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#1
第096回国会 外務委員会 第12号
昭和五十七年七月一日(木曜日)
   午後三時一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月七日
    辞任         補欠選任
     藤井 孝男君     中山 太郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         稲嶺 一郎君
    理 事
                大石 武一君
                鳩山威一郎君
                松前 達郎君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                安孫子藤吉君
                大鷹 淑子君
                中山 太郎君
                夏目 忠雄君
                秦野  章君
                宮澤  弘君
                田中寿美子君
                戸叶  武君
                立木  洋君
                木島 則夫君
                山田  勇君
   国務大臣
       外 務 大 臣  櫻内 義雄君
   政府委員
       外務大臣官房審
       議官       藤井 宏昭君
       外務大臣官房審
       議官       宇川 秀幸君
       外務大臣官房外
       務参事官     都甲 岳洋君
       外務省北米局長  淺尾新一郎君
       外務省欧亜局長  加藤 吉弥君
       外務省条約局長  栗山 尚一君
       外務省国際連合
       局長       門田 省三君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       科学技術庁原子
       力局核燃料課長  坂内富士男君
       科学技術庁原子
       力安全局原子力
       安全課長     松原 伸一君
       科学技術庁原子
       力安全局保障措
       置課長      川崎 雅弘君
       資源エネルギー
       庁長官官房原子
       力産業課長    長田 英機君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○原子力の平和的利用における協力のための日本
 国政府とオーストラリア政府との間の協定の締
 結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。櫻内外務大臣。
#3
○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま議題となりました原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 政府は、オーストラリア政府との数次にわたる交渉を経て、昭和五十七年三月五日にキャンベラにおいて、両国政府の代表者の間でこの協定に署名を行った次第であります。
 この協定の主な内容としまして、両国政府は、両国間における専門家及び情報の交換、核物質等の供給等について協力することとなっております。また、この協定により規律される核物質等は、核兵器その他の核爆発装置の開発、製造のために使用してはならず、また、軍事的目的を助長するような態様で使用してはならないこととしております。さらに、この協定により規律される核物質等の管轄外移転、再処理等は、一定の規制のもとにのみ行われることとしておりますが、再処理につきましては、予見可能かつ実際的な規制の仕組みが設けられております。
 この協定の締結によりまして、ウランの供給先として今後重要性を一層増すと考えられるオーストラリアとの間の原子力の平和的利用における協力関係をさらに発展させるための基礎が整備されることとなり、これは、核拡散の防止のための国際的努力及びわが国の核燃料サイクルの長期的、安定的な運営及び発展に資するものと期待されます。
 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
 何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
#4
○委員長(稲嶺一郎君) 以上で趣旨説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#5
○松前達郎君 通告はいたしておりませんが、最初に外務大臣からお聞きしたいことがございます。
 今回、大分長期にわたって諸外国、いろいろの会議にお出かけになったわけです。
 軍縮関係の特別総会、これはきょうの協定もやはり核の問題でありますけれども、平和利用の方と軍事利用と二つ分かれていろいろと問題が大きくなってまいりました。この軍縮の特別総会に出られて、わが国が将来、世界の中の日本としてどういう役割りを積極的に推進しなければいけないとお感じになったか、それをまず最初にお伺いをいたしたいと思います。
#6
○国務大臣(櫻内義雄君) 特別軍縮総会におきまして鈴木総理は、被爆の悲惨な経験を受けておる日本国の立場から、核軍縮を中心とする完全軍縮の遂行のために一つ一つ実効ある措置を講じていきたいと、こういうことを中心として軍縮の問題に対し真摯な御意見を吐露せられたわけでありますが、この日本の被爆国の立場を各国が理解をしており、また、近年における日本の経済大国としての地位も認識せられておると思われる各国の反響でございまして、総理の演説後におきましては相当数の各国の代表が議席に参りまして、その演説に対する賛辞あるいは日本に対して敬意を表するという光景でございまして、これらの点を目の当たりに拝見し、また若干の国との間に二国間の協議などをいたしましたが、いま国連加盟国百五十七カ国であったと思いますが、その中におきまして日本の地位はきわめて高いものである。それだけに、日本の言動というものは慎重に、また各国の範となる言動をとるべきではないかということを痛感した次第でございます。
#7
○松前達郎君 わが国が今後世界の核軍縮の中に果たせる役割りですね、これについていろいろな考え方があると思いますが、現在では米ソ両国が核大国と、こういうふうに言っていいんじゃないかと、かように思うわけですが、その二つの国に核に関する軍縮を今後推進させるという、そういう努力、これを直接アメリカ、ソビエトに対して話を持っていっても、これはなかなかそう簡単にはいかないと思うので、そうじゃなくて、たとえばそのそれぞれの国の勢力を及ぼす範囲の国々、たとえばソビエトであればサテライトの国々ですね、東ヨーロッパ関係、まあそのほか飛び離れたところにもありますけれども、アメリカにすると、これは日本をもちろん含め、あるいは西側のヨーロッパ諸国、こういうところがそれぞれ一つのグループを形成しておりますから、そういった国々との間にやはり相当話し合いを続けながら、できれば将来非核地帯というか、そういったようなものを形成するような合意を取りつけていって、だんだんと身ぐるみ――身ぐるみと言いますか、着物を脱がすようにはがしていく必要があるんじゃないか。
 そういう動きが出てきますと、恐らく米ソ両大国もこれにある程度の対応をせざるを得なくなるのじゃないかと私は考えるのですが、いまお話の内容を伺いますと、わが国の総理の演説が非常に評価が高かったというお話ですが、さて、それでは今後われわれとして、こういった核軍縮に関してどういう行動をとっていくのか。この辺、何かお考えがございましたら、ひとつお知らせいただきたいと思います。
#8
○国務大臣(櫻内義雄君) 松前委員が御承知のように、軍縮を訴える場として国連というものは、今回の特別総会などが絶好の場所であると思いますが、同時にジュネーブの軍縮委員会がございまして、これらの委員会の場を通じましても従来日本も努力をしてまいっておるわけでございます。
 御指摘のように、核を保有しての米ソは超大国であると思います。また、この超大国の影響を受けておるそれぞれの勢力関係があって、いわゆる東西関係を形成しておると思うのでございます。そこで日本は、この東西間における軍縮というものが促進されることを期待しておるわけでございまして、現在、この両大国の間で中距離核戦力の削減交渉、あるいは戦術核削減交渉、こういうものが行われておるわけで、この核戦力というものができる限り低いレベルで均衡を保つ、そのことが世界平和に貢献するゆえんではないかとこのように見ており、この両大国の交渉が成果の上がることを期待しておるわけでございますが、そういうこととともに、国連、ジュネーブの軍縮委員会を通じての日本としての努力、また日本は、繰り返し申しておりますようにまず核軍縮の前提としては核実験の禁止をしてもらいたい、この核不拡散条約の普遍化をしてもらいたいと、いろいろと日本としても提議をしておるわけでありますが、その一番の眼目は、やはり実効性の上がることをやってもらいたいということを強く訴えておって、この超大国の間が低いレベルの均衡で世界の平和の上に多少でも役立っていくようにしてもらいたいものだと、このように思う次第でございます。
#9
○松前達郎君 その具体的な方策を、強力な方策があればその辺を練っていただいて推進していただければと思うのですけれども、その後、今度ASEANに御出席になったのだと思いますが、その会議の場所ではやはり核軍縮等を含めたそういう問題は出ましたでしょうか、出ませんでしたでしょうか。
#10
○国務大臣(櫻内義雄君) ASEAN拡大外相会議におきましては、それに先立つASEAN諸国のいろいろ協議の結果を受けまして、域外の関係の深いアメリカ、カナダ、豪州その他が一堂に会して協議をいたしたのでありますが、これはどちらかというと、ASEAN諸国と関係の深い域外との間の対話であって、その場で何を決めるということではございませんでしたが、ベルサイユ・サミットを受けてのことでございますから、経済関係のことが主であったわけでございます。域外のサミット参加国からは、参加国における模様を申し上げたりいたしました。
 それから、ASEAN諸国の方におきましては、現在の国際経済情勢からいたしまして自由貿易体制を維持して、そしてこの困難な経済状況の打開のために努力しようという、そういう機運の中にございまして、個別的なそれぞれの国から日本に対する市場の一層の拡大の要請などがございましたが、特にこの軍縮問題について印象に残るような発言はなかったと思います。
#11
○松前達郎君 最近、特にわが国の外交問題の中ではいろいろな問題が提起をされ、非常に困難な問題も出てきているようでありますけれども、いまの軍縮関係はこれはもう世界全体の大きな問題でありますから、当然わが国としてその中で主張もし努力もするということなんですが、その後いろんな問題が出てきた。たとえばIBMの問題ですとかあるいは日韓の経済協力の問題ですとか、ごく最近では北朝鮮との、これは民間の漁業協定というんですか、イカ漁船の問題とか、いろんな問題がわれわれの周辺に出てきているようでありますが、それはそれとしてまた後ほどお伺いすることにいたしまして、いま対象となっております日豪間の原子力協定、これについてお伺いをいたしていきたいと思います。
  一番最初に、これは原子力政策そのものの問題はちょっとここでは触れませんけれども、現在わが国が原子力発電を行っている、その原子力発電に必要なウランの供給を受けなければいけないわけですね。日本の場合の生産というのはほんのわずかで、もうないと言っても等しいぐらいのものであると思いますので、当然国外からウランの供給を受けざるを得ない。このウランの供給というものもこれは石油と同じで、やはり安定供給という問題がついて回るのじゃないか、かように思っておるわけですが、現在の供給の状況、これは余り細かくは要りません、それと今後の供給の見通し。こういったものについて総体的に一体どういう状況にあるのか、どう見通しておられるのか、それをちょっと御説明いただきたいと思います。
#12
○説明員(長田英機君) お答え申し上げます。
 天然ウランにつきましては、わが国は電力会社がいろいろな地域と長期契約を結びまして確保を行っております。現在までの段階で確保している量は約二十万トンでございまして、この量でまいりますと一九九〇年代の前半までは原子力発電所に必要な天然ウランは確保されている。こういうことになります。なお、これ以降につきましては新たに新規契約を結ぶなりあるいは探鉱促進、あるいは開発段階への参加、そういうような方法によりまして天然ウランの確保に努力していきたい、こういうふうに考えております。
#13
○松前達郎君 そうしますと、やはり天然ウランの確保の前提としてウランの鉱石ですかね、これの発見とか開発とか、そういうふうなものにやはりある程度わが国としても努力しているのじゃないかと思うんですね。特に燃料関係の会社では、オーストラリアとかその他アフリカあたりでやっていると私は聞いておりますけれども、国外でのウラン鉱石の探査ですとかあるいは入手ですね、またさらにこれを濃縮ウランに加工しなければいけないということがありますから、その辺の一つの流れというのは一体どういうふうな流れが主流を占めているのか、その辺ちょっとお聞きします。
#14
○説明員(坂内富士男君) お答えいたします。
 先ほどの答弁にございました電力会社が主としてその長期契約等に基づいて海外からのウランを購入するということのほかに、当然、非常に息の長いウランの安定確保を図るという意味から、政府としましては、動力炉・核燃料開発事業団をもって諸外国のウラン探査を行わせております。いま幾つかの国がございますが、メインとしましてはオーストラリア、カナダ、アフリカ、こういった諸国にその重点の探査地域がございまして、鋭意そこで探査を行っているということでございます。
 それからもう一つ、民間としましても海外探鉱の開発を行っておるわけでございまして、これは金属鉱業事業団による成功払い融資等の助成措置、こういったものを通じまして積極的に国としても探査の活動に重点を置いているということでございます。
 それから濃縮ウランのことでございますが、現在、御承知のようにこれも動力炉・核燃料開発事業団が長い間かかって技術開発をしてきた、その成果といったものが人形峠のパイロットプラントという形でもっていま花咲いておりまして、そちらでいま濃縮ウランの最後の技術開発といいますか、そういったことが行われている段階でございます。
 今後濃縮ウランの国産化といった点から申しますと、最終的には商業プラントというものを当然建設し、国産の濃縮ウランを得るということになるわけでございますが、そこに至る一つの橋渡しと申しますかそういった観点で、パイロットプラントと商業プラントとの間にいくべき、いわば原型プラントといったものの建設、これの計画をいま進めているところでございまして、このパイロットプラントによって原型プラント、商業プラント、これに至る一連の研究開発を行うことにより濃縮ウランの安定確保に資する、こういうことの計画を立てているところでございます。
#15
○松前達郎君 こういった一連の開発が、一つの燃料といいますか核燃料の供給の流れの一番最初の部分に当たるわけですね。それからさらにある程度濃縮された燃料といいますか、これが原子炉の中で燃えるということになっているのだと思いますけれども、現在、原子力発電による電力生産計画、それと同時に、これは電力生産計画というのは需給見通しとかいろいろありますけれども、そういったようなものと核燃料、これは使用済みの再処理の問題ですね。これらについての現状と計画、けさ政府から何か発表されたようでありますけれども、こういったものについて概略ちょっとお知らせいただきたいと思います。
#16
○説明員(長田英機君) 原子力発電の状況について御説明申し上げます。
 現在、原子力発電施設は運転中のものは二十四基、約千七百万キロワットございます。建設中、準備中のものも入れまして合計いたしますと四十一基、約三千三百万キロワットございます。現在の計画によりますと、昭和六十五年度末の設備容量は四千六百万キロワットというところを目標として考えております。
 なお、発電量でございますが、いま私の手元にありますデータによりますと、五十五年度の発電量は八百二十億キロワットアワー、さらに、昭和六十五年度の目標といたしましては、二千五百三十億キロワットアワーというふうに目標とした数字を置いております。
 それから再処理につきましては、現在動燃の第一工場、そのほか英仏に委託をしておりますけれども、次の段階といたしまして大体一九九〇年ごろには第二工場をつくりたい、こういうふうに考え民間企業が成立しておりまして、諸準備を進めているところでございます。
#17
○松前達郎君 その再処理問題なんですが、これはたとえば英国、フランス等に依頼して再処理をいまやっているわけですね。これについても、最近その再処理によって生ずる廃棄物があるから、そういったようなものについては、日本が全部引き取ってくれと、イギリスとかフランスとか再処理工場の付近に保管しておくわけにはいかないのだということが何か言い出されているような報道を見たわけですが、この放射性廃棄物等の引き取りですね、この問題については一体どういうふうに解決をしていくのか、その辺。
#18
○説明員(坂内富士男君) いまの先生御指摘の俗に一口に返還廃棄物と言っている問題でございますが、たしか一週間か十日か何日前だったか、新聞に載ったことがございます。
 つまりその趣旨は、いままでの何といいますか理解ですと、高レベル廃棄物が返ってくることになっておって、低レベル廃棄物は返ってこないことになっているはずだといった形で、それが何か開発か何かでそちらのフランス側の方の高官か何かが低レベルのものも返してよこすのだ、返すのだといったことを言ったというふうなそんな記事であったかと思います。
 ところで、私どもが理解している限り、再処理の英仏等への契約につきましては、高レベルあるいはまた低レベルといったことではございませんで、再処理を行って出てきた廃棄物は日本に返還するオプションを有する、こういった概略契約になっておるというふうに理解しております。それですので、当初から高レベルもしくは低レベル、一口に言いますとレベルを問わず日本の使用済み燃料の再処理、その結果生じた廃棄物は日本に返ってくる、そういったオプションを向こう側も持っている、こういうふうに理解するべきであり、またそうなっていくように思います。
#19
○松前達郎君 原子力発電によって生ずる放射性廃棄物というのが非常に大きな問題になっているわけなんですけれども、特に英国とかフランス等に依頼しているその分についても、いまお話しのようないろいろな問題が提起されてくるということになりますけれども、わが国で行われている原子力発電により直接発生してくる放射性廃棄物ですね、これがどうも相当量に達するのじゃないかと私は思うわけなんですが、これをまたどういうふうに処分していくかという問題等、非常にむずかしい問題が未解決のままであろうと私は思います。現在わが国の発電所内に置いてある分も含めて、放射性廃棄物は一体どのくらいあるのか、これをお知らせいただきたいと思います。
#20
○説明員(長田英機君) 現在、原子力発電所などから発生しますところの低レベルの放射性廃棄物は、原子力発電所等の敷地内に貯蔵施設を設けまして、厳重かつ非常に安全な状態で貯蔵しているわけでございます。その量が二百リットルのドラム缶で約三十万本という数字になっております。
#21
○松前達郎君 これはふえるぺースがどのくらいかわかりませんけれども、どんどんふえていくと敷地内からあふれ出すことはありませんか。
#22
○説明員(長田英機君) 先生御指摘のように、この本数はわれわれの持っております原子力発電計画を遂行てまいりますとまさにどんどんふえていくわけでございまして、原子力委員会の計算では二〇〇〇年に百八十万本というような計算もございます。したがいまして、これにつきましてはなるべく早く陸地処分あるいは海洋処分ということで、適宜最終処分をしていくという努力をしていかなければならない、こういうふうに考えております。
#23
○松前達郎君 そこで出てくる問題が処分をする方法とその場所ですね。これは多分いまドラム缶等をどこかに投棄をする、海洋投棄というのがありましたね、試験投棄ですか、これは太平洋の中に投棄していこうという、これも恐らく対象になるわけですね。そうなると、やはりそこにまず出てくるのが外交関係が非常にまた問題になってくる。パラオですとかトラックとか、あの辺から盛んに、かつて投棄をしようという発表があったときに相当な反対運動があった、これはもう御承知のとおりだと思いますが、この海洋投棄というのは、すでに計画をされたけれども一応中止をしているという段階なんですか。それとも今後また適当な時期に相手国の理解さえあればこれを推進しようというのか、その辺いかがでしょうか。
#24
○説明員(松原伸一君) お答えいたします。
 低レベル廃棄物の海洋投棄に関しましては、原子力委員会の方針にのっとりまして、国際協調のもとにこれを進めるということになってございまして、わが国といたしましては、通称ロンドン条約と称してございます廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約を批准してございます。
 また、昨年五十六年にはOECD・NEAの放射性廃棄物の海洋投棄に関する多国間協議監視制度にも参加してございます。
 また、ロンドン条約の加盟に関連いたしまして国内法制等も整備いたしまして、手続面からはいつでも海洋投棄ができるというような態勢になっているわけでございますが、先生御指摘のとおり、南の諸国等の反対もございまして、まだ実施していないということでございます。
 海洋投棄のやり方にいたしましてはまず試験投棄をいたしまして、その結果を見まして、チェックいたしまして本格的投棄に移すというようなことに考えてございます。
 なお海洋投棄の安全性に関しましては、いままでいろいろやりました試駅研究の成果をもとにいたしまして、行政庁で安全性のチェックをいたしまして、さらにその行政庁でやりました安全性のチェックを原子力安全委員会でダブルチェックをいたしまして、安全であるというようなことを確認してございます。
 今後の方針でございますが、海洋投棄いたします廃棄物の安全性を含めまして、広く南の諸国その他関係者の方に御理解を求めるべく、今後とも鋭意努力していきたいというふうに考えております。
#25
○松前達郎君 この海洋投棄というのは相当いろいろ問題があると思うんですね。それで、相手は小さな島だから少しぐらい文句言われても構わないからやっちまえというのじゃ困る、ロンドン条約というのに彼らは加盟しているわけじゃないでしょうから。恐らくその当時はまだ独立国でもなかった、そういうところですね。ですからその辺も外務省の方も十分配慮していかなきゃならない問題があるんじゃないかと思うんです。ああいう南洋諸島というのですか、あの辺二百海里だけぐるっと回しておいても物すごい面積になるんですね、海域に。ですから、小さな島だからと言ってばかにできない、やはり日本の庭みたいなところだと思いますから、その辺も十分お考えいただいた方がいいんじゃないか、かように思っておるわけです。
 そこで次に、プルトニウムの問題なんですが、今度の協定もこのプルトニウムにある程度関連をした内容のものが盛られていると思いますけれども、プルトニウムというのは、当然原子力発電を行うときに発生をしてくるといいますか、つくられてくる放射性物質なわけですが、このプルトニウムを現在わが国でどのぐらい所有をしているのか、これは何も純プルトニウムという形でなくても結構ですから、総量として一体どのぐらいあるのか、これをちょっとお答え願いたいのです。
#26
○説明員(川崎雅弘君) いまの先生の御質問に対してお答え申し上げます。
 先生御案内のとおり、プルトニウムは現在、発電中の炉の中でどんどん生産をしておりますので正確な数字を申し上げるのははなはだ困難ではございますが、現在およそ九トン程度ございます。
 御承知のとおり、発電炉で現在生成中というのもございます。それから使用済み燃料として、発電所の中にございます使用済み燃料を貯蔵しますプールの中に燃料という形のまま閉じ込められた状態で存在しておるもの、それから、そういうものから分離しまして、やや純粋に近い形のプルトニウムといったようなものがございますが、現在、わが国にございます九トン程度のプルトニウムのうちの約七割がすべて使用済み燃料あるいは使用中の燃料の中に、他のウラン等とまじって混在した形で存在しておりまして、残りが新規の燃料のために酸化物の形で加工されたものであるとか、再処理工場で分離された硝酸溶液のような形で存在している、以上のような状況でございます。
#27
○松前達郎君 純プルトニウムという形は余りないということですね。ですから、そこは多少問題は薄らいでくると思いますが、プルトニウムが核兵器にとっては必需物資であるということ、これはもう当然なことなんですが、このプルトニウムに対する防護策ですね。防護というのは、プルトニウムジャックというのがあるのかどうか知りませんが、今回の日豪の協定の中にもそれがうたわれておりますけれども、この防護対策というのは現在どういうふうな対策をとっているのか、その辺いかがでしょうか。
#28
○説明員(川崎雅弘君) 先生の御質問の趣旨を若干翻訳して御説明をさしていただきたいと思いますが、一つは核兵器への転用をプルトニウムについて防止するという措置についてでございますが、この点につきましては、昭和五十二年にわが国が核不拡散条約に加盟しました以降、プルトニウムと言わずあらゆる核物質すべてに対して、国際原子力機関の行いますいわゆる保障措置と申します核兵器への転用を防止するための一つの国際的な監視手段を受け入れておりまして、そういう意味で国際的な監視が行われております。
 それから二番目のいわゆる防護措置、通常フィジカルプロテクションと言われている点でございますが、これらにつきましてはプルトニウムあるいはその他の核物質を使います各事業所に対しまして、原子炉等規制法あるいはその他の関係法令によりまして、事業者において適切な国際的に定められておりますガイドラインに沿った防護の措置をとるように、行政指導を行っておるところでございます。
 なお、このような行政指導の措置等につきましては、これまでのところ十分国際的な水準を満たし得る措置だというふうに国際的にも評価を受けているところでございます。
#29
○松前達郎君 このプルトニウムの防護といいますか、いま言われたようなこと全体を含めて、いま審議しております日豪原子力協定の中に入っているとさっき申し上げたのですが、これはどうなんですか、日豪以外に原子力協定ありますね、こういった日豪以外の原子力協定にはこういうものが含まれているのかどうか、これはいかがでしょう。
#30
○政府委員(宇川秀幸君) お答えいたします。
 日加の協定に防護措置について規定がございます。その他私ども日本が結んでおりますアメリカ、フランス、英国との関係においては、特に防護について規定を置いておりません。
#31
○松前達郎君 そうしますと、この防護というのは、たとえば原子力発電所に置いてある、あるいはその関連施設に置いてあるプルトニウムの混合体ですね、そういうものとか、そのほか厳重に保管をされているとおっしゃいますけれども、どこに保管されているのか私まだわかりませんが、そういったようなもので、一応そういった原子力関係施設の中にある分についてのものと、それから輸送手段ですね、輸送をしている最中これを防護するという問題もあると思うんですね。一時ある国が地中海で船ごととってしまったという話もなきにしもあらずなんですが、これはうわさかもしれませんけれども。たとえば、さっきのフランスで、あるいは英国に依頼して再処理をする、そういったものの運搬中の防護とか、そういうものはこれは含まれてないわけですね、このいまの協定等について。
#32
○説明員(川崎雅弘君) 今回御審議を賜っております日豪協定の第四条にそういう核物質防護についての規定が設けられてございますが、内容としましては輸送中もそういうことがとられることを含んでおると理解しております。なお国際的なガイドラインは、やはり同様輸送中についても配慮するようにというふうなことが述べられております。
#33
○松前達郎君 輸送中が一番危ないんじゃないかと思うんですけれども、その辺はまたいずれいろいろな問題に波及しますのでこのぐらいにいたしまして……。
 核拡散について、この協定が配慮をされている、こういうふうなお話ですけれども、最近はどうも原子力開発ということ、特に原子炉を導入して、核燃料を燃やしてそれによってプルトニウムの生産をするとかいろんな問題が出てきておるわけですが、特に原子力エネルギーが必要とされるその国の能力を超えて、能力といいますか必要量を超えて核燃料を輸入している国が大分多くなってきていますね。この辺がやはりいわゆる核兵器といいますか、イラクの原子炉爆撃事件などに見られるようなそういったような問題がどうもあるのじゃなかろうか。特に最近では、この核兵器というのが高いものだとよく言われますけれども、考えてみると逆に安いんじゃないかと思うんですね、総合的な戦力からいくと。ですから比較的手っ取り早く相手国に脅威を与える材料になり得るのだと、こういうふうに見ていいのじゃないかと思うので、大国がやる手段としては別の手段でやるのでしょうが、特に中東あたりの国がこういったものを開発する、特に核兵器を開発していくと。その内容は非常にプリミティブな核兵器かもしれませんけれども、そういう問題が最近どうもあるような気がするわけですね。ですからそういう意味から言いますと、やはり核を拡散させないという努力というものが今後大いに必要ではないか。したがって、それに対して日本側がやはり率先して、ここにあるように不拡散に関する問題を提起をし、さらにそれを推進するという必要が、そういうことがわれわれの役目じゃないか、こういうふうに私考えておるわけなんです。
 ですから原子が問題についてはいろいろな問題がありますけれども、平和利用と一言に言っても、確かにエネルギー生産というものだけに使えば平和利用かもしれません。しかし、それも今度逆にその発電所の設置の問題になりますと、それぞれ設置される地域の人の反対運動もあるし、いろいろな問題がそこに出てくる、こういうことになろうと思うので、原子力開発というのはいまわれわれの人類にとって非常に大きな問題、文明論的な問題を提起しているんじゃないかと、かように私思っております。そういう意味でこれから先、さっき冒頭に大臣にもお伺いいたしましたけれども、核兵器、核戦力といいますか、これについて、われわれとしては厳しい態度でひとつこれから臨んでいかなきゃいけないんじゃないか、こういうふうに考えておりまして、その点この協定の締結等もこれは一つの機会かもしれません。その点を推進をひとつよろしくお願いしたい、かように思っております。
 それから同じエネルギー問題ですが、核とちょっと違いますけれども、最近どうもアメリカのレーガン政権の対ソ経済制裁というものが非常に露骨な、あるいは強力なものを打ち出してきつつある。特に、われわれの日本に関連したものでは、日ソ共同事業に対する米国の対ソ経済措置というものが大きな障害となりつつあるというふうに報道されているわけです。
 それからこれも報道ですが、もうアメリカから直接大臣あてに文書が来ているということも伺いました。今後この共同事業に対する取り扱い、日本側としての努力、一体どういう方向に進めていくのか。また同時に、この共同事業というものが私は非常に意義があるものだと思っておりますが、この辺に対するお考え、これをひとつお聞かせいただきたいと思うんです。
#34
○政府委員(加藤吉弥君) ただいま先生御指摘のとおり、去る六月十八日、アメリカの国家安全保障会議におきまして、いわゆるヤンブルグ西シベリアの天然ガス計画及びサハリンの日ソ共同天然ガス、及び石油開発計画に対するアメリカの資機材の輸出ライセンスは、これを発給しないという決定があったわけでございます。従来わが国といたしましては、このサハリンの計画はヤンブルグの計画とは非常に違うということを累次アメリカに説明してまいりましたのですが、こういう結果になったことはきわめて残念であるというふうに考えております。
 今後本件をどう取り進めていくかということでございますが、すでに六月二十二日付で櫻内大臣及び安倍大臣から、それぞれ米側の国務省――当時は国務長官ヘイグさんでございましたけれども、ヘイグさん及び商務長官のボルドリッジさんに対して非常に残念であるということを述べると同時に、再検討、再考方を要望してきたわけでございます。こういう努力は、今後もわが国として続けてまいりたいと考えております。できる限り早期にアメリカ側が従来の態度を再検討して、必要な機材の輸出あるいはリースに対して許可を与えるように要請を重ねていくつもりでございます。
 他方ソ連側に対しましては、この事業の直接当事者でございますサハリン石油開発会社の小林社長が二十八日ソ連に赴きまして、モスクワで先方の外国貿易省の次官と会談しております。まだその結果の詳細は報告は受けておりませんが、こういう事態になって本年の開発は計画どおりに恐らく進まないであろう、その場合にどうするかということを先方と打ち合わせて帰ってこられたものと承知しております。
 かように私どもとしては、政府もある程度の責任を持つ事業でございます、国策に沿う事業でもございますので、側面的な見地から関係の会社等に必要な援助を与えるとともに、必要に応じてはソ連政府と、またこれからも従来どおりアメリカ政府と接触を続けてまいりたいと考えております。
#35
○松前達郎君 この問題については、日本だけじゃなくて西欧側についてもいまおっしゃった。パイプライン等も含めて大きな問題提起になっているのじゃないかと思うんですが、内容的にちょっと違うかもしれません、開発の仕事が。しかし、経済制裁というものが果たして効果があるのかどうか、こういうことをやって効果があるのかどうかというと、私はそうないんじゃないか、逆効果になる可能性があると私は思うんですけれども、この点も一つ。
 それから米国に対する要望というものを出されておるということですが、これは日本からアメリカに、当時のヘイグ国務長官に出された、これに対しての回答というのはまだないわけですね。
#36
○政府委員(加藤吉弥君) 新聞紙上で報ぜられておりますのは、レーガン大統領から鈴木総理あての二十三日付の書簡であると承知しております。ただ、この新聞の報道ぶりは必ずしも正確ではないと私どもは考えております。先ほど申し上げたとおり、櫻内大臣及び安倍大臣の書簡は二十二日付で発出されております。実際に先方に手交されたのはアメリカ時間の二十三日であろうと思います。同日付でレーガン大統領から鈴木総理あての返書が来ておりまして、恐らくこれはいわゆる行き違いの書簡であったのではないかと思います。かつ、レーガン大統領の書簡の内容は、報じられているとおり日本側の要請を拒否したという内容ではございませんで、むしろこの決定に至る背景の説明、いかに大統領自身にとってつらい決定であったか、またこれによって単に日本に大変な迷惑をかけることは十分承知しているけれども、アメリカの企業に対して最も大きな損害を与えるのである、ここら辺をよく理解してくれと、こういう背景説明の書簡であると私どもは了解しております。したがって、日本の要請に対する拒否というようなものではないというのが正しい見方かと思います。
#37
○松前達郎君 そうであればまた今後少し望みもあるわけですから、この辺はひとつ強力に推進していただければと思います。
 次に、日韓の経済援助の問題、これもまたどうもすっきりしない面があると思うんですけれども、四十億ドルというものを日本側が案として提示をした、これに対して韓国側から新しい逆提案があった、こういうふうに報道されております。これは商品借款というものを最初から韓国側が言っていたわけなんですが、日本側は商品借款というのは応じられないということであったわけですが、新たにまた来た韓国側から提示された案というものが、これは正式に提示されたかどうか知りませんけれども、申し入れがあったというように伝えられているのはこの商品借款が含まれている。だから日本の提示したものとは多少違っているというふうに見えるわけなんですが、この点いかがですか。
#38
○国務大臣(櫻内義雄君) 李新外務長官が就任後に日本の前田大使に韓国側の考え方を示された事実がございます。その中身はひとつ内密にしよう、こういうことでございますが、いまお尋ねのように円借款を、いわゆるODAをもっとふやしてもらいたいとかあるいは商品借款を考えてもらいたい、こういうお考えを示されたようでありますが、前田大使からは、従来日本側が申し上げておることは、日本としてはもうぎりぎりのところを申し上げておるので、そういうお考えについては日本として応ずることは困難である、そういうようなことを申し上げたのでありますが、自分の考え方について日本側に伝えてくれぬかというようなことを言われた。そういう経緯があるわけでございますが、日本としては先般柳谷外務審議官が行かれた折に、プロジェクト別にこういうものはODAでいける、こういうものは大体輸銀でどうかというようにいろいろ申し上げて、その申し上げたところが日本としてはもうぎりぎりのところでありますので、現在のところそういう考え方については、検討はしてみるとは申しましたけれども、韓国側の要請に応ずることはこれは困難だと思います。
#39
○松前達郎君 数日中にたしか韓国の外務大臣ですか、アメリカの帰りに日本に寄られるという話なんですが、恐らくそのときにこの話がある程度出るのじゃないかとも思いますけれども、もし出たとしても、いま大臣おっしゃったような線でやられるのかどうか、その辺いかがでしょうか。
#40
○国務大臣(櫻内義雄君) これはかねて私もそういう意向を申し上げておるのですが、私が新たに外務大臣になった、先方が今度新しく外務長官になった、何か経済協力問題があって、そのことが片づかないからお互いに行き来をしない、意見交換の機会もない、そういうのはどういうものかと。そこで李新長官が訪米をされるということでありましたので、ひとつお帰りには非公式で結構だが日本にお寄りにならぬかと、お寄りになるのであればわが方で御招待をいたしたい、こういうことを申し上げておいたのであります。これに対して李長官もそれじゃ寄りましょう、こういうことでございますから、お会いした上は両国間の各種の問題、中には経済協力問題も当然入ると思いますが、それらについて腹蔵のない意見交換をしたい、また、私としてはいままでに日本側が提示しておるのが、何ゆえにこれがぎりぎりであるかというようなこともそういう機会に御説明申し上げ御理解を得たい、こんなふうに思っておるところでございます。
#41
○松前達郎君 日韓の経済援助という問題については、どうもいままでの経過を見てみますと、最初にアメリカに行かれて、それで必ずその後にこういう問題が出てくるのですね、前にも委員会で申し上げましたけれども。ですから今回お呼びしたということであれば、あるいはそういうことがないかもしれませんが、これについてもやはり特に商品借款という問題を考えた場合に、これは非常に違った意味で問題があるのじゃないかと私は思っておるわけです。というのは、特に最近の北朝鮮とわが国の関係というのがどうも少しずつおかしくなるような気配もありますしね。そんなようなことで、朝鮮の南北の問題がまた再燃する可能性も出てくるし、あるいは韓国の武器とか、そういうものの近代化ですね、これもやらなければ
 いけないという問題もあるでしょうし、いろいろ問題があって、それとのリンクがされているような気もしないではないので、商品借款という問題はそういう意味も裏に考えながらやはり対応して
 いかなければならないんじゃないか、こういうふうに私は思うのですけれども、それはそれにいたしまして。
 時間がもうほとんどありませんので、次にこれまたいろいろ問題が起きたIBMの産業スパイ問題なんですが、これは民間の会社同士の問題ですから、政治的な介入とか政治的な問題として取り上げるかどうか、この辺はまだ恐らくそこまで至っていないんじゃないか。その後起訴するかどうかの問題ですね、こういう問題等も含めてちょっとその後どうなっているか、私はまだ聞いていませんけれども、アメリカと日本の関係を見ますと、特に繊維の問題に端を発して、それからたとえば、いわゆるテレビとか家電の問題に入ってきて、その次は自動車だぞ、こういうことをアメリカのある上院議員が私に言いましたけれども、果たしてそのとおり自動車の問題が出てくる。それからその次は何かというと、これは半導体である。ところがIBMの問題は半導体そのものではないのですね、これは。システム上の将来の問題としてスパイが行われたというふうに言われておるわけですから。さらに次は何かというと、これは金融と保険関係である、そういうプログラムが大体立っているわけです。もう保険については大分始まっているようであります、金融はまだこれからでしょうけれども。
 これは貿易摩擦と関係が直接ないかもしれません。しかし、そういったいろいろな問題が次々と起こってきているのが現状であろうと思うので、IBMの産業スパイ問題についてもちょっと私の感じでは、どうもはめ込まれたような感じがしてならないわけですね。はめ込まれたとするならば、ちょっとこの辺のアメリカの対日政策というものまでこれに絡んでいるのじゃないかと、こう考えざるを得ない。そうでなければいいんですけれども、そういったような一連の問題、どうも最近非常にアメリカが日本に対して世論づくりというものを盛んに押してくる、そういった感じで現在の状況を見ていいのじゃないか、こういうふうに思っておるのですが、政府としてこのIBM事件というのをどう考えられているのかということと、政治問題にまだなってないと思いますが、これらについては今後どういうふうに取り扱うのか。この裁判をするかしないかの問題、それから国としての成り行きの問題等も含めて、政府としてどう対応されるのか、それを最後に一言お聞かせいただきたいと思います。
#42
○政府委員(淺尾新一郎君) まず事実関係から申し上げますと、いま松前委員が非常に推理を働かされたわけでございますが、私の答えがあるいは非常にナイーブかもしれませんけれども、アメリカ側の国務省の発表でも、実はこのIBMの関係は従来から捜査をしていた、日本をねらい撃ちにしたものではないということが第一点でございます。それから、日米関係にこれは影響を与えないようにするというのがアメリカ側の基本的な立場でございます。また同じように日本側も全く同じ立場に立っておるわけでございます。したがって、このいわゆる産業スパイというものは刑事事件として処理していくということでございます。
 なお、ちなみに、先ほどお尋ねになりました大陪審の結審というものが本日出まして、日立関係の十二人全員については起訴、及び日立の会社それ自体も起訴、ただし、三菱関係については審理を延期と、こういうのが現状でございます。
#43
○松前達郎君 この問題も、こういった熾烈な情報合戦が行われているということの裏づけになるかもしれませんけれども、しかしこれからいろいろと問題がアメリカとの間に出てくると思うんですね。たとえば農産品の問題だって、これは恐らくまだまだ解決と言えない、解決どころじゃない、これからまたさらに押してくるだろうというふうに思うんですけれども、そういう中でやはりわれわれとして外交政策そのものも相当自信を持った政策といいますか、独立国としての政策を出していく、これがやはり重要なことじゃないかと私は思っておるわけなんで、周りで起こるあらゆることが、多少大きな目で見ていろいろな流れにつながっていくということ、これをやはり見落としちゃならないんじゃないか。この辺はもちろん有能なる外務省の皆さんですから申し上げる必要はないと思いますけれども、どうもその辺が最近動きが、流れが少しずつ変わってきているような気がいたしてならないわけであります。
 それと同時に、いまの原子力関係、これも使い方によっては善と悪に分かれるわけですが、特に悪の方の核兵器問題、これについてもやはり日本としては原爆の被爆体験を持つということ、これももちろん基礎にあるわけですが、もっと大きな目で見て推進、いわゆる平和に対する努力というもの、これをやはりやっていくべきだろう。国連といっても、国連というのは場所としてはありますけれども、これが強力な体制になるというのはなかなか遅々として進まない、そういう状況だといま思います。
 ですから、国連はもちろん基礎になりますが、それと同時に何か新しい動きというものをわれわれとして提案をしていかないと、ただ国連を強固にするということだけでは済まないんじゃないか。その提案というものをやはりひとつ打ち出してみるということですね。これがやはり世界の平和というか、世界の中の日本としての役割りを認識させる一つの大きな力になるのだろうと私は思っておるわけです。そういう意味でひとつ今後とも努力をいただきたい。これは要望でございますけれど、要望いたしまして、質問を終わらしていただきます。
#44
○戸叶武君 なかなか外務大臣にもお目にかかれないので、総理大臣の鈴木さんや外務大臣の櫻内さんは、現場に触れて、体で物を確かめようという非常に精神の旺盛な方で、そういう意味においては、観念的な実証主義学者よりも体でぶつかって受けとめて、そして問題の中から直観と決断においてタイミングを逸しない一つの政治的な配慮をしようという新しいタイプの政治家として、人物私見においては非常に日本の政治史の中で興味ある人物だと私は思っておるのです。実証主義的な政治学の学究として、大学の教授という観念論のマンネリズムの中からは政治は生まれない。政治はやはり文明史観と哲学を持つその英知の中から特に体当たりで、体でぶつかって、そこから発するところの直観と決断によってタイミングを逸しない一つのひらめきが出るのじゃないかという点において、ひらめきを私は非常に政治学においては重視しておるのであります。別に頭が光っているからというのじゃないけれども、櫻内さんはやっぱりそういう光を放っているような感じがするのでありますが、このごろ少しくたびれちゃったのじゃないかと思う。鈴木さんも櫻内さんも、体質的にいまの自民党はだれが総理大臣をやっても結局この混沌の中へ巻き込まれて、これが現実なんだから仕方がないじゃないかというあきらめまではいかないにしても、もがいてももがいてもそこから活路を見出すことができない失望感が私はあなたたちの顔にもさえない面を出しているんじゃないかと思っているのです。これはわれわれがいまの自民党の総裁をやっても、いまの社会党だって責任ある地位についたならば、批判は自由だけれど、いまの状態ではだれがやっても、いまの政治をどう打開するかということはむずかしい問題で人ごとじゃない。われわれは総理大臣や外務大臣になっていないで、野人だから勝手なことを言えるんじゃないかという野人の楽しみを満喫しておるわけでありますけれども、それを満喫している間に日本の国が滅びてしまっちゃどうしようもないと思うから、やはり自分のふるさとを愛し、祖国に対して責任を持つ政治家というものが、われわれでなくてもいいからだれか出てこないと、いまのままだと権力と金に弱い奴隷の外交です。インドではちょうどハゲタカというのがいまして、路傍で行き倒れで腹がへったりなんかして死ぬと、はらわたが腐ったと見てからハゲタカは疾風のごとく飛んできて、そこいらがなかなかおいしいところなんでしょうが、骨だけ残して全部食べちゃうんであります。いまはゴキブリ政治家が多くて、権力に弱く金に弱い、金は政治に必要ですが、金、金、金という形でこんな日本ほど堕落した、権力に弱く、金に弱い、そして小ばくち打ちみたいなことばかりやっている国民は先進国の中じゃまあない。世界史の中で奇異な笑い物になる歴史をいまわれわれはつくっているかと思うと情けなく感ずるのであります。
 そういう意味において私は、この今度の豪州との協定においてもやはり外務省におけるまじめな官僚の人たちが主としていろんないままでの経験からつくり上げたものでしょうが、豪州においても日本においても、やはりこれだけすぐれた考え方を持って、とにかく核兵器の根絶を目指しながらも、いきなり核兵器という形で取っ組むことよりも、核兵器において重要な役割りを果たすウランの問題に対して、後で悔いのないような、私は用意周到なこの条約を少し細かいところまで配慮し過ぎたと思うけれども、やっぱり歯どめをつくり上げた点においては、条約技術としては最近においては両国の外務当局の見識がここに躍動していることを私は感じているのであります。官僚でもエリートの方でしょうが、そういう人すらもこれだけの国を憂い、人類を憂いて条約に対して真っ向から取り組んでいる姿を見て、いまの政治家は恥ずかしく思わないんでしょうか。
 私はこの間通産省官僚の中で優秀な人物と言われて期待されていた若杉君が、アメリカからの次から次の無理難題を――アメリカとしては無理難題だと思わないほど、それほど力の政治というものになれ過ぎちゃって、恫喝するならばどこまででもやって、そうしてひねり倒してみせるんだというようなやり方に対して、官僚でも抵抗を感じて、とにかく日本は資源がない国なんだ、せめて日本の技術、労働力、勤勉さ、そういうことによって、そうしてどんどん新しい物を開発して、日本人の頭脳と労働の力をもって、それと日本人独特のいままで蓄積された勘、修練、それを働かしていく以外に、貿易で収入を得る以外に世界に貢献することはできないじゃないかという形で、場合によってはソ連とでもやはりもっとシベリア開発その他の問題で、あるいは燃料の開発の問題で提携しなくちゃならぬということをぶっ放したときに、一番加勢したのはヨーロッパの官僚です。
 アメリカでも、マクナマラさんとは私はもう二十年来の古いつき合いで、彼がフォード会社の副社長の時分に、アメリカ自身がガソリン浸りをして高級車まがいのものをつくろうとして、フォード会社があのでかでかとした豪壮なフォード車をつくって、それが逆目に出て、ガソリン節約の時代に大衆車として伸びるべきフォードが逆なやり方をやって、フォード会社はそれがために今日の致命的な打撃を受けたのです。これはマクナマラの失敗です。しかし、あれだけ頭脳のいい男で、ペンタゴンに行って迷子にならなかったのはマクナマラぐらいだと言われておりますが、彼がケネディに採用され、ジョンソンによって、これだけの人物を防衛関係にだけ使っていくのはもったいないと、ジョンソンはそのころはもっと聡明だったでしょうから感じたのでしょう。数字にも明るいし幅が広いし、それで世界銀行の総裁に推薦したのがジョンソンです。しかし、今度アメリカの閣僚の経験がある一人として彼はいわゆる軍備を、国防をおろそかにしろなどという考えは持ってない方で、むしろ日本の軍事的協力というものを求める面はあります。
 しかしながら、ジョンソンさんが言っているように、強引に台湾をアメリカの軍事基地にしようとして、中国から大きな不信感と恨みを買い、また日本の憲法改正には応じないという国民世論があるにもかかわらず、自民党の中における一つの勢力、どっち向いて走るのか台風の目だから、岸さんでも田中さんでもどっちへ走るかはこれからわからない面もあります。日本のためとでも思っているのでしょうが、こういう形でいま軍備を強化して、アメリカとともに同じような役割りを果たそうという行き方が果たして東洋における日本や中国、東南アジアに不安を導かないかどうかということは、じっくり中国でも日本でも考えるべき問題であって、少なくとも太平洋やアジアの問題はアメリカより、日本は間違いも犯したけれども、私は反省しなきゃならない面を多分に持っていると思います。日本自身が冷静に、日本国の憲法は敗れてつくられたマッカーサー憲法だと言うけれども、あれは国連憲章に基づいてモデル国家たるべき国連の健全な時代につくられたところの憲法であります。マッカーサーは取り次ぎ役であって、年じゅうあの人は不安定な、それほど憲法に対して明るい面は一つもありません。伊藤博文と同じ程度です。そういうときにマッカーサー憲法と言って、しかも日本の憲法を自主憲法と言うけれども、自主でも何でもない。伊藤博文はどれだけの責任を持ったのですか。天皇の名によるところの軍隊、宣戦布告なりあるいは軍事費をビスマルク憲法以上に、プロシア憲法以上に、国会が手を入れることのできないような一つのブレーキをかけて井上馨やあるいはあの取り巻き連中とつくったわけで、進むことも退くこともできないで日本が無条件降伏したのは、どこに原点があるのです。だれがしりをぬぐったのです。天皇は気の毒です。民族統合の象徴としての存在ならばそれなりの意義がある。やっぱりニクソンや田中さんが天皇になったらだれだって困るんですよ。そういう苦い経験の中から、フランスの国家が、マルセイエーズの歌から怒濤のような大衆の怒りの中にアンシャンレジームが行進歌の中から生まれたように、敗戦の中から日本は新しい日本を、世界に貢献し得る日本をつくり上げようと決意した以上、日本の自民党の中には通用するかもしれないが、そんなことをやってごらんなさい。あなた方の政権をつぶすのにはこれは一番いい、自滅するのには。いま国民が、婦人が、未来をよかれと信ずる青年がだれがいまのような戦争への道を歩み、ベトナムの戦争に黒人が麻薬でもって奴隷のごとく戦争を強いられてヒッピーにまで成り下がっていったあの悲劇を見ていて、だれがそんなことをやりますか。常識的に考えて戦争かデタントかは、デタントはむずかしいけれども、お互いに話し合って、相互の立場を理解し合って、それで問題を片づける以外に人類の破滅を救う方法はないんです。あなた方だってそれはわかっているはずなんです。にもかかわらず、自民党の自滅を急ぐんなら別です。社会党の中にもうろちょろ――社会党と言っては悪いかな、私も社会党だから。いや、やっぱりいまの憲法は理解できない人がいます。だからこそ、全国区におけるところの自民党と社会党が組んで、一人か二人減っていくのを何とか食いとめようなんという形で日本憲法の外堀を埋めるようなばかな考え方を、不勉強なるがゆえに、世界の中における日本の使命を忘れたようなとぼけた考え方を持っているがゆえに、私は歴史上において取り返すことのできないとんでもないところへいま来ているんじゃないか。この時の流れと勢いはどうすることもできないんだというのが鈴木さんやあなたの苦悩かもしれないが、あなた方、現在内閣を持っているんじゃないですか。日本の主権者は国民です。天皇は民族統合の象徴です。定着しつつあります。再び天皇に号泣して恥を与え、そうして、みずからの責任で戦争終結を、だれもやらないときにやらせなければならないような屈辱を再びやらせるつもりか。国民を裏切るつもりか。日本の歴史の中において、この政治家の不勉強、大衆の憂えを憂えとすることのできない腰抜け、これがいま日本を滅ぼしていくところのハゲタカにつっつかれる前の迷える民族の姿です。私は本当に悲しい。私は、マルクスレーニン主義を学んでも一度も共産党にも入ったことはない。別にそれだからといって誇りとするものじゃない。しかし、全体主義的な物の考え方は、右も左も、食糧暴動や戦争や暴力でもって革命が可能であると思うような非常識な考え方はもう世界に通用しなくなったのです。もっと常識的な、もっと大衆とともに苦悩し、大衆とともに模索して未来を開こうという、未来に対して光を求める運動以外に祖国を救う道はないと思うんですが、櫻内さんいかがですか。やっぱりあなたの苦悩をも私はこの際幾らかわかっていないと、責めるばかりが能じゃないから、一掬の涙なきにしもあらずで、苦悩の一端をひとつ御披瀝を願いたいと思います。
#45
○国務大臣(櫻内義雄君) いろいろと御高見をちょうだいいたしまして、教えられるところが多うございました。
 まず、政界の現状について、権力、金力に対する御批判をちょうだいし、また今後の発展の上には、技術、労働力、勤勉さの必要性をお説きになりました。
 憲法に対する御意見をちょうだいしたわけでありますが、これは大変勉強になりましたが、特に全体主義的考え方についての強い否定をされた、あるいはデタントの必要性を強調されたりしての御意見でございまして、私も日本の外交の一端を背負わしていただいておる上に大変御高見をありがとうございました。
#46
○戸叶武君 今度はもっと細かいところに入りますが、私は単なる演説をやっているんじゃない。ただ単に国会が、だんだん行政権の膨張によって、小国家と言いながら事実上は行政の拡大によっていつの間にか最高機関というものが内閣に従属するような形になって、官僚国家になりつつあります。日本の官僚は、フランスの官僚以上に危機を感じてよく勉強していてくれます。だから、もっているのだと思いますけれども、ただ危ないのは、官僚というものは頭がいいし頭脳があるけれども、腹がないところにやっぱり官僚の限界があると思うんです。私はそういう点において、もっと政治家がいい知恵を持って、そうして責任は、泥は政治家がかぶる。自分で泥棒のようなことをやって泥をかぶるのはあたりまえのことで、これは泥棒なんです。そうじゃなくて、やっぱり自分で政治責任はかぶるというだけの私は勉強はしてもらいたいと思うんです。
 そこで聞きますが、これは大臣だけじゃないけれども、外務官僚の中の人たちは非常によく勉強している人はあるんだが、日本が無条件降伏したときの国連の決定、国連憲章と、それを母体として生まれた日本国憲法と、その前に秘密のうちにわれわれの知らない間に日本の国の主権は侵され、アメリカ、イギリス、ソ連の三大巨頭の、ヤルタにおける秘密条約において人の領土を無断で、主権を無視して軍事謀略的秘密協定をやったヤルタ協定が、サンフランシスコ平和条約においても、北方領土の問題で一番障害になったのは、発表されないヤルタ協定がのどにつかえて、アメリカがあいまいな態度をとらざるを得なかった。そして、ダレスはいきなりあのときからすでにソ連を敵視して包囲政策――コンテインメントポリシーをやり出して、いまだにそれがレーガンの中にも流れているアメリカ外交の伝統です。
 次の平和条約は戦争に勝ったから負けたからというのでなくて、他国の領土を奪うようなことはしないということをアトランチックチャーターにおいても英米は宣言し、ポツダム宣言においてもそれは繰り返しているのに、戦力が弱ったからといってフランスと中国は除外して、三国だけの力の外交の取引によってつくり上げた――戦時中にはそういうこともあり得ることかもしれませんけれども、ヤルタ協定を解消しなくてどうして本当の平和条約というものが成立すると思うんですか。問題は、世界の秩序というものが前向きでベルサイユ協定以来進んだのじゃなくて、ヤルタ協定において逆転し、米英の言っている国際法の理念というものは裏切られているじゃありませんか。日本がいま北方領土の問題だけを中心として、そうして平和条約はこれこれでなければ結ばないと言ってソ連には突き当たっております。ソ連に突き当たることができる民族でいながら、どうしてアメリカに突き当たることができないんです。その条約の問題で非常に現実と理想との間でいろんなギャップがあるでしょう。あるけれども、やっぱり国際的な秩序の方向づけの理念というものには一貫して貫くものがなけりゃならないのでありますが、条約局長、これは外務大臣に答弁させると、外務大臣に責任がいきなりストレートにいっても失礼ですから、どうあなたが受けとめていますか。
#47
○政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。
 ヤルタ協定というものが戸叶先生御指摘のような領土問題についての性格を持っておることは御指摘のとおりであろうと思います。しかし政府といたしましては、従来から申し上げておりますことでございますけれども、ヤルタ協定それ自体は、戦争中にこれらの三大国が秘密に取り交わした文書でございまして、したがって、いかなる意味においてもわが国自身を法的に拘束するものではないということは、これは従来から政府が明確な立場をとっておるところであろうと思います。
 それからアメリカ自身の立場につきましては、これも先生御高承のとおりに、従来からアメリカもいわゆるヤルタ協定なるものは、単にその当事国の当時の首脳者が、戦争中の共通の目標を陳述した文書にすぎないものと認め、その当事国による何らの最終的決定をなすものではなく、また領土移転のいかなる法律的効果を持つものではないと認めるという立場を従来から明確にしておりまして、その意味におきまして、アメリカもヤルタ協定というものがわが国との関係におきまして、領土処分についての法律的な効果を持つものではないということは認めておるところだろうと存じます。
   〔委員長退席、理事大石武一君着席〕
#48
○戸叶武君 もう少し過ぎてからの方がヤルタ協定を問題とするのにはタイミングがいいと思いますが、それは、飢えたるポーランドを救えという声は必然的に、アメリカがどんなことを決めようがヨーロッパじゅうの世論となり、フィンランドからノルウェー、スカンジナビア半島からバルト三国にまで及び、私は東欧にも、ソ連に対してもっとココムの強化よりも緩め、もっと自由な立場をしなければ窒息してしまうという要求の中に、飢えたるポーランドを救えという人道主義的なスローガンのもとに、食糧暴動が恐らくはこの十一月か十二月かに起こる危険性がある、それを防ぐために私はヨーロッパじゅうの、大きな世界の声となると思います。それは、ポーランドも知っているしソ連も知っている。ソ連のかいらいとまで言われる軍事政権においても、最終的なものにいくと、結局はポーランドは死にもの狂いで、ヤルタ体制を解消しろと。
 われわれはヨーロッパの中国に民族が国家をかつてからつくっていながらも、置かれている地位のおくれから、ドイツのナチにおいては虐殺され、戦争のどさくさに、帝政ロシアだけではなくて、ソ連からは強制労働によって奴隷のごとく使役されて、民族は分断されてしまっている。民族自身の統一ということがポーランドの生きる道である。ポーランドの労働者も農民も、これなくしてはやはりポーランドの生活の独立ができない。あのナポレオンに敗れたときにフィヒテがベルリン大学で言ったように、あれだけフランス革命の前夜において進歩的な見解も持ったが、あの敗れた後における虚脱状態のベルリン大学において、学問の独立と研究の自由なくして、大学の自主性なくして民族の独立は果たし得ない、民族独立なくして一国は成り立たないという、痛烈な大学の学長としての演説をやっております。あんな演説はないです。フィヒテがぶち込んだのは、魂なきドイツは再び民族として統一への失格者になる危険性があるぞという形に対しての憂国の私は本当の赤誠だと思います。
 そういう意味において、私は、ポーランドは寒さに向かってくるときに、ちょうどロシア革命後におけるロシアが、農業政策に失敗しただけでなく、飢餓に襲われたときに、世界じゅうから飢えたるロシアを救えという人道主義的な呼び声に応じてソ連を救う大衆的な運動が起きたように、もっと私はイデオロギーを乗り越えて純粋な形でポーランドを救い、中国からも日本からも、余り米なり何なり――余り米でなくても一粒の麦でも何でも送って、とにかくポーランドの飢餓を救って暴発を防がなければならないという形は私は出てくると思うんです。ソ連やアメリカがどんな権謀術策をもってもこの怒涛のようなヒューマニズムというものに打ちかつことはできないです。それが起きてからでは間に合わない。いまのときに、ソ連でもアメリカでも、もう少し考えをし直さなければ、力ずくでいっては、地獄へ両国も行くばかりです。世界から孤立します。
   〔理事大石武一君退席、委員長着席〕
いま、気の毒で気の毒で、ソ連やアメリカの外交を見ちゃいられないから、私は余りひどい自滅の仕方をさせたくない。この辺でやっぱり反省を促して、平和共存以外に世界の生きる道はないんだということを、アメリカのインテリがもっと勇気を持ち、労働者も大衆も勇気を持って、ソ連もそうです、共産主義のああいう体質によって、おくれた形の体質で近代国家はできようはないんだ、ちょうどいいときなんで、そういう古ぼけた全体主義的な権力国家、官僚国家、そういうものから脱出して、やはり遅まきながら議会制民主主義によって、みんなして話し合い、お互いの立場立場を理解していくような声が世界から上がってくるときに、日本が遠慮しているけれども、日本の一億と中国の十億、世界の四分の一が、いままでのような発想よりコペルニクス的な転換をして、真理は権力に勝つんだ、この信念を持って、小ばくち打ちのようなマージャン賭博や麻薬やゴルフ賭博なんかをやらないようにして、もっと民族が質素で清潔になっていかないと、世界から日本は相手にされなくなると思うのです。条約上の解釈だけでは、解釈学からは何も生まれない。
 朱舜水の偉さは、私はこの間、浙江省に呼ばれて碑を建てに行った。三百年ぶりでふるさとへ帰って、南京攻略に失敗して以来、絶望して水戸光圀の知遇に甘んじて日本に帰化した朱舜水は、朱熹(朱子)の正流であるけれども、朱子学や王陽明学などというものにこだわっていない、体験を通じてもっとその時々に必要な実践の学を探究したので、その門下生の中からは朱子学に対抗した陽明学者を幾人か輩出させている。王陽明学のいいところ桑子学のいいところも――いいところと言ったって古ぼけた孔孟の思想でなくて、もっと親を大切にし、家庭もりっぱな家庭をつくり上げていく、そういう生活の基礎から立て直していかなきゃならぬという形で、陶淵明の五柳先生の伝なり、あるいは白楽天の酔吟先生の伝なりを通じて水戸光圀に本当の学問を教えたのであります。
 いま中国で、マルクス主義とかレーニン主義とか、毛沢東とか周恩来路線とかについて、議論は中国では文字の国だから勝手だ。しかし、辛亥革命の原点に帰るというのは、民族全体が炎のごとく一体となって燃え上がり、自分の間違いは謙虚な態度で改めて、民族の中に流れている道義的生命力を政治の現象面に、興亡の歴史にこだわらず三千年の文化、道統を躍動さすべきである。それには教育だ、緑だといって、百年の計は木を植えるにしくはなし。それだけでなく、百年の計は、貧乏人でも勉強ができるような、日本のインチキ教育と違って、本当の教育を大衆に、政府が責任を負うようなものをつくり上げなけりゃならぬというところへ発想の転換が来たということは、苦労したかいがあって、中国は、日本の明治維新の後におけるああいう官僚、軍閥の、薩長藩閥の明治政府の自由民権をつぶしてきたものと違って、中国革命の進展過程において幾多の試行錯誤はあったけれども、現在、内部調整段階において発想の転換が試みられつつあると思います。辛亥革命の原点に戻れとの反省がその一つです。
 外務省の国際法の先生もなかなか条文解釈がうまい。条文解釈から生きた政治は生まれない。物をクリエートするものは生まれない。御用学者だけだ。日本で戦争に負けた後に国民主権の憲法をつくる能力を持った憲法学者はいなかったじゃないか。行政に逃げて、官庁の何とか委員とかなんとかやっておれば、大学教授よりは収入が多い。御用学者だ、全部が。こういう形で明治維新においてアンシャンレジームを打ち砕いて、国民の手に政治が奪還できると思うものが、薩長藩閥と宮廷におけるところの茶坊主によって自由民権が圧殺され、プロシア的な国家体制、あれよりもひどい国家体制ができて、惨めに負けてだれも責任を負う者がなかった。天皇だけが泣きながら人間天皇を宣言して、二度とこういう辱めを民族に受けさせないために責任をかぶったのだと私は思います。道義的な意味において、やはり日本民族の表徴として、山本玄峰老も、妙心寺の管長を務めた人だが、進駐軍の将校に問われたとき私と同じやっぱり見解を述べております。楢橋君が立ち会っているからわかっていたはずです。こういう聖徳太子なり弘法大師なり、あるいは中国から来た無学祖元なり朱舜水なり、中国と日本は幾多の間違いを起こしたけれども、政治の中枢部が腐敗したがゆえに、いかなる志士仁人が出ても、滅びるものは滅びていったけれども、その中で民主化されない国家体制のもとにおける志士仁人はむなしく、文天祥にしても朱舜水にしても皆去っていったんです。しかし、その中における三千年の文化、道統は烈々として流れているんです。お母さんはしっかりしています。家庭における中心です。親孝行を知らぬやつはだめです。魯迅の家に行っても、田舎でのお母さんがひねもすやはり質素な生活で働き抜いたのです。文字もろくに知らない人でしょう。だから、やはり魯迅のような人物も生まれたのです。
 私は、安部磯雄先生に質素なる生活、永遠の心という教えを受けましたが、大逆事件や何かいろいろな波乱万丈の中にいて、一貫して社会主義の道を守った安部磯雄さんには特徴的なものはないけれども、実証主義的な政治形態を早稲田の伝統につくった点においては、大山郁夫教授と同じく、小野梓先生と同じく、非常に私はりっぱなものが残されていると思います。
 高文試験に通った秀才は、秀才に違いないが、どうぞもっと凡人になってください。大衆とともに苦悩し模索し、凡の哲学に徹して、みずからエリートなどとうぬぼれないで、そうして大衆とともに新しいものを創造する。
 母なる大地、自分を産んでくれたお母さん、ふるさと、それを大事にできないやつが世界に対して責任を持つことができますか。祖国のために命をささげるというだけの祖国に対する愛情と責任感を持たないやつにだれが政権を与えますか。いまのような不自然な政権、議会制民主主義の本来の精神に帰るべきです。いい機会です。
 どうもこの冬、暖冬異変で、もっと寒けりゃゴキブリを殺してしまったんだが、暖かかったばっかりにゴキブリはふえるばかりでどうにもなりませんが、この辺は、人だけに責任を持たせずに、田中さんでも何でもそれぞれの、いいとは初めは思ったのだと思いますが、周りの連中が悪いことは田中さん、いいことは自分のことにして――三木武吉は偉いやつだけれども、それを言いました。おれは人間をつかまえる前に金をつかまえちゃったので政治家として失格者だ、戸叶君、金より人間だなあ、おれは政治家としての失格者になったのはそれだと。
 私は、名指しはしないけれども、何人といえども祖国のために、人類のために考えを持たない悪党ばかりではありません。夜沈々としてもがき苦しみながらいる人が、田中さんあたりでは、あのお母さんはりっぱな人じゃなかったですか。傷ついたらいつでも自分のところへ帰ってこいというだけの愛情を持った人じゃないですか。あれほど私は人のために尽くすという精神に徹したお母さんの精神というものが最後の救いだと思います。大地と母親を大切にすることのできないやつにモラルはないです。
 伝統は、新しいものを生み出す生命力を躍動させる力が欠けてしまいます。いま大きな台風の中に日本はあるので、そういう意味において、私は条約の問題も、一条約課長は熱心な方でよく勉強しておりますが、問題は総理大臣、外務大臣、そこいらの人たちがもっと日本の歴史の中において、世界史の中でいま日本人があざ笑われるか、小ばかにされるか、本物かにせものかと試されているときです。憂国の志士は民族の将来を考えたときに、私はもう少し政治の中にコペルニクス的な発想の転換が必要だと思います。
 私はいつも失恋したやつに言うんです。逆立ちしてみろと、のぼせた血が下へ下がってくるからと。いま、どうも失恋してやけを起こしているような人間と同じように、頭へ血が上っちゃって、逆立ちすりゃ血が下がるから治るのに、そのことも忘れているんですよ。
 どうぞ、もっと日本人は能力を持っているのだから、暗記でも、あるいは今日の電子工学の根本でも、日本人というものにはかなわないとフランス人でもスイス人でも言うのは、でっち奉公した時分から暗算やそろばんや四書五経を勉強したのは、卒業証書よりも、神経よりも頭脳よりも、肉体の中に技術と一緒にひそんでいるんです。それがいま近代化された日本においてまだ完成はされていないけれども、大きな新しい原動力になっていると思うんです。教育だけはいまのようなでたらめな教育はなくさしてください。マージャンは全部やめろというわけじゃない、家庭マージャンぐらいはいいでしょう。けれども、今日の麻薬、ばくち打ち、そういうものがばっこしていくところに日本の未来がありますか。何で恐れているんです。何でそいつらの手先をしなけりゃならないんです。本当に私は憂うべきであって、もっと総理大臣なり外務大臣はつらい、おれなんか頼まれてもちょっといま御免だと言って逃げる方に回るかしれないが一竹林の七賢人は何もかも知っていました。しかし、時がまだ自分らが出しゃばるときではない、世間が迎えてくれない。竹林の七賢人は凡に徹したのです。四季を求めて詩を吟じ、歌を歌い、竹林におって同好の士と交わりを結んだ。アメリカあたり賢人グループというのが行っているそうだけれども、本当のことをアメリカに告げているんでしょうか。御機嫌をとっているんでしょうか。そこいらはしかと確かめられませんけれども、大来君あたりが行くと本当のことを言っても通じるようだけれども、どうも外務省の先輩あたりはやっぱり御丁寧な注釈つきだから通じないんだと思うんです。そこへいくと、われわれと感覚が違うけれども、いまのマンスフィールド夫婦なんというのは率直に物を言っております。グルーさんよりも率直です。グルーは日本にほれ過ぎた。率直だけれども、あれはアメリカ人が言っているだけで日本人が何も、私と同じ年だけれども、いまの大使の言うことを参考意見として聞けばいいのであって、こういう動きがアメリカにありますよ程度で聞くだけであって、大使がこう言ったから、大使の言うとおりにしなけりゃいかぬなんというへ理屈はないんです。奴隷の考えです。アメリカ人は率直に物を言うんです。ハーバード大学がだめになったら今度はエール大学がやっぱりすばらしい一つの国際法の中においては人材を出しつつあります。
 どうぞそういう意味においてがまんすることが第一、短気を起こさないで戦争に引きずり込まれないでいくこと。この後十年平和を保っていくならば、アメリカと日本が臥薪嘗胆して、復讐さすためじゃない、世界にわれわれの過ちと同じ過ちを犯させないために協力して、光は東方よりの実践を、東洋的ルネッサンスをシュペングラーが予告したような、トインビーがそれを受けとめているような形のものをつくり上げねば、具体的事実以外に真理は浸透しないんです。いま苦しんでいるかしれないけれども、もう少しがんばらなければやっぱり総理大臣の資格も外務大臣の資格もない、あるかしれないけれども後世でもって史家によって裁かれますよ。司馬遷の史記のように、きんたま抜かれても、宦官と同じような友人を弁護したがゆえにやられても司馬遷の史記の中には本当のことが書いてあるじゃないですか。私はそれを学びたい。国会に依然としてへばりついているのは、この目で事実を見、どういうプロセスを経てこうなったかという歴史の必然の流れというか、それに対してどういう目的意識を持ってそれを打開したか、その実証主義的な政治学を、近代社会科学の中におけるその方法論を、哲学を、体をもって受けとめていくことがわれわれの一つの政治家としては未完成のまま、しかし実証主義的政治学の伝統を守る点においてはやっぱりデューイやラスキやそういういままでの先覚者があるので、名誉も要らぬ、地位も要らぬ、演説屋にすぎないと見られてもいい。
 本当のことをたたきつけて、後世の人にわれわれ国会の記録の中に、自民党の方が私は相当な教育を受けた人もあるし、恥を知っている人もあるから、特に参議院においては、ばかげた憲法改正などという社会科学の方法論も、政治経済の文化にわたっている経綸も、文明史観も哲学も持たない、官僚のなれの果てと言われたくないだけの私は常識を持っていると思うんです。フランクリンのような常識人、三権分立よりもコモンセンス、それがアメリカの民主主義においては大切なんだ。法治国家的な窮屈な法理論でなくてコモンセンス、日本人は良識と言わないと承知しないだろうけれども常識、大衆の常識、健全なる常識、アメリカもそれが崩れてしまった。ソ連も何とか博士というのがやたらに幅をきかせてきた。なかなかいいのもいるけれども、つまらないのもいる。こういう形で世界自身が新しいやっぱり発想の転換を求めているときに先取りをするというのは、碁でも将棋でも下手でも先手必勝というのがある。後から人の顔色ばかり見て、あんまがつまずくような形で、自分もつまずくまで学ぶ必要はない。
 やっぱりアメリカにもソ連にも思い切ったことを本当に言い、アメリカの第五列、ソ連の第五列のような、自分の祖国はどこであるかということを忘れたようなやつに政権は絶対に来ない。大衆は知っている。労働組合委任のメンバーになって賃上げには参加するけれども、なぜ投票が少なくなるか。それは労働組合の幹部に聞いてみたい。大衆は英知がある。しかし、いまの財界人だって、いまのような混沌たる政治ではかなわぬ、自分だけがよけりゃいいという形にはいかないなということはやがて悟ってこざるを得ない。愛知君あたりでも基準通貨の問題に対して福田さんなんかとは違った角度で、やっぱりあの魔術を解かなくちゃだめだと。高金利によって、フローレンスの高利貸しみたいなことをもって法王庁を堕落させたり、カイザリズムを持ち込んで共和制をぶっつぶしたり、北ヨーロッパの暗黒時代を見て、ニーチェが神がいないと言ったのは天才と気違いのあいのこだと言うけれども、本当の事実を見て、暗たんたるルネッサンスの恥部を見て、スイスの山の中から澄んだ眼で出ていったニーチェが神を認めることはできないと言うのはあたりまえのことだ。神様が金に化けてしまってどうにもならない。これがルネッサンスの暗黒面であって、モナリザの顔を見てごらんなさい。ノイローゼの顔です。日本の皇后さんの顔を見てごらんなさい。もっとふくらみのある、ロシアの国会議員が、やっぱり成金のロシア美人の貴族婦人の絵よりも、モナリザの憂うつな顔よりも何というこだわらないおおらかな屈託のない顔だろうといってびっくりして褒めてくれた。これはやっぱり美術鑑賞に対する人間本来のものがあるんだと思うんです。音楽や美術を通じて、世界にはインターナショナルというのはないけれども――
 もう時間だと言うから、まだ六日と八日がありますからまたこの次にいたしましてこれでやめますけれども、いま私は本当に泣きたい。号泣したい。田中正造ならば直訴したい。人民に直訴するんだ、田中正造みたいに。天皇に哀願したんじゃない、天下に警鐘を乱打したいというのが田中正造の真意です。私はいま国会を守る自由民権を口とし、民主主義を口とする人は多いけれども、だれが人民のために、――人民と言っちゃいけないと廖承志君が言った。私は烈々たる愛国者だと言って、一九六〇年に北京に行ったとき彼が言った。戸叶さんの日本の国で使っている言葉は国民だから、国民と翻訳を改めてくれと。廖承志君の偉さはその人の心をわかってくれることです。言葉じりで物を言っているんではない、気魄だ、人間の。中国にはそれが通ずるものがある。
 いま、まとめろと言うが、まとまらないものがまとまっている証拠なんです。これが混沌の哲学というものだ。私は、演説というけれども、言論の自由が国会の生命であって、内閣から小さいことを引っ張り出して新聞に物を書かせるようなのは外道だ。最高機関としての国会議員の権威はどこにあるんだ。役人と事前の慣れ合い質問みたいに、新聞記者に頼んでの質問みたいな、発表のままのようなことをやっていてはだめだ。発するところ傍若無人、あたりに人なきがごとし。天下国家を論ずるときには自由濶達に物を論ずるだけの気魄がなければ、国会はなきに等しいものだと私は思うのであります。国会の生命を奪還するためにあえて演説をやっているんだ。演説が何が悪い。叫ばなくちゃならない。日本人というのはやっぱり文字解釈だの言挙げする。「敷島の大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花」、ずばりと言っているじゃないですか。その短い歌の中に日本人の心をうたっているじゃないですか。歌挙げしているのです。私は、古代の日本人のようなもっと屈託なく、さっき田中寿美子さんと女流歌人の額田王の話をしたけれども、ああいう屈託のない女性は世界には少ない。
 もっと大らかな日本人にならないと、けちけちして何だが砂糖の甘さに集まってくるアリのような、ゴキブリのようなものばっかりになっては、やはり民族は小さくなっちゃうと思いますから、それであえて私はデモステネスじゃないが、波に逆らうがごときディスカッション、ディスカッションと言ってもフリーディスカッションを求めて、お互いに言論を練磨し、お互いに本当のことを言い合い、ときにはつかみ合いしたっていい。宋襄の仁を行うのじゃなくて、相手に頼んで人を刺すなんていうことをやっているから殷の国も滅ぶし、壮士一たび去って帰らずという決意は殺し屋なんかに頼むのじゃないんです。自分の体当たりで、気魄で相手を倒すこと、それでなければ国は滅びる。そういう意味において、もう少し国会が小物集団でなくて、日本の民族の憂いをここでもって語り合う場所にし、世界の人々も新しい議会政治のあり方を探求している。ECだってそうです。もっと屈託なく、ざっくばらんの話をやっているんです。日本だけですよ、こんなばかげた、国会は事実上死んでいるじゃないですか。
 時間だと言うから、この次の六日、八日というのがありますから、とにかく死なないうちは極楽へは私は行くつもりで闘っているのです。警告です。
 終わります。
#49
○委員長(稲嶺一郎君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後五時五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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