことをはっきりお答えを願って、正しいことを私に教えてもらいたい。また私と見解が違うならば、それは君とは見解が違う、われわれはこう思うんだと、こういうことをはっきりとひとつお答えをいただいて、自信を持って答弁をされる、行政の執行に当たる、こういう毅然とした姿勢をぜひおとりをいただきたいということを冒頭お願いを申し上げておきたいと思います。私は、いろんな問題につきまして、見解が違う、意見が違うということは、ある意味では大変結構なことだ。国の将来のためには意見が違った方がよい。こういう問題がたくさんあると思いますので、どうぞひとつ御遠慮なく御指摘をいただいて、お互い切磋琢磨をして国政の発展を図りたいものだと、こういうふうに念願をいたしております。
 そこで、御質問でございますが、まず医療費の問題につきまして二、三お尋ねを申し上げたいと思います。
 これからの社会保障を考えます場合には、私から申し上げる必要はございませんけれども、この医療費の問題は大変大事な課題だというふうに思います。国民の負担という面を考えましても、あるいは国家財政という点を考えましても、これは今後大変大事な問題だというふうに思います。そこで、最近の国民医療費の状態は一体どうなっておるのか。年々増高しておるわけでありますが、その増高する原因というものを厚生省はどういうふうに見ておられるのか。今後どのような推移をするか。その辺のお見通しも含めてひとつ保険局長からでもお答えをお願い申し上げたいと思います。
#4
○政府委員(大和田潔君) 国民医療費でございますが、五十六年度には十二兆八千六百億、五十七年度には十二兆八千八百億見込んでおるわけでございます。率から言いますと、五十六年度には七・五%、五十七年度は七・九%増というふうに見込んでおります。
 何で国民医療費がふえていくのかという原因でございますが、まず人口の増加、それから人口の高齢化、疾病構造の変化というもの。それからいわゆる医学、薬学の進歩、医療水準の向上、医療技術の進歩。こういったようなものが国民医療費の増高の原因というふうになっているものであるというふうに考えられるところでございます。
 なお、今後の国民医療費がどうなるかという御質問でございますが、国民医療費の今後の動向というものを予測することは大変困難でございますが、一応五十五年度から五十七年度までの平均伸び率というものを使いまして、昭和六十年度の国民医療費というものを推計してみますと、約十七兆六千億程度というふうに見込まれるわけでございます。
 以上でございます。
#5
○佐々木満君 医療費の増高の原因につきましてお話を伺ったわけでありますが、巷間、医療費の増高の大変大きな原因と申しますものとして、出来高払いの仕組みに原因があるんではないか、こういう御指摘が御承知のようにあるわけであります。私は、出来高払いの制度というのは、いろんな問題もございましょうけれども、ほかの仕組みにはない大変な長所があるわけでありまして、長い間の実績を踏まえて日本の中で定着をした仕組みだと、こういうふうに評価をいたしているわけであります。しかし、それにしても、もしこの仕組みが医療費の増高の大きな原因だといたしますと、これはまた大変問題がある。こういうふうに思うわけであります。私はそうじゃない、こういうふうに思っておりますけれども、一体その辺のところを厚生省はどうお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
#6
○政府委員(大和田潔君) 医療費の増高の原因といたしましては、先ほど申しましたように、人口の増加であるとか、あるいは人口構造の高齢化、医学技術の進歩といったようなものが考えられるわけでございまして、診療報酬支払い方式と現在の出来高払い、これのみを原因とするということはできないと思います。現に、日本と支払い方式を異にしております先進諸外国におきましても、医療費の増高傾向が見られるところでございます。
 ただ、いろいろな支払い制度がありますが、どの制度にもやはり一長一短というものがあろうと思われるわけでありまして、したがって、その短所を補完するという施策を講じていく必要があるというふうに考えておるわけでございまして、わが国の出来高払い制度のもとにおきましては、今後とも医療費適正化対策を積極的に推進していく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
#7
○佐々木満君 私は二年ほど前でございましたか、当社労委員会で私の考えを申し上げて、厚生省の当時の医務局長の御見解を伺ったことがございますが、改めてひとつ医務局長にお尋ねをしたいのであります。
 医療費の増高の原因としまして、よく検査づけ医療だとか、あるいは薬づけだとか乱診乱療だとか、こういうことが巷間言われておるわけであります。当委員会の御論議の中でも、こういうお話が盛んに出てまいりますし、また新聞等にもそういうことが間々書かれるわけでありますが、そういうのを見たり聞いたりしておりますと、日本におきましては、乱診乱療というか、検査づけ、薬づけ医療というのが一般的に行われている、こういう印象を持たれる心配が私はあると思うわけであります。もしこの乱診乱療ということが通常、普通一般的に日本の医療で行われているということになりますと、これは医療費がふえるとかふえないとか、そんな次元の低い問題ではないと思います。これは人命にかかわる、人間の生命の尊厳にかかわる大変基本的な問題になると思います。いやしくも人体に対して要らないものを投入したり、よけいなことをして体をひねくり回すようなことになったら、これは医療費なんていう問題ではない、人間の尊厳にかかわる大変な問題だと、私はこういうふうに思います。
 したがいまして、もし日本の医療がそういう状態であるとするならば、法律をつくってでもそういうものは厳しく規制をすべきものである、こういうふうにさえ思います。しかし、そうではない、まあ一部の悪徳と言われる方々は別としましても、日本のお医者さんというのは正しい医療行為をやっておるんだ、検査づけなんていうのはない、あるいは薬なんていうのも適正に与えておるんだ、そういうことだとするならば、私は、国民の不安を解消する意味で、厚生省が国民に対して、日本の医療は正しいんだ、正しく行われておるんだから安心してお医者さんに行きなさい、心配するな、こういうことを大いにPRをすべきだ、こういうふうに思います。そうしないと、何かお医者さんに行く場合に、要らない薬を持たされるとか、何かわけのわからぬ検査をされるとか、これはお医者さんと患者の信頼関係にもかかわる大変基本的な問題だと私は思うわけであります。
 そこで、この前、田中医務局長にお尋ねを申し上げましたところ、なかなか明快なお答えが得られなかったわけでございますが、ひとつ医務局長から、一体日本の医療はどうなんだ、一部に思いのはおるけれども本当にりっぱな正しい医療が行われている、国民の皆さん安心してお医者さんのところへ相談に行きなさい、こういうことを当委員会を通してはっきりとひとつお答えをいただければ大変ありがたいと思いますが、いかがですか。
#8
○政府委員(大谷藤郎君) 一部の医療機関におきまして、国民の医療に対する信頼を失わせるような行為が見られますことはまことに遺憾なことでありまして、私どもといたしましては、医道審議会等におきましても厳正に対処していくべきものと考えております。
 しかし、大多数の医療機関におきましては、国民の健康と生命を守るために日夜献身的な努力をいたされておるというふうに考えておりますし、またこうした努力によりまして、わが国の医療水準あるいは健康水準、たとえば世界最長の長寿国になっているというふうなことになってきているものであるというふうに信じているわけでございます。
 いずれにいたしましても、医療につきましての不祥事に対しましては、厳正に臨みますとともに、また一方ではわが国の医療機関がそのように果たされている役割りにつきましても、国民の皆様の認識を深めていただくことは大変必要なことであるというふうに考えている次第でございます。
    ―――――――――――――
#9
○委員長(粕谷照美君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、玉置和郎君が委員を辞任され、その補欠として斎藤十朗君が選任されました。
    ―――――――――――――
#10
○佐々木満君 大変心強い御見解を伺ったわけでございますが、どうぞひとつ悪いものは厳正に正していただきますけれども、日本の医療は本当にお医者さんの良心に基づいて正しく行われているということのPRを、私どももいたしますけれども、行政当局におかれてもよろしくひとつお願いを申し上げておきたいと思います。
 やや具体的な問題でございますけれども、わが国の医療におきましては、外国に比べて入院の日数が非常に長い、こういうことが指摘をされております。私は、日本の医療の水準なりあるいは医療技術というものは外国に比して遜色がない、こういうふうに確信をいたしておるわけでありますが、たとえば入院日数が極端に長いというのは一体どういうことなんだろうか。私は素人でございますけれども、その辺に大変疑問を持つわけであります。私もお医者さんの友達をたくさん持っておりますが、そういう人たちの話を聞きますと、入院の必要性がないと言っちゃ語弊がございますけれども、そろそろ退院してもいいというような人もなるべく長く置いてくれと、こういうことを言われるということが間々あると。そういうことをおっしゃる人もおるわけでありますが、その辺のところは一体どうなんだろうか。総医療費の中に占める入院医療費、こういうものは一体どう考えたらいいんだろうか。この辺のところにつきまして局長からお考えをお聞かせ願いたいと思います。
#11
○政府委員(大谷藤郎君) 私からお答えさしていただきます。
 患者の平均的な在院日数は、確かにわが国の場合ほかの国に比べまして長い統計が出ております。しかし、この入院日数の問題につきましては、医療保険の問題あるいは一部負担の問題等の医療保険制度の違い、あるいは社会福祉施設等の関係、あるいは住宅事情等いろいろな原因が影響しているものと考えるわけでございます。また、わが国におきましては、慢性疾患を持っている方が普通の病院に入院されておって、たとえばアメリカのようなナーシングホームといったようなものが、中間施設といったものが整備されておらないというふうなことも一つの原因がとも思われます。しかし、いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、大多数の医療機関におきましては、患者さんの症状に応じた適切な入院医療を行っておられるというふうに理解しているわけでございます。
#12
○佐々木満君 次に、これは私の個人的な意見も含めて御質問申し上げたいわけでありますが、あるお医者さんのお話を聞きますと、今日十三兆を超える医療費がある、その中で相当の部分が、たとえば簡単なかぜだとか、あるいは熱が出たとか、あるいはかすり傷を負ったとか、そういう簡単という言葉は適当でありませんけれども、そういうことに使われておる、相当の部分が使われておる、こういう御指摘をなさる方もおるわけであります。
 で、私どもの子供のころ、昔でございますと、私はいまでもそうなんですが、かぜを引いた場合は卵酒でも飲んでゆっくり二日も寝て汗を出す、それで治る、また治す。そういうことなんでございますけれども、そうでなくって、すぐお医者さんに駆けつけていく、こういう現状が相当多いということをおっしゃる方もおるわけです。私は、簡単なかぜでもかすり傷でも何でもお医者さんにかかることは大変結構なことだ、それはどんな大きな病気につながるかもしれませんから、簡単なときによく検査をしてもらって治療してもらう。これは私は大変結構だし、ぜひそうすべきだというふうに思います。思いますが、しかし、そういうことで簡単に治った、何にも問題なかった、そういう程度のものについて保険でこれをみるというのは、一体どうなんだろうか、私はこれ前から疑問に思っておるわけであります。
 もともと、この保険というのは、何でもそうだと思いますけれども、医療保険の場合も、もともとは病気をして大変金がかかる、もう自分の月給では本当にどうにもならない、そういうものについてみんなで助け合おうじゃないかというところから、保険という考え方が私は出てきていると思うわけでありまして、医療保険の場合も私はこの考え方が当然貫かるべきものだというふうに思うわけであります。したがいまして、そういう簡単な、簡単という言葉は適当でありませんけれども、ごくわずかの医療費というものは、それは自分の健康は自分で守るんだということで、家計の中でそれをあらかじめ予定をしておいて対応するのが、これからの健康人としての心構えでなければならない、こういうふうに思うわけであります。
 こういう私の考え、これに対して、厚生大臣の個人としてのお考えで結構でございますから、お聞かせをいただきたいと思います。間違いなら間違いだ、見解が違うなら違うとひとつはっきりとお答えを願います。
#13
○国務大臣(森下元晴君) 佐々木委員から先ほど、実は生命の倫理、人間の尊厳という問題から始まりまして、ただいまのお話まで至っておるわけでございまして、かぜのような軽い病気まで医療保険でみる必要があるのかないのかというような率直な御意見、御質問いただいたわけでございますが、私は、医療とかまた医業というものは、他の職業と違った面を持っておる、すなわち人間の生命、健康を預かる非常に大事な、しかも良識的な精神的な面まで必要とする聖職と申しますか、そういう部門でございますので、これは一概にかぜだから自分が払ったらいいとかどうだとかということには私は通じないと、率直に申し上げまして申し上げたいと思うんです。たとえばかぜをこじらすと肺炎になっていくというような過程も実はございます。だから自己負担はだれしも嫌でございますから、ついついかぜをこじらして重い病気になってかえって費用がかかる。それだけ保険給付がふえるというようなことも実はあるわけでございますから、やはり基本になるのは、医者の良識と申しますか、また制度を通じて医者としての経営が成り立つような問題、それから医者の良識が十分発揮できるような制度、こういう理想的な方向に向かわないと、ただ軽いから自分の負担だけでいくんだということに規定をしてしまいますと、せっかくの医の目的である健康と生命を守るという考え方からずれるような感じがするわけでございます。そういうことで、この問題については慎重に検討しなければいけない。
 ただ問題は、軽いからどうこうという問題じゃなしに、一部負担の問題をどの程度の限度まで抑えるのがいいかどうか、いわゆる受益負担と申しますか、自己負担の割合をどこまで持っていくのが健康に対する認識の度合いを個人個人が感ずるかという問題に通ずることでございまして、軽いだろうからということは、卵酒だけで済ますというわけにはもういかないような情勢になっているように思うわけでございます。
#14
○佐々木満君 大変ありがとうございました。
 私は、後ほども申し上げたいと思うんですけれども、自己負担、いまお話がございましたが、適正な自己負担というのは、これは当然あるべきだというふうに思いますが、もちろん困る方おられるわけですから、そういう方は別でありまして、別な対策が必要でございますけれども、一般的にはそういうお考えで進むべきだと、私はこういうふうに思っておるわけでございます。いずれにしましても、私は、保険というのは、個人の経済で対応できない、そういうものをみんなで助け合ってやるんだということだと思いますので、私ももう少し勉強をしますが、ひとつ厚生省でも御検討をいただきたいと思います。
 医療費の増高につきましては、日本だけでなくって世界各国共通の悩みであるというふうに言われております。最近の世界各国の状況、後で資料をいただければ結構でございますが、大まかな概況についてひとつお知らせを願いたいと思います。
#15
○政府委員(大和田潔君) やはり欧米諸外国におきましても、人口の高齢化とか、医療需要の多様化とか、医療の高度化といったようなものを背景にいたしまして、医療費の増高というものが続いておるわけでございまして、それに伴いまして、やはり財政の圧迫であるとか、国民の負担増というような医療をめぐる諸問題が起こっておるわけでございます。
 そこで、主要各国の医療費の最近の五年間程度の平均の伸び率というものを見てみたいと思いますが、それを見ますと、アメリカにおきましては、毎年平均一三・二%程度の増高を示しておる。それから西ドイツにおきましては一〇・四%程度の増高、それからフランスは一七・七%程度の増高、イギリスは二〇・七%の増高というぐあいに、毎年の平均伸び率というのはかなり高い伸び率を示しておるところでございます。これらの状況に対しまして、やはり各国ともいろいろな施策を講じておるというのは御承知のとおりでございます。
#16
○佐々木満君 次に、老人保健法案の問題について二、三点お尋ねを申し上げたいと思います。
 老人保健制度、これは長い間論議されてきた問題でございますけれども、各方面からいろんな考え方、構想というものがいままで示されてきたことは御承知のとおりであります。完全別建ての制度がいいとか、あるいは財政調整方式がいいとか、いろんな構想が有識者の方々から提案をされてきたわけでありますが、今回政府がこれを全くの別建ての仕組みということで提案されたわけでございますけれども、考えられるいろんな構想、案の中から別建ての制度をつくった、提案をなさったという理由は一体何なのか。そこのところをお聞かせを願いたいと思います。
#17
○政府委員(吉原健二君) 新しい老人保健医療制度のあり方につきましては、従来からいろいろな考え方があったわけでございます。五十二年の十月に厚生大臣の私的諮問機関である老人保健医療問題懇談会から御意見がございまして、その一つの考え方として、現行制度のまま医療保険制度間の財政調整で対処する方式が一つあるだろう。もう一つは、そういったことではなしに、新しい制度をつくって総合的な老人保健医療対策を進めるべきである。その場合にも、その財源の調達には、全額公費で賄う方式でありますとか、あるいは年金の財源を持ってくる方式でありますとか、あるいは今回のような各医療保険制度が共同で財源を拠出して賄う方式でありますとか、いろんな方式があるという内容のものであったわけでございます。
 私どもこういった考え方についていろんな角度から慎重に検討をいたしたわけでございますけれども、現行制度を前提にいたしまして、各医療保険制度の間で財政調整をするという考え方につきましては、なかなか利害関係者の納得が得られない。実際問題といたしまして、このような考え方につきまして、橋本厚生大臣のときに橋本案として発表をいたしたわけでございますけれども、健保組合、健保連を中心として強い反対意見がございましたし、こういった財政調整方式のままでございますと、予防を含む総合的な保健医療制度というものができない、やりにくいという問題があるわけでございます。
 それから新しい制度をつくってやる場合に、どういった財源をもとにしてやっていくかということが大変大きな問題になるわけでございますけれども、完全に現行の制度と切り離して、たとえば住民なり事業主の方々から新しい種類の拠出金で賄うという考え方も検討いたしたわけでございます。小沢厚生大臣のときに、このような考え方をもとにして案をつくりまして発表をいたしたわけでございますけれども、その考え方につきましても、老人を現行制度から全く切り離すことについてはどうだろうかという強い御意見がございましたし、現在の保険制度をさらに複雑化する、あるいは仮にこういった新しい制度をつくる場合には機構の増大等を招くおそれがあると、そういうような問題点があったわけでございます。
 そういったいろんな経過、経緯というものを踏まえまして、私どもは先ほど申し上げました新しい制度が必要である、その場合の財源の方式としては、現行医療保険制度からの共同の拠出金で賄うという方式が一番望ましい、また現実的である、関係者の、関係団体の御理解、合意というものも得やすいのではないかというようなことで、この考え方をもとにして案をまとめまして、関係の審議会にもお諮りし、その御答申を得て法律案として御提出さしていただいたわけでございます。
#18
○佐々木満君 次に、先ほども若干申し上げましたが、医療費の支払い方式の問題でございますが、これにつきましては、現在いろんな案と申しますか、考え方が出されておるわけであります。私はこの現在の出来高払いの仕組みが、いろんな問題があると思いますけれども、一番よい、こういうふうに思っておりますが、この出来高払いの仕組みを変えて、たとえば西ドイツのような総額の請負制にしたらいいんじゃないかとか、あるいはイギリスのような登録人頭払い制にすればうまくいくんじゃないかと、いろんな御提案、御議論がございます。しかし、いろいろ教えてもらいますと、たとえば西ドイツにおきましては、病院の勤務医につきましては、この請負制というものは適用されておらないとか、あるいは英国でも一般家庭医だけに人頭払い制が限定されているとか、いろんな事情があるようでございます。その辺の事情につきまして、御承知の範囲内で結構でございますが、お教えをいただきたいと思います。
 それからこれらの方式、いろいろあるわけでございますけれども、仮に日本でこういうことはやれるのか、導入できる条件が日本ではあるのか、そういう問題。
 それからイタリアが最近出来高払い制を変えて人頭払い制にしたという話を聞くわけでありますが、その辺の事情等につきまして、ひとつ概括的で結構でございますから、お知らせを願いたいと思います。
#19
○政府委員(大和田潔君) 先生おっしゃっておられますように、西ドイツの総額請負制というものについてはいわゆる開業医だけとの契約ではないかと。おっしゃるとおりであります。医師全体の約五五%でございますが、総額請負制度は開業医について行われるものであるわけであります。またイギリスの登録人頭払い制度につきましても、これは一般家庭医、これは医師全体の約三五%でございますが、にのみ採用されておる。病院についてはまだ別の仕組みがございまして、西ドイツの病院については、保険者と病院との個別契約に基づいてやっておりますし、それからイギリスの病院はそのほとんどが国営である、必要とされる費用は租税で賄われておるというような状況になっておるわけでございます。
 で、これらの各国の支払い制度、西ドイツにおける団体請負方式であるとか、あるいはイギリスの登録人頭払い方式、日本の出来高払い方式、それぞれ先ほど申しましたように長所短所があるということが言えるわけでございますが、これらの診療報酬の支払い方式につきましては、いろいろ方式が諸外国で採用されておるわけでございますが、それぞれの国の医療制度であるとか、医療を取り巻く諸情勢と密接不可分な関係にございまして採用されているもんでございまして、その前提条件の異なるわが国にこれらの方式をそのまま導入するということは、それはなかなか困難なことであるわけでございます。これらにつきましては、なお今後とも研究を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、そのまま導入するのはなかなかむずかしいもんであるというふうに考えます。
 また、最後にイタリアの事情につきまして先生から御指摘があったわけでございますが、このイタリアの医療保障は、従来は社会保険方式で行われてまいったわけでございますけれども、一九七〇年代の一連のヘルス、保健医療ですね、保健医療改革の中で総合的ないわゆる保健医療サービス体制に統合されるというような動きの中で、一九八〇年から新しく従来の方式にかわりまして登録人頭払い、従来の出来高払いを登録人頭払い制に移行をするという改革を行っておるわけでございます。
 なぜこういうような制度にしたかといいますと、従来の医療保険制度が大幅な慢性的赤字に悩んできた、あるいは都市部における医師の過剰であるとか、あるいはイタリアの保健医療水準の地域格差といったような問題がございまして、医療保障制度の変革というものに踏み切ったものと思われるわけでございます。
 なお、その後の状況を私ども知り得た範囲で見ますと、スムーズにはなかなか運んでないという点などもあるようでございます。たとえば登録人頭報酬制に移行いたしました後に、どうも少数の有名医について登録が殺到している、希望してもなかなか登録されないというような場合がある。反面、多くのお医者さんは四、五百人しか受け持つことができない、報酬水準はかなり低いものになっている。そんなようなことから報酬引き上げを要求するお医者さんのストライキが非常に起こっておるといったようなことも問いておるわけでございまして、なかなかスムーズにはいってないようでございますが、御質問につきましては以上のようなことで、イタリアにつきましても一九八〇年代から医療保障の移行が見られておるということをお答えいたす次第でございます。
#20
○佐々木満君 大和田さん、いまあなた、私に対して先生という言葉を使われたわけですけれども、私は先生でも何でもないんです。どうも余りこの言葉を最近は乱用する傾向があるようでございまして、私は国会議員であって国会議員以外の何者でもないわけです。人に物を教える資格もないし、教えるつもりもない。先生というならむしろあなたの方が私よりも先生だ。不快用語でございますから、私に対しては、ひとつそういうことは何とか御勘弁願いたいと思います。
 そこで、この法案の中の費用負担の問題、これは大変大事な問題でございますが、健保連あるいは財界、こういうところが、この費用負担の問題につきまして、国保の負担を安易に健保組合や企業に転嫁するものだ、こういう理由で反対だというふうな声が聞こえてくるわけでありますが、一体この法案が本当にそうなのか。これはこれからいろいろ議論をして私ども勉強しなきゃなりませんけれども、一体どのようなお考えでこの費用負担というものを決めてこの法案に盛り込んでいただいたのか、その基本的な考え方、これをお聞きしたいと思います。
 それから衆議院でこの法案が通過をいたしまして、いま参議院の方で審議しているわけでありますが、この段階に至って反対意見が大変急速に高まってきているような感じもするわけですけれども、この法案を皆さん大変苦労しておつくりになった事情よく承知をしておりますが、事前に関係団体の御意見というものは十分お聞きになったに違いないと思うんですけれども、一体そのあたりのところはどうなのか、あわせてひとつお答えを願いたいと思います。
#21
○政府委員(吉原健二君) 新しい老人保健制度におきまして、だれがどのような形で費用を負担していくかというのは、制度の大変大きなポイントの一つだろうと思います。そういったことから、この制度におきましては、私ども基本的な考え方として、まず第一に国なり地方公共団体の公的責任というものが非常に大きいということが第一。それから第二に保険者間、各医療保険制度間から一定割合を拠出していただくわけでございますけれども、各保険者間の負担の公平を図るということが大事である。御案内のとおり、現在の医療保険制度相互間の老人医療についての負担には、非常に大きな不均衡なり不合理がございます。それを是正していくという視点が第二でございます。それから第三に、新しい制度をつくるにいたしましても、現行制度との関係を十分考えて、費用負担についての急激な変化、一方で負担の増加、一方で負担の減少というような急激な負担の変化というものを来さないように配慮をしていく必要がある。大きく言いまして、以上申し上げました三つの考え方に立って今回の老人保健法案の費用負担のあり方というものを決めているわけでございます。
 その結果といたしまして、特に保険者間におきましては、従来国民健康保険の負担が、老人の加入率が大きい、老人の加入者が大きい、こういう理由で大きくなっておりました国民健康保険の負担が軽減をされることになりまして、反面、従来老人加入率が低い、老人の加入者数が少なかった組合健康保険を中心にした負担というものが大きくなっているわけでございます。
 そういったことで、健保連それから経済団体が言っておりますように、決してこの法案が国保の負担を安易に被用者保険に転嫁するというようなものではございませんで、各制度間でできるだけ公平に合理的に均衡のとれた負担をしていただく、そういう考え方で、その結果として被用者保険、特に組合健保の負担が増加をすることになっているわけでございます。
 この制度をつくるに当たりましては、先ほども申し上げましたように、従来いろいろな経緯がございますし、関係者の利害というものが相反する面がございますので、法案をつくるに際しましては、十分関係団体とは意見の交換をし、話し合ってきたつもりでございます。同時に社会保障制度審議会、社会保険制度審議会、二つの審議会におきまして十分な審議、慎重な御審議をいただいたわけでございます。この二つの審議会にはいずれも健保組合の代表の方も入っておられますし、事業主の代表の方も参加をされておられるわけでございます。こういった二つの審議会で十分審議をいただき、その御賛成を得てこの法案を提出をさせていただいたわけでございます。
#22
○佐々木満君 次に、老人保健法案につきましては、いろんなたくさんの批判があるわけでありますが、その批判の中で、どうも新しい法案をつくった目的というのは国庫負担の削減にあるんではないか、国庫負担の削減が目的じゃないかというような御批判が御承知のようにございます。私は、この法案の目的というのはそんな格調の低いものではない、こういうふうに確信をいたしておるわけであります。この目的を見ましても、健康の保持、それから適切な医療の確保、それから疾病の予防、治療、機能訓練、こういう事業をやる。そして国民保健の向上と老人福祉の増進なんだと大変格調の高い目標を掲げていらっしゃる。私はそういうのがこの法案のねらいだと、こういうふうに確信をいたしております。もちろんあとで若干申し上げますが、いろんな保健事業、こういうことをやることによって結果的に医療費が少なくなり、そして国庫負担も少なくて済む。それは私は大変結構だと思うんですけれども、それは結果論でありまして、そこにねらいがあるんではない。ねらいはやっぱり法律の目的に書かれたそういう崇高な格調の高いところにある、私はこういうふうにこの法案を理解しておるわけでありますけれども、そういう理解でよろしいのかどうか、御見解をお聞かせを願いたいと思います。
#23
○国務大臣(森下元晴君) 御指摘のとおりであると思います。決して老人保健法の趣旨は財政上の問題が主目的ではございません。高齢化社会に備えまして、社会福祉面また社会保障的な両面から、御老人というものは健やかに元気で長生きをしていただきたい、そういう考え方に立っておるわけでございます。
 しかし、その中でもやはり健康に対する問題は一番大事な問題でございますから、老人保健法に書いてございますように、そのためには四十歳から健康手帳をお渡ししてまず積極的な健康づくり、それから予防、それから病気になってもできるだけ早く治るように、そしてまた病後の障害が出ないようにと、こういうような、多少理想的ではございますけれども、高い理念を掲げた保健法でございまして、そうなりますと必然的に財政的にも非常にプラスになる。財政というものは二十年、三十年、四十年、五十年と長い展望の中において付随的に財政的な効果があらわれるんだ。こういう目的のもとに実はつくられたわけでございますから、金がかかるからそれを、財政調整的な目的をすべての目的とするような保健法ではないということを申し上げたいと思います。
#24
○佐々木満君 ありがとうございました。
 そこで、いまお話ございましたが、この法案の中で重要な点が幾つかございますけれども、本当に大事なのは保健事業だろう。これがうまくいくかいかないか、これがこれからの日本に大変大きな影響を与えるものだと、こういうふうに思うわけでございます。
 保健事業につきましては、後で石本委員の方からいろいろとお尋ねを申し上げることになると思いますが、私は一つだけ。
 先般社労委員会で私ども委員長のおともを申し上げまして愛知県、静岡県の視察をさしてもらったわけでありますが、大変勉強になりましたんでございますけれども、いろいろ見せてもらいまして、お話をお伺いしまして、保健所というものと市町村保健センターというのがあるわけでありますが、この間の役割り分担、どっちにしたって、これお互いに助け合って連携をとってやることに変わりはございませんけれども、どうもこの保健所と市町村の保健センターとの役割り分担が必ずしもはっきりしていないような感じを持ってまいりました。これはこの法律を施行するに当たりまして大変大事な問題だと思いますので、ひとつそのことだけ、保健所と保健センターのことだけひとつお考えをお聞かせ願いたいと思います。
#25
○政府委員(三浦大助君) 保健所と申しますのは、これは市町村に対しまして事業計画の作成に関する指導とか、あるいは施設とか設備等の貸し付け、あるいは保健婦の要員の派遣、こういったことを地域の実情に応じまして積極的に技術協力、支援をひとつ行っていただきたいというふうに考えておるわけでございまして、このほかにも保健所は市町村からの委託を受けて、あるいは離島や僻地等を抱える市町村にあっては、市町村にかわって事業の一部を実施するということも考えておるわけでございます。
 それで、佐々木委員の御指摘のございました保健事業を円滑に実施していただくためには、保健所が、実施主体でございます市町村に対しまして、地域の技術センターとして積極的に協力、支援を行っていくことが何よりも重要なことではないかというふうに考えておるわけでございまして、したがいまして、保健所につきましても、地域の実情に応じて必要な健診機器等を整備するとともに、市町村との連絡調整をより一層密にするために各保健所ごとに連絡協議会を設けることとして、保健所の支援体制にも十分配慮するようにということを私ども申し上げたいと思います。
#26
○佐々木満君 この保健事業は、これから着々と実施体制、一遍にはいかないと思いますけれどな、着々この体制を整備していただいて効果を上げていただくことになると思いますが、体制が整備いたしましても、結局住民、国民の皆さんの積極的な参加、こういうことがなければこれは実らないわけであります。私はかって田舎の県庁でこういう仕事をやったことがございますが、私のところでは十年ほど前から県民皆健診運動、年に一回は全部の県民の皆さん一回健診を受けようじゃないか。こういうことを十年ほど前からやっておりますけれども、なかなか健康な人、特に若い健康な方々に対して健康診査を受けなさいと言うことは簡単ですけれども、受けていただくということは非常にこれはむずかしい。しかし、これをやらなければこの法案というものも実らないわけでありますが、この辺のところをどうやって進めていくのか、これはなかなか大変なことだと思います。しかし、これはやっぱりじみちに粘り強く住民の皆さんの協力を得て、御理解をいただいてぜひこれはやっていかなきゃならないポイントではないか。こういうふうに思ったりいたしてございます。
 そこで、たとえば健康診査、この健康診査の受診率、こういうものを一例としてとってみますけれども、どのぐらいな順序でどのぐらいな割合で、スピードでこれを高めていこうとするのか。大まかなところで結構ですけれども、どのぐらいな目標でこれを高めていこうとなさるのか、その辺のところをお聞かせを願いたいと思います。
#27
○政府委員(三浦大助君) 健康診査の受診率につきましては、現在やっております一般診査で約二〇%、それからがん検診で約八%という受診率が出ておりますが、これを六十一年度には一般診査で五〇%、それからがん検診で三〇%まで引き上げようということで、年次計画的にその普及を図るように私ども努力してまいりたいと思っております。そのために市町村の保健センターとか、あるいは保健所の機能強化、あるいは胃がん、子宮がん検診車の整備ということをやってまいりたいと思っております。
 しかし、健康診査を初めとする保健事業に、御指摘のように住民の方々が積極的に参加いただけることが、国民健康づくりを進める上で最も重要であることはもう御指摘のとおりでございまして、今後健康教育とか、あるいは健康相談などの事業を実施するに当たっては、受診の勧奨だけでなくて、国民みずからの日常生活におきます健康づくりに対する自覚というものを高めていく形で行われるように市町村を指導してまいりたいというふうに考えております。
#28
○佐々木満君 それじゃ、最後に大臣に二点ほどお尋ねをして終わりたいと思いますが、老人保健制度を新しくつくるということは、これは大変長い間の懸案事項であったわけでございますが、私はこの国会でぜひこの制度を発足していただきたいと念願をしておる一人でございます。そこで、私の希望どおりにこの法案が成立をいたしました場合には、その次の日本の医療の課題は一体何だろうか。まだちょっと早いようでありますけれども、老人保健後の課題は何だろうか。私は、一つは、長年の議論でありますが、被用者保険の全体のあり方の見直しの問題ではないか。もう一つは都道府県の負担も含めた国保のあり方、こういうものの見直しではないんだろうかというふうに考えておりますけれども、大臣はどのようにお考えなのか、お聞かせを願いたいと思います。
 急速な高齢化社会でございますけれども、私はこれから心身ともに健康な円熟した高齢者をつくっていくということは、これは厚生行政だけでなくて国の運命にかかわる大変大事なことだというふうに思っております。お年寄りの人たちがたくさんふえる、そういう人が心や体に病気を抱えて暗い顔をしておる、そういう日本になるとすれば、日本の国はだんだん衰退をしていく、私はそう思います。そうではなくて、年はとっても心身ともに元気だ、こういうお年寄りがたくさんできますと、日本の国は引き続いて活力のある、そして円熟した社会として一層発展するに違いない、こういうふうに思いまして、私はぜひそういう社会を目指したいと、こういうふうに思うわけでございます。大臣のひとつ御所信を、御所見をお伺いをしまして私の質問を終わらせていただきたいと思います。
#29
○国務大臣(森下元晴君) 佐々木議員の言われるとおりでございまして、私も実は同感でございます。人間生活において一番大事なのは、健康また生命を守ることであると同時に暮らしを守っていこう。厚生省はまさにこの二つを高く掲げまして、社会保障、社会福祉の形において全力を挙げておるわけでございますけれども、健康を守っていこう、できるだけ元気で健やかに長生きをしていただこう、しかも活力のある福祉社会を築いていこう、これが将来に対する展望でもございますから、その目的に見合った制度をつくっていくのが私どもの仕事でございます。それが老人保健法でございます。続きまして、将来は、健康保険制度のあり方、いまいろんな制度が――年金も同じでございますけれども、制度間にアンバランスが生じておる。同じ健康を守ろう、また老人に希望を与えようというような考え方においては平等でなくてはいかぬと思います。そこで、負担と給付の面においてでこぼこが生ずるようなことでは、かえって福祉の精神に反するというようなことで、制度的な見直しもやはり徐々に、これは国会等でも審議をしていかなくてはいけないし、また私ども厚生省としても積極的に考えなくてはいけない。しかも、高齢化社会にどんどん進んでおりまして、三十年後、四十年後には老人の人口割合が一五%から二〇%近くなるというような社会の変化に対応するような制度の見直し、またその見直しによってそれを改正していくことも必要である。ただ同じ制度にいつまでもしがみつきまして、かえって身を縛るようなことではいけないと思っております。そういうことで、社会の変化とともにまた将来を見通して、本当の老人対策また健康対策はいかにあるべきかということに対しまして、私どもも全力を挙げたいと思っております。
#30
○石本茂君 この法案は、老人の健康対策につきまして長い日月をかけて十分に検討されて、自信を持って提案をされた法案であろうと私は考えておる者の一人でございます。老人の健康づくりということになりますと、年とってからにわかに考えてもどうしようもできないというような趣旨のもとに、壮年期から総合的な健対策を進めていくんだというような中身になっております。これは大変結構なことであり、当然なことだと考えておるわけでございます。
 そこで、日に日に年寄りがふえるとどこへ行っても聞かされるわけでございますし、現実はそうでございますが、非常に単純なことをお聞きいたしますけれども、現在、老人と一口に言いますが、七十歳以上の人口といいますか、人数が一体どれくらいおられますのか。それからそれが人口比率で一体どれくらいになりますのか。六十五歳以上というのは随所に見かけるわけでございますが、七十歳以上というのはちょっと見かけておりませんので、この機会にお尋ねしたいと思います。
#31
○政府委員(吉原健二君) 七十歳以上の人口は現在七百二十二万人と推計をされておりまして、絵人口に対する割合は五・九%、約六%でございます。ちなみに、六十五歳以上の人口は千百二十三万人でございまして、総人口に対する割合は九・五%でございます。
#32
○石本茂君 七十歳以上がもう六%に達している。これもちょっと驚いたところでございますが、この七十歳以上の人々の疾病の罹患状況といいますか、そういうものをちょっと見ますと、高血圧でございますとか、脳卒中ですとか、心臓病、いわゆる成人病が過半、大半を占めようとしている現実を見るわけでございます。
 従来とも国民の健康づくりということに手をつけられて、そして厚生省当局は、地域のすみずみにまで、食生活の改善運動でございますとか、いろいろ保健対策について手を尽くしてきておられると私は思っておるところですが、この法律が施行されますことによってどこがまた変わっていくのか、どこに重点が置かれていこうとしているのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
#33
○政府委員(吉原健二君) この法案のねらいでございますけれども、先ほどから大臣がお答え申し上げておりますように、何といいましても、今後の老齢人口の増加に備えて、健康な老人づくりを目指すということでございますので、七十歳からの医療だけではなしに、壮年期、四十歳からの予防活動、健診、健康教育、そういったものを飛躍的に拡大をさしていきたい。その点が一番大きな違いであろうというふうに思っております。
#34
○石本茂君 そのことはよくわかるわけでございますが、私はこんなところで愚鈍なことをちょっと聞きますけれども、健康づくり対策ということで、それで地域の保健センターもどんどんと整備されつつありますし、保健所の内容の整備もできつつあると私は思ってきたわけでございます。そうしたことの比較におきまして、この法案が可決されて成立したその後において、そういういままでやってきた対策と、今後のこの対策を含めての時点においての何か特別なもの――特別なものという言葉が変でございますけれども、全般的にいままでやってきたものにさらに力点を置いていくというふうに理解していいんでございましょうか。
#35
○政府委員(吉原健二君) あるいは不十分なお答えになるかもしれませんが、この制度ができました場合のいままでとの違いは、何といいましても、いま申し上げましたように、予防なり健診活動、つまり病気の少ない老人、健康な老人をつくるというための諸活動を進めていくということが第一。
 それからもう一つは、七十歳以上の御老人にとりましては、現在、医療というものが中心に行われているわけでございます。ある程度の医療なり治療というものが終わった後のリハビリテーションでありますとか、あるいは在宅の御老人の方に対します保健婦さんによる訪問指導、そういった事業というものが、現在全く行われてないわけではございませんが、ごく一部の市町村でわずかしか行われておりません。この法律ができますと、そういった方々に対する保健サービス、訪問活動、訪問サービスというものを充実をさしていきたい。
 同時にリハビリテーション、それは単に病院だけのリハビリテーションじゃございませんで、地域の中でのいろいろな施設を使ったリハビリテーションというものを、各市町村全国的にやっていけるような体制をつくっていきたい。そういったことによりまして、医療というものも、病院あるいは入院中心の医療から、できるだけ地域、さらに具体的には在宅での治療、あるいは療養というものが続けられるような条件というものをつくっていきたいということでございます。
#36
○石本茂君 そうしますと、こういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。現在、方々でいろいろなことが行われております、これは個々別々とは言いませんけれども。そういうものを、さっきちょっと申しましたけれども、壮年期からすべて総合的に、そして従来やってきたことにさらに力点を置きながら、老人保健対策といいますか、年とってからという意味じゃなくその対策を進めていくんだ。こういうふうに理解しておけばよろしゅうございましょうか。
#37
○政府委員(吉原健二君) そういうことでございます。
#38
○石本茂君 そこで、この法律の中身について、簡単に見たわけでございますが、伺っていくわけでございますけれども、市町村が中心になって行います四十歳以上を対象として行う保健対策でございますね。この対象は、主として組織労働者ではない、いわゆる自営業者でございますとか、あるいは農業に従事する人々などが主体になるんじゃないかと思うのでございますが、これらの人々は、たとえば健康診査、一年に一回受けなければならないという、そういうものが強制的になるのか。それからその健康診査を受ける時点で自由にどこに行ってでも受けられるものなのか、指定された保険医療機関でなければだめなのか。そういうことをちょっとお聞きしたいと思います。
#39
○政府委員(吉原健二君) この法律によります健康診査等の保健事業の対象として考えておりますのは、いまお話のございました自営業者の方々、主として国保に加入しておられる方々と、それから被用者保険の家族の方々、主婦、配偶者の方方、そういった方々を対象に市町村が中心になって保健事業をやっていきたいということを考えているわけでございます。
 それから健診のやり方といたしましては、強制的なものにするのかどうかということでございますけれども、法律上は私ども強制という考え方をとっておりません。しかし、先ほどから申し上げておりますこの制度、この法案のねらいからいいまして、できるだけ四十歳以上の方皆さんに健診等の機会が与えられるようにしたいということを前提に考えておるわけでございまして、そういったことから健診のやり方といたしましては、従来のように市町村が中心になって集団健診でやるやり方が中心になるかと思いますけれども、それだけではなしに、民間の医療機関に委託するような方式もあわせとりまして、できるだけ国民の方々がそういった健診を年に一遍は最低受けられるような機会を多くつくっていきたいというふうに考えているわけでございます。
#40
○石本茂君 この趣旨、目的というものはあるわけでございますから、できるだけ受けやすい方策をぜひおとりいただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 それから機能訓練、これは病後の問題も含まれますし、あるいはまた、どうも肩がこってかなわない、どうも足が歩きにくいというような時点で医師の診断を受けて、そして機能訓練をした方がよろしいと仮に言われます。そういう場合に機能訓練を受ける場所でございますね。これも自由に選択ができるんだと私は思うんですが、これもどういうふうなお考えでございましょうか。
#41
○政府委員(三浦大助君) 機能訓練事業につきましては、市町村の保健センターとかあるいは老人福祉センター、こういうものを利用して、脳卒中の後遺症を有する老人を主として対象にいたしまして、この人たちに日常生活の動作訓練、こういうものを実施していきたいというふうに考えておるわけです。
 どこでもというお話でございますけれども、それは市町村で一応いろんな計画をつくりますが、私どもは現在、こういう市町村保健センターあるいは老人福祉センター等を使ってやっていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
#42
○石本茂君 幸いに近くにそういうセンターがあればいいんですけれども、非常に遠い、そこへ行くまでが難儀である。その途中に整形病院があって、そこにリハビリテーションの施設があった。あるいはまた公的な医療機関があってそこにそういう設備があった。そういうものは利用できないんじゃなくて、できるようにできないものでしょうか。
#43
○政府委員(三浦大助君) その辺は事業実施の際によく市町村の方で一番便利な方法をお考えいただくということにしたいと思いますが、私ども現在の時点では、こういう保健センターとかあるいは老人福祉センター、こういうものを使っていただきたいというふうに考えておりますが、もしそのほかにも何かありますれば、それは当然市町村の方で計画に入れてお使いいただいても結構だと思います。
#44
○石本茂君 それは実情によりましては、市町村の担当者と十分お話し合いをして、そして近くの医療機関を利用することもできるんだというふうに考えてよろしゅうございましょうか。
 よくこういうことを聞かれるんですが、方々歩いていますと。老人保健法案ができるということですけれども、私どもは何を書いているかさっぱりわからないけれども、ただで健診が受けられるとか、ただで手足の痛んだものが治せるとかというふうに聞いていますけれども、本当にそうでしょうかというような質問を受けるもんですから、私はこの辺を具体的にお示しをいただきたいと思って聞いたわけでございます。
#45
○政府委員(三浦大助君) よく国保の診療所等におきましてこういうリハビリ施設のあるようなものもございますが、当然そういうものも、一番使いやすい形で計画する段階で市町村がどこでやると、こうお決めいただければいいわけでございます。
#46
○石本茂君 そこでもう一つ、この場合、健康診査を受けた場合もそうですし、リハビリなどを受ける場合もそうですが、この医療費といいますか、経済的な背景でございますね。これはどういうようなふうに、読めば書いてあるわけでございますが、具体的にどういうふうに措置されようとしているのかお伺いしておきたいと思います。
#47
○政府委員(三浦大助君) この費用につきましては、一般診査は一部負担百円、それから精密検査は三分の一、それからがんの検診につきましても三分の一側負担いただくと、こういうことになっておるわけでございます。
#48
○石本茂君 何でこういう愚鈍なことをお聞きしているかということですが、一般の大方の方々は、こういう健康診査とかそういうものがただで受けられるのではないだろうかというようなお考えを持っている方が多いもんですから、私は明確に個人負担もあるのですよということをお示しいただいておきたいと思うわけでございます。これは厚生省のおつくりになりましたパンフレットなど拝見しておりますと、ちゃんと分担率など書いてあるわけでございますが、人から言い伝え、聞き伝えということになりますと、一年に一回はちゃんと体の検査もしてもらえるんだとか、それから体が不自由な場合はリハビリも受けられるんだと、非常に安易に受けとめておられる向きが多いもんですから、この辺は内部の非常に細分的な問題でございますけれども、この法案ができるという過程において、一般のこれを受ける側にいる者の考え方といいますか、願いといいますか、そういうものをも私は含めてきょうはお尋ねをしているわけでございまして、よくわかりました。
 それから次は医療費の一部負担のことでございますけれども、この負担するという趣旨ですね。いままで七十歳以上は全部無料であった。それがなぜ負担しなきゃいけないんだろうか。われわれがせっかく獲得した既得権を破壊するもんじゃないかというような声がちまたにかなりあると私は思っております。よく陳情などに来られます方たちも、そのことは必ず言及されますものですから、この負担分について主目的はどこにあるのか。たとえば医療費の一部に充当するんだというふうに答えていいのか、そうじゃなくて自己責任というものを喚起するためだと言い切っていいのか。その辺についてちょっと、私なりに口ではいろんなことを言っていますけれども、迷いがありますもんですから、この一部負担の趣旨というものをきちっとお示しいただきたいと思います。
#49
○国務大臣(森下元晴君) 一部負担の問題につきましては、もちろん財源に充てるという点もございますけれども、それ以上に、老人の方々にも自分の健康は自分で守るという自覚を持っていただく、健康に対する自覚、そういう意味で、負担の公平という制度の基本的な考え方に基づいて、無理のない範囲で実際にかかる費用のごく一部を負担をしていただく、こういう趣旨のものでございます。
#50
○石本茂君 いま大臣も無理のない範囲でというお言葉ございました。この負担能力といいますか、何かそういうものに一つの限界線といいますか、どれくらいの収入がある人は払いなさい、これ以下の人は払わぬでいいです、何かそういう線でも内々あるんでございましょうか。どうなんでしょうか。
#51
○政府委員(吉原健二君) この一部負担の趣旨が、いま大臣が申し上げましたように、自分の健康は自分で守るという自覚を老人の方々にも持っていただくというようなことが基本でございますので、これは老人の方々皆さんにごくわずかでも持っていただきたいということにいたしたいと思っておるわけでございまして、所得の高い低い、あるいは、あるないということによって、負担のあるなしという区別はしない考え方をとっております。
 したがいまして、その金額なり負担をしていただく方法につきましても、どなたにも無理のない範囲でお願いできる範囲内の額、方法ということで、現在の外来一月四百円、入院の場合に一日三百円という金額になっているわけでございます。
#52
○石本茂君 この外来について一カ月に四百円、それから入院につきましては二ヵ月間以内一日三百円、これは無理なく支払えるであろうという構想のもとに立てられた金額であるというふうに私自身納得させていただきたいと思います。
 そこで、この外来の一月四百円というこのことでございますが、これは保険医療機関が単位なのか。たとえば病院でございますと、その中に内科、外科、整形外科と幾つもございますから、その医療機関の中の一診療科が単位になって四百円というものを言うことなのか、その辺ちょっとお聞きしたいと思います。
#53
○政府委員(吉原健二君) 原則的に医療機関単位で御負担をいただく考え方をとっておりますが、大病院、総合病院につきましては、従来の健康保険の本人の自己負担についてもそうなっているわけでございますけれども、原則として内科なら内科、眼科なら眼科、外科なら外科といった診療科目ごとにお願いをしたいというふうに思っております。ただし、一つの病気で診療科をまたがって受診をされたような場合に、形式的に診療科目が違うからといってそれぞれ負担をしていただくということにはしないつもりでおります。
#54
○石本茂君 そうしますと、その判断は患者さん個人というよりも、その医療機関が判断できるわけでございますね。いまおっしゃるように、疾病は一つである、しかし内科だけじゃなくて、耳鼻科にも行きなさいというようなものがあるわけですからね。
 そこで、もう一つ愚痴くさいことを聞きますが、この外来一科について四百円、それから入院患者二カ月間一日三百円、この金額が、およその見当でよろしゅうございますが、一体どれくらいになるものでございましょうか、丸めた額が。
#55
○政府委員(吉原健二君) 五十七年度で推計をいたしますと、いま申し上げました一部負担の金額が、トータルで、満年度で四百八十億でございます。五十七年度の老人医療費の総額を約三兆二十億というふうに推計をいたしておりますので、それに対する割合で申し上げますと一・六%程度ということになるわけでございます。
#56
○石本茂君 まあ幾らかはあれでございますけれども、ほとんどこの金額というものは医療費への充当ということを目的としていないというふうに理解してよろしゅうございますね。
#57
○政府委員(吉原健二君) おっしゃるとおりでございまして、老人医療の財政が苦しいから老人の方々にも負担をしていただくという考え方ではございません。
#58
○石本茂君 よく理解できました。
 それから次にお伺いしたいと思うのは、さっき佐々木委員からも御質問があったわけでございますが、この老人保健法の制定に伴いまして、保健所とか保健センターの整備ということが出てきております。そのことにつきましてですが、たとえば保健センターは、一体今後どの程度さらに増設していこうとしておられるのか。それから現在一体何ヵ所ございますのか。それから保健所の場合でございますが、この老人保健法をめぐってさらに増設をする必要があるのかどうかわかりませんが、増設が考えられているのか。あるいは内部の設備については、これはみんな方々いっぱい考えていかなきゃならぬものがあると思うんですが、その辺をちょっとお尋ねしたいと思います。
#59
○政府委員(三浦大助君) 市町村の保健センターにつきましては、昭和五十三年度から五十六年度までの四ヵ年にかけまして三百九十一カ所整備してまいりました。今後この老人保健制度の新しい発足に伴いまして、私ども毎年百二十カ所ずつ整備してまいりまして、厚生省といたしましては、五年後には全国で大体千カ所ぐらいできるようにということを考えておるわけでございます。
 なお、この市町村保健センターの設置計画は最終的には大体全市町村に対象として一カ所ぐらいは欲しいというふうに考えておるわけでございます。
 なお、保健所の増設の問題でございますが、保健所は現在八百五十五カ所ございますけれども、現在これは数をふやすということは考えておりませんで、むしろ中の機能を高めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#60
○石本茂君 よくわかりましたが、この保健センターにつきましては、厚生省が一方的につくれるものではないんじゃないか、これは地域の方の申請といいますか、準備態勢というものがございますので。これもできるだけ増設に踏み切っていけるように、地域の指導といいますか、そういうものが必要じゃないかなあというふうに私は考えるわけでございます。早く一千カ所になったらいいなと思っている一人でございますが、保健所につきましては増設は考えない、むしろ内容の整備、内部の設備の整備等に重点を置いていきたいとおっしゃったと私は理解さしていただきたいと思います。
 そこで、先ほども出ましたんですが、この保健所のするべき仕事の領域と、それから保健センターが果たすべき領域でございますね。これはさっきお話もございましたので、大方わかったような、まだわからぬようなところがございますものですから、恐縮でございますが、もう一度お尋ねしたいと思います。
#61
○政府委員(三浦大助君) 保健所と申しますのは、これは市町村に対しまして事業計画の作成に関する指導、それから既設の設備なんかの貸し付け、あるいは保健婦の要員の派遣、こういうことを地域の実情によりまして積極的に技術協力、市町村に対して支援を行っていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
 このほかに保健所は、実際この老人保健制度の実施が非常にむずかしい市町村からの委託を受けまして、あるいは離島や僻地等を抱える市町村につきましては、市町村にかわって事業の一部を実施していただきたいというふうに考えておるわけでございます。
 当然これは市町村の事業になりますので、市町村の保健センターにつきましては、先ほど申し上げましたように、現在四百カ所ぐらい設置してございますけれども、この場が一番今後の活動の場になりますので、私どもこの市町村保健センターの一層の活用が行われますように、今後この増設を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#62
○石本茂君 仕事の内容は、保健所の仕事は老人保健だけじゃございませんので、非常に多岐にわたっておりますから、これはそれなりにわかるわけですが、この老人保健法をめぐりましての保健指導でございますとか、あるいは健康相談でございますとか、健康診査などを含めまして、いっそのこと全部地域の保健センターにその主たる任務を任すというわけにはいかぬものでございましょうか。
#63
○政府委員(三浦大助君) 市町村が全部おやりいただければ、これはこんないいことはございません。なかなか市町村も一挙に整備というわけにはまいりませんので、私ども五年ぐらいかけてその間に一応のレベルに持っていこうと、こういうふうに考えておるわけでございます。その間、手薄なところはひとつ保健所の方でお手伝いいただこうというふうに考えておるわけでございます。
#64
○石本茂君 いま局長、五年間というお話もございましたが、私は保健婦のことについて少しお尋ねしたいと思うんです。
 この保健婦も向こう五年間で約八千人の増員を見込んでおられたかと思うんでございますが、今年度は千五百人近くが予定されているように思いますけれども、これは確保できるでしょうかお尋ねいたします。
#65
○政府委員(三浦大助君) この保健事業に従事していただく保健婦につきましては、私ども目標年次の六十一年度において約八千人を確保していこうというふうに考えておるわけでございまして、この中の約二千人につきましては、現在全国に一万五千人ぐらいの保健婦がおるわけでございますが、この二千人はこの中からひとつ振りかえていただこうということでございます。それからあと三千人につきましては、これは寝たきり老人等の訪問指導事業に充てるために、経験豊かな退職保健婦を雇い上げていきたいというふうに考えておるわけでございまして、残り三千人につきましては、ひとつ六十一年までに新しい採用で確保しようというふうに考えておるところでございます。
#66
○石本茂君 そうしますと、これは医務局の方が保健婦などの育成を図っておられるわけでございますが、いまお話しがございましたように、保健婦と一口に言いますけれども、臨床の場面にもかなり入り込んで仕事をしておりますので、これは掘り起こしはわりあいに容易かもしれないなという気もいたしますけれども、果たして全部が保健衛生方面に出てくるのかどうかという危惧の念を一つ持っておりますことが一つ。
 それからもう一つ、保健婦の未設置市町村がまだかなりあるわけでございますが、この未設置市町村に国がかなりの補助をしてでも置きたいということでしょうか。それとも、補助額はみんな通り一遍、並びでございますから、特別に困窮な市町村に対して特別な補助金は出せません、であるから、それはもう仕方がないんだということで今後いかれるわけでございましょうか。その辺お伺いしておきたいと思います。
#67
○政府委員(三浦大助君) 保健婦の未設置の市町村につきましては、現在全国で約四百六十カ所ばかりございます。こういった市町村につきましては、新しい制度の創設を契機として、これはぜひひとつ保健婦を設置していただきたいということを強力に指導していきたいというふうに考えておりますが、しかしいろんな事情から必要な要員の確保が当面行い得ない市町村というのが出てくるわけでございまして、こういう市町村を管轄する保健所がひとつ保健婦の駐在制とかあるいは派遣制を活用いたしまして、積極的な協力体制をとっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
 なお、未設置の市町村の解消につきましては、五十三年度の国民健康づくり計画の一環といたしまして、国民健康保険の保健婦が市町村の保健婦に移管足なったわけでございますが、それ以来大変大幅な改善が進んでおりまして、五十三年度末には未設置市町村というのは約六百ございましたけれども、二年後の五十五年末には約四百六十に減少をしてきておるわけでございまして、またこのうち保健所からの駐在制とかあるいは派遣制が実施されているところが約百七十ぐらいあるわけでございます。いずれにしましても、未設置の市町村につきましては、保健婦を置いていただくように強力に指導してまいりたいと考えております。
#68
○石本茂君 少しもっと細かいことをちょっとこの機会にお伺いしたいと思うんですが、沖縄県でございますね。沖縄県はいま全部保健所の保健婦の駐在制をとってきていると思うのです。もちろん市町村保健婦もいると思うんですが、あそこは市町村保健婦さんというのはどれくらい一体おるものでございましょうか。
 といいますのは、ああいう特定な島をいっぱい持って、そして零細な町村というか村が多うございますので、こういう地域を選定して、そこは駐在制をとっていくというような何か地図が、来年、再来年というんじゃございませんけれども、五年間の間に十分検討していただいて、そしてこの県のこの地域についてはこれはもう保健所からの駐在制をとっていくんだという何か明確な一つの路線を見つけていただきませんと、みんな非常にいま迷っておるわけでございますね、この問題が出まして。青森県などは駐在制をとってきたわけでございます、これは政務次官おられますけれども。ところが、この問題が出まして非常に保健婦さんたちが不安になりまして、非常に周章ろうばいされたということもあるわけでございますが、そういうことにつきまして、局長、どういうお考えをお持ちでございますか。足りないところにだけ駐在させる、駐在させると言ってそれで済むものでしょうかどうでしょうか、お伺いいたします。
#69
○政府委員(三浦大助君) 現在、沖縄の市町村の保健婦数というのは六人しかおらぬわけでございまして、ただいま申し上げた駐在制度をとっている県というのは沖縄県、それからいま石本委員御指摘の青森県、それからあと和歌山、高知、この辺が駐在制度をとっておるわけでございます。
 いま保健婦が年間、五十七校ございまして、二千人ぐらい毎年卒業しておると思います。そこで、その中の八百人ぐらいはほかのいろんな職場へ行きまして、大体千二百人ぐらい市町村に来ていただけるんではないだろうかというふうに考えておりますが、片方でまた六百人ぐらいの退職者が出てまいりますので、この辺ひとつこれから計画の段階で十分私ども県とも相談いたしまして、またいろいろ地域の実情に合った方向で適当な、的確な指導を考えていきたいと思っております。
#70
○石本茂君 そこでOBの保健婦さんの掘り起こし方でございますが、恐らくこれは県の責任でございますので、県当局がお考えになると思うんですが、私ひとつお願いしたいことがございます。看護婦の掘り起こしということの時点で、これは医務局所管でございますが、ナースバンクというものをつくったわけでございます。ここが、各県に全部できているとは言えませんが、ほとんど無料紹介で掘り起こしをしてまいりました。このナースバンクを各都道府県がやはり利用できないものだろうか。所管が違うから、それは医務局関係だから、こっちは保険局関係だから、それは違うからというんじゃなくて、何かそういうものを利用して、そうして看護職の掘り起こしに全力を挙げるような方策を御指導いただけないものだろうかと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
#71
○政府委員(三浦大助君) この点につきましては、私ども予算をお認めいただいたばかりでございますので、これからいろいろ考えてまいりたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、私ども内部の相談の段階でも、いま各府県に看護協会の支部がございまして、これがいままで主として病院中心にやっておったわけでございますが、最近保健婦さんの活動も一緒になってやっておる、保健婦部会なんというものも一緒にしまして全部込みでやっておる、こういうところもございますので、こういうナースバンクなんかもひとつ使ったらどうかなということは、私どもいろいろ考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、県で一番やりやすいような方法もございますので、その辺はひとつ県の実情もありますから、県とも御相談してやってまいりたい。私どものいろいろいま検討している中には、こういうところも、ナースバンクも使ったらどうかなということも考えておるわけでございます。
#72
○石本茂君 そこで、これから増員されるであろう、また、されなければならない保健婦の主たる任務でございますが、これは一体どこに重点が置かれますのか。たとえば健康教育あるいは健康相談あるいは訪問指導あるいは訪問看護、いろんな種類があるわけでございますが、どこに重点的に充当されようとしておりますのか、この機会にお尋ねしておきたいと思います。
#73
○政府委員(三浦大助君) 保健婦さんというのは、今度の新しい老人保健制度におきましては、一番中心的な存在になるわけでございまして、これは私ども当然健康教育、健康相談、それから訪問指導、その辺に重点を置いていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
#74
○石本茂君 これは社会局の関係になるかどうかわかりませんけれども、老人保健対策という部類に入ると思うんですが、要するに寝たきり老人の介護などがかなり精力的に幅を広げて実施されておるわけでございますけれども、この場合の訪問指導並びに訪問看護というものに、将来といいますか、近い将来になりますが、力を入れていかなければいかぬのじゃないだろうか、専門職の知識を持っておりますから。その場合に、これは保健婦だけじゃなく、看護婦も導入してもいいんじゃないだろうかというようなことをちょっとひそかに考えておりますけれども、このことをどのように局長はお考えでございましょうか。
#75
○政府委員(三浦大助君) 寝たきり老人に対します訪問指導につきましては、これは一方でまた家庭奉仕員とのいろんな連携という問題も起こってございますし、それから保健婦さんの足りないところにおきましては、これは看護婦さんもある程度お願いしなきゃいかぬのじゃないだろうかというふうに考えております。
#76
○石本茂君 きょうこの場でこのことを言う必要はないんでございますが、局長も大臣も御承知だと思うんですが、保健婦助産婦看護婦法という法律をひもといてみますと、この領域は看護婦で、この領域は保健婦で、この領域は助産婦だという、三権分立しているのがこの法律の中身でございます。そういうことになりますと、この訪問指導というようなものの考え方の中で、果たして訪問看護というようなものを入り込めましても、看護婦というものの起用が、この法的な解釈の中で私は実現できるとも思うんですけれども、問題が起きてくるんではなかろうかなというような気がするわけでございます。
 それからもう一つは、母子保健対策で、助産婦さんが妊産婦とかあるいは褥婦とか新生児の訪問あるいは指導をしております。ところが、これは保健婦がまたできるわけでございまして、そういうことが仲よく今日まで進められてきておりますけれども、裏をひっくり返しますと、背景の中に、私ができるんだ、私ができるんだというような争いもなかったわけではございません。そういうことを考えますと、保健医療というこの幅の広い社会の中で看護対策というものを考えますと、三つの権限を争って、そして国民の保健医療、特に老人対策等につきまして、それでいいんだろうかというようなことを私、考えるわけでございますが、このことについて大臣、どうお考えでございましょうか。こういう幅の狭い法律が永久にまかり通っていけるもんだろうか、またいかせていいもんだろうか、どういうふうにお考えでございましょうか、ちょっとお尋ねしておきたいと思います。
#77
○国務大臣(森下元晴君) 非常に専門的な御質問でございまして、いわゆる看護婦さん、保健婦さん、助産婦さん、また家庭介護人、お互いに認識し合って助け合ってやっていただけばいいわけですが、間々社会にはそうでない場合がございまして、かえって混乱をする、かえって所期の目的と反するような結果が出る場合が間々過去においてはございました。そういう点で、ただいまの石本議員の御意見、私ども十分尊重いたしまして、そういうことが絶対ないように配慮していきたいと思っております。貴重な御意見をありがとうございました。
#78
○石本茂君 このことにつきましては、また担当の医務局長さんにいずれいろいろお尋ねしたいと思っておりますので、大臣の御所見ありがとうございました。
 要は、いずれにいたしましても、この老人保健対策というのは国民全体の生活の安定に私はかかってくると思うんです。一軒の家庭で年とった老人を養うという意味じゃございませんが、ともに生きていく、そのためにはいろいろな問題がそこに介在しておりますので、この健康対策、保健対策、とにかく健康で生きて、健康で死というものを迎えてもらえるという体制づくり、これはもう日本の国家の安定にまで影響するものではないかなと、私はこの法案を通しましてそういうふうにしみじみ考えるわけでございまして、ただ単なる老人保健対策というこの表に出てくる字句だけじゃなくて、その裏をひっくり返しますと、国家の安定、国民生活の安定というようなところに全部波及していっておるのではないだろうか。してみたら、この法案には内容的にはいろいろ問題もまだあろうと思いますけれども、自信を持って提案をされた法案でございますし、われわれもまたそうした隆路については十分に検討しなければいけませんけれども、これは一日も早く国民生活の安定という大目標に向かって制定しなきゃならないものだと考えておりますが、いかがでございましょう、吉原審議官、大臣お二人の御所見を伺いたいと思います。
#79
○政府委員(吉原健二君) いまお話ございましたように、将来の高齢化社会を考えた場合に、現状の制度では行き詰まりがくる、いろいろな問題がございますし、行き詰まりがくるというふうに考えておりまして、この法案の考え方、それぞれのお立場からいろいろな考え方が、御意見があろうかと思いますけれども、やはり将来の人口の高齢化、あるいは経済なり社会経済情勢の変化なり推移というものを考えました場合には、新しいこういった考え方に立った老人保健医療制度の創設、確立というものがどうしても必要だというふうに思っておりますし、そういった意味でこの法案の御審議をぜひお願いをいたしたいというふうに思っておるわけでございます。
#80
○国務大臣(森下元晴君) 高齢化時代に備えまして、元気で健やかに老人生活を送ってもらいたい、これが私どもの願いでございまして、二十年後、三十年後、四十年後には六十五歳以上の御老人がパーセントにいたしましても二〇%近くなる。こういう社会情勢の変化もございまして、いまから対処しなければいかぬわけでございまして、欧米の福祉また医療先進国と言われていた国国でも、そういう一つの駐路にもうすでにぶつかっておるわけでございまして、この点わが国の場合にはいまからやっても決して遅くなかった。しかしここでやらなくては手おくれになる、そういう気持ちでおるわけでございます。そういうことで、いろいろと試行錯誤的な点もあるかもわかりません、これは。しかしながら、やることによってより一層福祉の効果も上がるであろうし、また老後の安心のために若い方々もそれだけの活力ある生活を送れるわけでございまして、そのためにはどうしてもこの法案を通していただきたい、このように実は思っております。
 なお、その背景にございますのは、福祉の精神また社会保障の精神、すなわち相互に助け合う、また同時にできるだけ自分のことは自分でやっていきましょうというような思想的な自助努力、また相互扶助の精神がなくてはいけないし、また医者にしても、それをお助けする看護婦さんにしても、また保健婦さんにしても、人道的な立場また医の倫理の立場の上に立った、他の職業と違った一つの使命感を持ってこの問題に取り組んでもいただきたい。そういうことでこの法案を提出さしていただきまして、これから御審議をいただくわけでございまして、いろいろ皆さん方御意見もあると思います。私ども十分御意見も踏まえますし、またいろいろと異議に対しましては、私どもも専門官からお答えして、この法案が一日も早く上がるようにお願いを申し上げたい、こういう気持ちでございます。
#81
○石本茂君 どうも本当に御所見、御意見いろいろありがとうございました。私お伺いしたいと思ったことを佐々木委員もお聞きになったんですが、最後に一つだけお伺いしたいと思います。
 医療費の支払い方式で、現物支給の出来高払いになっておりますが、これがかなりあっちこっち意見が出てきているように思いますので、どうしてもこの方式が最もよいのだというふうに納得できる何か御意見といいますか、それを教えていただきたいと思うんでございます。
#82
○政府委員(大和田潔君) これは先ほどもお答え申し上げましたように、いろいろな支払い方式というのがあるわけでございますが、これはそれぞれにやはり長所短所があるということは言わざるを得ないと思うんです。しかし、諸外国におきます支払い方式を直ちにわが国に導入できるかどうか、こういう問題になりますと、従来からの医療制度あるいはその他の前提条件というようなものを考えまして、なかなかむずかしい問題である。こういうようなことでございまして、したがいまして、支払い方式につきましては、それぞれの長所短所がありながら、その短所を補完するということにつきまして努力をしていく方向で考えていかにゃならぬのだろうというようなふうに私どもはいま考えておる、こういうことでございます。
#83
○石本茂君 絶対にこの方式でなければならぬという、そういう結論ではないようにお伺いしましたが、そういうふうに理解しておいてよろしゅうございましょうか。いろんな方法がありますけれども、どれをとるにしても準備態勢も必要だし、そうにわかには移行できないんだ、現在の支払い方式が最も現在の日本の医療というものにマッチしているんだというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
#84
○政府委員(大和田潔君) 現在の出来高払い、これは従来からの伝統もございますし、日本におきまして一番マッチしておるというふうに考えられますので、なかなかその基本を変えるということはむずかしい、しかしその短所は補っていかにゃならぬだろう、こういうようなことでございます。
#85
○石本茂君 どうもありがとうございました。
 以上をもちまして私の質問を終わります。ありがとうございました。
#86
○委員長(粕谷照美君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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