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#1
第096回国会 法務委員会 第3号
昭和五十七年三月二十三日(火曜日)
   午前十時二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 二月二十六日
    辞任         補欠選任
     山中 郁子君     宮本 顕治君
 三月十六日
    辞任         補欠選任
     宮本 顕治君     山中 郁子君
 三月十七日
    辞任         補欠選任
     山中 郁子君     宮本 顕治君
 三月十九日
    辞任         補欠選任
     大坪健一郎君     初村滝一郎君
 三月二十日
    辞任         補欠選任
     宮本 顕治君     山中 郁子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鈴木 一弘君
    理 事
                平井 卓志君
                円山 雅也君
                寺田 熊雄君
                小平 芳平君
    委 員
                臼井 莊一君
                戸塚 進也君
                中西 一郎君
                真鍋 賢二君
                八木 一郎君
                小谷  守君
                山中 郁子君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  坂田 道太君
   政府委員
       警察庁長官官房
       審議官      鈴木 良一君
       法務省刑事局長  前田  宏君
       法務省矯正局長  鈴木 義男君
       法務省訟務局長  柳川 俊一君
       法務省人権擁護
       局長       鈴木  弘君
       法務省入国管理
       局長       大鷹  弘君
       厚生省公衆衛生
       局長       三浦 大助君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       矢口 洪一君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   梅田 晴亮君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   大西 勝也君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   原田 直郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       内閣官房インド
       シナ難民対策連
       絡調整会議事務
       局長       色摩 力夫君
       警察庁刑事局捜
       査第一課長    仁平 圀雄君
       厚生省医務局国
       立療養所課長   佐々木輝幸君
       建設省大臣官房
       官庁営繕部長   渡辺  滋君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
○刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提
 出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る十九日、大坪健一郎君が委員を辞任され、その補欠として初村滝一郎君が選任されました。
#3
○委員長(鈴木一弘君) 裁判所職員の定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。坂田法務大臣。
#4
○国務大臣(坂田道太君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。
 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、高等裁判所における工業所有権関係行政事件並びに地方裁判所における特殊損害賠償事件及び覚せい剤取締法違反等刑事事件の適正迅速な処理を図るため、判事の員数を八人増加しようとするものであります。
 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、高等裁判所における工業所有権関係行政事件、地方裁判所における特殊損害賠償事件、民事執行法に基づく執行事件及び覚せい剤取締法違反等刑事事件、家庭裁判所における家事調停事件並びに簡易裁判所における民事調停事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所の職員の員数を、司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減員を差し引いた上、なお一人増加しようとするものであります。
 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
#5
○委員長(鈴木一弘君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(鈴木一弘君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 去る二月二十五日聴取いたしました坂田法務大臣の所信について、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#7
○寺田熊雄君 法務大臣にお尋ねいたします。
 刑法の改正案は、今国会提出を法務省におかれて断念したという新聞報道がありますが、この点はいかがなんでしょうか。
#8
○国務大臣(坂田道太君) 刑法の改正につきましては、慎重に作業を進めているところでございますが、まだ断念はいたしておりません。
#9
○寺田熊雄君 そうしますと、日弁連との協議もこれからなお御継続になりますか。それとも、これは打ち切られたんでしょうか。どちらでしょうか。
#10
○国務大臣(坂田道太君) 日弁連との意見交換につきましては、この四月の十六日にもう一回やりたいと考えておるところでございます。
#11
○寺田熊雄君 この刑法改正案につきましては、保安処分が最大の論争点になっております。その上、法務、厚生、両省間の意見の不一致も伝えられておるわけであります。いままでも衆参の法務委員会でこの点の質問があったようでありますが、なお念を押しますために厚生省にお尋ねをしたいわけであります。保安処分制度に対する厚生省の現時点における見解、これをちょっとお伺いしたいと思います。
#12
○政府委員(三浦大助君) 法務省におきまして現在検討されております保安処分制度は、これは重大な犯罪を犯しました精神障害者の再犯防止ということに重点を置いた制度というふうに私ども理解をしておりまして、私ども別にこの制度に異議を唱えるものではございません。ただ、厚生省としても、この制度におきまして適正な医療が図られますように法務省と協議してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#13
○寺田熊雄君 法務省案によります保安処分制度が行われます場合に、果たして精神神経科の医師の協力が得られるだろうかという懸念を私どもは持つのであります。両省の御当局は、この問題についてはどういうふうにお考えでしょうか。法務、それから厚生、両省にちょっとお伺いしたいと思います。
#14
○政府委員(前田宏君) 先ほど寺田委員は、保安処分につきまして法務省と厚生省との間で意見の不一致があるようなことを仰せになりましたけれども、ただいま厚生省からもお答えがございましたように、保安処分制度そのものにつきましては特に御異論はないように理解しておるわけでございます。ただ、具体的に収容施設をどこにするかとか、あるいはいま仰せになりましたような実際に治療、処遇をする場合にどのようなことをするかというような点を含めて、なお厚生省との間で協議、検討を続けている段階にあるわけでございます。
 したがいまして、仰せのようにこの処分制度――保安処分と言った方がいいのか、あるいは治療処分制度と言いかえた方がいいのかという問題もございますが、この制度が実現いたします場合に、当然医師等の協力が必要であることは言うまでもないところでございまして、その点につきましても厚生省と十分協議をいたしまして、できる限りの御協力を得たいと考えております。
#15
○政府委員(三浦大助君) 私どもは法務省の方からまだ治療処分制度の骨子を受け取っただけでございまして、そういう中身がどうなるかという細かいものはまだいただいてないわけでございまして、したがって、まだ御意見を申し上げる段階にはないわけでございます。ただ、この医師の協力の問題でございますが、そういうことで、いま中身がわかりませんと、いろいろ学会の方の御意見もまだわかりません。
 ただ、現在の精神科医療というものが、非常に開放的な医療ということに重点を置いております。社会復帰をなるべく早くやっていただくために開放的な医療という方に進んでおりますので、その点、再犯防止ということに重点を置いた制度というのはどうもいろいろ精神科の方で異議もあるようでございますけれども、私どもまだ法務省の方から細かい具体的な内容を聞いたわけでございませんので、まだ正式に学会の方との連絡その他は承っておりません。
#16
○寺田熊雄君 本来、身体的といいますか、精神神経上の欠陥を持つそういう点からできる場合、社会的な不適合性といいますか、そういう異常さと、薬物とかアルコール中毒による一過性のといいますか、後天的といいますか、そういうものの社会的な不適合性、異常さ、そういうものと同列に置いて対応策を考えるのがいいのか、それともこの二つはやはり性格的に異なるというところからして対応を異にした方がいいのかという点の疑問がありますが、この点は、法務、厚生両御当局はどういうふうに考えておられますか。
#17
○政府委員(前田宏君) ただいま仰せになりましたように、広い意味での病気と申しますか、そういうことによる精神障害、それによって犯罪を犯すという人たちと、また薬物等の乱用等によりまして精神に異常が起きてそのことによって犯罪を犯す方々という、大きく分ければ二つの類型があるわけでございまして、それも全体から言えば広い意味での精神障害による犯罪ということが言えると思いますけれども、内容的には仰せのように違うわけでございますから、それに対する処遇、扱い方というものは当然異なるべきものと考えます。
#18
○政府委員(三浦大助君) ただいまの御質問のアルコール中毒のような場合とそれから麻薬、覚せい剤、こういうものの中毒の場合と、社会適合という問題につきまして同列に考えていいか、こういう御質問でございますが……
#19
○寺田熊雄君 いや、ちょっと局長、いま私がお尋ねしましたのは、たとえばこれは言っちゃ悪いけれども、もし遺伝によるものだとしますと、そういう精神的な欠陥というのがあるかもしれませんね。そういうたとえば分裂的な性格を受け継いでいる人、あるいはうつとか躁とかいう躁うつ病のようなものを持っている人、これは果たして先天的なものか後天的なものか、私が医学的に確かめたわけじゃないですが、そういう系統のものと、それからアルコールを極度に体の中に入れたとか、あるいは覚せい剤を非常に注射したとか、そういうことによる精神に異常を生じた人、この二つを同列に置いて処置した方がいいかどうか。その問題です。
#20
○政府委員(三浦大助君) 大変失礼しました。
 それは同列に考える方がいいというふうに私ども考えておりません。
#21
○寺田熊雄君 同列に置いてないと言いますと、それに対する対応策といいますか、対応策の中には治療と隔離とがあると思いますが、治療、隔離処分というようなものを別々に考えていくのか、理念は別であっても、たとえば治療する場所や何かは一緒でもいいというのか。その対応策、それをちょっとお伺いしたいんだけれども。
#22
○政府委員(三浦大助君) ここで私ども一つ大きな問題にしておりますのは、覚せい剤と申しますのは、こういういろんな精神障害の場合ちょっと特徴がございまして、非常に短期間に精神症状が消失してしまうという問題がございます。それから、わりあい精神分裂症に似た妄想幻覚を伴うということで、ちょっとほかの精神障害の場合と違ってむずかしい面があるわけでございます。したがいまして、私どもいま公衆衛生審議会にこれを検討する部会を設けまして、現在いろいろこの対応策を御検討いただいておるという段階でございます。
#23
○寺田熊雄君 その審議会というのは、法務省の担当官なんかも委員として入っておりますか。
#24
○政府委員(三浦大助君) 入っておりません。
#25
○寺田熊雄君 そうしますと、法務省がいま考えておられる保安処分制度というようなものに、その審議会では一切タッチしない、そういうものですね。
#26
○政府委員(三浦大助君) 先ほど申し上げましたように、細かい内容がわかってまいりますれば当然そういうことも審議会の方にお話し申し上げて、あわせていろいろ御意見を聞くということもございましょうけれども、現在純然たる医学的に覚せい剤の中毒の診断基準とか、あるいはまた、そういうものをどういうふうにして措置入院制度を適正に運用していったらいいか、こういう医学的な中身についていま検討しておる段階でございます。
#27
○寺田熊雄君 大臣、ちょっといまの公衆衛生局長の御答弁を伺いますと、保安処分制度について日弁連と十分協議なさる、そのこと自体は大変結構だと思います。ただ、厚生省当局との間の協議というものは、全然と言っては語弊があるかもしれませんが、余り行われておらないような印象を受けますが、この点いかがでしょうか。
#28
○国務大臣(坂田道太君) 実際は、内々にはお話し合いを続けておるところでございます。いずれ私たちの方でもう少し作業が進みましたある段階におきましては、正式に厚生省と法務省と協議をするという形に実は持っていきたいというふうに私は考えておるわけでございます。
 ただいまの前段のお話でございますけれども、私も実は精神衛生関係は十分わからない点もございます。したがいまして、実は個人的にではございますけれども、精神衛生の専門家の方々に二、三実はこの問題について率直なお話を伺ったこともあるわけでございまして、ただいま厚生省から御答弁がございましたように、やはり精神障害と言っても、本当の本来的な精神病、障害者、たとえば分裂症あるいは幻覚その他のもの、そういう言うならば内的要因による精神障害者と、それから薬物その他の、たとえばアルコールあるいは麻薬あるいは最近非常にひどくなってまいりました覚せい剤による外的要因によるところの精神障害、これとはそれの処遇については明らかに違う。もし同じ精神障害であっても、外的要因による障害者と内的要因による障害者とを一緒に処遇をするということになるならば、それははなはだいま厚生省あるいは精神衛生の立場で治療、保護、さらに社会復帰、開放的に向かっておるこのやり方に相反することになりかねない。したがって、むしろその点は処遇については考えていただきたいということを伺ったわけでございまして、このお話は私ごもっともな話である。
 したがいまして、同じように、これをとらえ方といたしましては、法務省の刑事政策上の治療処分という形でとらえましても、そのとらえた後の処遇のやり方ははっきりと区別して取り扱わなければいけないのではないだろうか。そういうことをはっきりすると、恐らく精神衛生学会あるいは精神病を現実に取り扱っておられる方々の大方の批判にこたえ得るのではないだろうかというのが実は私どもの考え方でございます。
 最近、このような精神障害者による凶悪な犯罪等がちまたに起こっておる。現実に何人か人殺しをされておる。そうすると、その方々にとりましては、一体われわれの不安をどうしてくれるのだ、あるいはわれわれ被害者の立場をどうしてくれるのだ、国は何をわれわれのために防衛をしてくれるのだということが当然起こっておるわけでございまして、これに対して現在の措置入院制度のもとにおいて十分であるかどうかということがやはり国民の間から投げかけられておる、あるいは刑事政策上の問題から考えましても、何か諸外国にあるような市民防衛、社会防衛の立場から何らかの措置を考えるべきじゃないかという国民の声も一方にある。
 こういうことを踏まえましたときに、法務大臣といたしましては、やはり治療処分のような制度も、非常にしぼりにしぼった六罪種等については、刑事政策上の治療処分、そしてそれももちろん治療はやる。しかしながら、市民からは隔離することによって市民の一人一人の生命、身体を守ってあげるということは当然ではなかろうかというふうに私は考えるわけでございまして、何とかこの点についても日弁連の方々とお話し合いをすることによって了解するところは了解する、両方で認め合うどころは認め合うということにすべきではないだろうか、漠然とながらそのような考え方を持っておる次第でございます。
#29
○寺田熊雄君 若いま法務大臣がおっしゃった内的原因による精神病ですか、それから外的な、あるいは薬物による精神異常、この両者を裁然と区別すべきだと、私も実は内的というのを生来的というふうに表現したんですが、それから一時的な精神異常、両者はやはり同列に論じがたいのじゃないだろうか。しかも、治療とか隔離の対応も異なるのではないかという疑問を前から持っておりました。そういう意味で、いまの法務大臣の御答弁というのはそれなりに傾聴しておったわけでありますけれども、そういう面で、そういう理論的といいますか理念的な区別、それによって対応の仕方が異なってまいりますね。
 そういう点、やはりなるべく早く厚生省の専門の部局ともよく御相談になっておかれませんと、余り早急に両省がこの重大問題を短期間にまとめ上げて成案を得る、それをわれわれに突きつけてくるということはちょっとどうかと思いますので、なるべく早目に両省で御協議になるように希望しておきますが、いかがですか。
#30
○国務大臣(坂田道太君) 私も同様に考えております。したがいまして、早急に厚生省との正式の協議に入りたいというふうに思っておるわけでございます。
 それから、この問題は、やはり将来この刑法改正が国会の場に出、そして御審議を煩わすわけでございますが、よしんばこれが通りました暁におきましても、これを実際に実施いたします場合においては、やはり裁判官の判定ということにつながってまいりますし、その場合は弁護士の主張というものを十分に聞いた上で裁判官は御決定になるということだろうと思うのであります。その相手方たる日弁連が十分理解をしていないということになると、やはり私は、刑法の大改正でございますから、これは問題だと思うので、もうできるだけひとつお互いは協力すべきところは協力する、話し合いを続けまして、そして法案を作成をしたい、こういうことでございます。
 そういうことで、先ほど冒頭に御質問がございましたように、もう断念したのではないかというようなお話でございますけれども、今国会について鋭意私は努力をしてまいりました。しかし、新聞等に報道されておりまするように、もう時間も非常に迫っておりまするので困難な状況になったという批評もあるわけなので、それはそれなりに私も思っておりますけれども、しかし、まだ時間がございますから、最後のところまで私としては最大の努力をする、それから先はそれから先だというふうに思いますし、慎重の上にも慎重に、でございますから、一月四日の御用始めに、私はゆっくり急ごうと言いましたのも、実はそのような私の気持ちを申し上げたわけでございます。
#31
○寺田熊雄君 なお、厚生省の方も、この問題はきわめて重要な問題ですね。そして日弁連、御承知のように人権の擁護という点からきわめて慎重な態度をとっております。御存じでしょう。これはわれわれもやはり同じで、この制度はそう簡単な審議、簡単な考慮でその是非を決することができないというふうに考えております。厚生省におかれても、この問題は十分にお考えになった上でその採否を御決定いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#32
○政府委員(三浦大助君) 厚生省におきましても、最近の覚せい剤等の乱用によりますいろんな事件というものは、非常に重大な社会問題だというふうに考えておるわけでございます。
 ただ、覚せい剤の慢性中毒者とけうものは、先ほど申し上げましたように、比較的短期間で精神症状が消えてしまうということもございまして、医療だけでこれに対処するということは非常に困難な面がある。やはり広く覚せい剤対策全般の中でこの問題をやっていかなきゃいかぬだろうということもございまして、公衆衛生審議会に部会を設けていま鋭意検討しておる段階でございますので、法務省の方からまたいろいろ細かい御相談がありましたときには積極的に協議に応じてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#33
○寺田熊雄君 医務局長、いらっしゃっておられますか。――
 保安処分による治療施設を新しくつくることが財政上その他の理由で困難になった場合は、国立病院を保安処分上の治療施設として利用するというようなことも、これはまだ決まったわけじゃないでしょうが、そういう案も出ておるやに聞いておりますが、厚生省はこの考え方には反対のようにたしか衆議院では答弁していらっしゃるようだけれども、その点は現時点でも変わりませんか。
#34
○説明員(佐々木輝幸君) 精神科医療は、最近、精神障害者の社会復帰をできるだけ早く図るために、病棟の開放化といったいわゆる開放的な治療が進んでいる状況でございます。国立病院、国立療養所におきましても、そのような方向で現在努力しておるところでございまして、そうした医療の場に保安的見地からの治療処分または保安処分に付されました者を入院させることにつきましては、その方向に合わず困難であるというふうに考えております。
#35
○寺田熊雄君 それじゃ、厚生省の方はもう結構ですから、終わります。御苦労さまでした。
 次に、代用監獄制度につきましては、日弁連その他に強い反対があるわけであります。ところが、警察庁で今回提案すると伝えられております警察拘禁法あるいは警察留置施設法、これには一層強い反対があります。何か日弁連の側から承りますと、法務省と警察庁との協議が果たして円滑になされたのかどうか、その点で大変疑問を抱かざるを得ないような報告を聞いておるのでありますが、どのようなこれは協議がいままでになされたのか、その結論はどうであったのか、この点について御報告願いたいと思います。
#36
○政府委員(鈴木義男君) いわゆる代監問題につき比しては、昭和五十五年の十一月に出されました法制審議会の答申、すなわち「監獄法改正の骨子となる要綱」におきまして、代監制度は存置するということになったわけでございます。それとともに、法制審議会の要綱におきましては、代用監獄は刑事施設すなわち現行法の監獄でございますが、これにかえて使うということと、それから代用監獄に入った者についても、刑事施設に関する法律の規定を適用するという答申がなされたわけでございます。
 そういう答申のほかに、法制審議会では二つの附帯要望事項と申しますか、実施上の考慮事項ということで、一つは、法務省の刑事施設すなわち現在の拘置所でございますが、拘置所の収容能力をなるべく将来ふやしていくということを考慮しろ、それからもう一つ、警察の留置場につきましてはその設備を十分に整えるとともに、それに関与する職員、警察官の教養訓練を十分にするという要望がついておるわけでございます。
 法務省におきましては、そういう法制審議会の答申の線に沿って、監獄法の改正案、現在刑事施設法案と呼んでおりますが、これをつくってそれの立案を進めてまいったわけでございます。
 他方、警察庁におかれては、現在のいわゆる留置場には、代用監獄として入ってくる主として一番多いのは勾留になった被告人でございますが、このほかに警察で逮捕した被疑者を留置することになっておるわけでございますが、そういう警察で逮捕した被疑者についての規定を設けるとともに、代用監獄として警察の留置場が使われる場合の法律関係について別に法律をつくった方がいいのではないか、こういうお考えがございまして、それで警察拘禁施設法案、あるいは名前はちょっとまだ決まってないようでございますが、そういう法案をつくろうとなさったわけでございまして、この点については法務省とそれから警察庁との間で十分話を詰めてまいったわけでございます。
 それで、最終的な詰めというのには多少まだ時間がかかるわけでございますけれども、基本線といたしましては、先ほど申しました法制審議会の答申の線に沿って両方の法案をつくっていくということでは、警察庁と私どもと意見が一致しておるわけでございます。
 日本弁護士連合会等で警察庁方面の法案についていろんな御批判が出ていることは私どもも了解しておりますけれども、その批判の前提になっております考え方は、何か警察の方では法制審議会の答申を無視したような法案をつくっておるのじゃないか、こういう危惧が何かあるようでございますが、先ほど申しましたように、警察庁で立案されておられる法案も、それから私どもの立案いたしております刑事施設法案も、ともに法制審議会の答申を出発点とし、これを基礎としてできておるわけでございまして、別に両者の間に意見の食い違いがあるということではございませんので、お答えいたします。
#37
○寺田熊雄君 ここであなたから、両者の意見の食い違いがあるというそういう答弁を期待することはそれは無理だろうと思いますが、われわれが仄聞するところによると、警察の方の無理が通ったという印象を受けておるわけであります。余り法案の中身に入るわけにはいかないし、本当に法制審議会の答申のように、代用監獄制度というものを漸進的に廃止していくというそういう法針が両法案の中ににじみ出ておればこれは問題はないですけれども、むしろ結果的に代用監獄を永久化しよう、意図的であったらそれは大変だけれども、そういうものがにじみ出ておれば、これはわれわれとしてはとうていそれは賛成しがたい法案ということになりますね。
 余り法案の中身に立ち入るわけにはまいりませんので、それではそれはその程度にしておきまして、次は台湾人の旧日本軍人であった人々の戦死者、戦傷者に対する国家補償、これは裁判上はなかなか認められにくい問題のようであります。現行法上認められにくい。そこで、その補償を議員立法で実現しようという動きがありますね。これについて法務大臣としてはどういうふうにお考えでしょうか。大臣のこれに対する御所見をお伺いしたいと思います。
#38
○国務大臣(坂田道太君) ただいま先生もお述べになりましたように、現行の法制度の観点からはなかなかこれは困難であろうかというふうに思います。しかし、一方、また法律を離れまして考えましたときに、この前の大戦におきまして同じ日本人として戦争に赴いた方々、その方々に対してこのままでいいのだろうかということを日本人として考えましたときに、何らかの処遇を考えなければならないのではないかというふうに考えましたときに、やはり現行制度ではどうしてもいけないということになるならば、各党の方々の話し合いによってもし議員立法として立法化され、そしてその救済の道が開かれるということであるとするならば、もちろん私として異論のあるところではない、このような気持ちでおるわけでございます。
 あくまでも法務大臣といたしましては現在の法律ということを守っていく職務でございますので、ただいま私からどうだこうだということは申し上げられませんけれども、しかし、議員立法としてやっていただくということがもしできるとするならば、私が冒頭に申し上げました法律論は別といたしまして、政治論として納得できるような気持ちに私はございます。
#39
○寺田熊雄君 次に、死刑囚についての処遇でありますが、監獄法の規定によりますと、刑事被告人に適用すべき規定が適用せられるということになっておるようでありますが、最近ある死刑囚が短歌同人誌への投稿などを禁止せられたということが問題とせられ、新聞紙上報道せられておるんでありますが、これは死刑囚の処遇については何か内規があるというようなことも言われておりますが、これはどういう内規があって、そしてこういう規制がやむを得ないのかどうか。なるべくは死に至るであろう人の生活、短期間の生活でありますので、その行為が短歌の同人誌への投稿などというものであれば、許しても差し支えないんじゃないかというような気もしますね。これはどんなふうになっておりますか、ちょっと御説明いただきたい。
#40
○政府委員(鈴木義男君) ただいま御指摘のように、死刑囚につきましては原則として刑事被告人に関する規定を適用するというのが監獄法の原則でございます。現に死刑確定者の扱いにつきましては、この監獄法の規定にのっとって運用しておるわけでございます。
 ただ、刑事被告人と死刑確定者を全く同じように扱えるかどうかということになりますと問題でございまして、刑事被告人はまだ無罪の推定を受けておる人たちであるのに対して、死刑確定者は、犯罪の中でも最も重大な犯罪を犯したということが裁判によって確定された人たちでございますから、そういう地位の違いから言いまして、当然処遇の上でも違いが出てくるのは当然であろうというように考えております。
 先ほど死刑確定者の取り扱いについて内規があるのではないかというふうに仰せられましたが、内規というとなんですが、私どもが指導しております基準といたしましては、死刑確定者については、特に死刑確定者と外部との交通ということにつきましては、身柄の確保ということを一番重視しておりますが、それとともに、外部との交通が本人の気持ちを不安にさせるというようなことがあってはならない、あるいは社会の人たちに不安を与えるようなことがあってはならない、それからさらに死刑確定者が外部に物を書いて出したり、あるいは受け取ったりということによって刑務所、拘置所の事務が非常に多くなるということがあっても困るであろう、こういうような点を考慮して考えろということになっております。
 いま御指摘の特定の死刑確定者でございますが、これは短歌誌への投稿を認めなかったということはそのとおりでございますが、実は短歌誌への投稿というのはほんのわずかな部面、場面でございまして、この死刑確定者は、実はその前は短歌の雑誌を自分で編集し、校正をやり、それから会計も担当しということで、拘置所で社会にいるのと全く同じようなことをしていて、拘置所当局もそれをある程度やむを得ないというようなことで見ていたわけでございますが、少しこれは行き過ぎであるということで制限をいたしまして、短歌を投稿すること、あるいはこの人は相当短歌に上達されているようでございまして、外部から短歌の添削を頼まれるということもございますが、そういう短歌を投稿したり、あるいは外部からの依頼に応じて短歌の添削をするという限度においては従来どおり自由にやっていただくけれども、それ以外の分については必要に応じて制限をするということにいたしまして、先ほどお話のありました短歌の投稿は結構だけれども、そのほかの文章については一応原則として遠慮していただくという指導をしておるわけでございます。
 なお、この人の一カ月の信書の発信件数は、大体出す方も受ける方も百通ぐらいございますので、その点も念のために申し添えさしていただきます。
#41
○寺田熊雄君 そうすると、短歌の投稿とそれから添削、この二つは認めると、こういうことですな。ちょっとはっきり言ってください。
#42
○政府委員(鈴木義男君) さようでございます。
#43
○寺田熊雄君 検察当局は、ロッキード事件でいま話題となっております総理大臣の職務権限の問題、これは法律問題であると考えておられますか。
#44
○政府委員(前田宏君) どのようにお答えしたら的確かと思いますが、帰するところは法律問題であろうと思いますけれども、やはり事実問題もその前提としてはあり得る問題ではないかと思います。
#45
○寺田熊雄君 事実問題もあり得るというのは、一般論で結構だから、ちょっと説明してくださいますか。
#46
○政府委員(前田宏君) 現に進行中の事件のことでございますし、それからこの問題が今後大きな論点になってくるわけでございますので、なるべく差し控えさしていただきたいわけでございますが、たとえば総理大臣の職務権限につきましては、閣議との関係がどういうふうになるかというような問題があるわけでございまして、そういう意味において前提事実があるであろうということを申したわけでございます。
#47
○寺田熊雄君 ちょっと局長、いま聞きとれなかったので、もう一遍。
#48
○政府委員(前田宏君) 一例といたしまして、総理大臣の職務権限ということが問題になります場合に、その権限の行使と閣議との関係ということがあるわけでございまして、その閣議の内容なりやり方なりと申しますか、そういうことはやはりある意味では事実問題ではないかというふうに申したわけでございます。
#49
○寺田熊雄君 いまの職権の行使とそれから閣議の内容との関連というのは、総理大臣の職務権限の行使はあくまでも閣議決定の範囲にとどまるべきであるという法律論が前提になっているように思いますね、局長のいまの御意見。そうでしょう。
#50
○政府委員(前田宏君) そういうことがまた一つの問題になっているという意味で申したわけでございます。
#51
○寺田熊雄君 しかし、閣議の決定事項の範囲にとどまるべきか、決定事項がなくても職務権限の行使はあり得るか、それから閣議の決定に場合によっては多少異なっても、総理大臣の職務権限の行使が直ちに無効になるものではなくして、それはやはり職務権限の行使としてはあり得るのだというような問題、これはすべて法律問題だと私は考えるんだけれども、局長どうでしょう。
#52
○政府委員(前田宏君) 先ほども申しましたように、帰するところは法律問題であろうと思います。ただ、そういう議論をする場合に、やはり単に抽象的に議論するだけではとどまらないで、若干事実問題に踏み込むこともあるであろうということを申したわけでございます。
#53
○寺田熊雄君 私は、本質的にはそれは法律問題だと思いますね。ただ、それを余り事実問題の方に持っていくというのは、ちょっと弁護側のペースに乗ったような感じを持つんだけれども、そういうふうな趣旨で弁護側はいまロッキード事件の立証に入ろうとしているわけです。この結審の時期を引き延ばそうという意図がありありと見える。われわれもわれわれの長い経験からそんなふうに感ずるのでありますが、検察としてはいつごろをめどとして結審に持っていくという方針を立てておられるのだろうと思うんだけれども、これは最終的には裁判所が決定するからどうしようもないけれども、検察としての方針というか、それはあるんでしょう。どうでしょうか。
#54
○政府委員(前田宏君) 本年に入りましてから一月十三日あるいは二十日、二十七日というような期日が入っておったわけでございますが、それがいわば弁護人側の都合と申しますか、によりまして取り消されたということがございます。それにつきましていろいろな御批判というか御意見もあるわけでございますが、その後、裁判所の広い意味での訴訟指揮と申しますか、もございまして、二月に入りまして一応期日が進行されており、再三裁判長の方から督促のようなこともありまして、弁護人側の反証計画も一応説明がなされたようでございます。
 しかしながら、具体的な証人の氏名であるとか数であるとか、そういうこともまだはっきりしていないというような状況にございまして、それがいろいろと御意見を生むことであろうかと思いますが、そういうような状況でございますので、事は被告人弁護人側のいわゆる反証といいますか立証計画、その具体的な内容にもよるわけでございますし、また裁判所の御判断にもかかわることでございまして、検察側といたしましては当然のことながら、この事件に限らず、訴訟の早い進行ということは必要であると考えておるわけでございますけれども、具体的にいつまででなきやならぬということも言いがたい問題でございますので、できるだけ早い公判の審理がなされることを期待しておるわけでございます。
#55
○寺田熊雄君 最高裁は、従来速記官の充足を毎年四十人をめどに考えている、一生懸命努力しておるという御答弁がありました。これは、いまおいでになっておられる事務総長の次長時代の御答弁にもあったわけです。そういう御答弁を誠実に実行されておられるとすると、もうそろそろ定員の充足は完成するはずだと私は思うのですけれども、この点いかがですか。
#56
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 速記官の充員につきましては、寺田委員から過去たびたびおしかりをこうむっておるところでございまして、私どもとしては本当にいま一生懸命充員に努めておるわけでございます。
 もう少し具体的に申し上げますと、四十人ということを前に申し上げておると思いますが、確かに毎年速記官を四十人ずつ書記官研修所というところに入れまして二年間養成をしておるわけでございます。ただ、その四十人というのは、これはいままでも申し上げておるところでございますが、何分裁判所の速記といいますのは、ソクタイプという機械を打って速記をとっておるわけでございますが、二年間の養成の過程におきまして必ずしも適性がないというふうに認められる者もございますし、御本人の方で途中で言ってみれば棒を折ってしまうという者もあるわけでございまして、そういう意味で四十人最初に入れますが、確実にそれが二年後に全部四十人卒業するということには実はならないわけでございます。それとともに、もう一方において毎年毎年ほかへ抜けていく、あるいはおやめになる、つまり減耗と申しますか、やめる方があるわけでございます。
 そういうことで、毎年毎年やってきておりますが、およそのことを申し上げますと、前に寺田委員から御質問がありましてから約四年たっておりますが、大体百名近くふえた、充員ができたということでございまして、従前二百名をちょっと超える欠員がございましたが、現在百名をちょっと超える欠員がございます。ただ、ことしの春には欠員の数が百名を切るようになる、そういう状況でございます。
#57
○寺田熊雄君 これはわれわれが訴訟へ参加いたしましたときに痛感するんだけれども、両当事者の主張が極端に異なる、対立が激しいという場合には、裁判官も非常に事実の決定に苦心をなさる。そうなると、心証を得るために証人の証言をしさいに検討しなきゃいかぬ、それにはやはりありのままに言ったことを録取するということが非常に効果があるわけですね。われわれは速記による証人の調書を希望する、しかしなかなか忙しくて速記官が得られないということがしばしばあるわけですね。この問題について、録音を何か弁護人が費用を出してそのまま速記させるというようなところも一部あるようですけれども、こういうことを認めますと、お金のある者でないと本当の充実した訴訟ができないというようなことになってはなはだどうも好ましくない。やはりあらゆる者に平等に速記の機会を与えるということに努力をしていただかなきゃいかぬ。
 努力はしておられるんだろうけれども、なお一層努力をして、少なくも定員だけは充足してもらいたい。私どもはなお増員してもらいたいという希望があるんだけれども、まあ増員とまでいかなくても、せめて定員の充足だけはしてもらいたいと思うんです。これは事務総長、あなたにも御責任がある。あなたもここで、毎年四十人ずつ充足するように最大限の努力老するということを約束していらっしゃる。ですから、やはり総長のこれからの御努力、それを約束していただかないといけません。いかがですか。
#58
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) おしかりを受けましたように、寺田委員からぜひ充足しろというお話がございまして、私もまことにごもっともなことでありますので、その当時、相当数の欠員があったわけでございまして、何とかこれをできるだけ早く埋めていきたいというふうに考えたわけでございます。
 その考えは現在も少しも変わっていないわけでございますが、ただ、先ほど人事局長も申しましたように、なかなかこの養成ということが困難でございまして、ことに速記を始めました当時はかなり高校を出て優秀な人たちがたくさん応募してくれたわけでございますが、経済事情の変動等、あるいは進学率の向上等でなかなか適性な人を数多く得るということも困難になってまいって、現在のところ、先ほど人事局長も申しましたように、年間できるだけ優秀な四十人を集めておるつもりでございますが、養成の過程においてかなりの減耗率があり、先ほど来申し上げているようなことになっておるわけでございますが、定員の充足ということについては、今後も最大限の努力をいたしたいというふうに考えております。御了承をいただきたいと思います。
#59
○寺田熊雄君 最近最高裁では、担当の裁判官、調査官が弁護人との面会を制限ないし拒否する傾向が強いという批判があります。私もかつて齋藤悠輔裁判官のところにお邪魔をして、これは戸田弘調査官が当時事件を担当しておられた。戸田君は仲のいい友達だったので、戸田君にどうだろうかと相談したら、それは寺田さん、直接齋藤裁判官に当たってごらんなさい、あの方は非常にいい性格の方だからということで、齋藤さんにお目にかかって、保釈してくれと言って頼んだら、すぐ了承してくれたという経験があるんです。これは一つの例だけれども、弁護人が担当の裁判官や調査官に会えないというのではやっぱり困るんですね。
 忙しくてそうたくさん来られちゃ困るというお気持ちはわかるけれども、国民の声を聞く、事件関係人の声を聞くのは法廷でかしこまって聞くだけでいいというわけじゃないので、その点は裁判官の方針を事務総長が云為するというわけにいかぬだろうけれども、少なくとも調査官程度であれば、これはあなた方の司法行政上の監督で何とかなるんじゃないかと思いますが、これはどうでしょう。事務総長のお考えを伺いたい。
#60
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 事、裁判部の問題でございますので、これは裁判官に寺田委員の本日の御質問の御趣旨を機会を得てお伝えをいたしまして御判断をいただくということになろうかと思いますが、私、仄聞いたしておりますところでは、調査官は、できるだけ弁護士さんがおいでになったときにはお目にかかって御趣旨を十分伺っておる、そういう方針でおるというふうに聞いております。また、現にそうやっておるのじゃないかというふうに考えております。
#61
○寺田熊雄君 いま局長がこの問題で御発言になりたいようだったんだけれども、何か弁護人の間では、どうもこのごろ裁判官、調査官が面会をしたがらないで困るという声があるんです。いま総長は、調査官は少なくもそういうことはないと思うということをおっしゃったが、あなたはどんなふうに現実を認識しておられますか。
#62
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 過去のことは私もつまびらかではございませんが、最近では裁判官は直接お会いにはなっておらないようでございますけれども、調査官につきましては、訴訟代理人あるいは弁護人の方からのあらかじめのお申し出があれば、よほど仕事上の差し支えのない限りは必ずお目にかかっているというふうに裁判部の方から承っております。
#63
○寺田熊雄君 それが事実であると大変結構なんです。そういうふうに承っておきましょう。
 それから、弁護人が審理の進行状況について照会をした場合にもなかなか応じない、秘密主義で困るという批判もあるんです。これは書記官の職務範囲になるか、調査官の取り扱う範囲になるかちょっとよくわからないけれども、弁護人が審理の進行状況を問い合わした場合に、書記官なり調査官が、いまこうなっていますというようなことを言う、これは一向差し支えないんじゃないかと思うけれども、そういう批判が出るというのはどうだろうかと考えるんですね。この点はどうなっていますか。
#64
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 審理の進行状況につきましては、書記官の方は不明なようでございます。調査官も必ずしも全体を把握しておらないそうでございます。ただ、調査官につきましては、知り得る場合もないではないようでございますが、最高裁の場合には進行状況をお話しいたしますことは、あるいは合議の進行状況、判決決定の時期等を示唆することにもなりかねませんので、その点、現在審理中でございますというお答えしかできませんことを御理解いただきたいと思います。
#65
○寺田熊雄君 合議の内容を伺うというような非常識な弁護士はおらないので、こういう批判があるのは何でだろうか、私も詳しく尋ねたわけじゃないので、それじゃ、これはまたよく事情を聞いてからお尋ねすることにします。
 それから、弁護人席が制限されておる、相当数の弁護人が傍聴席にいるようなそういう現象がある、何とか十分の弁護人席を設けてもらえないだろうかというような意見もあるようですが、これはどうですか。
#66
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 弁護人席につきましては、大法廷におきましては上告人、被上告人が各十席、小法廷につきましては各五席が固定して備えつけられております。それを超えます多数の弁護人が出廷されました場合には、全員が弁護人席にお座りになることが物理的に不可能となってまいるわけでございますが、そのような場合には、これまでは弁護人席にお座りになれなかった方につきましては、傍聴席の方にお座りいただけるように配慮しておりまして、決して弁護人席を制限するということはしておらないというふうに聞いております。これまでは多数弁護人が出廷されます場合には、事前に弁護人と打ち合わせを行いまして、弁護人席にお座りになれない弁護人は傍聴席の方でお座りいただくことにつきましては、十分弁護人の方の御了解を得てそのような措置をとっているというふうに聞いております。
#67
○寺田熊雄君 これは普通の地方裁判所等におきましては、固定の弁護人席が足りないときは臨時に机を運ぶ、臨時にいすを持ってきて弁護人を座らせる。傍聴人席に座るということは何とか避けておるようですが、そういうような配慮は最高裁でもしていいんじゃないですか。必ずしも固定席に着かなければならないというわけじゃないと思うけれども、これはどうでしょう。
#68
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 補助いすを設けてはどうかという御質問だろうと思いますが、実は代理人席、弁護人席の後ろの部分、傍聴人席との間の部分がわりに狭うございまして、その余地が少ないわけでございます。一つぐらい置けないかと言われましたら、それは一つなら置けないことはないように思われますけれども、それでは何脚まで置けというような御要求がありました場合に、果たしてどの辺で線を切ったらいいかという問題がございますのと、やはり法廷の設計上も既成の固定席以上の人がその辺にいるということになりますと、不時の災害の場合に混乱が起こりかねないということで、固定席以上のものをその辺に補助いすとして設けない従前からの取り扱いのようでございます。
#69
○寺田熊雄君 これは弁護人の方からそういう要望があった場合、必ずしもそれを拒否して、再考の余地はないんだといって頭からはねてしまうほど重要な問題じゃないので、弁護人の希望があればそういうふうに取り扱ってもいいのじゃないかと思うんだけれども、もう少し弾力的にお考えいただくわけにいかぬのだろうか。これは総長、いかがですか。
#70
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 寺田委員も御承知かと思いますが、小法廷必ずしも余地が多くございませんので、現在のところは、御希望がございました場合には、よく事情をお話しして、傍聴席の前のところにお座りをいただくということで御納得を得ておるやに伺っておりますが、これは一つには、やはり各小法廷のお考えの問題でもございますので、その辺のところは私ども、こういうふうにいたしますというふうにはちょっと申し上げかねる面があるわけでございます。
#71
○寺田熊雄君 余り大きな問題じゃないからこれはこの程度にして、余りがんばらずに弾力的に処置された方がいいように思いますがね、弁護人が納得すればそれで結構だから。
 それから、弁護人本人等の出入がきわめて厳しくチェックされる、傍聴券の交付も裁判所構外でなされている。もうちょっと国民が自由に出入できるような雰囲気がほしいんだという人もある。少なくも前庭などは、余り門扉を閉ざして出入を禁止するというようなスタイルはどうなんだろうかという感じがする。外国などに行きますと、たとえば地方裁判所の前庭を国民が憩いの場所にしているというようなところもあるわけですね。つまり役所というものは国民全部のものなので、役人がおれのものだと言ってひじを張り、そしてそれを独占物にするというようなものじゃないんですね、本来。何かいまの最高裁のスタイルというのは、邪魔者は一切入れないぞと言ってひじを張って国民を遠ざけているような印象も受けないではないんですね。これは司法行政上の問題で事務総長の専権に属するところだから、事務総長の御答弁を伺うべき問題だと思うが、これはどうですか。
#72
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 決して邪魔者は入れないぞといったような姿勢をとっておるわけではございません。ただ、いろいろのこともございまして、やはり正当においでいただく当事者あるいは代理人等の方がおいでいただくのについて障害にならないように、また反面、御承知のように多数の方が面会を強いて求めて来られるといったような事案もないではございませんので、ある程度の庁舎の保安と申しますか、そういった面からの規制をやっておるのが現在の状態でございます。ただ、代理人等正面からお入りいただく、あるいは当事者が正面からお入りいただくというようなことについては一切規制等はいたしていないわけでございますので、その点は御了解をいただきたいと思います。
 ただ、傍聴の問題になりますと、実はあの建物の構造上たとえば傍聴においでになる方の持ち物とか雨天の場合等の雨具とか、そういったものをお預かりするというような関係もございますので、現在のところ西門を使っておりまして、その結果、一部傍聴券の交付等につきまして道路の方にはみ出すということもございますが、これは建物の構造上ちょっと現在のところ変えようがございませんので、御了承をいただきたい、このように考えております。
#73
○寺田熊雄君 事務総長のそういう気持ちを、できるだけ下部の職員によく徹底していただきたいと思うんです。
 最後に、最高裁判所跡にいま建設中の裁判所の総合庁舎、これが完成した場合には、現在の刑事地方裁判所、高等裁判所、民事地方裁判所等がこれに入る。あの辺が大分あく。何か聞くところによると、これは建設省の方でその裁判所の跡地、検察庁、それから日弁連、東京の三弁護士会、こういうものの庁舎や建物がある地区をA地区と称して、その跡地の利用について考えておられるということであります。そのマスタープランはできたのかどうか、何か官庁営繕部長の方で考えていらっしゃるというのですが、マスタープランをちょっと説明していただきたいと思います。
#74
○説明員(渡辺滋君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘の霞が関のA地区でございますが、この地区にただいま東京高等・地方・簡易の裁判合同庁舎を建設中でございます。これができますと、御指摘のように現在の東京高等裁判所、それから東京地方裁判所、簡易裁判所、これらが入居いたしますので、現在の建物はあくということになります。一方、私ども中央官衙の整備に当たりましては、この地区内に国政の中枢機能を有しております全官庁をうまく配置していかにゃいかぬということで、長期的に一体どの官庁がどうなるかということを検討しながら建設計画を進めるという必要がございますので、現在では各官庁といろいろ今後どうなるかという御相談をしておるところでございます。
 それで、御指摘の裁判合同庁舎ができました後どうなるかということでございますが、この跡地の使い方につきましては、現在あのブロックに入っております法務省がございますが、法務省関係の整備、それから地区全体を考えますと、空き地が実はもうございませんものですから、いろんな要望にこたえましてその他の官庁を入れる合同庁舎第六号館、これも仮称でございますが、いま五号館をつくっておりますので六号館になるわけでございますが、そういうものも建でなくてはいかぬだろう。それから、先ほどお話しの弁護士会館につきましても、これは国の機関ではございませんけれども、念頭に置いてマスタープランをつくるということで作業をしておるところでございます。
 どんなものができたかと言われますと、まだ絵はできておりませんけれども、そういう作業をしておるところでございます。
#75
○寺田熊雄君 ちょっと聞くところによりますと、何か緑地帯を豊富におつくりになるということ、これは大変結構なことで、あの辺の美観の上からも、市民が憩うというか、都市美の上からもあらゆる面から望ましいと考えておるんですが、その緑地帯の深さというか、それはどういうふうな考えですか。
#76
○説明員(渡辺滋君) お答え申し上げます。
 実は五十一年の十二月でございますが、建築審議会に官公庁施設部会というのがございまして、ここで中央官衙整備計画の基本方針ということにつきまして答申をいただいております。この中で、特に皇居の緑あるいはお堀の水、これに接した付近につきましては景観上非常に重要なところであるしということで緑をたくさん設けるようにしろという答申をいただいております。
 先般建設されました警視庁につきましても、七十メーターほどバックさせろということでお話をしまして、そういうことで七十メーターのグリーンの地帯を何とか設けようということでいま考えておるところでございます。Aブロックにつきましても、そのぐらいの緑はとりたいというふうに考えております。
#77
○寺田熊雄君 現在の法務省の赤れんがの建物、あれは非常に明治時代の名残を残す由緒ある建物でありますし、いわば文化財とも称すべきもので、これはもうぜひ残してもらいたいと私どもは年来そういう主張をしておるんですが、これはあなた方どういうふうにお考えでしょうか。
#78
○説明員(渡辺滋君) お答えいたします。
 法務本省の現在の赤れんがの建物でございますが、明治二十八年に完成したものと聞いております。これにつきましては、戦災によりまして、昭和二十年三月十日でございますが、火災を起こしておるわけでございます。その後、復旧工事を二十三年から二十五年に行いまして現在使用しておるわけでございますが、その後すでに三十年たっております。
 これにつきましても、先ほどの審議会におきまして、古いから全部壊せというのはいかぬ、その構造上の問題とか、今後どう使うか、その辺もよく検討をして、残すものは残すように考えなさいという答申をいただいておりますので、その線に沿いまして、今後、構造上の問題、あるいは今後どう使うかという問題、これらを含めて検討をしなければいけないということになってございます。それで私ども、五十七年度、新年度になりましたら必要な調査を行いまして、そういった保存といいますか、活用といいますか、そういう面について関係各省ともよく御相談をしてまいりたいというふうに思っております。
#79
○寺田熊雄君 なお、日弁連からもあなた方に強い要請があると思いますが、これは全国の弁護士のいわば殿堂を築くという強い要請があるようでありますから、この点も十分配意していただきたいと思いますが、いかがですか。
#80
○説明員(渡辺滋君) ただいま御指摘の弁護士会館の建設問題でございますが、これも念頭に置きましてAブロックのマスタープランをつくるということで、現在では法務省自身をどういう規模にするかという検討、それからさらに、国としてどういう施設を建てざるを得ないかという検討、これと一諸に絡めまして検討を進めておるところでございます。
#81
○寺田熊雄君 これは法務大臣にぜひ御努力をいただきたいと思うんですが、現在の赤れんがの法務省の建物、あれは、いま建設省の部長がおっしゃったように、明治年間の古い建物である。外国などへ行きますと、よく御承知と思いますが、古いものを非常に大切にして残しておりますね。日本の場合は、どちらかというと、便宜主義からやたらに壊してしまう傾向が過去にありました。最近その誤りが見直されているようでありますけれども、あの建物は文化財としてぜひ残すという点で、法務大臣もそういう面の御努力をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
#82
○国務大臣(坂田道太君) 法務省のあのれんがづくりの由緒ある建物は、ぜひ私は残したいというふうに思っておるわけでございます。いろいうの方からの御陳情も受けております。
 実は私、前に、いま北の丸公園にございまする近代美術館工芸館というのが、昔の古いれんがづくりの建物であったのでございますけれども、あれを残すことに努力した一人でございまして、やはりこういうような文化的な価値のあるものはできるだけ残したい。ただし、それが非常に危険であるとか、あるいは安全性を疑われるというような構造等については十分の配慮をしなければいけない。しかし、やはりこういう建物はできればひとつ残したいというのが私の気持ちでございますし、寺田先生のお考えと全く同じでございます。
#83
○寺田熊雄君 終わります。
#84
○小平芳平君 法務大臣の所信について二、三お伺いいたしたいと思います。
 初めに、刑法の全面改正について、特に保安処分等について寺田先生からいま御質問があり、政府から答弁がありました。専門的な御質問があり御答弁がありましたが、私の場合は素人でありまして大変お聞きにくいと思いますが、なおかつ疑問に思う点を御質問したいと思います。
 初めに、「保安処分制度(刑事局案)の骨子」というのがございますが、これについてお尋ねしたいことは、この一番最後のところに「治療施設については、国立の精神病院等を用いることの可否につき、厚生省と話し合いつつ、検等中である。」、こうなっております。
 そこで、法務省に伺いたいことは、この治療施設については法務省独自で施設を考えていかれるのか、それともここに書いてありますように、国立の精神病院等を用いる方に重きを置いて考えていらっしゃるのか、その点はいかがでしょう。
#85
○政府委員(前田宏君) お尋ねの点につきましては、ただいま御指摘になりましたような、いわゆる「(刑事局案)」の骨子の「備考」におきまして「治療施設については、国立の精神病院等を用いることの可否につき、厚生省と話し合いつつ、検討中である。」というふうになっておるわけでございまして、現にそういう段階にあるわけでございます。
 先ほど寺田委員からのお尋ねもございましたが、厚生省との話し合いは相当頻繁に行っておるわけでございまして、先ほど余りやっていないではないかというような御意見もございましたけれども、日弁連との話し合いに比べればはるかに密度の濃い話をしているわけでございます。ただ、
 内容的に十分詰まっておりませんので、私どもといたしましても、また厚生省の立場におかれましても、十分詰めた上ではっきりしたことを公にしたいという立場にあるわけでございます。したがいまして、この点につきましてもなお話し合いを継続していきたいというふうに考えております。ただ、厚生省の方から先ほど御答弁もございましたように、その点についてはいろいろと問題もあるという御意見も伺っているわけでございますが、その点も含めてなお十分検討をいたしてまいりたい、かように考えております。
#86
○小平芳平君 国立の精神病院等を使用することについて、話し合いをしているというふうに理解いたしてよろしいですか。それで、何カ所くらい使うことになりますか。
#87
○政府委員(前田宏君) ただいま申し上げましたように、内容的にはまだ十分詰まっておりませんので、具体的に何カ所と言うわけにもまいらないわけでございますけれども、私どもが考えておりますいわゆる治療処分制度におきまして年間の収容者がどのくらいになるかというようなことも内々試算はしております。しかし、その場合に、要件等によりまして大分違ってくる点もあるわけでございますので、明確なことは現段階では申しかねるわけでございますけれども、何百人にもなるというようなことではないというふうに理解しておるわけでございます。
 したがいまして、施設をどのようにするかということは、処分の制度の内容ともかかわり合いのあることでございますので、先ほど来申しておりますように、具体的にかつ慎重に検討してまいりたい。
  そのような人数を想定いたしますと、施設の数も、もちろん一カ所の収容人員ということによりまして数もおのずから異なってくるわけでございますが、それほど大きな数にはならないのではないかというふうに考えております。
#88
○小平芳平君 わかりました。
 そうしますと、どういう施設になるかによって決まりますが、一、二カ所ないし二、三カ所ないしは数カ所という程度に考えられますか。
#89
○政府委員(前田宏君) 大体そのように御理解をいただいて結構だと思います。
#90
○小平芳平君 それから、この刑事局案には、治療処分の目的、それから手続ですね、そういうことがいかにもないように思います。ですから、先ほど厚生省の三浦公衆衛生局長が言っておられましたが、細かい点がよくわからなくて意見の言いようがないんだというふうにも言っておりましたが、いかがでしょう、どういう目的で施設を予定しておられますか。
#91
○政府委員(前田宏君) この治療処分制度につきましては、法律の形からいきましても、いわゆる刑法の面で規定される実体法の規定と、それからいわば裁判手続を定めますいわゆる手続法的なものと、それから実際に処遇をいたす場合の処遇法と申しますか、そういう法律が三本立てとして必要なわけでございます。それで、いま小平委員が御指摘の「保安処分制度(刑事局案)の骨子」といいますものは、いま申しました中での刑法に規定される部分についてのいわば骨子でございまして、当然のことながら手続あるいは処遇に関する法律というものがこれに関連して必要になってくるわけでございまして、その点も当然検討をいたしておるところでございます。
 特に手続の問題につきましては、この骨子の中にもございますように、その言い渡しは裁判所が行う、また期間の更新も裁判所が行うということがすでに明示されておるわけでございますが、さらに細かいいわば刑事訴訟法的な手続規定というものが当然必要になるわけでございます。また、処遇の面では、まあ監獄法と並べますと適当でないような印象になりますけれども、やはりそういう施設法あるいは処遇法というものが当然必要でございまして、対象者が精神の障害によってそういう犯罪行為をしたという者でございますから、それに応じた適切な処遇をするという処遇が当然考えられるわけでございまして、いま御指摘のいわゆる施設につきましても、一言で言えば病院的なものということに当然なるわけだと思っております。
#92
○小平芳平君 病院的なものになる場合、これは厚生省にも伺い丸いんですが、精神衛生法は精神障害者の治療と保護が目的であるというふうに思います。それで、その治療のために入所する方は、治療をし保護を加えることが目的になっている。そこへ保安的要素を入れるのに反対であるということは、日本精神病院協会でそういう見解を発表しているわけですね。厚生省はいかがですか。
#93
○政府委員(三浦大助君) 先生御指摘のとおり、精神衛生法の目的というのは医療、保護それから社会復帰、これを目的としておるわけでございまして、精神病院の機能もいまはもう社会復帰ということを重点的に考えておるわけでございまして、したがいましてそういう場所に保安的な処分の考え方を入れた措置をとりますと非常に混乱を来すと申しますか、困難ではないかというふうに考えておるわけでございます。
#94
○小平芳平君 ですから、そこは法務省も、刑事局長もそう思われますか。
#95
○政府委員(前田宏君) 精神衛生法が第一次的に対象者の医療並びに保護を目的とするものであることは御指摘のとおりでございますが、その要件としていわゆる自傷他害のおそれがあることということを定めておることからいきましても、それを第二次的というか間接的というか、いろいろ言葉の使い方はあろうかと思いますけれども、単に対象者の治療というだけでもないではないかというふうに思っておるわけでございます。ただ、そういう第一次的な目的というものがそういうことでございます関係上、やはりおのずからなる限度と申しますか、そういうものがあるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
 ただ、その点につきましては、なおいろいろと意見の詰めも必要であろうと思っておりますし、病院の場合、一般的に現在の方向が開放的処遇に向かうということはこれは当然のことであろうと思いますけれども、病院の場合でも、特に危険な対象者につきましては特別の処遇をするということもあってしかるべきでございましょうし、また現にそういう扱いもなされているわけでございますから、そういう点もまた考えなければならないのではないかというふうに思っております。
#96
○小平芳平君 先ほど法務省からも厚生省からも答弁がありましたし、また国民もそう思うであろうということは、凶悪犯罪や通り魔殺人とかバス放火とかそういうのが繰り返されては困るということ、それは一致していると思うんですね。しかし、精神病院も自傷他害というような問題がありますから厳しくはいたしますけれども、開放的になってきているということを厚生省が一生懸命説明しているわけですね。
 そこで、ちょっと厚生省に伺いますが、この刑事局案によりますと「心神喪失のため」という場合と「心神耗弱のため」ということがありますが、入所する場合にはこういう診断があるわけですか。
 それから、なければ精神病、精神障害者に対する診断区分はどういうふうなものがあるわけですか。
#97
○政府委員(三浦大助君) 精神衛生鑑定という場合におきましては、診察の時点において精神障害があるかないか、あるいは自傷他害の疑いがあるかどうか、これを判断するわけでございまして、司法鑑定におきましては、犯行時における精神状態につきまして刑事責任を問える能力がある状態であったかどうかと、これを判断するものがないかと特に考えておりまして、その程度によって心神喪失と心神耗弱とに分けられるというふうに私ども理解しておるわけでございますが、司法鑑定によります判断の後の通報あるいは精神衛生鑑定と時間的経過をつけるために、司法鑑定と精神衛生鑑定の判断が異なる場合があるのではないかというふうに考えます。
#98
○小平芳平君 要するに、法務省で言っている「心神喪失のため罰することができない場合」というふうに書いてありますけれども、これはこれで非常に重要な問題です。非常に重要な問題ですが、医学的にはどう判断するかということをお聞きしたいわけなんですね。
 たとえば、この刑事局案には放火、殺人等の六種類の犯罪を挙げております。ですから、放火、殺人等の六種類の犯罪は防止しなきゃならないということはきわめて大事なことなんです。きわめて大事なことなんですが、医学的には放火、殺人も精神障害者として治さなきゃいけないとともに、こそ泥とか万引きでもやはり精神障害があれば治さなくちゃいけないですね。ですから、医学的にはこういう分け隔てができなくなるのじゃないかということを伺いたいわけです。
#99
○政府委員(三浦大助君) 心神喪失という言葉が医学用語ではないわけなのでございまして、それから犯罪の重さと精神障害の重さというものはこれは別の問題ではないかというふうに私どもは考えております。
#100
○小平芳平君 ですから、そこを、心神喪失とかそれから犯罪の重さを病院に任されても困るということじゃないですか。
#101
○政府委員(三浦大助君) いまの精神衛生行政と申しますのは、先ほど来申し上げましたように、医療保護、社会復帰ということを目的としておることと、今度の法務省の方でお考えの保安処分というものは、これは重大な犯罪を犯した精神障害者の再犯防止ということでございまして、全くその次元が異なる問題でございますので、それを同一に論ずるというのはなかなかむずかしいのではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
#102
○小平芳平君 刑事局長、それでいかがですか。全く次元の違う問題であって、この刑事局案でねらいとしていること、これはぜひそうやってほしいということなんですが、かといって、これを現在の病院へ持ち込まれても、そういう犯罪の種類によって治療しているのじゃないわけですね。精神障害の障害の程度に応じた治療が行われているわけですね。いかがでしょう。
#103
○政府委員(前田宏君) 適切なお答えができるかどうかと思いますけれども、確かに一面、精神障害者であれば精神障害という面での治療ということでございますから、お説のようなことが言えるかと思いますけれども、やはり私どもの目から見る場合は再犯でございますし、精神医療の面から見れば再度の事故といいますか、自傷他害といいますか、そういう言い方になろうかと思いますが、そういうことの危険性ということを考えます場合には、病状の中身としていわばどういうことをまたやりそうであるかということは、やはり当然考えられてしかるべきではないかというふうに思うわけでございます。
#104
○小平芳平君 ですから、法務省はそうお考えになるのが当然でありましょうし、そのためにこそこうした案をつくって進めようとしておられる。しかし、そのことを精神病院へ持ってきて、さあこのとおりやってくれと言われても、かみ合わないですね。もう少しかみ合う議論を始めなくちゃならないのじゃないですか。
#105
○政府委員(前田宏君) 確かにそういう点があろうかと思いますし、私どももいま当面の問題、つまり精神に障害のある方々の中でまたそういう危険なことをやりかねない人たちがいる、それに対してどう対処すべきかということでございまして、それをいわゆるお医者さんと申しますか、病院と申しますか、そちら方だけのいわば責任と申しますか、判断でやっていただくのはやはり無理があるのじゃないかというふうに考えておることは事実でございます。
#106
○小平芳平君 そこで法務大臣に伺いますが、そういうふうにお互い厚生省も法務省も大事な問題点を抱えている、それで病院だけで事が足りるかというと、いやそれは法務省も再犯をまた防いでいかなくちゃならないという立場もあるし、かといって、法務省の方で再犯を防ぐために、殺人犯だ、放火犯だ、特別のそういう治療をしてくれと言われても、これは病院で困るじゃないですか。この薬は殺人に効く薬だとか、そんなことはないわけですよ。ですから、病院の方は障害の程度に応じてしか治療ができないわけでしょう、実際問題。
 そこで、これは新聞で拝見したんですが、法務省の私的諮問機関として保安処分問題を考える会を設ける構想があるかないかですね。それから、そこには医療関係者を加える必要があるかですね。少なくとも、もっとかみ合った議論をしていかなくては問題は解決できないと思いますが、いかがでしょう。
#107
○国務大臣(坂田道太君) 実はそこに私の苦心があるわけでございまして、いま日弁連さんの方から主張されておるのは、新たに保安処分制度を設けなべとも現在の厚生省でおやりになっておる精神衛生法に基づく措置で十分ではないか、しかし十分といっても実態はなかなかそうではない、自傷他害の人を措置入院しましてその方を受け入れても、短期間にこの方々が出てしまうということ、そのために結局厚生省の予算、人員等が不足しているから、それを十分に手当てをすれば、日弁連さんがおっしゃるようなことは現在の制度でも十分に果たせるのじゃないかという御意見、私どもの方は、それはそれといたしましても、相当それには時間がかかる、費用もかかる、しかし現在起こっておるような精神障害を受けておる人の犯罪、特に六罪種のごとき凶悪犯罪で、しかも起訴されましても心神喪失ということで無罪になる、あるいは大体起訴ができないということで、これまたそういう人たちが存在するということになれば再犯のおそれがあるということで、現にいろいうの再犯の事例が起きておるわけでございます。
 一方、やはり市民の立場、国民の立場――加害者の人権も大切だけれども、その加害者によって引き起こされた被害者、被害者の家族、あるいはそのコミュニティーあるいは社会というものの不安や懸念や怒りを一体政府はどうしてくれるのだ、何にもしてないじゃないか、一体厚生省の措置入院でいいのかと言われましたときに、政治家といたしまして、ただいま私は法務大臣でございますけれども、かつて私は厚生大臣もいたしました。そういう観点に立つならば、政府自身としては両方を踏まえた一つの具体的な、先生にお答えできるような案があってしかるべきではないかというふうに思っておるわけです。
 いま非常に問題点が明確になってまいりました。この橋をかけることが私は政府としての務めではなかろうか。またその間、法務大臣としてやるべきこと、あるいは厚生大臣としてやるべきこと、それを含めた一つの政府の考え方があっていいのではないだろうか、こういうふうに思うわけでございまして、困難ではありますけれども、そういう問題を解決しなければならない責任がある。
 そこで、一般国民の良識のある方々、常識ある方々は、この状況をどうお考えでございますかということを一遍お聞きいたしますることは、私が法案を作成するにつきましても非常に大事なことである。そしてまた、よしんば何らかの案を国会に提出いたしました場合においても、公聴会等において皆さん方がそういう方々の御意見をお聞きになって是か非かというふうにお考えいただくことも私は大事だと、こう思いまして、でき得べくんばそういうような第三者の有識者の方々、もちろん厚生省関係の精神衛生に携わっておられる方々、あるいは精神犯罪の学者の方々、あるいは鑑定医等を実際にやっておられる方々、あるいは裁判をやっておられる判事さん、そういうような方々にひとつお考えをいただくということは、この段階できわめて必要というふうに思っておるのです。
 まだ、いつどういうふうにして出発するかは考えておりませんが、いまやそういう機が熟してきておるというふうに思っておるわけでございましりまして、これにつきましては、外国と比べても非常に入院患者が多い。それから入院日数が多いというのは事実でございまして、これにつきまして、私どもなるべく社会復帰を早めて、社会復帰の政策に重点を置いてやってまいりまして、なるべくそういうことのないようにということでいまやっておるわけでございますが、何せベッドが足りないのが現状でございますので、現実は、ここで申しわけないのですが、ある程度超過入院という現実の姿はあるわけでございますが、しかし、最近非常に私ども社会復帰政策というものを強くとり出しておりますので、以前と比べますとかなり超過入院というのは減ってきているのが実情でございますので、ひとつその点御理解をいただきたいと存じます。
 それから、国立の病院がない、県立の病院がないということがございました。確かに県立病院のないところが八県ございますが、そういうところは国立の病院あるいは他の公的医療機関の精神科病棟がございますので、そういう方面で措置入院その他の問題は取り扱っておりますので、現在のところ、厚生省が行っています措置入院制度につきまして、措置入院患者が入れなかった、こういうことはいまないわけでございます。これはもう重点的に入院させるようにということを、私ども常々指導しているわけでございます。
 三番目に、犯罪者の方がいること、こういうお話がございましたけれども、あくまでも私ども精神衛生行政は医療と保護、これを主でやっておりますので、全く次元の異なる問題でございます。でございますけれども、先ほどお話しのございました措置入院制度というのを適正に私ども運用することによって、間接的には社会防衛に役に立っているのではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
#108
○政府委員(前田宏君) 先ほど来お答えいたしておりますし、また大臣からも御答弁があったところでございますが、要するに精神障害者の中にはいろいろな人がいるわけでございますから、それに応じてどのように取り扱っていくことが適当かという問題でございますので、厚生行政の分野でやるべき心の、またそれと並行して私どもの分野でやるべきものというものを十分より分けると申しますか、分担を決めまして、要するに目的は一つでございますから、それなりの対策を講じていくべきものと、かように考えております。
#109
○小平芳平君 次に、やはり寺田先生からお話がありました監獄法改正について準備を進めているというふうなことが所信表明にございますが、この点について、時間も大分経過しましたので一点だけ質問したいと思います。
 まず初めに、法務省は刑事施設法案として準備をしておられますかどうか、ごく簡単にお答えをいただきたい。
 警察庁は留置施設法案という名前になりますか、そういう点で準備しておられますかどうか、簡単にお答えをいただきたい。
#110
○政府委員(鈴木義男君) 法務省におきましては、ただいま刑事施設法案の国会提案を目途に準備を進めておるところでございます。
 この刑事施設法案は、現在の刑務所それから少年刑務所それに拘置所の三つについて規定するということが中心の法律案でございますが、この法律案の中におきましては、現行法で行われております代用監獄制度についても、これを制度面あるいは運用面で改善を加えるという形で存置するという考え方で立案を進めております。
 他方、警察庁においては、警察留置場に関する法案を別途用意されておるところでございますが、この法案とそれから法務省の刑事施設法案との間にどういう関係を持たせたらいいかということにつきましては、これまで法務省と警察庁との間でいろいろ協議をいたしまして、先ほど寺田委員からの御指摘にもございましたように、法制審議会から答申のあった線に沿って両方で案をつくっていくということにほぼ大体話ができつつあるところでございます。したがいまして、この両法案が、今国会のできる限り早い時期に提案されるということになろうというように理解いたしております。
#111
○政府委員(鈴木良一君) 警察庁におきましても、留置施設法という、仮称でございますけれども、そういう法案を準備をいたしております。この理由でございますけれども、御存じのとおり、留置場は全国で約千二百三十カ所ばかりございます。延べ二百五十万人の収容をしておるわけでございます。この中には逮捕被疑者がございますと同時に、あと被勾留者あるいはその他の収容者も入っておるわけでございます。
 実は、私の方では、逮捕被疑者の処遇につきましては、現在、国家公安委員会規則でございます被疑者留置規則というもので行っておるわけでございますけれども、やはり被疑者の人権保障の精神を明確にするという観点から、法律で制定することが望ましいということで、これを法律で規定したいというふうに考えておるわけでございます。それからまた、先ほど申しましたように、被勾留者あるいはその他の収容者がおるわけでございますが、やはり警察の留置場の中に全部収容されておるわけでございまして、施設法ということになりますと、現在収容しておる者につきましての処遇の関係を書くというのが法律の立て方になろうかと、かように考えておるわけでございます。
 しかしながら、法律の中身につきましては、これはやはり同じ対象の収容者が法務省の刑事施設法の関係にも入るわけでございまして、この関係で処遇は斉一にしていかなければならないということはもちろんでございます。そういうことで、私の方では施設あるいは組織の違いから来ます合理的な差異を設けることはございますけれども、あとは法務省の刑事施設と同一の処遇にいたしたいということで考えて、現在立法作業を進めておるわけでございます。
 先ほど矯正局長からもお話がございましたように、そういう形で両省庁でほぼ合意に達しておりまして、できる限り法制審の答申の趣旨を生かすという形で法案の作業を進めておると、かような段階でございます。
#112
○小平芳平君 先ほど寺田先生の質問に対して矯正局長が、法制審議会の答申を尊重して答申どおり両省が法案を準備しているという趣旨のお話があって、いまもまたそういうお話がありました。
 私がお尋ねしたい一つの点は、この代用監獄は一時的なものとして将来は廃止するということを予定して答申は出されているというふうに思いますが、法務省が準備している法案も、代用監獄は将来なくすという考えの上に立って準備されているのか、警察庁が準備されているのも、警察庁は特に法的根拠を明確にするということをただいまも述べられましたが、恒久施設としょうとして準備しておられるのか、その点をお伺いしたい。
#113
○政府委員(鈴木義男君) ただいま法制審議会の答申においては、この代用監獄というものは一時的なものであって将来なくすというのが法制審議会の答申であると、こういう御趣旨のお話がございましたけれども、法制審議会ではそういう趣旨の答申はいたしておりません。法制審議会といたしましては、現在の捜査の実情、それから現在の監獄に当たります拘置所の全国における数あるい、は場所等を考慮いたしまして、現状においては代用監獄というものを廃止することはできない。すなわち、これを運用面でも制度面でも改善を図りながら存続させていくという結論であったわけでございます。
 ただ、先ほど寺田委員からの御質問にもお答えいたしましたように、法制審議会の答申に一項がございまして、これは答申の内容そのものではございませんけれども、代用監獄を将来運用していく場合の要望事項と申しますか、注意事項と申しますか、ということで、将来できる限り被勾留者の収容の必要に応じることができるよう、拘置所及び拘置支所の増設及び収容能力の増強に努めて被勾留者を刑事留置場、これは代用監獄のことでございますが、そこに収容する例を漸次少なくすることと、こういう実施上あるいは運用上の御要望があったわけでございます。
 私ども理解しておりますところは、法制審議会といたしましては、別に代用監獄を将来なくするとか、あるいは永久に存続するとか、そういう御判断があったわけではございません。とにかく改善した上存続するということでございますので、その法制審議会の答申の趣旨に合った法案を考えておるわけでございます。
#114
○政府委員(鈴木良一君) いわゆる代用監獄制度につきましての趣旨につきましては、矯正局長の理解されておるのと私も同一に考えておるわけでございます。
 なお、将来の運用につきまして矯正局長からもお話がありましたように、私の方に向けられましては「刑事留置場の構造、設備及び管理機構の改善並びに収容処遇に当たる警察官の教養訓練の充実に努めること。」という配意事項をいただいているわけでございまして、こういうものに現行の制度運用に必要な改善を加えながらこの制度を続けてまいりたいと、かように考えております。
 いま申しました点につきましては、私の方もできる限り改善をしようということで、管理機構の改善につきましては、一昨年の四月に従来刑事部門が所掌しておりました留置業務を全国一斉に行政管理部門に移しております。
 具体的に申しますと、警察署では刑事課等が担当しておりましたものが、総務課あるいは警務課というふうな形に全部管理の仕方を変えておるわけでございまして、これは本部でも、あるいは警察庁でも全部同じ形で対応しておるわけでございます。
 また、留置場の構造、設備の改善につきましても、私の方は五十四年十一月に留置場の設計基準を全面的に改正いたしまして、五十五年の四月から実施に移しておるわけでございます。これはたとえば留置室、接見室の面積を拘置所並みに拡張するとか、あるいは留置人のプライバシーを保護するために留置室の前面の下半分を不透明な合成樹脂板で遮蔽する、そういうふうな形でできる限り改善をしていくということをすでに実施に移しております。
 また、担当警察官等に対します教養訓練の問題につきましても、すでに警察大学校におきまして幹部教養の内容を一層充実をさせておりますし、また昨年度からは府県警察学校に新たに看守の任用教養の課程を新設いたしまして、こういうふうな看守の教養訓練の充実に努めておるということでございますけれども、さらに今後とも一層そういう面について努力を払ってまいりたい、かように考えております。
#115
○小平芳平君 私が廃止とかなくすと言ったのは、適当でなかったと思います。確かに書いてありますのは「被勾留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること。」となっておりますですね、局長がおっしゃったとおりに。ですから、「漸次少なくする」というのはどういうことか、どのくらい少なくするのかということをお伺いしたい。
 それから警察庁には、人権を守るための措置がとられているというちょっといま説明がありましたけれども、やはり人権を守ること、その人権の点は恐らく法制審議会の答申どおり宗教とかいろんなことが入ってくるだろうというふうに予想しますが、そういう点。
 それから、やはり少なくしょうという考えなのか、それとも少なくすることを予想しているか。とにかく恒久的措置として考えておられることは事実でありましょうと思いますが、いかがですか。
#116
○政府委員(鈴木義男君) 先ほども申し上げましたように、法制審議会の実施上の要望事項というのは、いわば一種の精神規定のようなものでございますので、これの正確な内容がどうであるかということはなかなか申し上げにくいわけでございますし、またその解釈といいますか受け取り方は、それぞれの立場の方で若干受け取り方が違うのではないかというように思われるわけで、ございますが、私どもとして考えてというか、受けとめておることを申し上げますと、少なくとも現在の拘置所の収容能力をさらにふやしていかなければいけない。すなわち、本来ならば拘置所へ入れた方がいいという被勾留者が警察の施設の方に入るということでは困るわけでございますので、そういうことがないように拘置所の収容能力をふやしていく。
 したがいまして、捜査上の必要等からこの人は警察の施設に勾留した方がいい、この人は拘置所に勾留した方がいいというその実質的な判断で分かれていくということならばいいのですが、拘置所がないから、本来はある特定の被勾留者を拘置所に入れた方がいいのに入れられないということでは困るので、少なくともそういうことがないように拘置所あるいは拘置支所を整備いたしまして収容能力をふやしていく。その結果として、拘置所に収容するのか、あるいは警察の施設に収容するのかということは裁判官がお決めになる問題でございますが、そういう際に、適切と認められる方へ収容できるように施設の能力をふやしていくということは、少なくとも法制審議会のこの要望事項と申しますか、考慮事項と申しますか、それの中に含まれておることであるというように考えております。
#117
○政府委員(鈴木良一君) 人権を守るための措置というお尋ねでございますが、私の方におきましても、先ほど申しましたように、法務省の刑事施設と処遇が変わってはならないということを基本にいたしておるわけでございまして、宗教の問題あるいは文書の閲覧の問題、あるいは面会、信書の問題、いずれも法務省の刑事施設と同じ処遇にするというふうな形で立法をしていきたい、かように考えておるわけでございます。
 先ほどもちょっと申しましたように、施設の関係等で若干できるものとできないものがあるというのは御了解いただきたいと、かように思いますけれども、趣旨は、われわれはできる限りできるものは法務省の刑事施設と同じ処遇にしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
 それからもう一つの、少なくしようとする考えかということでございますが、これは本来どこを勾留場所にするか乞いうのは裁判官の判断によって決まることであろうと思います。そういうことで、実は私どもの方の施設に入れると裁判官が判断された場合に、それが応じられないという形では私どもも困るということでございますので、そういう形で必要な形のものは準備をしていく、かようなことになるのではなかろうかと、かように考えております。
#118
○小平芳平君 時間がなくなりましたので、インドシナ難民につきましていろいろ伺いたかったんですが、これはまた次の機会に伺うことといたします。
 簡単に伺っておきたいことは、難民の認定申請はどういう状態か、それから認定はいつになるかというような点。
 それから、大和の定住促進センター、ここなども生活費は大人一人九百円、子供十六歳以下一人五百円というふうに、非常に施設を管理している人は大変な努力が必要な状態にあります。あるいは建物も難民キャンプのテント村なんかから見たらましでしょうけれども、しかしきわめてお粗末だということ、こういう点があります。したがって、こういう点を少しでも改善しようとしても、どこの省が窓口かということになるときわめて分かれているんですね。
 ですから、第一点はこれは法務省ですから、法務省から難民の認定申請、それからいつごろ認定になるかという点をお答えいただきたいことと、−それから大和の定住センターを初めとして、定住までいかない難民を各地で収容しておりますが、そういう点についての問題点を述べていただきたいと思うのです。
#119
○政府委員(大鷹弘君) まず、難民認定の申請の数について申し上げますと、三月一日現在で約四百名の申請者がございまして、この国籍とか出身地域別に申し上げますと、十数カ国にわたっております。
 なお、この約四百名のうち、インドシナ半島関係者が三百数十名を占めております。
 それでは、この認定がいつになるだろうかというお尋ねでございますけれども、現在鋭意調査中でございまして、果たしていっこの難民認定の裁決ができるか、まだ申し上げられる段階にはございません。
#120
○説明員(色摩力夫君) インドシナ難民対策の問題点についてお尋ねになりましたので、たくさんございますけれども、主なものを申し上げたいと思います。
 まず、先生御指摘のとおり、主務官庁、つまり主として責任を負う官庁がインドシナ難民対策全般に関して一つにまとまっておりません。また、これは非常に複雑な行政の対象でございまして、また日本の社会、日本の政府も例のない新しい問題でございますから個々ばらばら、いろんな省庁にまたがるというのはこれはやむを得ません。それにしても、インドシナ難民対策の主要な場面、主要な面についてそれぞれ主務官庁あるいは主として責任を負うべき官庁がすべて一義的に決まっているかと申しますと、残念ながら決まってない部分もございます。したがって、この点も行政機構全体としていかに合理化するかというのが、これが一つの問題点かと存じます。
 また、具体的な現在やっておりますインドシナ難民対策の問題点に入りますが、先生御承知のとおり、現在、制度として定住難民とそれから一時滞在難民という二つのカテゴリーに分けまして、いわば二本立ての形で難民対策を官民の協力のもとに行っているというのが基本的な構造でございます。この二つに分けるという考え方は、日本の社会ができるところがらやっていくという結果の姿であろうと私は考えるわけなのですが、それにしても、二つに分けたことによって起こる問題もございます。また、二つに分けることによって合理的にさばける問題もございます。非常に複雑な関係になっております。
 それで、定住難民の問題に関しましては、御承知のとおり定住難民の、つまり難民問題の最終的解決は何かと深く考えてみまするに、これは日本の社会が最終的には吸収するかしないかというところに問題の根源がございます。その間におけるとりあえずの保護あるいは便宜の供与、それからいろんな行政、各細かい問題がございますが、これはいわば入り口でございまして、全国津々浦々の日本の地域社会がこういう人々を最終的にいかに吸収するか、これが確保されない限り、難民問題の解決は残念ながら日本の社会にはないという妙なことになると私は考えるわけでございます。これが定住難民の最大の問題と心得ております。
 最後に、一時滞在難民の問題でございますが、一時滞在難民はたてまえとしてUNHCR、つまり国連の難民高等弁務官事務所の国際的な庇護の調整によりまして、それを受けてわが国の政府が一時預かりというたてまえで保護しております。そういう方々は、最終的には必ずしも日本に定住を希望するとは限らない。実績としては、そういう方々はむしろ非常に少ないというのが現状でございます。大部分の方々がアメリカとか豪州あるいはカナダ、ヨーロッパ諸国に最終的に定住することを希望しております。しかし、客観情勢は非常に厳しくて、欧米諸国はそれぞれの数量的な制限あるいはそれぞれ独自の基準、条件を持っております。
 そういうことから客観的に判断しまするに、一時滞在難民の相当の部分が第三国への定住のための出国というものはほとんど不可能ではないか。それにもかかわらず、日本に定住を希望しない場合、わが国としてインドシナ難民対策として制度上どう解決するかという大変な難問がございます。
 以上でございます。
#121
○委員長(鈴木一弘君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時三十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十七分開会
#122
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、坂田法務大臣の所信についてこれより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#123
○山中郁子君 先日、法務大臣の所信をお伺いいたしました。初めに、これに関連して二、三大臣にお尋ねをしたいと思います。
 昨年暮れの第二次鈴木内閣の改造人事で、法務大臣にどなたがなるかというのはかなり国民の関.心を集めた点でございますが、それは言うまでもなく、田中元総理を被告とするロッキード裁判がいよいよ大詰めを迎えようとしているということで、法務大臣の姿勢いかんが裁判に微妙な影響を与えるのではないかというそういう国民の心配があったからだということは、申し上げるまでもないと思います。こういう時期にあって、いまほど法務大臣の毅然とした姿勢、とりわけ政治的な圧力から社会正義を断固として守る決意が求められているということはないと思いますが、この点にういて大臣の御見解を初めにお尋ねをいたします。
#124
○国務大臣(坂田道太君) 私は、就任に際しましても申し上げましたとおりでございまして、法務大臣を引き受けました以上は、おのれをむなしゅういたしまして厳正公正な政治姿勢を貫きたいと、かように考えておるわけでございます。
#125
○山中郁子君 これは予算委員会などで社会党の寺田先生も御質問されておられましたが、田中元総理は犯罪の容疑者として起訴されて刑事被告人になっている。このような特殊な法律的な地位にある者として、本来社会に対し謹慎すべき立場にあると思いますけれども、たとえ法律上の明文の規定がなくても、法治国家である以上、当然本人も行動を慎まなくてはならないはずですし、周りの者もそのように扱うことが求められているはずだと思います。かなりこれは多くの人々の意見でもあります。この点に関しての法務大臣の御見解をお伺いいたします。
#126
○国務大臣(坂田道太君) いかなる人といえども、法のもとには平等でなければならないということを考えますわけでございますが、現在、公判係属中の具体的な事件につきまして、法務大臣として意見を申し述べるということは差し控えたいというふうに考えております。
#127
○山中郁子君 一般公務員の場合、国家公務員法によって「刑事事件に関し起訴された場合」というのが「本人の意に反する休職の場合」となって入っています。法律上は、確かに一般公務員の場合と違うということは私も十分承知しておりますけれども、いわゆる破廉恥罪などで起訴されたら、大概もうやめるか退職するか、あるいは休職という状況になるというのは、普通の公務員の場合でしたら当然に行われている事態です。それが、なおさらに政治家、とりわけ大臣とか、この場合は元総理大臣ですから、そういうような国家の要職にある者あるいはあった者が、公人として社会生活上特殊な地位を占めているわけですから、普通、通常人であれば、有罪の判決が出てその刑が確定するまでは無罪の推定を受けると言われている場合でも、こうした場合には無罪の推定は働かないという意見も多くあることは大臣も御承知のとおりだと思いますけれども、私はそういう点でやはりそこに法務大臣の姿勢というのが、いまおっしゃいましたように、裁判中の者であるからということでそれには言及できない、ないしはそれからは中立的な立場でいるということが、結局、結果的にこうした犯罪人を擁護するということにつながりかねない問題があるという点が憂慮されるところだと思います。
 それで、これは最近アメリカの上院で注目すべき事件がありまして、御承知だと思いますが、FBIのおとり捜査にひっかかって収賄罪で有罪判決を受けたハリソン・ウイリアムズ議員の追放処分に関しての問題です。これは上院の態度がいろいろ注目されていたんですけれども、新聞報道でも伝えられておりますように、結局本人が辞職して決着がつきました。
 田中元総理も、一審で有罪判決が出たら潔く議員を辞して刑に服すべきであると、私も思いますし、それから当然のことながら多くの国民の意見もそのようであるというふうにいろいろな点で開陳されていますけれども、この点については大臣いかがお考えでしょうか。
#128
○国務大臣(坂田道太君) やはり政治家といたしましては、自己の一身上の問題につきましては、その本人の自由意思によって決められるべきものでございまして、いやしくも法務大臣といたしまして、いま公判中のものにつきましてかれこれと批評を申し上げるということは差し控えたいと、かように考えております。
#129
○山中郁子君 じゃ、こういうことはどういうふうに考えられますか。
 一国の総理を務めた人間が逮捕訴追されるだけでもこの上ない不名誉なことであって、恥を知る者であったなら即座にその職を辞するのが当然だというのが常識的な考え方です。有罪の判決が出ても控訴審があると言ってがんばる、控訴審で有罪になっても、まだ最高裁があると言ってがんばる。そういうふうになると、最高裁で刑が確定するまで長期にわたって、明らかにそうした有罪の判決が出て、そして大きな批判が集中しているにもかかわらず、政治の舞台でがんばり続けるということが果たしてあっていいものかどうか。しかも、自民党の中の最大の派閥の長として、表向きも、また裏向きにはもっと大きくさまざまな影響力を発揮しているという事態が放置されていいものかどうか、近代国家日本としてそうした恥ずべきことが放置されていいのかどうか。
 何年かかるかわかりませんよね、最高裁で刑が確定するまでは。それでも、その期間も含めてなおかつ大臣は、裁判中のものであるから物を言うことは慎む、何らそれについての見解は持たないと、こうおっしゃるわけですか。
#130
○国務大臣(坂田道太君) 私としては言うべきではないというふうに思っております。
#131
○山中郁子君 法務大臣というのは検察官の上級に立つ者でしょう。そして、田中角榮に犯罪事実がありと確信して訴追しているのが検察です。この裁判の結果に対して中立ではあり得ないと思います。中立を装うことが、中立を主張して何ら見解を述べず、また警告も発しないということは、少なくとも刑事被告人に利するものになるということで、検察の努力に対して支持、激励する立場にある法務大臣の言としてはいかがかと思われますけれども、その点はどうでしょう。
#132
○国務大臣(坂田道太君) 御批判は御批判として承りますけれども、私といたしましては、ただいま申し上げましたとおりでございます。また、検察当局といたしましては、この事件の公訴維持につきまして従来から最善の努力を傾注しておるところでございますし、私は検察を信頼をいたしておるわけでございまして、この点につきましても万全を期してもらう、もらえるというふうに考えておる次第であります。
#133
○山中郁子君 法務大臣は、重ねて申し上げますけれども、訴追する側の人間なんですよね。そして、そのために検察が努力をしていると言われている。そのことについて中立を装う姿勢が、結果的に田中角榮並びに田中陣営を喜ばせ励ますものになる。そこに対してまた国民も多くの批判を持っているということを私は重ねて申し上げまして、法務大臣の姿勢の根本が問われる問題であるということを指摘しておきたいと思います。
 次の問題に入りますけれども、最近、建設業界の談合にまつわる不正事件が次々と国会の舞台でも明るみに出されています。連日マスコミでも報道されているという状況ですけれども、法務大臣の先日の所信表明にこの問題について一言も触れられていないのは、私は奇異な感じがいたしました。いろんな点を全面的に触れておられるようでありますけれども、たとえば保険金目当ての殺人等の凶悪重大事犯、金融機関を対象とする強盗事犯、公務員による不正事犯、さらに暴力団を中心とする覚せい剤事犯、その他いろいろな事犯を挙げてこれに対する取り組みを強調されておりますけれども、談合問題について何らこの所信表明で、昨年の臨時国会以来今国会にかけてずっと次々と重大な事実が明らかになってきているというもとで触れておられない格別な理由があれば、お伺いをしたいと存じます。
#134
○国務大臣(坂田道太君) 格別な理由はございませんけれども、特に所信表明を行いました後に、たしか談合問題が非常に取り上げられたというふうに記憶をいたしておるので、あるいは間違っておるかもしれません。しかし、いやしくも事、犯罪の問題につきまして、談合罪であれ何であれ、そういう問題については、やはり法務大臣といたしましては厳正に対処するということは当然なことだ、法務大臣としてのそれこそが一つの大きい使命であるというふうに私は考えているわけでございます。
#135
○山中郁子君 これは昨年の臨時国会から問題に明らかになってきているので、所信表明をおつくりになる前からもう大問題になっているのですから、その辺はどうぞ、いいかげんなことでなく御認識をしていただかなければならないと思います。
 また、今国会になりまして、わが党が独自な調査に基づいて三井建設の営業報告書などでも次々と明らかにしてきていますが、この中身によりましても大手建設業者とそれから防衛施設庁や建設省や農水省や、そうした官業の癒着問題も明らかになっています。防衛施設庁に至っては、もう癒着などというよりは、防衛施設庁自身が談合のイニシアチブをとっている、そういうやり方で自分たちがどこの業者に割り当てをすると、こういう話になってひどい状態になっております。そしてさらに、ここの中に政治家が介在するという問題も出てきていますけれど、いま法務大臣は厳正な姿勢で臨むと言われましたけれども、これらの諸事件に対して当然検察のメスを入れるべきだと考えておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
#136
○政府委員(前田宏君) 衆参の予算委員会等でもお答えしたことがあろうかと思いますけれども、いろいろといま御指摘のようなことが問題になっており、新聞等でも大きく報道され、また国会でも御論議がなされているところでございます。いろいろと疑惑と言われるような問題もないとは言えないと思いますけれども、その場合に、犯罪の疑いがありますものにつきましては、先ほど大臣が御答弁されましたように、当然厳正に対処すべきものと考えておりますけれども、これまでいろいろと指摘されているような状況のもとでは、まだ具体的な犯罪の嫌疑があるという状態ではないのじゃないかというような印象を持っておるわけでございます。
 ただ、よく申し上げることでございますが、捜査当局が捜査をいたします場合に、こういう疑いがあるのでこれから捜査をするとか、あるいはこの点はこういうわけであるからすべきでないとかいうようなことをあらかじめ申し上げるということは、事柄の性質上、適当ではないのじゃないかということでございます。
#137
○山中郁子君 申し上げることが適切でないとおっしゃりながら、何か余りまだそういう段階になっていないんじゃないかとおっしゃっているというのが、どうも腑に落ちない話ですし、また大臣がおっしゃったように厳正に対応するという言葉が真実であるならば、いまの刑事局長の御答弁は余りにも消極的過ぎるということを言わざるを得ないと思います。しないとおっしゃっているわけではありませんから、時間の関係でそれ以上深入りは避けますけれども、三井建設自身がもうその文書の信憑性も含めて認めているわけですから、それをいまさら疑いがあるかどうかわからないようなことを言っていることでは、検察の任務に照らして任務を果たすことができないのではないかということを申し上げておきます。この問題の最後ですけれども、建設大臣がこの談合問題で昨年十一月に建設業界に対して、関係法令の遵守とその徹底を求める警告の談合を発表されています。御承知だと思います。法務大臣としても警告の談話を法務大臣の立場から発表されたらいかがでしょうかという私の意見でございますけれども、いかがでしょうか。
 それから、あわせてそうした姿勢を明らかにする――所信表明にたまたま入っていなかったわけですから、そういう分も含めて毅然とした姿勢を示されるという一つの証明にもなると思いますが、たとえば検察官会同などで議題として取り上げるなど、いろいろな対応の姿勢を示されることを研究なさる余地があると思いますけれども、具体的にいま私が提起いたしましたことも含めてお伺いをいたします。
#138
○国務大臣(坂田道太君) 一般的な問題として、法の適正な運用ということにつきましては、検事正会同等におきましても従来から引き続き述べてきているところで、ございますが、いまお話しのように、この談合問題につきましてそのような声明を出すとか警告を発するとかいうようなことはただいまは私は考えておりません。
#139
○山中郁子君 重大な問題で厳正に対処するとおっしゃって、たまたま所信表明にも入れられなかった問題ですから、声明をお出しにならないという理由はないと思いますけれども、何か特別な理由があってそれは断固出さないとここで言明なさるわけですか。
#140
○国務大臣(坂田道太君) いや、あなたはそういうふうに出した方がよろしいというふうに御主張でございますけれども、私といたしましてはただいまは考えておりませんどいうことを申し上げた次第であります。
#141
○山中郁子君 考えていないというだけおっしゃったのでは、厳正に対処するんだというあなたの姿勢、法務大臣としての姿勢を国民の前に明らかにすることにならないじゃないかということを申し上げて、重ねてその点を指摘しておきます。次の問題といたしまして、私はきょうのこの機会に、事前に法務省当局にはいろいろ説明もし、また資料などもお渡ししてございますが、日産自動車の追浜工場などで行われている労働者に対する暴力行為、傷害事件について明らかにすると同時に、関係機関の対応の強化を求めたいと思っております。
 この事件は、神奈川県の横須賀市にあります日産自動車の追浜工場の労働者である八木光明さんが暴力行為者を相手取って、去る二月二十四日、神奈川県警に告訴をしている、そういう事件です。この暴力・傷害事件については神奈川県警ですでに捜査を開始しているようでありますけれども、この事件についての告訴内容の概要と捜査状況について、簡潔で結構ですので、まず御報告をいただきたい。
#142
○説明員(仁平圀雄君) 御指摘の事件につきましては、ことし二月二十五日に神奈川県警察におきまして告訴を受理いたしまして、現在関係者からの事情聴取や現場の実況見分を実施するなど捜査中でございます。
 告訴の内容は、告訴人が本年二月五日と八日の両日にわたりまして、勤務先の日産自動車株式会社追浜工場内におきまして、同僚数名から暴行傷害を受けたというものでございます。本件は、告訴事件でございますので、速やかに捜査を遂げまして検察官に送付することといたしております。
#143
○山中郁子君 私がこの委員会の場でなぜこの問題を取り上げたかといいますと、これは本当にひどい話で、いやしくも法治国家でこういうことが許されていいのかというそういう内容です。類似の事件もあります。で、いま御報告がありましたように、職場の中での暴力傷害事件なんです。
 八木さんという方は、昭和四十一年の八月十五日に日産自動車株式会社に入社して、それから車両部追浜車両課で車両の出荷、受け入れの点検、車両整備、附属品管理等の仕事をしている労働者なんです。
 この方がなぜ集団暴力を受けるに至ったかといいますと、一つは、八木さんは日産労働組合追浜支部の組合員ですけれども、四十六年ごろから組合と会社が一体となって特定の候補者を選挙に際して応援する選挙活動、これに協力しないということが理由になっている。
 それからもう一つは、厚木市に同じくこれは日産厚木工場から分離、独立してできた厚木自動車部品株式会社というのがありますけれども、この日産自動車株式会社の子会社厚木部品で昭和五十四年の十月二十九日、七名の労働者が日産労組の名誉を汚したというような言いがかりをつけて除名されています。私もこの事件は詳しく知っておりますけれども、同じくやはり名誉を汚すなんてそんな問題じゃなくて、思想、信条にかかわる問題なわけです。そして、ユニオンショップ制度になっているところがら即日会社から解雇通告を受ける、労働組合を除名されたために。
 そういう事件で、これをいま裁判で争っているわけですけれども、その除名を正式に決定する直前の五十四年の十月二十二日に、八木さんの職場でも職場大会が開かれて、厚木部品のこの七人の労働者の除名について賛否が問われたんですけれども、八木さんはこれに反対をしたわけです。当然のことだと私は思います。思想、信条を理由にして労働組合を除名したり、そしてまた、それから職場の解雇を引き出すみたいなことはあるまじきことだと思います。とにかく八木さんはこれに賛成しなかったんです。このことを理由にして、五十四年十月ごろから今日まで、ありとあらゆる嫌がらせ、侮辱、就労妨害、賃金差別、職場八分、退職強要、組合脱退強要、仕事の取り上げ、脅迫、集団的つるし上げ、尾行、集団的暴力、こういうものがもうずっと続いているんですね。
 こういう状態が続いてきて、昨年の十月ごろから暴力行為がひどくなってきている。ここに私、六枚の診断書のコピーを持ってきて、これはそちらにお渡しをして、ごらんいただいていると思いますけれども、昨年十二月二十五日には左下腿挫傷、つまり左の足に全治一週間の暴力を受けている。診断書がみんな出ている。十二月二十六日には頭部、左胸部、両下腿部打撲傷、同じく一週間の診断書。ことしになって一月二十七日には顔面、頸部、左大腿部打撲傷、これもやはり同じく一週間の診断書が出ている。二月五日になりますと右大腿部、右顔面、頸部、左胸部挫傷で同じく一週間の診断書が出ている。そしてまた二月八日に、それがまたどんどんエスカレートしていって、右の大腿、左下腿、胸部、腹部打撲傷、内出血、血尿――急所をけり上げるんですから血尿、同じく全治一週間の暴力を受けていますけれども、そのほかにこの同じ日の暴力で左第七、第九の肋骨骨折ということがわかりまして、その後引き続き四週間の診断書が出ている。こういう事件なんです。
 私が最初に申し上げましたのは、いやしくも日産といったら大企業ですよね。世界の日産、日本の日産で大企業、そこの場所でこういう事態が起こっているということは大問題だと思っておりますが、その点について、いま私がごく簡単に申し上げましたが、診断書もありますし、それから肋骨を二本折られているレントゲンの写真もここに私持ってきていますけれども、こういうことが大企業である日産の職場で白昼公然と行われているということについて、これから私、明らかにしていきたいと思いますけれども、まず最初に、法務大臣のこれは御感想で結構ですから伺わせていただきたいと思います。
#144
○国務大臣(坂田道太君) 御感想と申されましても、やはり法務大臣といたしましては、犯罪の事実の有無ということを明らかにいたしませんと何とも申しようがない。しかし、いかなる事態におきましても、暴力というものが許さるべきでないということだけははっきりいたしておるわけでございまして、それがどのような事態において起こったのか、そしてそれが犯罪を構成するのかどうなのかということにつきましては、検察当局が十分捜査をするものだと考えております。
#145
○山中郁子君 これは実情はいま私がまとめて申し上げましたけれども、御本人の八木光明さんが告訴をしたことに関しての報告書を書かれているので、私は大変時間が限られていますので、その中のごく一部を読み上げます。これは私がしゃべるんじゃなくて、御本人が報告書として提出しているものです。これは二月五日の暴力行為に関して松田――松田というのは暴力行為者の一人ですが、松田ら数名、この事件は五人で、五人を告訴しているんですけれども、そういうふうにして集団で暴力行為を働いているんですが、
 松田が「話があるから、こっちへ入れ。」といって、立入禁止のドアを開けました。私が「ここは立入禁止になっている。」といったら、松田は「許可を受けたんだからいいんだ。入れ。」といい、小峰といつのまにかきていた鈴木が、私をそこに押し込みました。
 その囲いの中に、小峰・鈴木・松田が入ると、すぐ松田は入口のカギをかけ、その向こうには、小笠原が見張りのように立っていました。正面から見えないそこに入れられるや否や、一小峰と鈴木が暴力をいきなり振ってきました。まず小峰は私の左胸を、安全靴の先で蹴り上げました。私は呼吸が一時止まったようになり苦しくなりました。
 鈴木ば私の右横腹を手拳でもって何回もなぐりました。私はあまりの痛さで「ウー」とうなり、たまりかねて、小峰・鈴木に「暴力をやめろ」とどなりましたが、やめるどころか、さらに、小峰と鈴木は繰り返し暴力を振ってきました。
 こういう状態で二月五日の日に五十分にわたって暴力行為が行われました。
 それから、また六日、七日と、土曜、日曜と休みだったので、医者に行って治療もしてもらって八日に出ていったら、今度はまた八日の日に呼び出して、これは四時三十分から五時まで数人でもって暴力行為を働くと。
 私は、鈴木から体を両手でかかえられた時から、二月五日のように集団暴行をうけると、とっさに感じ、鈴木の両手をふりはらって逃げようとしましたが、鈴木は体が大きく、両手を強く締めたので、どうしても逃げられませんでした。
 立入禁止の自動配電盤のサクの中におしこめられるや否や、松田が私に「いつから受け入れの仕事をやるんだ。」といいがかりをつけるや否や、松田は、私の左右のほほを手拳でもって一度ずつなぐってきました。私のまわりには、正面に、松田、右側に長谷川と高橋、左側に鈴木がおり、私が逃げないようにとりかこんで、入口は閉めてありました。
 次に鈴木が、手拳でもって、私の首を二回たたき、私の左横腹を手拳でもって何度もなぐり、足でもって左横胸を何度もけりあげました。私は激痛を覚え、たまらず、「暴力をやめろ。」とさけびましたが、隣にいた松田は「暴力じゃない。」とどなりました。
 本当にずっとこのようにして、きようも御本人がお見えになっていますけれども、御本人の報告書が書かれています。本当にこういうことが一体どうして行われているのかと思わせるほどの事実です。
 いま法務大臣は、何しろ犯罪というのは事実だからというふうにおっしゃいました。すでにこうした事実がはっきりして、そして告訴もされ、そしていまレントゲン写真もありますし、診断書もありますし、この報告書その他ありますけれども、そういう事態が行われているということを十分御承知になっていただかなければならないんですが、この点で刑事局長に伺いますけれども、いま私が一部御紹介しました。それはもっともっとひどい内容がずっと行われてきているわけですね。侮辱罪だとか強要罪だとか脅迫罪だとか暴行罪、傷害罪。私は法律の専門家ではありませんからわかりませんけれども、そういうこうした暴力行為というものはいろいろな犯罪を構成するものだと思いますけれども、どのような刑法上の犯罪を構成する可能性があると思われるか、御意見を聞かせていただきたいと思います。
#146
○政府委員(前田宏君) 具体的な案件につきましては、先ほど警察庁の方から御答弁がありましたように、現在神奈川県の県警で捜査中というふうに聞いておるわけでございますので、その捜査結果にようなければ確定ができないことでございます。
 一般的に申しまして、お尋ねのようなことがあったと、いたしますと、当然考えられますのは暴行とか傷害とか、そういう罪名に当たる行為であろうと思います。
#147
○山中郁子君 捜査の結果というふうに、捜査中だからというふうにおっしゃいます。それはそれとして、私がここで言いたいのは、その捜査自身を本当に厳正にきちんとやっていただいて、あいまいなことで済ましてもらったら困るということなんですね。なぜかといいますと、日産でのこうした暴力傷害事件はこの問題が初めてじゃもちろんないんです。いままで告訴した事件だけでも、これも一覧表をお渡ししてあると思いますのでごらんいただいていると思いますが、十四件あるんですよ、告訴しているものでも。神奈川、東京、埼玉で刑事事件として告訴している。ところが、不起訴になっているんですね。
 私は、そこでこの二、三のすでに告訴して不起訴になっている例についてお伺いをしたいんです。そうしなければ、この八木さんの事件だって、またそのままあいまいで不起訴になるということは十分考えられるわけですから。
 まず、この中の一つであります五十五年一月十八日に、午前七時から国電の新子安駅前で厚木自動車部品の七名の労働者、先ほど除名になって解雇になったと御紹介しましたけれども、この問題で宣伝活動をしていたんですね。そうしたら、七百名の日産の従業員がこのビラ配りに殴り込みをかけてきたんです。そして、宣伝を妨害して三名に傷害を負わせました。自動車を損壊し、殴打し、けり上げなど集団で暴行を加えた事件なんです。これは朝、行われているわけで、目撃者も大ぜいいるし“現場の証拠写真もあるんです。それが何で不起訴になっているんでしょうかね。
#148
○政府委員(前田宏君) お尋ねの事件は五十五年の一月十八日に発生した事件のことであろうと思いますが、御指摘のように五十五年の十一月二十五日付で不起訴処分になっております。
 告訴の内容は、ただいま御紹介のようなことであったわけでございますが、いまおっしゃいましたのとはどうも必ずしも一致しないようでございまして、被害者に当たる告訴人の方々は暴行を受けたということを当然供述しておられるわけですけれども、御本人たちもだれにやられたのかという、いわば犯人といいますか、行為者を特定するに足りるようなお話が出ていないというふうに聞いておりますし、また写真等もあったということは御指摘のとおりでございますが、その写真によつでも犯行の具体的状況というものが明らかにし得ないというようなことで、結局立証が十分できないという判断になったというふうに承知いたしております。
#149
○山中郁子君 立証できないはずのない事件なんです。
 もう一つ伺いますけれども、これは四十八年の十一月二十三日、厚木自動車部品構内で、これは高階孝治さんという人に対して小林繁盛外五十名が足でけるなどの暴行を加えて、かつ同人所有の、つまり高階さんの腕時計を損壊したというこういう事件がありました。この事件も、白昼公然とした事件で目撃者もたくさんいるんですよね。これまた、どうして不起訴になったんですか。
#150
○政府委員(前田宏君) ただいまの四十八年の事件でございますが、そのころに何件かの告訴事件が警察になされて、検察庁にはもちろん送られて来ているわけでございまして、その事実は判明いたしておりますけれども、検察庁におきましてはすべての記録を全部保存しておりませんので、一応の内規的な保存期間が過ぎますと、記録を順次廃棄するというような扱いをいたしておるわけでございます。
 したがいまして、お尋ねの事件につきましては、処分の日時は記録上といいますか、帳簿上といいますか、明らかでございますが、具体的な内容につきましては遺憾ながら詳細がわからないということでございます。
#151
○山中郁子君 そういうことだから、その十四件すべてについてそうなんですよ。だから結局、後を絶たない原因をそれがまた一つつくり出しているということなんです。私は暴力行為者、容疑者あるいは被疑者、こうした人たちからの事情聴取をうのみにして、そして厳正な捜査をしなかった疑いがあると思います。立証困難だとか不起訴にしたということはだれもが承服できない、事実を曲げることになるんだということをよく認識していただかなければいけないと思うんです。こうした徹底的な捜査をしない姿勢、そして被疑者に対して、つまり暴力行為者に対して甘い姿勢、それが日産の企業内で暴力事件が後を絶たない理由をつくり出していて、今回の八木さんの事件もそうした土台の上にまた起こってきたというこういう問題です。
 それで、今回告訴された八木さんへの暴行事件は、先ほどお話がありましたように、当然厳正な捜査をしなければいけないわけで、してもらわなければいけませんけれども、いままでの十四件のこの不起訴にしてしまったものを踏まえて、今度は絶対そういうふうにはしないというしっかりした姿勢で臨んでいただくお約束をぜひここでしていただきたいと思います。いかがでしょう。
#152
○政府委員(前田宏君) 従来、日産自動車の関係で同種の事件がたくさんあるということでございまして、確かにその多くが不起訴処分になっておりますけれども、一部のものにつきましては起訴した事例もあるわけでございます。
 それぞれの内容につきましては、先ほど申しましたように、記録が現在存在しないものもありまして詳細に御説明ができない点もございますけれども、検察当局といたしましては、暴力行為といいますか、そういう犯罪に当たる事件につきましては、別に手を抜くとか、いいかげんな捜査をするとかというようなことは毛頭考えていないわけでございまして、捜査を十分尽くしまして起訴すべきものは起訴する、しかしながら起訴できないものはまた起訴できない、こういうことであろうと思います。
#153
○山中郁子君 いままでそうやってきたとおっしゃるけれども、その結果が、先ほど申し上げましたような白昼公然とたくさんの目撃者がいるということで、加害者のはっきりしている場合も含めて不起訴になっているんだということを私は申し上げている。だから、心を新たにして、今回の事件についての徹底した厳正な捜査をすべきであるということを申し上げておきます。
 それで、人権擁護局にお伺いをいたしますけれども、この八木さんをめぐる事件は、告訴された暴力事件だけでなくて、先ほどもちょっと御紹介しましたように、長期にわたる根深い人権侵犯事件でもあるわけですけれども、人権擁護局としても当然調査をし、処理規程がありますけれども、告発だとか勧告だとか、その他しかるべき行政指導をすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。お考えを伺わせてください。
#154
○政府委員(鈴木弘君) お答え申し上げます。事実関係はよくわかりませんが、八木さんの件につきましては告訴もなさっており、それに基づきまして警察の方で取り調べを始められたということであります。われわれといたしましては、すでに刑事事件として専掌機関が捜査に入られた以上は、われわれが事件に介入していくのは相当でないと考えております。
#155
○山中郁子君 いままで私は、日産ではそうした事件が相次いでいると申し上げました。そして八木さんの問題に関しても、告訴した暴力事件のほかにさまざまな人権侵害の事件が五十四年以来ずっと積み重ねられてきているわけですね。それに、もっとさかのぼって行われているという状態です。ですから、いまあなたのおっしゃることで一歩譲ったとしても、告訴していない事件、その他人権侵犯いっぱいあるわけですから、そういう問題についてだけでも調査をするということはおっしゃれるはずでございますけれども、いかがでしょうか。この国会で私が問題として提起しているわけですし、そして御本人たちも人権擁護委員会へも申告をするということを考えていらっしゃるようでもありますので、この際、人権擁護局としてもその職務に照らして徹底的な調査もし、そして適切な処理をとるということをお約束いただきたい。
#156
○政府委員(鈴木弘君) お答えいたします。申し立てを受けまして、人権侵犯の疑いがあるというようなことになりますと、調査に入って、もし人権問題として放置できないというような判断ができます場合には適切に対応してまいりたい、かように思っております。
#157
○山中郁子君 私、いま国会でこれを申し上げているわけですから、あなた方これを認識されたわけですね、事前にももう資料を差し上げでありますから。だから一般論でなくて、この日産の企業の中で行われている人権侵犯について、毅然とした立場で調査をし処理をするというお約束をいただきたい、こういうことを申し上げております。そういうことをちゃんとお約束しなきゃ、人権擁護局は何のためにあるのかということになりますよ。
#158
○政府委員(鈴木弘君) お答えいたします。被害者の方からわれわれの方に申し立てがございましたら、適切に対応してまいりたいと、かように思っております。
#159
○山中郁子君 日産でどうしてこういう暴力事件が後を絶たないのかといいますと、いま私が申し上げました警察や検察当局の姿勢にも問題があります。それは重大な一つの要因です、いままでの事件に対する。しかし、そもそもこの日産の企業内に思想、信条の自由がないからなんです。この八木さんの事件にしても、また同じ追浜工場で栄松さんという方の事件もあります。これも資料としてはそちらにお示しをしてありますので、中身は省略いたしますけれども、すべて労働組合の方針に反対をする。つまり、それは、選挙などについての特定の候補者を支持するというそういう問題です。そして、会社と労働組合が推薦する特定候補の応援をしない、そういうようなことが発端になっているのです。
 これは労働組合内の民主主義の問題であると同時に、いま労働組合の問題は横に置きますけれども、憲法第十八条の奴隷的拘束及び苦役からの自由、第十九条の思想及び良心の自由、第二十一条の集会、結社、表現の自由、これらの問題、基本的人権に明らかに違反をしているというふうに言わざるを得ないと思います。日産の会社の中では、日本の国の憲法が通用しないのか。こんなばかな話はない。しかし、よく企業、職場に憲法なしというようなことも言われている状況で、これは日産だけではありませんけれども、日産は目に余るものがあります。私は、日本にそういう企業が存在してよかろうはずはないと思いますけれども、この点についての法務大臣の見解をお伺いいたします。
#160
○国務大臣(坂田道太君) いやしくも自由社会におきまして基本的な人権が守られなければならぬことは当然なことでございまして、いかなる企業の中においてもやはり人権は守られなければならないというふうに思います。
 ただいま政府委員からお答えいたしましたように、そういうようなもし訴えがございましたならば、これに対しまして十分事情を聞き、そうしてもし違反がありました場合には厳正に対処をするということを申し上げておきたいと思います。
#161
○山中郁子君 私も長いこと職場で働いてきた人間ですけれども、日本の労働者は、長時間労働という問題もありますけれども、職場の中で働いている時間というのは人生の大半を占めるという考え方もできるのですよね。ここにおいでの皆さんもそれはそうです。いろいろ自分の職業、そこの場で生きている時間というのがむしろ人生の大半を占める、憲法では思想、信条の自由がうたわれ、しかしその人生の大半を占める職場の中では、その特定の労働組合や会社が強要する候補者を私は支持しないのだ、私の思想、信条、良心の自由からいって支持しないのだ、別な人を支持するのだということだけをもって命まで危ぶまれるようなこうした暴力傷害行為が公然と、平然と行われているという事態は、まさにゆゆしき問題だと思います。
 いま、もちろん当然のことながら、法務大臣は企業にあっても守られなければならないとおっしゃいましたけれども、大企業であればこそその社会的責任がより一層大きいわけです。そして、しかも人間は、そこに働く労働者の人たちは人生の大半をそこの職場で過ごすわけですから、より一層積極的に、憲法で保障された基本的人権が守られなければいけないというそういう内容を持っている。そこであっても守られなければいけないという消極的なものじゃなくて、一層積極的にそういうところであってこそ守られなければいけないし、またそういうことを保障する大企業としての社会的、道義的責任があるということをここで強調したいところです。
 ぜひひとつ、私はいま日産追浜工場の具体的な八木さんの事件について申し上げましたけれども、日産の中で目に余る暴力行為が次々と行われていることを一般論でなく大きく心にとめていただきまして、法務大臣が所信で述べられました法秩序が揺るぎなく維持され、国民の権利がよく保全されている、国民の信頼と期待にこたえるよう、誠心誠意、その職責を尽くしてまいりたいとおっしゃっているその中身を現実のものとして、毎日の暴力行為に本当に命を脅かされる思いをしている日本の労働者、日産の労働者の人たちを激励してあげていただきたい、心からそのように要望する次第です。最後にそれらのことも含めて、法務大臣のお約束をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
#162
○国務大臣(坂田道太君) いかなる職場におきましても、暴力行為が公然と許されるべきことではございませんし、基本的人権が守られなきゃならないことは当然だと思います。そういうことが十分行われる社会こそが、私は日本の進むべき社会であるというふうに思うわけでございまして、治安の問題、法秩序の維持ということにつきまして日本国内を見ますると、まだまだ不十分な点がございます。
 しかし、世界各国を見ますると、かなり日本の法秩序の維持というものは高い水準にある、かつ犯罪者も比較的少ない。これは社会主義国家及び自由諸国を含めてそういうことが言えるというふうに評価をされておると思いますが、さらにさらにこれをお話しのとおりに深めまして、あるいは高めまして、そうして本当にいかなる職場にあっても自由が守られ、あるいは基本的人権が守られ犯罪が少なくなるというようにいたしたいものだ、暴力がなくなるようにいたしたいものだというふうに私も念願いたすものでございます。
#163
○中山千夏君 最初に大臣にお伺いいたします。所信の中で「矯正及び更生保護行政の充実について」というところがありまして、そこで犯罪者及び非行少年の改善更生については、刑務所、少年院等における施設内処遇と実社会における社会内処遇とを有機的に連携させることに努め、その効果を高める。「そのためには、まず施設内処遇の実情につき広く国民の理解を得るとともに、良識ある世論を摂取」というふうな表現がありまして、「広く国民の理解を得る」ということは大変重要なことであろうと思うのです。ところが、「施設内処遇の実情につき広く国民の理解を得る」と、こう口で言うのはやさしいけれども、事実上はどのようにして、どのような方法で理解を得ていこうとしていらっしゃるのか。その辺のところをちょっとお聞かせいただきたいのです。
#164
○政府委員(鈴木義男君) 刑務所その他の矯正施設につきましては、ここ数年来できる限りの機会をとらえまして内部の実情等を一般の市民の方々、これは主として新聞その他の言論機関を通ずるわけでございますが、通じまして一般の市民の方々の御理解を賜りたいというように考えております。
 最近の例で申しますと、幾つかの刑務所あるいは少年院につきましては、テレビの放映という形を通じまして内部の実情それから中にいる人たちの考え方等を発表させていただき理解していただいておりますし、また昨年来ちょっと問題になりましたけれども、たとえば刑務所の作業製品を一般の方々に買っていただく機会を通じまして、中での職員の働き方あるいは収容されている者の実情等についていろいろ御理解を賜ることに努力をいたしておるところでございます。
#165
○国務大臣(坂田道太君) 私もまだ就任間もないことでございますので、全国の刑務所あるいは少年院等矯正施設を十分見たとは言えないわけでございますが、たまたまいっか本委員会におきましても申し述べましたとおりに、府中の刑務所を視察さしていただきました。その処遇等につきましてもいろいろ所長からもお話を承りましたし、また私自身見て回ったことでもございます。それから、郷里に帰りましたときに熊本の刑務所も実は視察をいたしました。それから、府中の帰りには練馬の鑑別所も見たわけでございます。
 この練馬の鑑別所というのは有名な鑑別所であったわけでございますけれども、行ってみまして車をおりましたところ、何か練馬福祉教育相談所と書いてある。これは間違ったかなと思っておりたのです。そうしましたら、その後に実は鑑別所がございました。かなりモダンな建物で、そしてその地域の住民とも、そうここは鑑別所だというような感覚のないきわめて普通の病院か何かというような、あるいは学校かというような感じでございました。
 こういう少年院とか鑑別所というものは、もしうまく地域の方々の協力を求めながら、そしてその地域住民の期待にこたえて、余りここは刑務所です、鑑別所ですと言わないような空間設定をして、そしてその工夫をするならば、こんなにうまくいくじゃないか。刑務所についても、あるいは少年院等についても、今後こういう矯正施設等についても、もう少しやはりその地域住民と分け隔てない形における施設があってよろしいなというふうに、実は感想として持ったわけでございます。
 当然なことながら、建物だけじゃなくて、その内容につきましても、たとえば鑑別所の場合は二階に上がりましたところが、そこは心理学の専門の方々、十九人だったと記憶をいたしておりますが、いかにも大学における研究室みたいな感じでございました。所長さんも実は文学博士で、恐らく心理学の権威者だったと思いますが、いろいろお話を聞きましても非常に適切だ。そして住民とは、いまの福祉教育相談所において窓口というのはやっておられる。その研究所の人がそこに行っていろいうの指導もされておる。また地域の住民とも、学校の先生が暴力問題についてお話しに来たり、あるいは父兄の方がそこに来たりしておられる。そして、いろいろな科学的な判別方法等の指導もやっておる、こういうことがこれから必要ではないかなというふうに思いました。
 日本全国を一度に改革するということは困難にいたしましても、少なくとも方向といたしましては、そういうような方向で臨まなければならないなというふうに感じた次第であります。
#166
○中山千夏君 ちょっと最初お伺いしたことからは私の次の質問はずれてしまうかもしれないんですけれども、ちょうど経験談をお聞きしたのでお伺いしたいんですけれども、大臣は収容されている方たちといままでお話し合いを持たれる機会はございましたか。
#167
○国務大臣(坂田道太君) まだ残念でございますけれども、そういう機会に恵まれておりません。
#168
○中山千夏君 実は私、やはり議員になりましてからある刑務所を視察させていただきました。そこで所長さんたちから大変有用なお話をいっぱい聞かせていただいて、本当に大変な仕事だなということを、これは処遇といってもそこで働いている人たちの処遇という意味でも、これからいろいろ考えていかなければならないことがあるんじゃないかなというふうに思いましたし、それからいま大臣が見てきて経験されたようなことを私もいろいろ感じました。建物なども、そこは女子刑務所なんですけれども、大変ソフトな感じにできておりました。ところが、やはりそこで収容されていた方からお話を伺うと、また違った側面が出てくるのですね。
 現実にその中で日々暮らしている方たち、管理されている方たちの側に聞きますと、最初に所長さんに案内していただいて見たところが、全然違ったふうに見えてくる。たとえば、おふろ場なんかにしましても、大変りっぱな大きな湯舟が二つも三つもあったんですね。シャワーもついていた。そこだけを見たものですから、すごいおふろだなと思って感心して、中に収容されていた方に後で話を伺いますと、事実上使うのはその三つのおふろおけのうちの一つだけで、シャワーは出ないというようなことがあったりするわけですね。ですから、ぜひ何か機会がありましたら、事は処遇ですから、やっぱり処遇されている人たちの意見は大事だと思うんですね。収容されている方たちの意見を聞いていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#169
○国務大臣(坂田道太君) これはどういうふうなことで法務大臣としてそういうことを聞いていいのか悪いのか、あるいはそういう慣行があるのかどうなのかを私は知りません。知りませんけれども、私自身としては会ってお話をしてみたいという気持ちがあるわけです。
 ただ、先生もごらんになったと思いますけれども、NHKでたしか北海道のある女子の少年院ですね、それに加藤登紀子さんが、いま千夏さんが言われたような立場で率直に一対一で、顔は横顔でほとんど見せないようではございましたけれども、しかしその所作や、あるいは言葉ははっきり伝えられたわけです。これを聞きまして、私は非常に感銘を受けておるわけでございます。でございますから、やる方法は考えなきゃなりません、何と申しましてもそこに入っておられる人たちでございますから。しかしながら、その真実の声をわれわれ一般が受けとめるということはやはり大事なことだというふうに思うわけでございまして、そういうふうに感想を持っておるわけでございます。
#170
○中山千夏君 さて、またちょっと頭の話に戻りまして、国民の理解を得るというお話なんですけれども、先ほどお答えいただきましたように、やはりいろいろな情報を一般の人たち、あるいは近隣の人たちに知っていただくことが施設の場合だととても大切だと思います。それからほかのことに関しても、法務行政一般に関しても、やはりいろいろな情報を知ってもらうことで国民の理解が深まるということがあると思うんですね。その点はいかがなんでしょうか。
#171
○国務大臣(坂田道太君) 一般的に申し上げますとそのとおりだと思うのでございますけれども、法務省にはまた法務省のいろいろのしきたりや伝統があって、それをすぐさま改革するのがいいのかどうなのか、やはりこれは慎重を要するというような問題もあるかと思うので、一般的にはそのように考えておりますけれども、あるいは物次第においてはそうではないというようなところもあるのではないかなというふうに考えております。
#172
○中山千夏君 先日もちょっとほかの委員会でお話を伺いましたけれども、その物次第の中に入るのではないかと思うんですけれども、死刑についての情報というものをわれわれに知らせていただけない、なかなか率直にお知らせいただけないという理由がどうしてもちょっと飲み込めないんですね。その辺もう一度御説明いただけたらと思います。これは大臣じゃなくても結構です。
#173
○政府委員(前田宏君) 一般的にいろいろな情報と申しますか、というものが国民の前に明らかになるということは必要だと思いますけれども、事、死刑に関しましては、やはり慎重な配慮が必要であろうというふうに思うわけでございます。中山委員も情報の公開というふうなことをおっしゃるわけでございますが、まさか死刑を公開で執行しろということまで申されるわけでもないだろうと思いますし、そのようなことを申すわけでもございませんけれども、死刑の執行は、やはりその本人のみならず家族その他の関係者に対して影響を与えることでもございますし、そういう家族の名誉とか、あるいは感情とか、いろいろな問題があるわけでございます。
 また、現に死刑の執行を待っていると申しますか、死刑囚として在監している者の心情の安定というようないろいろな問題があるわけでございまして、そういう点から死刑の執行につきましては、原則としてひそかにこれを行うべきものであるというふうに考えておりまして、その点は今後とも変わらないように思うわけでございます。
 なお、死刑判決が確定する経緯等につきましては、もとよりのこと裁判の過程で明らかになっているわけでございますし、新聞等におきましてもその経過等は詳しく報道され、また判決が確定した場合には、ほとんど全部と思いますけれども、報道もなされているというようなことでございます。したがいまして、そういう観点から、いまどういう事件が死刑になるかというようなこと、そういう死刑になるべき事件、またなった事件の概要等は、そういう裁判の過程あるいは新聞等の報道を通じて国民の前に明らかになっておるわけでございまして、それ以上に死刑をいつ執行するかとか、あるいはしたかとかいうようなことについて、それを事前、事後にかかわらず公にするということは、やはり適当ではないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
#174
○中山千夏君 できるだけ理解を得る努力をして、そしてできるだけ許す範囲で情報は公開していくという姿勢をお持ちだという前提でもう少し細かくお伺いしたいんですけれども、いまおっしゃったことの中で、たとえば家族の、つまり公開しないことの理由は、死刑囚の家族の名誉、それから、これから執行予定されている人たちの気持ちと、その二点だというふうにお伺いしてよろしいですか。
#175
○政府委員(前田宏君) いろいろな点から考えるべきことが多いと思いますけれども、主たる点と申しますか、特に留意を要するのはそういう点ではないかと思っております。
#176
○中山千夏君 すると、できるだけ公開していきたい、できるだけ国民の理解を得たいというところにちょっと重点を置いて考えさせていただきますと、たとえば公開の仕方にもいろいろありまして、さっきおっしゃったように死刑執行そのものを公開してやるというのも公開ですけれども、これをもちろん私は望んでいるわけじゃありません、死刑そのものに私は反対ですから。それともう一つは、先ほどからも話が出ていますけれども、たとえばテレビなどでいつ幾日だれだれを処刑するという放送をしてしまうという公開の仕方もありますね。だけれども、そういうものを省いていきますと、死刑を執行された方の御家族や何かの名誉にも傷がつかなくて、それから許される範囲でこの程度は国民に知らしていいということが、限度というものがあると思うんですね。
 たとえば、私なんか考えますと、過去十年の間に何年には何件の死刑執行があったかというようなことは、たとえばテレビで公開しろということではなくても、議員だとかそれから死刑について考えたいと考えている市民の人ですとか、それから研究者とかという人たちが聞いてこられた場合には、理解を得るための基礎として正確なデータなんかを知らせてあげるということは一向差し支えがないのではないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
#177
○政府委員(前田宏君) 基本的には中山委員と考え方を異にするものではございませんけれども、何年に何件あったかということがどういう意味を持つか、またそれをお知りになることがどういう効果を持つかということとの兼ね合いでもあろうかと思うわけでございます。それがそれだけでとどまれば問題はあるいはないのかもしれませんけれども、そのことから、たとえばよく言われておりますように、だれの大臣のときには死刑の執行があったとかなかったとかというような話に置きかえられて議論されるといいますか、話になったりすることもございますので、そういうこともあわせ考えなければならないのじゃないかというふうに思っております。
#178
○中山千夏君 そうすると、一つ問題がふえまして、大臣の気持ちといいますか、大臣の名誉ということではないのかもしれませんけれども、死刑を執行した大臣を知らせないようにするという目的も、やっぱりその情報を公開しないことの中には含まれてくることになりますけれども、そうなんでしょうか。
#179
○政府委員(前田宏君) 事はそう単純といいますか、簡単ではないように思うわけでございまして、よくそういうことが言われるということを申しましたのは、別にある時期の大臣がどういうお考えであるかということにかかわらず死刑の執行がなされた場合とかなされない場合とかいろいろとあるわけでございまして、それをただ表の上でめ統計的な数字だけで申しますと、そういう実態といいますか、が逆に誤解をされるというような問題もあるということを申したわけでございます。
#180
○中山千夏君 いまがどうであるかということをおきまして、いつもこの情報の問題を考えるときにやっぱり突き当たるのが、一つの大事な部分としてはどの大臣が執行を何件したかというようなことが出てきてしまう。そのことを避けたいと思っていらっしゃるという感じは、いつもすごくわかるんですね。そうすると、大臣は好きこのんでたとえば死刑の執行をするわけじゃないわけですよね。大臣というのはそういう役目を国民から負わされていて、この間も坂田さんの方からお話がありましたし、それから前法務大臣に聞きましても、自分個人としては死刑がなくなるような世の中になってほしいと思うとおっしゃるし、人間としてはそれがあたりまえの感情だと思うんですね。
 ですから、本当に政務という立場に立ってすっきりできることであれば、隠す必要はないと思うんです。それを何となく言いにくい、国民からちゃんと秀任を受けてやっていることであるにもかかわらず、何となく堂々としていられないというところに、死刑制度の大変な問題点があるのじゃないかと私はずっと考えているんですけれども、大臣はその辺どうお考えになられますか。
#181
○国務大臣(坂田道太君) 私は非常に人間的ではなければならない、しかし、お役目柄やらなきやならないことはやらなきやならない、それには非情に徹すべきであるという考えを持っておる一人でございます。でございますから、その問題と、それからもう一つは、死刑囚に対するわれわれの考え方というものはあくまでも厳粛でなければならないということは、先般の委員会でもお答えを申し上げたとおりでありまして、私たち常人が考える以上に、たとえば死刑の判決を受けた方々が残っておられる場合、一人の死刑囚が執行をされたということがわかりましたどきのその反応というものは、われわれ常人が考え得べからざるようなショックやいろんなものを与えるということを、私はじかに、じかと申しますか、直接死刑囚からではございませんけれども、第三者の神父の方から私は承っておりまして、そうあるだろうと、おおよそ私といたしましては推測がつくわけでございます。
 そういうことを考えました場合には、先般の委員会において千夏さんが私に答弁を求められましたけれども、私としてはああいうお答えしか実はできなかったわけでございまして、その後「世界」も読ませていただきまして、ずいぶん考えさせられたわけでございますけれども、しかし、ただ、これは何もかにも報道しないことが悪いことである、これはインチキであるというふうには私は考えないわけなので、この辺はあの「世界」にお書きになった方と私は意見を異にするわけでございます。
 そういうわけでございまして、やはり日本の国情、単に現在の社会における日本じゃなくて、日本人は二千年来日本列島で住みついてきていろいろな習慣を持ち続け、われわれの血脈の中にはそれが生きておるわけです。そういう人たちの大部分の意思というものは私は尊重さるべきだというふうに思うわけでございまして、たとえばこの前お答えを申し上げましたように、五十五年六月の総理府の統計におきましては、死刑廃止論に対する賛否、これが賛成一四%、反対六二%です。ところが、五十六年のこれは十二月でございますが、朝日新聞の死刑廃止論に対する賛否におきましては、賛成が一九%ですが、反対もまた七六%、わからないが五%ということが出てきております。
 これは同じ統計でございませんのでいろいろございましょうけれども、かなりの数字、つまり五〇%以上のものが、やはりまだ現在の段階では廃止すべきじゃないのだ、こういうことは、やはり民主主義というのは国民の世論というものを大事に考えてやっていくということが正しいのであって、少数といえども、あるいは神様の目から見ればどっちが正しいか、どっちが正しくないか、これはあり得ると思うのです。
 しかしながら、現在の民主主義的手続を踏んでいく以上は、時の法務大臣としては、そういう国民の意思というものをこういう形でしか実は言えない。しかし、そういう国民の意思の表現が、まあ千夏さんから言えば、われわれが秘密にしておるからそれをもうちょっと大っぴらにするならば、あるいはこれはむしろ賛成者が非常に多くなるのじゃないかという御議論だと思うのですけれども、実は私はかなりこれは、そのことをよしんばやりましても、ある程度いま刑事局長が申しましたように、かなりな部分において公開できるところは公開するにいたしましても、このいま申し上げましたようなデータばそう基本的に崩れるということはないのじゃないかというふうに私は考えておるわけです。これはあるいは意見の相違かと思いますけれども。
#182
○中山千夏君 一つちょっと訂正したいんですけれども、私は、公開することによって反対論者がそうなにふえるという期待を持って公開をしてほしいと思っているのじゃないんです。公開した、なるべくみんなに情報を流した結果、ますます死刑は必要なんだという意見がふえることもあり得るだろうというふうに考えています。それでも、みんながどちらの意見になるにしても、やっぱり本当の民主主義というのはみんなが本当にとことん考えて、そして結論を出した上での世論に乗っているべきじゃないかと思っているものですから、できるだけ情報を公開していただきたい。
 そして、そのできるだけというところを私なりにいろいろ考えてみますと、どうしても細かくなってくると、毎年ごとのデータは大臣がだれだかわかってしまうから出せないというようなところにぶち当たりますので、その辺ちょっとお聞きしたんですけれども、ちょっと時間がきょうないものですから、このお話はここまでにして次に移りたいと思います。
 法務行政などの場合、行政は何でもそうだろうと思いますけれども、やはり人々が反感を持ったり反発心を持ったりということがありますと、とてもみんなの理解を得るなんということはますますむずかしくなってくると思うんですね。特に法務行政なんかは、人々の不信や反発というものを買ってはならないものであろうと思うんです。
 そこで、ちょっと失礼なお尋ねになるかもしれませんが、坂田さんはいままでに交通違反のもらい下げというのをなすったことはございますか、秘書の方が代理になすったということでも結構ですけれども。
#183
○国務大臣(坂田道太君) 余り記憶がないのでございますけれども。
#184
○中山千夏君 余り記憶がないという――どっちかに決めてください、なかったでもあったでも。
#185
○国務大臣(坂田道太君) ありません。
#186
○中山千夏君 でも、そういう慣例といいますか、習慣といいますか、悪習といいますか、そういうものがあるということはもちろん御存じですよね。
#187
○国務大臣(坂田道太君) 何か田舎では、やっぱりそういったことは行われておるように思います。
#188
○中山千夏君 おっしゃりにくいこともあるだろうと思いますけれども、私などもやっぱりよく聞きます。それで、田舎じゃなくて、やっぱり東京で聞きます。それから実例も幾つか知っております。
 そうすると、国会議員になったときに、千夏さんはこれから交通違反しても楽でいいねなんて一般の人から言われるわけですね。私はちょうど免許を持っておりませんので違反をすることもないわけなんですけれども、そういうことが一般の人たちも知っている常識になってしまって、政治にかかわっている国会議員であるとか、それから高官の方とかと知り合いであれば、あるいはその当人であれば、交通違反してももらい下げてもらえるんだというような事実がありますと、交通違反というもの自体が、どうも交通違反でひっかかった人の話を聞くと不公平だなという感じがするらしいんです。
 駐車違反にしても、全部駐車違反している車がつかまえられるならいいけれども、たまたま運が悪くてつかまったという感じがしているところへもってきて、つかまった者の中から、特に国会議員に知り合いがいるからと言ってもらい下げてもらえるというような人がいるということについては、大変反感を持つわけですよ、みんな。
 もしかしたら事例がわかりますか、幾つか。数とかわかる方はいらっしゃるでしょうか、御存じの方は。
#189
○政府委員(前田宏君) 中山委員のもらい下げということの意味もまだよくわからない点があるわけでございまして、違反を犯しました場合に逮捕される。なるべく早く釈放してほしいというような陳情とか、あるいはできるだけ寛大にしてほしいというような陳情とか、そういうことがあるということはあり得るかと思いますけれども、事件そのものをいわばなくしてしまうというか、もみ消してしまうとか、そういうような極端なことはないように考えているわけでございます。
#190
○中山千夏君 もしあったとしたら、とってもいけないことだと私は思うんですけれども、それはいかがでしょうか、前田さん。
#191
○政府委員(前田宏君) 一般論といたしまして、人によって犯罪の正否が変わってくるといいますか、処理が変わってくるということは適当でないと思います。
#192
○中山千夏君 じゃ、少なくとも絶対ない、そういうことはないようにと、今後していらっしゃるわけでしょうか。
#193
○政府委員(前田宏君) 捜査機関もいろいろあるわけでございますから、私がすべてについて責任を持つわけにもいかないわけでございますが、事、検察当局に関しましては、そのようなことは絶対にあり得ないと考えております。
#194
○中山千夏君 大臣はいかがでしょうか。
#195
○国務大臣(坂田道太君) 法務大臣たるもの、そういうことがなからしめるというのが私の職務だというふうに考えております。
#196
○中山千夏君 非常に満足のいくお答えをいただきましたので、今後の結果を見守りたいと思います。
 それから最後に、去年の十月に法務委員会で八王子の医療刑務所を視察させていただきました。そのときに、いろいろ所長さん以下お話を伺ったんですけれども、そこに関東以北の約二百数十名の方たちが体を悪くして収容されているわけです。その中に精神科がありまして、その二百数十名の約三分の一、八十名の方が精神科に入っているわけです。もちろん医療刑務所ですから、刑に服しているときに病気になった、発病した、あるいは前に精神病だった方が治っていたんだけれども、刑に服しているときに再発したというような方たち、それが約八十人いらしたわけです。
 そのうちの約四分の一である二十名程度の方が、伺いましたら拘禁性の精神障害なんです。それは所長さんと医療を担当していらっしゃる方に伺ったんですが、拘禁性なんだそうです。そうしますと、刑務所で拘禁されているということ自体が、その二十名の方たちにとってはいわば精神病の原因になっているわけなんです。そうすると、拘禁されている、刑務所に入れるということが、そんなにたくさんの拘禁性の精神病の方たちをつくり出しているということで私実はびっくりしたんです。
 これは、さっき所信の中でも話していらした処遇の問題とも非常に関係がありますし、それから先ほどお話に出ていました保安処分の問題とも非常に関係が深い。片方で保安処分というようなことを言いながら、片方では処遇そのものが精神病を生み出しているというのは、大変な矛盾なんです。この辺のことについてどのようにお考えか、最後に伺いたいと思うんですが。
#197
○政府委員(鈴木義男君) 八王子の医療刑務所におきます精神障害者の数、あるいはその中で拘禁性精神病ではないかと思われる人たちの数については、大体ただいま御指摘のとおりだと思います。
 ただ、拘禁性精神病というのが大変実はまだよくわかってない精神病でございまして、入ったらだれでもなるというものでもございませんし、それから入ってなる主たる原因が拘禁されておるということによるのか、あるいはそれ以前の素質によるのかということもございまして、そこらあたりの解明もこれからは必要だと思うのでございますが、実際問題として、いわゆる拘禁施設というものを運営しておりますと、それまでは少なくとも表に出なかった症状が、入ったがために出るということも実はあり得るわけでございまして、そういうことはなるべくないようにという努力をしておるところでございますが、残念ながらそういうケースがないとは申し上げられません。
 ただ、一体どのくらいあるのかということになりますと、八十人の中に二十人もということになると非常に大きな割合でございますが、実はその八十人が母数ではございませんで、母数は四万、五万という全収容者の中から、八王子だけ二十人でございますから、まだほかの医療刑務所にも多少おると思いますが、四万、五万という数の被収容者の中からそれだけ出てきておる、こういう実情でございますので、御理解願いたいと思います。
#198
○中山千夏君 また、ほかの医療刑務所の状態なども勉強してみたいと思いますけれども、いずれにしましても、先ほどから話に出ているように、大変精神障害とそれから処遇の関係というのは微妙な問題がとてもたくさんあると思うんです。ですから、前の方もおっしゃっていましたけれども、よくよくお考えになって、いろいろ決めたり行政なすったりしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。終わります。
#199
○委員長(鈴木一弘君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#200
○委員長(鈴木一弘君) 刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。坂田法務大臣。
#201
○国務大臣(坂田道太君) 刑事補償法の一部を改正する法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。
 刑事補償法による補償金額は、無罪の裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が未決の抑留もしくは拘禁または自由刑の執行等による身体の拘束を受けていた場合については、拘束一日につき千円以上四千八百円以下とされておりますが、最近における経済事情にかんがみ、これを引き上げることが相当と認められますので、右の四千八百円を七千二百円に引き上げ、補償の改善を図ろうとするものであります。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#202
○委員長(鈴木一弘君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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