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#1
第096回国会 本会議 第5号
昭和五十七年一月二十九日(金曜日)
   午前十時二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第五号
  昭和五十七年一月二十九日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。矢追秀彦君。
   〔矢追秀彦君登壇、拍手〕
#4
○矢追秀彦君 私は、公明党・国民会議を代表して、総理の施政方針を初めとする政府演説に対し質問を行い、総理並びに関係大臣の所信を伺います。
 まず、鈴木内閣の基本姿勢について伺います。
 総理は、さきの演説で「変化する社会への対応」を基本テーマにされました。昨年は、「二十一世紀への足固め」であったと思います。総理は、現下の国民生活をめぐる変化をどう見ていますか。国民生活は、一見、物質的に豊かに見えますが、実際は、低いベースアップと高負担に加え、財政の機能が低下し、不平等、不公平が著しく高まっています。端的な例は、地価の上昇によって、土地などの資産保有者とそうでない人たちの間には大きな格差が生じており、もはや個人の能力では是正不可能となっています。中流意識の後退が叫ばれ、個人の経済的な力の差が公平自由なチャレンジの機会を閉ざし、新たな貧困が定着、固定化していくのを政治がどう救い上げていくかが問われています。総理はどう認識されていますか。
 また国民は、軍事大国への傾斜や学歴偏重社会、入試偏重教育に伴う教育の荒廃、高齢化社会への対応などの面でも将来に対する強い不安を感じております。また、経済は格差や破行性が解消せず、倒産や失業が続発しています。国民は、「変化する社会への対応」を自分ではなし得ない現状に強い政治のリーダーシップを求めています。鈴木政治はこれにどうこたえようとしているのか、お伺いしたい。
 さらに、先行き不安の時代、政治に強い期待の目が集まっていながら、反面不信も強くなっています。一月二十六日のロッキード事件全日空ルート判決では、さきの児玉ルートに続き有罪判決が下され、自民党政治の金権体質が司法の場でも明らかになってきました。また、最近国民の大きなひんしゅくを買っているのは、公共事業の入札における談合問題です。これは政界、官界、業界の癒着による腐敗を示すものであり、国民はその是正と入札の厳正化を強く求めています。いまこそ政府・自民党は、国民の政治不信を取り除くために具体的な行動を起こさねばなりません。
 しかし、総理演説の中からは政治倫理の確立については何の説明もありません。総理、あなたが主張されてきた政治倫理の確立は一体どうなったのですか。また、わが党が再三主張し、総理も各党と議論したいと言われておきながら一向に前進していない政治資金規正法の見直しの問題はどうなったのですか。個人献金に移行するという法の趣旨に逆行して、企業献金の制限緩和の声はますます強くなっています。これでは国民の政治不信を取り除くことはできません。総理はどうされますか。談合問題も含めて具体的にお答えいただきたい。
 次に、金のかからない選挙の実現ということで、自民党は前国会で成立を阻止された拘束名簿式比例代表制を導入する選挙制度改革案を、性こりもなく今国会で強引に成立を図ろうとしています。
 われわれがしばしば強く主張しているように、この法案は事実上、無所属候補が立候補を制限され、法のもとの平等や議員資格の差別禁止条項に照らして憲法違反という根本的な欠陥を持っています。また、投票の際には個人の名前を書くことができず、政党名だけを記入し、有権者は名簿の順位も変更できないという、世界でも例を見ない国民の投票意思を全く無視した非民主的なものです。しかも、選挙の洗礼を受けて当選した選挙区議員と、ほとんど選挙運動をしないで議席を獲得する比例代表議員との間には大きな不平等が存在します。加えて、参議院本来のチェック・アンド・バランスの独自性機能を全く失わしめる大改悪であり、心ある国民の多くが強く反対しています。
 総理、あなたはそれでも強引に数を頼んで強硬に成立を図ろうとされますか。もしそのような行動に出るならば、それは民主主義の破壊であり、参議院を死滅させる暴挙なのです。いまからでも遅くはありません。自民党総裁としての総理が、良識をもってこの改悪法案を撤回されることを強く要求します。いかがですか。
 総理、国民は不公平、不安、不信の改善修復を強く願っています。これなくして「二十一世紀への足固め」も「変化する社会への対応」も全く困難です。以上、まず冒頭に総理の基本的な政治姿勢を伺っておきます。
 次に、経済、財政問題に入ります。
 まず、五十七年度経済見通しについてですが、その前提として、五十六年度経済は、政府が当初国民に示してきた内需主導による均衡ある経済成長が大きく食い違い、内需低迷、外需依存となって内外の問題を激化させた上、昨年十月の五十年基準による成長見通し四・七%を二カ月後の十二月の改定では四・一%へと、この間〇・六ポイントもの下方修正を強いられたことは周知のところです。顧みれば、政府は、五十五年中の実質賃金の目減りを回復し、個人消費を伸ばすと約束してきましたし、昨年五月の国会答弁では河本経済企画庁長官が「景気の底離れ宣言」をして、国民に明るい期待ばかりを振りまいてきました。結果は、各般に及ぶさまざまな景気の明暗、破行性が拡大し、経済活動が低迷する現状は完全に経済運営に失敗したことが明白です。政府はこの責任をどうとるおつもりなのか、まず伺っておきたい。
 さて、五十七年度経済見通しでは五・二%の成長を見込んでいます。これは民間経済研究機関の三ないし四%の成長見込みに比べかなり高くなっています。そこで基本的な問題を数点お尋ねしたい。
 第一は、第二次石油ショック以降の日本経済、なかんずく現下の経済は、比較的物価が鎮静化する中で実質賃金や民間設備投資が鈍化し、企業の収益面では電子工業を初めメカトロニクス分野を中心に大企業の収益好調が見られる反面、中小企業はかなりの不振が続くというばらつき状況です。政府の高目の経済成長予測は、日本経済の潜在的成長力をどう見た結果なのか、あるいは景気回復予想の一年おくれによる需給ギャップ回復と見て予測されたのか、明確な答弁をお願いしたい。
 第二点は、現下の地域間、業種間、企業規模間などに見られる破行性が五十七年度において解消するめどはあるのか、あるいは五%程度の成長では破行性や格差の並存は当然あると見るべきものなのかどうか、お伺いします。
 第三は、行政改革、財政再建下において、経済に対する財政の役割りがほとんど期待できなくなっているほか、金融政策も米国などの国際金融情勢との関連で機動的、弾力的な政策実行が困難となっております。特に、行政改革と経済の関連では、経済に全く目を向けないで行革を進めるならば、結局は経済も財政も破綻することになりますが、この両立をどうしていくのか、整合性ある答弁を求めます。
 第四には、米国経済の動向についてですが、景気が回復に向かえば米国の金利上昇が再び起こり、米国政府はインフレか失業かの選択を迫られることになり、その政策いかんは円相場やわが国の輸出にも大きな影響をもたらすことになりますが、政府は米国経済をどう見ているのか、お尋ねします。
 第五に、五十七年度経済見通しの中身についてであります。個人消費支出の伸びは実質三・九%と、五十六年度の一・八%に比べ倍の増加が見込まれています。周知のとおり、個人の所得は五十六年度に入り実質プラスに転じたのもっかの間で、所得税を初め公的負担の二けた増加に伴い、昨年六月以降、可処分所得は連続マイナスという落ち込みが続いており、物価の安定と個人消費拡大の同時目標は実現していません。五十七年度に家計の可処分所得が高まり、消費が回復するという条件は全くないように見えますが、政府の考えを伺いたい。
 民間経済の自律回復力を期待する政府経済運営に対し、財界筋は春闘大幅賃上げ要求を警戒して、早くもこれを牽制する発言をしています。また、最近の消費傾向は普及型から質的充実型に変質し、大量消費は見込めないと言われますが、私は、こうした変化は所得の増加が低いことから生じたもので、家計の自律的な消費傾向の変化ではないと考えますが、どうですか。個人消費を回復させるには、思い切った減税により可処分所得をふやすことがすべてに優先する政治課題です。減税は、冒頭述べた国民の不公平是正の上でも欠かせません。五年連続の所得減税の見送りにより実質増税は確実に進行しています。国民の減税に対する要求は日増しに高まっています。総理の耳にはこの国民の声が聞こえないのでしょうか。総理、この場で減税の決断をしてください。いかがですか。
 次に、住宅建設投資についてですが、政府は五十六年度〇・九%増にとどまる住宅投資を五十七年度で一〇・四%増と急激な増加を期待しています。五十六年度は住宅建設戸数が百十万戸台に落ち込むと見られ、当初見込みの百三十万戸から大きく後退しております。政府は、五十七年度に土地、住宅税制を改め、住宅建設を図ると宣伝していますが、土地供給の増加と地価の安定は望めません。住宅建設の基本課題は、五十六年に国民生活白書が指摘したとおり、個人の住宅取得能力にあります。これの改善なくしては政府見通しの達成に疑問を持たざるを得ません。住宅投資回復の根拠と条件を伺います。
 さらに、物価についてですが、卸売物価は五十七年度三%上昇と、五十六年度見込み一・八%の約倍の上昇を見込み、消費者物価も四・七%上昇と、五十六年度四・五%より高く見込んでいます。民間経済研究機関が上昇率低下を見込んでいること、さらに為替レートが円高に向かうことから見て政府見通しは理解できません。さらに日銀総裁からも、政府経済見通しは調整インフレの危険ありと警告しています。物価の安定を口にしながら、その陰ではインフレ政策をねらっているのではないかと思いますが、国民の納得のできる説明をしていただきたい。
 次に、景気に関連して素材産業と中小企業問題にしぼって伺います。現在、アルミ、パルプ、塩ビ樹脂などの素材産業は不況にあえいでいます。政府は不況カルテルなど一時しのぎの対策はとっているものの、産業構造の基本的な変化に対応する施策はとっておりません。素材産業の重要性にかんがみ政府はどう対処されるのか。通産大臣に早急な対策を希望するとともに、その方針を伺います。
 中小企業については、日銀の企業短期経済観測で見ると、その売上高は、五十六年一−三月期は前年比マイナスを記録し、七−九月期もほんのわずかな伸びです。これに反して大企業の多くは大幅な伸びを示しています。五十七年三月以降の予測も中小企業に明るい見通しはありません。中小企業の振興は景気回復の大きな要因のはずです。政府の対策を伺います。
 次に、貿易摩擦問題ですが、政府の経済見通しでは、五十七年度の経常収支を百二十億ドルと見込んでいます。五十六年度が百億ドルを上回ることは確実で、五十七年度も内需の回復いかんでは輸出増に拍車がかかり、貿易摩擦を高める懸念が濃厚です。また、OECD発表の主要国の経済成長率予測では、米国はマイナス成長、西独、フランスは一ないし二%成長にとどまり、失業問題は一層の深刻化が心配されており、五十七年度は貿易摩擦激化の条件がきわめて高いと言えます。総理は、貿易摩擦の解消を最重点課題として取り組むと述べられ、非関税障壁の改善や市場開放、製品輸入の拡大などを挙げていますが、これらの措置で世界経済の縮小化の動きを食いとめられますか。また、輸入増加にどの程度の効果が期待できますか。対米、対EC別に説明をしていただきたい。
 わが国は、一方で貿易・技術立国として最先端製品を開発し、世界市場に輸出していかないと経済は成り立ちません。このことは貿易摩擦問題を次々に生じさせやすい立場にあることを意味します。政府は、との点の調和を抜本的にどう図る所存か、その対策を伺いたい。また、わが国の経済発展は海外からの資金調達に負うところが少なくありません。わが国経済の国際的地位の高まりに伴って金融市場の開放問題は急務です。政府の具体策を伺いたい。
 さらに、ここで問題なのは、日本の市場開放によって一番影響を受ける畜産、果実などの国内農業です。貿易摩擦のツケを農業のみに押しつけるようなことがあってはなりません。総理は、この点いかなる対策をもって臨もうとしているのか、伺いたいと思います。
 次に、防衛費の異常な突出と社会保障費の圧縮について伺います。五十七年度予算では、防衛費が七・八%の伸び、社会保障費は二・八%と、防衛費の三分の一の伸びに抑えられ、一般歳出の増加分五千六百九十六億円の実に四三%が防衛費に充てられたことになります。さらに、防衛費の増加は中期業務見積もりの前倒しによって巨額の後年度負担が生じ、国民総生産に対する比率が一%を上回ることは明らかであります。財政硬直化を理由に社会福祉を切り捨て、心身障害者を初め社会的に弱い立場の人たちをいじめておきながら、一方では防衛費のみを聖域化しようとする政府の姿勢に国民は強い不満を抱いています。中でも児童手当制度は、わが党の再三の拡充要求にもかかわらず後退を続けております。出生率の低下、老齢化社会など将来のわが国を考えた場合、中央児童審議会の意見書に述べている「第一子からの支給」、「手当の大幅引き上げ」、「所得制限の撤廃」の線に沿って拡充すべきであると思いますが、総理の御所見を伺いたい。
 さらに、大蔵原案では、またしても教科書有償化が打ち出されました。教科書無償配付は憲法の精神に沿ったものであり、国民の権利であると思います。財政当局が財政事情のみを理由にして有償化を打ち出すことは不当です。総理は、国民に教科書有償化は今後ともあり得ないとはっきり約束していただきたい。
 次に、行財政改革の推進について伺います。
 行政改革は、単年度の会計上のやりくりや金づくりだけで事足りないことは明白です。財政再建期間というトルネルを出たとき、二十一世紀につながる行政システムができ上がっていなくてはなりません。そのためには五十七年度予算の中にもその芽を組み込んでおくべきで、それが行政改革の理念と言えます。五十七年度予算にその芽はありますか、その項目は何ですか。
 五十七年度予算編成で、臨調第一次答申やゼロシーリングの上限枠設定により、各省庁では自主的な減額査定が行われました。しかし、シーリング枠を突破する幾つかの経費については後年度に支出を義務づけるなど、一時しのぎのツケ回しが行われて、その額は八十億円と伝えられています。これでは隠れた借金依存財政としか言えません。後年度負担のツケ回し経費を説明してほしい。また、五十八年度以降の支出にどう関係してくるかも伺いたい。
 さらに、五十七年度行革における補助金の整理合理化はどう図られましたか。補助金の執行状況を見ると、不用額を多く出しているものと、そうでないものとのばらつきがありますが、整理合理化の基準は何ですか。また、一律削減で支障は生じないのかも伺いたい。さらに、公務員の削減、配置転換はどの程度進んだかもあわせて説明してください。
 この夏には臨時行政調査会の基本答申が出され、行革がいよいよ本番を迎えます。国鉄を初め、各種の組織、機構にメスを入れる大手術が答申されると言われますが、五十八年度の予算編成は五十七年度と同じような手順で進められるのでしょうか。また、五十七年度行革の実行面でも見られたように、給与や人、組織などに関係する改革はきわめて実行が困難で後退しがちですが、五十六年度以上に決断を迫られる基本答申をどう実行されますか。なお、行革の進め方について、無原則、機械的一律方式は、国民生活の破壊と環境衛生など中小零細企業者の生活権を脅かす危険性があります。この点慎重な配慮を要望しておきます。
 財政再建問題について伺います。
 財政再建の政府指針は、昨年国会に提出された財政中期展望であり、五十九年度には赤字国債から脱却することを公約されました。この方針を守るために、五十七年度のゼロシーリングを初め緊縮予算編成が行われたはずです。五十七年度予算は、中期展望の一二・三%の歳出増加見込みが六・二%とほぼ半分に圧縮され、予算規模は二兆八千億円ほど縮小されました。この歳出圧縮は要調整額を解消したものの、福祉や教育にしわ寄せされたことは許しがたいことであり、不要に膨張した経費をもっと圧縮すべきでありました。
 こうした五十七年度予算規模圧縮の状況から見て、財政再建期間の各年度においては中期展望見通しの予算額より小さな規模の予算になることは必至で、歳出面では中期展望を上回るスピードで財政再建が進むことになります。さらに、この夏の臨調基本答申を誠実に実行するならば、さらに歳出削減が進み、歳出面での財政再建のめどはつくはずです。
 次に、歳入面から見ますと、五十六年度の税収不振の影響で、五十七年度予算は中期展望の予定税収を三千六百六十億円も下回り、また赤字国債の削減も予定より二千六百九十億円少なくなっています。これは政府の経済運営の失敗によるものであり、その政治責任は重大です。しかも、財政当局は本日の閣議に新中期財政展望を報告しましたが、その中身は財政再建の困難性をいたずらに誇張し、増税なき財政再建を放棄した上、国民には行政サービスの切り下げと増税の二つを押しつけるものであり、断じて許せません。しかも、五十六年度の税収見通しは、補正予算の減額を超える落ち込みとなることは確実です。政府はこの見通しの誤りをどうされますか。財政再建の達成には税収の動向がその成否のかぎを握っています。そのため、財政再建期間中といえども景気と財政再建の両立は常時心がけることが当然であり、不公平税制の是正はもちろんのこと、創意と工夫によって十分な税収が得られるような経済の環境づくりを図っていかなければなりません。
 しかし、最近、政府与党の内部に中期財政展望が足かせになって景気対策の推進ができないという理由で、財政再建の大黒柱とも言うべき中期財政展望の見直しをせよとの考えが強まっていると言われますが、総理は増税なき財政再建の方針を放棄するのか、それとも堅持してその達成を目指すのかどうか、伺いたい。私は、財政再建の目標年次はこれを堅持し、万が一変更するとしても、五十九年度決算を見て新たな財政計画をつくり、その後の財政再建につなげていくことが、国民にわかりやすく、首尾一貫し、国民の協力も得られると思いますが、どうですか。
 さらに、政府はしばしば本会議答弁でも、わずかな所得税減税と引きかえに大型間接税の実施をちらつかせています。これは、ただいたずらに財源確保のみに狂奔していることになると思います。いかがですか。そうしたやり方は、結局、行財政改革を中途半端なものに終わらせるおそれがあります。さらに、新税が財政再建のためではなく、防衛費突出などに向けられては国民はたまりません。増税なき財政再建の方針を総理はこれからも堅持するのかどうか、新中期展望を踏まえて、総理にしかと伺いたいのであります。
 関連して伺います。最近、赤字国債を建設国債と同じように借りかえを行うという考え方が政府部内で高まっているやに聞きます。赤字国債は消費的経費を賄う国債であるため、償還満期には全額現金償還すべきであります。しかも、いまこれを言い出すことは、これまた財政再建の方針を放棄したことになります。また、財政法上にも大きな問題があります。この際、赤字国債については借りかえをしないことを総理の口から明確に示していただきたいのであります。
 次に、地方の振興策についてです。
 八〇年代は地方の時代と言われながら、地域格差は依然として大きいものがあります。県民所得を見ましても、一人当たり所得、東京を一〇〇とするならば、沖繩は最低で四四・二八と実に半分以下です。全国平均を一〇〇とした民力水準で見ますと、東京一四七・五に対し沖繩は六八・八と、これまた半分以下となっており、全体的に見て、大都市から離れた地域の所得、民力が劣っている状況が見られます。こういった格差是正のため政府は今後どうされていくのか。大阪では、来年の大阪城築城四百年を契機として、「大阪二十一世紀計画」がいま検討されています。各地域の伝統と特性を生かした国土づくりこそ急務です。かつて大平内閣のときに策定された定住圏構想は一体どうなったのですか。鈴木総理は新しい地域振興のビジョンをお持ちになっているのでしょうか、お伺いしたい。
 次に、二十一世紀まであと十八年という観点から、中長期的な問題について総理の所信を伺いたい。
 まず、高齢化社会についてです。老齢人口が二けた台に乗り、その対応が急がれます。五十七年度では、社会保障関係費を初めとして厳しい抑制が図られましたが、高齢化社会の国づくりを行う施策はどう生かされていますか。医療、年金、雇用、生きがい等に分けて説明願います。
 特に、健康に対する国民の関心はますます高まっています。しかし、一方において、現在の医療に対する国民の不満、不信も高まっております。政府は健康保険制度の抜本的改革を怠り、財政が厳しいからといって安易に保険料のみを上げ、ただ老人保健法さえ成立すればそれで事足れりとしている場当たり的姿勢では、とうてい国民の信頼にこたえられる医療の確立は困難です。今後ふえ続ける医師、歯科医師の質の向上のために、医学教育、国家試験、卒後研修、生涯研修などをどう改革されようと考えられているのか、また医師、歯科医師が安心して治療に専念できる診療報酬体系のあり方をどうするのか、健康保険制度の統合という抜本的改革はいつ行うのか、さらに、予防からリハビリテーションまでの包括的地域医療の充実強化をどうするのか。未解決の問題を多く抱えている医療制度について、総理はどのようなビジョンをお持ちなのか、具体的にお答えいただきたい。
 また、中高年齢者の最近の雇用促進の実施状況はどうなっていますか。中高年の雇用または再雇用についての中長期的な方針並びに目標を伺います。
 さらに、年金財政はこのまま進めば破綻してしまいます。だからといって急激な負担を課すことになれば、制度間の矛盾を初め、世代間の対立や不満も激化します。これらを解決するため、わが党はすでに基本年金構想を主張しています。これを実行する意思はあるのかどうか伺いたい。また、西暦二〇〇〇年までの負担率の見通しと政府の対応策をあわせて伺います。
 ここで、いま一つ重要な問題は婦人の地位向上です。高齢化社会では働く婦人が断然多く、その所得保障は低いのです。それは若年のころからの労働、保健などの構造的な男女格差が原因となっています。総理、婦人の地位向上についてどうお考えになっているのか、あわせて婦人パートタイマーの減税を実施するのかどうか、伺いたい。
 次に、エネルギー問題について伺いたい。石油危機以来八年経過した現在、その需給はいま一応の安定を見せてはおりますが、本質的な問題は何ら解決されてはいません。あの社会構造を一変させた石油危機は決して過去の物語ではないと思います。OPHC諸国の動向一つで再びパニックは起こります。一時的な需給緩和、目先の市場予測に左右されるのではなく、長期的見通しに立って根本問題に取り組んでいくべきと思いますが、総理、通産大臣の所信を伺いたい。
 脱石油、代替エネルギーと幾ら叫んでも簡単に切りかえられるものではありません。そこで、当面取り組まなくてはならないのは省エネルギーの促進です。当局は、石油ショック直後は口を開けば省エネ、省エネと叫んでおりましたが、最近はその姿勢も緩みがちのようです。省エネルギーの成果と今後の具体的な方策について伺いたい。あわせて、代替エネルギーの将来見通しについても伺いたい。
 次に、もう一つ重要な資源である鉱物資源については、石油と同じく確保されなければ日本の産業界は重大な影響を受けます。これに対する政府の施策はほとんど進展していません。備蓄については、多いものでニッケルの七日分、タングステン、コバルト、モリブデンに至っては備蓄ゼロなのです。八〇年代は鉱物資源危機の時代とも言われています。政府は、五十七年度中にレアメタルの備蓄をそれぞれ十日分にしたいとの意向のようですが、これで十分ですか。また、達成できるのですか。備蓄を含めて鉱物資源確保の対策を伺いたい。
 次に、コンピューター、ロボットの問題について伺いたい。コンピューターの利用を中心とした社会の情報化は、今日、産業界はもとより、国民生活の面に深く浸透してきていますが、既存の法律や諸制度が情報化に対応して十分整備されていないため、国民の不安、不満が深刻化していくおそれがあります。このため、政府は、わが国が目指すべき情報化の方向を明示し、これによって国民のコンセンサスを得ながら必要な施策を展開していくべきです。それには、まず情報化の基本的枠組みともいうべき情報化社会のビジョン、情報産業の振興、プライバシーの保護、情報の公開など、情報化に関する基本的施策を盛り込んだ情報基本法を制定すべきであると考えますが、政府の見解を承りたい。
 さらに、オフィスオートメーションの発達、コンピューター処理の高度化により、金融機関を中心にこれを悪用した犯罪が頻発し、今後ますますふえる傾向にあります。また、これをチェックする安全機能は決して十分とは言えません。現行のコンピューター安全対策について政府の対策は時代に適合していないと思われます。新たな対応が急務です。政府の見解を伺いたい。
 また、二十一世紀はコンピューター化、ロボット化による社会の変革と、これに伴って人間と機械の調和が問題となってきますが、政府はそうした長期の対策を検討しているのでしょうか。総理の所見を伺いたい。
 この問題の最後に、私は科学技術立国について伺います。総理も演説の中でこの問題に触れられておりますが、項目の羅列だけで何ら具体的なものがありません。
 そこで伺います。まず、最先端技術の研究開発のための予算、研究体制、科学技術教育、特にオーバードクター問題に見られる研究者の処遇は、総理の言う科学技術立国にふさわしいものと思いますか。長期的な展望も含めて伺いたい。
 ここで私が特に指摘しておきたいのは、科学技術と軍事利用との関係であります。すでに米国でわが国メーカーの製品が軍事利用化が話題となり、また、日米間で武器を共同で開発することは可能であるとの合意がすでになされ、武器輸出三原則は空文化しています。科学技術の進歩発展は人類の幸せに結びつかなくてはなりません。政府は武器輸出三原則を厳しく守り、将来とも軍事利用は絶対にないとの総理の明確な答弁を伺いたい。
 次に、当面する外交、防衛の問題について伺います。
 初めに、核兵器を含めた軍縮外交についてです。本年六月の国連第二回軍縮特別総会において、総理はいかなる基本方針と視点に立って、何を具体的に訴えるつもりですか。その際、核保有国に対し核防条約第六条の履行を強く求める考えはないか。あるいは、わが国の非核三原則について各国の同調を得るとともに、何らかの取り決めの道を開く行動計画を示すべきであると思うがどうか。
 また、反核、軍縮運動は世界的に急激な広がりを見せています。ことに欧州においては、近い将来戦域核兵器が使用されるという危機感から反核運動が盛り上がっています。反核運動の背景及び実際に脅威が現実的なものかどうかについて、どう分析され、評価しているか伺いたい。
 次に、日ソ関係についてです。さきに行われた日ソ事務レベル協議の結果について、将来展望の上からどのように判断しているのか。そこではポーランド、アフガン問題、さらにアジア情勢についていかなる見解が示されたのか。対ソ関係は今後とも忍耐強く継続させながら進める必要があることは言うまでもありませんが、北方領土返還など対ソ外交の具体的な方針と見通しについて示していただきたい。
 次に、日中関係です。国交正常化十年を迎え、新たな段階に入ったと思います。経済文化交流の面でより強力な展開が望まれると考えますが、政府の所信を伺っておきたい。
 次に、日米安全保障協議委員会で合意された極東有事研究についてです。いま、なぜ日米間で極東有事研究が必要なのか、極東有事とは具体的にいかなる事態なのか。また、米国は、朝鮮戦争の先例にならった便宜供与を期待し、このことは個別的自衛権の範囲を超える可能性があり、憲法に抵触する非常に危険なものです。政府はこの便宜供与を認めますか。もし認めるならば、立法手続、行政上の措置はどうなるのか。また、政府は「現行法制、従来の条約解釈の範囲内でできることしかやらない」との考えがあると伺っているが、その範囲内で何ができるのか、歯どめはあるのかどうか伺いたい。
 最後に、総理、政治は常に現実を直視し、その課題の解決を図り、そして将来への展望を明示しなければなりません。特に、若い世代が来るべき二十一世紀へ希望に燃えて羽ばたけるよう、そのひのき舞台をいまから築いておくことこそ政治の責任であると確信します。総理の誠意ある具体的な答弁を期待し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(鈴木善幸君) 矢追議員にお答えいたします。
 まず初めに、国民生活の変化、その格差に関する認識と政治のリーダーシップの問題を中心にお尋ねがございました。
 国民生活は、最近の調査によりましても、生活の各部面における国民の満足感の度合いが上昇しており、これは全般的な生活水準の向上を反映しているものと理解しております。確かに、中流の上と思う階層が減少して、中流の下と思う階層が増加したり、勤労者世帯の所得格差の縮小傾向が一進一退という状況が見られたりしておりますが、これらは最近の景気動向の影響もあると考えられ、新たな貧困の定着などとは見ておりません。
 いずれにいたしましても、変化する社会へのわが国民の対応力に全幅の信頼をおきつつ、政府としては行財政改革、国際社会への対応、安全保障とエネルギーの確保、高齢化社会対策、恵まれない人々への配慮など基本的な施策を積極的に講じてまいりたいと考えております。
 次に、政治倫理についてお尋ねがありましたが、就任以来、私は、政治倫理の確立を図るためには公正で金のかからない選挙制度の確立が急務と考え、一歩一歩改善措置を講じてまいったところでございます。政治資金規正法の見直しの問題は、さきに個人献金の届け出の明朗化について一部改正を行ったところであり、その他の面については引き続き検討が進められていると承知いたしております。選挙制度や今後の各党の政治活動のあり方に直接関連する問題でありますので、今後なお各党間で十分論議を煮詰めていただかなければならないと考えます。
 なお、昨年来、公共工事の発注に関連してさまざまな疑惑が指摘されていることはまことに遺憾であります。公共事業にかかわる入札の合理化対策については、建設大臣より中央建設業審議会に調査、審議をお願いしているところであり、この審議状況を参酌し、速やかに所要の是正措置を講じてまいる考えでございます。
 次に、参議院全国区制の改正案を撤回せよとの御意見がありましたが、現行の参議院全国区制については、これまで各方面から多くの問題点が指摘されてきたことは御案内のとおりであります。現在、国会の審議に付されている全国区制の改正案は、憲法問題を初め、参議院の機能、役割りの問題、投票方法などについても十分検討を尽くした上で提案されたものと承知しておりますが、今国会においてぜひとも精力的に御審議いただき、速やかに全国区制の改善が実現されるよう切望をいたしております。
 次に、所得税減税でありますが、現下の厳しい財政事情のもとでは残念ながらこれを見合わせるよりほかありません。ただ、所得税の現行課税最低限と税率構造を長期にわたって固定することは適当でないと考えますので、歳出歳入両面にわたる徹底した見直しを進め、五十九年度特例公債脱却の明白なめどをつけるとともに、所得税減税の財源の手当てが可能となる条件を国民的合意のもとにできる限り早く整えたいと考えております。具体的にどのような方法によるかについては、広く国民各層の御意見を伺いながら幅広い角度から検討を進めてまいりたいと存じます。
 次に、住宅問題についてのお尋ねでありますが、昭和五十七年度においては、住宅建設を促進するため、住宅金融公庫を中心とした公的住宅金融の拡充、土地住宅税制の改正などの諸施策を講ずることにより、住宅取得能力の改善や宅地供給の円滑化を図ることとしております。また、民間金融機関による個人向け住宅金融の充実に努めるとともに、的確な経済運営を図ることにより、実質所得の回復、地価の安定等、住宅投資を取り巻く環境の好転が期待できるものと考えております。
 次に、貿易摩擦に関してでありますが、すでに政府は、東京ラウンドの合意に基づく関税率の段階的引き下げの二年分前倒しなどを決定し、さらに明日の経済対策閣僚会議でも、輸入検査手続につき大幅な改善措置を講ずることとしております。
 御質問は、これらの措置によって世界経済の縮小化を食いとめられるかという点でありますが、わが国がこれらの措置を講ずることは、欧米諸国において台頭している保護貿易主義の防遏に寄与するという意味において、世界経済の縮小防止に大きく貢献すると考えます。政府としては、今後ともわが国のかかる政策努力を初め、わが国に対する理解を一層深めることにより、貿易の拡大均衡のもと、自由貿易体制の維持強化に努めてまいります。
 農産物の市場開放の問題でありますが、関係諸国との友好関係に留意しつつ、農産物の需給動向等を踏まえ、わが国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本的に重要であると考えます。かかる観点から、わが国農業の実情や、これまでの農産物の輸入拡大措置について今後とも諸外国に十分に説明し、その理解を得ながら適切に対処するとともに、長期的展望に立って農業生産の再編成と農業の生産性の向上に努め、総合的な食糧自給力の維持強化を図ってまいりたいと考えます。
 社会保障費について御質問でありますが、五十七年度社会保障関係予算につきましては、老人、心身障害者を初め、経済的、社会的に恵まれない人々に対する施策等を充実させた結果、社会保障関係予算の増加額は一般歳出増加額全体の約四四%と大きな割合を占めており、全体としての福祉水準は維持されていると考えております。
 御指摘の児童手当制度につきましては、今後の動向や各方面の議論を勘案しながら幅広く検討を行ってまいりたいと存じます。
 義務教育教科書の無償給与制度につきましては、昭和五十七年度予算においても存続することといたしておりますが、臨時行政調査会第一次答申において「廃止等を含め検討する。」とされておりますので、さらに各界の意見に耳を傾けつつ、今後のあり方について検討してまいりたいと存じます。
 次に、行政改革についてのお尋ねでありますが、御承知のとおり、政府は行政改革を当面する最重要な課題の一つとして位置づけ、その推進に取り組んでおります。今後は、臨時行政調査会の審議の動向や、国会の御審議、御指摘の各分野の政策上の要請等にも配意しながら、行政改革の基本的課題について政府としての施策の検討及び立案推進に当たる方針であります。
 財政の中期展望についての御質問がございました。
 五十七年度予算に基づく新しい中期展望は、今朝の閣議で大蔵大臣から報告がありました。中期財政展望は毎年度作成されるいわゆるローリング方式をとっておりますが、新しい中期展望を検討の手がかりとして、財政再建の議論を一層深めていただきたいと存じます。
 なお、御関心の特例公債脱却の年度は、今度の中期展望でも五十九年度とされており、その点変更はございません。
 なお、特例公債につきましては、借りかえを行うつもりはございません。
 地域格差を是正し、地域の振興整備を図ることは、長年にわたる国政の重要課題であります。そのため、政府としては、昭和五十二年十一月に第三次全国総合開発計画を策定し、全国土の利用の均衡を図りながら、人間居住の総合的環境を計画的に整備することをねらいとする定住構想を推進してきております。今後とも経済社会情勢の変化に対応しつつ、この基本方針に沿って地域の振興に努めてまいります。
 医療、年金、雇用、生きがいなど高齢化社会の国づくりを行う施策は、五十七年度予算ではどう生かされたかとの御質問でありましたが、医療、年金、雇用、生きがい等の各般の施策を整合性を持って実施し、高齢化社会の国づくりを適切に行うため、五十七年度予算においては次のような措置を講じることとしております。
 まず第一に、老人保健制度を創設し、疾病の予防や健康づくりを含む総合的な保健事業を実施することにより、国民が健康な老後を迎えることができるようにいたしました。このため、現在本院で御審議いただいている老人保健法案につきましては、ぜひ早期成立をお願いいたします。
 次に、年金については、厳しい財政状況のもとでも可能な限りの改善を行うこととし、厚生年金、拠出制国民年金等の特例的な物価スライドの実施、老齢福祉年金の年金額の引き上げを行うこととしております。
 高齢者の雇用対策については、個別行政指導の強化による六十歳定年の早期実現、事業主に対する雇用助成制度の活用による六十一歳以上への雇用延長の推進、さらにシルバー人材センターの拡充による高齢者の就業対策の推進などの総合的な施策を講じることとしております。
 高齢者の生きがい対策については、老人就労あっせん事業を実施するとともに、豊かな老後を築く地域活動を推進するため、老人クラブ、生きがい対策への助成を行うこととしております。また、家庭奉仕員を大幅に増員するとともに、派遣対象家庭を拡充し、在宅の要援護老人対策を拡充するよう配意いたしました。
 医療制度についてのお尋ねでありますが、医師、歯科医師の資質の向上、技術を重視した診療報酬体系の確立、地域医療計画の推進などによる地域医療の充実等に努めてまいりたいと考えます。
 次に、中高年の雇用促進の現状と方針についての御質問がありましたが、本格的な高齢化社会の到来を迎え、高年齢者にふさわしい雇用、就業機会を確保することはきわめて重要な政策課題の一つであり、従来から積極的に推進してきたところであります。今後とも六十歳定年の一般化の早期実現、六十歳代前半層の雇用対策の推進など、総合的な高年齢者雇用対策を強力に推進してまいりたいと存じます。
 年金制度の今後のあり方を考えるに当たりまして、公明党の基本年金構想も十分参考にいたしたいと存じますが、当面は各制度間の不均衡の是正に努め、制度全体の均衡ある発展を図りたいと存じます。なお、今後保険料負担の増大が見込まれますが、勤労世代の合意の得られる負担水準となるよう、いまのうちから計画的に検討を行う必要があると考えます。
 次に、婦人の地位向上についてでありますが、憲法を初めとする諸法制において男女の平等が基本的原理として保障されており、従来から、男女の平等の完全な実現を達成し、婦人の地位向上を図るため広範な諸施策を推進してきたところであります。今後におきましても、私は内閣総理大臣としても、また総理府に設置されている婦人問題企画推進本部長としても、国内行動計画及びその後期重点目標に沿って婦人差別撤廃条約批准のため諸条件の整備を図るなど、婦人の地位向上のため一層努力してまいります。
 次に、エネルギーの問題につき、一時的な需給緩和や目先の市場予測に左右されるのでなく、根本問題に取り組んでいくべきであるとの御意見でございましたが、全くそのとおりであり、全面的に御意見に賛同するものでございます。今回の施政方針演説で、現在のような比較的安定した時期にこそ中長期的なエネルギー対策を進める必要がある旨述べ、五十七年度一般会計予算におきましても、厳しい財政事情の中からエネルギー予算につきましては一三・二%の伸び率といたしましたのも、このような考え方に基づくものであります。
 武器技術輸出に関連してのお尋ねがございましたが、政府としては、米国に対する武器技術輸出につきましても、基本的には武器輸出三原則及び昭和五十一年二月二十七日の武器輸出に関する政府方針に基づいて対処する考えでございます。ただ、日米安保条約等との関連もありますので、目下この点につき関係省庁で引き続き検討を行っているところであります。
 国連軍縮特別総会に臨むわが国の立場についてお尋ねがございました。
 わが国は、平和憲法のもと、非核三原則を堅持し、軍事大国とはならず、その持てる力を世界の平和と繁栄のために向けることを国の基本方針としております。来る第二回国連軍縮特別総会におきましても、平和国家として、また核不拡散条約当事国としてのわが国の立場を踏まえ、核軍縮を中心とする軍縮の促進を訴える所存であります。その具体的内容については今後検討していきたいと考えておりますが、核実験全面禁止条約、核不拡散条約の普遍性の達成を初めとする核拡散防止体制の強化、化学兵器禁止の早期実現など、実現可能な具体的措置の促進を訴えていきたいと考えております。
 なお、欧州における反核運動についてはさまざまの要因があると考えられますが、一つには、欧州諸国が経済的、社会的に困難な状況に置かれている中で、近年、東西間の緊張緩和にかげりを生じていることに対し、国民の不安が高まってきているという事情もあるのではないかと考えられます。しかし、いずれにせよ、現実に核兵器を使うか否かということについては、米ソ両国とも核戦争に至るような対決は避けるとの基本的立場を有しているものと考えております。
 次に、日ソ事務レベル協議についてでありますが、私は、日ソ関係が困難な局面にあるにもかかわらず、双方が国際情勢、両国間の問題など広範な問題について言うべきことを率直に言う機会を得たことは、今後の日ソ関係を進めていく上においてきわめて有意義であったと考えております。
 ポーランド問題については、わが方より、この問題が外部からの干渉によるととなくポーランド国民自身によって解決されるべきであるとしてソ連に自制を求め、アフガニスタン問題については、ソ連軍の早期全面撤退を主張し、また、アジア情勢についても、広く中国、朝鮮半島、東南アジア情勢について意見を交換いたしました。ポーランド、アフガニスタン問題などにつきましては、先方はおおむね従来の立場を繰り返したにすぎなかったようであります。
 今後の対ソ外交についてのお尋ねでありますが、政府といたしましては、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、両国間の真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することを対ソ外交の基本と考えており、引き続きこの立場に立って粘り強く対処していく所存でございます。
 次に、日中関係についてお尋ねがございましたが、隣国中国との間において良好にして安定した関係を維持発展させていくことは、わが国外交の主要な柱の一つであります。国交正常化以来、日中両国の関係は着実に発展を遂げてまいりましたが、本年は国交正常化十周年に当たることでもあり、私と趙紫陽総理との間で相互訪問も予定されております。政府は、今後とも中国との間で、政治、経済、文化など幅広い分野における関係の一層の増進を図るべく努力してまいる所存でございます。
 最後に、いわゆる極東有事研究についてでありますが、本件研究作業を進めることは、安保体制の抑止力を高め、わが国の安全及び極東の平和及び安全を一層効果的に維持するという意味で有意義と考えております。
 研究作業の内容は、今後の研究の進展をまたなければなりませんが、いずれにせよ、わが国の憲法上認められないことを前提とするような研究を行うことは全く考えておりません。また、研究の結果、わが方として立法ないし行政上の措置を義務づけられるものでないことは、すでに政府がたびたび明らかにしているとおりであり、この点につきましては日米間で合意しているところであります。
 以上お答えをいたしましたが、残余の点につきましては関係閣僚から御答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は、昨年の五月、政府は景気の底離れ宣言をしたが、その後の経済はそのとおりいってないではないか、こういう御質問でございますが、景気回復の足取りについで申し上げますと、五十四年に第二次石油危機が起こりまして、五十五年の夏ごろから日本の経済は急速に低迷しだしたのでございます。そこで、政府といたしましては、五十五年の九月と五十六年の三月に、二回にわたりまして景気回復のための総合政策を決定いたしました。そういうこともございまして、大体五十六年の五、六月ごろ大底に達したのでなかろうか、こう思っております。しかしながら、それ以降、経済は回復には向かっておりますけれども、その回復の足取りが緩慢である、これがいまの現状であろうと思います。
 ただ、ことしで第二次石油危機が起こりましてから三年目にもなりますので、世界経済全体も回復の方向に行くと言われております。私どもといたしましても、ことしの後半からわが国の経済は回復の方向に進んでいく、このように考えておるのでございます。
 それから次は、わが国経済の潜在成長力とは何ぞや、こういう御質問でございますが、私は欧米諸国とわが国の経済を比較いたしまして、幾つかの相違点があると思います。まず第一にインフレと失業、この点について大きな違いがございます。したがいまして、欧米諸国はインフレと失業に苦しんでおりますので、労使関係がきわめて不安定であります。また、いまのような経済情勢のもとでは貯蓄率が非常に低い水準になっております。わが国も一時に比べますと貯蓄率は少し下がっておりますけれども、世界最高の水準が続いておるのでございます。したがって、それを背景にいたしまして金利水準もいま世界で最低の水準にある、こういうことが言えようかと思います。また、経済の国際競争力につきましては、一、二の例外はございますが、世界最強の競争力を持っておりまして、しかもその差は年々拡大しつつある、こういう違いもあろうと思います。また、防衛費の負担の相違もあろうかと思います。
 以上のような違いが、わが国の他の国と比べての潜在成長力であると考えておりますが、このような力を今後も引き続いて強くしていくというのが、これからのわが国の経済政策の目標であろうと存じます。
 それから経済の破行性についてのお話がございました。
 確かに御指摘のように、ただいま規模別、業種別、地域別のばらつきが相当見られるのであります。しかしながら、このばらつきの原因は、やはり景気の回復がおくれておるというところにございますので、景気の回復の進行に従いましてだんだんと解消するであろうと思いますが、ただ、現在構造的に不況業種と思われるような業種もございまして、そういう業種に対しましては個別対策が必要であろうと思います。また、当然、中小企業とかあるいは農林漁業とか、そういう業種に対しても特別の政策が必要であろうと思いますし、同時に、地域別の破行性は相当深刻なものがございますので、これに対する特別の対策も必要であろう、このように考えております。
 それから行財政改革と経済の関係いかん、こういうお話でございますが、昭和五十九年に財政再建をするという政府の目標に対しまして行財政改革を進めておるわけでございますが、同時に、経済の活力の維持拡大ということがどうしても必要だと私どもは考えております。そこで、行財政改革と経済の維持拡大と、その整合性を進めながら五十九年度の財政再建目標を実現すべきものだと、このように考えております。
 なお、米国景気の見通しいかん、こういうお話でございますが、昨年の第四・四半期、十月−十二月期のアメリカ経済のGNPは前期比マイナス五・二%と、こういう水準でございます。一−三月の状態も相当悪いであろうと言われておりますが、しかし、第二・四半期から順次回復に向かいまして、後半相当高い成長になるであろうというのがアメリカ政府並びに権威ある国際機関の見通しでございます。
 個人消費につきましての御質問がございました。
 個人消費は、五十六年度は政府の見通しよりは落ち込んでおりますが、五十七年度につきましては、引き続き物価が安定するものと私どもは期待をしておりますし、後半、景気の回復につれまして雇用者所得も拡大をする、そういうことを背景に五十七年度の個人消費はある程度回復するであろう、このような見通しを立てておるのでございます。
 それから物価政策についての御質問がございました。
 調整インフレを考えておるのではないか、こういうお話でございますが、政府は調整インフレなどということは絶対に考えておりません。経済政策の一番大事な点はやはり物価の安定である、このように理解をいたしております。また、その方向で政策を進めておるのでございますが、五十六年度の年度間を通じての消費者物価は、おおむね四・五%前後におさまるのではなかろうかと思いますが、五十七年度を四・七と想定しておる点を調整インフレ云々と、こういう御質問になったのではなかろうかと思いますが、後半世界経済全体が回復し日本経済も回復する。したがって、後半物価もある程度上昇するという想定をいたしまして四・七という目標を設定しておりますが、しかし目標はそれでありましても、全力を尽くしまして、それ以下の水準に物価がおさまるように努力をしていくつもりでございます。五十六年度におきましても、五・五という目標に対しまして四・五という水準におさまっておりますので、低位で物価は安定をするということは政府の基本的な経済政策であるということを申し上げておきたいと思います。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(渡辺美智雄君) 貿易摩擦の問題に関連して、日本の金融市場をもっと開放せよ、こういう御意見でございます。
 これは、われわれといたしましても、年々外国の金融機関が日本国内に支店等を設置することを認めてきておりまして、たとえば在日の外国銀行の増加状況は、四十五年で十八行三十八支店だったものを、五十六年では六十九行九十四支店ということで、五十六年だけでも五行九支店というものを認めておるわけであります。したがいまして、極力そういう点ではわれわれは開放をしておるわけでございます。ただ、国によって銀行業務の内容というものが違いますから、アメリカでやっておったことそのままそっくりを日本でやらせろと言っても、これは日本では証券会社と銀行というのは分かれておって業務分野が違う、したがってアメリカのまねそっくりというわけにはいかない。日本の銀行とそっくりというととはできますから、そういう点では開放をしておるわけでございます。
 なお、外為法も昨年の十二月に改正して、原則自由ということにしたところであります。
 また、この間の財政演説でも言っておるように、日本は非常に外貨不足の国に対しては、OPEC諸国の余っている、だぶついたオイルマネーの還流ということについていろいろ橋渡しをやつて、国際金融がうまくいくように、いろいろと国際の金融問題には貢献をしておるところでございます。
 なお、財政再建期間の終わったときに二十一世紀につながる行政システムはでき上がっていなければいけない、五十七年度の中でそのような芽は組み込んであるのかと。これは御承知のとおり、五十七年度の予算においては臨時行政調査会の第一次答申というものを尊重して、それを極力予算に反映するように努力をしてまいりました。したがって、それを芽と言えば芽だし、魂を入れたということじゃないかと、そう思うわけでございます。引き続き第二次の答申が出るわけですから、そこで本格答申というものが今度出てくる。したがって、それをどういうふうに今後処置していくかということは、大きな柱というものの芽は今後の問題になる、そう思っております。
 それから五十七年度予算で後年度負担のツケ回し経費が八千億だ、その内容を説明せよと、こういうのですが、ツケ回し経費というふうにわれわれ考えておりませんので、何千億円になるか、そういう計算はいたしておりません。
 それから五十七年度の補助金の整理合理化はどういうふうにやったか、一律削減で支障はないかということでございますが、これは調査会の第一次答申を踏まえまして、個別的な事項については個別的にいろいろ整理合理化を図ったが、その他の事項については各省庁に一律一割削減ということを御協力いただきました。これは一律一割といっても、各省庁でもう補助金は何百もありますから全部一律というのじゃなくて、中には伸ばしたものもあるし、なくしてしまったものもあるし、減らしたものもあるし、ただその省庁として一割減っている。これは、削減目標は千六百三十六億円を考えたのですが、実際の実績は二千十六億円、目標額を三百八十億円超過達成できました。おかげさまでそういうことになりました。
 それから整理合理化の基準は何か。これについては、補助金というのは有力な政策手段ではありますが、ややもすると、あぐらをかいてしまって、要するに既得権化してしまう。だから、そういう弊害がありますから不断に見直しをしていかなければなりません。したがって、すでに目的を達成したもの、それから社会的な実情に合わなくなったもの、それから補助金をやっても余り零細で効果の少ないもの、こういうものはまず整理をする。そして、あとは統合メニュー、合理化等を図って、手続の簡素化その他少なくしようということを基準として整理合理化を図ってまいりました。
 公務員の削減、配置転換につきましても、ことしは行管庁と一緒になりまして千四百三十四人に上る大幅な縮減に成功をいたしました。配置転換も着実に実施しておるところでございます。
 それから中期展望の歳出増加見込みを六・二%に圧縮した、これは非常に圧縮したのだが、もっと不要に膨張した経費を圧縮すべきではなかったかということでございます。
 われわれとしては、極力経費の圧縮にこれ努めてまいったところでございます。いずれにしても、一・八%というものはこれは二十数年来なかった緊縮予算でございますから、経費をぶよぶよふやしてはそんなにならないわけでございまして、極力圧縮をしてまいりました。しかしながら、まだ切り方が足らぬと言われますが、これはなかなか実際問題として、文教問題等におきましても、大学の補助金三千六百億円をもっとばっさりできないかとか、教科書無料化をやめたい、いろいろそういうことも考えたわけでございますが、しかし非常に抵抗が強くて、それは要するに抑え込むということで大体成功した。人件費も伸びる、物件費も伸びる、その中で去年と同じに抑え込んだということで非常に苦労して。これは発想の転換を図っていかなければ、なかなか思い切ってばっさりということは言うべくして非常にむずかしいことは皆さん御承知のとおりだろうと、そう思います。
 そういう中にありましても、実は社会保障費等については、先ほど総理の答弁にあったように、要するに歳出増加額の四四%も社会保障費の増加額の方へ回ったということですから、そういう厳しい中でもやっぱり見るところはちゃんと見ておるのだということを御了承願いたい、こう考える次第でございます。
 それから五十六年度の税収見通しの誤りの問題でございますが、これは御承知のとおり、経済見通しが変われば税収見通しは変わるのです。経済というものは生き物でございますから、一年前に見通ししても、計画経済でもなかなかそのとおりはいかない。まして自由経済でありますから、政府が直接コントロールしてやっておるわけじゃございませんので、どこまでもこれは見通しでございますから。そういうようなことで、それは激動する世界経済の中、不確実性の時代、まさにそのとおりなんです。したがって、そういう中において、われわれの考えたよりも景気の回復テンポがおくれたということも事実ですし、消費節約が徹底されて石油がかなり減った、そのために日本貿易は黒字になったなんていう付録もついて出ますよ。しかしながら、その節約ムードというのは一般個人にも及ぶということも言えます。その結果は、先ほど言ったように消費者物価の急速な鎮静化ということになり、卸売物価が四・一と見たら一・八以下になって、現在では一・六ぐらいです。こういうものは従価税である物品税というようなものにはストレートに影響しますから、税収の減収につながるということも事実でございます。そういうようなものが大体見込まれるものについて、われわれとしては経済の実態に合わせておいた方がいいという考え方から、この税収の見積もりについては補正をしたというだけのことでございます。
 それから中期財政展望との絡みで、五十九年度決算を見てから財政計画をつくってきちっとしたものをやれ、それまではいままでの方針どおりでやれということでございます。
 これは、総理が答弁したように、この財政の中期展望は、財政の現状を一定の仮定のもとで後年度負担を推計した額を投影するという形でつくってあるわけでございますから、これはどこまでも財政運営を進めていく上での中期的な検討の手がかりにすぎません。したがって、これは将来の予算を拘束するものではございません。ただ、われわれとしては五十九年度赤字国債の脱却という目標は変えないということは、総理のおっしゃったとおりでございます。
 それから大型間接税の問題等に絡んでのお話がございましたが、これも総理の方からお答えがあったので省略をさせていただきたい、かように思います。
 婦人パートタイマーの減税問題につきましては、これは現在七十九万円までの収入がありましても、それは扶養家族として認めてますというだけのことでございまして、それ以上、百万円仮に収入があれば、扶養家族から外れて一所得者になりますというだけのことであります。これはたとえば同じ家内内職にいたしましても、自分が品物を買って三十万円の所得があった場合はこれは扶養家族にはならないわけです。したがって、それとのバランスというような問題等も考えて、七十九万円というものは現在のところまあ私はほかとのバランスから見て精いっぱいであると、そういうように考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(安倍晋太郎君) 第一に、基礎素材産業についてのお尋ねでございますが、確かにいま業界は非常に悪化をいたしております。この基礎素材産業に対しましては、産業構造上あるいはマクロ経済上の位置づけを明らかにし、各業種の中長期的なあり方を踏まえた根本的な対策が必要であると考えております。こうした観点から現在通産省でも産業構造審議会等において鋭意検討を進めておりますが、たとえばアルミのように、すでに実施し得る対策から順次実施をしてまいっておるところでございます。その際に、原材料、エネルギーコストの低減、供給規模の適正化等の対策が重要であると考えておりまして、個別的にひとつ鋭意取り組んでまいりたいと考えております。
 景気対策との関連で中小企業対策についてのお尋ねでございますが、中小企業は出荷額あるいは設備投資におきまして全体の約五割を占めて、日本経済のいわば最も重要な地位を占めておることは申し上げるまでもないわけでございます。したがって、御指摘のとおり、中小企業の振興を図ることは景気対策上きわめて重要であります。このために政府は、政府系の中小企業金融機関の貸出基準金利をいわゆる長期プライムレートを下回る水準に設定するなど、中小企業の景気回復のためきめ細かな対策を実施してまいっておりますが、今後ともこのような考え方で中小企業振興を図ってまいりたいと考えております。
 わが国の資源エネルギー対策についてでありますが、これはさきに総理から御答弁がありましたように、供給の確保あるいは省エネルギーの徹底、さらに代替エネルギー政策の推進等につきまして予算でも特別な配慮をいたしておりますが、腰を据えて取り組んでいかなければならないと感じておるわけであります。
 資源の中でレアメタルについての御質問がございました。御指摘のように、国民経済の発展と国民生活の安定向上の観点からこれはきわめて重要な課題でございまして、今回の予算におきましても、レアメタルの備蓄制度につきまして一歩前進をさせたわけでございますが、今後ともさらに各般の施策をひとつ強化してまいりたい。
 次に、最先端技術製品の輸出と貿易摩擦との問題についてでございますが、この最先端技術は先進諸国全体の活性化のために重要視していくべき分野でありまして、現在の貿易摩擦が先進諸国の国内経済の疲弊にあることを考えますと、この分野における産業協力等を通じまして先進国間の協力を進めていくことが肝要であると考えております。
 こうした意味で、実は一昨年の日米合意に基づく電電公社の調達開放、あるいは昨年九月、日米で合意した半導体関税の相互の前倒し等、エレクトロニクス分野での協力の進展は非常に有意義なものであったと考えております。私も、先般訪米をいたしましたが、この分野でいわゆるスタディーグループの設置をいたしたい、こういうことを提案いたしてまいりました。
 コンピューター、ロボット等の情報化社会への進展との関係での各種のお尋ねでございましたが、今後の情報化社会のあり方については、いま産構審におきまして昨年六月答申を得たところでございますが、この答申によって各種の施策を計画的かつ積極的に進めてまいりたいと考えております。
 なお、コンピューターにつきまして、いろいろと安全対策で問題が出ておるわけでございますが、産構審情報産業部会に諮りつつ、御指摘の点等につきましてはひとつ検討をして、前向きに取り組んでまいりたいと考えております。
 コンピューター化、いわゆるロボット化によるところの社会問題、特に人間と機械との調和につきましては、いずれにせよ人間中心の思考が重要であると考えておりまして、かかる観点から今後の施策を考えてまいりたいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣中川一郎君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(中川一郎君) わが国が今日の経済発展を見たのは、科学技術の力によるところが大きいと言われております。さらに今後、資源の乏しいわが国が民族発展の可能性を切り開き、世界の進歩に貢献していくためには、すぐれた国民の資質を十分に生かし、次代を担う人材を育て、科学技術の振興を図ることがきわめて重要とされております。
 このため、昭和五十七年度予算案においては、原子力、宇宙、ライフサイエンス等先端的分野を初め科学技術関連諸施策を推進するとともに、特に科学技術振興調整費を拡充し、科学技術会議の調整機能の強化を図り、また流動研究システムによる創造科学技術推進制度を拡充する等、先端的、基礎的科学技術を振興強化していくことといたしております。
 さらに、昭和六十年には国際科学技術博覧会を開催し、特に次代を担う青少年の科学技術に対する理解を深めることとしております。また、研究者の処遇についても、今後とも努力してまいるつもりでございます。
 このようにして、厳しい財政状況のもとでございますが、予算及び研究体制に工夫をこらし、科学技術立国を目指して、政府は一層努力を払ってまいるつもりでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(徳永正利君) 宮本顕治君。
 宮本顕治君の発言を求めましたが、これを取り消します。
 これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時三十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二分開議
#11
○議長(徳永正利君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。宮本顕治君。
   〔宮本顕治君登壇、拍手〕
#12
○宮本顕治君 私は、日本共産党を代表して、総理に質問をいたします。
 質問に先立って、昨日葬儀が行われた横浜の米軍機墜落事件の犠牲者林和枝さん、及び今日なお夕張炭鉱事件で地底に横たわっておられる人々を含めた多数の犠牲者に対して、心から哀悼の意を表します。
 同時に私は、政府は政治の責任にかんがみて、こういう惨事は繰り返さないという決意を新たにすべきだということを強調するものであります。
 さて、まず国際情勢と日本の責任についてお尋ね申し上げます。
 今日の世界は、米ソを盟主とする大きな対立する軍事ブロックによりまして、際限ない核軍拡競争が進んでおります。そうして世界の軍事費の総額は百兆円を超えまして、核兵器の貯蔵は人類を何回も殺すことができるような巨大な量に達しております。
 そこで、まず第一、最も重大なことは、アメリカのレーガン大統領が二回にわたって限定核戦争があり得るということを表明した点であります。
 これは、米国は安全にしておいて、アジア及びヨーロッパを核戦場にしてはばからないという非常に残酷で虫のよい構想であります。この構想のもとで、アメリカの忠実な同盟者としての日本の地位、これは実に原爆をまくらに暮らしているに等しいものであります。アメリカの「核の傘」のもとでの軍備増強とか、最小限の自衛とか、非核三原則尊重と申しましても、客観的にはこの恐るべき核戦略の一環、一翼に置かれているのが日本の現状であります。
 昨日の衆議院本会議におきまして、わが党の金子議員の質問に対して、総理は、この限定核戦争構想というのは、アメリカがどんな攻撃にも対応し得る有効な態勢をとっているんだという弁護論を展開され、そしてこれに対してはっきりした不満、抗議の意思表示はなさいませんでした。しかし、この限定核戦争というのは、決してそういう抽象的なものではないのです。アメリカは核攻撃を受けないという意味で限定的であって、他の地域は核戦場にし得る、するという恐るべき構想なのであります。総理はそれでも結構だと思っていらっしゃるのでありますか、きわめて重大な問題ですから、改めてお尋ねする次第であります。
 わが党が来年度の予算に関しまして、軍事費一兆円以上の削減ということをあえて要求したのは、ただこの軍事費が他の分野の予算から比べてみてバランスを失しているとか、異常に突出しているというだけの問題ではないのであります。それは、限定核戦争構想下の日本の軍拡は、その意図が何であろうと、結局は大局的には日本民族の破滅的な不幸をみずから進めることになるというのが、問題の厳粛な客観的な意味であります。
 今日の軍事問題の根底にあるこの限定核戦争問題を正面から政府が検討されて、そうしてこれに対してしっかりした態度表明するということを私は政府の緊急かつ重大な責任と考えるものでありますが、政府の所見を伺うものであります。
 第二に、核軍縮問題であります。
 総理は施政方針演説で、ことしの国連軍縮特別総会に出席するとか、また、そこで核軍縮を中心とする軍縮を訴えるということを言われました。また、昨年八月六日の広島におきましては「核兵器の廃絶」ということをあえて強調されました。しかし、最近の国連での日本政府の態度を見ますると、核兵器の配備や使用の禁止決議等にこともあろうに反対しているのであります。理由としては、もし賛成すれば核抑止力の効果を損なうとか、あるいは軍事ブロックの相手方の利益になるんだというような弁明であります。これは全くアメリカの言い分の引き写しであります。いやしくも唯一の被爆国として、核兵器の廃絶を誓っている政府代表の口にすべきことではないのであります。
 私は、そこで、政府が今後国連で核兵器全面禁止協定等が問題になったときに、その提案に賛成するかどうか、このことをはっきりこの場でお聞きしたいと思うのであります。
 第三は、政府は「力の均衡論」というものをとっておられます。軍事ブロック間の力の均衡が平和を維持するんだ、この理論であります。
 しかし、「力の均衡」というのは、事実上相手側に対する優位を絶えず競い合う、そういうものなのであります。したがって、「低い水準の均衡」といっても、実際はどんどん相手方より軍備をふやす、こういうものでありますから、戦後、世界の軍事費は四倍に増大している、この秘密がここにあるのであります。
 特に、核兵器の均衡となると、相手方に与える恐怖感、このバランスであります。しかし、戦力のバランス、特に核戦力のバランスを数字的に比較して判定することは、それぞれのブロック側の政治的、経済的、地理的条件、また同盟構成力の多様性によって、きわめて困難かつ不可能なものなのであります。私たちは、この点ではソ連共産党に対しても「力の均衡論」をやめよということを率直に、公開書簡で繰り返し誤りだということを批判しているのであります。
 この軍事ブロック間の軍拡の悪循環はきわめて深刻であります。したがって、世界の本当の平和ということを考えるならば、この巨大な集団的な誤謬から脱却することが大事なのであります。政府は、平和とか世界の繁栄を口にするならば、その方向に向かって努力すべきでありませんか。そして、国連で軍縮を訴えるだけでなく、まず国内でそれを実行すべきであるとわれわれは主張するものであります。
 第四に、軍事ブロックと民族の自決権の関係であります。
 いまや軍事ブロックの強化自体が自己目的になっているというのが世界の大きな誤りでありますが、当然これは加盟国の自主性、自決権というものを「共通の安全保障」という名前で侵害しているのであります。
 この十年間の世界政治の汚点として、アメリカのベトナム侵略戦争、韓国の軍事独裁政権に対するアメリカのてこ入れ、ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入、ポーランドの今回の軍政の出現、これらを挙げることができますが、これはいずれも大国中心の軍事ブロック政策と不可分の産物であります。ポーランドの軍政に関して言えば、その実態、手続とも、社会主義の大義に反するだけでなく、またポーランドの社会主義の建国の理想にも反している。わが党は厳しい批判を行っております。この軍政発動の決定的根拠にされているのは、ソ連中心のワルシャワ条約機構、ポーランドがこの一員であるから安全保障が大事だということでソ連の干渉も行われているのであります。
 アメリカはわが国の軍事予算の突出を求めてさまざまな言動をし、干渉してきたということは周知のことであります。ところが政府は、これに対して、日米軍事同盟がある以上アメリカの要求は当然なことだと、こう陳弁しております。しかし、翻ってみますると、日米軍事同盟そのものが、本質的には、さまざまな事実が示すように、日本の主権の侵害、制限を許容しているのであって、その意味では国辱的なものであります。安保条約第三条は双方の軍備増強を義務づけることを約束しております。
 今日の世界の軍事ブロックのあり方は、二度の大戦の反省に立った国連憲章の集団的安全保障という本来の精神から逸脱しているものであります。そういう意味で、私は、日米軍事同盟の廃棄と日本の中立化の道こそ国連創設の原点に合致するものであると確信しておるものであります。
 第二次大戦で日独伊同盟の一環として戦い、あのような犠牲を内外に引き起こした日本の戦後政治における責任は重大であります。私は、政府がそういう認識に立って、この問題についての所見を述べられることを求めるものであります。
 わが国の当面する経済問題について述べます。
 第一に、一国の経済を見る基準はどこにあるかという問題であります。
 総理は、外国との若干の指標を挙げて、日本経済は大変よくできていると自画自賛されております。しかし、この基準は、大多数の国民の生活の実情はどうかというところにあるものであります。すでに問題になっておりまする実質消費支出が二年連続マイナスという事態は、きわめて重大であります。これは国民の生活水準の実質低下を意味するというふうに総理はお考えかどうかということをまず伺いたい。
 収入が支出に追いつかないのは、大企業の賃金抑制、中小企業関係労働者の低収入、税金や社会保険料の引き上げ、物価、公共料金の上昇、福祉切り下げ、教育費等の負担増等の総合的結果であります。成長率、物価上昇率などの外国との比較はどうであれ、国民生活水準の実質低下という事実こそ、主権者である国民にとって、日本経済は「安定と繁栄」どころか、「不安と苦痛」に満ちたものであるということを私は証明していると思うのであります。しかし、資本金十億円以上の大企業の内部留保はこの一年間に六兆円ふえております。わが国経済で最も恵まれたものがあるとすれば、こういう大企業ではないでしょうか。
 総理は、午前中の答弁の中で「国民生活の満足度が上昇している」ということを言われました。ところが、政府の八一年度国民生活白書によっても、国民の満足度は国際比較で見ても欧米諸国と比べて最下位なんであります。総理府の世論調査によりましても、「昨年と比べて生活が低下している」と答えた人が、「向上している」と答えた人の三倍を上回っているのであります。総理は、日本経済についての自画自賛はお控えになって、こうした多くの国民の切実な苦痛を正面から受けとめるべきであると思いますが、、いかがでございますか。
 第二に、経済の現状打開の方向であります。
 今日の深刻な三重苦、消費不況、財政難、経済摩擦は相互に深い関係がありますが、これは基本的には歴代自民党の経済政策に起因し、また最近では、臨調路線が露骨に軍事費優先、大企業本位、国民生活犠牲という方向を追求したからであります。したがって、中小企業の未曾有の倒産、勤労者の生活難、こういう中で大企業への特権的な補助金、大企業向けの大型公共事業等は手厚く配慮されております。そうして大企業は政府の保護のもと、異常に強まった競争力で海外に進出して、その摩擦のツケが、農産物の輸入の拡大による農民の苦痛とかさまざまな形で一般国民に及んでいるのであります。これは結局、経済運営の基本が働く人本位でなく、アメリカや財界、大企業の圧力に左右されているからではありませんか。
 たとえば、政府は退職給与引当金の適正課税を一たんは志しましたが、土光氏ら財界の圧力で腰砕けになりました。なぜですか。また、本四架橋のためには四六%増の予算をつけながら、国民生活に深くかかわる下水道等の生活密着型公共投資になぜ力を入れないのでありますか、お伺いいたします。
 本来、行政改革とは、むだを排して国民本位の効率的な行政を行うことであります。残念ながら、今年度の臨調路線として実行されたものはこれを裏切りましたが、われわれは今後も基本的なねらいとして軍事費の大増強、大企業の聖域化、福祉、教育カット路線の推進等を見ないわけにはいきません。臨調委員の多数を占める財界、官僚の求める日本のあり方、国の歩みの根本についても大きなそういう危険があるのであります。これでは私は、消費不況、財政難、貿易摩擦の三重苦は解決どころか、ますます深刻になるほかはないと考えますが、総理の御答弁を求めるものであります。
 政府の施政方針演説を聞いても、この根本的な問題についての展望はつかめません。しかし、私は、本当に国民本位の経済政策に徹するならば展望は開けると確信しております。軍事費を思い切って一兆円以上も削るとか、あるいは大企業優遇の補助金や不公正税制を是正するとか、不正な談合入札を是正して一般会計だけでも六兆円に上る公共投資の一割のむだを省けば、生活密着型投資を重視するという方向に転換することができるし、むだな金を省くことができるのであります。
 したがって、所得税減税、公共料金抑制などとともに国民の購買力の向上、これらが経済民主主義に基づく日本経済の再建の柱でなくてはならぬ。その道を勇敢に選ばぬ限り、日本経済は多くの国民にとって苦難の連続になるということを考えざるを得ませんが、この点についての総理の所見をお伺いいたします。
 総理は、婦人の問題についても期待を表明されました。私は、婦人差別撤廃条約を八五年までに批准するという政府の公約実行のためにも、母性保護を十分保障した男女雇用平等法が必要だと考えますが、総理の所見を伺います。
 全国区選挙制度、参議院の全国区改革という問題でありますが、全国区選挙制度についての自民党の案は、無党派の人々の立候補の余地を奪うなど、憲法が保障する民主主義の根幹に反するものであります。わが党は、全国区比例代表制そのものは検討の対象にできると思いますが、自民党の改悪案を強行するならば、内容、手続の両方で参議院の自殺行為になると私は考えるものであります。政府のお考えを伺います。
 最後に、政治姿勢について。
 昨年十二月八日は太平洋戦争四十周年でありました。鈴木内閣成立以後、靖国神社問題、軍備増強、憲法問題等、あの戦争の反省を忘れたような姿勢が目立っております。三百十万の日本人が命を失い、近隣諸国に二千万人の犠牲者を出したあの戦争が、全く大義名分のない戦争だったということへのまともな反省がないのではありませんか。
 また、ロッキード事件、相次ぐ談合入札への政府の甘い対応、大学の裏口入学への口ききは選挙区の住民に対してあたりまえなどという閣僚も出る始末であります。鈴木内閣はモラル観、倫理観が乏しいのではないですか。自民党内の派閥間の和と国民世論の常識とが矛盾するとき、どちらをおとりになるか、私はしかと総理にお伺いしたいと思うのであります。
 日本共産党は、六十年前に党を創立して以来、侵略戦争に反対して、平和と民主主義のために一貫して闘ってきた党であります。今後とも、わが党はこの伝統を生かして闘い抜くということを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(鈴木善幸君) 宮本日本共産党委員長にお答えいたします。
 まず、御指摘のレーガン大統領の発言についてでありますが、この発言は、米国はいかなる攻撃に対してもこれに対応し得る有効な態勢をとることをその抑止力の基本としているという趣旨を述べたものと認識しております。お話にあったような、米国本土は避けるが、他の地域は核戦争の戦場にするなどという無責任な趣旨の発言ではなく、米国としても核戦争に至るような対決は避けなければならないという基本的立場に立っていることは、これまでもいろいろな機会に明らかにされてきているところであります。
 宮本さんの御指摘をまつまでもなく、核兵器の使用は、たとえ限定的なものであっても、これが現実のものとなってはならないことは申すまでもありません。わが国といたしましては、今後とも核保有国の自制と責任を求めるとともに、国際的に核軍縮の促進を訴えてまいる所存であります。
 なお、政府は、核兵器全面禁止協定の提案国になるかとのお尋ねでございましたが、現在、国連でそのような提案が行われているとは承知しておりません。いずれにせよ、すでに本国会でも述べましたとおり、国連における核軍縮関係の決議案につきましては、政府はこれまでも具体的提案に即して、これが真に核軍縮を促進し、国際の平和と安全に資するか否かという観点から是々非々の態度で臨んできており、今後ともかかる態度で臨んでまいる所存でございます。
 なお、今日の国際社会を見るに、これが東西間の軍事力の均衡を基礎としていることは否定できない現実でありまして、わが国もこの現実を直視して、国の安全保障政策を実施していかなければならないと考えます。したがって、わが国としては、引き続き日米安保体制の円滑かつ効果的な運用と防衛力の着実な整備を進めるとともに、他方において、世界の平和と安定を長期的により強固なものとするため、軍縮、軍備管理へのたゆまざる努力を行っていくことが肝要であると考えております。
 なお、日米安保体制を破棄せよとの趣旨のお話がございました。
 われわれは三十年前、日米安保体制によってわが国の平和と安全を確保するという道を選択いたしました。今日のわが国の平和と繁栄を目の当たりにするとき、この選択が正しかったということはだれの目にも明らかであります。いずれにせよ、この点につきましては、われわれは日本共産党の方々とは全く立場を異にするものであることを再度明確に申し上げておきます。
 次に、経済関係の御質問にお答えをいたします。
 まず、家計の実質消費支出でありますが、第二次石油危機の影響などにより五十五年にはマイナスを記録しました。五十六年も、統計で見る限り、所得の伸び悩みなどにより一進一退を続けております。しかし、勤労者世帯では、五十六年に入り消費支出はほぼ実質増に回復しております。政府は今後、物価の安定を基礎に、国内民間需要を中心として景気の着実な回復を促進することにより、家計消費の回復に努力してまいります。
 しかし、世界的な比較で見れば、日本経済が最も恵まれている状況にあることは事実でありまして、いたずらに卑屈になる必要はありません。わが国の経済が現在外需依存型になってきており、また貿易摩擦問題があって、いずれも解決の努力を要する問題でありますが、それはわが国の経済運営がアメリカや大企業の圧力に左右されているからではなく、停滞する世界経済の環境の中で、複雑困難な諸種の要因によるものであることは明らかであります。
 退職給与引当金の累積限度額については、五十七年度税制改正の検討課題とされたことは事実でありますが、税制調査会の答申を受けて今後基本的な検討を進めていくこととしたものでありまして、財界の圧力で腰砕けになったという批判は当たりません。
 五十七年度の公共事業予算は、総体として前年度と同額に抑制しましたが、その事業別配分に当たっては、住宅対策、下水道、環境衛生施設整備等、国民生活に関連する事業について特に配慮しております。
 なお、本四連絡橋事業につきましては、その財源の大宗が財投資金等の有償資金であること、事業の遅延はかえって採算を悪化させることなどを勘案し、現在実施中の一ルート四橋に当面限定との臨調答申に沿って所要額を計上したものであります。
 私は、国民の大きな関心事である行政改革は、国民の支持を受け、世論に沿ったものであると考えており、軍事優先、大企業優先の行政改革であるとの批判は全く当たらないと考えます。政府としては、今後も臨時行政調査会の審議の動向や国会の御審議を踏まえながら、国民一般の要請に即した総合的視点に立って、行政改革の基本的課題に関する施策の検討及び立案、推進に一層努力してまいる方針であります。
 今後のわが国経済についての私の見解を求められましたが、今後のわが国経済は、行財政改革、国際的な経済摩擦の解決、来るべき高齢化社会への対応など、多くの課題に対処していかなければなりませんが、国民の英知と努力を結集して、課題の解決に全力を傾注するとともに、適正な成長を保ちつつ、質的に充実した国民生活の実現と国際経済社会への貢献を目指して着実に発展を続けることができると信じております。
 次に、婦人の活動についてでありますが、婦人差別撤廃条約については、その批准のため国内法等諸条件の整備に努めていくこととしておりますが、男女雇用平等法の制定、母性保護の充実などについては、関係審議会での審議の結果を待って検討してまいりたいと存じます。
 次に、参議院全国区制の改革についてお尋ねがありましたが、現在の参議院全国区制については、これまで各方面から多くの問題点が指摘されてきたことは御案内のとおりであります。その改革はいまや緊急の課題であると考えております。現在、国会の審議に付されている全国区制の改正案は、昨年来各党にもその内容を御説明をし、憲法問題等についても十分検討を尽くした上で提案されたものと承知しており、今国会においてぜひとも精力的に御審議をいただき、速やかに全国区制の改善が実現されるよう切望しております。
 次に、鈴木内閣は憲法軽視、戦争への反省がないとの御批判でありましたが、わが自由民主党は結党以来、責任ある国民政党として、憲法の精神にのっとり、自由と民主主義を尊重し、常に国民の熱い支持のもとに、わが国が戦後の廃墟から今日の世界でもうらやまれるほどの自由と平和と繁栄を享受する国になったことに大きな貢献をしてきたことを誇りといたすものであります。鈴木内閣は、今後とも平和憲法の理念を尊重しつつ、国政の進展に精励してまいりたいと存じます。
 最後に、政治倫理についてお尋ねがありましたが、就任以来、私は、政治倫理の確立を図るためには公正でお金のかからない選挙制度の確立が急務だと考え、一歩一歩措置を講じてきたところであります。すでに再三申し上げたとおりであります。今後におきましても、倫理委員会の設置、議院証言法の検討などの諸点につき、各党各会派の御協議が進展されることを希望するものであります。いずれにいたしましても、政治倫理の問題は個々の政治家の良心の問題に帰着いたします。この意味で、政治に携わる者は、私を含め常に自粛自戒し、政治倫理の一層の確立に努めてまいりたいと思います。
 お答えをいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(徳永正利君) 藤井恒男君。
   〔藤井恒男君登壇、拍手〕
#15
○藤井恒男君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、さきに行われました総理並びに三大臣の演説に対しまして若干の質問を行います。
 さて、わが国は、戦後一貫して国際社会の中においてその発展の利益を享受し、今日の立場を築いてまいりました。しかし、いまや日本は、人口は世界総人口の二・七%にもかかわらず、国民総生産は自由世界全体の二二%を占め、輸出額も同様八%を占めるに至りました。この日本の比重は、日本経済の潜在成長力の強さから見て、今後ますます高まりこそすれ低下することはないものと思います。
 この意味において、世界各国は、日本が政治、経済、防衛の各般にわたって世界平和の維持発展にいかなる貢献をするのか、いかなる利益を日本は逆に世界各国に与えるのかを注視しております。わが国がこの課題の解決に失敗すれば、福祉国家の建設はもちろんのこと、日本の存在基盤さえ失う危険性があることを国民一人一人が十分自覚しなければならないと思います。世界の日本への期待の高まり、これとはうらはらな日本の世界認識の甘さ、それに由来する行動力の欠如、このギャップの解消こそ今後の国民的最重要課題と言っても過言ではありません。
 このため、わが国は、外に対しては世界平和の積極的創造への貢献と国際経済の発展に対するわが国の責任の明確化、内においては本格的な行革の断行と内需中心の適正成長の達成、さらには高齢化社会に対応する基盤づくり等に努めなければならないと思います。この基本認識について総理はどのようにお考えか、御所見をお伺いいたします。
 次に、具体的に外交、防衛問題について質問します。
 いまも申し上げましたように、日本の存立は世界の平和と不可分一体であり、わが国は自主的な防衛努力と世界平和への貢献を同時並行して進めなければなりません。このバランスこそが重要であり、わが党は、一方における軍事大国路線、他方における無防備無抵抗論の両極論を排さなければならないと確信しております。ところが、鈴木内閣の防衛政策は、場当たり的、事なかれ主義であり、まことに遺憾であります。
 たとえば、昨年の日米共同声明をめぐって、日米安保条約がありながら、日米は軍事同盟ではないと発言し、いたずらな混乱を招いたり、来年度防衛予算について、それがわが国の自主的な計画に基づく積み上げというより、対米配慮でいわばごり押し的に決められ、このことについての国民の不信を招いたことは重大であると思います。さらに、去る十二日に総理が海空重視のハリネズミ防衛を国防会議なり総合安保閣僚協に諮ることなく指示し、十八日にはこれを事実上否定するという軽率な指示を行ったことなどがそれであります。
 総理、このようなことで国民の防衛問題に対する健全なコンセンサスがつくれるでありましょうか。もしアメリカ向けと国民向けの発言を使い分けたり、国会対策を優先して国民に真実を語らないというのでは言語道断であると言わなければなりませんが、総理の真意をこの際、承りたいと思います。
 本年は、国連軍縮総会の年であります。核軍拡競争をいかにしてストップし、緊張緩和を実現するかが最大の国際的課題であります。この問題について、わが国は傍観者的であったり他国追随ではなく、積極的なイニシアチブをとることが必要だと思います。総理、あなたが率先してアジア・太平洋首脳会談を提唱してはいかがですか。
 さらに、「核軍縮・平和研究機構」といった世界の権威者を集めたシンクタンクをわが国に設置するよう提唱してはいかがなものでしょうか。総理の御所見を承りたいと思います。
 次に、内政問題についてお伺いします。
 わが党は、五十六年度経済運営について、所得税減税による民間活力の維持を強調したにもかかわらず、政府は一兆四千億円にも上る大幅増税を行い、当初の目標とは全くうらはらに、輸出中心の低成長を招いています。このことは勤労者の可処分所得を停滞させ、消費支出を抑制し、ひいては中小企業の活力を奪い、税収は伸び悩むといった日本経済の悪循環を引き起こしつつあります。五十七年度も同じ轍を踏もうとしています。
 そこで総理にお伺いします。
 この際、総理がたびたび述べておられる「財政再建が先決で減税ができる余裕がない」という発想を根本的に改めて、「内需拡大によるわが国経済の発展と国民生活の安定」を求める発想に立ち、内需拡大の柱を所得税の減税、住民税の減税とすべきであると思うのですが、いかがでしょう。
 重ねて申し上げますが、政府の方針で推移するなら、減税はしないし、景気は低迷し、財政再建もできないという八方ふさがりに陥るばかりであり、結果は国際経済紛争を拡大する道につながるものと思います。わが国が世界の平和安定に貢献する道は、国際経済において、まず日本自身が経済紛争の種を事前に摘み取る努力を重ねることであり、そのためには輸出中心の経済成長を内需中心の適正成長に転換することであり、所得税減税は勇断をもって実行しなければならない最重要課題であると確信します。総理の決断を促したいのであります。
 次に、事業所得者の必要経費は毎年、物価上昇に応じて改善されるにもかかわらず、給与所得者の必要経費に相当する給与所得控除は、五十二年以降据え置かれております。これはまさに重大であります。この不公平をどうするおつもりか。
 次に、五十六年度に三千七百五十億円の赤字国債の追加発行を行い、五十七年度予算においても、当初の目標であった一兆八千三百億円の赤字国債減額が一兆五千六百億円にとどまっております。このことは総理の公約に反するものと思うが、いかがですか。
 次に、政府は来年度経済見通しを五・二%の実質成長としていますが、これを実現するための手段は何も用意されておりません。どのような方策をとるのかお伺いいたします。
 次に、行政改革についてお伺いします。
 民社党は、昨年暮れの党首会談において、今後五年間で約四万五千人の国家公務員の実質削減、第二地方交付税の導入による公共事業費の節約合理化、地方出先機関の原則的廃止、国鉄の抜本的合理化等の行革についての具体的提言とともに、五十七年度予算編成に対しても幾つかの要求を行ってまいりました。総理はこれをどのように受けとめたのか。また、総理は行革に取り組む姿勢が昨年の「政治生命をかける」といった態度から後退したような印象を与えているが、本格答申を前に「増税なき行革」についての決意を国民の前に明らかにされたい。
 次に、確実にかつ急速に到来しつつある高齢化社会に備えた福祉政策のあり方について質問します。
 わが党が、行財政のむだを徹底して排除し、行政機構を簡素合理化せよと主張している最大の理由は、高齢化社会に伴う福祉充実への重点的財源確保を図る足がかりとするためであります。しかるに、いまの実態は高齢化社会のビジョンが不明確なまま、財政再建の名のもとに年金支給時期の繰り下げなど福祉の無原則な後退が図られております。これから高齢化社会を迎えるに当たって、どのような福祉のあり方がよいのか。たとえば、これまでの制度を抜本的に改めて、新たな日本型福祉政策を創造するなど、国民とともにその合意を形成する時期にあると思うのだが、この際、これからの福祉政策についての展望をお示し願いたい。
 政府は、すでにあらゆる面において行き詰まっている新経済社会七カ年計画を廃止し、高齢者福祉計画を中心に据えた新たな経済社会計画を策定すべきと思うが、総理並びに厚生大臣の見解をお伺いします。
 次に、貿易摩擦問題について伺います。
 わが国の輸出額が自由世界全体の八%を占め、昨年一年間で対米黒字百三十四億ドル、対EC百三億ドルの黒字を計上している今日、この問題は国際経済の最重要課題になっています。ために日米間にはかつてない相互不信関係を招来し、今日では危機的状態にまで発展しております。この状態を打解するための具体的施策をお聞かせ願いたい。
 また、政府が昨年十二月に発表した対外経済対策は、具体的にどのように実行に移すのか。現在二十七品目ある残存輸入制限品目はいつまでにその緩和を図るのか、また、どのような品目を考えておられるのか。なお、関税率の引き下げについては新たな提案を行う決意があるのか。これらの問題はかかって総理のリーダーシップにあると思います。総理の御答弁をお願いいたします。
 次に、教育問題についてお尋ねします。
 教育は青少年の心を豊かにし、次代の担い手としての使命、自覚及び責任を持った人間として育てることにその目的があると思います。しかし、現状は、知識の詰め込みと激しい進学競争の中で、多くの青少年は心身をむだにすり減らし、一方、校内暴力など青少年非行の増大というまことに憂うべき事態になっております。
 この原因は、第一に、知識や技術を教える教育はあっても、人間そのもの、人格そのものを築くことに対する教育の指針を欠いたこと、第二は、民主主義と自由をはき違えた教育が行われていることであります。一人一人を大事にする教育は自分のみを大事にする教育に置きかえられ、家庭、社会、国家など自分以外のものに対する感謝の気持ちを忘れさせ、権利の主張に偏した教育となっています。さらに、子供一人一人の個人差、能力差に関係なく同じ教育内容を押しつけ、理解のいかんにかかわらず自動的に進級する平等の意味をはき違えた教育が行われているところに問題があります。
 わが党は、このような観点に立ち、教育の原点に戻って、現憲法及び教育基本法を堅持し発展させる立場から、これまでの教育の見直しと今後のよりよき教育を求めて「教育憲章」の制定を提唱しております。文部大臣はいかがお考えでしょうか、お伺いいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 次に、政治倫理の確立と金権腐敗の根絶についてお尋ねします。
 民主主義政治を発展させるためには、政治の強いリーダーシップと国民の政治に対する信頼が不可欠の条件であります。そのためには政治倫理の確立と金権腐敗の根絶を図らなければなりません。いまこそ「公開・参加・責任の国民に開かれた政治」、「清潔な政治」の実現のため全力を尽くすときであると思います。このため、これまでもしばしば国会内で論議が交わされ、総理もまた就任直後は政治倫理の確立を緊急課題の第一に掲げ、倫理委員会設置に意欲を見せておられましたが、自後しりすぼみになっております。ロッキード裁判が進み、国民が政治に対する疑念を増大させている今日、総理は政治倫理確立についてどのように対処するのか、その所信を伺わせていただきたい。
 最後に、参議院全国区制度について申し上げます。
 総理、申すまでもなく、選挙制度なるものは議会制度の根幹にかかわる最も重要な、いわば土俵づくりの問題であり、しかも主権在民の民主政治にあっては、選挙制度の変更は、選ばれる側の都合よりも選ぶ側、すなわち国民の意思が十分に反映されなければならない性格のものと思います。
 総理は、さきの施政方針演説の中で「議会制民主主義の進展を図るため参議院全国区制を改革しなければならない」と申されたのでありますが、これはどういうことを言っておられるのか全くわかりません。現行の全国区制というものは議会制民主主義にもとるものとお考えなのかどうか、お伺いいたします。
 仮にこの通常国会で多数をもって本法案の成立を図るとしたならば、国民は全くかやの外に置かれ、国民の生の声を全く聞くこともなく、国民不在の中で手前勝手な選挙制度を国民に押しつけることになり、これはまさに議会制民主主義を損なうこととなり、国民の政治に対する不信はさらに拡大するのではないかと恐れるものであります。
 わが党は公明党とともに、自民党に対して、全国区制改革については自民党の単独の議員立法を審議するやり方を改め、各党が案を持ち寄り、相互に検討を加え、なお第三者機関である審議会に諮問を行うとか、国民の生の声を反映させるために公聴会の開催や参考人による意見聴取等、慎重な審議の進め方を具体的に提案したのでありますが、これは拒否されるところとなっております。
 さきにも申したように、議会政治の基本にかかわる選挙制度の改革を、審議会を持つこともなく、一党による議員立法で多数をもって押し通す、このような審議のあり方が許されてよいものでしょうか。参議院の基本的あり方をも変革しかねない選挙制度の改革を、なぜそんなにあわてて強引にやろうとなさるのか、私は理解に苦しむものであります。総理の率直なお考えをお聞かせいただきたい。
 なお、自民党案に対して具体的に問題点を指摘します。
 一、従来わが国の選挙は、投票用紙に候補者の氏名を書くことを原則とし、これが定着しているわけだが、全国区に限って政党名を記載させる投票制度が導入された場合、有権者の理解と共感が得られるだろうか。
 二、欧州では、政党は明確に憲法上の機関であり、政党法あるいは倫理規範もそれなりに確立されております。これに引きかえ、わが国には政党法もなく、まして政策が金で売買されるがごとき汚職が絶えない未成熟な政党政治体制にあります。したがって、政党本位の選挙をするのであれば、政党法の制定、政治資金の規制の徹底化などが先行されなければなりません。これをおやりになるのか。
 三、衆議院が議席数による政党政治の権力の府であるのに対して、参議院はこれに対してチェック・アンド・バランス機能を持つ良識の府であることをもってわが国の二院制は成り立っております。このとき、参議院に対して政党選挙を強要し、より政党化を強めることは本来の参議院の機能を失わせる結果とならないか。
 四、現在の全国区制度は小会派及び無所属候補に対して開かれた門であります。これを閉ざすことは、価値観の多様化とともに進んできた多党化と参議院の本来の機能をつぶすことになり、国民の意向に背を向けることになります。かつ憲法違反になると思うが、どうか。
 五、拘束名簿をどのように作成しようとするのか。当選順位は本来有権者が決定するものであります。それを有権者にかわって政党が決めることが果たして許されるものであろうか。有権者から候補者を選ぶ権利を奪うことは憲法に違反しないか。
 選挙制度は国民のものであります。国民は、参議院の衆議院化、つまり政党化が参議院の第二院としての本来の機能を低下させるものであるとの批判の声を起こしております。自民党の改革案なるものは、この国民の意向に逆行するものであり、議会制民主主義を根底から覆すことにつながります。まして、参議院ではここ数年、議長のもとに参議院改革協議会を持って、全党が国民の声を受けて参議院の本来のあるべき姿を模索しております。参議院の選挙制度を変えるとするなら、参議院改革協議会の結論に合致する方向の中からこれを行わなければならないと思います。総理、いかがなものでしょう。
 以上、率直な御答弁をお聞きいたしまして、私の代表質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(鈴木善幸君) 藤井議員にお答えいたします。
 まず、国際社会におけるわが国の比重の高まりなどに触れつつ、内外の政策課題に関する私の基本的認識についてお尋ねがございました。
 今回の施政方針演説におきまして、特に緊急な課題として行財政改革の推進と国際的な経済摩擦の解決を挙げました。また、内需の振興と高齢化社会への対応などを強調いたしました。これらに関する基本認識におきまして、私は藤井議員と思いをほぼ同じゅうするものであります。
 私は、わが国が世界第二位の経済大国になった今日、特に国際経済面におきまして、これまでの受動的な利益の享受者の立場から、能動的な役割りを積極的に果たしていく立場へと変化していくことがとりわけ緊要であると考えております。
 次に、防衛の問題につきましては、施政方針演説でも述べたとおり、今日自由主義国の有力な一員としてのわが国が、みずからの国はまずみずからの手で守るとの決意のもとに、憲法の範囲内で必要最小限度の防衛力の整備を着実に進めることは、わが国に課せられた当然の責務であると考えます。このため、私は、日米安全保障体制を基調とし、専守防衛に徹し、近隣諸国に軍事的脅威を与えることなく、かつ非核三原則を堅持しつつ、防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く到達させるよう、自主的な判断のもとに他の諸施策との調和を勘案しながら着実な防衛力整備に努めているところであります。
 私のこのような基本的考え方は、内閣発足以来一貫しているところでありますが、国の防衛は国民の理解と支持によって裏づけされていることが何よりも必要であり、このため、このような私の基本的考え方について今後とも機会あるごとに広く国民に説明し、防衛問題について国民的コンセンサスが形成されるよう努力してまいる所存であります。
 先般、私が伊藤防衛庁長官に指示したことに関係いたしましての御発言がありましたが、その内容は次のようなものでありますので、御理解を願いたいのであります。
 最近、国民の間に防衛問題、安全保障の問題について関心が高まりつつあるが、わが国は地勢的に見ても、国境線を陸続きに持つところの大陸国家ではなく、四面海をめぐらす海洋国家である。また、平和憲法のもとで専守防衛に徹するわが国として、これにふさわしい防衛体制を考えることは当然である。このような観点から今後防衛計画の大綱を達成していくに当たって、専門家による研究をさらに深め、侵略の企図を未然に防止する抑止力の一層の向上を図るよう努めてもらいたい、これが私が伊藤防衛庁長官に指示したところでございます。御理解を願います。
 次に、軍縮の問題についてお答えをいたします。
 軍備競争の傾向を是正し、軍縮、軍備管理に努力すべきことは、御指摘のとおり今日世界が挙げて取り組むべき課題であります。わが国は、従来より平和憲法のもとで非核三原則を堅持し、軍事大国とはならず、その持てる力を世界の平和と繁栄のために用いることを国の基本方針としており、来るべき第二回国連軍縮特別総会に際しては、私自身これに出席して、平和国家としての立場から核軍縮を中心とした軍縮の促進を強く訴えたいと考えております。
 なお、アジア・太平洋サミットの開催につきましては、昨日も佐々木委員長より同様の御提言がございましたが、貴重な御意見として承りました。現在のアジア・太平洋地域の情勢に照らして見れば、かかるサミットを意義あらしめるような素地は遺憾ながらまだ醸成されていないと考えますが、今後とも国際情勢、アジア・太平洋地域の情勢の推移を慎重に見きわめながら、その可能性について探求してまいりたいと考えております。
 次に、経済、財政問題にお答えいたします。
 まず、日本経済は輸出中心の低成長という悪循環を引き起こしつつあるのではないかとのお尋ねでありますが、わが国の景気の現状は、在庫調整もほぼ終わり、生産、出荷も基調としては増加傾向にあるなど、そのテンポは緩やかであるものの、総じて見れば回復過程にございます。一方、五十六年度のわが国経済が当初見通しより外需依存型の成長になっていることは御指摘のとおりでありますが、これにはアメリカの高金利を背景に予想以上の円安傾向になったことが大きく影響したのであります。しかし、最近では輸出の伸びの鈍化、輸入の下げどまりなどが見られるに至っていることは御存じのとおりであります。今後におきましては、住宅建設、中小企業対策など民間活力が最大限に発揮される環境を整えるとともに、引き続き金融政策の適切かつ機動的な運営を図るなどきめ細かな経済運営を行い、国内民間需要を中心とした景気の維持拡大を図っていく考えであります。
 内需の拡大のため所得減税を行えとの御意見でありますが、現下の財政事情、及びわが国の個人所得に対する所得税負担の割合が国際的に見てなお低い水準にあることから、所得税減税についてはこれを見合わせることといたしました。
 五十六年度補正予算における三千七百五十億円の特例公債追加発行は、物価の予想以上の安定などによる税収減に伴う歳入不足を補てんするためのものであり、まことにやむを得ないものであります。また、五十七年度の公債減額がすべて特例公債とならなかったのは、一つは各省庁がゼロシーリングの枠内に要求を押し込むに当たって、施設費等の建設公債発行対象経費を削減してきたこと、第二は公共事業関係費を前年度と同額とした一方、これに充てる特定財源収入の増加が見込まれたことの二つの理由により、投資部門の財源不足が少なくなり、建設公債が必然的に減少したことなどによるものでありまして、御了承をいただきたいと存じます。しかしながら、これによって財政再建の基本路線はいささかも変わるものではなく、今後とも、その実現に向けて最大限の努力を払う所存でございます。
 御承知のとおり、政府は、行政を抜本的に見直し、新しい時代にふさわしいものとするとともに、国民一般の要請に即して行財政の対応力を回復するため、行政改革を当面する最重要な課題の一つとして位置づけ、その推進に取り組んできております。すでに昨年七月の臨時行政調査会の第一次答申を受けて所要の施策を推進中であり、当面法的措置を講ずべき事項について、さきの臨時国会において行革関連特例法の成立を見たほか、昭和五十七年度予算編成過程においても各般の措置を講じ、極力その実現を図っております。
 政府としては、今後も臨時行政調査会の審議の動向や国会審議において表明された御意見その他、もちろん民社党を含めて各界各方面からのさまざまな御提言等をも適切に踏まえながら、できるだけ国民に大きな負担を強いないような形で財政再建を推進するとともに、行政の合理化、効率化を推進する方針であり、改革の基本的課題に関する政府としての施策の検討及び立案推進に一層努力してまいりたいと考えております。
 新経済社会七カ年計画についてでありますが、現行の新経済社会七カ年計画においては、人口の高齢化を含めた社会的変動などの背景を踏まえ、経済運営の基本的方向の一つとして新しい日本型福祉社会の実現を掲げております。政府としては、こうした基本的考え方に沿って、雇用、社会保障などの面で各般の施策を推進しているところであります。したがって、御指摘のような高齢者福祉計画を中心に据えた新たな経済社会計画を策定することは、現段階では考えておりません。
 次に、国際経済摩擦の解消についての御質問でありますが、御指摘のとおり当面の最重要課題であります。
 このため、政府は昨年十二月十六日の経済対策閣僚会議において、市場開放対策、輸入促進対策、輸出対策など五項目から成る対外経済対策を決定し、現在その推進に努めているところであります。中でも、輸入制限の緩和については、諸外国の関心品目に留意しつつ、残存輸入制限について適宜見直しを行い、その結果を経済対策閣僚会議に報告することになっております。また、関税率の引き下げについては、すでに東京ラウンド合意に基づく関税率の段階的引き下げの二年分前倒しを決定したところであります。なお、明日予定している経済対策閣僚会議において、輸入検査手続等の改善措置を決定することといたしております。
 政治倫理の確立につきましては、すでにこの壇上からもしばしば申し上げましたとおり、それが政治への国民の信頼確保のための基盤であり原点であるという観点から、私は一歩一歩取り組んでまいりました。今後におきましても、今回の施政方針演説で強調いたしましたとおり、政治と行政のすべての面で国民の不信を招くことのないよう、政治倫理の一層の確立に努めてまいります。倫理委員会の設置及び議院証言法の検討の問題につきましても、各党各会派の協議の速やかな進展を希望いたしております。
 最後に、参議院全国区制の改革案に関し、改正の趣旨及び具体的な疑問点について詳細な御意見がございました。
 まず、改正する趣旨についてであります。現行の参議院全国区制については、これまで各方面から多くの問題点が指摘されてきたことは御案内のとおりであります。これは単に金や労力の問題にとどまらず、有権者にとっても候補者の選択がきわめて困難であることなどの点を十分考慮して、改正案が取りまとめられたものと承知いたしております。
 次に、具体的問題についてでありますが、まず投票の仕組みについて候補者名を書いて投票する限りは現行制度に伴う問題点の解決は困難でありますし、また私は、御意見のように現に国政に参画されている各党が未成熟であるとは決して考えておりません。
 政党法、政治資金規正法を先行させよという主張については、事柄の性格上、なお慎重に御論議を願う必要がありますので、当面の緊急課題として全国区制の改正を取り上げたものであります。
 そのほか、改正案は、御質問の参議院の機能、役割りの問題、憲法問題、地方区候補者とのかかわりなどについても慎重な検討を重ねた上で取りまとめられたものと伺っておりますが、法案は政府提案ではございませんので、各党間で論議を詰めていただければ幸いと存じます。
 なお、改正案については、昨年来、各党にも御説明し、御検討を願ってきたところでありますので、今国会においてぜひとも精力的に御審議いただき、その早期改善が実現するよう心から念願しております。
 以上お答えいたしましたが、残余の問題につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(河本敏夫君) これからの経済運営をどう進めるのか、こういう御質問でございますが、まずわが国を取り巻く経済環境について申し上げますと、第二次石油危機が起こりましてからようやく三年目を迎えまして、石油の需給関係は小康状態になっております。また、世界経済もことしの後半からようやく回復に向かうであろう、こういう見通しが有力になってきております。こういう世界経済の状態を背景といたしまして、内需中心の経済成長ができますようなそういう経済運営を進めてまいりたいと考えております。
 まず第一に、物価の安定を進めてまいりたいと思います。物価の安定はすべての政策に最優先させたいと考えております。先ほど金融政策につきましては総理からもお述べになりましたが、民間の設備投資が促進されるようなそういう政策を、金融政策も含めまして進めてまいりたいと考えております。なお、住宅政策につきましては、積極的にこれに取り組んでまいる所存でございます。
 以上のような政策を中心といたしまして内需拡大の方針を進めてまいりますが、公共事業につきましては、五十七年度予算におきましてある程度の量を確保しておりますが、なお予算が国会において成立をいたしました暁におきまして、これを経済の実情に合わせまして機動的に運営をすることにいたしております。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えをいたします。
 給与所得控除が据え置かれておる、一方、自営業者、農業所得者は物価が上がれば経費が上がる、したがって給与所得控除を据え置いておるのは不公平でないか、こういうような意味に私はとったわけでございます。ところが、給与所得控除というのは、一番下の五十万円というようなことでございますが、これはやはり給与が上がれば控除額は上がるわけであります。五十万円の収入しかないのは五十万円の控除ですから、これは一〇〇%で所得はゼロ、しかし百万円の収入の人は、これは確かに五十万円ですから五〇%の控除割合。三百万円になると、百五万円控除しますから控除割合は三五%。五百万円の人は百四十五万円で二九%。一千万円の収入は二百五万円控除します、したがって二〇・五%。一千万円を超えますと控除率がだんだん下がっていくということで、そういう意味から高額の人は非常に重税感がふえていると言われるのも事実でございます。しかしながら、そのように給与所得控除は別に事業所得と比べて経費率が不公正であるとは考えておりません。(拍手)
   〔国務大臣森下元晴君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(森下元晴君) 藤井議員に二点お答えをしたいと思います。
 高齢化社会における福祉のあり方につきましては、高齢化社会を控え、個人の自立自助や、家庭、地域社会での助け合いの精神のもとに国民生活の基礎を支えるという社会保障の役割りが適切に果たせるようにしてまいりたいと存じております。その際、国民の将来の負担をも考慮しながら社会保障の効率化を進めるとともに、真に福祉を必要とする人々に対しましては重点的に福祉の充実を図ってまいりたいと思います。
 また、高齢者福祉計画を中心とした新たな経済社会計画の策定につきましては、先ほど総理が答弁されたとおりでありますが、私といたしましては、今後とも年金、医療、社会福祉の各分野について、中長期的展望を明らかにできるよう努力してまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣小川平二君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(小川平二君) お答えいたします。
 わが国の学校教育が、今日、青少年非行あるいは受験競争等々の問題を抱えておりますことは、ただいま御指摘のあったとおりでございます。これを改めて、知・徳・体の調和のとれた人間性豊かな児童生徒を育成することが大きな課題でございますから、文部省としては、新しい学習指導要領の趣旨を生かした学校教育の充実、教師の資質と意欲の向上、生徒指導あるいは道徳教育の充実など、文教施策の一層の推進に努力しているところであります。
 教育のよりどころとして教育憲章を制定してはどうかとの御意見につきましては、一つの御提案としてかねてから承知をいたしておりますが、文部省としては、憲法及び教育基本法において示されている教育の理念に基づいて、ただいま申し上げましたような文教の諸施策を進めているところでございます。したがいまして、これに加えてさらに教育憲章を考えるということにつきましては、慎重に対処すべき問題だと考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○副議長(秋山長造君) 片岡勝治君。
   〔片岡勝治君登壇、拍手〕
#22
○片岡勝治君 私は、日本社会党を代表して、当面の問題について質問いたします。
 さて、まず初めに、行政改革についてその基本的なあり方を改めてここでただしたいと思います。
 そもそも今回の行革は、長期の誤った政策の集積である財政危機であるのに、その責任から逃れ、赤字の穴埋めをやるには行革の名を付しておかなければ国民がついてこないと見て始められたと見られるわけであります。したがって、今回の行革は、このように政治的なるがゆえに、どの部分が行革なのか、まさに方向音痴に陥っていると思うのです。いまここで従来の行きがかりを捨て、国民のための、国民にわかる行革に転換しなければ、その実効を上げることは不可能でありましよう。
 そこで、第一に申し上げたいことは、政策の選択や財政のやりくりなどはおよそ行革とは無縁のものだということであります。よって、この部分を除いたもので、これまで実施したと誇らしげに言う行革について、これはむだを省いたもの、これは効率を上げたもの等、分類をして御報告をお願いをいたしたいと思うわけであります。
 第二の問題は、行革が効率をねらいとするのは当然であります。しかし、福祉政策の後退は実は逆行であります。国民の福祉のニーズの公共的提供は、ノーマライゼーションという新たな考えも加わりまして、その公正と効率化を図れる最も合理的なシステムだからです。政府や臨調の行革がまずとこの切り捨てを図ることは、行政の効率化を否定した行革の自己矛盾と言えるわけです。
 第三は、増税なき行革の問題ですが、すでに触れられましたので、この点は省略をいたします。
 第四は、むだのない効率的な行政の名によって民主的ルールを削り取ることが行革なのですか。国会も、公共料金や、さきの行革法などで次々と審議の対象が狭められました。議会がむだで非効率的な機構と見ることに末恐ろしさを感じます。各種審議会も、政府や行政みずからがっくり、イエスマンだけを集め、行政の隠れみのにするから整理の対象にされるのです。民主的ルールこそ真の行革の推進力ではありませんか。政府の見解を承りたいと思います。
 次に、五十七年度重点施策とした住宅問題について触れてみます。
 日本の住宅事情は、四〇%の国民が困窮し不満を持っています。わが党はかねがね、住宅保障法による計画的な庶民住宅の大量建設などを提唱してきました。しかし現実は、ついにはウサギ小屋とささやかれてしまっております。本来、住宅政策は国民生活安定向上の基本政策であって、不況だから景気浮揚の手段とするところに欠陥政治を見るのです。
 今日、国民は実質賃金の低下等によって、住宅取得能力の余裕度が極度に低下しております。しかも、政府の進めてきた持ち家住宅は土地や建設費の高騰から高ねの花であり、またローン地獄にあえいでいるのです。ですから、五十五年の住宅建設は百二十五万戸で、前年対比一五%減、四十八年ピーク時の実に六五%まで落ち込み、うち賃貸住宅はそのわずか四分の一、五十六年度はさらに落ち込みが確実になっております。こうした現実を踏まえますれば、住宅政策の根本見直しと条件整備があってしかるべきであります。
 そこで、次の諸点について見解をただしたい。
 第一は、これまでの持ち家住宅から賃貸重点、特に公共賃貸の大量建設に転換すべきである。
 第二には、公共賃貸住宅の質を向上させ、西欧先進国並みに魅力あるものにすべきである。
 第三に、持ち家政策による公庫借り入れ一千万円には、毎月国から利子補給として一万三千円の補助がある計算になっているわけであります。したがって、これの見合いとして、低所得者である賃借人に公正を期すためにも補助制度をつくるべきであると思いますが、これらについての見解を承りたいと思います。
 第四は宅地問題。いま政府や関係省庁筋では、来年度は甘いあめをなめるか、厳しい税のむちを受けるか両面で対応するからうまくいくであろうとしきりに言っております。この言葉に見られるような権力のかさにかかった態度で、どうして土地の供給が増大するでありましょう。土地高騰が続く限り、こうした手段では実効が上がらないのは、これまでの経験で明らかであります。抜本対策を別に立てるべきであります。それより晩も当面、公共機関による賃貸制度への決断、遊休未利用地、大企業の買い占め土地の提供、都市再開発補助に対応した義務的賃貸住宅の建設等をまず積極的に推し進め、住宅ストックの飛躍を図らなければなりません。
 以上の諸施策が並行的に進まなければ、政府の住宅政策は庶民には届かず、一部の高額所得者のためのものとなる程度で、その目標の建設戸数にはとうてい達しないでしょう。見解を求めます。
 次に環境問題です。
 わが国の大気、水質、騒音などの典型七公害は、不況にも影響されて汚染進行の気配を見せております。すなわち、五十五年度調査でも二酸化硫黄、二酸化窒素も大都市では高濃度が続き、一部では急上昇、加えてばいじん汚染が急激に進行しております。また、全国の主要道路沿いでは、二酸化窒素環境基準達成率が前年より八%も低下をいたしております。こうした状況が照葉樹林や野生動物を激減させていると伝えております。国際的にも、世界環境白書が指摘しているように、大気汚染が気象、農林業に影響し、広域的に樹木の成長をおくらせ、あるいは消失させ、生物の激減を警告いたしております。
 さて、わが国の公害対策は、まず住民が立ち上がり、自治体がこれを受けて条例化し、最後に国が法律や基準をつくるというパターンでした。今日でもアセスメント法あるいは最近の空き缶対策のように、財界癒着による消極性が目立っております。これでは両面から環境庁スクラップ論が出るのは当然であります。事態は環境行政を一層重くしていることから、環境庁もその姿勢を正すとともに、公害防止、自然保護という政策から快適な環境の創造に転換し、がんばっていかなければなりません。
 よって、第一に、環境対策の行政姿勢と、これらの新たな課題についてどう対応されるのか。第二に、汚染対策は濃度規制から総量規制を重点とする対策、総量管理システムを確立、転換しなければなりません。その基準、地域設定などの見直しをどう進めるか、お示し願いたい。
 次に、新しい領域たるアメニティーについて所見を伺いたい。
 たとえば、林野行政はいままで経済性、企業性のみに立ってきましたが、森林の持つ環境のはかり知れない価値を考えれば、ここにその管理や経営の重点を変えなければならぬと思います。なお、日本は木材需要の七〇%を主として東南アジアより輸入し、ためにその地域の森林が半減していると言われます。この森林再生は日本の義務、この点の海外援助を図るべきであると思うが、いかがでしょうか。これらに対する見解を求めたいと思います。
 また、最近ディーゼル車の排気ガスに強い発がん性物質のあることが確認されました。沿線住民、特に高速道路沿線では深夜の騒音あるいは振動の上にこの排気ガスではたまりません。これは運転手にもショックです。緊急対策を強く望むとともに、月に一日ぐらい高速道路をジョギング、散歩などに開放し、経済性のみでなく公共的住民サービスを図り、住民との共存を図る、そういう発想の転換が必要なのではないでしょうか。
 次に、教育政策を取り上げましょう。
 行革の名による教育費切り捨てが端的にあらわれました。四十人学級の繰り延べ、学校建設費一一%カット、増税なき行革がここに変形して学費値上げとなっています。すなわち、国立大学授業料二〇%増の二十一万円、私学助成は前年同額、当然増二百五十億荘から実質削減、ために学費など年十万円程度の負担増が予想されております。しかも奨学金は改善ゼロ、踏んだりけったりたたいたりの冷たい仕打ちであります。実質所得マイナスの御時世でありますから、せめて当分学費の値上げの凍結、あるいは奨学金の改善を図るなどの心配りがなぜできないのか。
 教科書無償も予算編成期になると揺さぶられ、さまざまな駆け引きに利用されております。教科書無償はまさしく義務教育無償の象徴的政策であって、むだを省くという行革の対象になり得ぬ性格のものです。この点、明確な態度を表明されたい。
 教科書はまた数々の受難が続いております。政治権力の介入、政治干渉に行政も教科書会社も屈服してしまう体質、検定制度の変質から国定化、文部省高級官僚のゴルフ会員権事件、これらの裏には教科書会社の政治献金問題などなど、国民はやり切れない気持ちです。こんなことでどうして青少年の非行問題を語られますか。これら一連の事件がどうして生まれたのか、これを防止するには文部省としてどうすればいいのか、しかとお答えをいただきたい。
 最後に私は、平和の問題について改めて総理の所信をただしたいと思います。
 あなたは、昨年八月六日、広島平和記念式典で次のように誓われました。「私は、戦争と核兵器の脅威から人類を解放し、恒久平和と人類共存の道を開くため、たとえとのような困難があろうとも、さらに一層の努力を傾けてまいることをお誓いいたします」と。これは最高政治指導者たる首相の誓いであり、また、あなたの人柄からも私はこの言葉に偽りがあろうなどとは疑いたくありません。しかし、この言葉をよそに、いまの日本が軍事力増強最優先に針路をとっていることは確かです。しかも、それが米国の強い要求と、その核戦略体制の中にある事実も総理は否定なされますまい。総理の誓いとこの現実をどう判断したらいいのだろうか。
 ここで自衛隊幹部の一連の発言について、文民統制の機能していない事項に触れる予定でありましたが、すでにこの点につきましては質問で触れられておりますので省略し、次に移りたいと思います。
 昨年、防衛白書は愛国心をうたい上げました。突出した防衛予算が象徴する防衛力増強と、色濃くしてきた戦時体制下の路線に国民のコンセンサスを求めた白書の愛国心とは何かは、言わずもがなであります。では、政府の防衛力最優先政策を憂え、これを批判し、反対し、軍縮、反核の平和運動に立ち上がっている国民は非愛国者となるのですか。軍事力を背景に特定の道徳規範の強要を許すは、文民統制がなきも同然です。国防会議の議長としての首相はどうお考えですか。
 四年前、横浜での米軍機墜落事故で二人の子を亡くし、みずからも全身やけどを負い療養中の母、土志田和枝さんが三日前ついに亡くなりました。くやしい、でも生きたい、生きてもう一度子どもを産みたい、生きて皮膚を提供してくれた七十何人かに御恩返しがしたいとの希望を命綱として、心身の苦痛と闘ってきた若き母親でした。痛恨にたえません。
 この事件にはこんなこともありました。事故現場に飛来した自衛隊救援機は、燃え上がる住宅から火だるまになって飛び出してきた親や子供たちをよそ目に、パラシュート脱出の米軍パイロットだけを救い上げて空のかなたに消えていったのです。軍事行動から言えばこの非情な行為が通常なのかもしれません。この事故の原因も責任の所在もついに不明、賠償も不完全、四年の歳月を経て何一つ完全に解決したものはないのです。この事件のように、国民の犠牲だけが取り残されているわけであります。防衛白書で言う国を守るということや愛国心とは、このようなことにも耐えろというのでありましょうか。この悲しいてんまつでも基地撤去要求の理解ができないというのでしょうか。この際、鈴木総理大臣の率直なお気持ちをお聞きしたいと思います。
 いま教科書から原爆の図初め、戦争を忌み平和を求める人間の記録が次々と消されようとしております。余りにも悲惨だという。悲惨でない戦争があるのでしょうか。平和のとうとさを子供たちに語り継ぐのが教育であり、教科書であります。軍縮と反核を誓った鈴木さんに、こうした状況にも苦悩の影さえ見えないのは一体どうしたわけでありましよう。
 最後に、いま軍拡がにわかに声高となり、政財界を先頭に大きな旗が振られています。しかし、彼らはみずから銃をとろうとはしないし、また彼らの家族、ファミリーたちにも銃をとらせようとはしません。当然です。息子たちの二度とない人生を、むなしい戦争に追いやって終わらせたくないと思うは愛深き親心。なれば、人に銃をとれと旗を振りたもうな。息子に銃をとらせたくないと思う者は、人様の息子に銃をとれと軍拡の旗を振りたもうな。この言葉を鈴木首相並びにいま軍拡の旗を振っている方々に差し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(鈴木善幸君) 片岡議員にお答えいたします。
 まず、行政改革についてお尋ねがありました。
 私は、行政改革と財政再建とを不可分の関係にあるものとして把握し、表裏一体のものとして行財政の改革に取り組んできております。その際、財政を健全な姿に戻し、行政をその施策内容にまで踏み込んで抜本的に見直すことにより、時代の要請と国民一般の期待にこたえ得るよう行財政の対応力を回復することを基本課題と考えており、わが国行政の全般を通ずる総合的視点に立って、引き続き行財政の改革に全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
 私は、時代の要請と国民一般の要望に沿うように行政を運営するためには、不断の見直しを行う必要があると思います。行政改革の推進に当たっては、このような視点から行政全般にわたるいわば聖域なき見直しを進める必要があり、福祉もその例外ではございません。
 住宅政策についての御質問でありますが、政府は国民の居住水準の向上を図るため、第四期住宅建設五カ年計画に基づき、総合的、計画的な住宅対策を講じているところであります。昭和五十七年度においては、最近の住宅建設の動向にかんがみ、経済の安定的発展を確保し、国民生活の向上を図る観点から、公的住宅金融の拡充、土地住宅税制の改正などの諸施策を講ずることとしております。
 次に、わが国の環境汚染は、国、地方公共団体、国民の一体となった努力の結果、一時の危機的な状況に歯どめをかけることができたと考えておりますが、今後は御指摘のように、社会経済条件の変化に即しつつ、公害防止、自然保護から一歩進んで、快適な環境を創造していくことにも十分配慮する必要があると存じます。このため、私は、環境影響評価法案の早期成立を期するなど環境汚染の未然防止に十分意を用いながら、長期的、地球的視野のもとに快適で潤いのある環境の確保を目指してまいりたいと存じます。
 教育費負担の問題でありますが、昭和五十七年度においては、厳しい財政事情のもとにあって、文教予算についても臨時行政調査会第一次答申の趣旨を最大限に尊重しながら種々の節減合理化措置を講じておりますが、他方、教育の機会均等の確保などの見地から育英奨学事業の貸与人員の増加を図るなど、限られた財源の中できめ細かい配慮を行っております。
 義務教育教科書の無償給与制度については、昭和五十七年度予算においても存続することといたしておりますが、臨時行政調査会第一次答申において「廃止等を含め検討する」とされておりますので、さらに各界の意見に耳を傾けつつ、今後のあり方について検討してまいりたいと存じます。
 最後に、防衛に関連して愛国心や教科書について御意見がありました。
 愛国心の強調は特定の道徳規範を強要するものではないかとの疑念をお持ちのようでありますが、昨年の防衛白書では、愛国心とは何か、また国を守る心の重要性について記述しておりますが、御指摘のように特定の道徳規範を強要するというような意図に出たものではないことは申すまでもありません。
 なお、御指摘の昭和五十二年の横浜での米軍機墜落事故は大変痛ましい事故であり、先日亡くなられた林和枝さんに対し心から弔意を表し、御冥福をお祈り申し上げます。もとより、この種の事故はあってはならないのでありまして、この事故を重要な教訓として受けとめ、事故の再発防止について最善を尽くしてまいりたいと思います。
 教科書の記述について疑念を述べられましたが、学校教育においては児童生徒の知・徳・体の調和のとれた発達を目指し、平和的な国家及び社会の形成者として心身ともに健全な国民の育成を目的とするものであります。その中で軍縮問題や核兵器の脅威について理解させ、平和を確立する熱意や態度を育成していくことは重要であると考えております。
 以上お答えいたしましたが、残余の問題につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(中曽根康弘君) 第一の質問は、行革は福祉を犠牲にする口実ではないか、どの点でむだを省き効率化を行ったか、こういう質問でございます。
 現在、効率化を行い、むだを省き、また今度の予算等でも実行しているところは、第一に補助金、許認可、あるいは特殊法人等の整理統合の問題で、これは現にやり、またやっておるところです。あるいは人員につきましても、第六次の削減計画をやって五年間に四万四千八百八十六人減らしますが、本年度はその第一年としてこれも実行しておるところです。あるいは特殊法人の役員の削減、これも実行しております。あるいは地方公共団体の人員と給与の抑制、これも自治省が指導して、いま懸命にやっておるところでございます。これらのところを中心にしまして、いま懸命にむだを省く努力をしておるところです。
 第二に、福祉の要請にこたえることが公共性と公正さにこたえることではないか、こういう御質問で、福祉を犠牲にするなという御趣旨であると思いますが、行革につきましては、全体のバランスを考え、いわゆる聖域を考えておりません。しかし、今次の行革の一つの重点としましては、活力ある福祉社会の建設ということを大きく打ち出しておりまして、その点は重点化として取り上げておるところであります。
 具体的な例を申し上げますと、たとえば補助金にいたしましても、十四兆円余に及ぶ補助金の増加率を見ますと、五十六年度におきましては六千五百四十七億円前年度に対してふえておるわけです、四・七%です。それが五十七年度予算におきましては、前年度に対して二千五百九十一億円、一・八%増にとどめました。しかし、その増加額の九〇%近く、二千二百九十億円は、実に社会保障関係と文教、科学技術関係に充当しておる状態でございまして、やはり苦しい中でも社会福祉には重点が入っておるわけでございます。
 行政の中における民主的ルールを尊重せよという御議論は私も同感でございまして、たとえば中央集権をいかに是正するか、あるいは縦割り行政等をいかに直していくか等々について、いま臨調で懸命に調査をしておるところでございます。
 以上で終わります。(拍手)
   〔国務大臣始関伊平君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(始関伊平君) お答えいたします。
 まず第一に、住宅政策の抜本的な見直しと条件整備が必要ではないかというお尋ねでございますが、第四期住宅建設五カ年計画を的確に実施いたしますために、昭和五十七年度におきましては、住宅金融公庫の貸付限度額の引き上げ、それから融資枠の拡大などの公的住宅金融の充実によりまして取得能力を補完いたしますとともに、土地住宅税制の改正などによりまして宅地供給の円滑化を図ることといたしております。さらに、民間の金融機関による個人向け住宅金融の充実に努めるとともに、物価の安定その他的確な経済運営を図ることによりまして、住宅建設が促進されるものと期待をいたしておる次第でございます。
 住宅政策の中に入りまして、まず賃貸住宅を重点にして住宅政策を進めるべきではないかというお尋ねでございますが、国民の居住水準の向上を着実に図ってまいりますためには、国民の住宅に対する需要動向に即応して、いわゆる持ち家、借家それぞれにふさわしい役割りがあると考えており、そのため必要な対策を適切に講じていきたいと考えております。
 なおまた、公共賃貸住宅の質の向上についても御指摘がございました。新規に建設する公共賃貸住宅については、逐次規模の拡大を図っておりますし、また、既設の公共賃貸住宅につきましても、建てかえ、増改築等によりまして、その改善を進めているところでございます。
 それから低所得者の住宅対策といたしまして、賃借人に補助制度を創設したらどうかというような御意見でございましたが、建設省といたしましては、適正な入居管理と住居費負担とを的確に結びつけるという観点から公共賃貸住宅の供給を行っておるのでございまして、また別に民間賃貸住宅につきましても、利子補給や低利融資等によりまして良質で安い家賃の住宅の供給に努めているところでございます。方法は違いますが、御趣旨に沿うような施策を進めておるということを申しておきたいと思います。
 それから宅地問題でございますが、これは土地税制の改正等の政策では実効が上がらないのではないかという御指摘でございます。
 政府といたしましては、従来から各般にわたる宅地対策の推進に努めてきたところでありまして、土地税制につきましても、関連諸施策の重要な一環として所要の改善を図ろうとしておるのでございます。今後とも土地税制の改善とあわせて、市街化区域内農地の宅地化、それから土地区画整理等による計画的な宅地開発、関連公共公益施設の整備、さらに線引きの見直しと開発許可の適切な運用による宅地開発、また再開発による土地の有効利用等々の諸施策を総合的に推進いたしまして、これによって宅地の供給を円滑にしていきたい、かように考えておる次第でございます。
 また、宅地問題の抜本的対策の一つとして、公共機関による土地の賃貸制度の創設等によって宅地供給の増大を図るべきではないかという御提案でございますが、これらの御提案の施策には種々の問題もありますが、宅地供給施策の、さっき申し上げましたような多角的な土地供給施策の総合的推進の中で対処してまいりたいと存じます。
 それから都市再開発をやる場合に、賃貸住宅をつくることを義務的にやらしたらどうかという御指摘もございましたが、市街地再開発事業の実施に際しましては、住宅供給の促進に努めていることはもちろんでございまして、その際、賃貸住宅については地域の住宅需要の動向等を勘案し、その特性に即応して供給されるよう、都市計画法などに準拠いたしまして指導いたしておるところでございます。
 なお最後に、高速道路をジョギング等に提供してはどうかという御提言がございました。
 供用中の高速道路をしばらくでもとめますと、物資輸送の混乱や一般道路の混雑増加などがございまして、社会的な影響を考えると、これを実現することは困難ではなかろうかと考えております。しかし、高速道路の開通の前に住民の方々との交流を深めるべくマラソン大会等を開催した例もあるのでございまして、要望があれば、当省といたしましても積極的に考えていく所存でございます。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣原文兵衛君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(原文兵衛君) お答えいたします。
 環境問題に対する御質問は四点になると思いますが、第一の環境行政の基本姿勢につきましては、先ほど総理から御答弁がありましたので御了承願います。
 次に、濃度規制から総量規制を重点とする対策への転換についてでありますが、大気汚染及び水質汚濁の防止のための規制手法としましては、まず濃度規制に始まり、それのみによっては環境基準の確保が困難な大都市等の地域を対象として、総量規制が導入されてきております。総量規制は、言うまでもなく、工場等からの汚染物質の排出総量を計画的に削減するものでありまして、環境汚染の防止を実効あるものとするため、地域の汚染状況に応じ必要な地域を指定し、適切なレベルの基準を定め、かつその適否についても常時フォローしているところであります。
 次に、林野管理についてであります。
 森林は、自然環境の保全上も重要な機能を果たしております。これを保全していくことが重要なことであることは言うまでもございません。したがって、その管理につきましても、自然環境保全の観点から関係省庁と十分な調整を図ってまいりたいと思っております。
 また、東南アジアの森林の問題につきましても、環境庁は地球環境の保全という観点からも大きな関心を有しております。関係方面に対して理解と協力を求めるよう努力をしてまいりたいと思います。
 次に、ディーゼル車の排出ガスについてであります。
 最近、ディーゼル車が増加傾向にあること及びディーゼル排出ガスと発がん性物質との関連が注目されているところから、現在ディーゼル排出ガスの環境影響につきまして調査研究を行っているところでございます。それらをも踏まえ、国民の健康の保護を図るため、今後とも自動車公害対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣小川平二君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(小川平二君) お答えいたします。
 教育費の負担につきましては、かねてから教育の機会均等の確保並びに質的向上を図るという観点から、さまざまな配慮をいたしてまいっております。
 国立大学の授業料は、従来から社会経済情勢の変化に応じて改定を行ってきておりまするが、五十七年度におきましては、諸般の情勢を総合的に勘案して、これを改定することとしたものであります。授業料の改定に際しましては、学生の修学援助のため授業料免除枠を拡大いたしますとともに、教育研究特別経費、厚生補導経費など、学生関係の経費について重点的に配慮をいたしております。
 私立大学等の経常費補助につきましては、臨時行政調査会の第一次答申もあり、前年度と同額の二千八百三十五億円を計上いたしたところであります。人件費や物件費の上昇に伴い私立大学等の経常的経費が増加することも考えられますが、今後とも私学側が自主的努力を高めるようさらに効率的な配分方法につきまして鋭意検討改善を加えますとともに、他方、私学側におきましても、従前以上に自主的に経営努力を行い、極力、教育条件の維持と授業料の引き上げの抑制に努めますよう強く期待しているところであります。
 また、日本育英会の育英奨学事業につきましては、かねてから充実に努めてきているところであり、五十七年度予算において大学院貸与人員の増員を図るなどの改善を行うことといたしております。今後とも厳しい財政事情ではありますが、できる限り教育費負担の抑制に努力してまいりたいと考えております。
 義務教育教科書の無償給与制度につきましては、ただいま総理が御答弁をされたとおりでございます。
 教科書に対する政治権力の介入云々のお言葉もただいまございましたが、私はそのような事実があるとは考えておりません。文部省におきましては、従来から中正な立場に立って教育的に適切な教科書が生まれるよう検定に最善の努力を払ってきたところであり、今後とも、教科書に関する各方面の意見はいずれも謙虚に受けとめつつ、教科書検定制度を通じて教科書の改善と充実に努めてまいる所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○副議長(秋山長造君) 安恒良一君。
   〔安恒良一君登壇、拍手〕
#29
○安恒良一君 私は、日本社会党を代表して、総理並びに関係閣僚に国民生活及び福祉に関する問題を中心に質問をいたします。
 総理は、施政方針演説で「変化する社会への備え」を力説されました。八〇年代後半から二十一世紀にかけて、わが国には急速な高齢化と低成長への移行といった激しい変化が押し寄せてきますが、そうした情勢を前に、政府は国民生活の安定と福祉の維持向上にどのような備えをされるのか、まず総理に伺いたいと思います。
 いま多くの国民は、「福祉切り捨て」とか「年金の崩壊」とか、さらに「環境の汚染と破壊」といった声に代表されるとおり、生活と福祉の先行きに非常な不安を抱いており、悪い方へと変化する生活基盤に対してどう備えたらよいのか迷っているのではないでしょうか。果たして総理の演説はこうした不安にこたえたかどうかと言えば、「国民の生活は最優先順位で政府が守ります。何も心配は要りません」、この一言が施政方針演説になぜないのか、きわめて大きな疑問を感じるものであります。
 総理、変化する「社会への備え」を国民だけに訴え、押しつけながら、政府の責任は棚上げしたとの批判に、あなたは一体どう答えられますか。五十七年度予算は防衛費の七・八%の異常突出が目につきますが、これは経済大国の国際的責任だと説明されております。しかしながら、経済大国の責任と言うならば、これを生み出した「国民一人一人の英知と努力」に対しどう報いるというのか、総理、あなたに問われているのではないでしょうか。
 政府は、国民生活の重点が量的拡大から質的充実への時代になったという認識をお持ちだと思います。しかし、かつて国民生活白書が掲げた「健康、安全、快適、創造、平等」といった生活の質を充実するための目標は、政府の言う国民一人一人の「自立自助」の努力だけではとうていこれを実現することができません。その理由は、これらの目標に欠かせない条件や手段を国民がお金を出してそれぞれに買い調えるということができないからであります。たとえば、汚染されない水や食物、公共交通、保健医療、さらに介護者の派遣などのシステムが必要となりますが、これらはいずれも個人個人の努力で調えることはとうてい不可能であります。これらはいずれも国民共同の生活手段として、公的に供給するというのが近代国家の任務ではありませんか。そこで端的にお尋ねいたします。総理、これらの生活手段を整備する責任が国にあることを、あなたははっきりお認めになるのですか。総理のお答えをいただきたいと存じます。
 社会共同の生活手段については、国の責任で公的に供給、整備するという原則から見ますと、五十七年度予算の社会保障関係費の伸び率二・八%という措置は、万人の目から見て奇異であり、異常であるとしか言いようがありません。総理、あなたは行財政改革と福祉の関係を一体どう考えているのですか。本来政治の基本目的である福祉が、あなた方にとっては行財政の手段にすぎないのですか。自民党政府はハンディキャップを持った人々の暮らしを削ってまで戦闘機や駆逐艦をふやすのですか。行財政改革と福祉の関係について総理の基本理念を問わないわけにはまりません。
 昨年は国際障害者年でしたが、その目標である「完全参加と平等」にいたしましても、緊縮予算だからといってこれを後戻りさせてよい性格のものではありません。この目標を達成するために、私たちは、障害者の雇用拡大、障害児への普通教育の開放、障害者年金及び最低賃金による所得の保障及び移動・交通の自由、以上四つを最重点課題として主張してまいりましたが、これらについて今後どう推進されるのか、いわゆる十カ年行動計画との関連で明らかにしていただきたいと思います。
 なお、これにあわせてスモン患者、とりわけ投薬証明のない患者の早期全面救済についても、この機会に方針を承りたいと存じます。
 社会保障予算に関して、厚生大臣、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
 国民健康保険などに対する自治体負担への振替措置は、今後きっぱりあきらめると理解してよろしいのでしょうか、まずこの点についてお尋ねをいたします。
 また、年金給付に要する国庫負担額も、これまでは八%台で推移してきた伸び率がわずか一%弱に抑え込まれ、その上、厚生、国民両年金の物価スライドの実施時期が一カ月繰り下げられたのであります。しかし、財政の帳じり合わせにお年寄りまで利用しようというこの姿勢は、血も涙も通わない、まことにつれない仕打ちと言うべきではないでしょうか。昭和四十八年、年金制度にスライド制が初めて導入されて以来、消費者物価の上昇に追いつこうと努力してきたにもかかわらず、早くもこれが一歩後退させられたのであります。従来の経緯を尊重して、直ちに改善すると約束すべきと考えますが、総理、いかがでしょうか。
 年金問題では、二十年後、三十年後の長期年金財政の見通しと計画をどのように策定するかが欠かせない問題であり、これがないため、国民の間には年金の将来について不安感があふれているのであります。言うまでもなく、国民は老後の生活設計に破綻が生じては困るのです。この種の改革には、長期的な見通しのもとに段階的に実施に移していくという配慮が必要であります。この際、年金制度の長期計画について明確な方針を示していただきたいと思います。
 さらに、五十六年度に十三兆円に達すると見られる国民医療費について、一体、総理並びに関係大臣はどう考えられておるのか、お尋ねしたいと思います。
 国民は、いま医療の現状に不安と不満を抱きながら健康な生活をみずから取り戻す実践を始めております。その動きの中で培われているのは、成人病、慢性病が、薬づけ、検査づけのいまの医療では予防も治療もできはしないという見きわめてはないでしょうか。すなわち、日常生活における自然とのかかわり方、食物のとり方、あるいはまた運動と休養のバランスなど、要するに日ごろの暮らし方を変えるごとによって健康を取り戻そうとする動きが活発になってきたと思われるのであります。また、一九七七年にアメリカ上院栄養問題特別委員会が「不治の病と食事との関連」と題するレポートをまとめ、また国内では「食は医なり」との考えが広がって、熊本県菊池郡などにこれを実践する公立の医療機関さえあらわれております。
 そこでお尋ねしたいのは、第一に、政府が進めてきた健康づくり対策及びこれから手をつけようという老人保健事業においては、成人病、慢性病の予防と治療にかかわる以上のような動きをどう評価されているのか、特に老人保健法案のどこでそれを裏づけようとしているのか、明らかにしていただきたいと思います。
 第二に、医師や保健婦などが患者と十分に話し合って指導しても、投薬や検査をしない限り全然採算が合わないという現行制度をどう打開する所存か、承りたいと思います。特に、現行の点数出来高払い制度をどのように見直すのか、この点は大蔵大臣からも答弁をいただきたいと存じます。
 次に、社会保障と関連して、産業用ロボットの導入が雇用にどのような影響を与えるかについて、政府の見解をお尋ねしたいと思います。
 わが国のロボット設置台数はすでに七万七千台以上にも達し、世界の産業ロボットのうち、実に八〇%を保有していると言われています。最近これがきわめて広範な産業分野に導入されつつあり、しかもロボットがロボットをつくるという時代を迎えようとしております。このホワイトカラーでもない、ブルーでもない、スチールカラーのロボットを導入した工場においては、現在中高年労働者を中心に配置転換や人員整理が行われており、次の段階には当然、本格的な人員整理の強風が荒れ狂うことが予測されております。したがって、この余剰労働力の吸収をどうするかが今後の雇用政策の面での重大な課題になるでしょう。そこで政府は、これからのロボット社会において雇用問題をどのように取り組むのか、またロボットの活用の望ましい方向をどのように描いているのか、総理並びに労働大臣から所見を述べてもらいたいものであります。
 また、わが国のロボット化社会は高齢化社会と同時に進行してまいります。このまま放置すれば、年金保険料を支払う労働者はロボット化によって減少し、他方、年金受給者は高齢化によって増大し、その結果、年金財政を逼迫させることは必至であります。そこで、ロボットを就業者とみなし、年金保険料その他を事業主がロボットにかわって全額を支払うという制度、簡単に言えばロボット税というような制度を創設する必要があると思うのでありますが、この点は大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
 総理は、施政方針演説で「特に婦人の活動に期待する」と述べられております。国連婦人十年の運動も後半期に入り、各国は次々に婦人差別撤廃条約を批准しています。わが国においても当然批准を急ぐべきと考えますが、本国会に提出される予定がありますか。また、雇用における男女平等は条約の中の重要なポイントであります。わが党はすでに法律案を提出しておりますが、政府はいつ提案されるのか、お伺いをいたします。
 次に、わが党は、パート等で働く婦人の課税最低限度額を百二十万円とするように提案をしておりますが、政府はどのようなお考えをお持ちでしょうか、お伺いをいたします。
 次に、国民生活に不可欠な公共交通の確保についての問題であります。
 第八十五国会で、公共交通の確保のために必要な行財政・立法措置を講ずるという決議を行い、政府はこの趣旨に沿って誠意をもって努力することを約束いたしました。しかし、その後政府は、何らこれを実行しないばかりでなく、国鉄ローカル線の撤去や過疎地域におけるパス路線の廃止等の問題が相次ぎ、地域交通の確保に逆行するような措置をとっているではありませんか。このような国会を愚弄した結果となったのは一体どこに原因があったのでしょうか。まず政府に猛省を促して、お尋ねしたいと存じます。
 政府は、これまで公共交通に関しては、「総合交通体系の中で検討する」ということを半ば決まり文句のように言われてきましたが、総合交通体系の中身とは一体何だったのでしょうか。果たして体系的な計画があった上でそう言われていたのでしょうか。この際、率直に答弁をしていただきたいと思うものであります。
 こうした政府の無責任な姿勢は、昨年出された運輸政策審議会の答申によりさらに倍加すると思われてなりません。すなわち、この答申の柱になっている考え方は、わが国の車社会の現状を追認し、交通事業者にはより一層の過当競争をあおり、過疎地域における鉄道やバスはどんどん切り捨て、政府が率先してマイカーの積極活用を奨励し、私的交通手段に社会的責任を負わす方向を目指していると思うのであります。このような答申に反対し、生活交通を確保するための地方自治体の決議ないし意見書採択は、すでにこの一月二十七日現在で何と五百九十を数えております。さらに非常な勢いで全国的に広がりを見せておりますが、政府は一体これをどう受けとめておられるのか、所感を承りたいと存じます。
 公共交通をめぐる政府の信じられないような無為無策ぶりは、国鉄の現状に最も象徴的にあらわれております。国鉄の負債総額約十六兆円の半分以上は、何と工事に伴う借入金によるものであります。そして、いまなお毎年一兆円を超える膨大な工事費のほとんどを借金で賄い続けております。赤字を承知で東北及び上越新幹線、青函連絡トンネルをつくり、高い工事費や借料を国鉄に押しつけ、そしてまた新幹線開業に伴い並行在来線もまた巨額の赤字を出す、このようなやり方で赤字が累積しないはずがないではありませんか。その上、このツケをたび重ねての運賃値上げに回すのですから、国鉄経営にはまさに常識の一かけらもないと言わざるを得ません。
 こうしたやり方を長年続けてきた国鉄経営陣、それを行わせた政府と自民党、国鉄経営の危機の本質はまさにこの点にあると言わなければなりません。総理はそれを認めるかどうか、認めるとすれば今後どう改めるのか、総理の責任のとり方とあわせて、明確に答えていただきたいのであります。
 公共交通がいわゆるモータリゼーション、とりわけマイカーの普及によって後退していることは周知のとおりであります。わが国の自動車総数は四千万台を超え、人口当たりにしてアメリカに次ぐ世界第二位になりました。しかし、わが国の自動車業界は昭和六十年には六千万台になることを想定しております。また、政府も自動車道路予算などでこれを支援するというのが現状であります。
 そこで、この際政府の自動車政策の基本をお尋ねしたいのであります。政府は、わが国における自動車保有台数の限界をどの水準に置いているのかという問題であります。国土面積から森林面積等を差し引き、いわゆる可住地面積当たりの乗用車保有台数を国際的に比較いたしますと、すでに日本は第二位の西ドイツの二倍、アメリカの十倍となり、断然トップ、超過密になっている事実を政府は一体どう理解しておられるのでしょうか。わが国の地理的状況、既存道路の混雑度、交通事故死傷者の再増加といった実態、並びに省エネルギーの必要性から見ましても、政府は自動車及び自動車道の増加拡大には、もはや急ブレーキを踏むべきではないでしょうか。総合交通体系を整備する最高責任者としての総理の明確な答弁を聞かせていただきたいと思います。
 以上で私の質問は終わりますが、最後に、鈴木総理の施政方針演説を初め、各党代表質問に対する政府の答弁は、いま大多数の国民が素朴に疑問に思い、不安を感じている点について、何一つ答えていないという不満と批判が国会の内外で充満していることは周知の事実であります。特に私の質問は国民生活に直結する諸問題にしぼっているのでありますから、総理以下の明確で具体的な答弁を求めて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(鈴木善幸君) 安恒議員にお答えいたします。
 まず、私が施政方針演説で述べた「変化する社会への備え」についての御質問がありましたが、来るべき高齢化社会において国民すべてが健康で生きがいのある生活を送れるようにするためには、福祉、労働、産業、教育、住宅、地域など各般の施策を整合性を持って推進する必要があると考えております。中でも、当面の問題として現在国会で御審議いただいている老人保健法案は、疾病の予防や健康づくりを含む総合的な老人保健対策を確立しようとするものでありますので、早期成立をお願い申し上げます。また、年金制度については、人口の高齢化がピークを迎える三十年、四十年後に備えて、制度全体について計画的に検討を行っていく考えであります。さらに、高齢者の雇用対策は社会の活力を維持するためにも重要であり、六十歳定年の早期実現はもとより、六十歳代の人々の雇用対策についても、今後ともその推進に努力してまいる所存でございます。
 わが国の今日の繁栄をもたらした国民一人一人の英知と努力にどう報いるのかというお尋ねでありますが、政府及び与党である自由民主党の政策の一つ一つがすべて国民に報いるための努力であります。今後とも国民多数の支持のもとにこの努力を続けてまいります。国民生活を質的に充実し、これからの生活の真の豊かさを築いていくためには、お金で買えるものばかりでなく、非貨幣的なものもまた重要であります。このような国民生活の両面を今後より一層充実していくために、自助の精神による個々の人々や家庭の努力がまず第一でありますが、御指摘のように、個人的な努力では達成できないものも多くありますので、自助努力と行政を含む社会全体の努力をバランスさせていくことが重要であると考えます。
 行財政改革と福祉の関係について私の基本理念をお尋ねでありましたが、当面の行財政改革は、簡素にして効率的な政府を実現し、行財政の対応力を回復することにより、活力ある福祉社会を実現することを重要な目的とするものでありまして、福祉を行財政の手段とする考えは持っておりません。
 国際障害者年を契機に今後の障害者対策はどうなるのかとのお尋ねでありましたが、先日、中央心身障害者対策協議会より「国内長期行動計画の在り方」について提言をいただいたところであります。その中では、御指摘の障害者の雇用、教育、所得保障及び移動・交通等の生活環境の問題が重要な課題とされております。政府といたしましては、この提言を尊重し、長期的視野に立って障害者対策の推進に取り組んでまいる所存でございます。
 次に、今後の年金制度のあり方でありますが、人口の高齢化がピークを迎える三十年から四十年後に備えて、各方面からの御意見も踏まえながら、制度全体について長期的な視点に立って検討してまいりたいと考えております。
 国民医療費の問題でありますが、人口の高齢化などにより国民医療費の増加にはやむを得ない面もありますが、急激な増加は負担面等に大きな影響がありますので、健康づくりのための施策の充実、医療費適正化対策の推進などにより、適切に対処してまいりたいと思います。
 ロボット導入の雇用への影響についてお尋ねがございました。
 御指摘のように、近年わが国の産業界では、産業用ロボットの導入を初めとした技術革新が急速かつ広範に進展しております。技術革新はわが国経済の活力の維持、生産性の向上といった点からも重要な課題であり、政府としても長期的な視点からその推進を図っていく必要があると考えておりますが、その際には、労働力人口の急速な高齢化等の変化のもとで、技術革新が雇用にどのような影響をもたらすかについても十分に検討し、雇用の安定が図られるよう配慮してまいりたいと思います。
 次に、婦人の活動についてでありますが、婦人差別撤廃条約については、その批准のため国内法等諸条件の整備に努めていくこととしておりますが、男女雇用平等法の制定、母性保護の充実などについては、関係審議会での審議結果を待って検討してまいりたいと存じます。
 地方陸上公共交通維持整備に関する決議についてでありますが、地方陸上公共交通の維持整備の重要性を認識し、従来から所要の措置を講じてその維持整備を図ってきたところであります。今後とも決議の趣旨を尊重してまいりたいと存じます。
 総合交通体系についてお尋ねがありました。
 政府は、昭和四十六年十二月、臨時総合交通問題閣僚協議会において、総合交通体系についての基本方針を取りまとめましたが、その際定められた方針は、競争原理を活用しつつ、各交通機関の分担関係を想定し、交通需要を調整、誘導していくという基本的な考え方に基づき、交通政策の総合化、体系化のための諸方策を示したものであります。政府はこの基本方針に沿って諸般の交通政策を推進してきたところでありまして、この方針は現在においても基本的に妥当なものであると考えております。
 国鉄の経営危機は国鉄の経営陣と政府及び自由民主党の責任であるかのような御意見でありましたが、いま国鉄に対する世間の批判が高まっているのは、自己努力を欠き、ひたすら他に責任を押しつけるような体質に対するいら立ちではないかと思います。国鉄の収支の状況はまことに憂慮すべきものがありまして、国鉄の労使、政府、与野党、その他関係者が国鉄の問題を真剣に受けとめて、その解決に当たらなければならないと存じます。
 自動車及び自動車道の増加抑制についての御質問がありましたが、今日、自動車は国民生活にとって欠くことのできない輸送手段として定着しておりますし、わが国自動車産業は、広範な関連中小企業を含め、わが国経済発展と雇用吸収の大きな原動力になっておりますので、市場経済の原則に照らしましても、自動車の生産販売に対して、御指摘のような観点から政治ないし行政が介入して制限を加えることは適当でないと存じます。また、道路は国民生活及び経済活動を支える最も基本的な社会資本でありまして、その整備は今後とも必要であると考えております。
 以上お答えいたしましたが、残余の問題につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣森下元晴君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(森下元晴君) 安恒議員よりたくさんな質問をいただいております。八つにしぼりましてお答えをさせていただきます。
 一番初めの、障害者の所得保障及び移動と交通の自由の確保についてでございますが、障害者の「完全参加と平等」という目標達成の上できわめて重要であると考えておりますので、中央心身障害者対策協議会の御提言でもある「国内長期行動計画の在り方」も踏まえまして、さらに一層推進に努めてまいりたいと思っております。
 次に、スモン患者の救済についてでございます。
 裁判所の指示に従いまして和解により解決するとの当事者間の合意があり、国といたしましては今後ともこの方針に従い、いわゆる投薬証明書のないスモン患者を含め、一日も早く和解による救済ができるように努力を続けていく所存でございます。
 次に、国民健康保険への都道府県負担の導入の問題についてでございますが、五十七年度予算編成のときに、関係大臣の間で、今後速やかに国、地方の役割り分担を含めまして国民健康保険等の制度のあり方について検討することを合意しており、その検討の際の課題の一つであると考えております。
 次に、年金の物価スライド、例年より一カ月おくれたという点でございます。
 御承知のように、現下の財政事情はきわめて厳しいものでありまして、年金受給者の方々にもその間の事情を御理解を願いたいと存じます。なお、物価上昇率が五%以下の場合でも、特例的に物価スライドを実施することに踏み切ったわけであり、この点は政府の努力を御評価願いたいと存じます。
 次に、年金の長期計画についてのお尋ねでございますが、今後の年金制度のあり方につきましては、本格的な高齢化社会を迎える二十一世紀初頭においても制度が健全かつ安定的に機能できるよう、長期的な視点に立って検討を進める必要があると考えております。具体的には、すでに各方面から提出されている御意見や臨時行政調査会の御意見も参考といたします。また、関係審議会の御議論も踏まえながら検討を進める所存でございます。
 国民医療費につきましては、年々増加していますが、人口の高齢化、医療の高度化等によりやむを得ない面もあります。しかしながら、急激な国民医療費の増加は国民の負担面に大きな影響を及ぼすことになるため、健康の増進、病気の予防のための施策を講じるとともに、医療費適正化対策を推進することにより医療資源の効率的な活用がなされるように努めてまいりたいと考えております。
 成人病等の予防と治療に関する内外の活動の評価及び老人保健法案との関連でございますが、近年、内外において予防と治療を一体としてとらえ、日常生活の中で成人病等の問題に対処しようとしていることは評価すべきものと考えます。政府といたしましても、従来からの健康づくり対策をさらに発展させ、老人保健法案におきましては壮年期から各種の保健事業を総合的に実施することといたし、国民の健康づくりを図るとともに、国民みずからの健康づくりに対する日常の取り組みについて育てていく所存であります。
 最後に、現行の診療報酬の出来高払い方式につきましては、この方式の基本を改めることはなかなかむずかしい問題でございます。現行方式の長所は生かしつつ、その短所を補完することとし、医療費適正化のための諸施策を推進していきたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(渡辺美智雄君) 国民健康保険にかかわる負担の一部を都道府県に回すのはあきらめろということでございますが、これはなかなかむずかしい問題でありまして、五十七年度の予算編成のときに関係大臣で合意をいたしまして、今後速やかに国と地方の役割り分担をどうするかというような問題も含めてひとつ検討をしていこうと。したがって、この問題も今後の検討課題の一つということでございまして、断念をするわけにはまいりません。
 それから年金の伸び率が一%で非常に後退だというお話でございますが、これは厚生大臣がいまお答えしたとおりでございます。補助金の額は二兆三千八百六十九億円で、額としては一%しか伸びておりませんが、個々の受給者にとっては、いま言ったように四・五%の年金増となっておるわけであります。これは恩給、共済、みんな右へならえということでございまして、例年より一カ月おくれたというのも、これは全部右へならえで、現在の財政事情、物価動向等も考えてやったことでございますので、御了承をお願いしたいと考えております。
 それから十三兆円医療費、これは私も全く重大問題だと思っておるのです。しかしながら、人口の高齢化、医療の高度化によって、今後もある程度どうしてもこれはふえざるを得ない。しかし問題は、ふえることはいいんです、むだに使われたり、いい加減に使われたりしては困る。したがって、この点は私はかねて安恒議員と同じ考えでございまして、むだのないように指導監査体制を強化したり、レセプトの点検をきちんとしたり、そういうことをやらなければいかぬ。地域によって外来患者の一カ月一件当たりがえらいばらつきがあるとか、医療機関によって同じ地域の中でもむらがうんとあるというような点は、本当に社会的公正の確保という点からもほうっておけない問題ではないかと、そう思っております。厚生省の方でしっかりやってもらうつもりでございます。
 それから出来高払い制度の問題でございますが、これもいま厚生大臣がおっしゃったようなことでございまして、これはもう一長一短みんなあるわけでございます。これもしかし、いまやめてしまうといっても、ほかに何かいい方法と言われても、なかなか他に名案がないというところに問題があるわけでございます。(「ある、ある」と呼ぶ者あり)いや、なかなかないんですよ、これは。言うならばできそうなのは、団体契約でドイツのように上限を抑えてしまって、全体でもうこれだけだよ、幾ら取るものがあってもそれ以上払わないよと。だれかごまかす者があったら中でお互いにチェックし合うとか、そういうようなことならばできそうなものじゃないかと思うけれども、よくひとつ検討してもらうことにいたしたいと思っております。
 それから社会党がパートの課税限度額を百二十万円に提案をしております。どうかということですが、これはもらう方にとっては多ければ多い方がいいのかもしれませんが、やはり税金というのは公平の問題というのがあるのです。問題は、配偶者といいましても、たとえば夫婦がおって子供が二人いる。子供が大きくなって全部勤めに行って、それから子供が嫁をもらった。嫁さんも勤めに行っている、子供もできた。しかし、おばあちゃんが家におって、その子供のめんどうを一切見てやっているから嫁が働きに行けるという場合もあるわけです。しかしその場合は、そのおばあちゃんは二十九万円しか控除は認めないわけです。それはともかく、会社に行ってもし課長になったり、議員に当選するにしても、配偶者の人が一生懸命働いたから出世したのだという例もたくさんありますが、こういう場合も二十九万円しか控除は認めていないわけです。したがって、そういうような所得のない配偶者とのバランス、これも考えなければならない。実際は金に計算すればあるのかもしれませんが、しかし現実に税法上お金に見積もらないという配偶者がいっぱいいるわけです。したがって、やはりそういうところとのバランスを考えると、基礎控除二十九万円、これが限度じゃないか。
 もしそれを全体として上げろということになれば、基礎控除を上げろという話にこれはつながる話で、所得税全体の見直しの問題、こういうことになるのじゃないか。結局、所得者になるということは七十九万円以上所得がある、百万円あればだれかの配偶者から外れるというだけです。所得者として自分は別に二十九万と五十万の基礎控除は受けられるわけですから、ただ納税者になるというだけであって、全体とのそういうバランスも考えないと、ほかから不満が出るということも御了承願いたいと存じます。
 その次には、産業ロボット、これがふえて、要するに年金の掛金をする人がだんだん減ってしまうのじゃないか、これは大変なことだと。いまのところはどうということないが、本当にこれがどんどん将来ふえていくというようなことになれば、いま言ったような考えも一つの大変な心配事だと私は思います。しかし、いまの段階でロボット税という新税を考えるというわけにはなかなかいかないわけでございます。
 したがって、それはふえるといっても、どれぐらいふえるか。実際百人使っているところでロボットを使って八十人にしたというようなために、仮に八十人の残った人の生産性が上がって月給が上がれば、やっぱり年金の掛金も上がるわけですから、そこらの今度は年金の上限をどこにするかという問題は一つありますが、これは現在程度ならば、会社の所得が上がれば法人税がいっぱい入ってくる、あるいは残った従業員の生産性が上がって月給がいっぱい上がれば、税金も掛金もふえるという点もございますから、いまはストレートにすぐ結びついて年金額が減ってしまうということになるほどの状態ではありません。
 しかしながら、将来の問題として、本当にこれがどんどん町工場にまでみんな入っていって、人を使わなくても仕事ができるということになってくると、これは一つの大きな産業革命でございますから、そういう場合にはどうするかということは、そういう事態が現実的に広がるという事態のときに対応してまいりたい、まだ時期尚早である、こういうことであります。(拍手)
   〔国務大臣初村滝一郎君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(初村滝一郎君) 安恒議員にお答えしますが、問題は四つあったかと思います。一つは障害者の雇用拡大の問題、それから最低賃金制度の適用の問題、それで三番目にいまお話になっておるロボット化の社会の問題について、そして最後に婦人差別撤廃条約を早急に締結せよということであります。順次お答えをいたします。
 障害者の雇用促進については、雇用対策の最重点課題の一つとして今日まで取り組んできておるわけです。昨年の実雇用率も従来に比べまして相当の伸びを示してきております。今後、国際障害者年を単に一年限りの問題として終わることなく、これを契機として障害者雇用の一層の拡大を図るために、特に今年からは重度障害者の雇用促進に重点を置いて対策を進めていく所存でございます。しからばその具体方策についでは、先般提出されました中央心身障害者対策協議会の提言、あるいはまた近く提出を予定しております身体障害者雇用審議会の意見書等を十分に尊重して、その方向に沿った身体障害者雇用対策の充実強化に努力をしてまいる所存でございます。
 また、最低賃金は原則として心身障害者を含めてすべての労働者に適用されているところであり、今後とも金額の改定など適切な運営に努めてまいる所存であります。なお、労働能力の著しく低い心身障害者につきましては、雇用機会を確保する観点から適用除外制度が設けられておりますけれども、その運用に当たっては、心身障害者の保護に欠けることのないように慎重に処してまいりたい考えであります。
 ロボットの問題でございますが、近年わが国の産業界では産業用ロボットの普及が進展しておりますが、これまでのところ雇用面においては、新たな職域の拡大や労働者の新しい技術への適応性が高いこと、企業内において能力開発や円滑な配置転換が進められたことによって、特段の問題は現在起こっておりません。
 しかしながら、産業用のロボット普及は今後急速かつ広範に進むと考えられます。高齢化など労働力供給構造の変化のもとで雇用面にも多様な影響が生じることが予想されます。このために労働省といたしましては、産業用ロボットを初めとするマイクロエレクトロニクス技術の雇用に及ぼす影響について、量的側面のみならず質的側面もあわせて、総合的な調査研究を昭和五十七年度から本格的に進めるようにいたしております。
 また、経済の発展や国民生活向上の上で技術革新の推進は非常に重要な課題であります。これに当たっては、労働者の雇用の安定が図られるとともに、労働条件あるいは職場環境、就業意識等の面でも、労働者の職業生活の改善につながり得るよう十分配慮する必要があると思います。なお、この問題につきましては、政労使等関係者間で十分な意思の疎通が図られまするように配慮いたしたいと考えております。
 最後に、婦人差別撤廃条約は、昭和五十六年九月三日に国連条約として正式に発効したところであります。政府としては国内行動計画後半期における重点課題として、本条約批准のため国内法制等諸条件の整備に努めていく所存でございます。
 本条約批准のために雇用の分野でどのような条件整備が必要となるのかについては、十分検討が必要でありますけれども、いずれにしましても、雇用における男女の機会と待遇の平等を確保するという観点から、法的整備を含む今後の婦人労働対策について、現在関係審議会において検討が行われているところでありますので、政府といたしましては、その審議会の結果を待って、男女雇用平等法の制定、母性保護の充実等について検討してまいりたい所存でございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂徳三郎君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(小坂徳三郎君) 私に対する御質問は四点でございました。
 第一点は、身障者の移動・交通の自由の確保についてでございますが、基本的には総理からお答え申し上げましたが、運輸省といたしましては、中央心身障害者対策協議会の「国内長期行動計画の在り方」の意見を十分尊重いたしまして今後行政を進めて、身障者の方々の期待にこたえてまいりたいと心得てございます。
 それから第二点は、総合交通体系の問題でございますが、総理から基本的なお答えがございました。私からは運輸行政とのかかわり合いを申し上げたいと思いますが、基本的には四十六年の閣僚協議会の決定と同様の趣旨でございますが、その後の経済社会の変化を踏まえまして、昨年七月に行われました運輸政策審議会の答申を指針といたしまして、順次これを実施してまいるというような方向で進めてまいります。
 第三点は、第八十五国会における決議についてでありますが、これも総理からすでに御答弁がございましたが、運輸省といたしましては、地域交通の維持整備のための長期的な展望に立った交通計画をつくるために、地方公共団体を含む地方陸上交通審議会に諮って、地域ごとの交通計画の策定を進めておるところでございます。とともに、所要の助成措置を充実をいたして総合的に施策を展開してまいっておるのでございます。
 助成措置につきましての財源として、特別会計のようなものをつくるという試みを過去においてなしたのでありますが、なかなかこれは実現をいたしておりません。また、さきの運輸政策審議会の答申にもございますように、財源措置は必要であるけれども、新たな負担を国民に求めるものであるから、国民の十分なる理解を得た上で慎重に運ぶように心がけてまいらなければならぬというふうに現在思っておるところでございます。
 第四点は、運輸政策審議会の答申に対して各自治体議会等からの意見書が多数出ておることは承知しております。運輸省といたしましては、地域の公共交通の重要性を十分認識して所要の助成措置をとっておるところでありますが、今後とも一層の施策の充実を図ってまいりたい、そのように考えております。
 なお、各方面から提出されております意見書の中で、自家用自動車を公共交通より優位に置いた交通体系を提言しているという指摘が見られるのでございますけれども、運輸省といたしましては、公共交通より自家用自動車を優位とする交通体系を現在考えておるのではございませんので、御理解を賜りたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#35
○副議長(秋山長造君) 江田五月君。
   〔江田五月君登壇、拍手〕
#36
○江田五月君 代表質問も衆参通じて最後の締めくくりになりました。私は、新政クラブの個性豊かな七名を代表して、総理及び関係大臣に質問いたします。
 政党は、言うまでもなく、国民のためよりよい政治を行うために相争うべきものです。それなのに、ともすれば私たちはこれを忘れ、争いのための争いに終始する。私は総理の政治についても、評価すべきものは評価していきたいと思います。
 評価すべきものの一つは、総理の軍縮についての積極姿勢です。大変な量の核兵器が世界の火薬庫に蓄えられており、しかも限定核戦争とかいって、実際にこれに火をつけることが検討されている。これはもう人類の危機です。わが国は被爆体験を有し、しかも世界の平和が国の存立の基礎なのですから、軍縮は国是でなければなりません。このような時期に総理御自身が国連の軍縮特別総会に出席される。大いに敬意を表します。
 軍縮か軍拡かについて、いま世界じゅうで綱引きが行われています。総理の周辺でも、総理の軍縮への熱意を苦々しく思っている人もいると思います。総理のお考え自体の中にも、両方の傾向が混在しているようですね。しかし総理、アメリカもソ連もその他の先進諸国も、いずれも過大な軍事費の重圧に苦しんでいる。世界各国での軍縮の要求も高まっている。軍縮こそが世界の進むべき方向であり、軍拡は時代逆行ではありませんか。御所見を伺います。
 わが国が自由陣営の一員というのは当然ですが、それでも欧米に追随せず、独自に国際社会の中で軍縮の姿勢を明確にしても、決して世界の孤児にはならない。国内でも、軍事費に回すよけいな金があるなら、その金で軍縮への外交努力を強めるため、外務省や在外公館の軍縮関係の部局や人員をこそ増強すべきです、軍備でなく。被爆体験の風化を防ぎ、広島、長崎の悲惨に目をつぶるのでなく、これをいつまでも国民が覚えておくよう教育面での配慮もすべきです。大学に平和と軍縮の講座を設けるのも手です。そのほか「平和の日」とかいろいろあります。軍縮と平和のため、できることはすべてすべきであります。どういう具体的行動をおとりになるか、具体的にお答えください。
 一つ超具体的な提案をしましょう。わが国の被爆体験を世界に広めるため、六月、国連軍縮総会に行かれるときに、広島、長崎の記録映画と写真のパネルを御持参になってはいかがでしょうか。
 さて、来年度の予算案の中に、わずか二百十万円余りですが、きらりと光る部分があります。ほかが悪いから目立つ。それは、瀬戸内海に浮かぶ小島、長島と本土との間に橋をかけるための予備調査費です。長島と本土とはわずか三十メートル、大声を出せば声の届く距離です。この島に国立のハンセン氏病療養所が二つあり、患者千七百人と職員とで二千三百人の人がいます。長い間、国はこのハンセン氏病患者をひたすら社会から切り離すことに努力をしてまいりました。ある日突然、愛する家族から引き離されて力ずくで療養所に隔離され、以来、一生を離島で送る。この人たちの苦悩はどんな名文家でも言葉で表現できないでしょう。
 ところが、ハンセン氏病はもともと感染力は弱く、しかもいまでは患者のほとんどが完治しているのに、なお後遺症と社会の冷たい目のため社会復帰はきわめて困難です。昨年は国際障害者年でした。障害者の「完全参加と平等」をテーマにしたこの年に少しおくれましたが、この島に橋がかかる。関係者は「人間回復の橋」と呼び、これからの障害者福祉のシンボルだと喜んでいます。しかし、橋がかかる地元の人々の心の中に、まだとまどいとわだかまりがあるのも事実です。
 そこで総理、この機会に障害者福祉についての根本姿勢を伺いたい。
 世の中、五体満足な者だけで成り立つものではありません。目の見えない者、耳の聞こえない者、障害者もまた社会の大切な構成員ですし、これらの人たちの完全な社会参加を社会の大目標にしなければなりません。ノーマライゼーションと言われるこの考え方についての総理の姿勢いかんということです。「人間回復の橋」を蜃気楼にしてはいけません。自分のお隣に障害者が来たとき、だれもとまどいを感じないような社会、わだかまりなく障害者にだれもが手を差し伸べる社会、そんな社会をつくらなければなりません。御所見を伺います。
 ここでもう一つ超具体的な提案をします。一度、長島のハンセン氏病療養所をお訪ねになりませんか。
 ところで、経済運営と財政のことについては、すでに多くの質問と答弁がありました。しかし、国民は納得していません。大変な不況です。倒産件数などについて数字を挙げるまでもないでしょう。税金の重さ、不公平、けさの新聞を引用するまでもないと思います。いい話といえば、暮れの酉の市のくまでの売れ行きがよかったぐらいなこと。なのに、鈴木内閣の閣僚は皆、雲上人じゃありませんか。雲の上。だれ一人としてこの国民の困難を肌で理解する人はいない。違いますか、河本長官。どうですか、渡辺大臣。減税の要求はそんなに無理難題ですか。五年も続けて自然増税ですか。五・二%大丈夫ですか。税収は大穴があくのではありませんか。判で押した答えでなく、現実に対し素直になってはいかがですか。
 財政再建の方針が硬直して総理のメンツになるとき、泣くのは国民なんです。メンツと強弁の政治はいけません。真の財政再建のためにも、一兆円減税により政治の信頼を回復することが必要ではありませんか。どうですか、総理。
 国民の政治不信といえば、利権と政治の結びつき。鈴木さん、あなたの政治、人事は、いまのあなたの地位を確かにするために、灰色も黒色も構わず色目を使って、政治倫理に襟を正すことを忘れ、国民に政治に対する深い深い不信感をこれでもかこれでもかと植えつけているのです。日本は、国際環境にちょっと異変があっただけでも、経済も社会も乱れてしまうおそれがある。その意味では弱い国です。政治が国民の信頼を得ていないと、いざというときに国民に自制や助け合いを説くことはできないのです。そうでしょう。何とかの「大切」とか徳目を挙げてみても、言っている本人が政治を利用して金もうけ。これでは国民は耳を傾けようがない。政治不信はわが国の将来にとって致命的になります。どうするおつもりですか。何もかも全部裁判所に任せるつもりですか。
 具体的に聞きましよう。田中元首相に第一審で有罪判決が出たとき、それでもなお盟友関係を続けられますか。
 総理、あなたはいずればそのいすをお去りになります。ところが、あなたと一緒に政治不信も去るといううまいぐあいにはいかない。後に政治不信とか軍事緊張やそのほかのツケが残る。資源のことや環境のこともあります。農業の衰退も教育の荒廃も年金の破産も。行革はどうですか。あなたは未来のことをいろいろ言われますが、国民はあなたとともに未来に向かって歩むことに不安を感じているのです。あなたに任せていると、二十一世紀には仮にうまく生き残ったとしても、荒廃した自然の中で社会のあちらこちらにほころびばかり目立ち、私たちは相変わらず金と物を求めてあくせく働くという未来しか目に浮かばないのです。あなたは一体、どんな未来展望をお持ちなんでしょうか。
 総理、責任は重大です。どうぞ未来に取り返しのつかないツケだけは残さないよう最後にお願いし、こんな無責任政治をとにかく大きくつくり変える決意を表明して、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(鈴木善幸君) 江田議員にお答えいたします。
 近年、国際情勢には厳しいものがありますが、さればとて東西両陣営が競って軍備増強を続けるという状況は決して好ましいものではありません。われわれは、力の均衡が平和と安定を支えているという現実を認めつつも、バランスを保ちつつ、その水準をできるだけ低くするようあらゆる努力を行う責務があると考えております。
 この意味で、来る第二回国連軍縮特別総会は各国がこのような努力を一層強化するためのよい機会であり、私もぜひこれに出席して、平和国家としてのわが国の立場から、核軍縮を中心とした軍縮の促進を強く訴えたいと考えております。
 軍縮関係の人員を増強せよとの御提言でございました。外交実施体制の拡充強化につきましては、私もつとに意を用いてきているところでありますが、御提言の点につきましても貴重な御意見として承っておきます。
 なお、政府としては、軍縮、軍備管理への努力を展開してまいるに当たって、やはりこの面での国民の正しい認識と支持が得られることが不可欠であると考えております。かかる考え方に基づき、政府は常々軍縮の広報活動に意を用いているところであり、広報資料の作成、テレビ、ラジオを通じる軍縮問題の解説など幅広い広報努力を行ってきている次第であります。
 なお、広島、長崎の記録映画等を国連軍縮特別総会に持参すべしとの御提言につきましては、私も、被爆の実情に関する的確な認識を適切な形で世界各国において深めていくことはきわめて有意義であると考えておりますので、貴重な御意見として承っておきたいと思います。
 瀬戸内海の長島にかける橋の話から障害者福祉に触れられる御質問がございました。
 障害者福祉については、今後とも国際障害者年のテーマである「完全参加と平等」の実現を図り、障害のある人もない人も、すべての人にとって住みよい社会の建設を目指して努力してまいりたいと存じます。私もかつて厚生大臣在任中、ハンセン氏病療養所を視察したことがございます。それは昭和四十年、当時の佐藤榮作首相が戦後初めて沖繩を訪問され、沖繩の祖国復帰が実現しなければ日本の戦後は終わらないと申されたことは、国民の記憶に鮮明に残っておりますが、そのとき私も佐藤首相に同行し、沖繩の医療福祉の諸施設を視察いたしました際、ハンセン氏病療養所を訪れ、患者の皆さんの医療と生活の実態について見聞いたしたことがあります。私は、そのような体験を通じまして、こうした障害を持った方々の対策について、より一層これを推進してまいりたいと考えております。
 経済運営と減税についての御質問がございました。
 この点はすでにたびたび申し上げているところでありますので、経済企画庁長官及び大蔵大臣の答弁に譲りたいと存じますが、一点だけ申し上げておきたいのは、私が自分のメンツのために財政再建に努力しているなどということは決してないということであります。財政の再建は多くの困難と忍耐を伴うものでありますが、今日の不健全な財政状態を放置し、いわゆる赤字公債の償還のために新たに赤字公債を発行しなければならないという事態に立ち至りますと、国家経済はもとより、国民生活にとってもまことにゆゆしいことでありますので、鈴木内閣の最重要課題としてこれに取り組んでいるのであります。きわめて重要な国民的課題でありますので、私のメンツなどという次元の問題ではございません。
 最後に私は江田さんに申し上げたい。あなたは、私とともに未来に向かって歩むことには不安を感じていると述べられました。
 私たちの世代がいまのあなたと同年代のころ、サンフランシスコ平和条約が発効し、わが国は戦後の荒廃と混乱から自分の足で立ち上がりました。自来三十年、私たちは手をとり合いながら高度成長の坂道を駆け上ってまいりました。今日わが国は、世界のGNPの一割を占める経済大国になり、世界の中にあって揺るぎない地位を占めつつあります。
 いま私は、はからずも政権を預かる身となって、借金だらけの日本、貿易摩擦などで国際社会で孤立化するような日本を次の世代に引き継ぐようなことだけはしたくないと考えております。私が内閣の最重要課題として行財政改革と国際経済摩擦の解消を挙げているのは、このような考えに基づくものであります。私は、私に残された情熱のすべてを燃焼し、この仕事に当たり、二十一世紀に向けてのわが国の発展の基盤を強固にする一助になりたいと思っております。願わくは、江田さんのように明日を担う世代の方々は、いたずらに現状を批判するだけでなく、未来をしっかりと見詰め、祖国日本をより豊かでより生きがいのある国につくり上げていただきたいと存じます。
 以上お願いをいたしまして、残余の質問に対する答弁は所管大臣に譲ります。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(河本敏夫君) 五・二%成長は可能か、こういう御質問でございますが、現在わが国の経済は緩やかな回復過程にあると考えております。これまで景気の足を引っ張っておりました在庫調整も、ほぼ終了したものと判断をいたしております。また、世界経済もことしの後半からは回復に向かうであろうと期待をされております。先月二十三日、OECDでは先進工業国の経済見通しについて発表いたしましたが、現在は最悪の状態にあるけれども、ことしの後半にはOECD二十四カ国平均の経済は三%強の成長に回復するであろうという見通しを発表いたしております。私どもは、必ずしもこの見通しの数字をそのまま信用するものではありませんけれども、世界経済の方向は大体その方向に進んでおると判断して間違いないものだと考えております。
 そういう中にありまして、わが国は物価、それから失業、労使関係、貯蓄率、金利水準、国際競争力あるいは防衛費の負担、こういう面で欧米諸国よりもはるかに有利な条件にございました。その有利性を十分発揮できるような経済運営を進めたいと考えております。もとより現在は経済の激動期でございますから、経済の変動に当たって機敏かつ適切に経済運営をしなければなりませんが、日本の持っておりますこれらの基礎的な力を総合的に発揮することによりまして、本年度の経済成長見通し五・二%は達成できるものと確信をいたしております。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(渡辺美智雄君) 減税をやれというお話でございます。もうかねがね何人からも言われておるわけです。私としてもできることならという願望は持っております。しかしながら、それには財源が必要でございます。
 御承知のとおり、いまもお話があったように、世界じゅう高い石油が原因で二けたの物価高、あるいは八%、九%、多いところでは一一%の失業率で悩んでおるわけです。日本は御承知のとおり失業が二・一から三ぐらいのところを行ったり来たりで、倒産が毎月史上最高最高と言われましても、失業者の数はふえない、なぜか。これは当然にどこかの繁栄産業が吸収しているからだと私は考えます。その陰には、いままで財政が犠牲になっていろいろと投資をしたり、あるいは社会保障等を支えてまいりました。しかしながら、もうすでに九十三兆円という公債の残高を持つに至り、このまま放置すれば財政インフレという方向に行きかねない。
 これは、イギリスやアメリカのようなインフレを背負い込んでは大変ですから、われわれとしては、どうしてもこの際はそういう道を歩まないために財政の再建を優先しなければならぬ。メンツでやっておるわけではございません。したがって、この減税問題については、諸般の情勢から本年度はとうてい無理だということを申し上げておる次第でございます。(拍手)
#40
○副議長(秋山長造君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時二十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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