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#1
第096回国会 法務委員会 第10号
昭和五十七年四月二十七日(火曜日)
   午後一時四十六分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     山中 郁子君     宮本 顕治君
 四月二十七日
    辞任         補欠選任
     宮本 顕治君     山中 郁子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鈴木 一弘君
    理 事
                平井 卓志君
                円山 雅也君
                寺田 熊雄君
                小平 芳平君
    委 員
                臼井 莊一君
                戸塚 進也君
                中西 一郎君
                小谷  守君
                山中 郁子君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  坂田 道太君
   政府委員
       法務政務次官   竹内  潔君
       法務大臣官房長  寛  榮一君
       法務省民事局長  中島 一郎君
       法務省刑事局長  前田  宏君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   梅田 晴亮君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   大西 勝也君
       最高裁判所事務
       総局民事局長兼
       最高裁判所事務
       総局行政局長   川嵜 義徳君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       警察庁刑事局捜
       査第一課長    仁平 圀雄君
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    森廣 英一君
       法務省民事局参
       事官       稲葉 威雄君
       外務省国際連合
       局専門機関課長  佐藤 裕美君
       郵政省郵務局業
       務課長      伊藤 修介君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法
 律案(内閣提出)
○船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一
 部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○寺田熊雄君 郵政省の方は来ていらっしゃいますか。――先にあなたに伺います。
 民事訴訟法における書類の送達は、特別送達を原則として、特別送達によらざる場合には書留郵便に付する送達あるいは簡易送達などの諸制度を採用しておるようですね。それで、これは民事訴訟法における特別送達、これは郵便官署でどのように扱っておられるのか。裁判所の方から郵便送達報告書という印刷物を取り寄せてみますと、いろいろ書き込む欄がありますね。この中で裁判所の方で書き込む個所はどことどこであるか、それから郵便官署の方で書き込むところはどことどこであるか、まずその辺からちょっと御説明いただけますか。
#4
○説明員(伊藤修介君) お答えをいたします。
 特別送達の郵便物の裏側に郵便送達報告書という一枚の紙がついているわけでございまして、その中で先生いま御質問のありました点についてお答えを申し上げますと、一番上の欄に事件の番号というのがございます。それから発送年月日という欄がございます。それから、その下に送達書類という欄がございます。書類の名称、差出人、それから受送達者氏名という欄がございますが、ここの部分につきましては、差出人の方に裁判所で差し出される場合には裁判所で記入をしていただくことにしてございます。それから、その下の欄に受領者の署名または押印という欄がございます。その欄は、その送達を受けた方の署名なり押印なりをしていただく。それから、その下の欄に送達方法という欄がございます。本人に渡したか、それとも本人が不在でありましたために事務員に渡したかという欄がございます。
 それからまた、正当な理由なく受け取りを拒んだかどうかという欄がこの送達方法の欄の内容になっているわけでございますけれども、これにつきましては、配達に行った人が記入をする。それから送達年月日時、それから送達の場所、それから一番最後の、昭和何年、何月何日、何々郵便局の配達員何の太郎兵衛という欄があるわけでございますが、ここの欄は、配達に行った人か、または窓口で交付するような場合には窓口の担当者が記入をする、こういうことになっております。
#5
○寺田熊雄君 それから、特別送達をした場合に、当該の送達を受くべかりし者が不在であった場合、あなた方は不在配達通知書という書面をこれは送達を受くべかりし者に発送するわけですか、それともポストに、郵便受けにほうり込むわけですか。この扱い方はどうなるのか。
 それから、不在配達通知書の記載はどの程度の記載をして、そのことが、当該の送達を受くべかりし者にその事実を知らせるためにどの程度の努力をなさるのか、その辺ちょっと説明してください。
#6
○説明員(伊藤修介君) 特別送達の郵便物を持っていきまして配達に伺うわけでございますけれども、その際、本人あるいはそこの事務員等いない場合には、不在配達通知書というものを作成をいたします。この不在配達通知書は、配達に行った配達員がそこの場所で不在配達通知書というものを作成をいたしまして郵便受け箱に入れてくる、郵便受け箱がないような場合には人目につきやすい場所に置いてくると、こういうことでございます。
 本体の特別送達郵便物につきましては、郵便局にとめ置きまして窓口交付を行う、こういうことになるわけでございますけれども、不在配達通知書の中にそれではどのようなことを記載するかと申しますと、もちろん受取人の名前、だれだれ様というのは記載をいたしますけれども、そのほかに差出人の氏名、たとえば裁判所から出ていれば何々裁判所という差出人の氏名と、それから郵便物の種類を記載いたします。書留あるいは書留速達というような郵便物の種類。それから窓口で受領するときに、その不在配達通知書のほかに、正当な本人かどうかを確認するために、本人であるというそういう証明書を持ってきてくださいという内容と、それからその郵便局の窓口が開いている時間等々を内容としました不在配達通知書を置いてくるわけでございます。その不在配達通知書を見まして、何月何日にもう一度配達してくれというような御希望があれば、その不在配達通知書の下の欄に配達希望年月日という欄がございまして、そこの欄に希望を書いてポストに入れていただければ、その日に郵便局からまた配達に伺う、こういう仕組みでございます。
#7
○寺田熊雄君 不在者が家に帰ってみて、郵便受けに郵便官署の、こういう書類を配達いたしましたが、おられないので郵便局に来てくれという趣旨のことを書いてほうり込んでおく、そのことを読んだ場合に、裁判所が発送しているということはわかる。書留であるということもわかる。しかし理想を言うと、それがたとえば訴状であるとか証人の呼び出し状であるとか、そういう書類の内容がわかれば一番いいわけですね。全然裁判所に関係のない人物が、何ゆえ裁判所から来るのだろうと不審を抱いても、それほど気にとめないということがあり得るわけです。それが訴状であるということになると、おれのところに訴状が来た、あるいは証人呼び出し状が来た、これは何だろうという疑問を持って郵便局に出かけるというようなことが期待できる。だから、郵便官署の方に取りに行くという意欲を生じさせるためには、その書類の内容がその郵便官署の通知の中に記載せられればよりよいわけなんだけれども、そこはちょっとまだ何か親切が足りないような感じを受けるわけであります。
 これは後でお伺いすることにして、次に、団地であるとか、ことに高層アパートの居住者に対する訴訟書類の送達方法、これはエレベーターがあればすっと上がって行きやすいんだけれども、五階ぐらいの公共住宅の場合はエレベーターがない方がむしろ一般のようですけれども、その場合でも集配人は特別送達の場合はやはり当該本人の部屋を目指して行くのか、それとも管理人に任せるのか、書留郵便に付する送達の場合はどうか、簡易送達の場合はどうかというようないろいろの疑問があるけれども、この点を説明してください。
#8
○説明員(伊藤修介君) まず、最初の高層建築物から御説明を申し上げたいと思うわけでございますが、高層建築物の中で郵便法なり、あるいは郵便規則なりに定められております郵便受け箱を設置しなければならないビルというものがございます。
 現在、東京の大島四丁目の団地には実はこの受け箱がついておりませんで、普通扱いの通常郵便物につきましては郵便局にとめ置きまして、それで本人の方に郵便局に来ていただきまして窓口でお渡しをしているということでございます。それじゃ、このような場合に先生の御質問の特別送達郵便物はどうなのかということでございますが、特別送達郵便物、あれは書留が基本になってございます。書留とか、あるいは速達郵便物、これにつきましては、そのようなビルでも各階に配達をするという方法をとってございます。
 それから二点目の、その他の団地等の配達でございますが、郵便事業を効率的に運営をしていくという見地から、団地等の管理人の方あるいは受取人の方に御協力をお願いをいたしまして一括配達という制度がございます。これは、その建物なり、あるいは同一構内におります方々の代表として郵便物を受け取っていただく、こういう制度でございますが、こういう制度を行います場合には、そういう御協力をいただけるかどうかという点がまずございます。それでは結構です、やりましょうというふうに御協力をいただきました場合に、それじゃ、どこからどこまでの郵便物を代表として受け取っていただけますか、通常郵便物だけにしてください、あるいは通常郵便物と小包だけ私の方で代表して受け取りましょう、書留は各戸に配達してくださいというような方とか、あるいは、すべて書留郵便物まで含めて自分のところで代表して受け取りましょうというようないろいろな実は態様がございます。
 したがいまして、書留郵便物まで全部一括受領という形で受け取りましょうというような場合には、一般的な書留郵便物まで一括受領でお願いをするということでございます。ところが、そういう場合でも、特別送達の場合は原則として本人に交付をするという形にしてございますので、一括受領の場合でも管理人の方にお願いをして置いてくるということはございません。ただ、民訴法上、正当な受け取る権限を持っている事務員の方なり管理人の方なりが、たまたま一括受領を一緒にしているというような場合には、これは特別送達郵便物ですという事情を話しまして正当な送達を行う、こういう状況でございます。
#9
○寺田熊雄君 これは、東北管区行政監察局長がことしの三月二十三日付で東北郵政局長に対して「居住者等の意向確認と一括配達実施方法の見直し」という書面を送付しております。
 「一括配達の実施状況について、住宅の用に供されている高層建築物のうち郵便受箱を設置しているものを中心に抽出調査した結果、次のような事例が認められたので、東北郵政局は管内郵便局に対し適切な指導を行う必要がある。」、適切な指導というのは、「一括配達を行っている郵便物の中には、書留等特殊取扱いの郵便物も含まれている」。ところが、郵便局はこういうものについて一括配達を開始するに当たって、居住者等に対する周知方及び協力要請を的確に行っていない。したがって、居住者と一括配達を受ける者との間における郵便物の代理受領についての委任関係が不明確である。
 一括配達の実施状況を見ると、一括配達を受ける者とその対象郵便物等についての配達資料を十分整備していない。一括配達に対する実態の把握が非常に不明確である。中には、一括配達郵便物を受付の窓口に放置しておくようなことさえもある。
 書留郵便物等の場合は、あて名人との間における授受の記録を明確にしておくことが望ましいけれども、中には、その記録を全然行っていないものさえもある。こういうような点について、適切な指導を行えという通知をしておりますね。
 それで、改善措置について四月十日までに回答してほしいという要望をしておりますが、これはきちっと回答をなさっておられるかどうか。
 回答をしておられるとすると、その内容はどうであるか。これについてお答え願いましょうか。
#10
○説明員(伊藤修介君) ただいま先生から御指摘をいただきましたように、五十七年三月の二十三日に東北管区行政監察局長から東北郵政局長あてに、ただいま先生がお話をされました内容について通知をいただいてございます。この通知を受けまして、東北管区行政監察局の方に本日私どもの回答を報告をしたわけでございますが、その内容につきまして御説明をさしていただきたいと思うわけでございます。
 まず第一点の、居住者等の意向の確認についてでございます。私ども、一括配達を行います場合に、協力者並びにその利用者についての周知あるいはこの制度の趣旨の説明というものを行いまして、特に居住者の方々の通信の秘密の問題もございますので、そういう郵便物の取扱方法についても、十分理解をいただいてやっているものと考えていたわけでございますけれども、御指摘をいただきました趣旨ごもっともでございますので、この一括配達を開始するに当たりましては、居住者等に事前に十分周知をしまして、了解を得た上で行うよう関係郵便局を指導するというのが、回答の第一点目でございます。
 それから二点目の、書留郵便物等の取扱方法についての指摘でございますけれども、これにつきましては、取り扱いに適切さを欠いているものについては、指摘の趣旨を踏まえてなお一層の徹底を図っていくこととする。
 こういう内容の回答を、本日いたしたところでございます。
#11
○寺田熊雄君 それでは、またさらに疑問が起きれば来ていただくことにして、きょうはあなたはもう結構です。どうも御苦労様でした。
 それから、今回の改正法の第百六十九条の第二項、これはつまり「送達ハ之ヲ受クベキ者ノ住所、居所、営業所又ハ事務所ニ於テ之ヲ為ス」という第一項がありますね。第二項を新設して「前項ニ定ムル場所が知レザルトキ又ハ其ノ場所ニ於テ送達ヲ為スニ付支障アルトキ」と、このときは勤務先に送達してよろしいという新設の規定でありますが、勤務先が知れておるときは、たとえば原告が被告に訴えを起こす、その住所が知れないということでいきなり勤務先に送るということはないんでしょうね。
 それから、最初訴状を送達したけれどもその後住所が知れなくなった、請求も拡張して、つまり訴状の訂正をする、それを送ろうとしたら今度はそこに住所がないということがわかった、移転先もわからない、勤務先がわかっているから勤務先に送ると、こういうことになると思うけれども、しかし、勤務先がわかっておれば、原告は勤務先でその人間の住所を調べることができるのではないか。だから、勤務先がわかって住所が知れないという場合は、ないことはないにしても少ないんじゃないだろうかという疑問があるのだけれども、この点はいかがでしょう。
#12
○政府委員(中島一郎君) 勤務先がわかっております場合には、勤務先で住所等を調べる方法があるということはおっしゃるとおりでございますけれども、勤務先等で住所等を教えてくれる場合はいいわけでありますが、教えてくれない場合がある。通常の場合は教えてくれない場合も多いというふうに承知いたしておりますので、こういう規定が必要であろうと考えております。
#13
○寺田熊雄君 確かに、勤務先で住所を教えてくれない場合もあると思うけれども、立法する場合に、勤務先で住所を教えてくれない場合の方が多いんだ、教えてくれる場合が非常に少ないんだという、何か経験的事実といいますか、そういう調査をした結果なんですか。あなた方の常識でそういうふうな立法をなさったんだろうか、それともやはりあなた方の日常の経験というか、裁判所の実務上の経験で統計をとってみて、やはりこういう弊害があるんです、だから立法したんですとおっしゃるのか、その辺はどうでしょう。
#14
○政府委員(中島一郎君) 統計は私存じませんけれども、私の経験といたしましても、原告が被告の住所がわからないということで相談に来ておりまして、書記官がそれじゃ勤務先がわかっているのだったら勤務先で調査していらっしゃいと、こういう指導をいたしております。勤務先に行ったのだけれども教えてくれない、どうして教えてくれないのだと言ったら、いやそういう書類を自宅に送ってもらっちゃ困る、ここへ送ってもらってくれと、こう言っておるというようなことも経験をいたしておりますし、教えてくれない場合が多いというのではございませんけれども、そういう場合も多い、多いと申しましょうか、そういう場合もあるということを申し上げたわけでございます。
#15
○寺田熊雄君 何か少し釈然としない面もあるけれども、さらにまた私も考えてみます。
 次に、住所等に送達するのに支障があるとき、このとき勤務先に送ると。この送達するのに支障があるというのは、本人も配偶者も勤めに出て昼間はおらないというのが一番ポピュラーな例であるという御説明がありましたね。それもわかっている。その場合、私どもの主張、前にも申し上げたが、原則として夜間送達をしたらいいじゃないかということをお尋ねしたときにあなた方は、いや執行官は本来の執行業務に従事をさせたいと。そこで送達というような機械的な業務は漸次執行官の業務から取り除いていきたいと言ったのか、取り除かれる傾向にあると言われたのか、その辺ちょっと私もはっきりしないんだけれども、趣旨はそういうようなお答えだったですね。
 それがまた、どうしても私の方に釈然としないので、なるほど執行官はいまや地位が上がったから、執行官が何か得々として書類の送達業務をするというのは嫌がるかもしれないけれども、しかしまた、公務員というのは人の嫌がる仕事もやっぱりやるという気持ちを持ってもらわないと困るので、職業に貴賎はないのだから、それが司法秩序の確立に必要なんだ、人権の考慮をする立場からも必要なんだと思えば、そういう機械的な仕事にも喜んでやっぱり従事してくれなければ困るという気持ちも私どもするわけですよね。
 それからもう一つは、執行官の補助者もあるんじゃないだろうか、補助者がある場合には補助者にさしてもいいんじゃないかという気持ちもある。だから、夜間送達を頭から嫌がって、そしていまそういう制度があるのに、それを嫌がっていきなりストレートに就業場所に書類を送達するということはどうも私、釈然としないんだけれども、その点はどうでしょう。
#16
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 前回申し上げたことの繰り返しになりまして恐縮でありますけれども、昭和四十一年に御承知のとおり執行吏が執行官になったわけでございます。このときに執行官の任用資格というものを行政職(一)表四等級以上というふうな格に決めまして、四等級と申しますと、裁判所では当時主任書記官ということであったわけであります。それ以上の資格を持つ人でなければ執行官に任用しないということにしたわけであります。これは執行が公正適正に行われるためにぜひ必要だということで、そういうことになったわけでございます。そういう任用資格の飛躍的な向上を目指しましたとともに、やはり執行官は本来の執行業務に専念すべきである、執行官の事務の純化を図るべきであると、こういう方向を運用として目指してきたわけであります。
 そういうような経過がございますために、当時相当数の送達を受け持っておりました。夜間送達に限りませんで、昼間の送達も執行官が担当するものは相当数ありました。しかし、これを順次縮小してまいりました。ということは、郵便送達に切りかえるということでございます。そういう方向になってまいりまして、当時と比べますと、現在は執行官が担当する送達は五分の一くらいに減ってきておるのが実情でございます。
 と同時に、四十一年当時執行吏代理という者が相当数おりました。これが多くは送達業務を担当しておったわけでありますが、この執行吏代理の制度はなくなりまして、経過的に執行官臨時職務代行者ということに名前が変わったわけであります。これも漸次人数を減らしていって、そういう変則的な代行者というものはなくしていくという方向でございました。現在二十数名しかおりません。そういうような関係がございますために、御指摘のように、夜間送達を原則的にすべて行ってからでなければ就業先への送達ができないということになりますと、相当また夜間送達件数というものはふえてくるだろうと思います。
 そういうことになりますと、先ほど来御説明申し上げております執行官の業務の純化ということがまた逆戻りをするおそれがあるということで、私どもとしてはどうしても必要なものはこれはやむを得ませんけれども、原則的に、一般的に夜間送達を執行官にやらせるのだという方向は御勘弁をいただきたいと、こういうことでございます。
#17
○寺田熊雄君 私どもも執行官の地位を上げるべしということを年来の主張にしておったから、局長からそういうふうに言われるとちょっと立場に困るんだけれども、そうなると、執行官は地位が首席書記官級というと、これはもう地方官署のまず課長クラス以上と見ていい。それに、とことことことこ郵便のようなものを送達させるというのは、私にとってもそうしなさいと言うのは苦しいことであるけれども、それでは夜間送達という制度は廃止なさるおつもりか、それとも制度そのものを廃止せずにおく。そして、その担い手はやはり執行官であるというそのたてまえは置いておくのか。その辺、いかがでしょう。
#18
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 送達実施機関として民事訴訟法に執行官と郵便集配人というものが規定してございますので、その限りにおきまして執行官の送達というものを廃止するというわけにはまいりません。したがいまして、また裁判所が夜間送達を執行官に命じました場合には、これを受けざるを得ないという状況にありますし、その制度自体をいまどうこうするということを考えているわけではございません。
#19
○寺田熊雄君 その制度自体は動かさない、しかもその担い手は執行官である、しかし執行官の高い地位にかんがみてやらしたくない。その辺のところが、お気持ちはわかるけれども、なお私ども釈然としない面があるのでありますが、しかし、きょうはこの程度にとどめて、なお一層私もさらに考えてみたいと考えております。
 それから私が疑問に思うのは、勤務先に訴状あるいはその他の書類を送る、支払い命令を送る。その場合、日本ではまだまだ裁判所から書類が来るというのを好まないというか、何か嫌らしいもののように考える空気がないとは言えない。ことに一流の会社で課長になる一歩手前である、ライバルもおる、そういう事実がライバルに利用されるというようなことも、これは松本清張の小説ではないけれども、われわれもそういう場合があるだろうということはほぼ想像できる。したがって、先ほど中島民事局長がおっしゃったように、住所に送達してもらっちゃ困る、勤務先に送れという者もそれはないことはないだろうが、それはしかし、そういうのは例は少ないのじゃないだろうか。
 そこで、勤務場所に送達して波紋を起こす前に、書類を受け取ってくださらぬと勤務先に送りますよという警告的な書面、これははがきでも結構であり、場合によっては電話でも結構だけれども、書記官から本人にその点を通知したらどうか。そうすれば、本人はびっくりして郵便局にとめ置かれた書類を受領に行くのじゃないだろうかというような気もするんですが、そういう手当てを講ずるお気持ちはないでしょうか。
#20
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 御指摘のような手段、方策をとれば、確かにプライバシーの保護には手厚いことになるだろうと思います。
 ただ、今回の改正は、確かに現在の法律のもとにおける送達よりもプライバシーという観点から言いますと、一歩踏み出したといいますか、受送達者の関係から見ればやや不利になるということは否めないところだろうと思います。
 ただ、しかし、前回にも申し上げましたような昼間不在者が多いために送達できないケースが非常にふえている。このことは、一方においては、その相手である通常は原告でありますが、原告が裁判を受ける権利と言うと大げさになりますけれども、それを損なうことになるのではないか。これはいわば裁判を進めていかなければならない、司法の運営に責任を持っております裁判所の立場からしますと、非常に困ったことでありまして、ある意味では公益と言ってもよいかと思います、訴訟の進行を図るということは。このプライバシーという私益と裁判の進行を図らなければならないという公益とのいわばバランスの問題でありまして、どこにそのバランスをとるかという問題に帰着するだろうと思います。
 御指摘のような手当てをしようといたしますと、これはかなりの事務量になります。一方、先ほど郵政の方から御説明がありましたとおり、一度特別送達をしたけれどもいなかった場合には不在配達通知書というものが投げ込まれる、しかもそこには裁判所から来た書留郵便物だということが表示されている、こういう手当てもされておることでもありますので、彼我参酌いたしますと、書記官による事前の警告、通知というかなりの事務量、エネルギーをつぎ込むことはどうかというふうに考えるわけでございます。
#21
○寺田熊雄君 そこは局長のおっしゃることはわかるんだけれども、われわれは、裁判所書記官の事務がふえるかもしれないけれども、そう頻繁に特別送達が不可能になるケースがたくさんあるわけじゃないだろうから、書記官がはがきで、そのはがきも、なんでしたら最高裁判所でちゃんと文句を刷っておいてあげて、あとは表書きを書くだけにして、はがきをほうり込むというのは、書記官の事務をそう増加させるものではないのじゃないかと私は考える。これはさらにまた考えることにして、きょうは局長のお答えをそのまま受けておくことにしますがね。
 それから、この間、山中さんからたしかお尋ねがあったんですね。それは、送達する書類の封筒はホチキスでとめてある。私もそこまでは気がつかなかった。なるほど、そう言われればホチキスを非常に使っている。ところが、勤務場所に送達がなされた場合、好奇心から受け取った人間がホチキスをちょっと開いて中を見る、後またホチキスでぱちっととめておくと、そういう危険性があるんじゃないかということを先般山中さんが指摘された。なるほど、考えてみるとそういうことは考えられる。だれでも事務の簡素化という本能的な欲求から、わざわざのりを封筒の半ぺらにつけて封緘するというようなめんどうくさいことよりも、ホチキスでぱちんととめて発送するということの方が多いでしょう。
 しかし、勤務場所に送る場合には、やはりのりをつけて張って、たやすくそれが開封されないようにするというくらいの配慮は裁判所はあってもいいんじゃないだろうか。それは事務がふえるかもしれないけれども、しかしやっぱりおれが事務をとるという場合で物を考えずに、大衆がどういうふうな目に遭うだろうかという下の方の立場に立って考えていただけないかということなんですね。これは私の考え方だが、これはいかがですか。
#22
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 全国のすべての裁判所を調査したわけではございませんけれども、御指摘のようなホチキスで封をするという方式は、かなりのところで行っているようでございます。
 現行法のもとにおきます送達でありますと、本人の住居所、営業所、事務所といった、いわば本人の支配圏内で送達が行われるということでありますので、仮に本人がいなくて補充送達ということになったとしても、その支配圏内の人でありますから、プライバシーの深刻な問題は生じないのが一般だろうと思われます。現在行っておりますそのホチキス方式も、こういうような実情を踏まえて実務が編み出してきた省力化の一つの方策であっただろうと思います。
 しかし、御指摘のように、この改正法が実施されますと勤務場所、就業場所という、いわば自分の支配圏外の場所で送達が行われる。しかも補充送達、同僚等が受け取る場合があるということになりますと、確かにプライバシーの侵害のおそれというものがなくはないと言わざるを得ないと思います。これが実施されましたならば、裁判所といたしましても、少なくとも就業先への送達便については、のりづけをするというような方法を徹底して行わなければならない、このように考えております。
#23
○寺田熊雄君 その局長のおっしゃるのりづけを徹底して行わなければならぬというそういうことを徹底させる方法は、たとえば最高裁判所規則でそれを決めるのか、それとも民事局長通達でそれが十分徹底できるというお考えなのか、その辺はどうでしょうか。
#24
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 事柄が事柄でございますので、たとえば首席書記官会合等でその趣旨を徹底させ、下部に流していくということも考えられますし、あるいはこれは送達関係は総務局所管でございます。すべての事件局にまたがることでございますので、民事裁判だけではございません。そのほかのところでも送達は行いますので、それを統べております総務局長の通知、通達といったことも考えられます。実際に法律が成立しましたならば、その点遺憾のないように措置をしたいというふうに考えております。
#25
○寺田熊雄君 いま局長の御説明の中で、これは民事関係だけではないというお話があったと思うんだけれども、この百六十九条の第二項、これに関する限りは刑事関係の書類の送達にはこれを準用しないというお答えがあったようにも思うんだけれども、その点はどうでしたか。つまり、刑事訴訟規則で、この百六十九条第二項の規定は刑事訴訟法の規定による送達には準用しないということをうたうのかどうかという点ですね。
#26
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 刑事訴訟法の五十四条に「書類の送達については、裁判所の規則に特別の定のある場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定(公示送達に関する規定を除く。)を準用する。」と、こういう形になっております。
 したがいまして、何らの手当てをもいたしませんと、就業場所送達のこの規定が刑事手続にも準用されるということになるわけでありますが、私どもの刑事局の方ではこれをこのまま準用させるのは適当でないという考え方から、新しいこの法案の百六十九条の二項に要件が三つございますけれども、一番最後の当事者が同意したというような場合、この最後の要件については準用してもよかろう。しかし、第一、第二の要件による就業場所への送達は、これは準用すべきではないという考え方で、目下これを除外する規則をつくるべく検討中でございます。
#27
○寺田熊雄君 これは、あなた方一体でいらっしゃるから別段念を押す必要はないけれども、刑事局長の所管であるわけだから、刑事局長に答弁していただいた方がベターでしょうね。それはどうかしら。
#28
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) この点につきましては刑事局と十分連絡をとりまして、ただいま申し上げたような趣旨のことを考えているということを民事局長が述べて結構だと、こういうことでございましたので、便宜、私から申し上げた次第でございます。
#29
○寺田熊雄君 同じ最高裁判所事務総局の中だから、そういうふうに伺っていいでしょうね。
 それで、家裁の書類送達方法では、何か家庭裁判所というこの裏書きはしないんだというような説明があったけれども、これも家庭局長にかわってあなたにお答え願っていいのだろうね。どうでしょう。
#30
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) この点につきましても家庭局長から意見を聞いておりますので、私から申し上げるつもりで参っております。
#31
○寺田熊雄君 それで、家庭裁判所では、このプライバシーの保護のためにどういう配慮を具体的にやっておるのでしょう。
#32
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 家庭裁判所におきましても、呼び出しとか審判書を送るというようなことで送達ということがあるわけでありますが、正式の送達という方式で当事者に書類を送るというのは非常に少ないようでございます。
 たとえば、抗告ができる審判書を送る場合、これは抗告期間の起算点をはっきりさせる必要がありますので正式の送達をやっておるようでありますが、通常の審判とか調停の呼び出しは送達の方法をとりませんで、便宜、通常六十円の封書等あるいは電話などを使っておるようであります。そして、これはプライバシーの保護と同時に、費用の節約ということがかなりウエートを持っているというふうに聞いております。正式の送達でありますと八百六十円かかりますが、普通の封書でありますと六十円でありますから、八百円の節約ができるというわけであります。
 多くのものは、いま申し上げましたような簡易な方法で行われていて、しかもその中でプライバシーの保護に十分気をつけなければならない事件につきましては、前回も申し上げたかと思いますが、私書箱を使う。裁判所が私書箱を持つわけです。裁判所が差し出すのでありますが、裁判所が出したということがわからない、私書箱何号というのが出したということになる、そういう形をとったり、あるいは書記官、調査官が個人の名前で手紙を出すというような配慮をしているというように聞いております。
#33
○寺田熊雄君 これは十分研究してお尋ねするわけじゃないけれども、家庭裁判所に関しては、勤務場所への送達なんということは全く考慮に置いてはおられないんでしょうね。その点、どうでしょう。
#34
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 多くは正式の送達によらない簡易な方法で間に合っているわけでありますが、先ほども申しましたように、抗告の対象になり得る審判書を送る場合、これは正式の送達でないと困るわけでありますが、その場合には、勤務先送達ができればそれも利用するということになろうということでございます。
#35
○寺田熊雄君 私もいま詳しく分析してお尋ねすればよかったんだけれども、つまり少年事件に関しては勤務場所に送達ということは全くないんでしょうね。ただ、身分関係や相続関係についてはこの民事訴訟法上の勤務場所への送達ということは、離婚なんかの場合にこれを全くいかぬというわけにはいかぬでしょうが、少年事件の場合は勤務場所にやられちゃ全く困るから、これは全く適用を除外するわけでしょう。この点どうでしょう。
#36
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 家庭局におきましても、御指摘のように少年事件については就業場所への送達は考えないということでございます。
#37
○寺田熊雄君 それから、この百六十九条の第二項の規定の仕方が非常に生硬にできている。熟していない。これは何か聞いてみると、法務省の原案にはなかったのを、法制局が入れたんだというようなことを聞いたことがあるけれども、真偽のほどは知らない。何にしても「前項ニ定ムル場所が知レザルトキ又ハ其ノ場所ニ於テ送達ヲ為スニ付支障アルトキハ送達ハ送達ヲ受クベキ者が雇用、委任其ノ他ノ法律上ノ行為ニ基キ就業スル他人ノ住所、居所、営業所又ハ事務所ニ於テ之ヲ為スコトヲ得」、これを「送達ハ送達ヲ受クベキ者が雇用、委任其ノ他ノ法律関係ニ基キ」と言えばいいんじゃないか。「法律上ノ行為ニ基キ」なんて言わないで「委任其ノ他ノ法律関係ニ基キ」と、こうした方がわかりやすいと思うんだけれども、これはどうでしょうか。
#38
○政府委員(中島一郎君) 御指摘の条文は、確かに若干わかりにくいと申しますか、若干生硬であるというような見方もあろうかと思うわけでありますが、この辺は純粋に表現の問題と申しましょうか、文言の問題でありますので、私どもの方で法制局といろいろ協議をいたしました結果、このような形に落ちついたというわけでございます。
 いまの「法律上ノ行為」というところを「法律関係」というふうに変えることはどうかという御提案でございますけれども、表現でございますから、いろいろな方法もあろうかと思いますが、現在のところはこういう表現を選択をしたということでございます。
#39
○寺田熊雄君 これはさらに考えさしていただくことにします。
 それから、改正法の百四十四条のただし書き、これは後でお尋ねをする奈良地方裁判所の裁判官が奈良の弁護士会から総スカンを食ったという問題があるけれども、確かにやたらに和解を勧める裁判官、答弁書が出ないうちから和解を勧めたなんて、そんなことも日弁連の新聞には書いてある。そういう裁判官がおりますと、証人調べ、あるいは検証などを行っても、どうせ和解になるんだということで、このただし書きを適用して調書をつくらない。この間、民事局長の御説明では、いやそれは調書というのはもう大体すぐつくるんです、大体口頭弁論期日というのは、あるいは証拠調べ期日というのは二カ月ないし三ケ月先になるから、その間に調書はできておりますと、こういうお答えがあった。
 しかし、われわれが下の方から裁判官を見上げる、あるいは書記官の事務を見る。そういう場合に、中には和解がこれはできるということでサボるやつはないだろうか。調書を作成せずに放置する、そういう誘惑に駆られるおそれ、そういうずぼらな書記官というようなものの事務の懈怠、これを必ずしも否定できないんじゃないだろうか。この間、中島局長のお話では、いや、それは代理人がどうしても調書をつくってくれということを言えばつくりますというお話だった。しかし、すべての代理人が先を見て、また書記官の嫌がるのを調書をつくれということを注文を出すかどうか、そういう点のわれわれは懸念があるわけですね。
 だから、この調書を省略し得る場合は、当該の証人調べが行われた日あるいは検証が行われた日ないしその直後に和解あるいは訴えの取り下げが行われた場合に限るというふうにしてはもらえないかというのが私の希望でありお尋ねであるわけだけれども、これはどうでしょう。
#40
○政府委員(中島一郎君) 前回も申し上げたかと思いますけれども、通常の場合は、一カ月置き、あるいは二カ月置きに次回期日が決められるわけでありますから、訴訟完結の場合にまだつくられていない調書というのは、これは直近の期日の調書に限られるというのが普通であろうかと思うわけでありますが、例外的な場合といたしまして、集中審理を行う、連続して審理を行うというような場合などもあるわけでありますから、その場合には、直近の期日の調書だけに限るというのは狭過ぎるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#41
○寺田熊雄君 その証人の、あるいは事件の集中審理が行われた場合は、またそれで規定の仕方が別にできるんじゃないだろうかと私は考えたからお尋ねしたわけで、さらにまた、この問題ではいまお話ししたようないろんな点の疑問があるので、後日に譲りたい。もう時間がないので、まだ二、三質問を残しておきます。
 奈良地裁の仲江利政裁判官、これは会議録を調べてみると衆議院でもやはり質問があったようであります。私も日弁連新聞を見てびっくりした、こういう裁判官がまたあらわれたかと。この間、実は東京地裁の裁判官の問題でお尋ねをして最高裁のお答えをいただいたんだけれども、またしてもこういう非常識な裁判官があるということが報道せられておる。非常に驚いたんですが、これは恐らく最高裁もすでに衆議院で質問がなされておるので事情を御調査になったと思うけれども、私はこの日弁連新聞の記事で一番遺憾に思ったのは、単にいきなり和解を勧告するとか、証人の尋問時間を不当に制限するとか、あるいは期日について強引な決め方をするとか、そういう問題よりもさらにびっくりしたのは、判決原本に加筆訂正を行った疑いがきわめて濃い。つまり判決を、すでに正本を当事者に送達しちゃったその後で判決を直しちゃった、こういうことであります。
 これは更正決定をすればいいので、何も恥でも何でもない。われわれは誤り多きものでありますから、誤りがあることは当然だからもう更正決定をすればいい。何でこそこそと後で判決を直したりするか。この根性、こういう根性を持った裁判官ではこれはもう裁判官の名に値しない。私はそれを遺憾に思っておる。だから、この事実を調査して、これが真実であるというのであれば、当然最高裁は、これをほうっておいてはいかぬのですよ、これは。こういう事実があったのかどうか、その点をまずお伺いしたい。
#42
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいまお尋ねの仲江利政裁判官につきましては、寺田委員からもただいま御指摘がございましたように、訴訟指揮上のいろいろの問題についての要望というものが弁護士会から出ております。その中に、その問題とは別に、いま御指摘になりましたような判決原本を判決言い渡し後に訂正したのではないか、訂正しておるという御指摘があったわけでございます。そういう要望書が奈良の裁判所の方へ参りましたわけでございます。
 そこで、奈良の裁判所では、早速その点を特に重点的に関係人から事情を聴取いたしまして、いろいろのことはございましたけれども、簡単に結論として申し上げますと、どうもやはり判決言い渡し後、送達が両代理人に行われた後で判決原本への訂正が行われたようでございます。
 やや詳しく申し上げますと、「被告」とあるところに名を加えたとか、それから何もないところに「各自」というふうな文言を入れた、たとえばそういうふうな訂正、加除、加筆があるということが判明したわけでございます。
 そこで、このことについての処分ということが問題になるわけでございますが、その事実が明らかになりましたので、ことしの三月十六日でございますが、大阪高等裁判所長官から仲江判事に対して、厳重書面注意というものを行ったわけでございます。
 なお、ちょっとこれは直接この問題には関係がないわけでございますけれども、仲江裁判官は四月に大阪高等裁判所の方へ配置がえということになっております。ただ、後で申し上げましたことはこの問題とは直接関係のないことではございますけれども、結果としてはそういうことになっておるということを付加して申し上げる次第でございます。
#43
○寺田熊雄君 裁判官というのは、行動も公明正大でなきゃいけないし、精神も公明正大でなきゃいけないですね。だから、こそこそと判決を直しちゃうなんというのはこれはもう言語道断で、とうていわれわれとしては考えられないんですよね。だから、その事実があったということを人事局長が率直にお認めになって、そして厳重注意という処分をしたんだと言われるならば、まあまあそれなりに私はあなた方のなさったことを評価するわけですけれども、しかしこれは厳重注意ということで精神が改まりますかな。やっぱりその心構えを根本的に変えてもらわなきゃいかぬですよ。自信がありますか。
#44
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) これはやや弁解――本人の言っておりますことをちょっと申し上げますと、これは寺田委員も御承知のことがあると思いますけれども、両代理人が同意の上で、正式に更正決定をやらないで簡単なことなら直すということが全然ないわけのものではございませんで、そこら辺に対する認識がやや不十分だったという点もないわけではないわけでございます。
 ただ、事実関係、詳細にそこら辺まで確定できないわけでございますが、要するに後で直したということ自体は間違いのないわけでございますから、この点、そういうことで仲江裁判官もいまでは大いに反省しておりまして、大阪高裁長官からも、ただ書面を渡したというだけではなくて、十分にその点についての御注意があったはずでございますので、今後はそんなことはまずないものというふうに考えておる次第でございます。
#45
○寺田熊雄君 そうありたいものですね。私どもの考えでは、優秀な裁判官ほど謙虚で他人の言うこと、他人というのは当事者である、あるいは代理人であり弁護人であると、そういう者の言うことに注意深く耳を傾ける人なんですよ。ところが、だめな人間ほど、独断的で強引で他人の言うことに耳を傾けない。裁判官も全く同様です。だから私は、よくこういう人に対して裁判所が教育をしてほしいと考える。余り個人を追及するのは私の好むところじゃないから、この程度にしておきます。
 それから、最近ナースキャップ論争というのがある。つまり、看護婦さんが仮処分の申請をする。それで看護婦さんの制服を着る。看護婦さんの帽子というかな、看護婦さんの衣装を頭にまとって法廷に出る。裁判官がその帽子を取りなさい、看護婦さんの方は、いやこれは帽子じゃありません、帽子かもしれないがわれわれのこれは一つの制服みたいなものだ、取らないと。取らなければもう裁判しないと言って裁判官が引っ込んじゃった。困ってしまって、裁判してもらえなければ困るというので取ったと、こういうおもしろいことがある。これは過去において国会でも山口シヅエ代議士ですか、帽子をまとって議場に入ったと。けんけんごうごうたる抗議が起きて取らされたということが、過去においてあるようであります。これは坂田法務大臣におかれては非常に長い御経歴ですので、御存じのことと思いますけれどもね。
 戦前、声楽家が検察官の部屋へ行って参考人で調べられたことがあります。昔は東京区検察庁と言ったかな、いまの区検ですかね、たしか茂見検事のところだったかと思うんだけれども。それで、日本で著名な声楽家がやはりわりあいに大きなつば広の帽子をかぶって部室に入っていったところが、名前はちょっと違うかもしれませんからいまのは違うかもしれぬということで聞いていただきたいが、その帽子を取りなさいと、こう言った。いや、婦人の帽子というのはこれはアクセサリーみたいなものでこれを取ることはいけません、取りませんと、こう言った。取れ、取らぬということで論争になって、とうとう取らされてしまった。それでその声楽家は怒って、新聞で検事さんをたたいてやると言って息巻いて帰っていった。その検事が今度は食堂で、当時は石郷岡という上席検事がおったが、食堂でそれを披露した。そうしたら石郷岡検事が、ううん、それは検事局というものの性質を知らぬからだなあなんと言って注釈を加えたと。それは、われわれのかっこうの議論の的になったことが戦前ありましたけれどもね。
 エリザベス女王などは、公式の席上でもちゃんと小さな帽子をかぶっていらっしゃる。それを全然文句を言う人はいない。一体、裁判所はどういうふうにこれを考えておられるのか、検察庁はどうか、法務大臣はいかがでしょうか。これをお伺いしたいと思うのです。
#46
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 御婦人の通常の服装のアクセサリーとしてかぶっておられる帽子と、ユニホームの一部である帽子とは一緒ではなかろうと思うのであります。
 横浜に係属しております具体的事件における訴訟指揮の問題でございますし、現在、その当事者から裁判所に対して質問状が行っておるようであります。これに対して裁判所側は、まだ何らの応答もしてないようであります。そういう生きた事件のことでございますので、あの扱いがよかったのかどうかということについてのコメントは差し控えさしていただきたいと思うのでありますが、看護婦さんのユニホーム、ナースキャップを含めたユニホームというものは、外出着等の不潔から患者を保護し、また勤務が終わればすぐこれを脱ぐことによって看護婦自身を病菌から守る役割りをしていると、そういうもので、職場でつけるものだというふうに言われております。
 これが外で、あるいは法廷でどうか、社会常識的に見てどうかということの問題であろうと思います。それから先は、裁判長の訴訟指揮にかかわることでございますので、差し控えさせていただきます。
#47
○寺田熊雄君 検察庁はどうかな。
#48
○政府委員(前田宏君) 余り十分考えたことはございませんので、的確なお答えができるかどうかとも思いますけれども、女性の方が洋服の場合に帽子をかぶるという場合に、それをどう受け取るかということ。これは日本の場合とまた外国の場合とでも、いろいろと受け取り方が違うのじゃないかというふうに思うわけでございます。
 先ほど寺田委員仰せになりましたように、エリザベス女王ならエリザベス女王がやっておられるということについて別に違和感がないということであろうと思いますが、その帽子の大きさなり態様なり、いろいろと問題もあろうと思いますので、一概には言えないのじゃないかと思います。
#49
○寺田熊雄君 法務大臣、いかがですか。
#50
○国務大臣(坂田道太君) やはりこれは風俗習慣の違いがあると思うので、ヨーロッパ諸国では女の子が室内で帽子をかぶっているというのはあたりまえじゃないですか。私はそう思うのです。でございますけれども、これはその土地、その民族によってやはり服装というのは発達してきておるわけなので、何とも申し上げようはございません。特にこの問題は法廷の中でございますから、これはやっぱり法務大臣といたしましては、裁判官のおっしゃることに対してとやかくは申し上げたくない。
 しかし、一般的と申しますと、もう少しお互い同士が相手の服装、それが自分と違ったからといって、相手の国じゃどうだろうかとやっぱり考えてみることが必要じゃないかと思いますし、またヨーロッパ諸国の人が日本に来られたときには、日本の室内においてはどうなのかと。自分のところで帽子をかぶっておるのがいいからどうなのかと思ったときに、お茶室の中なんかではやっぱり帽子は取った方が日本人の気持ちとしては非常にああというふうに、むしろ尊敬の念が出てくるのじゃないかと思うので、これは一概に言えないのじゃないかというふうに思います。
 ただ、法廷内問題は、これは裁判官の秩序維持のためにありますから、いろいろあったと思います。それについては、私はコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
#51
○寺田熊雄君 何といいますか、私どもは婦人の帽子、これは婦人の装飾の一つである。婦人も思っている。また、いまやそういうふうに風俗が次第に西洋化するといいますか、近代化していく過程にあるわけで、それを尊重していいんじゃないだろうか。何か帽子をかぶったら法廷の秩序が乱れるとか、裁判官に対して失礼だとか考えることが、どちらかというと少し了見が狭いと私は考えるんだけれども、しかしこれは余りここでそう強く主張をするというわけじゃありません。十分検討していただきたいという趣旨でお尋ねをしたわけであります。
 せっかく警察の方に来ていただいたから最後に一つ、まだほかに質問がたくさんあるんだけれども、お尋ねをしたい。
 というのは、大阪においてこの十八日に、病院の精神科を退院したばかりの男に若い女性が刺身包丁でいきなり腹などを刺されて死亡した。この新聞報道によると、これは精神分裂病で入退院を繰り返しておった。しかし医師の了解を得て退院した。これはやはり精神科の医師の処置が非常に不十分というか、適切でなかったことによるんじゃないかというような感じを持ったことでありますが、真相はどうか。この辺、ちょっと警察の方にお伺いしたい。
#52
○説明員(仁平圀雄君) この被疑者が、茨木市内の精神病院に昭和四十八年十一月以降ことしの三月十六日までと、大変長い間精神分裂病で入院していたというのは先生おっしゃいましたとおりでございますが、まだ警察の捜査におきましてこの精神病院からの事情聴取は行っておらないわけでございます。しかし、すでに捜査関係事項照会書をもちまして、入院中のカルテだとか観察記録等の写しの提出は求めておるわけでございまして、近く被疑者の病状につきましては、直接担当医から事情聴取することになっておるわけでございます。
#53
○寺田熊雄君 それじゃまた次回にでもその結果をお尋ねすることになると思います。
 それから、横浜の地方裁判所を舞台にばっこしていた暴力競売の大物三人を逮捕したという新聞記事があるけれども、横浜の裁判所というのは、この間も何か暴力をふるった者が競売場で現行犯で逮捕されたという事件、これはあなたに御説明いただいたが、さらにまたこういう記事があるということ、これはなかなか病根が深いと考えられる。この真相はどうですか。
#54
○説明員(森廣英一君) 神奈川県警察が本年の四月二日に、横浜地方裁判所の競売場で発生いたしました威力を用いた競売妨害事件の犯人を現行犯として逮捕いたしました。このことは去る四月十八日の先生の御質問にございまして、私、答弁さしていただいたところでございますが、あの犯人をその後取り調べをいたしました結果、今回いま先生が御指摘のいわば事件が余罪としまして判明をいたした、こういうことでございまして、去る二十三日に犯人を逮捕したわけでございますが、一昨年、昭和五十五年の十二月五日と、それから昨年、翌五十六年の七月二十四日の二つの不動産競売の案件に関しまして違法な談合を行った、こういう事実を自供を得まして、そうして四月二十三日に当該競売案件の入札参加業者四名、これを逮捕いたしまして、さらに関係個所の捜索を実施したものでございます。
 捜査の現在の状況とか今後の進展のぐあいということにつきましては、なかなか事件内容もむずかしいものでございますし、したたかな者を取り調べをする必要もございまして詳しく申し上げるわけにはまいりませんけれども、こういった事件をきっかけにいたしまして、先生も御指摘ありますような裁判所の競売を舞台にして暗躍をしておるようなブローカーどもを徹底的に解明しようということで、現在神奈川県警では捜査本部を設置しまして、今後ともこの事件のさらに積極的な解明というのを推進していく態勢をとっておるところでございます。
#55
○寺田熊雄君 それでは、また捜査の進展に伴ってお二方に来ていただいて、さらに詳しいことをお尋ねすることにして、きょうは結構です。ありがとうございました。
 最後に一つだけお尋ねしたいのは、最近法務省で四月二十四日法務省令第二十五号の、いわゆる商法関係の営業報告書等の記載事項等に関する省令が出ましたね。これで、しばしば論ぜられた財産上の利益の無償供与の開示、このディスクロージャーの要請が果たしてこの省令によって十二分に実現されあたうのかどうか、この点ちょっと御説明をいただきたい。また詳しくは次回その他でお伺いするが、十分ディスクロージャーの要請を満たし得るかどうかという点についてだけ御説明いただいて、質問を終わりたいと思います。
#56
○政府委員(中島一郎君) いわゆる会社の無償供与の開示あるいはその監査ということにつきましては、それが会社の社会的責任を遂行する上で非常に重要な一局面であるというようなこともございますし、あるいはただいま御指摘の会社の総会屋その他のものに対する不正支出につながりやすいというような点からも、法務省令としては重要項目として考えておったわけでございます。
 今回、新しく改正ないし制定をいたしました法務省令におきましては、会社がする財産上の利益の無償供与を監査役の監査報告書の記載事項にするとともに、その監査の結果を監査役の監査報告書の記載事項とするとともに、これを附属明細書においても開示をするということにしておるわけでございます。
 附属明細書における開示はどういう方法でやるかというわけでありますが、販売費及び一般管理費の明細を書く。しかも、その記載方法は監査役の監査の参考になるように、監査役が無償供与の監査をする場合に参考になるように記載しなければならないものというふうにいたしておるわけでございます。これは会社の実情に応じまして、監査役の判断によって無償供与に関する記載をさせるという趣旨であります。無償供与について何らの触れるところがない附属明細書というものは、これは適法なものとは言えないということになるわけであります。
 規定の内容はそういうことでございますけれども、今回の商法改正はいわゆる企業の自主的監視機能の充実を目標としたというものでありまして、企業の実体が必ずしも一律でないということを考えますと、ただいま申しましたように、監査役の努力に期待して企業の自主性を尊重した措置を講ずるということが適当であるというふうに考えたわけでございます。
 なお、監査役は監査のために必要と考えればさらに進んだ開示を要求することができると、こういうことで十分この開示の目的を達することができるというふうに私どもとしては期待しておるわけでございます。
#57
○小平芳平君 今回の民事訴訟法の改正で法務省に伺います。また、大臣も御都合があるようですから、これにお答えになって席を立ってください。
 お伺いしたい点は、提案説明の中に「民事訴訟手続等の適正、円滑な進行を図るため」改正しようとするものというふうになっております。なっておりますが、どういう点が適正、円滑な進行を図ることになるのかどうか。具体的に、初めにどういう改正がこういう適正、円滑な進行になるのか。
 それから、国民にとってメリットになることはどういうことがあるか、裁判所の御都合がよくなるということはどういう点があるか、そういうことについてお答えいただきたいと思います。
#58
○政府委員(中島一郎君) 今回の改正の根本的な考え方と申しますと、民事訴訟理論の根本的なものには触れないで訴訟の迅速化、簡易化というものを図ってまいりたいということが主眼でございます。
 ただいまお尋ねの円滑ということになりますと、送達手続を円滑にすることによって訴訟の迅速化を図る、ただいままでは必ずしも円滑にすることのできない場合があったということにかんがみまして、送達手続の円滑化を図る、あるいは当事者や証人等の不出頭の場合に訴訟の迅速、円滑ということが妨げられますので、今回、罰金とか過料の額を引き上げて当事者とか証人の出頭を確保する、そして適正な裁判に資するというようなことが、適正ということの一つのあらわれであろうかというふうに考えております。
#59
○国務大臣(坂田道太君) ただいまの民事局長から申し上げたようなことで民事訴訟手続等の適正、円滑さを確保しようと、こういうことだと思います。
#60
○小平芳平君 国民にとっても、十分メリットがあるというふうにお考えでしょうか。
#61
○政府委員(中島一郎君) 送達が円滑にいかなくて不便を感ずるというのは、これは裁判所の方も事件が残って困る点は困るわけでありますけれども、より困るのは、その訴訟を早く進行させたいと望んでおる当事者側ということになるわけであります。でありますから、その訴訟が速やかに進行する、支障なく進行するということは、まずその当事者のために非常にメリットになるということが言えようかと思います。
#62
○小平芳平君 次に、それでは具体的に若干お尋ねしてまいりたいと思いますが、調書の省略について、現在でも簡易裁判所においては、民事訴訟法三百五十八条ノ二により省略が認められていると思いますが、その実情と、それから今回の百四十四条の改正と照らし合わせて御説明をいただきたい。
#63
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま御指摘のように、民事訴訟法の三百五十八条ノ二という条文によりまして、簡易裁判所においては調書を省略できる場合があるわけでございます。それで、統計的にこれを調べたことはございませんですが、若干庁について調査いたしましたところ、多くのところでは証人調書の省略をしている例が多いようであります。本人尋問調書よりも、証人尋問調書の省略をしているケースが多いようでございます。ただ、控訴率が高い不動産関係訴訟等では、省略はなかなかやっていないというような実情が出ております。
 簡易裁判所の調書の省略のただいま申し上げました条文と、今回の百四十四条によります調書の省略とはいささか視点、観点を異にするものであろうと私どもは考えております。百四十四条によります省略というものは、事件が裁判によらずして完結した場合に省略できる、それは調書をつくっても少なくともその事件に関する限りもはやその調書をつくる実益がないということからくる省力化の問題であります。簡易裁判所における調書の省略というのは、いろいろその他簡易裁判所の手続では簡易な手続が決めてございますが、その一環といたしまして調書を省略できるとしておるわけでありまして、事件が裁判によらず完結した場合のみならず、それ以外の場合でも省略していいということでございます。このように両者は趣旨が違うというふうに考えております。
#64
○小平芳平君 簡易裁判所の方の手続は、当事者に異議がないこと、裁判官の許可があること、この二つの要件が必要とされますか。
 それから、今回の改正ではこうした点が、当事者から記載すべき旨の要求がないとき、または裁判長の許可があったときというふうになりますか。いかがでしょうか。
#65
○政府委員(中島一郎君) おっしゃるとおりでございます。
#66
○小平芳平君 そういたしますと、簡易裁判所の方の省略の方が当事者に異議がないかどうかを確認する、その上に裁判官が許可するという手続が踏まれるのに対しまして、今回の改正は当事者が申し出なければもう省略されちゃうわけですね。省略されることが原則になるわけですね。つまり、簡易裁判所の方の手続から言えば、当事者にまず確認をしてくれるわけです。だから、当事者は要りませんとか、要りますとか言えるわけです。ところが、今回の改正では、そういう手続がないわけであって、自分から、よくその事情をのみ込んでいる人なら調書を取っといてくださいと言うこともあり得るでしょうけれども、一般的な市民が当事者になっているような場合は知らない。だから、わざわざ申し出ることがない。そうすれば、裁判長はおおむね省略してよろしい、こういうことになるんじゃないでしょうか。
#67
○政府委員(中島一郎君) 簡易裁判所の規定の方は、これはまだ事件が進行中でございます。どうなるかわかりません。証人を調べてもらいたいということで調べてもらったのだけれども、この証人は余り事情を知りませんでした、これはもう調書をつくってもらわなくて結構ですと、こういうふうに当事者が異議がない場合もございましょうし、あるいはこの証人を調べてもらった結果よくわかりました、判決はどうなってももう自分の方は控訴するつもりもありません、ですからこの証人の調書は結構ですと、こういうこともあろうかと思いますので、やはり当事者の異議の有無ということを確かめないと調書の省略はできないだろうというふうに思うわけであります。
 一方、今回の百四十四条の規定の場合は、これはもう訴訟が完結をしたわけであります。しかも、それは判決によらないで完結をした。和解なり取り下げなりということで完結をしたわけでありますから、先ほど川嵜局長も申しましたように、その事件限りで申しますならば、調書はこれは必要がないというのが原則であります。しかし、例外的に当事者が別件でその調書を証拠に使いたいとか、あるいは何かほかの理由によってこの調書だけはぜひ取っておいてもらいたいのだという場合があることが考えられるわけでありますが、その場合には当事者に申し出てもらう。そのかわり申し出があれば無条件でつくりますと、これが百四十四条の規定でありまして、私どもとしては、それぞれの制度の違いということを考えますと、こういった規定がふさわしいのではないかというふうに思うわけでございます。
#68
○小平芳平君 御趣旨はよくわかりますが、今回の改正に当たっても、当事者が申し出れば調書は残しておくということですね。ですから、要するに今回の改正が成立いたしましても、実際の運用に当たっては当事者の意見というものをもっと聞いてみるような運用が必要じゃないですか。
#69
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 実は、現在の実務におきましても、証人調べをした当該期日に和解が成立したような場合には、双方の異議がないという意見に基づきまして調書をつくらないという運用がなされております。これはもちろん根拠がないわけでありますから、当事者の同意と申しますか、異議のない旨の積極的な意思表示を求めているわけであります。
 今度この新しい法律ができました場合、裁判所といたしましても、大体は和解で終わる場合にこの規定が働く場合が多かろうと思います。取り下げというようなことで終わる場合には、実際問題としてはそれほど適用例はないのだろうと思います。和解で終わりますケースでは、双方が必ずそろっております。そろって話し合いの上、成立ということになるわけでございますから、双方、当事者本人、さらには代理人がついておられれば代理人も同席しておられるわけであります。その際、念のため、きょう調べた証人、あるいは前回調べてまだでき上がっていない証人調書を、もういいですね、どうしましょうというようなことで確かめるということは、これは自然の流れでございまして、そういう扱いになるものというふうに思っております。
#70
○小平芳平君 いま言われたような扱いになれば、私の言わんとする趣旨もそういうことであります。
 次に、就業先への送達について伺います。前回の質疑でなお疑問に思う点についてお伺いします。
 初めに、訴えを提起する前に内容証明郵便等を出したけれども返送された。だから、訴えを提起する方でこれを証拠として裁判所へ出せば、裁判所は住所、居所がわからないものとして直接就業先へ送達をするような御答弁がありました。ありましたが、争いのある相手からの郵便は受け取らなくても裁判所から来た郵便は受け取るという場合もありますので、やはりこの場合でも、送達は住所、居所へまずやるという原則は崩せないんじゃないでしょうか。
#71
○政府委員(中島一郎君) 確かに、内容証明郵便は争いのある相手方から来る書面である場合があり、そして後日送られてくる特別送達による訴状等は裁判所から来る書面であるという違いがございますので、そこのところは十分に考えなければならない点であろうかと思いますけれども、私が申し上げましたのは、内容証明郵便を送ったところが全戸不在ということで返されてきた、それが一度ならず二度も三度もあった、しかもそれから余り日もたっていないというような場合に、必ず就業先送達をするというのではございません。しかし、そういう場合には、もう一度裁判所から住居所に対する送達をしなくても住居所送達ができる場合があるということを申し上げたわけでございます。
#72
○小平芳平君 住所、居所へ出しましたけれども戻ってきましたと言って申し出ても、それをそのまま裁判所としては信用して、じゃ勤め先はというふうになる場合ですね、局長がいま説明するような場合もあるけれども、そうでない場合もあるわけです。私が説明したのは、そうでない場合の方を説明したんですがね。
#73
○政府委員(中島一郎君) その内容証明郵便の返ってき方でありますけれども、一定の住所に対して送った、ところがそのあて先には、すでに本人は転居しておって転居先は不明であると。これは当事者が言うのではございませんで、郵便集配人が言うわけであります。そう記録もついておるわけでありますから、これは信用してもいいだろうと思います。しかし、そのときは転居先不明であったのが、現在不明かということになりますと、それはそうでない場合もありましょうから、いろいろと事情を聞くことになろうと思います。たとえば、住民票は移っているのか、移っている先はどこなのか、あるいは戸籍の附票の記載は調べてみたかとか、あるいは近所でいろいろ事情を聞いてみたかとか、いろいろ確かめることになると思います。
 その場合に、住民票の記載によれば現在の住所は不明である、転居先を住民登録しないでどこか姿をくらましてしまったとか、あるいは戸籍の附票にもそういう記載がない。近隣の人はこういう説明をしておって、ある日、夜逃げ同然にどこか行ってしまったとかいうようなそういう証明書がいろいろとそろって出てまいりました場合には、これは住居所が不明であるという資料になり得るのではないかということを申し上げているわけでございます。
#74
○小平芳平君 いろいろ調査してみてということで了解いたします。
 次に、先ほど寺田先生からも御質問がありましたが、刑事訴訟規則の場合、原則的には就職先の送達は除くといたしますけれども、本人が承諾した場合は勤務先に送達するというふうに先ほども御答弁がありました。しかし、刑事手続の場合は、勤務先に送られるということは、たとえ本人が承諾したとはいっても、本人の将来を考えれば決してプラスにはならないじゃないか。はっきり言って、刑事事件の場合は勤務先へは送ってもらいたくないというのが実際の大部分の考えであり、そういう場合が大部分じゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
 それからもう一点は、この法律の施行期日を十月一日からとしてありますが、その間に刑事訴訟規則のような、準用され、あるいは適用される法令の整理がつけられて施行できるのかどうかという点について伺います。
#75
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 前回も申し上げましたとおり、ただいま私ども刑事局におきまして、就業先送達の一部は準用しないというふうに除く規則をつくる作業を進めておる最中でございます。一部除かないで準用するということになるわけでありまして、この場合、被告人が同意している場合はあえて除かなくてもいいだろう、就業先場所へ送達していいのじゃないかと、こういう考え方でございます。これは本人の意思を十分確認しなければならない。それはどういう方法で確認するか、そのあたりも十分検討をしたいということで作業を進めておる最中であります。
 なお、刑事手続における送達は略式命令の送達が圧倒的に多いわけでございます。略式命令は年間二百万件以上ございます。これの送達ということでありまして、中身は交通違反というようなことになろうかと思いますが、それがどの程度のプライバシーに関連するかということも大量的に見れば考えなければならない問題だというふうに思っております。
 なお、この新しい改正法案の施行期日に、もちろんただいま申し上げました刑事訴訟規則は間に合うように、同一期目に施行できるように作業をする予定であります。
#76
○小平芳平君 当然間に合うでしょうけれども、そのほかにどういうものがありますか。
#77
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 少年審判事件につきましても、刑事手続と同じようにこれを除外する規則をつくらなければならないということになっておりまして、その関連の規則もあわせてつくるということになります。
#78
○小平芳平君 次に、送達は送達を受けるべき本人に対する直接交付ということが原則だろうと思いますが、勤務先を加えますと、前回も政府側から御説明がありましたように、直接本人に渡すということがむしろ例外になって、大企業なら文書係とか事務員とか雇い人とか、そういう間接的に渡すのが原則になりはしないか。前回の御説明から言うと、むしろ間接の方が多くなる、そういうことを承知の上で改正なさるわけですか。
#79
○政府委員(中島一郎君) 決して本人に対して直接交付するということでなくてもいいというわけではございません。就業場所に参りまして、だれだれさんあての書類を受け取ってもらいたいということでありますから、その送達者をそこに呼んでもらいましてそして本人に交付するというのが原則でございます。ただ、その本人が就業場所から外出をしておるとかというようなことで本人に交付することができない場合ということになりますと、それは補充送達という方法もあると、こういう趣旨でございます。
#80
○小平芳平君 そうしますと、郵便を届けに行った人が就業中の本人を呼び出して、来てもらって渡してこいということですか。
#81
○政府委員(中島一郎君) 百七十一条でありますが、「送達ヲ受クベキ者ニ出会ハザル場合ニ於テ」と、こうありますので、留守その他で出会うことができないということが補充送達の要件でございます。
#82
○小平芳平君 もちろんそうなっておりますけれども、実際問題として、郵便配達に行った者が就業中の人を、本人を呼び出してそこで手渡してくる、またそうしなければならないというふうに決められますか。
#83
○政府委員(中島一郎君) いろんなケースがあろうかと思うわけでありますが、一番典型的な例は、私先ほど申しましたように、外出中であるというような場合であろうかと思います。あるいは非常に重要な仕事に従事をしておりまして手が離せないというような場合にどうなるかとか、具体的な場合についてはいろんなケースが考えられると思いますけれども、やはり私は規定の本来の趣旨としては本人交付が原則であって、本人に出会うことができない場合に補充送達が許されるということを基本に考えるべきであろうと思います。
#84
○小平芳平君 押し問答になりますからやめますけれども、実際問題新しく、古くても同じですが、勤めている人が、ちょうど郵便を配達に行ったとき、そこにいるとは限らないわけですね。それは外出している場合もあれば、工場で働いている場合もある。ですから、そういう働いている人を、仕事の途中ですけれども、呼び出してきて渡さなきゃいけないか、そういうふうに決めるのですかということをお尋ねしたんです。
#85
○政府委員(中島一郎君) 実際の運用といたしましては、集配人としては受付のようなところに参りまして、本人をそこに電話などで呼んでもらうと、大きなところではそういう扱いになるのではないかと思います。
 ただ、その場合に、非常に重要な外科手術をやっておってその場所を離れた場合に患者の生命にも影響するというような場合にまで呼び出して渡すのかどうかということになりますれば、それは具体的な場合の運用、待っていて渡せるものなら待っていて渡してもらいたいけれども、その具体的な事実関係において、出会わないときという規定の解釈として、許される限りにおいては補充送達も許されると、こういうことであろうかと思います。
#86
○小平芳平君 それから百六十九条の二、前回もお伺いしたわけですが、また寺田先生からもこの文章が云々という先ほど御質問がありましたが、「前項ニ定ムル場所が知レザルトキ」、これはだれが知れないということですか。それから「送達ヲ為スニ付支障アルトキ」、これはだれの支障か。それから「申述」は、これはわかります。ですから、場所が知れないときという場合と、支障あるときというのは、だれのことを言っているかということをお尋ねします。
#87
○政府委員(中島一郎君) まず最初に「知レザルトキ」ということでありますが、これは最初は住居所を書いてくるだろうと思います。住居所に送達をいたしますが、先ほども申しましたように、その住居所にはすでに居住していない、転居をしたけれども転居先は不明であるということで書類が返ってまいります。そうなりますと、いろいろと書記官が調査をするわけでありますが、資料を提供するのはこれは当事者であります。昔は警察その他に対して裁判所から調査嘱託をして、受送達者の住所を調査してもらっていたというようなこともあったわけでありますが、現在はそれはやっておりません。したがいまして、当事者がいろいろと自分で調査をいたしまして資料を提供する。そのいろいろな資料を総合的に判断をして、書記官が住居所が知れないと言えるかどうか、あるいはもっと調査の余地があるかどうかということを考えるわけであります。
 その次に「支障アルトキ」でありますが、この「支障アルトキ」の典型的な例といたしましては、前回も申し上げましたけれども、住居所などにおいて送達を試みましたけれども、受送達者及び代理受領資格のある者が不在であるということで効を奏さなかったという場合が典型的な場合であろうと思います。この場合におきましては、受取人不在ということを理由に還付されてまいるわけでありますから、裁判所書記官としては、まず通常の送達方法によっては受取人不在で送達ができないケースじゃないかということを考えるわけであります。
 そこで、休日送達なり、あるいは夜間送達というものを執行官によってすることができるかどうかということを考えるわけでありますが、それはそれぞれの実情に応じまして、速やかにそれが期待できる場合もありますし、期待できない場合もあるわけでありますが、それが期待できない場合には、次に就業場所がわかっているかどうか、わかっておれば就業場所に対する送達をするかどうかということを考えるということになるわけでありますが、まず当事者がそういうことを申し出てくるであろうというふうに思います。
 書記官の方は、就業場所があるのかないのか、就業場所がわかっているかどうかということはわからないわけでありますから、住居所あての書類が送達できずに返ってきましたよということを当事者に知らせて、当事者の申し出を待つわけであります。それで、当事者がもう一度住居所あてに送達をしてくださいと、こう言いますか、あるいは夜間送達なり休日送達をしてくださいと、こう言いますか、あるいはそれじゃ就業場所に対する送達をやってくださいと、こう言いますか、それによってどの方法をとるかということを書記官が判断するわけでございます。
#88
○小平芳平君 休日、夜間の執行官による送達はほとんど可能性はないというような説明がありましたですね。ますますそういう可能性がなくなるというふうに考えていらっしゃるんですか。
#89
○政府委員(中島一郎君) ずいぶん昔には、現在の執行官と類似の仕事をしております者はいわゆる執達吏という名称で呼ばれておったわけでありまして、これはいわゆる執行の執という字と送達の達という字と吏員の吏という字を書きまして執達吏と、こう呼んでおったわけでありまして、当時のいわゆる執達吏の仕事の内容は、執行と送達というものが、割合ははっきりは申せませんけれども、ほぼ似たような比重を占めておったのではないかというふうに思うわけであります。
 それが執行吏と改められ、さらには現在、執行官というふうに改められてきた経過を考えてみますと、先ほど川嵜局長も申し上げましたように、執行官というものの仕事の純化と申しましょうか、地位の向上というふうに申し上げていいのかと思いますけれども、そういった傾向にありまして、執行に重点を置いてきたということが申し上げられると思うわけでありまして、これもいわゆる臨時代行者がおるところとおらないところもありましょうし、あるいは執行官の仕事の繁閑によりまして、送達についてそれを処理できる余力がある場合とない場合もありましょうし、一概には言えないわけでありますけれども、傾向としては、次第に執行に重点を置いて送達は郵便送達を原則とするというふうな方向にあるということは事実であろうかと思います。
#90
○小平芳平君 よく御説明はわかりました。したがって、この「送達ヲ為スニ付支障アルトキ」というこの表現が、このままじゃわからないですね、いまおっしゃったことが。もう少し、そういうおっしゃった意味がわかるようにならないですか。
#91
○政府委員(中島一郎君) こういった表現につきましても、法制審議会その他でいろいろと衆知を集めて御審議をいただいた結果、またそれを条文にする上で、私どもが法制局と協議をした結果、こういうふうに落ちついたわけでありまして、私どもとしては、ただいまも申しましたような規定の実質を表現するのにふさわしい規定であろうかと思っておるわけでございます。
#92
○小平芳平君 「場所が知レザルトキ」は、受ける本人の住所、居所が知れないときで、はっきりしています。「支障アルトキ」というその「支障」が、だれのどんな支障かということが、説明するといまのように長くなって、確かにそういう場合は支障があるということになるんでしょうが、だれの支障かわからないじゃないですか。
#93
○政府委員(中島一郎君) これはすべての事情を総合的に判断するということになるわけでありまして、たとえば次回期日の呼び出し状でありますれば、次回期日の呼び出し状が届くにふさわしい期間、余裕を置いて届かなければならないわけでありますから、待っておってそれが間に合わなくなるということでは、これは大いに支障があるということになるわけであります。あるいは少しぐらい待っておっても十分余裕があるということであれば、執行官の都合によっては待っておってもよろしいということでありますから、これは全く具体的な事情事情に応じて、すべての事情を勘案して判断をするということになろうかと思います。
#94
○小平芳平君 同じことの繰り返しになりますからやめますが、それなら、すべての事情を勘案して支障あるときとでもしておかないと、このまま読んだのじゃわからないじゃないですかね。
 それから次に、証人の呼び出しにも就業先へ送達されることがあるわけですか。
#95
○政府委員(中島一郎君) あり得るわけでございます。
#96
○小平芳平君 その場合、正当の理由なく不出頭の場合、二百七十七条と二百七十七条ノ二におきまして、訴訟費用の負担、十万円以下の過料、それからまた十万円以下の罰金または拘留に処されるというふうにありますが、これは二重に罰則がかかる場合もあるわけですか。二重にかかるのでしょうか、一方だけなんでしょうか。
#97
○政府委員(中島一郎君) 二百七十七条の不出頭に対する過料の規定でございますが、これはいわゆる民事罰とか、あるいは秩序罰とかいうふうに呼ばれておるわけでありまして、その受訴裁判所における内部の手続で過料を科することができるということでございます。二百七十七条ノ二の罰金は、これはいわゆる刑罰でありまして、裁判所が自分でこの刑罰を科することはできませんので、捜査機関に告発をしまして、起訴をされた後、別の裁判所で罰金刑を受けるという制度になっておるわけであります。
 したがいまして、通常の場合といたしましては、まず不出頭の場合には、二百七十七条で訴訟費用の負担を命ずる、あるいは過料に処すということを試みるのではないかと思います。そういう手段をとりましてもなおその非常に重要な証人が出頭をしない、あるいは逃亡してしまったというような場合には、この二百七十七条ノ二によって刑罰を求める、こういうことになるのではないかと思います。
#98
○小平芳平君 時間が来ましたのできょうはこれで終わりにしますが、いまの問題をお聞きした趣旨は、そのように正当の理由なくして出頭しないと重大な問題が起きるわけでありますから、そこで、この正当な理由とは何かということが大変重要な問題になります。
 それで、就業先に送られた送達、この場合、たとえば事務員が渡すのを忘れたとか、あるいはいろんなケースがあると思いますが、そういう場合の正当な理由は、どういうことが正当な理由というふうにお考えでしょうか。
#99
○政府委員(中島一郎君) ただいまおっしゃいましたように、呼び出し状が現実の問題として届かなかった、自分は裁判所から出頭を命ぜられておるということを知らなかったという場合は、これはもうまさに、正当な理由でしたですか、のある典型的な例である。たとえ呼び出し状が届いておりましても、病気のために出頭できなかったとか、あるいはその他それに準ずるような場合で、いわゆる正当な理由があるということが考えられるわけでありまして、それは送達ができた上で出頭しなければそれに対して過料にするとか、あるいは罰金のための告発をするという場合には、別途、正当な理由の有無を証人本人に確かめるわけでありますから、これは、送達手続が住居所あてにされたか就業場所においてされたかということとは関係のないことであろうというふうに思います。
#100
○小平芳平君 終わります。
#101
○委員長(鈴木一弘君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
#102
○委員長(鈴木一弘君) 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は去る二十二日の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#103
○小平芳平君 今回の改正は条約がもとになっているということでありますが、一九五七年の条約にかわって新たに条約を制定するに至った経緯とか背景について御説明をいただきたい。
#104
○説明員(佐藤裕美君) この船舶所有者の責任につきましては、各国とも伝統的にいろいろとその責任制限の制度を採用してきたわけでございますけれども、その方式はいろいろございまして、統一の必要性があるという認識が持たれたわけでございます。
  〔委員長退席、理事平井卓志君着席〕
そして、古くは大正十三年、ブラッセルにおきまして海上航行船舶の所有者の責任の制限に関するある規則の統一のための国際条約、いわゆる一九二四年条約というものがございましたけれども、この条約は若干複雑な面があったりいたしまして余り締約国はなかったわけでございます。しかし、第二次大戦後に至りまして再びこのような統一のための機運が生じまして、より合理的な条約というものを作成しなければならないということになったわけでございます。そして一九五七年、昭和三十二年でございますけれども、ブラッセルにおきまして海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約というものができたわけでございます。
 この一九五七年条約というのは、かねてから責任制限の方式として最も合理的であろうと言われてきておりました金額責任主義というものを基礎とした条約でございます。そのような金額責任主義を採用した点等もありまして、その後、多くの国がこの条約に入りまして、締約国の数は現在三十四カ国となっております。
 それで、わが国もこの条約に一九七六年、昭和五十一年にこれを批准いたしまして締約国となったわけでございますけれども、その一九五七年条約ができましてから十数年もたちましたために、インフレ等の進行が非常にはなはだしいものがありましたので、その責任制限の限度額というものを引き上げる必要があるという認識が出てきたわけでございます。そして、ロンドンにございます政府間海事協議機関、IMCOと申しますが、ここにおきましてIMCOの法律委員会を中心といたしまして検討が重ねられてまいりまして、昭和五十一年、IMCO主催の国際会議がロンドンで開かれましたわけですが、このときもちろんわが国も参加いたしましたのですけれども、四十四カ国の国が参加して、この七六年の条約というものが十一月に採択されて作成されたわけでございます。
 以上が国際的な背景と存じます。
#105
○小平芳平君 政府の説明としましては、世界の多数の諸国が責任制限の条約に加盟し、また責任制限をしているということでありますが、リベリア、ギリシャ、パナマ、ソ連、アメリカ、イタリアというふうな国が加盟しておりませんが、こういうのはどういう事情なんでしょうか。
#106
○説明員(佐藤裕美君) 一九七六年の条約には、実はリベリアは加盟しております。
 それから、そのほかの国でございますけれども、アメリカにつきましては国内法上、船主責任制限制度に関しまして、アメリカの場合、船価責任主義と金額責任主義とを併用いたしておりまして、このような事情から一九五七年条約につきましてもアメリカは入っていないわけでございます。
 そのときのアメリカの説明によりますと、一九五七年条約の採用する金額責任主義、これはトン数を基準にいたしまして責任限度額を定める方式でございますけれども、これでは同じトン数であっても船の価値、船価の低い中古船もありますし、それから船価の高い非常に優秀な船もある。こういう事情にもかかわらず、船価を考慮しないでトン数によってのみ責任限度額を算出するということになりますとこれは不公平ではなかろうかというような理由を挙げまして、アメリカはこの条約に入っておりません。
 それから、一九七六年条約につきましても、この条約が金額責任主義ということを先ほど御説明いたしましたけれども、その方式をとっておりますこともあるいは理由かと思いますが、アメリカはこの条約にはまだいまのところ締約国とはなっていない次第でございます。
 それで、アメリカの国内制度の詳細等につきましてはあるいは法務省の方から御説明があるかと思いますが、そのほかの諸国の国内的な制度の詳細につきましては、法務省の方からまとめて御説明があるかと思います。
#107
○政府委員(中島一郎君) 私の方も、それぞれの外国の国内法につきましては詳細を承知しておるというわけではございません。
 ただ、アメリカにつきましては、ただいま外務省の係官の御説明もありましたように、金額責任主義の中でも特に船価制限主義と申しましょうか、船価をもとにした限度額を算出するという方法をとっておるということを承知しておるわけでございます。
 それから、リベリアあるいはパナマについてお尋ねがあったわけでありますが、これらの両国につきましても基本的には船価主義、すなわち船舶及びその附属物運送に関する債権等の価格を限度として責任を負うという主義をとっておるということでございます。
#108
○小平芳平君 要するに、リベリアは新条約に加入をしましたが、アメリカ、ソ連、ギリシャ等は加入の見込みがないのでしょうか。簡単で結構です。
#109
○説明員(佐藤裕美君) 現在までのところ、この七六年条約への加入のための準備を進めている国といたしましては北欧四カ国、それからヨーロッパのそのほかの若干の国、合計九カ国、それからさらにチュニジアとかブラジルとかインドネシア等が条約締結のための準備を進めていると、こういうふうに聞いておりますが、現在までのところ、ソ連ないしアメリカが具体的にこの条約に加盟するための手続の準備を進めているというふうには承知いたしておりません。
#110
○小平芳平君 改正法の施行日は「公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日」となっておりますが、したがっていまの外務省の説明のように、準備している国があるから、そういうふうに五七年条約の破棄が効力を生ずる日とか、あるいは新条約が日本国について効力を生ずる日とか、そういうことは十分考慮した上で「二年を超えない範囲」というふうにしてあるのでしょうね。
  〔理事平井卓志君退席、委員長着席〕
#111
○政府委員(中島一郎君) 現在の法律は一九五七年の船主責任条約に準拠しておるわけでありますが、この条約を廃棄するためには、ただいまおっしゃいましたように一年前にベルギー政府に通告をすることが必要であるということになっております。したがいまして、この新しい法律の成立後直ちに廃棄の通告を行ったといたしましても、少なくとも一年間は新しい法律を施行することはできないということになります。また、一九七六年の条約は、十二カ国が批准または加入してから約一年後に発効するということになっておるわけでありますが、現在すでに批准し、または加入した国というのは五カ国でありまして、十二カ国が批准する、あるいは加入するのは来年の初めごろというふうに見込まれておるわけであります。
 そこで、これらの状況を踏まえて法律を実施するという必要がございますので、公布の日から起算して二年以内という政令で定める日を施行日としたわけでございます。
#112
○小平芳平君 それで、五七年条約を廃棄した場合に、わが国の船舶と、五七年条約には加入をしているが新条約には加入していない国の船舶とが衝突事故を起こしたような場合の責任制限はどうなるか。要するに、五七年条約をわが国は破棄いたしますから、わが国の船と五七年条約にそのまま入っている国の船とが衝突をしたというような場合の責任制限はどうなるか。それがわが国の領海内の場合、相手国の領海内の場合、それから公海の場合というふうに分けて御説明いただきたい。
#113
○政府委員(中島一郎君) わが国は一九五七年条約を廃棄して今度の改正法がすでに施行になっておるということを前提にして申し上げたいと思いますが、その場合は、わが国の領海内で衝突その他海難事故が起こりました場合には、これはわが国の法律が適用になる。わが国の裁判所でこの責任制限が問題になった場合には、これはわが国の裁判所が扱って、しかも適用するのはわが国のこの改正法であるということになります。それから非締約国について、その領海内で起こりましてその国で制限手続を問題にするという場合には、その国の法律が適用になるということになろうかと思います。
 問題は、公海で事故が起こったという場合でありますが、まずその場合には、どちらの国に裁判権があるのかということが問題になるだろうと思います。いわゆる国際民事訴訟法の問題でありますので、国内法と違いまして確立をした考え方というのは実は固まっておらないわけであります。ただ、日本の船が被告になる場合、これは日本の国が裁判権を持つということは疑いがなかろうと思います。相手の船が被告になるとき、これはかなり問題でありますけれども、この場合も日本の国の裁判権というものを肯定していいのじゃないかというふうに私どもは考えております。
 どの国の法律を適用するのかということにつきましてもこれも大変むずかしい問題でありまして、具体的にそういうことが問題になった例というのもございませんので、はっきりした考え方が固まっておるわけではないわけでありますけれども、いわゆる準拠法ということになりますと、法廷地法でありますとか、あるいは加害船の旗国法あるいは被害船の旗国法、あるいはその両方の法律が重畳的に重ねて適用になるといういろいろな考え方があるわけでありますけれども、多くの場合は日本法が適用されるというふうに考えていいのじゃないかと思うわけであります。
#114
○小平芳平君 このいただいた資料を見ますと、海難事故の件数に比較して責任制限事件数が少ないように思いますが、その原因について御説明いただきたい。
 また逆に、委付主義の時代における委付の件数に比較すると責任制限事件数の方がかなりふえておりますが、その原因について御説明いただきたい。
#115
○政府委員(中島一郎君) まず、この事件数の比較でありますけれども、海難事故が起こりましても必ずしも責任制限の問題が起こるというわけではございませんで、まず責任問題が起こるということが必要でありますが、海難事故のうちには責任問題すらも起こらないという場合があるわけであります。いわゆる自傷行為と申しましょうか、みずからのミスによって船舶その他についての損害をみずからこうむったという場合につきましては、これはそもそも責任問題が起こらないわけであります。次に、責任問題が起こったといたしまして、制限し得る債権の額がいわゆる責任限度額以内であります場合には、これまた責任制限の問題は起こらないわけでありまして、責任制限の限度内において損害額が全額支払われるということになるわけであります。
 問題になりますのは、責任制限し得る実損の額が責任限度額を超える場合でありますが、そういうケースは非常に少ない。したがって、制限申し立ての件数が非常に少ないということになるわけであります。また、仮に実損額が責任制限の額をオーバーするという場合におきましては、これは限度額がわかっておりますので、それを基準にして当事者が話し合いで解決をするという場合もあるわけでありまして、責任制限の申し立てをするまでに至らないというケースがまた多くあるわけでございます。
 それから、委付主義の時代との比較をおっしゃいましたが、委付主義というのは、これは日本の以前の制度でありますと、海産、船体とそれから運送賃等を相手方に投げ出して、そしてそれを限度として責任を免れるという制度でありますが、船体その他が無傷のまま残っております場合には、これはかなりの価値がありますので、船舶所有者等としてはその船体を投げ出すよりも、金銭その他によって損害賠償をして解決をするということであったでありましょうし、あるいは船体が沈没その他によって滅失してしまったという場合には、これを投げ出してこの責任を免れるということは実際問題としてできないことでありますから、これまた金銭その他によって別途解決をするということであったろうと思うわけでありまして、委付主義というものが、実際問題として現実には作用しておらなかったということの一つの証左であろうかというふうに思っております。
#116
○小平芳平君 今回、新たに責任制限主体として救助者が追加されておりますが、これについて御説明をいただきたい。
 それで、たとえば転覆している船を海上保安庁などが港へ曳航してくる途中で沈没したとか、そうなった場合にはどうなるかというふうな具体例で御説明をいただきたいと思います。
#117
○政府委員(中島一郎君) まず、救助者が責任制限主体として加えられた理由でございますけれども、現行法におきましても、救助者は救助船舶の所有者等またはその被用者等に当たる場合であれば、船舶所有者等または船長等として責任を制限することができたわけでありますが、船舶を用いないで救助をする場合には、責任制限をすることができなかったということであります。
 具体的な例を挙げて申しますと、船舶を使って救助をしておりまして事故を起こして被救助船に損害を与えた、その他損害を与えたという場合には、これは責任制限ができるわけでありますが、たとえばヘリコプターを使って救助しておった場合には、それによって損害を与えた場合には、これは責任制限をすることができなかったと、条約の規定によってそういうことになっておったわけであります。そのバランスを是正する必要があるということがあったわけであります。あるいは救助者に責任制限を認めませんと、救助活動を円滑に行うことの妨げになるおそれがあったということがあるわけであります。
 実際にこの有名な事件があったわけでありまして、昭和四十年にクウェートの沖で起きました東城丸事件というのがございます。この事件は、東城丸という日本の船が事故を起こしまして、この破口部といいますから、被損して口をあけた部分があったわけであります。そこへ修理作業としてサルベージ会社が救助に行ったわけでありますが、救助の必要上、船外の海中からこの東城丸にガンでボルトを打ち込んだと。そのボルトの打ち込みが原因となりまして爆発事故が起こりまして、東城丸の船体被害を生じたと、こういう事件であります。
 船舶の運航によって救助方法として損害を与えたというのであれば責任制限ができたのでありますが、海中から打ち込んだガンのために事故が起こったということで責任制限ができなかった。それがイギリスの最高裁判所に当たります貴族院まで争われたのでありますけれども、サルベージ会社の責任制限を認めなかった。そこで、このような救助者にも責任制限を認める方が妥当であるという有力な主張が起こるきっかけになりまして、今度の一九七六年の条約に取り入れられたということであります。
 具体的な場合はどうかということでありますが、ただいまおっしゃいました曳航その他救助に関する一切の場合が含まれるわけでありますが、それが船舶所有者によってなされる場合には、これは従来からも責任制限ができたわけで、今回つけ加わりましたいわゆる救助者ということになりますと、先ほど申し上げましたように、あるいはヘリコプターで救助しておったところが、そのヘリコプターが墜落をしてほかの方に被害を与えたとか、あるいは漁業をやっておったほかの方に被害を与えたとか、漁網を切ったとか、いろいろな場合が考えられるわけであります。
#118
○小平芳平君 その責任制限が船舶にだけ認められる、その責任を制限されるというたてまえでいまいろいろなことを伺ってきているんですが、大体は船舶にだけそういう制限措置がとられるということは、外国とのつり合いを考えればそういうことも言えるのでしょうが、日本国内だけで考えた場合どういうことになりますか。
#119
○政府委員(中島一郎君) 最初に、先ほどの答弁に補充させていただきますが、お尋ねは海上保安庁の船が曳航するということでありましたが、それは公務として救助をするという場合でありますので、これは責任制限主体としては除かれます。公務以外のものが公務以外として救助する場合に、責任制限が認められるということでございます。
 それから、国内についてのお尋ねということになりますと、たとえば自動車の場合とか、その他汽車の場合とかというようなそういうほかの交通機関についてはどうかと、こういう御趣旨かと思いますけれども、これはやはり船舶と申しましょうか、海上企業の特殊性ということから来ておるのじゃなかろうかと思います。理由としてはいろいろ考えられるわけでありますけれども、大きくは古くから各国において認められているという沿革的な理由が一つございます。
 それから、海上企業が多額の資本を投下した船舶の運航であるという非常に危険性の大きい企業であるということがございます。したがいまして、一たん事故が発生をいたしますと巨額の損害が生ずる。そこで、企業の採算性でありますとか、あるいは保険への責任転嫁の限界を超えることになるということになるわけであります。このような海上企業の適正な運営と発展を図るためには、責任制限制度というものが必要であるということになるわけであります。
 さらには、海運業の国際性ということから考えて、わが国だけが船主責任制限を認めないということは困難であるというような実質的な理由も挙げることができようかと思うわけであります。ただ、これはあくまでもいわゆる国際的な面に重点があるわけでありますから、他の締約国に全くの関係のない部分については、これは国内で自由に決めることができるということになっておるわけでありまして、現に今回の改正法におきましても、内航船につきましては、内航船が自分の船舶に乗船をさせておる旅客に損害を与えました場合には、これは責任制限することができない、無制限の損害賠償義務を負うということになっておるわけでございます。
#120
○小平芳平君 あとはまた次の機会に質問したいと思いますが、先ほどの公務は除くわけですね。したがって、船で曳航してくる場合には船会社が責任制限されるけれども、海上保安庁が任務があるから救助に向かわなくちゃいけないし、かといって損害が生じた場合は制限なしに無制限に賠償するというような点が、そういう慣行でずっと長年来ているからそれでいいんだというわけでしょうか。
#121
○政府委員(中島一郎君) そもそも責任制限主体の問題として船舶ということが問題になるわけでありますが、その場合に、この法律において船舶とは公用船を除くということになっておるわけであります。それとのバランスを考えまして、公務として救助が行われた場合には、それは責任制限の問題は起こらないということにしておるわけでございます。その場合は、国が全額の責任を負うということでございます。
 先ほど申しましたように、責任制限制度というものは海上企業の安定的な発展に資するということもこの制度の一つの目的でありますが、公用船あるいは公務として救助が行われるという場合は、多くの場合、海上企業の安定的な発展というための考慮は必要でない場合ということになりますので、そういう意味から申しましてもこの制度を適用する必要がない一場面であろう、あるいは被害者の保護を厚くするということから申しましても、そういった場合は除くということに合理的な理由があると思うわけでございます。
#122
○小平芳平君 終わります。
#123
○山中郁子君 今回の法改正は幾つかの点があるわけですけれども、内容的に見ますと責任制限の範囲の問題ですね。それから制限金額の引き上げの問題、それらの適否という問題になると思います。それで、初めに私は責任制限の範囲の問題、つまり法第三条第三項の関連になりますけれども、その問題を中心にお伺いをしたいと思っております。
 この法案が、先ほど来から御説明もありました一九七六年十一月にロンドンで開かれたIMCO主催の会議で採択された海事債権についての責任の制限に関する条約に加入しようということで、それに伴って提案されているものだと理解しておりますけれども、この問題点を考えるに当たって、ごく初歩的な考え方をちょっとただしたいんですけれども、要するに船舶所有者等の責任を制限する必要がどこにあるのか、それはどういう根拠でそれが必要だとされるのか。この点はいろいろ議論されてきた経過があるというふうに承ってもおりますし、事実そうなわけですけれども、要するに海運企業を保護する必要があるというところに一つのポイントがあるという理解は成り立つと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
#124
○政府委員(中島一郎君) ただいま御指摘のように、いわゆる海運業と申しましょうか、海上企業の特殊性ということから申しまして、その安定的な発展というものに資するということが、この制度の一つのねらいと申しましょうか、目的として各国が古くからこの制度を採用してきた理由の一つであろうというふうに思います。
#125
○山中郁子君 日本の場合は主要海運国ということ、そういう地位を占めていると一般的に言われておりますけれども、だからこの条約に加入もする、そしてそれに伴って国内法も改正する、それによって日本における海運企業の保護に努める、こういうところがポイントであると関連して理解をしてよろしいですか。
#126
○政府委員(中島一郎君) この制度の認められる理由、存在理由ということにつきましては、先ほども申し上げましたようにいろんなことが考えられるわけでありまして、先ほど申しませんでした点は、若干細かくなりますけれども、たとえば船長の代理権限が大きいというようなこともあります。
 それから、一たん航海に出てしまうと、船長や乗組員に対する船舶所有者の指揮監督が困難である。あるいは船長とか船員とかは資格といいましょうか、免状と申しましょうか、技量が公証されておるというようなこともございます。あるいは、わが国の法律によりますと、船舶所有者の責任として民法所定の使用者責任よりももっと重い、一面において無過失責任に近いような責任を認めておるということでありますから、そういった点を考慮して、責任制限制度がなければ船舶所有者に酷ではないかというような考慮もあるわけであります。
 そういった点をひっくるめて考えますれば、やはり海上企業の特殊性ということが存在理由の大きな柱になっておるだろうというふうに思うわけでございます。
#127
○山中郁子君 第三条の今度の改正、三項の新設の問題がいまのこの法案自体の持つ海運企業の保護という点とも絡んで、私はやはり問題があるという認識をせざるを得ないんですけれども、まず一九七六年十一月のIMCOの会議で、この会議に出席された日本政府の代表者はどういう方たちであったのか、どういう役職の方であったのか、現在どういうところで職業その他に当たっておられるのかを教えていただきたい。
#128
○説明員(稲葉威雄君) 私ども、まだその当時の方々の後までフォローしておりませんけれども、主として運輸省、外務省から御出席になられたというふうに考えております。法務省からは当時の加藤民事局第二課長が出席いたしまして、この方はすでに退官されて弁護士をされております。谷川成績大学教授が海事法の関係の会議についてはこれはずっと出ておられまして、この方も当時出ておられたわけでございます。それから後は、運輸省の当時の係官が何人か出ておるというふうに当然記憶しておりますけれども、しかしその方々がいまどういう役職についておるかということまでは、私どもちょっと現在の時点でははっきり判明しておりません。
#129
○山中郁子君 私は、ちょっと外務省においでいただかなかったんですけれども、外務省に伺ったところ、当時のイギリスの日本大使館の公使であった橘さんという方と、運輸省の海運局の参事官であった柳さんという方が代表としてお出になっていらっしゃるということでございました。それから、オブザーバーとして当時の日本郵船企画部調査役であった藤代和雄さんという方が出ていらしたということでございましたが、この点は御確認をいただけますか。
#130
○説明員(稲葉威雄君) 私どもはっきり記憶しておりませんけれども、外務省からのそういうお話でございましたら、間違いなかろうというふうに思っております。
 それから、藤代さんは多分出ておられたというふうに記憶しております。
#131
○山中郁子君 日本郵船の業界代表がオブザーバーとして政府代表団で出ていらしているということの中にも、その企業保護という問題について今度の改正との絡みでの問題点があるというふうに私たちは考えるのですけれども、特にその後、いわゆる日本船主協会の月報、船協月報というのがありますけれども、この中に藤代さんも含めて業界の方たちが、これらの条約それから国内法の改正の問題などについていろいろ話をされていらっしゃる。
 たとえば、これは船協月報の一九七七年の二月号ですけれども、座談会をやっていらっしゃる。この中で、いま申し上げました日本郵船の藤代さんが、「要は特殊な危険にさらされる海を活動の舞台とする海運企業を保護するところに一つのポイントがあり、そうすることによって適正妥当な運賃水準を維持し、通商貿易を発展させる、という大きな目的をもった保護の規定といってよいでしょう。」と、こう述べていらっしゃるわけで、かなりはっきりしているわけです。
 そこで、第三条の関係で改正される中身について伺いたいのですけれども、条約の第四条の「責任の制限を妨げる行為」というところでは、「責任を負う者は、損失を生じさせる意図をもつて又は無謀にかつ損失の生ずるおそれのあることを認識して行った自己の作為又は不作為により当該損失の生じたことが証明された場合には、自己の責任を制限することができない。」と。この第四条、これが今回の法改正の第三条第三項の条文、「船舶所有者等若しくは救助者又は被用者等は、前二項の債権が、自己の故意により、又は損害の発生のおそれがあることを認識しながらした自己の無謀な行為によって生じた損害に関するものであるときは、前二項の規定にかかわらず、その責任を制限することができない。」というところに照合するものだと理解いたしますけれども、同じ意味であるということでよろしゅうございますか。
#132
○政府委員(中島一郎君) そのとおりでございます。
#133
○山中郁子君 この第三条三項の「損害の発生の「おそれがあることを認識しながらした自己の無謀な行為によって生じた損害」という表現ですね、なかなかややこしい表現なのですけれども、これは結局故意という表現とほぼ同じだと、ないしは故意に近いものであるというふうに理解をするのが妥当なのでしょうかね。
#134
○政府委員(中島一郎君) 故意というのは、この条約で申しますと「損失を生じさせる意図をもつて」というところにございますので、これは意欲的と申しましょうか、その意欲があるということであろうかと思います。それに対しましてこの「無謀な行為」というのは、これは故意はございませんで、やはり内容は過失であろうと思うわけであります。
 ただ、その過失の中でも単純な過失ではなくて、「損害の発生のおそれがあることを認識」をしておるということが必要でありましょうし、その行為が無謀なものであるということが必要であるということにおきまして、私どもが言っておりますいわゆる認識ある過失というものに近いのではないか、あるいは認識ある重過失というものに近いのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#135
○山中郁子君 現行は「故意又は過失」となっているわけですね、所有者等の場合は。「故意又は過失」、それが「故意により、又は」ということで、いま何回も申し上げますが、「損害の発生のおそれがあることを認識しながらした自己の無謀な行為によって生じた損害しと、こう置きかえられるわけですね、過失があったと。そうすると、これは過失の程度というか、重過失という当然そういう中身も入るけれども、それはやはり大変故意に近いというか、そういう重過失であるという理解にならざるを得ないと思うんです。
 それで、これは中島局長も衆議院の法務委員会での太田委員の質問に対しましてこういうふうに答弁されていらっしゃる。「結果の発生を認容しておればこれは故意ということになるわけでありますが、結果の発生を認容していないという意味で故意ではないわけでありますけれども、非常に故意に近づいていった過失」と、こうおっしゃっているわけですね。だから、置きかえている中身が、性格というのは、やはり単に過失といった範囲はかなり広いわけですね。だけれども、それはもう大変故意に近づいていっている、限りなく故意に近づいていっている過失というふうに大変狭められてくるものであるという理解が成り立つと思って、これを読んだ上で認識しているんですけれども、それはそういうことになりますね。
#136
○政府委員(中島一郎君) われわれのなじんでおります責任概念といたしましては、故意、過失と、そして故意の中に確定的な故意と未必の故意、それは過失の中に認識のある過失と認識のない過失とでも申しましょうか、そういうものがあるというふうに考えておるわけでありまして、その未必の故意と認識ある過失とは境を接しておるというふうにいま言われておりますし、われわれもそういうふうに考えております。
 そういう意味におきましては、この「損害の発生のおそれのあることを認識しながらした自己の無謀な行為」というのは、われわれのなじんでまいりました責任概念のどこに当てはめられるかというと、若干異質なものでありますけれども、先ほど申しましたように、強いて言えば認識ある過失、しかも認識ある重過失ということになるわけであります。それは、故意に境を接しておる過失の故意に境を接しておる部分であるということは申し上げられるかというふうに思うわけでございます。
#137
○山中郁子君 限りなく近く境を接している。私は問題にしているのは、結局そういうことによってうんと船主の責任が制限される範囲が広がるということを言いたいわけです。
 それはまた追い追い言いますけれども、要するに、当初日本政府は重過失という表現をするように主張されたということですね。しかし、これがいまこの法案に出されているように、「損害の発生のおそれのある」云々という表現になった。これは結局重過失という表現よりも中身がより具体的であると同時に、故意に近い表現だというふうに理解しておりますけれども、そしてそのことが船主協会などでは、こういうふうになったということが、つまり重過失ではなくてこういう表現になったということは歓迎をしている。船主協会の月報でのいろいろな企業の方たちの発言などを読ましていただくと、そういう受けとめ方がされていると思いますけれども、その点は理解は一致するでしょうか。
#138
○政府委員(中島一郎君) この点は私どもとしても、わが国としては重過失ということを主張したけれども、こういう表現になったということを承知しておるわけであります。
 それの評価でありますけれども、これは船舶所有者そのものに、現行法で申しますと故意、過失があった場合、新しい法律で申しますと、故意または無謀な行為があった場合、こういうことになるわけでありまして、理論的にこの表現を形式的に両者比較いたしますと、確かに責任制限できる場合が広がった。したがって、責任制限のできない場面が少なくなったと、こういうことになるわけでありますけれども、従来から船主そのものの、船舶所有者等の故意、過失が問題になって責任制限することができなかったケースというのはこれはないわけであります。現実の問題としてはないわけであります。
 ということは、この責任制限事件というのは、いずれも船舶所有者等の過失ではなくて、その被用者である船長あるいはその他の船員の過失、たとえば操船ミスでありますとか、そういった船長その他の者の過失によって船舶所有者が責任を負う、その責任を制限する、こういう事件がすべてでありまして、したがいまして船舶所有者は無過失であるという事件ばかりであったということになるわけであります。
 したがいまして、こういうふうに規定が改正されることによりましても、実際問題としてはそこに影響はない。一面、今回の改正は責任限度額を非常に引き上げるわけでありまして、船舶のトン数の測定方法も変わって約二割アップするというようなことも含めますと、あるいは船客、旅客の損害についての別枠を設けたというようなことを考えますと、この被害者保護という面においては非常に大きな改善であるというふうに考えるわけであります。それと込みにして考えますと、この条約四条、したがって法三条三項の改正というものは、これは十分がまんのできる改正であるというのが私どもの評価でございます。
#139
○山中郁子君 そこのところを、私はやっぱりもう一つ解明しなきゃいけないと思っているんです。というのは、もしいま局長がおっしゃるようなことだとすれば、業界の対応というのはもう一つ不思議だと思うんです。
 先ほども御紹介しましたけれども、船協月報ですね、これは一九七六年の十二月号ですが、こういうふうに言っているんですね。「もし第四条中の」、これは条約の第四条ですね。「カッコ内の文言が付加されると”gross negligence”」、これは重過失ですね。「”gross negligence”の解釈を巡って再び運送人の故意又は過失の解釈をめぐる紛争と同様の紛争を生ぜしめるおそれが多分にあり、現行条約の文言に対する前記改善の実はこれにより大幅に失われることになると考えられる。当協会としては、以上の理由により」、もっとほかにも理由を述べておられますけれども、「以上の理由により第四条の文言中、括孤内の文言を削除し、それ以外の文言を原案通り採用することを強く希望する。しと、こういうふうに主張されています。
 それから、同じく船協月報のこれは七七年の二月号ですけれども、この中に、先ほどもちょっと藤代さんの発言として御紹介いたしましたが、その中でもその他の方々、業界の方たちも述べておられますが、一様に重過失でなく条約が決まったということについて歓迎されて、「結果的には、業界の考え方が世界の大勢と同じだったということです。」こう言っておられますね。
 それから、飯野さんという上野運輸商会の方、業界の方ですけれども、飯野さんという方が、「五十七年条約に比較すると、やはり新条約は今後、われわれが制度として実際に取り組むうえでやりやすいものになるんじゃないかと思う。批准の促進、国内法の整備という問題について、受入体制だけは、なるべく早い時期にご尽力いただきたい」、こういうふうにおっしゃっておられます。
 それで、ですから船長の方の範囲もこういうふうに変わっているんだと。要するに、いまの局長の御答弁とそれから衆議院でお答えされていることも含めてちょっと理解をいたしますと、一つは、船舶所有者の責任制限の範囲は確かに拡大した。しかし、一方では船長等の責任を制限できない範囲が拡大したということが一つある。
 それからもう一つは、船舶所有者等が自分の過失によって責任を負う場合というのは従来から余りなかったんだ。だから、この点での影響は、船主、オーナーの責任制限の範囲が拡大しても実際には余り影響はないんだと、こうおっしゃっている。反面、船長等の責任制限できない範囲が拡大されたということは実際上の影響が出てくる、こういうところだと、おっしゃっていることを整理すると。だから、がまんのならない法案ではないし、一方で責任制限金額が引き上げられるのだから被害者等に大変歓迎されるであろう、こういう評価だということのように理解いたしますけれども、それはそういうふうに取りまとめた形で理解してよろしいですか。
#140
○政府委員(中島一郎君) おおむね私はそういう趣旨で申し上げたわけでありますが、もう一つ補充して申し上げたいと思いますが、一つは、認識しながらした無謀な行為というもの、いわゆる重過失というものと、私どもは実際問題、具体的な事実を認定し、それにこの規定を当てはめるという意味においては、同じようなことになるのではないかということを考えております。というのは、重過失には確かに認識しながらということがつけ加わらないわけでありますけれども、重過失という以上は、これは結果の発生を認識しておるというのが、これが実際の形ではないかというふうに思うことが一つございます。
 それから、無謀な行為であるかどうかということを判断するのは、実際問題としてこれは日本の裁判所がやるわけでありますから、日本の裁判所といたしましては、グロスネグリジェンスというのが括孤内から省かれましても省かれませんでも、この無謀な行為というものの解釈として、重過失というものとそう違ったものを考えるはずはないということは私ども一つ考えるわけでございます。
 それから、責任限度額を引き上げることについて、やっぱり各国いろいろと御異論があったわけでありますから、それを引き上げるについては、一方では責任限度額を引き上げるかわりに、簡単なことではこの責任制限制度というものが破られないようにしたいという御希望はあったのだろうというふうに思うわけでありまして、そういう意味では、この責任制限できない場合の要件というものがなるべく厳格である方が望ましいということになるわけでありますから、表現としては過失あるいは重過失というよりも、認識しながらした無謀な行為という方が好ましいということがあったのじゃないかと思います。
 特に、ただいま御紹介になりましたその発言をしておられます業界の方というのは、業界を一応代表して会議に出られたという方でありますから、自分たちの活躍によってこういう条約になったということを強調するという立場もおありになったのじゃないか。だから、そういう点も割り引きして読んでいただきたいというふうに思うわけであります。
#141
○山中郁子君 それが一番大事なところなので、割り引きはちょっとなかなかできかねるんでして、やっぱり真意を酌み取らなくちゃいけないのですけれどもね。
 さっき御紹介しましたように、このグロスネグリジェンスは困るということを主張しているのは、「海事債権についての責任の制限に関する国際条約案に対する日本船主協会の意見」、そういうこととして公表されているものです。それで、その中で、故意または過失でその意味で争われるのがいろいろある、大変だ。したがって、さっき申し上げましたように、グロスネグリジェンスをとったということについて、今回の法案のような表現になったということについて歓迎しているわけですね。だから、局長の言われるように、どっちでも大したことないんだ、変わらないんだ。逆に業界の立場から言えば、そういうことでオーナーの責任制限の範囲がどうにも変わらないとか、かえってそういう被害者の利益になるような面があるということならば、何で業界が、船主たちがそういうことを言うのかということだって腑に落ちない話であって、そういう点から言っても割り引きして見るなどということはできないし、国が船主協会の立場に立って割り引きして物を考えたりするようなことは厳に慎んでいただかなければならないことでないかと私は思っております。
 これはまたもう一つ、そこでこれを解明していけばいいんですけれども、その前提としてお伺いしますけれども、オーナー、船主に故意または無謀な行為がなくて、船長や乗組員の故意または無謀な行為によって海難事故が起こった、そういうケースは現行法が施行されてから以降どのくらいあるのか、これをちょっとお示しいただきたい。
#142
○政府委員(中島一郎君) そういった数字につきましては、私どもの方はもちろんでありますが、統計はないのじゃないかと思いますので、ちょっと明らかにすることはできません。
#143
○山中郁子君 そういう統計がないということも私は理解に苦しむんですが、それはひとつぜひ運輸省などに、法務省としても、こういう法案関連のデータでございますから、お問い合わせいただくなり何なりしてほしいと思います。実は、私も運輸省にも伺ったんですけれども、にわかには出ないと、こういうお話なんですよ。そうすると、さっき局長がおっしゃったのは、こういうケースが実際過去に現実にどのくらいあるのか、それがどういうふうに処理されてきたのかということの上に立脚しなければ成り立たない論法、論旨なんですよ、もし仮に局長の言われたことに理があるとしても。それじゃ、実際そうだからこうだということでなければならないはずなんですね。私は、そういう点でも、こうしたデータはぜひ法務省としても運輸省に、全然出ないわけでもないらしいんですけれども、すぐには出ないというようなお話でしたので、法務省からもデータを整備していただくようにお願いをしておきたいと思うんです。
 いずれにいたしましても、そうすると、局長がおっしゃっているオーナーの場合、それから船長の場合、これはそれぞれ違うのだから、今回は反対になるわけだから、それによって結果が、船主の責任が軽減されるということではないという御主張ですね。これは、やっぱりもう一つどうしてもそのまま承るわけにいかない論理的な問題も含んでおりますので、きょうは与えられた時間が終わりに近づいておりますので、この点の詰めは次の機会にしたいと思っておりますが、御発言があれば承っておきます。
#144
○政府委員(中島一郎君) 一言だけ申し上げますけれども、現行法で申しますと、船舶所有者に故意、過失がある場合には、船舶所有者は自分の責任を制限することができないということであります。船長等に故意、過失がありましても、船舶所有者みずからに故意、過失がなければ自分の責任は制限することができるわけであります。
 次に、船長等が自分の責任を制限することができるかどうかということになりますと、現行法では、船長に故意がある場合に限って船長は自分の責任を制限することはできないことになるわけです。改正法では、船長に故意または無謀な行為があった場合には、船長はみずからの責任を制限することができないということになるわけであります。
#145
○山中郁子君 それも含めて次回にあれしますけれども、最後にお伺いしたいのは、いまの船舶所有者には故意または無謀な行為がなくて、それから船長や乗組員にそういう行為があって海難事故が起こったという場合は、被害者に対して損害賠償の責任を負うのはだれになるのか、この点をちょっと最後に伺っておきます。
#146
○政府委員(中島一郎君) 船舶所有者に故意もない、過失もないという場合でございますが、その場合、船長等に故意、過失があれば、まず船舶所有者は商法の六百九十条によって責任を負うことになります。その責任を制限できるかどうかということになりますと、これは船舶所有者は自分には故意、過失はないわけでありますから、これは一定の限度に責任制限をすることができるということになります。
 今度は、船長その他の船員でありますが、自分に故意、過失がある場合には、これはもちろん責任を負うことになります。しかし、責任制限をすることができる場合があるわけでありますが、故意または無謀な行為があった場合には、自分の責任は制限することができないということになるわけであります。でありますから、船長なり船員としては、これは自分の責任でありますから、それが責任制限することのできない場合がふえたことになります。いまは故意があればできなかったわけでありますが、今後は故意もしくは無謀な行為があれば責任制限することができないということになります。
 でありますから、自分の責任問題でありますから、これは行動は慎重になるのじゃないか。したがって、どちらに有利な改正かということになれば、これは被害者側に有利な、事故がそもそも起こりにくくなるという意味において、プラスの面のある改正ではないかということを申し上げたわけであります。
#147
○山中郁子君 あとは次回に譲ります。
#148
○委員長(鈴木一弘君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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