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#1
第096回国会 社会労働委員会 第13号
昭和五十七年五月十一日(火曜日)
   午前十時二十三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     高杉 廸忠君     対馬 孝且君
 五月十日
    辞任         補欠選任
     対馬 孝且君     高杉 廸忠君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         粕谷 照美君
    理 事
                遠藤 政夫君
                佐々木 満君
                安恒 良一君
                渡部 通子君
    委 員
                石本  茂君
                関口 恵造君
                田代由紀男君
                田中 正巳君
                福島 茂夫君
                村上 正邦君
                森下  泰君
                高杉 廸忠君
               目黒今朝次郎君
                中野 鉄造君
                沓脱タケ子君
                藤井 恒男君
                山田耕三郎君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  森下 元晴君
   政府委員
       内閣法制局第四
       部長       工藤 敦夫君
       厚生大臣官房総
       務審議官     正木  馨君
       厚生大臣官房審
       議官       吉原 健二君
       厚生省公衆衛生
       局長       三浦 大助君
       厚生省環境衛生
       局長       榊  孝悌君
       厚生省医務局長  大谷 藤郎君
       厚生省薬務局長  持永 和見君
       厚生省社会局長  金田 一郎君
       厚生省保険局長  大和田 潔君
       社会保険庁医療
       保険部長     入江  慧君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
   説明員
       警察庁刑事局保
       安部公害課長   中島 治康君
       国税庁直税部法
       人税課長     渡部 祐資君
       文部省大学局医
       学教育課長    前畑 安宏君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  林部  弘君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○老人保健法案(第九十四回国会内閣提出、第九
 十五回国会衆議院送付)(継続案件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(粕谷照美君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 前回に引き続き、老人保健法案を議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○高杉廸忠君 私は、本法案の審議に際しまして、去る四月の二十七日、本委員会における質疑に引き続きまして、本日は老人病院並びに精神病院の実態と患者の人権等について、これらを中心に以下質問をいたしたいと存じます。
 これまでの論議は、主として支払い方式の見直し、主治医制度、保険料とその拠出の方法、医療の供給体制、マンパワー確保など、主に支出する側、言うなら与える側の論議であったと思います。現実に医療資本が、かつての精神医療の初期のような意味で進出をし、雨後のタケノコのように輩出をしつつあるいわゆる老人病院における医療の実態、すなわち医療を受ける側、お年寄りの人権の問題については触れられていなかったと考えます。そこで、私はこの点に触れてその改善をただしていきたい、このように思っております。
 そこで、まず伺いますのは、昭和五十六年七月二十二日から八月初旬にかけて、浩徳会都病院の寝たきりで介護を要する二十人の患者の方が、医療法人財団・明理会埼玉セントラル病院に送られました。ところが、移送後二週間で三分の一の方が死亡しております。二カ月間で一名を除いて他の全員が死亡したと言われております。これは明らかに異常な出来事であると思いますが、どのようにお考えになっておられるのか、またこの事実を行政としては具体的にどのように把握をされているのか、まず伺いたいと思います。
#4
○政府委員(大谷藤郎君) 患者を転院させる場合に、どういう場合に転院させるか。これは病院の持っている機能、つまり救急の外科でありますとか、あるいは産婦人科でありますとか、そういった病院の機能、あるいは患者さんのそのときの病気の状況等に基づきまして、医師がこれを判断すべきものでありまして、個別の患者がどういうふうになっていたかという問題については、個別のケースごとにその医師が判断して、十分注意してやっておられなければならないというふうに考えるわけでございます。
 いま先生がお話しになりましたようなことがもしそのままあったとすれば、これは医学的に見ましてかなり異常なものであるというふうに考えますが、ただいま事実関係を把握しておりませんので、私の立場からは具体的にどうのこうのという判断を申し上げるということは差し控えさせていただきたいと存じます。しかし、先生御指摘の点は非常に重要なことでございますので、関係者から事情を聴取するなど、調査に努めたいというふうに考える次第でございます。
#5
○高杉廸忠君 私が申し上げましたことも、事実の御報告を、後日で結構でありますからいただきたいと思います。
 そこで、進めますけれども、移送患者が短期間に死亡した理由の一つに、鼻腔流動があると、こう言われているんですね。都病院では時間をかけてスプーンで食事をさせていましたけれども、埼玉セントラル病院では鼻腔流動で画一的に行われたと、こう言われているんですね。
 このように給食時間に時間がかかるのは、全員鼻腔流動などというやり方で行われているようですけれども、このことを厚生省の方で是認されているのかどうか、この点も伺いたいと思うんです。
#6
○政府委員(大谷藤郎君) 鼻腔栄養法と申しますのは、医学的には嚥下障害、つまりのみ込めないというふうな場合、あるいは意識が障害されていて自分で自力で食事ができない、こういうふうな場合に行われるものでございます。しかし、そう申しましても、嚥下障害あるいは意識障害といったものにも大小それぞれございますので、そういった個々の患者さんに対するその必要性の判断ということにつきましては、これは主治医が十分状況を判断して行われるべきものであり、当然そういうふうに医師として行っているというふうに考えたいわけでございます。
 そういうわけで、その当否をここでその事実について申し上げるということにつきましては、差し控えさせていただきたいというふうに存ずる次第でございます。
#7
○高杉廸忠君 この移送の場合、家族の方から何とかここに置いてほしいという懇願があったというふうに聞いているんですね。それにもかかわらず急に連れていかれた。しかもその理由というのは、聞くところによりますと、セントラル側が患者さんを少しくれないか、こういうように都病院に頼んだ、こう言われているんですね。移送、転院などに当たっては、私は家族の方や本人の意思というのを尊重されてしかるべきだと思うんですが、この点どういうふうにお考えなのか。また行政の指導として、本人並びに家族の方々の意思を尊重される、こういうことであると思うんですが、この点はどういうふうに御指導されておりますか。
#8
○政府委員(大谷藤郎君) 現在診療を受けている患者さんが病院をかわられると、そういう場合は、患者さんが希望をされてかわられる場合、あるいは主治医が判断して転院をさせる場合、そういう場合の二つが考えられますけれども、いずれにいたしましても、基本的には、本人や家族の方々が御意向があるのを無視して病院が行うというふうなことは一般的にはあり得ないことであると思います。
 ただ、家族に連絡がつかない場合でありますとか、あるいは緊急の脳外科手術等行わねばならない場合に家族に連絡がつかない、ほうっておけばその病院ではぐあいが悪いというふうな場合には、これは病院の判断で、人の命を救うという観点から、医学上の全く緊急の見地から行われるべきものでありまして、一般的には当然家族や患者御本人の御意向を無視してはならないというふうに考えるわけでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、その病状が、移送でありますとか、そういった病院がかわるということによって、病気が悪くなったりよくなったりというふうな問題につきましては、これは主治医が十分判断して行われなければならないものであると考えます。
 その場合にどのような行政としての指導をしているかというお尋ねでございますけれども、これは本来医療行為そのものでございまして、医師の当然の配慮、行為というふうに考えますので、一般的にはこれを一々行政指導によって関与すべきものであるというふうには考えておらないわけでございます。
#9
○高杉廸忠君 御承知のとおりに、お年寄りは若い人と異なって環境の変化に対応できにくいわけですね。たとえば同じ病院の中でも、部屋がかわったり担当者の方がかわるだけでどうもお年寄りの方は落ちつかない、こういうことが言われているわけですね。何か物でも動かすような感覚で扱われ、画一的にお年寄りに医療を押しつける、こういうことではないかと、こういうふうに考えるんですがね。この移送の理由、それから死亡の実態、先ほどから提起しました幾つかのその原因、これらをぜひ御調査をいただいて、御報告はもちろんでありますが、改善策ですね、ぜひ示してほしいと思うんですが、いかがでしょう。
#10
○政府委員(大谷藤郎君) 先生の御指摘のございました点も含めまして、行政上把握できますことにつきましてはできる限りその調査に努めることにいたしたいと存じます。
#11
○高杉廸忠君 お願いをしておきます。
 次に、社会福祉法人の浴光会国分寺病院の問題について伺いたいと思うんですが、この病院は本院が百六十床です。CTスキャンを備えていると言われているんですが、どういう経過でそのスキャンの許可を得たのか、またその使用状況などを行政としてはどのように把握されているのか伺いたいと思うんですね。
 また、入院があると一通りの検査があると、こう言われているんですけれども、適正に使用されているのかどうか、この点もあわせて伺いたいと思うんです。
#12
○政府委員(大谷藤郎君) CTスキャンは非常に有効な高額な機械でございますが、医療補助、許可等の手続は必要といたしておらないのでございます。したがいまして、病院が使用している状況につきましては、行政が一般的にこれを把握するという仕組みにはなっておりません。したがいまして行政としては把握しておらないわけでございます。
 また、このCTスキャンの検査が画一的に行われているのじゃないか、適正に使用されていないのではないかと、こういうふうなお尋ねでございます。CTスキャンは、従来治療が不可能であった脳出血あるいは脳梗塞等の病気につきまして、これを治癒することができるための診断の画期的な機械といたしまして非常に重要な機械でございます。ございますけれども、確かに先生おっしゃいますように、これが必ず一通りの検査として行われているというふうなことは考えられないわけでございますけれども、これをどういうふうに使うかという問題につきましては、これが非常に有効な診断の道具であるというふうな見地から、これは主治医の判断によるものでございまして、これを一般論として申し上げるのはいかがなものかというふうに考えるわけでございます。
#13
○高杉廸忠君 このCTスキャン購入の問題ですけれども、船舶振興会から補助を受けた、こういうふうに言われているんですね。それにしてはどうも価格が高いんではないかと、こういうような話があるんです。したがって、この病院の医療機器購入には、話によりますと、別の会社があって、この病院の幹部の職員の人がその会社の社長であるとも言われているんです。こういう実態は行政の方で把握されているのかどうかですね。また、このスキャンは幾らで購入をされ、購入時の病院の理事会の承認、こういうような手続があったのかどうか、この辺はどういうふうに把握をされているのか伺いたいと思うんです。
#14
○政府委員(大谷藤郎君) 社会福祉法人浴光会がCTスキャンを整備するのにつきましては、この法人の理事会の議決に基づきまして、日本自転車振興会の補助金の申請を行っておりまして、そしてその結果補助金が交付されたということは私どもも承知いたしております。
 ただ、その場合、実際にCTスキャンがどういう価格で購入されたか、あるいは業者はどうなのかというふうなことにつきましては、これは把握するような状況でございませんでしたので、把握をいたしておらないというわけでございます。
#15
○高杉廸忠君 次に、同病院の医療内容についてでありますけれども、点滴をどんどんする、こういうふうに言われているんですね。一単位六十人のうち四十人が点滴だったとも言われているんですね。本数は一日に二本から三本、中には四本とも言われておりまして、担当のA医師は、こうやればもうかるんだ、とにかく一通りはやってみればいいと、こう言っているそうですが、これで果たして適正な医療と言えるのかどうかですね。どういうふうにお考えになりますか。
#16
○政府委員(大谷藤郎君) 点滴につきましては、点滴によって栄養を摂取しなければ栄養がとれないというふうな場合でありますとか、そのほか点滴によって非常な治療効果が上がるという特殊な場合に適用されるものでございます。したがって、それにつきましては、主治医として点滴が必要だというふうな医学的判断に基づいてやっているというふうに考えるわけでございます。しかし、先生がおっしゃいますように、すべての患者さんにただただ点滴をやるというふうなことは、もう当然そんなことはいけない、考えられないことでございます。
 しかし、点滴について四本が多いんじゃないかというふうなことでございますが、これは四本必要によっては当然行わなければならない場合もあるわけでございます。
#17
○高杉廸忠君 いま指摘しましたように、適正でないとすれば、改善のためには具体的にどのような御指導をされますか。
#18
○政府委員(大谷藤郎君) 点滴の判断というのは、先ほども申し上げましたように、これはすぐれて医療行為、医学行為でございまして、これを一般的な行政という点でどうこうというのは、非常にむずかしい問題があるのじゃないか。はなはだ医務行政として迂遠なようにお考えいただくかもしりませんが、医師の資質、あるいは国家試験、あるいは卒後の研修、医師自身のそういった問題としてこれを考えていかないと、こういった個々の医学行為の問題にまで一般の行政がうまく立ち入ってそれが効果を上げるかどうかという点については、私もそこの点は、はなはだ先生には申しわけないんでございますけれども、やはりオーソドックスに、そういった点で医師の資質、医療の内容、病院の医療というものを向上さしていくという見地からアプローチすべきものではないかというふうに考えているわけでございます。
#19
○高杉廸忠君 次に、胃の透視の問題について触れたいと思うんです。
 胃の透視も定期的に行われているんですね。重症の人にも胃カメラを行うとかで、これに携わっている看護婦さんの言葉によりますと、こういう言い方が適当かどうかわかりませんが、聞いたところでありますから率直に申し上げると、まるで人殺しの手伝いをしているようだと、こう言って嘆いているんですね。昨年の九月には、九十五歳になるお年寄りの方に検査をするためにバリウムを飲ませた。ところが、気管支に誤飲をして肺が真っ白になった。肺炎のための白さではないかと言われて、結局はこの人はこのために亡くなられたんですね。
 また、B医師の言は、こうやればもうかるんだと、こういうようなことを言われて、口から無理な患者さんには鼻腔から造影剤を入れてやる、こういうようなことが行われているようなんです。
 相手はお年寄りですから、この種の検査には当然適正な診療とか、適正な医療とか、適正な検査、こういうものが私はあるべきだと思うんですし、またその歯どめがあるべきだと思うんです。どのようにお考えになりますか。
#20
○政府委員(大谷藤郎君) 先生がただいまお話しになりましたような事例があるとすれば、これはとうてい考えられないことでございまして、私どもとしてもこれを絶対に認めるわけにはいかないと思うわけでございます。
 しかし、現在の私どもの医学医療の方の現実から考えましても、そういうことがあり得るというふうにはなかなか考えられないわけでございまして、やはり医師は医学上の適正な判断に基づいて必要な透視、必要な医療というものをやっているのではないかというふうに考えるわけでございまして、当然そういった厳しい自己規制の中でそれが行われなければならないというふうに考えるわけでございます。
 ただ、これを制度上どういう歯どめをかけるかというふうな問題になりますと、先ほども点滴の場合にも申し上げましたように、医学上の一々あらゆるそういう行為について歯どめが可能なのかどうなのか。どうしてもこれは結果論的な立場にならざるを得ない点もあるように思うわけでございまして、そういった点につきましては、私どもとしても十分考えていきたいというふうに考えるわけでございます。
#21
○高杉廸忠君 局長、さっきも、適正な診療か、適正な医療かと、こういうふうに私の方は提起をしているわけです。ですから、そういう事実関係がはっきりすれば、適正であるかどうかという判断はできると思うんですね。その場合に、適正でなかったらどう改善をしていきますか、こういうことをさらにお尋ねをしたわけです。ですから、十分御調査の上、行政の姿勢としては、正しい医療が行われることをお考えになっていただきたい、こういう願いを込めているわけですから、そういう意味で御調査の上ひとつ御報告いただければありがたいと、こう思っております。
 特に、傾向として、胃の定期検査が生保の人たちに多いと、こう言われているんですね。生保の方というのは特に国にお世話になっていると、こういうひけ目があるようです。ですから病院側の指示には拒否できない。こういうように言われているんですけれども、こういうことでいいかどうか、私はこれを疑問に思うんです。こういう点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
#22
○政府委員(金田一郎君) ただいまの御指摘の点につきましては、最速実情を調査してみたいと思っておりますが、被保護者の方が不必要なひけ目を感じているというようなことであれば、決して好ましいことではございませんので、生活保護制度の趣旨をよく理解するよう、関係者に対しまして保護の実施機関を通じて十分指導してまいりたいと考えております。
#23
○高杉廸忠君 これはまた、患者さんにルンバールをするか否かについても、明らかに他の方法で診断ができると思われる症状でも、やってみなければわからないですよと、こういうようなBお医者さんの言葉なんですね。それで実行している、こういうことが行われているようです。こういう態度、あるいはこういうお医者さんの行為、こういうものは私は適正でないというふうに思うんですが、これはどういうふうにお考えになってますか。それからまた、そういう事実を把握されておりますか、これもあわせて伺いたいと思うんです。
#24
○政府委員(大谷藤郎君) ルンバールは、神経系統の疾患で脳脊髄液に異常があるのかどうか、そういうふうな場合に行う検査でありまして、長い針を背中に突き刺すというふうなことでございまして、医師として当然患者さんのそういった気持ちというものを酌んで、みだりに恐怖心やそういうことがないように十分注意して医師や看護婦は行わなければならないというふうに思うわけでございます。
 そういう点で、もし先生がおっしゃるようなそういうふうな態度や行為というものがあるとすれば、これは医師の倫理、看護婦の倫理というふうな立場から、医療従事者の医の倫理という立場から、これは当然そういうことについては反省していただかなければならないし、許してはならないというふうに思うわけでございます。
 ただ、その医学的判断、ルンバールを行うかどうかという問題につきましては、もしこれをやらなかった場合に――たとえば脳脊髄膜炎でありますとか、普通の症状では把握できないことがこのルンバールによって早期に発見できるというふうな点もございますし、そういった点で、先ほどから毎々申しておりますように、医学的行為を選択する権利と申しましょうか、それは厳重に国家試験を受けて医師という立場や与えられた人に任されている行為でございまして、それによって十分その点で考えてやられているものであるというふうに考えたいわけでございます。
 そういった点につきましても、当然先生おっしゃるような御心配につきましては、私どもとしても十分考えていかなければならないというふうに思うわけでございます。
#25
○高杉廸忠君 私は、先日の本委員会において質疑の際に、医療法人社団・浩徳会都病院の件に関してお尋ねをした際、資料のお願いもしました。結果としてその資料の御提出はいただきましたが、依然として調査中、検討中の中間報告的な内容でありますから、引き続いて若干お尋ねをいたしたいと思うんです。
 まず、競売の公告について伺いたいと思うんですが、この競売公告は、入札者を病院経営を継続する意思のある者に限定していないですね、今度の場合は。この点はどういうふうになっておられるのか、まずお尋ねをいたしたいと思うんです。
#26
○政府委員(大谷藤郎君) 先生がお話しのように、五月二十日に競売を行う旨の公告が四月十六日に行われておりまして、特段の入札資格等の限定を行っておりません。
#27
○高杉廸忠君 競売があって入札者を限定していない、こういうことなんですけれども、そうしますと、三百人近い患者さんと百二十人近い職員を抱えたままで、だれが競り落としてもいいというふうになるんですね。一昨年秋の宮城の万年青病院の競売では、裁判所の判断によりまして、病院を継続経営する意思のある者以外は競売に参加できない、こういうような枠がかけられているんですね。今回それがない。これはどういうことなんですか。
 そこで大臣、せっかくですから大臣にお尋ねをいたしたいと思うんですが、大臣は、三月二十五日の本院予算委員会並びに先日の私の質問に対して、病院を継続する方向で努力をいたしますと、こういうような御答弁をいただいておりますし、予算委員会の片山甚市先生の御質問に対しても、そう大臣はお答えになっているわけなんですね。こういう競売の事態、いま申し上げました病院を継続する意思のない者でも入札していくような今回の入札、私はちょっと大変だと思うんですが、大臣どういうようにお考えになっておりますか。大臣が御答弁いただいたことも含めて、大臣は継続をしていくということで努力をされると何回か繰り返されておりますから、確認の意味でも、大臣の姿勢、御所見を伺いたいと思うんです。
#28
○政府委員(大谷藤郎君) 私からちょっと事実関係について先に御報告申し上げさせていただきます。
 前にも大臣から申されましたように、私どもの方といたしましては、東京都より東京地裁に対しまして、病院の競売に当たりましては、入院患者につきまして十分配慮してもらいたいという申し入れを行ったところでございます。また、病院の継続が図られるように、東京都を通じまして、都の精神病院協会等の関係者に働きかけを行ってきたところでございますが、その目途がつかない段階のまま、特段の条件も付されないままで今回競売の公告が行われましたことにつきましては、まことに残念なことであるというふうに思うわけでございます。
#29
○国務大臣(森下元晴君) 確かに三月二十五日予算委員会で私は、この入院患者がそのまま治療を受けられるように、いわゆる継続の問題につきまして、いまおっしゃったような御答弁をいたしております。
 いま聞きまして、実は驚いているようなわけでございまして、非常に残念であると同時に、これを最後まで努力して、私が申し上げたような方針でやっていただくように最後まで私は努力をいたしたい。十分詳細まだ承知しておりませんし、もっとよく調べまして最後まで努力をいたしたいと、このように思っております。
#30
○高杉廸忠君 大臣、競売を目前に控えていま一番大事なことというのは、病院を継続する方策をどう講ずるかですね。これは言うまでもないと思うし、大臣もそうお考えだと思うんです。
 局長、民事絡みで大変だと思うんですよ。しかし私どもも協力を惜しまないし、この病院継続については最善の英知を傾けたいと思っているんです。
 この点に対する対応が、いま大臣の姿勢なり、先日からのお話を伺って大変私も心強く思うんですが、事務的な段階になりますと、どうも大臣の姿勢とは若干違いが出てくることは非常に残念なんです。ですから、どう方策を講ずるかということに知恵を傾けていただきたいと思うんですが、局長どうですか。
#31
○政府委員(大谷藤郎君) いま大臣も申されましたように、大変な御熱意をお傾けでございまして、私どもといたしましても、その御趣旨に沿って事務的に最大限の努力を働きかけたいというふうに思っております。
 病院の継続が図られますように、東京都を通じまして、競売落札者を含めまして、関係者への働きかけを精力的に続けていきたいというふうに考えております。
 なお、もし第一回目の競売日に落札がなされなかった場合には、再度競売の落札者を病院経営の意思ある者に限定するというふうな条件をつけていただくよう、東京地裁に要望いたしたいというふうに考えております。
#32
○高杉廸忠君 せっかく大臣からのお答えもありましたし、いまのようなお話ですから、どうぞひとつ継続ができるように最善、万全を期していただきたい、お願いをしておきます。
 それからなお、ちょっと細かい点に触れたいと思うんですけれども、浩徳会都病院の処理について、私はいまお答えもありましたから、あるいはまた去る三月の二十五日の予算委員会においての片山先生に対するお答えで結構だと思うんです。しかしなお、先日資料をいただきまして、ちょっと私なりに理解ができない点もありますから、さらに財務関係についてのお尋ねもいたしたいと思うんです。
 浩徳会牧山理事会長が、宗教法人の、先日も指摘をいたしました東善光寺の代表役員の立場を利用して都病院に肩がわりをさせた五億円の使途についてお尋ねをいたしたいと思うんですが、資料でもその使途そのものについてはまだわかっていないんですね。ただ、その浩徳会の昭和五十四年度貸借対照表によりますと、仮払い金として総額四億四千三百五十九万二千三百九十九円、これが計上されているんですね。このうちの四億二千八百四十七万九千百三十九円、これは宗教法人の東善光寺に対するもので、この資金、これは同宗教法人の行う事業に供された、こういうふうにあるわけなんですね。そうすると、この四億二千八百四十七万九千百三十九円の資金、これは医療法人社団・浩徳会都病院から宗教法人東善光寺の事業に回された、こういうふうに見られるんですけれども、この点は確認してよろしゅうございますか。
#33
○政府委員(大谷藤郎君) 東京都が浩徳会より事情聴取いたしましたところでは、御指摘のとおりでございます。
#34
○高杉廸忠君 このことが医療法人社団・浩徳会都病院の業務に重大な支障を及ぼしたと考えられるんですが、どういうふうにお考えになりますか。
#35
○政府委員(大谷藤郎君) 昭和五十四年度末現在の負債総額が十二億四千万円に上っておりますが、そのうち東善光寺に対する仮払い金は四億三千万円を占めております。したがいまして、御指摘のように、都病院の業務に重大な支障をもたらした一因となったというふうに考えます。
#36
○高杉廸忠君 さらに、この仮払いがだれの意思によって行われたということで、仮払いを決めた浩徳会理事会の議事録について私も伺ったんですが、昭和五十一年から五十五年の間、十五回の理事会が開かれているようなんですね。その中では仮払い金に関する議決というものは一切行われていないようなんです。そうしますと、これは理事会には諮らず理事会の議は得なかったと、こういうことになるんですね。理事会にも諮らないでこのような多額の仮払いができるのかどうか。これはちょっと不思議に思うんですが、どういうふうにお考えになりますか。
#37
○政府委員(大谷藤郎君) 理事長には法人の代表権がございますので、たとえ理事会の議決を経ていないといたしましても、東善光寺に対します仮払い金の支払いは対外的には法的な問題はないというふうに考えますが、東京都が浩徳会より提出を受けております議事録どおり仮払い金の支払いが理事会の議決を得ないで行われたということになりますと、これは法人の定款違反の疑いもございますし、また法人運営のあり方としても問題がございます。そういう点で事実の解明を現在行っているところでございます。
#38
○高杉廸忠君 先日いただいた資料で、あるいはまた私どもの調査ではっきりしたところによりますと、宗教法人東善光寺に対する浩徳会都病院からの仮払いというのは、昭和五十二年度が一億三千七百九十九万八百九十三円、昭和五十三年度が三億六千百七十五万八百五十三円、昭和五十四年度が先ほどの額四億四千万、合計しますと五十二年度、五十三年度、五十四年度で約十億円、こうなるんですね。年々増加しているわけですね。
 こういうことが何でこれまで見落とされていたのかもう不思議でならないんですが、私はそういう指導が、適正といいますか、十分な指導がないまま、あるいは意識的に見落とされたのかわかりませんけれども、いまのような理事長の権限等々についても私も若干承知をいたしておりますが、こういう事実がはっきり出ているわけです、財務諸表でも見れば。これはどういうふうにお考えなんですか、大変な金額だと思うんですけれども。
#39
○政府委員(大谷藤郎君) 医療法人の財務の審査につきましては、確かに先生が御指摘になっておりますとおり不十分な点がございますので、これにつきましては、十分指導の徹底を図っていかなければならないというふうに考える次第でございます。
 それからもう一つなんでございますが、実はいまの金額は全部累計されるというものではありませんで、これはそれが重なっていっているわけでございますから、全部で十億になるというふうなものではございませんので、その点につきましてはひとつよろしくお願いいたします。
#40
○高杉廸忠君 調査をしましたところ、宗教法人東善光寺の霊園造成事業はどうも北海道だけではないようなんですね。私は手元に、京山霊園造成計画並びに同霊園造成工事開発区域位置図、こういうものがあるんですけれども、これは岡山市の谷万成での計画のようなんですが、この件はどういうふうに把握をされておりますか。
#41
○政府委員(榊孝悌君) ただいまのお尋ねの件でございますけれども、先生御承知のとおり、その霊園の経営につきましては、これは墓地、埋葬等に関する法律によりまして、都道府県知事もしくは地方自治法上の指定都市の長の許可を得なければならないということになっておるわけでございます。
 ただいまのお尋ねの件につきましては、私どもも岡山県の環境部を通じましていろいろ報告を受けたわけでございますが、宗教法人東善光寺によります墓地経営というのは、現実には岡山県内にないようでございますし、またこの五月の初めの現在で同法人からの墓地の経営許可申請というものも提出されていないという状況にあるというふうに承知しております。
#42
○高杉廸忠君 私どもの調査によりますと、所在地は谷万成一の七百五十三の一ほか二十三筆。総面積七万四千二百六十七平米、開発区域約三万平米。申請人、北海道札幌市中央区大通西、宗教法人東善光寺。土地譲渡人、岡山市出石町二の五の十八の藤井商事株式会社。大規模土地取引等に関する事前指導申出書提出が昭和五十六年五月の二十八日。市の意見として六月の二十三日、県の指導として八月二十三日。土地売買等届出書が八月の二十六日に十八筆、七万一千七百三十一平米。この市の意見、県への通告が九月の四日で開発予定は約一年後。こういうふうになっているんですね。
 このことは十分まだ把握をされてないようでありますけれども、昨年の九月の二十一日の岡山の市議会でも問題にされたと、こういうように聞いているんです。早急にお願いでありますが、この事実関係というものを御調査いただきまして確認をいただきたいと思うんです。そこでその土地売買をめぐってどのような資金の流れがあるのか、できればこの点もお調べをいただき、資料として御提出をいただきたい、こういうふうに思うんですが、いかがでしょう。
#43
○政府委員(大谷藤郎君) できる限り事実の解明に努力させていただきたいと存じます。
 ただ、東善光寺は宗教法人でございまして、厚生省の監督権限が及ばないという点もございまして、事実関係の調査にも限界があるという点につきましても御了解をいただきたいというふうに存じます。
#44
○高杉廸忠君 去るこの三月の十二日に本院の予算委員会では、先ほども申し上げましたとおりに浩徳会都病院の問題が取り上げられました。早いものですでに三カ月が経過をしております。
 そこで、本件を締めくくる意味で最後にお願いを申し上げたいと思うんですが、浩徳会都病院の患者さん、これは若い方ばかりじゃないのですね。移送などを行った場合なかなか対応が困難な方もいらっしゃるわけなんです。病院の継続を図りつつ、三月二十五日に、先ほども大臣から繰り返しお答えをいただきましたようなお約束をいただいたことを私は確実に処理していただきたい、こう思うんです。そしてなお、この宗教法人の東善光寺の岡山市におけるいま申し上げました京山霊園造成などといった問題も出ておりますから、厚生省、国税庁、警察庁三省庁で御協議をいただいて、いま私が指摘をいたしました事実関係についての御調査、こういう点も含めて事実関係を明らかにしていただきたい、これはお願いであります。この点も含めまして、それぞれの省にきょうはおいでいただいていると思いますが、確認をいたしたいと思うんです。
#45
○政府委員(大谷藤郎君) そのような方向で努力させていただきたいと存じます。
#46
○高杉廸忠君 国税庁。
#47
○説明員(渡部祐資君) 国税庁といたしましては、日ごろから新聞報道その他各種の資料情報の収集に努めておりまして、これらの資料情報と申告内容とを照らし合わせまして、課税上問題があると認められるものにつきましては、実地調査を行うなどによりまして、適正な課税を図るよう努めているところでございまして、本件につきましても、このような一般方針にのっとって対処してまいりたいと思っております。
#48
○説明員(中島治康君) 警察庁といたしましても、医療の問題、非常に国民に影響の大きいところでございますので、関心を持ってやっておるわけでございますが、この問題、関係の機関とよく連絡をとりまして、御期待に沿うように努めてまいりたいと思っております。
#49
○高杉廸忠君 ぜひお願いを申し上げておきます。
 それからだんだん時間が参りましたから、締めくくるような意味で大臣にお答えをいただきたいと思うんですけれども、いままで私が述べてきましたのは老人病院の実態についての一例ですね。わずかなんですが、具体的な一例を挙げましてただしてきて、そしてお年寄りをめぐる医療の荒廃あるいはその営利化への目的とされている姿というものを浮き彫りにしたというように思っているんです。
 そういう過程で、やはり問題なのは、家庭における介護が十分なされない多くのお年寄りが入院した場合、家族の目が十分行き届かないところでは、残念ながら、一部かもしれませんけれども、治療の名のもとにそれに値しない処遇を受けている、こういうことをあらわしているのではないかというふうに思うのです。そういった点で、私は質疑を通じていままで幾つかの例を挙げ、幾つかの法人の実態も挙げました。大臣、どのような御見解をお持ちですか。また、今後こういう問題についての改善についての御決意等も承りたいと思うんですが、大臣いかがでしょう。
#50
○国務大臣(森下元晴君) 具体例を引かれての御意見、また御質問でございまして、正しい医療が行われておらない、また医の倫理にもとるようなそういう医療、治療が行われておる、まことにこれは残念なことでございます。老人病院の問題、それから宗教的な施設の問題、それから霊園、すなわちお墓の問題、何か関連があるようでございます。老人の特性を悪用したような一連の行為があったんじゃないだろうか。むしろ、医よりも経営的なそういうような面を感じられるわけでございます。
 残念ながら、全国の医師、医療機関、ほとんどの方がりっぱな方でございますけれども、一部こういう例がございますと、すべて医療がうまくいっておらないような、また厚生行政が悪いような印象を与えることは事実でございまして、その点、御指摘のあった点については早速調査をいたします。また事実の解明に努めていきたい。
 少なくとも老人保健法は、そういうことがないように、老人の特性に見合って、いまいろいろ例を挙げて言われましたが、いわゆる家族と患者との対応、また病院と老人との対応、また移送等についても十分家族と相談する問題、老人は一般の患者と違いまして孤独という一つのまた別の病気も持っておりますし、そういう面も踏まえまして、老人保健法においても、高杉委員の御意思を生かすような方向の運営をすべきであると、私はこういうことを申し上げて御答弁にかえさせていただきます。
#51
○高杉廸忠君 最後になろうかと思いますけれども、御承知のとおりに、現在疾病にあって介護を必要とするお年寄りというのは、家庭に介護の手がないところでは、特別養護老人ホームに入所するとか、あるいは病院へ入院するか、このいずれしかないんですね。しかし、すべてとは申しませんけれども、老人ホームでは、地域社会に密着して存在するという面が希薄であるし、ともすると、入所者と家族の方々のつながりが、地理的にも気持ちの上でも遠く薄くなっているのが実態ではないか、こういうふうに考えるし、またそれも入所希望者を受け入れるだけの十分なこういう体制にないのが今日の私は実情だろうと思うんです。
 また、入院されているお年寄りについても、先ほどから私が述べましたように、あるいは以前から問題としてきましたように、都病院や十全会の問題を指摘しましたけれども、どうも営利の対象としか老人を見ていない、こういった実態にあるのではないかと、こういうふうに思うんですね。こういう実態でお年寄りが安心して死を迎えられることになるだろうか。そういう点では残念ながら、わが国の施策の対応というのは貧困である、こういうふうに言わざるを得ないんです。社会連帯の中でお年寄りの最期をどのようにみとっていくか。わが国の施設体系、大変不十分であると考えるんです。
 先般来私どもは、わが党のナーシングホーム等の提案に対しましても、本委員会を通じて大臣からも、検討あるいは勉強中、こういうような答弁しかいただいてないのをきわめて私は残念に思うんです。そういった答弁にあること自体がおくれを示しているのではないだろうかというふうに考えるんです。施設の面で医療と福祉、家庭と社会、これをつなげる役割り、これをどのような面で担っていくのか、こういう考え方を私は明らかにしていただきたいと思うし、大臣が本委員会でしばしば御要請になります法案の成立についても、私どももいま幾つかの点の問題提起をし、できるなら与野党合意で修正等も実現して、前向きな姿勢の中で取り組んでいきたい、こういうような気持ちも持っております。いま申し上げましたようなことで、最後にこれからの施策の充実等々について、ぜひひとつ大臣の御見解、御決意を伺いたいと思うんです。
 以上をもちまして私の質問を終わりたいと思います。
#52
○国務大臣(森下元晴君) 医療と福祉の関係、また老人特有の病気、またこれの治療、そういう問題につきまして、非常にむずかしい問題でございますけれども、根本的な問題に触れられた御質問でございまして、私どもも真剣に取り組んでいきたいと思っております。
 一般の福祉の考え方は、従来は御承知のとおり厚生ということで、たとえば救貧対策であるとか、いろいろそういう趣旨でやられておりましたが、最近は福祉の範囲も非常に広がってまいっておりますし、特に御老人の場合は、何と申しましても、御質問のようにお年寄りの最期は、これは人間生まれた以上は必ず最期が来るわけでございまして、私の人生はよかったと、安らかな安心感の上に最期の日を迎える、こういうことが、私は医療の、また福祉の最終の目的でなくてはいかぬと思います。そういう意味で、老人保健法においてもそういうような広い意味の福祉を取り入れる、また広い意味の医療も取り入れながらやっていくべきである。そういうことで、ナーシングホームの問題もそれに適応した一つの施設ではあるまいか、このように思っておるわけでございます。
 こういう点も含めて、よく御意見の趣旨を踏まえまして、老人保健法でこれを生かすように、いろいろ皆さん方の御意見も踏まえて、検討また実行をしていきたいと、こういう強い決意で進めていきたいと思います。
#53
○渡部通子君 前回私は、保健事業の主要な担い手となります保健婦について御質問をいたしましたので、今回は、これまた高齢化社会の保健事業には不可欠なマンパワーであるリハビリ要員、これについて若干の質問をいたしたいと存じます。
 まず、保健事業のマンパワー確保五カ年計画、これを拝見いたしますと、理学療法士、それから作業療法士、これにつきましては具体的な確保数が示されておりません。拝見した限りでは実に不明確でございます。「地域の専門病院等の協力を得て確保するほか、市町村の機能訓練事業を支援するため保健所に配置を進める」と、これだけ書かれているだけでございまして、これは具体的にはどうなさるおつもりでございますか。
#54
○政府委員(三浦大助君) マンパワーの確保につきましては、保健婦につきましては目標八千人という数字がございますが、医師、それから理学療法士、作業療法士につきましては、このような具体的な数字は挙げてございません。これは地域の医療資源をいろいろ活用してやっていこうということでございますが、一応PT、OTにつきましては、六十五名ぐらいは確保したいというふうに考えておるわけでございます。
 なお、精神衛生相談員につきましては、現在二百四十四人おるわけでございますが、これは目標といたしまして約四百二十五人を六十一年までに確保しようと、こういう計画でおるわけでございます。
#55
○渡部通子君 PT、OTは六十五人ということですが、合わせてでございますか。
#56
○政府委員(三浦大助君) これにつきましては、PT、OT、現在でもかなり不足しておるわけでございますので、六十一年までに六十五人ぐらいは確保したいと思っておりますが、これは大都市とかあるいは県の中心的な保健所におきまして、数は少ないですが、ひとつ指導的な役割りを果たしていただこうと考えておるわけでございます。
#57
○渡部通子君 六十一年までに二つ合わせて六十五人というささやかなものでございますか。
#58
○政府委員(三浦大助君) 現在の養成計画からいきますと、早く大ぜいの人を確保したいわけでございますが、一応六十一年までに各都道府県で何とかこのOT、PTの活動が一定レベルでできるようにということで、一応六十五人という目安をいまつくってあるわけでございます。
#59
○渡部通子君 少し私は理解しがたいんですけれども、その六十五人を確保すれば、六十一年までに一定レベルの訓練ができるとお考えになっているのかどうか。これは現在の不足の状態とあわせてカバーできるとお思いになっていらっしゃるのかどうか。その辺もう少し詳しく聞かしてください。
#60
○政府委員(三浦大助君) 私ども、このOT、PTにつきましては、各地の病院、医療機関、いまこういうところにおります人たちに応援を願おうという考えでおるわけでございます。いろんな企画をしたり、あるいは指導的立場に立つ人は、どうしても大都市とかあるいは県とか、大きな県の中心的な保健所には指導者として必要でございますので、これはぜひひとつ確保したい。あと不足の部分につきましては、これはその地域の医療機関からひとつ応援願おうと、こういう計画でございまして、六十五人でやるということでなくて、具体的にはもっと医療機関からのいろいろな応援もございますので、一応六十五人というのは、企画、指導、そういう中心的な役割りを果たす人をまず確保したい、こういうことでございます。
#61
○渡部通子君 厚生省が訓練施設として挙げていらっしゃるのは、市町村保健センター、それから老人福祉センター、保健所、特別養護老人ホーム、その他適当と認められる施設と、こうなっているわけでございますね。
 私、こちらから申しますけれども、この施設がどのくらい現在あるかという数をまず調べました。そうしますと、市町村保健センターが現在四百カ所。これは六十一年までに一千カ所になさるというおつもり、計画が出ておりますけれども、保健センターが現在で四百カ所。それから老人福祉センターが、五十五年現在ですが、一千百七十二カ所。それから保健所、現在数が八百四十二カ所。それから特別養護老人ホーム、これも五十五年度現在ですけれども、一千三十一カ所。
 そうしますと、いま厚生省が訓練施設として考えられている現在の施設というものが、合計しますと、この四種類で三千四百四十五施設になるわけですね。ここでともかく保健事業、リハビリをやろうということになっているわけですね、お年寄りの。
 で、いまPTの数が三千四十五、OTの数が一千八十九人。こういうことでございますと、このやろうという施設数と比較をいたしましても、PTについては四百人不足、それからOTについては二千三百五十六人が不足する、施設に一人と考えた場合ですよ。こういう状況と思いますが、それはそのとおりですか。
#62
○政府委員(三浦大助君) 機能訓練と申しましても、一応医療に近い機能訓練があるわけでして、そういうものはもう専門のOT、PTが必要だと思います。
 ただ、私ども、たとえば老人福祉センターとかあるいは特養ホーム、あるいは市町村の保健センター、こういうところで考えております機能訓練の活動と申しますのは、最も簡単な体操といいますか、それから日常血清の訓練、こういうことを考えておりますので、これは必ずしもOT、PTでなくとも、しっかりした指導があれば、保健婦さんにやっていただく。こういうことを考えておるわけでございまして、したがって全部OT、PTが要るというふうには私ども考えてはおりません。
#63
○渡部通子君 わかりました。
 そうすると、こういう施設には一々一人もいなくてもいいんだという、そういう認識のもとに保健事業をやろうと厚生省は考えていらっしゃる。何とか保健婦さんに応援を得たり、それからその地域の医療機関に指導を受けたりすればそれでいいではないかと。これじゃ、保健事業に対してこれから本当に力を入れていこうという場合に、少し投げやりなんではないか。考えてもこの養成等が追いつかないから、まあ地域にお任せをしましょう、お願いをしましょうという、こういう一つの厚生省の、まあ投げやりな姿勢と言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、行き届かない点というのがうかがわれてもいたし方ないと思いますけれども、それはどんなものですか。
 それから万一、素人が作業訓練とか歩行訓練とか、そういったものを指導して事故が起こったりした場合、そういう場合の責任の所在というのはどう問われるわけですか。
#64
○政府委員(三浦大助君) 一応、この機能訓練につきましては、近くの医療機関から応援をいただく医師一人、それからOT、PTにも応援いただく、それから保健婦さんがつく、こういうかっこうで一応予算は組んでございます。
 したがって、先ほど申し上げました六十五名というのは、これは県単位に企画しあるいは指導をする、そういう中心的な役割りを持つ方はぜひ必要だと、こういうことでございまして、一応機能訓練の場所には医師、それからOT、PT、それから保健婦さん、この三者が一応おって指導するということになっておるわけでございます。
#65
○渡部通子君 ですから、各訓練施設にその三者がそろっているということが理想だと思うんですね。
 で、私、先ほど数を挙げましたけれども、現在の訓練施設においても、PTにおいては四百人足りない、OTに至っては二千三百五十六人が足りないと、こういう状況になっておりましてね。しかもそれは今回の訓練施設だけを挙げたわけでございまして、このほかの通院施設とか収容施設、こういうニーズも考えてみましたときに、必要数はもっともっと大きいものになるのではないか、こう考えます。
 さらに、施設の増設というものは厚生省も考えていらっしゃるし、離職者数を考えてみれば、療法士さん等の養成というものは非常に急がなければならない。こういう状況というものを私は提示をしたいと思うんですけれども、それに対して不足を補うためにも養成を急がなければなりません。
 で、現在の養成計画というものはどのような基礎データに基づいてつくられたものなのか、また、それによってこれらの不足をカバーできるものと考えていらっしゃるのかどうか、その点も伺います。
#66
○政府委員(大谷藤郎君) 先ほど公衆衛生局長からも申し上げましたように、リハビリテーションと申しますのは、医学的あるいは社会的あるいは職業的、いろんな幅広い分野がございまして、医師がみずから行うリハビリテーション、あるいは医師が理学療法士、作業療法士に指示して行うリハビリテーション、あるいは理学療法士が看護婦さんあるいは保健婦さんその他ボランティアいろんな人々を通じて行うリハビリテーション等、このリハビリテーションというのは、要するに社会で自立できる人をつくり上げるように援助する、あるいはトレーニングするというふうなことでございまして、理学療法士、作業療法士が何人わが国の場合正確に必要かという問題につきましては、これはなかなかむずかしい問題がございます。
 現在、毎々国会でも御答弁申し上げておりますように、厚生省が理学療法士六千人あるいは作業療法士四千人という養成目標というのを掲げましてやってまいりましたんでございますが、これは昭和四十二年に初めて理学療法士、作業療法士が誕生したという、そういう歴史のおくれという点を勘案いたしまして、当時アメリカのリハビリテーションの従事者の理学療法士、作業療法士というものを目安に考えまして、非常に大ざっぱな目標といたしまして、これを策定したものでございます。しかし、この数字につきましては、大体充足できるというふうになってまいりましたので、私どもといたしましても、こういった問題につきまして、もう少し正確な作業の位置づけあるいは将来数というものについて策定をいたさなければならないというふうに考えております。
#67
○渡部通子君 いま御答弁にあったように、アメリカの大体の人数というものを基礎データにして決めたんだと。それが、厚生省の資料によりますと、アメリカは人口十万人に対して十二人の理学療法士がいる、したがってわが国は十万人に対して十人にした、こういうことでございますが、どうせまねするなら十人に減らさないで十二人ということで策定すべきではなかったんですか。いま大ざっぱにとおっしゃったけれども、今度保健事業に初めて国が乗り出そう、本当に老人医療というものを保健に重点を置こうと、私たちは今回の法案に対してもそこに非常な評価を求めているわけですが、それならば昭和五十一年に策定したこんな基礎データ、みずから大ざっぱとおっしゃるような、しかもまねするなら中途半端じゃなくてちゃんとまねしていただけばいいのに、ちょっと値引きをしてまねをしたような基礎データの五十一年の計画をそのまま受け継ぐのか。それとも、今回老人保健を考えるに当たって、改めてこの基礎データについて検討をし、そしてこの数を策定なさろうとはなさらなかったのか。その辺も伺います。
#68
○政府委員(大谷藤郎君) 先ほども申し上げましように、当時私どもは病院の看護婦不足ということで非常に悩んでおりまして、この充足がわが国の医療の当面の目標であったわけでございます。しかし、一方ではこういったリハビリテーションの需要が深まるということが予測されましたので、ゼロから出発いたしまして、私も当時からそれに関係いたしておりましたが、学校をつくりましても先生がいない、当初は皆アメリカからお迎えして、アメリカ人の先生で学校を出発する、こういうふうな状況でございまして、当初は東京病院にただ一カ所の学校がわが国で唯一の学校という非常におくれた状態でございまして、WHOもずいぶんわが国に協力をしてくれたわけでございます。
 しかし、そういうわけで、当時目標を策定するにいたしましても、余りにもそういったおくれた状態でありましたために一相当高い数値を出すということは、いかにも現実とマッチしないというふうなことで若干遠慮してやったというふうな点もございます。しかし、この目標数のために、たとえば理学療法で申しますと、昭和四十五年にようやく八校に達しました理学療法士の学校が五十七年には三十四校になっている。また作業療法士につきましては、四十五年度に三校に達しましたのがいまや二十一校に達しておりまして、入学定員は理学療法士で七百六十人、作業療法士では四百四十五人というふうな数字に達してきまして、私どもとしても、いまようやく理学療法士、作業療法士の需給の計画というものが実態に即して立てられるというような時代になったというふうなことで、まことにその点については申しわけないのでございますけれども、現実はそういうふうな実態でございます。
 したがいまして、先生の御指摘のように、私どもといたしましても、これからの脳卒中、成人病というふうなものの疾病構造を考えましたときに、こういった問題につきましては、先ほど申し上げましたように、こういった学校の伸びの実態を踏まえまして正しい将来数というものをはじき出したいというふうに考えております。
#69
○渡部通子君 今回この法案をおつくりになるに当たっては、改めて目標を策定したり、養成計画をつくったりということはなさらなかったわけですか。
#70
○政府委員(大谷藤郎君) ヘルスの事業につきますPT、OT等、医療の分野で働くPT、OTの割合というのは、医療の方が圧倒的に多いわけでございます。それはたとえば脳卒中で倒れますと、病気で入院されているときからの理学療法が一番大事なわけでありまして、それがだんだん回復するに従いまして、それはむしろ社会的あるいは職能的なものになってまいりまして、これはむしろそういった一般的な仕事のできるトレーナーのような方がやられる方がいい場合さえも出てくるわけでございます。
 したがいまして、老人保健法のヘルスの場合というのは、私どものいまの養成計画の中で賄える範囲というふうなことでこういうふうな数字になったのでございますけれども、ヘルス事業の算定につきまして、私も前公衆衛生局長をやっておりましたので、非常に責任もございますが、これは全体のマンパワー計画というふうなもので全体として考えるべきだというふうに思うわけでございます。
 リハビリテーションというものは、ここまでがリハビリテーションで、ここまでが医療で、ここまでが看護だというふうなものではございませんで、医療全体、看護全体の中にリハビリテーションというものは含まれるものでございまして、お医者さんがやられるもの、看護婦さんがやられるもの、PT、OTが専門的にやられるもの、あるいは助手の方がやられるもの、いろんな分野があるわけでございまして、そういった点をヘルス事業としては全体として考えていこう。六十何人が少ないという御指摘ございますけれども、これはいわゆるPT、OTとしての職能的な、専門的な、中核的な活動をしていただきたい、こういうふうな考え方で策定した数字であるというふうに私は理解しているわけでございます。
#71
○渡部通子君 繰り返しになりますけれども、ヘルス事業をやろうというときに、PT、OTに対して改めて策定計画を立てなかった、五十一年の目標そのまんまずるずると引っ張ってきたというような点は、厚生省の怠慢と言われても私はいたし方がないのではないか、本気で受け入れ体制をつくる気があるのかどうか、これを指摘しておきたいと思うんです。保健婦さんに手伝ってもらってもと言われましたけれども、保健婦さんそれ自体はもう大変な不足の状況を呈しているわけでございますから、その辺は怠慢を責められてもいたし方ないのではないか。これを強く指摘しておきたいと思うんです。
 文部省に伺いますが、文部省の所管の養成の現状と来年度の見込みはどうなっておりますか。
#72
○説明員(前畑安宏君) お答えをいたします。
 現在私ども、文部省所管の医療技術短期大学というのを各関係の大学の医学部等に併設をしておりますが、五十四年度以来こうした医療技術短期大学部に理学療法学科、作業療法学科の設置を進めてまいっておりまして、すでに金沢と弘前、北海道、神戸、京都、この五つの医療技術短期大学にそれぞれ作業療法学科、理学療法学科を設置をいたしております。入学定員はそれぞれ二十名でございますので、両方合わせまして二百人という規模になっております。
 今後の計画につきましては、先ほど来医務局長の方からも御答弁があってございますように、養成目標等についていろいろむずかしい問題もあるようでございますが、私どもといたしましては、厚生省とも緊密に連絡をとらしていただきまして、大学側の準備の状況や国の行財政事情等を勘案しながら整備について検討してまいりたいと、このように考えております。
#73
○渡部通子君 来年度のいま見込みはどうですかと伺っているんですが、資料でお出しいただいたとおり、二十人、二十人という養成の見込みでございますか。
#74
○説明員(前畑安宏君) 来年度のことにつきましては、しばらく検討さしていただきたいと、このように思っております。
#75
○渡部通子君 おかしいですね。ちゃんとお出しいただいた資料の中に、二十人、二十人で出ているんですよ。
 いまのお話のとおり、五十四年度に金沢大学にリハビリテーション関係学科が設置されて今日に至るまで、五大学ですね、それで養成が行われてきた。毎年大体二十人程度が一大学で御卒業になっているというような資料をいただいておりますけれども、入学志願者の状況、これが定員に対してどのくらいございますか。
#76
○説明員(前畑安宏君) 入学志願の状況でございますが、入学定員がそれぞれ二十人と非常に少ないものでございますので、かなり大学によって大幅な異同がございますことは御理解いただきたいと思いますが、五十七年度について申し上げますと、理学療法学科は、北海道が十一倍という志願倍率になっております。弘前の場合が五・六倍、金沢の場合が九倍、それから京都の場合が四倍、神戸の場合が十二倍ということでございます。
 それから作業療法学科でございますが、北海道が六・四倍、弘前が三倍、金沢が七・二倍、京都三・六倍、神戸が五・五倍と、このような状況になっております。
#77
○渡部通子君 なり手はいるんですね。私はなり手がないという心配もしたんですけれども、それはもう吹っ飛びまして、非常に志願者が多い。これからこういう資格を持ちたいという人はふえてくる傾向にあるんではないかと思うんですね。したがって、大いに今後大学で、枠を広げ、教員を確保し、条件を改善していただいて、何とかこういう一人でも多くの資格者をつくっていくという方向を目指していただきたいと思うんですけれども、なかなか志願者は多いけれども養成がふやせないというネックあるいはその改善策についても意見をお聞かせください。
#78
○説明員(前畑安宏君) 先ほど来医務局長からも答弁があってございますように、何分歴史がきわめて浅いということもございまして、基本的には教員の確保にかなりむずかしい問題があるわけでございます。それと、私立なりあるいは公立の場合には、実習病院についてもいろいろとむずかしい問題があるように伺っております。
 教員の問題につきましては、基本的に申し上げますと、こういった理学療法なりあるいは作業療法のその養成施設において高度な教育を行って教員を養成するという方向と、あるいは大学の医学部におきましてリハビリテーション医学といったようなものをもう少し充実しながら医師の資格を有する専門家を養成していくと、この二つの方法があろうかというふうに考えておるわけでございます。
 作業療法士あるいは理学療法士につきましては、ただいま先生御指摘いただきましたように、短期大学というものを設置を進めてまいっておりますので、それから次第に優秀な人材が育ってこようというふうに考えております。また医学の分野におきましても、新しく設置されました大学の一部では、リハビリテーション医学の教育研究体制を強化いたしまして、専門の講座を設けるというような学校も幾つかございます。また専門の講座を設けてないところにございましても、リハビリテーション医学関係の授業科目を設けたりいたしまして、関係の教育の充実に努めておるところでございます。そういったところを通じまして、今後次第に教員が養成されてこようというふうに考えておる次第でございます。
#79
○渡部通子君 同じ質問を厚生省にも伺っておきたいと思うんですが、養成所等に対する志願者の状況とかあるいはそれの改善策等についてお願いをします。
#80
○政府委員(大谷藤郎君) 厚生省関係の学校につきましても志願者は大変多うございます。たとえば清瀬にございます国立療養所東京病院のリハビリテーション学院では六・六倍、都立の府中リハビリテーション学院では十九・三倍、また犀潟の国立療養所のリハビリテーション学院では十・四倍、大阪の近畿中央病院では十八・二倍というふうに、相当むずかしい受験の状況、倍率の状況になっております。
 厚生省といたしましても、できる限りこういった学校の増設に努めたいというふうに努力いたしておりますが、何分先ほども申し上げましたように、教官の獲得というのが大変むずかしいことでございます。したがいまして、リハビリテーションの分野だけ教員になるという志望者の方につきましては、選考いたしまして、二年間留学させるという制度までとっておりまして、教官の確保に努力しているわけでございまして、今後とも、先ほど先生の御質問のとき私ちょっと一つ申し忘れましたが、私どもといたしましても、先生の御指摘のように、現在の六千、四千の数字でいいかどうかというふうな問題につきましては、これはぜひ検討をして、正しい将来数に向かって、いまこのような実態を踏まえまして、少し考え直してみたいというふうに考えておるわけでございます。そういった実態を踏まえまして、学校の問題につきましても前向きに対処していきたいというふうに考えております。
#81
○渡部通子君 ちょっと発想の転換をして伺っておきたいと思いますけれども、この教育の場所ですね、厚生省か文部省かということでございますが、PT、OTにしろSTにいたしましても、文部省で卒業してきた人の方が、本人の自覚あるいは社会の認識、こういったものも高いと、何とはなく。したがって仕事に対する熱意とか責任感、定着性、こういったものもいいというふうに言われています。これは労働省の職業訓練校等でも同じようなことが指摘されているところでございますけれども、やっぱり短大卒となった方が、言ってみればかっこういいと、待遇等においては変わりはないと思うんですけれども。そういった意味で、いっそのこと、保健婦や看護婦等についても、現在の二本立て養成を文部省に一本化して、厚生省は養成計画の策定とか卒業生の配置と、こうした方がはたから見ると非常にすっきりすると思うんですけれどもね。こういった点についての議論は起こってこないのか、また大臣等はどうお考えになるか、伺いたいと思います。
#82
○国務大臣(森下元晴君) PT、OTの問題につきまして、先ほどからいろいろお話をお聞きしたり御質問がございましたが、いまの御質問、文部省と厚生省両方やっておる、一本にしたらどうですかというお話でございますが、現在のところ、理学療法士それから作業療法士としても、必要な知識とか技能を習得するための履修科目とか必要時間数は、厚生省所管の養成施設でございましても、文部省所管の短期大学でございましても、同様でございます。また、必要とされております理学療法士、作業療法士数の増大に対処するためにも、それぞれの特色を持った施設による養成が行われる必要があり、現在のところ理学療法士、作業療法士の養成を文部省のみが行うことは考えておらない、両立てで特色を生かしてやっていこう、こういうことでございます。
#83
○渡部通子君 それはそれで、現在のところとして了解をいたしておきます。
 この養成の拡充というものは、再三申し上げておりますように、保健事業の成否を決めるかぎとも言うべきものだと私は思いますし、昨年の国際障害者年の国会審議の際にもしばしば指摘されたことでもございますから、文部省もこれを重点事項として、ぜひ来年度予算要求にはがんばってもらいたい。ともかく、なりたい人がたくさんいるわけですし、必要数というのは増すばかりでございますので、ひとつ文部省も、厚生省が主体だからなどと言わないで、大いにがんばっていただきたいと思いますし、厚生大臣も、国務大臣として、文部省のこれに関する予算の要求というものに対しては大変応援をしていただきたい、こう思いますが、これは文部、厚生両方から御答弁をいただきます。
#84
○国務大臣(森下元晴君) 文部省ともよく相談いたしまして、ただいまの御要望に沿うように全力を挙げたいと思います。
#85
○説明員(前畑安宏君) 厚生省の方ともよく御連絡をさしていただきまして、来年度の問題につきましては検討をさしていただきたいと思います。
#86
○渡部通子君 決意の方はそのとおりだと思うんですけれども、来年の計画も、一校で二十名というこの枠もなかなかふえそうにもありませんで、なかなか困難であるということが実態であるということも私よくわかりました。そうなると、厚生省の方でもまたうんと養成をがんばっていただかなければならないと、こういうことになるんでございます。
 先ほど医務局長がちょっとお答えになりましたけれども、いまの養成目標というものは、五十一年の医療関係者審議会の養成目標を何となく受け継いだにすぎない。今回改めて老人保健事業を念頭に置いて策定されたという経緯は考えられなかったわけでございまして、今後のニーズに対応するのが大変困難ではないか、こう思います。いまもちょっとお話がございましたけれども、PT六千人、OT四千人、これでは十分ではないのではないか。六十一年度の保健事業の目標年度までに何らかのもう一回計画の立て直しが必要ではないか。改めて養成施設の増設等の見込みも立てるべきではないか。こう思いますけれども、それはいかがでございますか。
#87
○政府委員(大谷藤郎君) 先ほどからも申し上げておりますように、私どもといたしましても、おくれている理学療法、作業療法を急速に欧米の水準に持っていこうとして、どろ縄式にがんばってきたわけでございまして、その目標も、当初としては非常に達成がむずかしいというふうに考えた数字であったのでございますけれども、幸い厚生省、文部省両方の努力で、その達成が目前に迫ってきたわけでございます。したがいまして、その後の医療状況、あるいは社会情勢の変化、その他の状況等も勘案いたしまして、私どもの方で、医療関係者審議会・理学療法士作業療法士部会という専門家の審議会もございますので、そういった方面とも御連絡をとりまして、この問題について、先ほどから申し上げておりますように、検討をさせていただきたいというふうに考えております。
#88
○渡部通子君 検討していただくそうですが、六十一年度までのマンパワー対策というものはこれは大変大事な問題になって、ある意味では本法案の最も大事と言ってもいいくらいに重点を置かなければならないところだと思う。しかもお金がかかることですから、御決意はあってもなかなか大変だと思いますが、何とかいまの決意に従って年次計画をお立ていただくわけにはいかないか。これを出していただくことが厚生省の熱意を示されることにもなると思いますので、年次計画を策定していただきたいと思います。これについては大臣の御答弁も願います。
#89
○国務大臣(森下元晴君) マンパワーの問題は、今後の老人医療、また老人の健康、また一般の方々の療法等にも非常に必要でございます。したがって、この人材の確保と同時に、経費の増額という問題も出てまいりますけれども、これにつきましては全力を挙げて取り組んでいきたい。
 ただ、こういう財政難のときでございますから、また同時に社会保障、また社会福祉に対する一つの見直しの時期でもございまして、むだな点もあるかもわかりませんし、そういうむだな点はできるだけ省きまして、重点的な方向に、また全般としても御趣旨に沿うようにやっていきたい、このように思うわけであります。
#90
○渡部通子君 STについても伺っておきますが、すでに養成が行われて約十年、STの数も現在約六百人と聞いております。現在養成は所沢のリハビリセンターで三十名養成しているようでございますけれども、いまだに身分法が確立しておりません。このことについてどうお考えですか。
#91
○政府委員(大谷藤郎君) 厚生省では昨年の三月に、日本聴能・言語士協会、日本耳鼻咽喉科学会などの関係四団体の要望を受けまして、厚生省内に学識経験者から成ります検討会を設けまして、言語療法士の制度化について検討を開始したわけでございます。ところがその後、修業年限の問題につきまして関係の団体から非常に強い異論が出てまいりまして、この調整が非常にむずかしいことになりましたので、ただいまのところ事態の推移を見守っている、こういう状況でございます。
#92
○渡部通子君 そう言われて、長過ぎるんですね。
 地方公務員になっている者については、このため専門職として認められませんし、処遇の面でも一般事務職として不利な状況に置かれているわけで、これはもう御承知のとおりでございます。STの身分法の制定は十年来の懸案で、政府の回答はいつも、検討中、それから団体の方で意見が合わないからと、こういうことが繰り返されているわけでございますけれども、昨年国際障害者年、こういったことも過ぎたわけでございますし、関係団体の合意を待っている、ただそういう消極的な姿勢ではなくて、この際、英断をもって来年度にでも身分法を国会提出する、またすべきではないか、こう思いますが、大臣の御答弁をいただきます。
#93
○国務大臣(森下元晴君) 非常に重要な問題でございます。できるだけ調整に努力をいたしたいと思っております。
#94
○渡部通子君 切りのいいところで休憩に入らしていただきますが、いま療法士等について若干の御質問をいたしましたが、繰り返し申し上げるようでございますけれども、今回の法案を本当にいい法案たらしめるために、じみな仕事でございますが、ヘルス事業に対する施設とか、人員の養成・確保とかについて特段の努力をしていただきますことを重ねてお願いをいたしまして、一応私ここで打ち切らせていただきます。
#95
○委員長(粕谷照美君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩をいたします。
   午前十一時五十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二分開会
#96
○委員長(粕谷照美君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、老人保健法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#97
○渡部通子君 私は午後は、医療費の適正化対策について、特に薬を中心に若干のお尋ねをいたします。
 厚生省では、一昨年に七項目にわたる医療費の適正化対策を発表されましたし、また臨調答申等においても同様の趣旨で取り組むべき方針を打ち出しております。本当に医療費の適正化は――何でも抑制すればいいということではありませんけれども、むだを省いていく、矛盾をなくしていく、これほど今日求められているものはないと思うのです。
 そこで、まず昨年六月に薬価基準一八・六%の引き下げが行われたわけでございますが、その後業界筋ではもっぱらもうからなくなったなどという話が聞かれますし、また薬価基準の問題については改正以降むしろ正常化への声が弱まったという話も聞きますし、その一方では新薬がどんどん収載されていく。このままでは国民医療費の三分の一を占めております薬剤費の抑制ということは効をなさないのではないか、もとに戻ってしまうのではないか、こういう危惧を私は抱きますが、厚生省はその心配はございませんか。
#98
○政府委員(大和田潔君) 既存の薬の薬価基準につきましては、先生おっしゃいましたように、昨年六月におきまして大幅な薬価改定を行ったところでございます。
 なお、新薬の収載につきましては、五十六年、昨年は百五十九品目の新薬を収載しておるわけでありますが、その収載方式につきまして、目下新薬の薬価算定に関する懇談会で、専門家の方々にお集まりいただきまして、そこでいろいろ御検討いただいておるところでございまして、先生の御心配のようなことにはならないように私どもも一生懸命やっておるつもりでございます。
#99
○渡部通子君 ここ十年くらいを見てみますと、二、三年間隔で大体薬価基準は引き下げられておりますけれども、これは本来なら年一回、こういうことで、昨年からはそういう方向になってはおりますけれども、薬価基準が引き下げられておりながら、この十年くらい薬剤費は一向に減らないのではないかと思いますけれども、その推移はどうなっておりますか。
#100
○政府委員(大和田潔君) 先般三八%という薬剤費の割合が出たわけでありますが、これは実は昭和五十五年のデータが非常におくれまして、先般の発表になって出たわけでございます。その後におきまして、先ほど申しました薬価基準の改定を行っておりますので、その結果というものがまだ私ども把握できておりませんが、かなり薬価の占める割合というものは少なくなってきたのではないかというふうに考えておりますが、ただ、そのデータを見ておりませんので、ちょっと胸を張って、ここで幾らということが申し上げられないわけでございます。
#101
○渡部通子君 いま私、十年ぐらいの推移はと伺ったんですが、この二月五日に厚生省が発表されました社会医療診療行為別調査報告、五十五年度版によりますと、政府管掌保険の調査では総医療費に対する薬剤比率、いまおっしゃいましたように、三八・二%です。ここ四、五年の経緯を見ますと、私から言ってしまいますけれども、五十一年度では三七・三%、五十二年度では三七・七%、五十三年の二月に薬価の引き下げがありまして、そのときに初めて三四・二%と下がっているわけですが、五十四年には三六%にまた戻り、五十五年にはおっしゃるとおり三八・二%に戻ってきたと、こういう推移のようでございます。
 で、いま局長おっしゃるように、五十六年に薬価の切り下げをやったから大分下がるだろうと、こうおっしゃってはおりますけれども、五十三年二月に薬価切り下げで下がった比率が、改定のない五十四年、五十五年にだんだん盛り返してもとの水準に戻ってしまっている、これが実態ではないかと思うんです。ですから、五十六年六月に大幅な切り下げがあったんですから、五十六年度は一たんは大きく下がるけれども、しかし薬価基準の改定を行わなければ、また比率はだんだん高くなるだろうと、過去の推移から見てそう言わざるを得ませんけれども、その心配はございませんか。
#102
○政府委員(大和田潔君) そのような心配があると思います。したがって、私どもといたしましては、継続した努力を払っていかなきゃならぬ。
 ただ、もっと前の、たとえば昭和四十六年、四十七年ごろの、あるいは四十八年ごろの薬剤費の比率は四〇%台、四十六年におきましては四五・八、四十七年が四二・七、四十八年四六・四ということでございます。したがいまして、それから比べますとかなり下がってきておる。下がってきておりますけれども、しかし、いま御指摘ございましたように、五十三年は三四・二まで下がったけれども、またじりじりと上がってきていると、こういったような傾向につきましては、絶えず私どもは注視をしていかなきゃならぬというふうに考えるところでございます。
#103
○渡部通子君 まあ心配があるから注視をしていくということでございますので、それについてまた質問を続けます。
 何でせっかく下げられた薬剤比率がまたじりじりと上がってくるか。この一つの原因として、医薬分業の行われていない日本では、メーカーの意図が医療機関の薬品選定の基準を簡単に変更させ得ると、こういう構造があるからだと私は思います。すなわち、安い薬から高いものへ、使用する薬品の変更並びに大量使用を促進させる要素、こういったものがちゃんと温存されているわけですね。その辺に大きな薬剤費の減らない理由があると思うわけです。
 で、昨年の新薬の収載状況というのは、先ほどちょっとありましたけれども、どういうふうだったわけですか。
#104
○政府委員(大和田潔君) 昭和五十六年におきましては百五十九品目、これを収載いたしております。
#105
○渡部通子君 薬務局の説明では新薬の収載は大体年二回ということのようでございます。薬価改定の方は三年以上も放置しておいて、医療費を引っ張り上げる要素を多分に含んだ新薬の収載だけが年二回がルール化していってしまう。こういうことではいかに薬価基準の引き下げに努力をしても、どんどん上向きに薬剤費というものが上がらざるを得なくなってくるという構造があると思うんです。
 その辺を指摘しますと、どうしても厚生省の顔はメーカーへ向いているのではないか、こう言われてもいたし方がないと思うんですが、いかがですか。
#106
○政府委員(大和田潔君) 新薬の収載というのは、これは国民の立場に立ちましても、非常によく効く薬が薬事審議会を通って許可された、その場合に保険に使われるという時期が非常におくれるというんではやはりぐあいがよくないんではなかろうか、こういうふうに考えます。したがいまして、年二回の収載というのはやはり必要ではないかと思います。
 問題は、その場合の薬価の決め方、適正な決め方をしていかにやならぬということにかかってくるんではないかというふうに考えるわけでございまして、その方向で努力をいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
#107
○渡部通子君 おっしゃるとおりなんですね。新薬収載して悪いと私は言わない。本当に効く薬が国民のために保険に収載されていくということは結構なことですけれども、その薬価の決め方です、問題は。それが高値に高値にと決められていったならば、年二回の新薬の収載はルール化して、そして薬価基準の方は年一回の切り下げ、切り下げというか、適正化がなかなか行われにくい。前回に至っては三年も放置された。こういう状況ではこれは大変なことですよ。だから、いままさにこの価格の決め方が問題だと、局長言われたとおりだと思います。
 それで、年二回収載されている新薬は非常に高く価格が決められている、私はそう認識をいたします。局長はそう思われないかどうか、またその原因等について御意見があったら言ってください。
#108
○政府委員(大和田潔君) 従来、この新薬の価格の決め方につきましては、類似薬効比較方式をとっておりますことは御承知のとおりであろうと思います。これはいわゆる類似薬効比較方式で既収載品目の価格と比較いたしまして、これは割り高にならないように薬価の算定をするということで決めておるわけでございます。
 その決め方につきましても、いろいろ議論があるところでございますので、これも先ほど申し上げましたように懇談会をつくりまして、鋭意この新薬の薬価算定につきましていま決め方を詰めてもらっているところでございますので、さらに適正な決め方ができるというふうに考えておるところでございます。
#109
○渡部通子君 割り高にならないように、そういう決め方をしていると言うんですが、まさに割り高になっているということを私はたびたび委員会でも指摘をしてきたわけです。
 それで、割り高にならないようにしているとおっしゃるから、また具体例を言いますけれども、去年抗生物質について薬価の切り下げが行われました。従来よく使われておりました内服薬のセファレキシン、これが七〇%ダウンしました。注射のセファロチン、これは四三%ダウンをいたしました。大きく落ちたものが多いので、メーカーもこの対抗手段を考えたらしくて、抗生物質の新薬が大量に今度は申請をされた。新薬とは申しましても、全く新しいものではなくって、ちょっと構造式を変えた、こういったものが多いわけです。特に注射用の抗生物質では、セファロチン、これ一グラム薬価が千五百円から大体二千円ちょっとぐらいのもの、あるいはセファゾリン、これ一グラムが二千四百円、こういったものにかわって少し適応範囲が変わっただけで一グラム四千五百円台にもなるものがどっと収載をされたというのが現実でございます。
 それで、薬価差の比率が同じ二〇%とまず仮定をいたしますと、千五百円のものであったならばもうかる幅は三百円でございますが、ところが四千五百円のものならばその三倍の利益、九百円という薬価差が出てくるわけですから、病院経常ではそちらを使うことになるのは当然でございます。この問題点についてはどうお答えになりますか。
#110
○政府委員(大和田潔君) これにつきましては、いわゆる実勢価格というものを把握いたしまして私ども薬価基準の改定を行っておるわけでありまして、実勢というものを私どもはいかに把握していくかというところが大事で、私どもといたしまして努力していかにやならぬ、そういう問題であるというふうに考えるところでございます。
#111
○渡部通子君 いま、セファロチン一グラム千五百円、セファゾリン一グラム二千四百円、こういうものにかわって――これが去年の薬価改定でタウンしたから、もう少しちょっと変わった薬で一グラム四千五百円、こういうものが収載されていくといったような現実ですね。
 これは素人にはなかなかわかりにくいですが、メーカー提出の資料で調査がされるわけでございますからね。そういうことになると、同じ薬価差の比率というものは、分母が大きくなるわけですから、これは大変なものになっていくでしょう。こういうことが行われている限り、薬剤費の抑制とか、矛盾を省くとか、むだを削るとかということはできないんではありませんか。この具体例を聞いているんですよ。
#112
○政府委員(大和田潔君) 主として医療機関で使用いたしますのは、もう当然のことながら、薬効がAとBと違う、Bが効くといった場合に、Bを使用するということに当然なるわけでございます。ただいまのように薬が高い、したがって薬価差が大きいからそちらの方を使うということではない。
 ただ、そういったようなケースがあるといたしますれば、先ほど申しましたように、実勢価格というものを把握いたしまして薬価基準の改定というものが行われるわけでございますので、問題は、適正な薬価というものが決められれば、先生御心配のようなことにはならなくて済むということになるんではなかろうか。したがって、私どもといたしましては、新薬の薬価の決め方もできるだけ適正なものにしていかにゃならぬということで努力をしているというようなことでございます。
#113
○渡部通子君 それじゃ、このセファゾリンとセファロチンの少し薬効を変えたものの一グラム四千五百円というこの収載は、適正な価格であったという御意見ですか。
#114
○政府委員(大和田潔君) 品目といたしまして、いまのセファゾリンはわかりますが、いまおっしゃった品目というのにつきましては私、明確ではございませんが、当時収載されましたもので四千五百円程度のものがあるわけでございますが、それの決め方がどうか、こういうふうに承っていいんではないかと思いますが、これは類似薬効というものから持ってきた、たとえば通常の場合の使用量というものを比較する、あるいは重症の場合の使用量というものを比較いたしまして、それから類似薬効の比較をいたしまして、ただいま申しましたような比較は、薬事審議会資料に基づく臨床比較試験の成績というものを反映するわけでございますけれども、使用量等を比較することによりまして価格を決めている。さらにメリット加算というものをつけるケースがあるわけでございますが、そういったようなものによってつけていくということで、確かに四千五百円程度の新薬が収載された例はございますけれども、それはいま申しましたようなやり方で価格を決めていった。
 ただ、じゃどういう類似薬から決めたということにつきましては、ちょっと私どもの方から申し上げるわけにはなかなかいかないというわけでございますが、そういう類似薬からの算式によりまして決めた、これが類似薬効比較方式でございますが、そういうやり方で決めたということを申し上げたいと思います。
#115
○渡部通子君 それじゃもう一つの具体例は、これは再度の紹介になるかと思うんですけれども、同じような方法がよく行われているという例で挙げます。
 いま非常に多く使用されている抗生物質の注射にセフェム系抗生物質というのがございますが、これらの注射剤の日本での市場は、年間三千億とも四千億とも言われておりまして、今後ますます新しい薬が出てくると、こういうことです。そこで問題になりますのが、武田から出しておりますパンスポリン、それからチバガイギーが出しておりますハロスポア、これが保険に通っているわけでございますけれども、このパンスポリンを収載する場合には、何と比較して四千七百六十五円という価格になすったわけですか。
#116
○政府委員(大和田潔君) 先ほど申しましたように、これは何と比較したというそれがちょっと申し上げられないわけでございますけれども、まさしくこれは比較薬があります。
 このパンスポリンにつきましては、非常に広範囲の各種細菌に効果のある医薬品でございますので、そういった同じような、たとえばブドウ状球菌であるとか、連鎖球菌、肺炎球菌とか、インフルエンザ菌等の非常に幅の広い各種細菌に効果のある医薬品というものを持ってまいりまして、それがいまのパンスポリンに非常に似ておると、こういうことでございます。その医薬品を選定いたしまして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、その医薬品の用法・用量というものを勘案いたしまして、このパンスポリンの値段というものを決めてまいっておるわけでございます。そういう決め方をしておるわけでございます。
 ただ、これにつきましては、当初にも申しましたけれども、さらに適正にする。従来も決して適正でないとは言っておりません。ぴしっとやってきたつもりでございますが、さらに適正化するために、新薬の薬価算定に関する懇談会で議論をしていただいておると、こういう状況でございます。
#117
○渡部通子君 適正にすると言って下がったためしはないんですね。もういつも倍々というふうに上がっていくというのがその適正にするという中身になっているわけなんです。
 いまパンスポリンの比較した薬は申し上げられないと、こういう話でありますが、私たちの調査では、年間七百億円の売り上げでトップと言われておりましたセファメジン(藤沢)は、一グラム当時二千九百六十円、これと比較したと私たちは承知をいたしております。そうしまして、この藤沢のセファメジンと比べて半分の量で効く、効果は同じだと、こういう話でございまして、したがって、藤沢の一グラムが二千九百六十円、大体三千円ですから、その倍の六千円になる、メーカーはこう主張したと、こういう経緯がございます。厚生省としては、さすがにその主張はのみ込めないで、倍とはということで、約八〇%ぐらいに決めたらどうかというのが実情でございました。したがって、四千七百六十五円、五千円弱というようなお値段がついているわけですね。
 ところが、日本抗生物質学術協議会発行の抗生物質抗菌スペクトル表というのがございまして、それを見ますと、セファメジンもパンスポリンも、一日標準投与量はともに一から二グラムと、同じになっているんです。これをどう思いますか。
#118
○政府委員(大和田潔君) 先ほど申しましたように、これは私ども医薬品が許可されます際の中央薬事審議会資料に基づく臨床での比較試験の成績をもとにしておるわけでございますので、それから算定をしているということでございます。ただいま先生のおっしゃいました資料、ちょっと私存じないわけでございますけれども、われわれのやり方というのは、ただいま申しましたような資料をもとにしておるわけでございますので、そういうやり方であるということについて御了解を願いたいと思います。
#119
○渡部通子君 御存じないとおっしゃいますから、じゃ調査をしていただけますか。
#120
○政府委員(大和田潔君) 承知いたしました。
#121
○渡部通子君 私がくどくこうして申し上げますのは、この二千九百六十円の薬効と比較して、半分で効くからといって六千円を要求して、その八〇%をとって厚生省がまず五千円弱に決めた。これでも高いんですよ。ところが、今度は専門家の用法・用量というものを拝見いたしますと、両方とも同じ投与量をしろという。これじゃもうかり方においては、全くウハウハと言いたいような状況ではないかと思うんですね。こういうのをめくら判押すとしたら、本当に厚生省はめくらかと、こう言われてもいたし方ない。
 いま調査をするとおっしゃっていますから、その結果を見ますけれども、こういう事実がまかり通っているとすれば、幾ら薬価基準を引き下げても、新薬収載のたびに倍々ゲームで薬価というものは上がっていくのではないか、こう指摘せざるを得ないんです。厚生大臣どうお思いですか。
#122
○国務大臣(森下元晴君) 非常に詳しいデータの御意見、御質問でございまして、自由経済の中で、しかも公正な自由競争というような公取のいろんなチェックもございまして、実勢価格をつかんだり、またそれに基づきまして薬価を決めることはなかなかむずかしいことは事実でございます。したがって、厚生省の方針といたしましては、いわゆる薬によって医者がもうけるのだという印象を与えるようなことは私はいけないと思っております。過去のデータにおきましてそういうような結果が出ておる。そのために昨年大幅に薬価の基準を下げさしていただきましたし、また今後毎年一回改定後いろいろ調査を行うということでございまして、そういう不合理な点が出ないようにやっていきたいと、それが私の考え方でございます。
#123
○渡部通子君 そこで、さらに重ねて申し上げておきますけれども、このセフェム系の注射剤というものは、次から次へこれからも新薬が出てくるだろうと思います。それらがみんな不当――私に言わせれば不当に高値に決められたパンヌポリンの価格を対象として必ず類似薬効比較という形で決められていくわけでございますから、こういうところによっぽど監視の目を働かしていただきませんと、薬剤費高騰というものは抑えられない。これを重ねて指摘をしておきます。
 そこで、お尋ねしますけれども、現行の類似薬効比較、この方式について、いろいろ批判があると思うのですが、それをお認めになるかどうか、どんなところが難点になっているかお聞かせください。
#124
○政府委員(大和田潔君) これにつきましては、いろいろ問題の指摘というものもあるわけでございますが、しかし基本的にこれ以外のものをとっていくこともなかなかむずかしいというふうな考え方もございます。したがいまして、これにつきましては、繰り返して恐縮でございますけれども、専門家の方々によりまして検討をしていただいておりまして、適正な新薬の算定方式につきまして結論をできるだけ早く出していただきたいと思っておるわけでございます。
#125
○渡部通子君 そこで、類似薬効比較をする場合の問題点でございますが、その比較試験を行う場所ですね、国公立病院や大学病院、このデータが主として使われておりますけれども、こういった病院のデータではメーカーの意思どおりとならざるを得ないと思うんですね。メーカーにとって不利なデータは出てきにくい。ここに一つの難点があるのではないかと私は思います。
 そこで、中立の立場でデータの読める人がいない限り、類似薬効比較をやるたびに薬は高くなっていくだろうと思うんですよ。そういった中立の立場でデータを読み判断する人というものを国で用意する必要があると思いますけれども、その点はいかがなものですか。
#126
○政府委員(大和田潔君) やはり中央薬事審議会の資料ということで、私どもといたしましては、それを信頼いたしたいというふうに考えております。
 いま生おっしゃいましたような仕事ということになりますと、またこれはなかなか定員の問題もございますし、大変なことになるわけでございます。権威ある審議会資料というものを私どもといたしましては基礎にして進めていくというのが、やはり妥当ではないかというふうに考えておるわけでございますし、新薬の薬価算定懇談会につきましても、よりよい適正なものをまさぐっておるわけでございますので、それらを勘案いたしましてよりよいやり方をしていきたいというふうに考えておるわけであります。
#127
○渡部通子君 局長さんのお答えは、一つも前向きな何か改善点というのが出てこなくて残念なんですけれども、いまの答弁をずっと聞いている限り、新薬が収載されるたびに薬は高くなる、毎年毎年薬価基準を下げていっても、とうてい追っかけっこで、医療費に占める薬剤費の三、四〇%というものはずっと続いていくのではないか。私はこれを初めの危惧のとおり申し上げざるを得ません。
 新薬の価格を決める場合のメリット加算というのは、私はこんなのは要らないのではないかと思うんですよ。これはよくわかりません。有効性、安全性ですぐれていれば三%のメリット加算をする、あるいはさらにそれが国産品で開発経費が必要であったろうということでまた三%で、六%のメリット加算ができることを認めております。高い薬の上にまたメリット加算、この考え方は一体どうなんですか。現状として容認できるものなんですか。
#128
○政府委員(大和田潔君) 医薬品の中には、医療上有用性の高い医薬品というもの、あるいはまあ相対的なものでございますけれども、そういったような医薬品であるとか、あるいは開発経費が高い国内品であるといったようなものはあるわけでございまして、それをすべて一律にというのもどうかという気がいたします。三%、三%で六%という場合もありますし、いずれか一方、国内開発品というようなものだけの場合は三%でありまして、いずれか一方の場合もあるわけでございますが、そういった、言うならば、一種のめり張りということになるわけでございますが、そういうものをつけることによりまして、何と申しますか、妥当な新薬の決め方ができるんではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
#129
○渡部通子君 新薬収載の分でメリット加算をしたのはどのくらいあるんですか。
#130
○政府委員(大和田潔君) 昭和五十五年の場合は二七・二%、五十六年の場合は三四・六%、したがいまして、三〇%前後という感じのメリット加算が行われておるわけでございます。
#131
○渡部通子君 ちょっと違った薬をつくってどんどん収載されていく、しかもその資料はメーカー主導型で、それにまた加えてメリット加算もしていく。新しい薬ができるたびにどうしたって薬の値段は上がりますよ、構造がそうなってますもの。
 いまずっと局長さんのお返事を聞いていても、一つとして、じゃいまの質問をとらえた上で改善をしましょうという点は出てこないわけですね。いまやっていらっしゃるのが精いっぱいだ、大変正当にやっていらっしゃる、適正化に努力していると、こういう御見解なんですけれども、このような形で新薬が毎年二回どんどん収載される、一方薬価調査は一年一回行われるかどうかというような状況でこのまま推移して、果たして医療費の適正化とか薬剤費の矛盾を省くなどということが可能かどうか。
 私は新薬の収載一つをとって質問をいたしましたけれども、これじゃ老人保健法案を通しましても、幾ら拠出金を出しても、あるいは支払われる側を検討してみても、医療費の適正化というこの大枠において国民に納得のいくような方途を示さない限り、理解は得られないと私は思います。いま一連の薬の問題について全く氷山の一角の一端を御質問したにすぎませんけれども、大臣にこの点の御見解を重ねて伺いたいと思います。
#132
○国務大臣(森下元晴君) 御指摘のとおりでございまして、私も個人的にはそのように実は思っております。医療費の増高、そしてその中に占める薬価の割合、またその薬価の割合の中で二五%ぐらいを占める抗生物質の割合、そういうものだけ考えましても、この問題をそのまま放置しては医療費の適正化はとうてい期し得られないと、そういうように私自身も実は感じておるわけでございます。
 ただ、先ほども申し上げましたように、制度上の問題等もございますし、九〇%バルクラインというような基準のとり方の問題等もございまして、そういうような結果になっておるわけでございますけれども、これも医療費の適正化の中で、先ほど申し上げましたように、年一回この薬価基準は改定をしていきたい、そしてまたいろんな機会にもお諮りをいたしまして、適正化のために薬価を通じて努力をしていきたいと、このように思っておるわけでございます。
#133
○渡部通子君 ひとつ大臣、個人的にはそう思われるのではなくて、大臣としてひとつ権限を使って御努力をいただきたいと思います。
 私、先般の予算委員会でも抗生物質の使用量、金額、これが非常に高い点を指摘いたしまして、大臣もお認めになりました。そこで、こうした点を改善するためには、どうしてもその実態をつかむことが必要でございまして、したがってその一つとして、抗生物質の生産額を外国と比較をし、一人当たりの生産額をつかむべきではないかということで御提案もいたしました。もしわかっている国があればその部分だけでも教えていただきたいし、わかっていらっしゃらなければ調査をして資料として御提出をされんことをお願いいたします。
#134
○政府委員(持永和見君) 抗生物質の生産金額の問題でございますけれども、先般も予算委員会の席で先生にお答えしたところでございますが、欧米における資料につきましては、ヨーロッパ諸国の場合には、政府機関といった公的機関による生産金額の調査がございませんので、日本と比較し得るデータは入手できないという状況でございますけれども、アメリカにつきましては、商務省の統計局によるデータがございます。
 これをもとに御説明申し上げたいと思いますが、まず日本の場合の抗生物質製剤の生産金額でございますけれども、五十六年七千八百一億円でございます。これは全体でございます。これを国民一人当たりに割りがえしますと六千六百十八円ということになります。いま先生御指摘の諸外国との比較でございますが、諸外国との比較、アメリカについてのデータがあると申し上げましたけれども、アメリカにつきましても、円の換算レートの関係あるいは統計指標の問題、そういった意味で単純に比較することにはいろいろ問題はあるかと思いますけれども、ちなみにこの商務省の出しております数字をそのまま申し上げますと、全体としてアメリカにおける抗生物質製剤は、医薬品全体の八・四%を占めております。日本の場合には昭和五十六年で見てみますと、二一・二%でございます。国民一人当たりに直しますと、これは統計が古くて五十三年ということになりますけれども、五十三年で申し上げますと、日本の場合には国民一人当たり五千五百二十六円、アメリカの場合には八百六十四円ということで六倍強、アメリカに比べまして日本の抗生物質の生産量は六倍強、こういうような実態でございます。
#135
○渡部通子君 ですから、明々白々なんですね、日本が高過ぎる、使い過ぎるということが。それが何も国民が望み、患者が望んで使われているわけではなくて、まさに医師の采配一つで使われている。患者にはわからないわけですからね、薬の中身というものは。したがって、高い薬、高い抗生物質がどんどん使われるし、新しい薬がつくられては高く収載される。医療機関としても、局方などという安い薬に頼ってたんでは、経営ができませんで、高い抗生物質をどんどん使った方がもうかる。この構造自体にメスを入れない限り、これはどうしようもないんです。
 私、大臣から先ほど御答弁いただきましたから重ねて御答弁をいただきませんけれども、もう繰り返し繰り返し申し上げているところで、こんな明白なわかりやすい議論はないわけでございまして、何とかこの辺にもうそろそろ医療費適正化問題として薬剤費の構造にメスを入れていただきたいと、重ねてお願いをする次第です。またチャンスを見てやりますから。
 続いて、差額ベッド問題に対してもお聞きをしておきたいと思います。かねてより医療保険制度の重大な欠陥として問題点が指摘されております保険外負担、この差額ベッドは、厚生省や自治体が大変御苦労していただきまして、大変改善していることは私、了解をしております。しかし、なお私大病院等においては五〇・六%が差額ベッド、しかも三人室以上の何と三八・三彩までも差額徴収ベッドという現状になっています。最低限三人室以上の大部屋で差額を徴収することは、国民の医療に必要な費用は保険が負担するという国民皆保険制度を根幹から覆すことになる、こう危惧をいたしますが、こうした現状をどう認識され、また改善策をお持ちであるか、まず伺います。
#136
○政府委員(大和田潔君) 差額ベッドはなくしていかなきゃならない、三人室以上の差額ベッドは特になくしていかなきゃならない、こういうことで、私どもは差額ベッド、いわゆる保険外負担の解消の問題につきましては、常にこれを昭和四十九年の保険局長通知を初めといたしまして、強力に行政指導をやってまいったわけでございます。
 毎年いま先生おっしゃっていただきましたように差額ベッドにつきましては減っておるというデータは出ております。これは昨年の七月一日現在の調査によりますると、前年に比較いたしまして、三人室以上の差額ベッドが完全に解消した都道府県の数は、前年が三十一、それが三十四というふうに増加をいたしました。それから三人室以上の差額ベッドは約一万減少、九千八百減少した。三人室以上の病床に占める差額ベッドの割合も、三・四%から二・三%というふうに減少をしてきておるわけでございます。
 さらに、そういった傾向に拍車をかける、さらに推進するということから、昨年六月の診療報酬改定におきまして重症者加算制度、御承知のようにこれを創設いたしまして、診療報酬の上からも保険外負担の解消のための具体的措置を講ずるということにいたしたわけでございます。
 そういったようなことによりまして、さらに医療機関に対する指導の徹底というものをこれからも図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#137
○渡部通子君 いまもお話がありました重症者特別加算制度、これによる増収分に見合うものとして、大部屋三千三百六床、三二・七%の差額ベッドを一年以内に解消することで合意をなさったと、こういうことでございますが、見通しはいかがでございますか。
#138
○政府委員(大和田潔君) 私、一般論として申し上げたわけでございますが、ただいまおっしゃいましたのは、例の私大の附属病院でございます。これが先ほども言われましたように、比率からいたしますと、確かに圧倒的に三人室以上の差額ベッドの保有率は多い。これは大学病院の病床数を見ますと、二万六千幾らというのが三人室以上の総ベッドでありますが、そのうち一万程度が差額ベッドであったわけでございますが、三八・三%を占める。これを解消いたしますために、これは私立医科大学協会あるいは文部省とも鋭意その解消について折衝いたしてきたところでございます。
 そこで、各私立大学病院から、三年を目途に三人室以上の差額ベッドを解消する、こういう計画が出てまいりました。当面、今後一年以内に三四%に当たる三千四百四十床を解消いたしますという改善計画書の提出が出てまいったところでございます。一年間に三四%、三千四百四十床の差額ベッドを解消する、こういう計画でございます。これによりますと、現在三人室以上の差額ベッドのある病院が、これは私立医科大学病院が三十六病院ありますが、ただいまの計画によりますと、一年以内に六病院は完全に三人室以上の差額ベッドがなくなる、こういう計画でございます。
 この計画の実行という問題でございますが、私ども鋭意これにつきましては、さらに私立医科大学協会とも密接な連絡をとりながら進めてまいりたい、これが着実に解消されるように最大限の努力を払ってまいりたい、このように考えておるところであります。
#139
○渡部通子君 経営難を理由に抵抗していらした私大側とともかくこうした合意がかなったこと自体は、保険外負担解消の第一歩としては評価する声もございますけれども、私は、中医協が昨年の診療報酬引き上げを認める答申を出す際に付した条件からするならば、あくまでも原則としては一年以内に解消されるべきものだと、こう思いますけれども、それが三分の一程度にとどまったという現状、それはどう認識していらっしゃいますか。
#140
○政府委員(大和田潔君) 中医協におきます答申の趣旨というのは、原則は一年以内だと。しかし、特殊な事情、たとえば構造設備等が厚いというようなことでございますね、非常にりっぱな構造設備等があるというような特殊事情がある場合は三年ということになっております。これは私立大学の附属病院につきましては、すべてそういう特殊事情というものがあるわけでございまして、この特殊事情というものを容認いたしまして三年を目途、そういう計画書につきまして私どもは合意をした。あとは何とかそれを実行させるということにあるというふうに考えておるわけであります。
#141
○渡部通子君 そうすると、遅くも五十九年度中には大部屋の全差額病床がなくなる、こういう合意をなすっていらっしゃるわけでございますが、本当にそうなるのかどうか、特に私大側の協力が今後も得られるとお考えになっているのかどうか、あわせて伺います。
#142
○政府委員(大和田潔君) 最大限の努力をしていく、こういうことでございます。そういうことで私立医大の方からも御協力を得まして、何とか実現をするように努力をしていきたいというふうに考えております。
#143
○渡部通子君 その時点においてもなお大部屋の差額の解消がなされない病院があるならば、三年ごとに行われます保険医療機関の指定更新、これを保留するぐらいの強い覚悟が行政として当然必要だと思いますけれども、いかがですか。
#144
○政府委員(大和田潔君) なかなか現実問題としてはそこまでいくのは非常にむずかしいと思いますが、私どもといたしましては、非常に強い覚悟でそれが推進するように要請をしてまいりたいというふうに考えております。
#145
○渡部通子君 問題点がこれだけ指摘されておりまして、行政側の努力にもかかわらず、なおも私立医大病院において差額ベッドがなくならない、こういう背景は、言うまでもなく、それが病院経営の重要な柱になっているからだと思うわけですね。都心の某私大病院では、差額収入が年間で約二十五億円にも上っているとのこと、これは朝日新聞に出ていたわけでございます。そういう事実もあるくらいでございまして、保険の室料では病室の原価を賄うことができないというのが本当の主張ではないかと思うんです。さきの診療報酬の改定でも、室料は千円から千五百円引き上げられましたけれども、大変中途半端ではなかったか。厚生省の考えでは、引き上げ幅は五十円であっても、診療報酬全体では医療機関の健全な運営を脅かすものではないとのことでございますけれども、私は三年四カ月ぶりの改定がわずか五%という引き上げでは、建設原価や光熱費、こういう高騰には遠く及ばない、差額ベッドを生む要因になっていると考えるわけでございますけれども、認識を伺います。
#146
○政府委員(大和田潔君) 大変な実は財政再建をしなきゃならぬという時期に、昨年は医療費改定を行ったわけでございます。したがいまして、各般にわたってごしんぼうをいただいておるところであろうかと思うわけでございますが、室料につきましては、これは毎年診療報酬改定のたびに引き上げを行ってきたところでございますし、特に昨年の診療報酬改定につきましては、室料の引き上げと同時に重症者室料特別加算、先ほども申し上げました個室の場合は一日二百点、二人部屋の場合は百点、これを新設いたしまして、重点的にその改善を図ったところでございまして、総体的に見まして、決して私、室料が安過ぎるというふうには考えていないわけでございます。今後とも、室料を含めました入院料につきましては、中医協の審議も踏まえながら、その適正な評価に努めてまいりたいというふうに考えるところでございます。
#147
○渡部通子君 室料が安いとは思わないなどとおっしゃっていいのかどうか知りませんけれども、いずれにしても、差額ベッドを生まざるを得ないという背景があるわけでございまして、そこの改善にこれからも大いに努力をしていただきたいということをお願いしておきます。幾らお金を積んでもいいところへ入りたいという人もまれにはいるかと思いますけれども、差額ベッドのために泣いている国民がどれほど多いかということを改めてここで強く御認識をお願いをしたいと思います。
 続いて、付添看護料についてもちょっと伺っておきたいと思います。
 先月、東大の附属病院の分院が基準看護病院でありながら付き添いをつけさせたということで承認を取り消された話、これは私も質問をしたところでございます。これなどは患者に負担を転嫁するもので、断じて許せないと思うのですけれども、反面、現在の看護基準自体も、その後の医学の進歩にそぐわないものでございまして、特に重症患者の多い病院では、付き添いを廃止したら患者の命が保証できないようなケースもあり得る。その中で基準の見直しがなされる時期になっていると思うのでございます。
 それで、総医療費に占める薬剤費の割合というものは先ほど三八%、ところが看護料はどのくらいなんですか。
#148
○政府委員(大和田潔君) 看護料全体というのは、いろいろな事項の中に看護料的なものは入っておるわけでございますが、とりあえず普通看護点数と基準看護加算点数というものだけではじいてみますと、看護料は医療費の六・七%というふうな割合になろうかと思います。
#149
○渡部通子君 そのくらいだろうと思います。これじゃ薬づけですね、やっぱり。看護料が六・七%程度、薬剤費の割合は三八%、これは非常なアンバランスだと思いますね。日本の医療の実情というものを如実に数字が示しているのではないかと私は思います。そもそも看護料が余りにも安過ぎるということもあわせて指摘せざるを得圧せん。
 そこで、日本看護協会などでは特三類の新設を要望しているくらいでもありますし、私も看護基準そのものも実情に合わせるように再検討すべきであると考えますけれども、そうした考えがおありかどうか伺います。
#150
○政府委員(大和田潔君) 現在の基準看護の分類、これは決して現在の医療の実態を踏まえたものじゃないとは言えないというふうに考えておるわけでございまして、また個々の患者の症状に応じて配慮するための看護体制というものを必ずしも満たしていないというわけではないというふうに考えておるわけでございます。さらに昨年六月の重症者看護特別加算というものも新設いたしまして、病棟におきます患者の病状に対応した措置をとったところでございます。
 したがいまして、これはいまおっしゃいました日本看護協会等の関係団体からの要望というものも承知しておるわけでございますが、これは今後の重症者看護特別加算の推移等も見守りながら、今後とも全体として医療の実態に即した看護基準を定めてまいりたいというふうに考えておるところであります。
#151
○渡部通子君 すべて財政的なものが絡みますから、はかばかしいお答えはいただけませんでしたけれども、保険外負担というものを鋭意解消していただかなければ、日本の医療はどうしようもないわけでございまして、きょうは薬の問題とか若干のことで医療費適正化ということをただしたわけでございます。どうかいま新しく医療問題聖踏み出そうという国の姿勢が問われているときでございますので、何とかこの医療費の適正化ということに対して厚生省がこれから鋭意努力をしていただきたいということを重ねて申し上げ、大臣の御決意を承ります。
#152
○国務大臣(森下元晴君) やはり一つの見直しの時期にこの医療費の問題もございまして、本当の医療行政はいかにあるべきか、そういう段階になっておるように思います。いい面は残しまして、むだな点であるとかへまた矛盾した点は勇気を持ってここで訂正していこうというその一環として、老人保健法を提出さしていただいたわけでございまして、その精神からもとらないように、いろいろ御指摘ございましたような薬、薬剤費の問題、また看護の問題、そういう問題を通じまして医療効果が上がるように、社会保障制度の効果が上がるように全力を挙げたいということを申し上げます。
#153
○沓脱タケ子君 それでは、前回の質問で私は、老人、医療に一部負担の導入をするということに反対をする理由を述べまして、いろいろと御見解をただしてまいりました。厚生省のおっしゃる理由というのは、一部お金をいただくことによってお年寄りに自分の健康に自覚を高めていただくんだ、あるいは医者にかかり過ぎると言われているので、そういうことを是正していきたいんだというふうなことが一貫して述べられているわけでございますが、前回私、御指摘申し上げましたように、政府統計でも、七十歳以上の方々が何らかの形で自分の健康に留意をしている、気をつけているというのが八〇%に及んでいる。それからお年寄りが医者にかかり過ぎると言われるけれども、そうではなくて、これは厚生省の国民健康調査の結果から見ましても、本人は病気でないとおっしゃる方々をちゃんと診察してみると、四〇%は病気持ちであるというふうな実態が出ているところからいたしまして、大体お年寄りが自分で自分の健康への自覚を高めろとか、あるいは医者にかかり過ぎるとかというのは、実態に反しているということであり、お年寄りをばかにした考え方ではないかという点を指摘申し上げたところでございます。
 私はその際に、制度の大改悪をやるんだから、一部負担金を取るということに大きく制度を変えるに際して、これは国民の皆さんが納得のいただけるような根拠を示していただきたいということを強く御要請を申し上げたわけでございます。そういう点が明らかにならない限り、うまくおっしゃっておっても、いろいろとおっしゃっておられても、一部負担を取るということは明らかにお年寄りが医者にかかりにくくなる、つまり受診抑制になるということを、四十二年でございましたか、健康保険特例法の例を挙げて、働き盛りの人であっても、一日十五円の薬剤費の一部負担というときには、健康保険の本人の受診率というのはがたんと下がったという前例を引いて明らかにいたしました。
 そういう点で、はっきりしていないというふうに思うんですが、特に私は冒頭にお伺いをしておきたいと思いますことは、制度の大改悪をするんだから国民の納得のいく論拠を示していただきたいということで質問を申し上げたときに、吉原審議官がこういうふうにおっしゃっているんですよね。客観的なデータを示せと私が言うたもんだから、客観的なデータをお示しにならずに、社会保険審議会と社会保障制度審議会の答申では一部負担導入を認めているというふうなことだとか、厚生省の調査では七十数%の方々が一部負担を認めているというお答えをされました、二十日の日に。
 そこでお聞きをしたいんですけれども、社会保険審議会の答申は、患者の一部負担についてはこういうふうに言われているんですね。「やむを得ないものとする意見の外、導入そのものに反対という意見もあった」ということで、これを一部負担の導入を認めているというふうに言われるというのは、このデータをもとにしておっしゃったというのであれば、言い過ぎではないかというふうに思うわけです。
 それから厚生省の調査というのは、この五十五年の九月に厚生省の大臣官房企画室が行われた高齢化問題調査だといたしますならば、これによりますと、こういうふうに数字が出ているんですね。「税金や保険料があまり高くならないようにし、余裕のある家庭の老人には医療費を一部負担」してもらうべきだという御意見が四八・四多。それからもう一つは、お金に「余裕のある家庭の老人には一部負担をしてもらい、その財源を老人福祉に回すのであれば」医療費の一部負担には賛成するというのが三一・三%。これを合わせますと確かに七九・七%なんですね。
 二十日の日には、これを用いて一部負担に賛成をしているというふうにおっしゃったわけですけれども、お金のある人は負担をしてもらってもいいのではないかというのが両方とも七九%であって、これは吉原審議官、きわめて意図的な御答弁だと思うんですけれども、意図的というか、不正確きわまりないと思うんですね。だから、そういう点では、前回の答弁についてはお取り消しを願いたいです。具体的なデータを示せと言うたのに対してあなたそうおっしゃったんだからね。そんなのは国民をばかにしたことになりますよ。はっきりしてください。
#154
○政府委員(吉原健二君) 前回私が申し上げましたのは、いま御指摘のあったとおりなんでございますけれども、まず社会保険審議会の答申の件でございますが、確かに答申それ自体は、一部負担につきましては、「現行制度における老人の受療の状況、新制度における費用負担のあり方等からみて、やむを得ないものとする意見の外、導入そのものに反対という意見もあった。」ということになっておりますが、社会保険審議会での審議の状況、経緯というものから、ここに書いてある趣旨というものは、全体的には社会保険審議会としてはやむを得ないというのが大多数の意見でございまして、ごく一部の少数意見として、「導入そのものに反対という意見もあった。」ということであったわけでございます。したがいまして、この審議会の多数意見、全体としての意見は、あくまでもやむを得ないというのがこの審議会の意見であったというふうに私は理解をしているわけでございます。
 それから社会保障制度審議会におきましては、これは全員一致で、現在の老人の無料化制度については基本的に見直す必要がある、そして自助努力の必要性を配慮していくべきであるということが述べられているわけでございます。これも現在の無料化制度については基本的に見直すべきであるという御趣旨と理解をしているわけでございます。
 それから厚生省が五十五年九月に行いました高齢化問題の調査、いわゆるグリーンペーパーの調査結果でございますけれども、確かに調査そのものは、おっしゃいますように、お金の余裕のある家庭の御老人には負担をしてもらうべきであるというふうなことになっておりますけれども、この場合には、その具体的な負担の仕方、金額、そういうものをここでははっきり明示をして質問をしているわけでございませんで、老人医療の無料化というものが必要かどうか、あるいは一部負担をしてもらうべきかどうか、そういう考え方について調査をいたしまして、その結果、いま申し上げましたような結果が出ているわけでございまして、この場合の趣旨というのは、負担能力なり負担の方法というものを考えて一部負担というものを必要と認めるかどうか、そういう趣旨の調査であり質問だというふうに思っているわけでございます。
#155
○沓脱タケ子君 その高齢化問題調査集計表というのは、さっき申し上げたように、厚生省の官房企画室の調査でしょう。そんなこと書いてないですよ。いま私が指摘したとおり書いてある。で、その設問はあなたの方の設問でしょうがな、こんなもの。全くひどいと思うんですよ。だから、国民に対する御意見を聴取している分についてはこういうふうにはっきりと出ているわけですね。だから、お金が足りなくて困るんだということを前提にして、保険料が高くなって困るんだというふうなことになるんなら、お金に余裕のある家庭の老人には医療費の一部を負担してもらうべきだという意見に賛成の方が四八・四%ですね。これはおたくの調査の資料ですよ。もう一つの方は、お金に余裕のある家庭の老人に一部負担をしてもらって、その財源を寝たきり老人の介護などの老人の福祉のために回すのであれば、医療費の一部負担には賛成するという方が三一%。いずれにしても、いやだけれども、一部負担をするんなら、お金のある御家庭の老人に負担をしてもらいたいというのが七九%なんですね。
 だから、私が余り客観的なデータを示してくれって言うたものだから、非常に無理をされたと思いますけれども、事実を曲げたりあるいは事実でないような形でのお答えというのを国会でなさるというのは、国民を愚弄するに等しいと思うんですよ。その辺をはっきりしてくださいよ。
 あなた、そうおっしゃっているんですよ。一部負担に賛成の方が七〇%以上だ、七十数%が一部負担を認めているんだというふうなお答えをしておるんですがね、それは前提が違うわけですから、そういう点は、一番そこが大事な点で論議をしておるときに、正確なお答えをいただくという点でその点は正確にしていただきたい。いかがですか。
#156
○政府委員(吉原健二君) 私、必ずしもこの調査の趣旨を曲げて引用さしていただいたとは思っておりません。現行の無料化制度というものを今後とも続けていくべきかどうか、あるいは負担能力なり所得水準、所得能力を考えて一部負担ということはあってもいいのかどうか、そういう点についての私は調査だと思います。確かに負担の金額なり方法によって、また賛否というのは違った形で出てくる場合はもちろんあろうかと思います。
 また新しい調査のことを申し上げますと、あるいはおしかりを受けるかもしれませんが、御参考までに申し上げますと、ことしの三月に、これは読売新聞でございますけれども、全国の世論調査の一環といたしまして、具体的にこのいま御審議をいただいておりますこの法案の一部負担についての調査をしておられます。その結果を見ますと、外来一月四百円、入院二カ月に限り一日三百日というような一部負担についてどういうふうに考えるかという具体的な調査を読売新聞がされておられますが、その結果を御参考までに申し上げますと、「病院のサロン化など老人医療の実態からみて、一部負担は当然だ」というのが三一・六%でございますし、「老人に多少負担がかかっても、財源の問題からみてやむを得ない」というのが三四・一%、合わせて六五・七%ということになっております。「保険料などを上げても、老人医療の無料化は続けるべきだ」というのが二八・二%。こういう結果が出ておりまして、具体的にこの法案で御審議をいただいております一部負担についても、半数以上の方がやむを得ない、あるいは当然だというような結果になっております。
#157
○沓脱タケ子君 さっきの分については正確にしてもらいたいということを申し上げた。
 いま読売のデータをお挙げになりましたけれども、これはお年寄りを中心にしてのアンケートと違うでしょう。国民全体諸階層ですから、これはなかなか実情というのはわからないし、その設問の内容だって、保険料が高くなっても無料でおくべきかなどと言われたら、これはどんどん保険料が上がるのはかなわない、それなら少々のお金の負担をしてもらってもしようがないというふうに若い方々がお考えになるのは当然なので、私はそこの論議をしようと思っていないんです。
 いずれにいたしましても、前回にも私申し上げたように、本当に一部負担をやるということがいかにお年寄りを病院に行かせないようにしてしまうかということについては、これは働き盛りの方が、あの四十二年の特例法のときを見てみなさいな、一日一剤十五円という一部負担金のときでも、どかんと受診率が下がった。お金がかかるんだったら売薬で済ますか、ちょっとがまんして寝とこうかということになっているわけですよ。そういうことになっておるんで、働き盛りの人さえもそうなんだから、お年寄りにはそういうことにしてはならないという点を前回るる申し上げてきたわけでございます。厚生省が言っておられる一部負担導入の論拠というのは、これは私ども納得のできる御答弁をいただいていると思っていません。
 そこで関連して、非常に心配をしますのでお聞きをしておきたいのは、四月の二十六日に参考人に来ていただきました日経連の松崎専務理事は、かぜや腹痛などの軽い病気は自己負担をしてもらっても、入院などは保険で賄うのがよいと思うというふうな御意見を述べられました。また、こういう意見については第二臨調の第一部会の報告でも最終報告案がまとめられていると言われております。それによりましても、同様のことが報告案の中に入っているように拝見しておりますけれども、こういう問題に対して厚生大臣の御見解いかがですか。
 老人医療にも一部負担をつける。これは一般国民の話ですが、一般の国民にかぜ引きや腹痛のような軽い病気は自分で負担をしてもらうというふうなことが言われている。臨調の報告にもそういうことが出ている。この関係というのはきわめて重大だと思いますので、厚生大臣の御見解を最初にお伺いをしておきたい。
#158
○国務大臣(森下元晴君) 前にも私どなたかの同じような質問に答えたことがございます。軽い重いは、これは医者の判断でございまして、かぜぐらいだと思っても肺炎だったかもわからない。まあそういうことで、医者に行きにくいということになりますと、かえって重い病気であって医療費も高くつくということで、一概にはそうでない、また医療というものは独特なものである、こういう見解を持っております。
 そういうことで、軽易な疾病については受益者負担を求め、また一方高額な医療については十分保障するという議論があることは承知しております。先ほどのお話のような御意見の出たことも知っております。このような考え方は、今後の医療保険制度のあり方に関し確かに一つの御意見であると考えておりますが、保険給付と患者負担はいかにあるべきか、これは制度の根幹にかかわる重要な問題でございますので、慎重に検討しなければいけませんし、ただ簡単に軽いからどうだという判断を私どもがなかなかしにくい問題でございますので、今後慎重に検討してまいりたいと、このように思っております。
#159
○沓脱タケ子君 それは確かに大臣おっしゃるように、病気が軽いとか重いとかというのは、患者本人が判断できるものではないと思いますよね。特に成人病の方々なんというのは、どういうことかというと、頭が痛いとか頭が重い、肩がこる、体がしんどいというような、そういう訴えでやってこられて、それが高血圧症の患者であったり心筋梗塞の患者であったりする場合がしばしば発見をされているわけですね。成人病などであれば特にそういった点がはっきりしないわけです、軽いか重いか。本人はしんどいと言うだけなんです。診察し検査して初めて、これは大変だ、心筋梗塞ではないのかということになるわけですよ。あるいは頭が痛い、肩がこると言って来られて、初めて高血圧症だということがわかるというふうなものなんですね。
 ところが、確かに大臣、この委員会で御答弁になっておられるんですが、その軽い重いというのはなかなか判断しにくいと。これは四月の六日の御答弁ですが、こう言われているんですね。「自己負担の割合をどこまで持っていくのが健康に対する認識の度合いを個人個人が感ずるかという問題に通ずることでございまして、軽いだろうからということは、卵酒だけで済ますというわけにはもういかないような情勢になっているように思うわけでございます」。覚えていらっしゃると思いますが、そういうお言葉になっているんですね。
 私は、自己負担と健康に対する自覚が相関連するという考え方というのは、老人保健法で患者の一部負担導入の考えと同じだと思うんですよね。
 こういう点で、大臣、私は老人保健法に一部負担の導入をするというふうなことを政府のお立場として固く踏まえてやろうとしておられるということについては、ここが医療保険制度全体にそういう一部負担の制度を持ち込んでいく突破口にされていくんではないかという点では、これは医療保険制度全体の改悪につながるんではないかという心配というのは国民の中に出てきているのが当然だと思うんですけれどもね、その点について大臣どうですか。
#160
○国務大臣(森下元晴君) これは基本的に、老人なるがゆえにすべて負担が要らない、ただでいいんだという考え方では私はいけないと思います。身体障害者の方々でも、ある面においては一部負担等の負担をしておる場合もございますし、現に病気しない御老人も、保険金をお払いしながら病気にかからないという方々の御意見を聞きましても、私は健康である、非常にありがたい、保険料を少々払っても病気しない方がいいんだというようなことも言われておりまして、一概にすべて負担が要らないのが福祉的な考え方であると、私はそうは思っておりません。
 だから、この一部負担という制度をつくって、健康に対するありがたみというか、そういうことがすべての目的でございませんけれども、お互いにこの保健制度に対する御協力、無理のない程度で協力をするんだという気持ちをこの制度で出していこうじゃないかと、むしろお願いしたいという気持ちでやっておるわけでございます。
#161
○沓脱タケ子君 どうも私の質問にお答えをいただいてないんですが、そういう国民の心配をするようなことをやってはならぬと思うんです。
 私は、医療費が高騰することを幾ら高騰してもよろしいなどと考えていないんです。医療費の高騰というのは適正に抑えていかなければならないのは当然のことでございます。これは前回も私るる申し上げましたけれども、本当に医療費を抑えるということは何かと言ったら、多くの国民が健康であって、病人が少なくて、医療費を少なくするということが厚生行政の本旨じゃないかという点を申し上げましたが、それをやるためにということで、今度は保健事業という項目をおつけになっているんですね。
 保健事業というのは、これは今国会でも岩手県の沢内村の病院長さんにおいでいただいて、いろいろお話を伺いましたけれども、向こうでは受診率は高いけれども医療費は他と比べてうんと低くなっている。それはなぜかと言えば、これは健康診査が十分やられ、病気の早期発見、早期治療がやられるということのために、医療費全体が非常に低くなっている。保険料も一万円以上も値下げをしたということをお述べになられたわけでございますけれども、沢内村の例を考えるまでもなく、これは理の当然であろうと思うわけですね。それをどうしてやっていくかという上で保健事業というのはきわめて大事だと私どもも考えております。
 それをやっていく上で私、考えなきゃいけないなと思いますのは、多分大臣御存じないかと思いますけれども、経済企画庁がずいぶんユニークな調査をしておられるんですよ。財団法人余暇開発センターに委託をした「自由時間活用による健康への効果に関する調査研究」という報告をまとめておられるんです。これは五十三年度です。
 これを見ますと、週休二日で自由時間に恵まれている人たちの方が、運動やスポーツを実践しておって、加齢による体力低下の鈍化の傾向が見られると。健康保険組合の例から見ても、自由時間を活用して体力づくりを行うことによって、入院に対しては約一四%、入院外約一八%の医療費軽減効果があり、これは昭和五十三年度の国民医療費推定約十兆円に対して一兆六千億程度の医療費の軽減ができるという大胆な推計がやられているんですね。つまり国民の生活環境というもの、それから労働の環境というふうなもの、休息の状況というふうなものがいかに大きな影響を国民の健康に及ぼすかという点の一つの大胆な試算だと思うんですね。
 世界保健機構では、これは憲章で健康の定義というのが出ておりますね。御承知だと思いますけれども、WHOは、「健康とは」という定義で、「健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」というふうな定義を述べております。
 こういう定義を実現していくためにも、予防と早期発見の体制を確立して、十分にこれを保障する医療の体制がなければならない。これも明らかでございますし、これが確立をするということが国民の健康を守り、国民の幸福、ひいては国の発展に大きく寄与できるという政治政策の重要な根幹の一つでなければならないんではないかと思うわけです。
 このWHOの健康の定義の方向を実現することについては、この方向での努力をすることについてはだれも異論はないであろうと思います。いまこの定義の実現を追求するということが求められているんではなかろうかと思うんですが、これは理念の問題といたしまして、大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
#162
○国務大臣(森下元晴君) 健康に対する定義、WHOで出されております。私もそのとおりだと思います。
 これはよく色紙なんかあちこちで見ると、「健体康心」という言葉が書かれておりまして、いろいろ説明を受けると、健やかな体と安らかな心を持つことが大事ですよと。まさにWHOでおっしゃっておることと同じだと思います。
 そういうことで、この経済企画庁で出された余暇利用という問題が健康に非常につながっておる、いわゆる心のゆとり、それからみずから体力また体質に合ったような適当な運動、こういうことであると思います。
 ただ、余暇に一日じゅう寝ていることによって健康が保てるという意味ではないように思いまして、沓脱委員のおっしゃる理念と、この点は私、同感でございます。
 以上です。
#163
○沓脱タケ子君 そこで、論議をしていると時間がありませんので、次へいきますけれども、保健事業に関して全国民をどう網にかけていくかという原則を明らかにしていく必要があるんじゃないかと思うんですね。
 私は、病気の予防とか早期発見、早期治療というふうなことを徹底していくためには、一つは子供のころの学校、保育所、幼稚園を含めて学園ですよ。その次が職場でしょう。そうして地域ということで、三つの点でここを徹底していけば、これは国民の皆さん方の健康状態を捕捉していくということはできると思うわけでございます。
 これは御異論はないと思いますが、そこで一つずつ皆お聞きをしたいんだけれども、そうもいきませんので、一つは、初めに労働者の対策についてお聞きをしたいと思うんですね。これは労働省にお聞きをしたいんですが、労働者の健康保持は重要な企業及び行政課題だと思いますが、いかがですか。
#164
○説明員(林部弘君) おっしゃるとおりでございます。
#165
○沓脱タケ子君 それで、厚生省にお聞きをしたいんですが、四十歳以上の者に施行するという医療以外の保健事業、これは本法以外の法令で実施する場合は本法の対象となっていないということになっていますね。そういうことですね。これは二十二条で除外規定があるんだからそうなっておるでしょう。そうすると、職場で働く労働者、勤労者の場合は何法によってお任せをするんですか。
#166
○政府委員(吉原健二君) この法律の保健事業の対象、これは市町村が実施主体になるわけですが、二十二条で「医療保険各法その他の法令に基づく施設又は事業のうち」、健診等の保健事業をそれらによって受けた場合あるいは受けることができる場合には行わない、つまり市町村の保健事業の対象者としないということでございまして、職域に勤めておられる方の健診等の事業は原則的にそれぞれ職域で受けていただく。
 職域で受ける受け方にいろんなあれがあると思いますけれども、いま御質問のございました労働省所管の労働安全衛生という観点からの健診もございますし、それから医療保険各法、つまり政管健保にいたしましても、あるいは組合健保にいたしましても、それぞれ被保険者に対しまして保健施設活動というものをかなりやっております。したがいまして、原則としてそちらの方でまずやっていただく、健診等を受けていただくということを考えているわけでございます。
#167
○沓脱タケ子君 ですから、老人保健法には職域に働いておられる勤労者の方々は該当しないと。それは労働省の所管である労安法かあるいは健康保険とか組合健保でやってもらいたいと、こういうわけですね。私は、老齢化対策を強めていくというのは、働き盛りの労働者、勤労者の年齢における十分な健康管理というのがきわめて大事だと思うんですね。
 そこで、労働安全衛生法で、事業者は労働者に対して健診を行わなければならない義務がありますけれども、この制度というのは、労働者の健康の確保、ひいては事業の円滑な運営という目的で設けられているんでしょう、この健康診断というのは。いかがですか。
#168
○説明員(林部弘君) 労働安全衛生法で定めております健康診断の問題につきましては、大きく分けますと二つになろうかと思います。一つはいわゆる一般的な健康診断、それからもう一つは、いろいろな有害環境に対応いたしまして行っております特殊健康診断ということになろうかと思います。ですから、私どもはあくまで、職場で働いております労働者の健康というものを守っていく上で、いま申しましたように、一般的な健康管理をするという角度からの健康診断と、それから特殊な作業環境下での有害物の暴露から労働者の健康を守るという見地でやっているもの、そういう二つの系統の健康診断を事業主の責任においてやっていただく。そういうたてまえで健康診断の実施を少しでも推進してもらおうということで努めているわけでございます。
#169
○沓脱タケ子君 それで、労働安全衛生規則四十四条で定期健康診断の調査項目が決められてますよね。これでは、身長、体重、視力、聴力等はもちろんですが、「胸部エックス線検査及びかくたん検査」、それから「血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無の検査」と、こうなっているわけですが、これではちょっと不十分じゃないかと思うんですね、成人病検診にとっては。だんだん時代が変わっているし、社会の状況も変わっているわけで、それに対応していくべきではないかと思うんですね。
 それから高齢化社会を迎えて現に定年年齢は延長されてきている。それから労働者の平均年齢も少しずつ高くなりつつありますね。何よりも労働者の健康保持を図る上では、労働者の健診の充実というのは時代の要請だと思うんですね。
 これは大分古い調査ですけれども、労働省の調査によりますと、労働者の二六プロでしたかね、二六プロの方々は、仕事をしておるけれども慢性病、何か医師から病気持ちだというふうに言われているということで、労働者は疲れているし、病気を持っている人が多い。四分の一以上がそういうことになっているということでございますから、健診の充実というのはきわめて大事だと思うわけです。
 で、四十歳以上の労働者について、胃のレントゲンとか血液検査とか心電図などの成人病検診の項目ですね、こういうものを労安規則に追加するというふうなことを検討される必要はないでしょうか。まあ、これは関係審議会等の御意見を当然聞かなきゃどうにもならないんでしょうけれども、そこまで考えていく必要はないでしょうか、労働省。
#170
○説明員(林部弘君) 先ほど申し上げましたように、有害環境の方の問題は少しずつ、いろんな有害環境に応じた規則と申しますか、法令の整備に伴って健診のあり方について整備をしてきておるわけでございます。それから一般的な健康診断の問題につきましても、基準法の中から労働安全衛生法が独立をいたしました時点で、先ほど先生が御指摘になりましたように、成人病検診の場合にも行われますようなそういう健診の項目が取り込まれたという経緯がございます。
 ただ、私どもは、事業主の責任において労働者の健康を守っていただくという、事業主のみの負担の形で健康診断を行ってきているという事情がございますので、その意味では、いわゆる高齢化社会を迎えるというときに、おっしゃるような御趣旨も十分理解はできるわけでありますけれども、直ちに健診の項目をふやすということになりますと、従来から私どもの行っております一般健診というのは、厚生省サイドが行っておりますようないわゆる成人病対策ということではございませんで、むしろ若い方から年をとった方まで、労働者が現実に職域において適正な配置が行われるとか、十分健康で災害にも遭わないで労働ができるように担保するとかいったそういう見地から行っておる健診でございますので、たとえばがん検診でございますとか、特殊な心臓の検査とかいったようなものまで、直ちに取り込むということにはなかなかならないんではないだろうかというように現在の段階では考えております。
#171
○沓脱タケ子君 問題は、この健診というのは健診の充実と受診率を高めるということが一番大事だと思うんですね。厚生省も今度の保健事業で健診の受診率を五年間に五〇%に引き上げるとおっしゃって目標にしておられるんですが、これは非常に問題、なかなかやれないではないかということで、マンパワーの問題などいろいろと問題になっているでしょう。予算の問題も含めて出てきているわけですが、そういうことで地域でそんなに五〇%どうするんだろうかということが非常に心配の種になっているわけですね。
 で、国民全体のその受診率を上げていくという上で一番捕捉しやすいのは、やっぱり職場で働いている勤労者の方々なんですね。ところが、私はいま労働省に健診項目を新たにふやしていくことを考えないかということを申し上げましたが、一般健診が非常に低いんですね。これは前回もちょっと質問をこの委員会でいたしましたから詳しく申し上げませんけれども、全労働者の約三〇%程度しか健診は受けられていない。七〇%の労働者は労安法に定める定期健診も受けていない。あるいは受けていても報告されていない人もあるかもわからないですけれども、労働省としては捕捉されているのは三〇%なんですね。――いや、それは首かしげているけど、時間がないから余り詳しく言いませんが、後で教えてあげます。この前にきちんと詳しく申し上げた。ですから、こういうことでは話にならないので、健診項目を充実すると同時に、これは受診率を上げていくということを考えなければならない。七〇%近くの働く方々が一般健診から漏れているというふうなままで、片や厚生省は、いや地域で別にやりますと。そこへ流れてくれたらそれでいいのかしれませんよ。大体どこが本当に国民全体の保健事業に責任を持つのかと言いたくなってくるわけなんで、特に私は、一番捕捉のしやすい職場のところは、きちんと捕捉していくということを考えるべきではなかろうかと思ってこの問題を取り上げているわけです。こんなに率が低いというのは、一つは小さい企業では費用の問題もあるわけですね。第一、五十人以下は報告の義務がないでしょう。そういう状況だから低いわけです。
 そこで、さっきお話のありました政府管掌の健康保険の成人病予防検査事業というのがやられていますね。その目的はりっぱなものですよ。ところが、これはどのくらいやられていますか。この目的は、健康保険の被保険者で、疾病の早期発見、健康管理の推進を図る、対象者は被保険者のうち四十歳以上の者で検査を希望する者となっているんですね。いまどのくらいやっておられますか。
#172
○政府委員(入江慧君) 五十五年度の数字で申し上げますと、二十二万六千人ということになっております。
#173
○沓脱タケ子君 それは二十二万六千人と言うたってわかりゃせぬですよね。それは何人の労働者の中で、対象人口何ぼの中の二十二万六千人かということを言うてもらわないと。
#174
○政府委員(入江慧君) 失礼いたしました。
 私どもいまおっしゃいました四十歳以上の被保険者を対象としておりまして、五十五年度で四十歳以上の被保険者は約六百六十万人と推計しております。したがいまして、割合で言いますと三・四%程度ということでございます。
#175
○沓脱タケ子君 これは検査の内容も大変いいんです。費用は一万二千円だけれども、健康保険で八千五百円持って、自己負担三千五百円ですね。これ非常に内容の豊富なりっぱな検査項目になっていると思うんですが、ここを伸ばす必要があるんじゃないかと思うんですね。せっかくこんなりっぱないい制度があって、対象人口の三%やそこらでは、制度とも言えぬほどのことなので、ここを伸ばすべきだと思うんですけれども、これはどうですか。労働省も、これは成人病検査を検討するという立場で、厚生省と協議をしながら、小企業の中にこれを広げていくというふうな指導をしていく必要はないでしょうかね。いかがでしょう。
#176
○説明員(林部弘君) 私どもの労働安全衛生法に定めております健康診断は、事業主に義務づけをしておるものでございますので、たてまえから申しますと、段階的に実施率を上げるという性格のものではございませんし、成人病の対策という角度からやっているものでございませんから、もちろんお互いに利用できる部分を相補い合うということについて否定するつもりはございませんが、歩調をそろえて現実にやれる性格のものであるかどうかということになりますと、いま先生の方から御指摘のありました社会保険庁サイドの保健事業というのは、恐らく段階的に事業を伸ばしていくという性格のもののように思われます。
 先ほど先生から三〇%ということでございましたが、実際はそれほど低くないと思っておりますけれども、私どもの方は、いずれにしても完全実施を目指すということで、監督指導の際にも健診の実施については非常に強く指導いたしております点でございますので、私どもの基本的な方向としては、事業所に対しまして、監督指導の場合、あるいは自主的ないろいろな業界団体の活動に対して、健診の実施率の向上を推進してもらうという方向に基本的な路線があるというふうに申し上げることになるのではないかと思います。
#177
○沓脱タケ子君 それで、私、厚生省に考えていただかなければならないと思うんですね。ヘルスの事業というのは、他方でやられる分は除外しますと簡単におっしゃっているけれども、労働省の方は、そんな成人病対策なんて特別に考えてないというわけでしょう。厚生省どうしますか、実際。いや、そんなら働く人たちも全部ヘルスでやるというんだったら、これまた大変なことになるのでね。一体どこをどういうふうに中心的にやっていくのかという点をはっきりしておいてほしいと思うんですね。
#178
○政府委員(三浦大助君) 私どもといたしましては、一応被用者本人は職場の方でやっていただく、それ以外の方は市町村で対象にしていこうと、こういうことになっておりますけれども、一応職場の方でできなかった方、あるいはその職場の健診水準と申しますか、そういうものが市町村でやる水準、健診内容の水準よりも低かったような場合には、これは私の方でひとつ取り込んでやっていこうではないか。その辺の計画につきましては、また労働省の方とこれからいろいろ相談をしまして、なるべくひとつみんなが受けていただくような方向で持っていきたいというふうに柔軟に考えております。
#179
○沓脱タケ子君 特に私は、健康保険の事業としてやっているいまの健診制度、二十二万六千人やっているのだそうですけれども、成人病検診をもっと拡大をすりゃいいと思うんですよ、職場の方々には、被保険者本人には。その辺はどうなんですか。
#180
○政府委員(入江慧君) 先ほど三・四%と申し上げましたけれども、ちょっと補足説明させていただきますと、私どもは社会保険事務所から事業所を通じまして受診希望者を募りまして、その希望者について健診した結果が二十二万六千人、三・四%という実績でございます。
 それで、いまのような御意見で、この対象者を拡大したらどうかということでございまして、五十七年度の予算では、これを非常に大幅に七〇%対象をふやしまして、三十八万五千人を健診できるための予算を取得しております。これは五十七年度の四十歳以上の被保険者の五・一%ということになりまして、三・四から五・一にふえるということになっております。
#181
○沓脱タケ子君 積極的にそうやってくださっているのは結構なんですが、ヘルスの事業全体をにらんでそういうこともどんどん進めていって、もっと率をアップしていくということが、国民全体の健康を捕捉していく上で、あるいは予防と早期診断をやっていく上できわめて大事だから申し上げているので、あなたのところがサボっていると言うているんじゃないんですよ。五・一に引き上げる、五十七年度予算四十二億円ですね、アップをしているという点で非常に結構だけれども、それにしても六百万以上の労働者の中でわずかに三十八万かでしょう。そこをもっと充実すりゃいいじゃないかという問題もあるわけですよ。
 その辺のところを、一つは、厚生省だけではなしに、労働省との御協議もいただいて、もっと効率的にやれないものだろうかどうだろうかということを申し上げているわけです。その辺についての御見解を、これは厚生省の御見解を伺っておきたいと思います。
#182
○政府委員(吉原健二君) 基本的な考え方は、いま御指摘のあったとおりに私ども考えておりまして、この法律の第五条、総則の中に実はこういう規定を置いているわけでございます。保険者の責務といたしまして、「保険者は、加入者の老後における健康の保持のために必要な施設又は事業を積極的に推進するよう努めるとともに、保健事業が健全かつ円滑に実施されるよう協力しなければならない。」。
 こういう規定を置いておりますのは、一般的な制度として、市町村がこの老人保健法を施行する、事業をやっていくということになりますけれども、保険者は保険者として、従来よりも格段にその加入者、被保険者等のためのいろいろな施設なり事業というものをいままで以上に積極的に推進してもらいたい、両々相まって、国民の老後の健康というものが確保されるようにしていきたい、そういうことをわざわざこの法律の第五条にも実は明記をいたしまして、そういったことを進めていこうということを考えているわけでございます。
#183
○沓脱タケ子君 その点は、その法律に基づいて効果の上がるようにひとつ進めてほしいと思うんです。
 私はヘルスの事業全体をなかなか申し上げる余裕がないんですが、これはマンパワーの問題、特に保健婦さん、OT、PTを含めて、体制が十分とれないということが明らかなために、絵にかいたもちにならないようにしてもらいたいということ、これはもう同僚委員からも詳しくいろいろと御指摘がありました。私も同様の心配を持っています。
 そこで、余り時間がありませんので、このヘルス事業の健診で、受診者の一部負担というのがありますね。一般診査で百円、精密検査ではそれぞれ三分の一の自己負担にするという厚生省のお考えですが、いまは一般診査というのは全額公費でしょう。
 だから、どんな問題が起こってくるかといいますと、たとえば大阪市を調べてみたら、一般診査も精密検査もいま公費負担です、無料ですね。で、もしこの法案が通って十月一日から施行されるということになったらどないなるかと言ったら、九月三十日までの方々は無料で、十月一日の人からは一部負担をもらうという結果になるんですけれども、これは現場では大変困るという意見が出ている。こういう一般診査の負担金の百円というふうなものをやめたらどうですか。本当にややこしいことになって、いままでただやったのを、たった百円ずつ取るというのですよ。特に一般診査の場合なんというのはやめたらどうですか。
#184
○政府委員(三浦大助君) 健康診査の費用徴収の問題でございますが、これはみずからの健康はみずから守るという自己責任の観点から、今回ごく無理のない範囲でいただこうということになったわけでございまして、この切りかえにつきましては、これも都道府県の方で健診計画その他計画的にやっていただくということになっておりますので、その辺はひとつ混乱の起きないように都道府県の方でやっていただこうと思っております。
#185
○沓脱タケ子君 あんたとこは、自分の健康を自分で守るんやと言うて、医者に行くときにも一部負担を出せ、健康診断受けるときにたった百円でも出せと言うんだけれども、この百円は一体だれが集めるんですか。これも大分心配していましたわ。地方自治法では、現金の出納、保管というのは、出納員その他会計職員が行わなきゃならないということになっているんでしょう。保健婦にこれを集めさせるということはできないでしょう。それなら百円ずつもらうために事務職員を一人連れていかんならぬ、あるいは事務職員を配置しなきゃならないということになるんだけれども、これも大変な問題なんだということで、現場ではずいぶんお困りの声が出ております。
 だから、こういう無理なことをやって、国民の健康は金を出すことによって自覚を高めるなどと妙なことをおっしゃってることになっているわけですが、一部負担はやっぱりやめるべきじゃないですか、この百円ぐらい。
#186
○政府委員(三浦大助君) これは私ども、その費用はその場で職員が徴収するということをいま考えておるわけですが、今回の一部負担につきましては、これはもう無理のない範囲で、ごくわずかな費用でございますし、自分の健康は自分で守るという自己責任の観点に立って、今回こういう御提案をしたわけでございます。
#187
○沓脱タケ子君 もう余り時間がありませんので、まとめてお聞きをしたいんですが、もうすでに末端では、現場ではそういう問題点が出てきております。
 それからもう一つは、この保健事業をやっていく上で、厚生省案を見ていきますと、人口一万ないし三万の市町村で、おおむねたとえば健康教育年十二回とか、健康相談月六回とかというようなことの基準を決めておられるんですが、人口二百七十万もあるような政令指定都市、こういう場合にはどう考えていくのか、厚生省はどういうふうに御指導なさるつもりなのか。現場では頭抱えていますよ。お考えいかがですか。
#188
○国務大臣(森下元晴君) 大都市におけるヘルス事業をどうするかという問題でございますが、地域住民の人間関係が密接でございます農山地域に比べまして、都市部においては、保健事業を推進していく場合、その実施体制についていろいろ課題があると考えています。しかし、その一方で、都市部においては、一般医療機関等の豊富な保健医療資源の活用が期待できるという面もございますので、それぞれの地域の特性に応じた実施体制を工夫していくよう国としても十分配慮してまいりたいと、このように思っておるわけであります。
#189
○沓脱タケ子君 そうしますと、大都市は、政令指定都市あたりでは、好きなように実情に応じてやってもらってよろしいということですか。いや、困っておられますわ、どないするんやろうなと、一万から三万というようなことの基準でいろいろなことを決めておられるということになりますとね。そういう点を明確にしていく必要があるのではないかというふうに思います。
 私の持ち時間なくなりましたので、もう一つだけ聞いて終わりたいと思うんです。
 特に政令指定都市の場合には、費用負担ですね、保健事業あるいは健診の費用負担、これが府県の負担が抜けます、この案によりますとね。府県の負担がなくなるので、国が三分の一、府県が三分の一、市町村が三分の一というのが、政令指定都市では国が三分の一、指定都市が三分の二ということになって、大変費用が余分にかかってくる。そういう点について、そのままで押し通すということになったら大変だと思うんですが、その辺の実態をよく把握されて、府県の援助というものをやってもらえるような指導というのが必要ではないかと思うんです。これは細かくちょっとお話をしようと思いましたが、時間がありませんので、きょうはその点の大づかみな考え方を聞いておきたいと思います。
#190
○政府委員(三浦大助君) この指定都市制度と申しますのは、これは一定の規模を備えた大都市に、地方制度の特例といたしまして、行政事務の再配分を行って、これに伴います財源の配分調整を行うことにしたということになっておるわけでございまして、したがって政令指定都市に対しましては、社会福祉あるいは公衆衛生、こういったいろいろな事務につきまして都道府県と同等の権限を認めておるわけでございまして、同時に、地方税あるいは地方交付税、こういった財源につきましても道府県からの移譲が認められておるわけでございます。
 この指定都市制度の基本的性格を踏まえまして、新しい老人保健制度におきましても、指定都市には応分の負担をお願いするというものでございまして、ひとつこれは御理解をいただきたいと思います。
 なお、老人保健法への移行が予定されております老人福祉法に基づく健康診査、これも同じようなことになっておりますし、あるいは結核予防法、伝染病予防法あるいは児童福祉法につきましても、同じような形になっておるわけでございます。
#191
○沓脱タケ子君 じゃ、もう時間がありませんので終わりますが、この点はしかし一遍検討してもらう必要があろうと思いますので、そのことだけ御要望申し上げて、きょうは時間がありませんので、以上で終わります。
#192
○山田耕三郎君 私が本法案審議のために与えられました時間は、これで全部消化をいたしますことになりますので、若干重複がありますと思いますけれども、確認の意味でお尋ねをさしていただきたいと思いますから、御了承をいただけますようお願いをいたします。
 まず第一点は、厚生大臣の言われます日本型福祉と、先日伊藤防衛庁長官の、国民は国を守るという意識を忘れて、国家をゆすり、たかりの対象としてしか見ていない、という言葉で国民を批判された思想との関連についてお尋ねをいたします。
 私は、さきの委員会におきまして、厚生大臣の言われる日本型福祉についてお尋ねをいたしました。大臣のお答えを要約いたしますと、結局は、老人保健法案の理念でありますところの自助と連帯の精神を基調とした福祉を強調されておるように受けとめております。そのことは裏を返して言いますと、いままでの福祉は、甘えの構造のもとで国民は余りにも国や行政に寄りかかり過ぎてきた、これからの経済的低成長の社会にあってはもっと自助と自立の精神を養い、社会的助け合いの風土をつくり、福祉行政における財政負担の軽減を図らなければならないとの、いわゆる財政的配慮が先行した思想のように思いますけれども、大臣はそのようにお考えになっておられるのかどうか、お尋ねをいたします。
#193
○国務大臣(森下元晴君) 私の申し上げました日本型福祉というのは別に特別な言葉ではございません。新しい時代の新しい福祉的な考え方にここらで見直していこう、転換期に来たんだという意味で、かつての欧米先進国、そういう国々が歩んでまいりました社会保障また社会福祉、そういう線から、これからは日本独特のりっぱな福祉社会をつくっていこうと、こういう気持ちで申し上げたわけでございます。
 御承知のように、昭和四十八年に福祉元年で急速に福祉行政が成長したことはもう事実でございます。そういうことでかなり世界の水準に達したと私は思っておりますし、また先進国と言われたヨーロッパまた北欧の国々でも福祉の見直しが始まっておる。高齢化社会の低成長時代に対しましてどうしていくべきか、いわゆる高福祉高負担でいくのか、また中福祉中負担でいくのか。いろいろ新しい時代に対する国民の健康と暮らしを考える社会保障、またこの谷間にございますお気の毒な障害者の方々等についての考え方をここらで見直していく必要があるんじゃないだろうか。
 過去において甘えの構造の上に立っておったんだというようなことは、私も決してそう思っておりません。ある程度福祉の行政また福祉の水準を上げるためには、国が主導的な役をしなければこれはだめでございます。これは一般の産業も同じでございまして、まず国が先頭に立っていろんな税制また金融体制、また補助体制等によってその線まで上げていく。これからは新しい一つの相互扶助、お互いに助け合っていこうというような考え方、それからまたいままでの厚生、いわゆる救貧対策と言われる社会福祉、生活保護の問題等の線から、これからはそういう救貧対策でない福祉に、いわゆる厚生という範囲よりも広がった福祉政策を考えていこう。
 たとえば重度心身障害者、なかなかこれは厚生といいましてもそう簡単にいけない。そういう方々の所得保障をどうするかというのも新しい形の福祉行政であるということで、いままで急速に成長してまいりました日本の社会保障制度、社会福祉制度、そういう一連のものを、諸外国の例を見ながらむだを省いて重点的にやっていこう。
 たとえば在宅福祉のような問題も、自分の家で生まれ自分で育って、そこで健やかに安らかに、最期にはこの世とお別れしていこうという。これはだれしも生がある以上死があることは当然でございますから、そういう面で、日本独特の、諸外国にない風土的なまた習慣的な問題もございますし、それを臨調等でも示されておりますし、各種審議会とか各政党でも、それぞれの年金問題とか福祉に対する新しい考え方も出されておりまして、そういうことも参考にしてやっていきたいということで、別に防衛庁でおっしゃったようなそういう気持ちは全然ございません。
 以上です。
#194
○山田耕三郎君 ただいまの厚生大臣の御意見は承っておきます。
 この伊藤防衛庁長官の防衛懇話会における発言の要旨は、新聞の記事によりますと、国民は平和をあたりまえのことと考えて、自分の国を守るという意識が失われてきた、国民は、国、内閣、政府などを行政主体として甘え、ゆすり、たかりの対象としてしか見ていない、みんなでつくり上げていく国家という意識がない、国に対して求めるのはゆすり、たかり、おねだりのようなことばかりだと。聞いたことはございませんのですけれども、新聞の報道では大要以上のように表現をされておりますが、そういった言葉で国民を批判をしておいでになります。
 この発言が果たして防衛庁長官だけの突出をした発言であるのだろうか、この辺に私は大きな危惧の念を持ちます。何か鈴木内閣の底流に、いかにも国民が甘やかされているという考え方があるように思われてなりませんのですけれども、こういった発言については、厚生大臣はこの伊藤防衛庁長官の発言をどのように受けとめておられますか、御所見を承りたいと思います。
#195
○国務大臣(森下元晴君) 私も実は現場でお聞きしたわけでございませんが、新聞報道等によりまして認識をしたわけなんです。ゆすりとか、たかりとかいう発言は、そのときの話の前後等の関係で出た、本人も後で訂正しておりますから、まあ言い過ぎたということだと思いますし、私もそのとおりだと実は思っております。
 ただ問題は、私も厚生大臣というよりも国務大臣、閣僚の一人として、空気とか水と同じように国を守っていくということも非常に大事なんだ、それをひとつ皆さん認識してくださいという気持ちがああいう言葉になりまして、いろいろ批判を受けたわけでございまして、国民にいろいろと物を申し上げる前にまずみずから正していこうということの東洋的な考え方でなくては、非常な非難を受けるという民族的な特性もございますし、民主政治のもとでは、それだけの国民に理解をしていただくということの努力が一番必要なんじゃないだろうか、私はそのように思っております。
 そういうことで、私ももちろん国防の必要性も大事だと思っておりますけれども、国民一人一人がこの国に生まれてよかった、また老後の保障についても、また健康に対する保障についても、憲法二十五条で保障されておりますように十分政治が配慮していただいておるという気持ちの上に、総合的な国家安全保障の上に国を守ろうというような防衛の思想が生まれてくるのが当然でございまして、ただ自衛隊をふやすとか装備をふやすことだけが防衛、安全保障ではないと、私はこういう観点でおるわけでございまして、防衛庁長官としてああいう言葉を言われていろいろ誤解を受けたり批判されたのは、まことに私としては、日ごろ伊藤防衛庁長官の気持ちがわかるだけに、お気の毒な発言であったというように実は考えておるわけでございます。
#196
○山田耕三郎君 私は、この発言に先駆けまして、「中国残留孤児のルーツ「大敗走」昭和二十年夏・満州」、ジャーナリストの佐瀬稔さんの書かれましたものを読みまして、当時を回想いたしまして、眠れない一夜を過ごしたその翌朝の朝刊でこの記事を拝見いたしましただけに、印象はきわめて鮮烈なものを持っております。
 これは日清、日露の両戦役を経て、他国の領土であります満州において、日本が権益を拡大をし、事実上の領土化への明治政府以来の大方針の延長線の上で、いわゆる酷寒の辺境に送り込まれました満州開拓団、満州開拓団青少年義勇隊、これらの皆さんやその家族が、軍が存在をするのにもかかわりませず、その軍隊に守られることもなく、何の戦力も持たないままで国境線になだれ込んできたソ連軍や土着民の急襲に逃げ惑い、女性は彼らのなすがままにじゅうりんをされ、あげくの果てはある母は乳幼児を捨て、さらにある親はわずかな食糧との交換に幼子を売り、ざんきの思いで大陸を彷徨し、自責の念に耐えかねた人は発狂をし、あるいはみずからが命を断っていく道を選ぶ等、この世の生き地獄が大変達者な筆で表現をされておりました。
 このような中で残留孤児が生まれたそのルーツを明らかにしておいでになるのでありますけれども、先般の肉親捜しに帰ってこられましたときの孤児の皆さんの真剣な訴え、思い合わせて、われわれとしては簡単に見過ごすことはできません。たとえば一人の人は、日本が栄えたから帰ってきたのではありません。故郷を離れた者はすべて故郷を思うものであります。決して迷惑をかけませんから名のり出てくださいということを真剣に訴えておられました。為政者たる者、その責任はまことに大きいと思います。
 私も、昭和十六年から三カ年間、関東軍に身を置き辺境の守りについておりました関係で、その情景は手にとるようにわかります。あのような強大な軍隊があって、なぜ敗走する非戦闘員の婦女子の皆さんを守れなかったのだろうか、いまもってこの行為は理解をすることができないのでございます。しかし、結局は、国家も軍隊もこの人たちを守り得なかったということだけは事実です。
 だからこそ、こういうことを知っておる国民の皆さんは、政府の言うままになっておってはいけないという人もあってもよろしいと思います。いろいろの意見が出てくるのもまた当然だと思います。それらを甘えるというような簡単なもので解決することはやっぱり慎まなければならないと私は思うのでございます。
   〔委員長退席、理事安恒良一君着席〕
 このような経過を経て、そのときに日本に帰ってきた人たちも、また帰ってこられないままに自己の意思に反した人生を歩くことを余儀なくされた三十七年間の間に機会を得て帰ってきた人たちも、みんな過去を持っておいでになるのであります。ある婦人は申されました。私は新聞も読みません。テレビも見ません。過去を思い出すというようななまやさしいものではありません。私にはいまもってその傷口から赤い血がどくどくと流れ出ておるような気がいたします。そして、すべての人たちは世の中をはばかりながら人目を避けてひっそりと暮らしておいでになる方々もたくさんおいでになります。
 われわれがかつて老人に対する福祉医療を政治の場面に実現をしていったときには、こういう方々に対する償いの気持ちもそこには確かにありましたと思います。そしてこれらが全国のそれぞれの地区で実施に移されましたときには、すべての為政者は、すべての責任者は、明治、大正の困難な時代を生きてこられました皆さん方に対するせめてもの贈り物でありますこの制度のもとで、余生を安楽に送っていただくことができたらというあいさつが、通常の姿になっておったことをいま思い起こしておるのでございますけれども、迎えました国家の財政の状態が今日のようでありますから、財政的な配慮から一部食掛金を課するということで無料化の制度が終息をしようといたしておりますのでございますが、このようなささやかな贈り物がいま厚生大臣の時期に失われていくということを私は忍び得ないのでございますし、これには賛成をいたしかねるのでございますけれども、こういった人たちが含まれておるその老人福祉医療制度について一部負担を課していくということはやっぱりやらなければ仕方がないと大臣はお考えになりますか、その辺をお尋ねをいたします。
#197
○国務大臣(森下元晴君) 広島、長崎の原爆被爆者は、戦争の生んだ悲劇でございますが、それに続きまして、あの満州でソ連が参戦をして以来ああいう悲劇が起こりまして、その後遺症がいまなお残っておる。それが先般の中国におられる日本人孤児の問題でございまして、私も担当大臣といたしまして、代々木の青少年センターに参りまして心から感動を覚えると同時に、まことに申しわけございませんでしたという気持ちで実は涙を流したわけでございます。
 山田委員も満州の方におられたようですが、私はやはり終戦のときに蒙古におりまして、同じような惨状と申しますか、私の方は在留邦人全部北京まで四万近くの方がお帰りになった。これも小説、朝日新聞が出しておりますけれども、いま考えると非常によかったと思いますけれども、満州の方は地形的にも、また軍隊がほとんど南方に転進していったという事情もあっただろうと思いますし、特にあの国境線で十六歳や十七歳の方が満蒙義勇軍として配置されておった、そして日本から若いお嫁さんをもらって王道楽土を夢見て働いておった。その夢が無残に打ち砕かれただけではなしに、ああいう悲劇が演ぜられた。
 そういう方々は、生き残って日本にお帰りになった方々も、国家に対する不信感また政治に対する不信感は一生持ち続けておるであろう、これはよく私もわかるわけでございます。そういう意味で特に明治の方々、これは明治、大正、昭和と生き抜いてきた方々でございまして、どの世代の方よりも御苦労が多かった。非常にバラエティーに富んだ人生を送られて、いまの日本の物質的な繁栄はそういう方々の御苦労、御功績の上にあるんだという気持ちも実は持っております。
 そういうことで今回の一部負担につながってまいるわけでございますけれども、この問題とその問題ひっつけられますと、私もなかなか苦しいわけでございますけれども、老人福祉年金等でそういう方々に、これも大した金額ではございませんけれども、そういう気持ちの一部も入っておるように思いますし、ただ金額的にはまことに申しわけない数字であるし、所得の制限もしております。そういうことで、この問題は健康に対する認識というと何かわかるようなわからぬようなことになりますけれども、要は、私から申し上げれば、そういう国に功績があって大事にしなければいけない、また政治に対して少しでも信頼感を持っていただいて、そして若い者をもっともっと指導してもらわなくてはいけないという立場でございますから、言われることはよくわかりますけれども、まあひとつ今回は、国の財政も逼迫しておりますし、先輩である御老人の方々も無理のない負担の程度でひとつ何とかそれくらいはしてあげてくださいというような気持ちで、実はこれは私の個人の気持ちでございますけれども、この法案を出させてもらっております。いろいろ理屈はついておりますけれども、要は、ひとつ何とか御無理な御負担でない程度にお願いしたい、これが私の偽らざる個人的な気持ちでもございますし、山田委員の言われるように、いまの御老人に対する感謝の気持ち、また何かで報いなければいけないという気持ちは重々よくわかっておるわけでございます。
#198
○山田耕三郎君 次は、老人医療費についてお尋ねをいたします。
 老人医療費がだんだんと増高をしてきておるということはよくわかります。しかしこれはその原因が問題だと思います。医療費の抑制というのは、まず医療費の中に巣くうております不正を排除することから取り組まなければならないと思いますし、これこそ厚生省の皆さん方の大変大きな任務なのではないかと思います。それを行わないで、一部負担をまずやっていかれるという手法には賛成できがたい旨、先日の質問のときにも言わせていただきました。
 たとえば日本最大級の医療法人だと言われます錦秀会の不正事件でも、新聞の皆さん方は、「老人医療で急成長」、このようなタイトルで表現をしておられます。しかも、急成長の背景は、一つは、一般病院が敬遠をいたします救急患者を受け入れてきた。二つの面は、低所得患者、わけても公費負担患者の受け入れに積極的であった。三番目は、老人患者の受け入れであった。このようなところが指摘をされております。さらに十全会系の三病院の不正請求の実態は、さきの委員会で高杉委員の質問の時点ではまだ明確になっておりませんでした。こういうような不正防止のための追及でありますとか、その結果の究明でありますとか、こういったことがどうしてもおくれがちになります。この辺に医療の荒廃に対する不信感が出てまいっておりますのも事実であります。
 大臣はよくおっしゃいますように、お年寄りの皆様方に対しましては性善説をとっておると言われます。それはまことに結構でございますけれども、しかしその医療の荒廃をまず一部負担の実施から始めていこうと言われます手法は、老人に対しては悪者視をした施策なのではないか、何かそのように思えてなりません。すなわち、老人が受診を抑制さえしてくれれば、医療費は抑制をされるという論理から出ておるように思いますのですけれども、そのように私は考えます。ですけれども、医療費の増高の本質は何かということについては、国民の皆さん方はちゃんと知っておいでになります。たとえば先日の健保連の調査でもわかりますように、現在のわが国の医療は荒廃していると思っておりますかという設問に対しまして、四八・五%の方が荒廃をしていると答えておいでになります。さらに、荒廃をしていないと答えておられます方はわずかに一九%であります。
 こういうような実態を前にして、どうしてもやっていただきたいのは、やはり医療費の中に巣くいます不正をなくしていくということでございますけれども、医療費の適正化のためにどれだけの実効ある対策がとられるのでありますか。さらには、不正が後を絶ちませんけれども、不正の再発を防ぐためにどのような実効策をおとりになりますのか。幾つかのお答えをいただきました。そしてその方針を明示もしておいでになります。けれども実効が上がっておりません。改めていまの二点に対して直接の担当者からお答えをいただきたいと思います。
 大臣に対しては、不正が正されない限り、老人に対して一部負担というペナルティーを課することはいけないと私は思いますのですけれども、本当に不正をなくするということができますのかどうか。今日までの審議の経過の中では、答弁こそいただいておりますけれども、私たちが信頼を寄せるほどの答弁がいただけておりませんが、その辺のところを重ねてお尋ねをいたします。
#199
○政府委員(大和田潔君) ただいま先生おっしゃいました不正に対する厳正なる措置、これを推進していくべきである、いままでどうであったかと、こういうことでございますが、新聞等の報道で御理解いただけると思いますが、この不正に対しましては、非常に厳しい態度で臨んできておるところでございます。
 この医師の不正をなくすということは、医師と患者の信頼関係というものを回復する大きな手段でもありますし、国民の不信感というものを払拭するために、ぜひとも必要なことであるということでございまして、私どもはこの指導・監査というものを積極的に推進することにいたしまして、不正請求に対しましては厳正なる態度で臨む、つまり保険医療機関の取り消し等の厳正なる態度で臨むということで今日までやってきておるわけでございまして、そのための指導・監査体制ということにつきましても、非常に厳しい定員事情の中でも、こういったたとえば中央におきます医療指導監査官というものを充実をする、増員をする、あるいは地方における医療事務指導官といったようなものに対しても、これを充実していくということで、かなり急ピッチに指導・監査体制の充実を図ってまいったところでございますし、また今後とも指導・監査体制の充実、さらに指導・監査の推進ということを行ってまいりまして、ただいま先生のおっしゃいましたような趣旨に従いまして厳正に進めてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
#200
○国務大臣(森下元晴君) 老人性悪説ではないかというお話がございますが、私はそう思っておりません。先ほど申しましたように、現在の日本の繁栄の基をつくっていただいた、大変苦労された世代でございますし、むしろ性善説に基づいて対処をすべきである。
 ただ、医療、それから医者の立場は、これは生命、健康を預かっておるわけでございますから、これは厳しく対処しなければいけない。これはもちろんわれわれ政治家も同じでございます。また学校の教師なども立場上、疑わしきは罰すという、みずから罰することもございますけれども、そういう態度の上に立たなくては、患者にしてもまた国民にしても、信頼感が得られない。そういう観点に立っておる。
 老人の医療費が全体の医療費の中で占める割合が多いのは、すべて御老人が乱診乱療の濃厚診療の基をつくって悪いんだということは、われわれも決して申し上げておりません。ほとんどの事例が、先ほどもいろいろ御質問の中にございました具体例もあって、ほとんど経営的なそろばん的なそういう医療機関がむしろ老人を悪用して、そしてむしろ医の倫理から離れた、いわゆる老人の特性を逆用、悪用して、そして金もうけに走っておる、そして御迷惑をかけておるというような実態を見ました場合、決して私は老人が、われわれの先輩が悪いということは一切言っておらないわけでございます。
 まあ、そういうことで、一部負担の問題にしても、先ほど私が申し上げましたように、この御老人が体が悪いにもかかわらず診察回数を減して、そして医療費を少なくするのが目的であるということは、私どもは決して考えておらないわけでございまして、この問題はいろいろと御理解をいただくと同時に、高齢化時代で――現在約一千万、これが二十年後には二千万人。年金もそうでございますけれども、低成長、高齢化ということになってまいりますと、どういうふうに国家財政に影響するかとか、また保険財政、年金財政に影響するか。そういう全般の中で御老人に対する医療をどうしていこうか。今日の問題ではなしに、五年、十年、二十年、三十年と中長期にわたる問題の一つの転換期における一つの施策でございます。いろいろとわれわれはそういう方々を尊敬しながら、あえて御無理のない程度で御負担していただくことによって、これから違った意味で困難に直面しようという政府または国を助けていただこうと、そういう気持ちも実は踏まえての今回の制度であることを申し上げたいと思っておるわけであります。
#201
○山田耕三郎君 次は、拠出金についてお尋ねをいたします。
 財界ですとかあるいは健保連あたりから、拠出金の増加に歯どめの措置をとるように政府に対して修正要求が出ておりますことを承っておりました。これに対しまして、拠出金の額は、今年度の見込み額を基礎として来年度以降は老人人口増加率、年率は三・六%に見合う金額を上乗せしていくということで、要望団体と政府との話し合いが一応ついたという報道がさきにございました。
 このことは別といたしましても、もしそのような増加抑制措置をとられることで合意をされたとしますなれば、あるいはその増加抑制措置をおとりになるとすれば、全体の保険会計の中で、国保の負担軽減がその分だけ減額をされていくことになると理解をしてよろしいのですか、お尋ねをいたします。
#202
○政府委員(吉原健二君) 健保連なりあるいは経済団体からいまお話のございましたような趣旨の要望が自民党に対してされているということは聞いております。ただ、そのことにつきまして、老齢人口程度の増加はやむを得ないということで、自民党と経済団体との間に合意ができたというふうには聞いておりません。一部にそういった報道もされておりましたけれども、まだ合意ができたというふうには私ども聞いておりません。
 私どもとしては、あくまでもこの法案というものが、各保険制度間の負担のいままでの不均衡、不合理を是正する、公平な負担をしていくという目的で制度の仕組みを考えておりますので、この基本的な制度の仕組みというものはできるだけ維持した形で、経済界にもあるいは健保連にも納得をしていただきたいと、いまの時点ではなおそういうふうに念願をしておるわけでございます。
#203
○山田耕三郎君 仮定のことにお答えをいただくということは無理かもしれません。無理であればそれで結構でございますけれども、たとえばもしいまのような方策がとられたといたしましたら、その分だけ入ってきます原資が減ります。それはどこで調整をなさる仕組みになっておりますのか、御教示をいただきたいと思います。
#204
○政府委員(吉原健二君) 最終的にどういうことになりますか、それによりまして、いまの制度の仕組みのどの点をどうすればいいかということを考える必要があるかと思いますけれども、
   〔理事安恒良一君退席、委員長着席〕
現在健保連なり財界が言っておられますのは、本来自分の制度に加入をしている以外の方に対する持ち出しといいますか、負担というものが今度の新しい制度で出てくる、それが健保連の場合で言いますと、約七百八十億でございますけれども、それが年々ふえていくのは困るということでございまして、もし仮にそれをある一定の限度にとどめるというようなことにしようとすれば、現在の医療費の負担の案分率でございますね、実績医療費の案分率と加入者案分率というものを二分の一ということにしておりますけれども、その加入者案分率を何らかの形で手直しをしないと、そういった形にはならないのではないかというふうに思っております。
#205
○山田耕三郎君 それでは、最後にまとめとしての一項目をお尋ねをいたします。
 たとえばこの老人保健法案がこのままで成立をして、十月から発足するということになりますと、私自身は次のように考えます。たとえば一部負担金でありますとか、拠出金等の財政対策だけがひとり歩きをして、肝心の保健事業とか医療費の適正化というようなものが置き去りにしてしまわれるのではないか、こういう心配をきわめて大きく持っておるのでございますけれども、もしそうだとすれば、医療費の増高などを抑止をするということはとうてい望むことができません。
 そういう心配を持ちます原因は、特に保健事業においては、実施主体であります市町村側の準備体制の不足、さらには先ほどからの質問でいろいろお答えはいただいておりましたけれども、絶対的な要員不足はどうしても避けられないのではないか。五年間という準備期間は必ずしも十分ではありません。このように考えますのと、医療費の適正化というのが、言うはやすくして行うことはきわめて困難な要因が残っておるように思えます。そういったことからいわゆる一部負担や拠出金等の財政対策だけがひとり歩きをして、肝心の保健事業や医療費の適正化というのが置き去りにされてしまうような心配を持ちますのでございますけれども、本当にその心配はございませんか、最後にもう一度重ねて御所見を承りたいと思います。
#206
○政府委員(三浦大助君) 今回御提案申し上げております保健事業につきましては、健康診査あるいは健康教育あるいは健康相談、こういう事業につきましては、いままで国民の健康づくり対策の一環としてすでに市町村がやってきておる事業でございます。たとえば健康手帳につきましては、もう全市町村の半分ぐらいがやっておりますし、健康診査につきましては、循環器、がん、子宮がんそれぞれ九割以上の市町村が、完全という姿じゃありませんが、ともかく手をつけておる。ただ、機能訓練とか、こういったものにつきましてはちょっと実施率は低い。
 今度の老人保健制度、新しい制度の創設によりまして、こういった一連の事業の内容を一層充実しようというわけでございまして、したがってもうすでに県の方ではいろいろ計画に着手しておる県もございます。決して置き去りになんかならないように私どももいたしますし、また置き去りにされるというふうに私ども考えてはおりません。
#207
○政府委員(大和田潔君) 医療費適正化対策が置き去りになるのではないかと、こういう御心配でございます。
 これは限りある医療資源を有効適切に活用するということは、申すまでもなく非常に重要なことであると考えておりまして、このため、先ほども申し上げましたけれども、指導・監査の強化、のみならずレセプト審査の充実改善、薬価基準の適正化等のいわゆる医療費適正化対策を強力に推進していままでもきておるところでございますけれども、今後老人保健制度の創設の後におきましても、もちろんのことでございますが、一層これらの施策を充実強化してまいりたいと、このように考えておるところでございます。
#208
○国務大臣(森下元晴君) この不正請求の根絶を最後には目的とするわけでございますけれども、それにはしばらくの年月が実はかかると思います。
 人間のつくる法律でございますから、いろいろと錯誤もあるかもわかりません。しかしながら、要は、いままで四十八年以来無料化された老人医療を有料化するわけでございますから、そういうこともございまして、私どもはかなり強い決意を持って不正請求の根絶に努めたい。また、いろいろとレセプト審査等を初め、医療費が不正に請求が行われないように、これは全力を上げるのは当然であるわけであります。
 ただ問題は、先ほど冒頭に日本型福祉ということの質問がございました。私は、この保険制度を見てなかなかむずかしいなと思うのは、診療また患者の医者を選ぶのは自由でございます。そして出来高払い方式で払われる。薬も自由に製造できます。そしてまた医者も自由にそれを採択できます。ただ、最後の段階において、これの価格を九〇%バルクラインというふうな方法でこれを決める。そこで実勢価格と薬価との間に差ができることも事実でございます。
 そういうことで、自由経済と申しますか、それと社会主義経済のちょうどいい面を取り上げて、そしてこれがうまくいくべくわれわれ努力はしておりますけれども、まだまだ十分なじんでおらない点がございまして、そこにこの自由経済、自由競争、公正な競争というような公取の一つの枠等もございまして、そこに価格形成をするための隘路も出てまいりますし、そこらあたりも将来の問題として、両方のいい点をうまく兼ね合わせてまいりますと、世界一理想的な保険行政、また年金等についてもそれができ上がる。それを目指して、私は日本型福祉で、もう世界のこれこそ福祉大国としての先進国に将来はなるべきである。こういうことでございまして、結論は一朝一夕にはなかなかむずかしいけれども、そういう一つのロマンと理想を掲げながら、一生懸命にやってまいりたいということを最後に申し上げたいと思います。
#209
○山田耕三郎君 終わります。
#210
○安恒良一君 質問に入る前に委員長にお願いしておきたいんですが、いま野党側はこれだけたくさんおるんですが、与党側の委員の御出席を委員長の方からひとつ。野党側は十名全部おるわけですから、重要法案ですから、直ちに与党側の出席をひとつ。三名しかおいでになりません。これじゃとても私質問をする気になれませんので……。質問を続行しますから、すぐひとつ集めてください、委員長、お願いしておきます。
 それでは、私は、きょうは一時間でありますから、主として、もうすでに私どもは本法案の修正について十項目の態度を明らかにいたしていますから、その中で、なぜ修正をしなきゃならぬのかということを御理解いただける二、三点にしぼってきょうは御質問をしたい。改めてまた時間をゆっくりとりまして問題についてあれをしたいと思います。
 それから厚生省側に、答弁側にお願いしておきたいのは、すでに同僚委員がもう長時間にわたって質問をされておりますから、私も質問の重複は避けたいと思います、できるだけ。答弁も機械的な繰り返し答弁はひとつおやめください。もうあなたたちが何をお答えになったかよく存じております。そういう意味で、一時間を有効にひとつ使わさせていただきたい、こういうふうに思います。
 まず、この老人医療の特殊性ということで、すでに私どもの同僚委員から、老人病というのは慢性疾患であるから、いわゆる対症療法的に注射、投薬のみを集中的にやることは望ましくない、こういうことをすでに多くの同僚委員からお話しされたと思います。
 そこで、私は、主治医制度の創設について厚生省はどう考えているかということをお聞きをしたいんであります。私は現行の医療保障制度の諸問題解決の一つとしては、本来であるならば、私ども社会党が主張しておりますようなホームドクター制、もしくは登録人頭払い制度を取り入れることが望ましいと思います。しかし、現行の出来高払いには厚生省側からも一長一短あり、欠点を直しながらと、こういう答弁も聞いていますから、私は直ちにこれらの制度を改善することは困難だろうと思います。また、一部ホームドクター制や登録人頭払いの導入に強い反対をする人々もいることも事実であります。
 そこで、一挙にそこまでいき得ないとするならば、老人医療の特殊性を考慮した主治医制度を当面取り入れるということの考えを持つ必要があるのではないだろうか。それはなぜかと言うと、お年寄りに親身になって相談をしてもらえる主治医は必要であります。また診療に当たるお医者さんも、本人から聞いて、わかりにくい過去の病歴や、他のお医者のもとで診療をやった場合のそれらを適確に把握し、適切かつ有効的な診療が私はできるというふうに考えるわけであります。ですから私は、たとえばお年寄りの方が主治医その他のお医者におかかりになった場合でも、医師間の相互診療の把握、調整、連絡、こういうことが主治医を中心になってなされなければならないと思います。でありますから、主治医のもとで総合的な診療管理、いわゆる生活指導、これができるようなシステムを試みるべきだというふうに思うわけであります。
 こうした制度は、本来で言いますならば、年寄りだけではなくて一般の方にも導入すべきであると思いますが、当面、その必要性が非常に高い老人の場合にはぜひ導入する必要があるというふうに私は考えます。そしてその場合、総合的な診療管理に当たる主治医に対しましては、相当の指導・管理料、これは診療報酬の中で私は月決めに支払うべきだというふうに考えますが、こういう問題についてどのようなお考えをお持ちでありますか、事務当局並びに厚生大臣にこのことをお聞きします。
#211
○政府委員(吉原健二君) ホームドクター制、あるいはイギリスでとっておりますような医師の登録医制、そういったものをわが国の場合に制度として直ちに取り入れることはなかなかむずかしい問題があると思っております。
 ただ、いまお話しのございましたように、特に老人の場合にホームドクターを持つことを促進をするということ、そしてホームドクターによる生活指導等が継続的に行われるような何か仕組み、制度、そういったものを考えることは私は必要だと思っております。したがいまして、診療報酬等の面におきましてそういったことが促進できるような、あるいは少しでも芽が出せるような形の診療報酬というものを老人について検討していく必要があると思っております。
 具体的にそれならばどのような形のものがいいのか、いま月決めで一月幾らというようなことはどうかというような御提案もございましたけれども、そういったことにつきましては、かなり専門的な問題でもございますので、診療報酬を中医協で御審議をいただくことにしておりますけれども、中医協で十分そういった問題も含めて検討をお願いしたいというふうにいま思っております。
#212
○国務大臣(森下元晴君) この主治医制またはホームドクター制の利点につきましては、たびたびお話に、日本で理想的な医療体系を持っておる岩手県の沢内村とか長野県の佐久、こういう地域の問題が出ます。まさにあそこのお医者さんは主治医であり、またホームドクターでしょっちゅう診療に回って、しかも医療費が非常に安くつく、そして理想的な健康状況を守っている。ただ、地域的にはできますけれども、国内全部にそれを及ぼすということはなかなか私はむずかしいと思うわけでございます。
 出来高払い制は、御承知のように、これも先ほどお話ございましたが、一つの性善説の上に立たなくてはなかなか欠点が出やすいということがございまして、医療費がかなり重なって、それがいろんな問題になって御老人が悪用されておるという例が間々あることが、この出来高払い制に対する御批判にもなっておる。そういうことで一長一短あると思いますけれども、全般的に考えました場合に、私どもは出来高払い制でやることが、最善であるかどうかはわかりませんけれども、この方法によって、医の倫理を背景として、そして医療、治療の効果を、また国民の健康を守りながら、また医療財政的にもできるだけ効率的な方面に持っていこうと、こういう考えでおるわけであります。
#213
○安恒良一君 ちょっと厚生大臣にお願いしておきますが、私が聞いてないことをお答えにならなくて結構ですから、出来高払い制の問題なんか改めて時間をとって議論しようと思っております。私がいまお聞きしたことは、たとえば、審議官にも言っておきたいんですが、私はホームドクター制度のすべての導入を言っているわけじゃないんですよ。制度の導入や登録人頭払いの導入は一挙にはできないだろう。だから、老人保健医療機関と指定された医療機関の中で老人が主治医を選択する、そういう主治医制度ということを言っているわけです、ホームドクター制度とはイコールではありませんから。答弁は注意をしてやっていただきたいと思います。
 そこで、いまのお二人の答弁をお聞きしましたが、私は、何らかの方法で、たとえば中医協でということを言われましたが、主治医制度そのものについては否定をされなかったと思うんであります。私は、この主治医制度を確立しないまま、たとえば丸め方式で考える――この前の議論の中であなたはたとえば甲乙のほかに丙表的なという発言もされ、丸め的なことも中医協でという議論が、あなたか、保険局長か、どっちかしたと思いますが、そういう単純な丸め方式で診療報酬の指導・管理料を導入すれば、かえって診療の混乱、乱診乱療になりがちだ。たとえばいまの診療報酬点数の中に指導・管理料というものを加えたとします。そうしますと、お医者さんが指導・管理を日々やったということになれば、すべてそれは点数化され、医療費にはね返ってくるわけです。ですから、指導・管理いわゆるかかりつけの医者が相談を受け生活指導をした場合に、その支払いというものは厳格にしておかないとかえって今度は医療費の増大を招くという感じを私はしますが、その点はどうですか。
#214
○政府委員(吉原健二君) 老人医療の診療報酬のあり方を考える場合に、従来の薬づけ、検査づけというものをできるだけ少なくしていくためには、一定範囲の投薬あるいは検査も含めた形の包括化の方向というものも合理的な範囲内で検討していく必要があるのではないかというふうに思っております。
 ただ、その場合にそのやり方によりましては、いまおっしゃいましたように、かえって医療費の増加につながるとか、あるいは粗診あるいは粗療につながるというような心配もございますので、そのやり方については十分また検討し御議論をいただく必要があると思っておりますけれども、方向としてはそちらの方向もあわせて考える必要があると思っておりますし、先ほどからお話のございます主治医による生活指導、そういったものとの連携も十分考えながらいろんな方策を考えていく必要があるというふうに思います。
#215
○安恒良一君 この問題はきょうこれだけでやっておるわけにいきませんから、宿題にしておきますから、次の私が質問に立つときに、この主治医制度についてどうするのか、採用するとすればどうするのか、あなたも方向は否定されなかったわけですから、これはこの次質問のときにお聞きします。きょうは、これより以上これだけでやりとりしても時間がたちますから、次に参ります。
 次は、どうしても支払い方式を見直さなきゃならぬ、このことはかねがね同僚委員から言ってきたことでありますし、私はぜひ支払い方式の見直しということを明確に、審議を通じて、また法律を最終的に取り扱いを決めるときに、はっきりしたいと思っているんであります。
 その支払い方式をこの委員会で決めるわけにいかないわけです。どこでやるか。私どもは、政府が当初原案で出されました老人保健審議会ということが一番正しいと思います。ところが、残念ながら、政府原案を自民党みずからが一部の野党の皆さんの同調を得て中医協というふうに変えてきております。そして、これまたきょうまで御質問に立たれた多くの先生方から中医協ではできないのじゃないかということを質問したら、大臣も保険局長も胸を張って中医協で今度はできると言いました。そこで、できないという証拠をひとつきょうはこれから議論をしてみたいと思います。
 保険局長にまずお聞きしますが、昭和三十六年あなたは厚生省のどのポストにおいでになりましたか。
#216
○政府委員(大和田潔君) 昭和三十六年は、実は私は厚生省におりませんで、県に出ておったのでございます。
#217
○安恒良一君 吉原審議官は。
#218
○政府委員(吉原健二君) 厚生省の年金局におりました。
#219
○安恒良一君 私は実を言うと、昭和三十七年から中医協の委員を十三年間やっております。ですから、その限りにおいては、あなたたちよりも私の方が年数も長いし、詳しいわけなんです。
 そこで、私はどうしても中医協で今回の診療報酬の改正が、支払い方式の見直しができないと思いますのは、まず中医協が昭和三十六年に改組されました。それまでは昭和三十四年の六月十一日、日医が中医協委員を引き揚げまして、それまでは四者構成であったわけですが、それがすったもんだ、すったもんだしまして、社会保障制度審議会の答申等を得て三者構成、いまのいわゆる公益四、支払い者側八、医療担当者八になったことは、歴史的に御承知であろうと思います。
 そこで、昭和三十六年以降中医協が審議を中断をした審議事項中断の理由、資料としてこの一覧表をお願いしておきましたから、委員長のところでお許しを得て、御理解をいただくために全員にお配りをお願いしたい。
#220
○委員長(粕谷照美君) よろしゅうございますか。――それじゃ配付してください。
   〔資料配付〕
#221
○安恒良一君 いまお手元に資料が配られたから見ていただきたいと思いますが、三者構成に改組された中医協がしばしば中断をしています。もちろん支払い者側の辞任によって中断した事例もありますが、ほとんどが日医の委員、もしくは医系委員の出席拒否によって、もしくは辞表提出によって、長いときは一年も二年も、少ないときでも半年とか三カ月も中医協が中断をしている。これを読み上げてもらいますと時間がかかりますから、資料でごらん願います。
 そこで大臣にお聞きしたい。こういうような中医協で、あなたは胸を張って、中医協はもう今後はうまくいくでしょうということが言えるんでしょうか。過去これだけしばしば中医協が中断をして決まらない。そういう中で、今回新しい老人保健にふさわしい支払い制度を、現行の出来高払い制のデメリットはそこで直すと、こうあなたの方は言われていますが、直せるということになりますか。私はそれは本当に絵にかいたもちになるんではないだろうかと思いますが、まずこれを。あなたも初めてこれを詳しく見られたと思いますね。なぜ中断をしたのか、どのぐらいの期間中断しておったのかというのも見られたと思いますから、このことについてのお考えをひとつ聞かしてみてください。
 それから保険局長も、胸を張って、今後中医協はうまくいく、いくと言っていましたが、こんな状態でうまくいくんですか。過去にうまくいかなかったことがうまくいくとすれば、どうしたらうまくいくのか、あなた自身がこれを見られてわかるように、過去にうまくいかなかったのが、今度あなたが胸を張ったらうまくいくんですか。いまの三者構成で、いまの中医協の運営規則のままで中医協がうまくいくというふうにどうしてお考えになるのか。単に日医の会長がかわったからといって、それだけでうまくいくなどということは全く子供の考えに等しいと私は思いますが、その点どうですか。
#222
○国務大臣(森下元晴君) 過去の中医協の運営につきまして、いま御指摘のようにいろいろ波乱万丈の歴史がございます。そういうことで今後どうか、また中医協の審議でうまく老人保健法が運営されていくであろうかということでございますが、胸を張っておるわけでございませんけれども、この中には公益委員を中心とした関係者の御尽力によりまして審議が軌道に戻ったような経過もございますし、今後ともその運営が適正に図られるよう最大の努力をいたしたいと思います。
 中医協の構成の問題につきましても、運営の面でできるだけ各方面の意見を踏まえて、老人保健の診療報酬の審議にふさわしいように検討してまいりたい、このように実は思っておるわけでございます。
 過去につきましては、もうおっしゃるとおりでございまして、そういうことが起こらないように厚生省なり厚生大臣のそれだけの権威と申しますか、良識に基づいて運営していただくようにやっていきたい、こういう気持ちであります。
#223
○安恒良一君 そんな抽象的なことじゃ困るんですよ。
 たとえば、じゃ大臣、五十三年の八月二十九日から五十五年の三月一日まで、厚生行政への非協力ということで、中医協には直接関係ないんですが、高額所得医師調査資料が読売新聞に載った、こんなことで五十三年の八月二十九日から五十五年の三月一日まで二年近くにわたってとまっているんですよ。あなたが言うような公益委員の良識によってどうこうできるんじゃないですよ。
 この一つ一つの理由を見てください。三十六年から五十五年まで、中医協自体の問題でもとまる場合もしばしばあるし、中医協以外で起こった厚生行政の問題でも中医協はしばしばとまるんですよ。ましてや、今度は、医療担当者は現在の出来高払いを堅持すると言っている。その中で老人にふさわしい診療報酬を中医協の場で議論をして、公益委員の良識だけによって解決できるなら、こんな事態は過去に起こらないでしょう。過去に多くの大臣が苦労しながらも、こういう事例がずっと中医協の中に起こってるんですからね。中医協でもしもやるとするならば、いまの八・八・四という構成をたとえば昭和三十六年に戻して各側四者構成にする。
 それはなぜかというと、大臣、中医協では八・八のうちのどっちかの八が出席を拒否すれば、残念ながら何も決まらないんですよ。一年であろうと二年であろうと空中分解するんですよ。そうして出てくるときは何かというと、ぼつぼつ医療費の引き上げをしてもらいたくなると出てくるわけなんですよ。
 そういうことが繰り返されておることを知っておって、あなたは単にこの場だけの答弁で、公益委員の良識とか、そんなことが起こらないようにと言われても無理でしょう。この過去の事例を全部調べてごらんなさいよ。無理なことを国民をだましてはいけません。それならそれのように、そんな事態が起こらないように中医協を改組して、たとえば医療担当者が出席を拒否しても、逆に支払い者側が出席を拒否しても、その他の公益委員によって公正な運営ができるように改めなきゃだめじゃないですか。それがない限り、幾ら精神的にうまくやりますとか言ったって。そのことを私は聞いている。それがためにきょうは、過去の事例を、なぜ中医協が中断をしたのか、その期間はどうなってるのかということを資料に求めてそれで論をする。抽象論をきょうやるためじゃない。
 いままであなたが言ったことは、前の私どもの同僚委員に同じことを何回も繰り返している。そういうことがないようにきょうはこれを出してもらって、これを見ながらやると、そんな抽象論議にはならないんです。たとえば、委員の構成をこう変えるとか、規則をこう変える。そういうことの中で防止をすると言うならば、これは説得性がある。それがないまま精神論的に公益委員に踏ん張ってもらいますと言ったって、一方側が出なけりゃ、一年でも二年でもとまるんですよ、またとまっているんです、過去に。過去にとまってるじゃないですか。それをあなたたちはどうしようとされるのかということをお聞きしている。いままでの繰り返し答弁を聞く必要はありません。この事例を見て、あなたが幾ら言われても、これの事例の中で公益委員が説得すれば何とかなるということじゃないんですよ、いまの中医協は。どうですか、それは。
#224
○国務大臣(森下元晴君) 中医協の構成の問題について、その運営の面でできるだけ各方面の意見を踏まえて、老人保健の診療報酬の審議にふさわしいものとなるように検討をしてまいりたいと思っております。
#225
○安恒良一君 そうじゃないんです。私が聞いていることは、各側が欠席をした場合は、中医協は、いまの場合、八・八のどちらかが欠席をしたら成立をしません、残念ながら。それをどう改めようとするのですか、運営だけでは改められないんですよ、防止ができない。これを見られてもわかるように、一号側が欠席した場合もありますが、ほとんどは二号側が欠席。欠席戦術をとれば半年でも二年でも三年でも中医協は開かれないんです。何も決まらないんです。それをあなたはどう改めようとされるんですか。
 あなたたちが老人保健審議会と言っておきながら、だらしなく医師会の圧力を受けて、そして中医協に変えてしまった、変えてしまったならしまったで、せめて中医協が機能するようにする気はないんですか。中医協がきちっと物事を正式に決められるようにしなけりゃ、このままでは一号側なら一号側、二号側なら二号側が欠席と言ったら決まらないんですよ、何にも。何にも決まらない。それが過去に一遍か二遍あったことなら、あなたが今度は説得するでいいけれども、そうじゃないんです。歴代厚生大臣が皆苦労して、皆この欠席戦術に遭ってその当時皆頭を痛めているんですよ。歴代厚生大臣が皆そうなんですよ、この昭和三十六年から最近までの間、どの厚生大臣も苦労した。しかも中医協に関係しないことが起こっても中医協に及んでくるんです。
 そういう状況の中で、ただ単に精神的運営だけでは、大臣、片づかないんですよ。そういうことが起こらないように、きちっとした運営規則、構成を含めて改正しない限りは、中医協というのはうまくいかないんですよ。私自身が実に十三年間その中で大変苦労したんですから。だから、そういう点についてどういうふうにお考えをお持ちですか、もう一遍聞かしてください。
#226
○国務大臣(森下元晴君) 中医協における審議において、診療側委員のいまおっしゃったような引き揚げ等の事態を招来するようなことのないように、その円満な運営に最大限の努力を払ってまいりたい、その具体的な内容につきましてはいろいろ検討もしていきたいと、このように思っております。
#227
○安恒良一君 これも答弁になりません。宿題にしておきますから、この次の質問のときにはもう少し――そんな同じことの繰り返しでは、全くこんなことを申し上げては失礼ですが、それは能力がないというふうに言いたくなるんです、そんなことばっかりあなた繰り返したら。事務当局が横でこれこれと言うからしようがないんでしょうけれども、もう少し具体案を持ってきてくださいよ。抽象的じゃ困るんですよ。この法案を本当に通したいと思うなら具体案を持ってきてください。どういうふうにするのか、どうして歯どめをかけるのかということがないと、一方側が欠席をすればそれまでなんですから、残念ながら。ですから、これは宿題にしておきます。
 続いて次にまいります。
 次は、退職者継続医療ですね。これもすでに七七年の健保国会、当時十四項目の中の一つとして退職者継続医療問題が出されて、これも同僚委員からたくさんの質問がありました。ところが、いずれもあなたたちはいろいろ検討中ということですね。ですから、ある委員からは、もう七七年から現在まで何年たってるんですかというおしかりまであなたたちはお受けになったと思うんです。ところが、依然として、いろいろむずかしさがありまして、いろいろ検討してますと、これで本委員会の答弁がいままできておりますが、私はやはりそれでは困るわけです。
 現行の雇用制度や医療保険制度のもとで、退職後の医療保障がレベルダウンするとともに、結果的にどこにいくかというと、ほとんどが国保にいくわけです。そうしますと、国保財政に極端に負担がかかってくるわけです。私たちは、本当ならば老人保健制度の対象者を七十から六十歳に下げてもらいたいと思いますが、まあ一遍には財政上いきませんでしょう。そこで、わが党の案は六十五歳になっておるんでありますが、いずれにいたしましても、老人医療保険制度に入るまでの間は、私たちは当面退職者の利益を考えまして、いままでのまま各制度におるということです。そして保険料の負担割合は、いまの任意継続と違って、現行の負担割合にしたらどうか。
 たとえば政府管掌健康保険でいいますと、一六・七政府が出しています、残り労使折半になっています、そういう方向はどうなのか。組合管掌でまいりますと、事業主と被保険者が半々に負担をしてます、そういう制度。それから組合管掌の場合でも、中小零細の場合には、その場合には政府管掌健康保険と同じような国庫からの補助というのが必要だと思いますが、いずれにいたしましても、それぞれの現行の保険制度の中に現行の負担割合を原則としておる、国保に流れていかないと、こういうことを私は考えるべきだ、いわゆる退職者に対する保険給付を続行すべきだと思いますが、これもいろいろむずかしいとか、検討してますということじゃなくして、どうしようとするのですか、あなたたちは。いつの時期にこれを出そうとするんですか。むずかしいとか、いろいろ検討するとか、ああだとかこうだとかということじゃなく、どこにネックがあるんですか、どこを打破すればこの問題は前進をするんですか。もう七七年から今年まで相当の年限がたっていますから、そのことについて、いままで聞いたことは結構ですから、以上私が言ったことで、いままで答弁した以外に答えられることがあったら答えてください。同じことなら宿題にします、これも。
#228
○政府委員(大和田潔君) どうも同じことになるかもしれませんが、このポイントは、高齢退職者の医療費、これは平均を二、三倍上回る、これをだれがどのように負担するかというのがどうしても基本問題である。したがって、いま言われました事業主負担という問題が一つある。それから保険者、これは弱小保険者の負担が重くなるのを一体だれがどう負担するかというような問題。さらに、それがどうしても財政調整といったようなものに発展するんではなかろうかといったような問題が出てまいりまして、なかなかむずかしいものでございますので、前回の実は健康保険法のときにもお約束いたしましたけれども、なかなか結論が出ませんで、検討しておるわけでございます。引き続き検討いたしますけれども、なかなか結論が出ないということをひとつ御了解願いたいと思いますが、なお検討を急いでまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#229
○安恒良一君 これも全く同じ答弁です。大臣、こういう問題については世の中いろいろ動いているわけですね。たとえばいまあなたが言われたところの健康保険組合自体も、これはもう考えなきゃいかぬところへ来てるんじゃないかと、こんなことが健康保険組合の方に出つつあるんですよ。そのときに保険局長は全く十年一日のごとく同じ答弁しよるわけです。前の健保国会で聞いても同じことを言うんですね。だから、いつごろまでにあなたたちは――世の中の流れは変わってるんですよ。だれがどう負担するかということだけじゃないんですよ。私どもは二十年なら二十年、三十年なら三十年、そこの健康保険組合に掛けるときは余り病気しないんですよ。大体定年退職になってから病気の率は高くなる。そうなるときに、いままでの制度におることは、ひいては国保財政の赤字を救うことにもなりはしないかということで議論をしてるんですからね。何も財政的なことをだけ言ってるわけじゃないんですよ。
 そういうふうに退職者継続医療というものを――いまは任意継続というのが御承知のように二年あります。ありますが、本人が十割ですから、国保にいった方が安上がりなんですよ。それでみんな国保へいっちゃうんですよ。そして国保がだんだん退職者のたまり場になり、お年寄りのたまり場になって赤字になってるんですから、ここのところ、七十歳以上の老人健康保険制度をつくることもそれは必要ですが、それと同時にその間の問題です。五十五か六十からやめて、政府が言う七十までの間のことですから、老人保健をつくればそれで解決することじゃないんですよ。それじゃ解決しない、その間のつなぎの問題ですから。
 その点をひとつ、これも宿題にしておきますから、ひとつ早急にできるだけ、この次のときにはたとえばここまで検討してるとか、これはこういう時期にはひとつ国会の場に出したいとか、もしくは何々審議会に諮りたいとか、そういう前向きの答弁が聞かれるようにしてもらいたい。きょうは結構です、同じこと聞くだけ時間がもったいないですから。
 じゃ、次にまいります。次は、これは俗称の言葉でよく、老人保険料の歯どめ論と言われてますね、正確には負担の問題だと思いますが。これもかなり同僚委員からいろんな点が聞かれましたから、いま一遍私は憲法論との関係で、このことは、きょうは法制局もお見えになってると思いますから、お聞きをしたいと思います。
 まず、これまでの質疑を通じまして、老人保険料並びに拠出金の性格がある程度明らかになりました。また、これらの負担を国民に強いるについては、憲法第八十四条の租税法定主義の直接の適用はないが、当然その精神にのっとって課するものであると、こういう説明があったことは事実であります、これは同僚委員の質問で。
 ところで、私はお聞きしたいんでありますが、憲法は何ゆえに租税法律主義を明文をもって明らかにしているのですか、本条が特に設けられたことの意味はどこにあるというふうにあなたたちは理解をしておりますか。それぞれ関係者からこのことについてお答えください。
#230
○政府委員(工藤敦夫君) お答え申し上げます。
 ただいま先生、憲法八十四条を引用されましたが、憲法八十四条におきますいわゆる「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と、こういうふうに書かれておりますが、このいわゆる租税法定主義と呼ばれているものについては、もう改めて御説明申し上げることもないと思います。
 で、租税法定主義につきましては、従来からお答えをしてまいりましたところでございますけれども、租税が国民に対しまして公権力に基づきまして賦課される。こういうことにかんがみまして、各種の課税要件、これを法律において明確に定める。これによりまして、いわゆる租税の賦課徴収が法律に基づきます客観的な基準に従って行われ、その結果、恣意的な運用が排除される。こういうことを確保しようとするものでございます。
#231
○安恒良一君 じゃ、私からじかに設問しましょう。
 租税法律主義の本条が特に設けられました意味は、次の諸点に求められるべきだと思いますが、どうですか。
 一、租税法律主義または代表なければ課税なしの原則の確立のための長い問の闘いが、近代憲法をつくり上げる歴史の中の主要なテーマになったことが一つ。
 二つは、古く議会の課税同意権と立法権とは別個の権能として生成しまたは観念されたのであり、近代に及んで両者は融合したけれども、財政に関し特に一章を設ける以上、法律によらなければ義務を課せられないという原則を、最も重要で代表的な財政収入である租税について明らかに規定することが当然であること。
 第三、狭義の租税法律主義、すなわち租税の種類及び課税の根拠だけではなく、課税物件、課税標準、税率、納税義務者などもすべての法律の定めを要することを明らかにするものであること。
 私はこの租税法律主義を設けられた意味はそういうところにあると思います。これは私というよりも、日本国憲法について法学協会がこういう見解を統一しているのでありますが、このことは間違いありませんか。
#232
○政府委員(工藤敦夫君) 先生いまお挙げになりました三点につきまして、確かに法学協会の憲法解説においてはそのように書かれております。
#233
○安恒良一君 厚生省はこの点どう思いますか。
#234
○政府委員(吉原健二君) 法制局の部長が御答弁したのと同じ見解でございます。
#235
○安恒良一君 そこで、前段は整理されました。そうなりますと、国民に義務を課し、その権利を制限することは法律によらなければならない。第八十四条の本項の規定がなくても、法律によらないで租税を賦課することは許されないと私は解釈されると思います。
 この八十四条について種々の説明がありましたが、要は、法律によって国民の負担が明らかにされることが必要ではないでしょうか。その点はどうですか。
#236
○政府委員(工藤敦夫君) お答え申し上げます。
 確かに国民の負担といいます場合に、租税あるいは租税にかわるべき各種の課徴金、負担金、こういった性格のものでございますが、そういったものにつきまして、租税につきましてはこの八十四条で明らかでございますが、それ以外のものにつきましても、租税法定主義の精神にのっとりまして、法律で負担についてその根拠を明らかにするということは確かにおっしゃるとおりだろうと思います。
 ただ、その場合に法律上いかなる規定を設けますか、これにつきましては、その負担金の性格なり内容、こういったものに応じまして適切な判断が下されるべきだろうと思います。その場合に、負担の率あるいは金額そのものを法律に規定する方式以外にも、率あるいは金額の算定方式を明定する、こういう方式も許されると一般には解されております。
#237
○安恒良一君 そのことは、同僚委員が聞かれたとき、そこまであなたはもうすでに答えられている。
 いま、あなたが言われたことを要約しますと、八十四条の説明として、憲法が要求しているのは、「法律又は法律の定める条件」の解釈として二つの場合があるとして、一つは厳格に率、額そのものを明文化する場合、このほかに第二は負担の算定方法、仕方を明文化する場合も許される、これがあなたの答弁だったと思う。いまも大体それに近いことを言っている。過去にあなたが答弁したことを整理すると、こういうことになります。
 私は、あなたのというか、政府の法制局の解釈自体に賛成しがたいのです。賛成しがたいのですが、百歩譲って、少しここを議論してみましょう。百歩譲って、負担の算定方法、仕方を明文化することでも許されるとしても、それによって国民の負担がある程度推測される、あるいは計算ができる、その限度が明らかにならなければならないと私は思う。でなければ、法定主義にかなっているということは考えられないと思いますが、いかがですか。
 あなたが言われた第二のことを百歩譲って肯定しても、もう一遍言いますが、国民の負担がある程度推測、推計される、あるいは計算される、あるいはその限度が、ここまでだという限度が明らかになる、こういうことがなければ、私は法定主義にはかなっているとは考えられないと思いますが、いかがですか。
#238
○政府委員(工藤敦夫君) ただいまお答え申し上げましたように、率あるいは金額の算定方式というものを明定しました場合、それに従いまして一定の推測ができる、あるいは計算ができるというのは当然だろうと思います。また、そういった算定方式を明定するということによりまして、一応ここで言っております要請にはこたえている、かように考えております。
#239
○安恒良一君 そうしますと、現在いま厚生省が出されているやつで、国民が自分である程度計算ができ、推計ができ、その限度額が明らかになりますか。ならないじゃないですか。だから歯どめ論というのも出てくるわけでしょう。憲法で言われているのは国民ですからね。政府が計算したらこうなりますということじゃないんですよ、憲法で言われていることは。
 少なくとも国民がある程度自分の負担がどのくらいになるのか、もしくはどういう計算でどうされているのか、また自分の負担の限度はどのくらいになるのか。今回の法律で、国民として、老人保険料の負担分について、たとえばAという組合管掌におる国民が、自分はどのようになるのか、二年目はどうなるのか、三年目はどうなるのか。この法律が通ると、あなたたちのお考えでは、ずっとどんどん水ぶくれになっていくわけでしょう。それで、この憲法の精神で言われるところの、国民が法定主義に基づいて自分の負担額を推計できますか、もしくは計算できますか。もしくはその限度が明らかになりますか。その点はどうなんですか。これは厚生省と法制局、両方に聞きます。これはあなたたちは計算できるかもわからぬけれども、法定主義というのは、国民がそういうことをはっきりしなければならぬということで法定主義なんです。どうですか。
#240
○政府委員(吉原健二君) 具体的にたとえば政管について申し上げますと、五十七年度におきましては、この法律によりまする被保険者一人当たりの拠出金、つまり保険料相当分の金額は二千百八十六円程度になるということが、この法律に基づく算定方式で計算できる、あるいは推計ができるわけでございまして、それを料率に換算をいたしますと、政管の場合には千分の約十二・〇になるということでございます。組合について、個々の組合によっていろいろ老人の加入率等が違いますので、すべてのデータがここにあるわけではございませんけれども、個々の組合がこの法律に基づく算定方式で計算すれば、おのずといま申し上げましたような数字というものが推計をされるというふうに思います。
#241
○安恒良一君 だから私は法律論を言っているんですよ。「法律又は法律の定める条件」としては、負担の算定方法、仕方を明文化しなければならない。それは個々の組合の場合の個々の組合を指しているんじゃないんですよ。個々の国民が、自分が負担をするのにはどういう方法なのかということが明確にならなければ、この憲法の八十四条に言っているところの精神には適しないんですよね。あなたは政管の、平均を言っただけじゃないですか。個々の組合については、今度の計算方法でやったら全部違ってきて、しかもそれは組合で計算してもその年度だけしかわからないんじゃないですか。その明くる年度はもうわからないじゃないですか。そんなことでどうして八十四条の精神に合致するというのか。厳格に率、額そのものを明文化する場合、もしくは負担の算定方法、仕方を明文化する場合で、しかもそれは、私が何回も言うように、国民個々人が自分の負担がある程度推計できる、あるいは計算できる、その限度が明らかになる、そのことによって初めて八十四条というのは生きてくるんじゃないか。それはどうですか。
#242
○政府委員(工藤敦夫君) 一点お断り申し上げたいんですが、それはその八十四条の直接の適用ではないということをまず第一点で申し上げたつもりでございますが、その点が一点でございます。
 それからもう一点は、先ほどお答え申し上げました際に、恣意的な運用の排除ということが一つの大きなこの八十四条の精神だろうと思います。そういう意味から申し上げまして、先ほどのように算定方式が法定化されているという限りにおいては問題があるとは考えておりません。
#243
○安恒良一君 そういうことになるとまた堂々めぐりですね。八十四条の租税法定主義の直接の適用ではないと。しかし、あなたは当然その精神にのっとってという説明をされているんですよ。その精神にのっとって僕は質問しているんです。そうすると、その精神にのっとっても、個々人が自分のいわゆる負担の限度というのが計算もできなきゃ、負担の限度もない、わからぬ、推計もできない。それでどうしてその精神にのっとって課せることになりますか。直接適用じゃないが、しかし当然その精神にのっとって適用するんだからいいんだと。これ以外には、国民がこういうものを負担する場合の定めというのは憲法八十四条しかないんですよ。国民が負担をする場合には、保険料で出すのか租税で出すのか、もしくは料金で出すのかということになっていますね、これは。その三つの方法、それはいずれも、御承知のように、関係審議会の議決を経るものは経る、そして国政の場においてこの八十四条に基づいて議論をされて一つ一つが法律となっているんじゃないんですか。たとえば料金の場合に、国鉄運賃をどうする、郵便料金をどうする、税制の場合には税の税率をどうする、各種の保険の場合には保険料率をどうする、一部負担をどうするということは、すべてこの精神に基づいて国政の場で議論をされ、関係審議会の議論を経てそして国民に明らかにされておる。だから国民は、自分の負担の限度もしくは自分の負担しなきゃならぬものの計算、推計がすべてできるわけです。
 ところが、今回の場合だけは、厚生省の答弁を聞いても、個々の保険組合の場合には個々の保険組合で計算してもらえばわかる、それも当年度だけだと。来年どうなるかというのは当該の保険組合もわからぬ。しかも、あなたたちは、この法律を一遍通したら、永久にこの法律でどんどんやっていこうと。
 そういうことが本当に、大臣、いまの論争を聞かれていいことだと思われますか。八十四条に合致していると思われますか。私は、この八十四条の精神から言って、今回のこのやり方には非常に問題があると思います。大臣、ここのところ、いままでずっと論争を聞かれて、この点についてどう思われますか。
#244
○国務大臣(森下元晴君) 憲法第八十四条の精神にのっとり、できる限り法律に基づいて必要な定めをすべきものと考えております。このような考え方を踏まえまして法案を策定したものでございまして、租税法定主義に反するとは考えておりません。
#245
○安恒良一君 これも繰り返し答弁で、いま私が聞いたことをあなたは全然お聞きになってなかったんじゃないですか。憲法にはこう書いてあるんですよ。憲法の精神は、個人が負担をする国民の負担が、ある程度推測あるいは計算でその限度が明らかにならなければ、法定主義にかなっているとは考えられないんです。ところが、組合管掌であろうと共済であろうと、当年度分についても、組合で精密に計算をしないと各人の負担はわからないんですよ。そんなものがどうして法定主義になるんですかと、そういうことを私は聞いているんです。大臣がいま言った同じようなことを繰り返し繰り返し言われてもしようがないんだ。いま言われた憲法論争をずっと聞かれた中で、あなたの思想なり哲学なり聞かしてくださいよ。ただそんな繰り返しのことを言うんじゃなくて、こうこうこうだから、安恒君おまえの言っているところは無理だというなら無理だと言ってみてください、大臣。あなたはそんなことを、何回も同じことを、いままで同僚委員が聞かれたらメモ見て答弁しているんですから、それを聞こうと言っているんじゃない。それがため、私はきょうは、いままで同僚委員が議論した以上のところに踏み込んで議論しているんですからね、あなたの方も踏み込んで答弁してくださいよ。繰り返しのことを聞いていてもしようがない。大臣、どうですか。
#246
○国務大臣(森下元晴君) かなり踏み込んだつもりでございますけれども、どうも意に沿わぬようでございますが、八十四条の精神にのっとり、できる限り法律に基づいて必要な定めをすべきものと考えておるわけでございます。
#247
○安恒良一君 では、このことも、大臣ちょっときょうは、あなたもよくレクを受けてないようですから、後の宿題にしておきますから、ひとつもう少し次回のときには中身に論争が入れるようにお願いをしておきたいと思います。
 そこで、まず一般論として負担の算定方法を明文化することも許されると、こう言われていますね。こういう解釈をいまされました。それはどのようにそれが許される場合を限定するかを明らかにしてもらいたい。いかなる場合でもそんな解釈が許されるとは私は考えられませんが、どのような場合に、まず一般論として、負担の算定方法を明文化することでも許されると法制局も厚生省も言われたんですから、それが許される場合の限定ですね、これはどういう場合でしょうか、それをちょっと説明してみてください。
#248
○政府委員(工藤敦夫君) いわゆる算定方式を明らかにすれば許される、こういう場合でございますが、これは各制度制度によりまして、その実態あるいは性格、そういったもので枠が決まってまいりますわけでございます。そういう意味で個々の制度に即して考えるべきものだろうと思います。
#249
○安恒良一君 それじゃ具体的にお聞きしましょう。
 本法のように、今後どんどん年ごとに老人保険料というのが増大をしていきますが、これは厚生省も答弁で明らかになった。これが本当に、いまあなたが言われた負担の算定方法を明文化することでも許されるという八十四条の要求を真にかなえたことになるというふうにお思いになりますか。この点についてお聞かせください。
#250
○政府委員(工藤敦夫君) そのように考えております。
#251
○安恒良一君 私は非常にその点は問題があると思います。
 そこで法制局にお聞きしたいんですが、あなたはそのように考えると言うんですから、このような政府解釈に基づいて算定した仕方、方法でも許されるという具体的な立法例があるならお知らせください。これと同じような、あなたが言ったような精神で今日まで算定をしている仕方、方法等の立法例があるならお答えください。
#252
○政府委員(工藤敦夫君) ただいま突然のお尋ねでございますので、私も確たる立法例を挙げるわけにまいりませんが、私記憶しております範囲では、公害の健康被害の補償法、これの賦課金の算定は、たしか算定方式を政令に譲っていたと思っております。
#253
○安恒良一君 厚生省、ほかに研究していませんか。あなたたちはこれをおつくりになった方ですから、いままで過去において、公害被害者補償法のほかにこのような算定の仕方、方法でやっている立法例というのを御承知ありませんか。
#254
○政府委員(吉原健二君) 若干性質は違うかと思いますけれども、現在、健康保険法で健康保険組合が財政窮迫組合に対する共同事業というのをやっているわけでございますが、これは料率というものを法定をしておりませんで、その事業について必要な費用というものを各組合から拠出金をもって充てるということにしておりまして、その拠出金を料率でどういうふうにとっていくかというのは全部法律以下の問題にゆだねられている、そういう例がございます。
#255
○安恒良一君 法制局に聞きますが、労災保険法はどうですか。
#256
○政府委員(工藤敦夫君) 労災保険法につきましても、いわゆる労働保険の保険料の徴収等に関する法律におきまして、労災保険料率はたしか省令にゆだねられていたと考えております。
#257
○安恒良一君 あなたはまだ勉強してないということですが、あなたがおっしゃったように、あなたが言った一つは公害健康被害補償法ですね。それから審議官が答えたことは法律じゃないんですよ、それは。全然問題にならぬ。労災保険法もいま答えられました。しかし、これはこのような政府解釈に基づく算定方法とは違うんじゃないですか。いま二つの立法例のうち一つだけにしましょう。あなたが正確にお答えになった公害健康被害補償法、これは今回の老人保健法と同様であるというふうにお考えになるのがそもそも間違いですね。
 それはなぜかと言うと、そもそも公害については企業側に発生者責任があるわけです。だから当然責任を負うべきものでありまして、負うべき負担ですから、それはこれでいいわけです。私は八十四条に抵触すると思いません。そもそも公害については、企業側に発生者責任が明確になっておりまして、当然責任を負うべきものの負担でありますし、また労働災害補償だって事業主の賠償責任ですね。これは労働者には責任がないんです。ですから、賠償責任があります。
 これはこのような立法例があるだけでありまして、今回のように国民全体に負担をかけていくやり方というのは、過去には例がないんでありますが、その点はそれぞれどういうふうにお考えになりますか、法制局、厚生省。
#258
○政府委員(工藤敦夫君) 私が引用いたしました公害健康被害補償法の場合に、確かにいわゆる汚染を出します者が賦課されるという意味では御指摘のとおりかと思います。ただ、いわゆる公権力に基づきまして賦課金を課されるという場合のその賦課金の算定方法等につきましての考え方といいますか、法律上の規定の仕方というものにつきましては、これはいまのものと法律上の扱いとしては同じではなかろうか、かように思います。
#259
○政府委員(吉原健二君) 先ほどの健保組合の共同事業の例を申し上げましたけれども、私は今度の新しい法律の拠出金の仕組みと非常に似通っていると思っております。健保組合相互の間で一定の事業を組合間の全体の共同の事業としてやっていこうという場合に、その財源を各組合からの拠出金に求めているわけでございます。その拠出金を各被保険者なり事業主から保険料という形で取っている、その保険料をどうするかということは法律には書いてございません。やっぱりそれぞれの組合に任しているわけでございます。そういったことから、法律上の性格としては、この健保組合の拠出金に非常に似ている、むしろそれと同じように考えていいのではないかというふうに思っております。
#260
○安恒良一君 私が聞いていることにあなたは答えてないんだ。私は労災とそのことをどういうふうにあなたは思うかと聞いているんだからね。健康保険組合のことは健康保険組合の中でみんなで話し合って決めていることなんですよ、そんなことは。根拠法がどうかということを聞いているわけじゃない。健康保険組合同士で被保険者、保険者納得し合って話し合いをして決めている、自主的に決めていることですから、あなたたちのお世話になっていることじゃないんですよ、法律的には。そんなことを聞いているわけじゃない。
 そこで、時間が私、四十四分ということでもうありませんから、最後にこれを宿題にしておきますからお考えいただきたい。というのは、さっきの政府の答弁で、私並びに同僚の質問に対する答弁で、医療保険法がばらばらで、被用者保険だけなら料率が決め得たが、国民健康保険や日雇保険は、保険料率の定め方がまちまちであったり定額制をとっているので、どうしても料率で決められなかった、こう言ってあなたたちはその苦渋の胸の内を明らかにしたじゃないですか。ですから、今日でもこの負担の賦課方式が合理的だとは考えられないんじゃないでしょうか。いろんな問題があるということは、あなたたちは過去の私の同僚委員の質問の中でお答えになっているんですから、ですからこれは宿題にしておきます。この次のときに、どうしたらいま言ったようないろんな問題点がある中で合理的な負担、賦課方式、しかも憲法八十四条の精神にのっとった合理的な負担方法があるのかということは、次回質問までに研究をしておいてください。これは研究課題にしておきます。
 以上をもって私の質問を終わります。
#261
○委員長(粕谷照美君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 これにて散会いたします。
   午後四時四十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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