くにさくロゴ
1981/07/06 第96回国会 参議院 参議院会議録情報 第096回国会 社会労働委員会 第15号
姉妹サイト
 
1981/07/06 第96回国会 参議院

参議院会議録情報 第096回国会 社会労働委員会 第15号

#1
第096回国会 社会労働委員会 第15号
昭和五十七年七月六日(火曜日)
   午前十時二分開会
    ―――――――――――――
   委員長の異動
五月十四日粕谷照美君委員長辞任につき、その補
欠として目黒今朝次郎君を議院において委員長に
選任した。
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十四日
    辞任         補欠選任
     粕谷 照美君     本岡 昭次君
  出席者は左のとおり。
    ―――――――――――――
    委員長        目黒今朝次郎君
    理 事
                遠藤 政夫君
                安恒 良一君
    委 員
                石本  茂君
                斎藤 十朗君
                関口 恵造君
                田代由紀男君
                田中 正巳君
                福島 茂夫君
                村上 正邦君
                森下  泰君
                対馬 孝且君
                本岡 昭次君
                中野 鉄造君
                沓脱タケ子君
                藤井 恒男君
                前島英三郎君
                山田耕三郎君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  森下 元晴君
   政府委員
       厚生大臣官房長  吉村  仁君
       厚生大臣官房審
       議官       吉原 健二君
       厚生大臣官房会
       計課長      坂本 龍彦君
       厚生省公衆衛生
       局長       三浦 大助君
       厚生省医務局長  大谷 藤郎君
       厚生省医務局次
       長        山本 純男君
       厚生省薬務局長  持永 和見君
       厚生省社会局長  金田 一郎君
       厚生省保険局長  大和田 潔君
       社会保険庁医療
       保険部長     入江  慧君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
   説明員
       内閣総理大臣官
       房参事官     瀬田 公和君
       外務省国際連合
       局企画調整課長  野口 晏男君
       大蔵省主計局主
       計官       小村  武君
       文部省大学局医
       学教育課長    前畑 安宏君
       文部省管理局私
       学振興課長    坂元 弘直君
       厚生大臣官房統
       計情報部長    竹中 浩治君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○老人保健法案(第九十四回国会内閣提出、第九
 十五回国会衆議院送付)(継続案件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(目黒今朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る五月十四日、粕谷照美君が委員を辞任され、その補欠として本岡昭次君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(目黒今朝次郎君) 前回に引き続き、老人保健法案を議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○対馬孝且君 本日は、延長国会後一カ月有余の審議が行われるわけでありますが、二十五時間三十七分という審議が行われておりますし、したがいまして、できるだけ重複を避けまして質疑をいたしたいと思います。
 いずれにしましても、第一の質問としましては、わが党が提出をしております修正の主なる問題につきまして第一点に申し上げたいと思います。第二としましては、医師、歯科医師国家試験問題等の医学教育の問題について、第三は老人保健制度創設とその後の国民健康保険制度の問題、最後に保健事業に関連した具体的問題について承りたいと、こう思います。しばしば同僚議員から質問いたしておりますので、問題点を私はしぼって申し上げますので、政府側の明確な態度を、回答を、誠意を持ってお答えを願いたいと、こう思います。
 まず最初に、わが党の修正項目は、同僚議員もやっておりますが、もう一ヵ月も経過をしておりますので、それなりに政府側としても、この委員会を通しまして訴えのありました内容というものを整理されているというふうに考えます。したがいまして、まず第一の問題としましては、保健事業関係につきまして冒頭お伺いします。
 保健事業は、年次計画を立てて進めてきておりますが、事業量及び予算面において詳しく説明をひとつしてもらいたいと思います。この場合、特に都道府県はどういう役割りを果たすことになるのか。この点はしばしば言っていますけれども、その裏づけになる政策、手だてがはっきりしていない、こういう問題がございますので、この点まず第一点お伺いします。
#5
○政府委員(三浦大助君) 保健事業につきましては、昭和五十七年度の予算におきまして、本年の十月から実施するための事業費として四十七億一千四百万円ばかり組んであるわけでございますが、また保健婦の増員、あるいは施設設備の整備、あるいは市町村あるいは保健所における実施体制の整備を図るために必要な経費といたしまして九億三千八百万円を計上しておるわけでございます。さらに、市町村の保健センターとか、あるいは保健所等の関係施設の整備につきましては、保健衛生施設整備費で、五十一億円の中でひとつ対応していきたいというふうに考えておるわけでございます。
 厚生省といたしましては、これから市町村の実施体制を大体五年間で年次計画的に整備してまいりまして、五年後にある程度の事業の拡大を、市町村を一定のレベルに持っていこう、質量ともに向上させていこうと、こういうふうに考えておるわけでございまして、具体的に申し上げますと、五年間で保健婦を八千人確保いたしまして、あるいはまた市町村保健センターを一千カ所まで整備する、こういう基盤の整備を進めていきたいと考えております。
 それから、検診の方でございますが、たとえば一般検診、これは循環器の検診でございますけれども、この受診率を五〇%まで持っていこう。これは現在約二三%の受診率でございますが、それを五〇%まで持っていこう。それから、がん検診の受診率、これは子宮がん胃がんともに、受診率を三〇%まで引き上げよう。
 それから各市町村におきまして機能訓練や訪問指導が本格的に実施できるようにしたいと考えておりまして、これに必要な予算の確保につきましては、これから全力を挙げてまいりたいと思っております。
 こうした保健事業の実施に当たりましては、都道府県は、保健所を通じまして、実施主体でございます市町村に対しまして技術的な援助を行う、また必要に応じて、たとえば検診等につきましては、市町村の委託を受けまして、僻地とかあるいは離島にあっては市町村にかわって一部の事業を実施していこうということを考えておるわけでございます。
#6
○対馬孝且君 いま、予算面の裏打ち、あるいは保健婦を中心とする増員あるいは配置体制、こういう問題はそれなりに前進をしていると思うんでありますが、これは後で具体的な保健事業の中でより詰めてまいりたいと思います。
 いま言ったような体制あるいは予算の裏打ち、あるいは制度の確立、加えて人的な補充、こういう問題が明らかにされておりますが、それでは保険者が行うべき保健事業の目的、内容、そういうものが一体どういうふうに具体的に進められていくのか、ここらあたりもあわせてひとつお示しを願いたいと思います。
#7
○政府委員(大和田潔君) 保険者が行うべき保健事業につきましては私の方からお答えをいたします。
 まず、これは保険者によります積極的な保健サービスの推進、これは老人保健法上の責務とされておるわけでございまして、政管健保を初め、被用者保険各制度におきまする保健施設活動につきましては、これは今後とも被保険者等のニードに十分対応できるよう、老人保健制度における保健事業の内容にも配慮しながら、積極的に充実を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。たとえば政管健保につきましては、五十七年度予算におきまして、成人病検査の対象者数を一挙に七割増というふうにいたしておりまして、金額も五十六年が二十五億九千万、それを四十四億一千七百万というふうに飛躍的に増加充実をいたしまして、これの充実を図っておるわけでございますし、また健保組合におきましても充実を図るように積極的に指導をしておるわけでございます。そういった方向で一生懸命やってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#8
○対馬孝且君 問題は、後からも出てきますけれども、保険者の対策としましていまお答え願ったわけでありますが、もちろんそれはそれなりに結構なんでありますけれども、それが実際に計画どおり一体軌道に乗っていくのか、あるいは政管健保にしても、組合健保にしても、そこらあたりが実際にマッチしてそういう実行体制が伴っていくのかどうか。その確信をしばしばここで言われておりますけれども、どうもこの委員会の開かれたとき、法案を通すときはそういうことを言うけども、いざふたをあけてみると、なかなかそうは進行していない。過去の例も後から申し上げますけれども、そういう問題について、ひとつ局長として責任ある立場で、必ずいま言ったことは実施いたしますと、こういうことをきちっと確約をしてもらいたい。これどうですか。
#9
○政府委員(大和田潔君) この保健施設活動は従来から重視をしておるところでございまして、先ほども申しましたように、予算上の措置を五十七年度非常に飛躍的に増大いたしておりますし、これはもうぴしっと私どもやっていくという所存でございます。
#10
○対馬孝且君 それでは次に医療供給体制の問題についてお伺いします。
 これもしばしばここで同僚議員から言われておりますが、現在問題になっております老人病院が全国どのくらいか、その正確な実態をつかんでいるか。これの要点を簡潔でいいからひとつお答えを願いたいと思います。
#11
○政府委員(大谷藤郎君) いわゆる老人病院につきましては、制度上の定義というものはございませんが、一応老人を受け入れ、あるいはまた病床の大部分を老人が占めているような病院を、一般的に老人病院と言っているのではないかというふうに考えるわけでございます。
 こういった定義でいきますと、老人病院の数は、正確には把握しておりませんけれども、昭和五十三年の医療施設調査で、全国で四百四十六ヵ所、ベッド数にいたしまして、二万一千ベッドというふうになっております。また昭和五十六年末現在につきましては、現在集計を進めているところでございまして、いまのところ五十三年の数字ということでございます。
#12
○対馬孝且君 私も北海道で老人病院の関係の実態を調査してきましたが、今日的段階ではかなりこれはふえていると思います。これは北海道の現象ですけども、札幌市、政令都市になりました関係もありまして、人口がここに集中しているということはありますけども、ふえている。
 ということはどういう意味かといいますと、核家族体制の問題もちろんありますが、老人の特異性から来る老人病対策ということ、その必要性、老人病にこたえる意味でふえてきていると、これは事実だと思うんです。
 したがって、いま五十六年の締めはしていないと言うが、この点、これからの老人病院のあり方という問題、今後充実あるいは見直す必要があるのではないか。この点もし御感想があったらひとつお聞かせを願いたいと思います。
#13
○政府委員(大谷藤郎君) 確かに先生がお話しになりましたように、老人人口が増大しておるとか、あるいは核家族化による社会的要因等で老人病院がどうしてもふえているという現状はございます。
 しかしながら、こういった老人病院について、医療内容について十分いろいろ指導をやったらばどうかということが再々言われていることでございますが、いわゆる老人病院と言われている中には、確かに必ずしも適正な医療サービスが確保されていないではないかというような御指摘もございますので、私どもといたしましては、医療監視の徹底などを通じましてこういった問題について対処してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
#14
○対馬孝且君 この問題も具体的な問題でひとつ後で御質問したいと思います。
 老人と言えば、まあ五十を超えれば大体病気二つ、三つだれしも持っているわけでありまして、私自身も高血圧症状の状態に入ってきておりますから、そういう意味では、慢性疾患と言われる高血圧あるいは心臓疾患あるいは糖尿病という傾向がとみにふえてきている。もちろんがんはいま全国最高でございます。したがいまして、こういった慢性疾患の多い老人に対して、医療施設として中間的な施設というものを設ける、こういう積極的な手だてが検討されてしかるべきではないかと、こう思いますが、この点どういうふうにお考えですか。
#15
○政府委員(大谷藤郎君) 確かに先生おっしゃいますように、慢性疾患が多い老人のための医療施設というものについては、いろいろ工夫をしなければならないというふうに考えるわけでございます。医療供給体制を整備するだけでなしに、いわゆる保健対策、ヘルスサービスあるいは福祉施策というものと緊密な連携をとって総合的にこれに対処していかなければならないと、こういうふうに考えているわけでございます。
 したがいまして、私どもといたしましては、たとえば医療機関につきましても、リハビリテーション機能を持っている医療機関というものを整備しよう。あるいはまたその中で中心的に働いていくPT、OTといった専門職種の養成についても力を入れてこれを増加を図るようにしていく。また、常時医療を必要といたしませんが、介護その他のケアを必要とする者につきましては、いわゆる特別養護老人ホームあるいは在宅の福祉サービス、こういった福祉サービス、こういったもの、先ほど申し上げましたように医療と福祉との間で連携を図って、その間をスムーズに受け渡しをしながら総合的に地域で対処していくというふうな考え方で現在やっているところでございます。
 しかし、先生おっしゃいますように、いわゆる中間施設あるいはナーシングホームというふうなものにつきまして、これをさらにつくるべきではないかというふうな議論も私ども前々から伺っておるわけでございますが、この問題につきましては、医療法上の位置づけの問題、あるいは先ほど申し上げました社会福祉施設との関連の問題、それからさらにはその費用負担をどうするか、こういうふうな検討すべきむずかしい問題がいろいろございまして、私どもといたしましては、この面につきまして十分関係方面から御意見を伺いながら、中間施設問題については対処いたしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#16
○対馬孝且君 いま一応考え方が示されていますが、ひとつこれは年次計画をきちっとつくって――その地域地域の特殊性ももちろんあります。私は全国何カ所か歩きましたが、この中間施設がないというところは結果的には老人のアフターケアが行き届かない、いまもお話がありましたが、そういう施設のないところは結果的に老人サービスが行き届いていない。そういうことがひいては病気を悪化さして死を早める結果にもなっていると、こういう状況をしばしば訴えられておりますので、ここらあたりこれから促進をしてもらいたいということを強く申し上げておきます。
 次に、拠出金の歯どめ問題、これはここでもしばしばずいぶん議論になっておりますが、これはわが党の修正要求の一つの大きな課題にもなっておりますので、一ヵ月も先ほど申しましたように検討されているわけです。拠出金の増加を老人人口の増加程度にどう抑えていくか。原則的には三年間の据え置きということをして、上限問題は議論の詰めをいましていることは事実でありますが、この点について、その場合に不足分をだれが一体負担するのか。これは国で穴埋めをする、すべきではないかというのが終始一貫したわれわれの基本でございますので、この点についてひとつ明快なお答えを願いたい、むしろ前進的課題としてお答えを求めたいと、こう思っているわけですが、いかがですか。
#17
○政府委員(吉原健二君) 拠出金の歯どめにつきまして、与野党の間でいろいろお話し合いが進められているということは伺っているわけでございます。仮に老齢人口の増加程度に健保組合等の負担増をとどめた場合に、当初考えていた額との差をどうするかということが、確かに先生おっしゃいますように一つの大きな問題になろうかと思います。国でその分を穴埋めすべきであるという御意見でございます。
 そういった御意見も確かに一つの御意見としては私はあるかと思いますけれども、もともとこの拠出金の問題というのは、制度全体の仕組みから言いますと、医療費の全体の七割を保険者の拠出金で賄う、残りの三割を国と地方公共団体で賄う、こういった仕組みをとっておりまして、あくまでも保険者からの拠出金の中のいわば分担の問題ではなかろうかというふうに思うわけでございます。したがいまして、仮にこの新しい制度によりまして健保組合の負担増というものがふえる、そのふえるのに一定の上限なり制限をつけるとすれば、やはり保険者間の中でその分をどうするかというようなことになるのではなかろうかと、私どもとしてはそういうふうに思っているわけでございます。
 実際問題といたしまして、現在の国の財政の状況、そういったものを考えますと、なかなかその歯どめの穴埋めを国が持つということは、実際問題としても非常にむずかしい状況にあるのではないかというふうに私ども思っているわけでございます。
 それからちなみに、全体の制度の仕組みといたしまして、保険者が七割、公費で三割ということにしておりますけれども、現在現行制度は大体どういうことになっているかといいますと、実際問題として、現行の保険者の負担割合、保険者の拠出分というのは八割、公費が二割、こういう関係になっておりまして、この新しい制度におきましては、それを保険者の拠出分は全体として七割、公費が三割、こういうことにしている、初めから公費の負担部分を多くしているというようなことにもなっておりまして、その上さらに穴埋め分を国でというのはなかなか、御意見としてはわかりますけれども、むずかしいんじゃないかというふうに私どもとしては思っておるわけでございます。
#18
○対馬孝且君 これも議論されていることですからね。審議官、問題は歯どめのない上昇になっているというところに問題点があるのであって、これは重複するから私言いませんけれども、ここでも法定主義論争はずいぶん交わされているわけです。これは衆議院でもやりました、ここでもやっています。同じことを繰り返してもしようがありません。
 問題は、国がなぜ穴埋めをするかということは、これは七対三ということはもちろんそうなっていますけれども、要はそれをはみ出して保険者、被保険者の負担になるというところに問題があるのであって、それでなくとも組合健保は相当な赤字になっている、そこにまた赤字が増高していく。これでは正常な医療関係を維持するということにならないじゃないですか。その点は国が、基本としては、そういう場合は穴埋めをする、この方針に立たなければ、言葉であなたが医療の均衡とか医療の改善とかいろいろなことを言ってみたって、結果的には国は経費を削減して保険者に、被保険者に負担をかける、組合あるいは政管健保に犠牲を負わせる、あるいは一面では地方自治体に転嫁をさせる。こういうやり方では僕は、真の老人保健法を提起した意義からいっても問題がある。この点はもう一度考えて見直してもらわなければならない。
 特に、その場合において各制度の負担額が一体どの程度になるのか、これもひとつあわしていま一度答弁を願いたいと思います。
#19
○政府委員(吉原健二君) 現在の政府案によりますと、健保組合の負担増が初年度で七百八十億、満年度ベースの計算でございますけれども七百八十億、これが年々百億程度ずつふえていくということになっております。昭和六十年には約千九十億程度に健保組合の負担増、現行制度と比べた場合の負担増がその程度の額になるという試算をしているわけでございますが、健保組合につきまして仮に老人人口程度の負担増にとどめる、歯どめをかけるという措置をとったといたしますと、この七百八十億に対して毎年の負担増が、大体老齢人口の増加が三%程度、厳密に言いますと三・六%ぐらい、ここ三年間の平均がそうなるわけでございますが、三%程度でございますので、毎年の負担増がせいぜい二十億ないし三十億程度にとどまる、三年間でも百億以下ぐらいにとどまるということになるわけでございます。
#20
○対馬孝且君 いまそういうお答えを願いましたからあれですが、これは七百八十億、いまも話が出ました。しかしその推移をしていくとこれは大変なことになるのでありまして、これは組合健保パンクですよ、はっきり言って、そのままいったとするならば。いま言ったように、老人の人口増加率の分だけ一応線を引く、そこで抑えていく、こういう歯どめであれば、いまあなたが言ったように二十八億程度でしょう。そういう点で歯どめをかけるならかけるというきちっとした方針でひとつこの際、もちろん与野党でいま話し合いはしていますけれども、政府側としてそこまで歯どめをかける一つの態度として、いまあなたが出されましたけれども、そういうことでひとつ確認していいですか。この点はっきりしておきます。
#21
○政府委員(吉原健二君) 結構です。
#22
○委員長(目黒今朝次郎君) 確認します。
#23
○対馬孝且君 それでは次に、老人保健法の問題については時間的な関係もありますから、ちょっと後回しにさせていただきまして、時間の配分がちょっとございまして次に回したいと思います。
 それでは医師、歯科医師の国家試験問題の医学教育の問題につきまして掘り下げて質問をしてみたい、こう思います。
 まず、春の医師の国家試験の合格者が発表になりました。全国平均で七一・四%ということになっています。終戦直後の混乱期を除けば史上最悪の結果だ、こう言われているわけです。三十年代半ばから四十七年までは九〇%の高い数字にありましたが、どうもここ三年間、ちょっと資料提出を願ったわけでありますが、五十五年には八〇・四%、五十六年は七五・六%、五十七年度は七一・四%、こういう結果になっているわけでありますが、これは間違いであれば御指摘願って結構でありますが、こういう傾向が現実にある、この事実は間違いございませんか。この点はどうですか。
#24
○政府委員(大谷藤郎君) 先生御指摘のとおりでございます。
#25
○対馬孝且君 したがって、こういういま私が申し上げたような大変ばらつきが出ているわけでありますが、こういう結果についてどのように政府側、当局側としてお感じになっていますか、これをまずお聞きします。
#26
○政府委員(大谷藤郎君) 医師国家試験と申しますものは、臨床上の必要な医学あるいは公衆衛生というものにつきまして、医師として基本的な必要な知識、技能というものについての資格試験でございます。そういうわけで、医科大学において課程を修めました者は、当然合格するはずというふうに私どもとしては考えているわけでございます。
 しかしながら、先ほどから先生御指摘のとおりいろいろばらつきもございますし、そういった点がありますのはまことに残念なことでございます。
 しかし、人命を預かる職業といたしまして、これらの基準に達しない人が不合格になるということは、これはまことにやむを得ないものであるというふうに私どもとしては考えておりまして、医師国家試験につきましては、厳正にやっていくという考えでおるわけでございます。
#27
○対馬孝且君 いまやむを得ないものであり、厳正にという局長の答弁ですが、しかし試験問題が年ごとにむずかしくなったりあるいは重箱の隅をつつくような問題がふえたからだ、こういう意見もちょっと若干ありますけれども、しかし問題がむずかし過ぎて資格試験よりも選抜試験になっているという意見もあるわけですから、むしろ選抜試験という意見もあるわけですから、そういう点からいけば理屈にならないんじゃないですか。その点どういうふうにお考えになりますか。
#28
○政府委員(大谷藤郎君) 先ほども申し上げましたように、医師国家試験といいますものは、医師が活動を開始するのに必要な基本的な知識及び技能を問うものでありまして、これはいわゆる資格試験でございます。したがいまして、この試験問題の出題に当たりましては、先ほど先生おっしゃいますような御批判があるかもしれませんが、私どもといたしましては、いわゆる各科別の出題基準、ガイドラインというものをここ数年来、いろいろ大学の先生方にもお集まりいただきまして、非常に詳しいものを作成いたしておりますし、また常に妥当な範囲あるいは適切なレベルというものが保たれるよう、試験委員会で十分御審議いただいて試験問題を出しているというふうに考えているわけでございます。
#29
○対馬孝且君 ですから、私の言いたいのは、特にむずかしいということでなければ、原因が出題にあるという指摘は当たらないと思うんです、私は。そういう意味で、あなたもいまおっしゃっていますけれども、人命を預かる以上一定の基準というものが設けられているでしょう。当然合否の基準というものがあってしかるべきである。いまあなたも基準をつくってやっているみたいに言っているのだが、そういうことだとするならば、私の言いたいことは、それじゃ学生の質が一体低下したということになるのかどうか。世間一般の見方でもあると思うんですけれども、戦後は九〇%の合格率だった、しかし春の国家試験では四十六年から低落傾向を見せ始めまして、国立大学と一部の私立大学との合格率の差が非常に実は大きくなってきている。ただ、四十年代後半につくられた新設医大の巨額な、私に言わせれば、納入金を取って合格させるという、こういう弊害が今日端的に今回あらわれたのではないか。このことをどうお考えになっていますか。
#30
○政府委員(大谷藤郎君) 国家試験の合格率が下がってきているではないか、これについてどうなのかということでございますけれども、これにつきましては、一部には学生の質が低下したのではないかという指摘もございますし、また一方では医学医術というものがここ十数年来急速に進歩いたしまして、基本的なものだけにいたしましても、いわゆる医学情報量というものが急速に膨大なものになっている。こういう点もございまして、この低落傾向につきましては、いろいろな面から考えるべきものであるというふうに考えております。
 なお、先生お話しのように、巨額の納入金を取るという問題につきましては、文部省においてそうでないように指導されているというふうに聞いておりますし、今後とも厚生省としては、文部省としてそういうふうな御指導をいただくことが非常に大事なことではないかというふうに考えているわけでございます。
#31
○対馬孝且君 これね、局長、どう言おうと裏口入学で多額な納入金をした者が学校に入っていくという仕組みは、今回一回だけじゃないでしょう。しばしばこの問題は出された問題ですから、金を持って裏口入学をすれば医者になれる、そういう納入金のあり方に根本的なメスを入れない限り――質のいい、質を高める、あるいは素質を高める、実際に医者としての資格ある人間を形成していく、そこらあたりを何か隠蔽しちゃって、いや実は日進月歩で技術も進歩しているのだと。それも若干あるかもしらぬけれども、なぜこれだけ低下したかという、そこに一つの問題点がある。ここを追及するとかしないとかそんな次元ではなしに、素直にこういう実態というものを見直してみないと、根本的なこれからの対策が出てこないんじゃないか、こう思うんですよ。この点はどういうふうにお考えですか。
#32
○政府委員(大谷藤郎君) 私も先生がおっしゃることが非常に大事なことであるし、こういう点につきましては、先ほども申し上げましたように、文部省とも十分このような方向でやっていただくようにお願いをいたしたいというふうに考えているわけでございます。
#33
○対馬孝且君 率直にお認めになっていますから、これからまた、文部省も来ておりますから、文部省にひとつお伺いをしていきたい、こう思います。
 そこで、いま私が申し上げましたが、今回の合格率のワーストワンになった杏林大の場合ですね、これはどういうことですか。私に言わせると、新卒が九十九人に対して、浪人が八十七人というわけでしょう。これは間違いであれば指摘して結構です。浪人の合格率は一七・二%だと報道されていますよ。学校経営上できの悪い学生も受け入れ、卒業させざるを得ないというのが実態かもしれませんが、医師を養成する医科大学で三分の一程度の合格率では、学校の存在意義さえ問われるんじゃないか、私はこういうふうに言わざるを得ないわけであります。したがって、文部省としてどのような考えを持っているかということが第一点。
 それから大学の医学教育そのものが果たして十分医師の養成に対応していないのではないかという疑問を持たざるを得ません。したがって、この点について文部省として明確な見解をひとつ明らかにしてもらいたいと、こう思います。
#34
○説明員(前畑安宏君) お答えいたします。
 先ほど来先生御指摘の実態につきましては、私どももこれを素直に認めて、医学教育のあり方について全体として見直すべきであるというふうに考えておる次第でございます。御指摘のとおり、過去におきまして、一部の私立医科大学におきまして、入学者の選抜に関し若干不適切な事態があったということは事実でございまして、まことに遺憾であると思っております。
 しかしながら、先ほども厚生省の方から御答弁いただきましたが、私どもの方でも鋭意関係大学に対しまして指導に努めておりまして、今日においては、それぞれ建学の精神にのっとり、独自の教育方針に基づきまして、教育内容、教育方法にそれぞれ改善工夫を図りつつ、すぐれた医師養成のために鋭意努めているところというふうに承知をいたしている次第でございます。新しい大学ができまして、創立当初にはいろんな混乱があるわけでございますが、俗に大学ができて一本立ちするまでには三十年かかるというふうに言われておるわけでございます。そういう点で今後とも鋭意関係大学の充実につきましては指導に努めてまいる所存でございますが、どうぞひとつよろしくお見守りをいただきたいと思う次第でございます。
#35
○対馬孝且君 杏林大学の場合は、これは顕著な例だと思いますけれども、根本的にこういう問題は見直してみなければ、いまあなたも素直に認められたから、それはそれなりとしてあれですが、三十年かかるからというようなことを言ってもらってもどうにもならぬことであって、三十年それじゃどういうことをやってもいいのかということになるのであって、そうではなしに、いまあなたもお認めになったように、どうしたら人命、人の命を預かる医者としての養成あるいは資格というもの、教育を与えられるのか。このことが基本なんですから、それは長い目で見なければならぬということだけではなしに、むしろ根本的な、先ほども指摘しましたけれども、どこに問題点があるのかというその基本にメスを入れないで、ただ改革しますとか、あるいはやっていきますとかということじゃならないと思うので、この点は特に、あなたも認めましたから、ひとつ指摘をしておきたいと思うわけです。
 それで、この春の予算審議の際も、合格率が低いということは同僚議員から指摘がございました。これは予算委員会でも出ております。しかし合格率が低い学校に対する国庫補助、こういうことについてもう一回検討してみる必要があるのではないか。こういうふうに私は調査を依頼してみて、私なりに調査をしてみて実感するわけであります。合格率の低い学校の場合は、一人当たりの補助金は百五十万円ですね、間違いであれば御指摘願って結構です。百五十万円を超えていますから、したがって合格率だけではなくて、高度の倫理性とかあるいは技能を備えたよい医師の輩出を当然進めることがやはり基本でなければならないんじゃないか。こういうことから考えますと、国家試験に合格しなければ医師になれないわけですから、こういう点について文部省は一体どういうふうに今後検討を加えようとしているのか。ただ百五十万超えてとにかく金を出していりゃいいんだというものではなしに、先ほど言ったように、高度な倫理性あるいは技能というものを持たしてりっぱな医者としての資格を得させる体制なり、あるいは学校のそういう教育の充実というものを期す、そういうものが前提に立たなければならないんじゃないか。この点どういうふうにお考えになっておりますか。
#36
○説明員(坂元弘直君) お答え申し上げます。
 私大経常費補助金といいますのは、教育研究にかかる経常的経費につきまして、一定単価に基づきまして一定率の補助をしておるわけでございますが、学生に補助するのではなくて、学校法人にいわゆる機関補助をしておるわけでございます。
 そこで、算定の方法といたしましては、たとえば教員給与あるいは職員給与あるいは教員研究費等、それぞれの項目につきましてそれぞれの単価にそれぞれの人数を乗じて算定をしておるということでございます。そういうように基礎的に算定した額をさらに当該学校の教育研究条件に応じまして傾斜配分を行っております。
 ただ、教育研究条件がいいか悪いかという判断をする場合に、教育内容がいいか、あるいは教官の質が高いかどうかというのは、なかなか客観的に判断をすることが文部省としてはむずかしい。そこで、むしろ客観的に判断できる要素といたしまして、たとえば教員一人当たりに対する学生数が多いか少ないか、あるいは定員に対する学生収容人員が多いか少ないか、というようなことで傾斜配分の要素にいたしまして最終的な配分を行っておるわけです。
 たとえばいま御指摘のございました医師国家試験の合格率の低い学校を申し上げますと、定員に対する在学者の数が非常に多いということもございまして、傾斜配分上は大変不利な配分になっております。
 先生がいま数字を挙げました百五十万というのは、杏林大学の昭和五十五年度の一人当たりの補助額でございまして、医学部全体の平均補助額は二百三十万になっております。悪いところは百五十万程度、いいところは三百万も超えるような学校もございます。
 いずれにしましても、私どもとしましては、実は昨年の臨時行政調査会の答申で、五十七年度予算は、私大助成については本年度は五十六年度と同額以下に抑制するという答申をいただきまして、五十七年度の補助額が二千八百三十五億、五十六年度と同額になったわけでございまして、五十六年度と同じ配分方法で算定いたしますと、人事院勧告並みの給与アップ等を行うに必要な当然増経費が二百三十億ございます。その二百三十億をどうしても配分方法の改善で吸収しなければならないわけでございますので、私大経常費助成の配分方法につきましては、現在いろいろなことを考慮しながら、各方面の意見を聞いて慎重に検討しておる最中でございます。
 ただ、先生御指摘の医師の国家試験の合格率をストレートに配分方法にはね返さすというのは、たとえば教員養成学部の教員採用率をどうするのか、あるいは保母養成学部の保母になった率などを一体加味するのかしないのか、というような他の学部の問題もございますので、直ちに配分にストレートにはね返さすことは非常にむずかしい、検討すべき問題が多々あると思いますけれども、いずれにしましても、適正な配分方法の改善方につきましては鋭意検討してやってまいりたいと思っております。
#37
○対馬孝且君 いや、私言っているのは、何も合格率だけを言っているんじゃないんですよ。ただ問題は、今日こういう事態が、後から申し上げますけれども、国民が判断をしても納得できないような国家試験の漏洩問題なども今日あらわれてきている。そういう実態を掘り下げて検討していった場合に、ただ均等配分――もちろん傾斜配分もそれはあるだろうけれども、そのことだけによって、つまり先ほど言った高度の倫理性であるとか、あるいは技能のあれというものを充実していくことになっていかないんではないか。そこらあたりをもう一回再検討する場合に十分見直して、素質を高めるということも要素に入れながら検討を加えていくべきものではないか。こういうことを言っているわけですから、それが証拠に、今日の段階で、率直に申し上げますけれども、大学の医学部が国家試験の場合はもう予備校化しているんじゃないか、こういう批判さえ実は出ている時代でありまして、この点を含めて再度どういうふうにお考えになっているのか、ひとつお答えを願いたいと思います。
#38
○説明員(坂元弘直君) 先生のおっしゃるところは私ども十分理解しているわけでございますが、先ほども申し上げましたとおりに、当該学校が倫理性の高い医師を養成するための教育を行っておるというような判断は、抽象的な判断でございますので、そういう判断を文部省がして、直ちに補助金の額に何らかの差を設けるというのは大変むずかしい、正直申し上げましてむずかしさがあるわけでございます。
 そこで、先ほど申し上げましたような教育研究条件の維持向上に非常に努力をしておるということが客観的につかまえ得る、そういう数字で傾斜配分も行っておるわけですけれども、さらに、先ほど説明するのをちょっと漏らしましたが、そのほかに特別補助という制度をやっておりまして、これは学術の振興あるいは特定分野あるいは特定課程の教育につきましてすぐれた教育研究を行っているような場合に、特別補助として増額配分をするようなシステムがございます。先生が御指摘になったようなところは、むしろその特別補助の方で十分検討すべき課題かと思います。
 それで、私どもとしまして、先ほど申し上げました今後の配分方法の改善の中に特別補助のあり方を含めて検討課題といたしておりますので、先生が御指摘になったようなことを踏まえまして、特別補助のあり方を検討する際に参考にさしていただきたいというふうに考えております。
#39
○対馬孝且君 いまそういうことで特別補助、私言っているのも固定的なことを言っているんじゃなくて、要は先ほど言った素質の問題あるいは国民が信頼を託せるような医者をつくり上げていくということが目的なんですから、そういう意味で、特別補助でやることも結構です。そういう問題を含めて再検討、見直してみるということでよろしゅうございますね。――はい、わかりました。
 それでは次に、医師過剰時代に入りつつある現在、国民が強く望んでいるのは、何といっても、いまも話が出ましたけれども、安心して自分の生命を託することができる、そういうお医者さんをどうやってつくるかということに国民の願いがあるわけでありまして、したがって巨額の入学金を積んで入学して、何年も浪人してやっと国家試験に合格したような医者というのは、心身ともにきわめて不安定じゃないか。
 これは率直な例を申し上げますけれども、今回の国家試験が十三回目という人がいるんですね、十三回。国家試験十三回ですよ。十三回受けたというのが八十五人いる。こういう実態は一体どういうふうにお考えになっているのか。これは私はちょっと意外性を感ずるんだけれども、まあ三回や五回は、仏の顔も三度というのはよくあるが、十三回と聞いて私はびっくりしているんですよ。十三回も国家試験を受けたのがいまだに八十五人もいる。こういう実態を一体どういうふうに踏まえてお考えになっておるのか、これをひとつはっきりお示しを願いたいと思います。
#40
○政府委員(大谷藤郎君) 一部少数の者が何年も浪人いたしましてやっと国家試験に合格するというような事態につきましては、私どもも決して好ましい状態ではないというふうに考えております。しかしながら、大体医科大学の卒業生は卒業後三回目くらいまでの国家試験で九七%が合格しているわけでございまして、何回も受験するという者はきわめて限られた数であるというふうに考えているわけでございます。
#41
○対馬孝且君 局長、今回で十三回受けたのが八十五人いるんじゃないですか。これ間違いですか。間違いないでしょう、このことについては。ほかの者はおったにしても、私が言いたいのは、こういう十三回が八十五人もいるという問題について、いや九十数%まともに三回程度で受かっていますと言ったって、この段階に来れば――何もその努力した者に対して私はそれを無にするということはもちろん言わない。これは青年の、あるいは人間の一生かけての願い、あるいは本人の意思、それから終生を込めた信念、これは私も尊重しますよ。しかし命を託するというこれはほかの職業と違うわけですからね。
 そうしますと、十三回が八十五人もいるとするならば、私は少なくともこの場合は、医師国家試験の厳しい水準に達しないということであるとすれば、私は当然受験年数の制限というものを設けることを検討すべき段階に来ているんじゃないか。これではわれわれとてもおっかなくて命を預けることはできませんよ、はっきり言って。そういう問題についてただマンネリ化している。今回の場合なんか典型的な数字でしょう。これははっきりしている。これをノーマルな状態と言えますか、はっきり言って。そうでないとするならば、私が申し上げますように、少なくとも受験年数の制限等をこの際検討してみる段階に来ていると、私は素直な意味で言っているんですよ。この点どうですか。
#42
○政府委員(大谷藤郎君) 確かに先生お話しのように、受験回数を制限するということはあるいは一つの御意見であるというふうに考えるわけでございますが、憲法におきます職業選択の自由というふうな関係もございますし、これを制限することはなかなかむずかしい問題があるのではなかろうかというふうに考えております。しかし、なお今後、私どもといたしましては、国家試験の改善委員会というのを計画いたしておりますが、この改善委員会におきまして、この問題につきましても検討していただくように考えたいと存じております。
#43
○対馬孝且君 大臣ね、当局側とのやりとりを聞いていまして、こういう実例というのはどうですか。何も私は憲法上の職業の選択の自由を侵そうとかそんなことを言っているんじゃないんです。少なくとも国民が安心して命を託せる、人命を預らせる、そういう資格ある先生方、お医者さんをつくり上げるんだと、こういう基本から考えるならば――適・不適格はありますよ。適・不適格は何人を問わず僕はあると思う。しかしいま言った十三回も受験した人が八十五人もいるという状態で、私は先ほども申し上げるように、本当に国民がそうだなと信ずるお医者さんに仕上げることができるのか。ここは私は、国民の命を預かる医者としての資格たるゆえんについて大事にしてもらう。もちろん本人の選ぶべき道は、また他に選ぶ道も指導してやる。こういうふうに一定の段階で検討すべき段階に来ているんじゃないか。こうやりとりを聞いて、大臣も賢明な方でございますから、どういうふうにお考えですか。
#44
○国務大臣(森下元晴君) いろいろ資格を取るために試験制度がございますが、その中でも国家試験は最高の権威を持ったものでございまして、厳粛に公正にまた明朗に行わなくてはいけない。このように思っておりますし、特に生命を預かる、健康を預かる医師とか歯科医師の国家試験については特別の配慮をしなければいけない。そういう趣旨からして、私は個人個人の資格を取りたい方の人権も大事でございますけれども、そういう方方に自分の命を預ける方々の人権ということを考えました場合に、その資格については特別の配慮と申しますか、安心感の上に立つ制度を設ける必要がある。
 そういうことで、いま十三回も受けられたという特殊な例を挙げられましたが、この問題は国家試験の、先ほど局長も申し上げましたが、改善委員会等でも論議の対象になっておるようでございます。この医者は十三回目に通ったというレッテルを張るわけでございませんし、患者としては非常に心配されておる。一般国民も自分の健康を守るために心配しておるわけでございますから、一定の歯どめをかけることも一つの考え方であるんじゃないだろうか。ただ、非常にこれはむずかしい問題でございますから、十分前向きで検討課題の一つに加えていきたいと、このように思っております。
#45
○対馬孝且君 いま大臣言われたが、人間の人たるに値する職業の基本的な選択というのは、私もこれはもう最優先すべき問題ではありますけれども、何といっても命を託するという、人命を安心して任すことができるというこのことが、このことだけは待ったなしだ。これをやっぱり基本にして改善委員会で大臣も前向きでひとつ御検討してもらいたい、これは強く申し上げておきます。いま大臣からございましたので、そういうことで了解をいたします。
 それでは次に、厚生省に近く国家試験改善委員会が、いまもお話がございました、春と秋の国家試験の一本化という試験のあり方の検討を開始するという、省内には問題の本質がまだいまだに解明できておりませんけれども、これがつくられるということになっております。
 そこで現在のあり方ですね、期待される医師像というもの、期待される医者像というものをいかなるレベルで、どのような方法で、どのような時点を目途に接近をするか。それがすなわち卒前教育、卒後の研修、国家試験の間にいま緊密な連携が行われていないところに問題があるのではないか、こういうふうに感ずるんですが、この点どういうふうにお考えになっていますか。
#46
○政府委員(大谷藤郎君) 全く先生御指摘のとおり、医師国家試験をよくするためには期待される医師像がどういうものであるか、またそれに到達するための大学教育あるいは卒後研修、あるいは生涯教育、こういう中で医師国家試験というものをどういう位置づけをしなければならないか、そういった点につきまして総合的に検討して、総合的な中でこれを考えていかなければならないというふうに考えるわけでございます。
#47
○対馬孝且君 いま総合的に考えていきたいという認識では局長と一致しております。したがって、次にそれじゃお伺いをしますが、いま申しました医の倫理を実践をし、日進月歩の医学の発展に即応するためにはどうしても生涯教育というものが必須となるであろう、私はこう思います。したがって、医師の素質を考えれば、医科大学の入学試験方法にも十分検討の余地があるのではないか、これが一点です。
 それから単に国家試験を医師として社会に出る関門としてのみ問題をとらえるのではない、こういうとらえ方は間違いではないかどうか、こういう認識をしておるんでありますが、この点お伺いをしたい、こう思います。
#48
○政府委員(大谷藤郎君) この点につきましても、私も全く先生と同じような考え方を持っておりまして、確かに優秀な人に医科大学に入っていただくということが一番大事なことではないかというふうに思いますが、この点については文部省の方からの御意見を伺えばどうかと思います。私どもといたしましては、当然それはそういうことでなければならないというふうに考えるわけでございます。また医師国家試験というものは、それが終わればもうすでに社会に出て医療を行うという関門で、もうそれが終わったというふうなことには私どもとしては考えておらないわけでございます。
 先ほど来再々申し上げておりますように、臨床医学上あるいは公衆衛生上必要な基本的な知識、技能というものを一応そこで認めたということでありまして、さらに社会に出てりっぱな医師としていろんな分野で御活躍いただくためには、卒後研修あるいは生涯教育、こういうふうなことが十分行われて初めてりっぱな医師として活躍をしていただけるというふうに考えているわけでございます。
 厚生省といたしましては、そういうわけで卒後研修には多大の費用を投じておりますし、また生涯教育につきましても、おくればせでございますけれども、ここ数年来地域医療研修センターというものを設置しようということで、すでにモデル的に実施してきているところでございまして、今後とも医師国家試験と卒後研修、生涯教育というもの全体として、よき医師、社会で本当に働いていただける医師というものの資質を向上していくように努力いたしたいというふうに考えております。
#49
○対馬孝且君 いま総合的体制をつくりながら充実を期していきたいというお答えですから、認識は私と一致する、質問に対してそのとおりであるということですからね。
 それで、文部省も来ておりますから、一緒にこれは伺った方がいいと思います。
 私は、この国家試験の問題はわが国の縦割り行政の弊害によるんじゃないかと、こういうふうに断定をしたいと思うんです、これはっきり申し上げて。そればわが国の医師養成制度、いまも局長がおっしゃいましたが、いわゆる卒前教育あるいは大学教育は文部省ですね。国家試験並びに卒後の研修の方は厚生省所管。こういう二つの縦割りになっているわけです。したがって大学病院は前者で、あるいはその他の病院は後者だと、こういう区分けに実はなっているわけでありますが、本来医学教育が先ほど言った医の倫理に立脚をいたしますならば、生涯教育を前提とするものである限り、卒前卒後を踏まえて一貫した方針のもとに教育が行われるべきものである、こう私は考えます。
 したがいまして、これは文部省、厚生省にまたがる医学教育の問題ですから、いま局長も総合的な教育というものを検討したいとおっしゃっていますから、したがってそのための機関設置がやっぱり必要ではないか。このことをお伺いしたいと思うんでありますが、答弁を願いたいと思います。文部省にも同様に、この認識、見解を含めて、文部省としてどうお考えになっているか、これをひとつお伺いします。
#50
○政府委員(大谷藤郎君) 確かに先生御指摘のように、医師の教育から生涯教育に至るまでのいろんな過程におきまして、文部省と厚生省とに所管が分かれている点はございます。しかし、この所管の問題につきましては、歴史的、実務的ないろんな要素がございましてこのようになっているわけでございまして、現状といたしましては、私どもはたとえば厚生省の医療関係者審議会、あるいは医師部会、歯科医師部会その他の部会には文部省の大学局長にお入りいただいておる。あるいはまた文部省が設置しておられます大学設置審議会あるいは大学局の視学委員会というのには、厚生省の私がこれに委員として参画いたしておりまして、そういった所管の違いはありましても、できるだけ実務的には一貫した体系でやっていこうというふうに努力をいたしておるわけでございます。先生おっしゃいます意味は十分わかりますので、私どもとしては今後とも一層両省の連携に努めなければならないというふうに考えるわけでございます。
 なお、この医学教育についての検討する機関というものを総合したらどうかと。これはかつて大学の医学部長・病院長会議でもそういった考え方が一時提案されたこともございますが、何分こういう所管の問題というのは大変むずかしい問題でございますので、私どもとしても、これは今後の問題として勉強をさせていただきたいということで御答弁させていただきたいと存じます。
#51
○説明員(前畑安宏君) ただいま厚生省の方から御答弁いただいたとおりに私ども考えております。
#52
○対馬孝且君 いずれにしても、いま総合的な連携プレーという形で現在も行われている。行われているが弊害が出てきているわけですな、どう言ったってあなたも認めたように。弊害があるとすれば、現在の連携プレーだけの体制でいいか。私は、この段階で思い切った総合的な機関の見直しをしてみる必要があるんじゃないか、こういうふうに考えるわけですよ。これはずいぶん緊密に連携していると言いながら、事実はこれは逆現象に、マイナスの現象になっているわけですから、こういう事実があるから、これから申し上げる問題が出てきているわけですから、それを克服するとすれば、従来の機構あるいは委員会、そういうものでいいのかどうか、むしろ見直す段階に来たんじゃないか。そのための何らかの総合的な機関設置というものは検討されていいんじゃないかと、こう思うんですが、これはむしろ大臣にひとつお伺いしたいと思います。
#53
○国務大臣(森下元晴君) 御意見ごもっともでございまして、この点私は、臨調答申の内容の中にこういう問題が入っていないかどうか、まだ実は見ていないんですが、当然そういう問題が入るべきだと実は思っておるわけなんです。
 そういうことで、教育は文部省管轄である、しかし国家試験以後は厚生省の管轄である。しかも生涯における医学の進歩とか医療器具の進歩によって、この教育を受けなくてはとうてい――人命を預かる聖職でございますし、患者また国民全般の安心感、また安全感という点から考えましても、非常に重要な問題でありまして、ここらあたりで医の倫理、また医学の論理、そういう問題も含めて見直すべき段階が来ておると、このように思っております。
#54
○対馬孝且君 大臣からいま全く見直す段階に来ているということでございますので、ひとつ積極的にこれをこれからそういう方向に実現できるように進めていただきたいということを申し上げます。よろしゅうございますか。
#55
○国務大臣(森下元晴君) いま申し上げましたとおりでございまして、対馬委員の御趣旨に賛意を表したいと思っております。前向きで検討いたします。
#56
○対馬孝且君 次に、私は、今回の医師国家試験でもう一つの大きな問題になりました今春の歯科医師国家試験で、出題の一部が事前に漏洩した問題を明らかにしたい、これを解明しておきたい。国民の立場からもはっきりしなければ、将来本当に命を託し、人命を託することができない、ほうはいとしてこういう国民の声が高まっておりますから、これをこれから解明をしてみたいと、こう思います。
 昨年の医師国家試験で一部が漏れたということに続いて、今回は二度目ですね。これは皆さんも御承知のとおりだと思いますよ。したがって、国民の国家試験への信頼を損ない、医師への不信に拍車をかけたゆゆしい問題である、こう私は思います。しかし社会的に与える影響が非常に大きくて、マスコミは各社ともそれなりの主張の場で論調を実は出しております。これは御承知だと思います。ただそれだけに社会的な影響を与えたことは非常に大きい。それなのに厚生省は、去る六月二十二日の記者会見で、事実上この問題は終息をいたしました、つまり終息宣言を明らかにした。厚生省のこれまでの調査の結果は一体どうなっているのか、これを国民の前にひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
#57
○政府委員(大谷藤郎君) 春の歯科医師国家試験をめぐりまして、一部疑惑を招くような事態を生じましたことはまことに遺憾に存じております。
 歯科医師国家試験の一部が漏洩したのではないかということが新聞に報道されまして以来、厚生省では関係者から事情聴取を行うなどその疑惑の解明に努めてまいりました。その過程で、国家試験委員である教授が、学生に対して講義されました内容や、あるいは補講に当たりまして重要事項として指示をされたというものが、国家試験出題に関する情報となりまして学生の間に伝わり、これが新聞に報道されたような事故につながったものではないかという疑念を持つようになったわけでございます。
 これは非常にむずかしい問題でございますが、国家試験に携わっていただく試験委員である教授と大学の教育に携わっておられます教授とが同一人である。こういう微妙な関係でありまして、教授が教育として行われた分野、これが国家試験の出題につながるのではないか。非常にこれは微妙な問題でございますが、私どもといたしましては、国家試験に携わっていただく教授とされては、こういった疑惑がないように絶対にその教育において厳正に行動をしていただきたいというふうに考えているわけでございます。こういった点につきまして、若干こういった点に疑念を持つ、疑念の事態があったということにつきましてはまことに遺憾に存じております。しかし、これが直ちに歯科医師法の第三十条に言いますところの試験問題の漏洩があったと断定するというには、これはなかなかむずかしいのではないかと、こういうふうに私どもとしては判断をいたしておるところでございます。しかし、各委員の先生方に対しましては、国家試験に対する厳正と公平を欠くおそれがあるような行為につきましては、厳にこれを慎んでいただきたいというふうに強く要請いたしたところでございます。
 また、この調査の過程におきまして、国家試験の受験を控えました学生の間でいわゆる国家試験対策活動なるものが非常に盛んな大学がある、また試験委員の属する学部関係者との情報交換など、国家試験の公正を疑わせるような行き過ぎた活動もあるというふうに把握いたしました。しかし、以上のようなことから不正受験があった事実を特定するまでには至らない、こういうことがありましたけれども、これが直ちに不正受験であるというふうには特定はできない。できなかったのでございますけれども、私どもとして厳正を期すべき国家試験のあり方といたしましては、これは一つの問題点であるというふうに考えておりまして、以上申し上げました点について今後厳正に改善をいたしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#58
○対馬孝且君 いま答弁いただきましたけれども、まことに遺憾であった、問題点はこうだ、歯科医師法三十条に従って云々と、こうありましたが、私はこの問題というのは構造的、本質的な問題を持っていると思います、このことについては。それじゃほかの公立大学の場合、多々いままでありますけれども、あった場合に完全に、あれでしょう、これは民事なり刑事の事件まで発展した例が多いでしょう。何もそのことを私はためすがために言っているんじゃなしに、その受けとめ方について僕はやっぱり甘さがあると思うんですよ。
 これから具体的に一つずつお伺いしますが、まず私は、この歯科医師の国家試験問題の漏洩事件は非常に不可解だ、不愉快だという感じを率直に持っておりますね。それは医道の荒廃を防ぐ意味でも徹底的にけじめをつけなければならない。そのためには、いま局長が答弁しているんですが、けじめになっていないんじゃないかと、はっきり言ってこれは。そういう感を私は深くするし、どうもうやむやな終息ではないかということを言わざるを得ないんです。これは後から一つ一つ具体的に挙げます。
 したがって、人間の健康、生命がかかわる問題ですから、これに携わる医師の国家試験がこれほどずさんであるとすれば、これは単に歯科医師だけの問題ではない、これははっきり申し上げて。医道全体に及ぶ問題である、きわめて重大な問題として受けとめなければならない。こう思いますので、大臣、まず冒頭この考え方についてどう受けとめているのか、大臣からお伺いします、認識について。
#59
○国務大臣(森下元晴君) 今回の国家試験漏洩問題につきましては、私からも、まことに遺憾でございましたと、これは深く私も反省を込めまして申し上げたいと思っております。
 おっしゃるように、今回の問題は、歯科医師の今回だけの問題ではなしに、過去におきましてもそういう例も実はございましたし、またこの処置につきましても、おっしゃるように一件落着というような明快な幕切れでなかったことも、実は私自身も個人的には承知しておりますけれども、いわゆる行政の調査のでき得る限りの範囲内で、厚生省医務局長以下係官、全力を挙げたことは私も刻々報告を受けまして承知をしております。
 問題は、今後こういう問題が絶対に起こらないようにすべきである。いろいろその過程において該当の科の試験委員の方々連帯責任のようなかっこうでやめていただいたり、いろいろいたしましたけれども、これですべてが終わったんではない、私はそういうふうに受けとめて実はおるわけでございまして、二度とこういうことが起こらないように――確かにこれは医の倫理、医の論理に関する大変重要な問題でございますから、十分今後とも気をつけていきたいと同時に、冒頭申し上げましたように、まことに遺憾な事件であったと、このように反省もしております。
#60
○対馬孝且君 しかし、大臣から、深く反省をし改善をしたい、医道に反するという立場で一定のあれをしたと言うんだが、これは挙げれば、枚挙にいとまないほどありますよ。
 ひとつそれじゃ具体的に局長にお伺いしますが、事件発覚の端緒になったのは、一部の新聞にも報道されましたけれども、国家試験の前夜にホテルに泊り込んで、二百人も学生が都内の一流ホテルに集合して、そこで特訓を受けたという実態が明らかになっているわけでしょう。こんなことが許されますか、ほかの学部学科であったって。これ自体が私は構造的に問題があると思うんですよ。こういうなれ、習慣、そういうものが許されるというその構造的なものに問題があると思うんだ、私は。これはひとつはっきり言っておかなきゃならぬことで、これは文部省もあわせて答弁してもらいたいけれどもね。
 それからもう一つは、これははっきり申し上げますが、本当にそういう実態があり、今回の試験がなされて、しかも厚生省に本当にそういう謙虚に反省があるとするならば、この事件発覚した後に春の試験の合格者を発表しておるわけですが、これはどういうことなんですか。もしこの事件が出なければこれは別だけれども、事件が出た直後にことしの春にやった試験の合格者を堂々と発表する。その内容そのものに問題があるという疑惑が出ているさなかにこういうものをやるという実態の中に、私は先ほど言った厚生省のこの国家試験に対する構造的な欠陥がある。
 そのことを私は具体的に一、二指摘したいんですが、こういう問題についてどういうふうに受けとめておるかということと。それなら本当にこの問題を考えるのであれば、合否の判定の見直しをやり直せばいいんですよ、私に言わせれば。そうでしょう。裏からこういうことをやって、先ほど私冒頭申し上げましたように、そういう裏口入学的な金も使ってやった、そういう仕組みと構造が積み重なってここへ到達したと。もちろん断定したわけじゃないが、そういう要素があると思う。そうだとするならば、その受かった学生の合格点というのは正しいのかどうか。正しくないと思うんだよ、はっきり具体例としてこういう事実が明らかになっているだけに。
 私はこれは不平等だと思うんですよ。まじめにやった者と、そういうものをやって試験を受けて、ただで受けて、全部手のうちわかって、はい御苦労さんというような、片一方はあくせく苦労して勉強しながらもこれが受かっていかないと。これは私はほかのことと違うと思うんですよ、はっきり申し上げて。人間の生命を託するだけに私は言っているわけだ。そうだとするならば、これは先ほど言ったように、春の試験で、この事件が発覚した直後にすぐ合格者を発表していく、片一方では一流ホテルに二百人も集めて特訓をしている。こんな例、これ自体が私は問題だと言うんです。それならやり直すべきですよ。もう一回合格点に達しているかどうかということをやり直すべきだ。その点どういうふうにお考えになっていますか。
#61
○政府委員(大谷藤郎君) まず、前段の点でございますが、受験生が都内の一流ホテルに集合して特訓を受けている実態についてどうなのかということでございますが、先ほども医師国家試験で申し上げましたように、歯科医師国家試験と申しますのは、歯科医学及び口腔衛生に関して歯科医師として基本的に具有すべき知識、技能について資格試験を行うと、こういうことになっておりまして、国家試験の問題も歯科大学におきます通常の授業内容を前提にして出題しておると、こういうことで、当然合格になるべきものであるというふうに考えるわけでございます。国家試験を控えまして学生が受験対策に当たるということは、ある程度やむを得ない点もありますけれども、先ほどから御指摘のような行き過ぎの点につきましては、文部省とも御相談して、文部省の御協力を得まして、関係方面に、こういった行き過ぎについて、是正につきまして要請をいたしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
 それから合否判定の見直しをすべきではないかと、こういうお話でございます。この点につきましては、確かに今回調査いたしました過程で、一部大学におきましてその講義の内容や、あるいは補講におきます重点項目の指示等が、いわゆる学生の情報メモにつながったのではないかという疑いが持たれているわけでありますけれども、そのことによって不正な受験が行われたとする事実にまでは特定ができなかったわけでございます。したがいまして、今後ともこういった問題については絶対に、厳正と公平を欠くおそれのある行為については絶対にこれは慎んでいただくというふうなことで、今回の問題につきましては、特定できなかったということで、合否判定の見直しはいたさないというふうに考えているわけでございます。
#62
○説明員(前畑安宏君) 先ほど来国家試験の合格率につきまして種々御論議をいただいたわけでございますが、医師あるいは歯科医師となることを目指しまして医学部なり歯学部に入学した者が最終的に国家試験に合格できないというような事態につきましては、本人のみならず社会的にもまた大変残念なことであるわけでございます。したがいまして、学生なりが国家試験に合格をするためにいろんな努力をするということは、それはそれなりに私どもとしても理解できないわけではございませんが、先生御指摘のように、そういう情報収集活動といった、ある意味では必ずしも医学、歯学の本質にかかわらない活動をした者と、そういうことを行わないでじみちに勉強をした者との間に、差がつくというようなことが仮にあっては、大変遺憾なことだと考えておる次第でございます。本質的にはそういったことがないような国家試験ということが行われれば最も望ましいわけではございますが、当面、先ほど厚生省の方から御答弁ございましたが、私どもの方に何がしかの協力のお話がございますれば、厚生省とも十分協力をさしていただきまして、しかるべく対応について検討をさしていただきたいと、このように考えております。
#63
○対馬孝且君 いま局長から答弁、文部省からも答弁ございましたけれども、私がどうも納得いかないのは、漏洩したと見られる科目で全体平均点数よりも高いということは、これは不正受験の確証ではないかと、こういうことがはっきりしているんじゃないですか。どうなんですか、この点は。これは毎日の社説に載っておりますね。平均が明確に一定点数、二十三点とかあるいは三十六点とかと出ていますね、六十三点とか。この全体平均点数よりも高いということは、これはむしろ不正受験の確証ではないかということが明らかじゃないですか。われわれ素人が見ても、これは明確に答えが出ていることじゃないですか。
 この点一体、合否判定のやり直しができない、僕はこれがわからぬね、このことについてあなたが言うことば。数字はごまかしできないでしょう、何点、何点という数字は。ここらあたりはっきりしないと、これは国民は納得しないと思うんだよ。これがうそだと言うんなら指摘してもらって結構だよ。
 ここに出ている。私、新聞を持ってきていますけれども、こういうふうに言っていますわな。はっきり申し上げますと、点数がはっきり出ていると、こういうわけですよ。二十三点ですか、二十三点で、それからあといいので六十三点というのがあるということをきちっと書いているんです。こういうところからいくと、いま言った答弁では国民が果たして納得できるだろうか。あなたは、調査した限りでは、事情聴取した限りではそういうこともないと、こう言うんだけれども、そこらあたりがやっぱり納得いかない。
 それからもう一つ、先ほどあなた私に答弁してないんだけれども、春に受験したものを直ちに受験後に発表するということはいかがなものかというより、常識的に言って、これは慎重を期して、むしろ発表を後へ延ばして、内容が明らかになった時点で発表をする、もしくは合否のやり直しをするということがあったなら、これは別ですよ。全然合否のやり直しはしないで、やっただけやり得であると、はっきり言うならば。悪いことやった方が得するんだというようなこんな教育のあり方、国家試験のあり方を許していいか。これは私は重大な問題だと思うんですよ、このことについては。そこらあたりをいま一度きちっと答えてもらわぬとね。
 何も追及するという小さな気持ちじゃないんだ、僕は。国民がこういうのをどう見ているか。そういう本質的な問題について、見直すなら見直すための改革はどうすればいいかと。こういうふうにしなきゃならぬのだから、それはっきりひとつ答えてくださいよ。そういうことが、私に言わせれば官僚的調査だと言わざるを得ないんですよ。これははっきり言うならば、ある新聞に出ておったが、本来ならこれは責任処罰が出るべき問題ですよ、はっきり申し上げて。何らの責任処罰もないじゃないですか、はっきり申し上げて。これであなた、第二、第三のこういう問題をなくするなんという言葉で言ったって、必ず第二、第三、第四が出てきますよ、私に言わせれば。そういう観点で言っているわけですから、ひとつ明確にしてください、その点。
#64
○政府委員(大谷藤郎君) 確かに先生御指摘のように新聞報道でも示されておりますが、一部の点につきまして学校間に差があるということは事実でございますが、しかしこれにつきまして、直ちにこれが不正受験であるかどうかという判定については非常にむずかしい問題ございまして、私どもとしてもいろいろ検討いたしましたが、これは学校の先生によりまして、その教え方におのずから軽重、厚薄というふうなものがあるのは当然のことでございます。これはできる限り、私どもといたしましては、そういったことがないカリキュラムの編成ということが望ましいわけでございますけれども、それはその先生が専門にされておる、あるいは重要とお考えになっておるというのは、全国三十の歯科大学すべて全く同じというふうなことは考えられないわけでございまして、そこでやはり学校間の格差というものはどうしても若干出てまいる。
 それと不正受験につながる点数の格差というものについてどういうふうに考えるかという問題につきましては、私どもとしても非常に検討いたしたところでございますけれども、これを直ちに不正受験とすると言うにはむずかしいという結論に達したわけでございまして、その点について御了解を賜りたいと存じます。
#65
○対馬孝且君 いや、私がどうもあなたの言っていることが解明できないのは、あなた先ほど私に対しては、講義の中でそういうものが漏れていったということもお認めになったし、それから講義の重点項目、あるいは試験委員がその中で指示したのではないかという疑いもあるということをあなたは言ったね。間違いないと思うんだが。
 それでははっきり聞くけれども、こういうことになっているんですよ。補綴学と口腔外科学をあわして試験問題が漏れた疑惑では――いいですか、ここ大事なところですよ。試験委員である一部の大学の教授が講義で重要事項だとして個条書きにして繰り返し教えた内容が出題されている。これが一つ。それからまた別な試験委員である教授が補講担当の助教授に講義の重点項目を指示した、それが出題の内容と全く一致していたと、こうなっているわけだ。これは子供でもわかることなんだ、こんなことは、あなた。だからそういう、これらの試験委員による公正な試験が行われていないということは、これをもって何人を問わず疑う余地はないと思うんだな、局長。
 私が言っているのが間違いならこれは別だけれども、そういう恐らく学校間の格差の問題じゃないんだよ、そんなこと、あなたの言っているのは。学校間の格差なんて次元の問題であなたは答弁しているけれども、これはピントが狂っているよ、はっきり言って。私は、学校間の格差を言っているんじゃないんだ。国家試験問題を漏洩した客観的事実というものは一体どうなんだ。その事実は、いま私が言ったこの補綴学と口腔外科学を合わせた試験問題の漏れた疑惑は、たまたまいま言った個条書きで流したものと、繰り返されたものと、教授が助教授に対して命じた補講担当の講義の内容、重点項目、これはきわめて明確じゃないですか、この点は。
 これはどうも言葉を濁すんだけれども、事実を明らかにしないで、何か臭い物にふたをするようなことを言ったって困るよ。明確にこういうものをしてくださいよ。
#66
○政府委員(大谷藤郎君) 先ほど当初の事実報告で、若干省略して御報告申し上げましたので、その点誤解を生じたかもしれませんので、再度御説明申し上げますが、講義の中でいわゆる学生メモにつながったのではないかという一点につきましては、歯科大学は六年制でございますが、その六年生には授業は全然その先生はしておられない。四年生の授業のときに、しかもそれが四月から六月の授業の間に講義をされた内容が三月の六年生の国家試験に非常に似ていると、こういうことでありまして、恐らくその四年生の授業内容が六年生の方に流れて、どういう講義をされたかというのが聞かれて、だんだん流れていったのではないだろうか。こういうことでありまして、直接それがリークをされた、こういうことにはその点がなっていないという点がございます。
 それからもう一つの、補講におきます重点項目の説明ということでございますけれども、それは助教授の方が補講をやっておられまして、その中で何点かについて、その先生が自分はこういう問題は大事だというふうなことで、いわゆる教育上の問題として言われたものでありまして、御本人は、これはあくまで教育としての重点について言って、試験問題そのものを言ったのではないというふうに説明されておられて、そこのところが、私どもといたしましても、これを直接漏洩と考えるのか、あるいはこれは教育上の問題であると考えるのか、そこのところは非常に微妙なむずかしい問題があるわけでございまして、この点につきましては、今後私どもとしては、こういった点は非常に疑惑につながるし、学校間の不公平にもつながりますので、この点については、厳重に将来国家試験委員の先生方には学校教育の中で御注意をいただく、厳正にやっていただく、こういうことでこれからを処理してまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、その点についてひとつ御了解をいただきたいと思います。
#67
○対馬孝且君 これは、御了解してくれと言ったって、了解できる答弁の内容じゃないよ、そんなこと言ったって。それは一般的な講義をしているというのは別にして、試験のあれを個条書きにしてちゃんと書いたと言っている。一般の講義をしたというのはわかるが、世界情勢から始まって、世界各国から全部やったわけでもない。個条書きにして出したと、こうなっている限りでは、これが試験の問題集でないなんて、どこからどういうふうにこれは説明つくんですか。このことは理解してくれと言ったって、理解のしようがないじゃないですか、あなたの答弁は。
 しかも、はっきり申し上げますが、試験委員の息子が受験者であったという世間の常識では考えられないようなことが出ているじゃないですか。これはうそじゃないですよ。試験委員の息子が今回の受験者であった。こういう客観的な事実がはっきりしておって、いや、なかなかこれは解明がむずかしいとか、そこらあたりの範囲がむずかしいとか、そんなものでないと思うのだな。僕は、どうもそこらあたりが、答弁が何か逃げよう逃げようとしているのかどうかしらぬけれども、客観的事実は事実であって、それだからどうしようというので、客観的事実の上に立って次の改革をしなければ本当の改革につながっていかないと、このことを私は言っているのであって、こういう事実があって、うそならうそだとはっきり言ってくださいよ、あなた。現実にそうでしょう、間違いないでしょう。試験官の息子が現に受験しておった。このことだけ見たって、自分の子供のために流したと言ったって、結局うがって考えればそこまでだってできるじゃないか、あなたそんなことを言ったって。そういう答弁ではこれは納得できませんよ、私は。この点はひとつもう一回はっきり答弁してください。
#68
○政府委員(大谷藤郎君) 先ほどから申し上げておりますように、私どもとしても、一部出題委員の方々が疑惑を招くような行動をされたということにつきましては、もうまことに遺憾に存じているわけでございまして、しかしこの問題が非常にむずかしい教育上の兼ね合いとの問題もございますので、今後この問題で二度とこういった疑惑を起こさせるというふうなことがないように努力する、こういうことで私どもとしては処理をいたしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#69
○対馬孝且君 先ほどの試験官の方は認めるのか、試験委員の息子が受験をしておったという事実。
#70
○政府委員(大谷藤郎君) これも事実でございますが、私どもも教授にこれを聴取いたしましたところ、これにつきましては、もちろん出題委員としての自覚の上に立って絶対漏洩というふうな事実はいたしておらないというふうなことでございまして、私どもとしてはそれを信じているわけでございます。
#71
○対馬孝且君 そういう子供だましみたいな話をしたって、子供だってわかることだ、そんなものは。自分の息子が受験しておって、その試験委員がまさか漏らしたなんて言うわけはないじゃないか、そんなものは。だから事実は事実としてはっきりしているのだから、あなたは理解してくれ、今後厳正に厳正にと盛んに言うのだけれども、かくなる客観的な事実をはっきり認めないで次の改革をやると言ったって、それはだめだと言うんだ、僕の言うのは。必ず今度第二、第三が起きますよ、はっきり言って、第三、第四の事件が。私は明言しておく、そういうあいまいな態度であるとするならば。
 そういうものを克服していくため客観的な事実だけははっきりしていく。その上に立って克服すべき改革は改革でいまあなたが言っているから、それは改革は改革でしなければならぬ、これから私も申し上げますけれどもね。そういう点を踏まえてこれはひとつ大臣、いまこの私のやりとりを聞いて、私が何もこじつけて押し切ろうとか、無理やりこじつけているという印象ありますか。客観的な事実を述べて話をしているんですよ。それが見方によって変わるとか、そんなことを言っているんじゃないので、客観的事実は事実でいいじゃないか。その事実に対してどう対処するかというのは、これはまた新たな問題。そういうやりとりを聞いておって、私は局長の答弁を聞いておって、全く何か、いや、そうでないのだとか、事実を隠蔽しよう隠蔽しようというような、どうもそういうふうにとれて了解できませんよ、このことははっきり申し上げて。この点ひとつ大臣からお答え願いたいと思います。
#72
○国務大臣(森下元晴君) 私は、先ほど明快に一件落着ではございませんと申し上げました。非常に不明朗な何か心にひっかかるような終末でございますけれども、しかし私どもは、先ほども申しましたように、局長以下もう全力を挙げて事実の究明に実は日夜努力をしたわけでございます。たびたび私どももその内容、報告を聞きました。
 先ほど御質問ございましたが、試験結果の発表をおくらすかどうか、またやり直すかどうかということまでも、話し合いをしたわけでございますけれども、われわれの考えでは、疑惑を受けるような仮に受験生がおっても、これはごく少数であるかもわからない。しかしほとんどの方はそうでない。しからばやはり発表は予定どおりすべきである。こういう観点に立って、実はやり直しとか、また発表を延ばすとかいうことは実はしなかったわけでございますし、またそのときのいろいろな話で、いろいろ調査の過程で、発表後調査の過程におきましてそういう問題が出た場合、不正なことが起こった場合には、仮に発表しておってもそれを遅滞なく取り消す、そういう経過も実はあったわけでございまして、今後何かの事情でそういう問題が蒸し返されるおそれが、私はないと思いますけれども、万々一あった場合、またそういう予期せざる問題が起こった場合に、これは遅滞なく取り消すというような方法もやらないとも限らない、こういうふうに実は思っております。だから、明快に一件落着はしておりませんというように私お答えしたわけでございます。
 秋の試験の問題もございますし、いろんな観点から考えまして、一言で言えば、まことに遺憾で、反省しておりますという言葉に尽きるわけでございますけれども、まじめに勉強して一日も早く資格を取って開業したいという方もたくさんおいでになるわけでございますから、総合的な判断の中で、いろいろ御指摘のことはよくわかりますし、将来の問題を考えた場合にこれでよかったんだろうかという一部反省もございますけれども、あえて最後に私が判断をさしていただきまして、こういう処置をとらしていただいたわけでございます。
#73
○対馬孝且君 いま大臣からのそういうこと、これはわかります、一応は。ただ問題は実態論だけははっきりしておかないと。これは一件落着ではないという大臣の答弁ですね。時間の関係もありますから、これだけやっているわけにいきませんから、次の問題を質問していきますけれども、実態論として私は、本当に根本的な構造的な問題を明らかにするというのであれば、司法に頼めば簡単なわけでしょう、調査をしてくれと言えば。そこになぜいかないかというところに、率直に言うけれども、厚生省自体の試験委員に対する遠慮だ、配慮だということを言わざるを得ないでしょう。これは私なりの判断ですけれども。そういうことでは根本的な解決になっていかない。そこのことを私は言っているわけですよ。
 だから、この問題について、私ははっきり申し上げて、こういう問題について本当に解明したいのであれば、これは司法の手を煩わしたって解明すべきものは解明した方がいい。そういうことによって将来絶滅をさしていくということなんだけれども、まあ大臣がこれをもって終わったわけじゃないと言うから、私はこれは今後もひとつ徹底的に解明をしてもらいたいと大臣に申し上げておきます。
 それから漏洩防止等については、今後もやり直すということだが、この問題についても実態論をもう少し掘り下げていただいて、この次というのじゃなしに、いまこれからはっきりさしていくというくらいな姿勢をお持ちになってもらわぬと、大臣、これは世間は納得しませんよ、はっきり言って、国民的にもこんなことじゃ。私自身が納得できないだけでなくて国民が納得しない。こういう立場から大臣、ここで強く申し上げておきたい。その点よろしゅうございますか。
#74
○国務大臣(森下元晴君) この問題は、いま申し上げましたように、十分納得いく方向で努力をしていくと同時に、前向きの点におきましては、構造的な問題、また文部省の行政に立ち入って恐縮でございますけれども、教育のあり方、いわゆる国家試験の予備校のような教育内容では困ると、一言で申し上げればですね。それがいろいろ疑惑を受けた原因の一つでもあるように私は思います。したがって、文部省、厚生省、この問題につきましては、今後ともよく相談をいたしますとともに、試験の改善委員会を通じまして疑惑が一掃されるように全力を挙げていきたいということをお約束いたします。
#75
○対馬孝且君 きょうの段階で、一応大臣はそういう段階にとどめておきたいと言います。私はこの問題は、今後の問題というよりもいま時点の問題であるというふうに受けとめて、これを徹底解明をしていかないと、絶対に将来問題が起こり得る。この点は、私は変なことを断言するようでありますけれども、そうならないためにいま私が申し上げていることなんで、いま大臣からございましたから、いまの、今日の段階では、そういう方向でさらにこの問題に対する真相究明、加えて実態の把握、そしてこれに対する今後の対応策を含めて対処してもらいたいと、こういうことを申し上げておきます。
 したがって、今後の対策として、どういう問題点を重点的な対策としてお考えになっているのか、これを大臣からお答え願いたいと思います。
#76
○政府委員(大谷藤郎君) 大臣がお答えになります前に、私から事務的な問題について先に御説明させていただきます。
 今週中にも改善委員会を発足いたしまして、先ほどからいろいろ申し上げております疑惑を招くような問題点につきまして、これを完全に断ち切れるような国家試験のあり方というものを考えていただきたいというふうに考えております。
 たとえば出題につきまして、いわゆる講義内容とそれが一致していて、ある特定の学校だけが利益を受けるのではないかとか、あるいはそういった先生方の出題委員の選定の問題でありますとか、いろいろこういった問題につきまして、私ども今回の調査結果で疑惑を招くことがあった問題点につきまして、これを完全に断ち切れるような改善というものを考えておりまして、このことを早速発足させたいということで、大臣にもお話し申し上げているところでございます。
#77
○対馬孝且君 この問題は、そういう単純なものじゃないと思うんだね、今後の改革について、これが事実ならば別だけれども。はっきりしていることは、歯科医師国家試験制度改善委員会委員長石川氏のあれで、東京医科歯科大学歯学部長のあれで出ているんじゃないですか。
 一つは、一定の問題をためておき、新しい問題とあわせて出題するプール制を導入する、それから二つ目は出題の基準作成、試験委員の適正な選出方法、受験回数制限、それから合格点の基準の見直し等について検討していくということを出されているわけです。
 私は、これだけじゃなしに、問題は、試験委員を選ぶ、試験委員を委嘱する場合の態度ということについて、もっと根本的な見直しをする必要があるんじゃないか、私はそう言いたいんですよ。そういう問題を含めて、いま私五点挙げましたが、そういう問題とあわして、試験委員を選ぶ場合の厚生省の基本的な態度、これが私は問題だと思うんだな。マンネリ化しておると思うんですよ。ただやめればいいというものじゃない、おれに言わせれば。やめるどころの問題じゃないと思うんだ。それ以前の問題として、これをやる場合に、厚生省として扱う場合に、この試験委員を委嘱する場合に、客観的な委員会などをつくって、そこで公正を期し、委員会なるものを設置して試験委員を委嘱する。こういう態度を私は持つべきだと、こう思うんですが、この点どうですか。
#78
○政府委員(大谷藤郎君) この問題につきましても、改善委員会で十分御検討いただくことといたしております。
#79
○対馬孝且君 十分改善委員会で検討するといういまお答えですが、このことについて私が申し上げたいことは、むしろこういう試験委員を選ぶ姿勢の問題、考え方の問題、これがきちっとしないからマンネリ化してしまってかくなる事件が発生したと、私はこう思うんです。これは断定していいと思うんだ。
 ただ、そういうことを考えあわせれば、少なくともこの問題については、私が言った試験委員を選ぶ場合のあり方の問題。それからもう一つは、ここに出されておりますけれども、諸外国では、アメリカでもフランスでもイギリスでも、プール制による試験の一定科目の導入という問題が諸外国では全部採用されている。そういう意味で学校間の格差がなくなる。そういう問題等も指摘をされておりますし、加えて、私も先ほど申しましたように、今後こういうことはあってはならないわけでありますが、問題は何といっても、この問題は灰色に決着してはならない問題だ。ロッキードと同じで灰色決着ということはあり得ない。かかる問題については、黒白をはっきりつけるべき性格の問題であると、このことを明確に申し上げておきたいと思うんでありますが、この点についてひとつ、午前中の部はもう時間ですからあれですが、大臣の所見を聞いて次の問題に入りたいと、こう思います。
#80
○国務大臣(森下元晴君) まことに医の倫理の根幹に触れる御質問また御意見いただきまして、厚生省といたしましても、この問題につきましては、災いをもって福となすという考え方の上に立ちまして、二度と起こらないようにしたい。
 と同時に、また今回の問題も、終わった問題とせずに今日的な問題、また将来の問題としても十分検討、またできるだけこの解明、明朗化のために努めていくということをお約束いたします。
#81
○委員長(目黒今朝次郎君) 本案に対する午前の質疑はこの程度とし、十二時五十分まで休憩いたします。
   午前十一時五十分休憩
     ―――――・―――――
   午後零時五十四分開会
#82
○委員長(目黒今朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、老人保健法案を議題として質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#83
○対馬孝且君 それでは、午前中に引き続きまして、老人保健法との間接的なというよりも、むしろ直接的な問題でもございますが、九十四日間延長の中で最近出てまいっておりますのは、来年度予算の問題が一番大きく、厚生省にかかわる問題が重要な問題になってきているようであります。閣議でも取り上げられ、また私も本会議でも若干申し上げましたが、いずれにしましても、この問題は、老人保健法がこれから推移する場合の財源の見通しなど重要な関係もございますから、明らかにしておきたいと思うんでありますが、単にそれだけではなくて、これからの年金問題、社会福祉全般にわたる重大な問題にもかかわってくる、これを非常に私は懸念をしております。
 そこで、まず大臣にお伺いしておきたいのは、来年度予算に向けて政府・自民党が政府・与党協議会、通称十一人委員会を設けることを明らかにいたしました。そこで協議枠というのを決めようとしているわけでありますが、現在対財政当局、特に大蔵と厚生省の関係の話は一体どのように進められているのか、まずこのことをひとつ伺っておきたいと思います。
#84
○国務大臣(森下元晴君) 御心配いただいておりますように、厚生省といたしましても、当面の関心事は五十八年度の予算をいかに組むか。当然増の非常に多い厚生省でございまして、この点一番実は心配をしております。非常に財政が逼迫しておりますし、増税なき財政再建ということを内閣は旗印にいたしまして、そのためにどうしたらいいか。それが歳出の削減という手段を通じて財政を再建をしようと、こういう方向が実は示されておるわけであります。
 十一人委員会は、私も詳しいことは余りわからなかったんですが、とにかく政府と与党、自民党の首脳が委員会をつくって、そこで枠を決めて、そしていろいろ党内で問題が起こらないように、また閣議もスムーズに決まるようにというような連絡調整的な機能としてつくられたわけでございますけれども、一時は決定機関のような印象を与えたような時点がございました。そういうことで私も実は、厚生省は一番大きな予算を持っておりますし、また国民の生活に直結しておる、健康と暮らしを守る非常に重要な行政を預っておるわけでございまして、目的は財政の再建ということで私どもは協力をしなければいけませんけれども、歳出の抑制ということになりますと、やはり言わしていただくことは言わしていただかなければいけない。
 そういうことで、やはりその中に入っていろいろと要望を申し上げたい、また実情の説明もしたい、こういうことで申し入れたわけでございますけれども、実は閣議で、新聞等で御承知のように、これは連絡調整機関であって決定機関でないんだ、最後は閣議で決めるんだ、政府の問題であるのだ、こういうふうなことになりまして、私の考え方は十分申し入れてございますけれども、十
 一人委員会に改めて入れるかどうか、また入れてくれるかどうかという問題は、いまのところはそのまま保留になっておるのが現実でございます。
#85
○対馬孝且君 なぜこの問題をお伺いするかと申しますと、問題は、五十七年度予算の際にもしばしば申し上げましたが、完全に防衛費突出をして福祉を切り捨てる、この一貫した方針に対しましてわれわれは反対を続けてまいりました。そのあらわれが老人保健法にもあらわれている一部負担の問題であろうと、間接的には。そう私は判断をしているわけです。したがって、そうなれば、いま連絡協議会だという大臣のお答えでございますが、私は単に連絡協議会という性格ならば、これは党と政府の関係でございますから、これは常時必要に応じて、たとえば重大な段階で行われているんではないのか。しかし少なくともこのマイナスシーリングという問題だけに、単に連絡機関という性格はもちろんあろうけれども、やっぱり私はかなりの拘束力を持つ性格になるのではないかと、そういう感を深くしたからであればこそ、私は大臣も、特に厚生省が福祉にまつわる、国民にまつわる一番犠牲が多い、それだけにメンバーの中に加えてほしいと、こういう意欲を持ったものと、こういうふうに私は考えるわけであります。
 そういう私は真意であろうと思うのでありますが、そういう意味では、単なる連絡機関とは言いながら、党と政府の間における相当な臨調の答申を踏まえての何らかのものを持つという危機感を大臣はお持ちではないのか。そういう意味で、先ほど申しましたようなことを、大臣も意欲を持ったと思うのでありますが、その真意をもう一回ひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
#86
○国務大臣(森下元晴君) いま御指摘のように、五十七年度のただいま行われておりますこの予算の内容につきましても、当初予算を組む場合には、率直に申して、実はやりくりいたしました。十一カ月予算とか、また特例法によって年金の負担金を先送りするとか、そういうことで内容的には七・何%ぐらいの増になっておるような計算でございますけれども、しかしやりくりしたことは事実でございます。だから、そういうことはもう二度とききませんし、五十八年度の予算編成は大変だなと実は私一番心配もしておりますし、また一番大きな予算を持っておりますから、削る方から見ると一番削りやすいように思われると大変でございますから、我田引水ではなしに、目的が財政再建でございまして、決して歳出を削減したり抑制するのが目的でないわけでございますから、活力ある福祉社会をつくっていくというのもこの臨調の理念の一つの柱として出されております。そういうことを考えました場合に、我田引水ではなしに、本当に必要な福祉予算は、これは十分私も大きな声で要求すべきものは要求する。幾ら大蔵省からいろいろ言われましても主張すべきである、こういう考え方でございます。
 いろいろと党の方にもこの厚生関係、福祉関係の機関もございまして応援等もいただくわけでございますけれども、それ以上に超党派的にこの福祉という問題は十分考えていただく。また福祉が予算をふやすことによって財政再建の足を引っ張るとか、また景気の浮揚に役立たないということでなしに、むしろ福祉予算をふやすことによってある時期におきましては非常に景気刺激をしたという、五十数年前の世界恐慌のときにスウェーデンですか、そういうことも聞いておりますし、福祉予算というものは景気にも大きく影響するんだ、減税ばっかりが景気浮揚の政策でない、福祉も考え方によれば、やり方によれば、非常に景気刺激、内需拡大のためにもプラスするんであるというような経済的な感覚も実は私、持っておりまして、そういう問題も含めて実はいろいろと物を申そうというような気持ちを持っております。
#87
○対馬孝且君 いま大臣の心構えといいますか、五十八年度予算に臨む基本的な態度、また心構えということは私も多とします。したがって、そういう基本姿勢でぜひ臨んでもらいたいと思うのでありますが、そろそろ五十八年度予算編成に向けて八月大体省議というのが常識でありますから、したがいまして、各省としても勉強を、あるいは概算要求の段階に入っていると思うのでありますが、厚生省として、大臣としてどのような点を配慮して、いまもお答え願いましたけれども、重点事項として予算編成に立ち向かっていくか。この点後から申し上げますが、その点ひとつまず伺っておきたいと思います。
#88
○国務大臣(森下元晴君) どういう方向に重点を持っていくかと言われるわけでございますが、非常に厳しいこの財政状況を念頭に置きまして、また同時に将来にわたっての社会保障制度を安定的かつ効率的に運営していくためには、各施策について給付それから負担等の見直しを行い、また合理化、適正化を図ることを五十八年度の予算編成の基本方針としておりますし、またいろいろ見直し等を含めまして、老人それから障害者を初めといたしまして、社会保障施策を本当に必要とする方々には最大の配慮を払ってまいりたい。先ほども少し申し上げましたけれども、多少の見直しとか、むだがございましたら、そういうものは手直しいたしますが、老人、障害者を初め社会保障政策を本当に必要とする、何遍も申しますけれども、そういう施策については最大限の配慮をいたしたい、このように思っております。
#89
○対馬孝且君 いま大臣の重点項目といいますか、重点考え方については、老人問題あるいは社会福祉全般の問題を指しているという意味のことをお答え願いました。私はやっぱり何と言っても、きょうも新聞報道にありましたように、臨調の土光会長ですら国民の世論にこたえなければならない段階に来ている。つまり、防衛費だってできるだけ削減すべきであると初めて土光臨調会長といえども言わざるを得なかったということは、国民のやっぱり声だと私は思うんです。いまもお話出ましたが、景気浮揚、五年間実質的には増税はしていないと言いながら実質増税、可処分所得は減ってきている。そこへ福祉は結果的に、どんなことを言おうとも、やっぱりしわ寄せになっている。こういう声、決して個人の意思でなしに、そういう国民の声を土光会長といえども今日的段階では言わざるを得なくなった。
 この認識を踏まえた場合に、いまあえて大臣からそういうお答えございましたから、少なくとも福祉の問題に切り込みをする――当然増の問題が、いま言ったように、後から申し上げますけれども、八千億とも言われておりますから、そういう基本を維持していく、むしろ年金のスライドアップを切り捨てたり、あるいは医療の負担増高を受益者に負担の犠牲を強いるということのないような基本的立場でぜひ臨んでいただきたい、このことを強く申し上げておきます。よろしゅうございますか。
#90
○国務大臣(森下元晴君) おっしゃるとおりでございまして、そのような方向で行きたいと思っております。
#91
○対馬孝且君 したがって、そこで、ことしの概算要求の枠についてどのような認識をしているかということが一点。
 それから一部の新聞報道によれば、大蔵省は本年度比二〇%あるいは一〇%の医療費削減ということを厚生省に申し入れたと伝えられているのでありますが、この真相をひとつ明らかにしていただきたい、こう思います。
#92
○国務大臣(森下元晴君) 五十八年度の概算要求枠は、どの程度に目標を置いておるのかということでございますが、一言で言えば非常に厳しいものになると思います。しかし、御指摘のように、当然増は、昨年もそうでございましたけれども、昨年以上にこの当然増の額はふえるわけでございまして、この対応に非常に苦慮をしておるというのが現実で、ただいま作業中でございます。
 それと、非常に大きい厚生省の予算の中でも医療費補助は大きいわけでございますから、これを一〇%また二〇%切れというような申し入れがあると。これは閣議の後で実は大蔵大臣と、正式ではございませんでしたけれども、話し合って、新聞の記事になったわけなんです。
   〔委員長退席、理事安恒良一君着席〕
大体最近の医療費は、前と違いまして二けた台から一けたに下がりまして、これは厚生省が、関係局が非常に努力した結果もあると私は思いますけれども、この医療に携わる方々自身の自省と申しますか、自粛、そういうこともあったと思うんですが、最近の統計を見ますと、ずっと一けた台でございます。八%とか七%ぐらいですね。かなり減る傾向にございまして、いい傾向だなというふうに実は考えておるわけなんです。
 一〇%ことしの予算、五十七年度から切れということは、大体七、八%上がっておりますから、現実には二〇%ぐらい近くになるというのが、あの二〇%の基準になったわけでございまして、初めから二〇%切れという意味ではなかったわけであります。しかし数字的には、結果的には実際は、七、八%ぐらい上がるであろうと思っていたのを一〇%減すということは、結論的には二〇%ぐらい減さなくてはいけない。そういうことで、大蔵省の考え方としては、一〇%ぐらい減らせぬだろうかという意味に私はとりまして、ああいう発表が少しオーバーに出た感じで、大蔵大臣の方からも二〇%とは言っておらないという否定はされておりまして、そのとおりで実はございます。そういうことで、しかし一〇%を減されるということになりますと、これは現実は、七、八%、それに近いぐらい上がろうとしておるのが一〇%減るわけですから、これはかなりむずかしいなあという感じはします。
 ただ、やはり医療費の適正化の問題ですね、レセプト審査とかいろいろ一連の、そういうことば全力を挙げて従前以上にやっていきたい。そしてむだな医療費はできるだけチェックをして少なくするように努力はしなければいけない。ただ一〇%減すとか二〇%減すということは、そういう数字でそれをあらわす段階でもないし、また医療というものは粗診粗療にならないようにしなければいけないし、これは非常にむずかしい問題でございます。
 そういうことで真相は、いまお尋ねの一〇%または二〇%医療費を減せという申し入れがあったと聞いておるということの真相については、以上のようなことでございます。
#93
○対馬孝且君 真相はわかりましたが、いま仮に大臣がお答え願ったようなことだとしても、仮に一〇%としても、七、八%当然増があるわけですから、逆に言うと約二〇%逆に切り込まれる。これはプラス・マイナスですから当然そうなるわけでありまして、そうなったら、これは大変なことになってしまうという危機感を持たざるを得ないのは私一人ではないと思います。
 そうすれば、真相はよくわかりましたが、これに臨む大臣の一もちろん医療の適正化、そういうものに努力されることは当然であります。このことに対して、もちろんいま数字はどうだという意味ではありませんけれども、先ほど臨む心構えをお聞きしました。その姿勢があるとすれば、大蔵の考え方というものにひとつ毅然たる態度で臨んでもらいたい、こういうふうに考えています。いかがなもんですか、この点。
#94
○国務大臣(森下元晴君) 激励のお言葉と受けとめまして、やはり正しきは声を大にして大いに主張したい。また、大蔵大臣も厚生大臣をやっておりますから、すべてよく知った方でございますので、正しい意見、当然の意見は耳を傾けてくれるであろうし、また私どもの要求は受け入れてくれるであろう、こういう確信を持って全力を挙げて予算獲得のためにがんばりたい、このように思っております。
#95
○対馬孝且君 いまもお答えありましたが、先ほど大臣の言葉の中にも超党派的にひとつ福祉予算の維持のためにもがんばりたいということがございましたが、これは野党は全面的に異論はないわけでございまして、むしろ自民党さんの方がその姿勢になればこれはできるわけでございますから、むしろそういう姿勢でひとつ臨んでもらいたいということを特に申し上げておきます。
 そこで、厚生省の五十八年度当然増経費、予測としては大体八千億を上回るのではないか、こういう数字がちょっと出ていますが、この点どういうふうに予測をされておりますか。
#96
○国務大臣(森下元晴君) かなり巨額の当然増経費が生ずるということはわかっておりますが、いま八千億もの当然増経費が要るんじゃないか、出るんじゃないだろうかと言われましたが、まだそこまで詰めておりませんし、もちろん昨年より上がることは常識的でもございますし、大体そこまで行かぬにしても、近い数字になるように私は思っております。
#97
○対馬孝且君 去年のあれから言っても、推理しますと、私が判断してもそれに近い、前後の数字になるだろうということは、これは予測し得る数字だと、こう私なりに思っています。
 そこで、現在の社会保障予算、前年度並みに抑えるということになりますと、勢い、いまも話が若干出ましたが、医療費補助の思い切った削減以外に方法がないと、こういう大蔵の、財政当局の考えも実は出ているように聞いております。したがって、現在の医療費の支払い方式を、ここで何回も同僚議員から、わが党からも申し上げておりますように、根本は支払い方式を見直すことにおいていわゆる医療費の財源というものは出てくる。
 こういうことを再三われわれ訴え続けているわけでありますが、その点と考え合わせてみますと、支払い方式は現状のままで、そして当然増が八千億も出てくる、そこへ先ほど言ったような大蔵の考え方があるとするならば、一体どういう処方せんをこれからお書きになるのか、どういう処方せんを示そうとしているのか、この点をひとつこの機会に伺っておきたいと、こう思います。
#98
○国務大臣(森下元晴君) この点につきましては保険局長より答弁させます。
#99
○政府委員(大和田潔君) 医療費削減の処方せんということでございます。
 支払い方式の問題でございますが、これは従来から申し上げておりますように、長所短所というものがございます。私どもの日本でとっております現行の支払い方式におきましては、これは長所を伸ばす、短所を補うという形で進めてまいりたいというふうには考えておるわけでございますが、現在の医療費の増高の要因といたしましては、御承知のとおり、人口の増加であるとか人口構成の老齢化あるいは医学薬学の進歩と、いろいろな原因が考えられることは御承知のとおりでございまして、これを機械的に大幅に削減するということは、これはなかなか困難でございます。
 それで、ただいま申しましたような原因でございますので、たとえば西独の総額請負方式であるとか、あるいはイギリスの人頭払い方式といったようなところでもやはり医療費の増高というものが見られておる。私どもの方として、したがって現在の支払い方式のもとにおいてどうやるかという問題でございますが、これは医療費のむだというものは極力排除しなければならぬということが言えるわけでございまして、たとえば昨年六月の診療報酬改定におきましても、検査点数の適正化を行うとか、あるいは薬価の一八・六%大幅な引き下げといったようなことを行いまして、医療費というものに対する、何と申しますか、抑制策というものをとってまいったわけでありますし、また指導・監査あるいは医療費通知といったようないわゆる医療費適正化対策というものを推進してまいったわけでございますが、さらにこれからもこういった施策を総合的に推進するということによりまして医療費の効率的な使用というものを強力に図ってまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
#100
○対馬孝且君 局長、私言っているのは、根本的な支払い方式をどうするかということはここでも同僚議員から指摘をされ、また質疑が交わされていますね。そう言ったって、いますぐできるわけじゃないでしょう、どんなこと言ったって。五十七年の八月までに間に合うんですか、これ。そんなこと言っているんじゃないんですよ。大体私が質問で言っているのは、そういうことをもし将来やらないと、いますぐできないという次元においてこの八千億当然増がもし出てくるとするならば、当然おのずから処方せんを書かなきゃならぬでしょう。それをどういうふうにお考えになっているのかと私聞いているんであって、この問題については根本的にはまた改めて質問しますよ。
   〔理事安恒良一君退席、委員長着席〕
 その前に、実際問題として、それはいまどう言おうと、人頭払い方式にしたって、総額請負方式にしたって、根本問題はここで議論されている。私も一昨年言ったことがある。そういう問題と同時に、いま言っていることは、当面八月の五十八年度に対してどういう処方せんを書こうとしているんだ、そこを言っているんだよ、私が言っているのは。
#101
○政府委員(大和田潔君) 現実の問題といたしまして、私どもに対しましてまだ具体的な額というものが明確でございませんので、いわゆるそういう意味の処方せんというものはまだないわけでございますが、先ほどもちょっと触れましたように、一律の大幅削減といったようなことはなかなかむずかしい、医療費におきましてはむずかしい。したがって、従来行っております適正化対策の強力な推進ということによって、極力医療費の抑制ということにこたえていくということが、いまお答えできる精いっぱいのところだということでございますので、御了承いただきたいと思います。
#102
○対馬孝且君 いずれにしても、あれでしょう、もういま七月六日ですよ。大体八月末までには省としての五十八年予算の概算の一定のあれはつくられなきゃならんでしょう。そしたら、そういう段階からいくと、どうもあなたの言っているのはただ医療費の適正化だけでね。それじゃあなた、医療費の適正化だけで絶対この予算が組めるということになりますか。そうならないでしょう、はっきり申し上げれば。その点を私は言っているんであって、何かまだまだと言うけれども、まだまだじゃないんだよ。いま今日の段階である程度の方向性をはっきりしておかなければ。
 そういう意味で、大臣、私は聞いたんだから、大臣がそういう基本姿勢を出したから、私はその姿勢は了とするというんだ、大臣の姿勢を多とするというんだ。あなたのお答えをお聞きすると、いや、そうなんだが、いや医療費の適正化をやれば何とかなりますと。それだけでいいんですか、問題は。それだけで五十八年度の予算には、それじゃ五%の仮にマイナスシーリングになったとしても、その基本姿勢、そういう内容でもってちゃんと、プラススライド問題すべて含めて、医療費には一切しわ寄せはしないと。よろしゅうございますか、それで。
#103
○政府委員(大和田潔君) 繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、どの程度の医療費削減か、これは具体的に財政当局との話し合いというものにまだ入っておりません。したがいまして、それを私ども受け取りまして、全身全霊を挙げてその問題については取り組んでいかにゃならぬと思っておるわけでございます。
 ただ、基本的な姿勢の方向といたしましては、先ほど申しましたように、いろいろな医療費適正化対策というものがあるわけでございますので、そういったものを私ども全力を挙げて進めていくことによって、言うならば、非常に大きな問題のある時期というものを切り抜けていかなきゃならぬというふうに考えているわけでございます。
#104
○対馬孝且君 いや、あなたの答弁は、私の聞いているのは、先ほど大臣がそういう姿勢を示し、重点項目に臨む大臣の決意というものを伺ったわけですよ。それならその段階で、医療費の適正化というんじゃなくて、大臣の先ほど示された姿勢なりあるいは重点項目に臨む厚生大臣の決意というものを、意を体してこれからひとつ先ほど私が申し上げたことに対処いたしてまいりたいと、これならわかるんだよ。何かあなたの出てくる答えは、ただ医療費の適正化だけで何とかするようなことを言って、それをやればいいんだというようなことを言うから、私は問題を詰めているんであって、そうではないんではないか。ないとするならば、私はお聞きしますけれども、それじゃ次のことを聞きますよ。
 それじゃ要求枠を大体三区分して、一区分は五%のマイナスシーリングだ。大蔵が言っていることですよ。大蔵の大綱を私は見た限りで言います。二区分目は、景気対策上マイナスにできない一公共事業、削減した場合影響の大きい生活保護費、健康保険の国庫負担等、こうなっているでしょう。三区分目は、六項目の特別枠と来年度の参議院選挙等と区分されていると聞いている。こういう区分になっていることに対して、一体それじゃどのように対応しようとするんだ、そういう抽象論では話にならないじゃないですか、私の言うのは。こういうことが大蔵から出てきているから私聞いているんです。
 あなたの言うんじゃ、医療費の適正化だけしゃべっていれば、それであんたは何か五十八年度の予算を組めるようなことを言っているんだが、現実に具体的に大蔵は財政当局の考え方として、一区分、二区分、三区分、そして二区分の中で生活保護費、健康保険の国庫負担分云々と言ってるじゃないですか、はっきり。そういう場合にどういうふうに対応していくのかということを私は聞いているのであって、ただ医療費の適正化だけ云々という、そんな答弁は答弁になってないよ。
#105
○政府委員(坂本龍彦君) ただいまの保険局長の答弁は、医療費についてというふうに私聞き取って理解いたしましたんですが、厚生省予算全体の問題として私の方からお答えをさせていただきます。
 いま御指摘のございましたように、来年度のシーリングについては、先ほどお話もありましたように、政府・与党協議会でございますか、ここで基本方針の骨子というようなものが示されたことは事実でございます。ただ、私どもとしては、このシーリング、具体的な枠については大蔵当局と折衝をした上で決めると、こういうことになっておるわけでございまして、
    〔委員長退席、理事安恒良一君着席〕
その作業にこれから入るわけでございます。
 その過程におきまして、一つは、できるだけ厚生省予算の当然増などを考慮いたしまして、できるだけその要求の枠を多くとるということでございまして、もう一つは、いずれにしても、この要求枠というのは厳しいものと思われますので、その中でどうやって具体的な予算を編成していくか、こういうことになるわけでございます。
 この問題につきましては、非常に私どもも前々から苦慮をしておりまして、予算要求がどうすればできるかという問題については、なおこれから八月末に向けて鋭意検討していかなければならない問題でございますが、現在の段階において、具体的にこのような方法で予算の要求内容を決定するというところまでまだ来ておりません。基本的には先ほど大臣がお答えしたような方向で進むということでございますけれども、具体的方針につきましては、なおこれから鋭意検討を進めて結論を出すようにいたしたいと、こう考えておるわけでございます。
#106
○対馬孝且君 大臣、いま私は具体的に言っているんで、財政当局が明確に一区分、二区分、三区分という中で、しかも明らかに項目を挙げて財政当局が打ち出しているわけですから、そういう意味で私はお聞きしている。もちろんそれは具体的に出た段階で対応する、そんなことはあたりまえの話であって、それはもう当然のことであるわけですが、先ほど大臣が言ったように、こういう具体的な段階まで来ている、ここに私はそれなりの危機感を感じるものだから、先ほど大臣もお答え願っておりますけれども、会計当局の考え方はわかりましたけれども、これからの予算に臨む腹構えとして、先ほど申し上げました大臣の姿勢はございますけれども、ここまで具体的にこう示された段階では、私は相当な大臣としての腹をお決めになっていただいて、そして厚生省全体もひとつ挙げて、先ほども大臣の言われている超党派的にこの問題をどう大蔵当局のあれに対して押さえ込みをかけるか、あるいは切り捨てを押さえ込むかという姿勢で、ひとつ断固たる不退転の決意で臨んでもらいたい。この件についてお伺いしたいと思いますが、いかがですか。
#107
○国務大臣(森下元晴君) 財政当局からこの三区分で、五%のマイナスシーリング、それから二番目に公共事業とか、削減した場合影響の大きい生活保護費等、健康保険の国庫負担分も入っておりますが、それから特別枠と、そういうふうに三段階に分けてやるような方向は出されております。
 そういう中で、私の先ほどお答えいたしましたように、これは初めから弱気になってやれば、もうこれはだんだん押されることはわかってますから、だからそういう政治的な配慮もいたしまして、私どもは社会保障、社会福祉、いわゆる厚生行政が重大な行政である、また国民生活に影響を及ぼす、また政府自身が考えております内需の拡大、景気浮揚、また財政再建と、そういうことに反対しない何か共通点が求め得るということに工夫をいたしまして、言うべくは大きな声で申し上げるという覚悟がいまからなければ、もう初めからお手上げではこれはますます追い詰められますから、そういう意味で与党のみならず野党の方々にも御後援を得まして、御配慮いただきまして、そしてもう全力を挙げて予算を多くいただけるように、いわゆるマイナス五%というのができるだけ少なくなるように、ふえる方の枠をよけいいただけば、これは平均すれば多くなりますから、そういう方向を、戦術と申しますか、戦略と申しますか、この財源獲得戦略を私は強気で立てなくてはいけない。もちろん会計の方もそのつもりでやっておると思いますから、全力を挙げたいと、このように思っております。
#108
○対馬孝且君 一応全力を挙げる、現状の福祉関係の問題を基本にしながら姿勢を正してまいりたいという大臣の答えが再々あるんですが、いずれにしても、マイナスシーリングに切り込まれるということは、われわれは絶対切り込むことに反対でありますから、この問題については、先ほど言ったように、野党の立場でも政策という点で今日の段階では一致するはずです、この問題については。少なくとも現行制度の中の年金のスライド問題あるいは老人保健、いま審議にかかっておりますけれども、この社会保障全般にわたる切り込みに対する反対、これは一致するんであって、要は問題の置き方をどこにするかということ、どちらに目を向くかというだけのことでありますから、大臣が言われるとおり、これはひとつ不退転の決意で対処してもらいたい、このことを強く私は申し上げておきます。
   〔理事安恒良一君退席、委員長着席〕
 したがって、さきの委員会でも議論されているんですが、この法案に対する問題点として施行期日がある。いま九十四日という会期延長の中で審議しているが、当初出された法案というのは、昨年出されているわけですが、施行期日を十月一日とうたっているわけであります。いろいろ与野党いま折衝を続けられていますけれども、いろいろ聞いておりますけれども、これは根本的に見直してもらわぬとね。もう七月ですから、どういったって、このままいったって八月になっちゃうでしょう。相変わらず出したときと同じでは――もうすでに船は進んでしまっているんだよ。船は前の位置にいるわけじゃないんだから、現在進行してしまっているんだから、約一年間ずれ込んでしまって、相変わらず施行期日については変わりはございませんと、こんなことをしゃべっておったんでは、これは話にもならぬと思うんだ、私は。こういう問題についてこの一カ月以上にわたってどういう御検討をなされているか、この点ひとつしかと審議官からお答えを願いたいと思います。
#109
○政府委員(吉原健二君) 老人保健制度をできるだけ早く実施すべきであるという関係団体なり関係者の御要望もございましたし、また国会等でのこれまでの御論議、そういったものを振り返ってみましても、できるだけ早期の実施をすべきだということでございましたので、私ども五十七年度十月実施ということで予算も計上をいたしているわけでございます。率直に申し上げまして、十月までそれほど長い期間ございませんので、法案が成立をいたしましてからそれまでの間、たとえば中医協での御審議でありますとか、あるいは保険者の拠出金の金額の確定でありますとか、あるいはヘルスの事業についての都道府県なり市町村なりの実施体制の整備、そういった大変大きな準備、大事な準備というものがございますので、非常に苦しくなってきたことは、私率直に言いまして、事実でございますけれども、ただ国の方針といたしまして、十月実施ということが私ども決めております既定の方針でございますし、予算もそのように計上されておりますので、全力を挙げて十月実施できるように私ども、国会で十月実施ということでお決めいただきますならば、私はもう全力を挙げてその実施に向けて努力をし、都道府県なり市町村なりあるいは保険者の方々にも御協力をお願いしたいというふうに思っているわけでございます。
#110
○対馬孝且君 審議官ね、そんな話にならない、子供に聞いてもばかみたいなことを言ったって、それはだめだよ、あなた。いま八月を目の前にしてあと二カ月になるのに、制度の改革というのは、単に老人保健法だけの改革じゃないでしょう、各種保険にまたがる制度の改革をしておるんだよ。どうしてこれが実務的にできるのか。こんなことははっきりしているじゃないですか。それを改まって同じことの繰り返しでなくて、この段階で少なくとも、実務的に省内でまとまってないとすれば別だけれども、現段階ではこれの実施期日については再検討しなければならない。これは物理的にいってもその段階に来ていると、こういうふうに判断をしておるんですが、これはむしろ大臣からこの段階でお伺いしたいと思います。
#111
○国務大臣(森下元晴君) 予定よりも、いろんな理由がございましたけれども、法案の御審議が延びて、通過できないということになりますと、十月一日の実施が非常にむずかしくなったということは事実でございますけれども、私どもは最後まであきらめずにがんばっていきたいと、このように思っております。
#112
○対馬孝且君 与野党折衝やっているから、それはあきらめずにいきたいという大臣の所信はわかるけれども、現実にできないじゃないですか、そんなこと言ったって。大臣、できると思いますか。はっきり言えば、十月一日からこの制度改革を含めて実務的にその対応ができると断言できますか。しかし、現実にあなた、不可能だという時点に立っていることだけは間違いないでしょう、客観的な事実として。この点どうなんですか。いや、そうでないと言い切れますか。言い切れないというならまた別なふうに考えなきゃいかぬけれども、どうですか。
#113
○国務大臣(森下元晴君) 非常に苦しい答弁でございますけれども、むずかしいわけでございますけれども、私どもはやらなくてはいけないという不退転の決意は持っております。
#114
○対馬孝且君 そういう見解であれば、老人保健法問題は、その姿勢が変えられなければ、これはそう簡単に審議を尽くした段階にならないんじゃないかと思う。現時点でさえここまで追い詰まってきておるのに、まだ変えられないというんじゃ、とてもじゃないけれども話になりませんな、大臣。いま言っているのは、現実の問題として、客観的な事実としてはもう後は迫ってきている。どういったって八月ですから二ヵ月でしょう、仮に八月上がったとしたって。できないじゃないですか、こんなことを言ったって。そういう客観的な事実としては一体どうなんですかと私は聞いているんだよ。それは不退転の決意って、言葉だけ言ったって、将来とも改めないと、こういう原則なら私は考えなきゃなりません。この点どうなんですか。
#115
○国務大臣(森下元晴君) 非常にむずかしい客観情勢になっていることは事実でございます。これは認めます。
#116
○対馬孝且君 それはむずかしい客観的情勢だとお認めになるならば、この実施期日についても当然再検討してもらいたい。こういうことはいかがですか。
#117
○国務大臣(森下元晴君) この問題につきましては発言を差し控えさしていただきたいと思います。
#118
○対馬孝且君 いま申しました客観的事実を認めているわけですから、ひとつ鋭意検討をしていただくように強力にお話しておきます。
 それから次に入らしていただきますが、時間が迫ってまいりましたから、保健所の問題でまだ解明されていない問題もたくさんあるんです。それじゃ保健所の運営補助金の問題についてちょっと私伺っておきます。
 ここ数年の国家予算の編成作業中、保健所の運営補助金の廃止、地方交付税への切りかえの動きがあります。最近の第二臨調の部会報告の中で取り上げているようでありますが、この問題は第九十三臨時国会、私も質問いたしています。厚生省から補助金の必要性について答弁があったが、今日の保健所行政の現状の中で保健所の運営補助金の役割りがなくなったのか、あるいは保健所が都道府県の指導で完全に定着して行政的に強化されているふうに伺っていますけれども、この点どのように御認識されるか、お伺いします。
#119
○政府委員(三浦大助君) 保健所の運営費の補助金につきましては、これからの保健所のあり方ともあわせて考えなきゃいかぬと思いますけれども、実は私ども、いつも交付税回しの話が出てくるわけでございまして、特に今回こうして老人保健法案、新しい老人保健制度を発足させるにつきましては、マンパワーという面から、いまこれを交付税にかえるというわけには私どもまいらぬわけでございまして、その点私ども現状維持ということを貫き通したいというふうに考えております。
#120
○対馬孝且君 私は五十五年の十一月二十五日の当委員会で私は質問いたしまして、このときに当時の局長が同じ答弁をされております。したがって私は、そのことは百も承知で質問しておるんでありますが、今日の保健所の現状を考えた場合、補助金の役割りは大きくて、保健所行政に必要な財政措置というものを考えるべきであるのではないか、この点をもうちょっと前進的な、地域格差論いろいろのことございますけれども、そういう意味での積極論があっていいんじゃないか、こういうふうに考えますが、どうでしょうか。
#121
○政府委員(三浦大助君) 前の局長御答弁したとおりでございまして、いま先生がおっしゃったとおりに私ども考えております。
#122
○対馬孝且君 それでは、いま私が指摘をいたしましたそういう問題点を、これは五十五年十一月二十五日確認していますが、その方向で進んでおるということは間違いないという答弁ですから、ひとつさらにそれを前進するように裏づけある行政の措置をとってもらいたい、これを強く申し上げておきます。
 それから緊急問題で、ちょっとどうしても大事な問題ですから、時間が来ましたが申し上げておきたいんであります。
 一つは、北炭夕張炭鉱がいま社会的に重大な問題になっております。ところが、北炭炭鉱病院がこのほど夕張市に移管受託をする、こういう問題が実は発生いたしております。炭鉱というのは、御存じのとおり、軽傷災害というのは日々連発をしておるわけでございまして、こういうことはあってはならないことだけれども、現実に災害が、災害というよりも軽傷などは日常茶飯事のことでございます。
 その場合、現実にいま炭鉱病院が市に移管をした場合に、移管受託をしているんでありますが、ところが市自体が北炭に対して四億数千万円実は貸している。ところが、移管を受託をすることになりますと、約八億でこれを買い上げてもらいたい、こういう話が参りまして、事実上いま炭鉱病院のお医者さんはやめていなくなる、看護婦さんもやめていなくなる。それはそうでしょう。賃金を払わない、賃金は半分しか払わない、あるいは退職金もどうなるかわけわからぬと、こういう問題が出ているわけです。社会的問題に実はなってきているわけです。大臣、実はこれは大変な問題になっております。したがって、これは一方では重大災害は避けなきゃなりませんけれども、ともあれ日常茶飯時に軽傷が起きているという実態を踏まえた場合に、市としてはもうやりようがないと、これは率直なあれです。しかし受けなきゃならぬ。受けるということがはっきりしました。大体それだけで八億、そのほかに炭鉱病院を維持していくとするならば、これからまた十数億の金が必要となってくる。こうなってきますので、二十数億を超えるだろうと言われているわけです。
 このやり方は、もちろん私は厚生省だけでできるとは思いません。自治省が起債を起こして当面の手当てをする、あるいは厚生省としても、救急医療などに手当てをしている特別補助といいますか、そういった対策をぜひ講じてもらわなきゃならぬ。ここらあたり、もちろん現地事情を把握をされていると思いますし、もちろん道庁からも上がってきていると思うんでありますが、これは実は緊急避難の措置の段階になっているわけです。このまま放置すると看護婦さんもいなくなってしまうし、お医者さんもいなくなってしまう。そうなったら一体どうするか。こういう緊急避難の段階に来ているものですから私はあえて申し上げるんでありますが、この特別対策を厚生省と自治省を含めてひとつとってもらいたい。この点、担当の局長なり大臣からお伺いをしたい、こう思います。
#123
○政府委員(大谷藤郎君) 夕張炭鉱病院につきましては、先生が先ほどからお話しのとおり、夕張市におきまして買い取り等種々検討が加えられていることを聞いております。
 病院の買い取り資金の確保あるいは職員の身分移管等、解決すべきむずかしい問題が種々ございますが、厚生省といたしましても、地方自治体の意向を踏まえまして、関係省庁とも相談いたしまして必要な対応をいたしてまいりたいというふうに考えます。
#124
○対馬孝且君 必要な措置をとっていただけるということですから、それならあれですが、問題は、いま一番大事なことは、看護婦さんがいなくなるという問題、お医者さんがいなくなるという問題に対して、これは市はもちろんでありますが、道庁ももちろん手だてを講じているのでありますけれども、当面対策としてこれを何とかする道はないかということが先ほど申しましたように実は問題になっているわけです。
 私がきょうここで申し上げたいことは、もちろんこれを把握されていることは承知しておりますけれども、現地へひとつ係官を派遣していただいて、現地の生々しい実態調査をしていただいて、その上に立って当面緊急にすべき措置と長期的にやるべき対策と二つに分けて対処をしてもらいたい。こういうふうに考えるんですが、いかがなものでしょうか。
#125
○政府委員(大谷藤郎君) 道庁や市の方の御意向も聞きまして十分必要な対策を講じたいと考えます。
#126
○対馬孝且君 ぜひそれをひとつ、いま言ったように当面緊急の課題でございますので、自治省ともタイアップしてひとつ早急な手だてを尽くしてもらいたい、こう思います。
 大臣、このことについて、これに対応する緊急な対策をとっていただくということについて大臣のいま一度の所見を伺っておきたいと思います。
#127
○国務大臣(森下元晴君) いま局長が御答弁いたしましたように、今日的な問題、また長期的な問題も踏まえまして、自治省ともよく相談、また地元の夕張市、北海道庁ともよく相談、連絡いたしまして、必要がございましたならば、係官を派遣してより一層十分連絡、また調査もいたしたい、このように思っております。
#128
○対馬孝且君 それでは次に、これも過般当委員会で私は二回申し上げたことがあるんでありますが、この前の四月二十七日の老人保健法を審議する委員会におきましても、同僚の高杉委員から実は出されておりますが、無医村地区の医師対策等の問題について伺います。
 四十八年から五十二年までの間の無医村地区は全国で千七百五十地区ある。そのうちの二百九が北海道である。中でも道東が多い。道東地帯といいますと釧路、根室管内方面を指すんであります。これは前にも私二回ほど佐分利医務局長時代にも申し上げたことがあるのでありますが、このことについては前向きで対応したいという、予算委員会でもそういうお答えを願っているのでありますが、一向にこれは進んでいないのであります。
 つまり、この二百九のほぼ過半数を超える地区が実はこの道東地区である。したがって、北海道はいま札幌医大、北大、加えて旭川医大――まあ道北地帯は、この旭川医大が設置したことにおいて、一応道北地区の医師の問題について解消するという一定の見通しが実はついてきております。この旭川医大ができたということにおいて道北地帯の無医村地区の解消ということが、これはすべてではありませんけれども、そういう方向に改善されている、これは一つの実証だと思います。
 そういう意味で、道東地区にぜひ医科大学を設置してもらいたいということを同僚の岡田利春代議士も予算委員会で申し上げておるんでありますが、これはぜひひとつ前向きで取り組まさしてくださいという答弁でございますけれども、その後一向に、もう四年間になりますけれども、前進はしていない。調査費ぐらいつけろということを申し上げたことがあるんでありますが、この点についてひとつ前進的な解決をされることを強く望んでやまないんであります。検討検討で時間をずらすというのではなしに、根本的に調査費程度ぐらいは来年度要求していく、このぐらいの構えをやっぱり持ってもらわないと、全国一の無医村地区の解消にはならないんじゃないかと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
#129
○政府委員(大谷藤郎君) 道東地域におきまして医師数が足りない、医師確保がきわめて重要な課題であるということは、私どもも十分承知いたしております。先ほども先生がお話しになりましたように、北大、札幌医大に加えまして、昭和五十四年から旭川医科大学で卒業生が出ているというふうなことがございまして、北海道全体といたしまして逐次卒業生がふえているわけでございます。また、全国的に見ましても、内閣といたしまして、目標といたしておりました人口十万人につき百五十人の目標を昭和六十年までに達するという見込みは、それを待たないで達成されるというふうに、急ぺースで全国の医科大学卒業生がふえているという現状でございます。そういう見地で、文部省におきましては、医科大学の新設につきましては非常に慎重な姿勢をとっているということが全国的にあるわけでございます。
 ただ、道東地域におきまして非常にむずかしい医師数不足というそういう問題につきましては、私どもも十分注目しているわけでございまして、厚生省といたしましては、地域偏在の問題にいろいろな手だてをもってこれに積極的に対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#130
○対馬孝且君 これは積極的にという言葉が出るんだけれども、これは佐分利医務局長時代からもう四年になるんだよ。これは文部省にも予算委員会で申し上げたことがあるんです。これはひとつ前向きで、全国一の無医村であるので、取り組ましてもらいたいということは出るんだけれども、どうもここらあたりが踏ん切りがつかないというか、マンネリ化というか、その場限りの答弁でなしに、四年前の佐分利医務局長時代にも、またあなたも同じことを私に言っているんだけれども、そういうことのないように、積極的に来年度五十八年度予算編成に臨むに当たっての考え方を十分に誠意を持って検討してもらいたいし、調査費ぐらい要求するという構えに立ってもらいたいと、こう再度申し上げるんですが、これはむしろ大臣にお伺いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
#131
○国務大臣(森下元晴君) 北海道の東地区、いわゆる道東地区に医科系の大学をつくるということにつきましては、われわれは非常にむずかしいということを実は聞いております。これはもちろん厚生省の所管でございませんので、文部省の所管でございますので、余り深入りするわけにいきませんけれども、要は、非常に医師数が少ない、無医村が多い、これをいかにして解消していくかということに尽きるわけでございまして、いろいろ地理的な関係もございますし、またそういう施設が、学校等がないためにそういう現象が起こっておることでございまして、地域によってそういうような粗密があることは、まことに医療行政としても申しわけないと思っておるわけであります。
 実は、先般北海道のある地域からちょうど私のところにおいでになった方が、全国のどこが一番人口の割りに医者が多いかと医師密度を調べた結果、私の選挙区の徳島県が一番多いということで、ちっとは徳島県の医者を北海道へ回してくれと言われたんですが、実は徳島県自身にも無医村があっちこっちございまして、医師の多い少ないという、いわゆる密度の問題は、北海道がどうだ、また四国がどうだという問題よりも、同じ地域でもどうしても都市に集中しがちである。先ほどの午前中の質問の中にも、医師というものはときどき勉強もしてもらわぬといかぬ、研修もしてもらわぬといけないというようなことで、どうも僻地に行きたがらないわけであります。これは待遇だけの問題ではなしに、常に勉強しなければいけないとか、子弟の教育等の問題もあるんだろうと思います。一番全国で密度の高い徳島県でもやはり無医村がある、そして外国のお医者さんがおいでになっておるような地域もございまして、一概に北海道だけではございませんけれども、しかし総合的に考えました場合に、やはり北海道は医療の恩恵を受ける施設またそういう機会が非常に少ない。
 そういうことで、われわれも努力はいたしますけれども、ただ学校をつくる問題については、私どもが聞いておる範囲では非常にむずかしいと、率直に申し上げましてそういう状況でございまして、といって、ほっとくわけでございませんので、医療体系上の問題として、厚生省としても全力を尽くして、そういう無医村の解消のためには全力を挙げるということを申し上げたいと思います。
#132
○対馬孝且君 これは大臣ね、五十二年の予算委員会で、私でなくて、先ほど申し上げました衆議院での予算委員会ですが、岡田利春代議士がこれを質問いたしまして、これは厚生大臣も答えているんです。それから文部大臣も答えているんです。その点は最重点のあれとしてぜひひとつ積極的に取り組ましてもらいたいと、こういう答弁をやっているんですよ。
 ただ、いまお聞きすると、何か後退したような答弁している。むずかしいという言い方になると、あんた、当時の厚生大臣とは違うんじゃないかということになるんでね。これは文部大臣も前向きで検討さしてくれということになっているんですよ。だから、その意味でいくと、むずかしいんでなしに、当時の五十二年にそういうことが言明されているんだから、それをやるためにはどういう問題点があるんだ、それを克服すべき問題は一体何なんだと、こういうことで取り組ましてくれと言うならわかるんだけれども、いま大臣の答えを聞くと、むずかしいというようなことで、逆に五十二年よりか後退したのかということになってしまうのでね。それでは私はここで引き下がるわけにはまいりませんよ。この点もう一回ひとつはっきりしてください。
#133
○国務大臣(森下元晴君) この点は文部省と相談をいたしたい。ただ、ここで私、文部省の意向を差しおいてどうこうと言うのをちょっとはばかる点が実はございます。そういうことで、五十二年に文部大臣、厚生大臣が前向きの答弁をされたという対馬委員の御発言を踏まえまして、文部省また文部大臣とよく前向きで話し合いをしてみたい。その後どういう状況でそうなっておるかということもあわせまして、よく話し合いをしてみたい、こういうことを申し上げたいと思います。
#134
○対馬孝且君 いま大臣から前向きで話し合いをしたいと、こういうことですから、それなりにひとつ了とします、問題はもちろん文部省との関係もございますから。
 いずれにしても、私は、きょうは三時間やりましたけれども、まだ三時間程度、自治体問題全般が実は残っております。それから老人保健制度の創設とその後の国保問題ということで、これも全部残っておりますが、いずれ改めてやることにいたしまして、きょうのところは、いま大臣からお答え願いましたようにこれは前向きで、本当に言葉だけでなしに、調査費ぐらいは来年度は日の目を見るくらいの決意で、ぜひひとつ最善の努力を払ってもらいたいということを申し上げまして、きょうはこれをもって終わりたいと思います。
#135
○中野鉄造君 私は、特に老人対策の中で痴呆性老人、そしてまた寝たきり老人の方々に対する対策をまず最初にお尋ねしたいと思います。
 老人福祉法が制定されてもうすでに二十年の歳月が過ぎましたけれども、この二十年の間に社会環境というのは目まぐるしい移り変わりをしてまいりました。特に高齢化が急速な進展をしております最近、核家族の増加とともに、老人を扶養していくその能力は弱体化していっているわけですけれども、それだけに老人福祉対策の整備充実は、これはもう緊急の課題となっているわけでございます。いま申しますように、初めにそうした同じ老人対策の中でも痴呆性老人対策、この対策についてお尋ねいたします。
 実は、一昨日のNHKのテレビドラマの「ドラマ人間模様」という中でもこの老人性痴呆症の実態を取り上げられておりましたけれども、事実はもっともっと深刻で、これはいろいろな付随的な家庭問題を派生していることも事実でございます。しかもこれは今後高齢化の急速な増加に比例いたしまして、いまだ経験したことのないような大きな社会問題となることは、これは必至ではなかろうか、こう思います。
 私の調査したところでは、東京都を例にとりますと、六十五歳以上の老人のうち、この痴呆性老人、いわゆるぼけですね、痴呆性老人の出現率は四・六%、こういうふうになっておりまして、都内六十五歳以上の老人は約八十七万と言われておりますので、このパーセントでいきますと、この出現率からいけば、約四万人の方々がこの痴呆性老人ということになりますけれども、厚生省では全国の数をどういうようにつかんでおられますか。
#136
○政府委員(三浦大助君) 老人性痴呆の全国の数でございますが、国としてはこれまだ把握しておりません。ただいま先生おっしゃいましたように、昭和五十五年に東京都で実施いたしました「老人の生活実態及び健康に関する調査」という調査がございまして、これから推計いたしますと約五十万人という数字があるわけでございます。発現率というのは、六十五歳以上の老人の四・六%という数字があるわけでございまして、またその原因といたしましては、脳血管障害によるものが最も多いというところまでわかっておりますが、国としてまだ全国的に把握はしておりません。
#137
○中野鉄造君 この痴呆性老人の介護というのは、これは寝たきり老人とは違って、手足がわりかし自由に動く、また行動性があるというようなところから、本当に寝たきり老人とはまた違った深刻な悩みもあるようでございまして、たとえば夜中大きな声を張り上げるとか、夜どこともなしに出かけていくとか、あるいは家族を離さない、あるいは外出したら道に迷って、一週間のうちに二回も三回もあっちこっちの交番から引き取りに来てくれというような電話があるとか、そういうような大変ないろいろな悩みがあるようですけれども、そういう問題行動とでもいいましょうか、そういうようなものが約四一・九%、こういうように全体の中で把握されておりますが、こうしたいわゆる老人性痴呆症、これが精神障害とみなされておりまして、昭和三十九年の厚生省老人福祉課長通達で、この人たちは特別養護老人ホームに入所できないことになっておりますが、こうした通達がいわゆるぼけ老人の介護対策の根っこになっているのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
#138
○政府委員(三浦大助君) 老人性痴呆で医療を要するもの、なお行動制限を要するもの、こういうものは精神科の病院の方に入院をさしていただいておる。それからもう一つは、医療は要しないけれどもある程度の行動制限は必要とするもの、これは特養の方に入れさしていただいておるということでございまして、いま老人性痴呆で入院中の患者が二万二千人、それから特養の方にいま入っておられる方が、特養の入所者の一三%に当たりまして、一万四百五十人ということでございまして、あと軽度の痴呆で家庭介護が可能なものにつきましては、精神科のデーケアあるいは外来診療、あるいは保健婦さんが訪問していろいろ相談を行っているというのが実態でございます。
 この問題につきましては、先ほどの老人保健事業の実施を通じまして痴呆の発生を防止するということが、これから非常に大切なことじゃないかということで、今度の老人保健法案の中でも精神衛生対策として中に含まれておるわけでございまして、この保健事業の一環として、こういうものを保健所を中心として今後私ども対策を進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#139
○中野鉄造君 もちろん予防対策ということ、これはもう当然必要でございますけれども、それと相まって、先ほどから申しておりますように、相当な急速な出現の増加をもたらしている現況でありますので、こうした方々に対する対策がいかがですかということをお聞きしたいんです。
#140
○政府委員(三浦大助君) 痴呆老人の福祉対策といたしましては、特別養護老人ホームあるいは養護老人ホームにおきます痴呆老人の適切な処遇を推進するために、今年度から新しく精神科医の雇い上げ費も計上しておりまして、そういった方面の充実も図っておるわけでございます。
 なおまた、精神衛生の面からいたしますと、老年性痴呆疾患の中で明らかに精神症状を呈するようなものは、これは精神病院において先ほど申し上げましたように医療を行っております。この種の患者のための専門病棟の制度も、昭和五十二年度から国庫補助をつけまして整備を行っておるということでございまして、老人保健事業の一環といたしまして、新しく昭和五十七年度から老人性痴呆及びその家族を対象といたします精神衛生相談事業も行うことにしております。
 もろもろの対策を実施しながら、ひとつこういう人たちの福祉の向上に役立っていきたいと考えております。
#141
○中野鉄造君 この痴呆症の医学的定義というのはありますか。
#142
○政府委員(三浦大助君) 医学的定義と申しますのは、痴呆というのは、精神医学的には、一たん獲得された知能が脳の器質的障害によって永続的、つまり不可逆的に低下あるいは喪失することをいうという定義がございます。
#143
○中野鉄造君 そうすると、これはもう治らないわけなんですね。
#144
○政府委員(三浦大助君) 不可逆性の変化ですから、これはまあ非常に治るのはむずかしいということでございます。
#145
○中野鉄造君 そうすると、同じ痴呆症にも重度のと軽度のといろいろあると思いますけれども、先ほどからお答えになったように、全国的に見て推定約五十万、その中には重度、軽度いらっしゃると。しかし、たとえそれが半分にしても、三分の一にしても、相当なこれは数になるわけでございますが、先ほど御答弁があったようなそういうような相当な数の人たちを、しかも治る見込みのないそういう人たちを収容できる、あるいは治療できるだけの何か対策がありますか。
#146
○政府委員(三浦大助君) こういった人たちの収容につきましては、先ほど申し上げましたように、五十二年から専門病棟の整備も行っておるわけでございます。
 なお、先ほど不可逆的変化ですから非常に治ることはむずかしいと申し上げましたけれども、脳に刺激を与えて治すような医学的な研究もいま盛んに行われておるわけでございます。
#147
○中野鉄造君 だから、五十二年から行われておりますから、現在の時点ではどういうふうになっていますか。
#148
○政府委員(三浦大助君) 五十二年から病棟の整備を始めまして、五十二年には二百八十三床でございましたのが、五十七年には約七百床にまでふえてきております。
#149
○中野鉄造君 わずかに七百床なんですね。そうすると、あとの方々はその家族の方々が大変な御苦労をなさっているわけですけれども、ですからいま申し上げておりますように、そうしたたくさんの本当に言い知れない心身ともに御苦労なさっている方々に対して、何らかのひとつ手を差し伸べてやっていただきたいというところで、ますますこの対策が追いつかないくらいな急速な高齢化が進むわけですので、特にこの点をお願い申し上げているわけです。
 それといま一つは、こうした精神障害者とみなされるこのぼけ老人の方々が、やがてこれだけ多くなってまいりますと、犯罪に結びつくような行為も出てこないという保証はありませんし、最近とみに増加しつつあります精神異常者による悲惨な犯行、特に数日前に発生しました東京、佐賀の両事件にかんがみまして、こうした精神異常者あるいは精神障害者による犯罪防止の上からも、今後どのような対策をお考えになっているのか、この点はひとつ大臣にお尋ねしたいと思います。
#150
○国務大臣(森下元晴君) この痴呆老人、まあ一名ぼけ老人という言葉は、いいか悪いか知りませんけれども、現実に高齢化社会の中で、寝たきり老人もそうでございますけれども、私はそういう常識的な人格を失った老人の方を持つ家庭ぐらい不幸な家庭はないと思います。精神病院に入れるにも忍びない、といって一般の病院では入れてくれにくいということで、御指摘のとおりでございます。
 まさに老人保健法の趣旨でございます健やかに元気で長生きしていただきたいと、そういうことをこれからやるわけでございまして、今日的な問題で、現にそういう方々に対するこの対策ですね、非常に専門の病床も少ない、また家庭においては犯罪にもつながるような場合もございます。そういうことで、私自身も知り合いにそういうような方のある方がおられまして、相談を受けたり、またいろいろ陳情等でも、特に痴呆老人についての相談は非常に多いわけでございまして、この点、老人保健法とはまた別の問題、今日的な問題としてこの対策をもう少し重点的に取り上げなければいけないと、こういうふうに実は考えておるわけでございます。
#151
○中野鉄造君 事のついでのようですけれども、先ほども申し上げましたように、かって精神病院に入院しておった人だとか、放置しておけばそうした犯罪行為もなしかねないというような人たちに対して、どういうようなお考えをお持ちですかと、それをお聞きしているんです。
#152
○政府委員(三浦大助君) いま新聞紙上で問題になっております精神障害者の犯罪という問題は、むしろ痴呆性老人と申しますよりも、分裂症あるいは覚せい剤による精神障害という方々のことが大分話題になっておるわけでございます。
 ただ、いま私どもあくまでも、精神衛生法上は、精神障害者の治療と保護ということをたてまえにしておるわけでございまして、一方、法務省の方でいま治療処分という話題もございますが、これはあくまでも犯罪の防止ということでございまして、次元の違う問題であるわけでございますが、ただ私ども、こういう精神障害者の医療と保護を行うということは、間接的にはまた犯罪防止にもつながってくるんじゃないだろうか。
 したがいまして、いまいろいろそういう問題どうしようかということで、公衆衛生審議会の方で御審議をいただいておるわけでございますが、とりあえずたとえば、そういう可能性があると申しますといろいろ人権上の問題があってむずかしゅうございますけれども、措置入院で出られた方々をまた後手厚く見守ってあげる。そういうことは県の精神衛生センターなり保健所なりで後いろいろとお世話をしてあげる。こういう施策をさらに充実させることによって、だんだんそういう問題がなくなっていくように取り計らっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#153
○中野鉄造君 これはそういういわゆる精神異常者のみならず、先ほどから申しておりますように、こういう痴呆性老人の方々がどうかすると人格が喪失していると言ってもいいような方々でありますがゆえに、事の善悪というものがなかなか理解しがたい、あるいは妙な幻覚だとか、あるいは被害妄想みたいなことから犯罪につながるような行為をしてみたり、そうでなくとも失火、いわゆる火災を発生させるとか、そういうようないろいろなことだってこれは考えられることなわけなんですから、その点についてもひとつ、先ほどお聞きいたしますところでは、まだまだきわめて遅遅としてその対策が進んでいないようでございますので、ひとつ極力この御努力をお願いしたいと思います。
 この老人性痴呆症、この予防というのはどういうような対策がありますか。
#154
○政府委員(三浦大助君) この予防でございますが、一番老人性痴呆の大きな原因と申しますのは、何と申しましても、脳血管障害によるものが一番多いわけでございます。したがいまして、今度の老人保健事業の中にもございますが、こういう事業の実施を通じて循環器対策というものをまず積極的に推進すれば、いまその原因が約四割ぐらいがこういう循環器疾患によります原因によって痴呆になるわけでございますから、かなり減ってくるんではないだろうか。あわせて、また老人のための精神衛生の相談事業、これは五十七年度予算にも含まれておりますが、なるべくそういうことで老人の方々のめんどうを見てあげたい。そういうことを通じましてひとつ痴呆の防止をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#155
○中野鉄造君 半分に近い人たちは、どちらかと言えば、そういう脳疾患によるところの原因でそういうことになる、あとの方々は、どちらかと言えば、老化現象によるという、そういう抽象的なこともありましょうけれども、生きがいをなぐしたがゆえに、そういう面からそういうようなことになってくるということも十分に考えられるわけですけれども、寝たきり老人というようなそういう老化の予防と同時に、この痴呆症に対する予防ということについてもいろいろひとつお考えをいただきたいと思います。
 ちなみに、この間新聞で見ましたけれども、生きがいというか、そういうようなものをいつまでも何らかの形で持ち続けていただくというようなことで、おさらい教室だとか、そういったようなことをお年寄りに分担してもらって、近所の子供たちにおさらいのお相手役をさしているというようなところだとか、いろいろ知恵はあるんじゃないかと思いますので、ひとつその点も御検討いただきたいと思います。
 次に、寝たきり老人についてお尋ねしますが、在宅の常時介護を要する寝たきり老人、この方々を抱えている御家族の労苦というものは、これはもうもちろん大変なものがあると思いますが、その実態をどのように認識されておりますか。そしてまたその対策をどのように実施なされているのか。この点についてお尋ねします。
#156
○説明員(竹中浩治君) 最初に寝たきり老人の数について御説明をきしていただきたいと思いますが、昨年の六月に私どもの厚生省で実施をいたしました厚生行政基礎調査の結果によりますと、六十五歳以上で六ヵ月以上寝たきりの状態にある方、いわゆる寝たきり老人の数は三十二万四千人ということでございます。これは老人ホーム等の社会福祉施設に入っておられる方は除いてございます。この数は、六十五歳以上の人口に対しまして百人のうち二・九一人、およそ三人ぐらいということでございます。
 今後この寝たきり老人の数がどうなるかということでございますが、社会的な、医学的ないろいろの条件がございますので、予測はむずかしいわけでございますが、御承知のように、今後高齢者の人口が増加をいたしますので、それに伴って寝たきりの老人の数がふえるのではないかということは当然考えられるわけでございます。しかし、また一方で、寝たきりになる原因の主な部分は、高血圧とか脳卒中といった循環器系疾患でございます。これらは、今後いろいろ努力をいたして減少さしていきたいということで、いまの老人数の増加に伴います寝たきり老人の数も多少ブレーキをかけることができるんではないかと思っております。
#157
○政府委員(金田一郎君) 寝たきり老人に対する対策でございますが、福祉サービスといたしまして、特別養護老人ホームを整備いたしておりますことは御承知のとおりでございます。
 在宅の方々に対するサービスといたしましては、第一に家庭奉仕員の派遣による身の回りの世話をいたしております。この奉仕員は今年度から一万六千六百人ばかりに、約三千人以上の増員をいたしております。
 第二番目に、特殊寝台、浴槽など、日常生活用具の給付をいたしております。これは約六品目のものでございます。
 第三番目といたしましては、寝たきり老人を一時的に特別養護老人ホームで預かります寝たきり老人短期保護事業。これは約一週間程度でございますが、収容対象が約二万八千人程度でございます。
 第四番目といたしまして、デーサービス施設に通所をいたしまして、入浴、給食、日常生活動作訓練などのサービスを受ける通所サービス事業でございますが、これは現に七十四カ所ございます。
 第五番目といたしまして、家庭を訪問し入浴、給食、洗濯のサービスを行う訪問サービス事業でございますが、これは四十七カ所ございます。
 第六番目といたしまして、特別養護老人ホーム等に通所をいたしまして、リハビリテーションを受けます在宅老人機能回復訓練事業がございますが、これが二百六十四カ所ございます。
 第七番目といたしまして、在宅老人家庭看護訪問指導事業、これは百六十八市町村で現にやっておるわけでございますが、これらの事業につきまして、それぞれその家庭の実情に応じましたきめ細かなサービスを行っているところでございます。
#158
○中野鉄造君 きめ細かなサービスをやっているといま御答弁がありましたけれども、それだけのことを聞く限りにおいては、きめ細かなということも言えなくもないかと思いますけれども、いまおっしゃったように、それだけの寝たきり老人の数に対してわずか一万六千六百人の人たちがいろいろ御苦労をしていただいておる。本当に一週間にあるいは十日間のうちに果たして何時間そういう方々のお世話をしていただくことができるかといえば、本当にこれはもうわずかなものだということになると思います。こういうこともやっている、ああいうこともやっているということで、まあ員数合わせみたいなことじゃなしに、もっともっと何かそのお家族の方々にとって、また御当人にとっても、かゆいところに手が届くような何か施策はないものかということを私たち痛感するわけです。
 いずれにしても、いまお答えがあったような大半の方々が在宅の介護によって毎日を過ごされておる。それだけにそのお家族の方々は大変な御苦労をなさっておる。これはまた裏を返せば、社会は収容、ケアに要する多額の費用のかなりの部分を節約しているということがこれで見れるわけですけれども、現在老人の福祉施設入居者の一人当たりの所要額はどの程度になっておりましょうか。また、その在宅対策の予算額は一人当たりに換算するとどういうふうになっておりますでしょうか。
#159
○政府委員(金田一郎君) 現に老人の施設に収容されている方につきましては、たとえば特別養護老人ホームの場合におきましては、その金額は、一番低い場合には全く徴収してないわけでございますが、最高が四万五千円ということでございます。収入がどの程度ございましても四万五千円ということでございます。それから養護老人ホーム、これは低所得の老人の方が比較的多いわけでございますが、この場合は四万円ということでございます。ことしの七月からそういうことになっております。
 それから在宅の方々に対します経費がどれだけかかっているかということにつきましては、ちょっとただいま詳細な資料がございませんので、もしよろしゅうございましたら後ほどお届けいたしたいと思いますが、それでよろしゅうございますか――失礼いたしました。在宅福祉対策総額百一億円でございます。一人当たりはちょっといまわかりませんので、後ほどまた調べてみたいと思います。
#160
○中野鉄造君 この寝たきり老人と言われる人たちが、先ほど御答弁がありましたように、今日の数字はわかりましたけれども、今後の高齢化が進むに従ってかなり増加すると思われます。将来の増加人数をどういうように予想されておりますか。
#161
○説明員(竹中浩治君) 寝たきり老人数の将来予測、なかなかむずかしいんでございますが、先ほどちょっと申しましたように、老人の数がふえるということでふえる。一方でいろいろのヘルスサービス等によって減るということでございますが、私ども最近では五十三年と五十六年に調査をいたしまして、その五十三年と五十六年の調査の結果から計算をいたしてみますと、五十六年が三十二万四千でございますが、六十年は三十三万から三十五万ぐらいのところではなかろうかという感じを持っております。
#162
○中野鉄造君 先ほどから申しておりますような痴呆性老人あるいは寝たきり老人、こういう方々を抱えている御家庭では、本当にお気の毒なことなんですけれども、そういう手のかかるお年寄りを抱えているということがゆえに、よけいな家庭不和だとかいろんな家庭問題が派生しているわけですけれども、それがややもすればとかくしわ寄せが、何ですか、おしゅうとさんの看護に当たる人たちが女性であるというところから、奥さんだとか娘さんだとか、そういう女性の方にそのしわ寄せがかかってきているというのが実情じゃないかと思います。本来ならば共稼ぎできる立場にありながらも共稼ぎできない。そしてまた経済的にいろいろなよけいな負担がかかってきているというような実情があるんじゃないかと思いますが、その実態をどのように認識されておりますか。
#163
○政府委員(金田一郎君) 確かに先生がおっしゃったような実態がございまして、実は昭和五十二年に全国社会福祉協議会が調査いたしました結果がございますが、これによりますと、寝たきり老人の介護に当たっております人は、ただいま男女の別でおっしゃいましたが、女性が八六・九%ということでございまして、お嫁さんの場合が三七%、配偶者が一二・六%、子供が二一%という状況でございます。
#164
○中野鉄造君 こうした在宅寝たきり老人の場合、いまおっしゃったような家族の大変な苦労があるわけですけれども、国際的に見てまいりますと、最近は特にそういう方々に対しては公的機関でカバーしていっているという傾向が強いと思います。たとえて申しまして、家庭奉仕員の欧米諸外国の数というようなものがわかりましたらひとつ教えていただきたいと思います。
#165
○政府委員(金田一郎君) 諸外国におきます老人対策でございますが、諸外国におきましても、公の施設の場合とあるいは民間の施設――社会事業というのは古くから民間でもいろいろやっておられたわけでございますので、それぞれございまして、わが国の場合とおおむね同じような状況ではないかと思っておりますが、たとえば各国とも老人ホーム等の施設対策と、それからホームヘルパーとか給食サービス、デー・サービス・センター等への通所によるサービスなどの在宅対策が実施されております。
 外国とわが国と比較いたしますと、わが国の老人福祉対策も、先ほどもちょっと申し上げましたホームヘルパーが今年度から非常にふえまして、かついままでは低所得世帯だけでございましたのが、年次計画的にすべての世帯を対象にするということになりましたので、おかげさまで在宅対策、施設対策ともに諸外国と比べてみましても、まず大体その体系は諸外国に劣らないものになったのではなかろうかと考えております。
 また、ホームヘルパーの数は、各国のいろいろな事情がございまして、非常に多いところ少ないところございまして、たしか私の記憶ではイギリスなどは非常に数が多かったと思います。いまちょっとお待ちいただきたいと思います。――失礼いたしました。
 ホームヘルパーの配置状況でございますが、アメリカが総数で六万人でございます。カナダが三千二百九十人。フランスが七千百四十四人。
 このように申し上げてもちょっとおわかりにくいかと思いますので、アメリカの場合のこの六万人といいますのは、人口十万対比で申しますと、常勤、非常勤合わせまして約二十八人でございます。カナダが三千二百九十人といいますのは、人口十万対で約十四人でございます。フランスは七千百四十四人、人口十万対約十四人でございます。それから西ドイツは一万二千六百八十五人、人口十万対約二十一人でございます。オーストラリアが三百三十九人、これは人口十万対約五人でございます。イギリスが非常に多うございまして、十二万九千七百二十四人、人口十万対二百二十二人という状況でございます。
#166
○中野鉄造君 わが国は。
#167
○政府委員(金田一郎君) わが国は五十七年度で人口十万に対して十四人でございます。
#168
○中野鉄造君 それで、いろいろなサービスの内容というものもあるかと思いますが、たとえばこの間ある新聞で見ましたところでは、ある地方では、特にこの寝たきり老人も含めて独居老人の方方、こういうような方々に、ホームヘルパーというか、いろいろな訪問指導というか、そういうものの一環として給食を実施しているというようなことも聞きましたけれども、そういう点はどのようにお考えですか。
 というのは、独居老人の方々の一番の要望というのは、三度三度の炊事あるいはその炊事のための、食事のための買い物というようなことが一番苦になるというような調査結果が出ておる。そこからそういう運動が始まっているようですけれども。
#169
○政府委員(金田一郎君) 確かにおひとりの老人の場合にはお困りの方が多いと思いますが、先ほどちょっと対策の中で申し上げましたうちの訪問サービスでございますが、これは入浴とか給食、洗濯と申し上げたわけでございますが、この中に給食のサービスもございまして、食事をお宅まで運んで差し上げるということをいたしております。また通所サービス、通ってこられましてその施設で食事を差し上げるというサービスもいたしております。これら両方あわせまして現在約百十カ所のサービスを行っているわけでございます。
#170
○中野鉄造君 ヘルパーの人たちがその対象者のところに毎日行けますか。
#171
○政府委員(金田一郎君) 従来は大体多い場合で週に四回程度と考えておりましたが、今年度からは毎日必要によりましては伺うということも考えております。したがいまして、大体多い場合は一日に二時間程度毎日ということもあり得ると考えております。
#172
○中野鉄造君 私も以前地方の議員をしておりました当時、そのヘルパーの人たちの御苦労というものをつぶさに見ておりまして、その実態というものを承知しているつもりですけれども、なかなかその計画のとおりにはいかないようでございまして、その点もひとつ十分これから考慮、検討して当たっていただきたいと思います。
 特に、今回保健事業の一つとしてこうした寝たきり老人に対する訪問指導という事業を行うということになっておりまして、それと、このことについて先ほどから申しておりますように、寝たきり老人をいかにそういうようにならないように予防するかということがまた一つの対策になっておりますが、同時にこの寝たきりの人たちを一人でも多くそういう状態から脱却させていくということも、これもまた一つの仕事ではないかと思いますが、この事業は、先ほどから申しておりますように、言うことは簡単でございますけれども、実際やってみると大変ないろいろな苦労がそこにあるわけですが、厚生省は初年度の訪問指導の対象者を十七万二千人と概算要求の段階では見積もっておられるようですけれども、この十七万二千人というのはどういうようなところから算出されておりますか。
#173
○政府委員(三浦大助君) 私どもの計画で昭和五十七年度におきます訪問指導の対象者と申しますのは、寝たきり老人とそれから訪問指導を必要といたします要注意者、これを合わせて約十七万人というふうに見込んでおるわけでございます。
 その内訳を申し上げますと、寝たきり老人につきましては、四十歳以上の寝たきり者約四十万人おるということを見込んでおるわけですが、この中で訪問を希望する者は約半分の二十万人程度ではないだろうかというふうに見込みまして、実施可能な市町村から逐次開始することといたしておるわけでございます。初年度はこの六〇%、すなわち約十二万人を訪問するということになっておるわけでございます。
 この半分の根拠と申しますのは、これは東京都の老人総合研究所が前に実態調査をいたしましたときの要訪問率、そこからその要訪問率を引用してこのパーセントを決めてあるわけでございます。また、健康相談とか健康診査の結果、特に訪問して指導をすべき要注意者というものにつきましては、初年度約五万人と見込んでおります。
 なお、厚生省といたしましては、市町村におきます実施体制の整備を進めまして、五カ年後には訪問指導の必要と認められる者すべて、つまり二十一万人を訪問できるように事業の規模を逐次広げてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#174
○中野鉄造君 そうすると、厚生省が作成されております保健事業の概要及び実施計画案では、対象者を「四十歳以上の在宅のねたきり者及び健康診査等の結果、訪問指導が必要と認められる者」と、こうなっておりますけれども、その健康診査等の結果訪問指導が必要であると、こういう人たちはどういう人たちを言うんですか。
#175
○政府委員(三浦大助君) これは医学的にいろいろなケースが考えられると思いますが、たとえば狭心症の疑いがあって、余り動かさぬ方がいいというような方は訪問しなきゃいかぬ。そういう医学的な個々のケースに基づいて決めていかなければならないと考えております。
#176
○中野鉄造君 そうすると、この実施計画では、訪問指導に従事する保健婦さんには、退職保健婦の雇い上げ三千人、この人数で対処すると述べておりますけれども、この三千人の方々はどういう形で雇用されるわけですか、その雇用形態は。
#177
○政府委員(三浦大助君) この寝たきり老人の訪問指導につきましては、経験豊かなという意味で、退職された保健婦さんを活用することにしておるわけでございますが、その勤務形態と申しますのは、たとえば週のうち二日なりあるいは三日なりこれを地域の寝たきり者がいる家庭の訪問指導に従事していただくということで、雇い上げということになっておるわけでございます。
#178
○中野鉄造君 それで、そういういわばパートですね、パートといったような形になるわけですか。
#179
○政府委員(三浦大助君) さようでございます。
#180
○中野鉄造君 そういうパートというような非常に責任があるようなないような、その身分の所在というものも、もし何か事故があったときにはどこが責任を持つのか、そういったようなこと、またそういうパートというような勤務形態で十分な事業の推進ができるかどうか。その点いかがでしょうか。
#181
○政府委員(三浦大助君) この訪問指導事業につきましては、要訪問者の決定とかあるいは主治医との連携、こういうものは常勤の保健婦さんであくまでも計画をしていただく、そこに雇い上げの退職保健婦さんとの有機的な連絡をとりながら実施していただこうと、こういうことになっておるわけでございまして、この雇い上げの保健婦にすべてを任せると、こういうことではございません。
 また、事故の問題につきましては、まだそこまで私ども――計画の段階でございますので、これからいろいろ県の方でそういう細かい配慮、また打ち合わせ、どうするかという問題、これから御相談してまいりたいと思っております。
#182
○中野鉄造君 そうすると、その訪問指導をされる内容というものはどういうことですか。
#183
○政府委員(三浦大助君) 寝たきり者と申しますのはとかく不衛生になりがちでございますので、その清拭の方法、きれいにする仕方、それからあるいは食事の指導、それから日常生活の動作訓練、こういうことが中心になろうかと考えております。
#184
○中野鉄造君 先ほどお答えがありましたように、そういう方々は主治医、お医者さんとの連携、そういうようなことを密にしていくということですけれども、それといま一つは、先ほど私ちょっと触れましたように、地方の市町村ではこれまたホームヘルパーという人たちがいらっしゃるわけなんですが、そういう方々と事業内容が重ならないまでも、いろいろなその接点というものはあるわけですけれども、そういった点についてのいわゆる連携とでもいいましょうか、そこいらをどのように配慮されていくのか、またその連携をだれがうまくやっていくのかですね、その点はいかがでしょうか。
#185
○政府委員(三浦大助君) こういう寝たきり者につきましては、当然健康手帳が配付されてあるわけでございます。したがいまして、訪問した保健婦さんが中心になっていろいろお世話を申し上げるわけでございますが、ホームヘルパーとの緊密な連携あるいは主治医との緊密な連携、これは当然必要なことでございますので、その点は県の方に十分指示いたしておきたいと考えておるわけでございまして、その連携をする中心になる方々と申しますと、これは常勤の保健婦さんにお世話をいただかなきゃいかぬじゃないだろうか、その方が中心になって有機的な連携を保ってやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#186
○中野鉄造君 いろいろ調査結果によりますと、寝たきり者というよりも、特に寝たきり老人の場合ですが、寝たきり老人を介護する家族の人たちから見た場合に、その家族の方々の要望事項の順位をつけて言えば、いわゆるお医者さんの往診をまず第一番に希望する。それから二番目に医療費に関する問題ですね、できれば無料化にしていただきたいだとか何だとか、その医療費に関する問題。それから三番目には、医療機関施設の充実、配置と、こういったような点。そのほか二、三、いろいろありますけれども、いま挙げられているような保健婦の訪問と指導というような事項は、要望の順位としてはずっと後に出てくるわけなんですけれども、先ほどからお答えになっておりますように、できれば毎日、一日数時間ずつ訪問指導をするというようなことであれば別として、実際にはこれはやってみないとわからないことですけれども、なかなかそういうことはむずかしいと、こう思うんです。
 先ほどから申し上げておりますような二、三、私事例を挙げて申しましたけれども、そういう日常的な当面する切実な問題を解決するという面から、御家族のそういう要望等にもっと耳を傾けて対処されるべきじゃないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
#187
○政府委員(三浦大助君) わが国にまだ訪問看護という制度がございません。したがいまして、いろいろ医療機関との関連のむずかしさはあろうかと思いますが、こういう往診あるいは医療費のお世話、いろいろ出てこようかと思います。したがいまして、それは担当の常勤の保健婦さんによくひとつ連絡を密にしていただきまして、たとえば医療費のいろんな相談があれば、当然保健所にはメディカル・ソーシアル・ワーカーがおるわけでございますから、そういった方々との相談、いろんなところとの連携プレーは密にしていくように十分指導してまいりたいと思っております。
#188
○中野鉄造君 全国保健所長会の保健事業実施体制の調査報告によりますと、実施不可能とする市町村が二百十七市町、全体の八・五%、無記入を含むとこれは一五%、保健所では実施不可能とするところ一四・六%、無記入を含むと二四%と、四分の一にもこれは達しているわけですけれども、こういった報告をどのように認識し、分析しておられますか。
#189
○政府委員(三浦大助君) 私どもこのヘルス事業につきましては、一挙に、一斉にやるというんじゃございませんで、五年間かけて一定のレベルにまで持っていこうと、こういうことでいまやっておるわけでございます。したがいまして、いままだ保健婦すら置いてない町村があることも私ども十分わかっておるわけでございますが、だんだんそういう町村は少なくなってまいってきております。
 特に、いまそういう保健所長会のいろんな調査もございましょうけれども、現に全国三千二百二十五市町村の中で、もうすでに健康手帳というものを配付して実施している市町村はもう五〇%、現在やっている市町村は五〇%ございます。あるいはまた健康学級、あるいは健康相談をやっている市町村というのは八割に達しております。それから健康診査、循環器、胃がん、子宮がん、こういうものは九五%ぐらいの市町村が何らかのかっこうでやってる。ただ、機能訓練、リハビリのようなものはまだ一四%ぐらいの市町村でやってるにすぎない。こういうことでございますので、かなりの市町村で保健学級とか健康相談とか健康診査、こういうことはもうやっておるわけでございまして、ただその実施率がまだ低い。たとえばがんならまだ八から九%程度、それから循環器なら二三%程度と、こういうことでございますので、順次ひとつこういう一連の対策が五年後にある一定のレベルにまで全部平均して持っていけるようにということで、私ども今後努力してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#190
○中野鉄造君 この医療保険と福祉というものは、これはもう車の両輪みたいなもので、切っても切り離せない関係にあるわけですけれども、したがって、行政の面でもその接点のところが果たしてスムーズに連携をとり得るようにしていかなくちゃいけない。そういう組織づくりをする必要があると思いますけれども、そういう点で中央の方でどのような対応をされるのか、また地方に対してはどのような指導をされるのか、その点お尋ねいたします。
#191
○政府委員(吉原健二君) 老人保健法を実施いたしますための中央、地方での体制といいますか、機構の問題でございますけれども、厚生省におきましては、公衆衛生局に老人保健部をつくりまして、そこで所管をするということを考えておりまして、現在設置法の改正を国会で御審議をいただいているわけでございます。これまで医療は保険局、それから公費支給の分は社会局、そういうふうに分かれて所管をしておりました。それから老人のヘルスにつきましては、同じく社会局の老人保健課で所管をしておりますし、一般の成人病対策等につきましては、公衆衛生局の結核成人病課というところでやっていたわけでございますけれども、この法律というものが医療とヘルスというものを総合的にとらえて推進をしていこうということでございますので、やはり一つの部をつくって強力な体制をつくる必要がある。何といいましても、年金と並んでこの法律というのは将来の高齢化社会における一番大事な柱の法律となるものでございますので、体制といたしましても、そういったしっかりした体制をつくって進めていくということを考えているわけでございます。
 それから地方におきましては、都道府県におきましても、そういった新しい制度の趣旨というものを踏まえまして、民生部あるいは衛生部、そういったところがこういった老人対策を現在所管をしているわけでございますけれども、できれば統一的に総合的に実施ができるように、都道府県によって事情は違いますけれども、私どもとしては、どちらかというと、衛生部で一体的に所管をして推進をしてもらうということをお願いをしているわけでございます。市町村におきましても、同様な趣旨でこの法律の制度の実施のためにしっかりした体制をいま都道府県を通じて準備その他をお願いしてる段階でございます。
#192
○中野鉄造君 じゃ最後に大臣にお尋ねいたしますが、先ほどからずっとお聞きしてまいりましたけれども、ややもすれば総花的で、あれもやります、これもやりますと、しかし余り内容は伴わない、そうして急速な高齢化社会についていけないようなきわめて緩慢な対策のように思われて仕方ないんですけれども、ひとつ今後の御決意をお聞かせいただきたいと思います。
#193
○国務大臣(森下元晴君) 人生五十年から人生七十五、また人生八十歳と、非常に高齢化社会に突入して、日本の医療、また文化面におきましても世界の水準に達した。こういう喜ぶべき現象もございますけれども、また一面、急速に高齢化したために、非常なひずみが出てきておることは事実でございます。
 それが老人保健法の立法していただく趣旨でもございますし、いまいろいろ御意見拝聴いたしまして、寝たきり老人とか、また痴呆老人が、御本人はもちろん、御家族の方々にも大変な御苦労をおかけしておる、それで行政はなかなかついていけないというこの現実、これはわれわれも率直に認めなくてはいけないし、今日できることは、最大限の力をもってしなければいけないわけでございますし、これから高齢化社会において、もちろん年金等の問題もそうでございますが、保険面におきましては特に御負担の問題、また同時に高齢化社会に住む方々、そういう方々が元気でしかも健やかに長生きできるような社会をつくらなければ、これは何のための高齢化社会かわからないというふうに実は感ずるわけでございます。
 なるほど医療とか治療面、薬も非常に高度に発展いたしましたが、保健、衛生、社会環境づくりという多角面から、本当にピラミッドが築かれていくように、すべて総合的に健やかな高齢化社会をつくっていこうと、こういう理想を掲げながら、現実面においては早く御意見どおりまた政策が追いついていくように、私どもは今日の問題として予算面においても全力を挙げてやっていきたい。そのためには、ホームヘルパー、また介護人等の問題につきましても、補充の問題とか、またいろいろときめ細かなやり方についても勉強もしたいし、また配慮もすると同時に、保健所も、また地方の自治体ともよく相談してやっていきたいと、このような強い決意で取り組みたいと思います。
#194
○中野鉄造君 終わります。
#195
○沓脱タケ子君 私は、これまで二回、四月の二十日と五月の十一日の質疑で、老人保健法の基本的理念が、社会福祉、社会保障、公衆衛生に対する国の責任を定めた憲法の精神に反するという点を特に四月の二十日には厳しく追及をいたしてまいりました。
 そのことが、さらに臨調の第一部会報告が発表されまして、いよいよ国民の前に明らかになってきたわけでございますけれども、老人保健法は、行革のためには福祉を切り捨ててしまうんだというこの臨調路線の先取りである。しかもそれが臨調に代表されておりますように、財界の主張そのものであるということでございます。
 さらにまた、私は一部負担金の導入については、政府の御主張には根拠がないという点を各方面から御指摘を申し上げてまいりました。あるいは保健事業につきましては、労働者健診というものを特別に重視するべきではないかという点についても申し上げ、さらに地方自治体の単独上積み事業というのを政府が強制的にやめさせることはできないはずだという点の問題等を取り上げてまいりまして、老人保健法案というのは今日の状況のもとで廃案にするべきであるということを強く主張してまいったわけでございます。
 一部負担金の導入によって、現在無料の老人医療費を有料にするということは大変重大な問題でございまして、現在の国民生活の中でも大変な問題であると同時に、今日のお年寄りにとりましては、本当にがまんのならないというか、認めることのできない問題だと思うわけでございます。したがって、きょうもう一度改めて一部負担金の問題についてお伺いをいたしたいと思います。
 具体的にちょっとお聞きをしておきたいと思っておりますのは、衆議院修正で参っております、本院では原案になっておりますが、外来の場合に月に四百円、医療機関ごとにお年寄りが取られるということになりますと、お年寄りというのは体全体あちらもこちらも故障が多いわけでございますから、内科にかかって四百円、眼科へ行って四百円、歯科へ行って四百円というふうになるわけでございますね。そういうことになるでしょう。
#196
○政府委員(吉原健二君) そういうことでございます。
#197
○沓脱タケ子君 その場合に総合病院に行っても同じことですね。
 もっと気になりますのは、たとえば高血圧症で内科にかかっている、たまたま月末に行った、六月の三十日にあんまり頭が痛い、目まいがするということで病院へ行った。あなた高血圧症ですよと、そのとき四百円。三日分お薬をもらってまた来なさいと言われて、七月の二日に行った。月がかわったからといってまた四百円。こういうことになるんでしょう。
#198
○政府委員(吉原健二君) 御質問の例ではそういうことになります。
#199
○沓脱タケ子君 いやいや、具体的に患者さん、そないなるでしょう。御質問によるとじゃないでしょう。そんな場合しばしばあるでしょう。まあ三十日というのは極端かもわからぬけれども、それは二十八日でも二十九日でもいいわけですわ。病気というのは、うまいこと一日に病気になるというわけにいかへんですわな。一日になったら四百円払って三十日行けるということになるかもわからぬけれども、それは二十九日にかかるときも、三十日に発病するときもあるわけですから、そういうことはしばしば起こると思うんですね。
 そうしますと、現在の健康保険法の初診時一部負担金、いわゆる初診料八百円ですね、これは同一疾病であれば、月がかわって一ヵ月でも二ヵ月でも半年でも、同一疾病だったら八百円、一遍払ったら終わりでしょう。そうですね、いま。そうしたら、働き盛りの人が初診料八百円払ったら、同一疾病で二カ月であろうが半年であろうが、一年であろうが、八百円で済むのに、お年寄り、老人は七十歳になったばっかりに毎月毎月四百円払わなきゃならぬというのは、いかにも道理に合わないと思うんですね。お年寄りのふところの方が乏しいわけですからね。こういう点は、厚生省改善する気持ちはありませんか。
#200
○政府委員(吉原健二君) 老人保健法で、老人の方々に対する一部負担というものをどういった金額で、どういう方法でお願いしたらいいかというのは、いろいろ法律をつくります段階で実は議論もございましたし、私ども検討をいたしたわけでございます。
 当初、私ども考えましたのが、初診だけではなしに、初診の際に三百円、それから再診の際に百円その都度いただくというようなことを実は考えたわけでございまして、社会保険審議会等にもお諮りをしたわけでございますけれども、お年寄りの方々について、再診の都度取るのはどうかというような御意見が強く出まして、初診とか再診ということを言わずに、それならば月単位で幾らという金額にしたらどうだという御意見が強く出まして、その御意見に基づきまして、月単位で実は五百円、もう初診とか再診とか言わないというようなことにさしていただいたわけでございます。
 月単位にいたしますと、おっしゃいますように、月末に行って四百円払い、月が改まりますとまた四百円払うというようなことになるということは、十分わかっておりましたけれども、それでも初診、再診のたびに幾らいただくということよりか、その方がいいではないかという御意見がございまして、そういったことでいろんなことを考えた末に、現在のような月単位で外来の場合には、当初五百円を考えていたわけでございますけれども、衆議院の段階で四百円ということに軽減をされたわけでございます。そういった経緯でこの一部負担が現在御審議をいただいているような形になっているわけでございます。
 それで、恐らく先生の御質問は、そういう月単位じゃなしに初診だけにしたらどうだ、あるいは仮に月単位で取るにしても初診日から数えたらどうだというようなことかと思いますけれども、病院におけるあるいは診療所における診療というものが、先生御案内のように全部月単位で処理をされております。それから診療科ごとの処理がされております。カルテにいたしましても、あるいは診療報酬請求明細書にいたしましても、レセプトにいたしましても、月単位で処理をされておりますので、そういった実務的なことも考えまして月ごとに幾ら、四百円ということにさしていただいたわけでございます。
#201
○沓脱タケ子君 いや、月ごとに処理するというのは、診療報酬の請求明細書というのを月ごとに出さにゃいかぬから、健康保険法だって月ごとに請求をするんですよ。私は道理に合わぬと思うんですわ、何と言ったって。
 だってあなた、元気で働いている人たちが初診料ということで、一疾病で初診料一部負担金を八百円払えば、何ヵ月続いてもそれは有効であって、お年寄りだから何で毎月毎月金額は四百円にしても払わにゃいかぬかというのは、さっぱりわからぬですね。
 特に、過日来の論議の中でも、また実態的にも明らかなように、老人の疾病というのは慢性疾患が多いということで、これはもう経過が長いということは明らかなんですね。高血圧症で何年かかっても、毎月毎月これから四百円払えと、こういうわけでしょう。これはいままでの論議の中で、一部負担金をいただくというのは、お年寄り御本人の健康の自覚を持っていただくという自覚料だというようなことを何遍か伺っているんですけれども、四百円ずつ毎月払うということと自分の健康に自分が気をつけるということとの関係、どんな関係ありますかな。こんなもの金払おうが払うまいが、お年寄りは自分の健康を早く回復したいという、これはお年寄りに限らぬですよ。すべての人間、疾病にかかったときには、早く回復したいという自分の健康に対する自覚というのがきわめて強いというのは共通だと思うんですね。四百円もろたらお年寄りが自覚が高まるというわけのものでもないと思うんですがね。
 この辺は、前回、前々回の御答弁あるいは同僚委員に対する御答弁、いままでたびたび伺っているんですが、納得しがたいんでね。何で四百円もろたら病人の自覚が高まるんですかな。その辺がちょっとすっきりしたら国民の皆さんにもわかっていただけるし、私も理解できると思うんだけれども、道理に合わぬという気がするんですが、いかがでしょう。
#202
○政府委員(吉原健二君) その辺があるいは私どもの考え方と先生の考え方が違う点であるかもしれません。
 現在の老人医療の無料化制度というものが健康に対する自覚を弱めている、あるいは自助努力といいますか、そういった考え方からいっておかしいのではないかというのが、実は私どもこの法案を国会に提案さしていただくに際しまして、いろんな各方面、関係者、それから審議会等で御審議をいただきまして、大部分の方々が、いま申し上げましたように、健康に対する自覚なりあるいは自助努力という面からいって、現在の無料化制度を維持していくことはなかなか問題が多いのではないかと。同時に、そういったこと以外に、これから老人医療費は老人の数がふえるとともに相当ふえていく。これは避けられないことだと思いますけれども、そういった増加する老人医療費というものを国民みんなで公平に負担をしていこうという場合に、老人は老人であるがゆえに一体ただ、全くただということでいいのかと。もちろん大部分は若い働いている人たちの負担にお願いせざるを得ないわけですけれども、それにいたしましても、老人の方がどんなに所得があろうとなかろうと、全くただでいいのかというような御議論もございました。そういったことから月に五百円、現在四百円ということになっておりますけれども、その程度の負担は老人の方々にも御納得をいただけるのではないかということでこういったことになっているわけでございます。
#203
○沓脱タケ子君 これやっぱり理解できへんのですよ。
 老人医療を国民みんなが負担すると言うけれども、老人は厄介者でないでしょう。長い間社会的貢献をしてきたお年寄りたちでしょう。その人たちの健康を、一部負担金を出させるということで受診率を抑えるということで何とかかっこうをつけていこうと、みんなが分け持って負担するのだから、できるだけ抑えた方がいいという発想になるんですね、それだったら。長い間社会に貢献してきた人たちの、特にお年寄り、これは健やかなお年寄りにどういうふうにしていくかということが本旨であって、現在のお年寄りの病人を何とかみんなが分け持って負担するのだから無料でいいんだろうか、無料で結構じゃないですか、長いこと苦労してこられたのだから。
 健やかなお年寄りになるような施策を十分に積み上げてきて、あしたからそうならないけれども、五年先には本当に健やかな老人が多くなって、現実的には、結果としては、医療費は少なくなったというふうな施策というのがやはりまともな厚生行政だと思うわけですね。医療費を減らすのに、医者に行きにくいようにして医療費を減らすというのは、これは本末転倒なんですよね。健康なお年寄りを、健やかなお年寄りをたくさんつくろうということでヘルスの事業というのは今度ついているわけですけれどもね。ところが、四十歳以上の健診も百円取るのでしょう。こんなもの百円取ったからといって健康自覚を促進するんですか。いまだったら無料でしょうがな。大部分無料ですよ。精密検診以外はほとんど無料でしょう。それ今度は百円取るというのですね。
 私は大阪で、この前もちょっと御指摘申し上げたけれども、大阪市で聞いたけれども、もう大変困る言うていたな。たった百円ぐらいのお金を集めるために、保健婦さんだけが行ってやれることを、保健婦が公金の扱いができないために事務員を派遣せんならぬ、人件費も出ないじゃないか、一体どないしてくれるつもりなんやというのが――それは公式の席上では大阪市が厚生省にそうは言わないかもしれない。私どもにはそう言いましたよ。一体何考えているんや、百円もらうために事務員を一人出さんならぬのやと。こういう不合理なやり方があるわけですから、私ども理屈にならぬと思うのですね。
 さらに、入院の場合も、提案されている本法では一日三百円でしょう。二カ月だから一万八千円。健康保険の本人の場合は一日五百円ですね。これは一ヵ月ですわ。五百円だから一ヵ月一万五千円。お年寄りの場合は一日三百円だけれども二ヵ月だから一万八千円。それで働き盛りの人が入院するときは一部負担金が一万五千円で、最も乏しいお年寄りのふところからは一万八千円。これはどう考えても割りに合わない、道理に合わないし、国民の皆さんから考えたって、何でそんなことをせにゃならぬのやと、こんな酷なことをなぜせにゃならぬのやということになるわけでございます。やめたらどうですか、こんなこと。入院したくてするお年寄りがいますか。それも健康の自覚料ですか。入院したいから入れてくださいと言って、入れてくれる病院、どこぞにありますかね。もっと置いてくれと言っても、部屋がないからと言ってみんな追い出されているんですよ。何のために三百円取るんですか。
#204
○政府委員(吉原健二君) 先ほどから、今度の老人の一部負担と、それから健保本人の場合との比較で御質問があったわけでございますけれども、健保本人と老人の場合とは必ずしも同列に論ずることはできないのではないかというふうに思います。
 一つは、受診の機会、これは当然のことでございますけれども、圧倒的に老人の方が多いわけでございますし、同時に、いまお話の出ました入院期間にいたしましても、老人の方は四カ月ぐらいが平均入院期間、健保本人の場合には一月か一月ちょっとぐらいが平均の入院期間ということがございます。
 それから健保本人はいま初診の場合に八百円、それから入院の場合にも五百円を一月じゃないかというお話でございますが、健保本人というのは、通常家庭の中では生計の中心者になっているわけでございます。したがって、自分一人だけの生活あるいは医療というものを支えているわけじゃございません。多くの場合に、配偶者なり家族、子供というものを抱えている。その配偶者なり子供が病気になった場合の医療費の負担、これは健康保険制度でも三割、原則負担をすることになっているわけでございます。その負担はだれがやっているかといいますと、これは健保本人の負担になっているわけでございます。したがって、本人分としては確かに初診料だけ、それから入院の場合にも一月ということはございますけれども、自分の配偶者なり子供が病気になった場合には三割を負担をしている。決して軽い負担にはなっていないと思います。
 そういう事情も、私は今度の老人の一部負担とのバランス論を考える場合には念頭に置く必要があるのではないかというふうに思います。
#205
○沓脱タケ子君 それはそんな論議をしたらおかしいんですよ。それじゃなんで政府は四十八年一月から老人医療無料化を発足さしたんですか。いま審議官の御意見で言うたら、そんなら何でやったのか。やったのは間違いでしたか。おかしなことを言っちゃ困るんですよ。間違いじゃなかったんでしょう。現に大臣、現行の無料制度というのは、老人が経済的な能力も低くてお医者にも十分行けなかったんですね。これを改めて、せめて病気になったときぐらいは、治療の機会を十分に保障していこうということで発足をしたんじゃなかったんですかね。それで非常に喜ばれた。
 私は、余分なことを言う必要ないと思うんですけれども、医者の一人として特に言うておきたいと思っているんですよ。だって、現に私も長い間診療をやっていたからよく実態を知っているんですよ。
 昭和二十年代、三十年代、四十年代の半ばまで、病院にお年寄りというのはなかなか来ませんよ。それで、どんなふうに言うて来るかといったら、御家庭の奥さんが来て、うちのおばあちゃんがずいぶん長く休んでいます、このごろちっと調子が悪うなってきました、もしものときがあって診断書を書いてもらえなかったら困るから、一遍先生診にきてくださいと言って頼みに来られた。そんなのは珍しくなかったんですよ、その時期は。
 医者にしたってがまんがならぬですがな、あなた。診察に、往診に行くったら、治療に行くのが医者の本旨ですよ。しかしそう言うて頼まれる患者さんを診に行くときは、何を診に行くと思いますか。長患いで寝ているおばあちゃんの病名は何か、どのくらい、何日ぐらい命がもつかということを診に行くんですよ。医者にとってもたまったものじゃない。医者にとってたまったものじゃないだけでなしに、御本人が気の毒でたまらぬじゃないですか。長年苦労して働いてきた年寄りが、まあ言うたら死に病でしょうが、死に病にかかっているときでさえも自由に医者にかかれなかったんですよ。だからこそいまの無料制度というのがいかに喜ばれたか、おわかりいただけるでしょう。
 それが国民皆保険になり、そうして高額療養費制度等もできて愁眉を開いた。しかし一番喜ばれたのは、そういうところが本当に救われてきたということで、今日、老人医療の無料化というものが、お年寄りを初め、年寄りを持つ若い世代の皆さん方にも非常に喜ばれてきたというのはそこなんですよ。ところが制度発足して十年でその無料化を有料化原則に変えようというわけでしょう。せっかくこうしてつくり上げて喜ばれている制度を一体だれが有料化しようと言い出したんですか。
#206
○政府委員(吉原健二君) いまの無料化制度ができましたのは、先生御案内のように、昭和四十八年でございますけれども、当時はまだ健康保険の給付率というのは五割でございました。したがって、お年寄りも含めて、家族の方々は五割を自己負担しなければならなかったわけでございます。そういった背景がありまして無料化が行われた。確かにお年寄りの方に喜ばれたことは事実でございますし、その時点におけるそういった制度、私は大変よい制度であったと思います。それはそれなりに理由があった制度だと思います。
 しかし、今度のこの新しい老人保健法は、そういった老人に対するいまおっしゃいましたような受診の機会を奪うとか、必要な受診を抑制するとか、そういった考え方は全くございません。今度の四百円あるいは三百円という一部負担によって、そういった結果になるという心配も実は全くないと思っております。そういったことになってはならない、そういった金額でなければなりませんし、またそういった方法でなければならないというようなことで私どももいろいろ考えましたし、また関係審議会でも御議論をいただいた上で、いま御審議をいただいているような一部負担にしたわけでございまして、決して老人の方々、簡単に無料を有料に戻すというようなことがよく言われますけれども、決して四十八年以前の状態に戻すわけではない。基本的には費用の心配なしに、必要なあるいは適切な医療というものは、お年寄りの方にこれからも受けていただけるようにしなければならないと、そういう考え方に立っているということは御理解をいただきたいと思います。
#207
○沓脱タケ子君 それなら外来の話はあなたの言い分で話を妥協するとしましょう、私は反対ですけれどもね。入院の場合というのはやめなさいよ。入院は、本人が希望して入院する人ということはないんだから。病状に応じて医師の指示で入院をさせるのだから、やめなさいよ。何のために取るんだ、健康の自覚も何もないですよ、そんなもの。本人の意思いかんにかかわらず疾病の状況によって医師が指示して入院させるんでしょう。そんなものまで金を取るというのはやめなさいよ、いかがです。
#208
○政府委員(吉原健二君) 外来はいいけれども入院はいかぬというその理由が、率直に言って、よくわからないわけでございます。医療費についての一部負担を持っていただくということになりますと、そういった区別なしに、外来の場合にもあるいは入院の場合にも、負担できる範囲内で、負担能力の範囲内で、無理のない範囲内でお願いすることは許されることではないかというふうに思います。
#209
○沓脱タケ子君 外来であなた四百円というのは、受診抑制にならない金額だというから、私はそんならその問題は一応おくとしてと言うた。いまの老齢福祉年金幾らですか。十万も二十万も出ているんだったら、それはあれですわ、二ヵ月一万八千円、それはしんぼうしてもらえるかなというふうにあなたがお考えになるというのはわかるよ。
 いま幾らですか。
#210
○政府委員(吉原健二君) 老齢福祉年金は、ことしの九月から二万五千百円ということだと承知をいたしております。
 ただ、年金のお話が出ましたから申し上げさせていただきますが、これからの大部分の老人の方方、これは福祉年金というよりか拠出制の厚生年金なり国民年金の受給者がこれからどんどんふえていくわけでございます。年金の平均的な額というのは、実際の受給者でもう月額十万を超えていると思いますし、標準的な年金では十四、五万の水準に来ているのだと思います。確かに福祉年金の受給者、まだ七十歳以上の方で相当数おられますけれども、今度の老人保健法でお願いする月当たりの金額、入院の場合でも一日三百円、三十日九千円。九千円というのが高いか高くないかというのは、それは先生いろいろ御議論があろうかと思いますけれども、四十八年当時年金はまだ低かったと思います。月額五千円程度だったと思います。そういった状況、年金の水準が非常に上がってきたというようなことも考えますと、いまお願いしている一日三百円、こういった負担というものは決して老人の方々、福祉年金の受給者の方々にとっても、それほどむちゃな、あるいは無理なお願いではないのではないかというふうに思っているわけでございます。
#211
○沓脱タケ子君 二万五千円何がしの老齢福祉年金もらって、それで九千円入院の一部負担金取られて酷でないですか。どんな勘定をしているんですか。
 将来、おっしゃるようにみんな十万、二十万の年金、あるいは二十万以上の年金になったころには、それは無理ではないでしょうと言われたら、そうかもしれぬなというふうに思います。それは私が思うだけでなしに、国民の皆さん判断するんですよ。いま七十歳以上の人というのは大部分老齢福祉年金ですよ。
 もうそんなもの、率や何やというの、時間がないから言いませんけどね。だから、そんな無理なことはやめたらどうですかと言うているのはそこなんです。私、きょうここでそない粘ろうと思わなかったけど、変なことをおっしゃるからついつい言わにやしゃあないようになる。
 そうなんですよ。月に四百円やから病院の受診抑制にはならぬとあなたはおっしゃったから、それじゃ入院はどうなんだと言っているんです。国民の皆さんが聞いて、ああ、もっともなことを言うているなという程度のことを言うてもらわぬと、それは私が了解できないだけじゃなしに、国民の皆さん了解できないでしょう。そない無理があるというんやったら、やめたらどうですかと言うているんです。
#212
○政府委員(吉原健二君) 同じことの繰り返しになるかもしれませんが、この老人の一部負担について、国民の方々あるいは老人の方々が一体どういうふうに受け取られているか、あるいは御意見をお持ちになっているかということにつきましても、私ども大変関心を持っていたわけでございます。で、せんだっても申し上げたかもしれませんけれども、世論調査におきましても、この程度の一部負担というのはやむを得ないというような御意見が多数、大多数を占めておりますし、社会保険審議会でも一部、一部負担はおかしいというような御議論もございましたけれども、大部分の御意見、審議会としての御意見は、最初に申し上げましたような観点から、一部負担というのは必要である、あるいはやむを得ないという御意見だったわけでございます。老人関係の団体のお気持ちも伺いました。この程度の一部負担ならやむを得ないではないかというようなことであったわけでございます。
#213
○沓脱タケ子君 審議官、もう繰り返すのをやめますけれども、お年寄りの方々がやむを得ないというのは、前提があってやむを得ないんです。一部負担は、豊かな生活のゆっくりした人たちから出してもらうというのはやむを得ないというのが圧倒的に多かったんですよ。その辺はあなたの方の調査でそうなっているんだね。だから、お年寄りがやむを得ないからしんぼうしますというのは、大部分の人が言うているなんということはちょっと言い過ぎだと私は思います。
 私はそこに力点を置くんではなくて、こういうせっかくいい制度を政府がおやりになって国民から喜ばれた。十年たつやたたぬで、こんなことをまた有料にしていって、一遍有料にしたら、次々と一部負担金が上げられるんじゃないかという心配を国民の皆さんはお持ちになっている。
 そういうことを言い出したのはだれかといって私言いましたね。これはちょっと調べてみて私も驚いたんですが、四十八年の一月からこの制度が発足したんでしょう。その二年後の、わずか二年ですね、五十一年度の予算編成の五十年のときに、大蔵省は予算編成のときに受益者負担、自己負担導入をすでに打ち出しておられるんですね。財政制度審議会の報告を見ますとちゃんと書いてありますね、御承知でしょうから一つ一つ紹介いたしませんが。
 で、そのときに厚生省何と言いましたか、厚生省当局。どういう姿勢をおとりになりましたか。二年後にそういうふうに大蔵省から言われたときに何と言いましたか。受益者負担で自己負担取れいうて、それを導入するべきだといって打ち出されたときに、厚生省の姿勢どうだったですか。
#214
○政府委員(吉原健二君) そのときは厚生省は反対をいたしました。そして老人医療の将来のあり方、高齢化社会における老人医療の新しい制度のあり方について十分検討したい。その中で一部負担の問題についても検討さしてほしいということで、その時点におきましては反対をいたしました。
#215
○沓脱タケ子君 明確ですね。
 それで、財政当局は初めから受診抑制の目的を持って一部負担を導入せよという意見を持っていたんですね。これは財政制度審議会の中間報告、これを見ましても、高度成長は終わった、安定成長期なので福祉の圧縮をせよという中で、老人医療については、福祉先取りの時流の中で無料化が推進された結果、受診状況について近時問題が提起されており、この機会に一部負担制度の導入が実行に移されるべきであるというのが出ていますね。だから、制度を発足して二年たったら、もうすぐにやめろいって言い出しているんです。
 ところで、自民党は、この財政審の中間報告よりずうっと前から、老人保険制度をつくる場合には一部負担金を課すべきであるという考えであったということを大臣御承知ですか。
#216
○国務大臣(森下元晴君) 記憶にございません。
#217
○沓脱タケ子君 自民党は四十四年の六月、医療基本問題調査会小委員会の報告を発表しておられますが、その報告の中では、「老齢保険制度」という項目にこない書いてありますわ。「老齢保険制度」、「差し当り、被用者を除く七十歳以上の国民を対象とする」。「老齢保険制度の財源は、地域住民及び被用者からの拠出金並びに国庫負担をもって充てる」。それから給付率は、「被用者本人及び七十歳以上の老齢者の外来については十割とする。ただし、外来診療については初診時及び再診時に定額の一部負担、入院診療については普通給食費相当分を負担させる」と書いてあります。四十四年ですよ、大臣。
 だから、財政当局とか自民党がなぜこれほどにそれじゃ一部負担金に固執すると思いますか。これは大臣どう思われますか。
#218
○国務大臣(森下元晴君) 審議官とのやりとりを聞いておりましたが、昭和四十八年、御承知のように、福祉元年といいましてかなり思い切った福祉対策をやりまして、おくれておった分を取り返すべく出発した年であったわけです。その一環として老人医療の無料化ということに踏み切ったと思います。
 それまでの御老人が医者にかかる機会が非常に少なかったその一つの原因は、心理的な問題もございまして、医者に見てもらうことによる恐怖感、何か悪い病気があるんと違うか、そういう多少恐怖感が、われわれも御老人の方にお話聞いてみますと、あったようですね。医者にかかることが、非常に悪いんだけれどもこわい、何かもっと悪く言われると困る、心配ないと言われるとありがたいんだけれども、その逆心理が働いて、案外医者好きしなかったという面もあったようです。
 そういうことから無料化されまして、それも大きな原因だったと思うんですが、どんどんと健診に行く、また病院に行って体を見てもらった、急に老人医療の医療費がふえていった。現在の老人医療が全般の医療費に占める割合が、われわれ想像以上に実はふえていることも事実でございます。
 だから無料化を有料化にしたというわけではございませんけれども、将来の高齢化社会がどんどん進んでまいりますし、健康に対する認識とか、いろいろ理屈はつけておりますけれども、とにかくほかとのバランスのこともこれあり、無理のない程度でひとつ御負担を願えないでしょうかというのが、今回の四百円になり、また入院費の三百円になっていった。
 こういうことで、私どもとしては、朝令暮改のような感じを与えますけれども、いろいろ試行錯誤と申しますか、法というものは、時代の変遷とともに多少の修正も、御納得をいただいて変えていくことも、民主主義の制度下ではいたし方がない。特に低成長に変わった、医療費はどんどん上がっていったという中で、むしろ私の気持ちは、そういう御老人にお願いをしてどんどん医者に来てください、そして健康を保ってください、そして早くよくなってくださいと、こういう気持ちと同時に、またいまの財政状況、特に保険の財政状況を考えた場合に、御無理のない程度で負担をしてくださいと、そういうような気持ちを持ってこの法律を出さしてもらったということでございますから、よろしくお願いいたします。
#219
○沓脱タケ子君 大体私が聞いたことに答えてくれなかったんですがね。私は、さっきから御指摘申し上げたように、財政当局や自民党さんがなぜこれほど一部負担に固執するか、大臣どう思われますかと聞いたんですがね。これはもう時間がありませんから私が申し上げますが、非常にはっきりしているんです。
 大臣が再々いままでおっしゃったように、健康に対する自覚を持っていただくとかなんとかという、そんななまやさしいことじゃないんです。ここに自由民主党発行の「日本型福祉社会」という本がありますが、これの百六十二ページにこういうふうに書いてありますわ。
 今後、医療費の無駄な膨張を避けるためにはどうすればよいだろうか。答は一つしかない。それは「長瀬関数A式」のXを大きくすること、特にゼロでなくすること、である。いいかえれば、患者の自己負担分をふやすことである。
 保険財政が赤字になったからといって、保険料を引上げてみても、需要を減らす上では何の効果もない。まして企業や国庫の負担をふやす形ではさらに効果がない。なぜなら保険料引上げは右のとは関係がなく、X、すなわち医者にかかった時に支払う分がタダか、きわめて少ない限り、人は医者にかかることを差控えはしないどころか、「これまでより高い保険料を払っている以上、ちょっとしたことでも医者にかかってモトをとらねば損」という考え方になる。医療需要の際限ない膨張を抑えるためには、「人は自分の財布と相談して真に必要なものだけを買う」という原則を、多少なりとも医療保険制度の中に導入しなければならない。と書いてある。
 つまり、自己負担をふやすということが受診抑制をして医療費を抑える一番効果的な唯一の方法だ、人は自分のふところ、財布と相談して真に必要な医療だけ買えるようにするのが一番いいと書いてある。
 医療というのはケーキを買うたり洋服を買うのとわけが違うんですね。ふところと相談がつかなくても、ふところぐあいが悪いからいうて病院に行かなんで重病になったら、それこそ保険財政に重圧をかけることになるわけです。本当に医療の問題というのは、自分の財布と相談するというようなことは全くとんでもないことなので、こんなところに根底があって老人医療の一部負担金が導入されるということは私は断じて許せないと思う。撤回するべきだと思いますが、いかがですか。
#220
○国務大臣(森下元晴君) いろいろ自民党の考え方をお読みになりましたが、自民党にしてはまことにけしからぬ話でございまして、もう少し自民党は精神的な政党でございます。金が要るから受診せぬとか、健康の問題に金が要らぬとか、たくさん要るとか、そういうのは恐らく間違いじゃないかと私思うんですがね。
 読まれたこと、おかしいなと私も思っておるわけでございますけれども、繰り返しますけれども、別に金の多寡とか、要るとか要らぬとかじゃなしに、本当に保険財政もなかなか緊迫しておりますし、またこの健康に対する認識ですね、そういうものを考えました場合に、全般の中の大きな負担がかからない程度の御負担をひとつ願う。それが御老人から若い者を全部を含めた社会保障の一つの考え方でもあるわけでございますから、それが生活、生計、収入、そういうものに影響するほどの金額でございましたら別でございますけれども、まあひとつ無理のない程度で御負担をお願いしたいと、ひたすらもうお願いしてこの法案を通していただきたいという気持ちでいっぱいでございます。
 どうも自民党のその内容は、いまお読みになりました内容については、私はちょっとおかしいなと思っております。
#221
○沓脱タケ子君 おかしいな言うたら、大臣ちっとぐあい悪い。これは五十四年の八月、発行は自由民主党広報委員会出版局です。一遍改めて読んでみてください。ぐあい悪いと思うんですよ、こんな考え方では。
 大臣、大変な時期に大臣になられたので御苦労は多かろうと思うんですけれども、こんなことを言われたら国民は承知しませんわな。ケーキや着物買うように、自分のふところぐあいと相談して病院に行けというようなこと、こんなことを言うてお年寄りから一部負担金取るんだなんということは、これはそういうふうにPRしてごらんなさい、国民の皆さん断じて了承しませんで。その辺はっきりしておきたいと思う。
 時間が余りもうなくなったんで、私、五月の上旬あたりからいわゆる修正の相談が進んでいっているという話が出ておりますので、これ問題点の一つ二つだけをちょっとお聞きしたいと思います。
 一つは、これは施行期日ですね。同僚委員からも出ておりましたけれども、この点はどうなんですか。十月一日、十月一日と盛んにおっしゃっているけれども、法案では成立後一年半ですね。だから、十月一日も一年半の以内だし、来年の四月一日でも一年半以内だし、いいんじゃないですか。その辺はどうなんですか。
#222
○政府委員(吉原健二君) 法律では、いまおっしゃいましたように、法律が成立をいたしましてから一年半以内で施行日は政令で決めるということになっております。
 ただ、この法律を国会に出さしていただきましたのは、去年の通常国会、最後になりましたけれども、五十六年の五月であったわけでございます。ですから、法律を出した時点におきましては、あくまでも五十七年度の実施。ですから、昨年の五月からあれいたしますと、五十七年の十月、秋ぐらいの実施を実は念頭に置いていたわけでございます。したがいまして、現在でも五十七年の十月実施ということでお願いをしたいという考え方は変わりがございませんし、ことしの予算もヘルスの分も含めまして五十七年十月から実施ということで予算も組まれているわけでございます。都道府県なり市町村も、十月実施を念頭に置いてもう一部準備を進めているというようなこともございますので、私どもとしては十月実施でぜひともお願いをしたい、一日も早く法案の成立をお願いしたいというふうに思っておるわけでございます。
#223
○沓脱タケ子君 十月一日から予算も組んで通っているのでということなのよね。予算を組んでと言われるが、新しい予算を組んで通っているのを延ばしたというんやったら、えらいもったいない気がするんだけれども、政府の支出が減るんですね、今年度の予算は。七百九十億、約八百億ですね、平年度で。だから十月一日ということになったら、四百億足らずが予算としては減らされているわけですね。これがもし実施が延びたら、その分がお金が余分に要るということになるんですね、ことし通った予算からプラスアルファね。そういう問題があるんで大変やというんですか、それはどうですか。
#224
○政府委員(吉原健二君) 確かにおっしゃったような問題もございます。
 ただ、もう一方、ヘルスの予算が十月から計上されている。それは昨年までのヘルスの予算に比べまして倍あるいはそれ以上の予算が、すでに十月実施を前提に組まれている、その予算の施行というものがむずかしくなる。私どもヘルスについていろいろ御議論がございましたように、一日も早くこの法律の成立をお認めをいただいて、ヘルスの実施に移りたいという気持ちを持っているわけでございます。せっかく大蔵省も苦しい財政事情の中を相当程度今年度の実施のための予算というものを計上してくれておりますので、何とか十月からヘルスの実施も含めて軌道に乗せていきたいというふうに思っているわけでございます。
#225
○沓脱タケ子君 せっかくつけてくれた予算やから早く使いたいというように聞こえるんだけれども、違うでしょう。差し引き大蔵省からは出したお金が減っているわけでしょうがな。延びたらその分を大蔵省が出さんならぬはずですよ、三百億か三百五十億か。もし来年の四月一日まで延びたら五ヵ月延びるわけでしょう、十月一日からやったら六ヵ月かな。そんなら約四百億ですよ。
 大蔵省の方おいでですね。大蔵省は、これ実施を延期するということになったら、財政的にいかがですか、同時に御見解はどうですか。
#226
○説明員(小村武君) 私どもとしましても、ただいま吉原審議官がお答えになりましたように、これからの本格的な高齢化社会を迎えて、老人保健制度の確立をもう一日も早く実現していただきたいということで、したがいまして一日も早く法案の成立をお願いし、予定どおり実施を図りたいと考えております。
#227
○沓脱タケ子君 これはだからもう実際上は八、九しか準備期間がないんだから、同僚委員も御指摘になったように、きわめて困難があるというふうに思いますよ。こんなもの延ばしてあたりまえだと思いますけれども、金のかすがいがかかっているからなかなか延ばされへんという問題もあるんではないかと思って聞いたんです。しかし、そうとははっきりおっしゃらないで、むしろ新しい予算があってそれを使いたいからみたいな上手なことを言うけれども、中身は違いますよ。時間がないから次へ行きます。
 もう一つは、拠出金の歯どめですね。老人医療費の拠出金の歯どめにかかる問題というのは一番大きな問題になっていたようですね、特に二カ月前の段階でも。で、拠出金の歯どめを最も熱心に要求しているのは財界であり、健保連なんですね。財界の方の要求の内容や根拠というのは、御承知のとおりだと思うんで、ちょっと聞きたいんですがね。
 健保連の西野会長が、これは関経協に来たときの話かな、関経協で西野健保連会長がお話をしておるのが、こない言うているんですね。非常にはっきりしている。いわば赤の他人のどら息子がバーで飲んだツケの分まで分担させられるようなことだから、そんな老人保険料の負担はしたくない。これはえげつない言い方ですね。とにかく退職者やら自営業者や農民のお年寄りというのは、大企業にとっては赤の他人のどら息子や。そのお年寄りの生命と健康を守るためにかかる費用はバーで飲んだツケと一緒やと。これが関経協で受けたというんだけれども、実際何考えているのか、ちょっと驚きました、私。それが財界の考え方だとしたら大変ですね。
 だって、いまのお年寄りというのは、本当に働き盛りの間企業で骨身を削って働いてきたのがお年寄りになり、それが退職後商売をしたり、ある人たちは郷里へ帰って農業をやっているというのが大部分でしょう。企業の社会的責任というのを何にも考えてない。あきれて物が言えないわけですけれども、大臣どない思いますか。
#228
○国務大臣(森下元晴君) その点についてはごもっともなことでございます。
#229
○沓脱タケ子君 それはだれでもそう思いますわな。私はこれは大企業がもっと負担するべきだと思っているんです。
 拠出金の歯どめの方法について財界と自民党が合意したとやらいうて報道もありましたが、これは事実ですかな。(「合意なんかしてないよ」と呼ぶ者あり)まだか。それはまだかもわからぬなとも思うんですよ、そない言われたら。それで時間がないからちょっと走りますがね。
 拠出金の健保連の負担分の増加分が五十七年度七百八十億。新聞報道で言われておりますように、来年度以降老人人口の伸び約三・六プロとして、三年以内に見直すというようなことで合意をされたという報道もあるんですがね。一方では、いや財界はそんな三・六プロも聞いてない、五年間七百八十億固定してくれなんてなことを言うてるという報道もあるわけ。
 それで、大概財界というようなところは好き勝手なことを言うなと思って私はずっと報道を聞いてきたわけですけれども、端的に言いまして、その場合に財界が言うように固定せいという話は別として、老人人口の増加率三・六プロというものが毎年加算をされるということになりますと、負担割合は変わりますね、各保険者間の負担割合というのが。それなら被用者保険の負担は減って、その分は全部国保の負担増になると思うんですけれども、そういうことになったらどうなるかというのは、厚生省は試算なさってますか。
#230
○政府委員(吉原健二君) まだ財界等との間で合意がなされたというふうには伺っておりませんので、そういった考え方に基づく試算というものもいたしておりません。
#231
○沓脱タケ子君 まあ、やってないが、本当かうそか知りませんけれども、大体目の子算用でわかるのかもわからぬな。私の方は素人でよくわからぬから計算してみました。老人医療費の伸びを一三%、年間ね。それで三・六プロということで抑えましたらどないなるかというと、被用者保険は百七十億減ります。そのうち健保連の組合健保分、これが八十四億、百七十億のうちの八十四億。一方ふえる方の国保はどないなるかというと、そのうちの約六三%、六〇プロが国庫補助ですからね、国庫が百億円ふえるんです。財界が言うとおりに被用者の保険の負担を減らしたら国保がふえますので、百七十億ふえる。そのうち百億は国が国保に出す法定費用ですね。それで国保の掛金が約七十億ふえると、こういうことになるんですがね。
 それで、財界の言い分に沿うてやったら、ひ弱でもう負担に耐えかねていると言うて、今度老人保健法を早くつくれつくれと言うている一番ひ弱な国保にしわ寄せが返ってくるんですが、厚生省担当者の御指導も得て試算をしておりますので、大体こんな傾向になるということは、計算してないかもわからぬけど、お認めになりますか。
#232
○政府委員(吉原健二君) まだ計算はいたしておりません。結局、歯どめでもって、健保連の負担額が仮に原案より減った場合には、それは従来どおりの考え方で各保険者間が持つということになるのではないかというふうに思っています。
#233
○沓脱タケ子君 それは、百七十億の負担を政府が国庫で全額見ると言うたら国保へ行きませんよ。しかし保険者が七割持つという制度の中で被用者保険の方を減らすと、自動的に国保へいきますからね。国保へしわを寄せたら悪いから、概算百七十億は政府が国庫で全額見ます、国庫でこれだけはめんどう見ますと言うたら別に関係ないんですわ。国庫でめんどう見られますか、大蔵省。
#234
○説明員(小村武君) いまどういうふうなお話し合いが与野党間で進められているか承知しておりませんが、仮に特定の保険集団の負担が減ったということについて、その分をすぐに国庫で負担をしろということになりますと、これは実質的に、その保険集団の加入者案分率といいますか、加入者調整率等が縮減されるということになりまして、果たしてそれで負担の公平が図れるかどうか、私ども基本的な理念として疑問に感じております。
#235
○沓脱タケ子君 私は、国庫が持つと言うたら別に国保へしわが寄らぬからいいけれども、大蔵省は、何しろ金できるだけ減らしたいわけだから、むずかしいこと言うわけでしょう。
 それで、時間がありませんので、最後に私は、国庫は持つべきものは持つ、それで一部負担金はなくして、もっと企業の社会的責任というのをきちんと位置づけて、社会保障費用の負担というのは高めることが必要だと思うんですよ。
 たとえば欧米諸国の社会保障費用の事業主負担の割合というのはどないなってるかいうたら、これはもう皆さん百も御承知でございますが、たとえば西独では四二・九%、フランスでは七〇・二%、イタリーは六一・八%、アメリカでさえも三二・四%、わが国は一九八〇年のラインでわずかに二七・六%です。いかに企業が優遇されているかっていうことが明らかでしょう。
 だからね、わが国の社会保障制度っていうのは企業負担が少ないっていうのは有名なんですよ。逆に労働者負担が多くなっているわけですから、だから私はこういう費用負担の問題を考えてみる必要があると思うんです。ですから、少なくとも保険料負担、老人保健に関する保険料負担分についてはせめて労使三対七にする必要がありはしないか、いま五対五ですからね。そんなもの、どら息子やなんやちゅうようなことをぬけぬけ言わすんではなしに、せめて欧米並みにまず老人保険料から労使三対七にしたらどうかと。だって、現に組合健保では労働者……
#236
○委員長(目黒今朝次郎君) 沓脱君、時間です。
#237
○沓脱タケ子君 労働者四三%、資本家五七%に健保連ではおおむねなってるでしょう。こういうことをやることがきわめて大事だと思うのは、労働者の負担を重くしないで、資本家負担を社会的責任としてきちっと一定の負担は課していく、政府は国の責任として出すべきものは出していく。こういうことにするべきだと思いますが、いかがですか。
#238
○委員長(目黒今朝次郎君) 時間が過ぎてますから、要領よく答弁してください。
#239
○政府委員(大和田潔君) この労使折半の原則につきましては、これはわが国の社会保険制度に長く定着をしておるわけでございまして、これは基本的な考え方でございまして、この原則を変えるということは考えていないわけでございます。
 なお、この老人保健法による医療は、保険者の共同事業的なものでございまして、保険者の拠出金は従来各保険者が老人に対して行ってきた医療給付にかわるべきものでございまして、これに充てる老人保険料は、これは現行保険料と実質的に相違がないというふうに考えられるわけでありまして、したがって、老人保険料の労使負担割合も現行保険料と同様に扱うべきものであるというふうに考えております。
#240
○沓脱タケ子君 最後に一言。
#241
○委員長(目黒今朝次郎君) もう時間が過ぎてますから、一言。
#242
○沓脱タケ子君 私は保険局長が物を言われたというのでちょっと変な気がしている。老人保健法というものを審議しているわけですから、私はあえて老人保健の保険料についてというふうに申し上げたんです。そういうことを考えてみるべきではないのかということを申し上げたわけです。時間がありませんから詳しく申し上げられなかったので十分御理解がいただけなかったと思うんですが、大臣ね、こういう状況ですから、もっと工夫をして、本当に一部負担金をやめて、お年寄りの医者代ぐらいはゼロにして安心して病院にかかれるようにしていく、改善するべき点は改善をいろいろと工夫してやっていくということをやるべきだと思うわけでございます。そうでないと、御承知のように、マイナスシーリングで国民医療全体に対しても切り込みが入ってこようとしているという段階ではないですか。ここが大臣にがんばってもらう橋頭堡ではなかろうかと思うわけで、大臣の御見解をお伺いをして終わりたいと思います。
#243
○国務大臣(森下元晴君) いろいろと意見のやりとりございました。いろいろ法律等につきましては、その時代また社会情勢によって変わる場合もございますし、負担なきものが一部負担をお願いせんならぬという時代にもなってまいったし、また将来においてはどういうふうな方向に変わっていくかも、そのときの情勢によって、民主政治でございますから、動く可能性も実はございます。いろいろ御説よく承りましたが、現在のところは政府の方針に従いまして、ただいまの原案で私どもは全力を挙げたいと、このように実は思っておるわけでございます。
 以上、お答え申し上げます。
#244
○前島英三郎君 老人保健法案の審議でございますが、本題に入ります前に一つ緊急な課題がありまして、確認しておきたい問題がありますから、ちょっとお許しをいただいて伺ってまいりたいと思います。
 実は、国連の国際障害者年諮問委員会がきのう七月五日からウィーンで始まりまして、国際障害者年世界行動計画の最終案についていま討議に入っております。世界行動計画は、地球上の五億人に上ると推計されますすべての障害者にとりまして、非常に重要なものであるのは言うまでもありませんけれども、昨年の夏に出されましたいわゆる第二次草案はすでに翻訳もなされておりまして、私も見ているわけでございます。その内容というのはきわめて格調が高くて、かつ世界の現実をよく踏まえたものであるという印象を受けているんですが、ところがわが国政府がその内容を後退させるような動きをしていることが判明したわけでございます。順を追ってお尋ねしてまいります。
 まず、国連の障害者に関する世界行動計画の討議の経過と状況を承っておきたいと思います。これは外務省が窓口になったと思いますので、伺います。
#245
○説明員(野口晏男君) お答え申し上げます。
 いま御指摘のありました世界行動計画につきましては、その原案とも言えます長期行動計画案の骨子並びにその作成日程等につきましては、第二回諮問委員会、これは五十五年の八月に開かれたわけでございますが、そこにおきまして審議されまして、同年の三十五回国連総会にてこれが承認されました。これを踏まえまして国際障害者年事務局は、障害者に関する世界行動計画案というものを作成いたしまして、この草案は第三回諮問委員会、すなわち昭和五十六年の八月に開かれた委員会でございますが、そこにおきまして審議され、若干修正されました後、採択されました。
 この草案は、同年十一月三日付の国連事務総長の書簡をもちまして、各国政府に対しましてコメントを求めるということで、各国に配布されました。そして同年の三十六回国連総会におきましても、この行動計画の完成を求める決議が採択されたわけでございます。
 国際障害者年事務局は、各国政府などより提出されましたコメントを踏まえまして改定いたしました事務局案を作成いたしまして、同事務局案の審議が現在、先ほど御指摘のありましたように、ウィーンにおきまして開催されております第四回諮問委員会にて行われておるわけであります。ここでの審議の結果を踏まえまして、ことしの秋、第三十七回国連総会におきまして最終的にこの行動計画案が決定されるという見込みでございます。
#246
○前島英三郎君 つまり、昨年十一月に各国並びに各機関に第二次草案が送付されて、ことし三月一日までにそれぞれのコメントを提出することになっておったということですね。日本政府としてはどのように提出に際して対応したのか、まず政府としてのコメントを提出したのかどうか、いつ提出したのか、これもちょっと伺っておきたいと思います。
#247
○説明員(野口晏男君) 先ほど申し上げましたように、障害者に関する世界行動計画草案、これは第三回諮問委員会の案でございますが、それに関しまして、昨年の十一月三日付で国連の事務総長から書簡をもちまして、わが国を初め各国政府のコメントの提出を求めてきたわけでございます。外務省といたしましては、総理府国際障害者年担当室とも協議いたしまして、障害者年推進本部幹事に当たります各省庁に対しまして、昭和五十七年二月一日までにコメントを提出していただくようにお願いしたわけでございます。その後、各省から提出されましたコメントにつきまして、外務省としまして、世界的な行動計画作成という目的に照らしまして、国際的にも妥当なコメントであるべきだという観点から、関係各省と協議、調整いたしまして、そういった経過を経まして取りまとめたコメントを三月の上旬に、在オーストリアの大使館を通じまして、国際障害者年事務局に提出したわけでございます。
#248
○前島英三郎君 そうすると、幹事の省庁が寄り集まってそのコメントづくりをしたというふうに理解をしていいわけですね、日本国政府のコメントとして。
 次に伺いますのは、そのコメントの内容はどのようなものであったか。また全部で何項目ぐらい日本政府としてのコメントを出したのか。それはどうですか。
#249
○説明員(野口晏男君) 全部で二十項目ぐらいだったかと思いますが、その中で主な点を御説明さしていただきます。
 第三回の諮問委員会、すなわち第二案に対しまして政府コメントといたしまして、まず第一に、これは最初の方の記述でございますが、第二十九項に、世界の「すべての国」におきまして十人に一人が障害者であるというふうな記述がございましたところを、これはちょっと言い過ぎではないかということで「多くの国」において十人に一人が障害者というふうに改めるべきだという意見を述べました。
 それから障害者の教育問題に関します第五十一項でございますが、そこに「教育は障害者の統合にとり非常に重要な手段である」という文章がございましたのを、「障害者の社会への統合にとり非常に重要な手段である」というふうに改めるべきだというコメントを出したわけでございます。
 同じく教育問題に関します第百三項におきまして、「各国は、障害を有する各児童が普通学校制度における教育へのアクセスを確保するための政策及びサービスに係る補助的機構の採用を行わなければならない」というふうな記述がありましたのを、そこを、対象とします児童を限定いたしまして、「普通学校において教育を受けた方がより教育効果が期待できる各障害児童については」というふうに修文するようにコメントいたしました。
 それから同じく教育問題に関する第百四項に、「普通学校制度の施設が障害児にとり不適当である場合には、改善措置がとられるべきである。特別な施設での教育を提供することが必要な場合には、この教育の質は普通学校の教育と同等のものであり、また普通学校の教育と密接に関連したものでなければならない」というふうな記述がございましたのを、前段の方の「障害児」と書いてありますところを「前文(パラ103)にて言及した児童」というふうに修文し、また後段に「特別な施設」と書いてございますのを、そこにさらに「特殊学校及び特別な施設」というふうに訂正するようにコメントいたしました。
 それから第百八項の次に、新たなパラグラフとしまして、「しかしながら、その特別な対策によってかえって職域を限定したり民間の活力を損なうものであってはならない。また、各国の実情に応じ、多様な手段を講じることができるように配慮することが必要である」という一文をつけ加えるようにコメントいたしました。
 それから最後に、一般的な政策決定への障害者の参加という点に関係いたします第百十二項に、「各国は、かかる団体との直接のコンタクトを樹立し、その団体が関係を有するすべての事項における政府の政策及び決定に対して影響を与えるチャネルを提供しなければならない。各国は、この目的のため障害者の団体に対し、必要な財政的援助を行わなければならない」となっていたところでございますが、そこの前段につきましては、「各国は、かかる団体とのチャネルを確立し、このチャネルを通じて、その団体が関係するすべての分野における政府の政策及び決定に対し影響を与えうるようにすべきである」と修文いたしまして、後段につきましては、「財政的な」という文言を削除するようにコメントしたわけでございます。
 主なところはそういうところでございます。
#250
○前島英三郎君 その日本のコメントを出した、それがいまウイーンで審議されている、こういうことですね。
 国連の事務局では四月十九日付で、各国から寄せられたコメントを整理して、今回の諮問委員会のために第三次草案をまとめて各国に送りました。第三次草案には日本からのコメントが一カ所採用されていますね。そのほか六カ所に脚注として日本からのコメントが掲載されております。
 私ども実は、先週一週間東京でDPI、世界障害者会議が開かれたときにスウェーデンからこの資料をいただきました。私はこれを見まして、正直言いまして、大変恥ずかしい思いをしたわけです。一つは、日本政府が出したコメントについて私たち障害を持った者自身が知らないという事実であり、もう一つはその内容が世界の趨勢から見て明らかに後退につながるものだったからでございます。
 たとえば加盟各国が障害者の組織との直接の接触を持つことによって、障害者に関する政策に対する影響力を行使できるようにしようという趣旨が書かれているのに対して、日本政府のコメントは「直接の接触」を外した文脈を提案しているんです。あるいは障害者団体に対して、「必要な財政的支援」と書いてあるところについて、日本のコメントは、その「財政的」というのをなぜか外しているんです。なぜ外したのか。削除すべきだという提案をするとか、いろんなところで後退に対するコメントが日本政府の意見として実は出されているということなんです。
 特に問題と思いますのは、その障害児の教育に関してできる限り統合教育を進めていこうという世界的な傾向に対しまして、日本のコメントは、数カ所にわたって分離教育の立場からのコメントを出しているんです、日本政府の決定として。私はなぜこのようなコメントが日本政府から提出されたのか大変理解に苦しむわけなんです。
 そこで伺うんですけれども、日本からのコメントはいつどのようにして作成したか、それはさっき伺いました。委員会で。その経過の説明も伺ったわけですけれども、総理府には国際障害者年の担当室がありますが、特に二月一日が締め切りだということになりますと、その前には特別委員会が、障害者自身、あるいは中心協の人たちを中心としたそういう組織体があったわけで、そこに一体諮られたのかどうか。実は国内の長期行動計画もその中で議論が百出されている部分なんです。それを外務省がまとめ上げて、たくさんの意見があったのを勝手につくって諮りもしないので出したのか、あるいは総理府との、あるいは特別委員会との連携を持って、それなりの答申として日本政府のコメントとして出したのか、その辺はどうですか。
#251
○説明員(野口晏男君) 先ほど申し上げましたように、外務省といたしましては、総理府の国際障害者年担当室と協議いたしまして、障害者年推進本部幹事の各省庁と協議をいたしまして出したわけでございます。
#252
○前島英三郎君 そうすると、総理府に伺いますけれども、国連のその世界行動計画草案に対する日本政府のコメントをまとめるに当たって、国際障害者年担当室としてはどのような役割りを果たしたということになりますか。
#253
○説明員(瀬田公和君) 総理府といたしましては、外務省から原案の送付を受けまして、これは先生もさっき日本訳を見たというふうにおっしゃいましたけれども、日本障害者リハビリテーション協会というところがございますけれども、そこを通じましていろんな障害者団体と協議をしながら実は日本訳をつくりました。そして、その日本訳を、さっき外務省から御説明ございましたように、外務省と一緒に各省庁の会議を持ちまして、そこでいろいろディスカッションの用に供していただいたわけでございます。
 御承知のように、十一月から十二月、一月という期間は私たち中央記念事業の最終段階に差しかかっておりましたし、先生もおっしゃいましたように、国際障害者年特別委員会におきましても最終的な議論が白熱しておりましたし、また私たちも障害者に関する長期計画の立案等非常な多忙な時期でございましたので、この最終的な取りまとめにつきましては、これは所管省庁でございます外務省に一任してやってもらったと、こういうことでございます。
#254
○前島英三郎君 多忙であるとかなんとかということは別に問題にならないんで、これは外務省がその責任を持つんですか。どうですか、その辺は。
#255
○説明員(野口晏男君) 対外的に出します文書につきましては、外務省としてよく検討した上で出しておるわけでございます。
#256
○前島英三郎君 ことしの一月二十二日に中央心身障害者対策協議会は、国際障害者年特別委員会の討議を経て「国内長期行動計画の在り方」について意見具申をしたわけです。その中で、一つの部分を挙げますと、「心身障害児の教育については、いわゆる統合教育を心身障害児の教育のあるべき方向として打ち出すべきであるとの意見も出され、活発な論議が行われたが、これについては、意見を集約するには至らなかった。」と、こう述べているんです。この部分だけを抜き出しますと、「意見を集約するには至らなかった。」という部分だけが印象に残りそうなんですけれども、この文章には実は次のようなさらにつけ加えたものがあるんです。ここが重要なんです。
 「しかしながら、心身障害児の教育の在り方については、関係者の要望や関心が極めて強いことに留意し、今後、各界各層が協力し、心身障害児の教育の実態等諸情勢の推移を見きわめつつ、障害関係者の理解と一般国民の協力が得られるような心身障害児の教育の在り方について合意の形成を図り、心身障害児の教育の推進に努める必要がある。」、こういうぐあいに今後の課題として残しているんですね。
 にもかかわらず、政府の長期計画、この三月二十三日の策定においても、この部分はこのまま生きているんです。文部省の現在の考え方はともかく、統合教育を含めまして、検討課題としていわば将来について幅を持たしてあるというのがこの特別委員会の結論なんですよ。にもかかわらず、相前後して検討された世界行動計画の日本のコメントにおいては、文部省の考え方だけがストレートに国連に送られている形になっているわけです。これは私大変問題だと思うんです。国際障害者年推進本部及びその庶務を担当する担当室としてはその辺についてはおかしいと思わなかったのかどうかですね、それを大変疑問に思うんです。
 いまウィーンで開かれている諮問委員会に日本からオブザーバーとして出席していると聞いておりますけれども、だれがどのような資格で出席しているのか。オブザーバーも実は大変権限があるんです、発言権もあるんですから。その人選にはいかなる理由と意味があるのか。この人選ですね、ちょっと伺っておきたいと思う、まず総理府から。
#257
○説明員(瀬田公和君) 総理府といたしましては、外交文書として外務省がどういうコメントを出すかということについては、これは外務省の領域でございますから、実は最終的な案文というのは見ていなかったわけです。
 ただ、文部省も含めまして私たち議論に参加している中で、わが国の障害児の多くというのは、御承知のように養護学校で教育を受けておりまして、また今後の教育の方向というものにつきましては、障害者に関する長期計画の中におきましても、今後時間をかけて検討するということを明らかに実はしているわけでございます。
 したがいまして、先生お読みいただきましたように、今度の諮問委員会の案の中では、障害児を普通学校で教育することが適当であるという趣旨の行動計画に実はなっているわけでございますけれども、直ちにわが国としてはそれをそのまま賛成することはできない、今後時間をかけて検討していくというわが国の立場も、その中に幾分か含ませるような形で修正してほしいというふうな会議の雰囲気であったということは承知しております。
#258
○前島英三郎君 外務省はどうですか。日本のコメントとして外務省は責任を持ったわけですよ。ところが、日本の長期行動計画は、国内行動委員会の中でしっかりとこの教育問題が論議されて、幅を持たして次のステップとしての一つの結論が得ぬままに出されているわけなんです。
 実は、国連に出されたものを申し上げますと、日本からの修正案、「障害児にとって不適切である場合には、特別な学校や施設での教育が必要なところでは」というような形が、たとえばスウェーデンなど世界の趨勢は、「すべての障害児は、他の子どもと同等の教育レベルを保障され、普通学校教育制度の中で確実に教育を受けられるような」という形を出しているわけですよね。これは一つの世界の趨勢なんです。にもかかわらず、特別委員会で、そういう審議があった経過もわからないままに、日本政府のコメントとして外務省が勝手に結論を出して提出していいんですか、それは。
#259
○説明員(野口晏男君) 先ほど申し上げましたように、対外的な文書につきましては、外務省としてよく検討して出したわけでございますが、それが国際的に適当であるかどうかという観点から見たわけでございますが、国内的に国内の長期行動計画との整合性ということになりますと、これは国内のしかるべき官庁におきまして十分検討されておったものと私たちは了解しております。先ほどの答申における両論につきましては、十分外務省としても一応承知しておりましたことは事実でございます。
 それから先ほどの御質問の終わりの方でございますが、今度の第四回諮問委員会へのオブザーバーの点につきましては、日本からは在オーストリア大使館の書記官のほか、文部省から初等中等教育局特殊教育課長及び高等学校教育課課長補佐が出席しております。
 外務省としましては、諮問委員会の討議を全般的にフォローする必要がありますので、在オーストリア大使館の館員をして出席せしめて会議の模様をフォローさしております。それからそれ以外に、関係省庁において関係部分を特に現地で実地にフォローするということを適当とする場合もあり得ようということで、関係省庁の意向を聞きましたところ、今般文部省から出席の希望がありまして、その文部省からの出席につきまして、総理府を含めまして政府部内にも御相談して、特に意見はなかったというふうに私たちは了解しておる次第でございます。
#260
○遠藤政夫君 議事進行。
 理事会で老人保健法案の審議について各委員の時間が割り当てられます。その時間の枠内で委員が老人保健法案に関連をして御質疑になることは結構ですけれども、老人保健法案と全く関係のない質疑をされることについては、これは委員会の常識として委員長御注意いただきたいと思います。
#261
○委員長(目黒今朝次郎君) まあ、お互いに委員会をやっていることですから、緊急事案という提起がありましたんで、若干長くなっておりますけれども、前島委員にとっては緊急事案だろうと、このように委員長は認定してずうっと発言を許してきたわけでありますが、いま遠藤理事の要望もありますから、それらの問題について、発言者の方で十分その点を心得て、要領よくしかも問題点について質問をしてもらう。
 また、答弁者の方も、私が聞いていますと、身障者の教育問題については文部省と、この社労委員会では平行線でずうっとやってきた問題でありますから、その辺のことを、政府が対外的に出す際には、十分調整した上で出せばこういうような質疑はなかったと、私の経験からもそう判断するんです。
 その辺、問題点だけしぼって前島委員の方で締めくくりの質問をしてもらうし、答弁者の方も、その辺の手落ちがあれば、手落ちをどういうふうに今後調整して反映するかということを含めて答弁願えれば、これで一件落着と、こうなるんじゃないかと委員長は、やりとりを聞いておりまして、そう考えますので、もう一問だけ、前島さんの方で締めくくりして、政府の方でそれにこたえる答弁をして本論に入ってもらいたいと、このように委員長から要請しておきます。
#262
○前島英三郎君 私は、老人保健法案と心身障害児者の問題というのは表裏一体だと思うんですよ。全く別の形だというふうなとらえ方もあるかもしれませんけれども、老人保健法案は、年老いた人たちに対しての政策の中に非常にひずみを感ずる。それと同じように、国の政治的な感覚が、あるいは障害を持った人、あるいは弱い人たちの立場においてだんだん切り捨てられていく傾向に対して、こうした形の中で討論しているんです。私は、いまの動議に対しては非常に不愉快に思います。
 というようなことで、結論だけ申し上げますと、当事者が何も知らされないうちに、国内で議論の多い問題について、きわめて一方的な見解が日本政府のコメントとして提出されたわけです。そして、オブザーバーとしてその問題の担当課長がわざわざ送り込まれているということなんですね。国内だけでは飽き足らず、まさに世界じゅうを文部省の考え方で塗り込めようというんじゃなかろうかと私は思うくらいです。
 大臣は国際障害者年の副本部長ですから、じゃ、いままでのやりとりのひとつまとめを大臣に伺いたいと思います。いかがお考えになりますか。
#263
○国務大臣(森下元晴君) 前島委員と外務省その他の関係者のやりとりを聞かしていただきました。まさに老人保健法と障害者の方々の関係なきにしもあらずという感じを私もしております。そういうことで簡単に、時間の関係もございますし、大臣としての考え方を申し上げたいと思います。
 国連の障害者に関する世界行動計画につきましては、現在外務省を中心に対応がなされておるところでございますが、障害者対策推進本部の副本部長といたしまして、障害者の福祉対策は、国際障害者年一年限りのものとすることなく、本年三月に政府がもうすでに決定いたしております、すなわち障害者対策に関する長期計画、この趣旨を踏まえながら今後とも一層推進してまいりたいと思っております。
 この中に詳しく実は書いてあるんですが、もう御承知のとおりでございますので読み上げを省略さしていただきます。この趣旨は、いまおっしゃったような大体趣旨でございまして、この点いろいろ、厚生省また副本部長として、私の方からも連絡が不十分であったかもわかりません。これ私、個人的な見解で、御迷惑をおかけしておるということを一言だけ申し上げておきます。
#264
○前島英三郎君 じゃ、本題に入りますけれども、大変申しわけありませんでした。
 国内行動計画と世界に出す日本のコメントの余りの違いというものに大変憂える一人です。しかも、それが担当室という総理府の中にありながら、そこがまたそれを何ら実行してないという部分にも、何のための担当室かという感をいたしました。外務省もコメントづくりは慎重にしてもらいたい、こう思います。これはまた後ほどやるといたしまして、本題に入りたいと思います。
 私は、さきの質問におきまして、老人保健法案に対する私の基本的な立場を明らかにいたしました。医療と保健、つまりヘルスとを一体のものとして育てていこうと、そういう理念そのものには大変同意するわけでございます。しかし、その理念がこの法案によって現実のものとなる保証は残念ながらないのではないか、そういう気もするわけでございます。うまくいって五年先ぐらいではなかろうかというような気がいたします。にもかかわらず、医療費の一部負担は直ちに老人の上にのしかかってまいりますし、納得できないという部分が私の考えであります。
 そもそも厚生省の姿勢として、老人保健の充実のためにこの法案を提出したのか、あるいは医療財政の立て直しのために提出したのか。恐らく両方だろうとは思うんですけれども、どうも本音の部分での腰の構えがすっきりしていないんじゃないか、そんな気が大変強くいたします。私としては、保健事業の充実という課題は非常に重要な問題であると考えております。お年寄りの問題のみならず、障害児者の問題にも大変かかわり合いがあるからでございます。わが国の憲法二十五条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と、このように第一項に書いてあるわけでございますけれども、どうもその後の第二項について忘れられがちではなかろうか、そんな気もいたします。「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」、こう後段では書いてあるのでございます。ですから、この精神にのっとって国民の健康というものを向上させる努力をしてきて、その一つの流れの中でいま老人保健が当面の最重要課題として登場してきたと、こういうことでなければならないと私自身は思います。
 そこでお尋ねしたいんですけれども、老人保健法案の保健事業につきまして、その基本理念を組み立てるまでにどのような経過があり、どのような点に留意してこられたのか、その点をかいつまんでお答えをいただきたいと思います。
#265
○政府委員(三浦大助君) この老人保健につきましては、いままで断片的にばらばらにやられておりました衛生教育、健康教育あるいは健康相談、あるいは健診、それから機能回復訓練あるいは訪問指導、こういうものを一貫してひとつやっていこう、そして健やかな老後を老人の方に送っていただこうと、こういう趣旨で今度のヘルス事業を始めるわけでございます。したがいまして私ども、先生いま五年後と言いましたが、そこまで待たずに、一刻も早く量的にも質的にもこの事業が一貫してできますようなレベルに早く持っていきたいということで一生懸命努力をしてまいりたいと思っております。
#266
○国務大臣(森下元晴君) 私からはこのヘルス事業の基本的理念についてちょっと申し上げたいと思います。
 初めに、この法案の目的がいわゆる財政面か、またそれとも老人の福祉健康面か――まあ両面あるというお話でございましたが、私も両面ないとは言えません。いろいろ高齢化社会に対処して、両面のいいところをこの法案に生かしていきたいということを率直に申し上げたいんです。
 このヘルス事業は、国民の年齢とか、それから心身の状況に応じて、壮齢期から健康教育、それから健康診断等の保健事業を総合的に実施いたしまして、成人病等の予防、早期発見、早期治療を図るとともに、国民みずからの健康に対する自覚を高め、老後の健康を確保しようとするものでございます。これが大体ヘルス事業の基本的な理念でございます。
#267
○前島英三郎君 ここ数年の保健事業を振り返ってみますと、昭和五十三年度から国民健康づくり対策が実施されておるようでございます。国民すべてが健康な生活を送れるようにというのが目標にされているわけですけれども、この中では老人というものがどのように意識され、手が打たれてきたのか。あるいはまた、この中で健康増進センターがつくられているわけなんですけれども、老人保健法が実施された場合、このセンターも戦力となっていくものなのかどうか知りたいと思います。国民健康づくりの大まかな現況及び老人保健法案との関係について、このセンターの戦力、その辺はどのようにとらえていらっしゃるか、伺いたいと思います。
#268
○政府委員(三浦大助君) 厚生省では昭和五十三年度から、国民の健康づくりを重点施策として取り上げてきたことは、いま御指摘のとおりでございますが、この中で柱が三つございまして、一つの柱は、妊産婦とか、あるいは乳幼児から老人に至るまでの生涯を通じた健康づくりの推進、この旗印を一つは掲げてまいっております。それから二番目に、健康づくりの啓蒙普及とこの広報を第二の柱にしております。三番目は、市町村保健センター等の健康づくりの基盤整備。この三つの柱をもって推進してきたわけでございます。昭和五十七年度予算におきましては、この国民の健康づくり対策関係予算として約二百六十億円が計上されておるわけでございます。
 ただいま御審議いただいております老人保健法に基づきます保健事業と申しますのは、これは生涯を通じる健康づくりの一環として、四十歳以上の者を対象にした総合的な保健サービスを提供いたしまして、国民の老後におきます健康の確保を図ろうというものでございまして、これによって国民健康づくり対策のさらに飛躍的な発展を図っていこうというのが趣旨でございます。
#269
○前島英三郎君 一方、昭和五十三年度から試行的に実施されておりますのに、老人保健医療総合対策開発事業というのがありますけれども、これはまさに老人保健法案が目指す保健と医療の一体化を進めるいわばパイロット事業でございますが、この事業の経験なり教訓なりというものは十分に注目されるべきであると思われるんですけれども、本事業は、昨年度で百六十八市町村でしたか、実施していると聞いているんですが、その概況、また今後の見通しみたいなものが伺えればと思います。
#270
○政府委員(三浦大助君) 老人保健医療総合対策開発事業と申しますのは、これは老人の健康状態に応じまして、健康教育とかあるいは健康相談から機能訓練までのいろんな施策を総合的に行ってまいりたいということでございまして、老後の健康を確保するということを目標としたものでございまして、昭和五十三年度からモデル事業として開始したわけでございますが、御指摘のとおり、五十七年度におきましては、約百七十市町村において実施しているところでございます。
 今回の老人保健法案におきましては、従来公衆衛生の施策として行ってまいりました循環器の検診とかあるいはがん検診、こういった施策とこの事業とを一緒にいたしまして、四十歳以上の者を対象として年次計画的に全国的に拡大して実施しようということになっておるわけでございます。
#271
○前島英三郎君 保健事業の一線で重要な役割り果たすのは保健所なんですけれども、前回の質問の中で私は、保健所医師の問題、保健所を補完する市町村保健センターの整備計画についていろいろ伺ったわけなんですけれども、今回はもう少しちょっと大きな視点からお答えいただきたいんですけれども、保健所と市町村保健センターの運営の基本的な考え方ですね、どのような考え方で機能を発揮させて、どのような点を重視して今後充実強化を図ろうとしているのかという問題ですが、どうですか。
#272
○政府委員(三浦大助君) 市町村保健センターと申しますのは、一口で申しますと、保健対策を実施する場所の提供というためにつくられておるわけでございまして、この中身につきましては、市町村が行うこととされておりますたとえば母子保健あるいは成人病予防あるいは老人保健、こういった対人保健サービスと申しますか、その中でも特に住民の日常生活に密着した頻度の高いものを実施する拠点というふうに御理解いただければよろしいかと思います。したがいまして、地域住民が健康問題につきまして自主的に行うようないろんな集会にも利用される施設になるということでございます。
 一方、保健所の機能と申しますのは、これは市町村への指導あるいは技術の援助、こういうものを行うことを主としておりまして、あるいはまた広域的な処理を必要とするもの、あるいは高度の技術の設備を要するもの、それからいろんな種類の医療関係の職種によるチームワークを必要とするものにつきましては、保健所でなければこれは行えないわけでございまして、そういう高度なものの対人保健サービスに力点を集中させていこうと、こういうわけでございます。
 なお、保健所は、このほかにまだ環境衛生とか食品衛生の監視、指導、こういった仕事もあわせて保健所の方でやっておるわけでございます。
#273
○前島英三郎君 いろいろ伺ってまいりますと、いろんな糸、それも新しくて丈夫な糸が紡ぎ出されているけれども、それらがより合わされて太いりっぱなロープになってくれないもどかしさのようなものを若干私は感じるんです。糸と糸が近寄っているのは感じるわけですけれども、それが何となく合わされていきそうにない。合わされそうもない。
 一つの原因は、マンパワーの不足ということが私は大変大きいと思うんです。もう一つは、保健衛生行政の縦割り、横割りの垣根がじゃまになっていまして、別々ばらばらになってしまっているという面、これも大変大きな原因だろうと思うんです。ですから、いませっかくの糸を太いロープにより合わせをするためにも、この際結び目が必要ではないかというような気がするんですけれども、老人保健法案がその結び目になってくれるかというと、私はそれは大変困難であろうと言わざるを得ないわけです。ちゃんとした結び目があって老人保健法も生きてくる、むしろそういう関係を期待したいと思うんですね。
 ここで角度を変えてお尋ねしたいんですけれども、WHOはいまプライマリー・ヘルス・ケアを重用視しておりまして、西暦二〇〇〇年までにすべての人に健康を目指す世界的戦略を展開しております。プライマリー・ヘルス・ケアは障害の予防にとっても大きな課題であり、先ほど取り上げました国際障害者年世界行動計画の中でも明確な位置づけがなされているわけでございます。したがいまして、障害者問題と老人問題というのは表裏一体であるということは、そういう点を私は指しているわけでありまして、このWHOのプライマリー・ヘルス・ケアに関して厚生省としてどのように受けとめておられるのか、見解を伺いたいと思うんです。どうですか。
#274
○政府委員(大谷藤郎君) WHOのプライマリー・ヘルス・ケアは、同じ地球上で先進国と開発途上国との間に余りにもひどい医療上の格差がある、あるいは同じ国内でも先進的なコミュニティーと後進的なコミュニティーとの間では格差がある、また同じ人と人との間でも基礎的なヘルスケアについては非常な差がある、これを認めることができないという立場から、単に医療機関内の医療を進めるだけではなしに、コミュニティーというものをベースに置きまして、健康増進あるいは予防あるいはリハビリテーションといったものに、広く地域的総合的包括的にアプローチをしていこう、また単に医師、看護婦だけではなしに、いろんな職種、ボランティア、地域社会全体の人人と一緒になって総合的に健康を守っていこうという運動でございます。
 したがいまして、WHOのプライマリー・ヘルス・ケアにつきまして、いわゆる開発途上国向けのものではないかという一部の方々の批判もあるわけでございますけれども、このWHOのプライマリー・ヘルス・ケアの物の考え方というものにつきましては、わが国の百年の歴史を持つヘルスあるいは医療の制度の上にも非常に深い反省、批判を与える点がありまして、厚生省といたしましては、WHOのプライマリー・ヘルス・ケアの物の考え方で保健医療を見直し、足らざる点を補い、いい点は伸ばしていくというふうにすべきであるというふうに考えているわけであります。
#275
○前島英三郎君 わりあいこれは、いまおっしゃられたように、発展途上国の問題であって、先進国には関係がないといった誤解もあるようでございますけれども、わが国としてもいい面はいい面として育てるということが日本型福祉にとっては重要ではなかろうか。そういう意味では、そういう部分で日本が決して先進国とも断言できないような、そんな感じがするんですけれども、わが国の今後の一つの到達水準ですね、どの程度であると考えておられますか。
#276
○政府委員(大谷藤郎君) 先ほども申し上げましたように、プライマリー・ヘルス・ケアは、すぐれて医療あるいは保健の原点の立場に立って見直せと、こういう主張でございます。したがいまして、このWHOが運動を始めました一九七八年にソ連のアルマ・アタでアルマ・アタ宣言というのを発しましたが、その同じ年にわが国でも先ほど公衆衛生局長から御説明申し上げました国民健康づくり計画というものを発足させております。これは非常にプライマリー・ヘルス・ケアの考え方と似ている――似ていると申しましょうか、同じ考え方に立っているわけでございます。
 また一方では、アメリカ等の影響で開業医の方方の中からいわゆるプライマリー・メディカル・ケアの運動というのが進められております。これは従来専門化、分化し過ぎの医療に対する反省から、人間全体として見ようというプライマリーケアという運動が始められておりますが、このプライマリーケアの運動も、それだけでは、診療の領域だけでは十分な健康を守ることができないという最近反省がございまして、これをプライマリー・ヘルス・ケアに広げていこうと、こういうふうな考え方になっているわけでございます。
 私個人の考え方でございますけれども、国民健康づくり計画をわが国全体の公衆衛生、医療上に大きく広げていき、また同時に医療の第一線にある医師の方々が、プライマリーケアをさらに環境あるいは予防、そういった問題に広げていってプライマリー・ヘルス・ケアとリンクしていただく、こういうふうなことが非常に大事ではないかというふうに考えます。
#277
○前島英三郎君 ですから、さっきの結び目論に戻りますけれども、私はプライマリー・ヘルス・ケアが一つの結び目になるのではないかというような気がするんです。
 なるほどわが国はさまざまな分野で国際的に高い水準を達成しつつありますけれども、しかしそれが国民一人一人のところに行き渡っているかというと、そうでもないような気がしてなりません。プライマリー・ヘルス・ケアは、わが国にとっては科学や技術の水準というところではなくて、それをいかにして国民一人一人のところにまんべんなく行き渡らせるのかという政策的な課題として提起されていると、そのように私はこれを受け取っているわけなんですけれども、そういう意味では一つの今後結び目になるように強くお願いをしたいと思います。治療から予防への医の発想の転換ということも、今後はまた大変重要になってくると思います。
 この審議を通じましても、いろいろ問題点があるにいたしましても、これから高齢化社会を迎える、また高齢化社会を迎えるに当たってそれなりのハンディキャップをそれぞれの人が持つ。そういう意味では、今後厚生行政の中でもしっかりとその辺のビジョンを打ち立てて長期的にやっていただきたいことを最後に申し上げまして、御答弁は結構でございますので、私はきょうは少し早目に時間を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#278
○山田耕三郎君 持ち時間の関係もございますので、老人保健法案の審議を通じまして私が質問をいたしました項目の中から、確認の意味を含めて数点について簡潔にお尋ねをいたします。
 まず第一点は、老人保健法案が政府提出の原案のとおり成立をいたしましたといたしました場合に、今日各地方の自治体においては相当数上積みの行政を行っておるところがあります。そして、それらがうまく機能をしておるところもございますが、こういった地方自治体に対しても、国の意図される水準にまで引き下げてレベルを合わすよう話し合っていく、すなわち行政指導をしていくという旨答弁がございましたけれども、今日でもそのお考え方は変わりませんですか、お尋ねをいたします。
#279
○政府委員(吉原健二君) この老人保健法案の趣旨、考え方というものを地方自治体におかれましても十分御理解をいただきまして、国の考え方、それから施策との整合性を考えて、見直しをしていただきたいという気持ちには変わりはございません。
#280
○山田耕三郎君 そういたしますと、ただいまも申し上げましたとおり、確かに全国的に見て全体の数、絶対数は少ないかもしれませんけれども、うまく機能をして上積み行政を成功をさせておられるところがあります。わかりやすくいたしますために、その例を岩手県の沢内村にとってみます。ここは六十歳まで十割給付を拡大をしておいでになります。そして、人口比から見まして、どこの自治体よりも受診件数はたくさんございます。しかし全体の医療費は非常に少ない。そういったことで、いわばここの村民の皆さんは、この医療制度の恩恵を享受しておいでになりますと言っても、過言ではありませんと思いますのですが、こういったところまで水準を引き下げていかなければならないのでありますか、その辺のところをお尋ねをいたします。
#281
○政府委員(吉原健二君) よく例に引かれます沢内村におきまして、二十年あるいは三十年も前から予防事業というものに力を入れられまして、おっしゃいましたような大変な成果を上げてきておられる。医療費の面でも、他の町村あるいは県に比べまして、あるいは全国的にも大変低い状態になっているという点につきましては、私ども大変敬意を表するわけでございます。
 ただ、この老人保健法案が成立をしましたときに、それでは沢内村だけは六十歳以上からの無料をそのままでいいかどうかというふうなことになりますと、この老人の医療というものの給付の内容といいますか、あるいは国民の負担というものが自治体によって差がある、一般的な考え方として、自治体によってばらばらであるというのはいかがかというふうに思いますし、それから同時に、沢内村の医療というものも、沢内村だけのいままでの国保とは違いまして、いわば国の責任において、この老人保健法における医療というものは、実施そのものは市町村長にお願いをしますけれども、あくまでも制度の運営、それから費用の負担というものは国の責任において財源も確保してやっていこうと、こういう制度でございますので、特定の市町村について、給付の面なりあるいは負担の面なりについて、例外を設けるということはもう実際問題としてむずかしい。
 実は、この法案を提出しますときにそういったことも十分考えまして、町村会の方々ともいろいろ議論をしたわけでございますけれども、やはり医療については、国の責任においてむしろ一律にやってもらいたいというような御意見もございましたので、そういった考え方でやらしていただきたいというふうに思っているわけでございます。
#282
○山田耕三郎君 私は、今日の時代が地方の時代と言われますゆえんは、それぞれの自治体において特徴のある行政運営がなされてもよろしい、このように思っておりますのですけれども、ここでその問題を論議をしようとはいたしません。ただ、画一的な手法をとられたがために医療体系を直していかなければなりません。で、変革のときにはいろいろ問題が起こりますのは当然のことでありますけれども、そういったときに、せっかくうまくいっておりますときに、何かぐあいが悪くなってきたというような徴候が出てきた場合に、それでもなおかつこの画一的な方策を推し進めていかれようとされますか。そういった結果は、こういった医療の問題ですからすぐあらわれてくると思いますんです。そういったときに柔軟な対応がとれるのかどうか、再度お尋ねをいたします。
#283
○政府委員(吉原健二君) 地方自治体がそれぞれの地域の実情等を踏まえながら、その特色を生かして事業をやっていただくというのは、地方自治の基本的な考え方だろうと思いますし、この老人保健法案におきましては、医療につきましては、全国画一的な考え方をとっておりますけれども、ヘルスの事業、保健事業につきましては、そうではなしに、むしろ自治体の特色というものを生かしながらできるだけのことをやっていただきたい、国もできるだけの支援なり応援をするという考え方に立っておりますので、沢内村のこれまでの保健事業、さらにこの老人保健法ができましたならば、もっと従来以上に国としては応援できるようなことになろうかと思っております。
 したがいまして、この老人保健法ができまして、沢内村の住民の方々のヘルスの問題あるいは医療の問題に問題が生ずるというようなことはあり得ないと、私はそういうふうに思っておりますけれども、先生の御心配の点も十分わかりますので、法律施行後の状況というものは、十分国としても関心を持ち、見守っていきたいというふうに思います。
#284
○山田耕三郎君 私は、医療の荒廃によります医療費の増高が、何の罪もない弱者であります老人に対して、一部負担金を課さなければならないというような発想を誘発してきたのではないか、こういう考え方に立つものであります。だから、こういう法案を出されますについては、現行法のままでなしに、医療の荒廃を防止する何らかの施策があわされて出てこなければいけなかったのではないか、このように思っております。そういう立場から次の問題をお尋ねいたします。
 たとえば医療法人十全会の医療費の不正請求の実態が、約一カ年を経過した後のこの委員会において、委員の質問に対してさえいまだに明確になっておらないという答弁がございました。それは、私は怠慢ということよりも、むしろ現行制度のもとではなかなか踏み込めない面があってそのことが明らかにならないのではないか、このように思っておりますんですけれども、この辺に対するお考え方を承りたいと思います。
#285
○政府委員(大和田潔君) 十全会につきましては、水中機能訓練に係る保険請求、これが問題になったところでございまして、すでに御報告いたしましたように、昭和五十五年十月に厚生省、京都府が共同保険指導を行っております。医師の直接指導監督のないものに係る請求、水治療訓練の場合に医師の直接指導監督のないものの請求、これが問題でございまして、その事実を確認の上に、返還を含めた必要な措置を講ずるように京都府に指示をいたしたわけでございます。
 この問題、何が時間がかかっているかといいますと、本件につきましては、医師の直接指導監督のないもの、どれがそういうものに該当するかということの特定がなかなか困難である、つまり事実確認に長期間を要していると、こういったようなことでございます。
#286
○山田耕三郎君 もう一つお尋ねします。
 さきに問題を起こしました富士見産婦人科病院が、事実上の分院の開設を申請をしておるということで、患者の被害者の同盟の皆さん方は、社会正義を逆なでするものという立場から反対をしておいでになり、さらにこの申請を受けた監督官庁は、現行法では認可せざるを得ない旨の新聞報道がございました。われわれ国民としましては、こういった実態に奇異の感を持っておりますのでございますけれども、だとすれば、現行法で何ともならないんだったら、何とかなるようにこれは変革をしていかなければならないと思いますのですけれども、そういった面もそのままで提案ということになっておりますのです。この辺いかがですか。
#287
○政府委員(大谷藤郎君) 御指摘の富士見産婦人科病院分院につきましては、先般方倉国臣医師の名義で開設届が埼玉県に対して提出されました。しかし方倉医師と医療法人芙蓉会との関係に不明確な点がある、また芙蓉会による事実上の同分院の再開であるという疑いが持たれましたので、埼玉県の指導によりまして開設届を撤回いたさせました。引き続き同分院の問題につきましては、先生が御指摘のように、社会的な批判を浴びることのないよう必要な指導監督をいたす考えでございます。
 なお、御指摘のような医療の荒廃が生じないように医療機関の指導監督には今後とも万全を期してまいりたいというふうに考えております。
#288
○委員長(目黒今朝次郎君) 山田委員、時間が来ましたから……。
#289
○山田耕三郎君 最後にお願いします。厚生大臣にまとめとしてお尋ねをいたします。
 この老人保健法案は、財政対策上から考え出されたものでありまして、憲法に定められた国民の権利をも奪い去られる施策と私は見ておるのでございます。この法案が現状のままで施行されました場合には、老人に対する一部負担と、さらには保険者団体に対する拠出金制度という財政対策だけがひとり歩きをして、財政対策とうらはらの関係にあります保健サービスの事業はなかなか機能しにくいだろうと見ております。しかも、現行制度のままでは、ただいまもお尋ねいたしましたとおり、医療費の不正請求を初めとする医療の荒廃を是正することは困難と見ております。
 したがって、結局は、老人患者に対する一部負担金徴収の道を開くという大変革による老人福祉の後退でしがなかった、こういうような結果を招くのではないかという心配を持っておるのでございますけれども、そういったことにならないように厚生大臣のお考えを承っておきたいと思います。
#290
○国務大臣(森下元晴君) 高齢化時代に入りまして御老人対策をいかにするか、特に医療を通じましてどうするかという大きな使命を持った保健法でございます。基本的には、御指摘のように、結局は医療の荒廃を防ぐ、結局は財政対策だけのための法案でないということの上に立たなければ、国民の信頼が得られないし、また協力も得られません。そういうことで、私は医の倫理の高揚、それから医師の資質の向上を図る、そのために医学の教育はもちろん、卒後の臨床研修を初め、卒後研修体制、こういうことを一層充実いたしたいし、また医療行政を監督しております厚生省といたしましても、御指摘のようなことにつきまして十分配意をいたしたいし、先ほど沢内村の例を出されましたが、医療、保健、予防、食生活の指導まで含めて町の行政と病院また村民が一体となって実を上げている、こういう方向にやはり国全般の医療行政、保健行政も持っていきたい、また国民の老後の幸せのためにこの法案がありたい。また、私どもはそういう大きな希望を持って、またそういう目的を持ってこの法案を提出させてもらっておるわけでございますから、よろしく御協力をお願い申し上げまして、御答弁といたします。
#291
○委員長(目黒今朝次郎君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十二分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト