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#1
第096回国会 法務委員会 第15号
昭和五十七年八月五日(木曜日)
   午前十時二十五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 八月四日
    辞任         補欠選任
     岩本 政光君     世耕 政隆君
     関口 恵造君     安井  謙君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鈴木 一弘君
    理 事
                平井 卓志君
                円山 雅也君
                寺田 熊雄君
                小平 芳平君
    委 員
                臼井 莊一君
                戸塚 進也君
                増岡 康治君
                真鍋 賢二君
                八木 一郎君
                和田 静夫君
                山中 郁子君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  坂田 道太君
   政府委員
       法務大臣官房長  筧  榮一君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  千種 秀夫君
       法務省刑事局長  前田  宏君
       法務省入国管理
       局長       大鷹  弘君
       外務省アジア局
       長        木内 昭胤君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   梅田 晴亮君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   大西 勝也君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   原田 直郎君
       最高裁判所事務
       総局民事局長兼
       最高裁判所事務
       総局行政局長   川嵜 義徳君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   小野 幹雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       警察庁刑事局捜
       査第一課長    仁平 圀雄君
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    森廣 英一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨四日、岩本政光君及び関口恵造君が委員を辞任され、その補欠として世耕政隆君及び安井謙君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(鈴木一弘君) 裁判所法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は去る七月二十九日の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○寺田熊雄君 最初に、裁判所で行われます不動産競売、動産競売もそれは現実にはございますけれども、主として不動産競売の問題でありますが、これにしばしば暴力団の介入があるということがマスコミをにぎわしております。
 私も、この間ある事件の依頼を受けまして直接関係者から聞いたのでありますけれども、これは東京都下のある裁判所の競売で、くりからもんもんがたくさん押しかけてきて、その競売が行われなかったという実例があったようであります。そして、そのくりからもんもんを動員したと目される人間を呼びまして実情を聞いてみますと、その男が申しますのは、すべての競売ブローカーに言うことを聞かせる大ボスがおりまして、その大ボスに頼めばおよそできないことはないんですと。大ボスが一定の金を依頼者から取りますね、そして競売ブローカーの重立った者に金をつかませる、そういうことによって支配を確実なものとしておるということを断言するわけですね。
 そのことが真実かどうか私自身も半信半疑なのでありますけれども、しかし、その男が確信を持って私どもに語るわけですね。これは裁判所におかれても実情をよく御調査になる必要がありますし、そういうことについては従来警察当局もかなりよく捜査権を発動して捜査をしておられるようでありますが、そこで冒頭にこの問題についての従来の捜査経過、これは警察当局の捜査経過、それから検察庁もすでに起訴なさっておられる事件もあるようでありますが、最近におけるものだけで結構ですから、どこの裁判所でどういうものをどういう罪名で起訴しておるというような点、それから最高裁の方ではそういう点についてのもし調査の結果がございましたならば、そういうものについてまず御説明をいただきたいと思います。
#5
○説明員(森廣英一君) お尋ねの横浜地方裁判所、東京地方裁判所におきますところの談合事件の捜査の状況でございますが、先般四月二十七日の当委員会で犯人を三名逮捕したところまで御報告申し上げたと思いますけれども、その後捜査を進めまして、神奈川県警察では暴力団員を含む競売ブローカー全部で八名を逮捕しておりまして、この八名の者が競売物件五件につきまして、談合金総額として八百万円を動かしまして不正な入札を行っておった、こういう事案を解明をいたしております。
 さらに、いまお話にもございましたように、事件は東京地裁における談合事件にも波及をいたしまして、東京地裁関係におきましても四名の被疑者を検挙いたしておりますが、東京地裁関係では談合金の総額は九百万円という額が動いておる、こういう事案を解明をいたして検察庁に送致をいたしたところでございます。
#6
○政府委員(前田宏君) 横浜地裁と東京地裁におきます競売入札妨害事件につきましては、ただいま警察庁の方から概略の御説明があったわけでございますが、検察庁におきましては、警察からそれぞれ送致を受けました事件を捜査をいたしまして、結局のところ、合計八名の被疑者につきまして、一名は略式請求でございますが、あとは公判請求をいたしております。そのほかに、嫌疑不十分で不起訴にした者が一名あるということでございまして、公判請求した者につきましては、現在横浜の裁判所に係属中と、こういうことに相なっております。
#7
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 私ども把握しております暴力団の競売介入の事例はかなりございます。ただいま正確な数字、手持ちの資料がございませんので申し上げられないのでございますが、毎年数件ずつは少なくと一も発生しているという実情でございます。最近では、横浜、宇都宮、足利支部等においてその事例があったようでございます。
 私ども非常にこれは残念なことでございまして、裁判所としてとり得る措置はできる限りとるように努力しております。新しい民事執行法による期間入札制度も本年じゅうにはかなりの庁でこれを実施するという体制になっております。そのように努力をしつつある実情でございます。
#8
○寺田熊雄君 これは、実際競売を主宰する執行官、あるいは関係する書記官などが一番よくわかると思うんですね。ですから、その執行官なり書記官からよく裁判所が事情を聴取なさって、彼らがもう何もかも率直にすべてを上司にぶちまけるという、そういうことで十分御調査を願いたいと思います。そうしていらっしゃるのですか。もししてなかったら、これから鋭意そういうふうにお進めいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#9
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 確かに、不動産売却を主宰いたします執行官はその売却場へ出入りする業者の顔をよく知っておるわけでありまして、どういう人が業者であるかブローカーであるかということは執行官は十分承知していると思います。東京地裁などでも、大体執行部の裁判長が執行官からそういうような実情を聴取しているようであります。
 ただ、そういう悪質なブローカー等がわかりましても、その競売場において何らかの妨害行為をしない限りは、これを退場せしめたり競売に参加させないという措置がとれないわけであります。裁判所の外でいろいろな談合をやったり何かしているといたしましても、これがわからない。そういうようなことで、裁判所としても先ほど申しましたようにとり得る措置はできるだけとるようにしておるわけでありますが、手の届かないことがあるわけであります。
 したがいまして、そのような面も含めまして、捜査当局の適正な捜査権の行使によってその暗躍を防止するというようなことも裁判所としては期待したいというのが実情でございます。
#10
○寺田熊雄君 確かに、水面下の動きというやつはなかなか把握できないかもしれないが、また彼らの何といいますか、大胆不敵な行動というのは目につくこともあるんじゃないでしょうかね。だから、たとえば民事局長は、この間の東京地方裁判所八王子支部の、くりからもんもんがたくさんわっと押しかけて競売ができなかったようなことも報告を受けておられますか。受けておられるならばいいが、受けておられないとすると、そこにやはり現場の状況に対する把握というか、そこのパイプが詰まっておる。下の方が事の重要性に気づいておらない、だから上に報告しないということがあるわけですね。
 ただ、そういう点、もうちょっと心を細やかにしてやってもらいたいことと、それから警察の方もできるだけ水面下の動きをキャッチして裁判所の方に知らせて、両者の御協力によって競売が適正に行われるように努力してもらいたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
#11
○説明員(森廣英一君) ただいまお話のありましたように、事案は非常に重要であると存じますので、今後ともこの種事案に視察の目を行き届かせまして、競争入札の公正を害する者を排除するように努めてまいりたいと存じます。
#12
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま御指摘の八王子の件は、私ども実は承知しておらなかったのであります。おっしゃるとおり、現場の状況を克明に私どもの方で把握することが何よりもまず第一に必要だろうと思います。できる限り、きめ細かい配慮をしていきたいというふうに思います。
#13
○寺田熊雄君 大体それで結構です。
 それからもう一つ、裁判所をめぐる暴力事件というようなものも、これは裁判の適正な運用というものを非常に妨害をいたします。私どもも実際上とんでもない人間からやはりねらわれて困ったことがありますし、法廷の中で証人が威迫を受けるのを身をもって守ったようなこともあるのです、数はそうないですけれども。ですから、裁判所構内における暴行事件、いつか韓国人が書記官を狙撃したなんというのもありましたけれども、そういう事例について現時点である程度の調査ができておれば、警察当局それから最高裁判所当局、御両所でもし調査が多少でもできておりましたら、ちょっと御説明いただきたいと思います。
#14
○説明員(森廣英一君) 十分なお答えにならないと思いますが、裁判所構内の事件を取りまとめるような報告なり統計なりの制度をとっておりませんので、大変不十分なお答えしかできないと思いますが、最近報告のありました顕著なものだけかいつまんで一、二申し上げます。
 五十四年の五月十九日に、いまお話があったと思いますが、東京地方裁判所の第四庁舎前の中庭で、結婚をめぐるトラブルから、手製のもりとか散弾銃を発射して傷害を負わせた殺人未遂事件というのが発生しております。それから五十六年九月三日には、大阪高等裁判所におきまして、民事訴訟の被告に対しまして暴力団員が暴行を加えて一週間の傷害を与えた事件というのが発生しておるようでございます。また、五十六年十月三十日には、仙台地方裁判所の石巻支部におきまして、競売の執行に絡みまして暴力団員らが入札参加者を脅迫して競売を妨害した事件、このようなものが発生しておると掌握しておりますが、いま申し上げましたように、漏れなく落ちなく事件の報告をとっているわけではございませんので、十分な報告ができないという点をおわび申し上げます。
#15
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) ただいまの法廷あるいは裁判所構内における事件につきまして、件数あるいは具体的事例についてただいま資料を持ち合わせておりませんが、法廷内におきましてこういう事件が発生しました場合には、当然法廷等の秩序維持に関する法律によりまして裁判所がしかるべき制裁を加えるということはもとよりでございますが、それを含めまして、それ以外の構内につきましても捜査当局と十分連絡をとりまして、あるいは御協力を申し上げまして、しかるべき措置をとっていただくというようにしているところでございます。
#16
○寺田熊雄君 それでは、これはこれからも最高裁、警察あるいは検察庁というようなお立場の方方が事の重大性を十分御認識の上で、よく適切な調査をしておいていただいて、私どもにその資料を御提供願いたいと思います。きょうはもう警察庁の課長さん結構です。
 簡易裁判所の事物管轄を拡大するという問題、これは過去においてもしばしば最高裁判所、法務省、日弁連の間で意見の対立を来した問題なのでありますが、今回は非常に法務省の方がうまくやられたと言っては何ですが、日弁連と十分協議をなさって、その点のトラブルは全くなかったようで大変結構なことでありましたけれども、簡裁の使命というのが、できるだけ素人の裁判官、しかも人生経験が豊富な円熟した方々を裁判官として、そして迅速に事件を裁いていく、そういうふうな最初理想を持って出発したようでありますけれども、しかし、いまの刑事裁判はそれで賄えるようでありますけれども、民事裁判に至ってはなかなかそういう素人ではもう裁き切れない実情にあります。
 ですから、実際事件を担当して裁判所に出入りする弁護士としましては、これはもうとてもだめだ、できればやはり簡易裁判所判事も有資格者をもって充ててほしいという、そこに願望が生まれるわけであります。当初の理想とそういう現実的な要請とをどういうふうにこれを満たしていったらいいのか、調和さしていくべきか、われわれも非常に苦しむわけでありますけれども、最高裁としてはどういうふうにお考えでしょうかね。また、一方の理想と片一方の要求とをどういうふうに調和していったらいいというふうにお考えでしょうかね。その点、ちょっとまずお伺いしたいと思うんですが。
#17
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 簡易裁判所は、御承知のとおり少額軽微な事件を簡易迅速に処理するという役割りを持っておる。それでは、果たしてその少額軽微な事件とは何かということで、その定め方が訴額ということになっておるわけでございます。そういう定め方になっておりますために、現行法のもとで三十万円以下といいましても、簡単な金銭請求の三十万円以下もあれば、三十万円の訴額を有する不動産事件でこれが非常にむずかしいという事件もあるわけでございます。
 これらの事件を簡易裁判所判事が適切に処理していくというためには、前者の簡単な金銭訴訟の処理については問題はないと思いますけれども、不動産訴訟の処理につきましては従前から問題の提起があったわけであります。一番代表的な訴訟形式が、土地の境界確定訴訟等であります。このような事件を、果たして簡裁で処理させておいていいのかという問題がいろんな方面から提起されております。今回の三者協議の場におきましても、そのことはかなり強く弁護士会方面から言われておったわけであります。確かに考えてみますと、訴額で画一的に簡裁の守備範囲を決めるというのは、やや荒いところも否定できないわけであります。今回の改正法案は、その点をきめ細かに不動産訴訟に特例を設けたということに相なっておるわけであります。このような制度になりますと、簡裁では少額事件を簡易迅速に処理していくという本来の機能が十分発揮できることになるだろうというふうに思われます。
 そうすると、そういう事件を担当する裁判官は果たしてどういう人であるべきかということになってくるわけでありますが、これは本来、法が予定しております現在の簡裁判事の資格を有する人、これで十分賄っていけるのではないか、一応そういうふうに考えるわけでございます。
#18
○寺田熊雄君 非常に裁判がむずかしい事件というのは、不動産に関する事件というのはいわばその象徴的なものであって、それだけではないですわね。民事事件はすべて困難だと言っていいくらいで、少額軽微の事件といえどもなかなかむずかしい事件があるんですが、それと実際問題にぶつかってみますと、率直に申しますと有資格者の若い裁判官の方が、何といいますか、裁判官的な良心というようなものがかなり鋭く裁判に出てくる。円熟した下からたたき上げられた方は、それなりのよさはたくさん持っていらっしゃるんだけれども、どうも強いものに、長いものに巻かれろといいますか、だから警察から逮捕状の請求があったら、何でもかんでもみんな出しちゃう、そこを吟味するというようなことが全くない。だから、警察の方はとかく簡易裁判所に持っていってしまう、地方裁判所の方には持っていかないという傾向がやっぱりありますね。
 ですから、そういうような点で、弁護士仲間では、やっぱり有資格者が欲しいというようなことを言う。勾留状の請求に対しての却下をする事件などを見ていても、もちろん簡易裁判所の円熟した方々にもそういうことがありますし、無罪の裁判をすることもあるけれども、どちらかというと、有資格者の若い鋭い裁判官的良心を持っていらっしゃる方の方がそういう処置に出られることが多いと、こういうふうに思いますね。
 あなた方としてはやっぱりあれですか、簡易裁判所の裁判官は特別任用の方で足りる、有資格者を充てる必要はないと、こういうふうに思われますか。有資格者もできるだけ簡易裁判所に置いた方がいいと、そういうふうに思われますか。その辺のお考えはどうでしょう。
#19
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 先ほど来お話が出ておりますように、簡易裁判所というところは少額軽微な事件を迅速に処理するというのが簡易裁判所の目的でございますので、裁判官として要求される資質というものを、地方裁判所、家庭裁判所、それから高等裁判所等の裁判官の場合と簡易裁判所の裁判官の場合とを比べてみますと、そこにそれぞれの裁判所の目的と申しますか、特徴からくる相違というものがやはりあるであろうというふうにまず考えるわけでございます。
 したがいまして、まず簡易裁判所の裁判官としては、地方裁判所等の裁判官のように、厳格な意味での資格者、それからそういう意味での法律知識というものは、それほどはなくてもいいのではないかというふうに思うわけでございます。とは申しましても、やはり簡易裁判所もいわゆる司法機関の一つでございますから、全然法律知識がないというのでは困るわけでございまして、ただ、そうは申しましても、ある程度の法律的な素養があれば、それ以外の人格、識見、徳望等のある方がむしろいいのではないかというふうにも一方考えられるわけでございます。
 そういうようなところから、裁判所法ができましたときに、簡易裁判所につきましては、有資格者につきましては、いわゆる判事補が三年たてば簡易裁判所判事の資格がある。それ以外に特則を設けまして、いわゆる特任簡易裁判所判事というものを認めたのであろうというふうに思うわけでございます。そういう意味で、法のたてまえからしてもそうでございますけれども、言ってみれば有資格者でなけりゃいかぬというふうには思わないわけでございます。
 ところが、いま寺田委員がおっしゃいますように、それでは全部有資格者以外の特任ばかりでいいのかというふうなお尋ねといたしますと、これは例の臨時司法制度調査会の意見もございます。それから、この前の裁判所法の改正のときにも、衆議院の法務委員会での附帯決議というものもございまして、われわれといたしましてはそういうことは頭に置いて運用しているわけでございまして、そういう意味では、全部が全部ではございませんが、ごく一部にそういう有資格者をもまじえた、そういう意味での混合した形というのがいまの簡易裁判所のあり方としては望ましいのではないか、一応のお答えとしてはそういうことになるのではないかと思います。
#20
○寺田熊雄君 大体、あなたの一部はまぜるとおっしゃる有資格者というのは、全国の簡易裁判所の判事の中でどのぐらいまじっていますか。
#21
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 簡裁判事の数、時期によっていろいろございますけれども、およそ七百五十くらいというふうに考えまして、そのうちの四分の一ぐらいがいわゆる有資格の裁判官でございまして、それ以外、残りの四分の三ぐらいがいわゆる特任簡裁判事というふうに御理解いただければよろしいかと思います。
#22
○寺田熊雄君 簡易裁判所は全体で幾つあるのだろうか。そのうち、しばしば私ども簡易裁判所の廃止であるとか統合であるとか、あるいは事務移転であるとか、いろいろなことを聞きますね。そういうものはどの程度あって、また、これからもそういう、できるだけ簡易裁判所を全国に漏れなく配置するということが次第に失われていくんじゃないかという、そういうおそれも持っておるのですが、何か一定の方針で進んでおられますか。そうでなくて、現実の必要によってそういう廃庁とか統合とか、あるいは事務移転というのがあるのか、その辺のところをちょっとお伺いしたい。
#23
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 全国の簡易裁判所の数は法律上五百七十五庁ございます。
 当初、敷地を得られない、庁舎を得られないといったような関係から開庁できなかった、これも法律的には事務移転庁でございますが、通常未開庁と言われておりますものが八庁ございます。開庁後、土地の開け渡しを求められたり、火災に遭ったり、あるいは庁舎が相当傷んで裁判所としてのサービスを提供するにはふさわしくない状況になったために、開庁後事務移転をしました庁が十二庁ございます。未開庁は、ただいま申しましたように開庁できない障害がございまして、その障害は現在なお変わっておりませんために開庁されておらないわけでございますし、開庁後事務移転をいたしました庁十二庁は、それぞれの理由があって事務移転をして現在に至っておりますわけで、そういった状況等が消滅いたしますれば事務移転の解除ということも十分考え得るわけでございます。
 したがいまして、私どもといたしましては一定の方針のもとにどうこうするというようなことは全くいたしてはおりません。
#24
○寺田熊雄君 これはきょうでなくて結構ですから、開庁できなかったところはどことどこか、事務移転したものはどことどこか、また、なぜ開庁できなかったか、なぜ事務移転したか、その一覧表をつくって当委員会に出していただけますか。
#25
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 承知いたしました。
#26
○寺田熊雄君 今回の改正によってどの程度この簡易裁判所の事件が増加するのか、あるいは、先ほど民事局長が言われたように、不動産事件を地方裁判所に移送する、あるいは事件が難件であれば、また当事者の希望があれば地方裁判所に移送するというようなことによってこれが減るのか、その辺の見通しはどういう見通しでいらっしゃるのか、また、その見通しをなさった理由はどうなのか、この辺をちょっと説明していただきたい。
#27
○政府委員(千種秀夫君) 詳しくはまた裁判所から御説明があるかと存じますが、お手元にお届けいたしました本法律案関係資料の関係につきまして一応私から御説明申し上げます。
 この資料の別表十一でございますが、結論といたしまして、概算二万件強、ここに数字としましては二万五十五件というふうに書いてございますが、この数字の件数が、地方裁判所から簡易裁判所に移動するであろうと推測しております。
 その理由ということを御説明申し上げますと、五十五年の統計が一番新しいのでございますが、この統計によりますと、地方裁判所の事件の三十万から九十万までの訴額を有する民事訴訟事件でございますが、この数字が大体、と申しますのは、統計が百万までの単位になっておりますので、それを比例して概算したわけでございますが、その数字が総計三万五千八百六十五件という数字がまず出てまいります。それが全部行くかということになりますと、今度加えました制度あるいは従来の制度の活用によりまして若干減るだろう。まず総体的に、従来からございますが、地方裁判所で受理してほしいという要請受理の事件がございます。また、裁量移送の事件もございます。こういうことによって、大体一割ぐらいは地方裁判所の方へ行くであろうということで、その件数に〇・九を掛けますと、三万二千二百七十八件という数字が出てまいります。
 それでは、それが全部行くかということになりますと、今度不動産事件につきましては、九十万円以下でございましても地方裁判所と簡易裁判所の競合管轄ということにいたしました。その理由は、また後ほど御説明する機会があるかと存じますけれども、内容が複雑であるということもございますし、何といいましても弁護士の選任率が非常に高いわけでございます。そういうことから勘案しまして、不動産事件の九十万以下のものでございましても、八〇%ぐらいは地方裁判所に移るのではないか、要するに、この制度がかなり活用されるのではないかという見込みを持っております。
 それでは、不動産事件というのはどのぐらいあるかということでございますが、この三十万から九十万の新しい訴額の範囲で計算いたしますと、五千六百四十一件ぐらいという数字が出てまいります。したがいまして、その八割が四千五百十三件と、これをまず引かなければなりません。それから、従来三十万円以下で簡易裁判所が取り扱っていた事件についても、また八〇%が地方裁判所に移るのではないかという推計をいたしまして、その数はもともと九千六百三十一件ございましたものですから、それに八割ということで七千七百十件。いま申しました不動産事件の八割を先ほどの件数から引きますと、この二万五十五という数字が出てまいるわけでございます。
 そこら辺のところの、実際はこの法律が施行された上でフォローしてみないとわからないのでございますけれども、仮にその推計がずれたといたしましても、不動産事件というのは全体として数の上ではそうございませんから、その件数が大幅に狂うということはないと考えております。
 以上でございます。
#28
○寺田熊雄君 何か最高裁の方では、いまの法務省の御説明につけ加えることはありますか。
#29
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいまの法務省の御説明のとおりであります。
 要約いたしますと、結論としては二万五十五件移るであろうということでありますが、内訳は、不動産事件以外が二万六千六百三十七件簡裁に移りまして、逆に不動産事件が六千五百八十二件減ると、この差が二万五十五件でありまして、これが簡裁にふえるという計算見込みであります。
 なお、御質問にあったかと思うのでありますが、現在の要請受理あるいは裁量移送の制度、これがどのように運用され、将来この法律改正を件数にどのように反映していくかという点につきましては、ちょっと見込みが立たないのでありますが、今回改正法に盛られました競合管轄の制度あるいは必要的移送の制度、これが従来の要請受理あるいは裁量移送の制度を一歩進めたものでありまして、その延長線上にあるというふうに考えておるわけであります。この新しい制度がどのように機能していくかということによって、従来の裁量移送あるいは要請受理の件数に増減が出てくる、こういうふうに見込まれるわけであります。
 したがいまして、新しい制度であります競合管轄あるいは必要的移送の制度がかなり機能するということになりますと、従前の要請受理あるいは裁量移送の件数は少なくなるだろうと、こういうふうに見ているわけであります。
 以上でございます。
#30
○寺田熊雄君 裁判所の職員で組織せられる全司法労働組合、これの出したパンフレットを見ますと、かなり事件はふえて書記官の業務が著しく繁忙化してくる、こういうふうに言っておりますね。これはあなた方そういう組合員の意見はお聞きになっていらっしゃるでしょうね。あなた方としてはこの組合の意見が正しいというふうに思われますか、それとも違った結論をお持ちですか、この辺をまずお伺いしたい。
#31
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 先ほど来、法務省あるいは最高裁の民事局長から御説明、答弁がありましたとおり、今回の事物管轄の改定によりまして、約二万件くらいの民事訴訟が簡裁の方に動くであろうというふうな推定がされるわけでございますが、これは簡易裁判所一庁当たりにいたしますと約三十六件の増加となるわけでございます。前回、昭和四十五年の改正時には一庁当たり約六十件増加いたしましたので、それに比べると増加割合は少ないわけであります。
 なお、今回の法案によりますと、双方の申し立てがございますと、いかなる事件についても地方裁判所へ必要的に移送するという制度が盛り込まれておりますので、あるいはこの増加率は少し下回ることも考えられないわけでもないわけであります。
 御承知のように、簡易裁判所は五百庁以上もうございますために、大都市の相当事件数の大きい簡易裁判所から、地方の民事訴訟取扱庁でありながら年間一件もないといったような簡易裁判所まで非常に幅広いわけでございます。私ども小庁、中庁、大庁とある程度の規模別にモデルをとりまして試算をいたしました結果によりますと、小庁、中庁におきましてはさほどの負担増にはならないというふうに考えております。
 ただ、大庁になりますとある程度の、裁判官、書記官いずれについて見ましても、負担増ということはございますので、そういった裁判所につきましては、やはり人の手当てが必要になってくるところも出てまいるというふうに考えております。
#32
○寺田熊雄君 この問題では、これは職員の労働条件に関連することでありますので、やはり組合と交渉があるということが一般的に期待されますが、交渉はやっぱりなさっておられますか。そして、組合は最高裁に対してどういう要求をしておられますか。
#33
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 今回の簡易裁判所の事物管轄の改定に際しまして、全司法労働組合との接触を担当しておられます人事局の担当課長が組合側の要望、考えを数回にわたって聴取されましたし、法案の直接の担当部局であります私どものところにも組合の役員の方が見えまして、私が直接要望をお聞きするなり、担当課長が聞くなりいたしております。
#34
○寺田熊雄君 大体、組合はこの問題に関して反対だというんだけれども、もし実施に移すならどうしてほしいというような要望が当然あるはずですね。どんなふうにあなた方その要望を受けとめておられるのか、その点をお伺いしたいんだけれども。
#35
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 地方裁判所に相当事件数がふえ、しかも地方裁判所に係属する事件は困難な事件が多いので、もう地方裁判所はパンク寸前の状態にある、したがって簡易裁判所に事物管轄を改定して事件を移すのではないか、簡易裁判所も現在相当忙しいので、それでは簡易裁判所の方がやっていけない、人員をもっと増員すべきであるというような要望なり考えが基本的にあったというふうに理解しております。
#36
○寺田熊雄君 その職員の充員という問題、これが確かに全司法労働組合の私どもに対する陳情の中にあるんですけれども、この職員の充員という問題について、あなた方はやはり必要を認めて御努力になっていらっしゃるのか、それとも必要はないというお考えなのか。私はそういう点を率直に聞いてみたかったので、組合を参考人として呼びたかったんだけれども、これは実現するかしないかわからぬけれども、やはりあなた方も何か組合を嫌なものだというふうに思わずに、やっぱりあなた方の部下として一緒に働く連中なんだから、よくその意見を聞いて、正しいものはあなた方も快くそれを受け入れて、その実現に努力するという態度が欲しいんですね。何かこうあなた方が歓迎していないような空気が電波のごとく伝わってくるから、それじゃ困るので、その要望をどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、それをお伺いしたいんですよ。
#37
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 実は、三者協議が相当進行いたしました段階で、組合の方から担当局である総務局も会ってくれというお話がございまして、私どもとしてはお会いして御意見は御意見で承ろうということで、決して嫌がっているわけではございません。
 もう一つ、増員の点でございますが、今回の事物管轄の改定に伴って増員が必要になるかと言えば、私どもとしてはそういう認識ではございません。裁判所全体の中における事件の割り振り、分担割合が変わってくるということでございますので、このことが直ちに増員の必要性ということには結びつかないと存じますけれども、ただ、現在裁判所全体として見ますと、特に民事事件は増加の傾向にあることは十分承知しております。したがいまして、その点は毎年の裁判所職員定員法の改正という形で、裁判所全体にとって必要な人員の増員を毎年毎年お願いしているわけでございます。
#38
○寺田熊雄君 そこで、いま書記官の定員というのはどのぐらいあって、欠員がどのぐらいなのか。そして、その足りないところを兼任というようなことで埋め合わせておるというようなことも聞いておるので、地方裁判所と簡易裁判所の兼任の書記官というのはどのぐらいあるのか、そういう点をちょっと御説明いただきたいと思います。
#39
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 書記官の定員は、裁判所全体ででございますが、六千六百ほどでございまして、現在欠員としては二十名にちょっと足りない十数名の欠員を抱えておるというのが一番最近のデータでございます。
 なお、その書記官につきまして、地方裁判所と簡易裁判所との兼任の関係はどのように行われておるかというお尋ねでございますが、実はこの書記官の任命は最高裁判所でやっておるものではございませんで、圧倒的多数、大部分の地方裁判所、簡易裁判所等の書記官につきましては、地方裁判所が任命をし、兼任の関係も地方裁判所でやっておるということで、実は私どもの方で的確にどれだけの兼任者があるかということはつかんでいないわけでございます。
 事柄の実態に徴しましても、寺田委員がよく御承知と存じますが、東京とか大きなところの簡易裁判所、それから田舎の方へ参りますと独立簡易裁判所、これは別でございますが、甲号支部でも小さいところとか、乙号支部あたりになりますと、それぞれ同じ部屋に机を並べてやっておりまして、地方裁判所兼簡易裁判所の方、簡易裁判所兼地方裁判所の方、それぞれあるわけでございます。これはそれぞれ地方裁判所で任命しておりまして、仕事の繁閑に応じましてお互いに応援し合う、そういうふうな実態が実はあるわけでございまして、そういう意味で兼務者もどれだけあるかということが的確にわかりませんと同様に、実際どちらの仕事をどれだけやっているかということにつきましても、それぞれの時期、それぞれの場所におきます仕事の繁閑に応じて応援し合うというのが実態でございますので、そういう意味でいまのお答えにつきまして、何名だというふうには的確に申し上げかねる事情を御了察いただきたいと思います。
#40
○寺田熊雄君 いや、なぜ私がこういう質問をするかといいますと、いまの全司法労働組合の者が私どもに説明するのでは、簡易裁判所にこれだけおりますといっても地裁と兼任なんです、簡易裁判所の事務を実際はとれない状態にある、地裁の事務をやっていると。ですから、これだけの数があると言ったってそれをそのままうのみにすることはできませんと、こういう説明があるわけですね。
 ですから、やはり地裁所長が任命するとしましても、事務の繁閑というようなことをあなた方が調査なさる場合は、そういう点もある程度やっぱり認識をしておいていただかないと、地裁所長のやることだからどうも実態が把握できないということでは困る、把握してもらわにゃ困る。これは、あなた方が全国からそういう報告を徴すれば容易にわかることですから、そういう点も十分把握して事務をとってもらいたい。それでないと、やっぱり組合とあなた方との間でそういう点の認識なり対処の仕方が違ってくるでしょう。どうですか。
#41
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 先ほど来申し上げておりますように、地方裁判所の本務で簡易裁判所兼務というのが一方においてございますし、簡易裁判所本務で地方裁判所兼務あるいは家庭裁判所兼務、これは支部等で一緒にやっております関係でそういうものもございますが、いまの寺田委員の御指摘の組合が言っておりますものは、簡易裁判所が本務でありながら仕事をしないで地方裁判所のいま仕事ばかりと言いましたが、ほとんど地方裁判所の仕事をやっているというふうな、そういう主張であるかというふうに思うわけでございますが、実は本務、兼務の関係は、両方兼務しておる職員はこれはかなり相当おるだろうというふうに思いますが、個々の職員につきまして具体的に一体どちらの仕事を何十何%やっておるかということになりますと、私自身裁判官で地裁と簡裁を兼務したことがございますけれども、これは容易にそのパーセントを自分の頭の中で算出してもむずかしゅうございまして、それぞれの人の主観も入ってくるというふうなことでございまして、実際はなかなかむずかしいわけでございます。
 ただ問題は、簡易裁判所が本務でありながらも地方裁判所ばかりやらせる、仕事は簡易裁判所の方が忙しくて地方裁判所の方が暇なのに、そちらをやらせるというふうなことがありますとこれは問題でございますけれども、問題は、そういうことがないように、つまりそれぞれの裁判所の仕事に応じた事務の割り振りを考えるということが一番肝心なところでございまして、そこら辺につきましては私どもとしても十分配慮して、忙しい人に暇な方をやらせるというふうなことがないようにということを十分配慮してやっていきたい、このように考えるわけでございます。
#42
○寺田熊雄君 それは裁判官の場合は、両方兼務したって事務はもう一方にもっぱら当たるということが多いでしょう。両方一切兼務しているというのは、それは地方では巡回するような場合もあるけれども、大体は決まっている。いま言った書記官の方は、そういう点で簡裁にこれだけいるから十分だというふうに最高裁の方で思っておられるとそれは実際は違うんですと、こう言っているから、やっぱりよく彼らの主張も謙虚に耳を傾けて実態を把握してもらいたいと、こういうことを言っておるわけですよ。
 それから、簡易裁判所裁判官の定員というのはどのぐらいおるのか、そしてそれがどのぐらい欠けているのか、この問題がまず一つと、それから裁判官の不在庁というのはどのぐらいあるのか、これをちょっと説明していただきたい。
#43
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 簡易裁判所判事の定員は七百七十九でございます。御承知のように、毎年簡易裁判所判事の新しい方が八月一日に任命されますので、現在はほぼ埋まっている状態でございます。
 簡易裁判所判事不在の庁は、全国で百四十九庁ございます。
#44
○寺田熊雄君 その不在庁というのは、やっぱり事件が少ないから不在にしておるんですか。その点どうなんです。
#45
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 御承知のとおり、全国に五百以上の簡易裁判所がございまして、先ほどもちょっと触れましたけれども、事件量の非常に膨大な簡易裁判所から、へんぴな田舎の独立簡易裁判所に参りますと、事件量は非常に微々たるものしかないという簡易裁判所がございます。先ほどもちょっと例に挙げましたけれども、民事訴訟事件を取り扱う簡易裁判所でありながら年間ゼロといったところもございますし、年間一けたという簡易裁判所は何十かございます。そういったところにすべて人員を、簡易裁判所判事を配置するということは、人の全国規模での有効的な配置という点から考えますと非常にむだになってまいるわけでございまして、二つの庁を兼ねて受け持っていただきましても、十分国民の皆様方に御迷惑をかけないで事務が遂行できるという場合がございますために、やはり百四十九の不在庁が現に存するということでございます。
#46
○寺田熊雄君 それら不在庁に対しては、巡回裁判的に処置していらっしゃるのか、それとも事件があったらその都度行くということに随時なさるのか、その辺はどうしておられます。
#47
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 百四十九庁のうち、兼務をしておられる庁数が百三十六庁ございます。残り十三庁が他庁からの填補という形でございます。
 これらいずれも非常駐庁におきます裁判の事務の処理につきましては、非常駐庁のやはり事件数いかんによって一様ではございませんで、平均的に申しますと週二回から一回というのが通常のようでございます。週のうち曜日を決めて開廷をする、その庁に行って事件処理をされるということであります。ただ、極端に事件数の少ないところでは、月二回程度で十分賄えるというようなところもあるようでございます。一方、ある程度事件数のあります庁につきましては、週三回というところもございます。事件が急にたくさん出てきたというような場合、あるいは当事者の御都合で臨時に開廷をしなければならないというような必要がありますときには、随時そのような体制をとっているというふうに承知しております。
 なお、緊急を要します令状とか保全関係の事務につきましては、日ごろから非常駐庁と常駐しておられる庁との間で緊密に連絡をとって、迷惑のかからない処理ができる体制をとっております。
#48
○和田静夫君 ちょっと御質問の間で申しわけないんですが、外務省のアジア局長、外交日程が入ったようですから一、二問だけ質問をいたしますが、まず在日朝鮮人・韓国人六十六万七千人のうち強制連行で日本に連れてこられた人及びその子供、孫は今日何人ですか。
#49
○政府委員(木内昭胤君) 在日韓国人・朝鮮人の方々の数は、和田委員御指摘のとおり、六十万余にわたるわけでございますが、強制的に日本に移入された方々の数がそのうち幾らであるかということは正確には把握いたしておりません。当時、この方々は日本国籍を有しておられたわけでございまして、そういう意味合いにおいて、自発的に来られた方々も多数おるわけでございます。
#50
○和田静夫君 いわゆる一九三九年に国民徴用令が出されて、それに基づいて半島の人たちが、たとえば職場の帰りに街頭でもって日本の警察なりに連行をされながら強制的に内地に持ってこられる、そして炭鉱業務に従事をする、そういうような形のことはたくさんあったわけでありますが、その辺の資料というのは今日全然ありませんか。
#51
○政府委員(木内昭胤君) 資料は全然ないということではございませんで、日韓国交正常化交渉の際にもこの補償の問題が議論されたわけでございまして、そのときに韓国側から提示のあった数字もございますし、日本側での数字もございます。そのときにあります数字がどこまで正確であるかは別にしまして、日本側で把握いたしておりました集団移入の数字は六十七万人でございます。
#52
○和田静夫君 その中で向こうにお帰りになった方々もいらっしゃるでしょうけれども、今日まで日本の国内に残られて、そしてその方々の子孫がふえる、そういう状態は把握はされていませんか。
#53
○政府委員(木内昭胤君) 正確には把握いたしておりません。
#54
○和田静夫君 正確でなくても概数的にはどうですか。
#55
○政府委員(木内昭胤君) 手元にございませんので、後刻調べて御報告させていただくということで御了承いただければと思います。
#56
○和田静夫君 それじゃ、そういうことで後で教えてください。
 そこで、その人たちに対する、中国の方々も含んでですが、国家的賠償の措置とでもいうものですね、こういうものはどういう形でなされましたか。
#57
○政府委員(木内昭胤君) 徴用された韓国人の軍人、軍族の方々、それから労務者の補償問題は、先ほど触れましたとおり、日韓国交正常化のときの大きな交渉のテーマになったわけでございます。
 しかしながら、朝鮮動乱による韓国側資料の散逸等もございまして、この補償すなわち請求権の問題について的確な基礎となる事実がございませんでしたので、結局、請求権解決を一括して解決した経緯がございます。その結果、経済協力によりまして無償三億ドル、有償二億ドルの経済協力を申し上げるということで、韓国側と交渉の末、了解に達したわけでございます。その結果、後日、韓国当局がこの徴用された韓国人の方々の御遺族に対しまして何がしかの補償を韓国当局の手によって行われた経緯がございます。ただし、在日韓国人の方々はその中には含まれておらないわけでございます。
#58
○和田静夫君 そうすると、朝鮮民主主義人民共和国と将来の国交等の関係を考えた場合には、同様の問題は起こってくる、そう理解してよろしいですか。
#59
○政府委員(木内昭胤君) 将来の問題としまして、北朝鮮と同様の問題が起こり得ることは理論的に考えられます。
#60
○和田静夫君 どうもありがとうございました。
#61
○寺田熊雄君 地方裁判所でも、弁護士を代理人として頼まずに当事者だけで訴訟が行われるということがありますね。これは地裁段階でもある。簡易裁判所はことに多い。ちまたの金融業者など、あるいは自動車の販売会社などそういうものが多いのでありますけれども、これは一体どのぐらいあるんだろうか、全体の中のパーセンテージはどのぐらいか、地裁もわかれば一緒に御説明いただけばなおありがたいのですが、どうでしょうか。
#62
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 当事者双方が本人である、いわゆる本人訴訟の率でございますが、地方裁判所について申し上げますと、ここ数年間大体二〇%という数字になっております。簡易裁判所におきましてはややふえる傾向にございまして、五十五年段階で八〇・三%という数字になっております。これを五十五年の事件の中で何件が本人訴訟かという件数で申し上げてみますと、地方裁判所は二万一千百四十件、簡易裁判所は五万八千五百八十一件、このようになっております。
#63
○寺田熊雄君 今度は義務的に移送する場合、原告、被告双方が申し出た場合、それから裁量で移送する場合、この移送の場合を非常に今度拡張しておりますね。現在は簡裁から地裁へ移送する事件というのはどのぐらいあるのか、この点をちょっと御説明いただきたい。
#64
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) お手元の法律案関係資料三十六ページをごらんいただきたいのでありますが、ここに「要請受理、裁量移送の状況」という表が出ております。左側が要請受理件数でございまして、四十六年度千五百三十一件、これをピークにいたしまして大体減る傾向にあり、五十五年度は八百二件というふうになっております。裁量移送の方は、四十七年度の千二百六十三件がピークでありまして、その後減少しておりまして、五十五年は六百八件、このような数字になっております。
#65
○寺田熊雄君 次に、簡易裁判所で金銭関係あるいはその他の事件について調停委員の活動の領域というのはかなり広いですね。それから、家裁に至っては調停が非常に大きな役割りを占めますので、家裁の調停委員、きょうは家庭局長おられないから家裁は一応除外するとして、地裁のさまざまな調停事件、これも調停委員のよしあしによってずいぶんその能率が違ってまいります。当事者の満足度というようなものも違ってくる。私ども見まして、弁護士として立ち会いますと、調停委員のよしあしというのが一見してわかります。いい人ではあるけれども適当でないという人もあるわけですね。それから、非常にできるけれども少しこれは強引過ぎるなあと思われる調停委員もある。いろいろある。これは裁判官でもあるわけです。一体、調停委員はどういうふうな経路で、どういう点に主眼を置いて選ばれておるのか、この辺をまず御説明いただきたい。
#66
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 調停委員の選任につきましては、民事調停委員及び家事調停委員規則によりまして任命が行われておるわけであります。この第一条に要旨このように書いてございます。調停委員は、弁護士となる資格を有する者、民事、家事の紛争解決に有用な専門知識経験を有する者または社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満のものの中から最高裁が任命すると、このようになっております。
 この任命の基準に基づきまして各地方裁判所、家庭裁判所でどのような人を最高裁に推薦するかという作業に入るわけでありますが、この作業は各地方によって実情は異なりますので一様ではありませんけれども、大体、自薦、他薦の人、その他薦の中には裁判所がお願いをして各種団体へ推薦方を依頼した結果出てくる方が多いわけであります。その団体の中には、地方公共団体もありますし弁護士会もありますし医師会もあると、こういう状況でありますが、そういう候補者がそろいますと、当該裁判所の裁判官が一応面接を行う。適任と思えばこれを最高裁へ任命上申する、最高裁の方で検討をして、よろしいということであればこれを任命する、こういう経過といいますか、作業の進め方で任命が行われておるのでございます。
#67
○寺田熊雄君 最高裁の方で一人一人吟味なさるということは事実上不可能だろうと思うから、現実には、私ども見ておりますと、どうもこれは地裁の事務局長が大きな権限を持っているんじゃないかというふうににらんでおるわけです。
 私どもも推薦したのがあるんだけれども、推薦されて委員になったのが、何か理由不明な中で再任を拒否されているというのか、うまく体裁よく外されるというのか、その外された人にりっぱな人があるんですね。それで私自身が苦情を言われた。これは女性の詩人なんですけれども、だれが見ても調停委員としてりっぱなんじゃないかと思うのだけれども、どういうわけか外されて、その詩人から私、非常に苦情を受けた。それで、事務局長にいろいろ言ったんだけれども不得要領で、私も余り無理を言いたくないから黙っておるんですがね。
 そのほか、老人でも七十歳未満だと、これも一人外されて、非常に正義感のあるりっぱな人じゃないかと思うんだけれども、これはあえて私、事務局長等にお話はしなかったんだけれども、いろいろ探ってみると、調停委員のボスというか、仲間があるんですね、そのボスがおる。そのボスが事実上決めて事務局長あたりに申告して、事務局長は事情をあんまりよくわからないから、権限はあるけれども、どうもそれをうのみにして選任するということがあるようですね。そのボスも決して悪い人間ではないんだけれども、悪い人間でなくてもやはりイデオロギーの問題もあるし、感情的な問題もあるし、どうも気に入らないと。それでボスが中心になって、二、三の古参がおるわけで、それが実権を握っておる。そして外されたと私はにらんだんですがね。
 ですから、これはやはりあなた方高いところにいらっしゃる方は下々のことは余りよくわからないから、よく地方裁判所の事務局長等にそういう点の注意をするように、大ボス、小ボスが横暴を働いていい人間を再任させないように追放してしまうようなことがないように、よくひとつ十分指導していただきたいと、こう思いますが、どうでしょう。
#68
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 御承知のように、調停制度、四十九年の十月に大幅な改正がありまして、調停委員の制度が従前の候補者制度から非常勤の国家公務員に変わったわけであります。その他、手続的にもいろんな整備が行われました。それを契機に、調停の充実ということにつきましては私ども相当力を入れていろんな施策を進めてまいったわけであります。しかし、何といいましても、その制度を支える調停委員の方にもし適当でない方が入っているということになりますと、これは非常に困るわけでございます。その点は十分に注意をしていかなければならない。いま御指摘のようなことが本当にあるのかどうか、私ども十分その点は把握しておりませんけれども、そのようなことがあってはならないというふうに考えます。
 したがいまして、調停制度の充実拡充につきましては、さらにいま御指摘の点も含めまして、いろんな施策を進めてまいるつもりでございます。
#69
○寺田熊雄君 最後に、全司法がわれわれのところへ配付してくれたものに、読んでみるとこういうところがある。私はこれは卓抜なるアイデアと称すべきか、そうではなくして、これはとうてい実現不可能なものと見るべきかよくわからないんだけれども、「夜間・休日の調停(開廷)を実施します。」と。それから、これは現実に行われておるんですが、「定型訴状(申立君)を完備し、口頭受理を促進します。」と、こういうものがある。
 一つお尋ねは、口頭受理というのが現実にどの程度行われておるのか。これが現実に行われておれば、簡裁の当初の理想というものがかなりよく実践されておるということになりますね。大衆は非常に便利である。これがどのぐらいあるのか。もし調査しておれば御説明をいただきたい。
 それから、卓抜と評すべきか、そうでない瞑想と目すべきか、夜間、休日の調停を実施すると、これはどうなのか。私どもも自治体の長をやったことがあるんだけれども、ごみの処理、これは欧米では夜間寝静まったときに自治体がごみの処理をしていくのがありますね。日本でもときどきはあるというんだけれども、私どもが職員に夜間の勤務というものを打診してみると、やっぱり夜仕事をするということを非常に労働組合は嫌がるんですね。ところが、労働組合の方から夜間の開廷を実施するというような案がうたわれておる。これは一体どう見るべきか、あなた方はどう受けとめておるのか、まずこの辺をひとつ御説明いただきたい。
#70
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) まず、口頭受理でございますが、簡裁における民事訴訟事件の特則の中で口頭受理というのが一番典型的な特色と言っていいと思います。これが前回の裁判所法改正、四十五年改正時にこの特則の活用というものが強く要請され、附帯決議も付されたわけでございます。このような状況を受けまして、私どもの方でこの口頭受理につきましては、これを積極的に進めるような施策をとってまいったわけでございます。
 それで、口頭受理というものにも私どもの方で二種類のものを考えておりまして、一つは、純然たる口頭受理、いま一つは、裁判所の窓口に定型訴状の用紙を備えつけてあります。これを用いて窓口の係がいろいろ教えて書き込ませて出させる訴状、これを受け付けた場合、これを定型書面による訴えの受理と、こう言っております。この二種類を含めまして口頭受理というふうに言っておるわけでありますが、その件数は、五十五年度の新受事件の中で一万一千七件、一四・一六%、これが口頭受理ということで処理をされておるわけであります。
 実は、現在の簡易裁判所の民事訴訟の新受の中には四六、七%に近いクレジット訴訟が含まれております。このクレジット訴訟の原告はすべて業者でございますから、こういう人たちのために口頭受理をやる必要はないだろうと、こう思います。そういたしますと、残りについて口頭受理を考える必要がある。残りの件数について、先ほど申しました一万一千件が何%に当たるかと、こう計算してみますと、これが二六%に当たります。大体四分の一は口頭受理で処理している、かなりいい成績をおさめているというふうに私どもは見ておるわけでございます。
 なお、訴訟とともに調停というのは非常に大きなウエートを持っておるわけでありますが、調停につきましても口頭受理を積極的に進めておるわけであります。
 これをちょっと申し上げますが、五十五年度における新受調停事件のうち、これも純粋の口頭受理と定型書面による受理とがございますけれども、これは両者を合わせますと三万一千五百十三件、新受件数の五二・三%、これだけ、半数以上が口頭受理ということになっておりまして、かなり大きく機能しているというふうに言えようかと思うのであります。
 最後に、夜間調停の御指摘がございました。実は、この夜間調停につきましては、昭和三十年代に一度試みたことがございます。若干の簡易裁判所におきまして、夜間調停を試みたことがあるのであります。しかし、その後利用件数が漸減してまいりまして、ゼロになったということで、現在夜間調停は行われていないのが実情でございます。
 ただ、現段階におきまして夜間調停を広くやれるかということになりますと、現段階におきましてはいろいろの問題点があろうかと思うのであります。これは、当事者双方が夜間を希望いたしませんとできないことでありまして、片一方が、いや夜では困るということになれば、これはやるわけにいかないというような事情があります。それから、裁判官、書記官のみならず、調停委員を夜間に確保しなければならないということ。それから、夜間裁判所を開いておくわけでありますから、いろいろ警備上その所要の人員を置かなきゃならない。そういったいろいろな面が、問題点があるわけでありまして、この問題点を克服して夜間調停をやらなきゃならないかどうか、ここが問題でありまして、にわかに結論は出しがたいというふうに思っておるわけでございます。
#71
○寺田熊雄君 次に、昭和四十五年の衆参両院における附帯決議、これを見ますと、よくずいぶんいろいろと事物管轄の拡大に関連してたくさん決議をつけたという感じがしますが、その衆議院の附帯決議の第一項で、政府、裁判所は、簡判の任用に関し可及的に法曹有資格者をもってこれに充てる等、簡判の充実強化に務むべしという一項がありますね。これは、その後やはりこれに沿うて法務省及び裁判所は御努力になっていらっしゃるわけですか。ちょっと御説明いただきたいのですが。
#72
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 簡易裁判所判事の充実強化に関しましては、まずその例として挙がっております、できるだけ有資格者をもって充てるという問題でございますが、これは先ほどちょっと御説明を申し上げましたけれども、私どもとしてはできるだけその線に沿ってということを考えておるわけでございますけれども、最近の実情としては、最近は判事の定年退官者が非常に少のうございまして、大体一番有力な給源が判事の定年退官者あるいは中途退官者と申しますか、そういう方がなられるというのが実情でございますが、それが少し最近少のうございますために、率直に申しましてちょっと有資格者が減っておるという状況でございます。ただ、私どもの考え方としては、できるだけこの附帯決議の趣旨に沿った方向に持っていきたいというふうに思っておりますが、ままならないというのが実情でございます。
 それ以外に、簡易裁判所判事の充実強化につきましては、簡易裁判所判事につきましても、先般来いろいろ不祥事等も起きました関係上、簡易裁判所判事のいわゆる推薦基準を少し年齢を上げることでございますとか、あるいは司法研修所におきます簡易裁判所判事の研修の充実強化を図る、いわば質的な向上と申しますか、そういう面でいいろやっておるところでございます。
 第一項につきましては以上のようなことでございます。
#73
○寺田熊雄君 それから第四項に、政府と裁判所は、裁判所法の今次改正にかんがみ、速やかに第一審裁判所としての地裁及び簡裁の人的、物的設備の充実強化に努めよという一項がありますね。これはどのぐらい御努力になったんでしょうか。
#74
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) まず、人的の点でございますけれども、裁判官及び一般職一員の充実強化に努めました結果、地方裁判所及び簡易裁判所の予算定員は、昭和四十六年以降昭和五十七年までの間に判事四十九人、判事補五十六人、簡易裁判所判事十二人、裁判所書記官八十二人、裁判所事務官八十七人、合計二百八十六人の純増を見ております。この点につきましては、当法務委員会の御支援のたまものと感謝いたしております。
 次に、人的設備充実強化の一環といたしまして、裁判官の事後教育を充実させるために、従前から行われておりました各種の研修に加えまして、新たに裁判官を外国に留学させる制度、また新任判事補研さん等の研修制度を設けまして、法曹としての能力、素養の向上を図ってまいっております。
 次に、物的な面でございますが、附帯決議の趣旨にのっとりまして、地方裁判所本庁、支部、独立簡裁、合計二百三十庁の新営増築等の充実強化に努めてまいりました。また、簡裁に対します図書、器具類の配付でございますが、近年特に簡易裁判所の図書資料の整備充実に相当力を入れておりまして、たとえば簡易裁判所の裁判官室につきましては、裁判官研究庁費によりまして、昭和四十五年度から五カ年計画を立てまして、その整備を集中的に行い、その後も引き続き新刊図書等につきましての整備を行っております。
 最後に、裁判器具等でございますが、図書資料と同様、その充実に努力を続けております。
 大体、以上でございます。
#75
○寺田熊雄君 そのほかの項は大体私どもよく承知しておることなんですが、最後に、参議院の附帯決議の四項に「地方裁判所に於ては、裁判の公平と迅速のために、刑事事件に於ては、検察官手持証拠を被告人側に事前一括開示するようにし、民事事件に於ては、公害事件の挙証責任について、被害者側の負担を軽減するようにすべきである。そのため必要ならば、法令の改正について検討すべきである。」と、こういう一項がありますね。なかなかこれは、私いま現時点で見て思い切った附帯決議をつけたものだというふうに考えるんだけれども、これはどのように実現されておりますか。
#76
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 私の方から、公害事件の挙証責任の関係について裁判所の立場からの意見を申し上げます。
 御承知のとおり、四大公害事件、イタイイタイ病、新潟水俣、四日市ぜんそく、熊本水俣、これを四大公害事件と呼んでおりますけれども、この四大公害事件が順次判決がなされました。この判決が、疫学的因果関係が立証されたならば法的因果関係は事実上推定される。言いかえれば、被告企業側が自然的因果関係を否定する立証をしない限り因果関係は肯定されるのだというような立場の判決をしてきたわけであります。このような考え方は、実務の上でほぼ定着しているように見受けられるわけであります。したがいまして、この参議院の附帯決議につきましては、ほぼ目的が達せられているのではないか、実務的に裁判実務の上で目的が達せられているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#77
○政府委員(前田宏君) 刑事の関係につきまして、この附帯決議では裁判所が主体のように書かれてございますけれども、立法の要否ということも含めて検討すべきである、こういうことになっておりますので、その点について申し上げますが、いわゆる検察官手持ち証拠の一括開示という問題につきましては、寺田委員も御案内のとおり、いろいろとむずかしい問題を含んでいるわけでございます。特に、現行刑事訴訟法の基本構造にかかわることでございまして、この問題だけを取り出して解決するというようなわけにもまいらない点があるわけでございます。
 そこで、そういうような根本的な問題を含んでいるこのことにつきまして検討いたします場合に、そういう立法措置等が必要かどうかというその前提になります事態が問題になるわけでございますけれども、これも御案内のとおり、この手持ち証拠の問題につきましては、当事者が請求を予定しております証拠につきましては刑事訴訟法なり刑事訴訟規則に規定があるわけでございますし、またそれ以外のいわゆる手持ち証拠につきましては、昭和三十四年あるいは三十五年の最高裁の決定、さらに昭和四十四年の最高裁の決定があるわけでございます。この御決議はその直後のような状態でなされたわけでございまして、そういう最高裁の決定がありましたことからもうかがえますように、いろいろと問題があったわけで、現在でも全くなくなったというわけでもないと思いますけれども、幸いにしてと申しますか、そういう最高裁の御決定がございまして、それに従った実務の運用というものが積み重ねられているというふうに理解しているわけでございます。
 そこで、そういう運用もおおむね定着しているというふうに見ておるわけでございまして、なお今後もその点は十分頭に置きながら見てまいりたいと思いますけれども、そういう現状でございますので、先ほど来申しましたようないろいろな問題を含んでいるこの問題につきまして、すぐに立法の必要があるというふうには考えていないわけでございます。
#78
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) ただいまの点でございますが、大体は法務省の刑事局長のおっしゃったことと同じでございますが、実務の運用を見てまいりますと、実務では大多数の事件では事前一括開示が行われているわけでございまして、全体から見ますと事前一括開示がなされていないのはほんのわずかな事件でございます。そのわずかな事件についてまた紛議が生じているということでございますが、この点につきましては、これは昭和四十四年の四月二十五日最高裁判所第二小法廷の決定にもございますように、この事前一括開示につきましては弊害ということも考えられないわけではございません。
 事案によりましては確かに罪証隠滅あるいは証人威迫あるいは擬装工作というようなことがその結果生ずるというようなことも懸念されるわけでございまして、そういう懸念される事件もないわけではないわけでございます。すべてこれを事前一括開示という仮に規則なり何なりで手当ていたしますと、そういう弊害の除去ということについても何らかの手当てをしなきゃならぬ。そういたしますと、これはまさに事件の性質、審理の状況、証拠の種類その他具体的な状況によって適当な訴訟指揮権の行使として処理するのがより妥当ではないか、結論としては妥当な結果が得られるのではないか。
 そういうことで見てみますと、実務の運用ではかなりこの最高裁判所の決定以来いろいろな試みがなされておりまして、この一括事前開示をしないことによる訴訟の遅延というようなことも、かなり運用によって解決されているように見受けられます。そういうようなことから、私どもといたしましてはいまのところでは運用に任せた方がかなり妥当な結果が得られているのではないかということで、運用をいましばらく見守っていきたい、そういうふうに考えております。
#79
○和田静夫君 ほとんど時間がなくなってきましたから簡単に質問いたしますが、まず、ことしも間もなく八月十五日がやってきます。日本が全く理不尽で無謀な戦争を挑んで、そうして敗北した記念日、それが訪れてくるわけですが、この記念日をどういうふうに記念するのか、この点を、教科書問題が非常にやかましく論議をされている折からでありますので、まず法務大臣の御見解をお尋ねをするという形で私の質問を始めたいと思います。
 大臣は、この八月十五日靖国神社に参拝されるわけですか。
#80
○国務大臣(坂田道太君) 参拝するつもりでおります。
#81
○和田静夫君 文部大臣をお務めになったころから幾たびか論議をあなたと交わしてきましたが、あなたの心情、またハト派的な立場に立たれるという政治家グループの中に数えてこられた法務大臣、そういうことを知らぬわけじゃありませんが、どういうお立場で、またどういうお気持ちで参拝されるのかということを、ちょっと聞かしていただければありがたいと思います。
#82
○国務大臣(坂田道太君) 私、戦前学生のときに、私たちの仲間が動員されたり、あるいは学徒動員で戦争に赴きまして戦死をされた多数の人たちがおるわけでございます。私はこうやって生き残っておるわけでございますが、そして政治家になっておるわけでございまして、この人たちのためにも二度と再びこのような戦争を引き起こしてはならない、平和な日本をつくり上げなきゃならないというふうに私は決意をいたしたわけでございまして、機会あるごとに私は靖国神社に参拝をいたしまして、そうして亡くなられた方々に対して、新しい平和な日本をつくるのだという決意を述べるといいますか、そうしてそのみたま安かれと祈っておるわけでございます。けさも実はお参りしてまいりました。
#83
○和田静夫君 いまも言われましたように、戦争をしてはならない、二度と戦争をやらない、そういうことで八月十五日を記念日とした趣旨の御理解、私人として述べられたあなたの御意見ならば私もそれを了としないわけではありませんけれども、これは後ほど意見を申し上げるとして、あの戦争というのは昭和十六年十二月八日のハワイ、パールハーバーへの攻撃から始まる太平洋戦争と、主として中国を侵略した日中戦争と分けることが私はできると思うんですが、太平洋戦争はいわば中国侵略の結果として生じた、そういうのが私は常識だろうと考えていますが、その辺は大臣、一言でいかがですか。
#84
○国務大臣(坂田道太君) ただいまこれは非常に大きな問題になっておりますし、所管の大臣もおられまするので、私この問題に余り深入りはいたしたくございません。しかしながら、私の歴史観といいますか、そういうものは、大体先生がおっしゃたようなことだというふうに理解をしております。
#85
○和田静夫君 私は、八月の十五日を記念して、先ほども大臣お述べになったように、二度と戦争を起こしてはならないと誓う。その中身は、太平洋戦争もさることながら、大陸へのこの侵略を深く反省するという立場、そういうことからなされなければならないと考えているわけであります。
 その点で大臣の御見解をいま承ったんですが、教科書問題を、ここで論議を私は文部大臣経験者であるあなたと本当は仕組んでみて、そして今日の違いというものを浮き彫りにするのがいいと思うんですけれども、立場もございましょうからそのことを述べようとは思いません。ただ、一九七二年の日中共同声明が、中国国民に重大な損害を与えたとしているのは、この中国の領土を攻め侵した、つまり侵攻し侵略した、そういう事実を認めたからに私はほかならないと考えているわけです。一九三〇年代、四〇年代に日本が中国に仕組んだことは、無概念な進出という言葉でもう片づけられることではない、そう考えられるんですが、ここのところは答弁を避けますか。
#86
○国務大臣(坂田道太君) これはやはり先ほどお答えをいたしましたとおりに考えておるわけでございまして、日中国交回復のときに声明をいたしましたこと、そのこと自体を私もそのように考えるわけでございます。
 私は、もともと日本の歴史を考えてみますと、日本が非常に膨張主義的な政策をとったときには、結果としてはすべて間違えておったというふうな認識を私自身持っているものでございまして、むしろ徳川三百年の間におきましても鎖国をとった、これは一面においてまた批判をされるところもございますけれども、私はこの三百年がむしろ日本の民主化につながる、あるいは日本の明治以後における近代化につながる何といいますか母体になっておる、上層の文化が末端まで及んでいった時期ではないだろうか、そういうような認識を持っておるものでございます。そういう立場から安全保障も考えていくという立場を、私は従来一貫してとってまいっておるわけでございます。
#87
○和田静夫君 戦前の日本、いわゆる大日本帝国が中国同様朝鮮にも侵攻する、侵略する、そして植民地化をした。八月十五日を不戦、反戦の記念日にするということは、私はこうした戦前の日本が近隣諸国に行った侵略総体を深く反省する、そういうものでもあるのだと思うんですが、そういうような歴史認識は私は法務省の行政とも大いに関係があるのだと考えてきているわけであります。
 残念ながら、外国人登録法の改正案の論議を静かに聞かせていただきましたが、私自身が意見を述べる機会を失しましたので、入管局長にお見え願ったんですが、そういう歴史的な認識で法務省の行政というものが進む。いわゆる在日朝鮮人や中国人の多くは、日本のこれら諸国への侵略、植民地化の結果として在日となっている。これは局長も多くを外交の場で過ごしてこられた方ですから恐らく意見を一にするんだと思うのですが、私も実は党の中央本部の地方政治局長として自治体の多くの首長の皆さんと相談をしながら、あの朝鮮という国籍の書きかえの問題なり、あるいは国保を全国の自治体に適用していくときに大変苦労をした経験を持っていて、在日朝鮮人や中国人の皆さんと多く接触をしていますから、その人たちの心をかなり深く知っているつもりで述べるのでありますが、入管行政を進めるに当たって、その基本的理念として、このいわゆる歴史的な認識は私は不可欠なものだと思うんですが、これは局長、在日朝鮮人の多くが戦前の日本の国家的強制によって生じたということ、そういうふうに位置づけていることについて間違いありましょうか。
#88
○政府委員(大鷹弘君) わが国の入管行政上、朝鮮半島出身の方々につきましては一般外国人と違った特別の処遇が与えられております。これは昭和二十七年の法律第百二十六号、これが基底になっているわけでございますけれども、この法律の中でそういう特別の待遇、特典を受けることのできる人たちの範囲、条件を決めております。
 それは二つございまして、一つは、そういう方方が戦前からわが国に在留しておられるということでございます。これは特に朝鮮半島それから台湾出身者の方々を念頭に置いております。それから第二に、この方々はかつてわが国の国籍を持っていたけれども平和条約の発効でわが国の国籍を喪失した、こういう方々であるということを規定しているわけでございます。
 したがいまして、入管行政上は、この二つの条件を満たす方々につきましては特別の処遇が与えられているということでございます。
 なお、歴史的ないろいろな沿革その他につきましては、私どもはそれぞれ認識は持っておりますけれども、入管行政に直接かかわるほどではないわけでございます。
#89
○和田静夫君 この論議のまとめとして、大臣に一言だけ私の意見を最終的に述べますが、戦前の日本が朝鮮や中国に侵略して多くの無事の民を侵した。殺害をした。この点を日中共同声明のように深く反省するならば、その侵略戦争の精神的支柱であった靖国神社の存在をどう考えるのかということは、やはり公人としては十分に考えてみる必要がある。
 その意味で、八月十五日の大臣としての参拝というのは、私としてはすべきではない。政府要人が八月十五日に参拝をされるということは、あの大陸の侵略戦争、アジアの解放、大東亜共栄圏の確立という美名で行われた侵略というものを結果として容認をすることになる。私もそう考えるし、私が接触をしてきた多くの中国や朝鮮民主主義人民共和国や、あるいは在日の韓国人を含む朝鮮人の人たちもそう考えている。そのことを私は意見として強く述べて、前段大臣が答弁をされた大臣のお考えの趣旨が政府要人として歪曲されることがないということを私はこの機会に期待をしておきたい、そう思うのであります。
 さて、法律案でありますが、先ほど来いろいろな論議がございました。さっきの答弁との兼ね合いで、次のように認識をしてよいかということを一前段で一言承りたいのは、簡裁の仕事がふえる。そして、約二万件が地裁から簡裁に移動する。そういう概略的な数字でした。私の調査、あなた方からいただいた数字を合わせて、一九八〇年の裁判官数が、地裁が千三百十一人、簡裁が七百九十一人。裁判官一人当たりの負担件数は、地裁が六百三十六件、簡裁が四千百六十六件。そうすると、簡裁が約六・五倍という数字になるんですが、先ほどの答弁を含んでそういうように認識してよろしいですね。
#90
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 委員御指摘の数字は、そのとおりでございます。
 ただ、その数字は地裁の全新受事件数、簡裁の全新受事件数をそれぞれ裁判官数で割ったものでございまして、裁判官の現実の事件の負担の重みというものを見ます上では、そういった数字での割り算では必ずしも妥当には出てまいらないと思います。裁判所の事件の中には、裁判官の負担度の高いものとして訴訟事件がございます。それ以外の事件は、訴訟事件に比べますと一般的には負担が軽い。ただ、訴訟事件でございませんでも、たとえば会社更生事件ですとか大きい破産事件になりますと、それなりの負担はあると思います。
 しかし、このお手元の法律関係資料にもございますが、たとえば三十四ページをごらんいただきますと、簡易裁判所の民事事件の種類別の新受件数が出ておりますけれども、ただいま私が申しましたのは、左側の方の訴訟という欄に書かれているものでございます。それが、真ん中辺の督促、公示催告、過料といったような事件になりますと、訴訟に比べまして負担としては軽くなってくるわけでございます。仮に五十五年の地裁、簡裁の訴訟事件だけについて裁判官数で割ってみますと、地裁につきましては、一人当たりの負担件数が約百六十七件、簡裁につきましては約百三十二件でございます。
 加えて、事件の内容について考えてみました場合には、簡裁の訴訟事件の多くがクレジット関係の事件で、容易に処理し得るものがきわめて多いのに対しまして、地方裁判所で処理いたします事件の相当多くが、一件一件非常に困難なものが多いという点から考えますと、件数から見ただけの比較では十分ではないように存じますし、われわれが簡易裁判所判事の方々からいろいろな機会に御意見を伺うこともございますけれども、負担が重い、重過ぎるというような声は余り聞かれないところでございます。
#91
○和田静夫君 先ほどの寺田委員に御答弁になりましたこととの関連ですが、簡裁の負担度との関係で裁判官や職員の増員などの手だてなんですが、定員法の改正の際に考えると述べられたわけですが、具体的にはどんな構想を今日お持ちですか。
#92
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 毎年大蔵省との折衝におきまして、裁判官の必要人員、次年度定員を増員していただきたい裁判官の人員、それに伴いまして一般職員をどの程度増員してほしいかといったような折衝を重ねてまいるわけでございまして、ただいま昭和五十八年度の増員計画がまだ固まっておる段階ではございませんので、次年度以降からの増員というものについて確たるものがあるわけではございませんけれども、年々、特に民事事件が複雑化しあるいは数もふえておりますので、それに見合った増員の努力は続けてまいりたいというふうに思っております。
#93
○和田静夫君 いや、事務ペースでは大体今週いっぱいぐらいでみんなまとまるわけでしょう、各省、来年度予算に対するところの基本的な要求、最も具体的な部分は。したがって、きょう具体的には全然まとまっていないという答弁にはならぬのじゃないですかな。
#94
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) ただいま申しましたのは、およその人数は私どもとしても考えておりますけれども……
#95
○和田静夫君 それはどれぐらいですか。
#96
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 私ども事務的には詰めておりますけれども、最終的に要求を出しますに当たりましては裁判官会議の御了承を得なければなりませんので、ただいまその数字を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
#97
○和田静夫君 十分協力をしようと思って申し上げたんですけれども、かなり警戒的ですが、後でちょっと教えてくれますか。平場でなんなら別問題ですが、それはいいでしょう。
#98
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) ちょっと検討させていただきたいと思います。
#99
○和田静夫君 裁判所法第三十六条に「裁判官の職務の代行」という条文がありますが、この実態はどうなっておりますか。
#100
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 裁判所法にございます職務代行と申しますのは、いわゆる兼務とは別に、それぞれの裁判所の事件の動向にかんがみまして、それぞれの地方裁判所が裁判官会議で決めるものでございます。
 その決め方も実はいろいろございまして、毎年年末に翌年度の事務分配というのを裁判官会議で決めるということになっておりますが、その事務分配の中で、どこどこのたとえば簡易裁判所にはだれが行くというふうなことを一つの事務分配の形として決めるというものがございますのと、それから急な必要がございまして突発的に起きましたときに、その都度裁判官会議等を開きまして決めるというものがございますが、これも裁判所法、法律自体が書いてございますように、むしろ最高裁判所はそういうものには介入しないというたてまえをとっておりまして、それぞれの地方裁判所がそれぞれ事務分配等と同様に決めていくということになっておりますので、数字的に何人ということはちょっと申し上げかねるわけでございます。
 兼務につきましては、先ほど申しましたように百数十人の兼務者がおるというわけでございます。
#101
○和田静夫君 時間の関係がありますから、たくさんきのう質問の通告で皆様方にあれしてありますけれども、省略をしていきます。
 ちょっと私、誤解もあるといけませんから聞くんですが、先ほど寺田委員の質問に対して、簡裁の判事の定員七百七十九というのは満たしていると、こういうふうに答弁されたわけですかな。
#102
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 簡易裁判所判事、それこそ時期によっていろいろございますが、いまはちょうど八月一日に新任の簡易裁判所判事を任命したところでございますので、ほぼ大体埋まっておるというふうに申し上げました。
#103
○和田静夫君 ただ、ここの定数の部分も新しい要求の中では増という要求は出るわけですな、具体的な数字は先ほどの話でいいから。
#104
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 裁判官の中にも判事、判事補、簡易裁判所判事、そのほか高等裁判所長官は定数が決まっておりますから、増員要求の対象としては判事、判事補、簡易裁判所判事というものが考え得るわけでございますが、具体的に今年度はどのところを増員要求しようかということにつきましては、それぞれの事件の動向を眺めつつやっておるところでございます。
#105
○和田静夫君 四十五条の簡易裁判所判事の職務に必要ないわゆる学識経験者の件ですが、昨日も言いましたけれども、選考任用者のほとんどが書記官、事務官あるいは裁判所職員、そういうふうになっているわけですね。ここのところは簡易裁判所の設立の本旨との関係でどうなんだろうかということを私はアマチュアなりに少し首をひねっているんですけれども、学識経験のある者は裁判所の関係職員だけじゃ私はないと思うんですね。四十四条で法学部の大学教授というのは別口ありますが、法学部以外の研究者でも簡裁判事となる資格を持っている方は私はたくさんいるのじゃないだろうかというふうに考えるんですが、それはそういうふうに考えてよいのでしょうか。
#106
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 簡易裁判所判事にはどういう方がいいかということにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、要するにいわゆる有資格者のように厳密な意味での法律ばかり勉強した、法律を長年やったという方でなくても、ある程度の法律的素養がありましたら、人格、識見りっぱな方であればそれでよろしいわけでございまして、だからただいま仰せになりましたような法学部以外のたとえば大学の先生というものも、簡易裁判所判事として必要な法律的素養がある限りにおきましてはそういう方も適格性を有する、もちろんのことでございますが、そういうことになろうかと思います。
#107
○和田静夫君 私も、言われるように、言ってみれば解釈法的なドグマに落ち込んでしまうというような構成ではなくて、もっと幅広い人々が簡裁判事として選ばれていく、行政の上ではそれが非常に必要だろうと思うので、そういうことを要求をしておきたいと思います。もっと論議をしてから申し述べるべきでしょうけれども、時間がありませんから……。
 警察庁、局長まだあれですが、日航の片桐機長の事件ですね、新聞報道がずっと先行しているんですけれども、これはどうも刑事責任が免責をされていく、そうなってくると、今度は管理者たる日航の責任というふうなことを考えることになりますが、その辺の現状と見通しとでもいいますか、ちょっと御説明願いたい。
#108
○説明員(仁平圀雄君) 局長がまだ到着しておりませんので、恐縮ですがかわってお答え申し上げます。
 本件事故の原因につきましては、去る四月十三日に出されました航空事故調査委員会の中間調査結果及びこれまでの捜査の結果から片桐機長の異常操縦によるものと認められておるわけでございますが、片桐機長につきましては、事故前の病状あるいは事故時の言動等から精神状態に疑問が認められましたので、目下専門家による精神鑑定を実施中でございます。また、会社側につきましては、片桐機長に対する健康状態の管理、関係者の職務権限、それから本件事故に対する予見可能性等につきまして現在捜査を進めているところでございます。
 いずれにいたしましても、警察といたしましてはできるだけ早く関係者の刑事責任を明らかにすべく鋭意捜査しておるところでありまして、鑑定を依頼しております航空事故調査委員会に対しましても鑑定結果を早く出していただくよう要請いたしているところでございますが、ただいまのところ、捜査の見通しを具体的に申し上げるという段階には至っておらないわけでございます。
 それから、鑑定留置の状況についてでございますが、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律違反の容疑によりまして、東京地方裁判所裁判官から鑑定留置状の発布を得まして、五月十二日から八月十一日までの三カ月の予定で東京警察病院多摩分院に鑑定留置し、筑波大学小田教授外一名の鑑定人により精神鑑定中でございますが、先日、鑑定人から鑑定留置期間を一カ月ほど延ばしてほしいという上申がございまして、七月三十一日には東京地方裁判所の裁判官から鑑定留置の期間を九月十一日まで延長するという決定をいただきましたので、同日これを執行いたしておるわけでございます。
 先生御指摘のように、鑑定留置が一カ月延長されたということからいろいろと推定の記事が出ておるわけでございますけれども、警視庁ではまだ鑑定内容については発表いたしておらないということでございまして、現在鑑定中でございますので、鑑定内容につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますので御了承いただきたいと思います。
#109
○和田静夫君 アメリカ連邦航空法施行規則に捜査当局は注目をされている、こういうことになってきていますね。アメリカの航空法と日本のそれとの違いは当然あるわけですけれども、日航がアメリカ航空法を知っていながら片桐機長を乗務をさせたというようなことになってくると、これはまた当然管理責任、こうなりますね、これは。
#110
○説明員(仁平圀雄君) 私もまだアメリカの状況については詳しく承知しておりませんが、御指摘のように、心身症というような問題が、アメリカでは機長としての職務を行わないということになっておるようでございますので、そういったことも当然念頭に置いて捜査を進めなければなりませんし、そうなりますと、会社側の刑事責任というようなものがいままで以上に問題になってくるであろうと考えております。
#111
○和田静夫君 どうもありがとうございました。
 最後ですが、昨年の三月十八日の予算委員会で治安維持法関係の資料を公開すべきだと質問をしました。そして、警察庁長官や行管庁長官、いわゆる政府側からは原則として公開するという答弁をいただきました。その後、関係者が法務省に公開要求に行ったところが、どうも余りはっきりしないということになってきている。あそこで触れた学者の方々の部分というのはかなりスムーズにいったんですが、それ以外の方々のものだとスムーズにいかないということが言われているんですが、そういう事実経過はございますか。
#112
○政府委員(千種秀夫君) 昨日ちょっとそういうお話を伺いまして、早速ありそうなところへ当たってみたのでございますが、そういうことを承知していないという回答でございました。
 具体的には、私ども司法法制調査部で資料室といいますか図書館を所管しておりまして、おいでになるとするとその辺ではないかということで日誌なども調べてみましたが、治安維持法関係の方はお見えになったという記録がないのでございます。所管からしまして刑事局ではないかということで刑事局にも伺ってみたのですが、どうもそういうことは聞いていないということでございまして、事実としましてはもう少しお話を伺って再調査したいと考えております。
 現在のやり方といたしましては、総合窓口制度になりまして秘書課の広報連絡室に閲覧窓口というものをこしらえてございます。これは法務省の本館の中央に大きな看板をぶら下げてございまして、どんな方でもそこへお見えになりますとそこで関係の部局に連絡をして御案内したり、判断を要するものについては後日御回答申し上げて御連絡を申し上げる、こういうような措置をとっております。これは五十五年に大臣訓令ができておりまして、それを施行するために秘書課長通達もできておりますので、何か法務省にお電話でもいただければ必ずそこが応対するようになっておりますので、いま現在そういうことはないと思っております。
#113
○和田静夫君 ただ一つ、昨日も申し上げましたけれども、治安維持法の当事者ですね、つまり犠牲者がたとえば自分の検事調書を見たいといった場合に、これは公開されますか。
#114
○政府委員(千種秀夫君) そういう資料ももしございますれば同じことになると思うのでございますが、その治安維持法関係の検事調書というものがあるのかどうかということをまず聞いてみましたところが、これは全部ないということなのでございます。ありましても、現在の刑事事件の記録ということでございませんで、これは戦前のものでございますから、あるとしますと法務省の保存資料ということになると思います。そういうことで、具体的に何が書いてあるかということでプライバシーの問題が起こるとかそういうことがありますと、それは担当部局の意見を聞かなければならぬということも生じますけれども、そのために見せないというようなことはないと思っております。
#115
○和田静夫君 大臣、あした人事院勧告が出るわけです。それで、これは法務大臣と最高裁にぜひ伺っておきたいんですが、公務員賃金据え置きの声がどうもかなり高まっているんです。私は一般論をここで言おうとは思っていないのですが、人事院という制度がある以上は、その勧告は正当に受けとめられるべきだということだけは申し上げたいんですが、裁判官といえどもかすみを食って生きているわけではないので、私はぜひこれはもう法務大臣、最高裁は強くやっぱり完全に実施をされるべきだという立場に立たれるべきだと思うんですね。
 戦後の裁判官の法を守った上で起きたいわゆる事件というものを、われわれは記憶をいつも新たにしながら思い浮かべるわけでありますけれども、法務省関係等の皆さんの賃金が、今日その社会的任務の重要性との兼ね合いにおいてわが国の現下の経済事情等照らし合わせてみて一体妥当なものかと考えてみれば、妥当なものになっていませんよ。したがって、妥当なものに近づけることの努力は皆さんの手によってもなされるべきだということを考えるんですね。そういう上で、大臣と最高裁との見解を承っておきたいと思うんです。
#116
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 裁判官につきましては、御承知のように直接勧告というものがあるわけではございませんで、一般職の国家公務員につきまして人事院から勧告が出されるわけでございまして、裁判官の報酬法につきましては、一般の官吏の例に準ずるという形の法律の規定もあるわけでございます。
 ただ、私どもといたしましては、人事院勧告がありました以上は、それに従ったベースアップの措置はとっていただきたいという希望は十分に持っているわけでございます。
#117
○国務大臣(坂田道太君) 人事院の勧告というものは尊重すべきであるというふうな気持ちで対処してまいりたい、こういうふうに思っております。
#118
○委員長(鈴木一弘君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。
   午後零時四十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時五分開会
#119
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、裁判所法等の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#120
○小平芳平君 午前中の質疑でも出ておりましたが、簡易裁判所はどういう目的でつくられたか、要するに簡易裁判所の設置された目的をお伺いしたい。
#121
○政府委員(千種秀夫君) 簡易裁判所は、少額軽微な事件を簡易迅速に処理するということを目的としておりまして、より具体的に申しますと、その数におきましては五百八十というような多くの数を配置いたしまして、それだけ庶民の生活に近い場所に裁判所を設置しまして、また裁判官となる人につきましては人生経験の豊富な一般の素人、法律家でない人を配置することもできるし、また手続につきましては素人でもできるようにやさしい手続を設ける。また、訴訟事件につきましては少額なものに限る。そのほか督促手続でございますとか調停、和解と、こういった素人が手軽にできるような手続というものを中心に管轄を定め、いわゆる一言で申しますと庶民的な裁判所と、こういうことでできておるわけでございます。
#122
○小平芳平君 そして、五百七十五庁あるわけでしょうか。午前中のお話のように、五百七十五庁の簡易裁判所はみんなそれぞれいま御説明のような機能を果たしておりますか。
#123
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 大変数が多うございますので、大都会にある事件数の非常に多い簡易裁判所もあれば、事件数のきわめて微微たるへんぴな地に設置されております簡易裁判所もございますけれども、それぞれ設置の目的に沿うた機能は果たしているというふうに存じます。
#124
○小平芳平君 事務移転庁というのは、これはどういうことでしょうか。
#125
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 裁判所法の三十八条におきまして、簡易裁判所において特別の事情によりその事務を取り扱うことができないときに他の簡易裁判所にその事務を取り扱わせることができるという規定に基づきまして、事務移転がなされるわけでございます。
#126
○小平芳平君 先ほどの御答弁にもありましたが、事務移転庁、それから未開庁等は何庁ありますか。
 それから、たとえ事務移転していても、あるいは未開庁でも十分機能を果たしておられますか。
#127
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 設立当初から開庁されておりませんいわゆる未開庁も法律的には事務移転庁でございますが、その数が八でございます。開庁後事務移転をいたしました庁が十二でございまして、合計で事務移転をいたしておる庁が二十庁ございます。
 未開庁である八庁につきましては、敷地の確保あるいは庁舎の確保というものができませんために開庁に至らず今日に至っているわけでございますが、大都会における未開庁につきましては、非常に近接地に簡易裁判所がございまして、そちらの方で十分国民の皆さん方にそれほど時間をかけないで利用いただけるようになっておりますのと、大都会以外のところの未開庁につきましては、多少の時間的な不便はございますけれども、今日までそれなりに安定した状態で他の開設をいたした簡易裁判所を御利用いただけていると思います。
 開設後事務移転をいたしました十二庁につきましては、いろんな事情から、たとえば火災で焼けてかわるべき庁舎の確保が困難である、あるいは土地の明け渡しを求められて明け渡すに至って、その後かわるべき敷地が求められない、あるいは庁舎が相当老朽化してきて裁判所として御利用いただくには十分でないために移転したといったようなところでございますが、やはり事務を取り扱っておりませんとそれなりの御不便ということは形式的には考えられますけれども、それぞれ移転先の簡易裁判所を利用することによって機能は果たしているものというふうに考えております。
#128
○小平芳平君 未開庁の八カ所は土地、建物がうまく手に入らないためにいまだに未開庁ということになっているという御説明でありましたが、その土地、建物を探し開庁しようという努力はいつからなさっていらっしゃるんですか。
#129
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 新憲法施行と同時に開庁すべきところを開庁されていないわけでございますが、なかなか敷地の確保が困難なため今日に至っているわけでございます。
#130
○小平芳平君 法務省はどう考えられますか。新憲法施行後、要するに簡易裁判所として開庁しようという努力をしているんですが、いまだに土地がないか建物がないかという理由で開庁してないということ。それで、裁判所の方からは迷惑はかけてないという御答弁であります。私たちのような素人がこの数が少ないとか多いとか、それからこのまま充実すべきだとか減らすべきだとか、そういうことを私は申し上げているわけじゃないんですが、要するに八庁は土地、建物が見つからないというだけの事情で、理由で戦後ずっと努力しているのにいまだに報いられないということに対してどうお考えでしょうか。
#131
○政府委員(千種秀夫君) これは法律改正の問題でございませんので、なかなか私の立場から申しにくいことでございますけれども、それは戦後の特殊な事情のもとで土地、建物を見つけることが困難なことは確かにあったと思います。そして、その後それをそれじゃどうするかということにつきましては、裁判所の御当局でいろいろと苦心をしてこられたことでございまして、私どもとしましてもそれが必要であればぜひ実現したらありがたい、こう思っておるわけでございます。
#132
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 説明が十分でなかった点があるかと存じますので補足させていただきますが、未開庁につきましては、開庁されないまま三十年以上経過いたしましてそれなりに一つの安定状態ができ上がっておりますのと、たとえば大阪を例にとって申しますならば、市内に三カ所の未開庁があるわけではございますけれども、いずれも大阪簡易裁判所に所要時間五分あるいは十分といったような場所でもございますし、私どもといたしましては、開庁されております、現に機能いたしております簡易裁判所の充実強化に力を入れるべきものと考えておるわけでございます。
#133
○小平芳平君 そうしますと、大阪の例で申しますと三カ所の未開庁は未開庁のままでやむを得ない、現にある簡易裁判所を充実していけば足りるのだということなんでしょうか。要するにその御方針を承りたいんです。
#134
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 私どもとしてはやむを得ないというふうに考えております。
#135
○小平芳平君 したがって、この五百七十五庁という数字は動いてもやむを得ない、むしろ減ることもやむを得ないということなんでしょうか。
#136
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) ただ、法律的に申しますと、やはり五百七十五庁存在はしておるわけでございますので、いま直ちにその法律を改正してそこを削ってしまおうという考えでいるわけではございません。
#137
○小平芳平君 次に、民事訴訟事務を取り扱わない庁は何庁ありますか。
 また、この点については午前中も御答弁がありましたが、その民事訴訟事務を取り扱わない庁は何庁あって、この民事訴訟事務を取り扱わなくても十分目的を達成している、簡易裁判所の少額軽微の事件を簡易迅速に扱うという当初の目標には十分かなっているというふうにお考えなんでしょうか。
#138
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 民訴事務不取扱庁につきましては昭和二十九年の裁判所法の改正の際に、当時三万円から十万円に事物管轄が引き上げられたときでございますが、当時の政府の原案は三万円から二十万円ということで提案されたわけでございます。したがいまして、相当程度の管轄の拡張がありますので、多くの簡易裁判所の中には人的あるいは物的にも拡張された事務を取り扱うにはいまだ十分整備されていないと考えられる簡易裁判所があるということで、最高裁判所規則で指定をするという方針がとられたわけでございますが、国会における修正の結果、十万円ということになりましたので、当初の予測ほどは多く指定する必要がなかったわけでございますが、それでも四十三庁ほど指定されました。その後、物的、人的な設備の充実に伴いまして、あるいはその簡易裁判所の管轄区域内における民事訴訟が相当ふえてきたというようなこともございまして、五庁ほど解除されております。
 その余の簡易裁判所につきましては、やはりまだ十分充実されていないという点と、その簡易裁判所が取り扱うべき民事訴訟の数がきわめて微々たるところがほとんどであるというところから、指定された現状のままでまいっております。したがいまして、非常に事件数の少ないところにつきましては、近隣の簡易裁判所で民事訴訟事務を取り扱っておりますので、形の上で全く御不便をかけていないとは申し上げかねますけれども、まあまあさほどの御不便をかけない状態でまいっておると考えております。多少管内の事件数のふえてまいっておるところもございますので、その辺につきましては、設備の充実を図るといった方向で、今後解除という点も検討してまいる余地はあると思っております。
#139
○小平芳平君 いまの御答弁に、民訴を取り扱わない庁が何庁だというふうにおっしゃったですか。
#140
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 当初指定が四十三庁でございまして、その後解除されましたのが五庁で、三十八庁になりましたが、その三十八庁のうち七庁につきましては、その他の事務も移転されましたので、現在は民訴事務不取扱庁は三十一庁となっております。
#141
○小平芳平君 裁判官が常駐しない庁、これは何庁か。それから二人庁、三人庁は何庁でしょうか。
#142
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 裁判官非常駐庁は百四十九庁ございます。一般職二人庁は四十一庁、一般職三人庁は百七庁でございます。
#143
○小平芳平君 それで、裁判官が非常駐でも、午前中の御答弁がありましたように、巡回していく、あるいは兼務していくということで十分不便はかけないでいるか、むしろ簡裁の当初の目的にかなった活動ができているかどうかということが一点。
 それから、二人庁というと、どなたとどなたになるでしょうか。この二人庁でも十分その機能を果たしておられますかどうか、お伺いしたいです。
#144
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) どのような簡易裁判所、たとえば事件数の少ないところにも職員が少なくとも三人おり、あるいは簡裁判事が常駐されるということが一つの意味では望ましいのかもしれません。しかしながら、簡易裁判所判事につきましても相当の資格あるいは識見を要求されておりますし、したがいましてその数をやたらにふやすというわけにもまいりません。
 そういった意味からの全般的な観点からの地方の効率的な運営という点から見ますならば、裁判官不在庁がこの程度あるのは私どもとしてはやむを得ないことではないか。その事務量を見ますと、通常の十分の一程度の事務量しかないところが相当あるわけでございます。午前中にもちょっと申し上げましたけれども、民事訴訟事件を取り扱っている庁でありながら年間ゼロ、一けたにすぎない庁が数十庁あるというような現状でございますので、その辺は二庁をかけ持っていただきまして、週二回程度通常の場合行っていただければ、十分簡易裁判所としての機能を果たしているものと思います。
 二人庁につきましては、通常書記官一名、事務官一名という配置だと思います。私どもとしましては、やはり一つの簡易裁判所としての機構を維持いたしますためには、せめて一般職員三人は欲しいということで努力をいたしておりますが、二人庁になりますと、事件数の少ない中でもまた非常に少ない簡易裁判所ということになりまして、それだけに、人事異動をおやりになる場合にも希望者も少ない、なかなか行っていただきにくいというような事情も一方にございまして、努力はいたしておりますけれども、やむを得ない状況かと存じます。
#145
○小平芳平君 新受件数が一番多い簡易裁判所と一番少ない簡易裁判所は、例を挙げてみるとこういうことになるということは御答弁いただけますか。
#146
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 民事訴訟事件の最も新受件数の多い簡易裁判所は大阪簡易裁判所でございまして、昭和五十五年の新受件数は四千七百二十一件でございます。逆に最も少ない簡易裁判所は新島簡易裁判所でございまして、昭和五十五年度における民事訴訟の新受件数はゼロでございます。
#147
○小平芳平君 たとえゼロであっても、簡易裁判所がそこに存在する、法律上も、また実体の上でも存在するということに意義があるというふうにお考えなんでしょうね。そこで、最高裁判所の方針としては、たとえ新受件数がゼロであっても、なるべく裁判所としての形は整えていきたいという方針なんでしょうか。
#148
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 民事訴訟事件の新受件数はゼロでございましても、簡易裁判所は国民に親しまれる裁判所として調停事件、即決和解事件あるいは督促事件、それから刑事で言いますと令状といったものを取り扱っておりまして、それなりの機能を果たしていると思います。特に、新島簡易裁判所につきましては離島でもございますし、簡易裁判所としての機能は十分果たしているものと考えております。
#149
○小平芳平君 法制審議会司法制度部会において、簡易裁判所制度についての審議を行われておりますか。
#150
○政府委員(千種秀夫君) 現在、司法制度部会において簡易裁判所の問題を審議しておりません。御質問の趣旨が、始まって以来ということでございますと、この部会が設けられましたときには、裁判所の上告制度とか、そういうものに関連をいたしまして訴額の問題が論じられたことはございますけれども、簡易裁判所独自の問題として議題になったことはございません。
#151
○小平芳平君 私がいま質問している趣旨は、簡易裁判所が当初はこういう目的でというふうにお答えになったでしょう。それで、現状においては五百七十五庁がそれぞれ目的にかない機能を果たしておりますかどうかという点を御質問しているわけなんです。
 昭和二十八年二月二十日ですか、このときに法制審議会司法制度部会が設けられ審議を始めたというようなことになっておりますかどうか。
 それから、現在は何もしてないというお話でしたが、昭和二十八年当時はどういう審議をなさったか、また結論はどういうことになっておられますか。
#152
○政府委員(千種秀夫君) ただいま御指摘のとおりに、司法制度部会は昭和二十八年の二月二十日に裁判所の制度の改善に関する諮問第九号というのを調査審議するために設置されまして、諮問第九号と申しますのは、裁判所の制度を改善する必要があるか、あるとすればその要綱を示されたいというのがその諮問の内容でございます。これに基づきまして、昭和二十九年一月までに八回にわたって最高裁判所の機構、その他裁判所の制度の問題について審議を行いまして、同月十六日にその結果を中間報告として提出したわけでございます。
 また、続きまして三十一年三月二十三日に、最高裁判所の機構及び上告制度の部分につきまして、上告制度改正要綱案というものを決定いたしまして答申を出しております。また、その後、右要綱案に関連する問題点を審議しました後、昭和三十二年まで判事補の職権の特例につき審議を行いまして、また答申を出しておるわけでございます。
 このように、昭和二十八年から三十年の初頭にかけまして、主として上告制度を中心にして、どのように裁判制度を改善する必要があるかということを中心に議論をしてまいりました。その関係におきまして、簡易裁判所の問題も議論になったということでございます。
#153
○小平芳平君 先ほど最高裁から御答弁がありました、民事事件を取り扱わない簡易裁判所の指定ということもここで議論されましたかどうか。
#154
○政府委員(千種秀夫君) 先ほど申しました中間報告を受け、民事訴訟法部会から要綱というものが出ておりますが、その終わりのところに「簡易裁判所の事物管轄の範囲の拡張」というのが出ております。それによりますと、第一として「簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張すること。」、二といたしまして「右に伴い、最高裁判所は、必要があるときは、最高裁判所の定めるところにより、特に指定する簡易裁判所にその所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の他の簡易裁判所の民事訴訟に関する事務の全部又は一部を取り扱わせることができるものとすること。」、こういう要綱ができております。その経緯から申しまして、この審議におきましてこの問題が論じられたと考えております。
#155
○小平芳平君 そこで、最高裁の方では、取り扱わない簡裁の指定は逐次解除していくという方針だということでしょうか。
#156
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 法制審議会の司法制度部会でどのような御議論があったか私つまびらかではございませんが、昭和二十九年の簡易裁判所の民事事物管轄の改定に伴いまして指定いたしました民訴事務不取扱庁につきましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、人的あるいは物的施設の充実、管内における民事訴訟事件の増加等をにらみ合わせながら考えてまいりたいと思っておりまして、相当ふえているところがございますので、その辺は十分今後措置してまいらなければならないところもあるかと存じますが、非常に少ないところにつきましては、まだ解除をするという考えは持っておりません。
#157
○小平芳平君 昭和三十九年、臨時司法制度調査会の意見書には、簡易裁判所は整理統合することを考慮することというふうな趣旨のことが出ておりますか。
#158
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) そのような趣旨のことが出ておると承知しております。
#159
○小平芳平君 そういうことが出ましても、先ほどの基本方針と申しましょうか、別に整理統合するというようなことは考慮はしていらっしゃらないということでしょうか。
#160
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) この問題につきましては、古くから私どもといたしましても検討してまいった問題ではございます。裁判所といたしましては、裁判所の任務であります適正迅速な裁判の実現という重大な使命を達成いたしますために、これまでの努力に加えまして、一層裁判あるいは裁判所の運営を合理的、効率的に行うよう努力しなければならないというふうに考えております。そういった観点から、裁判所の配置の問題が一つ大きな問題としてあると考えております。
 簡易裁判所が設置されましてから今日までの間に、人口の分布状況、交通事情等に相当の変化が生じておりますために、司法全体の機能を高めますためには、これらの状況の変化に対応した裁判所の配置というものが検討をされるべき問題であることには間違いのないところであろうかと思います。しかしながら、裁判所の配置は直接国民の権利義務に絡むきわめて重大な問題でございまして、単に事件数の多い少ないといった事務的、行政効率的な観点からだけでは律し切れない問題であろうかと思います。言ってみれば、司法の運営の根幹にかかわります事柄でございますから、各方面の国民的合意のもとに検討されなければならないことだというふうに考えております。
#161
○小平芳平君 去年の七月でありますが、服部最高裁判所長官が中曽根行管庁長官にお会いになったときに、裁判所も改革を検討努力したいというふうな趣旨を長官が述べられた云々というふうに新聞報道がありますが、この点はどうなんでしょうか。
#162
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 昨年七月、臨調の第一次答申が出ました折、中曽根行政管理庁長官が最高裁判所長官を訪れられまして、このような一次答申が出ましたと、これは行政府関係のものではありますけれども、裁判所においても自発的な御努力を願いたいという趣旨のことを述べられたというふうに承知しております。その際、服部長官は、御趣旨はよくわかりましたという御返事をされたように承っております。
#163
○小平芳平君 そういうお話が出たということで、別に、新聞に書いてありますように、前向きに積極的な発言があったというようなことでもないでしょうか。
#164
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 私が承知いたしております範囲では、御趣旨はわかりましたということでございます。
#165
○小平芳平君 それで、この点についても午前中に再三御質問がありましたが、二万件が簡裁にふえるだろうというふうな根拠についても午前中にお話がございました。この二万件がふえるとしましても、ちょうどうまく平等にふえてくれるとありがたいんですが、ふえるところは急速にふえる、そうでないところはそうでもないというふうな繁閑の差がますます激しくなりはしないかということになりはしないでしょうか。
#166
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) もともと非常に民事訴訟事件の新受件数の多い簡易裁判所から、先ほど御紹介しましたようなゼロといった、あるいは一けたといった簡易裁判所まであるわけでございますから、事件数二万件の地裁から簡裁への移りというものは非常に簡易裁判所によって差がございます。その点は確かでございます。そこで、きわめて小規模の簡易裁判所につきましては、数件今度の改正の結果移動をするような簡易裁判所から、あるいは千件を超えます新しい事件がふえることが予測される簡易裁判所もございます。これはもともと規模の大小によるものでございますから、まあやむを得ないというふうに思います。
#167
○小平芳平君 昭和四十五年の改正のときの附帯決議で調停についての決議がなされておりますが、調停委員不在の調停が、今回の二万件の移動によってますますそれがふえやしないかということはいかがでしょうか。
#168
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま御指摘のように、前回の裁判所法の改正のときの附帯決議で調停制度の刷新が求められたわけであります。これを受けまして裁判所といたしましては、四十六年の六月一日に臨時調停制度審議会というものを発足させまして調停制度の刷新の答申を求め、その答申を受けまして法律が四十九年の十月、施行になりました。調停委員制度、調停の手続等が拡充整備されたわけであります。それを機会に、私どもとしては調停制度の運用面における拡充に努めてまいったわけでありまして、人的、物的な手当ても相当なされております。調停委員に人を得、さらに物的な設備を備えまして、充実した調停が行われるよう努力をしつつある状況であります。
 このような状況でありますが、確かに御指摘のように、今回の改正によりまして二万件の訴訟事件が簡裁へ移動するということになりますと、それだけ手を取られる。したがって、調停がおろそかになるのではないかという御指摘、まことにごもっともでございます。ただ、調停事件の運営というものは各庁、庁の規模の大きさ等によりまして一様ではございません。いろいろございます。大きい庁になりますと調停専門の裁判官がおります。東京、大阪あるいは福岡といった大きな裁判所では大体そういう調停専門、訴訟はやらないという体制にあります。こういう庁が大体は大きな数の事件が移ってくるわけでございます。そういうところは、調停専門の裁判官がおりますから心配は要らないのではないかというふうに見ております。調停もやり訴訟もやるというところの方がむしろ多いわけでございますけれども、そういう庁におきましても裁判官が訴訟をやる人、調停をやる人を分けて期日を入れて、重ならないようにしているのが実情でございます。そのようなやり方、工夫によりまして調停に影響が出ないように現在も行われておりますし、今度法改正によればますます御指摘のような事態も考えられますので、そういう創意工夫が必要だろうというふうに考えております。
 何分、民事調停は民事訴訟と並びまして紛争解決の大きな役割りを担っておるわけでありますから、この調停機能が阻害されることがないように、いろいろな手当てをしたいというふうに考えております。
#169
○小平芳平君 それから、事物管轄が三十万円から九十万円に引き上げられるということでありますが、物価とか、前回の改正時点と比較しまして、いただいた資料にも出ておりますが、必ずしも三倍ということにはなってないと思いますが、この点についてはどんな御見解でしょうか。
#170
○政府委員(千種秀夫君) 先生御指摘のように、そちらにお出ししてございますいろいろな経済指標を見てまいりますと、三倍を超えるものもかなりございますし、また超えないものもございます。特に、超えないものとして、消費者物価指数なんというのはわりあい低く出ております。そういう数字をどういうふうに見るかということの問題かと思いますけれども、この消費者物価指数などというものがわりあい低く出ている理由を考えてみますと、これは家庭消費支出の中で比重をつけて対象を選んで統計を出しているというような数字の基礎になる資料の問題があるようでございます。
 経済変動と申しましても、経済事情の変動の中にはやはり所得が上がったか、また消費支出がふえたか、物の価値が相対的に上がってきたとか、いろいろな見方があると思うのでございますけれども、訴訟の対象になる経済的な利益というものは必ずしも消費者物価指数と並行しているようには思われないわけでございます。といいますのは、物価が上がらなくても所得が上がり消費がふえる、また蓄財がふえるということになりますと価値が相対的に価格が上がってまいりまして、やはり紛争の対象というものの価格もまた上がってくるように思うわけでございます。そういう意味からいろいろな指標を総合いたしまして、三倍を超えるものもかなりあるということから、大体三倍ということに落ちついたわけでございます。
#171
○小平芳平君 それで、この統計の問題についていろいろお話がたくさんあると思いますけれども、統計の問題はさておきまして、中間においては九十万円という数字ではなくて、百万円とか百二十万円というような予測と申しましょうか、そういうことが出た段階もあったかと思いますが、法務省当局としては九十万円が妥当な線である、これで当分大丈夫だというふうなお考えなんでしょうか。
 それから、事務の配分からその九十万というものが出てくるということではないんでしょうけれども、要するに二万件が簡裁へ移動するということが九十万円のねらいなのか、それとは全然関係なく決められているのだということなんでしょうか。
#172
○政府委員(千種秀夫君) この九十万円という結論に至るまでにはいろいろな議論がございまして、先回改正の際に附帯決議にありました法曹三者の協議会というものをまず開いたわけでございます。これは実務家の感覚からいたしまして、在野の弁護士先生の意見を全国的に広く伺ったわけでございます。その中で、いろいろなやっぱり意見があったようでございます。最初に新聞などには百万というような数字が出てまいりましたが、これはその途中の議論の経過を直感的に見まして、いろいろな指数が三倍になっておる、九十万というのはいかにも半端だから大方百万がいいところじゃないかというような推測記事が出たのが、最初の百万という数字であったように思います。
 いろいろな数字を見てまいりますと、先ほど申しましたように、三倍を超えるものがございますので、確かに百万というのも一つの線でございますが、生活実感として百万というのはやっぱり一けた上になりますので、大分高いという意見もかなりございました。いや、それも結構であるという意見も実はございまして、最高裁判所の方もこの法律が施行される時期と統計資料の時期のずれというものも考えまして、将来ある程度持続し得るものでなければいけないということから、百二十万という提案をされました。その百二十万でいいという意見も実はございました。ところが、地方へ行きますと、まだ三十万円でいいというような意見もございました。余りにもばらばらでございまして、弁護士会の中でもいろいろとその意見の統一に苦慮されたようでございます。
 その経過は三者協議会でいろいろとお話を伺っているわけでございますが、その結果、やはり三倍というところがいろいろな指標から見てもいいところではないか、また金額だけで決められないのであって、やはり不動産事件とか困難事件の処理についての処置というものを十分講じれば九十万でもいいのではないか、それでなければ六十万がいいとか、いろんな意見が出たわけでございます。それで、落ちつくところは九十万になりまして、私どもも九十万でほかの制度も加味すれば当分いけるという判断をしたわけでございます。
 そこで、その二万件を移すこと、地裁と簡裁の事件の負担あるいは分担比率ということが問題になるかということでございますが、これは先ほども先生が申されましたように、それが目的でこの改定をやっておるわけではないのでございますが、ただ物価が上がるとか経済変動が生じまして簡裁の取り扱う訴額の上限というものが上がりませんと、簡易裁判所へ来る事件がだんだん減ってまいります。先ほど来、これは人口動態とか交通機関の問題で簡易裁判所の事件が非常に減っているところがあるようでございますけれども、それに加えて、また経済変動によりまして減ってくるということになってまいりますと、これは簡易裁判所を身近で利用しようとする国民の立場から見ますと、簡易裁判所に受け付けてもらえないので遠い地方裁判所へ行かなければいけないというような事態も出てくるわけでございます。
 そういう観点から事件の分担比率というものを見てまいりますと、簡易裁判所の事件がどうも減ってきているところが多い。逆に都会のようなところは簡裁もふえておりますから、比率が必ずしもそう急激に開いてくるわけではないのでございますけれども、やはり地方の中小簡易裁判所を見ておりますと、事件比率が減るということはそれだけ国民から遠のくということにもなるわけでございます。そういう意味で、この事件の分担比率というのも、やはり経済指標と同じように一つの参考資料になる。そういう意味で、ある程度簡易裁判所の事件がないといけないと、こういうふうな考え方に立ってその分担比率を考えているわけでございます。
#173
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 三者協議におきます裁判所側からの当初の提案であります百二十万円という線につきましては、今回の改正の実現が期待される最も早い時期が昭和五十七年の秋であろうと昨年末予測したわけでございます。最も早い時期でことしの九月か十月である。当時、経済指標で出ておりました数値は昭和五十五年、あるいはものによっては五十四年のものしか出ていないものもございました。昭和四十五年と五十五年とを比較いたしましても、すでに三倍が妥当である。ここ数年の経済指数の変動をそのまま昭和五十七年の中ごろまで持ってまいりますと、四倍でも決しておかしくはない。また、そのもう一つ前の二十九年からの物価の変動を見ますと、もう千二百倍に達する指数を示すものがほとんどでございましたので、私どもといたしましては百二十万というのは合理的な線であるという考えを持ったわけでございます。
 しかしながら、十二年の間があったとはいえ、やはり一挙に四倍に引き上げるということは、家賃の四倍引き上げではございませんが、非常に抵抗感が多い。それならば百万円にすればどうかということも、先ほど出ました新聞報道等、先走ったと申しますか、予測記事で百万というのが出ておりましたし、百万円という線もこれまた考え得る線だと考えました。しかし、三者話し合いをつけなければならないその中におきまして、やはり日弁連側としては、先ほど千種部長もちょっと触れましたように、三けたに乗るということへの心理的な抵抗もあったようでございます。この際、不動産その他に手当てをすることによって、あるいは一般の事件についても必要的な移送の制度を盛り込むことによって、日弁連側も了解をされたわけでございます。
 私どもとしましては、四倍は四倍、それなりの理由があるとは存じますが、それではこの際は三倍にとどめておいて、いずれ経済事情の変動が将来ございますれば、そのときにはまた金額の点は話し合いで上げることも可能ではないかというような観点から、この際九十万円というところで合意を見たわけでございます。
 もう一つ分担割合の点でございますが、地方裁判所と簡易裁判所とはその性格、役割りというものが違うわけでございます。今回の改正も、前回の改正以降における経済事情の変動に見合った改定ということが目的でございまして、分担割合がどのぐらいが適当かということが先行する筋合いのものでないことは委員御指摘のとおりで、資料にお示しいたしました分担割合の変動というのは、経済事情の変動に見合った改定の結果こうなるということだとお考えをいただきたいと存じます。
#174
○小平芳平君 次に、民事訴訟費用法の改正について、この非財産権上の請求に係る訴えの訴額を現行の三十五万円から九十五万円に引き上げるとしておりますが、この理由について簡単で結構ですから御説明いただきたい。
#175
○政府委員(千種秀夫君) 算定不能の訴訟につきましては、これは民事訴訟法で地方裁判所の管轄ということになっております。これは特別な法律で、人事訴訟法で離婚事件であるとか、会社の決議について会社法でありますとか、そういうところでいろいろと特別法で地方裁判所の管轄にしているものもございますが、いずれにいたしましても、これらをひっくるめまして地方裁判所で管轄をしろということは、簡易裁判所では非常に荷が重いという特別な事件でございます。
 そういう意味で、これはもともと地方裁判所の事件であるということから、訴額としましては簡裁の三十万円を超える三十五万円ということにいたしまして費用を計算しているわけでございます。今度これが九十万円に上がりますと、これをやはり簡裁の訴訟物の上限をちょっと超える九十五万円にするのが同じ考え方からすれば妥当ではないか。そういうことから、算定不能あるいは非財産的な訴訟の目的物の価額というものは上限の上をいく九十五万、こういうふうにすることにいたしたわけでございます。
#176
○小平芳平君 九十五万円に引き上げることによって、手数料の増収見込み額はどのくらいと計算されますか。
#177
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 昭和五十五年度の新受事件を基礎にいたしまして推算をいたしてみますと、対象となる算定不能の事件は一審から上告審まで合わせまして六千五百三十七件となります。この事件数に値上げ差額を掛けた数字ということになりますが、これがただいま御質問の答えになるわけでありますけれども、三千四百七十万六千四百円ということに相なります。
 なお、第一審の場合、従前でありますと手数料が三千四百円でよかったものが、今回八千二百円になり、差額四千八百円がふえるという計算に相なります。
#178
○小平芳平君 簡易裁判所の目的、また簡易裁判所の特徴についていろいろお話がございましたが、この訴訟手続の特則がどの程度活用されておりますか。
#179
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 簡易裁判所の民事訴訟手続につきましては、いろいろな特別の定め、特則が民事訴訟法に規定されております。その中で最も国民との関係で重要なものは、訴えが口頭でできるという特別な定めであります。
 これの運用状況を申し上げますが、これは前回の裁判所法改正の際に附帯決議等による国会の要請を受けまして私どもいろんな施策をとった結果でありますけれども、四十六年以降順次訴えの口頭受理の件数がふえてまいりまして、五十五年におきましては一万一千七件、全体の新受事件の一四・二八%が口頭受理ということに相なっております。
 一応、いろいろございますけれども、これが代表的なものでありますので、口頭受理の実情を御説明したわけでございます。
#180
○小平芳平君 口頭受理の点はわかりましたが、要するに特則は十分活用されているという御判断でしょうか。
#181
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) やや個別的になりますが、特則の中で口頭による訴えの受理はいま申し上げたとおりであります。そのほかに簡易の呼び出しというものがございますが、これは普通は八百六十円かかる特別送達郵便でやるのが原則でありますが、これを六十円の封書でやるとか、あるいは電話で呼び出しをするというようなことができるという特則があるわけでありますが、これはかなり活用され、訴訟の経済性に役立っているように思われます。そのほか、簡易裁判所では答弁書とか準備書面とか証人の申出書とかといういろんな書面を本来ならば出さなきゃならないのでありますが、これは省略してもよろしいという特則があります。これもある程度活用されているようであります。裁判所側の省力化に役立つ施策として証人調書の省略の規定あるいは判決書の簡略化の規定がございますけれども、これらも若干ではありますが活用をされております。
 大体、以上のとおりでありまして、なお活用の余地があるのではないかという項目もないわけではございません。さらにこの裁判所法改正を契機に、きめ細かい特則の活用についての配慮をしていきたいというふうに考えております。
#182
○小平芳平君 要請受理それから裁量移送、これらの活用についてはどうなっておりますか、お尋ねしたいと思います。
#183
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 法律案関係資料、お手元にありますが、これの三十六ページに要請受理、裁量移送の状況を示す表がございます。ここに示してありますように、この二つの制度は以前からあったわけでありますけれども、これにつきましても前回の裁判所法改正の際に活用方が求められたものでありました。私どもの方で通達を出す等して、要請受理の活用を促すというような施策もとりました。その結果がこの表にあらわれておるわけであります。
 要請受理の事件数は左側にありますが、四十六年がピークでありまして千五百三十一件、五十五年は八百二件、裁量移送は四十七年がピークでありまして千二百六十三件、五十五年が六百八件、このような状況に相なっております。
#184
○小平芳平君 活用が活発になったことは、最高裁の通達が原動力であったということですか。
#185
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま申し上げましたように、四十五年の裁判所法改正の際に衆参両方の法務委員会におきましてたしかこの裁量移送、要請受理の制度の活用を求める附帯決議がされたということは、裁判所の内部に十分浸透したわけであります。そこへ、要請受理につきましては、できるだけ当事者の意思に沿うよう受け付けることという通達を出しました。このようなことが相まって、こういう実績が出てきたものというふうに理解しております。
#186
○小平芳平君 この必要的移送制度新設の理由としまして、不動産訴訟以外にも複雑困難な事件があるということでありますが、これは少額軽微な事件でも地裁へ持っていかれる、移送されるということなんでしょうか。
#187
○政府委員(千種秀夫君) 必要的移送の制度に関しましては、結論としてそういうことになります。
 ただ、その理由ということでございますが、現在でも裁量移送がございまして、この裁量移送はやっぱり複雑であるということが一つの理由でございますけれども、当事者が双方申し立てるというような場合には、やはり運用の問題として考慮せざるを得ないというようなことは現にあると思います。
 ただ、それが裁量ということになりますと、裁判所の判断をまって移送されるものでございますから、当事者が申し立てにくい。そのことは、本当に複雑な事件についてもやはり申し立てにくくなるのだ、こういうような実情があるわけでございまして、その結果、当事者双方が同意して両方から移送してくれ、こういう場合には裁判所が裁量で判断しなくても当然に移送させるようにしたらどうか、それが必要的移送の真の理由でございます。
#188
○小平芳平君 御説明はよくわかりますけれども、簡裁の目的、少額軽微と言いますが、軽微な事件であるかどうかは、少額であるかどうかもそうですが、ましてや、事件により内容によってそれは軽微な事件だと見る人もあるでしょうし、いや私にとってはきわめて重大事件だという場合もありましょうから、やはり簡裁の目的から見てそういうことはどうなんでしょうか。
#189
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のように、軽微とか少額とかいうものはかなり相対的な問題であろうと思いますけれども、たとえば労働事件のようなものを考えてみますと、仮に一カ月分の賃金であって、わずか数万円のものでございましても、そこにやはり労働法の問題が介在してまいりますと、争議事件は簡易裁判所では余りお目にかからない事件でございますから、特に素人の裁判官で労働法を専攻されない方につきましてはかなりむずかしい問題になってまいります。また、地域の支援団体もついてくる場合もございましょうし、そういうことは余り簡易裁判所の法廷ではないことだろうと思います。
 そういった裁判所の立場から見まして、いろいろとむずかしい問題がございますので、その個人個人の主観的な価値観というものだけではなくて、そういう法律問題一般の中で、比較的例が少なく、また複雑な法律問題を含む、こういうような観点で物を考えているわけでございます。
#190
○山中郁子君 私どもは、裁判所法の一部改正に衆議院で反対をいたしました。この法案が非常に慎重に審議をされなければならないと思っておりますゆえんは、大きく申し上げまして二つあります。
 一つは、すでに衆議院段階でも、それから本日も議論が交わされていることですけれども、戦後における日本の司法制度の民主化の一つの柱として創設をされました簡易裁判所の理念が大きく損なわれて現実にもいるし、これを一層促進するものになるということは否定できないのではないかという問題です。簡単に言ってしまえば、簡裁の性格はやはり相当変えられてしまうという危惧を私は持っております。
 それから二つ目は、最高裁いろいろおっしゃいますけれども、簡裁の現状は、現在でもかなりたくさんの事件ないしは相談事を抱えまして、要員要求も常に労働組合からも出されているという状況のもとで、今回の法改正に基づいて一層その業務量が増大するということでは、現場の実態からもこれは受け入れられないところであるのは当然でありますし、また、初めに申し上げました簡裁の設立趣旨そのものをも損なうものにしたがってなってくる。大きく申し上げまして、そういう二つの問題点があろうかと判断をしております。
 それで、そうした認識に沿いまして、若干できるだけ重複を避けるつもりではありますけれども、もう一つ突っ込んで御見解を承りたいところもありますので、その点は御了解いただくこととして、お考えを伺うことにいたします。
 初めに、簡裁の理念の問題です。これは衆議院段階でも、それから先ほど小平委員の御質問でも答えられておりますけれども、改めて、まず私の質問の出発点として確認をしたいのでありますけれども、たとえば裁判所法案の起章に当たった司法法制審議会の第五回第一小委員会、これは昭和二十一年でございます。ここで当事の幹事でありました畔上さんという方が、簡易裁判所の性格に関して、「名前の簡易でなく、言葉の響では民衆裁判であり、全国津々浦々の民衆が相寄り民衆が裁く、自分達の手で処理すると言ふのであり、単に簡単に処理すると言ふことになれば従来の区裁判所で賄へるので、要は民衆的色彩に重点があるのだと思ひます。」と述べておられます。
 それからまた、第九十二帝国議会衆議院におきましては、当時の木村司法大臣が本会議における政府提案理由説明におきまして、「簡易裁判所は、軽微な民事、刑事の事件を扱い、全国数百箇所にこれを設け、簡易な手続によって、争議の実情に即した裁判をするよう工夫いたしておるのでありまして、司法の民衆化に貢献するところ少なからざるものがあろうと期待いたしておるのであります。」と述べておられます。
 また、引き続きまして、これは昭和二十二年ですけれども、衆議院の裁判所法案委員会の答弁ですが、「簡易裁判所、これは直接民衆に接触する第一線に立っていく裁判所であります。本法の実施後には、五、六百の簡易裁判所ができるのですが、裁判の民主化がほんとうに実現できるかできないかということは、この運用いかんによっておると思うのであります。これらの判事になる人によろしきを得まして、そしてこの制度の完璧を期したいと考えておる次第であります。」等々述べておられます。そのほかにも、いろいろ当事の簡易裁判所創設に関する理念を政府の当事者が述べていることは多くあります。
 これらの簡易裁判所創設の理念というものが、現在においてもいささかも変わるものでないというふうに考えておられるのかどうか、その点をまずお尋ねをいたします。
#191
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 簡易裁判所創設の理念は、委員仰せのとおりだろうと存じます。
 先ほど千種調査部長からもお話のありましたとおり、比較的少額な民事事件あるいは軽微な犯罪に関する事件を、任用資格を一般の裁判所とは異にする裁判官でも取り扱える。したがって、手続を簡易にして国民の身近なところで処理できる。また一方、訴訟だけではなく、簡易裁判所が取り扱うにふさわしい調停、督促事件、刑事で言えば令状その他の事件を取り扱うこととされて設立されたわけでございまして、今日に至るまでその点につきましては私どもとしても何ら理念の変更を考えておりませんし、その理念の達成のためにできるだけの努力はしてまいっておるつもりでございます。
#192
○山中郁子君 その理念の達成のために努力をしてきているとおっしゃいますけれども、具体的にどのような努力をされていらっしゃるのか、これは大変疑問に思うところです。
 ここでひとつ私は具体的に、これは労働組合の文書によります彼らの意見ですけれども、最高裁判所はこのような簡易裁判所の設立の趣旨や本来の機能、現実の役割りを見ず、こういうふうな推移をしてきているではないかといって挙げていることが数点あります。それを申し上げますので、御確認をいただきたい。
 一、職員の配置を十年前に比べて総数で約四百五十名も減員している。二番目に、未開設庁八庁を放置している。これは先ほどから何回も確認をされました。三点目、十二庁を全部事務移転している。これも確認されてきたところです。
   〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕
四点目、三十八庁を民事事件移転庁にしている。五番目、この文書によりますと、「百五十庁を裁判官不在庁にし、」となっておりますが、先ほどのお話を聞きますと、百四十九庁になるようですが、それを含めて御確認をいただきたい。六点目、「現在、二、三人庁は百四十六庁におよび、」、これも先ほどお伺いしているところによりますと、百四十八庁になっているようでございますけれども、あわせて御確認をいただきます。
 このようにして、簡易裁判所の原点を踏みにじる政策を取り続けてきているという告発をされております。この点いかがですか。
 この問題と同時に、あなた方がそれでは創設以来、その理念に沿って拡充、発展、強化するべく努力をしてきたつもりであるとおっしゃるその努力の内容というのは、いかなる形で現在論証されるものなのかどうか、お尋ねをいたします。
#193
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) ここ十年、四百数十名の減員ということのようでございますが、実は簡易裁判所につきましては、地方裁判所あるいはその支部併置の簡易裁判所の場合におきますと、兼務発令その他で現実に簡易裁判所の事務を取り扱っている職員数というものが非常に把握しにくい面がございます。したがって、四百数十名の減ということは非常に確認がむずかしいわけでございますが、あるいは昭和四十五年に前回の事物管轄の改定が行われまして、昭和四十六年には相当数の事件が地裁から簡裁に移ったわけでございます。そのときには、必要な庁にはそれなりの手当てがされたものと私どもは考えております。その後十二年を経まして、簡易裁判所の事件は最近では多少民事訴訟事件はふえてまいっておりますけれども、その増加に比べまして、地方裁判所の事件の増加の方がきわめて大きく、また非常に内容も複雑困難な事件が地方裁判所には係属するに至っております。したがいまして、相対的に見ました場合、四十六年から今日までの間に多少、簡裁の事件の減少に伴う地方裁判所の事件増に対処するための人員が簡裁から地裁に動いたことは、これはあるように思います。
 次に、未開庁の点でございますが、未開庁八庁につきましては、大都会における、先ほど例にいたしました大阪三庁につきましては、非常に現在開庁されている大阪簡易裁判所に近い。しかも、現在に至るも敷地の取得がきわめて困難であるという事情が変わっておりませんし、そのために、形式的には五分なり十分であっても、あるいは国民のためには御不便になるのかもしれませんけれども、実質的に見ました場合に、さほどの御不便をおかけする状態にはなっていないと考えております。
 それから、開庁後事務移転をいたしました十二庁につきましては、あるいは火災によって庁舎が焼失した、あるいは敷地の明け渡しを求められて返還した、あるいは相当老朽化して裁判所としてのサービスを提供するにはふさわしくない状況下にあるといったような、それぞれの状況に応じて、それぞれの時期に移転されたわけでございまして、そういった状況を解消すべく努力すべきはもちろんでございますけれども、現に活動している簡易裁判所の充実強化の方に現在努めているという実情にあるわけでございます。
 次に、民事訴訟事務の移転庁につきましては、昭和二十九年の事物管轄の改定の際に、人的、物的な設備が必ずしも十全でない簡易裁判所について、当初、四十三庁移転し、その後五庁解除したわけでございますが、現在残っております庁につきましては、きわめて管内の事件数が少ないところがほとんどでございまして、相当多くなっているところもございますので、それらについてはやはり解除の方向で検討しなければならないというふうには考えております。
 次に、裁判官非常駐庁、ここ十年くらい約百五十庁ということで、年々、あるいは年度途中におきましても多少の変動がございますので、現在は百四十九庁に相なっておりますが、これらの庁の多くは非常に事件数の少ないところでございますので、限られた人を全国的な規模で有効に簡易裁判所に配置いたしますためには、この程度の裁判官非常駐庁があることは、私どもとしてはやむを得ないというふうに考えております。
 二人庁、三人庁、百四十数庁につきましても、私どもとしましては、一般職員の数はできれば最小限度三人おることが望ましいというふうには考えておりますけれども、非常に事務量の少ない、しかもそういうところは非常にへんぴなところでございまして、なかなか職員の異動の希望もむずかしいといったような、いろんな要素がございまして、やむなく二人庁でしんぼうしていただいておりますけれども、これが決していいというふうに思っておるわけではございません。今後ともその辺の解消については努力はいたしたいと思っております。
 先ほど簡裁のあり方を全うするためにどのようなしからば施策をとったのかというお話でございますが、前回の事物管轄の改定の際の国会におきますいろんな附帯決議で要望された点、これらはいずれも簡易裁判所のあり方にとって非常に重要な点でございまして、そういった実現可能な事柄につきましては、これまで十分努力したところでございますし、今回改正の中に盛り込まれております不動産訴訟の競合管轄といった点につきましても、やはり簡易裁判所らしい事件の処理の方向での改正だというふうに考えております。
#194
○山中郁子君 実現可能なことがほとんどなかったということになるのではないかと言わざるを得ないのでありますけれども、私が先ほど労働組合が告発をしている六点について申し上げました。これはあなた全部お認めになったんですよね。第一点目の、四百五十名の減員についてのみ実数は把握できないというふうにおっしゃる。これもどうかと思うので、先ほどの議論を伺っておりまして、調べようと思えば調べられることを、そういうふうにしてわからない、把握できない、そんなばかな話はないので、これは指摘しておきますけれども、いずれにしても、地裁との相対的な関係で簡裁の人間が減ってきているということはお認めになっているわけですよね。
 私は、先ほど一番最初にだから申し上げたんですけれども、確認したんですけれども、簡裁の理念は変わらないのか、変わらないのだと。そして、それに基づいて強化充実させるために努力をしてきているのだし、これからもするんだと、こうおっしゃるのだけれども、理念というのは相対的なものじゃないのですね。そうでしょう。理念に照らして充実をしていくということを言っていながら、そこの職員が大幅に減員されているということは、説明のしようのない軽視の結果であるとしか言いようがないのですよね。そのことを指摘しておきたいと思います。
 それで、もう一つ、どうしてもこれはけさほどから寺田委員あるいは小平委員の質問の中でのお答えで、もう私もわからないなあと思っているのは、未開設庁が八庁放置されている。三十数年にわたって放置されているのですね。そして、やれ土地がどうとか建物がどうとかとおっしゃるけれども、そして、なくても不便はかけてないのだと、こうおっしゃる。だけれども、法律ではそれが開設されるべくちゃんと決められている。そして三十数年も経過している。それは私、法治国家でそして法律を、法秩序を維持するための最高の機関であるところで、こういうことがずっと行われていて、それで大丈夫なんだ、不便かけてないんだと。そうかといって、一方では、だからといって法律を変えるというつもりもないし、これからどうするつもりなんだろう。いつまでも最高裁自身がやる気のない法律をそのままつくっておいて、これからまたずうっと長きにわたってこのまま放置しておくおつもりだとしかうかがえないんですけれども、これは開設のために努力をなさるというふうに、なさる方針を持っておられるんだと理解してよろしいんですか。
#195
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) その点につきましては、昭和三十九年の国会の衆議院の法務委員会におきましても、附帯決議で、十数年放置されたままの未開庁が数庁ある。再検討して開庁を必要とするもの、あるいは当面開庁を必要としないものを区分して、法的措置あるいは予算措置を行って簡易裁判所運営の合理化を図るべきであるという御決議がございまして、ごもっともなことだというふうに考えておりますけれども、そのためには法律の改正が要るわけでございます。
 現在、開庁できておりません八庁につきましては、開庁できなかった理由が現在も実はそのまま続いているという面もございます。しかし、ここ三十年以上経過して、そこに簡易裁判所がないという状態での別の安定状態のようなものもできておりまして、私どもとしましては、開庁されております非常に多くの庁、現に動いております五百五十五庁の充実強化の方にまず力を入れるべきものと考えておりますので、当面これらの庁については開庁できなかった理由もそのまま続いておりますし、改めて開庁することに向けて最大限の努力をするというところまでは申し上げかねる状況でございます。
#196
○山中郁子君 何回伺ってもそういうお答えなんで、これは大きな大変重大な問題だと思いますね。最高裁が、法律で決められているにもかかわらず、三十数年にわたって未開庁のまま放置しておいて、いまに至るもそれを開設するために一生懸命努力するんだということをおっしゃらないということは一体何を意味するか。私は、三十数年前のこの時点から現在に至るまでその場所での土地や建物の取得条件の困難さというふうにおっしゃるけれども、住民がふえてきていることは確実なんですよね。そして、その間にたくさんの土地や建物が売買されているんですよ。やる気がなかったからやれなかっただけの話であって、やろうと思えば幾らだってできる。現在だってそうです。そういうところに、あなた方が口では、簡裁創設の理念に照らして一生懸命努力もしてきたしこれからもするんだとおっしゃるけれども、それは本当に口だけのことにしかならないじゃないかということを改めて指摘をせざるを得ません。
 次に、簡裁の今度の改正で、初めに申し上げましたように、現在でも簡裁の業務はいろいろ大変多く困難で、要員要求も労働組合からも出されているという実情のもとで、さらに仕事が約二万件おたくの方の推定で簡裁へ移ってくるという状態になってくるわけですけれども、この簡裁設立のその趣旨に照らして、口頭受理ということが、その機能がもっともっと強化されて、本当に国民が裁判権の行使をより簡便にできるという事態をつくっていく必要があるんじゃないかというふうに思っておりますけれども、その点はあなた方が二万件ふえる、現状はこうだ、地裁に比べてどうかと、こういうふうに言っている場合の口頭受理の問題、
   〔理事小平芳平君退席、委員長着席〕
つまり、訴訟にならないそういうさまざまな相談事だとか、それから口頭受理の機能をもっと発揮していくという、そういう問題について何ら目配りをされていないままに、機械的に地裁との相対関係でもってこうだというふうにおっしゃっていると言わざるを得ないと思うんですけれども、その点はどうですか。
#197
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 先ほど委員が御指摘になりました、一体簡易裁判所についてどんな本来の機能に見合った施策をとっているのだという点でありますが、それにいまの御質問は関連すると思います。
 私ども、四十五年の裁判所法改正のときにいろいろ論議があり、裁判所に対するいろいろ国会からの要請があったわけでありますが、その中にただいまの口頭受け付けを含む簡裁の特別の定め、特則の活用というのがございました。これを積極的にこの施策を推し進める方策をとってきたわけであります。
 それで、実情を申しますと、訴えの口頭受理は昭和四十六年八百六十九件、全事件の一%にすぎなかったものでありますけれども、五十五年には一万一千七件、全事件の一四・一六%にまで拡充されてきております。
 なお、国民の立場から見れば紛争解決に非常に便利な方策、手段であります調停につきましても、同じく口頭受理の方策を推し進めてまいったわけでありまして、これは五十五年度におきまして三万一千五百十三件、申し立てに係る全新受事件の五二・三%に達したわけであります。これはかなりの成績をおさめているものと私どもは見ておるわけであります。このように、簡裁の理念の実現に無関心であったわけではありませんで、国会の御指摘もありましたけれども、このような施策をとってまいっているわけであります。
 さらに、つけ加えさせていただきますならば、調停制度の拡充刷新という点につきましても、これは簡易裁判所が主として調停は行うわけでありますが、この調停の拡充刷新ということは、いわば簡裁の理念を実現する一つの重要な施策であったわけでありますけれども、これも昭和四十九年の十月に法律改正を得まして相当な拡充をしたわけであります。その結果がお手元の法律案関係資料三十四ページにいろんな事件の統計表がございますが、この中の右から二つ目に調停の欄があります。これをごらんいただきますとわかりますように、四十九年が三万九千件くらいであったものが、五十五年には六万二千七百件ばかりに非常な伸びを示し、調停がいかに民衆に親しまれ活用されているかということがわかるわけであります。
 最近、調停の中身を見ますと、サラ金調停が四割を超えるような実情になっております。これは、サラ金に悩む一般の人々が裁判所の調停制度に救済を求めてきているわけであります。かなりのこれは効果を挙げているということを示すものだろうというふうに私どもは理解しておるわけであります。
#198
○山中郁子君 サラ金がその調停の大きな部分を占めて、国民の生活を守る上での役割りを果たしているということを裏返せば、サラ金の問題がふえた分だとすれば、それじゃやっぱり調停というのは、同じようにサラ金というのは新しい社会現象であり新しい問題点として出てきているわけですから、やっぱり変わっていないという件数の増加ですね。そういう意味で私は、だからサラ金の件数が多くもしなるとすれば、それは大変社会現象として残念なことで、これは解決していかなきゃいけないことで、そのために簡裁が役に立つということはもう当然そうしなきゃいけないことなんですけれども、そういう意味で申し上げているんです。
 というのは、ここにこれは「簡易裁判所」――「庶民の裁判所をめざして」というサブタイトルがついております日弁連の編集をいたしました本がございます。もちろん皆さん先刻御承知のとおりだと思いますけれども、これは五十年に日弁連が第三回司法シンポジウムを「簡易裁判所をめぐる諸問題」というテーマで開いたときの内容をまとめたもので、歴史的究明と綿密な実態調査によって簡易裁判所の問題と、それから理念あるいは現状を浮き彫りにしたものであるというふうに書かれておりますけれども、本当にそのとおりだと思いまして、大変啓発されるところが多いのです。
 この中で、たとえばこの口頭受理の問題で、これがその目的どおりに行われるとすれば、「庶民にとって裁判所のしきいをとりはずし、より多くの少額紛争事件を本来の解決ルートにのせるのに役立つであろう。」と。「ところが、その運用の実績は、」――日弁連がかなり詳細に調査をされているわけですけれども、「運用の実績は、はなはだ不振というほかはない。調査しえた範囲の簡易裁判所のうち、口頭の申立による起訴の受付を現実に行っている庁は、わずか約二割程度にとどまる。地方裁判所管内の全簡裁を通じて口頭受理がなされていないという例も」千葉や甲府などにあって「稀ではない」と述べています。
 そしてまた、「簡易裁判所の陣容がおおむね手薄であるという現状のもとでは、多くの簡裁が、口頭受理を万やむをえない場合の例外的措置とし、積極的に拡充しようとする意欲に欠けているように見受けられるのも、決して無理とはいえないかもしれない。」という分析をされています。つまり、実際の件数、サラ金問題などであなたがいま強調なされたようなのは、まさにそういう背景でありまして、実際にもっともっとたくさんの、簡易裁判所の創設の理念に照らして国民が裁判権の行使を簡易に行うことができるという、そういう積極的な簡易裁判所拡充強化体制の充実ということが求められているにもかかわらず、簡裁が「口頭受理に消極的でありつづけることは、庶民の裁判手続への親近感をますます失わせ、一層多くの紛争を危険な非公式解決手段へ流出させる結果となるであろう。」という日弁連の分析ですね、これをうなずかしめるものがあるというふうに私は思います。この点で、やはり口頭の受理が職員の不足のために行われていないというそういう現状に、やはりもっと率直に目を向けていただかなければならないと思うんです。
 日弁連の調査に基づく分析でも述べていますけれども、「手続の簡易性は、職員不足によって阻害されている。」と言っているんですね。それで、「現実には、書記官が不足し、多忙な大多数の簡裁では、これらの手続はほとんど実施されていない。現場の書記官の話では、訴の口頭受理をすれば、一件受理するのに少なくとも半日かかるし、場合によっては丁寧に事案をきいて処理すると、一日中かかってしまい、」、したがって他の仕事が手につかなくなる。だから、書いてきてくださいと、こういうふうになって、いわゆる口頭受理ということが行われないで、結局弁護士に依頼するか、あるいは司法書士の協力を得なければならない。お金がかかる。訴訟することをまた断念する。そういう選択の余地しかなくなって、いわゆる最初よく駆け込み裁判所というふうに言われたそのイメージによる手続の簡易性が結局没却されてしまっているという分析をされています。
 私は、やはり現状を調査いたしましても、そういうことは事実の問題としてあると思いますけれども、これらの実態をやはり単に訴訟件数を機械的に数字の上で、机上でもって計算するだけではなくて、これらの現状を十分踏まえた上で地裁との相対性でもって簡裁の方に事件を移して、それでよろしいんだ、あるいは簡裁から地裁へ人間が多少移動して簡裁の人数が減っていても、それはそれで簡裁を軽視したことにはならないんだということには絶対にならないと思いますけれども、いかがですか。
#199
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) もちろん、簡易裁判所にはそれなりの理念というものがございますが、やはり私どもいろんな施策を講じますには、簡易裁判所だけではなく全国のあらゆる段階の裁判所についても十分機能が発揮し得るように考えてまいらなければならないわけでございます。それらの点から見ますと、現在なお十分な、もうこれ以上は不要だというほど十分な人手があるとは決して考えておりません。したがって、そこは毎年事件の伸び等をにらみながら増員の御審議をお願いしているわけでございます。
 ただ、委員仰せの、地裁から簡裁に事件を移すことによってと申されました点は、昭和四十五年当時であれば非常に近くの簡易裁判所が利用できたであろう事件が、今日では遠くの地方裁判所まで行かなければならなくなった。その点は控訴審について見ますと、高等裁判所か地方裁判所かという点でまた非常な差が出てまいるわけでございまして、今回の事物管轄の改定は、昭和四十五年当時簡易裁判所で、国民が身近なところで事件の処理を受け得たその範囲内の、現在における事件は簡易裁判所で取り扱ってもらう方が国民のためになるという観点からの改定でございますので、その辺、御理解いただきたいというふうに存じます。
#200
○山中郁子君 四十五年の十万円から三十万円のときにだって大問題であったことを、皆さん方はよく御承知なはずですよね。ですから、そういう理屈は通らない。
 それで、先ほど国会での附帯決議なども体して一生懸命努力してきたとおりしゃるけれども、私は、じゃ附帯決議でどういうことがされたのかということを思い起こしていただきたいんですが、いま「簡裁の人的・物的設備充実」ということがこの附帯決議の中にうたわれています。実際上その「物的設備充実」という問題について見ましても、じゃ皆さん方、簡裁をどういうふうに充実強化してきたかということは、ちょっとそのまま伺えないという現状があると思います。
 これはたくさんいろんな例が出ておりますけれども、先ほど私が引用いたしました日弁連の調査に基づく結果の中で二、三の問題点をちょっと指摘してみますと、裁判所の庁舎の問題、まず、「設置当初の木造建築が」「未だ改築されない老朽庁舎は相当数に及んでいる。」、いままでのは老朽したからといって、そのままもうやめてしまうということもずいぶんありました。「なかには、長野地裁管内の大町簡裁・松本簡裁、高知地裁管内の安芸簡裁、水戸地裁管内の常陸太田簡裁等、明治時代に建てられた木造建物も存在している。」という状態です。
 庁舎の附属設備について言うならば、「必要な附属設備である図書室・弁護士控室・公衆控室・接見室等を設けていない簡易裁判所が少なくない。」ということも指摘をしていまして、このときの調査を日弁連がされたときの「三九八庁のうち一九・三%に相当する七七庁が、公衆控室を設けていない状態である。」、「また、たとえ公衆控室が設けられていてもきわめて劣悪な状態なものしかない裁判所が多い。」、冬になると非常に寒くて、あるいはまた物置同然であるとか、利用上大変不便なところに設けてあるとか、控え室が狭くて使用にたえないとか、そういう報告が多々あります。
 弁護士控え室についても、このときの調査の回答のあった三百九十庁のうち三五・九%に相当する百四十庁が弁護士控え室を設置していない。接見室に至っては、三百六十九庁の調査の中で、実に八二.三%に相当する三百四庁が接見室を設けていない。
 また、冷暖房設備の問題について見ますと、簡易裁判所庁舎の冷暖房設備は貧弱の一語に尽きると言っているんですけれども、三百九十三庁の調査の回答のうち、わずか二二・七%に相当する五十四庁で冷暖房設備が完備されているにすぎない。あとはなしですね、あるいは不完全。特に独立簡裁ではわずか九庁が完備しているだけである。そのうち四庁は東京地裁管内である。
 什器の問題についても、什器備品の面でも簡易裁判所は地方裁判所に比べて総じて貧弱である。簡易裁判所には原則として地裁からの中古品が配置されて、新品はめったに来ない。改善はいつも最終というのが常識で、地裁にクーラーが設置されたため扇風機が不要になるとそれを簡裁に回す。あるいは最高裁が移築したので、そこで使用していたクーラーが要らなくなって簡裁の裁判官室にこれを移す。現状がまさにそういう事態で、簡裁軽視というのはこうした物的設備問題でももう如実にあらわれていると思うんですが、私はいま一つの、その附帯決議を一生懸命やっていますとさっきおっしゃったけれども、この中には明らかに「人的、物的設備の充実」――物的設備の充実ということも入っているんですが、この現状はこれはもうどうこう言葉で言いつくろえるものじゃありませんので、こういう実態は率直にあなた方は見直していただいて、やはり簡裁を簡裁として理念に照らして重視していく、国会での約束も果たしていく、そういう立場にやはりきちんとお立ちにならなければならないのではないでしょうか。いかがですか。
#201
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 庁舎の関係でございますので私からお答え申し上げます。
 簡裁が物的関係施設の面でなおざりにされているのではないかという趣旨のお尋ねかと存じますが、現在、独立簡裁として私ども把握しておりますのは約二百六十庁ぐらいあると思いますが、いまいろいろお話しになりましたような未整備の庁が約百庁ございます。
 ところで、前回の事物管轄の改正以後、つまり四十五年以後現時点までにどのような整備がなされてきたかということを御説明申し上げたいと思いますが、一口に独立簡裁と申しましても、本庁併設の簡裁もあれば甲乙支部への併設簡裁、それにいわゆる独立簡裁という三種類があろうかと思うわけでございます。この四十五年から本年の三月末まで、つまり五十六年度予算までということに区切って申し上げますと、新営並びに増築数はトータルで約二百三十庁に及んでおります。その中で、いわゆる独立簡裁の新営は九十庁余りを数えまして、約百庁に近い独立簡裁を新営整備してまいったわけでございます。
 お話のような未整備の庁では、たとえば弁護士控え室の手入れが足りなかったり、あるいは公衆待合室の整備が不足であったりということになっている面もないとは申し上げませんが、いま申し上げましたように四十五年以降に限りましても、努力を重ねてきました現在の新営の簡裁に当てはめて考えますならば、当然のこととして裁判官室あるいは職員の事務室はございますが、法廷もございますが、そのほかに当事者の控え室は必ず二つつくるようにしておりますし、調停室もそれに見合った数だけ、複数の数は必ず設けるようにいたしております。また、最近の現象といたしまして、身体障害者設備も必ず設けるようにしておるような次第でございます。
 冷暖房の関係あるいは什器備品の関係、これにつきましては全国的な規模でそれぞれに順次追って施策を進めてまいっておる段階でございますが、私どもとして一言で申し上げますならば、いま仰せになりましたような新旧差別だとか管内差別だとか、そのようなことがないように、一年を通じましてそれは頭にたたき込みながらきめ細かく目配りをして今後も努力を続けていきたいと、このように考えておる次第でございます。
#202
○山中郁子君 それは何も新しくしたり何も充実したりしないわけじゃないでしょうから、それはこういうふうにこういうこともしました、ああいうこともしましたとおっしゃれば、幾らでもおっしゃれるでしょう。だけれども、日弁連の調査した裁判所で、幾つのうち何%がこういう状況だ、何%がこういう状況だと数字を出して明記しているわけですから、やはりそういう客観的なというか、説得できる改善の資料というものをあなた方はやはりお示しにならなきゃいけないだろうと思います。
   〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕
いずれにしても努力をなさる必要があることでありまして、実際に最高裁、地裁、間に高裁が入るんでしょうけれども、地裁、簡裁と、こういうような簡裁軽視というのは、一番最初の理念の問題に照らしても重大な皆さん方の考え方の間違いではないかということを指摘しておきます。
 この問題と関連するんですけれども、昭和三十九年に臨時司法制度調査会意見書というものが出されまして、これがいろいろ議論になった経過があるんですが、私は、やはりその後の推移が、今回の法改正も含めて、このときの臨時司法制度調査会の意見書の持っている大変危険な誤った方向に、最高裁が簡裁の内容をやはり変質させる結果の道を歩まさせていると言わざるを得ないと思うんです。このときに「事物管轄の拡張について」ということで、「現在すでに地方裁判所における裁判官の事務負担は過重であって」「地方裁判所と簡易裁判所との間の事務負担量のバランスは失われることになる。そこで、この観点から見るときは、第一審全体の能率を高めるため相当大幅に事件を簡易裁判所に移さなければならない必要性が生ずる」として、「経済情勢の変化、一般物価指数の上昇、一定金額に対する価値感の変動等は、民事事件について簡易裁判所の事物管轄を拡張すべき要因になるものと思われる。」ということが意見書として出されています。御承知のとおりです。
 それから、それに先立ちまして、さらに簡裁を区裁判所に改称するということもこの時点で出ているんですね。
   〔理事小平芳平君退席、委員長着席〕
一番最初に私が申し上げましたけれども、戦前の区裁判所とは全く違う理念に立って戦後の簡易裁判所が創設されたにもかかわらず、このときの臨時司法制度調査会の意見書の危険なこうした内容に沿って、具体的には、結果を見れば、それからまた、いま出されている裁判所法の一部改正案を見れば、そのような進め方がされているというふうに指摘せざるを得ません。
 それで、実際問題として皆さん方が訴訟件数でもっておっしゃるけれども、それのほかに実際には訴訟件数にはあらわれない窓口相談その他その他さまざまな業務があるわけですよね。そういうことが全司法に代表されるそこの職員の方たちの声となって、この裁判所法の一部改正、事物管轄の問題についていろいろ言われております。午前中に寺田委員も指摘されたとおりだと思います。
 それで、私はもう一つ労働組合が提起をしています問題点をお示しして御意見を承りたいのですけれども、この問題について、つまり今回の法改正に伴ってどうなるかということについての職員の意見を聞いている統計があるんです。拡張されたら増員が必要だと思うかという質問に対しましては、全体としては八三%の職員が、増員が必要だと思うというそういう回答をしているんですね。それで、九十万円に拡張されたら仕事が処理できるだろうと答えているのは、本庁・甲号支部併設庁ではわずか一・三%しかいない。あとの人はやはり無理しなきゃならないだろう、残業しなければ処理できないだろうと、こういうふうに答えておられます。それから、本庁・甲号支部併設庁では九二・三%の人たちが拡張されたら増員が必要だと思うと、こう答えていらっしゃるのですね。
 一々細かくは申し上げる時間がありませんけれども、私はこういう実際に現場で働いている人たちの数として訴訟にあらわれないそういう日常の業務のあり方、そしてしかも簡裁の目的に照らせば、窓口相談その他その他そうしたものこそが、もっともっときめ細かく充実した形で対応されなければならない業務の本業の一つであると言っても差し支えないと思うんですけれども、こういう職員の受けとめ方について、もっとやはり率直に事態を、事実をよく見て、働く者の立場に立って、その職員の立場に立って要員の問題も考えていかなければならないし、もしそのようにして考えれば、さっきおっしゃったように小、中、大とあれすれば小、中は全然問題はない、大の方は少しはふえるけれどもこれもやりくりできるんだと、こういうような安易なお答えは出てこないはずだと存じますけれども、その点はいかがでございましょうか。
#203
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 私自身も、今回の事物管轄の改定に関しまして三者協議が成立する直前ころでございましたか、全司法本部の役員の方とお目にかかりまして全司法の意見あるいは要望といったものもお聞きしたわけでございます。
 そのときに、ただいま委員仰せのような観点からのお話もございました。しかし、私どもの認識ではやはり相当の食い違いもあるように思います。二人庁、三人庁といったような簡裁につきましては、あるいは全司法の方で言っているのではないかもしれませんけれども、それよりもう少し規模の大きい簡易裁判所につきましても私どもの考えでは、認識しておりますところでは、さほど今回の改定によって事件数が変動すればもうどうにもならないというようなものではないように思っております。
 今回の改正は、不動産訴訟の競合管轄あるいは双方申し立てによる必要的移送といったような新しい制度が盛り込まれておりますので、変動数も予測にすぎませんけれども、相当数変動する簡易裁判所につきましては、もちろん人的な手当てが必要になってくるところがあることもこれも十分認識しておりますので、そういった庁につきましては、地元の地方裁判所と十分連絡をとって対処してまいるつもりでございます。
#204
○山中郁子君 窓口相談その他その他の訴訟件数みたいな形で表にあらわれないそういう問題、仕事こそ、簡裁の任務に照らして重視していかなければいけないことで、そういう潜在的な要求はたくさんあるわけですね。だから、そういうものがもっともっと生かされて表にあらわれてきて、そしてそれが受け入れられる条件が必要なんだ、そこが簡裁の趣旨に沿う業務のあり方だということについては御異存はないと思いますけれども、その点はいかがですか。
#205
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) いわゆる簡裁におきます窓口相談につきましては、一般の私人が最初に裁判所と接触するその接点とも言うべきところでもございますし、また、一方当事者の言い分だけをその場合聞くということになりますから、担当職員としては裁判所の公正さに疑いを抱かせることのないよう、訴訟とか調停の手続、申し立て方法など手続的な面を教示するにとどめまして、事件の中身あるいは結論については当事者が誤った認識を持たないように特に意を用いるべきであります。
 したがいまして、そういったところには各庁とも経験豊かなベテランを配置しております。窓口事務と言われます簡裁の受け付け事務につきましても、今後とも対応に遺憾のないよう対処してまいりたいと思います。
#206
○山中郁子君 その窓口事務が、さっき日弁連の調査で御紹介したような状況で、受けるに受けられないという事態だということも十分配意をしていただかなければならないと思います。
 関連いたしまして、これは日弁連でも提起をしておりますし、すでにいろいろと議論にもなっていると思いますけれども、定型訴状用紙の用意、そうしたものなどの一層の綿密な配備などで口頭受理をもっと促進させるという問題、さらに休日、夜間の受理の検討、具体的に、たとえばそこに箱か何か置いて、そこへ入れて休日、夜間でもとにかく出せるとか、それから当直の方たちで受け付けることができるとか、とにかく受け取るだけということだとか、それからこういうふうにしてトラブルを解決する道があるんですよと。
 つまり、簡易裁判所ということで、一々弁護士や、日本の国民の国民感情として裁判というのはややこしいものだ、それでお金もかかるものだと、こういうことの中だけれども、やはり国民の裁判権の行使という観点から、簡易裁判所というこうした裁判の簡単にできるものがあるのですよというPR、そうしたものをもっとやはり強化して、簡裁の業務を消極的に受けとめるのではなく、積極的に国民の利益を守る立場で、いま具体的な提起をいたしました内容について受けとめ実践をしていくというお考えがあるかどうか、ぜひそのようにしていただきたいと思っておりますけれども、お伺いいたします。
#207
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) まず、第一点の口頭受理の点でありますが、これは訴えのみならず調停につきましても、先ほど申し上げたとおりその施策を推進しているところであります。
 現実にどのようにやっているかと申しますと、窓口に訴状記載例というものを各裁判所に置きまして、しょっちゅう出てくるであろう訴えの形式を想定して、こういうふうに書けばよろしいのですという記載例を置いております。同時に、窓口に口頭起訴のための調書用紙を備えつけておきまして、これも七種類くらい訴訟の多い類型を選んでその用紙を置いておきます。これに書き込めばよろしいというような形をとっておるわけであります。
 調停につきましても全く同じような措置をとっておりまして、この調書用紙は相当数、ちょっと数は忘れましたが、数十万部を各簡易裁判所に配付して、この口頭受理の施策がさらに推し進められるように措置をとっております。
 次に、夜間、休日の受け付けでありますけれども、これは宿日直が行われている庁におきましてはもちろんその宿日直者が受け付けをいたしますし、宿日直者がいない場合には、郵便受けに入れておけば次の一番最初の執務日にそれを郵便箱の中から出して受け付ける、こういうような措置がとられております。
 最後の広報の点でございますけれども、簡易裁判所のいろいろな民衆に親しまれるような施策、調停の口頭受け付けとか訴えの口頭受け付け、あるいは調停制度そのものといったものを、あらゆる利用できる方法、PRの媒体を使いまして広報活動をしているのが実情であります。たとえば、対応する地方公共団体の広報紙に、口頭受け付けをしますよといった、あるいは調停というものはこういうものです、簡単に利用できますというような記事を載せてもらうというような方法をとっているところもあります。
 でき得る限りの広報施策、これは御指摘のようにとるべきだろうというふうに考えまして、私どももそのような措置をとっておるのでありますが、さらにその施策を進めたいというふうに思っております。
#208
○山中郁子君 時間が参りましたのであと二点だけまとめて質問をさせていただきますので、簡潔に御見解を伺うことにしたいと存じます。
 一つは、簡裁判事の問題なんです。これはきょうも議論になりましたので、簡単にちょっと私の意見と、それからお考えも伺うことにしますが、この推薦とそれから試験、これによって選抜されるというふうになっています、簡単に言いますと。それぞれやはり問題がありまして、推薦というと結局、長い間そういう仕事をしてきたけれども必ずしも簡裁の判事として適格であるかどうかということよりも、論功行賞的な人事が行われているという批判もあります。それからまた、試験というのはそれはそれでいいんですけれども、この場合には試験を受けるについても、やはり推薦委員会でもって推薦されないといけないという仕組みになっているために、これは労働組合も日弁連なども批判的な見解を示しているんです。
 要するに、日弁連の言葉をかりますと、「推薦を希望する書記官等にとっては上司であり、」つまり推薦委員会のメンバーがですね、「司法行政上の監督権者である。そのため、推薦の過程で司法行政上の一定の配慮が入ることは避けられない実情にある。いいかえれば、最高裁にとって「好ましくない人物」は、その他の点においていかに簡易裁判所判事として適格者であろうとも、簡易裁判所判事になる道を閉ざされてしまう。」、試験だとはいえ、推薦委員会を通らなきゃいけないから。こういう問題点がかねてから指摘されておりますので、私はどうこうということをいま申し上げるつもりはありませんが、より公正な簡裁の趣旨に照らした適切な人選が、選抜が民間からの登用も含めて行われるべきであるという観点に立って、やはりこの簡裁の判事の選抜のあり方について見直しをする必要があるのではないかという意見を持っておりますので、その点についての見解をお伺いします。
 それからもう一つは、最後になりますが、やはり最初から私申し上げましたように、あなた方はいろいろおっしゃるけれども、たとえばお金の問題だとか、それから要員の問題も結局はそうなんですけれども、地裁との相対的な関係で、簡裁の方がどうだとか、そういうことがやはり出てくるんですね。つまり、私はやはりもっとオーソドックスに、簡裁の趣旨に照らしてもっともっと拡充強化しなければならないということはいっぱいあるんだし、そのことは言葉の上ではあなた方も否定なさらないんだから、正攻法に、正面突破というのですか、やはりその財源措置を国に要求して、そしてそういう期待にこたえる措置を図っていくべきだ。地裁が大変なら、地裁だって当然そうです。国民の権利を守る上で重大な司法なんだから、そういう意味で地裁は地裁でちゃんと足りないものはそれで措置をしていく、簡裁は簡裁でより一層充実強化していく、そういう正面突破というか、正攻法の態度を維持、堅持して努力をされるべきだと思います。
 これは三月三十一日、たしか予算委員会の委嘱審査という形で行われた法務委員会で、寺田委員が財政法十八条第二項に関連いたしまして質問されていますけれども、まさに司法の独立という観点からの憲法の理念に立ったこの財政法上の立場に立って、きちんとしたそうした理念を持った予算の要求、そしてまた、断固としてそれに基づく簡裁、地裁それぞれの国民の利益を擁護する立場での充実強化に努力をされるべきだと考えておりますが、その二点について最後に見解をお伺いをいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
#209
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) いま二点おっしゃいましたうちの第一点の、簡易裁判所判事の任命につきまして簡単に申し上げたいと思います。
 簡易裁判所判事は、いわゆる有資格と特任と両方ございまして、ただいまの山中委員の御質問はいわゆる特任簡裁判事の任命に関することでございます。これにつきましては、これも御指摘にございましたように、各地方裁判所に置かれております簡易裁判所判事推薦委員会の推薦、この簡易裁判所判事の推薦委員会と申しますのは、これは裁判所だけでやっておるものではございませんで、まさに弁護士会からもお入りいただいておりますし検察庁からもお入りいただいておりまして、いわば裁判所とは別のそういう推薦委員会が推薦をしてくる。
 その推薦がありました者につきまして、最高裁判所にございます簡易裁判所判事選考委員会で選考する。この選考委員会の方も裁判所だけではございませんで、弁護士会からも入っていただいておりますし、検察庁等からも入っていただきました、いわば法曹三者の集まった選考委員会でございまして、そこで選考しておるわけでございまして、確かに仰せのとおり、簡易裁判所判事につきましては、その設立の目的に従った公正な任命が必要だということはそのとおりでございまして、私どもとしても、いままでもそうしておるつもりでございますし、ますます今後もその点については配慮をいたしまして、設立の趣旨に従ったような、いい簡易裁判所判事が任命できるような、そういう配慮をやっていきたいというふうに考えておるところでございます。
#210
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 財源措置の点についてのお尋ねでございますので、お答え申し上げます。
 予算編成作業につきましては私どもといたしましては、裁判運営というのは私ども裁判所にとりましては最も大切な事柄でございまして、それにいささかでも障害の生じないように懸命の努力を続けてまいっておるところでございますが、内閣に席を持たない裁判所といたしましては、委員もいささかお触れになりましたいわゆる二重予算制度というものもございます。これは私どもとしましては、この裁判所の予算における要求を貫徹するためのいわば最後の手段ということになるわけでございますが、それを常時念頭に置きながら、内閣あるいは財政当局と接触を続けてまいっておるような状況でございます。また、内閣あるいは財政当局におかれましても、この点は十分に念頭に置かれた上で裁判所の要求についていろいろ御判断をなさっているものと私どもは信じているところでございます。
 仰せのとおり、私ども、重大な予算の編成につきましては今後とも最大限の努力を続けていく所存でございます。御理解を賜りたくお願いを申し上げます。
#211
○山中郁子君 終わります。
#212
○委員長(鈴木一弘君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#213
○委員長(鈴木一弘君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 裁判所法等の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#214
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#215
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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