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#1
第096回国会 社会労働委員会 第17号
昭和五十七年八月三日(火曜日)
   午前十時二十七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 七月二十九日
    辞任         補欠選任
     関口 恵造君     田原 武雄君
     村上 正邦君     玉置 和郎君
 七月三十日
    辞任         補欠選任
     田原 武雄君     関口 恵造君
     玉置 和郎君     村上 正邦君
 八月二日
    辞任         補欠選任
     田代由紀男君     竹内  潔君
     藤井 恒男君     柄谷 道一君
 八月三日
    辞任         補欠選任
     竹内  潔君     藤井 孝男君
     中野 鉄造君     中尾 辰義君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長        目黒今朝次郎君
    理 事
                遠藤 政夫君
                佐々木 満君
                安恒 良一君
                渡部 通子君
    委 員
                石本  茂君
                斎藤 十朗君
                関口 恵造君
                田中 正巳君
                成相 善十君
                福島 茂夫君
                藤井 孝男君
                村上 正邦君
                森下  泰君
                対馬 孝且君
                本岡 昭次君
                中尾 辰義君
                沓脱タケ子君
                柄谷 道一君
                前島英三郎君
                山田耕三郎君
       発  議  者  安恒 良一君
       発  議  者  対馬 孝且君
       発  議  者  本岡 昭次君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  森下 元晴君
   政府委員
       厚生大臣官房総
       務審議官     正木  馨君
       厚生大臣官房審
       議官       吉原 健二君
       厚生省公衆衛生
       局長       三浦 大助君
       厚生省医務局長  大谷 藤郎君
       厚生省社会局長  金田 一郎君
       厚生省児童家庭
       局長       幸田 正孝君
       厚生省保険局長  大和田 潔君
       厚生省年金局長  山口新一郎君
       厚生省援護局長  北村 和男君
       社会保険庁年金
       保険部長     小林 功典君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○老人保健法案(第九十四回国会内閣提出、第九
 十五回国会衆議院送付)(継続案件)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律
 の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
 付)
○公衆浴場法の一部を改正する法律案(田中寿美
 子君外七名発議)
○市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る
 国の補助に関する法律案(対馬孝且君外一名発
 議)
○戦時災害援護法案(本岡昭次君外六名発議)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(目黒今朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二日、藤井恒男君及び田代由紀男君が、また本日、中野鉄造君がそれぞれ委員を辞任され、その補欠として柄谷道一君、竹内潔君及び中尾辰義君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(目黒今朝次郎君) 前回に引き続き、老人保健法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○安恒良一君 きょうはいよいよ老人保健法を最終的に討論、採決をする段階になりました。すでにわが党の同僚委員、私を含めまして老人保健法の全般について議論をしてまいりました。きょうは最終的にいままで議論を深めてまいりましたことについて確認をしたい点が数点ございますので、これから主として厚生大臣にその点をお答えをお願いをしたいということで質問をいたしたいと思います。
 まず、支払い方式についてでありますが、もう議論の中身は御承知でありますから端的にお聞きをいたします。
 老人保健審議会に戻すか、戻すことが一番いいと思いますが、中医協で審議することがやむを得ないとすれば四者構成とすること、それも困難な場合は少なくとも公益委員を増員すること。
 それから専門委員を置く場合の人数をどのように考えられているのか。
 それから私どもは中医協の審議を円滑にするための議事規則の改正についての考え方を打ち出しておりますが、これについてどう考えられているのか。以上三点について大臣からの御答弁をお願いをしたいと思います。
#5
○国務大臣(森下元晴君) お答え申し上げます。
 衆議院の修正どおり、中医協で審議することとし、三者構成のままといたしたい所存でございます。
 公益委員の増員につきましては、できるだけ速やかに関係法の改正に努力するとともに、さしあたり専門委員の設置、議事規則の検討等を含め、円滑な審議が行われるよう努力いたします。
 なお、専門委員は二名といたします。中医協において老人保健の診療報酬の審議が行われることにかんがみ、専門委員は老人医療に関する学識経験者をもって充てるものといたします。
 議事規則の改正については、国会における御審議の経過、御意見等を中医協に十分伝えまして、中医協の円滑な審議を確保するための措置について御相談を願うことといたします。
 以上であります。
#6
○安恒良一君 次に、老人の診療報酬の中で、主治医による生活指導料の新設を中医協に諮問すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
 また、この主治医の選択、登録制度の創設のために各般の検討をすべきであると思いますが、どうか。理由はすでに前回の質問の中で明らかにしておりますから、この点についてお答え願いたいと思います。
#7
○国務大臣(森下元晴君) 御指摘の生活指導料の新設につきましては、現行の慢性疾患指導管理料等との関係も考慮しながら、主治医による生活指導が促進されるような診療報酬点数の設定について、中医協において検討をお願いしてまいりたい所存であります。
 次は、老人ができるだけかかりつけの医師をもって在宅で医療や健康管理についての指導等を受けることは望ましいことと考えており、それが実際上促進されるよう各般の措置を講ずるようにしてまいりたい所存であります。
 なお、主治医の登録制については、医療制度の基本にかかわる問題でございますが、私としては前向きに検討いたしてまいりたい所存であります。
#8
○安恒良一君 次に、医療法の改正についてでありますが、大臣はしばしば本国会に提案をすると言われていました。前回のやりとりでそれがきわめて困難になったということを言われたのでありますので、そこでそのことをお聞きしたいんですが、医療法の改正を次の通常国会に提出すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
#9
○国務大臣(森下元晴君) 医療法の改正につきましては、さらに検討、調整を進めまして、次期通常国会には提出いたしたい所存でございます。
#10
○安恒良一君 次に、老人保健の拠出金の歯どめ問題について質問いたします。
 老人保健の拠出金にかかわる保険者の負担増は、毎年の老人人口の増加率を最高限度として考え、三年以内を目途に見直すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
#11
○国務大臣(森下元晴君) 御指摘の点につきましては、老人人口の増加率を最高限度として老人保健審議会にお諮りすることとし、この法律の施行後三年以内を目途に見直すことといたしたい所存であります。
#12
○安恒良一君 次に、保健事業について質問しますが、まず第一に、保健事業については、第一次五カ年計画終了後第二次五カ年計画を策定すべきであると思いますが、どうでしょうか。その中でマンパワー等の強化を図ってもらいたいと考えていますが、いかがでしょうか。
#13
○国務大臣(森下元晴君) 保健事業につきましては、第一次五カ年計画に引き続きまして、第二次五カ年計画を策定し、施設、マンパワーの強化を図ります。
#14
○安恒良一君 そこで、少し中身についてお聞きをしたいと思いますが、その第二次五カ年計画の中で全保健所等の整備、雇用(パート)の保健婦の定員化、全保健所及び市町村に対する栄養士、それから精神衛生相談員の配置、それからOT、PTの養成数の拡大を図るべきだと思いますが、いかがでしょうか。
#15
○国務大臣(森下元晴君) まず、全保健所等の整備につきましては、保健所の整備は、第一次五カ年計画終了後引き続いて第二次五カ年計画を策定し、全保健所を整備します。
 次に、パート保健婦の定員化でございますが、保健婦の増員につきましては、第二次五カ年計画の中でさらに増員するとともに、パート保健婦については定員化に努めます。また、保健婦にかかる補助金については、保健婦の現員と補助対象数の格差是正に努めます。
 次に、全保健所及び市町村に対する栄養士、精神衛正相談員の配置についてでございますが、今後とも栄養士の全市町村配置に努力するとともに、当面第二次五カ年計画において原則として保健所に複数を配置することといたします。精神衛生相談員は第二次五カ年計画の中で原則として全保健所に配置することといたします。
 次に、OT、PTの養成数の拡大でございます。OT、PTにつきましては、現在資格取得者が少ないことから、当面専門病院等の協力のもとに確保することとしておりますが、今後ともその養成数の拡大については鋭意努力をいたしたい所存でございます。
 以上でございます。
#16
○安恒良一君 次は、健康手帳の交付についてお伺いしますが、健康手帳は四十歳以上の検診受診者及び希望者には全員交付すべきであるというふうに考えますが、いかがですか。
#17
○国務大臣(森下元晴君) 健康手帳は、健康診査を受けた者を含めまして希望者全員に交付できるようにいたしたい所存であります。
#18
○安恒良一君 次に、検診希望者の取り扱いについてでありますが、検診希望者には、予算でしばらず、全員受診ができるようにしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
#19
○国務大臣(森下元晴君) 健康診査事業につきましては、市町村の実績に応じまして補助をすることとしており、これによりすべての希望者は受診できることとなります。
#20
○安恒良一君 そうなりますと、私はやはり受診率を引き上げていかなきゃならぬと思いますから、検診の受診率を一〇〇%にすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
#21
○国務大臣(森下元晴君) 健康診査については、希望者全員が受診できるよう、その実施体制を整備していきたいと考えております。
 なお、健康診査の受診率の向上につきましては、健康教育、健康相談等の場を活用して積極的に受診の奨励に努めるとともに、保健所機能の充実や集団検診車の整備等、年次計画によりその実施体制を整備することとしております。
#22
○安恒良一君 次は、健康診査の受診者の負担について触れますが、健康診査の受診者負担は、保健所や集団検診で受診した場合と医療機関で受診した場合とで差のないようにすべきであるというふうに思いますが、いかがですか。
#23
○国務大臣(森下元晴君) 医療機関検診と保健所、集団検診とを比較すると、検診の単価に差がございますが、受診者の負担についてはアンバランスが生じないようその負担額を軽減する措置を講ずることといたします。
#24
○安恒良一君 次は、総合病院において、お医者の指示によりまして二つ以上の診療科にまたがって受診をした場合の一部負担金は、一回払えば足るようにすべきではないかというふうに考えますが、いかがですか。
#25
○国務大臣(森下元晴君) 総合病院において、医師の指示により診療科をまたがって受診した場合には、診療科ごとに一部負担を徴収しない取り扱いといたします。
#26
○安恒良一君 退職者医療についてお伺いしますが、私は、退職者医療については、本格的な制度の実施に向けて関係審議会に諮る時期をひとつ明確にされたいと思いますが、いかがでしょうか。
#27
○国務大臣(森下元晴君) 退職者の医療につきましては、制度の創設に向けて努力をいたします。そのため、本年秋ごろを目途に社会保険審議会に諮ることといたしたい所存でございます。
#28
○安恒良一君 本年秋ごろと言われましたが、遅くとも十月ごろと考えていいでしょうか、その場合。
#29
○国務大臣(森下元晴君) そのようにしたいと思っております。
#30
○安恒良一君 次は、本制度の施行の期日についてお伺いいたしますが、これだけ議論を重ねてまいりましてすでにもう八月に入ったわけでありますから、十月ではとうてい無理だと私は考えます。そういう意味で、老人保健制度は昭和五十八年二月一日から実施すべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#31
○国務大臣(森下元晴君) そのようにいたしたい所存でございます。
#32
○安恒良一君 確認質問事項の主要項目は以上で終わったのですが、これももうすでに私が議論しておりますが、もう一遍ちょっとあれしておきたいと思いますのは、歯科の予防について、歯槽膿漏の取り入れについて私は前回の質問のときに申し上げました。ですから、歯槽膿漏というのは早くからやった方がいいんですが、少なくとも四十歳から予防の中において、この歯科に関しては歯槽膿漏の予防の取り入れについての考え方をもう
 一遍聞かしてください。
#33
○政府委員(三浦大助君) 歯科の歯槽膿漏の検診につきましては、私どもこの対策の中でちょっとモデルケースとしてやってみたいというふうに考えておるわけでございます。
#34
○安恒良一君 私の持ち時間は残っていますが、以上をもって終わります。
#35
○渡部通子君 私は、自由民主党・自由国民会議、公明党・国民会議、民社党・国民連合、以上三会派を代表いたしまして、今日まで審議されてまいりました老人保健法案に対しまして、確認の意味を含め若干の質問をいたします。少々安恒委員とダブる点もございますが、御了承願います。
 まず最初に、老人保健の診療報酬の審議に当たりましては、中医協における専門委員を任命すること等によって、円滑適切な審議が行われるように配慮すべきでございます。再三議論されたところでございますが、これに対する確認をいたします。
#36
○国務大臣(森下元晴君) 御指摘の趣旨に沿いまして老人医療に関する学識経験者を専門委員に任命すること等により、中医協において円滑適切な審議が行われ、老人の心身の特性に応じた診療報酬が定められるよう努力をいたしたい所存でございます。
#37
○渡部通子君 老人保健のレセプトについては、保険者においても速やかにこれをチェックできるようにすべきだと思いますが、いかがですか。
#38
○政府委員(吉原健二君) そのようにいたしたいと思っております。
#39
○渡部通子君 さらに、レセプト審査の改善充実を図るため、支払基金の権限の強化、これを図っていただきたいと思いますが、いかがですか。
#40
○政府委員(大和田潔君) 支払基金における審査の充実を図りますため、審査委員、職員の増員を図りますとともに、その任務と役割りの明確化について検討をいたします。特に、五十七年度にはコンピューターを導入し、重点審査に活用するための資料作成を行うなど、支払基金の審査機能が十分発揮できるよう努めることといたします。
#41
○渡部通子君 拠出金に関しまして激変緩和をしていただきたいと思いますが、その対策等について三点伺います。
 この法律によりまして、老人加入率の高い保険者については負担が経減される一方、老人加入率が極端に低い保険者は著しく負担がふえることになります。老人医療費の公平な負担という観点からは、確かにやむを得ない面はございますが、拠出金の算定に当たっては老人加入率に上下限を設けて極端な負担の増減を緩和する措置が必要ではないかと存じます。
 次に、やむを得ない理由によってその年度に拠出金の納付が困難と認められる保険者について、一部の納付を翌年度に回すことができないかどうか。
 三点目は健保連は、現在高額医療費等については財政調整事業を行っておりますが、老人保健の拠出金はこの事業の対象となるのかどうか。
 以上のような点につきましては、法律上も明確にしたらいいと思いますが、いかがですか。
#42
○政府委員(吉原健二君) 御指摘の点につきましては、運用上必ずしも不可能ではございませんが、法律上明確にさせていただきたいと思います。
#43
○渡部通子君 老人保健制度ができました場合、政管健保の現行の保険料率千分の八十五はどうなりましょうか。また、その上限千分の九十一との関係はどうなりましょうか。
#44
○政府委員(大和田潔君) 政管健保の保険料につきましては、老人保健の拠出分を含め、当面、現行の料率で対応できるものと思います。
 老人保険料率につきましては、政管健保の上限料率千分の九十一は適用はないものでございますが、上限を設けた趣旨にかんがみまして、できるだけ長期にわたって、老人保険料率と一般保険料率をあわせ、その範囲内におさまるよう努力をいたします。
#45
○渡部通子君 そうであるならば、この点も法律上明確にしたらどうかと思いますが、いかがでございましょうか。
#46
○政府委員(大和田潔君) そのようにさしていただきたいと思っております。
#47
○渡部通子君 高額医療費の自己負担限度額、これを三万九千円から引き上げるに当たりまして、段階的な緩和策を講じるべきではないかと存じます。また、この措置については社会保険審議会の意見を十分参酌すべきと思いますが、いかがでございますか。
#48
○政府委員(大和田潔君) 御意見の御趣旨は理解できますので、現在この問題を審議しております社会保険審議会におきまして適切な結論が得られるようにいたしたいと思っております。
#49
○渡部通子君 それから医療費のむだ、それから乱診乱療をなくし老人に対して真に適切な医療や看護を行うという観点から、老人病院のあり方や老人の医療についてのガイドラインの作成、中間施設の創設など、こういった問題について真剣に検討すべきだと思います。いかがですか。
#50
○政府委員(大谷藤郎君) 御指摘の点につきましては、関係方面や専門家の御意見を十分伺いつつ、真剣に検討を進めてまいりたいと考えております。
#51
○渡部通子君 老人保健法によります保健事業の実施に当たりましては、地域ごとに保健サービスと福祉サービスが十分連携を持って行われることが肝要です。このための具体策をもう一度重ねて伺っておきます。
#52
○政府委員(三浦大助君) 御指摘のとおりでございまして、市町村が老人保健法による保健事業を実施するに際しましては、保健と福祉に関する関係行政機関はもちろんのこと、民間の関係者あるいは関係の団体等から成る協議会をつくってまいりまして、地域の実情に応じて保健サービスと福祉サービスが連携をとりながら、効果的に進められるように都道府県、市町村を十分指導してまいりたいと考えております。
#53
○渡部通子君 制度実施までの間、都道府県、市町村などにおける実施体制の整備とともに、制度の趣旨、内容についての国民の皆様への周知徹底、これが大事だと思うんです。特にお年寄りの方々に十分に理解してもらうことが大切であると思いますが、これに関しては大臣の御決意を伺っておきます。
#54
○国務大臣(森下元晴君) 御指摘のとおりでございまして、都道府県、市町村における保健事業の実施体制の整備、制度の趣旨、内容についての国民の方々への周知徹底等については万全を期し、新制度の円滑な発足に最大限の努力をいたしたい所存でございます。
#55
○渡部通子君 以上で確認事項は終わりでございますが、ただいまの御答弁をぜひとも鋭意努力して実施に移していただきますことを強く要望いたしまして終わります。
#56
○沓脱タケ子君 老人保健法案の審議の最終段階に当たりますので数点の質問を行っておきたいと思います。
 まず最初に、きょうは自民党、公明党、民社党の修正案も示されておるわけでございます。その上に立って御質問を申し上げたいと思います。
 まず第一に、一部負担金の問題でございますが、老人医療の無料化制度というのは、たびたび申し上げてきましたように、国民にとりましては大変喜ばれている制度でございます。先日わが国の平均寿命というのが厚生省から発表されましたが、男子が七十三・七九歳で世界一、女子が七九・一三歳で世界第二位という長寿国になったわけでございます。これに老人医療無料化制度も大きく貢献をしてきたことは明らかだと思うわけでございます。今度のいま出されている修正案、原案を見ますと、これはもう明らかに無料化制度をつぶすということにしかならないと思うわけでございます。
 私はこの質疑の最終段階に当たって改めてお伺いをしておきたいんですが、一部負担をお年寄りに課すということについての御答弁ですね、政府の御見解、根拠というのが非常にはっきりしないという点がございます。無料制度を有料原則に変えていくということは、制度的には非常に大きな変更になるわけでございますので、国民にとって納得のできる理由を明確にするということがきわめて大事だと思うわけでございます。
 そこで、一部負担をお年寄りに課す理由について、大臣はたびたびお話しになりましたように、健康に対する自覚を持ってもらうという御意見をたびたび伺っておるわけでございますが、何かさっぱりようわからぬわけですね。これは大臣もわからぬと言うておられたようですけれども、そういう点で、大臣も何かようわからぬけれどもと、わからぬようなことになりますけれどもというのは、山田委員の御質問に対してもお答えになっておるわけですが、そういうことのままで重大な制度の変更をされるというのでは、これは国民は納得しないと思うんです。
 そこで改めて、最終段階でございますから、大臣に国民の納得できる根拠、理由ですね、これを明確にしておいていただきたいと思います。
#57
○国務大臣(森下元晴君) 現在の老人医療の無料化制度につきましては、老人の健康への自覚を弱めている、あるいは行き過ぎた受診を招きやすいという弊害も指摘されております。老人保健制度につきましては、老人の方々に健康への自覚を持っていただき、適切な受診をお願いするという観点から、実際にかかった費用のごく一部の負担をお願いすることとしたものでございます。また老人保健制度においては老人の方々の医療費は国民皆で公平に負担することとしており、この観点から、老人の方々にも無理のない範囲内で一部負担をしていただくことは、十分御納得いただけるものと思っておるわけであります。
#58
○沓脱タケ子君 これは御納得いただけるかどうかという問題は、すでにもう前回、前々回にも論議を申し上げたとおりでございますので、そうではなくて、国民に一部負担をさせることによって健康の自覚を持ってもらうなんというようなことがさっぱりわからぬし、負担があろうがなかろうが、国民というのは自分の健康について非常に留意をしているというのも、これは厚生省あるいは総理府等の調査で明らかにされているとおりでございまして、そこが中心ではないのではないかというところが、国民の非常に不安とするところになっているわけなんです。もう一遍その辺ははっきりさしておいていただきたいと思います。
#59
○国務大臣(森下元晴君) 別にほかに隠された意図というものはございません。見解の相違もございますけれども、先ほど私が申し上げましたように、健康に対する自覚を持っていただく、したがって費用の点ももうほんのごくわずかな負担をお願いするということでございますので、この点ひとつ御理解を、御納得をぜひいただきたい、このように思っておる次第であります。
#60
○沓脱タケ子君 一部負担に対する大臣のお考えというのは、やっぱり健康に対する自覚を高めるということが主たる理由、無理のない負担と、こうおっしゃるわけでございます。しかし国の財政の状況から見てどうなんだろうかということなんです。今日の国家財政というのは、大変厳しいということは実情でございます。しかし厳しい危機的状況にあることはそのとおりでございますけれども、これは片方では軍備拡大はちゃんとやっていっているわけですね。先日も国防会議の決定がありました五六中業を見てまいりますと、一機百十五億円のP3Cが五十機、一機百十億もするF15は七十五機、これをアメリカから買うというわけでしょう。
 そこで、ちょっとお聞きをしたいんですが、御負担にならない程度の一部負担と、こうおっしゃるんですが、お年寄りから集めるという一部負担金の徴収金額は、五十七年度満年度として四百八十億でございますね。その中で一部負担金を負担してもらうことによって国庫負担の減少というのは百二十億ぐらいでしょう。違いますか、吉原さん。
#61
○政府委員(吉原健二君) 御質問の趣旨がよくわからない点があるんですが、一部負担の趣旨は……。
#62
○沓脱タケ子君 何でわからぬ。いやいや、わからぬのやったら、時間ないからもう一遍言い直そう。
 お年寄りの一部負担金を徴収すると、今度の制度で。そういうことで、五十七年度の満年度になると四百八十億ですよ、おたくの方から出ている資料によりますと。その四百八十億のうち、それによって国庫負担の減少をする分というのは百二十億程度でしょうと言って聞いているんです。確認をしている。
#63
○政府委員(吉原健二君) 新制度の創設によりまして、新制度の一部負担の金額は四百八十億でございますけれども、現行制度と比べました場合の一部負担の増加額というのは、百二十億程度でございまして、国のそれによる負担すべきであった金額というのは、百二十億の約四割相当額ということになるわけでございます。
#64
○沓脱タケ子君 だから、百二十億の四割相当額――それはいままでの話とちょっと違うな、また計算間違うたか。そんなこと時間とられたら困るんですが、まあ百二十億まるまるであったとしても、一部負担金を集めることによって、国庫負担の減少分ですね、まるまる減ったとして考えたって、まあ百億でもよろしいが、約百億の国庫負担を減らすために片方でお年寄りから新たに百二十億は集めるわけでしょう。百二十億というお金は国民にとっては相当な巨額ですよ。
 ところが実際には、国の施策の中で言えばP3C一機分なんです。これでは大臣、財政が厳しいからとか、あるいは健康の自覚を増進してもらうだとか言うてみたところで、国民の目から言うたらどう思いますか、納得できますか。P3Cは百十億ですわ、それを五十機買うんでしょう。お年寄りから新たに一部負担金を百二十億余分に集めるんですよね。P3C一機分で片つくじゃないかということになるのは、国民のこれは常識ですよ。そう思いませんか、大臣。
#65
○国務大臣(森下元晴君) そういうふうにお考えの一部の方もあると思いますけれども、防衛のことは防衛といたしまして、私どもはひたすら福祉が後退しないように全力を挙げておるわけでございまして、その点比較して云々するということは避けたいと思っております。とにかく全力を挙げて福祉が後退しないように一生懸命やっていきたい。また老人保健法におきましても、老人の福祉のためにも全力を挙げてまいりたいと、このように思っておるわけであります。
#66
○沓脱タケ子君 それは防衛のことは防衛に任しておくということでしょうが、しかし内閣といったら一体のものでしょう。厚生大臣といえども国務大臣なんですよ。防衛は防衛庁長官がやっているんだから知りませんでは済まないわけてすが、国民から納得のいく姿での改正というのが必要なんだ。
 私、時間を節約をしたので冒頭抜きましたけれども、国民がこれほど喜んでおり、しかも日本の国民が世界一、二の長寿国にまで貢献をしてきた今度のすぐれた制度を、これはりっぱなものに充実をすることこそが大事であって、改悪をするべきではないというふうに考えているんです。これは繰り返し申し上げてきておるわけですが、そういう点で、一機百億を超える軍用機というのはじゃんじゃん買えるんだけれども、乏しいお年寄りのふところから百二十億の一部負担金を取るというふうな制度の改悪というのが納得できないと思うのは、これは理の当然なんです。国民がそう思っても、これはあたりまえなんですが、そういうことになるような制度というのはやっぱりやめるべきだと思うんですが、大臣いかがです。
#67
○国務大臣(森下元晴君) P3Cを買うために福祉予算を削るということは、少し飛躍された御意見だと思うんです。ただ私は、国防に関する考え方、安全保障に対する考え方、いろいろございまして、国民がこの国を信ずるに足る、守るに足る、そのためにも福祉ということが大事でございます。社会保障制度が平等しかも公平に行われております。そして安心感、また安全感というものが国民をしてこの国を守るに足る国である、これが私は国を守る基本であると思います。
 そういう意味で、いまいろいろ御意見ございました、福祉は大事であると。兵器を買うために福祉を切り捨てる、またその犠牲になるということについては私もよくわかると思うんですが、ただ、P3Cを買うために老人医療の有料化をしたんだ、一部負担をさしたんだという考え方には私は同調はできません。しかし、基本的な考え方については、国家安全保障というものは決して武装、いわゆる武器をたくさん持つということがすべてではない、むしろそれよりも国民の防衛に対する考え方、また福祉に対する考え方、そういうことが基本である、こういう信念は私は持っております。
#68
○沓脱タケ子君 時間が余りありませんので、その点については、これは私はたまたまP3Cは実例として、一部負担金の、原案でいけば、新たにお年寄りのふところから集めるという金額が百二十億、だからたまたまP3Cを引例をしただけなんですよ。国民の生活を犠牲にして、軍拡路線を象徴するような形で老人医療の有料化というのが改悪をされるというふうなことは、国民は納得できないんだということを申し上げておきたいわけです。
 特に、私は国民の皆さん方が心配をしておられる点がもう一つあると思いますのは、老人医療の一部負担金を導入するということが、それにとどまらずに、医療費の自己負担を強化するという方向、こういうことになるのではないかということが非常に心配をされているわけでございます。財界の意向を受けて臨調が経費医療の患者負担をすでに打ち出しておりますし、本委員会でも参考人質疑の中でもはっきり出てきておりますけれども、厚生省はこの対応についてはどういうふうにお考えになっておるのか、改めてお聞きをしておきたいと思います。
#69
○国務大臣(森下元晴君) 臨調答申にも示されている、この「高額な医療については適切に保障をする一方、軽費な医療については受益者負担を求める」という考え方は、今後の医療保険制度のあり方に関し、保険給付と患者負担はいかにあるべきかという制度の根幹に係る重要な問題でありますので、慎重に検討しなければならないと考えておるわけでございます。
    ―――――――――――――
#70
○委員長(目黒今朝次郎君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、竹内潔君が委員を辞任され、その補欠として藤井孝男君が選任されました。
    ―――――――――――――
#71
○沓脱タケ子君 慎重に対処しなければならないとおっしゃっておられるんですが、老人保健法の次は健保本人の一部負担のアップだということはすでに臨調でも言われておるし、あるいは社会保障長期展望懇談会の提言も同趣旨のことを言われておりますが、これについて厚生省はすでに準備を始めているのではないんですか。
#72
○政府委員(大和田潔君) ただいま大臣も御答弁いたしましたように、この問題につきましては慎重に検討しなければならぬ、こういうような問題でございますので、私どもいろいろな御意見、これは臨調の御意見、あるいはただいま先生おっしゃいましたような長期懇の御意見等を踏まえまして、なお慎重に検討した上結論を出すという性格のものではないかというふうに考えておるわけであります。
#73
○沓脱タケ子君 慎重に検討をしていると言うわけなんですが、すでに大臣、こういうことがあるんですよ。石野事務次官が、自己負担、現在八百円の初診料ですね、これが千四百円か千五百円が妥当だということを公言していることを御存じですか。
#74
○政府委員(大和田潔君) 一部の雑誌に、これは個人的な見解であるということで言っておることは存じております。
#75
○沓脱タケ子君 おっしゃるとおりで、「クリニックマガジン」の七月号ですね、これに書いてありますね。どない書いてあるかちょっと読みましょうか。「必要な時に医者に行くという時の初診料はいくらぐらいが妥当だと思いますか。」ということの問いかけに対して、石野事務次官は、「個人的意見を言わせてもらえば、千四百円から千五百円ぐらいではないですかね。」ということを言っておられるんですね。厚生省が慎重に検討するというふうに言っておられる段階で、すでに千四百円、千五百円というふうなことを、金額を言っておられるという点は、きわめて私は重要だと思うんですね。単なる一課長が言っているとかいうんじゃなくて、事務次官というのは、これはもう事務段階の最高責任者でしょう。その方がそういうことを言っておられるということは、現実に内部では厚生省でそのことが検討されているんではないんですか。
#76
○政府委員(大和田潔君) この問題につきましては、それはそれぞれ個人個人に、これは私もそうでございますが、それぞれの人がそれぞれこれぐらいがいいんではないかということは、それぞれ意見があろうかと思います。ただ、それが厚生省の見解として、厚生省の方針ということでこれが発表されますには、省の意思統一といいますか、意思決定というものがあって初めて、これが省の意見として出てくるわけでありますが、それぞれ私どもは個人的にはこうしたらいい、ああしたらいいというような見解を持っておる。それがたまたまこの雑誌におきまして事務次官が、個人的な見解ということをはっきり断って、そういう意見を述べておるわけでございまして、これは決して省の意見としてまとまっているものではない。これは先ほど申し上げたとおりであります。
#77
○委員長(目黒今朝次郎君) 沓脱君、時間が来ましたから……。
#78
○沓脱タケ子君 最後に申し上げておきますが、大臣、そういったことがすでに論議をされ、臨調の部会報告でも言われ、あるいは本委員会の中の審議を通じても、健康保険の本人についても、一部負担金を増高させていくという向きの話が出ているわけですけれども、国民が一番心配しておりますのは、老人医療の一部負担の導入によって、この次は国民全体にかかる国民医療の負担増、あるいは健康保険法の改悪という形で、国民に負担増が強いられるのではないかという点が、最大のこれは心配になっているわけです。そういった点で、そういうことにならないようにひとつきちんと大臣の御見解をまとめてお伺いをしておきまして、修正案についての若干の質問をしたいと思いましたけれども、時間がありませんので、終わりたいと思います。
#79
○国務大臣(森下元晴君) 沓脱委員のおっしゃるように、必要以上に社会福祉に対する財政難を理由にして圧迫されないように、また負担増にならないように、厚生省としても考えておりますし、また給付と負担という将来の展望を考えました場合でも、よく納得していただく線で私どもは全力を挙げてまいりたい。臨調等の内容を見ましても、軽費医療の問題云々書いてございますけれども、また内容的には、本人と家族間の格差の問題を云々というようなことも実は書いてございまして、すべてこの臨調の内容は大きく負担をかけなさいというようなことではございませんので、そういうことも含めて検討をさしていただく。趣旨はよく私もわかるわけでございまして、趣旨を生かしまして、今後の福祉行政、厚生行政に全力を挙げたいということを申し上げたいと思います。
#80
○委員長(目黒今朝次郎君) 以上で本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#81
○委員長(目黒今朝次郎君) 御異議ないと認めます。
 本案に対し、遠藤君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容は、お手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案を議題とし、遠藤君から趣旨説明を聴取いたします。遠藤君。
#82
○遠藤政夫君 ただいま議題になりました老人保健法案に対する修正案につきまして、自由民主党・自由国民会議、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、第一に、この法律による老人保健制度の実施に伴う保険者の負担増が著しく大きなものとならないよう、次年度以降の保険者の拠出金の加入者按分率は、老人人口の増加率を限度として二分の一以下の範囲内で毎年度政令で定める率とし、この法律施行後三年以内を目途として見直すこととするものであります。
 なお、この加入者按分率を政令で定めるに当たっては、厚生大臣はあらかじめ老人保健審議会の意見を聞くことといたしております。
 第二に、被用者保険本人の入院時一部負担金については、健康保険法による負担額一万五千円を限度とすることであります。
 その他、保険者の拠出金等について所要の修正を行うことといたしております。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#83
○委員長(目黒今朝次郎君) 遠藤君提出の修正案は予算を伴うものでありますから、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。森下厚生大臣。
#84
○国務大臣(森下元晴君) 政府といたしましては、やむを得ないものと考えます。
#85
○委員長(目黒今朝次郎君) 本修正案に対して質疑のある方は順次発言をお願いいたします。
 別に発言がないようですから、これより原案並びに修正案に対して討論に入ります。
 御意見のある方は順次賛否を明らかにして御意見をお述べ願いたいと存じます。
#86
○本岡昭次君 私は、日本社会党を代表し、ただいま討論に付されました老人保健法案及びその修正案について、そのいずれにも反対する立場から、以下その理由を簡潔に申し述べたいと思います。
 新制度の創設に当たり、わが党は二つの基本目標を立てました。その第一は、成人病、慢性病の予防と治療に確実な効力を持つ制度ということであり、私たちはこれを薬剤依存から生活療法へという言い方をしているところであります。第二は、お年寄りの健康を支える地域の総合的な条件整備について、この際行政責任の所在を明確にするとともに、これに関連する市町村の権限及び実行力を強化拡大することであります。
 この基本目標に沿って、わが党は、老人保健法案の修正及び関連法の改正に関する方針を立て、政府・自民党に改善を迫ってまいりましたが、それは次の十項目であります。すなわち、支払い方式の見直し、主治医制度の創設、老人保険料の歯どめ設定、医療法の改正、施設及びマンパワーの確保、健康手帳の徹底的な活用、一部負担の解消、退職者継続医療との接続、公費負担医療の優先適用、施行期日の変更、以上の十項目であります。
 これに対して、政府・自民党が譲歩したのは、先ほど提案された修正案及び確認答弁に尽きるわけでありますが、この程度の内容で、一般国民がどうして納得できるでしょうか。私は、実に暗たんたる気持ちがいたします。
 たとえば、この法律が施行されると、治りにくい慢性病を薬づけ、検査づけにするようなことがなくなると言えるでしょうか。かかりつけの医師が、患者の食生活を初め、日常生活の全般にわたってアドバイスし、患者の体質を変えていくための取り組みをしやすくしない限り、これはなくならないのであります。つまり主治医制度の確立、生活指導料の新設、点数出来高払い方式の改定などがまことに急務であり、それが新制度発足の前提条件なのであります。
 また、この制度が発足すると、平年度、政管健保百七十億円、組合健保七百八十億円、共済組合二百十億円程度と言われる新たな拠出が義務づけられますが、それを主たる財源として行われる市町村の老人保健事業は、拠出した側の職域から見て、果たして信頼できる、拠出しがいのある状態になるのでしょうか。地域中核病院及び保健所を中心とする医療供給システムの整備や、在宅患者に対する訪問サービスの徹底がない限りこれはとうてい不可能と言わねばなりません。
 このように本案の趣旨は不可解きわまるものでありますが、これによって、各保険に対する国庫補助金は来年度、現行よりも千八百四十億円の減少が見込まれており、立案の意図はずばりここにあると考えないわけにはまいりません。
 なお、修正案における入院時一部負担の限度額一万五千円についてであります。被用者健保本人のみを対象にしたことは著しく公正を欠くものであり、大多数の国保加入者及び被用者健保の家族たる老人を差別する結果となることを強く指摘しておきたいと思います。
 つまり政府は、患者及び保険料負担の増大によって国庫支出の軽減と受診の抑制をねらっているのであります。しかも、このことが国民医療費の肥大化対策として本来講ずべき施策、たとえば生活療法の確立と重複診療の防止、点数出来高払い制度及び薬価制度の抜本的な改革、医師及び医療機関の適正配置と重複投資の防止などを後回しにする口実として利用されようとしているのであります。
 要するに、本案は実効を期待できないばかりでなく、現在急務となっている医療の改革をさらに遠いところに押しやるという逆効果さえ予想されるのであります。また、この程度の修正案によっては、基本的な事態に何らの変更も期待できないことが明白であります。
 以上が両案に反対するわが社会党の主な理由であります。終わります。
#87
○佐々木満君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表しまして、ただいま議題となっております老人保健法案及びこれに対してただいま遠藤君から提出されました修正案につきまして、修正案及び修正案を除く原案に賛成の意を表するものであります。
 まず、わが国においては、本格的な高齢化社会の到来を控え、予防から治療、リハビリテーションに至る総合的な保健対策の確立が急務となっておることは御承知のとおりであります。今回の老人保健法案はまさにこのような要請にこたえて、国民の自助と連帯の精神に基づき、壮年期からの疾病予防、健康管理を推進することによって健康な老人づくりを目指すとともに、老人医療費の負担の公平を図ろうとするものでありまして、この法案のねらいはまことに適切なものであり、高く評価すべきものと考えます。
 しかしながら、本委員会における審議におきましても明らかになったところでありますが、老人医療費の増加に伴って保険者の負担が際限なく増加することは問題であり、これに対して何らかの歯どめを設けることが必要であると考えられるのであります。
 このような観点から、この制度の実施に伴う保険者の負担増が著しく大きくならないよう、次年度以降の保険者拠出金の加入者按分率につきまして毎年度二分の一以下の範囲内で老人人口の増加率等を勘案して政令で定める率とし、この法律の施行後三年以内を目途として見直すことにしたほか、被用者保険本人の入院時一部負担金につきまして、健康保険法による負担額一万五千円を限度とすること等を主な内容とする修正案が提出されたものと理解するものでありまして、私は、このように修正されることによってこの法律の円滑な実施がさらに図られるものと確信いたすものでございます。
 最後に、私は、この法律の目的が有効に達成されるためには、それぞれの地域で関係団体、関係機関が連携を一層密にしていくことが必要であると存じますが、同時に医療費の適正化対策、老人の特性を踏まえた適切な診療報酬の制定、保健婦の増員、その他保健事業の実施体制の整備が計画的に進められることが必要であると思います。
 政府におかれては、これらの課題に真剣に取り組み、最大限の努力を傾注されることを強く要請をいたしまして、修正案及び修正部分を除く原案に対して重ねて賛意を表しまして、討論を終わります。
#88
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、老人保健法案並びに修正案に反対の討論を行います。
 老人や子供、障害を持った人などはもちろんのことです、すべての国民が安心して暮らせる平和な社会の実現、これこそが政治の基本的な目標であります。
 昭和四十八年、老人医療費無料化制度が国の制度として実施されたとき、戦中、戦後を苦労してこられたお年寄りたちは、初めて政治の温かさを感じられたのであります。国民もこぞってこの制度発足を支持しました。
 したがって、老人保健制度は、国民がつくり上げてきたこの老人医療無料化原則の上に立って拡充、発展をさせるべきものであります。
 具体的に言えば、無料化原則を堅持すること、老人医療費の主な財源となる被用者保険からの拠出金は、老人たちの多くがかつては企業発展に協力をした労働者であった事実から、大企業の社会的責任として当然大企業がより多くの負担をすべきこと、また疾病の予防や保健制度の抜本的な強化などが強く求められてきたところであります。
 ところが、本法案は、財界と臨調が国民に押し
 つけようとしている社会保障切り捨て路線の第一歩となっています。国の老人福祉対策の中でお年寄りが政治に期待してきた唯一の温かさは、本法案により影を差す、悲しむべき結果となるのであります。
 以下、反対の理由を具体的に申し上げます。
 反対理由の第一は、本法案第二条の基本理念に「自助と連帯」という美辞を使いつつ、その本音は自分の健康は自分で守れ、国にたかるなという、財界と大企業の御都合理論をそのまま持ち込んでいる点であり、絶対に許すことはできません。これはわが国社会保障法体系の重大な後退のモニュメントとなるでありましょう。
 第二の反対理由は、老人医療費は、社会全体の責任から言っても無料化が継続されるべきであります。それにもかかわらず、本法案は老人本人からも一部負担金を取る有料制度となり、制度の基本的改悪を図るものであります。また、この一部負担金導入は、審議の中でも明らかになったように、受診抑制のねらいのほか、何ら根拠もないのに強行されるものであります。
 その三は、老人医療費の負担につき、本法案は臨調路線に基づいて、国の負担は減らしながら、老人本人、労働者と中小企業を含む事業主、自治体の負担を大幅にふやすこと、結局、国民負担に転嫁している点であります。
 私は、反対理由の最後に、政府が本法案の施行を機に、自治体単独の老人医療上積み措置の中止を強要しようと意図しているが、これは地方自治への重大な干渉であり、住民福祉の切り下げ強要として絶対に認めることはできないことを明言しておきます。
 なお、本法案は、一部の修正がなされましたが、この修正は、財界の要求に屈し、大企業の社会的責任を免除するもので、賛成はできません。
 以上の理由により、本法案に反対するとともに、その撤回を求めて私の反対討論を終わります。
#89
○渡部通子君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました老人保健法案につきまして、修正案並びに修正を除く原案に対し、賛成の立場で討論を行います。
 本格的な高齢化社会の到来に備えて、高齢者の医療、所得をいかに保障していくかは、当面解決の迫られている社会保障の大きな課題でございます。
 わが国の医療は、今日までともすると治療中心に偏しているといった批判がございました。国民すべての願いである健やかに老いるためには、若いときからの予防、保健にこそ力を入れるべきであり、また不幸にして罹病した場合の施療はもちろんのこと、治療からさらに予後のリハビリテーションへと一貫した保健治療システムが必須であることは論をまたないところでございます。また、国民医療費の増高する中で、老人医療費を国民連帯の中でいかに公平に負担していくかは、今日の財政窮迫のもとで国民全体で考えていかねばならない大きな問題となっております。
 本法律案並びに修正案は、まだまだ困難な問題はたくさん抱えておりますものの、次の理由でこういった難問に一歩解決への方途を示そうとしたものであると評価いたします。
 第一に、この老人保健構想は、壮年期から健康づくり、健康診断、訪問指導などの総合的な保健対策を推進することにより、だれもが健康な老後を迎えることができるような体制づくりを目指したものであり、本法案はその出発点となるべきものであります。
 第二に、老人の医療費を医療保険の各保険者が共同で持ち寄ることにより、国民みんなで公平に負担するという方向、すなわち高齢化社会における不可欠要件としての相互扶助、連帯を示すものとして評価いたします。
 第三に、とかく問題の多い医療のあり方、特に老人の特性に見合った医療を目指すため、診療方針、診療報酬の再検討が約束されていることでございます。
 さらに、衆議院の修正に加え、各界から問題視されておりました拠出金の限度がない点に歯どめ措置を講じられたこと、また入院の一部負担について、患者の負担を軽減するため健保本人については一万五千円を限度として実質減額したこと等の再修正、さらにまた実施時期については、準備期間を設けるという観点から、今日より六カ月後の来年二月一日と約束されていること等、国民の要望を盛り込んでいることは高齢化社会における諸問題の一つの解決に向かうもので、評価できると考えます。
 以上、簡潔に賛成の理由を申し述べ、賛成討論といたします。
#90
○柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております老人保健法案について、修正案並びに修正部分を除く原案に対し、賛成の討論を行います。
 その第一の理由は、本法案の目的と基本的理念で示されているように、国民の自助と連帯の精神に基でき、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、ややもすると治療の保障に偏重していた現行制度を改めて、予防から治療、リハビリテーションに至るまでの一貫した各種保健事業を総合的に行うとともに、それに必要な費用は国民が公平に負担することをしようとしており、その趣旨を評価するからであります。
 第二は、政府原案の内容中、問題のあった診療報酬や一部負担の導入、あるいは各保険者の拠出金などの諸点について、第九十五回国会の衆議院において修正が行われ、老人保健法による診療方針及び診療報酬については中央社会保険医療協議会の意見を聞いて定めることとされ、一部負担については、外来時一部負担金が五百円から四百円に、入院時一部負担の徴収期間が四カ月から二カ月に縮減されるとともに、低所得者に対する減免措置が講ぜられ、さらに拠出金については、保険者拠出金に係る医療費の額と加入者の総数による按分率が、政令で定める率から二分の一として法定されることとなりました。
 それに加えて、本院においても、実施時期を昭和五十八年二月一日よりとし、診療報酬の審議に当たる中央社会保険医療協議会の審議期間を相当程度確保するとともに、専門委員の任命など、その円滑かつ適切な審議が行われる配慮について確認が得られたこと、保険者拠出金の加入者按分率について、老人保健審議会の意見を聞き、かつ老人人口の増加率の範囲内で政令で定める歯どめ措置がとられたこと、高額医療費や概算医療拠出金について激変緩和措置が実現したこと、入院時一部負担について被用者保険本人との調整が行われたこと、健保連が行う共同事業の対象に拠出金を加えるなど所要の修正が行われたこと、医療法改正の早期実現、保健事業の計画的整備充実、保険外負担の早期解消、レセプト審査の改善等医療費のむだの排除についての善処が確約されたこと、などがなされており、私どもの主張が相当程度取り入れられ、その内容が前進を見たからであります。
 しかしながら、本法案によって問題がすべて解決されたわけではありません。施策が生かされるかどうかは今後の運用いかんにかかっております。本法に関連する医療供給体制の整備、診療報酬の適正化を初めとする医療費適正化対策等が推進される必要があります。
 また、本法案の最大のメリットである保健事業の目的を達成するために、保健事業のシステム化を図り、保健婦、リハビリ要員等マンパワーの確保、保健所の機能強化と保健医療施設の整備拡充、在宅ケア、特別養護老人ホームなど関連福祉施策との連携、これらの財政的裏づけについて万全を期すことを政府に要求します。
 最後に、本制度の診療報酬を基本的に検討することは重要な課題となっていることにかんがみ、中央社会保険医療協議会における円滑な運営が行われるよう今後公益委員の増員や、専門委員の充実を要望し、あわせて、再三にわたり政府が今国会に提出を約束し、今回の審議においても同僚委員が問題とした医療法の改正を可及的速やかに行うことを要求し、あわせて、追って提案されるであろう附帯決議を政府が誠実に履行することを要望して、賛成の討論を終わります。
#91
○委員長(目黒今朝次郎君) 以上で討論は終局いたしました。
 これより老人保健法案について採決に入ります。
 まず、遠藤君提出の修正案を問題に供します。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#92
○委員長(目黒今朝次郎君) 多数と認めます。よって、遠藤君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手をお願いいたします。
   〔賛成者挙手〕
#93
○委員長(目黒今朝次郎君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 この際、安恒君から発言を求められておりますから、これを許します。安恒君。
#94
○安恒良一君 私は、ただいま可決されました老人保健法案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会各派共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    老人保健法案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について速やかに適切な措置を講ずべきである。
 一、老人医療についての診療方針及び診療報酬は、老人の心身の特性を踏まえて改善を図るものとすること。
 二、差額ベッド、付添看護等の保険外負担を早急に解消するよう努めること。特に私立大学附属病院における不当な差額ベッドの解消を中心として行政指導の徹底を図ること。
 三、薬価基準の適正化、医療機関に対する指導、監査の徹底、医療費通知制度の普及、高額医療機器の共同利用等の施策を積極的に推進することにより、医療費の無駄を排除し、その適正化を図ること。
 四、レセプト審査の改善充実を図るため、社会保険診療報酬支払基金の審査委員、職員の増員を図るとともに、コンピューターを活用した統計的審査方式の積極的導入を図ること。
 五、老人保健事業の円滑な実施を図るため、市町村に地域の関係者からなる連絡協議組織を設けるよう指導すること。
 六、老人保健法に基づく歯科の保健事業の確立、特に歯槽膿漏等に対する歯科健診の導入に努めること。
 七、老人医療におけるはり、きゆう、マツサージの取扱いについては、その需要にこたえられるよう特段の配慮をすること。
 八、痴呆を主とした老人の精神障害に対応するための施設の整備を行うとともに、老人精神障害対策に関する専門的な調査研究を進める等総合的な対策を講ずること。
 九、多数の原爆被爆者を抱えているため新たに相当の医療費負担が発生する地方公共団体については、その実情を踏まえ、適切かつ十分な財政措置を講ずること。
 十、退職者医療については、本格的な制度の実施に向けて、このため本年秋頃を目途に社会保険審議会に諮ること。
 十一、老人の保健医療と密接な関連を有する年金、福祉サービス、雇用、住宅等に係る老人福祉対策の一層の充実を図るとともに、老人問題に関する総合的な研究体制の整備について検討すること。
  右決議する。
 以上でございます。
#95
○委員長(目黒今朝次郎君) ただいま安恒君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#96
○委員長(目黒今朝次郎君) 多数と認めます。よって、本附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、森下厚生大臣から発言を求められておりますから、これを許します。森下厚生大臣。
#97
○国務大臣(森下元晴君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。
#98
○委員長(目黒今朝次郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#99
○委員長(目黒今朝次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 ただいまから休憩に入ります。
 午後の部は十二時三十分開会といたします。御協力をお願いします。
   午前十一時四十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後零時三十四分開会
#100
○委員長(目黒今朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、国民年金法等の一部を改正する法律案、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。
 まず、右三案について、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。森下厚生大臣。
#101
○国務大臣(森下元晴君) ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 戦傷病者、戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、年金の支給を初め各種の援護措置を講じ、福祉の増進に努めてきたところでありますが、今回、年金等の支給額を引き上げるほか、戦没者の妻及び父母等並びに戦傷病者等の妻に対する特別給付金の支給対象範囲を拡大するなどの改善を図ることとし、関係の法律を改正しようとするものであります。
 以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。これは、障害年金、遺族年金等の額を恩給法の改正に準じて引き上げるものであります。
 第二は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正であります。これは、未帰還者の留守家族に支給される留守家族手当の月額を遺族年金に準じて引き上げるものであります。
 第三は、戦没者等の妻に対する特別給付金支給法、戦没者の父母等に対する特別給付金支給法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、昭和五十六年の遺族援護法の改正により、遺族給与金を受ける権利を有するに至った戦没者の妻及び父母等並びに障害年金等を受けるに至った戦傷病者等の妻に対し、それぞれ特別給付金を支給することとするものであります。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
 国民年金法等の一部を改正する法律案提案理由の説明を申し述べます。
 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 所得保障の中心である年金制度を初め、母子家庭、心身障害者に係る諸手当の制度については、従来から充実に努めてきたところでありますが、国家財政の再建が課題とされている最近の厳しい財政状況のもとにあっても、老人、障害者等に対しては社会経済情勢の動向に対応した適切な配慮がなされる必要があります。
 今回の改正案は、このような趣旨にかんがみ、厚生年金等の拠出制年金について物価スライドの特例措置を講ずるとともに、福祉年金及び諸手当についてもこれに準じた給付の改善を行うこととし、これらの制度の充実を図ろうとするものであります。
 以下、改正案の内容について、概略を御説明申し上げます。第一に、厚生年金、船員保険及び拠出制国民年金の物価スライドの特例措置について申し上げます。
 現行の制度におきましては、消費者物価上昇率が五%を超えない場合には物価スライドは実施されないことになっておりますが、年金受給者を取り巻く諸状況を勘案し、昭和五十七年度において、昭和五十六年度の物価上昇率が五%を超えない場合であっても、特例としてその上昇率に応じた年金額の引き上げを実施することとしております。
 なお、この年金額の引き上げは、厚生年金及び船員保険については本年七月から、拠出制国民年金については本年八月から行うこととしております。
 第二に、福祉年金の額につきましては、昭和五十七年九月から、老齢福祉年金を月額二万四千円から二万五千百円に、障害福祉年金を一級障害については月額三万六千円から三万七千七百円に、二級障害については月額二万四千円から二万五千百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金を月額三万千二百円から三万二千七百円に、それぞれ引き上げることとしております。
 第三に、児童扶養手当等の額につきましては、福祉年金に準じて、本年九月から児童扶養手当の額を児童一人の場合月額三万千二百円から三万二千七百円に、特別児童扶養手当の額を障害児一人につき月額二万四千円から二万五千百円に、重度障害児一人につき月額三万六千円から三万七千七百円に、それぞれ引き上げるとともに、福祉手当についても月額一万円から一万五百五十円に引き上げることとしております。
 以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
 次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案提案理由を説明さしていただきます。
 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者については、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律により、健康診断及び医療の給付を行うとともに、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律により、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保健手当等の支給を行い、被爆者の健康の保持増進と生活の安定を図ってまいったところであります。
 本法律案は、被爆者の福祉の一層の向上を図るため、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律について改正を行おうとするものであります。
 以下、その内容について御説明申し上げます。
 まず第一は、医療特別手当の額の引き上げであります。医療特別手当は、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の状態にある旨の厚生大臣の認定を受けた被爆者であって、現に当該認定に係る負傷または疾病の状態にあるものに対して支給されるものでありますが、この医療特別手当の額を現行の月額九万八千円から十万二千四百円に引き上げるものであります。
 第二は、特別手当の額の引き上げであります。特別手当は、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の状態にある旨の厚生大臣の認定を受けた被爆者のうち、医療特別手当の支給を受けていないものに対して支給されるものでありますが、この特別手当の額を現行の月額三万六千円から三万七千七百円に引き上げるものであります。
 第三は、原子爆弾小頭症手当の額の引き上げであります。原子爆弾小頭症手当は、原子爆弾の放射能の影響による小頭症の患者に対して支給されるものでありますが、この原子爆弾小頭症手当の額を現行の月額三万三千六百円から三万五千百円に引き上げるものであります。
 第四は、健康管理手当の額の引き上げであります。健康管理手当は、造血機能障害等特定の障害を伴う疾病にかかっている被爆者であって、医療特別手当、特別手当または原子爆弾小頭症手当の支給を受けていないものに対して支給されるものでありますが、この健康管理手当の額を現行の月額二万四千円から二万五千百円に引き上げるものであります。
 第五は、保健手当の額の引き上げであります。保健手当は、爆心地から二キロメートルの区域内において直接被爆した者であって、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当または健康管理手当の支給を受けていない者に対して支給されるものでありますが、この保健手当の額を、一定の範囲の身体上の障害のある者並びに配偶者、子及び孫のいない七十歳以上の者であってその者と同居している者がいないものについては、現行の月額二万四千円から二万五千百円に引き上げ、それ以外の者については現行の月額一万二千円から一万二千六百円に引き上げるものであります。
 また、これらの改正の実施時期は昭和五十七年九月一日といたしております。
 以上がこの法律案を提案する理由及びその内容であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#102
○委員長(目黒今朝次郎君) 次に、公衆浴場法の一部を改正する法律案、市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る国の補助に関する法律案、戦時災害援護法案、右三案を一括して議題といたします。
 まず、右三案について、それぞれ発議者から順次趣旨説明を聴取いたします。安恒良一君。
#103
○安恒良一君 私は、公衆浴場法の一部を改正する法律案について提案の理由を説明したいと思います。
 私は、ただいま議題となりました公衆浴場法の
 一部を改正する法律案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ、第二院クラブ及び一の会を代表しまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 売春防止法制定より二十六年を経過した現在、政府公認の集娼制度は解体されたが、売春の形態は多様化し、潜在化して、第三者による女性の搾取は後を絶ちません。
 「国連婦人の十年」の起点であった一九七五年の国際婦人年メキシコ会議において、婦人の人格の尊厳及び肉体の不可侵が宣言され、人身売買及び売春の禁止が決議されています。また、一九七九年十二月、第三十四回国連総会において採択された婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約第六条においても「締約国はあらゆる形態の婦人の売買及び婦人の売春からの搾取を禁止するためのすべての立法を含む適当な措置をとる」と規定されているところであります。この条約は、一九八〇年七月コペンハーゲンでの国連主催の世界婦人会議においてわが国も署名をし、すでに九十九国が署名、締約をしております。そして、この条約は一九八一年九月に発効し、現在では、批准、加入国はすでに三十八カ国に及んでおりますので、わが国も批准を急がなければなりません。
 わが国においては売春防止法によって売春は禁止されているとはいえ、さまざまな売春の形態が存在し、社会環境は年少者の性的非行や少女売春を生み出す大きな要因となっています。また、暴力団や業者による売春の強要は外国女性(主としてアジアの各国)にも及んでおり、海外からの非難も浴びています。それらはしばしばトルコ風呂その他各種の接客業者の仲介や強制によるものであり、このまま放置しておくならば売春防止法はその意義を全く失うものとなりましょう。中でも、個室付浴場業の業態は売春の温床と化し、特殊浴場業の距離規制の悪用によって全国各地に集娼地域を発生させており、そこで役務を提供する女性に対して浴場業者は事実上の管理売春による搾取を行っています。またこれらの業者と結託するひも、暴力団などによる売春の強制、搾取など、女性の人権侵害は目に余るものがあります。
 ここに、売春防止法の効力を補完するための一助として、個室において異性による役務を提供させることを禁止し、売春の温床を多少とも取り除くことを目的とした、公衆浴場法の一部改正を提案するものであります。
 以上がこの法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#104
○委員長(目黒今朝次郎君) 次に、対馬孝且君。
#105
○対馬孝且君 私は、市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る国の補助に関する法律案の提案理由を説明申し上げます。
 ただいま議題となりました市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る国の補助に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 北海道等寒冷の地域の住民にとっては、暖房は生活を維持していく上で必要不可欠のものであり、他地域に比べて多量の燃料を必要としていますが、年々高騰する石油等の燃料費の支出は、寒冷地住民の生計を圧迫し、生活保護世帯に準じた低所得世帯にとっては、ゆゆしい問題となってきております。たとえば北海道における住民の石油等の暖房費の支出は、標準世帯で約二十三万円にも及び、なおこの騰勢は恒常化しつつあります。このような低所得世帯にあっては、これに何らかの援助の手を差し伸べなければ、冬期間は多数の世帯が生活保護を受けなければならないことにもなりかねない状況になってきております。
 また、行政当局においても、これら地域における生活の実情について調査を行い、その実態把握に努められているところであります。
 このような事態に対処して、一部寒冷地における地方公共団体は、母子世帯等に対し特別生活資の貸金付事業及び援助金等を支給する事業を行っております。
 しかし、現下の地方財政の実情では、地方公共団体が低所得世帯に対し、実のある暖房費の援助事業を継続して行うことは困難であり、当該地方公共団体は、これら事業に対する国の援助を強く要望しているところであります。
 そこで、市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業の円滑な実施を図るため、道県が当該事業につき補助する場合における当該補助に要する費用について国が補助する必要があります。これがこの法律案を提出する理由であります。
 以下、本案の内容を説明いたします。
 第一に、寒冷地世帯暖房費援助事業とは、寒冷地の低所得世帯に対し、当該世帯の暖房費に係る経済的負担の軽減を図るため、暖房費に係る援助金、灯油等の金品を支給しようとするもので、国庫補助の対象となるのは、寒冷度、世帯構成員数に応じて通常必要と認められる暖房費の三分の一に相当する額として、政令で定める額までの援助に限っております。なお、対象地域である寒冷地は、寒冷の度がはなはだしい地域を政令で定めることとし、対象世帯は、世帯構成員全員の所得合算額が政令で定める一定の額未満である世帯に限定するとともに、寒冷地手当受給者世帯、生活保護世帯、社会福祉施設入所世帯等を除いております。
 第二に、国庫補助は、道県が市町村に対し補助を行っている場合に限り、その補助に要する費用の三分の二を国庫補助するものとし、市町村事業費の二分の一相当額を限度額としております。
 なお、この法律は、公布の日から施行し、昭和五十七年九月一日以降の事業について適用することとしております。
 以上が、本案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いを申し上げまして、提案理由にかえます。
#106
○委員長(目黒今朝次郎君) 次に、本岡昭次君。
#107
○本岡昭次君 私は、ただいま議題となりました戦時災害援護法案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ、第二院クラブ及び一の会を代表いたしまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 すでに戦後三十六年を経て、あの忌まわしい戦争への記憶が一段と風化しつつある中で、なお戦争の傷跡が生活を圧迫し、生命と健康を失った多くの一般戦災者が、いまなお国から何らの援護を受けることなく、戦争犠牲者として、傷病苦と生活苦にあえぎながら、余命をつないでいる現実を放置することはできません。
 私は、これら戦災者の心情と、報われることなく高齢で亡くなられる方々の続出する日々に思いをいたすとき、援護の手が一刻も早く差し伸べられる必要を痛感せざるを得ないのであります。
 振り返ってみますと、さきの大戦では、原爆投下を含め、米軍の無差別爆撃はとどまることなく、銃後と思われていた非戦闘員と、その住居までも、一瞬にして戦場に変え、わが国全土にわたる諸都市を焼き払っていきました。
 昭和二十年四月十三日、状況窮迫せる場合に応ずる国民戦闘組織に関する閣議決定は、「新たなる兵役義務により、兵として動員し、統帥権下に服役せしめ得る必要な法的措置を講ずること」を決め、昭和二十年六月二十二日に、即時公布された義勇兵役法では、「国民義勇隊に参加せしむべきものは、老幼者、病弱者、妊産婦等を除くの外は、可及的広範に包含せしむるものを徴兵」し、いわゆる国民皆兵体制をつくり上げたことによっても、当時すでに平和な銃後は存在せず、戦場そのものとなっていたことは明白であります。
 これによる一般市民の死傷被害は、沖縄を除いても、優に八十万人を超え、罹災人口は実に一千万人を超すといわれています。
 中でも昭和二十年三月十日の東京大空襲は、わずか二時間余の爆撃によって、全都の四割が一瞬にして灰じんと化し、炎の中で約十万の都民の生命を奪いました。その惨情は、イギリスの一物理学者が、原子爆弾攻撃による荒廃化を除けば、いままでになされた空襲のうち最も惨害をほしいままにした空襲と指摘するほどでありました。
 昭和十七年二月二十四日に公布された戦時災害保護法では、昭和二十一年に廃止されるまでの間に十二万七千人の民間戦災者、傷害者、同遺族に対し、救済、補償もなされました。
 しかるに、政府は今日まで、戦争犠牲者対策を、軍人軍族及びその遺家族など、昭和五十七年三月末現在約十二万人に限定してきているのであります。
 法制定後、準軍属といわれる人々など、わずかな範囲の拡大はあったものの、銃後の犠牲者に対する援護の手は、基本的に皆無に等しいまま今日に至っているのであります。
 一方、今次大戦の同じ敗戦国である西ドイツでは、すでに昭和二十五年に、戦争犠牲者の援護に関する法律を制定し、公務傷病と同視すべき傷害の範囲をきわめて広範に規定したため、援護の手はあまねく一般市民にまで行き届き、その対象は、昭和五十二年六月末現在においても、実に二百十七万八千人にも上っています。
 わが国の戦争犠牲者対策は、原爆被爆者に対する特別措置は別として、あくまでも軍人軍属等に限定しようとするものであり、こうした政府の態度は、大戦の過ちを衷心から悔い改めようとする姿勢に欠けるばかりか、その態度のよってきたるところが、軍事優先の思想であるのではないかとの疑念さえうかがわせるものであります。
 戦後三十六年を経て、いまだに放置されたままの一般戦災者に対し、国の援護措置を望む国民の声は、戦災地域にとどまらず、それ以外の自治体から決議・意見書が多く寄せられている事実と共に、もはや一刻の猶予も許さないところにきています。本案は、このような国民の声を背景に、本案成立の日まで、いまだ戦後は終わらないとの確信をもって作成し、再び提案するものであります。
 次に、本案の要旨について、簡略に申し述べますと、さきの大戦で空襲その他の戦時災害によって身体に被害を受けた者及び死亡した者の遺族に対し、戦傷病者特別援護法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下それぞれ特別援護法、遺族援護法と言う)に規定する、軍人軍属等に対する援護と同様、国家補償の精神に基づく援護を行おうとするものであります。
 ただし、遺族に対する援護については、遺族年金にかえて、一時金たる遺族給付金百万円を支給することとしております。
 援護の種類別に申し上げますと、第一に、療養の給付、療養の手当一万九千三百円支給、及び葬祭費九万七千円を支給することであります。
 第二は、更生医療の給付は、補装具の支給及び修理、国立保養所への収容並びに日本国有鉄道への無償乗車等の取り扱いであります。
 第三は、障害年金または障害一時金を支給することであります。
 以上、支給要件、給付内容はすべて軍人軍属等におけると同様であります。
 第四は、遺族給付金、五年償還の記名国債として百万円の支給であります。一遺族の範囲は、死亡した者の父母、子、孫、祖父母で、死亡した者の死亡の当時、日本国籍を有し、かつその者によって生計を維持し、またはその者と生計をともにしていた者といたしております。
 第五は、弔慰金五万円の支給、遺族の範囲はおおむね軍人軍属等におけると同じであります。
 なお、この法律による援護の水準を、特別援護法または遺族援護法による軍人軍属に対する援護の水準と同じレベルにしたことに伴い、これらの法律による準軍属に対する援護で、なお軍人軍属に対する援護の水準に達していない者については、同一レベルに引き上げる措置を講ずることといたしました。
 最後に、施行期日は、公布の日から一年以内で政令で定める日といたしております。
 何とぞ、御審議の上、速やかに本案の成立を期せられんことをお願いいたしまして、提案理由の御説明を終わります。
#108
○委員長(目黒今朝次郎君) 右三案に対する自後の審査は後日に譲ります。
    ―――――――――――――
#109
○委員長(目黒今朝次郎君) 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、国民年金法等の一部を改正する法律案、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#110
○本岡昭次君 まず、私は、国民年金の一部改正の法律案問題につきまして質問を若干させていただきます。
 第一に、厚生大臣に年金制度の将来展望に関係する問題でお伺いをいたします。
 去る七月三十日、第二次臨時行政調査会の基本答申が出されて、その中に年金制度の改革、年金行政の一元化、またそのための改革のための手順等が提言されています。また、同じく七月十四日には、大蔵大臣の諮問機関である共済年金制度基本問題研究会が共済年金の一元化を答申いたしております。さらに、七月二十三日提出された社会保障長期展望懇談会も、厚生大臣に対して年金制度の一元化、給付水準と負担の限界、支給要件、給付体系の見直し等について提言を行っております。いずれも厚生大臣すでに御存じで、内容も検討されていることと思うんですが、現在わが国の年金制度のうち加入者の八割を占めている国民年金、厚生年金を所管している厚生大臣として、これら一連の年金制度に関する諸提案をどのように受けとめられているか。そしてまた、厚生省として、毎年この年金の問題はさまざまな角度からその検討が要望され、また各大臣も検討、改善を約束されてきておるわけですが、今後の具体的な政策にこうした提案を現時点でどのように反映していこうとされているのか、基本的なお考えをお聞かせ願いたい、このように思います。
#111
○国務大臣(森下元晴君) 社会保障制度の中で年金問題、医療保険の問題、福祉の問題、これは三本柱で、暮らしと健康を守る人間の基本的な生存の問題でもございます。特に高齢化社会にどんどんこれから入ってまいりますし、負担と給付の割合をここらあたりで見直しつつ、また同時に老後の保障について安心を持っていただかなくてはいけない。こういうようなことから、臨調でも共済研でも、また厚生大臣の諮問機関でございます長期懇からも答申が実は出されておりまして、将来の年金はいかにあるべきかというようなことで、私どもも非常に重大な問題として受けとめておるわけでございますけれども、今後の年金制度の改革を進めるに当たりましては、この年金制度が老後の所得保障の中核としての役割りを十分果たしていくことができるように、制度の長期的安定を図っていくことが重要であり、その際には、今回のこの社会保障長期展望懇談会や臨時行政調査会などの提言、答申などの御趣旨及びその内容を十分踏まえて取り組んでまいりたい、このように思っておるわけであります。
#112
○本岡昭次君 まず、いま三つのそれぞれ提言なり意見なり答申なりについての基本的なお考えを伺ったんですが、どうも余り抽象的過ぎまして理解ができないので、もう少し具体的に中身について質問をいたしてまいります。
 まず、臨調の答申でありますが、この臨調答申にある社会保障、特に年金制度の改革のねらいと内容をつぶさに読んでみた感じ、そして盛られている考え方、それと、厚生大臣の諮問機関である長期懇が提言している内容とその考え方、これは比べてみるとなかなかおもしろいものがあると私は思いました。大臣も、自分が諮問した長期懇が答申してきたその内容と、片や臨調というところで答申されたその内容は、双方比較する上において非常に当然関心を持っていただかなければならぬ、このように思うんですね。そういう意味で大臣、臨調の答申と長期懇の提言ですね、これをどういうふうに理解しておられますかお聞かせいただきたい。
#113
○国務大臣(森下元晴君) 私は、基本的にはそう変わらぬと思います。ただ、臨調の場合は大きな観点から大まかに大きな方向を出されておる、長期懇の方は非常に専門的に具体的に出されておるというふうな違いはありますけれども、その精神、またその方向というものは決して違っておらない、このように実は思っておりまして、いずれも将来展望、高齢化社会にどんどん入っていく過程、また将来において給付と負担をどういう割合に持っていくべきかということが盛られておるように思います。
 たとえば長期懇では、将来、給付的な考え方として、そのときの給料の大体六五%ぐらいをめどにするとか、それから負担の方も大体いろいろ合わせまして三九%ぐらいを目標にするとか、欧米先進国といわれる国々が過去たどってきた経緯、また現在日本よりも非常に成熟しておりますから、そういう国々が成功した例もございますし、またいろいろな悩みも現在持っておるようでございまして、そういうものも勘案しながら出されておるんじゃないか。それに日本の人口動態がどう変わっていくかということもかなり見通しもされておりまして、そういう面で、とにかくいまこの年金問題について明確にすることが、もう現に納めておられる方々、負担をされておる方々にとっても、将来の安心感のためにも、また安定感のためにも非常にいいことであるし、また現在のタイミングをそらすわけにいかないというようなことで、すべての考え方が今日に集約されてきたんだと、このように実は思っておるわけでございます。
 しかし、その中に流れておるのは自助努力、それから互助、自分でできることは自分でやろう、それから同時にまたお互いに助け合いをしていきましょう、それでどうしてもむずかしい、またできない問題は、国がそれを重点的にやっていきましょう、そういうような三つの方向から取り上げられておりまして、高度成長の時代と違った意味で、いわゆる老齢化、高齢化、低成長時代の福祉、また社会保障制度を明確に示されておるように私は実は思っておるわけであります。
#114
○本岡昭次君 いま大臣は、臨調は社会保障の問題、年金の問題だけでなく、国全体の行政改革、さらに国民の物の考え方までに及んでいる非常に大きな立場から年金を見ている、長期懇の方は専門的に見ているという違いはあっても、基本的に変わらないと思う、またその精神なりその方向性もそう違っていない、このようにおっしゃいました。
 しかし、私は、私の力でこの長期懇の提言と、それから臨調の基本答申とを読み比べましたところ、社会保障や年金制度の理念、考え方に基本的な違いがある、私はこのように読み取っています一それはぜひこの場で明らかにして、厚生大臣に、そうしたら両方とも同じだというふうな考え方でない考え方で今後臨調に対応していただきたい、こう思うからあえて申し上げます。
 それは、いま厚生大臣もおっしゃいましたけれども、福祉社会あるいは社会保障を考えていく基本的な条件として、臨調もそれから長期懇も、個人の自助努力、そして連帯と相互扶助、こうしたことが前面に強く出されていて、国の関与する公的保障というふうなものが後回しにされている、これは長期懇の方も臨調の方もそういう基調がある、そのことは私も認めます。しかし、それは私は賛成できません、反対なんです、この考え方は。だからといって長期懇もけしからぬ、臨調もけしからぬということじゃないわけです。しかし、そういう個人個人の努力でやりなさいとか、あるいは相互扶助、お互いに助け合いなさいとかいうことだけが前面に出て国の保障が後回しになっているという基調そのものは賛成できませんが、しかしその中にあっても、さすがに厚生大臣の諮問機関の長期懇だというところはあるんです。これは臨調と一味も二味も違う、やはりこれは国民の社会保障を受け持っている厚生大臣の諮問機関の長期懇だという部分があります。僕はそれをひとつ大事にしてもらいたいと思うんですね。
 それは、長期懇の方の社会保障に対する基本的な考え方の中にこういう文章があります。「社会保障推進の基本的考え方」ということの中の初めに、「社会保障制度の役割は、所得の再分配等を通じて、公平に国民生活の安定を図ることにある。」、こう書いてあって、その次に、「国民自らが租税と社会保険料負担により維持するものであるから、給付と負担を組み合わせて議論した上で、全面的に見直しを行い、国民の積極的参加の下に、社会保障の範囲と限界について合意を形成していくべきである。」、こういうふうに書いてあるんですね。ここのところが非常に重要だと、こう思うんです。
 すなわち、国の政治の民主的機能として富と所得の公平な再配分、これは国でしかできませんから、この公平な再配分による全国民連帯の助け合い、つまり公的保障制度の確立、このことを前提にして長期懇の方は年金制度の改善を訴えているということ。
 一方、臨調の答申の中にはそういう言葉は一言も見当たりません。臨調の精神というのは、要するに現在各年金間に不公平がある、不平等がある、不均衡がある、これを是正しなさい、そしてできるだけ国の財政が負担として多くかかわることを防いでいきなさいという考え方に尽きるわけなんです。とにかく公平に制度を組みかえろということであるわけなんです。
 私はこれから、厚生大臣、臨調の答申というものが出た中にあって年金問題が非常にクローズアップされていく状況下にあって、最低いま私が申し上げました長期懇の提言している基本的な考え方、これを大事にしてひとつ臨調に臨んでいただきたい。臨調は要するに財政再建というものが全面に出ていく、当然そうだと思います。しかし、厚生省の立場というのは社会保障の理念を踏まえ、そしてその理念を実現していく基本的な考え方の中に、ここにも述べておるように、富の再配分、所得の再配分、こうしたものを国の力によって民主的に行って、その国の力を裏づけとして社会保障をやっていくという、そこの点がしっかりと踏まえられて、臨調の答申の具体化の今後に臨んでいただきたいと私は強く考えるんですが、ひとつ厚生大臣のお考えを改めてお聞きしたいと思います。
#115
○国務大臣(森下元晴君) 臨調の方で、特に私がそういう面で社会保障また社会福祉に関係して一番感ずるのは、いわゆる「活力ある福祉社会」という言葉、二つの大きな柱の中で使われております。「活力ある福祉社会」という言葉の中にはいろんな意味が含まれておりまして、これは非常に抽象的な言葉でございますから、長期懇に比べてかなりそういう面では少しわかりにくいじゃないかと、私自身も実はそういう気がしておるわけです。その点長期懇は、いま御指摘のように、所得の再分配であるとか、社会的公正であるとか、またこの社会保障、社会福祉がうまくいくことによって国が繁栄するんだということまでも実は言っております。
 それともう一つは、社会保障が自主的また自由な活動による経済社会の発展を目標とする現在の自由主義国家を支える一つの基盤であるとも実は言っておるわけでございまして、そういう意味で臨調の内容とは見る方向が、最後のねらう方向は一緒にしても、山で言えば登る方向が違っておる、変わっておると言われても、私はそれは否定はいたしません。長期懇の方は、社会保障こそが国民に安定感、安心感を与えて、それが国の繁栄につながるんだというようなことを強く出しておることは私も同感でございます。
#116
○本岡昭次君 いまの大臣の答弁を聞きまして安心したんですが、そこで最近の新聞を見ますと、臨調の答申を受けた政府、そして総理が今後どのように取り組んでいくかという方針が新聞で報道されています。その中で年金問題がクローズアップをされているわけですね。そして、その年金問題は次のようにずっと書いてありました。
 年金問題を総合的に検討する年金調査会の設置や年金担当大臣を決めて、昭和五十八年度末まで――昭和五十八年度末というのは臨調の答申の中でして、これが首相の方針であると新聞の中には出ておりませんでしたが、言ってみれば、年金問題を総合的に検討する年金調査会をまず設置して、年金担当大臣が決まって、その設置された年金調査会に対して諮問をして、その答申を得て、昭和五十八年度末までに成案を得て、速やかにそれを実施しろと、こういうことではないかと、こう思うんです。
 そういう道筋の問題について、年金問題すべてが厚生省、厚生大臣の所管ではありませんけれども、年金問題の総元締めといってもこれは間違いないわけで、そういう立場から、こういう一つの進め方の問題ですね。それと、先ほど厚生大臣とやりとりを若干いたしましたその長期懇の提言というものが、一体どういうふうにそういうところで扱われるのか。
 せっかく長期懇が提言を出した。しかしまた年金調査会というものが設置されて、そこへまた年金担当大臣が諮問して、そこで何かのまた答申をもらって出していく。私は言ってみれば、厚生省なんというのはこの際ちょっと横にのいとれ、いままで厚生省が考えてきたことというのはもう意味がないんだというふうに受け取れて仕方がないんです。厚生省軽視というんですかね、その所管省である厚生省のいままでせっかく積み上げてきたものなんか一切無視してしまうというふうな、どうもそこのところが納得できないんですが、その手順に対する大臣の所見のようなもの、それから長期懇の提言というのは一体どう扱われることになるんですか、そこらを教えていただきたいと思います。
#117
○国務大臣(森下元晴君) 私は、年金問題は厚生省が主になってやるべき問題でございまして、これが大きな意味で内閣全般で取り上げられることは、これは悪いことではないと思います。それだけ関心が持たれたということでございますが、この年金大臣をまたどこかよそへ持っていかれるようなことになりますと実は困るわけでございますし、またわれわれも自信を持ってやってきたのが大変心配の種でございます。
 そこで、国鉄の問題と年金の問題が急にクローズアップされまして、そして内閣の方へ審議会をつくってここでやろうと。何か屋上屋のような感じを与えるような気もせぬことはございません。ただ、年金問題は、大蔵省にも総理府にも関係がございまして、厚生省だけではすべてを賄い切れない、また取り組めないという問題もございますけれども、私は中心は厚生省にある、また厚生大臣が長期懇のあの答申を受けまして、あの精神に沿ってやるべきであると、こういう強い信念も実は持っております。
 審議会云々の問題でございますが、まだ正式に煮詰まっておらないように聞いておりますし、一つの考え方として出されたわけでございますから、今後の問題として、私どもも年金問題につきましては厚生省が中心になってやりたい、またやるべきであるというようなことは主張していきたいと、このように思っておるわけであります。
#118
○本岡昭次君 蛇足になると思いますけれども、臨調の答申が出るのは七月末ということはもうはっきりしているわけで、厚生省としては、年金問題が具体的にその答申の内容に盛り込まれるということもわかっていたと思います。その段階で長期懇が一週間前に年金問題の提言を行った。臨調答申の一週間前に行ったというのは何か特別な意味のようなものがあるんですか。そこらはいかがです。
#119
○国務大臣(森下元晴君) 特に意図して早く発表したわけでもないし、臨調の方にも長期懇のメンバーと兼ねておる方もございまして、私は基本的な考え方はそう変わらぬと思いますから、ある程度のいろいろ意見の調整等があったんじゃないだろうかと、このようにも実は考えております。先にやっておかないとだめだということはないと思うわけなんです。
 ただ、いまちょっとお話がございましたが、この年金の一元化の問題、これはもう前から、官民格差があるとか官官格差があるというようなことは、数年前から実は言われてきておりまして、その一番初めにやるべきことが国鉄共済、これが一番内容的には危機に瀕しておる、これをどうにかして助けなくてはいけない、だから三公社で何とかすべきであるということで、厚生省所管外の総理府とか大蔵関係の方が、むしろそういう面では先に進んでおるということでもございますし、将来は国民年金、厚生年金、大きく大別してここらあたりの調整に入っていくと思うんですが、これはかなり先の話だと私は思うんです。
 そういう経過もございまして、臨調でもそれを大きく取り上げておりますし、また長期懇の方はむしろそういう問題とは違った面で取り上げておりますから、そこらが多少、読んだ場合に、長期懇を先に出しておく方が厚生省のために都合がいいんだというふうに考えられる節があるかもわかりませんけれども、別にそういう意図を持って早く出されたことはまずないと、このように私は思っております。
#120
○本岡昭次君 いま共済年金の一元化の問題も触れられましたが、共済年金制度基本問題研究会のこの「意見」、私もずっとこれを読ましていただきました、全部。人ごとでない、対岸の火事として見るわけにはいかないということで、厚生年金も昭和八十年には危険ラインを突破していくということですね。保険料率、本人一〇%から一二・五%というそこの危険ラインを突破していくということが出ておりますし、厚生大臣の直接の所管ではありませんが、ここで国鉄共済を救済するために公企体共済と国家公務員共済ですか、とのまず全体的な合併をやれというふうなことがあって、その中で厚生年金との合併統合問題もずっと検討されていますね、この文章を読みますと。
 そこで、直接所管ではありませんけれども、国鉄共済の救済という問題、臨調に出ておりますけれども、これをどういうふうにお考えになりますか、一元化問題について。差し支えなければひとつ御意見を伺いたいと思います。
#121
○国務大臣(森下元晴君) 他の所管に余り及ぶとどうかと思いますけれども、しかしこれは対岸の火災でないわけでございまして、いずれは厚生年金、また国民年金、これが八割以上を占めておりますし、厚生省としても関心を持たなくてはいけない大問題でございますから、あえて申し上げますけれども、今後の本格的な高齢化社会の到来に備えまして、年金制度の安定的な運営を図っていくためには、年金の給付と保険料負担のバランスを図ることが大変重要な問題である、そこで国鉄共済の問題もその意味から重要な問題提起を行ったものと認識しております。今後の年金制度の改革に当たりましては、制度を支える現役の勤労者の負担や生活水準と給付水準とのバランスの問題についても十分留意しながら慎重に検討してまいりたい。
 それから年金制度の一元化につきましては、究極的には望ましいことであることは間違いない、これはもう臨調で言われておるとおりでございます。ただ、その各所管省庁が将来の一元化を展望しながら責任を持って制度間の不均衡の是正等を進める必要もございますので、この点、厚生省が初めに音頭を取るべきか、また、先ほどお話が出ましたけれども、内閣にそういう審議会をつくって、それが全部やるのではなしに、迎え水的なある程度歩み寄る、また方向づけをするだけの機能を発揮するのか、だれかがどこかでそれをやらないと、各省庁とも皆遠慮がちでございますし、そういう点心配はしておりますから、そういうような私自身も考えでおるわけでございます。
#122
○本岡昭次君 これから一元化に向けていろんな提言がなされ、またそのための会議が開かれ、またそのための法案がつくられていくということになりますが、私は、この社会保障の長期懇の提言の中にありますように、とにかくそうした全面的な見直し、すなわち一元化というふうなことを行うときの大事なこととして、「国民の積極的参加の下に」という、ここのことを大事にしてもらいたいと思うんですね。だから、それぞれ現在八つに分かれている年金に入っている人々、それを運営している人々、そうした全国民の積極的な参加のもとに、納得の上にあるべき将来の年金の給付とか負担とかというふうなものはつくられていくようにぜひお願いしたいと思うんですね。財政再建というものだけが突っ走って、そこから一刀両断に一元化というものをやっていくということのないよう、ひとつ要望をしておきたいと思います。
 そこで、長期懇の提言の中で一つだけお聞きをしておきたいことがあります。提言を受けて間もないので内容の検討は余りできていないかもしれませんが、いま私が質問する程度のことは当然御存じだろうと思いますから、質問をいたします。
 それは、提言の中の五ページに「給付の水準と負担の限界」ということがあって、言ってみれば、厚生年金の場合、いまの負担と給付でやっていけばやがてそのバランスが崩れてしまうと。バランスが崩れるというのは給付だけが非常に高くなってしまって負担がたえられなくなる、こういうことなんです。その高い給付水準の例として次のような例が挙がっています。すなわち「四十年加入の単身の男子の場合現役被保険者の平均標準報酬に対する比率七五%程度」と、こう書いてあります。これが高い給付水準の例として書いてあるんですね、七五%です。これではバランスが保てなくなり、年金そのものが破壊してしまうので、将来「被保険者の直近の平均標準報酬の六割程度の水準が一応の目安と考えられる。」と、こう書いてあるんです。六割といえば六〇%ですね。片や七五%が非常に高い水準になってくる。だからそれを六〇%の水準に落とせば負担と給付の水準のバランスがとれるのではないかということ、負担は後で西ドイツの一八%程度ではないかというようなことが書いてあるわけなんです。
 そこでふっと見ますと、七五引く六〇ということで一五%ということになるのか、四十年と入っていますから、片っ方の方は四十年なのか三十年なのかわからぬ。だから、どういうふうにこれを比較したらいいのか。給付を受ける側にすれば、将来、現在もらっているよりどの程度給付水準をダウンせよと言っているのか、この提言の中身をかみ砕いてひとつ御説明をいただければありがたいと思います。
#123
○政府委員(山口新一郎君) ただいま御質問の中にありました六〇%というレベルは、実は昭和四十八年体制の際の社会保険審議会の御意見の中にも、平均標準報酬の六〇%程度という数字がすでに示されたことがございます。ただ、この場合には、その基礎となる加入期間をどうとるかというところで御意見が分かれていたようでございます。
 で、先ほどお話のありました、今回の長期懇の提言の中にあります七五%と申します数字は、これは五十五年改正のときにはじいた数、字でございますけれども、平均標準報酬月額が二十万円、その場合の単身者の年金月額が、四十年加入を前提といたしますと、十五万一千七百五十円になります。これは二十万円の七五・九%でございます。恐らくこの数字を例として挙げられたのだと理解しております。いま申し上げましたように四十年加入でございます。
 で、厚生年金の場合には、恐らく受給者の平均加入期間が四十年程度になりますのは二十一世紀になってからだと思います。したがいまして、現在すでに年金をもらっていらっしゃる方あるいは間もなく受給される方々の問題ではないわけでございます。二十一世紀の段階で保険料を負担する現役の方と年金をもらう受給者の水準、そのバランスをとる方がいいんではないかという御意見だと私どもは受けとめております。
 単に給付と負担ということにいく前に、実際に保険料を負担するそのときの現役の方は、賃金で食べているわけでございますから、その賃金が仮に現在価格で二十万と、これが平均でございます。これで大体夫婦子供二人、四人ぐらい食べているわけでございます。それに対しまして、お年寄りが一人あるいは二人でどのくらいあればいいか、そこのバランスが一番大事だと思います。そういう意味で、この長期懇の提言の中でも現役勤労者の所得水準とのバランスを失してはまずいという立場で書いておられると、そういうふうに受けとめております。
#124
○本岡昭次君 そうすると、いまの話をもっと単純にしますと、二十万円、そうして四十年の経過があって十五万何がしが出た場合に、それは七五・九%ということになるということなんですが、それを六〇%程度と書いてありますが、そうすると、これは単純に二十万円の六〇%で、二、六、十二万円と。現役の標準報酬、いま標準的な賃金をもらっている人は、四十年たてば七五・九%程度になってくるから、それの六割となると、まあ十二万円というふうに単純に考えていってもいいわけですか。
#125
○政府委員(山口新一郎君) 長期懇の六〇%という考え方はそういう考え方であろうと受けとめております。
#126
○本岡昭次君 はい、わかりました。それに対する意見をここで述べておっても、長期懇の出している提言ですから、また別のところで論議することにいたしまして、そういうふうに理解をいたしておきます。
 それから、ついでと言っては何ですが、同じように長期懇の中で、「支給要件、給付体系の見直し」ということの中に、これは臨調の答申の中にも入っていた部分だと思いますが、「国民年金に任意加入しなかった被用者の妻が高齢で離婚した場合など、年金保障が必ずしも十分でない面がみられる」、そして「今後、婦人を含め国民すべてが老後生活において年金が保障される仕組みを検討する必要がある。」とか、またその次の段には、「国民年金の任意加入制度の在り方には問題があるので、被用者の妻の年金制度における位置づけ」、こうしたものも考えていけというふうにずっと書いてあるんですが、このことは、いままでの年金問題に対する社労委員会の議事録をずっと見てみますと、事改めて長期懇がここで提言をしなくても、何遍となくここで議論されて、議論のあるたびに厚生大臣は、そのとおりだと思います、解決のために努力しますとか、検討しますとか、いろんな言葉が並べてある、いわゆる大臣答弁の類になるような形なんです。
 これはどうなんですかね、長期懇でこんな提言をされること自身が厚生省として恥ずかしいことじゃないかと思うんですね、いまさらという感がするんですね。こんなところでされなくても、きちっと厚生省として将来、女性の年金権を確保するという基本的な立場というものを考えて、その案はもうきちっとつくられてあるというふうにならなければうそだと思うんですが、その点どうなんですか。これがいまさらながら出てくるということと厚生省の対応です。怠慢だと思うんですがね、どうです。
#127
○政府委員(山口新一郎君) 怠慢というおしかりは素直にお受けしたいと思います。
#128
○本岡昭次君 素直に受けただけでは……。
#129
○政府委員(山口新一郎君) それで、長期懇が指摘されましたのは、まだ問題としては残っておりますから指摘をせざるを得なかったんだろうと理解しております。
 この問題は、厚生年金、国民年金の五十五年改正の際にも関係審議会でなおさらに検討しようということで見送られた問題でございます。そもそもは、現在の国民年金法が制定されましたときからの宿題でございます。
 お話しのように、特に高齢で離婚された妻の場合等考えますと、非常に問題を残しているわけでございますが、そういう意味で私どもは、次、五十九年改正を一応事務当局としては目標を立てておりますけれども、その際に何とか解決策を出したいということで、実は昨年の十一月からすでに、社会保険審議会の厚生年金部会でも各項目について懇談会の形で検討を続けていただいておりますがへその中でもこの問題につきまして非常に熱心に御議論をいただいているところでございます。
#130
○本岡昭次君 ついでにお尋ねしておきますが、いま長期懇が指摘している、国民年金に任意加入をしていない被用者の妻と言われる人、高齢になって離婚した場合にはもう保険に入るすべがないという立場の人は、どの程度の数おられるわけですか、推定でいいですが。
#131
○政府委員(小林功典君) 現在、昭和五十六年十二月末の数字で申しますと、被用者年金加入者の妻で国民年金に任意加入している方の数、これが七百四十七万人でございます。これが全体の対象につきましては、その分母になります対象世帯の数がなかなか把握がむずかしゅうございまして、どうしても推定が入るわけでございますが、大体入っている方が対象世帯の七、八割だろうというふうに言われております。したがって、逆に言うと二、三割が加入していない、こういうことだと思います。
#132
○本岡昭次君 これは早急にひとつ手をつけてくださいということを私もここで要望しておきます。
 それでは、もう時間がありませんので次の問題に移ります。残った時間、今回の法律案の中身に具体的に入ってまいります。
 この法律案で一番納得のできない部分は、年金が、あるいはまた福祉諸手当が、物価スライドということで給付の引き上げが行われておりますが、例年に比べて一カ月おくれとなっていること
 私がここで長く申し上げるまでもなく、こうした給付の受給者というのはその給付に対する依存度が非常に高く、生活の中の基本的な収入源となっているものですから、一日も早い改善というものをやってあげなければならぬと思います。しかし今回は一カ月物価スライドをおくらしたということなんですが、一体そのことによってどの程度の財源が生み出せたのか。また、なぜそういうこ源を生み出さなければならなかったのか。それぞれ年金を受けておられる方々にかわってその点は厳しく批判を込めて質問したい、このように思うんです。
#133
○政府委員(山口新一郎君) 五十七年度の物価スライドの問題につきましては、御案内のとおり、昨年の夏、概算要求を出します時点で、初めてゼロシーリングという非常に厳しい制約下の中で予算要求をするということになったわけでございます。その段階ではあらゆる面でしぼられたわけでございますけれども、年金の物価スライドにつきしても、とりあえず法定どおりのものを要求としては出すという形をとらざるを得なかったわけでございます。
 私どもとしましては、そうは言いましても、厚生省関係だけの年金のスライドの時期が例年よりも遅くなるのは非常におかしいという立場をとり対象世帯の七、八割だろうというふうに言われまして、その段階ではまだ公務員の給与の取り扱いも決まっておりませんし、恩給、共済もスライドが未定という形でございましたので、その状態で済んでいたわけでございますが、年末の予算編成におきまして、恩給、共済につきまして、公務員給与との関連で例年よりも一カ月おくれで年金額の改定を行うということになったわけでございまして、それにつきましては、それでは厚生年金国民年金等につきましても、法定ではなくて、せめて例年より一カ月おくれで同じバランスでスライドをする必要があるということで、当初要求よりは実施時期を早めるということで、ようやく政府案の中に織り込むことができたわけでございます。
 もちろん、長い年月の間にようやく制度化されましたスライドでございますので、例年よりも実施時期が一カ月おくれたことにつきましては、私どもも非常に残念でございますが、そういうような全体の財政事情の中でやむを得なかったという事情を御理解いただきたいと思います。
 なお、一カ月おくれにつきまして、財源としては約百億円でございます。とまでしてそうした財
#134
○本岡昭次君 一カ月おくれ、諸般の事情があるからひとつ納得してくれということですが、納得はできないわけなんです。というのは、それはほかの関係があるからというふうなレベルだけで話をすれば、あれもこれもこうなっているから厚生省所管の年金もということでは、考えが一歩も出ません。
 後ほどこれは安恒委員が御質問なさると思いますが、去年の年金改正のときの議論を聞いておりますと、物価スライドというのは四月実施という考え方が正しい、だからそこへ一歩でも二歩でも近づいていく努力をしなければならないということについて厚生省側も異論がないわけです。
 ただ問題は、それに対する事務能力がない、対応する事務的能力がないからということが前面に出て、当時の厚生大臣も答弁の中で、計算をしていくその能力が不足ということでありますから、それはどうしたら事務能力を高めていくことができるかということについて厚生省として考えさしてもらいます、というふうな答弁が、たしか去年の五月十二日の会議録を見ますと載っているんです。
 だから、そういう経過からして、ゼロシーリングが出てから一年、そうした基本的な正しい本来あるべき考え方に迫っていくということはかなぐり捨ててしまって、横並びにそれを合わせるだけということでは、一体この社労委員会で何を議論しているのかということにぼくはなると思うんです。
 厚生大臣初め、そこに並んでおられる方々は、そこで答弁したことを、議論したことを次のときに一体どう生かそうとするのか、もしそれが生かせないなら、その反省の上に立って私たちに納得できるようなお話があってしかるべきだと思うんです。去年は計算能力の問題だと言いました、しかし計算能力を高めていくためにいろいろ検討しましたけれども、こうこうですと。四月に近づけるべき努力という問題は、一向その中から出てこないで、ゼロシーリングからの発想だけでくるということは、どうしてもこれは納得できない。このことを言っても水かけ論ですから、私は抗議の意味を込めて、いまこれは言いっ放しておきます。後ほどまた安恒委員の方からやっていただけると思いますから。
 そこで、去年はゼロシーリングでそうなったと言うでしょう、ことしはマイナスシーリングを、こうくるんです。いよいよもって物価スライド四月実施ということから遠のいていって、ひょっとすると、概算要求の中にも物価スライド分は組み込めないんじゃないかということすら危惧するようなことになりますね、いまのお話だけですっといきますと。それはどうなっているんですか、そこらの話は。ひとつお願いします。
#135
○政府委員(山口新一郎君) 来年度の要求につきましては、実はいま会計課を中心に省内で鋭意検討をしている最中でございまして、いまの段階ではどうするということまでお答えできる状況にはないのでございまして、お許しをいただきたいと思います。
#136
○本岡昭次君 お許しをいただきたい、それで私が許すというような関係ではないんです。
 いま言いましたように、物価スライドというものの持っている意味、これはここで議論する必要はないと思うんです。ただ、それを四月まで持っていくための努力をどうするかということが問題になっている時代において、今度はゼロシーリングからマイナスシーリングになれば、そこのところにまたメスが加えられて、一カ月おくれることによって百億円財源的に浮いたという話ですから、二カ月おくらせば二百億、三カ月おくらせば三百億というふうに、単純にマイナスシーリングによる五%を削れという問題に対する穴埋めを厚生省がここでしようということになれば、これは大変なことだと思うんです。こうした福祉年金、福祉というふうな言葉がここに入っている年金、そういうものまでも含めて、一括実施時期をおくらすことについて、厚生省が他の並びの上において唯々諾々と引き受けていくということはどうしても納得できぬ、許せぬことだと思うんです。これから先のことだから御勘弁くださいということですけれども、大臣、先のことにしろ、大臣としてのお考えはあってもいいと思いますし、お聞かせいただきたい。
#137
○国務大臣(森下元晴君) スライドの問題と、できるだけ四月に近づけるということ、毎年私ども頭を悩ましてきた問題でございます。昨年も実はゼロシーリングということで、概算のときにはかなり先送りにしておったことは事実でございます。それをできるだけ手前に持ってこようと年末のときには努力をいたしました。
 それから最後までスライドの問題が、消費者物価指数が五%を割っておりましたから、特例が認められるかどうかということの両方の心配がございまして、厚生省のサイドとしてはスライドも五%以内でもやりたいと。これは実現したわけでございます。
 ただ、時期の問題が完全におっしゃる方向まで持ってこれなかった。結論的には昨年に比べて一カ月遅くなった。当初は、御承知のように、十一月とか十二月とか、また翌年の一月というような三段階で実は組まれておったわけでございますけれども、だから努力したんだ、よかったということは私も申し上げられません。
 そういうことで、いまいろいろお話の中で、私も五十八年度の予算は大変だなと実は思っているわけです。そういうところへしわ寄せがいかないように、私は五十七年度のスライドの問題、また実施時期の問題等考えました場合に、五十八年度の予算、これからこの月末にかけて詰まっていくわけでございますけれども、その問題、実は一番心配しておることをいま言われたわけでございますから、いまここでこういたしますということを言えないということを年金局長が申し上げたはずだと思うんです。
 そういうことで、私は激励の意味に受け取りまして、一生懸命にがんばっていきたい。ここへしわ寄せをして、ゼロシーリングに数字合わせをするようなことはいたさないように努力をしたいと、このように実は思っているわけであります。
#138
○本岡昭次君 それでは最後に大臣に、激励というよりも、いま言いましたスライドあるいは実施時期等を絶対に後退させないでもらいたいという要請を込めていま申し上げたいんです。
 長期懇の答申の中でも次のようなことが書いてあります。これは異例のことじゃないかと思うんですが、こういうことです。当面の財政的判断だけが先行して、社会保障の果たすべき機能が阻害されてはならない、こういうことが書いてあります。これもう読んでおられると思うんですが、当面の財政判断だけで先行してというのは、ゼロシーリングとか、マイナスシーリングとか、いろいろそういうことだと思うんですよ。社会保障の果たすべき機能が阻害されてはならないと長期懇の答申の中で述べられていますが、これはまさにいま私が質問し、大臣が答弁されている、そういう状況を長期懇が推察をして、社会保障の果たすべき機能を阻害されるようなその状況を絶対つくってはならぬ。すなわち、それは長期懇自身が社会保障の果たすべき機能が阻害されつつあるという認識を持ったからこそこういう答申をやったん、だと、私はこう思います。
 だから、絶対にそうしたことのないように、この長期懇がここまでのことを言っているということも、謙虚に反省をしてもらって、来年度の予算の問題、そしていま審議している一カ月おくれのこの問題についても、私はそれでいいと言っているわけじゃないわけで、そのことの抗議も含めて、元に戻しなさいということも含めての発言をしております。再度大臣の発言をいただいて、質問を終わります。
#139
○国務大臣(森下元晴君) 社会保障のあり方については、いま御指摘のように、長期懇の中でも、「社会保障と国家財政」という中で明確に実は書いてございます。いまおっしゃったように、「今後、社会保障の効率化が必要であるが、その過程において当面の財政的判断のみが先行して、社会保障の果たすべき機能を阻害し、将来の国民生活の安定を損なってはならない」。角を矯めて牛を殺すと、たとえがいいたとえではないかもわかりませんけれども、そういうことを言われておることだろうと思っております。
 そういう意味で、歳出面のみならず歳入面についても速やかな検討ということで、しわ寄せを社会保障にすることなしにやらなければいけないという意味のことがこの長期懇の重要な部門に書いてある。私も肝に銘じまして、そういうことがないように、そうして活力ある福祉社会、また福祉によって国が繁栄するんだという基本的な考えをよく行政に出していきたい。特に年金問題につきましては、五十九年に大改正をやるということを去年から実はいろいろと答弁でも申し上げております。いろいろな答申も出されておりますし、従来から作業も進めております。いま御指摘のような趣旨のことも十分その大改正の中に加えさせていただきまして、よりよきものをつくっていきたいと、こういうことを申し上げまして御答弁といたします。
#140
○安恒良一君 私も三つの法律を一本に質問をいたします。それぞれ関係局長なり大臣からお答え願いたいと思います。
 まず、いま同僚の本岡委員から年金問題で質問されました。少し補充的に質問をしておきたいと思うんです。
 最初に、五十四年に年金制度基本構想懇談会が厚生大臣諮問で報告を出しました。それから社会保障制度審議会から「皆年金下の新年金体系」が出ました。それから最近ではいま本岡さんが言われた共済年金制度基本問題研究会、社会保障長期展望懇談会、それから現在社会保険審議会の厚生年金部会で五十九年改正に向けての議論がされていると聞いています。こんなにたくさん出て、あなたたちは今後の日本の年金のあり方をどうされようとしているのか。
 そこに入る前に、以上申し上げましたもので、厚生年金はいま何を議論しているかということを聞かしてもらえばいいんですが、これらの答申の特徴、違いの点、こういうことについて一遍ちょっと答えてみてください。こういうところは共通している、ここが著しく違っているとか。それをちょっといま言ったものについて全部ひとつ答えてください。
#141
○政府委員(山口新一郎君) まず、社会保障制度審議会の建議でございます。五十二年の十二月十九日に提言をされているわけでございますが、いわゆる基本年金構想と言われているものでございまして、まあ二階建てということになりますか、基本年金を六十五歳からすべての老人に支給する。単身は三万円、夫婦で五万円、これが基本年金でございます。その上に各制度ごとに国庫負担相当分を除いた給付を上乗せをするという考え方でございます。
 三番目には財源でございます。上乗せの方は保険料でやるわけでございますが、基本年金の分につきましては、現行の国庫負担のほかに新しく新税を設けてこれに充てるという考え方でございます。
 それに対しまして、厚生大臣の私的諮問機関でありました年金制度基本構想懇談会、これの報告でございます。最終報告は五十四年の四月に出されておりますが、これの基本的な組み方といたしましては、まず、先ほどの制度審のように全部制度を基本年金として統一するというのではなくて、各制度の分立を前提としてその不均衡の是正を図るという考え方でございます。仕組み方としては、その点が一番大きく違っているわけでございます。
 それから長期懇の場合には、ここでは具体的な体系論そのものを出してはおりませんけれども、方向として、いろんな問題を解決するのに、制度が八つに分立していることを前提としてやるのでは行き詰まるので、制度の一元化など枠組み自体の改革が必要である。そのための本格的検討に着手をしろという言い方をいたしておりまして、その具体的な改革された枠組みをどうする方がいいということまでは触れておられません。
 それから共済年金制度基本問題研究会でございますが、これも共済制度全般につきましては、具体的に新しい改革後の体系については何も提言はしておられません。ただ問題点をそれぞれ個別に、給付水準でありますとか、あるいは併給調整の問題でありますとか、開始年齢の問題等を指摘をしておられます。国鉄共済の絡みにつきまして、部分的でございますけれども、三公社と公務員の共済年金を統合しろということを提言しておられるわけでございます。
 でございますから、体系の枠組みとしましては、制度審が全体としての基本年金構想とプラス上積みという考え方、基本懇の方が制度分立のままで格差の是正を図るという考え方、二つやや離れた形でございますが、提言がなされているというふうに理解できるかと思います。
#142
○安恒良一君 私の聞いたことにまだ答えてませんね。いま社会保険審議会の厚生年金部会が議論を進めていると言うんですが、それとの関係。
 それからその際に、本岡さんも質問しましたが、臨調も出してますね。年金制度の統合について五十八年度までの成案、とりあえず国鉄年金類似制度の統合とか、それから公的年金の段階的統合と年金行政の一元化、これにも出てますね。それをちょっと説明すると同時に、答えてもらいたいのは、こんなにいろいろもらってどうするんですか、あなたたちは。どういうふうにしていこうとするんですか。たとえば実施の時期でも、臨調は五十八年と言って、あなたの方は五十九年大改正と、こう言っているわけですね。
 というのは、私は、年金というのは、全体を一元的に考えないと、あっちこっち直しとったら、ますますつじつまが合わなくなると思うんですよ。ですから、こういうふうに同じ厚生大臣の諮問機関でも、年金制度基本懇談会が提案した後、また社会保障長期展望懇談会にお願いをしている。そしてそれが出た。一方、あなたたちは、今度は社会保険審議会の厚生年金部会で大改正についてまた議論しておる。そしてある程度建議的なものはもらって、諮問はまた改めてやる。総理の諮問機関があるわ、厚生大臣の諮問機関はあるわ、大蔵大臣の諮問機関も一まあ共済年金は必ずしも大蔵大臣じゃないんですが、大蔵省が中心にやりましたね。しかもやっていることは皆、年金なんですよ。ですから、どういうふうに今後されるのか。
 私は、年金というのは国民皆年金ですから、どこかで一本に年金全体をどうするかということを考えていかないと。それぞれ大臣が諮問機関をつくってもらっちゃって、そしてしかもその結論の中身がかなり、いまあなたがおっしゃったように、違いが相当あるわけですよね。そして質問されると、いや、年金はおれのところ、厚生省が中心だと大臣胸張っているけどね、胸張っただけじゃだめなんですよ。大体どうしようとされるんですか。
 一つ聞いておきたいのは、私は臨調の答申に余り賛成しないんですが、年金を一元的にやるために年金担当大臣をつくるというところにはぼくは賛成なんですよ。私はもう前々から、予算委員会で、年金担当の官庁をつくれ、大臣をつくれ、そしてそこですべての年金を一元的に集めて議論しない限り、ばらばらで各省がやっておったんじゃ、いつまでもどうにもなりませんよと。国民年金はあなたの方で一これも審議会が提言していますね、きょう。国民年金審議会が提案する。ですから、大臣ね、あなたも厚生大臣であると同時に鈴木内閣の重要閣僚の一人ですから、どうするんですか、こういうふうに提言ばっかりやたらにもらって。あなたは言うでしょう、いや、うちは、五十九年大改正をやるんだ、進めているんだと。それは厚生年金でしょう、五十九年大改正というのは。一方、国鉄共済年金は五十八年にやろうと言っているんですよ。これはあなたよりも偉い総理のところですからね。ですから、あなたも内閣の閣僚の一人として、こういういろんな提言がされて年金をどうしようとされているのか、そこをひとつ聞かしてください。
 たとえばどういうふうに統合してやるとか、こうやるとか、少なくともこれとこれとこれとは今後手をつけなきゃならぬ問題だとか。次から次に審議会にかけちゃ答申もらって、そして自分の所管のことだけやっておくようじゃ、大臣は年金については務まらぬと思うんです、ここまでくれば。おれは厚生大臣だから厚生省所管の年金をやっておきゃいい。おれは年金局長だから厚生省所管の年金局のことだけやっておけばいいということじゃないんですよ。私が挙げただけでも六本も七本も提案があるでしょう、わずか四、五年の閥に。しかもかなり問題の違うとらえ方をされておるわけですね、財源問題にしても、仕組みにしても。
 だから、私があなたたちに聞いたのは、共通点は何ですか、違う点は何ですかと聞いておる。あなたは違う点だけ言っておる。共通点は何にありますか。たとえば給付水準をどうしようとするのか、スライド制をどうしようとするのか、いろんなことがあるでしょう。それらを含めて、ずるっと六、七本ここのところ答申が出ていますから、共通点で何ですか。違う点はいま少し言われました。そしてそれを受けて、国務大臣の一人として、大臣、あなたはどうされようとするんですか。
 厚生省だから、厚生年金だけの方で大改正を五十九年やると、またつじつまが合わなくなるんですよ、ほかのやっと。年金というのはつじつまを合わせるためには年限がかかりますね。
 たとえばいま厚生年金の支給開始年齢は六十歳からになっている。国家公務員、地方公務員や三公社五現業は、五十五歳を二十年かけて六十歳に合わせておる最中でしょう、いま。それだけ少しを手直しをするのにも経過措置が要るんですから、もうここまできますと、だれか責任担当大臣がおって、そこのもとで一本ですべての年金を洗い直すなら、いままでの提言を全部洗い直すなら洗い直して、問題点を引き出して、そして改正年度。
 だから、必ずしも私はそれを一年、二年急ぐ必要はないと思うんです。余り急ぐとつじつま合わせだけで、そこだけやってしまう。そんなことをしておったら、またおかしなことになると思いますから、何もゆっくりやれと言っているのじゃないですよ、五年ごとの大改正という約束がありますから。五十九年大改正の方向もやられている。一方、これで見ますと、臨調の方のやつは、五十八年度にとりあえず、国鉄等いわゆる三公社五現業の共済と国家公務員共済までの統合は、これはもう出ておるわけですから、政府はそれは早くやらなきゃいかぬと。じゃ、それやるときに、片っ方、民間の方の厚生年金関係はどうするのかという問題が出てくるわけでしょう。
 ですから、私は、年金関係で一番お聞きしたいのは、ここまでくると、内閣の中で年金担当は、あるものは厚生大臣、あるものは大蔵大臣、あるものは運輸大臣が所管されていますね、その他。それを、総理を交えて、どういうふうにしていくかということを国民にお示しにならないと、提案されたやつのそこだけちょっとつまみ食いしてやっておったら、ますますこれは矛盾を深めていきます。ですから、そこらの問題を含めて私はお聞きをしているわけです。
 ただ単に、年金局長のように、新年金体系はこう書いてあります、これはこうありますなんて、私は知っておって聞いておるんですからね、それ全部読んで。ですから、私は、一番聞きたいことは、これからの日本の年金というものを、これだけのたくさんの提言があるものについて、その提言を受けてどのような年金づくりを考えられているのか。それがために政府の機構をどうするのか。それはいまのまま、厚生省は厚生省、大蔵省は大蔵省、運輸省は運輸省でやっておったらどうにもならぬですよ。
 たとえば共済年金制度の基本問題研究会の提案自体について、関係省によって意見が分かれておるわけですね。関係大臣によって意見が分かれてくるわけです。そんなことをやっておったら、年金問題というのは私は全然前進しないと思いますが、大臣、これらをいま私が申し上げた含みでどうしようとされるのですか、鈴木内閣として、年金問題は。
#143
○国務大臣(森下元晴君) おっしゃるように非常にむずかしい問題でございますけれども、ここらあたりでびしっと一つのその方向を示さないといかぬ、もうぎりぎりの段階になっておるように私自身も思っております。厚生大臣としてはやはり厚生省を中心にして物を考えたい、また考えなくてはいけないというようなこともございますけれども、鈴木内閣の閣僚として、将来の各省庁にわたる年金、共済問題をどうすることが一番いいのか。そのために臨調答申というものが出されて、これに政治生命をかけて取り組もうという鈴木総理大臣初め、鈴木内閣の姿勢でございますし、その中には当然年金問題も入るわけでございます。
 まだ臨調が正式に発表されておらないというようなことに逃げ込むわけでもございませんけれども、一応全貌もある程度出てきておりますし、いまおっしゃったような方向で――本当に私も、審議会とか懇談会とかたくさんあり過ぎて、内容的にも理解できておらない点も実はたくさんあるわけですが、ただ、すべてに共通する問題は、ここらあたりで意思統一をしていかないと、結局は老後の幸せのために一生懸命掛金をして、二十代、三十代の方でもそのために給料の中から引かれておる、そういうことを考えました場合に、これは将来の問題といえども今日の問題である、そういうふうに実は理解をしております。
 そういうことで、まず年金は将来いかにあるべきか。たとえば公的年金、いわゆる中核としてこれをどの程度の割合で持つか、またそれに企業年金をどういう割合で持つか、またそれに、いわゆる個人年金という問題も最近出てきておりますけれども、そういう問題を加味していくのか、また公的年金一本でいくのがいいのか。先ほども御質問が本岡議員からございましたけれども、いわゆる高福祉高負担につながるような方向でいいのかどうだろうか。最終時の給料の六割にするのがいいのか、七割五分にするのがいいのか。そのためには掛金がかなり高くなるというようなことも踏まえて、ここらあたりで先進国でやった国々の実態も踏まえ、また将来の高齢化時代に備えて、人口動態等も考えて、本当に私は、ここらで一厚生大臣という立場ではない、大きい意味で年金大臣的な全般を含めた考え方に立たなくては、ただその場限りで逃げるようなことは許されない。
 そういうような非常に緊迫感と申しますか、私自身も、いまいろいろと御意見おっしゃいましたけれども、ただそのとおりだと私が申し上げることは、非常に無責任なようでございますけれども、よくそういう問題を踏まえまして、今日的な問題、また将来の問題も踏まえまして年金問題に取り組んでいきたい、こういうふうに思う次第でございます。
#144
○安恒良一君 どうも抽象的でわかりませんから重ねて聞きます。
 厚生年金を中心に年金部会で五十九年度のいま大改正に取り組まれているらしいんですが、そこでこの一つだけでもどう整理をするんですか。社会保障制度審議会が出している皆年金下の新年金体系は、基礎年金構想にいわゆる二階建てなんですよね。私ども社会党はその二階建て構想を是認をしながら、最近とみに盛んになっている企業年金ということで、三階建て年金構想をきちっと出しているんですよ。ところが、厚生省の年金制度基本懇談会は基礎年金構想をとってないわけです。現在の年金体制、年金の分立をそのままにして、格差を、アンバランスを是正をしていこうということで今日まで来られているわけです。そういう中で今度は、御承知のように、臨調答申は出てしまったんです。それはそれで、ここに掲げてある、いわゆる統合ということで出てきているわけでしょう。その他たくさんの審議会から出ている。
 たとえば、いまあなたがおっしゃった、本岡さんが質問しました妻の座の問題一つをとっても、厚生年金等の被用者年金にいわゆる奥さんが入っている、これと国民年金とをどうするのか。国民一人一年金問題、これもずっと議論されてきていることでしょう。こういう問題について、いま五十九年度大改正を目標にしていろいろ作業を進められていますが、それならば、いま私が聞いたところだけでもどうしようと思われているんですか、厚生省としては。どの構想をおとりになるんですか。いろんな提案がたくさんありますね。たくさんある中で一番問題になるのは、高齢化社会を迎えて、いまのような八つの制度が分立をし、ばらばらではいかぬ、統合の方向にいかなきゃならぬということについて、だれしもそこまではいい。じゃその統合の仕方についてはどうか。一つの考え方を持たないと私はいけないと思います。
 そこで、私が聞きたいことは、社会保険審議会厚生年金部会でいまそれらの問題はどういう論議をされているのか。また、あなたたち自体はどういうことをお持ちなのか。こういうことを聞くと、いや、それは審議会の答申を待ちましてと、こうよく逃げますが、それじゃどうにもならぬのですよ。今日の段階でこれだけの提言が出てきて、この機会を外しまして、とりあえず厚年は五十九年改正でやっておく、一方、臨調の方は五十八年といってて、またその次の段階というのはならないんです、こんな問題は。
 そうしますと、国民皆年金下における基本的なあり方として、国民共通の基礎年金をとって、その上に職能別といいますか、厚生年金とか共済とか、こういう二階建てをしていくのかとか、もしくはもっと大きく統合して、被用者年金は一本にして自営業者の国民年金という二階建てをつくるのか。こんなところについて一つの考え方を持たなければ進みようがないでしょう。
 ですから、長年年金に取り組んできておる者として私がお聞きしていることは、厚生年金部会等の議論、さらに五十九年度改正についていま言ったような問題点を厚生省としてはどう整理しようとするのか。しかもそれは自分だけのひとりよがりではだめなんです。臨調なら臨調の答申を横目ににらみながら、もしくは共済年金制度基本問題研究会の答申も横目ににらみながら、すべてを見ながらどういうふうにするか。
 というのは、いつもあなたたちが言うように、何といっても年金は、各省に分かれているが、中心は厚生省なんだと、こうおっしゃるわけです。厚生省は、年金の中心省なんだとおっしゃる以上は、その中心である厚生省自体が、年金のあり方についてどういう考えを持っているかということをきちっとこの際聞かしてください。それは審議会の答申を待ってなんて、そんな逃げ腰じゃだめです。大臣、年金局長、私はこういう考えを持ってますというのが、もうここまで来て、なけりゃ――審議会の答申を得てそれから考えますなどというばかげた答弁をしたら、ようそれで務まりますかということが返ってくるわけです。いろいろのことがたくさん今日まで提言をされていますから、あなたたちは、この五十九年改正なら五十九年改正に向けてどういうふうにしようとしているのか、そこのところ、一番基本になるところですね。いま八つにばらばらに分かれておっていいとか、給付に格差があっていいとか、だれしもそんな考えはないと思う。
 ただ、年金にはそれぞれの歴史がある。その歴史を踏まえながらどうしていこうとするのか。それにはどうしても一つの結論を出さなきゃならぬのは、基本年金構想でいくのかどうか、それとも各制度分立のままでやっていくのか、この違い。それからいま一つは、それに伴う財源についての考え方が違いますね。保険でいくのか、いわゆる基礎年金構想的なところは新しい財政として税金によって賄うのか、こういうところも、これは大きい違いですから、そこらが議論をされて一本になっていかないとどうにもならぬと思いますが、そこらはどうしますか。
#145
○政府委員(山口新一郎君) ただいま安恒先生からお話のありました点はもうそのとおりでございます。私どもも、私どもが具体的な案をお示しをして、さらに御議論をいただくということにしなければ、年金の議論はこれ以上は進まないというふうに考えております。
 で、もちろん私が個人的にそれなりのものをいろいろと考えたものがございますけれども、年金局長の立場として公表するには、まだその機に至っておりませんので、きょうの段階ではお許しをいただきたいと思います。
#146
○安恒良一君 そんなことでやっとって間に合わないんじゃないですか。臨調の方は五十八年度、総理も、年内着手をしたい、国鉄の改革と年金の改革は年内着手、こう言ってるんですよ、総理も。そして、いま聞いたら、いや、私は個人的に持ってますけれども、年金局長としてはきょうのところは御勘弁願いますなんて、そんなあんた逃げとって何ができますか、あんた。年内着手と言ってるんですよ。それはそれでやっとってもらえばいいんだということじゃないんですよ。片っ方が進んでくると、それは厚生年金や国民年金にも影響があることなんですよ。そうすると、厚生省としては、年内着手されるに当たって、日本の年金のあり方は、中心担当省の厚生省としては、こういうふうに制度的には思います、財源的にはこういうふうに思います、もしくは、整理統合するならば、そのカテゴリーとしては、このような過程を踏んでやっていくべきじゃないですかということを出さなきゃ、おれたちは中心だ中心だと言っても、また横へのけられますよ、あなたたちは。
 いま聞いて、きょうはまだ言えませんというんじゃ――きょう言えなかったらいつごろ言えるの、山口さん。きょうは言えぬというなら、きょうはこれより聞いたってしようがない。いつごろになったらそれは言えるんですか。それを聞かしてくださいよ。片一方は年内着手と言ってるんだからね。いつごろになったらそれは言えるですか、きょうは言えないというなら。
#147
○政府委員(山口新一郎君) 着手という意味では、私どもは昨年の十一月からすでに着手をしているわけでございます。厚生年金部会の各項目の、第一ラウンドと申しますか、その検討が一応いまのところ十月で一わたりする予定でございますが、その段階で、それまでに出ました御意見も踏まえまして、私どもから具体的に幾つかの案をお示ししながら、さらに二回目の議論をしていただくということでお話をしてございます。したがいまして、いままでの私どものスケジュールから申しますと、秋には具体的な案を公表できる段階になるということでございます。
#148
○安恒良一君 それじゃ、これ以上、私、時間もったいないですから、十月ごろには具体的案をお示しになるということをしかと承っておきます。十月といったらすぐ来ますからね、いま八月ですから。そしてまた、そのころになると臨時国会が開かれますから、そのときになってまたしばらくなんて言わないように。というのは、いま私が申し上げたような、中心省に座るなら座るという意味で、やはり中心省としての抜本的なきちっとした考え方を持たなきゃいかぬと思う。
 それから、大臣、あなたお答えにならなかったんですが、年金大臣をつくるということは、年金業務を何も厚生省からとっぱなすと言ってるわけじゃないですよ。どこかに全部一元化して議論しなきゃならぬところに来ているだろう。まさにその点は臨調の指摘は正しいと思いますが、それはどう思いますか。
#149
○国務大臣(森下元晴君) 年金大臣を具体的につくるという意味よりも、私は年金大臣をいわゆる専業、専門としてつくるぐらい力を入れなくてはいけないという意味でそういう話が出たんだろうと思います。省庁の統合の時期でもございますし、そういうときにあえて年金大臣をつくるということは、年金にかける内閣の意欲と申しますか、国民の期待が非常に強いというふうに実は考えておりまして、あえて年金大臣をどうこうという意味には、これはこだわっておりません。それくらい非常に大事な機構をつくらなくてはいけないし、またそういう意欲を持ってやるべきである。だから、それを厚生大臣が年金大臣になるんだとか、どこがどうだとかいうふうには実は私は考えておりませんので、非常に大事であるという意味にとっております。
#150
○安恒良一君 私がいままで予算委員会なりこの委員会で何回も言ったときは、各省庁の事務次官をもった年金の横の連絡会議とか、いろんなことを何回も答弁されておるわけですよ。ところが、そんなものは一つも進んでいないんですよ。それは大臣は兼務があるかどうかわかりませんが、まず年金を一つの大臣のもとに皆集めなきゃだめなんですよ。それから事務機構も一つに集めないと。あるものは総理府がやっている、あるものは大蔵省が担当している、あるものは運輸省が担当している、こんなふうに今日の年金がばらばらになっているんですから、私は少なくとも年金問題については責任大臣――何も新大臣をつくる、つくらぬは別の問題ですから、厚生大臣なら厚生大臣のところに全部集めるという方法もあるでしょう。大蔵大臣が全部兼務するという方法があるかもわかりませんが、私は厚生大臣なら厚生大臣が全部権限を持てばいいと思うんです。そして事務は全部そこで一元化する。でないと、それぞれ省別にやっておったのでは、これはいつまでもうまくいかない。それを単に事務次官クラスの横に省別の連絡会議とか担当局長の連絡会議をつくってやりますと言ったって、もう言って何年にもなるけれども、何一つ進んでいないです。
 ですから、そういうような強力な年金問題を中心に担当する大臣と、そのもとにおける統合された事務機構というのがない限り、なかなか今日――しかもそれを早くやらなきゃならぬわけですね、高齢化社会というのは、もう目の前に迫っていますから。そのことを私は言っているんですが、その点はどうですか。
#151
○国務大臣(森下元晴君) 同感でございます。
#152
○安恒良一君 それじゃ、この問題はそれぐらいにしまして、ひとつ次期、十月には、いま申し上げたようなわが国の進むべき年金のあり方というものについての問題の提言と、それから当面、五十九年改正でこれはこうするとか、それから五十八年度に共済等をやるなら、それを横並びにこうするということを、ぜひ国民の期待にこたえたことを発表していただきたいということを申し上げておきます。
 次は、これも本岡さんが主として年金の角度からスライドを言われましたが、私は戦傷病者戦没者遺族等援護法、これも一カ月おくれていますし、それから原爆被爆者に対する特別措置に関する法律の中にもこの関係がありますね。この三つとも、いままでと違って物価スライドないし、それから中には賃金スライドもありますが、なぜ一カ月おくれているのか、私には理由がわからないわけです。私は衆議院の議事録を読んでいますから、ダブった答弁は要らないんです。
 あなたたちから言うと、いろいろなものの横並びとかゼロシーリングとか、こう言われますが、私はなぜわからないかということを申し上げますと、たとえば戦傷病者戦没者遺族等援護法は、この法律は国家補償でしょう、社会保障以上の重要なものですね。国家補償法に基づいてこれがやられていますね。それから原水爆は国家補償とまでいきません。私たちは国家補償と言いたいところですが、国家補償的に社会保障で原水爆の問題はいろいろされていますね。それから年金は御承知のようにこれは社会保障としてやられている。そういうものが、国家財政が赤字だからとか、もしくはゼロシーリングだからといって、そこらが切り込まれるのが私はわからないんです。いま言った一つ一つの法律の基本的な性格から、一つは国家補償、一つは国家補償的な社会保障、社会福祉、それから年金は明らかに社会保障的な福祉、こういう角度からそれぞれスライドの実施の仕方はいろいろなのがありますが、それが厚生大臣が一生懸命がんばったんだけれども一カ月おくれたと、こう言いたいところだと思いますが、しかし私はどうもその理由が、いま言ったような一つ一つの法律の性格からいって私にはわからないんです。その点についてひとつお答えください。
#153
○政府委員(北村和男君) お話の中で一番最初に第七部社会労働委員会会議録第十七号昭和五十七年八月三日参議院二十援護法が出てまいりましたので、私から答弁いたします。
 年金額の引き上げ実施時期につきましては、たびたび申し上げているところでございますが、国の財政状況の厳しさでありますとか、あるいは臨時行政調査会の第一次答申におきまして、恩給の増額を極力抑制するといったような方針が示されたこと等を考慮したものでございます。
 なお、援護法の関係は、いま先生お話にございましたように、主として軍属を中心として給付するたてまえになっておりまして、軍人につきまして行われている恩給法といわばうらはらの関係になっている関係でございまして、今回は、先ほど申し上げましたような諸般の理由によりまして、恩給につきましても同様な措置をとったことにより、それとリンクしてこのような措置を講じたものであると、そのように考えております。
#154
○安恒良一君 そんな答えはもう衆議院で聞いていると言ったでしょう。その上でわからぬから聞いているんです。というのは、恩給なら恩給というものがあるから、恩給がおくれたからとか、国家公務員の賃金が一部抑制されたからとか、そういう横並びの例になるわけですね。しかし一つ一つの性格を考えてごらんなさいと言っているんです。私は、現役で働いている労働者の賃金を、たとえば人事院勧告なら人事院勧告を値切ることにも反対であります。また公労協の仲裁裁定を値切ることにも反対なんです。それはなぜかというと、民間の労働者に横並びで、それぞれ権威ある機関が民間との実情でやっている、国家財政が赤字だからということでそこで値切ることは反対なんです。しかしそのことはさておきましょう、きょうは。きょうの論議じゃありません。
 これは現役のいまの働いている労働者。ところが、恩給にしろ、それから戦傷病者にしろ、それから原爆にしても、これは現役じゃないわけですよね。遺家族であるとか、傷ついた本人であるとか、それから年金の場合のスライドも、物価上昇に応じてスライドしている。
 たとえばいま年金受給者を考えてみましょう。六十歳以上の年金受給者とか七十歳以上の老齢福祉年金受給者の将来を考えると、若い局長はわかるかどうかわからぬが、大臣なんかおわかりだと思うんです。この激しい明治、大正、昭和という時代を生き抜いて、しかも昭和に入って数々の戦争の中で生き残って、しかも戦後、敗戦国からアメリカに次ぐ経済大国に仕上げたのはそういう人々じゃないですか。その人たちがいま現役を離れて年金で生活をしているわけでしょう。それを国家財政が赤字だからでは……。
 幾ら浮くのかといったら、百億でしょう。私は何も防衛費とだけこのことを比べようと思いませんけれども、あなたたちはF15戦闘機を二十七機買うと言われる。一機幾らかと聞いたら百億ちょっとするというんです。P3Cを七機買うというんです。私はわかりやすい数字で言ってる。たとえば厚生大臣、百歩譲って、厚生省もゼロシーリングだ、もしくは、これから論議しますが、マイナスシーリングだというときに、そこにメスを入れなくても入れるところがあるんじゃないですか、あなたの所管の中だけでも。いま言ったような明治、大正、昭和と生き抜いてきて、特に昭和の激動期に戦争に何回も派遣をされ、やっと生き残って帰ってきて、そして食うつ食わぬつして、今日のりっぱな日本をつくり上げた人々に対するこれは、あるものは国家補償である、あるものは社会保障である、福祉である、そういうところを、幾らゼロシーリングだからといって、しかも削って百億なんでしょう、百億、それをどうして守り得ないんですか、厚生省として。どうして守り得ないんですか、百億の話を。私はそれがわからぬと言っているんですよ。
 そんな横並びとか縦並びという議論は、もう衆議院で済んでいるんですよ。私は、政治というものは国民に対して愛情を持たなきゃならぬ。その愛情を持つのは、削っていいところと削って悪いところがあるはずなんです。たとえば自助努力とか、相互扶助とか、助け合いといっても、自助努力でできることとできないことがあるでしょう。私は一月二十九日の本会議であなたにも質問し、鈴木総理にも質問したはずなんです。そういうものから見ると、ここに書いてあるような年金関係なり、援護法なり、原爆関係を一カ月削って百億程度浮かせるということが愛情のある政治なんですか。しかももらっている人はいま言ったような大変苦労に苦労をして今日のりっぱな日本を築き上げてくれた人ばっかりじゃないですか、もしくは犠牲になって亡くなっている人の遺族じゃないですか。そういうところを私は聞いているのです。大臣、そこをどう思いますか。
#155
○国務大臣(森下元晴君) お考え方としてはそのとおりでございます。
 ただ、政策決定的な面が習慣的に行われてまいっておりまして、それが恩給との横並び、またスライド制度との兼ね合い、そういうことで財政難の折に一カ月おくれと、そういうことになったわけでございます。
#156
○安恒良一君 そこで、本岡さんも言われたんですが、いま言われたように、機械的に横並びにされたところに御反省があるならば、今度はいま五%マイナスシーリングで予算を一生懸命つくられていますね、本岡さんの答えにあなたはっきり言われなかったけれども、そこまで言われるならば、少なくとも五%と言ったら、ことしよりもひどくなるんですからね。常識的に考えると、一カ月おくれか二カ月おくれになるか、うまくいってもとんとんで、また一カ月おくれのまま出てくるのかなと、こんな心配になるわけですよね。
 私は、たとえば厚生省の中で五%削らなきゃならぬなら削る。僕に言えと言ったら、私が言ってあげますよ、幾らでも、五%削るのを。たとえば一つは、衆議院でも議論されているでしょう、医療費問題なんて削ろうと思ったら削れますよ、がばっと。そういうときあなたたちは、医療費の審議になるときは削る削ると言うわけよね。医療保険の議論のときになると、監査をなにやりまして、指導をこうやりまして、あれをやりまして、総額でこういくと言うけれども、いざのときになったら、なかなか削れないんですね。厚生省だけで言うならば、そういうところあるじゃないか。
 それから国として、全体として、大臣、ここまで来たら、小さな政府、安上がりの政府、削るところは削れと、国民は言っているんですから。しかし、削ってならぬところを削れとは言っていないんですよ、行政改革は。それを機械的にゼロシーリングとか、五%というところで横並びに考えるところにこの問題があるわけですから、少なくとも、大臣、こういういま申し上げたようなスライド制、物価スライドであるとか、援護法であるとか、原爆とか、こんなところは本岡さんの質問のときにも、いま予算編成中ですが、各局長一致結束をしまして断固としてそこは守り抜きますと。
 むしろ、何回も言っているように、本当なら、賃金が四月一日から上がるなら、賃金スライドしているところも四月から上がるべきですよ。物価も三月三十一日までの物価上昇分を年金に上げているんですから、計算能力がないと言いますが、これだけコンピューターが発達してきますと、計算能力がないというのも言えなくなってきたんです。すばらしいコンピューターがいまできていますから。そうすると、スライドの実施の時期は四月なら四月にする方向に大臣は持っていかれてしかるべきだと思うんですね。それと国の財政が足らぬということは次元が違うんですからね。
 削るなら削るで、もうちょっと大きいところを削らなきゃだめですよ。国民が見て、なるほどなと思うところを削らなきゃいけません、なるほどなと思うところを。こんなところを削って、国民は、これは行政改革でございます、臨調りっぱでございます、厚生大臣りっぱでございます、と言う人いないです。そうでしょう。
 明治、大正、昭和と生きて、昭和の初めから苦労に苦労を重ねて今日のりっぱな日本をつくった人の年金の実施の時期を一ヵ月ずらしてみて、百億浮かしてだれが拍手喝采しますか、あなた。だれが拍手喝采しますか。するはずなんかないじゃないですか。同じ厚生省の中でも大なたをふるうべきところは大なたをふるう。それから厚生省だけでできなければ、国全体の予算の中で大なたをふるわなければならぬところは、私は幾らでもあると思いますよ。
 そういう角度で、きょうここで聞かれたら――いまあなたたちが一番それでいろいろ苦労されているところでしょう、五十八年度予算。それぐらいの考え方をきちっとしてひとつ言うてみてください。来年度のこれらの問題についての考えは、少なくとも全力を挙げてこういうふうにしますという考えを。どうですか、大臣。
#157
○国務大臣(森下元晴君) 御趣旨ごもっともでございまして、私どもも五十八年度予算を通じまして全力を挙げることを申し上げたいと思います。これからの問題でございますが、一生懸命やらしていただきます。
#158
○安恒良一君 それじゃ、大臣だけでなくて、大臣が代表されていますから、関係局長も体を張って全力を挙げて、削ってならないこういうところについては削らぬようにがんばると。五%マイナスシーリングであっても、そしてむしろ国家財政が非常にむつかしいときですが、あるべき姿に向けて一歩一歩近づけていくと、こういうお約束をいただいたと思ってここは承っておきます。
 じゃ、次に参りますが、次は、これもこの三法に関係をしてくるんですが、大臣も衆議院で大分答弁されていますが、軍人に対する扱い、軍属に対する扱い、準軍属に対する扱い、それから被爆者、それから一般国民の戦傷病者ですね、これは私どもはきょう提案を議員立法で出したんですが、それからそのほかに今度は昔は日本の軍人、軍属であったとか、準軍属であったとか、もしくは徴用でおいでになっておった北朝鮮人民共和国や韓国の方々や台湾の方々ですね、こういう問題がたくさんあるわけです。
 もちろんこの委員会の中で、たとえば日赤看護婦さんの問題であるとか、満蒙少年開拓義勇軍の問題であるとか、陸海軍看護婦さんの問題であるとか、少しずつ個々に改正をしてきたことは事実であります。しかし、大臣、これも一遍ひとつ抜本的にどこかで検討委員会をつくって洗われたらどうかと思うんですね。その都度その都度持ち込まれたやつを少しずつ手直しをしてきているわけですね。
 しかし、いま申し上げたたとえば韓国の方々であるとか、そういう方々は、もともと日本国民であったことということが一つの大きな足かせになっていますね。それから現在これを受ける場合、本人なり遺族が日本国民でないと受けられぬという。これはもう衆議院の議論にもありますね。
 これはわかりやすい例を私は一つ挙げたんですが、そういうふうに軍人、軍属、それから準軍属、被爆者、それから一般国民ですね、それからいま言ったような、現在ではそれぞれ他国籍をお持ちになっていますが、当時はわが国の国籍を持ち、もしくはわが国に徴用で来られたという、もしくはそういうことで国家権力によって動員されて来られて、いろいろ不幸にも亡くなられた方々、またそれらの遺族の方々があると、こういうものをどうするかという議論をしないと。
 私ども野党側は、それぞれ衆議院における議員立法、参議院における議員立法という形で、一般国民の戦傷病問題はいつも提案しますが、審議すらなかなか入らない。まあ審議に入っていますが、実質的な討議はされない。衆議院側はある程度討論しているが、いよいよ採決のときになると自民党が逃げ散らかす。その採決は困る困ると、こう言って逃げ散らかすわけですね。そういうのが実際ですね。そんなことを何年も何年も繰り返しておったらいけないと思うんですよ。もうこれもここらで一遍すべてをやはり洗い直してみる。でなければ、一応その軍人軍属のところでやったときに、関係大臣が集まって、これで戦後は終わったと、こう言っていますが、終わったと言いながら、その後国会で次から次に修正してきているんですから、追加してきているわけですね。
 それからすでに一部これは裁判にもなっていますね。元台湾の兵隊の方の裁判、一部判決が出た。こういう問題がありますから、これも一遍ここらで、幸い臨調の行政改革ということで、いままでの積年の問題を全部洗おうというときに来ていますから、この際、大臣が閣議等で御発言くだされて、どこが担当することになるかわかりませんが、これらの問題を全部一遍洗ってみる。洗った中で問題を解決しなければ。
 たとえば原子爆弾被爆者に対する特別措置法についても、国家補償なのか社会保障なのかという大論争をずっと続けてきているわけですね。そしてだんだん国家補償的なことの発言を強められています。園田厚生大臣なんかはかなり前向きです。それからあなたが衆議院で議論されたものを見ましても、あなたもかなり前向きで、これらの問題については国家補償的な要素を持たなきゃならぬということをあなた自身も言われているわけですから、そういうことだったら、ただ単に社会労働委員会のやりとりだけに終わらせるんじゃなくして、閣議あたりで十分議論されて、何人かの大臣に関係することでありますが、どこかがこれを引き受けて、たとえば総理府が引き受けることになるのかどうかわかりませんが、一遍全部を洗い直して、そして現行はこうなっている、問題点がここにある、それからこれから救済をしなきゃならぬ人はこういうふうにあるんだ、しかしわが国の財政上、今日はここまでだとか、そういうことをしないと、委員会論議も毎年毎年ぐるぐる回るばかり。私は毎年の議事録を読んでそう思うわけです。
 ですから私は、幸い森下厚生大臣、こういう問題については、議事録を読ましていただきますと、自分自身の人生経験の中からも、一遍こういうものを洗い直さなきゃならぬのだというお気持ちが、衆議院におけるやりとりの中ににじみ出ていますから、こういうことを聞くんですが、大臣が社労委員会だけで御答弁されるんじゃなくて、閣議あたりでこれをどうしようとするのか一遍ぜひ議論してもらいたいと思いますが、その点大臣いかがでしょうか。
#159
○国務大臣(森下元晴君) 戦後処理は終わった、戦後は終わったということは、もうすでに十数年前に宣言みたいなかっこうで言われたことがございますけれども、その後から後から処理問題が起こってまいりまして、たとえば恩給欠格者の問題とか、シベリア抑留、それから海外に財産を置いてきた方々の補償の問題、それに日本人孤児の問題、それから台湾の日本人の問題、それから樺太におる韓国の方々、たくさん違った内容でこの戦争による犠牲者の姿がまた浮かび上がってきております。
 御承知のように、内閣の総理府の方に、わずかではございますけれども、調査費をつけまして、そういう問題を検討しようじゃないか、ただ気安めだけではなしにやろうじゃないかという方向づけは、実は今回の五百万円の予算がついたというふうになっておりまして、まあ五百万円で果たしてできるかどうかはわかりませんけれども、もう少し強力に、私も援護局を持つ厚生省の大臣として、積極的に早くやろうじゃないかということを、閣僚の一人として、今後、より一層発言の機会を得るし、また実行のために全力を挙げていきたい、このように申し上げます。
#160
○安恒良一君 同僚委員が、私どもの議員立法で、野党全体の議員立法で提案しました戦時災害援護法の問題にしましても、すでに提案理由の中に明らかにされておりますように、西ドイツでは、私どもと同じ敗戦国なんで、条件が非常に似ている、しかも奇跡的な経済復興をした国なんですが、日本も西ドイツもですね、しかし西ドイツは、すでに早く戦争犠牲者全体を網羅して一つのきちっとした法律をつくっているわけですよね。
 私はなぜそれが必要かというと、最初は軍人軍属をつくって、それから、ずっと広げていきますと、接ぎ木に接ぎ木を足したようで、救われたことは悪いことじゃないと思いますが、しかし運動が盛んで声の大きいところは早目に救済されるけ第七部社会労働委員会会議録第十七号昭和五十七年八月三日参議院れども、後から後から声が小さいのが出てくる、そして救済の中身は悪くなる。一方、救済を受けるべき人が老齢化をして亡くなってくる。こういう現状が続いているわけでしょう。ですから、声が大きいとか、圧力団体とか、どこかの政党に泣きついてやれるところはやったということじゃ、不公平だと思うんですよ。
 だから、そういう意味から言うと、大臣も問題点は全部認識されているわけですから、一遍この際、それらの問題を全部洗いざらい調査すべきものは調査するし、中身の中から問題点を拾い出すものは拾い出した上で、そして全体の公平の観点からやっていく、こうあるべきだ。それと財政事情とのにらみの中でやっていかないと。今日のように財政事情が悪くなってまいりますと、それが中心になって一部救済とかやっていきますと、ますます継ぎはぎだらけになると思うんです。私は継ぎはぎだらけで不公平があってはいけないと思うんです、こういうものは。
 そういう意味から言うと、この際は、五百万か何ぼか予算をつけられたそうですが、私はもう一遍ひとつぜひ大臣の方から――この中でかなり厚生省にかかわる問題もたくさんあるわけです。問題点はいま大臣が全部もう拾い上げられました。問題点については、私とあなたにはこれからやらなきゃならぬ問題については共通認識があるわけです。私は、軍人、軍属、準軍属、被爆者、それから一般国民、それからかつて日本国民の国籍を持った方と、こういうふうに大きく挙げましたけれども、そのほかに中国の孤児の問題もあれば、国民の中でシベリア抑留の問題もいろいろ出ていますから、そして声の大きいところだけ、何か超党派で動きがつくられる、何とかの会、何とかの会でですね。これじゃいけませんので、ぜひ大臣、そういう点についてあれしてもらいたいということで、大臣、前向きに取り組むということをこれは重ねて要望しておきます。
 次に参ります。
 私は、今日米ソのとどまるところを知らない軍拡競争の中で、草の根運動としていわゆる非核問題、これが世界的に非常に大きく高まっています。わが国におきましても、広島における集会、東京における集会、それから総理みずからが国連軍縮総会に行かれた問題等から考えますと、全体を横並びに見てもらうことは必要なのでありますが、その中ですでに何回となく議論をしてきておりますところの原子爆弾の問題ですね。これも国会の論議を通じて国際法違反であるということは、ほぼ共通の認識を得ることになりました。そうしますと、これを国家補償的というこの「的」のところを取るためには援護法の制定と。たとえば広島における二十五万人集会の中で援護法問題というのが非常に大きい問題になりました。恐らくことしの八月六日と八日、総理は長崎へ行かれる、大臣は広島へ行かれるというときに、この援護法問題が非常に大きい問題になってくる。そうすると、これを言いますと、大臣はすぐ、いや、それはわかるけど、また戦傷病者の横並びとか、一般国民の中で戦時災害を受けた人の横並びであって、心はわかるんだが、それだけなかなか一遍にいきませんと、こんな種類の答弁を衆議院で大臣はされていると思いますが、私は、原子爆弾が明らかに国際法違反であるということがわかった場合は、たとえば戦傷病者、戦没者遺族等には国家補償法としてこれは援護法がやられているわけでありますから、少なくともまず取っかかりといいますか、いまの世界的な一番声の大きい問題であるところのこの原水爆の被災者である方々に対する援護法という問題について、これももう毎年の国会の議題の中で議論されていますが、まず一歩こういうものをできるものからやる、そういうことをやっていく中で、私が申し上げたようなことを全体の横並びを見ながらやっていくという考えですね。たまたまいま世界的に非核問題が大きい問題になっていますね、そういう状況の中でそれらに取り組まれる。これは園田大臣等はかなり前向きの答弁をされましたが、それらの問題について大臣はどういうふうにこれを推し進められますか、そこのところだけ聞かしてください。
#161
○国務大臣(森下元晴君) 園田大臣が前向きの答弁をされたことは私も聞いております。なお、歴代の大臣も一応理解を示す答弁はしております。
 しかし、人類史上初めての原子爆弾による被爆、非常に痛ましい、国際法上から見ても非人道的で許されるべき方法手段ではない、幾ら平和を回復し戦争を終結するためとはいえ、原子爆弾による攻撃、しかも、いわゆる軍隊でない一般の方までも大きな犠牲を受けたわけでございますから、私自身もそういうふうに考えますけれども、いまここでそのとおり、援護法の適用また援護法を制定いたしますという御答弁については、まだしばらく私は保留をさしていただきたい、なお検討をいたしたいということでございます。
#162
○安恒良一君 いま言えない、まあしばらく検討さしてくれと。中身を言わないのはわかりませんが、これも時間とってはいけませんので、それじゃ私は、その問題も含めて、だんだん明らかになってきたものはできるだけ早目にぴしっとしていく、それから総合的にやらなきゃならないものについてはやると。
 一般国民が本土決戦という中で大空襲を受けた、沖縄なら沖縄の決戦、それから本土において東京を初め大爆撃を受けた、そして被害を受けられたということは、もうこれは明らかになっているわけですからね。
 そんなことを言いますと、そんなことは当時一億皆受けているじゃないかと言うけれども、私たちはそれ何も一億と言っているわけじゃない。そこで傷つかれたとか亡くなったとか、そういう方々に対することをずっと毎年野党が出してきているわけですから、ですから、それらを含めて――逃げるときはそれをお使いになるわけですから、そっちとの見合いということで、いましばらくお待ちくださいとお逃げになるんですから、もうそういう逃げをやめて、何回も大臣自身も、今度は調査費がついたと言われていますが、一遍全部を洗い直すと、早急に。そしてあるべき姿というものをきちっと出す。そしてそれを実行するときに、一遍に実行できるごとと、場合によれば段階を経なきゃならぬこともありましょう。それはそれなりで明示をすれば、私は国民はわかってもらえると思うんです。
 ところが、逃げておってはいけません。いつまでも横並び横並びと言いながら、原水爆の援護法も解決しない、戦傷病者も解決しない、それから元日本兵であった方の第三国の方々の問題も解決をしない、シベリア抑留者の方々も横並び横並びということで後へ後へと。鈴木総理は後送りの好きな方のようでありますが、それじゃいけません。後へ後へと送っておったんじゃ、ますます矛盾を深めていくし、国民はそういうものについては理解を示さないと思いますから、もう一遍この問題は、いまのところは、どうしてもいまは言えないとおっしゃいますから、それらを含めて、ひとつきちっとしていただきたいということを申し上げて、私十一分までありますが、できるだけ少し早めてくれという同僚の御意見もありますから、きょうはこれぐらいにしておきます。
#163
○渡部通子君 最初に、中国の残留孤児の問題につきまして若干のお尋ねをいたします。
 去る五月の末に厚生省の係官が訪中をなさった際に、中国側から、今後も引き続き肉親捜しに協力する前提として、残された養父母等の扶養問題、この解決が求められたそうであります。厚生省といたしましても、これなくしては今後のスケジュールが進展しないとの感触を持たれたようでございます。
 元来中国人は、私たちよりもはるかに老後のために子女を養育するという考えが非常に強い。婚姻法も親の扶養を義務づけているほどでございますから、帰国する邦人孤児に対して養い親の方から民事訴訟が提起されて、中国の法院で養育費を支払えとの判決がなされた。これは新聞報道で承知をいたしました。ほかにも同様な訴訟がなされているような状況と聞きます。
 こうした中国側の要請にこたえるため、政府は扶養費貸付金制度、これを検討中と聞きます。まず、こうした制度の基本的な考え方や要旨について御説明いただきたいと思います。
#164
○国務大臣(森下元晴君) 中国残留孤児の問題につきましては、これも大きな戦後処理問題の一つでございますし、また中国政府の御厚意にこたえるためにも非常に大切な問題でございます。また日本自身の信頼を諸外国に啓蒙するためにも非常に大事な問題である。いわゆる人道的な問題、外交的な問題すべてを含んだこれは大切な問題であります。
 そういうことで、ことしの春はずいぶんこの孤児の問題で新聞紙上をにぎわしたわけでございますけれども、その後いろいろ養父母等に対する扶養の問題が出てまいりました。これは当然のことであります。孤児が日本に帰ってくる。後に子供さんが残される。また養っていただいたお父さんお母さんが残される。一人の孤児のために多くのまたその方を頼りにしておった方々が残される。悲劇が悲劇を生むということでございまして、これまでやらないと本当の解決にならないということであります。
 そういうことで、帰国した孤児が中国に残してきた養父母の扶養等の問題については、基本的には孤児と養父母の間の個人的な問題でございますけれども、孤児及び日本の親族が自力で扶養費等を支払うことが困難な場合、世帯更生資金制度がございまして、これを活用しよう、そして必要な資金を貸し付けするとともに、養父母に対する送金を確実にするため、特定の法人に送金の代行を行わせるというようなことで検討を進めておるわけでございますけれども、それ以上にわれわれは、一つの外交問題としても、特に総理がこの九月に北京に参りますし、中国との間の問題について、この孤児問題、また養父母の扶養の問題について突っ込んだ話がされると思っておりますので、より一層、ただ更生資金を貸し付けするということだけではない、もう少し情的な方法を私どもも検討していきたいと、このように考えております。
#165
○渡部通子君 大体趣旨はわかりましたけれども、おっしゃるとおり、ことしは日中友好十周年でもございますので、厚生省としてもそれを必ずいい方向へ持っていっていただきたいと思うわけです。
 いま大臣の御説明いただいたような内容で、大体中国側の理解を得ることが可能と見通していらっしゃるのかどうか、またその時期はいつごろでございましょうか。
#166
○政府委員(北村和男君) 先ほど先生からお話のございましたように、先般私どもの担当課長が中国に参りまして、残留孤児の肉親捜しの問題についての協力要請をいたしました際に、前提条件としてこの問題が提起されたわけでございます。いま大臣から御答弁申し上げましたように、大体私どもはこのような考え方で国内的には処理できるという見通しを持ちましたので、今後早急にまた再度中国政府と折衝をするつもりでございます。それで、これは政府全体の案として処理をいたしますとともに、ただいま厚生大臣の諮問機関として中国残留孤児問題懇談会の方にも御相談をいたしている最中でございますので、その方の手続も終わりましたらば、即刻また中国政府と折衝をしたいと、さように考えております。
#167
○渡部通子君 この養育費の問題がネックとなって、五十七年度の新規事業としてことしの夏に予定されておりました政府調査団の派遣、これが事実上引き延ばさざるを得なくなった。それからことし秋に予定されております孤児の訪日、これについても予定どおり実施ができるかどうか、こう危ぶまれている状況ではないかと思いますが、本年度の予算で計画されているこうした事業の実施見通し、これについてもこの際伺っておきたいと思います。
#168
○政府委員(北村和男君) 本年度の事業は、大きく分けますと、日本政府が先方へ調査団を派遣するということが一つ、それから本年春に行いました在中国の孤児を日本に招くというのをことし前年度の二倍やりたいということの大体二つでございます。
 これにつきましては、私ども中国に訪れます調査の方はできるだけ早く、それから孤児を招請いたしますのは大体ことしの秋と来年の春というふうに予定をいたしておりました。したがいまして、先ほど来お話しを申し上げております扶養費の問題について中国と合意ができれば、即刻この事業に取りかかれるわけでございますので、何とか先方の完全な了解を取りつけた上で、五十七年度当初予定いたしておりました事業の円滑な執行を行いたいと、そのように考えているわけでございます。
#169
○渡部通子君 ぜひ努力をしていただきたいと思います。
 次に、先日発表されました中国残留孤児生活実態調査、これは厚生省でおやりになったことですが、これによりますと、九六%の世帯が生活保護を受けていらっしゃる、こういう状況だそうでございます。その後三、四年でほぼ三分の二の世帯がそこから脱却はしているものの、なお孤児をめぐる種々のハンデを考えてみますと、幾ら低利とはいいましても、貸付金の返済が重荷になってくるのではないか、これはもう十分予測されるわけでございます。
 なるほど、養育費の問題はすぐれて個人の問題ではございますけれども、孤児の置かれた特殊な立場を考えるならば、それがどうしても不可能な者、こうした方たちについては国庫等による肩がわり、これが考えられてよいのではないかと思います。それから前回も話題になりましたけれども、国民の方々から大変たくさんの善意の寄金等も寄せられるわけでございますから、こういった活用が当然されていいのではないか、こう思いますが、これに対するお考えを伺っておきます。
#170
○政府委員(北村和男君) お話まことにごもっともでございまして、私ども非常に努力をして日本に定着しようとしている孤児の人たち、その家族の人たちの努力を大変多とするわけでございますが、何分帰ってまいりましたときには日本語ができないわけでございますから、職についてお金を返すというのもなかなか無理であろうかと思います。ケース・バイ・ケースの実情に応じまして、できるだけ弾力的な措置を行いまして、孤児の負担にならないように考えてまいりたいと考えております。
 その際、いま先生からお話のございました国民各界各層から寄せられました大変心温まる寄附金を最大限有効に使ってまいる所存でございます。
#171
○渡部通子君 扶養自体は原則的に個人の問題ではございますけれども、残留孤児対策そのものが日中両国間の戦後処理問題、こういう意味になると思います。そうなりますと、国家間の問題ということにも考えられますので、あくまでも日本政府の主導、保証、こういう貸付事業ということが基本でなきやならないというふうに思いますので、送金システムの確立等、これが必要と思いますが、これに対する御認識はいかがなものでしょうか。
#172
○政府委員(北村和男君) 先ほど申し上げました中国との折衝の際にも、先方が一番御心配になってますのは、扶養すべき孤児が中国国内にいる限りにおいては、中国政府がいろいろと指導もし、監督と言ってはなんでございますが、そういう立場にあるわけですが、一たん身柄が日本に渡ってしまいますと、なかなか目が行き届かない点がある、そういう点をひとつ日本政府もよろしく頼むと、そういう趣旨であろうと私ども理解をいたしておりますので、そういう点につきましては、私ども政府が直接やるわけにはまいりませんので、厚生省の所管をいたします公益法人等を特定いたしまして、
   〔委員長退席、理事安恒良一君着席〕
その法人にこの支払いのためのお金を借りる事務であるとか、向こうへ送金する事務であるとか、それを代行してもらうことによりまして先方にきちんと約束を守る、そのような措置を取りたいと考えて、いま準備中でございます。
#173
○渡部通子君 その場合、お伺いしておきたいことは、いま法人の話が出ましたけれども、新たな公益法人を設立するお考えなのか、それとも本事業のモデル的な制度である世帯更生資金の貸し出しを行っている社会福祉協議会に事業を委託する方法をお取りになるのか、どちらを選択するおつもりでいらっしゃるのか。もしも新たな法人の設立ということになりますと、既存の法人のスクラップ・アンド・ビルドということになるのか、この点も伺っておきたいと思います。
#174
○政府委員(北村和男君) いま先生おっしゃいました二つの方法、あるいはそれ以上の方法もいろいろ考えられると思いますが、厚生省といたしましては、中国の一般引揚者を含め、残留孤児対策についての全般的な援護事業を一本化して行うということは、非常に有意義なことであろうと思いますので、現在の検討の過程では、ただいま申し上げましたように、厚生省所管の公益法人を特定いたしまして、この扶養費の仕送りの問題等を含めて、あらゆる意味での残留孤児対策をやっていただく方向で検討をいたしております。
 法人の新設あるいはスクラップ・アンド・ビルド等の問題につきましては、いま事務的にいろいろ検討いたしておりますが、何とか合理的で、それから時間も急ぐものでございますから、できるだけ早くこの法人が発足できますような方法をいまいろいろと検討中でございます。
#175
○渡部通子君 これからの事業の進め方でございますけれども、たとえば招待枠を見ましても、今年度は去年の六十人の二倍と倍増されており、さらに来年度は三倍、こういう方向が検討されているそうでございますが、孤児対策自体が拡大強化されているというのはすばらしいことですけれども、高齢化しておりますし、だんだん肉親も捜しにくくなってくる。これを思いますと、問題の全面解決のための一貫性、これをもう少し検討していただく必要があるのではないか。短期集中型の施策の実行、これが何よりも大事ではないかと思うんです。ですから、そのためには年次計画を策定して、一定の目標、プログラムのもとに総合的に施策を推進すべきだ。こうしないとなかなか片づかないのではないか、こういう気がいたしますので、それに対する大臣の御所見を伺いたいんです。
 それからもう一つ私伺ってみたいのは、これは私の個人的な意見になりますけれども、肉親を捜してこちらへ連れてきても、なかなか問題は多い。かといって、向こうに置いておくままでは、また孤児たちの要望もかなえられない。どっちで暮らすにしても、問題は非常に残る。だから、将来のこれは方向ですけれども、あえてこっちへ来て暮らさなきゃならないとか、永住の地のように考えなくて、むしろ気軽に行ったり来たりできるような状況、肉親がいてもいなくても、捜せても捜せなくても、故国であることには違いないし、なつかしいことなんですから、行ったり来たりできるような、そういう状況をむしろ財政的にも補助して、そういう気軽な形で将来の解決方法が見つけられないものか。これは私の大変個人的な見解でございますけれども、そういうことも含めて大臣の見解を伺っておきたいと思います。
#176
○国務大臣(森下元晴君) 孤児数につきましては、大体千名とか二千名と限られた数でございまして、そんなに何万も何十万もということもございませんし、いまおっしゃったように、一番いい方法は、ちょうど女の方であればお嫁に行って里帰りがよくできる、ときどきお帰りになれる、こういう姿が私は一番いいと思います。
 ただ問題は、それに伴う財政と申しますか、いろんな費用問題でございまして、簡単にそういう面で向こうからこちらに来られない方がたくさんあるようであります。日本においでになる場合もかなり大きな借金をしておいでになったということも聞いておりまして、結論的に私はそういう姿が一番いいんじゃないだろうか。向こうの政府でも、もう日本に帰るんだったら、養父母の方も子供さんも全部連れて帰ってくれ、別れ別れにおられると本当に悲劇が続くということもおっしゃっておりまして、でき得れば、そういう形で日本とのつながりをしながらいつでも帰れるような形、これに対して国が助成するような方法ですね、これが私は一番いいと思うんですが、なかなかそうばかりいきません。
 それから初めの質問に対するお答えでございますけれども、この肉親捜しは孤児の積年の悲願でもございまして、また関係者が非常に老齢化している事情もあるので、早急にこれを解決しなければいけない問題である。中国残留の日本人孤児問題懇談会、ここの意見でも、そういう問題がたくさん実は出ている。ボランティアの方もおられるし、向こうでお住みになった経験者の方もおられますし、そういう問題も実は出ておるようでございまして、そういう懇談会の御意見等も踏まえまして、とにかく早くやらないと、いつまでもだらだら延ばすわけにいきません。
 それと同時に、初めは民間主導でもできるんじゃないかと思っておりましたところ、中国政府が政府間でやろうじゃないか、政府間でやらないとなかなかむずかしいというような、当初私どもの考えたのとかなり内容的に変わってまいりまして、その点、総理が九月においでになって、十分話し合いをされて、いい成果を持ち帰っていただけると、これも実は期待をしているわけでございます。
 以上です。
#177
○渡部通子君 帰国した孤児が日本に住む場合に、大変問題が多いことは最近の報道等によってもよくわかっております。財政的にも、言語の問題でも、大変なようでございまして、これら自立のための基本的な訓練というもので現在援護局段階で検討されているとうかがいますが、センター構想ですね、収容センター構想、これについて少し伺っておきたいと思うんです。どういうものがどういう御決意のもとでおできになるのか。
#178
○国務大臣(森下元晴君) 引揚者が定着先におきまして一日も早く自立して社会経済活動に参加していくために、日本語の教育、それから日本の生活になれるための生活指導がきわめて大切であることは、言うまでもございません。厚生省といたしましても、日本語の習得のための語学教材の支給、それから生活指導員の派遣等の定着援護施設を行ってきたところでございます。
 なお、収容センターを設けまして、帰国後集中的に日本語教育、それから生活指導を行うことは、引揚者の定着を促進する上で有効な方法であると考えられますので、中国残留日本人孤児問題懇談会の意見の中にも、これもございますから、十分具体的な方法等についての意見も聞きまして検討してまいりたい、このように思っておるわけであります。
#179
○渡部通子君 それはぜひ集中的に行っていただきたいんですが、これは職業訓練とか職業紹介等も当然加わってくると思いますし、社会教育等も加わってくると思いますから、労働省とか他省庁との関連、こういった点についても留意を要望しておきます。
 それから就籍の問題についてもう一点伺っておきますが、去る六月一日に東京家裁におきまして、父母不詳のまま日本人であることの認定を求めて、許可が出ました徐明さん、この記憶はまだ新しいところでございますが、その際、有力な審判材料となったのが現地の発行いたしました公証書、いわゆる日本人孤児証明書でございました。日本政府としてこれら孤児について、司法的手続によらなくても日本国籍を付与する方途が講じられるべきと考えますけれども、これは大臣の英断を期待いたしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
#180
○国務大臣(森下元晴君) 結構でございます。できるだけ前向きで御便宜を図っております。その点については厚生省としてもお認めいたすようにしております。
#181
○渡部通子君 いま推定三百人近くそういう方がいると言われておりますので、ひとついまの大臣のお答えのとおり、法務省当局とよろしく御配慮をお願いしたいと思います。
 次に、年金のことについて若干伺います。
 社会党さんからの質問で大体基本的なことは尽きておりますので、あえて重ねての御質問は審議促進のために全部省くことにいたしまして、若干伺います。
 先ほど御答弁の中になかったのですが、現在社保審の厚生年金部会において、五十九年と言われております次期財政再計算期に向けての予備作業として、主要検討事項のそれぞれの個別項目について検討が進められていると、こう報道されておりますが、主要なテーマというものは何なのか。さっき秋という結論のめどは伺いましたけれども、もしテーマをここで発表できたらひとつ教えていただきたい。
#182
○政府委員(山口新一郎君) 今回、厚生年金部会が検討するに先立ちまして、どういう項目について検討を進めるかということで委員の皆さんの意思統一をされたわけでございますが、
   〔理事安恒良一君退席、委員長着席〕
それをまとめたものでございますけれども、大きなくくりといたしましては、一つは改正に当たっての総括的事項ということでございまして、この中には、厚生年金保険制度そのものだけではございませんで、基本年金構想等公的年金制度全体の体系論との絡みでどうするかというような問題が一つございます。
 それから二番目が、給付に関する事項ということでございまして、これは非常に抽象的でございますが、内容的には将来に向けての給付水準のあり方の問題でございます。この中には、先ほど長期懇の御議論との絡みでどの程度の割合にするかというような問題、あるいは世帯類型に応じてどういう金額にするか、さらには婦人の年金保障の問題、こういうものが含まれているわけでございます。
 それから三番目が、スライド制に関する事項ということでございまして、スライドの指標でありますとか、その基準あるいは時期、これを基本的にどう考え直すかということでございます。
 それから四番目は、これはやや技術的でございますが、標準報酬に関する事項ということでございまして、現在上限と下限を定めまして法律で改正するようにいたしておりますけれども、医療保険の方が変わりましたので、そこら辺のところをどう受けとめるかということでございます。
 それから五番目に、財政に関する事項ということで、保険料と国庫負担の問題でございます。
 それから六番目に、適用範囲に関する事項ということでございまして、未適用業種あるいは五人未満事業所、さらには任意継続制度の取り扱い、こういうふうなものを含めて検討されるわけでございます。
 現在までのところ、ここまでの検討を一応第一ラウンドとして終わっておりまして、あと業務処理体制の問題、さらに厚生年金基金の問題、それから積立金の管理、運用に関する問題等が予定されております。
#183
○渡部通子君 それでは、十月という先ほどの話でございましたので、それを重ねて念を押して、この質問については終わります。
 先ほどもいろんな提言があってどうするんだという御質問がかなりありました。その中で、差し迫って臨調の基本答申が出ておりまして、「全国民を基礎とする統一的制度により、基礎的年金を公平に国民に保障することを目標としながら」、制度間の不均衡を是正する中で段階的に制度の一元化を進める、こういう方向が打ち出されているわけでございまして、制度分立という答申もあるようですけれども、大体そういう方向というものがコンセンサスを得つつあるのではないかという感触を私は持ちます。
 昨今では総理の一元化に向けての意欲もありましたし、また各野党の主張等におきましても、基本年金いわゆる最低保障年金のようなものに議論が集中しているように思います。これを二階建てにするか、三階建てにするか、そういった議論はあるにいたしましても、そういう方向だと思うんですが、この傾向に対しての大臣の御認識だけを伺っておきます。
#184
○国務大臣(森下元晴君) 年金制度は、それぞれ目的、それから沿革、財政状況等が異なっておりますが、将来これを一元化することが望ましい方向であることは、いま御意見おっしゃいましたけれども、私も間違いない方向であると、このように考えております。
 そういうことで、その意味からしても、各所管の省庁が将来の一元化を展望しながら、責任を持って制度間の不均衡の是正等を進める必要があり、厚生省といたしましても、先ほど申しましたように、すでに年金改正について鋭意検討作業を進めておるところでございます。
 いろいろ先ほどからもこの年金問題、今日の問題、また将来の問題をどうするのか、非常にむずかしい問題でございますけれども、国民の安心感、安定感のためにも、これを早く打ち出さなくてはいけないというようなお話もございまして、そのとおりだと思います。そういうことで、いま申し上げましたように、厚生大臣といたしましても、この年金問題に全力を挙げて今後とも取り組んでまいる所存でございます。
#185
○渡部通子君 もう一点、婦人の年金権のことでございますが、これも細かく言うといろんな問題がございますが、根本的な考え方だけ伺っておきたいと思います。
 言うまでもなく、女性個人としての生存権思想、これが、婦人の年金権につきましても、根底に置くべき考え方ではなかろうかと私は考えています。現在の被用者年金では、給付はあくまでも被用者本人が基本でございまして、要は、夫に従属する存在、これが婦人の位置づけられている立場だと思います。婦人の権利といった側面から考えますと、これは全く希薄ではなかろうかという気がするんですね。議論がたくさんあるところは承知はいたしておりますけれども、こうした矛盾をどのような方向で改革されようとしているのか、それから今日まで検討されてきた問題点の詰めがどういう方向で解決されていくのか、それから大臣御自身はこういう基本的な考え方についてどういう御意見をお持ちなのか、この辺を伺っておきたいと思います。
#186
○国務大臣(森下元晴君) 婦人の年金権の問題が社会問題となりまして、新聞紙上等でもかなり論議されておることは事実でございます。
 いろいろ将来に対する不安、万一いろんな事情で離婚しなければいけない――離婚を奨励するわけでございませんけれども、そういうような事態が起こるかもわからないと、非常に不安な気持ちでおるわけでございます。
 婦人年金の問題は、かなり年配になって掛けようと思っても、いわゆる権利がなくなってしまう、それだけの期間がなければ年金の権利がないというような制度的な問題もございますし、といって、婦人の深刻な年金に対する問題も考えないわけには――検討課題として、この改正問題の中でも婦人の年金問題について検討をしていきたいと、このように思っておる次第でございます。
#187
○渡部通子君 ちょっと大臣の基本的な思想的な点だけを伺っておきたいというのが私の一番のメインなんですけれども、いわゆる個人としてごらんになるのか、それとも被扶養者として位置づけていくしかないとお考えなのか、その辺だけ聞きたいんです。
#188
○国務大臣(森下元晴君) この問題は、男性の立場である私が果たして女性のすべてのことをわかっておるかどうかということでございまして、もちろん男女、平等、近代国家としては当然個人としての権利は尊重すべきであると、こういうふうに一言で申し上げればそのとおりでございます。個人としての権利は尊重すべきであるということであります。
#189
○渡部通子君 それでは原爆の問題につきましても若干お尋ねをいたします。
 私たちは従来から、現在のいわゆる社会保障的性格の強い原爆二法、この二法につきましては、国家補償の精神に基づいた被爆者対策を推進していくように、これはもう毎年毎年主張してまいったところでございます。政府の見解はなかなか従来から変わらないわけでございまして、確かに原爆基本懇でも、政府の言っておられます一般戦災者とのバランス、こういうものからこれまでと同じような見解を出して、いわゆる国家補償の立場まで踏み切れない説明をしております。これもよく承知をいたしておりますけれども、昨今の反核運動の高まり、こういった中で唯一の被爆国としての日本の立場、これもまた明確にすべきときではないか。政府の姿勢も一歩前進してもいいのではないか。こういうときだと、こう認識をしているわけでございます。
 しかし、先ほどの御答弁にもありましたように、政府の態度はなかなかむずかしいわけでございまして、こういう状況ですから、現実的には、現行法のもとでは、医療費や健康管理手当、諸手当などが支給されている、その理念は社会保障の考え方でございまして、これは被爆による健康被害、精神不安と一般の戦災者とをどう見るかということだと思いますけれども、これについての見解をもう一度ただしておきたいと思います。
#190
○政府委員(三浦大助君) 広い意味におきます般戦災者と被爆者とに対します施策のバランスの問題でございますけれども、原爆被爆者対策につきましては、これは被爆者の受けました放射線による健康障害という特別の犠牲に着目して、広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置を講ずべきであると、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし、基本問題懇談会の御意見に指摘されておりますように、原爆被爆者の受けた放射線によります健康障害が特別な犠牲というべきものであっても、国民的合意を得られるか、あるいはまた社会的公正を確保するという意味におきまして、原爆被爆者対策は、これは一般戦災者をも対象とする一般社会保障制度との間で均衡のとれた公正な妥当なものでなければならないというふうにも考えておるわけでございます。こういった趣旨から、こうした放射線による健康障害と関係なく被爆者年金やあるいは被爆者の遺族に弔慰金を支給するというようなことは、これは均衡を失するんじゃないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
#191
○渡部通子君 そこまではよくわかっております。これは繰り返しませんけれども、それでは国家補償的という「的」とか、あるいは広い意味の国家補償という「広い意味の」といった形容詞ですね、こういったものをなるべく薄めていって、国家補償の精神に立ち返る方向で今後とも施策を進めていただきたいということを要望しておくにとどめます。
 そこで、当社会労働委員会でも、毎年附帯決議を決議してその推進を図っておりますけれども、たとえば所得制限についてはなるべく撤廃をしてほしい、これは例年主張しているとおりであります。その第一歩としてようやく、医療特別手当、それから原子爆弾小頭症手当、これにかかわる所得制限の撤廃が実現しましたけれども、これはいわば近距離で被爆した人たちが対象となっておりますので、今後ともこの対象枠の拡大を図っていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
#192
○政府委員(三浦大助君) この各種の手当につきましての所得制限のあり方につきましては、いま先生御指摘いただきましたように、昨年の六月のこの社会労働委員会の附帯決議の趣旨に沿いまして、原爆医療審議会などの学識経験者の意見を聞きながらいま検討しておるわけでございますが、現在所得制限が課せられております健康管理手当あるいは保健手当あるいは特別手当は、これはいずれも放射線障害との直接的な関連が認められておりませんので、所得制限をいま撤廃するということは、これは大変困難なことであるわけでございますが、しかしこの問題につきましては、引き続き放射線障害との関連を中心に検討を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#193
○渡部通子君 じゃ、もう一点ですね。
 老人保健法が制定されますと、被爆者医療の問題、これがある意味では、広い意味における国家補償としての被爆者対策という意味では後退をするのではないかと思います。特に広島、長崎両県、両市に生ずる新たな負担は二十四億八千万円とも言われておりまして、これまでの原爆医療法の規定により県市の負担がゼロからこれだけの負担増について、改めて政府の考えをお聞きしておきたいと思います。厚生大臣は、連合審査の際におきまして、適切かつ十分な配慮をすると、こう答弁をされておりますけれども、もう少し具体的にどうされていこうとするのか、この点ただしておきたいと思います。
#194
○政府委員(三浦大助君) 原爆と因果関係のあります被爆者の認定疾病、これにつきましては、全額国庫負担で措置いたしていくわけでございますけれども、被爆者の一般疾病につきましては、一般の医療保障制度を優先的に適用すると、こういうことになっておるわけでございまして、したがって老人保健法の施行に当たりましては、老人被爆者には老人保健法が適用されることになるわけでございますが、被爆者を多数抱えます広島、長崎につきましては、老人保健法においてかなりな負担が新たに発生してまいっておるわけでございますが、この負担増につきましては、その実情にかんがみまして、先ほどの老人保健法案に付せられました附帯決議の趣旨もこれから尊重いたしまして、あるいはまた今後長崎、広島県市の実情も十分調査いたしまして的確な財政措置を講じてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#195
○渡部通子君 いま大変漠然とした御回答をいただきましたけれども、大臣よろしゅうございましょうか。
#196
○国務大臣(森下元晴君) 老人保健法が施行されることによって、いままでよりも老人を初め原爆の被爆者に対して不利な状況にならないようにいたしたいと、この一言でございます。
 ただ、自治体に対する負担の割合が、これは附帯決議でもございますように、大きな負担にならないように、またこの緩和のために努力をしていきたいということも、附帯決議に入っておりますけれども、あわせて申し上げたいと思っております。
#197
○渡部通子君 終わります。
#198
○沓脱タケ子君 それでは三法を一括してお尋ねをしたいと思います。
 最初に年金問題について少しお伺いをいたします。
 基本的には私ども、今日の年金の中でスライド分の一カ月おくれということについては、きわめて妥当でないという点を最初に申し上げておきたい。
 で、初めにちょっとお聞きをしておきたいと思いますのは、臨調の基本答申が七月の三十日に鈴木総理あてに出ました。この臨調の路線と年金制度の問題については、各同僚委員からもたくさんお聞きになっておられますので、私もその問題について若干お聞きをしておきたいと思います。
 まず初めに具体的なことについてお聞きをしたいんですが、臨調は、御承知のように、昨年の七月の第一次答申でも、「支出に関する個別的方策」の中で、「各種公的年金に対する事務費国庫負担の保険料財源への切換えを図る。」とありました。この方針は、この医療負担、医療保険、国庫負担へ求められていたわけですが、これに対して厚生省は、公的保険であるのでそういう立場はとれないという旨の御回答を出されておられました。私はこういうお立場というのは当然のことだと思うわけです。俗な言葉で言えば株式会社厚生省ではないんだから、またもっと言えば、私的な保険ではないわけですから、この立場は当然のことだと思うわけですが、今回基本答申が出たという段階で、厚生省のこの立場は引き続き不変のものであるかどうか、その点を確認しておきたいと思います。
#199
○政府委員(小林功典君) 社会保険は、先生も御案内のように、強制適用を原則としておりますし、従来から、創設以来、国が事務費は負担するということできたわけでございます。そこで、仮にこれを保険料財源に切りかえるといたしますと、一つは社会保険事業に対します国の責任をどう考えるかという問題がございます。それからさらに二つ目として、ただでさえ高齢化が進みまして保険料負担がふえていくという時代に、これに加えて保険料アップという形でまた負担増をお願いするといったのはどうだろうかという問題がございます。
 このような問題がございますんで、これは困難であろうという考え方にはいまでも変わりはございません。
#200
○沓脱タケ子君 そういたしますと、臨調基本答申がどうあろうと、今後も、国民に対して保険料に転嫁をするということは、当然保険料の引き上げになるだけではなくて、公的制度の私的制度への転落にもつながりかねないというわけですから、こういうことははっきり断るという立場を貫くというふうに理解しておいてよろしいわけですね。
#201
○政府委員(小林功典君) そのとおりでございます。
#202
○沓脱タケ子君 引き続きお尋ねをしたいのは、鈴木内閣は、昨年の臨調の第一次答申を受けて、昨年の臨時国会でいわゆる行革一括法を提出されました。この中で、年金について言えば、すべて年金の国庫負担を五十七年度から五十九年度の三年間四分の一繰り延べることが提起されてそういうことになったわけでございます。そこで、この繰り延べ総額というのはどのくらいの金額になるのか。総額というのはいわゆる元利合計ということになろうかと思いますが、どのくらいになるか、そのうち厚生年金だけでは元利合計はどのくらいになるか、ちょっと数字をお述べいただきたいと思います。
#203
○政府委員(小林功典君) 五十九年度までかかりますので、一定の仮定をおきまして推計をしなければいけないわけでございますが、五十七、五十八、五十九と繰り延べをいたします場合に、一つは五十八、五十九年度は直近五年間の給付費の平均値をベースにしまして推計しているというのが一つ、それからもう一つは、運用収入相当分の利率でございますが、これは年七・三%という仮定をおきましてはじいてみますと、元金と運用収入相当分を含んだ合計額でございますが、五十九年度で七千四百二十五億円でございます。
#204
○沓脱タケ子君 厚生年金もほぼ似たようなものですか。いまのは厚生年金だけですか。厚生年金だけで元利合計が七千四百二十五億円ということですね、推計ができると。
 問題は、この返済問題がどうなっているかという問題なんですね。この法律では、繰り延べることと返済するということは確かに書かれているわけですけれども、いつどういう方法で返すかという点では、これは昨年の臨時国会でも、ことしの予算委員会等でも、さんざん各方面から質疑をされましたけれども、一向にはっきりしないわけですね。
 大臣、常識的に言いましても、借金をするときに、必ず返します、だから金貸してください、しかし、いつ返すんだと言われたら、いや都合のつくときに返すんだなんてなことでは、一般の社会は通らないわけですね。こういう一般常識で通らないことですね、国は法律で強権的に借金だけして返済は不明では。これはどうにも理解に苦しむわけですが、大臣いかがお感じになっておられますか。
#205
○国務大臣(森下元晴君) この問題は、昨年特例法をつくっていただきまして、年金財政の安定を損なわないように、特例適用期間経過後、減額分の繰り入れのほか、積立金運用収入の減収分を含め必ず適切な措置を講ずることとされておるわけですが、特例適用期間経過後の繰入措置につきましては、その趣旨にのっとり、厚生年金等を所管する大臣として、その財政の安定に責任を持つ立場から確実に実施を求めてまいる所存でございます。したがって、いつ返すかということは、いまの段階で私から申し上げるのは保留さしていただきたいと思っております。できるだけ早く返すと、こう言わざるを得ないわけでございますけれども、まだそこまでの計画は立っておりません。
#206
○沓脱タケ子君 これは私はあいまいにしてはならないと思うんですね。
 これは局長にお聞きをいたしますが、これは単なる補助金ではないでしょう。法律で国が負担義務を負った国庫負担金なんですね。厚生年金保険法の第八十条で明確にされておりますように、坑内作業従事者は保険給付の百分の二十五、その他の者は保険給付の百分の二十、これを国庫が負担すると明記をされておりますね。そうでしょう。それは単なる補助金でもないです、国庫負担金なんです、法律に基づく。それを勝手に借りて、まだいつから幾らずつ返すかわかりませんてな話は、こういうことは国民にとっては非常に不信を買いますよ。片方ではそういうことをやっておって、片方で大変な厳しい年金の受給状況の中で一カ月おくらすのはまあまあてなことでは、これは国民の当然不信を招くことは明らかだと思うわけです。
 そういう点で、これはひとつ大臣きちんと詰めていってもらわなきゃならないと思いますが、今後どういうふうにお詰めになりますか。財政事情は六十年になったって、好転するどころか、もっと厳しくなってくる状況はもうすでに明らかですね。そういう中でどういうふうに話をお詰めいただくのかというのは国民のきわめて注目をするところなんですが、いかがでしょう、今後の課題として。
#207
○国務大臣(森下元晴君) お説のとおりで、これは国民の信頼を得るかどうかという非常に大事な問題でございまして、いいかげんにするつもりはもちろんございませんし、三年間の期間があるわけでございますから、その間に返済をできるだけ早くして年金財政に迷惑をかけないようにいたすという方針であることはもうはっきりしております。ただ、先ほど申しましたように、年度計画を立てろと言われますと、まあ少し待ってくださいと言わざるを得ないという現状でございます。
#208
○沓脱タケ子君 時間がありませんから、余り突っ込もうとは思っていないんですけれども、年金制度への国民の信頼感というのはきわめて大事だと思うんですよ。特に二十年から三十年、四十年と長期にわたる長期契約制度でございますから、信頼感がなかったらもう話にならないという点が一番問題だと思いますので、そういった点では、国民の不信を招かないように大いに努力をしていただくことを重ねて御指摘を申し上げておきたいと思うんです。それから国民の信頼という点では、特に年金制度の長期安定ということですね、長期的な安定というものがなければこれまた信頼性というのは出てこないわけでございます。
 そこで、厚生省は、財政再計算期は法律上は六十年だけれども、これを早めたいと。かなり大幅な年金制度の改正をということで審議会の厚生年金部会で検討してもらっておりますね。これはいろいろとすでに論議も出てきたところでございます。かなり大幅な改正をやりたいということでございますが、この大幅改正に関してでございますけれども、これは年金の現状についてなんです。
 臨調の方針、これは私どもから言わせれば、ずいぶん好きなことを言っていると思いますが、現在のわが国の社会保障は一応の水準に達しているという認識から出発をしているんですね。これは私は誤解を与えるのではないかというふうに思います。すでに皆さんの周知のように、老齢福祉年金は月に高い方で二万五千百円ですね。
 山口年金局長が「週刊社会保障」誌で述べておられるのは私全くそのとおりだと思うんですね。五月十日号にお述べになっているところを見ますと、給付水準のところで、「厚生年金の現状では平均で、昨年の九月で十万八千円になっている。しかし、全部がその程度の年金をもらっているならまあまあであるが、加入期間別にみると二十年未満加入者の平均が七万円、二十〜二十五年未満加入者で九万円といずれも十万円を割っている。しかも、この人たちの数が約六割を占めている。国民年金に至っては、現実に出ているのは二万円台ばかりで、西欧に遜色ないどころの話ではない。まして、こちらの方が五百万人と多い。受給者の実感からいって、西欧に遜色ないなどといわれたら反発を感じるわけである。」というふうなことをお述べになっておられますが、全くそのとおりだと思うわけですね。
 そこで大臣、私はわが国の年金の現状がこういう状態だという現状認識から出発しないといけないと思うわけで、その点は大事ではないかと思いますが、いかがなんですか。そういう状態だから
 一カ月おくらすんだ。これは見過ごせないんだということがあるんですよ。いかがですか、現状認識。
#209
○国務大臣(森下元晴君) 年金の水準を考える場合には、現在支給されておる年金制度における支給額の問題と、それからいまの制度で成熟化した場合の支給される額と両方考えないとこれいかぬと思います。
  私どもが世界的水準に達しておると言うのは、このままで成熟化していった場合にかなり給付率もよろしいということを予想して言っておるわけでございます。したがって、今日いただいております、給付されております年金の額は、まことに少ないということも事実でございまして、これが生活の足しになるかどうかということになってまいりますと、これはそうでございますと言えないような、まことに微々たる金額でございますが、これを率直に申し上げますと、これは成熟度が違いますから、しかし制度そのものは私は遜色はないと。ただ、二十年後、三十年後、四十年後における人口動態等のこともよく考えて、ここらあたりでひとつ見直して、長い間国民から信頼されてこの制度を続かさなくてはいけないと、こういうことは考えておるわけでございます。
#210
○沓脱タケ子君 時間がないので余りお聞きできないんだけれども、現状認識でどんなふうになっておるかという一例をちょっと申し上げておきたい。
 老人の生活実態と年金の関係で、これは大阪府下にある法人の軽費老人ホーム、定員五十人で現員五十人というところなんですが、そこの受給実態をちょっと調査してみた。そうしますと、五十人中老齢福祉年金受給者が二十二名、国民年金の方が八名、それから厚生年金が六名、通算老齢年金が四名、その他恩給だとか遺族年金の方が一人、一人ですが、こういうことになっているんです。
 一方、その利用料を見てみますと、国の徴収基準によりますと、基本的な利用料というのは、生活費利用料が五十七年度一人一カ月三万八千三十円、事務費の利用料が五十七年度同じく一人一カ月四千二百円、合わせて四万二千二百三十円ですね。年間利用料は冬季加算を含めますと五十一万四千二百六十円になる。
 ところが、これを見てみますと、老齢福祉年金は月に二万四千円でしょう。それから上がって二万五千百円ですわね。国民年金の八人の方の収入を見てみますと、年額で二十七万四千八百円、一番高い人で三十五万円あるいは三十四万三千五百円というのが高い方なんですね。厚生年金では、これは中には九十万、九十一万幾らという方がいますけれども、五十四万円あるいは六十八万円、少し高くても七十五万円。通算老齢年金の方も一番多い方で七十二万円という程度なんですね。そうなってまいりますと、これは福祉年金のお年寄りは当然のことですが、国民年金受給者も家族からの仕送りなしでは老人ホームの必要経費が賄えないという状況なんですね。厚生年金受給者でも大半が必要経費とんとん。あるいは必要経費とんとんというんですけれども、確かに食べて寝るということだけでとんとんなんですね。したがって趣味とか娯楽、嗜好、旅行や買い物なんというようなことはできない。一生営々として働いてきたお年寄りの生活実態なんですね。ですから、こういう状況ではたとえ一カ月でもおくらしてやるのは酷だというのが率直な感懐でございます。そういう点の実態を申し上げておきたいと思うんです。
 それから時間の都合がありますので、次に年金の支給開始年齢の問題についてちょっとお伺いをしておきたいんですが、これにつきましては、支給開始年齢六十五歳の引き上げについては、各方面からの御意見がたくさん出ております。国民から見ますと、長いこと掛金掛けてきて六十歳になってやっとと思うと、これが延長される心配、あるいはこの給付水準の限界明示などという問題でどうなるんだろうかという心配、あるいはさらに掛金が高負担ということで上がってくるのではないかということで、大変肌寒い長期展望ばっかりが目につくという状況なんですね。
 そこで私はお伺いをしておきたいんですが、こういう賃金も上がらない、減税もストップされたままという現状で、高負担だけが先行するというのは不信の一つになってくるであろうと思う。臨調でも、第一次答申も基本答申でも、支給開始年齢の引き上げというのを強調しておりますが、私はこれはきわめて無責任だと思うわけですね、端的に言いまして。支給開始年齢の引き上げについては、五十五年改正に向けて、五十四年度でしたね、国会でも問題になったわけですが、これは修正削除されたわけですね。
 そういういきさつから見まして、私はこれはきわめて問題だと思っているわけですが、特にあのときに、前回の国会で問題になったときに修正削除をされた理由というのは、いわゆる高齢者の雇用確保というのができないのではないか、いまの現状では。それが一つだったと思うんですが、今日新たにこういうことが言い出されてきておりますけれども、あの当時と比較して、雇用の安定的な確保というのができると考えられるでしょうか。だって失業者はもう最高でしょう、最近ではね。高齢者雇用どころの騒ぎじゃないというところにだんだん行きついてきているわけですけれども、そういう点はいかがお感じになられますか、大臣。
#211
○国務大臣(森下元晴君) 支給開始年齢を引き上げていくというようなことに対する御心配でございまして、一番いいのは、元気で長生きをされて、しかも適当な仕事があるということが一番いいと思うんですが、そうなかなか簡単にはいかないのが現実でございます。
 しかし、年金の受給年齢を見ましても、五十五歳の方もあるし、六十の方もあるし、六十五歳の方もございまして、これもまちまちでございまして、この均衡という点も実はございます。それから定年制の問題等も出ておりますし、そういう問題も含めまして、結局勤務をやめた、仕事をやめて年金をいただくまで何年間空白があるというようなことでは困るわけでございまして、そこは連動さすようなことでなければならぬと思います。そういうこともよく考えて、雇用の問題、それから定年制の問題等、それと横並びの問題、よくそういうことを考えまして、あるいは支給開始の年齢についてもよく検討しなければいけない、考えなくてはいけないと、このように思っておるわけであります。
#212
○沓脱タケ子君 関連してちょっと局長に聞きたいんですが、これを六十五歳支給に仮にした場合に財政効果はどの程度ありますか。
#213
○政府委員(山口新一郎君) ざっとしたところで、ほぼ一割程度ではないかと思います。
#214
○沓脱タケ子君 五歳も延ばしたら、たくさん財政効果があるんかと思ったら、一割程度だとおっしゃるわけでしょう。
 在職老齢年金制度もあって、みんな六十歳からもらってないんですね、現状でも実際には。だから、そういう点では、成熟すればこれはもっと効果が減殺されるんではないかというふうに思うんですね。だから私は、大臣は、雇用の問題あるいは定年の問題、そういった問題と横並びの問題で、年金が有力な老後保障、唯一の老後保障と言える問題だから、そういう点を考えて慎重にとおっしゃっておられましたが、雇用の問題、定年制の問題、財政効果だって大したことないということになれば、支給開始年齢を延ばせ延ばせというふうなことを各方面で言われているけれども、実際には国民の不信を招くだけで、財政的な効果は大してないんだという点は、厚生省はPRというか、知ってもらって、対応についても特に慎重に対処するべきだと思いますが、いかがですか。
#215
○政府委員(山口新一郎君) おっしゃるとおりだと思います。
 開始年齢の問題は、年金制度単独で物を考えるべき性格ではないわけでございまして、全体の社会経済情勢の中で、年金制度がどこの役割りを持っておるのかということを前提に物を考える必要があると、こういう基本認識で私どもは考えております。したがいまして、最近では私どもは余り六十五歳にしなきゃいかぬということは申しておるつもりはございません。
#216
○沓脱タケ子君 いや、臨調答申だとか、基本答申に出ているんですからね。国民は大変敏感なんです。だから、そういうのはよく知らない方々がそう言っているんだけれども、担当している厚生省ではこういう考えだということをもっと明らかになさる必要がある。同時に、慎重な対処を図っていくということがきわめて大事だということを申し上げているわけです。国民は不安になっているんですからね。その辺のことなんです。
 時間がありませんので、私、障害者の関係で一つお聞きをしておきたいのは、身体障害者福祉審議会がことしの三月二十九日に、「今後における身体障害者福祉を進めるための総合的方策」というのを大臣に答申をしております。これについて一点だけお聞きをしたいんですが、この答申は、「身体障害者の範囲に関する検討課題」として四点を挙げております。そのアの項に書かれておりますが、「現在、内臓については、心臓、腎臓及び呼吸器の機能の障害が法の対象とされているが、これらとの均衡上その他の内臓の機能障害についても検討する必要があろう。この場合、医学の進歩等を考慮する必要があるが、人工臓器の使用者は法の対象とする方向で検討されてよい。」というふうに述べられておるわけですが、ここで言う人工臓器の使用者とはどういう方々ですか。
#217
○政府委員(金田一郎君) ただいま先生言われましたのは、いろいろその他にもあろうかと思いますが、審議会でいろいろ御議論がございましたのは、人工肛門、人工膀胱でございまして、その他人工腸管その他についても、いろいろ世間で問題になっているように承知いたしております。
#218
○沓脱タケ子君 そうしますと、この答申の具体化ですね、これは法律の改正が必要だと思いますが、今後のスケジュールはどういうお考えですか。
#219
○政府委員(金田一郎君) 実は、この答申は、身体障害者福祉対策全般にわたる非常に膨大なものでございます。障害の内容につきましても、等級あるいは範囲等についていろいろ御意見も述べられておりますし、また身体障害者の施設の体系の再編成等、非常に幅広い問題がございますので、ただいま私ども、幸い今年度の予算でもお認めいただいておりますので、基本問題検討委員会というものを設けまして、早ければ九月ごろには発足いたしたいと、ただいま人選を進めているところでございます。
#220
○沓脱タケ子君 時間が余りないものですから、もう少し詳しくお聞きしたいんだけれども、そうすると、基本問題懇談会で検討されて、それで法改正を要するものは改正案をつくっていくということと理解してよろしゅうございますか。
#221
○政府委員(金田一郎君) それぞれの問題につきまして、法改正の要否も含めまして検討をお願いいたしたいと思っております。
#222
○沓脱タケ子君 それじゃ、その問題はそれまでにいたしまして、あと戦傷病者戦没者遺族等の援護法に関して若干お伺いしておきたいと思います。
 これはすでに各同僚委員からも言われておりますように、本法案というのはそもそも戦後処理に関する法案なんですね。しかも国家賠償的、国家補償的性格を持つという点で、こんなものを一カ月値切るというふうなことはどう考えても許されないというふうに考えるわけでございます。すでに審議の中でも出ておりますように、戦後処理というのは終わったと一方では言われているけれども、一方ではなかなか終わっていないというのも実情でございます。すでに大臣もおっしゃっておられたように、私どものところにも、ソ連に抑留された人たちから補償せよという御要望、また参議院では全野党が先ほど共同提案をいたしましたように、民間人の戦争犠牲者への補償要求、あるいは陸海軍従軍看護婦の処遇の改善、あるいは中国残留孤児問題などなど、私どものところにも数々寄せられておるわけでございます。
 未解決の国際問題の一つに領土問題というのもございますね。大臣の政党では北方領土の問題、北方領土の返還というふうに言っておられますが、わが党は全千島がそもそも日本の固有の領土だという立場でソ連とも折衝を重ねているところであります。
 私は、この際、中国孤児対策についてちょっとお聞きをしておきたいと思いましたが、これにつきましては、同僚委員がかなり詳しくお聞きをされましたので、時間の関係もあるのでこれは割愛をしたいと思うわけですが、一言だけ伺っておきたいと思いますことは、この問題をめぐって外交問題に発展しないように、わが国政府の責任というものを明確にして、孤児問題の対策というのは対処するべきではなかろうかという点を痛感しているわけです。
 たとえば、若干申し上げておきたいと思いますが、ああしてことしの春のように日本へ肉親捜しに来られた方というのは非常にラッキーな方なんですね。中国におられて、あれは日本人の孤児らしいと言われただけで、孤児だという確認を得るということだってなかなか簡単ではないというんですね。それを確認してもらうための費用だってずいぶんかかっている。そういうもろもろの諸問題というのは、私どもの目になかなか触れないところへまでずいぶん問題も広がっているようでございますし、そういった点では、養父母問題はもちろんのこと、中国孤児と言われている方々は明らかに戦争の犠牲者、悲惨な犠牲者でございますから、この人たちが母国の政府の処遇というもので本当に心温まるようになれるように、そういう対処の仕方というのはきわめて大切だと思うんですね。そういうことについてはそういうお立場を貫いていただけるかどうか、その点だけをお聞きをしておきたいと思います。
#223
○国務大臣(森下元晴君) 中国残留孤児の問題につきましては、人道問題でもございますし、また日本と中国との間の外交問題でもございます。この問題で余り中国政府に御迷惑をかけない、また不信感をかけないようにしなければいけないし、同時に中国の人民の方々にも日本という国の本当の真意を知ってもらわなくてはいけないし、手段方法を誤りますとこれは逆効果になりますので、日本の真意を知ってもらいたい、やはり戦後処理の問題の一環として真剣にまた慎重に、それで早急に解決をするように全力を挙げたいと思っております。
#224
○沓脱タケ子君 もう一つ大臣の所見を伺っておきたいと思いますことは、戦後処理問題を本当に誠意を持って解決していくという立場からも大事だと思うのでお聞きをしたいんですが、いま国際問題に発展をしてきております「侵略」か「進出」の問題ですね。これは詳しく申し上げなくても御承知のように、高校社会科の教科書の検定制度によって、中国大陸や朝鮮半島に日本軍が軍事侵略をしたのを「進出」などと書き改めたという問題で、中国、韓国、朝鮮民主主義人民共和国が強く反発をしておりますし、中国は正式に抗議を申し入れただけではなしに、文部大臣の訪中も拒否するというふうなことまで起こって、非常に激しい批判を浴びているわけでございます。
 私は、大臣、一国の教科書の記述をめぐってなぜこういう大きな批判が起こっているのかという点が大事だと思うんですね。抗議や批判をしている国の側は、それは民族が受けた悲劇として永久に歴史上に消すことのできない事実として日本の軍国主義の侵略行為を銘記しているし、絶対にあいまいにできないという感情が強いのは当然だと思うわけですが、大臣、あなたはどう思われますか。侵略が正しいと思われますか、進出が――企業が外国へ進出するのとはわけが違うんだけれども、進出でよいと思われますか。私は、アジア近隣諸国の国民感情を含めてお考えいただいて、どういうふうに考えられますか、一言伺っておきたい。
#225
○国務大臣(森下元晴君) 一般的な問題でございましたら、日本の場合はわりに自由に教科書がつくれまして、また自由に選べるわけですから、私は世界一自由な国であると、このように思っています。
 ただ、あの大戦につきましては、大変日本が迷惑をかけた、また中には誤解を受けておる点もたくさんございまして、三十七年といえども、まだまだそういう問題が風化はされておらないというふうに実は感じておりまして、これは教科書問題で侵略とか侵入とか進出という問題ではなしに、まだまだ日本に対する評価というものは根強く悪い意味で残っておるんだな、日本自身がいろいろああいう戦争を通じて御迷惑をおかけしたことについては非常に神経質にお考えになっているんだな、だから教科書といえども慎重に扱わなくてはいけないと、このように私、実は考えております。
 そういうことで、いろんな歴史的な過程の問題は、百年、二百年、五百年たてばわかりませんけれども、いまのような時点においてはやはり慎重にやるべきである。しかし、厚生大臣でございますから、余り歴史の評価について申し上げる立場にないわけでございますから、余り深いところまで発言は控えさしていただきたいと思っております。
#226
○沓脱タケ子君 厚生大臣ですから、文部大臣にお聞きするようなことを聞こうとは思ってないんです。ただ、私は、非常に大事だなと思うのは、国家みずからが偽善を行うということが、児童や青少年、国民にとってどれだけ誤った影響を与えるかということ、これは私ども自身が戦前の教育を長々受けてきた中で痛いほど感じております。そういう点で教育は真実を教えなきゃならないという立場は、ここは文教委員会じゃないからそんなこと言おうと思ってなかったんですが、大臣がそういうふうにお答えいただいたので付言をしておきたいんです。
 たとえば七月二十九日の毎日新聞の夕刊の「まっぴら君」というところに書いてある。何かお店でウナ重かウナギどんぶりかを食べている。「「侵略」が「進出」……この伝でいけば「食い逃げ」は「脱出」……とこうなる」と。こういう指摘、実に風刺のきいたいい漫画なんですが、こういうのが出てくるようなことでは子供たちの教育にもどういう影響を与えるかという点を心配をいたします。
 私、時間がもうありませんので、最後にお聞きをしたいのは、これは第二次世界大戦、特に満州事変と言われる時点から含めまして、日本人が約三百十万人の犠牲が出ているというのは、これはいただいた資料の中にもございますが、こういう状況の中で、しかもこれはもう時間がありませんで申し上げませんけれども、たとえば最近のベストセラーになっております森村誠一氏の「悪魔の飽食」を見ましても、いかに残虐無道、非人道的なことをやってきたかということがいよいよ明らかにされているわけでございます。
 これは大臣、知っているか知らないかとかという以前の問題ですね。現実にそういうことが明らかになっているわけですが、私は侵略か進出かなんていうようなことを持ち出したのは、援護法に対処する政府の態度が、戦後処理というのは何らかの形で被害を受けた日本人に対する戦後処理なんですよね。そういうことに対処する場合に、本当に侵略戦争の中で他国に迷惑をかけたという点を謙虚に反省をし、本当に責任を感じて国内外で対処するという政府の姿勢なしには、いろいろと問題が起こってくるであろう。片や進出、侵略が問題になるように、片方で引き上げを一カ月おくらせるというふうなことは、軌を一にして出てきているというふうにしか見られない。そういう点は、国民の不信を買うであろうというふうに思うわけです。そのことが原爆の方々に対してまで一カ月おくらせるというふうなことと相まって、こういった点についてこそ、被爆者に対しては被爆者援護法を当然つくる時期になってきているんだし、おくれ過ぎているわけです。また戦傷病者に対する援護に対しても、そういった態度を貫くべきであるという点を強く要請をしたいと思うのですが、最後に大臣のお答えを伺って終わりたいと思います。
#227
○国務大臣(森下元晴君) 御趣旨はよくわかりますが、いろいろ過去の経緯等もございまして、国家補償的な扱いをさしていただいておる。また原爆の被爆者に対する私どもの考え方も同じでございます。しかも人類史上初めての悲惨な犠牲になったわけでございますから、世界じゅうが核兵器で充満し、平和平和と言いながら、やっておることは核の拡散である時代でございまして、日本の非核三原則、核を持たないという平和に徹する日本の態度、また総理等の発言が世界じゅうから非常に評価されると同時に、日本の考えるとおり世界が動いてもらいたい。それが私は大戦で迷惑をかけた日本としてやるべきことである。われわれの世代のときにそれをやっておくべきである。こういう反省の上に立ちながら、また私どもの子孫のためにも子孫が卑屈にならないように、いい日本を残していくために、私どもは戦後処理の問題を通じて、ここらでぴしっとしておく必要がある。このように実は思っておるわけであります。
#228
○柄谷道一君 一括審議されております戦傷病者戦没者遺族等援護法及び原子爆弾被爆者特別措置法の問題につきましては、私は昭和四十九年以来何回にもわたって発言を求めております。しかし、各年度で全会一致決定されました附帯決議を反すうしてみますと、そのすべてが満たされたという状態とはとうてい言えないと思うわけでございます。厚生省といたしまして、もう一度この十年来の国会附帯決議、これを読み返していただきまして、速やかにこの国会の意思を満たす強力な行政展開を行っていただきたい。このことを冒頭要請いたしまして、本日は時間の関係がございますので、国民年金法等の一部を改正する法律案を中心に御質問をいたしたいと、こう思います。
 去る七月九日、閣議了解事項として、来年度一般会計予算の概算要求につきましては、いわゆるマイナスシーリングの枠が設けられた、こう承知いたしております。現在これをもとにいたしまして各省概算要求案を作成中のことと思いますが、五十七年度政府予算案作成の過程において、大臣以下厚生省が強力に大蔵省と折衝をされた実績は私も承知いたしております。しかし結果的には、実施時期をずらすとか、または所得制限を強化するなどの後退をもたらしたということもまた否めない事実であろうと思います。
 マイナスシーリングということになりますと、来年度予算編成で財政的な圧迫要因が一層強まることは必至でございます。こういう状態の中で、私は老後、疾病、雇用及び住宅といういま国民の抱いております四つの不安を行政として除去するということは、臨調の言う活力ある福祉社会というものの少なくとも基盤となるべきことではないか。防衛費及び国際協力等につきましては、政府の重点施策であるということのゆえをもって、このマイナスシーリングの範疇から外されております。私は厚生省予算も聖域であるとは考えませんけれども、少なくても政府の重点施策の項目としてこの維持及び向上というものは期せられてしかるべきである、このように考えるものでございます。四つの不安のうちの大きな老後、疾病という二つの不安を解消すべき任務を負う厚生大臣といたしまして、今後の所信をまず冒頭承っておきたいと思います。
#229
○国務大臣(森下元晴君) 私は、国家安全保障、いわゆる国の安全のためにはもちろん防衛力と申しますか、自分の国は自分で守っていかなくてはいけない、国力に応じたそういう力がなくてはいかぬと思っておりますけれども、それと同時に守るにふさわしい国である。そのためには、社会保障、社会福祉制度を通じまして、いまおっしゃいました老後の幸せのためにいわゆる健康で所得が保障されておる、それから公衆衛生、環境衛生等を通じて快適な生活ができる。これが国を守ろう、この国のためにがんばろうという活力の上に国家の永久の繁栄があると、このように思っておりまして、臨調でもまた長期懇でも言っておりますけれども、社会保障制度はいわゆる自由国家を守るための不可欠の要素である。また社会保障というものは国の発展のかぎにならなくてはいけないというふうに実は言っておりまして、そのとおりだと実は思っております。これからそういうような厚生行政を通じまして国家経営をやるべきであると固く信じておるわけでございます。
#230
○柄谷道一君 今後急速に高齢化社会が訪れてくるわけでございますが、とりわけ老後の所得保障の支えとなるべき年金の役割りが一層今後重大になってくる、これはもう必然でございます。ところが、最近国民の中で、年金の将来についての不安感が高まっておるということも否定できない現実でございます。私は、このような不安感の高まりというものは、ひっきょう年金制度に対する確固たる将来展望を欠いているというところにあるのではないかと、こう思います。基本年金構想など、この制度の統合一元化の方向が多く打ち出されているわけでございますけれども、年金の抜本改革に取り組む大臣のスケジュール的な発想を含めたお考えを承りたい。
#231
○国務大臣(森下元晴君) 年金の問題は、将来の問題であると同時に今日的な問題でございます。
 先ほども質問がございましたが、二つございまして、年金の現在の制度がどうなっておるか、いわゆる成熟化した場合にどうなるかということと、現在現に給付されておる方々が幾らもらっておるか。これはまことにお粗末な実は金額、もっとも年限が非常に少ないわけでございますから、要は負担に対してどれだけの給付があるかということの今日の問題であると同時に、二十年後、三十年後こうなるんですよという一つの方向、方針を出さないと、特に二十代、三十代の方々は安心して掛金を掛け得ない。しかも現在は約一〇%ぐらいの年金に対する負担金でございますけれども、いずれこれが二〇%に上がるであろう。また健康保険等の掛金を入れると大体三九%ぐらいになって、税金と合わすと五〇%近い負担金になる。給料の半分は税金、掛金でなくなってしまうというような心配が実はございますし、また一部民間のいろんな関係の保険会社等においては、公的な年金だけでは十分生活できませんよ、だから民間の保険にも入ってくださいというようなこともございまして、非常に心配をしておることは事実でございます。
 そういう意味で、厚生省としても、五十九年に一応年金を見直そう、そして今日の問題から将来の問題について、もちろん女性の方々の年金問題等も含めまして、一つの見直しをしようじゃないかというときに、ちょうど臨調でも年金の一元化の問題、また長期懇でも年金とはどういう性格であり、どういう使命を持っておるんだということも示されておりまして、ちょうどすべてのタイミングがそれにそろってくるんじゃないだろうか。だから思い切って、年金問題を通じまして、安心して健やかな老後を送れるように、また若いうちからでも将来の老後に対する安心感を持って、そして仕事に励んでいただけるように、これが年金に対する厚生省、また私の考え方でございます。
#232
○柄谷道一君 大臣のお考えは伺いましたけれども、当社労委員会で、昭和五十四年八十七国会、五十五年九十三国会、五十六年九十四国会、ここ三年間を見ましても、この委員会で附帯決議の第一番目に、公的年金制度全体を通じて、各制度間の整合性及び人口の老齢化に伴う年金受給開始年齢と雇用との連動も配慮しつつ、速やかに年金制度の抜本改善を図れ、こういうことが決議されているわけでございます。抜本改正を急ぐべきだということは、私は院の総意であると言ってもこれは差し支えございません。
 しかも各種審議会や懇談会で、私がちょっと調べましただけでも、昭和五十五年八月三十日、現代総合研究集団が「福祉社会の実現のために」という提言を行いまして以来、企業年金研究会、賃金研究会、日本国民年金協会、国民年金研究会、厚生省の障害者の生活保障問題検討委員会――これは中間報告でございますが、経済審議会長期展望委員会の公的部門の役割小委員会、経済審議会の長期展望委員会、第二次臨調、政策推進労組会議、企業年金研究会、共済年金制度基本問題研究会、そして七月二十三日の社会保障長期展望懇談会と、多くの提言はもう出そろっているわけです。各政党も年金問題の抜本改革に対する考え方もすでに打ち出されております。
 私は、こういう事実を眺めてみますと、この長期展望に立つ抜本改革については、いまやもう議論する時期は過ぎた、これらの多くの提言というものを総合して、大臣がいかに英断、決断を下して、その方向を示すかということにかかっていると私は判断するものでございます。
 したがって、私はこの際、その時期、いま五十九年と言われましたけれども、私はその時期は五十九年という時点よりもむしろ早めるという意欲的な姿勢でこの問題に取り組むことが至当ではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
#233
○国務大臣(森下元晴君) 五十九年ということは一つの目途でございまして、できるだけ早く実はやりたい。また五十九年からやるにしても、早くできるだけ目標また方針、それから考え方を申し上げることがより親切であるし、また安心をしていただける、このように思っております。
 いろいろ懇談会とか研究会がございまして、いろんなカラーで前向きに年金についての御意見が出されたことは私、結構だと思うんですが、これが集約されまして、先ほどおっしゃいましたように、雇用の問題から定年の問題、いろいろ連動を――おやめになってから年金をいただく、これは連動しなければ意味がございませんし、それから一元化の問題、いろいろ格差がございまして、そういう問題も含めて、社会保障制度ですから、お互いに助け合うということと同時に、給付される金額的なものがある程度平等でなくては、ここにかえって不公平、不満が生まれるというようなこともございまして、そういう意味も込めて、年金の一本化と同時に年金給付の時期の問題、また時期が示されますと定年制の問題、それから雇用の問題との関連、いろんな要素が絡み合いますし、また一本化の問題も厚生省だけの問題ではない、大蔵省また総理府の問題もございますから、厚生省だけがひとり歩きするわけにいきませんし、幸い国鉄の問題と年金問題が内閣で取り上げられまして、いよいよ出発しようということでもございますし、私も厚生大臣として、その中でわれわれの考え方を大いに申し上げたい。もうすでに実行の時期であるというようなことを、いまおっしゃったようなこともそういう中で申し上げて、いまさら議論の段階ではない、もう実行の段階であるということを申し上げていきたい、このように思っておるわけであります。
#234
○柄谷道一君 共済の統合問題も、これは当面の過渡的措置ということにすぎません。これを仮に統合しても、私の承知する範囲では、昭和六十年になれば、統合した共済年金そのものが今度は財政危機に陥る時期が来る。これはわずかのつなぎの対策としか受けとめられないわけですね。国民の合意を求めなければ、年金の統合化というのはできる問題ではありません。したがって私は、厚生省当局が最終案まで詰めて出すというんではなくて、やはりその方向、大綱、こういったものを逐次打ち出しながら国民合意の形成に努め、そしてこれと並行して審議会の審議が進んで、最後の、建物で言えば壁が塗られる、こういう段取りをぜひ大臣の方でも御配慮をいただきたい、このことを要望しておきます。
 それから公的年金制度の中でも、被用者年金と比較いたしまして、国民年金は被保険者数が最も多くて二千七百六十万人を占めております。にもかかわらず、その年金制度は最も条件が劣悪である、こう言っても過言ではございません。今後の国民年金についてどういうお考えでその水準を高めようとしておられるのか、お知らせをいただきたい。
#235
○政府委員(山口新一郎君) 国民年金につきましては、もう柄谷先生よく御存じのように、当初から、厚生年金に対しまして、二十五年の金額と厚生年金の二十年の定額部分とが歩調が合っていたわけでございまして、その点は現在の段階でもほぼ相似通っているわけでございます。
 で、条件が劣悪というお話でございますけれども、制度が発足いたしましたのが一番遅かったわけでございまして、その意味では、現在発生しております受給者は、加入年数がまだ短いわけでございまして、一番長い人でも十六年分の年金ということになりますから、そういう意味では、すでに三十年を超えるような加入期間を持っている人が出ております厚生年金に比べますと、実際に出ております年金額はまだ低いわけでございますが、将来制度が成熟いたしますと、すべてが四十年年金になるわけでございます。三十六年に始まりましたから、七十六年、五年待期で八十一年から発生いたします年金はすべて四十年年金でございます。四十年年金になりますと、五十五年改正の段階で六万七千円でございますから、現時点では七万円を超えているわけでございます。これが夫婦それぞれに出るわけでございまして、それほど私どもは劣悪ではないと考えております。
 むしろこの水準も、その他の被用者年金と同様に、次の改正では、合理的なレベルというものをもう一回探ってみる必要があるんじゃないか、こういうふうに考えているわけでございます。
 ただ、負担の方につきまして、おっしゃいましたように、定額制の保険料でございますので、そういう意味では、所得比例の負担をお願いしております被用者年金に比べまして非常に不利な条件を持っております。そこのところは年金の仕組みとしてはむずかしい要素を抱えているわけでございます。
 所得比例制がどうかというような御意見もよく出るわけでございますけれども、実際にはその所得の把握の問題につきまして、その事務体制あるいは定員、経費、そういうものを考えますと、なかなか簡単な問題ではないわけでございます。従来からそういう御提言もありましたけれども、いままでのところ、なかなかいい方法が見つからないできているというのが現状だと思います。
#236
○柄谷道一君 いま御答弁の後段の方で、所得比例制の問題について、所得の把握の問題、事務手続の問題等なかなか問題がある、こういうお答えが出たわけでございますが、私は、この国民年金制度の給付水準をこれから高めていこうという場合に、その方法としては、現在任意加入の所得比例制を強制加入方式に切りかえる。その場合、低所得者については法定免除もしくは申請免除の制度を配慮する、こういった方法を併用していかなければ、現行の定額制を基盤として問題の処理を図っていくということでは、この給付水準を飛躍的に向上せしめるということは、私もいろいろ昔から勉強している者の一人としては、なかなかむずかしい、こういう考えを依然として持っておるものでございます。その点はいかがですか。
#237
○政府委員(山口新一郎君) おっしゃいました所得比例制といいますのは、現在の付加制度の部分だと思いますが、これも実は仕組みは定額で仕組んでおりまして、加入だけが任意になっております。それを比例制にする場合でも、所得の把握ということが問題になります。一番簡単なものとして考えられますのは、税の根拠になっております所得でございますが、その税の根拠になる所得の把握についていろいろ世上問題があるわけでございまして、それをそのまま使っていいものかどうかというのが一つ大きな問題がございます。さらに、一人一人につきましてそういう把握をしなきゃいけませんので、この点は非常にむずかしい。
 そうなりますと、いまおっしゃいましたように、任意制でどうかということになります。任意制は、本来、社会保険としては余り好ましくないものであると私は考えております。といいますのは、途中になりまして、どうも負担に耐えられないからやめたということでどんどん脱退するというような仕組みでは、制度として安定しないわけでございます。そういうところに比例制は非常にむずかしさがあるところでございます。ただ、せっかくの御提言でございますので、私どもの検討の参考にさせていただきたいと思います。
#238
○柄谷道一君 この問題につきましては、きょうの質問時間が短うございますから、改めて機会を得てさらに私の考えを述べまして、検討の資としていただきたいと、こう思います。
 そこで、公的年金の同一制度内の併給調整という点を見ますと、共済組合が一番よくて、厚生年金がこれに続き、国民年金はほとんど併給できないという仕組みになっております。これはたとえば老齢年金と障害年金、老齢年金と遺族年金、障害年金と遺族年金、遺族年金間、こういった問題につきましても、後者の三つは共済では完全併給でございます。ところが、国民年金はこのすべてが併給なしでございます。また厚生年金を見ますと、後者の三つが一部併給と、こういう形になっているわけですね。これは調査室が調べました参考資料の三十二ページから三十三ページに併給実態が記されておりますから、これは間違いのない現実でございます。
 そうして考えますと、私は、年金の保障の意義、受給者間の公平という観点からいたしまして、これらを是正しバランスを図るということが必要ではないかと、こう思うんですがいかがでしょうか。
   〔委員長退席、理事安恒良一君着席〕
#239
○政府委員(山口新一郎君) その問題は御指摘のような問題がございます。
 ただ、私どもが担当しております厚生年金と国民年金につきましては、基本的には同じ考え方で極力一人一年金という方向で従来から調整をしてきているわけでございます。一部厚生年金で併給があるように見受けられますけれども、これは遺族年金等金額の低い場合に一定限度まで最低保障をするために部分的に併給が生じますけれども、基本的な考え方は一人一年金ということでございます。
 それに対しまして、共済組合の方は、依然としてまだ一保険料一年金という考え方でございますので、御自分の老齢年金をもらっていらっしゃる方が配偶者の遺族年金ももらえるというような形になっております。この点は、私どもとしては、従来から共済組合の関係の方に同じように歩調をそろえてほしいということはお願いをしておりますけれども、いままでのところ実現を見てないというのが実情でございまして、将来は一元化問題なんかが問題になります一つの大きな理由でもあるわけでございまして、極力限られた財源を必要なところへ給付を持っていくという考え方で、一人一年金ということで整理をしていくのが本来だというふうに考えております。
#240
○柄谷道一君 一人一年金の原則がいいのか、一保険料一年金といいますか、その原則がいいのか、これは大いに議論の両者あるところでございますが、しかし同じ公的年金の中で、この併給問題についてその原則が全く異なった立て方がされているということは、これは明らかに、大臣、矛盾だと思うんですね。私は、水準その他、大きな意味での統合調整の前に、こうした公平の視点からバランスを図るということについては、もっと厚生大臣と大蔵大臣あたりがひざを突き合わせてこの問題の解決を模索する、そういう熱意がなければなかなかこれは解決できる問題ではないと、このことを指摘いたしておきます。大臣、また御努力をいただきたいと思うんですが、よろしゅうございますか。
#241
○国務大臣(森下元晴君) 社会保障制度でございますから、いわゆる社会的に公正、公平でなくてはいけません。それが併給があったりなかったりということは、非常に不平等でございますし、また不信感が伴うわけでございますから、社会保障制度の精神に反するというようなことで、いろいろ沿革、歴史等が違って、期待権とか既得権、そういう問題もございますけれども、できるだけ早くそういう問題を解消して、そうして一年金になるようにしたいと、このように思っておるわけであります。
#242
○柄谷道一君 この調整問題でございますが、労災保険の年金と厚生年金とのこの調整でございますけれども、これも所管は労働省ですけれども、労働者災害補償保険法の附則四十五条に、「労働者の業務災害に対する年金による補償に関しては、労働者災害補償保険制度と厚生年金保険その他の社会保険の制度との関係を考慮して引き続き検討が加えられ、その結果に基づき、すみやかに、別に法律をもつて処理されるべきものとする。」と。この附則ができたのが昭和三十九年ですよね。もう十数年、二十年近い期日が経過いたしておるんですけれども、この附則四十五条というのは今日まで形骸化されていると言っても過言ではないんですね。これは法治国家ですから、附則に定められたことは、ここに「すみやかに」と書かれているわけですから、その調整というものを実現することが法に忠実なるゆえんではないかと、こう思うんです。厚生省側の御意見を伺っておきます。
#243
○政府委員(山口新一郎君) ただいまの問題は、実はたまたまその改正のときに私が年金課の補佐をしておりまして、経緯をよく承知しております。労災を年金化するに当たりまして、財源が非常に厳しいので、厚生年金は生活保障部分を担当して、労災はその上に乗っかって損害賠償部分を持つというシステムにしたわけでございます。つきましては、その損害補償部分をどの程度にすべきかという水準を決めなきゃいけないわけでございますから、すぐはできないということでございますので、いまのような経過措置がついたわけでございまして、私としては、五十九年改正の際には改めてこの問題は労働省側に注意を促したいと、常々そう考えておるわけでございます。
#244
○柄谷道一君 常々考え二十年に近しと、ここらは考えられる期間がちょっと長過ぎるんではないかと思うんです。
 大臣、こういう条文があることは恐らく大臣は御承知なかったと思うんですね。しかしいまのようなことが実態でございますから、これは労働大臣と技術的に詰めておったんでは、両方とも問題があるわけです。この問題も、大綱については、政治的な決断というもの以外にこの附則を忠実に守る方向は容易に見出せないのではないかと、こう思いますので、この点は大臣ひとつお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#245
○国務大臣(森下元晴君) 私、この問題、実は知りませんでして、そういう二十年もそのままになっておったと、まことにこれは申しわけないというか、恥ずかしい問題でございます。そういう行政の、まあいい面もたくさんありますけれども、悪い面と申しますか、非常に遅滞して行政の効率が悪いということは、臨調あたりで今回いろいろ御指摘もあったし、この際行政改革をやりまして、そういう行政効率が上がらぬようなことはだめだというところに私は目的があると思うんです。
   〔理事安恒良一君退席、委員長着席〕
そういう意味で、心を新たにしまして、そういう問題を含めて行政がスムーズに行われるように、むだを省いてそういう問題を前向きに取り組むように全力を挙げていきたいと、このように思っております。
#246
○柄谷道一君 時間が参りましたのでもう一問だけにとどめます。
 いまの大臣の御答弁は、法治国家が放置する国家、いわゆる放置国家にならないように特に御配慮をいただきたい。
 スライド制については多くの委員から指摘されたわけでございますが、一カ月おくれた。まことに遺憾でございますが、ただ五%を下回った場合の特例スライドであるということは、これ注目する必要があると、こう思うんです。
 そこで私は、年金の実質価値を維持するために今後スライド率の五%をさらに低率に引き下げること、また外国のいろいろな資料も出ておりますけれども、物価スライドだけでなくて、賃金スライドも加味するという方法を採用すること、またスライドを四月からの予測スライドにするという方法を検討することなど、スライドの実施の時期をおくらしていくことを早める、これは当然ですけれども、実質価値の維持のために、ただ現行制度を踏襲するだけではなくて、新たな検討が必要ではないか。このことに対する御答弁を承りまして、私の質問を終わります。
#247
○国務大臣(森下元晴君) スライド問題につきましては、消費者物価が五彩以内の場合にはやらなくてもよろしいというようなことになっておりますが、特例的にずっと五%以内でもスライドは続けさしてもらっております。ただ、問題は実施時期がおくれまして、この点いろいろ御指摘されておるわけでございます。
 そういうことで、スライドの基準のとり方とかまた実施時期の問題につきましても、これも次の制度改正のときにあわせて検討課題として早急に詰めていきたいと思っておるわけでございます。
 以上です。
#248
○前島英三郎君 それでは、特に障害者の年金問題につきまして若干質問いたしますので、もうしばらくごしんぼうをいただきたいと思います。
 私は障害者の所得保障施策に関してお尋ねしてまいりたいと思うんですが、昨年来この問題の重要性は、当委員会を初め予算委員会などで重ねて強調されてきたところでございますけれども、またそれに対する政府の答弁というものは、その重要性を十分認識しているという趣旨のものでございました。それではどのように対処するのか。どうも答弁がずるずるずるずるとただ繰り返し、同じようなオウム返しであっては、大変生き急ぎしている障害を持つ人たち、特にまた最大公約数から切り捨てられている弱者に対しては、それは心ある答弁とは思えないわけであります。
 一つは、各年度の予算編成、法律改正の中でどのように努力をしていくかという面があります。五十七年度におきましては、例年よりも後退しておりますし、残念ながら評価することはできないわけでありますが、むしろこの障害者の多くは大変失望感さえ抱いておるのが現状でございます。
 もう一つには、総合的に制度の見直しをして、障害者の所得保障制度を新たな見地に立っていかに確立していくかという道がございます。この面におきましては、年金、手当あるいは生活保護、さらには介護等の在宅サービス、これらを総合的に検討して障害者の生活実態に見合った制度とすべきことを私どもは訴えてまいりました。厚生省といたしましても、その主張を受けとめまして、省内にプロジェクトチームをつくって検討してこられたわけでありますけれども、その検討は現在、第一段階を終わりまして、第二段階に入ったところであると伺っております。いわば検討の節目に当たりますので、この際検討の状況などにつきまして詳しく伺っておきたいと思うわけでございます。
 障害者の生活保障問題検討委員会というのがプロジェクトチームの名称でございますけれども、この検討委員会の報告が去る四月十六日付で出されております。そこで、まずこの報告書の性格及び特徴というものにつきまして伺っておきたいと思うんですが、どうでしょうか。
#249
○政府委員(正木馨君) ただいま先生のお話のございました検討委員会の報告は、本年の四月十六日に出されたものでございますが、この検討委員会の報告は、先生御案内のように、昨年の国際障害者年に当たりまして、特に障害者の生活保障問題の重要性にかんがみまして、省内にプロジェクトチームを設けまして、これは社会局、児童家庭局、年金局、非常に各局にまたがっております。横断的な問題として取り上げてプロジェクトチームをつくりまして、一年ばかり検討いたしまして、その検討結果を推進本部長たる事務次官、それから厚生大臣に御報告をしたという性格のものでございます。
 この報告書の内容につきましては、すでにごらんいただいておるかと思いますけれども、この際、障害者問題につきましての障害者対策の現状がどうなっておるのかというものを網羅的に調べました。さらに障害者団体等からの御意見がどういう点に集約されるのか、それを十分分析をしたつもりでございます。その上に立って、今後この問題を解決するためにはどういった手だてが考えられるだろうか。複数案になったわけでございますが、複数案を考え、さらにそれぞれの提案につきまして、一体乗り越えなければならない問題点がどういうところにあるのかということを分析したつもりでございます。
 要するに、この問題につきましては、いろいろむずかしい問題がございますが、国民的なコンセンサスを得ていかなければならないということで、現在この問題についての専門家会議を設けまして御審議を願っておるという段階でございます。
#250
○前島英三郎君 報告書を読みますと、現行の制度のあり方に対しまして、その問題点について指摘して、いまおっしゃるように吟味して、いろいろな意見が出されております。問題点の多くは、かねてから私どもも指摘していた点がかなり重なっておりますし、おおむね妥当な取り上げ方であろうというふうに思っているわけでありますが、そればかりか、厚生省内の検討委員会がみずからの行政施策のあり方に関しまして、大胆かつ率直にその問題点を認めているということは、大変評価できると思うんです。
 そこで、大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、こうした問題点の指摘あるいは現状に対する基本認識につきまして、厚生大臣としても同感であるか否かという点でございますが、いかがでございましょうか。
#251
○国務大臣(森下元晴君) 結論から先に申し上げますと、同感でございます。昨年は国際障害者年、十年間の行動計画を立てまして、総理が本部長、また私が副本部長ということで、世界の模範的な国になろうという非常に意欲満々で私どもやっております。
 それから福祉の見直しと申しますか、そういうことも同時にやっておりまして、その中で本当に必要な福祉には重点的にやっていこう、それが私は十年計画の骨子でなくてはいけないと思っておりますし、その中の中心は、重度の身体障害者たちの所得の保障問題でございます。老人問題とか、特に重度の障害者の保障問題これを全力を挙げて実はやりたいということでございまして、そういうことでいまおっしゃったことには同感であるわけであります。
#252
○前島英三郎君 大臣が評価されているということも、大変うれしいわけでありますけれども、検討委員会の報告は、幾つかの解決策の案を取り上げておりまして、その問題点を掲げておりますが、どのような方向でいくかにつきましては今後の検討にゆだねると、こういうぐあいになっております。「本問題については、より深く検討を進め、また、関係者はもとより、広く国民の支持が得られるように、専門家による総合的観点からの議論の場を設けることが必要ではないかと考える。」と、こう結んでいるわけでございますが、すでに専門家会議を設置して検討に入ったと聞いておりますが、この第二段階につきまして、どう進めていくのか伺いたいと思うんですが、どうでしょうか。
#253
○政府委員(正木馨君) 障害者生活保障問題専門家会議を厚生大臣からお願いをいたしまして、いわば私的諮問機関でございますが、五月に発足をいたしました。委員の先生方十五名で構成されておりますが、去る五月に発足をいたしまして、私どもプロジェクトチームの報告書を御説明をし、現在現状についての御論議、これから問題点についての御論議に入っていくわけでございますが、私どもの希望といたしましては、来年の夏ぐらいまでに御論議をいただいてというふうに思っております。
#254
○前島英三郎君 五月に発足しまして来年の夏ぐらいまでには議論をしてもらうということでございますけれども、何回かその中には熱心な議論もなされるだろうと思うのです。
 そこで、その専門家会議の役割り、性格についてお尋ねしておきたいのですけれども、特に法律的な裏づけを持たない検討機関であるわけで、その位置づけをはっきりさせておく必要があるのではないかと私ども思っております。身体障害者福祉審議会ではなく、なぜこうした専門家会議にする必要があるのかという点ですね。専門家会議がどのような権能を有するのかというような問題、メンバーの選任はどのような基準に基づいているのかというような問題、これらの点を含めまして、専門家会議の性格づけについては厚生省はどのようにとらえておるわけでしょうか。
#255
○政府委員(正木馨君) 専門家会議は、先ほど申しましたように、大臣の私的諮問機関であるわけでございますが、この障害者問題につきましては、先生御案内のように、関係審議会といたしましては、先ほど先生申されました身体障害者福祉審議会のほかに、児童福祉審議会であるとか、社会福祉審議会であるとか、あるいはまた年金に当然関連を持ってまいりますので社会保険審議会、国民年金審議会、厚生省関係でも数審議会にわたっておるわけでございます。
 そこで、具体的な法改正ということになれば、それぞれの審議会に諮問するということになりますが、まず厚生省としての腹構えをする上で、広く関係審議会の公益の先生方にお入りをいただき、そしてさらに労使の代表の方々、それから障害者の方も二名参加していただいておりますが、そういう十五名の先生方にざっくばらんにこの問題について御論議をいただく、私どもの出しました報告書についても十分たたいていただくということで、国民的なコンセンサスの得られる案づくりをしたいというのが、この専門家会議にお願いしているところでございます。
#256
○前島英三郎君 大臣の私的諮問機関でありますから、それなりの重みはあるだろうと思うのですけれども、往々にして、過去のいろんな経緯を見てみますと、何となくそうした検討委員会でお茶を濁すといいますか、何ら前進がないというような経緯があるだけに、非常に警戒せざるを得ない部分もあるわけでございます。私がよく耳にいたします心配は、審議会の答申とか意見具申といったものが、非常にいいことを述べていましても、それがなかなか実行されないではないかというような声も一面大変強いわけでございます。
 今回の専門家会議にいたしましても、せっかく長い時間をかけてよい案が出されたといたしましても、それがいままでの諸問題のように実行されなくては意味もありませんし、やっぱりそうだったかというような落胆がなお一層障害者に覆いかぶさってくるということも懸念されるわけです。専門家会議の結論が行政当局に対しまして拘束力をちゃんと持つかどうか、行政当局はそれをすべて実行するつもりがあるのかどうかということも、大変私どもも率直に伺いたいところでございます。そのあたりにつきましては、明確な御答弁をいただいておきたいと思うのですけれども、その辺の権能、それから出た答申、こうしたものがいままでのそういう流れとは違うのだという、国際障害者年十年という長期的な展望に立って、何かひとつ取り残されている重度障害者に対する厚生省としての取り組みの真剣さを伺っておきたいと思うのですが、その辺はいかがでございますか。
#257
○政府委員(正木馨君) この専門家会議の御意見の拘束力ということになりますと、なかなかむずかしい問題でございますが、私どもの率直な気持ちを申し上げますと、新しい制度づくり、現状改革ということについてはいろいろ、この報告書にもございますように、むずかしい点がございます。そういう点を専門家会議でも率直にお話をし、一体どういう解決の方途があるのかということをざっくばらんに御議論をいただいていきたいというふうに思っております。そうしてせっかく大臣が御意見を承るということになっておるわけでございますので、専門家の十五名の先生方お集まりいただいておるわけでございますから、実現可能な方途というものをぜひお示しをいただいて、それを最大限に尊重をして前進を図ってまいりたいというのが、私どものかたい気持ちでございます。
#258
○前島英三郎君 専門家会議のメンバーにつきまして、各方面のすぐれた方々に入っていただいていることは、私も承知しているんですけれども、どのようにすぐれた方々でありましても、決して当事者そのものにはなり切れないという面もあろうかと思います。今回の所得保障問題の焦点は、一つには二十歳前の幼いころからの障害者、そしてまたより重度の障害者の問題であることは言うまでもございません。そういう方々はざっと七万から八万対象になる障害者でありますけれども、委員の方々の中には障害を持った当事者の方もおられますし、また常日ごろさまざまな障害者に接しておられる方も多いとは思うのですけれども、専門家会議として幼いころからの障害者、より重度の障害者の生の声を聞いたり、あるいはそうした方々の生活実態に直接触れる、そういう機会を持ちながら検討を進めていくことも大変重要であろうと、私はそう思っております。今後いろいろな審議が尽くされるだろうと思います、検討もなされるだろうと思うのですけれども、そういうお気持ちは当然おありだろうと思うのですが、いかがですか。
#259
○政府委員(正木馨君) 先生もおっしゃいましたように、この専門家会議には障害者の方々もお入りいただいておるわけでございますが、この生活保障の問題につきましては、昨年の五月にも特に幼いときからの障害者の所得保障を要請するということで、いろいろな御要望の声を各団体からいただいております。ということで、現在の専門家会議の進行状況を見ながら、座長とも御相談をいたしまして、障害者団体等の直接御意見を聞く機会を持つようにいたしたいというふうに思っております。
#260
○前島英三郎君 これからは福祉というものもいい意味での見直しは必要であろう。その見直しの中で最も重要なことは、車いすなら車いすの当事者の持っている知恵というものを育てていく。そういう意味では、本当にそういうことを必要とする人々がどのような生活をしているのか、また生の声はどうなのかという点では、この専門家会議のメンバーを拝見いたしましても、確かに車いすの人はおりますけれども、その対象となるべき脳性麻痺のその当事者であるという方々が選ばれておりませんし、むしろそういう方々も随時こうした専門家会議に出席するような方途を講じていただければ大変ありがたいと、このように思います。
 専門家会議についてもう一点お尋ねしたいと思うのです。
 それは、結論の時期的なめどは来年というようなことを伺っているわけでありますけれども、もし専門家会議の結論が出た場合、制度改正あるいは法改正が必要になってくる部分もあるかと思うのです。また予算編成との関係もありましょう。一方では、身体障害者福祉審議会の答申に基づく法律改正との関係も考えなければならないのではないかと思います。そうした各方面との兼ね合いも考えながら、一応専門家会議の全体的な結論というようなものは出るものかどうか。それはまたいつごろになるだろうか。その辺の見通しはいかがでございましょう。
#261
○政府委員(正木馨君) 先生ただいまおっしゃられましたように、この問題につきましては、五十九年を目途としておる身体障害者福祉法の改正とも関連する面が当然出てまいると思います。それから年金制度の改正との関連も出てまいると思います。いろいろな他制度との関連というものを考慮しなければ、なかなか具体案というものはまとまってまいらない。その辺にもむずかしさがあると思いますけれども、私どもとしては、そういう諸情勢も十分見詰めながら、少しでも前進が図れるような方向に向かって専門家会議がいい実現可能な結論を出していただくように、そして私どもとしても、大臣も重度障害者の生活保障問題の重要性を先ほど申されましたけれども、その前進に向かって何とか仕遂げていきたいという気持ちでおります。
#262
○前島英三郎君 ぜひいい答えが出るように期待をいたします。
 さて、この四月もう一つの報告書が出されております。脳性麻痺者等全身性障害者問題研究会の報告でございます。昨年七月、中間報告がありまして、今回はその総まとめでございますが、十分に読みごたえのある充実した報告であったと私は評価しているんですけれども、この報告書の位置づけ、性格、特徴につきましては、中身をごらんいただいておりますからわかりますけれども、この研究会が対象としている障害者の皆さんと、生活保障専門家会議が念頭に置いている障害者とは、まさにぴったり重なり合っていると思います。検討委員会としては、脳性麻痺研究会の成果というものを当然参考にしてこられたと思いますし、また専門家会議としても当然参考にしていただきたいと思います。
 私は、脳性麻痺研究会の報告は、単に脳性麻痺の人たちの問題というよりも、障害者の自立といった問題についてきわめて基本的原理的な考え方を示している点で、今後の障害者対策全般に対して大いに参考となりましょうし、参考にされるべきであると考えております。
 行政改革あるいは財政再建というようなお題目の中で、もともとランニングシャツ一枚のそれをはぎ取るような形になってしまいますと、大変これは問題も大きくならざるを得ないと思いますし、いろんな意味で厚生大臣も御努力はされているのでありますけれども、正直言いまして、そうした働きたくても働けない、あるいは拠出したくても拠出もできない、そういう取り残されている人たちが少しでも救い上げられる、そしてまた少しでもそういう人たちが生活の基盤の中で、憲法二十五条にのっとった生活が保障されるという社会が僕は本当の温かい社会だと思います。
 そういう点では、今年度につきましては、まことに残念ながら厳しい財政状況で、大変おくれた支給というような部分をも聞くにつけましても、一万円が何でもない人と、百円が実はあしたの生活の中に厳しい状況を迎えるというような人たちをも思いますと、厚生大臣の温かい気持ちというものをせめて、こうした委員会を通して強くそうした障害者に激励の言葉をいただければありがたいと、このように思いますが、大臣いかがでしょう。
#263
○国務大臣(森下元晴君) 午前中に通していただきました老人保健法も、実は五十二年秋でございますから、五年前に懇談会という形から発足して、いろいろ皆さん方の御支援できょう委員会を通さしていただいたわけでございます。そういうことでこんなにかかってはかなわぬわけでございますけれども、重度の障害者の方々の所得保障のためのいろいろ制度、そういうものにつきましても、全力を挙げてやらしてもらいたいと、このように思っております。それが国際障害者年を去年終わりまして、そして前向きでこの問題に取り組んでおります私どもの今後十年計画でどういう形のものができるか。福祉大国日本というそういう名を高らかに上げていきたいと思っております。
 実は、私きのうちょうど富山へ行きました。あそこにりっぱな施設がいまできております。今度リハビリのかなり予算をつけてやっていこう。肢体不自由児の方がたくさんおいでになるし、ちょうど老人特養と御一緒になっておりまして、車いすの方がたくさんおいでになるし、ふろへ入れる設備もりっぱにできております。その前の前の日曜日には兵庫県の但馬の方です。ここにもりっぱな施設ができております。
 ああいう施設を見ますと、本当にどんどんりっぱなものができておるなという感じがいたしますが、ただ恐らく、全体から見れば、一部の方が利用されておるだけで、まだほかのそうでない方がたくさんおいでになると思うんですね。そういうことで、私もできる限りそういう施設を見さしていただきまして、激励をすると同時に全国的にそういう方々が恵まれるように、そういう福祉の見直しというものは、まさに本当に必要とする方々に重点的に福祉をやるのだと、そういうような覚悟で今後も取り組んでまいりたいと思うわけでございます。
#264
○前島英三郎君 いろいろな新しい施策の実現は、予定どおりにいきまして五十九年度からでございますけれども、そうしますと、五十八年度も今年度と同じような惨めな思いをしなければならないのか、それが大変心配でもございます。現在、五十八年度予算の概算要求の取りまとめの時期でございますが、マイナスシーリングという状況の中でどのような姿勢で概算要求の作成に当たっておるのか、承っておきたいと思います。一つは年金関係、それから障害者福祉対策関係、それぞれお答えをいただければありがたいと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
#265
○国務大臣(森下元晴君) 厚生省が柱としておりますのは、年金の問題、それから健康を守るための健康保険の問題、それからもちろん福祉の問題でございますが、五十八年度の実は予算につきましては、全般的な財政難、歳入欠陥と言われるときでございまして、ゼロシーリングというようなことを大蔵省から言われまして、むだを省けというような至上命令もありまして、非常に苦慮しております。その中で福祉の後退と言われないように、またそういう重点事項が非難されないように全力を挙げていきたい。それぞれの所管で一生懸命実はやっておりますけれども、きょうまでは実はこの老人保健法、またこの三法に厚生省挙げてやってきたわけでございます。これからこの五十八年度の予算に取り組んでいくわけでございますから、いまいろいろお話のあった問題につきましては、全力を挙げまして、年金問題また障害者の福祉の問題が後退しないように――昨年もいろいろ御不満な点はあったと思いますけれども、十年計画という至上命令もございますから、よく大蔵省にもかけ合いまして、全力を挙げたいというふうに考えておる次第でございます。
#266
○前島英三郎君 所得保障制度がしっかりと確立されますと、障害を持った人も町の中で生きていくことができるわけであります。大臣は富山県の高岡のちょっと南の方にあるあの施設をごらんになったと思いますが、しかしあの施設そのものも、荒涼としたたんぼの中にまだ点在しているにすぎない。またそこに生涯生きていかなければならない障害を持った人たちの立場を思いますと、もっともっと町の中で障害を持った人も健康な人と一緒に生活できる環境こそ大切ではなかろうか。それをまた多くの障害を持っている人たちは望んでいるのではないか。
 身体障害者更生援護施設には一人当たり月額十二万円ちょっと国費は出されております。重度身体障害者更生援護施設には十五万円ぐらいは出されておりますし、身体障害者療養施設に至りましては、二十二万円強、それぞれの国費が出されているわけですけれども、じゃそれが本当にその障害を持っている人たちにとって幸せかというと、必ずしもそうとは言えない。そういう施設は一過性のものであって、本来は、それぞれの生きたいところで、あるいは自分が骨を埋めたいところで、障害者も一個の人間として生涯を終えるような環境づくり、また年金制度というものを、この所得保障制度の確立によって果たしていただくことが、僕はかえって行政改革、財政再建には大きな一つの活力になるのではないか。そういう気がいたしますと、障害者の真のニーズを厚生省がしっかりと酌み取っていきながら、今後の厚生行政というものをやっていただきたいと思うのでございます。
 最後にその所信を大臣に伺いまして、私の質問を終わります。
#267
○国務大臣(森下元晴君) 活力ある福祉社会をつくろう、これが国の繁栄につながるのだということは、臨調でも示されておりますし、また福祉社会というものがいわゆる自由国家を支えていくんだというようなことも言われておるわけでございますから、私は福祉につきましては、全力を挙げていこう、こういうふうに実は考えておるわけであります。「完全参加と平等」ということが本当に重度障害者初め身体障害者の方々の理想とする姿ではあるまいか。それによってそういう方々の希望を満たすことが社会の活力につながると、このように思っておるわけでございます。
#268
○委員長(目黒今朝次郎君) 他に御発言もなければ、右三案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#269
○委員長(目黒今朝次郎君) 御異議ないと認めます。
    ―――――――――――――
#270
○委員長(目黒今朝次郎君) 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対し、安恒君及び佐々木君から委員長の手元に修正案が提出されております。両修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、両修正案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。安恒君。
#271
○安恒良一君 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会を代表いたしまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、昭和五十七年度における障害年金、遺族年金及び留守家族手当等の額の引き上げの実施の時期を、昭和五十七年五月から同年四月に繰り上げること。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いをいたします。
#272
○委員長(目黒今朝次郎君) 佐々木君。
#273
○佐々木満君 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する修正案について自由民主党・自由国民会議を代表しまして提案の理由を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、原案のうち、昭和五十七年五月一日、再度の引き上げについては同年八月一日施行となっております遺族年金等の額の引き上げについて、本年の五月一日、八月一日がすでに経過しておりますので、これを公布の日と改め、昭和五十七年五月一日、再度の引き上げについては同年八月一日にそれぞれさかのぼって適用しようとするものであります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#274
○委員長(目黒今朝次郎君) 安恒君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。森下厚生大臣。
#275
○国務大臣(森下元晴君) ただいまの日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会提出の修正案については、政府といたしましては反対でございます。
#276
○委員長(目黒今朝次郎君) 他に御発言もなければ、これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 別に発言もないようですから、これより戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 本案について、安恒君及び佐々木君からそれぞれ修正案が提出されており、これら両修正案にはそれぞれ共通する部分もございますが、便宜、各修正案ごとに採決を行います。
 まず、安恒君提出の修正案を問題に供します。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#277
○委員長(目黒今朝次郎君) 少数と認めます。よって、安恒君提出の修正案は否決されました。
 次に、佐々木君提出の修正案を問題に供します。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#278
○委員長(目黒今朝次郎君) 多数と認めます。よって、佐々木君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#279
○委員長(目黒今朝次郎君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 この際、安恒君から発言を求められておりますので、これを許します。安恒君。
#280
○安恒良一君 私は、ただいま可決されました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項につき、速やかに格段の努力を払うべきである。
 一、一般戦災者に対し、戦時災害によって身体に障害を受けた者及び死亡した者に関する援護の検討を目途としてその実態調査を実施すること。
 二、戦没者遺族等の老齢化の現状及び生活の実態にかんがみ、国民の生活水準の向上等にみあって、今後とも援護の水準を引き上げ、公平な援護措置が行われるよう努めること。
 三、給付改善の実施時期については、従来の経緯を踏まえ、適切な措置を講ずること。
 四、戦没者遺族等の老齢化の現状にかんがみ、海外旧職域における遺骨収集、慰霊巡拝等について、更に積極的に推進すること。
 五、生存未帰還者の調査については、引き続き関係方面との連絡を密にし、調査及び帰還の促進に万全を期するとともに、中国からの引揚者が一日も早く日本社会に復帰できるようその対策に遺憾なきを期すること。
 六、中国残留日本人孤児の肉親調査を今後とも積極的に推進するとともに、帰国を希望する孤児の受入れについて、関係各省及び地方自治体が一体となって必要な措置を講ずること。
 七、かつて日本国籍を有していた旧軍人軍属等に係る戦後処理のなお未解決な諸問題については、人道的な見地に立ち、早急に、関係各省が一体となって必要な措置を講ずるよう検討すること。
 八、法律の内容について必要な広報等に努める等更にその周知徹底を図るとともに、相談体制の強化、裁定等の事務の迅速化に更に努めること。
   右決議する。
#281
○委員長(目黒今朝次郎君) ただいま安恒君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#282
○委員長(目黒今朝次郎君) 全会一致と認めます。よって、安恒君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、森下厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森下厚生大臣。
#283
○国務大臣(森下元晴君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。
#284
○委員長(目黒今朝次郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#285
○委員長(目黒今朝次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#286
○委員長(目黒今朝次郎君) 国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対し、渡部君及び佐々木君からそれぞれ委員長の手元に修正案が提出されております。両修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、両修正案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。渡部君。
#287
○渡部通子君 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会を代表いたしまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、
一、昭和五十七年度における厚生年金保険、船員保険及び拠出制国民年金の年金額の物価スライドの実施時期を政府案より一カ月繰り上げ、厚生年金保険及び船員保険については昭和五十七年六月から、拠出制国民年金については同年七月からにすること。
二、福祉年金、児童扶養手当、特別児童扶養手当及び福祉手当の額の引き上げの実施時期を、政府案より一カ月繰り上げ、昭和五十七年八月からにすること。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#288
○委員長(目黒今朝次郎君) 佐々木君。
#289
○佐々木満君 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、拠出年金の昭和五十七年度における物価スライドの措置について、原案では、厚生年金保険及び船員保険が昭和五十七年七月一日、国民年金は同年八月一日から施行することになっておりますが、それぞれの期日がすでに経過しておりますので、これを公布の日から施行し、七月一日、八月一日にそれぞれさかのぼって適用しようとするものであります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#290
○委員長(目黒今朝次郎君) 渡部君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。森下厚生大臣。
#291
○国務大臣(森下元晴君) ただいまの日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会提出の修正案については、政府としては反対でございます。
#292
○委員長(目黒今朝次郎君) 他に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 別に御発言もないようですから、これより国民年金法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 本案については、渡部君及び佐々木君からそれぞれ修正案が提出されており、これら両修正案にはそれぞれ共通する部分もございますが、便宜、各修正案ごとに採決を行います。
 まず、渡部君提出の修正案を問題に供します。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#293
○委員長(目黒今朝次郎君) 少数と認めます。よって、渡部君提出の修正案は否決されました。
 次に、佐々木君提出の修正案を問題に供します。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#294
○委員長(目黒今朝次郎君) 多数と認めます。よって、佐々木君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#295
○委員長(目黒今朝次郎君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 この際、渡部君から発言を求められておりますので、これを許します。渡部君。
#296
○渡部通子君 私は、ただいま可決されました国民年金法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    国民年金法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
 一、本格的な高齢化社会の到来を迎え、中高年齢者の雇用の改善と特に適正な給付と公正な負担のあり方を含め公的年金制度全体の抜本的検討を加え改善を図ること。
 二、提出制年金の物価スライドの実施時期及び福祉年金等の給付改善の実施時期については、従来の経緯を踏まえ、前向きに適切な措置を講ずること。
 三、婦人の年金権のあり方については、被用者の妻の国民年金への任意加入制度に関し早急に結論を出し、その結果を踏まえて総合的な見地から検討を進め、速やかにその確立に努めること。
 四、各福祉年金については、引き続きその充実に努めるとともに、関係諸制度との関連を含め、基本的な検討を行うこと。
 五、本格的な年金時代を迎えるに当たり、受給者、被保険者に個別的かつ具体的に対応できるよう年金相談体制を充実するとともに、業務処理体制の強化を図り、これにあわせて、支払期月、支払回数及び支払方法の制度間の整合について検討すること。
 六、老齢年金及び通算老齢年金は、非課税とするよう努めること。
 七、五人未満事業所の従業員に対する厚生年金保険の適用の問題について、具体的方策を樹立し、その適用の促進に努めること。
 八、中国からの帰国者並びに国際化の進展に伴う海外長期在任者及び在日外国人等に対する年金制度について、適切な方策の確立に努めること。
 九、積立金の管理運用については、被保険者の福祉を最優先とし、積立金の民主的運用に努めること。
 十、児童手当制度については、長期的展望に立って、制度の基本的な検討を進め、その改善に努めること。
 右決議する。
#297
○委員長(目黒今朝次郎君) ただいま渡部君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成挙手〕
#298
○委員長(目黒今朝次郎君) 全会一致と認めます。よって、渡部君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、森下厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森下厚生大臣。
#299
○国務大臣(森下元晴君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。
#300
○委員長(目黒今朝次郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#301
○委員長(目黒今朝次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#302
○委員長(目黒今朝次郎君) 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対し、柄谷君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。柄谷君。
#303
○柄谷道一君 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会を代表いたしまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。
 修正の趣旨は、昭和五十七年度における医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当及び保健手当の額の引き上げの実施時期を、昭和五十七年九月から同年八月に繰り上げること。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#304
○委員長(目黒今朝次郎君) 柄谷君提出の修正案は予算を伴うものでありますから、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。森下厚生大臣。
#305
○国務大臣(森下元晴君) ただいまの日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会提出の修正案については、政府としては反対でございます。
#306
○委員長(目黒今朝次郎君) 他に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 別に御発言もないようですから、これより原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、柄谷君提出の修正案を問題に供します。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#307
○委員長(目黒今朝次郎君) 少数と認めます。よって、柄谷君提出の修正案は否決されました。
 それでは次に、原案全部を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#308
○委員長(目黒今朝次郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。この際、安恒君から発言を求められておりますので、これを許します。安恒君。
#309
○安恒良一君 私は、ただいま可決されました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、その実現に努めるべきである。
 一、原爆被爆者については、広い意味における国家補償の見地に立って、その対策が講じられるべきであるとの原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見が出されたこと等にかんがみ、被害の実態に即応した援護対策を可及的速やかに一層拡充するよう努めること。
 二、医療特別手当については、所得制限が撤廃されたが、他の諸手当についても、被爆者の障害の実態に即して改善するとともに、医療特別手当等については、生活保護の収入認定からはずすよう検討を進めること。
 三、原爆症の認定については、被爆者の実情に即応するよう、制度と運営の改善を行うとともに、健康管理手当の認定についても、制度の趣旨が生かされるよう地方自治体を指導すること。
 四、被爆者について、死没者の状況が十分把握されていないことにかんがみ、その調査を行うこと。
 五、原爆病院の整備改善を行い、病院財政の助成に十分配慮し、その運営に当たっては、被爆者が必要とする医療を十分受けられるよう万全の措置を講ずるとともに、被爆者に対する家庭奉仕員制度の充実及び相談業務の強化を図ること。
 六、被爆者とその子及び孫に対する放射能の影響についての調査、研究及びその対策について十分配慮するとともに、原爆医療調査機関の一元一体化について検討し、その促進を図ること。
 七、放射線野響研究所の研究成果を、被爆者の健康管理と治療に、より役立てるため、運営の一周の改善、同研究所の移転、原爆病院との連携強化などにつき検討すること。
 八、給付改善の実施時期については、従来の経緯を踏まえ、前向きに適切な措置を講ずること。
  右決議する。
#310
○委員長(目黒今朝次郎君) ただいま安恒君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#311
○委員長(目黒今朝次郎君) 全会一致と認めます。よって、安恒君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、森下厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森下厚生大臣。
#312
○国務大臣(森下元晴君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分二尊重いたしまして努力いたす所存でございます。
#313
○委員長(目黒今朝次郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#314
○委員長(目黒今朝次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時五十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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