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#1
第096回国会 法務委員会 第16号
昭和五十七年八月十日(火曜日)
   午前十時六分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 八月九日
    辞任         補欠選任
     加瀬  完君     矢田部 理君
 八月十日
    辞任         補欠選任
     世耕 政隆君     岩本 政光君
     八木 一郎君     大木  浩君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鈴木 一弘君
    理 事
                平井 卓志君
                円山 雅也君
                寺田 熊雄君
                小平 芳平君
    委 員
                岩本 政光君
                臼井 莊一君
                大木  浩君
                戸塚 進也君
                増岡 康治君
                矢田部 理君
                和田 静夫君
                山中 郁子君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  坂田 道太君
   政府委員
       法務大臣官房長  筧  榮一君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  千種 秀夫君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   梅田 晴亮君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   大西 勝也君
       最高裁判所事務
       総局民事局長兼
       最高裁判所事務
       総局行政局長   川嵜 義徳君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   参考人
       日本弁護士連合
       会前事務総長   落合 修二君
       一橋大学教授   竹下 守夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨九日、加瀬完君が委員を辞任され、その補欠として矢田部理君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(鈴木一弘君) 裁判所法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として日本弁護士連合会前事務総長落合修二君、一橋大学教授竹下守夫君の御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 参考人の方々には御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
 本日は、それぞれの立場から忌憚のない御意見を承りまして、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じます。
 これより参考人の方々に順次御意見をお述べ願うわけでございますが、議事の進め方といたしましては、初めに参考人の方からお一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただくという方法で進めてまいりたいと存じます。
 それでは、まず落合参考人からお願いいたします。落合参考人。
#4
○参考人(落合修二君) 御紹介いただきました前日弁連事務総長の落合修二でございます。
 ただいまから、上程されております裁判所法等の改正法案につきまして、参考人としての意見を申し上げたいと思います。
 この法案は、法曹三者、つまり裁判所、法務省、日本弁護士連合会、いわゆる法曹三者によりまして長い時間をかけ克明な審議を遂げて、本年三月、三者間におきまして合意された内容がこの法案に盛られておるわけでございますので、私はその三者協議に議題設定から最後の合意に至るまで直接関与させていただいておりますので、そういう観点から本法案の持つ意味、そしてまた、今後の問題点等を述べさしていただきたいと思います。
 この法案は、簡易裁判所の民事事物管轄の上限を現行の三十万円から九十万円に引き上げることを主眼としておりますし、またこれに関する特別な措置として、一般的に複雑困難と思われております不動産に関する事件は、訴額のいかんにかかわらず地方裁判所と簡易裁判所の合意管轄とするということが含まれております。また、一定の要件のもとに、簡易裁判所に係属しておる訴訟事件を必要的に地方裁判所に移送することなどがその内容となっております。
 簡易裁判所の民事事物管轄の上限訴額は、すでに先生方御承知のとおり、昭和二十二年発足当時五千円であったものが、その後数次の改定を経まして、昭和四十五年、三十万円に引き上げられて今日に至っておるものでございます。
 その改正につきましては、単に経済事情の変動等で簡単に改定していいものかどうか、より根本的な問題があるのではないかということから、その都度多くの議論が展開されてきておるところでございます。そこにこの問題の重要性もあるわけでございますが、特に昭和四十五年の改正におきましては、弁護士会側は簡易裁判所の本来の理念、本質にもとるものではないかということで、この十万円から三十万円に引き上げる案に対しましては強力な反対を続けてまいりました。
 御承知のように、簡易裁判所は昭和二十二年に発足したわけでございますが、当時の成立の過程などにもしばしば述べられておりますように、戦前の区裁判所、つまり地方裁判所の下級審としての、その下にある同質の裁判所、すなわち区裁判所とは全く性質を異にして、戦後の司法民主化の一環として民衆に親しみやすく、そして軽微なものについてはできるだけ簡易、簡便、迅速に、かつ低廉に処理していただくということ、そしてまた、調停制度などを強力に推進することによって、専門的な知識、素養がなくても当事者本人が気軽に、そして簡便にこの裁判所を利用することができる、いわば民衆的裁判所といいますか、あるいは駆け込み的な裁判所と申しますか、そういったものとして発足したわけでございます。
 したがいまして、その裁判に当たる裁判官の資格につきましても、いわゆる厳格な法曹資格を有しない者でも裁判官に任用できるということや、あるいは手続におきましても、地方裁判所で行われておりますような民事訴訟法そのものを厳格に適用していくことでなくて、たとえば口頭で訴訟が提起できるとか、もろもろの簡易な特則手続が設けられております。したがいまして、おのずからそこで扱う訴訟事件というものはどうしても金額的にも比較的少額であるものであり、かつ複雑困難でないものを、いま言ったような方式あるいは機構で処理していくということが求められておるわけでございます。
 ところが、この訴額を引き上げることによりまして、より多くの事件が、そしてまた、中には複雑困難な事案も当然含まれてまいります。こういったものをいまのような制度、運用で行っていいのかどうかという点が当時大きな問題になりまして、弁護士会側としてはとうてい許容できないものであるとして、強く反対を唱えてまいったわけでございます。
 また、国会における審議におきましても多くの反対意見が表明されておりますし、法案の可決に当たりましては、両院におきましてそれぞれ重要な附帯決議までなされておるところでございます。衆議院におきましては「簡易裁判所判事の充実強化」、訴訟手続の特則の活用、地方裁判所における受理、地方裁判所への裁量移送の活用、「簡易裁判所の人的、物的設備の充実強化」等が附帯決議としてなされております。また、参議院におきましても「今後、司法制度の改正にあたっては、法曹三者の意見を一致させて実施するように努めなければならない。」ことを指摘された上、特則手続の活用等、幾つかの決議をされております。
 このように、簡易裁判所の事物管轄の引き上げ問題は、わが国の裁判制度の根幹にもかかわると言ってもいいくらい重要な問題でございます。そういう経過を経て今日に至っておるわけでございますが、この参議院における決議の中に、先ほど申し上げましたように、法曹三者の意見を一致させて実施すべきという点はきわめて重要なことでございました。これにつきましては、法曹三者は真摯にこれを受けとめまして、若干の紆余曲折はございましたが、昭和四十九年以降、司法制度の改善を図ることを目的といたしまして、法曹三者が特定の議題を定めて協議を重ねてきております。
 法曹三者協議が開始されまして、幾つかの重要問題を討議してまいっておりますが、中には、さきの刑事裁判をめぐる当面の問題に対する方策という非常に困難な、また重要な問題がございまして、これも三者間の克明な論議の末、昭和五十四年三月に合意に達しておるようなわけでございます。
 この問題が過ぎた後、法曹三者協議会の議題をどうするかということが三者間で問題になりました。三者協議における議題といいますのは、法曹三者各者からそれぞれテーマを出しまして、これについて三者で合意したものについてテーマとするということになっておるわけでございますが、昭和五十四年の十月、裁判所側は新しい議題として、簡易裁判所の民事事物管轄についてを協議したいと、こういう提案がございました。
 この問題は、先ほど言いましたように、大変重要な問題でございますので、私ども弁護士会側といたしましても、参議院の附帯決議もございますので、これをテーマにすることについて検討を重ねたわけでございますけれども、何せ先ほど言いましたような重要な問題でありますし過去の経過もございます。そして、一体簡易裁判所とは何なのかという本質論、理念論もございます。また、現今の簡易裁判所がどのような実態にあるかという点も克明に調査検討を重ねなければ実のある協議はできないということから、かなり時間をかけまして、この問題を三者協議の議題にするかどうか、弁護士会側としても真摯に検討を重ねてまいまして、約一年半以上になりましたけれども、五十六年の七月に、この問題を三者協議の議題とすることに三者間で合意をいたしたのでございます。
 ただ、裁判所としては、現在の三十万円を一定金額引き上げたいというのが主眼でございましたけれども、この問題を経済事情の変動とか、あるいは地裁、簡裁の事件の配分の問題というような観点からのみ検討することは誤りではないか。この際、簡易裁判所の根本問題に触れた討議をするならばということで合意したわけでございますが、幸い大きいテーマとしては、簡易裁判所の民事事物管轄についてということを議題にすることとしながらも、その具体的テーマとしては、事物管轄のあり方についてとか、簡易裁判所民事事件の地裁受理、つまり要請受理と言っておりますが、それや、裁量移送の活用等がどうなっているか、どうすべきかというような問題それから特則手続の活用がどうなっているか、今後どうすべきかというようなこと、それから調停制度の運営がどうなっているか、どうすべきか、さらに現在の簡易裁判所の人的、物的設備についての問題等も含めてこの問題を討議しようということになったわけでございます。
 これらの問題は、いずれも当院あるいは衆議院において附帯決議の中に盛られた事項でもございますので、法曹三者はそういうことを各論としながら、この問題を討議するというふうになったわけでございます。
 その後、昨年の九月から本年三月まで前後十回にわたる協議がなされたわけでございます。弁護士会側としましては、先ほど言いましたように、簡易裁判所は何なのか、何が任務なのか、どうあるべきか、そして現在どうなっているのかという根本的な問題から多くの問題を提起いたしました。裁判所側もこれに対して、その都度討議に加わられていろんな意見を開陳されましたが、一応そういう総論を経た後、十二月になりまして、裁判所側から三十万円を百二十万円に引き上げたい。その理由としては、やはり昭和四十五年以降経済事情の変動でおおよそ三倍、そしてまた、本法が施行されるころになるとおおむね四倍近く、あるいはさらにその後を見越すとそのくらいのところになるというので百二十万円の提案がございました。
 もちろん、いままでの協議の中で出ておりました訴額にかかわらない重要な、あるいは複雑困難な事件をどうするかというような問題も討議済みでございましたので、裁判所といたしましては、土地に関する事件のみは地方裁判所と簡易裁判所を競合管轄とするということ。それから、それ以外の事件についても当事者が合意すれば必要的に簡易裁判所から地方裁判所に移送をしなければならないことにするというような幾つかの附帯条項も入っておりましたが、これをめぐって、その後協議会では激しい論議が展開されたわけでございます。
 弁護士会側としては、経済事情の変動によって訴額が改定されるべきではないというような考えはもちろん持っておりませんし、合理的なものであるならば一定の引き上げはやむを得ないのではないかというような見解に立ちながらも、やはり先ほど言いましたような簡易裁判所の裁判官の資格問題あるいは特則手続の適用、こういった問題から、果たして国民が簡易裁判所で審理してもらうその限度というのは那辺にあるだろうか、こういうところをもっと詰めなければいけないのではないか。
 それから、当時の説明によりますと、約四万件の事件が地方裁判所から簡易裁判所に移るであろう、こういう見解も出ておりますが、果たして現状ではこの大量な事件が簡易裁判所に流入した場合に麻痺状態になるのではないか。この辺が一体どうなっておるか、またどう対処することなのかというような点について多くの議論が展開されたわけでございます。
 特に、競合管轄の対象である土地につきましては、これは競合管轄で結構だとは思うのですけれども、原告が簡易裁判所を選択した場合、被告は地方裁判所で審理してもらいたくてもできないことでは意味がない。むしろこれを争う被告側に、克明な、そしてまた厳格な、そして有資格者の裁判官に裁判してもらいたいという要請がより強いのではないかということで、被告から申し立てがあれば必ず簡易裁判所から地方裁判所に移送しなければならないような措置を講ずるべきであるということと、さらには建物の問題についても当然これを包含すべきではないかということを非常に強く私どもは主張したわけでございます。
 と申しますのは、不動産事件というのは固定資産評価額で訴額を決めますので、かなり実勢とは差がある。三十万円あるいは百万円ぐらいの物でも実際は数百万、時には千万を超えるような実質利益を含む案件もあるわけでございますので、どうしてもそのようにしてもらわなきゃ困る。特に建物の場合には評価額はだんだん下がっていくし、あるいは建物自体は大したことはなくても、それに必ず土地問題が絡むわけでございますので、不動産として土地も建物もすべてこの競合管轄の対象にし、かつ被告からの申し立てがあれば、必要的に地方裁判所に移送するということを強く求めたのでございます。
 そして、この金額につきましても、百二十万はいかにしても現在の庶民感覚から見て、先ほどのような制度である簡易裁判所で審理してもらうには余りにも高過ぎるというようなことを中心に、毎回数時間を用して協議をしたわけでございます。
 その結果、三月に至りまして裁判所も、金額は九十万円を上限とする。そして、不動産についてはすべて競合管轄とし、かつ先ほど言いましたような必要的移送制度を取り入れる。そして、不動産事件以外の事件についても、当事者双方が合意すれば必ず地方裁判所に移送するということも了承されたわけでございます。もちろんそのほかに、先ほど附帯決議で申し上げましたような地方裁判所の要請による受理、あるいは裁判官の裁量による移送というようなものも当然残っていくわけでございますので、これらを総合すれば、私どもとしては簡易裁判所の本質を変えることなく訴額の引き上げがなされるというふうに理解いたしまして合意をしたわけでございます。
 本法案も、その内容をすべて裁判所法あるいは民事訴訟法の改正案の中に盛り込まれておりますので、この法案そのものについては、私としては、また私どもの会といたしましても、理事会で全員一致で承認しておりますし、この法案の成立には全く異存はないところでございます。
 ただ、一つ申し上げたい点は、三者協議の中でもしばしば触れておりますが、当初の四万件が、このような措置にすることによって、裁判所の試算では約二万件が地裁から簡裁に移るというふうに言われておりますが、これとても現在の簡易裁判所の実態では、かなり円滑さを欠くのではないだろうかという危惧を私どもはいまもって持っておるわけでございます。
 そういう観点から、簡裁の人的、物的施設の充実強化、特に不在庁等の解消あるいは裁判官、裁判所職員の増員、簡裁判事への民間人の積極的な登用、こういった人的、物的の施設、設備につきましてさらに一層整備がなされなければいけないものと考え、こういったものも引き続いて検討していくことを要求し、また裁判所も、あるいは法務省も、この点について今後引き続き討議をしていくというふうに合意されております。
 同じようなことが幾つか言えるわけでございますが、先ほど言いました要請受理あるいは裁量移送の制度の活用も、裁判所側の説明では十分であるというふうに言われておりますけれども、私ども実務の観点から見ますと、全国的にはまだ必ずしも十分ではないじゃないか。一層この活用を図るように努力していただきたいと思うのでございます。また、特則手続の活用やその周知徹底についても同様だと思います。それから、やはり簡易裁判所が一番駆け込み的な機関として特徴的なものは調停制度でございますが、これについても、その強化活用を図ることを強く求めるものでございます。
 こういった幾つかの問題をさらに今後充実あるいは強化させていくということ、そしてこれについて協議を重ねていくということを前提に、私どもは合意をしたわけでございます。したがいまして、当局におかれてこれらの問題を一層努力されるとともに、また、当院におきましても、こういったことが実現できるよう特段の御配慮をお願いして、この法案の可決をされたいというふうに申し述べたいと思います。
 一応この程度で最初の陳述を終わります。
#5
○委員長(鈴木一弘君) 次に、竹下参考人にお願いいたします。竹下参考人。
#6
○参考人(竹下守夫君) 一橋大学の竹下でございます。
 それでは私からも、本委員会の審議にかかっております裁判所法等の一部を改正する法律案についての意見を申し上げたいと思います。
 私は、この法案の主な問題点と思われるものを四つばかり挙げまして、それについて順次意見を申し上げていきたいと思います。
 まず第一は、今回の改正法案によりまして簡易裁判所の事物管轄が訴額九十万円以下の事件にまで拡張されるということになっておりますけれども、それが現行制度における簡易裁判所の性格を変更することになるのかどうかという問題でございます。それと関連いたしまして、そのように事物管轄を拡張することが果たして妥当かどうかという問題、これが第一でございます。
 それから第二は、法案の第一条の定めます不動産に関する訴訟についての競合管轄というものを認めることの是非でございます。
 それから第三は、法案第二条によりまして新しく民事訴訟法三十一条ノ三としてつくられることになっております二つの規定、一つは、第一項の当事者双方の意思の合致があったならば、裁判所は必ず事件を簡易裁判所から地方裁判所へ移送しなければならないというその規定の是非。
 それから第四は、新設される民事訴訟法三十一条ノ三の第二項の方の不動産に関する訴訟についての被告の申し立てによる必要的移送の制度の是非ということでございます。
 ただ、第三と第四は、いま第四として挙げました三十一条ノ三の第二項の方が、むしろ二番目に取り上げました競合管轄の是非の問題と密接に関係しておりますので、順序としてはそちらを先に申し上げたいと思います。
 まず第一は、簡易裁判所の事物管轄の拡張が、現行制度のもとにおける簡易裁判所の性格を変更するものであるかどうかという点でございます。ただ、簡易裁判所は民事事件ばかりではなくて刑事事件についても管轄を持っておりますが、今回の改正と刑事事件とは直接関係ございませんから、刑事事件の点については触れない。それからまた、調停、特則手続についても特別に専属管轄を持っているわけでございますけれども、これもいま落合参考人の方からお触れいただきましたし、直接の問題とはややずれますので、主として私は民事訴訟との関係での簡易裁判所の性格というものを考えていきたいと思うわけでございます。
 簡易裁判所の性格につきましては、皆さんもすでにもう御承知のとおりいろいろな議論がございます。しかし、当時の立法資料等から見ます限り、裁判所法制定の立法過程に関与されましたいわゆる立法関係者の方々が、旧法時代の区裁判所とは違った英米の治安裁判所あるいは一九五八年の改正前のフランスの治安裁判所ないしは英米の少額裁判所と言われるようなものをモデルといたしまして、少額事件につきまして民衆に親しまれやすい裁判所をつくろうという意図であったということは、ほぼ間違いないように思われるわけでございます。
 この関係でしばしば引き合いに出されます第九十二帝国議会における裁判所法提案理由というものを見ましても、「簡易裁判所は軽微な民事、刑事事件を扱ひ、全國數百箇所に之を設けまして、簡易な手續に依りまして争議の實情に即した裁判をするやう工夫致して居るのでありまして、司法の民主化に貢献する處尠からざる所があらうと期待致して居るのであります、」というふうに説明されておりますし、そのほかにもこれを裏づける資料がいろいろございます。
 そのような立法関係者の考え方というものが、でき上がった簡易裁判所制度にもあらわれているわけでございまして、そのうち最も重要な点を二つ挙げるといたしますれば、一つは、まず裁判所の数を非常にふやして、全国にたくさんの簡易裁判所を設け、国民が身近に裁判所を持つという、そういう考え方を実現したという点でございます。旧法下の区裁判所は最後の段階では全国二百八十三庁でありましたのが、簡易裁判所は裁判所法制定当時におきましてすでに五百五十七庁つくられたわけでございます。現在では五百七十五庁にさらにふえております。
 それからいま一つは、簡易裁判所判事制度というものをつくったということでございまして、いわゆる法曹有資格者ではなくても、一般からの特別選考によりまして簡易裁判所の裁判官を任明するということにしたわけでございます。これはちょうど治安判事のように、一般の良識を代表する人たちというものを少額事件の裁判に関与させまして、細かい手続等はともかくとして、結論が妥当であるようなそういう裁判を実現していこう。むしろ、細かい手続を厳格に定めるということは、利用者の国民にとっても便利なものではないし、また、そういう手続が必要だということになると、なかなか簡易裁判所判事をそのように一般の民間から採用するというようなことはむずかしいのではないかという、そういう考え方があらわれていたものと思うわけでございます。
 そのほかさらに、司法委員というような制度が新しく簡易裁判所について設けられた。それから、事物管轄の点につきましても、旧法下におきましては訴額とかかわりなしに必ず区裁判所の管轄とされていた事件があったわけでございますけれども、簡易裁判所ではそういうものは一切廃止いたしまして、すべて訴額を基準にしてこれを少額に抑える、そういう考え方がとられたということでございます。
 それから、やや細かいことになりますけれども、簡易裁判所の裁判に対する不服申し立ての点でも、これを地方裁判所にしたということでございます。もし、簡易裁判所が地方裁判所と同じような意味で、ただ訴額の少ない事件を担当するというのであれば、あるいは不服申し立ては、地方裁判所の判決に対する不服申し立てと同じように、いきなり高等裁判所へ行くという考え方もあり得たのではないかと思いますけれども、そうではなくて、地方裁判所に不服申し立てをするというそういう制度をとっているということでございます。もっともこの点は旧法時の区裁判所でも同じでありまして、当時も区裁判所の民事の判決に対する不服申し立てば地方裁判所であったわけでございますので、最後の点は区裁判所と比較してみた場合の簡易裁判所の特色というふうに言うわけにはまいらないだろうと思います。
 このように、簡易裁判所というものが一つの少額裁判所というものを目指した新しいタイプの裁判所をつくろうとしたものである、そしてそれができ上がった制度の中にもかなり色濃くあらわれているということはそのとおりなのでございますけれども、他方では、それではじゃ純粋にそれだけで貫かれているのかと申しますと、どうも私はでき上がった制度から見る限り、そうは言えないように思うわけでございます。
 もし、英米流の治安裁判所ないし少額裁判所というものを本当に純粋に実現しようといたしますと、これは普通の地方裁判所以上の裁判所とは違ったやや特殊な裁判所、これは憲法上特別裁判所という言葉があって、これはもう禁止されておりますので、特別裁判所という言葉を使うのはちょっと誤解を招くと思いますから特殊裁判所という言葉を使うといたしますと、そういう特殊裁判所としてつくらないとどうもその理想は実現できなかったのではないかと思うわけでございます。
 先ほど申しましたように、民衆の駆け込み裁判所的なものであるということになりますと、国民は、裁判所へとにかく事件を持ち出して権利救済をしてもらいたいというふうに言えば、ある程度裁判所の方がイニシアチブをとって、細かい手続などにこだわらずに結論を公正妥当に打ち出すという、そういうものであることが望ましいわけでございまして、現に諸外国の治安裁判所的なものは、そういう裁判所として性格づけられているように思うわけでございます。
 そうなりますと、簡易裁判所の手続というものもそれに見合ったものにならなければいけない。依然として、地方裁判所以上の裁判所と同じように、どういう事実があったかということを厳格な証拠調べによって認定をいたしまして、それに法を適用して結論を出す。その判断の過程も、はっきり判決理由という形で示すというようなことになりますと、どうしてもそこで行われる裁判というものも厳正なものにならざるを得ない、地方裁判所以上とそう違わないということになってくるわけでございます。
 それから、さらには上訴との関係というものも重要でございまして、上級審に地方裁判所の判決と同じように不服申し立てができるということになりますと、幾ら少額事件を第一審では簡易迅速に判断をするといっても、もう第二審へ行けばほかの地方裁判所の事件と同じようになってしまうということでは目的を達しないということになりますし、それからまた、上級審が下級審の判決をレビューするということになっておりますと、それにたえるだけの手続というものを構成して、それを記録に残していかなくちゃならないという問題もあるわけでございます。
 ところが、簡易裁判所の手続はどうなっておるかというと、すでに皆様御承知のとおり、地方裁判所の手続を原則としながら若干の特則を設けるという方針をとったわけでございます。しかも、すでに旧法の区裁判所におきましてもそのような手続の特則というものがあったわけでございまして、それにつけ加えられたのはそれほど多くはない。先ほどの司法委員の制度に関する規定を除きますと、当事者を期日に呼び出すときの呼び出しを簡易な方法でやってもいいとか、あるいは欠席をした当事者が提出した書面を陳述したものとみなすという場合を地方裁判所よりは少し広げるとか、あるいは調書を簡略化する、それから証人尋問のときに証人が書面を見ながら答えてもいいというような程度でございます。
 口頭起訴とか、随時出頭による起訴という制度は、これは区裁判所当時からあったわけでございまして、別に簡易裁判所になりましてから特につくられたというわけではない。もちろん、しかしそういう制度を残したということにつきましては、当時の立法者は、やはりこういうものは簡易裁判所の性格にふさわしいという判断を示したものと言うことはできると思うわけでございます。
 要するに、簡易裁判所の手続につきましても、地方裁判所の手続よりは簡易なものにするという考え方が当然あったわけですけれども、基本的な、つまり裁判というものは事実を厳格な証拠調べによって確定をして、それに法を適用して判断をするのだ、しかも、その手続も厳格に法によって規律されたものでなければならないという、最近の言葉で言いますと、いわゆるデュープロセス、適正手続の考え方というものについて、地方裁判所と簡易裁判所とで非常に大きく質的に変えるというような考え方はとられていなかったというふうに見ざるを得ないわけでございます。
 これは、訴訟裁判所ではないので必ずしも適切な例ではないのですけれども、身近なところから比較の対象を選ぶといたしますと、たとえば家庭裁判所というものがございますが、家庭裁判所は、ある意味では本当にわが国の現在民衆裁判所として国民に親しまれ定着しているというふうに言えると思うのでございますけれども、家庭裁判所の場合には厳格な訴訟手続というものによらなくていい、これは非訟事件裁判所でございますから当然そういうことになるわけでございますけれども、そういうことになっているわけでございます。どうもそれに比べると簡易裁判所の方は、そういう一応立法関係者が理念として置いたものが、法律で決められた手続にそのままストレートには反映していないということが言えるように思うのでございます。
 それからいま一つは、司法制度全体との関係で、先ほどの特殊裁判所としての少額裁判所という位置づけがなされているかという点でございますけれども、どうもこの点も問題に思うわけでございます。もし、本当に特殊な裁判所としての少額裁判所ということにして、区裁判所時代には裁判所へ持ち込まれなかったような一般庶民の間の小さな事件というものを裁判所に出せるようにしようということであるといたしますと、もともとわが国の裁判制度に持ち出されていた、つまり区裁判所当時に区裁判所に出ていたような事件というものも、これは地方裁判所が引き受けるということにならざるを得ないわけですから、地方裁判所の方を旧法時代よりは拡充しないといけないということになるはずでございます。
 ところが、裁判所の数から見ますと、旧法時代地方裁判所が四十九庁、それから区裁判所が二百八十三庁あったわけですけれども、新設の地方裁判所は依然として四十九庁だ。ただ、支部の点では、旧法当時は地方裁判所の支部というのが八十七だったのが、新法では二百四十二というふうにふえております。ただ、細かいことになりますけれども、支部がふえたといっても、いわゆる甲号支部といいますのは八十五庁ということでございますし、この支部を計算に入れましても、旧法下の地方裁判所の本庁、支部、それから区裁判所の数というものと、新制度の地方裁判所の本庁、支部の数というのを比べてみますと、かなり違いがあるということになるわけでございます。
 それからまた、裁判官数を見ましても、旧法当時の比較的最後の段階、昭和十六年の段階で、統計というか法律の規定になりますと、判事の定員が千六百一人であったということでございます。ところが、裁判所法施行直後の簡易裁判所判事を除いた判事及び判事補の定員は千八十七人、しかもそのうち判事補が二百五十人ということになっておりますから、当時、判事補は一人前の裁判官と見ないのだという観念が支配していたことを考えますと、判事の定員は八百人ぐらい、そうするとほぼ半分になるわけでございます。
 もちろん、当時、裁判官というものに対するイメージといいますか、裁判官のあり方というものが旧法と新法とで非常に違ってまいりましたし、また、そうでなければならないという考え方がありましたから、単純に数だけの比較ではいかないわけでございますけれども、もし簡易裁判所というものを非常に特殊な少額裁判所として位置づけるのであれば、地方裁判所以上をもう少し拡充するという考え方が裁判官の数の上にも出てきてよかったのではないかと思われるわけでございます。
 それからまた、問題の訴額自体も、旧法下の最後の区裁判所は、訴額を基準とする事物管轄につきましては二千円以下の事件ということであったわけですが、簡易裁判所は当初から五千円以下ということでございます。これはもちろん、当時すでにもうインフレが進行しておりましたから、物価の上昇ということを見越したということが入っているわけでございますし、これは資料的にもそのとおりでございますけれども、しかし、二千円であったものを逆に五千円に上げたというのは、区裁判所で行っていた程度の事件を簡易裁判所で扱うのだという考え方が出ているように思うわけでございます。
 そうなりますと、結局のところ、立法関係者の理念といたしましては、特殊な少額裁判所というものをねらって、それが事実簡易裁判所の制度の中にかなり色濃く出てはいるのでございますけれども、他方ではまた、やはり旧来の区裁判所と同じように、地方裁判所と民事第一審事件を分担する裁判所という性格を持っていたというふうに考えられるわけでございます。
 その上にさらに、これは果たして当時の立法関係者の方々が十分に意識しておられたかどうかわからないのですけれども、最高裁判所の負担軽減問題というものと密接な関係があるように思うわけでございます。最高裁判所は、御承知のとおり旧法の大審院とはまるっきり性格の違う裁判所としてつくられたわけでございます。憲法問題についての終審裁判所であると同時に、行政事件をも担当する。一般民事事件はもちろんでございます。民事、刑事の事件はもちろんでございます。しかも、それを十五名の裁判官で行うという体制をとりました。
 そこで、もし地方裁判所第一審というものを原則といたしまして、簡易裁判所はこれは特殊な裁判所なのだという考え方でいきますと、特別な上訴制限という制度を伴っていないわけですから、十五人の最高裁判所というものが負担過重にあえぐことになるのは明らかであったわけでございます。事実、新制度発足直後から、最高裁判所の負担軽減問題というものが大変重要な問題としてクローズアップされてきたわけでございます。
 そうすると、最高裁判所をそのようなものとして構想する以上、何らかの形で上訴制限を設けるか、第一審を簡易裁判所から始めるという事件をある程度設定するかしなければ、最高裁判所の機能が十分に果たせないということになるわけでございます。この点は、もし立法者が十分意識していなかったとすれば、この観点から簡易裁判所の事物管轄を広げていくということは、これは一種の最高裁判所が大変だからそのしわ寄せを簡易裁判所の方へ持っていくという意味合いを持つことになります。私は事実そういう意味合いを持っていると思うわけでございますけれども、これは現在の制度の中ではどうもやむを得ない。確かに、簡易裁判所も民衆裁判所として十分機能してもらいたい。しかし、最高裁判所も憲法問題に関する終審裁判所ですから、これが機能不全になってしまったのでは困るということになるわけでございます。
 要するに、こういった裁判所制度全体との関係で、簡易裁判所がどうも少なくとも客観的に見る限り特殊な裁判所としての位置づけを得ていたわけではない。むしろ地方裁判所と、第一審の民事裁判所管轄を分け合う裁判所という性格を初めから持っていたのではないかということになるわけでございます。しかし、そうは申しましても、それじゃ立法関係者がねらいとした民衆裁判所、国民一般に親しまれる少額事件のみを扱う特別の裁判所としての簡易裁判所というものの理念が見失われていいかというと、そういうことにならないのは言うまでもないわけでございます。
 ただ、私がいままで述べたところから申し上げたいのは、もしその理念を純粋に貫こうとすると、これはわが国の現在の司法制度全体を見直さなければ無理なのではないかということでございます。とても簡易裁判所の枠内だけでこの理念を貫こうとしてもむずかしいというふうに思うわけでございます。もちろん、しかしそれほどの大げさなことではなくて、枠内だけで、なおこの理念に忠実に打つべき施策はないのかということになれば、これはまたおのずから別でございまして、そういう手段はまだ残されていると思います。
 たとえば、口頭起訴の制度を活用していただくとか、あるいは場合によっては夜間開廷というようなことを考えてもいいのじゃないか。ただ、この場合には裁判所職員の労働条件の問題が出てまいりますから、そちらとの関係を処理することも必要でございますけれども、しかし、その問題の解決ができればそういうことも大いにやっていただいていいのではないかと思います。
 それから、簡易裁判所の中には、裁判所法施行当時から決められているにもかかわらず、いまだに開設されてない庁があるということでございますし、常勤裁判官のいない裁判所もあるということでございます。これらがどうもそのまま放置されているということは、大変好ましくないわけでございます。もちろん、当時と現在ではいろいろな生活関係、交通事情等も違っておりますから、もし、そのような未開設庁あるいは常勤裁判官のいない裁判所というものが本当にその場所に必要なものかどうかということに問題があるのであれば、そういうことも検討し直しまして、そのかわり真に必要だというふうに思ったところは必ず開設をして、そこに常勤の裁判官を置いていただくということにしていただきたいと思うわけでございます。そのようなことは大いに検討していただきたいと思うのでございます。
 ところで、今回のそれでは事物管轄の拡張はどうかと申しますと、ただいま申し上げてきましたようなところからいたしますと、どうももともと簡易裁判所は一定の範囲では第一審の裁判所としての機能を分担するという性格を持っていたわけでございまして、今回の改正が、じゃあそれを変更するほどの大きな事物管轄の拡張なのかと申しますと、どうもやはり私は物価変動に見合った程度の改正、したがって実質的にはこれまでの簡易裁判所の性格を変えるほどの大きな事物管轄の変動というふうには思われないわけでございます。
 この点は、当事者の簡易裁判所の利用、つまりある意味ではあくまでも地方裁判所よりは身近にある裁判所でございますから、その簡易裁判所の利用という点から見ても、これは物価変動に見合った事件が簡易裁判所の事物管轄になるということはマイナスではございませんし、それからまた、地方裁判所との負担の分担という点から見てもマイナスにはならない、プラスであろうというふうに思うわけでございます。でも、そうなりますと、今回の事物管轄の拡張というものは積極的に考えてもいいのではないかと思うのでございます。
 第一点が長くなりましたが、次に第二点でございますが、不動産に関する訴訟について新たに競合管轄を認めるということが妥当かどうかということでございます。
 このように、一定範囲の事件について事物管轄を持つ裁判所を、審級関係で上級、下級にわたって両方に認めるという考え方は、どうもほかの諸外国を見ましても一般的ではないようでございます。どこの国でも大体ある種の事件はどっちの裁判所というふうに決めれば、そっちの裁判所だけが管轄を持つというのが普通のようでございます。ただ、当事者が合意をした場合には、それを動かすことも認めるということは、これはもう決してまれなことではございませんが、初めから法律上こういうふうに競合管轄を認めるということは、全く例がないわけではないように聞いておりますけれども、少なくとも一般的ではございません。
 しかしながら、御承知のとおり、わが国では不動産、土地に限らず建物をめぐる争いというものはしばしば非常に深刻になるわけでございます。この点は、先ほど落合参考人も御指摘になったとおりでございます。外国ですと境界確定の訴訟であるとか、あるいは土地をも含めて占有関係をめぐる訴訟というようなものは、やはりその土地に近い裁判所が担当するのが相当だという考え方から出ているのだと思いますが、多く最下級の、わが国の現在で言えば簡易裁判所のような裁判所が管轄をするというのが一般でございます。わが国の旧法下の区裁判所の事物管轄というのも、まさしくそういう考え方に立っていたのだと思うのでございます。
 ところが、ことに第二次大戦後、わが国における土地問題あるいは住宅問題というものが非常に深刻な、ある意味では社会問題化してまいりましたために、これをめぐる争いというものは非常に利害の対立が深刻になるわけでございます。そこへもってきて、しばしば指摘され寸ますとおり、いろんな技術的な理由から、もともと不動産をめぐる訴訟の訴額というものの算定がむずかしい。先ほど例に挙げました境界確定の訴訟にしましてもそうですし、土地の占有をめぐる訴訟についても同様でございます。
 そのために、固定資産税のための評価額というものを基準にして、しかも占有についての争いは大体三分の一にするとか二分の一にするとかというような形で、どうも便宜的な基準を設けざるを得ないわけでございます。そのために、訴額は小さいのだが当事者から見るとその訴訟にかかっている経済的な利益あるいは生活上の利益というものは非常に大きいという事件がどうしても多く出てくるわけでございます。
 そうなりますと、利害対立が深刻であればあるほど、それを解決するための手続というものも厳正なものでなければいけないということになってまいりますし、それからまた、裁判の結論だけではなくて、いわゆる判決理由というものも十分当事者の納得できるような形で示されなければいけないということになるわけでございます。そこで、やはり少なくとも当事者が望むのであれば、地方裁判所でも訴訟ができるという政策的な決断をする必要があるように思うのでございます。
 したがいまして、今回のように競合管轄を認めるというのは、最初に申しましたとおり、諸外国の例を見ますと必ずしも一般的ではございませんけれども、わが国の不動産をめぐる訴訟というものの特殊性からいって、この競合管轄を認めるということは妥当なのではないかと思うわけでございます。
 それから、第三点の被告の申し立てによる必要的移送でございますが、これはただいまのように、競合管轄を認めて原告側にその撰択権を与えるということにしましたこととの権衡上、どうしてもやはり原告が簡易裁判所の方でいいというふうに考えて訴えを起こしてきたとしても、被告が地方裁判所でやりたいというふうに望むのであれば、これは地方裁判所へ移送をするということにするのが合理的であろうと思われるわけでございます。
 やや細かい問題になりますが、その申し立ての時期について、本案について応訴をするまでというような制限を設けてございますけれども、これはもともと民事訴訟法では、全く管轄のない裁判所に一方の当事者が訴えを起こしてきた場合であっても、相手方被告の方がこれは管轄違いだということを言わないで本案について応訴をしますと、その裁判所に管轄が生じて、そこで訴訟をやるのだということになっておりますので、そうすると、少なくとも競合管轄の場合には一応管轄はあるわけでございますから、その管轄のある裁判所からほかへ持っていくという場合も、同じ時期で移送申し立ての制限がなされるということにならざるを得ないように思うわけでございます。
 それから最後に、双方の合意による必要的移送でございますが、この点も、もともと管轄の合意というものがあれば、つまり初めから両方の当事者が、本来は簡易裁判所の事物管轄に属する事件であっても、地方裁判所の方でやりたいという合意をしていれば、地方裁判所の管轄が生ずるわけでございます。
 これは、たとえばわが国の母法であるドイツなどでは、地方裁判所の事件を区裁判所の方へ管轄の合意によって移すのはいいが、区裁判所の事件を地方裁判所の方へ移す管轄の合意は認めないというそういう考え方をとっておりますから、そういうところでは非常に異例なことになるわけでございますけれども、わが国ではもともと当事者が合意をすれば簡易裁判所の事件であっても地方裁判所へ持っていくことができるということになっておりますので、一たん訴訟が始まった後でも、当事者が結局合意をするのと同じように、両方の当事者が望むというのであれば、これは移送するということにするのがよろしいのではないかと思うわけでございます。
 以上、結局四つの問題点について、いずれも私は改正案の方向に賛成といいますか、改正案の方向でよろしいのではないかという意見でございますけれども、しかし、これは決して簡易裁判所を軽視するというようなことではございません。
 それから、地方裁判所から、最高裁判所の御説明によるとほぼ二万件程度の事件が簡易裁判所に移るであろうという見通しだそうでございますが、二万件の事件というものが簡易裁判所へ行ったときの簡易裁判所裁判官、書記官、事務官等の負担の増加というものを考えないでいいわけではもちろんないわけでございまして、そういう点につきましては法務省あるいは最高裁判所におかれまして十分の御配慮を願いたいと思うわけでございます。
 ちょっと長くなりましたが、以上で私の意見を終わらせていただきます。
#7
○委員長(鈴木一弘君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の意見陳述は終了いたしました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#8
○寺田熊雄君 お二人の参考人の方々のお話を、大変興味深く拝承したわけであります。
 まず、落合参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、お話では去年の七月ですか、五十六年の七月、この問題を法曹三者協議の議題とすることに合意をし、ことしの三月に合意ができた、そういうお話のようにお聞きしたんですが、原案が百二十万円とおっしゃたんですかね。私どもが聞いておりますのは、何か百万円という原案だったというふうにも聞いておったんですが、百二十万円だというお話でちょっとびっくりしたのですが、そして回数は十回ぐらいお話をなさったということであったようでありますが、そのお話し合いの中の主要な論争点ですね、これはどんなものであったのか。主要な部分だけで結構ですから、ちょっと簡単にお話しくださいますか。
 それから、元来が簡易裁判所は少額軽微な事件を取り扱うということで、円熟した素人の裁判官に裁判をしてもらいたい、裁判をさせようということで発足をしたようでありますけれども、現実には少なくも弁護士の間では、できるならば有資格者の裁判官に裁判してもらいたいというやっぱり希望が強いようですね。その有資格者による裁判というものと、人生経験豊富な練達の素人の裁判、いま最高裁にどちらに主眼を置いて裁判官を任命しているのかと聞きますと、やはりどちらに主眼を置くというわけにいかないので、両方の裁判官をミックスしてやっているのが現実ですというそういうような答弁を受けるのですが、落合参考人とされましては、現実に実務をおとりになる立場で、これはどちらの方が望ましいとお考えになりますか。
 それから、人的、物的の施設を充実するということを条件に今回の事物管轄の拡大に同意をしたというふうにおっしゃったように聞いたんですが、その人的、物的施設の充実というのは、人的の方は主として増員なのでしょうか。それとも、いまお尋ねをした有資格者というようなことなのでしょうか。
 また、資格がない人であっても、最高裁判所のさまざまな訓練といいますか裁判官的訓練を、あるいは教育といいますか、そういうことを経ればいいという御趣旨なのか。
 それから、物的の施設についていま現に物的の施設が不十分だという点をお気づきでしたら、それもおっしゃっていただきたいと思います。
 それから、簡易裁判所と最高裁の裁判官の定年が七十になっておりますね。最高裁の裁判官などに会って聞いてみますと、どうも六十五ぐらいがいいなと、このごろは記録を十分読むのが少ししんどいというような、これは真剣に言ったのか、日常の会話をしながら聞いたことでありますので、どの程度の真剣味で言ったのか必ずしもはっきりしませんが、そういう感想に接するわけであります。これはどういうふうにお考えになりますか。
 それから竹下参考人にも、いま私が落合参考人にお尋ねをしたことですね、この問題についても、お考えがございましたら、お述べをいただけばありがたいと思います。
 簡裁の事物管轄を拡大するのは最高裁の事務量を減らす意味があるということ、確かにそういう考え方も陰で動いておったのかもしれませんが、しかし同時に、それは高裁の事務量をふやしますね。東京高裁など、われわれの友人が現役でおったときに聞いてみますと、もうとてもおれの力量では処理し切れないと泣き言を言うくらい忙しいようでありますが、その忙しい高裁に、また上告審の事務量をふやすということが一体どういうことなんだろうかというような考えもないではないわけでありますが、そういう問題についても両先生のお考えを賜れば幸いであります。
#9
○参考人(落合修二君) お答えいたしますが、質問が大変多岐にわたり、かつ内容が非常に微妙なことでございますので、どこまで的確にお答えできるか自信ございませんが、私の意見としてそれぞれについて若干の見解を述べさしていただきます。
 三者協議における論争点の主要なものは何かという御質問でございますが、先ほどもちょっと触れましたように、やはり裁判所の方では事物管轄が訴額によって決められておるので、その訴額が十年以上経過して経済事情の変動により現実にマッチしていないということが強く言われておりますが、私どもは、訴額で定めるというふうになっておることは事実でございますけれども、一体その訴額とは何を意味するのか。裁判所の御説明では少額というふうに言っておりますけれども、少額という中には、やはりこれは比較的簡易あるいは軽微というような概念が入っておるものというふうに私どもは解釈するわけでございます。
 したがいまして、ただ一定の少額ということで発足したというのであれば、これは一定の段階で上げるということもそれなりの合理性は出てくるわけでございますが、少額そのものをもう少し内容的に私どもは考えなければいけない。少額イコールすべてではございませんが、一般的に簡易あるいは複雑性が少ないというような意味でございますので、この訴額をもって定める点が、訴額とは何であるかという点を私どもは中心に議論をいたしまして、裁判所の経済、いわゆるスライドですか、これについての見解について反対的な考えを前段においてずいぶん論争いたしました。
 もちろん、それにつれて、先ほど言いましたように、簡易裁判所は一体本質は何なのかという点が総論的にも議論になりました。しかし、十二月に具体的に訴額を百二十万円に引き上げるという提案があってからは、もっぱらその額の問題、それから額を一定額引き上げるにしても競合管轄の範囲をどこにするか、特に、建物を競合管轄の対象にするということについては相当の時間をかけました。それともう一つは、被告の方から申し出があれば必要的に地裁に移す、この二点が各論的には非常に大きな問題になっております。
 そこで、私ども一体訴額はどの程度引き上げたらいいのか、あるいは引き上げる必要があるのかどうかという点では、基本的には、できるだけ簡易裁判所の訴訟は訴額を引き上げることを避けるべきであるという見解をとっておるわけでございますが、しかし、諸般の事情から上げるとしても、やはりこれはできるだけ少なくすべきである。全国の弁護士会にもこの問題についてアンケートをとったのでございますが、いろいろ地方の実情等によって引き上げる必要なしという意見から、百二十万相当というところまで非常にばらつきがあったわけでございます。しかし、総じて、せいぜい倍ぐらいだろうというのが大方の意見のようでございました。
 しかし、現実に九十万ということになったわけでございますが、それにはどうしても建物まで競合管轄の対象にするということであれば、そしてまた、当事者の合意があれば必要的に移送するという措置があれば、仮に九十万まで引き上げても多くの複雑困難あるいは当事者が希望する事件は地方裁判所に行って、簡易裁判所は比較的簡単な、金額こそ九十万になっても、内容的にはそう大きな問題のないようなもので措置できるだろうということから、本当は私どもとしては二倍ぐらいということも当初考えておったのでございますけれども、いまのような措置を得られることによって、九十万もやむなしという見解に立ったわけでございます。大きな論争点はその辺でございます。
 それから、有資格者の裁判官がいいのか、あるいはそうでなくても社会的に信望のある練達の士がいいのかという点になりますと、これはなかなか人の問題で一概に言い切れないのでございますが、簡易裁判所が調停を中心にし、あるいは比較的軽微な事件を簡便に、余り訴訟法に縛られずにやっていくということであれば、やはり社会の実情を知っておる、むしろ有資格でない人の優秀なりっぱな裁判官をたくさん入れていただく方が望ましいのではないだろうかというふうに思います。もちろん、有資格の裁判官も皆りっぱでございますので、そういう方も、全部ではなくても今日ぐらいの数の方がおられるということも一向にこれは差し支えございませんけれども、簡易裁判所の本質からいいますと、いま言ったような老練、練達の人、必ずしも資格がなくてもそういう方にどんどんやっていただける方がいいのではないだろうか。私も三十年やっておりますので、簡易裁判所の裁判官にもずいぶんお世話になっておりますが、むしろ私の実感的な観点から申し上げた次第でございます。
 それから人的、物的施設の拡充でございますが、これはやはり現在でも不在庁あるいは未開庁等がございまして、それから特に不在庁のような場合には一週間に一遍ぐらいそこに来てやるということで、地方によっては大変不便しておるようでございます。やはりできるだけ迅速に処理をするためには、裁判官の増員ということも当然必要になってくるだろうと思いますし、同時に私どものいろいろな調査によりますと、当事者の、あるいは裁判所に来る人のお世話をいろいろする関係上、書記官の負担がかなりあるようでございます。そして、裁判事務をうちに持ち帰って整理しなければならないというようなところも結構あるように、また私自身もそのようなことを聞いておりますので、やはりこれは全体的に足りないのではないだろうか。
 それから、一つには、全体的な問題だけじゃなくて個々的な問題として、大阪の吹田の簡易裁判所あるいは名古屋の中村の裁判所、あるいは東京では墨田ですか、幾つかそういう個別的な特殊性があってかなり渋滞しているのではないか、あるいは今後渋滞していくのではないかと思われるところがございますので、総体的にも言えるけれども、やっぱり個々の特殊な事情にあるところの手配などは十分にしていただかなければいけないのではないかというふうに思っております。
 物的については、昨今いろいろ新営の裁判所がたくさんできて大変便利にはなりましたけれども、それにしても、やはりまだ残っているところもあれば、あるいは新営のところでもかなりもう窮屈になっているところもあるやに聞いておりますし、また見ておりますので、さらに一層そうい
 った設備関係、建物だけではございません、その他の設備についても必ずしも十分ではないと言えるのではないかと思います。
 それから定年問題でございますが、簡易裁判所の定年については、先ほど言ったような老練あるいは練達の人ということになると、やはり七十まではやれるのではないか。現に、調停でも八十過ぎても調停委員をやっておった時期があるのですが、いまは七十をもって大体定年として、ほぼ七十以上の調停委員の方はなくなりましたけれども、調停でも、私も二十年ぐらい調停委員をやっておりますが、七十を超えた人とも組んでやったことがありますけれども、りっぱにやっていける人がずいぶんおりますし、また当事者なども、あるいは関係者も、十分心身の故障のない方には非常に心服して聞いておられるということもよくありますので、七十は通常ならば簡易裁判所においては相当ではないかというふうに私は考えております。
#10
○参考人(竹下守夫君) 先ほど御指摘のございました最高裁判所の事務量との関係で、第一審簡易裁判所で事物管轄を拡張すれば最高裁の負担軽減にはなるかもしれないが高裁の負担過重になるではないかと、そういう御指摘でございまして、確かにそういう御指摘もごもっともと思うわけでございます。
 ただ、第一審地方裁判所にしておきましても、どうせ高裁は第二審が行くわけでございますから、第二審と上告審とで役割りが違うという点で同じに言うわけにはいきませんけれども、それほど、最高裁の場合ほど大きくは違わないように思うわけでございます。
 ただ、それにしましても、私が申し上げましたのは、別に最高裁判所の負担過重を何とかして解消するために簡裁の事物管轄を広げろというそういうことではございませんで、要するに、簡易裁判所の事物管轄という問題が全体の司法制度の枠の中で考えられなければいけないのではないか。要するに、これは特別の理念に基づいてできた裁判所だから、ほかの裁判所は同じ通常の裁判所、こちらは特殊な裁判所だから負担過重の問題は通常裁判所の枠内で処理すればいいではないか、簡裁は別だというふうなわけにまいらないのではないか、そういうことを申し上げたつもりだったわけでございます。
#11
○寺田熊雄君 いま落合参考人にお尋ねを申し上げた件なんですが、簡易裁判所の裁判官としてはやはり有資格者がいいか、いま落合参考人がおっしゃった、信望のある、そして人生経験豊かな素人の裁判官、これが望ましいか、この問題についてはどうお考えになりますか。
 それからもう一つは、家庭裁判所は非常に大衆から親しまれているという御感想をお述べになりましたですね。簡易裁判所についてはどうお考えになっていらっしゃいますか。
 それから、裁判官の定年の七十歳の問題、落合参考人は現実に十分裁判官としての執務可能という御意見を述べられたんですが、先生はどういうふうにお考えになりますか。
#12
○参考人(竹下守夫君) どうも失礼いたしました。先ほど落合参考人への御質問についてもお答えするようにというお話でしたのに、どうも失念いたしました。
 初めの簡易裁判所の裁判官の給源と申しますか、どういう方が簡裁判事になられるのが適当と思うかという御質問でございますが、これは実際のところなかなか判断がつきませんで、私としましては、せっかく地方裁判所以上の裁判官とは違う性格のものとしてこの裁判所法が位置づけをしまして今日までそのとおり運用されてきたわけでございまして、今日確かに一部からは簡易裁判所の裁判官に対する不満と申しますか、これでは不十分だというような御意見があるということを聞いてはおりますけれども、しかし、全体としては、いまの簡裁制度が、簡裁判事の不適格のためにうまくいっていないというようなことにはならないのではないかと思うわけでございます。
 そうしますと、やはり現在のような姿で運用されていかれるのがいいのではないか、結局落合参考人がさっきおっしゃったのと同じことになりますが。もちろん、法曹有資格者からなられることも結構でございます。とりわけ地方裁判所、高等裁判所を定年で御退官になったような、文字どおり老練な裁判官が簡易裁判所の裁判官として御活躍いただくということは、大変結構だと思うわけでございます。それとは別に、一般から良識のある人を簡易裁判所判事に任命していただいてやっていただくということも、やはりそれはそれで捨てがたい長所があるというふうに思っているわけでございます。
 それから二番目の、簡易裁判所が果たして家庭裁判所ほど一般国民に親しまれていると考えるかという点でございますが、これも、どうもちょっと余りデータがございませんので何とも申しかねるのでございますけれども、私が先ほど引き合いに出しましたのは、とにかく家庭裁判所の場合には非常に一般の方から利用しやすい裁判所、文字どおり家庭問題について争い事が起こったら家庭裁判所へ駆け込んで何とかしてもらう、そういう裁判所というイメージが定着している。どうもそれに比べて簡易裁判所の場合には、特にそれより悪いという評価を聞くわけではございませんが、同程度の親しみやすさというような評判も余り伺ってないということで、若干違いがあるかなという程度でございます。どうも余りお答えにならずに恐縮でございます。
 それから最後の、簡易裁判所裁判官の定年につきましては、これは私もやはり七十歳という現行のままでよろしいのではないかというふうに思います。理由は、先ほど落合参考人がおっしゃったことと同じでございますので、失礼さしていただきます。
#13
○小平芳平君 時間の関係もありますので、両先生に同じことを伺いたいわけであります。
 それは、両先生ともすでにお述べになりました簡易裁判所のあり方または簡易裁判所の充実強化という点についてであります。この点については設置庁数が五百七十五庁となっておりますが、先ほど来お話がありましたように事務移転庁十二、未開庁八、民事訴訟事務を取り扱わない庁三十八、裁判官が常駐しない庁百四十九、二人庁四十一、等のようであります。こういう状態におきまして、落合先生からは簡易裁判所は何が任務か、どうあるべきか、いまどうなっているかというような点についてお話がございましたが、そういう点につきまして現在の司法制度のもとでも少しでも改善できることはないものかどうか、お気づきの点がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
 それから、時間の関係で申し上げてしまいますが、竹下先生からは、「司法行政権について」という先生の著書を拝見したのでございますが、この簡易裁判所の五百七十五庁という数が適当な数かどうか。
 それは法務省と最高裁のどちらが判断する問題なのか。あるいは法律の提案権は政府にありますが、政府が提案し、法務省が提案し国会で決めたということが最高裁の意思に反しているというような場合は生じませんかどうか。そういう点について、お気づきの点があったらお聞かせいただきたいと思います。
 以上です。
#14
○参考人(落合修二君) 簡易裁判所というものが、しばしばここでもいま述べられておりますように、やはり何といいましても庶民に密着して、そのために手軽に利用できるというところに本来の使命があるのだろうと思います。また、そのように機能もしてきていると思うのでございますけれども、ただいま御質問の中にありましたように、事務移転とか、あるいは未開設とか、非常駐とかいろいろございまして、せっかくその地区に簡易裁判所がありながら円滑に機能していただいてないという不満も全国的にはかなりあるようでございます。
 特に、弁護士のような立場からいきますと、一週間に一遍ぐらいしかそこには来ないという場合には大変不便を来すし、また仮処分あるいは仮差し押さえといった保全命令のように急ぐような場合には、はるか遠くまで急いで行かなければならないというようなこともあるようでございまして、ぜひともこういった点はできるだけ、せっかく開設をすることになっておるところでございますので、いろいろ他の要因があろうかと思いますけれども、ぜひこれは裁判所にも御努力願って十全な姿にしていただきたい。また、それには国会の先生方にもそういうふうな方向で御努力願いたいと思うわけでございます。
 それから、設備あるいは人員の充実問題も、先ほど言いましたように、個々的にはかなり問題がある部署がございます。今回の協議におきましては、われわれは裁判所に対しまして従来なかなか見せていただけないような資料も含めまして資料の提供をお願いいたしました。裁判所は、一般に公表されている統計以外にも、かなり従来見せていただけないようなものまで資料に提供していただいて克明な検討を重ねました。
 その中で、やはり個別的にも、あるいは総体的にもまだまだ不十分な点がたくさんあるではないかという指摘をし、裁判所では大体充足しておるというふうな言い方をされておりますけれども、私どもの実務家の各地の声からいたしますと必ずしもそうではないだろう、だからこそ今回も訴額の引き上げをした後でもずっとこの簡裁問題をフォローアップしていく必要があるということで、先ほど寺田先生からは条件と言われましたが、これについてさらに協議を重ねていくということを前提として私どもは合意したわけでございます。
 したがって、これから先――いままで余り各部門、部署でフォローアップされていなかったのではないか。特に弁護士会でもそうだと思います。四十五年にあれほど激しい反対をして附帯決議をつけて通ったわけでございますが、その後、簡易裁判所がどうなっているかについては、シンポジウム等は開いておりますけれども、それほど今日ほどきめ細かく検討はしてこなかったわけでございます。ましてや、今回競合管轄とか、あるいは訴額が九十万という多額になるというふうな観点から、ぜひそれに合わせていま言ったもろもろの問題をフォローアップしていくことにしたいわけでございますし、これについては他の二者も同意しておりますので、きっとこの点についてのフォロー、そして不備なところの充実については改善されていくものというふうに私信じておるわけでございます。
 本当に裁判所が民衆のためによき相談相手のようになれないならば、弁護士会としても弁護士をそこに派遣してでも相談に乗ろうじゃないかということも、協議会でも提案したこともあるわけでございます。ただ、一般的に家庭裁判所と違うのは、私も経験あるのでございますけれども、調停ならばよろしいのですけれども、訴訟になりますとやはり対立当事者というのが前提でございますので、裁判所の職員も大変相談を受けて困るようでございますね。
 たとえば、訴状が出て、これに対してこうなんだがどういうふうに防御したらいいだろうかという相談だと、なかなか片方にのみ力を入れるわけにいかないので、どうしてもそっけなくなる面もあるようでございます。そんなところ、調停委員とか、あるいは地域の弁護士もできるだけタイアップして、庶民のための裁判所の機能を果たしていくよう努力することにやぶさかでないというのはいまでも私ども変わっておりませんので、何かいい方法があったらと思って協議を続けていくことにいたしております。改善をされることを期待しておるわけでございます。
#15
○参考人(竹下守夫君) それでは、私からお答えすべきことは二つだったと思いますが、一つは、簡裁のあり方の充実強化という問題それからいま一つは、司法行政との関係でございますが、初めの簡裁のあり方ということにつきましては、これは非常に長期的に、一体これからわが国の司法制度の中で簡易裁判所をどういう方向へ持っていったらいいのかということになりますと、これは非常に大きな問題になると思います。先ほども申しましたとおり、当初考えられました構想というのを純粋に貫いていこうということになりますと、これは司法制度にかなり大きな変革を要求することになるのではないか。それがもちろん実現可能性ということも考えなければなりませんので、そこまでの改革ができるかどうかということになりますと、どうも私は余り見通しは楽観できないように思うわけでございます。
 そうなると、結局は一つの考え方としては、二兎を追うようなことになりますが、民衆裁判所的な考え方と、それから、しかし他方では、やはり第一審機能を地方裁判所と分担するという役割りと両方担っていくようなことになるのではないか。それは具体的にどういうふうな形で実現できるかということについては、またいろいろ検討すべき問題が残っていると思います。
 それから、もう少し短期的に見まして、しかし、さしあたりどういうふうにいまの簡裁制度を充実強化していくかということにつきましては、これは先ほど申しましたとおり、現在の枠の中で生かせるようなものはどんどんやはり民衆裁判所的方向に実現していっていただきたいというふうに私としては思っているわけでございます。最高裁判所当局におかれましても、口頭起訴の問題につきましてはかなり前から力を入れてやっておられるということでございますけれども、なお一層そういう方向を進めていただきたいというふうに思うわけでございます。
 それから、具体的に御指摘のございました未開設庁とか、それから不在庁、二人庁等の問題につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、私はやっぱりそれはいまもう一度検討の時期に来ているのではないかという気がするわけでございます。ただ、再検討というのは、実際に未開設ないしは不在でも何とかやれているのだからそれでいいじゃないかという意味ではなくて、そういうところは廃庁にしてしまっていいじゃないかという方向で申しているわけではもちろんございませんで、現在の経済事情なり、あるいは人口の移動ないしは交通事情というようなものを踏まえまして、果たして簡易裁判所を一体どこに設置するのが妥当なのか、国民の利用という面から見てふさわしいのかということをもう一度御検討いただいて、やっぱり必要だというところはこれは早急に充実していただかないといかぬのではないかと思うわけでございます。
 その場合に、しかし充実と申しましてもこれは人の問題でございますので、どうしてもこれは定員増加、裁判官のみならず事務官、書記官の定員増加ということにならざるを得ません。しかし一方では、行政官庁側では大変厳しい状況に置かれているわけでございますので、一応司法部はそれとは別だと申しましても、なかなか容易に定員増加ができるとも思われませんので、最大限の努力をしていただいて、その中で合理的な配置をするというしか仕方がないのではないかと思うわけでございます。
 それから、そのような検討をするについて一体それは最高裁判所がするべきことなのか、それとも法務省側がするべきことなのかという御質問でございますが、これは私はやはり司法行政の問題でありまして、最高裁判所側が検討すべきことであろうと思うわけでございます。とりわけ人事、それから予算等に関係してまいりますから、これはやはり最高裁側で御検討いただくべきだろうと思います。もちろん、しかし法律事項にわたる改正が必要な場合には、これは法務省を通じてその法案を提出していただくほかはないわけでございますから、そこは最高裁判所と法務省とで十分に意思の疎通を図られてやっていただく。しかし、これはいままでもいろいろな問題についてはそうやっておられるわけでございますので、別にその点について危惧はないだろうと思うわけでございます。
 それから、それと関連してだと思いますが、もし政府の立法が最高裁の意に沿わないようなことが起こったらどうなるかという御質問でございますが、これは少なくとも従来の経過から見る限り、裁判所に関連のある立法をなさるときには、法務省と最高裁判所で十分意思の疎通を図られてその上で提案されている、そう思われますので、具体的には問題になることはないのではないかと思うわけでございます。もちろん、理論上はそういうこともあり得るわけでございますが、その場合には、しかしこれは法律ができてしまえば、違憲でない限りは裁判所としても遵守せざるを得ないわけでございますからそういうことになるだろうと思いますが、現実にはそういう事態は万々起こらないというふうに思うわけでございます。
#16
○山中郁子君 御意見ありがとうございました。
 初めに、落合参考人に三点お尋ねをしたいのですけれども、まず第一点は、これは日弁連でも臨時司法制度調査会意見書批判ということで、昭和四十二年に出されております文書がございまして、私も読ませていただいて大いに共感するところが多くあります。この臨時司法制度調査会の意見書に示された簡裁についての方針ですね、これは具体的なあれこれの問題まで捨象して決めつけるというつもりはないのですけれども、どうもいろいろ勉強してみますと、前回、四十五年の改正と今回の改正と二つをずうっと経過を見ますと、やはり簡裁のあり方がこの臨時司法制度調査会で提起をされている方向へ全体として流れてきているのではないかと思わざるを得ないんですけれども、この点についての御見解をお伺いをいたします。
 それから二点目は、前回の改正時には日弁連を先頭にしてかなり大きな反対運動がありました。これも日弁連でお出しになっていらっしゃいます簡易裁判所民事事物管轄拡張反対運動総括報告書というのがございましていろいろ勉強になりましたが、このときと今回の違い、つまり日弁連としては今回合意をしたとおっしゃるその違いの中で、三者協議が行われたということは一つはっきりしている。しかし、そのほかに、先ほど二点御意見の中にございましたけれども、もう少し本質的な前回との相違というものの評価が日弁連としておありになったことによって合意に達したのかどうか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
 それから三点目は、先ほど御意見の中でも、移送件数が仮に二万件としても実態では円滑さを欠くという状況は考えられる。したがって、人的、物的にも拡充整備というか、拡充を条件として合意をしたのだという趣旨の御発言があったと理解をいたしました。この辺の問題は当委員会においても大変いろいろ問題になっておりまして、私も、労働組合などが調査をしている現場の方たちの声で、最高裁がおっしゃるのとはかなりやはりずれがありまして、そこら辺の手当ては実際どういうふうになるのかということはもう一つはっきりしません。
 具体的に申し上げますと、この事物管轄の拡張に対して具体的に要員の措置をするという考えはない、一般論としては今後充実強化していくんだというふうには物的にも人的にもおっしゃるんですけれども、具体的に今回の問題についてそういうことはなくてやっていけるという、簡単に言えばこういう趣旨の御答弁が繰り返されているんですけれども、ということは、もう一つ言えば、具体的な保証がないままにこれが実行されようとするということはやはり問題ではないかと思いますので、初めに以上三点を落合参考人にお尋ねをいたします。
#17
○参考人(落合修二君) 第一点の、いわゆる臨司意見ないしこれに対する日弁連の批判との関係でございます。三十九年でございますか、当時、臨時司法制度調査会の意見書が出まして、これには司法の万般にわたるいろんな改善と言われる方針が出されておりますけれども、その中で簡易裁判所についても、これを戦前の裁判所化するような方向が打ち出されております。そしてまた、訴額の上限も相当額引き上げるということも打ち出され、当時三十万にするとか、あるいは五十万にするとかいうような意見も出ておったようでございます。まさしくこの点からいたしますと、いま御質問のような点が根本問題として私どもには提起されるわけでございまして、この問題に入るに当たりましても会内討議を十分にいたしまして、あくまでも日弁連としてはこの臨司の意見に対する批判には沿うものである、また沿っていかなければいけないということが前提でございます。
 この問題について内部的なことを申し上げますと、日本弁護士連合会、各会にもございますけれども、司法問題対策委員会というものがございまして、もろもろの司法問題がこの特別委員会で論議されておるわけでございます。今回もこの問題に入る前にこの専門委員会、司法問題を専門的に調査研究する委員会に、協議に入るかどうかということ、入った場合にはどのような方針で、かつ具体的に何を討議していくかということを、二年間いろんな調査研究のほかにそれらの討議も重ねてきた上で、結論としてはやはりこの批判書の精神を貫いていくべきである。そこからはみ出さない限りにおいては、これは参議院の附帯決議もございますので、三者間で協議ができればいいけれども、それを超えてはならない基本線を持っていくということは、終始私どもは肝に銘じてやってきております。
 したがいまして、この九十万がそれを超えているのか超えていないのかといういろんな批判も、あるいは評価もございましょうけれども、先ほど申しましたような、要するに簡便にかつ比較的軽微な事件をやっていくのだということについての手当てがどこまでできるか。それから、民衆裁判所としての機能を果たしていくためにどれだけ支障を来さないかということを常に主眼に置いて協議してきております。したがって、単純に金額を上げるということであるならば、恐らくまた前みたいな意見になっていったか、あるいはもっとはるか別な形の結論になっていたかもしれません。しかし、裁判所あるいは法務省の方でも、これに対応する日弁連の意見も真摯に受けとめていただいたというふうに私ども思いますが、従来にない新制度を導入することによって、簡易裁判所の本質を変えていくものではないというふうに私どもは会内合意を得まして、この結論になったわけでございます。
 それから、三者協議に入って前と違った形をとりましたけれども、これについては三者協議に対する若干の批判も内部的には実はありますけれども、しかし大方はこういう種の問題について法曹三者で十分討議をし、その上で法制審議会あるいは国会等で御審議いただくという方針が最も望ましい。また、参議院の決議にも、さっき言いましたように、はっきり明示されておりますので、これを忠実に履行していこうということで、時には不調に終わる問題もあるし、時には合意に達して解決する問題もあります。私ども、必ずしも協議に入ったから、どんなことがあってもこれはまとめなきゃならないのだということではございません。しかし、双方の努力によって合理的な解決ができるならば、これにこしたことはないという精神で臨んでおります。したがいまして、今回は特にこの反対運動というものは、内部的にも、また機関の中でも出てはおりませんので、このような形に終わったわけでございます。
 それから諸問題、先ほど私四つ申し上げましたけれども、これらの改善策を改善していくことを条件というふうに私、最初言ったのかもしれませんが、どのようなふうに変えていくかということは、実はまだ双方でできておりませんので、より正確にこの点を申し上げますと、今回のこの法案のとおり実施する場合には、この実施を含めまして簡裁の運営について改善をこれからしていく必要があるが、これについて法曹三者でさらに協議を重ねていくということを前提にしているわけでございます。
 改善することを条件というふうにあるいはお聞きになったかもしれませんが、私どもは、正確に申し上げますと、改善していくことについて従来余りやってなかった協議を重ねていく、その中で解決をしていこうと、こういうわけでございますが、しかし、昨今の諸事情で果たしてどこまでできるか、当局にも特段の御努力を願わなければならないし、またその点についてどの程度実行がされるのか、こういう機会に国会においてもひとつ協議が実り、かつ実効あらしめるように特段の御配慮をお願いしたいというのはそういうわけでございまして、今回は前回と違いまして協議によって合意いたしましたが、決して路線を変更したものでないということだけは、この機会に明確に私申し上げておきます。
#18
○山中郁子君 ありがとうございました。
 竹下参考人に二点お尋ねをいたします。
 先生、最初にかなり詳細に御意見を述べられたことの結論的に私が理解いたしましたところは、いろいろなデータを述べられまして、日本における簡易裁判所は、設立の趣旨に照らしてみるならば、その目的が実現されているとは言いがたいと思うというふうに理解いたしました。
 それに関連して二点お尋ねしたいんですが、一つは、御意見の中にもありました、いわゆる特殊裁判所としての少額裁判所というものは、これはごく簡単にわかりやすく言っていただいて結構なんですが、それではどういう柱が必要なのか、どういうものがその柱とされるべきなのかということをひとつ教えていただきたいということです。
 それからもう一つは、その問題に関連して、私も法律の専門家ではありませんので、素人の勉強の範囲でいま理解をしているところは、やはり現在の簡易裁判所のあり方自体も、確かに先生が指摘されたように、その設立の趣旨に照らして目的を実現し得ていると言えない状況というのはいろいろあると思わざるを得ません。しかしその上に、四十五年の改正もそうですけれども、今回の事物管轄の拡張が、細かいことを申し上げる時間はないんですけれども、その本来の趣旨に照らして実現し得てないという簡裁のあり方の弱点をというか、むしろ問題点を一層助長するものになるとどうしても考えざるを得ないんです。
 それは、一つだけ例を申し上げれば、簡裁全部とは言いませんけれども、かなり大都市ないしは大都市周辺の状況というのは忙しくて大変なわけで、そこへまたたくさんの仕事がかかってくると、そういう状況になれば、本当に本来庶民が気軽に利用しなければいけないし、またその潜在需要は持っているその要求というものが、いまでさえなかなか口頭受理もしてもらえないし、そういう状況なのに、このことによって一層そうしたことが阻害されてくるという意味で、私はやはりその問題点を助長するものになるということはどうしても否定できないのではないかと思いますので、その点についての御意見を伺わせていただきたいと思います。
#19
○参考人(竹下守夫君) まず最初の点でございますが、私が申し上げましたのは、簡裁の現実が本来の目的に沿うものではないのではないかということではございませんで、確かに立法に関係していた方々の間では、それからまた、政府の提案理由の中にも一つの方向を目指すものがあった。しかし、それが当初からそのまま全部法律ないしは、あの当時同時につくった日本の司法制度全体の中にそのまま実現できるような形では生かされていなかった。だから、初めからいわば二重性格のものとして簡易裁判所が位置づけられていたのではないかと、そういうことでございます。
 そこで、それじゃそれを純粋に特別な少額裁判所としての簡易裁判所であらしめるためにはどういう柱が必要なのかという御指摘でございますが、一つは、やはり訴訟手続自体がもっと簡単に、一々両方の当事者が、いわゆる対審構造といいますか、両方の当事者がそれぞれこういう事実があった、ああいう事実があったというようなことを主張し、それを裏づけるために法律の規定に従った証拠を提出して、それを裁判官が法律に従って証拠調べをやって、どういう事実があった、こういう事実があった、だからこれに実体法、民法なら民法をこういうふうに適用してこういう結論になるということを判断し、その過程を一々記録に残していくというような形の訴訟のやり方では、どうしてもこれは一般庶民としては使えないのではないか。
 調停が普通の訴訟より非常になじみやすいというふうに言われておりますのは、決して費用が安いという点だけではなくて、やはり手続で、何をやっているのか、それぞれがどういう意味を持っているのかというのが素人が見てもよくわかる、だから使いやすいのだと、こういうことだろうと思うのですね。ところが、幾ら金額が小さくてもこれはそう簡単な事件ばかりではございませんので、金額が小さいから簡単というわけにまいらないと思うのですけれども、しかし、だからといって、それを地方裁判所以上でやるのと同じような厳格な手続でやったのでは当事者としてはどうにもわからない。小さな額の事件ですから、経済性から言って、すべて弁護士さんを頼むというわけにはいかない。国民が自分でやっぱり使える手続じゃないと困る。そこで、もっと手続を簡略化する必要があるだろうというのが一つでございます。
 それと関連して、やはり不服申し立てというものをどうするかという問題がございます。これはアメリカの少額裁判所などでは、やはり無制限に不服申し立てを認めるという考え方はとられていない。むしろ、少額の中でもまた一定額以下のものについてはもう不服申し立てば認めない、一審限りでおしまいにするというような考え方。こういう考え方は、イギリスのカウンティーコートという県裁判所の手続でもとられているようでございます。そういう考え方が必要だろうし、それから第一審の方を、先ほど申しましたように厳格な訴訟手続じゃなくするということになれば、これは不服申し立てを認めたときは、むしろ不服申し立てでは一からやり直しだというような考え方をとってくる必要があるだろうと思います。不服申し立てをすると、第二審は第一審の続きとしてやるのだというのじゃ、第一審の方がやっぱりしっかりしておいてもらわなきゃ困るというふうに、逆に不服申し立て制度が第一審の手続を規定するような面がございますから、やはりそういうことも考えておかなきゃいけないのではないかということになると思います。
 それからいま一つ重要な点は、やっぱりほかの裁判所との関係でございまして、簡易裁判所だけを一つの理念で実現しようと思いましても、これはどうしても日本の司法制度全体の一環でございますから、それじゃ簡易裁判所が特別な少額裁判所だと、それじゃほかの事件はどうなるのかという問題がどうしても出てくるわけでございますね。ほかの事件をほかの裁判所が受け持つわけでございますので、そのほかの裁判所の方をどういう体制にするかということが、どうしても不可分に結びついてくるということでございます。それが第一点でございます。
 それから第二点は、今回の改正、それから四十五年の改正というものが、ただいま申しましたような簡裁の特別な少額裁判所としての理念というものにどうも背馳する、ないしは背馳しないまでもそれを実現しにくい方向へ進んでいるのではないかという御指摘でございますが、そのこと自体につきましては、最初に私申しましたように、これは既存のいままでの地方裁判所と簡易裁判所の負担の分担というものに実質的な変化を与えるものではないと思いますので、直接のお答えとしてはそういうことにはならないのではないかというふうに申し上げることになると思うのですが、しかし御意見、御指摘のありました点は、それと同時に、今回二万件の事件が簡易裁判所へ移っていったら、簡易裁判所の方が負担過重になってしまうのじゃないかという御指摘で、これは確かにそういう心配はあるだろうと私も思うわけでございます。
 その点は、これはまさしく人事行政の問題でございますので、最高裁判所当局におかれましては当然御配慮いただけるものだというふうに私は考えているわけでございまして、同じ簡易裁判所といっても、確かにこの二万件のうちのごくわずかしかふえないところもあれば、大都会の裁判所のように非常に大きく事件数がふえるというところもあると思いますので、そういうところへはしかるべき人員配置をしていただけるものというふうに考えているわけでございます。
 以上でございます。
#20
○山中郁子君 ありがとうございました。終わります。
#21
○中山千夏君 きょうはどうも御苦労さまでございます。
 二つお伺いしまして、お二方それぞれ御専門の立場から御意見をお聞かせ願えればと思います。
 まず最初は、小さな問題、小さなことなんですけれども、簡易裁判所で家宅捜索の令状を出しているということです。これは簡易裁判所の性格、あるいは簡易裁判所の判事の性格というものから見まして、適当な仕事なのだろうかというふうにちょっと疑問を持っているわけです。と申しますのは、これは思想的な事件に関係して特によく見聞することなんですけれども、人権上ちょっと余りにも行き過ぎではなかろうかと思われるような家宅捜索がなされているんですね。それをいろいろ考えてみたり聞いたりしてみますと、どうも事務手続さえ完備していると警察は簡単に令状を取れるというような形になっているらしい。果たしてそれで本当にいいのだろうかという疑問があるわけです。今度二万件という仕事がふえますと、ますます簡易裁判所は忙しくなって、ますます事務手続さえ完備していればぱっと令状を出してしまうというような傾向が強まるんじゃないかという気もいたしますので、この点、お二方の御意見をお伺いしたいと思います。
 それからもう一つは、大変素人っぽい原則的な質問で恐れ入るんですけれども、三権分立ということから考えますと、法曹三者協議というもののあり方というものにちょっと疑問が生じるんですけれども、このあたりはお二方はどう考えておられるか。
 以上、二つお伺いしたいと思います。
#22
○参考人(落合修二君) 刑事事件の令状の発出問題にちょっと入ってきたので、私も的確なお答えができるかどうかわかりませんが、確かに私ども刑事事件を扱っておりますけれども、令状の発給がかなり形式化して、もう少し克明に検討すべきではないかという事例は、いまの家宅捜索の問題に限らず、ときどきそういう経験を私どもいたします。戦後、簡易裁判所でいわゆる治安判事的なことから令状主義になったことはいいのですが、これを簡易裁判所の裁判官にもやらせるということになっておるわけで、その制度自体は私はそれなりに意味はあると思うのですけれども、問題は、裁判官の一つには意識の問題あるいは見識の問題、一つには、やはり忙しいところではばか忙しいという中からどうしても形式に流れやすいというような結果ではないだろうか。制度そのものではなくて、やはり運用の中からそういったことがときどきあるのではないかというふうに思われますので、この辺も、事件が簡裁の方でまたふえますと、そういった点への影響も当然考えていかなければならないかと思いますが、これらもひとつ今後法曹三者でもいろいろ検討をしていくことになると思います。
 それから、三権分立と三者協議の問題でございますが、三者協議は先ほどそのいきさつから、どんなことをやっているかを詳しく御説明したつもりでございますけれども、決してここで立法作業をするというわけではございません。時には、今回のような立法事項についての専門家あるいは当面の当事者での話し合いということでやっておるわけだし、中には運用上の問題でいろいろ話すことも当然あり得るわけでございまして、司法制度の改善について広くこの三者で話し合おうということ、そしてこの三者協議は、先ほど何回も申し上げますように、当院でそのように御指摘いただいて、私どもこれを真摯に受けとめていまやっておるわけですが、それなりの効果を発揮しております。
 したがいまして、三者で合意したからといって、また国会でそれが当然そのままそのとおりでなければいけないという理論的根拠はございませんので、決して国会の立法権を私どもが干渉しているということには絶対なっておりませんし、なってはならないと思っております。したがって、三権分立とこの三者協議というものの間には何らの矛盾的なものは存在いたしませんので、ひとつ御安心いただきたいと思います。
#23
○参考人(竹下守夫君) まず、第一点の簡易裁判所が捜査令状を出しているという点でございますが、これは率直に申しまして私、刑事関係専門ではございませんのでよく実情を存じませんが、中山議員の方がよく御存じかとも思いますけれども、制度といたしましては、令状を発付する要件等につきましての判断が簡易裁判所の裁判官、判事がやったのでは不正確になるといいますか、誤るおそれがあるのではないかというような懸念は一応ないのではないか。
 その意味では、制度として簡易裁判所の裁判官が捜査令状を出せるということは不当とは言えないのではないかと思うわけでございますけれども、現実に運用面でどういう問題があるかということになりますと、ちょっと私としてはよく事情を存じませんので、申しわけないのですが、何とも申し上げかねるということでございます。
 でも、一般論といたしましては、確かに簡易裁判所の負担過重ということになってまいりますと、事務一般の判断が必ずしも的確にいかないという懸念はないわけではないと思いますが、それは運用の問題でやっていただければ何とか解決できるのではないかと思います。
 それから、三者協議のあり方と三権分立の問題でございますが、これは確かに、一つは国会との関係で、何か事前に最高裁、法務省、それから日本弁護士連合会というものとが内容を決めてしまって、実際上国会の審議が余り意味がないようなものになるというようなことでありますと、国会との関係で三者協議のあり方というのが問題になるかと思いますけれども、これはただいま落合参考人もおっしゃいましたように、あくまでも三者の一応の意見調整ということだと私は了解しておりますので、国会の立法権ないし審議権を侵害するという心配はないだろうと思います。
 それからいま一つは、行政権と裁判権との関係でございますね。行政権の一翼を担っている法務省と最高裁判所とが事前に協議をしているという点については問題はないかという御指摘だと思いますけれども、先ほどもあちらの先生の御質問にお答えしましたように、立法権が法務省にございまして、裁判所関係事項についても裁判所がみずから法案を提出するということができませんから、どうしても法務省と最高裁というものとが立法事項につきましては協議をし意見の調整をせざるを得ないという関係にあると思うわけでございますね。
 それと、日本弁護士連合会はそういう意味では直接関係はないようなことでございますけれども、これはやはり、いわゆる法曹三者の一翼を担う団体でございまして、法律上認められているものでございますから、在野法曹の意見というものも、立法をする際には法案の内容に反映をしていただいた方がいいのではないかと思うわけでございまして、そういう点から見ましても、少なくとも現在まで行われている三者協議というようなものにつきましては、三権分立との関係での疑念というものはないというふうに考えてもいいのではないかと、私はそう思っているわけでございます。
#24
○中山千夏君 ありがとうございました。終わります。
#25
○委員長(鈴木一弘君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。心から御礼を申し上げます。
 午前はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。
   午後零時十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時五分開会
#26
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 裁判所法等の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#27
○寺田熊雄君 簡裁の事物管轄の拡大によって簡裁の事件数がどの程度増加するであろうか、これにつきましては大体二万六千件ぐらい増加する、ただし六千件は地裁へバックするので純増は二万件ほどであるという御答弁がありましたね。
 その増加する二万件の事件というのはどんな種類の事件であろうか、前回の御答弁をいろいろそんたくをいたしますと、ともかくクレジットの事件あるいはサラ金の事件、こういう金銭貸借の事件が最近急増しておるということでありましたので、このような事件がいままで三十万で抑えられていたのがふえるのかどうか、こういうふうな疑問を持つわけでありますが、この点についてはどんなお考えでしょうか。
#28
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 今回の改正によりまして三十万円から九十万円に引き上げられることに相なりますから、三十万円を超え九十万円以下の訴訟物の価額の事件が一応すべて簡易裁判所の管轄となるわけでございますが、非常に類型的に見て困難視されております不動産に関する訴訟につきまして、地方裁判所と簡易裁判所の競合管轄という制度が盛り込まれておりますので、
   〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕
三十万円を超え九十万円以下の不動産に関する訴訟は、多くは地方裁判所の方に提起されるであろうという見込みでございますので、私どもの二万件の試算も、御承知のとおり三十万円を超え九十万円以下の不動産訴訟の約八〇%が地方裁判所に提起されるであろうことを前提とした試算でございますので、簡易裁判所の方に参ります約二万件というのは、ほとんどが金銭訴訟であろうというふうに考えております。
 その金銭訴訟の中で、最近事件が非常にふえておりますのがクレジット関係、サラ金関係のものでございますので、委員御指摘のとおりになろうかというふうに考えております。
#29
○寺田熊雄君 簡裁の事件の中で地裁に控訴される事件、これは何か統計みたいなものがあるんでしょうか。もしなければ、大体のところで結構ですが、どういう事件が控訴されるか、ちょっと御説明いただきたいと思うのですが。
#30
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 昭和五十五年で見ますと、簡易裁判所の民事事件のうち控訴されているものの七〇%以上が土地、建物等の不動産事件でございまして、今回の事物管轄が改正されますと、それらの事件につきましては地方裁判所との競合管轄が認められている点から、地裁に移ることが予想されます上、簡裁に増加するのは控訴率の比較的少ない金銭事件であると思われます。
#31
○寺田熊雄君 先ほど午前中に二人の参考人の意見を聴取したのでありますが、その中で一人の参考人が、簡裁の事物管轄を拡大するというのは最高裁の上告事件を減らす意味があるし、そういうような目的を持って簡裁の事物管轄の拡大を意図したこともある。今回もそうだというのか、今回は違うというのか、その辺のところはちょっとぼけておりましたが、そういうような指摘がありました。
 いま総務局長のお話ですと、簡裁の判決の中で控訴されるものの中の七〇%は不動産に関する訴訟の判決であるというのでありますからして、それらは大部分は地裁に提起されるであろうということになりますと、最高裁の上告事件というものには余り変化がないと見ていいですね。普通の簡裁事件ですと、上告は高等裁判所が取り扱う。しかし、いま局長の御説明ですと、むしろ最高裁の方に上告される率の方が多いと。その点には、今回の法案はたとえ成立しても変化をもたらさないと考えてよろしいんでしょうね。
#32
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 前回、事物管轄の改定が行われました昭和四十五年のときにも、最高裁判所に上告されます事件の数にはほとんど変動が見られなかったようでございます。今回につきましても、私どものこれは予測ではございますけれども、最高裁判所へ上告される事件の数の面でさほど変動がないのではないかというふうに予測いたしております。
#33
○寺田熊雄君 きょう調査室の方から衆議院の会議録を取り寄せてざっと閲読をいたしますというと、司法委員制度の運用の状況についての質問があるようであります。それを読んでみますと、年間、現実に司法委員の活躍した事件というのは千件程度であるという答弁があるようであります。そうしますと、これはほとんど活用されていないと言ってもよろしいと思いますが、これについては最高裁としてはどんなふうな考えを持っておられるのでしょうか。ちょっとお伺いしたいんです。
#34
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 司法委員制度も、裁判に対する国民あるいは民衆の関与ということで、簡易裁判所制度の発足と同時に認められた制度でございまして、非常に国民が直接裁判に関与するという意味で結構な制度だと存じております。
 本来は、本来と申しますか、あるいは法の意図したところは、実際に法廷で行われます審理に立ち会って国民の良識を裁判に反映するということにあったようでございますが、なかなかそういった国民関与という点でのわが国の歴史的な土壌というものが浅かったせいか、それほど利用されていないことも事実でございます。したがいまして、最近では訴訟事件について裁判官が和解を勧告いたします際に関与していただいておることの方が多いようでございまして、その意味では調停制度と似たような利用のされ方もされているわけでございます。
 最高裁判所としましては、司法委員制度の設けられました趣旨はやはり今後とも十分生かしてまいりたいというふうに考えております。
#35
○寺田熊雄君 一説によると、これは存在することに意義があるので余り活用されなくてもいいんだという御意見の方もおられるようであります。なるほどそうかなという感じもするけれども、いまの総務局長のお話だと、できるだけ活用したいというのでありますから、今後のあなた方の第一線裁判官に対する指導ですね、これを望んでおきます。
 それから、昭和三十九年の臨司意見、これがちょいちょいやはり話題になりますが、当時この臨司意見が発表になりましたときには、日弁連、それから単位弁護士会、これの厳しい批判があったことは皆さんも御記憶があると思います。私ども岡山弁護士会の場合でも、高等裁判所の支部が廃庁になるようなことがあれば国選総辞退をもって闘うというようないろんな作戦を立て、ついに廃庁ということを、まあ具体的な案として最高裁にあったかどうかこれは知りませんが、そういうことをなしにしていただいて、いろいろ県、市、商工会議所、そういうものの努力、弁護士会のもちろん努力が中心になりましたけれども、広島高等裁判所岡山支部の新しい庁舎を建てることに成功をしたわけであります。
 これは岡山だけでなくして、函館にありました札幌高裁の函館支部は現実に廃庁になったんですね。そういう例もあり、かなりな大騒ぎになったわけでありますが、
   〔理事小平芳平君退席、委員長着席〕
高裁支部の廃庁と同時に、簡裁の問題についてもこの臨司意見というものが大変思い切った意見を出しておりました。
 第一が、簡裁を区裁判所に改称しろ、戦前の制度に戻せということでしょうか。それから整理統合をしろ、事務移転をしろ、事物管轄を拡張しろというような意見でありましたので、これもごうごうたる非難の的になったわけであります。簡裁制度を根本から揺り動かすというものであったわけでありますが、いまその後、最高裁判所のいろいろな御方針なり、また局長のお答えなどを吟味いたしますと、この臨司意見はもうすでに過去のものになってしまった、これを採用するような意図は全くないというふうに私どもは受け取っておるわけでありますが、そういうふうな理解をしてよろしいでしょうか。
#36
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 臨司の意見は、裁判所の設置問題につきましても相当広範にわたって意見が述べられておりますが、事、簡易裁判所について申し上げますと、臨司の意見で出ましたように、当時たしか三十九年の八月か九月に答申がございましたが、その当時で簡易裁判所を裁判所に名称を改めて民事の事物管轄を三十万から五十万に引き上げるべきであるという意見であったと思います。
 なお、その中でも、どちらかというと五十万円に引き上げるべきであるという意見の方が強かったように聞いております。したがって、当時の臨司の意見書としましては、明らかに裁判所化の方向が出ていたものと存じます。現在私どもは、経済変動に伴いまして事物管轄の金額は引き上げられてまいっておりますけれども、設立当初の理念であります簡易裁判所のあり方というものが変わっているとも思いませんし、また今後変えようとも思ってはおりません。
 ただ、簡易裁判所の数の問題につきましては、これまでにも当委員会でも答弁申し上げておりますように、私どもとしましても古くから検討している問題の一つではございます。設立当初と現在とでは人口の分布、交通の事情等も非常に変わってまいっておりますので、全国的な視野での裁判所の有効な利用という点から考えますと、配置の問題というものにつきましては今後とも検討はしてまいらなければならないと思っております。ただ単純に事件数が少ないから、あるいはそういった面から、行政的な効率が悪いという面からだけでは律し切れないほど国民の権利義務にかかわる重要な問題だと認識しておりますので、十分国民の皆様方がこれでいいのだというような方向が打ち出されるのでなければ手をつけるべきものではないという考えでおります。
#37
○寺田熊雄君 いまの局長のお答えで私どもも結構だと思います。余り合理化至上主義で、ことに行政効率、財政効率というようなことだけで大衆の便、不便を考慮しないで事務移転などやってもらっては困る、これはわれわれも全力を挙げてやはり反対をせざるを得ないということでありましたので、いまのそういうお考えで、大衆の便宜と国民のそれによって受ける福祉のぐあいということを中心にお考えをいただきたいと私ども考えております。
 それから、いまちょっと局長おっしゃったけれども、最近人口が急増するとかいうようなことで簡裁の位置を変えるとか、あるいは事務上の特段の処理をするとか、何かそういう必要が起きた具体例がありましたら、御説明いただきたいと思いますが。
#38
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 仰せのとおり、人口急増地帯というものも各所にいま見られるところだと存じますが、具体的な形で、あるところに簡易裁判所を設置すべきであるというような話は承知しておりません。
#39
○寺田熊雄君 また最近、事件の処理が著しくおくれている簡裁があることが指摘されたというようなことも午前中の参考人の意見陳述の中にあったわけでありますが、何か吹田であるとか愛知中村であるとかいうような具体的な裁判所の名前も指摘せられておりましたが、そういう裁判所が全国で具体的にどの程度あるのか、あるとすればその原因は何なのか、その辺をちょっと御説明をいただきたい。
#40
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 確かに、御指摘の吹田簡易裁判所、愛知中村簡易裁判所あるいは墨田簡易裁判所について見ますと、ここ一、二年民事訴訟事件が急増いたしております。全国的に見ますと、いま手元に細かい資料はございませんけれども、あるいはそのほかにも相当数事件の伸びている簡易裁判所もございます。これらにつきましてはクレジット関係、サラ金の事件が急増しているということが原因でございまして、他の一般的な損害賠償請求事件あたりの金銭訴訟事件、土地、建物事件等の伸びはそれほどでもございません。
#41
○寺田熊雄君 いまの問題と関連をいたしまして、今回の法案に対して全司法労働組合中央執行委員会、これが反対する見解というものを私どもの方に配付してまいっております。
 その理由づけの中でこういう一文があります。「簡易裁判所の現状からみた場合どうか。」こういうタイトルがついておりまして、
 前回三〇万円に拡張された一九七〇年の前数年は簡裁の民事通常訴訟受理事件数が減少傾向にありましたが、今回の場合はこの数年来簡裁の民事事件が急激に増加を示しており状況に大きな相違があります。すなわち、一九八〇年には七万五、五五二件に達し前回の拡張で大幅に増加した一九七一年の七万五〇九四件を追い越していますし、また同じく調停事件が約三〇パーセント増(四万八四四七件→六万二七一四件)、督促事件が約六三パーセント増(二一万五三六件→三四万二二〇九件)というように激増し、かつ、その後も引続き大幅な上昇傾向にあります。一方、職員数の方は欠員の不補充、相次ぐ地方裁判所への人員引抜きによって、簡裁の事件処理はすでに飽和状態にあるといえますし、窓口相談や口頭受理をはじめとする住民サービスも低下しつつあります。このような状況にもかかわらずいま訴額を一挙に三倍に拡張されるならば、増員が期待されない以上簡裁はマヒ状態に陥り、職員の健康破壊がすすみ、簡裁本来の役割はますます形がい化することが明
 らかです。こういう一節がある。これが本当であるとすると、確かにこの法案はいけない、あしき法案であるということにならざるを得ないんですね。
 「簡裁はマヒ状態に陥り、職員の健康破壊がすすみ、簡裁本来の役割はますます形がい化する。」悪事が三つも重なっています。これはあれですか、最高裁にはこういう全司法の反対意見というのは行っておりますか。行っておるとすると、この中の内容はこれは真実かどうか、これは当然吟味せざるを得ないと思うんですね。これが真実であれば、最高裁は手を打たなきゃいけない。これはどうなんでしょう。これをちょっとお聞きしたいです。
#42
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 全司法労働組合の御意見は書面でも拝見いたしておりますし、私自身も直接本部の役員の方にお目にかかって、全司法労働組合側の現状認識を聞かせてもらい、あるいは要望も聞いております。私どもの認識と全司法労働組合側の認識とには相当の開きがございます。
 確かに事件数、ここ二、三年をとってみますと、民事訴訟事件につきまして相当数の増加がございますけれども、しかし、なお前回の改定直後であります昭和四十六年当時の事件数と昭和五十五年とを比べますと、昭和五十五年は昭和四十六年の九〇%弱にとどまっております。また、調停事件数が相当ふえてまいっておる点も事実でございます。これは昭和四十九年でしたか、調停制度の改革によりまして、調停の充実強化ということに力を入れまして次第に伸びてまいったのだと思います。
 国民に親しまれる、手近なところで事件の受理を受けられるという簡易裁判所の性格から考えてみますと、調停事件が伸びてまいるということは、ある意味では簡易裁判所がよく利用されているということで、結構なことだと考えております。したがいまして、私ども、ここ数年当委員会におきましても御審議いただいております毎年の裁判所職員定員法で増員をお願いしてまいっているわけでございます。
 それから、督促事件が非常にふえている点も確かでございます。この督促事件は、よく話題に出ますクレジット関係、サラ金関係といったものの事件がふえたことによるものだと思われます。他方、過料ですとか、和解ですとか、公示催告ですとか、仮差し押さえ、仮処分でありますとかいったような民事事件は非常に減ってまいっておりますし、刑事事件も減ってまいっております。
 これらの点から見ますと、私ども職員を配置するに当たりましては、毎年、一、二年前の新受事件等をにらみながら、できるだけ全国的な規模で、高裁にも地裁にも簡裁にも適正な人員を配置することに相努めておるわけでございまして、昭和四十六年からしばらくの間は、確かに簡裁の事件が減っただけに、その分地方裁判所の方に回ったということもあろうかと思いますが、また最近では簡易裁判所の事件が伸びてはおりますけれども、それ以上に地方裁判所の民事事件の数がふえ、事件の内容において困難な事件がふえてまいっております点から、簡易裁判所の事件数の伸びと人員のそれに対する伸びというものが十分連動していないかもしれません。
 しかしそれは、いま申しました地方裁判所の事件の伸びなり複雑困難性が大きいがゆえに、事件が少々ふえてもそれで賄い得るという観点からのものでございまして、一般的に見ますと、あらゆる裁判所について事件がふえてまいっておりますので、私どもは今後とも毎年お願いいたしております増員の点で十分努力をして、できるだけ簡易裁判所の方にも十分な人手が渡るように今後とも相努めてまいりたいというふうに考えております。
#43
○寺田熊雄君 簡単にちょっと結論だけを伺いたいんだけれども、この簡裁が「マヒ状態に陥り、職員の健康破壊がすすみ、」云々というのは「明らか」だという、この点はどうなんですか。どういうふうに認識していらっしゃいますか。
#44
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 私どもとしましては、ただいまも申し上げましたように、全国的な視野におきまして、限られた人数を適正に配置しておるつもりでございますから、特に簡易裁判所につきましてそういった状況があるというふうには考えておりません。
#45
○寺田熊雄君 それで、こういうふうな認識なり見通しを全司法が持ってあなた方に交渉に来るわけでしょう。そうするとあなた方は受けて立つ。話し合いの方は当然あるはずですね。あなた方は全司法の諸君にあなた方のお考えを述べられると。先方はそれであなた方の意見に納得しましたか。やはり納得しないで、あくまでもそれは納得できません、実情と違いますと言ってがんばるのか、その辺のところはどうなんでしょうね。
#46
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 御承知のように、簡易裁判所は全国に五百以上ございますので、非常に規模の小さい庁からきわめて規模の大きい庁までばらつきがございます。非常に規模の小さい庁、これはしたがって事件数がきわめて少のうございますので、そういったところについてまで全司法労働組合の方でも人手が足りないというほどのことは言っておらなかったように思います。相当規模のところで忙しいのだというようなことは、確かに私どもも聞きました。
 しかしながら、ただいま申し上げましたように、どこの裁判所も暇であると私どもも決して思ってはおりません。簡易裁判所の中にも相当忙しいところがあることは事実でございます。しかし、裁判所は簡易裁判所だけではございませんので、地方裁判所、高等裁判所についても私どもとしては適正な人の配置ということに相努めなければならないわけでございまして、事件数その他の動向を十分踏まえて人の配置、手当てをいたしておるつもりでございますので、ただいまの現状ではまあまあの適正な配置が行われているというふうに考えております。
#47
○寺田熊雄君 この法案は、日弁連などの要望をよく組み入れて法曹三者で十分協議をなさって出てきた法案ですので、私どもも賛成の立場に立っておりますけれども、こういう全司法の反対意見などを見ますと、多少正直に言ってどうかなという感じもいないではないわけですね。そこで、できれば参考人に全司法の労働組合委員長を呼んでその真偽を確かめてみたかったわけでありますが、諸般の事情でそれがかなわなかったので局長にお伺いするということになるわけですが、局長の御意見を伺うと大丈夫です、賄えますと、忙しいのは簡裁だけじゃありません、まあそれはそうだろうけれども、われわれでも忙しいし、忙しくなくても困るんだから、暇でも困るんだから、それはわかるけれども、やはり全司法の言うことは根っから根拠のないことを言っているというふうにとるべきではないわけで、それなりのやはり根拠を持ち、その叫びにはそれなりの切迫した空気あるいは真実性が込められておるように思うわけです。
 ですから、これはやはり最高裁が何か全司法をめんどうくさがったり嫌がったりせずに、やはりぼくは、職員を代表する労働組合でありますので、よくその意見に耳を傾けて、そしてこういう不満が出ないように十分適正な措置をしてもらいたい、それを希望したいんですが、いかがでしょう。
#48
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) あるいは私の御説明の仕方が不十分であったのかもしれませんが、私どもも全司法労働組合の言うように、簡裁の中にも相当忙しいところがあることはそのとおりだろうと思います。しかも、今回大きい簡裁につきましては相当数の民事訴訟事件が移るわけでございますから、そういったところを、何庁とまでははっきりは申せませんけれども、相当の数の簡易裁判所につきましては人手の手当てをする必要も出てまいるだろうと思っております。裁判所全般につきまして事件数の伸びが大きくて、私ども裁判所職員の現在の数が十分であると決して思っているわけではございませんで、そこは厳しい財政事情の中におきましても毎年じみちな努力を重ねてまいらなければならないと思っております。
 特に、簡易裁判所につきましては、今回の事物管轄の改定によってどこも手当をしなくていいというふうには私どもも思っておらないところでございまして、事件の移りの推移を見ながらその辺は十分考えてまいりたいと思っております。
#49
○寺田熊雄君 いまの局長の御答弁の中には、今後やはり全司法労働組合と十分話し合ってこういう不満が起きないように十分努力していきたいという、そういうお考えはちょっとなかったように思うのだけれども、やはりよく全司法労働組合の意見を聞き、十分謙虚に話し合って、正しいものであればそれを取り上げていくという気持ちがあってほしいと思うんですよ。いかがでしょう。
#50
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 委員御指摘の点は、今後も十分努めてまいりたいというふうに思います。
#51
○寺田熊雄君 それから、簡易裁判所が少額軽微な事件、これは民事、刑事でも、たとえば賭博であるとか窃盗、横領というような非常にポピュラーな、われわれの容易に理解し把握し得る事件、こういうものについて迅速に裁判をしていく。そのためには資格者に限らない、人生経験の豊富な信頼し得る素人の裁判官を登用する、それでいいと思うんですね。いいけれども、また一面、民事事件など、とかく弁護士の仲間で不満が起きる。さっぱりわかっておらぬじゃないかというような不満がある。それから、長いものに巻かれろという傾向があって、いわゆる裁判官的な良心というようなものが少し欠けておりはせぬかという不満が起きる。
 そういうことを考えますと、この間も局長たしかおっしゃったと思うけれども、これからも裁判官の質を高めていく、十分いろいろな方法を用いて法律的な教養を高めていきますということをおっしゃったですね。それは結構だと思うので、裁判官的良心なんというのはそう口で教えたからすぐ生まれるものじゃないので、これは裁判所の雰囲気といいますか空気で自然に醸成されていくというものでしょうから、そういう点ですぐれた裁判官を一人でも多く配置すれば周囲に影響を与えていくのでしょうが、いろいろな方法を使って、素人の裁判官であっても弁護士会が不満を持たないように、十分教育面、指導面で御尽力をこれからもひとつお願いしたいと思います。この点いかがでしょうか。
#52
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 前回、たしか担当の人事局長が御答弁申し上げたのかと存じますが、簡易裁判所は必ずしも有資格の裁判官でなくても裁判できる、そのためにいろんな簡易な手続もつくられているという点もございまして、有資格の裁判官、特別に任用されました良識ある裁判官――有資格の裁判官も良識がないというわけでは決してございませんけれども、学識経験のあるという点で選ばれた特別任用の裁判官、それらの種類の裁判官がある程度まじり合った中で行われていくというところに、簡易裁判所の一つの特色もあるように存じます。
 特別任用の裁判官につきましては、以前にも増して任用の試験も厳しく行われており、採用後の研修も司法研修所で、あるいは司法研修所の研修を終えました後は大都市の先輩の大ぜいおられる裁判所で十分訓練を受けて独立簡易裁判所の方に参る運用になっておりますので、その点は今後とも十分行われることであろうと思います。
 また、毎年のように高裁単位の協議会あるいは会同等を通じて、さらに質の向上にも相努めてまいりたいというふうに思います。
#53
○寺田熊雄君 最後にお尋ねをするのは、毎年のことでありますが、これは法務大臣にもお尋ねをいたしたい。
 まず、最高裁の方では、日弁連の方で強い希望があるのは国選弁護料の引き上げの問題であります。これは私どもも毎年陳情を受け、そして私どもなりの努力も多少はいたしておるわけでありますが、ことしは何やら末曽有の財政難で片っ端から削り取ってやろうと大蔵大臣を初め大蔵の官僚が大変意気込んでおるようで、だから皆さんのこれを突破してこれを説得して予算をふやすということがいかにむずかしいか、私どもよくそこは理解しておりますけれども、しかし大蔵当局の武者ぶりに恐れをなして引っ込んでもらっては困るわけであるからして、こちらも身構えて突進をして、できるだけ多くのものを取っていただきたい。それでないと、やはり日弁連その他の期待を裏切っていろいろの面で支障を生ずるわけであります。
 最高裁におかれては国選弁護料の、そして法務大臣におかれては、いつものことでありますが、法律扶助協会への補助金の問題あるいはお二方ともいまお話のございました裁判官の増員の問題、あるいは登記官その他登記所職員、法務局職員の増員の問題、難関ばかりでありますけれども、ぜひひとつ予算の獲得の面では獅子奮迅の御活躍をお願いしたいと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
#54
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 内閣へ提出いたします昭和五十八年度の概算要求につきましては、今月末に予定されております最高裁判所の裁判官会議において確定されますので、まだ明確なことは申し上げられませんけれども、国選弁護報酬につきましては、これは憲法に基礎を持ちます刑事司法におきます人権保障のかなめとなるものでございまして、毎年のことではございますが、最高裁判所といたしましては最大限の努力をし、最重点事項として要求し、それなりの成果を上げてまいったと思っております。
 来年度につきましても、従前の態度を改めることなく十分努力してまいりたいと思っております。また、増員につきましても、裁判所が十分な機能を果たしますためには毎年欠かせない問題でございまして、これも例年どおり最大限の努力を払ってまいりたいというふうに考えております。
#55
○国務大臣(坂田道太君) 法務省の来年度の予算につきましては、ただいま作業を重ねておるところでございます。
 何を申しましても、国の秩序維持とそれから国民一人一人の権利保全という非常に大事な職責を務めといたしておる省でございますから、行政改革の非常に厳しい予算査定の状況にはございます。しかしながら、必要な予算というものは何といたしてでも確保しなければならない、そういう気持ちでおるわけでございまして、登記所関係の問題あるいはまた、法律扶助協会等の補助金等の問題につきましても、ひとつ最大限の努力を払う覚悟でございます。
#56
○寺田熊雄君 終わります。
#57
○小平芳平君 午前中の参考人の御意見についてですが、お二人とも今回の改正そのものには賛成であるというような御趣旨。特に手続的な面等において若干の注文はつけられましたけれども、原則的には賛成であるというふうに伺っておりました。ただ、お二人とも一致して強調されたことは簡裁の充実強化であります。
 あと私もわずかな時間でありますが、この点について御質問したいのですが、初めに三者協議の過程で裁判所側は競合管轄を土地事件のみに限定するとの意見であったというふうなお話がありましたが、裁判所側として建物も含むことにした事情について御説明をいただきたい。
#58
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 当初、土地事件についてだけ競合管轄を認めることでいかがかというふうにいたしましたのは、同じ不動産訴訟とは申しましても、土地事件と建物事件とでは相当ないろんな面での開きがあるというふうに考えたわけでございます。土地は基本的な不動産であるということ、訴訟物の価額の算定の基礎となります固定資産税の評価と現実の価値との間の乖離は土地については相当大きいけれども、建物についてはさほどでない。建物については相当大きなものもあるけれども、建物訴訟につきましては相当大きな建物の明け渡し、あるいは建物収去、土地明け渡しといったような事件もございますけれども、中にはアパートの一室の明け渡しを求めるものも建物訴訟の範疇に入るわけでございまして、それらの点から考えますと、この際競合管轄を認めるのは土地事件についてだけでよろしいではないかというのが当初の考えであったわけでございます。
 しかしながら、建物を収去することによって実際には土地の明け渡しが求められるというような事件も相当多くあって、建物訴訟というのは建物だけの経済価値の問題では済まされないというような日弁連側の御意見、それから日弁連が三者協議を成立いたさせます前提として、各単位弁護士会にアンケート調査した結果の単位弁護士会の御意見としては、一会も残さず建物訴訟についてもやはり土地訴訟並みに競合管轄にすべきであるという御意見が出てまいったという点を踏まえまして、私どももそれでは一歩進めて建物訴訟についても土地訴訟同様の扱いをいたすことに踏み切ったわけでございます。
#59
○小平芳平君 次に、裁判の効率的な運用を図るために地裁と簡裁の分担、これは三十万円が九十万円で分担を決めようというわけではないけれども、しかし、現実の問題として、簡裁には全く別系統の事件が行くというふうな別の制度にはなってない。同種の事件が地裁に行き簡裁に行く、また簡裁に行き地裁に行くというふうな現在の制度で、裁判所としてはどういう割合が適当と判断されますか、伺いたいわけです。
 たとえば二万件が移動する、移行するということでも、その移行する辺が妥当というふうに考えられますのか、その辺の事情について伺いたいと思います。
#60
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 簡易裁判所発足当時の事情を見ますと、簡易裁判所設置の当初の審議の過程におきましては、あるいはアメリカの少額裁判所といったような制度を見習ったという点はあるようでございます。
 しかしながら、発足いたしました簡易裁判所は、確かに比較的少額軽微な事件を簡易迅速に行うという大目的がございますのと、国民の身近なところで国民に親しまれる裁判所という点で、督促事件でありますとか、調停事件でありますとか、あるいは刑事で言えば令状事件でありますとかいった、令状は地裁も扱いますけれども、地方裁判所が扱わない事件を相当簡易裁判所の取り扱う事件と決めたわけでございますが、事、民事訴訟事件について見ますと、訴訟物の価額によって比較的少額なものを簡易裁判所が扱い、そうでないものを地方裁判所が扱うということで、お互いに第一審の民事訴訟を分担し合うという形で発足したわけでございます。
 経済変動に伴いまして、その額はスタートの五千円から今日の三十万円に切り上がってまいったわけでございますが、特にと申しますか、今回の九十万円への引き上げについて考えてみますと、地方裁判所と簡易裁判所とがどの程度の民事訴訟事件を分担し合うのが適当であるかという思考を前提としたものでは決してございませんで、昭和四十五年当時三十万円以下の民事訴訟事件は簡易裁判所が取り扱っていたのでございますから、それを現在の経済価値に引き直すと十分九十万円に達するわけでございまして、ある意味ではこの改定が行われませんと、国民が簡易裁判所を身近なところで利用するということが次第に利用しにくくなってまいっておると言えるのではないかと思います。
 また、それとうらはらの問題でございますけれども、それだけに、地方裁判所の方に比較的少額な事件が参ることによって地方裁判所が非常に重い負担を負ってきている。こういった点から、昭和四十五年当時扱うことにさせた程度の事件を、今回経済変動を勘案して簡易裁判所で取り扱うことにしてはいかがかという発想からのことでございますので、地方裁判所と簡易裁判所とが民事訴訟事件のどの程度の割合を分担するのが適当かということが中心になって、基礎になってお願いしているわけではないわけでございます。
#61
○小平芳平君 分担割合がどの程度が適当かということが基礎になって、今回の改正が行われるのではないということですね。それはよくわかりますが、結局、昭和四十五年当時の分担割合にしようという御意図なんでしょう。
#62
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 金額的には昭和四十五年当時三十万円であったものは今日では九十万円程度であろうということでございますけれども、今回の改正法案に盛り込まれておりますのは単純な金額の引き上げだけではございませんので、不動産訴訟の地簡裁競合管轄さらにあらゆる事件についての当事者双方の希望による地裁への必要的移送という新しい制度が盛り込まれておりますので、分担割合は、昭和四十五年当時より、二万件簡裁に動くと試算した結果によりますと、地裁の方が多くなっております。
#63
○小平芳平君 それから、前回の委員会で最高裁当局は、簡裁の未開庁については今後も開庁する意思がないかのような答弁をされましたが、将来とも開庁の見通しがないのに法律では決めてあるということ、その辺の予盾はどう説明されますか。これは最高裁と法務大臣にお尋ねしたい。
#64
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 未開庁につきましては、庁舎ですとか敷地の確保が困難な事情がございまして、今日まで開設されていない実情にあることを前回申し上げた次第でございますが、一方、相当期間、三十年以上の時間の経過とともに、その後の交通事情ですとか人口分布の変化によって、未開庁の大多数の庁につきましては、その管内の事件数もきわめて少ないか、あるいは大阪などの都会地におきましては、事件数はあるにいたしましても、近隣の既設の簡易裁判所に行きますのにきわめて時間もかからないというような意味で、地域住民の方々にもそれほど御不便をおかけしていないのではないかと思われるわけでございまして、そのような意味で、前回、未開庁につきましては開庁されないまま現在では一種の安定状態が生まれていると思われますので、当面未開庁の開設について消極的な意向を述べますとともに、現在執務しております簡易裁判所の充実強化に一層力を注ぎたいというふうに申し上げたわけでございます。
 それで、当面開設しないのであれば廃止しないのはなぜかという点もあるわけでございますけれども、私どもといたしましては、事務移転庁あるいは未開庁をどのように扱うべきかという点につきましては、あくまでも庁舎ですとか敷地の状況、事件の動向といった事実的な側面の問題であるのでありますけれども、簡易裁判所の設立、廃止といった法律の改正にかかわる問題につきましては、裁判所全体の配置のあり方、簡易裁判所の役割りといった制度の根本的な検討をせずに、私ども一存で、これは現在のところ開設されないからもう法律上も廃止してしまっていいというふうに決めかねるわけでございまして、そういった点から、現在未開庁が八庁ほどそのままの状態で残っているわけでございます。
#65
○国務大臣(坂田道太君) 未開庁、事務移転庁、民訴事務非取扱庁、これらの問題は、いずれもこれにつきまして恒久的な方策を講ずるには簡易裁判所制度全般につきまして根本的な検討を要するところであるというふうに考えるわけでございます。
 現在、裁判所におきましては、簡易裁判所の訴訟手続の運用面におきまして努力をされておると聞いておりますが、また、先般の三者協議会におきましても、簡易裁判所の問題につきまして種々意見の交換がなされたというふうに聞いておりますし、また、裁判所の方でもこれを踏まえましていろいろ御検討になっておるというふうに思います。
 法務省といたしましても、裁判所あるいはまた弁護士会の御意見も聞きながら、制度のあり方につきまして十分研究してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#66
○小平芳平君 ただいまお話がありました今回の事物管轄の三者協議のときに、簡裁の運営について最高裁並びに法務省からはどういう御意見がありましたか。弁護士会の御意見は午前中に伺ったわけですが、その弁護士会の御意見の中には、法務省それから最高裁の二者とも積極的に取り組むようなお話があったかのようにおっしゃっておられましたが、いかがでしょうか。なるべく具体的に、こういうことというのがありましたら挙げていただきたいです。
#67
○政府委員(千種秀夫君) 細かい運用の問題は裁判所の方からまた御説明があるかとも存じますが、三者協議会におきましてこのテーマが議題になりました際、弁護士会と裁判所の意見がかねて対立しておるような状況のもとで、法務省がどちらかといいますと中立的な立場でいろいろ議事を進めたという経緯がございます。
 そういう経緯から申しまして、一般的なことをまず私から御説明申し上げたいと思いますが、この問題がやはりテーマとして裁判所の方から提案されました際に、まず問題になりましたことは、昭和四十五年の改正の際に、国会におきます衆議院また参議院の両法務委員会におきます附帯決議の問題がございました。
 その中身というものは、一言で申しますと簡裁の充実強化ということになろうかと思いますけれども、その各具体的な問題につきましては、この委員会におきましてもときどき引用されております日弁連のシンポジウムと申しますか、研究をなさった本が出版されております。その中に、日弁連の意見もかなり詳細に出ております。こういうことについて一体どうするかということが、まず弁護士会側の方からいろいろと質問がございました。そこで、これに対して裁判所の方で具体的な資料をもっていろいろと説明を申し上げようと、そういうことからこの問題の議論が進められたわけでございます。
 そこで、まずこの問題を取り上げる最初に、裁判所の方から簡裁の充実強化に関する具体的な統計資料を十分用意されまして、事前に二月ほど前からお渡ししておきまして、研究をしていただいて、その説明をすることから話が始まったわけでございます。その際に、人的、物的な問題、事件数の問題、それからさらに詳細に申しますと、一律にといいましても全国的に見て忙しいところと普通のところと、それから暇なところとある。たびたびここでもお話に出ておりますけれども、民事訴訟を取り扱わない庁であるとか、裁判官が常駐しない庁であるとか、二人庁、三人庁というものは一体どういうふうに運用されておるかとか、それに対する地元の意見はどうであるとか、せめてこうしてもらいたいとか、定型訴状はあるというけれども実際に窓口に行ってみるとどうもよく見えないとか、窓口が不親切であるとか、調停については夜間調停がなぜできなくなってきたかとか、そういった細々した問題を逐一説明し希望を聞きということから話が進んでいったわけでございます。
 その説明の後に、金額を幾らにするか、それについては附帯決議もあるが不動産についてはどうするか、そういう提案がなされましたわけでございまして、初めから金額が幾らというようなことで提案がなされたわけではございません。金額が提示されるにつきましては、たしか四、五回そういう説明なり議論が進んだ後であったと承知しております。
 そういうことから、提案がございました後についても、いろいろ充実強化について検討をしないと金額についての御返事ができないということで、また四、五回かなり突っ込んだ話し合いがなされたように記憶しております。そして、国会の法案提出期限というものもございまして、三月ごろに急遽何回も重ねて議論をしたのでございますけれども、この際、余り急いでもその結果についてはここで見きわめがつかない、大体の意向としてはこの法案のようにしてもよろしい、しかし法律が成立した後、いわゆるアフターケアと申しますか、十分に簡裁が機能するようにしなければいけないので秋になったらまた運用について協議しよう、そういうことを決めまして、この法案の基礎になる大綱の合意を得たわけでございます。
 経過から申しますと、大体さような次第でございます。
#68
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 裁判所側の行います具体的な問題といたしましては、まず定型訴状を含めて口頭受理をもっと十分やれ、それから特則手続も十分に活用すべきである。現在もあります要請受理についてもさらに地方裁判所に徹底してもらいたい。また、双方合意による必要移送の制度を設けられたけれども、裁量移送の活用も今後十分図られるようにすべきである。それから調停制度の運用を充実すべきである。それから人的、物的な面でも簡易裁判所を充実強化していくべきである。最後に、簡易裁判所の国民の利用について裁判所側も積極的にPRをすべきである、そういった点でございました。
#69
○小平芳平君 何回にもわたった三者協議の内容を、あるいは何回も討議を重ねられた簡裁強化の内容を、いまここで簡単におっしゃっていただくのは大変無理なこととは思いますけれども、いまおっしゃったような点が充実されるように希望いたします。
 大体この下級裁判所の設置場所、管轄区域を定めることは裁判所内部の問題とも考えられますが、これらが、五百七十五ということが最高裁規則によらないで法律によって定められているというのはどうしたいきさつなんでしょうか。
#70
○政府委員(千種秀夫君) この裁判所の設置につきましては、国の裁判制度の基礎になる問題でございますので、法律で定めるのが適当という判断で、法律の規定するところとなったと理解しております。
 憲法には、裁判所の規則制定権が規定してございまして、これがどの程度の範囲までできるかということにつきましては、ほかの問題につきましてもいろいろ議論があるようでございますが、やはり基本的なことは法律で定める、国会が定めるというのがよいということで、いろいろな問題につきましてもかなり法律で規定しているところと思います。そういう考え方によるのではないかと思います。
#71
○小平芳平君 そこで前へ戻りまして、法律で簡易裁判所をそれぞれ設立すると現在なっておりますですね。法務大臣は、この法律は誠実に執行するという立場にありますですね。そうすると、先ほど大臣から御答弁もありましたが、法律でこの五百七十五カ所と決めておいて、そして実態としては依然として未開庁が何カ所もあるということをこのまま置いておくという合理的な説明はどうなんでしょうか。
 そこで、法律改正について最高裁と法務省が相談なさったことがありますかどうか。あるのは法律の実態に合わせるように、誠実に法律を執行する立場にある法務大臣として、きっちり法律どおり開庁して運営しようという努力をなさったんでしょうか。その点について伺いたい。
#72
○政府委員(千種秀夫君) 事務的なこともございますので、まず私が申し上げますが、確かに裁判所の設置の現状が法律にきちんと合っているというのが理想であろうと思います。また、その理想のようにしなければならないと思うのでございますが、昨今議論になっておりますように、裁判所の設置という問題が現状と非常に合わなくなってきた理由というのはいろいろございます。しかも、それは考えてみますと、戦後三十年の間というのは長いようでございますが、経済変動、生活の激変という点から見ますと、かなり私どもにとっては激しい変動であったように思います。
 そういうことで、それに合わせていく場合に、ここの人口がふえ事件がふえたからここに簡易裁判所をすぐつくって、また今度は減ったから減らしてということが非常に機動的にできます場合はよろしいのでございますが、これは仮に規則によりました場合でも法律によりました場合でも、制度ができますとそれを利用する方々が出てまいりますので、今度なくすという場合には、仮に一件でもなくせないというような問題がございまして、こういう設備、制度というものはなかなか機動的に変更しにくいという性格がございます。
 そういうことからいたしまして、確かに終戦直後にまだ空き地も大分あったような、家も余り建っていないようなときに考えましたことと、それから十年ほどたって考えましたこととでは、見通しの問題からしましてもかなり違ってきた。それが十年の間にまた違ったというような結果論でございまして、弁解がましいことになりますが、なかなか現状をどう定めるかということが見きわめもつかないままに世の中が変わってきたというのが現実ではなかろうかと思います。
 そこで、一方において都市にかなりの人口が集中してまいりますと同時に、地方においてはかなり人口が減る。また、地方都市においても集中化が行われますと、中央都市同様非常に事件がふえ人もふえるということになりまして、そちらの方の応援をするために、とかく暇と言われるところから人を吸い上げて応援をする、こういうことは実は裁判所だけでなくて法務省の所管の法務局なんかにはもっと顕著にあらわれておりますが、恐らく各役所、皆同じであろうかと思います。それによりまして、かなり法律でないところは、省令でできるようなところはどんどんと改廃をしているという実情もございます。
 私などちょっと見てまいりますと、裁判所が一番前のままではないか、そういう意味ではもっと統廃合をしろという意見が出るのも当然と思われるような節もございます。しかしながら、その統廃合という問題はやはりその裁判所の機能、先ほど来出ております庶民サービスというような観点からそう容易にできることでもございません。そういうことで、裁判所の使命と、それから国家の財政と申しますか、能率という面からの利益とその調整をどうするかということが非常にむずかしい問題でございまして、裁判所当局におかれましてもその点を頭を悩ましながら三十年来たのじゃないかと私ども察するところでございますし、私どもも実は自分たちの所管しておる組織について同様な悩みがございますので、実は非公式ながら常にその問題は意見の交換をしておるわけでございます。
 公式にどういう意見交換をしたかということになりますと、これは三十九年にいわゆる臨司の意見書が出まして、統廃合を進めるというような意見も出ております関係上、その直後に、昭和四十年の初めのころでございましょうか、法務省、裁判所の間でどういうふうにするかということを意見交換をしたということを私ども承知しておりますが、意見書につきましては各界の批判もございまして、すぐに実現するというような機運でもございませんでした。その後、今日に至っているのが現状でございます。
 しかし、今度のこの法改正に当たりましても、またその問題がやはり考えられるわけでございまして、三者協議におきましても未開庁をどうするつもりであるかとか、あるいは裁判官が常駐しないところはどうするつもりであるかとか同様な御質問が出たわけでございまして、また裁判所の方も、ここでお話しになっておられるような同様なお答えをしておられるような次第でございます。
 そういうことで、これからそれじゃ法律でどういうふうに改正するかということになりますと、やはり特定の、いま開庁していない庁であるとか、あるいは裁判官のいない庁であるとがいうものをすぐ法律から外すというようなことは容易にできないことでございまして、全国的にある総合的な調査なり基準なりを設けまして、その上でやらないと、また改正するというようなずさんな作業になってしまいます。そういうことで、これから十分その点は意見を交換し調整してまいりたいと、こういうふうに考えております。
#73
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 問題になっております八庁の未開庁、これも法律上は裁判所法三十八条によります事務移転庁でございます。昭和二十二年五月三日の憲法施行と同時に新しい裁判所法も施行されたわけでございますが、したがって形式的には昭和二十二年五月三日から、当時は五百五十七庁でございましたが、それだけの簡易裁判所が開庁しなければならなかったわけでございます。
 しかし、どうしても敷地あるいは庁舎の確保が困難であったために開庁できなかった庁、これは実は現在残っております八庁よりもっともっと多くの数がるタート時点では開庁できながったわけでございます。しかしながら、やはり法律上設置されました庁につきましてはできるだけ早く開庁すべきであるということで努力を重ねまして、ほとんどの庁は開庁できたわけでございますが、八庁につきましては残念ながら敷地、庁舎等の確保ができなかった時代が非常に長く続いたということでございます。その点、御了承をお願いいたしたいと存じます。
#74
○山中郁子君 本法律案の審議の最後の機会になるわけでございますが、私は本日、大きく二つの問題について重ねてお尋ねをすることにしたいと思います。
 一つは、今回の改正案が成立施行された場合に現実の業務のありようがどうなるかということにつきまして先日もお伺いしたところでありますが、かなり現場の実態から考えられる声と、それから最高裁がお答えになる考え方、推測とやはり開きがありますので、もうちょっとここははっきりさせておきたいという立場からです。
 まず、この法律案が成立施行された場合には現実にどのくらいの事件が地裁から簡裁に移ることになるのかという点で、約二万件の移送が行われるだろうという御答弁がいままで出ております。そしてまた、その算出の根拠らしきものについてもお話はありましたが、重ねて確認をしておきたいのですが、その根拠を簡潔にお示してください。
#75
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 法律案関係資料の三十七ページ、三十八ページの表をごらんいただきたいのでございますが、この三十八ページに結論のただいま御指摘の二万五十五件が移るという表がございます。
 この内訳は、不動産事件以外の金銭等の訴訟が二万六千六百三十七件増加いたしまして、不動産事件が六千五百八十二件減る、これは簡裁を中心にして申し上げておりますが、という計算であります。差し引き二万五十五件簡裁にふえると、こういう計算であります。
 その不動産関係が問題でありますけれども、注の二にこの算出の根拠を書いてございます。結局、端的に申し上げますと、三十七ページの第十表、「不動産事件の審理の実情」の表の代理人選任率という欄がございますが、その一番上の総数という欄、これを見ていただきますと、地方裁判所の不動産事件の代理人選任率は八九・六%、簡易裁判所のそれは七六・三%、こうなっております。これを平均いたしますと八三%ということになるわけであります。
 地裁にしろ簡裁にしろ、不動産事件につきましては代理人の選任率が非常に高い。これは当事者が原告側であろうと被告側であろうと、不動産訴訟については非常に真剣に取り組むのだということを示していると言えるわけであります。当事者がそれだけ真剣に取り組むということは、それだけ主張も複雑になってまいりますし立証も複雑になってまいりますということで、当該事件の処理はかなり複雑困難さを増す、そういう事件は地方裁判所で処理した方がいいし、当事者の方も地方裁判所での審理を望むであろうと、こういうことからこの八三%、これを数字を丸めまして八〇%は地方裁判所に行き二〇%が簡易裁判所に行くだろう、こういう推計のもとに先ほどの数字が出てきたわけでございます。
    ―――――――――――――
#76
○委員長(鈴木一弘君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、世耕政隆君及び八木一郎君が委員を辞任され、その補欠として岩本政光君及び大木浩君が選任されました。
    ―――――――――――――
#77
○山中郁子君 要するに、弁護士選任率、選任している場合には、それがイコール移るという前提での算出の根拠だと承りました。それで、私はこれはやっぱりちょっと甘いと思うんですね。実情の把握において事実誤認があるのではないかと思わざるを得ないんです。
 先ほど数字をお示しいただくようにお願いしておいたんですが、最近弁護士の地裁離れということが言われていて、地裁での職権主義的な強引な訴訟指摘を嫌う。あるいは地裁では事件が立て込んだり、また手続も複雑で時間がかかる。そうしたことを嫌うという傾向で、簡裁で早く決着したいという要求もあり、合意管轄をして事件を地裁から簡裁へ移すケースもふえているということがあります。このような最近の傾向から考えますと、弁護士のついた事件が地裁へというような計算は実情に合わないのではないかというふうに思うんですが、その点はいかかですか。
 同時に、あわせてお尋ねをいたしますが、現在、簡易裁判所で現行法のもとで、つまり三十万円という現行法のもとで、三十万円以上の事件を合意管轄でやっているケースがふえていますけれども、これがどの程度ふえているのかお尋ねをして、数字をお示しいただきたいと思います。
 お願いしましたのは、五十年と五十六年との両方のその数ですね、三十万円以上の数と、それからそれが全体に占める比率が伺えれば幸いです。
#78
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 昭和五十年度について申し上げますと、三十万円を超えるもの四百九十六件、パーセンテージは〇・九%でございます。これが順次ふえてまいりまして、五十六年度はこれはまだ確定数字ではございませんが、八千三百十七件、九・二%という非常に急激な伸びを示しております。
 これが三十万円を超えるものの数でございますが、これは恐らくは合意管轄が大半であろう。応訴管轄ということで簡裁に係属したというものも含まれておりますけれども、合意管轄が多いだろうというふうに見ております。
#79
○山中郁子君 いまお示しになった数字がまさに物語っているんですけれども、私どもの調査によりますと、五十五年を見ましてもこれは四千八件、五・三%、五十年の〇・九%から比べますと毎年急増していることがわかりますが、五十五年と五十六年を比べましても、いまお示しいただいたように九・二%に五十六年はなっているんですね。やはり急増ですね。私はこういう傾向というものが、現に三十万円という現行法のもとでも、三十万円を超えるものが簡裁で合意管轄が行われているということの示していることは何を意味するかということを、やっぱりお考えいただかなきゃならないと思うんです。
 そこで、やはり弁護士が選任されているからというだけで、それが地裁へ移るということの根拠には大変なりにくい話であって、現状を誤認するもはなはだしい、およそ甘いというか無責任な根拠だとしか言えないんですけれども、この点はいかがですか。
#80
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいまも申し上げましたとおり、三十万円を超える訴訟件数、簡裁に係属する訴訟事件数は急激な伸びを示しております。この原因は一概には申し上げかねるのでありまして、いろいろな原因が複合していると思います。
 その一つは、三十万円ということで十二年間事物管轄が固定されておりますために、本来ならば簡裁で処理できたはずの事件が地方裁判所へ行ってしまう。だから、これはやはりもともと簡裁でやってもらった方がいいのだということで合意して、簡易裁判所に訴えが提起されたという事件がかなりあるだろうというふうに見ております。
 さらに最近、これは五十年以降顕著な事例なのでありますが、クレジット関係の事件が非常に多くなっている。これらの事件におきましては、クレジット会社が取り立て訴訟をやるために、弁護士を頼まないでやろうとすれば簡裁でやるほかはない。簡裁であれば弁護士でない人を代理人に選任して訴訟ができるというメリットがありますために、この種事件については簡裁への合意管轄がなされるケースが多いのであろう、いずれも推測でありますので正確とは申し上げられませんけれども、いま申しましたような点が原因になっていることは間違いないというふうに見ておるのでございます。
#81
○山中郁子君 それはやっぱり御都合のいい恣意的な推測であって、それはおわかりになると思いますけれども、実際問題としては、弁護士のサイドでも強権的な訴訟指揮を嫌うとか、あるいは時間がかかるとか、そういうことから弁護士の地裁離れということが現象として起きているんですよね。それが、いまあなたの方からお示しいただいた三十万円以上の合意管轄の数字としてあらわれているんですから、そこのところはもう少しやはりシビアに責任を持った見方をしていただかないと困るんです。そうしなければ、あなた方がそういうあやふやな根拠で二万件だと、こうおっしゃるけれども、その二万件だけだってこれは大変いろんな問題があるんですよ。
 にもかかわらず、その二万件のことさえもはっきりした根拠ではないという問題になってきますから、一番最初の論拠が崩れてくるんですね。にもかかわらず、最高裁ではそういう単純な論拠に基づいて、そしてこの法改正の施行後、事件がどの程度簡裁に移るかということの様子を見て人員の配置を考えていきたいというふうなのんきなことをおっしゃっているんだけれども、大丈夫なんですかということを私はお伺いしたいわけです。
 それで、八〇年の民事執行法の審議の際にも、私どもは人員の配置などは大丈夫なのかということを再三お尋ねしたんですけれども、このときも同じ調子で、様子を見てということで、大規模庁に二、三人の書記官をふやしただけだったというふうに理解しております。だけれども実情はどうですか。これは知っていらっしゃるはずだと思うんですけれども、東京や大阪地裁の実情ですと、私どもが関係者から詳しく様子を聞いているところによりましても、大変な状況になっていて、特に競売の関係では、間に合わせの電話や事務が増大しててんてこ舞いの騒ぎになっている、もう戦争状態だとか、つかみ合わんばかりの状況になっている、決して大げさでなく実際が。それはあなた方御承知のはずですけれども、そういう雰囲気さえ出てきているというこういう状態です。
 これは明らかに最高裁の見通しが、民事執行法の改正のときにあなた方がおっしゃった見通しが大外れに外れたという結果なんですよね。もうすでにそういう実績があるんだから、しかもまた今度、何の根拠もなくて、そして恣意的な推測に基づいて大丈夫だとおっしゃる。そういうことはやはり容易にいただけないんです。もっと事態をシビアに考えていただきたいと思うんですが、最高裁の御答弁では、現在の簡裁の人員で何とかしのいでいける、様子を見てというふうにおっしゃっているんです。
 私は、ここで二、三の具体的な例をちょっと御紹介をいたします。それは、やはり現状は余りにもあなた方のおっしゃるのと違うので、この際ちょっと真剣に考えていただきたいという考えで、気持ちでお示しするわけです。これは全司法がとっている、今度の問題を前提としたアンケートです。
 具体的に二、三の点を申し上げますと、八王子の簡裁、ここではここ数年間受理件数は著しく増加をしている。そして口頭受理、窓口相談は一日約四、五件あるけれども、電話による相談が多く、親切な応対ができない現状だ。居残り、持ち帰り仕事はほとんど毎日。年次休暇はなかなかとれない。それから、口頭受理は法律で定められているものなのに、全くやられていないという現状であるということを訴えています。
 岡山簡易裁判所。同じく著しくここ数年間受理件数が増加した。そして口頭受理、窓口相談は一週約三十件あるけれども、口頭受理はしていない。できないわけですね。それから、管轄が三十万円から九十万円に拡張されたら、残業しなければもちろん処理できなくなる。現在、休暇もとれないし、居残りをしながら何とか仕事を処理しているので、これ以上ふえたらどうにもならないということをやはり訴えておられます。
 宮崎簡易裁判所。これも同じく数年間著しく受理件数は増加した。窓口相談は一日約五件あるけれども、こたえられていない。こういういわゆる駆け込み裁判所というような設立の趣旨に照らした機能は全く果たしていないし、これ以上ふえたらどうにもならないと訴えておられます。
 甲府簡易裁判所。これも口頭受理、窓口相談が月で約八十件あるけれども、こたえられていない。事物管轄が拡張されたらとても処理はできないだろうと。
 愛知中村簡易裁判所。これもここ数年間、受理件数は著しく増加をしている。一日に約四、五件の口頭受理、窓口相談がある。手持ち事件処理に追われて相談の時間が全くとれないので、こうした住民の期待にこたえられていない。今後事物管轄の拡張が行われれば事件数が増加するのは明らかで、増員が認められても、いろいろ事務室の整理その他からいって困難である。
 松戸の簡易裁判所も、同じく数年間の受理件数は著しく増加をしている。口頭受理、窓口相談、これは多分一日だと思いますが約二十件ある。ほとんどやはりこれにこたえられていない。訴額が増加した場合には、現状では処理できないということははっきりしている。
 ごく一部、私いま御紹介いたしましたけれども、これは余りあなた方は偏見を持ってお受け取りにならないで、現場の職員の実際の掛け値のないところの実情なんですよね。あなた方は全体の数字、その二万件というものも何とかできるだろうというふうに安易におっしゃるけれども、こういう状況のもとに、しかもこの法改正に具体的に関係して要員の増は考えていないとおっしゃるんだから、ここのところのあなた方の見込みがもし違ったら一体どうなさるおつもりなのか、そこを、もうこの法案審議も最後のところに来ておりますから、はっきりしたお約束をいただきたいと思うんです。もし見込みが狂って、こういう現状、だから狂うに決まっているんですね、いまだってこういう現状で大変なんだから。そうした場合にはどういう責任ある対処をなさるんですか、お伺いをいたします。
#82
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 今回の改正法案に盛られております不動産事件簡裁競合管轄という制度が初めてとられますだけに、見込み数で不動産訴訟の約八〇%が地裁へ行くであろう。それはそれなりの根拠があって推定いたしたわけでございますが、あくまでも推定でございますので、狂わないとは絶対申し上げるわけにはいかないと思います。
 私どもは、現在立てております推計をもとに、それぞれの簡易裁判所にどのくらいの事件数が移動するであろうかという試算はいたしておるわけでございまして、前回の当委員会におきましても、小規模庁、中規模庁についてはさほどの事件の移動がないからまず人員の手当ては要らないだろう、しかしながら大規模庁の一部につきましては、二万件推定のもとにおいても相当程度の事件の移動が見込まれるから、それらの庁については必要な手当てをいたしたいというふうにお答えいたしたわけでございまして、これがもし相当大幅に推測が狂って簡易裁判所の方に多くの事件が行くといたしますと、それはそれだけ地方裁判所の事件数が減るわけでございまして、私どもとしては人的な手当てをいたさなければならない庁があるいはより現在の推測よりふえることにはなろうかと思いますが、必要なところには十分な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
#83
○山中郁子君 人的な手当てをしなきゃならないといういまの推測は、それじゃどのくらいの庁でもって人的手当てをしなきゃならないとお考えになっていらっしゃるのか。そして、それはどこからどういう人的手当てをなさるのか。結局、地裁から持ってくるということでしょう。地裁がいま忙しいから簡裁に移すということだっていろいろ言われていますね。
 そういう状況のもとで、地裁から持っていくなんてとんでもない話でしょう。それをこの問題に関連して人を純粋にふやす、純増の手当てをしないままにどういう手当てをなさるおつもりなのか。しかも、その予測が狂った場合にはまた別に新たに手当てを考えるとおっしゃるけれども、それもまた地裁から持っていくというだけの話なのかどうか。
#84
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 今回、事物管轄の改定を理由といたして裁判所の人手をふやしてくれたということは、これはなかなか私としては通りにくい理由だろうと存じます。全体の裁判所の新受件数がふえて裁判所全体が忙しくなっているということを理由に、毎年わずかではございましても増員の要求をし、当委員会に御審議をおかけいたしまして増員を果たしてまいっているわけでございまして、その点は今後も同様の努力をいたしたいと思います。
 しかしながら、今回の事物管轄の改定に伴って動きます事件は、地方裁判所から簡易裁判所へ動くわけでございますので、現在の簡易裁判所で事件数が相当増加することによって賄い切れないという状態になりますれば、現在もちろん、委員仰せのとおり、地方裁判所も忙しいことは忙しいわけでございますけれども、裁判所全体の配置をいかにすべきかという観点から考えてまいりますと、相当大幅な事件の移動がございましたら、それはやはり地方裁判所に軽くなる分だけ人手を簡易裁判所の方に振り向けていってもらうという措置をとらざるを得ないのだろうというふうに考えております。
#85
○山中郁子君 私も乱暴なことを言うつもりはないんですけれども、結局やはり要員の合理化ということが先に立つんですよね。そうじゃなくて、いろいろおっしゃるけれども、簡易裁判所の理念をいささかも薄めるものではないとか、いろいろおっしゃっているけれども、結局それから大きく外れていくという成り行きにならざるを得ない。それはこの前指摘したとおりです。
 それで、お約束をいただきたいんですけれども、それでは、これであなた方大丈夫なんだとおっしゃって、推移を見てというふうに言われていますが、施行後それではたとえば三カ月の時点で実情を詳しく調査なすって、あなた方が本法案の審議でおっしゃっていたことと大きく予測が狂うというような事態になった場合には誠意ある措置を講じるということは、これはぜひともお約束をいただきたいと思っておりますけれども、いかがですか。
#86
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) その点は、事件の推移を見て十分考えさせていただきます。
#87
○山中郁子君 私はあえて三カ月ということを申し上げました。ですから、一般論に流すのではなくて、これだけ何回も各委員の方も心配なすっておっしゃっているし、私も何回も申し上げました。責任を持って三カ月後に事態を調査して、そして報告もしていただき措置もしていただくということをお約束いただきたい。
#88
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 果たして三カ月の期間で十分であるかどうか。時期的なもので事件数の伸びがある月もあるわけでございますので、その辺は妥当な期間を設定いたして、事件の動きに対して対処してまいりたいと思います。
#89
○山中郁子君 もう一つお尋ねしたいことは、離島の簡易裁判所の問題です。なかなか機会がございませんので、この機会にお尋ねもし、お約束も御努力をいただきたいと思います。
 わが国の離島、島嶼部ですが、そういうところにも簡易裁判所が幾つかありますけれども、配置はどのようになっておりますか、お示しください。
#90
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 離島の簡易裁判所が幾つあるかという御質問でございますか。
#91
○山中郁子君 ええ、どういうふうに設置されているか。
#92
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 離島の簡易裁判所、約十三ほどあろうかと思います。正確には一、二庁の差はあるかもしれませんが、私のあれでは十三庁ではないかと思います。
 一つ一つ名前を……。
#93
○山中郁子君 わかっていれば、ちょっとさっとおっしゃってください。
#94
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 八丈島簡易裁判所、伊豆大島簡易裁判所、新島簡易裁判所、山口県でございますが久賀簡易裁判所、西郷簡易裁判所、長崎県でございますが有川簡易裁判所、同じく長崎県の上県簡易裁判所、熊本県の牛深簡易裁判所、鹿児島県の屋久島簡易裁判所、広島県の因島簡易裁判所、鹿児島県の甑島簡易裁判所、鹿児島県の徳之島簡易裁判所、それから高松地裁管内の土庄簡易裁判所、こういったところでございます。
#95
○山中郁子君 こういうところでは、もちろん、地裁に行くには大変ということで、簡裁が事実上、裁判所そのものとして機能しているというふうに思うんですけれども、この離島の簡易裁判所について従来、識者から弁護士の不在という問題が指摘されています。これはなかなかやはり大変で、そこに行って仕事に当たるとしても、気候条件その他にも左右されますし、容易に推察ができるんですが、伺うところによると、旅費などについては、行って帰るのに三日かかったとしても当日の仕事に当たる一日分の日当しか出ないというふうな話を伺うので、何か大変不合理だなと思うんですが、その辺はそうなんですか。行き帰りにかかる日数は日当が出ないんですか。
#96
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 裁判所職員の出張等の旅費日当につきましては、国家公務員等の旅費に関する法律に定めがございまして、これに基づいて支給されております。
#97
○山中郁子君 そうすると、行きと帰りに、たとえば八丈島へ行くにしても、行きに一日かかるし帰りにまた一日かかる、そしてまた、船でも出なければ何日も待っていなきゃならないみたいになるわけでしょう。そういうのも、ちゃんと日当全部出るんですか。
#98
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) いまお尋ねのような例でございますと、それはやはり公務上の必要な宿泊ということになりまして、宿泊料、旅費――旅費は往復でございますが、日当は出ることになっております。
#99
○山中郁子君 そういう点についての御意見というか苦情も伺っておりますので、私の方でも再度調べてみたいと思います。
 それで、今回の改正では、不動産に関する訴訟は地裁に移送できるというふうになっているんですけれども、離島では本土の地裁へ訴えるということも大変困難で、したがって、そこの簡裁の仕事というふうになるんですけれども、しかも離島の事件というのは、やはり田畑や森林、こういうのをめぐる争いというのが統計的にも多いというように調査されているところなんです。
 それで、こういう事態、離島の現状ですね、そういうものに照らして考えるならば、たとえば弁護士が不在であるというところで、書記官などについても経験のあるすぐれた人々をそれ相応の待遇をして配置して、そして訴状や訴訟上の文書の作成を手伝うとか、弁護士にかわるような――かわるといっても資格的にかわられるということではないんですけれども、たとえば実務上かわるような役割りを果たす特別の配慮、そういうものが求められていると思いますけれども、それら、そのことだけに限らなくていいんですが、離島における簡裁のあり方について、やはり住民の期待にこたえる特別な措置というふうなお考えをお持ちかどうか。また、ぜひその充実強化について取り組んでいただきたいと思っておりますが、その辺の御意見をお伺いいたします。
#100
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) ただいま委員仰せの中で弁護士にかわるという点は、はっきりどういう御趣旨か理解いたしかねる面がございますけれども、弁護士にかわるような動きをするということになりますと、国家公務員としてそういうことをやっていいかどうかという問題もございます。ただ、簡易裁判所でございますので、事件の口頭受理というような点は十分特則としてなし得るわけでございますから、そういった点をうまく活用していただくということで対処できょうかと思います。
 離島につきましては、やはり相当離れているような場合にはなかなか地方裁判所に参るというのも遠うございますので、私ども九十万円以下の不動産訴訟事件につきまして、地裁簡裁の競合管轄にしようではないかという相談をいたした理由の一つもそこにあるわけでございます。やはり地域住民の方が自分の近くの簡易裁判所を選べるということも必要であろうかと思っております。したがいまして、今回の改正が実現されまするならば、そういった意味でもうまく簡易裁判所というものが機能していくのではないかというふうに考えております。
#101
○山中郁子君 先ほども申し上げましたけれども、弁護士の資格にかかわるようなもので弁護士のかわりというふうに言っているのではなくて、いまあなたもおっしゃいましたけれども、要するに訴える場合にその訴状をつくるとか、それから訴訟上の文書の作成だとか、そういうことができないために弁護士が必要になってくると、こういうことなんだから、だからそういうことに十分熟達した書記官なりその人的配置をおたくの方で努力をしてくださることによって、住民の要求にこたえられるようにしていただく必要があるのではないかということを申し上げておりますので、念のため重ねて申し上げておきます。口頭受理その他とおっしゃいましたけれども、現状なかなかそういってないというところに離島の問題点があるということの指摘でございます。
 それで、競合管轄の問題は、私申し上げているのは、要するにそうだからといって、弁護士を選任しているものが全部動くかといったら、そんなことはないでしょうということはさっき申し上げたので、変なひっかけをなさらないでいただきたいと思いますけれども、私が先ほどから競合管轄の問題で申し上げているのは、二万件というその根拠についてのあいまいさ、根拠のなさということを指摘しているのだということを、重ねて申し上げておきます。
 離島の簡易裁判所の問題が議論になるなんというチャンスはめったにないと思いましたのでお尋ねをし、また一層の充実強化、住民の期待にこたえる方策に努力をしていただきたいということを要望申し上げまして、質問を終わります。
#102
○委員長(鈴木一弘君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#103
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#104
○山中郁子君 私は、日本共産党を代表して、裁判所法等の一部を改正する法律案に対し反対の討論を行います。
 反対理由の第一は、戦後、新憲法のもとで制定された簡易裁判所は、その創設の理念を少額軽微な紛争、事件を簡易、低廉、迅速に処理する裁判所として、戦前の区裁判所とは全く性質の異なる裁判所として性格づけられていました。
 昭和二十一年制定当時国会で説明に当たった木村司法大臣も、これは司法の民主化に貢献するものであり、裁判所の民主化が本当にできるかできないかは全国五、六百カ所に設けられる簡易裁判所の運用のいかんにかかっているとさえ述べていたのであります。
 ところが、その後、自民党政府並びに最高裁は、この創立当時の理念に沿った方向で簡易裁判所の拡充強化のための努力をするのではなく、庁舎の設置や人員の配置等においても一貫して消極的な姿勢を示してきたのであります。とりわけ、一九六四年に臨時司法制度調査会が、簡易裁判所を区裁判所に改称し、整理統合、事務移転を推進し、民事、刑事の事物管轄を拡張すべきであるとの意見書を公表して以来、この意見書に基づいて簡裁の小型地裁化、区裁判所化への方針を推し進めてきたと言わなければなりません。
 政府と最高裁は、今回の改正は単に物価上昇など経済変動に伴う事物管轄の変更にすぎないかのように述べておられます。しかし、意見書が、第一審全体の能率を高めるため相当大幅に事件を簡易裁判所に移す必要があるとして、経済情勢の変化、一般物価指数の上昇、一定金額に対する価値感の変動等は、民事事件について、簡易裁判所の事物管轄を拡張する理由になるものと思われると述べているとおり、今回の改正がこの方針を具体化したものであることは明白であると思います。
 一九七〇年の改正の際にも、国民各層から厳しい批判と反対の声が上がったことはまだ記憶に新しいところでありますが、今回の改正も臨時司法制度調査会意見書の具体化という点でこれと全く軌を一にするものであり、今回の改正でさらに簡裁制度の形骸化のおそれが強まってきていると言わざるを得ません。
 わが党は、従来から簡易裁判所を民衆裁判所、駆け込み裁判所として拡充強化する政策を掲げ、その実現のために努力してきたところでありますが、今回の改正案はこの方向とはまさに逆行するものであります。
 反対理由の第二は、本改正案は、自民党政府の臨調、行革路線の司法版とも言うべきものであり、裁判所の一種の反動的合理化案であるという点であります。
 わが党は、毎年裁判所職員定員法の審議に際して裁判官、裁判所職員の必要な増員を訴え、そのための最高裁の真剣な対処を求めてまいりましたが、いつも期待外れに終わってきました。今回の改正についての説明によれば、約二万件の事件が地方裁判所から簡易裁判所に移されることが予想されているにもかかわらず、最高裁は増員は考えていない、施行後の推移を見て地裁との調整を図るなどと言っておられます。
 今回の改正は、複雑な事件が増加して地裁の負担が増大する一方なので、これを何とか軽減しょうとして簡裁に事件を割り振ろうとするものであることは明らかであります。そうだとすれば、必要な人員を確保してこれに正面から対処すべきであって、簡裁の本来の性格をゆがめ、職員に犠牲を転嫁するようなやり方で事態を切り抜けようとするのは、まさに本末転倒であると言わなければなりません。これでは、簡裁本来の調停手続や窓口事務などの機能を圧迫し、国民の期待に背いて裁判所離れを助長することになりかねません。
 衆参法務委員会の審議の中でしばしば指摘されましたように、最高裁はこれまでも簡裁での取扱事件数の減少を理由に簡易裁判所の統廃合を推し進め、すでに多数の簡裁を法律に違反して事実上廃止してきましたが、現在、裁判官のいない不在庁が百五十四カ所もあり、職員のわずかしかいない二人庁、三人庁が百四十八庁にも及んでいます。また、法律知識の十分でない一般国民に簡裁を利用しやすくするためには、口頭受理の制度や特則手続がもっと活用される必要がありますが、その努力も十分とは言えず、簡裁制度を国民に知らせる広報活動も徹底しているとは言えません。
 このように、国民の簡易裁判所に対する潜在的な需要をも掘り起こし簡裁活用の道を大きく切り開くのではなく、逆に簡裁本来の機能を縮小させるような改悪はとうてい認めがたいところであることを申し上げ、私の反対討論を終わります。
#105
○委員長(鈴木一弘君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#106
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 裁判所法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#107
○委員長(鈴木一弘君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#108
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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